#わんちゃん首輪花かざり
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リチとの遭遇(冒頭試し読み)&通販のお知らせ
こたつの天板をひっくり返すと麻雀のラシャだった。あの緑色が現れると夜だった。布端がちょっとほつれて毛羽立っていて、直行はいつも焦れったかった。剥がれかけたかさぶたを引っ掻くみたいに手が伸び、びーーっと引っ張りたくてたまらなかったが、あれは父とその友人、あるいは伯父たちが夜な夜なジャラジャラやるためのものだった。勝手に触ると叱られそうな気がしてがまんしていた。 母家の隣のプレハブ小屋だ。父たちはしょっちゅうそこに集まり、ときには半裸になって酒を飲んでいた。母や祖母はほとんど来ない部屋だった。酒とかつまみとかを運んで溢れた灰皿を交換する役目は直行だった。夏の小屋はかなり蒸すが、窓も扉も全開にして扇風機をまわしておくと夜風が涼しかった。 ぶおお……ぶおお……と風に乗って鳴き声が響く。あれは牛蛙だと祖父が言った。火を通すとささみみたいだがあまりうまくはない、ただし唐揚げにすれば鶏か蛙かわからない。直行は、六年生になったら授業でカエルの解剖をやる、一人一匹カエルを与えられて必ずお腹を割かねばならないと上級生からおどかされていたため、いつまでも響く鳴き声が怖かった。そうしたら祖父が励ますみたいに「鳴いているのはみんな雄だ」と教えてくれた。変な励ましだと思った。 日が暮れる。父は小屋に向かう。麻雀牌にベビーパウダーをまぶし、夏場は長い時間やっているうちに牌と牌が汗でくっついてしまうからで、直行が赤ん坊のころ汗疹やおむつかぶれにはたかれたのと同じ粉だった。いそいそと作業する父の背中は汗ばんで、太い首が桃色に染まっていた。小屋の中を甘いにおいでいっぱいにして仕度し、父は客を待った。そうしていいにおいは男たちの汗やたばこでたちまちぐちゃぐちゃになった。 牌は杏仁豆腐みたいに見えた。しっかり固くて、スプーンを押し当てたらすとんと切れる、甘いシロップの中に浮かんでいる……。牌山を見ているとひんやりと甘い味が口の中によみがえった。甘味が虫歯に滲みる気さえした。あるいは父たちのツモったり切ったりの手つきは寿司職人みたいだと思っていた。伏せられた牌の白色はシャリで、背の黄色は……、黄色いネタって何かな。沢庵とか卵とか。もしくは辛子を塗られた? そんなもの見たことはないがたぶんバラエティ番組の罰ゲームっぽい何かが頭にあった。直行がじっと見ていても父も誰も麻雀のルールを教えてくれなかった。そばで携帯ゲーム機をいじりながら勝手な想像ばかりしていた。 父の後輩らしきちょっと若い男。日焼けした体がケヤキの若木みたいで、背中も眉も額も、体の全部がまっすぐだった。定規で引いたみたいな輪郭だと直行は思った。彼が「ロンです」と控えめに発声する感じがいいなと思っていた。あ、ロンです。あ、ツモ。おとなしく勝つ感じが格好いいもののように思えた。ただどうもロンとかツモとか宣言しても必ずしも勝ちとはならないようで、直行にはますます謎めいていた。 昼。男たちがいなくなったあとも直行はそれについて考えた。授業中や掃除の時間にふと思い出した。ポン、チー。卓のあっちからこっちへやりとりされる点棒。あれは算数セットの何かに似ていなくもない。小屋の麻雀はいつも長い時間やっているから直行は途中で寝てしまうこともあり、誰かが布団へ運んでくれた。男の横顔。彼はたばこを吸わない。漬物の茄子を齧るとき、汁がこぼれないようにあるいは惜しむように、口に運んだ箸をちょっと吸う。直行も真似をしてみたが茄子漬けを好きになれなかった。においも感触も苦手だった。鉢に残った漬け汁の青色は朝顔みたいな色だと思った。授業で育てた朝顔。直行のだけ成長が遅かった。みんなが実をスケッチしたり種を収穫したりしているころ、直行の鉢だけまだ青い花を咲かせていた。 苦手だとわかっているのに客の前で見栄をはり、茄子を口に入れたら飲み込めなくてべえっと吐いた。父はべつに叱らなかったが声をかけてくれるでもなかった。若い男がティッシュをとってくれた。しゅっしゅっとすばやく二枚。二枚も使って母親に怒られないかと、小屋にはいないのにとてもどきどきした。そうして若い男は出し抜けに「子どものころ学校のトイレでうんこするのが恥ずかしくて、体育館横のトイレは幽霊が出るって噂を流したよ」と言った。おれ専用のトイレにしたんだと笑った。 鳴いている蛙はみんな雄だ。いつかの祖父の励ましは理屈として通らないと思ったが、あれは理屈を言いたいわけではなかったのだとしばらく経ってからふと思い至った。体育館でマットを運んでいたら急にそう思った。たんになぐさめようとして言葉を継いだのだ。直行の学校は体育館の横にトイレはなかった。渡り廊下がいつも薄暗かった。 それならばと直行は思い、父たちのいない昼のうちにこっそりラシャのほつれを毟ることにした。学校から帰ってきてそっと忍び込み、昼間の小屋はかえって薄暗かった。カーテンの隙間��ら差し込む光が埃の粒子に跳ね返り、光の道筋を作ってキラキラしていた。直行は口を開け、ぱくっぱくっと空気をかじって吸い込んでみた。キラキラが埃だというのはわかっていた。汚い粒が自分の胃袋に溜まっていく背徳感に酔った。 天板を浮かせて隙間に手をつっこみ、布端を探った。天板は重く、指を挟むと爪がぎゅっと白くなった。痛くはないが圧迫される感じがよかった。思ったより少ししか糸はほどけず、びーーっとはならなかった。千切った糸は絨毯の裏に隠した。すっかり擦り切れたパンチカーペットで、タバコの焦げ穴があいている。直行の人差し指がちょうど嵌まる穴。そこに指を突っ込むのが好きだった。自分の指が芋虫になって絨毯を食う。きっと穴はどこかちがう場所につながっている。ワープ。そのころ髪を抜くのもちょっと癖になっていて、ぷちっと抜いたときの案外痛くない感じがやみつきになっていた。根元の白いかたまりが大きいとうれしくて、いい感じのかたまりが取れるまでぶちぶち抜いた。抜いた毛も糸と一緒に絨毯に挟んだ。 直行は一人で小屋に入り浸るようになった。毎日緑の布地をこすった。父たちがラシャと呼んでいたからこれはラシャなんだろうなあとおぼえたが、本当はもっとちがう名前があるのか、このような敷物がラシャというのは世の中の常識なのか、直行にはわからなかった。ラシャは音を消した。酔った父たちのでかい声に反し、牌を切る音はことんことんとおとなしかった。おらっとふざけて乱暴な打牌をすることはあったが、それでも大した音は鳴らない。寿司っぽい。寿司のことはよく知らないけど。白い調理服の男のイメージ。たまに連れて行ってもらう回転寿司は若いアルバイトとおばさんのアルバイトが多く、ちょっとちがった。伯父は醤油をむらさきと呼ぶ。伯父の太鼓腹には盲腸の手術跡がある。盲腸の痛みがいかに大変だったか、伯父は大仰に語り直行を怖がらせたが、手術跡というのは格好いい気がしていた。酔った伯父のひたいはてかてか赤く光った。 重い天板に手首の骨のところをわざと挟んでみて、痛くないのに痛がってみた。手がちぎれる! 罠が仕掛けられていた! 鰐に噛まれた! そういう想像。なかなかいい演技だったと直行は思うが一人きりでやっていたことなので誰も見ていない。昼間の小屋には誰も来なかった。やがて自慰を覚えた。 挟まれる感じといえば、重たい布団に押しつぶされるのも好きだった。押入れに積まれた布団の間に体をねじこみ、圧迫される感じがうれしかった。そしてそういう喜びは人に知られてはいけないものだろうと直感していた。これは誰にも��れてはいけない感情だと直行は噛み締めた。 でも従兄弟たちは察していたのかもしれない。集まった子どもたちで床にうつぶせになって何人も重なる遊びをよくやっていて、直行は一番下にされがちだった。その遊びのことはペチャンペチャンと呼んでいた。一番下はじゃんけんで決めようとは言うが小さい子が下になってはかわいそうだともっともらしく言われ、だいたいいつも直行が下敷きになった。どんどんみんな積み重なって、他人の体と密着したのはこれが最初の記憶かもしれない。自分ではない体のぐにゃっとした重さや熱。におい。 二つ上の従兄はそんなに背が高いわけではなかったが腕や足が骨っぽくて重かった。のしかかられると日焼けした腕にうっすら毛が生えているのがよく見えた。従兄の輪郭も定規で引き直されつつあると思った。直行が重いと叫ぶと毛が揺れた。草原だと思った。自分のとはちがうよその家の服のにおいがくすぐったかった。ペチャンペチャンをやっていると母たちに叱られた。内臓が破裂しちゃったらどうするの。直行はそのスリルにもひそかにドキドキしていた。ペチャンペチャンは三人目くらいから腹がぐっと押され、潰される感じで、苦しい苦しい、痛い痛い、ぺちゃんこになっちゃうよと直行はわめいた。ほんとはそんなに痛くなかった。痛みよりも快感があったのだが、ごまかすみたいに苦しいと叫んでいた。 やがて従兄は中学生になり麻雀の輪に入っていった。卓を囲む四人の男たち。じゃあ、従兄が入ったぶん誰が抜けたのだろう。それとも誰も抜けずに仲良く交代で? 疑問に答えは出ないまま、やがて直行が中学に入るころには父たちはあまり集まって遊ばなくなった。若い男は結婚し、子どもが生まれたときいた。直行は小屋をもらって自分の部屋とした。
5/21文学フリマ東京の新刊です。3万字くらいの短い小説で、薄い文庫本です。
通販開始しましたのでよかったら覗いてみてください〜
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余花に吉兆
1. 友人あるいは恋人のようなことを始めたら、もっと分かり合えて親密な空気だとか柔らかな信頼みたいなものが生まれるかと予想していたが、俺らの空間は特段何かが変化することもなく、近すぎず遠すぎずの関係が果てなく伸びていくのみだった。 大切なものを手のひらに閉じ込めるような日々だった。彼の大きな体は存在感だけでもどこか騒々しかったが、無音より心地よかったのだ。
うずたかく積もった瓦礫がようやく街から消える頃、俺は人生初の無職デビューを飾った。事務所は畳んだし復興支援委員会の任期も終わった。警察や公安、行政から相変わらず着信や不定期な依頼はあれど、様々な方面からの誘いを断り所属する場所がなくなった俺はぼんやりと初夏を迎えることとなった。 無職になりまして。とセントラルの定期通院の帰り、待ち合わせた居酒屋で焼き鳥をかじりながら言うと彼は呆けた顔で俺を見た。エアコンの効きが悪いのか、妙に蒸し暑くてふたりとも首筋にじんわり汗が滲んでいる。 「お前が?」 「はい。しばらくゆっくりしてから次のこと考えようと思って」 「お前にそんな発想があったとは」 「どういう意味ですか」 「休もうという発想が。いつも忙しく働いとったろーが。そもそも趣味や休みの過ごし方をお前の口から聞いたことがない」 「それ元SKたちにも言われましたわーー。人を仕事人間みたく言わんでくださいよまあその通りですけど。今までやれなかったこと全部やったろ、と思ってたんですけど10日で飽きました。福岡いるとどうしても街の様子気になっちゃうしホークスだ〜〜♡ て言われるし、どっか旅行でも行けばって言われるんすけど全然そんな気になんないんすよ。来月には引きこもりになってるかもしれねっす」 そしたら会いに来てくださいね♡ と言ったら、彼は釈然としないような、そして何かに耐えるような、そんな顔をした。 店を出ると強い風が頬を打った。まだほんのわずか残っていた春の気配が吹き飛んでいく。じゃあ、と手をあげかけたところでデカい手が伸びてきて顎を掴まれた。「飲み直すぞ、うちで」「ひゃい?」かくて俺はそのままタクシーに突っ込まれ(この人と乗る後部座席は超狭い)、轟邸へお持ち帰りされることとなった。
暗闇の中でうずくまる恐竜みたいな日本家屋。数奇屋門と玄関の間だけで俺の1LDKがすっぽり入りそう。靴を揃えて上り框に足をかけると今度は首根っこを掴まれた。連行されるヴィランそのままの格好で俺は廊下を引き摺られ居間の隣室へ放り込まれる。今夜は何もかも展開が早い。「なになに? 俺には心に決めた人がいるんですけど⁉︎」「使え」「は?」 「この部屋を好きなように使え。しばらく置いてやる」 「もしかしてあなた相当酔ってますね⁉︎」 「あれくらいで酔わん。お前が、ヒーロー・ホークスが行くところがないなんて、そんなことがあってたまるか」 畳に手をついて振り仰ぐ。廊下から部屋に差し込む灯りは畳の目まではっきりと映し出しているけれど、彼の表情は逆光でわからない。 「俺、宵っぱりの朝寝坊ですよ」 「生活習慣までとやかく言わん。風呂を沸かしたら呼びに来てやるからそれまで好きにしてろ」 けれど俺が呼ばれることはなく、様子を見に行くと彼は居間で寝落ちていたのでやっぱり酔っていたのだと思う。デカい体を引きずって寝室に突っ込んだ。風呂は勝手に借りた。
酔ってはいたものの彼の意思はしっかり昨晩にあったようで、そして俺も福岡に帰る気が全くおきなかったので、出会い頭の事故のように俺の下宿生活は始まった。 「うちにあるものは何でも好きに使え」なるありがたいお言葉に甘えて俺は巣作りを開始した。足りないものはAmazonで買った。徹夜でゲームしたりママチャリで街をぶらついたり(帽子をかぶってれば誰も俺に気づかなかった)ワンピース一気読みしたり豚肉ばかり使う彼からキッチンの主権を奪いそのまま自炊にハマったりもした。誰を守る必要もなく、誰かを気にかける必要もない。誰を満足させる必要もなかった。彼が出かける時間に俺は寝ていたし夕飯も好きな時間に食べていたので下宿より居候の方が正確だったかも知れない。誰かとひとつ屋根の下で暮らすことへの不安はすぐ消えた。早起きの彼がたてる足音や湯を使うボイラー音、帰宅時の開錠の音。そんな他人の気配が俺の輪郭を確かにしていったからだ。 ヒーローを引退した彼は事務所を売却したのち警備会社の相談役に収まっていたがしょっちゅう現場に呼ばれるらしく、出勤はともかく帰り時間はまちまちだった。まあわかる。治安維持に携わっていて彼に一目置いていない人間はまずない(治安を乱す側はなおさらだ)。「防犯ブザーのように使われる」とぼやいていたが、その横顔にはおのれの前線を持つものの矜持があった。どうしてか俺は嬉しい気持ちでそれを見ていた。
2. ある夜、俺は玄関で彼のサンダルを履き外へ出た。引き戸を開けると明るい星空が広がっていて、それが妙に親しかった。縁側に腰掛けてぼんやり彼方を眺めると星の中に人工衛星が瞬いている。ほとんどの民家の明かりは消えていて、夜は少し湿りそして深かった。紫陽花だけが夜露に濡れて光っていた。 知らない街なのに、他人の家なのに、帰らんと、とは微塵も思わなかった。俺はここにいる。知らない場所に身ひとつで放り出されてもここに帰ってくる。呼吸をするたびに心と体がぴったりと張り付いていった。 気配を感じて振り返ると、あの人がスウェットのまま革靴を引っ掛けて玄関から出てくるところだった。 「風邪をひくぞ」と言われ何も答えずにいると犬か猫みたいにみたいに抱えられ、家の中に連れ戻された。 それからほとんど毎夜、雨でも降らない限り俺は外に出て彼方を眺めた。そうすると彼は必ずやってきて俺を連れ戻した。ある夜「一緒に寝てください」と言ったら彼は呆れたように俺を見下ろして「お前の部屋でか」と言った。そうかあそこは俺の部屋なのか。「あなたの部屋がいいです」と言ったら視線がかちあい、耳の奥で殺虫器に触れた虫が弾け飛ぶみたいな音がして、目が眩んだ。 「そんで、同じ布団で」 「正気に戻ってからセクハラだとか騒ぐなよ」 彼の布団にすっぽりおさまると目が冴えた。やっぱこの人なんか変。そんで今日の俺はもっと変。分厚い背中に額をあてて深く息を吸った。おっさんの匂いがして、めちゃくちゃ温かくて、甘くて甘くて甘くて足指の先まで痺れる一方で自分で言い出したことなのに緊張で腹の奥が捻じ切れそうだった。 彼の寝息と一緒に家全体が呼吸をしている。眠れないまま昨夜のことを思い出す。俺が風呂に入ろうとして廊下を行くと、居間で本を読んでいた彼が弾かれたように顔を上げた。その視線に斥力のようなものを感じた俺は「お風呂行ってきまぁす」となるべく軽薄な声で答えた。一秒前まであんな強い目をしていたくせに、今はもう血の気の失せた無表情で俺を見上げている。妙に腹が立って彼の前にしゃがみ込んだ。「一緒に入ります?」「バカか」「ねえエンデヴァーさん。嫌なこととか調子悪くなることあったら話してください。ひとりで抱え込むとろくなことないですよ。俺がそれなりに役立つこと、あなた知ってるでしょ?」 「知ったような顔をするな」 「俺はド他人ですが、孤独や後悔についてはほんの少し知っていますよ」 真正面から言い切ると、そうだな、と素っ気なく呟き、それきり黙り込んだ。俺ももう何も言わなかった。 ここは過ごすほどに大きさを実感する家だ。そこかしこに家族の不在が沈澱している。それはあまりに濃密で、他人の俺でさえ時々足をとられそうになる。昨日は家族で食事をしてきたという彼は、あの時俺の足音に何を望んだのだろう。 いつぞやは地獄の家族会議に乱入したが、俺だって常なら他人の柔らかな場所に踏み入るのは遠慮したいたちだ。けれどあの無表情な彼をまた見るくらいなら軽薄に笑うほうがずっとマシだった。これから先もそう振る舞う。 きんとした寂しさと、額の先の背中を抱いて困らせてやりたい怒り。そんなものが夜の中に混ざり合わないまま流れ出していく。
3. 涼しい夜にビールを飲みながら居間で野球を眺めていたら、風呂上がりの彼に「ホークス」と呼ばれた。 「その呼び方そろそろやめません? 俺もう引退してるんすよ。俺はニートを満喫している自分のことも嫌いじゃないですが、この状態で呼ばれるとホークスの名前がかわいそうになります、さすがに」「お前も俺のことをヒーロー名で呼ぶだろうが」「じゃあ、え……んじさんて呼びますから」「なぜ照れるんだそこで」「うっさいですよ。俺、けーご。啓吾って呼んでくださいよほら」「……ご」「ハイ聞こえないもう一回」「け、けいご」「あんただって言えないじゃないですかあ!」 ビールを掲げて笑ったら意趣返しとばかりに缶を奪われ飲み干された。勇ましく上下する喉仏。「それラスト一本なんすけどお」「みりんでも飲んでろ。それでお前、明日付き合え」「はあ」「どうせ暇だろ」「ニート舐めんでくださいよ」 翌日、俺らは炎司さんの運転で出かけた。彼の運転は意外に流れに乗るタイプで、俺はゆっくり流れていく景色を眺めるふりをしてその横顔を盗み見ていた。「見過ぎだ。そんなに心配しなくてもこの車は衝突回避がついている」秒でバレた。 「そろそろどこいくか教えてくださいよ」 「そば屋」 はあ、と困惑して聞き返したら、炎司さんはそんなに遠くないから大丈夫だ、とまたしてもピンぼけなフォローで答えた。やがて商業施設が消え、国道沿いには田園風景が広がり出した。山が視界から消え始めた頃ようやく海に向かっているのだと気づく。 車は結局小一時間走ったところで、ひなびたそば屋の駐車場で止まった。周りには民家がまばらに立ち並ぶのみで道路脇には雑草が生い茂っている。 テレビで旅番組を眺めているじいさん以外に客はいなかった。俺はざるそばをすすりながら、炎司さんが細かな箸使いで月見そばの玉子を崩すのを眺めていた。 「左手で箸持つの随分上手ですね、もともと右利きでしょ?」 「左右均等に体を使うために昔からトレーニングしていたから、ある程度は使える」 「すげえ。あなたのストイックさ、そこまでいくとバカか変態ですね」 「お前だって同じだろう」 俺は箸を右から左に持ち替えて、行儀悪く鳴らした。 「んふふ。俺、トップランカーになるやつってバカか天才しかいねえ、って思うんすよ。俺はバカ、あなたもバカ、ジーニストさんも俺的にはバカの類です」 「あの頃のトップ3全員バカか。日本が地図から消えなくてよかったな」 そばを食べて店を出ると潮の匂いが鼻を掠めた。「海が近いですね?」「海といっても漁港だ。少し歩いた先にある」漁港まで歩くことにした。砂利道を進んでいると背後から車がやってきたので、俺は道路側を歩いていた炎司さんの反対側へ移動した。 潮の香りが一層強くなって小さな漁港が現れた。護岸には数隻の船が揺れるのみで無人だった。フードや帽子で顔を隠さなくて済むのは楽でいい。俺が護岸に登って腰掛けると彼も隣にやってきてコンクリートにあぐらをかいた。 「なんで連れてきてくれたんですか。そば食いたかったからってわけじゃないでしょ」 海水の表面がかすかに波立って揺れている。潮騒を聞きながら、俺の心も騒がしくなっていた。こんな風に人と海を眺めるのは初めてだったのだ。 「俺を家に連れてきたのも、なんでまた」 「……お前が何かしらの岐路に立たされているように見えたからだ」 「俺の剛翼がなくなったから気ィ使ってくれました?」 甘い潮風にシャツの裾が膨らむ。もう有翼個性用の服を探す必要も服に鋏を入れる必要も無くなった俺の背中。会う人会う人、俺の目より斜め45度上あたりを見てぐしゃりと顔を歪める。あの家で怠惰な日々を過ごす中で、それがじわじわ自分を削っていたことに気づいた。 剛翼なる俺の身体の延長線。俺の宇宙には剛翼分の空白がぽっかり空いていて、けれどその空白にどんな色がついているかは未だわからない。知れぬまま外からそれは悲しい寂しい哀れとラベリングされるものだから、時々もうそれでいいわと思ってしまう。借り物の悲しさでしかないというのに。 「俺より先に仲間が悲しんでくれて。ツクヨミなんか自分のせいだって泣くんですよかわいいでしょ。みんながみんな悲壮な顔してくれるもんだから、正直自分ではまだわかんなくて。感情が戻ってこない。明日悲しくなるかもしれないし、一生このままかも。 あなたも、俺がかわいそうだと思います?」 「いいや」 なんのためらいもなかった。 「ないんかい」 「そんなことを思う暇があったら一本でも多く電話をして瓦礫の受け入れ先を探す。福岡と違ってこの辺はまだ残っとるんだ。それから今日のそばはおれが食いたかっただけだ」 「つめたい!」 「というかお前そんなこと考えとったのか。そして随分甘やかされとるな、以前のお前ならAFOと戦って死ななかっただけ褒めてほしいとか、ヒーローが暇を持て余す世の中と引き換えなら安いもんだと、そう言うだろう。随分腑抜けたな。周囲が優しいなんて今のうちだけだ、世の中甘くないぞ、きちんと将来のことを考えろ」 「ここで説教かます⁉︎ さっきまでの優しい空気は!」 「そんなもの俺に期待するな」 潮風で乱れる前髪をそのままにして、うっとり海に目を細めながらポエムった10秒前の自分を絞め殺したい。 彼は笑っているのか怒っているのか、それともただ眩しいだけなのかよく分からない複雑な顔をする。なお現在の俺は真剣に入水を検討している。 「ただ、自分だけではどうしようもないときはあるのは俺にもわかる。そんな時に手を…… 手を添えてくれる誰かがいるだけで前に進める時がある。お前が俺に教えてくれたことだ」 「ちょ〜〜勝手。あなたに助けてもらわなくても、俺にはもっと頼りたい人がいるかもしれないじゃないですか」 「そんな者がいるならもうとっくにうちを出ていってるだろう。ド他人だが、俺も孤独や後悔をほんの少しは知っている」 波音が高くなり、背後で低木の群れが強い海風に葉擦れの音を響かせた。 勝手だ、勝手すぎる。家に連れてきてニートさせてあまつさえ同衾まで許しといて、いいとこで落として最後はそんなことを言うのか。俺が牛乳嫌いなのいつまでたっても覚えんくせにそんな言葉は一語一句覚えているなんて悪魔かよ。 俺にも考えがある、寝落ちたあんたを運んだ部屋で見た、読みかけのハードカバーに挟まれた赤い羽根。懐かしい俺のゴミ。そんなものを後生大事にとっとくなんてセンチメンタルにもほどがある。エンデヴァーがずいぶん可愛いことするじゃないですか。あんた結構俺のこと好きですよね気づかれてないとでも思ってんすか。そう言ってやりたいが、さっき勝手に演目を始めて爆死したことで俺の繊細な心は瀕死である。ささいなことで誘爆して焼け野原になる。そんなときにこんな危ういこと言える勇気、ちょっとない。 「……さっきのそば、炎司さんの奢りなら天ぷらつけとけばよかったっす」 「その減らず口がきけなくなったら多少は憐れんでやる」 骨髄に徹した恨みを込めて肩パンをした。土嚢みたいな体は少しも揺らがなかった。
車に向かって、ふたりで歩き出す。影は昨日より濃く短い。彼が歩くたびに揺れる右袖の影が時々、剛翼の分だけ小さ��なった俺の影に混じりまた離れていく。 「ん」 炎司さんが手でひさしを作り空を見上げ、声をあげる。その視線を追うと太陽の周りに虹がかかっていた。日傘。 「吉兆だ」
4. 何もなくとも俺の日々は続く。南中角度は高くなる一方だし天気予報も真夏日予報を告げ始める。 SNSをほとんど見なくなった。ひとりの時はテレビもつけず漫画も読まず、映画だけを時々観た。炎司さんと夜に食卓を囲む日が増えた。今日の出来事を話せと騒ぎ聞けば聞いたで質問攻めをする俺に、今思えば彼は根気よく付き合ってくれたように思う。
気温もほどよい夕方。庭に七輪を置き、組んだ木炭に着火剤を絞り出して火をつける。静かに熱を増していく炭を眺めながら、熾火になるまで雑誌を縛ったり遊び道具を整理した。これは明日の資源ごみ、これは保留、これは2、3日中にメルカリで売れんかな。今や俺の私物は衣類にゲーム、唐突にハマった釣り道具はては原付に及んでいた。牡丹に唐獅子、猿に絵馬、ニートに郊外庭付き一戸建てだ。福岡では10日で暇を持て余したというのに今じゃ芋ジャージ着て庭で七輪BBQを満喫している。 炭がほの赤く輝き出すころに引き戸の音が聞こえ、俺は網に枝豆をのせた。 「今日は早いですね〜〜おかえりなさい」 「お前、無職が板につきすぎじゃないか?」 「まだビール開けてないんで大目に見てください」 家に上がった彼はジャージ姿でビールを携えて帰ってきた。右の太ももには「3-B 轟」の文字。夏雄くんの高校ジャージだ、炎司さんは洗濯物を溜めた時や庭仕事の時なんかにこれを着る。そのパツパツオモシロ絵面がツボに入り「最先端すぎる」と笑ったら「お前も着たいのか?」とショートくんと夏雄くんの中学ジャージを渡され、以来俺はこの衣類に堕落している。遊びにきたジーニストさんが芋ジャージで迎えた俺たちを見てくずおれていた。翌々日ストレッチデニムのセットアップが届いた(死ぬほど着心地がよかった)。 焼き色のついた枝豆を噛み潰す。甘やかな青さが口の中に広がっていく。 「福岡帰りますわ、ぼちぼち」 彼の手からぽとりとイカの干物が落っこちた。砂利の上に不時着したそれにビールをかけて砂を流し、網の上に戻してやる。ついでにねぎまを並べていく。 「……暇にも飽きたか」 「いや全然、あと1年はニートできます余裕で」 ぬるい風と草いきれが首筋をくすぐり、生垣の向こうを犬の声が通り過ぎていく。いつも通りのなんでもない夕方だ。そんななんでもなさの中、現役の頃は晩酌なんてしなかっただろう炎司さんが俺とビールを開けている。俺らはずいぶん遠くまで来た。 「福岡県警のトップが今年変わったんですけど、首脳部も一新されて方針も変わったらしくて、ヒーローとの連携が上手くいってないらしいんすよね。警察にもヒーローにも顔がきいて暇な奴がいると便利っぽいんで、ちょっと働いてくるっす。そんで、俺のオモチャなんですけど」整理した道具たちに目をやる。「手間かけて悪いんですが処分してくれませんか?」 「……どれも、まだ使えるだろう」 「はあ。リサイクルショップに集荷予約入れていいです?」 「そうじゃない。処分する必要はないと言ってるんだ」 的外れと知っていてなお、真っ当なことを言おうとする融通のきかなさ。その真顔を見て俺この人のこと好きだな、と思う。子どものまま老成したような始末の悪さまで。 「それは荷物置きっぱにしてていいからまたいつでも来いよってことでしょーーか」 「……好きにしろ」 唸るような声はかすかに怒気をはらんでいる。さっきまで進んでたビールは全然減ってないしイカはそろそろ炭になるけどいいんだろうか。ビール缶の汗が彼の指をつたい、玉砂利の上にいびつな模様をつくっていく。 「じゃあお言葉に甘えて。それとツクヨミが独立するってんで、事務所の立ち上げ手伝ってほしいって言われてるんすよ、なんでちょくちょくこっちに滞在するので引き続きよろしくお願いします具体的には来月また来ます♡」 「それを先に言え‼︎」 今度こそ本物の怒りが俺の頬を焦がした。具体的には炎司さんの首から上が燃え上がった。七輪みたいに慎ましくない、エンデヴァーのヘルフレイム。詫びながら彼の目元の皺を数えた。青い瞳にはいつも通りに疲労や苛立ち、自己嫌悪が薄い膜を張っている。今日も現場に呼ばれたんかな。ヒーロースーツを着なくなっても、誰かのために走り回る姿は俺の知ったエンデヴァーだった。腕がなくなろうが個性を使わなかろうが、エンデヴァーを許さぬ市民に罵倒されようが。だから俺も個性なくてもできることをやってみっかな、と思えたのだ。ここを離れ衆目に晒されることに、不安がないわけではないけれど。 疲れたらここに帰ってまたあの部屋で布団かぶって寝ればいい。家全体から、やんわり同意の気配が響くのを感じる。同意が言いすぎだとしたら俺を許容する何か。俺のねぐら、呼吸する恐竜の懐の。 「その……なんだ、頑張れ」 「アザーース」 帰属していた場所だとか、背にあった剛翼だとか。そんなものがごっそりなくなった体は薄弱で心もとない。だから何だ、と思う。俺はまだ変わる。 空があわあわと頼りない色合いで暮れていく。隣にしゃがんだ炎司さんの手が俺の背に添えられた。翼の付根があったあたりにじわりと熱が広がり、そのまま軽く背を押されて心臓が跳ねる。 「来月はそば打ちでもしましょうね」 短い肯定が手のひらの振動から伝わる。新たな命を吹き込まれる俺の隣で、炭が��ちりと爆ぜた。
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『魔女の選択』試し読み(『山梔の處女たち』収録
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表紙の写真は、高校時代からの友人мärさんです。
収録作『魔女の選択』の試し読みを掲載します。
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オド魔法女学院は早春、卒業旅行を控えていた。行き先はカリクシュマン��。オド魔法女学院最初の卒業生にして、はじめて女性で万象にえらばれ司となったマトゥーヤが、卒業試験のおりに学院の裏森と門をつないだ異界である。 「いま、いそがしいってわかってるよね」 教員室の窓からうんざりした顔を出しているのは三年生の担任のウタ。外には、エプロンを身につけたふくよかな女がひとり。野薔薇を一輪、ウタに差し出している。 「知ってる。だからきた。俗世の労働からさらってやろうと思って」 野薔薇は受け取ったものの、ウタの顔は渋い。 「あいにく、わたしはこの賃労働が気に入っているので、理の司にして大魔女マトゥーヤの迎えはおことわりするわ」 「なぜ。手をこんなに荒らして。紙ばかりさわっているからだ」 マトゥーヤと呼ばれた女は丸っこい両手で、野薔薇を受け取ったウタの手を包む。 「わたしのところへおいで、働かなくていい。あなたの大好きな本を好きなだけ読み、詩を書き、寝たいときに寝て、起きたくない朝は起きなくていい。なにもしなくていいんだよ、わたしには司の不労所得がある」 「その言いかた、いちいち癪にさわるわね。詩作は楽しいし、読書は人生の糧だけど、教員の仕事はわたしには大事な生きがいなの。帰ってちょうだい。卒業旅行の用意で忙しいんだから」 「つれないねえ」マトゥーヤはしらじらしくため息をつく。「わたしだって卒業旅行の準備のために呼ばれているっていうのに」 「だったらさっさと学院長室へいきなさいよ」 年に一度、この学院の卒業生たるマトゥーヤは卒業旅行のために招聘される。カリクシュマンテは、マトゥーヤだけが門をひらくことができる異界だった。 「まあ、門ならもう開き終えたんだけどね」 「学院長先生への挨拶は?」 「表敬訪問ならいましている、われらがオド魔法女学院のウタ先生に」 「わたしにしてどうするのよ」 「学院長の話は長くてあくびが出るよ、大昔から」 マトゥーヤは肩をすくめて、ぺろりと舌を出した。マトゥーヤとウタがこの学院の生徒だったころから学院長は変わっておらず、当時もいまも、講話はうんざりするほど長かった。 「マトゥーヤは仕事を終えた。もう帰ってもいいはずだ。あなたを連れて、ね」 「わたしは三年生の担任よ。いなくてどうするの」 「教師がいなくとも、旅行はできる。そう異界を調整しておいた。教師なんていないほうが生徒たちも楽しめるよ」 「もしものことがあるかもしれない。――あなたは忘れているかもしれないけど、十八歳はまだこどもよ」 「使い魔をえらんだんだろう。ならば立派な魔法使いさ。自分のことは自分で決められる。生涯のパートナーを、もうえらんだんだから」 その台詞にウタはさらに顔をしかめた。 オド魔法女学院の卒業試験は、各自で門を開き異界へゆき、使い魔を獲得することが卒業要件だ。使い魔は魔法使いにとっては必要不可欠な存在で、持たずに社会に出ることはできない。 ウタのクラスは、全員が使い魔を獲得し、卒業要件をきっちりと満たしていた。 それなのに、使い魔、とマトゥーヤが発したときにウタが表情をけわしくしたのには理由がある。 「どうしたの?」マトゥーヤは首をかしげたが、ウタが問題の核心を話してしまうまえに、次の台詞を次いだ。「わたしがえらんだ使い魔はオーガだった。ブタがブタをえらんだと担任は笑った」 「あの担任は最悪だったわ」 「あなただけが笑わなかったね」 ほんとうは、ウタは頭を抱えたい。なにもかもぶちまけてしまって、逃げ出したいと思っている。 「生徒がどんな使い魔をえらんでも、笑ったり否定したりしないのが教員の誠実さだ」 マトゥーヤが低く、厳しい声でつぶやいた。 そんなことは、門外漢である理の司に説かれなくても、教師なんだからウタはじゅうぶん、わかっている。わかっていてもなお、ため息をつき、頭を抱え、ときに否定の言葉が口をつきそうになってしまう。毎日毎日、それにたえている。 オド魔法女学院の卒業要件はただひとつ、自力で使い魔を獲得すること。そして、その使い魔がどんなものであったとしても、獲得したのならば、卒業を認めねばならない。もちろん、卒業要件を満たした生徒は、卒業旅行へゆく権利もある。卒業旅行は、みんなが楽しみにしている。――特定の生徒だけを参加させないとか、参加に特別な措置をとる、なんてことは、できないのだ。 それでも。 「ねえ」 古くからの友人――この学び舎でともに魔法を学び、使い魔をえらび、卒業旅行へいった学友に、ウタが重い口を開いて相談事を持ちかけようとする。 マトゥーヤはふっと軽く笑った。揶揄するようにも、悩みを聞くのを拒絶するようにも思われた。 「花が咲いたらまたくるよ」 「こなくていい。会いたくなったらこっちからいくから」 重い相談を口にせずにすんだ安堵と、言えなかったことによる消化不良で、ウタの声は親しさを欠いていた。 「転移術の天才は、ここから理の庭まで瞬時に飛べるものね。夜這いはいつでも歓迎だよ」 「花はありがとう。おなじ卒業旅行にいったものとして、今季の生徒たちの旅行も、つつがなく終わることを祈っておいてちょうだい」 「つれないねえ。もちろん、後輩たちの旅行が楽しい思い出になることは祈っているよ」 マトゥーヤはついと宙に指をすべらせる。 「司とは不便な身分だよ。万象の許可がなければ、第十三階級……最下層の魔法しか使えないんだから」 あらわれた箒に横向きに座ると、空に舞う。エプロンの裾がぱたぱたとはためく。 「ウタ。あなたは魔法を封印されていないんだ。得意の転移術で庭に遊びにきてくれ。――いきたくなったら、と言うばかりで、一度もきてくれたことがないじゃないか。マトゥーヤはさみしいよ。……素敵な卒業旅行を!」 箒に乗ったマトゥーヤの姿が見えなくなるまえに、ウタは窓をぴしゃりと閉める。自席にもどろうとするのを、新任の教員がじっと見ている。 「なに? 本物よ」 「本物って……」 好奇のまなざしに、ウタは答えをやる。 「あの女こそ、世界��はじめて女性で万象にえらばれた大魔女マトゥーヤ」 「どうしてウタ先生にお花をくれるんですか」 「わたしと同級生なの。司なんてみんなご大層に言うけれど理と井戸端談義をしていればいいだけの無職よ。働いてるわたしたちのほうがえらいわ」 ウタは自席に着き、卒業旅行の心得を書き出していく。例年のものを、今年は流用できなかった。 「……そうですか?」 新任の教員はきょとんとしている。彼女もオド魔法女学院の卒業生だ。大先輩たる理の司マトゥーヤには並々ならぬ憧れを育んでいる。 十五年まえの卒業旅行の前夜のことだ。教員たちが開いた異界の門にいたずらをして、マトゥーヤがカリクシュマンテに門をつなぎなおしたのは。たくさん魔法石がほしい、とウタが強く望んだのが原因だ。カリクシュマンテは、だれにも発見されていない異界で、手つかずの魔法石の森があった。そんなところを見つけ出すことのできるマトゥーヤは、当時から規格外の魔法使いだった。 「そうよ」 「それ、ウタ先生だから言えるから、額面通りに受け取っちゃだめよ」と、横から別の教員が口を挟む。「ウタ先生、同級生なのよ。それもずっと仲良しで、大親友」 毎年この時期に同僚たちとするやりとりだ。学生時代から、マトゥーヤと親しくしていたのは事実だが。 「腐れ縁なだけ」 「それにしては熱心なお誘いだったじゃない」 「大魔女マトゥーヤにさらわれたら働かなくていいし、好きにできるし、最高じゃない」 教務だけでなく、事務方の雑務にも日々忙殺されている教員たちはうんうんとうなづきあう。 「わたしは教員が好きなので」 ウタはため息をつく。――と同時にチャイムが鳴った。次の授業は卒業旅行を心待ちにしている生徒たちに、今日はその説明と、予行演習。教室では目をかがやかせた生徒たちが待っている。 「トミューラさんのことだって、投げ出してしまえるのよ」 いつかは出ると思っていたが、その名が話題にのぼるとウタの気持ちも重くなる。 「トミューラは自分の意思で使い魔をえらんだまでです」 なるべく平静を装って跳ねかえすが、教員室の全員がトミューラの名が出た瞬間からこの雑談に耳をそばだてている。 「でも、それがサキュバスだなんて」 「親友のモモさんの使い魔は、ユニコーンなのに。――このふたりを連れて卒業旅行だなんて」 ガタン、とウタは席を立つ。 「教室へいきます。授業開始のチャイム、もう鳴りましたよ」 あわてて次の授業の用意をする同僚たちを横目に、ウタは早足で教室へむかった。
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ハロー(´ー∀ー`)2023.5.6
GWはのんびりとレンタル祭りしてました〜
今回借りたのは9本!そしてレンタルしたその日にU-NEXTで1本だけ視聴しました笑
ということで簡潔に映画の感想です〜
U-NEXTで観たのはこちら
「ヘレディタリー継承」
ジャンルとしてはホラーですね。不気味な女の子が主人公と思いきや…なーんか母親が暴走してるのか母親が元凶なのかと思いきや…女の子のお兄ちゃんの存在が鍵なのかと思いきや…
という思いきやホラーでしたね
(何だそれ
結構グロいのと、私が1番言いたい感想は父親がとっっってもいい旦那さんやないの!ってこと←
おかしくなっていく妻に��しても優しさの塊だし、息子に対しても思い遣りの塊だし。
そんな素敵なお父さんは焼死しちゃったよね←
で、最大のホラーシーンはお母さんが糸鋸で自分の首をゴリゴリ切り落とすシーンです。これはもう…完全なるトラウマホラー認定ですよ。子供は見ちゃダメです。絶対に観ないで下さい。
そして最後まで観て私の一言は
「はい?」
説明をお願いします←
ということで誰かの考察レビュー見ましたよね。
タイトルからして何となく女の子に何かが宿っており、その何かは多分悪魔で、器としてお兄ちゃんの身体を狙っていたカルト教団のおばさんが母親に近づいたってことよね。
母親のお母さんがその信者で、どうやら王妃ってことになってたのでその悪魔の復活をさせる儀式はお母さんの時から続いてたってことよね。
で、その儀式を成功させるために首を落とす必要があったんだとか?その辺がよくわからないよねってこと。
母親はその儀式を成功させたくはなかったんだけど、夢遊病(精神の深い部分で操作されていたのか?)として意識下で儀式を遂行しちゃったということで、最後は悪魔が復活してチャンチャン!
「はい?」
で終わりましたとさ。
「セイント・モード/狂信」
これは観なくていいやつでした←
終末期ケアの看護師さんが主人公なんだけど、その人が神様の声を聞いて頭おかしくなるというか初めから頭おかしかったんだね〜という話です←
最後は浜辺で焼身自殺。それが神様のお声だそうです👼
「バイオレント・ナイト」
お下品なサンタさんが子供を救う為に悪い人達をボッコボコに殺す映画です←
サンタっていうかもう、バイキングだよね。
脳天潰しとかいうハンマー持って次々に悪い人を殺しまくるんだよね。
ホームアローンみたいなシーンもあります。
「ブラックアダム」
DCコミックの映画は一応ジャスティスリーグとかアクアマンとかワンダーウーマンとかバットマンは観たけど、マンオブスティールとかシャザムとかザスーサイドスクワッドとか観てないんだよね…
なので「シャザム」という言葉には何の知識もなかったから何それとはなったけど、楽しめましたよ。
今回はヒーローじゃないのね、、ふむふむ細いロック様が違和感ありすぎるwって感じだったしアダムがいかにして力を得たのかその理由が悲しかったし、一応ちゃんとしたストーリーがありました。
(何様
ブラックアダムめちゃくちゃ強いし、飛び方がスーパーマンだし、ジャスティスソサエティオブアメリカ(JSA)とかいう世界秩序を守るヒーロー組織が突然出てきて誰?ってなったし、男の子のお母さんがアダムとJSAに説教してつえぇ…ってなったし←
だってさ突然骨の兵士みたいなのが現れて「地獄の兵士だわ!やっつけるわよ!」とかなるのよ←
おかしーよね😂一体どこまで予見してて覚悟してるんや←
あっここは現実世界ではなかった←
とはなったけどさ。普通逃げるよね。でもカーンダックの国民達は反骨精神が強くてきっと奴隷時代に受けた屈辱と正義を血に秘めて受け継いできたってことなんだろね…知らんけど。
それでねJSAのメンバーでドクターフェイトっておじさんがいるんだけど、私はその人が好きだったなー。ドクターストレンジがもっと歳取ったらフェイトになるのかなって感じ(違います)
大体私のお気に入りキャラは死んじゃうんだけどね←
ヒーロー対ブラックアダム
って構図が私としては戦う必要ないのに…って思ってしまってもやもやしたけど、映像はすごかったね。
戦う理由がない、ただ邪魔なだけみたいな笑
ヒーロー側からすると、やはりアダムは世界秩序を乱す存在なんだよね。
最後はまとまったけどさ。
終わり方がかっこよかったよねー!ザ・映画!って感じでした。
「ヴェンデッタ」
ブルースウィリスが悪でした。
ギャング?かマフィア?かよくわからないけど、バカ息子の組織入りの儀式みたいなもので誰かを殺したら合格みたいなしきたりがあって。
それで高校生の娘を殺された父親が復讐するみたいな話。
そこまでハラハラ感もなく、別に観なくてもいい映画でした←
警察もそのしきたりを容認してたし、分かってて捕まえないグレーな社会ってよくある話だよね。
私が思ったのは裏社会牛耳ってるようなブルースのアジトのセキュリティが激甘のガバガバでバカなの?って感じでした〜
「ブレット・トレイン」
面白くないだろうなって思いながらレンタルしたけどその通りでした〜
ブラピが観たかっただけ、とそう思うことにしました←
姉に「ブラピのブレットトレイン借りたよ」と言ったら『プラピンはサスペンス系?』(打ち間違い
だってさ!
そんな俳優はおらんのよ←
始まってすぐ木村という日本人役の俳優がめちゃくちゃカタコトな日本語で喋ってて秒で見る気失くしました←
その木村、いつのまにか流暢な英語で会話してた←
建物とか景観とかがやっぱり中国なんだけど、海外からの日本ってこう見えてるの?って思うよね。
GACKTが出てた「BUNRAKU」って映画を思い出しました。海外映画に出てくる日本の舞台って本当違和感しかない…
「ノープ」
序盤は全然面白くなかったけど、UFOが出てきて🛸それでそれで?とはなってきました。
ただそれが乗り物ではなく、それ自体が生き物ってことで「へえ」って感じで←
見た目��くわからないエイリアンってことでいいのかね?
金属と思ってたけど、ビラビラの布みたいな花びら型のでかい食虫植物みたいな?食人エイリアンw
経営困難な牧場を立て直すために兄妹はこのエイリアンを撮影して一儲けするぞ!みたいな話。
途中、人々を襲ったチンパンジーの話があったんだけどこの話がどう繋がっていたのか全くわかりませんでした…
ざっくり言うと兄妹愛が勝つ!みたいな😂
観終わって誰かのレビュー読んだら、色んな映画のオマージュが散りばめられていたらしいんだけど私には何一つ刺さりませんでした←AKIRA知らないしね…
「ラストナイトインソーホー」
怖くないホラーでしたね。
主人公の女の子が霊感があって、デザイナーになる為に服飾科へ通い始めるんだけど同室の女の子がかなり性格ブスで嫌になって部屋を借りるんだけども、そこで霊体験していくといったお話。
かつてそこに住んでいた女の子の過去を追体験していくんだけど、その女の子の正体と物語の真相は少し捻りがありました。
ありましたけど、正体は読めてしまいました。だけど、怖いだけじゃなくてそこには悲しさとか裏切りとか傷があって、結果主人公はその体験によって助けられ成功するみたいな報われ方だったのでよかったなと思いました。
「アンテベラム」
輪廻のストーリーかと思っていたら違いました。
過去の話と現在の話が交互に展開されていると思い込んで見てたけど、主人公は同一人物で発言力のある黒人ということで拉致され奴隷として働かされていたというお話。
この映画には色々な社会問題やら政治的なものも絡んでいるようなお話なのでしょうけれど、私にはとても退屈でしたね…
人種差別はとても酷い行いですが、映画としては私は視聴選択しないかな…
(つまりレンタル失敗←
人種差別問題なら以前観た「グリーンブック」の方がとてもよかったです。
ということで、私のレンタル祭り終了でございます〜👏
ゼルダの伝説ティアーズオブザキングダム発売��で1週間切りましたね!!
今年のゲーム活動はゼルダ一色で終わるだろうと思っていたし、全て配信でプレイする予定だったのに…ネット開通日未定のせいで←←
予定が全て狂いました。
ゼルダを配信でする為に、プレイをネット開通日に合わせてスタートするのか
それとも動画でアップするスタイルにするのか…
まだまだ悩み中です。
ゼルダ解禁を我慢できるのだろうか←
3ヶ月も待たなければならないけど…それはそれでいいのかもとか思ったり。
他にも色々したいゲームは沢山あるんだけど、編集が本当に嫌なんですよね←
この無駄に時間かかる作業がかなり苦痛…😞
かと言ってぐだぐだNo編集のまま上げる訳にもいかず。「あーーー編集しなければーーー」って動画が溜まっていくとゲームをすることすら億劫になってくる始末←
やっぱり配信でぐだぐだのんびりリスナーさんと話しながらプレイするのが1番合ってるよねー。
私はぐだぐだしたいのです!
(知らんがな
ゼルダ寝かせる方向になりそうだね←
というかさ!NU○○光から追加のポケットWi-Fi来たって言ったけど、それもめちゃくちゃ速度遅くてなんなら1台目よりも更に遅いんだけどどういうこと?←
どっちに繋げてもクルクルクルクルなるんだが💢
これ以上イラつかせないでほしい←
結局愚痴って終わるブログです😂😂
※追記※
レンタル9本って言って一つ感想書き忘れてました←
「PIGピッグ」
ニコラスケイジがトリュフブタと山奥で生活してるんだけどある日その豚が盗まれた!!ってことでその豚を取り戻す為に奮闘するお話。
とにかくこの豚さんが可愛いかった!
でもストーリーはへんてこ←
奮闘していくうちにニコラスケイジの過去やらトリュフを売ってあげてる仲介の男性と父親の関係も深掘りされていくんだけど……
なんかただの親子喧嘩に巻き込まれて豚殺されて、世捨て人のニコラスケイジがただただ可哀想な話だったよね?←
メッセージがめちゃくちゃだよね←
せめて生きたまま豚帰ってきて欲しかった🥹またニコラスケイジと生活再開してほしかった🥹🐷
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初雪の頃【3】
別世界
『ラウンジ 綾子』には、私が入店したその日の時点で、七人の先輩がいた。
ドラマとかではこういう仕事って人間関係むずかしそうだけど、と不安だったものの、特に目立つ争いもなく、みんな比較的私をかわいがってくれた。ライバルになる才能はない、と思われたのもあるのかもしれないけれど。
真っ先に憶えたのは、智月さんだった。面接のとき、ケータイをいじっていた女の人だ。
何というか、私が思い描がく、“夜の女”そのものだった。ふくよかな軆にきらびやかな服、美女というわけではなくとも、悪戯っぽさをふくんだくるくる変わる表情。
出勤初日、独学の私の化粧に噴き出し、あれこれ教えてくれて、最後にリップグロスをくれた。実際にお客さんの席について、私がお酒なんてまずくて飲めずにいると、「智月が代わりに飲みます!」とかばってくれたりもした。
優しいというより、明るくざっくばらんで、ただ、良くも悪くもママと通じていた。何でも素直に言いすぎると、ママに伝わってしまう。一年半勤めた『綾子』を辞める頃には、そのことでほかの女の子たちと溝ができつつあった。
そんな智月さんより早く、私が入って二週間くらいで辞めていったのは、京香さんだ。
『綾子』の面々は、ママ以外、みんな二十代なかばくらいの人たちだと思っていたけど、ぜんぜん違った。私といくつかしか違わない人もいれば、三十手前の人もいる。
はっきりした年齢は訊きそこねたけど、京香さんはけっこう年齢を重ねた人だった。お酒を作る手が、骨張るぐらい細かったのをよく憶えている。
どう��もいいけど、前述通り私が入ってすぐ辞めたので、『綾子』のサイクルを知るまで、私が何か悪かったのかと悩んだりした。
同じ席に着く機会がなかなかなくて、長いこと名前を憶えられなかったのが沙菜さんだ。
気が強くて、何でもはきはき言って、私と一歳しか違わないなんて信じられない。そんなに美人とは言えないけど、そのぶんよく気が利いて、テーブルを盛り上げるのもうまい。智月さんと火花を散らすときがあり、私は内心苦手だった。
沙菜さんは、ほかの女の子と違い、新地にある派遣から来ている女の子だった。
ジュンさんと仲がいいな、と思っていたら、ふたりはもともと知り合いで、ジュンさんは、沙菜さんの紹介で『綾子』に来たのだそうだ。
ママお気に入りの女の子だったけど、沙菜さんのほうは、ママにあんまり懐いていなかった。
そんな沙菜さんの友達で、かなりボリュームのある軆をしているのがマリナさんだ。色っぽいというか、何というか。
マスカラで彩った睫毛で、瞳をぱっちりと見せて、ホルターネックのキャミソールにミニスカート、白い肌を惜しみなく露出している。この色気で、若干二十歳だったりする。
ネイルアートが趣味みたいで、いつもすごい爪をしていた。性格はおっとりとしていて、お酒を作るのに私がおろおろしていたりすると、助けてくれた。
でも、おねえさんという感じではない。メールで私を励ましてくれたりもしたけど、心は開いていないというか──まあ、夜の世界で、心を開くなんてことは、稀だろうけど。
『綾子』の一番の綺麗どころは、美咲さんという人だった。童顔なのか、化粧がうまいのか、二十九歳なんてあっさり信じる人はいないだろう。二十九の誕生日を祝われたとき、「もう歳なんていらんわー」と複雑な笑顔をしていた。
小柄で、ドレスよりスーツが似合う。着物とかも似合いそうだなあと思ったら、昼間はお花の先生をやっているのだそうだ。そちらが本業らしく、火曜日と木曜日、週に二回しか出勤していなかった。
淑やかな感じなのだけど、けっこうエロなことも平気で口にする。
私がママより信頼して、懐いて、“お姐さん”と慕っていたのは、美希さんだった。生まれが博多だそうで、そのことがきっかけで仲良くなった。
笑顔がすっごくかわいい人で、プロ意識も強いのだけど、プライドがつんと高いわけでもない。ドレスもスーツも着こなして、全身がすらりと細い。
「美希ちゃんと一緒がいいやろ」とショウさんが気を遣って、一緒の席になることも多かった。いろんなことから助けて、かばってくれた。
心配も人一倍してくれた。「こんな危ない仕事してほしくない」と言ってくれるぐらいだった。
そんな美希さんにもつらい日はあるようで、「さっきエレベーターで美希ちゃんが泣いてた」と耳にしたこともあった。でも、お店では常にあのかわいい笑顔だった。
もうひとり、土曜日だけの女の子がいたらしいけど、私は土曜日は休みだったので、よく知らない���月曜から金曜まで出勤しているのだから、ママはいっそ土曜も出てほしそうだったけれど、土曜日は父親が一階にいるので、部屋を出られなかった。
男の人は、ショウさんとジュンさんのふたりだった。
輪には入れなかったものの、はたで話を聞いていると、ジュンさんは俳優を目指していて、今はモデルをやっているらしい。今度の大河ドラマに出るそうで、お客さんにも「頑張れよー」とか「今のうちにサインくれ」とか励まされていた。ママもジュンさんを気に入っていた。
そのママだけど、一週間勤めれば、その気分のむらの激しさを察することができた。
『綾子』に勤めて半年以上続く人は、ほとんどいないという。私も出勤三日目で「どこが“気さくで明るい”だよ‼」と家で切れて、父親に怒鳴られて、手首を切った。
確かに、気さくで明るいときもある。お客さんに対してはそうだったし、お客さんがたくさん入っている日もそうだった。お客さんの入りが悪い日がひどかった。
ママは黒い服を嫌っていたのだけど──喪服の色だから、というしきたりらしい──、そういう服を着ている女の子をちくちく注意したり、お店を放置して一階のバーに入り浸ったり──一番見ていられないのは、ショウさんにやつあたりしているときだった。
ママの機嫌の悪いときの標的は、いつもショウさんだった。席でたどたどしく接客しているとき、突然、カウンターで怒鳴り声がしたときは、本気で怖かった。
お客さんの誰だか言っていたけれど、お客さんの前で怒鳴るのはやめてほしい。お客さんまで気まずくなる。ショウさんは言い返して逆撫でることはせず、おとなしく目をそらしていた。
早くお店に着くと、気のいい掃除のおばさんがいたのだけど、そのおばさんが言うには、ママに怒られたあと、泣いていたこともあったらしい。
ママはそういう、大の男を泣かせるくらいひどい毒を吐く人だった。いいところもあったのだけど、私のママへの印象は、強烈に“怖い人”だった。
引きこもりで対人恐怖症で、人の顔も真正面から見れない私が『綾子』を辞めなかったのは、ショウさんがいたからだ��
初めてお酒を作るとき、私がぽかんとしたら、「ほかの女の子には、そんなに優しく教えへんくせにー」とお客さんに揶揄われながらも、水割りの作りかたを教えてくれた。
ママに初説教を受けて半泣きになったら、「ママが見てないだけで、ちゃんとやってるって」と頭を撫でてくれた。お客さんにスカートの中に手を入れられたときは、「そういうときは、すぐ俺に言えばいいから」となぐさめてくれた。
他の土地の歓楽街は知らないけれど、新地の女の子はお客さんを笑わせ、楽しませなければならない。とりあえずしゃべる。とにかくしゃべる。しゃべってしゃべって、しゃべりおとす。黙っていても華になる人はいるけれど、「君はそうじゃない」とお客さんにきっぱり言われた。
私はカラオケも嫌いで、嫌いだと避けるのはダメだと分かっていても、やっぱりデュエットなんかを避けていた。お酒も手際よく作れない。笑顔も引き攣っている。話も噛み合わない。
正直、あっさり音をあげた。帰り際、カウンターに立ち寄って、ショウさんを呼んだ。ママに言うのは怖かったから、ショウさんに言えばいいと思った。
「あの、私、やっぱりこの仕事、ダメだと思うんですけど……」
◆
私が“さつき”という源氏名で『綾子』で働きはじめて、二週間しか過ぎていなかった。名前の由来は、単に五月生まれだからだ。
本名は嫌だった。本名は嫌いだ。
“源氏名”というものに、憧れもあった。
「え」
食器を洗っていた手を止め、ショウさんは私に大きめの瞳を向けた。
私は、お店では貸し衣装のピンクのスーツだったけど、通勤では例のボーイッシュな服装をしている。控え室なんてないから、トイレで着替える。お客さんには“変身”と呼ばれた。
その日も、終電の時間を気にしながらトイレで“変身”して、しばし躊躇ったのち、リュックを抱きしめてカウンターに歩み寄った。
「ダメって」
カラオケがうるさい薄暗い店内で、さいわいママは接客中だ。そのママが、突然「どうしたん?」と背後に来ないかびくびくしながら、私はショウさんに上目遣いをした。
「……無理、というか」
「辞めたいってこと?」
首をかしげた。辞めたい──辞めたいのだろうか。
「まだ、二週間くらいやん」
「うまく、しゃべれない、し」
「初めは誰でもそうやで」
「ん……でも」
どう言ったらいいのか、睫毛を伏せてうつむく。こんなときにも、はっきり物を言えない。この店にいると、必要以上に自己嫌悪におちいらなくてはならない。
煙草の臭いが服に染みこんでいく中、「うーん」とショウさんは唸った。
「分かった」
「え」
「明日、ちょっと早く来れる?」
「ん、まあ」
「ちょっと、俺と話そう」
「え……」
「さつきちゃんの気持ちとか、聞いたるから」
ショウさんも、ママを一瞥しながら言う。
「店に来る前、あー、どこがええかな。近くで話せる場所知らん?」
「……私、このへん、大阪駅しか分かりませんけど」
「じゃ、とりあえず、噴水広場で待ち合わせしよう。分かる?」
また首をかたむけた。
「分からへんか。んー、まあ、案内出てるから、どうにか来て。六時くらいに」
「話すって」
「今はゆっくり話されへんやろ。一回ゆっくり話そう。辞めるとかは、そのあとでもええやろ」
もう辞めたいんだけど、と思っても、いそがしそうなショウさんに、こくんとした。ショウさんは微笑むと、「ママに挨拶して帰り」と時計をしめした。私はそうして、『綾子』を走り出た。
【前話へ/次話へ】
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【八月映画感想会】 『ハロウィンの花嫁』 監督:満仲勧(2022)
煮付け以外のかぼちゃをしらない
以下は書き手のプロフィールです
◆ 『ハロウィンの花嫁』 あらすじ
ハロウィンシーズンの東京・渋谷。コナンたち招待客に見守られながら、警視庁の佐藤刑事と高木刑事の結婚式が執り行われていたが、そこに暴漢が乱入。佐藤を守ろうとした高木がケガを負ってしまう。高木は無事だったが、佐藤には、3年前の連続爆破事件で思いを寄せていた松田刑事が殉職してしまった際に見えた死神のイメージが、高木に重なって見えた。一方、同じころ、その連続爆破事件の犯人が脱獄。公安警察の降���零(安室透)が、同期である松田を葬った因縁の相手でもある相手を追い詰める。し���し、そこへ突然現れた謎の人物によって首輪型の爆弾をつけられてしまう。爆弾解除のため安室と会ったコナンは、今は亡き警察学校時代の同期メンバー達と、正体不明の仮装爆弾犯「プラーミャ」との間で起こった過去の事件の話を聞くが……。降谷零と、すでに殉職している松田陣平、萩原研二、伊達航、諸伏景光の4人を含めた、通称「警察学校組」と呼ばれる5人がストーリーの鍵を握る。(映画.comより抜粋)
◆ 映画に対するコメント
御殿山:
私 これより前の作品は全部観ているという数年遅れの追っかけでございます
最近の脚本、大倉崇裕さんなの知らなかった 言われてみれば、から紅はそうかもしれん
前半の引き方がめちゃ良かったのがだんだん大味になってしまった感はあるかも ヤバい爆弾があります、また一人爆発した、そいつは松田刑事の名刺を持っていたけどそれを使ってたのなんて数日間しかない、なにがあったのか から、警察同期組のサスペンスエピソードにつなげていくくだり、完璧ではなかろうか
確かに劇場版コナン、特に爆弾を使うコナンは爆破規模が右肩上がりなのはお約束 それは時計仕掛けの摩天楼のときからそう けど、今作はなんか違う気がする もっと裏で戦い続けてよいのではないか
トンデモアクションが要らないとは言わない コナンは毎回スケボーでハッスルしてほしい その上でなんか、もう少し地に足つけてほしいんだな せっかく原作に介入するレベルのコンテンツなんだからさ 私ゃあの爆弾犯死んだときびっくらこいたよ
<五段階評価>
俺、コナン老害だな度 ☆☆☆☆★
博士、世界にバレてるやろ度 ☆☆☆☆☆
小泉:
タイトルハロウィンの花嫁じゃなくてもいいんじゃないか
コナン映画の近年のアプローチの、あんまり犯人誰だってのが重視されていないのはまあもうよくて、じゃあ探偵もんやめてキャラもんでやろうってなったときの掴みが佐藤高木ペアなんだったら最後までそれで通してほしかった アクロバティックコナンいっけぇぇえはもう恒例なんだ
犯人と、それとは別に敵対する第三勢力がいるって構図はかなり斬新だと思いました 大事なシーンで結構みなさんがおちゃらけていたのもあんまり見たことなかったから意外でした そういう面白さがあった分、後半の見せ場の散逸感がかなり残念でした
松田陣平の回とその後の高木話でもう十分ストーリーやったからいいじゃんかっていうんだった���じゃあわざわざ爆弾・松田・佐藤高木ってくくらない映画のほうが見応えがあったんじゃないかと思いました
(追記)…一晩経ったあと、たしかに警察学校衆たちが後出しキャラだったからこういう映画になるのは仕方ないか…という気分に
<五段階評価>
顔写真入り公式サイトつくるな度 ☆☆☆☆☆
クイズタイムここなんだ度 ☆☆☆☆☆
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猫は知っていた 7月6日 月曜日 2
ちょうどそこへ警官が抜け穴から一本の象牙のパイプと泥まみれのブリキ缶を持ってきます。 ただ、その警官がクモの巣でひどく汚れていたとあります。 抜け穴を平阪が、桑田老夫人が途中まで通ったとしたら、クモの巣はないでしょう。 だから、抜け穴を抜けた先もクモの巣だらけだったのでしょう。
ブリキ缶は例のやつですね。 雄太郎も悦子も知らん顔です。
象牙のパイプは平坂のらしいです。 ちょっとわざとらしいですね。 でも、実際、平坂は失踪しているわけですから、この抜け穴を通ったのは間違いないでしょう。 つまり、このパイプのおかげで、平坂は抜け穴を通ったということにしたいんでしょう。 実際はわかりませんが。
その時、電話ががかってきます。 平坂からみたいです。 電話をとったのは、野田看護婦であまりのことに悲鳴を上げてしまいます。 その場にいたのは、電話をとった野田看護婦、仁木兄妹、宮内技師、院長夫妻、小山田夫人、人見看護婦です。 これもわざとらしく挿入されていますね。 つまりここにいた人間は、関係ないとでも言うようです。
それから、桑田老夫人の持っていた四角い包に刑事が関心をよせます。 院長夫妻は、わからないが物置き部屋を調べれば分かるもしれないといいます。 これで、家の者と刑事は物置き部屋へ行ってしまいます。
おばあさんの消息を尋ねに外出していた家永看護婦が帰ってます。 家永看護婦は外出していたんですね。 そういえば、ユリさんも学校へ行ってました。 この二人は外出していたのですね。 悦子は、そのユリさんの事情を知りたと思っています。
どうして、桑田老夫人は殺されたのか? 一体何を持ちだそうとしていたのか? 平阪がこの件にどう関わっているのか? 面白くなってきました。
午後三時過ぎ、仁木兄妹は、英一から捜査の進展状況をききます。
・死亡時刻は、午後二時前後。 ・死因は扼殺。 ・ふろしき包の中身は、時価二万五千円ほどの茶つぼだと思われる。 ・パイプは勝福寺の床下に落ちていた。 ・寺の向かいの吉川という元陸軍少尉が、ゆうべ遅く自動車の音を聞いた。 ・平坂は、古い美術品などの輸出をやっていた。 ・祖母が茶つぼを取引するために防空壕で落ち合った?。 ・平坂が、祖母を殺して茶つぼを持って逃げたと警察は考えている。
ユリさんが親戚に電報を打つために外出するのを仁木兄妹は、チョウジの植込みのかくれてやりすごし、門の外で捕まえます。 家の中では話にくいかもと思ったのでしょうね。 チョウジとは、クローブのことで、高さ10m前後まで成長する常緑小高木です。 樹皮は灰褐色で滑らかな質感があり、葉は緑色で光に当たると反射する光沢があり、革の様な質感をもっています。花は多数の小花が枝の先に集まって集散花序をつく��、また個々の花は蕾が緑色から赤色へと成熟すると花開き多数の白色(~薄黄色)の雄蕊が溢れでます。花色は緑色や赤色、白色(薄黄色)で、個々の花は釘の様な形をした萼から多数の雄蕊と1本の雌しべをだします、花序は小花が枝先に集まり集散花序をつくります。
例の紛失事件についての話です。 ユリさんが答えたのは次のとおりです。 ・いつ紛失したかわからない。 ・紛失に気づいたのは土曜日(7/4)、学校から帰った時。 ・寄木細工の箱に入れていたので開け方がわかるとは思えない。 ・指輪のほかに脱毛クリームの空き缶がなくなっていた。 ・でも、嫌疑をかけられるのがいやでごまかした。
で、雄太郎はそのユリさんの答えのほとんどを信じていません。
家に帰ってみると、家永看護婦に出くわして事件ことを話しますが、それよりもやっとって感じで、敬二のことが話題にあがります。 完全なサブキャラですから、もしかしたら全然出てこないのかもと思っていました。
大学に入るまでは、かなりやんちゃだったみたいですが、 医大へ入ったら下宿してもいいと言う条件で入学したのに、そこを飛び出しどこにいるかわからないそうです。 やっぱり、サブキャラですかね。
雄太郎は、家永看護婦に一つ疑問を投げかけます。 桑田老夫人と平坂がどうやって連絡していたのかという疑問です。 確かに、携帯電話もないし、入院患者と連絡をとるためには、病院に来るくらいしか思いつきませんね。
で、家永看護婦の答えは、「手紙」でした。 清子夫人が午前の便で、手紙が一通届いてたいのを思い出し、 家永看護婦がその手紙を、郵便受けから取ったのを思い出しました。
この当時は、午前と午後の2回郵便配達があったんですね。 もしかすると、夕方も配達があって3回とかあったんでしょうか? それだけ郵便物が多かったのでしょうか?
夜になって、仁木兄妹は銭湯に行き、その帰りに勝福寺の表門に回ってみます。 勝福寺も現場の一つですものね。 確かに確認するのもいいかもしれません。
表から正式に訪問するとしたら70mとなっています。 よく不動産なんかで「通常」は80M=1分といわれるみたいですから、訪問するとしたら1分くらいですかね。 勝福寺のまわりは半落葉低木の広葉樹であるイボタの木で囲まれています。 手入れはされていないみたいですね。
寺の前からゆるい坂の下まで広い道路がのびていて、その途中に古川元陸軍少将閣下の家があります。 その家の前にある空地で縁台を囲みふたりの男が街灯の光で将棋をさしていました。 一方は定年間近の小役人といった感じの頭のはげかかったずんぐりした男。 もうひとりは、「閣下」だった。
「閣下」は肩幅の広く上体を真直ぐにし太い手首は年をへたカシの木を思わせる頑丈さ。 銀泊色の髪の毛オールバックになでつけ、鼻の下には同じく銀の針のように光るひげが、鋭く南北両極を指しています。 縁台の一端には土焼きの蚊遣り豚が煙を淡く立てています。
さて、将棋はそれから簡単に蹴りが付いて、小役人といった感じの男が負けて挨拶も早々に帰ってしまいます。 それから、雄太郎が閣下の相手をして、今度は、閣下を負かしてしまいます。
そこで、閣下の重要な証言を聞くことになります。 ・午前二時十分前くらい坂の真下で車が止まった。 ・閣下の家か勝福寺に来るためだと思っていたが違った。 ・坂の上から車にのるために人が降りてきた。 ・二時すぎに、車が走り去った。
状況だけを考えれば、平阪がおばあちゃんを殺して茶つぼを持って逃げたとなりますね。
雄太郎と悦子は、事件について話します。 雄太郎が投げかけた疑問は、 ・老夫人がなぜ茶壺を売らなければならなかっ��か? ・老夫人を物置き閉じこめたのは誰か?また何のためか? ・平阪に抜け穴があることを話したのは誰か? ・ユリさんの指輪を盗んだのは誰か?
こんなところですかね。
つづく
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〖イベントレポート〗6/22(土)大ヒット御礼舞台挨拶実施!
6/22(土)にTOHOシネマズ日本橋にて大ヒット御礼舞台挨拶が実施され、主演の平泉成さん、佐野晶哉さん、秋山純監督が登壇しました。
映画公開から約2週間経過したこの日、満員の観客で迎えた大ヒット御礼舞台挨拶に立った平泉さんは「いやあ、夢のようですね」とキャリア60年にして自身初の主演映画の大好評ぶりに感慨無量の様子。周囲の反応・反響については「温かく優しい映画が久しぶりに見られて嬉しいという反応ばかりです。娘や息子に見せたい、両親にこの映画をプレゼントしたい、などと言ってくれる方もいました」と述べて、顔をほころばせていました。
一方、平泉さんから「うちの孫」と紹介された佐野さんは「成さんは大先輩だけれど、もう地元の学校の先輩みたい。いや、うちのじいちゃんです!」とすっかり仲良し。映画公開後の周囲の反響を聞かれると「中学時代の先生から友達経由で連絡がありました。映画を観て成長を感じて嬉しいと。同世代の友達は、そろそろ実家に帰らなければと思ってくれたり、友達の心を動かせたのが嬉しくて、全国的にそんな人たちが少しでもいたらいいなと思います」とさらなるヒットを祈願していました。
この日の平泉さんのネクタイは、佐野さんが映画公開初日に誕生日プレゼントとして贈ったもの。「今日もメンカラ(メンバーカラー)のネクタイをしてきました」と平泉さんが言うと「僕がいないところでもつけてくださっているようで本当に嬉しい」とニッコリ。また平泉さんが「どういうわけか私が持っている上着のどれにも合う」と太鼓判を押すと「成さんの過去60年の色々なスーツをネットで調べて、これや!と思って決めたから」と明かして平泉さんを驚かせていました。
一方、自身を“エゴサの鬼”という秋山監督は「ほとんどの感想に“いいね!”を押して、DMにもすべて返信しています。親に会いたくなった、親の写真を撮りたくなったなどと家族について書いてくれるのが嬉しい」と高評価に大喜び。すると平泉さんは「さっきから会話についていけないのだけれど…エゴサって何?」と首をかしげて、佐野さんからエゴサについての説明を受けていました。
そんな中、サプライズで平泉さんの愛妻・里香さんから想いのたっぷりこもった手紙が届き、司会が代読しました。
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成さんへ
「大輪の花 咲かずとも 充つる日々」 色紙に成さんがずっと書いて来た言葉です 脇役として沢山のお仕事をしながら 必死に自分を奮い立たせて来た言葉です けれど サインを書く横顔は何処か寂しげで… 「幸せは家族の総合点だよ」と声をかけ 何とか「充つる日々」をと 心掛けて来ました 秋山監督や出演者、スタッフの皆様に 心から感謝申し上げます ありがとうございました そして…成さん おめでとう! 大輪の花 咲かせたね! 晴れやかな面持ちで 明日からどんなサインを綴りましょうか… 幼い孫達が おじいちゃんの代表作 「明日を綴る写真館」を胸に刻める日を楽しみに…
2024.6.22 里香
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これに平泉さんは「泣かせにきたね!」と笑いつつも「大輪の花を今まで咲かせられなかった。横でいつも主役を見ながら悔しかったね」と語りだすと、「ダメだ!」とハンカチで目頭を押さえて感涙。「自分に悔しくてそんなサインばかりを書いていたけれど、今回主演をやらせてもらって…ありがとうございました」と感謝していました。
さらに、平泉さんの家族からも続々メッセージが届きました。
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19歳で役者を志し、ホテルを辞めた頃に想い描いた夢はいつしか「家族のため」として、少し形を変えてきたと思います。そんなお父さんを誇りに思い感謝してきました。夢が叶ったこと。60年間で関わった多くの人が喜んでくれると思います。本当におめでとう! ――長男・陽太さん
コツコツと努力を続けていれば、いくつになっても夢は叶うんだと、勇気と感動をもらえました。 お父さんは私たちの誇りです。 本当におめでとうございます。 ――陽太さんの妻・愛(めぐみ)さん
映画の主演、おめでとう! 僕も頑張るから、成さんも頑張ってね! 自慢のおじいちゃんだよ。また、会える日を楽しみにしてるね! ――陽太さんの長男・凛人(りひと)さん
すごいです。おめでとう!!!お母さんをはじめ芸歴60年支えてくれた人たちのお陰…そして何よりお父さんの人柄、努力の賜物だと思います。家族のために…ありがとう!!!この映画が沢山の人の心に響きますように! ――長女・季里子(きりこ)さん
「ひとつのことを60年続ける」…簡単なことではないと思います。家族のために走り続ける姿、多くの人に夢や希望を与えるお父さんの生き様が映画を通して伝わることを願っています。本当におめでとうございます。 ――季里子さんの夫・裕介さん
せいさん えいがこうかい おめでとう ――季里子さんの娘と息子・あかりさん&あおとさん
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妻のみならず、親族からも届いたサプライズ!しかも客席には妻をはじめ家族の姿が。平泉さんは「本当に嬉しい。我慢したけれど涙が…。この場に立たせていただくのに60年の月日が経ってもう80歳。長い事かかったなと思うけれど、本当にありがとうございます。家族として、今ひとつかっこよくない僕をずっと支え続けてくれた。かみさんにも、家族にも感謝です。ありがとう」としみじみ。その横で佐野さんも「成さんからご家族の話を聞くことが多かったので、こうして直接お会いできて、ご家族からの激励の言葉を聞かせてもらえて…うちのじいちゃんカッコいいです」とウルウルして「このタイミングに成さんと出会えて、僕は出会いの運が良いなと感じました」と平泉さんとの出会いに感謝していました。
最後に佐野さんは「成さんに出会って人生が何十倍も豊かになりました。58歳年下の僕と仲良くしてくださる成さんには頭が上がりません。観客の皆さんがこの映画に出会い、皆さんの日常の中でのちょっとした心の変化があったら幸せです」と挨拶。平泉さんも「こんなに晴れがましいところに立たせてもらえるのは生涯で一度きりかもしれないけれど、まだ元気なのでやれるところまで頑張ってやっていきたいです。その際はぜひ応援してください」と呼び掛けていました。
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このところ、東京は25度を越す日が続いています。来週も月曜日を除いて、ずっと夏日の予報。でも、日差しを避けて木陰に入ると涼しい風が吹き抜けていてベンチで気持ちよさそうにお昼寝している人を見かけたりします。メダカたちの食欲も旺盛で、元気に追いかけっこをしている姿が可愛いです。
今週の夏学期の初回クラスでも参加者の方々の明るい光と再会することができました。サイキックアートクラスでは絵の腕を上げた方、アウェアネスクラスではオールレベルからマスタークラスへ進級した方、リーディングの正確性が上がった方など、皆さんそれぞれ霊性開花の道を着実に進んでいらっしゃいます。(上の写真はサイキックアートクラスから)
今週見かけた肖像画に関するニュースをご紹介します。まずは、イギリスから。数多くの画集も出版している人気肖像画家のジョナサン・ヨーによるチャールズ国王の公式肖像画が公開され、その真っ赤な絵のように大炎上しています。プロジェクトが始まった時にはまだプリンス・オブ・ウェールズだったチャールズ国王の右肩に1匹の蝶々が止まる様子が描かれていますが、このアイデアを出したのは国王本人だということです。蝶は変化と再生のシンボルとされていますから、国を背負ってその役割を担おうとする覚悟なのでしょうか。批判が多いと報道されている赤い色からは、燃えたぎるような情熱が感じられます。
ヨー氏の画集を見てみると、画法としてグリッドを多用しているのがわかります。被写体の写真と紙の上に同一のグリッドを引き、一つずつマス目を模写していく方法です。��率を意識しながら被写体の細部を意識して写し取るので、緻密で正確な絵を描くことができます。グリッドを引くとデッサンの練習にならない、という意見もありますが、昔からアーティストたちは長い筆や測り棒を持った手を伸ばして片目をつぶりながらモデルのプロポーションを測ったり、デッサンスケールというグリッドがついた小窓を利用したりして、石膏像の大きさ、長さなどの比率を測っていました。
今学期のサイキックアートクラスでも石膏デッサンに挑戦していただきます。デッサンは情報をインプットしたものをアウトプットしながら、徐々にその精度を高め、誤差をなくしていく訓練です。それは、ミディアムシップを習得していくのと同じプロセスだと思います。今学期のクラスでも楽しみながら、その人にしか描けない唯一無二の素敵な絵を描いていただきたいです。
お次のニュースはオーストラリアから。
オーストラリアで最も成功している実業家ジーナ・ラインハート氏がアボリジニのアーティスト、ビンセント・ナマジラが描いた自分の肖像画の撤去を求めたというニュースで、オーストラリア国立美術館は彼女の申し出を拒否しているそうです。記事にある写真を見ると、他にもチャールズ国王やエリザベス2世の肖像画が並んでいて、どれも同じようにデフォルメされたユーモラスな姿で描かれています。どうやらナマジラ氏は風刺に溢れた作風で知られるアーティストのようです。彼はオーストラリアでアボリジニとして初めて市民権を得た有名なアーティスト、アルバート・ナマジラのひ孫です。
他にも自分の肖像画を認めなかったことで有名なのが、イギリスの元首相ウィンストン・チャーチルです。肖像画家グラハム・サザーランドによる80歳の誕生日プレゼントとして贈られた作品に不満を持った彼は、公表後に自宅の地下室にその絵を置き去りにし、二度と見ようとしなかったそうです。そして、完成の一年後に肖像画は燃やされてしまいます。
もしかすると名声や財産を得た結果として贈られる自画像には自分が一番認めたくない、真実の姿が映し出されているのかもしれません。
明日は久々にサンデーサービスを澤輪ミディアムと開催いたします。サイキック・アートもやる予定です。また、木曜日はドロップイン・ナイトを開催いたします。お時間のある方はぜひお立ち寄りください。皆さまのご参加をお待ちしています!どちらも参加方法はこのブログの下↓にあります。
・・・・・
夏学期クラスはサイトとショップからお申し込みいただけます。(アイイスのサイトでも告知されています)
春学期に蒔いた霊性開花という名の種を、眩しい太陽と清らかな水、豊かな土壌、そして爽やかな夏の風のエネルギーを享受しながら、共に大切に育んでゆきませんか?皆さまのご参加をお待ちしています!
・・・・・
サンデー・サービス(日曜 12:30〜14:00)詳細はこちらから。
5月19日 担当ミディアム:澤輪・森
6月30日 担当ミディアム:ゲスト・森
ご参加は無料ですが、一口500円からの寄付金をお願いしています。
当日は以下のリンクよりご参加ください。
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ドロップイン・ナイト 木曜日 19:00〜20:00
5月23日(木)指導霊(スピリット・ガイド)のサイキックアート
詳細とお申し込みはこちらからどうぞ。
過去の開催の様子はこちらからご覧ください。
#Youtube#awareness#unfoldment#spiritualism#spirituality#lightworker#mediumship#spirit communication#spiritual growth#霊性開花#ミディアムシップ#ミディアム#サイキックアート#psychic art#spirit portrait
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2024.5.2
誠也くんすぐカラカラになっちゃうのほんまにかわいいなって思う一方で、そんなにもずっと満たされずに心の奥底にしまい込んできた願望があるんやなって思うとなんや切ないし、抱き締めて撫で撫でして俺がおるからもう大丈夫やで、って言いたくなる。俺はほんまにその逆で、伝えたい伝えたいってなってるのに相手にされへんかったり放置されたり蔑ろにされたりしてきたたちやから、こんなにも受け取って消化してくれる人はほんまに誠也くんが初めてすぎて、嬉しくて嬉しくて毎日熱出そうなほどはしゃいでる自覚ある。相性いいどころの話やないでしょ、これ。俺はほんまにいくらでも注ぎたいし、注がなしぬ。
誠也くんのこと知れば知るほど愛しくて堪らへんよ、なぜか誠也くんはどんどん不安になってるみたいやけど…。確かに最初の頃のカッチリした飼い主といぬ、も楽しかったで?でも今は、いぬやけど誠也くんのこと癒したりよしよししたりも出来る有能リバっぷりを発揮させてもらえてて、想定外のよりしあわせを感じさせてもらってます。何より、一緒におって楽しくて��ざけ合うのもなに話すのも無限に広げたくなって、誠也くんの通知で冗談抜きに胸が弾みます。
昨日寝る前に「俺のこと喋ってから寝て」ってわがまま言うたんふと思い出した。たんぶらーのまとめ作業してえらいって褒めてくれて優しい誠也くん。ありがとうございます。そのあと、明日さの休みで嬉しいって書いてたのかわいい。俺が一人で寝るのいややって言うたら一緒に寝てくれたのもちゅーしてくれたのも嬉しい。夜中にたまたま目が覚めた時、誠也くんがさのって呼んでくれたのも嬉しかった。怖い夢見た時、真っ先に俺に連絡��れるの愛しいねん。少しでも不安が解消出来たらええなって思うし、昨日たまたま目が覚めてほんまによかった。通知では起きられへんから。ていうか通知オフやし。虫の知らせやったんかな。愛かな。
誠也くんと俺はちょっと似てる、って話からのMBTI一緒はほんまに笑った。北斗くんいわく、ENFPは普段陽気やけど一瞬で暗くなるんやって。闇があるって。影のある陽キャらしいです。日中とかわいわいきゃっきゃしてるけどふとした瞬間に不安になっていっぱい名前呼んでくれる誠也くんとか、不謹慎萌えで興奮する俺とか、その闇の部分なんかなって思ったり。波長が似てて、一緒におってとにかく楽しくてもっともっといっぱい話してたくて、離れてる時間がもどかしかったり今誠也くんなにしてるんかな(※仕事です)とか思ったり、常に誠也くんを求めて頭の中誠也くんでいっぱいや。俺がたんぶらー作るって言って慌てて過去の引っ張り出してくれたとこも、書き溜めてから見せようと思ってたのに俺の喜ぶ顔が見たすぎて我慢出来んくて2個書いて見せてくれたとこも、かわいいなぁって思うし愛しいしだいすきです。誠也くんとはほんまに時間があったら無限に話していられる気がしますし、話してますよね。そういう関係ほんまに嬉しいし楽しいしありがたいし幸せで、絶対手放したくないから守り抜いていきたいなって思ってます。
俺からの言葉の洪水に溺れて苦しくて吐きそうになるのに嬉しそうな誠也くんほんとにかわいい。それで一瞬で消化し切って悲しくなっちゃってるのもかわいそかわいい。俺が生きててそばにおる限り、終わることなくいっぱい注いでくはずやからそんなに心配せんでもええのに。誠也くんからしてずっとバレバレやったくらいにベタ惚れのさの、確実な好きバレして以降更にもっと誠也くんに沼ってんねん、わかるでしょ?好きって気持ちを文字にして誠也くんに伝えることでより自分の気持ちを深く理解して、誠也くんへの気持ちが深まってってるってとこはあると思う。毎日誠也くんのことが愛しくて堪らんし、こんなにも、周りから見たら引かれるほどにべた付きで一緒におるのにそれでも足りんってくらい一緒にいたくて話してたくて。楽しすぎて頭の中ふわふわお花畑。それはいつものことか。チュートリアル期間でリリースせずに、俺に首輪をつけて閉じ込めてくれてありがとう。前、誠也くんはサークルに入るのも自由やでとか言うてくれてたけど、それで誠也くんと過ごす時間減るとか有り得んくない?無理なんやけど…。話してて楽しいのは誠也くんと北斗くんで十分で、愛しい気持ちは誠也くんが無限に受け取ってくれるから他の人のとかマジで入る余地ないし時間割きたくないねん。友達1人切ったくらいには…。そのうちほんまに誠也くんと北斗くんだけになるかもしれへん。それもええかもね。重たすぎるって笑って。
誠也くんの好きなところ、いっぱいあるんやけど。さっきのお友達の話で他の子のこと「素質ある」って褒めててそれを俺が言ったらヤキモチやって勘違いしてめっちゃフォローしてくれたん優しいなって。誠也くん俺にヤキモチ妬かせたいとかないと思ってるけど、でも無意識に話して俺がしゅんとしてたらかわいそうやなってすぐにケアしてくれようとしたのほんまに優しい。俺が妬くのは誠也くんが人間関係築いてる人に対してやから、どっちかって言うたらやっぱり他のやりとりしてる人に妬きます。
(デリヘルごっこなんか付き合ってくれる子そうそうおらんし。)
俺がなんでも付き合うんでそんな子おらんくていい。
やきもちってか独占欲ですかね。
(よしよしされたいやん…滅多にないしな…)
滅多にないことない。俺がこれからずっといくらでもなんべんでもしたる。
誠也くんがやだって言うても出なくなるまでやめへんからよろしく。
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내 지난날들은 눈 뜨면 잊는 꿈
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『らむ、起きなきゃ。もう8時なんだけど!』
にゃごにゃごと、ベッドの下から叫んでいる小さなからだ。最近は4時くらいに意識を失うみたいに寝て、仕事の予定にもよるんだけど、だいたい8時前後に起きる。というか起こされる生活をしている。ユキちゃんに起こしてもらう、ありがたい話。昨夜もなんとなく苦しくて、目元が薄っすら腫れるくらい擦った。枕がやや湿っていて、寝付いてからあまり時間が経っていないことが見て取れる。ん゛ーっと大きく唸って、脚で蹴るように布団をベッドの端に追いやった。
ユキちゃん、おはよう。今日もありがとう。
寝起きが良い方では決してないのだが、それでも、身を起こして、もう身支度を始めないと。浮腫みでろくに開かない瞼を必死に持ち上げ、寝台の上から降りる。
8時を少し過ぎた時計がスヌーズの機能によって、また大声で時刻を告げるのが鬱陶しい。一度部屋を出かけたが、戻って時計を黙らせる。ああもう、朝は本当に苦手だ。意識のないところから、自分の意志で起き上がれればよっぽど良いが、大抵は上手くいかない。ありとあらゆることを自分のタイミングでしないと気が済まない私にとって、朝は苦痛の連続である。起きたいときに、起きたいし、眠いときは、そのまま寝ていたいのに。
自室を出てまず洗面所に直行し口を濯ぐ。寝ている時過度に絡まらないように、二つに結んでいた髪を解いて解かす。鏡を見ると、うん。やっぱり今日も、ぶっさいくだな。キッチンの方に向かって行き、冷蔵庫から水の入った浄水ポットを取り出す。お気に入りのピンクのコップに一杯分注いで、一気に飲み干す。起きてすぐに冷水を飲むのはなんとなく健康に良くなさそうとは思いながら、長年の習慣で無意識にやってしまう一連の動作である。急いで適当なパンを手に取り、胃に詰め込んでいく。朝食を食べるというより、この後に薬を飲むために必要な作業である。��粉症の薬を、再びコップに注いだ水と一緒に飲んで、また洗面台に戻る。歯を磨いて、顔を洗う。肌に色々なものを塗ったくって、着替えて、ヘアセット。お気に入りの香水を手首に吹きかけて、右手の薬指にいつもの指輪をはめる。右耳の耳たぶに空いた穴を、シルバーのピアスで寂しくないよう埋める。ようやく外に出れるわたし、らむちゃんの出来上がりだ。
「ありがとうございました!」
お客さんを見送って、今日の仕事は終わり。人の良さそうな声で当たり障りのない話をしながらお客さんと向き合って、その人を着飾っていくこの仕事は、たぶん自分の性に合っていると思う。午前中から慌ただしく働いて、夜も遅くまで、外であれこれ仕事をしている。はっきり、今の生活は楽しいが、面白くはない。楽しい瞬間は多いが、振り返って、面白く暮らしているとは到底言えないのである。寂しさに似た焦燥感。もっと色々な人と出会ってみたいのに。
元来規則的なルーティンワークがあまり得意ではなかった。自分のなかで決めたことはきちんとできるが、誰かに決められた毎日を自分の意志とは無関係に送ることが、いつからか至極難しくなった。毎日まいにち違うことをしている、とは言えるが、それは自分で望んだ“不規則性”ではなく、少しずつ神経を蝕んでいく、云わば見えない敵。支配しようのないこの不規則が、規則的に私を追い詰めていくことが、現在はっきり分かっていること。そんな生活を長く続けることは不可能で、勿論他でもない私自身が全く望んでいないこと。刻々と迫るタイムリミットは、気付くとすぐ傍まで迫っているようだった。最近少し神経質すぎる自覚があった。じりじりと、その敵は、確実に私の息の根を止めようと近付いてくる。
私が欲しいのは、安定した毎日ではなく、安定して仕事をやっていける落ち着いた環境と地盤だった。自分の意思に賛同して、仕事を一緒にやっていく仲間だった。いまの仕事を軌道に載せることって、そんなに難しいことなのかな。私、そんなに���力ないでしょうか。他の人と違うと思うんだけど、どうかな。
仕事で使う道具をまとめたあとは簡単に掃除をして、仕事場の電気を消す。4つある作業場が、2つ埋まっていれば良い方だが、今日も私だけが部屋の主だった。オートロックの部屋を出て、扉が施錠されたことを確認して、エレベーターホールに歩みを進めた。廊下は薄暗く、独りが一層強調されるようで嫌だった。下向きの矢印を押して、エレベーターが来るのを待つ片手間、貴重品だけが入った小さなカバンからイヤフォンを取り出す。白い栓を耳に突っ込むと機械的な音がして、iPhoneとの接続を知らせてくれた。やっと独りから解放された気分だった。お決まりのプレイリストをタップして、再生。ちょうどエレベーターが来たので乗り込んで、1階のボタンを押す。今日は途中で誰も乗ってこなかった。なんだ、私しかいないんだ。最近流行りのポップチューンを、鼻歌で歌っていたかもしれない。
家までの長い道のりを、重たい重たい荷物を抱えながら帰るのにもなんとなく慣れてきていた。嫌な慣れだと思う。こんな生活は早く変えてしまいたいし、肩が凝って大変だもの。帰宅してから急いで夕食を食べ、風呂にも入ってしまったので、今日は上出来だった。誰にも邪魔されず、夜まで自分のペースを保てている。ベッドに腰を掛け、iPhoneのカレンダーアプリで明日の予定を確認する。緑色の、仕事の予定のアイコンではなく、明日は友人とのスケジュールが一件あった。無意識のうちに顔を顰めていた。開いていた部屋のドアからユキちゃんが入ってきて、心配するように足にすり寄った。ぐるぐると考え事をすることもずいぶん増えたし、うまくいかない全てのことに薄っすらと腹を立てている事にも気付いていたから、最近の自分が嫌いだった。
漠然とした将来への不安感は、目元を擦っても消える訳が無くて、また止めどなく溢れてくる涙を、ぼたぼたと重力に任せるのすら嫌になって、枕に顔を埋めた。
ユキちゃん、おやすみなさい。また明日。
独りごつと部屋の電気を消す。一日中カーテンを閉め切った直射日光の入らない部屋が、ようやく眠る。
今までどうやって生きてきたんだったか、ときどき分からなくなる。どうしてこんな生活が続けられると考えたのかな。そうじゃなくて、こういう生活をしたかった訳じゃないのに。自分がやりたいことがはっきり分かるから、自分に課す期待値を暫くずっと下回り続けていることが心底嫌なのに。暗い部屋に、鼻を啜る音がよく響く。今までの���の生活が、目を醒ましたら忘れる夢だったらいいのに。
自立した自分の姿ばかり思い描いている。君のことをずっとずっと思っているこの生活が、早く終わってくれますように。気付いたらまた午前3時。
ねぇわたし、君がいないと。さっぱり毎日がおもしろくない。
오늘 노래 추천 ' Hype Boy ' -New Jeans
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三篇 下 その三
上方者は、 「ハァ、ソンナラお前のお馴染みは何屋じゃいな」 と、意地悪く問うと、 「アイ、大木屋さ」 と、弥次郎兵衛がいう。 「大木屋の誰じやいな」 と、上方者がさらに問うと、 「留之���よ」 弥次郎兵衛が答えた。 上方者が 「ハハハ、そりゃ松輪屋じゃわいな。 大木屋にそんな女郎はありもせぬもの。 コリャお前、とんとやくたいじゃ、やくたいじゃ」 (やくたい…上方言葉で、らちもない、とんでもない、よくない、など広い意味に使う)
弥次郎兵衛は、 「ハテ、あそこにもありやすよ。ナァ北八」 (大木屋は実在の大見世の扇屋のこと。松輪屋はやはり実在の松葉屋のこと。留之助は松葉屋の抱えの名妓の染之助のこと。したがってこのやり取りでは上方男の勝ち) 北八、面倒臭くなってきて、 「ええ、さっきから黙って聞いていりゃ、弥次さんおめえ聞いたふうだぜ。 女郎買いに行ったこともなくて、人の話を聞きかじって出放題ばっかり。 外聞のわるい。国者の面よごしだ」
弥次郎兵衛は、 「べらぼうめ、俺だって行くってんだ。 しかもソレ、お前を神に連れていったじゃァねえか」 (神…取り巻き、太鼓持ち。遊廓付きの本職ではなく、客が連れ込んだ遊びの取り巻き仲間。落語の野太鼓がこれである) 北八、思い出して、 「ああ、あの大家さんの葬式の時か。なんと、神に連れたとは、おおげさな。 なるほど二朱の女郎の揚げ代はおめえにおぶさったかわり、 馬道の酒屋で、浅蜊のむきみのぬたと豆腐のおから汁で飲んだ時の銭は、みんなおいらが払ったじゃねえか」 (葬式くずれで繰り込むなら安い店にきまっている。揚げ代二朱なら宿場の飯盛なみのごく安い女郎。馬道は吉原に通ずる町。そこの酒屋のぬたも汁もごく安い庶民的な食い物である)
弥次郎兵衛は、 「嘘をつくぜ」 北八も、 「嘘なもんか。しかもその時おめえ、さんまの骨をのどへ立てて、飯を五六杯、丸呑みにしたじゃねえか」 「馬鹿言え。お前が田町で、甘酒を食らって、口を火傷したこた言わずに」 「ええ、それよりか、おめえ土手で、いい紙入れが落ちていると、犬の糞をつかんだじゃねえか、恥さらしな」 (土手…吉原に入る途中の山谷堀に添った日本堤の土手八丁、金持ちなら土手八丁を四ツ手駕で飛ばし、貧乏人なら歩く、いずれも弥次郎の自慢が嘘だと、北八が暴露したかたち)
と、遣り合っている二人に、上方者が 「ハハハハハ、いや、お前方は、とんとやくたいな衆じゃわいな」 弥次郎兵衛が、 「ええ、やくたいでも、悪態でも、うっちゃっておきゃァがれ。 よくつべこべとしゃべる野郎だ」 上方者は、関わり合いにならない方がいいかと、 「ハァこりゃご免なさい。ドレお先へまいろう」 と、そうそうに挨拶して、足早に行ってしまう。 その後ろ姿をみながら、弥次郎兵衛は、 「いまいましい。うぬらに一番へこまされた。ハハハハハ」 この話の間に、三ケ野橋を渡り、大久保の坂を越えて、早くも見付の宿(磐田市)にいたる。
北八、 「アァくたびれた。馬にでも乗ろうか」 ちょうどそこへ、馬方が、 「お前っち、馬ァいらしゃいませぬか。 わしどもは助郷役に出た馬だんで、早く帰りたい。 安く行かずい。サァ乗らっしゃりまし」 (助郷…東海道の交通の確保のために、沿線の村々に幕府がかけた役務で、人馬の徴発を含めて重いものだった)
弥次郎兵衛は、 「北八乗らねえか」 と、問い掛けると、 「安くば乗るべい」 と、馬の相談が出来て、北八はここから馬に乗る。 この馬方は助郷に出た百姓なので、商売人の馬子でないから丁寧で慇懃である。
弥次郎兵衛は、 「そうだ、馬子どん。ここに天竜川の渡しへの近道があるんじゃねえかな」 と、思い出して、聞いてみると、 「アイ、そっから北の方へ上がらっしゃると、一里ばかしも近くおざるわ」 と、馬方がいう。 北八が、 「馬は通らぬか」 と、更にとうと、 「インネ、徒歩道でおざるよ」 と、ここから弥次郎は一人近道のほうにまがる。
北八は馬で本道を行くと、早くも加茂川橋を渡り、西坂の墳松の立場に着く。 茶屋女が声をかけてくる。 「お休みなさりやァし、お休みなさりやァし」 茶屋の婆も声をかけてくる。 「名物の饅頭買わしゃりまし」 馬方が、その婆様に声を掛ける。 「婆さん、おかしな日和でおざる」 「お早うございやした。いま新田の兄いが、一緒に行こうかと待っていたに。 コレコレ横須賀の伯母どんに、言いついでおくんなさい。 道楽寺さまに勧説法があるから、遊びながらおいでと言ってよう」 (道楽寺は遊びながらおいでにこじつけた架空の寺の名) 馬方は、 「アイアイ、また近うちに来るように伝えときましょう。ドウドウ」 と、いうと、また歩き出した。
「この馬は静かな馬だ」 北八は、珍しく乗りやすい馬なので、つい、そういうと、 「女馬でおざるわ」 と、馬方が、こたえる。 北八は、にんまりして、 「どうりで乗り心地がよい」 馬方が、問い掛けてきた。 「旦那は、お江戸はどこだなのし」 「江戸は日本橋の本町」 と、北が答える。 「はあ、えいとこだァ。わしらも若い時分、お殿様について行きおったが。 その本町というところは、なんでもえらく大きい商人ばかしいるところだァのし」 と、昔のことを思い出しながら、話してくる。 「オオそれよ。おいらが家も、家内七八十人ばかりの暮らしだ」 と、またまた、くちからでまかせ。 馬方もしんじているにのかいないのか、 「ソリャ御大層な。お神さまが飯を炊くも、たいていのこんではない。 アノお江戸は、米がいくらしおります」 「まあ、一升二合、よい所で一合ぐらいよ」 と、考えながら言うと、 「で、そりゃいくらに」 と、馬方は、よく分からない。 「知れたことよ、百にさ」 と、北八がいうと、 「はあ、本町の旦那が、米を百文づつ買わしゃるそうだ」 馬方は勘違いして、そういう。 北八、笑いながら、 「ナニとんだことを。車で買い込むは」 「そんだら両にはいくらします」 と、馬方。 「なに、一両にか。ああ、こうと、二一天作の八だから、二五の十、二八の十六でふみつけられて、四五の廿で帯解かぬと見れば、無間の鐘の三斗八升七合五勺ばかりもしようか」 (割り算の九九の二一天作の八は一二天作の五の間違い、途中から浄瑠璃の文句でごまかしている。米の値段も出でたらめ) と、何やら、難しそうな、計算をはじめる。 「はあ、なんだかお江戸の米屋は難しい。わしにゃァわからない」 馬方は、すっかりけむに負かれて、 「わからぬはずだ。おれにもわからねえ。ハハハハハ」 と、北八も自分でいっててわからなくなった。
この話のうちにほどなく天竜川にいたる。 この川は信州の諏訪の湖水から流れ出て、東の瀬を大天竜、西の瀬を小天竜と言う。 舟渡しの大河である。弥次郎は近道を歩いてここで北八を待ちうけ、ともにこの渡しを越えるとて、一首。
水上は 雲よりい出て 鱗ほど 浪の逆巻く 天竜の川 (水、雲、鱗、浪、逆巻く、みな竜の縁語の竜づくしが趣向)
舟からあがって立場の町にいたる。 ここは江戸へ六十里、京都へも六十里で、東海道の振り分けになるから中の町(浜松市)というそうだ。
傾城の 道中ならで 草鞋がけ 茶屋に途絶えぬ 中の町客 (ここを江戸吉原の中の町に見立てて、花魁道中の高足駄の代わりに草鞋、吉原の引き手茶屋と街道筋の茶屋、どちらも客が絶えぬと言う趣向) それより萱場、薬師新田を過ぎて、鳥居松が近くなったころ、浜松宿の宿引きが出迎えて、 「もし、あなたがたァお泊りなら、お宿をお願い申します」 と、二人の呼びかける。 北八がそれに答えて、 「女のいいのがあるなら泊りやしょう」 客引きここぞとばかりに、 「ずいぶんおざります」 と、いうと、弥次郎兵衛が、 「泊まるから飯も食わせるか」 宿引き 「あげませいで」 北八、 「コレ菜は何を食わせる」 宿引き、 「ハイ当所の名物、自然藷でもあげましょう」 「それがお平の椀か。そればかりじゃあるめえ」 「 それに推茸、慈姑のようなものをあしらいまして」 「汁が豆腐に蒟蒻の白和えか」 と、北八が、客引きとやりあっている。
弥次郎兵衛が、 「まあ、軽くしておくがいい。その代わり百ケ日には、ちと張り込まっせえ」 (ここのやり取りは、宿引きの言うのが、野菜ばかり並べた精進料理なので、死人の法要の料理だと皮肉ったのである。法要では、当初と百ケ日には料理を張り込むのがしきたり) 「これは異なことをおっしゃる。ハハハハハハ。時にもうまいりました」 「オヤもう浜松か。思いのほか早く来たわえ」 と、弥次郎兵衛、ここで一首読む。
さっさっと 歩むにつれて 旅ごろも 吹きつけられし 浜松の風 (松風の音の颯、颯と、さっさと歩くとにかけている。風に吹き送られ��早く着いた意味も含む)
その横を宿ひきが駆け抜ける。
宿引きは、旅館に駆け込むと、 「サァサァお着きだよ」 と、置くに声をかける。 「お早くございました。ソレおさん、お茶とお湯だァよ」 それに、こたえて、この旅館に亭主が出てくる。 弥次郎兵衛が、 「イャそんなに足はよごれもせぬ」 と、いうと、亭主 「そんなら、すぐにお風呂にお召しなさいまし」 と、奥に案内しようとする。
つづく。
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たとえ曇天星邱。
呱呱のそこ何処 かしこに、嵐そのもの垂る虹硝子の胸 かざり 抱懐 あとのまつりとなり、切り取られた影のわけ、梟をまなうらを担った。 軽くなった躯 皓い、露アラワ、暈ボけ肇ハジめた貝殻骨の。並木道には丸い瞳、偶人が冷やかに蕩けては見紛うよう、また少女が咲うのだと、この優刻ユウコクに眩むのだな あちらからもこちらからも 後退りをしては追いかけるばかりの、磨き立て軽く曝す すべてはシノプシス。見ず知らずのすがたは一目惚れかな。含みを払う本質を蕾にあると覗き、依怙地にして暗黙と節穴、道半ば密かは度々賛美にして天華 つごもりはせつらしい。 雲海 これは気づかなかっただけなのである 狂乱の炎はまるで黄昏を海、堕とした。銀鼠の肌を持ち 縹色を髪にお付きにした 苦い刺青を好み、さびしいものの茂みでもっと ちがった空間に 輪廻であると展開する、 沙漠に陽、尽きぬことを耳朶に障る眼福に犠牲を強いる、牡丹柄の、基調とした狆くしゃの、竹林ばかり ニンゲンで 不滅だろう 中にはただ見えなくなったやつが、執拗な自然ばかりを生い茂らせ始末におえない形を持っていて、山も谷も川もせせらぎ、つつ、大海をも淀んだ風に彩りを殺し、ひっそりとこの空は灰色とかわり、氷雨混じりのいたみを残していた。 きみもぼくも、今に乗せられた、破天荒を編み上げる 色の瞳も感じない、愉快な衝突を交わしている、さやさやとなる細い藤のつたない現象 縫うようでいて、留まることがない 砂紋の渦と零している、ある噂を わたくしの、あとにもさきにも ちいさな人生ではそのうち消えてしまいましたが ただ窓辺に腰掛け、今、春を待つていどの時をこうして 意味もなく 枯れ枝の葉脈と紬いでいる意味でございます。 どうしてか涙地のオーロラはゆらゆらと湛え、臙脂のモビール、数秒後のあなたは隻眼の花が衣。勿忘草のノクターン 旻を描いている。もじゃくちゃ。 銀光の歯車は祈りなき地面を紫に踏み鳴らす頃、斎を緩めない、ただ跡形もなく、永遠を踊らせる輪舞曲、自身も他者も、いままさに根も葉もなく この手で感じている感覚はきっと吹きさらしのものでしょう、両手で囲うほのおは熱くも微温くもない、マボロシてあったのかも知れません。 海岸はフルイドアートの中に。沈む それは靑い雛罌の瞳の 粗末な街に寄せ返す したたかな朝日が開いたから、ふかく毛布を惹く、終ぞソファーはかたい海の底まで。檸檬色をふくむ。今さら銀の円鏡と夢幻に身を委ねてもただ苦しいのかもわからなかったが、 吹き消すこともなく続いていったこの意図が、どこに繋がれるのでしょうか。ただこうしてどこか繕い、穴を埋めているだけでしょう ゆめのはなり/死期が近い。 多分雲の上にいる、 手を繋ぐ、歩き出す。 不確かなツルの障り、モザイクの尖りや悼み、 やわらかな砂の鳥は肌狂フれた時の寸感 たとえ曇天星邱とも 多分そのころは空想だった(だらだらとしていたから) 「メルヘンは貧相だから直ぐしぼんでしまうんだねえ」 『温ったかな」とても柔かった」小さかった。』 声もなかったが名前はあった。 離陸した鵬翼、まあ翔けなかったけど。 口裏を合わせたように思えて仕方なかった、 夢を抱いた夢をみたんだ どうとして色彩に委ねる、女の首ばかり飾っているそちら、枯れてなお美しくあろうと手を尽くしているあれら。空気に溺れている 安裸花にありたかった 枯れ草も、老齢のススキも、嘯いた種も、薄く燐として繊月を扇いでいる。爆ぜるような風だけが嗚咽を経て、空だけが雨とほどく季節、たたらば。 アーモンドの花が一肢シずつ 増えては のみ込まれて行く。丸くあった青海が、近づく旅に 誰かの落とし物を探し回る、微温い風が 欠伸している、その奥地の、こちょこちょばなしを うんちくな素肌が、ひととき、振り解いた熱を また寄せ返す。波間にいきる、某がすべてと おとなしく響いていた―― 2024-01-01
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2月22日(水)open 12-18
雨も雪もやみましたが、寒い寒い猫の日です。 皆さん暖かくして過ごしましょう。
通年猫の日の本・中川ですが、やっぱり猫の本をお会計に持ってきてくださる方がいると話に花が咲いてしまいます。 猫の本、たくさん揃っておりますのでお出かけくださいませ。
いつも通り、地域猫の仲間たちが遊びに。 お店に来てくださっている方々にはお話ししていますが、実は地域猫の3兄妹のうち、ママによく似たしましま柄の女の子が、もう2ヶ月近く顔を見せません。 お隣の方も彼方此方に聞いてくださいましたが、見つかりません。 かわいい子でしたので、誰かのお家で可愛がってもらっているといいな…と信じたいです。 が、やっぱり私には心臓の負担が大きい、地域猫との関わり合い… 全ての猫たちの面倒みることは不可能ですが、どうか一匹でも多くの猫たちが、幸せで、命を全うできますようにと願います。 もし万が一、この辺りにお住まいの方で、しましまちゃんを見かけた方がいらっしゃいましたら、お知らせいただけると嬉しいです! (そして更に万が一、うちにいます、という方がいらっしゃっても誰も怒ったりしないのでこっそり教えてくださいね) そんな事があり、黒猫兄妹たちは今、首輪をつけてもらいましたよ。 元気いっぱい、日々を生きています。
しまちゃんのこと、今日書こうと思ったのは、大好きな絵本『ねこのき』のおはなしを書いた長田弘さんのあとがきを改めて読んだから。 そしてつい飼い猫のロロに似ているという理由で手にした、金井美恵子エッセイ・コレクションの『猫、そのほかの動物』。 猫への眼差しを、こんなにうっとりする言葉で表現できるという作家の素晴らしさ… 2点は古本で店頭に並んでおりますので、是非ご覧になってください。
もちろん、猫の本以外にもご用意がございます。 意外と色んな本があるんですね!驚かれることの多い当店です。
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エスカルゴンその2
11話 ・「コックオオサカといえば、ミリオンセラー『宇宙遥かな旅遥かな味』を書いた、有名な料理評論家でゲスよ!」 ・「私にはそんな味です。ギヒヒヒヒヒヒ。」 ・「たった今、貴様(カワサキ)のレストランは営業停止処分でゲス。」 ・「これじゃったら陛下が作った料理の方が、なんぼかマシでゲスなぁ。」 ・「てゆーか、カワサキ以外ププビレッジに料理人はいないでゲス。」 ・「こうなったら食材でゲスな(もちろん自身のことではない)。」 ・「前菜の『シーザーサラダ・ププビレッジ風』でゲス。」 ・「…っていうことは、(今回の魔獣は)無料ってことでゲスかね。」
12話 ・「これは、これは心霊写真でゲスぅ。」 ・「この世に未練を残した幽霊が映る現象でゲス。とくに恨みを抱く相手の背中に…。」 ・「(門前の橋が勝手に閉まったのは)きっと幽霊の仕業でゲしょ。」 ・「えぇ、と、とんでもない、超常現象は私の専門ではないでゲスよ。」 ・「エスカルゴンは居留守でゲス。」 ・「(おしっこ漏らしたことは)誰にも言わねぇから。」 ・「あー!怖いよー!やだよー!」 ・「な、何をするんでゲスか、ちょ、ちょっと、あ、あー!や、やめてー!許してー!およしになってー!あ、あれー!あー!(トイレまで全力疾走)」 ・「へっへっへっへっへ、皆よくやったでゲスよ。へっへっへっへっへ、さ、これはご褒美でゲスよ。」 ・「これは…(デデデに対する)復讐でゲス…。」 ・「私はこれまで、陛下から散々脅かされてきたでゲス。」 ・「陛下はイタズラ好きで、何度私を脅かしたことか…(泣)。」 ・「あるときは、トイレに何時間も閉じ込められて…今では、夜中には(トイレに)行けなくなったでゲス。」 ・「また、あるときは野蛮な武器で陛下に追いかけられたでゲス。」 ・「でも一番怖かったのは…(自分の部屋で驚かされたこと)。」 ・「これじゃ心臓に悪いでゲス…。血圧に悪いでゲス…。だから…だから憎い陛下にいつかきっと仕返ししようと思って…(泣)。」 ・「全部私の計画でゲス…。インスタントカメラも…占い師の予言も…つり橋の事故も…飛ぶ幽霊も…、皆…このわたくしめが…。」 ・「とんでもない!最後まで陛下を怖がらせることができたんだから、こっちの勝利でゲスよ!」
13話 ・「花火職人?おふざけにも程があるでゲスよ。」 ・「貧しき人民共よ、今年も残り少なくな…なんだこりゃ(拡声器のキーン音)」 ・「火の用心と戸締まりを(ここからは拡声器のキーン音で聞こえない)」 ・「禁止されると余計やりたくなる。さーすがはずるーい陛下でゲスな。」 ・「こーれ!魔獣!陛下にお返事せんか!」 ・「(デデデに発砲したサスケに対して)けしからん!コイツには直ちに送り返すべきでゲス!」 ・「今回はエルカルゴンも頑張ったでゲスよ!」 ・「「大筒花火テッポードン」!これなら気に入らないヤツを銀河の彼方に吹き飛ばせるでゲス。」 ・「あんなチープな魔獣よりも私目の給料とボーナスをドーン!と増やした方が、早いでゲスよ。」 ・「(自身の山車が燃やされて)あらーま、なんてことを。」 ・「どうしたの?なにあれ?(テッポードンの残骸が降ってくる)」
14話 ・「もう陛下、新年早々機嫌が悪いでゲスなぁ。(ナイトメア社から)年賀状?来たのは請求書だけでゲスよ。それは(陛下がナイトメア社に)お金を払ってないからでゲしょ?」 ・「お年玉?子供じゃあるまいし。(新年のカレンダーをくれないのは)酒屋じゃないんだからアレー!(福袋をくれないのは)デパートやスーパーの客寄せじゃないんだからもう、まったくしょうがないアー!。」 ・「(デリバリーシステムを破壊して)二度とお買い物しないでゲスよ。」 ・「待ってました大統領カスタマイエーイ!いいぞいいぞ(デデデに殴られる)。」 ・「さぁ、今年もチャンネルDDDは頑張るでゲスよ!」 ・「チャンネルDDD!」 ・「(チャンネルDDDでは)視聴者の皆様に、健やかに眠れるヘルシーな夢枕をプレゼント、でゲス。」 ・「それがいいのは分かりましたが、さぁ気になるのはお値段でゲスなぁ。」 ・「(健康夢枕が)無料!?ということはタダでゲスねぇ?」 ・「ご希望の方は、住所・氏名・年齢・職業に「健康夢枕希望」と書いて、お送りくださいませー。お近くの方は…(デデデ「直接取りに来い!」)」 ・「(デデデに「枕で寝ろ」と言われて)はいはい分かりました、どうせこうなるんじゃないかと思ってたでゲスよも~。」
15話 ・「いやー、海辺のドライブはロマンチックでゲスなぁ(顔がめっちゃやる気ない)。」 ・「最新鋭の電子ペットでゲしょ。」 ・「(首を絞められて)苦しい~、電子ペットならおもちゃ屋でゲス~。」 ・「陛下、ヤツは留守でゲスなぁ。」 ・「(手を出すなと言われたら)尚更燃える陛下のイヤ~な性格を理解していないようでゲスな、あのガキ共。」 ・「(デデデにロボット犬を捕獲しろと言われて)宮仕えはつらいでゲス(「宮仕え」とは大王や貴族等の偉いモノに仕える人のことである)。」 ・「(ロボット犬捕獲を)まだやる?(もう飽きてる)」
16話 ・「海底資源の探索は、潜水艇でも作らないと無理でゲスよねぇ。」 ・「そち(カイン)はフームが好きでゲしょ?なら手を貸してやるでゲスよ。」 ・「(水槽を貸して)陸でも生きられるようにしてやるでゲス。」 ・「陸と海の結婚とは、ロマンチックでゲスなぁ。」 ・「何でゲス?その水中メガネ。このエスカルゴンの作った潜水艇が信用できないということでゲスか?」 ・「陛下、あのマンボウが来たでゲスよ。」 ・「でも、海の中じゃ(カービィは)いつもの力は出せないはずでゲス。」
17話 ・「(特別な日って)燃えないゴミの日…じゃないですよね?」 ・「あー!ちょっとその指輪を見せるでゲス!ほう…これは私のゆびわでゲス(クズ)。こんなところにあったでゲスか…。…疑うでゲスかー!?よろしい…。」 ・「いいものを手に入れたでゲス。」 ・「(メーベルに鑑定してもらって)…どうでゲス?超大粒のダイヤ、100デデンなら安いでゲしょ?」 ・「ふん、あれは安物のガラス玉でゲス。メーベルの鑑定でゲスよ。」 ・「(自身の指輪コレクションを見て)まさか、これがみんなガラス玉なんてことはないよなぁ…。せっかくデデデ陛下の目を盗んでため込んだんでゲスから…。」 ・「あぁ、腕の運動でゲス(指輪を壁に隠すのを誤魔化す)。」
18話 ・「ね~むれよいこよ~♪」 ・「バババヶ原へ���海でゲスかー?」 ・「へへへへへへへ、今度の作戦は最高でゲスな。(タネとなるノディを生み出し、それを食べたものを眠らせ、)そして(目覚めるために)その花の匂いを嗅ぐためにやって来たものを、食うでゲス。」 ・「(次のピューキーの餌は)ピンクボール。」
19話 ・「暴走族徹底取り締まりでゲース(早口すぎて何言ってるのか分からない)。」 ・「下に参りまーす(ナックルジョーに装甲車ごと投げ飛ばされる)。」 ・「ぶ、無礼者。このお方をどなたと心得る。たとえ姿かたちは無様でも、意地汚さは天下一品、デデデ大王様なるぞ(水戸黄門のパロディ?そして案の定殴られる)。」 ・「食い物のあるところカービィ有りでゲスなぁ。」 ・「お前(メタナイト)の出る幕じゃないでゲス。」
20話 ・「雪とは思いもつきませんでゲしたなぁ~。」 ・「あぶなーい!(デデデと共にフームを雪まみれにする)」 ・「気象現象に関するギワク~(疑惑)でゲスか?」 ・「いやでも陛下、どこまでやるんでゲス?ちょっと寒すぎるでゲスよ。」 ・「(凍らされたアイスドラゴンを見て)本物の氷のドラゴンでゲス…。」
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※びっくりするくらい長いしキモい
はじめに言うんですけど、
私本っっっっっっっ当に月先生の小説大好きなんです!!!!
もう、対になってる「思ひ寝に空蝉」に関しては見る専だった頃に死ぬほど長文のマロ送る位好きだったんです。(千代ちゃん万歳‼️)
それの!!続編が!!!!!
出るということで!!!!!!
さっそく読ませていただいたんですけどもーーーーーーー好きですよね。全部好き!!すきー!!!!
○表紙絵
まず表紙絵ってなんぞやって感じじゃないですか。ただでさえ天才的な小説に更に天才的なイラストをつけるってどういうことですか、殺しにかかっているのですか()秋、朝ということが伝わってくる色使い、秋の憂いを感じる筆遣い、どれをとっても素敵過ぎて大好きです。
これは小説も含めてそうなんですけど、朝と秋っていうのが「思い寝に空蝉」(夏、夜)の対比になっていて本当に最高ですよね。夏の朝と夜でも対になることすら気づけなかった頭の固い人間故に、秋の朝という季節?時期?の事を書いていると知ったときは少し大袈裟ですけど、衝撃が走ったのです。夏の対にするなら冬なのではなんて浅はかな思考だった過去の私をぶん殴りたいです。(もはや表��の感想じゃない)
チュヤの横顔が美しすぎてもうダメです。いつものツリ気味の目や眉が少し伏せられていて、この小説の雰囲気をまるごと取り込んだような表情になっているのです...
というか今気づいたんですけど!!!!横顔の向きまで対になってるじゃないですか!!!
二つの表紙を横に並べたら向かい合う二人になっている...二人の視線が交わるような、でも交わらないような感じがお話しの中の離れていてもお互いのことを考えてしまうことを表してるようで、もう、好きです。色々なとのが対になっているなかで背景のお花は同じなのがロマンチックで良きです=͟͟͞͞♡(輪郭は違うけども)。霧が夏よりもボヤけているのは息が白いからなのかな🤔💭(月さんが意図されてるかはわからないけど)このお話は秋で朝だし、中の心情とも合わさって寒いだろうから息も白くなるかもしれないなと思いまして...(めんどくさオタクの考え)
何度でもいうけど顔が可愛い!儚くて可愛い!!キュッと結ばれた唇とか、細かい上まぶたのまつ毛とか、しなやかな下まつ毛とか、憂いを帯びた瞳とか全部大好きです!!!左目のまつ毛が少し見えてるのも細かくて好きです𝒄𝒉𝒖…髪の塗り方…というか質感もしっとりしてて最高〜🥹🙌こういう厚塗りみたいな色の塗り方大好きなので本当に栄養源になります。バランスが難しい(当社比)横顔をこんなにも儚くて可愛くて素敵なものに仕上げるなんて...流石すぎます月先生ᯒᯎ"❤︎
○小説
お恥ずかしながらタイトルの火恋しという言葉に覚えがなくてですね...調べたんですけど、火が恋しくなる時期のことって、、晩秋だけでなくタイトル全体から秋を感じられる~!!???ってなりました。センスしかない~( ; ; )💕💕
始まり方お洒落すぎません!?!?ダザのこれまでや、あの有名な台詞を思い返してからの「生きることを始めたのか」ってッ余韻しかない!!!あと個人的に月さんの「息をし、食事をし、恋をし、死ぬ」の解釈が聞けてとーっても嬉しかったです✌息、食事、恋、死が平行して存在するってことかなと思ってたんですけど、息、食事の先に恋っていう解釈すごくストンって降りてきました!!というか、「息食事恋死」って確か15歳の時の台詞ですよね、ダザがポトマを抜けるまで3年くらいあったのにずっと覚えてるチュヤ健気過ぎて可愛いです👁❤️👁
ダザがポトマを抜けた時にチュヤが何をしてたかとか、相棒だから幇助の疑いがかけられいたとかってもう本当に皆大好きなネタだと思うんですけど、例に漏れず私も好きなので無事死亡しました。首領は全てお見通しだから、チュヤを疑うことはないよね、そうだよね、、;;とか思いながらも、まだ色々飲み込めてない中取り調べ?しないといけないチュヤを思うと私まで苦しくなりますからァァァ首領にありがとうございますって言うときちょっと言葉に詰まるところとかも細かいけど、チュヤの心情が現れているようでン"ン"ン好きです 首領が町医者というかヌヌ黒のお父さん過ぎてもぉ~~~首領~~(;;)
借りたままのボールペンって言葉いいよね...やっぱり幹部の席のことや作戦のことみたいな大きい話から日常的な小さいことまで全部含めて中にとってのオサムなんだよな~~~てか荷物て!!!女房!!!!!過呼吸とか冷や汗大好きなのでもっと苦しめて❣️(うちわ)
私愛車爆発ってチュヤにとってかなりの救いだと思ってたんですけど、ダザが自分の意思で出ていったってことの証明になるっていうのを見て撃沈🫠確かに置き土産だと=もう戻らないっていう風になります���んね〜〜…チュヤが誰が爆発させたか知らなかったらそのことに気づかなかったんだろうけど、、月先生罪な人だ…
でもそこで沈まないチュヤ~~高貴な人よ~~~アァァァァァァァァァァ精神美しすぎ...
恋に引っ掛かっちゃう中~若者だよ〜!!甘酸っぱいよぉ😭😭恋を、で1回句点挟むの文と文��余白?空間?チュヤの思い?とか感じられて好き!!天才!!!!そういうの弱いからやっちゃダメ!!!やってください!!!!!てかなんですかー俺は嬉しいのかって!!そういう所が!!!高潔すぎて、え良い子過ぎる…スパダリなんよ〜
最後の比喩脳内で映像流れるくらい大好きです~~甘いー!甘いの好き🤤恋自覚してしまったチュヤーーーーーこんな瞬間みんな好きなんだから、もう、なんぼでも見たい最後の最後まで雰囲気たっぷりで流石すぎます月先生👁💞👁
テンション高ぶってる時でも落ち着いてる時でも書いてたので話に一貫性無さすぎるんですけど、このお話と月さん大好きな気持ちだけはずっと変わらず持ってましたよ💃❤️💋最高を摂取させてくれて本当ありがとう過ぎます〜❣️❣️いつかの絵と文章の本楽しみにしてますね〜👁❤️👁🫶
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