#蛇腹財布
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"affordance新作受注会" affordance 蛇腹財布 "コンパクトでスッキリとした薄型の二つ折り財布" コンパクトでスッキリとした佇まいの財布です。 蛇腹になっているのでそれぞれの部屋は大きく開きカードも小銭もお札もそれぞれ取り出しやすくなってます。 お札は縦に収納。横にスライドして取り出します。 お札の折りぐせも付き難いので、会計時もスムーズに出し入れできます。 「キャッシュレス決済が多いけど、ある程度の現金は持ち歩きたい方にオススメ」 6色の中からお好きな色を選び、コンビカラーや刻印などのカスタムオーダーも承っております。 ─────────────── Special exhibition affordance 新作受注会 3/11 sat - 3/26 sun 12:00-18:00 ※ソコノワ一部店内にて ※受注製作(一部即売商品あり) ─────────────── <PROFILE> affordanceとは、物事/環境が人に与える意味や価値。(心理学者 J・J・ギブソンが作った言葉) 同じ物でもその価値や用途は手にする人によって生み出されていきます。 制作する革製品を介して、そのきっかけになりたいと考えています。 #affordance #アフォーダンス #受注会 #革財布 #蛇腹財布 #ソコノワ #sokonowa #川越 (ソコノワ - sokonowa) https://www.instagram.com/p/CpxDH5ZvhYE/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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【常威近代史】(七百五十九回) 上海淪陷 時間線去到1937年嘅11月,11月1號,蔣介石喺南翔軍事會議上,嚴令各軍不得隨意撤退。之前已經講過,中國參戰嘅軍隊其實係由不同嘅部隊混編而成,一個「混」字,大家亦都相當清楚,混亂事小,混賬事大。呢啲唔同嘅部隊,喺過去十幾年之間彼此打嚟打去,有時候係同袍,有時候係敵人,亦都係司空見慣嘅事。現在因為有共同敵人——日本鬼子——又變成咗某程度上嘅盟友,就算大家義憤填膺,一致槍口向外,不過長期以來彼此間嘅敵意同血仇,確實唔會係一夜之間消失。蔣介石嘅最高指令,個個都話遵守,全力以赴,但係去到前線,又淨低幾多成呢?呢個世界嘅嘢,其實好簡單。同你friend同你真心相對,做嘢就會做120%;但係虛以委蛇,口服心不服,同你出五成功力算你好彩。中國軍隊嘅問題,除咗軍備同金錢,仲有一樣嘢就係唔團結。蔣介石成日話先安內後攘外,你估其他人唔識得相同諗法咩? 舉個例子比大家參考下,蔣介石任命嘅第一位上海地區作戰司令官,就係篤信基督教嘅馮玉祥(1882-1948),馮玉祥從前係蔣介石嘅敵人,夥同桂系李宗仁一齊打蔣介石嘅中原大戰失敗之後,一鋪清袋,一直住喺南京,以研究、寫作、演講讓自己成為知名嘅鼓吹抗日人士,如何包裝自己,變色龍馮玉祥係當時嘅絕世高手。抗戰發生之後,蔣介石發佈馮玉祥成為上海戰區總司令,其實好多人都覺得好詫異,當然蔣介石係表達咗自己不計前嫌,大仁大義嘅氣魄,亦都示意北方戰場同上海彼此相關,再冇南拳北腿之分,不過當馮馮玉祥去到前線,當時上海就有好多官兵唔妥佢,唔聽佢指揮,所謂上樑不正下樑歪,仲要面對嘅對手係軍備軍紀遠在自己之上嘅日本皇軍,真係唔輸有鬼。但馮玉祥嘅例子,只係九牛一毛。 11月1號,中蘇訂立第一次信用借款5000萬美元嘅協議,第二次國共合作,蘇聯除咗派出空軍支援中國,仲有擲地有聲嘅金盧布經濟支援。同一日,國立長沙臨時大學開始上課。11月3號,太原失守。日本今日亦正式拒絕參加係布魯塞爾召開嘅「九國公約」會議。討論日本侵華嘅九國公約會議今日喺比利時首都布魯塞爾召開,日本同德國拒絕參加,意大利則充當日本嘅代言人。英國、法國同美國態度曖昧,不願意開罪日本,敷衍了事,終於所謂九國會議草草收場,於24號無限期休會,大會通過咗一紙宣言,重申九國公約原則,要求停止戰爭行動外,並無任何實際效果。可憐嘅蔣介石於淞滬戰爭中all ln,犧牲咗佢手中部分精銳部隊,希望換取西方列強並肩對付日本人,或至少得到更多國際外交上嘅「實質」支援,可惜事與願違,其他國家除咗得把口譴責之外,並無任何實際行動支持中國,正正是——賠了夫人又折兵。 11月5號,日軍喺杭州灣嘅金山衛同金公亭大規模登陸,火上加油!八路軍晉察冀軍區成立,後嚟成為中共十大元帥之一嘅聶榮臻(1899-1992)將任司令員兼政委。今日,日本通過德國駐華大使陶德曼(1877-1950),首次向蔣介石轉達日本對華談判條件。上個月21號,日本外相廣田弘毅(1878-1948,東京審判上唯一被處死嘅文官)會晤德國駐日大使,表示隨時預備同中國談判,希望德國從中斡旋,當然預備同你談判,並唔代表要停戰,轟炸同殺戮繼續發生。日本人開出嘅談判條件係,包括内蒙自治,擴大華北不駐兵區、承認偽滿洲國、上海停火、停止排日、共同防共、以及減少日貨進口稅等等。所有嘅條件都觸及蔣介石嘅底線,如果有得傾,亦都唔使開打啦?我亦強烈相信,如果當時蔣介石接受媾和條件,十年之內,整個中國就會同朝鮮臺灣一樣成為日本嘅殖民地。 11月7號,日本華北開發公司係北平��立。11月8號,中國青年新聞記者協會喺上海成立。11月9號,招商局將全部產業喺名義上轉交美商衛利韓公司,理由亦都好簡單,日本未同美國宣戰,屬於美國嘅財產,日本人唔可以掂。 11月11號,中國最大嘅城市,東亞第一號大錢罌上海淪陷,日軍喺今日佔領上海,而上海外國租界則淪為孤島。11月5號破曉,日軍喺艦炮、飛機掩護下,於金公亭、金山衛同時登陸,中國喺依一帶幾十里長嘅海岸線上,只有62師其中小部分部隊,以及少數地方武裝擔任守衛工作,兵力懸殊到烏蠅��航空母艦,於是幾乎響毫無抵擋嘅情況下,日軍順利大規模登陸。11月8號,日軍第10軍主力渡過黃埔江,11月9號,佔領楓涇,並向西直指嘉慶、平望。至此,滬杭公路被切斷,上海僅餘守軍陷於腹背受敵危局。於是第三戰區決定全軍撤退,但係因為命令下達得太遲,部隊已陷於混亂狀態,撤退嘅部隊擁擠於公路上,情況非常混亂。 關於淞滬戰爭,亦有一點可以提,就係中共並無參與依場重要會戰。毛澤東固然堅持部隊不介入其中,而中共得到唯一嘅讓步,就係蔣介石同意佢哋嘅行動限制喺河北同埋察哈爾嘅部分地區內,即係同意中共成立晉察冀邊區政府,大敵當前,兩黨仍然彼此極不信任,中共亦希望能以敵後遊擊作戰方式參戰,以維持自己的獨立性同自主權,且儘量小心不侵犯國民黨勢力範圍,以免發生軍事衝突。 #常威💀 #蔣介石平反系列 #佛經抄寫員 #中日戰爭 #民國歷史 https://www.instagram.com/p/CoCT92kvVXG/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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国を繁栄させる四つの道具 国を治めるうえで一番大切な事と具体的な方法を考えるための逸話
市営住宅集会所へ講演会を聞きに行った。 演題は「 兵法書 ( へいほうしょ ) を読んで『生き方』を考える」。内容の要点は次の通りだった。 韓非 ( かんぴ ) は、今から2300年ほど前に生まれた 韓 ( かん ) の貴族。隣国 秦 ( しん ) の圧迫に苦しむ祖国を救うために兵法書を書いた。韓王様は、その兵法書に興味を示さなかったが、隣国 秦 ( しん ) の王様 政 ( せい ) (後の 始皇帝 ( しこうてい ) )は、兵法書に書かれている内容に感動していた…兵法書に書かれている方法で富国強兵を実現し、戦国の乱世を終わらせることができると思ったから。 秦 ( しん ) に 韓 ( かん ) を自国の一部にしようとする動��が有ったので、 政 ( せい ) を説得して 韓 ( かん ) を 秦 ( しん ) とは別の[国]として認めてもらうために、 韓非 ( かんぴ ) は 秦 ( しん ) に行かされた。 政 ( せい ) が 韓非 ( かんぴ ) を信頼して大臣に任命したら自分は大臣を 辞 ( や ) めさせられると考えた 李斯 ( りし ) は、悪口を言いつけて 韓非 ( かんぴ ) を牢屋に入れさせるようにした。そして、 政 ( せい ) が考え直す前に 韓非 ( かんぴ ) を自殺させた。「 拷問 ( ごうもん ) で苦しむ前に毒を飲んだ方が楽」と親切心を 装 ( よそお ) いアドバイスする 振 ( ふ ) りをして…
韓非が書いた内容は、次の四つ。 1)国を豊かにし軍隊を強くするための四つの道具 2)国を滅ぼす五つの害虫 3)家来や家族の心を見抜くのに役立つ六つの 徴 ( きざし ) 4)家来や国民をコントロールするための七つの技術 [国を興すための道具]のうち主なものは、次の四つ。 1)[国の法律]を実行するための組織 2)[国の法律]:国民が行うべき事やしてはならない事を書いた文章 3) 布令 ( ふれい ) :[国の法律]を国民に知らせるための立て札など。「貧乏を無くす」「搾取階級を討つ」「差別を許さない」「弱者を救う」「自由と民主」などの ス ( ・ ) ロ ( ・ ) ー ( ・ ) ガ ( ・ ) ン ( ・ ) も、これの一種。 4) 信賞必罰 ( しんしょうひつばつ ) :富国強兵に役立つ行いをした者には必ず 褒美 ( ほうび ) を 与 ( あた ) え、[国の法律]に違反した者は必ず処罰するという[国の法律]の運用 以下は、韓非が書いた兵法の要旨 〖国を治めるうえで一番大切なこと〗 行うべき事としてはならない事を法律で決めて、国民に法律を守らせる。 王様が[法・術]を 駆使 ( くし ) して富国強兵を実現��れば、望みのもの全てを手に入れることができる。富国強兵の方策とは、法律や禁令を明らかにし、計略をよく心得ることである。法律が明らかであれば、国内に事変が起こっても混乱することなく、計略が当を得ておれば、国外で戦死したり捕虜になったりする恐れもなくなる。 いつの時代でも、徳のある人が采配をふるって民衆がそれを見習うことで一国が治まるとは限らない。腹が減っているとき目の前に米をみつければ人目を避けて盗り、貧しいとき目の前に金塊をみつければこっそり盗む人間が多い今、仁徳だけでは国を治められない。 私利私欲の許されない国家運営の場面において、チェックや監視がしっかり行われなければ、社会は乱れ政治は腐敗して、国が滅亡に向かう。 昔の秦国では、だれも国法を守らず、仲間うちの 掟 ( おきて ) を勝手に作ったり、好き勝手に行動していたので、国は乱れ、軍隊は弱く、王様はバカにされていた。 大臣に任命された 商鞅 ( しょうおう ) は、王様に、国法をキチンと決めて皆に守らせる方法を 提案 ( ていあん ) した。 五軒組と十軒組をつくって、国民に密告させあい、連帯責任をとらせる。 詩経 ( しきょう ) や 書経 ( しょきょう ) などの書物は焼き捨て、法令を明示する。 大臣の請願を聞き入れず、国のために働く者を大切にする。 当時、秦の国民は、罪を犯してもうまく逃れ、功績もないのに 讃 ( たた ) えられる古い 習 ( なら ) わしに慣れきっていたので、新しい法が出ても軽視して守ろうとしなかった。しかし、新法を犯す者に必ず重罰を加え、密告者に 褒美 ( ほうび ) を取らせるようにしたら、密告と受刑者が増えた。 新法に反対する世論が盛り上がったが、王様も 商鞅 ( しょうおう ) も、構わず、新法を適用して犯罪者を取り締まった。 その結果、犯罪は減り、国は良く治まり、軍隊は強く、国土は広く、王様の 権威 ( けんい ) は高くなった。 また、 商鞅 ( しょうおう ) は、商工業よりも農業を大事にすべきだと 提言 ( ていげん ) した。 国民が家を離れて仕官を求めることを禁止し、事あるときに兵役をつとめる農民を表彰する。 魏 ( ぎ ) の 昭 ( しょう ) 王は、自分で政務を手がけてみたくなった。 そこで、 孟嘗君 ( もうしょうくん ) に言った。 「ひとつ自分で政務をやってみたいが」。 「政務を手がけられるのでしたら、まず法律を勉強 為 ( な ) さることです」。 昭王は法律の本を読みだしたが、いくらも読みすすまないうちに、眠ってしまった。 そして、「���には法律の勉強はできない」と 嘆 ( なげ ) いた。 王様は、権力のカナメをおさえていればよい。家来にまかせておけばよいことまで自分でやろうとするのでは、眠くなるのは当然だ。 「どうも法というのは、うまく使えない」と、 韓 ( かん ) の 昭 ( しょう ) 王が大臣の 申不害 ( しんふがい ) に愚痴をこぼした。 「法は、功績によって賞を与え、能力に応じて官を授けることです。あなたは法を定めておきながら、身近の者の請願を聞き入れていらっしゃる。それでうまくいかないのです」。 「なるほど、これで法の使い方がわかった。もう誰の請願も聞き入れないぞ」。 ある日、申不害が 従兄 ( いとこ ) の仕官を願い出た。 「おまえは、そうは教えなかったはずだ。願いを入れて教えを捨てたものだろうか。それとも、願いを断ったものだろうか…」。 申不害は謝って引き下がった。 市場に出かけようとする母親に子どもがついてきて泣いた。母親は「家にお帰りなさい。お母さんもすぐ帰ってあなたのために豚のごちそうを作るからね」と言って子供をなだめた。 母親が市場から帰ると、父親が豚を殺そうとしていた。母親は父親を止めながら、「あれはただあの子に冗談を言っただけのことですから」と言った。 父親は、「子供は冗談だと思っていないぞ。子供には冗談が分からないのだ。だいたい子供というものは、両親からいろいろなことを学ぶもの、両親の言うことにちゃんと従うものだ。今もし子供をだますようなことをすれば、それは子供に人をだますことを教えることになる。第一、母親が子供をだませば、子供は母親を信用しなくなる。それでは子供に教育なんぞできやしないではないか」と言い、豚を煮た。 〖国法を守らせるための条件整備〗 斉 ( せい ) の 桓 ( かん ) 公がお忍びで民間を視察したときのこと。 鹿門稷 ( ろくもんしょく ) という男がいたが、彼は七十になっても妻がなかった。 桓公がお供の 管仲 ( かんちゅう ) に聞いた。 「しもじもには、年寄りになっても妻を持てない男がいるものだろうか」。 「ございます。鹿門稷という男は、七十だというのにまだ妻がありません」。 「どうしたら妻を持たせることができるだろうか」。 「こういう言葉があります。王様が財産を作りすぎると、しもじもの暮らしは貧しくなる。宮中にひとりで寝る女がいると、しもじもには老いて妻なき男が���る」と。 「わかった」と、言って、桓公は、まだ手をつけていない宮中の女を、みな嫁に出した。 それから次のような命令を出した。 「男は二十で嫁をとること。女は十五で嫁にいくこと」。 こうして、宮中には、ひとり寝の寂しさを歎く女はいなくなり、民間には妻のない男がいなくなった。 何の準備もなしに命令だけ出しても守られるはずがない。 〖信賞必罰〗 母の幼子に対する愛情は、何よりも深い。しかし幼子が良くない行いをするようならば、先生につかせて修養をさせるし、���い病気にかかるならば、医者にみせて治療をしてもらう。もし先生につかなければ刑罰を受けることにもなりかねず、医者に見せなければ死んでしまうかもしれない。母がいくら我が子を愛しても、愛情などは、刑罰から、また死から救うのに役に立たない。つまり子供を無事に育てるものは、愛ではないのである。子と母とを結ぶ絆は愛である。また君臣関係を結ぶものは計算尽くである。母でさえ愛を以って家庭を無事に存続させることができないのに、どうして王様が愛などと言うもので国家を保持することができようか。 仁者は恵み深く、気前よく財産をばらまいてしまう。暴者は心が強くて動かされず、簡単に罰を与えてしまう。慈しみの心が深いと、厳しく罰することができず、気前が良いと、人に与えることを好み、心が強いと、臣下どもに対して憎しみの心が現れ、簡単に罰を与えると、むやみに人を死刑にしてしまう。その結果、厳しく罰することができなければ、罪を多めに見ることが多くなり、人に与えることを好めば、功績の無い物にまで恩賞を与えてしまう。また、憎しみの心が現れれば、下々の者はおかみを怨むようになり、むやみに人を死刑に処したならば、民衆は謀反を起こそうとする。 だから、仁者が王様の位につくと、下々の者は好き勝手に振る舞い、軽々しく法律に違反して、お上に対して一時の幸福をむさぼることを望むのである。また暴人が王様の位につくと、法律は気まぐれで王様と臣下の仲は不和になり、民衆は怨んで謀反の心を生じる。そこで私は、仁者にしても暴人にしても、ともに国を滅ぼすものだと主張するのである。 親や近所の者や先生がいかに怒り、責め、教え 諭 ( さと ) しても、少しも改めようとしない子供でも、法律を以て悪人を摘発する巡査が来たら、恐くなって変節し、良い子になる。 民衆は愛情に対しては図に乗ってつけあがり、 威嚇 ( おどし ) にはおとなしく従うのだ。 政治を知らない者は、「刑罰を重くすると、国民を傷つける。刑罰を軽くしても悪事を予防できるのに、どうして重くする必要があるのか。」と言うが、軽い刑で悪事をしない者は、重い場合にも当然悪事に手を出さない。 重刑は、悪人にはプラスになるところが小さく、お上が下す罰は大、民はわずかの利益のために大きな罪を犯すことはしない。 軽い刑は、悪人が得る利益は大きく、お上の下す罰は小、民は利益を目当てにその罪を見くびるから、悪事は防ぎようがない。 20㍍の城壁を、身軽な者でも越すことができないのは、そそり立ってけわしいから。黄金30㌕が道に落ちていても拾う者が居ないのは、必ず罰を受けるからだ。 高山で羊を飼えるのは、山がけわしくないから。2㍍の布が道に落ちていれば拾う者が居るのは、罰を受けるとは限らないからだ。 功績のあった者に必ず賞を与えて 讃 ( たた ) え、犯罪者は手心を加えず罰して不名誉に 晒 ( さら ) せば、能力のある者もない者も全力をつくすだろう。 荊南 ( けいなん ) 地方にある 麗水 ( れいすい ) という川には 金 ( きん ) が出る。金を採ることは法令できびしく禁止されており、捕まれば衆人の前で 磔 ( はりつけ ) の刑に処せられる。処刑された死体はおびただしい数にのぼり、川の流れをせき止めるほどになったが、金を採る者は、あとを絶たなかった。衆人の前で 磔 ( はりつけ ) にされるほど重い刑罰はないのに、それでも金を採る者がいるのは、絶対捕まるとは限らないからだ。 「お前に天下をやる。その代わり、お前の命はもらう」と言われたとする。それでも天下をもらうという馬鹿者はいないだろう。天下をもらうほど大きな利益はないのに、それをもらう者がいないのは、必ず殺される、とわかっているからだ。 魏が 武 ( ぶ ) 王のとき、 呉起 ( ごき ) は 西河 ( せいか ) の長官となった。 国境近くに 在 ( あ ) る敵国 秦 ( しん ) の小さな 砦 ( とりで ) が農民に害を及ぼしていた。といってそれを除くためにわざわざ軍隊を集めるのは大げさすぎる。 考えた末、車のかじ棒を一本、北門の外に立てかけ、布令を出した。「このかじ棒を南門まで運んだ者には、上等の土地と上等の屋敷をとらせる」と。 布令を信じかねて運ぶ者がいなかったが、あるとき、それを運んだ者が出てきた。すかさず、布令どおりの賞を与え、今度は一 石 ( こく ) の赤豆を東門の外に置いて、布令を出した。「この赤豆を西門まで運んだ者には、前と同じほうびをとらせる」と。人々は先を争って運んだ。 そこで呉起は布令を出した。「明日、砦を攻めるが、一番乗りした者には、 大夫 ( たいふ ) の地位を与え、上等の土地と上等の屋敷をとらせる」と。人々は先を争って砦に攻め込み、あっという間にこれを占領してしまった。 〖国益と私利〗 王様が国民の利己的行為を許せば、国の利益は害される。 王様が賞罰を加える対象と、国民が名誉・不名誉とする対象は、 往々 ( おうおう ) にして 一致 ( いっち ) しない。 功績をあげて爵位を与えられた者が世間では評価されなかったり、農業に 励 ( はげ ) んだ者が賞を与えられても農業はつまらない仕事と思われたりする。 その一方で、招請に応じない者を排斥しても、彼らが俗世を超越するものとして尊敬されることがある。世間の評判を気にして、自分で働かずに衣食を得る「有能者」や、戦功をあげずに高位にのぼる「賢人」を横行させれば、国土の荒廃と兵力の弱体化をまねく。 学問によって世を乱す儒者を赦してはならない。 大臣が魚好きであることを知った国中の者たちが、争って魚を買い求め、彼に献上してきたが彼は受け取らなかった。弟が理由を聞くと、大臣は「魚が好きだからこそ受け取らない。献上される魚を受け取って判断に影響し、法を曲げれば、大臣を辞めさせられる。献上される魚を受け取らず、大臣を辞めさせられなければ、安心して自分の力で魚を得ることができる」と答えた。 楚 ( そ ) の国の正直者が、羊を盗んだ自分の父を、 令尹 ( れいいん ) 大臣に訴え出たが、令尹はこの正直者をつかまえて死刑を宣告した。王様に忠義だてして親不孝の罪を犯したものとして断罪したのだ。令尹が、父親を訴え出た息子を罰してからというもの、 楚 ( そ ) の国では罪人を訴え出る者がいなくなった。 魯 ( ろ ) の国が戦ったとき、三度出陣して三度とも逃げ帰った男がいた。どうして逃げてばかりいるのかと孔子が尋ねると、男は答えた。「わたくしには老いた父があります。わたくしが死んでしまったら、養う者がおりません」。その孝行ぶりに感心して、孔子は彼の位をあげてやった。孔子が、敗走した兵士の位を上げてからというもの、魯の国民は敗走を恥としなくなった。 「仁義」を身につけた者を信頼して登用したり、学問を修めた者が先生と呼ばれて名声が得るような風潮を許せば、国は乱れて王様の地位がおびやかされるようになる。 国を富ます農業や敵を防ぐ兵士にたよりながら、同時に飾りたてた儒者の服装を喜ぶのは、チグハグな行動だ。国法を敬わずお上をおそれない遊侠、刺客のたぐいを養うのも、チグハグな行動だ。チグハグな行動をしていたら、働く者が勤めをおろそかにし、働かず学問する者が日ましに多くなる。そして、世の中が乱れる。 宋 ( そう ) の 崇門 ( すうもん ) の町で、あまりに真剣に親の喪に服したため、ひどくやせ衰えてしまった者がいた。親を思う心が深いからだとして、お 上 ( かみ ) は彼を官吏にとりたてた。 次の年には、喪に服したため身体をこわして死ぬ者が、十人以上も出た。子が親の喪に服すのは、肉親の愛情に発することだが、それすらも、恩賞によってこのように奨励できる。 家来が王様につくすことにおいては、恩賞による効果が大きいはずだ。 昔、 蒼頡 ( そうけつ ) は、文字を創るにあたって輪になった形の「ム」によって「私」を表し、それに反するという意味の「ハ」を加えて「公」という字にした。公私が相反することは、既に蒼頡が知っていた。未だに公私の利害が一致すると思うは無知の 極致 ( きょくち ) 。 〖国法と人情〗 良く治まってる国は、国法が人情に通じており、国を治める道理にかなっている。 小さな悪事は、村人に連帯責任を負わせ、相互監視させる。禁令で自分に連座するものがあれば、村人は監視せざるをえない。監視する者が多ければ、悪者は悪事を謀れない。 ウナギは蛇に似ており、蚕はいわゆる毛虫に似ている。人は蛇を見ると、びっくりし、毛虫を見ると身の毛もよだつ。だのに、夫人は平気な顔をして、蚕を摘み上げ、漁師はウナギをわしづかみにする。利益があるとなると、人が嫌うことなどは忘れてしまって、みんなあの孟墳のような勇士となる。 だれでも自分の知らない物事には警戒するが、よく知っている物事には進ん��為そうとするものだ。なぜならそうすることが自分にとって得になることが容易に推察できるだからだ。 子綽 ( ししゃく ) は、「左手で四角を画きながら右手で丸を画くことはできない。肉でアリを追っても集まるだけだ。魚でハエを追っても群がるだけだ」と言った。道理に逆らった行為は、うまくいくはずがない。 《禁止と奨励、賞と罰、その原則を逆にしたら、どんな神業をもってしても、政治はできない。条件を与えながら進ませないのは、乱の起こる元である》。 〖損得感情の働きを知る〗 人は幼児期に親に 疎 ( おろそ ) かにされると成長して親をうらむ。成人となった子供が老いた両親を 粗略 ( ぞんざい ) に養うと親は怒って子供を責める。本来、子と親の仲は、利益を度外視したきわめて親密な関係であるはずなのに、相手をうらんだり非難したりするのは相手が自分に報いてくれるという打算があるからだ。得すると思えば仲よくなり、損すると思えば、親子の間にもうらみの気持ちが生じる。 君臣関係では、肉親関係以上に打算が働く。まっとうなやり方で身の安全が保障されるならば、臣下はそれなりに力を尽くして主人に仕えるだろうが、そうでなければ私利私欲に走り、上に取り入ろうとする。王様は、何が得で、何が損なのかをはっきり天下に示したうえで、役立つ臣下に官爵を与え、臣下はそれに対して己の知力を提供するようにしなければならない。 カラスを飼いならすには、まず羽を切る。羽を切られてしまえば、カラスは人間に餌をもらうほかない。どうしたって馴れないわけにはいかないのだ。 [法・術]に 長 ( た ) けた王様の家来飼育法も、これと同じだ。 ポイントは、 俸禄 ( ほうろく ) に頼らざるを得ず、与えられた職に務めるほかないように仕向けることだ。家来は 否 ( いや ) も応もなく服従するだろう。 〖王業の基礎〗 王様が家来を評価するとき、世間の評判に惑わされて、成果を確かめなければ、口先ばかり達者で実際の役に立たない者が増える。昔の聖人を 讃 ( たた ) え「仁義」を口にする者が朝廷にあふれれば、実力と実行力を兼ね備えた人材は世に 埋 ( うず ) もれ、国力が 衰 ( おとろ ) えていくことになる。 商子 ( しょうし ) 、 管子 ( かんし ) といった政治書を読む人々は多くても、内容を活用する人は少なく、農業の議論はしても実際に 鋤 ( すき ) を手にして耕作する者が少なければ、国は貧しくなる。 孫子 ( そんし ) 、 呉子 ( ごし ) といった兵法書を備えていても、実際に 鎧 ( よろい ) 兜 ( かぶと ) をまとって戦う者が少なければ、軍隊は弱くなる。 [法・術]に 長 ( た ) けた王様は、無用な議論が国力を弱めることを知っており、実用にのみ価値を認める。そうすれば、国民はそれに従い、国力は充実していく。 田畑で働く骨の折れる仕事に国民が従事するのは、富を手に��ることができるからだ。 戦で死ぬ危険があっても国民が兵役につくのは、高い身分を求めるからだ。 学問や言論を修めれば畑仕事で骨を折らなくても富が手に入り、戦で死ぬ危険を 冒 ( おか ) さなくても高い身分が得られるとしたら、誰が骨を折ったり危険を冒すだろうか。頭を使う者が多くなれば、法の権威は失われ、力を尽くす者が少なくなれば、国は貧しくなる。 [法・術]に 長 ( た ) けた王様が治める国に書物は無用、[法]が[教え]なのだ。 聖人の言葉も無用、官吏が先生なのだ。遊侠の私的武力も無用、国の戦で敵を斬ることが勇気なのだ。 国民は、法にはずれた言論を 為 ( な ) さず、働くときは実績をあげるように働き、勇気は戦で発揮する。このように王業の基礎をかためれば、太平の世に国は富み、戦となれば強い軍隊が国を護る。 ⦅亡国五害[韓非]に続く⦆
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古典落語 子ほめ
「こんちは。ご隠居さん、おいでになりますか?」 「おや、熊さん、どうしたい、きょうは、仕事はやすみかい?」 「じつはね、仕事が半チク(中途はんぱ)になっちまったんで、家にいてもつまらねえからお宅へうかがったようなわけで……いま、八の野郎に聞いたんですが、なんですってねえ、お宅にこもっかぶりが一本ついてるんですってねえ。あっしゃあ、酒ときた日にゃあ目のねえ男なんですが、それでも自分で買うてえのは、あんまり心持ちがよくねえんで、おごってもらうのが大好《でえす》きな性分《しようぶん》なんで……どうです、一ぺえ飲ましてもれえやしょうか?」 「飲ましてあげるよ。そりゃあ、飲ましてあげないこともないけれども、なんだな、おまえさんぐらい不器用な人はないな。職人なんてえものは、なにか芸をやるもんだ」 「何かやるったって、あっしゃあ、まるっきり無芸大食の口なんで……」 「うちではそれでいいけれども、よそへいった日にゃあ、お世辞の一つもいわなくっち���あ、おごってなんかくれないな」 「へーえ……お世辞なんてことは、あんまりやったことはねえんですが、一体《いつてえ》どんなことをいったらいいんで?」 「まあ、なんだな。ちょっと人さまに会ったら、ていねいにことばをかけるんだな。『こんにちは、いいお天気でございます。しばらくおみえになりませんでしたが、どちらのほうへおいでになっていらっしゃいました?』……で、そのかたが、『商用で海岸のほうへ……』とおっしゃったら、『道理で、潮風にお吹かれになったとみえて、たいそうお顔の色が黒くなりました。しかし、あなたさまなどは、もともとお色がお白いから、故郷の水でお洗いになれば、じきにもと通りになりましょう。ご安心なさいまし。まあ、そういうふうにいっしょうけんめいになっておいでになれば、お店のほうも大繁昌、まことにおめでとうございます』……こういうんだ」 「ああなるほど……そういえば、きっと飲ましてくれますかね?」 「それで買わなかったら、いよいよ奥の手をだすんだ」 「相手の財布をかっぱらいますか?」 「それじゃあ泥棒だよ……むこうの年齢《とし》を聞くんだ。『失礼ではございますが、あなたのお年はおいくつで?』……そのかたが、四十五だとおっしゃったら、『四十五にしては、たいそうお若い。どうみても厄《やく》そこそこでございます』」 「なるほど……厄てえのは、いくつなんで?」 「男の厄年は四十二だ」 「へーえ……そういえば飲ましてくれますか?」 「まあ、人情てえものでね、一つでも年齢《とし》を若くいわれれば一ぱい買いたくなる」 「そうですかねえ。そんなくれえなことなら、あっしだっていえまさあ。むこうから人がきたら、聞いてみりゃあいいんでしょう。こんちはとくらあ。いいお天気でごぜえやすと……しばらくおみえになりませんでしたが、どちらのほうへいっておいでになりやしたと……むこうのほうで、商売用で海岸地方へといったら、こっちが、道理で、潮風に吹かれたとみえて、つらがまっ黒だ」 「つらなんていうやつがあるかい。お顔の色が黒くなったと、ていねいにいわなくっちゃあいけない」 「なるほど……お顔のお色が黒くなってと、あんたなんぞもとが黒いから……」 「おいおい、もとが白いんだ」 「もとが白いから、故郷の水で洗えば、じき白くなるから安心しろい、このけだものめ」 「なんてらんぼうな口をきくんだ。そんなことをいったら、けんかになるよ。ご安心なさいとていねいにいうんだ」 「それで一ぺえ買うね。いよいよ買わなかったら、奥の手をだして、年齢《とし》を聞けばいいんでしょ? 『失礼なことをうかがうようでごぜえやすが、あんたのお年はおいくつで?』……むこうでもって四十五といったら、四十五にしては、大《てえ》そうお若いと、どうみても百そこそこだと」 「おいおい、ばかなことをいっちゃあいけない。厄そこそこだよ」 「ああそうか。厄そこそこだ……これで一ぺえ買いますね?」 「買うだろうよ」 「もしも買わなかったら、ご隠居さん、立てかえるかい?」 「ばかをいっちゃあいけない。まあまあ、やってみなさい」 「なるほど、これで一ぺえ買わせることをおぼえた。だけど、ご隠居さん、そううまくいくかねえ?」 「どうして?」 「だってね、うまく四十五の人がくりゃあいいけど、五十の人がきたらどうするんで?」 「五十だとおっしゃったら、『四十五、六ぐらいにみえます』と、そういっときな」 「六十だといったら?」 「五十五、六」 「七十だといったら?」 「六十五、六さ」 「八十だといったら?」 「七十五、六だよ」 「九十だといったら?」 「その順でいきなよ」 「順でいきなったって、その順��わからねえから聞いてるんじゃあねえか。このまぬけめ。なにいってやんでえ。いままで教えておいて、あとを教えねえって法があるもんか。教えねえなら、風の吹く日に、てめえのうちへ火をつけるぞ」 「あぶないやつだな。九十だとおっしゃったら、八十五、六というんだ」 「なるほど……百だといったら?」 「そう生きるかたはめったにないが、もしもいらしったら九十五、六といいな」 「二百といったら?」 「そんな人はいないよ」 「なるほどそうか……それから、もうひとつ聞きてえんですがね、うちのとなりの八公んとこにね、子どもができましてね、それで、長屋じゅうがそろって義理をやるんだとかなんとかいって晦日《みそか》前の苦しいところを二分《ぶ》ふんだくられちゃったんでさあ。だけども、町内のつきあいで、いやだともいっていられねえからやったんで……それで、あっしもしゃくだから飲みにいこうとおもうんだけども、なにしろそんなとこへいって口をきいたことがねえから、まだいかずにいたんで……いま、ほめことばてえものをはじめてならったが、やっぱり赤ん坊をほめるときにも、しばらくおみえになりませんというんですかい?」 「そんなほめかたがあるもんか。わたしは、八つぁんのところの赤ちゃんはみないけれども、たいていほめかたはきまってるよ。『たいそういいお子さんでございます。おじいさんに似ておいでになって御長命の相《そう》がおありなさる。栴檀《せんだん》は双葉より香《かん》ばしく、蛇《じや》は寸にして人を呑《の》む、どうかこういうお子さんにあやかりとうございます』と、そういやあ、自分の子をほめられてわるい気のするものはない。きっと一ぱい飲ませるよ」 「そうですかい。ほんとうに一ぺえ飲ませてくれますか?」 「飲ませるだろうよ」 「そいつぁありがてえ。じゃあ、さようなら」 「まあまあお待ち。うちで一ぱいつけるから飲んでいきなよ」 「いやよしやしょう。いま教えられたことをわすれるといけねえから、さっそくやっつけてきます。さようなら……えへへへ、うれしくなってきやがったなあ。きょうの熊さんは、いままでの熊さんとちがってるんだぞ。しばらくおみえになりませんでしたが……ってんで、酒を一ぺえ買わせる術をおぼえてるんだ。みそこなっちゃあいけねえや。しかし、なんだな、だれかと逢わなくっちゃあ、せっかくの術もつかいようがねえんだが……だれか通らねえかなあ。弱っちまったな……あっ、むこうからきたきた。てえそう色がまっ黒な野郎がきやがった。こいつぁおあつらいむきだ……ええ、もしもしそこへいく人、もし、ねえ、あなた……こんちは」 「こんちは」 「しばらくおみえになりませんでしたが……」 「え? ……あのう、失礼ですが、あなたはどなたでしたかな?」 「ははあ、てえそうお色がまっ黒け」 「大きなお世話だ。ばかにするな!!」 「あれっ、怒っていっちまった。いけねえ、いけねえ。まるっきり知らねえ人じゃあだめだな。知ってる人はこねえかな……あっ、しめしめ、きたきた。伊勢屋の番頭さんだ……ええ、番頭さん、こんちは」 「やあ、どうしたい、町内の色男」 「あれっ、いけねえや。むこうのほうが役者が一枚上だ。まごまごしてると、こっちが酒を買わされちまわあ……ええ、しばらくおみえになりませんでしたな」 「なにいってるんだ。ゆうべ髪結床屋《かみゆいとこや》で逢ったよ」 「あっ、そうだ……ええ、あれからしばらくお目にかかりませんでした」 「けさお湯屋で逢ったじゃないか」 「よく逢うな……そうそう、このあいだじゅうは、しばらくおみえになりませんでした」 「ああ、このあいだじゅうは、ちょっと商売用で海岸のほうへいってたからな」 「ありがてえ。ちくしょうめ、そうこなくっちゃあいけねえや」 「なにをぶつぶついってるんだい?」 「ところで、潮風に吹かれたとみえて、てえそうお顔の色が黒くなりましたと……ああくたびれた」 「なんだい、そんなに黒くなったかい?」 「ええ、黒いのなんのって、どっちがうしろだか前《めえ》だかわからねえ……そういうふうにいっしょうけんめいになっておいでになればお店もご繁昌、したがって旦那の信用もあつくなる。そうなりゃあ帳面づらをうまくごまかしてもわからねえ」 「おいおい、人聞きのわるいことをいうなよ」 「どうです、一ぺえ買いますか?」 「だれが買うもんか」 「買わねえ? ……よし、そうなりゃあ買うように、奥の手というやつがしまってあるんだから……」 「なんだい、気味のわるい」 「ときに、失礼なことをうかがうようでございますが……」 「いやだね、あらたまって、いったいなにを聞くんだい?」 「あなたのお年齢《とし》は、おいくつで?」 「年齢を聞かれると、めんぼくないよ」 「めんぼくない? 年齢はありませんか?」 「年齢のないやつがあるもんか」 「だってさあ、どっかの支払いにこまって質にいれたとか……」 「年齢を質にいれるやつがあるかい……もう一ぱいだよ」 「ああ百で……」 「そうじゃあないよ。これだけだ」 「おや、指を四本だしましたね。四つかい?」 「なにをばかなことをいってるんだ。四十だよ」 「ああ四十か。四十にしちゃあてえそう……えっ、四十?! ……しまった。こんなことがあるだろうとおもったから、四十五から上は聞いてきたんだがね、下を聞いてくるのをわすれちまった。ねえ、番頭さん、すいませんが、四十五になっておくんなせえ」 「ばかなことをいっちゃあいけないよ。自分でそう勝手になれるもんか」 「そこんとこをひとつ、あっしの顔にめんじて、四十五だといっておくんなせえ」 「おかしなひとだな……じゃあ、四十五だよ」 「四十五にしちゃあ、てえそうお若《わけ》え」 「あたりまえだ。ほんとうは四十だもの」 「いくつぐれえにみえるかと聞いてくれませんか」 「いくつぐらいにみえる?」 「どうみても厄《やく》そこそこだ」 「ばかをいうない、いいかげんにしろ!!」 「あっ、いてえ……ひでえなあ、人のことをなぐっていっちまやあがった。いけねえ、いけねえ。もうおとなを相手にするのはやめよう。赤ん坊にしよう。赤ん坊なら、すこしぐれえまちがったってなぐられる心配はねえや……おう、いるかい、八公」 「おや、だれかとおもったら熊さんかい」 「だれかとおもわなくったって熊さんだ」 「こないだは、義理をもらってありがとう」 「うん、きょうは、赤ん坊をほめにきたんだ」 「そうか、そりゃあありがとう。まあ奥に寝てるからみてやってくんな。産婆もそういってたよ。たいそう大きな赤ん坊だって……うちじゅうでよろこんでるんだ。奥に寝ているよ」 「そうけえ……うーん、なるほどでけえや。しかし、ちょいとでかすぎるな。おまけに額《ひてえ》ぎわに頭痛膏《ずつうこう》なんかはって……」 「そりゃ、うちのじいさんだよ。じいさんが、あたまがいてえといって寝てるんじゃあねえか」 「ああそうか。道理ででけえとおもった」 「となりに寝てるのが赤ん坊だ」 「これが赤ん坊か……うーん、なるほど、こりゃあちいせえや……なるほど……おやおや、人形のような赤ん坊だな」 「ありがとう。そういってくれたのはおめえだけだ。くるやつ、くるやつ、猿のようだとか、ほし柿のようだとか、みんな悪口をいっていきやがる。人形のようだなんていってくれたのはおめえだけだ。ありがとう……そんなにかわいいかい?」 「いえね、腹を押すと、き���っきゅっと泣くからよ」 「おいおい、らんぼうしちゃあいけねえよ。赤ん坊が腹を痛めてしまわあ」 「かわいい手をしてやがるな。まるでもみじのような手だな」 「ありがてえ。いいことをいってくれるぜ」 「こんなもみじのようなちいせえ手をしていやあがって、ちくしょうめ、よくもこれでおれから二|分《ぶ》ふんだくりゃあがったな」 「いやなことをいうなよ。おい、赤ん坊がとったんじゃあないよ。おれがもらったんだよ。そんなことをいうんなら、おまえにだけけえすよ」 「なあに、けえさねえたっていいけども、これがだんだん大きくなって、この手がのびると、泥棒かスリになる」 「おいおい、いやなことをいうなよ」 「まあ、ほめられるだけほめてやるよ」 「ありがとう。ほめてくんねえ」 「わたしは、八つぁんのところの赤ちゃんはみないけれども……」 「なにいってるんだ。みてるじゃあねえか」 「ああそうか。うん、これがあなたのお子さんでござんすか?」 「そうだよ」 「おじいさんに似ておいでになって、長命丸《ちようめいがん》(強壮剤の名)を相当お飲みになる」 「赤ん坊がそんなものを飲むもんか」 「せんだんの踏み台は、かん、かん……棺桶よりもまだ高え……」 「なんだい、そりゃあ?」 「なんだかわからねえ……蛇は寸にしてみみずを呑む。どうかこういうお子さんに蚊帳《かや》つりてえ、蚊帳つりてえ」 「夏じゃねえから蚊帳なんかつらねえよ。わけのわからねえことばかりいうない」 「よしっ、じゃあ、いよいよ奥の手だ」 「なんだい?」 「ときに、しばらくおみえになりませんでしたが、どちらのほうへいっておいでになりましたかと……えっ、商売用で海岸のほうへ? ……道理で潮風に吹かれたとみえて、お顔の色がてえそう……赤《あけ》えね」 「赤えから赤ん坊てえんだよ」 「ああそうか……失礼なことをうかがうようでござんすが、この赤ちゃんのお年齢はおいくつで?」 「おいおい、しっかりしろよ。赤ん坊の年齢なんぞ聞かなくったってわかってるじゃあねえか。きょうは七夜《しちや》だよ」 「ああ、初《しよ》七日《なのか》か」 「縁起でもねえ。初七日てえやつがあるもんか。きょうは七夜だよ。だから、まだひとつだよ」 「ひとつかい、うーん、ひとつにしちゃあてえそうお若けえ」 「ばかをいうなよ。ひとつで若いなら、いったいいくつにみえるんだ」 「どうみてもただだ」
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新作受注会のお知らせです。 3月11日より、 小川弘記氏が作るaffordanceの新作受注会を開催します。 受注会としては実に7年振りです。 絵を描くように、緩やかな曲線で作る小川氏の革小物。 ソコノワではオープン当初より取り扱いをさせてもらっており、別注での小さなお財布の製作など、親しいお付き合いをさせていただいてます。 今回、3型の新作が出来上がったタイミングで「お披露目を」と特別に受注会を開催していただけることとなりました。 期間中は、 <蛇腹財布><うす型長財布><ショルダーバッグ> 3型の新作を、実際にお手にとってご覧いただけます。 また、お好きな色でのコンビカラーや、刻印などのオーダーも承りますのでお楽しみに。 特にコンビカラーは、相談時にとてもワクワクしたものです。ソコノワがオーダーしたコンビカラーが届くのが待ち遠しい! 16日間、みなさまにもカラーや刻印を選ぶ"ワクワク"を味わっていただけたらうれしいです。 ─────────────── Special exhibition affordance 新作受注会 展 3/11 sat - 3/26 sun 12:00-18:00 ※ソコノワ一部店内にて ※受注製作となります ※3/12sunは瀧澤珈琲さんのPOPUPもございます ─────────────── <PROFILE> affordanceとは、物事/環境が人に与える意味や価値。(心理学者 J・J・ギブソンが作った言葉) 同じ物でもその価値や用途は手にする人によって生み出されていきます。 制作する革製品を介して、そのきっかけになりたいと考えています。 <affordance> HP Instagram https://www.instagram.com/p/CpE7XlePXVC/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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【常威近代史】(七百五十九回)
上海淪陷
時間線去到1937年嘅11月,11月1號,蔣介石喺南翔軍事會議上,嚴令各軍不得隨意撤退。之前已經講過,中國參戰嘅軍隊其實係由不同嘅部隊混編而成,一個「混」字,大家亦都相當清楚,混亂事小,混賬事大。呢啲唔同嘅部隊,喺過去十幾年之間彼此打嚟打去,有時候係同袍,有時候係敵人,亦都係司空見慣嘅事。現在因為有共同敵人——日本鬼子——又變成咗某程度上嘅盟友,就算大家義憤填膺,一致槍口向外,不過長期以來彼此間嘅敵意同血仇,確實唔會係一夜之間消失。蔣介石嘅最高指令,個個都話遵守,全力以赴,但係去到前線,又淨低幾多成呢?呢個世界嘅嘢,其實好簡單。同你friend同你真心相對,做嘢就會做120%;但係虛以委蛇,口服心不服,同你出五成功力算你好彩。中國軍隊嘅問題,除咗軍備同金錢,仲有一樣嘢就係唔團結。蔣介石成日話先安內後攘外,你估其他人唔識得相同諗法咩?
舉個例子比大家參考下,蔣介石任命嘅第一位上海地區作戰司令官,就係篤信基督教嘅馮玉祥(1882-1948),馮玉祥從前係蔣介石嘅敵人,夥同桂系李宗仁一齊打蔣介石嘅中原大戰失敗之後,一鋪清袋,一直住喺南京,以研究、寫作、演講讓自己成為知名嘅鼓吹抗日人士,如何包裝自己,變色龍馮玉祥係當時嘅絕世高手。抗戰發生之後,蔣介石發佈馮玉祥成為上海戰區總司令,其實好多人都覺得好詫異,當然蔣介石係表達咗自己不計前嫌,大仁大義嘅氣魄,亦都示意北方戰場同上海彼此相關,再冇南拳北腿之分,不過當馮馮玉祥去到前線,當時上海就有好多官兵唔妥佢,唔聽佢指揮,所謂上樑不正下樑歪,仲要面對嘅對手係軍備軍紀遠在自己之上嘅日本皇軍,真係唔輸有鬼。但馮玉祥嘅例子,只係九牛一毛。
11月1號,中蘇訂立第一次信用借款5000萬美元嘅協議,第二次國共合作,蘇聯除咗派出空軍支援中國,仲有擲地有聲嘅金盧布經濟支援。同一日,國立長沙臨時大學開始上課。11月3號,太原失守。日本今日亦正式拒絕參加係布魯塞爾召開嘅「九國公約」會議。討論日本侵華嘅九國公約會議今日喺比利時首都布魯塞爾召開,日本同德國拒絕參加,意大利則充當日本嘅代言人。英國、法國同美國態度曖昧,不願意開罪日本,敷衍了事,終於所謂九國會議草草收場,於24號無限期休會,大會通過咗一紙宣言,重申九國公約原則,要求停止戰爭行動外,並無任何實際效果。可憐嘅蔣介石於淞滬戰爭中all ln,犧牲咗佢手中部分精銳部隊,希望換取西方列強並肩對付日本人,或至少得到更多國際外交上嘅「實質」支援,可惜事與願違,其他國家除咗得把口譴責之外,並無任何實際行動支持中國,正正是——賠了夫人又折兵。
11月5號,日軍喺杭州灣嘅金山衛同金公亭大規模登陸,火上加油!八路軍晉察冀軍區成立,後嚟成為中共十大元帥之一嘅聶榮臻(1899-1992)將任司令員兼政委。今日,日本通過德國駐華大使陶德曼(1877-1950),首次向蔣介石轉達日本對華談判條件。上個月21號,日本外相廣田弘毅(1878-1948,東京審判上唯一被處死嘅文官)會晤德國駐日大使,表示隨時預備同中國談判,希望德國從中斡旋,當然預備同你談判,並唔代表要停戰,轟炸同殺戮繼續發生。日本人開出嘅談判條件係,包括内蒙自治,擴大華北不駐兵區、承認偽滿洲國、上海停火、停止排日、共同防共、以及減少日貨進口稅等等。所有嘅條件都觸及蔣介石嘅底線,如果有得傾,亦都唔使開打啦?我亦強烈相信,如果當時蔣介石接受媾和條件,十年之內,整個中國就會同朝鮮臺灣一樣成為日本嘅殖民地。
11月7號,日本華北開發公司係北平成立。11月8號,中國青年新聞記者協會喺上海成立。11月9號,招商局將全部產業喺名義上轉交美商衛利韓公司,理由亦都好簡單,日本未同美國宣戰,屬於美國嘅財產,日本人唔可以掂。
11月11號,中國最大嘅城市,東亞第一號大錢罌上海淪陷,日軍喺今日佔領上海,而上海外國租界則淪為孤島。11月5號破曉,日軍喺艦炮、飛機掩護下,於金公亭、金山衛同時登陸,中國喺依一帶幾十里長嘅海岸線上,只有62師其中小部分部隊,以及少數地方武裝擔任守衛工作,兵力懸殊到烏蠅對航空母艦,於是幾乎響毫無抵擋嘅情況下,日軍順利大規模登陸。11月8號,日軍第10軍主力渡過黃埔江,11月9號,佔領楓涇,並向西直指嘉慶、平望。至此,滬杭公路被切斷,上海僅餘守軍陷於腹背受敵危局。於是第三戰區決定全軍撤退,但係因為命令下達得太遲,部隊已陷於混亂狀態,撤退嘅部隊擁擠於公路上,情況非常混亂。
關於淞滬戰爭,亦有一點可以提,就係中共並無參與依場重要會戰。毛澤東固然堅持部隊不介入其中,而中共得到唯一嘅讓步,就係蔣介石同意佢哋嘅行動限制喺河北同埋察哈爾嘅部分地區內,即係同意中共成立晉察冀邊區政府,大敵當前,兩黨仍然彼此極不信任,中共亦希望能以敵後遊擊作戰方式參戰,以維持自己的獨立性同自主權,且儘量小心不侵犯國民黨勢力範圍,以免發生軍事衝突。
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#glencheck #グレンチェック → @glencheck_official #イタリアンレザー #通帳ケースウォレット #CHIOCCIOLA #キオッチョラ 絶賛愛用中です♡ こちらは印鑑やパスポート、銀行カードなどなど… 大切なモノを一括管理できる、大容量サイズの通帳ケースウォレット。 デザインも機能性も、めっちゃくちゃ気に入っています♪ 最近、病院関連のカードや書類などなど… 病院へ行く時に持っていかなくてはいけない必要なものが増えて、通常の財布には入りきらなくなってしまった😂 なので、とりあえずクリアケースとかに入れ持ち歩いていたんだけど。 もっと便利な入れ物、出来ればファッション性もあるもんがないかな~と思っていて。 色々と探っていたところで思い描いていた理想のウォレットと、キオッチョラと出会うことができました😆 蛇腹の収納ポケットがガバっと開き、中が見えやすく出し入れもすごく楽。 お薬手帳や印鑑も、1つにまとめて収納できるのは本当に便利ですね。 カードポケットも取り出しやすい縦型タイプで、印鑑側には4箇所。 反対側にも2箇所搭載されているので、診察カードに保険証にクレジットカードにと全て収めることができる。 お札も、もちろん入れることができるし。 背面には、マチが付いたファスナーポケット小銭入れもあるので。 基本はカード払いなんだけど、念のための現金も一緒に入れておくことができるから安心できて👍 外側前面にはオープンポケットが付いているんだけど、ここもすごく使えます。 ファスナーを開けずにサっと出して渡したい予約表や、しっかり纏めてから収めたいレシートをとりあえず入れておく時に便利ですね。 そしてこのデザインもすごく好みで、気分も上がってくる↗ このウォレットを持っていくようになってからは、待ち時間に眺めてニヤニヤしちゃったりしたりとかもして🤣 気が重くなる病院も、気落ちすることが無くなってきています✨ 本革で作られているんだけど、しっかりとしていてすごく上質な作り。 趣味で始めたレザークラフトが最近本格的になってきた旦那さん、こだわりが強いのもあり革製品には厳しかったり(うるさかったりも。笑)するんだけど。 このウォレットを見せた時、縫製がすごくしっかりしていてステッチが美しいと…旦那もこの上質な作り、そして私が使うってなった時にビンゴの機能性にも大絶賛でした。 皮って使い込んでいくといい味が出てきて、使い込むほどエイジングを楽しむことができたりもするので。 これもいい感じに育っていくのかなと思うと、使い込んでいくのが楽しみになっていますね♡ 病院通いがひと段落してからもパスポートや通帳、銀行カードに入れ替えてまた別の用途で活用することができるし。 末長い相棒になりそうです😊 ちなみに外側レザー下にはスキミング防止シートを内臓してあるので、大切な通帳やカードはしっかりと守ってくれますよ~ カラーはネイビー、グリーン、グレー、ピンクベージュの4色で。 ネイビー以外は名入も可能。 レディースで販売はしているけど、男女問わずのユニセックスなデザイン。 ギフトラッピングもあったりするので自分用にはもちろん、パートナーや大切な方へのプレゼントにもオススメです。 #leather #leatherwallet #RFID #イタリア革 #通帳ケースウォレット #通帳ケース #本革 #一目瞭然 #monipla #スキミング防止 #プレゼント #ギフト #レザーウォレット #レザー #財布 #glencheck_fan #PR #instagood #instalife #instajapan https://www.instagram.com/p/CkFlcYVOE-C/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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「最近家から近い行きつけのバーがあって」
「じゃあ俺の家からも近いね」
「ちなみに今週はこの日私、おやすみなのですが」
「その日仕事帰りで良ければ空いてる」
「一緒に行っちゃいます?」
「ん、連れてって」
──太陽が身を隠す頃。窓は無く、入口は一つのランプで上から照らされている。扉に並べられたアルファベットの羅列が、店名。
「ねえ、マスター。明日男の人と一緒に来るかもしれないです」
「へえ、良いじゃない。連れておいで」
お通しはゴーヤの和物。ツナと生姜がアクセントになっていて、程良い苦味がアルコールを薄めたトニックに添う。
人を連れてくると話した返事が「いつも一人なのに」という苦い言葉で始まっていたら、足繁く通ってはいないだろう。フランクで、距離感の掴み方が上手いのに、私の名前は呼び捨て。心地が良い。
言葉節も、料理も、私を甘やかしてくれるようでないと二回目はない。
珍しくジントニック二杯で帰路に着いた夜。
着る服に迷う時間を長めに取らないと、明日の私が困ってしまうから。
「明日の時間、遅くなりそうなら俺から連絡する」
「よろしくお願いします」
「じゃあ、おやすみ」
「今日さ、申し訳ないんだけど本屋寄っていい?」
「いつものところなら私向かいますよ」
「助かる、ありがとう」
ちょっとした業務連絡のようなメッセージ。
何だか義務的で、新鮮だった。
抑もの話、普段四十代の男性に囲まれてお酒を飲む人種なのだ。二人きりで話したことなどほぼなかった。なかったけれど、同じ感覚を共有していた。
とは言えども家が近ければ行動範囲もほぼ同じ。ポイントカードやクレジットカードの話で盛り上がった時、同じ本屋のポイントカードを持っていることで共通意識が生まれた話は記憶に新しい。
「ごめん、レジ並んでて。待った?」
「今来たところです」
「何この定型文みたいな、」
言葉尻に混ざる微笑。バケットハットの陰に弧を描く瞳の線がやけに眩しく見える。漸く陽が沈みかけた頃だと言うのにサングラスが必要だと言う話は聞いていない。
そのまま足を運んだ先は蛇腹の重そうな金属が未だ入口を閉ざしている。一軒先に挟むのはどうかという私の提案に間髪入れず承諾する様は、私の言葉を一度も否定したことがない人間らしいスピードだった。
席を別のお店で確保できた、はいいものの。元々同じ居酒屋の常連として繋がった男女二人。勿論通っていたのは私と彼だけではない、訳で、つまり。
「…あれ?君達だけ?後からおじさん達来るんでしょ?」
「いや、今日は僕と彼女二人です」
「あたし達��ら見たら意外な組み合わせというか」
「なるほど…なるほどねえ」
案の定、捕まった。顔見知りの夫婦。
歳上に囲われる二十代男女。年齢だけなら寧ろここ二人で酌み交わしていなかったことの方が驚くべきではとも思ったが、お互い大勢の飲みの場では自己を八割も主張しないできた若者なのだ。「おじさん」の接待に慣れすぎている。
返事もなあなあに、距離のある席に腰掛けて。ドリンクメニューを眺めては彼の耳元に柑橘がいいなと音を押し込む。騒めく店内は、口と耳の距離を近付けないと疎通ができない。
「じゃあレモンサワーと緑茶ハイ、メガで」
ああ、ああ。サイズについては何も言ってさえいないのに。普通のじゃ足りないし一杯だけだからね、と言わんばかりの悪戯な視線。口数は少なくとも、彼の黒目は如何にも物を語りたがるようだった。
そこから、何となく、なんとなく。地元の話だったり、普段の生活の話だったり、仕事の話だったり、ご飯の話だったり、家族の話だったり。知っているようで知らなかったことを、投げては掴み、掴んでは投げる。初対面ではないのに、小さなお見合いのようで。
「そういえば私、何とお呼びしたら」
「皆から呼ばれている渾名でいいよ?」
それなら。下の名前に「さ」と「ん」の2文字を付け足して、声に出してみる。同じでは意味がないのだ。
「…それ、はじめて言われたかも」
苗字が珍しいから。下の名前で呼ぶのは家族ぐらいだと話す彼は擽ったそうに瞬きを繰り返す。視線は氷と炭酸が混ざる手元のジョッキ。飲酒という名目の元、顔の下半分を覆う白を取り払う口実。コミュニケーションにおいて、呼吸数や視線、口元の動きまでを加味する私にとっては飲食の場が一番円滑。
頃合いを見計らい、さて一つの問題。義務教育内では教わらない、社会人ならではの。そう、勘定問題というカテゴリー。ここで挙げられる条件は以下の通り。
・女性二十代半ば、社会人
・男性二十代後半、社会人
・初対面ではないが二人きりでの食事は経験なし
・勿論交際している訳でもなし
ここで全額奢られるのも、かと言って男性の顔を立てないのも。一杯ずつではあったし、小銭分三桁を財布から取り出して。
「マスター、来ちゃった!」
「待ってたよ。お連れさんは初めましてだよね」
「はい、お手柔らかに」
関係性を深く追求されないカウンター越しの会話が心地良い。ビールを嗜む彼のお勧めを飲んだり、食べたいものを同時に言って重なる心地良さに笑ったり。下の名前で呼ぶと、柔和な笑みを携えて声を返してくれる。
「なあに?」
「茄子、食べられます?」
「俺ね、茄子は」
凄い好き。
勿体ぶるような、思わせぶるような。私への言及ではないはずなのに、照れてしまう。
注文を六回程繰り返した辺りで、彼が携帯電話に目を向ける。私もよく知る名前。近場でよく飲む知り合いの常連。所謂「おじさん達」のカテゴライズ。着信音と共にスライドバーがふる、ふるりと揺れている。
「…出ていい?」
「どうぞ」
親指のスライド。
「僕、今飲んでるんですけど」
一声目は不服が入り混じっている。私よりも定期的に飲んでいる相手な筈なのに、と少しだけ腹部の筋が動くように笑ってしまった。
言葉少な��返したかと思うと、彼は携帯電話を私に預ける。困惑したまま受け取り、もしもし、と一言。
「誰?」
「私です」
「どういうこと…?二人で飲んでんの?」
「まあ」
「今ガルバ居るんだけど行っていいなら行くわ」
「おじさんムーブしてますねえ、じゃあ後で」
カウンターからテーブルへ席を移動。
合流したのはおじさんだけ、かと思いきや、立ち寄っただけの先の夫婦の奥さんまで。またいつもの飲み会になってしまった。
だらだらと取り留めのない会話が繰り広げられる中、空いたグラスに気を配る二十代。飲みに慣れすぎてしまった。隣に座る彼のグラスが空く頃。
「何飲みます?」
「そろそろ焼酎飲みたいかな」
「私もお酒頼みたいんですけど、じゃあ」
──さんの、飲みたいお酒。二杯頼んじゃってください。
──ちゃんが好きそうなのね…了解。
「…ねえ、君らはどういう関係なの?いつの間にそんな名前で呼び合うように、」
目敏いというか耳敏いというか。
のらりくらりと交わす術を覚えた二人に死角はない。グラスを握る手がマイクを握る手に変わっても、歳上に飲ませて曲を入れて回して質問は交わす。肝臓だって若いのだ。
「じゃあ、お疲れ」
解散は午前三時を過ぎた頃。至って正気の沙汰ではないが、まあ致し方なし。帰り道は同じ。空気と同じくらいに生温い会話を続けては、近付く家までの距離。どうしても消化が不良な気がして。
「ね、…もし、まだ飲めそうならもう少しだけ飲みたいです」
「良いね、俺も。コンビニ寄っちゃおうか」
「大好きなベンチがあるので良かったらそこで」
足取り緩やかに緑とオレンジと赤のカラーリングで数字を模した店舗へ。冷えた缶を二人片手に、私はアイスも片手に。
「ここねえ、よく飲んで帰る最中に座って、友人とお喋りしたりするんです」
「緑多くて好き。こんなところあったんだ」
小気味良く響く缶の開封音。こぷこぷと喉を潤して、バニラアイスを包む最中の谷に沿って割る。
「あれ、こんなつもりじゃあ」
「サイズ感があまり宜しくなさげだね?」
思ったより少ない列で割れたアイスクリームを指先で摘む。口元へ差し出せば、素直に開かれはくりと齧られ。溢れる糖分を指で拭う横顔は彫刻のようで、瞳を奪われる。言葉少なに幾度か、私と彼に運ぶ作業。アルコールに浸かった身体に甘味はよく染み込む。
「おいし」
張った糸は緩めば緩む程、真っ直ぐな回路が声帯を揺らす。頬さえ緩んだ自覚がそこにはあった。
するりと、冷えた指先が鎖骨と首筋を這う感覚。融けた思考が現実に引き戻される間もなく、下顎に彼の人差し指。親指を添えられたかと思うと、速度を有することなく顔を上げられ、隣を向くように動かされ、曲がらない視線をレンズ越しに注がれる。
知らない。…知らない、そんな扇情的な目なんて。
泳ぎそうになる瞳は、近付く顔に反応を示した目蓋で閉ざされる。
口の端に残るアイスを舌で拭われ、柔らかく寄せられる唇。口内で交錯する粘膜は私の体温を蝕むようで、小さな水音が耳に響く。喉元を通した唾液に少しだけ残るチョコレートの香りは、眩むくらいに甘かった。
「…ねえ。恋人の俺、試してみてよ。後悔させないから」
街灯に潤む彼の薄い唇は濡れている。
嘘を吐く目とは正反対の、揺らがない視線。
否を告げる理由は、見つからなかった。
熱ばんだ身体がその先に記憶しているのは、覆い被さった儘に彼が脱ぎ捨てたバスローブから顕になる上半身の美しさと、外した眼鏡の奥の瞳の色。歳下だ、同性だと詐称されても気付けぬような顔立ちとは相反し、滲む支配欲は、正しく雄だった。押し込まれる劣情に身体を委ねれば、柔く胸元を食まれる。
「二度目のデートは、これが消える前にね」
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コーチのレディース財布の上手な選び方
素材に注目して選ぶ
素材によって財布の印象は大きく変わります。コーチのレディース財布の素材は、主に革とキャンバスです。
落ち着いた雰囲気をかもし出したいなら、しっとりとした革を選びましょう。さらに、華やかなインパクトを重視するなら、エナメル加工を施した革がおすすめです。 キャンバス素材は、遊び心やカジュアルなテイストを追求したい人に向いています。
素材によって自分を演出するのも、おしゃれの楽しみ方のひとつです。
印象を左右する「柄」にも注目
コーチのレディース財布の定番柄として絶大な人気を誇るのがシグネチャー柄財布です。ひと目でブランドがわかる存在感は、女性の自尊心をくすぐり自信をプラスしてくれます。
シンプルな無地タイプもおしゃれで、多くの人に支持されています。大人の落ち着きを求める女性には、リッチな質感を楽しめる点も魅力です。
女性らしさや華やかさを求めるなら、花柄を選びましょう。
収納力重視なら長財布をセレクト
コーチのレディース財布には様々なタイプがありますが、カード類を多めに収納したい女性は長財布を選ぶと良いでしょう。 コの字型にファスナーが取り付けられたラウンドファスナータイプなら、スムーズに開け閉めできて便利です。
マチが蛇腹状のアコーディオンタイプは、ファスナーを閉めれば程よい厚みに抑えられます。 バッグのなかで必要以上にかさばらないので、小さめのバッグのときでも安心です。
財布ひとつで身軽に外出したい女性には、ショルダーバッグタイプの長財布がおすすめです。昼休みに職場からさっと出たいときにも重宝します。
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