#静電場朔さん
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yaoyuan6478 · 2 years ago
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fujiitouta · 1 year ago
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2023.10.14
家族と会話をしているとイライラすることが多く、言いたくないようなことを言ってしまう。ただ、言いたくないだけでそう思っていることは確かなのだな。と冷静になると思う。そのことを確認する度に心がずんと重くなる。友人たちとの大事な約束をふたつもダメにしてしまった。ごめんなさい。
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街灯の下では三つ影があり誰にも似てると言はれたくない
橋場悦子「青葉」/『静電気』 2020.5.12
橋場さんとはじめてお会いしたのは、今年春に開催したキャッチボール大会でのことでした。大学では女子野球部だったとの事で、その場では貝澤駿一さんだけだと思った野球経験者がもうひとりいたことを心強く思ったものです。ひょんなことから、この度歌集をご恵投いただくことになり、またこのブログを再開するきっかけを作っていただきました。ありがとうございます。
歌集『静電気』は冒頭、橋場さんの短歌の師である外塚喬氏の序文から始まります。橋場さんは外塚氏が主宰する「朔日」の会員です。その序文は、外塚氏がいかに橋場さんに期待をしておられるかがよく伝わってくるものでした。一部抜粋します。
意識して内容を詩的にするとか、表現をする上で奇を衒うことはしない、自然体で詠んでいる作品が詩的と見られるのは、天性と言ってもよいのかも知れない��
外塚氏はこのように橋場さんの短歌を高く評価しています。本文の後ろに来る解説ではなく、どうしても先にこのことを言っておきたかったのでしょう。外塚氏の親心のようなものをひしひしと感じながらも、かように師の期待を一身に受けながら始まっていく歌集に、読者としての期待も高まります。
本日取り上げた歌は、歌集最初の「青葉」というタイトルの連作からです。夜、街灯の下を歩くと等間隔に設置してある街灯の光源から照射される光の位置の関係で影が多重に現れることの話だと思います。そのことを受けて、誰にも似てると言われたくない。という願望の吐露があります。短歌をやっていると、影響を受けた歌人の歌に「似ている」という評価を受けることがあります。たとえ本当にそうだとしても、あまり言われたくない言葉でもあります。特に歌集の冒頭での宣言のようにも受け取れたので、そのように強い意志を持って創作に取り組んでいることの表出とも受け取りました。この一首は短歌に限ったことではないのかもしれませんが、静謐である夜の道において、いくつもの自分を照らす光から生まれては消えていく影を見た時、たったひとつのオリジナルでありたいという強い気持ちを秘めながら歩いている。そんなひとりの人間の姿を好ましく受け取るものでした。
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deisticpaper · 2 years ago
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蜃気楼の境界 編(五六七)
蜃気楼の境界 編(一二三四)から
「渦とチェリー新聞」寄稿小説
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蜃気楼の境界 編(五)
界縫
 正嘉元年紅葉舞い、青い炎地割れから立ち昇る。音大きく山崩れ水湧き出し、神社仏閣ことごとく倒壊す。鎌倉は中下馬橋の燃える家屋と黒い煙かき分けて家族の手を引きなんとか生き延びた六角義綱という男、後日殺生も構わぬ暮露と成り果て武士を襲えば刀を得、民を襲えば銭を得て、やがて辿り着いた河川で暮露同士語らうわけでもなく集まり暮らす。或る夜、幾度目のことか絶食にふらつき目を血走らせ六角義綱、血に汚れた刀片手に道行く一人の者を殺めようとするが、嗚咽を漏らし立ち竦みそのまま胸からあの日の紅葉のごとき血を流し膝から崩れ落ちる。道行くその者、男に扮した歩き巫女だが手には妖しげな小刀、その去る様を地べたから見届けんとした六角義綱のすぐ背後、甚目寺南大門に後ろを向けて立つ闇霙(あんえい)と名乗る男あり。みぞれ降りだして、人とも呼び難いなりの六角義綱を一瞥し、闇霙、口開かず問いかける、そなたの闇は斯様な俗識さえ飼えぬのか。六角義綱、正嘉地震から甚目寺までの道中で妻を殺され、涙つたい、儂には女は切れん、と息絶える。その一通りを見ていた青年、六角源内、父を殺した女を浅井千代能と突き止めて敵討ちを企てるが、知られていたか検非違使に捕らえられ夷島に流され、以後誰とも交流を持たずに僻地の小屋で巻物を記したという。それから七五九年の時が経ち、二〇一六年、仟燕色馨を内に潜める二重人格の高校生市川忍とその同級生渡邉咲が、慧探偵事務所を相手に朔密教門前また内部にて些細な一悶着あった、その同日晩、奇妙な殺人事件が起こる。場所は百人町四丁目の平素な住宅区域、��害者女性、五藤珊瑚(三〇)の遺言は、残酷な苦を前に千年二千年なんて。戸塚警察署に直ちに捜査本部が設置され、その捜査とは別に警部補の高橋定蔵、市川忍の前に立つ。何故おれなんかに事情徴収を、と忍。事件当日、校門の監視カメラに映っていたきみが何か普段と違うものを見てなかったかと思ってね、若き警部補が爽やかに答え、それで市川忍、脳裏の人格に声を送る、一顛末あった日だ厄介だね。対し仟燕色馨、おそらくこの警部補、謎多き朔密教を疑っている、ならばこの事件あの探偵にも捜査の手が伸びる、ところで気づいているか探偵事務所の探偵に見張られている。
 小料理屋点々とある裏通りの角に螺旋階段へ繋がるアーチ状の古い門を持つ築古スナックビルの入り口で刈り上げマッシュショートにゆるめパーマの少年のような青年がただ立っていると突然背後から強面の男がどこに突っ立っとんじゃと怒鳴ってきたので青年は冴え冴えとした眼差しで振り返り、幻を見てたんじゃないですか、俺はずっとこの位置でスマホを見てました、俺の輪郭と色、背後の風景と俺のいる光景をもっと目に焼きつけてください。男は動転し不愉快な目の前にいる青年を忘れないようじっと食い入って見る。だが、その光景はすでに幻で、スマホを見ていた青年はもういない。走り去っていたのだ。朝のホームルーム直前にその青年、六角凍夏(むすみとうか)が現れ席につく。振り返り、後ろの席の渡邉咲に聞く、きみ、部活入ってるの。隣席美術部員中河原津久見が聞き耳を立てている。渡邉咲は初めて話しかけてきた六角凍夏が先々で勧誘しているのを知っていて、文芸部でしょ、と冷えた目を送ると、文化琳三部だよ、と。咲が琳三って何という顔で惑うと、清山琳三ね、俺らの界隈で知らぬ者はいないよ、とくるが、咲はどこの界隈の話なのと内心いよいよ戸惑う。だが、聞き耳を立てていた中河原津久見はピクシブなどで目にする虚無僧キャラねと気づくが話に加わらない。きみ、机の上の本、和楽器好きでしょ、清山琳三は気鋭の尺八奏者。私、渡邉咲、と口にしながら、尺八ね。放課後、六角凍夏は一人、文芸部部室の小さな教室に入って電気をつけるとドアを閉め、密室と成る。中央辺りの机に、鞄から取り出した古びた筒を置く。目を閉じる。刹那、周囲にぼろぼろの布団��幾枚とどさっと落ちてき��きだす。それは天明四年鳥山石燕刊行妖怪画集「百器徒然袋」に見られる暮露暮露団(ぼろぼろとん)だが現実に現れたわけではなく、六角凍夏の想像力は小さな空間で全能となり百器徒然袋の界隈と接続し、今回ならばそこに記された妖怪があたかも姿を見せたかのような気分になったのだ。密室に、江戸の布団の香りが充満する。ときに、異界からの香りが漂ってくることもある。翌、静かな夜、百人町四丁目にて更なる殺人事件が起こる。被害者は志那成斗美(四〇)遺言は、潔く煮ろうか。魔の香りも、又、此処に。
蜃気楼の境界 編(六)
五鬼
 出入りする者らの残り香も錯綜の果てに幻影さえ浮かべる夜の街。串揚げ並ぶコの字カウンター中程で束感ショートの若い警部補が驚きのあと声を潜め通話を切ると手話で勘定を頼み、さっぱりとした面立ちの探偵仲本慧に目をやり、五鬼事件だがまだ続いていたと輝きの瞳隠せないながらも声を落とし去っていく。百人町四丁目連続殺人事件の犯人佐々木幻弐が第二被害者志那成斗美の最期の正当防衛で刺され意識不明のまま病院で死亡したという話、監視カメラから犯行も明確、第一被害者五藤珊瑚への犯行とも繋がり既に報道もされた直後の第三事件発覚。カウンターに残された探偵仲本慧、ビールを追加し面白い事件だが依頼がきてないから何もできないね、と奥に座る長髪黒はオールバックの男に突然話しかける。その男、串揚げを齧りながらチラと目線を合わせる。慧、ビールを飲み干し、隣に座っていいかなと距離を詰め、そっと名刺を置き、歓楽街案内人の市川敬済だね仕事柄我々は抜け目ない、聞き耳を立ててたね、という。黙す市川敬済に、優秀な探偵の知り合いは二人と必要ないかなと強い声で独り言のように笑みを送る。店内、音楽なく、静かに食す客、座敷からの賑わい。この辺りで、青島ビールが飲める良いバーを探してる客がいたなそういえば、と市川敬済、懐から名刺を取りだし横に並べる。直後、和柄のマフラーをしたギャル僡逢里が現れた為、仲本慧、名刺を拾い、勘定を済まし去っていく。お知り合いさんなの、と尋ねつつ座る僡逢里に、池袋の二青龍で今は探偵の男だ知ってるか、と尋ね返す。誰よ、テリトリー渋谷だったし、今日はいないの。暗に警部補のことを口にする。僡逢里の耳元で、まだ続いてるらしい千代女のママ心配だな。食事の注文をしながら僡逢里、出勤前に���られたい、と呟く。夜十一時、一人になった市川敬済の前を男女が横切る。片方の男が枯淡の趣ある着物姿でありながら凍風をただ浴びるがごとく静かであったため変に気にかかるが、気にするのをやめて電話をかける。あら敬済さん、と通話先、青藍に杉の木が描かれた着物の女、さっきまで警部補さんがいらしてたのよ、お店は営業してません、今朝三人目の不幸がありまして五鬼も残すところ二人なの。語るは浅井千代女である。
 遥か彼方より朗々と木曽節が諏訪太鼓と絡まり聞こえる、それは五年前の、冬の宵、一人の女、吉祥寺の麻雀ラウンジ千代女の開店準備中、六人の女達を前に、肩に雪積もり震えている。浅井千代女が側に近づき、貴女の血に刻まれし鬼の禍、憎しと思うなら、受け継がれし技術でお金に変えて楽園を造るのよ、弐宮苺(にきゅういちご)の源氏名を授けるわ、そちらの西クロシヤ(五〇)引退で貴女の席があるの。語りかけてきた浅井千代女を取り囲む五人の女達、五鬼を見る。はい、と涙流し、生まれて初めての愉しい月日流れ、今、浅井千代女の周りに残る五鬼はその弐宮苺(三〇)と柵虹那奈(さくにじなな、四〇)だけだ。今朝殺害された紫矢弥衣潞(しややいろ、五〇)の遺言は、一路ゆくは三人迄。殺害現場で弐宮苺は両拳固く握りしめて言う。千代女さまを死なせはいたしません、次はこの私が千代女さまの匂いを身につけ犯人を誘いだし返り討ちにしてやります、これまで通り千代女さまは、五鬼にはできない私達鬼の禍の力を強める祈祷にどうか専念してください。浅井千代女の頬に涙が伝う。紫矢弥衣潞の形見の側に六歳の娘が一人。この災い突如訪れ、犯人の心当たりなく、志那成斗美が相打ちにし病院で死亡したという佐々木幻弐が何者なのかも分からない。不気味であったが浅井千代女は思う、そもそも私達がこの現世において得体知られていない存在なの、それに。相手は私達より強い、と震える。市川敬済に連絡を入れる。丑三つ時に市川敬済が女と帰宅、玄関騒がしく、津軽塗の黒地に白い桜が控えめに描かれた高さ一尺程のテーブルに女が横たわる音がする。自室でスマホを触っていた高校一年生の市川忍、悠里と帰ってきたのかあの女嫌いだな、と不機嫌になる。脳裏から仟燕色馨の声、きみの父だが今着信があり通話している。女といるのに別の女と喋ってるのそりゃあ母も出ていくよ。連続殺人の件だ探偵仲本慧の名前も出ている。いつも大人達は都合で何か企んでいて不快だよ。翌日、暑し��ホームルームの前に近寄ってきた同級生渡邉咲が、低血圧以外の何物でもないローテンションでいつもより元気な声で市川忍に話しかける。事件は解決してなかったのよ、貴方のお知り合いの探偵、仟燕色馨の出番じゃない?
蜃気楼の境界 編(七)
境迷
 昼か、はた、ゆめの夜半にか、北原白秋「邪宗門」の一節に紛れ込んでいた六角凍夏は国語教師茨城潔に当てられて、地獄変の屏風の由来を申し上げましたから、芥川龍之介「邪宗門」冒頭付近をちらと見、朗読し始めるが、正義なく勝つ者の、勝利を無意味にする方法は、いまはただ一つ、直ちに教師が、むすみその「邪宗門」は高橋和巳だ、遮ってクラス騒然となる。六角、先生、界をまたぐは文学の真髄ですと逸らす。教室の窓から体育館でのバスケの授業を眺めていた市川忍に、脳裏から仟燕色馨の声、百人町四丁目連続殺人事件、慧探偵事務所の手にかかれば一日で解決する探偵はあの少女が呟く数字で結論を読みとるからだ朔密教での一件はそういう話だっただろう。それじゃあカジョウシキカ勝ち目が。否あの少女がいかなる原理で数字を読むか今わかった。その時、教室の背後から長い竹がぐんと伸び先���に括られた裂け目が口のごとき大きな提灯、生徒らの頭上でゆらゆら揺れる。「百器徒然袋」にある不落不落(ぶらぶら)を空想した六角凍夏の机の中に古びた筒。不落不落を唯一感じとった仟燕色馨、市川忍の瞳を借り生徒らを見回す。何者だ。その脳裏の声へ、何故だろう急に寒気がする。界か少女は先の「邪宗門」のごとく数多の界から特定している市川忍クンきみはこの連続殺人事件どう思う。昨夜の父の通話を聞くに麻雀ラウンジ千代女のスタッフが四度狙われるから張り込めばだけど犯人佐々木幻弐死んでも事件は続いたし組織か警察もそう考えるだろうから現場に近づけるかどうか。吊り下がる口のごとく裂けた提灯に教師も生徒も誰も気づかず授業続く。休み時間スマホで調べた麻雀ラウンジに通話。まだ朝だ、出ないよ、休業中だった筈だし。仟燕色馨は通話先を黙し耳に入れ続ける。浅井千代女らは、魔かそれに接する例えば鬼か、ならば逞しき彼女らが手を焼く犯人も、人ではないと推理できよう恐らく一人の犯行による。驚き市川忍、犯人が死んだというのに犯行は一人だって。きみは我が師仟燕白霞のサロンで幼少時千代女と会っていたことを忘れたか父と古く親しい女性は皆その筋だろう。側に、一人の同級生が近づいていたことに突然気づき、晴れてゆく霞、市川忍は動揺する。渡邉咲が、不思議そうに見ている。
 柵虹那奈、と雀牌��らばりし休業続く麻雀ラウンジで浅井千代女が呼びかける。はい千代女さま。志那成斗美あの人の槍槓はいつだって可憐で美しかったわ、五藤珊瑚あの子の国士ができそうな配牌から清一色に染める気概にはいつも胸を打たれていたわ、紫矢弥衣潞あの方の徹底して振り込まない鬼の打ち筋には幾度も助けられたわ、三人とも亡くしてしまった、弐宮苺は私達を守ると意気込んでいるけどあの子を死なせたくないの。ラウンジを出て一人、浅井千代女は市川敬済から聞いた池袋北口の慧探偵事務所へ出向く。雑居ビル、銀行かと見紛うばかりの清潔な窓口が四つあり小柄の女性職員田中真凪にチェックシート渡され番号札を機械から取り座る。呼ばれると先の職員の姉、同じく小柄な三番窓口女性職員田中凪月が青森訛りで対応するがシート見てすぐ内線で通話し真凪を呼び千代女を奥へ案内させる。無人の応接間は中国人趣味濃厚で六堡茶を口にしながら十分程待つと仲本慧現れ、異様な話は耳にしている我が慧探偵事務所に未解決なしさ安心して、笑顔に厭らしさはない、依頼費は高くつくけどね。千代女は私達に似てるわと思う、職員は皆日本人名だが大陸の血を感じる、理由あってここに集い共同体と成っている、市川敬済とは昔SMサロン燕(えん)で業深き運営者は仟燕白霞に紹介された、世俗の裏側で通信し合うルートで辿り着いた此処は信用できる。受け応えを記録する仲本慧に着信が入り中国語で喋りだす。六堡茶を喉へ。探偵職員二名曰く、監視対象の市川忍が早退し校門前で謎の探偵仟燕色馨と通話していたという。仟燕色馨が仲本慧に仕掛けた誤情報だが、千代女を上海汽車メーカーの黒い車に乗せ吉祥寺の麻雀ラウンジへ。市川敬済はその謎の探偵にも件の連続殺人事件を探らせているのかなぜ子の市川忍が連絡を、空は雲一つない、SMサロン燕は五年前の二〇一一年に閉鎖し今は仟燕家のみその調査は容易ではないが必要かすぐ崔凪邸へ行くべきか。麻雀ラウンジのドア、鍵開き、僅かな灯火の雀卓で盲牌していた柵虹那奈、差し込む外光より、冷気識る。現れるは、病室で死に顔さえも確認した、佐々木幻弐である。上海汽車メーカーの黒い車は崔凪邸に着く。少女崔凪は、使用人二人と土笛づくりをして遊んでいる。
by _underline
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「渦とチェリー」チャンネル
【音版 渦とチェリー新聞】第27号 へ続く
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仟燕色馨シリーズ 全人物名リスト
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tomoshiyasuda · 2 years ago
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Posted @withregram • @artglorieux 本日スタート! 「ブレイク前夜展~次世代の芸術家たち~」 BSフジで放送中の『ブレイク前夜〜次世代の芸術家たち〜』。  毎週、今後世界に羽ばたく可能性がある次世代アーティストを紹介していますが、今展はその出演アーティストの中から28名を選んでの企画展となります。 日本画・洋画・立体作品など、出品される作品は様々。既製の���に囚われない自由で斬新な発想から生まれる作品は、私達に新鮮な驚きを与えアートの楽しさを再確認させてくれます。 未来の巨匠たちの魅力溢れる作品を、どうぞお楽しみください。 <出品作家> PARTⅠ:3月2日〜3月8日 ※最終日は午後6時閉場   #淺野健一 #阿南さざれ #飯島秀彦 #内田麗奈 #近藤大祐 #鈴木雅明 #静電場朔 #千葉尋 #ノガミカツキ #バウエルジゼル愛華 #ひらのまり #堀川由梨佳 #松浦美桜香 #水口麟太郎 #安田知司 PARTⅡ:3月9日〜3月15日 ※最終日は午後6時閉場 石黒昭 / 大串ゆうじ /オオタキヨオ/岡田守弘/毛塚友梨/古賀勇人/ 斎藤亮輔 /TARTAROS/月乃カエル/ 額賀苑子 /藤井佳奈/山田憲司/亘章吾 協力:本郷美術骨董館、ロイドワークスギャラリー <会期>3月2日(木)→3月15日(水) <営業時間>10:30~20:30 ※ 営業日・営業時間は変更になる可能性があります。 ※最終日は午後6時閉場 #ginza #ginzasix #art #gallery #artglorieux #exhibition #painting #銀座 #ギンザシックス #ギャラリー #アート #アールグロリュー #展覧会 #ブレイク前夜 (Artglorieux Gallery of Tokyo アールグロリュー) https://www.instagram.com/p/CpReA6YPMLe/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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harinezutaka · 3 years ago
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一年前日記35 (2020年8月26日~9月1日)
8月26日 10時チェックアウトの設定でだらだら。やらなきゃなという気持ちがクリアになった。いい感じ。また立て直して行こう。お昼からリモートで打ち合わせ。スマホがよくわからないひともいたので、家の電話も使いながらなんとか全員参加できた。初めての試み。打ち合わせや会議はどんどんなくな��てしまえばいいと思う。さよたんていの本を読んでいると、シトルーナとの共通点について書きたくなったので文章にまとめてみた。ちょっと熱くなってしまった。夜、買い物へ。昨日、夫が義実家からもらってきた紫蘇がかなり野性味あふれる味だったのでサムギョプサルっぽいものを食べたくなる。夜ご飯、サムギョプサル、イチジクの白和え。北欧暮らしの道具店で買い物をしていたものが届く。夫の誕生日プレゼントにフラワーベース。私はリップと靴下を買った。フラワーベース、好きそうとビビッときて衝動買いだったが喜んでくれていたみたいでよかった。
8月27日 午前中、鍼へ。元気になると調子に乗ってしまう話をすると、「元気なときぐらい調子に乗らないとね」と言われた。少し体調が悪いぐらいの精神状態で身体は元気でいられたらいいのになと思う。心と体を分けすぎなのかな。帰りに初めての一人カラオケをした。土用が明けたらやりたかったことのひとつ。ひとりの人も多くて、全然大丈夫だった。歌い疲れたら、本を読んだり。楽しかったです。夕方、水道管から変な音がしだしたと思うと、下の人がやってきて水漏れしてるとのこと。うちは水は使っていなかったので、給水関係かなと思っていたのだが、念のためと思って元栓を締めると何と音が静まった。業者の人に見てもらうと、やっぱりうちだったみたい。時間も遅いので、修理は明日になるとのこと。水が使えないので、お互いそれぞれの実家にいくことにした。夜ご飯は、スペアリブとまくわうりのスープ。
8月28日 朝から工事。家にいないといけないので、仕事は私が休んだ。「今日中に直すからね」と、どんどん職人さんが来てなおしてくれた。お昼に団地の職員の人も来てくれて、謝って帰られた。うちももっと早く元栓を閉めてあげられたらよかったんだけど。下の人の対応や補償が大変だろうな。もう古いのでどこがいつ今回のようになってもおかしくないみたい。水道管クライシスだ。安倍総理が体調不良を原因に辞任することに決まった。潰瘍性大腸炎って大変な病気だな。できることなら心身ともに健康な人がリーダーになって欲しいが、そんな人はおそらく政治家になりたくないと思う。夜ご飯、オクラとコーンのグラタン、ベーコンと蓮根の酸っぱい炒め物、トマトともずくとモロヘイヤのスープ。
8月29日 特に予定のない土曜日。朝、散歩する。今日も工事があるのかなと思っていたけど、今日はないみたい。壁のペンキを塗るって言ってたような気もするが、それはまた��とでの話なのか。お昼は高山なおみさんのレシピの煮干しとゴーヤのチャーハン。毎年、ゴーヤの季節の定番。大好きなレシピ。夕方買い物へ。初マイカゴでの買い物。「これに入れてください」というタイミングが難しい。夜ご飯は、手羽元の酸っぱ煮、なすの味噌炒め、きゅうりの梅和え。夜、ファッジと郵便局がコラボしたラジオがあった。40分、コーヒーの入れ方やキリンジのライブを聴きながら手紙を書くというもの。寝室に小さな机とランプをもって、過ごした。これがなかなかよかった。手紙は3通かけた。
8月30日 日曜日。今日中にやらないといけないはずのことがあるのに、ほかのことばかりやっている夫についイライラしてしまう。課題の分離、課題の分離、あなたは困ってもわたしは困らないんだぞーと頭のなかで唱えた。頭がうまく働かないモードになってきたので、全部ログを取ることにする。やるべきことを決めておいてサクサクとやっていくようにすれば動ける。Kちゃんとお昼を食べに行く。一人ずつ仕切りのあるラーメン屋さん。中で並べないようになっていて、順番がきたらLINEで呼び出してくれるシステム。車の中で20分ほど待った。そのあと、お茶をした。一人暮らしをしようかなと言っていた。いいないいな。私はまたなんか偉そうなことを言っていた気がする。何か近ごろ表面を撫でているようなコミュニケーションじゃ満足できなくなっている。でもそれは、お互いの掘りたい気持ちが同じでないと。嫌な気持ちになったかもしれないな。次は自分からは誘わないようにして待ってみよう。誘うと彼女は嫌でも会おうと言ってくれるから。夫は明日が誕生日だったので、ケーキを買って帰った。夜ご飯は、肉味噌炒めのレタス包み、キムチとえのきのスープ。肉味噌にひじきと豆の煮物も加えたら美味しかった。
8月31日 夫は少しやる気になっていてさくさく動き出した。私もさくさく動こう。やることリストを片付けていく。本も読んだ。夫が夜勤(今は時短になっているので22時まで)の日は、お昼ご飯が一日のメインになる。ハッシュドビーフとサラダ。たくさんできたので、晩ご飯もこの残りを食べた。もうすぐ満月なので、今のうちに欲しいものを買ったり、図書館の本の予約をしたりした。満月から新月の間は、なるべく物を増やさずはしゃがず月とともに身軽になっていけたらいいなと思っている。今日が誕生日の友人にメールしたときに、共通の友人が入院していることを知る。子どもも小さいので家族も大変だろう。早く良くなって欲しいけど、ゆっくり休むことが必要なんだとも思う。
9月1日 仕事の日。何となく憂鬱だったことが前に進められた感触があった。後輩がワープロを知らないと言うので「ワープロが出てくる小説、読む?」と言って『キッチン』を貸そうとしたけど「本読まないんで」と断られた。そっか。帰りに朔日餅を受け取りに。受け取り場所で少し並んで、来月の予約をする人はして、ある程度の人数ごとに店員さんに連れられて店内へという流れ。9月の朔日餅は小さなおはぎ。6個入りだったので、実家に持っていって、ひとつずつ食べてもらい私もひとつ食べた。上品な甘さで美味しいし、思ったより小ぶりだったのでペロリと食べられた。一年に何度かの楽しみにして何年かかけてコンプリートできたらいいな。夜ご飯は実家で。ハンバーグ、モロヘイヤのスープなどを作った。冷蔵庫を見ると今日もぎっしり。豆腐もたくさん入っている。何があるかメモしてから買い物に行けばいいのになあと思う。そういうのは習慣なんだろうな。日々のモヤモヤを放置しておかないことは気持ちよく暮らしていく上での筋トレやストレッチだ。どんどんシンプルにしていかないとなと思う。自分から目を逸らさないようにしないとと思って、物理的に鏡を見る時間を増やすことにしてみた。今は少し恥ずかしいが、大切なことだと思う。
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takamasa · 5 years ago
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(via 静電場朔 Diàn⚡️さんのツイート: "whoaaa!… ")
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utautain-suzuri · 2 years ago
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初土の種 8月
祈りを捧げる時、その姿勢はその心に従う形をとるでしょう。そして、多くは瞳を閉じるかと思います。 心を静めて目蓋の裏で、何を憶いますか。 そこに現れる像は、あなたの感じうる光によって見えます。 8月はピンホールカメラを用いました。 黒い筒の中、小さな穴から入る光を感光紙に当てて撮る写真です。 その時期や天候の紫外線量によって、日光を当てる時間は変化します。
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7月と同じ場所の景色ですが、少し角度が異なります。  8月の川には光が流されます。お盆の灯籠流しです。それは送り火となり、この世を訪れた魂を導きます。 写真には記憶の内であるように、うっすらとした青で山と川が映っています。お盆では山や川に、行事の場としてスポットライトが当たります。それは、御霊の還る所だから。日本人にとって、山や川の先は異界でした。京都の五山の送り火では、山に灯が点されますね。 写真にある山の名前には「八」の字が入ります。この辺りの竹は電球の開発に一役担い、一時は海彼の地を照らす事もありました。この地の竹ではありませんが、数字をかくのには竹ペンを用いました。また、この数字(文字)を用いる地にも「八」の字がつきます。 印刷は再びコンビニプリントなのですが、レーザー印刷という手法です。筒状の感光体(ドラム)にレーザーを当て、着色する粉(トナー)を付け、それを熱しながら圧して紙に転写する事で印刷します。
追憶の「光景」には何が浮かぶでしょうか。
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お盆のある旧暦7月、つまり新暦8月の朔日は地獄の釜が開くとされ「釜蓋朔日」、「地獄の口開け」と呼ばれ、そこから一ヶ月間お盆の行事がなされます。 地域によって差異があるものの、13日には精霊迎えをしてもてなします。16日に送りとして送り火を焚いたり、川に灯籠を流したり、海に精霊舟を浮かべたりします。これらが行事の中核と言えます。水施餓鬼と言って、専用の卒塔婆を川に流していた地域もあるようです。 今では川に物を流してはなりませんが、もてなしに用いたものも古くは纏めて川に流す、もしくは燃やしていました。これは浄める為です。
古事記でイザナギ命が黄泉の国から帰ってきた際、「吾(あ)はいなしこめしこめき。穢(きたな)き国に到りてありけり。故、吾は御身の禊せむ。(厭な酷く穢れに満ちた所に行って、私は穢れてしまった。身を清めよう。)」といって禊祓をしました。身を浄めるとあらゆる神々が生まれ、三貴子も生まれました。水辺は穢れがついた身を清浄にする場です。清い事は神道において重要な意味を持ちます。 また、古い遺跡では側溝や河川跡から祭祀に用いたと考えられる土製の馬や墨書人面土器、木製の人形、斎串等が出土しています。紙製��なりましたが、人形を流して身を清める行いは現代にも続いていますね。
愛知県海部郡蟹江町の須成祭では神葭(みよし)神事が行われます。これは穢れを葭に託して川に流す行事です。河岸の葭を刈って御神体として祀り、川に流すのですが、現代では定められた池に7日間浮かべる方式のようです。その後70日間再び祀られ、燃やされます。これに類する形態の祭は周辺地域などで多数見られます。葭には疫神を封じ込めてある為、葭を川に流していた頃には流れ着いた地では祟りを恐れて祠を建てて祀りました。然し、これが海に出ると様子が変わります。海に面する地では潮路より寄り来るものを福の神として扱う事があり、神葭神事においてもそれを祝ったり模���たりして喜び迎えます。忌避されたものが一端流されて清められると尊いものへと変じます。
また、神葭神事のような神事を川で行う地では、川に入り沐浴をすれば病気にならないとする地、逆に川を聖域として入る事を禁ずる地があります。 魂は穢れと清浄を往来します。川にこそ、そういった場面があるのです。
宵闇の中、川面や山に浮かぶ灯に案内されて、盆に訪れた魂が迷わず帰りますように。そして、此岸で営みをする各々の魂が清まる事を願います。
 
目次 8月(制作)
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herbiemikeadamski · 3 years ago
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. (^o^)/おはよー(^▽^)ゴザイマース(^_-)-☆. . . 11月5日(金) #仏滅(丁巳) 旧暦 10/1 月齢 0.2 #新月 年始から309日目(閏年では310日目)にあたり、年末まであと56日です。 . . 朝は希望に起き⤴️昼は努力に生き💪 夜を感謝に眠ろう😪💤夜が来ない 朝はありませんし、朝が来ない夜 はない💦睡眠は明日を迎える為の ☀️未来へのスタートです🏃‍♂💦 でお馴染みのRascalでございます😅. . チェックインが20時までと焦り💦 残業してる場合じゃないと片付け 一つ先の「つくば」まで行き駅を 降りると駅周辺はまぁまぁの明る さであるが少し遠くは真っ暗で闇。 . 駅から徒歩5分とか云われたが闇 に向かって歩く勇気がないし何処 なのかも方角も判らんしタクシー に乗ることに、それで行き先を 伝えると驚いた様な態度🤣😆🤣 . 「お客さん!あそこね...」凄く 親切というか余計なお世話ぐらい にしてくれるが、散々ホテルの 醜態を聞かされたら不安になる が、もう後戻りも出来ない⤵️⤵️⤵️ . 途中でセブンに寄って貰い食料 を調達✋ホテルに到着だが案の定 な感じでタクシーの運転手の云う 様なのが判った😅💦かなり古い 建築物でまるで昭和40年代に . ワ~プしたかの様です💦改修は してるだろうが、いつやったか は遠い過去的なオブジェがあり 古さを感じる。それは良いのだ が、一番嫌なのは匂いですよね。 . エントランスに入った時の立ち 込める程の臭気が子供の頃の遠 い記憶が覚醒する様でした😅💦 よく友達の家に行ったりすると 匂う家あるじゃないですか❓ . 部屋に入ると匂いは慣れてきた のかと😅💦助かるのはフェース カバーしてるから和らぐのかも 驚いたのはユニットバスの初期 型であろう代物ですよ✋あれは . かなり古く、よくこんなとって 置いてるなってのが笑うしか ありませんでした✋やはりその 物もかなりきつい臭気が息が 出来ないくらい酷かったデスw . もう!嫌っ⤵️⤵️⤵️ . 今日一日どなた様も💁‍♂お体ご自愛 なさって❤️お過ごし下さいませ🙋‍ モウ!頑張るしか✋はない! ガンバリマショウ\(^O^)/ ワーイ! ✨本日もご安全に参りましょう✌️ . . ■今日は何の日■. #トヨタカローラ新発売.  「国民車構��」の背景に1961(昭和36)年に発売のパブリカよりも様々な技術改良される新設計の初代カローラの販売が開始されました。  航空機の空気力学を取り込みトヨタスポーツ800やパブリカを手掛けた有名な技術者の長谷川瀧雄氏が担当した。  トヨタカローラは今も健在していて2019(令和元年)年9月17日(火) フルモデルチェンジされ初代モデルより55年の歳月になり12代目になるそうだ。 #新月(シンゲツ)(#朔・サク).  月と太陽が地球から見て同じ方向に見える時の状態を「朔(サク)」と云います。  また、この「朔」の状況に見える月の事を「新月(シンゲツ)」と称します。  太陽と地球の間に月が入る形でほぼ一直線に並びます。  月から反射した太陽の光が地球に届かないので地球からは何も見えません。 月はどうして光るかは、太陽の光を鏡の様に反射させて地球に届けて居ます✋  新月の日には新しい事を始めるのに良いとされる日で願い事を唱えると良いでしょう。 . #母倉日(ボソウニチ).  暦で、母が子を育てるように、天が人間をいつくしむという日。  春は、亥・子の日。夏は、寅・卯の日。秋は、辰・戌・丑・未の日。冬は申・酉の日。  他に四季の土用には巳・午の日がこれにあたり大吉の日とされる。 . #お香文化の日. . #ごまの日. . #いいりんごの日. . #おいしいあなごの日. . #雑誌広告の日. . #電報の日. . #新宿日本語学校・にほんごの日. . #予防医学デー. . #津波防災の日. . ●いい男の日. ●いい酵母の日. ●いい5世代家族の日. ●縁結びの日. ●Burn ALL GIFs day(#全てのGIFを焼き尽くす日). ●長城清心丸の日(毎月5日). ●みたらしだんごの日(毎月3,4,5日). ●生命保険見直し月間(1日から30日). ●低GI週間(11月1日から11月7日まで). ●ガイフォークスデイ【Guy Fawkes' Day】(イギリス). ●ナショナルデー(コロン市). . . ■今日のつぶやき■. #惚れた病に薬なし(ホレタヤマイニクスリナシ) 【解説】 恋わずらいをするくらいに誰かに夢中になってしまったら、それを治す薬はない。 ひとりでに冷静になるのを待つ以外に手だてはないと云う事。 . . 2001(平成13)年11月5日(土) #寺本莉緒 (#てらもとりお) 【グラビアアイドル、タレント、女優】 〔広島���〕 . . (ホテル山久 食堂) https://www.instagram.com/p/CV3nv2bh0-4t0f8H9d88KMRNmouqy0RWsLsUqs0/?utm_medium=tumblr
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nemurumade · 7 years ago
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永い夜の瀬でぼくらは、
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 熱い湯が素肌を叩いて、眠気を醒ましていく。ハンドルを回してシャワーを止め、濡れた髪を無造作に掻き上げた。  浴室を出て、バスタオルで肌についた水滴を拭い、ドラ��ヤーで髪を乾かし、質のいいワックスを使ってセットする。下着を重ね、クリーニングに出したばかりの白いニットに袖を通し、黒のジーンズを合わせた。  動くたび、鈍い痛みが微かに腰に走る。しばらく���えないからと言っても、これから長旅に出るというのに、あの男は容赦ない。  二年ほど暮らした、都心にそびえ立つマンションの高層階の一室も今日で見納めだ。泉の荷物はすでに向こうのホテルに送ったため、この部屋には手荷物以外、何も残っていない。カーテンから外を覗くと、十二月の空は分厚い雲で覆われ、昼頃になっても気温はさほど上がらないだろうと思われた。ジャケットを羽織る方がいいか、と考えながら、短針が八を指す腕時計を左手首につけた。 「……泉、」 不意に名前を呼ばれて、振り返る。目をこすりながら起き上がった男は、眠たげな声で尋ねる。 「もう出るの?」 「うん、」 「来て」 泉がベッドの側へ行くと、手を引かれ、キスをされた。 「たった二ヶ月離れるだけなのに、恋人の関係を終わらせるの?」 悲しみを宿した瞳を向けられ、泉は罪悪感を噛み締めながら、彼の寝癖を手櫛で直してやる。 「俺の気持ちは変わらないよ」 「……僕も、離れても泉を愛する気持ちは変わらない」 泉は彼の手を離した。彼は繋ぎ止めようとはしなかった。 「そういう優しいこと言ってくれる人ほど、離れていくんだよねぇ」  だから、ごめん。今までありがとう。そう続ければ、彼は諦めたように笑った。  手荷物だけを持って、泉は寝室を出る。その直前、彼が声を掛けた。 「泉、向こうでも元気で」  泉は微笑みを浮かべただけで何も言わずに、静かにドアを閉めた。  ロビーを出れば、真冬の朝の冷たい空気が頬を撫でる。  呼んでいたタクシーは路肩に停まって乗客を待っていた。後部座席に乗り込み、運転手に行き先を告げた。 「成田空港まで」
 正午頃のフライトまでに時間があったため、泉はラウンジでカクテルを頼んだ。長いフライト中に睡眠を取るためだ。適度に酔っておけば眠れなくなる心配はない。  ちまちまとそれを飲んでいると、スマートフォンに着信があった。  朔間凜月、の名前に驚きながらその電話に出る。 「もしもし、」 「これからロンドン行きって言うのに、辛気臭い声だなぁ」 クスクスと笑う声に、泉は溜息を吐いた。 「くまくんが早起きなんてするから、こんなに天気悪いんじゃない?」 「嫌味は健在で安心安心」 「ぶっ飛ばすよぉ?」  そう言いながらも、昨日、気をつけてね、なんて言いながら泉愛用のパックを一ダースもくれたので可愛くないことはない。凜月はそういう男だ。 「で、なんでわざわざ電話なんて掛けてきたわけぇ?」 「昨日はナッちゃんもス〜ちゃんもいたから訊き損ねたから。ちゃんと振ったの?」 あいつのこと、と問われて、 「振ったよ」 とキッパリと返事をした。少しの沈黙の後、嘘じゃなさそうだねぇ、と間延びした声が返ってきた。 「俺にとってはやっとか、って感じだけどね。別れて正解だよ、あんな男」  凜月は、交際当初から泉の恋人————つい先ほど別れたが————二つ年上のカメラマンの男を嫌っていた。一度ふたりがエンカウントしたとき、凜月は目も合わせなかった。普段、自分とはそれほど関わりのない人物を嫌わない凜月にとって珍しいことだった。  泉はグラスを揺らした。オレンジテイストのカクテルが小さな波を立てる。 「……それを確かめるためにわざわざ?」 「そうだったら悪い?」 「なんでそこまで……」 「前に言ったでしょ、『王さま』が可哀想だからだよ」 その言葉に、カクテルを一口飲む。仄かな苦味が喉を焼く。 「……その呼び方よしなよ」 「じゃあ、『れおくん』」 押し黙った泉に、凜月が溜息を吐くのが聞こえた。 「ほら、こっちでも嫌がるじゃん」 「うるさいなぁ」 不機嫌を露わにしながら、泉は足を組み直す。 「……あいつの話ももうよしてよ、何年前のことだと思ってんの」 「二年前」 と正確な数字を出してくる男に舌打ちをすれば、 「怒んないでよセッちゃん」 悪気のなさそうな声がして、少し間が空いた。 「……それだけだから。じゃ、気をつけてねぇ」 泉は、うん、と小さな声で返事をした。 「お土産よろしく〜」 そう言葉を残して、凜月は電話を切った。スマートフォンを耳元から離し、ポケットに入れ、カクテルを一気に飲み干す。苦味が喉を通り、真っ逆さまに、胃に落ちていく感覚がした。  搭乗案内のアナウンスが響く。泉は席を立ち、搭乗口へ向かった。
 瀬名泉は、夢ノ咲学院を卒業後、進学をせずにモデルの道を選んだ。ありがたいことに、卒業前から大手芸能事務所から声が掛かり、所属先には困らなかった。キッズモデル時代、学生時代の知名度もあり、期待の新人モデルとして優遇されることが多かった。  現に、世界的に有名なイギリスのブランドの広告塔に選ばれた。日本人初の快挙に、日本のファッション界隈はその話題で持ちきりだ。泉は、これから約二ヶ月間、撮影やショーへの出演のためにイギリスのロンドンで生活し始める。  それをきっかけに、約二年間付き合った男に別れを告げた。  カメラマンの彼は、紳士的で、穏やかで、素の泉を理解してくれる数少ない人物のひとりだった。その上、カメラマンとしての腕も良く、国内の賞を総ナメにしていた。だから、付き合ってほしい、と言われても嫌な気はしなかった。いいよ、という一つ返事でふたりは後藤が元々住んでいたマンションの一室で生活を始めた。  彼のなにが嫌で別れたのではない。ただ、自分はこの男を愛しているのだろうか、と自問しても、答えは出てこなかった。  ————泉、愛してる。 彼の腕に抱かれな��ら、そう囁かれても、泉はいつもなにも言えなかった。  ありがとう、とか、俺もだよ、とでも言えばいいのに、その言葉たちはいつも浮かんでは消え、声ではなく吐息となった。  優しくて、穏やかで、料理もキスもセックスも上手いのに、泉は、最後まで、彼を愛せなかったのだ。
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 着陸を知らせるアナウンスの声で、浅い眠りから目が覚めた。分厚い窓の外を見れば、夕方の空とコンクリートの地面を、滑走路の端が隔てていた。  飛行機はゆっくりと着陸し、人々は荷物を持って立ち上がる。彼らに続いて、泉も飛行機を降りた。  広いロビーには多くの人がいた。出発を待つ人、誰かを迎えに来た人、荷物を取りに行く人。みな足早にロビーを歩いていく。  泉は入国審査を待っている間に、すでに数日前に入国していたマネージャーに連絡をしておいたため、すぐに落ち合えた。 「泉、お疲れさま」 泉のマネージャーは、四十歳手前の女性だ。テキパキと仕事を捌き、ハキハキとした物言いで泉との相性は良い。 「お疲れさまです」 「タクシーでホテルに向かうけど、何か食べる?」 「いや、まだ大丈夫」 そう、と彼女は返事をして、タクシー呼んであるから、と泉のスーツケースを引いて歩き始める。彼女は結婚して十年の、テレビ局のプロデューサーの夫がいるが、子供はいない。だからなのか、彼女は泉を自分の息子のように接するし、泉はそれが嫌だというわけではなく、むしろ心地良かった。  タクシーの後部座席に乗り込むと、マネージャーは流暢な英語で目的地を告げた。
 ホテルには一泊し、その次の朝には、これから暮らすスタジオフラット、いわゆるワンルームマンションに移動した。中心地近くに建つ赤茶色の壁のフラットに、泉とマネージャーは一部屋ずつそれぞれ借りた。撮影からコレクションを二ヶ月かけて全てロンドンで行われるため、ホテルに長期宿泊するよりも賃貸の方が安上がりだという理由からだ。 「ブランド側との顔合わせは明後日だから、それまでに時差にも慣れてね。八時頃、一緒に夕食でもどう? 近くに美味しい店を見つけたのよ」 「うん、行く」 マネージャーに言われて、高校時代の頃と食生活は少し変化した。サプリメントに頼ることもほとんどなく、バランスの良い食事を三食しっかり摂ることを徹底している。  彼女は、泉より一つ上の階に上っていった。その後ろ姿を見送って、泉は受け取った鍵で自室の玄関扉を開けた。  小ぢんまりとした部屋だったが、家具は全て揃っている。ベッドの側のドアの先は、床が青いタイル張りになっているトイレとシャワールームだった。  悪くない、と思いながら窓を開けた。夜の冷たい空気が部屋に入り込む。  それから絨毯の上でスーツケースを開け広げる。その他の生活用品はこっちで買えばいいと考えていたため、中身は洋服ばかりだ。それらを備え付けのクロー���ットに移し、同じく備え付けの電化製品たちがちゃんと動くか確認した。テレビでは夕方のニュースが流れていた。  近所を散歩でもしようとまた外に出る。聞いていた通り、ロンドンの気温は低い。日本の十二月は、これほど寒くないはずだ。  若いカップルが寒さに肩を寄せ合いながら、泉の横を通り過ぎた、そのときだった。  泉より少し先を歩く、その背中。  車のタイヤがコンクリートの地面と擦れ合う音も、ざわめきとなった人々の話し声も足音も、膜をかけたかのようにくぐもって聞こえた。  ハーフアップにまとめられたあの長い赤毛、立てたコートの襟、軽快な歩き方とその歩幅と足音、すべてが、懐かしく感じた。  気づいたときには走り出してその背中を追いかけていた。 「待って!」 ぐい、と腕を引いて、振り向かせる。ゆらり、とエメラルドの中の光が揺らいだ。  目の色形も、手の大きさも、高く小さな鼻も、間違いなかった。この目の前にいる男は———……。 「……れおく、」 「Who are you?(おまえ、誰だ?)」 その声もレオのものにそっくりで唖然とした。だから、その喉から発されたのが流暢な英語だと気づくのに数秒かかった。  ————れおくんじゃ、ない。  そう理解して、慌ててその手を離して謝った。 「Oh,I’m sorry. I thought you were someone else.(ごめんなさい、人違いをしました)」  彼は驚いたように目を見開いてから、ゆっくりと微笑みを浮かべた。 「……英語も話せるのか。さすが日本が生み出したモデル界の新星、イズミ・セナ、だな」 日本語でそう、はっきりと自分の名前を発音され、泉は目を丸くして彼を見つめた。 「……俺を知ってるの、」 「知ってるよ、ファッション業界は君の話題で持ちきりさ。こっちのブランドの広告塔をするって噂には聞いてたからなぁ。まさか本物に会えるなんて嬉しいよ」 レオの声なのに、話し方は似ても似つかない。大きな違和感を咀嚼しながら、差し出された手を握り返した。 「おれはレナード。日系のイギリス人だよ。これも何かの縁だ、どうぞよろしく」 「よろしく……」 彼は屈託のない笑顔を泉に向けた。 「そんなに似てたの?」 黙って頷けば、彼は緑色の瞳を細めた。  途端、息苦しくなって目の前が真っ暗になった。  ぐらり、と傾いた身体を彼が支える。  セナ、と呼ばれた気さえして、泉は参ったなぁ、と思いながら、瞼を閉じた。
 次に目が覚めた時には、泉は見知らぬ部屋の天井を見つめていた。身体は痛まない、背中越しに感じる柔らかな感触に、自分がベッドの上に横たわっているのだと理解する。 「……気がついた?」 そう声がして、泉は上半身を起こした。そこにはマグカップを二つ持ったレナードがいた。そのうちの一つを泉に差し出す。 「ホットミルクだ、飲めるか?」 「ありがとう……」 微かな甘みが乾いた口の中に広がり、泉の意識��鮮明にさせる。レナードは、ベッドサイドの小さなテーブルに自分のマグカップを置き、ベッドの端に腰掛けた。 「急に倒れたから驚いたよ」 「ここは……?」 「俺のバイト先の休憩所。仮眠を取るためにベッドが備え付けられてるんだ」 「あんたが運んでくれたの、」 「うん」  泉も、彼に倣ってマグカップを置いた。  「ごめん、なさい。迷惑かけて、」 「謝ることない。寝不足か、貧血だろ。飛行機で眠れなかったのか?」 「まぁ、うん……」 いつもなら熟睡できるのに、今日は違った。意識はいつまでも泉のそばにいて、機内のざわめきや外から聞こえる微かなエンジンの音に鼓膜と神経が震えて眠りに身を委ねることが上手くできなかった。  ふと、窓の外に目を向けて、夕食の約束を思い出した。 「ねぇ、今、何時か分かる?」 「今? 六時半過ぎだけど」 その答えに、ほっと息を吐く。一度自分の家に戻ることはできそうだ。が、しかし、 「まさか、俺、一時間もここにいたってこと……?」 「まぁ、そうだな」 さらっと答えた彼に、泉はさらに罪悪感を覚えた。 「本当にごめん。いろいろとありがとう。またお礼をさせて」 と言いながら、泉は立ち上がる。 「もう行くのか?」 「うん」 と頷くと、彼は一度部屋を出て、泉の着ていたジャケットを手渡してくれた。それに袖を通す泉の横で、彼も上着を羽織り、鍵を尻ポケットに入れていた。 「ちなみにどこまで? 案内するよ」 「そこまでしなくても……!」 「おまえ、道分かんないだろ」 気絶してる間に運ばれてきたのだ。ここがどこだか、泉はもちろん知らない。 「……ごめん、ありがとう」 そう言えば、彼は、「���ーえ」と無邪気にはにかんだ。それは、少しばかり彼を幼く見せた。  出会ったばかりの素性も知らない男に助けられ、その男とふたりきりの部屋で一時間も死んだように眠り、そのうえ道案内までしてもらうなど、我ながらどうかと思った。  しかし、彼があまりにも昔の恋人に似ていたから、悪い人じゃない、と思ってしまったのだ。  泉は彼の半歩後ろをついて歩いた。狭い階段を降りると勝手口があり、人気の多くない路地に出た。そのドアの鍵を掛ける彼の背中に話しかける。 「レナードさんは、」 と言いかければ、 「レナードでいいよ」 と口を挟まれ、レナードは、と言い直す。 「仕事はなにしてるの、」 「アルバイトだよ、今はこのバーで働いてる」 「なら、どうして俺を知ってるの。自分で言うのもなんだけど、俺はファッション業界では話題に上がるだろうけど、ロンドンにいる一般人で俺を知ってる人はまだ少ないでしょ」  仕事を終えた鍵を再びポケットにしまい、今度は胸ポケットから煙草とライターを取り出した。吸っても?と尋ねるように片眉を上げた彼に、どうぞ、とだけ返事をする。彼は煙草の先に火を点けながら、にやりと笑った。 「いいね、『まだ少ない』ってところにおまえの自信が見える」  答えを急かすように泉が肩を竦めれば、レナードは細い路地を出た。夜の街はどこの国も賑やかだ。ほろ酔い気味の男女が楽しそうに笑いながら、ふたりの横を通り過ぎていった。 「この町はブティック���多いから、おれが働いてるバーも、デザイナーやモデルたちの御用達なんだ。プライベートな話はもちろん、仕事の話も嫌でも聞こえてくるってわけ」 「へぇ……」 「また飲みに来いよ。安くしてやるから」 「ありがと」 「あ、でも気をつけた方がいい」  急に声色を変えた彼の目線を辿ると、体格のいい男ふたりが、手を繋いで、またちがうバーに入るところだった。 「おれの働いてるところも、いわゆるゲイバーってやつだから。まぁ、ストレートも大歓迎なんだけど」 レナードは泉の方を見て悪戯っぽく笑った。 「おまえは綺麗だからさ。狙われやすいよ」 「……レナードもその気があるの?」 率直に尋ねれば、レナードは、 「俺はバイだよ」 とウインクした。  夕方、泉が倒れた場所で別れた。レナードは、自分の働くバーのカードを手渡した。泉がそれを受け取ると、 「Good night,sweet dream!(おやすみ、いい夢を!)」 と手を振って、電飾が輝く繁華街の方へ歩いていった。長い赤毛が靡くのを見て、泉は彼と逆方向へ歩き出す。  カードには店の名前と住所が記されていた。その下には「Homosexuals and heterosexuals are also welcome!(同性愛者も異性愛者も大歓迎!)」と綴られており、レナードの言葉は本当だったのだと知る。  このカードを見たら、マネージャーはまた呆れるに違いない。彼女には一度、男とキスしているところを目撃されたことがあるのだ。
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 夢を見た。  雪に包まれた、白銀の世界だった。  広いグラウンドに積もった雪の上で、彼は笑っていた。  セナ、と呼ぶその男に、泉は手編みのマフラーを巻いてやる。赤い毛糸で編んだそれに、彼は嬉しそうに顔を埋めた。  ————おれはね、セナがだぁ〜いすき!  ————おまえが一緒にいるなら、おれは幸せだから。  ————あいしてるよ、セナ!  無邪気な笑顔と、まっすぐな言葉が遠のいていく。  いつのまにか、粉雪は、身体を叩きつける吹雪になっていた。  ————もう、終わりにしよう。  赤いマフラーが風に吹かれて、彼の首から離れていく。  音にならない声で、彼の名前を呼んだ。  マフラーが、彼の姿が、雪にまみれて、消えていった。
 「Nice to meet to you,Mr.Sena.(はじめまして、瀬名くん)」 打ち合わせの場所であるロンドン市内のスタジオで待っていたのは、ブランドのプロデューサーとスタッフたちだった。 「Nice to meet to you,too.(はじめまして)」 握手をしながら、プロデューサーの男性は泉の顔をじっと見つめた。 「You’ve got beautiful eyes.(とっても綺麗な瞳をしているね)」 「Thank you.(ありがとうございます)」 彼は人好きの良い笑みを浮かべ、泉とマネージャーに席に座るように促した。  テーブルの上に広がった書類、椅子の後ろに並べられた真新しい服たち、誰かの香水の匂い。  通訳を交えながら、泉とブランドスタッフは話し合いを進めた。撮影のこと、コレクションのこと。すべてが新鮮で、泉の胸は高���った。  打ち合わせの最後に、プロデューサーは嫌味のないウインクをしてみせた。 「I’m counting on you,Izumi.(期待してるよ、泉)」 その言葉に、泉は頷いた。 「I’ll do my best.(頑張ります)」
 打ち合わせが終わった後、スマートフォンを確認すると、レナードからのメッセージが入っていた。 『一緒にディナーでもどう?』 その誘いに嫌な気はしなかった。先日のお礼もしたいし、と思いながら、 『七時以降なら』 と返信した。するとすぐに既読の文字がついて、 『終わったらおれの店に来て』 と新しいメッセージがその下に浮かんだ。  ねぇ、という泉の声に振り返ったマネージャーに尋ねる。 「この後は仕事入ってないよね」 「ええ」 彼女は泉の手の中のスマートフォンを見て、驚いたように瞬きした。 「もう知り合いができたの?」 「まあね」 「スキャンダルはやめてちょうだいよ」 念を押されてしまった泉は苦笑いしながら、 『分かった』 とだけ打ち込み、送信した。
 街はクリスマスソングに溢れ、電飾が輝いていた。  ソーホー地区では、同性カップルたちが楽しげに腕を組みながら、店に入っていく。  その後ろ姿を見送って、泉はマフラーに顔を埋めながら、足早に歩いた。  スマートフォンのマップに頼りながら、レナードが働く店に辿り着く。店の灯りは点いていない。そのうえ、店のドアには『CLOSED』のプレートが掛かっていた。  レナードはまだ来ていないのだろうか、と思いながらドアと睨めっこする。泉の後ろを、カップルたちが笑いながら通り過ぎていった。  それと同時に、バーとその隣の店の間の路地からの入り口から、レナードがひょっこりと顔を出した。 「Good evening,Izumi.」 彼の笑顔に、泉は肩の力を抜いた。 「店長が風邪ひいて臨時休業なんだ。裏から入って」  レナードについて、裏口から店の中に入る。  スタイリッシュな店内は、他のバーとはなんら変わらなかった。レナードに促されて、泉はカウンター席に腰掛ける。 「なにが食べたい?」 そう問いながら、レナードはエプロンの紐を腰の位置で蝶々結びにし、髪をポニーテールに結った。 「お任せする」 そう言えば、彼は少し困ったように眉を下げて笑った。 「お任せか〜」  彼は奥の厨房に入っていった。  店の中は見た目の割に広く感じた。テーブル席もあり、その奥には小さなステージがあった。ここで酔った客たちが歌うのだろう、と思った。 「今日は仕事だったのか?」 と厨房からレナードが尋ねた。 「そう」 と少し大きめの声で返事をする。ジュー、となにかを焼いているような香ばしい音がした。 「ロンドンコレクションに出るのか?」 「まあね」 「さすがだなぁ」 彼の感心したような声に、泉は少し誇らしく思った。  世界四大コレクションの一つであるロンドンコレクションは、一ヶ月後に行われる。それに泉は出演する予定になっているのだ。泉にとって、今までで一番の大仕事だ。ここで結果を残せば、瀬名泉という名は世界に知られることになる。  しばらくして、レナードが完成した料理とともに厨房から出てきた。  ミートパイとチップス、トマトサラダのセットだった。 「ワイン飲む?」 と訊きながら、レナードはセラーからボトルを取り出す。 「明日も仕事だから一杯だけね」 グラスに注がれた白ワインが煌めいた。ふたりでグラスの縁を合わせれば、チン��と軽やかな音が響いた。 「ふたりの出会いに」 「クサいセリフ、」 「ロンドナーだからさ」 ふたりは笑いながら食事を楽しんだ。  レナードが作ったディナーはどれも美味しかった。頬張る泉を見て、レナードは嬉しそうに笑った。  食事を終えると、レナードは煙草に火をつけた。彼が換気扇のスイッチを切り替えると鈍い音を立てて、どこにあるか分からない換気扇が回りだす。 「イズミ、」 少し酔いが回ったらしいレナードが、蕩けたような瞳で泉を見つめる。  その甘い表情に、泉は息を呑んだ。 「歌ってよ」 「……そんなとこまで知ってるわけ」 「おれの情報網をナメてもらっちゃいけないなぁ」  腕を引かれ、ステージの目の前に立つ。小さな円形のステージの中央には、スタンドマイクが待っていた。  聞き慣れた音楽が天井についたスピーカーから流れ出す。ピアノをメインにしたバラード。学生時代に所属していたユニット————Knightsの曲だった。  泉はレナードの方を振り向いて、静かに言った。 「……俺に、歌う資格なんてない。俺はアイドルじゃない。今歌ったら、あいつら……昔の仲間に、失礼だから」  "アイドルの瀬名泉"は、もうどこにもいなかった。瀬名泉を"アイドル"としてたらしめているのは、レオと凜月と嵐と司と、レオが作った曲だった。それらを失った今、泉は"モデルの瀬名泉"として生きるしかないのだ。  レナードは驚いたように見開いた目を二度瞬き、申し訳なさそうに眉を寄せた。その表情には、先ほどまであった酔いはなかった。 「……そうだよな。無理言ってごめん」 泉は慌てて首を横に振った。泉のわがままを、レナードが知る由もないのだ。自分の言葉に後悔した。 「……でも、」 そう言葉を続けたレナードに、泉は顔を上げた。 「おれは、悲しそうな顔をしてるおまえを、楽しませることはできるよ」 まっすぐな瞳に、泉は息を吐いた。懐かしいピアノのメロディーが、よけいに切ない。 レオにそっくりで、そしてレオではないこの男にだけは、言ってもいい、甘えてしまいたい、と思った。どうせお互い酔っているのだ。明日には忘れているかもしれない。  溢れそうになる涙を乱暴に拭って、喉に絡む言葉を吐き出した。 「……本当に、大事な人がいた。でも俺は、二度もそいつを守れなかった……ううん、二度も、傷つけてしまった」 滲む視界の中で、レナードはじっと泉を見つめ、泉の声に耳を澄ましていた。 「……俺は、強くなるために、ここに来ることを選んだ。自分を変えるために。もう二度とあいつに、あんな思いをさせないために。あいつに、見つけてもらうために」 レナードはゆっくりと泉に近づいた。 「触れていい?」 と問われ、その指が濡れた頰を拭う。 「……おまえなら大丈夫だよ、」  その言葉も、その眼差しも、目がくらむほど眩しくて、あぁ、レナードも強いのだ、そう、思った。
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 なぁ、セナ、そう呼びかけられて、なぁに、と振り返る。楽譜が散らばった床の上に寝転び、その右手を動かし続けていた。  夕焼けの色に染まった窓の向こう側で、カラスが鳴いた。 「……おれがいなくなったら、どうする」 その問いに、泉は答えを見つけることなどできなかった。そんなことを想像したくなかった。  レオは仰向けになって、楽譜を片手に立ちすくむ泉に、力なく微笑んだ。もとも細い身体がさらに細くなっているのが嫌でもわかる。 「こっち来て」 レオの頭の方にしゃがむと、レオの左腕が首の後ろに回される。そしてそのまま引き寄せられて、唇を重ね合わせた。顎の先にレオの柔らかな前髪が触れた。 「……セナ、愛してるよ」 ————そんな悲しそうな表情で、そんな優しい言葉、言わないでよ 掠れた声は喉の奥に張り付いて音にはならなかった。ただそこから微動だにせず、泉の喉を絞めるのだった。  その後、レオは本当にいなくなってしまった。取り残された泉は、夢の残骸を拾い集めて足掻き続けることしかできなかった。  戻ってきたレオと日々を重ねても、レオに対する罪悪感と後悔が、時間の経過によって消えるはずがない。今でもそれらに苛まれる夜もある。だからといって、償いとして献身しているわけではない。  ただ、ただ純粋にレオのことを愛しているから、彼のそばにいた。泉の気持ちにも、ふたりの関係性にも、名前などつけられないのだった。
 卒業後すぐに上京し、泉とレオは、さほど広くない郊外のマンションの一室で暮らし始めた。  レオから手渡された部屋の鍵は冷たかった。握りしめているうちに温まって、金属独特の匂いが右の掌に染み付いてしまったけれど、それさえも気にならなかった。 「一緒に、暮らそう」 泉に拒否権など最初からなかった。いつもそうだ。声色も言葉も優しいのに、その瞳に宿された光に、泉はいつも逆らえなかった。  一緒に食事をし、風呂に入り、ダブルサイズのベッドに潜った。  たまにセックスもした、次の日がオフでも、オフじゃなくても。レオが泉の背筋や頸に指を這わせるのは、しよ、という言葉の代わりだったし、たまに泉から誘うこともあった。  レオは、泉をほぐすように優しく抱いたり、肉食獣のように激しく抱いたりもした。彼はキスもセックスも上手だったが、途中で曲を書き出すのはさすがに勘弁してほしかった。  その頃が、一番幸せだったのだと、今になって気づく。  二年前のある寒い冬の日の朝、レオは忽然と、泉の前から姿を消したのだった。  同じベッドで寝ていたはずのレオの姿はなく、彼の服も、靴も、食器も楽譜も消えていた。窓の外で降る雪がコンクリートの地面に触れる音が聞こえそうなほど静まり返った部屋に、心臓がドクドクと脈打っている。  スマートフォンを手に取ると、その液晶画面に『留守番電話に一件のメッセージがあります』という通知が浮かんだ。発信元は非通知だった。恐る恐るそれをタップし、音量を上げる。  機械的な音声案内の後に、ピー、と甲高い音がなる。少しの沈黙、そして、微かな雑踏と、聞き慣れた声がスピーカーから溢れてきた。 「……セナ、急に出ていってごめん。でもいつか、この関係も終わりにしようと思ってた。セナも、その方がいいだろ?ごっこ遊びはもうおしまいだ。おまえとはもう会わない。じゃあな、元気で」  メッセージの終了を告げる機械音が鼓膜��震わす。  冷たいスマートフォンを握ったまま、泉は身動きできなかった。  そのメッセージは、つまり、ふたりの間にあった関係に終止符を打つもので、レオはあっさりと泉の傍を離れてしまった。昨晩だってあんなに優しく泉を抱いたのに、所詮それは演技にすぎなかったのだ。そんなことを信じたくないし、信じてもいないけれど、ただ、レオがふたたび泉のそばからいなくなってしまった、ということだけが事実として残った。  いつから、どうして、という疑問が浮かんでは消える。そんなの直接言いなよ、という怒りを覚えて、どこが悪かったの、と問い詰めたくなる。  ————ちゃんと愛してるってれおくんみたいに言葉で伝えれば良かったのかな。きっと、俺の愛は、れおくんに、伝わってなかったんだ。  悲しみも怒りも虚しさも悔恨も、すべてをぐちゃぐちゃに掻き混ぜてできた感情が喉の奥から迫り上がり、泉はベッドに飛び乗って枕に顔を埋めた。涙と嗚咽がひとりの部屋に響いたのが、滑稽で、無様で、哀しくて、泉は声を押し殺して泣いた。  レオのいない部屋はひどく寒くて広く感じた。  ふたりぶんのうち、ひとりぶんが消えた。  レオがいなくなってしまった。  実感が湧かないまま、食事も取らずに仕事に没頭していた。あっという間に減っていった体重にも、なんとも思わなかった。  そして、とうとう撮影現場のスタジオで倒れた。その頃のことはよく覚えていない。ただ、目を覚ますと楽屋のソファーに横になっていて、そばにはカメラマンの男がいた。 「気がついた?」 その優しい声色に、勝手にレオを重ねていた。  だからその出来事の数日後、一緒に洒落たバーに行ったとき、告白されて嫌な気はしなかった。いいよ、とだけ返事をした。  彼の住むマンションは都心にあり、主に泉の撮影現場となるスタジオにも近かったため、ほとんど同棲状態になった。  彼は写真の腕ももちろん、優しく紳士的で、料理もキスもセックスも上手かった。  それでも、レオを失った虚しさはいつもどこかにあった。泉はたびたび留守番電話に残された彼の声を聞いた。  いなくなったあの日から、レオのスマートフォンに何度も電話を入れた。しかし、聞こえるのは無機質な自動音声だけだった。  カメラマンの男といても、考えるのはレオのことばかりだった。  れおくんだったらもっと乱暴にしてくれるのに、優しくしてくれるのに、笑い飛ばしてくれるのに。  触れ合う肌がレオのものより冷たいことに、泉は泣きたくなった。  泉が求めているのは、レオだけなのだ。
 カメラマンの男と付き合い始めて二ヶ月。運の悪いことに、彼と一緒にいるところを同じスタジオにいた凜月に目撃され、強引に個室のあるレストランに連れて行かれた。  赤ワインとトマトサラダを頼み終え、店員が個室から出て行くと、凜月は泉に向き直った。 「……あのカメラマンと付き合ってんの?」 凜月は心底嫌そうな顔をしながらそう訊いた。そうだよ、と答えるとますます嫌悪感を露わにした。 「『王さま』はどうしたのさ。最近急に見てないし連絡も来てないけど」 先ほどとは違い、泉を咎めるような声ではない。 「……その呼び方よしなよ」 「��ぁ、ごめん。もう大人だもんね、じゃあ、れおくん」 本当に意地の悪いガキだと思いながら、目の前の男を睨む。ほら、と凜月が促したところで店員がやってきて���ラスと赤ワインのボトルを一本置いていった。  凜月は黙って二つのグラスにワインを注いだ。その色は、凜月の瞳と同じだった。 「……れおくんが、」  この先の言葉を、続けたら。そう考えると唇が震え、喉が締め付けられ、声が出なかった。  言って、と凜月が柔らかな声で宥めた。泉はグラスを傾けて、アルコールを胃に流し込んだ。それを終えたと同時に、 小さな声で絞り出すように呟いた、 「……れおくんが、いなくなった、」  大きく息を吐くと、アルコールの匂いが嫌でも分かった。  凜月は、真紅の瞳を泉に向けた。 「探さないの、」 そう言いながら、泉のグラスに赤ワインを注ぐ。それをまた飲み干す。だめな飲み方だと分かっていても、身体がアルコールに頼ってしまう。 「……探してる、けど、」 泉の言葉の続きを凜月は求めなかった。代わりに、泉を見つめて目を細めた。 「またおんなじこと繰り返すの? もういい大人なのに?」 「大人だから、しょうがないこともあるでしょ」 「『王さま』に会いたくないの、」  ふたたびグラスを手に取ろうとしたとき、一気に酔いが回った気がして、胃の奥から何かがせり上がってくる感覚がした。口元を押さえた泉に、凜月は、げ、と顔を引きつらせ、慌てて泉を立たせてトイレへ向かう。  個室に駆け込み、泉は空の胃から吐き出した。 「ほんっと、今日のセッちゃん、チョ〜うざい」 トイレのドア越しに凜月の声が聞こえた。
 スマートフォンのアラームで起こされる。目を開ければ、下瞼の縁に沿って、一滴の雫が流れた。それに気づいて、慌ててそれを手の甲で拭う。  さきほどまで見ていた朧げな幻を思い出そうとする。五人で籠城していた学院内のスタジオ、その窓から射し込む淡い夕焼け色の光が彼の頰を照らしていた。その首に手編みのマフラーを巻いてやれば、彼は嬉しそうに笑って、なにか口にした。その声を思い出そうとしても、懐かしい夢は淀んで消えていく。  寒さに身を縮めながら、ベッドから身を起こす。窓の外では粉雪がちらちらと舞っていた。  レオは、渡り鳥のように、どこか暖かい場所に向かっただろうか。ひとりで冬の寒さに凍えていないだろうか。  温かいココアでも作ろうとお湯を沸かす。やかんが鳴るまで、寒さに鼻を赤く染めた夢の中の彼のことを考えていた。
5
 ゲイバーらしからぬ外観には、電飾が増えていた。開け放たれたドアからは大音量のクラブミュージックが流れてくる。  ヘアアイロンをかけてまっすぐになった髪を流し、薄く色づいた縁なしサングラスを掛けていれば、スキャンダルに発展することもないだろう。黒いシャツの上にはファーコートを羽織り、ボルドーのベロア素材のパンツを合わせた普段しないような格好だから、なおさら。  腕を組んだレナードは、長髪をひとつにまとめたためか、幾分大人っぽく見えた。服装はTシャツに薄手のパーカーと革製のジャケットを重ね、ダメージジーンズに厚底のブーツ。泉の見立ては間違っていなかったらしく、よく似合っている。 「恋人らしく、って言っても、おまえは普通にしてていいから」 と言いながら、彼が泉の腰に腕を回す。普通でなんかいられるものか、と思いながら、緊張が伝わらないよ���に頷いた。
 なぜ泉がゲイバーのパーティーに来ているのか、もちろんレナードの誘いだった。  出会ってから、ふたりは友人として距離を縮めていた。一緒に食事をすることはもちろん、買い物をしたり、レナードが好きなジャズの店に行ったりもした。  数日前、衣装合わせの終わりにスマートフォンを確認すると、レナードからメールが入っていた。  『二十時に俺の店に来れる?』 そのメッセージに泉は躊躇うことなく、 『分かった』 とだけ返事をした。  泉の方が先に席に着いていると、レナードは申し訳なさそうな顔をしながら、エプロン姿でやってきた。 「ごめん、ちょっと打ち合わせが長引いて」 「打ち合わせ?」 泉がそう聞き返すと、レナードはジャケットを脱ぎながら頷いた。 「来週の週末に、あのバーでパーティーを開くんだ」 「パーティー?」 「そう。開店五周年祝い。歌って踊って一晩中飲み明かす、ってわけ」 「へぇ……」 「だから頼みたいんだけど、おれの恋人役してくれない?」 だから、が意味をなさない脈絡のない頼みに、泉は眉間にしわを寄せた。 「……なんで?」 「実はさぁ、ひとりの客からすごいアタックされてて。おれはバイだけど、誰でもいいってわけじゃないからさ、恋人がいるって嘘吐いてはぐらかしてるんだよ。でも今回のパーティーは恋人がいる奴は、その恋人を連れてくるっていう暗黙のルールがあってさぁ、困ってるんだよね」 「嘘吐くあんたが悪いでしょ、それは」 「分かってる、分かってるけど……! このままだと俺の貞操が危ないんだよ!」 だったらゲイバーのアルバイトなんて始めなきゃ良かったのに、と思いながらも、彼に恩を感じていないわけではない。だから、 「しょうがないなぁ」 と肩を竦めて承諾してしまうのだった。  レナードは、 「ありがとう、イズミ」 と嬉しそうに言いながら、メニューに手を伸ばした。
 店に入ると早速レナードは声を掛けられた。女装した男たちだった。 「Wow! Is he your boyfriend?(そちらがレナードの恋人?)」 「So cute!(やだ、可愛いじゃない)」 その言葉にレナードは笑って、そうだろ、と流していた。  彼女ら(と言うべきなのだろう)の横を通り過ぎて、レナードが誰かを見つけたらしく、足を止めた。 「俺、オーナーに挨拶してくるから、そこのカウンターに座って待っててよ」 と言われ、レナードは出入り口のドアの横へ向かって戻っていく。泉は彼の指示通り空いている席に座ってカウンター越しに、バーテンダーにアルコール度数の低いサワーを頼んだ。  差し出されたそれをちびちびと飲みながら、辺りを見渡す。ゲイじゃなくても入れるこの店は、多くの男女で溢れていた。ダンスフロアではDJを囲み、アルコールに酔った人々が曲に合わせて踊っていた。壁に背中を凭れて酒を飲みながら楽しそうに談笑している人々も多い。隅では、ゲイのカップルがキスを交わし、周りの友人たちから冷やかされて恥ずかしそうに、しかし幸せそうに、はにかんでいた。  自由に踊り、笑い、キスをする彼らが羨ましかった。大事な人とこんなふうに一緒に時間を過ごせることほど幸せなことはないと、泉はもう知ってしまっているから、余計にひとりで心細くなった。  ハァイ、と声を掛けられて振り返った。背の高い細身の男が、グラスを片手に人好きのする微笑を浮かべていた。 「Is the seat free? (ここ、いいかな?)」 と問いながら、泉の返事を待たずに隣の椅子に腰掛ける。 「Did you come alone today? (ひとりで来たの?)」 「No.(いえ)」 首を横に振りながら答えると、彼はグラスの中のワインを一口飲み、それからまじまじと泉を見た。 「Are you Japanese? You’re very beautiful.(君は日本人? とっても綺麗だ)」 それが分かりやすい口説き文句だとすぐに理解できた。サンキュー、と愛想笑いをしながら、目だけでレナードを探す。彼の貞操を守るどころか、これでは自分の貞操が危うくなりそうだ。  実際、彼は既に相当アルコールを摂取しているらしい。香水に混じって酒の匂いがするし、目尻は赤く染まっている。彼が何か言ったが、泉は聞き取ることができなかった。気づけば、彼の手が泉の耳に伸びる。こういうとき、何と言ったらいいか分からない。  彼の腕を掴もうとしたところで、後ろから声がした。 「Keep your hands away from my sir.(おれのツレに手ぇ出すなよ)」  振り返れば、煙草を唇から離して白煙を吐くレナードがいた。目の前のイギリス人は驚いたように目を見開いて、優しい声色で言った。 「Such a beautiful sir is yours?(レナードのツレ? こんな綺麗な子が?)」  どうやらこの店の常連客らしい。レナードは呆れたように、悪いかよ、と答えていた。  彼は不機嫌な顔で近くにあったカウンターの上の灰皿を引寄せて無造作に火を消して、泉を見た。その目がこちらに来い、と言っていた。泉が立ち上がって近づくと、腰に腕が回され、耳元で囁かれる。 「ごめん、キスさせて、」 驚いて彼から離れようとしたが、さらに身体を引かれて泉は顔をしかめた。 「どうしてそこまで、」 「こうでもしないと、あいつ、おまえを犯しかねないんだよ、」  その言葉は間違ってはいない。溜息をひとつ、いいよ、と言い終わらないうちに唇を塞がれた。  レナードは泉の腰にあった腕をほどき、今度は首の後ろに回した。  泉が柔らかな感触に驚いて唇を閉じ切らなかったのをいいことに、彼は乱暴に舌を入れてきた。熱と重たい煙草の味が、泉の理性を溶かしていく。泉が苦しげに鼻から息を吐けば、彼は時折唇を離し、また重ねてきた。そのたびに、透明な糸が切なげにふたりの唇の間で光る。 「ん、」 思わず声が漏れ、体温が上がっていくのがわかった。いつの間にか周りの人々が観衆となっていた。彼らの冷やかす歓声と大音量のクラブミュージックで満ちているから、周りの人々には聞こえなかっただろう。  しかし、目の前にいる男は違う。  さらに泉を攻め立てる。首に回った右手は頸をなぞり、そして耳裏に触れた。左手はシャツの裾から入り込み、背中を這う。硬い指の腹は、まっすぐな背筋を辿っていく。  薄目を開ければ、彼は緑色の瞳を満足気に細めていた。その表情に悔しくなって、泉も反撃の一手に出る。  彼の細い腰に回していた手を離し、シャツの隙間から露わになった鎖骨に触れる。間の窪みを押せば、彼は興奮し切った瞳で泉を見た。  熱を持ったその肌に、舌に、眼差しに、泥酔した気分になって、腰が砕けそうだ。下腹部が限界を訴えて痛む。  泉は彼の胸元を軽く叩いた。  彼は、薄い唇の端から垂れた、もはやどちらのものか分からない唾液を拭った。その指先が、あまりにも扇情的で。 「……イズミ、来い」  手首を掴まれ、泉の返答を待たずに歩き出す。周りの男たちは楽しそうに笑い、手を叩き、そしてグラスを空けた。 「It’s getting hot here!(お熱いねぇ!)」 観衆のうちの誰かの冷やかす声を背中に受けて、ふたりは賑やかな狭い店を足早に出た。  レナードが連れてきたのは、裏口を入ってすぐ横にある、従業員用のトイレだった。タイルの壁や床には汚れが残っていれば、使用期限の切れた芳香剤が汚い便器の横に転がっている。それでいて窓はなく、低い天井の小さな換気扇が音を立てて回っていた。  レナードは後ろ手で鍵を閉め、変わらず熱っぽい瞳で泉を見つめた。 「……野次馬の中に、例のやつもいた」 「あんたのことを好いてる人?」 「あいつ、諦めはいいから、もう大丈夫」 我慢できない、というふうに彼が泉を引き寄せる。それを制止しながら、泉は彼を見つめる。 「俺の貞操の方が危うくなるところだった」 「うん、ごめん、ひとりにして、」  レナードの指が泉の唇の輪郭をなぞる。 「……キスしてるときも綺麗だ、」 「当たり前でしょ」 きっと、自分も同じくらい熱のある眼差しを彼に向けてしまっているのだろう。興奮し切った身体は、自分自身で制御できない。  彼は、今度は優しく啄ばむようにキスをしてきた。いじらしくなって、思わずその腕を引いた。  まるで、レオとキスしているかのようなのだ。容姿も、キスの仕方も、そっくりで嫌になる。ただ、こんな苦い味はしない。彼は煙草を吸わなかった。 「……泉、」 彼の手が泉の腰を撫でた。 「したい、」 まっすぐ向けられた視線に侵食される。目の前にいる男が、月永レオにしか見えなくなって、縋るように彼を抱き締めた。 「……俺も、」
 ゆっくりと意識が浮上し、泉は瞼を持ち上げた。冬の朝に相応しい寒さに、泉は布団を引き寄せた。  昨晩隣で寝ていたはずのレナードの姿はない。腕を伸ばしてスマートフォンを引き寄せれば、その液晶画面には午前九時を示す数字が浮かんでいた。  上半身を起こしてから後悔する。ずきずきと腰が痛み、目を伏せた。  昨晩、レナードは泉を慰めた。トイレでキスをしただけなのに、泉の足腰には力が入らなかった。レナードは呆れたように、けれど欲情に満ちた目を、黙って細めた。泉を軽々とおぶり、バーからさほど離れていない彼の部屋に向かった。  暗がりの中、レナードは服を脱がなかった。最初はそれをずるい、と思った。隣室から壁を叩かれもした。しかし、すぐにそんなことはどうでも良くなって、泉は快感によがった。お互いを擦り合わせるだけでも、死んでしまうのではないかと思うほど、気持ち良くて、ふたりは大きく息を吐いて同時に果てた。あのときの、彼の濡れた瞳が脳裏に浮かんで、腰とはまた違う場所が微かに痛んだ。  バスルームからは水が弾ける音がする。昨晩、行為の後に泉がシャワーを借りて脱衣所から出ると、彼はそのままベッドで寝ていた。泉より早く起きて、身体の汚れを落としているのだろう。  獣を連想させた瞳は伏せられ、寝顔は少し幼くて、あまりにも、彼に似ていた。  それを思い出して、泉は柔らかな毛布に顔を埋めた。  レナードは、レオじゃないのに。 「……ごめん、」 小さく呟いた言葉は、冷たい空気に吸い込まれて消えていった。
6
 泉とレナードが身体を重ねたのは、あのパーティーの夜だけだった。その後、レナードも泉もお互いを求めはしなかったし、泉の方は求めてはいけないような気がしていた。  レオは他の誰でもないのに、他人のどこかにレオを重ねようと必死に足掻いて、寂しさを埋めようだなんて、レオに、重ねられる彼らに対して、あまりにも不誠実だと気付いているから。  月永レオはただひとりであって、その代わりなどいないのだ。
 パーティーの三日後の夜のことだった。その日は日暮れから雨が降り出し、夜が更けるにつれて雨脚は強まっていった。  十一時を回った頃、チャイムが鳴った。マネージャーだろうか、と思いながらドアスコープを覗くと、濡れ鼠になったレナードがいた。  慌ててドアを開けると、 「Good evening.」 彼はへらっと笑った。 「なんで傘差してないの」 「途中で折れたんだ。その上飛行機は欠航だよ。もちろん部屋も引き払っちゃったし、空港に寝泊まりするのは嫌だし……だから、な、泊めてくれよ」 彼の右手には大きなスーツケースがあった。どうやら本当に飛行機に乗ってロンドンを発つつもりだったらしい。髪の毛先やコートの裾からぽたぽたと水滴を垂らすレナードを訝しげに見ながら、他の住人が外廊下を歩いていった。 「……分かった、いいよ」 そう答えれば、ありがと、と彼は笑い、シャワールームへと直行した。  新品のバスタオルと自分のパジャマを脱衣所に置いといてやり、彼の濡れた服を洗濯機に突っ込んだ。  熱い湯を浴びた彼は、髪を乾かしながら泉に話し出した。 「母さんの具合が悪くなったから、実家へ帰るよ」 「……ロンドンには、もう帰らないの」 「うん。元々こっちに来ること、反対されてたから」 長い髪はドライヤーの熱風に晒され、乾いて靡いた。 「だから、おまえと会えるのも今日で最後だ」 「別に、スマホがあるから連絡なんかいつでも取れるでしょ」 「……うん」 ドライヤーの電源を切って、彼は寂しそうに笑った顔を泉に向けた。  ベッド使っていいよ、と言ってソファーで眠ろうとすると、腕を引かれてベッドに連れていかれる。彼は壁際に寄って、 「いいじゃん、一緒に寝れば」 ほら、と空いたスペースを手で叩いた。 「あんたのベッドじゃないけどねぇ」 という文句を言いながらも、泉はおとなしくベッドに潜った。 「人肌が恋しいんだよ」 「よく言うよ」 「本当だよ。おまえと離れるのが寂しい」 レナードは泉を見つめた。その眼差しに、泉は目を逸らす。 「それ以外はしないから、抱きしめてもいい?」 静かな声に、泉は黙って頷いた。彼は泉の背中にそっと腕を回した。その温もりと重さに、泉は唇を噛んだ。 「おれと、おまえの大事なひとが似てるって、言ったじゃん」 「そうだねぇ」 出会ったあの日、そんなに似てる? と言った彼の表情が脳裏に浮かぶ。 「……イズミは、そいつのことが好きだったのか?」 レナードはそう訊いた。泉は寝返りを打ち、彼に背中を向けて答えた。 「愛してる」  レナードは、エメラルドの双眸を瞠り、そうか、とだけ返事をした。泉は、うん、とだけ言った。そのあとは、ふたりとも、もうなにも言わなかった。  窓の外、雨が地面を打つ。その音を包み込むように夜は深まっていく。目を閉じれば、背中越しに彼の鼓動が聞こえた。
 目を覚ますと、レナードの姿はなかった。ベッドには彼の分の温もりが残っている。  今頃、空港に向かっているのだろう。何時のフライトか聞き忘れたことを後悔しながら、泉はベッドから出て、キッチンへ向かった。  ペットボトルのミネラルウォーターを飲みながら、ふと、ダイニングテーブルに目をやった。  その上に、マフラーがあった。赤い毛糸で編まれたそれに、泉は、まさか、と思いながら手を伸ばす。  編み方から、手作りだと分かる。端の方に、小さな王冠のワッペン、金色の糸で、"L.T"のイニシャルが刺繍が施されていた。  間違いなかった。そのマフラーに顔を埋めた。懐かしい匂いに泉は目を閉じた。  ————ありがとな、セナ!  思い出すのは、さきほどまで隣で眠っていた男ではない。  ぱっと顔を上げて、泉は素早く着替えてコートを羽織った。スマートフォンを引っ掴んでマネージャーに、 『体調が悪いから打ち合わせは俺抜きでやっておいて』 とメールを送っておく。マフラーを手に部屋を出て、タクシーに飛び乗った。
 空港は、相変わらず多くの人で溢れていた。クリスマス休暇を使ってロンドンへ来る人、ロンドンから他国へ出る人が多いのだろう。  そんな人混みを縫うように泉は走った。  搭乗を知らせるアナウンスと雑踏、売店から流れるBGMのクリスマスソングが入り混じっている。  もう飛行機に乗り込んでしまったかもしれない。どこの国へ行くのかも聞かなかったから時間も分からない。  出るとは思わなかったが、彼の番号に電話を掛けた。自分のスマートフォンから呼び出し音が虚しく聞こえる。  留守番電話にメッセージを残そうと思った————その時だった。  近くで誰かの携帯電話が鳴っているのが聞こえた。  その着信音は、彼のスマートフォンのものと、同じだった。  ぐるりと周りを見渡した。  人々が身に纏う服の色がやけにくすんで見え、動きもゆっくりに見えた。今まではっきり聞こえていた音も遠ざかる。  泉の視線の先、揺れる赤毛が見えた。  人混みの中、異様な存在感に泉は息を呑む。  泉は無意識のうちにふたたび駆け出した。 「待って!」 そう叫べば、周りの人々が驚いたように泉の方を見て、また素知らぬふりして、スーツケースを引っ張りながら歩いていく。  彼は振り返らずにすたすたと歩く。聞こえてるくせに、そう思うと泣きたくなって、大きく息を吐いた。
「待ってよ、ねぇ、……れおくん!」
 震えた声に、赤毛の男が立ち止まった。  彼に追いついた泉は、その腕をぐい、と強く引いた。  振り向いた彼が、は、と小さく息を漏らした。  ゆらり、とエメラルドの中の光が揺らぐ。  それは、泉の姿だけを映していた。  空気に晒された細い首に、そっと、赤いマフラーを巻いてやる。 「……こんなの、まだ持ってたの、」 震えた声でそう問えば、張り詰めていた緊張が解けたように、彼は、優しく笑った。  泉の大好きだったそれが変わっていないことに、堪えていた涙が零れて頬を伝う。
「……大事な、おまえとの思い出だから」
 ずっと、この日が来るのを願っていた。  セナ、と呼ぶその声を、ずっと、ずっと聞きたかった。  間違いなくそれは、レオのもので。  強く腕を引かれ、抱き竦められる。背中に回された腕も、顔を埋めた肩も、泉の頰に触れる赤毛も、ぬくい体温も、ぜんぶ、ぜんぶレオのものでしかなかった。 「……二年間、おまえのことしか、考えてなかった、考えられなかった」 「うん」 耳元で囁かれる言葉に、上手く返事ができない。涙がレオのコートの肩を濡らす。 「ひとりにしてごめん、勝手にいなくなってごめんな」 「……ほんとだよ、バカ」 「愛してる、愛してるよ、セナ。もう、いなくならないから、離れないから、おれと、一緒にいて、おれの、傍にいて……」 レオの声も、肩も、震えていた。彼の背中に両腕を回し、力を込めた。彼がもうどこかへ消えてしまわないように。 「うん、ずっと一緒にいる、もう二度と、離れないから」  涙で濡れた声を絞り出す。 「……ずっと、れおくんを、探してたよ」
7
 二年前の、クリスマスも近い夜だった。街は煌びやかなイルミネーションで飾り立てられ、浮かれたクリスマスソングと人々のざわめきで満ちていた。  レオと泉は久々にオフが重なり、レストランで食事を取ることにした。  ふたりは向かい合って、美味しいディナーとワインを嗜みながら、他愛の無い話をした。  泉は、以前テレビ局の廊下で偶然会ったらKnightsで集まりたいと駄々を捏ねられたこと、クラスメイトだった千秋が特撮の主演に選ばれたこと、今度UNDEADのライブに凜月と行くことになったこと、自分がブランドの広告塔に抜擢されたこと、などを楽しそうに話した。レオは、適度にお酒が入ると饒舌になる泉を愛おしく思いながらそれを聞いた。  店を出る頃、夜は静かに深まっていた。紺色の艶やかな空には、白い星々が人工の光に負けないようにと明るく光っている。南にはオリオン座が一際輝きながら浮かんでいた。  泉は、お気に入りのコートのポケ��トに両手を入れながら、寒そうにレオの半歩前を歩いていた。 「セナぁ、」 と呼べば、 「なぁに、」 と少しだけ火照った顔をレオに向けた。ワイン数杯で十分酔った泉はあまりにも無防備で、今すぐに食べてしまいたい、と思った。だから、その首の後ろに腕を回してキスをした。サングラスの下、彼が驚いたように目を見開いたのがわかった。 「……外だよ、」 「誰もいねえじゃん」 「そういう問題じゃ、」 ないでしょお、と文句を言おうとしたその口を再び塞ぐ。下唇を噛んでやれば、期待を含んだ濡れた眼でレオを見つめた。たぶん、ここからホテル街が近いのを、泉も知っている。 「……セナ、行くぞ」 泉はなにも言わない代わりに、繋いだ右手に少しだけ、力を込めた。  あの時の温かい手を、今でもレオは忘れていない。
 その数日後のことだった。  打ち合わせが終わり、スタジオを出たレオは、ロビーのソファーに座っていた男に呼び止められた。 「……月永レオくん、だよね?」 「そうだけど、」 と立ち止まって答えれば、レオの前に立った彼は名刺を差し出した。そこには、名前と職業が印字してあった。それを見て、あ、と思った。  泉が仕事で世話になっているらしいカメラマンだ。泉と一緒にいるのを見かけたことがあるし、泉からも度々話題が出るので、レオもなんとなく覚えていた。  どうも、と名刺を受け取りながら、背の高い彼を見上げる。彼はにこり、と微笑んで言った。 「折り入った話があるんだ。あまり人に聞かれたくないから、会議室を借りた。そこで話せるかい?」  レオは、嫌な胸騒ぎを抑え込むように黙って頷いた。  小会議室に入ると、彼は丁寧に内鍵を掛けた。  そして、カバンから取り出したのは一枚のプリントだった。怪訝そうな顔をするレオをよそに、彼は見開きページを開けて、レオの前に差し出した。  画質のいい写真数枚と、大きな見出し、そして記者が書いた文章が並んでいた。  それに、レオは思わず息を呑んだ。 「こ、れ……」 その写真には泉とレオが路上でキスをしたり、手をつないだりしているところがはっきりと写っていた。 「週刊誌の原稿だ。まだ印刷も発売もされる前のものだよ」  服装や場所からして、先日、ふたりで夕食を食べた後のものだ。 「その反応は、間違いないってことだよね?」 男は真剣な瞳でレオを見つめた。沈黙を肯定と受け取った男は、写真を一瞥する。 「僕は、この写真を撮った男の弱みを握っている。僕の力でこれを揉み消すことができる」 は、と顔を上げたレオに、男は優しく微笑んだ。 「……君が条件を飲むなら、ね」 その低い声に、レオは、全身の筋肉が強張るのが分かった。 「……条件って、なんだよ」 「なに、そんな身構えなくていい、簡単なことさ」 男は優雅な手つきで煙草を咥え、その先にライターで火をつけた。 「瀬名泉と別れろ」  突きつけられた言葉を瞬時に理解できなかった。ただ、言葉がひとりでに溢れる。 「どうして、」 「どうして、だって? 分かるだろう、この記事はそのまま来週の週刊誌に載るよ。メディアに取り上げられ、未だ同性愛に厳しい世間は大騒ぎだ。フリーで活動する君とはちがって、唯一無二の宝石のようなイメージを持たれている瀬名泉にとって、このゴシップは大ダメージだろう」 口を開きかけたレオの言葉を遮るように、彼はまくし立てる。 「加えて、君の母校にとっても。同じユニットメンバーだった後輩が、まだ在籍中だろう?きっと彼も被害を被るさ。君らのせいでね」  その言葉に、真新しい衣装をまとった司の姿が脳裏に浮かんだ。  泉は、司のことをよく気にかけていた。どこまでも面倒見が良い男は、弟が心配なのだろう。レオにもその気持ちがわかる。  まだ長い煙草が、灰皿に押し付けられた。彼は追い討ちをかけるように、にこりと微笑を浮かべる。  その表情には、冷徹さしか感じない。 「君のせいで、瀬名泉は穢れるのさ、月永レオ」  どくどくと心臓が脈打っている。喉を絞められているかのように苦しい。  れおくん、と呼ぶ彼の姿が瞼の裏に浮かぶ。  有名なブランドの広告塔に選ばれたんだよねぇ、と言いながら見せた、昨晩の嬉しそうな表情。  店頭に並ぶ、彼が表紙を飾った多くの雑誌。  群青のブレザーを纏い、かつての仲間を睨む瞳。  ————あのとき、彼は泣いていた。  おれが、セナを汚してしまった。  あの赦されない罪を、また、ふたたび、おれは繰り返してしまうのか。  レオは、記事から目を離し、目の前の男をまっすぐ見据えた。 「……分かった」  別れるよ。  そう告げると、男は満足そうに目を細めた。
 泉の部屋に帰ってきて、レオはベッドに腰掛けて、二年前のことを話した。そしてその後、泉のスマートフォンに留守番電話を残して、日本を出たのだ、と。  泉は、呆然と、レオを見つめた。 「あのとき、酷いこと言って、ごめん。おれ、けっきょく昔と変わってなかったんだ。おまえのことが大事だからって、セナを傷つけるような道を、選んで、おまえを、傍で守り続けられなかった、離れることしか、できなかった……なぁ、セナ、ごめん、ごめん……」 ぽろぽろと溢れる涙は、宝石のように美しく、哀しい光を放った。その煌めきを一粒一粒、零さないように泉は指で拭う。 「……泣かないでよ、れおくんは悪くないでしょ。あんたは俺を守ってくれたよ。寂しかったけど、でも、でもこうして、またちゃんと会えたから、ねえ、れおくん、もういいよ、だいじょうぶ、だいじょうぶだから、」 言葉を紡げば紡ぐほど、涙が溢れ出してきた。いずみ、と呼ばれて、涙で濡れた頰をレオが撫でる。  彼の瞳に映った自分は、見たことのない、みっともない顔をしていた。でも、今なら言える気がした。 「……もう、二度と離れないで、」 ずっと、言えなかった。言葉にしたら叶わない気がしていた。けれど今なら。  レオの小指が、泉のそれを絡め取る。 「約束する」  本当に? と訊けば、キスをされた。熱い唇が離れていき、は、と吐いた息が混じり合う。 「……今の、誓いのキスな」 レオが紡ぐありきたりな言葉に、泉は笑った。
 レオが慣れた手つきで泉のシャツのボタンを外していく。 「……いつからこっちにいたの」 「おまえと別れてすぐ」 細くくびれた腰をレオの指がなぞり、思わず声が漏れた。 「で、学生時代知り合ったやつがあのバーで働いてて、そのツテでバイトさせてもらえることになったわけ。ゲイバーって思ったより危険でさぁ、おれは何度ケツを狙われたかわかんない」 「……したの、」 「してないって」 「うそ」 「セナこそ、あの変態カメラマンと何回もしたんだろ」 言葉に詰まった泉を、レオは冷たい目で見下ろした。自分の被虐心を許しそうになってしまうその目線に、泉は息を吐いた。  レオは、泉が一番触ってもらいたいところには触れず、胸元に唇を寄せる。 「おれ、あの後スランプにも不能にもなってさ。おまえとバーのトイレでしたときに治ったんだよ、両方」 「ば、バッカじゃないのぉ!?」 と絶叫すれば、レオは舌を這わした。 「や、ァ、それ、やだ……っ」 泉は羞恥に自分の顔を覆った。レオの長い指が、泉が履いたパンツのジッパーを下げ、下着を脱がす。  おれさ、という声がいつもより低く聞こえて、心臓が痛いくらいに脈打った。そっと目を開けば、劣情と興奮を混ぜた色の捕食者の瞳が泉だけを見つめていた。 「おまえにしか興奮できないんだよ、セナ」  反らした首筋に優しく噛みつかれ、泉ははしたなく嬌声を上げた。レオは満足げに目を細め、今度は歯型が残るほど、強めに噛まれる。  レオの汗が泉の鎖骨に落ち、泉のものと混ざっていく。  あちこちに紅い痕が浮かぶ身体を捩れば、強い力で押さえられ、身動きが取れなくなった。  肩で息をしながら、泉はレオを睨んだ。 「明日、撮影なんだから、さぁ……!」 「二年越しのおれとのセックスと、毎日してる撮影、どっちが大事なんだよ!?」 と凄まれて、 「……れおくん、」 と答えてしまった泉の自業自得だ。明日、現場でなんと言われるか分からない。  しかし、あっという間にそんなこともどうでもよくなる。  触れる汗ばんだ肌はレオのものでしかない。その汗の匂いも、獣じみた深緑の瞳の光も、二年前となんら変わっていなかった。舌は煙草の味がするし、苦しそうに眉を寄せるその表情は、少し大人びたかもしれないけれど。 「あの後、おまえが、あんな男とセックスしてたとか本当にムカつく!」 あんな男、とは、あのカメラマンしかいない。 「俺だって、自分に、腹が立って、る!」 「ねぇ、あいつと何回した? どういうふうに抱かれた?」 「思い出させないでよ、萎える、」 「おまえの口から萎える、とか聞きたくなかった、な!」 「あっ、ちょ、ばか……っ」  意地の悪い目に、背筋が震えた。 「おれとのが、気持ちいいだろ、セナ」 彼の首の後ろに両腕を回して引き寄せ、キスを求めれば、レオはそれに応えた。 「……れおくんがいいに、決まってるでしょ」  それからは、泉にも、レオにも、余裕などなかった。  泉は抵抗さえできず、ただよがって喘いだ。  レオは満足そうに舌舐めずりをし、薄い唇で泉の肌に口付け、強く吸った。そのとき、わざとらしく立てられる、ぢゅ、という音と、レオの熱い吐息を、敏感になった耳が捉え、その毒が全身に回っていく。  長い赤髪を、形の良い耳にかけてやった。彼は、まだ涙の跡が残ったままの、上気した顔を綻ばせた。 「いずみ、好き、愛してるよ」 「俺も、」  愛してる、と答えたと同時に、ふたりで果てた。
 目を覚ましてから、二年越しではなく、三日ぶりじゃないか、と冷静な頭が気づいた。  あぁ、でも、彼はレナードとして泉を抱いていたから、れおくんとのセックスは二年ぶりで正しいのかなぁ、なんて思いながら、隣で眠る彼の頬を撫でた。薄い瞼が震えて、ゆっくりと彼が眠りから覚醒する。微かに揺れたエメラルドが泉を映す。 「……セナ、」  そう呼ばれて、泉は、は、と短く息を吐いた。  何もかもを投げ出してしまいたい。ここから何処にも行きたくない。このままこの瞬間が続けばいい。そう、願った。  気づかぬうちに、涙が頬を伝っていた。レオの指先がそっとそれを拭い取る。  その優しさに、泉は目を閉じて、彼の胸元に頭を押し付けた。レオは黙って、その首の後ろに腕を回す。 「もう、おれ、どこにも逃げない。何があっても、誰が邪魔しても、セナのそばで、セナを愛し続けるよ」  顔を上げた泉の唇に、レオは優しくキスを落とした。 「もう泣くなよ、今日、撮影なんだろ?」 「うん、」 「何時から?」 「夜の六時」 「分かった。朝メシ、食べれる?」 泉が頷くと、彼は裸体を起こした。しなやかな筋肉のついた背中に、いくつもの自分の爪の痕を見つけて体温が上がった。  ふと自分の身体を見下ろせば、至るところに唇の跡が紅く残っていた。腹や背中、脚は百歩譲っていいとしても、腕や手首など人の目線に晒されるところにもお構いなしだ。 「れおくんのばか」 と言えば、ベッドから降りたレオが、え〜?と悪戯っぽく笑う。反省の色など微塵もない。 「だって気持ちよかったじゃん?」 そう言い放った彼に、泉は枕を投げつけた。  レオは慣れた手つきで朝食を作ってくれた。トーストに焼いた目玉焼きを乗せ、軽く塩胡椒を振った。その横に付け合わせのポテトサラダが添えられる。香りのいいコーヒーはマグカップに並々と注がれた。  レオは自分のコーヒーに砂糖を2杯、ミルクを少々入れながら、口を開いた。 「セナが来るって聞いたのは本当だ。あの日、おまえを見かけて、相変わらず綺麗だな、って思った。もしこれで話しかけてもらえなかったら諦めよう、そのまま違う国へ移ろうと思ってた。でも、おまえが泣きそうな顔しておれの名前を呼んだとき、おれはなんてばかだったんだろうって思った」  その言葉に、マグカップを取ろうとした手を引っ込める。 「……じゃあ、なんで、偽名で名乗ったの。れおくん本人だって、言ってくれれば良かったのに」 「……勇気がなかった」  レオは泉の手を離して、目を伏せた。 「おまえに嫌われてたら生きていけないと思った。勝手におまえから離れたおれを許してくれなかったら、って思ったら怖かった。だから咄嗟に別人として振る舞ったんだ」  でも結局、と彼は申し訳なさそうに微笑んだ。 「おまえを苦しめてることには変わりないよな、ごめんな」 れおくん、と呼べば、なぁにセナ、と彼は答える。 「……俺がどんだけれおくんのことを愛してるか、ちゃんと、解ってよ」
8
 「I must apologize to you.(プロデューサーに謝らなければいけないことがあります)」 現場に入った泉の第一声に、プロデューサーをはじめ、スタッフたちは驚いたように目を瞬いた。  泉は視線の中、コートとセーターと、シャツを脱ぎ捨て、上半身を露わにした。  それを見たスタッフたちの何人かは驚き、何人かは苦笑いをした。そんな中で、 「It was a hot night,wasn’t it?(熱い夜だったんだねえ)」 とプロデューサーは楽しそうに笑った。 「I want take your skin if you don’t mind.(君が嫌でないなら、その肌を撮りたい)」 その提案に、泉は、安堵の息を吐き、 「Yes, my pleasure.」 と短く答えた。
 「れおくん、頼みがあるんだけど」 真剣な顔で泉にそう言われて、レオは緊張で肩を強張らせ、なに、とだけ返事をした。  ロンドンコレクションの当日。レオはファッション界の重要人物たちに囲まれながらコレクションの始まりを待っていた。泉が見立てたスーツをまとい、短く切った赤毛も美容院でセットしてもらったため、見劣りはしないだろうが落ち着けなかった。そんな中、胸ポケットの中のスマートフォンが震え、泉に呼び出されて、レオは今、関係者以外立ち入り禁止の楽屋にいるのだった。  目の前に立つ泉は、来冬の新作のファーコートを裸の上半身に羽織り、レザーパンツで脚のラインを強調している。化粧もすでに施しており、その美しさは何倍にも際立っていた。  泉はこのコレクションのファーストルック、つまり、最初にランウェイを歩く、という大役を務める。そこから業界からの泉に対する期待が窺えて、レオは泉を誇らしく思ったし、泉の他に適役はいないだろう、と思った。  その姿に見惚れていると、 「聞いてる?」 と足を踏まれた。 「痛い! ……ごめんって、セナがあんまり綺麗だから」  彼の横髪に伸ばそうとした手を掴まれ、そのまま楽屋を出てトイレへ向かった。個室に入って後ろ手で鍵をかけた泉を、レオは見つめることしかできない。 「あの〜、セナさん、もう、あの、出番まで三十分くらいしかないのでは……?」 三十分じゃ終われないけど、というレオの言葉は泉に塞がれた。 「キスマークつけて、」 「……は?」 早く、と彼はコートの前を開けて胸元を晒した。  レオは泉に問いただすことをやめ、彼の言う通り、胸元に口付けた。  泉の細い腰を掴んで引き寄せると、コートの下の肩がびくりと小さく跳ねた。  ぢゅ、という音を立てて皮膚を吸えば、紅い痕が残った。胸から鎖骨、それから首筋、耳朶を食んで、最後に唇にキスをした。下唇に歯を立てれば、泉の長い睫毛が震えた。  顔を離すと、お互いの濡れた息が絡み合って消えた。涙が滲んだ瞳でレオを見つめながら、泉はコートを着直した。 「……セナ、どうしよ、」 「なに、」 「勃った」 泉は照れたように、バカ、と呆れ笑いしながらドアを開ける。その笑った顔は、初めて出会った頃からちっとも変わっていなかった。 「……俺の出番に間に合うようにしなよね」  そう言い残して、さっさと出て行ってしまった。あまりにも横暴だ。でも、これが二年間の罰だとしたら、あまりにも甘すぎる。  あと二十分か、と腕時計を確認して、もう一度個室の鍵を閉めた。鼻腔には、泉の香水の匂いがいつまでも残っていた。
 観客席の照明は落とされ、中央に通る広いランウェイだけが照らされる。スタイリッシュな音楽が流れ出し、観客たちは皆スマートフォンを取り出し、その内蔵カメラを、世界中から集まったカメラマンたちは大きな一眼カメラをランウェイへ向けた。  ひとりのモデルが舞台に上がる。一斉にシャッターが切られ、フラッシュの光が彼を照らす。  決して高いとは言えない背でも、その身体には一切無駄がない。セットされた銀色の髪、ルージュを引かれた形の良い唇、まっすぐ前だけを見つめる薄青色の宝石のような瞳、ファーコートの前立てから覗く肌に点々と残された紅。  ランウェイの突き当たりで、彼はファーコートをはだけさせてみせた。蠱惑的で挑発的な笑みを、その美しい顔に浮かべて。  踵を返し、舞台へ戻る彼が一瞬だけ、レオの方を見た。その流し目に、レオは思わず息を呑んだ。 「Who is he?(彼は誰?)」 隣に座っていた女性が、連れの男性に問い掛ける。その男性は泉から目を離して彼女に答えた。 「He will be next top model. He is Izumi Sena,Japanese model!(次のトップモデルだ。イズミ・セナだよ、日本のモデルさ!)」  そうしてショーの直後に、あるブランドが公開した写真は、各界から絶賛された。  モノクロ加工が施され、色づいているのは澄み渡ったブルートパーズの瞳と、肌に刻まれた微かに見える官能的な赤いキスマークだけ。デザイナーの手書きでブランドのロゴとテーマが綴られた黒色の背景に、白い肌と身体を模る線がよく映えている。素肌にファーコートを羽織り、カメラから視線を外しているのは、日本人モデルだ。その美しさと危うさに、誰もが息を呑んだ。  期待の新星、瀬名泉に世界中が心を奪われたのだ。
 改札に向かう人々が足早に歩く。その足音と電車の出発を知らせるアナウンスが壁や天井にぶつかり、はねかえり、またぶつかって、絶えることなく駅を満たしていた。  その人混みの中に紛れて、ふたりは歩く。横に並んで歩いていたレオが急に立ち止まったことに気づくのに二秒かかって、その分遅れて泉は振り返った。  レオの目線は、壁の広告だけに注がれていた。少しだけ踵を返し、相変わらず細い手首を掴みながら、ちらりとその広告を見る。 「セナだ!」 まるで隠された宝物を発見した子供のように、レオは無邪気に笑った。 「うん、そうね。分かったから早く歩いて!」  足早に歩くサラリーマンや学生のうちの数人が、広告の前で立ち止まるふたりを煩わしそうに見ては、その横を通り過ぎていく。  泉はレオの手首を掴んだまま、出口に向かって歩き出す。 「ただでさえ電車が遅れて、あいつら待たせてるんだから急がないと」 「確かにあいつらには早く会いたいなぁ!」 「だったらさっさと歩く!」 しかし、レオが名残惜しそうに、泉が映った広告を振り返って見ているのが分かる。  一度強く手を引けば、レオは驚いたように泉を見た。 「……本物が隣にいるのに、満足できないわけぇ?」 嫌味ったらしく言ってやれば、レオは楽しげに笑った。 「どっちのセナも見てたいんだよ」 なんて言うのだから、やはり、レオの方が一枚上手だ、と思ってしまった。
 ふたりが着いた頃には、他の三人はすでに席についていて談笑していた。 「も〜、遅いわよ、『王さま』、泉ちゃん!」 子どもみたいにわざとらしく両頬を膨らませた嵐を、泉は呆れた目で一瞥する。 「電車が遅れてるって連絡したでしょぉ」 「俺たちは待ちくたびれちゃったんだけど〜」 凜月は頬杖をつきながら、司からメニューを受け取った。 「ともあれ! 久々に先輩方とこうして集まることができて嬉しいです!」 と、司はまだあどけなさが抜けない顔でレオと泉に笑いかけた。  泉とレオの帰国の報せを聞いて、五人で集まろうと言い出したのはもちろん司だ。自ら寿司屋の個室を予約し、五人のスケジュールを考慮しつつ日程を決めたのも司だった。 「leader、今までどこでなにをしていらっしゃったのか、ちゃんと説明していただきます」 レオの腕を掴んで自分の隣に座らせる司の背丈は伸び、精悍な顔つきになっていた。高校を卒業して二年が経つ。大学に行きつつ芸能界の仕事もこなすことが、彼をここまで成長させたのだろう。  レオは、そんな司に呆れたように溜息を吐きながら、さっそく日本酒を注文していた。 「聞いているのですか、Leader!」 「まぁまぁ、司ちゃんもなにか飲むでしょう?」 興奮気味の司の隣に嵐が腰を下ろしてそう宥める。  そんな彼らを見ていると、 「セッちゃんはこっち〜」 と、凜月に横から腕を引かれた。 「なぁに、くまくん」 「『王さま』とは向こうで散々イチャついたんでしょ」 「ちょっと、そういう言い方やめてくれない?」 横目で睨めば、凜月は楽しそうに笑った。  注文していたアルコール類が来て、機嫌を直した司が音頭をとる。 「それでは、Leaderと瀬名先輩の帰国と、Knightsの再結集に、乾杯!」 「かんぱ〜い」 グラスやお猪口を合わせ、冷たいそれらを飲む。泉の頼んだウーロンハイは飲みやすく、この一杯だけにしておこう、と思った。  凜月は慣れた手つきで自分のグラスに二杯目の日本酒を注ぐ。  泉と凜月の向かいに座る三人は、さっそく寿司に箸を伸ばしている。数貫を確保すると、凜月は、 「じゃあ本題ね」 と声を潜めた。 「いいもの見せたげる」  凜月はにやりと意地の悪い笑みを浮かべながら、嵐のカバンから新聞を取り出した。どうせ、コンビニで買ってからこれを入れるカバンを持っていないことに気づき、嵐��持っていてもらうように頼んだのだろう。  でもなんで新聞なんか、と疑問を口に出そうとした泉の前に、一面が広げられた。 「これ、読んだ方がいいよ」  凜月が指差したそこに大きく書かれたのは、”有名カメラマン、モデルらへの性的暴行で逮捕”の文字。その下には見覚えのある男の顔写真があった。 「別れて良かったねぇ、セッちゃん」 にやりと笑う凜月に、泉は眉間にしわを寄せながら、新聞を手にとってその記事を読む。  一緒に撮影していた男性モデルの複数人を襲ったらしい。被害者は皆新人モデルだというから、きっと、逆らったら仕事がなくなる、とでも脅されたのだろう。被害者の何人かが被害届を出したことで明らかになったそうだ。 「怖いのはさ、セッちゃんと別れてから、急にだからね」 「そうだねぇ」  素直に頷けば、凜月は物言いたげに目を細めた。その虹彩の色は昔とまったく変わっていない。それだけじゃない、その風貌も18歳の頃とあまり違わない。  なにを言うでもなく、黙ってお互いを見つめていると、向かいから低い声がした。 「リッツ、」 は、と振り返れば、猪口に日本酒を注ぎながらレオが言葉を続ける。 「近すぎ」 凜月は悪戯を咎められた子どものようにぺろっと舌を出して、ごめんね、と謝った。  レオが顔を上げて、泉を見た。長い前髪の間から緑色の瞳が覗いた。その光に、泉はすぐに目を逸らす。ドク、ドク、と心臓がうるさく脈打った。  特別なステージの上や、幾度も重ねてきた夜に、泉だけに向けるそれだったから。  なんで、今、と鼓動が速まっていく。レオに向けられた熱がじわり、と泉を侵食していく。  それに気づかないふりを装って、泉は凜月からお酌してもらった日本酒を喉に流し込んだ。
9
 五人揃った飲み会は午前十二時ちかくにお開きとなった。司は家の使用人の、凜月は兄の、嵐はマネージャーの車で帰っていった。  なんとなく、レオと泉は迎えを呼ばなかった。どちらからともなく、ふたりは歩き出した。  夜の東京は明るかった。ロンドンのものとは違う人工の光が、今は止んだ雨で濡らされたコンクリートを照らす。 「三人とも相変わらずだったなぁ」 「れおくんは会うの二年ぶりだもんね」  頷いたレオは楽しげに笑う。その笑顔が相変わらず眩しくて、泉は目を伏せて微笑んだ。 「スオ~もすっかりでかくなって……」 「あいつ、れおくんが卒業式に来なかったこと、相当怒ってたよぉ」 「うん、説教された。最後らへんはほとんど呂律が回ってなかったけどな」 下戸の司は、レオに負けまいと意地を張っていつも以上に飲んでいた。崩れた敬語には、彼本来の子供らしさが露わになっていて、レオは微笑ましそうに司の説教を聞いていた。  スクランブル交差点の信号は赤だった。大勢の人々に紛れるようにして、泉とレオも立ち止まる。  通り過ぎていく車の窓に、ビルの光が反射した。タイヤの擦れる音に紛れて、繁華街のざわめきが聞こえてくる。  信号待ちをする若い女性たちの何人かが、スマートフォンの内蔵カメラを目線の先の大型モニターに向けていた。  それに、映像が映し出される。  数年前に日本進出を果たし、若者たちから人気を集めているイギリスの有名ブランドの広告だった。  ひとりの男がカメラを睨む。その細められた薄青色の瞳に、彼女らは溜息を吐いた。 「瀬名泉、ほんとかっこいいよね」 「それね〜、なんであんなに美人なんだろ……」  車が停まり、歩行者用の信号が青に変わる。仕事終わりのサラリーマンや、飲みに来ていた大学生たちが重い足取りで交差点を渡る。  レオと泉も、その人の波に押されるように歩き出した。 「美人だって」 レオが陽気に笑いながら、泉の顔を覗き込む。 「言われなくても分かってるでしょ」 そう言い返せば、うん、と彼は泉の手を取る。そんなふたりを、誰も見咎めはしない。 「おれがいちばん分かってる」 素面で言うのだからずるい、と思う。レオは酒に強いうえ、今日はそれほど飲んでいなかった。その顔にアルコールのせいの赤らみなどはない。  どこまで歩く、とは尋ねなかった。レオが満足するまで着いていこう、と思った。  ただひとつ分かるのは、二年前まで一緒に暮らしていたあのマンションの方向に向かっていることだけだ。 「セナ、あの家、売ってなかったんだな」 「俺の家なんだから売るわけないでしょ」 「でも、二年間の間、ほとんどあのカメラマンの家にいたんだろ」 「まだあいつの話する?」  するよ、と彼は言う。 「まだおれは怒ってるもん」 「俺だって、置いていかれたこと、まだ根に持つからねえ、レナード」 そう呼べば、彼は困ったように眉を下げて笑った。 「じゃあお互い様だ」  繋いだ手は熱い。彼が寒そうに吐いた息は白く、闇に溶けるようにして消��た。  人気のない跨線橋の上で、レオが立ち止まった。彼の目線の先、細い線路が延びていた。そびえ立つビル群、その屋上では赤いランプがゆっくりと点滅していた。  真冬の透明な空気のおかげで、ふたりを取り囲む世界は美しく、鮮明だった。  唐突に腕を引かれ、唇が重なる。  彼らの下を、電車が通過した。 「……また、撮られるよ」  冗談めかしにそう言えば、レオは細めた瞳で泉を見上げた。 「そうしたら、ふたりで駆け落ちしよう」 その表情がひどく真剣で、泉は目を逸らしながら、ばか、としか言えなかった。 「おれだけのセナだったのになぁ」 なんて言いながら、レオは泉の顎をなぞる。 「……俺は、昔も今も、あんたのものでしかないよ」 そう言い返せば、彼は驚いたように瞬きした。まっすぐに伸びたまつげが震えるように揺れた。  レオの右手が首の後ろの方に回って、もう一度、そっと顔を近づけられる。  泉は黙って、優しい口づけを受け入れた。  唇を離したレオは、愛おしそうに泉を見つめた。 「……セナに出会えて良かった」  絡めた指先から伝わる熱も、昔から変わらないその眼差しも、泉は心の底から愛している、と思った。 「愛してるよ、セナ」 「……俺も、」  恥ずかしさにその胸元に頭を埋めれば、どく、どく、とレオの鼓動が静かに聞こえた。レオが笑えば、その肌が震えた。  彼の心臓が作り出すリズムに身を委ねるように瞼を閉じる。  最終電車が金属音を立てながら、轍を残していく。その音と窓から漏れる光が遠のいていった。  瞼の裏に思い浮かぶのは、この電車が行き着く先————夢の残骸が散らばった砂浜と、その先に広がる大きく青い海だ。  きっと、あの水平線の向こうから、永い夜の終わりがやってくる。  終わらないでほしい、と願った幸せな夜も、哀しみと息苦しさに首を絞められた夜も、レオと熱い肌を触れ合わせ抱き合った夜も、ひとりで冷たい布団にくるまり目を閉じた夜も、いつだって永遠を感じさせた。  けれど、それとは裏腹に、夜は明ける。泉の幸せにも、涙にも、素知らぬ顔をして。音さえ立てず、ただ新しい光を引き連れて。  そんな夜明けが来るのを、寂しい、とも、待ち遠しい、とも思う。  赦されるとか、赦されないとか、世間の目とか世論だとか、そんなことはどうでもよかった。  この男が好きだ。  月永レオを愛している。  今はただ、それだけでいい気がした。 「セナ、」  絡められた指先が、切ないほど愛おしい。  手を引かれて立ち上がる。夜風に彼の赤毛が靡いた。  星の見えない夜に、レオの瞳だけが優しい輝きを放ちながら、揺れた。 「帰ろう」  れおくんがそばにいる、ただ、それだけでいい。  そう思いながら、温かい手を握り返した。  永い夜が、ゆっくりと、静かに、深まっていく。
◇ 20171210
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honyade · 5 years ago
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西崎憲 × 日和聡子 × 竹田純トークイベント「書下ろしアンソロジーをつくること」 『kaze no tanbun 特別ではない一日』(柏書房)刊行記念
【ジュンク堂 池袋本店】 10月25日発売の、書き下ろし《短文》アンソロジー『kaze no tanbun 特別ではない一日』刊行を記念して、編著者の西崎憲、詩人・作家の日和聡子、柏書房編集の竹田純の3名によるトークイベントを行います。 執筆依頼から書籍の完成までを振り返りつつ、現代最高レベルの書き手17人による収録作品や「特別ではない一日」というコンセプト、そして「小説でもエッセイでも詩でもない」という《短文》ジャンルについて、三者三様の視点からざっくばらんに語り尽くします。
【講師紹介】 西崎憲(にしざき・けん) 作家、翻訳家、音楽レーベル主宰。 『ヘミングウェイ短篇集』『ヴァージニア・ウルフ短篇集』などを刊行。第14回日本ファンタジーノベル大賞を受賞(『世界の果ての庭』)。 歌集に『ビットとデシベル』。 『文学ムックたべるのがおそい』編集長。 「dog and me records」と「惑星と口笛ブックス」を主宰。 日本翻訳大賞選考委員。 運営する「ブンゲイファイトクラブ」が開催中。
日和聡子(ひわ・さとこ) 詩人、作家。 詩集に『びるま』(��原中也賞)、『風土記』、『虚仮の一念』、『砂文』(萩原朔太郎賞)など。 小説に『おのごろじま』、『螺法四千年記』(野間文芸新人賞)、『御命授天纏佐左目谷行』、『校舎の静脈』、『チャイムが鳴った』などがある。
竹田純(たけだ・じゅん) 柏書房・書籍編集者。 遠藤雅司『歴メシ!』、金井真紀、広岡裕児『パリのすてきなおじさん』、はらだ有彩『日本のヤバい女の子』、かげはら史帆『ベートーヴェン捏造』、劇団雌猫『だから私はメイクする』、山下泰平『舞姫の主人公をバンカラとアフリカ人がボコボコに(略)』などを担当。
開催日時:2019年11月02日(土) 19:00~
★入場料はドリンク付きで1000円です。当日、会場の4F喫茶受付でお支払いくださいませ。 ※事前のご予約が必要です。1階サービスコーナーもしくはお電話にてご予約承ります。 ※トークは特には整理券、ご予約のお控え等をお渡ししておりません。 ※ご予約をキャンセルされる場合、ご連絡をお願い致します。(電話:03-5956-6111)
■イベントに関するお問い合わせ、ご予約は下記へお願いいたします。 ジュンク堂書店池袋本店 TEL 03-5956-6111 東京都豊島区南池袋2-15-5
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kizi-letter-blog · 7 years ago
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好きな本について
Twitterで「尊敬する作家は?」と聞かれ改めていろんな本を見返すと、私はたくさんの人の作品が好きでした。なので、今回はその内何作か(という量じゃないけれど)語ろうと思います。(一部敬称略)
   「バースデー・プレゼント」(角川文庫「眼球綺譚」より、綾辻行人作)
  まず綾辻さんの代表作「十角館の殺人」。私は微々たるものですが現代で流行ったミステリは読んでいます。その中で最も記憶に残るトリック、ばらし方です。綾辻さんの作品はどれも最後の、ただでは終わらせないどんでん返しが素晴らしいのですが、これもとある一文で真相に気付き、読者に鳥肌を立たせます。おすすめです。
この作品で綾辻さんが好きになり読むようになったのですが、一番のお気に入りは上記通り「バースデー・プレゼント」です。
「眼球綺譚」は仄かにミステリが香る幻想小説短編集となっていて、「バースデー・プレゼント」も不思議な話です。踏切の「かぁん、かぁん」の音、20歳の「私」が見た夢、そして作中のバースデー・プレゼント。それらが織りなす幻想的な雰囲気は中毒になります。
特に好きな場面は、
 「ひとつはわたしの右手を。わたしが書いたすべての罪深い文章のために」
 ここから淡々と続くシュプレヒコールです。どの言葉も大好きで、ここだけでも何度も読み返してしまいます。
「バースデー・プレゼント」は夢の話のように、すごく惑わされる話です。私の印象としては、赤黒い夢の中、話が終わっていきます。ぜひ。
    「京に着ける夕」(角川文庫「文鳥・夢十夜・永日小品)より、夏目漱石作)
  日本の文豪、夏目漱石は「坊ちゃん」「吾輩は猫である」「こころ」���どが有名ですね。私は、もっと短編が注目を浴びてほしい、とも思います。
 もちろん「夢十夜」「文鳥」とても好きです。しかし、この本の最初に載っている「京に着ける夕」もおすすめです。なんてことない、寒い時期に京都に泊まった私小説なんですが、表現が素晴らしい。冬の寒々とした、でも汚くない、どこか漂う厳しさが、連なる単語から伝わってきます。
特に、
「あたかも三伏(夏の猛暑の期間をさす)の日に照り付けられた焼石が、緑の底に空を映さぬ暗い池へおちこんだようなものだ」
「陰気な音ではない、しかし寒い響きである」
このふたつの文が好きですね。内容よりも、紡がれる単語を楽しんでほしい作品です。
    「決闘戯曲」(角川文庫「千年ジュリエット」より、初野晴作)
  「ハルチカ」という題で確かアニメ化しましたね。それの原作です。ハルチカシリーズ4作目。
この人の作品は、地の文とセリフの離れ方が結構独特に感じます。クセはありますが、慣れるとそのテンポ良さが楽しいです。
内容はライトですが、ミステリーはどれもびっくりするものばかりです。中でも「決闘戯曲」はすごい。
話の内容はざっくり言うと、文化祭で行われる劇の台本の答え部分が分からないから、それを解こう! というものです。
この作品で問われるミステリーは、
・参加する1人が、右目が見えず、左手(利き手)が使えない状況で行われる決闘
・決闘内容は、弾丸が一発のみ装填された拳銃で、お互い背後に立ち、5歩歩いたのちに振り向いて銃を撃つ
・右目が見えない、左手が使えない彼はどうやって生き残るか?
一見生き残る確率は絶望的。しかし彼らはとある方法で生き残ります。その意志の強さに鳥肌が立ちます。ぜひ。
     「手作りチョコレート事件」(角川文庫「遠まわりする雛」より、米澤穂信作)
  「氷菓シリーズ」の4作目であり短編集。他の巻以上に登場人物の心情に焦点が近いので、とても好きな本です。と言ってもこのシリーズはジャンルがミステリーであり、この短編集でも推理がちりばめられております。
里志、という登場人物がいますが、彼の気持ちが少し書かれる話。この話で私は全巻揃えることを決意しました。悩むことが、なんというか、学生らしさが胸を打って。これは失礼な言い方ですね。ただ本当に好きで。
好きだ、という理由を上手く言い表せません。しかし好きです。とても読みやすいですから、心からおすすめします。ぜひ。
    「恋と禁忌の述語論理」(講談社NOVELS、井上真偽作)
  第51回メフィスト賞受賞作。(ちなみにメフィスト賞、どれもこれも個性的で面白いです。西尾維新もこれを取っていますし、高里椎名、高田崇史、森博嗣なども受賞しております。読もう)
こちらもミステリですが、トリックの暴き方が論理学を使ったもので、斬新です。数学嫌いでも楽しいと思います。比較的説明も分かりやすく、一見完全犯罪に見えた行為が理詰めで考えていくとぽかりと穴が開く、その感覚が楽しいです。
もっと有名になれ、と心から思う作品です。
     「きらきらひかる」(新潮文庫、江國香織作)
 こういう優しい話が好きです。実は現代作家で女性(ペンネームから明らかに女性と感じる方)はあまり読んできていなかったのですが、大好きになりました。本屋でふらっと買った本ですが、一切後悔しておりません。
最後の締め方は、「ああ、みんな幸せになれ」と素直に思います。春の太陽の日差しを思い出す、暖かい作品です。ぜひ。
     芥川龍之介
 ちょこちょこと好きな作品があるので、まとめて書きます。
  ・「歯車」
こういう私小説が好きなんですよ。ぐるぐる悩んで、思考が見れる、こういう作品。
  ・「地獄変」
高校の古典でも登場する、宇治拾遺物語「絵仏師良秀、家を焼くるを見て喜ぶ事」が元ネタであることは有名ですが、それで知った気になり読まないのはもったいない。火に焼かれるシーンは、一字一字想像しながら読むと絶句します。
  ・「蜜柑」
全てモノクロの世界だったのに、少女が電車から投げる蜜柑で色が変わります。その変わりようが大好きです。色の変化を感じるためにも、冒頭がどんなに退屈でもしっかり読んでほしいと思います。その後の蜜柑で感じる色の暖かさは、思わず読みが止まるほどです。
     「智恵子抄」(高村光太郎作)
  「千鳥と遊ぶ智恵子」「レモン哀歌」が有名でしょうが、その2作が好きです。特に「レモン哀歌」は、
 「がりりと噛んだ」
「トパアズいろの香気が立つ」
 から、レモンの清潔さがまざまざと浮かびます。狂気を汚いと思わせない、どこまでも静謐で崇高な様子がため息をつくほど綺麗です。今は文庫本も出ていて(新潮文庫など)買いやすいので、ぜひ。
     太宰治
  「人間失格」で、自殺、暗い、死にそうになる、そんなイメージしかないからと、他の作品を読まないのはもったいないです。「走れメロス」もこの人の作品なんですよ。ちょっと他のも読んでみようかな、って思いませんか?
こちらも好きな作品があるので数作紹介。
  ・「葉」(新潮文庫「晩年」より)
 小説にならない、イメージの断片が転がっている短編。特に最初の段落のものが好きです。
  ・「秋風記」
 Kと「私」の、退廃的で明るくしようとしている会話が好きです。
  ・「畜犬談」
 笑って読んでいましたが、最後に、真面目に読まないと悪いな、という気になります。
  ・「姥捨」
 自殺決行前夜後の話。彼らは死にませんが、その日常に戻っていく感じがリアルで何度も読んでしまいます。
  太宰治は、「駆け込み訴え」が一番わかりやすいかと思いますが、話口調で紡がれる文章が読みやすいです。思考を文にした感覚で、一緒に考えている気分になります。そして、使う言葉がまた、読者の胸に引っかかるものばかり。だから私は彼の作品が好きで、いくつも読んでしまいます。
     萩原朔太郎
  この人はイメージがすごい。使う単語がすごい。私が踏み込んでこなかった世界を広げてくれました。好きな作品を紹介します。
  ・「笛」
 あの冬空の、高く青い空が見事に表現されていると私は思います。感動しました。手書きで何度もノートに書くほど感動しました。こういう表現力を身につけたいです。
  ・「最後の奇蹟」
 「毛がはがね」「ゆびが錐」なんて思いつきますか。結びつける想像力がすごい。
  ・「死なない蛸」
 散文詩ですが、あの、何度も言いますよ。想像力がすごい。
  「夜に吠える」を手ごろな文庫本で出してくれないかな、と思う今日この頃です。
     宮沢賢治
  彼の比喩は科学的なものが多いですが、それがとても綺麗です。
 「ガラスよりも水素よりもすきとおって」
 という一文が「銀河鉄道の夜」でございますが、ただ「透明」と書く以上に、神秘的で、光り輝いていて、とても澄んだ水を想像させます。
このように宮沢賢治(詩が最も顕著に感じられる)の美しい比喩の世界は、疲れている時ほどうっとりします。
 ちなみに、私が彼の作品で好きなものは「よだかの星」です。よだかの嘆きを読むたびに、胸が締め付けられます。
    「キッチン」(福武文庫「キッチン」より、吉本ばなな)
  この柔らかく暖かい言葉、地の文が大好きです。軽々として読みやすく、ともかく暖かい。絶望からも前を向く様子も、決意なんてたいそれたものじゃなくて、暖かい。すごく人間らしさが感じられます。こういう文が書けたらな、なんてちょっと思います。
「満月」もとても好きです。
     長々と書いてきましたが、他にも好きな作家はたくさんいます。高里椎名、高田崇史、有川浩、小路幸也、海堂尊、時雨沢恵一、江戸川乱歩、堀辰雄、野村美月、西尾維新、そして図書館で借りて、今では忘れてしまった本もたくさんあるでしょう。web小説でだって好きな方はいますし、漫画でだって好きな作品はたくさんあります。
 そのどれもに気に入った表現が、気に入ったキャラクターが、気に入ったシチュエーションがあります。尊敬している作家は? と聞かれましたが、いわば多くの人を私は尊敬しています。どれも自分に無いから羨むんです。
  こんなにもたくさんの文章に囲まれていたことを、最近忘れておりました。それを思い出すことが出来て良かったです。
それではこれで一度、筆をおきます。ありがとうございました。
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yaoyuan6478 · 2 years ago
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#mdpgallery #galaxiasomsoc #静電場朔 #静電場朔dian #静電場朔さん #擦主席 (MDP Gallery) https://www.instagram.com/p/ClZyKrQhr31/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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arinkonokuni · 6 years ago
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【CoCシナリオ】ペットは私 PL:蓮川 KP:ありんこ
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KP:【CoCシナリオ】ペットは私 KP:いつもの零課です。そろそろ定時です。 KP:蘭くんはわりとちゃっちゃと帰って、あなたとチーフと凌霄がいます。 野分馬酔木:早く帰るのは良いことだなって思ってます KP:凌霄はソイジョイを並べて居残り体制です。 野分馬酔木:「……凌霄、仕事終わりそうか?」 凌霄 花:「はあ、そうですね、日付が変わるころには」 野分馬酔木:「・・・・・・・・・」 凌霄 花:ソイジョイを種類ごとに並べて満足している 野分馬酔木:「チーフ、凌霄の仕事貰ってもいいか?」ちーふーーーーーこの人また残業する気だよ! 凌霄 花:「ちょ、」 凌霄 花:「やめてください」 福寿朔太郎(見学):「ああ、手伝ってやってくれるか?」 凌霄 花:「いいですから!」 野分馬酔木:「ああ」ソイジョイをたおさないようにしながら自分の出来そうな仕事を取っていきます 凌霄 花:「やめてください!!なんですか!!」 野分馬酔木:「残業、良くない」 野分馬酔木:「明日に響くぞ」 福寿朔太郎(見学):「あまり残業が多いと上に目を付けられるからな」 凌霄 花:「いいんです!!私は!別に慣れてます!!」 野分馬酔木:「労働基準法を公務員が守らなくてどうする」 福寿朔太郎(見学):「自分だけの問題だと思ってるのか…?」 凌霄 花:「うるさい!夜中の出動に対応できるからいいんです!」 野分馬酔木:じ・・・・・・ 凌霄 花:「…」むぅ 福寿朔太郎(見学):(仕事を減らしてやったほうがいいな…) 凌霄 花:「だ、だいたい、私が一番年上なんですよ、別に一杯仕事して何が悪いんですか」 野分馬酔木:「時間内で自分の終わらせて帰る方が、年下にとっていい影響を与えるんじゃないか?」 凌霄 花:「蘭は私みたいになりたくないってさっさと帰るからいいじゃないですか」 福寿朔太郎(見学):「残るなら10時くらいまでにしておけよ」 凌霄 花:「わかりました、チーフ」 野分馬酔木:「分かった福寿」一緒に残る気 野分馬酔木:さっき取った書類抱えてデスクに戻ります 凌霄 花:「野分さんも帰ってくださいよ!」 野分馬酔木:「その山を半分は片付けたらな」 福寿朔太郎(見学):「…今日は先に失礼する。野分、凌霄あとは頼んだ」片付ける 凌霄 花:「はい!!おつかれさまです!!」 凌霄 花:「も~~~!野分さんは!!なんなんですか!保護者気取りですか!」 野分馬酔木:「ああ、お疲れ」 野分馬酔木:「……そうかもしれない」なるほどって納得した顔をしました 凌霄 花:「納得すんな!!いやですよ!!こんなデカい保護者!!」 福寿朔太郎(見学):ふふ…そんな二人を横目に見つつ先に帰ります 福寿朔太郎(見学):「お疲れ様」 KP:そんなこんなで、悪態をつかれながら仕事をこなしました。 KP:貴方も疲れ切って家に帰り、「明日休日だな…」って思って、就寝します。 野分馬酔木:おやすみ・・・・・ KP:【アイデア】 KP:目を覚ますと、見知らぬ部屋にいた。どうやらマンションの一室のようで生活感のある家具が並んでいる。 KP:ふと、身を起こしてみると首に違和感がある。 KP:触ってみたところ、探索者は自身が首輪をつけられていることに気づく。SANC0/1 野分馬酔木:「?」っておもって触ってみます 野分馬酔木:CCB<=60 【SANチェック】 Cthulhu : (1D100<=60) → 48 → 成功 野分馬酔木:「!?」困惑 KP:それに動揺していると、背後で扉が開く音が聞えた。 野分馬酔木:振り返ります 野分馬酔木:バッ KP:そこから入ってきたのは凌霄です。 KP:探索者を見て少し目を見開いた後、頬を緩ませて探索者に近づいてきた。 KP:そしておもむろに手を伸ばすと 凌霄 花:「かわいーーー!!!」 凌霄 花:わしゃわしゃー KP:わしゃわしゃと可愛がるように撫でてくる。 野分馬酔木:「??? の、凌霄…?お前、どうした……?」 野分馬酔木:困惑 凌霄 花:「大人しいなぁ…」ぎゅ 野分馬酔木:目の前にいるんは筋肉だるまやぞ KP:抱き着いてきました KP:Fカップです 野分馬酔木:Fかっぷが・・・・・Fかっぷが・・・・・ 凌霄 花:「へへ、今日はよろしくね」 野分馬酔木:「な、なにが…?」困惑の極み 凌霄 花:「うーーん!!小首かしげてかわいいなーー!!もう!!」ほおずり 野分馬酔木:「???」 野分馬酔木:「いや、おちつけ凌霄……!」 野分馬酔木:手とか使って軽く体をポンポンする 野分馬酔木:そしてちょっと離れたい 凌霄 花:「えへへ」なでなで KP:離れられます 野分馬酔木:はなれよ 凌霄 花:「あ」 野分馬酔木:「な、なにが起こってるんだ……?」 KP:<リビング> 部屋の中を見回してみると���鏡、猫の玩具、テーブル、ソファー、窓、扉があるのが分かる。また、奥にキッチンがあり、そちらも見ることが出来そうだ。 凌霄 花:「どこかいくの~?」にこにこ 野分馬酔木:(……凌霄、いつもと様子が違いすぎないか?残業のし過ぎで幻覚でも見てるんじゃ…) 野分馬酔木:CCB<=41 【精神分析】 Cthulhu : (1D100<=41) → 16 → 成功 凌霄 花:「…」 野分馬酔木:語りかけます、お前、疲れてたんだな…はやkに気づいてやれなくてすまない…みたいなかんじで 凌霄 花:「…かわいい」 凌霄 花:「もーー!かわいいなーーー!!」ぎゅ KP:Fカップがくっついてきます 野分馬酔木:「な、何故…!?」 野分馬酔木:え、なんで感じで一回鏡とかみに生きたいです。はなしてーー! 凌霄 花:「お話してきてかわいーなー」 KP:○鏡 近づいて覗いてみると、そこには1匹の猫が映っていた。その猫は探索者が動くと同じように動く。 探索者はそれが自分自身であり、KPCにはそう見えているのだろうと分かる。SANC0/1 野分馬酔木:CCB<=60 【SANチェック】 Cthulhu : (1D100<=60) → 20 → 成功 野分馬酔木:「………………、なる、ほどな?」 KP:よくみたら、凌霄���小脇に「ねこのきもち」って冊子をもってますね 野分馬酔木:(これなら凌霄の反応の意味も分かるが 凌霄 花:「ねこちゃん鏡珍しいにゃ?」 野分馬酔木:…いや、何故猫に…?)まさに困惑 野分馬酔木:「いや、珍しくはない、鏡は……」 凌霄 花:「クールだねーきみーかっこいいねー」 野分馬酔木:「いや、そもそも俺は…。…!凌霄、それ、開けてみてほしい」って猫のきもちを指さす?飛んで主張してみる? 凌霄 花:「んー!!おててかわいーー!!!」にぎにぎ 野分馬酔木:俺は野分馬酔木だということを主張したい 野分馬酔木:「…ちがう……」>< 凌霄 花:「ん~~かわいいにゃ~~」 野分馬酔木:こう、飛んで冊子に振れて見ます 野分馬酔木:取りたいなぁ! KP:いいですよ、あっさり取れます 凌霄 花:「それが欲しかったんだ~~ん~~いいよ~~」 KP:当たり障りのないただの雑誌です 野分馬酔木:>< 野分馬酔木:「……雑誌だった、すまん凌霄」お返しします 野分馬酔木:渡した 凌霄 花:「かえちてくれるの~うれしい~」笑顔でなでなでします 凌霄 花:鼻歌を歌いながらソファに座ります 野分馬酔木:(・・・・・、これ俺がもとに戻った時凌霄大丈夫なのか」 野分馬酔木:) 野分馬酔木:でも今のうちにいろんな所見て回ろうと思います。 野分馬酔木:元に戻るという強い意志 KP:いいねいいね 野分馬酔木:テーブルを見に行きます KP:○テーブル テーブルの上にはいろいろな雑誌や新聞が雑多に置いてあるのがわかる。 野分馬酔木:CCB<=69 【目星】 Cthulhu : (1D100<=69) → 62 → 成功 KP:【目星】それらの雑誌類に隠れるようにメモが置いてある。 KP:*メモ「解除の鍵は眠りの下に」 野分馬酔木:(解除の鍵、玄関の扉とかか?) 野分馬酔木:じゃあ窓! KP:○窓 近寄ってみると、ベランダがある。窓は開いており、心地よい風が探索者の頬を撫でた。 ベランダには鉢植えが置いてある。 野分馬酔木:じゃあ、来たついでなので行きます KP:*鉢植え 鉢植えには白いポピーが植えられている。鉢植えは重く、自力で動かすのは難しそうだと分かるだろう。 野分馬酔木:CCB<=1 【生物学】 Cthulhu : (1D100<=1) → 36 → 失敗 野分馬酔木:CCB<=(18*2) 【STR】 Cthulhu : (1D100<=36) → 60 → 失敗 KP:うごかない… KP:重いぞうーん 野分馬酔木:「……よっぽど重たい鉢植えなんだな…」ううん 野分馬酔木:じゃあ、もどって扉に向かいます 野分馬酔木:うそ!猫のおもちゃ見ます! KP:○玩具 鼠や羽根、ボールなど様々な玩具 KP:玩具を見たら【POW×4】 野分馬酔木:CCB<=(12*4) 【POW】 Cthulhu : (1D100<=48) → 40 → 成功 KP:成功→玩具がとても魅力的なものに見えて近づいたものの、見知った仲であるKPCの前で、はしたない真似はしたくないとぐっとこらえることが出来た。 野分馬酔木:(……いや、さすがにまずい。あぶなかった…) 野分馬酔木:離れよう 野分馬酔木:じゃあソファーに凌霄さんが座ってるので、扉に向かいます 野分馬酔木:(傷が浅いうちに元の姿にもどらないと…) 野分馬酔木:えーー廊下に向かいます 野分馬酔木:CCB<=(60/2) 【幸運/2】 Cthulhu : (1D100<=30) → 34 → 失敗 KP:あかないなぁ… 野分馬酔木:>< 野分馬酔木:寝室に向かいます KP:幸運の半分です 野分馬酔木:CCB<=(60/2) 【幸運/2】 Cthulhu : (1D100<=30) → 15 → 成功 野分馬酔木:あいた! KP:<寝室> 4畳ほどの寝室。ベッドと本棚が置かれている。 野分馬酔木:「開いた…」ほっ 野分馬酔木:じゃあ、このじょうたいを何とかしたいので本棚に行きます KP:目星か図書館 野分馬酔木:CCB<=25 【図書館】 Cthulhu : (1D100<=25) → 52 → 失敗 野分馬酔木:CCB<=69 【目星】 Cthulhu : (1D100<=69) → 65 → 成功 KP:黒い表紙の本と日記帳のようなものを見つける。 野分馬酔木:じゃあ、日記帳の方を読みます KP:*日記帳 開いてみると、誰かがつづった手記のようだ。日付は一切かかれておらずいつのものなのか分からない。 KP:・最初の方と最後の方の記述の抜粋 「暇だったからそこら辺にいた人間同士を同じ部屋に閉じ込めてみた。片方に首輪をつけて。  何が起こっているのか分からず狼狽えまくってて凄く面白かったww これは良い暇つぶしになりそうだ。飽きるまではこれで遊ぼう。 人間は本当に面白い。狼狽えて相手から逃げ回る者、動物になりきって甘える者、冷静に状況を判断し手がかりを探す者、人によって全然違う行動を示してくれる。 与えられた条件は同じのはずなのにどうしてこんなに面白い反応を示してくれるのだろうか。 そうだ、人間同士に元々関係があったら何か共通の反応をするのかもしれない。 仲の良いものや嫌いあっているもの、様々な関係の者をぶち込んで実験をしてみよう」 野分馬酔木:「………」 野分馬酔木:「……そもそも、人間を猫に出来るってどういうことなんだ」 野分馬酔木:知恵熱が出そう 野分馬酔木:黒い表紙の方をよむ KP:*黒い表紙の本 表紙を見てみると、白い文字で商品カタログと書かれているのが分かる。中を開くと、見たことのない様々な商品の写真と説明が載っており、通販雑誌のようなものであると分かるだろう。 探索者はその中で「気になるあの子に可愛がられたい!そんなあなたにおすすめ!!」と書かれている記事が目につく。 野分馬酔木:「・・・・・・・・・・ 野分馬酔木:」 野分馬酔木:よみます KP:・内容 そこには白、黒、銀の3つのカラーの首輪の写真が載っており、その下に商品の説明が書いてある。 「この首輪をつければあら不思議!あなたの姿をその子の好きな動物に見せることが出来ます。 姿が変化するわけではないので体に害はありませんし、普段通り体を動かすことが出来ます。 それに首輪をつけている限り効果は途切れないので、誤って正体がばれちゃうこともありません! 是非この機会に普段できないことを存分にやっちゃってください!!」 その下には購入はこちら!とかいてあり電話番号が書いてあった。 野分馬酔木:CCB<=69 【目星】 Cthulhu : (1D100<=69) → 17 → 成功 KP:写真が小さいので分かりにくいが、よく見るとそれは自分の首についているものと同じだと分かる。 野分馬酔木:「……これか…」 野分馬酔木:溜息をついた 野分馬酔木:(いったいどういう原理なんだ) 野分馬酔木:試しに外してみようと思います KP:鍵がかかっているようです 野分馬酔木:「……そう簡単には上手くいかないか…」 野分馬酔木:(……そもそも、今この状態でもどったら凌霄が傷つくのでは?) 野分馬酔木:ううんって考えてベットを見ます KP:○ベッド 白い大きな枕が置かれているシンプルなダブルベッド。触れてみるとふわふわで寝心地がよさそうだと思う。 野分馬酔木:「……どちらにしても鍵は探さないといけないか」 野分馬酔木:じゃあ、外に出てキッチンに行きます KP:○キッチン コンロや水道、冷蔵庫などがあるキッチン。掃除が行き届いているのは分かるだろう。 野分馬酔木:鍵!を探したいのでまず順にコンロから行きます KP:*コンロ周り 二口コンロがあり、その一つに鍋が置かれている。 また、調理台の上に猫のご飯入れが置いてある。 野分馬酔木:覗き込みます KP:・鍋 開けてみると中には茹でられたササミが1つ入っている。ほんのり温かい。 凌霄 花:「…あぶないよ…?」 野分馬酔木:「あ……」 野分馬酔木:(そういえば猫の姿に見られてるんだった) 凌霄 花:「行動力あるなぁ…」 凌霄 花:「うちにもすごい行動力のむきむきのがいるんだよ~」なでなで 野分馬酔木:(それ、俺なんだよな) 凌霄 花:「無茶しそうで心配なんだよね…」 凌霄 花:わしゃわしゃ 野分馬酔木:「それは、お前もじゃないか」 野分馬酔木:え、撫で返すけど 野分馬酔木:わしゃわしゃ 凌霄 花:「わかってくれるかにゃ~」 凌霄 花:「ふふ、やわらかくてかわいい」 野分馬酔木:「……そっちも、あんまりむちゃするなよ」 凌霄 花:「よちよち」 凌霄 花:「ササミがあるけどたべたいのかにゃ?」 野分馬酔木:「福寿への罪悪感かは分からないが…、あんまり目の下に隈を作ってると心配になる」 凌霄 花:「うーん、急に不安そうな声だしてるなぁ…御主人がいなくてさみしいのかな…?」 野分馬酔木:「……だからまずは、残業の減少からと思ってるんだがなぁ」遠い目 凌霄 花:「ごめんね?頼りないよね…」 凌霄 花:なでこなでこ 野分馬酔木:「……お前の心配をしてるんだ」 野分馬酔木:ぽんぽんって撫で返しとこ 野分馬酔木:え、ささみはいらないので…冷蔵庫見ます 凌霄 花:「でれた!かわいい!」 野分馬酔木:CCB<=(60/2) 【幸運/2】 Cthulhu : (1D100<=30) → 30 → 成功 KP:あいた… 凌霄 花:「すっごーい!天才!!」ぎゅ KP:中には沢山の食材が詰め込まれていた。その中にパックのミルクを見つける。 KP:・ミルク 表に「ミルク」と描かれてある以外何の表示もない。 それを見ていると、KPCが探索者の手からそれを取り上げ、「喉乾いたよね」とご飯入れに入れて差し出してきた。 野分馬酔木:CCB<=69 【目星】 Cthulhu : (1D100<=69) → 90 → 失敗 野分馬酔木:CCB<=40 【聞き耳】 Cthulhu : (1D100<=40) → 93 → 失敗 凌霄 花:「のむ?」 凌霄 花:じー 野分馬酔木:「……さすがに、ご飯入れからは飲めない…」首をふります 野分馬酔木:迫真で素 野分馬酔木:す 凌霄 花:「のどがかわいているわけじゃないのか…?」 凌霄 花:「ささみは?」ほぐして差し出してきます 凌霄 花:「はい、あーん」 野分馬酔木:「……さ、さすがに… 野分馬酔木:」 野分馬酔木:食材に申し訳ないけど…首を横に振ります…… 凌霄 花:「うーん、苦手だったのかな…」しゅん 野分馬酔木:>< 野分馬酔木:申し訳なくなった 野分馬酔木:(……これは、下手に一人で行動するより何かやってもらいたいかを伝えた方が凌霄の心配も減るか?) 野分馬酔木:じゃあ、「こっちに着いてきてほしい」って言って見れてないソファーに行きます 凌霄 花:「にゃー?」ついていく 野分馬酔木:なにもなかった…… KP:はい… 野分馬酔木:(刑事の勘もまだまだだな)っておもってじゃあ開けれなかった廊下の扉の前に行って 野分馬酔木:「すまないが開けてほしい」 野分馬酔木:って言います 凌霄 花:「ん?出たいのかな? 凌霄 花:難なくドアを開けます 野分馬酔木:「……猫の姿は歯がゆいな」 野分馬酔木:「ありがとう」 KP:廊下ですね。トイレ、洗面所・お風呂、玄関がある。 野分馬酔木:洗面台に行きます KP:○洗面台 洗面台の下には収納棚がある。 収納棚を開けると洗剤や石鹸などが詰め込まれている。 野分馬酔木:CCB<=69 【目星】 Cthulhu : (1D100<=69) → 54 → 成功 KP:【目星】その中に小さな鉄製の箱があるのに気づく。 KP:*箱 箱には鍵穴があり、鍵がかけられている。 野分馬酔木:「……また鍵か」 野分馬酔木:「凌霄、これ持っててくれないか?」 凌霄 花:「か~~わい~~~~!!!!」 凌霄 花:「これ宝箱?うー!!かわいいなーー!!!」 野分馬酔木:「凌霄……」通じてないんだろうなってきもちになりました 野分馬酔木:(まぁ、向こうから見たら猫だしな…) 凌霄 花:「は~~人懐っこくてかわいいな~~」 野分馬酔木:「…………」しばらくされるがままです 野分馬酔木:じゃあお風呂場にしばらくしたら向かいます KP:○お風呂場 ごく普通のお風呂場。蛇口をひねればお湯が出る。 凌霄 花:「おふろはいる?」 凌霄 花:「洗おうか?」 野分馬酔木:「それは、ダメだ」 凌霄 花:「綺麗な毛並みだもんね」 凌霄 花:ジリッジリ 野分馬酔木:首を振ってさっさと出ます…… 凌霄 花:「クールだなぁ」 凌霄 花:ついていきます 野分馬酔木:どうしようかな・・・・ 野分馬酔木:玄関行きます KP:扉に鍵はかかっていなく、とても軽い。普通に自分の力で開けることが出来そうだ。 野分馬酔木:「……鍵はかかってないが」 野分馬酔木:まじ? 凌霄 花:「あーだめだよ、勝手に出たら…」あわ… 野分馬酔木:(……しかし、鍵を見つけずに出るわけにもいかんしな) 野分馬酔木:「ああ、戻る」 野分馬酔木:じゃあもどって、ベランダに連れていきます 野分馬酔木:つれてって、鉢植えどけて! 凌霄 花:「ん?なにかあるのかな?」鉢植えをひょいと持ち上げます 凌霄 花:「白いポピーか~~~わ~~興奮する~~~」 凌霄 花:(不定 野分馬酔木:(……凌霄に軽く持ち上げられるんだな)軽くショック KP:鉢植えの下には白い鍵がある。 野分馬酔木:あったーー! 凌霄 花:「はぁ~~~このどこまでも透き通る白…綺麗…」 野分馬酔木:「凌霄、凌霄」 野分馬酔木:トントン 凌霄 花:「はっ!!」 凌霄 花:「ごめんにゃー!うー…今日はねこちゃんのお世話だったのに…つい…」 野分馬酔木:「しっかりしたか?」 凌霄 花:「よしよし~ありがとうね~~」 凌霄 花:なでこなでこ 野分馬酔木:(……これで癒されるならいいか)と思ってます 凌霄 花:「は~~この胸の所のモフモフたまらんわ~~」胸をもみもみしてる 野分馬酔木:「…… 野分馬酔木:choice[たえる,たえない] Cthulhu : (CHOICE[たえる,たえない]) → たえない 凌霄 花:顔を埋めてすーはーします 凌霄 花:「は~~たまらん~~~」 野分馬酔木:「凌霄、それ以上はお前が傷つく」ひょいって逃げます 凌霄 花:「ああ!!」 野分馬酔木:にげて箱!箱に向かいます KP:箱があるぞ 野分馬酔木:開けれますか? 野分馬酔木:鍵で KP:鍵を開けると、一回り小さな銀の鍵が入っている。 野分馬酔木:うーん、自分の首輪の鍵と会いそうですか?」 野分馬酔木:合う KP:あいます 野分馬酔木:「……どうするかな」 野分馬酔木:いま凌霄さんどこにいますか? KP:ベランダかな 凌霄 花:「にゃーちゃーん」 野分馬酔木:じゃあ、いまのうちに首輪を外します KP:はい、わかりました 野分馬酔木:(ばれる前に外した方が) KP:鍵をはめるとあっさりとはずれました。 凌霄 花:「にゃーちゃーん、どこかにゃ~」 KP:【NyanCat】 野分馬酔木:どうすっかなぁ 凌霄 花:「にゃーちゃーん、どーこーかーにゃー」 野分馬酔木:「凌霄」 凌霄 花:「え」 凌霄 花:「は?」 野分馬酔木:「帰るぞ」 凌霄 花:「・・・・・・・」 凌霄 花:「・・・・・・」 凌霄 花:「え?」 野分馬酔木:玄関を開けます 凌霄 花:「ちょ、」 凌霄 花:「え、」 凌霄 花:「のわき」 凌霄 花:「なぜ」 野分馬酔木:「なんでだろうなぁ」 KP:そしてようやく事態を認識したのか、今まで自分が探索者に行った所業を思い出して顔を羞恥に赤く染め上げると、逃げるようにその場から走り去って行った。 凌霄 花:「うわぁああああ!!!!!!」 野分馬酔木:「おっ、おい!!」 野分馬酔木:追いかけます・・・・ KP:探索者は慌ててKPCの後を追いかけることになるだろう。 そんな探索者の背後では誰かが楽し気に笑う声が聞えた気がした。 KP:*エンド報酬 クリアした     →SAN+1d3 ニャル様を楽しませた→SAN+1d2
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mmcathkmm · 6 years ago
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二魂一體
「君の名前で僕を呼んで」、久々に劇場で映画を観た(シェイプオブウォーターぶり)。
さてタイトルの示すとおり相手と一つになりたいとか、同化したいってどんな気持なんでしょう。恋とかんたんに云い切れて説明できる類のものだろうか?
私が真っ先に思い浮かんだのは、卒業研究対象だった室生犀星と、かれの生涯の友人萩原朔太郎。
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犀星が朔太郎に書いた「萩原に與へたる詩」、オリヴァーとエリオみたい。二魂一体、ふたつの魂が一つの体にあること、そのくらいに一心同体(一心ではないのが面白いね)であること…かれらは詩人でお互いの作品の価値をよく認め合っていたし、製作や交流をとおしての愛だったわけですが、このくらい切実なことばと関係というのは羨ましくもある。
「君の名前で僕を呼んで」はかなり切実な映画で、切実な映画が好きな私はもちろん好きだったわけですが、いちばん美しくて好きだったのはオリヴァーからの電話をとったあとのラストシーン。ずっと静かに涙を零し続けるエリオにフォーカスをあてて撮り続ける一方で、背後では食事の準備が続き(食器の音や人物の動きが意図的に大きく描いてあったと思う)、だれかを失ったり自分の心が死んでしまっても生活は容赦無く続いて行く、という救いようのない事実が美しく表現されておりシャッポを脱いだ。美しい夏から静かな冬へ、窓の外の真っ白な景色、暖炉の火のコントラスト。極めつけは食事の支度ができたのか、家族からの「エリオ」という名前の呼びかけ。ここの呼びかけはゾクゾクした。エリオはオリヴァーからほんとうにエリオに戻って、すなわち生活に、現実に引き戻されるという美しくかなしい仕掛け。決定的に失った、戻ってきたことを自覚せざるを得ない残酷な仕掛け。もうオリヴァーはいない。エリオが振り返って映画は終わる。
スフィアンスティーブンスの透明感溢れる音楽にもめちゃくちゃ情緒を揺すぶられた。
完全に美しく焼け付くような恋の記憶、いいなあ。たしかにそこにあった、美し過ぎる感情と記憶がその人を生かすということ(失うとその時は殺されるくらい辛いと思うんだけど)。そういう瞬間を切り取った作品はいつも眩しい。
二魂一体の相手に出会いたいものである。
もう少しリラックスして感想をいうと、やはり恋をしているときの人間の情緒とテンションは狂っており、おかしいし、完全にコメディなんですが、美しいですね。尊い。偏見のなく頼れる父母や心優しい友人に(マルシアの件はあんまり納得いってないんですけど 未熟な十代が傷つけ合うのはよくあることとしても…)囲まれてますます美しく育ってくれエリオよ(80s感バリバリの髪型と服装が最高だった)。
https://youtu.be/KQT32vW61eI
そしてこのスフィアンスティーブンスの劇中歌。いや何度聴いても美しい。
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basement-6 · 7 years ago
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【今月の一冊】
「さらば東京タワー /東海林さだお 著」
今月もありました。さいきん個人的マイブームが来ている「ショージ君」こと東海林さだおさんのエッセイです。多くのひとは新聞の4コマ漫画「アサッテ君」で知っているんじゃないかな。本業は漫画家の方ですが、食べ物についてのエッセイを書いた「○○のまるかじり」シリーズも有名で、音楽で言うなら「ミュージシャンズ・ミュージシャン」。業界内にも非常にファンが多いようです。
この「さらば 東京タワー」、もくじをさらっと抜粋してみると、「頭のふりかけ購入記」「納豆は手づかみで」「インスタントラーメンとわたし」「オノマトペ大研究」「対談 老人よ、性欲を抱け!」とまあ、すべて書き並べたわけではないですが、面白そうなサブタイトルばかりでしょ。その中で今回は「相田みつを大研究」の中で著者が主張している一説がおもしろかったので、ここでご紹介します。
「相田みつを大研究 名言を量産したっていいじゃないか、書けるんだもの」より
「誰もがそうだと思うが、ふだん、われわれは格言を必要とし��い。諺(ことわざ)も必要としない。そういうものがあるということは知っているが、ふだんは忘れているし、特に思い出そうともしない。『転ばぬ先の杖』という格言を思い出すのは、実際に転んだときである。あるいは転びつつあるときである。『飼い犬に手を噛まれる』は、噛まれたときである。あるいはいま噛まれている最中である。『後悔先に立たず』は、後悔のまっ最中であることが多い。『金の切れ目が縁の切れ目』は、実際にそういう目にあって、まさにそのとおりだなあ、と、つくづく感じながらこの格言を思い出す。こうしていくつかの格言を並べてみると、格言というものは、『後悔先に立たず』が示しているように、これらの不幸に対する予防、あるいは前もってそれらを防ぐ防止策としては役に立っていないことがわかる。(中略)考えてみると、格言は〝不運用〟が多く〝幸運用〟はあまり用意されていないことがわかる。しかし、二回目、三回目の不幸には役立つ。」
氏はここで(※もはやその姿勢の良さや、視点の低さ、自分とのレベルの違い等から『センセイ』と書いたほうが適切なのでは…と思ったりもするが、例に習って今回も『センセイ』呼びはしない。ここで誤解ないように断りますが、僕は学校の先生が嫌いだったからとかで『センセイ呼び』を避けているわけではないです。地元で中学の先生やってる友達いたりするんで、念ために記)格言やことわざの本質をさらっと偉そうにならずに、述べている。確かにそうである。ふだん、僕たちは「そりゃ泣きっ面に蜂だネ」とか、『そんなの焼け石に水だよ」とか、「のれんに腕押しだったな」とかのことわざを言ったりするが、それは、結果が出たあとに、その状況を適切に表す表現方法のパズルのピースのひとつである場合が多い。そしてそれらには、なんらかの「教訓」含まれているから、それは「不運用」である場合が多い。氏は格言・ことわざの実用性に対してのするどい私見を述べた上でこう続ける。
「しかもそこには世の常、人の常、していいこと、してはいけないこと、すなわち真理が含まれている。格言集、諺辞典なる本の出版が絶えないのは、誰もがこのことを知っていて、そのときどきの状況に応じて、自分用のものを探し出して自戒とし、反省の糧として利用しているからなのだ。格言集、諺辞典のほかに名言集というものもある。格言、諺のたぐいは出所がはっきりしないものが多いが、名言集のほうは出所がはっきりしている。名言のほうは、出所が偉い人であればあるほど多くの人に受け入れられる。ソクラテス、デカルトから始まって、シェイクスピア、チャーチル、ピカソ、チャップリン、ケネディ、二宮尊徳、徳川家康、福沢諭吉、そして相田みつを。なぜここに相田みつをが?と疑問を持った人もいると思うが、そう思った人は相田みつをの業績を知らない人である。相田みつをは、格言、名言の量産という意味においては断トツなのである。ソクラテスにしろ、ケネディにしろ、徳川家康にしろ、吐いた名言は生涯に多くて三つか四つ、多くは一人一言と言うのが多いが、相田みつをは無慮数千の名言、至言を書き残しているのだ。」
このあと氏の数ページにわたっての相田みつを論が展開されて行くわけだが、僕は自らの無知を恥じた。相田みつをの詩は(恐らく日本人なら誰もが知っている)「つまづいたって いいじゃないか にんげんだもの みつを」くらいしか知らず、この言葉自体は好きだったんだけど、書体がいささかウェットと言うか、「あったか味」があって、そのあたたかい感じが、恐らく多くの日本人の心を掴んで離さないと思うのだけど、僕は正直言うと苦手だった。僕はどちらかと言うとタイトル「かめ」とかで、書体はこのような(いまあなたが読んでいる書体です)機械で書かれたようなかぎりなく無機質に近いものが好ましい。そのうえで、「かめはね のろのろ うごくのよ」とか、「きをね けづったら べつのなにかになった」とかの(いま自分がテキトーに作ったのと並べるのは恐れ多いが)ドライで無意味に近い詩のほうを好む人間である。まあ、にんげんだもの、人それぞれ好む点は違って当たり前だ。で、ここで「にんげんだもの」の汎用性のすごさに気づくわけなんだけど。
東海林氏も述べているが、相田みつをさんのすごさはこの汎用性とわかりやすさにある。明治時代あたりの萩原朔太郎の詩集なんか読んでみるとわかるけど、大体が読んでわからないことを、わかる。いや、萩原朔太郎の場合も使っている文字自体はすごく簡単なんだけど、その組み合わせ方や「質感」がいささか高いところに居すぎて、正直無学な僕はわからなくなるのだ。そもそも詩は瞬発力の世界である。だから、萩原朔太郎の詩はその瞬発力の高さが評価されているのかな?長い小説は、一夜で天馬駆け天上まで行ってしまって書くことは不可能で、同じ物事を継続して続ける能力が必要となる。僕が今チャレンジしている超短編(日本でポピュラーな単語で言うとショート・ショート)と言われるジャンルは、人にもよるが、わりと詩に近く、「一晩もの」である場合も多い。ただこの「詩」と「短編」は、そもそも義兄弟で、樹はひとつの木ではあるけれど、資質は異なる。ジャンルの提言は無知をさらすようなものだから大まかにしか言えないけれど、詩はそもそも古来から人々の間で詠まれていた「歌」に近く、それを細かい描写により発展させたものが「短編」だと、そんな感じはする。相田みつをからそれてしまっていて、そもそもは東海林さだおさんの本紹介なわけなんだけど、つまりここで僕が言いたいのは、この二者の共通点である。二人とも、格式高く感じられるものを、誰でもわかるように一般的な視点を忘れずにその業績を上げた。質を維持したまま量産する力量も両者通じるものがある。話を戻すと、僕はこのエッセイを読んで相田みつをに対する自身の認識の甘さについて、恥じたわけである。これは僕自身も常に肝に命じているわけだけど、簡単にひとに伝えられそうな言葉ほど、難しい。わかりやすい例が「愛してる」がそれで、僕は嫌いな奴は徹底的に嫌いだけど、基本的にはあまりひとを嫌いにはならない。でも、それを伝えるために僕…だけではなく、文字を使う人間だれしもが、数千、数万、百万字以上使ってみても、まだ伝えられないんである。みんな「国」や「社会」や「習慣」の土地の上で育って来て、信じているものが違うから。つまり「にんげんだもの」はすごいのだ。で着地しそうだけど、これは【今月の一冊】の「さらば東京タワー」の一節なので、もうちょっと書く。
現在七九歳の東海林さんは日本の漫画・エッセイスト界では大御所も大御所で、言わばエライ人のほうに属する(僕は大御所がエライと言っているわけではなく、クソな『大御所さま』は、世の中掃いて捨てるほどいる)。このひと程ぼくら二十代(現在滑り込み二十代だから言ってみたかった)にあまり知られていなく、しかしおもしろいエッセイを書く現存の人物もあまりいないんじゃないか。そんな気はする。このひとの書く文章で個人的に好むのはその「エライと言われそうな立ち位置」から逃げに逃げた「根っからの庶民性」と「考察する姿勢の低さ」である。このひとの食べものエッセイの舞台は「大衆食堂」的な装置が多く、大体は「丼もの屋に行って親子丼を食べてあーだ。店主のおっさんがこーだ」とか、「カレーパンの空洞部分についての考察」である。著作数がものすごい多いので、これから読むのが楽しみなぶん、すべてカヴァーは出来ていないのだけど、とりあえずウン万円の高級料理が美味しくて…な話は見当たらない。僕はここに著者の美学を垣間見る。グルメ批評家ではないのだ。単純に自分が行きたい店に行き、説教を思っても、基本的には書かない。それをしかも五十年近く続けておられる。これはある種の狂気である。静かで庶民的な、ふつうなひとの狂気。
この本の魅力をすごくかいつまんで話すと「深夜の通販で頭のテッペンが薄いひと用に濃く見せる粉が売られていて、買った。僕は池上彰よりは薄くない」だとか、「ルンバを買った。僕は人を雇うことをしない生活をいままでしてきた。でもルンバ雇っちゃった。上下関係どんなんだろう」「スカイツリーが出来た。東京タワーはいままで首都の電波塔の役割を担って来たが、ぜんぶスカイツリーに負けているじゃないか。さらば東京タワー」とか、そんな感じです。どれもおもしろく、適度にゆるい。おすすめです。(あー、やっと一応書評っぽくなった)
最後に東海林さだおさんですが、本業が漫画家のひとなので、あたりまえに絵がうまいです。僕はこのひとの描くイラストがエッセイと同じくらい好きで、なんでかと言われると「いる」からです。こんなひと、いる。いる。上手な絵を描けるひとはたくさんいる。「生きた」絵を描けるひとはあまりいない。こんなひとの仕事に触れると、自分がしていることの小ささが良くわかるので、ありがたい。多才な作家に対しての書評でした。(予告・次回は愛知県は犬山に友達の喫茶店開業を祝して、友達と楽しい夏の小旅行して来たのでその話になると思います。オタノシミニ。)
2017.8.30(wed )
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abe-mochi-part2-blog · 7 years ago
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うみのこえ
海見たいなぁ。とうだるような昼下がりに織田が西瓜をかじりながら一言つぶやいたので、三好はそれもいいっすね、と返しながら次の休みを海を見に行こうと心のなかで決めた。食べたいものや遊びたいことをしょっちゅう口にするかわりに、山やら海やらの自然に関心を示さない彼がわざわざそう言ったことが、三好にとってやけに関心を惹いたのだった。翌日三好が計画を話すと、織田はいささか驚いた顔をしながらも、笑って頷いた。いつもの食えない表情とは違ったものだった。  始発よりは遅く、世間の勤め人が動き出すには少し早い時間に、二人は電車に乗った。郊外に向かう車内に人はまばらだった。四人がけの席に向かい合って腰かけ、三好が文庫本に目を通していると、眠そうに窓に額を預けながら織田がどれくらい時間がかかるのかと尋ねた。一時間ぐらいだと三好が返すと、彼は頭をもとの位置に戻して伸びをしてから、三好の頭のてっぺんから足の先までをすっと見回した。シャツから靴にいたるまで新品の、夏用に誂えた外出着だった。 「そういや」 「なんすか?」 「その服はじめて見たわ」 「……今日下ろしたんで」  別にたいした意味があったわけでもなく、夏になって外に出かける用事が今回がはじめてだったからこうなっただけだ。と言おうとしたが、昨日の晩に若干そわそわした気持ちで服を一式枕元に置いたことは確かである。三好が口ごもると、織田はいつものようににやついた顔をした。この表情をした織田は、すこし苦手だ。文庫本を閉じて顔を上げると、視線を合わせた織田がけらけらと高笑いをする。 「なんやワシと出かけるからお洒落したんか、かわいいとこあるやん」 「ちゃいます、これはたまたま……」 「たまたま?」 「……もういいっす」 「ま、ええわ。今回はたまたまってことにしといたろ」  三好をからかう材料を見つけたら徹底的にやるくせに、今回ばかりはあっさりと身を引いた。その代わりに織田はすっかり機嫌がよくなったようで、再び三好が文庫本を開こうとするたびにしりとりをしようだとか言って邪魔をした。また織田が服のことを追及してきたら分が悪いのは明白だったので、三好も誘いに乗った。静かに揺れる人気のない車内に、しりとりをする二人の声がぽつぽつと聞こえた。  次第に外の太陽が高くなり、車窓にも日差しが入り込み始めた。織田の真っ白なシャツが、三好の目に眩しくうつり、もしかしたら彼も自分と同じように新品を下ろしてきたのかもしれないと思った。もし、そうだとしたら。そう考えると三好はひどく恥ずかしくなって、織田にさとられないようにそっと視線を外した。  結局しりとりは三好の不注意で長くは続かず、潮の匂いに気づいた織田がはしゃいだ声をあげるまで、二人はぽつりぽつりと今読んでいる本の話をした。  人気のない小さな駅に二人は降りた。車内に入り込んできた塩の匂いと、ホームの端に生えた草の匂いが混じり、生ぬるい風が汗ばみはじめた肌に吹いてくる。  改札を出るとすぐさま道の先に水平線が見え、視界に砂浜が映りこんできた。 「なんやせっかくの砂浜やのに人おらんな」 「ここからちょっと行ったとこが海水浴場らしいんで、そのせいじゃないんすかね」 「ここは泳がれへんのか、ちょっともったいないなあ」  次は泳げるところを、と口にしかけてやめた。織田があっと声を上げたからだった。 「ほんまや、すぐそこに防波堤あるやん。たぶんすぐ深なるんやろな」  目を細めると、砂浜からそう遠くはない海中に、防波堤が一列に並んでいた。水平線の手前に、白い線が引かれているように見えた。 「オダサクさん泳ぎたかったんすか?」 「いや、別に。でもスイカぐらいは持ってきたらよかったかもな」 「割っても二人で一玉は食べられへんと思うんすけど」 「そこは三好クンが頑張って」 「さすがに無理っす」  自動車が一台二人を追い越した以外に、誰とも会わないまま砂浜に着いた。つくなり織田が荷物をその場に放り投げ、靴を脱ぎはじめた。 「ちょっといきなり何しとるんすか」 「足ぐらいつかりたいやん!」  靴下を砂浜に散らかして、織田は一目散に波打ち際まで走っていく。いつも飄々とした動きを見せる男が今ばかりは完全にはしゃぐ子どものようだった。あっつ、と声を上げながら海に入っていった。まくりあげたズボンの裾から覗いている足首が、いやに骨ばっていて細く、一瞬三好の心臓が跳ねた。日の光が白いシャツを透かして、細い体の線を浮かせている。  もしかしたら足首掴めるんちゃうやろか。そう思うとなぜかいけないものを見ている気分になって、三好は織田から視線を外して彼が散らかした荷物を拾い上げてまとめ、転がった靴をそろえて置いた。  織田が手招きをするので、三好も靴を脱いだ。彼の靴の隣に自分のものを並べたとき、ふいにこの靴を選んだときのことを思い出した。売り場で偶然目に止まって買い求めたのだったが、こう並べてみると、なんだか似ているような気がした。自身が気づかぬ間に彼の靴を想像してしまったわけではない、と思いたい。しかし今まで自分の選んできたものと多少は毛色が違うのも確かであって、いつのまにか織田が、三好の心のうちに、すっかり入り込んでしまった可能性も否定できない。織田から見えないように、荷物の影になるところに靴を並べなおした。  砂浜は火傷するかと思うほど暑かったが、海に入ると裸足の足裏が心地よかった。さっきまで水平線の向こうを見つめていた織田は、視線を落として波打ち際のふちをじっと見まわしていた。 「カニおらんかな」 「見つけてどうするんすか?」 「食えるんかなって」 「はあ」  サワガニとはわけが違うだろうと思ったが、織田がやけに真剣なので、三好も付き合って視線を落として波打ち際を探しながら歩いた。結局数十分かけても見つからず、首筋のあたりが日差しでちりちりと焼けついた。 「んー、さすがに暑いなあ。帽子持ってきたらよかったかもしれへんな」  織田が腕で日差しを避けながら言った。 「……どっか日の当たらんとこ入ります?」 「せやなあ、カニもおらんかったことやしそうしてよかな、三好クンも気いつけや。下手したら頭焦げそうになんで」  荷物を端にある木陰に置いて、織田がそのすぐそばに座り込んだ。三好は再び波打ち際を歩きながら貝殻を拾い、防波堤の隙間から遠くに見えている、ちいさな漁船を眺めたりした。その間に、浮かんだ詩に���いて考えた。  首筋に視線を受けて振り返ると、木陰から織田がこちらを見ていた。目が合うと、三好にひらひらと手を振った。影の中で表情はよく伺えなかったが、おそらく口元を緩ませているのだろうことはわかった。  手を振り返すことが妙に気恥ずかしく感じ、三好はそっと会釈のようなものを返すだけにして、視線を外して波を蹴った。そういうことが三回ほど繰り返された。織田は先ほどで海に対する興味を失ったのか、はたまた別のところに気が向いたのか、三好と目が合わない間は木陰で細い体���畳むようにして、考え事をしているように見えた。  海が見たい、と織田が言ったから、自分はここに来たのに、楽しんでいるのは自分だけのような気がした。日帰りで、騒がしくなく、それでいて美しいところというのを、三好は今までにない熱心さで探したのだったが、今になってみるとそれはひどく独りよがりだったのではないか。もともと織田が、こうした場所より都会の喧騒を好む男であることはなんとなく知っていたはずで、あの日の一言は気まぐれに過ぎなかったのかもしれない。だとしたら、何故彼は三好に付き合ってここまで来たのだろうか。  この浜辺には二人きりのはずなのに、三好には織田のことがさっぱりわからない。どこからともなく飛んできた鴎が防波堤の上にとまり、キイキイと鳴いた。 「楽しんでるか?」  三好が木陰に戻ると、織田が首を傾げて声をかけた。聞きたかった言葉を先に尋ねられて、どきりとしながら頷く。 「あの、オダサクさんは」 「ワシか? うん。楽しんでんで」  言い切られると気をつかっているんでしょうとか、そういうひねくれた言葉を発するわけにはいかなかった。はしゃいでいるときは悪ガキそのものの顔をして、けらけらと笑っているくせに、こういう時の織田はやはり今生では自分より年上で、それゆえの余裕のようなものを身につけているのだと感じずにはいられなかった。  悔しい、というわけではない。けれども、いつも少しだけ、もどかしい心地になる。  隣に座って、手帳を取り出して文字を書きつけた。織田がそれに興味を持ったのか、ぴたりと肩を寄せて手元をのぞき込んでくる。三好の腕に、織田の長い髪がさらさら触れた。 「何書いてんの?」 「ちょっと、さっき思いついたやつを」 「詩?」 「そこまでのもんじゃないっすけど」 「見ていい?」  隣からの視線が好奇心にあふれていて、断るのも野暮に思えた。手帳を渡すと、海に足首を浸したときと似た表情で、織田はたかだか数行にも満たない三好の言葉に何度も目を通し、口の中で繰り返した。朔太郎の詩を読むときの自分と似ている。手元に視線を落としたまま、織田が感心したように言う。 「ふうん。詩人には、目の前の世界がこう見えとるんやなあ」 「おおげさっすよ」 「ただの感想や」  織田の細い指がページをめくり、三好のほかに書きつけた言葉をぽつぽつと読んでいった。何度か気に入ったらしい表現を見つけると、いちいち三好を褒めてから手帳を返してきた。そのまま、しまいこんでもよかったのに、不思議と三好の手は、さっき書きつけたページをめくって破いていた。 「あの、よかったら、さっき書いたメモもらってください」  織田がきょとんとした顔をしながら紙片を受け取った。 「ええん?」 「いまから自分のとこには書きなおしとくんで」  こんなものが贈り物になるか。ともう一人の自分は心の中で言っている。しかしポケットに入っている白い貝殻が織田への贈り物になるとも思えなかった。  人にものを贈るのは、どうしてこうも照れくさくなるのだろうかと思った。自分の感情を込めているものであるならなおさらだった。彼が喜ぶようなものを、三好は何一つ持っていない。唯一、ほんのすこしでも可能性があるとするなら、それは言葉しかなかった。  来た、記念に。口にすると照れが増して、抱えた膝に顔を埋めた。  織田はしばらく破られた紙片を見ていたが、やがて丁寧に紙の端を折り畳んで、ことさら丁寧に取り出したハンカチにくるんで、ポケットにしまいこんだ。 「おおきに、大事にするわ」  まるで壊れ物でも扱うような手つきだったので、思わず三好はそこまでせんでも、と口を挟んだ。しかし織田はそうすることがさも当たり前かのような顔をしていた。 「せやって三好達治先生の生原稿やん。大事にせな」  織田が三好を「先生」だとか敬称を付けて呼ぶ場合、それはどことなくからかいを含んでいるものだった。しかし今回ばかりはあまりにも自然に呼ばれるものだから、三好は結局よころんでくれたんだったらと歯切れの悪い返事をして、一枚ページの切り取られた手帳を手慰めにぱらぱらめくることしかできなかった。  鴎の鳴き声と同時に潮風が二人の座る木陰にまで吹いたが、三好の頬に溜まった熱は結局逃げて行ってはくれないまま、黙って手帳に文字を書いた。織田は鴎を見つけたり海の上に船を見ると三好に声をかけたが、木陰からは動こうとせず、日が落ちてくるまで三好と肩先が触れる距離に座っていた。  駅舎が夕焼け色に染まるころ、帰りの電車に乗った。行きより多少乗客は増えていたが、それでも車内の人は少ない。 「もうちょっとおれたんちゃうの?」 「これ逃したら図書館に着くの夜中っすよ」 「ええー、そんなんなんの」 「田舎はどこもそんなもんでしょう」 「大変そうやなあ」  電車の窓枠に、織田がもたれかかった。駅から遠ざかるにつれ、入り込んでくる風から潮の匂いが消えていく。ゆっくりと、二人は元の世界に帰っていった。  疲れてしまったのか、織田の口数は少なかった。一度だけ、ハンカチにくるまれた紙片をひらいて、目を通していたかと思うとあの壊れ物を扱うような手つきでくるみなおした。胸ポケットにそれがしまわれるまで、三好は視線を外すことができなかった。自分まで大切にされているような気がするのは、何故だろう。  再び窓枠に肘を預けようとしていた織田が、三好をちらりと見るなりあれっと声をあげた。 「三好クン、えらい日焼けしてもうてんで」  つられてガラスに視線を写してみるが、肌の色はよくわからない。頬に触れてみたら、じんわりと熱がこもっていた。 「そういえば、なんか顔がピリピリするような……。そんなに焼けてます?」 「うん。なんやろな、因幡の白兎ちゅうやつやな」  にゅっ、と指先が伸びて、三好の鼻先をつまんだ。 ぴりぴりした感覚と、ひやりとした織田の肌の感触が抜けて、ふぎゃ、と変な声が出た。咄嗟に体を話して鼻頭を押さえたら、織田がいつもの高笑いをする。 「ふぎゃって!」 「オダサクさんがつまむからっす」 「いや摘まみたくなる鼻してるからつい」 「なんすかそれ」 「摘まみたくなる鼻は摘まみたくなる鼻やねん」 「はあ」  押し問答をする気力はなかったので、肩を落とした。織田はひとしきり笑って、今度は人差し指で鼻先をつついた。鼻はひりひりとしたが、今回ばかりは日焼けしていてよかったと思った。赤面しても、きっとわからない。  俯きぎみに次は帽子を持ってくる、と言うと笑っていた織田が急に目を丸くした。ちょうど三好が海に誘ったときと、そっくりそのままの顔で。 「せやな、次はもうちょっと、日焼けせんとこに行こか」  そうして、からかうでもなく、はしゃぐでもない、いつになく緩んだ顔で笑って見せたあと、砂がこびりついた三好の靴をつま先でつついた。  次の休みは、日焼けの引かぬ顔のまま、わざわざ電車に乗ってかき氷を食べに行った。二人のよく似た靴は、夏の間にずいぶんと擦りきれてしまい、季節の終わりに三好は靴を修理に出した。しょっちゅう二人で、 でかけたせいだった。
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