#中華そば勝本水道橋店
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arakawalily · 2 years ago
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「中華そば勝本」さんは、言わずとしれたラーメンの有名店ですね❗️東京水道橋西口すぐ❗️ ミシュラン獲得店「銀座八五」で知られるシェフ松村康史氏がラーメン店としてはじめて手掛けた店が中華そば勝本さん。私も銀座の八五さんと、つけそば勝本神保町さんに行きましたが、毎回感動する味わい❗️���とにかく並びますが、並んでも食べたいですね❗️ 昨日は東京ドームテーブルウェアフェスティバルに行く前の早い時間帯でしたので、幸い四人待ちの短い行列でした❣️ 鳥と豚からとった深みのあるスープに煮干しを合わせたコクのある清湯スープ❗️懐かしいけれど、どこか新しさも感じる中華そば❗️昔ながらの中華そばが現代アレンジされた感覚です。 行列の女神~らーめん才遊記で~のロケ地&監修としても有名ですね❗️ここに鈴木京香さん立っていたなあ〜とか、座っていたなあ〜とか、店内の雰囲気も落ち着いていて、感慨深いです。 2020年には食べログ百名店入り。鶏と煮干しをきかせて、丁寧にスープを仕上げた中華そば。 丸鶏、鶏ガラ、ゲンコツの動物系がスープの土台となり、煮干し、サバ節、昆布などの魚介系が香りと深みを出す濃厚煮干しそば。 どちらも、どこか懐かしくも厳選した食材と調理法で仕上げた贅沢な一杯となっています❗️ 「料理長で店主の松村康史は、長年に渡り、フランス料理を作り続けてきました。そして、"フルコースをひとつのお皿で表現してみたい"と思い至り、特別な日に食べるフレンチのコースではなく、どの年代層にも親しみがあるラーメンという食べ物にたどりついたそうです❗️ "1000円前後の値段で楽しめるフルコースを表現してみたい"という思いがさらに強くなり、勝本のラーメンが始まりました。『勝本』という店名は、松村氏がリスペクトする渡辺謙さんが、映画『ラストサムライ』で演じた"勝元"からきているそうですね❗️武士の精神でラーメンと向き合いたいという気持ちと、武士道の精神でまっすぐラーメンと向き合いたい❗️ そんな気持ちがいっぱいの一杯❗️途中、黒七味を入れたら、益々の深い味わいに❣️ #勝本#中華そば勝本#中華そば勝本水道橋店 #水道橋グルメ #水道橋ランチ #浅草開化楼 #行列の女神 (中華そば 勝本) https://www.instagram.com/p/CoGXRohSFQW/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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a2cg · 2 months ago
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道と私
水泳選手のインタビューで見たことがあるのですが実際のゴールより先のところに自分なりのゴール設定をしておき、到達しきった時点で初めて喜ぶようにしているそうです。
ゴール寸前で「もう優勝だ」と思って周囲を見た瞬間に抜かれるといった経験からそうしているのでしょうね。
自分も激しい腹痛に見舞われてトイレの個室を探している時にトイレが見��かったことに少し安心してしまい、着席する前にちょびっとパンツに何かが着いた経験があります。
それは武道や芸道の世界でもあるようで、何かが決まった後にも完全に気を抜くのではなく少し余韻を残しておく「残心」が大事みたいですね。
面白いのが「剣道・柔道」のような武術だけでなく「茶道・華道」などの芸術にも「道」が使われているのは、同じような思想があるんでしょうね。
「道」と言えば、県境を跨ぐような山の中の峠道では昔は土や石が剥き出しになっている所があったりしましたが、今は大体がアスファルトの舗装地になりましたよね。
と言うわけで本日のランチは #細打うどん竹や #竹や です。2024年食べログ百名店にも選ばれたこちらの店の支店が浅草橋にも2年前にオープンしたそうでやって来ました。
頼んだのは店の名物の #海老天カレーうどん と行きたいところでしたが、冷たい #うどん 気分だったので #つけ海老天カレーうどん で大盛りの値段が一緒なのでそうしました。
ジャズが流れる店内は意外と広々としていて、家族連れや仲間内など客層が様々。色々と観察しているうちに10分ほどで提供されました。
まずは3−4本まとめて摘んで #カレー につけて頂きます。細いのにしっかりと存在感のある弾力を感じながら頂く #麺 の喉越しと甘さが最高です。
カレー汁の味わいは巣鴨の古奈屋、築地の虎杖で食べて来たものと同じようなクリーミーさが感じられますが、この店のは少し爽やかな印象があります。
そして #海老天 は小海老を揚げたもので、軽い食感でサクプリ感が印象的。そのままで頂いても、つけ汁に浸して食べてもどちらも美味しいですね。
カレー汁の具材はネギが多い印象ですが、よく見るとインゲンもあって、こちらのもきゅっとした食感もいい感じです。
大盛り(1.5玉)でもちょうど良い分量なので、こちらで頼んだほうがいいと思います。カレー以外のメニューも気になるのと夜も気になるので、また訪れたいと思います。
ジオタグが出ないので住所を記すと東京都台東区浅草橋1-32-6 コスモス浅草橋酒井ビル 1Fです。
#浅草橋ランチ #浅草橋グルメ #浅草橋うどん #浅草橋カレーうどん #浅草橋つけ麺 #麺スタグラム #とa2cg
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kachoushi · 8 months ago
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各地句会報
花鳥誌 令和6年3月号
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坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年12月2日 零の会 坊城俊樹選 特選句
氷川丸の円窓いくつ北塞ぐ 昌文 十字架のかたちに燃る蔦紅葉 美紀 倫敦を遠く大使の冬薔薇 佑天 望郷の眠りの中に木の実降る きみよ 女学院に尖塔のかげ冬紅葉 久 冬木立の向かうをつくりものの海 緋路 昏き灯のランプシェードとポインセチア 和子 十字架を解かざる蔦の冬紅葉 光子 凍空や十字架赤き鉄であり 和子 誰も振り返らぬ早過ぎた聖樹 佑天
岡田順子選 特選句
みなと町古物を売りに行く師走 荘吉 窓は冷たく望郷のピアノの音 俊樹 氷川丸の円窓いつく北塞ぐ 昌文 冬館キラキラ星のもれ聞こゆ 美紀 冬日和トーストに染むバタと蜜 季凜 ガンダムを磔にする師走かな 緋路 革命は起こすものかも冬薔薇 緋路 誰も振り返らぬ早過ぎた聖樹 佑天 胼の手の婆キューピーを路地に売る 俊樹 古硝子歪めし冬の空はあを 久
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月2日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
神鏡の底まで蒼く冬の月 かおり 右手上げ思索のポーズ漱石忌 修二 綿虫のうすき影負ふ百度石 かおり 戯れにペアのセーターそれは無理 美穂 冬帝の裾に鉄橋灯されて かおり 赴任地は裏鬼門なり漱石忌 美穂 後戻りできぬ吊橋冬枯るる 愛 大枯野則天去私のここに居る 美穂 綿虫のことづてありと君に来る 愛 牝狐の頭に木の葉町娘 成子 憑き物を落とす霰に打たれをり 愛 落葉踏む音を楽しむ童かな 修二
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月3日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
亡き父よもう雪囲ひ始めしか 喜代子 百二才冬空へ帰られし 同 眠る山内で動めく獣達 都 年忘れ新入り下戸でじよう舌なり 同 門松の早や立ち初め禅の寺 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月7日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
冬菊を挿して祈りの夙夜かな 宇太郎 布教師の顎鬚白し報恩講 すみ子 投薬のまた一つ増え落葉蹴る 悦子 入隅に猫の目青し冬館 宇太郎 三途から戻りし者の年忘���同 闇一枚まとひてよりの浮寝鳥 都 露座仏の思惟の指さす空は冬 美智子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月9日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
冬の朝遠くに今日の始む音 恭子 空青く舞ふ白鳥の透きとほり 幸子 塀の猫すとんと消えて師走かな 三無 冬の雲切れて見下ろす日本海 白陶 枯菊のかをり残して括られる 多美女 路地裏に声の弾みし焼芋屋 美枝子 カリオンの音の明るさや十二月 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月11日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
寄せ鍋を囲みし人のまた逝きて 秋尚 まろまろと伊豆の山やま冬景色 怜 乾きたる足音空へ冬山路 三無 子離れの小さき寄鍋溢れをり のりこ 床の間に父の碁盤や白障子 三無 ご奉仕の障子新し寺の庭 和魚 信楽のたぬきと見合ふ障子越し 貴薫 煌めきをところどころに冬の山 聰
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月11日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
茶の花やエプロンで無く割烹着 昭子 風花にして降るとも降らぬとも 世詩明 ポインセチア抱けば幸せさうに見ゆ 昭子 武生花鳥必死に守る年の暮 みす枝 彩りも音も無く山眠りけり 英美子 雪まろげ仕上げは母の手の加へ 時江 糶終へて皮ジャンパーの急ぎ足 昭子 着膨れて女は手より立ち上がる 世詩明 古暦パリの街角にて終はる 昭子 街師走吹かるる如く人行き来 みす枝
令和5年12月12日 萩花鳥会
冬の月句友ともども偲ばれて 祐子 五羽が風邪萬羽が処分魔の鶏舎 健雄 冬の空めげず生きると決心す ゆかり 一年の抱負も薄れ年の暮 吉之 首かけし手袋母の匂して 美惠子
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令和5年12月13日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
この先は冬雲傾れ込む山路 あけみ 白菜を抱きかかへつつ持つ女 令子 こんなにも長年参じ近松忌 同 オリオンの名残惜しみて冬の朝 あけみ 晩秋や娘の云ふを聞き入れる 令子 さきたま花鳥句会(十二月十五日) 初霜や狭山の畑を曳く煙 月惑 頑なに一花残して冬薔薇 八草 終焉の一ト日のたぎり冬紅葉 紀花 枝折り戸の軋む庵や枇杷の花 孝江 今年酒老舗の店や菰飾 ふゆ子 くちやくちやの枯葉纏ひて大欅 ふじ穂 廃校を渋柿たわわ守りをり 康子 三年間無事に埋めよと日記買ふ 恵美子 何をするわけでも無しに師走かな みのり 落葉積む赤き帽子の六地蔵 彩香 嫁ぎ来て冬至南瓜を五十年 良江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月16日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
口重き男に隣り近松忌 雪 九頭竜の黙が寒さを増すばかり かづを 散る紅葉散りゆく黄葉なる古刹 同 枯菊や香りと共に燃え上がる 英美子 手焙に触れれば遠き父の事 同 賀状かく龍天空へ飛躍せり 玲子 父母の眠る故郷恵方道 やす香 山眠るひもじき獣抱き抱へ みす枝 鼻水をすすれば妻もすすりけり 世詩明 熟し柿つつく鴉は夫婦らし 同 人にやや離れて生きて帰り花 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月17日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
黒門の枡形山に裘 幸風 冬蝶を労はるやうに母の塔 同 眠る山起こさぬやうに歩き出す 白陶 隠れんぼ使ひ切れざる紅葉山 経彦 冬帝と対峙の富士や猛々し 三無 笹鳴や少し傾く城主墓 芙佐子 山門へ黄落の磴細く掃く 斉 黄落の野仏は皆西へ向き 炳子
栗林圭魚選 特選句
蒼天に山脈低く雪の富士 芙佐子 空を抱くメタセコイアの冬支度 三無 SLに群がる揃ひの冬帽子 経彦 かなしことうすれゆきたり冬霞 幸子 笹鳴の過ぐ内室の小さき墓 慶月 法鼓聴く銀杏落葉の女坂 亜栄子 古寺の法鼓の渡る師走かな 久子 冬帝や明るき供花を陽子墓碑 文英 笹鳴や少し傾く城主墓 芙佐子 枯芝の広場の狭鬼ごつこ 経彦
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月19日 福井花鳥会
赤き玉転がしながら毛糸編む 啓子 住み古りて遺木の数多なる落葉 清女 着膨れてストレス無しと云ふは嘘 同 雲たれて空塞ぎをり十二月 笑子 ささやきを交はす綿虫寄り来たり 同 神殿に大絵馬掲げ年用意 同 毒舌も競り合ふ友や年忘 泰俊 それぞれの色を尽して末枯るる 雪 小説を地で生く男近松忌 同 墨をもて仏描きし古扇 同
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令和5年12月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
母と娘の悲喜こもごもや古暦 雪 大いなる一つの鳥居や神の留守 同 近松忌日有り気の一文箱 同 筆に生れ筆に死す恋近松忌 同 初雪や瓦は白く波打てり みす枝 初雪や誰彼となく首縮め 同 さんざめく市井を抜けて見る聖樹 一涓 神々の眠れる山や風の音 ただし 捨て猫のすがる眼や雪催 清女
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和5年12月24日 月例会 全選句を掲載いたします。◎が特選句です。 当日の席題は「青」でした���
坊城俊樹選 特選句
 二百万余の英霊よ竜の玉 昌文  暦売る神となりし日遠くして 慶月  極月や足踏みかすか男衛士 音呼 ◎聖マリア棘やはらかき冬薔薇 和子  楽団の喧騒を待つポインセチア 順子  幔幕のうちは見せざり年用意 千種  聖夜待つランプの中の空青し 和子  悴んで十字架を小学生仰ぐ 順子 ◎十字架に鳩の休息クリスマス 要  朱き鯉悴みもせず行者めき 軽象  一枚の青空に垂れ冬薔薇 和子  著ぶくれのままカフェオレを飲むつもり 光子  著ぶくれの犬にユニオンジャックかな 佑天  冬帝のふくらませゆく日章旗 和子 ◎冬深む宿痾なる瘤持つ鯉へ 光子 ◎身じろがぬ寒鯉威してはならぬ 慶月  寒禽の寄り添うてゐる像の肩 政江 ◎擬態して聖夜の街に紛るるか 炳子  旧華族らしき猫背を外套に 順子  二の鳥居辺り冬帝在し険し 慶月  寒鯉の鐚一文も動かざる 千種  凍雲に閂かけよ大鳥居 月惑 ◎大鳥居いくつも潜りクリスマス はるか ◎きらめける虚構を踏みぬ霜柱 妙子  オルガンを踏み込むクリスマスの朝 光子 ◎くちびるの端で笑つて懐手 和子  数へ日の水あをいろに神の池 要  外套のポケットに怒りを握る 和子  冬ざれの鯉の影なき池の底 炳子  上野は勝つてゐるか像の極月 慶月  歳晩や動きさうなるさざれ石 眞理子  聖樹の灯巻き込んでゆくボロネーゼ はるか  冬眠の蛇を諾ふ斎庭なる 光子
岡田順子選 特選句
◎神の鳥冷たき影を像に置く はるか ◎極月や足踏みかすか男衛士 音呼  初対面黄色のマフラーして彼女 政江  花柊零るる坂の神父館 要  未知の先あるかのごとく日記買ふ 妙子  聖マリアと棘やはらかき冬薔薇 和子 ◎枯蓮のいのちの水に眠る朝 佑天  裳裾冷たき暁星のマリア像 俊樹  なかなかに僧には会へぬ師走かな 眞理子  十字架に鳩の休息クリスマス 要  鷗外の全集売れぬ隙間風 俊樹  窓越しに著ぶくれの手が師を招く はるか  朱き鯉悴みもせず行者めき 軽象  一枚の青空に垂れ冬薔薇 和子  著ぶくれの犬にユニオンジャックかな 佑天  霜晴や空ラのリヤカー巡回す 千種 ◎英霊の言の葉の外年詰まる 軽象  寒禽の寄り添うてゐる像の肩 政江  年逝くや素木の鳥居乾くまま 要  擬態して聖夜の街に紛るるか 炳子  数へ日の嵌つてしまふ小津映画 炳子  大鳥居いくつも潜りクリスマス はるか  きらめける虚構を踏みぬ霜柱 妙子  オルガンを踏み込むクリスマスの朝 光子 ◎くちびるの端で笑つて懐手 和子 ◎手つかずの落葉を散らす神の鳥 はるか  数へ日の水あをいろに神の池 要 ◎外套のポケットに怒りを握る 和子  サグラダファミリアみたいな銀杏枯れ 俊樹  風冷た悲しくなけれども涙 政江  二百万余の英霊よ竜の玉 昌文 ◎微動だにせぬ零戦と年忘れ 俊樹
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ichinichi-okure · 1 year ago
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2023.9.24sun_yamanashi
目が覚めてベランダから甲府盆地を眺める。 夏の間ずっと雲に覆われて見えなかった富士山が久々に全景を現し、夏が終わってしまったことを実感する。 朝の日課としているここからの富士山定点観察。 今日も寝ぼけたままiPhoneのシャッターを切り、インスタのストーリーへと投げる。
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台所へ行くと山積みになった食器たちが、昨晩の宴が現実であることを知らせてくれた。
先月の誕生日に送られてき��LINE。長らく疎遠となっていた後輩からのお祝いだった。 この歳になると誕生日はありがたみもないが、ふとこんな連絡が生まれるのは有難い。 きっかけさえあればすぐに当時の関係性に戻り、あっという間に東京から甲府に遊びに来ることが決まった。 長らく会えていない共通の後輩にも連絡すると、こちらもあっという間に前橋から遊びに来ることとなった。 後輩2人が会うのは12年ぶりという。
山梨に来る機会がない2人を「最高」の瞬間風速の記録を更新し続けている北杜市を1日かけて案内(sun.days.food→Gallery Trax→大滝湧水公園→wajiajia→夢宇谷→ひまわり市場→百番珈琲) して、我が家で再会の宴を行った。 会えていない間に堰き止められた長い時間が、洪水のように溢れかえりあっという間に宴は終わった。
そんな時間を振り返りながら丁寧に珈琲を点てる。ネルをそろそろ張り替えないとなぁ。 ご近所のミュージシャンに美味しい湧水を教えてもらい最近はその水を使っていてなんだか気持ちが良い。
今日も遊びたいと残った後輩の1人も目を覚まし、2人で濃いめの珈琲をすする。 sun.days.foodのブリオッシュをつまみながら、今日の予定を考える。
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昨晩友人から松本の『りんご音楽祭』に誘われて、後輩と2人で行くのも考えたが今日はゆっくりと日常を過ごすことに決めた。
レコード棚に手を伸ばし、ASPIDISTRAFLYの『A Little Fable』に針を落とす。 後輩が本棚を漁り始めたので、買って満足して開封してなかった画集や写真集を開封しながら読み進めていく。中でもソールライターの『THE UNSEEN』は全ての写真に声をあげてしまうくらい素晴らしかった。
フジビューStageでは、 ASPIDISTRAFLYに続きDry Cleaning、Big Thiefとあまり音楽に明るくない後輩でも聴きやすい比較的若いバンドが続いていく。
Big Thiefが『CUT MY HAIR』を演奏し終えるとフジビューStageを離れ温泉へと向かった。 甲府にきて驚いたことに、東京では水道水が当たり前の銭湯でも甲府では全て温泉だということ。
近くの馴染みの温泉でもよかったが、後輩と初めてを共有するのも面白いかと行ったことがなかったトータス温泉へ。
道中荒川の河川敷でモルックを2セット。 先輩らしく2セットとも勝利をいただくが、接戦でとてもスリリングな試合であった。
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トータス温泉の受付には、コンビニのガムのように烏骨鶏の卵が1つ50円で置かれていた。
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まさか浴場に熱い源泉が湧き出すところがあり、温泉たまごにして食べるのかと思い聞いてみたら 受付のお姉さんに笑われた。
浴場の扉を開けると、綺麗な浴場と奥に抜けるように露天風呂が見えとても気持ちが良い。 温泉の色は黄褐色で、40度と43度という微妙に温度が違う二つの湯船。 銭湯の多くは露天風呂といっても申し訳ない程度の大きさのものが多いが、ここは広くとても気持が良い。教えてくれた文文さんありがとう。
気持ちが良すぎて、長風呂してしまい急いで気になっていたお店へと向かう車内にはTortoiseの『TNT』が爆音で流れる。
13:45という ランチには危うい時間に、『千里』さんという町中華に到着。激しぶの歴史のある外観。 予感は的中し、ラストオーダー13:30でありつけず。
気を取り直して遅くまでランチをやっている大好きな『カレー食堂ビリヤタ』さんへ。 店内は満席で、15分ほど待つ。 悩みながら3種のカレーを選択し、睡魔に襲われながらカレーを待つ。 見た目、味ともに素晴らしいクオリティのカレーに舌鼓をうち眠気もぶっ飛ぶ。サービスでラッシーもいただき、こんなお店があるのが有難い。
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器を欲しがっていた後輩を山梨の作り手展をやっている『やまいち』さんへと連れていく。 住宅街のアパートの2階というロケー��ョンが激責めている、1人で喫茶も切り盛りしている甲府にはとても貴重なお店。 店主と東京の共通の店主の話を交わしてるうちに 後輩も良いお皿が見つかり、甲府駅へ向かう。
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散歩がてらに人が歩いていない昼間の甲府の飲み屋街を路上観察。相変わらず甲府のこのエリアは60年代の渋い建築が現役で残っていて面白い。
甲府土産はいつも迷うが、今回は澤田屋さんの黒玉をチョイス。
3日にわたる後輩との時間もあっという間に終了。 些細なことで疎遠になっていたが、お腹いっぱいとは言わずに、また近いうちにおかわりしたいと言ってくれた。
こんな日が巡って来ることを楽しみに、 また深く息を吸い日常に潜る。
-プロフィール- こまつざきあつし 山梨県甲府市 診療放射線技師/路上観察家 https://www.instagram.com/attu19/
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5men73i · 2 years ago
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最近の行動とか。
4/4 久しぶりに環状線を半周した。天王寺。思ったよりも道はおっきくて思ったよりも人は多くて思ってた通りのウェイウェイした人たちがいた。ライブを見てきたけど、この日はバイト。予定管理は何歳になってもできなくて、バイトが終わって瞬間に電車乗ろうとしたけど結局遅刻。そこでラーメン食べることにした。百名店ってなんか限定的だからいつもそこから取る習慣がある。今回も流石に大阪、1、2店舗はあるだろうと調べたがまず天王寺がどの地区に含まれるか分からない。結局大阪全部見た。でもラーメン百名店の店はなくていつものGoogleマップに頼ってみる。評価の高いところに行こうとするもいい感じのところが何個かあって難しい。結局気分で塩。塩?あんまり専門にしてるところ見て来なかったから良い機会。ロックタウンと同じ建物だからすぐいけるし。つけ麺食べたけど置いてる塩麺にかけて汁つけずに食べるのが美味しすぎてついつい塩振りすぎ。塩はどれだけかけても無料だからとセコケチ。塩分過多。汁つけたけど正直あれだとなくていい。というより塩の方が美味しすぎた。これにはにっこり。店員さんもめっちゃ優しい。これが世界平和の���け橋になればいい��に。結局ライブには大遅刻、1組目のバンドは最後の曲の途中からしか聴けなかった。2組目はしっかり全部聴けて良かった。年がちょっと上なだけなのにあんなに堂々しててすごい良い、ディレイ爆かけでよかった。お目当ては3組目。デジタルシングルのリリース記念みたいな感じ。最初からテン上げ爆上げ。ロックタウンは楽器音もボーカルの声も全部綺麗に聞こえて(当社比)すごく好き。ずっと聴きたかった新曲も聴けて満足。持ち時間が長くても好きなアーティストだとほぼ一瞬。感動と楽しさありがとう。最後に少しだけ話して帰宅。いつもライブ後は直帰、ただファンの中に友達がいないだけなのですがまあ、それも一興。なんせ天王寺からの帰りが長すぎる。電車の賃上げ、いざ自分が影響受けるとめちゃくちゃ腹立つ。ICOCAの残金不足で改札足止め、後方の方、前方注意でしたすみません。ならバイトの時給も上げてくれと心に思う。
4/5 地元の友達と仙台に旅立った。関西空港から行くので,また環状線経由。勘弁してくれ、遠すぎる。やっとの思いでついて気づいた、日本人ほぼいなくない?自然のアクティブラーニング。多分韓国語と中国語、てかほとんど中国語。乗り場なくない?とか喚いてたらそれもそのはず国際線乗り場。通りで外国人が多いわけ。国内線の方に向かうと日本語がいっぱい安心。1個か2個前の搭乗にギリギリの人たちめっちゃ走ってる、空港の人冷静対応。場数の差かも。私だけキャリーで来たんだけど、びっくり荷物料金片道3000円超え。スペース余ってたし一個小さいのにすれば良かった、、後悔先に立たず。そんなこんなで飛行機に乗る、曇り。窓側の席で外見てみたけど景色は普通。ペットボトル膨らんでない??まじ微妙すぎてわからない、なにそれ。仙台着いてすぐさまずんだシェイク。昔テレビで見てからずっと行きたかったからもう満足。うまい。ホテルチェックインしてすぐさまポケモンセンター。仙台まできて、、って感じだけどそんなことは全然ない。モノズとジヘッド仲間にしてうきうき。サザンドラがいなくて少し悲しかったけど、2体並べて頭が3つ、もうほぼサザンドラ。建物内少し見てから夜ご飯。うさぎ屋、これは居酒屋。なんか雰囲気好き。日本酒が安くなる日だったから日本酒ばっかり飲んだ、もちろんハイボールも忘れてな��。青いハイボール見つけたら必須で飲むからとりあえず頼んでみた。日本酒は安いから2回頼んだら実質無料!!とか言いながら綿屋、ばくれん、鍋島、楽器正宗、山和、AKABUをのんだ。やっぱり辛口よりも甘い日本酒の方が好き。食べ物は少し高かったけど全部美味しくて、サバシスターも食べられて良かった。お会計の時に店主に牛タンの話とバンドの話すると、牛タンのおすすめは司。その一言で善次郎そのあと2件目、ちょっとおしゃれそうなところ。頼んだフードは全部辛い。飲んだ酒はすぐに回収される。なんて店。雰囲気だけで生きてそう。飲みすぎて少しふらふら。最後はコンビニで買ったハーゲンダッツの勝ち。いつの間にか寝てた。
4/6 朝一にいってみる。仙台の桜は恋ピンクが多い。一本の大きな木に桜満���、地面にも桜が埋め尽くされてたのに桜に気づかないやついたまじ許せんよな。まじ。8時からラーメン食べた。500円、結構いい。それから朝一散策。試食の揚げ物店前に並んでた全てを食べさせられた、一苦労。そこのお店の人も牛タンのおすすめは司、晩御飯が決まる。そこから松島へ。電車ですぐだと思ってたけど結構時間はかかった。仙台を出発して思うけど、仙台以外本当に田舎。松島海岸駅は新しげ綺麗で観光業の偉大さ実感。船に乗る前に山に登る。時間をかけて坂道をあがると桜桜桜。きれい。ハイキング高齢者いっぱい。山に登ると松島の景色も一望できて桜の群れも見られて超一石二鳥。いろんな島を回った、名前少し独特すぎる。船乗ってる時にカモメ?が群れでお出迎え。近すぎて流石に席の外に出て見にいく。揺れがすごい、絶対誰か落ちたことある人いるだろくらいの揺れ。1人で見にきた外国人写真も一切撮らずただ見つめる遠い海。横でずっと誰々に似てる!ってコソコソ言われたけど、ごめんその人も知らんのや。降りてからは少し食べ歩いて海鮮丼食べた。ギリギリ入られてラッキー、いくらとサーモンの丼を頼んだ。ここまでは良かった、食べてる序盤にお味噌汁に服の袖当たってまさかまさかの大爆発お味噌汁ほとんど溢れて、服とズボン、床びしょびしょ。テンション下げ!!お味噌汁美味しかったのに…そのあとはずっと静かに食べてたけど、カキ焼いたやつ1つもらった。ホテル帰ってとりあえず衣服洗う。そのあとは牛タン食べに司へ。奇跡的にもすぐ入ることできてワクワク。あったかい時はすごく美味しかったけど,やはり肉冷めたらかたい。なんでもスピード勝負。おめされて頼んだ牛タンのしゃぶしゃぶはメインの牛タンに比べたらそこまで。室内暑すぎて仙台城まで散歩。途中西公園によって屋台を見てみるけど、みんなお腹はいっぱいで、3人のうち、潔癖1人、準潔癖1人で誰も買おうとしない。桜はすごかった。やはりここの桜もピンク色。公園すり抜け仙台城までの道はずっと坂道で死ぬかと思う。伊達政宗の像見ようとしたけど、事故で通行止め、ルートの難易度が激上がり。知的好奇心で生きてるのでもちろん行く。坂坂坂坂を登ってやっと着いて少し休んで写真の持って帰る。この日は20キロほど歩いた。やば。
4/7 最終日。特にすることもないけど絶対に行きたかった喫茶店とラーメン屋へ。百名店しか勝たんからな、と。一杯千円を軽く超えてくる。どうしても食べたかったたまごサンドのセットはなくて仕方なくバターサンドセットに。食パンは最高級品らしく本当に美味い、たまごサンドだったら良かったのにと変なことをつい思ってしまう。甘党なので苦いコーヒーを少し飲んで砂糖ドバドバ、珍しい形した砂糖と粉砂糖があってすご!とか言いながらまたドバドバ。。。気づけばめちゃ甘コーヒーになってしまった。まあ勉強やな。店内も可愛すぎてこれにはにっこり。ラーメン屋までは少し歩いてついた。人気店。すぐには麺に辿り着けない。コロナの影響を受けすぎてて立ち位置、マスク着用、話さない、が徹底されている。これで店員がマスクしてなかったらアツい。あっさりした中華そばでメンマと鶏肉が特に美味しい。スープ飲み干しても多分ギリ塩分過多じゃない。そのあとはまた散歩。まじ鼻水止まらない許せない。帰りも一生鼻水止まらない、たまに喉痛。色々あったけど、楽しかったのでオールおっけいとします。
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koji-yoshioka · 2 years ago
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•••• 濃厚煮干しそば 勝本 @ 水道橋 お帰りなさい。5月から復活の勝本です。 他の勝本系列も順次復活の模様。 濃厚は煮干しというよりは鶏白湯のほうですかね。実にまろやかなトロミが出ています。麺も具材もオーソドックス。ど真ん中を行く一杯です。 #中華そば勝本 #水道橋本店 #濃厚煮干しそば #ラーメン #ラーメン部 #ラーメン倶楽部 #らーめん #らーめん部 #らーめん倶楽部 #中華麺 #チャンポン #タンメン #ramennoodles #ramen #ramenshop #ramenlover #ラーメンインスタグラム #ラーメンインスタグラマー (中華そば勝本 水道橋店) https://www.instagram.com/p/CfIiIfyvUPx/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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oniwastagram · 3 years ago
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📸三條本家 みすや針 / Sanjo Honke Misuyabari Garden, Kyoto 京都市『三條本家 みすや針』の庭園が素敵…! 京都の中心繁華街・三条商店街に入ってすぐに苔む��た姿が美しい京町家の庭があるって、気づいてた…?河原町三条に店を構えて400年以上、近松門左衛門の浄瑠璃にも記され宮中御用達として後西天皇に屋号を賜った京の老舗“みすや針”ご当主こだわりの庭。 . 京都・三條本家みすや針庭園の詳細はこちら☟ https://oniwa.garden/misuyabari-kyoto/ ...... 「三条本家 みすや針」は京都の中心・三条河原町に江戸時代初期からお店を構える、“針”の老舗🪡 およそ150年前に作庭された京町家の庭が残ります。 . 三条商店街を入ってすぐ、人気の雑貨店だった“ミカヅキモモコ”が2021年に惜しまれつつ閉店――その後は2022年現在も空きテナントになっていますが、その空室の奥にチラッと庭の姿が見える…!?一年間気づかなかった…! . そのビルの奥に店舗をかまえるのが「みすや針」さん。 東海道五十三次🏘の始点・三条大橋🌉の先のこの地には約400年前から店舗を構え、当時の京都で謡われた歌や近松門左衛門の浄瑠璃作品“浦島年代記”にも登場する、文字通りの“京都の老舗”。 . 慶安年間の1651年には宮中の御用達(御用針司)に、現在の“みすや”の屋号は1655年に #後西天皇 (後西院天皇)より賜ったもの。 . 実は三条通りに面したビルの名は「みすやビル」。よく見たらビル前面にも「本家みすやばり 福井藤原勝秀」の看板が掲げられている。 店舗入口には明治時代の内国勧業博覧会のメダル🏅や、“福井”と刻まれたかつて使われた茶釜も展示されています。 続く。 ーーーーーーーー #japanesegarden #japanesegardens #kyotogarden #zengarden #kyotojapan #beautifulkyoto #beautifuljapan #japanesearchitecture #japanarchitecture #japanarchitect #jardinjaponais #jardinjapones #japanischergarten #jardimjapones #庭園 #日本庭園 #京都庭園 #枯山水 #枯山水庭園 #karesansui #mossgarden #苔庭 #そうだ京都行こう #京町家 #針屋 #おにわさん (みすや針) https://www.instagram.com/p/CcTMxcgvSrJ/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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september-girl23 · 3 years ago
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08SEP2021
7月の終わり、京都市内を走るバスで心地よく揺られて眠ってしまい、降りたかったバス停で降りそこねたことを思い出す。 お日さまがカンカン照りのなか鴨川の辺りにあるベンチで文庫本を読む男性がいたこと、水が流れる音が気持ちを涼しくさせてくれること、一軒家ばかりが並ぶ住宅街を抜けて大学生のときに一度だけ行った恵文社に再び足を運んだこと、しおりにしていたスターバックス京都三条大橋店のレシート、鴨川に等間隔に並ぶ人間のかたまり、など。
横浜に来てからバス停 1 つ分は歩けるだろう、とか一駅分は歩けるだろう、とかそういう感覚が当たり前になっているところで7月下旬の嵐山周辺を歩くのは考えが浅はかであった。こうしてバスを寝過ごしたではないか、と自分を問い詰めた。
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嵐山に行ったら湯豆腐を食べるといい、と Google で検索したら書いていたので有名そうな「嵯峨野」という湯豆腐のお店に行った。
なぜこんなにも暑い日に湯豆腐を食べるのか分からなかったけれど、世の中がこんなふうになってしまってからは自分の目で見ることや自分の舌で確かめること、音や匂いというものが如何に大切であるかということを思い知ったからである。
「お座敷とテーブル席、ご希望はございますか。」とお店の方に聞かれ、一人だったのでテーブル席をお��いした。案内された席は畳の上にテーブルと椅子がある席で、なんとなく罪悪感を感じた。畳、傷まないかなと心のなかで思った。
ランチと言えど、はじめてだったので勝手がわからず、コースしかないということだったので湯豆腐のコースを注文した。お庭を眺めることができる席だったので、青い空とお庭の緑、鮮やかなピンクのお花を見ながらセミの鳴き声を聞いてお料理が来るのを待っていた。
あとから隣のテーブルに夫婦が来たが、どうやら昔からの常連さんだったらしく、テーブルに付いているお店の方と「久しぶりだね、緊急事態宣言が出ている間お店やってなかったでしょ。何してたの?」「お庭の手入れをいつもは業者の方に頼んだりしていたのですが、時間もあったので私たちも手伝ったりしていました。」などと会話していた。こういうとき、お店の方の返し方が少しポジティブだとうれしいんだなと感じた。夫婦の会話を聞きながら、少食のわたしにはありえない量の湯豆腐とその他のお料理を食べた。ありえない、多すぎる…と心の中で思っていたところ、隣のテーブルの夫婦がこれまであまりお金を落とすことができていなかったという理由でさらに湯豆腐やお酒を注文していて、大人ってすごいなと感じてみじめな気持ちになった。わたしはいつ、そういうレベルに達することができるのだろうか。
食事を終えて、お店から出るときに店員の男性に「あのお花はなんていうお花ですか?」と聞いたら、わからなかったらしく「他の店員に聞いてきますね!」と言われて少しの間待っていた。靴を履き終え、男性が戻ってくるのを待っているとき、目に映るものの色がきれいで見惚れていた。今も文章を書きながら思い出している。戻ってきた男性によると鮮やかなピンクのお花は「百日紅」とのことだった。母が華道の師範資格を持っているにも関わらず、わたしはお花の名前に疎い。少しだけお店の人とお話をしてお店を後にした。
お昼時をすぎると嵐山も人が増えてきて逃げるようにして車折神社へ向かった。バスに乗ればよかったのに、ここでも「このくらいだったら歩けるだろう」と自分の体力を過信したのがよくなかった。
2021年夏の学びは、知らない土地ではおとなしく公共交通機関を利用すること。
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kabo1986 · 4 years ago
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* 前回定休日だったのでリベンジ。 特製中華そば(930円)を注文。 スープ飲み干す美味しさ😋 店内の清潔感、スタッフ対応🙆‍♂️ * #🇯🇵 #🗾 #🍜 #🍥 #vsco #vscocam #vscofood #igfood #instafood #foodgram #foodpics #foodporn #foodstagram #instapic #instaphoto #instagood #likefortag #cooljapan #ramen #ramennoodles #ラー写 #ラーメン #らーめん #拉麺 #千代田区 #水道橋 #kabo_eat (中華そば 勝本) https://www.instagram.com/p/CIiHrfzjGyO/?igshid=17eov8tc4f78s
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xf-2 · 4 years ago
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コロナ不況により、3700億円の損失が出ると試算される北海道の観光業。好調だった訪日外国人(インバウンド)はゼロとなり、各地に影を落としている。一方で、ポスト・コロナを見据えた動きも。4回にわたり観光に携わる北海道の人々の「今」を伝える。  最終回は新たなリゾート地への投資を求める中華系資本と、商機と捉え奔走する人々を追う。
準備が水の泡…中国人向け不動産ツアー中止 別荘も売れず「何十億円の損失」
テレビ電話で中国人と商談する不動産会社社長の石井秀幸さん(北海道小樽市)
 7月4日、運河で知られる観光の街、北海道小樽市。不動産会社や商社を営む石井秀幸さんは、中国人の投資家とテレビ電話で今後の対応を協議していた。  「コロナですることないから、牧場で牛や豚と遊びながら暮らしている」(中国人投資家)  「別荘を誰かに貸す? 売る?」(石井さん)  「売れるなら売る…」(中国人投資家)  石井さんは全道各地で約100軒の物件を扱っている。その多くが中国を中心とした富裕層向けだ。
7000万円で売却する予定だったがキャンセルとなった別荘(北海道小樽市)
 高台にあり海を望める一戸建ては中国・上海のデベロッパーに7000万円で売る仮契約が交わされていたが、新型コロナで来日できないためキャンセルとなった。  2月の春節(中華圏の旧正月)に合わせ企画していた中華圏の富裕層対象の不動産紹介ツアーも中止。「和室が欲しい」など様々な要望に添った物件20軒、総額100億円分を用意し、1年以上かけて準備してきたが、コロナの影響で水の泡となった。  小樽市では6月、日中に飲食店でカラオケを楽しむ「昼カラ」で、クラスター(集団感染)が発生し、40人が感染。全国的にも注目を集めた。石井さんのもとに取引先から心配の声が寄せられ、投資の動きも鈍っているという。  「コロナショックの損失は何十億円。用意した物件は、売れなくなるとただの不良在庫。だからといって地元で買う人はほとんどいない」
華僑華人連合会…”ポスト・コロナ”見据え会合 狙う投資先は「第2のニセコ」
新たな投資先を探るため集まった全日本華僑華人連合会の幹部ら(北海道小樽市、7月)
 7月17日、小樽市内の飲食店に中華系の経営者の集まり、全日本華僑華人連合会の幹部らが顔を揃えた。IT会社やコンサルティング会社の社長、投資家、女優…。さまざまな職業の人々が一堂に会したのは、道内の投資先を探るためだ。  会合で話題に上がったのは、「北海道のへそ」と言われる富良野地区だった。  「中国ではラベンダーの富良野が一番有名ですからね。コロナが終わったら富良野に」(何徳倫副会長)  「富良野はいい投資先。これから価格が上がる」(会員の江川悦弘さん)  夏は広大なラベンダー畑、冬はウインタースポーツ。富良野は1年を通し観光資源がある。北海道第2の都市、旭川の空港から車で約45分と好立地。パウダースノーが売りのスキー場もあり、世界的リゾートに変貌をとげたニセコをほうふつとさせ、「第2のニセコ」とまで言われ始めている。  「もはやニセコは大手デベロッパーでないと参入が難しい。加えて相次ぐ開発と新幹線のトンネル工事で水が枯渇してきている。その分、富良野は土地が安く資源も豊かでねらい目」(石井さん)
最高値2億3000万円…高級コンドミニアムが完売 「買いたい」高級別荘地の整備計画も
富良野市に完成した高級コンドミニアムのペントハウス(7月)
 香港資本の不動産開発会社が6月、高級コンドミニアムを富良野市に完成した。スキー場に隣接し、市街地もベランダから一望できる物件で、1戸あたり約3000万円から2億3000万円。全33戸が完売した。購入したのは、主に中華圏の富裕層だ。  当初は7月の開業予定だったが、新型コロナにより12月に延期された。宿泊費は最上階7階のペントハウスで1泊23万9000円。12月から3月まで入っている予約は22件で、ほとんどが外国人オーナーによるものだが、来日できる見通しは立っていない。それでも運営会社「ニセコアルパインデベロップメンツ」の橋詰泰治さんは手応えを強調する。  「コロナがいつ収束するか見えないので、海外だけではなく、国内の観光客に向けてもアピールしていかねばならない���、ニセコに投資している方は富良野にも目を向けている。手応えは感じている」
コロナ禍でも続く”ニセコ・バブル”… 富良野は「同じ環境で割安」
��ロナ禍でも投資熱が冷めないニセコ地区(北海道倶知安町)
 世界的なリゾート地として人気となったニセコは、コロナ禍でも投資熱が冷めない。高級コンドミニアムが集まる倶知安町は3月公表された地価公示で商業地、住宅地ともに上昇率は3年連続の全国トップだ。  3月の観光客の入り込み数は前年同月比75%減と激減しているが、富裕層向けリゾートの新設は堅調で、今年1~5月の建築確認申請は87件と前年同期比70%増となった。地価の算定に携わった北海道不動産鑑定士協会はさらに過熱するとみている。  「入国制限が解除されたあとの観光バブルを期待し、今のうちに買っておこうと考える投資家も多く、さらに地価は上昇する可能性がある」
高級コンドミニアムが完成した富良野市北の峰地区
 コロナ禍前、富良野市もインバウンドは確実に伸びていた。外国人延べ宿泊客数は2019年度で約15万4000人と、この10年で4.2倍に急増した。  土地価格が高いスキー場周辺の「北の峰地区」の基準地価は、ニセコの3分の1。富良野市の不動産会社オールアバウトフラノの池野正樹代表によると北の峰地区の土地価格相場は3年で4倍ほど上昇した。投資の影響だとみている。  「同じような環境のニセコと比べて割安。夏のリゾート地としてもリターンが見込まれ、投資家たちが富良野のよさに気づきはじめた」
“海外富裕層向け”の別荘地計画…テレビ電話使い現場で中国人客へセールス
造成している海外富裕層向けの別荘地(北海道中富良野町、6月)
 6月24日、石井さんは中富良野町役場を訪れ、小松田清町長と会談した。  「富良野エリアの価値は日本一だと思っている。さらに発展させるため、別荘の水道整備を助成していただけないか」  石井さんは海外富裕層向けの別荘地を町内に造成する計画で、道路や水道などインフラ整備費用の助成を求めた。  小松田町長は「中富良野町は観光のマチ。いっしょにマチづくりをしていきたい」と応え、具体的な協力方法を模索する姿勢を示した。
テレビ電話を使って上海の顧客に別荘地を売り込む石井さん(7月)
 石井さんが計画している別荘地は雄大な大雪山連峰のパノラマが広がる更地で、広さは5000平方メートル。ラベンダー畑で有名なファーム富田から約3キロの土地を13区画��分け、2階建てのアパート2棟や一戸建ての別荘数棟を建てる計画だ。  7月15日、造成予定地に立ち寄った石井さんはスマートフォンを手にし、テレビ電話で上海の貿易会社の女性経営者にセールスをかけた。女性は水や食品の輸出入を手がけ、上海でスーパーマーケット3店営んでいる。石井さんの得意先で、小樽市で一戸建ての別荘を購入したこともある。  「結構広い。きれい、上海より空が青い」(上海の貿易会社社長)  「1区画100坪、ここに別荘を建てる。どう?」(石井さん)  「買いたいね、行きたい富良野」(同社長)  即契約とはいかなかったが、好反応に石井さんの笑みは止まらない。
“海外資本”へ嫌悪感示す人の矛先に… 「北海道の売国奴」SNSや電話で罵倒
 インバウンドや海外資本の不動産買収に嫌悪感を示す人がいる。その矛先は石井さんら、誘致している側にも向けられる。インターネットの匿名掲示板やSNSには中傷が数え切れないほど書き込まれている。「北海道の売国奴」と電話で罵倒されたこともあるという。  「インターネットの書き込みはほとんど見ない。一つ一つ見ると心が折れてしまう。書き込んでいる人たちは中国人が来なくなった観光地の惨状を想像していないと思う」     石井さんとともに別荘地の計画を進める地元の建設会社社長、桑原守孝さんも同調する。  「働く場所もない、人口も減ってしまう。日本人が動かなかったら外国人を呼ばないとどうにもならない。食っていけない」(富良野市の建設会社社長)
ラベンダー畑は満開…”売り上げは2割”「海外観光客に戻ってもらいたい」
中国では日本の代表的な観光地として知られる「ファーム富田」(北海道中富良野町、7月)
 中富良野町は人口約5000人の農業を中心とした小さなマチ。農家の高齢化や担い手不足が進む中で、町は観光に力を注いできた。その中核をになってきたのが、観光農園の「ファーム富田」だ。  21ヘクタールの園内で「紫のじゅうたん」のように咲き誇るラベンダーは約17万株。今の1%にも満たない面積で1958年に始まった。1982年にはテレビドラマ「北の国から」のロケ地となり、全国から観光客が押し寄せた。去年の観光客は112万人。”SNS映え”を求め訪れるインバウンドも多く、中国では日本を代表する観光地になっているという。  しかし、コロナの影響で、ラベンダーが満開になったにもかかわらず観光客は激減。7月の来園者はインバウンドがほぼゼロだった影響で、例年の半分以下。収入源となっている土産や飲食店の売り上げも例年の2割程度にまで落ち込んだ。  「庭園にびっしりお客様が歩いている状態だったので、見渡しても人がいないというのは初めて。海外観光客は大きな数だったので戻ってきてもらいたい」(ファーム富田・辻暁課長)
 インバウンドがゼロとなり、牽引役を失った北海道の観光。北海道ではインバウンドの回復や更なる投資を熱望する人は少なくない。石井さんもそのひとりで、富良野の別荘地計画を進めている。 「中国人が爆発した時の反動はすごいですよ。どこでお金を使わせるか? 首都・東京ではなく北海道。そのどこかと考えると富良野。勝ちに行きます」  コロナ禍を抜けた先の光景に思いをはせる。  この記事は北海道ニュースUHBとYahoo!ニュースの連携企画です。北海道観光の現状とともに、ポスト・コロナを見据えた動きを追いました。
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emilylikestennis · 4 years ago
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エンリケ後悔王子
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先が見えない。行き詰まりのどん詰まりで我々は今抗ったり、受け容れたり、或いは諦めたりしている。想像した未来はもっと華やかで便利で、そうじゃないとしてもマトモだったはずなのに。
効率化を突き詰めればその先には『死』しかない。バンドは非効率の極みだ。その非効率を更に極め、自ら修羅の道を行く痴れ者たちことエミリーライクステニス。今回メンバー全員にインタヴューを敢行することにより、その哲学がヴェールを脱いだように思う。まずは唯一のオリジナルメンバーであるエンリケ後悔王子だ。
(聞き手:早瀬雅之)
友達もいないけど、いじめられるでもない。何もない。毎週ブックオフに行ってた
●まず生い立ちを訊こうかなと。
「出身は群馬の前橋っていう県庁所在地なんですけど」
●結構中心地というか栄えてる?
「いや、死んでますね(笑)。オリオン通り商店街っていうのが近所にあったんですけど、ブラックビスケッツが一体五万円の木彫りのブラビ像を売っていて、どうしても売れなかった最後の一体を買い取ったのがその商店街で。商店街の人が『この通りの名前もブラビ通り商店街にしましょう!』って言ってた(笑)。そんな街です」
●ええ…。今もその名前なの?
「多分…。僕が大学生くらいの時にその近くにモールが出来ちゃって、商店街は蹂躙されちゃったんですけど、そこに新星堂があってD☆SELDOMっていう安いオムニバスと、フリーペーパーを毎月取りに行ってた記憶が」
●ああ、出してたね。それが情報源みたいな。
「そうそう、音楽雑誌かそれ。タワレコは高崎に行かないとなかった。県庁は前橋なんですけど高崎の方が栄えているんですよね」
●何か栄えているイメージがあるよね。
「自分の思春期で結構(高崎に)持ってかれたかな。ヤマダ電機の本店とか」
●ライブハウスもclub FLEEZが高崎に移って。
「そうそう、G-freak factoryの根城でお馴染みの」
 ●家族構成はどんな感じだった?
「祖父母と両親と姉と兄と…」
●三人兄��?
「姉貴が九個上で兄貴が二つ上ですね。だから僕が小学生のうちに大学進学で家を出ていきました」
●何か姉弟仲が良いイメージがある。
「今でも年数回会うし、兄貴も姉貴もうみのてのライブ観に行ったことがあったはず(笑)」
●その節はどうも(笑)。
「洋楽を最初に教えてくれたのが姉貴で、後は兄貴とオルタナを掘ってたかな」
●なるほど。やっぱり上に兄弟いると強いというか影響受けるし、早熟になるというか。
「そうですね。一番最初は小学生の時に、姉貴がミスチルのファンクラブに入ってたので、当時出たDISCOVERYかな。あと深海をずっとカセットで聴いてた記憶が」
●いい入りなんじゃない?
「入門編としては(その二枚は)間違っているような(笑)。あとは兄貴がビーズが好きだったから聴いてましたね」
●じゃあ結構音楽には入っていきやすい環境だったんだね。
「両親は大学の合唱団か何かで知り合ったんだっけな。あとはクラシックが好きで。音楽番組を観てると「最近のは全然わかんねーな」って機嫌が悪くなるような感じの人でした」
●タチが悪いやつだ。
「かと言ってクラシックを強要するでもなかったですけどね」
 ●学校ではどんな感じだったの?
「小学校入るまではものすごく引っ込み思案で。それが小学校入ってからすごい、何か陽キャみたいになって」
●え?そうなの?
「文集のランキングに入ってる『面白い人』とか『将来有名になりそうな人』とかあらかた名を連ねてるんですよ。今じゃ考えられないんですけど(笑)」
●何でこうなってしまったんだ、みたいな(笑)。
「いわゆるクラスの中心人物だったんですよね。アクティブな。でも小五くらいからかな、今思うと些細なことですけど、自分の家庭が新しいガジェットに対してものすごい嫌悪感を出すというか。プレステとかアドバンス買ってくれないみたいな。それで段々みんなの話題についていけなくなって、翳りが見えてきた(笑)」
●(笑)。
「結局小学生の「面白い」「つまらない」の尺度って如何に話題を共有できるかがほとんどじゃないですか」
●そうだね。特にゲームとか。
「あと漫画、昨日のテレビ、流行りの音楽くらいか…。段々それについていけずに、スクールカーストが下がっていく(笑)」
●でも野球やってたし、運動なんかは出来る方だったの?
「小学生までは自分が主人公だったから(笑)。少年野球で打率六割くらいあったし。『ヒット打つの簡単じゃないですか?』とか言って調子に乗ってた」
●ムカつくなぁ(笑)。
「シングルヒットしか打てなかったんですけど。早熟だったのかな。当時は背も小さくて痩せてて。段々みんな身体が大きくなって。中学くらいだともう置いてかれちゃったみたいな」
●今の感じに段々近づいてきたね(笑)。
「中学くらいで陰と陽が逆転して陰の者に(笑)。タウン&カントリーの黒い方になっちゃった」
●陰陽のマークね(笑)。部活はずっと野球?
「中学は野球で、高校も途中まで軟式をやってたけど「勝つぞお前ら!」みたいな顧問に代わって…。高校の軟式野球ってすごいヒエラルキーが低いんですよ」
●そうなの?
「甲子園もないし。甲子園決勝の一週間後に明石の球場で偽甲子園みたいなのをやってるけど、誰も気にしてないというか」
●硬式と軟式ってまったく別物?
「全然違う。硬式はボールがまず痛い」
●(笑)。
「練習が好きだったんですよ。でも試合は緊張するから嫌いで。それと硬式は甲子園を目指してレギュラー争いもそうだし、負けたらお終いみたいな…。野球は好きだけど、競争とかバトルしたくない、みたいな精神性でしたね」
●ああ、そうなんだ。
「こっちは楽しく野球やりたいのに、強要するなよ。って。その顧問は初心者をすごくないがしろにしていたし。それで辞めちゃった」
●勝ちたいよりも楽しみたかったんだね。高校のカーストは?
「中学で底辺で…。紅白戦でわざとデッドボール当てられたりするんですけど」
●イジメじゃん(笑)。
「『先輩、塁に出られてよかったッスね』みたいな。だからとにかく、輩とかしょうもないいじめっ子がいない進学校に行くしかないっていう強迫観念だけで勉強してました」
●その頃は頭はよかったんだ
「うん。学年で十番以内だった」
●おお、すごい。
「それで前橋高校っていう男子校の進学校に行って。そこはね、スクールカーストがなかったんですよ、何もない。いい大学行けるように自由にやれ。みたいな」
●グループがないの?
「いや、グループはあるしもちろんイケイケな奴もいましたけど、男子校なのでカーストを思い知らされる現場に遭遇しない。『あ、あいつ俺の好きな子と一緒に帰ってる…!!』みたいなシーンを見ないで済むというか。たぶん九割以上童貞だったはずですよ」
●男子校だとそういう劣等感は生まれにくいのかもね。
「そう、友達もいないけど、いじめられるでもなく。何もない。部活が終わったら自転車圏内にある三つのブックオフを毎週ローテーションするだけ。三週間後に行くと微妙にラインナップが変わってて。あとはツタヤで安い日に下北系を借りまくる日々」
●なるほど。
 ●話が戻るというか変わるけど、兄弟の影響とかありつつも、高校くらいは自分の意思で音楽を聴いてたの?
「そうですね。中学終わりくらいまで洋楽を聴いてなくて。兄貴がツェッペリンとかハードロックが好きで聴かせてきたんですけど、ハードロック伝説みたいなエピソードあるじゃないですか」
●はいはい。ありますね。
「オジーオズボーンがコウモリ食べたとか、ホテルでグルーピーと…とか。それがすごくカッコ悪く感じて」
●ああ、ロッククラシック的なエピソードが。
「『俺たち、ロックだぜ』みたいなのが嫌だったんですよ。でも中三の時に姉貴がWEEZERを『これ聴きやすいよ』って貸してくれて。それですごく衝撃を受けた。こんな冴えない人がバンドやってるんだ!みたいな」
●大味なロックバンドよりもうちょっとパーソナルなのが好みだった?等身大の。
「そうそう、等身大の。中学の野球部引退した後から邦楽のギターロックにハマりだしたんですよね。くるりから始まりモーサムとかシロップとか。ちょうどその頃全盛期だったんですよ。アジカン、アシッドマン、レミオロメンの御三家を筆頭に…」
●一番アツい時期だね。後に続けとたくさんのバンドが。
「あとアートスクールとバーガーナッズかな」
●UKプロジェクトとかQuipマガジン的な。下北が盛り上がってた頃だ。
「で、洋楽はWEEZERからオルタナとかシューゲイザーにハマっていった」
●今でもその辺りは好きだと思うんだけど。その時期に聴いていたものがバンドのルーツになってる?
「そうですねぇ、初めてやったバンドはNIRVANAのデモみたいな音質の、汚くて演奏が酷い感じだったような(笑)」
●ライブ初体験は?
「一番最初は中三の時に行ったゴーイングアンダーグラウンドかな」
●おお、意外。
「受験期にハートビートが出て、ずっと聴いてたんですよ。後は高校のとき、FLEEZにアートスクールとか観に行ってた。早瀬さんも行っていたとされる…」
●パラダイスロストのツアーだっけな。モーサムと。
「あと結成当初の秀吉が出ていた」
●意外と群馬はバンド大国だよね。
「当時はメロコアと青春パンクが強かったですね。で、陽キャがそういうのを聴いてるから逆張りで内省的なギターロックが好きだったのかも知れない。バンドに一切罪はなくても、銀杏とかが聴けなかった」
●ああ、自分が入っていく余地がないみたいな?
「そうですね」
●そこから大学に行くタイミングで上京?
「はい。東京じゃなくて横浜だったけど」
 橋本君に『こんなくだらないとこ、さっさと抜け出そうぜ』って言って軽音部を辞めた
●そういえば楽器っていつ始めたの?
「中学の選択授業で体育選んだのに手違いで音楽になっていて、ピアノも辞めちゃったしどうしよう。ってなって」
●ピアノやってたんだ。
「小一から小六までやったのに何も身につかなかったけど。ト音記号の場所しかわからない。コンクール用の曲をひたすら半年前から練習してやり過ごしてたと思う。で、その授業でどうしようかなと思っていたら、いとこで駅でギター弾いている子がいて、その人がギターを貸してくれて。ゆずの楽譜とともに(笑)」
●まったく(ゆずを通った)イメージない(笑)。
「それでその曲は簡単だから何となく発表も乗り切れて。でもある日家に帰ったら兄貴がギター弾いてて、既にFとか抑えられるんですよ。『俺が借りたのに!』って。すごくムカついて(笑)」
●ああ、利用されたみたいな。
「そう。それでロクに弾いてなかったけど、高校受験の直前にギターロック聴きだしたからエレキが欲しいってなって。親に受験終わったらいいよって言われたんです。そしたら兄貴が『絶対ベースを買うべき。エレキは俺の弾けばいいから。ベース弾ければ高校でバンド組むとき重宝されるぞ』って言うんですよね」
●そうかな…。
「そしたら受験真っただ中で最初に話したオリオン通りにある新星堂が潰れることになって、弾くのは受験終わってからって約束で閉店セールでベースを買ったんです。で、勉強しててこっちは弾けないのに兄貴が弾いてるんですよ(笑)」
●ズルい奴だな(笑)。
「結局自分が弾きたいから弟に買わせると」
●それで「ベースを買った方がいい」って力説してたんだ。
「そうなんですよ。で、兄貴が僕が高二のときに大学進学でエレキ持ってっちゃって。家にアコギとエレキベースだけがある状態(笑)」
●厳しいね。
「しょうがないからアートスクールのベースをずっと耳コピしてて。部屋を暗くしてコンポ爆音でヘッドフォンつないで、小さいアンプからベースを弾いてる。親からしたら心配ですよね。子供部屋から重低音だけが鳴っている」
●うちの息子は大丈夫かって(笑)。
「受験の時もそうだしいろいろと心配をかけましたね」
●大学はどうやって選んだの?
「結果論というか、もともと大学デビューしたくて関西の方の大学を目指してたんですけど、高校の先輩が行ってた大阪大学ってところを志望校にして。センター試験って会場が適当な高校に割り振られて受けるんですけど、なんと会場が自分の高校の自分のクラスだったんですよね」
●えーすごい偶然だね。
「そのホームグラウンドで何故か受験科目を間違えて(笑)」
●何で(笑)。
「一日目にロッカー開けて確認したら『あ、阪大受けられないじゃん』って。それでやる気がなくなって高校も行かずに、もうA判定のとこならどこでもいいやって思ったら国公立の前期も落ちて、たまたま後期で引っかかって、気づいたらビーズの稲葉の後輩になっていたと。進路が決まったのが三月の二十日過ぎだったと思う」
●めちゃくちゃギリギリだな。
「ロックコミューン(立命館の音楽サークル)に入りたかったですね。くるりを輩出したでお馴染みの」
●あとヨーグルトプゥね。
「そうそう(笑)」
 ●そこでエミリー結成したの?
「満を持して『バンドをやるぞ!』って軽音サークル入ったんですけど。上下関係が厳しくて。しかもみんなメタルのコピバンをやっている。学園祭になるとOBたちが集結してジューダスプリーストとかやってるみたいな(笑)」
●すごいサークルの良くない感じが出てるね。
「新入生はすぐバンドを組んで五月にお披露目ライブで一曲やらなきゃいけないんですけど、僕は何故かたまたま同じ大学に進学した高校の同級生三人とバンドを組んだんですね(笑)」
●意味ないじゃん(笑)。
「陰の者同士で(笑)。それで何かコピーしようとしたけど全員下手過ぎてコピー出来なかったんです。ドラムはドラムマニア上がりでベースとギターはほぼ初心者で。だからオリジナル曲をやることにしたんです。で、同時期に橋本君ていうサークルの同期のミクシィが炎上しちゃった子がいて。『軽音部は内輪ノリでクソ��いカスの集まりだな』みたいなのが先輩に見つかって」
●うわ怖いなー。
「その子もお披露目ライブで頭脳警察みたいなオリジナル曲やって。すごいカッコいいんですけど、めちゃくちゃ物を投げられるんですよね。ライブ中に。その後何故か僕のバンドも物を投げられまして(笑)」
●すごい荒廃してるな(笑)。
「終わった後橋本君に『こんなくだらないとこ、さっさと抜け出そうぜ』って言って辞めましたね。で、他の音楽サークルにロバートジョンソン研究会っていうのがあったんですけど」
●なんだそりゃ(笑)。
「あんまり研究してる感じはなかったかな(笑)。まぁ、ブルースとかハードロックのコピーをする割と穏健派のサークルだったんですけど。新歓行ったら最後に名のあるOBみたいなのが袖からわらわら現れて、十人ぐらいで「いとしのレイラ」を弾いてるんですよ(笑)」
●それは、ダメだね(笑)。
「ここもダメだって(笑)。で、ある日ロック研究会っていうサークルが大学の路上でライブをやってて。JR ewingっていうノルウェーのハードコアバンドのカバー…その時はカバーって知らなかったんですけど。それを演奏してて、ドえらい���ッコよかったんです。赦先輩の同級生たちだったんですけど。で、そこに入ろうと思ったら、『ここはサークルというか半年5000円でスタジオ利用権をバンド単位で買う人たちの集まりだから、まぁ好きにしなよ』みたいな」
●へー。
「当時赦先輩はすごい怖い先輩とスリーピースやってて、赦先輩も怖かったんですよね」
●ちょっとイメージと合わないね(笑)。
「そうですね。『後のバンドメンバーである』って漫画だったらナレーションがつく」
●『この時はまだ知る由もない』みたいな。
「(笑)」
  今日大学ですごい面白いことあったのに、ライブで今歌ってるの、めちゃくちゃ暗い歌詞だなぁコレ
●なかなかエミリー結成しないね…
「いや、その同級生とのバンドが大学一年の終わりくらいに解散しちゃって、遅いハードコアをやってたんですけど」
●遅いハードコア(笑)。
「で『よし、今度はシューゲイザーをやろう』ってエミリーライクステニスが結成された」
●シュー…ゲイザー?
「当初はギタボが自分で、ベースが女の子で、ドラムは残留して、あとギター兼フルートがいた」
●編成だけ聞くとそれっぽいね(笑)。
「そうなんですよ。で、新歓ライブをやったらフルートが『カッコ悪いことしたくないわ』って抜けちゃって」
●曲はオリジナル?
「全部自分が作ってましたね。で、スリーピースになっちゃって、ギター二本ないとキツいわって思って。当時僕とドラムがポストパンクにハマってたんで、じゃあそういうのをやろうってなって。それが2008年の夏くらいかなぁ」
●なるほど。バンド名はずっとエミリー?
「そう。でもその後ドラムがギャンブルにハマっちゃって」
●ああ、良くない方向に。
「どうしたんだよ、って家に行ったらスロットの筐体が置いてあって」
●もうダメだ。
「それで脱退して途方に暮れてたらバイト先にクロアチア人が入ってきて。『ドラム出来ます』って言うからあ、ちょうどいいじゃん!って。デヤンさんっていうんですけど」
●加入したの?
「うん。クロアチアン・パンク時代ですね」
●そんなのあるの?
「いや、わかんないです(笑)。で、その人がライブの前日に『もうすぐ子ども生まれるからライブ無理かも』ってメールがきて、マジかと思ってたら翌日普通にリハ来てるんですよ(笑)」
●(笑)。
「『赤ちゃん大丈夫?』って訊いたら『昨日生まれて今ガラスん中入ってるから大丈夫』って」
●ガラスん中(笑)。
「それがきっかけかわからないけど、家族の圧により2009年の春くらいに脱退して。その後ベースも辞めるってなって」
●とうとう一人に。
「そう、で、どうしようと思ったんだけど、サークルの一学年後輩に泉君っていう毎日JOJO広重のブログを読んでる子がいて」
●だいぶオルタナティブだな(笑)。
「その子にベースをやってもらって、あと二つ下の武井君って子がドラムに加入した」
●だいぶ変わったね。
「でもその頃の音楽性はポストパンクとニューウェーブみたいな感じのままですね。で、どこでライブやっていいかわからないから、横浜…中華街の近くのライブハウスに毎週出てた」
●あーあそこね。
「そう、あれは本当に時間の無駄だった」
●(笑)。
「ブッカーにすごいナメられてたんですよね。暇な大学生の穴埋めバンドって」
●学生のバンドっていうのはねぇ…。
「酷い時は『来週の水曜日出れる?』みたいな。で、『面白いイベントになりそうなんだ』って言うから出てみたらアコースティック・ナイトってイベントで(笑)」
●酷いな(笑)。ありがちですね。いや、ありがちじゃよくないんだけど。じゃあ横浜が多かったんだ?
「あと下北のいろんなところに、殊勝にもデモを送ってたんですよ。モザイクとか251とか、今思うとちょっと違うんだけど(笑)」
●カラーが違うね(笑)。でもちょっとずつ広げようとする気持ちが。
「あと当時MySpace全盛期で」
●流行ってたね。
「そこでモーションとグッドマンと…葉蔵さん(中学生棺桶、例のKのボーカル)が働いてた頃のバベルかな。誘ってもらって。『あ、あっちから誘ってもらえることあるんだ!?』みたいな」
●『音源を聴いて連絡しました』みたいなのね。
「そうそう。まぁ、いわゆる平日の条件で今思えばアレですけど、それでも嬉しかったですよね。だからその人たちの悪口は言えない」
●(笑)。見出してくれたから。
「別にそこから鳴かず飛ばずですけど(笑)」
●(笑)。でもそこで知り合ってまだ付き合いがあるバンドがいる。
「そうそう。だから初めてモーション出たときのブッキングは今でも覚えてて、クウチュウ戦(現Koochewsen)、ギター大学、プラハデパートっていう」
●すごいメンツだな(笑)。
「すごいですよね。で、クウチュウ戦なんて年下じゃないですか。なのに上手過ぎて。『え!?東京ってこんなにレベル高いの??』。もう、幽遊白書の魔界統一トーナメントみたいなモンですよ」
●こんなすごい奴らが何の野心も持たずに…っていうやつね(笑)。
「そう、雷禅の喧嘩仲間のくだりね。で、初めてバンド友達が出来たというか。otoriとかもかな」
●音楽性的にも共鳴出来て。
「同世代だし。そんな感じでやってたんですけど、ライブやった後めちゃくちゃテンション下がるんですよね。当時の音楽性が」
●自分たちの音楽性のせいで?
「そう、お葬式みたいな気持ちになるというか。早瀬さんは四人になってからしか観てないと思うんですけど。当時は歌詞も暗いし」
●今とは全然違うね。
「うん。リフとか再利用してるのはありますけどね。普段部室で泉君とムーの話とか未解決事件の話をいつもしてて、そういう瞬間はテンション高かったり楽しかったりするのに、ずっと暗いことを歌ってなきゃいけないのはしんどいなって」
●最初の部活の話と少し繋がってくるかもね。
「うん。あと暗いバンドをやっていると暗くなきゃいけないと思っていて。打ち上げはしちゃいけない。みたいな思い込みもあり(笑)」
●イメージに縛られ過ぎてる(笑)。
「でも『死にてぇ』とか歌ってた人が打ち上げで乾杯してたら違和感あるじゃないですか。そういう強迫観念で自家中毒になってしまったというか。『今日大学ですごい面白いことあったのに、ライブで今歌ってるの、めちゃくちゃ暗い歌詞だなぁコレ』って」
●過敏だったんだね。
「センシティブだったんですよ。グッドマン出ても(ブッキングの)鹿島さんにすごいディスられてたし」
●ダメ出しが。
「で、MCだけすごい褒められる(笑)。当時三曲くらいやると僕が小噺をして(笑)」
●面白エピソードみたいなのを。
「『この間バイト先で…』みたいな。今思うとああ、平日のモーションだなぁって思うんですけど(笑)」
●そうだね(笑)。
「でも『この後もカッコいいバンドばっかり出るんで最後まで楽しんでいってください』とかは言ったことないですよ」
●『名前だけでも覚えて帰ってください』みたいな奴ね。
「(笑)。そう、それも言ったことないです。で、だんだんしんどくなってきたんで、どうしようかなと。当時の曲作りが僕がリフを持っていって、泉君がめちゃくちゃにするみたいな感じでやっていて。ドラムの武井君はすごいいい奴なんですけど、当時から曲の展開が多くて、たまに展開を忘れて、止まっちゃうんですよドラムが(笑)。ドラムの音がなくなったその瞬間僕と泉君がキレて楽器を投げつけてしまう。そういうことをしてたら『正直もうしんどいッス』って言われて、本当に申し訳なかったなと思いますけど」
●行き詰ってるね…。
「当時二学年下に獣-ビースト-とT-DRAGONがいたんですよ。僕が四年生、泉君が三年生の時です。みんなロック研究会にいたからそれなりに話してたんですけど、T-DRAGONは当時ノイカシのシグマとよくわからないバンドをやってて、あんまりパっとしなくて。獣-ビースト-はもっと謎で、時折八時間くらいスタジオ抑えてるんですけど、一人で入ってて何やってるかよくわからないんですよ」
●怖いな(笑)。
「本人曰くテクノっぽいのを作ってたらしいんですけど、結局一度も日の目を見ることなく。で、見た目がセドリック(At the Drive-Inのボーカル)っぽいじゃないですか。当時今よりもセドリックっぽかった。それでT-DRAGONに武井君の代わりに叩いてってお願いしたら、ライブとか観に来てくれてたのもあり割と快諾してくれて。で、獣-ビースト-に『At the Drive-Inみたいなバンドをやることになったから。ボーカルやって。この日スタジオいるから』ってメール送って。返事がなかったんですけどちゃんとその日スタジオに来てくれて、漸く今の編成の原型が出来たんですよ」
●やっと今の形に!
「いやー長いですね。この時点で大学卒業する直前ですね」
  仕事に好きとか興味とか求めない方がいいな。土日休みならバンド出来るから
●就職とかはどうしたの?
「大学三年の秋くらいに『どうしよっかなぁ』って出版社とか何となく受けていて。で、僕はマルチタスク機能がものすごく低いんですよ。いろんな会社を同時に受けるみたいなのが出来なくて、一社受けてそこそこのところまで行って、落ちて、また別のところにエントリー���て、みたいな」
●落ちるとゼロになっちゃう。
「そう。変に真面目なところがあるんですよ。面接で絶対「弊社が第一志望ですか?」って訊かれるんだからそこ以外受けちゃダメだよな。みたいに思っていた。あと某音楽雑誌の会社も受けたんですけど圧迫面接だったんで逆ギレして帰った」
●えー圧迫面接なんだ。
「エントリーシートに物凄い熱量をぶつけたんですよね。そしたら面接官に鼻で笑われたというか。『随分音楽が好きなんですね。ハハッ』みたいな。ライターの坂本真里子が好きだったんで受けたんですけど。まぁ入る価値のない会社ですね!って」
●すごいな。
「そういう感じで疲弊してきたからとりあえずモラトリアムを伸ばそうと、大学院行こうかなぁって思ったんですよね。そしたら親もそうだけど姉がすごい説教をして。うちの姉はすごい傾き者なんですよね(以下、傾き者エピソード)。で、大学院も行かない方がいいか、と。それでもう仕事に好きとか興味とか求めない方がいいな。土日休みならバンド出来るから。って今の会社に入ったんですよ」
●就職してからバンドとの両立はどうだった?
「難しいというか、当時僕が一番年上で唯一社会人だったからノルマとかスタジオ代全部負担してたんですよね。それがキツかったかな(笑)。たぶん2014年初頭くらいまで」
●結構最近までじゃん(笑)。
「獣-ビースト-とかT-DRAGONが就職するまでは基本的にあまり負担させないようにしようと。赦先輩も当時サポートだったし。でもグッドマンとモーションは本当に良くしてもらったから。あと両立と言うか…。僕大学を卒業する時に大学の近くに引っ越したんですよ」
●卒業するときに?
「意味がわからないんですけど。入った会社が家賃補助がないということに気づいて、極限まで安いところに住まなきゃって。本当にヤバい、タックルしたら崩れるような家。後にT-DRAGONもそこに住むんですけど」
●安いってどれくらいなの?
「えっとね、18000円」
●安すぎでしょ!!
「七畳+キッチン+風呂トイレ別でそれですからね。本当は20000円だったけど入るときに『大学院生です』って言ったら安���してくれた(笑)」
●いいなぁ。
「いや全然良くない。ボロいなんてもんじゃないですよ。木造の長屋を三分割して三部屋になってるんですけど。築は…五十年くらいかな。で、風呂が外にあるんですよ」
●共用?
「いや、共用じゃなくて、もう一つのプレハブ長屋みたいなのがあって、それが三分割されてるんですよ」
●なるほど。
「で、その外風呂が、外からしか鍵がかからない(笑)」
●閉じ込めることしか出来ない(笑)。
「そう。で、大学が近いので土日のスタジオは大学でやってたんですよね。ライブは基本土日で。平日のライブの時は誰か後輩に楽器を託して…。無理やりやってましたね」
●その頃はもう割と東京のオルタナシーンに食い込んでる感じの。
「確かうみのてと対バンしたのが2012年初頭で」
●一月だった気がする。
「グッドマンでね。あれが転機っていうと大げさですけど」
●いわゆるライブハウスに良く来る人たちに知られた感じかもね。
「その頃はやたらトリプルファイヤーと対バンしてた気がする。2012年から今でも親交がある人と一緒にやり始めた」
●まだ2012年だ。
「長いですね。とりあえず赦先輩が入るまでの話をすればいいかなって…」
●いつだろ
「2013年の春くらいかな。で、2012年の春に泉君が大学院に進学するんですけど、関西に行っちゃったんですよね。もう続けられないねって。で、サークルのかなり下に内海君ていうスキンヘッドの子がいて、見た目がいいから誘った。それが失敗だった(笑)」
●まぁいろいろ、あったね(笑)。
「うん、いろいろあった(笑)。それでバンド辞めてもらって。赦先輩はしばらく連絡もとってなかったんですけど、サポートやってもらえませんか?ってお願いして。で、なし崩し的に正規メンバーになってもらった。現在に至る」
●赦さんが入ってだいぶ音楽性に幅が。
「内海君の頃までほとんど僕が考えてたんですけど、赦先輩が入って初めてスタジオで曲を練り上げる、みたいな。バンドっぽくなってきた」
●他のメンバーのエッセンスが入ってきて
「こういうフレーズはどうかな、とかイメージを膨らませたり」
●やっとバンドらしいエピソードに(笑)。
「そこまで辿り着くのに五年くらい要してる(笑)」
●そこからは今に至る。
「メンバーは変わらないけど、音楽性はだいぶ変わったかな。ハードコアが薄れて…何というかメタ的な曲が増えた」
●そうだね、ハードコアでもプログレでもない、何とも言えない。
「何とも言えない(笑)。演劇の要素だったり、曲の中にもう一曲あったりとか」
●はいはい。
「構ダンカンバカヤロー!を観て『あ、こういうのでもやっていいんだ』とかボーダーを再確認させてもらってますね」
●アウトとセーフの線引きを。
 ●バンドの成り立ちはこれくらいにして、曲のアイデアとかどういう時に考える?
「基本のリフは今でも僕が考えるんですけど、スタジオで試して、カッコいいだけだとボツになるんですよ(笑)」
●(笑)。
「後はコンセプトをみんなで固めて。リフのパーツを無数に作っておいて、当てはめる感じ。シチュエーションとか」
●コンセプトありきでそこから曲と歌詞?
「それがないと今は逆に作りづらいですね」
●歌詞は誰が?
「今はほとんど獣-ビースト-です。Brand-new suicides(エミリーの楽曲の中に登場する架空のバンド)の曲だけ僕ですね」
●そうなんだ(笑)。ライブの時の意識は変わってきてる?
「昔はカッコよく思われたいみたいなのが多少あったと思うんですけど、今はもうとにかく面白いかどうか、みたいな。『さぁ、消費しろ!』って。最悪『何も思い出せないけどとにかく楽しかった』でいいや。って。『よくわかんなかったけど面白かった』でいい」
●それはすごくいいことだと思う。
「『よくわかんないけど凄い』という方向だと絶対勝てないじゃないですか。グランカとかルロウズとか。最高峰に。そっちは無理だから、変化球で攻めるしかない」
●ライブ中ってどういうことを考えてる?
「なるべく仕事のことを考えないようにしている(笑)」
●(笑)。
「ハンターハンターのシャルナークのオートモードみたいな。あれに近い感じになると割といいライブが出来ますね。今何を弾いてるとか一切考えずに弾けるときがあって。逆に『このフレーズ難しいんだよな』とかふと思い出すと弾けなくなっちゃう」
●邪念が入ってくるとね。
「だからなるべくオートモードで弾くようにしたい」
●展開がすごく複雑だから身体が覚えるまですごく時間がかかりそうな印象があるけど。
「でも正直、曇ヶ原(エンリケ後悔王子が過去在籍していたプログレバンド)より全然覚えやすいですよ」
●マジか(笑)。
「曇ヶ原はA→B→フォントが違うA→フォントが違うBみたいな感じで繰り返しが多いけど微妙に違ってて。でもエミリーはとにかくAからZまで覚えるだけなので(笑)」
●なるほどね。
 ●平日はどういう生活をしてる?
「仕事に行って、帰って、疲れて寝る。みたいな(笑)。『無』でしかない」
●仕事終わった後に何かするって難しいよね。
「平日何も出来ない病なんですよ。かれこれ十年」
●音楽は聴いてる?
「精神的にキツいと音楽も聴かなくなるというか、耳馴染みがいいやつしか聴けない時がある」
●新しい物を受け入れる体力もない時はあるよね。
「昔のJ―POPとか、中高のとき聴いてたのとか」
●最近はどんなのを?
「ジャンル的にはユーロビートですかね」
●ええ!?
「あれって速いんですけど、リフ的にオイシイというか。ファミレスで言うとミックスグリル定食みたいな曲ばっかなんですよ。キラーリフてんこ盛りみたいな」
●詰め込んである感じで。
「これは意外とヒントがあるなと」
●なるほど。バンド的に取り入れるぞ!って意識で聴いてるの?
「サウンドは取り入れようがないので、和音のリフとかフレーズを参考にしている感じ。あとは昔J―POPとして聴いてた、例えばglobeとかSPEEDとか、それをCDで聴き返すとめちゃくちゃ発見がある。『この曲のバンドサウンドすごいな』とか『あ、あの曲のパロディーなんだ』みたいな」
●メロディーしか覚えてなかったけど、聴き返すとアレンジがすごい、みたいなのはあるよね。
「そうそう。小さい頃はマイラバの声は『すごい声だな』って。オーバーダビングの概念がないから(笑)。みんなホーミーみたいにああいう声を出せるんだと。ミスチルとかめちゃくちゃハモれてすごいなって(笑)」
●すごい技術だ(笑)。
  記録媒体として一番長持ちするのは石か壁画なんですよ。レガシーをね、遺したい
●バンドをやってもう結構な歴があるけど、やってなかったらどうなってた?
「うーん。土日関係ない仕事をしてたかなぁ。あの…中学の時の夢が『オリックスの球団職員になること』だったんですよ」
●球団職員なんだ(笑)。
「プレイヤーとしての限界は悟ってたので(笑)」
●裏方でもいいから野球に携わるという。
「もっと前は小説家とか、マンガ家とか。いわゆるキッズが憧れるクリエイティブ職になりたかったけど。バンドやってなかったら…。ちょっと想像つかないですね」
●例えば今の生活からバンドが何らかの理由でなくなったとして、今の仕事だけ続けてくのは気持ち的にしんどい?
「しんどいですね。実際今それに近い状況になっているけど…。表裏一体というか、それでバランスとってたんだなぁって。普段はバンドと野球とハリエンタルラジオだけで生活出来たらいいなって思ってたのに(笑)」
●なるほどね。
「仕事以外のコミュニケーションが欠乏してて、ストレスが溜まっていく。バンドメンバーって十年近く、今まで少なくとも二週間に一回は会ってたのに。そ��人たちに一ヵ月以上会わないのは違和感がすごくて」
●フラストレーションが溜まってる感じ?
「この間スカイプでバンド会議みたいなのをして『いやぁ、楽しいなぁ』って(笑)。普段赦先輩がスタジオ遅刻するとすごく嫌な対応をみんなでしてたのに(笑)」
●失って初めてわかる大切さみたいな。
「前よりも優しくなれるかも知れない(笑)」 
●今はこういう状況ですけど、また落ち着いた頃にこうしていきたいとかバンドである?
「昔の自分みたいな、基本的に陰の者に『楽しいなぁ。バンドやってみたい』とか思われたいですよね。以前モーションで話しかけてきた男の子が、二十歳くらいなんですけど。『僕もバンド組みたいです!』って言ってて、あ、嬉しいなって思って。その後コンパクトクラブで群馬に行ったときにその子がまたいて『僕、バンド組みました!』って嬉しそうに報告してくれたんですよ」
●普通にいい話だ(笑)。エミリーは水とかうちわとかいろんな形態でリリースしてるけど、今後こういうのを出したいとかある?
「そうですね。僕が考えていたのがダウンロードコード付土地なんですけど]
●(笑)。
「10万円くらいの離島の土地を買って、そこに看板とQRコードを貼って、辿り着きさえすればフリーでダウンロード出来るみたいな(笑)」
●なるほど。
「アドベンチャー型音源」
●面白いな(笑)
「石碑でもいいけど。記録媒体として一番長持ちするのは石か壁画なんですよね。だから最終的にはそれでリリースしたいんですよね。将来オーパーツみたいになるかも」
●遺跡として遺っていくかもね。
「レガシーをね、遺したい」
5 notes · View notes
kachoushi · 2 years ago
Text
各地句会報
花鳥誌 令和5年1月号
Tumblr media
坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
………………………………………………………………
令和4年10月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
草花のひかりの中へ列車ゆく きみよ 玉電の秋日に錆びし蛙色 要 雁渡るご墓所の天の筒抜けて 順子 神在す胙として木の実独楽 三郎 大老の供華には黒き曼珠沙華 いづみ 木の実降る正室と側室の墓 同 おしろいや世田谷線の音に住む 千種 どんぐりに一打を食らふ力石 みち代 踏切を渡りカンナの遠くなる 順子 茎だけになりて寄り添ふ曼殊沙華 小鳥 直弼へ短きこゑの昼の虫 光子 金色の弥勒に薄き昼の虫 順子
岡田順子選 特選句
草花のひかりの中へ列車ゆく きみよ 黄のカンナ町会掲示板に訃報 光子 井伊の墓所秋の大黒蝶舞へり 慶月 大老の供華には黒き曼珠沙華 いづみ おしろいや世田谷線の音に住む 千種 十月の路面電車の小さき旅 美紀 秋の声世田谷線のちんちんと はるか 現し世のどんぐり星霜の墓碑へ 瑠璃 直弼の供華の白菊とて無言 俊樹 直弼へ短きこゑの昼の虫 光子 秋声や多情を匿すまねき猫 瑠璃 累々の江戸よりの墓所穴まどひ 眞理子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月1日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
点と点結ぶ旅して尉鶲 愛 振り向かぬままの別れや秋日傘 久美子 月光や洞の育む白茸 成子 木の実落つ長き抱擁解きをれば 美穂 折々に浮かぶ人あり虫の声 孝子 ひぐらしの果てたる幹へ掌 かおり 国境も先の異国も花野なる 睦子 虫の音が消え君の音靴の音 勝利 流れ星消えたるあたり曾良の墓 かおり
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月3日 花鳥さゞれ会 坊城俊樹選 特選句
天高き天守の磴や男坂 千加 秋高し景色静に広がりて 同 汽水湖に影を新たに小鳥来る 泰俊 朗々と舟歌流れ天高し 同 落城の業火の名残り曼珠沙華 雪 秋立つとほのかに見せて来し楓 かづお 天の川磯部の句碑になだれをり 匠 天高し白馬峰雲ありてなほ 希
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月6日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
夫のこし逝く女静か秋彼岸 由季子 赤い羽根遺品の襟にさびついて さとみ 学童の帽子が踊る刈田路 吉田都 雨音を独り静かに温め酒 同 紫に沈む山里秋の暮 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月7日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
蛇穴に若きは鋼の身を細め 鍜治屋都 芋の露朝日に散らし列車ゆく 美智子 神木の二本の銀杏落ちる朝 益恵 破蓮の静寂に焦れて亀の浮く 宇太郎 新種ぶだう女神のやうな名をもらひ 悦子 鱗雲成らねばただの雲一つ 佐代子 色褪せず残る菊とは夢幻能 悦子 ばつた跳ぶ天金の書を捲るごと 都
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
ますかたは吟行日和年尾の忌 百合子 奔放にコスモス咲かせ埋れ住む 同 椋鳥の藪騒続く夕間暮 美枝子 子等摑む新米の贅塩むすび ゆう子 名園を忘れ難くて鴨来る 幸子 ぱつくりと割れて無花果木に残り 和代 初鴨の水の飛沫の薄暮かな ゆう子 猪垣や鉄柵曲がり獣の香 三無
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月10日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
木の実落つ藩邸跡を結界に 時江 コスモスの花街道は過疎の村 久子 産声の高し満月耿耿と みす枝 ひとしきり子に諭されて敬老日 上嶋昭子 曼珠沙華供花としもゆる六地蔵 一枝 鰯雲その一匹のへしこ持て 時江 雨の日の菊人形の香りなし ただし あせりたる話の接穂ソーダ水 上嶋昭子 倒立の子に秋天の果てしなき 同 秋風にたちて句作に目をとぢて 久子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月10日 なかみち句会 栗林圭魚選 特選句
川は日に芒は風に耀うて 三無 風向きに芒の穂波獣めく 怜 雨止みて爽やかに風流れ出し せつこ ゆつたりと多摩川眺め秋高し 同 秋雨の手鏡ほどの潦 三無 患ひて安寝焦がるる長夜かな エイ子 藩校あと今剣道場新松子 あき子 秋蝶や喜び交はす雨上り せつこ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月11日 萩花鳥会
大阿蘇の銀波見渡す花芒 祐子 観る客と朝まで風の秋祭り 健雄 秋祭り露店の饅頭蒸気船 恒雄 秋吉台芒波打ち野は光る 俊文 花芒古希の体は軋みおり ゆかり まず友へ文したゝめて秋投句 陽子 青き目に器映すや秋日和 吉之 夕日影黄金カルスト芒原 美惠子
………………………………………………………………
令和4年10月16日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
金継ぎの碗によそふや今年米 登美子 そぞろ行く袖に花触れ萩の寺 紀子 子の写真電車と橋と秋夕焼 裕子 秋の灯に深くうなづく真砂女の句 登美子 花野行く少女に戻りたい母と 同 被写体は白さ際立つ蕎麦の花 紀子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月16日 伊藤柏翠俳句記念館 坊城俊樹選 特選句
御神燈淋しく点り秋祭り 雪 天馬空駈けるが如き秋の雲 同 自ら猫じゃらしてふ名に揺るる 同 秋潮に柏翠偲ぶ日本海 かづを 真青なる海と対峙の鰯雲 同 鶏頭のいよいよ赤く親鸞忌 ただし 桃太郎香り豊に菊人形 同 鬼灯の中へ秘めごと仕舞ひたし 和子 雲の峰だんだん母に似てゐたり 富子 振り返へるたびに暮れゆく芒道 真喜栄 坊跡に皇女が詠みし烏瓜 やす香
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
おほかたは裏をさらして朴落葉 要 秋深し紙垂の失せたる縄一本 千種 合掌のかたちに稲を掛け連ね 久子 豊穣に早稲と晩稲の隣り合ふ 炳子 耕運機突っ込まれたる赤のまま 圭魚 鏤める谷戸の深山の烏瓜 亜栄子 稔り田を守るかに巖尖りけり 炳子 晩秋の黃蝶小さく濃く舞へり 慶月 雨しづくとどめ末枯はじまりぬ 千種 穭田に残され赤き耕運機 圭魚
栗林圭魚選 特選句
溝蕎麦や角のとれたる水の音 三無 ひと掴みづつ稲を刈る音乾き 秋尚 稲雀追うて男の猫車 炳子 叢雲や遠くの風に花芒 斉 泥のまま置かるる農具草の花 眞理子 稲刈や鎌先光り露飛ばす 三無 耕運機傾き錆びて赤のまま 要 けふあたり色づきさうなからすうり 千種 晩秋の黃蝶小さく濃く舞へり 慶月 雨しづくとどめ末枯はじまりぬ 千種 隠沼にぷくんと気泡秋深し 炳子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月19日 福井花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
渡り鳥日本海を北に置く 世詩明 コスモスや川辺はなべて清酒倉 同 朝倉の興亡跡や曼珠沙華 千代子 案山子見てゐるか案山子に見らるるか 雪 赤とんぼ空に合戦ある如し 同 ゆれ止まぬコスモスと人想ふ吾と 昭子 色鳥の水面をよぎる水煙 希子 点在の村をコスモス繋ぐ野辺 同 小次郎の里に群れ飛ぶ赤蜻蛉 笑子 鳥渡る列の歪みはそのままに 泰俊 鳥渡る夕日の中へ紛れつつ 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月21日 鯖江花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
俳人の揃ふ本棚秋灯 一涓 大法螺を吹き松茸を山ほどと 同 那智黒をひととき握りゐて秋思 同 漂へる雲の厚さよ神の旅 たけし 稲孫田のところどころに出水跡 同 美術展出て鈴掛けの枯葉踏む 雪 院食の栗飯小さく刻みをり 中山昭子 秋晴や僧の買物竹箒 洋子 末枯れて野径の幅の広さかな みす枝 短日のレントゲン技師素つ気なし 上嶋昭子 栗拾ふ巫女の襟足見てしまふ 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月21日 さきたま花鳥句会 岡田順子選 特選句
竜神の抉りし谷を秋茜 裕章 コスモスの続く車窓を開きけり かおり 段々の刈田に迫る日の名残り 月惑 残菊の縋る墓石に日の欠片 同 草野ゆく飛蝗光と四方に跳ぶ 裕章 夕空を背負ひ稲刈る父母の見ゆ 良江 二つ三つむかご転がり米を研ぐ 紀花 黄葉散るギターケースに銀貨投ぐ とし江 秋びより鴟尾に流離の雲一つ 月惑 弾く手なき床の琴へも菊飾り 康子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月23日 月例会 坊城俊樹選 特選句
ケサランパサラン白い山茶花咲いたから 順子 草の実の数ほど武運祈られて いづみ 盛大に残りの菊を並べけり 佑天 誇らしげなる白の立つ菊花展 秋尚 白帝の置きし十字架翳りなく かおり 魂のせるほどの小さき秋の蝶 順子 晴着色の鯉の寄り来る七五三 慶月
岡田順子選 特選句
初鴨の静けさ恋ひて北の丸 圭魚 色鳥の色を禁裏の松越しに はるか 草の実の数ほど武運祈られて いづみ 菊月の母は女の匂ひかな 和子 白大輪赤子のごとく菊師撫で 慶月 ふるさとの名の献酒ある紅葉かな ゆう子 大鳥居秋の家族を切り取れる 要 菊花展菊の御門を踏み入れば 俊樹 亡き者のかえる処の水澄めり いづみ 秋興や一男二女の横座り 昌文
栗林圭魚選 特選句
菊花展菊の御門を踏み入れば 俊樹 鉢すゑる江戸の菊師の指遣ひ 順子 玉砂利を踏む行秋を惜しむ音 政江 秋の影深く宿して能舞台 て津子 神池の蓬莱めきし石の秋 炳子 破蓮の揺れ鬩ぎ合ふ濠深き 秋尚 能舞台いつしか生るる新松子 幸風
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和4年10月 九州花鳥会 坊城俊樹選 特選句
戻りくる波より低き鰯舟 喜和 人波によごれし踵カンナの緋 かおり 考へる葦に生れにし秋思かな 吉田睦子 北斎の波へ秋思のひとかけら 美穂 一燈に組みたる指の秋思かな 同 石蹴りの石の滑りて秋落暉 ひとみ 砂糖壺秋思の翳は映らずに かおり ゆふぐれの顔して鹿の近づきぬ 美穂 城垣の石のあはひにある秋思 成子 おむすびの丸に三角天高し 千代 梟に縄文の火と夜の密度 古賀睦子 黒電話秋思の声のきれぎれに 同 恋人よ首より老いて冬眠す 美穂 顔伏せてゆく秋思らの曲り角 かおり
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
1 note · View note
aigeangorm · 5 years ago
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なくさないように、しまっておいて
 これは、俺が17歳か18歳か……ともかく、25年くらい前に書いた小説です。完全にオリジナル。横書きだけど「小説」の体裁を気にしていたようで、数字は漢数字になっています。  もしも、「ひきこもり生活」のひまつぶしになれば、当時のJK俺氏も、公開に踏み切ったおばちゃん俺氏も、うれしいです。 なくさないように、しまっておいて 「一七歳か……いっつも俺の前を歩いてくよなぁおまえは」  互いに部活動を早引けして、よく行く喫茶店でケーキを頼んでささやかなお祝いをした後、家でもお祝いがあるからと言う彼女を送るため、俺たちは電車に乗っていた。彼女の耳には小さなピアス。 「嘘。そんなに早歩きしてないよ、私」  くすくす笑って彼女が答える。ふわりと視線を窓の外にやりながら、指先で軽く耳のイミテーションパールに触れる。気にいってくれたみたいだった。良かった。  まだそんなに遅い時間ではなかったけれど、もう外はだいぶ暗かった。冬の足音が聞こえてきました、そんなコピーが世の中に氾濫する季節。彼女の大きな瞳に、窓の外を流れるネオンの光が次から次へと映っては消える。俺はその光にしばし見入っていた。この、生まれて初めての恋人を、俺はそれはそれは大切に想っていた。  橋にさしかかる。足元から、さっきより乱暴な音が響く。 「ねぇ見て。……川に月が映ってる。綺麗」  急に言葉をかけられて、その瞳に見入っていた俺はちょっと動揺する。  彼女の視線は変わらず外へ向いていた。……綺麗だった。満月を二日ほど過ぎていただろうか、それでも輝きは衰えていない。いや、これから欠けていくことを知っているから、必死で光を放っているように見えた。  今度彼女の瞳に映るのは、……何もない、闇。月明りが包み込む、優しい闇だった。  おまえはあの時、なにを想ってたんだろう?  そしてあの夜、なぜあの川へ消えてしまったんだろう? 水面に揺れる月が、おまえを呼んだのだろうか……。  俺は、結局大学へは行かなかった。高校一年の時親父に連れて行かれたバーで働いている。バーテンダーの見習い(もう見習い歴三年だ……はぁ)である。親父の友人であるマスターは優しいけれど、仕事にはとにかく厳しい。マスターの奥さん(一水〈いつみ〉さんっていう)は、静かな言葉で容赦なく叱るマスターと叱られる俺を横目で見ながら、料理を用意したり気が向くとピアノを弾いたり。お客もいい人ばかりの、雰囲気のいい店だ。 「バーっていうより『溜まり場』っていう感じの、アットホームな店でな。俺の友達の店で、“サンクチュアリ”っていう店なんだけど。お前が行っても誰も咎めたりしないと思うんだ。どうせ初めて飲むなら、いい店でいい酒を飲むべきだっ」  そう力説した親父は、酒好きの遺伝子を俺にくださった(お袋もか)。 「瞳〈あきら〉くーん、バイオレットフィズ頂けるかしら」 「はい、かしこまりました。沢渡さん好きですねぇバイオレット」 「若い頃から好きでねー。必ずっていうほど飲んでたわ」 「あっ、やっぱり遊び回ってたんですか?」  なにーっ、と怒ってる沢渡さんは、思わずママー水割り頂戴っと言いたくなる風貌だけど、実は売れっ子の脚本家。この間のドラマも最高視聴率三〇パーセント!なんて出してたから、顔が知られてしまって迂闊に出歩けやしない、と嘆いている。“サンクチュアリ”は駅前の繁華街より少し奥まった所にあるから、そんな業界人もよく来る。(ちなみに俺も沢渡さんのドラマは好きで、欠かさず見ていたりするので、やっぱり嬉しい) 「一水さーん、ピアノ弾いてよー」 「あっオレも聴きたいーっ、弾いて弾いてー」  駅前公団住まいのサラリーマン二人が、ちょっと頬を赤くしてテーブル席から声をかけた。一水さんはそうねー今日は弾いてなかったぁねー、なんて言いながら洗い物の手を止めてカウンターを出る。  “サンクチュアリ”のウリのひとつが、一水さんのピアノだ。音大を出てるだけあって、腕前は一級だし、レパートリーも幅広い。  広くはないはずの店内に置かれたグランドピアノ。これだけ大きいのに、それほど圧迫感がない。  紫色の飲物を沢渡さんの前に置くと、静かにピアノが鳴りだした。 「……あれ、これって天気予報?」  カウンターにいた二人連れの女性たちが、はたと顔を見合わせる。俺も好きな曲だけど、やっぱり天気予報のイメージが……。 「おっ、ジョージ・ウィンストン」  おっと、お客だ。先にマスターが声をかけた。 「いらっしゃいませ。久し振りだねー、林くん」 「えぇ、昨日だったんですよ初コレクション。忙しかったんで」  林さんも常連の一人だ。ファッションデザイナーをしていて、最近独立したそうだ。そっか、じゃあ顔見せないはずだ。  男の人がもう一人と、女の子……年は俺と同じ位、かな……?  強い瞳。誰かに、似てる? 「あらら、こんなところでひなたちゃんにお目にかかれるとはねぇ」  沢渡さんがそう言った。 「知ってる人ですか?」 「えっ瞳くん知らないの? 藍川ひなたっつったら今一番旬なモデルよ。そっか林小吉のコレクションに出たのねー。見たかったわー。ちょっと挨拶してこよっと��  沢渡さんはそう言って林さんのテーブルのほうへ行ってしまった。えーと……。 「瞳、暇なら林さんとこオーダー取って来て」  マスターに言われて、はっと我に返る。  誰に似てるんだろう? いや、そんなこと差し引いてもかなりの美人だ(モデルなんだから当たり前か)。 「ご注文はお決まりですか?」 「お、瞳くん久し振り! まだマスターに怒られてんの?」 「いいかげん回数は減りましたよぉ。林さんこそ忙しそうですね……あっ、独立おめでとうございます」 「サンキューっ。あ、オーダーか、ちょっと待ってくれよ……」  いつもは結構落ち着いたクールな雰囲気の人なのに、なんだか陽気だ。そりゃそうだ、ついに念願の独立! だし。  沢渡さんはいつの間にか例のひなたとかいう子と話し込んでた。 「あれ、じゃあひなたちゃんて瞳くんと同い年?」 「え、あきらくんて?」 「この方よー。ここのバーテン見習い」 「え?」  こちらを見上げたところに、思い切り視線を合わせてしまった。  あ。  わかった……誰に、似ているのか。 「あきらくんて、いうんだ?」 「あ、ええ……そうです」  ぎこちなくなっちまったかな。 「すごいのよー、漢字でヒトミと書いてあきらって読むの」  うわ、綺麗な名前ーっと彼女が驚く(大抵俺の名前を一発で読んでくれる人はいない)。  俺はどうしようもない想いに駆られていた。  そうだ、彼女、玲子に似てるんだ。俺の、今まででたった一人の恋人に。  玲子は一七歳の誕生日の夜、家族でお祝いをした後、皆寝静まった後に一人家を出た。もちろん翌朝は大騒ぎだった。家族が捜索願いを出した直後、この街を二分して流れる川に女性が浮かんでいると住民から通報があった。……玲子だった。  玲子は前の晩食事をしたときのまま、高校の制服を着ていた。着衣の乱れは全くなく、外傷なし、争った跡もないことから、自殺と断定された。遺書も日記も見付からず、理由は全く判らずじまいだった。  玲子は学校では人気者だった。明るくて芯の強い子だった。誰もが彼女のことが好きで、彼女も皆のことが好きだった。俺たちは同じクラスで、いつもクラスの中心にいて校内と教室を忙しく行き来する彼女に、俺も好感をおぼえていた。そんな彼女が俺に告白してきたのは、あれは夏休みが目の前に迫った頃。俺は剣道部の練習を早めに抜けて、誰もいない教室で荷物を片付けて休んでいた。(前の晩親父と飲んでいたから、暑さに負けて気分が悪かったんだ)  誰かが、開け放した後ろのドアから入ってきた。 「……西条くん? どうしたの、部活は?」 「あー勝海さんだー……駄目だ、頭がくらくらする」 「大丈夫? 熱射病?」  玲子はそう言って心配そうに俺の顔を覗き込んだ。 「……ねぇ、いきなりだけど、西条くん今彼女いる?」 「へ?」  まさかあの人気者勝海玲子が俺なんかのことを好きだったなんて思わなかったから、��抜けな返事をしたっけな。玲子は二人のことを隠すこともなく、いつの間にかクラス公認、校内公認になってしまっていた。  玲子は成績も良かった。これなら六大学だって平気じゃないか、との評判だった。  だから、誰も信じられなかった。玲子が自殺するなんて。  今でも時折思い出す。水に濡れたおまえの耳に淡く光ってたイミテーションのパールと、あの夜水面に揺れていた月。  その度に怖くなる。あの偽物の宝石と、欠けていく月の光が、記憶の中で引かれ合い、繋がって、一つになっていくんだ。俺があのピアスをあげなかったら、おまえは月に呼ばれたりしなかったんじゃないか。馬鹿らしいといつも思い直すけれど、やっぱりそんな気がして、急いでしまい込む。 「瞳くん、なにか作って?」  あ。玲子の眼だ。 「瞳くん? おーい仕事中だぞ、ぼーっとするなー」 「……あっ、すみません」  ひなたさんだった。俺はカウンターの中に戻っていたんだ。いつの間にかひなたさんと沢渡さんがトレードしている。沢渡さんは林さんたちと楽しげに談笑していた。 「なにかって言っても、俺たいしたもの作れないよ」 「いいよ、なにか得意なの作って」  得意なのって言ってもな、まだマスターのOK出るのも三分の一の確率だし……とりあえず、モスコミュールなら平気かな。 「はい、どうぞ」  ひなたさんはきれいな指でグラスを受け取って一口啜ると、満足そうに微笑んだ。あまりモデルっぽい笑い方じゃなくて、ただの女の子の顔だった。 「おいしい! たいしたものじゃないの、これって」 「マスターはまだまだだって言うけどな」 「ふぅん、厳しいんだね……」  また一口啜った。よく見ると、どうもノーメイクみたいだ。つまりそれは、素顔だって十分きれいだってことで……すごいな。 「ねぇ瞳くんて、結構もてるでしょ?」 「えーっ?」 「かっこいいもん。ねーねー、彼女は?」  彼女、か。そういや、作ろうとも思わなかったな……。  違う。いらなかったんだ。 「いないよ」 「あ、そうなんだ? なんだ、皆見る目ないなあ……」  この店気にいっちゃった、また来るね、なんて言ってひなたさんは帰っていった。  その三日後に来たのを皮切りに、ひなたさんは本当によく店に来た。ほとんど二日に一遍である。初めと違って、毎回一人だ。  その日は日曜日で、マスター夫妻が次の日から旅行に行くと言い出した。早春の京都に行くそうだ(いいなあ)。自然、店は二人のいない三日間休業である。 「こんばんわぁ!」 「おっ、いらっしゃいひなたちゃん。今日は仕事休みかい?」 「ええ、明日からまた雑誌の撮影ですわー」  ひなたさんは“サンクチュアリ”に来るときはいつもノーメイクだ。そしていつも、カウンターに立つ俺の前に座る。なんだかそれだけで、店の中の雰囲気が少し変わる。モデルだからかな、なんて思うけど、そうじゃない。ひなたさんだから、周りの空気を変えることができるのだと思う。そしてその空気は、日なたのように暖かく居心地がいい。店の常連さんたちとも、すっかり仲良くなってしまっていた。 「瞳くん、いつも作ってくれるの、頂戴」 「かしこまりました」  あの日作ったつたないモスコミュールを、ひなたさんは妙に気にいってくれていた。  ──ありゃ、空っぽだ。 「ごめんちょっと待っててくれる? 酒足りないから取ってくるわ」  カウンターの奥へ回ると、同じことをしていたマスターが声をかけてきた。 「なあ瞳、ひなたちゃんって可愛いよなあ?」 「そりゃあそう思いますけど……どうしたんですかいきなり」 「瞳は今彼女いないんだろ?」 「だからどうしたんですって」 「いや、ひなたちゃんて瞳のこと好きなんじゃないかなあ、なんてな」 「はぁ!? 嘘でしょー」  嘘でしょー、とマスターの手前そう言ったけど、……どうもそうらしい。俺が暇になってカウンターの内側でグラスを磨いたりし始めると、俺にいろんな話をさせる。昔のこと、今のこと、趣味、いろいろ……。ひなたさんは人に話をさせるのが上手くて、しかも聞き上手だから、喋るほうもつい気分が良くなっていろいろ喋ってしまう。 「はい、お待たせ」 「ありがとう。ねぇ、入り口のところに貼ってあったけど、明日から休みなの?」 「うん、そう。三日間ね。あれっでも明日から仕事なんでしょ?」 「夕方には終わるもん。なんだ、明日から瞳くんに会えなくなるのか……」  何も言えなくなってしまった。胸の中に、忘れていた暖かみが戻ってきたような気がした。  同時に、眼の奥に淡い光が蘇る。それは冷たくて、胸の暖かさはすうっと冷めていく。白く、水に濡れて光る。白く、白く、光る。 「残念?」  やっと口を開いた。 「うん……でも、瞳くんも休みたいもんね。そりゃー仕方ないし」  素直な子だな……なんて、妙に感心した。俺はその日、上手くすりぬけて他の客の相手をして、その後ずっとひなたさんとは目も合わせなかった。  街を流れる川は、俺の好きな場所でもある。  この街の大抵の人が、幼い頃にはあの川で遊んだという記憶を持つ。街中だから釣りをする大人たちもほとんどいない。なぜかこの街の小学校は川沿いにあることが多いので、暖かい季節になると子供たちは遊び場を校庭から川へと移す。俺も、そうだった。小さい頃からあの川で遊んでいて、当然のようにあの川が好きだった。  その川へ、玲子は消えた。  どんな風に? 制服を着たまま──紺のブレザーに同色のボックスプリーツのスカート、赤いリボン、玲子はそれがとても良く似合ってた──俺がプレゼントしたピアスも、つけたまま。裸足で。あの夜は冷たい風が吹いていた……。  堤防から、川べりへ降りる。手前の方はまだ浅い。本流から枝分かれして、川というか水溜まりを作っているんだ。そこを白く細い足が横切る。ぴちゃ、ぴちゃ。ぬめっとした陸地を通り過ぎると、目の前を川が流れる。足元の小石に注意しながら、水の中へ、一歩、一歩。そう、このあたりから急に深くなる、もっと進むと流れに巻き込まれる……。  玲子の髪が、揺れた。 「瞳く────ん!!」 「えっ?」  振り返る。堤防の上に、……ひなたさんがいた。俺は、川の中に立っていた。ジーパンが膝まで濡れていた。 「なにしてんのーっ、まだ寒いんだから、風邪ひくよーっっ!」  おかしいな、店しめて、帰ろうと思って、それで……いつの間にか、家へと向かう角を逆に曲がっていた。川へ、足が向いていた。  まだ春は遠いようで、本当に水は冷たかったから、俺はすぐに川から出て、堤防の上にいるひなたさんの所へ歩き始めた。川は俺を呼び戻そうともせず、ただ淡々と流れているようだった。 「どうしたの瞳くん? びっくりしちゃったよあたし」 「いや、俺もよくわかんない……」  ひなたさんの家は川沿いにある一軒家だそうで(こんな郊外にもモデルは住むのだなと妙なことを考えた)、あの後家に帰ってまた犬の散歩に出てきたのだと言った。ばくという名(笑)のその犬は、人懐っこく俺の足元にまとわりついてきた。 「いくらなんでも、こんな時間に散歩してたら危ないよひなたさん」  俺は、しゃがみこんでばくの頭をなでながら見上げて言った。 「……瞳くん、ほんとに今彼女いないんだ?」 「……いないよ」  今日は月が出ていない。良かった。 「あたし、瞳くんのこと好きだよ」  柔らかい風が吹いた。川の中に月がある。俺は立ち上がる。 「ごめんね」 「どうして? どうして謝るの? あたしはただ、瞳くんのことが好きなだけ。別に付き合ってなんて言わない、瞳くんが嫌なら」 「違うんだ。好きに、なれないんだ」 「……え?」  眼の奥の冷たい光を見ないようにして、俺は言葉を押し出した。 「昔、恋人を亡くしたんだ。一七歳の誕生日の夜、この川に入って自殺した」  大きいひなたさんの眼が俺を見ていた。俺はその眼を見返すことができなくて、川の向こう岸を走る車たちの流れるライトの光を見ていた。 「家族も、もちろん俺にも、理由が分からなかった。学校では人気者で、成績も良かったし。俺といる時にも、いつも笑ってた」  ばくが足元にじゃれつく。 「わからないんだ……あいつが、どうして死んだのか。それを考え始めると、もう眠れなくなるし……でも、考え続けなければいけない気がするから。だから、誰も、好きになれないんだろうなって」 「……でも答えはないんだよ?」  ひなたさんが言った。俺はその顔を見ないようにして、帰るために堤防を降りた。  正直なところ、そんなことひなたさんに言ってほしくなかった。玲子のことを、彼女は全く知らないのだから。──話した俺が悪いのだ。 「瞳くん!」  俺の背中へ、ばくも、寂しげに鳴いている。 「あたしは、遠慮なんかしないからね!」  今日の夜には、マスターたちはこっちに着くはずだ。駅まで迎えに行こう、と何十杯目かのカクテルの味を見ながら思う。“サンクチュアリ”で働き始めてもう三年が経とうとしている。もうなんだか、マスターと一水さんが親のように思えてしまう。生んでくれた両親とは別の、両親。  マスターからはいつからか店のスペアキーを貰っていた。最初は怖くて仕方なかったけど、だんだんその怖さは気持ちのいい熱い緊張感に変わった。信用してもらっていることが嬉しかった。  マスターには、二人のいない間カウンターに立って練習をしたい、と頼んでおいた。明日からまた店を開けるから、今日は一水さんが頼んでおいた料理の材料も届く。だからいてくれると助かるなぁ、と一水さんが言ったのもある。まぁ毎日来ていたりするのだけど。  半地下になっているせいで、この店の裏口はない。(強いて言えばマスター夫妻の居住スペースに通じるドアくらいか)だから入り口のドアは『CLOSED』の札を出して、天気もいいから開けっ放しにしておいた。  店にはBGMをかけられる設備がない。ピアノがあるからだけど、俺はピアノが弾けないし、弾きながらシェーカーを振るのは���理だ。だから家から小さいラジカセを引っ張り出してきた。古いラジカセは、必死に音を出してくれている。  おっ、今回はいいかもしんない。ちょっと気にいったので、一杯飲み干すことにした。  ピアノの前の椅子に座る。ここに座って後ろを見ると、店内が見渡せるんだ。背もたれつきの椅子にまたがるように後ろ向きに座った。 ���なんだか疲れた……。三日間、毎日このカウンターに立って練習をしていた。店を開けているときは必ずしもシェーカーを振り続けているわけじゃない。こんなに酒というものに向かい続けたのは初めてだ。それでも納得のいくものなんて、──あったかな? なかったかもしれない。もしかしたら、マスターだって自分にOKなんて出してないんじゃないか、そんな気がした。  ふわりと風が入ってきた。まだ寒いけど、必死でやっていたからそうは思わなかった。心地いい。  グラスを持ったまま、軽く目を閉じた。 「今日はお休みじゃないの?」  あったかい。  目を開けると、ドアのところにひなたさんが立っていた。青空のかけらを従えて。 「お休み。俺だけだよ」  柔らかい笑顔を俺に向けると、いつも通りカウンターに座った。そしていつも通り、 「瞳くん、いつも作ってくれるの、頂戴」  俺もいつも通り、カウンターに立つ。 「じゃあさ、これ飲んでみて。いままででいちばん、かもしれない」  ほんと? そう言って、嬉しそうにグラスを受け取る。一口含んで、ひなたさんは驚いた顔をした。 「これ、いつもの?」 「そ、いつもの」 「……別のものみたいだよ? ほんとにおいしい」  しばらく、俺たちはお互いに黙っていた。ひなたさんはゆっくり、ゆっくりグラスを空けた。そして、脇の椅子に置いたリュックから、一冊のアルバムを取り出して一枚一枚めくると、俺の前に置いた。 「この子でしょ、瞳くんの亡くなった彼女って」  ……控え目な笑顔を浮かべるひなたさんの隣で、──玲子が、笑っていた。ひなたさんの人差し指が指しているのは、玲子だった。 「……話聴いててさ、もしかして、って思ったんだ。玲子は彼氏ができたなんて一言も言わなかったから、違うかと思ったんだけど、あの川で自殺したなんて話他に聞いたことないし。で、気になっておととい玲子の家に行ったんだ。おばさんに会って、昔話なんかして、玲子って彼氏いたのって訊いたら、『あら、ひなたちゃん知らなかったの? 高校の同じクラスの子だって言ってたわよ』だって。それで、やっぱり玲子だったんだなって。  あたしと玲子って、幼馴染みなんだよ。幼馴染みどころか、誕生日も、生まれた病院も一緒でさ。だから親同士も仲いいの。でも家は遠くてね、同じ学校に行ったことはないんだ。  なのによく一緒に遊んでた。お互いの学校の話したりして。どっかで、似てたんだろうね。誕生日も、生まれたところも一緒だから、なんか、特別だったの、お互いが。好きな本だとか、音楽だとかも、よく似てた。  でもね、中学に上がった頃、玲子が物凄い反抗期になっちゃったの。家にいたくない、お父さんもお母さんも大嫌いだって、よくうちに逃げて来て、泊まっていったりしてた。一年くらいで落ち着いたけどね。そしたらあたしはそういう玲子を真近で見てたから、親に反抗なんてしなくなっちゃった。そこから、あたしたちの性格は正反対になった」  俺はじっと聴いていた。ひなたさんの遠い眼を見ながら、ゆっくりとカクテルを作り始めることにした。瞳くんも知ってるだろうけど、そう言って俺の眼を見返して話を続ける。 「玲子は明るくて元気で、強かった。二年生の後半だったかな、クラス委員に立候補したなんて聞いたから、驚いたよほんと。自分が楽しいことが一番だった玲子が、だもの。あたしは『世のため人のため』なんてカケラも考えなかったから、信じられなかった。そしたら玲子なんて言ったと思う?『皆が楽しければ私も楽しいよ』って。忙しいよ、疲れたよ、辛いよって言いながら、死ぬまで皆のために頑張ってた。それでも、充実してるっ! って顔してたもん、負けたわー、って思ったんだほんとに。  あたしは逆に、何もできなくなったの。玲子のそんな姿を見ていて、自分には何もできない、あんなに強くない、って諦めちゃった。とりあえず周りの皆と一緒のことしてれば生きていられる。そう思ってた。  そうしたら、玲子は急に自殺しちゃった。なんでだか、さーっぱりわかんなかったよ、あたしにも。  ……でもね、だんだん、わかったの。もしかしたら、玲子は疲れちゃったんじゃないかって。おばさんも言ってたけど、玲子、行きたい大学だとか、将来の話って全然しなかったんだよ。そうじゃなかった?」  氷をグラスに入れながら、俺は何も言わずに頷く。 「だよね。怖かったんだと思う。だって、自分は皆が、皆と、うまくやって行けるようにって、それだけやってきたんだもん。周りはそれに甘えて、玲子が頑張ってる間に、いろんな夢を見て、それに向けて歩き始めてる。玲子には、その時その時を頑張るだけで精一杯なんじゃなかったのかな。それで疲れて、怖くなったんじゃないかなって、そう思ったの。  ……瞳くんのこと、どうして教えてくれなかったのかなって考えた。なんでだと思う?」  さあ、わかんないな。俺は首を軽く傾けてみせた。 「悔しかったのかもね。あたしさ、高校に入った時に、少しでも自分を変えたくって、ロングヘアをばっさりショートにしたんだ。で、美容院で眼鏡外した時、美容師さんが『眼鏡、外したほうが可愛いじゃない!』って言うのよ。半分お世辞だったろうけど、妙に褒めてくれて、なんだか気分良くなっちゃって、コンタクトにしたんだ。んでその勢いでオーディション受けたらこれが大当たりしてさ。もしかしたら、そんなあたしが玲子を余計苦しめてたのかもしれないんだ……」  どこかで、玲子が笑った。 「そんなことないと思うな。玲子さ、死ぬちょっと前、俺と一緒にいたんだよ。その時、誕生日の同じ、大切な親友がいるんだって初めて教えてくれたんだ。じゃあ今日一緒にお祝いしたかったんじゃないのって言ったら、その子は今日暇が取れないから、──仕事だったんでしょ、ひなたさん。──昨日二人でお祝いしたの、特別だから二人きりで、って嬉しそうにしてたよ」  やわらかくて甘い桃のカクテルを作った。ピンク色の液体をグラスに注いで、ひなたさんの前に置く。 「ありがと。瞳くんは?」 「俺は、これ」  バーボンをロックで。きれいに調和したカクテルもいいけど、たまにはこんなシンプルな味もいい。 「乾杯、しようか」 「何に?」  ひなたさんの眼には、桃のカクテルと似たような涙が浮かんでいた。きっと、甘いだろうな。なぜかそう思った。 「玲子に」  次の日から、“サンクチュアリ”はまた営業を始めた。マスターは、時々俺に難しいカクテルも作らせてやる、と言った。一水さんも、モスコミュールは一級品だね、うちの旦那より上手いかも、なんて言った。そしてなんと、それは俺の特別カクテルにされてしまったのである。ひなたさんが『Eye's Cocktail』なんて名前をつけてくれた。瞳のカクテル──俺の、カクテル。そうさせたのは、ひなたさんだ。  そのひなたさんは、やっぱり二日に一遍は店に顔を出す。そして、いつもこう言う。 「瞳くんのカクテル、作って?」  ある日、ひなたさんがこう言った。 「ねぇ、今でも玲子のこと好き?」  俺は、全く迷うことなく答えた。 「好きだよ。きっと、いつまでもね」 「良かった。あたしも玲子のことずっと好き。でもね、瞳くんのことも好きなんだ」  ひなたさんはそう言って、日だまりのように笑った。そしてその日だまりが、眼の奥に冷たく光る白く淡い光を、ゆっくり、ゆっくりあたためていくのを、俺ははっきりと感じながら、より良い調和を作り出そうと、毎日を過ごす。  冷たい真珠色した月をあたたかい光で包むことができたら、それを心のいちばん大切なところにしまい込んで、俺はまた恋をしてみようと思う。  なくさないように、しまっておこう。
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2ttf · 13 years ago
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nikaibun · 5 years ago
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十二月
 今年の十二月は鞄の中が牛乳まみれになったことから始まった。ボストンバッグに入れていた瓶の蓋が、事もあろうに外れてしまっていたのである。そして、まず手洗いにでも駆け込むべきところを、そのまま列車に乗ってしまった。気が動転していた。しかししばらく時間の経つうちに平静を取り戻して、終わってしまったことはどうにもならないことに諦めがつき、仕事場についたときに鞄をまるごと捨てた。そのあと、仕事仲間に笑い草にして語った。その鞄は、このように牛乳塗れになるまでに、約十ヶ月のあいだわたしに担がれてきた。それは買い付けたときは安売りをしていて特段たいした痛手にはならなかったし、捨てた瞬間は厄介払いでもしたかのように清々しい気さえしたものだが、こういうことが積み重なると、さすがに心が弱ってくる。
 ここ最近、二週間に一回は、牛乳塗れの鞄のような災難があるような気がしている。それを多いと捉えるのか、少ないと捉えるのかは、その人の人柄や性格などにも寄るのだろうが、わたしからしてみたら致命的に多かった。鍵を忘れて家族の帰宅する二十三時まで外に居なければならないとか、たった五分目を離した隙に自転車の盗難に遭うとか、些細なものだと、間違ったものを買ってきてしまうとか、ハンバーグに玉ねぎを多く入れすぎがためにただのひき肉炒めになってしまったことだとか。本当につまらない話だと思う。つまらない話は、積み重ねても積み重ねてもつまらない話でしかないが、それをたくさん乗せられた人は重さに耐え切れず死ぬんじゃないか知ら。  気丈なつもりでいたわたしも、いよいよ、押しつぶされそうになってしまったというわけである。
 もうすっかり十二月だった。人生で十二月を迎えるのは、なんだかんだ言って二十五回目である。そのくせ、いつも初めて迎えるような気持ちになってしまう。人間は、生きるのに必要なこと以外は忘れるようにできている。  九月末に仕事場が移転した。企業拡大により、自分の部署だけが引っ越すことになった。列車の乗り換えも変わり、仕事場への道のりが少し長くなった。変わってからもう二ヶ月は経つのに、わたしの足は今でも稀に以前の乗り換えを目指そうとする。  仕事場では、毎日ちがう笑い話をする。愚痴を笑いに変えるのである。何も解決しないが、単に憂さ晴らしのためだった。でも、意外とこれが労力の要る作業なのかもしれない。強いふりをしているだけの人には。つまり、わたしである。
 ハッピー・メリー・クリスマス! ケーキはいかがですか、お嬢さん。  樫の木でできた重厚なドアを開けると、店主が恥ずかしげもなくそう迎え入れてきた。わたしが店に入ってくるのが、硝子越しに見えたのだろう。その言葉は間違いなくわたしにだけ向けられたややおふざけ気味のものだった。 「ハッピー・ハッピー・メリー・クリスマス。楽しい時期ですね。」 「そんなしけた顔で言われちゃあね。」  店主は髪を無造作にかきあげて苦笑した。 「まあおれもそんなハッピーじゃないんだけどね。なにしろ十二月が誕生日だから、おれもいよいよ三十路なわけよ。」  わたしは、おめでとうございます、と言って、なるべくカウンターから離れた席に座った。 「いつもの?」店主でなく、カウンターの端っこに頬杖をついて座っていたノラが言った。わたしは黙って肯いて椅子に座る。ノラは、店主に「いつもの。」とそのまま伝えてまた雑誌を読み始めた。いつもの、といっても、そんなに格好いいものではない。カフェラテである。  わたしはこの店に繁く通う。なぜなら、いつ来ても席が空いているからである。広いわけではない。かといって、狭すぎるということもない。客足が思わしくないのは、駅前の道からやや外れたところにあるためだろう。しかし潰れる気配もない。それはわたしのような常連客が、まるで自分の家かのように通い詰めているからである。  ノラもまた常連だった。いつも同じ席に座っていた。人気のない席なのである。なにしろ、カウンターの端っこには雑貨が山盛りに置いてあるのでとても狭い。そして、しっかりした椅子ではなく、わりと簡易的な椅子が配置されている。ほとんどノラのために用意されたような席だった。 「随分と元気がないようで?」  ノラはくるっと振り返って、めずらしく機嫌よさそうにわたしに話しかけてきた。 「年の瀬は殺傷能力があるね。」わたしは無表情のままで言った。「物憂さだ。」  わたしの吐き出した言葉に彼は、ふうん、だか、へえ、だか、音で言い表せないような返事をして、また目線を雑誌に戻した。スウェットみたいなズボンの膝小僧を居心地悪そうに掻いて、息苦しかったのか薄いキャメルのセーターの胸の部分を軽く引っ張りおろした。ノラを一言でいうなら、近所のこぢんまりとした部屋に住む貧乏大学生といったところか。いつ来ても居るので、たしか学生だったとは思うのだが、授業に行っているのか否かはよくわからない。  店主はカウンターに座るご年配と話し込んでいる。景気良く世間話に花を咲かせながら、ほとんどノラのほうを見ずにカフェラテをカウンターの端に置いた。それを、ノラがわたしのいるテーブルに運んだ。 「もう半分、新年に足を入れているようなもんだ。」ノラが言う。 「どういう意味?」 「諦めと自棄みたいなもんですかね。」  口が止まらないのか、ノラはそのまま席へは戻らなかった。わたしの横へ細い身体をするりとくぐらせ、隣の席とわたしの席とのちょうど真ん中あたりに収まった。 「あの爺さん、ずっとマスターと話し込んでやがんだ。しかも、宝くじの話ですぜ? 当たりもしない紙切れのことを延々と。暇ったらありゃしないね。」 「そう? 夢があっていいと思うけれど。」 「おや。あなたはおれと同意見だと思ってましたけどね。」 「同意見といえば同意見だけどね。」 「なんと。嘘がお上手で。」  カラン、コロロン。ドアに取り付けてあるベルがのっそりとした揺れに躊躇いがちになると、二人目のご老人が杖をついて入ってきた。先にいた宝くじを夢見るご老人が元気に声を掛けるので、どうやら二人は知り合いらしい。 「単位は平気なの。」  何の気なしに、ノラに聞いてみた。彼は肩をすくめて見せる。「あなたに心配されるほどじゃありませんぜ。」
 悲しみよこんにちはという言葉が似合うのは素敵な異国の十七歳の女の子だけであろう。  マリオンは艶めく赤みがかった髪をシャンパン・ゴールドを纏った指先で梳きながら「あーあ。ふたご座流星群見られなかったなあ。」と言い言いわたしの隣へ座ってきた。  それは冬のわりに暖かい日の一瞬のことであった。やたら風だけが強くて、わたしは何度も帽子を吹っ飛ばされた。そのくせ曇っていて、空の彼方で繰り広げられていたはずの流星群は沢山の人に待ち侘びられていたのに、ついに姿を見せることはなかったという。わたしは仕事に追い回されぐっすり眠っていたのでわからなかった。  マリオンはきらきらの爪を眺めて溜息をつく。星のことで頭がいっぱいなようだった。何も言わずとも、彼女の目の前にはココアが運ばれてきた。言わずもがな、ノラの手によって。  彼女は知らないだろうが、今日はとある旅客車の廃車日である。わたしは特に列車が好きなのではないけれど、仕事に行くのに乗っているだけでその情報はいつの間にか頭に刷り込まれていた。駅前はいつも通りの賑わいであった。  一昨日のことである。仕事帰りの列車で、大騒ぎをするスーツの群れが流れ込んできた。夜遅かったので、酒でも飲んでいたのだろう、良い歳をして、大きな声で喋っている。忘年会か、とぼんやり思った。きっと、自分の立場も年齢もマナーも、何もかも忘れてしまったのだろう。それが良いことなのか悪いことなのかは、わたしなぞが決めるようなことではない。  ただ、あらゆることを忘れて良い日というのは、なんだか素敵な響きを持っていると思える。
 十二月の折でさえ初雪なんか降らなかった。昨年は天から鍋やフライパンさえ降ってきたというのにだ。風に乗って聴こえる歌は、 Gloria in excelsis deo という遠い国の言葉だった。 「ミサだ。」リュカさんが言う。「大聖堂でみんな練習してる。」  街の中には杉の木が点々と生えていたが、どれも等しく雪の衣を纏いはしなかった。不思議とさみしげな光景である。  リュカさんと昨年のストライキは大変だったねと話した。そうそう、鉄の塊が空から落ちてきたのは、さじを投げた料理人および主婦たちの怒りの声だったのだ。とはいえ鈍器が空から落ちてくる様は、今風の言葉を借りて言えば「普通に危ない」はた迷惑なものだったけれど、公安��一日で鎮めてくれて事なきを得た。その一連の流れを何をするでもなく眺めていたノラは、公安が一言漏らした「こんな事があってたまるか。」という真面目一徹の正統派の愚痴に一日中狂ったように笑い転げていた。あれから、一年経つのか。 「一年が早いです。リュカさん。」 「きみはまだ若いから分からないかもしれないけれど、ぼくほどになるともっと短く感じるよ。」 「そんなに歳変わらないじゃないですか。」 「きみの三倍は生きてる。」 「うそつき。」  リュカさんは学校に通っていた頃の二つ上の先輩である。  三倍、とは随分大きく出たものである。読書の量でいえば、わたしが一生読む文章の三倍は摂取しているのかもしれない。リュカさんは学生時代から図書館が友達だった。ヒトの友達がいないわけでもない。その教養の豊富さと人望から、リュカさんは何処へ行っても人に囲まれる性質の人物だった。 「知識の量とか、そういう意味でした?」 「んー。なんのこと?」 「なんでもありませんでした。」  わたしの三倍生きているリュカさんに、わたしの言葉足らずの疑問は届かなかったようである。
 同じような不幸が訪れるのではない。人はそれぞれ毎日なにかしらの困難に立ち向かっている。「まただ。」そう思うときは、その類の不幸を貴方が乗り越えられていないでいるから、何度もぶつかっているように感じているだけだ。  これほど真理に近い言葉を耳にしたのは、そう、おそらく七歳ぶりである。
 十二月二十七日。樫の木のドアを開けた。耳あたりの良い「カランコロン。」は今日は耳に届かない。おもわず上を見てやると、ベルが取り外されてしまっている。 「いらっしゃい。」店主はグラスを拭きながら言った。「今日は端へすわんないで、こっちへおいでよ。」  店主の手招く先には、ノラだけが居た。今は、ノラしか客が居ないようだ。ノラを客と言っていいものか、そういったところから議論する必要があるなら、頭が冴えるようにチョコレート・ココアをオーダーせねばならないだろう。 「今ね、一年は早かったねって、おれが言ったところ。」店主は人の良い笑みを浮かべた。 「おれは、早かったなんて思わないんですがね。」  ノラは、湯のみを持って緑茶を啜った。どう考えても、裏メニューとしか思えないシロモノである。 「お嬢さんはどう? 今年は過ぎるの早かったかな。」 「そうかもしれないと思ったこともあったけど、やっぱりそんなに変わらない気がします。去年も同じ早さで一年は過ぎていった。」 「ああそうなんだ。じゃあおれだけかあ、今年一年が早かったの。さすがだね、輝かしいね、二十代。」 「最後、三十路川柳みたい。」 「ださ。」  ノラの放った二文字で店主は笑いながら憤慨する。それを見たノラが、史上最高に面白いものを見たとでもいうような人の悪い笑みを浮かべる。まったくもって対象的な二人がゲラゲラと笑うさまをその横で見るような、そんな年の瀬を過ごすなんて、まるで今年の集大成だなあとわたしは残念な気持ちになった。
「リュカさんってすてき。」マリオンは瞳の中にうつる光彩をゆらゆらうっとりさせながら、両手を口の前であわせた。「あたしの三倍生きてるんだって。」 「騙されてるよ。」すかさずわたしは突っ込んだ。でも、マリオンはどうでもいいという風に首を大きく振った。そのたびにスモーキーピンクの髪が揺れ、甘いいちごの薫りがする。 「騙されたっていいわ。」
 あした、きみは死ぬかもしれない。あさって、わたしは居なくなるかもしれない。
 私小説を書かう。  と筆を持つまでして辞めたわけですよ。わかりますかね、お嬢さん。私小説なんかくだらない。不幸の積み重ねよりつまらない文の集まりですぜ。一つのことを言いたいがために、何百文字と捏造をでっち上げるなんて。酔っ払ったノラは、喉をひっかけひっかけそう言った。  本当にそうだと思った。  十二月二十七日。ドアベルの外された店の中で、流れに任せただけの忘年会が始まった。「おれたちは忘れる必要がある。」当然の権利のように、声高に叫ばれたのがそもそもの原因だった。この喫茶に酒のメニューはないが、店主とノラは家にあるだけの缶ビールを掻き集めて、ささやかな宴の幕を開いた。そして早速、ノラが酔っ払いに成り下がった。  酒に強いらしい店主は、冷蔵庫の奥からケーキを取り出してわたしに出してくれた。クリスマス用の材料が余ったからさあ、と明るく笑う。本当のことなんだか、どうなのだか。  わたしは、この場にリュカさんがいてくれたらなと思った。店主とノラの埃が舞いそうなほどの古臭い漫談には飽き飽きだった。なにせ、これはもう今年一年たっぷりと見ている。気乗りがしない。  じつは友人とけんかわかれをした。わたしがこの店へ来るほんの五分前ほどである。わたしが友人の集まりに顔を出さなかったことが原因だ。この手の不仲話は女子の中ではよくあることだった。  決定的なけんかがなくたって、友情というものはだんだんと色褪せていってしまう。今そばにある人が自分の今のすべてで、その先もその前も、何ひとつ同じものなどない。そうやって独り前に向かって歩くのだ。それが堪えないようにするために、人は飯を食らうのであろう。ケーキなどでは、なく。
 さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。ノラが言った。世にも奇妙な年越しケーキだよ。  いやいやいや。店主が言う。まだ二〇XX年だから。年越してないから。  ノー・ノー。もう半分二〇XY年に踏み入れているようなものさ。冬至を超えた瞬間から冬の本番っていうのは始まっていて、ある種、一年の始まりは真冬から始まるようなものなんだから、もう年越しと名乗ったって不思議じゃない。第一、三百六十五日あるうちの一日も十日も変わりゃしないんだから、そんな細かいところばかり気にするなんて、きみ、どだい時代遅れっていうものだぞ。ノラが言う。  店主はワイングラスをくっと傾けた(いつから缶ビールがなくなったのだろう)。「そういうの英語でなんて言うか知ってる?」  ノラは外国じみた身振りで首を傾げてみせた。 「GOOD GRIEF!」  そしてまた二人は大笑いをする。ノラは、意味をわかっているのだろうか。ちなみにわたしはよくわからなくて、その場ではただ苦笑いを穏やかな死海のボートのように浮かべているだけだった。家に帰ってキーボードを叩いて調べたら、画面に「ああ、呆れた。」という意訳が載っていた。
 煉瓦を積み上げて渡した橋があって、その真中でリュカさんは時計を直していた。年末になると、人間が身勝手に区切った時間軸と自然の時間に僅かな隙間が出来てしまって、放っておけばあっという間に昼夜が逆転してしまう。その一年分のズレを、ほとんど凍って水位の下がった川の上にある橋のところで、調節を施すというわけである。街中の時計も、この時期すでに来年に合わせたものもあれば、今年のままの時計もある。そのため、年末の待ち合わせはちょっとした騒ぎになることもある。  つじつまを合わせるために言っておくと、時計の針は年明け後の一秒から一年を均等に区切る速度で回っていないから、夏頃には結構ずれているのだそうだ。でも、一年の中で昼と夜の長さは引っ張り合って移ろいゆくため、人間は意外にもその科学的事実に気づかない。  客は随分とまだらだった。別の目的があって橋を渡る人が、小さな木の椅子に座ってドライバーを片手に腕時計をこじ開けるリュカさんを見て、もうこんな時期か、と気づいて、ついでに直してもらう、というくらいのものだった。年末の風物詩なのだ。 「ぼくからしてみたら、まだ二〇一三年の夏さ。」リュカさんはご婦人の華奢な腕時計を、結構乱暴に開けて、言い放った。ご婦人のうっとりとした表情を見る限り、彼が商品をずさんに取り扱っていることなんて微塵も気が付いていないのだろう。リュカさんは端正な顔立ちをしているので、人生がうまくいきすぎる。ご婦人は多めのチップをリュカさんの右手にしっかり握らせ、足取り軽く橋を渡って行った。 「電池を交換していないことをそんなに格好良く言えるものなんですね。」 「そうかな? お嬢さんも、詩でも勉強したらいい。」  リュカさんはドライバーをチェスターコートの大きなポケットに仕舞い込んで、椅子を肩に担ぎあげた。閉店の合図だ。 「そういえば、きみ、まだノラと会ったりしてるの。」 「会うっていうか、店に行ったらいつもいるので。」 「ふうん。そう。」  リュカさんはそれ以上何も言わなかった。これから何処へ行くのか訪ねると、市役所へ行くとの事だった。取られすぎた税金の帳尻合わせに行くんだとか。良かったら、それが終わった頃の、七時に待ち合わせをして、パスタでも食べに行きませんかと誘ってみた。 「それはもちろん、今年の時間のだね?」  リュカさんは、世界中のやさしさをかき集めたように穏やかに笑った。
 待ち合わせの時間まで、いよいよ暇になってしまった。図書館は昨日で閉館してしまった。わたしはボンヤリ橋の上で、寒さも凍えも忘れて、頬杖をついてしまう。  色々あったな。今年も。小さな溜息をついた。  でも、そのほとんどを、もう忘れてしまっていた。きっと生きるのに不要だったのであろう。つまらない話は、必要がない。  わたしの時計は、今年の時間を刻み続けている。このまま刻んでいったら、わたしはみんなより遅く歩いていけるのだろうか。みんなの一度歩いた安全な道を、踏みしめられるのだろうか……これもつまらない話なので、明日には全部忘れてわたしは時計の針を来年に合わせていることだろう。  あと三日で、十二月が終わる。誰がどう思おうと、きっかり三日だ。そうしたら、今年のことは、いとしい過去になる。
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lovemenman · 3 years ago
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【203杯目】 店舗名:神田 勝本 所在地:東京都千代田区神田猿楽町1-2-4 最寄駅:水道橋駅 ご対麺:特製中華そば+特製卵かけご飯【限定30食】♫😆  営業再開祈願の意を込めて また勝本の麺食べたいなぁ #ラーメン #らーめん #ramen #noodle #noodles #라면 #拉面 #japaneasefood #麺 #麺活 #ラー活 #麺ヘラ #ラーメン中毒 #ラーメンマン #ラーメンパトロール #ラーメン巡り #めんすたぐらむ #麺スタグラム #ラーメンインスタグラム #ラーメンインスタグラマー #ラーメン部 #ラーメン大好き #ラーメン好きな人と繋がりたい #飯テロ #lovemenman #らぶめんまん #勝本 #醤油ラーメン #食べログ百名店 #中華そば (中華そば 勝本) https://www.instagram.com/p/Cc2ZrSsvWVO/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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