#お茶呑みたいな予約してへんけど
Explore tagged Tumblr posts
Text
その夜
作業煮詰まって終電で新宿へ。
特急で3駅15分。帰り路急ぐ人波に逆らい歌舞伎町に向かう。「こんな時間に、」「歌舞伎町で、」と未だにわけのわからん優越感を持ってしまう自分に辟易する。単に地元の後輩が店長している飲み屋にしか行くところがないだけだ。
思い出横丁、大ガード、一番街を抜け、路駐の黒塗りの列の脇を曲がる裏通りの一角に「のぼせもん」がある。店は混んでいた。ラーメンやチャーハンのメ��客と呑みの客。鍋を振っている才木はオレに気付き顎でカウンターの角を指す。行く前にLINEしていたので手書きの予約の紙が置いてある。1人のときも2席分必ず確保してくれている。元々は博多ラーメン屋だったが場所柄呑みの客が多く、いつのまにかツマミが増えていき博多屋台メニューが並ぶようになった。もつ鍋まで出る。才木は平日ワンオペで店を回す。
ウーロンハイと煮卵とチャーシューが出てくる。才木が作ったウーロンハイは本当にうまい。大五郎と伊藤園の烏龍茶なのにいちいち美味い。ウチで同じように作っても全然違う。不思議。反対側の角の高橋さんと目が合い会釈する。この辺りのキャッチの元締めのヤクザ。入れ替わりくる休憩時の若者にメシを食べさせている。高橋さんはいつもの一升瓶の黒霧のロックのセット。この店で一升瓶をキープしているのは、高橋さんとサニーデイの田中さんだけだ。混み合ってきたので一度外に出る。
散歩しながら撮影。いい瞬間はなかなか出会わない。一度森山大道を見かけて後をつけたことがある。歩きながらずっと撮影していた。その数秒後に自分も同じ場所に立つけど、なにをなんで撮っていたのかまったくわからなかった。小一時間ついて回ったが途中巻かれた、というか見失った。「夢のように薄い水割りを」と酒で体を壊した森山大道がどっかのバーで言ったらしい。
ホスト街を抜けてバッティングセンターの前のたくさんの自販機の光の下に女の子が座りこみ泣いていた。遠目から一枚撮るかとカメラ構えた瞬間目が合いやめた。ばつが悪いので、なにか飲むかと自販機に小銭を入れる。女の子は黙って桃の天然水を押した。リボンが異様にたくさんついたレース生地のワンピースとロングブーツ。かなり酔っていて涙で化粧が落ちていた。とりあえず隣りでタバコに火をつける。吸うかと差し出すが首を横にふる。「携帯貸して」と、調べものか誰かに連絡するのかと渡す。イヤホンをつけたまま渡してしまい外そうとすると手を払い除け耳につけて歩き出した。
背はかなり小さく細い。アスファルトを鳴らしながら、ではなく、目についた自転車や看板を蹴り倒しながら���ラーコーンをぶん投げながら歩く。取れかけたツケマツゲも投げてた。倒された自転車や看板を元に戻しながら後ろからつかず離れずでついていく、声は届かない。もしトラブルになりそうなら出ていこうかと思ったけどみんなあっけに取られ何回か怒鳴られたが気にせず歩く。怒りか悲しみか大きなエネルギーが放出してる様はすごいライブで演ってる人が光って見えるのに似ていた。澱みがないから止まらない止められないのか。ランダムに設定していたレイジアゲインストザマシーンあたりが流れているのかと思ったら面白くてニヤついてたら、振り返り「キモ」と言われる。後ろ姿を撮りながら新宿をぐるぐる回る。たまに振り返ると「ウケる、Yahooニュースばっかり見てんじゃん、キモ」「フォロワー500人、キモ」とケラケラ笑う。見るなと言い返しても、もう背中聞こえていない。
どのくらい歩いただろう、そろそろ始発が動く時間で駅に向かう人が多くなってきた。あいかわらずなぎ倒しながら歩いていたが勢いはなくなっていた。酔いも覚めたのだろう。空の桃の天然水は持ったままだ。三丁目の飲み屋街から明治通り伊勢丹の向かいに出てきた。あーここ美味しいクレッソニエールと思ってたら突然立ち止まりイヤホンを外しiPhoneとペットボトルを思いっきり足元に投げつけてきた。
「おまえのハンパなやさしさが全部をダメにする」
と言い放ち新宿三丁目の駅に降りていった。拾うと画面はバキバキに割れていた。傷だらけで人質は解放された。音は鳴るかとイヤホンをつけるとpredawnが流れていた。
コンビニでアイスを買い店に戻る。誰もいない店内で才木は仕込みをやっていた。「にーやん遅かったね、瓶ビールでいい?」小さいグラスで乾杯だけして、才木はアイスをくわえながら厨房に戻る。系列の4店舗分のスープの仕込みを才木がやっている。さっきの話しを聞いてもらいたくて「少し休んで呑もうや」と誘う。「この豚は一度死んでウチにきてるから、2度死なすわけにはいかんのよ」と才木は言った。寸胴の中の豚骨を砕く才木の背中を見ながらアイスを食べた。
21 notes
·
View notes
Text
2023/8/15
8月15日 空いた心を埋め合わせるためにちょっと無理やり都内の泊まりたかったホテルにきている。 外泊する日の朝は念入りに掃除などをしてへとへとになる。今日は台風が近づいているからお部屋の湿度が75%まで上がり、頭が痛くなって、久しぶりにロキソニンを飲んでしまった。
昨晩入稿を終え、入稿前のチェックでキャプションを読み上げていたら、なんだか泣き声になっていた。10部しか刷らないけれど、それでもなるべく誰かの手に渡って欲しい気持ちがあり、あまり元は取れなくてもいいから手に取りやすい値段設定に���たい。
入稿を終えた報告を友人にして、お疲れ様でした!と言ってもらって、1人で展示をしないでよかった!と改めて思った。 他にも、キャンセルした旅行先で会うはずだって友人たちからのメッセージが嬉しくて、10月ごろに行きたいな〜と思っている。
1wallでグランプリを獲った“終末ユートピア紀行”の方の展示へ。 高円寺、10億年ぶりくらいに降り立った。 なんとなく生臭い駅周り、とにかく昼から呑めることをアピールしているお店が多い。今住んでいる町や職場の町には、明らかにいない人たちがいる。電車で隣に座った男性二人組の1人のiPhoneの画面がなんとなく目に入って、ラインのグループ名に使われていワードが、野方とかマキシマムザホルモンとか合宿とかで、その人は私と一緒に高円寺で下車して、そうゆう感じ。 ギャラリーへ行くと、明らかに私より年下だ!と思ってしまう作家さんがいらした。伊藤さんの写真、本人以外のポートレイトがたくさんあった。いくつかzineが販売されていて「終末ユートピア紀行」が収録されているものを購入。 以前までならばあまりグッズなど買ったりしなかった(部屋に物を増やしたくない一心)。 でも自分で展示の準備をしてみると制作にかかるお金は馬鹿にならないことがわかって、すこしでも好きな作家さんが制作を続けられるように貢献したいという気持ちで作品を購入させてもらった。 そして、ブックタワーをやっと決心して注文したので、本をいくらでも買ってしまう!という気持ちも相まって、そのあと行ったブルーナ展でもお化けナインチェの図録を買った!
空気の重さを引きずりながら、ホテルへチェックイン。お茶をコンセプト���したホテルで、ティーカウンターで抹茶や煎茶を入れてもらえる。 お部屋にもお茶を入れるセットがあったり、シャンプーなどのアメニティがお茶でかわいい。 でも思ったより駅から遠くて、一泊の最大公約数をみにまとったスタイルで長靴を履いていたため、雨が降らない日差しの中の徒歩がとても辛かった。
本当は夕方ガウディ展を予約ていたのだけれど、へろへろで行けなかった。 ソールライターもガウディも一生行けないと思う。
でも、行ってみたかったTHREEのカフェでヴィーガンソフトクリームを食べ、松屋銀座でブルーナ展を何となくみて、隣のアニメの展示の方がとっても混んでいて皆熱心な雰囲気がとてもわかる感じだった。
24時間メトロパスを買ってしまったので、明日はギリギリの時間まで移動してその先で何か遊ぶみたいなことをしたいね。
4 notes
·
View notes
Text
今回は選挙について書きます
私は自民党の総裁選挙も石破さんが勝つと分かってました
周囲に洩らしてました
今回の衆議院選挙も10月23日の収録で予想を話してますので末尾に貼り付けておきます
立憲民主党の党首である野田佳彦はDSと言って裏切り者です
DSとはディープステートの略です
トランプさんが演説で話しているディープステートの事です
アメリカとかロシアとか中国とか国家レベルではなく
米ドルを印刷して世界経済を牛耳る存在のことを
呼称(あだ名)としてトランプさんはディープステート(影の政府)と呼んでいるのです
ユダヤ金融資本と言われたりもしますが
戦争屋であり薬物利権を牛耳る連中の事です
党首である野田佳彦がDSだからと言って
立憲民主党が全て悪だと考えてはいけません
党同士の対決姿勢で考えると日本の政治は永久に前へ進みません
党ではなく人です
真実を発信して想いを同じにする人が組まないと
日本の政治はヤラレっぱなしなのです
強いいじめっ子に逆らえないパシリのままなのです
先日プロレスラーの前田日明さんと京都の自民党の議員である西田昌司さんが対談されてました
その中でとても踏み込んだ話をされてました
もちろん敗戦国である日本に対して勝戦国があり
勝戦国との約束事があります
日米地位協定と言います
敗戦国の憲法と勝戦国との契約とどちらの方が上でしょうか?
もちろん敗戦国を事実上支配する勝戦国との契約が重んじられます
石破さんは日米地位協定の見直しを掲げていました
正しい防衛論を展開していました
だから裏切り者の中にあって党内野党と言われていたのです
植民地契約の見直しを掲げるのは勇気の要る事です
総理になってトーンダウンしたのは脅されたからでしょう
日本の政治を変えたければ日本を日本人の手に取り戻したければ
それは一人では出来ません
小局でいがみ合わずに大局を見据えて団結が必要なのです
前田日明さんと西田昌司さんの対談の中で
日米合同委員会や年次改革要望書の話も出ました
私も2年前のABEMAの選挙特番で日米合同委員会と年次改革要望書の存在を暴露して
6600万再生回した事があります
多くの人が真実を発信して多くの日本人が気付き始めていることを嬉しく思います
前田日明さんと西田昌司さんの対談の中では
東京地検特捜部についても言及されており
無実の証拠を隠蔽し証拠を捏造してでっちあげて
狙った獲物は必ず有罪にする犯罪組織だと話されています
この事は検察と[徹底抗戦]したホリエモンも発信しています
東京地検特捜部はGHQが作った組織でありCIAだからです
西田昌司さんが本当の事を言えるのは西田さんも強い団体のボスだからです
自民党総裁選前のインタビューで小泉純一郎が答えていたように
「今回の総理は損しかない」のです
短命政権です
だから石破さんを勝たせました
石破潰しのターンです
我が国は自民党が大敗すると必ず災害が起こります
村山政権の阪神大震災であり鳩山政権から菅直人政権の3.11です
私は立憲民主党の総裁選でDS野田が勝った時に
この展開を予測して周囲やクローズ講演会で話していました
おそらく自民党は大敗するだろう事
そして感染症を含む何かが必ず日本を襲う事を
10月23日に収録した対談動画を貼り付けておくので見て下さい
維新は上がCIAです
なので自民党が大敗して立憲民主党が躍進しても大丈夫なように
立憲民主党の党首にDSの野田を据えました
立憲民主党と山本太郎さんが���を合わせても大丈夫なように
立憲民主党の頭に裏切り者の野田を据えたのです
こうなってくるとキャスティングボートを握るのは
国民民主党の玉木さんかも知れません
玉木さんはとても優秀な方です
今から100%間違いなく来るのは感染症です
そして何か災害も複合的に襲うかもしれません
立憲民主党が連立を組んだとして
「やっぱり任せてみたけどダメだったよね?」を狙いたいのでしょう
「立憲民主党に任せてみたけどダメだったよね」
を一回挟んでおいてから感染症と災害でグチャグチャになった日本を
「立て直そう立ち上がろう日本」で小泉進次郎です
これは何年も前からタイムラインに私は書いてきましたが決まったストーリーなのです
CSIS(CIAの民間人養成機関)に2年半留学していた小泉進次郎が来ます
CSISの中でも「お茶汲み」と馬鹿にされていた小泉進次郎が来ます
今回のターンは実はレプリコンが原因な感染症が日本を襲うこと
党で考えないで下さい
日本を守る事に終始して下さい
党派を越えて団結して下さい
専門家委員会の嘘を鵜呑みにしてはいけません
本当は体調不良はレプリコンが原因なのに
必ず新たな感染症の名前で仕掛けてきます
前回のコロナでは東京1400万人都市に対して初年度の重症者ベッド数は550床
800万人都市の大阪に対して重症者ベッド数は107床でした
550の70%である380床が埋まると緊急事態宣言を出していました
感染症は必ずきます
山本太郎さん玉木さん宜しくお願いいたします🙇
大局を見据えて正しい判断をお願いいたします🙇
お茶汲みエージェント小泉進次郎にバトンパスされる前に
日本のダメージを最小限に食い止めなければなりません
感染症は必ずきます
前回のコロナは致死率0.2%でした
それなのに感染症危機管理統括庁が出来ました
感染症法で行動制限する為です
1000万人都市に対して500しかベッドを作らずに緊急事態宣言を出していたのです
3年目でようやく770床でした
最初からベッドが2000あれば東京都は実は一度も緊急事態宣言を出してません
今回のターンで必ず感染症がきます
政権のキャスティングボートを握る皆様
決していがみ合わず喧嘩をせず時にタヌキになって
国難を回避して下さい
今回は短命です
次が本番です
お茶汲み進次郎が出てくるのか
アホ過ぎて見限られるのか分かりませんが次が本番です
東京都の皆さん次の選挙は須藤元気さんを勝たせて下さい
日本の未来に必ず必要な人材です
今回の選挙戦ラスト2日間は佐賀県の原口一博先生の元で勉強させて頂きました
最終日の19時59分まで一緒に同乗してマイクを握り
大事な局面で常に私を横に立たせて下さいました
原口先生の愛で黙って私に選挙を教えて下さったのだと思います
「軍隊式が嫌いだ」が原口先生の口癖で
「みんなで笑顔の明��い社会にしたいから政治家やって���から軍隊式はやらない」
腰の曲がった小さなおばあちゃんまで役割を与えて貰って
ちょっとどんくさいのだけどホッコリする笑顔の方々が
和気あいあいと笑顔で戦うチームでした
最終日に「練り歩きだ」て暗い夜道を歩きだして
佐賀県は国体が行われていて選手達が居て
「原口一博です宜しくお願いいたします」と声を出して頭を下げておられて
でも国体だから日本全国から集まった他県の人かも知れないし
選挙権が無い10代の選手かも知れない
原口先生が「戦略ミスだろ」て暗闇で言ってて
「顔も見えないよ暗くて」とか言ってて
そしたら横に居たチームの女性が
「新しく出来たアリーナこんなに間近で見れて良かったですね」て言ってて
「ライトアップがキレイですね」なんて言ってて
大事な選挙の最終日に先生はチームを叱責すること無く
「初めて見たよキレイだなー」と返していました
20時に戦いを終えると事務所ではしわくちゃの小さなおばあちゃんまで笑顔で拍手で出迎えてくれて
「おかえりなさい」「お疲れ様でした」みんな笑顔でした
この人は人に好かれるなーと心から思いました
癌を患って復活の大事な選挙のラスト2デイズです
少しくらいイライラやピリピリが出てもおかしくないのに
先生は褒めて認めて感謝を伝えて現場には笑顔が溢れていました
原口一博先生は小学校や中学校を一日4校も回ってワクチンを打たないように知らせてあげていました
対抗馬の自民党の方は明治ファルマの工場を視察した副大臣でした
選挙の二日前には怪文書(嘘記事)まで仕掛けられた原口一博先生
見事当選されました
農協や利権団体が強い佐賀県において
損得勘定の方々を市民の一票が倒した好例です
帰りの佐賀空港までのタクシーの中で
運転手のおじいちゃんが言ってました
「国民が馬鹿にされとる」
「自民党を落としても比例で復活するやろ」「嫌になる」
70歳は、とうに過ぎてる運転手さんがハッキリした口調で言ってました
この運転手さんの言った通り佐賀一区の自民党候補は
選挙で負けたのに比例でゾンビ復活しました
利権団体(損得勘定の繋がり)だけで勝ち上がってくる候補の特徴は
YouTubeチャンネルやTwitterを誰も見てない事です
原口先生の配信が数万再生されているのに対して
自民党の対抗馬の方のYouTubeチャンネルは50とか100でした
50万ではありません
ただの50人です
損得勘定の方々は利権という損得勘定で繋がってるだけなので
本人に興味がある訳ではなく仕事とか金に興味があるだけなので
本人のマイク��フォーマンスなんて誰も見ないのです
ところが本当に市民や県民に愛されてる代議士は数万人が閲覧するのです
ある意味愛されているお茶汲み進次郎は
選挙の最終日に皆がカツを食べてる時に
「選挙最終日のお昼はハンバーグ」と投稿して
Twitterで2987万人が閲覧してました
流石です
エージェントじゃなかったら友達にたりたいです
繰り返しになりますが必ず感染症がきます
専門家委員会の嘘報告に騙されないで下さい
今から我が国は大事な局面を迎えます
キャスティングボートを握る先生方の皆さん
日本を宜しくお願いいたします🙇
昨日アップした最新動画①
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
youtube.com/watch?v=lUflFr…
昨日アップした最新動画②
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
youtube.com/watch?v=kDRPgk…
昨日アップした最新動画③
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
youtube.com/watch?v=63BMWf…
前田日明さんと西田昌司さんの対談
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
youtube.com/watch?v=Pr9rEh…
1 note
·
View note
Text
ロンドン・ブリッジ・ブルー
ブログ開設から10年(と2か月)経った。10年よくも続いた、というのがわたしの感想である。直近5年は年に3,4回しか投稿していないものの、本数が減るにつれ長文化して作文に時間もかけているので、これはこれであり、と思っている。
10年の間に、“初めての挫折”、学部卒業を経て、渡英し修士課程・博士課程と進んで20代丸々たっぷりと学生をさせてもらったが、わたしはこの前の7月、ついに学生生活を終えた。
博士課程の終わりはちょこっとややこしい。論文を提出し、口頭試問を受ける。人によってはそのままの合格が認められるが、大抵は論文の修正というものが言い渡される。わたしも例に漏れず修正期間を与えられて、試問中に議題に上がった箇所の精度を上げることに勤しんだ。
わたしが修正の合格、すなわち卒業見込みのキューを出してもらえたのが実は3月のこと。その後印刷・製本そして納本を経て学位確定したのが卒業式の10日前、6月末だった。ただこのタイミングは人による。
なぜわたしが3月にキューを得たかと言うとビザの兼ね合いだ。学生ビザの期限が3月の28日であったため、なんならここに間に合うように調整した。本来であればわたしの修正の期限は5月であったが、ビザありきで修正を急いだし、関係各所をせっついた。試験官を急かして審査の結果を左右したらいけないと、試験官との間に入る世話人を学校からあてがわれたりもした。
卒業生ビザを得て留まるか、ここで本帰国をするか、本当は腹が決まりきっていなかった。卒業生ビザを申請できる要件を自分は偶然にも満たせる立場にいて、あのときの気持ちを正確に言い表すなら「その選択肢を捨てる勇気を持てない」というのが近い。この2年くらい悩んできた「卒業生ビザか完全帰国か」の天秤はこの期に及んで揺らぐばかりであったが、最終的な決め手は「今こちらで慎ましく暮らす程度の収入源は見込める」ことと「一度学生でない立場でロンドンに身を置いてみたい」という理由���った。これまでは学生ビザが足枷になって、大手を奮って演奏活動をできたわけではなかった。
5月締め切りのほうを生かして学生ビザを延長するという方法もないわけではなかったが、それには申請料がかさむ。イギリスのビザは申請するビザの年数に限らず申し込み1件につき一定の申請料がかかる。3年間有効の卒業生ビザを見越して用意していた高額な申請料を、たった2か月の学生ビザ(延長)に充てることは考えたくなかった。そうしたら、その先で卒業生ビザを申請する資金はない。
とはいえ、延長しか選択肢がないならそれもそれで運命か、と思った。そちらで申請料を使う羽目になったら、これを完全帰国の機会と受け止めよう。そう思って、3月初めに修正した論文を提出した。結果を待つ間あまり生きた心地はしなかったが、3月末に人生初の学会参加を控えていたので、そちらの準備で気を紛らわせた。そしてもし審査に合格した場合 ー 卒業生ビザを申請できる状態になった場合に備えて、できる限りの準備をしていた。
3月18日夕方に、修正が認められたと知らせが届いた。そこからは事前のシュミレーションに則って卒業生ビザの申請を進める。まずは学校から移民局に申請作業があり、移民局からの返事を待って、本人の申請作業に入る。
移民局からの返事は21日に来た。本人による申請プロセスのほとんどは前年に行った学生ビザの延長手続きに酷似していたので難なくこなしたが、ひとつ大きな想定外があった。
イギリスは2018年ごろからビザをプラスチックのカード(BRP)で発行していた。しかしBRPカードは2024年末の廃止が決定したため、2023年分のビザ申請から徐々にカードが発行されなくなりeVISAに移行していた。わたしは2023年の学生ビザ申請時にその数%のeVISAにヒット、ゆえに2024年の卒業生ビザ申請時には“手元にBRPカードがない”状態になってしまった。
これが厄介で、なんとわたしは新たにBRPカードを作る必要があり、そのために指紋と顔写真の提出に“行かなくてはならない”と申請画面に言われてしまったのだ。そして、指紋と顔写真のためには別途(ほぼ行政みたいな)民間企業の施設に赴く必要があり、そのセンターはスロットの予約が必要であった。わたしはその予約に翻弄されることとなる。
わたしの場合、まず自分が“センター予約が必要な人間”の条件に当てはまると気づいたのが電子申請画面の本当に最後の最後であった。前年に延長して“カードなし=最新の状態”になっていることに過信があった。最新すぎて、申請時に“eVISAの人間が新たなeVISAを得ること”があまり想定されてなかったのだと思う。
申請フォームの最後で、申請料を払い、国民保険料を払って、なんならクライマックスを終えたくらいの気持ちになっていた。前年にはこの支払い画面の挙動に振り回されて���というのは外国のクレジットカードが使えなかったせいで入力した前情報がクリアされてふりだしからやり直しというのを数回おこなったので、まずそのトラップを避けて通れたことにやや優越感すらあり、そして何とか工面した高額の申請料・保険料を支払えたことへの安堵と達成感でいっぱいになった。
そんなときだ、センターに行けと言われたのは。このとき3月22日金曜日。手持ちのビザの期限28日までに申請が完了すれば良いらしいし、払うものは払ったし、大丈夫でしょう、行政関係の申請が週末に動くことはないしね ー そう思って週末の学会に気持ちを切り替えた、ビザのことは週明けで良いでしょう、と。ちらっと確認した限りでは、指紋センターの無料枠は毎日朝8時に解放されるらしいと理解して、月曜8時にスタンバイすることにした。
月曜日、25日。8時をそわそわと待って指紋センターの予約表をのぞくと、信じがたい景色が広がっていた。わたしの理解が甘かった。予約枠には無料のものと有料のものがある。日付が近いところは有料ばかり、何より有料でも空いてない。無料スロットが毎日ちょこっとずつ解放されるのかと思ったら、解放されるのは毎日28日後の分で、今日明日のスロットが直前に無料になることはないのだ。
さっと目を走らせたところ、自宅から足を伸ばせる範囲での直近の空きは1週間後のようだとわかった。ビザの支払いから75日以内(だったと思うがもはや忘れた)に指紋などを提出することと書いてある。ひとまず1枠確保して、画面を閉じる。ー もうこれで今できることは全部やったはず、いいんだよね?
しかし翌朝になって不意にひらめいたのだ。もう一度申請画面を確認する。申請は指紋と顔写真の提出を持って完了とする。待てよ、支払いと指紋の間には最大75日くらい空いても良いとして、それとは別に、わたしの置かれた状況《学生ビザが切れる日までに申請を完了させる必要がある》ではやはり3月28日までに指紋も出さなくてはいけないのではないか…?
先述の通りカレンダーに今日明日の空きはない。しかしわたしも伊達にビザ申請を重ねてきたわけではなく、過去3回の経験がものを言った。この国のビザ申請は、何かと課金コースがある ー そしてそれは指紋センターにも通じるルールだった。VIPサービスのカレンダーが別にある。先に予約したスロットの5倍くらいの値段で、今日3月26日午後のスロットがあった。むしろほかにはいくら積もうとも空きがない。
この瞬間、走馬灯の如く一瞬でいろいろなことがよぎった。この数万円の申請料をケチった場合に失うのは目の前の3年ビザだけではなかった。これまで在英した7年半とその3年を累計すれば届くかもしれない永住権申請の要件がチラつく。この申請に失敗すればもちろん完全帰国よりほかない。この卒業生ビザを申請できるかど��かは、その先の人生をガラッと変えてしまう。
ほんの一瞬ののち、涙を呑んで支払った。目の前のスロットを逃して、この数万円より大きな額の申請料が無駄になることも怖かった。そして急いで支度をして、ビザのカードに載るのに耐えうる身なりを整えた。あまり食欲もなかったが、食べないと途中でブっ倒れるとも思った。でもなんだか冷蔵庫にろくなものもなくて、残りものを適当に調理してかっこんだ。
指紋センターでは笑ってしまうくらい丁重に扱われた。そりゃあVIP枠だからね。ところが写真を撮る段になって、前髪は全部上げてくれと言う。前回は前髪あっても大丈夫だったんだけどな…と思いながら、家で小綺麗にセットしたはずの前髪を雑にかきあげて写る羽目になった。もはや提出できるなら何でも良かった。VIP価格を支払っただけあって、オプションには「指紋と顔写真が確かに移民局に届けられました証明書」が含まれていて、センターをあとにして程なくメールで届いた。ご丁寧な装丁だったが、もし申請が却下されたときにこれがどれだけの力を持つものだろうかと考えると茶番にも思えた。とは言えどうにかなるだろうと楽観視する気持ちもあれば、申請がだめになってしまうかもしれないという心配に押し潰されそうになる自分もいた。
3月も末だというのに春の気配が遠く、わたしはやや小雨が吹き荒ぶイーストの街に放り出されて、半端にかきあげられた前髪がもっと荒れた。その足で数時間後には生徒さん宅に向かわねばならず、街で時間を潰す必要があった。東京はこんなとき、ターミナル駅に行けば駅ビルに本屋やブティックがあるものだが、ロンドンでは夕方の時間の微妙な暇つぶしに困る。カフェや商店は17時を過ぎるとバタバタと閉まるからだ。こんなふうに東京を恋しく思うならなぜビザを取ろうとしている?? あてどなく歩くうち、そこからテートモダン(美術館)なら閉館前にたどり着けるかもしれないと思い立ちロンドン・ブリッジに足をかけるが、風があまりに強く冷たくて気持ちが荒んだ。
そして思った。ビザを申請できる立場自体がそもそもとてもラッキーで幸運なことなのに、どうしてこうもどんよりとしているのか、と。その段階では機会を不意にしかねない恐怖が大きかったのが1番の理由であろうが、ではいざこの申請がうまくいったとして、橋の上だけでもこんなに人間がいるこの大都会で、わたしは一体何者として生きていくんだろうと思ったらどんどん不安が増した。
でもそれは“未来に対する恐れ“である。世界のどこにいようとも、どんな立場にあろうとも抱くものであるから、ビザ申請の途中のロンドン橋の上でそれを問うことに特別の意味はないが、テムズ川と同じくらい濁った色をした空はどうしてもわたしの心象��景をシネマティックにさせた。
結局、美術館を歩き回る元気もないと悟ったところで、自分がその日あまり食べていないことに気づく。8年近いロンドン生活で自分の“コツ”は掴んでいた。極端なメランコリーは空腹と寒さを埋めてから向き合うべし。指紋センターに課金したあとで財布は寂しかったが、今日ばかりは致し方ない。テートの真下のチェーンのレストランで、早めの夕飯にシーザーサラダを頼んだ。なかなか注文が来なくて時間が心配になったところで、ななめのきれいな焼き色が入ったチキンの乗ったサラダが届く。わたしのために誰かが丁寧にグリルしてくれたんだなと思ったら、それが無性に嬉しかった。それほどまでに近頃まともな料理をできていなかったんだなと気づいた。
翌27日朝。移民局からビザ申請が完了した旨連絡が届いた。実に期限の1日前である。何か月も前から心配してあーだこーだとあえて大袈裟に騒ぎ立てたのに、どうして最後にこうも走る羽目になったんだろう、と一度落胆の気持ちが差してくるが、入念な計算があったからこそぎりぎり滑り込んだのだと思い直した。
前回BRPカードを作った時は受け取りに苦労したのでその心配も頭を掠めたが、申請完了から約10日後に無事ビザが下りたのち、万全の体制で��び鈴を待ち構えたわたしとは裏腹に、郵便受けにペラっと投函されたBRPカードを受け取った。なおeVISAにシステム移管のため、このカードは年内で無効となる。
手にしてしまったカードは、誰もが羨むものかもしれない。そうであるのに、わたしがこれを手に入れてわーいでもヨッシャーでもなかったのは、畏れが大きいからだ。これまでに数えきれないほど見送ってきた、この地を去った人々の背中と、ビザ+シーザーサラダ分さみしくなった財布と、卒業後の行く先への不安を思うと、素直な感想としては「どうしてわたしがまだイギリスに残っているのだろう」というところになる。
それとて自分が獲得したもので、恐縮するものでもない。でも、ビザを獲得できるかできないかは本当に紙一重のことで、努力だけでどうにかなる話でもない。自分がただただ恵まれていたということを痛感しては、茫然とする。この気持ちは畏れというのが一番近い。
どうせならもっと夢のある言い方をして、人の希望になるような見せ方をすべきかもしれない。論文が審査を通ってすぐに国際学会で発表しました、とか。卒業後もビザを獲得してロンドンで生活しています、とか。卒業の翌月から音楽の仕事100%で家賃と生活費を払えました(これがフリーランス音楽家にとってはひとつの大きな関門)、とか。
それらも事実ではあるけれど、わたしにとってのリアリティは、ロンドン・ブリッジの上で頬に感じた冷たい風だ。あのとき強い風に吹かれて足を踏ん張ったように、これから先もぐっと耐える場面はあるだろう。わたしはあの風を忘れたくない。
0 notes
Text
2023.9.23sat_tokyo
4時20分 珍しく撮影の日よりも早起きをした 1回目のアラームでなんとか目を覚ますことに成功し 分刻みでセットしてたアラームを1つずつ解除していく 1つでも解除し忘れると大体トイレに入ってる最中に鳴って急かされるので慎重に…
朝は昨日に引き続き小雨が降っていて けど蒸し暑かった 駅では始発まで呑んでただろう初々しい男女が改札越しに手を振り合っていて微笑ましかった
6時過ぎ 羽田空港着
今回の行き先は、愛媛県 主に目的はふたつ
その1 愛媛の学生達にCMづくりのワークショップを行う その2 苦楽を共にした制作部の1人が去年愛媛に引っ越したので、皆で彼女に会いに行く
今その子は愛媛を拠点に映像制作の活動と、地元の人達に映像の作り方を教える活動をしていて その活動の一環で私達は呼ばれた
つまり、このワークショップを受け��ば同時に制作の子とも会えるという一石二鳥の案件である
今回のメンバーは 過去史上最悪の現場で一緒に山場をのりこえたプロデューサー、カメラマン、その制作、プロデューサーと仲良しの車両部、と私の5人。
あまりに辛かった現場だったのもあってか妙な結束感がうまれ、その後度々飲みに行ったりしていた仲だった
8時45分 松山空港に着き 全員集合。制作の子が迎えに来てくれた。 久々の再会に顔がほころぶ。
蛇口から出る濃厚オレンジジュースを堪能し、記念のスタンプを押したらいざ会場へ。
ちらほらと学生達が会場に集まり出し
10時 ワークショップ開始
プロデューサー、ディレクター、カメラマンと それぞれの役職を説明した後、CMがつくられていくフローや、企画コンテと演出コンテの書き方の違いなどをざっと話した。
その後、早速実践。今回は制作の子の依頼もあり、こんなお題を出してみた。
学生達は頭を抱えながら、手元の紙にキーワードを書き起こしていく。 このじっくり商品と向き合って関連するキーワードをひたすら書き起こしていく作業が、企画の第一歩になる。 文字だけを書き起こしていく子、ひたすらリサーチする子、イラストを交えながら展開させていく子、人によって考えるスタイルは様々でそれも面白い。
それから、各々散りばめた関連ワードなどをヒントに、キャッチコピーをひとつ絞り出してもらった。 企画コンテを書き出してもらうのは、実際はそこからになるのだけど、今回はあまりに時間がなかったため今回は企画コンテの種だし、まで。 (後日遠隔講評予定)
その後はカメラマンから、 実際に商品を撮影をしながら、魅力的にみえるアングルや構図などレクチャー。 短時間ではあったものの、実際私もかなり勉強になった。
おいしそうに食べる人を撮るレクチャー(車両部のナイス演技)
全体で約3時間ほどのワークショップを経て みんなでいもたきも美味しくいただき解散
地元の海で大きなブリを釣りをしてからワークショップに参加してくれた方もいて、綺麗な海が近くにあるってほんといい暮らしだと思った。
ここからはフリータイム
1日に詰め込みすぎた感じもあるけど
14時半 しまなみ街道を渡って5人で弾丸デイキャンプスタート
最高のロケーションなのに全然人がいなくて ほぼ貸切状態
ハンモックがあり バーベキューセットも釣り具もミニバイクもレンタルできてまさに夢のような空間
こんな透明度の高い海をみたら入らない訳にはいかなかった スカートがべっちゃべちゃになることも どうでも良くなって釣りに専念した ちなみに釣れはしなかった… すぐ側で大きなエイが泳いでた 通りすがりのおばちゃんと子供達に投げ方レクチャーしてもらった
肉を焼いたり
海を眺めたり…
ミニバイクに乗ったり
日が暮れるまでたっぷり大自然を堪能し
その後夜になると猪がでるそうなので 制作の子オススメの海鮮が美味しいと噂の居酒屋へ。 18時 こっからはスマホの充電が切れたのと私が酔っ払ったのであんまり写真はないのだけど
皆で色んな話をしたりカフェでお茶したり手相をみたり…
24時近く ホテルに戻ってほろ酔いのみんなとにこやかに解散
早速大浴場へ行って塩臭いワンピースを脱ぎ 1日をゆっくり振り返る
気持ちよく大浴場から出てから 部屋にタオル類一式を置いてきてしまったことに気付いて絶望した
終わりは最悪だったけど 総合的にとても充実した1日だった
将来的には四国に住むのもいいなぁ
ps.ずっと夢だったわんちゃんと��辺でお散歩も叶いました(制作の子のわんちゃん)
-プロフィール- 山田彩華 33 東京 CMディレクター https://instagram.com/daryama0509?igshid=OGQ5ZDc2ODk2ZA==
1 note
·
View note
Photo
二年前日記7(2021年2/12〜2/18)
2月12日 仕事の日。午後、今日中にと言われた仕事があったので午前中にしていたものより優先してやっていたら最終的にはこちらがするものではなかったことが判明した。いろいろ後ろ倒しになってしまって残業する。帰りはお弁当を買って帰る。ブロッコリーの味噌汁だけ作った。
2月13日 Kちゃんとランチ。ケーキ屋さんの2階のカフェで。一人暮らしのその後のこと、事故のこと、ドラマのことなどを話す。途中何も話さない時間もあったけど心地よかったな。前はもっと意味のあることを話したいとか思っていた気がする。嫌なやつだったろうに、ずっと付き合ってくれていて本当にありがたいことだな。美容院に行っていた夫を迎えに行って、買い物をして帰る。晩ごはんは、キャベツ鍋。くばらの鍋の素は美味しいな。夜、父よりLINEがあった。母の長年行っていた美容室がどうやら閉まってしまったらしい。新しいところに予約するのも段取りがうまくいかないのか、何度か挑戦しては帰ってきてしまうのだとか。一緒に行こうかと言ってみるが、父はもう少し様子を見てみますとのこと。こういうときどうしたらいいんだろうな。訪問してくれるところも最近多いみたいだけどどうなんだろう。
2月14日 朝ごはんに昨日のうちに焼いていたケーキを食べる。なんだかモヤモヤするので断捨離のテレビを見て片付けをする。ちょっとやる気になってきた。夫は、傍目から見ると呑気に見える。ゲームをしたり、椅子を注文しようとしたり。なんだかなぁ。ちょっとまたチクチク言ってしまった。夫なりに目標を決めてやってるみたいなので、今度こそちゃんと見守ろう。自分ももっと精神的に自立しないといけないな。一人でも生きていけるようにならねば。晩ご飯は手羽中とキャベツの煮物、漬物。寝る前に1時間ほど読書。母はやっと美容院に行けたらしい。家から近くてお洒落なところ。よかったー。美への執念すごい。受け入れてくれた美容院の人にも感謝。
2月15日 朝、鍼に行く。お客さんがたくさんの日。最近はいつもこんな感じ。昔に言われていたエクササイズをやっているかと聞かれて、そういえばそんなことを言われたこともあったなぁと思い出した。やってくださいねと言われる。朝ごはんを食べてなかったので、喫茶店に寄った。お昼は昨日の煮物の残りに、リボンの形のパスタがあったのでそれを足して食べた。夫の機嫌は引き続き悪い。多分心の柔らかいところを傷つけてしまったんだと思う。今できることは粛々と生活をすることぐらいなのかな。夕方、歯医者へ。物が挟まりやすくなっていた奥歯はやはり虫歯になりかけていて治療が必要とのこと。仮の詰め物をつめてもらった。昔と同じ味だなぁと少し懐かしい気持ちになる。晩ご飯はあさりと厚揚げのチゲ風鍋。夫は少しだけ話をしてくれるようになってきた。
2月16日 仕事の日。なんだろう。仕事に限ったことではないのだけれど最近よく感じること。カレーを作るので、材料こんな感じで切っといてねと言われたらわかるんだけど、何作るのかよくわらないままに飾り切りを求められるみたいな指示を受けるとわからーんってなってしまう。たぶん脳のキャパが小さすぎるんだろうな。ただの老化かもしれない。若い頃は何も考えずに飾り切りしてたもの。しかし、ビジョンをしめすのは大切だよなと思う。まあでも人任せではなくもっと自分で考えなきゃいけないんだろうな。晩ご飯は豚肉と新じゃがのオイスターソース炒め、昨日の鍋にトマトをいれたスープ。
2月17日 仕事の日。『ストイックチャレンジ』という本を読んでいる。ストア哲学の本。錨を沈める感じとかは何となくわかる。面白いな。いろいろ読んでみたい。最近悩んでいたことの答えがあるような気もする。帰りに実家に寄る。小手毬を駅の花屋さんで買ったのを持っていった。母に美容院変えたの?と聞くと、最初は忘れていたみたいだけど段々思い出してきた様子。髪がきれいと褒められたこととか、白くするといいとすすめられたとか。いい美容院っぽくてよかった。せっかく来てくれてるのにと、うどんをあたためて食べさせてくれた。夫には鮭弁当を買って帰った。新しくCDプレイヤーを買ったが、アンプの調子が悪いようでつかないみたい。
2月18日 朝、夫が職場の人と電話をしていた。どうやら明日から出勤することになったみたい。わーい、よかった。いきなり現場ではなく、軽作業を考えてくれてい���そうだ。そうだろう、そうだと思ったので早く相談してみたらと私は言っていたのだ。まだかぶりの肌着が着れないので、前開きのものを買いに行ったり、安全靴を買ったりした。お昼はくら寿司。義実家に夫を預けて私は一度帰宅する。いろいろと滞っていた事務仕事なんかをやる。夫を迎えに行って野菜をもらう。採れたてのわかめも。「お世話になりました」と言うと「こんな息子ですがよろしくお願いします」とお義父さんに言われた。
0 notes
Text
最近毎日仕事で忙しくしている恋人が、たまの休日に半分死んだように惰眠を貪っているとしたら、寝かせておいてやるのが人情だろう。ただでさえ晩秋の朝である。疲労困憊していなくても温かい布団は恋しい。
しかしながら、同棲している一つ屋根の下、毎日毎日夜と朝の数分ほどしか顔を合わせず、挨拶もそこそこに会社かベッドにGOしてしまうのは寂しい限り、というのもまた本音だ。特に今は繁忙期らしいイライに代わり、家事の大半を引き受けている身としては。心にもないが、「家政婦じゃないのよ!」とテンプレ主婦を真似してみたら、きっと恋人はすまなさそうに俯いて、皿洗いとか洗濯とか掃除とかを始めるのだろう。黙々と、起床時間早めたり、就寝時間を遅らせたりして。
そういう自虐的な誠意は求めていないので、ナワーブは目を閉じたままのイライの薄い身体をリビングまで引きずって行って、着替えを命じ、自分は朝食の準備に取り掛かった。
ゆで卵とバターを塗ったパン一枚、ミルクと砂糖たっぷりのコーヒーをテーブルに並べて恋人を呼ぶ。イライはくらんくらんと、まるで太陽光でうごく置物みたいに頭を振りながら、なんとか椅子に尻を乗せた。普段はこざっぱりと整えた茶髪に盛大に寝癖がついている。シャツのボタンは掛け違えているし、目元には大きな目やにが。半寝状態でもそもそとパンを食している恋人に失笑を飲み込み、これは重症だ、と呟いた。よっぽど眠いのだろう。
「ほら、うー」
「んー……」
ナワーブが手にしたシェーバーのじょじょじょじょじょという音とともに、一日で伸びた分の髭が刈り取られてゆく。イライの体毛は、生まれつき薄めなので青髭になりにくい。無精すればその限りではないが。
「っ、っ、ぁ、なわぁぶ?」
「こら、しっかりしろ、動くなオイ!」
ブラシで梳いてやれば髪が引っかかる度に、まだ半分夢の中に足を突っ込んでいる恋人の頭はぐらんぐらん揺らめいて、ついつい声を荒げる。
「うーん、あんた、意外と髪が硬いんだよな」
ため息混じりにブラシを放り、洗面台からイライ専用のヘアスプレーを持ってきて、頑固な寝癖に惜しみなく振りかける。いつも出勤前の恋人から漂ってくるさわやか��香りが居間に広がる。噴霧を吸い込んだらしいイライが「ぶひゅっ」と鳴いた。これが気が抜けているときの恋人のくしゃみなのである。久々にきいた「ぶひゅっ」にナワーブは我慢の甲斐なくおおいに笑った。
ゲージで休んでいたレディにご飯を用意し、止まり木にロープジェスを繋いで準備は整った。機能性重視のミニバンの助手席に恋人を押し込んで、ナワーブはいそいそと運転席に座る。水筒に熱いコーヒー、カバンにガムと飴が数個と、買い置きしてあったスナック菓子。運転中に飲む用のペットボトルは途中のコンビニで買っていこう。
「……なぁ……どこぃ……」
「ん? ああ、海だ、海。海に行くんだ」
「んに」
「そう、海。あんたは寝ていていいからな」
「むふぅ……」
「……なんだか子どもみたいだな、イライ?」
っくく、と静かに笑ってエンジンをかける。流れてきたラジオの音量を絞り、後ろの荷物からタオルケットを引っ張りだして、早々と寝始めたイライの腹にかぶせてやった。海までの予想所要時間は約一時間。天気予報は一日曇。よしよし、いいぞ。運転するなら曇りのほうがありがたい。道順はうろ覚えだが、ナビも地図も無しで行ってみよう。カーラジオからは微かに今月のヒットチャートが流れてくる。アップテンポな曲に背中を押され、ナワーブはうきうきとアクセルを踏み込んだ。
コンビニで肉まんとピザまんを買ったらイライが目を覚ました。どちらがいいか恐る恐る尋ねると、案の定肉まんの方を奪われた。恋人は食べるものだけ食べて、またストンと夢の中へと帰ってゆく。ハイウェイには乗らず、下道を走っていると、山! 畑! たまに民家! みたいな景色になって行くので少々焦った。針葉樹の濃い緑と枯れ野の朽葉色を越えて、隣の隣の街の市街地を抜ける。ここに来て初めて渋滞にハマったが、海へと続く道に入った途端、前にも後ろにも対向車線にも、走っている車を見なくなった。季節外れの観光地、最高。
堤防に寄せて車を停める。未だもって寝こけているイライのためにエンジンは切らない。最早無用となったラジオを消すと、波と風の音が窓を締め切った車内にもよく響く。ナワーブは水筒のコーヒーを紙コップに注ぎクリームを垂らしてかき混ぜた。後方へと傾いている助手席を見下ろせば、寝顔だというのに幼くも可愛くもない、きれいで凛々しい恋人が、まだ起きない。
「……む……んがっ……ぷひゅー……」
「! ……っぷ、」
と思ったら、ずいぶん可愛らしい寝息が、カーエアコン���乾燥し��唇から漏れた。ナワーブは紙コップを持ったまま、ハンドルに突っ伏して忍び笑う。腹筋が程よく痛んだところで、笑みの消えない唇を恋人の額へ。一度は離れたがやはり離れがたくなり、今度は刺青の入った頬へ。仕上げに前髪を優しく撫でつけて、運転席のドアを開け放った。
風が強い。潮の香りにはためく髪が首や頬を細々と刺してくる。油断していた右手が紙コップを落としかけた。空は朝から変わらずの曇天で、堤防の向こうの海は灰色と白のまだら模様だ。お気に入りのパンツにフード付きパーカーという格好ではいささか寒い。
車によりかかってコーヒをすすったところでエンジンが止まり、助手席のドアが恐る恐ると開いた。
「おはよう、寒いぞ」
「……うん」
まだどこか虚ろな目付きで恋人はふらりとナワーブに並ぶ。
「……寒い」
「はは、すまん。服の選択を間違えた」
「驚いた」
「何が」
「起きたら海だった」
「ぶっはは! それはびっくりしたな。でも家を出るときに、ちゃんと言ったぜ。海に行くぞって」
イライは俯いて肩を竦める。薄いジャケットのポケットに手を突っ込んでいる姿は様になっているが、窮屈そうでもあった。
「ハッピーバースデー、イライ」
「……あ、」
「まさか忘れてたとか、」
「……」
「まじか」
縮こまって頭を抱えるイライのつむじをぐりぐり押してみる。まったくもって自分を勘定に入れない恋人である。
「コーヒー飲むか?」
「……ごめん」
「ああ、朝食が少なかったからな、砂糖は?」
「いや、そうじゃなくて、君に気をつかわせ、ん」
珍しく俯いたまま話すイライをナワーブが覗き込んで、ちぅ。こういう時ばかり、この身長差に感謝していると、ひやりとした柔らかさはすぐに離れた。成功した悪戯に笑い、イライの真っ青な目がくりんと丸まった。
「せっかくのデートだぞ? そんな顔するなよ」
「私は……寝ていただけだよ。今まで」
「ドライブだからな。助手席のヤツは大抵寝るんだ」
「……ごめ、」
ちゅ、と、再び。そしてまた、にやり。
「しかし寒いな。車の中に戻ろうか」
「……もう、いいのか」
「ん、海は来たしな。あんたも起きたし」
「帰りは私が運転する」
「うん、センキュ」
荒れた波を堤防越しに眺め、ごうごうと吹き荒れる冷たい風に背中を押されて、それでもナワーブは満足そうに笑う。エンジン音が復活して、エアコンが暖かい風を送り出す。助手席に収まってシートベルトを絞めたところで、運転席のイライがナワーブの左手を握った。
傍らを向く。その僅かな間に寄せられた唇に目を閉じる。風も波音も遠くなり、互いの唇を食み合う湿った音だけが車内に満ちる。口づけは次第に深まり、上唇を食んで、下唇を噛んで、どちらからともなく差し出した舌が絡み合えば、もう止まらない。
「ん、……ぁ、」
「っ……ライ……」
「ン、ん……、は……ぁ、なわ、ぶ……、っ」
舌先から銀糸を引いて分かれる頃には、イライの眠気はどこかに吹っ飛び、多少値の張る昼食を、なんて考えていたナワーブの胃袋は、ぐうの音も出せずに縮こまった。
「……帰るか」
「……そう、だな」
それからたっぷり五分ほど経ち、ミニバンはのろのろと動き出した。充分に温まった車内では、まだ「恋人とのドライブ」だけを楽しみにしていたナワーブが用意したスナック菓子が、無言のままの二人にぽりぱりと呑まれていった。ひと袋を空にしたところでのミントガムだ。二人して。無言で。
ただの思いつきと、ちょっとした復讐心と、寂しさが少し。疲れ果てた恋人を寝かせておいてやらなかった後ろめたさと、今感じている幸福と愛しさが、不思議と胸の中で調和する。
望むらくは。
ナワーブは、遠ざかってゆく海を瞼の裏に描きながら想った。
どうかこの暖かさが、彼の上にもありますように。
1 note
·
View note
Photo
1月15日(日) おはようございます😊 1月15日(小正月)昔は『成人の日』でしたね。そうそう、気がつけば成人が20歳から18歳に変わってたみたいですね…💦 ってことは、これからは18歳で晴れ着も着ってことでしょ…。ウチも娘2人もいるんだけど、あっという間だな…😰 しかし、18歳って高校3年?卒業してる?受験シーズンだし、まだ成人って感じでもないような気がするんだけどなぁ…。成人した子供とビール一緒に呑むの���ちょっとした夢だったのに、なんだか複雑。 と朝からボヤキのような事言ってしまいましたが、『小正月』関西では一応今日までがお正月なのかな?しめ縄はずさないとだね…😅 大学入学共通テスト2日目、中学校も昨日入学テストでしたね! 受験生の皆様頑張って下さいね。 本日もご来店お待ちしてます〜😆👍🍔✨✨✨ ・ 【お客様へ】 ⚠️お席のご予約はお受けしておりません。店内のご利用は、ご来店頂きました順番にご案内しておりますので、来られましたら必ずスタッフにお声がけ下さい。 ・ テイクアウトはお電話にてご注文承ります。☎️078-986-1237 です!事前のご注文でお引渡しもスムーズです。※タイミングでお時間が少しかかる場合もございます。ご了承下さい。 ・ 当日のご予約は、開店前の朝9時頃からお電話にてご注文承ります。当日ご来店頂いてからのご注文はかなりお時間がかかる場合もございますのでご注意下さい。 ・ またスタッフ少人数のため、11時から営業が始まりますと、お電話に出れない場合もございます。少し時間をあけて再度お電話頂けると幸いです。 ・ 商品お引き渡しの際は、出来る限り少人数のご入店で、マスクの着用ご協力宜しくお願い致します。 ・ ハンバーガーだけでなく、ご一緒にパイ🥧やケーキ🍰、クッキー🍪もテイクアウトも承ります。 ・ ⚠️ハンバーガーはお引き渡し後、1時間以内にお召し上がり下さいね! パイ・ケーキ類は速やかに冷蔵庫で保管し、当日中にお召し上がり下さい。 ・ 駐車場はお店の周りに5台、第2駐車場に5台と数に限りございます。出来るだけ乗り合わせてのご来店でお願い致します。また駐車場内での事故や盗難等トラブルにおきましては一切の責任を負いかねますのでご注意下さい。 ・ 【本日のクッキー】 ・クルミとチョコチップのクッキー ・ハワイアンクッキー ・ダブルチョコレートクッキー の3種類。 ・ 【本日のパイandケーキ】 ・バナナクリームパイ ・サツマイモとクルミのパイ ・ミシシッピーマッドパイ ・ダッチアップルパイ ・塩キャラメルのパンプキンパイ ・抹茶チーズパイ の6種類! (DAKOTA RUSTIC TABLE) https://www.instagram.com/p/CnaXVnyhtyq/?igshid=NGJjMDIxMWI=
0 notes
Photo
今週末はこちらのイベントに参加させていただきます💫 あたしは、あれになるあれを製作中です◯ お楽しみにですー #お茶呑みたいな予約してへんけど#お菓子食べたいな残ってるかな #Repost @shopulu.jpn with @get_repost ・・・ 🍵好好喫茶🍵 ご予約満席となりました。ご連絡いただきました皆様、ありがとうございます🙇♂️ 当日キャンセルが出ましたら、飛び入りでもご参加いただけますので、近況はストーリーズにてご案内させてくださいませ。 また、展示は22日も行っておりますので、どうぞお気軽にお越しくださいませ。 台湾茶と併せてティータイムに召し上がっていただけるお菓子を、大好きなお二人にお願いいたしました(お持ち帰りのみ)。 🍍woost engine mealsのよっちゃんには鳳梨酥(パイナップルケーキ)。食べ応え満点贅沢パイナップル餡がたっぷり詰まってます。 🍪hachapuri米田さんにはロシアンクッキーкурабье(クラビエ)。さっくり、口の中でホロっにジャムが合わさる感じが素朴美味な優しいクッキー。 美味しいお茶とお茶菓子と、それをいただく茶器もお気に入りであれば世界は平和なんではないだろうか❗️とそんな単純とまではいかなくても、十分に心を胃袋をほっこりさせてくれるお菓子、是非お試しくださいね☺️ pop up shop ULU @ silta 3.20 12 - 20 3.21 12 - 20 3.22 12 - 18 好好喫茶 北浜1丁目1-18忠次郎ビル2階 ※看板がありませんので、@silta_salon プロフィールにあります"siltaへのアクセス"をご覧ください。 ●tea wear and more イソガワクミコ ( @suzu___935 ) 植田佳奈 ( @0kanaueda0 ) Funatabi atelier ( @motoco_funatabi ) とりもと硝子店 ( @yuyat.i.g.a216 / @torimoto1222 ) 辻美友子(Atelier mémé) ( @atelier_meme3 ) tipura studio ( @tipura_studio ) ●tea TE tea and eating(台湾茶/22日:好好喫茶) ( @te_tea_eating ) ●sweets woost engine meals ( @woostenginemeals ) ハチャプリ ( @hachapuri ) 宇(22日:好好喫茶) ( @____no_ki__ ) 3/22 好好喫茶-TE tea and eating と宇(のき) siltaさんの台湾茶を監修している川西まりさんの煎れるお茶と、お茶請けには宇さんのraw cakeをお召し上がりいただきます。 ※ご予約満席となりました。 13:00 - 14:00 - 15:00 - 16:00 - 17:00 - ��2200(台湾茶とraw cakeセット) ※こちらの料金は現金のみのお会計でお願いします。 ※ご予約優先とさせていただきます。 ご予約は@shopulu.jpnまでダイレクトメッセージ、もしくは[email protected]まで✉︎ください。 ※当日でもお席に空きがありましたらご参加いただけます。 https://www.instagram.com/p/B9yQmyqFbJN/?igshid=yhhklcurm2kl
0 notes
Text
お姉ちゃんと自由研究
「お腹の音の研究をしたい」
その少年は恥ずかしがりながらもそう言った。少年の名は陸(りく)。夏休みの宿題の自由研究として、陸は人間のお腹の音について研究しようとしてたのだ。
「いいよ。私でよければ協力するよ」
その研究に手を貸すことになったごく普通の大学生、美夏(みか)。彼女は陸の家の隣に住んでおり、陸とは家族ぐるみでの付き合いがある。彼女は陸を自分の弟のように可愛がっており、陸も彼女に懐いており、二人で遊びに行くなど、とでも仲が良かった。
そんなある日の出来事だった。夏休みが終わりに差し掛かった頃、いつものように陸が美夏の家に遊びに来た日の事だった。
………
「そういえば陸くん、夏休みの宿題はもう終わったの?」
美夏は聞く。
「うん。自由研究以外は全部終わったよ」
陸は元気に答えた後、続けて言う。
「けどね…自由研究だけがどうしても終わらないんだ」
「え?」
「僕がやりたい自由研究は、手伝ってくれる人が必要なんだけど、なかなか協力くれそうな人がいなくって……」
「なんだ。そんな事ならお姉ちゃんが協力してあげるよ。どんな研究なの?」
美夏は優しく聞くと、陸は突然恥ずかしがり出した。
「いや、いくら美夏お姉ちゃんでもこんな事は頼めないよ…ましてやこんな変な内容の自由研究なんて…」
「大丈夫だよ。悪い事じゃなければどんな研究でも、できる範囲までならいくらでも手伝うよ。それに、学校の宿題でしょ?やらないと先生に怒られちゃうよ」
「…ホントに?どんな変な研究内容でも、協力してくれるの?」
「もちろん!私と陸くんの仲じゃない」
美夏はニコニコしながら陸に協力を申し出る。陸は唾を飲み込んだ後、こう答えた。
「……お、お腹の音の研究をしたいんだ!」
「お腹の音?」
美夏は目を丸くした。お腹の音の研究?それは一体どんな内容の研究なの?と聞こうとした瞬間、陸は口を開く。
「うん。研究内容はね…」
要約するとこうだ。まず、食事をした直後のお腹に聴診器を当て、お腹の音を聴く。その後、時間経過と共に空いてゆくお腹の音を聴き、満腹時のお腹の音との違いを記録してゆく。という内容だ。
それを2日間行う予定だが、被験者が見��からず、このままでは研究自体が頓挫してしまうらしい。
「なるほど……確かに、少し変わった研究かもね」
「うん。でもいくらお姉ちゃんでもこんな事は頼めないよ。何時間もお腹を空かせたままでいろなんて無茶な事…」
陸は残念そうな表情をする。いくら仲のいい美夏でもこんな要求は飲んでくれないだろう。そう思っていた陸だったが…
「いいよ。私でよければ協力するよ」
意外な答えだった。
「え?ホントに…!?」
「うん。やって見ると意外と楽しいかも。それに、ちょうどダイエットしたいとも思ってたんだ。お腹空かせる実験、やってみるよ」
「ありがとう!お姉ちゃん!」
「じゃあさっそく…」
そう言って美夏は自分の服を捲りあげ、腹部を出した。陸はごくり、と唾を呑み、恥ずかしそうに美夏の腹部に目をやる。
「お姉ちゃんのお腹に聴診器を当ててみて」
陸はゆっくりと頷いた後、机の引き出しの中に入っている聴診器を取り出し、美夏のお腹に聴診器を当てた。
…くるる……こぽっ…
美夏のお腹から細やかな消化音が聞こえてくる。陸はドキドキしながら数分間、美夏のお腹の音を聴いていた。
「……陸くん」
「……」
「…もう、いいかな?お腹、しまっても…」
美夏も少し恥ずかしかった。仲の良い年下の男の子とはいえ、自分のお腹の音を聴かせるなんて経験は初めてなのだ。
「う、うん…」
美夏は捲りあげていた服を戻した。
「じゃあ、また数時間後…夜にまた聴かせるね」
「うん!」
陸はいつもに増して笑顔だった。自分の実験に協力してくれたからだろうか、それとも……
………
その夜、美夏の家に陸がやって来た。もちろん、例の聴診器と録音用の機材を持って。
「こんばんは、お姉ちゃん」
「あ、いらっしゃい陸くん」
美夏は笑顔で陸を迎え、自分の部屋に招き入れた。
「ご飯、食べてないよね」
「うん。お母さんに食欲が無いってウソついたから私だけご飯は抜き」
美夏はそう言って自分のお腹を押さえた。
「ホントはもう、お腹ペコペコ」
「ごめんねお姉ちゃん…僕のせいでご飯、食べられなくなって…」
「陸くんが気にする必要は無いのよ。さっ、始めましょ」
そう言って美夏は服を捲りあげ、腹部を出した。
「うん…」
陸は美夏のお腹に聴診器を当てる。すると、先程よりも活発な音が聴こえてきた。
ぐぅぅ〜…… きゅるるるる……
という音が美夏のお腹からする。これは空腹音だ。
「すごい鳴ってる…」
「お腹、空いてるからね」
数分後、美夏はお腹をしまい、陸はしっかりと様子を記録した。
「それじゃあ、また明日の朝にまた記録しようね。お姉ちゃん、それまでご飯食べないでいるから」
「うん!よろしくね!」
そう言って陸は帰っていった。
………
夕食もとらずに寝床についた美夏は、夜、眠れないほどの強い空腹感に襲われた。
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜っ……
「うう……」
美夏のお腹から大きな音が鳴る。
「…(お腹が空いた…)」
きゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……ぐるる……
美夏はお腹を押さえ、空腹に抗っていた。
……
翌朝……美夏はとても空腹��まま目覚めた。だが朝食は食べられない。なぜならまだ実験は続いているからだ。
「お腹空いた…」
きゅるるるるる…… ぐぅ…… ぐるるる…
昨夜程ではないがお腹が絶えず、細かく鳴っている。美夏は腹部に手を当てながらベッドから起き上がり、着替え、朝食をとらずに陸の家へと向かった。
……
「あら、美夏ちゃんいらっしゃい」
陸の家に着いた美夏を、陸の母親が出迎えた。
「陸なら二階の部屋にいるわよ。何だか、「美夏お姉ちゃんと一緒に宿題をやるんだ」って言ってたわ」
まさか陸の母親は宿題の内容を知らないだろう。そう思いつつ、美夏は陸の部屋へと向かう。
「あ、お姉ちゃん、おはよう」
陸は笑顔で聴診器を握り締めていた。
「おはよう陸くん。さっそく始めましょう」
美夏は服を捲りあげ、陸にお腹を見せた。
「うん…」
陸は、少し慣れたようだ。躊躇うことなく美夏のお腹に聴診器を当てる。
ぐるるるるるる…… ぎゅるぎゅる…
ぐぐぅぅぅぅぅ〜……
昨日の夜以上に鳴っている。美夏はとても空腹のようだ。
「美夏お姉ちゃん……すごい鳴ってる…!
ほんとにお腹、空いてるんだね」
陸はドキドキした様子で美夏の空腹音を聴いている。呼吸も荒い。
「うん。もうペコペコ」
美夏は空腹でへこんだお腹を押さえながら言う。
「何時間も食べないのって、思ってたよりきついね…私、もう倒れちゃいそう」
「美夏お姉ちゃん……」
「大丈夫だよ陸くん。このくらいしないとダイエットにならないし、それに…」
「?」
「…(お腹が空いてるのって、案外気持ちいい…それに、陸くんに私のお腹の音を聴かせるのも楽しい……)」
「…お姉ちゃん?」
「ううん、なんでもないゆ。それより、早く続きやろう!」
美夏は慌てて誤魔化した。
「うん!」
陸は美夏のお腹の音を記録すべく、再び聴診器を構えた。
……
その日の昼12時過ぎ……
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜っ
ぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるぎゅるるぅ〜っ
美夏のお腹が激しく鳴っている。昨日の昼食を最後に、何も食べていないお腹は怒りのような空腹音を奏でる。
「…(うう……お腹空いた…けど陸くんのためにも頑張らなくちゃ…)」
そう自分に言い聞かせたが、美夏の空腹はますます酷くなっていく。今にも倒れそうなほどだった。美夏はお腹を押さえ、少しフラフラしながら再び陸の家へと向かう。美夏と陸の両親もさすがに様子が変だと思われたが、美夏は上手く誤魔化し、陸の部屋へと入る。
「あ、あの、お姉ちゃん…」
「なぁに?」
「そろそろ、限界になったんじゃ…」
心配そうな声で陸が言った。
「えっ、そんなことないよー」
美夏は笑顔で言う。空腹は辛いが、こうして空腹に耐えているだけで陸に自分のお腹の音が聴かれていると思うと興奮してくる。もっと聴かせてあげたくなる。
「…(ダメ、お腹空いたままだとヘンな気分になっちゃう……)」
「じゃあ、続けるね」
「うん……」
いつものように美夏の空腹音を記録するため聴診器を美夏のお腹に当てようとした時だった。
「陸ー、ごはんよー」
「はーい」
美夏が「ごはん」という単語を聞いた瞬間だった。
ぐるるるる……ぐぎゅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜っ!!
ごぎゅるるるるるるるる!!!
美夏のお腹が大きな音で鳴った。部屋全体に聴こえる程に。
「……お姉ちゃん」
「……」
美夏はさすがに顔を赤らめた。
「…実験は、これで終わりにしようよ…協力してくれるのは本当に嬉しいけど、美夏お姉ちゃんが辛い思いをしてるのは、もう見たくないよ」
陸は心底心配していた。大好きな美夏がお腹を空かせ過ぎて倒れたりしたら嫌だ。そう思っていた。
「陸くん…」
美夏は陸の考えている事を何となく察した。だが美夏はこう返す。
「せっかくだし、続けようよ。ここで止めちゃったら、もったいないよ」
「…お姉ちゃん…!」
「それに…なにより…」
美夏は突然、捲っていた服を完全に脱ぎ、陸の顔(というか耳)に、自分の腹を押し付けた。
「お姉ちゃんのお腹の音…もっと聴いてほしいもん♡」
「〜っ?!!!!」
陸は心臓が止まりそうだった。年上の女性にこんな事をされては、理性が壊れてしまいそうだ。
「さぁ…お姉ちゃん、陸くんのためにお腹、ぺっこぺこにしたのよ…?もっと……もっとたくさん、聴いて?」
グゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ〜ッ…
ゴギュギュギュ…ギュルルルル…
絶えず鳴り響く美夏のお腹、それを耳いっぱい聴かされた陸は色々な感情がミックスして、声が出なかった。
……
実験は終わったが、その後も二人はちょくちょくお腹の音を聴かせ合った(というか、美夏が陸に聴かせるのがほとんど)というのは別の話…
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ〜
「いい感じにお腹、鳴ってる…お腹ぺこぺこ……待っててね、陸くん♡」
おわり
5 notes
·
View notes
Text
詩集「ACID WAVE」
詩集「ACID WAVE」
1.「ACID WAVE」 2.「FAKE MOVE」 3.「BLACK JOKE」 4.「SENTIMENTAL FUTURE」 5.「EMOTIONAL JAIL」 6.「無口な花束」 7.「DEMAGOG RHAPSODY」 8.「NOISY BOY」 9.「FLOWER JAM」 10.「APOSTROPHE」 11.「ROAD MOVIE 〜 ACID WAVE:EPILOGUE」
1.ACID WAVE
謂われもない 正しくない そんな言葉に縋り付く幻想 つまらない 逃げ出したい そんな怒りに縋り付く妄想
Ah 僕らは何のために生きるの? 幻想 妄想 空想 瞑想 惑わされないで
ACID WAVE こわれもの ACID WAVE はぐれもの 激しい風に吹かれた 今こそ君を見つめ直せ
ACID WAVE いたみわけ ACID WAVE のれんわけ 激しい風が変えてく この世界を洗いざらい “あたしが変える”
さりげなく とめどなく こんな言葉に立ち止まる若者 痛みもない 信じらんない こんな時代に立ち止まる旅人
Ah 僕らは誰のために迷うの? 群衆 観衆 聴衆 大衆 波に負けないで
ACID WAVE ふれるなよ ACID WAVE さけぶなよ 激しい風に吹かれても 何も言わぬ君がいる
ACID WAVE つらくても ACID WAVE さみしくても 激しい風に乗ってくの こんな世界にも愛がある だから! “あたしが変える”
こんなに叫んでも 誰も動いてはくれない なぜ なんで どうして ゆるせない 感じるパワー みなぎるエネルギー 君も一緒に行こう
ACID WAVE ほんとうを ACID WAVE しんじつを 激しい風が吹いてる あたしがこの世界を変えるの
ACID WAVE こわれもの ACID WAVE はぐれもの 激しい風に吹かれてる 今こそ君を見つめ直せ
ACID WAVE こんどこそ ACID WAVE はしりだせ 激しい風に乗っていけ あたしはもう一人じゃないんだ 激しい風と共にいけ 立ち止まってる暇はないよ だから! “あたしが変える”
2.FAKE MOVE
AとBの関係が AとCの関係になる 私が言いたいのは そんなことばっかじゃない
根も葉もない嘘に 世界は覆われ 君が何かを始めるとき その嘘が障害物(ゲート)に変わる
Fake Movement 嘘と言ってよ 私はそんな奴じゃないの Fake Moment なんとかしてよ 私の暮らしが毀(こわ)れてく 人は誰もが夜明けを求めて それぞれの明日を捜すもの
ある花の咲く時 薔薇が邪魔をする あなたの言いたいこと ぜんぶ代わりに述べてくれる
見聞きした声に 世間も騙され 薄っぺらの#とやらで 拡散される気分はどうよ?
Fake Movement 止まらぬ声に 私が私を殺してく Fake Moment 支配されて 私が私じゃなくなるの 作りかけのpersonality 粉々に砕けてく この夜
アイドルでいるのも 楽なことじゃない 君が君らしくいられるのは その嘘を代わりに繋ぐ誰かがいるから
Fake Movement 戻りたいわ 私がまだ“it”だったあの頃に Fake Moment もう十分よ 私に何も求めないで!
Fake Movement もうやめてよ 私がこんなに頼むのに Fake Moment 拡散されてく ほんとは全部嘘なんだ
Fake Movement 言われるがまま 私に出来ることはなに? Fake Moment 流されるがまま ただ生きてくしかないのね
3.BLACK JOKE
I hate a money… I hate a money… I hate a money… I hate a money…
顔も声も知らない奴が 今日も有名人を叩いてた どんなに声を遮っても どこからか お前は沸いてくる Uh-Oh 二言目には溜息さ
世界は正解を捜すけれど その世界が意外と狭いように もしも君が 何にも知らない 知らされない 鳥かごの中の生き物だったら?
憎しみの先に何がある 欺瞞と疑惑の世界の中で 僕らは生きていくのだから 一言目に許せる勇気を 黒い嘘 さあ放て Black Joke!!
努力や失敗も知らずに まるでヒーローを気取ってさ お前は何様なんだ? そもそも正義ってなんだ? Uh-Oh 少なくともお前は正義じゃない
I hate a money… I hate a money… I hate a money… I hate a money…
諦めの先に何がある 人々が現実に絶望して 無言で立ち去った痕には 一言目に愛しさを Oh baby さあ放て Black Joke!!
思想が思想とぶつかり合い 声を挙げることを躊躇う者たち そんな彼らを嘲笑う お前らも子羊の一匹だろ?
憎しみの先に何がある 欺瞞と疑惑の世界の中で 僕らは生きていくのだから 一言目に許せる勇気を 黒い嘘 さあ放て Black Joke!!
諦めの先に何がある 人々が現実に絶望して 無言で立ち去った痕には 一言目に愛しさを Oh baby さあ放て Black Joke!!
どいつもこいつも お前も貴様も いい子ぶってんじゃねえよ!!
4.SENTIMENTAL FUTURE
僕の馴染みのサ店が 日曜 店を畳むらしい 太陽の眩しい真夏日 レーコーがあまりに美味しかったんで 思わずマスターに駆け寄り 「ありがとう」と握手を求めると コーヒー豆を持たせてくれたよ
声を挙げるだけで すべて変わると信じた あの日々が懐かしい
僕が愛した御神酒(おみき)屋も 近々 店を畳むらしい 学友とアジった帰り道 日本酒があまりに美味しかったんで 思わずバーテンに駆け寄り 「この酒どこのですか?」と尋ねると 住所をメモに書いてくれたよ
声を挙げるだけで すべて変わると信じた あの日々が懐かしい
君との馴れ初め古書店まで 明日 店を畳むらしい 論文に追われた夏休み 黒髪があまりに美しすぎた 思い出は色褪せぬまま
声を挙げるだけで すべて変わると信じた あの日々が懐かしい
声を挙げるだけで すべて変わると信じてた あの青春の日々が 今はただ懐かしい
5.EMOTIONAL JAIL
ある日 パソコンを開くと 君が一面に映ってた 何故だか 僕はわからず 電話をかけてみると 全部話してくれた
大根がふつふつと煮えるように 時がすべてを変えるだろう 君は無邪気に語るけど なにも変わりはしなかった
ある朝 ウトウトと目覚めた 君は隣で笑ってた 何故だか 嫌な予感がして ぎゅっと抱きしめてみると 君は笑ってくれた
茶柱が幸福(しあわせ)を繋ぐように 時がすべてを変えるだろう 君は無邪気に語るけど なにも変わりはしなかった
ある夜 ニュースを観ると 君が白ヘルを被って 波と波 消えた幻が 僕らの終わりだった 全部終わりだった
数年後 僕たちは離れたまま 風の便りで今を知る 見出しに小さなイニシャル それは僕の名前だった
突然何かに追われるように 僕は再び帰京した 君がもういないと知りながら 青リボンをずっと捜し続けた Aの街に少女の声 聞こえた気がしたんだ
6.無口な花束
柱の落書き まばらな観客 毎週水曜 青春捜して さすらう愛を あなたへ囁く
哀しきセレナーデは 醒めた夢への餞別
誰もいないステージで ひとり悟った恋の限界(フィナーレ) 無口な花束 黄昏(ゆうひ)の約束 サヨナラは何も言わずに
時代は変わった ここは変わらない 小さな劇場 無限の未来へ 信じ続けた夢は何も語らず
群青は水性の儚さで あの夏を静かに溶かした
誰もいないステージで ひとり悟った恋の限界 無口な花束 永遠(とわ)への幕開け 倖せの唄をあなたと友に
フィルムに残された 涙と歓び 来週水曜 もうここにはいない 記憶は風と明日へ消えゆく
誰もいないステージで ひとり悟った恋の限界(フィナーレ) 無口な花束 無言の客席 サヨナラは誰にも言えずに
あなたのためにずっと ひとり狂った恋を謳い 夢への舟が来るんだと 私はひたむきに信じてた 無口な花束 「ファン一同より」の文字 サヨナラは夜に隠して
7.DEMAGOG RHAPSODY
幸せになりたくない人なんていない 優しくなりたくない人などいない 淋しいのがいいって人はいない 怒られるのが好きな人もいない
ああ 愚民たちよ なぜ君たちはそんなに愚かなのか? ああ 愚民たちよ どうして君たちはそんなに馬鹿なのか??
悲しいほど静かな街の中で ただ大好きなものを投げ捨て 俺はここまで歩いてきた 素直に夢を追いかけてきた
ラララ ラララララ ラララ ラララララ
文句を言う前に 君のやるべきことをやれよ 誰かをアジる前に 君のやるべきことをやれよ
言いたいことを言えば 風の噂��火は巻き上がり 還ってきた時には姿を爆弾に変え 俺の前で導火線が切れる
あきらめろ もう遅いぜ あきらめろ もう遅いぜ
声を挙げるのが遅すぎたのさ もう止まりはしないのさ
暴走電車にようこそ 華やかな宴にようこそ
怒れ 怒れ 怒れ 怒れ 怒れ 笑え 笑え 笑え 笑え 笑え ぴえん ぴえん ぴえん ぴえん ぴえん しくしく しくしく しくしく しくしく しくしく
自分がヒーロー気取りで 正しさの意味さえ知らずに 君は正しさを語るつもりなのか それならケチャップを丸呑みしてまで 苦労の道を歩むことはないだろう?
おかしいことはおかしいと言うのだ 違うものは違うと言うのだ 寂しいときは寂しいと言うのだ せつないときにはせつないと言うのだ
神がこの星を創り 俺たちがここに産み落とされた 宇宙の法則の中 流星群に乗り 飛びたて 夜が嵐に包まれて かつてない狂騒 明日は闇に覆われて かつてない競争 着せ替え人形のように お前も変わり身が得意だな!
壊してばかりじゃ何も始まらない 叩いてばかりじゃ何も産まれない 涙ばかりじゃ何処も渡れない 争いばかりじゃ夢も翔ばない
華やかな週末に 綺麗なドレスで着飾って 鏡の間 集結する若人よ
ひどく暑い夏に あの橋を駆け抜けてゆく 髪を束ねた 少女ランナー
黒雲に青空は見え 彼方には遥かなる山 その滾るような美しさ 忘れかけてたもの 子供たちのあどけない微笑み 淋しかったから 声をかけてみよう
ロックは死んだ ロックは死んだ ロックは死んだ サイレントマジョリティー 広場に人は集まり まだ終わってないと声を挙げる 意味がないと知っていても 変わる可能性がある限り 闘い続ける 走り続ける それが人の慣性
ダイスを振れば 転がる石のように 気まぐれに時代は変わる
誰かの声に揺られて 転がる石のように 気まぐれに世間は変わる
最高の詩があれば 世界も変わるはずさ
もう一度 信じてみたい もう一度 愛してみたい
愛する勇気をみんなで持てば きっと世界は良くなる
パンドラの函を開く前のように カオスのない世界 まだ物語は始まりすら��ない 人間なんだもの 毎日 君も生まれ変われる 世界はもっと良くなる
8.NOISY BOY
あの店でウォッカを片手に 世間を語った青年 過ちは恐れずに 明日を見つめていた
最終電車が過ぎても 何にも気にすることはなく 怒りに震えながら 正義を語り続けた
あれから何年かして 少年の姿は見えなくなった 今どこで何をしてるのだろう そんな想いが浮かんだ
道を健やかに 君だけのために走れ 最高の想いがあるなら それをぶつければいい 君ならできる 君ならやれる ここから君へ叫ぶよ 諦めるな 投げ出すなと 真っ白な空へ唄う
僕らが親父になって あの日の青年を見つけた 白髪になって シワも増えて なんだかやつれていた
最終電車が近づき 時計を何度も気にして まるで達観したかのような表情で 山手線に乗り込んだ
あれから何十年か経って 少年の微笑みも無くなり 諦めかけたその眼に 勇気は消え失せていた
道を激しく 君だけのために走れ あの頃の想いがあるなら それをぶつければいい 君ならできる 君ならやれる いつまでも君へ叫ぶよ 諦めるな 投げ出すなと 肩を叩いて君へ唄う
帰り際に振り返り 「もう終わったのだ」と淋しそうに 髭を生やしてつぶやく老紳士は もはや別人のようだった
悲しいなら悲しいと言っていいよ 許せないなら許せないと言っていいよ
世界を的確に切り取っていた あの日の少年はどこへ?
道を泥臭く 君だけのために走れ 守るべき人がいるなら その人だけのために走れ
道を健やかに 君だけのために走れ 最高の想いがあるなら それをぶつければいい 君ならできる 君ならやれる ここから君へ叫ぶよ 諦めるな 投げ出すなと 真っ白な空へ唄う
まだ僕らは諦めるには早すぎる
虚しいほどの情熱で 君だけのために唄う あの日の Noisy Boyへ
9.FLOWER JAM
君が風に吹かれ 光を浴びていた頃 爽やかな暮らしを 無邪気に語っていたね
コーヒー豆にこだわり うんちくを僕に語る 追い風に乗って 淋しさを憂い 華やかな明日を信じた
少女よ あの場所で唄う ラブソングをもう一度
清らかな青春の日差しのように 思い出を書き記す夏
君に吹いた風が止み 光が闇に変わる 過去を捨てようとも 過去に縋るしかなく
都会を歩く 若者たちの叫びが 真夜中に駆け出す 切なさみたいに 憂鬱な明日を感じた
少女よ あの場所で唄った ラブソングをもう一度
艶やかな時代の声のように 熱く燃え上がった夏
少女よ あの場所で唄う ラブソングをもう一度
清らかな青春の日差しのように 思い出を書き記した夏 眩しすぎた夏
10.APOSTROPHE
まだ秘めた気持ちを 形に出来ぬまま 私は星になった
いいねの数ばかりが 話題になる世界で 私は星になった
百億分の一 不幸のナイフが傷になる 愛する意味を知らぬ者が 幸せ 殺しに来た
ひとりの声 混じり合い いつしか世代になった 心のフィルター くぐり抜けて 届くのは心無い声 ああ 私はここにいなくていかい? まだ 私はここにいるべきじゃなかったかい??
いつの間にか過ぎてく 時間は風のように 私も大人になる
右も左もわからず その声 波のように 私も大人になる
七十億分の一 誰かに愛された人たち あなたに誇りがあるなら 画面の向こう側を感じて
ひとりの声 重なり合い いつしか時代になった 正義のフィルター 回り道して 伝わるのは心無い声 ああ 私はもう何も言わなくていいかい? まだ 私はもう何もしない方がいいかい??
喜びも悲しみも 全部抱きしめて あなたに愛があるなら 傷つけ合うのはもう終わりにしよう?
ひとりの声 混じり合い いつしか世代になった 心のフィルター くぐり抜けて 届くのは心無い声 ああ 私はここにいなくていいかい? まだ 私はここにいるべきじゃなかったかい??
ひとりの声 たしかめあい いつしかナイフになった 最後のフィルター くぐり抜けて 届くのは心無い声 もう 世界は誰のものでもないんだ…… さあ 世界に絶望するのはやめよう……
雲ひとつない青空 幸せのエールを投げた 悲しみも 喜びも すべて 今はどうでもいいよ 愛する人たちへ 愛せなかった人たちへ 何者でもない少女の詩を
11.ROAD MOVIE
愛する意味も 夢見る意味も知らず ただ叫び続けていた ただ泣き続けていた 誰かに操られるがまま 私は何かを変えようとしていた 変わろうとしていた
しかし 何も変わらず 今日も世界は回っている 私たちの声を聞こうともせず 今日も世界は変わっていく 誰のために頑張ってきたのだろう 何のために声を上げてきたのだろう
気付いたとき すべてが空っぽになっていた 気付いたとき 誰も周りにいなかった 気付いたとき 私は独りになっていた
誰にも気付かれないように 早朝家を飛び出した 最寄駅から各停に乗り 始発電車で故郷を後にした 愛を捜すために 夢を探すために 私は旅に出たんだ 旅に出たんだ
流れる景色は見慣れたはずなのに 今日はなんだか美しく見えるね 流れるビル群と住宅街の調べ すっかり季節は変わってしまったけれど この街は何も変わっていない ぎゅっと抱きしめてくれた 不安だった私をそっと見送ってくれた ありがとう ありがとう 涙が止まらなくなる
それでも 私は旅に出なけりゃいけない 世界の意味を知るため 旅に出なけりゃいけない 知らない世界を知るため 今日旅に出なけりゃいけない
世界がさらに速いスピードで流れていく 私の探していたものは何だったのか だんだんわからなくなってきた でも これでいいんだ わからなくてもいいんだ 地図を広げて目的地を確認してみた 知らない土地へ行くのはいつも緊張する 受け入れてもらえないんじゃないかと怖くなる でも これでいいんだ 怖くてもいいんだ
なんでもない日に旅に出よう ありきたりでいいんだ 無計画でもいいんだ ロードムービーみたいな旅に出よう
何時間か電車に揺られると お腹が鳴り始める 次の駅には売店がある ここは牛肉が有名だから 思いっきり腹を満たしておこう
そんなこんなで駅をブラブラしてたら 目当ての電車を乗り過ごした ちょっぴり焦ってしまったけれど でも これでいいんだ 焦らなくていいんだ 時間とは一旦距離を置く そう決めたんだ 私は決めたんだ 紫陽花が咲く頃に こう決めたんだ 私が決めたんだ
なんでもない日に旅に出よう ありきたりでいいんだ 無計画でもいいんだ ロードムービーみたいな旅に出よう
太陽が沈み 深い夜が顔を出す ただ叫び続けていた 泣き続けていた 少女の頃を思い出して 懐かしさに浸りそうになったけれど もういいんだ 水に流すんだ
かつて 私はわんぱくだった もはやその面影すらなく ただ大人になりかけていた そんな私をある人が変えてくれた 私は声を上げることを覚えた これまで無関心だった世界に興味を覚えた
気付いたとき 私は輪の中心にいた 気付いたとき もう戻れなくなった 気付いたとき 誰も相手にしなくなった
見知らぬ声が怖くなり ついに私は旅に出た いつ帰るかもわからない そういう旅だ 行き先も決めずにぼんやりと 流れる景色を見つめてる 明日の宿とその日の下着 これさえあればどこへでも行ける そういう旅だ 私だけの旅なんだ
なんでもない日に旅に出よう ありきたりでいいんだ 無計画でもいいんだ ロードムービーみたいな旅に出よう
今日の宿は友達の家 ご両親の気づかいが嬉しかった 友達も優しかった カレーライスが美味しかった お風呂は気持ち良かった 当たり前のように見えて当たり前じゃない そんなふつうが嬉しかった 友達と居られるのが幸せだった
翌朝 私は再び電車に乗った 片道切符でどんどんいこうか 青空があまりにも眩しかった もうとっくに夏は終わったというのに なぜこんなに暑いんだろう だけど もういいんだ 気にしなくていいんだ いつか涼しくなるよね だから もういいんだ 気にしなくていいんだ
なんでもない日に旅に出よう ありきたりでいいんだ 無計画でもいいんだ ロードムービーみたいな旅に出よう
どこまでも行ければそれでいい 雨の日でも傘は差さない 世間の声などどうでもいい 制服なんていらない 友達気取りももういらない
何度か友達の家に流れ着き ありったけの愛を注いでもらった 友達は皆やさしかった 戸惑うこともあったけれど これが旅だと思うと心が軽くなった 好きな人の���ジオが耳に届く度 もっと遠くへ行こうという気になった もっともっと旅がしたかった
なんでもない日に旅に出よう ありきたりでいいんだ 無計画でもいいんだ ロードムービーみたいな旅に出よう
行き先を決めなかったつもりだったけど 実は最初から決めていた あと数十キロで あと一回の乗り換えで カウントダウンが始まる
もうすぐ街に着く かつて夢にまで見た街だ もうすぐ旅が終わる いや始まりだ 私にとっての再始動
どうでもいいと言われた 君には期待していないと言われた 死ねとまで言われた そんな人たちを見返すために もう一度やり直す まだ愛とやさしさが残っているうちに この街でもう一度やり直す 私はまだ死んでいないから
なんでもない日に旅に出よう ありきたりでいいんだ 無計画でもいいんだ ロードムービーみたいな旅に出よう また数週間が経った やっと目的の人に逢えた 私は二度目の青春を始めた どんな瞬間よりも喜びを感じた 生きるってこんなに楽しいんだね 久々の感覚だった この街で生きられるのが嬉しかった 変わっていくのが楽しみだった
しかし変わらなかった そう簡単には変わってくれなかった まっすぐな笑顔 人間のぬくもり すべてあるのに なんにも変わってくれなかった だけど気付いた もう一度気付いた 私が変わろうとしなかったんだと 変わるために頑張れていなかったんだと
自暴自棄になりそうだったある日 ある人が教えてくれた 「君の自由は当たり前のものじゃないんだよ」 未だ名前はわからない とにかくあったかい人だった 忘れかけていたものを三たび思い出した もっと純粋に夢を追いかけてもいいんだ もっともっと熱く世界を語ってもいいだと
だから もう一度旅に出ることにした あの旅に出た時の感覚を思い出すために もう一度旅に出ることにした
いつかまたやり直せる この街は私をぎゅっと抱きしめた 旅立ちの日は空があまりにも美しかった 今まで感じたことのない安らぎがそこにあった 見つめ合う自然の笑顔がやさしかった 「人は何度でもやり直せる」 そう感じさせてくれる空だった
なんでもない日に旅に出よう ありきたりでいいんだ 無計画でもいいんだ ロードムービーみたいな旅に出よう
今の私ならどこまでも行ける 行き方のわからない目的地がすべての目印 人生はみなロードムービー
Bonus.PROTEST SONG’20
やさしさの行進(ぬくもりの交信) はげしさの更新(かなしさの恒心)
さわやかな日々も ひそやかな日々も みんな同じだよ しあわせの価値は みんな同じだよ あいに生きる あいで生きよう あいを生きていこう きみが思うほど きみは愚かじゃない
さみしさの漸進(つよがりの染心) いとしさの全身(たのしさの前進) はなやかな日々も ありきたりな日々も みんな同じだよ しあわせの価値は みんな同じだよ
ゆめに生きる ゆめで生きよう ゆめを生きていこう あなたが思うほど あなたは弱くない
詩集「ACID WAVE」Staff Credit
All Produced by Yuu Sakaoka(坂岡 ユウ) Respect to Pink Floyd, THE ALFEE, BAKUFU-SLUMP and MORE... Special Thanks to My Family, my friends and all my fans!!
2020.5.25 坂岡 ユウ
9 notes
·
View notes
Text
十二月後半日記
12/16
寒波到来。北日本や日本海側では大雪だそうです。Twitterでも書いたのですが、みなさんの家の軒下にはネギの詰まったプランターが置かれていないのですか?カルチャーショックです。
12/17
ネイルサロンへ。初めてのところだったけど至れり尽くせりですごかったので施術後即次回予約を入れました。帰り道が寒いからとゆず茶の入った紙カップをいただき、駅までの道を飲み飲み歩いた。なんだなんだ、おもしろいなあ。
12/18
コーマック・マッカーシー「ザ・ロード」を読む。火を運ぶ善い者。灰の街。終わった後の世界。ただ哀しいだけではなく、たくさんのものが心に降り積もる小説だった。
12/19
今年最後のテディベア教室。年越しはリスを作りながら過ごすことになりました。うまくつくれるかしら……。ヨーロッパアカリスっぽい色の生地がどうしてもみつからなかったのでハイイロリスもしくはエゾリスが出来上がる予定です。
12/20
お歳暮を送ったりお年玉を用意したり年賀状のことを思い出したり。いよいよ年の瀬というかんじ。休日もバタバタに忙しい。迷ったらとらやを送っておけという持論で生きているので実家にはもれなくとらやの羊羹や最中が届きます。
12/21
今年も冬至が来ました。柚子湯に浸かって身を清めてからカードを引く。ソーウィンと同じくホロスコープを引いたのですが、同じカードが同じ時期に出ることが多発。こ、これは行く先気をつけねばならぬ。でも13番目のカードが私の一番引きたかったカードだったのでまあ良し。来年は波乱の年になる予感。
12/22
まばたきしてる間に一日が終わる。ネンマツというやつです。それが終わったら間もなくネンシが来ます。人間はネンマツとネンシをおもてなしするためにあちこち駆け回って決裁や承認を得ねばなりません。ふん、つまんないの。
12/23
オイッコメイッコからお年玉が届いたとの連絡あり。写真付きでメッセージが送られてきたのですが一年会わないうちに驚くほど成長してたまげた。彼らの一年は私の三年だな。その後我が家は早めのクリスマスプレゼント交換会(二人)をし、講談社文庫ムーミン全巻BOXセットをサンタさんにいただきました。表紙がすべすべで気持ちがいい。今夜は抱いて寝ます。
12/24
クリスマスイブです。デパートには沢山のお客さんが入っていました。明日はケーキくらい買ってこようかしらね。
12/25
仕事納めの金曜日。帰りにデパートに寄ってみたら思った以上に密だったのでケーキは諦め家路につく。スパークリングワインと焼いた鶏肉で乾杯。楽しい10連休の始まりです。
12/26
今年最後のキャンドル教室。レッスンのあと、以前オーダーされていたテディベアを先生にお渡し。とても喜んでいただけました。静かなおともだちが欲しくて始めたぬいぐるみ作りがこんなふうに私を変えていくなんて思わなかったな。これからも作り続けたい。
12/27
ついに炬燵を出してしまいました。無限にごろごろしてしまう……。これでお正月を迎え撃てます。あとは湯呑、ヤーンボウル、半纏が欲しい。(お正月から帰れなくなる)
12/28
炬燵から抜け出せずにうだうだ。あまりに生産性がない一日に恐怖してアフタヌーンティーに出かける。ルフナのミルクティーとチャイマフィンの組み合わせがおいしい!久しぶりに家でスコーン作ろうかしら。
12/29
年越しの準備に忙しい。そんな中やっとミトンを編み終わりました。毛糸針が行方不明で刺繍がまだできない……。
12/30
実家からカニが届く。さっそくかにすき��しました。実家の正月はいつも蟹を食べることになっているのです。年越し用に買ったお酒が早速一本消えたのでまた明日買ってくるわね。
12/31
年の瀬。今年も本当に残りわずか。何も出来なかった一年と思っていましたがよくよく思い返すと全くそんなことはなく、新しい出会いもあり充実した年となりました。来年は今年撒いた種が芽吹くように、しっかり育てていく年にしたいと思います。皆さまお元気で。
1 note
·
View note
Text
まだまだする
ヴィクトルは、一週間ほど出掛けなければならないと言って、出発の十日も前からずっとなげいていた。当日も、朝からぶつぶつ言っていた。行きたくない、せっかく勇利がロシアへ来てくれたのだから一緒にいたい、話したいことがまだまだある、というのが彼の言い分だった。勇利は笑ってしまった。 「べつに話は逃げないよ。ぼくはこれからもロシアで生活していくんだから一週間程度会えなくても同じだよ」 「同じじゃない! 勇利はさびしくないのか!?」 「ヴィクトル、落ち着いて」 「これが落ち着いていられるか! やっと──やっと──俺は……」 「仕事なんだから……」 勇利はくすっと笑った。ヴィクトルってこんなに聞き分けがなかったっけ、と彼はすこし驚いていた。再会してから、なんだかわがままになった気がする。もともと、おかしなことを言うひとだったけれど……。 「マッカチンと待ってるから」 勇利はなだめるように言った。 「ぼくはスケートがんばるから、ヴィクトルは撮影がんばって」 「ああ、勇利……」 ヴィクトルは玄関のところで勇利を抱きしめると、吐息を漏らしていとおしそうにささやいた。 「急いで帰ってくるからね」 「うん。でも無理しないで。ぼくは平気だよ」 「なんでそんなにつめたいんだ?」 「つめたいとかじゃなくて……」 「一緒にいたいのは俺だけなのか?」 「いやぁ……そういうわけじゃないけど……」 「もっと俺に甘えてくれ」 「あー、うん」 甘えるってどうするんだろう……。勇利は笑いをかみころした。 「勇利」 「なに?」 「帰ったらすぐセックスしようね」 「え!?」 勇利はうろたえた。じつは、ロシアへ来てからすぐ、彼はヴィクトルと一夜をともにしたのだった。それから、ひんぱんに同じベッドで寝ている。そういう夜はいつだって、それはそれは濃密であまく、すてきだけれど、まさかこんなときにこんなふうに言われるとは思わなかった。 「ヴィクトル! ちょっと……」 「一週間も離れるんだからいいだろう?」 「きっ……昨日だってしたじゃん」 勇利はまっかになってつぶやいた。しばらく会えないから、とささやくヴィクトルが、ゆうべどれほど情熱的だったことだろう。 「そうだよ。そして次に会うまでできない。そのあいだ一週間だ。長すぎる。帰ってきたらすぐ抱きしめたいのは当然だろ?」 「当然かどうかは知らないけど……」 「当然なんだ」 ヴィクトルはきめつけた。 「帰ってきたらセックスしよう。わかったね」 「そういうことを予告しないでよ……」 「約束がしたいんだ。いいだろう? いやなのかい?」 「いやじゃないけど……」 それでは、ヴィクトルが帰ってくる日を指折り数えるのが気恥ずかしくなるではないか。うつむいた勇利をヴィクトルが熱烈に抱きしめた。 「帰ってきたら」 「…………」 「ね?」 こんなに熱心に言われたら断ることなどできない。���っとも、恥ずかしいだけで、いやだなんてこれっぽっちも思っていないけれど……。勇利は目を伏せ、ちいさく、うん、とうなずいた。ヴィクトルがまぶたをほそめた。 「ああ勇利、俺の勇利。いとしいいとしい勇利。飛んで帰ってくるからね」 ヴィクトルは勇利に熱愛のこもったくちづけをし、マッカチンをぎゅうぎゅう抱きしめて、想いをふりきるように出ていった。 「いってらっしゃい……」 見送った勇利はまだ赤い顔をしており、彼はマッカチンと視線を合わせると、照れくさそうににっこり笑った。 「ヴィクトル、困るよねー。変わってるよね」 ともあれ、一週間だ。勇利は、がんばってひとりでやってみよう、と決心をした。ヴィクトルは勇利はさびしくないのかと不満そうだったが、勇利としては、もちろんさびしいけれど、いままでずっと会えなかったのだから、一週間程度なんでもないというのが正直な気持ちだった。グランプリファイナルのあとだけのことでは��い。ヴィクトルと親しくなるまで、長いあいだ遠くから見ていたのだ。何年もそうだった。それにくらべれば、一週間なんて……。 勇利はまじめにリンクへ通い、買い物をし、料理の練習をしたり、一日のスケートの成果について考えたりして毎日を過ごした。マッカチンと散歩に行けば、マッカチンが道案内をしてくれた。わからないことは多いけれど、海外暮らしには慣れているし、それほど困ることはなかった。ヴィクトルは「大丈夫?」「元気かい?」「問題はない?」とメッセージを送ってくるが、ごく普通の日常生活だった。 しかし、さすがに、ヴィクトルが帰ってくる日が近づいてくると緊張した。ヴィクトル帰ってくる、そうだ、え、えっちするんだ……と赤くなってしまうのである。いままで、ヴィクトルとそういうことをするときは、夜に「おいで」と誘われるだけで、前もって「今日はセックスしよう」なんて提案されることはなかった。いつにする、とわかっているのはなんともくすぐったいものだ。今後はこういうことはひかえてもらわなければ……。 それはともかく、勇利の暮らしぶりは順調だった。ヴィクトルはといえば、「撮影が押している」とかなしそうなメッセージがあった。勇利は「待ってるから」となぐさめることしかできなかった。撮影ってどんな感じなんだろう。ヴィクトルはきっといろんな似合う衣装を着てるんだろうな。かっこいいヴィクトルがいっぱいにちがいない。ヴィクトル──。 あんなかっこいいひとと、えっちなんてできるかな? いままで幾度もしたことがあるにもかかわらず、勇利は心配になってきた。いろいろと照れたり悩んだりしているうちにとうとうヴィクトルの帰ってくる日になり、勇利は、いつもより気合いを入れて買い物に行った。 「いや、べつに……ぼくがつくるごちそうなんて知れてるけど……ヴィクトルはずっと外食だっただろうから。ヴィクトルがこういう歓迎を喜ぶかはわからないけど、なんていうか……そう……なんていうか……まあ……一応だよ。一応」 帰宅した勇利は、マッカチンにそんな言い訳を並べ立てた。 一週間くらい会えなくても平気だけれど、やはりヴィクトルが帰ってくるとなるとうれしい。勇利はよい気分で料理を終え、さて、さきに入浴しておくべきかというところで悩んだ。ヴィクトルはセックスがしたいと言っていた。それはつまり心構えをしておいて欲しいということだろう。けれど、だからといって、いかにも「さあしましょう」というようにお風呂に入って待っているのもどうだろう。あまりにも恥ずかしい。だが、何もせずにいると、まるでそんな気がないみたいだ。ヴィクトルは疲れて帰ってくるのだから、できるだけよい気分でいてもらいたい。ちゃんとわかっているということを伝えたい。しかし、あまりにあけすけな態度ではいられない。そもそも、ヴィクトルがまだセックスしたいこころもちかどうかわからない。あれは出掛けるときだったから、何か気持ちが高ぶっていただけかもしれない。そうではなくても、一週間の出張で彼は相当疲労しているだろう。今夜はセックスはいいと考えているかもしれない。 「う、うーん……」 なんでこんなことで悩んでるんだ? 勇利は気恥ずかしくなってあきれてしまった。お風呂には入っておこう。でもお風呂に入ったという気配は出さずにおこう。それがいい。適当にやろう。 そんなふうにとりきめ、浴室に入った彼だったが、ぼんやりしているとヴィクトルの熱っぽい瞳が思い出され、しきりと照れてしまった。勇利、セックスしようね、とうれしそうに誘う姿が目に浮かんだ。メッセージでも何度も言われたのだ。早く勇利とキスしたい。勇利を抱きしめたいよ。勇利とセックスがしたいなあ。勇利、セックスの約束、忘れてないよね? 「…………」 勇利はふと、一生懸命ごしごし身体を洗っている自分に気がついた。ヴィクトルがさわるのだから彼が喜んでくれるように綺麗にみがいておかなければ、という無意識からだった。 「ぼくは何をやってるんだ!?」 するかもわからないのに! ばかなのか! 勇利は自分にぷんぷん怒り、すばやく浴室をあとにした。しかし彼は、ヴィクトルのために、全身ぴかぴかになっていた。 勇利は時計を見た。そろそろ帰ってくるかな、と思った。そうだ、メッセージを確認してみよう。携帯電話を手に取った。 『すこし遅くなりそうだ』 「…………」 夕方に入ったメッセージだった。勇利はぱちりと瞬き、そばに行儀よく座っていたマッカチンに言った。 「ヴィクトル、遅くなるって」 しかし大丈夫だろうか。彼は「飛んで帰る」と言っていたけれど、本当にそのつもりなのだろうか。遅くなるならもう一泊して、無理しないことを考えて欲しいけれど……。 とりあえず、夕食は必要ないかもしれない。勇利はつくったものを冷蔵庫におさめ、居間へ行ってヴィクトルの写真集を眺めることにした。そうしているとあっという間に時間が過ぎ、彼が我に返ったのは、携帯電話が音をたてたときだった。 『絶対に今日帰るから!』 「…………」 無茶をしなければいいけれど。勇利は夜遅くに帰宅するヴィクトルのためにできることはないだろうかと考えた。食事はおそらく済ませてくるだろうし、ほかに必要なのは──風呂くらいだろうか? なによりもヴィクトルは眠りたがるかもしれない。きっとそうだろう。セックスはしないことになりそうだ。勇利はみがき上げた素肌のことを考えて赤面しながら、マッカチンにさきにやすむよう言った。 時計の針は進み、勇利が本気で心配し始めたころ、ようやく玄関のほうで物音がした。勇利は飛んでいって、そっと扉を開けた。するとヴィクトルがいきなり倒れこんできた。 「ヴィクトル!」 「勇利、ただいま……」 ヴィクトルは勇利の身体を抱きしめ、肩口に顔を押し当てた。勇利は眉を下げて笑い、彼の背に腕をまわした。 「おかえり」 「ああ……、疲れた」 「お疲れ様でした」 勇利はヴィクトルに寄り添いながら中へ招き入れ、廊下をゆっくりと歩いた。 「食事は済ませてきてるよね?」 「ああ……」 「お風呂はどうする? 支度はしてあるけど……」 ヴィクトルはとても眠そうだ。まぶたが半分閉じている。これはベッドへ直行かなと思った。その想像どおり、ヴィクトルは寝室の前で立ち止まった。勇利は扉を開け、ヴィクトルは室内へ足を踏み入れるなり、トランクを取り落とした。 「大丈夫?」 ヴィクトルが脱いでいく服を慌てて拾い集めながら、勇利は彼についていった。ヴィクトルは上半身裸になった。勇利は手にしたシャツや上着をどうしようときょろきょろした。と──。 「勇利」 「わっ」 勇利の手から衣服が落ちた。彼はヴィクトルに引き寄せられ、ベッドに押し倒されてあおのいた。 「ど、どうしたの?」 「勇利……セックスしよう……」 ヴィクトルはいかにも眠そうな、眠気に耐えているという目つきで言った。勇利はあっけにとられた。 「なに言ってんの?」 「約束しただろう? 帰ったらセックスするって」 「それはそうだけど……」 勇利は笑いだしてしまった。 「無理しなくても」 「無理じゃない! したいんだ」 「ヴィクトル、疲れてるでしょ?」 「疲れてはいる。でもする。だからこそする」 「すごく眠そうだよ」 「したい」 「明日にしようよ」 セックスをしよう、と照れるような誘いを受けているにもかかわらず、勇利は可笑しくて笑いながら言った。ヴィクトルがあまりにもがんばって「しよう」と言うものだから、なんだかほほえましくなってしまった。 「今夜は寝たほうがいいよ」 「なんでそんなつめたいこと言う?」 「つめたいことじゃないでしょ。かえってヴィクトルの体調を気遣ってるんだから。今夜は眠るべきだよ。そんな状態でしても……」 「いやだ。したい」 「ヴィクトル、本当は寝たいでしょ」 「眠いけどそれ以上にしたい。勇利としたい」 「わかった。じゃあぼくはここで一緒に寝るから。それならいいでしょ?」 「一緒に寝て、俺に抱かれるんだね」 「あのさ……」 「いや? いやなのか?」 ヴィクトルが剣呑な目遣いで勇利を見た。 「約束したのに」 「いやなんじゃないよ。ただ、ヴィクトルは疲れてるみたいだから、やすんで欲しいんだよ」 「やすむより勇利を抱きたい」 「起きたらね」 「勇利!」 ヴィクトルが絶望的な声を出した。 「俺はこの一週間、勇利とセックスすることを夢見て生きてきたんだ!」 「ちょっと……なに言ってるんだよ……」 さすがにこれには恥じらいをおぼえた。大声で何を言っているのだ。 「スポンサーのつまらない話に付き合うのも、カメラマン助手の不手際で撮影が遅れたのも、食事がまったく美味しくないのも、全部我慢した。すべてはこれが終われば勇利に会える、キスできる、セックスできる──そう思ったからだ!」 「や、やめてよ……そういうこと……」 「それを勇利はだめだと言うのか!? 俺の希望をかなえてはくれないのか!? 勇利にとってはたわいもないことなのか!? 俺は勇利とセックスしたくてがんばったのに!」 「そういう言い方やめてってば!」 「勇利は俺に愛されてくれないのか!? 俺の愛なんてごくささいなものだと、そう……」 「ちがうちがう! ちがうから!」 勇利は溜息をついた。彼はすこし考えてかすかにほほえんだ。仕方がない。無理に寝かせても、ヴィクトルの精神にはよくない影響を与えそうだ。それなら、彼の思うようにさせるほうがよい。一生懸命仕事をしてきたのだから、彼はそれだけのものを得るべきだ。──ぼくとの行為にそれだけの価値があるのかはわからないけれど。 「わかったよ……」 勇利はちいさくうなずいてヴィクトルの頬に手を当てた。 「しよう、ヴィクトル」 「本当かい?」 「うん」 勇利はこっくりもう一度うなずいた。彼の頬はほのかに赤くなった。 「ぼくお風呂で一生懸命綺麗にしたから……ヴィクトル見て……」 「勇利!」 ヴィクトルがうれしそうに瞳を輝かせ、勇利にキスをした。勇利はヴィクトルの背に手を添えた。大変だったんだろうな、とせつなくなった。こんなに遅くまでかかって……めいっぱい��やしてあげたい。どうすればヴィクトルの気持ちをやわらげられるのかはよくわからないけれど。 「勇利……本当に……俺は……このときを夢見て……勇利のことだけを考えて……ずっと……」 「うん。ぼくも待ってた。ヴィクトルが帰ってくるの……」 「勇利……勇利……」 ヴィクトルは勇利の首元に顔をうずめ、夢中でキスをしながら、勇利の衣服をゆっくりとまさぐった。勇利はどきどきと高鳴る胸をどうにかおさえ、ヴィクトルの髪を梳いたり背を撫でたりしていた。部屋着のファスナーが下ろされ、白い素肌があらわになると、明るいひかりに照らされるのに恥じらった。あかりを消したい。無理かな? ヴィクトルの気が散るようなことは言いたくない。 と──。 「…………」 のしかかっているヴィクトルの身体がふいに重くなった。それと同時に、勇利の肌を愛撫していた彼の手も止まった。 「?……」 勇利はふしぎに思い、顔を上げてヴィクトルのおもてをのぞきこんだ。 「ヴィクトル……?」 ヴィクトルはまぶたを閉ざし、勇利の上で寝息をたてていた。勇利は目をまるくし、それから笑ってしまった。やはり相当疲れていたのだろう。眠りたかったのだ。それなのにどうしてもするだなんて言い張って。まったく……�� 「仕方のないひと……」 勇利はいとおしそうにささやき、ヴィクトルの頬にくちづけした。ゆっくりやすんでもらおう。それ以外のことは明日だ。勇利はヴィクトルの下から抜け出そうと、そろそろと身動きした。 「……うん?」 「あ」 ヴィクトルがぱちっと目をさました。あ、起こしちゃった、と勇利は焦った。 「勇利、どこ行く?」 ヴィクトルが両目をすがめて勇利をにらんだ。勇利は苦笑いを浮かべた。 「ヴィクトルが寝ちゃったから邪魔しないようにしようかなって……」 「寝てなんかないぞ」 「いや、寝てたよ、いま」 「寝てない」 ヴィクトルはかたくなに言い張った。勇利はあきれた。 「寝てたよね」 「寝てない。勇利の勘違いだ」 「動きが止まったし、眠ってるみたいだったよ」 「ちょっと目を閉じてただけさ」 「そんな感じじゃなかったけど」 「そんな感じに見えなくてもそうなんだ。俺がそうだと言ってるんだからそうなんだ。勇利、セックスするぞ」 「無理しないほうがいいよ」 「無理じゃない! やりたいんだ!」 ヴィクトルがまたせわしなく勇利の首元にキスし始めた。しょうがないな、と勇利は黙ることにした。眠ったのは一瞬のことだったし……、目をさましたなら、本当にどうしてもしたいのだろう。 「勇利……」 「ん……」 くちづけを交わし、勇利はまぶたを閉ざした。ヴィクトルの匂い、と思った。ヴィクトルのぬくもりを感じる。勇利はこのとき、ぼくは一週間ずっとさびしかったんだ、とせつなくなった。会いたかったし、キスして欲しかった。さわって欲しかった。ヴィクトルのことだけを考えていた。 「勇利……勇利……」 「ヴィクトル……」 勇利はヴィクトルの吐息を肌に受け、じっと目をつぶったまま、彼にすべてをまかせていた。ヴィクトルの指がふれた場所が燃えるように熱く���さわられるたび胸が引き絞られ、幸福なような、なんともこころがうずくような、たまらない気持ちを味わった。ヴィクトル、と思った。やっと会えた……。 「ヴィクトル……」 ──ヴィクトルが動かなくなった。 勇利はぱちっとまぶたをひらいて瞬き、それから、もしや、やっぱり、と視線をそっと動かした。ヴィクトルは勇利の胸におもてを伏せている。両手で静かに顔を上げさせてみると、彼は目を閉じて眠っていた。勇利は笑いをかみころした。 「……あっ」 ヴィクトルはまたすぐに目ざめた。勇利は可笑しくてたまらなかった。 「ヴィクトル、本当にもう寝たほうがいいよ」 「いやだ! それはいやだ」 「明日の朝。明日の朝にしよう。ね?」 勇利はヴィクトルをなだめた。しかしヴィクトルは聞き入れなかった。 「だめだ。今夜する。俺はいますぐ勇利を抱くんだ」 「寝そうになってるじゃない」 「寝ない。目を閉じてただけだと言ってるだろう」 「寝息が聞こえたよ」 「寝息じゃない。普通の呼吸音だ」 「寝息だったけどなあ……」 「ちがう!」 ヴィクトルは怒ったように言いきった。 「やるぞ! 勇利!」 はいはい、と勇利は思った。彼は力を抜いてされるがままになったけれど、ヴィクトルは結局、同じことをあと二回くり返して、三度目にはとうとう目ざめなかった。勇利はかえってほっとした。笑いをこらえるのが大変だった。変なひと。なんておかしなひとなんだろう……。 勇利はヴィクトルの下から抜け出ると、ぐちゃぐちゃになっていた掛布をひっぱり上げ、彼の身体にかけた。すこし迷ったけれど、自分もここで一緒に眠ることにして、ヴィクトルに脱がされたりみだされたりした衣服と下着を丁寧に直した。ヴィクトルは平和そうに眠っていた。勇利はしばらく彼の端正な寝顔をみつめ、帰ってきたんだ、と思った。ヴィクトルが帰ってきた。ぼくのもとへ。 「……えへっ」 勇利はちいさく笑うと、ヴィクトルの頬にくちづけした。 「おやすみ、ヴィクトル」 そして彼の肩のあたりに額を押しつけ、口の端を吸いこむようにほほえんで眠りに落ちた。 翌朝目をさますと、全身があたたかいものに包まれ、鼻先にはよい匂いが差し、目ざめた瞬間から勇利は幸福だった。 「ん……」 視線を上げると、ヴィクトルが勇利をしっかりと抱きしめて、ゆっくりと呼吸していた。勇利は大きな瞳でしばらくヴィクトルをみつめた。ヴィクトル、帰ってきたんだな……かっこいい。そんなことを考えた。ヴィクトルが何かつぶやき、勇利をぎゅっと抱き直した。そのとき、彼は急にへらっと笑って、端正な顔立ちがゆるんだ。勇利はほほえんだ。そんな愛嬌のある表情も大好きだった。 「おはよう……」 「ゆうりぃ……」 返事をされたのかと思った。しかしヴィクトルはにこにこ笑いながら寝息をたてている。寝言だったらしい。勇利はしばらく彼の面立ちに見蕩れ、それから身体を起こして、そっと腕を外させた。台所へ行って冷蔵庫を開けた。低脂肪のミルクを飲み、空腹だったので、パンにソーセージを挟んで寝室に戻った。ベッドに腰掛けて、ヴィクトルの顔をみつめながらパンをかじる。すこし行儀が悪いけれど構わないだろう。ヴィクトルから離れたくないのだ。 しばらくすると、ヴィクトルが何かを捜すようにベッドを手でまさぐった。何をしているのだろうと勇利は眺めていた。ヴィクトルは何度も何度も敷布の上を確かめ、ない、ない、というようにあちこちを叩いたあと、ぱちっとまぶたをひらいて起き上がった。 「勇利!」 「はい」 勇利はパンにかじりつきながら返事をした。ヴィクトルが瞬いて勇利を見た。 「……勇利」 「はい」 「…………」 「あれ? ぼくを捜してたの?」 勇利が笑うと、ヴィクトルは眉を吊り上げた。 「勇利は薄情だ! 俺のそばから勝手に離れるなんて……」 「おなかすいたんだよ。あ、ヴィクトルはどう? ゆうべの夕食があるけど……朝からは食べられない……こともないね。ヴィクトルなら」 「何を食べてる?」 「ソーセージパンです」 ヴィクトルが大きく口を開け、反対側からかぶりついてきた。勇利は「ぼくの!」と声を上げた。 「いいだろうべつに。すこしくらいわけてくれ、こぶたちゃん」 「もう……」 ふたりはしばらく、ひとつのパンをふたりでかじりながらもぐもぐと咀嚼していた。ヴィクトル、飲み物なくても平気なのかな、と勇利は気になった。ヴィクトルはぼんやりしていたけれど、そのうち、だんだんと──ひどく真剣な顔つきになっていった。勇利はどうしたのだろうときょとんとした。 「……あー!」 突然彼が叫んだので、勇利はびくっとしてしまった。 「えっ、なに!?」 「あー! 信じられない! 信じられない!」 「ちょっともう、なんなの?」 「勇利と!」 ヴィクトルは頭を抱えた。 「勇利とセックスしていない!」 「…………」 勇利はぱちりと瞬き、上品にパンをかじった。 「ああ、なんてことだ……なんてことだ……」 ヴィクトルはひどくなげいたあと、勇利をにらんで声を大きくした。 「なぜ起こしてくれなかったんだ!?」 「いや、寝てたから……」 「だから! 寝たら起こせばいいだろう!?」 「疲れてるみたいだったし……」 「疲れてる以上に勇利とセックスしたかったんだ!」 ヴィクトルは相当頭に来ているようだった。彼は何やら、ゆうべ寝てしまった自分にぶつぶつと呪詛めいた言葉を吐いた。ロシア語だったので勇利にはわからなかった。 「ちょっと落ち着いてよ」 「勇利はぜんぜんわかってない! 勇利とのセックスがどれほど重要か……大切か……俺の睡眠なんかより……」 「まずは睡眠でしょ」 「勇利はわかってない!」 ヴィクトルは同じ言葉をくり返した。勇利は笑いだした。 「眠いの我慢してやってもしょうがない。朝でいいじゃん」 「朝なんて待てない!」 「いま朝だけどね」 「俺は夜したかったんだ! すぐにしたかったんだ!」 「そうは言っても……」 もう朝になってるし、と思っていると、残っていたパンを取り上げられた。ヴィクトルはそれを大きな口でぱくっと食べてしまった。 「あー! ぼくのパン!」 「──パンより俺とのセックスだろ」 ヴィクトルはふいに真剣な表情になり、低い声音でささやいた。勇利は赤くなった。そういう顔で、そういう声を使うのはずるくない? 「俺だって、睡眠より勇利とのセックスだ」 「また寝ちゃうかも」 勇利は照れくささを隠すため、もじもじしながらそんな憎まれ口を叩いた。 「証明する」 ヴィクトルが勇利を抱きしめ、ぱたっとベッドに倒れた。勇利はそこからは言葉もなく──。 「おなかすいた……」 セックスをして、みちたりて寝て、目がさめたらまたセックスをして、疲れて気持ちよく眠って、ということをくり返していたら、すっかり夜になっていた。ずいぶん怠惰な一日を過ごしてしまった……。勇利は恥じらいながら吐息をついた。 「何かつくろうか」 ヴィクトルはまくらべのあかりをともし、にこにこした。彼の笑みは輝いている。一週間、ずっと働いていたはずなのに、ずいぶん肌つやもよいようだ。 「冷蔵庫に、ぼくのつくったゆうべのごはんが……」 「ごちそうかい?」 「ふつう」 「ここに運んでこようか?」 ヴィクトルは元気いっぱいである。勇利はあきれてしまった。 「ヴィクトルはおなかすいてないの……? なんでそんなにいきいきしてるの……?」 「そんなのきまってるだろ?」 ヴィクトルは得意そうに胸を張った。 「勇利を抱いたからだよ……」 「ぼくって栄養剤かなにか?」 「そうだ。知らなかったのかい?」 そうなんだ……。勇利は赤くなって、折り曲げた指を口元に当て、ぼんやりした。ぼくで元気になってくれるのはうれしいかも……。 「さてと」 ヴィクトルは食事の支度をすべく、下着を身に着け、手近なパンツに足を通してひっぱり上げながら、ふと振り返ってにっこり笑った。 「勇利、食べたらセックスしようね」 「まだするの!?」
2 notes
·
View notes
Text
呑まれる
ギタリストの指先は、本当に硬いんだろうか。 スタジオの鍵をまわしつづける夏紀の指が目線の先にみえかくれすると、ふとそんな話を思い出す。ペンだこが出来たことを話す友人のことも。肩の先にぶらさがったなんでもない手を目にやっても、そこに年季のようなものはうかんでこない。どうやら、私はそういうものに縁がないらしい。 夏紀の予約した三人用のスタジオは、その店の中でも一番に奥まった場所にあった。慣れた様子で鍵を受け取った夏紀のあとを、ただ私は追いかけて歩いている。カルガモの親子のような可愛げはそこにはない。ぼんやりと眺めて可愛がっていたあの子どもも、こんな風にどこか心細くて、だからこそ必死に親の跡を追いかけていたんだろうか。なんとなく気恥ずかしくて、うつむきそうになる。 それでも、しらない場所でなんでもない顔をできるほど年をとったわけじゃなかった。駅前で待ち合わせたときには開いていた口も、この狭いドアの並ぶ廊下じゃ上手く動いてくれない。聞きたいことは浮かんでくるけれど、どれも言葉にする前に喉元できえていって、この口からあらわれるのはみっともない欠伸のなり損ないだけだ。 「大丈夫?」 黙り込んだ私に夏紀が振り向くと、すでに目的地にたどり着いていた。鍵をあける前の一瞬に、心配そうな目が映る。なんでもないよ、と笑ったつもりで口角を上げた。夏紀が安心したようにドアに向き直ったのを見て、笑えてるんだとわかった。少し安心した。 ―――――― 「ギターを、教えてほしいんだけど」 「ギターを?」 「うん」 あのとき私がねだった誕生日プレゼントは、夏紀のギター教室だった。 その言葉を口にしたとき、急にまわりの席のざわめきが耳を埋めた。間違えたかな、と思う。あわてて取り繕う。 「無理にとは言わないし、お金とかも払うから」 「いや、そういうのはいいんだけど」 私の急なお願いに、夏紀は取り残されないようにとカップを掴んだ。言葉足らずだったと反省する私が続きを投げるまえに、夏紀は言葉を返してくる。前提なんだけど、と、そういう彼女に、私はついにかくべき恥をかくことになると身構えた。 「希美、ギター、持ってたっけ?」 「この前、買っちゃって」 「買っちゃって?」 夏紀の眉間の皺は深くなるばかりだった。一緒に生活していると、こんなところも似てくるのかと思う。今はここにいない友人の眉間を曖昧に思い出しながら、たりない言葉にたしあわせる言葉を選びだす。 「まあ、衝動買いみたいな感じで」 「ギターを?」 「ギターを」 私が情けなく懺悔を――もっと情けないのはこれが嘘だということなのだけれど――すると、夏紀はひとまず納得したのか、命綱のようににぎりしめていたカップから手をはなした。宙で散らばったままの手は、行き場をなくしたようにふらふらと動く。 「なんか、希美はそういうことしないと思ってたわ」 「そういうことって?」 「衝動買いみたいなこと」 夏紀はそういうと、やっと落ち着いたかのように背もたれに体を預けなおした。安心した彼女の向こう側で、私は思ってもいない友人からの評価に固まる。 「え、私ってそういう風にみえる?」 「実際そんなにしたことないでしょ」 「まあ、そうだけど」 実際、あまり経験の��いものだった。アルコールのもたらした失敗を衝動買いに含めていいのかはわからないけれど、今まで自分の意図しないものが自分の手によって自分の部屋に運び込まれることは確かになかった。 そういう意味でも、私はあのギターを持て余していたのかもしれない。ふとしたことで気がついた真実に私は驚きながら、曖昧に部屋の記憶を辿っていく。社会に出てから与えられることの多くなった「堅実」という評価を今まで心の中で笑い飛ばしていたけれど、こういうところなのか。ちっとも嬉しくない根拠に驚く。 一度考え始めると、それは解け始めたクロスワードパズルのように過去の記憶とあてはまっていく。私が埋めることの出来ない十字に苦戦している間に、夏紀はとっくに問題から離れて、いつものあの優しい表情に戻っていた。 「教えるぐらいなら、全然構わないよ」 拠り所のようなその笑顔に、私は慌てて縋る。答えのない問に想いを馳せるには、この二人掛けはあまりにも狭すぎた。 「ありがと。買ったはいいけど、どう練習すればいいのかとかわからなくて」 「まあそういうもんだよねぇ」 こういうところで、ふと柔らかくなった言葉の選び方を実感するのだ。それはきっと過ぎた年月と、それだけではない何かが掛け合わさって生まれたもので。そういった取り留めのない言葉を与えられるだけで、私の思考は迷路から現実へ、過去から今へと戻ってくる。 スマートフォンを取り出して予定を確認していたらしい夏紀から、幾つかの日付を上げられる。 「その日、みぞれと優子遊びに行くらしいんだよね」 「そうなの?」 「そう、で、夜ご飯一緒にどうかって言われてるから、土曜の午後練習して、そっから夜ご飯っていうのはどう?」 日本に戻ってくるとは聞いていたけど、その予定は初耳だった。年末年始はいつもそうだということを思い出す。いつの間にか、そうやってクリスマスやバレンタインのようになんでもない行事のようになるかと思うと、ふと恐ろしくなった。 「大丈夫」 「オッケー。じゃあ決まりね」 ―――――― 「そういや、ギター何買ったの?」 「ギブソンレスポールのスペシャル」 「えっ」 いつ来るかと待ち構えていた質問に、用意した答えを返した。準備していたことがわかるぐらい滑らかに飛び出したその言葉に、なんだか一人でおかしくなってしまう。 私の答えに、夏紀は機材をいじる手を止めて固まった。ケーブルを持ったままの彼女の姿におかしくなりながら、黒いケースを剥がして夏紀の方に向けると、黄色のガワはいつものように無遠慮に光る。 「イエロー、ほらこれ」 「えっ……、いい値段したでしょ。これ。二十万超えたはず」 「もうちょっとしたかな」 「大丈夫なの?衝動買いだったんでしょう?」 「衝動買いっていうか、うん、まあそうね」 私の部屋にギターがやってきた真相を、夏紀の前ではまだ口にしていない。どうしようもなさを露呈する気になれなかったのもあるけれど、酷くギターに対して失礼なことをしている自覚を抱えたまま放り出せるほど鈍感ではいられなかったから。結局嘘をついているから、どうすることもできないのだけど。一度かばった傷跡はいつまでも痛み続ける。 「あんまこういう話するの良くないけど、結構ダメージじゃない?」 「ダメージっていうのは?」 「お財布っていうか、口座に」 「冬のボーナスが飛びました」 「あー」 「時計買い換えるつもりだったんだけど、全部パー」 茶化した用に口に出した言葉は、ひどく薄っぺらいものに見えているだろう。欲しかったブランドの腕時計のシルバーを思い出していると、夏紀にアンプのケーブルを渡された。 「じゃあ、時計分ぐらいは楽しめないとね」 そういう夏紀が浮かべる笑みは、優しさだけで構成されていて。私は思わずため息をつく。 「夏紀が友達で本当に良かったわ」 「急にどうしたの」 心から発した言葉は、予想通りおかしく笑ってもらえた。 夏紀がなれた手付きで準備をするのを眺めながら、昨日覚えたコードを復習する。自分用に書いたメモを膝に広げても、少し場所が悪い。試行錯誤する私の前に、夏紀が譜面台を置いた。 「練習してきたの?」 「ちょっとね」 まさか、昨日有給を取って家で練習したとは言えない。消化日数の不足を理由にして、一週間前にいきなり取った休暇に文句をつける人間はいなかった。よい労働環境���助かる。 観念して取り出したギターは、なんとなく誇らしげな顔をしているように見えた。届いたばかりのときのあのいやらしい――そして自信に満ちた月の色が戻ってきたような気がしたのは、金曜の午前中の太陽に照らされていたからだけではないだろう。 ただのオブジェだと思っていたとしても、それが美しい音を弾き出すのは、いくら取り繕っても喜びが溢れる。結局夜遅くまで触り続けた代償は、さっきから実は���み殺しているあくびとなって現れている。 「どのぐらい?」 「別に全然大したことないよ。ちょっと、コード覚えたぐらいだし」 幾つか覚えたコードを指の形で抑えて見せると、夏紀は膝の上に載せたルーズリーフを覗き込んだ。適当に引っ張り出したその白は、思ったより自分の文字で埋まっていて、どこか恥ずかしくなる。ルーズリーフなんてなんで買ったのかすら思い出せないというのに、ペンを走らせだすと練習の仕方は思い出せて、懐かしいおもちゃに出会った子どものように熱心になってしまった。 「夏紀の前であんまりにも情けないとこ見せたくないしさ」 誤魔化すようにメモを裏返すと、そこには何も書かれていなかった。どこか安心して、もう一度元に戻している間に、夏紀は機材の方に向き合っている。 「そんなこと、気にしなくてよかったのに」 そういう夏紀はケーブルの調子を確認しているようで、何回か刺し直している。セットアップは終わったようで、自分のギターを抱えた。彼女の指が動くと、昨日私も覚えたコードがスタジオの中に響く。 「おおー」 「なにそれ」 その真剣な目に思わず手を叩いた私に、夏紀はどこか恥ずかしそうに笑った。 「いやぁ、様になるなぁって」 「お褒めいただき光栄でございます。私がギター弾いてるところみたことあるでしょ」 「それとは違うじゃん。好きなアーティストのドキュメンタリーとかでさ、スタジオで弾いてるのもカッコいいじゃん」 「なにそれ、ファンなの?」 「そりゃもちろん。ファン2号でございます」 「そこは1号じゃないんだ」 薄く笑う彼女の笑みは、高校生のときから変わっていない。懐かしいそれに私も笑みを合わせながら、数の理由は飲み込んだ。 「おふざけはこの辺にするよ」 「はぁい」 夏紀の言葉に、やる気のない高校生のような返事をして、二人でまた笑う。いつの間にか、緊張は指先から溶けていた。 ―――――― 「いろいろあると思うけど、やっぱ楽器はいいよ」 グラスの氷を鳴らしながらそう言う夏紀は、曖昧に閉じられかけた瞼のせいでどこか不安定に見える。高校生の頃は、そういえばこんな夜遅くまで話したりはしなかった。歳を取る前、あれほど特別なように見えた時間は、箱を開けてみればあくまであっけないことに気がつく。 私の練習として始まったはずの今日のセッションは、気がつけば夏紀の演奏会になっていた。半分ぐらいはねだり続けた私が悪い。大学生のころよりもずっと演奏も声も良くなっていた彼女の歌は心地よくて、つい夢中になってしまった。私の好きなバンドの曲をなんでもないように弾く夏紀に、一生敵わないななんて思いながら。 スタジオから追い出されるように飛びてて、逃げ込んだように入った待ち合わせの居酒屋には、まだ二人は訪れてなかった。向かい合って座って適当に注文を繰り返している間に、気がついたら夏紀の頬は少年のように紅く染まっていた。 幾ら昔に比べて周りをただ眺めているだけのことが多くなった私でも、これはただ眺めているわけにはいかなかった。取り替えようにもウィスキーのロックを頼む彼女の目は流石に騙せない。酔いが深まっていく彼女の様子にこの寒い季節に冷や汗をかきそうになっている私の様子には気づかずに、夏紀はぽつりぽつりと語りだした。 「こんなに曲がりなりにも真剣にやるなんて、思ってなかったけどさ」 そうやって浮かべる笑いには、普段の軽やかな表情には見当たらない卑屈があった。彼女には、一体どんな罪が乗っているんだろう。 「ユーフォも、卒業してしばらく吹かなかったけど。バンド始めてからたまに触ったりしてるし、レコーディングに使ったりもするし」 ギターケースを置いたそばで管楽器の話をされると、心の底を撫でられたような居心地の悪さがあった。思い出しかけた感情を見なかったふりをしてしまい込む。 「そうなんだ」 窮屈になった感情を無視して、曖昧な相槌を打つ。そんなに酔いやすくもないはずの夏紀の顔が、居酒屋の暗い照明でも赤くなっているのがわかる。ペースが明らかに早かった。そう思っても、今更アルコールを抜いたりはできない。 「まあ一、二曲だけどね」 笑いながら言うと、彼女はようやくウィスキーの氷を転がすのをやめて、口に含んだ。ほんの少しの間だけ傾けると、酔ってるな、とつぶやくのが見えた。グラスを置く動きも、どこか不安定だ。 「まあ教本一杯あるし、今いろんな動画あがってるし、趣味で始めるにはいい楽器だと思うよ、ギターは」 「確かに、動画本当にいっぱいあった」 なんとなくで開いた検索結果に、思わず面食らったのを思い出す。選択肢が多いことは幸せとは限らない、なんてありふれた言葉の意味を、似たようなサムネイルの並びを前にして思い知った気がしたことを思い出す。 「どれ見ればいいかわかんなくなるよね」 「ホントね。夏紀のオススメとかある?」 「あるよ。あとで送るわ」 「ありがと」 これは多分覚えていないだろうなぁと思いながら、苦笑は表に出さないように隠した。机の上に置いたグラスを握ったままの手で、バランスをとっているようにも見える。 「まあでも、本当にギターはいいよ」 グラグラと意識が持っていかれそうになっているのを必死で耐えている夏紀は、彼女にしてはひどく言葉の端が丸い。ここまで無防備な夏紀は珍しくて、「寝ていいよ」の言葉はもったいなくてかけられない。 姿勢を保つための気力はついに切れたようで、グラスを握った手の力が緩まると同時に、彼女の背中が個室の壁にぶつかった。背筋に力を入れることを諦めた彼女は、表情筋すら維持する力がないかのように、疲れの見える無表情で宙に目をやった。 「ごめん、酔ったっぽい」 聡い彼女がやっと認めたことに安堵しつつ、目の前に小さなコップの水を差し出す。あっという間に飲み干されたそれだけでは焼け石に水だった。この場合は酔っぱらいに水か。 くだらないことを浮かべている私を置いて、夏紀は夢の世界に今にも飛び込んでいきそうだった。寝かせておこうか。そう思った私に、夏紀はまだ心残りがあるかのように、口を開く。 「でも、本当にギターはいいよ」 「酔ってるね……」 「本当に。ギターは好きなように鳴ってくれるし、噛み付いてこないし」 「あら、好きなように鳴らないし噛み付くしで悪かったわね」 聞き慣れたその声に、夏紀の目が今日一番大きく見開かれていくのがわかった。恐る恐る横を向く彼女の動きは、スローモーション映像のようだ。 珍しい無表情の優子と、その顔と夏紀の青ざめた顔に目線を心配そうに行ったり来たりさせているみぞれは、テーブルの横に立ち並んでいた。いつからいたのだろうか、全く気が付かなかったことに申し訳なくなりながら、しかしそんなことに謝っている場合ではない。 ついさっきまで無意識の世界に誘われていたとは思えない彼女の様子にいたたまれなくなりながら、直視することも出来なくて、スマートフォンを確認する。通知が届いていたのは今から五分前で、少し奥まったこの座席をよく見つけられたなとか、返事をしてあげればよかったかなとか、どうにもならないことを思いながら、とにかく目の前の修羅場を目に入れたくなくて泳がしていると、まだ不安そうなみぞれと目が合った。 「みぞれ、久しぶりだね」 前にいる優子のただならぬ雰囲気を心配そうに眺めていたみぞれは、それでも私の声に柔らかく笑ってくれた。 「希美」 彼女の笑みは、「花が咲いたようだ」という表現がよく似合う。それも向日葵みたいな花じゃなくて、もっと小さな柔らかい花だ。現実逃避に花の色を選びながら、席を空ける準備をする。 「こっち座りなよ」 置いておいた荷物をどけて、自分の左隣を叩くと、みぞれは何事もなかったかのように夏紀を詰めさせている優子をチラリと見やってから、私の隣に腰掛けた。 「いや、別に他意があるわけじゃ、なくてですね」 「言い訳なら家で聞かせてもらうから」 眼の前でやられている不穏な会話につい苦笑いを零しながら、みぞれにメニューを渡した。髪を耳にかける素振りが、大人らしく感じられるようになったな、と思う。なんとなく悔しくて、みぞれとの距離を詰めた。彼女の肩が震えたのを見て、なんとなく優越感に浸る。 「みぞれ、何頼むの?」 「梅酒、にする」 ノンアルコールドリンクのすぐ上にあるそれを指差したのを確認する。向こう側では完全に夏紀が黙り込んでいて、勝敗が決まったようだった。同じようにドリンクのコーナーを覗いている優子に声をかける。 「優子は?どれにする?」 「そうねえ、じゃあ私も梅酒にしようかしら」 「じゃあ店員さん呼んじゃおうか」 そのまま呼び出した店員に、適当に酒とつまみと水を頼む。去っていく後ろ姿を見ながら、一人青ざめた女性が無視されている卓の様子は滑稽に見えるだろうなと思う。 「今日はどこ行ってたの」 「これ」 私の質問に荷物整理をしていた優子が見せてきたのは、美術館の特別展のパンフレットだった。そろそろ期間終了になるその展示は、海外の宗教画特集だったらしい。私は詳しくないから、わからないけど。 「へー」 私の曖昧な口ぶりに、みぞれが口を開く。 「凄い人だった」 「ね。待つことになるとは思わなかったわ」 「お疲れ様」 適当に一言二言交わしていると、ドリンクの追加が運ばれてくる。小さめのグラスに入った水を、さっきから目を瞑って黙っている夏紀の前に置く。 「夏紀、ほらこれ飲みなさい���」 優子の言葉に目を開ける様子は、まさに「恐る恐る」という表現が合う。手に取ろうとしない夏紀の様子に痺れを切らしそうになる優子に、夏紀が何か呟いた。居酒屋の喧騒で、聞き取れはしない。 「なによ」 「ごめん」 ひどくプライベートな場面を見せられている気がして、人様の部屋に上がり込んで同居人との言い争いを見ているような、そんな申し訳のなさが募る。というかそれそのものなんだけれど。 「ごめんって……ああ、別に怒ってないわよ」 母親みたいな声を出すんだなと思う。母親よりもう少し柔らかいかもしれないけれど。 こういう声の掛け方をする関係を私は知らなくて、それはつまり変わっていることを示していた。少しだけ、寂しくなる。 「ほんと?」 「ほんと。早く水飲んで寝てなさいよ。出るときになったら起こしてあげるから」 「うん……」 それだけ言うと、夏紀は水を飲み干して、テーブルに突っ伏した。すぐに深い呼吸音が聞こえてきて、限界だったのだろう。 「こいつ、ここ二ヶ月ぐらい会社が忙しくて、それでもバンドもやってたから睡眠時間削ってたのよ」 それはわかっていた。なんとなく気がついていたのに、見て見ぬ振りをしてしまった。浮かれきった自分の姿に後味の悪さを感じて、相槌を打つことも忘れる。 「それでやっとここ最近開放されて、休めばいいのに、今度はバンドの方力入れ始めて。アルコールで糸が切れたんでしょうね」 グラスを両手で持ちながら、呆れたように横目で黙ったままの髪を見る彼女の声は、どこかそれでも優しかった。伝わったのだろうか、みぞれも来たときの怯えは見えなかった。 「希美が止めてても無駄だったから、謝ったりする必要ないわよ」 適切に刺された釘に、言葉にしようとしていたものは消えた。代わりに曖昧な笑みになってしまう。 「そういえば、夏紀のギター聞いたのよね?」 「うん、まあね」 「上手かった?」 「素人だからよくわからないけど、うまいなと思ったよ」 「そう」 それならいいんだけど、と、明らかにそれではよくなさそうに呟いた彼女の言葉を、私はどう解釈していいのかわからなかった。曖昧に打ち切られた会話も、宙に放り投げられた彼女の目線も、私にはどうすることも出来なくて。 「そういえばみぞれは、いつまでこっちにいるの?」 考え込み始めた優子から目線をそらして、みぞれに問いかける。さっきからぼんやりと私達の会話を聞いていたみぞれは、私の視線に慌てる。ぐらついたカップを支えながら、少しは慣れればいいのに、なんて思う。 「え?」 「いつまでこっちにいるのかなって」 アルコールのせいか、少しだけ回りづらい舌をもう一度動かす。 「1月の、9日まではいる」 「結構長いね、どっかで遊び行こうよ」 何気ない私の提案に、みぞれは目を輝かせた。こういうところは、本当に変わっていない。アルコールで曖昧に溶けた脳が、そういうところを見つけて、安心しているのがわかった。卑怯だな、と思った。 ―――――― 「それじゃあ、気をつけて」 優子と、それから一応夏紀の背中に投げかけた言葉が、彼女たちに届いたのかはわからない。まさにダウナーといったような様子の夏紀はとても今を把握出来ていないし、優子はそんな夏紀の腕を引っ張るので精一杯だ。 まるで敗北したボクサーのように――いや、ボクシングなんて見ないけれど――引きずって歩く夏紀は、後ろから見ると普段の爽やかさのかけらもない。あのファンの子たちが見たら、びっくりするんだろうな。曖昧にそんなことを想いながら、駅の前でみぞれと二人、夏紀と優子の行く末を案じている。 その背中が見えなくなるのは意外と早くて、消えてしまったらもう帰るしかない。隣で心配そうに眺めていたみぞれと目があう。 「帰ろっか」 「うん」 高校時代とは違って、一人暮らしをし始めた私とみぞれは、最寄り駅が同じ路線だ。こうやって会う度に何度か一緒に同じ列車に乗るけれど、ひどく不自然な感じがする。改札を抜けた先で振り返ると、みぞれが同じように改札をくぐっているのが見えるのが、あの頃から全然想像出来なくて、馴染まない。 少しむず痒くなるような感触を抑え込んで、みぞれが横に立つのを待つ。並んで歩くふりくらいなら簡単にできるようになったのだと気付かされると、もうエスカレーターに乗せられていた。 「なんか、アルコールってもっと陽気になるもんだと思ってたよね」 寒空のホームに立つ私のつぶやきを、みぞれは赤い頬で見上げた。みぞれは人並みに飲む。人並みに酔って、人並みに赤くなる。全部が全部基準値から外れてるわけじゃない。そんなことわかっているのに、なんとなく違和感があって。熱くなった体がこちらを向いているのを感じながら、もうすぐくる列車を待つ人のように前を向き続けた。 「忘れたいこととか、全部忘れられるんだと思ってた」 口が軽くなっていることがわかる。それでも後悔できなくて、黙っている方がよいんだとわかった。塞いだ私のかわりに口を開きかけたみぞれの邪魔をするように、急行電車はホームへと滑り込む。 開いた扉からは待ち遠しかったはずの暖かい空気が、不快に顔に飛び込んできた。背負い直したギターケースに気を遣いながら、一際明るい車内に乗り込んでいく。空いてる端の座席を一つだけ見つけて、みぞれをとりあえず座らせた。開いた目線の高さに何故か安心している間に、電車はホームを離れていた。 肩に背負ったギターを下ろして、座席横に立て掛けた。毎朝職場へと私を運ぶこの列車は、ラッシュとは違って人で埋め尽くされてはいない。だから、みぞれの後ろ姿が映る窓には当然私も入り込んでいて、いつもは見えない自分の姿に妙な気分になる。酔いはまだ抜けていないようだ。 「みぞれはさぁ」 口を開くと言葉が勝手に飛び出していた。降り掛かった言葉にみぞれが顔を上げる。 「オーボエ以外の楽器、やったことある?」 私の問いかけに、彼女は首を振った。 「そうだよね」 それはそうだ。プロの奏者が他の楽器に手を出してる暇なんてないんだろう。いろんな楽器を扱える人もいるわけだけど。その辺の話がどうなっているのかは、私にはわからない。プロではないし。 どうやっても違う世界の人と話すのは、取材をしているような感触が抜けきらない。私達の他の共通点ってなんだろう。毎度手探りになって、別れたあとに思い出す。 「ギター、楽しい?」 何故か話題を探そうとしている私を、引き戻すのはいつも彼女の問いかけだ。 どう答えるべきか、わからなかった。何を選ぶのが一番正しいのか、見つけるのにはそれなりに慣れているはずなのに、そういう思考回路は全く動かなくて、だからありのままの言葉が飛び出す。 「楽しい、よ」 それは本心からの言葉だった。本当に楽しかった。それを認めてしまうということが、何故か恥ずかしくなるほど。 つまりこのまま何事もなく過ぎていくはずの人生に現れたギターに、ひどく魅了されてしまったということだ。認めたくなかった退屈な自分をさらけ出しているようで。年齢のせいか生活のせいか、頭にふと過る自問自答が、ギターの前ではすっかり消え失せていることに気が付かないわけにはいかなかった。 (まあでも、このまま死ぬまでこのままなのかなとか、みぞれは考えなさそうだな) そう思うと、ずるいなと思った。 「楽しかった。新鮮だし」 私の答えに、みぞれは言葉を口に出さなかった。ただ笑顔ではない表情で、私のことを見つめている。どこか裏切られたかのように見えた。どこか寂しそうにも見えた。見ないふりをして、酔ったフリをして、言葉を続ける。 「ギターって奥深いね」 そんな大学生みたいな感想を並べて、目の前のみぞれから目を外す。どんな表情になっているのかは想像がついた。 「面白い音なるしさぁ」 確かめたくなくて言葉を繋げる。この悪癖がいつまでも治らない自分に辟易しながら、結局逃げるために言葉を選び続けている。そうやって中途半端に取り出した言葉たちの中に、本当に言いたいことは見えなくなってしまうって、わかっているはずなのに。 「夏紀の演奏が本当に上手くてさぁ」 「フルートは」 「っ」 遮られた言葉に思わず黙ってしまったのは、それが痛い言葉だったからなのか、言葉の切実さを感じ取ったからなのか。目を合わせてしまう。耳を塞ぎたくても、無気力につり革にぶら下がった手は離す事ができない。 「フルートは、続けてるの?」 みぞれの声は、どこか張り詰めていて、ざわついた電車内でも通った。隣の座席の男性が、こちらを盗み見ているのがわかる。ひどく晒し者にされているような、そんな気分になった。 やめるわけないよ、まあそれなりにね、みぞれには関係ないでしょ。なんて言ってやろうか。 「やめたって言ったら、どうする?」 選んだ言葉に、すぐに後悔した。 なぜ人のことなのに、そこまで泣きそうな目ができるんだろうか。子供がお気に入りのぬいぐるみを取られたみたいな、そういう純粋さと、どこかに混じった大人みたいな諦めの色が混じり合って心に刺さる。 「冗談だよ」 言い繕っても、彼女から衝撃の色は消えない。そんなにショックだったのだろうか。私に裏切られたことなんて、いくらでもあるだろうに。 「前からやってたサークルがさ、解散になっちゃって」 「解散」 「そう。だから、ちょっと吹く機会がなくなってるだけ」 それだけ。それだけだった。だからみぞれが悲しむことはないし、気に病んだり必要もないんだよ。そう言おうとした。言えるわけがないと気がついたのは、みぞれの表情に張り付いた悲しみが、そんな簡単な言葉で取れるわけじゃないとわかったからだ。 「大丈夫だから」 結局言葉にできたのは、そんな頼りない、どこをf向いてるのかすらわからないような言葉だった。みぞれは私の言葉にゆっくりと頷いて、それだけだった。 逃げ出したくなる私をおいて、電車は駅へと滑り込む。みぞれが降りる駅だ。 「みぞれ、駅だよ」 「うん」 目を逸らすように声を上げると、みぞれは小さく頷いた。何を話せばいいのかわからないような、その目は私を傷つけていった。降りていく後ろ姿に声を掛け���事もできずに、私はただ彼女を見送った。 そういえば結局遊ぶ約束をし忘れ��な。動き出した電車の中で、空席に座る気にもならないまま思い出す。ギターは何も知らないような顔で、座席の横で横たわってる。さっきまであったことなんて何も知りませんよって、言ってるみたいだった。 このまま置いていってやろうか。そう思った。
1 note
·
View note
Photo
. (^o^)/おはよー(^▽^)ゴザイマース(^_-)-☆. . . 9月19日(月) #先勝(乙亥) 敬老の日 旧暦 8/24 月齢 22.8 旧暦 8/13 月齢 12.1 年始から262日目(閏年では263日目)にあたり、年末まであと103日です。 . . 朝は希望に起き⤴️昼は努力に生き💪 夜を感謝に眠ろう😪💤夜が来ない 朝はありませんし、朝が来ない夜 はない💦睡眠は明日を迎える為の ☀️未来へのスタートです🏃♂💦 でお馴染みのRascalでございます😅. . 天変地異が起こる前兆に小動物や 昆虫なんかも身に危険が無いよう 避難する様に何処かに居なくなる 様に、人間も大古には野生の動物 だったので何処かそんな五感では ない六感的な超能力ではないです が、そんなの能力が残ってる人も 少なくはナイのではないかなって😅 . って事で今回の台風14号は大した 事ありませんでしたよね✋マダマダ これからだよってマスメディアが報道す るのを信じ切ってる方も少なくな い様ですけど🤣😆🤣私は今回のは 大した事なさそうな空気ってか匂 いが感じましたので呑気に構えて た😅💦コロスケ報道の様にきな臭い⤵️ . 日サロを予約してたし雨だったけど 熊本市内に様子を見に行って来た けど、コンビニ以外の殆どの店が昔 の正月時季でもあるかの様に閉ま ってました(๑°⌓°๑)マジ...マジデス。 驚いたのは地元のデパートみたいな 所も閉店なのはビックリでしたよ😅💦 ヤバイのかなって半信半疑だがジムは . 止めといた✋この程度の雨なら車 さえあれば全然、問題ないけど💦 流石にアシスト付の自転車では全身が ずぶ濡れで着替えをいくつも持た な、あかんもんね🤣😆🤣ムリムリ😅💦 いや、しかし台風ってよりも雨が 降ったらジム休みってのも嫌だなぁ っての⤵️やる事ないから19時に寝💤 . 今日一日どなた様も💁お体ご自愛 なさって❤️お過ごし下さいませ🙋 モウ!頑張るしか✋はない! ガンバリマショウ\(^O^)/ ワーイ! ✨本日もご安全に参りましょう✌️ . . ■今日は何の日■. #プレスコード(Press Code for Japan). 連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)がプレスコードを日本国に指令を行う。 大東亜戦争(太平洋戦争)終結後の連合国軍占領下の日本において、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)に よって誤った情報を国民に植え付ける「洗脳」を開始しました。 新聞などの報道機関を統制するために発せられた規則で連合国に反抗精神が覚醒しないように押さえつけに 入りました。 これにより検閲(ケンエツ)が行われる様になりました。 検閲とは、国家等の公権力が、表現物(出版物等)や言論を精査し、国家が不適当と判断したものを取り締まる 行為である。 国家とは、連合国軍占領下の日本の事を指すのであって、日本国民は今でも、この狭義に操作され自由がない。 1945(昭和20)年9月19日(水)先負. . #先勝(サキガチ、センカチ、センショウ). 陰陽道(おんみょうどう)の六曜日の一つ。 この日は勝負ごと、訴訟や急用などに運がよいとされ、早い時刻ほど良くとされ、午後は凶になるなどの俗信がある。 寝坊は、もっての他とされますね😅💦 . #敬老の日.#海老の日.#グランド・ジェネレーションズ デー. #アイスマン発見.#苗字の日. #九十九島の日.#育休を考える日.#919いけんの日(#平和への思いを忘れない日). #クイックルの日.#遺品整理の日.#獺祭忌(正岡子規の命日). . #牡蠣むきの日(九月第三日曜日). . ●シュークリームの日(毎月19日). ●共育の日(毎月19日). ●松阪牛の日(毎月19日). ●熟カレーの日(毎月19日). ●熟成烏龍茶の日(毎月19日). ●トークの日(毎月19日). ●クレープの日(9の付く日). ●いいきゅうりの日(4月を除く毎月19日). ●愛知のいちじくの日(7月~10月の19日). . ●9月19日を含む期間を設定している運動など 歯ヂカラ探究月間(9月1日~9月30日). . . #チリ陸軍記念日.#セントクリストファー・ネイビス独立記念日.#世界海賊口調日. . . ■本日の語句■. #一を聞いて十を知る(イチヲキイテジュウヲシル). 【意味】 物事の一部を聞いただけで全部を理解できる。 賢明で察しのいい事の例え。 . . 1997(平成9)年9月19日 #唐田えりか (#からたえりか) 【女優、ファッションモデル】 〔千葉県君津市〕 . . (Saburou, Kumamoto-shi) https://www.instagram.com/p/CiqYu7kh-nHwExHpbJ1GtohqMtoZWgA4hSilN40/?igshid=NGJjMDIxMWI=
#先勝#プレスコード#敬老の日#海老の日#グランド・ジェネレーションズ#アイスマン発見#苗字の日#九十九島の日#育休を考える日#919いけんの日#平和への思いを忘れない日#クイックルの日#遺品整理の日#獺祭忌#牡蠣むきの日#チリ陸軍記念日#セントクリストファー・ネイビス独立記念日#世界海賊口調日#一を聞いて十を知る#唐田えりか#からたえりか
0 notes
Text
第22回露新軽口噺@動楽亭(2020年2月14日)
露の新治・新幸師弟の研鑽の場である「露新軽口噺」、今回で数えて22回目となりました。会場はいつもの動楽亭、受付で「早期予約特典」のバレンタイン・チョコレートをいただき、場内に入るといつにも増してみなさん出足が早い。果たして、動員数新記録が達成されるのでしょうか・・・?
「厩火事」新幸(15分)
「第六回上方落語若手噺家グランプリ2020」の予選、新幸さんは4月13日(月)の第2夜に登場されます。そうか、すでに2か月後となったのですね。そんな話題には一切触れずに(笑)、家族の話で場内をあたためてから夫婦のネタへ。このあたり、枕から本編への流れがとてもスムーズですね。髪結いの亭主らしく(!)仕事もせずに酒を呑む男の本心を知りたさに、「馬か猿か」を見極めるべく大事にしている茶碗を割る。夫婦の綾の普遍性を扱う噺、何度聴いてもほのぼのとする小品にして佳品。自家薬籠中の十八番を楽しませていただきました。
「打飼盗人」新治(25分)
毎回三席、それも違ったカテゴリーの噺を用意するというのは演者さんにとっては大変な難行・苦行だとおもいます。70歳・70席を目指す新治さん、今夜も果敢にチャレンジされました。まずは泥棒が登場、夜中に入ったのは素寒貧のヤモメの家、言葉巧みに大工道具・装束・飯米、挙げ句の果てに溜まっていた家賃まで支払う羽目に。可哀相な泥棒の運命や如何に・・・さぐりさぐり噺を進めておられましたが、サゲが・・・(笑)。
「撮影タイム」新幸・新治(16分)
まずは新幸さん登場、師匠の着替えの間をつなぎます。遅れて新治さん登場、2ショットを収めた後、「東京フェイマス」ぶりと「過去の栄光」をチラシを用いてのミニレクチャー。
「稽古屋」新治(32分)
写真撮影の後、そのまま2席目に。林家染丸師につけていただいたとの説明から「色事根問」に入られました。短い高座のときには「一見え〜十評判」で切ることも出来ますが、「四芸」から「山城名物宇治の螢踊り」を経て「稽古屋」へ。師匠が手拍子で踊りを教え、目線の先には可愛い子どもの姿、下座の鳴り物と唄が入って上方らしい華やかさ。俳名を「一二三」としたアホを先に片付けようと、口三味線で唄を教える。体よく追い返されたアホが大屋根にのぼって稽古をするが・・・。いかにも上方林家らしい音曲を大切にする噺、私にとっては初体験、いいものを魅せて・聴かせていただきました。
仲入り
「雪の戸田川」新治(27分)
マクラなしで、「冬の怪談噺」としてすぐに本編に入られました。上方では純粋な怪談噺はほとんどないと言ってもいいでしょうが、露の五郎兵衛師が彦六の正蔵師からいただいた貴重な財産、新治さんはそれをしっかりと継承しておられます。戸田の河原で繰り広げられる男と女の愛憎劇、渡し船に場面が移ってからの空間表現、所作と台詞の見事さが相まって、観客を雪の世界に引き込みます。頭を下げられた瞬間、こちらも肩の力がホッと抜けて現実世界へ戻されました。
滑稽噺・音曲噺・怪談噺、見事な番組構成を堪能し、余韻を楽しみつつ家路についたことでした。
1 note
·
View note