#ミーティング遅刻
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不適切な検索候補を手動で削除するこのアプローチは、Google がかつてとった別のアプローチを思い出させました。Google は検索結果を手動で調整するだけでは満足せず、悪い結果があった場合に結果を生成するアルゴリズムを調整したいと考えていました。 「2002 年頃、あるチームは Froogle と呼ばれる、製品に限定された検索のサブセットをテストしていました。 しかし、1 つの問題が非常に明白だったので、チームは Froogle をリリースすることに躊躇していました。「ランニング シューズ」というクエリを入力すると、トップの結果はたまたまスニーカーを履いていたガーデン ノームの彫刻でした。 エンジニアたちは毎日、芝生アートと履物を区別できるようにアルゴリズムを微調整しようとしていましたが、ノームはトップの座を守り続けました。 ある日、奇跡的に見えるかのように、ノームが結果から消えました。 ミーティングでは、チームの誰も自分の功績を主張しませんでした。 そこにエンジニアが遅れて到着し、ランニングシューズを履いたエルフを抱えていました。 彼はそのユニークな製品をベンダーから購入しましたが、もう販売されていないため、インデックスには載っていませんでした。 「アルゴリズムは正しい結果を返すようになりました」と Google のエンジニアは言います。 「私たちは不正行為もせず、何も変更せず、立ち上げました。」 https://news.ycombinator.com/item?id=14009245
Google、検索で奇妙な AI の回答を手動で削除しようと奮闘中 | ハッカーニュース
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2023.7.19
わたしのヒースクリフ、朝は七時に起きて自分が昼に食べる弁当を作る。今はあらかじめ(あらかじめ!わたしの嫌いな言葉です)氷水で冷やしておいたスープマグに、冷やしてしめたそば、あるいは冷やし中華麺、たんぱく質代わりのツナやささみの缶詰、それに味付きの刻んだ生姜をまぶして蓋をする。仕事のある日はいつでも、どちらか。冬になればトマトスープを作るだろう。
毎朝、自分の仕事を確認してミーティングで言う。わたしは仕事を人に言うのはあまり好きではない。自分が主担当の仕事、副担当の仕事、自分の仕事、みんなでする仕事。お話し会の内容もいまひとつわからないが担当組に名前があるので、いくつかちょっとしたものがないか探して回っている。今日は狐面(もちろん、プラスチックのものだ)を買ってみた。使えるようであれば備品にしてもらったらいい。そういう手出しは正直多い。でもやってしまう、やらないではいられない。それから手が開けば再来月のブックトークの台本に手を入れて自分の話しやすいように書き足す。すでに選ばれている本を繰り返し読み、台本を読み、遅くとも九月が始まるまでには時間を計りながら通し稽古をする。本当に一からテーマを決めてブックトークはまだ作ることができない。ブックトークの本はたくさん買ったが、目が滑って読むことができないまま積まれている。
本当に霧の中、闇の中を手探りで走っているようだ。毎日そんな気分になる、なってしまう。相談すれば解決するかもしれないし、マニュアルはもちろんある。けれど「自分で最良の解釈をし、誰にでも分け隔てることなく伝え、また考えて実行する」ことが多い。明文化されていないことは人を見て、人の言うことを聞いて、自分が再現できるように自己マニュアル化する。それがとても恐ろしいような気持ちを起こさせる。本当に何も知らずに飛び込んだのだ。恐れ知らずもいいところでしょう、ヒースクリフ?
でも今日は、自分の職務の仕事について何か本がないかと思って書架を見ていたら、面白そうな本を見つけたの。『子どもの本100問100答』(大阪国際児童文学振興財団/創元社)「何かおもしろい本ない?」と聞かれた時にどのように考え、どのように話を聞き、どのような本を見てもらうか。そういう小さな(そして巨大な)質問に対しての考え方が書いてある。これは手元に欲しい気がする(そうやってブックトークの本も増えた)。少し読んでから眠ることにするわね、わたしのヒースクリフ。
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2024年1月22日(月)
私の職場(私立女子大学)では、今日が今年度後期の最終授業日だ。私自身は、午後の3限(13:00〜14:30)・4限(14:40〜16:10)に<情報機器の操作Ⅱ(看護学科)>を担当、一部オプションの課題ができなかったクラスもあるが、最後に<授業アンケート>を実施してすべてが終了した。残るは評価作業のみ、ともかく今夜は呑むぞー!
4時30分起床。
日誌書く。
朝食。
洗濯。
弁当*3。
ツレアイ(訪問看護師)は午後からの出勤、1人で出発。
名神走行中に、走行距離が5,000kmを突破した。
左手人差し指はまだ腫れているが、ゆっくりとタイピングする分には不都合はない。午後のクラスの課題を改めてチェックする。
3限・4限は<情報機器の操作Ⅱ(看護学科)>、両クラスで欠席者が4名、試験の時期なので少し心配になる��
授業アンケートを実施し、4クラス分を教学センターに届ける。職員もいろいろ入れ替わりがあって、私は存じ上げない方が対応してくれた。<共生社会と人権>の最後の出席者が4名だったのでアンケートは実施していないが、4名以下では実施しないルールを知らなかった。あれ、ひょっとしてルールが変わった?
帰路も順調、燃費が30kmを越えるとやはり嬉しい。
私より少し遅れてツレアイ帰宅、まずはココに点滴、私は夕飯用意。
息子たちには豚汁+ハムエッグ+サラダを用意、3男が風邪気味とのことで普段より少食、ツレアイは豚汁だけ食べて19時からWebでミーティング。私は1人でチビチビ。
ツレアイの終了時刻を見計らって、コレモ七条店へ買い出し、見切り品の寿司と刺身を購入��る。
🍶+🍷で慰労する。
片付け、入浴、左手は使いにくいが今夜は頭を洗った。
体重は前夜と同じ、遅い飲食を考慮すれば良しとしよう。
授業も終わってスッキリ、明日からは在宅時には10,000歩をクリアしよう。。
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230615 EXTRA
ポエムを書いた日と書かない日で何が変わるかといえば実際には大した変化はない。
ただ「約束の宣言」をした時だけは異なる。宣言をしたからには自分に対し縛りが生まれる。そもそもこのブログを「日刊」と名付けている時点で2日以上休むのはおかしいという意識が自分の中にも生まれてる。
「定例ミーティング」ってものがあれば毎週そこでの報告に向けて提出物をでっち上げなければならない。
数名でもいいからその報告を受け止め改善点を指摘してくれる人間がいるなら「やんなきゃな」って気持ちになってくる。
うん。だからそういう人間関係を作ったのだ。
思考をムダに重ねれば重ねるほど論点というか今やるべきタスクから意識が離れてしまう。今遅れている提出物を出す、その一点のみに意識を集中してロジックを、段取りを組み立てるのだ。
その為に「他者の目」が必要なのだ。見られている、測られている、信じられているという実感が必要だ。
他者の目を意識しながら好ましい自分をデザインしようと思えるだけの「社会への興味と信頼」が必要なのだ。
社会を信じ、社会を面白いと思う意識を燃やせ。
「社会不信」の時点でコンスタントな発信も仕事もできるわけがない。
社会不信な人間は「無茶苦茶自分が可愛くて(可哀想で)他人が憎い」という自己愛と他責に満ちた稚拙メンタル宿してなきゃあすぐにエネルギーは尽きる。
そういう意味で利己的な悪人ってのはむっちゃ生きるモチベーションが高いと言えるだろう。
「生き残る為の要素」として「悪」は間違いなく有利だ。
「他人から与えられた命令を愚直にこなす」のも一つの才能というか社会性だ。オーダーに対し逐一自分のポリシーと照らし合わせてやりたい / やりたくないのジャッジをしていたらいずれはバカでかい責任と負債を背負い込む事になる。
社会は「些末な仕事」を請け負い続ける事で「責任重大で失敗が許されない仕事」から逃れる事ができるのだ。
些末な仕事から逃げ続ければ最終的には「責任重大で失敗が許されない仕事」しか残らない。それは失敗が即・死に直結するような危険な仕事だ。スリルはあるだろうが関与すれば寿命縮むし周囲の人間もロクな人間がいなくなる。
・
さて、問題は今日どうするかだ。現時刻11:20。午後までにシャワー浴びネカフェに行って13:20までに作画作業に入りたい。
水をペットボトルに入れて持っていこう。ブースから出て水を飲む時間すら惜しい。
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あなたはどちら?
お金持ちのお金の使い方(普段) 価値が増えていくものにお金を使う。(情報や旅などの経験) 貧乏な人は、価値がすぐ下がるものにお金を使う(旅先のキーホルダーなど) お金の使い方に個性が出る。 (2007年当時のメモより) facebook オキタ リュウイチさんより あなたはどちらですか? 昨日から開催されているzoomセミナーは お金の有効な使い方や 増やし方を知ることができます 2日目の今日も10時と21時 お金持ちになる近道のお話を聞いてくださいね! こちらから参加されてくださいね♪ 匿名、顔出し無しで覗いてみて下さい遅刻の無いようにお願いします https://us02web.zoom.us/j/82891225251?pwd=SnJiWHEvQXZIZnY4aUw2YWFxcG5EZz09 ミーティングID: 828 9122…
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GRAミーティング開催報告 (その1)/ GRA Meeting Report < part 1 >
GRAは、世界最小の NPO法人ながら、“世界中の人々へ無償の支援” を行ない、Webサイトで独自の記事や動画などのコンテンツを発信しています。しかし、GRAの「思想」や「哲学」は伝わっていないと私は常に感じていました。 そこで、2月18日(日)開催のミーティングに向けて、効果的なアプローチの仕方について、私は集中して考え続けました。 (まるで、サイボーグ009が加速スイッチを入れた様に、時間の流れが遅くなり、色々な事を考える時間が増えました) そして、ミーティングで予想以上に良い決議を残せたので、本来ならば、直ぐに第一回目の報告を行ないたかったのですが、夕方には “電池切れ” の状態になり、早く横になり、翌日の月曜日も終日休んで “充電” に努めたので、第一報が遅くなりました。後日、2~3回に分けて報告します。
Although GRA is the world's smallest NPO, it provides "free support to people around the world" and publishes original articles, videos, and other content on its website. However, I always felt that GRA's thoughts'' andphilosophy'' were not being communicated. Therefore, I continued to concentrate on thinking about an effective approach for the meeting to be held on February 18th. Since we were able to come up with a better resolution than expected, we had originally planned to make the first report right away. However, by the evening, the battery seemed to be dead, so I went to bed early and took the whole day off the following Monday to try to "recharge", so the first report was delayed. I will report on this in two or three parts at a later date.
参加人数は 合計 8名(委任状による参加含む)、参加予定者全員の到着を待ち 10時過ぎに始まり、終了予定時刻を1時間以上過ぎて、13時10分に終了しました。 検討項目は、3項目の「活動基本方針案」、「2023年の活動報告」、「会計報告」、「事務局移転の承認」そして「届いた便りや意見の検討」でした。 また、参加者の方々から、GRA活動への「支援金」として 5,000円を受領しました。
以上、次回は、一番大切な「活動基本方針」について、どの様な検討があったかを報告します。 Next time, I will report on what kind of considerations were made regarding the most important "basic activity policy."
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2024/01/22
BGM: Nine Inch Nails - The Perfect Drug
今日は休日だった。通院日であり、病院まで行って先生にお会いする。この精神的な悩み・問題の「棚卸し」をすべくこうして先生たちにお会いする「月例」の面会を始めてからいったいどれくらい経つだろう。ぼくがまだ20歳そこそこだった頃からだろうか。まだ、ぼく自身が発達障害者であるとわかっていなかった頃からだ。ああ、長い月日が経ったものだ……。
その後、いつものようにイオンに行きそこでぼくの好きな作家である津原泰水のすさまじく素晴らしい、しかし確実に眉をひそめられる作品『ペニス』を読み始めた。卑猥なことを極力はぶいてこのすばらしい作品を語るにはどうしたらいいのだろう――この世界、このリアリティ(現実)とはたった1つのものだとぼくは受け取る。地球が1個の惑星であるとかそういうのと同じ意味において。しかし、その内側でぼくはいつもさまざまなことがら・ものごとを腑分けしている。たとえば、「人は男と女に分けられる」といった具合(いや、こんな単純な分け方は時代遅れだよというツッコミもあるだろう……ごめんなさい)。あるいは「事実と虚構」「現実と幻想」も考えられる。
たしかに、こんな感じでなんでもかんでもクリアに分けていく試みは世界をわかりやすく、把握しやすくするものだ。言い換えれば世界はそんなふうに腑分けする前はとてもカオス(混沌としたもの)であり、ゆえに豊饒でもあったということになるだろうか。この力作で津原泰水はこの世界やこの現実の真の姿を実に圧倒的にエレガントで、矛盾するが野蛮極まりない筆致で描ききる。もしぼくがもっと若かった頃にこの���品を読んでいたら、この筆に完全に参っていただろうと思う。猿真似さえしたかもしれない。
少なくともぼくの意見では、この種のマジカルで謎めいた力は小説が持ちうる凄味だと思う。そんなふうに影響を及ぼしうるほどの力を(悪影響も含めて)持ちえた作家たちをぼくは個人的に思い出す。実を言うと、決して読みやすい作品ではない(もちろん日本語で読んだわけだが、としてもほんとうにすごかった)。でも、サルトル『嘔吐』や村上春樹のスウィートな傑作群と充分拮抗する作品とぼくは信じる。今回の読書で、こんなことを考えついた。ブレット・イーストン・エリス『アメリカン・サイコ』にならって、この作品を『ジャパニーズ・サイコ』と形容するのはどうか、と。
夕飯を食べ終え、R・D・レインの『引き裂かれた自己』のページを少しめくってみた。これも読みやすい作品とは言えないのだが、でもこんなアイデアをもらえたように思う――ぼくは過去、ほんとうにつらかった時期を体験している。なのでいまでも身体と心が深刻なまでに「分離」した感覚を感じることがある。自分の身体が自分のものではない、というような……両者をつなげて一体感を感じ、「自分はここにいる自分だ」という満足感を持つことが大事かなとも思った。その意味で、ぼくが参加しているグループ(断酒会、発達障害を考えるミーティング、英会話教室、zoomミーティングなどなど)は大事なものなのだろう……。
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2024.1.9 tue_tokyo
あれ、もう夕方の光じゃん。 さようなら、今日1日ありがとう。 ほかほかでした。あなたのおかげです。
朝9:00にオンラインでミーティングをしたあと、そこから先1日何をしていたかというと、ただただ背中をあっためていた。
サーチライトのようにうちのリビングを1日かけて横断し、床や椅子や放ったらかしの本なんかを順に照らしていく太陽。その動きに合わせてわたしも移動し、まるまって背中をあっためていた。
振り返ると猫のま��ごとをしているだけの1日。
今日という日は、世の中は完全なる仕事始めの日。わたしはまたも遅れをとっているのだろうか。
「おどうぐばこを、とりにいくのがおそいです」振り返ると子供の頃から立ち上がりが遅い。連絡帳に書かれたあの頃から変わっていないのかもしれないな。もう40代なのに、変わらないままここまできたみたい。
年齢といえば、この間の1/8は成人の日で、わたしの姪っ子も今年成人式に出席した。姫のおねだり集合命令によってわたしは大阪までカメラマンとして出向き、朝から夕暮れまでキャッキャっとみんなで楽しく撮影会をした。
姪っ子がお友達と過ごす姿、姉がママ友とやり取りする姿を初めて見た。それぞれが、それぞれの場所で生きている。わたしの知り得ぬところで。なんだかとっても愛おしくって、ヘンなとこで泣きそうになるのを笑ってごまかした。
「20歳はオトナ0歳だよ」と前に教えてくれたのはわたしの師匠、写真家の横木さん。姪っ子が「オトナ20歳」を迎える時、どんな人になっているんだろう。わたしみたいにほとんど変わっていないかもしれない。いや、変わるべきところは自然に変わるよね。楽しみだな。
それにしても今日のわたしは動けない。 あぁ、あっという間に太陽が1日の終わりを照らしている。 「SOLITUDE AND BOREDOM」 うん、いいな、マサヤ君が書いたこれ。内容にそぐわず、深刻さとは無縁なダンスをしているみたいな字が好きだな。
さようなら。あったかいさま、太陽さま。 あなたがいなくなるのが寂しいです。寒いです。なので今日はもう眠ります。 そう、わたしたぶん、風邪をひきかけている。 こんなにふわふわといろんな事を思い出すのは、きっと微熱のせい。そして、うまく動けなくて退屈なせい。
おやすみ、また明日。 明日はきっと元気に会いましょう。
-プロフィール- 七咲友梨 東京 ⇄ 島根 写真家 / tea grower「sotto chakka」 https://www.instagram.com/nanasaki_yuri/
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2023/08/09
昨日行き損ねた美術館に行くことにした、今日は朝からそこに行き、午後大学に行こうとした。美術館は久々に行くところで、企画展で面白そうなものをやっているので気になっていったのだけど、その奥に常設があることに初めて気がついた。新棟のは親といったのだけど、こちらは同じくらいの規模で大変だった。企画のはやはり面白くて、カタログを買うか買わないか迷って買わない感じのだったけどドイツ語のみだったので案の定買わなかった。常設で面白かったのはやはりホドラーで、見たことないなあと思っていた大作がまとめてここにあった。逆にベルンとかに風景画の好きなやつが集まっている、ということがわかった。あとはジャコメッティのコレクション、これもなかなかの物量で、最初の彫刻が可愛げがあって良い。もちろん晩年までのものも凄まじいんだけれども、アヴァンギャルドにとっての戦争体験という問題があるなと思った。2時間かかってようやく観終わり、それでもじっくり観ていないところは多々あるのだけど、異常な空腹なので家に向かう。カレーでも作ろうと思って玉ねぎ、人参、ちょうど切れた牛乳を買って家に帰ったのだけど、あまりにダルくてすぐ作れるリゾットにしてしまった。さっと大学に向かう、ルームメイトは最後の休暇を楽しんでいるらしく、バルコニーで本を読んでいたので領収書にサインしてもらう。大学に行ったら同僚が二人ともいた。ダラダラ作業して夕方に、ちょっと泳いだりしようかなと思って早めに帰ってきたが、面倒になりやめ、ミーティング。過去イチ適当な夕飯を作り、少し飲みながら映画をみる。この映画は面白かった、がロシア語の吹き替えが微妙に遅れて入っていて、しかも一人の声で棒読みなので邪魔だった。Soy Cuba、という語りのプロパガンダ映画。内容はまあ別にどうでもいいのだけど撮り方が実験的。
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二度目のロックダウン
目覚ましの音に気づいて瞼を開けると、窓からの光が視界をつんざく。ロンドンは秋の雨季にあって、その日はすっきりとした快晴だった。二度目のロックダウンの前日の話だ。
昨晩はメールの返信を打ちながらキーボードに頭を突っ込むようにして寝ていた。夜中の1時過ぎになって意識を取り戻して、そこから寝支度をしたことを思い出す。半端なうたた寝を挟んだあとで迎える朝の目覚めは正直良くないが、時間にしては充分に寝ている。マグカップに牛乳を汲んで、沸かしたお湯を茶葉にくぐらせる。おととい焼いて積んでおいたスコーンを手にとってラズベリージャムを乗せ、寝ぼけ眼のまま口に詰め込む。傍らに残る紅茶をだらだらとすすりながら、朝のメールチェックをし、着替えて、10時からのオンラインのミーティングをこなす。1時間半弱で通話を終えると、遅ればせながらシャワーを浴びて出かける支度をする。何を思ったかせっかくだからと���この秋に新しく買ったジンジャー色のツイードの古着のジャケットを羽織った。
論文を書くために借りていた本の1冊に、返却期限の知らせが来ていたのはきのうの話、昨今は本を借りるにもあらかじめすべての書物をオンラインで予約し、受け取りも返却も日時を指定してスロットを確保してからでないと行かれない。学校の図書館に着くと、水曜日と書かれた大きな荷物カゴに本を入れるよう指示を受けた。この箱で3日過ごすのが、借りられた本たちの"自主隔離"である。去り際に見た校舎の前面に注ぐ日差しが、いかにも秋晴れらしい、静かな美しさを湛えていた。
ロックダウン前にせめて食べておきたいと心を決めて近くのサンドイッチ店に向かうと、今回のロックダウンでは持ち帰りのみで営業を続けるという看板を見つけて安堵する。アクリルのバリア越しに注文すると、受けてくれた女性に「Take away, isn’t it?(持ち帰りだよね?)」と言われて、いい加減に顔を覚えられたことを知る。いつも同じものを頼むアジア人だから覚えやすかったかもしれない。コロネーションチキンのサンドイッチとアールグレイを頼み、お茶係のお兄さんに「ティーバッグは入れておく?出す?」と聞かれたり、「手持ちだとちょっと熱いかも、まあ大丈夫かな」と言われたりした。
ふらふらとベンチを探して歩いた。お昼時で近くの公園はたくさんの学生が集っていて落ち着かなかったので、結局学校の近く��で戻ってリージェンツパークのベンチに腰掛ける。ふいに鳩がベンチにやってきて、わたしの膝頭に乗って首を傾げる。野生動物に餌を与えてはいけない。知っていながら、でも明日からロックダウンだし、という関係のない理由を持ち出して、具の色が付いていないパンの耳を、膝から降りた鳩にめがけて放った。すると想像だにしない速さで何十羽もの鳩が駆けつけてきて恐怖を覚えた。7年間通学時に歩いた上野公園で毎朝聞いていたはずの「公園内の、ハトにエサを与えないでください」というアナウンスが、何ら学習効果を生まないことを知る。すると今度はその群れが一斉に飛び立つので、二度恐怖を覚えた。安心して続きを食べ始めたらじわじわと鳩が戻ってきて、ベンチの周りを包囲する。中には背もたれやわたしの膝に寄ってくるものもいた。じっと正面から見つめるとやがて去っていくけれど、しばらくびくびくとしながら、でも動くのも面倒だと思って食べ続けていたら、鳩たちは諦めてまた群れで飛んでいった。
日差しを浴びながら紅茶をすすり、ぼんやりとメールやSNSを見た。もう何通目かわからないライブ配信のスカウトのメールを開いて、一旦目を通すも、特に目新しいことはなく、消すでもなく、返信するでもなく画面を戻す。SNSには、今日も誰かの旅先の写真と、誰かの食事と、誰かの演奏の動画が並んでいた。自分はしばし投稿をこしらえていなかったが、それだって10日くらいのことだ。米国大統領選の開票の経過も、ちょうど届き始めていた。まだどちらとも言えなかった。ベンチから立ち上がって紅茶を飲み干して、スーパーマーケットに向かう。この数日を過ごすための買い置きは月曜日に済んでいたけれど、家の近くのスーパーでは売っていないものをちょこっと買い足したくて、 Waitrose に入った。前回のロックダウンの時と違って、極端に品薄なものはない。パスタも小麦粉もあった。店内も落ち着いている。でも会計を済ませて店を出た時には入店制限がかかっていて、待機の列ができていた。
朝からやや貧血気味で、立ったり座ったりするたびにクラクラとしていたせいで、スーパーを出て歩く道すがらも、ちょっと地に足がついていない感じがした。最近はまっている『勝手にしやがれ』の歌詞「お前がフラフラ行くのが見える」を思い出す。平日の午後にしてはなぜか人が多かった。もしかしたら、ロックダウン前の最後の邂逅を楽しむ人たちだったのだろうか。屋外でなら誰とでも会うことを許されていた世界が、明日からはより絞られて、屋外でも決まったひとりにしか会えないらしい。それがどういうケースに対応するためのひとりなのか未だによくわかっていないけれど、そのルールがあることで救われる人がいるのだろう。一旦家に荷物を置きに戻ると、部屋に飾った小さなラッパスイセンと目があった。本当の春はまだ遠い。
結局いまいち貧血気味のままで移動が辛かったので、そのままUberを呼んで家庭教師をしている生徒宅に向かう。まだ16時台だからラッシュ前かと思いきや恐ろしく道路が混んでいて、運転手がややいらいらしていた。わたしに詫びながらUターンや細い裏道を駆使してくれて有り難い反面、運転中にいらいらする人を見るのはあまり心地よくないとも思った。でもその努力には感謝したいので降車時に1ポンドのチップを上乗せした。最後に交わした「Have a nice evening.」「Thanks, you, too.」というあいさつが、儀礼的なものであるのは知りながら、この期に及んで nice evening って何だろうという疑問は頭を掠める。ロックダウン下でもタクシーは人を運ぶだろうが、運転手にとって明日からはどんな日々なのだろうか。
とはいえ、電車のほうが早く着いただろうな、裏目に出たな、と思いながら、遅刻を詫びつつ今日の宿題を確認する。子供の口からも出てくる、明日からロックダウンという言葉。でも子供たちは明日からも学校に変わらず通う。政府のガイドラインだと大学はオンラインの割合を増やすことを推奨しているので、わたしは家にいる時間が増えるだろう。ロックダウンは結局何かと言えば、緊急性の低い物を取り扱う商店は閉めなければいけないわけで、そ��なるとさすがに何かが恋しくなるかもしれないと思ったが、お昼ご飯を買うときにブティック街を通過したにも関わらず、何も買わなかった。ヤケ買いするほどの気力もなければ、買って気分を高揚させようと思うほどのモチベーションも特にない。強いて言えば Dyptique の前で蝋燭を買おうか悩んだが、そういえばマッチを持っていないことを思い出して、やめた。どこのブティックも、暇そうに店番をする人たちが目に入った。いつもより通りで物乞いをするホームレスも多い。キャッシュレス生活でなけなしの小銭しかなかったが、ブランケットに包まるやや若い男性の前を一度通り過ぎてから、思い直して紙コップにいくらか入れた。その道の先で別のホームレスに、わたしとまったく同じ行動を取った女性を見かけた。
あるいは飲食店が持ち帰りしかできなくなることもあって、道々のレストランでは最後の外食を楽しむ人がかなり多く見受けられ、わたしも本当はちょっとだけ、自分では作れないこってりラーメンを食べて帰りたい気持ちが芽生えたけれど、いかんせん直近に大陸側で起こったことも考慮してきのうからテロ警戒レベルが引き上げられていたので、用事を終えたらまっすぐ帰るが吉と見て、すっかり日暮れが早くなった街で、一路に家を目指した。特に何ほどのことはない、何でもない1日ではあった。それでもどこかずっとのしかかってくるものがあって、上の空とも違うけれど、半ば目の前に意識がなかったような気がする。明日からどうやって過ごそう、いや、別に自分の生活はそもそも通常営業ではなかったから何を今さら、と思いつつ、やっぱり、メンタルのケアをしていく必要は��そうだと思わずにはいられない。やっとやっと、コンサートなんかもできるようになりつつあった10月だった。そこから悪夢の Second Lockdown までの急降下はあっけなかった。前回だって、まずは2週間くらいを目処に始めたロックダウンだったし、結果3か月強続いた。少なく見積もったところで今回も同じだけの時間はかかるだろう。
たまには、たとえ不急でも、お気に入りのサンドイッチを買いに行っても良いだろうか。お店が潰れるところは見たくない。そんな文字を打つ間、わたしの耳は街角で上げられている花火の音を捉える。ハロウィンの名残か、あるいは本来だったら明日は Bon Fire Night ガイフォークス・デーだから、どさくさに紛れてふざけた市民が上げていることは想像に難くない。褒めはしないけれど、どうにか発散し��い気持ちはわからないわけではない。どうか、そんなあなたも、ホームレスの人も、タクシーの運転手さんも、サンドイッチ屋さんも、図書館の司書さんも、ブティックで暇そうにしていた皆さんも、どうかどうか、みんな無事でいてほしい。
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第58回ミーティング
12/16/2022(金)
議長:くま(代理) 議事録:おにぎり侍
<本日のアジェンダ>
◯各担当の進捗共有
◯最終発表会準備
<ミーティング>
本日も進捗共有からです。
Web:一旦完成、動画は専修大学関係者のみ入れるページを作成し掲載
原稿:アンケート項目以外は一旦できてる
金沢旅行の制作物:途中、この時間内に完成
アンケート調査:ひとまず完成
動画:2徹したら。がギリギリまで編集しており遅刻するも完成
こんな感じでした。
いやぁ〜、動画なんとかできましたよ。2徹で目バッキバキです。
Webサイトにも載っているのでぜひ見てください!!!
https://www.ne.senshu-u.ac.jp/~proj2022-27/
あとは、作業が終わっていない日本男児を応援しながら原稿の確認をしたり最終発表の心構えをして本日のミーティングは終了です。
<余談>
本日は最終発表会の前日ということで、教室を発表ブースに大変身させました。
360度写真でブースを撮りました。
なんか高校の文化祭とかを思い出しました���。いわゆる青春ってやつみたいでちょっと楽しかった。成人を迎えた大人たちがまだ味わえるなんて、
最終発表会、頑張りましょう!!
担当:ら。
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甘やかしたい朝 #おはよう #ミーティング遅刻 #慣れない #朝ミーティング #在宅勤務 #20200728 #トモヱ乳業 #カフェラテ #cafelatte https://www.instagram.com/p/CDKwfkWFJKb/?igshid=s7aex27bboiy
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If it is not in black and white, it did not happen. というフレーズの意味を予想してみろとクイズ。全然わからず見当外れな guess をしたりした後ヒントタイム「メールの背景って何色だ?」(ダークモードとかあるけど、と思いつつ)まあ普通は白、かな「じゃあメッセージ本文は?」(あーなるほど)黒、かな「では black and white ってどういうことだ?」メールの見た目の配色?「うむ、つまりだな、black and white は書かれた文書のことを指す。で、このフレーズの意味は、『記録してないものは無かったもの扱いになってしまう』ということだ」からの、即興ロールプレイで「ヘイケン、明日の三時にミーティング出れるか?」いいよ「で翌日お前が三時に会議室に行くと誰もいなくて、お前は遅刻だ会議は二時からだ、ボスこいつ遅刻ですよ、いや三時って言ったじゃん、証拠はあるのか? what's your proof?、などということになる。自分自身を守るために、どんな小さなことでも記録しておくんだ」とめっちゃ実践的なビジネス教訓を教わった。
Other Program: Level 2 E-mail Writing NEW Lesson 12: Writing short requests/inquiries - @kyanny's blog
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つまさきになみのおと
そういえば、自分から電話することだって滅多になかったのだった。 ディスプレイに浮かぶ名前を、そっとなぞるように見つめる。漢字三文字、向かって右手側の画数が多いそれは、普段呼んでいるものよりもなんとなく遠くに感じる。同じ、たったひとりの人を指す名前なのに。こんな場面でやけに緊張しているのは、そのせいなのだろうか。うんと昔は、もっとこれに近い名前で呼んでいたくせに。本人の前でも、居ないところでだって、なんだか誇らしいような、ただ憧れのまなざしで。 訳もなく一度ベンチを立ち上がって、ゆるゆると力なく座り込んだ。ただ電話をかけるだけなのに、なんだってこんなに落ち着かないんだろう。らしくないと叱咤する自分と、考え過ぎてナーバスになっている自分が、交互に胸の中を行き来する。何度も真っ暗になる画面に触れなおして、またひとつ詰めていた息を吐き出した。 寮の廊下はしんと静まり返っていた。巡回する寮監が消していく共同部分の照明、それ以外は規定の中だけで生きているはずの消灯時間をとうに過ぎている。水泳部員の集まるこのフロアに関して言えば、週末の夜にはもう少し笑い声も聞こえてくるはずだ。けれど、今日は夜更かしする元気もなく、すっかり寝息を立ててしまっているらしい。 午前中から半日以上かけて行われた、岩鳶高校水泳部との合同練習。夏の大きな大会が終わってからというもの緩みがちな意識を締める意味でも、そして次の世代に向けての引き継ぎの意味でも、今日の内容は濃密で、いつも以上に気合���が入っていた。 「凛先輩、今日は一段と鬼っスよぉ」 残り数本となった練習メニューのさなか、プールサイドに響き渡るくらい大きな声で、後輩の百太郎は泣き言を口にしていた。「おーい、気張れよ」「モモちゃん、ファイト!」鮫柄、岩鳶両部員から口々にそんな言葉がかけられる。けれどそんな中、同じく後輩の愛一郎が「あと一本」と飛び込む姿を見て、思うところがあったらしい。こちらが声を掛ける前に、外しかけたスイミングキャップをふたたび深く被りなおしていた。 春に部長になってからというもの、試行錯誤を繰り返しながら無我夢中で率いていたこの水泳部も、気が付けばこうやってしっかりと揺るぎのない形を成している。最近は、離れたところから眺めることも増えてきた。それは頼もしい半面、少しだけ寂しさのような気持ちを抱かせた。 たとえば、一人歩きを始めた子供を見つめるときって、こんな気持ちなのだろうか。いや、代々続くものを受け継いだだけで、一から作り上げたわけではないから、子供というのも少し違うか。けれど、決して遠くない感情ではある気がする。そんなことを考えながら、プールサイドからレーンの方に視線を移した。 四人、三人と並んでフリースタイルで泳ぐその中で、ひときわ飛沫の少ない泳ぎをしている。二人に並んで、そうして先頭に立った。ぐんぐんと前に進んでいく。ひとかきが滑らかで、やはり速い。そして綺麗だった。そのままぼんやりと目で追い続けそうになって、慌ててかぶりを振る。 「よし、終わった奴から、各自休憩を取れ。十分後目安に次のメニュー始めるぞ」 プールサイドに振り返って声を張ると、了解の意の野太い声が大きく響いた。
暗闇の中、小さく光を纏いながら目の前に佇む自動販売機が、ブウンと唸るように音を立てた。同じくらいの価格が等間隔に並んで表示されている。価格帯はおそらく公共の施設に置いてあるそれよりも少しだけ安い。その中に『売り切れ』の赤い文字がひとつ、ポツンと浮き上がるように光っている。 ふたたび、小さく吐き出すように息をついた。こんな物陰にいて、飲み物を買いに来た誰かに見られたら、きっと驚かせてしまうだろう。灯りを点けず、飲み物を選んでいるわけでも、ましてや飲んでいるわけでもない。手にしているのはダイヤル画面を表示したままの携帯電話で、ただベンチでひとり、座り込んでいるだけなのだから。 あと一歩のきっかけをどうしても掴めない。けれど同時に、画面の端に表示された時刻がそんな気持ちを追い立て、焦らせていた。もう少しで日をまたいで越えてしまう。意味もなくあまり夜更かしをしないはずの相手だから、後になればなるほどハードルが高くなってしまうのだ。 今日は遅いし、日をあらためるか。いつになく弱気な考えが頭をもたげてきたとき、不意に今日の後ろ姿が脳裏に浮かんだ。途端に息苦しさのような、胸の痛みがよみがえる。やはり、このままでいたくなかった。あのままで今日を終えてしまいたくない。 焦りと重ねて、とん、と軽く押された勢いのまま、操作ボタンを動かした。ずっと踏み出せなかったのに、そこは淡々と発信画面に切り替わり、やがて無機質な呼び出し音が小さく聞こえ始めた。 耳に当てて、あまり音を立てないように深く呼吸をしながら、じっと待つ。呼び出し音が流れ続ける。長い。手元に置いていないのだろうか。固定電話もあるくせに、何のための携帯電話なのか。そんなの、今に始まったことじゃないけれど。それに留守電設定にもしていない。そもそも設定の仕方、知ってんのかな。…やけに長い。風呂か、もしくはもう寝てしまっているとか。 よく考えたら、このまま不在着信が残ってしまうほうが、なんだか気まずいな。そんな考えが浮かんできたとき、ふっと不安ごと取り上げられたみたいに呼び出し音が途切れた。 「もしもし…凛?」 繋がった。たぶん、少しだけ心拍数が上がった。ぴんと��射的に背筋が伸びる。鼓膜に届いた遙の声色は小さいけれど、不機嫌じゃない。いつもの、凪いだ水面みたいな。 そんなことを考えて思わず詰まらせた第一声を、慌てて喉から押し出した。 「よ、よぉ、ハル。遅くにわりぃな。あー、別に急ぎじゃないんだけどさ、その…今なにしてた? もう寝てたか?」 隙間なく沈黙を埋めるように、つい矢継ぎ早に並べ立ててしまった。違う、こんな風に訊くつもりじゃなかったのに。いつも通りにつとめて、早く出ろよ、とか、悪態の一つでもついてやろうと思ってたのに。これではわざとらしいことこの上なかった。 「いや…風呂に入ってきたところだ。まだ寝ない」 ぐるぐると頭の中を渦巻くそんな思いなんて知らずに、遙はいつもの調子でのんびりと答えた。ひとまず色々と問われることはなくて、良かった。ほっと胸を撫で下ろす。 「そ。それなら、良かった」 電話の向こう側に遙の家の音が聞こえる。耳を澄ませると、何かの扉を閉じる音、続けて、小さくガラスのような音が鳴った。それから、水の音、飲み下す音。 …あ、そっか、風呂上がりっつってたな。向こう側の景色が目の前に浮かぶようだった。台所の、頭上から降る白い光。まだ濡れたまま、少しのあいだ眠っているだけの料理道具たち。水滴の残るシンクは古くて所々鈍い色をしているけれど、よく手入れがされて光っている。水回りは実家よりも祖母の家に似ていて、どこか懐かしい。ハルの家、ここのところしばらく行ってないな。あの風呂も、いいな。静かで落ち着くんだよなぁ。 「それで、どうしたんだ」 ぼんやり、ぽやぽやと考えているうちに、水かお茶か、何かを飲んで一息ついた遙がおもむろに投げかけてきた。ハッと弾かれるように顔を上げ、慌てて言葉を紡ぎ出す。 「あー、いや…今日さ、そっち行けなかっただろ。悪かったな」 「…ああ、そのことか」 なるほど、合点がいったというふうに遙が小さく声を零した。 そっち、というのは遙の家のことだ。今日の合同練習の後、岩鳶の面々に「これから集まるから一緒に行かないか」と誘われていたのだった。 「明日は日曜日なんだしさ、久しぶりに、リンちゃんも行こうよ」 ねぇ、いいでしょ。練習終わりのロッカールームで渚がそう言った。濡れた髪のままで、くりくりとした大きな目を真っすぐこちらに向けて。熱心に誘ってきたのは主に彼だったけれど、怜も真琴も、他人の家である以上あまり強くは勧めてこなかったけれど、渚と同じように返事を期待しているみたいだった。当の家主はというと、どうなんだと視線を送っても、きょとんとした顔をして目を瞬かせているだけだったけれど。きっと、別に来てもいいってことなのだろう。明確に断る理由はなかったはずだった。 けれど、内心迷っていた。夏の大きな大会が終わってやっと一息ついて、岩鳶のメンバーとも久しぶりに水入らずでゆっくり過ごしたかった。それに何より、他校で寮暮らしをしている身で、遙の家に行ける機会なんてそう多くはない。その上、一番ハードルの高い『訪問する理由』というものが、今回はあらかじめ用意されているのだ。行っても良かったのだ。けれど。 「わりぃ、渚。今日は行かれねぇ」 結局、それらしい適当な理由を並べて断わってしまったのだった。ミーティングがあるからとか、休みのうちに片付けなきゃならないことがあるとか、今思えば至極どうでもいいことを理由にしていた気がする。 始めのうちは、ええーっと大きく不満の声を上げ、頬を膨らませてごねていた渚も、真琴に宥められて、しぶしぶ飲み込んだみたいだった。 「また次にな」 まるで幼い子供に言い聞かせるようにやわらかい口調につとめてそう言うと、うん、分かったと渚は小さく頷いた。そうして、きゅっと唇を噛みしめた。 「でもでも、今度こそ、絶対、ぜーったいだからね!」 渚は声のトーンを上げてそう口にした。表向きはいつものように明るくつとめていたけれど、物分かりの良いふりをしているのはすぐに知れた。ふと垣間見えた表情はうっすらと陰り曇って、最後まで完全に晴れることはなかった。なんだかひどく悪いことをしてしまったみたいで、胸の内側が痛んだ。 ハルは、どうなんだ。ちらりとふたたび視線をやる。けれど、もうすっかり興味をなくしたのか、遙はロッカーから引き出したエナメルバッグを肩に引っ掛け、ふいっと背を向けた。 「あ、ハル」隣にいた真琴が呼びかけたけれど、遙は振り返らずに、そのまま出入り口へ歩いていってしまった。こんなとき、自分��はとっさに呼び止める言葉が出てこなくて、ただ見送ることしかできない。強く引っ掛かれたみたいに、いっそう胸がちくちくした。 「なんか、ごめんね」 帰り際、真琴はそう言って困ったように微笑んだ。何が、とは言わないけれど、渚の誘いと、多分、先ほどの遙のことも指しているのだろう。 「いーって。真琴が謝ることじゃねぇだろ」 軽い調子で答えると、真琴は肩をすくめて曖昧に笑った。 「うん、まぁ、そうなんだけどさ」 そう言って向けた視線の先には、帰り支度を終えて集まる渚、怜、江、そして遙の姿があった。ゆるく小さな輪になって、渚を中心に談笑している。この方向からでは遙の顔は見えない。顔の見える皆は楽しそうに、ときどき声を立てて笑っていた。 「言わなきゃ、分からないのにね」 目を細めて、独り言のように真琴は口にした。何か返そうと言葉を探したけれど、何も言えずにそのまま口をつぐんだ。 その後、合同練習としては一旦解散して、鮫柄水泳部のみでミーティングを行うために改めて集合をかけた。ぞろぞろと整列する部員たちの向こうで、校門の方向へ向かう岩鳶水泳部員の後ろ姿がちらちらと見え隠れした。小さな溜め息と共に足元に視線を落とし、ぐっと気を入れ直して顔を上げた。遙とは今日はそれっきりだった。 「行かなくて良かったのか?」 食堂で夕食を終えて部屋に戻る道中、宗介がおもむろに口を開いてそう言った。近くで、ロッカールームでの事の一部始終を見ていたらしかった。何が、とわざわざ訊くのも癪だったので、じっとねめつけるように顔を見上げた。 「んだよ、今さら」 「別に断る理由なんてなかったんじゃねぇか」 ぐっと喉が詰まる。まるで全部見透かしたみたいに。その表情は心なしか、成り行きを楽しんでいるようにも見えた。 「…うっせぇよ」 小さく舌打ちをして、その脚を軽く蹴とばしてやる。宗介は一歩前によろけて、いてぇなと声を上げた。けれどすぐに、くつくつと喉を鳴らして愉快そうに笑っていた。 「顔にでっかく書いてあんだよ」 ここぞとばかりに、面白がりやがって。
それから風呂に入っても、言い訳に使った課題に手を付けていても、ずっと何かがつかえたままだった。宗介にはああいう態度をとったものの、やはり気にかかって仕方がない。ちょっとどころではない、悪いことをしてしまったみたいだった。 だからなのか、電話をしようと思った。他でもなく、遙に。今日の後ろ姿から、記憶を上塗りしたかった。そうしなければ、ずっと胸が苦しいままだった。とにかくすぐに、その声が聞きたいと思った。 寮全体が寝静まった頃を見計らって、携帯電話片手にひと気のない場所を探した。いざ発信する段階になってから、きっかけが掴めなくて踏ん切りがつかずに、やけに悩んで時間がかかってしまったけれど。 それでも、やっとこうして、無事に遙と通話するに至ったのだった。 「…らしくないな、凛が自分からそんなこと言い出すなんて」 こちらの言葉を受けて、たっぷりと間を置いてから遙は言った。そんなの自分でも分かっているつもりだったけれど、改まってそう言われてしまうと、なんとなく恥ずかしい。じわじわと広がって、両頬が熱くなる。 「んだよ、いいだろ別に。そういうときもあんだよ」 「まぁ、いいけど」 遙は浅く笑ったみたいだった。きっと少しだけ肩を揺らして。風がそよぐような、さらさらとした声だった。 「でも、渚がすごく残念がってた」 「ん…それは、悪かったよ」 あのときの渚の表情を思い浮かべて、ぐっと胸が詰まる思いがした。自分のした返事一つであんなに気落ちさせてしまったことはやはり気がかりで、後悔していた。いっつもつれない、なんて、妹の江にも言われ続けていたことだったけれど。たまにはわがままを聞いてやるべきだったのかもしれない。近いうちにかならず埋め合わせをしようと心に決めている。 「次に会うときにちゃんと言ってやれ」 「そうする」 答えたのち、ふっとあることに気が付いた。 「そういえば、渚たちは?」 渚の口ぶりから、てっきり今晩は遙の家でお泊り会にでもなっているのだと思っていた。ところが電話の向こう側からは話し声どころか、遙以外のひとの気配さえないようだった。 「ああ。晩飯前には帰っていった」 「…そっか」 つい、沈んだ声色になってしまった。何でもないみたいにさらりと遙は答えたけれど、早々にお開きになったのは、やはり自分が行かなかったせいだろうか。過ぎたことをあまり考えてもどうにもならないけれど、それでも引っ掛かってしまう。 しばらく沈黙を置いて、それからおもむろに、先に口を開いたのは遙の方だった。 「言っておくが、そもそも人数分泊める用意なんてしてなかったからな」 渚のお願いは、いつも突然だよな。遙は少し困ったように笑ってそう言った。ぱちりぱちりと目を瞬かせながら、ゆっくりと状況を飲み込んだ。なんだか、こんな遙は珍しかった。やわらかくて、なにか膜のようなものがなくて、まるで触れられそうなくらいに近くて、すぐ傍にいる。 そうだな、とつられて笑みをこぼしたけれど、同時に胸の内側があまく締め付けられていた。気を抜けば、そのまま惚けてしまいそうだった。 そうして、ぽつんとふたたび沈黙が落ちた。はっとして、取り出せる言葉を慌てて探した。だんだんと降り積もるのが分かるのに、こういうとき、何から話せばいいのか分からない。そんなことをしていたら先に問われるか離れてしまうか。そう思っていたのに、遙は何も訊かずに、黙ってそこにいてくれた。 「えっと」 ようやく声が出た。小石につまづいてよろけたように、それは不格好だったけれど。 「あ、あのさ、ハル」 「ん?」 それは、やっと、でもなく、突然のこと、でもなく。遙は電話越しにそっと拾ってくれた。ただそれだけのことなのに、胸がいっぱいになる。ぐっとせり上がって、その表面が波打った。目元がじわりと熱くなるのが分かった。 「どうした、凛」 言葉に詰まっていると、そっと覗き込むように問われた。その声はひどく穏やかでやわらかい。だめだ。遙がときどき見せてくれるこの一面に、もう気付いてしまったのだった。それを心地よく感じていることも。そうして、知る前には戻れなくなってしまった。もう、どうしようもないのだった。 「…いや、わりぃ。やっぱなんでもねぇ」 切り出したものの、後には続かなかった。ゆるく首を振って、ごまかすようにつま先を揺らして、わざと軽い調子で、何でもないみたいにそう言った。 遙は「そうか」とひとつ返事をして、深く問い詰めることはしなかった。 そうしていくつか言葉を交わした後に、「じゃあまたな」と締めくくって、通話を切った。 ひとりになった瞬間、項垂れるようにして、肺の中に溜め込んでいた息を長く長く吐き出した。そうしてゆっくりと深呼吸をして、新しい空気を取り入れた。ずっと潜水していた深い場所から上がってきたみたいだった。 唇を閉じると、しんと静寂が辺りを包んでいた。ただ目の前にある自動販売機は、変わらず小さく唸り続けている。手の中にある携帯電話を見やると、自動で待ち受け状態に戻っていた。まるで何ごともなかったみたいに、日付はまだ今日のままだった。夢ではない証しのように充電だけが僅かに減っていた。 明るさがワントーン落ちて、やがて画面は真っ暗になった。そっと親指の腹で撫でながら、今のはきっと、「おやすみ」と言えば良かったんだと気が付いた。
なんだか全身が火照っているような気がして、屋外で涼んでから部屋に戻ることにした。同室の宗介は、少なくとも部屋を出てくるときには既に床に就いていたけれど、この空気を纏って戻るのは気が引けた。 寮の玄関口の扉は既に施錠されていた。こっそりと内側から錠を開けて、外に抜け出る。施錠後の玄関の出入りは、事前申請がない限り基本的には禁止されている。防犯の観点からも推奨はできない。ただ手口だけは簡単なので、施錠後もこっそり出入りする寮生が少なくないのが実情だった。 そういえば、前にこれをやって呼び出しを受けた寮生がいたと聞いた。そいつはそのまま校門から学校自体を抜け出して、挙げ句無断外泊して大目玉を食らったらしいけれど、さすがに夜風にあたる目的で表の中庭を歩くくらいなら、たとえばれたとしてもそこまでお咎めを受けることはないだろう。何なら、プールに忘れものをしたから取りに行ったとでも言えばいい。 そうして誰もいない寮の中庭を、ゆっくりと歩いた。まるで夜の中に浸かったみたいなその場所を、あてもなくただ浮かんで揺蕩うように。オレンジがかった外灯の光が点々とあちこちに広がって、影に濃淡をつくっている。空を仰ぐと、雲がかかって鈍い色をしていた。そういえば、未明から雨が降ると予報で伝えていたのを思い出した。 弱い風の吹く夜だった。時折近くの木の葉がかすかに揺れて、さわさわと音を立てた。気が付けば、ほんの半月ほど前まで残っていたはずの夏の匂いは、もうすっかりしなくなっていた。 寝巻代わりの半袖に綿のパーカーを羽織っていたので、さして寒さは感じない。けれど、ここから肌寒くなるのはあっという間だ。衣替えもして、そろそろ着るものも考えなければならない。 夏が過ぎ去って、あの熱い時間からもしばらく経って、秋を歩く今、夜はこれから一足先に冬へ向かおうとしている。まどろんでいるうちに瞼が落ちているように、きっとすぐに冬はやってくる。じきに雪が降る。そうして年を越して、降る雪が積もり始めて、何度か溶けて積もってを繰り返して、その頃にはもう目前に控えているのだ。こ���場所を出て、この地を離れて、はるか遠くへ行くということ。 たったひとつを除いては、別れは自分から選んできた。昔からずっとそうだった。走り出したら振り返らなかった。自分が抱く信念や想いのために、自分で何もかも決めたことなのに、後ろ髪を引かれているわけではないのに、最近はときどきこうやって考える。 誰かと離れがたいなんて、考えなかった。考えてこなかった。今だってそうかと言えばそうじゃない。半年も前のことだったらともかく、今やそれぞれ進むべき道が定まりつつある。信じて、ひたむきに、ただ前へ進めばいいだけだ。 けれど、なぜだろう。 ときどき無性に、理由もなく、どうしようもなく、遙に会いたくなる。
ふと、ポケットに入れていた携帯電話が震え出したのに気が付いた。メールにしては長い。どうやら電話着信のようだった。一旦足を止め、手早く取り出して確認する。 ディスプレイには、登録済みの名前が浮かんでいる。その発信者名を目にするなり、どきりと心臓が跳ねた。 「も、もしもし、ハル?」 逡巡する間もなく、気が付けば反射的に受話ボタンを押していた。慌てて出てしまったのは、きっと遙にも知れた。 「凛」 けれど、今はそれでも良かった。その声で名を呼ばれると、また隅々にまで血が巡っていって、じんわりと体温が上がる。 「悪い、起こしたか」 「や、まだ寝てなかったから…」 そわそわと、目にかかった前髪を指でよける。立ち止まったままの足先が落ち着かず、ゆるい振り子のように小さくかかとを揺らす。スニーカーの底で砂と地面が擦れて、ざりりっと音を立てた。 「…外に出てるのか? 風の音がする」 「あー、うん、ちょっとな。散歩してた」 まさか、お前と話して、どきどきして顔が火照ったから涼んでるんだ、なんて口が裂けても言えない。胸の下で相変わらず心臓は速く打っているけれど、ここは先に会話の主導権を握ってしまう方がいい。背筋を伸ばして、口角をゆるく上げた。 「それより、もう日も跨いじまったぜ。なんだよ、あらたまって。もしかして、うちのプールに忘れもんしたか?」 調子が戻ってきた。ようやく笑って、冗談交じりの軽口も叩けるようになってきた。 「プールには、忘れてない」 「んだよ、ホントに忘れたのかよ」 「そういうことじゃない」 「…なんかよく分かんねぇけど」 「ん…そうだな。だけど、その」 遙にしては珍しい、はっきりとしない物言いに首を傾げる。言葉をひとつずつひっくり返して確かめるようにして、遙は言いよどみながら、ぽつぽつと告げてきた。 「…いや、さっき凛が…何か、言いかけてただろ。やっぱり、気になって。それで」 そう続けた遙の声は小さく、言葉は尻切れだった。恥ずかしそうに、すいと視線を逸らしたのが電話越しにも分かった。 どこかが震えたような気がした。身体の内側のどこか、触れられないところ。 「…はは。それで、なんだよ。それが忘れもの? おれのことが気になって仕方なくって、それでわざわざ電話してきたのかよ」 精一杯虚勢を張って、そうやってわざと冗談めかした。そうしなければ、覆い隠していたその存在を表に出してしまいそうだった。喉を鳴らして笑っているつもりなのに、唇が小さく震えそうだった。 遙はこちらの問いかけには返事をせずに、けれど無言で、そうだ、と肯定した。 「凛の考えてることが知りたい」 だから。そっとひとつ前置きをして、遙は言った。 「聞かせてほしい」 凛。それは静かに押し寄せる波みたいだった。胸に迫って、どうしようもなかった。 顔が、熱い。燃えるように熱い。視界の半分が滲んだ。泣きたいわけじゃないのに、じわりと表面が波打った。 きっと。きっと知らなかった頃には、こんなことにも、ただ冗談めかして、ごまかすだけで終わらせていた。 ハル。きゅっと強く、目を瞑った。胸が苦しい。汗ばんだ手のひらを心臓の上にそっとのせて、ゆるく掴むように握った。 今はもう知っているから。こんなに苦しいのも、こんなに嬉しいのも、理由はたったひとつだった。ひたひたといっぱいに満たされた胸の内で、何度も唱えていた。 「…凛? 聞いてるのか」 遙の声がする。黙ったままだから、きっとほんの少し眉を寄せて、怪訝そうな顔をしている。 「ん、聞いてる」 聞いてるよ。心の中で唱え続ける。 だって声、聞きたいしさ、知りたい。知りてぇもん。おれだって、ハルのこと。 「ちゃんと言うから」 開いた唇からこぼれた声はふわふわとして、なんだか自分のものではないうわ言みたいで、おかしかった。 できるだけいつも通りに、まるで重しを付けて喋るように努めた。こんなの、格好悪くて仕方がない。手の甲を頬に当ててみた。そこはじんわりと熱をもっている。きっと鏡で見たら、ほんのりと紅く色づいているのだろう。はぁ、とかすかに吐き出した息は熱くこもっていた。 「あのさ、ハル」 差し出す瞬間は、いつだってどきどきする。心臓がつぶれてしまいそうなくらい。こんなに毎日鍛えているのに、こういうとき、どうにもならないんだな。夜の中の電話越しで、良かった。面と向かえば、次の朝になれば、きっと言えなかった。 「こ、今度、行っていいか、ハルの家」 上擦った調子で、小さく勢いづいてそう言った。ひとりで、とはついに言えなかったけれど。 「行きたい」 触れた手のひらの下で、どくどく、と心臓が弾むように鳴っているのが分かる。 無言のまま、少し間が開いた。少しなのに、果てしなく長く感じられる。やがて遙は、ほころんだみたいに淡く笑みを零した。そうして静かに言葉を紡いだ。 「…うん、いつでも来い」 顔は見えないけれど、それはひらかれた声だった。すべてゆるんで、溢れ出しそうだった。頑張って、堪えたけれど。 待ってる。最後に、かすかに音として聞こえた気がしたけれど、本当に遙がそう言ったのかは分からなかった。ほとんど息ばかりのそれは風の音だったのかもしれないし、あるいは別の言葉を、自分がそう聞きたかっただけなのかもしれない。あえて訊き返さずに、この夜の中に漂わせておくことにした。 「それまでに、ちゃんと布団も干しておく」 続けてそう告げる遙の声に、今度は迷いも揺らぎも見えなかった。ただ真っすぐ伝えてくるものだから、おかしくてつい吹き出してしまった。 「…ふっ、はは、泊まる前提なのかよ」 「違うのか」 「違わねぇけどさ」 「なら、いい」 「うん」 くるくると喉を鳴らして笑った。肩を揺らしていると、耳元で、遙の控えめな笑い声も聞こえてきた。 いま、その顔が見たいな。目を細めると、睫毛越しに外灯のオレンジ色の光が煌めいて、辺りがきらきらと輝いて見えた。 それから他愛のない会話をひとつふたつと交わして、あらためて、そろそろ、とどちらともなく話を折りたたんだ。本当は名残惜しいような気持ちも抱いていることを、今夜くらいは素直に認めようと思った。口にはしないし、そんなのきっと、自分ばっかりなのだろうけど。 「遅くまでわりぃな。また連絡する」 「ああ」 そうして、さっき言えなかったことを胸の内で丁寧になぞって、そっと唇に乗せた。 「じゃあ、おやすみ」 「おやすみ」
地に足がつかないとは、こういうことなのかもしれない。中庭から、玄関口、廊下を通ってきたのに、ほとんどその意識がなかった。幸い、誰かに見つかることはなかったけれど。 終始ふわふわとした心地で、けれど音を立てないように、部屋のドアをいつもより小さく開けて身体を滑り込ませた。カーテンを閉め切った部屋の中は暗く、しんと静まっていた。宗介は見かけに反して、意外と静かに眠るのだ。あるいは、ただ寝たふりなのかもしれないけれど。息をひそめて、自分のベッドに潜り込んだ。何か言われるだろうかと思ったけれど、とうとう声は降ってこなかった。 横向きに寝転んで目を閉じるけれど、意識がなかなか寝に入らない。夜は普段言えない気持ちがするすると顔を出してきて、気が付けば口にしているんだって。あの夏にもあったことなのに。 重なったつま先を擦りつけあう。深く呼吸を繰り返す。首筋にそっと触れると、上がった体温でうっすら汗ばんでいた。 なんか、熱出たときみてぇ。こんなの自分の身体じゃないみたいだった。心臓だって、まだトクトクと高鳴ったまま静まらない。 ふっと、あのときの声が聞こえた気がした。訊き返さなかったけれど、そう思っていていいのかな。分からない。リンは奥手だから、といつだかホストファミリーにも笑われた気がする。だって、むずかしい。その正体はまだよく分からなかった。 枕に顔を埋めて、頭の先まで掛け布団を被った。目をぎゅっと瞑っても、その声が波のように、何度も何度も耳元で寄せては引いた。胸の内側がまだいっぱいに満たされていた。むずむず、そわそわ。それから、どきどき。 ああ、でも、わくわくする。たとえるなら、何だろう。そう、まるで穏やかな春の、波打ち際に立っているみたいに。
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(2018/03/18)
両片想いアンソロジーに寄稿させていただいた作品です。
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未来の笑顔はここから
いいお天気ですね♪ 朝から掃除、洗濯、ゴミ出しと バタバタしています 今日はこちらの写真をご覧になってください 老後の余暇を 楽しんで働く事はいいことです でも、働かなければ生きていけないというのは ちょっと考えなければいけません 年金だけでは暮らしていけないから 働かざるを得ない人は たくさんいらっしゃるようです あなたは70歳を過ぎても働きたいですか? 仕事はあるのでしょうか… 働ける体力は残っていますか? そう感じた方は 今日のzoomセミナーに参加してみてください ⬆️⬆️⬆️⬆️⬆️ ズームリンクはこちらです。全て同じ内容です。遅刻の無いようお願いします。 https://us02web.zoom.us/j/82891225251?pwd=SnJiWHEvQXZIZnY4aUw2YWFxcG5EZz09 ミーティングID: 828 9122…
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