#父の日に貰いたいレコード
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24歳、フリーターになってから半年くらい経つ 田舎でフリーターとして生きることは都内でサラリーマンとして生きることに匹敵するほど苦痛である、(あくまで"生きること"に関して、ね)なんて言うと皆さんにシバかれそうなので言わないでおく 内定も貰って就活も終わったし夕方からの勤務なので昼間は労働もない 昼間は別に聴きたくもレコードを流しながら鼻クソをほじっている ただiPhoneで音楽を聴くよりもひと手間加えることでなんとなく達成感があるからである どうだ、しょうもないだろう 最近はレコード保持者が俺氏含めて増えた みんな何でレコードプレーヤー買ったんですか 不便なのに て��とで書くことないから俺氏とレコードの馴れ初めでも書く
成人祝いと言われて皆何を思い浮かべるだろう 金とか、ペンとか、ネクタイとか、アクセサリーとかだろうか 俺氏は成人祝いで両親から上述のしょうもないモノ達よりもっとしょうもないレコードプレーヤーを貰った 無論、金が欲しかった てことで仕方なくレコードを集めることにした そのおかげか、レコード持ってます!っていうことでなんかちょっと、ね、カッコイイ感じにはなった 父親が持ってたレコードも流せちゃったりして結構良かった そこから古臭いものに惹か れるようになりラジカセなんて買っちゃったりもした ラジカセは昔の人からしたら相当便利だよな ラジオ聴けて、カセットテープ聴けて、CD聴けて、現代で例えるとメシ美味くて、どこにでもあって、朝までやってて、磯丸水産みたいなもんだ 磯丸水産に対する大衆の評価は軒並み低いが俺氏はかなり評価している お通しはキショいがメシが美味い 客層はウンコだが全店舗 水産!!て感じの雰囲気がある 総じて☆3.5である 低いか 磯丸水産といえば新宿西口店に行った際に泥酔をしたのちに食い逃げをしてしまったことがある 食い逃げというと聞こえが悪いが普通に会計を忘れて京王線に乗ってしまっただけだ それを食い逃げと呼ぶのか(翌日電話を掛け謝罪をして支払いしました)
明日はサボテン栽培を始めたアフロ幼馴染のお手伝いで草刈りしてきます サボテン欲しい方、メッセージ待ってます みんな明日も仕事頑張れ ~
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2022/12/28
犬と彼女と母と墓参り。
母は友人に線香や立派なお花を用意して貰っていた。あまり家族には恵まれない人生のようだけど、友人には恵まれてる。これはこれで素敵なものだと思う。お家焼肉をしてるときに、見た母の若いときの写真はとても綺麗でびっくりした。
「年始は駅伝見るから来なくていいよ」と息子の年始訪問を断る母。まぁ、マイペースで生きてよ。
夜はバスケ関連の友人とホームパーティー。家族を持つ人が多くなってきて、わいわいがやがや。
2022/12/29
昼に神戸に勤めに行った友人とご飯。山と海と学校を往復してる毎日みたい。想像すると都会の雑踏にまみれてる自分には素敵に思えるけど、実際はそうでもないらしい。とにかくレコード屋が少ないと嘆いていた。
神経質ながら優しいやつ。国際政治やら人権問題の研究していて独身。
人権問題を扱うってことは世の中の数多の人権侵害調べるってことで、なんでそんな気が滅入ることしてるんだよと言うと「まったくだねと」笑ってた。
とにかく生きてて何をしてても誰かに水を差されることが多く、あと本人も良く水を差すので、年中心が濡れてる。まぁ、性格が悪い(人が悪いではない)やつが好きなので、気があって友達やってる。
また、メソメソと結婚への不安を語った。好きな人には全面降伏でいいよと言ってた。全くそのとおりだよ。2022年の戦争について質問すると、世界の行く末は闇の中だってさ。悲しいことはつきないから、ま、たまには顔を合わせて笑ってよう。
2022/12/30-2022/12/31
大掃除…、いや中掃除くらいをざっとして彼女の実家へ移動。義理のお父さんとお母さん。そして義理の姉夫婦と子供、そして義理の妹夫婦と1/2まで一緒にいる。カニ鍋食べてお酒を飲む。昼間は公園で子供と犬と遊び、夜はモツ鍋と年越し蕎麦。
FNS歌謡祭や紅白やおもしろ荘なんかを観てあーだこーだ。幸せな家族のなんの変哲もない年越し。ほんとにあるんだな、これ。お金使わないし。うちはこういうthe生活みたいなのとは無縁だったから。血の繋がりが希薄で孤立している。どちらがいいかなんてわからないけど、まぁ両方経験できるのは幸せなこと。
「年越しってどんな感じでしてたの?」と彼女に聞かれ、毎年何してたっけ?とか考えたけど、深い関係でもない女性と寝たりしてたなと言えないことが頭をよぎる。寂しさは悪い意味で色んなものを飛び越えていく。漂流してたんだね、たぶんさ。いまは碇が湾岸についてるよ。
2023/01/01
区切りのない毎日を誰かが決めたルールで無理矢理区切って。なんだかんだ理由つけておめでとうとか言い合ってさ。そんなんでまた1年過ごせたら良いよね。明けましておめでとうございます。
熱燗を飲みすぎた。
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会うのはいつも女性
Tuesday 11 November 2014
真観は、禅寺に行けなかった。
7時5分のバスに乗り東京へ向かった。 10時、真観は、田無駅にて友人の画家Kとその友人Sさんと会った。3人で駅前のインディアンレストランに行ってランチを食べながら自己紹介と撮影の打ち合わせをした。真観は、近くSさん家族の家族写真を撮る。カボスを2人に3個ずつプレゼントするとKからは日本酒のゼリーとお菓子、Sさんからは、月初め石垣島に行った時のお菓子を貰った。
その後新宿に戻り、下北沢駅経由で駒場東大前まで移動。3時、池尻に住むMちゃんのお母様に写真を届けた。約1.5時間お母様とおしゃべり。コーヒーとバームクーヘンを頂いた。今日は、Mちゃんのお父様の一周忌の写真の納品だった。真観は、おしゃべりの最後にサプライズで真観が制作したBOOKを見せた。お母様は大層喜んでくれた。そして後もう2冊増刷して欲しいと言われた。真観、今回もサプライズ制作は成功した。帰り際、やはりカボスをお母様に3個プレゼントするとお母様から長野で製造されたワインを1本頂いた。
Mちゃんのお母様の家を出て近くのバス停から東急本店行きのバスに乗った。約束の時間まで少し時間があったの���中古レコード店でレコードを物色。特に欲しいレコードはなかった。6時20分、ドンキホーテ前でYちゃんと再会。Yちゃん相変わらず綺麗で可愛かった。Yちゃんの知り合いのお店へと歩く。その店は神山町にあった。店に入り、2人共お酒は飲まず料理だけ注文した。真観は、Yちゃんに「例の写真」を渡した。Yちゃんは、ビックリして喜んでくれた。正解だった。おしゃべりしていると時間はあっという間に過ぎお店を後にした。真観は、マークシティのバス停留所から9時5分発のバスに乗って静岡に帰った。カボスもYちゃんに3個プレゼントすると両方から高円寺の「踊り子サブレ」を頂いた。
真観は、4人の女生徒会った。 真観のコミュニケーションは殆ど女性だ。 それは何故か?真観が独身だからか? よく分からないが日本人の男性とのコミュニケーションは少ない。
今日のカボスと「そのお返し」は不思議だった。 久々に「トランシーな出来事」を書こうと思う。
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「虚無への供物」中井英夫 2271
第二章
27予言者の帰国01
この節のタイトルは、“予言者の帰国”です。 牟礼田俊夫がよいよ帰国するということなのでしょう。 第一、第二の事件の経緯なんかがわかるんでしょうか? それにしても、前から気になっていたのですが、牟礼田俊夫が予言者になった所以は何なんでしょう? そのあたりもわかるのでしょうか?
どういう訳か、牟礼田は探偵を引き受ける資格がないといいます。 例えとして、ピーター・ガンズのようには事件を解決できないとあります。 『赤毛のレドメイン家』(イーデン・フィルポッツ)の古典長編推理小説に登場する初老の探偵のことだと思います。 この話、ブレンドン刑事が惨めな失敗をしたあと、途中から、この探偵が登場するようで、それで例えているのかもしれません。 驚きの犯人も、もしかするとそれを例えている?と言うことは、犯人の目星もついているとか。 予言の件もありますから、そうとうの名探偵ということになるのでしょうか?
久生はプジョー203を運転して京浜国道を走っています。 ドゥサントロワ、フランス語で表現されています。粋ですね。
ちなみに、車名、203プジョー53年は、115万円だそうです。 重量当たり制動馬力 44.2HP/トン 加速所要時間 6秒31.1哩 登坂能力 勾配焼く18°をセカンドギアにて停止状態よりスタートせるも楽に上がれり 最小回転円直径 9.30メートル 制動力 76.8平方センチ/トン 四輪-683.2平方センチ950kg 計画燃費量 56キロ/1ガロン
だそうです。
目的地は、目白の氷沼家です。 空港に迎えに来ていた弟妹やジャーナリズム関係らしい友人と長いこと話し込んでいましたが、 紀尾井町の家へもよらずで目白の氷沼家へ向かっているみたいです。 探偵を引き受ける資格はないが、蒼司を見舞いの行くのだそうです。 ちなみに、 牟礼田は三十一二歳、外人の間でも目立つほどな長身で、 鼻筋も通って精悍に引き締まって居るみたいで、亜利夫は眩(まぶ)しい印象を受けています。
車の中では、藍ちゃんが、聖母の園の火事のことを聞いています。 藍ちゃんは、氷沼家の血筋を絶やすために何者かがあの事件を起こしたと決めつけているらしいです。
牟礼田は、客観的に考えようというのか、 朝刊の内容として、 『火災原因について警察が同日朝から調査を開始、同夜九時半にいたり原因はカイロ灰の不始末とわかった』 と発表したと言っていますね。 それよりも、死人がひとりひょっこり紛れ込んできたとしか考えられないと、 死体の数が合わないことをいいます。
それに、藍ちゃんは、やっぱり放火だったのでは、と興奮しています。 大叔母さんを殺すためだけじゃなく、誰かもう一人の死体を始末する必要があったから放火して一石二鳥を狙ったやつがいるんだとです。 なにしろ、養老院なんだから確実な自然発火装置を取り付けたり死体を運びこんでおいたに決まっている。とです。 確実な自然発火装置ってなんでしょう?
それを、亜利夫が否定しますね。 あまりに不確実だからというのです。 確かに確実ではないですね。
牟礼田もG・K・チェスタートンを例えて、あまりの現実離れして飛躍しすぎていると否定しますね。
チェスタトンは、英国の作家で、あのブラウン神父の生みの親だそうです。 「賢い人は葉をどこに隠す? 森のなかに隠す」で有名な小説「折れた剣」のことだと思います。
牟礼田は、あまり喋らないですね。 亜利夫が予言がどうしてできたのか聞いても、またいずれと話をそらします。
藍ちゃんがみたら喜ぶだろうと、 1911年にできたパリの巨大映画館ゴーモン・パラスでH=G・クルーゾーの映画をやっている。 『悪魔のような女(あくまのようなおんな、原題:Les Diaboliques)』という映画で、 フィルム・ノワールの代表作なんていわれてなかな評判だったとです。 フランスでの公開が1955年1月29日だそうですから、帰国直前に見たのでしょう。 余計印象にのこっていたのかもしれません。 フィルム・ノワール(仏: Film Noir)は、フランスの批評家によって命名された犯罪映画のジャンルを指すそうです。
で、『悪魔のような女』という映画のネタバレをしてます。 省略しておきますけど、これはまずいでしょう?
藍ちゃんは、1953年頃にキングレコードから発売されていたデッカ・レコード盤のLPイヴ・モンタンは持っていたけど、 牟礼田がお土産に持って帰った“ガレリアン原題:Le Galérien”イヴ・モンタンを嬉しがっています。
結局、11時頃に目白の氷沼家につきます。 “赤の部屋”で蒼司と牟礼田は再会します。 それを亜利夫ひとりが見守ることになります。
蒼司がいきなり泣き出したのは、日常茶飯の出来事にかわったことの家の業を一身に引き受けたつらさからであろう。 と、牟礼田は「大丈夫だ」と慰めます。 それから、どこかの別荘へ行くとか、この家を処分する方法や時期などの内輪話をしだします。
久生と藍ちゃんは隣の部屋で、貰ったレコードをテープに録音しています。
それから十日ほど経った二月の二十八日の夕方までは、 牟礼田はそれより何かと忙しかったらしく、亜利夫が克明につけている日記を借りていったほかは、特に何もないようです。
どうも、牟礼田の態度が気になりますね。 ズバッと解決できないとしても、 なんだか、解決したくないような感じです。 まあ、これから徐々にわかっていくのでしょう。
つづく
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セイント・オブ・セカンドチャンス:ベック家の流儀
2023年/アメリカ/カラー/93分
Netfilixで9月から公開されたドキュメンタリー映画「セイント・オブ・セカンドチャンス:ベック家の流儀」をTBSラジオ「こねくと」で紹介されていたので、再加入して視聴しました。
マイク・ベックへのインタビューから始まる。彼の父、ビル・ベックは第二次世界大戦で片足を失いつつも情熱的な経営者でマイナーリーグの経営を踏み台にして数々のメジャーリーグのオーナーになっていく。そしてシカゴ・ホワイトソックスのオーナーになった時に、息子のマイクを経営に誘う事になる。ビルは早くからアフリカ系選手を起用したり、ホームランが出た時に電飾や花火といった演出を考えたりとアイデアマンでもあった。1970年台��ディスコブームだったこともあってマイクの発案で1977年に球場でディスコイベントを行うと好評だった。だったら逆にディスコ嫌いの人向けのイベントをやってみようと思ったところ、ラジオDJのスティーブ・ダールの発案で1979年7月12日のダブルヘッダーとなっていた第1試合と第2試合の間にお客さんにディスコ音楽のレコードを持ってきて貰い、持ってきた人には98セントで入場でき、集めたレコードをフィールド上で破壊するイベントを開催する。
マイクは軽い気持ちで始めていたが、DJのスティーブ・ダールは今で言うところの迷惑系youtuber的存在で自己顕示欲が強く、所属していたラジオ局がディスコよりになるために解雇された経験から過激な発言をしていた。また観客にもディスコによって台頭してきたアフリカ系ミュージシャンや同性愛者への反発を持つ白人がおり、ダールによる煽りによって球場側の想定を超える盛り上がりになってしまう。事実球場側の想定は20000人~35000人だったのに対し(警備員は35000人想定で用意されていた)、球場のキャパを超える50000人以上が集まってしまった。入れなかった観客が違法に入場したり、第1試合中なのに「DISCO SUCKS」の大コールでおかしなテンションになった後でのレコード破壊イベントが行われてしまい、興奮した観客がフィールドに降りてしまったことで第2試合どころではなくなる。観客にも逮捕者やけが人が出てしまい、第2試合は没収試合とされてしまう。この事件は「ディスコ・デモリッション・ナイト」と呼ばれる事になり文化や人種の排斥運動として記憶されることになってしまう。そしてこの事をきっかけに父ビル・ベックは球団を手放すことになり(事件だけではなく選手の年俸がどんどん上がってきていたのも理由のひとつなのだが)、マイクはメジャーリーグのブラックリストに登録され球団から離れ、アルコール中毒の生活を続ける事になる。
「ディスコ・デモリッション・ナイト」の英語版のウィキペディア
https://en.wikipedia.org/wiki/Disco_Demolition_Night
しかしマイクが再婚したことをきっかけに良い流れが戻ってきていた。1993年に投資家からミネソタ州のセントポールにセインツという独立リーグのチームを作るので参加しないかというオファーを受け、���諾する。父親譲りのアイデアマンを生かして様々なイベントを仕掛けていき、小さいながらも地元に愛される球団にしていく。スタッフも少ないためにマイクも現場で働き、前妻との間に出来た男の子ナイト・トレインや今の妻との娘レベッカも働くようにした。やがてセインツでの成功が認められ、メジャーリーグに新規参入するタンパベイ・デビルレイズ(現レイズ)に誘われ、マイクは復帰するのだが…という話でした。
いやー、めちゃくちゃ面白かったです!ドキュメンタリー作品でありながら、エンタメ的な作りで楽しくみられます。それはマイク・ベックさんの生い立ちが起伏が激しいので映画向きだったのもありますし、語り手であるマイクさんが凄く陽気で話し上手なのも見ていて楽しくなってしまうのもあります。さらにこのマイクさん、芸達者なのを生かして再現VTRのパートで父親のビル・ベックさんを演じているのには驚きました。
また一見野球がテーマの映画のように見えますが、どちらかというと球団ビジネスに関わ��ファミリーヒストリーという感じなので野球に詳しくなくても大丈夫な作りになっています。アメリカ・アジア以外の野球に詳しくないNetfilix視聴者にも解るのでは。映画での事件になる「ディスコ・デモリッション・ナイト」も音楽面での事件ですし。
「ディスコ・デモリッション・ナイト」については近代音楽史まで見ている音楽ファンにはお馴染みの話なのですが、この事件の前後関係についてはまったく知りませんでしたし、知っている人も少ないと思うのでこの映画の資料としての価値も高いと思います。この事件は表現の弾圧だったり、焚書というナチズム的な行為がアメリカで起きてしまったので野球という範囲を超えた大きな問題だったわりには、その後の総括がベックファミリーの退任で終わらせてしまったふしがあるので今作にも関わっているメジャリーグとしてもきちんと後世に残すためにも総括面もやっておきたかった思惑もあったかもしれません。
映画を見ていくと「セイント・セカンドチャンス」というタイトルになった理由がよくわかると思います。色んな意味で二度目の再起となるチャンスが素敵な話でした。
了
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【今日のレコード】JOHN MAYALL & ERIC CLAPTON/Bluesbreakers
【今日のレコード】JOHN MAYALL & ERIC CLAPTON/Bluesbreakers 英国ロックのある意味「父」ともいえそうなジョン・メイオールの名作は、父の日ギフトにもお勧めです♪ こんなのプレゼントしてもらえるなら、チチっつうのになりたいよ、ワタシも😁 https://sorc.theshop.jp/items/75161501
もしもまだ明日の『父の日』のプレゼントが決まっていないなら、お手伝いいたしますヨ!例え��このレコードなどはイチオシで、お父さんじゃなくても、こんなレコード貰ったら小躍り間違いなし!言わずと知れたジョン・メイヨールがクラプトンと組んで出した一枚。ジャケもいいですよね~。お父さんが聴かなくなったらご自分のモノにしちゃってください。ムフフ。ご予算に応じたご提案も致します!『父の日』にはレコードを♪ ☆こちらの商品は携帯サイトBASEから!!商品詳細→…
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#エリック・クラプトン#ジョン・メイオール#ソーク#ブルースブレーカーズ#Bluesbreakers#Eric Clapton#覚王山#JOHN MAYALL#JOHN MAYALL & ERIC CLAPTON#LP#sorc#名古屋#中古レコード
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長岡に帰る度に届いてるブツ達。 『グループサウンズ』近田春夫 僕が子供の頃、でっかい家具調のステレオセットがありました。 そのため当時大学生だった叔父が自分の家で再生出来ないからとレコードをウチに置いてたのですが、それを母親が僕の子守唄代わりにいつも流してくれてました。 その中でも心に刺さったレコードがザ・タイガースの「ヒュー��ン・ルネッサンス」、このアルバムが大好きで何度も繰り返し聴かせて貰ったのが僕の最初のRock'n'roll体験。 またその叔父の車に載せて貰うと、8トラックカセットでブルー・コメッツやズー・ニー・ヴーなんかを流してて、その時は暗い曲ばっかだなぁなんて思って聴いてましたが。 そして中高生の頃、グループサウンズのリバイバルがあり、近田春夫さんはラジオでよくGSナンバーを流してくれ、また甲斐よしひろさんもグループサウンズ特集をやってくれ、そこでダイナマイツやリンド&リンダーズ、アダムスなんかを流し、レコードか見つからなかったからと、タックスマンの「恋よ恋よ恋よ」などを流してくれてすっかりGSに夢中になりました。 そして大学生になった時、黒沢進さんの著者「熱狂GS図鑑」と出会い、更にGSに夢中になり、ゴールデン・カップスやビーバーズなんかのの中古レコードを漁りまくる日々が続き、そのうち黒沢さんに手紙を送り、黒沢さんのB級GSコレクションをカセットテープで送って貰ったり、手に入らないカップスのレコードを録音して貰ったりしてました。 で、グループサウンズを日本のガレージサウンドとして捉えるという現在の傾向は間違いなく黒沢進さんの影響下にあるのですが、この近田春夫さんの本はそれとは違う目線でのリアルタイムの東京で体験した世代の視線で語られててとても面白かったです。 僕も以前からグループサウンズはビートルズの影響が薄いと思ってたので近田春夫さんのGS論はとても同感したし、ピーこと瞳みのるさんやエディ藩、鈴木邦彦さんへのインタビューは知らない話も聞けて興奮しました。 やっぱグループサウンズの沼は深いよ。 https://www.instagram.com/p/CpZEWybvwDb/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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僕の地元の話
「大野城」
かつてこの地にあった山城からそう名付けられたこの土地は、今となっては城下町とは程遠い、山と工場と住宅地しかない寂しい街だ。
当時の僕は特に目的もなく毎日を過ごし、高校も家から近所という理由で決めた。
もちろん将来の事など考えたこともなかった。ダラダラした人間だった。普通の何処にでもいる中学生だ。
Aとの出会いは高校進学も決まった中学3年の終わり。
Aは昼から学校に来て、気付いたら早退してるような変わった奴。
中学生では珍しくブルースギタリストを好んで聴いていたAの家に僕は入り浸るようになる。
Aの家はいつも家族が不在だった。
家にはAの親父の趣味なのか、
沢山のブルースやR&BのCDやレコードがあった。
そんなAの家はいつのまにか僕たち複数人の音楽好き中学生の恰好の溜まり場になった。
Aは僕を始め、音楽が好きな奴をしょっちゅう家に招いていた。
そこで初めて目の前で人がギターを弾いてるとこを見た。
Aの家に集まる奴らはギターやドラムなどの何かしらの楽器を演奏できた。
中でもAはダントツでギター上手かった。
ただ漠然とギタリストというのはテレビの中の存在だと思っていて、自分で弾くという事が選択肢に無かった僕にとって大きな衝撃だった。
同時に僕にも弾ける��もしれないと気持ちが高揚したのを覚えている。
ある日Aに地元のブルースBARに連れて行って貰った。
中ではおじさん達がセッションをする中、
Aにギタースケールのポジションだけを教えられ、その場でセッションに参加させられた。
無我夢中で教えられたポジションだけをひたすら適当になぞった。
今思えば旋律とも音楽とも思えない不協和音だったと思う。
それでもAとお店のおじさん達はみんな褒めてくれた。
僕はもう抜け出せなくなってしまった。
Aや仲間、そして音楽と出会って僕の人生観・価値観、色んなものが変わっていった。
僕はダラダラした奴から、我が強くて我儘で音楽が好きなダラダラした奴に変わっていった。
それからは残りの中学校生活は思い出し��れない程の記憶の断片。
仲間達とAの部屋にドラムセットや真空管アンプを置いて窓は防音材でふさぎ、ひたすらセッションしていた。
学校を早退して中古CD屋で欲しいものを漁りまくった。
中学校の放送室でお気に入りのブルースギタリストのCDを聴かせ合った。
ブルースBARでセッションした後、
朝までお店の倉庫で寝かせてもらった。
今まで味わった事ない程の刺激的な毎日だった。
僕達は無敵だった。ずっとそんな気がしてた。
今現在はAを含め、もう地元の仲間とは連絡を取っていない。
みんな我が強いのか、いつしか会うたびに喧嘩ばかりするようになってしまった。
理由も思い出せない程くだらない喧嘩ばかり。みんなロックスターに憧れて変に尖っていたせいか我を通す為なら他人の事なんてどうでも良かったのかもしれない。
特に大学まで進学した僕と中学を卒業して高校へ進学せずに働き出したAとの価値観は大きくすれ違っていった。
今ではみんなバラバラだ。
どこで何をやっているかは風の噂で聞くが連絡を取ることは恐らくもうないと思う。
みんなそれぞれ別の居場所を選んだ。
今でも地元に帰ると当時の事をよく思い出す。
Aの家、中古のCD屋さん、中学校、潰れたブルースBARの跡地。
僕の地元は山と工場と住宅地しかない寂しい街だ。
それでも僕が僕である理由が詰まっている。
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ゴールデンレコード
満天の星空、というものを初めて見た時、大倶利伽羅は己に足りないものはきっとこれだったのだろうと確信した。 幼い頃から己には何かが足りないような気がしていた。それが心なのか、趣味なのか、与えられた感情なのか。理解できなかったものを、満天の星空の下で理解することができた。これが心だ、これが感情だ、これが激情だ。暴れ狂う感情の奔流に流されながら、幼いながらに確信したのだ。そのときから、大倶利伽羅は星の下でしか生きることができなくなった。 大倶利伽羅はあまり裕福な家庭ではなかったが、生まれて初めて両親におねだりをして、天体望遠鏡を与えられた。大人になってもその天体望遠鏡を持っていて、幼い頃に貼ってしまったシールを未だに剥がすことができないでいる。両親共にこの世を去って、叔父の長谷部国重に引き取られてからも、大倶利伽羅にとって星空とは特別であった。
大学生にな��てから、人がまばらに入るような小さなプラネタリウムにアルバイトで入るようになった。幼い頃から通っていて、館長がアルバイトどうだろう、と勧めてくれたのだ。快く引き受けて、週四日大学の帰りと土日に入っている。長谷部は大学を卒業するまでしっかりと育てる、と金銭面での補助をしてくれている。このアルバイト代は将来的に長谷部に金を返すためにと思って取っておいているが、中型のバイクだけは購入した。 一人暮らしを始めて、バイクに乗って当てもなく走り、満天の星空を眺めて自宅へと帰る。夢のような日々であった。
そんな日々に小さな転機が訪れたのは、立冬が来てすぐの頃だった。少し寒くなってきた頃合いで、夜は長袖の上からコートを軽く羽織る程度でないと出歩けない。この季節になってくると、天体観測も趣が出てくる。そろそろまたバイクを走らせてどこかへ行こうかと思っていた矢先のことだった。 日曜日の夜、最後の上映時間になると殆ど誰も来ることはない。誰も来ないのであれば、閉めても構わないと言われていて、その日もそうしようと思って受付から立ちあがったところであった。 男は息を切らせて、最後の上映に間に合うかと訊ねてきた。 真白い雪のように白い肌に、金に輝く蜂蜜色の瞳、右目に眼帯をした、ぬばたまの髪の男だった。スーツの上にトレンチコートを羽織り、黒い皮手袋をつけている。
「大丈夫です、上映できます。」 「よかった。ありがとう。」
大倶利伽羅が今まで見た、どんな人間よりも美しく、凛としていた。人というにはあまりにも美しく、造形はどんな芸術品よりも優れていると思った。長い前髪の下、眼帯の下に一体何を隠しているというのか。そこを暴いてみたいとさえ思った。 頭を振って、目の前に立つ男にチケットを渡した。それを、皮手袋をしたまま男は受け取り、蜂蜜色を柔らかに和ませてありがとう、と言った。 とろけそうな瞳に、甘く低い声音に妙な心地になる。 男はその日から毎週必ず通ってきた。日曜日の夜、最後の上映のタイミングで男は来る。スーツであったり、私服であったりとまばらではあるが、男の容姿は目立ち、毎週必ず来るために大倶利伽羅はすっかり覚えてしまっていた。決まった時間に現れて、決まった時間に帰る彼のことを。
その日も、同じように日曜日の夜、最後の上映の時間に現れた。 ありがとうと笑ってチケットを受け取った男は、無数の座席の中から端の方を選んで座った。他に客はいないのに、なぜ真ん中ではないのだろうか。それを問うようなこともできず、上映時間に扉を閉めに、大倶利伽羅は中へと入った。 オーナーからは、客があまりいないときは観ても構わないと言われていて、時折そうしていたために、この日も何とはなしに座席に座った。男の横顔が見える位置だった。男はこちらを気にした様子もなく、目の前で上映される満天の星空を眺めていた。 展開される星空たちを眺める男の金に輝く瞳が、人工の星空の光を映してきらきらと輝いた。男の瞳は大倶利伽羅の瞳と似た色をしていたが、この男の色はもっと美しい。本物の星空の下であれば、一体どのような色を映すのだろうか。そう考えたら、男のことが気になってしょうがなくなった。 冬の大三角形、とプラネタリウムの中で女性の声が響いた。 オリオン座の上の方、御者座。黄色みを帯びた色合いの御者座の一等星、カペラが強く輝いている。プラネタリウムの中で線が引かれ、御者座の絵が描かれた。 冬の大三角形の「ベテルギウス」と「プロキオン」を線で結び、直角に北へ曲がったところ「ポルックス」がある。ほぼ同じ明るさで「カストル」があり、ふたご座の線が引かれて行く。 オリオン座の「ベテルギウス」、こいぬ座の「プロキオン」、おおいぬ座の「シリウス」。これで冬の大三角形となります。そう、女の声でナビゲーションがあった。 きらきらと輝く男の瞳が、それらを一瞬足りと逃さぬようにとじっと見ている。瞬きをするたびに、男の瞳から金が、星が、零れ落ちそうだ。 己がどうしてしまったのか、全く分からない。こんなに興味を示したのは、星空のことだけだったのに。今は星空を眺めることより、男の横顔だけを見詰めることに夢中になっていた。 上映が終わり、大倶利伽羅は慌てて視線を戻して扉を開けた。館内の空気が入れ替わり、現実に戻ったような心地になる。は、と息を吐いて振り返れば、男は立ちあがって、明るくなった天井を見詰めていた。まるでそこに星空がまだあるように見上げる彼に、名残惜しさを感じた。 男は大倶利伽羅に気付くと、大倶利伽羅の前を一礼して通って行った。彼の残した残り香だけが鼻に残る。 大倶利伽羅は男が見詰めていた天井を見上げた。確かあの辺りは、ベテルギウスがあった辺りか。半規則型変光星と呼ばれるそれは、周期的または不規則に光が変わる。距離にして642光年。途方もない距離に、ロマンチックなものすら感じない。
それからも男は、プラネタリウムを観にやって来た。決まって日曜日、夜の最後の上映時間に。 大倶利伽羅は男とまともに話をしたこともなければ、名前も知らない。ただ、男がやってくるときに今日の服装はスーツだの、先週は私服だっただのと勝手に思っているだけだ。自分自身で、こんな己が気持ち悪くて仕方ない。こんなストーカーみたいに、男の服装をチェックしているだなんて。 男はその日、二つのコーヒーを持ってやって来た。この小さなプラネタリウムは飲み物に関しては自由だ。少し傾斜のついた椅子に座るときは要注意だが、零されることも滅多にない。ただ、二つコーヒーを持っていることに疑問を抱いた。なぜ、と思いながら男にチケットを手渡せば、男は大倶利伽羅に一つのコーヒーを渡した。まだ温かいそれを思わず両手で受け取って男を見上げる。
「あげるよ。もうずいぶんと冷えてきた季節だろう。下のショップで買ってきたんだ。」
確かにこのプラネタリウムがある建物には、コーヒーショップも入店していたが、まさか自分にと購入してきたものだとは。ついでかもしれないが、大倶利伽羅の胸には衝撃が走った。この、何とも言えない感覚には覚えがない。新しい星が生まれたとニュースが流れたときでさえ、こんな気持ちにはならなかった。面映ゆいような、嬉しいような、胸が温かくなって、むずがゆい感覚だ。
「あ、ありがとうございます。」 「今日もお疲れ様。」
にこりと笑って、男はチケットを受け取ってから中へと入って行った。どうしたら良いか分からずに、男から貰ったコーヒーをカウンターに置いて、上映時間になるまでぼうっとしていた。 上映が始まっても、今日は中へと入らずに、コーヒーを飲みながら上映時間が終わるのを待った。普段であれば細々とした雑用をこなしているが、もうそんなことをしているような気分でもなかった。雑用は明日に回しても問題ないだろう。 金に輝く瞳が、己を映していた。それだけで、星々の輝きを見詰め続けているような優しい心地になる。大倶利伽羅はこの感情を知らない。ぽっかりと空いた穴を埋めるはずの満点の星空だって、こんな感情を教えてはくれなかった。
己は一体どうしたのだろうか。
あれほどまでに熱意のあった天文学にも身が入らず、男のことばかりを考えていた。名前を知りたい。彼の、宵の明星のような瞳に己を映してほしい。そればかりが頭に浮かんだ。これを恋と呼ぶには少しあどけないような、他愛もない小さな想いだった。 彼が来ない平日の夜、アルバイトに入っていても彼の姿を探してしまう。今週末必ず来ると分かっていながら、彼が来ないかもしれないと不安になることもあった。日曜日になれば、今か今かと彼を待ち、いよいよ彼が現れれば、彼と共にプラネタリウムに入り、彼の顔をじっと見ていた。彼は一度も気付くことなく、満天の星空を眺めていた。 彼の金の瞳を、宵の明星にたとえたが、ゴールデンレコードにも似ているかもしれないと思う。喩えられて嬉しいものではないかもしれないが、ボイジャー探査機に搭載されたゴールデンレコードのジャケットの色にも似ていると感じた。あれは美しいもので、大倶利伽羅のお気に入りでもある。 地球外知的生命体探査のひとつであり、地球や生命の分化を伝える音や画像が収められているレコードだ。地球外知的生命体が発見し、解読されることを期待して打ち上げられたもので、いつしか、もしかしたら、と期待を背負ったものである。 困難を乗り越えて星の世界へ。その言葉がひとつのメッセージとして収められていた。レコード自体が銅製なのは少しいただけないが、知的生命体がいる、いないにしても夢のある話である。その、美しい黄金のレコードの輝き。それに、似ているなと、思ったのだ。
「今日もお疲れ様。これ、どうぞ。」
たまの気まぐれで、男は大倶利伽羅にコーヒーを差し入れた。他の客であれば断っていただろうが、男からの差し入れは、どうしてだか断ることができずに受け取ってしまう。
「……どうして、いつもくれるんだ。」
ある日、いつも通り差し入れられたコーヒーを受け取り、敬語も忘れて男に尋ねた。男は大倶利伽羅の言葉を聞いて、ぱしりと瞳を瞬かせた。宵の明星、ゴールデンレコード、大倶利伽羅がそれらに喩えた瞳が黄金に煌めく。
「ええと、理由なんて特にないんだけれど、いつも会うし、ここ気に入ってるから。」
だからここで働く君も気に入ってるんだ。 そう言った男に、何と返して良いか分からず、大倶利伽羅はただ、そうか、とだけ返した。男は特に気にした様子もなく、瞳を和ませてカウンターから離れて行った。 気に入っている、男はそう言った。それが、嬉しくて嬉しくてたまらなくて、感情の発露の仕方が分からずにぐっと胸を押さえた。どうしたら良いのか、本当に分からなかった。 上映時間になって、重い扉を閉めに行ったとき、男と目が合ってしまった。気まずくて目を逸らしたが、男はにこりと笑っていた。ばくばくと心臓が鳴り響いて男へ向ける感情が大きくなっているのを感じた。後ろ手で扉を閉め、男の後ろ姿をじっと見つめたまま、大倶利伽羅は動くことができなかった。よく見ればつむじが二つあるのか、男のぬばたまの黒髪は二か所飛び出ているのが分かって、また息が苦しくなる。 ベテルギウスは、と説明する女性の声などとうに聞き飽きていて、男の声が聴きたいなと、思った。 はっと気が付けば上映時間は終わっていた。男は大倶利伽羅の前を会釈して通り過ぎて行く。その男に声を掛けたくて、けれど、どう声を掛ければ良いのか分からずに、男の背中を見送る。 館内の掃除が終わり、レジの締め作業をして、鍵を閉めて自宅へと帰る。すっかり冷え切った暗い部屋へと足を踏み入れてから、膝から崩れ落ちる。仕事に身も入らず、男のことばかりを考えている。
「すき、なのか……?」
それも分からず、初めての感情に振り回されっぱなしだ。 夕食も買ってくることができなくて、腹が鳴りっぱなしのままベランダへと出た。相も変わらず都会では星は見ることが叶わなくて、霞がかった暗い空を見上げた。月だけが爛々と輝いて、大倶利伽羅を見下ろしている。金色の輝きに、彼を見出して、大倶利伽羅は己の単純な思考に落胆した。もう深いことなど考えられずに、ただ単純にまた彼に会いたいと願う。
次の日の夜、久方振りに天体望遠鏡を手にして外へと出た。己がこんな思考に陥るのも、最近本物の星を見ていないからだと言い聞かせる。 明日のシフトは休みで、特に用事もない。星が有名な地名を頭の中でいくつかピックアップしながら、バイクの上に望遠鏡を固定する。望遠鏡片手に好きな場所へと走り回れるのは、今の内だけかもしれない。 ふと、背後から視線を感じて振り返った。そこには、月をバックにこちらを見ている美しい男がいた。思わず息を飲む。男は、プラネタリウムに毎週来る男だった。近所に住んでいたのか、と驚いていれば、男は蜂蜜色の瞳をとろけさせた。
「君、プラネタリウムの人だよね。」 「あ、ああ。」
そうだと頷くにも、壊れてしまうのではないかと思うほど首が重く、骨を軋ませながら首を縦に振る。
「君、星が好きなんだね。それ、天体望遠鏡でしょ。」 「そうだ。」 「それから見る星は、どんな感じなのかな。」
男の美しい唇からぽんぽんと飛び出す言葉についていけそうもなく、思わず考えることを放棄して、口から出るままに言葉を滑らせる。それは、己でも信じられないような言葉だった。
「一緒に、見に行くか?」
なぜそんことを言ったのか、自分で理解できなかった。ただ口から滑り出てしまって、今更訂正するなんてことはできない。 言ってから、喉がごくりと鳴って、己でも緊張していることが分かった。 一体どうすると言うの��。この美しい男をバイクに乗せて、星が良く見える場所で何を話せば良いのだ。名前も知らない男を、ただ毎週��が通い詰めているプラネタリウムでバイトしているだけの己と、接点なんてそれだけしかないのに。
「いいの?」
男は嬉しそうな笑みを浮かべて快諾した。それがまた、信じられなかった。名も知らぬ男の後ろに乗って、知らないところへ行くことを承知するだなんて。 ああ、本当に信じられない。 シートの中に積んであった予備のフルフェイスを渡し、男が被ってしっかりと顎紐まで付けたことを確認し、大倶利伽羅はバイクを走らせた。頭の中でピックアップしたいくつかの場所の中から、比較的近場の丘を選択する。それでも数時間とかかる距離だ。男の体温を背中に感じてどくりと心臓が鳴る。大倶利伽羅は戸惑ったが、男はしっかりと腹に手を回してきた。男のパーソナルスペースの狭さにまた驚いた。 郊外へと進めば、暗い夜道は街頭も少なく、人の気配もしない。人家もまばらになって山道へと入っていく。何度も行っていてすっかり覚えてしまった道を、緊張しながら進んでいく。不意にカーブで、腹に回った男の手に力が入れば、また緊張が高まった。
「着いたぞ。」
目的地に着いたとき、すでに23時を回っていた。男の仕事のことなどすっかり忘れていたが、大丈夫なのだろうか。しかし男がフルフェイスを外し、空を見上げて上げた声に、すっかりそんなことなど忘れてしまう。
「わあ、すごい!満天の星空ってこういうことを言うんだね!」
表情を綻ばせて声を上げた男は、公園の草むらに倒れ込んで星を見上げた。子供のようにはしゃぐ姿に、思わず大倶利伽羅も表情を緩めた。 大倶利伽羅がバイクの後ろに人を乗せたことも、己が天体観測をするときに誰かを連れてきたのも初めてだった。長谷部の車で天体観測に行ったことは何度かあったが、こうして大倶利伽羅が年齢を重ねてから誰かを連れて来たことなどなかった。
「気に入ったか。」 「もちろんだよ。僕、都会育ちだからこういうのは初めてだ。」
都心から少し離れただけで、星空は簡単に男を出迎えた。 大倶利伽羅は男の横に天体望遠鏡を組み立てる。組み立てている大倶利伽羅の横顔を、男はじっと見ていた。
「そういえば、あんた、名前は。」
ついに聞いてしまった。聞いてしまえば、後戻りはできないと思ったが、それでも知りたかった。美しい男の名を。己には彼を呼ぶのに不便だからと言い聞かせて。
「ああ、そういえば教えてなかったね。僕は燭台切光忠。」
変わった名字だと思ったが、己も人のことは言えまい。光忠という名は、ずいぶんと彼に相応しいものに思えた。
「変な名前だと思ったでしょ。」 「そんなことはない。変わっているとは思ったが、俺も人のことは言えないからな。俺は大倶利伽羅廣光という。」
そう伝えれば、男は瞳を瞬かせ、朗らかに笑みを浮かべた。
「格好いい名前だね。」
お前の方が、など言えなかった。名前などどうでも良いと思っていたが、彼がそう言うのならば、そうなんだろうという妙な自信につながる。 名前も知らない男の、名前をついに知ってしまった。不思議と���揚する気持ちに、ついていけそうになかった。星も見ていないのに、気持ちが高ぶっている。 組み立てた天体望遠鏡を、燭台切光忠が覗く。その横顔は、今まで見たどんな星々よりも美しかった。
男のきらきらと輝く瞳が、大倶利伽羅を振り返ったとき、星の光を反射した。その瞬間、理解する。 大倶利伽羅が求めていたものが、これだということを。足りなかったものを埋めた先にあるものを。
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zzz
202201 (抜粋)
◯ 首都高速から見たスカイツリーと富士山がとても綺麗だった。 おせち、煮物、お雑煮、毎年おばあちゃんの家で食べている。母方の味も、父方の味も大好き。 私がまだ働いていないせいでお年玉を貰ってしまう。父の昔のレコードを出して眺めた。東京から遠いのにタワレコのシールとか貼ってあって、買いに行っていたのだろうか。私よりよっぽど行動力に溢れている。
◯ なぜか意外な先輩と昼ごはんを食べる。突然の連絡は結構嬉しい。連絡って怖いけど大体して悪いことはない。していこ、連絡、2022。
◯ 明らかに古着買う人でないファッションをしていたのに、親切に色々話したり試着したりできる最高のお店に行った。椿座。(私) は独り言が多いし、だいたい人に聞こえている。でも中身はない。そんなところも分かってくれた。戦闘服を手に入れた。
◯ (私)は心の中でぼくと打ちたいところである。理由は音の響きが好きだからでそれこそジェンダー的な理由もなにもない。何もないことが大事。
◯ ライブに行きたい。12月は毎週末どこか行っていたのに。(いやもっと行っていた) やるべきworkはやらないと。
◯ 植物の世話を蔑ろにしている。種取りの時にカビの胞子がふわっと舞う。金色だったら、ティンカーベルの飛べる魔法こんなんだと思う。
◯ やるべきworkが終わったら、オミクロンの人が爆増していた。最悪の玉手箱。
◯ ねむきゅん、ねもちゃん、ミントグリーンは私にとっての憧れ未満。バグってtwitter作ってた。
◯ ロングコートダディ「たゆたうアンノウン」 東京03 稽古場単独公演「拗らせてるね。」 ちょくちょくお笑いの配信をみる。ラジ父をより楽しく聴くためでもある。
◯ あのちゃんのANN0が良かったおもしろかった。みんな見くびってるって笑いながらいい、毎回ちゃんと仕事をしている感じが好きなのです。あのちゃんねるを見ていれば、ラジオできることはわかる気がする。サニーデイ・サービス「春の風」を流しながらあのちゃんクイズに投稿されるメールをリアルタイムで言っていく感じ、ラジオのエモがある。弾き語りも最高。
◯ 京都文学フリマに行った。 意外と広く、何をかっていいか分からなかった。なんとなく誰かの日記とかジャズの本とか取った。買った中で今一番読むのを楽しみにしているのは「日本現代うつわ論1」
◯ 久々に化粧をしていたらしい。顔がぽかぽかする。
◯ NHK「恋せぬふたり」いまのところ(1/17)、ちゃんと嫌な気持ちになる、大袈裟なところもあると思う。ドラマの彼らのアロマンティック・アセクシャルというベクトルではないけれど、恋人がいない、合コンとかも行かない、マッチングアプリをしないせいで、一人で生きることを覚悟し媚びない人くらいに思われることも稀にある。ただ「寂しさ」や漠然とした未来への不透明さに苛まれることはもちろんあるわけで、そんな(?)寂しさについて1話で話していて安心した。味方、相方、友達、うまい言葉が見つかったら発明ではないか? パートナーという言葉も私にはしっくりきていないので。
◯ 「ハッピーアワー」「偶然と想像」「親密さ (short ver)」「なみのおと」「何食わぬ顔」濱口監督の作品、京都でたくさんやっているから観ている。距離感にひぇっとなる。私はパーソナルスペースが広いので、どこか、羨ましくもあり、でも自分が役者側だったらと思うと自我をどこに配置するのか混乱しそうだ。って役者になるはずはないのだけど。本当より魅力的な嘘が本当になっていく。そこが本当に思えるから、ぬるりと身構えてしまう。”エロティック”ということなのか。あと、会話はいつも論理的じゃないわね。
◯ ライブが中止、延期になり始めた。 深夜バスに乗っていたはずなのにと思って、京都メトロのplatform行った。ハウス、テクノ。心地よい。基本的に耳が早かったり、詳しくはないので、箱行ってゆらゆらと音楽の楽しいところを貰って生きている。砂原さん終わったら人が急に減っていた。意外と誰が回しているのかに依るんだなと思った。 もともとオールするつもりでなく、平日金夜に元気が余っているわけもなく、4時半くらいに帰宅。自転車圏内の良さ。
◯ コロナのバカぁ。家をあけるからと冷蔵庫からお肉と野菜をなくてしていて食べるものが全然ない。無理すぎて、クワトロ2ハッピーのピザ食べた。ピザむまいぃ〜
◯ お餅たべすぎる病
◯ 記録は続かない。インターネット上に載せたいときに。 アナログの日記があるから問題ない。ただ、最近手書きじゃないからこその脳とアウトプットまでの速さの違いを自覚して、書いている。
◯ 家からでない。身体が重い。パワパフガールズZが大好きで、ふとサントラ調べたらレンタル落ちで1万近かった、まじかよ。
◯ story と key message と fact の行き来で苦しむ。取捨選択ができないのはコアの部分が分かってないからだと当たり前のことを突きつけられた。横文字。
◯ 自転車直って嬉しくて、無駄に家の周りを2周したけど、1.7周くらいの時に正気に戻った感じあった。
◯ リョウコ2000のアトロクよかた
◯ 藤井風のANNまたお待ちしています。また聞きたい。って急に思い出す。
◯ パソコン音楽クラブのremix rework、1曲目から鳥肌で好き。see-voiceが本当に2021好きで。 “音の美しさの中の、一抹の不自由さと苦しさ。 不安にさせない不安。癒しにならない癒し。一瞬の永遠。 どう表現したらいいか分からないけれど、矛盾しそうなものが常に同時に広がりうつろっていく。海鳴りでその旅路も終わることが不思議とわかる。” って10/13の日記に書いていた。 リリパ行きたかった、MU2022の羽田空港でも見たかった。結構ライブセットのパーカス楽しみだったので延期が実現して欲しい。難しいご時世。
◯ フワちゃんANNX、友達と仲良くなる方法が詰まってる亜空間(フワちゃんに限る)。スペシャルウィークの楽しさ。ラジオは聞いたり聞かなかったりできる今週はだらだら聴いてる。みんな!このあと星見にいこう。そのあと海行こう。(中略) あたしの運転で行こ。怖い、絶対やだ。やばいって。よかったな。 でもどこか、空虚性も感じるのですけど。
◯ 帰り道好きな加茂川の音あるんだけど、な���か録音しときたいな。
◯ 花粉きてます。
◯ 京都に来てから全く見れていなかったスクール革命がゴールデンにきていた。スクール革命ずっとみてた。ゆるい雰囲気と、ふざけ時間の多さ (ゴールデンのせいかその辺はスマートになっていたように感じた。)あの頃の好きだったものはまじでずっと好きなようで、やっぱり知念くん最高だなーと。ずっとかっこいいし、変なんだよな。(変さは今回少なめだったけど) summaryとか行ってたな。10人かっこいいんでね。あとNYC。
◯ 市原佐都子 Q「妖精の問題 デラックス」at ノースホール。 そもそもデラックスの前を知らなかったので、youtubeでkyoto experimentの時のものを見た。生で観たものと、映像で観たものを比較できないけれど、デラックスはやっぱりデラックスで人が増えたことによって見やすくはなっていそうで、2018年のほうはきっと生でみたらそのカロリーの高さにやられていそう
◯ そういえば、Q「地底妖精」ならどらま館で観ているはずで過去の日記を探す。やっぱりみてた。”オスはみんな醜い刃物を持っていて” ぼくもその感覚を持って生きているかもしれない。cocoonもそうだったよな。舞台美術の綺麗さと不気味さともやがかった印象思い出した。見つからない土の中、根がはってるみたいな。もう忘れちゃったから嘘書いてるかもしれない。
◯ 村川拓也「仕事と働くことを演じる」 at ノースホール 役者 (参加者) の方のお仕事に基づき作られていた。全員役者、或いは表現活動をされている方だったこともあってか、マニュアルワーカーが多かった印象。仕事かぁ。生きることとは切り離せない、どうしても。
◯ スタジオいって遊びたいって友達に言ってたら高校の同期がいいよって言ってくれた。ただ二人とも別々の場所に住んでいる。でも嬉しい。
◯ 会話の終わりどきってどうしたらいいのかいつも分からない。ブレーキが効かない自転車で坂道下ってる感じ。
◯ だめだ〜〜〜ねむ〜〜〜〜〜〜〜i!!!yooooooo!!
◯ 恋せぬふたり、その大袈裟啓発的ムーブでないと伝わらないもどかしさ。全然それがいいとか悪いとかではなく。楽しく観ているので。あでももう、のほほんがほしい。のほほんだよ。阿佐ヶ谷姉妹~~
◯ MU2022行けないし、2月中旬まで東京行けなくなっちゃった。行けないことはないんだろうけど、家族に迷惑かけられないなと思うし、家族大事。
◯ meme、すうぃにを最初推していた時には知らなかったのに、どんどん好きなかっこいいアーティストがremixや作曲に関わっている。でんぱもそうやって私の世界を広げてくれているし。あぁディアステ通ってたな...次東京行く時また行きた。その一推ししていたアイドルはもういない。健康でいてほしさ。
◯ 水野しず「個性の大学」 個性が面白い、とか個性=自由とか、いやいやいやいやって思っていたところが分解されていた。目の前の地道なことにから逃げんなということに、どうやらそういうことに、なっているようなのだ。この世界は。私は個性の大学は割と卒業しているような気がする。学位記貰いたいネ。
◯ まードキュ
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When did your interest in photography begin - did you start taking photos while socialising and then went from there?
写真を撮り始めたのは4年まえのことです。僕とShusaku Yoshikawaという写真家の友達は、取材のためにBurger Recordsが主催したBurgerama 2014に行きました。会場に着いて彼は僕に「せっかく来たんだし、写真も撮った方がいい」と言って、カメラ(OLYMPUS miu 2)を貸してくれたことが、写真を撮り始めたきっかけです。その時僕はミュージック・ジャーナリストだったので、写真は本当に自分が撮りたいと思った瞬間しか撮りませんでした。その年はLAとNYCに合わせて一ヶ月近く滞在して、結局使ったフィルムは5本ほどでした。日本に帰り、それを現像に出して、データで自分が撮った写真を見たときに、本当に自分が伝えたいことや、ずっと憧れていた光景が写真の上に広がっていて、とても興奮しました。アメリカの日常や、音楽シーン、そこに集まった大好きなバンドや若者、shusakuや旅を通じて知り合った大好きな友達たち。そして彼らのパッションやエモーション。あの時の気持ちを引きずって、いまでもそれを続けています。
What was it about US youth culture that stood out to you and how does this differ from Tokyo?
US youth cultureに興味を惹かれるのは、日本のユースカルチャーにはない、選択のある自由さがあると思うからです。極端な例えですが、マック・デマルコがライヴをしていたとして、その最中、たくさんの若者が真剣に彼のライヴに夢中になるなか、それをあたかもBGMとして聞き、友達との談笑を楽しんだり、ドラッグに溺れる集団や、地べたに座り、一心不乱にピザを食べてビールを飲む人たち、全く音楽を聞かず、遠くでいちゃいちゃしているカップルなど、様々な光景がいっぺんに広がるのがUS youth cultureだとして、日本だと、ライヴはそのアーティストのライヴを観に行く機会だと大半の人が捉えているので、チケット代も高いですし、人々はライヴを真剣に観ます。
日本では、誰かが右と言えば右、左と言えば左と言って口を揃えようとします。出来るだけ輪を乱さずに、整頓された規律の中で生きるので、周りからどう見られるかを凄く気にします。そういう文化の中にユース・カルチャーもあります。繰り返しになりますが、日本で生まれ育った僕にとって、US youth coultureに憧れる理由は、日本とは全く逆のアプローチがあって、決めつけのない自由さがあると思ったからです。
And how about in terms of gigs and audiences?
上で話したことがここでも説明で��ます。例えば、日本のヴェニューには細かい決まりごとがあって、オーディエンス、そしてアーティストまでもがその中でライヴを楽しまなければなりません。ただ日本のカルチャーが全部そうというわけではありません。ざっくりとした、それぞれの違いの話です。
Why does the sense of freedom and gigs appeal to you as a photographer?
僕が自由さに惹かれるのは、なにもかもが自由だからといって、人は幸せをずっと感じられるとは思わないからです。そもそも生きること自体が苦しいことですからね。だからそう思えたり、そう感じられるっていうことは、とても貴重なことなんです。 ギグはもちろん大好きですが、ギグに惹かれているというよりは、そこに集まる人々や、アーティストが、その場では自由さを感じられているように思うから、僕はそこで写真を撮るんだと思います。そして、もしかしたらそれは、こんな生きづらい世の中(社会)だからこそ、せめてヴェニューでそれぞれに何かがおこっているこの瞬間だけは、自由や幸せを感じられるべきだっていう、祈りやお願いからくる行動なのかもしれません。
You’ve worked with the likes of Mac DeMarco and The Garden, how did you first meet these people?
いま考えると不思議なんですが、MacとThe gardenの二人とは、Burgerama 2014の会場で出会いました。しかも同じ日に、会場の中でもほとんど同じ場所で。僕は彼らと出会えましたが、ガーデンとマックはその時にはまだ出会ってませんでしたね。
How did the situation arise for you to go on tour with them?
彼らと出会った2014年から毎年、春から夏にかけて、僕はアメリカのLAとNYCに滞在するようになりました。Mac DemarcoとThe Gardenのフレッチャーは、僕の写真を一番最初に褒めてくれた人物でした。LAではThe Garenの二人がOCからLAまで遊びにきてくれたり、僕がLAからOCに遊びにいったり。NYCではMacの家に泊まって、彼が色んな場所を案内してくれたり、少ない滞在中の中で僕らは同じ時間の中で過ごし、僕は彼らの写真をたくさん撮りました。macとfletcher は僕の写真を彼らのレコードのアートワークに使ってくれました(mac demarcoのanother demo oneと、puzzleのsoaring)。写真を撮り続けているうちに、彼らはライヴの時も、いつもと同じように写真を撮っていいよと言ってくれました。ステージ下でも、袖でも、上でも、好きなところで撮っていいと。今でもその資格が僕にあるか自信はありませんが、彼らのリスペクトにとても感謝しています。そんなお互いのことを、僕はそれぞれにずっと話してきました。どんな人たちで、どんな風に遊んだりしたか、また音楽に向き合う姿勢や、彼らの音楽についてまで。それで、2016年にThe GardenがNYCにライヴのためにやってきたときに、泊まるホテルがないと困っていた彼らに、僕はマックの家に皆んなで泊まろうと提案しました(その時僕はmacの家に泊まっていました)。最初ガーデンの二人は遠慮してたんですが、ホテルが見つからなかったので、結局僕はマックに電話をしました。電話で彼は凄く酔っ払っていて、なんでも大丈夫だから、ビールだけ買ってきてと言って電話をきりました。ガーデンと僕はマックの家に向かいました。どうなるんだろうと、なぜか僕が凄く緊張したのを今でも覚えています。しかし、マックの家に着くと、彼らはすぐに仲良くなりました。皆んなでキエラが作ったフレンチフライズを頬張ったり、バカな歌を歌って、ジョークを延々と言いあったりしました。どんな理由だって、大切な友達と大切な友達が繋がる瞬間は最高です。それからMacがLAに引っ越して、彼らはたくさん遊ぶようになりました。去年の春、the Gardenのツアーにフォトグラファーとして参加して、それが終わってマックの家にフレッチャーと遊びに行ったときに、マックは夏のツアーで、ガーデンをサポートにすると言いました。そしてマックは続けて、だからゆうきも来なきゃダメだと言いました。
Are there any specific stories from this time that stand out in your memory?
僕にとって、一ヶ月半にも及ぶ長いツアーに参加することや、アメリカの各都市を回ること自体がはじめてだったので、ツアーの全てが大切な思い出です。彼らにとって当たり前で些細なことも、僕にとっては特別に思えました。マックはオレゴンのショーから、僕を毎日ステージにあげて、歌わせたり、彼とキスさせたり、踊らせたりしました。ミズーラではまだ9月だっていうのに雪が積もっていて、途中でヴァンを泊めて皆んなで雪合戦をしたり、ミルウォーキーでは、ライヴが終わった後にアレックと屋上に行って、自分たちのこれまでのことや、彼に将来の悩みを相談したり、目を覚ますと僕らのヴァンは、マンハッタンの橋の上を走っていて、目をこすったあとに広がったニューヨークの夕陽が凄く綺麗だったり、レディオ・シティーでのthe gardenのライヴ後に、ワイヤットと彼のお父さんが抱き合っている光景を見て、家族に会いたくなった寂しい気持ちや、フィリーで食べたチーズステークの味も忘れられません。僕とマックはお腹がいっぱいなのに、ピザソースがかかったチーズステークお代わりをして、吐きそうになったり、ジョージアではライヴ前にジョンとアミールとアンディーとヴェニーの近くの公���でサッカーをしたときに感じた和やかさや、ニューオーリンズからフレッチャーと僕は筋トレを始めて、僕らの腕がどんどん逞しくなったことや、オフの日に、マックがテレビ番組の収録のリ��ーサルをしているとき、僕とキエラは控え室にあった紙にラクガキをして笑いあったり。毎日違うエナジーやエモーションを持った彼らのファンとの時間も思い出に残っています。ある子は僕に自宅の鍵をくれたり、ある子とはホラー映画の話をしたり、ある子とはサッカーのボールを蹴りあったり、とある子はライヴ中にずっと泣いていたり、とある子たちはライヴ中にずっと抱きしめあっていたり。そんな彼らを毎日ステージから眺めて、彼らが大人になったとき、今日を、今日抱いた気持ちをどう振り返るんだろうと僕は考えたり。 写真を始めるまえ、僕がミュージック・ジャーナリストだった頃、好きなバンドのインタヴューを控えていた僕に編集長は当然怒り出しました。彼は僕に言いました、なんで好きなアーティストのレコードを持ってこない? なんでサインを貰わない? あの時の僕にはその言葉の意味が分からなかったのですが、ツアーの最終地点のLAに戻ってきた僕は、編集長があのとき言ってくれた言葉の意味をようやく理解しました。あのとき編集長はこう続けました。どんな立場になったとしても、謙虚に、誰よりもそのアーティストや、音楽のファンであり続けなさい。LAでのツアー最後のライヴが終わったあとに、僕はツアーに参加したクルー全員に“this old dog”のレコードにサインを書いてもらいました。最後にサインをしてくれたのがマックだったんですが、彼がサインをしてくれているその瞬間と、彼がサインを書いてくれているときの優しい表情は一生忘れません。あの時編集長が伝えたかったことは、きっとサインをもらったという結果を大切するんじゃなくて、その行為が、その時の気持ちを残すための作業だから大切にするんだと僕は学んだような気がします。僕が写真を撮る理由もそれと同じようなことなのかもしれません。
As a photographer, what is it about youth culture that appeals to you? And how do you try to capture it?
誰しもが公平に歳を取ります。社会に出て、仕事でお金を稼いだり、家庭を持ち、出会いと別れを経験して、時間の経過の中で、色んなことを知っていきます。問題に直面したら、なんでそれが起こったのか考え悩み、誰かが幸せになったら、それを自分の気持ちに置き換えてみたりもします。でも、色んなことを知っていくことで、ある人は感情をあまり動かさなくもなります。これが幸せで、これが苦悩だって決めつけてしまうのです。人生の生き方を決めつけて、効率よく生きる選択は簡単なんです。ユースカルチャーはまだなにも知らない状態を肯定できる、広大で漠然とした粗雑な海のようなものです。またそれは、選択のある–決めつけのない– 自由な海でもあります。 僕がキャプチャーしたいのは、そんな対象の中で、この瞬間にもがき生きる人々の、まだ何もしらない(答えのない)感情の動きです。
People with their own individual personalities were the ones who captured your attention; at a glance was it their clothing or looks that caught your eye? 彼らと出会う前は、ただ音楽に惹かれました。僕は彼らの音楽の大ファンですからね。ツアーには色んなオーディエンスがいましたが、ライヴは彼ら��同じくらい、(もしかしたらそれ以上に)僕自身も楽しみました。出会ったあとは彼らの内面に惹かれました。彼らは強い心をもっています。自分らしく生きることと、思いやりを持つことの両立はとても難しいことだと思うんですが、彼らはその二つを持ち合わせているんです。 僕は人を撮るときに、こうしたいとか、ああして欲しいとか、決して指示を出したりしません。自分が好きだと思った瞬間をただスナップしているだけです。だからそれが誰かや、その人がどんな見た目かは全然気にしてません。もっと漠然とした“vibe”に共感するから写真を撮るんです。それは私生活でも同じです。見た目が綺麗で、人気者で、たくさんお金を持ってたとしても、根本的な考え方が違ったら、仲良くなりませんし、仲良くなりたいとも思いません。 What is the next project you aim to do? いま自分のこれまでの活動をまとめた本を作っています。貧乏で夢も希望もなく、大学に行かなかった僕が音楽シーンに入っていって、ミュージックジャーナリストになって、写真をはじめて、色んな出会いの中で、色んなことを経験したこと、本ではそれらの出来事や、僕が実際に何を思ったかを言葉にしようと思っています。写真集も出したいですが、まずアルバイトを探してお金を貯めないといけませんね(笑)。
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村上家徒然
村上家。叢雲神を守る「叢雲守」のお役目が名字の所以。雨ごいのための棒術の風習があり、夏になると棒術による祈雨の舞が披露された(現在も風習が残っている)。土地を守るために武士を出すようになり、武家としての活躍が江戸まで続く。神への忠義は国へ、人へ尽くされた。
その忠君精神と武士道を継いで、曾祖父「硲(はざま)」は1930年の日本を生きていた。1930年時28歳、1902年の生まれ。武家の出として、良い立場ではじめは内地の兵として迎え入れられたが、特務総長に収まってからは、性格や、周囲の抑圧によって出世の道が困難になっていた。そんなときに、特高から声をかけられ、特高警察の真似事もするようになる。綺麗事だけでは戦争には勝てないと、大義のためにと、自分の意思を曲げてまで、冷徹者として国に尽くした。敵兵に剣を向けた数よりも、取り締まったアカの数の方が断然に多かった。上層同士の間の会話に混ざる「村上を使え」は、スパイをあぶり出すことを意味した。探索者「村上硲」がシナリオ上で死亡していない場合、1945年8月15日、玉音放送のレコードを巡って東京で起きた内地クーデター「宮城事件」にて、クーデター阻止にまわり命を落としている。享年43歳。最終的な階級は大尉だったが、これを硲は不釣り合いに感じていた。1944年、終戦前に現在の村上家の住まいでもある「叢雲神社」は空襲により全焼。こどもたちは一度、遠縁の親戚のいる京都へと移っていた。
硲は1926年に妻「惟子(ゆいこ)」と結婚。 娘息子たちは七人おり、名前は上から「健(たける)[1927年生まれ]」「清(きよし)[1929年生まれ]」「昭子(あきこ)[1932年生まれ]」「千代子(ちよこ)[1934年生まれ]」「良子(よしこ)[1937年生まれ)]「豊(ゆたか)[1940年生まれ]」「進(すすむ)[1942年生まれ]」。
健は1944年の空襲を機に志願兵として出兵し、戦地にて18の歳を迎える前に亡くなる。���硲にあたりの強い息子だった。清は家族を支えるために働くも、体が弱く結核にかかり、1954年に25歳の若さで死亡する。昭子は「父は国に殺された」と憤慨し、京都に残り、1955年に結婚。千代子は早くに東京の家に戻っており、22歳の良子と豊に実家を任せる形で1961年に嫁ぎ先へ嫁ぐ。2010年75歳の時に癌で死亡。良子は東京で編集者の職につき、働く女性として活躍した。1964年、東京五輪の警備を務めていた警官と恋に落ち、結婚。豊は弟の進と協力し、神社の復興のために尽力を尽くした。2020年現在、京都に暮らす昭子(88歳)、警官の夫に先立たれている東京都都心に暮らす良子(83歳)、村上家を継いだ豊(80歳)、その弟の進(78歳)は存命。
いづるの祖父の「豊(ゆたか)」。彼は村上の血族のなかでも格別に異端で、海外の文化や新しいものを好んだ。その柔軟さが、戦後復興と称され開発蹂躙されかけた土地を守ることに繋がる。理解のないものは彼を夷狄かぶれと揶揄してたが、自由の意思は曲げなかった。こんな時代だからこそ神も自由も必要だ、とそれが豊の考えだった。また、昭子が何度も言った「父は国に殺された」が頭の隅に残っていたのかもしれない。 アメリカ人から貰ったサングラスを気に入り、何度か買い替えたが、今もつけている。1966年、26歳の時に結婚し、1968年に長男「薫(かおる)」、1970年の時に次男「茂(しげる)」が生まれている。 ファンキーでフリーダムな祖父「豊」の息子のひとりである「茂(しげる)」は、そんな父が嫌いだった。豊のせいで幼少期につらいことがあったのも一旦にあるが、単純にものの考え方の差があったからだった。神だの霊だのの話は耳が蛸になるほどまでに聞かされて、知識として得たものは多くあるものの将来的に生かしたいとは全く思わず、むしろ関わりたくなかった。というのも、霊感が無くホラ吹き気味の豊と違って、茂は本当に幽霊が見えてしまっていたからだった。見えていたからこそ知らぬふりをして、なるべく関わらないように生きようとしていた(それでも関わるときは関わるのだが)。ちなみに、豊に性格が似た兄の薫は渡米している。兄との共通の趣味はツーリングだった。
茂は神社を継ぐことよりも、生者のために、自分の力で何かをすることに強くこだわった。目に見えない力に頼るのではなく、自分の腕で誰かのためになることをしたかった。そういった意思から、彼は警察官となる。祖父は警官にいいイメージはあまりなく、反対したが、茂は押し切った。そう決めて、成人するころにはもう、幽霊の類はほとんど見えなくなっていた。1994年、24歳の時に妙子(たえこ)と結婚。1996年に長女、1998年にその弟を授かる。2020年時点で50歳。
彼らの血を引いて生まれたのが、現代を生きる村上家姉弟、長女であり姉の「志弦(しづる)」と長男であり弟の「伊弦(いづる)」だった。2人とも父からは厳しく育てられ、家に共にいる祖父からは幽霊や妖怪の話をきいて育つ。
しづるは父と同じく警察の道を目指す。それは志が高く…というよりは、警察官になることと神職につくことの板挟みになっている弟をみて、また、そのことで度々喧嘩をする父と祖父の様子をみかねて「じゃあ私が警察に…」といったのが発端だったのだが、その時は「そんな軟弱な精神で警察官を目指すな!」と父に怒鳴られ、震えあがりながら萎縮してしまった。ただ、彼女はそのとき半分本気だったことと、「自分は期待されていないのだ」という事実を突き付けられたようで、どこか悔しさを感じた出来事でもあった。
彼女は、いつだったか学校で「幼稚園の先生とか向いてそう」、「クラスで一番早く結婚しそう」と評価されたことがある。陰口で地味だと言われた事も、家で自分が一番弱いことも知っている。だから余計、自分は「自分に似合っている普通のこと」ではなく「村上の人間だからできる事」をしたいと思っていた。彼女はそうした思いで警官学校までいき、道のりの厳しさを乗り越え、刑事になった。…刑事!?アレ!?警察官がよかったのにナンデ!?(流された)。 マイナスな事をきっかけとして目指してきた夢だったが、今は前向きに頑張っている。まだお茶くみが多いが…。
いづるはとかく霊と縁がありすぎる人間だった。彼の周囲は強い感情をもって���に留まる者たちがとりかこみ、付喪神が往来する。その影響で幼少期特に自分の感情や表情があまりにも希薄だった。自分がものを考え、自分の感情として外に出すことに思考を使うよりも、周りの声をきくのにストレージを割いていたからである。
神隠しにもそれなりの頻度で遭っていて、大人や姉に心配をかけたことも度々あった。そのうちのいくらかはただいづるが迷子になっていただけだが、祖父豊は迷子も含めて全部神隠しと称して語っている。回りの大人たちの反応はまちまちだったが、父茂にとって神隠しは深刻な問題だった。茂自身が神隠し経験が1度あったのと、霊の存在を認知していたために、心中では祖父よりも深刻に息子のことを心配していた。
”自分”を持ってかれないようにと、祖父はいづるに知る限りの神道の知識や伝承などを教えこみ、父は身を守るためにと剣道と居合道をはやくから教えた。そのかいあってか、なんだかんだで健やかに育つ。が、神道と剣に特化しすぎた結果ちょっと変わった子になった。
いづるにとって、幽霊は本当にいるし、まじないは存在するものであり、この世の全てには神が宿り、伝承は信じるに値するもので、言霊には意思と魂がのる。
父からは警察官を、祖父からは神社の神主になることを勧められ将来に迷っていたいづるは、生者と死者、両方のために在りたがった。そうした考えを持ちながら、人生を歩いて、どうするべきかをずっと考えてきた。
答えとして辿り着き目指そうと決めたのは、神職につきつつ探偵のような事を行う、というものだった。そんな職業はないが、そういったことがしたいと思っている。 警察としての道は、姉が切り開いてくれている。ならば自分は、自分に受け継がれたものを守り、後世に引き継ぐためにも、神主となって土地を守るのが良いと思った。人からもそうでないものからも分け隔てなく、相談事があればきくようにしたいと考えている。
2020年2月長谷川妖子と婚約。京都國學院大學専修課程在学、2022年卒業予定。 結婚も2022年を予定している。
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「虚無への供物」中井英夫 1121
第一章
12十字架と毬
“泉”で、亜利夫と久生の会話です。
そこで、衝撃的とでも言うのか、 ���木田老人は、バア“アラビク”に時々出入りしていたことがわかります。 あの鯰坊主の田舎紳士に体つきもよく似ていたと藍ちゃんも思い出したとかで、 変装していたこともわかります。 まあ、驚くほどでもない気もしますが、どうやら、外国の探偵気取りで、 変装していたということをいいたいのでしょうね。 そういえば、 よく変装する探偵がいたような気がしますね。
藤木田は、新潟とは半日で往復できるといいます。 その当時なら、急行「越路」となるのでしょう。6時間で上野と新潟を結んでいますから、 数字の上では可能かもしれませんが、 昔の人は忍耐強いですね。
ただ、このあたりも伏線ぽいです。
藤木田はチェス盤に向かい準備をしますが、 その横で、藍ちゃんが「タマがった」といいます。 状況から言っても、驚いたという意味だと思うのですが、 これ、明らかに方言です。 しかも、九州地方の方言ですね。 藍ちゃんは、北海道の出身だと思うのですが、九州の人と付き合いがあるのでしょうか?
これも伏線でしょうか?
その後、 藍ちゃんはLFで毎週水曜日の夜十時三十五分からやっているという、 蘆原英了の解説する“パリの街角”(スポンサーは大日本製糖)というシャンソン番組を聞きます。 テーマ音楽に「タ・マ・ラ・ブム・ディ・エ(Ta ma ra boum di hé)」- ジェルメエヌ・モンテロ(Germaine Montero)が使用され、 その後、「小さなひなげしのように(Comme un p'tit coquelicot)」- ムルージ(Marcel André Mouloudji)という曲も聞こえてきます。 この歌、ちょうど帰国した石井好子がしきりに歌っていたそうですが、 その当時「あの人に貰った花」や「君去りなば」をレコードとして発売しているみたいです。
結果的にこれが事件の時刻を特定することになります。
ところでLFはニッポン放送「JOLF」の下2文字を表しているのでしょう。 実際にそういう番組があったかどうかはわかりませんが、 蘆原英了が解説するシャンソン番組はあったようですから、 そのあたりを参考にしたのでしょうか。
その後、橙二郎が藍ちゃんと書斎へ入っていって、 亜利夫と藤木田は相変わらず紅司の部屋でチェスをしています。 その間に、浴室の中で紅司が死体に変わったのです。
お使いに出ていた爺やが帰ってきて、 紅司がまだ風呂から出ていないのを心配するのがきっかけで、 結局、密室状態の風呂場に倒れている紅司を発見することになります。
密室状態とした理由の一つは、 紅司のつけさせた「鎌の形になった刃が受金の中に食い込む式」の鎌錠のせいです。 なんとなくイメージは湧くのですが、 その当時の鎌錠がそれほど頑丈で、 密室と言えるほどのものなのでしょうか? 例えば、磁石なんか使えば簡単に外せたりできそうなんですが。
その密室状態の風呂場に皆はなんとか入ろうとします。 藍ちゃんだけが外からのアプローチをしたみたいですね。 結局、皆は脱衣室のガラスを壊して入ります。
風呂場の中では、洗面の水道がだしっぱなし、蛍光燈が点滅していました。 紅司の死体は、右手に愛用の日本剃刀、左手は拳を固めていて、 その背中に奇怪な十字架の文様が浮かび上がっていた。 それは、誰の眼にも鞭痕だとわかります。 つまり、紅司はマゾヒストで、どこかの与太者が相手に違いないと想像します。 亜利夫は、ヘンリー・ハヴロック・エリスを紐解くまでもない。 紅司は、受け身の倒錯者(パバート)だったと決めつけます。
確かに、相手がいないとつかないでしょうから、 与太者の存在が疑われますね。
ちなみ、 ヘンリー・ハヴロック・エリスは、イギリスの医師で性科学者などでもあり、性について調査・執筆した大著『性の心理』を刊行しています。
ここまで、 亜利夫の話を聞いていた久生が、閉口したようすで眉根に嫌皺(いやじわ)を寄せるとありますが、 これは、どんな様子なんでしょうか? 慣用句の「眉根を寄せる」と同じで眉間にしわを寄せる様子を表現しているのだと思いますが、 面白い表現ですね。
さて、発見時に、おろおろした爺やが抱き起こそうとするのを現場に触ってはいけない。 と、藤木田が止めます。 で、医者である橙二郎が脈をとり死んでるのを確認します。 藤木田は、警察には知らせずに蒼司君と嶺田博士に電話をするように言います。
不思議ですね。 まあ、一般の家ではないことはわかりますが、 警察に連絡しないでどうするというのでしょう?
それから、亜利夫が再度確認すると、風呂場の様子が書かれます。
・白いタイルの湯舟には蓋もなく、透き通った湯が僅かな湯けむりを挙げていた。 →つまり、湯船には誰も隠れていない。 ・左手の電気洗濯機は蓋も絞りきも外され、シャボンの泡が細かに崩れかけている。 →さっきまで洗濯してた? ・引き違いの二枚のガラス窓には差し込みのカギが根元まできっちり閉まっている。 →開いてては、密室になりません。 ・空気抜きの狭い高窓も閉ざされている。 →大きさは、はっきりわかりませんが、人は通れないでしょうし、機械的な細工もできないということでしょう。 ・ジェット蛇口から水道が勢いよくほとばしっている洗面台。 →水がでてることが? ・その棚には温室咲きの純白のグラジオラスが一輪挿しに差されておる。 →花に何の意味が?
亜利夫が紅司に電話をかけようとしますが、どういうわけか電話が不通になっていて、 藤木田の隣家を騒がせるなという指示で、 亜利夫と藍ちゃんが、目白駅前の黄色い電話ボックスに飛び込んで電話をかけます。
この黄色い電話ボックス、通称「丹頂形」と言われるそうで、 この年の10月頃から使用開始されたみたいですね。
八田皓吉宅に電話が繋がり、 蒼司と話すと、 なんと蒼司は、 叔父さんである橙二郎と紅司の関係を考え、 本当はまだ死んでない紅司を橙二郎が殺すのではと疑います。
藤木田もいることだし、 まさかそんなことはないだろうと亜利夫は思いますが、 多少不安になったのか、急いで帰ります。
氷沼家に帰ってみると、 家の中には何かしら前にもまして異様な雰囲気がみちています。 藤木田老人は階段の上り口に突っ立って腕組みしながら二階と風呂場の方を等分に見比べ、 橙二郎が書斎に麝香(じゃこう)を取りに上がったからなどと独り言をつぶやいている。 風呂場の紅司はうつぶせのままで爺やがへたりこんでいっしんに手を合わせて拝みながら経文を唱えています。
その爺やの唱えている経文が、 爺やの唱えている通りという感じで挿入されています。
まあ、流石にこれが事件と関係しているとは思えませんから、 爺やの精神状態がおかしいということを表したかったのでしょうね。
亜利夫も普通の精神状態ではなかったのでしょう。 本来なら死体など見ることも触ることも嫌だと思うのですが、 紅司の左首を握ってみました。 すると、今までに経験したことのない重味と冷たさを瞬時に感じで、 手首を離してしまいます。 手首はだらりと下にたれました。
これで、やはり死んでいるということはわかりますね。
つづく。
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海辺の洞窟
リネン君は、誰よりもまともです、という顔をして、クズだ。彼の中身はしっちゃかめっちゃかだ。どうしたらそんなにとっ散らかることができるのか、僕には分からない。
彼の朝は床から始まる。ベッドに寝ていた筈なのに、いつの間にか転がり落ちているのだ。頭をぼりぼり掻きながら洗顔もせずに、そこらに落ちている乾いたパンを食べる。前日に酒を飲んでいたのであれば、トイレに行って吐く。
それから自分を寝床から蹴落とした女を見やる。それは顔も知らない女であったり、友人の彼女であったり、上司の妻であったりする。ともかく面倒くさそうな女だ。
ここで必ず電話が鳴る。誰もがリネン君が起きる瞬間を見計らったように電話をよこす。それとも彼の体が電話に備えるようになったのか。まあ、どちらでもいい。
電話の向こうは女の関係者で、烈火の如く怒っている。朝から怒鳴り声を聞くのは気分のいいものではない。口の中から胆汁がしみ出してくるような心地になるので、黙って切る。
リネン君にとって、彼女とその関係者の将来など、自分には関係のないことなのである。いやいや彼は彼女らの人生に大いに干渉しているのだが、リネン君は全ての責任を放棄しているのだ。誰が何と言おうと、彼は彼の行動の責任をとらないし、とるつもりもない。だからどうしようもない。
そうこうしているうちに女が目覚める。彼女はリネン君の消えゆく語尾から、彼氏や旦那の名前を聞き取るだろう。次の瞬間彼女はヒステリックに喚き出し、リネン君は自室を追い出されるはめになるわけだ。
リネン君はあくびをしいしい喫茶店に入り、仕事までの時間を潰す。休日であれば友人なのか知り合いなのか曖昧な人間と遊ぶ。暇な輩がつかまらなければ、その辺をうろつく汚い野良猫とたわむれる。リネン君は大抵の人には煙たがられるが、動物には好かれるのである。
リネン君は出会う人々とろくでもない話をする。誰かを笑わせない日はないし、誰かを傷つけない日もない。彼は湧き上がった感情を、健全であれ不健全であれ、その場で解消するだけなのだ。
僕等は同じアパートに住んでいる。リネン君の部屋は一階の一番端っこ、僕の部屋は二階の階段のすぐ隣だ。親しくなる前から彼の顔は知っていた。朝、父さんに言われて新聞を取りに行くと、みちみちにチラシの詰まった郵便受けの前で悪態を付いている彼を時々見かけた。母さんから、
「あんな人と付き合っちゃダメよ」
とお叱りを受けたこともある。その理由を聞くと、
「しょっちゅう女の人を連れ込んでいるみたいだし、毎晩のように酔っ払って何かを叫びながら帰ってくるし、たまに非常階段で寝てるし、ゴミは分別しないで出すし、昼間もふらふらして何をしているか分からないし、無精髭を剃りもしないしこの間だって⋯⋯」
と、このように、大人達のリネン君の評判はよろしくなかった。
僕等はアパートの庭に設置されている自販機の前で出会った。リネン君の第一声は、
「おい。五十円持ってないか」
だった。小遣いでジュースを買いにきた小学生にかける言葉ではないと思うが、いかにも彼らしい。リネン君はたかった金で手に入れたエナジードリンクを一気に飲み干した。それから隣でグレープジュースをちびちび啜っている僕を、
「ガキ。礼に煎餅やるから来い」
「え? でも知らない人の家に行くなって母さんから言われてるし」
「親離れは早いにこしたことない。いいから来い」
「え、あ、あの、ちょっと」
誘拐まがいに部屋に招いたのだった。
そうして僕は彼と親しくなった。もちろん母さんには内緒で。
彼の部屋は余計なものでいっぱいだ。年期の入った黒電話、聞きもしないレコード、放浪先で見つけてきた不気味な雑貨、または女性。つまり彼の部屋は子どもの暇つぶしにもってこいの場所なのだ。
「リネン君はどこから来たの?」
僕が尋ねても、彼はにんまり笑って答えない。
「俺がどこからやってきたかなんて、お前には関係ないことだろ?」
「じゃあこれからどこへ行くの?」
「嫌なことを聞くやつだな、お前は」
リネン君は心底うんざりした顔で僕を睨みつけた。けれど僕は睨まれても平気だ。大人は彼を怖がるけれど、僕はそうではない。彼は子どもと同じだ。好きなことはやる。嫌いなことはやらない。それだけ。それは子どもの僕にとって、非常に理にかなったやり方に思える。
大人は彼をこう呼ぶ。「根性なし」「我がまま」「女たらし」「クズ」⋯⋯。
リネン君は煙草をくゆらせる。
「近所のババア共ときたら、俺の姿が見えなくなった途端に悪口おっ始めやがる。常識人になり損なっただけなのにこの言い草だ。奴らに面と向かって啖呵切る俺の方がよっぽど潔いぜ。違うか?」
本人はそう言っているが、リネン君は陰険だ。この間なんて仕事で成功した友人の彼女と寝て、絶交を言い渡されてされていた。僕には確信犯としか思えない。
「バカ言え。どうしてそんな面働なことをやらなくちゃならない? 俺はな、他の奴らの目なんてどうでもいい。自分の好きなことに忠実でありたいだけだ」
リネン君は良くも悪くも自分の尻拭いができない。つまりクズっていうのは、そういうことだと思う。
とはいえ彼は僕に良くしてくれる。
「林檎食うか?」
彼は台所から青い林檎を放ってくれた。
「ありがと」
僕は表皮を上着の袖で拭き、がじっと齧る。酸っぱくて唾液がにじむ。リネン君は口いっぱいに食べカスを詰め込みながら、もがもがと言った。
「そういや隣の兄ちゃん、引っ越したからな」
なぜとは聞かなかった。リネン君が原因だと察しがついたからだ。
「どうせ彼女を奪ったんでしょ」
「『彼女を奪う』か。『花を摘む』と同じくらいロマンチックな言葉だな。お前、いい男になるよ」
「適当なこと言って」
「悪いな、またお前の植木鉢から花を摘んじまったよ」
「本当に悪いと思うなら、もうこんなことやめてよね」
「駄目だ。夜になると女が欲しくなる。こう見えても俺は寂しがり屋だからな」
「うえー、気色悪っ。⋯⋯それでお兄さんはどこに?」
「浜辺の廃屋に越したって。遊びに行こうったって無駄だぜ。あいつ、彼女にふられたショックで頭がおかしくなっちまって、四六時中インクの切れたタイプライターを叩いてるんだそうだ」
彼女にふられたショック? それだけではないだろう。リネン君の残酷な言葉に弱点を突かれたのだ。
人間は隠そうとしていた記憶、もしくはコンプレックスを指摘されると、呆れるほど頼りなくなるものだ。ある人は気分が沈みがちになり、ある人は仕事に行けなくなる。リネン君は、大人になるということは秘密を隠し持つようになることだ、と言う。
つまり、と僕は子どもなりに解釈する。大人達は誰もが胸に、洞窟を一つ隠し持っているのだ。穴の奥には宝箱があって、そこには美しい宝石が眠っている。宝石は脆く、強く触れば簡単に壊れてしまう。彼らは心を許せる仲間にだけその石を見せる⋯⋯と、こんな具合だろうか。
リネン君は槍をかついでそこに押し入り、宝石を砕いてしまうのだろう。ばらばらに砕けた宝物。リネン君は散らばる破片を冷徹に見下ろす。物語の悪役のように⋯⋯。
ではリネン君の洞窟は? 彼の胸板に視線を走らせる。何も見えない。堅く堅く閉ざされている。僕は酸っぱい林檎をもう一口齧る。
午後の光が差す道を、僕等は歩いた。今日の暇つぶし相手は僕というわけだ。
「リネン君」
「何だ」
「僕、これ以上先へは行けないよ。学区外だもの」
「そんなの気にするな。保護者がついてるじゃないか」
リネン君は自分を指差した。頼りになりそうもない。
「学校はどうだ」
「楽しいよ」
「嘘つくんじゃない」
「嘘じゃないよ。リネン君は楽しくなかったの?」
「楽しくなかったね。誰がクラスメイトだったかすら覚えていない。あー、思い出したくもない」
路地裏は埃っぽく閑散としていた。あちこちに土煙で茶色くなったガラクタが転がり、腐り始める時を待っている。プロペラの欠けた扇風機、何も植えられることのなかった鉢、泥棒に乗り捨てられた自転車⋯⋯。隙間からたんぽぽが図太く茎を伸ばしている。僕達はそれらを踏み越える。
「友達とは上手くやれているか」
「大人みたいなことを聞くんだね」
「俺だって時々大人になるさ」
「都合の悪い時は子どもになる��せに?」
「黙ってろ。小遣いやらないぞ」
「ごめんごめん。友達とはまあまあだよ」
「どんな奴だ」
「うーん」
僕はそれなりに仲のいい面子を思い浮かべる。けれど結局、分からない、とだけ言った。なぜなら誰であっても、リネン君の擦り切れた個性には敵わないように思えたからだ。僕の脳内で神に扮したリネン君が、同級生の頭上に腕組みをしてふんぞり返った。
「どいつもこいつもじゃがいもみたいな顔してやがる。区別がつかねえのも当然だ」
リネン君はまさに愚民を見下ろす神の如くぼやく。だが僕は彼を尊敬しているわけではない。むしろ彼のようになるくらいなら、じゃがいもでいる方がましだと思う。
「ところでリネン君、僕等は一体どこに向かっているの?」
彼の三角の鼻の穴が答えた。
「廃墟だよ。夢のタイピストに会いに行く」
潮の匂いに誘われ松林を抜けると、そこは海だ。透き通った水色の波が穏やかに打ち寄せる。春の太陽が砂を温め、足の裏がほかほかと気持ちいい。リネン君の頭にカモメが糞を落とす。鳥に拳を振り上げ本気で怒り狂う彼を見て、僕は大笑いする。
その建物は浜辺にぽつりと佇んでいた。四角い外観に白い壁、すっきりとした窓。今は壊れかけて見る影もないが、かつては垢抜けた家だったのだろう。
ペンキが剥げたドアを開ける。錆びた蝶番がひどい音を立てる。中はがらんとしていた。一室が広いので、間取りを把握するのに手間取る。主人を失った椅子が一脚悲しげに倒れている。家具といったらそれきりだ。天井も床もところどころ抜けている。まだらに光が降り注ぎ、さながら海の中のようだ。
空っぽの缶詰を背負ったヤドカリが歩いている。リネン君がそれをつまみ、ふざけて僕の鼻先に押しつける。僕の悲鳴が反響し消えてゆく。本当にここにお兄さんが住んでいるのだろうか。
「どこにいるってんだ。これだけ広いと探すのも手間だぜ」
リネンくんは穴の空いた壁を撫で、目を細める。
「僕は何だかわくわくするな。秘密基地みたいで」
「だからお��はガキだってんだ」
「うるさいな⋯⋯あ」
「あ」
僕等はようやく彼を見つけた。
お兄さんは奥の小さな部屋にいた。バネの飛び出た肘掛け椅子に座り、一心不乱にタイプライターを叩いている。紙に見えない文字が次々と刻まれてゆく。テーブルには白紙の「原稿」が山積みになっていた。僕等は息を呑み、その光景に見入る。
僕は目の前の人物がお兄さんだと信じることができなかった。きらきらしていた瞳は濁っていた。締まった頬はこけていた。真っ直ぐだった背骨はたわんでいた。若さでぴんと張ったお兄さんは、くしゃくしゃになっていた。
「ご熱心なことで」
リネン君はテーブルに寄りかかり、これみよがしに足を組む。
「おい、元気か」
お兄さんは僕等に目もくれない。リネン君は溜息を吐く。
「聞こえてるのか」
先程よりも大きな声だった。沈黙が訪れると、キーを叩く音だけがカチャカチャと鳴った。呼吸のように規則正しく。カチャカチャカチャ、チーン。カチャカチャカチャカチャ、カチャ。
リネン君は懲りずに話しかける。
「何を書いてるんだ。小説か。いいご身分だな。ちゃんと物食ってるか。誰が運んでくれてる。あの女か?答えろよ。答えろっつうんだ。おい!」
かつてお兄さんは僕とよく遊んでくれた。爽やかに笑う人だった。時折食事に誘ってくれた。決まって薄味の感じのいい料理だった。彼女が顔を出す日もあった。彼に似て優しい女性だった。リネン君が彼女を知るまでは。
「お前、俺が彼女と寝てからおかしくなったんだってな」
リネン君はねちっこい口調で囁く。
「脆いもんだ、人間なんて。そうだろ? 好青年だったお前がこんなに縮んじまった。どうしたんだ? 筋トレは。スポーツは。やめちまったのかよ。友達は会いにこないのか? そうだよな。病人と面会なんて辛気臭いだけだ。
お前は何もかも失ったんだ。大事なものから見放されたんだ。良かったなあ、重かっただろ。俺はお前の重荷を下ろしてやったんだよ。大事なものを背負えば背負うほど、人生ってのは面倒になるからな。
にしても、たかが女一人逃げたくらいで自分を破滅させるなんて馬鹿なやつだな。お前は本当に馬鹿なやつだよ」
お兄さんは依然として幻の文字を凝視している。それにもかかわらず毒を吐き続けるリネン君がやにわに恐ろしくなる。一度宝石を砕かれた人は、何もかもどうでもよくなるのかもしれない。何も感じることができない空っぽの生き物。それは果たして人間なのだろうか。もしかしてリネン君の石は、もう壊されてしまった後なのかもしれない。
チーン。
お兄さんが初めて身動きをした。原稿が一ページできあがったらしい。彼は機械から完成品を抜き取ると、ロボットのように新たな用紙をセットした。後は同じことの繰り返しだった。決まったリズムでタイプを続けるだけ。カチャカチャカチャカチャ。
リネン君は舌打ちをした。
僕等は廃屋を後にした。夕日が雲を茜色に染め上げる。水平線が光を受けて星のように瞬いていた。海猫がミャアミャア鳴きながら海を越えてゆく。遠い国へ行くのだろうか。
「壊れた人間と話しても張り合いがねぇな。ったく時間の無駄だった。まともな部分が残ってたら、もう少し楽しめたんだがな」
リネン君はクックック、と下劣な笑いをもらす。仄暗い部屋で背中を丸めていたお兄さんの横顔が頭をよぎる。
「リネン君、どうしてお兄さんだったの?」
僕はリネン君に問いかける。糾弾ではなく、純粋な質問だ。リネン君は億劫そうに髭剃り跡を掻きむしった。
「お前には関係のないことだろ」
「お兄さんに何かされたの? お金がほしかったの? それとも彼女さんが好きで妬ましかったの?」
「どれもガキが考えそうなことだな」
「ねえ、何で? 教えてよ」
彼は僕の肩をぽんと叩いた。それで分かった。彼は僕の問いに答えてはくれないだろう。明日も、明後日も、その先も。ひょっとするとリネン君も、自分がどうしてそうしてしまうのか分からないのかもしれない。だから洞窟荒らしを繰り返してしまうのかもしれない。それは彼の壊れた宝石がさせることなのかもしれない。ずっと、ずっと前に壊れてしまった宝石が。
僕は彼の手を握る。
「僕には何でも話してよ。僕、子どもだし。大人の理屈なんて分からないし。リネン君が話したことは誰にも言わないよ。友達にも絶対。だからさ⋯⋯」
リネン君は鼻をスンと鳴らした。何も言わなかったけれど、僕の手を払いのけることもしなかった。
僕等はとぼとぼと暮れなずむ街道を歩いた。夜が深まるにつれ、繁華街のネオンがやかましくなる。リネン君は殊更騒がしい店の前で立ち止まると、
「これで何か食え」
僕に小銭を握らせドアの向こうに消えた。
近くの自販機でコーラを買う。プルタブを開けると甘い香りが漂う。僕はリネン君の部屋に放置されていたビール缶の臭いを思い出す。どうして黄金色の飲み物からあんな臭いがするのだろう。コーラのように甘やかな匂いだったらいいのに。そう思うのは、僕が子どもだからなのだろうか。
僕は全速力で走る。野良犬にちょっかいをかけていたら、すっかり遅くなってしまった。早く帰らないと母さんに怒られるかもしれない。これまでの時間誰と何をしていたのか問い詰められたら、リネン君のことを白状しなければならなくなる。自白したが最後「あんな人と付き合うのはやめなさい」理論で、監視の目が厳しくなるかもしれないのだ。
慌ててアパートの敷地に駆け込んだ時、リネン君の部屋の前に女の人が座り込んでいるのが見えた。臍が出るほど短いTシャツ、玉虫色のジャケット、ボロボロのジーンズ。明るい髪色と首のチョーカーが奇抜な印象だ。切れかけた電球に照らされた物憂げな顔が気にかかり、つい声をかけてしまう。
「あの。リネン君、しばらく帰らないと思いますよ。居酒屋に入ってったから」
女の人は僕を見た。赤い口紅がひかめく。瞬きをする度、つけ睫毛からバサバサと音がしそうだ。彼女はかすれた声で返事をした。
「そう。だろうと思った」
彼女はラインストーンで飾られたバックから煙草を取り出し、火をつける。煙からほのかにバニラの香りがした。
「君は彼の弟?」
僕はぶんぶんと首を横に振る。これだけは何が何でも否定しなければならない。
「ふーん。じゃ、友達?」
「そんなところです。僕が面倒を見てあげています」
「あいつ、いい歳なのに子どもに面倒見られてるんだ。おかしいの」
女の人はチェシャ猫のようににやりと笑った。彼女は派手な上着のポケットをまさぐる。
「ほら、食べな」
差し出された手にはミルク飴が一つ乗っていた。
「あ。有難うございます」
「あたしミクっていうの。よろしくね」
「よろしくお願いします」
僕は彼女の横に腰かけ、飴玉を頬張った。懐かしい味が口内に広がる。ミクさんは足を地べたに投げ出し、ゆらゆらと揺らす。僕も真似をした。
「ミクさんはリネン君の彼女なんですか」
「はあ? 違うって。昨日あいつと飲んでたら突然ここに連れ込まれちゃって、明日も来いなんて言われてさ。暇だから何となく寄っただけ。彼氏は他にいる」
恋人がいるのに名も知らぬ男の家に���晩続けて泊まりにくるなんて、やはり大人の考えることはよく分からない。
「それにあいつ、彼女いるんじゃないの?」
「えっ。いないですよ」
正しくは「ちゃんとした彼女はいない」だ。
「そうなの? 昨日彼女の話で盛り上がったのになあ。じゃあ思い出話だったんだ、あれ」
好奇心が頭をもたげる。僕はわくわくと聞き返した。
「リネン君が言う彼女って、どんな人だったんですか?」
「えーとね。確か大学で知り合って」
リネン君、大学なんて行ってたんだ。
「サークルの後輩で」
サークル入ってたんだ。
「大人しくて可愛くて料理が上手くて守ってあげたくなる感じで」
そんな人がリネン君と付き合うだろうか。
「結婚しようと思ってたんだって」
「まさか!」
「うわ、びっくりした。突然叫ばないでよね」
「すみません。今のリネン君からは全く想像できない話だったもので」
「そんなに?」
やっぱ君っておかしいの、とミクさんは微笑む。
「どんな人にも、こっそり取っておきたい思い出って、あるからね」
僕はひょっとして〝彼女〟がリネン君の宝石だったのではないかと推測し、やめた。いくら何でも陳腐だし、ありきたりな筋書きだ。恐らく宝石はもっと複雑で、多彩な色をしているはずだから。
ミクさんはあっけらかんと言う。
「ま、君の反応を見る限り、彼女の存在もあいつのでっちあげだった可能性が高いけど」
大いに有り得る。彼女は腰を上げスカートの砂を払った。
「行くんですか?」
「うん。君もそろそろ帰る時間でしょ?」
「リネン君にミクさんが来たこと、伝えときましょうか?」
「いいよ。この分じゃ、約束したことすら覚えてないと思うから」
ミクさんは僕に溢れんばかりにミルク飴を握らせると、
「またどこかでね」
カツカツとヒールを鳴らして立ち去った。
ドアを開けた瞬間母さんがすっ飛んできて「心配したのよ!」と怒鳴った。
「まあ許してやれよ、男の子なんだから。なあ?」
「お父さんは黙ってて!」
「はい」
どうして僕の周りの男どもはこうも頼りないのか。
母さんにこってりしぼられながら、僕はかつてのリネン君の恋人を思い浮かべる。まなじりは涼しく吊り上がり、心なしか猫に似ている。けれどリネン君がどんな顔をして彼女に接していたのかという点においては、全く想像がつかない。
女性を抱いては捨てるリネン君。皮肉を言ってばかりのリネン君。人を廃人にするリネン君。リネン君にとって今の生活は、余生でしかないのだろうか。
洞窟は宝石の輝きを失ったら、どうなるのだろう。僕等は心が壊れても死なないけれど、それは果たして幸福なことなのだろうか。人は肉体が朽ちるまでは何があっても生きる運命だ。この体は意外と頑丈だから。
「聞いてるの?!あんたって子は本当に⋯⋯ちょっと、誰からこんなにミルク飴貰ったの!叱られながら舐めないの!」
「痛っ!」
頭をはたかれた衝撃で、口の中の飴がガチンと割れる。
僕の宝石は誰にも見つからないように、奥深くに隠しておこう。誰かが洞窟に侵入した場合に備え、武器を用意しておこう。相手を傷つけることのない柔らかな武器を。もしかしたらその敵は、リネン君かもしれないから。
僕がお説教されている頃、孤独なタイピストの家に誰かが食事を運んでいた。カーテンの向こう側に蝋燭の火が灯され、二人の影が浮かび上がる。
古びた机に湯気の立つ皿が置かれると、お兄さんはぴたりと手を止める。彼は凝り固まった体をやっとのことで動かし、痩せ細った手でスプーンを掴む。
その人は彼が料理を口に運ぶのを、伏し目がちに、いつまでも見守っていた。
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09110115-1
街の外れ、小さな白い家。扉に掛かった「close」の字が時折「open」に変わる。その時にだけ訪れることができる不思議なお店。噂がまことしやかに囁かれ始めてから暫く経った頃、私はその家の前に立った。
何度目だろう。この白い扉を見たのは。そして、毎度目に映るのは、白地の板に黒いゴシック体で彫られた「close」の文字。はあ。ため息が溢れて、思わずその無機質なプレートを手でなぞった。今日も、ダメだった。これが裏返しになってたら、良かったのに。私の未来はこの店の中にあるのに。どうして。
なんだかもう力が抜けてしまって、私は玄関の前に膝をついて座り込んだ。膝に、砂が刺さって少し痛い。着ている白のワンピースは少し汚れている。洗わなきゃ。でも、何もかもが億劫。私がそうして裾の黒いシミを見ていたら、不意にガチャリ、扉が開かれて、扉がおでこにぶつかった。
「いてっ」
「......えっ?」
中から驚いた表情で顔を覗かせた、薄い水色をした男の人。まさか扉が開くとは思ってなかった私と、人がいると思ってなかったであろう彼。私を心配そうに見下ろして、そして、彼は「close」のプレートに伸ばしていた手を引っ込め、「中へどうぞ。」と、扉を開いた。
おでこを押さえながら踏み入れた念願のそのお店。二つの扉をくぐった先には、こじんまりした部屋。物はあまりなく、ロッキングチェアが1脚とテーブルが一つ、小さな椅子が二つ。シンプルだ。小さな椅子に促されるまま座って、壁に立てかけてあるレコードやドライフラワーを眺めた。素敵。上手く言い表せないけど、暖色に囲まれていて、素敵。
「これで冷やして。」
「ありがとう、ございます。」
手渡されたひんやりと冷たい濡れタオル。おでこに当てると心地いい。ほう、と一息吐いて、彼を改めてじっくり見た。ここに人間が住んでいることは知っていたけど、見たことはなかった。いつも閉じられた扉と物音一つしない家しかなかったから。彼は色素の薄そうな目と髪の色をしていて、柔らかい、消えてなくなりそうな青空の色。年は、幾つぐらいなんだろう、よく分からない。けど、多分成人はしてるはず。私よりは年上かな。
「何してたの?」
「えっと、その、このお店に用事があって、でも、閉まっていたので...すみません、閉店してるのに、中に入れてもらって。」
「僕の不注意で痛い思いさせちゃったから、気にしないで。それに、丁度、開けようかと思ってたんだ。」
「じゃあ、もしかして...」
「うん。貴女の願いを叶えられると思うよ。」
じわ、じわり、目が熱くなって、私はまだ何もしてないのに、込み上げてくる涙に勝てなかった。ぽろぽろ頬を滑っていく涙を必死に拭っていたら、彼に、ハンカチを渡された。
「どうぞ。」
「あっ、ありがとう、ございます、すみません。」
「いいえ。僕、簡単に説明だけさせてもらうから、落ち着いたら、話を聞かせてくれる?」
「わかりました。」
そして彼は落ち着く声色で、ゆっくり、店の説明を始めた。なんてことはない。ここは、ただの香水屋だ。彼はいわゆる調香師で、お客さんの求める香りを作り出してくれる。
ただ、この店は、香りと共に、忘れていた記憶が戻ることがある。というのが、密かに噂されていた理由だった。香った時、その場面で何か、大切なことが起こっていたとしたら。それを思い出すことが出来る。過去に囚われる人々がこの家を訪れる理由がよく分かる。
「それで、貴女は...『ガチャガチャ!ガチャ!』
説明を一通り終えた彼が私に質問した瞬間、玄関の扉が乱暴に揺らされる音がして、びくりと身体を震わせてしまった。closeの札は掛かってたはずなのに、ドアの向こうの誰かはガチャガチャと扉を揺らし、そして、鍵を開け物音を立てながら店へと入ってきた。
「篠宮ぁ。邪魔すんでぇ。」
現れたのは、タバコのような白い棒を咥えて、この暑い中黒いスーツを着崩して着てる、青黒い男の人。なんだか粗雑で、ヤクザみたいな人。私は慌てて振り返り、驚いて固まる彼にこっそり声を掛けた。
「け、警察、呼びますか、」
「いや、それは...」
「けーさつぅ?ナハハ、自分おもろいこと言うやん。」
男が胸元をごそごそと探り、手帳を取り出した。開かれた面に光る桜の代紋、そしてきっちり制服を着て写真に映る男。まごうことなき警察手帳だ。状況が飲み込めない。
「どーも、お呼びですか。」
「...脅かすのやめてくださいよ、鴻神さん。」
「ど、どういうことですか...?」
「近く寄ったから来てん。君、ダレ?」
「僕のお客さん。」
「あー、客。そんならお前、鍵閉めたらあかんやん。監禁罪成立すんねんで。」
「ご、ごめん、お客さん、久しぶりだから忘れてた、」
「はー、あっつい。なあ、冷コー。」
「はいはい、待ってて。」
「警察、本物...?」
男のレイコーという呪文を聞いた彼は立ち上がり、部屋の奥へと消えていった。得体の知れない男と二人、部屋に放置されてしまった私は、ぽつり、思わず心の声を呟いた。その言葉は運悪く目の前の男に届いていたらしい。私と彼が話していた机に行儀悪く腰掛け、また、ナハハ、と気の抜けるような笑い声を立ててから、咥えていた棒、飴を口から取り出してガリ、と噛んだ。私は男に対しての警戒を解かない。
「証明したいとこやけど、今は手ぶらでなぁ。チャカもワッパも持ってないねん。」
「???」
「えーと、あぁ、あったあった。ほい。」
男はポケットをガサゴソ漁り、少しくちゃっとなった小さな紙を取り出し机に投げた。この男の名刺らしい。ガリガリ、男の歯は飴をとうに失い、何もついてない紙の棒を手持ち無沙汰に噛んでいる。
「警視庁、刑事部捜査二課、特別捜査第二係巡査部長、鴻神、......」
「ルイ、や。鴻神誄。」
「...本当?刑事さんなの?」
「せやで。ま、自分が想像してんのは捜一の方やろうけどな。」
「そーいち?」
「そ。殺人事件の捜査をするかっちょいー刑事は皆捜査一課やねん。」
「鴻神さんはカッコいいよ。はい。」
グラスに満たされた黒い液体と氷。ああ、レイコーは冷たいコーヒーのことか、と納得する。何かと思った。彼が退いた後の椅子に座った男は放った名刺と棒をぐしゃりとまとめて握りゴミ箱へ放り投げて、私の正面に座って機嫌が良さそうに刺さった黄色のストローへ口を付けた。こちらに向いた細い糸目はどこを見ているのか、開いているのかすらよく分からない。
「この人は、鴻神さん。僕がお世話になってる人で、こう見えてちゃんとした警察官。」
「ナハハ、どー見えてんねん。」
「...捜査二課っていうのは、知能犯を専門にしてるの。詐欺とか、贈賄とか。」
「へぇ...すごい。賢いのね。」
「そうそうそう見た目と違って、ってなんでやねん。誰が見た目アホや。」
「ははは、元気だなぁ。」
私は、胸に留めた言葉を吐き出さず、そのまま飲み込んだ。夏にそぐわない不健康そうな白肌の男は、男とは対照的に汗をかいたアイスコーヒーを飲み干し、氷をかき混ぜながらずるずると残りを啜っている。何かを噛むのは癖なんだろうか、プラスチックのストローが波打ってへにょへにょになっている。男はちらりと腕時計を見て、「ごっそーさん。」と呟き立ち上がった。誘われるように向かった先はロッキングチェア。
「篠宮、俺また戻らなあかんから、30分後起こしてくれ。」
「分かった。」
「公務をサボるのね、悪いお巡りさん。」
「君はオカンか?束の間の休みくらい大目に見てえな、かわいこちゃん。」
「今日はどれにする?」
「いつものがええ。ほな、おやすみ。」
汚れた小さなぬいぐるみとくたくたのブランケットを巣のように整えた男はこちらに背を向け、器用にチェアーの上で縮こまり丸まった。昔、誰かが飼ってたハムスターみたい。
彼がカウンターの下から小瓶を取り出して、男の眠る椅子の上から降り注ぐように、シュッ、シュッ、香水を撒いた。少し間を置いて私のところまでふわり、香ってきたのは、ごく普通の、でもどこか懐かしいような、夏の石鹸の匂いだった。薄緑になった男は何も言わず、ただ微かに肩を上下させている。もう眠ってしまったのだろうか。
かたり、音がしてハッと我に帰ると、私の前に薄黄色の炭酸が置かれた。
「レモンスカッシュ。嫌いじゃなければどうぞ。」
「ありがとう。」
「彼の事は気にしないで。もうぐっすり眠ってるはず。で、貴女は、何を探しに来たの?」
「私は、あの日、母に言われ��言葉を、探しにきました。」
あの日、私が学校の行事に参加なんてしていなければ良かったんだ。そう思い続けることで、贖罪している気分になっていた。甘い、甘すぎる。過去に戻れるなら今が無くなっても、あの日に帰って私は家族と共に死ぬだろう。
簡単だ。高校の修学旅行から帰ったら家が燃えていた。それだけだ。私に残ったものは、父母、そして7歳だった妹の僅かな生命保険と、家族だったモノの消し炭だけ。原因は放火だった。犯人は捕まったけど、否認を続けていて、発言が支離滅裂だから、刑法39条が適用される可能性があるらしい。私は犯人に関わるのを辞めた。罪の意識?そんなものはなから無いから人の家に火をつけられるんだ。贖罪?反省?するなら最初からしない。何もかもが虚無だった。ただ前にある道を、止まっては死ぬと歩き続けていた。
私には、昔から人の周りにさまざまな色が見えていた。色は変幻自在で、動き回り私を楽しませた。色は意味を持ち、時に人の幸せを、人の秘密を、そして人の不幸を、曖昧なニュアンスで私に伝えてきた。
あの日、確かに家族の周りに、紫の雲が見えていた。色は言葉を話してくれるわけじゃない、ただその不穏な影に、私は目を伏せて、鏡を避けて、逃げた。どうにもならない、どうにもできないことは分かっていた。私には、見ることしか出来ない。未来を変える力はない。
あれは、まだ私が3歳の頃、目の前で真っ赤な色を纏っていた子猫が、止めるのも間に合わず道路に飛び出してトラックに轢かれた時のことだった。泣きじゃくった私は家に帰って母にすがりつき、ずっと隠していた私の秘密を話した。頭がどうかしてると思われるかも知れない、嘘だと笑われるかも知れない。それでも良かった。母は、優しい笑顔で微笑んで、そして、私に言った。何かを、確かに言った。頭の中の母は何度思い出しても口をパカパカとくるみ割り人形のように動かすばかりで、音が耳に届かない。お母さん、何、聞こえないよ、教えて。抱き締められた背中は暖かく、母のエプロンからは使っていた柔軟剤の香りがする。いい匂い、落ち着く。私はここにずっといたかった。
「思い出せないんです。」
「そっか。分かった。この中から、似てるなって思う香りを選んでくれる?幾つでも構わないよ。」
彼は部屋の中を歩いて思案しながら、持ってきた親指ほどの小瓶を机の上にいくつか並べた。中には1センチくらい液体が溜まっていて、どれも淡い色をしていた。蓋を開け、似ている、お母さんみたい、と思う匂いを、示していく。どれも似ているようでどれも違う。柔軟剤の香りじゃダメなんだ。あの、お母さんの香りは、どこに。
「ありがとう。」
私が選び出した瓶を持って、彼は隣の部屋へと消えていった。私は一人、眠る男の微かにすら聞こえない寝息に耳をそば立てながら、過去の記憶に想いを馳せていた。男へ目線を向けることはなかった。男の周りには、黒いシャボン玉が無数に浮いている。
シュッ。彼が香水を撒いた瞬間、私の意識はふわりと空高く浮かんで、そしてブラックアウトした。
ここは、記憶の中だろうか。私は小さな手で母のエプロンにしがみついて、エプロンからは今日の晩ご飯のチキン南蛮の酸っぱい香りと、私の大好きな柔軟剤と、お母さんの化粧品の匂いがした。お母さん、お母さん。大好き。私のこと、捨てないで。
「...素敵なギフトを貰ったのね。」
「ぎふと?」
「神様はね、皆が生まれる時、一つプレゼントを持たせてくれるの。困った時、誰かを助けられるように。」
「だれかを...」
「そう。もしかしたら、助けられないかもしれない。プレゼントの重さに、疲れてしまうかもしれない。それでもいつか、貴女が貴女として生まれて、良かったって、貴女として生きていこう、って思える日が来るの。」
「わたしとして、いきていく?」
「そう。だから、たいせつにたいせつに、離さないようにね。」
母は私の小さな手と母の少しカサついた手を重ね合わせて、きゅっ、と握ってくれた。手首には、私が幼稚園で編んだミサンガが巻かれていた。お母さん、私、私として生まれて、良かったのかな。まだ分からないけど、お母さんの子供で、良かった。
「......落ち着いたかな。」
「っ...はい、ありがとう、ございます、記憶、思い出しました、母の言葉も、全て、」
「良かった。もし辛ければ、ここに置いて帰っても構わないよ。」
「...持ち帰ります。私が、私であるために。」
涙を拭いて、彼から薄い紅色の香水瓶を受け取る。ひんやり、冷たいそれに頬を押し付けて、そして、もう一度、その香水を手首へと振りかけた。少しだけ、ほんの少しだけ、顔を上げて進める気がした。
「あ、いけない、もう30分経ってる。」
時計を見て慌てた彼は男に駆け寄り、肩を揺さぶった。シャボン玉は彼をするりと避け、触れたものはぱしゃりと割れ、床に黒く染み込み消えていった。
「あー...よう寝たわ。」
「ほら起きて、しゃんとして。今日も遅くなるの?」
「せやなぁ、てっぺん超えるから気にせんで。明日、忘れたらあかんで。」
「病院でしょ、分かってる。ありがと。」
「おー、ええのん貰ったやん。かわいこちゃん。」
猫のように伸びた男が私に近寄り、香水を見て機嫌がよさそうにニコニコと笑う。そして、ポケットからお札を取り出し、「これでええか。」と彼に握らせた。
「私、ちゃんとお金持ってます。」
「これはサボタージュの口止め料や。所謂賄賂やな。」
「......お兄さん、体調悪いの?」
「いや、定期検診だよ。」
「ほんなら、俺行くわ。」
「この子、家まで送ってあげて。」
「はいよー。今日はこれくらいにしといたるわ、言うて。ナハハ。」
流されるまま、香水をタダで貰ってしまった。彼は優しい笑みを浮かべて、私達が角を曲がってしまうまでずっと、扉の前で見送りをしてくれた。
横を歩く男の周りには、相変わらずふよふよとシャボン玉が飛んでいる。私は、知っていた。黒いシャボン玉は、嘘ばかり吐いている人の呼吸の色。
「刑事さんは、詐欺事件を追いかけてるのね。」
「せやで。」
「だから、嘘ばかりついてるの?」
「せやなあ。」
「お兄さん、どうして関西弁なの?」
「高校まで向こうおったから。」
「篠宮さんとは、一緒に住んでるの?」
「入り浸ってんねん。アイツ世話焼きやから。」
「お兄さん、幾つなの。」
「30。」
「なんで警察官になったの。」
「そら公務員やからなぁ、安定や。」
「警察官が、アクセサリー付けてていいの。」
「ん?あぁ、このネックレスはなぁ、自分がくたばって肉片になっても判別出来るように、イニシャル付けとんねん。」
「......どうして、今は嘘付かないの?」
男の口から吐き出されるシャボン玉は全て、無色透明。不可解な様子に、気味が悪くなる。男はまた一つ新しい飴を取り出し、私にも一つ差し出してくる。恐る恐る受け取って、葡萄味のそれは食べずにポケットへ仕舞った。男は包装を剥いたイチゴミルク味を咥え、カツカツと歯を当てながら舐めている。
「よかったなぁ、君。記憶戻って。」
「ええ。篠宮さんは、凄い人だわ。...何をするつもりか、知らないけど、彼を傷つけるようなこと、しないでね。」
「はっ、えらいご執心やな。過去なんてなあ、何の意味もないねん。」
「...そんなことないわ。どんな過去も、私を作る要素よ。」
「強いなぁ、君は。ええやん、大事にしぃや、ソレ。」
暫く歩いて、ふと私の住むアパートの前で立ち止まった男が、「ほなな。」と手を上げ、ふらりふらりと大通りの方へ消えていった。
「嘘ばっかり。」
吐き捨てるように言った言葉は、男には届いたのだろうか。私は一度も、家の場所を聞かれていない。
「おおきになぁ、篠宮。」
『僕はただ、彼女の手伝いをしただけだよ。』
「こんな早くお前のとこ行くと思わんかったわ、いやー、焦った。機転聞かせてくれて助かったわ。」
『あんな丁寧に説明しなくても、ソーイチもソーニも若い子には分かりませんって。』
「相棒とか見とるかもしれへんやん。」
『...気丈に振る舞ってましたね。』
「んや、あれはホンマに元気が出たんやろ。帰り道も、篠宮さん篠宮さん言うて尻尾振ってたわ。」
『...ふふ、そうですか、それは良かった。』
「なんや、嬉しそうやな。」
『面白い子だな、って思っただけです。』
「...あっ、すまん、呼ばれたわ、また連絡する。」
『はぁい。頑張って。』
通話終了、の文字を暫く眺め、怒鳴るように俺を呼ぶ上司の元へと歩みを進めた。内容は大体分かっている。どうせ、捕まえたなら最後まで責任を取ってキッチリ放火犯を吐かせろ、だ。出来ることならやってる、と心の中のゴミ箱に吐き捨てて、怒り散らかすハゲ頭を眺めながら、楽しそうに会話する二人をぼんやり思い返していた。
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