Tumgik
#時間を無駄にする能力
danzoku · 1 year
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無駄に使う能力
時間を無駄に使う能力が上がったな
と自分を毎日讃えている。
時間を無駄にできるなんて、その状況含めて、よほどの能力だから。
最高の能力だ。
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chikuri · 5 months
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「民主党政権のどこがどう悪夢だったのかきちんとした説明を聞いたことがない」という主張は定期的に出現しますね。とはいえさすがに「聞いたことがない」なんてはずはないので、おそらく「自分の気に入る説明ではない」という意味か、「バカに分かるように説明したところで、そもそもバカは聞いてない」パターンのいずれかとは思いますが。 悪夢のような時代を生き抜いてきた者として私が言えるのは、「とにかく、あのような惨劇は二度と繰り返してはならない」ということだけです。あの時代がいかに酷いものであったか、ご存知ない方もぜひこの機会に知って頂きたいので、支持者から叩かれること覚悟で全力で反論していきますね。 個人的に、「悪夢の民主党政権」における大きな問題点は次の3点と考えています。 (1)国家運営能力の欠如により、内政上の失敗を数多く引き起こし、国益を損ない続けた。 (2)拙劣な外交を繰り返し、日米関係をはじめ、周辺諸国からの信頼を大きく毀損した。 (3)総理・閣僚をはじめとする所属議員の度重なる不祥事や、自分たちに都合が悪い情報を隠蔽する体質によって、国民の政治に対する信頼を失い続けた。 では、それぞれどんなことがあったか振り返っていきましょう。はらわたが煮えくり返る覚悟で読み進めてください。 (1)国家運営能力の欠如 ・財源の見込みが甘く、政権交代の際に掲げたマニフェストはほぼ未達成。 ・官僚を敵視して排除し、国家業務の停滞と質低下を招いた。 ・金融政策と財政政策が食い違い、タイミングの悪い増税も重なり、景気や株価は低迷を続けた。 ・歴史的水準まで進んだ円高を放置し、デフレを加速させた。 ・法的根拠がないばかりでなく、仕分人の選定や対象事業選定にも透明性を欠いた「事業仕分け」をデフレ時におこない、必要な公共投資を削減。経済を悪化させたにも関わらず、結果に責任を負わなかった。 ・「コンクリートから人へ」という誤った政策により、災害対策を疎かにしたうえ、地域社会を破壊した。 ・「朝鮮王室儀軌引渡」「尖閣事件の船長釈放」「運用3号通知」「国家公務員採用大幅減」など、閣僚たちが思い付きレベルの意思決定を独断でおこない、結果的に我が国の将来に禍根を残した。 ・法的根拠のない組織を乱立させ、意思決定過程が曖昧になり、指揮命令系統も混乱。 ・法的根拠のない大臣や副大臣を任命したり、個人的な友人を参与に、党職員を内閣官房職員に任命するなど、ルールを無視、公私の別がつかない人事を実施。 ・原発停止、ダム建設中止など、法令根拠や事前協議が必要な決定を手続無視で断行。 (2)外交能力の欠如 ・普天間基地問題が迷走し、沖縄とアメリカの信頼を大きく損なった。 ・来日したオバマ大統領を日本に残したまま、鳩山総理がAPEC首脳会議に出席するためにシンガポールに向かうという非礼行為。 ・尖閣沖漁船衝突事件では、中国側の脅迫や報復に屈して船長を早々に釈放、不起訴に。その後の尖閣諸島国有化でも迷走。 ・領空侵犯が頻発するも、実効的な対策をとらず。 ・韓国に対しては、通貨スワップ協定締結、朝鮮王室儀軌引渡し、慰安婦問題での「知恵を絞っていきたい」発言など、不用意な譲歩を重ねた。 ・韓国の歴代大統領として初めて、竹島へ李明博大統領が上陸。 ・旧ソ連時代を含めて初めて、北方領土へロシア国家元首が上陸。 ・実現に向けた方策が何ら決まっていない状態で、国連気候変動サミットにおいて「CO2の25%削減」を突如国際公約化。 ・実現の見込みも全くないまま、G8の場で、「太陽光パネルを1000万戸に設置する」と突如国際公約をおこなった。 (3)閣僚・所属議員の度重なる不祥事と情報隠蔽体質 ・鳩山総理⇒偽装献金問題、脱税問題、引退撤回、「最低でも県外」「Trust me」「国民の皆様が聞く耳を持たなくなった」 ・菅(直人)総理⇒外国人献金問題、北朝鮮関係団体献金問題、「顔が見たくなければ法案を通せ」 ・野田総理⇒在日韓国人献金問題、脱税企業献金問題、民団選挙協力お礼発言、「大きな音だね」 ・小沢元代表⇒政治資金規正法違反容疑で強制起訴(無罪判決)、献金虚偽記載で公設秘書が逮捕(有罪判決) ・仙谷官房長官⇒尖閣漁船衝突事件、「自衛隊は暴力装置」 ・赤松農水大臣⇒口蹄疫問題、「だから早く殺せって言ってるのに」 ・松本復興担当大臣⇒「知恵を出さないやつは助けない」「書いたらその社は終わりだから」 ・長妻厚労大臣⇒運用3号独断決定、職務停滞 ・蓮舫行政刷新担当大臣⇒事務所費架空計上問題、国会内ファッション雑誌撮影、「2位じゃダメなんでしょうか?」 ・前原外務大臣⇒外国人から政治献金受領 ・川端文科大臣⇒事務所費架空計上問題、キャバクラ費用を政治資金で計上 ・鹿野農水大臣⇒対中不正輸出疑惑、機密漏洩疑惑 ・鉢呂経産大臣⇒「死の街」「放射能をうつす」 ・一川防衛大臣⇒「安全保障に関しては素人」 ・柳田法務大臣⇒「答弁は二つだけ覚えておけばいい」 ・山岡消費者担当大臣⇒マルチ商法業者からの献金問題 ・中井国家公安委員長⇒議員宿舎にホステス連れ込み&カードキー貸与、式典で秋篠宮ご夫妻に「早く座れよ」とヤジ ・小林議員⇒違法献金問題で選対委員長が逮捕、選対幹部が公職選挙法違反で有罪 ・土肥議員⇒竹島領有権放棄を日本側に求める「日韓共同宣言」に署名 ・横峯議員⇒賭けゴルフ、女性暴行、恐喝事件への関与 ・緒方議員⇒「スーパー堤防はスーパー無駄遣い」 ・原発事故対応(SPEEDI、米実測値の非公表、議事録不作成など)、尖閣ビデオ、北朝鮮ミサイル発射への対応、温暖化対策の家計負担、年金改革の財政試算 など、自分たちに都合が悪い情報は隠蔽し、政府への深刻な不信感を招いた。 ・総理-閣僚間で見解の方向性や意見の不一致が常態化。それらも含め、自民党で同様の事態があれば野党のみならずマスコミも総出で吊し上げられる事態となるが、マスコミも概ね民主党に好意的な報道姿勢。 そんなに民主党時代が良かったなら、下野以降何度でも政権を取り戻すチャンスはあったはず。なのにただ一度もそうなっていないということは、それが民意ということです。私もあんな地獄のような時代は二度と御免です。
新田 龍 / X
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simamamoru · 2 months
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汚辱の日々  さぶ
  1.無残
 日夕点呼を告げるラッパが、夜のしじまを破って営庭に鳴り響いた。
「点呼! 点呼! 点呼!」
 週番下士官の張りのある声が静まりかえった廊下に流れると、各内務班から次々に点呼番号を称える力に満ちた男達の声が騒然と漠き起こった。
「敬礼ッ」
 私の内務班にも週番士官が週番下士官を従えて廻って来て、いつもの点呼が型通りに無事に終った。辻村班長は、これも毎夜の通り
「点呼終り。古兵以上解散。初年兵はそのまま、班付上等兵の教育をうけよ。」
 きまりきった台詞を、そそくさと言い棄てて、さっさと出ていってしまった。
 班付上等兵の教育とは、言い換えれば「初年兵のビンタ教育」その日の初年兵の立居振舞いのすべてが先輩達によって棚卸しされ、採点・評価されて、その総決算がまとめて行われるのである。私的制裁をやると暴行罪が成立し、禁止はされていたものの、それはあくまで表面上でのこと、古兵達は全員残って、これから始まる凄惨で、滑稽で、見るも無残なショーの開幕を、今や遅しと待ち構えているのであった。
 初年兵にとつては、一日のうちで最も嫌な時間がこれから始まる。昼間の訓練・演習の方が、まだしもつかの間の息抜きが出来た。
 戦闘教練で散開し、隣の戦友ともかなりの距離をへだてて、叢に身を伏せた時、その草いきれは、かつて、学び舎の裏の林で、青春を謳歌して共に逍遙歌を歌い、或る時は「愛」について、或る時は「人生」について、共に語り共に論じあったあの友、この友の面影を一瞬想い出させたし、また、土の温もりは、これで母なる大地、戎衣を通じて肌身にほのぼのと人間的な情感をしみ渡らせるのであった。
 だが、夜の初年兵教育の場合は、寸刻の息を抜く間も許されなかった。皓々(こうこう)とした電灯の下、前後左右、何かに飢えた野獣の狂気を想わせる古兵達の鋭い視線が十重二十重にはりめぐらされている。それだけでも、恐怖と緊張感に身も心も硬直し、小刻みにぶるぶる震えがくるのだったが、やがて、裂帛(れっぱく)の気合
怒声、罵声がいり乱れるうちに、初年兵達は立ち竦み、動転し、真ッ赤に逆上し、正常な神経が次第々に侵され擦り切れていった。
 その過程を眺めている古兵達は誰しも、婆婆のどの映画館でも劇場でも観ることの出来ない、スリルとサスペンスに満ち溢れ、怪しい雰囲気につつまれた素晴しい幻想的なドラマでも見ているような錯覚に陥るのであった。幻想ではない。ここでは現実なのだ。現実に男達の熱気が火花となって飛び交い炸裂したのである。
 なんともやりきれなかった。でも耐え難い恥辱と死につながるかもしれない肉体的苦痛を覚悟しない限り抜け出せないのである。ここを、この軍隊と云う名の檻を。それがあの頃の心身共に育った若者達に課せられた共通の宿命であった。
 この日は軍人勅諭の奉唱から始まった。
「我ガ国ノ軍隊ハ代々天皇ノ統率シ賜ウトコロニゾアル……」
 私は勅諭の奉唱を仏教の読経、丁度そんなものだと思っていた。精神が忘れ去られ、形骸だけが空しく機械的に称えられている。又虐げられた人々の怨念がこもった暗く重く澱んだ呻き、それが地鳴りのように聞こえてくるそんな風にも感じていた。
 勅諭の奉唱が一区切りついたところで、一人の古兵が教育係の上等兵に何か耳うちした。頷いた上等兵は、
「岩崎、班長殿がお呼びだ。すぐ行けッ」
 全員の目が私に集中している。少くとも私は痛い程そう感じた。身上調査のあったあの日以来、私は度々辻村机長から呼び出しをうけた。あいつ、どうなってんだろ。あいつ班長殿にうまく、ゴマすってるんじゃないか。あいつ、俺達のことを、あることないこと、班長殿の気に入るように密告してるんじゃないか。同年兵も古兵達も、皆がそんな風に思っているに違いない。私は頑なにそう思い込んでいた。
 つらかった。肩身が狭かった。
 もともと私は、同年兵達とも古兵達とも、うまくいっていなかった。自分では余り意識しないのだが、私はいつも育ちや学歴を鼻にかけているように周囲から見られていたようである。運動神経が鈍く、腕力や持久力がからっきし駄目、することなすことがヘマばかり、ドジの連続の弱兵のくせに、その態度がデカく気障(きざ)っぽく嫌味で鼻持ちがならない。そう思われているようだった。
 夏目漱石の「坊ちゃん」は親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしていたと云うが、私は生まれつき人みしりのする損なたちだった。何かの拍子にいったん好きになると、その人が善人であれ悪人であれ、とことん惚れ込んでしまうのに、イケ好かない奴と思うともう鼻も引つかけない。気軽に他人に話しかけることが出来ないし、話しかけられても、つい木で鼻をくくったような返事しかしない。こんなことではいけないと、いつも自分で自分を戒めているのだが、こうなってしまうのが常である。こんなことでは、同年兵にも古兵にも、白い眼で見られるのは至極当然内務班でも孤独の影がいつも私について廻っていた。
 あいつ、これから始まる雨霰(あめあられ)のビンタを、うまく免れよって――同年兵達は羨望のまなざしを、あいつ、班長室から戻って来たら、ただではおかないぞ、あの高慢ちきで可愛いげのないツラが変形するまで、徹底的にぶちのめしてやるから――古兵達は憎々しげなまなざしを、私の背に向って浴せかけているような気がして、私は逃げるようにその場を去り辻村班長の個室に急いだ。
 2.玩弄
 部屋の前で私は軽くノックした。普通なら「岩崎二等兵、入りますッ」と怒鳴らねばならないところだが、この前、呼び出しをうけた時に、特にノックでいいと辻村班長から申し渡されていたのである。
「おう、入れ」
 低いドスのきいた返事があった。
 扉を閉めると私はいったん直立不動の姿勢をとり、脊筋をぴんとのばしたまま、上体を前に傾け、しゃちこばった敬礼をした。
 辻村班長は寝台の上に、右手で頭を支えて寝そべりながら、じっと私を、上から下まで射すくめるように見据えていたが、立ち上がって、毛布の上に、どっかとあぐらをかき襦袢を脱ぎすてると、
「肩がこる、肩を揉め」
 傲然と私に命じた。
 私も寝台に上がり、班長の後に廻って慣れぬ手つきで揉み始めた。
 程よく日焼けして艶やかで力が漲っている肩や腕の筋肉、それに黒々とした腋の下の毛のあたりから、男の匂いがむっと噴き出てくるようだ。同じ男でありながら、私の身体では、これ程官能的で強烈な匂いは生まれてこないだろう。私のは、まだまだ乳臭く、淡く、弱く、男の匂いと云うには程遠いものであろう。肩や腕を、ぎこちない手つきで揉みながら、私はふっと鼻を彼の短い頭髪やうなじや腋に近づけ、深々とこの男の乾いた体臭を吸い込むのだった。
「おい、もう大分、慣れて来たか、軍隊に」
「……」
「つらいか?」
「いエ……はァ」
「どっちだ、言ってみろ」
「……」
「つらいと言え、つらいと。はっきり、男らしく。」
「……」
「貴様みたいな、娑婆で、ぬくぬくと育った女のくさったようなやつ、俺は徹底的に鍛えてやるからな……何だ、その手つき……もっと、力を入れて……マジメにやれ、マジメに……」
 辻村班長は、岩崎家のぼんぼんであり、最高学府を出た青白きインテリである私に、マッサージをやらせながら、ありったけの悪態雑言を浴びせることを心から楽しんでいる様子であった。
 ごろりと横になり、私に軍袴を脱がさせ、今度は毛深い足や太股を揉みほぐし、足の裏を指圧するように命じた。
 乱れた越中褌のはしから、密生した剛毛と徐々に充血し始めた雄々しい男の肉茎が覗き生臭い股間の匂いが、一段と激しく私の性感をゆさぶり高ぶらせるのであった。
 コツコツ、扉を叩く音がした。
「おお、入れ」
 私の時と同じように辻村班長は横柄に応えた。今時分、誰が。私は思わず揉む手を止めて、その方に目を向けた。
 入って来たのは――上等兵に姿かたちは変ってはいるが――あっ、辰ちゃんではないか。まぎれもなく、それは一丁目の自転車屋の辰ちゃんなのだ。
 私の家は榎町二丁目の豪邸。二丁目の南、一丁目の小さな水落自転車店、そこの息子の辰三は、私が小学校の頃、同じ学年、同じクラスだった。一丁目と二丁目の境、その四つ角に「つじむら」と云ううどん・そば・丼ぶり物の店があり、そこの息子が今の辻村班長なのである。
 私は大学に進学した関係で、徴兵検査は卒業まで猶予されたのであるが、彼―― 水落辰三は法律通り満二十才で徴兵検査をうけ、その年か翌年に入隊したのだろう。既に襟章の星の数は私より多く、軍隊の垢も、すっかり身についてしまっている様子である。
 辰ちゃんは幼い時から、私に言わせれば、のっぺりした顔だちで、私の好みではなかったが、人によっては或いは好男子と言う者もあるかもしれない。どちらかと言えば小柄で小太り、小学校の頃から既にませていて小賢しく、「小利口」と云う言葉が、そのままぴったりの感じであった。当時のガキ大将・辻村に巧みにとり入って、そのお気に入りとして幅をきかしていた。私が中学に入って、漢文で「巧言令色スクナシ仁」と云う言葉を教わった時に「最っ先に頭に想い浮かべたのはこの辰ちゃんのことだった。ずる賢い奴と云う辰ちゃんに対する最初の印象で、私は殆んどこの辰ちゃんと遊んだ記憶も、口をきいた記憶もなかったが、顔だけは、まだ頭の一隅に鮮明に残っていた。
 辻村班長は私の方に向って、顎をしゃくり上げ、辰ちゃん、いや、水落上等兵に、「誰か分かるか。」
 意味あり気に、にやっと笑いながら尋ねた
「うん」
 水落上等兵は卑しい笑みを歪めた口もとに浮かべて頷いた。
「岩崎、裸になれ。裸になって、貴様のチンポ、水落に見てもらえ。」
 頭に血が昇った。顔の赤らむのが自分でも分った。でも抵抗してみたところで、それが何になろう。それに恥ずかしさに対して私は入隊以来もうかなり不感症になっていた。部屋の片隅で、私は手早く身につけていた一切合切の衣類を脱いで、生まれたままの姿にかえった。
 他人の眼の前に裸身を晒す、そう思うだけで、私の意志に反して、私の陰茎はもう「休メ」の姿勢から「気ヲ付ケ」の姿勢に変り始めていた。
 今日は辻村班長の他に、もう一人水落上等兵が居る。最初から突っ張ったものを披露するのは、やはり如何にもきまりが悪かった。しかも水落上等兵は、私が小学校で級長をしていた時の同級生なのである。
 私の心の中の切なる願いも空しく、私のその部分は既に独白の行動を開始していた。私はどうしても私の言うことを聞かないヤンチャ坊主にほとほと手を焼いた。
 堅い木製の長椅子に、辻村班長は越中褌だけの姿で、水落上等兵は襦袢・軍袴の姿で、並んで腰をおろし、旨そうに煙草をくゆらしていた。班長の手招きで二人の前に行くまでは、私は両手で股間の突起を隠していたが、二人の真���面に立った時は、早速、隠し続ける訳にもいかず、両手を足の両側につけ、各個教練で教わった通りの直立不動の姿勢をとった。
「股を開け。両手を上げろ」
 命ぜられるままに、無様な格好にならざるを得なかった。二人の視線を避けて、私は天井の一角を空ろに眺めていたが、私の胸の中はすっかり上気して、不安と、それとは全く正反対の甘い期待とで渦巻いていた。
 二人は代る代る私の陰茎を手にとって、きつく握りしめたり、感じ易い部分を、ざらざらした掌で撫で廻したりしはじめた。
「痛ッ」
 思わず腰を後にひくと、
「動くな、じっとしとれ」
 低い威圧的な声が飛ぶ。私はその部分を前につき出し気味にして、二人の玩弄に任せると同時に、高まる快感に次第に酔いしれていった。
「廻れ右して、四つん這いになれ。ケツを高くするんだ。」
 私の双丘は水落上等兵の手で押し拡げられた。二人のぎらぎらした眼が、あの谷間に注がれていることだろう。板張りの床についた私の両手両足は、時々けいれんをおこしたように、ぴくッぴくッと引き吊った。
「顔に似合わず、案外、毛深いなアこいつ」
 水落上等兵の声だった。突然、睾丸と肛門の間や、肛門の周囲に鈍い熱気を感じた。と同時に、じりッじりッと毛が焼けて縮れるかすかな音が。そして毛の焦げる匂いが。二人は煙草の火で、私の菊花を覆っている黒い茂みを焼き払い出したに違いないのである。
「熱ッ!」
「動くな、動くとやけどするぞ」
 辻村班長の威嚇するような声であった。ああ、目に見えないあのところ、今、どうなってるんだろう。どうなってしまうのだろう。冷汗が、脂汗が、いっぱいだらだら――私の神経はくたくたになってしまった。
  3.烈情
「おい岩崎、今日はな、貴様にほんとの男ってものを見せてやっからな。よーく見とれ」
 四つん這いから起きあがった私に、辻村班長は、ぶっきらぼうにそう言った。辻村班長が水落上等兵に目くばせすると、以心伝心、水落上等兵はさっさと着ているものを脱ぎ棄てた。裸で寝台の上に横になった水落上等兵は、恥ずかしげもなく足を上げてから、腹の上にあぐらを組むように折り曲げ、辻村班長のものを受入れ易い体位になって、じっと眼を閉じた。
 彼白身のものは、指や口舌で何の刺戟も与えていないのに、既に驚くまでに凝固し若さと精力と漲る力をまぶしく輝かせていた。
「いくぞ」
 今は褌もはずし、男一匹、裸一貫となった辻村班長は、猛りに猛り、水落上等兵を押し分けていった。
「ううッ」
 顔をしかめ、引き吊らせて、水落上等兵は呻き、
「痛ッ……痛ッ……」と二言三言、小さな悲鳴をあげたが、大きく口をあけて息を吐き、全身の力を抜いた。彼の表情が平静になるのを待って、辻村班長はおもむろに動いた。大洋の巨大な波のうねりのように、大きく盛り上がっては沈み、沈んでは又大きく盛り上がる。永落上等兵の額には粒の汗が浮かんでいた。
 凄まじい光景であった。凝視する私の視線を避けるように、流石の永落上等兵も眼を閉じて、烈しい苦痛と屈辱感から逃れようとしていた。
「岩崎、ここへ来て、ここをよーく見ろ」
 言われるがままに、私はしゃがみこんで、局部に目を近づけた。
 一心同体の男達がかもし出す熱気と、激しい息づかいの迫力に圧倒されて、私はただ茫然と、その場に崩れるようにすわりこんでしまった。
 戦いは終った。戦いが烈しければ烈しい程それが終った後の空間と時間は、虚しく静かで空ろであった。
 三人の肉体も心も燃え尽き、今は荒涼として、生臭い空気だけが、生きとし生ける男達の存��を証明していた。
 男のいのちの噴火による恍惚感と、その陶酔から醒めると、私を除く二人は、急速にもとの辻村班長と水落上等兵に戻っていった。先程までのあの逞しい情欲と激動が、まるで嘘のようだった。汲(く)めども尽きぬ男のエネルギーの泉、そこでは早くも新しい精力が滾々(こんこん)と湧き出しているに達いなかった。
 「見たか、岩崎。貴様も出来るように鍛えてやる。寝台に寝ろ。」
 有無を言わせぬ強引さであった。
 あの身上調査のあった日以来、私はちょくちょく、今夜のように、辻村班長の呼び出しをうけていたが、その度に、今日、彼が水落上等兵に対して行ったような交合を私に迫ったのである。しかし、これだけは、私は何としても耐えきれなかった。頭脳に響く激痛もさることながら、襲いくる排便感に我慢出来ず私は場所柄も、初年兵と云う階級上の立場も忘れて、暴れ、喚き、絶叫してしまうので、辻村班長は、ついぞ目的を遂げ得ないままであった。
 その時のいまいましげな辻村班長の表情。何かのはずみでそれを想い出すと、それだけで、私は恐怖にわなないたのであるが、辻村班長は一向に諦めようとはせず、執念の劫火を燃やしては、その都度、無残な挫折を繰り返していたのである。
 その夜、水落上等兵の肛門を責める様を私に見せたのは、所詮、責められる者の一つの手本を私に示す為であったかもしれない。
「ぐずぐずするな。早くしろ、早く」
 ああ、今夜も。私は観念して寝台に上がり、あおむけに寝た。敷布や毛布には、先程のあの激突の余儘(よじん)が生温かく、水落上等兵の身体から滴り落ちた汗でじっとりと湿っていた。
 私の腰の下に、枕が差し込まれ、両足を高々とあげさせられた。
「水落。こいつが暴れんように、しっかり押さえつけろ。」
 合点と云わんばかりに、水落上等兵は私の顔の上に、肉づきのいい尻をおろし、足をV字形に私の胴体を挟むようにして伸ばした。股の割れ目は、まだ、水落上等兵の体内から分泌された粘液でぬめり、私の鼻の先や口許を、ねばつかせると同時に、異様に生臭い匂いが、強烈に私の嗅覚を刺戟した。
「むむッ」
 息苦しさに顔をそむけようとしたが、水落上等兵の体重で思うにまかせない。彼は更に私の両足首を手荒く掴んで、私の奥まった洞窟がはっきり姿を見せるよう、折り曲げ、組み合わせ、私の臍の上で堅く握りしめた。
 奥深く秘められている私の窪みが、突然、眩しい裸電球の下に露呈され、その差恥感と予期される虐待に対する恐怖感で、時々びくっびくっと、その部分だけが別の生き物であるかのように動いていた。
 堅い棒状の異物が、その部分に近づいた。
 思わず息をのんだ。
 徐々に、深く、そして静かに、漠然とした不安を感じさせながら、それは潜行してくる。ああッ〃‥ああッ〃‥‥痛みはなかった。次第に力が加えられた。どうしよう……痛いような、それかと云って痛くも何ともないような、排泄を促しているような、そうでもないような、不思議な感覚が、そのあたりにいっぱい。それが、私の性感を妖しくぐすぐり、燃えたたせ、私を夢幻の境地にさそうのであった。
 突然、激痛が火となって私の背筋を突っ走った。それは、ほんのちょっとした何かのはずみであった。
「ぎゃあッ!!」
 断末魔の叫びにも似た悲鳴も、水落、上等兵の尻に押さえつけられた口からでは、単なる呻きとしか聞きとれなかったかもしれない。
 心をとろけさせるような快感を与えていた、洞窟内の異物が、突如、憤怒の形相に変わり、強烈な排便感を伴って、私を苦しめ出したのである。
「お許し下さいッ――班長殿――お許しッ ――お許しッ――ハ、ハ、班長殿ッ」  言葉にはならなくても、私は喚き叫び続けた。必死に、満身の力を振り絞って。
「あッ、汚しますッ――止めて、止めて下さいッ――班長殿ッ――ああ――お願いッ――お許しッ――おおッ――おおッ―― 」
「何だ、これくらいで。それでも、貴様、男か。馬鹿野郎ッ」
「ああッ、……痛ッ……毛布……毛布……痛ッ――汚れ――汚れますッ――班長殿ッ」
 毛布を両手でしっかりと握りしめ、焼け爛れるような痛さと、排便感の猛威と、半狂乱の状態で戦う私をしげしげと眺めて、流石の辻村班長も、呆れ果てで諦めたのか、
「よしッ……大人しくしろ。いいか、動くなッ」
「うおおおー!!!」
 最後の一瞬が、とりわけ私の骨身に壊滅的な打撃を与えた。
「馬鹿野郎。ただで抜いてくれるなんて、甘い考えおこすな。糞ったれ」
 毒づく辻村班長の声が、どこか遠くでしているようだった。
 終った、と云う安堵感も手伝って、私は、へたへたとうつ伏せになり、股間の疼きの収まるのを待った。身体じゅうの関節はばらばら全身の力が抜けてしまったように、私はいつまでも、いつまでも、起き上がろうとはしなかった。 
 班長の最後の一撃で俺も漏らしてしまったのだ。腑抜けさながら。私はここまで堕ちに堕ちてしまったのである。  瞼から涙が溢れ、男のすえた体臭がこびりついた敷布を自分の汁と血で汚していた。
 どれだけの時間が、そこで停止していたことか。
 気怠(けだる)く重い身体を、もぞもぞ動かし始めた私。
 「なんだ、良かったんじゃねぇか、手間取らせやがって」
 おれの漏らした汁を舐めながら辻村班長が言った。
 そして汚れたモノを口に突っ込んできた。
 水落上等兵は、おいうちをかけるように、俺に覆い被さり、聞こえよがしに口ずさむのであった。
 新兵サンハ可哀ソウダネ――マタ寝テカクノカヨ――
        (了)
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miel8328 · 2 months
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24/08/13(火)
この世は死ぬまですべて茶番だからね〜。きっと我々が生きてる間に真実を見ることはないよ。だから必死になる必要もないし。
茶番に気付かず死にたいと思うまで頑張ってしまったのが、私の悲劇の始まりでしたから。
茶番と割り切って役割を演じるだけでええんよな。そこに意志は必要ないし求められてない。茶番なのは人生全部だけど、特に仕事はそれが強く出る舞台だと思う。
他人は舞台装置のマネキンです。マネキンって会話する物体じゃないから、話が通じるわけないのよね〜。
俳優として力不足な人もいるじゃん?それを多分我々は人間力と言い換えて、人間力が低いと言ってるだけなんよな。それってつまりは今の私の話だと、演技力がないのと役割の理解が出来てないだけなのにね。台本がないから即興の茶番なのよ、人生はすべて。
頑張ることが無駄とは言わないけど、多分劇の中でしか意味ない。例えばお金をあの世に持っていけないのは、劇は劇でしかなくて、他に現実があるからで。劇での出来事は現実に何も影響がないからなんだろうねー。人生を通しての茶番で得たものも、劇中でしか意味をなさないものなんだと思うわ。
我々にとって何が現実かは死んで舞台を降りないとわからないっていうのが、怖さでもあり面白さでもある。
そう思うと芸事や芝居(=芸能界)が持て囃されるのもなんか納得できる。芸能界自体が人生のメタ認知機能的なものだからなんだろうなと思うしね。
演じさせられてるのも、別にロスチャイルド家ガーとか陰謀論ガーとかでもなく、ロスチャイルド家もそういう役割の役を演じてるだけだと思う。
我々人間は生きてる(舞台にいる)間に真実も真理も知ることはできないと思います
それだと世界が平等でないことも、私の中で納得できる。格差がある舞台の設定なのねと思えば。理不尽や不条理の整合性が取れる感じかな?
世界の全部に大きな意味はなくて、世界の全部に舞台装置としての意味はある。各個人の感情も舞台を良くする要素でしかない、みたいな感じかね。
なんかスピリチュアルくさくて自分で笑ってしまうんだけど、スピリチュアルの人達が求めてる救いも実はないんだと思う。救いがある設定の茶番ならあるかもだけど、不条理が多そうな舞台だから、救いは期待できない気がしますね。
この世って茶番で頑張る必要なくね?って思う人が増えて、それによって不都合が生じて、観客か監督の立場の存在が舞台設定を変えたら、救いがある世界に変わるかもなーと思ったりなんだり。全ては私の妄想です。オホホ。
救いを求めて他力本願になってないのが、私の思想とスピリチュアルの違いなんかな。神様とか高次元の存在とか宇宙とかも舞台装置だと本気で思ってるから、そこもスピリチュアル信者とは違うか。
まあ人間が考え得るものは全て茶番の舞台装置でしかないと思いますね。
この内容を朝からLINEのメッセージで送るというイカれた娘に「母はそういう発想なかった。面白い。」 と返信をくれる母も相当クレイジーだなと思いました。
会社や上長を含む部署内の人間への不信と軽い嫌悪はある。それも舞台の演出と思えば気が楽。
ライフハックとして気が重いことや嫌な場面に向かう時に「ショートコント◯◯」 と心の中で唱えてから行く。みたいなやつが結構バズってた記憶があるけど、人生茶番劇の劇中劇なのかもね。おもしろ。
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cafelatte-night · 9 months
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1/13 土曜日
デリケートゾーンの黒ずみが気になったのでトレチノインとハイドロキノンを塗っていたら炎症後色素沈着を起こし、生まれつきある大きな痣みたいになってしまったので皮膚科へ。
飲み薬3種類もらって帰宅。昨晩のアウトデラックスで、自分の体を実験台にするのが好きな女医が出てきた。その人は外国人専門(しかもスキンヘッドのみ)らしく、旦那さんもスキンヘッドの外国人。顔のいい男は悪いやつが多いから、タイプじゃないけど性格のいい旦那の顔を自分で整形して自分好みの顔にしたと言っていて、ぶっ飛んでて好きだなぁと思った。わたしも自分の体を実験台にするのが好きだけど、もちろんリスクヘッジはしっかりと…
帰宅後、婚約者とVideo call 。わたしが見てる前でイってくれたのは初めてだった。心から好きと言えなくなって苦しい。もしこの人と一緒になれなかったら、この「好き」は嘘になってしまうみたいだったから。
出会った頃は、冷たい人だなと思った。きっと、たくさんの女を泣かせてきたタイプだろうなと。(そんなエピソードはひとつも聞いたことないけど見た目がそんな感じ) でも知れば知るほど、優しくて温かくて一途で、今までたくさん女性に泣かされてきた人だった。こんなこと言うと烏滸がましいけど、わたしが幸せにしてあげたいと思った。この人の優しさをこれ以上無駄にしたくない。
寝る前になって美容欲がむくむくと湧き出てきた。光脱毛と歯のホワイトニングと清掃、いつもより丁寧なスキンケア。決してきれいにはなれないけれど、自分の体を大切にするのは気持ちがいい。
1/14
朝の6時にあった3度の着信に気づかなかった。
気づいたのは朝9時。こんな早朝に誰かから電話がかかってきたのは、祖母の危篤時以来だ。何事かと思い電話をかけたら、元彼が昨晩バーで飲みすぎてアパートの鍵を失くしたそう。なんとか自分で鍵を探し、部屋に入れたが二日酔いがひどくて寝込んでいた。心配だったので薬がほしいか聞いたら、ほしいとのことで車で40分近くかかるけど薬を持って行った。
明らかにぐったりしてる彼。自業自得だけどかわいそうに見えた。先週末、私たちはもう長い間会わない感じのさよならをしたばかりだ。彼は傷心してやけ酒したようだ。彼がこんな状態になったのは私のせいでもある。
もう私と会わないと思ったから、バーで日本人の女と話してインスタを交換したらしい。むかつく。あんたのそういうすぐ他の女に走るとこ大っ嫌い。
その日は彼の家に泊まった。次の日、ちょっと調子が良くなった彼といっしょに朝ごはん食べて彼のスマホの写真を一緒に観ていたら、妊娠検査薬とメッセージ付きの写真を見つけた。私と知り合う前に付き合ってた日本人の女のものだった。彼はなんでこの写真が残ってるのか分からないと慌てて消した。陰性の写真だったけど、彼女の話は彼から聞いたことがあって、初めてのデートで股を開いたからあまり好きじゃなかったと言ってた女だ。
私がその写真を見たら、「なにこれ、コロナのチェックかな?」としらを切りやがった。舐めんなクソ。そのあと、わたしはベッドに篭ってシャットアウトしたけど、彼は弁解してきて「過去は大事じゃない、今からが大事だよ」と。それは分かるけど、そんな写真見せられてすぐ切り替えられるかっての。浮気は絶対にしないと思うけど…この元彼、信じてもいいと思いますか。
なぜわたしが元彼にこんなに執着しているのかというと、一緒にいる時の自分がとてもよく笑うから。それに、もし他の女と付き合うことになったら、その女を「特別」に魅せることができる能力が彼にはある。わたしがそれになりたいと思ってしまう。
婚約者とは、まだ会ったことないからいっしょにいる時の自分がよく笑うか分からない。元彼は話をたくさんしてくれる。わたしがいつも聞き役になる。過去のエピソードや最近あったこと、世界のことなどなど。婚約者はあんまり雑談が得意じゃない。わたしも得意じゃないから、元彼といるときより楽しくなさそう。でもそれが重要なのかどうかも分からない。
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ari0921 · 4 months
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<正論>中国の空母にどう対応するか
麗澤大学特別教授、元空将・織田邦男
新型空母「福建」の弱点は
5月1日から8日間、中国の新型空母「福建」は初の試験航海に出た。6年以上かけて上海の造船所で建造され、2022年に進水した。その後、係留状態で艤装(ぎそう)を施し、検査、試験などが実施されてきた。今回、東シナ海という実環境下で各種システムの検証が行われたことだろう。排水量は8万トンと米海軍新型空母に比べるとやや小ぶりである。だが既に実戦配備している「山東」(6万6千トン)、「遼寧」(6万トン)の2隻をはるかに上回る。
山東、遼寧がスキージャンプ方式で戦闘機を発艦させるのに対し、福建はカタパルト方式を採用した中国初の空母となる。ただ一般的な蒸気式カタパルトではなく、電磁式を採用しているのが注目点である。現在、電磁式カタパルトを実用化しているのは、米海軍原子力空母「ジェラルド・フォード」だけである。フランスの原子力空母「シャルル・ドゴール」は蒸気式を採用しているが、独自開発できず、米国からのライセンス生産である。
空母のカタパルト運用は容易ではない。米海軍は安全に使いこなすのに約40年かかった。電磁式を初採用したジェラルド・フォードはトラブルで起工から就役に7年かかった。中国は初めてカタパルト方式を採用したが、一足飛びに電磁式を採用した。軍事常識からすれば無謀に近い。電磁式は十分な電力確保が必要で、原子力空母であることが望ましい。通常動力の福建が必要な電力を円滑に供給できるか疑問視する声もある。
スキージャンプ方式による発艦では最大発艦重量が制限され、戦闘機の能力発揮が制約される。また艦隊防空の要である早期警戒機も、探知能力に劣るヘリコプター型しか搭載できず、空中警戒監視能力に弱点を抱える。
カタパルト方式では燃料、弾薬を最大搭載した戦闘機を発艦させることができる。さらに監視能力の高い固定翼の早期警戒機(KJ―600)が運用でき、山東、遼寧とは段違いに優れた戦闘能力発揮が可能になる。時間はかかるだろうが、諸問題を解決してカタパルト方式に熟達すれば、中国海軍の洋上作戦能力は飛躍的に向上するだろう。
なぜ空母を持ちたがるか
福建の任務は台湾有事の際、台湾東側の海域に展開し、米海軍の接近を阻止し、制海権を奪取することだ。米海軍を海域から排除できれば、台湾攻略は容易になる。最終目標は2049年までに西太平洋の覇権を獲得することである。近年、中国海軍力の増強は凄(すさ)まじい。艦艇数では既に米海軍を超えた。今後、福建型を4~6隻建造し、「原子力化」を進める計画があるという。
他方、対艦弾道ミサイルの登場、水中ドローンの出現、水中発射魚雷の長射程化などにより、空母はもはや時代遅れともいわれる。こういう時期に、なぜ中国は空母を持ちたがるのか。中国の梁(りょう)光烈国防相(2009年当時)は次のように述べた。「世界の大国で空母を持っていないのは中国だけだ。永遠に空母を持たないわけにもいかない」「中国には広い海域があり、海を守る任務も重い。中国の海軍はまだ力が弱く、発展する必要がある」
中国の空母保有は「中華民族復興の夢」「国威発揚と軍威発揚」といった政治目的が軍事的合理性に優先しているようだ。中国は今後とも空母保有に向けて莫大(ばくだい)な資源を投資し続けるだろう。早ければ10~15年後には、空母の戦力化が実現するかもしれない。
「無用の長物化」させる戦略を
安全保障の要諦は最悪を想定し準備しておくことだ。将来の空母の脅威に備え、無力化対策の検討を開始すべきだろう。「空母に対しては空母」の発想は、費用対効果上も軍事的合理性からも愚策である。各種対艦ミサイル、AI型ドローン、自律型魚雷といった空母の致命的弱点を突く先進技術が手に届くようになってきた。
現在、防衛省は長距離地対艦ミサイルや空中発射型対艦ミサイル、そして反撃力としてのスタンド・オフ・ミサイルなどを開発中である。だが空母対応としては不十分である。防御の余地を与えてしまう単純な攻撃手段では対応策にならない。多種多様な手段で空母艦隊の防御能力を飽和させて初めて無力化を強いることができる。空母の無力化に焦点を絞った空中、海上、海中の非対称兵器開発に着手すべきだ。同時に硫黄島の拠点化、要塞化も必要だろう。
対応策さえ準備できれば、日清戦争前の「定遠」「鎮遠」の如(ごと)き威圧効果で、大騒ぎすることはない。必要以上に恐れ、いたずらに騒ぐのは中国の思う壺(つぼ)である。
空母の運用には艦載機や早期警戒機だけでなく、随伴する艦艇群、潜水艦などが不可欠であり、莫大な予算を要する。中国空母戦力が完整した時点で、「無用の長物化」させる手段を手にしておけば、莫大な予算を無駄金に終わらせることができる。これが日本の採るべき戦略であろう。今すぐ着手すれば、十分に間に合う。(おりた くにお)
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suma10ra · 8 months
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2024/02/13
自分の目、かなり気に入っている。
相変わらず労働が激しくてなんかもーくたくたになっちゃってあっちこっちでぽっぽろけだった。
1月は26歳になったり、大阪に行ったり、友人のHNと同じ名前の店に行ったり、それはもう色々あったんだけどなんだもう鮮明に書き起こせるほどは覚えていなくて、今はただ上澄が美しくキラキラと光っているので、そんな感じで濁して流して、いい気持ちでいます。
今月に入ってからも色々あった。
生きていればそれなりに色々あるのが人間というものなんだろうから、何でもかんでもあれやこれや書き連ねるのもなぁという気持ちもありつつ、しかし汚い気持ちは記録しておくとある意味で自分の人間らしさを思い出す媒体となるので、そうなるようにそうしてみる。
仕事で嬉しいことがあり、がんばってきてマジで良かったね、と自身に対して思う。私は私を誇りに思う。
と同時に同量もしくはそれ以上の重圧(自分で勝手に上乗せしている側面もありけり)と、これが崩れた時に信頼を著しく損なうのでは、という無駄な心配もぽたぽた滴っており、少しずつ確実に心がびしゃびしゃになっているのだが、今のところ見ないふりをしている。
私は自分の能力に自信を持っているけど、その自信を帳消しにするくらいに自分の人格に対しては否定的なので、能力がべこべこになってもなお人に好かれている自分、というのがいまいち想像できなくて、へこむ。
バスがとろくてイラつく。
この三連休はたくさん眠りたくさん食べて映画とアニメをたくさん観た。たくさん観て気づいたことがいくつかあるので気持ちのまま正直につらつら書いてみる。
・能力がないのにでしゃばるやつを見てるとイライラする(優生思想?)
・キャラに対して「この人仕事だとこういうタイプっぽい」という嫌な社会人ぽい感想を持つようになった
・志が低い人に対してはそんなにイライラしないかも
・他者に自己肯定させようとするコミュニケーションが心底嫌い、言ってほしいことを引き出そうとするな
・私、感情移入しないタイプだと思ってたけどすごいする
・明確なゴールがない中でドラマを起こすのって難しいんだろうな
・ハリーポッター、大人になってから観てよかった
・SNSで安易にネタバレするやつ、布教と称してゴリゴリに展開を教えて萌え語りするやつ、いなくなってほしい
・自らの正義を信じて進むのと、自分のことを疑いながら進むのではかかるストレスが猛烈に違うだろうね
・あっけらかんとして呑気な存在って過度にストレスが加わる状況では絶対に必要
明確に書きたいことがあったような気がするけどもう忘れた。書いている側からさらさら流れていくような感覚がある。それなら書かない方がいいんじゃない?ってか? これは定期的な灰汁抜きであり排泄に近い作業だから・・・。
次回、歯の矯正シミュレーション(保険適用外2万円+消費税)の巻!
私は私をもっと好きになれるように生きていこうと思う、好きになれるならどんなところでもいい。今は目だけが好きだけど、そこからもっと好きなところを増やしていけばいい。好きなところがないなら作っていく。
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kennak · 10 months
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9月21日午前6時に父が亡くなった。 老健からの退所が決まり、週末のみ自宅で過ごすことが決定してからの 我が家はまさに上を下への大騒ぎだった。 家の中までの導線を確保した上で車椅子が通るよう道を整備し、 父が使っていた寝室に入るサイズの介護ベッドを調達して 高齢の母の負担が極力減るようにヘルパーの力を頼りながらの受け入れ生活だったが あれほどの労力をかけて準備したにも関わらず、わずか2ヶ月ほどでピリオドを打った。 コロナ感染からの重症化で一時は命も危ぶまれた父は、奇跡的に回復するも 肺炎により嚥下機能が著しく低下していたため誤嚥性肺炎を繰り返しては再入院し、 「急変した際の延命治療はどうしますか」とその都度医師に聞かれた。 そして3度目の再発で入院し、同じように「どうしますか」と問われた時、 半ば慣れっこになっていた私たちは「回復の希望があるならできるだけのことはやってほしいが 機械の力を借りて心臓を動かすだけの措置なら不要」と回答した。 そしてその翌日、まるで私たちの会話を盗み聞きしていたかのように父は逝った。 今年もケムコ様より東京ゲームショウにお誘いいただいていたのだが 父の容体が安定していないことからギリギリまで返事を待っていただいていた。 (快く待ってくださったケムコ様には本当に感謝しかない。ありがとうございます。) 最初から断ることも考えたが、遠出すれば気分転換になるかもという現実逃避的な思考もあり 引き延ばすだけ引き延ばした挙句に父が選んだ旅立ちの日は9月21日、東京ゲームショウの開幕初日だった。 父についてのエピソードで一番古い記憶を辿ると、幼稚園のクリスマス会になるだろうか。 園児のところにサンタがやってきて菓子を配る恒例の会で私も楽しみにしていたのだが 当日やってきたのはサンタのコスプレをした父で、特に素性を隠すでもなく 大声で私の名前を呼びながら「おおしのびん、今年はワシがサンタじゃ」と菓子を手渡した。 私は幼稚園の年少組にして「サンタは親が演っている」ことを知ってしまったのである。 生粋の目立ちたがりで役職のつくポジションが大好きだった父を見て育ったせいか 私は人一倍自分を表に出すことを避けるようになり、今もこうしてハンドルネームでブログを書いている。 母から「お父さんのようになってはダメよ」と言われて育った私は、 言ってみれば父を反面教師にして出来上がった集合体のようなもので、何から何まで合わない。 合わないのに、成長するにつれて父に似た部分が体のあちこちに、思考の節々に現れては嫌悪した。 今にして思えば、父のようになりたくない、は、父のように何事にもオープンで大らかには生きられない 内向的な自分の劣等感が生んだ、羨望からくる逆恨みだったのかもしれない。 そのことを受け入れ、父の中に幾らかの可愛らしさを見出してからの親子関係は 世間で言うところの仲の良い親子には届いていなかったかもしれないが、そう悪くもなかったと思う。 3度目の入院の知らせは突然だった。 デイサービスから「微熱があり酸素量も少ないため念のため病院に連れていきます」と連絡があり またかと思いながら病院に駆けつけた。 前々回、前回と同じようにしばらく入院して、回復すればまた退院するのだろうとぼんやり考えていたので 入院手続きのために膨大な枚数の用紙に記入しなければならないことの方が気が重かった。 翌朝面会に行くと、父は痰を吸入してもらって楽になったのか静かに眠っていた。 夜中も1、2時間おきに吸入をしていたと聞き、頭の下がる思いがする。 とてもではないが、このケアを自宅ではできなかったろう。 父は私のことはわかっていたようで「会いにきたよ、わかる?」と聞けば小さく頷いていた。 「元気になって、また家に帰ろうな」と声をかけるとまた小さく頷いていて 「この様子なら大丈夫だろう」と少し安堵した。 しかし、翌朝の医師の説明では、心臓の機能が大分弱っているので 肺炎が治るよりも先に心臓が持たないかもしれないと告げられた。 そして、冒頭に書いたように「無理な延命治療は本人も辛かろうし不要。 楽になるための治療なら全力でお願いします」と回答して帰宅した。 その日の深夜、病院から容体がおかしいと電話があり、孫たちも連れて慌てて深夜の病院に 大勢で押しかけると、別室に移動した室内で父はスヤスヤと眠っていた。 「みなさんが到着される直前に急に安定し始めて」とナースは申し訳なさそうに笑ったが 「人騒がせなじいじだ」と悪態をつきながらも皆笑顔だった。 その翌日、またしても深夜に病院から電話があり、同じように大勢で深夜の病院に向かった。 酸素がなかなか上がってこないと昨夜より病室内の空気に緊張感があったが 当の本人は傍目には穏やかに眠っているように見えた。 「こんなことがこれから毎晩続くのかしら」と母が疲労困憊の様子で口にするのを聞きながら 昨日医師に「まぁ、こんな感じで心臓がゆっくり止まってしまうほうが本人は楽だと思いますよ。 本当に眠るように、何も苦しまずに済むので。」と言われたことを思い出していた。 ほどなくして心電図を表示している機械から危険を知らせるアラーム音が鳴り、慌ただしくナースが入ってきた。 「まだいったらだめだよ」「起きてじいじ」「起きないと怒るよ」と孫たちがそれぞれ父に声をかけ 「家に帰ろうよ」と姉が語りかけた後に、それまで黙って見守っていた母が父の手を取って話し始めた。 「じいじ、ねえじいじ、本当に好き放題に生きたわね。 突然商売をすると言い始めて、30年間も私にその店を手伝わせている間に 他所で女を作ったり、こっそり家のお金に手をつけたり。 その人を連れてゴルフに旅行にと遊びまわり、飲み歩いてね。 子育てなんて全部私に任せっきりで、ほとんどしなかったでしょ。 でもねじいじ、私はそれでも、あなたにまだ居て欲しい」 父の左手を両手で包み込み、まるで駄々っ子を宥めるように話しかける母の言葉を聞きながら 「おいおい、こんな男にだけはなるなと刷り込み続けて今更それはないだろう」と思ったりもしたが その言葉を聞いて、つくづく夫婦のことは夫婦にしかわからないのだと思い知らされた。 そして母が話し終えるのを待っていたかのように、9月21日午前6時に父の心臓は動きを止めた。 息を引き取る直前まで、話しかければ反応していたし、ゆっくりと腕を持ち上げたりピースサインも出せていて 「ぎゅっと握ってごらん」と言えば握り返していた父の時間は、本当に呆気なく止まったのだった。 けたたましい機械音さえなければ寝落ちを疑うほど穏やかな最期だった。 入退院を繰り返したとはいえ、何週間も昏睡状態が続いたわけでもなく、 在宅介護開始から2ヶ月、再入院から僅か2日で逝った父は ピンピンコロリとまではいかなくとも、ほどほどコロリぐらいの称号は与えても良い気がする。 面倒を見ていた親族の誰も介護疲れに陥らせず 別れを惜しむ気持ちを十分に残した上で旅立ったことは、家庭を振り返らず仕事に恋に奔放に生きた父が 珍しく見せた父親らしい気遣いと言っていいかもしれない。 週末は自宅で皆に介護されながら、コロナ感染の入院直前に食べるはずだった念願の鰻もちゃんと食し 早朝にも関わらず親族8人が見守る中で逝けたのだから、幸せだったろう。 亡くなる前日の朝、家族がいる手前では気恥ずかしさが勝ってしまい、正直な気持ちを話せないと思った私は ひとりで病院に面会に行き、眠っている父に向かって幼い頃から反抗的な態度を取ってきたことを詫びた。 「できの悪い息子でごめんな」と耳元で話していると、父が一瞬、私の手を握り返してきた、気がした。 あの時間がなければ、私の後悔はもっとずっと大きかったと思う。 テレビで何度も見かけた「9月21日午前6時21分、お亡くなりになりました」という医師の言葉を聞き終えて外に出ると もう空は明るくなり始めており、電話1本で飛んできた葬儀屋と話をしているうちにすっかり陽は昇った。 秋晴れの爽やかな朝だった。 悲しみに浸る暇もなく、数々の段取りが始まった。 実を言うと、2年ぐらい前から「親が亡くなった時にするべきこと」という ハウツーのページをブックマークしていて、折に触れて読み返すのを癖づけていた。 10年以上前の別れでは狼狽してしまい、何もかも人任せにしてしまった反省から いざという時にあたふたせず、冷静に適切な行動とれるための予習をしていたのだ。 親族と親しい方々への連絡、役所への届け出、葬儀の手配など まるで流れ作業のように進んでいって、翌日には通夜、翌々日の葬儀がすんなり決まった。 通夜の翌日、親族の集まった部屋に入ると、皆が見守る中で父が風呂に入れられていた。 旅立ちの前に全身を綺麗にするオプションサービスで、母が頼んでいたらしい。 髪も丁寧に洗い、顔もパック&化粧までしてほとんど韓流スターのようなフルコース。 一部始終を近くで見ていた姉が「私がやって欲しいぐらいのサービスだったわ」と感心していた通り 仕上がった父はこざっぱりして生気を取り戻したように見えた。 昼時になり孫たちが腹が減ったと言うのでGoogleMapで調べてみると 田舎のため近くにはコンビニぐらいしか引き当たらない。 「仕方ないから適当におにぎりでも買ってこ���うか」と義兄は言ったのだが 騒がしく葬るのが我が家のスタイルだからと、私の提案でデリバリーを頼むことにした。 幸い、配達圏内にカレー屋とピザ屋が引き当たったため Uberと出前館に一軒ずつ注文を出し、数十分後には親族控室はカレーとピザの匂いで充満した。 父の想い出話を肴にワイワイと盛り上がり、「こんなに騒がしい親族の控室はないんじゃないか」と 誰かが口にするほど賑やかな昼食になった。 年を取ってもジャンクフードが大好きだった父は、すぐ横で羨ましく見ていたに違いない。 皆で盛り上がっているところに葬儀屋が入ってきて、一枚の紙を置いていった。 折り鶴の形をした形状記憶用紙で、皆で一言ずつ別れの言葉を書いてお棺に入れるのだという。 「お疲れ様でした」「あちらでは偉そうな振る舞いをしないように」(←私)など各自が書き込み、 最後に全員のメッセージを読んでいると、看護学生をしている姪が書いたと思しき一文が目に留まった。 「きちんと面倒をみてあげられなくてごめんなさい。立派な看護師になってみせます。」 淡々と皆の様子を俯瞰で眺めてきた私は、その一文を読んで初めて涙腺が緩んだ。 父親としては赤点だったが、祖父としては孫達に慕われる良きじいじだったのだ。 父の顔の広さもあって、葬儀場には置き場所に困るほどの花が届き、弔問客で溢れ返った。 コロナ禍ではとても実現できなかったであろうし、やはり父はツイている。 「いよいよお別れの時です。 生前お付き合いのあった方は、どうか前に出てきてお顔を見て差し上げてください。 仏様は亡くなっても私達に多くのことを教えてくださいます。 命の儚さ、尊さ、多くの教えを私達の心に遺して旅立たれるのです。」 お棺を閉じる前のお坊さんの言葉に誘われるように棺の前に立ち、眠っている父の顔を覗き込んでみた。 次々と収められる花に囲まれた父は、加工アプリで装飾し過ぎた写真のようなビジュアルで少しだけ滑稽だった。 そしてその姿を見てフフッと少し笑った後に、訳もわからず涙が流れた。 時間にしてほんの1分ぐらいだったと思うが、どこかの栓が抜けたようにドバドバと流れて自分でも驚いた。 「最後ぐらい泣いてくれ」と、父が私の涙腺(栓)を抜きにきたのかも知れない。 こんな機会でもなければ会うことの無かったであろう、数十年振りの知人や親戚と再会し 様々な思い出話をしていると、この時間も父の置き土産なのだと感じる。 簡略化の進む現代風の葬り方にも良い点はあるが、昔ながらの葬式も、その煩わしさも込みでなかなか良い。 親族用にチャーターした火葬場までの送迎バスに乗り込む際、 片手で骨壷を持ち、片手でスマホを持って自撮りをした。父とのツーショットである。 山の中腹にある火葬場は薄曇りで少し肌寒かったが、待ち時間中��やはり四方山話で盛り上がった。 火葬を終え、小さな骨壷に収まった父と帰宅してから 四十九日までの予定を親族で確認し、それぞれが日常に戻っていった。 数日して何気なくiPhoneの写真フォルダを見ていると、入院時に父と撮った写真が出てきた。 亡くなった9月21日は金曜日、その写真は2日前の19日だったので 写真の上にはまだ『水曜日』と表示されている。 iPhoneの写真は1週間以内なら曜日で表記され、1週間以上が経つと○月○日の表記に変わる。 水曜日という表示に、まだ数日前まで父はこの世にいたのだと気づかされた。 老健に長く入っていたし、それほど頻繁に会っていたわけでもないのに 「もういない」ことが日毎に実感となって、音もなく雪が降り積もるように静かに寂しさが募っていく。 あっという間に四十九日を迎え、近しい親族だけで法要を済ませた。 葬儀の時と同じお坊さんがやってきて、最後にまたひとつ話をしていった。 「四十九日が経ちましたね。 毎日元気にお過ごしでしょうか。 今日はひとつ、時間と命について皆さんに考えていただきたいと思います。 私たちは皆、等しく流れる時間の中で生きています。 亡くなった方の時間はそこで止まり、しかし私達の時間は動き続けます。 時間の止まった方との距離は日々遠くなり、日常で思い出す機会が減ってきたり 悲しみが薄れたりしますが、そんな時こそ、生きていることを自覚していただいたいのです。 今日この場で皆さんと過ごした時間が二度と戻らないのと同じように 時間は先にしか流れないと自覚しながら、1日1日を大切に過ごして下さい。」 私にとって父が良い父でなかったように、父にとって私も良い息子ではなかったろう。 生きているうちにもう少し何とか出来たかもと思わないでもないが、全ては後の祭り。 是枝裕和監督の映画「歩いても歩いても」に出てくる 『人生はいつも、ちょっとだけ間に合わない。』を、まんまと私も体験してしまった。 先人からの教訓を受け取っていたのに、実践を怠って同じ後悔をして その気持ちをこうして文章に残し、誰かが悔いを残さないようにと祈る。 そうやって、人は生きていくのだ。
四十九日 - 忍之閻魔帳
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reportsofawartime · 1 month
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宮崎駿が38歳で監督デビューした時の鬼畜エピソードクソワロタwwwww http://blog.livedoor.jp/nwknews/archives/6156321.html… 大塚っていうパヤオの先輩が映画版ルパンの監督をやることになったんだが 鈴木清順の書いた脚本がゴミ過ぎて大塚がパヤオに「監督なんかやりたくねえよ」と電話した そしたらパヤオが「じゃあオレがかわりにやるわ」と立候補 パヤオはその日のうちに手伝っていた高畑の赤毛のアンの仕事を辞職(メインスタッフなのに)して(高畑は激怒)会社も辞めて大塚のスタジオに移籍した 大塚のスタジオに移籍してくるときにパヤオは丹内司っていうのちにラピュタの作画監督をやる若手のアニメーターも引き抜いてきた 電話の翌日からパヤオは大塚のテレコムってスタジオに来て 勝手に自分の机を作って鈴木清順の脚本を読みもせずゴミ箱に捨て ものすごい勢いでカリオストロの城のイメージボード(水彩画)を描き出した それと同時にパヤオは赤毛のアンで天才的な仕事をしていた若手の富沢信雄ってアニメーターを高畑に無断で引き抜いてテレコムに入社させてしまった(富沢は今はテレコムの社長) 1か月でカリ城のストーリーを完成させたパヤオは山崎晴哉って脚本家に脚本を執筆してもらうも出来上がりを読んで「つまんねぇな」と一蹴 結局脚本を無視して1か月かけて絵コンテを描くことになった 絵コンテを描きながらパヤオは赤毛のアンの筆頭原画(原画を描く量が最も多い)だった篠原征子っていう若手アニメーターを無理やり引き抜いてテレコムに入社させてしまった(クラリスは全部この人が描いた ジブリではハウルまで原画を担当し引退) それから1か月かけてパヤオは亜細亜堂の河内日出夫ってアニメーターとオープロの友永和秀と山内昇壽郎と真鍋譲二ってアニメーターを引き抜こうとしたんだが それがバレて揉めて結局出向って形で協力してもらうことになった(友永っていう若手は冒頭のカーチェイスシーンを1人で描いた天才) その翌月にもパヤオは赤毛のアンから新川信正っていう若手アニメーターを引き抜いてカリ城に参加させた(この人はテレコムには入社せずにフリーランスになった) そしてその翌月にはパヤオは赤毛のアンで背景美術を描いていた山本二三っていう若手を無理やり引き抜いてテレコムに入社させてしまった(この人はラピュタやもののけ姫の美術監督をやった) パヤオが電話で監督に立候補してからアフレコ終了までに7カ月かけて映画は完成した(実際の製作期間は6カ月でそのうち作画期間は4カ月半) 映画は制作費の5億円すら回収できないほど大コケ(配給収入3億)しパヤオが次回作を作れる可能性はゼロとなった アニメージュの編集者だった鈴木敏夫はパヤオに映画を作らせるために戦国魔城とかとなりのトトロとかもののけ姫とかいった作品の企画書を書かせるが 上層部は「原作がないものは駄目だ」と相手にもしてくれない パヤオは高畑が監督をやることになったリトルニモっていう合作映画を手伝うために渡米するが高畑がプロデューサーと喧嘩して速攻で降板したため次の監督に指名された 帰国した高畑にかわり新監督としてイメージボードを描きまくるがプロデューサーのゲーリー・カーツ(スターウォーズとかをヒットさせた人)と大喧嘩して速攻で帰国 無職となったパヤオに鈴木の上司で尾形というアニメージュの編集長がパヤオに漫画版ナウシカの連載をさせる ナウシカの映画化を焦った鈴木敏夫は最低でも原稿が160ページなければ出版できないにも関わらず118ページの薄っぺらい単行本を出してしまう ナウシカの1巻は初版7万部出したが5万部も売れず大コケとなったが鈴木敏夫は編集長の尾形と共に強引に映画化を推し進め徳間と博報堂の合同の会議にまで持ち込む そのプレゼンの席でナウシカの出版部数を聞かれた鈴木敏夫は「50万部売れてます! 大ヒットです!」と大噓をついた その嘘のおかげでナウシカの企画は動き出したがカリ城が大コケしたパヤオの新作は100%コケると業界中の噂となり引き受けてくれるスタジオはどこにもなくテレコムにすら断られた 唯一引き受けてくれたのがトップクラフトというアメリカのアニメを専門に作っていたスタジオでパヤオは日本のアニメを一度も作ったことがないというとんでもないスタッフを使ってナウシカを作らなければならない羽目になってしまった そこにド素人の庵野秀明がアニメーターとして参加したいと面接にやってくる おわり
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iwataiga · 1 month
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のんびり生きて80歳で死ぬ
のと、
全力で生きて70歳で死ぬ
だったら、断然70でいい。
老人になってからの10年は退屈だもんね。
では、60は?
うーん。60?ちょっと短くね?
55は?
いや無理無理、それはいや。
でも55と60の違いってなに?
老後が短い?
いや、でも、そもそも老後にやりたいことってなに?
…特にないなあ。
仮に、60で死ぬとするか。
いま、半分。か。
うーん、怖い!
早すぎる!
でも30歳を超えるってそういうことなんだな。
しかも、体力は落ちていくから、本当の意味で自分の好きに生きられる時間なんてないし。
おいおい、若さってやっぱ貴重だよ。
どうすんだよ。
20代、仕事に使っちゃったよ。すっごく楽しかったけどさ。もう一回20代に戻っても、同じ生き方を選ぶと思うけどさ。
でも、そういうことじゃないのよ。
なんだろうな、「本番」が始まっちゃってるのが怖いのよ。
今までの人生って、「いつか役に立つからこの本読んどこう」「この映画見とこ」「体鍛えとこ」「スキル身につけとこ」って感じだったんだけど。
その「いつか」が、「今」であることに震えるのよ。
うわ、これが本番じゃん。
今日が本番かよこれ。
って。
本で学んだこと、鍛えた体力、仕事の能力、好きな友達…
育ててきた果実を収穫して、いま表現して、いま楽しまなきゃ、意味ないのよ!!
うそでしょ!
いや、うそじゃないのよ!!
それが、いちばん、怖い!!
歳をとっていくことではなく、今が本番であるということ、そしてこの本番すら終わっていき、50歳くらいには次の世代に「本番」を譲っていかなきゃならないことが怖い。そこで譲らない人が、老害になるんだろうし。
ひい。
まじで、無駄にできない、時間を。
今日という日を、これ以上無理ってくらい噛み締めないと。
意味ないのよ、先延ばしにしても。
つかめつかめ一日を。
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tutai-k · 10 months
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未来に絶望しかなくても、信じてもいいかという気持ちにはなれる
ろくな人生を送っていない。はっきり言って馬鹿にされるばかりの人生で、他人がずけずけと入ってくるか、必死になってつくったものは、「この場所なら少なくとも壊されなくて済むかな」と思っているような場所に置いても踏み潰される。 いつだって人生最悪の日を更新して、わたしはわたしがこの世に生まれた日こそ呪われてあれ、とくりかえしている。
ろくでもない人生を送っている。
昨日もまあそういうろくでもない人生の最悪の日を更新するような日だった。詳細ははぶくが、さっさと人生のリタイアを考える程度には日常に喜びがない。ここ半年、「よかったな」と思うことは数える程度で、あとはなんていうか「どうしてこうなったんだ」というようなことばかりである。持病はまた悪化してきた。
そんな昨日、三ヶ月に一度行っているアフタヌーンティーの予約を入れていた。秋のアフタヌーンティーは9~11月。忙しすぎてもう無理かと思っていたが、なんとか日程を調整してぎりぎりで行けた。が、この半年ろくなことがない、しかも昨日は最高潮(でもきっとここからもっと最悪になるんだろうなとは思っている)で、「こんな気分のまま大好きなアフタヌーンティーに行くのか…」と思っていた。 いつものシェアオフィスにいくとアフタヌーンティーがむずかしいので、もうすこし近くのコワーキングスペースに行った。こども編み物教室をやってて、ちいさいこたちがたくさんいた。原稿をやろうと思っていたけど、編み物でつくったきのこや目玉焼き、クッキーでおままごとをしているこどもたちが仲間に入れてくれたので、一緒になって遊んで、絶望から少し立ち直れたので、アフタヌーンティーは楽しめた。
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今日は朝から、フォロワーさんが楽しそうに見ているゲゲゲの鬼太郎の映画を見に行った。鬼太郎誕生秘話?みたいなやつ。鬼太郎はこどものときにアニメを見てて、ちゃんちゃんこが飛んだり下駄が飛んだりするのを眺めていたくらいである。似たような時間にやってたベムベラベロと違いが分かっていなかった。
だからほとんどはじめてみたいなもので、楽しめるかな…と思っていたが、これがめちゃくちゃおもしろくてとてもよかった。わたしはあんまり因習村ということばが好きじゃない。(面白おかしく語られる山村に実際に住んでいるのは限界集落の高齢者だ)、「ムラ社会」を嫌い、笑い、そこでなんとか生きている人たちの生活を勝手にデフォルメして凄惨さでエンターテイメントする、そういう姿勢を好まない。だからすこし警戒していたけれど、見られてよかったな、と思った。
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主人公の水木は第二次世界大戦で(おそらく)南洋の前線に送られていたのだろう。玉砕を命じられた経験などがなんどもフラッシュバックする。かれと一緒に冒険(?)するのは、妻を探しているという男。ゲゲロウと水木に呼ばれていて、顔が鬼太郎そっくりなので、どうやら彼は鬼太郎の親父らしい。つまり目玉のおやじと呼ばれる存在の前身である。このふたりが、いわゆる「因習村」の「因習」の謎を解き、立ち向かっていく……。
お話しのつくりとしてはこんな感じ。公開されて間もない映画だから、あんまりネタバレ的なことを書いては、と思うので、よかったなあと思うところを少しだけしゃべると、
前線に送られた水木も、妻を探すゲゲロウも、どちらも「国」(はっきり「日本」と言ってしまっていい)に搾取され、押しつぶされてきた存在だ。そして二人とも、じつは根本のところでこの「国」とか「人間」という存在を信じられていない。その二人が、なりゆきで一緒に行動して怪異に立ち向かってゆくなかで、「未来」を信じ、きっと自分たちの後ろを歩くだろう存在のために、未踏の山に道を作るような行動をするところだ。 水木もゲゲロウも、とくに「強い男」ではない。水木は、自分より強い存在に(命やその他の「安全」)をちらつかされると、強く出られず引き下がってしまう。復員した水木が、戦争経験者だからと言って、肉体的に強く/戦闘・殺人の技巧に長けているわけではない。マスケット銃や斧を振るう場面はあるが、基本的に彼は、第二次世界大戦から復員したひとびとに(現代のある層が幻想している)むけられる「強さ/能力」を持たない(強さや能力を持たないのが普通だ。わたしの母方の祖父も戦時中に兵隊に取られていったが、死ぬまで戦地の悪夢を見てうなされていたそうだ)。この物語では戦争の経験とはつねに生きる強さや気力をそいでいく「傷」であり、物語を前に進ませる原動力とはなり得ていない。 ゲゲロウも、戦闘力という意味で、あまり強くなくて、バトルシーンよりも「捕まっちゃってる」場面のほうが印象的だ。ゲゲロウはよく捕まる。しかたなくバトルはするけど、本来の性格が、好戦的ではなく、強い方でもないのだろうと思う。人間からは隠れて、静かに生きていたい存在だったのだろうというのがなんとなくわかる。 ふたりはまったく強くなくて、「今」のためにもがいている。ゲゲロウが妻を探しているのは「今」のためだし、水木がこの村にやってきたのも「今」の自分のためだ。 だが、互いに関わりあうなかで、「未来」の話ができるようになる。 ふたりが立ち向かうのは特定のだれかのかたちをしているが、物語を俯瞰すればそれは戦時中に私腹を肥やしたものたち(国の暗喩)であり、ヒエラルキーの下層にいる存在を搾取する構造だ。水木はこの国を憎んでいる。「こんな国なんか滅びちまえ」と言う水木に、未来の話をするのはゲゲロウだった。水木がそう叫ぶ場面で、ゲゲロウはもっと、「国」を「構造」を滅ぼしてしまいたいと叫ぶような目にあっている。だが、この「国」「構造」の向こうにいる未来に、「今」を託したいと思う。 ふたりは最後まで強くなかった。戦うことで未来を勝ち取るのではなく、過去を引き受けることで「今」の向こうの「未来」のために、強くないままで、先へ進もうとする。
その未来へのまなざしの強さを、愛おしいと思った。
ここから下は、よかったな~と思った点のいくつか ・水木が、作中のこどもにされている虐待に対して嫌悪感をもよおす存在であること、そのこどもの結末に対して心から泣ける男であることと、そうでありながら一方では社会的地位や保身のため、時に哀れみで不誠実な行動を取ってしまうこともある人物として描かれているところがよかった。「水木は完全に正しい存在ではなく、善悪のメートル原器ではないが、それでもその絶対的な正しさだけを持たない人物が未来のために道を作る」という部分は、人間の営みそのものだと思った。
・「愛」というのが、性愛/恋愛で結ばれる男女のものだけでなく、血縁を通り越した、そして「記憶(愛着)」のない場所でも抱かれるものだと描かれたことがとてもよかった。これから、「未来」をつくってゆくわたしたちに、大きな希望になるように思えた。
クソみたいな人生だし、きっと明日からだってろくでもない日々だ。だけどまあ、いまはすこしだけ、未来を信じてもいい。
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moonrobe · 2 months
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単巻作品
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『風花雪月』
喫煙の補導で停学になった高校生の知幌。両親が激怒する家に帰りづらく、従兄の束の部屋に転がりこむ。その町で佳鈴という女性に出逢い、ひと目で惹かれるが、彼女には夫も娘もいて……男子高生×人妻のラブストーリー。
『IN BLOSSOM』
愛してるのは二次元の彼!重度の夢女子・季羽は進級したクラスで早瀬という女子生徒に目が留まる。近づきたい、でも触れたくない。そんな季羽は、“ノンセクシュアル”という恋はしてもセックスは求めない性を知る。
『月の堤』
精神安定剤を飲み、工場で働く毎日をやりすごす心を病んだ青年。ある日、職場で古株のおばさんになじられる新人の女性に目が留まる。何となく気になるものの、彼女には娘がいて──哀しいほどの純愛を綴る恋愛小説。
『ミメシスの夜』
昼は「普通」に紛れて過ごす彼らは、夜、いつものバーでありのままのすがたになる──ビアンの未桜、トランスセクシュアルの透羽、ゲイの七音とバイの伊緒。いつも四人で過ごす夜に、柳という中年男性が現れ……?
『僕の爪痕』
クラスメイトの女子である里菜に、暴力的なイジメを行なう少年・早原。スクールカースト上位の彼が、底辺の里菜を容赦なくいびる背景には、幼い頃からトラウマが関係していた。彼は里菜に「恐怖」を覚えていた──。
『PASTEL ZONE』
死後に待っていたのは異世界転生──じゃなく、現世に遺した人々に対して“無力”になったことを思い知らされる、気のふれそうな時間だった!家族、友人、恋人の中で過去になる自分に、あなたなら耐えられますか?
『砂糖づけの人形』
容姿のことでイジメられて以来、髪をほどくこともなくなった結菜。そんな結菜の前に現れたのは、家の都合で引き取られてきた佳月というはとこの美少年。次第に結菜に心を開いた佳月が語った、彼の過去とは──?
『Baby,RAG BABY』
僕は好きになった人と幸せになれない。同性を好きになった日から、そう思ってきた希雪。そんな悩みを知ってか知らずか、ふたごの妹の希咲は希雪の書いた詞をたどってギターを弾く。そんなふたりが出逢ったのは──
『ミチカケループ』
DV彼氏の束縛を愛だと言い張る彼女、そんな彼女に片想いする彼、ふたりの力になろうとする彼女、そして彼女が片想いする彼は……さまざまな男女の負の感情が絡みあい、吐き気がするような連作短編集。
『360°』
「僕、女の子が好きなんだよね」ある日、親友の雪月がそう打ち明けてきた。男ならそうだろうと思った千晶に、雪月は自分の心は女の子なのだと訴えてくる。さて、軆は男、心は女、それなら恋する相手は──?
『Blue hour』
クリスマスの朝、闘病していた僕の恋人が死んだ。彼女がいなくなったこの世で、それでも生きていかないといけない。それは気の遠くなる長い夜を過ごすようで──愛する存在を喪っても、前を向いて生きるための物語。
『死花』
僕には命など邪魔物でしかない──誰も自分など愛さない、そんな想いに囚われ、“心”や“意思”のない物体を愛し、やがて死体性愛に目覚めていく少年。殺さないと人を愛せない彼は、ついに一線を超えてしまうが……?
『まちばり』
幼い頃に捨てられた少年は、残飯の中から赤ん坊を拾い、その子を妹として守り育てることを心の支えに成長する。ずっと盗みで生きてきたふたりは、ある日、男娼宿のオーナーである男に目をつけられて──?
『ロリポップ』
遊びほうける高三の夏休み。大して本気でもない彼女、校則違反だらけの親友、俺も将来を考えることから逃げている。そんな現実逃避の毎日の中、自傷癖を持った女の子と出逢い、次第に惹かれていくけれど──?
『中2ヒーロー』
知名度と話題性で作家になる芸能人。俺のクラスメイトの神凪瑠斗みたいな奴。音楽、モデル、文学、何をしても認められて、何だよもう!俺の取り柄は書くことだけど、そのたったひとつにも光は当たらないのに。
『男の娘でした。』
駄菓子屋で店番をする癒は、子供たちに「姫」と揶揄われている。青春は華やかな男の娘として暮らした癒。しかし今はイケメン女子の恋人・伊鞠に首ったけ。彼女のためなら何も厭わぬ、ハイテンションラブコメ!
『僕らの恋はうまくいかない』
書くしか取り柄がない青年・希音の周りの人々は、みんな恋をこじらせている。女装男子に恋するゲイ、塀の中の初恋の人を想う少女、実の弟との関係に溺れる女性、好きな人のペットに過ぎない少年──
『彼女の恋は凪いでいる』
恋をする。私にはその感覚が分からない──自分はどこかおかしいのかと悩む舞凪が知ったのは、自分が無性愛者(アセクシュアル)だということ。そんな彼女と、高校で知り合った三人組の男女は……?
『それでも君に恋をする』
この気持ちは報われないかもしれない。どんなに想っても届かないかもしれない。距離を取る親友、兄の婚約者、勘違いする彼女、振られた相手、長年の友達、失恋を引きずる男女。それでも、君が好き。
『雪の十字架』
彼女は俺を怨みながら死んだ。高校時代の同級生の死に取り憑かれ、精神を病んだ瑞栞。しかし恋人である陽葵に寄り添われ、やっと未来に光が芽生えたはじめて──そのとき、少女の怨念としか思えない惨劇が始まった。
『恋にならない』
三十歳。焦って婚活もしない私は、誰とも結婚なんてしない気がしてきた。そのほうが気楽でいいとさえ思っていた。なのに、あるきっかけで夫のいる女性と親しくなって──ねえ、私たち、友達のままならよかったの?
『白濁の血』
俺のなめらかで蒼白い肌は、まるで白濁を浴びたときのままのようで。幼い頃、さらわれて犯人と倒錯的な時間を過ごした美しい少年。忌まわしい記憶をなぞりながら、カミソリで自分を傷つける。彼の傷ついた魂の在処は?
『深紅の盃』
血を飲みたい。僕はその異様な欲求をこらえきれない。でも、君が僕のそんな欲望を理解してくれた。だから、ただ君のそばにいられたらよかったのに──ある日突然現れた美しい彼が、僕から理性を掠奪する。
『雪薬』
枕営業も厭わないホステスの凪子。そんな彼女を支えるのは処方される大量の薬。今日も口説き落とそうとしてくる客である作家が飲みに来る。薬さえ飲めば、まともでいられるんだから、それでいいじゃない──
『MIDNIGHT』
お互いを犯すように、一線を超えて禁忌に耽る姉弟。そこに愛はなく、ただいらだちを吐き出して夜の行為を重ねていたが、ある日、姉弟の幼なじみが隣の家に帰ってくる。そこから、姉弟の関係は揺らぎはじめて……
『START OVER』
夢の中でくらい、幸せな恋ができたらいいのに。そんなことを思うアラサー女子・真幸は、今日も職場後輩の恋バナマウントをかわす。このままひとりなのかな。そんな不安も一抹感じる日々、彼女の前に現れたのは──?
『アイオライトの夜』
あの残暑の夜を、私はきっとずっと忘れない。祖母を亡くし、乾燥したような退屈な日々を送っていた少女。ある日、彼女はクラスメイトの少年の飼い猫探しにつきあうことになり、さらに「帰らずの森」に踏み込むことになるが……?
『アスタリスク』
ずっと死ねばいいのにと思いながら生きてきた。機能不全の家庭、登校拒否の教室、そんな環境に身を置き、繰り返すのは自殺にも至らない自傷行為。それでも、こんな僕でもまだ──。言ってはいけない願いをこめて。
『指先に触れる君が』
周りにはゲイであることを隠し、ひっそりだけど、穏やかにつきあう映乃と真冬。しかし思いがけない運命に引き裂かれ、かけはなれたふたりに起きる、切なすぎる奇跡──ファンタジー風味のボーイズラブ。
『万華鏡の雫』
秘かに想いを寄せていた恵波とつきあうことになった水澪。幸せな交際が始まったが、恵波をつけ狙う不気味な影と、謎めいた水澪のルームメイト・早凪によって、徐々に歯車が狂いはじめる──血塗られたグロテスクBL。
『揺籃に花』
俺の家族はみんな狂っている。そんな俺も家族を避けて引きこもって暮らし、夜にだけ街を出歩く。いつものバーで引っかける男娼のキキのことは気に入ってる。ただし恋愛感情ではない、そう思っていたけれど──
『さいれんと・さいれん』
「ほかに好きな子ができた」いつもそう言われて彼氏に振られる桃寧。俺なら心変わりなんかしないのに。そう思っていた水雫は、ついに桃寧とつきあうことに!そして現れた桃寧の弟は男の娘!?NTR系BL。
『ローズケージ』
雪理と雪瑠、そして颯乃。幼い頃はいつも三人一緒だった。しかし雪瑠が失踪したことで、三人はばらばらになってしまう。数年が経ち、中学生になった颯乃の前に現れた雪瑠が語った、雪理と共に受けていた虐待は──
『Noise From Knife』
担任教師の水波と秘かにつきあい、心も軆も愛されている優織。このままずっと先生のそばにいたい。そんな甘い願いは、優織がナイフを持った何者かに襲われたことで壊れはじめる──恋心と友情が錯綜するBL。
『樹海の影』
静かに暮らす姉弟の藍と燐。ふたりは夜ごと軆を重ねる、ゆがんだ男女でもあった。このままではいけない──分かっていても、呪われた記憶を共有するふたりは、互いに狂おしく執着する。これは愛情か、あるいは呪縛か。
『黒血の枷』
幼い頃、おぞましい出来事に見舞われたこまゆ。しかしその記憶も薄れた頃、その出来事が起きた町へと帰ってくる。懐かしい友達、幼なじみとの甘やかな再会──しかしこまゆを襲った悪夢は、まだ終わっていなかった。
『茜さす月』
幼い頃の忌まわしい記憶を共有し、互いを求めあってきた姉弟、萌香と有栖。ある日を境にふたりは離れることを選ぶが、それでも秘めた心では相手への狂気じみた執着が絶えることはなくて──禁断の愛の果ては?
『紅染めの糸で』
幼い頃から片想いしていた年上の幼なじみに大失恋した香凪。友達には早く次を見つけろと言われるが、簡単に心は切り替えられない。そんなとき遭遇したのは「男なら誰でもやれる女」こと深月毬実の情事現場だった。
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manganjiiji · 2 months
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万願寺さん、こんにちは。
以前、病気のことや家族のこと、仕事のことなど相談させていただきましたADHDの者です。近況報告と少しご相談をさせていただきたく、ご連絡いたしました。
まず、改めてあの時たくさんの言葉をかけていただいて、背中を押していただいて本当にありがとうございました。今でも読み返すと涙が出ますし、たびたび勇気をもらっています。
現在は、病気の数値はだいぶ安定していて、週2日で4-5時間程度ですがアルバイトも始めました。
学校は、休学してまた行こうと思ったのですが親にすごく反対され大喧嘩になり…退学も検討しましたが一応内緒で休学をしています。笑
最近占いを見始めたのですが、どうやら私は今までの7年間が闇で、今年から数年間抜群に運気がいいそうです。
イラストの方でも、ありがたいことに依頼をいただく機会が増えたり、企業から声をかけてもらうこともあって前に進めている実感があります。
また、お洋服のブランドを始めました。まだ事業としてではないですが、こちらもかなり好調でありがたいです。
そして万願寺さんに言われた通り、手帳と年金の申請をしました。実は申請する前に、申請しようと思っている旨を母親に伝えたのですが「人としてあり得ない」ということで大喧嘩(といっても一方的に散々言われただけですが…)になり、正直迷いました…が、親元を離れるためにも必要ですし、精神科の先生にも相談して、親には秘密にして申請しました。その結果無事にどちらも審査を通り、手帳の取得と年金の受給が決まりました。
万願寺さんに言われなかったら行動できていなかったと思います。本当に本当にありがとうございました。
そして、話が変わりますがよろしければ私がずっと抱いていた夢の話を聞いてください。
私はイラストレーターとお洋服のブランドの二つのお仕事だけで1人で生きていけるようになりたいという夢があります。また、そのために田舎に自宅兼アトリエを作って自然に囲まれてインスピレーションを得ながら暮らしたいと考えています。
現在も積極的に活動をした結果イラストやブランドを少しずつ見てもらえる機会が増え、収入につながりつつありますが、まだ安定しません。
年金がもらえることになったので正直一人暮らしでも生活できるのですが、親は年金をもらっていることを知らないため建前上、先に書いた通りアルバイトと、自宅で母親と一緒にハンドメイドの犬服の製作・販売をしています。
この犬服の販売というのは、私が言い出したことなので名義は私なのですが、ほぼ母親が主導権を握っています。私が製作したものでも母親が値段を決めて(すごく安いです…)、その他についても私が意見したことはさまざまな理由をつけて9割否定されるためほぼ叶いません。本当に値段が安く趣味のレベルなので製作するだけ時間の無駄なんじゃないかと最近思い始めました…。
数年後、イラストとブランドの収入が安定してきたら、理由がつけられるので引っ越そうかと考えておりましたが、このままダラダラと犬服とバイトを続けていてもイラストとブランドの足を引っ張るだけで、せっかく運気がいいのに時間を無駄にしてしまうと思ってしまいます。
そして何より、病気が完治したらまた正社員として安定して働くことを親は望んでいます。
一刻も早く親元を離れたいのですが、年金を受給していることが知られずに引越しをする方法、引っ越し費用や日々の生活費などを用意できたという理由はどのようにするのがベストでしょうか…
※いままで私に一切貯金がなかったことを親は知っています…
長くなってしまい申し訳ございません。
よろしければご回答いただけますと嬉しいです。
匿名さんこんにちは。長いお手紙をありがとうございます!前回からのその後、年金の給付決定まで至ったとのことで、嬉しい限りです。
「一刻も早く親元を離れたい」という気持ちをはっきりと言葉にできるようになったことが、匿名さんにとって、実はすごい進歩だと思います。ご質問についてですが、どうしても年金給付を受けていることを知られたくないのであれば、「アルバイトや依頼で得た貯蓄を、密かに別の口座に作っていた」ということで、どんなに無理があるとしてもこれを押し通すしかないように感じます。
前回の質問の回答と重複すると思いますが、匿名さんは成人として独立した1人の人間です。親の監督下にある未成年ではない。だから、親という他人が何を言ってこようと、その人にはなんの法的な拘束力もなく、1人の人間がやることに対して、1人の人間がとなりでワーワーギャーギャー言っているだけです。その人が親であるからもちろん匿名さんは配慮したいのでしょうし、お気持ちは想像できるところです。それでも、相手が匿名さんへの執着を卒業するためにも、ここは、「大人なのでこちらの行動にあなたが口を出す権利は無い」という気持ちを忘れずに、やんわりと『濁し続ける』というのはいかがでしょうか。濁し続けるというか、とにかく何を言われても「別の口座に作った秘密の貯蓄がある」の一点張りで通す、という案です。本当は年金を受給しているんじゃないか?と勘ぐられたとしても「それをあなたに教える義務はないし、教える気もない」ということを伝えてもいいかもしれないです。ただ、あまり過激な言葉や態度になってしまうと相手も逆上してしまう可能性がありますから、やんわりと、あくまで『濁し続ける』の精神で…どうでしょうか。
本当にここまで、よく頑張って歩んでこられたと思います。本当に本当にお疲れ様です。絵の依頼やお洋服のブランドのことなど、匿名さんの今までの血のにじむような努力の結果だと思います!心から喝采を送らせていただきます。ここまで来たら、あとは最後のもうひと踏ん張りで、匿名さんは精神の平穏を手に入れられると思います。とにかく、引越しの手続きを淡々と進めること。引越しの用意を進めていることも、別に親の人に言わなくていいと思います。不動産屋に行き、部屋を内見し、賃貸契約をし(保証人がいらないタイプの賃貸も沢山あります)、引越し日を決め、引越し業者を手配する(自分の独力で、車などを借りて引越しする場合もあると思います)。そして引越し当日、荷物の運び出しを終えたら、それで晴れて、親の人とはもう一緒に暮らさなくてよいし、命令にも心を乱されなくてよくなります。本当にあと少し、あと一歩のところに、その未来が迫っていると感じます。
ですから、最後のその時(引越しの成功)まで、あとはなんとか、攻撃を『かわし続けて』ください。最後の日に引越しが成功したら、後はもう離れたところから何を言われようと、1人の成人に対して、他の成人が文句を言っているだけです。それまでは、どうにか大きな事に発展しないよう、時には様子を見て、『秘密の貯蓄が溜まった』のゴリ押しで行きましょう。あなたの財産に関して、親の人がそれを暴いたりする権利はありません。
���人的には、年金の給付を受けていることを事実として告げるのもありかな、と思いますが、匿名さんがその事実を明かさない方がいいと判断しているのであれば、多分その方がいいんだろうなと思います。それにしても、本当に、アルバイトを続けられるほどに、一時期よりも回復され、生活や精神面も落ち着かれたようで、心から嬉しいです。今後の夢も明確にあって素晴らしいですし、是非それを達成してほしいです!
以上が私の案になりますが、できるだけ色んな方の意見をお聞きになることをおすすめします。上手くいくかどうか、というか引越しできるかどうかの鍵は「自分の財産と生活を親という他人に害させない」という気持ちを強く持ち続けることだと思います。前回のおたよりよりも、今回のほうが、はるかに親の人からの依存や執着に対して、距離を取れているように感じます。私が色々と言うまでもなく、やはりご自身で気づかれていた面、行動せねばと思っていた面があったのかもしれませんね。その心意気や、めちゃめちゃ、よし!!!!!という感じだと思うので、引き続き、ご自身の『幸せ』のために、辛く苦しい思いもまだするとは思うのですが、あと少し、頑張ってください……!!匿名さんの新たな生活、そして落ち着いた健全な精神面の保護を、心より応援しております。私に出来るのはこうして言葉を並べることだけですが、ここまで独力でできた匿名さんなら、きっと成し遂げられると感じています。
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patsatshit · 10 months
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いまの世の中の風潮的にこういう言い方をすると色々と問題になってしまうのかもしれないけれど、僕は昔から女性が苦手で、いや、苦手というか怖い存在と言った方が良いかな。フェミニズム云々とかではなく、対峙したときに生き物として畏怖の念を抱いているというか、純粋にかなわないと思ってしまう。これは男女という性別には関係のない話やけど、人って打算的やし残酷でしょう。たまたま僕はこれまでの人生でそういう女性と多く出会ってきたから、ある種のトラウマになっているのかもしれない。文筆家OBATA LEOはそんな僕が素直に話ができる数少ない女性のひとりで、彼女が自主制作しているZINEを読んだとき、年齢や性別に関係なく、この人とはもっと話がしたいと思った。だから今回のインタビューで彼女の素顔に少しでも迫っていけたら嬉しいし、それによって僕自身がトラウマを克服できたら最高!
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〔土井〕 そんな訳でLEOちゃん、今日はよろしくお願いします。あなたの素顔に迫りたいということで、いきなりで申し訳ないんやけど、LEOちゃんはメイクは念入りにする?それともスッピンでも平気な人?
{LEO〕畏怖の念というの、当たり前かもしれませんが自分はあまりピンとこず、それはさておき、話したいというのはとても嬉しいお言葉です。土井さんに対する自分の思いは話し出すと長くなるのでここでは割愛しますね(笑)。インタビューの最初の質問って、文章の書き出しと同じでその後の流れを決める置き石のようなものですが、無駄のない場所に置きはったなという感想です(笑)。メイク、友達や知り合いや初対面の人と会う日、休みを満喫するぞって日は絶対めっちゃします。でも誰とも会う予定ない日は日焼け止めすらせず出かけてますね……。本にも書いたんですけど、メイクって自分にとっては、したくてやってると言い切れるわけでもなければ、したくないのに嫌々やってるとも言い切れるわけでもない、微妙な行為で。川上未映子の『乳と卵』という作品で、豊胸手術について、「それは社会に思い込まされてるんや」という意見と「自分がしたいからするんや」という意見が対立して決着がつかない、という場面があります。自分もフェミニズムというものを知ったとき、そういうジレンマに陥って、なんなら「社会に思い込まされてることを全て取り除いて真の欲望を見つけたいと思う」みたいな文章まで書いたんですけど、今となってはそんなことは不可能やしあまり意味もないのかもと思ってます。
〔土井〕うーむ、良いね、出だしからヒリヒリとした緊張感があるわ、前回の小野ちん(moanyusky)のときとはえらい違いや(笑)。そう、でもやっぱりメイクって自分のなかでは割と重要で、メイクは女性だけに限った話ではないとはいえ、やっぱり男性でメイクをする人はまだまだ少数やし、僕らおっさん連中のほとんどがむき出しの顔面を晒して生活してしているの��対して、女性の多くはメイクで日々、自分の顔を変化させることができる。メスで皮膚を傷つけることなく、その日の気分で変身できるというのは、なかなかにショッキングなことで。『乳と卵』は僕も大好きやし、未だに川上未映子の最高傑作やと思ってる。あそこで描かれる能動的か受動的かという問題、実はタラウマラのご近所さんで実際に豊胸手術をした主婦の方がいて、その人は旦那が胸が大きい方が好きなんだろうと思って実際にやってみたら実は旦那の好みはそうではなかったと知って、めちゃくちゃ後悔してはった。旦那を喜ばせたいという自発的な想いが発端とはいうものの、その背後には無意識に旦那の好みに寄せていくという受け身な態度が窺い知れる。しかもそれが思い込みやったとなれば更に話がややこしくなる。ほんま人間はどこまで能動的に振る舞えるんやろうね、甚だ疑問やわ。そう言えば『乳と卵』のなかに巻子と緑子という親子が互いに自分の頭で玉子を割ってドロドロになる描写があったやん。あれって卵子を破棄したいという願望の現れやと思うねんけど、LEOちゃんの最新作『目下茫洋』のなかにも子宮を爆弾に例えて「それを運び続けることが、すなわち生きることになっている」という強烈な表現があってゲロ吐きそうになってん(賛辞)けど、それ以外の箇所も含めてあきらかに前作『ROLLER SKATE PARK』とは異質の内容になってると思う。前作から今作に至るまでの期間に何か心境の変化のようなものがあったの?
〔LEO〕なるほど!!いわれてみればストレートな比喩やのに、卵の場面でその解釈を思いつきませんでした……!殻が割れるというのが、二人の心の殻が割れるってことを暗示してるんかなぁと思ってました。あとはその卵を体にぶつけて割るという非日常的である意味馬鹿らしい行為を共有することで、関係も変わったんかなぁとか。そもそも、あの話でもなんで巻子が豊胸手術をしたいかっていうのは謎なんですよね。他の人とその話をする機会があったときに聞いた意見で妙に納得したのは、豊胸手術をすれば全てが上手くいくという願いみたいなものがあったんじゃないかというので、それは実際の土井さんのご近所さんの話を聞いて、改めて重ね合わせてしまいした。旦那さんを喜ばせるためには、豊胸手術をする以外の形もあったはずやのに、それが選ばれたという事実について、考え込んでしまいます。ZINEの内容としては、『目下茫洋』の原稿を書き始めたのは、『ROLLER SKATE PARK』と同じタイミングで2022年の9月です。でも最後の最後まで完成しきらず、また最初に出す作品で「女性の書き手」というイメージをつけたくなかったので、別の機会に回すことにしました。一年経って、やっと踏ん切りがついたので、今回出したというような感じです。なので、心境の変化は特にないですね。それどころか、2022年の9月に書きはじめるときにも、2020年とかもっと前に書いた別の原稿を原型にしたので、むしろ『ROLLER SKATE PARK』の方が異質な内容といえるのかもしれません(笑)。
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〔土井〕そうなんや!あの2冊は同時期に書かれたものなんや!それはびっくり!あれをがっちゃんこして1冊にしないところがニクいね(笑)。でも「女性の書き手というイメージをつけたくない」という気持ちはわかる気がする。社会そのものが「女性」というイメージを操作する機械やとしたら「女性」の書き手にとってはこのことほど煩わしくて鬱陶しいものはないよね。機械についてはドゥルーズの言葉を引くしかないけど「一方の機械は流れを発する機械であるが、他方の機械は、この発せられた流れを切断する機械である。乳房は母乳を生産する機械であり、口はこの機械に連結されている機械である」っていう、何回読んでもきちんと理解できないドゥルーズなりの概念があって、さっきの能動的か受動的かという話に戻るけど、要するに手を取り合ったかと思えば手を離すということをひたすらに繰り返すってことやんな(違ってたらすみません!)。『ROLLER SKATE PARK』が流れを発する機械やとしたら『目下茫洋』は、この発せられた流れを切断する機械やという感じかな。でもあれは確かにぶった斬りにきてるよね(笑)。そもそもLEOちゃんが「能動的」に文章を書きはじめた、あるいはそれをzineにしようと思ったきっかけは何なの?
〔LEO〕機械の例えはほんまにそうですね……。操作できないレッテルを貼られた箱のなかに勝手に分類されるときの無力さは筆舌に尽くし難いものがありますね。ドゥルーズのその文、帰り道で何回も考えてみたけど難しい(笑)。能動と受動に関しては、自分も全然答え出てないです。「能動的に」文章を書きはじめたきっかけやZINEにしようと思ったきっかけもいまいちはっきりとはしてなくて。文章は小学2年生くらいに挿絵つきの物語を書きはじめて、3年生くらいのときに大学ノート一冊分くらいの勧善懲悪的な物語を書いてたのは憶えてます。子供向けの賞にも応募したことあったような。中学生のときは音楽の感想を書くブログに熱中してて、高校生のときは今もたまに更新してるはてなブログで書いたり、掌編を書きかけては筆を投げたりしてました(笑)。大学に入ってからも、気づいたらtumblerやGoogleドキュメントやノートに文章を書いてて、なんか書こうと思って書くよりは気づいたら書いてる(書かないとやってられない)って感じで、それこそわりと受動的な部分や習慣の部分が多いと思います。ZINEは大学に入る前から出してみたいと思ってたんですが、なかなかまとまった文章を書けずにいて、最後のひと押しをしてくださったのは他ならぬ土井さんです!
〔土井〕え、ほんまに!なんにせよLEOちゃんの文章が世に出るきっかけになれたんやったら、素直に嬉しいわ。それにしても小学校低学年から物語を書いてたというのはすごいな。僕は二十歳のときが最初で、司馬遼太郎の『燃えよ剣』をまんまギャングの抗争に置き換えた内容で(笑)。いま思い返してみてもほんまに恥ずかしい!でもその恥ずかしさの先にしかいまの自分の作品はなかったなぁとは思う。そういう意味でも勧善懲悪の物語を経た、いまのLEOちゃんが書いた小説を読んでみたいな。エッセイや日記はもちろん素晴らしいけど、僕はやっぱり根本的に「嘘」が好きやから、あなたの「嘘」つまり小説が読んでみたい。そう言えばLEOちゃんとはじめて会ったときに別役実の『ベケットといじめ』という本をオススメしてくれたやん。後に僕がイジメ体験者であることを知って、めっちゃ気にしてくれてて、ええ子やなって思ってん(笑)。あの本のなかで中野富士見中学で起きた「葬式ごっこ事件」を題材に、自殺した被害者も含めてあそこに関わった全員が何らかの役割を演じていたという指摘があったけど、いまでいう同調圧力、それかやっぱりドゥルーズの機械云々がふたたび頭をよぎる。まさにLEOちゃんの言う「箱のなかに勝手に分類される」感じで、そういうのは決して珍しいことじゃない。むしろいまを生きる者みんなが何かしらの役柄を演じてると言えなくもないし、ちょっとゾッとするよね。そう言えばLEOちゃんは『ベケットといじめ』の解説を書いていた宮沢章夫さんの演劇に役者として関わったことがあるんやろ?そのときのこと詳しく教えてほしいな。
〔LEO〕いや〜話したことに対してこんな熱量で返してもらえるのに「インタビュー」って、改めてすごいです(笑)。初めに書いたのがギャングの抗争やったんや、面白い!「その恥ずかしさの先にしかいまの自分の作品はない」ってほんまに間違いないですね。まぁ自分はまだ青二才なので、今も恥を塗り重ねてる最中ですけれども(笑)。小説、実はまさに一昨日書きはじめたところです。今回2作目のZINEを出してみて、いわゆるエッセイの形では今自分が書きたいことを表現するには限界があるなと感じて。それで、題材は現実からとるにしても、嘘の物語を書いてみようと思いました。「ベケットといじめ」のその指摘は本当にぞっとするところですよね。個々の人間の強い意志や悪意じゃなくて、場の雰囲気が人々に演じさせ、死にまで追いやるという。演劇については、当時はあまりピンとこなかったというのが正直なところでした。でも今の話でいうと、ちょうど先生の演劇に出る前に、友人が主宰してる劇団のワークショップで「目の前の相手を馬鹿にする」という演技をしたときに、普段とは違う強い言葉や嘲りの語調が自分の上に現れてきたのはびっくりしました。「役を演じる」というのは、それほど力のある怖い行為なんやと思います。「ゴドーを待ちながら」では、少年の役だったんですが、「わざと演じようとしなくていい」と言われていたので、演じるという感覚はあまりなかったし、思わず感情移入するような話でもないので、台詞をどんな風に言うべきか迷ってました。ご期待に沿えず申し訳ないのですが、実は当時の稽古のことよりも、帰ったらなんか焦りながら新書を読んでたことの方をよく憶えてます(笑)。当時はわかりやすく言葉の形で手に入るもの(知識)だけが価値あるものやと思ってて。小説という表現や、役者の人が身体に蓄えてきたものの豊かさとかに、全然思い及んでなかったです。教授としての宮沢章夫に5年も習ってやっと、価値あるものは世界のどこにでも遍在してるんやということに気づけました(笑)。先生は、街をフィールドワークさせたり、好きなものについてプレゼンさせたり、昔の映像を見せたり音楽を聴かせたりと、いわゆる「学問」的なアプローチではない授業をやっていました。それを勘違いして「楽単(単位をとりやすい楽な授業)」として舐めた態度で授業を受けてる学生も多かったですが、実際のところ受け身でも何かが身につくように親切に教えてくれるわけではなくて、街をフィールドワークする授業では、自分で実際に歩くことでしか見つけられない視点を得てきたかというところを厳しく見ていました。印象的だったのは、ただ通行人が新宿の駅前を歩いてるだけの映像を3分間くらい見せたあとに、先生ひとりが「面白いよねぇ」と笑っていたことで、このニュアンス伝わるかわかりませんが、この人は皆に全然見えてないものが見えるんやなと(笑)。
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〔土井〕めちゃくちゃ興味深い話がいっぱいなだれ込んできた(笑)!LEOちゃんの小説、それはヤバい、楽しみすぎる。日記専門店「日記屋 月日」でディレクターをしている蟹の親子さんともよくこの話をするねんけど、やっぱり僕らは「ほんまもんの嘘」を肯定できなくなったら終わりやと思うねん。いまはどちらかと言えば「嘘」は「フェイク」と貶されて、「ほんま」は「リアル」だと厚遇される。僕はどうしてもそういう価値観とは相性が悪い。本来フェイクかリアルかみたいな単純な二項対立からは逃れたところに小説の「語り」はあると思うねん。せやから「あの登場人物のモデルは誰ですか?」とか聞かれても返答に困ってしまう(笑)。「目の前の相手を馬鹿にする」ワークショップの話もめっちゃおもろいな。そこでLEOちゃんの脳みそに降りてきた罵詈雑言の数々……どんな感じやったんやろ、想像でけへん(笑)。『ダークナイト』でジョーカーを演じたヒース・レジャーもまさに同じような境地に立ったんとちゃうかな?ふとしたきっかけで自分のなかの底なしの悪意に気がついてしまうことはある。たまたまレジャーはそこから戻ってこれなくなったのかもしれへん。僕は『ダークナイト』が大好きなんやけど、何が凄いってジョーカーが自身の口が裂けた原因を語る場面で、あるときは「親父のせいでこうなった」と言い、また別のあるときは「妻のせいでこうなった」とか言うねん。めちゃくちゃ怖いやん。しかも最後まで明確な根拠が提示されないままに映画は終わる。「何らかの要因があって、こうなった」というのは、あらゆる物語にとって逃れ難きテンプレートやと思うけど、ジョーカーにはそれがない。すべては突発的に、因果関係なしに起こり得る。笑い飯の漫才にも優しいおばあちゃんが自分の畑の土から出てきたモグラをスコップで叩き殺す、みたいなネタ(哲夫が披露した「すべらない話」かもしれない)があったような気がするねんけど、ああいうのが一番怖い(笑)。ある種の物語に依存している人たちは何でもかんでも原因があって結果が生ずることを求めるけど、実際は人間ってそんなにわかりやすいものでもないやん。恨みとかなくても笑いながら人を刺す奴も絶対おるで。例えば自分の作品でいうと『JAGUAR』の終盤で前後の脈絡なく唐突に「常温でも冬場なら五日、夏場なら二日は日持ちしますよ」みたいな語りが出てくるねんけど、あれはほんまに自分でもわけがわからない(笑)。なんのこっちゃさっぱりやで。でも日常生活においては別に珍しいことでもなく、普通に歩いていても突然色んな言葉や考えが降って湧いては消えていくやろ。だからあのまま残してん。なんかLEOちゃんの話を聞いていると、宮沢章夫さんは講義や演劇を通じて学生たちにそういうことを伝えたかったんちゃうかなぁって思うわ。そうそう、あとあなたを見��いていつもハッとするのが印象的なファッション。すごく似合っているし、魅力的やと思うねんけど、あの独特のファッションは自分なりに考えがあってのことなん?
〔LEO〕「フェイクかリアルかみたいな単純な二項対立からは逃れたところに小説の『語り』はある」っていうの、ほんまにそうですね。小説のなかは独自のルールで動いてる一個の世界で、どんなに現実っぽい見た目してても現実ではないから、それを現実の物差しで測ってリアルか否かを問うのはなんか違うなと思います。その映画は知らなかったんですが、毎回別の説明するのめっちゃ怖いですね(笑)。宮沢先生は演劇も笑いもいわゆる「不条理」な感じなので、近いと思います。因果関係については、小説書きはじめてみてもう早速ぶつかってる壁です。いや、読んでる側のときはなんでもかんでも因果関係で解明しようとする読みはつまらんのちゃうかと思ってました。例えば、夏目漱石の「こころ」でなんで先生やKが死んだのか?みたいな問いって、物事の因果関係の層で片付く問題じゃないと思ってて、仮にあれが個別の具体的な人間に抽象的な概念を象徴させてる話なんやとしたら、そこで出来事だけ追って説明しようとするのってナンセンスやんと思ったり。でもいざ書こうとしてみると、なかなか因果関係から逃れるのって難しいですね。「すべては突発的に、因果関係なしに起こり得る」っていう土井さんの捉え方は、もしかしたら他者の捉え方を反映してるのかなって思いました。tumblerの記事とか読ませてもらってても、勝手に合理的な説明を作って納得しようとしたりするよりかは、他人は他人でわからんもんやって大前提がある気がして、清々しいなと思います。ひとが皆、自分が理解できるような形で自分の行動の意図を説明してくれるわけじゃないですもんね。ファッションは自分なりに気を遣ってるところではあります。顔が地味やから、せめて服だけでも派手にしよう、みたいな(笑)。でもZINEでも書いたみたいに、本来の自分を「粉飾」してる感覚で、つい服を買ってしまうけど、常に微妙な引っかかりがある。真剣に服が好きな人とは対立する価値観やと思うんですけど、服(やメイク)って所詮は見た目のところでしかなくて、本当に大事なものは精神のところにあるんやとも思ってて。だから、いつか坊主にして毎日同じ黒のシンプルな上下を着るみたいな日々を送れたらなとも思うんですけど、なかなか踏ん切りがつかないでいます。
〔土井〕嫌や!LEOちゃんが坊主の黒服は何でか知らんけど嫌や(笑)、ってこれも勝手な理想の押しつけやねんなぁ。ほんますんません。うちの奥さんもたまに「坊主にしたい」とか言うときがあって「嫌や」って言うたら「自分は私が嫌やって言うてもタトゥー彫ってるやん」って怒られる(笑)。人間って自分勝手やな。ファッションに関連した話で、今年の8月に大阪の音楽イベント���出演した韓国のDJ SODAさんが性被害を受けた事件があったやん。DJ SODAさんの身体に故意的に触れた奴が「あかんことをした」というのは大前提にして、僕はあのDJ SODAさんのファッションやセックスアピールと誤解されても仕方がないようなジェスチャーがとても怖い。彼女は「私は服を選ぶ時、自己満足で着たい服を着ているし、どの服を着れば自分が綺麗に見えるかをよく知っているし、その服を着る事で自分の自信になる」と言うていたけど、やっぱりそれを目の当たりにすることによって気まずさを抱える人間や、性的に興奮してしまう人間がいることも頭の片隅に置いとかないとあかんと思う。もっと言えば、彼女が派手なメイクや衣装で自身のスタイルの良さを際立たせれば際立たせるほどに、別のタイプの女性に劣等感を抱かせはしないか?僕はやっぱり筋骨隆々な男を見るのが苦手で、なんとなく目を背けてしまう。でも街中には肉体美をこれみよがしに見せつける看板を掲げたジムがどんどんできて、筋肉バカが量産される、あっ、さすがに言い過ぎた(笑)。これは僕の偏見に満ちた感想なんやけど、男女問わずキラキラした連中って、すぐに群れるし、意識的であるにせよそうでないにせよ他を排除しようとするやん。あいつイケてない、キモいとか言って。DJ SODAさんたちのようなポップアイコンの無自覚な言動が世の中に優劣の基準を植え付けて、新たな弱者を生んでるような気がしてならへん。まぁ、だからって胸を触る行為が許される訳ないし、そんな奴はどつかれたらええねん、とは思うけど(笑)。とにかく一般的に言われる強者、弱者という区分には違和感しかなくて、それは常に変動するものやし、それぞれの局面によっても変わってくる問題やからね。スーパー銭湯やホテルが刺青やタトゥーを禁止にしてるところが多いけど、僕は仕方のないことやと思う。入浴のわずかな時間に刺青だらけの奴の人間性なんか知ったこっちゃないし、ほんまは優しくて良い奴やねんとか言われても、見た目には威圧感しかないから。LEOちゃんは同性の立場からDJ SODAさんのことはどう捉えてる?
(LEO〕そうですね……。それほど詳しくないですが、現代らしい出来事やなとは思ってて、自分のなかでもいろんな考えが交差してます。DJ SODAさん個人に対して思うことは特にないですが、その人に限らず、自分を綺麗に見せたいという欲望や見た目を通して自信を得るというあり方を正々堂々と公言する風潮には違和感を感じますね。それは必ずしも社会の大多数が肯定すべき「潔白」で「正しい」価値観ではないはずです。そもそも「美しさ」は必ず「醜さ」を前提としていて、美しくあろうとすることは、他者よりも優位の場所にいたいという薄汚い欲望が剥き出しになってるあり方だと思うので。土井さんの言うように、実際にそういうものを見て、性的な興奮や気まずさを感じる人も居るわけですし、決して手放しにいいね!ってなるようなものではないと思います。と言ってみて、自分が服を買うときに感じる後ろめたさの理由がさらに明確になりました笑 つまり、自分もアプローチは違えどDJ SODAさんなんですよね。ただ自分としては、自己満足でやってるというのを、「自分が好きで能動的に選んでる」という意味で捉えてるので、他者にどう思われるか・どう扱われるかというところまで受け入れなあかんとは思っています。いや正味なところ腹がチラッと見えるような服を着てるからって腹触られたらキレてしまいます、でも腹を見せる服を着ることで自分は何を表現しようとしてるのか?って考えたら、ほんまに後ろめたい汚れた答えしか出てきません。「腹を見せるのは自分のスタイルが良いのを誇示したいから」→「スタイルの良し悪しは自分の努力で決まったわけではない」→「ほとんどただの遺伝要因にすぎない要素を自分のものかのように誇示してるのはさすがにダサすぎる」→「でもこの服を着ると自分の気分も上がるし」→「その『気分の上がり』は詰まるところ優越感だよな」→「いやでも実際これを着ていくと評判もいい」→「その『評判』に何の価値がある?」…みたいな問答を繰り返しながら、結局のところ快楽に溺れてる情けない人間です。そういう「屈託」(グレーゾーン)の部分をどんどん取り払って、ポジティブを装っていくような風潮があまり良いとは思えないですね。お風呂のタトゥーは少し違う部分もあるけど、威圧感を感じてしまう他者がいるという点では似てますね。
〔土井〕そうやなぁ、タトゥーも含めてファッションってほんまに難しいよね。そこにはやっぱり今回の僕らの話の裏テーマ的にもなってる能動的か受動的かという話と切り離せない問題やと思うし、そこには確実に実在しない何者かによる「まなざし」がべったりと貼り付いてる。ちなみにほんまの余談なんやけど、いまや作業着も私服もまったく同じで毎日同じ服装しかせえへん僕も、実は服飾専門学校に通ってた時期があって、結局なんぼやってもまつり縫いができへんくて早々に中退してん。ほんまこれどうでもええ話やったわ(笑)。とにかく今回のインタビューで気がついたことがあって、LEOちゃんのなかにも男性性があるし、僕のなかにも女性性があるということ。それが順繰り自分でも気がつかないうちに小刻みに切り替えが行われてるんちゃうかな。だから自分の行動や考えにも常に違和感がつきまとう。さっきようやくその結論にたどり着いた自分はもはやいまの自分ではないから、どうやってその結論に至ったのか、いまとなっては到底わかわからない、みたいな(笑)。その果てなき違和感に決着をつける術が僕の場合は小説なのかもしれへん。決着というか、違和感を違和感のまま提示できる裏ワザのようなもんかな。生きてたら矛盾だらけやけど、その矛盾をそのまま置いてみたり、別の角度から眺めてみたり、転がしてみたり、味見してみたりできるのが小説やな。さっきのファッションに関するLEOちゃんの問答なんて、すでにめちゃくちゃ小説的やと思うねん。小説って何も起承転結があって、ある地点で発生した問題を最終地点に送り届けて解決することが目的ではなくて、語りそのものの躍動こそが本来の醍醐味やと思うから。俗にいう解決しない物語は、独りよがりな問答から始まる。だからやっぱり僕はこれからあなたが書き上げるであろう「嘘」が楽しみで仕方ない。今回は色々と突っ込んだ話ができてほんまに楽しかった。そもそも関東から関西に戻って来たばかりで仕事も執筆活動も大変なときに時間を割いてくれてありがとう。そんなわけで最後の質問、いまのLEOちゃんの最大の楽しみは何ですか?それが聞きたい。過日Gerald MitchellのDJで踊るあなたはめちゃくちゃ楽しそうやった!
〔LEO〕なるほど……面白いです。自分のことだからって自分で全て把握してるわけでもないんでしょうね。自分(私)は把握できてると思い込んでたけど、それこそ小説を書きはじめてから深層心理を掘り返すような作業に早速飲まれてて、全然把握できてないことを思い知らされました(笑)。小説って面白いですね。いまは書き急がず、もっといろんなものを読んでみようと思ってます。最大の楽しみ!確かに音楽を聴くのはとても好きですが、最大と言われるととても難しい(笑)。若干ズレてて恐縮ですが、布団でまどろんでるときと良い夢をみてるときが一番幸せですかね。最後こんなんですみません、こちらこそ貴重な機会をほんまにありがとうございました。今後は自分が土井さんを個人的に質問攻めにさせてください。この長いインタビューを読んでくださった方もありがとうございました!
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hitujijp · 10 months
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放下に売り渡した意志
オレに関しては状況に好転の兆しは無い。立場的は、いつもの定位置、つまり無位無冠無役の座を確固たるものとしている。
とはいえ、勿論それらについて改善しようとか、どうにかしようとする努力は行っていない。なぜって、どうせ無駄だからだ。いつも通り後悔しながらただそのまま受け入れる、たったそれだけの単純にして最速、最も簡単な解決方法を遂行するのが人生だと思っている。
余談だが入院している父は、少し体調が落ち着いた時を見計らって延期されていた手術を何とか行えたらしい。手術は当初想定��り難航した様だが一応は完了し、その甲斐あってか最悪の時期より体調に改善傾向が伺える。あと1回手術が必要なのと、その後もリハビリが必須だがひとまず父は直近の危機を脱したと見ている。
とはいえ、幾らリハビリが首尾良く運んでも要介護になる可能性は高い。オレは無能かつ、最底辺、そして極めつけの悪党だが、幸い身体能力だけは高めなので力仕事は特に問題無い。あとコミュニケーションが苦手なオレとしては喪主とかやりたくないので、その点でも胸を撫で下ろしている。
父に関して言えるのは「なるようにしかならないし、なるようになる。死んでいない内は生きなさい」に尽きる。
実際今回オレは何もしなかったに等しい。ただ風向きが変わるのを待っていただけ。だから風向きが変わらない可能性も十分有った。しかし人間には限界が有り、全ての物事を手中には出来ない。その上生活を継続し、成立せしめる為にはどこかで「解決」を投げ出し、どうとでも解釈出来る都合の良い論理を使って辻褄合わせをする放下が必要になる。動物なんて大抵そういうもの。誰にしても自分にしても。
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ari0921 · 5 months
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和六年(2024)5月2日(木曜日)
   通巻第8236号 
 コロンビア大学占拠組に学生は少数、プロの活動家、外人部隊が大半
   悪名高きリサ・フィシィアが扇動。米国分裂の前衛部隊が政治演出を狙った
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 極左活動家に占拠され器物を損壊されたコロンビア大学のハミルトンホールにニューヨーク市警冊が突入、およそ百名の活動家を逮捕した。
場外で扇動していたのは悪名高きリサ・フィシィア女史(63歳)。「われわれは99%」と叫んでウォール街占拠事件なども彼女が扇動した。
現在の米国分裂を作り出した前衛部隊の活動家である。
 アメリカの世論は換わった。
 7月の共和党大会の焦点はトランプが『副大統領』に誰を指名してチケットを組むか、である。WOKE批判の人間が選ばれるだろう。
ニッキー・ヘイリー元国連大使が予備選撤退の際にトランプを支持しないで、トランプ陣営から離れたため、彼女の副大統領指名の可能性は薄らいだ。
というのも軍需産業とウォール街の幹部でなりたつ共和党主流派はトランプに��協力的であり、現在もこれからもトランプは支持者だけの孤軍でたたかう姿勢にある。
 となると最有力の副大統領候補はトゥルシー・ギャバートに絞られてきた。
第一に女性であること。第二に少数民族出身という条件をみたしており、第三に有力視される材料とは彼女が民主党幹部だった「履歴」、第四がイラクで戦った『軍歴』である。
 彼女は最年少でハワイ選出下院議員、2020年には民主党の大統領候補予備選にでた。またヒラリー・クリントン批判で知られる女傑。されど美人。難点がもしあるとすれば、彼女がヒンズー教徒を信奉するインド系であることだろうか。ちなみにニッキー・ヘイリーもインド系である。
トゥルシー・ギャバードの新著『国を愛するために』が4月30日に発売され、たちまちベストセラーとなった。
彼女はこう書いた。
「無駄な時間はもう無いのです。私たちの国は激しく分裂しています。共和国として、労働組合としての私たちの将来は暗い。騒音、狂気、暗闇。。。多くを締め出してサーフボードで海に漕ぎ出したり、山にハイキングに出かけたりして、母なる自然の平和と雄大さを味わいたい」
 つづけてギャバートは、なぜ民主党に絶望したかを語る。
「狂気が消え去ることを期待して目隠しをして生活を続けるには、あまりにも多くが危険にさらされています。私たちが立ち上がって、この国を破壊しようとしている人々に、私たちの政府は国民の、国民による、国民のための政府であることを思い出させない限り、立憲民主主義に対する狂気と脅威は消えることはなく、増大するばかりです」
 ▼アメリカはどうしてこうなったのか?
ギャバートは続ける。
「私が2002 年にハワイ民主党に入党したのは、当時、国民のための言論の自由を尊重し、参加者全員を大きなテントに歓迎し、多様な意見や意見を共有する政党のように見えたからです。第二次世界大戦中、隣人や友人たちが日本の強制収容所に放り込まれ、一瞬にして自由が奪われたことを思い出しながら、市民の自由と権利のために闘う政党だった。それはJFKとマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師に触発された政党でした。アメリカ人として団結すれば何が可能になるかを示してくれました。その党はもはや存在しません」
エセ民主主義の偽善者が民主党のエリートだと批判が続く。
 「民主党はあらゆる問題を人種差別化することで私たちを分断し、反白人人種差別を煽り、神から与えられた自由を損なうために積極的に活動する、卑劣な『目覚め』(WOKE)に煽られた『戦争屋』の「エリート主義陰謀団」の完全な支配下にあります。
憲法に明記されており、信仰と精神を持つ人々に敵対し、警察を悪者扱いし、法を遵守するアメリカ国民を犠牲にして犯罪者を保護し、「安全」だと主張しながら国境を開いたままにし、国家安全保障国家を兵器化して、政敵の追撃、そして何よりも日を追うごとに私たちを核戦争に近づけています」
 激越な批判である。
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