#断捨離によるダイエット
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30/12/2023
毎日部屋の断捨離、模様替えを行っていますが、以前、家族共用で使用していたテーブルをそのまま自室で使っているので、部屋のサイズに比べて場所をとって不便だったので、新しいテーブルを探していました。
加えて、テーブルの角に体をぶつけることもあり、丸テーブルを候補に探していると、ニトリでそら豆シルエットの可愛いテーブルを発見👀✨
当初の予算より3,000円安く買えました🥰
そして以前から欲しかったサイドテーブルもちょうど良いサイズがニトリで安くなっていました🙌これまた2,000円でお釣りが出るというありがたい価格✨
そして、最後はカーテンを衝動買い笑
実はこのカーテンが一番高い出費でした💸💸
以前は弟が使っていた深緑のカーテンをそのまま流用して使用笑
ふと、カーテンの色が地味…って思ったら、部屋の間取り・荷物が嫌になってしまいました苦笑
この1ヶ月足らずの間、好みの物・色すっかりも変わってしまい、以前の私なら絶対選ばない色です。
ただ、カーテンのおかげで部屋が一気に明るくなりました✨
以前より絶賛断捨離中ですが、まだ終わっていませんので、今日もこれから頑張って断捨離します。
夜は疲れて判断力が低下するので、太陽が昇っている間にします🌞
因みに、断捨離を始めてから、現在進行形で体重が落ち続けています👀❣️
5年ぶりの体重かも🥰この体重はキープしたいので、どうかリバウンドしませんように🙏✨
しかも、入らなくなったと嘆いていたお気に入りのマーメイドスカートが履けるようなりました🤗✨
汚部屋ではなかったですが、今まで捨てられないものを
「エイッ❕」
って捨てた影響があるのでしょうか❔
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村井ネイチャーズDiary19(番外編)
日頃のなまった体を何とかしたい。
運動不足の解消と健康な身体作りもしたい。で、あわよくばダイエットもしたい。
そんな気持ちで山口と二人でロードバイクをはじめることにしました。
いろいろ調べて、自分の欲しい自転車が大阪のお店にあったので、そこまで取りに行くことにしました。
どうせならそのまま乗って帰ってこようと思いつき、2日間のお休みをもらい、大阪から名古屋まで約180㎞の道のりを自転車旅をすることにしました。
1日目は大阪から滋賀までの80㎞。ここで宿泊。
2日目は滋賀から名古屋まで100㎞。
こんな感じの日程で計画を立てました。
名古屋から大阪までは近鉄特急「ひのとり」で行きました。
北の事務の杉本さんに近鉄乗車券をご厚意でもらい、せっかくなのでプレミアム席を予約しました。
自転車屋さんの開店時間まで時間があるので、難波駅を下車して道頓堀周辺をぶらぶらすることにしました。
おいしいもの食べたり、グリコの看板も見てきました。
道頓堀を後にして、地下鉄に乗り換えて梅田まで行きました。
時間になったので、自転車を取りにお店まで向かいました。
自転車を受け取りました!
乗り方などの説明を受けて、装備を自転車にくっ付けてこれから滋賀まで向かいす。
道に迷いながら淀川毛馬こうもんまで来ました。
この淀川サイクリングロードで京都まで向かいます!
漕ぐとロードバイクは早いから爽快感もありました。
大阪の淀川サイクリングロードは景色も良いし。
最初は楽しく漕げてました。新しい自転車だから気分も高揚していまいましたし
寄り道なんかして写真撮ったり、おいしいもの食べたり。
もうすぐ京都。ここまで40㎞くらい走りました。
何時間か乗ってるとケツが痛くなってきました。
京都に着いた頃にはサドルに座るのもだんだん苦痛になってきました。かなりキツイ、、、。
京都から滋賀に入るこの山越えの坂道がずーっと続いていてめちゃくちゃキツかった。
途中、自転車降りて歩いて登ってました。笑
暑さでやられてきて、
疲労感もピークで漕ぐのが嫌になってきました。
楽しい旅のはずが、なにこれ?修行か?と思うくらいに、何かこう自分が今やっていることに対しての無謀さというか。
考えてるとだんだん腹が立ってきました。
琵��湖まで来ましたが、まだ先が長い。
このまま自転車を乗捨てて電車で帰ろうかとも思ってました。
でも初日の目的地の滋賀県のホテルを予約してあるし。
だからそこまでなんとか走りきりました。
夜になっても頑張って80㎞くらい漕ぎました。
正直、ゆっくり観光する余裕なんて全然無かったです。
ただただつらい、、、。そんな感じでホテルに到着しました。
2日目はというと、
断念しました。はい。
2日目は100㎞走らないといけないし、1日寝ただけでそんな距離走る元気もない。もう無理でした。
何が何でも木曜日までには帰らないと、金曜日は朝9時からケアが入ってるし。
いろいろ考えた結果、濱田さんにSOSの電話をして迎えに来てもらいました。濱田さんには本当に感謝です。
大阪→名古屋の旅は失敗に終わりました。
リタイアして名古屋に帰りました。
自分の力はここまででした。マジで情けない、、、笑
だからまた今度、リタイアした滋賀から名古屋までの100㎞をリベンジしてやろうと思っています!
これから頑張ってトレーニングやるか。
ルーム北 村井
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2022/9/20
7ハウスx蟹座x水星・土星
情緒を重んじるコミュニケーション。相手の気持ちや意向を汲んで関わろうとするが、対人関係の重圧や抑圧・ストレスを感じやすい。対人関係やパートナーは人との心の繋がりを重視するが排他的で内輪的な雰囲気になりやすい。
今日は蟹座の月。上���したカード占いのように身内��屓な傾向が強くなる。逆行水星と木星のオポジション、金星・太陽と海王星のオポジションで現実感覚が薄くなりそう。考えが膨らみすぎて纏まらない・空想に耽る・自己犠牲的・奉仕的精神の強まりなど。土星・天王星スクエアもタイト目。断捨離・ダイエット・必要ないものをそぎ落とし身軽にする。精神的な圧力が強い時期なので事故や怪我などにも注意。台風被害も大きくならないよう願う。
#毎日#cozmicca lectrica#占い#占星術#西洋占星術#japanese art#spiritually#illustration#art#astrology#蟹座#水星#土星#魚座#乙女座#お絵描き#絵#イラスト#cancer#capricorn#virgo#pisces#mercury#saturn
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ハイフのおかげで今年は私もミニスカート履けるように✌ ##ハイフ #ファッション #リラックス空間 #癒しの時間 #ミニスカート #小顔 #友達ほしい #骨盤矯正 #人生変えたい #部分やせ #beforeafter #骨格診断 #カラー診断 #メイクアップ #驚きのビフォーアフター #東灘区エステ #成功するダイエット #クローゼット断捨離 #神戸 #パーソナルスタイリスト #六甲アイランド #エステ #コーデ #ショッピング同行 #コーディネート #なりたい自分になる #タロットリーディング #ライフスタイル #キレイになりたい #女性起業家 https://www.instagram.com/p/CgOTovKrPVQ/?igshid=NGJjMDIxMWI=
#ハイフ#ファッション#リラックス空間#癒しの時間#ミニスカート#小顔#友達ほしい#骨盤矯正#人生変えたい#部分やせ#beforeafter#骨格診断#カラー診断#メイクアップ#驚きのビフォーアフター#東灘区エステ#成功するダイエット#クローゼット断捨離#神戸#パーソナルスタイリスト#六甲アイランド#エステ#コーデ#ショッピング同行#コーディネート#なりたい自分になる#タロットリーディング#ライフスタイル#キレイになりたい#女性起業家
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近頃のこと
インプットが足りないのだ、と思う。いつもそわそわしている。というか、自分の外の世界を見渡したり眺めたりすることなくぼんやり自分の膜の内側5センチくらいの深さで滲んでいる、それが私の意識。インプットするには、もう少し膜を薄くクリアに温度は冷たくする必要があるだろう。ダイエットみたいなものかな、意識の世界から不純物を排出してシェイプアップする。そうしたら外も見えてもっとインプットできるようになると思う。
最近は、とはいえ、断捨離にはまっている。断捨離っていうたびに断捨離って多分だれかの造語だよなあ、と思う。子供の時に流行った言葉だと思うけど、もう定着したということか、一発で変換できるし、みんなに通じる。断捨離しています最近。長い間部屋が常にごった返していた。こんまりとか断捨離とかそのような言葉は吾輩の辞書にはないという感じで暮らしていた。マキシマリスト?ミニマリストの逆。でもなぜか結婚が決まってから急に人が変わったように物理的にものたちを捨てたくなり、たくさん捨てて、ブックオフにもっていって、ひとにあげて、メルカリでも売った。自然な気持ちでとんとん拍子に決まった結婚だけど、自分がおもっている以上にイニシエーションなのだろう。
結婚が楽しみ、今年しましょうかと思っていたけどお仕事の免許の関係などで来年の1月ごろに婚姻届けを出す。ひとりひとり結婚するんだあとか友達にいうのが楽しい。結婚!すごくおめでとうと言ってくれるひととか、大喜びしてくれる上司とかみんなの反応に驚かされる。結婚したからって何かを確かにできるわけじゃないけど、私が思っているよりももっとおめでたいことが起こったということなのかもと思った。周りに幸せな結婚をしているひとが多いというのもある。おめでとうって言ってくれた人ありがとうございます。家族が選べるのは最高です。(お相手に感謝と敬意)でも夫婦別姓も同性婚も認められていない日本で当たり前の選択肢ではないことを肝に銘じて。
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ふと思い立って2016年の時に文菜ちゃんと撮ったヌードを漁った。ラインで「おまえが兎丸愛美になるんだよ」という挑発的な題でアルバムを作成していた。懐かしさで胸が縦に膨らんでいく。 が、それも束の間だった。ぎょっとした。 2016年のわたしは、撮影してくれた文菜ちゃんに対して時間差で申し訳なくなるくらい、ブスだった。 身も蓋もないがそれが事実だった。 ブスだった。山崎ナオコーラもエッセイでよく自分の容姿にこの表現を用いているが、まあ、そう言うしかなかった。ブス。衝撃的だった。なんでこんなってくらい悪かった。 いろんな角度から撮ってもらっていたが、全部あかんかった。良い写真は俯いているか顔が��れてるやつ。OH…とセクシーな方ではなく、悲しむ外人のようなため息が出た。顔の造作の問題なのか表情の問題なのか、度の強いメガネをかけているからなのか。 情けない。庇う要素がないくらいぜんぜん可愛くなかった自分に対してではなく、歳を経て余計ルッキズムをかざしている自分が、あまりにも、浅くて、これは一体大人としてどうなんだろうと思った。 わたしはそれに負けることなく果敢にヌードを残したのだ。凄い。いまの自分だったらできない。気づけば、見た目に恵まれない人がするtinderでのセックス報告や顔に大きく油絵加工をほどこした下着の自撮りを投げる裏アカウントに対するのと同じような冷ややかなまなざしで過去のわたしを見ていた。いたたまれない気持ちになる、昔の自分。 今使っているAndroidには2017年以降の画像しかほとんど残っていない。 ”鏡を見た。じっと顔を見つめる。太ったんだろうか。こうして見ると自分が想定していたよりも顔がまるいような気がする。顎の下の肉がいつもよりある気がして指でつまんだ。しっとりとやわらかい肉がにくたらしかった。引きちぎってしまいたかった。その夜は夜食を食べずに、お風呂から上がってすぐ歯を磨いた。 でも、すっかり習慣になったものを取り払うことはできなかった。しばらくはおやつを我慢したり、ごはんをすこし残したりしていたけれど、いつのまにか元通りの食生活に戻っている。すぐに成果が出るならともかく、こんなことをしたところですぐに痩せるはずがない。何より――どこにエネルギーを使っているのか、運動をしていなくてもおなかが空くのだから仕方がない。多めに粉を溶いたココアを啜るとあまみがふわりとやさしく広がった。 どちらかと言えば痩せている方に入るとひそかに自負していたのに、いつのまにかどちらかと言えば太っている、に足を踏みだしかけている。 クッキーを開けて咀嚼する。あぶらが指紋の溝に染みる。バターの味をする指を舐めとりながら、ふっと学習机の脇の姿見のなかの自分と目が合った。 のっそりとした風貌の女がクッキーを大口開けて食らっている。 みにくい、と反射的に思った。顔の造作も、蛍光灯に照らされた荒れた肌も、ぼわぼわとふくらんだひっつめ髪も、野蛮な仕草も。 びくっとした。これがわたし? そしていま、自分に対して「みにくい」とまるで街ですれ違う赤の他人を瞬時に判断するみたいに思わなかったか。とても素直に、正直に、自分のことをそう思ったのだ。それが他人だったら、どう��ろう。もっと残酷に、せせら笑いとともに切り捨てられるに決まっている。 目をそらして残りをすべて口におさめた。味わう余裕もなかった。ティッシュで指の油分を拭い取る。胃の底に、カロリーを確実に摂取した重みがずっしりと加わる。 二枚目に手を伸ばす。もう鏡のほうは見ないようにして、ゆっくりと噛みしめた” 奇しくもこれは2016年の冬に書いた原稿の抜粋で、あのときの誇張した描写が誇張ではなくなっているのかもしれないな、と思った。 「あたそ」という人のツイートでこういうのがあって唸った。”見た目や体型、変えられない部分を悪く言う人と縁を切るのは勿論ですが、私が脆すぎる自尊心を保ち続けるためには「世の中すべて顔で決まる」「きれいじゃなきゃ意味がない」と言い続ける人や、アイドルや女優の写真を持ち出して過度なダイエットをしている人と距離を置くのも凄く凄く大切なことだった”ーー自分がまさにそうだと思った。美容アカウントや整形アカウントが流行りだした時期も2016年とぴったりあてはまる。 わたしはどちらかと言えば美容右翼だ。と言っても初級だけど、200万くらいガツンとぶち込んでいる(脱毛と矯正で8割くらいかな…)。化粧品には興味がないくせに美容アカウントやコスメアカウント、整形アカウントを見るログアカウントも生意気にも年以上使っている。 韓国のペラッペラの体のアイドルの画像をアイコンにしたTwitterが威嚇のように「カリカリの手足になりたい」「20代をデブで過ごすなんて死刑」みたいに騒ぐのを見て精神的に殴られるのは茶飯事で、もしログアカウントを持っていなければ200万も注ぎ込んだかどうか怪しい。情報収集のためとは言いつつ、中毒性がある。 誰かを傷つけうるくらい強い思想を刃物のように振りかざしているのを眺めるのは、悪い気分じゃない。自分がそうはしないのは、きっかけがなかっただけにすぎない。 先月、同期の女の子に「**ちゃんって何を目指してるの」と言われた。わたしの課金具合に対する素の感想だと思う。右翼の中ではまだまだ赤ちゃんレベルだけれど、同世代の中では課金している方、思い詰めている方であるらしい。 その時、わーっと顔に血が集中するのを感じた。 とっさに「だって鏡見た時に『可愛い!』つってニコッてなりたいからさ」とちゃかすように答えたけれど、どうしても、いじわるな揶揄を含んでいたのではないかとうがってしまって、嫌だった。多分、マジでぽろっと出ただけだと思う。 その子は「わたしも歯並び悪いけど、八重歯は八重歯で気に入ってるよ」と朗らかに笑��て、なんというか、彼女に似合っていて、とても可憐だと思った。 わたしは歯並びを直したことに何の後悔もなく満足しているけれど、その自己肯定を心から羨ましいと思った。歯並びに関しては当時すきな人に「それが可愛いのに、治すことないよ」と言ってもらえたけれど、でもだめだった。 美容右翼である自分を誇らしく思わないわけでもない。ジムは週3夜以外日傘、ほとんど肌荒れもしない。自分のことはまぎれもなくオッケーを出せる。 でも、たどり着いたここがこんなにも空っ風がふく場所だなんて思わなかった。
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ひとたびにして永遠
聞き分けよく、申し分のない態度で送り出したは��だった。これはまちがいではない、ほかにやりようはないし、お互いに必要なことだとわきまえてもいた。けれど、やはり──怒っていたのかもしれない。だからヴィクトルは、ひと月という長いあいだ、勇利に連絡を取らなかった。 ひと月! よくもそんなに耐えられたものだと、勇利からのメールを受け取ったとき、ヴィクトルは自分自身、驚いた。勇利の言葉を目にしてしまうと苦しくなった。しかしその「ひと月をなにごともないように過ごし抜いた」という英雄的事実は、やはり愛情を反対側から見た結果だったのかもしれない。いとおしかったからこそ、腹が立ち、感情がみだれ、そんなに言うなら勝手にしろとなげやりになって、そしらぬふりをしたのだ。 ヴィクトルのそんな反抗的態度とはまったく異なり、勇利のメールは、きわめて愛情深く、優しいものだった。ヴィクトルはマッカチンを抱きしめながら、それをむさぼるように読んだ。 最愛のヴィクトル こちらは今日は雨です。ヴィクトルが好きだと言った、ぼくの部屋のすぐ外の木が、しずくを打ちつけられてうなだれています。ヴィクトルに会えなくてぼくもしおれそうです。 お元気ですか? このひと月のご無沙汰は申し訳ないのひとことです。とても忙しかったのです。でも、ぼくがこれだけ忙しいのだから、貴方はもっとそうなのでしょうね? もしかしたらぼくのことなどもう忘れているかもしれません。そのときのことを考えて、自己紹介しておきましょう。お久しぶりです。勝生勇利です。貴方が大事にして、いろいろ教えてくださった生徒ですよ。思い出しましたか? 日本ではどれをどんなふうにどうしようと考えていたのですが、考えるまでもなく、ぼくの予定は管理されてしまいました。誰にでしょう。よくわかりません。ぼくは先日まで、スケート連盟の人に会ったり、これまでのスポンサーに挨拶したり、これからもよろしくお願いしますと言われたり、何かの番組でしゃべったり、こういうことに興味はないですかと声をかけられたり、とにかく、人と会っていました。正直なところ、誰と何を話したのかおぼえていません。すぐになんでも忘れるヴィクトルを思い出し、こういうところも先生に似たのだと思いましたが、ヴィクトルは人を楽しませたり喜ばせたりすることは好きなので、こんなことは忘れたりしないのかもしれません。実際、オフシーズンに愉快なことに精を出す貴方を見ているから、やっぱりここは先生に似たのではなく、ぼくの身勝手な一面だと納得しました。 つまらない話はやめておきましょう。 といって、おもしろい話もないのです。とにかく昨日までそういうことをしていて、あまり長谷津にもいられませんでした。ホテル暮らしが続いて、退屈でした。夜にはいつも貴方を思い出しました。早くゆっくりメールを書きたいと思っていました。 さて、ぼくは昨日長谷津へ戻ってきて、もう我慢できなくなったので貴方にこうして文章を綴っています。でも、そんな日々だったものだから、何も報告できることがありません。ヴィクトルこそ、ぼくが東京で退屈していたように、いまぼくのこのメールを読んで退屈しているかもしれませんね。でも、これからさきは楽しいメールを送りますと約束もできません。なにしろぼくはおもしろみのない人間なのです。貴方ならわかっているでしょうけど。 あれ? でも、よく、「勇利はおもしろいなあ」と言われた記憶があるな。なぜかな? それでは、このあたりで。 そちらはまだ寒いでしょうね。マッカチンと抱きあって眠っていることでしょう。風邪をひかないようにね。 貴方の勝生勇利 灰色の空を背景にした、濡れた木の写真がくっついていた。勇利の部屋の窓からの風景だった。それを見た瞬間、ヴィクトルの胸は引き絞られた。勇利に会いたい。そう思った。 ヴィクトルは、勇利が競技生活を終えようがどうしようが、ふたりのあいだにある絆は不変で、離れることはないと信じていた。だから勇利が日本へ一度帰ると言ったとき、「ああ、とりあえずのんびりするのがいいかもね」と簡単な挨拶をした。 「勇利が帰るなら俺も帰るよ。いつにする?」 勇利はまじめに言った。 「ぼくひとりで帰るよ」 「なぜ? あ、俺の予定を気にしているのかい? べつにいいよ。用事があればこっちへ来ればいいんだし、いますぐしなくちゃいけない仕事もないし。まあ、いろいろ──苦情は言われるかもしれないけど、深刻なものじゃない。俺が好き勝手にするのなんて、みんな慣れてるからね。生涯関わらないでくれと言えばちょっと待てと引き止められるだろうけど、すこし休暇が欲しいと要求するくらいなんでもないさ」 「ちがうんだヴィクトル。ぼくは考えてみたいんだ」 「何を?」 「今後のぼくたちのことを」 そのとき、ヴィクトルは直感的におののき、めまいを起こしそうになった。勇利がまたいやなことを言い出すのではないかとおびえた。しかし勇利は「離れたい」と言ったわけではなかった。「考えたい」──そう言ったのだ。 「ぼくたちは近づきすぎていると思う。お互いのことしか見えない」 「それで何か問題があるのかい?」 「問題はないよ。でも、もっといろんなヴィクトルを見たいし、ぼくはヴィクトルのことを改めて考える時間が必要なんだ」 「それってつまり、俺はもういらないということ?」 「なんで?」 勇利は笑い出した。 「ヴィクトルのこと考えたいのに、なんでいらないなんて思うの? 反対じゃない?」 「別れることを考えたいんじゃないのか?」 「ヴィクトルのことを考えたいんだよ」 その「ヴィクトルのこと」の中に「別れ」もふくまれるのではないかと気が気ではなかった。勇利はヴィクトルを愛している。これはいつも感じていることだ。しかし、愛されているからといって油断できないのが勝生勇利なのである。 勇利は一度きめたらこころを動かさない頑固さを持っている。ここで「だめだ。日本へは帰さない」とヴィクトルが譲らなかったとしても、なんとしても自分の思い通りにしてしまうという予感があった。ヴィクトルはあきらめた。そのことをクリストフにこぼしたら、彼は笑って気楽に言った。 「いいんじゃない。確かに君たちはひとつになりすぎだよ。いまは完全にとけあっちゃって���からね。離れないとわからないこともある。スケートと同じさ。自分ですべっていたら、いいのか悪いのか、判断がつかないことがあるだろう。あとで映像を見て、ああ、こんなふうだったか、って理解できる。たまには風を入れることも必要だよ」 「そんな理屈はくそくらえだ」 「ずいぶん上品な言葉遣いをするじゃないか。けど、ゆるしたんでしょ?」 「ああ。好きなだけ羽を伸ばしてくるといいと言った。でもすぐに勇利は泣くぞ。俺がいなくてさびしくて、やっぱり一緒にいたいから貴方も日本へ来て、あるいはロシアに戻ります、そんなふうに泣きついてくる。一週間もしないうちにね」 「つまり勇利は、自分がそうなるかどうかためしたくて離れたんだ」 「……ならなかったらどうなると思う?」 「なるんでしょ」 クリストフは楽しそうだった。 「自信があるんだろ、ヴィクトル」 勇利はひと月、連絡をよこさなかった。 勇利は、俺がいなくても生きていけるかどうか、それをためしているのでは? ヴィクトルはそんな思いがぬぐえなかった。しかしそれなら、メールなんて送ってこないはずである。完全にヴィクトルを切り捨てにかかるにちがいない。けれど勇利は、最初のメールのあと、しばしば連絡を入れてきた。それも、運命をこころみているとは思えない、愛情深い様子だった。 最愛で最愛の最愛なヴィクトル 今日はすこしリンクですべってきました。大変です。東京でも、時間があれば知っているリンクへ足を運んですべっていたのですが、改めて時間をかけて滑走してみたら……、驚かないでください。 トリプルアクセルが跳べなくなっているのです! クワド? 訊かないで。 冗談ではありません。トリプルアクセルといえば、ぼくの代名詞ですよ。勝生勇利ほどトリプルアクセルをうつくしく跳べる者はいないと、世界じゅうで評判なのです。毎回かならずGOEプラス3の加点、ヴィクトル・ニキフォロフよりもすばらしいジャンプ、プリンスオブトリプルアクセル。そんな勝生勇利です。もう跳べません、なんてとても口にはできません。 ……ごめんなさい。だいぶおおげさに言いました。こういうのを日本語で「盛る」と言います。ヴィクトルは日本語がだいぶ上手になりましたよね。この表現は知っていましたか? ともあれ、ぼくがトリプルアクセルを得意にしていることと、トリプルアクセルが跳べなかったことは本当です。これはやばい。今日から猛練習を始めることにします。まず筋肉量が落ちているのをどうにかしなければいけません。ああ、こんなとき、優秀なコーチがいてくれたらなあ……。 なんて。 ヴィクトルは、マッカチンと仲よくしていますか? それでは、また。 貴方だけの勝生勇利 写真は、なつかしい、アイスキャッスルはせつの玄関口だった。ヴィクトルはいますぐ勇利のところへ行って、トリプルアクセルの見本を跳んであげたくなった。 いや、待て。いまの自分のトリプルアクセルはうつくしいだろうか? このところ忙しくてリンクに顔を出していない。明日は行かなければ。 愛するヴィクトル 今日は地元のちいさな地方誌の取材を受けました。昔の話をしました。スケートを始めたころのことです。いえ──バレエを始めたころのことかな。ヴィクトルにいつからあこ��れているのか、という話もしましたよ。ぼくが貴方に夢中になったのは何歳のときだったか、そのことを貴方に語ったことはありましたっけ? もし知りたかったら、この地方誌を取り寄せればいいかもしれません。取材をしてくれた人は、「いつもはたいていあまるけど、このインタビューが載る号は瞬く間になくなるにちがいない」と言っていました。まさかそんなことはないと思いますから、簡単に手に入るでしょう。 いろんな人が、ぼくに会うたび褒めてくれます。女性はいつも「肌がお綺麗ですね」と言います。冗談だと思っていましたが、今日会った人にも言われたので、もしかして本当では、という気がしています。ヴィクトル、貴方もよくそう言ってくれましたね。 みんな、ほかにもいろいろ褒めてくれるのですが、差し引いて聞いています。おもしろいのが、どれも、ヴィクトルが一度は言ってくれたことのあることばかりなのです。でも──、そう、ひとつだけ、初めて聞いた言葉があります。それはこんなのです。 「勝生さん。勝生さんがニキフォロフさんを見るときの目がとてもすてきです。最高にかわいらしいです。いつもそんな目で見ていらしたのですか?」 どうですか? 貴方は、ぼくが貴方を見るとき、かわいい目つきをしていたことに気づいていましたか? 貴方は「かわいい」とか「綺麗だ」とかは言ってくれましたが、「俺を見るきみのまなざしが最高にかわいい」と言ってくれたことはありません。かわいいそうですよ。知らなかったならおぼえてください。知っていたら──、どうして言ってくれなかったのですか? ひみつだったの? ぼくからも貴方に言うことがあります。ヴィクトル、貴方の目は──ぼくを見るとき、みんなが知るヴィクトル・ニキフォロフじゃなくなりますよ。ぼくはその瞳がとても好きなのです。ご存じでしたか? 貴方の従順な 勝生勇利 ヴィクトルはリンクへかよい、まるでシーズン中であるかのように熱心に練習をして、トリプルアクセルも、四回転のジャンプも、すべてうつくしく仕上げた。機嫌よく帰宅し、食事をしているところへ、勇利からメールが届いた。見ると今日は文章がほとんどない。その代わり、動画がくっついていた。 ヴィクトルコーチ ぼくのトリプルアクセル、いかが? 貴方の忠実なる生徒 ヴィクトルは勇利のジャンプをじっくりと眺め、ここがいい、ここがよくない、プラス3はつけられない、と判断した。 愛するヴィクトル 今日は用事があって福岡へ行ったのですが、リンクで南健次郎くんに会いました。おぼえていますか? 試合で顔を合わせたことが何度もありますよ。日本の選手です。ぼくを見ると口が利けなくなったようです。でもすぐに立ち直っていました。ぼくはすこしすべりました。動画撮影の許可を求められたのでいいよと答えました。 今日使ったリンクは氷がやわらかかったです。ヴィクトルは固い氷が好きなんだよなあ、と思いました。 ぼくがどういう氷が好きか、貴方はおぼえてくれていますか? 貴方の勇利 ヴィクトルはすぐさま調査をし、南健次郎のSNSを探し当てた。いちばん新しい投稿に動画があって、「尊敬する勇利くん!!」と興奮ぎみに言葉が添えられていた。勇利はジャンプをすることもステップを踏むこともなく、まるで一般的な人のようにすいすいとすべっているだけだった。こちらを見ようともしない。相変わらず不親切である。しかしヴィクトルは食い入るように勇利の姿をみつめた。 右手を見た。 ��らっ、と光るものがあった。 ヴィクトルは驚くほど安堵し、やすらかな気持ちでマッカチンを抱きしめ、眠りについた。 最愛の貴方 ヴィクトル、大切な話があります。 じつは……。 太ってしまいました……。 なんということでしょう……。 いえ、愛するヴィクトル、安心してください。貴方が長谷津へ来たときほど肥えてはいません。ぼくはいま、甘やかされているのです。ヴィクトルもずいぶんぼくに甘いひとですが、ゆるしてくれないこともたくさんあります。貴方がいなければぼくはこうなってしまうのです。知っていましたか? ぼくがダイエットが得意なことはご存じでしょう。明日からがんばります。走りますし、食事制限もしますし、筋力ももっとつけます。そのためにいちばん効くのが何か、ぼくはわかっています。 「そんな身体じゃ、何を教えても無駄だね、こぶたちゃん」 貴方の、こちらのこころを凍らせるようなすてきな笑顔を思い浮かべて励みたいと思います。 痩せるまで連絡しません。そうしたら一日でも早く痩せられるのでは、と思います。 ヴィクトルはどうして太らないの? ずるいよ。 おやすみなさい、ヴィクトル。 貴方の夢を見る 勝生勇利 いとしいヴィクトル 痩せました! 驚きましたか? わりとすぐだったでしょう? ぼくはやればできる子なのです。知っていましたか? これでも、コーチによく「勇利はやればできる子なんだよ」と褒められたものです。 そして思い出しました。ぼくはちびっこスケート教室なるものの講師を任命されていたのです。すっかり忘れていました。痩せてよかった……。 というわけで、スケート教室の先生をしてきました。 あ、なんですか? おまえなんかに講師が務まるのかって? ばかにしないでください。 ええ、ぼくもそう考えました。自分の資質のなさに気づいていないとお思いでしたか? 大丈夫です。ぼくはグランプリファイナルで選手を優勝させるという大きな目標もありませんから、それほど重大な役割ではありません。どこかのレジェンドコーチほどよくわからない宇宙語も使わないし、とめどのないお説教もしません。「なんで自信が持てないんだ?」と不思議そうにしたりもしません。いいですか。ぼくのコーチングはこうです。 「みんな、いまからジャンプをするからよく見ておいてください。見ておぼえるんですよ。わかりましたか? おぼえたら各自やってみるように」 ……冗談です。もうすこし言葉は尽くしました。でも、ごまかしの上にごまかしを重ねた感じです。ぼくの指導で優秀な選手が出るとはとても思えません。でも、本当に幼い子たちなのでそれでいいのです。スケートをする楽しさが伝わればいいなと思いました。スケートは楽しいものなのです。世界一のあこがれの選手に片想いをして、その選手と同じ氷の上に立ちたいとねがいながらするスケートは最高です。 みんな転んでばかりです。教える時間より、助け起こす時間のほうが長かったくらい。でもどの子も笑っていました。ぼくは自分がスケートを始め���ときのことを思い出しました。ヴィクトル、貴方も最初はあんなふうに転んだのでしょうか? とても想像がつきません。ぼくの中のヴィクトルは、いつも最高にかっこうよくて、すてきで、超越していて、崇高で、きわだった皇帝なのです。 ぼくがそう思っていること、知っていましたか? 勝生勇利 追伸 でも、家ではちょっと子どもっぽいところもありますよね。 勇利はいま、日本ではいちばん有名な男子のスケート選手なので、インターネット上にもいろいろな記事が出ていた。また、南健次郎のように、動画をアップロードする者も少なくなかった。加えて、ウェブ上の番組に呼ばれることもあり、そうした姿もときおり見られた。ヴィクトルは最近の勇利を目にするたび、彼の右手に黄金のリングが輝いているのを確かめた。時に、「それはヴィクトル・ニキフォロフさんとおそろいの……」と尋ねられると、彼はほほえみ、「ええ、そうです」と落ち着いて答えた。ヴィクトルのひとりよがりかもしれないが──外すつもりはないという意思が感じられた。勇利からの恋文──ただのメールだとヴィクトルは受け取っていなかった。あれは恋文だ──も途切れることはない。たわいないことでも、彼は熱心に書き送ってくれる。ともに住んでいるときにはなかったことだ。ふたりでいたころは、必要なことを、そっけない文句で、飾らずに連絡してくるだけだった。いまは愛情のこもった文章を綴り続けている。 しかし、それでいて勇利は、「そろそろロシアに戻りたい」とか、「ヴィクトルは日本へ来る気はない?」とか、そういったことは言い出さなかった。ヴィクトルは、もしや勇利は、このへだたりを保って今後付き合いたいのでは、とそんなことを考え、そわそわした。 ヴィクトルのことは愛してる。でも一緒にいなくても万事上手くいくんだということがわかったよ。──いつそう言い出すかわからない。 そんなのはだめだ、と思った。それは無責任というものだ。勇利は、一度ヴィクトルを殺し、生まれ変わらせたのだ。新しく誕生したヴィクトルは前よりも傷つきやすく、勇利の愛情を欲している。勇利はよく「わかっていますか?」「知っていましたか?」「気づいていましたか?」と尋ねるけれど、彼こそわかっているのだろうか。 おまえが俺を変えたんだ。 愛するヴィクトル 貴方がウミネコをカモメと言った海へ行ってきました。ひとりで行きました。貴方が隣にいなくてつまらなかったです。 写真は、夏にヴィクトルがはしゃぎまくっていたシャワーです。楽しかったですね。 勝生勇利 ヴィクトルは、勇利の撮ったなつかしい海を後ろにした写真に見蕩れた。勇利のこころに初めてふれたときのことがありありと思い出された。 いとしのヴィクトル 今日は、いつかふたりで出かけた長谷津城を訪れました。みんな誰かと一緒でした。ひとりなのはぼくだけでした。 写真をつけておきます。 ぼくがいま、誰に会いたいかおわかりになりますか? 勇利 いとしいヴィクトル ヴィクトルといつだったかお酒を飲んだお店に行きました。あのとき飲んだのは何だったでしょう? おぼえていないので、ヴィクトルが好きな焼酎を頼みました。美味しかったです。ヴィクトルがいればいいのになあと思いました。 写真をつけておきます。なみなみと注がれているから、ぼくがまた酔っ払って余計なことをしたのではないかと心配でしょう。大丈夫です。この一杯きりにしました。 帰ってきて、ぼくはいまひとりで自室にいます。さっき、ふと思い立って、ヴィクトルが使っていた部屋に行ってみました。そこはがらんとしていました。ベッドに寝転がってみると、ヴィクトルの匂いがしました。不思議ですね。もう長いあいだヴィクトルはこれを使っていないのに。そのままうと��としたら、ヴィクトルの夢を見ました。内容は忘れてしまいました。目がさめて、「ヴィクトル?」と呼びかけてしまいました。そうか、夢か、と思いました。ここにはぼくひとりしかいません。 この自室にいると、いまにもヴィクトルが扉を開けて、「勇利!」と飛びこんできそうな気がします。 ヴィクトル、知っていましたか? ぼくは貴方が来るまで、部屋の壁一面に貴方のポスターを貼っていたのです。現在? どうでしょう。知りたいですか? 壁の写真を送ろうかと思いましたが、送ってあげません。 ヴィクトルはいま何をしていますか? ぼくはいま、ヴィクトルのことを考えています。 明日から東京です。何かの番組の収録だったと思います。何だったかな……。 おやすみなさい。 今夜ヴィクトルの夢を見られたら、今度こそおぼえていたいです。 ヴィクトルはぼくの夢を見ますか? 貴方の勝生勇利 勇利。俺を変えたのはおまえなんだ。おまえが俺を殺して生かした。なのにそんなことも知らないで、よくもこんな恋文を送ってくるな。ヴィクトルはせつなさを感じながら部屋の中を歩きまわった。いますぐ勇利のところへ行きたい。しかし彼は考えているのだ。──いったい何を考えているのだろう? こんなに愛を語っていても、明日には「もう考えるのはよすことにします。メールを送るのもやめます」と言い出しそうでこわい。 おまえが俺を新しくしたのに。おまえが……。そんなことをずっと考えていたら、ふと思い出すことがあった。 「──ねえヴィクトル」 あのとき勇利は、自分の金メダルを眺めていた。ヴィクトルに寄りかかり、すこし酔ってとろんとした目をしていた。 「ぼくには誕生日がふたつあるんだよ」 「え?」 生まれるときに時刻が変わった、という意味かと思った。しかしそれなら、変わったあとの日付が誕生日になるはずだろう。 「ぼくが生まれたのは、十一月二十九日」 勇利はほのかに笑った。 「でも、ソチでのグランプリファイナルのとき、全部が終わったと思ったんだ」 ヴィクトルは、あのとき、帰る人々でごった返すロビーで傷ついた顔をした勇利を思い出した。 「ああ、おしまいだって。おおげさかもしれないけど、そう思った。本当だよ」 「うん」 「でも」 夢見るように勇利は目をほそめた。 「雪の降る春の日、ヴィクトルがぼくの前にあらわれて、ぼくは新しくなったんだ」 彼はヴィクトルにことさらにもたれかかり、甘えるようにささやいた。 「あの日がぼくのふたつめの誕生日……」 勇利はヴィクトルの手を握りしめ、耳元に口を寄せて、熱心な言いぶりで礼を述べた。 「どうもありがとう、ヴィクトル。ぼくを変えてくれて」 ──勇利。 ヴィクトルは勇利の私室へ入った。勇利のナショナルジャージが、壁際にかかったままになっていた。これを着た彼が幾度ヴィクトルに飛びつき、笑ったかしれない。ヴィクトルは手を伸ばした。そしてジャージを荒々しくつかみ、胸に抱きしめた。 「勇利……」 勇利は指輪を外さない。しかし、彼はここにはいなかった。 それからふっつりと恋文が届かなくなった。ヴィクトルは、そうか、東京だと言っていたな、と思ったけれど、べつに東京からでもメールは送れるだろうと不機嫌になった。しかし、心配はしていなかった。仕事をしているのだろうと受け取っていた。ところが、三日経っても四日経っても音沙汰がない。いったい幾日の仕事なのだろうとそわそわした。まだやっているのか。それとも、別の仕事が入ったのか。まさか何か事故が起こったわけじゃないだろうな。ヴィクトルはニュース記事を丁寧に調べた。何も問題はなさそうだった。 そわそわしていたのが、いらいらに変わってきた。一週間が過ぎた。もう我慢できない、日本へ行ってやる、と思ったとき、勇利からなにごともなかったかのようにメールが届いた。 恋しいヴィクトル こんにちは。いまぼくがどこにいるかおわかりになりますか? じつは日本にはいません。 バルセロナです! うそだと思う? 写真をくっつけておきますね。 今日着きました。 わかると思うけど……、時差ボケです……。 ごめんなさい、もう寝ますね。 死にそう……。 おやすみなさい。 眠りのとりこ 勝生勇利 追伸 いまでもぼくをスリーピングビューティと呼んでくださる? バルセロナ! ヴィクトルはあぜんとした。 どうしてバルセロナなのだろう? これも仕事だろうか? ただの旅行か。勇利は旅に興味があるたちではない。誰かに会いに行ったのか。バルセロナに友人はいないはずだ。ヴィクトルはなんだか落ち着かなかった。 バルセロナ。バルセロナ……。 親愛なる貴方 こんばんは。そちらはいま何時かな。今日は、ぼくたちの初めてのグランプリファイナルの会場となったところへ行ってきました。中には入っていないよ。何か催しがおこなわれていたみたい。あのとき、ロビーに飾ってあったぼくのパネルを、ヴィクトルがしみじみと眺めていたことを思い出しました。 じつはまだ本調子ではないので(眠いだけ)今日の活動はこれで終わり。明日はいろいろできるといいな。 おやすみなさい。 夢の住人 勝生勇利 厳しいヴィクトル先生 雨だったので、一日ホテルにいました。もったいないかな……。 夜には雨が上がったので、屋上のプールに行ってみました。ヴィクトルが入ったあそこだよ。 あそこ……、いいね。のんびり泳ぐことができて。星空が綺麗でした。 ヴィクトルとは海にもプールにも行ったけど、本気で泳いだところは見せたことがないかもしれません。ぼく、泳ぎはわりと得意なんだよ。スケートの選手になっていなかったら、水泳選手になっていたと思います。……冗談です。でも、得意なのは本当。ヴィクトルと本気で勝負すればよかったな。 いまは部屋に帰ってきて、ぼんやりしています。プールの写真を一緒に送るね。なつかしい? 明日は晴れると思います。 ここへ来てからもずっとヴィクトルのことを考えてるよ。 言うことを聞かない生徒 勝生勇利 ヴィクトルはだんだん不安になってきた。勇利は何のためにバルセロナにいるのだろう。あのプールに入ったということは、つまりあのときのホテルに泊まっているのだ。それでどうするつもりなのだろう? 勇利は──。 勇利は、いったい……。 愛する貴方 晴れたのであちこち出歩いてきました。おぼえていますか? あのとき、ぼくはヴィクトルに観光に連れていってとねだり、貴方はぼくをいろいろなところに案内してくれましたね。あのとき行った場所、ほとんど全部、ひとりで行ってみました。変わってなかったよ。入ったお店も同じ。どれも、ちゃんといまもありました。ごはんもね、そこで食べた。たまたまテーブルが空いてたので、席も同じ。ヴィクトルがスーツを買ってくれたお店、ひとりで入るのは勇気が必要だったけど、思いきって足を踏み入れました。驚いたことに、あのときの店員さんがいて、ぼくをおぼえてくれていました。正確にはヴィクトルをおぼえていたんだと思う。貴方は有名人ですからね。すこしだけ話しました。 ナッツ屋さん。行きました。思い出すと可笑しくなる。ナッツで喧嘩するぼくたちって何なのでしょう。でもたぶん、いま同じことになってもやっぱり喧嘩するのでしょうね。あのナッツ、結局どこへ行ったんでしょう? 誰が食べたのかな? あのあと、ぼくがロシアへ渡ってから、ヴィクトルがおみやげだと言ってナッツを買ってき、いたずらっぽい顔をしたことを思い出しました。 あのときは、ヴィクトルについていろんなところへ行って、とても疲れたけど、ひとりで行くとちっとも疲れなかったです。淡々と目的地を目指すだけだからでしょうか。 こちらにはもう一日います。明日行くところもきまっています。 おやすみなさい。 貴方の勇利 今日の写真は、勇利が休憩していたベンチだった。本当にあそこに勇利は行っているのだ、とヴィクトルは思った。そしておそろしいほどの焦燥にかられた。 勇利はなぜ、ふたりの思い出の場所に、ひとりで足を運んでいるのだろう? いったい何のために? まるで……。 まるで、過去を清算しているようではないか……。 ふたりで過ごした長谷津でヴィクトルのことを考え、ふたりが絆を結んだバルセロナでもヴィクトルのことを考えている。 ヴィクトルとの、どんなことを? 思い出をたどって……、終わりにするためでは? 勇利はヴィクトルに、別れを告げているのではないか? 彼はあのとき、普段にはしたがらない観光をしたがった。別れるにあたり、思い出をつくろうとしたのだ。最後のデートだと。 それを、いま、たどって……。 勇利は……。 「うそだろう」 ヴィクトルは低く言った。 「うそだろう、勇利」 最愛のヴィクトル バルセロナは今日で最後です。明日、ここを発ちます。 今日は大聖堂に行ってきました。 おぼえていますか? ぼくはここで貴方に指輪を渡しました。 貴方は優しくぼくにもはめてくれましたね。 とてもうれしかった。 ただのおまもりです。 でも、ものすごいききめのおまもりです。 一生の宝物だと思いました。 ぼくはこれを外しません。 階段に座って、あのときのことを思い出していました。 なつかしかった。 勝生��利 俺はどうしておとなしく待っているのだろう。 ヴィクトルは自分に猛烈に腹が立った。 勇利がいないのに、どうして何もしないのだ? 勇利のすることを見ているだけ。なぜ、恋文が届くというだけで満足しているのだ? 考えたい、と言われたからといって何なのだ。そんなことは知ったことではない。こんなの、ぜんぜん俺らしくない。 ヴィクトルはヴィクトルでいて欲しい。 俺は俺なのだ。 「ヤコフ」 ヴィクトルは、深夜だというのにヤコフに電話をかけた。 「頼みがあるんだ」 勇利は明日、日本へ帰るのだろうか。そして──どうするのだろう? もう満足しました。貴方との思い出を訪ね歩いてみちたりました。これ以上は望みません。終わりにしましょう。さようなら。──そんな言葉を送りつけてくるつもりか。 ヴィクトルは誰もいないリンクに立った。勇利のことを考える。勇利のことだけを。 繊細な旋律が流れ始めた。ヴィクトルは両手いっぱいに愛をみたし、勇利のことを想った。なめらかに踊り、すべった。これまで、こんなに複雑な感情をともなってスケートをしたことがあっただろうか? それは祈りのようだった。そして、情熱でもあった。情愛でもあった。つまるところ──愛だった。勇利が織り上げた愛を、ヴィクトルは思い出していた。 勇利のスケートを初めてじっくりと目にしたのは、ヴィクトルの「離れずにそばにいて」をすべったときだった。映像ではあったけれど、ヴィクトルは視線を外せない思いで熱心にみつめた。勇利は、ヴィクトルのまねをし続けた昔を思い出すためにあれをすべったという。難しいプログラムだ。試合でそのまま使うものである。しかし勇利は、うわべだけではなく、ほとんど自分のものにしていた。相当すべりこんだにちがいない。勇利はあの曲を通して自分をみつめ──そしてヴィクトルをみつめていたのだ。 勇利は自分の愛を表現するとき、何を考えていただろう? ヴィクトルは、勇利の振りをすっかりなぞりながら、あのときの勇利を思った。この曲を振り付けしたのはヴィクトルだ。勇利を理解し、彼の深い想いがあらわれるようにした。しかし、ヴィクトルの思うそれと勇利の本物のこころはまったく同じではない。勇利は……ヴィクトルのことを、どんなふうに……。 勇利がヴィクトルをみつめたように、ヴィクトルもいま、勇利をみつめていた。 あのころ、愛のようなものに気づき始めた勇利。彼はどんな気持ちでいただろう。そして──グランプリファイナルで最後だときめたとき、何を思ったのか。 ヴィクトルは、「終わりにしよう」と言った勇利を責め立て、激怒した。あのときはそれが精いっぱいだった。勇利を求めていたのだ。「もっと俺を必要としているのかと思った」──そうも言った。しかし、勇利がヴィクトルを求めていなかったとはけっして言えない。彼には決断する勇気があっただけだ。そのあと、勇利と過ごした日々を思えばわかるではないか。彼はヴィクトルをこころから熱愛し、楚々とした、はかりしれぬ愛を捧げ続けた。おぼつかない気持ちで「終わりにしよう」なんて言ったはずはない。彼は苦しんだ。じゅうぶんに……。 自分よりも、ヴィクトルを取ったのだ。 それはヴィクトルの望むところではなかった。勇利はヴィクトルの気持ちを考えていなかった。そうかもしれない。彼のひとりよがりではある。でも、ヴィクトルを愛していなかったという証拠にはならない。むしろ正反対ではないか。勇利は、自分のことよりもヴィクトルを……。 勇利……。 またそうやって俺を愛するあまり、俺の手を離そうというのか。 きみの紡ぐ愛は繊細に過ぎる。 そして──身勝手だ。あまりにも……。 ヴィクトルは微笑を浮かべた。そうだ。勇利はそういう子なのだ。そんな勇利だから、ヴィクトルは愛してしまった……。 でも──。 勇利。 俺もね……。 身勝手さでは、おまえに引けを取らないんだよ。 知ってたかい? この曲……。 いい曲だね。 一緒に、何度も何度もすべった。あのときは勇利のお手本だったけど……。 いまは、俺の愛を織りこめるよ。 俺だけの、きみにだけそそぐ、愛を……。 ヴィクトルは、最後に、手を、差し伸べた。 いつも勇利がヴィクトルに向かってそうしていたように。 このときはヴィクトルが、勇利に向かって……。 それで初めて気がついた。 この手のさきに愛するひとがいるというのは、どんなに胸のあたたかくなることだろう。 ──勇利。 いつもこんな気持ちで俺を見ていたの? 「どうもありがとう、ヤコフ」 ヴィクトルはリンクサイドに上がると礼を述べ、物穏やかにほほえんだ。ヤコフはなんともいえぬ奇妙な表情をしていた。 「おまえが人のプログラムをすべるのを初めて見た」 「そうだっけ」 「いい演技だ」 ヴィクトルはちょっと目をみひらいた。 「ヤコフが率直に褒めてくれるのは珍しい。初めてじゃないか?」 「いい演技だ」 ヤコフはもう一度言った。 「本当に……」 「…………」 こころからのその賛辞に、ヴィクトルはかすかな笑みを浮かべた。 「俺……、彼を見ていたんだ……」 その夜、一本の動画がインターネット上にアップロードされた。 【Victor NIKIFOROV】I tried skating.【YURI ON ICE】──。 ヴィクトルは食事の支度をしていた。まったく自分は料理の腕が上がったと彼は考えた。勇利と暮らすようになってから、格段にそれは進歩したのだ。しかしヴィクトルは、自分のつくるものより���勇利の用意する食事のほうが好きだった。でもそれと同じくらい、自分のつくったものを食べた勇利が喜ぶのが好きだった。 「マッカチン、そろそろごはんにしようか?」 マッカチンが返事をした。マッカチンのごはん、ごはん、と戸棚のほうへ行ったら、玄関の呼び鈴が鳴り渡った。何かが届く予定も、訪問の約束もなかったのでヴィクトルは首をかしげた。しかし、誰だろう、と思う間もなく、開錠の音がし、続いて扉がひらいたので、はっとして息をのんだ。一目散にマッカチンが玄関へと走っていった。ヴィクトルは動転しながらあとを追った。 「わっ。元気だな……。はいはい、ただいま。いい子にしてた?」 マッカチンが喜んで吠えた。ヴィクトルは廊下で立ち止まり、戸口に視線を注いだ。 「ん」 マッカチンを撫でていた勇利が顔を上げた。彼はぱっと立ち上がると顔を輝かせ、両手をひろげた。 「ヴィクトル!」 なつかしい、おさなげな笑顔にヴィクトルは見蕩れた。勇利は気持ちよさそうに叫んだ。 「ぼくは貴方と結婚する! そして、貴方の人生をしあわせにするぞっ」 ヴィクトルは目をみひらいた。勇利は靴を脱ぎ散らかし、ヴィクトルに駆け寄った。そして飛びつくようにして抱きついた。ヴィクトルはふらついた。しかし、しっかりと受け止めた。 「ただいま! ね、太ってないでしょ!」 「勇利……」 ヴィクトルはぼうぜんとした。勇利はヴィクトルの胸に頬をすり寄せ、しあわせそうにほほえみながら、仔猫のようなしぐさをした。 「ヴィクトル、いい匂いがする! ごはんつくってた?」 「あ、ああ……」 「ぼくのぶん、ある?」 「あるよ……」 「食べる!」 勇利が元気に言った。ヴィクトルはうなずき、「じゃ、支度するから」と答えた。 「荷物を片づけておいで」 「はーい」 勇利は、さほどのものは持っていなかった。手まわりの品だけ、といった印象だ。遠征のおり、ジャージやスケートシューズ、衣装、着替え、と持ち歩いていたことを思えば、かなり身軽な様子である。ヴィクトルは上の空で食卓をととのえた。 「いただきます!」 ふたりは向かいあって食事を始めた。マッカチンも食べ出した。ヴィクトルはそっと勇利のそぶりをうかがった。勇利は「ヴィクトルのこれ、久しぶり」と言いながら炊き込みごはんをたべている。まるで、ちょっと数日仕事で留守にしたけれど、何の問題もなく帰ってきた、といった具合だ。 「バルセロナからそのままこっちへ来たの?」 「うん、そうだよ。出国しようとしてちょっと足止めされたけどね」 「何かあったのかい?」 「とくに予定をきめてなかったから、いろいろ狂っちゃって。飛行機に乗れなかっただけ」 「そう……」 「おいしいなー。ヴィクトル、おかわり」 「また太るぞ」 そう言いながらもヴィクトルはおかわりのぶんを与えた。勇利は終始にこにこしており、普段通りだった。ヴィクトルは、何のためにバルセロナへ行ったのか、ということを訊けないままだった。いやなことを言われるかもしれない。いや、しかし──勇利はここへ帰ってきたとき、なんと言っただろう? 「もうくたくただよ。いまあるのはね、食欲と睡眠欲。できればお風呂も入りたいけど、眠気に勝てるかなあ」 「旅行、楽しかった?」 「写真見た? なつかしかったでしょ?」 「……ああ」 勇利は食事のあと、目をこすりこすり風呂へ入った。そして上がるなり「むり」とつ��やいて寝室へ直行して寝てしまった。ヴィクトルは、夢ではないのか、勇利は本当に帰ってきたのか、と思いながら片づけをした。幾度も寝室をのぞきに行って、勇利の寝息を確かめた。マッカチンが勇利にくっついて眠っていた。 ヴィクトルは寝支度を済ませると、そっと勇利の隣にすべりこみ、彼の寝顔をみつめた。ずっと見ていた。眠れなかった。勇利の頬にふれようとして、手をひっこめた。 勇利……。 それでもいつの間にか寝入ったらしい。夜半、ふっと目ざめると、勇利の目がぽっかりと開いていた。彼の瞳は、暗闇の中で、濡れたようにひかっていた。 「……勇利」 「体内時計がめちゃくちゃなんだよね」 「……そうだろうね」 「眠れなくなっちゃった……」 ヴィクトルは手を差し伸べた。このほどは、慎重に、そっと勇利の頬にふれた。勇利は天井からヴィクトルのほうへ視線をまわし、まぶたをほそめてにっこりした。 「あれ……、見た。すごいね……」 勇利はささやいた。 「うれしかった。ありがとう」 「……あれをすべって、勇利のいろいろなことがわかったよ」 「ぼくもあれを見て、ヴィクトルのことがわかったよ」 「どんなこと?」 「わかるでしょ?」 「…………」 「わかるはずだよ。ぼくはもう、胸がいっぱいなんだ」 「勇利……」 「ん?」 「帰ってきたとき言ったことは、本当?」 「うん」 勇利は熱意のこもったまなざしをヴィクトルに向け、こっくりうなずいた。 「もうきめたから」 「…………」 「で、指輪を買おうと思ったんだけど」 「えっ」 ヴィクトルは仰天した。 「買ったのか!?」 「時間がなくて……」 「…………」 勇利は照れたように笑った。 「なんだか、ヴィクトルにすぐ会いたくなっちゃって、でも飛行機が取れなくて、いらいらして、ホテルでふてくされてたら、時間が経っちゃったんだよね。そのあいだに店に行けばよかったんだけど、すっかり動転してて」 ヴィクトルは息をついた。 「……指輪なら、もうもらったよ」 「それはお礼だよ」 「金メダルを獲ってくれたから、それでいい」 「そっか」 ヴィクトルはせつなくなって口をつぐんだ。 「ヴィクトルはやっぱりかっこいいね」 勇利はつぶやいた。 「あんなスケート、見たことないよ……」 しばらくふたりとも黙っていた。勇利はもぞもぞと身じろぎすると、ヴィクトルのほうへ寄ってき、ぎゅっと抱きついて首元に額をくっつけた。 「……ヴィクトルだ」 「うん」 「ヴィクトルの匂い……」 「うん」 「いつぶりかな?」 「さあ……」 ヴィクトルは額に落ちかかる勇利の髪をそっと払ってやった。 「おぼえてないな……」 「ヴィクトルはすぐ忘れるもんね」 「勇利と会えない時間なんてまじめにはかっていたら、気が狂う」 「…………」 「勇利はそんなふうに思うこと、ない?」 「……ヴィクトル、ぼくね」 勇利は低くささやいた。 「ずっと、貴方だけ見てたんだ」 「……うん」 「ヴィクトルのスケートを見て、夢中になってから、もうずっと。脇目もふらずに、ヴィクトルだけを」 「……ああ」 「ぼくはヴィクトルのスケートが好きで好きで……、」 勇利はほのかにほほえんだ。 「スケートから離れても、ヴィクトルが好きなんだろうと思った」 「…………」 「ヴィクトルをどうしようもないほど愛していて、おぼれていて、どっぷりで、離れられないんじゃないかって」 「…………」 「そうじゃないかと予感してたんだ」 勇利が何かを探すように手をさまよわせた。ヴィクトルは彼の手を握った。強く……。 「その疑いは濃厚だった」 勇利の声は、青くかすむ神秘的な夜の中にしみこんでゆくようだった。しかし、けっして消えない。ヴィクトルのこころにとけて、じわっとそこをあたためる。 「それを、確かめたかったのです」 カーテンの隙間から、わずかばかり入ってくるおぼろなひか��が、勇利の頬を白く照らした。真珠のような純潔さに、ヴィクトルは陶然となった。 「……それで?」 ヴィクトルはちいさく言った。勇利はあえかな息をつき、微笑を浮かべた。 「思った通りでした」 「…………」 勇利……。 いま? いま……、それを知ったのかい? いまごろ……。 俺は……。 俺はもう、とっくに……。 「……変わった子だね」 「そうかな��� 「そういうの、好きだけど」 「そう?」 「ああ」 「そっかぁ……」 勇利は夢見るように笑った。 「……楽しかった?」 「何が?」 「長谷津とか……バルセロナとか……」 「何度もメールに書いたけど」 勇利はヴィクトルの耳元にくちびるを近づけ、優しく言った。 「貴方がいないから、つまらなかったよ」 ヴィクトルは胸が痛くなり、ものが言えなかった。 「ヴィクトル……」 「…………」 「ぼくのこと……、最後まで……、」 勇利の愛情深い声が可憐な懇願をした。 「……おねがいします……」 勇利は寝息をたて始めた。ヴィクトルは起き上がり、まくらべの棚のひきだしを開けて、そこからちいさな箱を取り出した。そして、もうずいぶん前に支度していた指輪を、勇利の薬指にそっとはめた。自分の指にも通した。勇利が何かをつぶやいた。すてきな夢を見ているように、彼は口元に微笑を漂わせていた。 そこでヴィクトルは、棚に携帯電話を置き忘れていたことに気がついた。近頃は仕事の用事が多いので、電話をふたつにわけているのだ。こちらは私的なものである。深夜にヤコフにかけてから、そのままだったのだと思い出した。電池が切れてしまっている。なにげなくコードにつなぎ、メールが入っていることに気がついた。ヴィクトルははっとした。急いで開封し、視線を走らせる。そしてすやすやといい気持ちそうに眠っている勇利を見た。 「勇利……」 あのヴィクトルのすべりを目にして、勇利はこころをきめたのだと思っていた。しかし……。 「勇利」 ヴィクトルはたまらないという表情になった。我慢できず、身をかがめ、勇利のくちびるにおごそかに接吻した。 「勇利……、俺もだよ」 最愛なるヴィクトル 眠れません。 明日……ううん、今日発つというのに、これでは寝坊してしまいそうです。でも、いくら寝ようとしても眠れないので、こうしてヴィクトルのことを思い出しています。 ヴィクトル。 ぼくは貴方と離れてから、たくさん貴方にメールを書きました。メールを書いていないときでも、貴方のことを考えていました。何をしていても、ヴィクトルのことで頭がいっぱいでした。一緒にいるときより、いっそう、そうでした。そうだろうと思っていました。でも、実際体験すると、「そうだろう」と想像していたのとずいぶんちがいました。 さびしく、せつなく、つらかったです。 思ったより、ずっと……。 何を見ても、何をしても、ヴィクトルがそばにいないことが不思議でした。貴方がいたらなんと言うだろうと考えました。どんなふうに笑うだろうと思い浮かべました。 ヴィクトル……、ぼくは、貴方のスケートをひと目見たときから夢中でした。でも……。 いつからぼくはこんなふうになってしまったのでしょう? 貴方はいつ、ぼくをこんなふうにしたのですか? いつだったか、ぼくには誕生日がふたつあると言ったのをおぼえていますか? ぼくは、苦しいくらい貴方が好きです。 その気配はずっとしていたし、予感もありましたが、それに、今日、気がつきました。 新しいぼくになったのです。 ��くのみっつめの誕生日です。 ヴィクトルはいつもぼくを新しくしてくれますね。どうして? どうしてぼくはこんなに貴方が好きなのでしょうか? そのひみつを、貴方は説明できますか? ぼくにもいつか解き明かせるでしょうか? これが最後の便りになります。もう、メールなんかでは満足できません。ぼくはヴィクトルに会って、ヴィクトルにみつめられ、ヴィクトルの声を聞いて、ヴィクトルの匂いを感じたい。 ヴィクトルに抱きしめられたいです。 貴方はこんなぼくをどう思うでしょう? 度を超した愛情だとひるむでしょうか? おかしな子だと笑うでしょうか? 貴方の気持ちがわかればいいのですけれど。でも、わからなくても構いません。ぼくはまっすぐ貴方の胸に飛びこみます。 貴方はぼくのすべてです。 もう、ずっと前からそうだったのです。 ようやくはっきりとわかりました。 貴方は知っていましたか? ぼくの愛は貴方のものだと。 永遠に貴方の 勝生勇利
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今日の社弁当:非断シャリ弁当 ───────────────────────────────────────────────────────────
店主(配偶者)は一昨日まで「断捨離」を米(シャリ)を断つダイエット。 つまり「断シャリ」だと思い込んでいたようだ。わりと衝撃の事実だった。
「断シャリ」か・・・。 そんな事を思いかえしていると、逆にシャリを意識してしまう。そしてついつい 1合ほどの筍ご飯を弁当に詰めてしまった。
二回に分けて食べようと思っていたが、一度で全部食べてしまった。 断捨離も、そして断シャリも自分には超えがたい壁のような気がしてならない。
そして押入れの奥から、捨てずにとっておいたランニングウェアーを取り出し ワークアウトの手はずを整える。
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** 今日はまたまた ハプニング😇 今だんなさんの車を 借りていて ぶつけた記憶は 全くないけど バンパー⁈ みたいなの外れて、 だんなさん 機嫌が悪くなるの巻 って感じでした😅 とりあえず、ビニールテープで ベタベタ貼り付けて 落ちないように 走ってます😂 さてさて、 みなさんは 物を捨てる派? 捨てれない派? わたしは わりと捨てます。 もう、使わないな、 もう、好きじゃないな、 もう、読んだな、 もう、着ないな、 もう、似合わないな、 邪魔だな、 汚いな、 とか、 で、ひとにあげたり 捨てたりします。 物がありふれて ごちゃごちゃしている 空間にいると わたしは ・頭の中がごちゃごちゃする。 (ただでさえ頭の中整理できないのに笑) ・心も穏やかでいれずイライラする。 ・なんか太る笑。 です! 結果、健康にも不調になる気が します。 ☆物を捨てる���整理する) メリットたくさんあります! ①掃除がしやすいから いつも綺麗でいれる。 ②余分な時間が減り有効的に 時間はを使える (物を探したり 服を探したりしなくて良い) ③お金が残るようになる (本当に必要なものしか買わなくなる) ④健康に痩せれる (清潔感溢れたお部屋にいると なぜか食べ物も断捨離したくなる) ⑤心が穏やかになる (自分にとって好きなもの、 必要なものだけが シンプルなお部屋にスッキリして いると自分の人生を自分で選択している 気持ちになり心が豊かに) 今はただ捨てるより 周りに使ってくれそうな方に あげたり、売ったりが 簡単にできる時代なので 物にも命があると、 わたしは思うので できるだけ 生かして あげる方法を考えて それでも 捨てるしか なければ ありがとうって言って 捨てる。 ようにしています。 とにかく、 本当に必要な物以外は 買わない! が 1番良いですね! わたしも洋服、 つい、 ポチッと してしまうので 気をつけます🙇♀️ 自分に正直に 体に素直に シンプルな思考で GO!GO!GO!😄🧡 #ダイエット #健康 #美容 #思考 #笑顔 https://www.instagram.com/p/Ciz2GRSpOLi/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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今後の方針
💰️家計
嫌儲十訓遵守!
都市部賃貸引越→交通機関利用で車維持費・人身事故リスクからの解放&部落コミュニティからの離脱
積み立てNisa全額投資中
👨💼仕事
一般病棟で働けるのも体力のある若い時だけ→精神科要検討!
英語を極めて転職力アップ(例文を自分の文に変えて覚える)
低コストからはじめられる起業検討
🎨趣味
絵は定期的にコンテストに応募する→情報収集
Web漫画投稿(Kindle)
オリジナルキャラクターの投稿(Twitter生足ちゃん参考にする)くるくるツインテール葱天
💊健康
「まぁ、いいか。」で自分を許す。執着を手放す。
毎日寝る前にジョギング、筋トレ!
ビヒタスで腸活(腸脳相関)→メンタルとダイエット強化
🏠️部屋
断捨離してミニマムな生活を目指す!
コメダみたいな癒し空間作りたい
⛑️防災
ローリングストック法(無印2ケースに保管)で非常食を切らすことなく確保する。
燃料(ガス管、ポータブル電源、ソーラーパネル、電池)
あとはキャンプバックに全て必要なものは入っている。
🧑🤝🧑人間関係
執着するほど相手にされなくなる。「まぁ、いいか。」って依存しない方が人がよってくるんだよね。不思議。
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感情をコントロールする方法オンライン講座その2をUdemyで公開しました こんにちは。 プライベートメンタルジム The Change代表のおぐすけんじです。 悩みって何だろうと考えた時に 感情が渦巻いている状態のことなのかなと思います。 悩みは思考ではありません。 悩むのをやめて問題解決の思考に移行できれば問題も消えていきますが、それをさせるのがカウンセリングなのかもしれません。 ただ感情が渦巻いてしまっている人は、なかなかその思考に移行できません。 ということで「感情をコントロールする方法講座」その2を公開させていただきました。 もう感情に振り回されない!! お金を払ってでも心の安定を得たい方のための心理学講座。 思考技術を身につけて精神的筋肉をつけましょう!! 感情をコントロールする方法はカウンセリングをして人にも、または自分自身にも使うことができます。 感情別に ・劣等感、怒り、不安、緊張、喪失感、人に嫌われたくない、寂しさとは何なのか? ・どうして、どのタイミングでその感情が現れるのか? ・どう対処すればいいのか? ・もう感情に振り回されない方法 をお話ししていきます。 そして ・私たちの心のバロメーターを変える方法 ・精神的筋肉をつける方法 ・思考技術 ・心のトレーニング法 もお伝えしていきます。 もう一つは 「心の構造」と「心の取扱説明書」をお伝えしています。 心や思考にも構造があります。 ただ人はそれを知らずに心の「取扱説明書」を読まずにに生きています。 ダイエットや筋トレのように、こうすれば痩せやすいとか筋肉がつきやすいといった、最新スポーツ科学のようなものが「心」にもあります。 どうした時に人は幸福感や安心感を感じるのかを知り、もう感情に振り回されるのはもうやめましょう。 5日間限定で1220円〜受講できます 「感情をコントロールする方法講座」その2 怒りと不安と劣等感、寂しさよ今すぐさようなら https://www.udemy.com/course/2-gqmyvd/?couponCode=BDA5D9A35CC0D0A55634 感情をコントロールする方法その1 「心」の取説・感情をコントロールして幸せに生きる方法その1:心の取扱説明書を一緒に解いていきましょう https://www.udemy.com/course/aizoshgm/?couponCode=D73CE1F9BA863C9B7F94 お金の問題、寿命、癌、断捨離、依存症、魂、宗教を例に心の構造とメカニズムを学んでいきましょう:心理学を使ってこれからの人生を生き抜く方法。 https://www.instagram.com/p/CeKrXIXLBtl/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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2021/12/26
今日はコスメの断捨離しました。主にリップ類。↑が捨てた物。結構たくさんあるわ。リップ好きなのにコロナで全然消費できなかった…なのに劣化して臭くなるし。
空っぽor劣化シリーズ
目薬は空っぽなのになぜか捨てずに取っておいたやつw
カスッカスなCHANELのリップグロス(しかも異臭がする)。Jillのグロスも変色&異臭残りも少ない。catriceのリキッドシャドウもカスッカスだしリキッドなので明らかにやばい。紫のグロスも一見普通に残っているように見えるが、カスッカスでチップに乗らない。ちなみにJillのチャームは外してプリンセスセレニティのがま口ポーチに付けました。↓6月の誕生石のムーンストーンがセレニティのイメージぴったりだわ。ちなみに白いファーのポンポンはArianaの香水からのチャーム。元々付いてたのは銀水晶のチャームだけでした。
日本で買ったマスカラシリーズ。今髪色暗いから(毛先のみブリーチ)眉マスカラいらないしとにかく古すぎて使える気がしない。ドーリーウインクのはパケ可愛いから置いといただけwでも明らかいらんよな。
色みが好きじゃないものシリーズ
Winnersでつい衝動買いしてしまったものがほとんど。
Too facedのラテックスリップの質感が嫌い。すんげーべたべた。マスクしてるときにつけれた代物ではない。wetnwildのはメタリックカラーの黒に近いブラウン系の発色なんだけどもハロウィンぐらいにしかつかえないwハロウィンには黒リップを別に買えば良いと思っています。
色付きリップクリームたち。リップクリームだけど保湿性がクソ。LOLのリップクリームに至っては水色が唇に乗るので血色も悪くなるし。ポルジョ風のパケのはダイソーで買った物なので別に躊躇せず捨てれる。色味は好きだったけど、保湿具合は良くないので…plumpグロスはスースーして気持ちよくてお気に入りったけど、白みピンクのラメがすごく似合わないし、液漏れがひどくてリップクリームがわりにも使えないので。
MANNA KADERのリップはMLBBって感じの色合いだけども、これをつけても気分は上がらない。実際コロナ前も全然使ってなかったしな。これを豆に塗り直すぐらいだったら、もうマットな赤リップを軽めにつけて、元々唇が赤い人っぽく見せた方が盛れる。
ティント類。基本的に色味がダメダメです。マットリップの方がよっぽど良い。マリリンモンローのやつは真っ赤な方は気に入りってるので残しますがピンクは微妙。韓国コスメのティントはオレンジピンクって感じであんまり好きな色味ではない。essenceのクリアの方はティントじゃないのか?っていうくらい発色しないし、かといって保湿力があるわけでもない。ラメも付かない。色づ���わけでもなく保湿するわけでもない謎の棒を塗ってる気分になるので処分。ピンクの方が良いけども、すぐ落ちる。
残しておくもの
左から。マリリンモンローのリップクリーム(ほんのり色付き&ラメ付き)は最近買った物だからとりあえず残しておきます。まあ一年後には処分の対象になるだろうけども。
マリリンモンローの真っ赤なティントは塗りたては濡れたような真っ赤なんだけども、乾いてくると濃いピンクになる。右端のCHANELのグロスと口紅のように。だからこれを家で使って、そのシャネルをお直し&保湿用として持ち歩こうかな?って感じです。
中央のtoofaced、catrice、udのラメグロスはほとんど発色しないけども、保湿力があるのでリップ下地or保湿に使えると思って。udは大好きなスースーするタイプなので。
とりあえず来年はこの辺のリップを使いきって行こうと思います。それまで新しいリップ買わないことを目標にします。ほんまはアイシャドウの整理もしたほうが良いんだろうけど、アイシャドウは粉物で基本あんまり劣化しないし、もし劣化でのアレルギー反応でたら捨てようって思ってるから、まあ気長に使っていこうと思う。アイシャドウも来年は買わないようにしよう…とにかくコスメの情報とか見ないようにしなきゃなあ。マスカラとルーセントパウダーぐらいは買っても良いことにして。来年はスキンケアやダイエットに力をいれようかな。
https://ameblo.jp/okou8888/theme-10108727123.html
たまたま見つけた記事だけども、この人はコスメを少しでも意識して使い切るように一週間同じメイク用品を使うという一週間チャレンジっていうのをやっているみたい。まあ私はファンデとか全く持ってなくて、toofacedのコンシーラーくらいしか持ってない(もう古すぎるしシミのカバーするにも厚塗りになりすぎるから、代替品が買えたら処分しようかと思ってる)から関係ないんだけども、チークとかアイシャドウパレットとかリップとかは一週間同じものを使うように意識するっていうのはアリかなと思った。
チークは何気に4個も持ってる。CHANELの定番のチーク(ピンクオレンジ系)、同じくCHANELのチーク&リップ(コーラルピンク系)、セーラーマーズのリップ&チーク(赤)、essenceのパックマンコラボの4色チーク(ブラウン、オレンジ、コーラル、青みピンク)リップ&チークはブラシなしで指でぼかせばいいから好き。旅行用に使おうかなって感じ。やっぱ普段は粉物チークのCHANELとパックマンを交互に使うのがいいかも。
あとアイシャドウパレットはnyxのPhoenix(赤系)、ccolorのGolden palette(ブラウンゴールド系緑系)、essenceのパックマンコラボ(定番の赤茶系)、hottopic(ヌードカラー系)、ANNA SUI(ベージュ×ブラウン×ターコイズ)、Jill Stuartの2017年限定パレット(白×ショッキングピンク×ブラウン系+グリッター)、w7(ブリックカラー系)という感じでどれも多少の捨て色はあるけど充分使えるからなあ。
チークとアイシャドウパレットとリップを週の初めにあみだくじで決めて、それを一週間どうにか使う(アイシャドウパレットは単色アイシャドウの併用可能)というルールでやってみようかな。リップは一週間固定で。
昨日クリスマスにもらったピアス(太め)をつけるために、年末まで太めのピアス付けっぱなしにしとこう。軽く拡張。右が完全に縮んでる感じだから、とりあえず普通のピアス(でも少し太め)を付けっぱなしにしてる。海外のピアスって基本的に太いんだってね。ぐぐるとエルメスやティファニーなどの高級価格帯のものでも太めで1mmぐらいあるらしい。日本の市販のピアスは0.7〜0.8とからしいからどれだけ太いかって話。ホールをプチ拡張しないと入らんわ。
なんか昔男友達がやたらとピアスのゲージ数を気にしていたけども、普通の人は自分のピアスのゲージ数がどのくらいか具体的に知らんよな。ボディピアスならその知識があるのもわかるけどさ。普通に耳たぶに開けてるような人は市販のピアスが入ればどうでもいいもんな。その友達はイキリたいのか拡張希望だったみたいだけども、結局社会人になってピアスをほとんどしなくいから閉じてきちゃってるみたい。あれから10年だもんなあ。そりゃイキリの二十歳の男の子もさす���に大人になるわ。私も右のピアスホールがあんまり綺麗に空いてないからいっそのこと閉じたほうがええんかも。それか少し拡張した方が誤魔化せるんかな?女性は一粒ピアスしてても何にも言われないけども、男はいろいろ言われるよな。むしろ女性はピアスもマナーのような感じ。結婚式ではピアスかイヤリングつけるし、お葬式でもシンプルなパールのピアスなら付けても良いというかパールのネックレスかピアスをつける方がむしろマナー的には正解らしい。まあ女性は化粧がマナーみたいなもんだから、ピアスもその一つなのかもね。海外ではピアスはまだ幼い女児が開けてるし、まあピアスってよっぽどでかいジャラジャラしたモチーフでもないと邪魔にならないアクセサリーだもんな。私もピアスのそこが好き。つけっぱなしにしなきゃいけないなら、ネックレスは寝るときには首閉まりそうで怖いし、指輪もごくシンプルなものでないと邪魔だし、腕輪やアンクレットはいくら可愛くてみ邪魔だし。大河ドラマに出るとかいうわけでもない一般人だと、ピアス空いてる方がなんだかんだで便利だわ。イヤリング可愛いのもいっぱいあるけども、イヤリングほんまにすぐ落として無くすからなあ。ピアスも時々無くすけど、そもそも落としにくいからなくなりにくいんだよな。
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お酒をあまり飲まなくなったら、甘党へまっしぐら🍰経済的にもダイエットしよう🦾 #ハイフ #ファッション #リラックス空間 #癒やし #甘党女子 #小顔 #友達募集中 #骨盤矯正 #人生変えたい #部分やせ #beforeafter #骨格診断 #カラー診断 #メイクアップ #驚きのビフォーアフター #東灘区エステ #成功するダイエット #クローゼット断捨離 #神戸 #パーソナルスタイリスト #経済的にダイエット #エステ #コーデ #ショッピング同行 #コーディネート #なりたい自分になる #タロットリーディング #オラクルカード #キレイになりたい #心理学 https://www.instagram.com/p/CfA2_YqLidf/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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今の一軍リップ6本 見事にグロスがなくなりました マスクにつくしすぐ落ちてマメに塗り直さないと顔色が悪くなるので ずぼらなわたしにはグロスは不向きですね💦 今断捨離がすすんでおりまして いつもは戦力外だけをメルカリにだすのですが 今回は2軍レベルでも全て売り払ってしまったので この6本でまわしております まぁ今までが多すぎでしょみたいな😅 発送手続きとか荷造りとか結構好きだからおやすみ中にコスメだけではなく服も一軍を残して結構売りさばきました(代打もいません) 捨てたら0円だけど 売ればチリツモで数万になるので ばかにならんです メイクボックスもクローゼットもすっきりー! 2度と無駄買いしないぞ!とは思うんですがいつの間にかものが増えるんですよね💦ダイエットとおなじか 「断」がなかなかできないひとなんだよね… まぁむりせずぼちぼちですね #一軍リップ #断捨離 #メルカリ https://www.instagram.com/p/CWqQzivlaBq/?utm_medium=tumblr
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ただいまハニー、おかえりダーリン
帰宅の途中、ヴィクトルの携帯電話が鳴った。ヴィクトルは荷物を抱えながら、片手で器用に通話をつないだ。 「アロー」 「やあヴィクトル。調子はどう? 勇利との結婚生活、楽しくやってる?」 「結婚してないよ」 ヴィクトルは否定しながら、顔では笑み崩れるほどに笑っていた。彼は「結婚はまだ」と言いつつ、勇利との婚姻につ��て冷やかされるのが大好きなのだ。 「勇利とは同居してるだけ。そのほうが都合がいいから住まわせてあげてるんだよ。もちろん迷惑なんかじゃないし、俺も安心だから、それでいいんだけどね」 「へえ、そう。じゃあそういうことにしておくよ。俺はてっきり、勇利の居場所は俺の隣にしかない、ほかへ行くつもりなら俺にも考えがある、とかなんとか脅して、なかば強制的に自宅へ呼び寄せたのかと思ったよ」 「そんなこと言うわけないだろ?」 当たってはいないが遠くもないことを勇利にほのめかしたので、なんでわかるんだ、とヴィクトルは内心で冷や汗をかいた。 「で、なに? 俺をからかうためにかけてきたのかい?」 「いや、本当にどうしてるのかなと思って。突然コーチ宣言して消えた英雄が戻ってきたんだ。ロシアの国民は復帰を歓迎しただろう? オフシーズンとはいえ──というかオフシーズンだからこそ、争って露出を求められてるんじゃないかと思ってね。君はそういうところでは親切心が旺盛だから、体調はどうかと」 「ああ、まあ確かに忙しいね」 ヴィクトルは、自動車がいないことを確認してから通りをさっと渡った。 「でも、もうすぐ落ち着くはずだから」 「食事はどうしてるの? 勇利がつくってる? 彼、料理なんかできるのかい?」 「簡単なものはつくれるみたいだよ。まあ、レシピを見てその通りにつくってるだけだって言ってるけど。でも最高に美味しい」 「そりゃよかったね」 「仕事で夕食に誘われても、家で食べることにしてるからってほとんど断ってるんだ。べつに食事の当番が勇利ときまってるわけじゃないんだけどね。そのあたりも一段落してからだよ。勇利には申し訳ないと思ってる。時間ができたら、めいっぱい優しくしてあげなくちゃ」 「なんだか思ったより元気そうだね。心配して損した。勇利の癒し効果は絶大だね。何か特別なことでもしてもらってるの?」 「特別なこと?」 ヴィクトルは思わず、ふふ……と笑い声を漏らしてしまった。 「ヴィクトル……」 「なに?」 「俺はべつにいいけどね、彼は彼を知るスケーターたちのあいだでは清純で通ってるんだ。あまりいやらしいことをさせるのは感心しないな」 「人聞きが悪いな! やらしいことなんかさせてないぞ!」 「さっきの含み笑いはただごとじゃなかったよ」 「えっちなおもてなしをされてるわけじゃない。勇利はね、俺を気遣ってくれてるんだよ。俺が連日仕事詰めだからって気持ちをほぐそうとね。彼はとっても独創的ですてきなんだ。帰るたび新しいことを教えてくれる。今日も何が待っているのか楽しみだな」 「え? わりと手がこんでる感じかい? 食事が豪華とか、そういうことじゃないんだよね? 何をしてくれるの?」 「聞きたい?」 「のろけを聞くのはばからしいんだけど、悔しいことに興味をそそられるね」 「じゃあすこし話してあげよう。このあいだはね……」 ヴィクトルはいらだちながら家路を急いでいた。あの男、話が長すぎる、とその日あったことを思い出し、時計を見るとますますいらいらした。早く帰宅して勇利とゆっくりしたかったのに、それも望めそうにない。明日はすこし遅めに活動を始めるのでよいのだけれど、だからといって進んで夜更かしもできないし……。 「ただいま」 ヴィクトルは不機嫌になりながら扉をひらいた。 「勇利? いないのかい?」 マッカチンだけが駆けてき、「おかえり」というように挨拶した。ヴィクトルは彼のつむりをごしごしと撫で、「遅くなってごめんね」と謝った。 「勇利は?」 マッカチンは鼻を鳴らすばかりである。 「いないのかい?」 俺が帰ってきたのにどうして迎えてくれないんだ、とヴィクトルは腹が立った。俺がこんなに会いたいと思って帰ってきたのに、勇利はそうでもないんだろう。勇利にありそうなことだ! 「勇利!」 ヴィクトルはかばんを投げやり、コートを脱ぎ捨てながら居間へと入った。 「なんで出迎えてくれないんだ! 帰ってすぐ勇利の顔を見たいと思った俺の気持ちを、おまえは──」 ヴィクトルは言葉を切った。勇利はソファに横たわっていた。しかし眠っていたのではない。彼はすらっとした脚を高く組み、優雅に頬へ手を当て、微笑を浮かべてヴィクトルを待っていた。 「おかえり、ヴィクトル」 勇利は眼鏡をかけていなかった。前髪もすっきりと上げ、いかにもうつくしかった。それだけではない。彼は、「エロス」を演じるときに着ていた、あの魅惑的な衣装姿だった。 「た……ただいま、勇利」 ヴィクトルはほとんどぽかんとしながら挨拶した。勇利は腕をつき、けだるげな様子で起き上がると、ヴィクトルのほうへゆっくりと歩み寄ってきて、上着のボタンをひとつずつ外し始めた。 「お仕事お疲れ様。大変だったでしょ……?」 「あ、ああ……」 勇利の目つきはただごとではない。まるで演技に入りこんでいるときのようだ。そう──「いったい何のスイッチが入ってるんだ」とヴィクトルが戸惑ってしまう妖艶さである。 「ヴィクトルをこんなにこき使うなんて、ひどいスポンサーだね。ぼく、ゆるせないな……」 勇利がささやいた。ヴィクトルはくらくらした。 「今日はごはんも食べてきたんだよね? ぼくひとりでさびしかった……」 「ごめん……」 「ううん、謝って欲しいんじゃないの。さびしかったって、知ってもらいたいだけなの……」 勇利は次に、ベストのボタンを外しにかかった。その手つきのじらし上手なこと。鼻血が出るかもしれない、とヴィクトルは思った。 「ヴィクトルもすこしくらいは、さびしいって思ってくれた……?」 ベストがひらききると、勇利の指がネクタイにかかる。結び目に指がすべりこんできて、ヴィクトルはたまらない気持ちになった。 「……もちろんだよ」 「本当? うれしい……」 勇利が吐息をつき、上目遣いにヴィクトルをちらと見る。その婀娜めいた目つき……。 「ヴィクトル……」 「……なんだい?」 「ヴィクトルって、ひどいひとだよね……」 するするとネクタイをほどかれる。ヴィクトルは突っ立ったままどうすることもできない。やめろと言うなんて思いもよらない。 「……どうして?」 「こんな遠くまでぼくをさらってきて……、なのに、ずっとほうっておくんだもの……」 勇利は目を伏せると、そっと首をかたげ、ヴィクトルのおとがいの線にちょっとだけくちびるをふれさせた。これが強烈だった。ヴィクトルは、舌を入れてキスするよりも興奮した。 「もしかして貴方……、ぼくに飽きたの……?」 「…………」 「町では一番の美女だったけど、いざ故郷に連れて帰ってくると、本当はこの子たいしたことなかったんだなって……、そのことに気がついちゃった……?」 勇利の手は、いよいよシャツのボタンを外しにかかっている。 「そうだよね……、ここには綺麗な人はたくさんいるし、ヴィクトルを愛してる人も大勢だもの……」 「…………」 「結局、色男に連れ去られたら、こんなふうに不遇な暮らしをするよりほかはないんだね……愛してるなら耐えるしか……」 喉がからからだった。めまいがする。勇利の声はどうしてこんなにかすれているんだ? なぜこうも吐息混じりなんだ? なんという誘惑……。 「どんなにさびしくても貴方を待って……、お情けでふれてもらうのを待つしかないんだね……」 勇利がかなしそうに頬に手を当てた。 「ぼく……、騙されたのかしら……」 勇利のまつげが揺れ、それから瞳が甘く責めるようにヴィクトルを見た。黒い瞳の表面が濡れてひかり、とろけるような憂いを帯びて瞬く。 「確かにつかまえたと思った貴方の愛は、うそだったの……?」 勇利の手がヴィクトルの衿元にかかった。彼はそっとシャツをずらし、ほかの衣服と一緒にするっと肩からすべり落とした。 「ヴィクトル……」 「ゆ……、」 「ぼく……」 勇利は深くうつむきこみ、それからぱっとおもてを上げると、にっこり笑ってシャツを抱きしめた。 「これ、洗濯場に持っていくね。あとスーツも片づけておいてあげる。お風呂沸いてるよ。着替えも出しておいたから入っちゃって。ゆっくり浸かって、疲れを癒してね!」 勇利、とヴィクトルを抱擁しようとしたヴィクトルは、勇利が身をひるがえしたことで勢いがあまり、転びそうになった。 「え? え? ちょっと……」 「あ、ごはんはほんとに食べてきた? おなか空いてない? ぼく、明日の朝のためにサンドウィッチをつくったんだ。もし欲しいならすこしくらい食べてもいいよ。マッカチン、おいで。ヴィクトルはお��呂だからね」 「勇利!」 ヴィクトルは抗議するように呼んだ。勇利がきょとんとして振り返る。 「いまのは何だったんだ!?」 「え?」 「な、なんでそんな、衣装まで着て、俺を誘──」 「予定より遅かったから、ヴィクトルきっといらいらしてるだろうなと思って」 勇利はほほえんだ。 「何か楽しいことしてあげようかなって。ぼくの持ちネタその一。町一番の美女。どうだった? 家に帰ったら町一番の美女がいるってどんな気分? つまんなかった?」 「…………」 「あー、やっぱりそういう恋って旅先だからこそ燃え上がるものなのかなあ……。家庭的な空気の中に美女がいても白けちゃうか。行きずりの感じのほうがよかった? 失敗したかな? すべった? あ、すべったってわかる? 受けなかったってことなんだけど。まあいいや。早くお風呂──」 「勇利」 ヴィクトルは背後から勇利を抱きしめた。勇利が「え?」と驚く。 「確かに俺はいらいらしていた。でも勇利のおかげでいらだちなんて吹っ飛んだよ。いまはとても気分爽快だ」 「そ、そう? それはよかった……」 「けど、今度は別のことでもやもやを抱えている」 「あ、あの、ちょっと……」 ヴィクトルは下肢をぐいぐい勇利の臀部に押しつけた。 「勇利……、こっちも解消してくれないか……」 「待ってヴィクトル、ぼくそういうつもりじゃ」 「俺はとっくにそういうつもりなんだが」 「ぼくはただ、ヴィクトルが楽しくなればいいなと思って、」 「楽しくなってるよ」 「いや、あの、こういうことじゃなくて、むしろ『それで誘惑してるつもりなんだ? へえ』って笑ってもらいた��て」 「あれで俺が誘惑されないと思ってたんだ? へえ……」 「ヴィクトル、だめだよ、ゆっくりやすんだほうが……」 「運動したほうがぐっすり眠れる」 「だめ!」 勇利の手から衣服が落ちた。ヴィクトルはソファに勇利を押し倒した。 「ヴィクトル、そこまで詳細に教えてくれなくていいんだよ」 「あれ、そう? 聞きたいかと思って」 「勇利もばかだな。そんなことをしたらどうなるか、わかりそうなものじゃないか。ヴィクトル、やめたの?」 「衣装が汚れる、とか言って抵抗するから、俺より俺の衣装を優先するのがゆるせなくて強引に抱いた」 「鬼だな……」 「でも勇利、『ヴィクトル、かっこよかぁ……』って言ってたよ」 「ヴィクトルならなんでもいいのか」 「かわいいよね」 「それ、疲れ取れたの?」 「翌朝肌つやつやだったよ。でも勇利は『やすんで欲しかったのに……』って衝撃を受けてた。それで誘惑系はまずいと思ったんだろうね。次にはおもむきを変えてきたよ」 ヴィクトルは玄関の扉を開けると、ふう、と息をついた。おなか空いたな、と思った。よい匂いが鼻先をくすぐる。この香りは……。 「おかえり、ヴィクトル!」 勇利とマッカチンが駆けてきた。 「ただいま、勇利。カツ丼だね!」 「そうだよ、ヴィクトルのためにつくったんだよ」 「ほんとに? カツ丼は久しぶりだ。うれしいな……」 ヴィクトルは言葉を切った。そしてまじまじと勇利をみつめた。勇利はにこにこしていたが、ヴィクトルの視線に気がつくと、気恥ずかしそうに目をそらし、「そんなに見ないで……」とささやいた。 勇利の腹部はぽっこりとふくらんでいた。頬もふっくらしている。まるで長谷津で初めて会ったときの彼のようだ。しかしもちろん、いまの勇利は肥えてはいない。朝ヴィクトルを送り出すおりは、氷にのることをゆるされる、ほっそりとした洗練された勇利だった。何か仕掛けがあるらしい。 「さ、早く入って。おなか空いたでしょ。そろそろだと思ってあたためておいたよ」 「ああ、ありがとう」 ふたりは向かいあって食卓についた。マッカチンも自分のごはんをもらって食べ始めている。ヴィクトルは器用に箸を動かしてカツ丼を食べながら勇利を見た。勇利もカツ丼に取り組んでいる。彼はふとおもてを上げ、ヴィクトルをじっとみつめた。きらきらと輝く瞳がかわいくて仕方ない。ヴィクトルは笑いそうになるのをこらえた。 「ヴィクトル、言って」 「うん?」 「言ってよ、あれ」 「何を?」 「ヴィクトル、ぼくね……、太りやすいから、試合で勝たないとこれ食べさせてもらえなかったんだ……」 「うん……」 知ってるよ。そう言いさして、ヴィクトルはようやくぴんと来た。 「ふうん。勇利は最近、このカツ丼を食べたのかい?」 「イエスイエース。よく食べてまーす」 「なぜ? 試合に勝ってもいないのに。そんなブタみたいな身体じゃ、何を教えても無駄だね! せめてシーズン中の体型に戻さなきゃ、コーチする気になれない。それまでカツ丼禁止だよ! こぶたちゃん」 「ううっ……」 勇利はおおげさにかなしそうな目をすると、横を向き、口元を手で覆った。 「わ、わかりました……」 彼は立ち上がり、戸棚から別の皿を出してきた。ブロッコリーともやしがのっている。ヴィクトルはびっくりした。サンクトペテルブルクでは、もやしは簡単には手に入らない。輸入品を取り扱っている店まで行かなければならないのである。 「今日からダイエットします……」 いかにもつらそうに勇利はブロッコリーを食べ始めた。ヴィクトルは可笑しくなり、笑いをこらえた。勇利、俺のために、そんなにめんどうな買い物までして……。 「勇利、かなしまないで。こぶたなきみも俺はかわいいと思ってるし、愛してるよ」 「でも痩せないとリンクに上がっちゃだめなんでしょ?」 「もちろんだよ!」 「すごい笑顔……」 「手ざわりとか抱きごこちはこぶたちゃんのほうがいいってば。ぷにぷにだし」 「そう……?」 勇利はちらと上目遣いでヴィクトルを見た。 「痩せてるぼくは好きじゃない……?」 「そんなわけないじゃないか! 体脂肪を落とした勇利はうつくしいよね。とりわけ腰と足首が好きだよ。あとでさわっていい?」 「ぼくはいま太ってるんです」 「ああ、そうだっけ」 「太ってるとジャンプが大変なんだよね」 勇利が溜息をついて説明を始めた。 「身体が重いし……、着氷もずしんって感じだし……」 ヴィクトルは笑いながら耳を傾ける。 「衣装を着るときはぱんぱんで、ファスナーがブチってちぎれちゃいそうだし」 「むしろあの体型で着られる衣装あるのかい?」 「…………」 「うん、それで?」 「スケートシューズを履くときはおなかがつっかえるし」 「言いすぎだろう」 「コンパルソリーやってると、左右にふらふら揺れるんだよね。右と左で肉の付き方がちがうのかな」 ヴィクトルはくすくす笑った。 「ときどき、すべるよりも転がるほうが得点高くなるんじゃないかと思ったりするよ」 「ふっ……」 「でもぼく、スピンは得意なの。重いから重心がしっかりするのかもね」 ヴィクトルは声を上げて笑った。勇利が満足そうにヴィクトルを見ている。ヴィクトルは手を差し伸べ、勇利の頬にふれて、「ありがとう」と礼を述べた。そのままほっぺたをつつくと、何かが歯に当たる音がして、ふくらみがひっこんだ。 「何を入れてるんだい」 「飴。ブロッコリーが変な味になるし、食べづらくって。もういい?」 「いいよ」 勇利は飴玉をかみ砕いてしまうと、そのあとは機嫌よくブロッコリーともやしを食べた。 「カツ丼も食べていいよ」 「試合に勝ってもいないのに?」 「今夜は特別に許可しよう」 「ありがとう、コーチ」 食事のあと、勇利を後ろから抱えてソファに座り、ヴィクトルは腹部をぽんぽんと叩いた。 「どうやってる?」 勇利は笑ってシャツを持ち上げ、中からタオルをたくさんひっぱり出した。 「ワオ、急にすらっとしちゃった」 「どう?」 「うん、うつくしい」 「抱きごこちがよくなくてごめんね」 「拗ねないの」 「どうせかたくて何の色気もない身体ですよ」 「色気ならあるよ……」 勇利が振り返った。ふたりのくちびるが優しくふれあう。 「おもしろかった?」 「うん、すごく」 「去年のぼく思い出した?」 「うん。かわいかったな」 「ほんとに?」 「動画で『もしや』とあやぶんではいたけど、会ったときやっぱりって腑に落ちて、俺の知ってる勇利とちがうって思った」 「別のやつが成り代わってると思った? スケーターとして一般的な体型をしてる勝生勇利は、どこかに閉じこめられてるんじゃないかって疑った?」 「いや……」 ヴィクトルはにっこり笑った。 「勇利が本物であることは、疑いようもなかったよ」 「がっかりした?」 「言っただろ? こぶたちゃんの勇利も愛してるよ」 「ほんとかなあ」 「今夜のは、持ちネタその二?」 「そう。こぶたの勇利」 「たまにしてくれ」 「これ好き?」 「好きだ」 「体型ネタの欠点はね、逆ができないことだよ」 「逆?」 「太ってるときに『ほっそりした勇利』はできないでしょ。持ちネタに加えたいんだけどね」 「太るつもりでいるのか」 「ん? いいでしょ? だって肥えてるぼくも愛してるって言ってくれたじゃない」 勇利はいたずらっぽく言ってヴィクトルにもたれかかった。 「それはなかなかおもしろいね」 クリストフが感心した。 「だろう? 見せたかったな。といっても、クリスは太ってる勇利のことは知らないよね。動画では見ただろうけど」 「あの動画は衝撃的だったね。ヴィクトルのプロをすべってるっていうのはもちろんなんだけど、勇利なに食べたんだって思ったよ。太りやすいとは聞いてたけど、こうなる前に誰か止めなかったのかって」 「まあそうだよね……。でもクリス、太ってる勇利も愛らしいんだよ。ころんころんしてさ。いとおしかったな……」 ヴィクトルは携帯電話を握りしめてうっとりした。 「はいはい。勇利が引退しても食べ物をたくさん与えないようにね」 「太ってもあの子はすぐ痩せられるよ。いろんな魅力を持っているんだから勇利ってすごいよね。ほっそりしてる勇利がまた美人なんだ。眼鏡を外したときなんかぞくぞくする。あの目でちらっと見られたらもう……」 「勇利、ほかには持ちネタとやらはないの? なかなか工夫してるよね。ヴィクトルのために」 「そう! 俺のために彼はいろいろ考えてくれてるんだよ! こないだのがまた最高だったな……」 扉を開けるなりのことだった。目の前に勇利とマッカチンがいて、勇利は笑顔でヴィクトルに紹介した。 「ハイ、ヴィクトル・ニキフォロフです! いつも応援ありがとう! この子は俺の大切なマッカチン。いちばんの理解者だよ!」 今夜の勇利は、ヴィクトルのナショナルジャージを着ていた。その裾から見えているのはどうやら「離れずにそばにいて」の衣装で、ヴィクトルが身につけているときにくらべて、丈がいくらかあまっていた。 「え? サイン? ごめんね、いまはペンを持っていないんだ。代わりにこれでゆるしてくれるかい? ほら!」 勇利が手を差し出した。ヴィクトルは思わず手を伸べた。勇利が握ってかるく上下させる。それからぱっと離し、眼鏡をさっと外して、ヴィクトルに向かって片目を閉じた。ヴィクトルがサングラスを取ったおりにするしぐさだ。ヴィクトルのファンはみんなこれにきゅんとなるようである。もちろんいま、ヴィクトルもきゅんとした。 「さ、こっちへ来て」 勇利は眼鏡をそのあたりに置くと、さっさと奥へ入っていった。ヴィクトルはおもしろくなっていそいそとついていった。勇利はヴィクトルの肩に手をのせ、「座って」と小声で言ってソファに座らせた。それからさっとジャージのファスナーを下げると、気取ったしぐさでそれを脱ぎ、後ろに誰か立ってでもいるかのように渡すふりをした。実際にはソファの上に置く。 「ああもうわかってるよ。大丈夫、心配いらないって。そんなこわい顔ばっかりしてると、またスケ連から『もうすこし控えるように』って言われるよ!」 ヴィクトルは噴き出しそうになった。これは彼自身がヤコフによく言うことである。実際にスケート連盟から注意を受けるのはヴィクトルで、「奇特な行動を控えるように」と通達されるのだった。だからヤコフは「おまえだろうが!」と怒っている。 「ヤコフはコーチインタビューの内容でも考えててよ。金メダルにキスさせてあげる。問題ない、ジャンプ構成は変えないよ。今日はね!」 勇利は言うと、自分で「On the ice representing Russia Victor Nikiforov!」とアナウンスした。ヴィクトルは目を輝かせ、力いっぱい拍手をする。勇利はヴィクトルの演技前のルーティンをそっくりそのまま再現した。よく見てるな、とヴィクトルは感心した。すぐに演技をするのかと思ったら、勇利はぺらぺらとしゃべり出した。 「さあ、最終���走はロシアのヴィクトル・ニキフォロフ。さすがロシアの英雄、すごい歓声です。ショートを終わって二位ジャコメッティとは大差をつけての一位」 実況も勇利が担当するらしい。ヴィクトルはすっかり楽しくなった。ぴたっと勇利が静止する。うつむいてまぶたを閉ざしたかと思うと、彼は小声で言った。 「ヴィクトル、音楽、音楽」 「え?」 「それそれ」 ソファのすみに勇利のノート型のコンピュータが置いてあった。ディスプレイを見ると、音楽再生ソフトが立ち上がっている。再生しろということらしい。ヴィクトルは笑いをこらえながら「離れずにそばにいて」をスタートさせた。勇利の���─ヴィクトルになりきった──演技が始まる。 「このプログラムには、四回転を四本用意しています」 演技をしながらもちゃんと実況するようだ。氷の上ではないので当然ながら流れるようにはできないけれど、手を抜かずにきちんと振りをやっている。勇利は一年間これを演じ続けたのだから、苦もなくできるだろう。しかし、エキシビションでするときとはどこかちがう。ヴィクトルがするようにしているようである。そう、あの動画で見た演技だ。勇利が勇利としてすべるのではなく、ヴィクトルの模倣。 「さあまずは最初の四回転……、四回転ルッツ綺麗にきまりました!」 勇利に四回転ルッツは跳べない。しかし、ルッツの踏み切りをちゃんとしている。回転は二回だ。 「さあ二本目はヴィクトル・ニキフォロフの代名詞──四回転フリップ、これもきめた!」 遊びかと思ったが、勇利は最後までするつもりのようである。ヴィクトルは相変わらず笑いをこらえながら勇利の演技を見守った。ジャンプはすべて二回転である。よく見ると、勇利は髪もヴィクトルのように整えているではないか。念が入っている。ヴィクトルは隣にいるマッカチンを抱き、勇利のヴィクトル・ニキフォロフの試合を観戦していた。ジャンプのあとは、ちゃんと手を叩いて称える。曲のいちばんの盛り上がり、ジャッジアピールのところでは、当然勇利はヴィクトルに向かって手を差し伸べ、ほほえみかけてくれた。ヴィクトルは喜んで拍手をした。 「さあ、最後の四回転──四回転トゥループ、トリプルトゥループ、きめました! 四回転すべて着氷!」 コンビネーションスピンを披露すると──その場でポジションをきめてじっとしているだけなので可笑しくて笑ってしまう──勇利はフィニッシュのポーズを取った。挨拶をするのかなと思ったら、その姿勢のまま「さすがヴィクトル・ニキフォロフ、すべての四回転を完璧に着氷しました! これも高い得点が出るでしょう」と実況し、それから「いやあ、すばらしい演技でしたね!」と解説まで入れたので、我慢できず、ヴィクトルは手を叩いて大笑いした。ようやく勇利は胸にてのひらを当て、優雅に一礼した。ヴィクトルに向かって投げキスをする。 「勇利、俺は挨拶でそこまではしない」 「いまのはヴィクトルが相手だから、特別」 「なるほど」 勇利は花束を拾うふりをしながら部屋のすみのほうへ行き、「ヤコフ、俺よかったでしょ!?」と言った。ヴィクトルはまた大笑いした。 「それ勇利だろ!」 勇利がくるりと振り返り、戻ってくる。終わりかと思ったがちがうようだ。いつの間に取り上げたのか、何かを手に持っている。彼はヴィクトルの前でぴたりと止まると、ヴィクトルにそれを差し出した。思わず受け取ったら、身をかがめ、首にかけて、というしぐさをする。それは金メダルだった。ヴィクトルは笑いながら勇利の首にメダルをかけた。勇利が「サンキュー」と言い、ヴィクトルと握手する。それからかるい抱擁。姿勢を戻した彼は、金メダルをかかげ、まわりに手を振った。メダルを取り上げ、気取ったやり方でキスする。 「来季の目標? 来季は日本へ行って、ユウリ・カツキのコーチをするよ!」 「え!? いきなり記者会見なのかい!? そんなこと俺言わなかったけどね!」 「勇利! 今日から俺はおまえのコーチになる! そしてグランプリファイナルで優勝させるぞっ」 「ちょっと待って飛びすぎじゃないか!?」 勇利はヴィクトルに向かってぱちんと片目をつぶった。ヴィクトルは楽しくてたまらず、差し伸べられた勇利の手を取ると、ぐいと引き、膝の上に彼を抱えこんだ。ぎゅっと抱きしめ、頬ずりをする。 「おもしろかった?」 「おもしろかった!」 「いまのは持ちネタその三。ヴィクトル・ニキフォロフの勝生勇利」 「最高!」 「似てた?」 「英語の発音まで俺に寄せてない?」 「がんばってみたけどどうかな。ロシア語っぽい発音難しいんだもの」 「なんでサングラスじゃなく眼鏡のままだったの?」 「一度サングラスでやってみたんだけど、絶望的に似合わなくて。たぶんヴィクトル死ぬほど笑って、そこからさきを冷静に見てもらえないと思ったんだ」 「えぇ? 残念だな。やってみて」 「笑い死んでも知らないよ」 「見たい!」 「うん……」 勇利は本当に一度はためしてみたらしく、すぐそこにヴィクトルのサングラスを置いていた。そっとかけ、それを外して片目を閉じる。ヴィクトルは噴き出した。 「ほら……」 「…………」 「だから言ったでしょ……もう」 「いや、かわいいよ。死ぬほどかわいい。かわい死ぬ」 ヴィクトルは肩を揺らしながら、勇利が首からかけているメダルを調べた。 「……四大陸の金メダルなんだけど」 「だってワールドのは持ってないからさ……」 「それは俺のを使わなかったの?」 「さすがに金メダルはむやみにさわれないよ」 「勇利ならいいのに。そもそも、ヴィクトル・ニキフォロフを演じてるのにワールドのじゃないって……」 「グランプリファイナルで獲れてたらそっちを活用したんだけどね。でもほら、全日本のじゃさすがにあれでしょ……ぼくが持ってる金メダルでいちばんいいのって四大陸だし……」 「うーん……」 「ほら、考えてみてよ! ヴィクトルはどんなにがんばっても四大陸の金メダルは獲れないんだよ! そういう意味ではすごくない!?」 「こじつけがすぎる」 ヴィクトルは笑顔になった。 「でも楽しかった。勇利はいろんな特技を持ってるんだねえ」 「元気出た?」 「出たよ」 「癒された?」 「癒されたよ」 「なごんだ?」 「とっても」 「よかったあ」 勇利はヴィクトルの胸にもたれかかった。彼はまぶたを閉ざし、うっとりしながらつぶやいた。 「ぼく、ヴィクトルに頼ってばかりで何もできないから、これくらいはしないとね……」 ヴィクトルは、勇利はばかだな、と思った。何のためにヴィクトルが毎日がんばっているのか、どうしてヴィクトルの日々が輝いているのか、勇利はちっともわかっていないのだった。何の苦労もなくても、勇利がいないのなら、そんな暮らしはまったく味わいやうるおいがなく、つまらない。ヴィクトルは黙って勇利の髪を撫でた。 「合ってる?」 勇利が目を開けた。 「え?」 「髪型」 「ああ……」 「なんだか恥ずかしいな。ヴィクトルがやるからかっこいいんだなってわかったよ。今後『ヴィクトル・ニキフォロフの勝生勇利』をやるときは、髪型だけはぼくの試合のときのやつにしようかな」 「似合ってるよ」 ヴィクトルは笑ってささやいた。 「そのジャージも、衣装も似合ってる」 「そうかな……」 「うん」 ヴィクトルは勇利の耳たぶにくちびるを押し当てた。 「裾も袖も、ちょっとあまってるけどね……」 「ほっといて!」 「ヴィクトル、最高に愛されてるね」 「そうだろう? 勇利は発想が豊かで、いろいろなことを思いつくんだよ。いくらでも俺を驚かせるんだ。なのにね、自分のプログラムをどうするかっていうことになるとたちまちうんうん唸り出して、ちょっと考えるから待って、ばっかり言うんだ」 「今度パーティがあったら、余興を勇利に頼もうかな」 「だめ」 「どうして?」 「勇利の特技は俺に披露するためだけにあるんだよ。誰にも見せない」 「ひとりじめ王子だね」 クリストフがからかった。ヴィクトルは笑って電話を切り、自宅の扉の前に立った。さて、今夜の勇利は何をしてくれるだろう? あのかわいくて仕方ないヴィクトルの勇利は……。 「ハイ、勇利」 「ハイ、ヴィクトル。今日の仕事はどうだった? なんだか楽しそうだね。いいことがあったの?」 「仕事は普通だよ。クリスとさっきまで電話してたんだ。だから機嫌がいいのかも」 「へえ。ぼくといてもそんなに機嫌がよくはならないようだけどね」 「勇利のことを話してたんだよ」 「上手いこと言うね。いまのでゆるしたよ」 勇利はにっこり笑った。その笑顔が最高にかわいいとヴィクトルは思った。 「ごはんできてるよ。食べる?」 「うん。マッカチンただいま」 ヴィクトルは寄ってきたマッカチンを撫でた。 「マッカチン今日はすごくいい子だったんだよ。いつもいい子だけど、いつも以上に。ぼくの帰りがすこし遅かったのに、文句も言わずに待ってて、部屋に入ったら元気に迎えてくれて、ずっとそばにいてくれたんだ」 「そうかあ。えらいね、マッカチン」 ヴィクトルと勇利は向かいあって夕食をとった。ヴィクトルは高級な店でいくらでも食事ができるけれど、勇利のつくる料理に勝るものはこの世にはないと思った。 「勇利は今日はどうしてた?」 「ずっとリンクにいた。夢中になってすべっちゃった。みんな親切だね」 「あのリンクでいちばん勇利に優しいのは俺だよ」 勇利は笑い出した。 「そうだね」 「そうだとも」 「でもいま、ヴィクトルはリンクにいないから、そのこと忘れてしまいそう……」 「勇利……」 ヴィクトルは胸がきゅんとし、思わず身を乗り出して勇利にキスしようとした。勇利はヴィクトルのくちびるにちいさなトマトをくっつけ、それを口に押しこんだ。 「勇利……」 「何です?」 勇利はすずしい顔で答えた。ヴィクトルは苦笑を浮かべる。ヴィクトルはこのところ、毎日忙しい。遅くなることも多い。しかし勇利は文句を言わずに待ち、ヴィクトルが帰宅したら元気に迎えて楽しいことをしてくれる。勇利もいい子だ。最高に。勇利がいなければ、ヴィクトルはもう何ひとつできないだろう。 「今夜は何も用意してないんだね」 ヴィクトルは言った。 「ぼくが支度したこれ、なに?」 勇利があきれたように食卓にある食事を示す。 「いや、そういう意味じゃない。持ちネタは?」 勇利はにやっと笑った。 「がっかりした?」 「いや」 「愛がうすれた?」 「いや」 「楽しいことのできない勇利には用事はない。そう思った?」 「いや」 「もう出ていけ、おまえの顔なんか見たくもない。そういうこと?」 「勇利、精神攻撃をやめてくれ」 勇利はにやにや笑い続けている。 「ぼくの愛がうすれたのかもしれないね?」 「なんだって?」 「冗談だよ。いつもめいっぱいでたくさんであふれそうであふれてるよ」 「精神攻撃をやめてくれ……」 「ネタ切れじゃないよ」 勇利はとり澄まして言った。 「教育しておこうと思って」 「え?」 「あんまりいろいろやりすぎると、本当のぼくを忘れちゃうかもしれないでしょ」 ヴィクトルは思わず勇利を見た。勇利はいたずらっぽく笑っている。 「そんなの泣いちゃうよ。……だめだった?」 なんてかわいいことを言うんだ……。ヴィクトルはうっとりした。勇利はいつも最高だ。 「勇利、もう一度言ってくれ」 「え?」 「いまのせりふ、もう一度」 「ヴィクトルをいろいろ教育するぞっ」 「ちがう」 望みとはちがったのに、ヴィクトルは思わず噴き出してしまった。 「俺のまねが上手いよね」 「あのイーグルからのトリプルアクセルはなんだ!?」 「ほかには?」 「後半ジャンプに気持ちが行きすぎて演技がおろそかになってたよねえ。ああいうの好きじゃないなあ、俺」 「あのさ、��なり甘いことも言ってるつもりなんだけど、そういうのはないのかい?」 「まだ寝てたのぉ?」 「……なにそれ」 「バルセロナで時差ボケのぼくに言った言葉」 「……それのどこが甘いんだ?」 「え、甘いじゃない。めちゃくちゃ甘いし、やらしいよ」 「え……」 「……と、もっともらしく言ったらヴィクトルはいろいろ想像してくれるんだろうね」 「……勇利」 勇利はしばらくまじめにヴィクトルをみつめ、それからくすくす笑い出した。 「いいの。甘い言葉は、ぼくが言われたままで、ぼくのこころだけにしまっておくんだよ」 彼は上目遣いでヴィクトルを見た。 「そんなの、口に出したら、恥ずかしくって泣いちゃうよ……」 ヴィクトルは目をまるくした。 「ヴィクトルの甘い言葉が聞きたいなら、ヴィクトルがぼくに言ってくれればいいんだよ……」 「勇利……」 ヴィクトルはうれしくなってほほえんだ。 「いまの、もう一度言って」 勇利はまぶたをほそめ、口元を上げて優しく言った。 「本当のぼくをヴィクトルが忘れたら、泣いちゃう」 「そうじゃない、……え」 「ヴィクトル、ぼくとの結婚生活は楽しい?」 勇利は愉快そうに尋ねた。 「えっ……」 ヴィクトルは絶句し、それからおそるおそる訊いた。 「俺たち……、結婚してたの……?」 「ヴィクトルにばっかり甘い言葉言わせるのも悪いから、たまにはぼくからも言おうかなと思って。どう?」 「まだ……結婚してないよ」 「そうだったね」 「この言葉をはしゃいで言わなかったの、初めてだよ」 勇利は重々しくうなずいた。 「ぼくも、こんなに甘い言葉を言ったの、初めてだよ」 それから彼は得意そうに言った。 「どう? 本当のぼくも、悪くないでしょ?」
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