#上野朝子のマンハッタン散歩
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11月29日、チェルシーのダイナーで買いています。テレビでは大学生のバスケの試合が流れ、ラジオからはガンズアンドローゼズが流れ、天井のファンはゆっくりと回る。なるべく個人的なことを忘れないうちに。

10/28(日本)「行ってみないとわからない」渡航前に俊平さんとミーティングをして出た結論がこれだった。ビザも飛行機も住む場所も整った。でもそれ以外はほぼ白紙。いくつか送ったメールはほぼ返ってこず。申請書にあんなに大きなことを書いたのに、実際にそんな立派なリサーチが自分にできるのか。いくつか送ったメールはほぼ返ってこず。成果を求めないとACCの方は言って下さったけど、自由に貼りついた責任の二文字を撫でながら、自分がと��でもないほら吹きになったような気分で渡航の日を迎えてしまった。
数日前に偶然出会ったカメラマンTommyに言われた言葉’Stay active, talk to people’ をノートに書いて家を出た。期待と不安と興奮ともう一つ何かが体の中を泳いでいる。

10/28(NY) JFK空港に到着したのは夕方4時頃。約12時間のフライトはほぼ寝られなかった。いくつか映画を見たけど、E.T.で号泣して着陸。シンプルでエバーグリーンな物語にもだけど、その中にある大胆な省略にめちゃくちゃ感動した。見終わった後、遠くの空に思いを馳せるような作品に携わりたい。シリアスな現実も大事、だけど圧倒的な夢の一部になりたい。子供の中に大人はあって、大人はどこか子供である。
遅々として進まない税関を抜けて滞在先のBrownsvilleにたどり着いたのは6時頃。電車の中、揺れるスーツケースを抑えながら、夕日に染まる街並み眺めた。どこかに似ていてどこにも似ていない景色。その景色の一部になっていく。その後何度となく思うことになる「来てよかった」はこの時が最初。

10/29 目が覚めたのはおそらく8時とか9時だったと思う。とても深く眠った。やっと深く眠れた。起きてすぐ家の周りを散歩。ダンキンでシナモンとチョコレートのドーナッツ、そしてホットチョコレイトを注文。食べながらまた歩いた。家の目の前には学校と公園。ちょっと歩けばランドリーやデリがあり、小さな教会がいくつもある。
この日は生活に必要なものを揃え、昼過ぎからBushwickの辺りをぐるぐる歩いた。いくつかの古着屋とレコード屋を巡っていたらもう日が暮れていた。下北とか高円寺でもできることをここでもやる。というかどこの土地に行ってもやっている。レコ屋や古着屋、コーヒー飲みつつ本を読んだり作業ができる場所(遅くまでやっていたら更によし!)、を探して自分なりの地図を作る。
家に帰って俊平さんと乾杯をし、この2ヶ月でどんなことしたいかを話した。言葉にすると叶いそうな気がする。
眠くなるまで明日以降で受けたいワークショップやスタジオを探した。自分が勘違いしていたこともあり、ドロップインで受けられる演劇のクラスがなかなか見つからない。少し焦る。

10/30 8時頃起床。10時からTrisha Brown Dance Companyのクラスを受けにマンハッタンへ。 会場のEden’s Expresswayはソーホーに立ち並ぶある巨大なビルの一つにの中にあった。チェックインを済ませ、今にも崩れ落ちそうな階段を上って4階へ。辿り着いたのは陽の当たる美しいスタジオだった。明るい色の木の床と白い壁、そして大きな窓が三つ。その前に並ぶ植物たちを邪魔しないように参加者はそれぞれの荷物を置いていた。
Mariah Maloneyは自分の体の重さを感じるようにを指示を出す。体の心地よさ、衝動に従って体を動かしながら床との関係をとりながら自由に動く。ペアになってマニュピレーション、そこから即興的な動きに展開し、次第に皆でインプロ。そしてしれっと振付。出てくる動きがユーチューブで見たいくつかの動画を連想させるもので「トリシャブラウンっぽい!」っとなんだかグッと来た。振付をもとに改めてペアワーク。更にスローモーションで沈んでいくタスクと新しい振付を手渡して三つを自由に行き来しながらセッション。2時間はあっという間に過ぎた。Mariahはワークの度に自分がカンパニーにいた時のことや、Trisha Brownに言われた言葉をシェアしていく。会場がカンパニーが使用していた稽古場だということが彼女の描写を細かくしていく。単にテクニックを紹介するだけじゃなく、人間性やそこにあったやりとりや景色すら手渡していく。ニューヨークに来てはじめてのワークショップがこのクラスでよかった。 クラスが終わってからMariahやワークショップを主催しているmovement researchのインターンの方に話をきく。会場のことやおすすめのクラスなどを教えてもらう。 その後Alexander Techniqueを受けにGibney at 280 Broadwayへ。このスタジオは今回の滞在でとても重要な場所���も。大小いくつもの部屋があり、大きなスタジオには照明を吊るための��トンとロールバックの客席も用意されていた。天井の一部はガラス張りになっていて、見上げると空が臨める。この日は青空。世田谷パブリックシアターの天井のことを思い出す。
アレクサンダーテクニックのクラスは小さな部屋で自分含めて4人。正直英語は6割ぐらいしか分からなかった。ペアになり身体を解いて行く。Sarah White-Ayónの声がけに従いながら身体はあるべきところに戻っていく。驚いた。終わってすぐにメモをとってみるけど、体へのアプローチを文字にするのはとても難しい。
クラスが終わって同じペアだったJと改めて自己紹介。「コンタクトインプロビゼーションのすごいジャム」を紹介してもらう。
俊平さんとセントラルパークを少し歩いて帰宅。9時頃にはもう眠かった。

10/31 この日も深く眠って1時からWe Speak English。会場のWebster Libraryはマンハッタンの右上にあった。英語が第一言語じゃない人のために行われる無料の英会話教室。参加者はフランス、中国、韓国、ベネズエラ、日本、チリと様々なところから来ていて、自分のように用があってしばらく滞在している人もいれば住んでいる人もいるようだった。
主なワークは以下の通り。①自己紹介→他己紹介(名前、出身、NYの最高だと思うところと最悪だと思うところをペアになって話し、その後皆にペアの相手を紹介。)②そこから「自分がここに何年も住んだとして、ニューヨーカーになったと感じたとする。それはどんな瞬間か。その時に自分に起きている変化は何か」というお題でディスカッション。自分は「今の自分のよりタフになったとき、そう感じるのかもしれない」と答えた。参加者の年配の方にものすごく同意された。先生の「自分は小さい時にドミニカからニューヨークに来て今に至るまでずっとニューヨークにいる。ニューヨーカーだけどドミニク人だと思っている」という言葉が印象的だった。「それぞれの文化や習慣をもったままここにきた時、どこまでこの土地の、この国の文化を許容し、合わせるのか」というお題も出た。英語で答えるのが難しいし、なかなかに深い問いかけ。しばらく皆黙ってしまった。口火を切ったおじさんの英語はなまりが強くほぼ分からなかった。自分もあれこれ話したかったけど「いろいろ手にとってみたいタイプっす」としか答えられなかった。そこから今日はハロウィンだよーという流れになりお菓子が振る舞われ、③最後はビデオを見ながらなぞなぞとディスカッション。ビデオは非英語圏の方が病院に行く時の困難が描かれていた。
曖昧なリアクションはしないで、分からない時は分からないと伝え、聞き取れない場合は「もう少しゆっくり話してください」と言えばいい。大切なのはちゃんとやりとりがしたいという意思を伝えること。平易な言葉でものすごく重要なメッセージのこめられたビデオだ。これからの日々を過ごす上でとても大切なものを与えてもらった気がする。
イーストリバーをぼんやり眺めてからセントラルパークを横断し、Museum of Natural Historyへ。度肝を抜かれる物量。地球上のあらゆる生物、地球そのもの、宇宙までもがミクロにマクロにシームレスに語られている。超面白かった。インターンの青年がバイソンやエルクについて熱く語ってくれたのもよかった。この博物館にあるもの全てが区分けされているようで全て繋がっている。そして連綿と続いていたものを人間が壊しまくってきた歴史を見るようでもあった。ニューヨークの歴史の語り方を批評し直す展示もあった。膨大すぎて見切れず。また行こう。
夜はブルックリンに移動してTouche Amore。完璧。完璧すぎるハロウィンの夜。この瞬間に次はない。だからこれは自分の歌だと言わんばかりキッズたち。一人の歌が一人一人の歌になる時、音楽にしか起こせない革命は起きる。

11/1 朝10時からGagaを受けにGibneyへ。じっくり展開していき、言われるがまま踊りに踊った。充実感とともに寝そべる。天井の窓は曇っていた。お昼もGIBNEYでMELT。あらゆる方法でずっと筋膜をリリースする2時間。英語、全く聞き取れずとても落ち込んだ。夜は俊平さんと在外研修制度で来ている友野翔太と合流してMOMAへ。ユニクロナイト、超すごかった。ヘトヘト。やはり見切れず途中で断念。展示の内容もさることながら時代やジャンルをシームレスに繋がっていく空間のあり方、偉大な作品群の中で突然現れるお絵かきワークショップ、子供に向けて書かれた注釈なども興味深かった。ロビーではlot radioとMOMAのがコラボレーションでDJが曲をかけている。来た時にはハウスがかかっていて、帰る時には優しいフォークっぽいのがながれていた。広い空間があっていい音楽がなっていたらひとは踊る。踊るひとを眺めながらおしゃべりしたりお酒を飲んだりする人もいる。いい時間だった。とってもよかった。美術館でDJしたいっす。翔太と俊平さんと屋台のハラルフードを食べつつ、作品の感想やベンチの重要性なんかについて話した。

11/2 朝、Yoshi Amaoさんが主催されているSamurai Sword Soulのオープンクラス。 会場はブルックリンのChez Bushwick Studio。このクラスはMasaya Okuboさんに誘っていただいて知った。Masayaさんは弟の紹介。人のつながり。まさか初めての殺陣のクラスがニューヨークだとは思わなかった。恥ずかしいほど何もできず。この滞在、できることを確かめるより、できないことを集めていく60日なのかもしれない。悔しいと思うものがあれば何かしら動いていく。殺陣、日本戻ったら始めます。

11/3 コインランドリーに挑戦したのがこの日だったと思う。感想も含めて6ドル弱。靴下が若干縮んでしまった。その後、スタージナタリーの記事を書き、4時にはOpen movementというイベントに参加すべくPerformance Space new yorkへ。全く何が行われるか分からなかったけど、インスタの写真を見ていくと決めた。あまり詳しく調べない。調べたら怖気ずく。
会場はイーストビレッジのビルの4階、お茶が飲めるスペースの奥に巨大なクラブのような空間があって、既に50人ぐらいの人が静かにストレッチなどしていた。この時点ではまだ何のイベントなのかはまだ分からず。 謎の人が現れ、一人一人に耳打ちして指示を出していく。自分は「誰か一人の動きのコピーをして。ただしバレてはダメ。そして2メートル以上近づかないで」という指示だった。50人が黙々と指示通りに動いていく。集団になって動いたり、動物の鳴き声を模倣したり、寝転がったり、時間をかけてゆっくりと歩いたり、自分と同じように誰かをコピーしたり。ひたすら静かにカオスな時間が流れて謎の司会者が少しお喋り。「じゃあしばらくみんなで即興!」と言って爆音で音楽がかかる。絞られたピンクの照明の中、爆音でかかるハウスミュージック。せっかくの広い空間、自分は思いっきり走り回った。 数曲かけたところで再び司会者登場。どうやらここまでがウォームアップだったようで、言われるがまま空間の東西南北に分かれて「儀式」を作るワークショップ。チーム名を考え、大切なものを一つ用意する。それの崇め方をみんなで考え披露する。その後空間の位置も工夫して、他のチームを巻き込んだ儀式をシェアしていく。実に3年ぶりの英語でのグループワーク。相変わらず付いていくので必死だった。頭の中にアイディアはいくつもあったけど、なんて言おうか考えているうちに話はコロコロ変わっていってしまう。自分たちのチームは一冊の本を神と崇め、その本を経典とし、ランダムで選んだ文章を読み上げ、他のチームに復唱してもらうというパフォーマンスを行った。復唱しながら次第に動きが生まれ、移動式の聖歌隊(だいぶよく言っています)のようになっていくというものを披露。
思ったより上手くいったこともあり、パフォーマンスが終わった途端に喉が渇き、会場を出てロビーで一息ついていると、同じグループの女性もやってきた。引っ張っていってくれてありがとうと伝えると、適当に言ったことをみんなが喜んでくれたから上手くいったね、と言う。自分が日本から来たこと、滞在の目的、英語に難儀したことなど伝えると、彼女は最近まで高円寺に滞在していたと教えてくれた。CAVEのことも知っていた。狭いぞ、世界。話が盛り上がっているうちにワークショップは終わっていた。 アートやダンスが好きな人が昼から集まり、自由に過ごすことができる。そしてある時間になるとゲストがやってきてワークショップが行われるというのがこの日の趣旨だったらしい。
この日もやはりヘトヘトになって帰宅。明日以降の予定を考えて寝��と思う。
やるべき事、行くべき場所、会うべき人は増えていくばかり。そりゃそうだ。ニューヨークなのだから。瞬きするスピードで1週目を終えた。初日の不安が嘘のよう。

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あなたにだけは忘れてほしくなかった
アメリカ合衆国、ニューヨーク州、マンハッタン、ニューヨーク市警本部庁舎。 上級職員用のオフィスで資料を眺めていた安藤文彦警視正は顔をしかめた。彼は中年の日系アメリカ人である。頑なに日本名を固持しているのは血族主義の強かった祖父の影響だ。厳格な祖父は孫に米国風の名乗りを許さなかったためである。祖父の信念によって子供時代の文彦はいくばくかの苦労を強いられた。 通常、彼は『ジャック』と呼ばれているが、その由来を知る者は少ない。自らも話したがらなかった。 文彦は暴力を伴う場合の少ない知的犯罪、いわゆるホワイトカラー犯罪を除く、重大犯罪を扱う部署を横断的に統括している。最近、彼を悩ませているのは、ある種の雑音であった。 現在は文彦が犯罪現場へ出る機会はないに等しい。彼の主たる業務は外部機関を含む各部署の調整および、統計分析を基として行う未解決事件への再検証の試みであった。文彦の懸念は発見場所も年代も異なる数件の行方不明者の奇妙な類似である。類似といっても文彦の勘働きに過ぎず、共通項目を特定できているわけではなかった。ただ彼は何か得体の知れない事柄が進行している気配のようなものを感じ取っていた���である。 そして、彼にはもうひとつ、プライベートな懸念事項があった。十六才になる姪の安藤ヒナタだ。
その日は朝から快晴、空気は乾いていた。夏も最中の日差しは肌を刺すようだが、日陰に入ると寒いほどである。自宅のダイニングルームでアイスティーを口にしながら安藤ヒナタは決心した。今日という日にすべてをやり遂げ、この世界から逃げ出す。素晴らしい考えだと思い、ヒナタは微笑んだ。 高校という場所は格差社会の縮図であり、マッチョイズムの巣窟でもある。ヒナタは入学早々、この猿山から滑り落ちた。見えない壁が張り巡らされる。彼女はクラスメイトの集う教室の中で完全に孤立した。 原因は何だっただろうか。ヒナタのスクールバッグやスニーカーは他の生徒よりも目立っていたかもしれない。アジア系の容姿は、彼らの目に異質と映ったのかも知れなかった。 夏休みの前日、ヒナタは階段の中途から突き飛ばされる。肩と背中を押され、気が付いた時には一階の踊り場に強か膝を打ちつけていた。 「大丈夫?」 声だけかけて去っていく背中を呆然と見送る。ヒナタは教室に戻り、そのまま帰宅した。 擦過傷と打撲の痕跡が残る膝と掌は、まだ痛む。だが、傷口は赤黒く乾燥して皮膚は修復を開始していた。もともと大した傷ではない。昨夜、伯父夫婦と夕食をともにした際もヒナタは伯母の得意料理であるポークチョップを食べ、三人で和やかに過ごした。 高校でのいざこざを話して何になるだろう。ヒナタは飲み終えたグラスを食洗器に放り込み、自室へ引っ込んだ。
ヒナタの母親はシングルマザーである。出産の苦難に耐え切れず、息を引き取った。子供に恵まれなかった伯父と伯母はヒナタを養子に迎え、経済的な負担をものともせず、彼女を大学に行かせるつもりでいる。それを思うと申し訳ない限りだが、これから続くであろう高校の三年間はヒナタにとって永遠に等しかった。 クローゼットから衣服を抜き出して並べる。死装束だ。慎重に選ぶ必要がある。等身大の鏡の前で次々と試着した。ワンピースの裾に払われ、細々としたものがサイドボードから床に散らばる。悪態を吐きながら拾い集めていたヒナタの手が止まった。横倒しになった木製の箱を掌で包む。母親の僅かな遺品の中からヒナタが選んだオルゴールだった。 最初から壊れていたから、金属の筒の突起が奏でていた曲��見当もつかない。ヒナタはオルゴールの底を外した。数枚の便箋と写真が納まっている。写真には白のワイシャツにスラックス姿の青年と紺色のワンピースを着た母親が映っていた。便箋の筆跡は美しい。『ブライアン・オブライエン』の署名と日付、母親の妊娠の原因が自分にあるのではないかという懸念と母親と子供に対する執着の意思が明確に示されていた。手紙にある日付と母親がヒナタを妊娠していた時期は一致している。 なぜ母は父を斥けたのだろうか。それとも、この男は父ではないのか。ヒナタは苛立ち、写真の青年を睨んだ。 中学へ進み、スマートフォンを与えられたヒナタは男の氏名を検索する。同姓同名の並ぶ中、フェイスブックに該当する人物を見つけた。彼は現在、大学の教職に就いており、専門分野は精神病理学とある。多数の論文、著作を世に送り出していた。 ヒナタは図書館の書棚から彼の書籍を片っ端から抜き出す。だが、学術書を読むには基礎教養が必要だ。思想、哲学、近代史、統計を理解するための数学を公共の知の宮殿が彼女に提供する。 ヒナタは支度を終え、バスルームの洗面台にある戸棚を開いた。医薬品のプラスチックケースが乱立している。その中から伯母の抗うつ剤の蓋を掴み、容器を傾けて錠剤を掌に滑り出させた。口へ放り込み、ペットボトルの水を飲み込む。栄養補助剤を抗うつ剤の容器に補充してから戸棚へ戻した。 今日一日、いや数時間でもいい。ヒナタは最高の自分でいたかった。
ロングアイランドの住宅地にブライアン・オブライエンの邸宅は存在していた。富裕層の住居が集中している地域の常であるが、ヒナタは脇を殊更ゆっくりと走行している警察車両をやり過ごす。監視カメラの装備された鉄柵の門の前に佇んだ。 呼び鈴を押そうかと迷っていたヒナタの耳に唸り声が響く。見れば、門を挟んで体長一メータ弱のドーベルマンと対峙していた。今にも飛び掛かってきそうな勢いである。ヒナタは思わず背後へ退いた。 「ケンダル!」 奥から出てきた男の声を聞いた途端、犬は唸るのを止める。スーツを着た男の顔はブライアン・オブライエン、その人だった。 「サインしてください!」 鞄から取り出した彼の著作を抱え、ヒナタは精一杯の声を張り上げる。 「いいけど。これ、父さんの本だよね?」 男は門を開錠し、ヒナタを邸内に招き入れた。
男はキーラン・オブライエン、ブライアンの息子だと名乗った。彼の容姿は写真の青年と似通っている。従って現在、五十がらみのブライアンであるはずがなかった。ヒナタは自らの不明を恥じる。 「すみません」 ス��イン人の使用人が運んできた陶磁器のコーヒーカップを持ち上げながらヒナタはキーランに詫びた。 「これを飲んだら帰るから」 広大な居間に知らない男と二人きりで座している事実に気が滅入る。その上、父親のブライアンは留守だと言うのであるから、もうこの家に用はなかった。 「どうして?」 「だって、出かけるところだよね?」 ヒナタはキーランのスーツを訝し気に見やる。 「別にかまわない。どうせ時間通りに来たことなんかないんだ」 キーランは初対面のヒナタを無遠慮に眺めていた。苛立ち始めたヒナタもキーランを見据える。 ヒナタはおよそコンプレックスとは無縁のキーランの容姿と態度から彼のパーソナリティを分析した。まず、彼は他者に対してまったく物怖じしない。これほど自分に自信があれば、他者に無関心であるのが普通だ。にも拘らず、ヒナタに関心を寄せているのは、何故か。 ヒナタは醜い女ではないが、これと取り上げるような魅力を持っているわけでもなかった。では、彼は何を見ているのか。若くて容姿に恵まれた人間が夢中になるもの、それは自分自身だ。おそらくキーランは他者の称賛の念を反射として受け取り、自己を満足させているに違いない。 「私を見ても無駄。本質なんかないから」 瞬きしてキーランは首を傾げた。 「俺に実存主義の講義を?」 「思想はニーチェから入ってるけど、そうじゃなくて事実を言ってる。あなたみたいに自己愛の強いタイプにとって他者は鏡でしかない。覗き込んでも自分が見えるだけ。光の反射があるだけ」 キーランは吹き出す。 「自己愛? そうか。父さんのファンなのを忘れてたよ。俺を精神分析してるのか」 笑いの納まらないキーランの足元へドーベルマンが寄ってくる。 「ケンダル。彼女を覚えるんだ。もう吠えたり、唸ったりすることは許さない」 キーランの指示に従い、ケンダルはヒナタのほうへ近づいてきた。断耳されたドーベルマンの風貌は鋭い。ヒナタは大型犬を間近にして体が強張ってしまった。 「大丈夫。掌の匂いを嗅がせて。きみが苛立つとケンダルも緊張する」 深呼吸してヒナタはケンダルに手を差し出す。ケンダルは礼儀正しくヒナタの掌を嗅いでいた。落ち着いてみれば、大きいだけで犬は犬である。 ヒナタはケンダルの耳の後ろから背中をゆっくりと撫でた。やはりケンダルはおとなしくしている。門前で威嚇していた犬とは思えないほど従順だ。 「これは?」 いつの間にか傍に立っていたキーランがヒナタの手を取る。擦過傷と打撲で変色した掌を見ていた。 「別に」 「こっちは? 誰にやられた?」 キーランは、手を引っ込めたヒナタのワンピースの裾を摘まんで持ち上げる。まるでテーブルクロスでもめくる仕草だ。ヒナタの膝を彩っている緑色の痣と赤黒く凝固した血液の層が露わになる。ヒナタは青褪めた。他人の家の居間に男と二人きりでいるという恐怖に舌が凍りつく。 「もしきみが『仕返ししろ』と命じてくれたら俺は、どんな人間でも這いつくばらせる。生まれてきたことを後悔させる」 キーランの顔に浮かんでいたのは怒りだった。琥珀色の瞳の縁が金色に輝いている。落日の太陽のようだ。息を吸い込む余裕を得たヒナタは掠れた声で言葉を返す。 「『悪事を行われた者は悪事で復讐する』わけ?」 「オーデン? 詩を読むの?」 依然として表情は硬かったが、キーランの顔から怒りは消えていた。 「うん。伯父さんが誕生日にくれた」 キーランはヒナタのすぐ隣に腰を下ろす。しかし、ヒナタは咎めなかった。 「復讐っていけないことだよ。伯父さんは普通の人がそんなことをしなくていいように法律や警察があるんだって言ってた」 W・H・オーデンの『一九三九年九月一日』はナチスドイツによるポーランド侵攻を告発した詩である。他国の争乱と無関心を決め込む周囲の人々に対する憤りをうたったものであり、彼の詩は言葉によるゲルニカだ。 「だが、オーデンは、こうも言ってる。『我々は愛し合うか死ぬかだ』」 呼び出し音が響き、キーランは懐からスマートフォンを取り出す。 「違う。まだ家だけど」 電話の相手に生返事していた。 「それより、余分に席を取れない? 紹介したい人がいるから」 ヒナタはキーランを窺う。 「うん、お願い」 通話を切ったキーランはヒナタに笑いかけた。 「出よう。父さんが待ってる」 戸惑っているヒナタの肩を抱いて立たせる。振り払おうとした時には既にキーランの手は離れていた。
キーラン・オブライエンには様々な特質がある。体格に恵まれた容姿、優れた知性、外科医としての将来を嘱望されていること等々、枚挙に暇がなかった。だが、それらは些末に過ぎない。キーランを形作っている最も重要な性質は彼の殺人衝動だ。 この傾向は幼い頃からキーランの行動に顕著に表れている。小動物の殺害と解剖に始まり、次第に大型動物の狩猟に手を染めるが、それでは彼の欲求は収まらなかった。 対象が人間でなければならなかったからだ。 キーランの傾向にいち早く気付いていたブライアン・オブライエンは彼を教唆した。具体的には犯行対象を『悪』に限定したのである。ブライアンは『善を為せ』とキーランに囁いた。彼の衝動を沈め、社会から悪を排除する。福祉の一環であると説いたのだ。これに従い、彼は日々、使命を果たしてる。人体の生体解剖によって嗜好を満たし、善を為していた。 「どこに行くの?」 ヒナタの質問には答えず、キーランはタクシーの運転手にホテルの名前を告げる。 「行けないよ!」 「どうして?」 ヒナタはお気に入りではあるが、量販店のワンピースを指差した。 「よく似合ってる。綺麗だよ」 高価なスーツにネクタイ、カフスまでつけた優男��言われたくない。話しても無駄だと悟り、ヒナタはキーランを睨むに留めた。考えてみれば、ブライアン・オブライエンへの面会こそ重要課題である。一流ホテルの従業員の悪癖であるところの客を値踏みする流儀について今は不問に付そうと決めた。 「本当にお父さんに似てるよね?」 「俺? でも、血は繋がってない。養子だよ」 キーランの答えにヒナタは目を丸くする。 「嘘だ。そっくりじゃない」 「DNAは違う」 「そんなのネットになかったけど」 ヒナタはスマートフォンを鞄から取り出した。 「公表はしてない」 「じゃあ、なんで話したの?」 「きみと仲良くなりたいから」 開いた口が塞がらない。 「冗談?」 「信じないのか。参ったな。それなら、向こうで父さんに確かめればいい」 キーランはシートに背中を預け、目を閉じた。 「少し眠る。着いたら教えて」 本当に寝息を立てている。ヒナタはスマートフォンに目を落とした。
ヒナタは肩に触れられて目を覚ました。 「着いたよ」 ヒナタの背中に手を当てキーランは彼女を車から連れ出した。フロントを抜け、エレベーターへ乗り込む。レストランに入っても警備が追いかけてこないところを見ると売春婦だとは思われていないようだ。ヒナタは脳内のホテル番付に星をつける。 「女性とは思わなかった。これは、うれしい驚きだ」 テラスを占有していたブライアン・オブライエンは立ち上がってヒナタを迎えた。写真では茶色だった髪は退色し、白髪混じりである。オールバックに整えているだけで染色はしていなかった。三つ揃いのスーツにネクタイ、機械式の腕時計には一財産が注ぎ込まれているだろう。デスクワークが主体にしては硬そうな指に結婚指輪が光っていたが、彼の持ち物とは思えないほど粗雑な造りだ。アッパークラスの体現のような男が配偶者となる相手に贈る品として相応しくない。 「はじめまして」 自分の声に安堵しながらヒナタは席に着いた。 「彼女は父さんのファンなんだ」 ヒナタは慌てて鞄から本を取り出す。 「サインしてください」 本を受け取ったブライアンは微笑んだ。 「喜んで。では、お名前を伺えるかな?」 「安藤ヒナタです」 老眼鏡を懐から抜いたブライアンはヒナタに顔を向ける。 「スペルは?」 答える間もブライアンはヒナタに目を据えたままだ。灰青色の瞳は、それが当然だとでも言うように遠慮��ない。血の繋がりがどうであれ、ブライアンとキーランはそっくりだとヒナタは思った。 ようやく本に目を落とし、ブライアンは結婚指輪の嵌った左手で万年筆を滑らせる。 「これでいいかな?」 続いてブライアンは『ヒナタ』と口にした。ヒナタは父親の声が自分の名前を呼んだのだと思う。その事実に打ちのめされた。涙があふれ出し、どうすることもできない。声を上げて泣き出した。だが、それだけではヒナタの気は済まない。二人の前に日頃の鬱憤を洗いざらい吐き出していた。 「かわいそうに。こんなに若い女性が涙を流すほど人生は過酷なのか」 ブライアンは嘆く。驚いたウェイターが近付いてくるのをキーランが手を振って追い払った。ブライアンは席を立ち、ヒナタの背中をさする。イニシャルの縫い取られたリネンのハンカチを差し出した。 「トイレ」 宣言してヒナタはテラスを出ていく。 「おそらくだが、向精神薬の副作用だな」 父親の言葉にキーランは頷いた。 「彼女。大丈夫?」 「服用量による。まあ、あれだけ泣いてトイレだ。ほとんどが体外に排出されているだろう」 「でも、攻撃的で独善的なのは薬のせいじゃない」 ブライアンはテーブルに落ちていたヒナタの髪を払い除ける。 「もちろんだ。彼女の気質だよ。しかし、同じ学校の生徒が気の毒になる。家畜の群れに肉食獣が紛れ込んでみろ。彼らが騒ぐのは当然だ」 呆れた仕草でブライアンは頭を振った。 「ルアンとファンバーを呼びなさい。牧羊犬が必要だ。家畜を黙らせる。だが、友情は必要ない。ヒナタの孤立は、このままでいい。彼女と親しくなりたい」 「わかった。俺は?」 「おまえの出番は、まだだ。キーラン」 キーランは暮れ始めている空に目をやる。 「ここ。誰の紹介?」 「アルバート・ソッチ。デザートが絶品だと言ってた。最近、パテシエが変わったらしい」 「警察委員の? 食事は?」 ブライアンも時計のクリスタルガラスを覗いた。 「何も言ってなかったな」 戻ってきたヒナタの姿を見つけたキーランはウェイターに向かい指示を出す。 「じゃあ、試す必要はないね。デザートだけでいい」 ブライアンは頷いた。
「ハンカチは洗って返すから」 ヒナタとキーランは庁舎の並ぶ官庁街を歩いていた。 「捨てれば? 父さんは気にしない」 面喰ったヒナタはキーランを窺う。ヒナタは自分の失態について思うところがないわけではなかった。ブライアンとキーランに愛想をつかされても文句は言えない。二人の前で吐瀉したも同じだからだ。言い訳はできない。だが、ヒナタは、まだ目的を果たしていないのだ。 ブライアン・オブライエンの実子だと確認できない状態では自死できない。 「それより、これ」 キーランはヒナタの手を取り、掌に鍵を載せた。 「何?」 「家の鍵。父さんも俺もきみのことを家族だと思ってる。いつでも遊びに来ていいよ」 瞬きしているヒナタにキーランは言葉を続ける。 「休暇の間は俺がいるから。もし俺も父さんもいなかったとしてもケンダルが 相手をしてくれる」 「本当? 散歩させてもいい? でも、ケンダルは素気なかったな。私のこと好きじゃないかも」 「俺がいたから遠慮してたんだ。二人きりの時は、もっと親密だ」 ヒナタは吹き出した。 「犬なのに二人?」 「ケンダルも家族だ。俺にとっては」 相変わらずキーランはヒナタを見ている。ヒナタは眉を吊り上げた。 「言ったよね? 何もないって」 「違う。俺はきみを見てる。ヒナタ」 街灯の光がキーランの瞳に映っている。 「だったら、私の味方をしてくれる? さっき家族って言ってたよね?」 「言った」 「でも、あなたはブライアンに逆らえるの? 兄さん」 キーランは驚いた顔になった。 「きみは、まるでガラガラヘビだ」 さきほどの鍵をヒナタはキーランの目の前で振る。 「私が持ってていいの? エデンの園に忍び込もうとしている蛇かもしれない」 「かまわない。だけど、あそこに知恵の実があるかな? もしあるとしたら、きみと食べたい」 「蛇とイブ���一人二役だね」 ヒナタは入り口がゲートになったアパートを指差した。 「ここが私の家。さよならのキスをすべきかな?」 「ヒナタのしたいことを」 二人は互いの体に手を回す。キスを交わした。
官庁街の市警本部庁舎では安藤文彦が部下から報告を受けていた。 「ブライアン・オブライエン?」 クリスティナ・ヨンぺルト・黒田は文彦が警部補として現場指揮を行っていた時分からの部下である。移民だったスペイン人の父親と日系アメリカ人の母親という出自を持っていた。 「警察委員のアルバート・ソッチの推薦だから本部長も乗り気みたい」 文彦はクリスティナの持ってきた資料に目をやる。 「警察委員の肝入りなら従う他ないな」 ブライアン・オブライエン教授の専門は精神病理学であるが、応用心理学、主に犯罪心理学に造詣が深く、いくつかの論文は文彦も読んだ覚えがあった。 「どうせ書類にサインさせるだけだし誰でもかまわない?」 「そういう認識は表に出すな。象牙の塔の住人だ。無暗に彼のプライドを刺激しないでくれ」 クリスティナは肩をすくめる。 「新任されたばかりで本部長は大張り切り。大丈夫。失礼なのは私だけ。他の部下はアッパークラスのハウスワイフよりも上品だから。どんな男でも、その気にさせる」 「クリスティナ」 軽口を咎めた文彦にクリスティナは吹き出した。 「その筆頭があなた、警視正ですよ、ジャック。マナースクールを出たてのお嬢さんみたい。財政の健全化をアピールするために部署の切り捨てを行うのが普通なのに新しくチームを立ち上げさせた。本部長をどうやって口説き落としたの?」 「きみは信じないだろうが、向こうから話があった。私も驚いている。本部長は現場の改革に熱意を持って取り組んでいるんだろう」 「熱意のお陰で予算が下りた。有効活用しないと」 文彦は顔を引き締めた。 「浮かれている場合じゃないぞ。これから、きみには負担をかけることになる。私は現場では、ほとんど動けない。走れないし、射撃も覚束ない」 右足の膝を文彦が叩く。あれ以来、まともに動かない足だ。 「射撃のスコアは基準をクリアしていたようだけど?」 「訓練場と現場は違う。即応できない」 あの時、夜の森の闇の中、懐中電灯の光だけが行く手を照らしていた。何かにぶつかり、懐中電灯を落とした瞬間、右手の動脈を切り裂かれる。痛みに耐え切れず、銃が手から滑り落ちた。正確で緻密なナイフの軌跡、相手はおそらく暗視ゴーグルを使用していたのだろう。流れる血を止めようと文彦は左手で手首を圧迫した。馬乗りになってきた相手のナイフが腹に差し込まれる感触と、その後に襲ってきた苦痛を表す言葉を文彦は知らない。相手はナイフを刺したまま刃の方向を変え、文彦の腹を横に薙いだ。 当時、『切り裂き魔』と呼ばれていた殺人者は、わざわざ文彦を国道まで引きずる。彼の頬を叩いて正気づかせた後、スマートフォンを顔の��に据えた。画面にメッセージがタイピングされている。 「きみは悪党ではない。間違えた」 俯せに倒れている文彦の頭を右手で押さえつけ、男はスマートフォンを懐に納める。その時、一瞬だけ男の指に光が見えたが、結婚指輪だとわかったのは、ずいぶん経ってからである。道路に文彦を放置して男は姿を消した。 どうして、あの場所は、あんなに暗かったのだろうか。 文彦は事ある毎に思い返した。彼の足に不具合が生じたのは、ひとえに己の過信の結果に他ならない。ジャックと文彦を最初に名付けた妻の気持ちを彼は無にした。世界で最も有名な殺人者の名で夫を呼ぶことで凶悪犯を追跡する文彦に自戒するよう警告したのである。 姪のヒナタに贈った詩集は自分自身への諌言でもあると文彦は思った。法の正義を掲げ、司法を体現してきた彼が復讐に手を染めることは許されない。犯罪者は正式な手続きを以って裁きの場に引きずり出されるべきだ。 「ジャック。あなたは事件を俯瞰して分析していればいい。身長六フィートの制服警官を顎で使う仕事は私がやる。ただひとつだけ言わせて。本部長にはフェンタニルの使用を黙っていたほうがいいと思う。たぶん良い顔はしない」 フェンタニルは、文彦が痛み止めに使用している薬用モルヒネである。 「お帰りなさい、ジャック」 クリスティナが背筋を正して敬礼する。文彦は答礼を返した。
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【キャプトニ】フィランソロピスト

ピクシブに投稿済みのキャプトニ小説です。
MCU設定に夢と希望と自設定を上書きした慈善家トニー。WS前だけどキャップがタワーに住んでます。付き合ってます。
ピクシブからのコピペなので誤字脱字ご容赦ください。気づいたら直します。
誤字脱字の指摘・コメントは大歓迎です。( Ask me anything!からどうぞ)
チャリティーパーティーから帰ってきたトニーの機嫌は悪かった。スティーブは彼のために、知っている中で最も高価なスコッチウイスキーを、以前彼に見せられたyou tubeの動画通りのやり方で水割りにして手渡してやったが、受け取ってすぐに上品にあおられたグラスは大理石のバーカウンターに叩きつけられ、目玉の飛び出るくらい高価な琥珀色のアルコール飲料は、グラスの中で波打って無残にこぼれた。 「あのちんけな自称軍事評論家め!」 スティーブは、トニーが何に対して怒っているのか見極めるまで口を出さないでおこうと決めた。彼が摩天楼を見下ろす窓ガラスの前でイライラと足を踏み鳴らすのを、その後ろから黙って見つめる。 トニーは一通り怪し気なコラムニストの素性に文句を言い立て、同時に手元の情報端末で何かをハッキングしているようだった。「ほーらやっぱり。ベトナム従軍経験があるなんて嘘っぱちじゃないか。傭兵だと? 笑わせてくれる。それで僕の地雷除去システムを批判するなんて――」 左手で強化ガラスにホログラムのような画面を出現させ、右手ではものすごい勢いで親指をタップさせながら、おそらく人ひとりの人生を破滅させようとしているわりには楽しそうな笑みを浮かべてトニーは言った。「これで全世界に捏造コラムニストの正体が明かされたぞ! まあ、誰かがこいつに興味があったらニュースになるだろう」 「穏やかじゃないチャリティーだったようだな」 少しトニーの気が晴れたのを見計らって、スティーブはようやく彼の肩に触れた。 「キャプテン、穏やかなチャリティパーティーなんてないんだ。カメラの回ってないところじゃ慈善家たちは仮面を被ろうともしない。同類ばかりだからね」 トニーは振り返ってスティーブの頬にキスをすると、つくづくそういった人種と関わるのが嫌になったとため息をついた。「何が嫌だって、自分もそういう一人だと実感することがさ」 「それは違うだろう」 「そうか?」 トニーはスティーブの青い目を見上げてにやりと笑った。「僕が人格者として有名じゃないってことは君もご指摘のとおりだろ?」 「第一印象が最悪だったのは、僕のせいかい」 これくらいの当てこすりにはだいぶ慣れてきたので、スティーブは涼しい顔で返した。恋人がもっと悪びれると思っていたのか、トニーはつまらなそうに口をとがらせる。「そりゃそうさ。君が悪い。君は僕に興味なさそうだったし、趣味も好きな食べ物も年齢も聞かなかったじゃないか。友人の息子に会ったらまずは”いくつになった?”と聞くのがお決まりだろ。なのに君ときたらジェットに乗るなりむっつり黙り込んで」 「ごめん」 トニーの長ったらしい皮肉を止めるには、素直に謝るか、少々強引にキスしてしまうか、の二通りくらいしか選択肢がなかった。キスは時に仲直り以上の素晴らしい効果を与えてくれるが、誤魔化されたとトニーが怒る可能性もあったので、ここは素直に謝っておくことにした。 それに、”それは違う”と言ったのは本心だ。「君は自分が慈善家だと、まるで偽善者のようにいうけれど、僕はそうは思わない――君が人を助けたいと思うのは、君が優しいからだ」 「僕が優しい?」 「そうだ」 「うーん」 トニーは自分でもうまく表情を見つけられないようだった。スティーブにはそれが照れているのだとわかった。よく回る口で自分自身の美徳すら煙に巻いてしまう前に、今度こそスティーブは彼の唇をふさいでしまうことにした。
◇
結局、昨夜トニーが何に怒っていたのか、聞かずじまいだった。トニーには――彼の感情の表現には独特の癖があって、態度で示していることと、内心で葛藤していることがかけ離れていることさえある。彼が怒っているように見えても、その実、怒りの対象とは全く別の事がらについて心配していたり、計算高く謀略を巡らせていたりするのだ。 彼が何かを計画しているのなら、それを理解するのは自分には不可能だ。スティーブはとっくに、トニーが天才であって、自分はそうではないことを認めていた。もちろん軍事的なこと――宇宙からの敵に対する防備であるとか、敵地に奇襲するさいの作戦、武器や兵の配置、それらは自分の専門であるからトニーを相手に遅れをとることはない。それに、一夜にして熱核反応物理学者にはなれないだろうが、本腰を入れて学べばどんな分野だって”それなりに”モノにすることは出来る。超人血清によって強化されたのは肉体だけではない。しかし、そういうことがあってもなお、トニーの考えることは次元が違っていて、スティーブは早々に理解を諦めてしまうのだ。 べつにネガティブなことではないと思う。トニーが何をしようとも、結果は共に受け入れる。その覚悟があるだけだ。 とはいえ、昨夜のようにわざとらしく怒るトニーは珍しい。八つ当たりのように”自称軍事評論家”とやらの評判をめちゃめちゃにしたようだが、パーティーでちょっと嫌味を言われただけであそこまでの報復はしないだろう(断言はできないが)。彼への反感を隠れ蓑に複雑な計算式を脳内で展開していたのかもしれないし、酔っていたようだから、本当にただの”大げさな怒り”だったのかもしれない――スティーブは気になったが、翌日になってまで追及しようとは思わなかった。特に、隣にトニーが寝ていて、ジャービスによって完璧に計算された角度で開かれたブラインドカーテンから、清々しい秋の陽光が差し込み、その日差しがトニーの丸みを帯びた肩と長い睫毛の先を撫でるように照らしているのを何の遠慮も邪魔もなく見つめていられる、今日みたいな朝は。 こんな朝は、キスから始まるべきだ。甘ったるく、無駄に時間を消費する、意味だとか難しい理由なんかこれっぽっちもないただのキス。 果たしてスティーブの唇がやわらかな口��げに触れたとき、トニーのはしばみ色の瞳が開かれた。 ……ああ、美しいな。 キスをしたときにはもうトニーの目は閉じられていたが、スティーブはもっとその瞳を見ていたかった。 トニー・スタークの瞳はブラウンだということになっている。強い日差しがあるとき、ごく近くにいるとわかる、彼の瞳はブラウンに緑かかった、透明水彩で描かれたグラスのように澄んだはしばみ色に見える。 彼のこの瞳を見たことのある人間は、スティーブ一人というわけではないだろう――ペッパー・ポッツ、有名無名のモデルや俳優たち、美貌の記者に才気ある同業者――きっと彼の過去に通り過ぎていった何人もの男女が見てきたことだろう。マリブにあった彼の自宅の寝室は、それはそれは大きな窓があり、気持ちの良い朝日が差し込んだときく。 けれど彼らのうち誰も、自分ほどこの瞳に魅入られ、囚われて、溺れた者はいないだろう。でなければどうして彼らは、今、トニーの側にいないのだ? どうして彼から離れて生きていられるのだ。 「……おはよう、キャップ」 「おはようトニー」 最後に鼻の先に口付けてからおたがいにぎこちない挨拶をする。この瞬間、トニーが少し緊張するように感じられるのは、スティーブの勘違いではないと思うのだが、その理由も未だ聞けずにいる。 スティーブは、こと仕事となれば作戦や戦略のささいな矛盾や装備の不備に気がつくし、気がついたものには偏執的なほど徹底して改善を要求するのだが、なぜか私生活ではそんな気になれないのだった。目の前に愛しい恋人がいる。ただそれだけで、心の空腹が満たされ、他はすべて有象無象に感じられる。”恋に浮わついた”典型的な症状といえるが、自覚していて治す気もない。むしろ、欠けていた部分が充実し、より完全な状態になったような気さえする。ならば他に何を案じることがある? 快楽主義者のようでいてじつは悲観的なほどリアリストであるトニーとは真逆の性質といえた。 トニーが先にシャワーを浴びているあいだ、スティーブはキッチンで湯を沸かし、コーヒーを淹れる。スティーブと付き合うようになってから、いくつかのトニーの不摂生については改善されたが、起床後にコーヒーをまるで燃料のようにがぶ飲みする癖は変わらなかった。彼の天災のような頭脳には必要不可欠のものと思って今では諦めている。甘党のくせに砂糖もミルクも入れないのが、好みなのか、ただものぐさなだけかもスティーブは知らない。いつからかスティーブがティースプーンに一杯ハチミツを垂らすようになっても、彼は何も言わずにそれを飲んでいるので、実はカフェインが入っていれば味はどうでもいいのかもしれない。 シャワーから上がってきたトニーがちゃんと服を着ているのを確認して(彼はたまにごく自然に裸でキッチンやタワーの共有スペースにご登場することがある、たいていは無人か、スティーブやバナーなど親しい同性の人間しか居ないときに限ってだが)、スティーブもバスルームに向かった。着替えを済ませてキッチンに戻ると、トニーは何杯目かわからないブラック・コーヒーを飲んでいたが、スティーブが用意したバナナマフィンにも手をつけた形跡があったのでほっとする。ほうっておくとまともな固形食をとらない癖もなかなか直らない。スティーブはエプロンをつけてカウンターの中に入り、改めて朝食の用意を始める。十二インチのフライパンに卵を六つ割り入れてふたをし、買い置きのバゲットとクロワッサンを電子オーブンに適当に放り込んでセットする。卵をひっくり返すのは危険だということを第二次世界大戦前から知っていたので、片面焼きのまま一枚はトニーの皿に、残りは自分の皿に乗せる。半分に割ったりんご(もちろんナイフを使う。手で割ってみせたときのトニーの表情が微妙だったため)を添えてトニーの前に差し出すと、彼は背筋を伸ばして素直にそれを食べ始めた。バゲットはただ皿に置いただけでは食べないので手渡してやる。朝食時のふるまいについては今までに散々口論してきたからか、諦めの境地に達したらしいトニーはもはや無抵抗だ。 特に料理が好きだとか得意だとかいうわけでもないのだが、スティーブはこの時間を愛していた。トニーが健康的な朝の生活を実行していると目の前で確認することが出来るし、おとなしく従順なトニーというのはこの時間にしかお目にかかれない(夜だって、彼はとても”従順”とはいえない)。秘匿情報ファイルであろうとマグカップだろうと他人からの手渡しを嫌う彼が、自分の手から受け取ったクロワッサンを黙って食べる姿は、人になつかない猫を慣れさせたような甘美な達成感をスティーブに与えた。 「今日の予定は?」 スティーブが自分の分の皿を持ってカウンターの内側に座る。斜め向かいのトニーは電脳執事に問い合わせることなく、カウンターに置いたスマートフォンを自分で操作してスケジュールを確認した。口にものが入っているから音声操作をしないようだった。ときどき妙にマナーに正しいから面食らうことがある。朝の短時間できれいに整えられたトニーの髭が、彼が咀嚼するたびにくにくに動くのを見て、スティーブは唐突にたまらない気分になった。 「僕は――S.H.I.E.L.D.の午前会議に呼ばれてるんだ。食べ終わったら出発するよ。それから午後は空いてるけど、君がもし良かったら……」 トニーの口が開くのを待つあいだ、彼の口元を凝視していては”健全な朝の活動”に支障を来しそうだったので、スティーブは自分の予定を先に話し始めた。「……良かったら、美術館にでも行かないか。グッケンハイムで面白そうな写真展がやってるんだ。東アジアの市場のストリートチルドレンたちを主題にした企画で――」 トニーはスマートフォンの上に出現した青白いホログラムから、ちらっとスティーブに視線を寄越して”呆れた”顔をした。よっぽど硬いバゲットだったの��、ようやく口の中のものを飲み込んだ彼は、今度は行儀悪く手に持ったフォークをスティーブに向けて揺らしながら言った。「デートはいいが、そんな辛気臭い企画展なんかごめんだ」 「辛気臭いって、君、いつだったか、そういう子供たちの救済のためのチャリティーを主催したこともあったろ」 「ああ、僕は慈善家だからね。現地視察にも行ったし、NPOのボランティアどもとお茶もしたし、写真展だって行ったことがある、カメラが回ってるところでな」 フォークをくるりと回してバナナマフィンの残りに刺す。「何が悲しくて恋人と路上生活者の写真を見に行かなくちゃならない? ”世界の今”を考えるのか? わざわざ自分の無力さを痛感しに行くなんていやだね。君と腕を組んでスロープをぶらぶら下るのは、まあそそられるけど」 「まったく、君ってやつは……」 スティーブは苦笑いするしかなかった。「じゃあ、ただスロープをぶらぶら下るだけでいいよ。ピカソが入れ替えられたみたいだ。デ・キリコのコレクションも増えたっていうし、展示されてるなら見てみたい。噂じゃどこかの富豪が画家の恋人のために、イタリアのコレクターから買い付けて美術館に寄付したって」 「きみもすっかり情報機関の人間だな」 「まあね。絵が好きな富豪は君以外にもいるんだなって思った」 「君は間違ってる。僕は”超・大”富豪だし、べつに絵は好きで集めてるんじゃない。税金対策だよ。あと、火事になったとき、三億ドルを抱えるより、丸めた布を持って逃げるほうが効率いいだろ?」 「呆れた」 「絵なんて紙幣の代わりさ。高値がつくのは悪い連中が多い証拠だな」 ところで、とトニーはスマートフォンを操作し、ホログラムを解除した。「せっかくのお誘いはありがたいが、残念ながら僕は今日忙しいんだ。社の開発部のやつらが放り投げた……洋上風力発電の……あれやこれやを解析しなきゃならないんでね。美術館デートはまた今度にしてくれ。その辛気臭い企画展が終わった頃に」 「そうか、残念だよ」 もちろんスティーブは落胆なんてしなかった。トニーが忙しいのは分かっているし、それはスティーブが口を出せる範囲の事ではない。ふたりのスケジュールが完全に一致するのは、地球の危機が訪れた時くらいだ。それでもこうして一緒の屋根の下で暮らしているのだから、たかが一緒に美術館に行けないくらいで残念がったりはしない。ごくふつうの恋人たちのように、夕暮れのマンハッタンを、流行りのコーヒーショップのタンブラーを片手に、隣り合って歩けないからといって、大企業のオーナーにしてヒーローである恋人を前に落胆した顔を見せるなんてことはしない。 「スティーブ、すねるなよ」 しかしこの(肉体的年齢では)年上の恋人は、敏い上にデリカシーがない。多忙な恋人の負担になるまいと奮闘するスティーブの内心などお見通しとばかりに、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべてからかうのだ。「君だってこの前、僕の誘いを断ったろ? しかも他の男と会うとかで」 「あれはフューリーに呼び出されて……」 「ニック・フューリーは男だ! S.H.I.E.L.D.の戦術訓練なんて急に予定に入るか? あいつは僕が気に入らないんだ、君に悪影響を与えるとかで」 「君に良い影響を与えてるとは思えないのかな」 スティーブはマフィンに刺さったフォークでそれを一口大に切り分け、トニーの口元に運んでやった。呆気にとられたような顔をするトニーに、首をかしげてにっこりと微笑む。 トニーはしてやられたとばかりに、さっと頬を赤くした。 「この、自信家め」 「黙って全部食べるんだ、元プレイボーイ」 朝のこの時間、トニーはとても従順な恋人だ。
◇
トニーに借りたヘリでS.H.I.E.L.D.本部に到着すると(それはもはやキャプテン・アメリカ仕様にトニーによってカスタムされ、「なんなら塗装し直そうか? アイアンパトリオットとお揃いの柄に?」と提言されたが、スティーブは操縦システム以外の改装を丁重に断った)、屋内に入るやいなや盛大な警戒音がスティーブを迎えた。技術スタッフとおぼしき制服を来た人間が、地下に向かって駆けていく。どうやら物理的な攻撃を受けているわけではなさそうだったので、スティーブは足を速めながらも冷静に長官室へと向かった。 長官室の続きのモニタールームにフューリーはいた。スティーブには携帯電話よりもよほど”まとも”な通信機器に思える、設置型の受話器を耳に当て、モニター越しに会話をしている。というか、怒鳴っている。 「いつからS.H.I.E.L.D.のネットワークは穴の開いた網になったんだ? 通販サイトのほうがまだ上手にセキュリティ対策してるぞ!! あ!? 言い訳は聞きたくない、すべてのネットワーク機器をシャットダウンしろ、お前らの出身大学がどこだろうと関係ない。頼むから仕事をしてくれ、おい、聞いてるか? ああ、ん? 知るか、そんなの。あと二時間以内に復旧しなけりゃ、今後は機密情報はamazonのクラウドに保存するからな!!」 「ハッキングされたのか?」 長官の後ろに影のように控えていたナターシャ・ロマノフにスティーブは尋ねた。 「そのようね。今のところ、情報の漏洩はないみたいだけど、レベル6相当の機密ファイルに不正アクセスされたのは確定みたい」 「よくあるのか?」 「こんなことがよくあっては困るんだ」 受話器を置いたフューリーが言った。「午前会議は延期だ、午後になるか、夕方になるか、夜中になるかわからん」 「現在進行中の任務に影響は?」 「独立したオペシステムがあるから取りあえずは問題ない。だがもしかしたら君にも出動してもらうかもしれない。待機していてくれるか」 スティーブは頷いた。そのまま復旧までモニタリングするというフューリーを置いて、ナターシャと長官室を出る。 「S.H.I.E.L.D.のセキュリティはどうなってる? 僕は専門外だが、情報の漏洩は致命的だ。兵士の命に関わる」 「我々は諜報員よ、基��的には。だから情報の扱いは慎重だわ」 吹き抜けのロビーに出て、慌しく行きかう職員の様子を見下ろす。「でもクラッキングされるのは日常茶飯事なのよ、こういう機関である故にね。ペンタゴンなんてS.H.I.E.L.D.以上に世界中のクラッカーたちのパーティ会場化されてるわ。それでも機密は守ってる。長官があの調子なのはいつものことでしょ」 「じゃあ心配ない?」 「さあね。本当に緊急なら情報工学の専門家を呼ぶんじゃない。あなたのとこの」 すべてお見通しとばかりに鮮やかに微笑まれ、スティーブは口ごもった。 トニーとの関係は隠しているわけではないが、会う人間全てに言って回っているわけでもない。アベンジャーズのメンバーにも特に知らせているわけではなかった(知らせるって、一体どういえばいいっていうんだ? ”やあ、ナターシャ。僕とトニーは恋人になったんだ。よろしく”とでも? 高校生じゃあるまいし)。だからこの美しい女スパイは彼らの関係を自力で読み解いたのだ。そんなに難しいことではなかっただろうとは、スティーブ自身も認めるところだ。 ナターシャは自分がトニーを倦厭していた頃を知っている。そんな相手に今は夢中になっていることを知られるのは居た堪れなかった。断じてトニーとの関係を恥じているわけではないのだが……ナターシャは批判したりしないし、クリントのように差別すれすれの表現でからかったりもしない。ひょっとすると、彼女は自分たちを祝福しているのではないかとさえ思う時がある。だからこそ、こそばゆいのかもしれなかった。 「ところで……戦闘スタイルだな。出動予定があったのか」 身体にぴったりとフィットした黒い戦闘スーツを身にまとったナターシャは肩をすくめて否定した。「私も会議に呼ばれて来たの。武装は解除してる」 スティーブが見たところ、銃こそ携帯していないが、S.H.I.E.L.D.の技術が結集したリストバンドとベルトをしっかりと装着していて、四肢が健康なブラック・ウィドウは未武装といえない。だかこのスタイル以外の彼女を見ることが稀なので、そうかと聞き流した。 「僕は復旧の邪魔にならないようにトレーニングルームにいるよ。稽古に付き合ってくれる奇特な職員がいるかもしれない」 「私は長官の伝令だからこの辺にいるわ。復旧したらインカムで知らせるから、とりあえず長官室に来て」 踵を返して、歩きながらナターシャは振り向きざまに言った。「残念だけど電話は使えないわよ。ダーリンに”今夜は遅くなる”って伝えるのは、もうちょっと後にして」 「勘弁してくれ、ナターシャ」 聞いたこともない可愛らしい笑い声を響かせて、スーパースパイはぎょっとする職員たちに見向きもせず、長官室に戻っていった。
◇
トニーの様子がおかしいのは今更だが、ここのところちょっと度が過ぎていた。ラボに篭りきりなのも、食事を取らなかったり、眠らなかったり、シャワーを浴びなかったりして不摂生なのも、いつものことといえばいつものことで、それが同時に起こって、しかも自分を避けている様子がなければスティーブも一週間くらいは目をつぶっただろう。
S.H.I.E.L.D.がハッキングされた件は、その日のうちに収拾がついた。犯人は捕まえられなかったが、システムの脆弱性が露見したので今後それを強化していくという。 スティーブがタワーに帰宅したのは深夜になろうかという頃だったが、トニーはラボにいて出てこなかった。これは珍しいことだが、研究に没頭した日には無いこともない。彼の研究が伊達ではないことはもうスティーブも知っているから、著しく不健康な状態でなければ邪魔はしない。結局、その日は別々に就寝についた。と、スティーブは思っていた。 次の日の朝、隣にトニーはいなかった。きっと自分の寝室で寝ているのだと思い、先に身支度と朝食の用意を済ませてから彼の居室を訪れると、空の部屋にジャービスの声が降ってきた。 『トニー様は外出されました。ロジャース様がお尋ねになれば、おおよその帰宅時間をお伝えするようにとのことですが』 「どこへ行ったんだ? 急な仕事が入ったのか?」 『訪問先は聞いておりません』 そんなわけがあるか、とスティーブは思ったが、ジャービスを相手に否定したり説得したりしても無駄なことだった。乱れのないベッドシーツを横目で見下ろす。「彼は寝なかったんだ。車なら君がアシストできるだろうけど、もし飛行機を使ったなら操縦が心配だ」 『私は飛行機の操縦も可能です』 「そうか、飛行機で出かけたんだな。なら市外に行ったのか」 電脳執事が沈黙する。スティーブの一勝。ため息をついて寝室を出た。 ジャービスはいい奴だが(このような表現が適切かどうか、スティーブには確信が持てないでいる)、たまにスティーブを試すようなことをする。今朝だって、”彼”はキッチンで二人分の食事を支度するスティーブを見ていたわけだから、その時にトニーが外出していることを教えてくれてよかったはずだ。トニーの作った人工知能が壊れているわけがないから、これは”彼”の、主人の恋人に対する”いじわる”なのだとスティーブは解釈している。トニーはよくジャービスを「僕の息子」と表現するが――さしずめ、父親の恋人に嫉妬する子供といったところか。そう思うと、自分に決して忠実でないこの電脳執事に強く出られないでいる。 「それで……彼は何時ごろに帰るって?」 『早くても明朝になるとのことです』 「えっ……本当に、どこに行ったんだ」 『通信は可能ですが、お繋ぎしますか』 「ああ、いや、自分の電話でかけるよ。ありがとう。彼のほうは、僕の予定は知ってるかな」 『はい』 「そう……」 スティーブはそれきり黙って、二人分の食事をさっさと片付けてしまうと、朝のランニングに出掛けた。 エレベータの中で電話をかけたが、トニーは出なかった。
それが四日前のことだ。予告した日の真夜中に帰ってきたトニーは、パーティ帰りのような着崩したタキシードでなく、紺色にストライプの入ったしゃれたビジネススーツをかっちりと着込んでふらりとキッチンに現れた。スティーブの強化された嗅覚が確かなら、少なくとも前八時間のあいだ、一滴も酒を飲んでいないのは明らかだった。――これは大変珍しいことだ。今までにないことだと言ってもいい。 彼は相変わらず饒舌で、出来の悪い社員のぐちや、言い訳ばかりの役員とお小言口調の政府���官への皮肉たっぷりの批判を、舞台でスピーチするみたいに大仰にスティーブに話して聞かせ、その間にも何かとボディタッチをしてきた。どれもいつものトニー、平常運転だ。しかしスティーブは、そんな彼の様子に違和感を覚えた。 彼が饒舌なのはよくあるが、生産性のないぐちを延々と口上するときはたいてい酔っている。しらふでここまで滔々としゃべり続けることはないと、スティーブには思われた。べたべたと身体に触ってくるのに、後から思えば意図されていたと思わずにはいられないくらい、不自然に目を合わせなかった。スティーブが秘密工作員と関係のない職種についていたとしても、自分の恋人が何かを隠していると気付いただろう。 極め付けはこれだ。スティーブはトニーの話を遮って、「君の風力発電は順調?」とたずねた。記憶が確かなら、この二日間、彼が忙しかったのはそのためであるはずだ。 「石器時代のテクノロジーがどうしたって?」 スティーブはぐっと拳を握りたいのを我慢して続けた。「だって、君――その話をしてただろ?」 「ああ……」 トニーは一瞬だけ、せわしなく何くれと動かしていた手足を止めた。「おもい出した。言ったっけ? ロングアイランド沖に発電所を建設するんだ。もう何年も構想してるんだけど、思ったよりうちの営業は優秀で――何しろほら、うちにはもっと”すごいやつ”があるんだし――そう簡単に量産は出来ないけど――それで僕は気が進まないんだが、州知事がGOサインを出してしまってね、ところが開発の連中が怖気づいてしまったんだ、というか、一人失踪してしまって……すぐに見つけ出して再洗脳完了したけど――冗談だよ、キャップ――でも無理はない事だとも思うんだ、だって考えてみろ……今時、いつなんどき宇宙から未知の敵対エネルギーが降ってくるかもしれないのに、無防備に海の上に風車なんて建ててる場合か? 奴らも責任あるエンジニアとして、ブレードの強度を高めようと努力してくれてるんだが、エイリアンの武器にどうやったら対抗出来るってんだ? 塩害や紫外線から守って次元じゃないんだろ? いっそバリアでも張るか? いっそそのほうが……うーん、バリアか。バリアってのはなかなか面白そうなアイデアだ、しかしそうすると僕は……いやコストがかかりすぎると、今度は失踪者じゃすまなくなるかも……」 スティーブは確信した。 トニーは自分に何か隠している。忙しいとウソまでついて。しかもそれは――彼がしらふでこんなに饒舌になるくらい、”後ろめたい”ことだ。
翌朝から今度はラボに閉じこもったトニーは、通信にも顔を出さなかった。忙しいといってキッチンにもリビングにも降りてこないので、サンドイッチやら果物をラボに届けてやると、その時に限ってトニーは別の階に移動していたり、”瞑想のために羊水カプセルに入った”とジャービスに知らされたり(冗談だろうが、指摘してもさらなる馬鹿らしい��い訳で煙に巻かれるので否定しない。羊水カプセル? 冗談だよな?)して本人に会えない。つまりトニーはジャービスにタワー内のカメラを監視させて、スティーブがラボに近付くと逃げているのだ。 恋人に避けられる理由がわからない。しかし嫌な予感だけはじゅうぶんにする。トニーが子供っぽい行動に走るときは、後ろめたいことがあるとき――つまり、”彼自身に”問題があると自覚しているときだ。 トニーの抱える問題? トニー・スターク、世紀の天才。現代のダ・ヴィンチと称された機械工学の神。アフガニスタンの洞窟に幽閉されてもなお、がらくたからアーク・リアクターを作り上げた優れた発明家にしてアイアンマン――億万長者という言葉では言い表せないほどの富と権力を持ち、さらには眉目秀麗で頭脳明晰、世間は彼には何の悩みも問題もないと思いがちだが――そのじつ、いや、彼のことを三日もよく見ていればわかることだ。彼は問題ばかりだ。問題の塊だといってもいい。 一番の問題は、彼が自分自身の問題を自覚していて、直そうとするどことか、わざとそれを誇張しているということだ。スティーブにはそれが歪んだ自傷行為にしか見えない。酒に強いわけでもないのに人前で浴びるように飲んでみたり、愛してもいない人間と婚約寸前までいったり(ポッツ嬢のことではない)、パーソナルスペースが広いわりに見知らぬファンの肩を親し気に抱いてみたり、それに――平和を求めているのに、兵器の開発をしたり――していたのは、すべて彼の”弱さ”であるはずだが、トニーはもうずいぶんと長いあいだ、世間に向けてそれが”強さ”だと信じさせてきた。大酒のみのパーティクラッシャー、破天荒なプレイボーイ、気取らないスーパーヒーロー、そして真の愛国者。アルコール依存症、堕落したセックスマニア、八方美人のヒーロー、死の商人というよりもよっぽど印象がいい。メディアを使った印象操作は彼の得意分野だ。トニーは自分がどう見られているか、常に把握している。 そういう男だから、性格の矯正はきかないし、付き合うのには苦労する。だからといって離れられるわけがないのだから、これはもう生まれ持ってのトラブル・メーカーだと割り切るしかない。 考えるべきことはひとつ。彼の抱える問題のうち、今回はどれが表面化したのか?
◇
トニーに避けられて四日目の朝、スティーブは再びD.C.のS.H.I.E.L.D.本部に出発しようとしていた。先日詰められなかった会議の再開と、クラッキング事件の詳細報告を受けるためだ。ジャービスによるとトニーはスティーブの予定を知っているようだが、ヘリの準備を終えても彼がラボ(あるいは羊水カプセルか、タワー内のいずれかの場所)から出てくることはなかった。見送りなんて大げさなことを期待しているわけではないが、今までは顔くらい見せていたはずだ。 (これじゃ、避けられてるどころか、無視されているみたいだ) そう思った瞬間、スティーブの中でトニーの抱える問題の一つに焦点が合った。
◇
ナターシャはいつもの戦闘��スーツに、儀礼的な黒いジャケットを着てS.H.I.E.L.D.の小さな応接室のひとつにいた。彼女が忙しい諜報活動の他に、S.H.I.E.L.D.本部で何の役についているのか、スティーブは知らされていなかった――だから彼女が応接室のチェストを執拗に漁っているのが何のためなのかわからなかったし、聞くこともしなかった。ナターシャも特に自分の任務に対して説明したりしない。スティーブはチェストの一番下の引き出しから順々に中を改めていくナターシャの後ろで、戦中のトロフィーなどを飾った保管棚のガラス戸に背をもたれ、組んだ腕を入れ替えたりした。 非常に言いにくいし、情けない質問だし、聞かされた彼女が良い気分になるはずがない。だがスティーブには相談できる相手が彼女しかいなかった。 「ナターシャ、その――邪魔してすまない」 「あら構わないのよ、キャップ。そこで私のお尻を見ていたいのなら、好きなだけどうぞ」 からかわれているとわかっていても赤面してしまうのは、スティーブの純潔さを表すチャームポイントだ、と、彼の恋人などはそう言うのだが――いい年をした男がみっともないと彼自身は思っていた。貧しい家庭で育ち、戦争を経験して、むしろ現代の一般人よりそういった表現には慣れているのに――おそらくこれが同年代の男からのからかいなら、いくら性的なニュアンスが含まれていようが、スティーブは眉ひとつ動かさないに違いない。ナターシャのそれはまるで姉が弟に仕掛けるいたずらのように温かみがあり、スティーブを無力な少年のような気持ちにさせた。 「違う、君は……今、任務中か? 僕がここにいても大丈夫?」 「構わないって言ったでしょ。用があるなら言って」 確かにナターシャの尻は魅力的だが、トニーの尻ほどではない――と自分の考えに、スティーブは目を閉じて首を振った。「聞きたいことがあるんだけど」 スティーブは出来るだけ、何でもないふうに装った。「僕はその、少し前からスタークのタワーに住んでいて――……」 「付き合ってるんでしょ。なあに、トニーに浮気でもされたの?」 スティーブはガラス戸から背中を離して、がくんと顎を落とした。「オー・マイ……ナット、なんでわかったんだ」 「それは、こっちの……台詞だけど」 いささか呆気にとられた表情をして、ナターシャは目的のものを見つけたのか、手のひらに収まるくらいの何かをジャケットの内ポケットに入れると、優雅に背筋を伸ばした。「トニーが浮気? ほんとに?」 「ああ、いや……多分そうなんじゃないかと……」 「この前会ったときは、あなたにでろでろのどろどろに惚れてるようにしか見えなかったけど、ああいう男は体の浮気は浮気だと思ってない節があるから、あとはキャップ、あなたの度量しだいね」 数日分の悩みを一刀両断されてしまい、スティーブは一瞬、自分の耳を疑った。音もなくソファセットの前を通り過ぎ、部屋を出て行こうとしたナターシャを慌てて呼び止める。「そ、そうじゃないんだ。浮気したと決まったわけじゃない。ただトニーの様子がこのところおかしいから、もしかしたらと思って――それで君に相談ができればと……僕はそういうのに疎いから」 「おかしいって? トニー・スタークが?」 まるでスティーブが、空を飛んでいる鳥を見て”飛べるなんておかしい”と言ったかのように、ナターシャは彼の正気を疑うような目をした。「そうだよな」 スティーブは認めた。「トニーはいつもおかしいよ。おかしいのが彼だ。何でも好きなものを食べられるのに、有機豆腐ミートなんて代物しか食べなかったり――それでいて狂ったようにチーズバーガーしか食べなかったり――それでも、何か変なんだ。僕を避けてるんだよ。通信でも顔を見せない。まる一日、どこかに行ったきりだと思ったら、今度はラボにずっとこもってる。ジャービスに彼の様子を聞こうにも、彼はトニー以外のいうことなんてきかないし、もうお手上げだ」 ナターシャはすがめたまぶたの間からスティーブを見上げると、一人掛けのソファに座った。スティーブも正面のソファに座る。彼女が長い足を組んで顎に手を当て考え込むのを、占い師の診断を仰ぐ信者のように待つ。 「ふーん……それって、いつから?」 「六日前だ。ハッキング事件の当日はまだ普通だったけど、その翌日はやたらと饒舌で……きみも付き合いが長いから、トニーが隠し事をしているときにしゃべりまくる癖、知ってるだろ」 「それを聞いたら、キャプテン、私には別の仮説が立てられるわ」 「え?」 「来て。会議の前に長官に報告しなきゃ」 ナターシャの後を追いながら、スティーブは彼女が何を考えているか、じわじわと確信した。「君はもしかして、S.H.I.E.L.D.をハッキングしたのが彼だと――」 「最初から疑ってたのよ。S.H.I.E.L.D.のネットワークに侵入できるハッカーはそう多くない。世界でも数千人ってとこ。しかもトニーには前歴がある。でもだからこそ、長官も私も今回は彼じゃないと思ってた」 「どういうことだ」 「ハッカーにはそれぞれの癖みたいなのがあるのよ。自己顕示欲の強いやつは特に。登頂成功のしるしに旗を立てるみたいに、コードにサインを入れるやつもいる。トニーのは最高に派手なサインが入ってた。今回のはまるで足跡がないの。S.H.I.E.L.D.のセキュリティでも追いきれなかった」 「トニーじゃないってことだろう?」 「前回、彼は自分でハッキングしたわけじゃなかった。あの何か、変な小さい装置を使って人工知能にやらせてたんでしょ。今回は自分でやったとしたら? 彼がMIT在学中に正体不明のハッカーがありとあらゆる国の情報機関をハッキングした事件があった。今も誰がやったかわかってないけど――」 そこまで言われてしまえば、スティーブもむやみに否定することはできなかった。 「……ハッキングされたのは一瞬なんだろう。トニーがやったのなら、どうしてずっとラボにこもってる」 「データを盗めたとしても暗号化されてるからすぐに読めるわけじゃない。じつのところ、まだ攻撃され続けてる。これはレベル5以上の職員にしか知らされていないことだけど、現在進行形でサイバー攻撃されてるわ。たぶん、復号キーを解析されてるんだと思う。非常に高度なことよ、通信に多少のラグがあるだけで、他のシステムには全く影響していない。悪意あるクラッカーやサイバーテロ集団がS.H.I.E.L.D.の運営に配慮しながらサイバー攻撃するなんて、考えられなかったけど――もしやってるのがアイアンマンなら、うなずける。理由は全く分からないけど」 ナターシャはすでに確信しているようだった。長官室の扉を叩く前に、スティーブを振り返り、にやりと笑った。 「ねえ、よかったじゃない――浮気じゃなさそう」 「それより悪いかもしれない」 スティーブはほっとしたのとうんざりしたのと、どっちの気持ちを面に出したらいいか迷いながら返した。恋人が浮気したなら、まあ結局は許すか許さないかの話で、なんやかんやでスティーブは許してしまったことだろう(ああ、簡単じゃないか、本当に)。しかし、恋人が内緒で国際平和維持組織をハッキングしていたのなら、まるで話の規模が変わってくる。 ああ、トニー、君はいったい、何をやってるんだ。 説明されても理解できないかもしれないが、僕から隠そうとするのはなぜだなんだ。 「失礼します、長官。報告しておきたいことが――」 四回目のノックと同時に扉を開け、ナターシャは緊急時にそうするように話しながら室内に入った。「現行のサイバー攻撃についてですが、スタークが関わっている可能性が――」 「報告が遅いぞ」 むっつりと不機嫌なニック・フューリーの声が響く。部屋には二人の人物が居た――長官室の物々しいデスクに座るフューリーと、その向かいに立つトニー・スタークが。 「ところで、コーヒーはまだかな?」 チャコールグレイの三つ揃えのスーツを着たトニーは、居ずまいを正すように乱れてもいないタイに触れながら言った。ちらりと一瞬だけスティーブに目をくれ、あとはわざとらしく自分の手元を注視する。「囚人にはコーヒーも出ないのか? おい、まさか、ロキにも出してやらなかった?」 「トニー、君……」 スティーブが一歩踏み出すと、ナターシャが腕を伸ばして止めた。険の強い声音でフューリーを問いただす。「どういうことです? 我々はサイバーセキュリティの訓練を受けさせられていたとでも?」 「いや、彼は今朝、自首しにきたんだ、愚かにも、自分がハッキング犯だと。目的は果たしたから理由を説明するとふざけたことを言っている。ここで君たちが来るまで拘束していた」 ナターシャの冷たい視線を、トニーは肩をすくめて受け流した。 「本当か? トニー、どうしてそんなことをしたんだ」 「ここだけの話にしてくれ」 トニーはスティーブというより、フューリーに向かって言った。「僕がこれから言うことはここにいる人間だけの耳に留めてくれ」 全く頷かない長官に向かって、トニーはため息をついて両手を落とした。「あとは、そうだな。当然、僕は無罪放免だ。だってそうだろ? わざわざバグを指摘してやったんだ。表彰されてもいいくらいだろう! タダでやってやったんだぞ!」 「タダかどうかは、私が決める」 地を這うように低い声でフューリーは言った。「放免してやるかどうかも、その話とやらを聞いてから決める。さっさと犯罪行為の理由を釈明しないなら、この場で”本当”に拘束するぞ。ウィドウ、手錠は持ってるか」 「電撃つきのやつを」 「ああ、わかった、わかった。電撃はいやだ。ナターシャ、それをしまえ。話すとも、もちろん。そのためにD.C.まで来たんだ。座っていい?」 誰も頷かなかったので、トニーは再びため息をついて、革張りのソファの背を両手でつかんだ。 「それで、ええと――僕が慈善家だってことは、皆さんご承知のことだとは思うんだが――」 「トニー」 自分でもぎょっとするくらい冷たい声で名前を呼んで、スティーブは即座に後悔したが――この場に至っても自分を無視しようとするトニーに、怒りが抑えられなかった。 トニーは大きな目を見開いて、やっとまともにスティーブを視界��入れた。こんな距離で会うのも数日ぶりだ。スティーブは早く彼の背中に両手を回したくて仕方なかったが、その後に一本背負いしない自信がなかったので、ナターシャよりも一歩後ろの位置を保った。 「……べつに話を誤魔化そうってわけじゃない。僕が慈善家だってことは、この一連の僕の”活動”に関係のあることなんだ。というより、それが理由だ」 ゆらゆら揺れるブラウンの瞳をスティーブからそらせて、トニーは話し始めた。
七日前にもトニーはS.H.I.E.L.D.に滞在していた。フューリーに頼まれていた技術提供の現状視察のためもあったが、出席予定のチャリティー・オークションのパーティがD.C.で行われるため、長官には言わないが、時間調整のために本部内をぶらぶらしていたのだ。たまに声をかけてくる職員たちに愛想よく返事をしてやったりしながら、迎えの車が来るのを待っていた。 予定が狂ったのは、たまたま見学に入ったモニタールームEに鳴り響いた警報のせいだった――アムステルダムで任務中の諜報員からのSOSだったのだが、担当の職員が遅いランチ休憩に出ていて(まったくたるんでいる!)オペレーション席に座っていたのはアカデミーを卒業したばかりの新人だった。ヘルプの職員まで警報を聞いたのは訓練以外で初めてという状態だったので、トニーは仕方なく、本当に仕方なく、子ウサギみたいに震える新人職員からヘッドマイクを譲り受け(もぎ取ったわけじゃないぞ! 絶対!)、モニターを見ながらエージェントの逃走経路を指示するという、”ジャービスごっこ”を――訂正――”人命と世界平和に関する極めて責任重大な任務”を成り代わって行ったのだ。もちろんそれは成功し、潜入先で正体がばれたまぬけなエージェントたちは無事にセーフハウスにたどり着き、新人職員たちと、ランチから戻って状況の飲み込めないまぬけな椅子の男に対し、長官への口止めをするのにも成功した。ちょっとしたシステムの変更(ほら、僕がモニターの前に座って契約外の仕事をしているところが監視カメラに映っていたら、S.H.I.E.L.D.は僕に時間給を払わなくちゃいけなくなるだろ? その手間を省いてやるために、録画映像をいじったんだ――もしかしたら。怖い顔するな。そんなような気がしてたんだ、今まで)もスムーズに成立した。問題は、そのすべてが完了するのに長編映画一本分の時間がかかったということだ。トニーの忠実な運転手は居眠りもしないで待っていたが、チャリティーに到着したのは予定時刻から一時間以上は経ったころだった。パーティが始まってからだと二時間は経過していた。それ自体は大して珍しいことではない。トニーはとにかく、パーティには遅れて到着するタイプだった(だって早く着くほうが失礼だろ?)。 しかし、その日に限って問題が発生する。セキュリティ上の都合とやらで(最近はこんなのばっかりだな)、予定開始時刻よりも大幅にチャリティー・オークションが早まったのだ。トニーが到着したのは、もうあらかたの出品が終わったあとだった。 トニーにはオークションに参加したい理由があった。今回のオークションに限ったことではない。トニーの能力のもと把握する��とが出来る、すべてのオークションについて、彼は常に目を光らせていた。もちろん優秀な人工知能の手も借りてだが――つまり、この世のすべてのオークションというオークションについて、トニーはある理由から気にかけていた。好事家たちの間でだけもてはやされる、貴重な珍品を集めるためではない――彼が、略奪された美術品を持ち主に返還するためのグループ、「エルピス」を支援しているからだ。 第二次世界大戦前や戦中、ヨーロッパでは多くの美術品がナチスによって略奪され、焼失を逃れたものも、いまだ多くは、ナチスと親交のあった収集家や子孫、その由来を知らないコレクターのもとで所有されている。トニーが二十代の頃に美術商から買い付けた一枚の絵画が、とあるユダヤ人女性からナチ党員が二束三文で買い取った物だと「エルピス」から連絡があったのが、彼らを支援するきっかけとなった。それ以来、トニーが独自に編み上げた捜索ネットワークを使って、「エルピス」は美術品を正当な持ち主に戻すための活動を続けている(文化財の保護は強者の義務だろ。知らなかった? いや、驚かないよ)。数年前にドイツの古アパートから千点を超す美術品が発見されたのも、「エルピス」が地元警察と協力して捜査を続けていた”おかげ”だ。時間も、根気もいる事業だが、順調だった。そして最近、「エルピス」が特に網を張っている絵画があった。東欧にナチスの古い基地が発見され、そこには宝物庫があったというのだ――トニーが調べた記録によれば、基地が建設されたと思わしき時期、運び込まれた数百点の美術品は、戦後も運び出された形跡がなかった――つまり宝物庫が無事なら、そこにあった美術品も無事だったということだ。 数百点の美術品のうち、持ち主が明確な絵画が一点あった。ユダヤ人投資家の男で、彼の祖父が所有していたが、略奪の目にあい彼自身は収容所で殺された。トニーは彼と個人的な親交もあり、特に気にかけていた。 その投資家の男がD.C.の会場にも来ていて、遅れてやってきたトニーに青い顔で詰め寄った。「”あれ”が出品されたんだ――」 興奮しすぎて呼吸困難になり、トニー美しいベルベッドのショール・カラーを掴む手にも、ろくな力が入っていなかった。「スターク、”あれ”だ――本当だ。祖父の絵画だ。ナチの秘宝だと紹介されていた。匿名の人物が競り落とした――あっという間だった――頼む、あれを取り戻してくれ――」 (なんて間の悪いことだ!) 正直なところ、トニーは今回のオークションにそれほど期待していたわけではなかった。長年隠されていた品物が出品されるとなれば、出品リストが極秘であろうと噂になる。会場に来てみてサプライズがあることなど滅多にない。それがまさかの大当たりだったとは! こんなことなら、時間つぶしにS.H.I.E.L.D.なんかを使うんじゃなかった。トニーは投資家に「落札者を探し出し、説得する」と約束し、その後の立食パーティで無礼なコラムニストを相手にさんざん子供っぽい言い合いをして、帰宅の途についた――そして、ジャービスに操縦を任せた自家用機の中で、匿名の落札者について調べたが、思うように捗らなかった。もちろん、トニーが本気になればすぐにわかることだ――しかし、ちょっとばかり酔っていたし、別に調べることもあった。そちらのほうは、タイプミスをしてジャービスに嫌味を言われるまでもなく、調べがついた。 網を張っていた絵画と同じ基地にあった美術品のうち、数点がすでに別の地域のオークションや美術商のもとに売り出されていた。
「これがどういうことか、わかるだろう」 トニーは許可をとることをやめて、二人掛けのソファの真ん中にどさりと腰かけた。デスクに両肘をついて、組んだ手の中からトニーを見下ろすS.H.I.E.L.D.の長官に、皮肉っぽく言い立てる。「公表していないが、ナチスの基地を発見、発掘したのはS.H.I.E.L.D.だろ。ナチスというより、ヒドラの元基地だったらしいな。そこにあった美術品が横流しされてるんだ。すぐに足がつくような有名なものは避けて、小品ばかり全国にばらけて売っている。素人のやり方じゃないし、僕はこれと似たようなことをやる人種を知っている。スパイだよ。スパイが物を隠すときにやる方法だ」 「自分が何を言ってるかわかってるのか」 いよいよ地獄の底から悪魔が這い出てきそうな不機嫌さで、フューリーの声はしゃがれていた。「S.H.I.E.L.D.の職員が汚職に手を染めていると、S.H.I.E.L.D.の長官に告発しているんだぞ」 「それどころの話じゃない」 トニーは鋭く言い放った。「頂いたデータを復号して、全職員の来歴を洗い直した。非常に臭い。ものすごい臭いがするぞ、ニック。二度洗いして天日干しにしても取れない臭いだ――」 懐から取り出したスマートフォンを操作する。���今、横流しに直接関わった職員の名簿をあんたのサーバーに送った。安心しろ、暗号化してある。解読はできるだろ?」 それからゆっくり立ち上がって、デスクの正面に立ち、微動だにしないフューリーを見下ろす。「……あんた自身でもう一度確認したほうがいい。今送った連中だけの話じゃないぞ。……S.H.I.E.L.D.は多くの命を救う。僕ほど有能じゃなくても、ないよりあったほうが地球にとっては良い」 「言われるまでもない」 「そうか」 勢いよく両手を合わせて乾いた音を響かせると、トニーは振り返ってスティーブを見つめた。ぐっと顎に力の入ったスティーブに、詫びるようにわずかに微笑んで、歩きながらまたフューリーを見る。「で、僕は無罪放免かな? それとも感謝状くれる?」 「帰っていいぞ。スターク。ひとりでな」 「そりゃ、寂しいね。キャプテンを借りるよ、長官。五分くらいいいだろう」 言うやいなや、トニーはナターシャの前を素通りすると、スティーブの二の腕を掴んで部屋を出ようとした。 「おい――トニー――……」 「キャップ」 ナターシャに視線で促され、スティーブはトニーの動きに逆らうのをやめた。うろんな顔つきで二人を見ているフューリーに目礼して、スティーブは長官室を後にした。
「トニー……おい、トニー!」 トニーの指紋認証で開くサーバールームがS.H.I.E.L.D.にあったとは驚きだった。もしかしたらこれも”システム変更”された一つかもしれない――トニーは内部からタッチパネルでキーを操作して、ガラス壁を不透明化させた。そのまま壁に背をもたれると、上を向いてふーっと長い息を吐��。 スティーブは壁と同様にスモークされた扉に肩で寄りかかり、無言でトニーを見つめた。 「……えっと、怒ってるよな?」 スティーブが答えないでいると、手のひらを上げたり下ろしたりしながらトニーはその場をぐるぐると歩き出した。 「きっと君は怒ってると思ってた。暗号の解析なんか一日もかからないと思ってたんだが、絵画の落札者探しも難航して――まあ見つかるのはすぐに見つかったんだが、西ヨーロッパの貴族で、これがまた、筋金入りの”スターク嫌い”でね、文字通り門前払いをくらった。最初からエルピスの奴らに接触してもらえばもうちょっと話はスムーズについたな。それでも最終的には僕の説得に応じて、返還してくれることになった――焼きたてのパンもごちそうになったしね。タワーに帰るころには解析も済んでるはずだったのに、それから数日も時間がかかって――」 「何に時間がかかっていようが、僕にはどうだっていい」 狭い池で周遊する魚のように落ち着きのない彼の肩を掴んで止める。身長差のぶんだけ見上げる瞳の大きさが恋しかった。「僕が怒ってるのは、君が何をしていたかとは関係ない。それを僕に隠していたからだ。どうして、僕に何も言わない。S.H.I.E.L.D.に関わりのあることなのに――」 「だからだよ! スティーブ……君には言えなかった。確証を掴むまで、何も」 「何をそんなに……」 「わからないのか? フューリーも気付いたかどうか」 不透明化された壁をにらみ、トニーはスティーブの太い首筋をぐっと引き寄せて顔を近づけた。「わからないのか――ヒドラの元基地から押収した品が、S.H.I.E.L.D.職員によって不正に取引された――一人の犯行じゃない。よく計画されている。それに、関わった職員の口座を調べたが、どの口座にも大金が入金された痕跡がない。……クイズ、美術品の売り上げは、誰がどこに流してるんでしょう」 「……組織としての口座があるはずだ」 「そうだ。じゃあもう一つ、クイズだ。その組織の正体は? キャップ……腐臭がしないか」 「……ヒドラがよみがえったと言いたいのか」 「いいや、そのセリフを言いたいと思ったことは、一度もない」 トニーは疲れたように額を落とし、スティーブの肩にもたれかかった。「だから黙ってたんだ」 やわらかなトニーの髪と、力なくすがってくる彼の手の感触が、スティーブの怒りといら立ちを急速に沈めていった。つまるところ、トニーはここ数日間、極めて難しい任務に単独で挑んでいた状況で――しかもそれは、本来ならばS.H.I.E.L.D.の自浄作用でもって対処しなければならない事案だった。 体調も万全とはいえないトニーが、自分を追い込んでいたのは、彼の博愛主義的な義務感と、優しさゆえだった――その事実はスティーブを切なくさせた。そしてそれを自分に隠していたのは、彼の数多く抱える問題のひとつ、彼が”リアリスト”であるせいだった。彼は常に最悪を考えてしまう。優れた頭脳が、悲観的な未来から目を逸らさせてくれないのだ。 「もしヒドラがまだこの世界に息づいているとしても」 トニーの髪に手を差し入れると、そのな��らかな冷たさに心が満たされていく。「何度でも戦って倒す。僕はただ、それだけだ」 「頼もしいな、キャプテン。前回戦ったとき、どうなったか忘れた?」 「忘れるものか。そのおかげで、今こうして、君と”こうなってる”んだ」 彼が悲観的なリアリストなら、自分は常に楽観的なリアリストでいよう。共に現実を生きればいい。たとえ一緒の未来を見ることは出来なくとも、平和を目指す心は同じなのだから。 「はは……」 かすれた吐息が頬をかすめる。これ以上のタイミングはなかった。スティーブはトニーの腰を抱き寄せてキスをした。トニーはとっくに目を閉じていた。スティーブは長い睫毛が震えているのを肌で感じながら、トニーを抱きつぶさないように自分が壁に背をつけて力を抑えた――抱き上げると怒られるので(トニーは自分の足が宙をかく感覚が好きじゃないようだ、アーマーを未装着のときは)、感情の高ぶりを表せるのは唇と、あまり器用とはいい難い舌しかなかった。 幸いにして、彼の恋人の舌は非常に器用だった。スティーブはやわらかく、温かで、自分を歓迎してくれる舌に夢中になり、恋人が夢中になると、トニーはその状態にうっとりする。うっとりして力の抜けたトニーが腕の中にいると、スティーブはまるで自分が、世界を包めるくらいに大きく、完全な存在になったように感じる。なんという幸福。なんという奇跡。 「きみが他に――見つけたのかと思った」 「何を?」 上気した頬と涙できらめく瞳がスティーブをとらえる。 「新しい恋人。それで、僕を避けているのかと……」 トニーはぴったりと抱き着いていた上体をはがして、まじまじとスティーブを見つめた。 「ファーック!? それ本気か? 僕が何だって? 新しい……」 「恋人だ。僕が間違ってた。でも口が悪いぞ、トニー」 「君が変なこと言うから――それに、それも僕の愛嬌だ」 「君の……そういうところが、心配で、憎らしくて、とても好きだ」 もう一度キスをしながら、トニーの上着を脱がそうとしているうちに、扉の外からナターシャの声が聞こえた。 「あのね、お二人さん。いくら不透明化してるからって、そんな壁にべったりくっついてちゃ、丸見えよ」 スティーブの首に腕を回し、ますます体を密着させて、トニーは言った。「キャプテン・アメリカをあと五分借りるのに、いくらかかる?」 唐突にガラスが透明になり、帯電させたリストバンドを胸の前にかかげたナターシャが、扉の前に立っているのが見えた。 「あなた、最低よ、スターク」 「なんで? 五分じゃ短すぎたか? 心配しなくても最後までしないよ、キスと軽いペッティングだけだ、五分しかもたないなんてキャップを侮辱したわけじゃな……」 「あなた、最低よ、スターク!」 「キーをショートさせるな! 僕にそれを向けるな! 頼む!」 スティーブはトニーを自分の後ろに逃がしてやって、ナターシャの白い頬にキスをした。「なんだか、いろいろとすまない。ナターシャ……」 「いいわ、彼には後で何か役に立ってもらう」 トニーがぶつぶつと文句をつぶやきながらサーバーの間を歩き、上着のシワを伸ばすさまを横目で見て、ナターシャに視線を戻すと、彼女もまた同じ視線の動きをしていたことがわかった。 「……トニーを巻き込みたくない。元気にみえるけど、リアクターの除去手術がすんだばかりで――」 「わかってるわ。S.H.I.E.L.D.の問題は、S.H.I.E.L.D.の人間が片をつける」 ナターシャの静かな湖面のような緑の目を見て、自分も同じくらい冷静に見えたらいいと思った。トニーにもナターシャにも見えないところで、握った拳の爪が掌に食い込む。怖いのは、戦いではなく、それによって失われるかもしれない現在のすべてだ。 「……もし、ヒドラが壊滅せずにいたとしたら――」 「何度だって戦って、倒せばいい」 くっと片方の唇を上げた笑い方をして、ナターシャはマニッシュに肩をすくめた。「そうなんでしょ」 「まったく、君……敵わないな。いつから聞いてたんだ」 「私は凄腕のスパイよ。重要なことは聞き逃さない」 「いちゃつくのは終わったか?」 二人のあいだにトニーが割り入った。「よし。ではこれで失礼する。不本意なタイミングではあるが――ところでナターシャ、クリントはどこにいるんだ?」 「全職員の動向をさらったばかりでしょ?」 「クリントの情報だけは奇妙に少なかったのが、不思議に思ってね。まあいい。休暇中は地球を離れて、アスガルドに招待でもされてるんだろう。キャップ……無理はするなよ。家で待ってる」 「トニー、君も」 スティーブが肩に触れると、トニーは目を細めて自分の手を重ねた。 「僕はいつでも大丈夫だ。アイアンマンだからな」 ウインクをして手を振りながら去っていくトニーに、ナターシャがうんざりした表情を向けた。「ねえ、もしかしてこの先ずっと、目の前で惚気を聞かされなきゃいけないの?」 そう言って、今度はスティーブをにらみつける。「次の恋愛相談はクリントに頼んでよ!」
◇終◇
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2019.6/5~12アメリカ旅行《前半》

NY在住の友人を訪ねてアメリカへ。帰国してから早数日、ようやく時差ボケも治り、思い出を整理できるところまで調子が戻って来た感じ。すごく長くなるので6日間を前半後半に分けて書きます。
1週間も案内をしてくれた友人ともちんに心から感謝。
6/5(水)
その前の週末から軽めの風邪を引く。なんとか早く治そうと葛根湯を飲んだり鼻うがいをしたりしていたものの、出発前夜のタイミングで発熱。やばい。とりあえず早く寝る。朝8:30に伊丹空港を離陸。羽田空港を経由して、ニューヨークJFK空港行きの飛行機で約12時間半を過ごす。現地に到着すると体調不良も治まって元気に。よかった。
現地時間の6/5(水)午前11時頃に到着。
時差の関係で、水曜の朝に出て水曜の昼前に着くスケジュール。なんとなく得した感じである。Uberを使って空港から友人宅へ。運転手はネパール出身のお兄さん。色々と話しかけてくれて楽しかったけど、英語力の低さゆえあまり会話弾まず。申し訳ない。
マンハッタンに到着し、友人と再会。少し休憩を挟んでさっそく街へ。

↑NYのビル、とにかくビルがでかい。地震のない国ってすごい。
高さもそうだけど、サイズが…。日本の都心もそこそこすごいはずだけど、建物の大きさに関してはケタ違いに感じた。ちなみに、「ニューヨーカーは早歩き」とか聞くけど、それはあんまり感じず。というか、大阪も結構早いんじゃないのかな。
NY観光の一発目はMoMA(NY近代美術館)へ。

↑なんか色んなところで見かけている(気がするだけの)モネの睡蓮

↑かの有名なジャクソン・ポロックの。
このほかにも「あれってここにあったんや!」という作品がずらり。
時差ボケが急に来て、途中立ったまま寝落ちしてしまいそうになった…

↑コンクリートのシンプルな建物も良かった。

↑古い外観の建物と今っぽい高層ビルが混在。

↑5番街を歩く途中で見かけた、セント・パトリック教会。圧巻。

↑友人おすすめの美味しいタコス屋さん[LOS TACOS]のタコス。辛うま〜!
時差ボケの眠気も覚める。

↑ファーストフード店的な雰囲気。速いテンポの会計&注文にまごまご。

↑夜は、日本でチケット予約していたブロードウェイの「アラジン」を鑑賞。
日本でもお芝居やミュージカルは見ていたけど、いや比べるのもアレなんだろうけど、歌とダンスのうまさが全然違って感動。ニューアムステルダム劇場もヨーロッパのオペラハウスのような趣ある雰囲気。自分達が座ったのはオーケストラ席(1階席)の後ろだったけど、舞台が見切れること無く広々と鑑賞できたし、オーケストラが舞台の下に潜り込むような形をしていて、舞台と客席の距離も想像以上に近かった…ほんま、メッチャ良かった…

↑舞台が終わって劇場を出るとすっかり暗く。
夜のタイムズスクエアは巨大すぎる広告の明るさでマジで電気付いてる部屋にいるみたいだった。
観光地のフォトスポットって「天気の良いときで、こっちの方角を向いて、この場所からこの角度で撮らないと映えない」みたいなのが結構あるけど、ここは真逆。想像以上に、この通りが長い!広い!広告がデカい!!写真ではやはり伝わらないあの迫力、臨場感は一生忘れまい…。

↑違う筋入ってもこの賑やかさ。

↑帰り道にたまたま目撃したエンパイア・ステート・ビル。
6/6(木)

↑朝のNY。この日は朝昼ごはんを食べにベーグル屋さんへ。

↑本当にビルが大きい。

↑[Ess-a-Bagel]のベーグル。ツナ&野菜サンド的なものを注文。コレ、めちゃくちゃ美味しかった…。特にこのツナの部分だけタッパに詰めて日本に持ち帰りたいくらい美味しかった…日本のと何が違うんだろうか…。
そして、コレに限らずアメリカは1食分が本当に大きい。このベーグルもバーガーキングのワッパー位のサイズ。もっちりしっかり、だけど固くないオニオンベーグルは味も腹持ちも最高でした。

↑注文方法はサブウェイに近い感じ。

↑本日のメインである[メトロポリタン美術館]を目指してアッパーイーストサイドを歩く。ゴシップガール世代なので、「アッパーイーストサイド」というフレーズはドラマの中で毎回必ず出てきて、どこかも分からず覚えていたもの。まさかそこを歩くことができるとは。

↑マンハッタン屈指の高級住宅街とのこと。駐車場無いんかな。

↑美しきメトロポリタン美術館。先月メットガラも開催されたばかり。前日のMoMAとは打って変わった佇まい。この階段も有名ね…

↑建物の向かい側はこんな感じ。

↑オーシャンズ8でネックレス落としてたとこ(多分)

↑あ!ゴッホ。

↑絵画や彫刻だけではなくて、遺跡だったり壁とか天井、ステンドグラス、さらにはこんな風にお部屋まるごと持ってきて展示…というものも多数。見どころ多し、というか物理的に広し作品数多し。見たいエリアを絞って、あとはさーっと見るというスタイルでもそこそこの時間が必要。すごい場所だなぁ。

↑個人的には中央アジア〜イスラムエリアが心に刺さった!どんな部屋に敷くねん、織るのに何年かかんねんという緻密な刺しゅうぎっしりの巨大な絨毯、偶像崇拝NGだからこそ発達した文字装飾(カリグラフィーやっけ?)の数々。昔はここが世界の中心だったんだなぁというのがめちゃくちゃ伝わってきました。

↑なんという鮮やかさ。

↑夕方はMET隣接の[セントラルパーク]を散策したり、5番街に戻ってティファニー本店に立ち寄るなど。

↑NYにしかない、ニンテンドーの直営ショップにも行った。湾岸戦争で爆撃に遭うも今なお電源が入るというゾンビゲームボーイの展示。

↑セントラルパークから見上げる摩天楼。

↑何回も言うけどほんまにビルが高い。

↑たまたま通りかかったトランプタワー。
夜、ブロードウェイの「Wicked」当日チケットの抽選のため劇場へ。
運が良ければ当日チケットを格安料金でゲットできるとあって、劇場裏の抽選会場には人だかりが。私含めて3人で抽選用紙に名前を書く。1時間ほどするとくじ引きが行われて当選者の名前が読み上げられるというシステム。
これが…当たった〜〜!!しかも私と友達の2人!!たったの30ドル(=3,000円ちょい)で鑑賞できるなんて。感動。

↑チケット当選した人にだけ貰える缶バッヂ。
元々Wickedとかオズの魔法使いのあらすじをあまり知らず、英語ということもあって細かいストーリーは後から復習したところもあるけど、ストーリー云々の前に(またしても)音楽や歌が本当に迫力あってとても楽しめた!
アラジンよりももっと劇場が大きくて、舞台の演出とか装置もすごかったなぁ。何より曲が良かった。帰ってきてからもずっとサントラ聞いてる。
6/7(金)

朝5時起きくらいで友人宅を出る。この日は遠出して日帰りでワシントンD.Cへ。地図で見るとNYとワシントン結構近そうなんだけど(実際アメリカの距離感で言えば近いんだろうけど)それでもバスで4時間。アメリカ、ほんま広い…。高速バスに乗り来んで朝7時にNYを出発。
どうでもいいけど行きのバスの冷房がガンガンで凍死しかけた。

↑ワシントンの街並み。NYと比べると人混みが少なくて静か。そして政治の中心地とあってビジネスマン率高し。

↑昼食は、地元の農家さんがやっているというアメリカ料理のお店[Farmers & Distillers]へ。
アメリカ!肉!!ステーキ!!て感じのステーキをたいらげる。コレも美味しかったなぁ…。思ってたのの倍以上大きかった。

↑ホワイトハウス。ここがトランプ大統領の職場…厳重なる警備でやや遠巻き。

↑ワシントン記念塔。天気も相まってなんか起こりそうな感じ。

↑リンカーン像。

↑リンカーン記念塔からワシントン記念塔は一直線。この眺め教科書とかでよく見るよね。キング牧師のスピーチときはこんなに広い通りが群衆で埋まったんか…。

↑立ち寄りで[スミソニアン国立航空宇宙博物館]へ。その名の通りアメリカの宇宙や航空にまつわる資料が展示されていた。航空機の模型とか。

↑ワシントンのメトロも、NYとはまた違った雰囲気。
後編に続く
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まだ終わってなかったのかよ!
アメリカ編 世界の中心 ニューヨーク
アメリカといえば
1位 資本主義の鬼
2位 世界のジャイアン
3位 野球
ハバナ最後の晩餐ら金がなさすぎてエクレア
次の日は9時半くらいのフライトてすが、ハバナ国際空港は意味不明なくらいアクセスが悪すぎて5時に出発。
これまた、なんでこんな早朝から混むんだってレベルのバスに乗り込みそっから約1時間。バス降りて自転車タクシーに乗って約20分。思ったよりも早く着いたじゃねぇか!
そっからチェックイン、出国審査問題なくスルー。
しかし、こっから大問題。
待てど、待てど飛行機に乗れない。
なぜか電光掲示版にもなんのステータスの変更もなく遅れること1時間。搭乗開始。
遅れるんならなんかアナウンスしろっ!!
これで直ニューヨークいけるならいいんやけど、マイアミ乗り換え…しかも2時間…
間に合うんかこれ!オイ!!
…
……
………
間に合いませんでしたっ♫
思ったよりも早く着いたものの空港が広すぎてなかなか移動に時間がかかる。しかも電子ビザと入国審査がまさかのここでやる。アメリカ入国めちゃくちゃ時間かかります。45分くらい。並んでる間に行っちまったよ
カスタマーセンター行って盛大に文句言ってやろうと思ったけどチケット見せたら案外簡単に次のニューヨーク行きのフライトが取れました。(しかも無料)
某ライアンエアーとはすげぇ違いだな!!
ただ、なぜか30分後のフライトのため急いで行ってと言われて、また手荷物審査を受け、広いマイアミ空港を走ってなんとかギリギリギリギリで搭乗。
あざした!
そっからは爆睡。
んで気づいたらもうニューヨーク。
そっから市内へ行こうとするも、直行で電車とつながってる訳でもなく、一旦メトロカードを買ったり、行き先を確認したりでなんやかんやあって
2、3時間遅れて宿に到着。ニューヨークは実質2日くらいしかいれないので、早速荷物置いてタイムズスクエアを目指します。
とにかくアメリカとは真逆のキューバからきたからか、アメリカのネオンとか、人の数、高層ビルとかもう興奮が半端ないです。
世界の中心タイムズスクエア

ぬおおおおおおおお
なんじゃこりゃぁ!!!
人種のサラダボウルやぁ
はい、そういや朝からなんも食ってねぇわと思い、ニューヨーク名物路上販売のチキンオーバーライスを食いました
うめぇです。
疲れも溜まってたので就寝。
次の日はニューヨークでやりたかった事ランキング1位の朝のセントラルパークを散歩するためちょっと朝早起きしてパンとキャラメルラテをテイクアウトしてセントラルパークでで食べてたけど
めちゃくちゃ寒い。
凍えながら楽しそうに散歩してる犬を眺めます。
食べ終わった後は、ひたすら散歩。

いや、まじで大きいんで半分くらいしか見れてはないけどもっとダラダラしたいなぁと
ジョンレノンが殺された場所にも行きます。

そっからはブロードウェイをずーっと通ったマンハッタンのかなり南まで歩きました。
そっからブルックリンブリッジ〜
ほんまに木でできてるんやな〜

ほんで、ダンボへ。
オシャレな倉庫街から橋が見える所はめちゃくちゃ人気です。

ここら辺のカフェでも休憩して、またマンハッタンに戻りました。
そっからチェルシーマーケット(写真から撮ってない)とかお土産を数軒回ってました。
買い物終えた後はとりあえずマクドへ。
本場のビッグマックてどんなもんじゃいって思ったけどめちゃくちゃ小さい。いや、マジで小さいから。
その後妹も学校の研修(?)でニューヨークいるらしく、なぜか貧乏なおれにサンドイッチとプリングルスを奢ってくれました。
そっから大雨降ってきたんで走って帰ってたら
アレ?財布がねぇ?
さっきまでポケットに入れてたし、え?
えっ?!
ってなっていや、クレカ3枚中2枚入れてるぞと思いなが焦ってきた道を走って戻ってたらタイムズスクエアまで帰ってきててそったらタイムズスクエアのど真ん中におれの折畳み財布が直立して立ってました。
サンキュー大雨。サンキューGOD
その日は30キロくらい歩いたんで、ヘトヘトになって1日終了。
次の日は米ドラマ頻出らしいグランドセントラル駅に行ってそっからニューヨーク現代美術館に向かいました。なんとなく
美術の授業で見たことあるやつもあるなぁと思いながら見てたけど、

これなんやねねん

芸術って難しい
そこからニューヨークで一番有名なチキンオーバーライスを食い、やっぱり自由の女神を見たいって思い、バッテリーパークへ

本来なら高い金払って自由の女神の島まで行きたい所やけどもあいにくそんな余裕はないので島と島をつなぐ無料のフェリーに乗り込みそっから見える自由の女神で我慢します。

ふーーーんって感じです
片道30分の船旅を終え、そっからはワールドトレードセンター跡地へ。
高層ビル群の中をスルスル抜けていくと、大きいアナがあいた広場が、
いや、本当に本当にマンハッタンのど真ん中。
そんな所に飛行機が突っ込んだかと思うとめちゃくちゃ恐ろしいです。

さ、そっからは最後にタイムズスクエアへ。
ここが本当に世界一周で最後の最後の場所になりました。
平成までに終わらせたかった
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I love MOMA’s classic neighborhood. @themuseumofmodernart . MOMA周辺の古い建物や、街の佇まいも好きなんです。 . . . #moma #midtownmanhattan #上野朝子のマンハッタン散歩 (at MoMA The Museum of Modern Art) https://www.instagram.com/p/CEpmLhyM_1E/?igshid=1ijtfpq5rwrsm
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Autumn in New York Central Parkはエレガントな一面を持つ。この日は逆さ富士ならぬ、優雅��逆さまマンハッタンを見せてくれました。公園の中にはたくさんの橋があるけれど私はこのボウ•ブリッジに惹かれます。#autumninnewyork #bowbridge . . . #mycentralpark #秋の空 #上野朝子のマンハッタン散歩 #上野朝子_ブルックリンの暮らし (at Central Park, New York) https://www.instagram.com/p/CGXbjXqlJnK/?igshid=3wj22kuow1km
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My new favorite tea spot in East Village. . やっと行けた! かわいい佇まいのお茶🍵屋さん @kettltea . . #上野朝子のマンハッタン散歩 #上野朝子_ブルックリンの暮らし この日はお抹茶を頂きました。 (at Kettl) https://www.instagram.com/p/CF94464ltSF/?igshid=vlatss4w5wi4
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Margot (My mother in low) and I are promising that we will meet each other more often, after this situation will be over❤️ (写真は数年前のものです) 義母のマルゴットさんは、マンハッタンのアッパーウエストのアパートで一人暮らしをしています。いつも自分で買い物にでかける89歳、元気なおばあちゃんです。ステイホーム中の今は、幸運にも階下に買い物を手伝ってくれる人がいて、会いに行かれない私たちは安堵しています。 寂しいけれど、今は会いに行けません。話し合って決めました。今まで通り居心地のいい自宅で、ひとりで居てくれる方が安全なのです。息子のデビッドも、他に3人、毎日電話をかけて、他愛のないおしゃべりをしています。 以下、州知事からのメッセージをシェアします。 「感染率は、我々が下げているんです。あなたが、私が、下げています。医療従事者でもフロントラインの従事者でもない。私たちがウイルスを制しているんです。私たちの今日の行動が、自粛が、子どもたちへの教育が、他人への思いやりが、明日の感染率を下げているのです。 マスクをしていますか?手を洗っていますか?ソーシャルディスタンスを守っていますか?子どもたちに話をしていますか?ハンドサニタイザーを使っていますか? 些細なことですが、これら全てをしっかりやることで、相当効果があるんです。外出を控えて、賢明な生活を送って下さい。 外出禁止令を出すのは辛かった。税率や投票年齢の告知などではないんですよ。政府が、家に居ろ、マスクを着けろ、って言うんですよ。皆さんにとって、とても辛い事だと分かっていますが、それでも皆さんは従ってくれた。状況を理解して、自主的に「right thing(正しい行動)」をすることを証明してくれた。お陰で前に進むことができた。皆さんが、州を、国を、前進させたのです。」 ニューヨークは、犠牲者の数は今日も600人を超えていますが、ピーク時のカーブは予想を大きく下回りました。少しずつ先の話も出てきていますが、ステイホームは5月15日まで、あとひと月ほど伸びました。 引き続き、一日置きくらいの散歩と、2週間に1〜2度の買い出し以外はHome Stay、がんばります。日本もがんばれ! #domypart🤍 #パークスロープライフ #上野朝子_ブルックリンの暮らし #マルゴットお母さん🧡 (at New York, New York) https://www.instagram.com/p/B_GPNhNlE_G/?igshid=1pwnldo5zfyxp
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Natural light, Inside of Freemans 🦌#chasingthelight . . デイライトが感じよく差し込むFreemans の店内。ここがオープンした時のカッコ良さったらなかったなあ。やられた〜ってドキドキしながら店内を見て回ったものでした。写真を撮りたかったけどインスタもなく(と思う) 、写真を撮るのは今ほど簡単じゃありませんでした。#そんなに前のことじゃないのに . . . #newyorkstyle #interior #modernvintage #ニューヨーク #asakoueno #上野朝子 #上野朝子_ブルックリンの暮らし #上野朝子のマンハッタン散歩 #日々のこと #フリーマンズ (at Freemans)
#上野朝子#フリーマンズ#そんなに前のことじゃないのに#ニューヨーク#日々のこと#上野朝子のマンハッタン散歩#modernvintage#newyorkstyle#asakoueno#上野朝子_ブルックリンの暮らし#interior#chasingthelight
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Girls dinner in Greenwich village. . 珍しく夕方からマンハッタンへ。サブウェイに乗ったら30分で着いてしまうグリニッジヴィレッジに、久しぶりに出かけて、美味しいイタリアンを頂く。女子会って楽しいな。#喋り足りない #レモン🍋のリゾット #goodchoiceをありがとう . 9時過ぎるといつも駅近くまで迎えに来てくれる夫と、帰りは家まで夜の散歩🌛。大分暖かくなったとは言え、夜はまだ冷える。 . . . #viacarota #westvillage #greenwichvillage #whitedishes #mycommontable #ニューヨーク #ニューヨークの暮らし #asakoueno #上野朝子 #上野朝子_ブルックリンの暮らし #日々のこと #foodporn #軽めの赤ワインと (at Via Carota)
#westvillage#asakoueno#ニューヨークの暮らし#レモン🍋のリゾット#日々のこと#mycommontable#goodchoiceをありがとう#上野朝子_ブルックリンの暮らし#ニューヨーク#軽めの赤ワインと#viacarota#whitedishes#foodporn#greenwichvillage#喋り足りない#上野朝子
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After snow storm. #hug #snowman & Mary . 今日は朝からマンハッタンへ。駅に行く途中、教会のマリア像に目をやると、雪がマリア様にハグしてるみたい⛄️だった💘。#スノーマンとマリア像 . . . #mary #snowman #snowstorm2018 #日々のこと #今日の散歩 #ブルックリンの暮らし #上野朝子 #上野朝子_ブルックリンの暮らし #asakoueno #ちょっとミラクル #snowstorm2018 (at Park Slope Historic District)
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