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TEDにて
ジョン・C・マザー:ジェームズ・ウェッブ望遠鏡が宇宙を拓く
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
ジェームズ・ウェッブ望遠鏡は、現代の科学と工学の奇跡です。
テニスコートサイズの遮光版で守られ、金メッキが施された6.5mの鏡を持つ世界一強力な望遠鏡であり
「我々はどこから来たのか?」「宇宙に生命はいるのか?」といった疑問に人類が挑む最新の試みでもあります(この望遠鏡は宇宙に打ち上げるために折り紙のように折り畳まなければなりませんでした)。
ウェッブを建造したNASAのチームリーダーを務めるノーベル賞受賞者のジョン・C・マザーが、この望遠鏡を使って宇宙の初期に最初の銀河が形成される様子を観測する方法や宇宙塵やガス雲の後ろを覗いて星々が生まれる様子を明らかにする方法。
エウロパやタイタンなど、生命を宿す可能��のある場所についての新たな詳細を見つける方法について説明します。
「この望遠鏡が大きな驚きをもたらしてくれる」とマザーは言います。
私が6歳のとき、父が言いました。お前は、とても小さな細胞でできていてその中に詰まった遺伝子が、お前の運命を左右するのだと。
私は思いました「それはすごいなあ。不思議なことが、いっぱいあるんだね。もっと知りたいよ」と。
私はガリレオやダーウィンについて読み、科学者になりました。
当時、解明されていたことは、まだ少なく我々はまだ化学元素が、爆発した星々から来たことも身の周りにある全ての物が、星の中身から再生されたことも。
自分らが、再生された星だとも知りませんでした。しかし、我々はビッグバンの観測に乗り出し、宇宙マイクロ波背景放射をミリ波で測定してマッピングしました。
これは、全天を楕円にまとめて分かりやすく示したものです。ビッグバンに関するこのデータには、寒暖のまだらがあることが分かります。
「まだら」は、最初の最初からあったものでその存在理由を誰も正確には知りませんが、銀河や星や惑星や。
やがて、人類の存在にもつながったのです。「まだら」がなければ、人類も存在しないのです。「まだら」が重要だとは分かりました。
では、どうしてそうなったのでしょうか?
次に何が起きたのでしょうか?
そこで、写真を撮ろうとなりました。もちろん、空の写真は、ハッブル宇宙望遠鏡で撮ります。この写真は1995年頃に、撮影されたもので遥か遠くの銀河が写っています。
これが可視光の観測ができる口径2.4mの望遠鏡で得られる画像です。この写真を見て、みんな感動しました。何千もの銀河が写っています。
ただ、誕生の様子が見られる最も遠い銀河は、撮影できませんでした。ですから、この写真に赤ちゃん銀河は写っていません。
必要だったのは、もっと大型で強力な望遠鏡であり、宇宙の果てからやってきて宇宙の膨張により引き延ばされ、赤外線となった光を捉えられるものでした。何が見つかるかは不明でした。
天文学者たちは本を書きこう訴えました「我々にもっと強力な望遠鏡を建造させてください」そして建造したのです。
これが、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡です。巨大な鏡が見えますね。六角形で赤外線が反射するように金メッキが施されています。口径は6.5メートルです。
それを守るのは5重の金属化プラスチック製の遮光板でテニスコートほどの大きさがあります。
この望遠鏡は大きすぎてロケットに収納できないので折り紙みたいに折り畳まねばなりませんでした。こんな望遠鏡を考案して建造できること自体が、素晴らしい工学上の偉業です。
こうして建造し、そして、打ち上げました。2021年のクリス��スの朝にフランス領ギアナから宇宙に飛び立ちました。完璧な打ち上げでした。
アリアンスペース社が、必要な位置に真っ直ぐ送り込んでくれました。ですから今後20年は、この素晴らしい新望遠鏡を運用して科学的な観測が行えると思います。
熱帯の雲を抜けて真空の宇宙空間に到達するまでに掛かった時間は、わずか2分でした。
では、この折り紙式の望遠鏡を宇宙空間で展開した様子をお見せしたいと思います。最初に太陽光パネルを展開しました。次が、通信アンテナです。双方向通信を行うためです。
次いで、巨大な遮光板を固定するパネルを展開しました。ここまで実際の時間では、2週間かかります。皆さんにお見せするために時間を短縮しました。現代工学の奇跡としか思えない実に複雑なものです。
この素晴らしい望遠鏡がなかったら同じことを他の方法で成しえたでしょうか?答えはノーでしょう。
必要なのは、大型の望遠鏡とそれが宇宙空間にあり、熱を発して自ら赤外線を放射しないよう低温にすることです。
3番目は、ここ地球からの指令だけで非常に注意深く展開されることです。
そんなに複雑なことが、なぜ可能だったか問われれば、まずは、練習、練習、練習です。リハーサルとテストでうまく行かなければ修正します。
そしてもちろん可能な限り、何でも2つずつ用意します。
3番目は、仲間たち全員と議論を重ねることです「本当にこれでいいのか?」「打ち上げ前に修正すべき間違いを何か見落としていないか?」などです。
そして、最後の手順が、ついに望遠鏡本体の展開です。これで宇宙空間に設置できました。ただし、まだ温かく焦点も合っていないので準備が整ったわけではありません。
これが冷え始めて次の手順を行えるぐらいの低温になるまで数週間待たねばなりませんでした。これを送り込んだのは、ラグランジュ点2という場所で地球の軌道よりも、およそ150万キロ外側にあります。
この点は、地球と一緒に太陽の周りを公転するので望遠鏡が離れて行くことはありません。ここは、そのような条件が満たせて、しかも片側だけの日よけで太陽と地球と月から望遠鏡を守れる唯一の場所です。
次は、我々が何を見たか?です。
観測したことのある星にジェームズ・ウェッブ望遠鏡の焦点を合わせて撮影しました。ぼやけた写真は2003年に打ち上げられたスピッツァー宇宙望遠鏡のもの。
鮮明な写真は、新しいウェッブ望遠鏡のものです。正しく機能してみんな感動しました。その星の鮮明な画像を得てこの被写体の感度が、計算できるようになりました。
あなたがマルハナバチだとします。その1センチ四方の体が、地球と月の間の距離だけ望遠鏡から離れた場所で羽ばたいていても、あなたが反射する日光と放射する熱の両方で我々にはあなたが見えます。
宇宙にマルハナバチはいませんが、未知の何かがあります。この望遠鏡はきっと大きな驚きをもたらしてくれることでしょう。
では、観測対象をお見せしましょう。ここは、こうして話している間にも星々が生まれている場所の一例です。今や我々は、星が爆発してちりを生み出し、そこから新たな星々が再生されることを多少なりとも知っています。
その再生が起こっているのが、この場所です。輝くガスとちりのこの美しい雲の中で星々が生まれているところです。
左側はハッブル宇宙望遠鏡が、可視光で捉えた画像で右側は同じくハッブル望遠鏡の赤外線カメラによって見え始めたちりを透過した画像です。
美しいですね。天文学者は、内部を見たいものですが、ウェッブ望遠鏡なら叶うでしょう。火星から外の太陽系が何でも観測できます。
これはかなり興味深い一枚です。
火星に生命がいる可能性は、皆知っていますが、エウロパはどうでしょう?エウロパは木星の衛星で氷に覆われた液体の海があります。それが分かったのもガリレオの名前にちなんだ探査機を送ったからでこれが我々が見て撮影した写真です。
今では、氷塊の割れ目から水が噴出していることが分かっていて 時々、その様子が、地球からでも観察できます。我々の計画は、そのジェット水流に探査機を送り込みその中に有機分子がないか確かめるというものです。
生命?いるかもしれません。この衛星もウェッブ望遠鏡で観測します。太陽系をさらに外に進むと我々が観測してきたタイタンがあります。
タイタンは太陽系の中で唯一、海と湖と雨と川と大気を表層に持つ衛星です。ただ非常に低温なためメタンやエタンなどの炭化水素が、液体で存在しています。地球では燃料として使われるものですね。
このことをこの先、ウェッブ望遠鏡で確かめ探査機を送り込んでヘリコプターを着陸させての探査さえ行います。ここは生命が存在しうる場所でしょうか?可能性はあります。
私もよく質問されますが、地球にいるような生物種が、本当に唯一の生命体なのでしょうか?
違うかもしれません。もし違うなら、ここは観測するのにふさわしい場所です。地球とは異なっていますが、固体と液体と気体があり、溶媒になりうる液体炭化水素があるからです。結果を待ちましょう。
次に我々が調べたいのは、生命のいる可能性がある系外惑星があるかどうかです。我々は、地球サイズの惑星を持つ小さな星々をこんな方法で観測します。
惑星が恒星の前を横切ると星の光が一部遮られますが、その惑星に大気があれば、星の光の一部がその大気を通過して我々の望遠鏡に届く途中でそれが分析できて大気の化学的性質が、探れるのです。
ですから第1は、その小さな地球型惑星に大気があるかどうか。
第2はその大気中に分子があるかどうか。
第3はその分子が水かどうかで液体の海ができるほどの量の水があるかどうかです。あるかもしれません。それを見つけてお知らせします。
宇宙に生命はいるのか?
それは、分かりません。しかし、このプロジェクトが終わった後も我々はさらに強力な望遠鏡で太陽のような星々を回る小さな地球を観測し続けるでしょう。
そのときには、こう言えるでしょう「本当に、本当に、地球みたいなのか���」���エスかもしれません。見つけたことは、全て皆さんにお伝えします。
手始めは、この夏に行う最初の科学的な観測です。ぜひご期待ください。天文学者たちは、光の速さで。そして、想像力の速さで旅をするのです。
宇宙望遠鏡に関して・・・
ハッブル宇宙望遠鏡(Hubble Space Telescope, HST)は、1990年に打ち上げられ、地球の周回軌道から宇宙を観測してきました。
ハッブルは、宇宙の膨張やブラックホールの存在、遠方銀河の観測など、多くの重要な発見をもたらしました。
ハッブルの主な観測波長は紫外線から可視光線、そして一部の赤外線までカバーしています。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(James Webb Space Telescope, JWST)は、ハッブルの後継機として2021年12月25日に打ち上げられました。
JWSTは、主に赤外線での観測を行うために設計されており、これによりハッブルでは観測できなかった初期宇宙の星や銀河の形成過程を明らかにすることが期待されています。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の大きさは、JWSTの主鏡は直径6.5メートルで、ハッブルの2.4メートルを大きく上回ります。
観測波長は、主に0.6から28マイクロメートルの赤外線を観測。
地球から約150万キロメートル離れた第2ラグランジュ点(L2)に配置され、地球の影響を受けずに安定した観測を目的に設計されています。
今後の後継機として
Nancy Grace Roman宇宙望遠鏡(Roman Space Telescope)は、2026年に打ち上げが予定されている次世代の宇宙望遠鏡です。
Romanは、広視野撮像装置を搭載し、ダークエネルギーの研究や系外惑星の観測に特化しています。
さらに、天文学者たちは地球型の系外惑星を観測できる巨大な宇宙望遠鏡の開発を提言しています。
これにより、将来的には地球に似た惑星の詳細な観測が可能となり、生命の存在を探る研究が進むことが期待されています。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡やRoman宇宙望遠鏡のような次世代の観測機器は、宇宙の謎を解明するための重要なツールとなり、天文学の新たな時代を切り開く可能性が期待されています。
<おすすめサイト>
背景重力波について2023
ジュナ・コールマイヤー:銀河とブラックホールと星々の最も詳細な地図
アンドリュー・コノリー:宇宙へ向けた次の窓は何か?
<提供>
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【My Favorite Movies of 2022】
【My Favorite Movies of 2022】
ノー・シャーク
バスタブとブロードウェイ: もうひとつのミュージカル世界(U-NXET邦題ブロードウェイとバスタブ)
エルヴィス
セイント・モード/狂信
アポロ10号 1/2: 宇宙時代のアドベンチャー
スペンサー ダイアナの決意
NOPE/ノープ
ミセス・ハリス、パリへ行く
幸せへのまわり道
マイ・ニューヨーク・ダイアリー
*今年も「3年ルールで2020年以降公開を新作とカウント」します。 ◆劇場で
『エルヴィス/Elvis』
“その時、腰が動いた”。メンフィスからラスベガスまで悪夢と背中合わせのスターダムを貪り、貪られ、��え尽きるまでの英雄暗黒神話。パーカー大佐を語り手に大胆に解釈した、魔術(ブードゥー?)的ジェットコースター映画。20世紀アメリカ史、ポップ音楽史、芸能史、信仰、亡霊…の複数レイヤーはぴったりくっ付いたまま、どれも切り離せない。エルヴィスもその一つ。でもこんだけアメリカの光と影を象徴するポップアイコンは、エルヴィスかマリリン・モンローくらいだろうな。(奇しくもその2人の映画が同じ年に…)
『スペンサー ダイアナの決意/Spencer』
『ジャッキー』に続き、パブロ・ララインの20世紀実録風「亡霊映画」。ジョニー・グリーンウッドの音楽、まるで棺を運ぶように進む車列、そこにあるキジの屍、そして「何かが見ている」気配を感じる亡霊視点のカメラが過剰にオカルトホラー。ダイアナは魂を失くした着せ替え人形と化し、二つの屋敷の間に放置された案山子だ。けど、ララインは亡霊を殺しはしない。ただ穏やかに安らぎを与えるのだった。
『ミセス・ハリス、パリへ行く/Mrs. Harris Goes to Paris』
憧れは力なり。キラキラ輝くドレスと、それに心奪われる瞬間のドリー・ズーム!ミセス・ハリスの赤い頬、ちょこまかした仕草、時に押しが強い姿勢、旅行鞄で佇む姿はまるでパディントン。でも実は対価についての話であり、「箱とその中身」の話で、ある意味左岸派映画。贅沢は敵じゃない!レスリー・マンヴィルとイザベル・ユペールの共演こそ、ほんと贅沢でした。
『NOPE/ノープ』
思った以上にスローバーン。そして思った以上に『ヴァスト・オブ・ナイト』と対になる。何せ、方や「I see you」、方や「I hear you」だもの。アレはアダムスキー型というより、下から見上げたカウボーイハットみたいだった。
『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』
作家になるにはNYだ!と、まずは憧れの力ありき。でも書く以前に読んでばかりの読書映画。ひたすらインプットの日々、消化しきれないほどの情報や知識や刺激的体験が次々と。羨ましいやらわかりみ深いやら。「フラニーとゾーイー」を久々に読み直したくなった。
◆配信で
『ノー・シャーク/No Shark』 https://www.amazon.co.jp/dp/B09KGFZ86K?tag=vod_contentsdetail-22
サメに食われたいのにサメはなし。NYのビーチを転々としながら、ひたすらその時を待つ女の脳内モノローグが延々と続く。まるで「ゴドーを待ちながら」か、ひとりマンブルコアか。正に人を食ったようなオチと、Toby Goodshankのエンディング曲がダメ押しする、デッドパンでナンセンスな「探索的狡噛」。それでもれっきとしたビーチ映画でサメ映画(反ジョーズ映画)。あの声とリズムが妙に心地良かった。
『バスタブとブロードウェイ: もうひとつのミュージカル世界/Bathtubs Over Broadway』 https://video.unext.jp/title/SID0067147
企業ミュージカル・レコード沼へようこそ。それは知られざるミュージカルの宝庫、もう一つのショウビズ世界。名作や名曲があり、巨匠もスターもいた。深い、深いぞこの沼は…!愛と情熱、同志との出会い、真剣で貪欲な探究心が思わぬ広がりを見せていくのにワクワクしかないドキュメンタリー。マニアの真っすぐで曇りのない愛が起こす奇跡に清々しく心洗われた。
『セイント・モード/狂信』 https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B09HNDY45W/ref=atv_dp_share_cu_r
『キャリー』meets『ミザリー』を更にメンタル・スプラッターに振り切った感じで、ローズ・グラス監督デビュウ作は完成度高いと思う。陰気に寂れたコニーアイランド、ワンルームのアパート、主演モーフィッド・クラークが良い。
『アポロ10号 1/2: 宇宙時代のアドベンチャー』 https://www.netflix.com/title/81161042
ロト��コープ・アニメで事細かに再現したスペースエイジの子供時代。ギプスしてる子が必ずいたとかイタズラ電話とかあったあった、TVアンテナに巻いたアルミホイル細かすぎ!でも記憶とは既にファンタジー。同じ69年の『ベルファスト』と通じると思った。ベトナム戦争とアイルランド紛争、少年の頭の中で混じり合う虚実、モノクロやアニメーションとしてパッケージ化した少年時代…けど、こちらには帰る家があって安心して眠れる。その楽観性が尊い。
『幸せへのまわり道』
(Amazonプライム、 U-NEXTほか)
トム・ハンクスはご本人完コピ以上に、優しく細めた目の奥にぞっとさせるブラックホールを演じているから恐るべし。殆ど瞬きしないし笑顔なのに笑ってない、『コラライン』のボタンの目みたいな…つい覗き込んでしまうようなその目に映る自分を見つめざるを得ない。ロジャースさんのシーンは全部、心がツーンとする。君たちは僕であり、君にできたなら僕にもできる。大変だけどやらなくちゃ…。ご本人の歌声が流れる中、優しさの王国ミニチュアセットを組み立てる男たちの手!
◆他にも良かった
『アネット』
緑のローブで殆どメルド(ドニ・ラヴァン)と化してるが、アダム・ドライヴァーはマイクとも人形ともプロレスができる、ほんと良いプロレスラーだな!先にサントラ聴いてたのもあって、スパークスのナンバーが頭から離れない。
『レット・ゼム・オール・トーク』
事件のないミステリー。ロードのないロードムービー(客船だから)。けど作家と探偵と死体はいる。そこがとても面白い。いわば聞き込みをする探偵役、ごく自然と年上に懐き気を許させるルーカス・ヘッジスのリアクションが絶妙。ソダーバーグは今まで特にピンとこなかったけれど、これはかなり好みで楽しかった。
『さよなら、私のロンリー』 https://www.netflix.com/title/81239497
エヴァン・レイチェル・ウッドの長くて重たそうな髪とダボダボな古ジャージ姿、動物的で芸術的な身のこなし、そして野太い声のインパクトたるや。生まれたてでおっぱい目指して匍匐前進する場面はちょっ��感動しちゃう。痛くて甘くて苦くて儚くて曖昧で奇妙な、説明しにくい感覚をユーモラスに掬い取ってみせるミランダ・ジュライ。『ニューヨーカー誌の世界』にある短編小説の映画化『ロイ・スパイヴィ』も、ほろ苦く甘い後味が好き。
『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』 https://www.netflix.com/title/81341644
銀貨30枚より銃よりも強いのは、権力のバッヂ(今だからこそ尚更うんざりする話だ)。言葉と目力で深く静かにカリスマ性を放つダニエル・カルーヤと、身軽な身体で飄々とリアクションするラキース・スタンフィールドがとても良い。特に「何なんだよもう!」って巻き込まれて焦って悪足掻きするラキースは毎度最高、そのジレンマは滑稽なほど哀しい。監督シャカ・キングの演出が非常にソリッド。
『ワールド・トゥ・カム 彼女たちの夜明け』 https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B09HNDVQL7/ref=atv_dp_share_cu_r
黒髪長身キャサリン・ウォーターストンと赤毛ヴァネッサ・カービー、これ時代が違えば『テルマ&ルイーズ』だ。だから悲劇だけど希望でもある。展開とは裏腹に、雪に覆われ荒涼とした冬景色から夏を迎え、来るべき世界へと「台帳には記録されない」女たちの地図。
夜空に星のあるように(リヴァイバル)
ザ・フォッグ(リヴァイバル)
ディナー・イン・アメリカ
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
ヒッチャー ニューマスター版
家をめぐる3つの物語
ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野
パワー・オブ・ザ・ドッグ
ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!
幸せの答え合わせ
TOVE/トーベ
目指せメタルロード
トラブル・ウィズ・ユー
ペトルーニャに祝福を
元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件
洞窟
マチルダ・ザ・ミュージカル
ホワイト・ノイズ
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清華大学の法学者、許章潤氏が7月6日、当局に拘束された。(12日に釈放されたが、その件についてはのちに述べる。7月8日公開「習近平政権が改革派言論人を逮捕してまで封殺したかった『批判の中身』」参照、以下、許先生と表記する)。
許先生が捕まったという知らせが入ったのが、7月6日の昼過ぎ、友人の大学教授、Tさんからのメッセージだった。
許先生と親交のあり、共通の友人である北京のKさんから「許先生の自宅の周囲に20台ほどの車が停まり、許先生が連行された」と涙ながらに電話があり、筆者にも伝えてほしいとことづてがあったという。早速Kさんに電話を掛け、同様の内容を直接聞いた。
以前も少し書いたと思うが、許先生とは3年前、来日した中国の自由派知識人グループから案内役を頼まれた旅行で知り合った。
箱根で、許章潤・清華大学教授(筆者撮影)
箱根と伊豆を2日半で回る旅で、筆者は宿や食事の手配からレンタカーの運転、観光地でのガイド役と、彼らの短い旅を満足してもらえるよう、できる限りの「おもてなし」をした。夜、箱根の静かな温泉街を、許先生と2人で歩いたのを覚えている。
ただ正直なところ、その時は許先生について多くを知らず、ましてやその後彼がこのような運命をたどるとは、全く予想していなかったので、あまり深い話はできなかったが、大変物静かな印象だった。
翌日、元箱根から箱根湯本に戻るバスが観光客で満員となり、かろうじて1人分の座席が取れたので許先生に勧めたところ、「クーティエンジュン(古畑君、彼は私のことをこう呼ぶ)は私たちのために大変な思いをし、疲れているのだから座ってください���と固辞され、1時間近く運転席の横で静かに立っていた。全く偉ぶったところがなく、しかも辛抱強い人だと感心した。許先生とは帰国後、メールのやり取りを続け、何本か論文を送ってもらった。
許先生はその約半年後、東大の訪問学者として再び来日、約半年間を東京で過ごしたが、その間の2018年7月、習近平政権を厳しく批判する「我々の現在の恐れと期待」をネットで発表した。帰国が迫っている先生にできればお会いしたいとダメ元でメールを送ったところ、すぐに返事があり、T教授とともにお会いした。
「自分は帰らなければならない」
その時の経緯は以前も書いたが、帰国すれば危険が待っているのではとたずねたところ、「自分は帰らなければならない。国外で声を上げても仕方がない。国内にもこういう声があるということを示さなければならない」と決心を語られたのだった。
ただ正直なところ、先生はその時、清華大学を辞めさせられ、地方の大学に左遷されるのではないかと話しており、学術会議などで再び国外に出られるかどうか、それが大学や当局が自分をどう見ているかの判断基準となるだろうと語ったが、その後の運命は彼の予想を上回る苛烈なものだった。
許先生とは、帰国後も微信などで連絡を取り合っていた。しばしばアカウントが停止されるため、友人から新しいアカウントを教えてもらっては、連絡を取り、無事を確認した。最後に連絡をとったのは5月。「また連絡が取れましたね」「いつか会える日を心待ちにしています」とのメッセージを送り合った。
だが、処分が厳しくなり、教育や研究の機会を奪われると、許先生が書く内容は以前にもまして厳しくなり、当局の逆鱗に触れるのではないかと心配していた。
だから今回のニュースを知っても、「とうとう来るべきものが来たか」というのが正直な印象だった。先生自身も、今年初めに出した「激怒する人民はもはや恐れていない」の中で、「自分がこの文章を発表することで処罰されることも覚悟しており、これが最後の執筆になるかもしれないが、責任逃れはしない」と覚悟を述べていた。
香港問題が引き金か
とはいえ、今回の「買春」という容疑は先生の上述のような人柄を考えたら、全くもって理解できず、許しがたい。
米コロンビア大学のアンドリュー・ネイサン教授はVOAのインタビューで次のように批判した。「(拘束に)驚きはしなかったが、ショックだったのは、中国政府がこの憲法の下でいかなる違法行為をしていない、非常に傑出した教授をこれほど厳しく弾圧したことだ。言論の自由を行使した許氏に対し、当局は『買春』という罪を着せた。このことで恥をかくのは許氏ではなく、中国政府の方だ。今回の事件は、中国の体制がいかに全体主義化したかを示している」
だが、「香港国家安全維持法(国安法)」を香港基本法の原則に反して導入し、言論統制を一気に進めた香港への対応や、攻撃的な「戦狼」外交を見ても、体制維持のためには外国から何を言われようがなりふり構わず突き進む「振っ切れ感」が今回の許先生への対応につながったとの指摘もされている。ある中国人学者の知人はこう語っている。
「習近平は許章潤氏を憎んでいたが、ずっと我慢していた。おそらくは世論への配慮だろう。だが香港問題で、共産党は赤膊上陣(上半身裸で戦いに加わる、何も気にすることなく物事を行う)し、横暴にも香港の自由を奪った。覆っていた布をすべて取り去ったのだから、何のためらいもなく以前から捕まえたかった許氏���捕まえたのだろう」
「香港問題と今回の事件は関係があるだろう。どのみち恥知らずのことをしたのだから、もう1つそれを重ねるのを恐れることはなくなったのだ」
さらに「習近平は決して自分に対する批判を許さない。共産党を厳しく批判しても、彼は許すかもしれないが、自分に対するたとえ温和な批判でも、決して許さず、必ず報復する。ある友人が警察に呼び出された時、警察からは『政府を罵ってもいいが、習主席を絶対に罵ってはいけない』と言われたという」と語った。
最近でも習近平を「権力を渇望する道化役者」などと批判した著名企業家、任志強氏や、新型コロナウイルスへの対応を批判、習の引退を求める文書を発表した法律家、許志永氏らが当局に拘束されている。
それでも許先生を知る知識人の中には、自分たちの思いを許先生は1人で代弁してくれたという声がある。友人で作家のY氏は、筆者に次のように述べている。
ちなみにY氏によると、許先生は1989年の天安門事件当時、中国政法大学の教員で、自らデモやハンガーストに参加したのだという。
「誰かが真実を語らねばならない」
「許章潤先生はここ2年の間、共産党が自分の権利を奪ったことを厳しく批判、特に習近平本人の行為について厳しい批判をしていた。これが逮捕された真の理由だ」
「ある会合で、彼は『どんな時でも、誰かが立ち上がって本当のことを言わなければならない』と語っている。彼はこのことを自分の責任だと感じていた。彼の一連の文章が発表されると、中国の知識人の間に大きなセンセーションを生み、多くの人は彼の勇敢さをほめたたえたが、一方で政府から報復されるのではないかと心配する人もいた」
「ここ数年中国の言論の自由はますます悪化している。体制に異を唱える人々の立場はますます厳しくなっている。許先生の言論は時代の問題を鋭く突き、最も危険な話題から逃げることがなかった。彼はだがこれにより自分にどのような結果が及ぶかは分かっており、すでにそのための準備をしていた」
「彼が警察により連行されたという情報はソーシャルメディアで大きな関心を呼んだ。多くの人が彼の待遇が不公平だと感じ、共産党政権による残酷な管理強化の現れだと受け止めた」
このように語るY氏に「許先生の思想には自分も賛同するが、現在の厳しい言論統制の下で、やり方がやや急進的ではなかったか。他の表現の方法もあったのではないか」と聞いてみた。これに対し彼はこう語った。
危険を知りつつも…
「彼の言論は『急進的』ではなく『危険』と言うべきだ。確かに、最も危険な言論であり、間違いなく報復されるであろう言論だった。だが、許先生の文章が広く尊重されるのは、彼の道徳的勇気のためだ。彼は国民全体に向かって、多くの人々が言いたいが言う勇気がないことを敢えて語ってくれた。現在の中国では、(直截的ではない)よりましな表現方法など私も思いつかない。隠喩式の��指桑罵槐(し���うばかい、遠回しに批判する)の言論すら削除され、処罰される。許先生はこの点を見抜き、思い切って立ち上がり、正々堂々と自分の主張を明確に述べたのだ」
そして、最後にこう語った「ある会合で、彼は次のようなことを言っている。つまり、勇敢とは、危険を知りつつも、それでもやらねばならぬことをやることだと」
つまり、彼は為政者に決しておもねることなく、言うべきことを正々堂々と言う、危険な道を自ら選んだ。このことが彼に対する共感を生んだのだ。
香港の著名な作家、顔純鈎氏もフェイスブックへの投稿で、次のように許先生を評価している。
「許章潤先生は今日最も勇敢な読書人(知識人)である。彼は民間の正気(正しさを貫く気概)を代表し、埋没することない民族精神を代表している。共産党は彼を捕まえたが、彼の声を消し去ることはできないばかりか、人々により深い影響を与え、彼の歴史的な地位はより崇高なものとなるだろう」
許先生が拘束される直前、彼のこの間の主要な論文をまとめた著書が米国から出版された。許先生はこの「戊戌六章」という著書の序文で、次のように書いている。
「立憲民主、人民共和の国家を」
「この書の目的は、人々の思考を刺激し、精神を凝集し、心を合わせて『中国の問題』を解決し、『立憲民主、人民共和』の公共の邦家(国家)を作るためにある。このような大きな転換をしなければ、中国は現代世界の体系に生き残ることはできず、人々の平安や文化の発展など論外だからだ。この公共の邦家がなければ、祖国は党の全体主義の植民地であり、人々はみな搾取される人質にすぎない。この世の中の正しい道に逆らい、赤い帝国へと突き進むのならば、行き止まりが待っているだけだ」
そして「中国が100年の紆余曲折を経て、再びスタートラインに戻るには、世界文明の体制に順応し、その正しい道をひたすら進み、新たな中国の文明を建設し、新しい中国を作ることにかかっている。さもなければ、ここ数年の中国のように再び世界の主流から孤立するのであり、その危機がすでに現れている。大きな転換が実現しなければ、天地は荊棘(いばら)のようであり、人々は安住することができない。人々が恐れおののき、国全体が不安に満ちたなら、この国土と人々はどうして平安を保つことができるだろうか」
つまりは中国が憲政による民主主義を実践し、国や社会の大転換を図ることが、新たな社会参加の力を得て、世界の中で再び輝くことにつながる正しい道だと指摘しており、全くそのとおりである。だが現在の体制はこれに背き、国家主席終身制に代表される権力集中と憲政民主の否定、毛沢東時代への思想的回帰、そして国際的な協調路線からの離脱による危険な道を歩んでいる、つまりある著名な民主活動家が指摘したように、「改革」も「開放」も否定したのだ。
なおこの本は、許先生がこれまでに発表した論文をまとめたもので、香港での出版を予定していたが、香港の出版業者が難色を示したため、米国で出版されることになったという。グーグルで電子版の購入が可能なので、許先生の思想に興味のある方はぜひ先生を応援する意味でもクリックしてほしい。
さて、前述のように、今回の拘束は、香港問題と関係があるとのある知り合いの中国人が指摘している。
以前本欄でも書いたのだが、許先生と並ぶ著名な自由派知識人の張千帆・北京大学教授は、「英中共同声明」や「香港基本法」の精神に則り、一国両制度を完全に実施すれば、香港社会は安定すると述べていた。(「反発と羨望が入りまじる「香港デモ」中国社会の複雑な受け止め方」参照)
だが習近平政権はこれとは正反対の対応を取った。高度な自治という約束を破って、中国本土並みの厳しい言論統制を敷き、香港から自由と民主を奪おうとしており、すでに「物言えば唇寒し」という雰囲気が生まれており、フェイスブックでも中国に批判的な投稿がほぼ消えてしまった。
中国のネットでは、「港独(香港独立派)の害虫を退治する殺虫剤」などと「国安法」を称賛する文章もあるが、筆者の知る多くの中国人は、微信などのSNSで、この問題について沈黙を保っている。
それについて、友人のJ氏が許先生の問題と合わせて、次のように語ってくれた。少々長いが引用する。(前述のY氏を含めいずれも安全性が高いとされる通信アプリを使った。)
人々は分かっている
「西側国家は国安法について、中国が(人の意見に耳を貸さず)ひたすら独断専行していると批判している。だが中国は耳を貸そうとせず、2つの世界の分裂はますます深刻になっている」
「この問題は体制内外の両面から見る必要がある。体制内の人間は恐らく、5割くらいの人は(香港問題を含め)どういうことか分かっている。だが妄議中央(中央をデタラメに論ずる、共産党の方針を批判すること)が許されない規定に加え、18回党大会以降、(国家主席)任期を撤廃し、監視機関を強化し、国家機関を私物化し、無数のアプリによって公務員に対し(習近平に対する)個人崇拝の雰囲気を生み、人々を疲弊させ、(国や社会の)問題について考える時間を与えないようにするなど、体制内の人々の思想を統制し、自ら知り得た政府の内幕を外部に知らせないようにしている。同時に千万もの五毛党(お抱えネットユーザー)らを使ってネットを一掃し、虚偽の“民意”を作り出して権力者に奉仕している」
「一方、体制外の人々の2割は(真相を)分かっているだろう。だが高圧的な統治の下、ネットや現実社会の中で“真相”を語ったら、間違いなく当局による厳しい監視体制により、どんなに軽くても当局の呼び出しを受ける。(ましてや)許教授に降りかかる結果はすでに目に見えている」
「中国本土の人々が国安法をどうみているか?私の周辺の体制内の人間は決してこの問題に触れようとしない。人々は『立派に死ぬより見苦しく生きる方がいい』という処世術を持っている。だから何も語ろうとしないということが、彼らはどういうことか理解しており、つまりは(暗に)反対の態度を表明しているのだ。心から賛成しているのなら、口に出して言うだろう」
「香港はかつて最も人気のある留学先だった。学生は香港の大学の学歴を得ることは名誉だった。だが今彼らの夢を壊そうとしている人がいる。この国安法がどうして大衆の支持を得るだろう?だが(暴政の下で)人々は恐れて口に出せず、道で人とあっても目で合図するしかない。このことが民衆の態度をよく表している」
「外国の反対を権力者は全く意に介さない。それは、(1)防火長城(GFW、ネット規制)により真相を覆い隠している。(2)14億人の韭菜(ニラ、いくら刈っても生えてくることから、いくら搾取してもすぐに代わりがきくこと)を抑えておけば、必要な金はすぐに手に入り、外国の金など大したことではない。(3)彼らは中国を70年統治し、人々の生殺与奪の権利を握っている。人々は跪いて運命を受け入れるしかない―からだ。彼らはさらに14億人を従わせるのに満足するだけでなく、中国モデルを世界に拡散しようとし、その第1歩に香港を選んだのだ」
「彼らにとって、香港は(民主化運動を武力で弾圧した)1989年の北京のようだ。当時彼らは(西側からの制裁を受けたが、)幸運にも西側政府や資本から許しを得て、騙すようなやり方で世界貿易機関(WTO) に入り、山河を汚染し腐敗によって得た金で表面的な経済の繁栄を手に入れた。そして今彼らは香港で賭けに出た。だが彼らは勝てるだろうか?」
「実際には中国は彼らが吹聴するほど富強ではなく、各方面は崩壊に瀕し、骨まで腐っていると言える。でなければなぜあれだけ多くの官僚や金持ちが子女や財産を海外に移すだろうか。彼らはこの国がどのようであるか当然最も理解している。彼らはこのボロ船がいつかは沈むと分かっている。彼らはこの政権の巻き添えを食いたくないのだ。彼らこそ最もお見通しなのだ」
「中国人の中の中国人」
「許章潤さんは、権力者にとっては1匹のアリにすぎず、踏み潰すのに何の力もいらないだろう。だが中国の歴史の中では、彼は時事の良し悪しを論じ、権力者に向かって敢えて『ノー』と言う勇士であり、正々堂々とした中国人の中の中国人だ。彼は将来の中国の歴史の中で、その名前を刻むだろう」
彼やYさんのように、香港問題を含めて一定以上の知識と外国の情報にアクセス���きる人々は事の本質を理解しており、許先生を支持している。問題は彼らが声を上げられないということだ。
許先生はこうした言論環境の中で、敢えて自分が声を上げたのだ。先生が書かれた「この世の中、いつも誰かが出てきて語らなければならない」という文章に、先生のこうした思いが述べられている。詳しくは紙幅の関係で紹介できないが、彼は最後にこう述べている。
「この世の中、いつも誰かが出てきて理を説かなければならないのだ。そうすることで人々が住むのにふさわしい世の中となる。誰が最初に声を上げるか、それは法律の天賦の才を持つ法律家が言うべきだ。社会には弁護士という職業がある。人々は弁護士を育てたのは、彼らに理を説いてほしいからだ。理にかなった、安寧な日々を人々が送るために、法律家、そして億万の同胞よ立ち上がれ!」
本稿を編集部に提稿後の12日、許先生が釈放され、自宅に戻ったというニュースが飛び込んできた。この件について、北京にいる友人、Kさんは筆者に次のように語った。
「許先生が釈放されたが、これで終わったわけではない。恐らく当局は、許先生を拘束し、国内外のメディアや社会、学者がどのような反応をするか、試してみたのではないか。それを踏まえて、次の手を打ってくる恐れがある。いずれにせよ、許先生は当局が最も警戒する知識人であり、我々もまだ安心できない」
我々としても、引き続き許先生の動向に関心を持ち、不当な処遇を許さないというメッセージを送り続けることが必要だろう。許先生には、ぜひ再び学者として活躍の場が与えられてほしい。そして日本を再び訪問し、前回の旅の続きをともにしたいと心から願っている。
(本稿は筆者の個人的見解であり、所属組織を代表するものではない。)
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・ フェンス越しの埠頭…船…青い空…青い海… 埠頭にいくと…どうしても空や海だけに、目がいってしまいますが…目線をちょっとだけ変えると、こんな素敵なポイントが見つかります。 また一つ写真の撮り方、小樽の見方を教えてもらった気がします。 #respect @nao_basic ・・・ 小樽の港 . #函館本線途中下車の一人旅 . . #港 #港町 #海 #海の見える街 #海 #海がある生活 #海が好き #海が好きな人と繋がりたい #波 #海岸 #船 #漁港 #灯台 #カモメ #水平線 ・ ・ #小樽 #小樽運河 #小樽サイクリング #小樽運河サイクリング #小樽観光レンタサイクルCOTARU #ノーと言わない観光案内 #otaru #otarucanal #otarucycling #cycling #otarucanalcycling #cotaru #rentalbike #ThankYouForABeautifulPhoto #ILoveOtaru (小樽港)
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BOMBTRACKを愛用するバイクガイドが行く、チェンマイ〜ヴィエンチャンのバイクパッキング旅
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こんにちは、スタッフの由谷です。
上の映像は、僕の友人が1月末から2月頭にかけて出かけてきたタイ〜ライオスへのバイクパッキングの様子を収めたものです。
幾度か前振りがあったとはいえ、ある日唐突にルートが送られてきて、それも10日間ほどのバイクパッキング旅の提案。
僕自身もワンデイ・ライドであれば唐突に提案することがあります。でも、数日間の旅となると考えることができてしまう...仕事のこと、家族のこと、道具のことなどなど、色々とあります。
サッと返事ができずにいた僕は2日後に足首を捻挫し、旅に参加できない身体的理由ができてしまい悶々としていると、誘い主の友人は一週間後に意気揚々と東南アジアへと出発していったのです。
その友人とは、富士山麓でバイクガイドを生業にするライドマニアであり、山行にも精通したアウトドアマン「Mitt氏」。
ARISE 2、HOOK EXT、BEYOND PLUSの3台を、ライドのスタイルで使い分けるBOMBTRACK愛好家です。
ハッピースマイルなMitt氏が運営するALOHA BIKE TRIPでは、オンロードライド、MTBのトレイルライド、さらにパニアバッグを装備したツアーライドなど、富士山周辺の自然を活かした多様なバイクアクティビティをガイドしてくれます。
3月から12月までのガイドシーズンを終えてオフシーズンになる冬期は、暖かい地域へ出かけたくなりワクワクするというMitt氏。以前には、ボルネオへ、オランダからドイツへ、一昨年にはアメリカ西海岸へ、昨年はベトナムへと、その時の直感に従い自転車での旅を計画するようにしているそうです。
バイクガイドを行っていると、国内はもちろんのこと外国からのお客さんをアテンドする機会も多いと聞きます。
あるとき、善行から悪行まで書ききれないほどユニークな逸話を話すタイからのスーパーセレブなメンバーと意気投合。
「タイでサイクリングは何処が良いんだ?」と聞くと、
口を揃えて「チェンマイ!」と言い、
「タイランドの格言で、いくら金持ちでも死んでしまえばお金を天国まで持っていけない。貧しい人達へ生きてるうちに還元しろ。」
「それがタイの人達の心であり、歌でもそう言う事を歌ってるのがタイ人に好まれるんだ。」
と話す姿が心に響き、今回の旅の目的地のひとつであるタイのチェンマイ行を決めます。
地続きで越境することに魅力を感じてたこともあり、隣国のラオスが目に留まり、空のあるヴィエンチャンまで、距離611.5km / 累積標高8,996mのバイクパッキングを計画。
Google Mapでリサーチし、Ride with GPSを利用して山間部や川沿いを選んで引かれた今回のルート。
農村部では主要道路であってもダート道であることが多く、交通が頻繁で斜度のある道では脇を押して歩くこともあったそうですが、山間部では、笑ってしまうほどの急勾配が所々あるものの気持ちの良いワインディングを楽しめたようです。
そして、ヤシの木やバナナなどの南国らしい木々が生い茂り、犬猫に鶏やうずら、豚や牛までもが放し飼いにされ、自由な動物たちと人工物のない景色が永遠と続く印象的な時間を過ごすことに。
タイの国民は、その95%が仏教徒と言われているそうで、立ち寄った寺院も立派。接する人々は穏やかで旅人へ温かく、同じアジア人として心が蘇った気持ちになったそうです。
タイのチェンマイ市内の道は整備されていて車やバイクの運転が穏やかな印象だったものの、ラオスのヴィエンチャンでは道も運転も荒いようで、油断できなかったとのこと。
隣り合うタイとラオスは文化も似た印象を持っていましたが、タイの方がより穏やかだったそうです。気候についても、タイは穏やかでグリーンなイメージで、ラオス(ヴィエンチャン)の方が灼熱感を感じたようです。
東南アジア最大のメコン川を挟み向かい合うタイとラオスの両国ですが、地続きで互いに見える距離にあるとはいえ、気候や資源など少しずつ異なる環境によって文化にも違いが出ていることに驚きを感じたとのこと。
この旅のルートは、人里離れた山間部や農村部を通ることが多く、宿のないエリアに備えてテント泊の装備を持参。
テント(MSR Hubba NX)はもちろん持参。暑いと思い、シュラフカバー(GORE)とマット(Therm-a-Rest)で寝ていたようですが、それが失敗。
東南アジアとはいえ、山間部の気温は10℃くらいになるので肌寒く、せめてコンパクトな夏用のシュラフ本体(羽毛200〜300g)を持っていけば良かったと後悔が残ったようです。
今回は、暖かい気候の中でサイクリングがメインの旅。自転車上で動きやすいサイクリングジャージの上下をメインに、速乾性のTシャツにストレッチショーツとインナーパンツを持参したとのこと。
よりカジュアルな服装も持参したかったところですが、荷物を極力少なくしたかったので、自転車に乗りやすい裁断で体が動かしやく速乾性にも優れたサイクリングジャージをメインに。
ライド時には大量に汗をかき頭から爪先まで砂だらけになることがあったり、一日の走行距離が100kmを超えることもあったため、結果的にサイクリングジャージをメインとしたことは正解だったようです。
しかし、今回のように暖かい環境でしっかりと走る旅であっても、カジュアルさも併せ持つ中間的なウェアがあれば、オフの活動も気兼ねなく行えるのでより良かったのではと思ったようです。
さて、今回の旅のテント泊について、少々困ったことが2つあったそうです。
ひとつは野焼きの影響。
山間部ではテントを張れそうなところがたくさんあったものの、暗くなるとあちこちで燃えているのが見えるほど野焼きが行われていて、焦げ臭かったようです。
安全なポイントを求め、ヘッドライトを点灯してさまよっていると大きな建物を発見。テントを張らせてもらおうと声を掛けると、ふもとから8km先の���頂にあるキャンプ場まで車で送ってもらえることに。
一日中走り回りクタクタになった身体で、さらに8kmの急なヒルクライムは無理。とても助かったそうです。
もうひとつは入国審査。
タイからラオスへの入国時、入国管理局に宿泊先を聞かれ
「キャンプ」と答えると
「ノー」と言われ、上官が登場。
「キャンプは危ないからダメ。ゲストハウスの利用を約束するなら入国させる。」
何が危ないのか気になりつつ面倒臭さもあり、それを快諾し無事にラオスへの入国を果たしたそうです。
前述のとおり、BOMBTRACK愛好家のMitt氏が今回の旅の相棒として選んだバイクは、ARISE 2でした。
シングルスピードだったものに、シフターとディレーラー、そしてカセットスプロケットを追加し1x11化。バイクガイドでも日常的に使用する愛車です。
よく進むのに角がなく疲れにくく、路面を選ばずスムーズに進んでいく作りな上にパニアラックも付けることができ、バイクパッキングの旅にも最適とのこと。
同じくARISEを愛用する僕自身にとっても、Mitt氏の旅はAIRSEのポテンシャルとともに、ますます旅への意欲を沸かせるものでした。
度々お伝えしてきましたが、ARISEは日常からアドベンチャーまで、したいことを何でもこなしてくれるマルチなバイクですね。
Mitt氏のALOHA BIKE TRIPでは、車体や道具がなくともレンタル品が用意されています。
富士山界隈へ遊びに行った際に、一日はレンタルでバイクアクティビティ、その他の日は観光といった利用者がたくさんいるそうです。
富士山麓で自転車遊びがしたいときは、ALOHA BIKE TRIPへ相談すると幸せになれますよ。
問い合わせ:http://www.alohabike.com/
Photo: Yoshiro Higai
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【SASRISE インド旅行記15】
ガンジス川沿いのホテルにチェックインして、重いバックパックを置いてから、手ブラでバラナシの街を散策に出掛ける。 相変わらずそこらじゅうの子供から大人まで話しかけてくるが、ホテルの客引きが声を掛けてこなくなったので少し楽になった。 この街に到着してから暫くは重いバックパックを背負って歩いていたので、新顔なのがバレバレだったのであろう。
「ジャポネーゼ!ジャポネーゼ!」
バラナシの中心地のメインガートと呼ばれるガンガー沿いは日本語で話し掛けてくる客引きが多くめんどくさいので、観光客の少ない地元の人たちが使うマーケットを歩く。
マーケットを暫く散歩していると、ひとりの悪そうな露天の奴 「チャラ男」が絡んできた。
真っ黒に焼けた肌に折れた前歯が印象的なサングラス野郎だ。
今日は全く露店の物が売れないから店を閉めて、お前にこの街を案内してやると言う。どこで金をせびってくるかわからないので、とにかくノーノーノーと冷たくあしらうが、懲りずにずっと付いてくる。
しかし、あまりの暑さと「ここのチャイはうまいぞ」のセリフに負けた。
6畳くらいの小さなチャイ屋さんの中に地元の人達が円形状に10人くらい座っている。僕もその中に押し込まれ、ゆっくりしていけと言われる。何かヒンディー語で怒鳴り散らした会話が飛び交っている。客の年齢層は幅広く怖そうな人も優しそうな人もごっちゃごちゃだ。
チャラ男が教えてくれる。貧乏もリッチマンも色々な身分の様々な職業の人たちがこのチャイ屋に集まってきて、政治について熱く語っているらしい。 たしかにそんな風に見える。激論しているそのど真ん中に行けと店の中心まで押し込まれる。いやいやいや、この熱い討論を邪魔しちゃいかんでしょと躊躇したが、店の中心の天井部には扇���機があった。ゲストの僕を涼ませようと気を使ってくれたのだ。激論していた皆さんは僕が真ん中に押し込まれるとスッと穏やかな顔になった。日本からのゲストだとみんなに紹介されると、日本の事を色々と聞かれる。そして、みんな自己アピールをしてくる。
クッキーとチャイを奢ってもらう。
日本のタバコとインドのタバコを交換する。ここでも日本のタバコ(メンソール)は人気だ。
隣に座っていた35歳のおじさんは数学の先生だと言う。何歳の子供を教えてるの?と聞くと、生徒は子供から80歳くらいまでだと言う。インド人は勉強熱心なんだなあと感心。日本は数学なんて子供の時に勉強して大人になったらみんな見たくもなくなるもんだ。
暫くお店の中のお客さんたちと楽しく話した後、チャラ男が外に出ようと言う。こいつの目的は最終的には絶対金なので、警戒心を元に戻して、もう何も要らないよと断り続けるが、しつこくついてくる。
あまりの暑さと「ここのラッシーはうまいぞ」のセリフに負けた。
本場インドのラッシーも飲んでみたかったので頂く。確かに美味かった。インドのラッシーは飲むと言うより食べると言った方がいいくらい食感がある。日本円で30円くらいだったが300円払ってもいいくらい美味しかった。
ラッシー屋さんも出てくる器は素焼き(植木鉢みたいな)なのだが、使い捨てだ。飲み終わるとわる割って捨ててしまう。手間とコストを考えたらプラスチックや紙コップの方が良いのではないかとも思ってしまうが、伝統文化なのかインドらしい雰囲気があっていい。
ラッシーを頂いた後も、さらにチャラ男は付いてくる。 常時ハイテンションなので面倒くさい。。。
今度は土産屋を案内してきた。金を使わせる本性出してきたかと思い、「ノーノーノー」と連呼して強く断るつもりだったが、「ノー」だけで呆気なく諦めたので拍子抜け。
次には、ガンジス川への近道を教えてやるからついてこいと、人ひとりしか通れない迷路のような狭い路地を暫く歩く。ここで迷子になった 帰れないなぁ。
ガンジス川に出ると人気の無い静かな場所だった。
汗ダクになった体を休めようと日陰になった川沿いの雑草に腰掛ける。 ガンジス川では牛と人間が混浴している。
チャラ男はボートに乗らないかと誘ってきた。300円で乗せてやると言う。 チャラ男は露天もやってるがボート屋も手伝っているら���い。バラナシのガンジス川には無数の手漕ぎボートが停泊していて、この街では人気のアトラクションだ。ボート屋は手のひらにタコが出来ていて硬くなっている。街で話したボート乗りはそれを自慢げに見せてくる。チャラ男にも手の平を見せてもらったが、ちょっとだけタコがあった。確かに本業ではなく、手伝っていると言ったレベルの硬さだった。
ボートには乗ってみたかったが、まだこのチャラ男を信用していないので、抵抗のできなくなるボートの上は遠慮した。何度も何度も誘ってくるが断る。
時々、目の前を通る観光客にもボートに乗らないかとしきりに絡んでいる。絡み方がチンピラ風のオラオラなので、みんな逃げていく。それじゃ無理だろと心の中で思っていたが、チャラ男はお構い無しにガンガングイグイ絡んでいる。
チャラ男は隣に座っている僕の事も材料に使い始めた。日本人の僕の事をベストフレンドだと言って場を安心させたり、僕が1人でボートに乗れないからお前も一緒に乗ってやってくれないかなどと、勝手な事をベラベラと話す。
色々な観光客がいたが、白人はノーとハッキリ断るのも軽くあしらうのも上手い。日本人はモゾモゾして曖昧な返答をする。確かに日本人はカモにしやすそうだ。
ボート乗りのインド人視点で人間観察できたので暫くは楽しかったが、いい加減嫌気がさしてきたのでその場を立ち去ろうとすると、電話番号を教えてきた。夜になったらプジャーというお祈りの儀式がガンジス川沿いであって、それをボートから見せてやるから電話しろと。僕の電話はインドで使えないから意味ないけど、OKと返答してやっと解放された。
結局、本当はいい奴なのか悪い奴なのかハッキリ分からなかったが、
僕がバラナシにもし産まれてたらきっと友達で、一緒に観光客を絡んでたかもしれない。テンション高くて暑苦しい奴だったけど何となく波長の合う奴だった気がした。
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不思議なこと
1
初めてそれを目にしたのは確か17歳の冬だった。
温暖なサンクレメンテにあって、身を切るような尖った空気の朝だった。家の持ち主であるところのマチくんは撮影で長らく家を開けていて、兄の啓吾が大会に出るために滞在していたのを覚えている。その頃なんとなく朝飯の係になっていた俺がキッチンに入って冷蔵庫の把手に手を伸ばしたとき、足の裏が生ぬるくて柔らかい「それ」を発見した。
何をこぼしたんだよ啓吾、と舌打ちをしたい気分で足元を見下ろす。子どもの頃、水彩絵の具の筆をバケツで洗うと水が鮮やかに色づくのが好きだった。けれど他の色が混ざるとそれはすぐにどんよりと濁ってしまって、高鳴った心はすぐに成長できない枯れ木になるーーーそんなことを思い出した。どんよりとした灰色に濁った半透明のそれは、俺の足よりひとまわり大きく、俺の足にめり込みながら床にへばりついていた。
スライム、というのが俺が啓吾に説明したそれの形状で、人肌くらいの温度でぺたぺたしていて、弾性があって押せば形を変える。特に匂いはなく、けれど強固にへばりついて床からはがれない。ナイフを差し込んでみたけれど刃から逃げるだけで決して切断はできない。
俺に起こされた啓吾は不機嫌そうに台所に足を踏み入れ、ぐるりと床を見渡した。
「で? 何なわけ?」
「いや啓吾しかいないっしょ、うち今俺らだけなんだから。昨夜なかったし。なんなのあれ?」
「アヅサお前何言ってんの? 何のこと?」
「何のことじゃねえよこれだよこれ」
すっとぼける啓吾を睨み返して俺は足先で「それ」を指す。
「いやだから床がなんだってのよ…掃除しろってこと? そりゃ掃除は俺してないけど、なんかこぼしたわけでもないのに朝から起こされるい��れなくね?」
「何言ってんのこのスライムだよ」
「お前どうしたの?」
押し問答を繰り返した末に、俺は愕然とした。思えばあの頃の俺は新たに知ることばかりだった。なにせ17歳だった。どれだけスノボが上手くなっても「しょせんアジア人」とひとくくりに見られることとか、俺が精いっぱい考えたオリジナリティーが詰まったランより有名選手のポールの適当に流すランにジャッジは高得点をつけるとか、俺は天才に絶対になれないとか、そういうことを知った季節だった。
けれどまさか、俺には見えている”それ”が啓吾には(そしてマチくんやノエルやありとあらゆる他人にも)見えないなんて思わなかったのだ。それは何か取り返しのつかないことをしてしまったような不安を俺に植え付け、長く尾を引くこととなった。
2
ユウくんの長い腕が宙に弧を描き、ハミングが自由な動きで部屋中を浮遊している。
俺はソファに寝そべったままスマホ越しにユウくんの踊りを見る。広いリビングをいっぱいに使って跳んだり回ったり反ったり折れたり。それだけ自分の体を自由に使えたら楽しいだろうなというくらい、ユウくんの体はぐにゃぐにゃと動く。
今年この家をマチくんから譲り受けた俺は、オフシーズン是即ち休暇とばかりに勝手知ったる我が家でだらけていた。そのうちにユウくんがトロントから遊びに来て、ヤってヤってヤってヤってヤってヤってヤりまくって、ようやく飽きたら外に出てスケートボードを転がしたり海沿いを歩いてみたり家にこもって映画をみたりゲームをしたりと、気の向くままに俺たちは春を満喫した。
台所の「それ」はあれから変わらずあり、時々伸びたり縮んだりしている。相変わらず俺以外の誰も「それ」に気づくことはなくて、俺にもなんだか不快だが仕方のないものーーーこめかみのニキビとか、二の腕のブツブツとかーーーそういうものとして意識の奥に片付けられている。
だから、ユウくんが
「台所のあれ、ずうっとあのままなの?」
と言ったとき、俺は今日の夕飯なにする? と問われたときくらいなにげなく、ううん、と鼻に抜けた間抜けな声を出してしまった。
「え。今なんて? 」
「台所にさ、あるじゃん。なんかめちょっとしたの。ずっと前から。誰もなにも言わないからなんかそのままにしてたけど。この間来たとき、啓吾くんとかノエルもいたじゃない。あの時思ったんだよね、もしかして他の人には見えてない?」
何と言えばいいかわからずに、俺はユウくんの顔をしげしげと眺めた。小さな顔に小さな目と鼻と唇が行儀よく収まっている、とりたててどうということもない、なんというかほどよい顔だ。ユウくんは両足のつま先を外側に向けて体全体を大きく後ろに反らせた。両腕も後ろに投げ出してほとんどブリッジみたいな要領で、後頭部が床についてしまいそう。
「あ、イナバウアー?」
「だいたいそんな感じ」
「って、そう、他の人はわかんないみたい。多分ユウくんと俺しにしか見えてない」
ユウくんは手をつかずに体を起こして、上体を2、3回ひねってから俺の隣に腰を下ろした。そのまま続きを促すように俺の顔を覗き込む。
「一昨年の冬くらいからあってさ。剥がせないし、切れないし、時々大きくなったり小さくなったりする。でも匂いとかもないし、別になんか害があるわけじゃないからそのまんまにしてる」
「そっか」
「ユウくん来るってあたりから小さくなったわそういえば。なんなんだろ?」
「動物じゃないっぽいよねえ。かといって緑じゃないから光合成もできなさそうだし。腐らないってことは無機物なのかな」
「ユウくんはああいうの見えるの、よく」
「いや全然。霊感とかもありませんし」
「あっても驚かないわ、なんか。悪霊とか撃退してそう」
「それ俺がゴーストバスターのプログラムやったからでしょ」
「そうかも」
「ほかの何かとチャンネルが合ったな、と思ったことはある」
「何それ」
「エキシとかショーでたまに…星の光って曲をエキシでやったんだけど。俺がラジオだとしたらさ、滑ってる最中に‘何か’とチャンネルが合って。その意思のとおりに体が動いて、気付いたらその誰かが伝えたいことを俺の体を通して表現してた、みたいな…」
「…」
「何言ってるかわかんないって顔してる」
「まあ…」
「だから言いたくなかったんだよ! 俺オカルト好きとか厨二病とかじゃないからね!」
チャンネル、はともかく。曲や雰囲気に没頭していればそんなこともあるのかも知れない。
お互いがお互いの言葉を待ってしまって、ハリボテみたいな沈黙が落ちた。俺の腹の音がハリボテに穴を開けて、その話はなんとなくそこで立ち消えになった。
その年の春は俺にとって、もう冬が来なきゃいいのになあ、と思う春だった。世界選手権も終わったし金メダルとれなかったしもう苦しいこととか辛いこととかしたくない。でも大会前からなんとなく受けていたメディア出演で散々健気でストイックな天才をアピールしてしまった俺の背後は、崖とは言わないまでも荒地みたいになっていた。何も生えてない荒地。
マチくんにも兄弟にも心配されながら、俺は自分でもどこに続くのかわかんない荒涼とした道を歩いていた、ひとりで。
世界選手権で2度目のてっぺんを取って押しも押されもしない大アスリートとなったユウくんは俺に何を言うでもなく、雑誌みたよ、だとか広告みたよ、あのカメラマンさんの写真好き、だとかシンプルな報告をくれた。その度最近の俺について何か思うことないのと問いたくなったけれど、俺にしたって何を相談したいのか自分でもわからなかった。それについて考えると突然周囲が冷たい霧に包まれて体が重くなるのだ。
そうやって溜め込んだものが慣れないアルコールの勢いで決壊する���は必然だったんだろうか。俺がアルコールに手を伸ばすといつも咎めるユウくんがその日は珍しく何も言わなかった。冷えたバドワイザーがヘソの奥まで一直線に落ちていって、俺の体を弛緩さ���ていった。
「ずっと春ならいいのにー…帰んないでよユウくん」
「来月には一緒に日本じゃん。それともトロントにも来る?」
「そうする。ユウくんちの子になる」
「昼間は市内でスケボー転がして、夜はうちでご飯を食べる。土日は一緒にゲームしたり陸トレする?」
「送り迎えもする。俺のこと関係者だってクラブに通しておいてよ」
「ああ、あれね。クラブの外でアヅが待ってたの可愛かったなあ」
一昨年ノーアポでトロントに行ったら、Cクラブの入り口でガードマンにあっさり追い返された。出待ちもNOと警告され仕方ないのでクラブが視界に入るギリギリでスケボーを転がしてユウくんを待った。相手のホームにノーアポで行くのはそれまでの俺にとってはごくごく普通のことで、雪山にもスケートパークにもガードマンなんていなかったのだ。ユウくんと付き合うと俺の常識はことごとく通用せず、俺は自分がいかにスノボ村の王子様として生きてきたかをまざまざと知らされる。
「冬が来なければいいのいに、かあ。アヅがそんなこと言うの珍しいね」
「もうスノボやるの疲れた俺。コンテストライダーでいるの辛い。難しいトリックやるの怖いし、成功しても同業者にはダサいって言われるし、うるせえ黙れ俺に勝ってからモノ言いやがれ、ってようやく言えるようになるかなってとこでポールに負けるし。人種の壁なにげにすげえ高いし。かと言ってカズくんみたいなすげえ映像つくって世界一、とかにはなれないし。そもそもムービーもバックカントリーも興味ないし。ずっとこの先もしんどくて怖い思いして難しい技やってかなくちゃいけない? そんで体が動かなくなったら引退? スノボってそんなことのためにあるの? 俺の19年てなんだったわけ?」
口からぼとぼと落ちる汚泥の稚拙さに慄くけれど、いくら出してもまだまだ奥に気持ち悪いものが残っていてまったく胸が晴れない。うんざりするくらい凡庸な泥が俺の骨に深く根を張り血管をめぐり、全ての気力を奪っている。
ユウくんは俺の隣に座って、黙って俺の言葉を聞いていた。
沈黙が酒気とともに床に滞留していく。夕飯は俺が適当に作った親子丼とデリカのサラダと味噌汁だった。大した苦労ではないけれど、ユウくんはほっとくとヨーグルトやトマトなんかをかじって食事をしている気になるので押し付けがましく食卓に並べてやらなくてはならない。食べ終わった食器が乾いていく。水にひたしておかないと米が取れづらくなるんだよな。
「アヅはそのまんまのアヅで全然価値があるのに、どうしてそんなに自信��ないの? アヅのやり方やスタイルでいいんだよ。やりたくないならやらなくていいよ。アヅからスノボとったって何も欠けないよ」
ユウくんの言葉が俺の上に降り積もる。皮膚をはじいて跳ねる。
「俺は俺が嫌いなの。誰か別の人になるとかして人生やりなおしたい」
「どうしようもないんだね、気持ちが。そういうときはね…」
外はとっぷりと暮れていて、高い天井から照明が控えめに降り注いでいる。真上からユウくんの頰を照らしてその眼差しを浮かび上がらせる。
「バンドだよ」
「は?」
「やり場のない思いをぶつけるっていったらギター。青春といえばバンド。バンドやろうアヅ」
「いや意味わかんないそもそもユウくん楽器できたっけ」
「俺が最後にやった楽器は…そうだな、中学校のリコーダーかな」
「ふざけんな俺なんか小学校低学年のカスタネットだわ」
「ひとつくらいギターのコード覚えてさ、iPhoneでトラック流してそれ弾いたら何となくそれっぽくなるよ。俺ちゃんと調べたし人にもきいたよ」
「…」
「世界一稼ぐスノーボーダーのポール・ブラックだってバンドやってるんでしょ」
「ポールと一緒にしないで」
「とにかくバンドだよ、アヅ」
ちょっと待て。俺は深刻な苦悩を打ち明けたのになんでこんなことになっているんだ。そしてこの目は本気の目だ。このままでは謎のツーピースバンド(弾けないけど)が誕生してしまう。世の中に鬱憤と恨み言を巻き散らかすだけのバンドが(弾けないけど)。
目立ちたがり屋のユウくんがそんなことを始めて、ただスタジオに籠って遊んで終わりにできるだろうか。とりあえずiPodに音源や動画を記録するだろう。そのiPodが万一誰かの手に渡ったら? もし万が一、ユウくんを追っかけまわすマスコミに万が一そんなところを嗅ぎつけられたら。羽根井ユウト、オフはまさかのバンド活動。相棒は北野アヅサ。俺はネットに踊るしょうもない見出しや兄の爆笑や弟の苦笑いを想像した。絶対に回避しなくてはいけない。そもそも俺はバンドに興味はない。
「せっかくの提案ですがお断りします」
「えー、やんないの」
「俺はスノボ以外では一切目立ちたくない」
ざんねーん、と軽い返事を返して、ユウくんが食器をシンクに下げにいった。食器を洗っているであろう水音を遠くに聞きながらユウくんのぬくもりの残るソファに額をこすりつけた。それでもほかの誰かといるより100倍ましだ、このぬくもりが。このわかりあえなさが。
「アヅ、バンドがだめならもう一個あるよ」
軽やかな足取りでユウくんが戻ってくる。
「出かけるよ。着替えて」
3
ナイトアウトには早いけど夕飯には中途半端な時間。半歩先を行くユウくんの後ろを半歩遅れてついていく。スマホの画面にマップを呼び出しユウくんは道��辿っているようだけど、俺は目的地は尋ねない。目抜き通りから路地へ一本入ると一気に猥雑さが増した。スプレーで描かれたやかましいアートや道に打ち捨てられたタバコの吸い殻に、かろうじて胸と尻が隠れてるお姉ちゃん。去年マチくんたちと言ったハーレムに比べたらここはそこそこ清潔な方だろうか、そんなことをすれ違う人々の身なりだとか笑い方を見ながら考えていると、ユウくんは通りに面した木づくりの扉に手をかけていた。窓も何もない一階建ての古くも新しくもないウッドの外観。看板には「260」。
合板でなく一枚板で造られているとおぼしきドアは意外に重くて俺は少しバランスを崩す。中はオーセンティックを気取りたいけれどいささかの予算と気品とセンスが足りない、という雰囲気で、カウンター席のはじに女がひとり座っているだけ。ドレスコードはなさそうだけど、俺のファッションで入っていいんだろうか。ユウくんがジャケットを着てるからそれで許してほしい。
ユウくんの隣のスツールに腰掛ける。ごくごく軽めのアルコールとジンジャーエールをオーダーする横顔を眺めながら、そろそろ企てを教えてくれないかと俺は思い始めていた。
アジア系の若いバーテンダーは店の安っぽさに反して仕事は丁寧で、静かに手際よくユウくんにカクテル、俺にジンジャーエールを出してくれた。ジンジャーエールは出来合いではなくちゃんと生姜の味がして、よく冷えていた。
「今日はどこから?」
「トロントから。友人が以前サンクレメンテにいて、ここを教えてくれたんだ」
言うなりユウくんは俺の肩を抱いて
「弟を迎えにきたんだ。子どもの頃からずっと離れ離れだったけど、ようやく一緒に暮らせるようになって」
と、言った。
俺はあっけにとられて思わずユウくんのグラスを見た。青いカクテルはほんの少しだけ口がつけられていて、底に果実の繊維が沈殿している。お酒が飲めないユウくんでもさすがにこれくらいでは酔わないだろう。
「それはおめでとう。君はずっとカナダに?」
「もともとは俺も弟も日本に住んでた。俺は進学でカナダ、弟は母に連れられてここに」
ユウくんは出し抜けの打ち明け話に少し戸惑った様子のバーテンダーに微笑んで見せる。
「俺が小学生になる前に両親が離婚して、お互い全然どこにいるかもわからなかったんだ。俺、今年就職するからこの機会に彼に会いたくて」
俺は静かに鼻から息を吐いて、全身の力を抜いた。とにかくリラックスして現実についていかなきゃならない。
「俺もそうなんだ。あまり初めてのお客さんにする話じゃないけど、世界のどこかに妹がいるよ。俺はもう探せるあてもないけど…君たちは幸運だね」
「ええ。建築が学びたいっていうんで、トロントで大学に通わせるんだ。彼にとってはお節介かも知れないけど、父も母ももう他界してて、世界でひとりだけの家族だから」
ねえ、とユウくんが俺の顔を覗き込む。俺は小さく首をうなづいた。
「迷惑だなんてそんなことないだろ、嫌だったらついていかないだろ、君だって」
バーテンダーが俺に水を向け、俺は小さな声でya、と呟いた。
「俺、進学できるなんて思ってなかったから。兄が迎えに来てくれただけでも嬉しいのに、何したいの? って聞かれて答えたらそんなことになって。何ていうか、こんなことあっていいのかなって。働けるようになったら恩返ししなきゃないっすね」
俺の喉はかつてないくらい潤って舌が別人のように動いた。ユウくんの前だって本物の兄弟の前だって、こんなに流暢に喋れたことがあっただろうか?
「どれだけ恩返ししなきゃなんないのか、そっちの方が怖いねえ」
バーテンダーはそう言って、僕はクリス、雇われ店長だけど、と名刺をくれた。
ユウくんは受け取りながら
「ありがと。俺、働くのは今秋からだからまだ名刺がなくて。ビジネスパーソンとして一人前になったらまた来るよ。僕はハルキ。弟はショウヘイ」と言った。
クリスはショウヘイ・オオタニ! ショータイム! と笑いながらバットをスイングするそぶりをした。
そしてたったこれだけの会話で、俺は初めて会ったバーテンダーとの間に、何かしらの糸が結ばれつつあるのを感じていた。
俺はもうこのバーテンダー、クリスにとって完全に見知らぬ人間ではなくなった。この街を歩いていればいつかどこかでこの人とすれ違うことがあるかもしれない、そうして互いにcheers、だとか軽く挨拶をするのかもしれない。
ユウくんは次はノンアルコールカクテルを注文して、ハルキとしての過去を語り続けた。ぺらぺらと、けれど設定に破綻なく日本出身でトロントでスポーツマネジメントを学び今秋からPR会社で働くことや、子どもの頃の俺との思い出を明るくときに淡々と語った。そしてときに俺に話をふった。俺は演技という意識さえほとんどなく、かえって語るほどに、言葉と自分自身とが接着されていくのを感じた。
クリスはほどよい距離感で相槌を打ち続け、ユウくんは俺のグラスが空いたタイミングで「そろそろ帰ろっか」と俺を促した。
目抜き通りの交差点で信号待ちをしながら、俺は通り過ぎていく車とユウくんの肩越しの頰を眺めていた。
不思議に興奮していた。埒を越えると口から何かが溢れそうだ。ショウヘイになりすましたついさっき。このいい知れぬ悦び。ドキュメンタリーやノンフィクションを通してではなく、肉声と表情を以って他人を騙り、ショウヘイの喜びや戸惑いを内側から感じるというのは、依存性を持つ心地よさだった。
ユウくんを呼ぶと、彼は振り返って半歩下がり俺の隣に並んだ。
「ユウくんは、いつもこんなことしてるの」
「まさか。トロントで俺引きこもりだし。バレたら超恥ずかしいじゃん。あ、でもさっきのお店を人から教えてもらったのは本当だよ。バーに行ったことないって言ったらベンジに「ユウは恋人をバーにエスコートしたこともない��⁉︎」って嘆かれて。今度アヅに会いに行くって言ったらサンクレメンテにいたことがある友達にリサーチしてくれたの。適当に静かで、適当にカジュアルで、適当に治安がよくて適当に親切な店。バーの作法なんてわかんないからネットでめちゃめちゃ調べたよねー」
ユウくんの言葉はおもちゃの兵隊のように俺の前を過ぎ去っていく。きらびやかで甲斐がない。
ユウくんはかがんで俺の目を覗き込む。車のヘッドライトがその瞳に一瞬映り込み、ぴかりと残像を残した。
「ねえ、アヅはど���だった。他の人になるの」
「後味は最悪だし、恥ずかしくて人に言えない遊び。でも、すごい興奮した」
「もっと喋って」
「…話せば話すほどショウヘイになってった、俺。楽しくてもっともっと喋りたくなって。言葉の通りの人生だったら俺どんな人間だったろうなってワクワクした。でも俺の20年間って俺なりに色んなことがあって重いはずなのに、それがなんていうか人を騙ることの全然足かせにならなくて、虚しい。自分の20年がすごいいいものでプライドあったら、そんなことしても意味ないって最初からわかるはずじゃん」
「そうだね」
「だから今はほんと、虚しい」
「うん。楽しいけど得るもののない遊びだったね」
「なんでこんなことしたの」
「なんでかなあ。バンドがダメならこれだって思ったんだ」
信号が変わり、ユウくんは俺の腕を軽く掴んで歩き出した。宵と享楽が目抜き通りに渦巻いている。
なんでかなあ。ユウくんはもう一度繰り返して、ストライドを広くして俺の半歩先へ出た。家まで、俺たちはその半歩を保ったまま歩いた。
その晩、俺たちは再会して初めてセックスをしないでただ抱き合って眠った。夜半に喉が乾いて台所に行って水を飲んだ。あのゼリーのような塊はカーテンの隙間から漏れる街灯の灯りを受けて、輪郭の曖昧な光の粒を浮かべている。
ユウくんが眠る前に言っていた。「あのスライム、ひと周り小さくなってたよ」。
確かにその通りで、それは鈍く光りながら身を縮めていた。
4.
翌朝、ユウくんと朝食を採っていると隣人でありマネージャーのノエルが様子を見に来た。ユウくんはノエルと軽く挨拶を交わしている。横乗りのコミュニケーションにも随分慣れてきたみたいだ。
ノエルがタブレットを見せて言うには、俺がスケートボードでワールドカップを目指すならば、デカいスポンサー契約の可能性がある、とのことだった。それは最近アメリカでも見るようになった日本のアパレルメーカーで日本に帰るとみんなここのインナーを着ている。低価格で高クオリティー、スタンダードなデザインで日本人のクローゼットを10年で塗り替えてしまったメーカーだ。
他にこの企業にスポンサードされている面子を俺は冷めた目で見る。他業界のレジェンドクラスのアスリートや、やがてそうなるだろう人たちばかりだ。
「俺をこの端っこにくっつけてやってもいいよって言ってんのT社は。太っ腹だね、俺がスケートでコンテスト出てたのなんてガキの頃の話だよ。もし俺が東京五輪目指すこと表明してさ、行けなかったらどうなんの」
「日本人のほとんどが’アヅサだっせーな黙ってスノーだけやってりゃいいのに’と思い、10人くらいが’チャレンジに価値がある! アヅサ素敵!’と思う。それでT社からは契約通りの金額が振り込まれる。それで終わりだよ」
challengeをゆっくり発音してノエルが肩をすくめる。
「でもアヅサにとって日本人にどう思われるかは重要じゃないだろう、違うかい?」
「そうだけど」
「簡単なことだ。スケートをやってT社と契約する。スケートはやるけどT社とは契約しない。そもそもスケートをやらない。この3つだ。時間はあるよ。マチに相談するかい?」
「マチくんに相談してもやりたいようにやれって言われるだけだし、自分で決める」
今年俺は二十歳になる。二十歳になったら、スポンサー仕事もメディア仕事も全て自分でイエスかノーを決めると父に約束させていた。父はこの金額を見たらイエスと言うだろう、二十歳の誕生日まではあと半年ちかくあるけれどそんなの誤差の範囲だ。
ノエルは最近伸ばし始めた髭をいじりながら考え込むような目になった。俺はタブレットをあてもなくスワイプしながら、体がどんどん重くなっていくのを感じる。どうしてこう未来というのは義務のようにやってくるのだろう。俺は去年死にかけるケガをして、それに立ち向かって世界選手権で銀メダルを手にした。それを評価してくれるならもう楽にしてほしい。
でも楽に、ってなんだろう。
ノエルの肩越しに、庭でノエルが連れてきたケヴィン(ゴールデンレトリバーのメスで男にばかり懐く)とユウくんが遊んでいるのが見える。ノエルが俺の名を呼ぶので、俺はフォーカスをすぐに切り替えた。
「いずれを選んでも、君が今まで積み上げたキャリアは変わらない。君は若くして英雄になったのだから、もっと自由に人生を楽しむべきだ」
また来る、と行ってケヴィンは帰っていった。
その背中を見送って、ソファの上に転がる。俺の今年の予定はこまごまとした仕事を除けば、ユウくんの日本での仕事に気が向く限り着いていくことと9月にマチくんが撮るムービーのメンツに混ぜてもらうことだけだ。
そのままスマホでインスタグラムを眺めていると、ばさっと何かが乗っかって、目の前が真っ暗になった。戻ってきたユウくんがスウェットか何かをかぶせたのだ。外側から自分もかぶさってきて、ソファの上の俺を両腕で捕獲する。
「やぁめ」
声がくぐもってしまう。スウェットにはまだユウくんの体温が残っている。
背中に体重をかけられ、前後にゆれながら喋るのは大変で、俺はつい笑ってしまう。
「俺に構ってくれたらやめる」
ユウくんが俺をますます激しく揺さぶるので、俺はひたすら丸まるしかなく、笑うと息ができなくて、やめて、構ってあげるからやめて、とあげた声はかすれ掠れになった。
突然体が軽くなって、目の前が開けた。新鮮な空気を吸い込む。ユウくんが床に座って俺を覗きこんでいた。
「アヅ、ノエルと難しい話してたでしょ」
「難しくはないけど…スケートボードでワールドカップ目指すなら新しくスポンサーつくけどどうするって話」
「そう。ふたりが話している間、台所に行ったの。あれ、朝より少し膨らんでた。まだ前ほどの大きさじゃないけど」
窓から差し込む日差しが、ユウくんの頰を透かしていた。薄く血管が見える。目の下が赤らんでいるのはここ数日のサンクレメンテ暮らしで日に焼けたからだろうか。
「アヅの気持ちに影響されるんじゃない、あれ」
「そんなことあるかな」
「そんな気がするよ」
ユウくんが俺の手を抱えてそのままソファに突っ伏したので、俺は空いている手でユウくんの髪を梳く。
さっきの歓笑の余韻が陽だまりに溶けていく。親愛と優しさ。
ふと、泣かないで、と思った。その後自分に驚いた。
ユウくんに心配してほしかったのに、いざユウくんが俺を気にかけてくれるとはぐらかしてしまう。いたく身勝手な振る舞いは彼ををいくばくか傷つけただろうか、先の大会で首位に届かなかった俺と、怪我明けの不十分なコンディションから爆発的なパフォーマンスを発揮して首位に立った彼。ナイーヴなユウくんがそのことを気にしていないはずがないのに、俺はそんなことも意識的に思考の外に追いやっている。
でもその優しさに報えない。方法がわからない。
ふと台所の水たまりのことを考える。あれが俺の気持ちに左右されるというなら、何にだろうか。不安か、不快か、なにか。だとしたらあれは一生消えないだろう。この家にいつか次の住人が住むことになってもきっとある。見えなくてもそこにあるのだから、そのうち何か誤作動ををするんじゃないだろうか。古い家に憑く怪談って案外そんなものかも知れない。説明できない現象にこの恋のような理屈に戻せない気持ちが加わったりしたら、何が見えたっておかしくない。
俺の思考がオカルティックに逸れたところで、ユウくんが俺を散歩に誘った。お昼を食べに外に行こう、できたら海に、と。
「いいけど…ねえユウくんは引退しないの」
「どうしたのいきなり。しないよ。とりあえず今年はしない。ねえ俺、あのレモネードもう一回飲みたい。水色の屋根の」
手を引かれソファから立ち上がる。
ユウくんの手は他の指に比べて親指が長い。この手が、いつも俺をどこかへ連れていく。
6.
世界一を二回とりましたので、俺は俺の好きなことをやるし皆さんに素敵なものをお見せしたいんです。とばかりに曲も振り付けも自分の趣味趣向で固めたきちがいじみた難易度のプログラムをぶち上げ、俺はそれを見て自由っていいな、と思った。
結局はそれが決め手だった。ユウくんのように華々しくはないが、スケートボードに本腰を入れることにした。スノーはやりたくなるまでやらない。コンテストには戻るかも知れないし戻らないかも知れない。スケートボードの腕前はスノーの順位には程遠いが、どうせいつかはスノーだって勝てなくなるのだ。ならば少なくともやりたいことをやって自分の地面に雨を降らしたい。
スケート転向後こそ多少は注目してもらったが、大会を追うごとにメディアの数は少なくなっていった。それが自分でもびっくりするほど心地よくて、アスリートとしての距離はどんどん離れていくけれど、なぜか今までで一番ユウくんを近く感じ���。
15歳で出会ったとき、ユウくんは俺の神様だった。それから侵略者になり、18歳で俺が大怪我をしたときは怪物(クリーチャー)に姿を変えた。もしかしたらやっと、俺たちは恋人になれるのかも知れない。
ユウくんは翌シーズン明けもサンクレメンテにやってきた。今度は春ではなく夏に。世界選手権で若手に完敗し、闘志を取り戻して。それでもオフの休暇はここで過ごすんです、といわんばかりのスケジュール取りが嬉しい。
俺は俺でスケート挑戦を決めてからまったく時間がなく、今回の休暇はもっぱらボウルに出かけてひたすらスケートボードに乗る俺と、それを観たりちょっと離れたところでゲームをしているユウくんという形になった。ユウくんが帰ればすぐに俺も中国へ遠征だ。
「ねえアヅ、台所のあれ、消えたんだね」
「実は去年の秋に消えたの、一回。でもまたできたりなくなったり、繰り返し」
「へえ。今は苦しくないの?」
「辛いとか考える暇ない。スケートボードで頭いっぱいっす」
「もうやんなくていい? バーで別人になる遊び」
「今はいいわ」
ボウルからの帰り道、ユウくんは嬉しそうにふにゃっと笑った。
太陽がようやく傾き、サンクレメンテの長い昼が終わる。熱せられたアスファルトや草いきれ、スケートのデッキがゆっくりと熱を失っていく。
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Photo
「ソングリズムトラック」 - 比較
歌のリズムがトラック」アライブドラミングのモバイルミュージシャンのAppで生産対応リズミカルな支持を提供します。それはで提供されていますアップルのiOSのApp Store。
アライブドラミングさん「選択しダウンロードして再生するモバイルアプリ-アライブドラミングはそれに最も便利なフォームだ、ミュージシャンの生産・品質リズムバッキングをもたらしソングリズムトラックを」。
ソングのリズムトラック
ソングのリズムトラックは完全に曲の音楽の形に配置されたリズミカルなバッキング(ノーメロディーやハーモニー)から構成されるバッキングトラックの新しいタイプです-それは「だ songform」。これらのトラックは1つが、プロのドラマーから取得するような完全な公演です。彼らは、カウントイン、導入部、コーラスや特性語尾、セクションの開始を示すフィルとendで囲まれています。でも音楽の橋やミドルコーラスは、スタイルに適した高い強度を有します。このすべては、典型的なアレンジャーのインタフェースなしで、それによってそれをシンプルに保ちます。一つは、30秒の下でトラックを選択することができます- 15秒で1がそれのこつを取得した後。
アプリケーションのプレイヤーがテンポ調整し、あなたのギグやジャムセッションのためのトラックを配列決定する施設があります。それはすべての能力のミュージシャンのためです。新しいミュージシャンが曲に伴奏を提供するために、アプリケーションを使用しています。すべてこの中に魅力的で感動的なリズムを楽しんで-彼らは、時間を維持溝に入ると曲の音楽的構造を内部化することを学ぶように、交感神経でリズムを取得します。ギグのミュージシャンは、セットリストの中に彼らの裏をカタログし、パフォーマンスを導くためにそれを使用します。セットリストの施設やミュージシャンのプレーヤーで、品質リズムバッキングを持つ、すべてのアプリケーションはとても便利である1の1は、より多くのこのリズムバッキングを使用して自分自身を見つけます。
ミュージシャンのプレーヤー
「ミュージシャンのプレーヤー」 -それは何ですか?画面を暗く一つは、バックグラウンドで再生されます、良いサイズのボタンがあり、物理的なボタンと音量を変更することができます。はい、それが、この選手はまた、トラックの音楽の形表示などを
“4 choruses of 32 bars of standard AABA form (8|8/8|8) with no intro’ and a 4-Bar ending”,
そして提供し、それが果たしている。このように対して視覚追跡を。これは、彼らがトラックを再生しようとしている直前のミュージシャンが欲しい情報です。彼らが演奏しながら、彼らはその場所を失いビットを起動した場合、ディスプレイにチラッ可能性が高い「それらを取り戻すだろうトラックに再び」。
リズムの大規模な図書館
ありますリズムの膨大な数 とあなたの歌のための無限の音楽の形式は。選択したら、配置されたトラックはアライブドラミングのサーバーからダウンロードされ、それが再生のためにあなたのデバイス上にとどまります。アライブドラミングは、彼らがユーザー自身の組成物およびアルバムのリリースに含まれるコンピュータに転送することができるので、トラックをリミックスするためのユーザー権限を付与します。
歌のリズムが離れてトラック何を設定しますか?
私たちはしばしば、この分野で新たな技術革新が表示されない-通常、それはワークステーション製品の改善や再加工がある-しかし、ソングのリズムトラックはある全く新しいアプローチミュージシャンをするためにその古来の必要性に対処する良いリズムバッキングを取得し、簡単に。
ノー・モアシーケンシングありません
選択名で曲の形式を選択するか、によってスティック表記を使用してシーケンシング・インターフェースを提供する上では、以前に見られていない技術革新と、このアプリケーションにその文字を与えてくれるものです。それはミュージシャンだけで曲の音楽の形を知っている必要があることを意味します。最初に、彼らはそれを理解していないとしても、場合彼らはこのことを知っています。ミュージシャンは、使用されている名前に精通していないかもしれないが、アプリケーションはまた、使用説明提供スティック表記をので、一つにより選択したときsongform名、
“32-bar AABA”,
トラックはまた、使用して表示されますスティック表記をと
“32 bars of standard AABA form (8|8/8|8)”.
アライブドラミングの上の資源がたくさんありますウェブサイト上のsongformが。実際には、songform名は全く使用されている必要はなく、1にも使用して選択することができますスティック表記を、
“8|8/8|8”,
そして、非常に同じ説明が表示されます、
“32 bars of standard AABA form (8|8/8|8)”.
このアプリは、ミュージシャンのために提供して独自の定義「を使用して、曲の形式の表記を貼り、例えば」、
“8|4/8|6”,
複雑な、ユーザー定義のフォームを可能にします。また、さらに複雑な形態は、歌への四つの部分から独立して繰り返しで可能です。でも太鼓休憩とプッシュは現在手配可能です。
アプリケーションはまたのための施設が含ま歌の配置を共有するので、あなたの歌のための配置がすでに共有されている場合、あなたはそれを見て、それを使用することができます。
ノーモアドラムループ
ソングのリズムトラック完全、生産対応のバッキング・トラックではなく、ドラムループ���提供します。しかも、ドラムループを使用していないアライブドラミングのサーバーのいずれか。彼らは記録が単一のドラムヒットや演奏の1つのバーよりも長い、8小節である可能性が高い有能なドラマーの高品質の録音を使用します。アライブドラミングは、シーケンシング・インターフェースを提供していないので、シーケンスへのドラムループはありません。代わりに、指定するための簡単な選択インタフェース(I)がある曲のフォームの配置および(ii)のリズムが。これは、クリーンなインターフェイスを保持します。唯一のオプションは、カウントインから特徴的な結末にコーラスを通じて完全なトラックです。ループであってもプレーヤーのインターフェイスで提供されていません。このアプリは、練習と高品質、完全、生産対応のトラックを実行する程度であることは明らかです。これは、プロのミュージシャンや目の肥えたアマチュアのためです。それは非常に、非常に遠くの玩具からであるドラムマシン。それは私たちが長い時間に持っていたほとんどの音楽の楽しさを提供します。
サービス
アライブドラミングのバックエンドサーバは、モバイルデバイスに完成したトラックを提供し、シーケンシングおよびオーディオ制作を行います。これは、すべてがいずれか、アプリ内にある特注のループを使用して、またはiOSの」一般的なMIDIサウンドを使用して他のドラミングのアプリで撮影したアプローチではありません。これはアライブドラミングのソリューションがないこと、最初は、ダウンロードが完了するのを待っているユーザーがいるが、これは高品質で、サーバーからのオーディオトラックの大きい選択を可能にします。
ミュージシャンに優しいデザイン
ユーザーエクスペリエンスは、テーブルではなく、難解な設計およびシーケンシング・インタフェースなどの標準のiOSの機能を採用し、「パフォーマンスに優しい」です。ミュージシャンのためのミュージシャンが使用して簡単になるように設計されています。私たちは新しいトラックのすべての時間を再生していると、再生時のシーケンスドラムループを無駄にしたくないので、トラックを指定するには、簡単なインターフェイスを持つことはミュージシャンにとって重要である-ので、本当の私はミュージシャンの大半を決してしない疑いがあることこれでありますシーケンス・ドラムはループ-それはあまりにも多くの努力だと悪い結果を提供します。しかし、それは全く違うと見通しているソングのリズムトラック 1は、素晴らしいサウンドのバッキングを提供する新しいトラックを、指定する15〜30秒かかります。
これは、プレイヤーと同じミュージシャンフレンドリーなアプローチです。これは、プレイヤーが使いやすいことを、実行または練習か、ミュージシャンにとって重要だ – 大きなボタンを読んで – そしてそれはそんなに多く便利な代わりにアルバムカバーを表示トラックの断面構造を有しています。最後に、ミュージシャンはプレイヤーと統合セットリストの設備を必要としています。彼らは、複数のセットリスト全体トラックの追加と削除、彼らのトラックを注文できるようにする必要があります。これらは、一般的な音楽リスナーのそれにミュージシャンのニーズを差別コア機能です。ミュージシャンが準備し、練習およびこれらのトラックのセットリストを実行するために組み合わせてこれらの側面は、このアプリケーションが死んで簡単に作ります。
競争?
これは、Appの非常に新しいタイプのですが、私たちはの代替案を検討してみましょうソングのリズムトラックを。
ワークステーション製品
同様の高品質オーディオ、完全な柔軟性、高い購入価格、あまり利便性。
調達および高品質の伴奏を作成するために、プロのミュージシャンのための洗練されたワークステーションのツールを学びます。これは、より多くの機能と柔軟性を持つ類似の偉大なオーディオ品質を持っているだけでなく、かなりの時間がかかる約30分を言って、それをレンダリングし、シーケンスソフトを使用して新しいトラックを作成し、それをタグ付けし、モバイルデバイスに転送します。あなたは、組成の機能と柔軟性を得るが、利便性に失う – 特にセットリストとプレーヤーに。
他のモバイルドラミングアプリ
低品質、低価格、別のコンビニ
多くの機能と施設とのドラミングアプリの非常に様々なものがあります。彼らは一般的に安価であるが、同じように配信しません。ここに近いものである宋リズムトラックのユースケースを。
セッションバンドドラムス
このアプリは、同様の命題を目指して-モバイルインターフェースとの良好な品質のドラムのバッキングが、それは、(i)高品質なリズミカルな伴奏と、(ii)の便利なインターフェイスの両方を提供する上で足りません。ユーザーインターフェースは、タスクに特有の視覚的な塩基配列に基づいています。これは、ワークステーションベースのシーケンサーを使用した、モバイルデバイスへの転送に改善されているが、私はまだあまりにも複雑であり、まだ多くのミュージシャンのための参入障壁になると思います。1は、トラックを配列決定するために持っているとして、それは間違いなく、より扱いにくく、より使い遅いソングリズムトラック。また、そこには実際のセットリスト機能ではありませんし、私はそれが魅力的、現実的なドラミングに十分提供しないと思います。しかしという安価である宋リズムトラックス 低い初期コストと1が連続することができますトラックに制限はありません。
モバイルミディミュージシャンの歌アプリ
低品質のドラミング、自己完結型の、より多くの施設
専用のフォロワーを集めている曲をベースとしているミュージシャンのための他のモバイルアプリがあります。iRealProとSongsterは、このような2つです。
iRealPro
おそらく通常はリズムのみの伴奏の観点から考えられていないが、これは、当然人気のアプリです。それは、セットリストを管理する素晴らしい仕事をし、多くの場合、曲を準備する(ルックアップを経由して)非常に効率的であることを意味する曲のユーザー参加型のライブラリを持っています。その強さは得ることにある完全なマルチ楽器伴奏曲が進むにつれて追跡されている曲のオンスクリーン和音シートを完備し、よく知られた曲に(リズムとハーモニーを)。それはおそらく、ミディ・テクノロジーに基づいており、ミックスのバランスを取るために良い施設を提供しています。このミックスは、リズムパートだけを持つように調整することができます。
iRealProはその価格のための良好な音質を持っていますが、そこから選択する多くのリズムがありませんし、太鼓のみのオーディオ品質は本当にありません。それはそれに遭遇した最初の印象だが、同じ太鼓を聞きながらループの後に何度も光沢を失います。場合、これは特にそうであるだけiRealProはリズム専用のトラックより完全なミックスの音がより印象的な場合と同様にリズミカルな伴奏ではなく、完全な「コンボ」を演奏します。なぜ、このリズミカルなオーディオはに比べて不足しているソングのリズムトラック?iRealProは、オーディオループの限定コレクションとアプリです。私は、同じリズムの異なるテンポのために使用されている別のループを聞くことができません。私は太鼓が生きて来て、1がでないように私は本当に偉大なドラミングが聞こえないになり、人間の変化聞こえないソングのリズムトラックを。これらは、我々は本物の音楽に期待するものがあるので、これはリズムとは関係ありません。iRealProは 新しい曲を学ぶことを支援するために、安価なツールのための大きなを得ています。���のリズムトラックス本当にさまざまな市場で果たしています。これは、曲を学び、実行しながら、高品質なリズム伴奏の多種多様に演奏を楽しんで詳細です。
Songster
他のモバイルベースのミディのアプリが、大幅に新しい何も便利なインターフェイスを備えた高品質なリズムバッキングを考慮しています。SongsterはのライバルであるiRealPro若干異なる市場と同様の結果と。他にも太鼓の特定のアプリがありますが、それらはすべてのリアリズム、興奮と広供給の面で落ちるソングのリズムトラックのサーバーベースであることによって達成”オーディオ品質を。何務めたのは、エンドユーザーに配信される前に、最適に配列決定し、音響エンジニアリング、すでに完全な高品質のトラックです。配列決定またはオーディオエンジニアリングんが、モバイルアプリケーションで発生しません。それは単に、要求を選択し、曲を再生します。
結論
ソングのリズムトラックを選択して再生すると便利です、本当に高品質なリズムバッキング用製品の新しいタイプです。あなたはこれらのバックトラックの疲れを取得するつもりはありません。あなたは何を配列しているつもりはありません。あなたはプレーヤーとセットリストのユーザー・インタフェースは継続使用を奨励していることがわかります。あなたはより多くの曲の形を認めるようになるだろうと、あなたはあなた自身のシングルやアルバムのリリースにこれらのトラックが含まれる場合があります。モバイル太鼓アプリと経験によって延期されないでください。ソングのリズムトラックは別の何かです。
あなたが最新アルバムを、ジャミング、新しい曲を学ぶギグまたは切断されているかどうか、この歌のリズムはトラックソリューションを提供します。
サンプルチェックアウト時にオーディオのをアライブドラミングのサンプル・ページ
これらの記事チェックの製品の背後にある考え方さらなる洞察を与えるアライブドラミングからを-
「練習する方法、そしてどのようにジャム」
「ときに、あなたのリズムで作業するには?」
「なぜ、リズムトラックとsongform?」
歌のリズムアプリをダウンロードトラックにAppleのApp Store
アライブドラミングのサンプラーアプリを試してみてください以前に人気の曲のトラックを配置しサンプリングするのを。あなたの練習やパフォーマンス要件にこれらを調整するためにアプリを使用して、その後は簡単です。すべてのサンプラーのアプリは同じ歌リズムトラックのアプリをが、含まれているサンプルトラックと。
ジ���ズとブルースサンプラー
アフロ・キューバンサンプラー
カントリーミュージックサンプラー
「songformは、」歌の組成構造のドラマーの視点から撮影した曲の形の生きドラミングの識別を指します。こうした12小節のブルースと32バーAABAなどの一般的なフォームの名前を採用することに加えて、生きドラミングは、曲の形式を記述するために彼らのスティック表記を導入しています。以下のセクションでは、ブリッジである場合、または傾斜バー、「/」|「」スティックの表記は、単に垂直バーによって分離されたバーのセクションの長さのリストです。
また、上で公開中。
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なごやでなごんだがや(と言いたかった犬山旅行記前編)
先日、一泊二日の旅行をしてきた。と言うのも、友人のOくん夫妻が愛知県の犬山市と言うところでこだわりの珈琲を出す喫茶店を開業したと言う話を聞いたからだ。最初は実家に帰省する時に途中下車して寄ろうかと考えていたんだけど、ちょうど友人のKsくんも遊びに行きたいと考えていたらしく、タイミングが合ったので、実家の帰省は来月あたりに引き延ばして一泊二日の小旅行にすることにした。バスはお互い別々の便で行き、現地で合流することに決まり、去る八月二十八日の日曜日に行くこととなった。以下はその旅行の内容を記憶をたどって大まかに再現したものです。ではでは↓
【14:30頃】
長距離バスから降りると晴天の空が広がっていた。名古屋駅は大きい。兵庫県は三ノ宮駅より大きい。埼玉県は大宮駅より大きい。東京は新宿駅よりは大きくはないが…まあ、大きい。そしてとても都会的できれいな駅である。高層ビルや、HAL学園の特徴的な建物があるあたりになんか、大阪や東京と似ている…って当たり前か。日本の三大都市のひとつなんだから。とりあえず先に着いている友人のKsくんに電話をする。反対口のジュンク堂書店にいるとのことで、中間地点で合流することに決まる。合流してから、とりあえず情報収集ということで、ジュンク堂書店に戻る。この非・合理的なところが世間的にはツッコミどころがあるようなのだが、我々の持ち味だったりする。ジュンク堂で名古屋の雑誌を読んでいて、「東京で言うところの名古屋スポット」の特集が目に入る。これは例えば「新宿駅→名古屋駅」というように、似ている街を連想して書いてあげて、関東からの読者にわかりやすく名古屋の都市をイメージしてもらう主旨の記事だ。そこで、都内で言うところの高円寺(古本古着音楽安酒。)に近いエリアが今池と書いてあったので、行ってみることにする。
【大体15:30】
今池に到着。僕が昼メシがまだだったので、飲食店を探してみたんだけど、閉まっている店が多い。名古屋と言えばソウル・フードがたくさんあり、(味噌カツ、小倉トースト、味噌煮込みうどん、あんかけスパゲッティ…)その本場の味を食べ歩くのも、この旅行の楽しみのひとつだった。(友人のKsくんは12時くらいに犬山に着いて、先に本場の台湾ラーメンを食べていた。KsくんはOくん夫妻が営んでいる店に早めに行って注文しない?と提案したが、僕は躊躇した。開店したばかりのお店では、これからお得意様になるお客さんも多いだろうし、出している物のクオリティからたぶん、忙しいだろうと思ったからだ。友人である我々に気を使ってもらうよりか、現地の顧客に気を使って欲しかったので、それをKsくんに伝え、閉店の19時以降にお邪魔してそこでツマミ等をお金を払って作ってもらおうかということになった。今後五年先、十年先まで行かないのなら、夫妻の作るランチを食べたほうが良かったかもしれない。でも、バス代だけなら片道三千円以下で来れるのだから、そんなに生き急がなくて良いじゃないか。と思った。営業時間��お邪魔するのは開業一年以降でも全然遅くはない。と、言うかそのほうが彼らも気が楽だろうと僕は思った)街をうろうろしていて、この時間帯でもやっている中華料理屋さんに入り「ちょい飲みセット」を注文する。店内のテレビでは24時間テレビがやっている。24時テレビの「愛は地球を救う」はエラソーなヤツらが会議室で自己満足に浸りながら立場の弱い人をうまく使って視聴率のために考えた企画を「良いことをしてますよ。ね。俺たちって偉大でしょ?」と上から正義を押し付けている臭いがぷんぷんしていて、お涙ちょうだいなところなんかを含めて、昔から嫌いだった。ひねくれていますかね。(現場で目にクマとか作りながら真面目に働いている人には悪いが)「ウィー・アー・ザ・ワールド」を何倍か薄くして、日本人向きにソフィスケイトして、泣かせるように人工的に辛子をまぶしたような番組だ(言い過ぎですかね)。人数多いアイドルグループの歌なんかも聴きたかねえし、正直消して欲しかった。しかし中華料理屋のおばちゃんや店員の男の人は良いひとで、「今池は夜の街の色が強いから、大須観音に行ったほうがいいよ」と教えてくれた。酒のアテも良かった。と、言うわけで、今池を後にする。
【たぶん16:30くらい】
大須観音に到着。まず来るべきはここでした。少しうろうろして思った感想は土地のマス目的な作りは京都っぽくもあり、街の雰囲気は原宿に似ている、だった。露店でインド料理の「サモサ」を売る店を発見して、「バルサミコ酢のキーマカレーサモサ」を注文する。客は中年の男の人ひとりで、店のお姉さんと話している。そのお姉さんに土地の情報を聞く。「もう少し先にマップを置いてある場所があるから」と教えてもらう。実はこのサモサ屋さんが後の伏線になるのです。Ksくんは「ナカタくんと俺が散策するとなぜかぐだぐだになるから、気を引き締めてまわろう」と、言わんばかりにマップを念入りにチェックしている。僕は「台湾まぜそば風カレー」の店が気になり、一時的に別れて行動することにする。Ksくんは「バナナレコード」と言うレコード屋に向かう。台湾カレー屋に来たのだが、店員のニコニコした写真がデカく貼られた看板により興味を削がれてしまい、やめることにする。その後べつの台湾カレー屋も見てみたが、こっちのほうも市長の写真と共に「名古屋市長推薦!」とかでっかく書いてあって、下品なのでやめた。僕自身もけっこう下品な人間ではあるが、このタイプの下品さはごめんだ(※こんなのにいちいち文句言ってたらキリがないんだけど、著しく街の景色を損なう看板などには行政もっと仕事したらどうですかね)。
バナナレコードに行きKsくんと合流する。東京の「ディスクユニオン」、神戸の「りずむぼっくす」の名古屋版、と言ったところか。僕の所持金は「地球と同じく限りある資源」なので、なにも買わなかった。値段も別に安くないし。Ksくんはもう少し物色してみると言うことなので、先に出て街をうろつく。
(西)門前前通り→(中)新天地通り→(東)大須通りが、この大須観音の大きく分けた三大通りで、街の作りそのものはそんなに単純化出来ないけれど、西寄りには漫画やアニメやオーディオ機器屋等のマニア向けの専門店が多い印象で、逆に東は渋谷、竹下通りよろしく。カラアゲ屋、クレープなどの食べ物の店や、古着屋が多い印象だった。日曜日ということと、観光スポットということで、とにかくひとは多い。そんな中で程よくマニアックで、一見にも開かれている居酒屋はないかとマップを見ていたら、あった。おもしろそうなお店が。店名は「男キモノ&BAR蛙屋」。普段から店に飛び込みで入りまくっている僕ではあるが、ちょっと異空間過ぎたらどうしよう。と思った。でも店の前の看板を見て(大事ですよね)個性的でレベルが高そうな店だと思ったので入ってみることにした。
【17:30~18:00くらい】
階段を登り、二階にある店内に入ると、そこは感じの良いカフェチックなお店だった。愛想の良い女性が迎えてくれる。客は和服を来た中年男性ひとりだ。とりあえず(たぶん今夜は飲みまくるんだから)レモンチューハイを注文する。おしながきと、壁に貼ってあるおすすめメニューを見るに、フードにもかなり力を入れている。燻したタパスがおすすめらしいので機をうかがって注文しようと考える。お酒のほうも、キモノBARなので日本酒が中心なのだが、大葉を使ったモヒートや、きゅうりのモスコミュールなどしっかりお酒をわかっていて、しかも安い。「ああ、この店は『当たり』だ」僕はホッと胸を撫で下ろした。すると、横の男性客が「お兄さん、さっきみたよ」と、言う。(…。すれ違うくらいで覚えられるくらい特徴的な顔立ちと服装だっけかな?)と「?」をあたまの上に浮かべていると、「いや、ほら。サモサ屋。オレあの時店長としゃべってて。あそこの店の常連なんだよね」「………。あ。あー!あの時のひとですか?」
そう。たまたま。超たまたま我々は、同じ店を二軒はしごしていたのだ。これは中心街の店の多さから考えると確率的にすごいことだと思う。そこから一気に場に溶け込む。Ksくんから電話があり、俺も歩き疲れたからそっちに向かうと言われる。しばらくして合流する。Ksくんもレモンハイボールを頼み、燻したつまみ盛り合わせを注文。小魚やプロセスチーズやサラミなどの燻製で、これもとってもおいしかった。女性店長に尋ねると、この店は旦那さんと二人で切り盛りしていて、元々はデザイナー出身の方々らしい。四階は事務所で、着物の売り場も兼ねているようだ。二階(バー店内)にも着物を売っているスペースがあり、年季の入った、麦のストローハットがかっこよかったので見ていると、中年男性が「これ、みんないいって言うんだよ。たぶん君の前に四十人くらい買いたいってひとが列を作って待ってるね」そこで女性店長「もうね、それを作れるひとはいないから、非売品なのよ」と。うーん、欲しい。あと僕は「デニム着物」に非常に、(デニム大好きなので二回言います)非常に興味を惹かれた。店長いわく、元々着物屋以外で何か別の業態の店をしたかったが、男の着物の敷居の高さをもっと低くして広めたいとの思いもあり、バー形体のメンズ着物とお酒の店を作った、とのこと。「蛙屋」の名が示すように、バーカウンターに芸の細かいカエルのグッズも置かれていてこれもいい感じ。途中、坊主あたまに眼鏡の和服男性と、若い感じの眼鏡を掛けた男性も入店して来て、サモサ合流の男性も眼鏡で、Ksくんも眼鏡を掛けているので、ノー・メガネが、僕と女店長だけになる。まあ、だから何だ。ですけど。
【ここで話した小ネタ】
1.友達のKsくんが「名古屋のひとは関西人に比べて方言を話したがらない。なんでだろう」と言っていて、その疑問を店内の人にぶつけていた。確かにそうで、僕は元が関東の人間だからあまり気にはならなかったけど、イントネーション含め、大体が関東弁だ。「どえりゃー」や「おみゃー」なんて言うひとはいない。だいたいみんな標準語で「~だよね」である。ただこの問題をちゃんと論じようとしたら、たぶんそれなりに資料を読む必要があるし、コマカイ分析は専門書を読むほうがきっと手っ取り早いだろう。ぶしつけな質問を店内のひとはあまり意識していなかったようで、わりと解答に困っていた。まあ、これらの「現場の状況」をあと付けで勝手にまとめあげ、私見を述べると、大阪はいささか「東京」を仮想敵として意識し過ぎではないか。と思う。だから、厳密に言えば、いち地方都市である大阪は「東京vs大阪」の図式を作りたがる。より濃い「大阪文化を練り上げたがる(僕は全然悪いことだと思いませんが)」結果、「大阪人のアイデンティティー」まで話が膨らむ。だから、「大阪弁」は当人達にしても外部の人間からしても「意識的なもの」になる。これはたぶん笑いについてにも言える。むしろ、名古屋人の「ぼくら真ん中だしどっちにも寄ってないよーん。びよーん。…でも深いところはあるけどね」のほうがわりと(現在関西在住の目はあるが)自然な感じはする。実際に愛知に住んでいるわけではないので、別にどっちが優れているとかではないですが。たぶん名古屋の人のほうがフラットな感覚があるんじゃないのかな。まあ、要研究ですね。
2.女店長の親族が鳥山明と同じ高校で、(そうです、『Dr.スランプ』のニコチャン大王のだがや!でわかるようにここ愛知��みんな大好き鳥山明の地元です)この大須観音にある「漫画を売る」ではなく「漫画を描く」専門店が出来たばかりのころに、よく気楽に遊びに来ていたらしい。たぶん「鳥山明が来る」が広まって、めんどくさくなったんだろうか。最近は来ていないらしいですが、有名人って大変そうですね。
なごやかに談笑したあと眼鏡坊主の男性がなんと、「名鉄名古屋ホテル」の温泉チケットとドリンクチケットがあるんだけど、良かったらいる?と言ってくれる。これは僕もKsくんもテンションが上がり、Oくん夫妻の分も合わせて4枚もらい、お礼を言う。
店を出ると20 時を過ぎていた。はっきり言って、Oくん夫妻を待たせ過ぎである。Ksくんが「このチケットで許してもらおう」と言う。いやあ、僕もKsくんもマイペースさには定評があるが、ほんと申し訳ない。カレーを作る約束をしていたので大須観音のスーパーで食材を買い、電車に乗る。ここから一時間近くはかかるから、着くのは22時近くか。喫茶ボタン、待っててちょ!(つづきます)
※写真がなぜか貼れないので先に文字のみで載せました。
2017.9.8(fri )
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絶対に「ノー」と言わない「新宿観光案内所」外国人観光客が絶賛
ざっくり言うと
外国人観光客が絶賛する、新宿駅東南口の「新宿観光案内所」を紹介している
人気の秘密は、無茶な質問にも絶対に「ノー」と言わないポリシーにあるよう
朝10時から夜7時まで年中無休で、13カ国語に対応できるようにしている
記事を読む Source: ライブドアニュース
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TEDにて
ヴィクラム・シャーマ: 量子物理学はどのようにして暗号強化するのか?
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
量子コンピューター技術が進歩すると、それに伴って、想像できないほどに計算能力が高まっていきます。
すると、データを保護するためのシステム(そして、民主的なプロセス)がさらに危険にさらされます。
しかし、差し迫ったデータの大惨事への対応策を練る時間はまだあるのだと、暗号理論の専門家ヴィクラム・シャーマは語ります。
量子を量子で迎え撃つ方法。つまり、最先端の攻撃から防御する、量子物理学の力を応用したセキュリティ装置やプログラムの設計について学びましょう。
量子暗号分野についての話です。
近年、ビジネス界では、サイバー攻撃の影響が見受けられます。JPモーガン、ヤフー、Home、Depot、Targetといった会社からのデータ漏洩は、数億ドル、時には数十億ドルの、損失をもたらしました。
世界経済の破壊に大掛かりな攻撃を必要とはしません。公共部門も被害を免れていません。2012年から2014年にかけて米国人事管理局では重大なデータ漏洩がありました。
職員2200万人分の身元調査記録や指紋データが盗まれました。耳にしたことがあると思いますが、国家が背後で支援するハッカーたちが盗んだデータを悪用し、多くの国で選挙結果に影響を及ぼしました。
最近の例を2つ挙げるとドイツの連邦議会の大量のデータが盗まれた件と米国民主党全国委員会から電子メールが盗み取られた件です。
サイバー攻撃は民主的なプロセスに影響を及ぼしています。更に事態は悪化することでしょう。
コンピューター・テクノロジーがより進歩するにつれてデータを保護するシステムは、より脆弱になっています。
更に懸念されるのが、新しいコンピュータ技術。量子コンピューティングの登場です。
これは微視的な自然の性質を利用するもので想像を絶するような計算能力の向上をもたらします。
とても強力なので現在使われている多くの暗号システムが無力となります。
絶望的な状況なのでしょうか?
デジタル・サバイバルキットを詰め込んで来るべきデータの大惨事に備えるべきなのでしょうか?いえ、まだそんな必要はありません。
量子コンピューティングは、まだ研究段階で実用化にはまだ数年かかることでしょう。
さらに重要なことに暗号技術の分野で飛躍的進歩がありました。
私にとっては、通信セキュリティの歴史においてとてもワクワクする時代の到来に思えます。
およそ15年前、自然界には存在しない量子効果を産み出す新たな方法について自分が学んだ時、私は興奮しました。
暗号の強化を可能にする物理学の基本法則を応用する着想に強く関心を抱きました。
現在では、私の研究室を含む世界中の企業や研究所の選り抜き集団が、この技術を実用化しようとしています。
そう、そのとおり我々は量子による攻撃を量子で迎え撃とうとしています。
その仕組みとはどういうものでしょう?
では始めに少しだけ暗号の世界にご案内しましょう。
まずは、手提げかばんと友人のジェームズ・ボンドに送り届ける書類とこれらを安全に保つ鍵が必要です。
これは極秘書類なので最新式のカバンを使います。鍵は特殊なダイヤル錠で閉じると書類の中の全てのテキストをランダムな数字に変換します。
書類を中に入れ鍵を掛けるとその瞬間に書類の内容がランダムな数字に変換されこれがジェームズに届けられます。
届ける途中で彼に電話し、コードを伝えます。
ジェームズはカバンを手にし、コードを入力すると書類は復号され、ほらっ暗号化された文章がジェームズ・ボンドに届けられました。
面白い例ですが、ここには暗号の重要な3要素が示されています。
コード、これは暗号鍵と呼ばれています。パスワードのようなものです。
そして、解鍵するコードをジェームズに伝える電話。これを鍵交換と言います。
このようにして暗号鍵を安全に正しい場所へ送ります。
鍵は、書類を暗号化したり平文に戻したりします。これを暗号化アルゴリズムといいます。
鍵を使って書類の文字をランダムに見える数字へと暗号化します。良い暗号化アルゴリズムとは、鍵がなくては解読するのがとても難しいものをいいます。
暗号でとても重要なのは、誰かがカバンを奪い取り、こじ開けても暗号鍵と暗号化アルゴリズムを知らない限り書類が読めないことです。
一見、単なるランダムな数字の並びに見えることでしょう。たいていのセキュリティ・システムは、暗号鍵を相手と交換する安全な手段に依存しています。
しかし、コンピュータの計算能力の急速な向上によって現在利用されている多くの鍵交換の方法はリスクにさらされています。
現在、もっとも普及している暗号の一つRSA暗号について見てみましょう。これは1977年に発明されました。
426ビットのRSA暗号を破るには、4京年かかると見積もられていました。わずか17年後の1994年に暗号は破られました。コンピューターの性能が、向上するにつれより長いコードを用いなければならなくなりました。
現在では、通常、2048か4096ビットの鍵長が使われています。ご存じのとおり暗号化する側とこれを破ろうとする側の間で互いを出し抜く戦いが繰り広げられています。
量子コンピューターが10年から15年後に実用化されたら複雑な数学的な手法によって支えられた現代の暗号システムが、さらに高速に解読されることになります。
量子コンピューターによって今は堅固な城であってもトランプタワー程度になってしまう可能性があります。城を守る方法を見つけなければなりません。
近年では暗号を強化するために量子効果の利用について研究する組織が増えています。ワクワクするような大発見もありました。
暗号において大切な3つのポイントを思い出してください。質の高い鍵、安全な鍵交換、それに、堅固なアルゴリズムですね?
科学と技術の進歩は、この3つの要素の内、2つを危険にさらしています。
まず第一に、鍵です。乱数の生成は、暗号鍵の基本的な要素です。しかし、現在使われているのは、真の乱数ではありません。
今のところソフトウェアを使って疑似乱数という一連の乱数を発生させ暗号鍵を生成します。プログラムや数学的な方法で生成された数には、幾分おそらく僅かではありますが、パターンが見出されます。
生成された数が真の乱数でないほど。もしくは科学的な言葉で言えば、エントロピーが低いほど発生する数の予測が容易になります。
最近では、いくつかのカジノが創造的な攻撃手段の犠牲になっています。スロットマシーンの出目が、ある期間記録され分析されました。これがサイバー犯罪を可能にしました。
回転盤の背後で稼働する疑似乱数発生器のリバース・エンジニアリングが、行われていたのです。これによってスロットマシンの出目を正確に予測し大金を手にしたのです。
同様のリスクが暗号鍵にも起こり得ます。真の乱数発生器は、安全な暗号には本質的に必要なものです。何年もの間、研究者たちは真の乱数発生器を製作しようとしてきました。
しかし、これまでに設計されたものの多くは、真にランダムではなかったり低速だったり繰り返し利用が困難だったりしています。
一方、量子の世界は、真にランダムなんです。だから、この内在するランダム性を利用することは意味があります。量子効果を測定できる装置があれば高速でいくらでも乱数を発生させることが可能です。
自称、カジノ犯罪者を全てがっかりさせられます。世界中の大学や企業の選り抜き集団は、真の乱数発生器の製作に真剣に取り組んでいます。
私の会社で最初に稼働した量子乱数発生器は、2mx1mの光学テーブルに取り付けられていました。その後、サーバー位の大きさに小型化できました。
今では、標準的なコンピューターに装着するPCIカードへとさらに小型化されました。世界で最も高速の真の乱数発生器です。量子効果を測定して毎秒数十億の乱数を生成します。
今ではセキュリティの向上のために世界中のクラウドサービスのプロバイダー、銀行や政府機関で使われています。
しかし、真の乱数発生器を用いてもまだ、2つ目の由々しきサイバー脅威が残されています。
鍵交換の安全問題です。今ある鍵交換技術では、量子コンピューターに対抗できません。
量子的な解決策は、量子鍵配送QKDといわれ、量子力学の原理的、反直観的な性質を活用します。量子的な粒子を観測するという行為は、それ自体を変化させます。
その仕組みを例示しましょう。鍵を掛けるためのコードをジェームズ・ボンドと交換する場面を再考します。
ただ今回は、ジェームズにコードを伝えるのに電話は用いず、コードを搬送するためにレーザー光の量子効果を利用し、標準的な光ファイバーケーブルでジェームズへと送信します。
ドクター・ノーが交換鍵のハッキングを試みるとします。搬送経路上で量子鍵の傍受を試みても幸いにもその形跡が残り、ジェームズと皆さんは傍受の事実を知ることができます。
傍受されたなら鍵を破棄できます。無事伝わった鍵は、データを堅固に守るのに使えます。
セキュリティが、物理学の基本法則に基づいているので量子コンピューターであれ、どんな未来のスーパーコンピュータであれ暗号を破ることができません。
私はチームのメンバーと共に一流大学や防衛部門と協力してこの素晴らしい技術を熟成させ次世代のセキュリティ製品を作ろうとしています。
「モノのインターネット(IoT)」は、複雑につながった時代を予期しており2020年までに250億から300億の装置が接続されると予測されています。
IoTの世の中で社会が正しく機能するためには、接続された装置を支援するシステムの信頼性こそが不可欠です。
この信頼を提供するために量子技術が必須となり、これが素晴らしい技術革新の恩恵を十分にもたらして生活を豊かにするに違いありません。
ありがとう。
こういう新産業でイノベーションが起きるとゲーム理論でいうところのプラスサムになるから既存の産業との
戦争に発展しないため共存関係を構築できるメリットがあります。デフレスパイラルも予防できる?人間の限界を超えてることが前提だけど
しかし、独占禁止法を軽視してるわけではありませんので、既存産業の戦争を避けるため新産業だけの限定で限界を超えてください!
(個人的なアイデア)
2020年後半くらいから様々な占いで出てきてた時代の変わり目。それが、西洋占星術で具体的に「風」の時代という形で出てきました。
私が、感じとってたインスピレーションは、たぶんこれかな?
兆しは、世界的な金融ビックバンの1970年代、IT革命のミレニアムの前から出ていたけど。
これは、これまでの約200年間。物質やリアリティの影響力優位「土」の属性の時代から、量子コンピューター、ビットやインターネットなどといった物質ではないものに影響力が増していく「風」の属性の時代に。
そして、本格的に軌道にのっていく属性は、今後200年程続くことになるのです(2020年12月22日から、2100年当たりをピークに少しずつ衰退していく2220年まで)
直前に!
Appleも何かを感じてたのか?Appleシリコン搭載Macの方は、「Mシリーズ」チップに移行してるし、符号してる。
Googleは、量子超越性を達成してきてるし、Facebookも脳波を読み取る機械の開発を発表してますし、符号してる。
イーロンマスクもブレイン・マシン・インターフェース(Brain-machine Interface : BMI)を具体的に発表。これも、符号してる。
ここから予想できることは、バリーシュワルツが言うように、労働の概念が変わり、地球に居ながら映画アバターのように!その惑星にある資源を使い。
月や火星、土星や衛星などに無人ロボット部品を送り、ゲームのように自宅にいながら共同作業しつつ仕事をすることで高額な賃金が手に入る可能性も高い。
火星や土星や衛星に関して���、有人宇宙船内を無重力工場にして惑星移動期間に3Dプリンター製造、組立を効率的に行うことが実現すれば良いが無人ならベスト。
光速で惑星間通信できるようになったとしても、火星や土星や衛星への通信は、地球からでもリアルタイムで遅延が起きるため、月面のみ、この可能性が開けます!
無重力でもあるため、洞窟に工場を建築して人間の暮らせる環境を作り出すこともできそうです。可能性は無限!この領域に限界はありません!国家や行政府の範囲外なので極端な自由もあります。命の保障はないけど!
このアイデアは、今後数十年、人間の限界を遥かに超える新産業なのでプラスサムになり、地球環境は汚染されず資源エネルギー問題も起こりません。
<おすすめサイト>
キアラ・デカロリ:量子コンピューターを作るための一か八かの競争?
ショヒーニ・ゴーシュ:10分でほぼ分かる量子コンピューター
ジョージ・ザイダンとチャールズ・モートン:確率の雲として存在する電子
2012年のノーベル物理学賞について
ジム・アルカリリ:量子生物学は生命の最大の謎を解明するか?
量子コンピューターの基本素子である超電導磁束量子ビットについて2019
Thunderbolt3端子搭載で電気自動車、燃料電池車を外部CPU、GPUとして活用するアイデア2018
量子エンタングルメント状態とパウリの排他律の不思議な偶然の一致2022
ゲリー・コバックス :追跡者の追跡をする!
<提供>
東京都北区神谷の高橋クリーニングプレゼント
独自サービス展開中!服の高橋クリーニング店は職人による手仕上げ。お手頃50ですよ。往復送料、曲Song購入可。詳細は、今すぐ電話。東京都内限定。北部、東部、渋谷区周囲。地元周辺区もOKです
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【News Up「8時だよ!全員退庁」自治体の働き方改革】 - NHKニュース : http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170217/k10010880781000.html { 2017年 } 2月17日 19時15分
「効率化 提案するため 日々残業」(ビジネスマンみっちゃん)。 「ノー残業 居なくなるのは 上司だけ」(仕事人間)。 今月発表された恒例の「サラリーマン川柳コンクール」の入選作です。今回は「働き方」に関する句が多く寄せられたということで、働き方改革をどう進めるか、悩む職場の本音がにじみ出ています。 長時間労働の是正などを目指す「働き方改革」は政府が重要課題の1つと位置づけ、去年8月には担当大臣が新設されました。全国の自治体も、地域の先導役を担おうと、勤務時間の縮減や休暇取得の促進、それに家庭生活や余暇を大切にするライフスタイルの実現に向けて、さまざまな取り組みを進めています。
■��あの手この手で…》
滋賀県大津市は、来月から、午後5時25分の業務終了時、ちょうど100年前に作られ地元の人たちに歌い継がれてきた「琵琶湖周航の歌」を庁舎内の放送で流し、職員の帰宅を促すことにしました。担当者は「郷愁を誘うメロディーを聞くことで、家路を急ぐ気持ちになってもらいたい」と話しています。 佐賀県武雄市では、今月14日、すべての管理職が部下の仕事と家庭生活の両立を応援する上司、いわゆる「イクボス」を目指すという宣言を行いました。これまで男性職員が育児休暇を取ったことがないということで、小松政市長は「育休や介護休暇を取っていいのだと思うことができ、また仕事を頑張ろうと思える組織風土に変えていきたい」と意気込んでいます。 このほか、夏の期間には、業務開始時間を早めて夕方には仕事を終え、生活を充実させようという「朝型勤務」や「ゆう活」と呼ばれる試みが、新潟県や岡山県、宮崎県などで行われています。
■《合言葉は「8時だよ!全員退庁」》
こうした中、福井県東部の大野市は、先月「8時だよ!全員退庁」を合言葉に残業を減らす取り組みを始めました。市役所の終業時間は午後5時15分。定時退庁を促すのはもちろんですが、残業する場合も、遅くとも午後8時には帰るよう呼びかけています。いきなり「残業ゼロ」を狙っては業務に支障をきたすとして、段階的な取り組みにしたのです。当面対象になるのは、財政や観光などを担当する4つの部署の職員およそ40人です。 午後5時15分、勤務時間が終わると、早めに帰宅するよう上司が声をかけます。そして残業する人がいるか、全員の前で尋ね、手を挙げた職員が職場に残ります。仕事が終わり次第、職場をあとにし、午後8時前、最後まで残っていた職員も家路につきました。
■《効率化の工夫も》
市では、これにあわせて、業務の効率化も進めています。会議は、資料を事前に配るなどして30分以内に終わらせる。上司やほかの部署の決裁が必要なときは、できるだけ、書類を持ち込むのではなく電子メ��ルのやり取りに切り替える。残業する場合は同じ課の全員の前で業務内容と退庁予定時刻を申告し、上司は特定の職員に業務が集中しないよう振り分ける。
■《成果は》
取り組みを始めて1か月余り。各部署の幹部が集まって成果を検証する会議が開かれました。この中で、参加した企画財政課の午後8時以降の残業が、1人当たりの合計で、去年1月は10時間だったのに対し、ことし1月は8時間に減ったことが報告されました。 8時以降の残業をすべてなくすことはできませんでしたが、取り組みを始めたばかりで平均2時間減らせたのは大きな成果だとしています。職員からも「家で子どもたちと話せる機会が増えた」とか、「友人と会う時間が以前より作れている」といった声が聞かれました。
■《課題も》
一方で、課題も見えてきました。会議では「上司が漠然とした指示を出すと、部下が業務をこなすのに時間がかかる。指示は明確にすべきだ」という意見が出されたほか、「イベントの開催前や年度末など業務が集中する時期はどうすればいいか」という指摘もありました。 大野市は、こうした点を検討するとともに、別の部署で重複する業務の見直しも進め、ことし5月ごろにはすべての部署で取り組みを始めたいとしています。 今洋佑副市長は、「職場の空気が変わり、忙しい部署の職員にも『帰る』という意識を持ってもらっている」と手応えを感じています。そのうえで、「早く帰ることが職員にとってプラスになり、それが組織の力につながるよう前向きに取り組みたい」と話しています。
■《広がる「残業制限」》
残業時間を制限する取り組みは、さまざまな自治体に広まっています。東京都は去年10月から、午後8時以降は残業しないよう職員に呼びかけています。東京・豊島区は先月から、午後7時以降の残業を原則として禁止し、午後7時に庁舎の明かりを一斉に消す取り組みを始めました。熊本市も今月15日から、午後8時以降の残業を原則として禁止し、特別な事情があるときも、午後10時までに退庁するよう呼びかけています。今月24日からは、月末の金曜日に早めの退社を促して買い物やレジャーなどを楽しんでもらおうという「プレミアムフライデー」が始まります。「仕事中毒」とも言われてきた日本人の働き方…。過重労働の弊害をなくし、家庭生活との両立や心の豊かさ、そして消費の底上げにもつなげられるのか。自治体の働き方改革の行方が注目されています。
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米軍の弱体化
いざとなったら米軍が助けに来てくれる──。そんな戯言を言える時代は過ぎ去りました。いまや米軍を〝スーパーマン〟のごとく頼ることはできません。
米軍は現在も世界最強の軍隊ですが、その力はこの20年で低下しています。また中国軍が急激に力をつけ、いまやアジア太平洋地域のパワーバランスは逆転しつつあるのです。
現に8月、シドニー大学米国研究センターによる報告書では、米国は太平洋における軍事的優位性をすでに失っており、同盟国を中国から防衛するのは困難になる恐れがあると警告しています。
冷戦の真っ只中だった1980年代、アフガニスタンを侵略し、北海道をも奪おうとしたソ連に対して、当時のレーガン政権は圧倒的な軍事力と経済力を背景に、日本やドイツなどの同盟国���連携して立ち向かいました。「侵略は許さない」という態度を示すだけでなく、軍事力を徹底的に強め、ソ連を心理的に屈服させようと考えたのです。その戦略は的中し、ソ連は侵略を断念。冷戦は終結しました。
その後、米国は国内問題に専念しようとしますが、9.11同時多発テロが起こります。米軍の戦略は「テロリスト���ちをやっつけない限り、米国の平和は守れない」と主張するネオコン勢力に引きずられ、ソ連や中国といった「大国相手の戦い」から「テロとの戦い」へとシフトしました。米軍の役割が「正規軍との戦い」から、イスラム過激派らのテロを防ぐことに変わったのです。この戦略転換が、今日の米軍弱体化を招く一つの要因となりました。
ところが、米軍がいくら中東の紛争に関与しても平和と安定は訪れず、紛争は拡大するばかり。兵士たちも自爆テロなどで死傷し、国民の不満も高まった2009年、「対外戦争で米国の若者を殺さない」と主張したオバマ〝民主党〟政権が誕生します。
オバマ大統領は「米国は世界の警察官ではない」と広言し、急激な軍縮を実施。世界の平和と安定を維持するための努力も怠(おこた)りました。米軍関係者が自嘲的に〝米国封じ込め政策〟と呼んでいたのが印象的です。
息子ブッシュ〝共和党〟政権時代の「テロとの戦い」への方針転換と、オバマ〝民主党〟政権による〝米国封じ込め戦略〟によって、米国の軍事戦略から中国やロシアの脅威は軽視され続けてきました。特に急速に国力をつけた中国に対しては、国内のパンダハガー(Panda Hugger:パンダを抱擁する人)と呼ばれる親中派によって、軍拡に対応するどころか、中国と組んでテロを防ぐ方向に誘導されていったのです。
かくしてこの20年間、政党は関係なしに、米国は「世界各地のパワーバランスを維持しながら紛争を抑止する」というレーガン政権の外交・安全保障戦略を見失っていました。
思い返してみれば米軍は1991年の湾岸戦争以来、正規軍と血みどろの戦争をしていません。いまの幹部も正規軍との戦争経験がない人がほとんどで、正規軍、しかも大国の正規軍との戦争をできるのか、米軍内でも多くの人が不安を持っている実情です。
同盟国を守る「能力」の低下
危機感を抱いたトランプ大統領は政権発足後、「国家安全保障戦略」で中国とロシアを「現状変更勢力」、いわば〝敵〟として位置づけました。さらに「国防戦略2018」でも中国を念頭に、「大陸間角逐」こそ最大の脅威であると再定義し、軍事費を毎年7兆円程度増やして懸命に軍拡しています。大国との戦争を念頭に置いた軍事戦略に回帰させたのです。息子ブッシュ政権以来となる国家戦略の全面的な転換でした。
トランプ氏が当選した直後のマスコミの論調を思い出してみてください。「トランプは安全保障の素人だ」「孤立主義を採用しアジアへの関与が失われ、日本も危うい」などと不安を煽(あお)っていたでしょう。実体は正反対で、トランプ政権はまともな対外政策に回帰させたに過ぎないのです。
しかし一度、軍縮した影響は計り知れません。まず国防産業が衰退しています。トランプ政権は現状から80隻増となる350隻の軍艦をつくると明言しましたが、製造を急いでもつくり終えるのは2050年になると言われています。そこでアジア太平洋地域に兵力を優先的に振り分けるべく、トランプ政権はシリアからの撤兵などを断行したわけです。
2019年10月27日、米国特殊部隊の奇襲作戦によって、ISの指導者アブ・バクル・バクダディが死亡しました。この作戦についてトランプ大統領の発言と記者会見の内容がホワイトハウスより発表されましたが、それを読むとトランプ大統領は「私は兵士たちが(シリアやトルコから)家に帰ってほしいし、何か意味のあることと戦ってほしい」とはっきりと言っています。トランプ大統領は限られた兵力を「意味ある戦い」に振り分けたいと明言しているのです。
さらに米国のインテリジェンス能力も落ちていて、トランプ政権は必死に立て直しを行っています。オバマ政権時代、予算削減のため情報収集の担当者を次々とクビにして、情報収集体制はボロボロになりました。平壌の空爆と金正恩の「斬首作戦」が実行されなかったのも、インテリジェンス能力の低下によりミサイルや核が保管されている地下の軍事秘密基地、さらに金正恩の居場所や本人確認のDNA情報の入手ができなったことが理由の一つだと言われています。
いまもマスコミでは「トランプは日本を守る気がない」「同盟関係を重視していない」との声が支配的ですが、このようなトランプ大統領の姿勢は「意志」ではなく、「能力」の問題なのです。トランプ大統領がいくら同盟国を守りたいと思ったところで、現実に同盟国を助ける能力を失いつつあるというのが正しい見方でしょう。
もちろん、圧倒的な核戦力によって中国軍が米軍に手出しできないのは事実で、日米同盟は「抑止力」として機能しています。しかし、いまや米軍が「通常兵器」で中国に対抗できなくなりつつあるという現実を踏まえ、同盟国である日本は防衛体制を全面的に見直さなければなりません。
「在韓米軍不要論」の深意
もう1点、日本が直視すべきなのは米韓関係です。
米国側は韓国に対する嫌悪感がこれまでにないほど高まっています。日米間で北朝鮮をめぐる協議をしているときも、「慰安婦問題で日本は謝罪をしていない」「日本大使を韓国に戻さないのはおかしい」と難クセをつけてくるのですから当然です。
米国は七十年前、韓国の赤化を防ぐために朝鮮戦争を戦いました。その記憶がある米軍の幹部たちは、「我々は北朝鮮から韓国を守ろうとしているが、もし韓国で被害が出たら〝米軍のせいで犠牲になった〟と言ってくるに違いない。こんな連中を助ける必要があるのだろうか」と思い始めているのです。
米国も当面は韓国への影響力確保の観点から米韓同盟を維持していくでしょうが、米軍を韓国に駐留させておくリスクが高まってきていることも無視できません。
戦闘機などの整備の一部は現地、つまり韓国企業が担いますが、文在寅政権は発足直後、北朝鮮のスパイを取り締まる国情院(国家情報院)の長官に極左の徐薫氏を起用しました。その結果、北朝鮮のスパイを取り締まる機能は麻痺し、韓国企業には労働組合を通じて北朝鮮のスパイが入り込んでいると思われます。そうなると、もはや韓国企業に在韓米軍の艦艇や戦闘機などの整備を任せることはできません。
軍事戦略面からも、米軍が韓国に駐留する必要性は低下してきています。米国にとって最大の脅威は、中国海軍のSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)です。いまのように軍事バランスが不均衡なままでは、SLBMを搭載した中国の原子力潜水艦が太平洋へ進出し、米国本土を核攻撃できるような状況が生まれかねません。すでにそうなっているという分析さえあります。このままでは、核戦力の優位すら危ぶまれることになります。
そこで日本・ベトナム・フィリピンに地対艦ミサイルを配備し、中国海軍を抑え込む「ミサイル・バリア構想」を在韓米軍が担う方向で議論が進んでいます。在韓米軍の一部がベトナム、フィリピンなどに展開していく、という話です。台湾海峡危機に対応するためにも、限られた部隊を韓国に置いておくよりは日本に戻し、日本・台湾ラインで中国海軍を抑え込んだほうが効果的と考えられています。
圧倒的な物量不足
冒頭でも指摘しましたが、とにかく米軍はいま、中国軍と比べて物量で劣勢に追い込まれているのです。
北朝鮮漁船による瀬取り、台湾海峡や尖閣諸島など東シナ海の問題、南シナ海における「航行の自由作戦」を主として担当するのは、駆逐艦です。現在、これらを担う米海軍の第7艦隊の駆逐艦はわずか8隻、潜水艦を含めても艦艇は70隻しかありません。日本の海上自衛隊の兵力は135隻で、日米両国の兵力を合計すると約205隻となります。
一方、中国海軍の駆逐艦は公表しているだけで33隻、潜水艦を含めれば750隻あるといわれ、艦艇の数だけを見ても中国の兵力は日米両国の約4倍もあるのです。
しかも中国は「ロケット軍」というミサイル専門部隊をつくっていて、いわゆる〝空母キラー〟といわれる対艦弾道ミサイルなどを次々に開発しており、その膨大な、かつ高性能のミサイル攻撃を仕掛けられたら、現在の日米両国のMD(Missile Defense:ミサイル防衛)体制ではとても対応できません。
昨年来、英国・フランス・オーストラリア・ニュージーランドなどが南シナ海と東シナ海に軍艦や飛行機を派遣しているのも、米国一国では中国海軍を抑止できないからだと見るべきでしょう。
「ハイブリッド戦争」に備えよ
中国の軍拡の源は、潤沢な資金です。資金が枯渇(こかつ)すれば軍の整備ができなくなり、動かない戦闘機や艦船が増える。物量で劣っているのなら、まずは貿易戦争で経済力を徹底的に奪うしかない──米中貿易戦争は、物量で劣る米国の〝時間稼ぎ〟という側面もあります。
またトランプ政権が最も警戒しているの��、中国の「ハイブリッド戦争」です。ハイブリッド戦争とは、電磁波、プロパガンダ、サイバーなど、ネットワークや通信を破壊する手法で2014年、ロシアがクリミア半島を占領したときに用いられました。ウクライナの国会議員の携帯電話を使えなくさせたり、フェイクニュースを流したりして抵抗能力を徹底的に排除したのです。
実際に習近平政権は台湾などを念頭に、ハイブリッド戦争を実行するため、準備を進めています。2015年12月、人民解放軍の大改革を行い、陸海空とロケット軍の4軍に「戦略支援部隊」を加え、5軍体制としました。戦略支援部隊は通信機能を麻痺させるために通信の基幹部分を抑えたり、プロパガンダを行う専門部隊で、ハイブリッド戦争遂行のために創設されたのではないかといわれています。
ハイブリッド戦争に対抗するには、敵国の通信技術が自国に流入することを防ぐ必要があります。だからこそトランプ政権は徹底してファーウェイを締め出しているのです。さすがに防衛省は『防衛白書』などで中国のハイブリット戦争について注意を喚起していますが、日本の経済界の反応は鈍いと言わざるを得ません。
今年はトランプ政権が宇宙軍を創設する法案を提出したことも話題になりました。これも中国の軍拡に対抗するものです。中国はミサイル戦や通信戦を念頭に、宇宙軍を強化しています。中国の宇宙空間での覇権を許してしまえば、いざというとき米軍の通信機能は麻痺させられ、中国の攻撃に全く対応できなくなってしまうのです。
日本海の争奪戦
マスコミが大々的に取り上げることはありませんが、日本海の争奪戦はすでに始まっています。
東シナ海では中国の軍艦や公船による尖閣諸島周辺への領海空侵犯が常態化、中国軍機を対象とした航空自衛隊のスクランブル(緊急発進)回数は過去最多を更新しようとしています。
日本海では2017年、対馬海峡を中国軍機が初めて通過し、昨年度は7回通過、過去最多を更新しています。2019年に入ってからは中国軍機とロシア軍機が竹島上空を合同飛行し、ロシア軍機は領空侵犯しました。そして空自機と韓国軍機がスクランブルしています。
そんななか、韓国の国防費が日本の防衛費を上回ったというデータが公表されました。経済不況に苦しんでいるにもかかわらず文政権は国防費を増やし、昨年は日本が約5兆3999億円、韓国が約5兆5310億円と初めて追い抜かれました。
さらに「緊張緩和」と称して38度線に配備していた韓国軍を減らし、『国防白書』からも「北朝鮮は主敵」という文言を削除、来年度の国防予算には「周辺国に対抗する戦力を確保する」という項目を新設しています。「周辺国」には当然、日本も含まれます。文政権は「李承晩ライン」の復活を狙っているでしょう。
1952年、当時の李承晩大統領は国際法に反し、竹島も含む漁業管轄権を一方的に主張しました。韓国はその後、日本と国交を回復する1965年までに約4000人の日本人漁師を拘束し、8人を死亡させています。先日、鹿児島に出張した際に李承晩ラインで拿捕された枕崎の漁師の親族の方とお会いしましたが、拿捕された漁師たちはヒドい虐待を受けたと聞きました。
今後、文政権は日本の漁船や輸送船への嫌がらせを行い、尖閣と同じように「サラミ戦略」で対馬海峡を含む日本海を〝韓国の海〟とすべく、動き始めるでしょう。
一方、日本海の豊かな漁場である大和堆では北朝鮮漁船が違法操業を続けています。そしてその北朝鮮漁船をロシアが拿捕した──すでに韓国、北朝鮮、ロシア、そして中国による〝日本海の争奪戦〟が始まっているのです。
一体、どれほどの人が、日本海が尖閣諸島海域のような「紛争海域」になると想定しているのでしょう。「北朝鮮の違法操業はけしからん」程度の認識のままでは、ますます危機に追い込まれていくことになります。
継戦能力低き自衛隊
「日本の自衛隊は優秀だから、韓国軍相手ならば大丈夫」という声も聞かれますが、もし一触即発の事態になったとき、憲法9条に縛られた自衛隊法の解釈では初動の遅れでやられてしまうでしょう。
実際に2016年には元空自航空支援集団司令官の織田邦男氏が、東シナ海上空で中国軍の戦闘機が空自機に対し「攻撃動作を仕掛け、空自機がミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱した」とする記事を発表しました。攻撃動作を仕掛けられたことは、冷戦時ですらありませんでした。
事実関係は防衛省幹部も大筋で認めたようですが、萩生田光一官房副長官、河野克俊統合幕僚長(ともに当時)はこれを否定しました。あくまで推測ですが、空自機が攻撃動作を仕掛けられながら戦域から離脱したことが判明すれば、同盟国である米国から「何という弱腰」と批判されることになるからだと思われます。
しかし中国の戦闘機と日々向かい合っている空自としては、攻撃動作を仕掛けられた場合に「戦域を離脱し領空侵犯を容認する」のか、「阻止するために反撃する」のか、政府に方針を決めてもらわなければ困ります。だからこそ、あえて情報を漏らしたのかもしれません。
領空侵犯を容認したら、「領空侵犯しても反応してこなかった」と中国に制空権主張の根拠を与えることになります。「撃墜もやむなし」と指示するには国際的な世論戦で負けないための宣伝能力の強化、日米連携の深化、敵基地攻撃能力の保持が不可欠です。
中国は「世論戦」を重視し、米国をはじめ主要先進国に中国が有利になるようなニュースを流す体制をつくり上げています。予算は1兆円とも言われ、米国のケーブルテレビで中国政府が作成したニュースを流したり、ニューヨーク・タイムズには中国共産党の機関紙『人民日報』の英語版が織り込まれているほどです。
一方、慰安婦問題という例を挙げるまでもなく、日本の対外宣伝力の弱さは知られています。韓国に対する「ホワイト国除外」でも、広報不足により国際社会では「日本が経済力で劣る韓国をいじめている」と報じられていたほどです。いまの状態で中国や韓国との間で紛争が起これば、日本は「悪者扱い」される可能性が高いと言わざるを得ません。
それだけでなく、中国は「日本政府から戦闘を仕掛けられた」と宣伝し、ミサイル攻撃を仕掛けてくる可能性すらあります。事実、米国務省の「中国に関する年次報告書2014」では、中国は短期激烈戦争(ショート・シャープ・ウォー)として「大量のミサイルを短期間に日本列島に発射し、米国の助けが来る前に日本を降伏させる」というシナリオが検討されているほどです。
日本はMDシステムを導入していますが、これだけで日本全土を守れるわけではありません。MDシステムは2段階に分かれていて、第1段階ではミサイルが大気圏にいる間に海上自衛隊のイージス駆逐艦が察知し、迎撃します。第2段階では、イージス駆逐艦が撃ち漏らしたミサイルを大気圏突入段階で空自の迎撃ミサイル、ペトリオットPAC-3で対応する仕組みになっています。
問題は第1段階では日本列島全体をカバーしていても、第2段階になるとPAC-3を配備している半径数十キロしか守れないことです。つまりPAC-3が配備されていない札幌を除く北海道、青森を除く東北、新潟などの日本海側、中国、四国、南九州はミサイル攻撃にまったく無防備なのです。
そしてそもそも防衛費の関係で在庫を抱えておらず、対応する迎撃ミサイルの数も足りていません。ミサイルだけでなく弾薬や燃料も不足していて、元自衛隊の幹部が言うには「おそらく海上自衛隊の護衛艦などが戦闘状態に入ったとして、戦い続けることができるのはせいぜい十数分だろう。自衛隊の基地が相手から攻撃を受けずに戦い続けることができたとしても1カ月持つかどうか」とのことでした。
トランプを救った安倍外交
米軍の弱体化と中国の軍事的台頭、米韓同盟の変質──日本を取り巻く安全保障環境の変化に、安倍政権はどう対応しようとしているのでしょうか。まずは外交戦略です。
トランプ政権は当初、中国に対抗するためにロシアと組もうと考えました。ところが関係改善は進まず、アジア諸国と関係を強化する方針に転換します。しかしフィリピンのドゥテルテ大統領は反米、ベトナム戦争の記憶があるベトナム、さらに核武装に踏み切ったインドなどとも関係は良好とはいえません。さらに「一帯一路」による買収工作で、中国批判を口にできない国も多くなっていました。
途方に暮れていたトランプ政権に救いの手を差し伸べたのが安倍首相だったのです。安倍首相は第二次政権が発足した2012年12月、英文で「アジアの民主的セキュリティ・ダイヤモンド構想」という英文の論文で、日米同盟を広げて東南アジアやオーストラリア、インドにいたるまでの連携網を構築する構想を発表しました。
この構想に基づき「地球儀を俯瞰する外交」で当該国との関係を深化させていったのです。特にインドとは同盟関係と言えるほど良好な関係を保っています。
一昨年、アメリカで会った米軍の元幹部は「セキュリティ・ダイヤモンド構想がなければ、南シナ海や東シナ海での中国の横暴はさらにひどく、紛争が勃発していたかもしれない」という認識を持っていました。
安倍首相がトランプ大統領とゴルフをラウンドしたり、トランプ大統領が安倍首相の誕生日を祝う姿に「アメリカの言いなり」「対米従属」と批判する向きもありますが、安倍外交が米国の大統領から頼りに���れていることの証明です。
トランプ政権と日本との関係が良好でなければ今頃どうなっていたことか、想像するだけでゾッとします。
こうした戦略的な外交ができたのは��倍首相個人の資質だけでなく、政治の仕組みを抜本的に変えたことも一因です。第二次安倍政権は、発足と同時に日本版NSC(国家安全保障会議)を創設し、軍事・外交・インテリジェンスを連動させた安全保障戦略をつくる体制を構築しました。
内閣人事局は「官僚いじめ」か
これまで日本の安全保障戦略は、防衛省が策定してきました。しかし霞が関で防衛省は3流官庁といわれていて、防衛庁時代は他省庁から相手にされず、防衛費の折衝すら直接財務省とできなかったほどです。
しかしNSCは内閣総理大臣直轄なので、安全保障戦略の主導権は官邸に移動し、ほかの省庁を巻き込んで安全保障政策を策定できるようになりました。そのような意味で、この改革は画期的といえます。
防衛、安全保障は防衛省の管轄と思われるかもしれませんが、住民保護や通信なら総務省、軍需産業による武器・弾薬の補給なら経済産業省、自衛隊の移動や戦闘機の離着陸なら国土交通省、戦闘によるけが人の対応なら厚生労働省……基本的にすべての省庁に関わっています。
NSCの話になると出てくるのが「内閣人事局」です。マスコミは内閣人事局を安倍政権批判の道具にして「官邸が好き勝手やるためにつくられた」「役人いじめ」というのですが、それは霞が関の現実を知らない人の謬論です。
内閣人事局は総合的な国家戦略を策定するための〝道具(ツール)〟にすぎません。さらにいえば、国益を考える有能な官僚を守るための道具です。
官僚たちにとって、守るべき最大の原則は「前例踏襲」──先輩たちが行ってきたことを守り、否定しないこと。これこそ出世の必須条件です。しかし「前例踏襲」では肝心の「国益」が守れないことも多い。
そんななか、安倍政権が内閣人事局をつくったことで幹部官僚人事を左右できるようになり、おかげで「国益のため前例を変えたい」と考える幹部官僚たちは上司に対し、「内閣人事局のせいで官邸からの指示には逆らえないので、やむを得ず先輩たちのやってきたことを改革します」と〝言い訳〟ができるようになりました。官邸が〝悪者〟になることで、各省庁の「前例踏襲政治」を改革しようとする国益重視の官僚たちを守ることができるのです。
「省庁縦割りの前例踏襲政治」から「内外情勢に機敏に対応できる国益重視の政治」へと官僚機構を変えるための道具が、NSCと内閣人事局というわけです。
令和の「富国強兵」を
NSCといえば9月、2つの大きな動きがありました。
まずNSCの実務部隊であるNSS(国家安全保障局)局長が外務省出身の谷内正太郎氏から、警察庁出身で首相側近の北村滋氏に変わりました。北村氏はインテリジェンスのプロで、拉致被害者奪還のためにウラで動き回ってきた人物です。
この人事はトランプ政権の方針と関係しているでしょう。トランプ政権はインテリジェンスに軍とCIAを使っていて、国務省をあまり関与させていません。というのも、国務省はパンダハガーだらけで情報がすぐ中国に漏れてしまう恐れがあるからです。国務長官にCIA出身のポンペオ氏を起用していることからも、トランプ大統領が国務省の官僚たちを信頼していないことはわかります。
一方、日本で国務省のカウンターパートは外務省なので、トランプ政権は外務省や外務省出身の谷内氏にできるだけ情報をわたさずに、内閣情報官だった北村氏にわたしていたという噂(うわさ)を米軍関係者から何度なく聞かされました。
外務省は谷内氏の後任にも同省出身者が就くことを期待し、谷内氏もそれを希望したようですが、外務省は外されることになりました。
この人事について朝日新聞は「官邸主導が強まる」「官邸にノーを言う人が少なくなる」という論調の記事を掲載していましたが、外務省は自分たちがNSCの主導権を握りたい、朝日もパンダハガーが多い外務省に担わせたいという意志が伝わってきます。
安倍政権としては北村氏をNSS局長に据えることでインテリジェンス重視を明確にし、トランプ政権との連携をさらに深めようとしているのでしょう。とはいえ、外務省などの抵抗が予想され、予断を許しません。
もう1つは、NSSに技術流出や産業スパイに対応する専門担当部局として「経済安全保障部門」を設置するという報道が出たことです。これまで技術流出や産業スパイに関しては経済産業省が外為法(外国為替及び外国貿易法)や不正競争防止法などを通じて対応してきましたが、中国企業による知的財産窃盗問題などには十分に対応できずにいました。
安倍政権としてはNSSに経済安全保障部門を新設することで、米中貿易戦争に対して的確、かつ迅速に対応しようとしているのでしょう。これらの動きにも大いに注目しておきたいものです。
米国は一枚岩ではありません。アジアの平和のために日本は弱い方がいいと考える「弱い日本派(ウィーク・ジャパン)」と、強い日本がアジアに安定をもたらす「強い日本派(ストロング・ジャパン)」が存在します。これまで日本は米国の「弱い日本派」によって、軍事的に抑え込まれてきました。
しかし幸いなことに、トランプ政権は中国の軍事的台頭に対抗するため、「強い日本」を求めています。危機はチャンスです。「強い日本」再建に向けた絶好のチャンスを生かすためにも、憲法改正だけでなく、デフレからの早期脱却、対米依存の是正を前提とした防衛費のGDP比2%増など、令和の「富国強兵」を断行したいものです。
江崎道朗(評論家・拓殖大学大学院客員教授) 1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、安全保障、インテリジェンス、近現代史研究に従事。『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP研究所)、『日本は誰と戦ったのか─コミンテルンの秘密工作を追及するアメリカ』(ワニブックス)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)ほか著書多数。
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「Be my coach, Victor!」
今にして思えば、自分の瞳に映っていた彼の瞳こそが、最も美しかったのだ。
「あ、電池切れた」
酒瓶を抱えたミナコが呑気に呟く。 ヴィクトルコーチ就任おめでとうパーティなるものの最中、隣で飲み食いしていたはずの勇利が、気付くと床に転がっていた。ふすーふすー。些か間抜けな吐息がヴィクトルの膝をくすぐっている。鼻の穴は大げさに伸縮しており、まさに仔豚だ。前も思ったけど、不細工なんだがちょっとかわいい。 「緊張の糸が切れちゃったんだね」 「演技的にも環境的にも新境地だったろうからな」 「まあ、これで晴れてヴィクトルもコーチになってくれたことだし、よかったよかったー」 「ユリオ帰っちゃったのは残念だけどねー。また来てくんないかなあ」 「お姉ちゃんー、勇利の部屋開けといたげてくれんとー? お母さん今手が放せんとねー」
スタッフルームの奥にいるらしい、寛子の声が座敷に届く。
「えー、お父さんはー?」 「その辺転がっとらんー?」 「あ、ほんとだ……しょんなかとね」
腹に珍妙な顔をこさえた利也を跨いで、真利が階段の方へと消えていく。それを何となしに横目で見送っていると、気付けば机の向かいに座っていた優子が身を乗り出してきていた。思わず顎を引く。間近で見てもティーンにしか見えない彼女の瞳は、彼のものによく似ていた。
「ね、ね、ヴィクトルっ。ぶっちゃけ、あなたは勇利くんのスケート、どう思ってるの?」 「あっ、それ私も知りたい!」 「俺も俺も。動画見てここまで来るなんて、よっぽど何かが引っ掛かったのか?」
興味津々な眼差し3セットを受け止めながら、ヴィクトルは少し逡巡する。どうにも勇利の印象があのダンスバトルの夜と結びつかないので、まずは試合での印象を述べることにした。うーんなんて嘯きながら、顎先を指で軽く叩く。
「ジャンプこそ泣いても飛ばずってかんじで精度不安定だけど、技術はあるし、体力も申し分ない。何より表現力が豊かだ。だが、その割に薄味過ぎる。情緒はあれど、情熱は皆無で、少々寂しいスケート、ってのが今のところの印象かな」 「わあ、ばっさり」 「リビングレジェンド相手じゃ仕方ないっしょ」 「あと、サービス精神はもう少し育てないとね。ファンとの接し方は及第点を遥かに下回っているよ」 「それも否定できないわね……いっくら私が注意しても全然治りゃーしないし」 「人付き合いも苦手だもんね……」 「まあ、こいつは正直薄情だけど、さみしいやつではないよ」 「ああ、ユーリが愛を知らない人間だとは思っていないよ。むしろ逆さ」
西郡の懸念故のフォローを正しく汲み取って。 日本人の想像する外国人らしく、ヴィクトルが大げさに肩を竦める。
「彼は確かに愛を知っているのに、受け取り方も返し方も判っていない様に見える。それが俺には理解出来ない」
膝先に転がっている勇利の前髪を指先で晒す。成人しているとは思えないあどけなさだった。起きている時には顕著な自信の無さだって、無意識下の今では鳴りを潜めている。 勇利を取り巻く周囲の環境は、とても愛に満ちている素晴らしいものだ。そうヴィクトルは高く評価している。だからこそ、それらを一心に受けているはずの勇利の頑なさが不可解だった。
「そっか、ヴィクトルにはまだ判らんとね」
優子がぽつりと呟いた日本語も。
「なあ、ヴィクトル。コーチになったからには、どうかこいつのスケートを愛してやって欲しい。それだけが、勇利から求められる見返りだからさ」
西郡が願う様に告げた英語ですら。
「さて、そろそろ勇利のやつ運んでやるか」 「部屋のドアは開けといたから、よろしくね」
宴会場に戻ってきた真利の言葉にうす、と返して、西郡が立ち上がろうと床に手をつく。勇利を運んでやるのだと察して、ヴィクトルは片手で制した。
「俺が運ぶよ。コーチたるもの、生徒のフォローはしないとね」 「え、でも大丈夫か?」 「大丈夫さ。仔豚ちゃんだった頃ならともかく、これくらいのサイズの勇利なら余裕、余裕」
何せ去年のバンケットにて、酔っ払って足腰立たなくなった彼を部屋まで送り届けてやったのはヴィクトルである。勇利の名誉の為にも、ここでは口を噤んでやるけれど。 おやすみー、と口々に見送られながら、ヴィクトルは勇利を抱えてその場を後にした。階段を上った突き当りの勇利の部屋は、真利が気を利かせてくれたおかげで開かれている。眠りの仔豚を難なくベッドに下ろして、ヴィクトルは軽く息を吐いた。肩を回せば小気味のいい音が鳴る。 ようやくスタートラインに立てた。 その感慨深さは、予想以上にヴィクトルのモチベーションを引き上げている。課題は山積みだ。やることの多さは自分だけを磨いていればよかった頃の比では無い。けれど存外、苦痛ではない。幸い、勝生勇利というスケーターにもちゃんと興味を持てている。そのことに、まずは正直、安心した。 案外、コーチも大丈夫そうだ。 フラットな気持ちで、気の抜けた顔をして眠る勇利の顔を見下ろす。ヴィクトルが最初に惹かれた輝く瞳は、かたく閉ざされれている。 これからだ。 まずは、ここから。 内心で喝を入れるけれど、共寝を振られ続けている身としては、いつまでも彼のテリトリーにいるのも居た堪れない。早々に部屋を後にする。扉の閉まる音が、やけに尖って耳についた。
どうかこいつのスケートを、愛してやってほしい。
先程の西郡の言葉が、ふいに脳内でリフレインする。
「もちろん愛しているさ。俺にしか、彼を使った最高のプログラムは作れない」
最初からちゃんと勇利のスケーティングに惚れている。ヴィクトルは本気で思っていた。 勇利の古いリンクメイトの言葉で大事だったのは、むしろその後なのだと。この時はまだ知らなかったので。
ある時、勇利のフリースケーティング用の曲が変化した。単刀直入に尋ねれば、テーマは「僕の愛について」。勇利自身にも女神が舞い降りたのか、スケーティングする足元は軽快で迷いが無い。プレイヤーが無くても、勝手に音を鳴らしている。 なるほどね。 ヴィクトルは得心した。
「ユウリにとっての愛が見つかったのかな?」
休憩の合間に、もう一歩踏み込んでみる。昨日までは怒られた質問も、今日からは彼を傷付けなかったらしい。自分の心の底を浚っていた勇利は、小さな唸り声の後潔く口を開く。 僕にとって愛とは、
「そこにあるもの、あるだけでいいもの」
誰も滑っていないスケートリンクで、その声は静かに、厳かに響いた。 無意識に、ヴィクトルは背筋を正す。
「随分とさっぱりした見解だね」 「シンプルに考えてみたんだ。滑るって何だったっけ? ……ってさ」
滑る? 何、とは? 疑問が喉元まで出掛かったけれど、寸前で押し止める。何となく、今は勇利の言葉を遮ってはいけないと直感した。
「隣を見たら優ちゃんがいて、時々西郡も混ざって、滑る。ミナコ先生にバレエのレッスン付けてもらいながら、大会に出て、家族に応援してもらいながら、滑る。僕はいつだって、誰かが僕にくれた時間と一緒に滑ってた」
ひとつひとつ、確かめる様に折られていた指が、綺麗に五本とも畳まれる。
「ひとりなんかじゃ、全然無かったんだなって」
あー恥ずかしい。ぱたぱたと勇利は掌で顔を扇ぐ。照れくさそうな生徒の様子に、ヴィクトルは微笑ましくなった。 愛の話をしていたはずが、いつの間にかスケートの話になっているのには少し呆れもしたけれど。勇利は本当にスケートを愛しているのだという、感心の方が大きかった。
「眼鏡取って前髪上げるとさー、芋さがちょっとマシになるよね。ほんとちょっとだけど」 「やかましかー真利姉」 「ユウリ、動かない。櫛刺さるよー」 「いてっ」 「ほら、だから言ったのに」
正面向いて、と頬を指で叩く。大人しく従う勇利のこうべは、梳かれた黒髪で綺麗な球体になっていた。 顔や体のパーツバランスも存外悪くない。勇利のシンプルな造作は、ヴィクトルにしてみれば好ましいものだった。無駄なものが少ない素材は、活かす側の腕が実直に問われる。だからこそ、手間暇掛けて野暮ったさの残る青年を美しく着飾らせるのは、なかなかに楽しい。 最初は届いた衣装を軽く合わせるだけの予定だった。本番と同じ様に仕上げているのは、スケートファン親子たっての希望だ。 感触は悪くない。「勇利くんシックなのも似合うねー」と優子はにこにこしているし、三つ子の姉妹も興味津々といった様子で写真を撮っている。姉として辛口だが、真利から見ても今の勇利はあか抜けて見える様だ。途中経過での評価としては上々だろう。 センスには一定の自負があるとは言え、他人を仕立てるのは初めてだ。ひとまずほっとする。
「にしても、贅沢ものだねー勇利。世界一のモテ男に服買ってもらって、髪まで梳いてもらっちゃってさ」 「真利姉、言い方! ちゃんとコーチ代と一緒に支払うから!」 「……支払えるの?」 「……前向きに検討させてください」 「でも何て言うか」
ひたり。女性陣の眼差しは、勇利の髪にワックスを馴染ませているヴィクトルに宛てられている。
「世界からヴィクトル・ニキフォロフを奪った男って言うより」 「ヴィクトル・ニキフォロフを顎で使う男……」 「刺されるねー!」 「フルボッコだねー!」 「だんがいぜっぺきいまいずこー!」 「……優ちゃん、三つ子に何見せたの?」 「ハマっちゃってる昼ドラを少々……録画してあるの見られちゃって」 「レディたち、何だか好き勝手言ってないかい?」 「知らぬが花だよ、色男」
深入りしない方がよさそうだ。ヴィクトルは潔く開き直る。 「まあいいや。コーチングしている間、俺はユウリだけのアーティストだしね」 「アーティスト? スタイリストじゃなくて?」
真利の疑問に応えたのは、勇利の得心した独り言だった。 そっか。
「今のヴィクトルは僕で表現してる様なものだから、アーティストなのか」
平然と口にしているけれど、その発想は『他者の作品である』という自己を肯定しているも同然だ。カツ丼に美女に色男。頑固な癖に発想はユニークさに事欠かない。自身の役に頓着しない柔軟さは正しく勇利の武器だ。とびきり優しく生え際を撫でてやる。 グッボーイ。
「そういうこと。だから安心して俺に身を委ねるといい。勇利をとびきり美しくしてみせるから」 「いや、こんな至近距離でウインクしないでください……って優ちゃん、鼻、血!」 「流れ弾当たっちゃったぜ」 「優子ちゃん、ティッシュいる?」 「あ、お構いなくー。常備してるんで」 「ママしょっちゅう鼻血ブーだもんね」 「にしごおりブーになっちゃう」 「ちがうよ、ブー子だよ」 「やめ、笑わかさんで、櫛刺さる」
優子も姉弟も震えているが、生憎やりとりは日本語だったのでさっぱり判らない。少々寂しかったので、八つ当たりも込めて些か乱暴に勇利の髪を掻き上げる。「ぴぎゃーっ」びっくりした勇利の上げた悲鳴は、まさしく仔豚だった。
「はい完成ー」
動揺も抜け切っていない、眼鏡を外しているので視界もあやふや。定まっていない視線の正面で手を差し出すと、勇利は素直に重ねてきた。緩く握り返してやり、ふたり揃ってスタンドアップ。右手は彼の腰に添えるだけ。左手はスワロフスキーに彩られた背中が美しく張りつめる様に、相手の指先ごと頭上へ誘ってやる。この間、彼は「え」としか言っていない。
「はいユウリ、un,deux,trois」
即席スポットライトをぶっ掛けられた役者は、それでも狭い舞台で危うげなくターンした。ジャケットの裾が綺麗なフレアー型に広がる。うん、Excellent!
「恥ずかしかーっ」 「ポーズまで決めといて今更だよユウリ」 「わーっ、カッコよか! くっそカッコよか! 決まっとるよー勇利くんっ。その衣装でスピンは絶対まじやばいっ」
優子の力いっぱいの拍手に、勇利の頬も思わずといった様子で赤らんだ。
「あっ……ありがとう、優ちゃん」 「ねえヴィクトル、今度からこいつの普段着も選んでやってよ。今あるの燃やしていいから」 「Yes! Let's fireeeeeee!!!」 「やめて!」 「ほんとほんと、ゆうりカッコイイー!」 「おとなみたーいっ」 「ついったにあげていい?」 「だから非公開だってば、スケオタ三姉妹! あと僕はとっくに大人ですっ」
足元でじゃれつく小さなレディたちをいなしながら、勇利が振り向く。
「で、どう? ヴィクトル」
やや頼り無げではあったけれど。 自分が磨き上げてやった男の出来栄えに、ヴィクトルは満足そうに笑ってやった。 深い紺のジャケットに、きらめくスパンコール。日本人に付きまとう幼いイメージを払拭してくれる、スラックス調の緩やかなボトムス。ダイエットを命じた甲斐あって、それを着こなす勇利のルックスは十分に魅力的だった。銀盤の上に立てば、きっと誰よりも美しいに違いない。 何より、後ろへと流した髪のおかげで、どんな彼の言葉よりも雄弁に心情を語る勇利の瞳もよく見える。 うん、素晴らしい。 俺の作品だ。
時々勇利は言うことを聞かなかったけれど、それでも概ねヴィクトルの望み通りに物事は進んでいた。 そう、進んでいたはずなのだ、この時までは。 勇利が何をしたのか判らなかった。 飛んだ。そうジャンプだ。予定していた4回転トウループじゃない。4回転フリップ。フリップだ。自分が教えた、けれどまだ出来損ないだったはずのジャンプ。転びはしたが、それでも確かに、勇利は。 俺は今、何を見ているんだろう。 眼の前の光景が信じられない。ヴィクトルはいつだって自分の想像した理想を実現させてきた。 勇利の高難易度なショートプログラムにしたって、彼ならば実践を重ねれば完璧に出来て当然だという確信が、最初からあった。現にそれは今大会でノーミスという形で立証されている。だからこそ最高の生徒だと誉めそやした。 明確なヴィジョンに則り描かれる、完璧な世界。ヴィクトルの作品はいつだってそうして形作られてきたのに。 それを勝生勇利は、完膚なきまでに叩き壊してきやがった。 今この瞬間、自分を探している氷上で一番美しい瞳を見ていられなくて、ヴィクトルは両手で顔を覆う。 勇利は本当に、俺の言うことを聞かない! 気付けばリンクサイドを全速力で走っていた。理性が付いていっていない。気持ちのまま、この足は彼の元へと動いている。何もかもが言うことを聞かない。 こちらに気付いた勇利が、自分と同じ様に駆け出してくる。 ヴィクトル!
「僕、よかったでしょ!」
屈��なく笑うこの男が、愛しくて腹立たしい。まったくもって理不尽で不可解な心臓の鼓動が、ヴィクトルの胸を叩く。 衝動のままに抱きしめた後の捨て台詞の、何と貧困なことか。
「ゆうり以上に驚かせる方法は、これしか思い付かない」
ヴィクトル・ニキフォロフが、勝生勇利の想像に屈した瞬間だった。
「そこまで魅力的な勇利選手なら、自分も選手として戦ってみたいと思いませんか?」
報道陣が投げ掛ける当然の質問。 もちろんちゃんと返答は用意していた。だというのに、実際に言われた瞬間、ヴィクトルの脳内にあったカンペは一瞬にして吹き飛んだ。反射的に笑って誤魔化して、結局は手近にいたユリオで適当に場を濁してしまう始末だ。まったくもってスマートさの欠片も無い。 記者と別れたエレベーターの中、ヴィクトルは心中で自答する。 アマチュアのフィギュアスケートとは競技だ。一人の勝者と数多の敗者、それ以外は無い。 つまり、 俺が、勇利を、負かす? 俺が育てた、スケーターとして最高の生徒を、自らの手で潰せと言うのか? ヴィクトルにとって、競うとは、勝利とは、つまりそういうことだ。 耳鳴りがする。響くのは、最近の勇利がよく零す文句だ。
──コーチらしいこと言わないでよ。
最初は確かに真似事だった。自分なりにコーチングとは何かと考え、試行錯誤する日々。ヤコフという、ヴィクトルにとって唯一のコーチにしてもらったことをなぞったことも一度や二度では無い。 勇利にコーチとして、与えられるものは何か。 最初はもっと、その中に自分の願望が混じっていた。だというのに、彼との時間を重ねるごとに、少しずつ、けれど着実に、自分と勇利のウエイトが逆転していく。 勇利にとって必要なもの、素晴らしいもの。 そればかりを考えてしまう毎日は、ヴィクトルに否が応でも自分以外の他者の存在を突き付けた。今まで誰も傍にいなかったわけじゃない。マッカチンをはじめ、孤独を和らげてくれる誰かは、いつだって確かにいてくれたはずなのに。 気付けば最近、心には常に、勇利がいる。
チィン。 小気味良いベルが鳴る。エレベーターの扉が、ヴィクトルの前で開かれる。
そうか。 俺は今、本当に、ひとりでは無いのか。
そうして、ヴィクトルは気付いていく。 踊っていないと死んでしまうのは、自分では無いのだと。
「コーチ、お疲れさまでした」 「ヴィクトルは、競技復活しないの?」
グランプリファイナルの夜、自分勝手な生徒がヴィクトルに差し出してきたのは、間違いなく赤い靴だった。一度履けば、二度と脱げない。死ぬまで踊り続ける呪われた靴。そんなものを勇利に突き付けられて、ようやく悟ったのだ。 ヴィクトルこそが、この男にその呪われた華々しい靴を履かせたかったのだと。 あの日の福音は、今もヴィクトルの耳の奥で鳴り響いている。
Be my coach, Victor!
勇利は知らない。ヴィクトルはとっくの昔に、他でもない勇利によって呪われていることに。 競技者であったヴィクトル・ニキフォロフは死んだ。 今いるのは、勝生勇利のコーチとして生まれ変わってしまったヴィクトル・ニキフォロフだ。 なのにそんなヴィクトルを、勇利は言葉が通じない外国人を見る様な目で凝視している。自分たちが今喋っている言語は何だ。訳せ、理解しろ、飲み干せ。今の俺たちは対等だ。交わしているのは、ロシア語でも日本語でも無い、赤の他人の国の言葉だ! 勇利はスケートを心底愛している。ヴィクトル以上に、自分の滑りが一番だという矜持を秘めているのも彼だ。その勇利が、自分のスケートよりもヴィクトルの競技者としての時間を優先した。勇利は確かに、ヴィクトルを愛してくれていた。思い知った。 だが、それがどうした。
「自分は引退して、俺には競技を続けろだなんて、よく言えるよねっ?」
呪ったのはお前だ! 呪われたのは俺だ! 呪い返してやる。
──僕が勝つって、僕より信じてよ! ──黙ってていいから、離れずに傍にいてよ!
あの優しい人々は、そうやって勇利を、彼のスケートを愛していた。勝利を無心で信じる彼らは、いつだって氷上でひとり戦う勇利の心と共にいた。ひっそりと、静かに。当たり前だ。己の身の内にしか棲んでいない記憶など、この世の誰よりも無口なのだから。 ヴィクトルだって、そうして勇利を愛してやりたかった。 勇利の求める愛し方を譲歩してもいいと。思えるだけの情は確かにあった。
けれど俺たちは、親子でも友達でも恋人でも無い。
注いだ愛に対して、見返りを求めて何が悪い。 遠慮はしない。 それが俺の愛だ。 だから勇利。 舞台の上で、誰よりも美しく踊って死ね。
呪いは成就した。
グランプリファイナルで栄えある銀メダルを手に入れた選手が、ホテルに帰って真っ先にしたことは、コーチと一緒に部屋のベッドを動かすことだった。前々夜にて、言い争った気分そのままに誂えられたベッドを無言で離していたのを、エキシビションを終えて帰ってくるまですっかり忘れていたのだ。
「部屋のメンテナンスは完璧なのに、ベッドの位置だけはそっとしておいてくれるなんて、ここのスタッフは気が利いてるね」 「気を使ってもらった感半端なくて居た堪れないけどね……」 「同感。成人男子ふたりで何をしてたんだろうな」 「ほんとほんと」
喉元過ぎれば何とやら。 気恥ずかしさを紛らわす様に、ヴィクトルも勇利も軽口を叩き合った。 どこか上っ面で交わされる言葉に、不安を覚えたのはきっとどちらもだ。 だからヴィクトルと勇利がもう一度お互いの胎を見せ合ったのは、バンケットを終えたその夜のことだった。 「勇利、せめてジャケットとスラックスは脱いでくれ。シャツとネクタイは諦めるから」
ベッドにうつ伏せでくたばっている勇利からは、イエスだかノーだか判然としない声しか返ってこない。彼が身に付けているスーツは、ヴィクトルが試合前の観光先で衝動買いしたものだ。急遽用意したものとはいえ、案外勇利に似合っているので、生地を痛めるには少々惜しい。
「勇利。いい子だから言うこと聞いて」 「うん……うん……」 「もー、だったら勝手に脱がすよ? それでもいいの」 「うん……」 「OK、じゃあまずはその履き潰した靴下から脱がせて、盛大に顔をしかめてあげよう」 「……自分で脱ぎます、すみませんでしたっ」
跳ね起きた勇利が、いそいそと持ち込んだスウェットに着替え始める。自分もスーツを着たままだが、眠気は強くないのでネクタイを緩めるだけに止める。腰掛けたスツールから見える夜景は、フリーでの勇利を彷彿とさせた。自身を一番美しく魅せる衣装で踊る、ヴィクトルにとって、最高のスケーター。 思わず漏れた息は、安堵に満ち溢れていた。 自分はもう少し良識があると思っていた。少なくとも、世間が抱いているイメージ程逸脱はしていない。その程度の分別はあったはずなのに。 躊躇いなど無かった。 勇利を引き留める為に他者を利用したのだと、はっきり自覚している。悪いとは思っているが、後悔は無い。ならば反省のしようも無い。ヴィクトルは今も勇利を呪っているからだ。 フィギュアスケーターの競技者人生は短い。それはヴィクトル自身が痛恨している。 だからこそ。 勝生勇利が氷上を去るのは、彼に最高の死に花を咲かせて、ヴィクトル・ニキフォロフが満足した時だ。
「……ヴィクトル」
ちょっといいかな。遠慮がちに掛けられた声に振り返る。視線の先の勇利は、見慣れたラフな格好だ。だというのに、滲む雰囲気で薄らと察する。どうやらちょっとしないことらしい。
「やっぱ現役続行撤回、とかは受け付けないからね」
今更思ってはいないが、一応釘を刺しておく。勇利は憤慨した様にかぶりを振る。「違うよ」
「それより大事なこと。ヴィクトルに聞きたかったんだ」
ホテルとはいえ、ここはベッドルームだ。長谷津にいない、今の勇利のプライベートスペース。差し出されたのは、勇利の柔らかい部分だった。壊れやすく、脆く、そっと受けとめなければならない様な。 ああ、ここまで自分たちは近くなったのか。 出会った当初は立ち入ることすら出来なかった距��に感慨を覚えて、とびきり優しく頷いてやる。意を決し��様に、勇利が小さく息を吸う。吐き出す。
「4回転サルコウはユーリが、フリップは、ヴィクトルがくれたものだ」
そうして、今までで一番心細そうな顔をした。
「僕はちゃんと、返せてた? ヴィクトルが僕に注いでくれた愛は、僕の中に見つかった?」
先程よりも鮮明に、美しく、勇利のフリースケーティングが蘇る。 Yuri on ICE. 勝生勇利の愛について、愛し方、愛され方、愛のすべてが込められたプログラム。 思えばこの曲は、一度だってヴィクトルの言う通りに演技されたことは無かった。自身がプロデュースしているのをいいことに、やんちゃな生徒は師の知らないところで勝手に構成を変えてしまう。だからこそ、いつだって驚かされた。新しい世界を魅せつけられた。 そして、その世界で見つけたのだ。 何度もリテイクを重ねて磨かれた技には、練習場所を提供してきた西郡夫妻が。洗練された佇まいと仕草には、バレエの基礎を叩き込んだミナコが。そのすべてを表現するしなやかで健康なからだには、いつだって彼の一番の味方だった勇利の家族たちが。 そして、 自身の競技者人生を投げ打ってまで、勇利に可能性を懸けたヴィクトルの姿が、確かにそこにあったのだ。
──どうかこいつのスケートを愛してやって欲しい。それだけが、勇利から求められる見返りだからさ。
ああ、どうやら俺も、ちゃんと愛してしまった様だよ、西郡。 悔しいが、勇利が望んだ通りに。 勝生勇利のスケートをいとしいと想えた時。 自分は確かに、彼から���を返してもらえていたのだと、ヴィクトルは潔く気付く。 勇利のスケーティングには、彼を愛した者たちが費やしてきた時間も、心も、力も、すべてが込められている。 だからこそ勇利は、銀盤を誰よりも美しく舞うのだ。
──全部スケートで返すよ。
その言葉通りに。
「ちゃんといたよ。勇利のスケートの中に、俺もユリオも、長谷津のみんなも、ちゃんといた」
万感の思いを込めて、勇利の右手を握り込む。自分の感動が、目の前の誰かに間違いなく伝わる様に。言葉にしてくれた勇利の為に。 ふと、掌の中のそれが震えていることに気付く。 どうした? なんて愚問だった。
「悔しい」
今にも零れそうなくらい涙を湛えているくせに。反して勇利の瞳は、磨がれたナイフそのものだ。
「ショートプログラムで失敗したことも、ユーリに負けたことも、あいつの演技に焚き付けられて、今までの覚悟全部ひっくり返されたことも、みんなみんな、悔しい」
勇利の激情が肌を刺す。ちりちりと焦れたそれは、紛れもなく闘志だった。 口を挟む隙も無い。ならば、好きに吐き出させてやろう。受け止めてやるのが、自分の役目だ。そう余裕ぶれたのも、結局はここまで。
「僕のコーチなんでしょ、ヴィクトル」
ふいにぶん投げられた言葉は、物分かりの良い大人の脳みそを揺さぶるのに十分な威力だった。 英語を分解し咀嚼する。 テンポアップしていくのは、彼の血潮か、自分の鼓動か。
「今よりも、もっともっと、強くなりたい。負けたくない。僕を勝たせて。お願いだ」
助けてよ、ヴィクトル。 冴えた目をした勇利が、ヴィクトルに乞うた。 痺れるとは、正にこの感覚だと閃く。 求めた。勇利は、求めたのだ。この俺の力を! 心の情熱に従って、ヴィクトルは勇利の指で輝くリングへ首を垂れる。
「勇利が望むなら、もちろん」
導けと言うのならつれていこう。自分が持てるすべての力と時間と情熱を使って、高みへと押し上げてやろう。 エキシビジョンで披露したリフトにしたってそうだ。勇利に掲げられたいんじゃない。自分こそがこの男を抱え上げ、世界で一番高い木に生る果実を掴ませたかった。 勇利がずっと引退しなきゃいい。 そんな夢みたいな望みは、今もヴィクトルの胸で息衝いている。 たった八ヵ月。自分たちはまだ、それだけしか共に過ごしていないのだ。大人の薄情さはお互い知っている。唯一の繋がりを失ってまで縁が続くなんて、楽観視は出来なかった。 だからいつか、何てことの無い話で笑い合いたい。 まずは笑ってさようなら。再会した暁には、挨拶代わりに肩を組んで、酒でも飲んで。 引退? あったね、そんなこと! なんてさ。 「何その余裕さ、腹立つ」
そんなこっちの気も知らないで。 むくれたかと思ったら、勇利は酷く生意気な顔をして見上げてきた。
「覚悟しててよね。僕はヴィクトルだって超えたいんだから」 「さすがは俺の生徒だ。そういうの嫌いじゃないよ」 「……すっかり日本的な言い回しを覚えちゃって、まあ」 「謙遜は日本的には美徳なんだろう?」 「そういうのは慇懃無礼、って言うんだよ」 「What? キンギンブレード?」 「それは物騒と言う」
一拍置いて、間抜けな笑い声がお互いからこぼれ落ちる。どうにもおかしくなって、シーツの上で転げ合う。大の大人が、ふざけて飛び跳ねてスプリングを鳴らす。みっともないことこの上ないのに、どうしようもなく楽しい。泡沫の休息はもうすぐ終わる。 復帰を宣言した以上、ヴィクトルはコーチでもあり、選手でもある。こうやって抱き締め合っても、これからは同じ椅子を取り合う者同士として戦わねばならない。手塩に掛けた教え子と言えど、手加減はしない。それがヴィクトルの愛だからだ。 雪辱に燃えた勇利の視線に、射抜かれることなど無いと判っている。何よりもヴィクトル自身がそれを望んでもいない。 それでも、
今この瞬間、きらきらと輝いている彼の瞳に、映っているのは自分だけだ。
世界で一番愛しているスケーターのこめかみに鼻先を押し付けて。 今は言えない一言を、そっと音にせず囁く。
一緒に金メダルを取ろう、勇利。
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【SASRISE インド旅行記11】 アグラ、15時。
これから寝台列車に乗って「バラナシ」へ行く。バラナシはヒンズー教の聖地で、ガンジス川の沐浴が有名な場所だ。ここから約600キロの道のりで12時間後に到着予定だ。
予約した電車が来るまであと4時間程あるので、コスタコーヒー(ヨーロッパではよく見かけるスタバみたいなお店)でボンヤリ時間を過ごす。 アグラの街はとてもデンジャラスなので、うろつかない方がよいという事からガイドにここで降ろされた。
ボンヤリしているだけでも外の景色を見てるだけであっという間に時間が過ぎる。 目の前の電信柱が断線して、火花が散りまくっているのがちょっと怖かった。
ガイドは約束の時間の10分前に迎えに来た。約束通りの時間にやってきた事をかなりアピールしてきた。インド人がみんなルーズだと思うなよというアピールなのか、普段は時間にルーズだけど今日は守ったぜというアピールなのか分からなかったが。運が良いのか僕がインドに来てから出会う人たちはみんな時間にキッチリだ。朝の電車もピッタリにやってきて発車したし。
アグラフォート駅に着き、ドライバーとお別れ。電車が来るまではあと2時間くらいある。駅の中をぐるっと一周して居心地の良い場所を探す。売店で水を購入してから程よいベンチを見つけ腰掛ける。
この駅も外側はデンジャラスだから中にいた方が良いそうだ。 かといって、この駅はデリーの様に警察に荷物検査をされて入場するといった厳重な境は無く、誰でも出たり入ったりできた。
物乞いが沢山寄って来る。 ヒンズー語で何言ってるかわからないので笑顔でかわす。ひとりの婆さんは前歯が空っぽで、しきりに歯茎をアピールしてくる。この歯を治したいから金をくれと言ってるようだ? こういうのは構い出すと次から次へとやって来るので、ノーと軽くあしらう。 婆さんは僕を諦めて隣に座ってたスーツのおじさんのとこに行ってたが、凄い勢いで怒鳴られてた。 あれくらい怒号じゃないとダメなのかと感心する。スーツのおじさんは僕の顔を見て優しく微笑んだ。
おじさんに、「今日は暑いね」と話しかけると 会話が通じない。このおじさんもヒンズー語しか話せないらしい。 それでも、ジェスチャーでお互いの気持ちを伝え合い何だかんだコミュニケーションは取れた。僕と逆方向のジャイプールに行くらしい。ジャイプールは北インドコースの旅行者には定番の観光地なのだが、今回僕には時間が足りず行けなかった。次回は行ってみたい。
そのおじさんは図体がめちゃくちゃデカく、何者なのか気になってたら、身分証明書を見せてきた。政府(government)のガードマンだと書いてある。よく分からないが、じゃあ、あなたは強いんですねとファイティングポーズで伝えると、そうだと頷いてた。少し安心して、電車が来るまでこのベンチにいる事にした。ただし、「government何とか」という職業の奴は気をつけた方が良い。特に政府お墨付きの「観光ガイド」と「ドライバー」。こいつらは偽造の身分証明書を持ってる。ガバメントを連呼すれば日本人は騙されると思ってる。
駅には子供の物乞いも多い。 ホームにへばりつき死体のように横たわる浮浪者も多い。電車を待っている普通の人達も、床に普通に寝てる。これ、インドあるあるのスタイル。
暫くすると、インドに到着した時に空港で会った僕と同じ1人旅の日本人に再会した。 インドで知り合ったと言う友達と一緒で2人旅になっていた。その友達は食あたりを起こしたらしく、グロッキーになっていた。 焦点は怪しく、フラフラになり、顔は真っ青で、目の前すら見えてない状況だ。屋台の物か水かに当たってしまったらしい。すぐに構内で横になり動かなくなっていた。
インドはとにかく広いのに、再会が多い。 日本にいる時には友達に会うのもなかなか時間を作るのに大変なのに不思議だ。 この数日間のお互いの話を話し、談笑した。お互いに濃い時間を過ごしたんだなあと思う。似たような出来事も多かったが、お金の消費の仕方は大分異なり、興味深かった。僕は結構ケチな日本人だったかもしれない。彼の使ったお金の半額以下しか使ってなかった。
そうこうしてるうちに、時間になり列車がやってきた。また、時間通りだ。
彼は僕と同じバラナシへ向かうらしいが、一本後の列車という事で、ここで再会を願ってお別れ。
親切なインド人が列車の場所を教えてやると言って近づいてきた。ありがたいが、よく見ると赤い服のポーター(荷物運び)。小銭を持っていないので、断る。油断すると金金金だ。断ったところで、数十メートル案内した分の金をよこせと言う。仕方なくポケットにあった50円程度の小銭をあげる。そうしたら100円よこせとうるさい。無いものはないので心を鬼にして冷たくあしらう。こっちが望んでないのに勝手にサービスして、金よこせの輩が多すぎる。
列車は何車両あっただろうか? インドの鉄道はめちゃくちゃ長い。自分の乗る車両の場所にちゃんと待ってないと、発車までに車両に乗り込めないほどに長い。車両から車両には防犯上の理由からか移動が出来ないのだ。身分によって乗れる車両が異なる。
1番安い車両には人が溢れるように乗っていた。 19時。僕は予約している寝台二等車に心踊り乗り込んだ。
※インドの駅は写真撮影禁止との事で残念ながら全然無い
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