wandering thoughts and interests of a musical theater geek living in Japan. Wishes to go to WE and BW at least once a year each. Now Seoul is added to my theatre-going cities list. 東京に生息するミュージカルオタクのとりとめのないブログ。年に1回ずつぐらいロンドンとブロードウェイに行きたい。最近は韓国の大学路ミュージカルにすっかり夢中。
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記事更新のしやすさを考慮して、ブログをはてなブログに移転することにしました。このままtumblr自体は残しておくつもりですが、新しい記事は基本的に移転先のブログで書いていくことになります。移転先のブログでもよろしくお願いいたします。
Sparks inside of me http://theatre-goer.hatenablog.com/
気づかれた方もいるかもしれませんが、新しいブログの名前は『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) の「Electricity」の歌詞からとっています。歌の中では、「自分の中でスパークする」という意味ですが、「自分の中のスパーク(閃光)たち」という意味にも読めるなと思い、このタイトルにしてみました。
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[Theatre-Going Report] January 20th, 2018 ファンレター (팬레터, Fan Letter) @ Dongsung Art Center, Seoul
2018年1月20日にソウル大学路 (テハンノ) で韓国創作ミュージカルの『ファンレター』(팬레터, Fan Letter) を観てきました。今年初の大学路での観劇。『ファンレター』が上演されているドンスンアートセンターは『ミスター・マウス』以来の2回目。大学路の中では大きめの中劇場ぐらいの劇場ですが、客席の傾斜がしっかりあって、後ろの方でも端のほうでも観やすいので結構好きな劇場です。私が観た回の文人たち、もといキャストのみなさまは
チョン・セフン (정세훈) : ムン・テユ さん キム・ヘジン (김해진) : キム・ジョング さん ヒカル (히카루) : チョ・ジスン さん イ・ユン (이윤) : パク・ジョンピョ さん イ・テジュン (이태준) : ヤン・スンリ さん キム・スナム (김수남) : ソン・ユドン さん キム・ハンテ (김한태) : クォン・ドンホ さん
でした。どの俳優さんもみんな役にハマっていて、本当に素敵でした。
韓国ミュージカルクラスタのフォロイーさんの多くに「好きそう」と言われていた本作。みなさまよく私の好みをご存知で...。(←)
表現者にとって表現すること、ミューズの存在、最高の創作を残すために払う犠牲とそうせずにはいられない業、虚構を愛することと自分を偽っても愛されたいと思うこと、才能、創作物を愛するのと人として愛すること...本当に色んなテーマが盛りだくさんで観劇後色々と考えを巡らせずにはいられない作品でした。
まずはInterparkに掲載されているあらすじをご紹介します。
1930年代の京城。やり手の事業家セフンはカフェで休んでいたとき、驚くような話を耳にする。ヒカルという死んだ女性作家の小説が出版されるというのだ。知られざる彼女の正体も明かされるという。
セフンは、留置場に入れられている文人団体「七人会」のメンバーで小説家のイ・ユンを訪ね、その出版を中止してほしいと頼む。イ・ユンは本当の理由を明かさなければできないと言い、ヒカルの恋人だった小説家、キム・ヘジンが彼女に残した最後の手紙まで取り出して自慢する。セフンはその手紙を自分は見る必要があると言い、ヒカルについて話し始めるが…。
ちなみにこの作品は舞台の下手側に台詞と歌詞を日本語と中国語に翻訳した字幕がモニターに映し出されます。モニターが見やすい座席はかなり限定されますし、字幕の表示されるスピードとタイミングにも難ありですが、それでも台詞のかなり多いこの作品。内容を理解するのにものすごく助かりました。字幕がなければあれだけ泣いて感動できなかったと思うので、本当に感謝です。
(以下、ほぼネタバレしかないのでご注意下さい)
この前提を共有しないと書きづらいので先にざっくりネタばらしをしてしまうと、セフンが敬愛する作家で「七人会」のメンバーでもあったキム・ヘジン宛に送ったファンレターの中で、セフンが使った筆名が「ヒカル」です。セフンはヘジンやイ・ユンを含む他の「七人会」のメンバーが集まる事務所で小間使いとして働き始めます。職場でセフンが憧れのヘジン先生と話しているうちに、「ヒカル」が送ったファンレターに感銘を受けたヘジン先生が、「ヒカル」が女性であると誤解し、自分が抱える孤独を唯一理解してくれる運命の人だと強く思っていることをセフンが知ったことにより物語が大きく動き始めます。
『ファンレター』は大学路の創作ミュージカルでは珍しい二幕もののミュージカルなのですが、一幕はとにかくセフンとヘジン先生がそれぞれに自分の中で作り上げた「ヒカル」像に囚われて溺れていく過程がすごく倒錯的で「うわぁあぁあぁああ」と心の中で叫びながら観ていました。いわばセフンの分身のようなヒカルですが、最初は天真爛漫な男の子のような姿だったのが、ヘジン先生の思い込みから始まった恋心を守るために闊達で芯の強そうなお嬢さんの姿になり、さらにはヘジン先生も分身であるセフンですらも弄んで楽しんでいるようにすら感じる蠱惑的な妖艶さを漂わせる女性になっていって…。その理由はそれぞれ違うにしろ、二人共が自分の頭の中にしか存在する「ヒカル」のイメージと想いを深めていくとともに、お互いしか存在しないその想像の中の世界に深��、深く耽溺していく姿がなんかもう、凄いのです。
やがてヒカルと彼女と共に書き上げる小説とその二人の共同作業によって表現する愛の形に溺れていくヘジン先生。持病の肺結核が進行し、病が身体を蝕めば蝕むほど執筆作業に没頭していきます。春風のように優しげな先生の変貌。追い討ちをかけるようにヘジンを「七人会」から脱退させ、世捨て人ように小説を書き上げること以外のことを許さないような環境に追い込んでいくヒカル。二幕以降ヒカルはセフンの手を離れて、理想の文学のためには何でもするエゴイズムの塊のような手に負えない存在になっていきます。それはセフンの中に存在した彼の一面とも言えるわけで。セフンにとってヘジン先生は、自分が一番辛い想いをしているときに一条の希望の光を与えてくれた尊敬してやまない存在。憔悴するまでに一途な愛を注ぐ相手を意のままに操り自分の掌で転がす快感を悦ぶヒカル。創作にその創作者自身が表出すること…なんだか深く考えるのが怖いことを突き付けられているような気がしてならないのですが、目を逸らすことを許さないようなゾッとするような凄味がヒカルにはあるのです。
傑作を世に送り出すこと以外に作家の存在意義はないと言わんばかりのヒカルと、病身を顧みないヘジン先生になんとか生きようと足掻いて欲しいセフン。自分の中のミューズ像に命を削りながらも傾倒するヘジン。ヒカルの正体に勘づき、その罪深さを認識しつつもその余りある才能をそのままにしておけないと決意するヘジンの友人のイ・ユン。本当に人間や表現者の業の深さを実感せずにいられません。
「ヒカル」なしでは自分は書けないのかもしれない。ただの小間使いの男の子であるセフンが、才気溢れるヘジンのミューズ「ヒカル」のようには愛してもらえないかもしれない。それどころか自分は受け入れてすら貰えないかもしれない。悩みに悩みぬいた後、最終的にセフンはヒカルに克ち、自分の手を傷つけることによって「ヒカル」を消すことを選びます。そしてヘジン先生への最後の手紙は、「セフン」自身としての「ヒカル」の正体の告白する内容。この手紙は直接セフンの手からヘジンへと手渡され、セフンの目の前でヘジンはその内容を読みます。「ヒカルは僕です」「ずっと僕だったんです」と更に告白を重ねるセフンに対して「彼女が...そんなはずがない」「何故私が死ぬまで隠し続けてくれなかった」とヘジンに拒絶されるセフン…。双方の気持ちのどちら側に立っても、とても見ていられなくて、本当に胸が苦しくなりました。そして気がついたら、「どうなってしまうんだろう?この物語はどのように終わるのだろう」とすっかり物語にのめり込んでいる自分に気づくのです。
次の場面では実業家になったセフンがイ・ユンを訪ねている物語冒頭の時間軸に��ります。「留置所に囚われている身の自分が手紙を隠し持てるわけはないだろう」と必死なセフンを気がすむまでからかった後、ヘジンから「セフン」宛の手紙を預かっており、それは「七人会」のメンバーが集会所としても使っていた事務所にあると伝えるユン。「さすがヘジン先生だな。また読者を一人救った」と意味ありげな言葉を残して。
ヘジンから「セフン」への最初で最後の手紙と思われるその手紙は、赦しと救済の手紙でした。舞台ではヘジン自身が手紙を書きながら読み上げるような演出のこの場面。「彼女の正体がなんであろうと、あの手紙を書いた人を愛さずにはいられない」と読み上げる先生の少し哀しげで、でもとても愛に満ちた優しいなんとも言えない笑顔。お約束のようにもう私の涙のダムは決壊です。セフンを赦して、その後間もなく亡くなったヘジン先生。あの世でヘジンに寄り添うように共にあったヒカルが、セフンがヘジンの赦しと愛を得ることにより、セフンの元へと還っていくような演出も本当に本当に素敵でした。セフンに裏切られたも同然なのに、重大な役目を引き受けたユンのセフンに掛ける期待と思いとか、それをユンにヘジンが託したことから感じ取られる二人の固い友情と、文壇に立ち、その発展を願う同士としての絆にも熱いものを感じます。
ヘジンと同じ病に冒されていたユンもやがて息を引き取り...。ラストは色々なことを乗り越えて、「七人会」にできた空席を埋めることになったセフンがその所信表明をする場面で舞台は幕を閉じます。長い間筆を折っていたセフンが、また彼自身が納得できるような文章を書けるようになるまでは時間がかかるのかもしれません。でも、ヘジンをはじめとした文人たちの思いが未来へと繋がっている。悲しい気持ちも残りつつも希望が持てる幕引きで、本当に素敵な余韻が残る作品でした。
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[Theatre-Going Report] July 30th - October 29th, 2017 ビリー・エリオット (Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo and Umeda Arts Theater, Osaka
東京公演6回、大阪公演6回の合計12回観たミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) の日本初演。うまく表現できるかわかりませんが、なぜ私がこんなにもこの作品が好きなのかを物語と演出を中心に書いてみたいと思います。
(以下、記事の性質上ネタバレを多く含んでいますのでご注意ください)
冗長な気もしますが、ビリーの物語のあらすじをまずご紹介します。
1984年。鉄の女マーガレット・サッチャー率いる保守党が政権を握っていた英国政府は採算の取れない20の炭鉱を閉鎖する合理化計画を発表し、イギリスの各地では抗議する炭鉱労働者による大規模ストライキが行われた。母を亡くし、炭鉱夫の父と兄、少しボケはじめた祖母といっしょに暮らす少年ビリー・エリオットが住むイージントンの町も、その「合理化計画」の対象となったイングランド北部の炭鉱町だった。緊張した面持ちで待つ人々が集まるイージントンの厚生会館にも、父ジャッキーと兄トニーが所属する労働組合によるスト突入の決定の報せが舞い込んでくる。団結を声高に謳い、奮い起つ若き炭鉱夫たちのリーダー格であるトニーを尻目にビリーにはなぜストをするのかもよくわからない。
息子に男らしく育って欲しいジャッキーは炭鉱夫仲間のジョージがコーチを務めているボクシングのレッスンにビリーを通わせていた。ある日、町の厚生会館で行われているそのレッスンに遅刻したビリーはジョージに居残り練習と会館の鍵を「ウィルキンソン先生」に渡しておくことを命じられる。ビリーが一人残された部屋に雪崩れ込んできたのは揃いの白いチュチュを身につけたかしましい少女たち。ボクシングのレッスンの後に厚生会館で行われていたのは、ミセス・ウィルキンソンによるバレエのレッスンだったのだ。
さっさと鍵を渡してお役目御免になりたいビリーを無視し、ウィルキンソン先生は強引にビリーをレッスンに参加させ、終了後にそのレッスン料として50ペンスを要求する。払えないというビリーに対し、また来週来た時に払えばいいと言ってのけるウィルキンソン先生。「バレエなんて」という気持ちがある一方、不思議と踊ることに心が浮き立って自己流で踊ってみるビリー。元々ボクシングにあまり前向きになれない気持ちがあったことも手伝って、ビリーはボクシングのために渡された50ペンスのレッスン代をバレエのために内緒で使い始め、次第にバレエに夢中になっていく。
しかし、ある日とうとうビリーがボクシングをサボってバレエを習っていることが父ジャッキーに見つかってバレてしまう。苦しい家計をやりくりして絞り出した50ペンスを「オカマのように���ね回る」ために使われていたと知ってジャッキーは大激怒。ビリーはバレエが好きであることを訴えるが、頭に血が上った頑なな父にバレエもボクシングも禁止されてしまう。ビリーにバレエダンサーとしての才能を密かに見出していたウィルキンソン先生は、父親には内緒でロンドンのロイヤルバレエスクールのオーディションを受けてはどうかとビリーに提案し、そのための個人レッスンを放課後につけることをビリー���持ちかける。
…とここまでで一幕の半分くらいまででしょうか。
「あの星は影を見てる 光が生む影を」
『ビリー・エリオット』の物語はダンサーとしての道を歩み始める少年の成長物語であると同時に、サッチャー政権下の炭鉱ストなど当時の社会情勢も取り扱った骨太の人間ドラマでもあります。ちょっとしたことをきっかけに、みるみるとバレエの才能を開花させていく綺羅星のような少年ビリー。その一方で町の大人たちを取り巻く環境は非情なまでに厳しい。長引く炭鉱ストを続ける父と兄はロンドンへのバス代も工面できないほど困窮しているし、バレエの師であるウィルキンソン先生も夫は不倫の挙句リストラされて酒浸りで、娘のデビーとも上手くいっていない。深い暗闇の中にあるからこそ輝く強い星の光。やがてその星がみんなを照らす希望となっていく。
星たちが味方だ 見捨てられても ゆくべき道を示し 導く 苦しみも痛みも 過去も乗り越えて 光浴び立ち上がる日まで 我々はひとつだ
ミュージカルのオープニングナンバーである「The Stars Look Down」の歌詞にも最初から暗示されているかのような見事な構成。その対比があまりにも鮮やかで残酷ながらも、そのどちらも否定しないのが『ビリー・エリオット』の素晴らしい所で、これほどまでに胸を打つ理由なのだと思うのです。
「使いな、これも」
話はいきなり変わりますが、私がもし『ビリー・エリオット』の世界の住人の誰か一人になれるとしたら、なりたい人物として一番最初に思いつくのがこの台詞を「He Could Go and Shine」の曲中で言う役名さえ明かされていない一人の女性です。ビリーをロンドンで行われるオーディションに行かせたくとも、そのロンドンへのバス代も出せないジャッキー。同じくスト中の他の炭鉱夫の仲間たちも懐事情は似たり寄ったり。そんな中、先陣を切ってジャッキーにカンパを申し出るのが彼女で、有無を言わせずジャッキーの手になけなしのお金を握らせるその力強い言葉と姿がとてもかっこいいのです。
こっそりとしわくちゃのお札をビリーに手渡すデイビーに、「アートを支援するぞ!」と言ってボクシングのレッスン料でコツコツためたお金をビリーのために使おうと言い出すジョージ。変���話かもしれませんが、私は彼らの姿にビリーを観るためにせっせと劇場に足を運ばずにいられない自分自身の姿を重ねていたのでした。
選ばれた5人のビリーたちは、それぞれに違う「めったくそ特別」な少年たち。ジャッキーがその踊る姿に目の当たりにして動かされたように、「この子たちのために何かできることがあればしたい」と思わされずにいられないのです。また、その一年以上にも及ぶ育成を兼ねたビリーのオーディションからして、ミュージカル『ビリー・エリオット』を日本で上演することは相当な大冒険だったに違いありません。博打のような決断に打って出た関係者をはじめ、実際にその公演を成立させるために関わった数多くの人々に対して投資したい。もちろん、純粋にビリーが好きだという気持ちがあったから何回も劇場に通ったのではありますが、このような気持ちがチケット購入を後押しする動機の一つになったことも事実です。こんなことは初めてで、自分でも少し驚きました。
「ビリーに投資したい」と思う自分自身と、「使いな、これも」と言ってお金を差し出す彼女に共通点を見出した時は、なんだかそれだけですごく泣けてきたことをよく覚えています。こうやってこの記事を書いているように、思ったことを表現したいと思い、たまにアウトプットしたくなるタイプのオタクである私。そんな私は、舞台に立つ俳優さんたちや制作に携わるみなさんのように「表現すること」によって生計を立てている人に対して果てしない憧れがあります。表現者として無限の可能性を感じるビリーたちに対しては言葉にするまでもなく。若い才能を信じて未来を託したい、その姿を見守りたいと思う。いつの間にか自分も気持ちの上でそちら側に立っていたんだなぁと思うと、ほろ苦い感傷が胸をくすぐるのです。
「みんながクソッたれダンサーになれんとよ」
これは数秒前には弟のオーディション合格を全力で喜んでいたトニーが、組合が全面降伏してストライキを終了するという報せを聞いて、自身や仲間の今後を嘆いて捨て台詞のようにビリーに投げつける痛々しい弱音です。
そう、誰もがダンサーになれるわけではない。ましてやそれで生計を立てられるほど成功するのは本当に一握りの人たち。さらにその中でスポットライト浴び続けられる存在となると…。残酷で不都合な真実。
ビリー役を選ぶ大規模オーディションの過程を考えても、それだけでもこの作品のテーマを包含するひとつの大きなドラマです。本当に、本当に積み重ねられてきた数々の奇跡で成り立っているのが『ビリー・エリオット』の舞台。ビリーとして選ばれた5人が舞台に立つことは、町のみんなの期待をその小さな肩に背負って故郷を旅立つ彼らの姿にも重なります。
「舞台はナマモノ」、「舞台は一期一会」とはよく言われる言葉ですが、ビリーは、公演を重ねることによって配役された少年少女たち、さらには大人キャストの絆が成長することを含めてビリーの成長物語のようなドラマになっていて、これほどこれらの言葉の重みを感じた作品は他にありません。
「個性が世界 救うのさ」
バレエスクールのオーディションを受けることについてどう思うかを、ビリーが親友のマイケルに相談した時に歌われる「Expressing Yourself」のナンバー。見応えのあるビリーとマイケルのタップダンスがとても魅力的な明るくて前向きな内容のナンバーでありながら、観る公演回数を重ねるうちにどうしようもなく涙が溢れるようになっていった場面でもあります。
ダンスを踊りたければ踊ればいい、炭鉱夫になりたいならなればいい、好きなことをして自由に自分を表現することの何が悪いのさと、キラキラとした笑顔で屈託なく笑って歌う少年たち。物語の幕が下りた後のフィナーレでも全員で歌われるこのナンバーは、どんな形でも、好きなことを追い続けてるだけで、誰もが表現者になれると言ってくれるのです。
「誇りを抱いて 歩け力強く」
誰もがダンサーになれるわけはない。でもダンサーにならなくても、日々を自分らしく精一杯生きるだけで誰もが表現者になれるという作品のメッセージの肯定感。その証拠に、踊っている時だけ自由になれたと語る祖母の姿も、一人バレエを踊る息子の姿に心揺さぶられ突き動かされ、仲間を裏切りスト破りを敢行しようとしたジャッキーの姿も、仲間と家族の絆を思い必死に父を止めようとするトニーの姿も、若い才能の未来をを思ってビリーを突き放すウィルキンソン先生も、戦いに敗れて炭鉱で働く日々に戻っていく炭鉱夫たちの姿もみんなとても凛としていてかっこいい。炭鉱夫のヘルメットに付けられた眩い無数のライトに照らされるビリーとは対照的に、暗い炭鉱へと降りていく男たち。不器用ながらも自分なりに一生懸命真摯に生きる彼らの姿はとめどなく愛おしく、輝くビリーとその才能と同じくらい胸を打つのです。
どんなときにも 心のままに あなたらしく生きて
自分らしく生きること。これはすでに故人であるビリーの母が息子に向けて遺した言葉でもあり。
今回この記事を書いてみて改めて実感しましたが、私がビリーをこんなにも大好きになった理由はその物語の根底を流れる大きな愛と希望と、人が生きていく上での悲哀をまるごと受け止めてくれるような懐の深さがあり、そしてそれが舞台の上だけではなくて今を生きるみんなの現実にも繋がっているからなんだと思います。そして、このみんなには舞台に立つ人、それを支える人、観客の全員が含まれる。
「またな、ビリー」
映画では成長したビリーが出演するバレエ公演を父と兄、そして親友のマイケルが観に駆けつけるところで幕を閉じますが、ミュージカルではビリーが手紙で母親に別れを告げ、マイケルに見送られながら生まれ育った町を旅立つところで幕が閉じます。
ビリーに別れを告げるのはとてつもなく寂しい。だけど、彼の夢を応援していつか逞しく成長したビリーの姿に再会したい。涙をこらえて笑顔でビリーを送り出そうとするマイケルの姿まで、まるで自分の気持ちを代弁するかのようです。いつか再会できる��信じたい。日本の『ビリー・エリオット』の舞台然り、ビリーたちを始めとするキャストのみなさん然り。このような感動を届けてくれた日本のミュージカルの未来の姿にも。
目を背けたくなるような暗い現実が待っている炭鉱町に残された人々の未来にも、ビリーの明るい未来を願うこの祈りのような気持ちが一筋の明るい星灯りのような希望となって照らすことを祈りながら。
遠く離れたイギリスの炭鉱町で繰り広げられるこの物語を、オリジナルの演出のままながらもすっと沁みて入ってくる日本語の台詞と歌詞に翻訳し、それぞれが役を生きている素晴らしいキャストで配役して、ビリーたちとともに舞台が成長する姿を見届けられる日本に持ってきてくれたことには、本当に感謝しても感謝しきれません。素晴らしい舞台を見せていただいて、本当にありがとうございます。
随分と時間がかかり長くなりましたが、この記事を「またな、ビリー」と送り出す気持ちに代えて。
「いつまでも」
2018.1.14 satoko
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[Theatre-Going Report] July 30th - October 29th, 2017 ビリー・エリオット (Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo and Umeda Arts Theater, Osaka [観劇日程・キャスト記録編]
2017年の夏から秋を捧げたと言っても過言ではないくらい、ミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) の日本初演は特別な作品になりました。ビリーの日本初演の公演期間は東京公演 (赤坂ACTシアター) が2017年7月19日から10月1日まで、大阪公演 (梅田芸術劇場) が10月15日から11月4日まで。マイ初日とその観劇後記については去年書きましたが、結局私は東京公演6回、大阪公演も同じく6回の合計12回ビリーを観ました。
私が観劇した日程とキャストは以下のとおり:
[201.7.30 ソワレ] ビリー : 加藤航世 さん お父さん : 吉田鋼太郎 さん ウィルキンソン先生 : 島田歌穂 さん おばあちゃん : 根岸季衣 さん トニー : 中河内雅貴 さん マイケル : 古賀瑠 さん デビー : 佐々木琴花 さん オールダー・ビリー : 栗山廉 さん トール・ボーイ : 山城力 さん スモール・ボーイ : 岡野凛音 さん バレエ・ガールズ : チーム・アッシントン
[201.8.26 ソワレ] ビリー : 前田晴翔 さん お父さん : 吉田鋼太郎 さん ウィルキンソン先生 : 島田歌穂 さん おばあちゃん : 根岸季衣 さん トニー : 藤岡正明さん マイケル : 古賀瑠 さん デビー : 佐々木琴花 さん オールダー・ビリー : 大貫勇輔 さん トール・ボーイ : 笹川幹太 さん スモール・ボーイ : 菊井凛人 さん バレエ・ガールズ : チーム・アッシントン
[201.9.3 ソワレ] ビリー : 加藤航世 さん お父さん : 益岡徹 さん ウィルキンソン先生 : 柚希礼音 さん おばあちゃん : 根岸季衣 さん トニー : 藤岡正明 さん マイケル : 城野立樹 さん デビー : 香好 さん オールダー・ビリー : 栗山廉 さん トール・ボーイ : 小溝凪 さん スモール・ボーイ : 桜井宙 さん バレエ・ガールズ : チーム・アッシントン
[201.9.10 ソワレ] ビリー : 木村咲哉 さん お父さん : 益岡徹 さん ウィルキンソン先生 : 島田歌穂 さん おばあちゃん : 久野綾希子 さん トニー : 中河内雅貴 さん マイケル : 持田唯颯 さん デビー : 佐々木琴花 さん オールダー・ビリー : 大貫勇輔 さん トール・ボーイ : 笹川幹太 さん スモール・ボーイ : 菊井凛人 さん バレエ・ガールズ : チーム・ベッドリントン
[201.9.23 マチネ] ビリー : 未来和樹 さん お父さん : 益岡徹 さん ウィルキンソン先生 : 島田歌穂 さん おばあちゃん : 根岸季衣 さん トニー : 藤岡正明 さん マイケル : 持田唯颯 さん デビー : 夏川あさひ さん オールダー・ビリー : 栗山廉 さん トール・ボーイ : 小溝凪 さん スモール・ボーイ : 桜井宙 さん バレエ・ガールズ : チーム・ベッドリントン
[201.9.30 マチネ] ビリー : 山城力 さん お父さん : 益岡徹 さん ウィルキンソン先生 : 島田歌穂 さん おばあちゃん : 久野綾希子 さん トニー : 中河内雅貴 さん マイケル : 持田唯颯 さん デビー : 香好 さん オールダー・ビリー : 栗山廉 さん トール・ボーイ : 小溝凪 さん スモール・ボーイ : 菊井凛人 さん バレエ・ガールズ : チーム・ベッドリントン
[201.10.21 マチネ] ビリー : 加藤航世 さん お父さん : 益岡徹 さん ウィルキンソン先生 : 島田歌穂 さん おばあちゃん : 久野綾希子 さん トニー : 中河内雅貴 さん マイケル : 城野立樹 さん デビー : 佐々木琴花 さん オールダー・ビリー : 大貫勇輔 さん トール・ボーイ : 笹川幹太 さん スモール・ボーイ : 桜井宙 さん バレエ・ガールズ : チーム・ベッドリントン
[201.10.21 ソワレ] ビリー : 山城力 さん お父さん : 益岡徹 さん ウィルキンソン先生 : 島田歌穂 さん おばあちゃん : 根岸季衣 さん トニー : 中河内雅貴 さん マイケル : 古賀瑠 さん デビー : 夏川あさひ さん オールダー・ビリー : 大貫勇輔 さん トール・ボーイ : 小溝凪 さん スモール・ボーイ : 岡野凛音 さん バレエ・ガールズ : チーム・アッシントン
[201.10.22 ソワレ] ビリー : 加藤航世 さん お父さん : 益岡徹 さん ウィルキンソン先生 : 柚希礼音 さん おばあちゃん : 根岸季衣 さん トニー : 藤岡正明 さん マイケル : 古賀瑠 さん デビー : 香好 さん オールダー・ビリー : 大貫勇輔 さん トール・ボーイ : 小溝凪 さん スモール・ボーイ : 岡野凛音 さん バレエ・ガールズ : チーム・アッシントン
[201.10.27 マチネ] ビリー : 前田晴翔 さん お父さん : 吉田鋼太郎 さん ウィルキンソン先生 : 島田歌穂 さん おばあちゃん : 根岸季衣 さん トニー : 藤岡正明さん マイケル : 山口れん さん デビー : 佐々木琴花 さん オールダー・ビリー : 栗山廉 さん トール・ボーイ : 小溝凪 さん スモール・ボーイ : 菊井凛人 さん バレエ・ガールズ : チーム・アッシントン
[201.10.27 ソワレ] ビリー : 木村咲哉 さん お父さん : 益岡徹 さん ウィルキンソン先生 : 柚希礼音 さん おばあちゃん : 根岸季衣 さん トニー : 藤岡正明さん マイケル : 持田唯颯 さん デビー : 佐々木琴花 さん オールダー・ビリー : 栗山廉 さん トール・ボーイ : 小溝凪 さん スモール・ボーイ : 岡野凛音 さん バレエ・ガールズ : チーム・アッシントン
[201.10.28 ソワレ] ビリー : 山城力 さん お父さん : 益岡徹 さん ウィルキンソン先生 : 柚希礼音 さん おばあちゃん : 根岸季衣 さん トニー : 中河内雅貴さん マイケル : 持田唯颯 さん デビー : 佐々木琴花 さん オールダー・ビリー : 栗山廉 さん トール・ボーイ : 小溝凪 さん スモール・ボーイ : 岡野凛音 さん バレエ・ガールズ : チーム・アッシントン
日程やキャストにリンクを貼っている部分は関連記事に飛びます。
一部のキャストに関して観ている回数が偏っていますが、大人キャストのスケジュールだけでチケットを取ったのが7/30, 9/3, 10/27マチネと10/28ソワレ、後はどのビリーを観たいかだけでチケットを取ったらこういう結果になりました。結果、力くんのトールボーイも含めてなんとか全キャストコンプリート!ここに書き出せていないシングルキャストのみなさまも含めて、全カンパニーまるっと大好きになった本当に本当に素敵な日本オリジナルキャストでした。
できることなら一人���人のキャストについて、好きなところを一つ一つ書きたいところなのですが、それを始めると好きが溢れすぎて永遠にレポを書き終えられずに下書きに入ったままになりそうなので、とりあえずまず記録のためのこの記事だけで投下。
これだけの回数を観ても、飽きるどころかまだ全然観たりないと思うくらい夢中になったビリー。彼らが作るビリーの舞台は今しか観れないんだと思うと、観たいと思う気持ちが止められず、毎回毎回が本当に宝物のような得難い舞台でした。
みんなでビリーを演ってくれて本当にありがとうございます。
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[Theatre-Going Report] Nov. 3rd, 25th, Dec. 29th, 2017 私とナターシャと白いロバ (나와 나타샤와 흰 당나귀) @ Uniplex, Seoul
2016-2017年の初演が大好評に終わった韓国創作ミュージカルの『私とナターシャと白いロバ』(나와 나타샤와 흰 당나귀) が早速2017年の秋から大学路ユニプレックスで再演されました。初演のキャストに加えて、ジャヤ、ペクソク、サネ役それぞれに新しいキャストが加わった今回の再演。二人の新しいペクソクとジャヤ、サネ一人と初演キャストだけど前回観れなかったアン・ジェヨンさんのサネを今シーズン観ることができたので、それぞれのキャストの印象の違いなどをまとめてみたいと思います。
私が今期の観劇日程とキャストは以下の通りです。
[2017.11.3 ソワレ] (1枚目のキャストボードの写真) ペクソク(白石, 백석) : キム・ギョンス さん ジャヤ(子夜, 자야) : クァク・ソニョン さん サネ(男, 사내) : キム・パダ さん
[2017.11.25 マチネ] (2枚目のキャストボードの写真) ペクソク : コ・サンホ さん ジャヤ : チョン・ウンソン さん サネ : キム・パダ さん
[2017.12.29 ソワレ] (3枚目のキャストボードの写真) ペクソク : カン・ピルソク さん ジャヤ : チェ・ヨヌ さん サネ : アン・ジェヨン さん
物語の流れと演出についてはほぼ初演と同じでした。(あまり詳しくもないですが、初演についてはこちらをどうぞ。) 劇場が変わった関係か、初演では舞台の上手側に設置されていたピアノは舞台下手側に。セットの変更もこれくらいです。
もともと舞台に登場する役者さんが三人、音楽のピアノの生伴奏のみというミニマム化されたシンプルな演出の作品だけに、俳優さんの多様な解釈と演技でそれぞれのジャヤと彼女が愛した詩人ペクソクの物語が展開されるこの作品。ゆえに俳優さんの力量と個性がかなり大きな鍵になる作品でもあります。そういう意味で、今期私が観たキャストの組み合わせは本当にそれぞれユニークな組み合わせになっていて面白かったです。
(以下、大したことありませんがネタバレありなのでご注意ください)
2017年の『INTERVIEW』(인터뷰) の再演で初めて観て、その圧倒的な演技力にすっかり虜になったキム・ギョンス (김경수) さんのペクソクは今期のロバで特に楽しみにしていたキャスティング。『INTERVIEW』では繊細な青年役から、柄の悪いあんちゃんまで見事に演じ分けていたギョンスさんのペクソクは、なんというか思いの外かなり肉食系でした。舞台の物語の中で語られるペクソクとジャヤの出会いでも、当時別の女性に恋していたペクソクは恋多き男ですが、出会ったその日にグイグイ迫るギョンスペクソクは獲物を狙うハンターの目。この色気と知性漂うペクソクは確実に数々の女性を泣かせてきた悪い男に違いありません。(←) 夢に生きる貧しい詩人というよりは遣手のインテリ青年実業家っぽいなぁというのが個人的な印象。ただ、才気溢れる(フェロモンも溢れる)インテリであることは間違いありません。「白いご飯とカレイと私たち」(흰밥과 가재미와 우린) の後半や「いつの間にか」(어느 사이에) で見せる切々たる表情と歌声は、きっとこのペクソクは恋多き男だけど、本気ですべての恋に真剣なんだろうなぁと思わせるようなペクソクでした。やはり悪い男です(笑)
そんな悪い男ギョンスさんペクソクの相手の「子夜 (ジャヤ)」は初めましてのクァク・ソニョン (곽선영) さん。とても綺麗な若い女優さんです。ギョンスさんのペクソクの役作りがそうさせるのか、初演を含めて私が観た四人のジャヤの中では一番恋する女性の雰囲気を感じるジャヤでした。ソニョンさんのジャヤの物語は、妓生 (キーセン) であること以外はごくごく平凡な女性として暮らしてきたジャヤとその人生��突如として現れた天才詩人のペクソク。彼によって鮮やかに変わってしまった彼女の人生を辿る物語でした。
新サネのキム・パダ (김바다) さんも今回初めましての俳優さん。初演で観たユ・スンヒョンさんとはまた違った雰囲気の爽やかな好青年で、より現代的な雰囲気の青年でした。あまり本編に関係ないですが、お名前の「パダ」は韓国語で海という意味ですが、劇中サネが歌う「海」(바다) という曲があり。「パダさんのパダ...」と密かにクスッと笑ってしまったのは多分私だけでは��いはず…(←) 物語の冒頭とラストで、とても愛おしげにペクソクの詩集を抱える姿が印象的でした。
コ・サンホ (고상호) さんは『アランガ』(아랑가) の都彌(トミ)役で出会って以来、ずっと機会があればまた観たいなぁと思っていた歌も演技もめちゃウマな俳優さん。観たい、観たいといいながらずっと観劇の枠がはまらず2年近く過ぎてしまいましたが、やっとその願いが叶いました。サンホさんのペクソクは、ギョンスさんとは対照的に永遠の思春期、という印象。普段明るくてファニーな感じなのに、感受性が高すぎて傷付きやすくて、保護欲を掻き立てられ、母性をくすぐられる。そんな感じなのに急に才気溢れるイケメンになったりするズルイ男です。ジャヤとの初対面の時のジャヤしか視界に入っていないっぷりが凄まじくてめちゃくちゃ可愛い。「私がこんなにもそっぽを向いて」(내가 이렇게 외면하고) はどのペクソクもコミカルで可愛いですが、その中でもサンホさんのペクソクは必死だけどからから空回っている感じがすごく可愛いかったです。芸術に生きる浮世離れした感じは後述のカン・ピルソクさんのペクソクに軍配があがりますが、苦労を知らない坊ちゃん育ちっぽくって、生活力はあまりなさそう(笑)詩作に没頭している時の真剣な表情とと普段の三枚目の雰囲気のギャップが印象的なペクソクでした。
サンホさんペクソクの相手のジャヤはこちらも初めましてのチョン・ウンソン (정운선) さん。ウンソンさんのジャヤは母性が強く包容力抜群な感じのジャヤだったので、サンホさんとの組み合わせがすごく良かったです。すごく優しい雰囲気のジャヤで、一緒にいるとそれだけで癒されるような、それでいて少女らしい可愛らしさも感じるジャヤのウンソンさん。ペクソクが詩を思いついたと言って「私とナターシャと白いロバ」の一節を書き始める時に手を叩いてキャーってなっている姿がすごく可愛い。サンホさんのペクソクとウンソンさんのジャヤがかなり身長差あるから、サンホさんがウンソンさんの目線に合わせて膝折り曲げて顔を覗き込むのも可愛い。物語の冒頭でもラストでも、「ああこの人は本当に心の底からペクソクの詩を愛していたんだな」と思わされる優しくてうれしそうな表情が素敵でした。
初演も含めて、一番観ているのがカン・ピルソク (강필석) さん��演じるペクソク。初演から観ていることは大きいと思いますが、なにやらもはや、私の中のペクソクのイメージはすべてソク様基準になっている感じがあります。それだけペクソクのイメージ=ピルソクさんになっているんですよね…。ソク様のペクソクは貧しい詩人だけど、苦労をさほど知らずに育ったいいとこのお坊ちゃんで、自分が可愛いことを知っていて、女性がそれをほっとけないのを知っているあざとさもある。空気を読まずに無邪気に振舞っているように一見見えるけど、どうしようもなく鋭くて感受性が高くて繊細。「白いご飯とカレイと私たち [Reprise]」(흰밥과 가재미와 우린 [Reprise]) では、どうやって食事のお金を工面したのかを聞かれたジャヤが妓楼で再度働き始めたことを伝えられずに誤魔化しても、その事実を察して青ざめて思い詰めたような表情をするソク様のペクソク。取り繕いきれないジャヤの表情も相まってすごく切ないシーンです。
ペクソクの役作りで一つ気になるのは、私が観た三人のペクソクの中で唯一ピルソクさんだけがジャヤに満州に付いて行かなかったことを責める場面で舞台側の正面を向いていたこと。ギョンスさんに関しては少し記憶が朧げですが、正面ではなく後ろか横を見ながら話していたし、サンホさんは完全に舞台に背中を向けて話していました。これは、実際にペクソクがジャヤに向けて言った言葉ではなく、ジャヤ自身がペクソクに付いていかない選択をしたことを責め続けているからだと思っているのですが、ソク様が正面を向きながらジャヤの選択を責める言葉を話す意図、気になります。誰か私の代わりに聞いてください。(←)
チェ・ヨヌ (최연우) さんのジャヤは「いい女」。この一言に尽きます。見た目も本当に美しいヨヌさんですが、女性らしい細やかさがありながら気風のいい大人の女性で、とても懐が深く、それでいて少女のようにとても可愛らしいのがヨヌさんのジャヤ。オフでも仲のいい先輩後輩であるピルソクさんとヨヌさんですが、再演でのお二人は長年連れ添った夫婦のような、二人でいることが自然でしっくりとくる空気が素晴らしかったです。ヨヌさんは韓国のミュージカル女優さんの中でも一位二位を争うくらい好きな女優さんなのですが、やっぱり大好きだなぁと再実感。所作が綺麗で、表情と声色の演技がとても細やかで本当に素晴らしい。ロバでは、ジャヤはペクソクと出会った若かりし頃から、自分が京城 (ソウル) で切り盛りしていた料亭を吉祥寺 (キルサンサ) として寄贈する老年までを演じ分けないといけないのですが、立ち姿の姿勢だけでジャヤの年がすぐにわかるのです。ペクソク二度目の結婚の報せに憤慨してフテ寝する姿とか、「北關の女」(북관의 계집) のラストで悲しく儚げに微笑む美しすぎる横顔とか、泣きながら待つことをやめる選択をした自分を責める姿とか…印象的なシーンを挙げたら本当にキリがありません。
N2Nのヘンリー、『ラフマニノフ』(라흐마니노프) などですっかり好きな俳優さんの一人になったアン・ジェヨン (안재영) さんは、前述の通りずっと観てみたいと思っていた初演からのサネ。今回念願叶って観れることをとても楽しみにしていたのですが、その上げていた期待値を遥かに凌駕してきたサネでした。サネはペクソクの友人だったり、お父さんだったり、弟弟子だったり、ジャヤが住んでいる家の家主だったりする様々な人物を演じないといけない役なのですが、それぞれの役のキャラ立ちが本当に素晴らしい!ペクソクとジャヤが初対面を果たすきっかけになった、失恋に嘆くペクソクをジャヤが働く妓楼に連れていく友人役は、「ちょ、アンタどんだけお酒飲むん!?」とツッこまずにいられないし(しかも酔い方も割とヒドイ)、ペクソクに厳しく、でも飼い犬には優しいペクソク父はもはや強烈すぎて何から言及すればいいのやら(笑)そんな強烈なキャラクターを演じながらも、「北關の女」(북관의 계집) を歌っている時のサネはいい声で朗々と歌いながらもあくまでジャヤの鏡に映る鏡像であることに徹していて。ペクソクの詩を朗読する文学青年の時は、とても男前で優しげな微笑を浮かべているので、そんな姿もとても印象的でした。
今回、初演キャストと再演で新たに加わったキャストは前半と後半で完全入れ替え制になっていたので、ギョンスさんのペクソクとチョン・インジさんの組み合わせとか、サンホさんペクソクとチェ・ヨヌさんジャヤの組み合わせとかを観たかった私には少し残念。次に再演がある時には、その組み合わせでも是非観てみたいなぁと思うのです。音楽も本当に素敵だから、OSTとかも出して欲しい。ロバの公演はまだしばらく続きますが (2018年1月28日まで)、前回の観劇が一ヶ月早いマイ千秋楽だったので、次の再演に期待するとします!
#musical#theatre report#나와 나타샤와 흰 당나귀#I Natasha and a White Donkey#私とナターシャと白いロバ#キム・ギョンス#김경수#Gyeong Soo Kim#コ・サンホ#고상호#Sang Ho Go#カン・ピルソク#강필석#Pil Seok Kang#チェ・ヨヌ#최연우#Yeon Woo Choi#アン・ジェヨン#안재영#Jae Yong An
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What I Saw in Theatres in 2017
2017年上期はソウル大学路の小劇場作品中心の観劇が多く、下期は「ビリー・エリオット」に夢中になり、日本語でミュージカルを観るよろこびを知った一年でした。GWに遠征できなかったのでトータル観劇回数は減りましたが、ペースはあまり変わらず...。韓国の本陣様がしばらく舞台に出ていなかったのと、ビリーにハマッたことをきっかけに少しソウルでの観劇が減り、代わりに国内の観劇が増えた一年でした。
[P] Play [M] Musical [C] Concert [V] Other Variety Performances *West End and London
リンクがついている作品は観劇レポや関連ブログエントリーに飛びます。
01/01 [M] Lazarus* 01/01 [P] Trainspotting* 01/07 [M] 스토리 오브 마이 라이프 (Story of My Life) 01/08 [M] 나와 나타샤와 흰 당나귀 [私とナターシャと白いロバ] 4
02/25 [M] 더 데빌 [ザ・デビル] 02/25 [M] 쓰릴 미 (Thrill Me) 02/26 [M] 라흐마니노프 [ラフマニノフ] 7
03/04 [M] 인터뷰 (来日公演) [インタビュー] 03/11 [M] Miss Saigon 25th Anniversary in London 9
04/08 [C] 부평아트센터 7주년 기년 음악회 [富平アートセンター7周年記念音楽会] 04/15 [M] 미스터 마우스 [ミスター・マウス] 04/15 [M] 매디슨 카운티의 다리 (The Bridges of Madison County) 04/22 [M] 紳士のための愛と殺人の手引き 04/26 [C] Ben Forster Showcase Live 04/29 [C] ミュージカル・ミーツ・シンフォニー2017 15
05/27 [M] メイビー、ハッピーエンド (어쩌면 해피엔딩) 16
06/10 [M] 키다리 아저씨 (Daddy Long Legs) 06/10 [M] 인터뷰 [インタビュー] 06/11 [M] 록키 호러 쇼 (ROCKY HORROR SHOW) 06/24 [M] Miss Saigon 25th Anniversary in London 20
07/08 [C] 2nd 신사들의 품격 [2nd 紳士達の品格] 07/08 [C] 2nd 신사들의 품격 07/09 [M] 인터뷰 07/16 [M] Before After 07/30 [M] ビリーエリオット 25
08/05 [M] 나폴레옹 (Napoleon) 08/05 [M] 아리랑 [アリラン] 08/06 [M] 마타하리 (Mata Hari) 08/12 [M] The Public Administration and Constitutional Affairs Committee Takes Oral Evidence on Whitewall's Relationship with Kids Company* 08/12 [M] Jesus Christ Superstar* 08/13 [M] School of Rock* 08/13 [M] V* 08/14 [M] Jesus Christ Superstar* 08/15 [P] Tempest* 08/15 [M] The Phantom of the Opera* 08/16 [P] Kiki's Delivery Service* 08/16 [M] Jesus Christ Superstar* 08/17 [M] Half A Sixpence* 08/17 [M] Les Miserables* 08/26 [M] ビリーエリオット 40
09/03 [M] ビリーエリオット 09/10 [M] ビリーエリオット 09/16 [M] 서편제 [西便制] 09/16 [M] 서편제 09/17 [M] 헤드윅 (Hedwig and the Angry Inch) 09/17 [M] 시라노 (Cyrano) 09/23 [M] ビリーエリオット 09/24 [M] Finding Neverland (来日公演) 09/30 [M] ビリーエリオット 49
10/14 [M] Hedwig and the Angry Inch Special Show 10/21 [M] ビリーエリオット 10/21 [M] ビリーエリオット 10/22 [M] ビリーエリオット 10/28 [M] ビリーエリオット 10/28 [M] ビリーエリオット 10/29 [M] ビリーエリオット 56
11/03 [M] 나와 나타샤와 흰 당나귀 11/04 [M] 여신님이 보고 계셔 [女神様が見ていらっしゃる] 11/04 [M] 서편제 11/05 [M] 헤드윅 11/11 [M] Allegiance (上映会) 11/25 [M] 나와 나타샤와 흰 당나귀 11/25 [M] 에드거 앨런 포 [エドガー・アラン・ポー] 11/26 [M] 여신님이 보고 계셔 64
12/10 [V] サロメ 12/16 [M] ドッグファイト 12/23 [C] 4 Stars 2017 12/29 [M] 나와 나타샤와 흰 당나귀 12/30 [M] 에드거 앨런 포 12/30 [M] 빈센트 반 고흐 [ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ] 12/31 [M] 에드거 앨런 포 12/31 [M] 에아포토 베이비 [エアポート・ベイビー] 72
ミュージカル: 57 ストレートプレイ: 3 コンサート:6 その他パフォーマンス:1 ソウル: 32 東京: 17 大阪: 6 ウェストエンド/ロンドン:13 映像: 3 その他:1
2017年マイベスト作品はもちろんビリー・エリオット!ビリー達をはじめ、日本初演キャスト、スタッフの方々にはこれからも追い続けたい人ばかり。ビリー以外の特に印象深い作品を挙げるとラフマニノフ (라흐마니노프)、インタビュー (인터뷰)、私とナターシャと白いロバ (나와 나타샤와 흰 당나귀)、Open Air TheatreのJesus Christ Superstar、西便制 (서편제)、マイケル・リーさん主演のヘドウィグ (헤드윅)、アリージャンス、女神様が見ていらっしゃる (여신님이 보고 계셔) など。
2018年も素敵な作品と演技に出会えることを願っています。
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What I Saw in Theatres in 2016
長いこと下書きに入れたままだったので、今更ですが2016年の観劇ラインナップ。沼作品が非常に多く、リピート回数がかなりぶっ飛んでいる年でした。
[P] Play [M] Musical [C] Concert [O] Opera *Broadway and New York **West End and London
01/01 [M] 스토리 오브 마이 라이프 (The Story of My Life) 01/01 [M] 바람과 함께 사라지다 (Autant en Emporte le Vent) 01/02 [M] 넥스트 투 노멀 (Next to Normal)☆ 01/23 [M] 스토리 오브 마이 라이프 01/23 [M] 스토리 오브 마이 라이프 01/24 [M] 넥스트 투 노멀☆ 01/25 [P] Hamlet (NT Live, Benedict Cumberbatch主演版) 7
02/06 [M] 넥스트 투 노멀 02/06 [M] 스토리 오브 마이 라이프 02/07 [M] 스토리 오브 마이 라이프☆ 02/21 [P] The Curious Incident of the Dog at Night-Time (NT Live) 02/27 [M] 에어포트 베이비 (Airport Baby) 02/27 [M] 아랑가 (阿娘歌) 02/28 [M] 아랑가☆ 02/28 [M] 스토리 오브 마이 라이프 (막공) 15
03/12 [M] 빨래 (パルレ) 03/12 [M] 넥스트 투 노멀 03/13 [M] 넥스트 투 노멀 03/19 [M] 아랑가 03/19 [M] 아랑가 03/20 [M] 아랑가☆ 03/20 [M] 아랑가 03/26 [M] 아랑가 03/26 [M] 빨래 03/27 [M] 아랑가 25
04/03 [C] チェ・ジェリム コンサート 04/09 [M] 아랑가 04/09 [M] 아랑가 04/10 [M] 아랑가☆ 04/10 [M] 아랑가 (막공) 04/30 [M] Les Misérables* 31
05/01 [M] Waitress* 05/01 [M] Daddy Long Legs* 05/02 [C] The New York Pops 33rd Birthday Gala : Do You Hear the People Sing* 05/03 [M] Shuffle Along* 05/04 [M] Daddy Long Legs* 05/04 [M] The Color Purple* 05/05 [M] The Phantom of the Opera* 05/05 [M] The Fiddler on the Roof* 05/29 [M] 에드거 앨런 포 (Edgar Allan Poe) [Preview] 40
06/11 [M] 마마 돈 크라이 06/11 [M] 에드거 앨런 포 06/12 [M] 에드거 앨런 포 06/25 [M] 에드거 앨런 포 06/25 [M] 스위니 토드 (Sweeney Todd) 06/26 [M] 노트르담 드 파리 (Notre Dame de Paris) 46
07/10 [M] 에드거 앨런 포 07/16 [M] 에드거 앨런 포 07/17 [M] 에드거 앨런 포 07/30 [M] 페스트 07/30 [M] 키다리 아저씨 (Daddy Long Legs) 07/31 [M] 페스트 52
08/13 [M] Kinky Boots** 08/14 [M] Into the Woods** 08/14 [M] In the Heights** 08/15 [M] Jesus Christ Superstar** 08/16 [P] The Threepenny Opera** 08/16 [M] The Phantom of the Opera** 08/17 [M] Jesus Christ Superstar** 08/17 [M] The Phantom of the Opera** 08/18 [M] Groundhog Day** 08/18 [M] Jesus Christ Superstar** 08/28 [M] 인 더 하이츠 (In the Heights) (来日公演) 63
09/24 [M] 페스트 09/24 [M] 페스트 65
10/02 [M] Miss Saigon 25th Anniversary in London 日本最速プレミア試写会 10/08 [M] 씨 왓 아이 워너 씨 (See What I Wanna See) 10/08 [C] 신사들의 품격 ☆ 10/09 [M] 킹키 부츠 (Kinky Boots) 10/09 [M] 그 날들 70
11/05 [O] 리타 (RITA) 11/05 [M] 씨 왓 아이 워너 씨 11/12 [M] ミス・サイゴン 73
12/10 [M] 스토리 오브 마이 라이프 (The Story of My Life) 12/10 [M] 스토리 오브 마이 라이프 12/17 [M] 나와 나타샤와 흰 당나귀 12/17 [M] 팬텀 (Phantom) 12/29 [M] Jesus Christ Superstar (Den Haag) 12/30 [M] The Phantom of the Opera** 12/31 [M] RENT** 12/31 [M] The Phantom of the Opera** 81
ミュージカル: 74 ストレートプレイ: 3 コンサート:3 オペラ:1 ソウル: 52 東京: 3 ブロードウェイ:9 ウェストエンド:13 映像: 3 その他:1
2016年のベスト作品はアランガ(아랑가)。それ以外の主な沼作品としてホン・グァンホさん主演のバルレ(빨래)、The Story of My Life (스토리 오브 마이 라이프)、Next to Normal (넥스트 투 노멀)、エドガー・アラン・ポー(에드거 앨런 포)、Regent Park Open Air TheatreのJesus Christ Superstar、Ben Forsterさん主演のThe Phantom of the Operaといったとこでしょうか。どう見てもソウルに住んでいる人の観劇記録な一年でした(笑)
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[Fan Letter] 日本の初代ビリー、加藤航世さまへ
航世くんビリーへ
航世くんのビリーについて書こうといざ意気込むと、目まぐるしく色んな記憶や気持ちが脳裏を嵐のように現れては消え、良い書き出しが思いつきません。
航世くんは私が初めて観ることができた日本のビリー。
そういったご縁もあり、カンパニーごと大好きでしょうがないビリーの日本オリジナルキャストの中でも、航世くんビリーは私にとって本当にめったくそ特別な存在です。
初めて航世くんのビリーを観たのは7月30日の夏真っ最中。
日本でビリーを観れる喜びに浮き足立ちながら赤坂ACTシアターに向かった私を迎えてくれたのは、ビリーに出演できる喜びをその端々に感じる本当に素敵なカンパニー、素晴らしい日本語訳詞、台詞、そしてまだどこか緊張感を漂わせているような航世くんビリーの真摯でひたむきな姿でした。今思い返してみると、その時に観た航世くんのビリーは静かながら内にとてもとても強い思いを秘めているように感じるビリーで、私はその秘められた強くてまっすぐな気持ちがその頃から気になっていたのだと思います。
次に航世くんのビリーを観れたのは、日本ビリー初観劇から一ヶ月ほど経った9月3日。
たった一ヶ月の期間で航世くんのビリーは目を見張るほど進化していて、航世くんが得意なバレエはもちろんのこと、Angry Danceのタップダンスの気迫も、お芝居も、歌も、すべてがびっくりするくらいパワーアップしていて…。もちろんその裏には航世くんの絶え間ない努力があったのだと思いますが、これだけの短い期間で驚くべく成長を遂げる若いパワーが眩しくて仕方ありませんでした。ビリーエリオットという作品の魅力にどうしようもなく取り憑かれていったのは、この2回目に観た航世くんビリーの進化が大きなきっかけだったのだと思います。
どうしても、どうしても航世くんのビリーの集大成を見たくて、追加した大阪遠征。本当に、本当に、そうすることにした自分を自分で褒めてあげたいくらい航世くんのラストビリーの2公演は素晴らしかったです。
初めて航世くんのビリーを観たとき、どこか硬かった表情はとても柔らかくなっていて。お芝居は9月に観た時よりもさらに進化しているのに、より航世くん自身をビリーに感じられて。透き通るような綺麗な歌声は、繰り返し何度も聞きたくなるもので。何より、ダンスを踊っているときのうちから滲み出てきて溢れ出すよろこびが航世くんが航世くんであり、ビリーがビリーである所以なんだとヒシヒシと感じられて、見ているこちらまでも幸せな気分になりました。
どちらかというと、日本の初代ビリーたちの中では笑顔が控えめな航世くんのビリー。でも、だからこそ時折こぼれ出る航世くんのビリーの笑顔がとても輝いて見えて、そんな航世くんの笑顔が大好きです。
集会場でみんなを眺めているときや、おばあちゃんの昔話を聞いているときにどこかずっと遠くを見て何かを探しているような航世くんビリーの横顔がとても好きでした。物語の中のビリーはまだバレエに出会う前だけど、やがて来る運命の出会いを予感させているようで。バレエダンサーとして、高い目標をずっと抱え続けている航世くんのビリーならではの表情のような気がしたのです。
一幕で一番好きな航世くんビリーのシーンはSolidarityでのバレエ教室でのシーン。
アチチュード・プロムナードで地面を見つめながら回っていたビリーが体を起こして腕を上げた瞬間、すべてが静寂に包まれて、みんなが吸い込まれるようにビリーに見入る数秒間が本当にたまらなく大好きです。誰もが息を飲んで、瞬きをするのも忘れて航世くんのビリーの美しいバレエに魅了されているのが空気として感じられる。航世くんのビリーはうすく微笑んでいて、「ああ、この子は本当にバレエが大好きなんだなぁ」と実感するのも大好きです。
デビー、バレエガールズと一緒のラインダンス(?)も最高に楽しそうでこっちも笑顔になるし、曲の最後の見せ場、アラセゴンターンからのピルエットを決めるシーンも、航世くんのバレエの美しさはもちろんのこと、うまく踊れたよろこびが溢れんばかりにこぼれ出るような航世くんビリーのうれしそうな表情が忘れられません。
マイケルと一緒に歌って踊るExpressing Yourselfにウィルキンソン先生、ブレイスウェイトさんと一緒に踊って歌うBorn to Boogieなどのバレエ以外のダンスナンバーも、踊っている航世ビリーは素の笑顔で本当に楽しそうで。違うダンススタイルで踊っていても、航世くんのビリーの踊りにはどこかバレエを感じさせる部分が随所にあって、それがとても航世くんらしく感じられて凄く好きでした。
そして一幕ラストのAngry Dance…
「子供らしく過ごさなくたっていい、俺はバレエダンサーになりたいんだ!」を地でいっているイメージの航世くん。その航世くんのAngry Dance。力強くて、かっこよくて、迫力満点で…それでいて足や腕の伸ばし方とか、やっぱりバレエの要素を感じる部分がとても美しくて。
千秋楽のパフォーマンスでは、途中で一瞬メロディが「白鳥の湖」に変わるところで入るピルエットが美しいだけではなく勢いや力強さも素晴らしくて、航世くんビリーの全身から発せられる全力の怒りの表現を固唾を飲んで見入っていました。最後に舞台の床に倒れこんでから、ゆっくり時間をかけてから力強く立ち上がるまでの間の取り方も最高でした。
二幕のMerry Christmas Maggie Thatcherの前でビリーが登場するシーン。
梅田芸術劇場の客席を1階から3階まで一瞬だけ見上げた様子には、3ヵ月の間ビリーとして舞台に立ち、さらに長い期間をかけてその準備に取り組んできた航世くんの軌跡への感慨が感じられて、なんだか胸の奥がギュッとしました。
父ちゃんがDeep Into the Groundを歌った後のビリーとマイケルの二人だけの会話のシーン。
台詞だけのシーンの中では、航世くんのビリーで一番好きな場面です。航世くんのビリーには、ひたむきさと同時に滲み出てくるような優しさを感じてそれがすごく好きなんですが、それを一番感じたのがこのマイケルとのやりとりの場面で。4回観れた航世くんのビリーの回でマイケル役を演じていたのは瑠くんと立樹くんがそれぞれ2回ずつですが、二人のマイケルたちは普段の明るさから想像もできないようなヒリヒリとした切実さでビリーを呼び止める表情がとても印象に残っているマイケルたち。「俺の手、冷たいだろ?」という声に滲み出ている優しさとか、「バレエが好きだからといって、俺はオカマじゃないからね?」という時の慎重で真剣な声とか、すごく真摯で誠実にマイケルの気持ちと向き合っているように感じて、ビリーを好きになったマイケルの気持ちがすごくわかる気がするのです。
そしてSwan Lake pas de Deux…
もはや色んな方々が絶賛し尽くしていて私が新たに言えることは何もないような気もしますが、”Dream Ballet”の通称のそのままに、本当に夢のような美しさでした。椅子を使った演出も面白いこのシーンですが、私にとっては航世くんが椅子から手を離した瞬間とか、椅子を放り投げた後の躍動感がとても印象に残っていて、枷から自由になって身一つで生き生きと踊るように感じる、ビリーが自身を解放しているように感じるのがすごく好きでした。千秋楽の大貫オルダービリーとのデュエットは、舞台上手に向かって二人で体を後ろに反らす時のシンクロ率が本当に素晴らしくて…。フライングの場面で会場から湧き上がる拍手の音が聞こえてきても、ただただ航世くんの姿を見つめ続けることしかできず。地上に降りたビリーの美しいアラベスクからの二人の力強く頷き合ってからのシェネと最後の腕を上げてのポーズも本当に素晴らしすぎて。きっと、何年も経っても思い出して泣くと思います。
本編最後のダンスと歌のナンバーのElectricity。
思いの丈を感じる間の取り方も、透き通って綺麗でありながらどんどん力強くなる歌声も。バレエの要素をふんだんに取り込んだダンスも。とても力強くて生き生きとしながらも、一振り一振りをとてもとても丁寧に嚙みしめるように踊りながらも踊りとしては流れるように鮮やかで。それは航世くんのビリーとしての最後の舞台に相応しいまさに集大成で。最後に美しいピルエットを回りきってポーズを決めた航世くんのやりきった充実感に溢れた誇らしげな表情が素晴らしく輝いていて忘れられません。泣き笑いの表情で顔をクシャクシャにした益岡さんの父ちゃんと同じように、あの奇跡のような瞬間に立ち会えて、誇らしくて、うれしくて、幸せでした。
ビリーの旅立ちの場面。
母ちゃんへの手紙はとても大切にするように丁寧に歌うのに、母ちゃんに「ううん、会えんと思う」と言われて「うん、そうだろうな」と答える航世ビリーの声には未練は感じられず、とてもすっきりとした表情で。物語としてビリーが生まれ育った町を旅立つのと同じように、航世くんも次の夢に向かって旅立つ瞬間でもあることが伝わってきて、胸がいっぱいになりました。
そしてついにやってきた千秋楽の本編ラストシーン。
いつもは食い入るようにマイケルの表情ばっかりを見てしまう私ですが、この日ばかりは航世くんのビリーの一挙一動に釘付けになって見ていました。
マイケルに呼び止められて、��送りに来た親友の元に走って戻ってほっぺにキスをするビリー。そのまま踵を返し、一瞬だけ立ち止まるもののの、すぐに再び力強く歩みだしてから「またな、マイケル」と告げて後ろを振り返らずに旅立っていった航世くんのビリー。マイケルへの粋なお餞別には、ふざけるような要素は一切なくて、真摯で誠実で。力強くて、優しくて、頼もしくて。こんなことをされてしまったら、マイケルは次の恋に進めなくなっちゃうんじゃないのかなと心配しながらも、マイケルが好きになったのがビリーで良かったね、と思わずにはいられないのです。
これ以外にも本当にここには書ききれないくらい好きな部分がいっぱいあって、色々と挙げだすとキリがなくて。
もう航世くんのビリーを見ることができないのだと思うと切ない寂しさが胸に広がっていきますが、清々しくて晴れやかな航世くんの笑顔と素晴らしい集大成を千秋楽で見ることができたので、心にはそれを上まる幸せな気持ちで満たされていきます。
本編の旅立ちの時からすでに前を向いて次に向かって力強く歩み続けている印象がしていた航世くん。みんなで踊るフィナーレは、一緒に頑張ってきた家族のような仲間のみんなへの好意と感謝で溢れていて。カーテンコール後の挨拶でも、次の夢に向かってすでに走り出していることを力強く教えてくれた航世くん。きっともう耳にタコができるくらい言われ続けていると思いますが、やっぱりこの言葉を送りたい。
あんたはめったくそ特別よ 幸運を、祈っとるよ
航世くんのビリーが大好きでした。これからもずっと。 ビリーになってくれて本当に本当にありがとう。
いつまでも
次は、バレエの舞台で輝いている航世くんに会いに行くのを楽しみにしています。
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[Fan Letter] 日本の初代ビリー、未来和樹さまへ
和樹くんビリーへ
最年長、15歳の和樹くんビリー。 ビリーたちの中では一番お兄さんと言っても、中学三年生の和樹くん。
和樹くんを実際舞台の上で観る前から、そのとても中学生とは思えないような、達観したような数々の発言に「すごいなぁ」と思いながら心の中で勝手に「和樹師匠」と呼んでいました(笑)
それでいて明るくてユーモアたっぷりでエンターテイナーな和樹くん。
ツイッターのタイムライン、ビリーたちへのインタビュー記事、テレビで放送されるビリーの特番…。それらを通して和樹くんの人柄に触れるうちに、和樹くんビリーは私の中でどんどん気になる存在になっていきました。
初めて赤坂ACTシアターでビリーを観た翌日に早速とった大阪公演のチケットを買ったときは、まだビリー役が発表される前でしたが、ビリー役が発表されて、私の日本初演ビリーを和樹くんのビリーで〆ることができると知ったときには、舞台の上で観たい気持ちがすごく募っていた和樹くんがマイビリー楽のビリーと知って「やったぁ!」と喜んだのを覚えています。
大阪で初めて会う予定だった和樹くんのビリー。
どうしても大阪まで我慢できなくて、9月に和樹くんビリーのチケットを追加したのは、9/3のソワレ後の藤岡さんトニーと中河内さんトニーのアフタートークイベントがきっかけでした。
トークイベントの中で、話題がトニーたちの各ビリーたちへの印象の話になったときの藤岡さんのお話。
正確な言い回しはうろ覚えですが、和樹くんに対しては
「一番プロ根性を感じる」 「声変わりや成長の恐怖と戦いながら 毎回ビリーを一生懸命やっているのが、めっちゃ泣けるんですよ」
などと熱く語り始めて、司会をされていたTBSアナウンサーの方に「巻きでお願いします」とやんわりと怒られていたのがとても印象的に記憶に残っています(笑)
背中を押してくれる方の言葉もあり、9/3に劇場でリピーターチケットを買い足した直後なのにも関わらず、結局深夜に再度和樹くんビリーのチケットを買い足しました。その時の決断を後押ししてくれた方の言葉、藤岡トニーの熱いトークには感謝してもしきれません。
そうしてやっと和樹くんビリーに出会えた9/23のマチネ。それは、平日はビリー終演の時間帯でもまだ職場にいることが多い私にとって、東京で和樹くんのビリーを観れるラストチャンスでした。
結果的に最初で最後になってしまった和樹くんビリーのパフォーマンス。和樹くんは私の中のミュージカル俳優の理想をすべて兼ね備えている素晴らしい表現者でした。
終演後はもう本当にぼーっとしてしまい、乗る電車を間違えて降車駅で降りれずに引き返したりしながらも頭の中の胸の中もうまく言語化できない和樹くんビリーへの想いでいっぱいいっぱいになっていました。
もう、その日の公演は、益岡父ちゃんに小突かれながら嫌々連れてこられた和樹くんビリーが集会所に登場した瞬間から、私は和樹くんビリーに釘付けでした。(そしてこの嫌々感がすごくわかりやすい!)
集会所で炭鉱のみんなと一緒にいながらも、どこか心は故郷から遠く離れた場所にあるように感じる和樹ビリー。今思い返して考えてみれば、和樹くんビリーのその姿は、どこか無意識に亡くなった母ちゃんの姿を探し求めているように思えます。
おばあちゃんの昔話を聞いているときは、顔中が笑っているような太陽のようなニコニコ笑顔なのに、デビーに対して「母ちゃんは死んだ」という声は、ゾクッとするくらい暗い和樹くんビリー。
和樹くんのビリーは人一倍明るくて人懐っこいのに、母ちゃんが亡くなった事実が誰よりも濃い影を落としていて、その光と影の印影が鮮烈な印象を心に刻み込んでくるビリーでした。
和樹くんのAngry Danceはま��に魂の叫び声そのもの。
怒り、悔しさ、悲しみ、苛立ち…ビリーを取り巻くあらゆることに対する膨大な感情の爆発としか表現できません。
命を削る勢いで怒りを表現する和樹ビリー。
私はもうただただ圧倒されて、和樹ビリーが発するエネルギーに翻弄されていました。踊り終わって和樹くんが舞台の上に倒れこんだ後、客席全体が息をのんで和樹くんを見守っているのを全身で感じました。
あれほど身を切られるような痛みを感じて、自分の心まで削られていくように感じたAngry Danceはありません。
1歳の差があまりにも大きい10代の少年。
15歳の和樹くんが12歳のビリーを説得力を持って演じることは、すごくすごく難しいことだと思います。
きっと和樹くんはビリーがとる行動、発言のひとつについて、それは深く、深く考えた上で和樹くんなりのビリー像を作り上げ、それを舞台上で表現していたのではと思っています。
お芝居、ダンス、歌にのせた「和樹くんのビリー」の表現力のあまりの高さにそれはそれは感動しました。
和樹くんのElectricity。
和樹くんビリーのElectricityはビリーにとって「踊ること」がどういうことなのかを発見する旅でした。
「なんでそんなこと聞くんだよ、意味わかんないよ」といった風で不貞腐れながら答えながらも、「抑えきれない気持ち」という言葉にたどり着いて、表現する言葉を夢中で探し始めだすビリー。
「まるで電気」という表現にたどり着き、表情は踊ることを思い、喜びに溢れはじめ、自分の中にいっぱい詰まっている踊ることへの喜びを表現せずにはいられなくなり、ついには踊りださずにはいられなくなるビリー。
ひとしきり踊った後に「そう 電気…」と噛みしめるように、確認するように歌う和樹ビリーは本当に電気に打たれたように手が、体が震えていて…。
そんな和樹くんのビリーにとっての「踊ること」が和樹くんにとって「舞台でビリーとして生きること」に重なって思えて仕方がなく、私はただただ泣くことしかできませんでした。
5人のビリーたちに対して行われたインタビューで問われた 「『Dream Ballet』では14年後のビリーと踊っていますが、14年後の自分は何をしていると思いますか?」 という質問。
迷いなく「バレエです���と言い切った航世くんに対して、 「今はビリーのことだけで精一杯なので分かりません」 と答えた和樹くんの対照的な二人の回答がとても印象に残りました。
「ビリーとしての今を生きること」に全力なイメージがとても強かった和樹くん。それだけに、私が和樹くんのビリーを観たちょうど1カ月後の10/23に発表された和樹くんビリー大阪公演降板のニュースはそれはそれはショックでした。
楽しみにしていた和樹くんビリーをまた観れないのが寂しいという気持ちもあったのですが、そんなことよりもビリーとして舞台に立てない和樹くんの悔しさ、悲しさを想像するだけで胸が潰れそうで、和樹くんのことを考えながら何度も泣いてしまいました。
多分そういう人は私だけではなく、たくさんいるのではないかと思っています。きっと本当にたくさんの人が和樹くんのことを思い、祈り、涙を流したのだと想像しています。ビリーに全力な和樹くんの姿が、本当にたくさんの人たちの心を動かしてきた証拠だと思います。
みんな和樹くんのことが大好きなんです。
和樹くんのことを考えて泣いてしまう自分、そんな自分もありのままに受け入れて、今は心が赴くまま気が済むまで泣��う、と思えたのも日本版ビリーに出会えたことが大きい気がします。
和樹くんは自分の中のビリーと常に対話を続けている気がする、とツイートでも書きましたが、ビリーとの対話に限らず、和樹くんはその驚くべき感受性の高さで自分の周囲を取り巻く激流のような情報、人の感情に対して深く考えを巡らせることができる本当に稀有な人だと強く感じています。
とても内省的でありながらも、明るくて社交的な和樹くん。
人の痛みがわかり、愛情を受けてそれを返すことができる和樹くんは本当に本当に素敵な人で、私は和樹くんの倍は軽く生きているいい年をした大人ですが、和樹くんの人柄と表現者としての才能にはひたすら憧れてしまいます。
和樹くんのビリーを観ることができたのはたった1回だけですが、舞台上で全力疾走でビリーとして生き、輝いていた和樹くんを観る奇跡に立ち会えたことは私の誇りです。
もしかしたら、ずっと痛みに耐えながらもそんなことを微塵も感じさせずにあんなに素敵な舞台を見せてくれていたのかもしれないと思うと、本当にただただ頭の下がる思いです。
本当に素敵な舞台をありがとうございます。 日本の初代ビリーになってくれてありがとう。 大好きです。
どんなときにも 心のままに あなたらしく生きて
これからも応援しています。
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[Theatre-Going Report] August 5th, 2017 アリラン (아리랑) @ Seoul Arts Center, Seoul
10カ月ぶりにユン・ヒョンリョルさんがミュージカルの舞台に戻ってくる!ということで韓国創作ミュージカル『アリラン』(아리랑) を観てきました。会場になった芸術の殿堂は実は初めて。私が観た回のキャストは、
ソン・スイク (송수익) : ソ・ボムソク さん ヤン・チソン (양치성) : ユン・ヒョンリョル さん バン・スグク (방수국) : ユン・コンジュ さん カム・ゴルデク (감골댁) : キム・ソンニョ さん チャ・オクビ (차옥비) : イ・ソヨン さん チャ・ドゥクボ (차득보) : イ・チャンフィ さん
でした。
日本占領下の韓国と満州を舞台にした話ということで、観に行っている日本人も少なければ���レポを書いている人はさらに少ないと思われるこの作品。私自身も、大好きなペウニムが久しぶりに出演する作品でなかったら観ていなかったと思います。ただ、少なからずどんな作品なのか気になっている方は意外と多いようですので、率直な感想を書いてみたいと思います。
まずは、Interparkに掲載されていたあらすじからご紹介。 (以下、ネタバレを含むのでご注意下さい)
日本の植民地支配時代、その時代を生きなければならなかった人の話。
キムジェ郡竹山面に住んでいるカム・ゴルデクの息子バン・ヨングンは借金20ウォンのためにハワイに役夫として売られる。 両班ソン・スイクの小間使いだったヤン・チソンは師匠である彼にいつも劣等感を感じて、その中、自分の父親が義兵に殺害されると、親日派になって郵便局長ハヤカワの斡旋で日本の諜報員学校を卒業して戻ってくる。 その間ソン・スイクは、満州に行き独立軍を率いている。 一方、カム・ゴルデクの娘スグクとその友達のオクビは日本の手先どもに貞操を奪われた後、険しい人生を生きていく。日本の手先になったヤン・チソンはソン・スイクの行方を追跡し、カム・ゴルデクも彼の手練手管で惨めに死ぬ。その過程でヤン・チソンは常に恋心を抱いていたスグクを脅迫して強制的に同居を始める。その中、満州で日本の討伐隊の朝鮮人殺戮が行われ...
と、あらすじを読んだだけで日本人としてもヒョンリョルさんファンとしても嫌な予感しかしません(滝汗) 原作の小説を元にした映画の評判も、日本人にはいたたまれないとしか表現できない内容ばかりだったので、ヒョンリョルさんの次回作が『アリラン』と知った時はとても動揺しました。しかし、10カ月も待ったペウニムのミュージカルの舞台。
ぶっちゃけ、みなさんが一番気になってるのは「結局、日本人としてどうだった?」ということだと思うので、それだけ先に言ってしまうと、「もういっそ清々しいくらい日本人が悪役だった」でした。私の言語力の問題できちんと理解できていない部分も多いと思いますが、善良な日本人の登場人物は皆無。悪役は韓国人側も多々登場しますが、漏れなく日本人の手先設定。書いた通りですが、ここまで来るといっそ一種の清々しささえ感じます(←)
でも、心配していたより全然作品を楽しめたのも事実です。音楽もいいし、シンプルな舞台美術もとても綺麗。歴史解釈云々をいったん置いておけば、物語も大河的でドラマチック。歴史解釈以前に日本人の描写にツッコミたくなる部分もあるのですが、(変な動きの丁髷侍風の日本人が出てきたりとか…) それはそれで面白かったり。そう、この作品は結構たくさん日本語の台詞があり、曲の一部も日本語だったりします。演じているのは韓国人の俳優さんなので、発音は上手い人も下手な人も。そんな中でも、ヒョンリョルさんが演じた日本の諜報員養成学校に留学した設定になっているヤン・チソン役は特に台詞も歌も日本語が多いです。ヒョンリョルさんの美声が「こーーこく、しーんみーーん」(皇国臣民) なんて歌っている姿は結構シュール。複雑なファン心(笑)日本語の発音は、ヒョンリョルさんは若干聞き取りづらい部分もあったけど結構きれい。場合によっては日本人役の俳優さんより発音がいいので、それもなんだかシュール(笑)
プレスコールのボムソクさんとヒョンリョルさんの動画があったので貼っておきます。これはかなり舞台終盤のシーン。二人が重ねて歌ってる部分にリプライズとして件の「皇国臣民」の歌詞がチラッと出てきます。ヒョンリョルさんの二幕のこのロングコートの衣装、似合っててかっこいい。
youtube
Interpark のあらすじは、ソン・スイクとヤン・チソン中心ですが、劇中はもっと群青劇の色が強い印象。両班(リャンパン)の出のスイク役のボムソクさんは凛としていてノーブルな雰囲気がかっこよかったですが、意外と全体の中では地味な気がしました。それより、裏切り者設定で悪役のチソンや彼が想いを寄せるスグク、スグクと恋仲の素朴なドゥクボやスグクのお母さんのゴルデクの印象の方が強かったです。特に女性陣が強いなぁ、と。
ドラマチックなストーリーには色んな情念が渦巻いていて、「ああこれが韓国人の『恨』(ハン) というものなのかなぁ」と感じました。韓国の方とは切っても切り離せない『恨』の感情。良くも悪くもその感情を燃やし続ける燃料を投下し続けているものの一つは、日本の植民地支配時代の「記憶」というのにはなんとも複雑な気分ですが、大多数の韓国の方にとってはそういうものなんだとという前提にたって割り切らないとなかなかお互いを理解するのは難しいのかなぁと思ったりもしました。
ヒョンリョルさんが演じたヤン・チソンは、悪役でありながらも多面的なキャラクターで人間味があり、手段を選ばないのでやることは相当えげつなかったりもするのですが、深みのある魅力的なキャラクターでした。できることならもう1回観たかったな、と思うくらい。彼の末期はなんとも憐れで胸が痛いですし、主要登場人物の大半が死ぬことになる『アリラン』はハッピーエンドから程遠いですが、ラストでみんなが歌う「アリラン」と「辛いことがあっても、表面にはそれは見せないようと振る舞う」という精神はとても印象に残りました。
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[Theatre-Going Report] July 30th, 2017 ビリー・エリオット (Billy Elliot) @ Akasaka ACT Theatre, Tokyo
発表されたタイミングからずっと観れる時を待ちわびていたミュージカル『ビリー・エリオット』(Billy Elliot) の東京公演を観てきました!記念すべき私の日本版ビリー初観劇のキャストは
ビリー : 加藤航世 さん お父さん : 吉田鋼太郎 さん ウィルキンソン先生 : 島田歌穂 さん おばあちゃん : 根岸季衣 さん トニー : 中河内雅貴 さん マイケル : 古賀瑠 さん デビー : 佐々木琴花 さん オールダー・ビリー : 栗山廉 さん トール・ボーイ : 山城力 さん スモール・ボーイ : 岡野凛音 さん バレエ・ガールズ : 小野梓 さん、久保井まい子 さん、並木月渚 さん、堀越有里愛 さん
でした。なんなら大人キャストも全員書き出したいくらいの素晴らしいカンパニー!舞台を見ていてもパンフレットを読んでいてもあらゆることの端々に日本版『ビリー・エリオット』への想いというか、愛がヒシヒシと感じられてなんだかそれだけで胸がいっぱいになります。週末に観て数日経ちますが、まだ上手くこの思いを言語化できていません。この気持ちはなんだかまるで「Electricity」の歌い出しみたい。
上手く言えません 言葉にできない 抑えきれない気持ち 自分をなくすような 忘れるような ほんとの僕になるような
I can’t really explain it I haven’t got the words It’s a feeling you can’t control I suppose like it’s forgetting, losing who you are At the same time something makes you whole
— 『ビリー・エリオット』公演パンフレットより (訳詞:高橋亜子さん、原詞:Lee Hall さん)
いきなり話は飛びますが、私は日本版ビリーの訳詞がかなり好きです。オリジナルの歌詞のニュアンスがほとんど損なわれることなくメロディにのせられていて。上で引用したオリジナルの歌詞を歌に乗せることを意識せずに自分が訳するとしたら、こんな感じ。
上手く説明ができないんだ いい言葉を持っていない コントロールできない気持ちなんだ 忘れることに似ているかもしれない、自分が誰かを手放すような 同時に何かが自分を完全にしてくれるんだ
時間をかけてしっかり言葉を吟味してできた訳詞なんだと思います。訳詞に限らず、ビリーたちをはじめとする子役たちの育成についてもそうですし、とてつもなく色んな方々の時間と労力と情熱と愛情をかけて日本版ビリーは幕を上げたのだと思います。そしてそれだけ色んな人のパワーをかけるだけの魅力がミュージカル『ビリー・エリオット』にはあるのだと思います。
私が初めてビリーを観たのは2013年、ロンドンの Victoria Palace 劇場。その時すでに10年近いロングランを果たしていたロンドンのビリーでしたが、私が観劇した日はちょうどオリヴィエ賞の結果発表の翌日で、一般からの投票で決まるその年の人気作品に贈られる BBC Audience Award をビリーが受賞した次の日でした。その日の観劇後の興奮冷め止まない気持ちは今でもよく覚えています。
ビリーがこんなにもエキサイティングな作品だって知らなかった! なんでもっと早く観なかったんだろう 絶対また観に来たい!
その後『Billy Elliot the Musical Live』を観た直後の感動と熱に浮かされて、もう1回2014年の年末にもう一度ロンドンでまた観たビリー。もうロンドンの Victoria Palace 劇場に行ってもビリーを観れないと思うと、すごく寂しい気分になります。
東京で初めて観たビリーは間違いなく私がロンドンで、映画館で感動した『ビリー・エリオット』そのもので、同時に「これは日本のビリーなんだ」と強く感じました。なんだかそれだけで胸がいっぱいになってしまって、案の定観劇中私は始終涙目で、ビリーとその家族、炭鉱の街のみんなの物語に泣き笑い、泣いて、泣いて。泣きすぎて頭が痛くなってしまい、自分の中で渦巻いている言語化できない想いの奔流をどう処理していいのかがわからなくて、帰りの電車も家に帰った後もいつも以上にぼーっと過ごしてしまいました。少し落ち着いたものの、今もまだそれが続いている感じがします。
公演初期にはありがちなハプニングやアクシデントも多くてハラハラする部分もあったし、「これ以上は望めない」と思うような完成した舞台ではなかったのだけど、それでも��観てよかった!」と心から思える満足感。そして、これからどう舞台が進化するのかを見届けたい、という気持ち。
まとまらない感想はいっぱいあるんですよ。(以下ネタバレばかりです)
航世くんのビリーは踊りがすごく綺麗で真面目で一途な感じがとてもかわいい。今後もっと「自分をなくすような」感情に身を任せて自分を開放した航世くんのビリーが見てみたい!瑠くんのマイケルは自分の本能に忠実に生きている感じが凄く好き。チュチュを着て喜んだり着せ替え人形を自慢げに見せたりしてるとこがめちゃくちゃかわいい。二人の「Expressing Yourself」はかわいすぎて悶える。吉田鋼太郎さんのお父さんは不器用で愛おしい。厳しくも愛情深い優しいお父ちゃん。ビリー以上にあたふたしているオーディションの父ちゃんかわいすぎる。九州弁かわいい。島田歌穂さんのウィルキンソン先生はイメージ通りすぎる。歌もダンスも演技も素晴らしい!中河内さんのトニーは見た目も性格もイケメン!演技もすごくよかった!根岸さんのおばあちゃんチャーミングすぎる。炭鉱のおじちゃんたちがちゃんと炭鉱のおじちゃんたちで、いかついながらもかわいくてうれしい!一見どこにでもいそうな普通の人たちが実はめっちゃ歌って踊れるのがビリーのアンサンブルの魅力だと思っているから、その通りで本当にうれしい!ビリーの父ちゃん、母ちゃんっていう呼び方かわいいな。ほとんどかわいいしか言ってないな私!でも、物語は非情なまでに厳しいんだよね。母ちゃんの手紙とか、父ちゃんのスト破り未遂とトニーのぶつかりとか、炭鉱へ戻っていくおじちゃんたちとか泣くしかないシーン多すぎる。でも「Swan Lake Pas de Deux」は感情移入じゃなくて、純粋な感動で泣いちゃうよね。そして「Angry Dance」やっぱりかっこよすぎる!生であのシールドがぶつかる音を聞くとブワーッと鳥肌が立つよね。「Solidarity」はミュージカル史上に残る名振り付けのシーケンスだよね!「Electricity」の最後の歌い上げとフィニッシュは「がんばれ!」って思って見てしまうよね。そしてその後のうれしそうな父ちゃんかわいすぎるよね、とか、とか、とか…。(←まとまらないからと言って開き直りすぎ)
上で一気にまくしたてたような感想が次々と脳裏をよぎっては去っていくのです。そして度々脳内をビリーの音楽と踊りがジャック。
団結だ、団結だ! 団結、永遠に! Solidarity, Solidarity! Solidarity Forever!
まだまだ聞き込んでいる回数が全然違うのでオリジナルの英語歌詞が脳内優勢ですが、日本語と英語が入り混じって脳内は完全なるカオスです。完全に熱に浮かされているような状態で、まだ見ぬビリーへの期待も、今後の成長への期待も膨らむばかりなので後何回かは絶対観に行きたいと思っています。すでに勢いで大阪公演のチケットまでポチッちゃいました。(←)
私の中では、ビリーは「遠征しないと観れない作品」でした。ビリーにしろ、マイケルにしろ、あまりにも子役に求められる資質が大きくて、しかもそれだけの才能を持っ��ビリーが5人くらいいて初めて実現可能な作品。日本人の子役からビリーやマイケルを探し出すのも、あれだけの人数の子役が必要になる演目が海外ツアーになって来日公演になるのも、どちらも同じくらい非現実的なことのように思っていました。日本で、日本人キャストでビリーを観れる。それを可能にしたことに関わったすべての方にただただ感謝の気持ちしかありません。
まだまだ、ロンドン版からツアー版/日本版になったときに変わったと思われる演出の部分とかについてとか、まとめてみたいことは色々あるのですが…。まだ日本のビリーは始まったばかり。これからどう進化していくのかを見守るのが楽しみでなりません^ ^
#musical#Billy Elliot#ビリー・エリオット#theatre report#加藤航世#吉田鋼太郎#島田歌穂#Kosei Kato#Kotaro Yoshida#Kaho Shimada
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[Concert Report] July 8th, 2017 2nd 紳士の品格 (2nd 신사들의 품격) @ COEX Auditorium, Seoul
去年の『紳士の品格』(신사들의 품격) コンサートに引き続き、最推しミュージカル俳優様のユン・ヒョンリョルさんが出演すると言うことで今年も行って参りました、その名も『2nd 紳士の品格』(2nd 신사들의 품격) コンサート!しかも今回のコンサートはヒョンリョルさん以外の出演者もみんな私が観たことのある有名ミュージカル俳優様ばっかり!。かなり豪華な顔ぶれにワクワクしながら楽しみにしていたコンサートだったのでした。韓国流に年功序列(笑)で出演者のみなさまをご紹介すると、今回の紳士達は
マイケル・リー さん キム・ダヒョン さん カイ さん ユン・ヒョンリョル さん
でした。
今回はヒョンリョルさんがマンネ(末っ子)。見えないかもしれないけど、と本人もネタにしてましたが、今回はヒョン達との共演です。コンサートでマチソワするのもどうかなぁ、と思いましたが結局一日中コエックスにいました(笑)それもこれも、ヒョンリョルさんが長らく舞台のお仕事をお休みしていて慢性的なペウニム不足のせい…_:(´ཀ`」 ∠): 気になるセットリストですが、昼公演、夜公演共に下記の通りでした。(敬称略にて失礼いたします)
Set List
ニュージーランド民謡「ポカレカレ ア��」 / 全員
ミュージカル『ファントム』より 「Where in the World」 (그 어디에) / カイ
ミュージカル『ノートルダム・ド・パリ』より「Lune」(달) / キム・ダヒョン
ミュージカル『ドラキュラ』より「Loving You Keeps Me Alive」(그댄 내 삶의 이유) / ユン・ヒョンリョル
ミュージカル『ノートルダムの鐘』より「Out There」/ マイケル・リー
ミュージカル『カンパニー』より「Being Alive」/ マイケル・リー
「모두 사랑인걸」(すべて愛だね) / カイ
ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』より「어쩌면」(もしかして) / カイ
ミュージカル『ルドルフ・ラスト・キス』より「The Steps of Tomorrow」(내일로 가는 계단) / カイ
ミュージカル『二都物語』より「Let Her Be a Child」 / ユン・ヒョンリョル、カイ
イ・スンチョル「서쪽 하늘」(西の空) / ユン・ヒョンリョル
ミュージカル『エドガー・アラン・ポー』より「Immortal」(영원) / ユン・ヒョンリョル
ミュージカル『ノートルダム・ド・パリ』より「Danse Mon Esmeralda」(춤을 춰요, 에스메랄다) / ユン・ヒョンリョル
マイケル・ブーブレ「Feeling Good」/ キム・ダヒョン
ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』より「Sugar Daddy」(슈가대디) / キム・ダヒョン
ミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』より「Angry Inch」(앵그리 인치) / キム・ダヒョン
バリー・マニロー「Weekend in New England」 / マイケル・リー
ドラマ『悪い奴ら』主題歌「Break Up」 / ユン・ヒョンリョル
サイ(PSY)「연예인」(芸能人) / キム・ダヒョン
ブファル「사랑할수록」(愛するほど) / カイ
イ・ムンセ「붉은 노을」(赤い夕焼け) / 全員
さてここからはセットリストに沿ってコンサートのレポに張り切って入っていきたいと思いますが、私自身の貧相な韓国語力を溢れる妄想力で補完したレポートになっていますので、その点は何卒ご容赦下さいませ m(_ _)m
オープニングの曲は去年のコンサートと同じく「ポカレカレアナ」。去年コンサート行ったときから曲名がわからずにそのまま放置してたんですが(←)、ニュージーランドの民謡を元にしたラブソングだったんですね〜。言葉の響きが韓国語っぽくなかったわけだわ(汗) 歌い始めはカイさん、ダヒョンさん、ヒョンリョルさん、マイケルさんの順番でペアになって歌うところがカイさんとダヒョンさんペア、ヒョンリョルさんとマイケルさんペアでした。ちなみにヒョンリョルさんは去年の紳士コンと同じ枠。
この曲の後紳士のみなさまから挨拶がありました。昼公演の挨拶のとき、ヒョンリョルさんからは「アリランの練習中です」、マイコー様は「ロッキー・ホラー・ショーに出演中です」とそれぞれの舞台作品の宣伝があったので、ダヒョンさんは「神と共にに出演中です」と慌てて補足したのに対して、カイさんは「僕はとくにないですね〜」とのたまい、ファンの子達に「ベン・ハー!」と言われて初めて「ベン・ハーに出演予定です」と余裕だったそうです(笑)夜公演はみんな普通に宣伝(笑)マイケルさんは「ロッキー出演中で、ナポレオン準備中で、さらにヘドウィグも準備中」と多忙っぷりをアピール!マイコー様ファンは大変だな〜と思いつつも羨ましいかぎりです。
その後は「ポカレカレアナ」と同じ歌唱順でみなさまが1曲ずつ披露。全体的に選曲が微妙に色々とリンクしていて、意外な選曲も色々あって面白かったです。カイさんの『ファントム』から始まり、同じフランス、パリが舞台の『ノートルダム・ド・パリ』からダヒョンさんグランゴワールの曲に続き、「月」から連想される『ドラキュラ』の曲(ちょっと、これは苦しいかな…)を歌うヒョンリョルさん。そして、ヒョンリョルさんが初代カジモドを務めたフランス版ノダムでダヒョンさんと同じくグランゴワール役を演じたマイケルさんによるディズニー版『ノートルダムの鐘』のカジモドナンバー…。特にヒ��ンリョルさんの「Loving You Keeps Me Alive」とマイコー様の「Out There」は意外。『ドラキュラ』は未観劇なので、最初「Loving You Keeps Me Alive」はミュージカルの曲だと認識できずにK-POPの曲かと思っていました(汗)「Where in the World」と「Out There」はカイさんとマイコー様が歌っているバージョンをそれぞれ見つけたので貼っておきます。どういうわけか「Lune」はダヒョンさんのもマイコー様のも動画が見つからず。「Le Temps Des Cathédrales」(대성당들의 시대, 大聖堂の時代) ならカイさんヒョンリョルさん含む全員分見つかるのになぜだ…。韓ミュ俳優のみなさま、この曲好きですよね(笑)
Where in the World (그 어디에) - 카이
youtube
Out There - Michael Lee
youtube
俳優様が1曲ずつ披露した後は、MC付きのそれぞれの俳優様のコーナーへ。他の出演者のみなさんよりマイケルさんだけ少なかったのがちょっと残念だったんですが、マイケルさんは “I wanted to give you something new” と言って、持ち歌以外を意欲的に披露してくれたのがうれしいサプライズでした。ディズニー版ノダムの「Out There」もそうだけど、マイコー様のボビー (Being Alive) が聞けたのがすごくうれしかった!アメリカのミュージカル俳優のみなさまはこの曲が好きな人多い気が(笑) 実際マイコー様も自分の好きな曲として「Being Alive」を紹介されていました。「今日は��訳さんがいないからマイケル・リー流韓国語になっちゃうけど…オットケー!」なんてはにかみながら話すマイコー様は超かわいかったです(*´꒳`*) 韓国語と英語で交互で話してくれるマイコー様ありがたや…。ソワレでは、「一緒に共演する三人の紳士たちは僕自身が彼らの大ファンなんだ、きっととても素敵な夜になると思うよ、一緒に楽しんでくれるといいな」、というようなことを話されてました。いつでも共演者への惜しみない賞賛を忘れないマイコー様は素敵だなぁと思うと共に、やっぱり発言がアメリカ人だなぁと思うのです(笑)私にはマイケルさんの韓国語の発音がいいのか悪いのかはさっぱりわからないのですが、やっぱりコンサートで英語で歌っている姿を聞いていると言葉に対する感情の乗り方が全然違って聞こえるので(これは私側の問題も大いにありますが)、英語公演になるという秋のヘドウィグがすごく楽しみだなぁ、と思うのです。マイケルさんの英語の演技を堪能してみたい!
マイケルさんが爽やかな笑顔で舞台袖にはけていった後は、ステージが暗転してスタッフが上手側にキーボードと椅子を搬入。運び込まれたキーボードに向かって座っていたのはカイさん!弾き語りでご自身のソロ曲「모든 사랑인걸」(すべて愛だね) を披露してくれました。実は私が初めて韓国で観たミュージカルは『マリー・アントワネット』で、私が観た回のフェルゼン伯爵がカイさんでした。私の記憶が間違っていなければ、『マリー・アントワネット』の最初のナンバーはフェルゼン伯爵が沈痛な面持ちで過去を回想するソロ曲なので、私の韓国ミュージカルの初めての人はカイさんということになります(笑)実はその時以来の2年ぶりのカイさんだったのですが、当初から抱いていた「正統派美声、声量が半端ない!」という印象はコンサートでも変わらず。声楽を勉強されていた方の美しい発声!やっぱりいい声。コンサートで一つ印象が変わったのは、本人としてコンサートに出演しているときはすごく楽しそうに歌を歌う方なんだなぁということです。そして意外とお茶目!マイコー様の直後の登場だったので、マチネでは歌い終わった後に英語で挨拶してみて笑いをとってみたり。しかし発音があまりに流暢すぎて逆にツッコミたい。(←)韓国の方が苦手な「F」の発音をためて苦労して発声したフリしてたけど、本当は全然余裕なんやろ、みたいな(笑)続いての曲「어쩌면」(もしかして) では、客席に降りてきてスーツの胸ポケットに飾られていたお花(淡いピンクの薔薇かな?)を観客の女性に渡したり、目の前で膝を折って歌い上げてみたり。「ちびまるこちゃんの花輪くんか!」と突っ込みたくなるキザな感じなんですが、それがイチイチ決まるのがカイさんのキャラクターなんだなぁと思ってしまうのでした。さすが紳士!
次のルドルフの「The Steps of Tomorrow」を歌い終えた後は、カイさんがミュージカルに出演しはじめて間もない頃、韓国初演キャストとして参加した『二都物語』で共演したとして���ョンリョルさんを紹介。2012年の初演、2013年の再演の両方でヒョンリョルさんが主演のシドニー・カートン役、カイさんがその恋敵役のチャールズ・ダーニー役として出演していて、二人はそこで初共演したそうです。そんな二人がデュエットしたのは「Let Her Be A Child」。SBSラジオで昔二人が同じ曲を歌っている動画を見つけたので貼り付けておきます。
Let Her Be A Child - 윤형렬, 카이
youtube
なんかカイさんが若い!ヒョンリョルさんは顔があんまり見えないけど、あんまり変わらないかな(笑)紳士コンでもカメラが入っていて、二人が歌っている様子がアップでステージ上で映し出されていたのですが、歌っていない方の人をアップにしているタイミングがマチネもソワレもちらほら…カメラリハ、なかったのかな(笑)動画の頃からさらに深まった感じがする二人の調和した歌声がすごく耳福でした!前回の紳士コンでもデュエットはチサンさんとヒョンリョルさんが歌った「말하는 대로」(言うとおりに) の1曲だけだったのですが、今回もデュエットはこの曲だけ。せっかく共演したことのある出演者たちが揃ってるのだから、もっとデュエットが聞きたかったという気持ちが正直あります。ここでもコンサート向きの男二人のミュージカル楽曲枯渇問題が影響しているのかな…。
二人のデュエットが終わって、拍手でヒョンリョルさんがカイさんを見送った後はヒョンリョルさんのターン!昼公演では、ヒョンリョルさんはちょっと悩んだ後、「カイ兄さんが英語だったから、じゃあ僕は日本語で…『アリガトウコジャイマス』」とご挨拶。韓国人の方の『アリガトウコジャイマス』が可愛くて妙に萌えてしまうのは私だけでしょうか。それが最推しのペウニムとなると、破壊力抜群…_:(´ཀ`」 ∠): 数多くある外国語の中で日本語を選んでくれたというのもなんかうれしい(*´꒳`*) ヒョンリョルさんの2曲目は韓国の歌番組『노래 싸움 승부』(歌合戦勝負) でも披露したことのある「서쪽 하늘」(西の空) を選曲。哀愁漂う感じのメロディが好きな曲です。ノレッサウムのヒョンリョルさんとミュージカル俳優ミン・ウヒョクさんの対決動画も結構好きなのでリンクを貼っておきます。勝負と言いながら、二人とも調和を大切に歌ってるから聞き応えのあるデュエットなんですよねー。すみません、脱線しました^ ^;
「ミュージカルのコラボレーションがコンサートのテーマに一つだから」、と言ってヒョンリョルさんが取りあげたミュージカルは去年の春に韓国初演となった『エドガー・アラン・ポー』でした。自分は「グリスウォルド」という牧師役で出演していたのだけども、グリスウォルドの曲はミュージカルの中で話の前後の流れがわかっている中で歌う分にはいいけど、コンサートでそこだけを切り取って歌ったら、「ユン・ヒョンリョルは頭のおかしい俳優だ」って思われてしまうから、グリスウォルドじゃなくて主役のポーの歌を歌います、と言ってヒョンリョルさんが歌ったのは、「IMMORTAL」(영원)!名曲揃いの『エドガー・アラン・ポー』の中でも特に好きな曲なのでこれはすごくうれしかったです!まさか本職ポーのマイコー様が出演しているコンサートでヒョンリョルさんのポーの曲を聴けるとおもっていなかったので喜びもひとしお!わかりやすくウットリ聴き惚れていました(笑)動画が残っていないのがすごく残念です。残っていたら、いろんな人にヒョンリョルさんのポーを押し売りできるのに!(←) ポーは今年の11月に再演が決まっていますが、ヒョンリョルさんも出てくれると私は信じています。そしてポーとグリスウォルド両方演って欲しい。ポーも似合うと思うんだよね〜。
次にヒョンリョルさんが歌ったのは、フランス版ノダムから「Danse Mon Esmeralda」(춤을 춰요, 에스메랄다, 踊ってください、エスメラルダ)。去年のコンサートでも選曲していたしそれ以外のコンサートでもよく歌っているので、やっぱりヒョンリョルさんにとっては、ミュージカルデビューでいきなり主役に抜擢されたカジモド役は大切な作品なんだなぁと思います。まだコンサートでしかこの曲を聴けていないから、いつか舞台でヒョンリョルさんのカジモドを観れる日が来るといいなぁ。
次にステージに登場したのはダヒョンさん!バックダンサーのセクシーなお姉さんたちを引き連れての登場です。ダヒョンさんが歌ったのはマイケル・ブーブレの「Feeling Good」で、ダヒョンさん自身も振り付きで歌ってくれました。だがしかし!多分ほとんどの人がダヒョンさんしか見てないんじゃないかなー(←)ダヒョンさんといえば「美人!」というのが私のイメージなのですが、なんかもう一人だけスクリーンに映し出されるお肌のきめ細かさが別次元でした(爆)ここまで美しいともはやジェラシーさえ感じません(笑)
次にダヒョンさんが歌ったのはヘドウィグの「Sugar Daddy」!このレポを書くためにいくつか2013年以前の韓国のヘドウィグの「Sugar Daddy」の動画を観たのですが、その頃の韓国のヘドウィグの「Sugar Daddy」はどこかカントリー調なのですね。ダヒョンさんがコンサートで歌ったバージョンは、2014年のブロードウェイ再演に近いかなりロックなアレンジでめっちゃかっこよかったです!客席に降りてきてのCar Washのパフォーマンスもちゃんとあり。そしてイツァークのパートはなんとダヒョンさんファンの方が対応!マチネで感無量になっちゃって一瞬言葉が出てこなくなったのも可愛かったし、ソワレでは無事そのリベンジを果たしたのも見ていて微笑ましかったです(*´꒳`*) きっといっぱい練習したんだろうなー。そんな彼女に惜しみない拍手を送るダヒョンさんも素敵。そして次のダンヒョンさんの曲もまさかの連続でヘドウィグからで「Angry Inch」!ヘドウィグのロックなナンバーが大好きなので、これもうれしいサプライズでした。こっちでも劇中同様ヘドウィグが飲んだペットボトルの水を会場に吹き出す演出あり。水鉄砲バージョンは明らかに、ペンカフェの子狙い撃ち(笑)夜公演では、ダヒョンさんがペットボトルの水を自ら頭からかぶって言葉通り「水も滴るいい男」になって更に会場は大盛り上がり!今年のヘドウィグにはダヒョンさんはキャスティングされていませんが、ダヒョンさんのヘドウィグがすごく観てみたくなりました。いつかまた演ってくれないかな〜。
ひととおり俳優様たちが歌い終わった後はファンサービスコーナー!去年のコンサートではルーレットが準備されていて、出演者の方がそれぞれルーレットを回して当たった内容を実施するという方式でした。ルーレットのあたりの中にファンとの交流イベントがあり、ファンサービス系の場合はチケットの半券をくじ代わりに使う形式だったのですが、今年はルーレットはなくなってファンサービスの内容は「指名した俳優さんと一緒に写真が撮れる」に統一。選出方法もチケットくじではなく、自己申告制でした(笑)例えば、「遠くから来た人!」とか「今日誕生日の人!」だとか。後はヒョンリョルさんとジャンケンをして勝ち残った人(笑)昼公演では、なんと遠くはメキシコから来た少年や、アメリカのオクラホマ州から来た人がいました!しかもメキシコから来た少年はマイコー様ペンと思いきやなんとカイさんペン!昼公演は4人、夜公演は10人ファンが選出されたのですが、カイさんのファンがすごく多くて軽くフィーバーしてました(笑)昼公演はヒョンリョルさんペンが一人もいなくてヒョンリョルさんがカメラマンになっていて、夜公演はちゃんと選ばれていてなんとなくホッ ε-(´∀`*) 夜公演は最後に選出された方が、特定の俳優さんを指名せずに全員と一緒に写真を撮ってもらっていて、すごく羨ましかったです^^
ファンサービスコーナーの後は再び俳優様たちが1曲ずつ披露。ここではみなさん歌謡曲を選曲されていました。ヒョンリョルさんは本人名義でCDシングルをリリースしたドラマ『悪い奴ら』の主題歌「Break Up」を披露〜^^K-Popも洋楽の流行曲にも疎い私はこの曲しかわからず(苦笑)そしてアンコールは去年のコンサート同様に「붉은 노을」(赤い夕焼け) をみんなで熱唱!会場もオールスタンディングで大いに盛り上がりました^^ここでヒョンリョルさんは、JCSのユダの時のように客席に降りてきて、椅子の上に立って歌ったり。コンサートの後にご一緒させてもらったダヒョンさんペンの韓国アガシのみなさまに「そういうタイプじゃないのになんでだろうね?」「マンネだからじゃない?」「ダヒョンさん以外盛り上げるの苦手だし」とバッサリ切られていて、申し訳ないですが大爆笑してしまいました(笑)
そんなこんなで、コンサート後のファンの皆様との交流も含めて大いに楽しませてもらった『2nd 紳士の品格』コンサート。俳優様たちの魅力を新たに色々発掘できたのも収穫でした^^もし3rdコンサートがあってそれに推しペウニム様たちが出演されることになれば、せっかくなので次はデュエット多めでお願いしたいなーと思います。
#musical#concert#concert report#카이#김다현#마이클 리#KAI#Da Hyeon Kim#Hyeong Lyeol Yoon#Michael Lee#マイケル・リー#キム・ダヒョン#カイ#ユン・ヒョンリョル#윤형렬
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[Theatre-Going Report] 2017.4.22 紳士のための愛と殺人の手引き (A Gentleman's Guide to Love and Murder) @ Nissay Theatre, Tokyo
2014年のトニー賞のミュージカル作品賞を含めた4部門を受賞したブロードウェイ発の人気コメディミュージカルの『紳士のための愛と殺人の手引き』(A Gentleman's Guide to Love and Murder, 以下長いのでGGLAM) 。ブロードウェイで観劇した際にそのブラックなユーモアに笑い転げたこの作品が市村正親さんをはじめとする日本人キャストで上演されると聞き、わくわくしながら久しぶりに日生劇場に観に行きました。国内でなおかつ日本人キャストでの観劇としてはかなり久しぶりの観劇となった本作ですが、私が観た回のキャストは
モンティ・ナバーロ (Monty Navarro) : 柿澤勇人 さん アダルバート卿、他 (Lord Adalbert and other D'Ysquiths) : 市村正親 さん シベラ (Sibella) : シルビア・グラブ さん フィービー (Phoebe) : 宮澤エマ さん ミス・シングル (Miss Shingle) : 春風ひとみ さん
でした。
まずは物語のあらすじからご紹介。(以下ネタバレありなのでご注意ください)
ある日、母を亡くしたばかりの貧しい青年モンティ・ナバーロの元に彼の母の知り合いだという老婦人ミス・シングルが訪ねてくる。突然現れた彼女は、モンティの母親は実は名門貴族であるハイハースト伯爵ダイスクイス家の令嬢でありモンティの父親と許されぬ恋の末に駆け落ちをして家を勘当されたのだと話し、モンティ自身にもその継承順位は低いもののダイスクイス伯爵の称号を相続する権利があるのだと打ち明ける。にわかにはその話を信じられないモンティだが、母親が親戚に宛てに書いて返送された手紙を読むにつれてその話を信じるようになる。
一方、モンティ自身も名家の令嬢シベラとの��分差の恋に悩んでいた。シベラに求婚するためには収入の良い仕事が必要だと考えたモンティは、ダイスクイス伯爵家の大銀行の頭取であるアスクイス・ダイスクイスSr.に仕事を紹介してもらえないかを依頼する手紙を書く。しかし、その結果息子であるアスクイス・ダイスクイスJr.からモンティとダイスクイス家の血縁関係を全面否定する冷たいけんもほろろな返事が返ってくる。ならばとモンティは母と親交もあった聖職者エゼキエル・ダイスクイスの元を訪ねるが、そこでも「家のゴタゴタには関わりたくない」とやんわり断れてしまう。案内された聖堂の屋上で、エゼキエルが強風にあおられて聖堂から転落しそうになった拍子に、「もしここで彼を助けずに見殺しにしたら、自分の爵位継承順位は繰り上がるのでは?」という考えがモンティの脳裏をよぎるのだが…。
前述のとおり、GGLAMはコメディです。しかも人が死ぬ度に笑いが起こるような感じのブラックなコメディです。GGLAMの主人公はモンティですが、そのモン��ィがハイハースト伯爵位を獲得するために次々と殺されていくダイスクイス家の人々を一人の役者さんが演じるのがこの作品の一番の特徴です。惜しくも受賞は逃しましたが、2014年のトニー賞の際はモンティ役のBryce Pinkhamさんもダイスクイス卿をはじめとする伯爵家の人々を演じたJefferson Maysさんはともにミュージカル部門の主演男優賞にノミネートされていて、この二人(?)の攻防を中心に物語が展開します。この作品の魅力は何と言っても物語のテンポの良さ、「名曲!」というわけではないのだけど耳に残って頭を離れないクラシカルだけどキャッチーな楽曲に、最後の最後まで意外な展開が残されている練られたエンターテインメント振り、そしてやっぱり一人で何役を演じる主演俳優の演じ分けと早替えだと思います。私はトニー賞の受賞前と後に1回ずつブロードウェイでこの作品を観ているのですが、日本公演はブロードウェイ公演のレプリカ公演ではなく、セットや衣装、演出も日本独自のものになっていたので、それを比較するのもなかなか面白かったです。
市村さんが演じるダイスクイス家の人々はもうさすが。偏屈な伯爵、ややオタク気質な聖職者、金持ちの放蕩息子、厳格な紳士、ゲイだと思われる養蜂家のフィービーの兄、生命力が溢れすぎている女性慈善家、筋肉至上主義の軍人、権力で役をもぎ取っている大根役者の大女優、そしてもう一人…。実に個性豊かなダイスクイス家の面々を演じ分けていながらも、どこか「市村さんらしさ」を感じる演技でこの役にはぴったりだったと思います。個人的にお気に入りのキャラクターはやっぱり、パワフルすぎる慈善活動家のレディ・ヒアシンス。きっと業を煮やしたモンティに直接手をかけられていなかったらすごく長生きしていそう…。回数を重ねるうちにどんどんと洗練されてスマートになっていくモンティの殺人の手管のあれこれをものともしない彼女の生命力、恐るべし。
この作品は女性が演じている女性陣(←)もすごく個性的で、それも魅力的なんですよね。モンティが想いを寄せていて、後に愛人となる良家の令嬢のシベラは悪女に分類されるのでしょうが、彼女の悪びれずにあっけらかんと自分のしたいように生きる姿はなんというか清々しくていっそかっこいいです。好き放題にしているようにしているようで、結構現実的なのも彼女の魅力かと。公演スタート前のキャスティング・インタビューで一言「若作り頑張ります」とコメントしていたのが忘れられないシルビアさんですが、自由奔放に生きるシベラを生き生きと魅力的に演じていたと思います。そしてやっぱり歌うまい。シベラとは対照的に奥ゆかしくて夢見がちな箱入り娘としているダイスクイス家の令嬢フィービーですが、彼女も控えめに見えて思っていることを全部口に出して言ってしまうようなところとか、物語の終盤に判明する衝撃のしたたかさとかがやっぱりかっこよすぎるので好きです。私はフィービーを演じている宮澤エマちゃんの密かなファンなのですが、彼女はくるくると変わる表情がとても魅力的。今回はコメディということもあって、ちょっとオーバー気味な表情の演技もとてもチャーミングでした。シルビアさんのシベラが艶っぽいアルトの音域なのに対して、エマちゃんは透き通るような声のソプラノなので、二人の声の対比もよかったです。結末を知っていると、アダルバート卿の殺人容疑で裁判にかけられたモンティの無実を勝ち取るために正妻と愛人の立場がお互いに手を組んでいたことがわかる握手のシーンはニヤニヤしてしまいます(笑)ちょい役だけど、すべての発端となる春風ひとみさんのミス・シングルもぶっ飛んでいてとてもよかったです。
今回プリンシパルキャストで唯一のダブル・キャストとなっているモンティはカッキーこと柿澤勇人さん。前回私がカッキーを観たのは、デスノートのライト役だったので、「同じ殺人犯の役でもこんなに印象が真逆の役もないよなー」と、妙な感慨を持ちながらの観劇になりました。手を染めていくにつれ、段々と黒くなっていくところまで一緒なのにこうまで違うとは(笑)Bryceさんのモンティを2回も観ているとちょっと顔芸に物足りなさを感じるのは否めないのですが(笑)、すごく楽しそうにモンティ役を演じていて可愛かったです。モンティは殺人に手を染めるにつれて、素朴な好青年が妖しい色香漂う男性に成長していくのですが、それでもどこかちょっと抜けていて憎めない感じで(遺産目的の連続殺人犯なのに)。色気たっぷりの柿モンティもいいですが、個人的には殺人のミッションコンプリートのためにワタワタしたり、上手くいってドヤ顔したり、シベラとフィービーの間で右往左往するコミカルな柿モンティが好きです(笑)。
舞台の物語は「モンティの運命、いかに!?」とテレビアニメの次回予告のように終わりますが、そういうところも含めてよく練られたコメディ作品だと思います。散々ネタバレしておいてこんなことを書くのもアレですが、まだ観たことのない人にぜひフレッシュな状態で観てほしい作品です。
[2017/7/25] 少しだけあらすじを修正しました。
#musical#theatre report#a gentleman's guide to love and murder#紳士のための愛と殺人の手引き#市村正親#柿澤勇人#シルビア・グラブ#宮澤エマ#Masachika Ichimura#Yuto Kakizawa#Sylvia Grab#Emma Miyazawa
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[Theatre-Going Report] June 10th & July 9th, 2017 インタビュー (인터뷰, Interview) @ TOM Theatre, Seoul
今年の3月の来日公演がとても強く印象に残った韓国オリジナルミュージカルの『インタビュー』(인터뷰, Interview)。本国韓国での2017年の公演ラインナップに入っている時点で観たいと思っていたのですが、来日版を観劇し、今年の再演でキャスティングされた俳優様たちのリストに気になる名前を見つけて、さらに観に行きたい気持ちが募ったというのは、来日版のレポートでも書いた通り。そんな気になる俳優様たちの中で、今回の公演のニューフェイスの中で一番「観たい!」と思ったのは、『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』、『アランガ』などの作品でその圧倒的な演技力で魅せてくれた演劇派俳優のカン・ピルソクさん。再キャスティングメンバーの中で一番気になったのは、周りのテハンノ作品好きの韓ミュペンのみなさまから大プッシュされていて、気になっていたキム・ギョンスさん。第一弾のキャスト組み合わが発表するや否やピルソクさんのユジン先生とギョンスさんのシンクレアの組み合わせを最優先して渡韓スケジュールを決めたのが6月の渡韓。
さらに今回の再演から入った演出変更。大筋のストーリーは大きく変わらないものの、作品を観る視点がかなり変わってくる大きな設定変更に、「これはまたこの組み合わせでもう1回観なくては!」と強く思ったところに、タイミングよく7月の渡韓の空いている枠でこのペアのおかわりができることが判明。そんな経緯があり、2回の渡韓に分かれて連続でほぼ同じキャストで『インタビュー』を観劇することになったので、2つの公演の感想を併せて今回のレポを書きたいと思います。私が観た2公演のキャストは下記の通り、
[2017.6.10] ユージン・キム (유진 킴) : カン・ピルソク さん シンクレア・ゴードン (싱클레어 고든) : キム・ギョンス さん ジョアン・シニアー (조안 시니어) : キム・ジュヨン さん
[2017.7.9] ユージン・キム (유진 킴) : カン・ピルソク さん シンクレア・ゴードン (싱클레어 고든) : キム・ギョンス さん ジョアン・シニアー (조안 시니어) : キム・ダヘ さん
でした。
ざっくりと2公演の感想を先に書いてしまうと、初めて観るギョンスさんの圧倒的な演技力と人格の演じ分けに目が離せずに見入ったのが6月の公演で、演出変更を受けて物語の見方が完全に変わり、ピルソクさんが演じるユジン先生の表情をついつい覗き見てしまい、先生とシンクレアの迫真の演技のぶつかり合いに固唾を飲みながら見入ったのが7月の公演でした。ミュージカルのあらすじは来日版のレポで書いているので今回は割愛させていただき、今回の演出変更中心にいきなりネタバレ全開でいきたいと思うのでご注意ください。妄想が暴走して無駄に長いので、それもご注意を…。
(以下、ネタバレありですのでご注意ください。)
新演出での1回目の観劇は大筋のストーリーが変わっているわけではないので、細かい部分での演出変更に少しずつひっかかりながらもあくまで解離性同一性障害(いわゆる多重人格)であるマットの物語としてずっと観ていました。解離性同一性障害の患者の多くがそうであるように、幼い頃に虐待を受けて解離障害になったマットの半生を解き明かしていく、被害者としてのマットの物語。なので、序盤の 「서툰 아름다움」 (不器用な美しさ) が、今回の演出から別のやや短めの曲に差し変わっていても、「まあ、確かにあの曲はメロディが綺麗だけど、蛇足感はあったよね。別にあそこで先生がシンクレア(マット)に自分の若い頃を重ねる描写とかいらないよね。」ぐらいにしか思っておらず。まさか先生に積極的にマットに感情移入できない理由があるなんて思ってもみなかったのです。
話はシンクレアに戻って、すごく演技の上手な役者さんだと聞いていてすごく楽しみにギョンスさんのシンクレアですが、百聞は一見に如かず。人格が入れ替わるたびに、身長とか体格、骨格まで変わったように見えて、本当にすごい俳優さんだと感嘆せずにいられませんでした。ジミーのときのくわえ煙草のまま喋って煙草の灰を撒き散らすガラの悪さと、ませた少女ながら、ジョアンの影には本気に怯えておどおどと逃げ惑うアンを同じ人が演っているなんて到底信じられません。物語の終盤に眠っていたマットの人格が目を覚ます前に中の人格が次々に表に現れては消えるシーンがあるのですが、このシーンでは人格が入れ替わるたびにマットの体を照らす照明の色が変わって、今どの人格が表に出ているのかを表現する演出がありました。2回目の観劇ではこの照明の演出がなくなっていて。この演出結構好きだったのでそれが見れなかったのは残念だったのですが、ギョンスさんの演技は別に照明の色がなくてもどの人格なのかがはっきりわかるので、改めてその凄さを実感しました。アンの人格が表に出てくるときの高速でアンとウッディの人格が入れ替わる演技もすごい。本当にどの人格の演技も素晴らしいんですけど、個人的には、ノーネイムが表に出てきているときのどことなくセクシーで妖しい雰囲気が好きです。一見落ち着いていて穏やかだけど、マットの人格の中で一番狂気を孕んでいる人格であることが感じられて。自分の語った物語の中に没入してしまうマットの危うさの演技もすごく良かったです。ジョアンに対する思いもすごく思い詰めたものを感じて、見ていて痛々しくて、本当に胸がギュッとしめつけ���れました。「인형의 죽음」 (人形の死) の悲痛な魂の叫び、繰り返される
타오른다 없어진다 燃え上がる なくなる 모든 것이 사라진다 すべてが消え去る
の歌詞にはただただ涙。
解離性同一性障害をもつ人の人格はそれぞれが役割を負っていることが多いと知った後は、マット以外のジミー、ウッディ、アン、ノーネイムのそれぞれがどんな役割を担っていたんだろうと考えてしまいます。ウッディは幼いマットがそのままの年をとらずに存在している人格で、アンはマットが姉に求めた姿を映した人格で、ジョアンに対して密かに抱いていた恐れや嫌悪感を担っている人格なのかなぁとか。ジミーは義理の父親の暴力に対抗するために生まれた人格なのかな、とか。ギョンスさんが演じるジミーにはそことなくジョアンへの鬱屈した愛憎が感じられて、それもゾクゾクしました。ある意味ジョアンを守るために生まれたジミーの人格なのに、ジョアンは自分に対して異物を見るように怯えるばかりで苛立ちが募る…みたいな。ちょっと妄想が過ぎてますかね^^;そして調整者のノーネイム。一番理性的なように見えて、主人格であるマットが生き延びるためには手段を問わない残酷さを隠し持った人格。それでいてノーネイムは一番マットに近いというか、マットの影のような人格なんだろうなと思います。何が言いたいかというと、こういう物語の背景を妄想せずにいられない説得力のある演技のギョンスさんすごい。
序盤の 「서툰 아름다움」 (不器用な美しさ) の曲変更を除くと、後半に集中している2017年公演からの演出変更。その一連の変更の発端がマットの過去とジョアンの死の真相が判明した後のノーネイムとユージン先生の会話です。先生がノーネイムに対して、「何故またジョアンのように女性たちを殺したのか?」と聞いた後に、ノーネイムが「殺された女性たち」と言ったことに過敏に反応するユージン先生。「殺された女性たち」と簡単にくくられた女性たちにも名前があり、それぞれの人生があったと。殺された女性たちの写真と名前が書かれた紙の束を持って、名前を一人ずつ読み上げては紙を床に散らしていく先生。泣きながら、それでもノーネイムを大声で恫喝し、ただならぬ気迫迫った雰囲気のピルソクさんの先生に圧倒されました。6月の観劇のときは、最後の一人だけ「レイチェル」、とファーストネームだけしか呼ばれず。7月の観劇のときは、最後の一枚は読み上げることも紙を散らすこともできずに、深くうなだれたピルソクさんの先生はそのままノーネイムに紙を乱暴にひったくられ、ノーネイムに挑戦的に顔を覗き込まれます。
ここで張られた伏線が回収されるのは、物語の終盤も終盤、マットの裁判中の「精神科学者」ユージン・キム先生への審問の後のシーン。次の審議の日取りを伝えて、その日の審議が終了した後に先生は裁判官とおぼしき声に呼び止められます。
「率直な質問ですが、マット・シニアーは先生のお嬢様レイチェル・キムの殺人犯です。本当に続けて治療が可能なのですか?」
(※ヒアリング力不足により少々妄想で補完されています)
実は私、6月の観劇ではこの衝撃的で超重要な台詞をちゃんと聞き取れていなくて、「あれ、先生 「유서」 (Reprise) は歌わないの?なんで??結構楽しみにしてたのに…」とモヤモヤしていました(汗)先生が読み上げた女性たちの名前の最後の一人が「レイチェル」と名前だけなので「もしかして身内なのかな?」という考えが頭を過ぎったくせに、何故ここを聞き逃すんだと自分を問い詰めたい気分ですが過ぎ去った過去は戻らず…。今回の演出変更から追加された先生の設定が明かされる大どんでん返しの真相を知った直後に思ったのは、「もう1回最初から観ないと!」です。運良く推しのコンサートに合わせた渡韓でピルソク&ギョンスペアがまた観れて本当に良かった!
真相を知った後だと、序盤の一見何気なく言っているように聞こえる 「내 안의 괴물」 (僕の中の怪物) 中の先生の歌う歌詞も全然違って聞こえます。
하나의 지정한 자아란 게 있을 수 있을까 一つの純粋な自我とういうものがあるのだろうか 영원히 변치 않은 본질적인 자아 永遠に変わらない本質的な自我 영원히 나로만 존재할 수 있을까 永遠に私だけが存在することができるだろうか
내 안의 어린 아이 私の中の幼い子供 내 안의 불만투성이 私の中の不満だらけの私 내 안의 광대 私の中の舞台役者 내 안의 예술가 私の中の芸術家 내 안에 너무 많은 내가 존재해 私の中にあまりにたくさんの私が存在する
注目してみると、ここでのピルソクさんの先生はどこか瞳が揺らいでいて。ここでもソク様の先生は「患者を治療する医者」としての自分と、「自分の娘を殺した犯人を糾弾したい父親」としての自分を意識して葛藤しているんだなぁ、と考えると涙を流さずにいれません。舞台の一番最初の映写機でブラインドに投影された写真を先生が眺めている場面でも、二度ほど先生がずっと下を見て俯いているときがあって。特に長いこと写真が映し出されている、アジア人っぽい目を見開いたまま亡くなっている女性の写真はレイチェルの写真なのかなぁ、と。そんな感じで7月の観劇では色々と先生に対して妄想が止まらない感じになっていました。
そもそも『インタビュー』のキャストが発表されたときに、演技の切り替えの素晴らしいピルソクさんがシンクレア役ではなく、ユージン・キム役でキャスティングされていることが意外でした。(まあ、お年は確かにシンクレアの設定年齢から離れていますが…スヨンさん、ジェボムさん、ジフンさんがシンクレア役にキャスティングされるならソク様も余裕かと。四人とも多分私とは違う時空の流れで生きているに違いない…。)雑誌のインタビューで、シンクレア役を演じたいと考えていたけど、今回の演出変更を活かすためには、シンクレアを導くユージン先生が重要だと考えて、先生役を引き受けることに決めたと話されていたそうです。なんかもう、本当にさすがソク様だなぁと。
真相を知った後の観劇だからなのか、一ヶ月の間にピルソクさんの演技の方向性が変わったからなのかは判然としませんが、注目して観ていると、ソク様の先生はマットのそれぞれの人格に相対するときの態度をわりと明確に使い分けているように感じました。「医者」としてのユージン・キムが優先される人格と、「父親」としてのユージン・キムが頭を覗かせる人格と。それはそのまま、先生が「レイチェルを殺した犯人の人格」として疑っている度合いと比例しているようで。対ウッディやアンだと、すごく優しいユージン先生。対ジミーだと、何度か治療の中で対面を果たしているせいか、一緒にガラが悪くなる対応のテキトー��は感じつつも「多分コイツではない」と思っていそうな気が。一番アンビバレントな感情を抱いているのは、やっぱり主人格のマットに対してかな。
件の裁判の審議の後の場面ですが、最初に観たときのピルソクさんの先生は、眉間にしわを寄せて長い沈黙の間も無神経な質問をした裁判官を睨めつけるような演技だったのですが、1ヶ月後の観劇のときは長い沈黙はそのまま、すごく悲しげに、揺れる瞳でわずかに微笑んでいて。その表情があまりにも悲しげで優しくて、もう私は泣くしか…。その後の、ゆっくりゆっくりと先生が書斎を片付ける場面も含めて悲しい余韻が本当に堪りませんでした。
さて、ピルソクさんとギョンスさんの演技について熱く語りすぎて完全にお留守になっていたジョアンの二人の女優さんに対する感想ですが…。ジュヨンさんのジョアンが幼い残酷さと狂気を感じるジョアンなら、ダヘさんのジョアンは少女の頃から大人びていて強かな女性の打算と冷たさを感じるジョアンでした。ジュヨンさんのジョアンはちらつく狂気を感じずにいられないのですが、ダヘさんのジョアンは心を殺していて奥底はとても冷静な印象。かなりタイプの違ったジョアンでどちらも良かったのですが、個人的にはジュヨンさんのジョアンがかなり好きです。なんというか、ジュヨンさんのジョアンは幼くて残酷で移り気だけど、マットを捨てることにするまではかなり歪んではいても曲がりなりにもマットへの愛情を感じられたので、より悲劇性が増す気がして。それこそお人形さんのように可愛いのに、幼いジョアンのときの演技では口を大きく開けて雨を飲み干そうとするアホの子の顔がためらいなくできるのも好きです(笑)赤ちゃんのマットに対して、「お前なんか死んでしまえばいいのに!」と言った直後にそれを後悔して泣きそうな顔で必死にマットをあやそうとする演技とかもすごく良くて。かと思えば、気に入らないことがあるとすぐ怒ってマットに手を上げようとするときの目が、未遂でも本気で据わっていてゾクリとしたりとか。ああいう表情を見た後だと、ジョアンが無邪気に歌う
앤, 내 친구 アン、私の友達
のメロディもホラーじみています。「애너벨 리」 (アナベル・リー) で無邪気にマットとじゃれあっていた後に一転してマットを誘う目の熱っぽさと妖しさは到底正気には見えなくて、そこにもゾクリ。来日公演で観たときも思いましたが、彼女もすごく演技のうまい女優さんだと思います。
演出変更前の来日公演を観たときも少し思ったのですが、今回『インタビュー』の感想を改めてまとめてみて思ったのは、ジミーが苛立ち、ウッディが顔色を窺い、アンが怯え、ノーネイムが冷静に見つめ、マットが愛した「ジョアン」もウィンダミアの事件の後にマットの中に生まれた表出していない彼の人格の一つなのかもしれないな、ということです。彼女が負っている役目はマットがジョアンを手にかけたことを忘れないことなんじゃないかな、と。マット自身は生きていくためにその記憶を手放すことを強いられたけど、そのことを忘れることを許すことができないマット自身がジョアンの姿となってマットを責め続けている。そう考えると、マットがオフィーリア殺人犯になった理由に説明がつくような気がするのです。レイチェルたちを殺したのは主人格であるマットだけど、それは彼の中にあの日に焼きついたジョアンでもある。それは過酷な境遇を背負った悲しい二人の悲しい負の連鎖の象徴なのかなぁと。
そして、その悲しくて忌まわしい負の連鎖を断ち切るためのキーパーソンがユージン・キム先生なんだろうな、とも思います。ユージン先生自身に「娘を殺害された父親」という悲しい過去の設定と葛藤を与えることによって、負の連鎖を断ち切ることの難しさと、だからと言って立ち止まっていられないという作品のメッセージが強くなった気がします。6月に観たときには演出変更の意図を消化しきれずにモヤモヤしてしまったのですが、改めて観てみると、今回の演出変更によって観客に「爪痕」を残す作品になっていて、「『インタビュー』は本来こうあるべきだったんだ」、と胸が痛みながらもすっきりした気持ちで劇場を後にすることができました。こう思えたのも、ピルソクさんの先生の儚くて悲しい笑顔がすごく大きかったと思います。
しかし、「今回はソク様の先生をガン見するぞ!」と意気込んでのぞんだ7月の観劇だったのですが、それでもやっぱりついつい見ちゃうんですよね、ギョンスさんのシンクレアを。そんなピルソクさんとギョンスさんの組み合わせは、お互いの細かい演技の相乗効果がすごくよかったし、歌声の相性もすごく良くて。思ったほどいろんなキャストでこの作品を観ることができなかったのは残念なんですが、ピルソクさんとギョンスさんの組み合わせで2回も観れたことは本当に良かったと心から思います。
#musical#theatre report#Interview#강필석#김경수#김주연#김다혜#カン・ピルソク#キム・ギョンス#인터뷰#インタビュー#Pil Seok Kang#Gyeong Soo Kim
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[Lyrics & Translation] Immortal (from Musical “Edgar Allan Poe”) London Showcase Version
Eric Woolfson 作詞作曲のミュージカル『エドガー・アラン・ポー』のロンドンのAbbey Road Studiosで撮影されたショーケース版よりポーが最後に歌う「不滅」(Immortal) の歌詞です。
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I was adrift on an ocean of dreams 夢の海を漂っていた I was amazed 驚かされたんだ
And as I sail to the end of the world 世界の果てに向かって航海していても I'm not afraid 怖くない
Mournful moon and willow tree 哀しい月と柳の木よ Tell the world not to weep for me 世界に私のために泣くなと伝えてくれ And I will be set free そして私は解き放たれる
I took a drink from a bottle of wine ワインのボトルから飲む癖がついて And I was changed 私は変わってしまった
Made a deal with the devil inside 内に在る悪魔と取引をして And I was shamed 自分を辱めた
I have sailed on stormy seas Where the four winds blow me 四方に吹く風が私を煽る 嵐の海も航海した
Shining moon and willow tree 輝く月と柳の木よ Tell the world--remember me 世界に私を覚えていてと伝えてくれ For I will be set free 私は解き放たれるから
All that we see 見るすべてのものは All that we seem 見えるすべてのものは Is but a shadow of a shadow Of a dream within a dream 夢の中の夢の 影の影に過ぎない
But if a tree is evergreen でも木がいつまでも緑なら Then maybe part of us もしかたら私たちの一部は Could be eternal 永遠になれるかもしれない
Though tangled life 絡みあった人生は May be no more 取るに足らないかもしれないけど
A drop of rain upon the ocean 海に落ちる一滴の雨や Grain of sand upon the shore 海辺の砂粒のように
The words will live forevermore 言葉は永久に生き続ける If you can hear me now もし私の声がいま聞こえるなら Am I immortal? 私は不滅だろうか?
Magic moon and willow tree 魔法の月と柳の木よ If they ask about me 私について尋ねられたら
Speak the truth, and they might learn 真実を伝えてくれ、そしたら彼らはわかるかもしれない Light a candle and watch it burn ろうそくに火を灯し燃えるのを見て Then I will be set free そうしたら、私は解き放たれるから
Free as a bird 鳥のように自由に Upon the wind 風に乗って
Now all the trials and tribulations もう俗世の試練と苦難は Of the world don't mean a thing 何も意味を為さない
Above the clouds 雲を越えて I'll fly away 私は飛び立っていく
Was it my imagination 私の想像だろうか Did the stars come out to play? 星たちが遊びに来たのか?
Beyond the sun 太陽の向こうの Eternal flame 永遠の炎
I hear a chorus of a million voices 私の名前を呼ぶ Calling out my name 幾万の声が聞こえてくる
But all I see and all I seem だけど私が見て、私が見えるすべては Is but a shadow of a shadow Of a dream within a dream ただ夢の中の夢の 影の影
Free as the wind 風のように自由で Lighter than air 空気よりも軽く
Free from the jealous minds 嫉妬深い心から解き放たれて The scornful, bitter words 冷笑に満ちた苦い言葉は Won't hurt me there そこでは私を傷つけない
And I will live forevermore そして私は永遠を生きる If you remember me もし私を覚えてくれているなら I am immortal 私は不滅だ
I am immortal 私は不滅だ
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[Theatre-Going Report] April 15th, 2017 マディソン郡の橋 (매디슨 카운티의 다리, The Bridges of Madison County) @ Chungmu Art Hall, Seoul
2017年4月15日、タイミングに恵まれて韓国でのミュージカル『マディソン郡の橋』(매디슨 카운티의 다리, The Bridges of Madison County) の初日を観に行ってきました。主演の二人を含むほぼすべてのキャストがシングルキャストであることも話題を呼んだ本作品。初日のキャストは
フランチェスカ (Francesca) : オク・ジュヒョン さん ロバート (Robert) : パク・ウンテ さん バド (Bud) : パク・ソヌ さん
でした。なんとフランチェスカの夫のバド役以外はみんなシングルキャスト、主演の二人の代打となるオルターネイトキャストも無しという俳優様の力を信頼した大胆キャスティングです。
韓国初演公演の初日、しかもアメリカ以外の国では初めて公演ということもあってか、劇場は開演前から業界関係者と思われる方々やオク様、ウンテさんのファンと思われる人達でいっぱい。ソウルでミュージカル作品を観に行くと、観客の9割ぐらいが女性という事も珍しく無いのですが、この日ばかりは会場にいらっしゃるおじさま方の多さが目に付きました。みなさまオク様ファンだったのでしょうか?そんな出演キャストのペン同士の集団がひしめく中で、アウェイ感を感じながら若干肩身の狭い思いをして自分の席に着いたのですが、そういう特別な日の公演だからこその舞台上の魔力を目撃する事ができて、いいタイミングで観劇できて本当にラッキーだったな、と思うのです。
ちなみに私はたまたまいいタイミングでアメリカの長期出張が入って、トニー賞の楽曲賞を受賞しながらも興行が振るわず、惜しまれながら短いランでクローズしてしまったブロードウェイ公演も生で観る機会に恵まれました。なんだかちょっと不思議なご縁を感じます。
原作の小説も、メリル・ストリープ、クリント・イーストウッド主演の映画もあまりに有名なので説明不要かもですが、簡単なあらすじをば。
戦時中に海兵だったバドに見初められ、彼に連れられてアメリカに移り住んだイタリア人のフランチェスカは、夫と二人の子供と共にアイオワ州のマディソン郡の牧場で慎ましく暮らしていた。ある日、娘のキャロリンが手塩にかけた牛のスティーヴィーを全米品評会に出すためにバドと子供達は泊まりがけの遠出でインディアナ州のインディアナポリスに向かう。留守を預かるフランチェスカの元にローズマン・ブリッジを探していると言い、National Geographic 誌のカメラマンだと名乗るロバートが訪れる。ローズマン・ブリッジまでの道案内を買って出たフランチェスカは、彼女が住む田舎の外の世界からやってきたロバートに少しずつ惹かれていき…。
初日の舞台上の魔力、それは主演のオクフランチェスカとウンテロバートの間に漂う只ならぬ緊張感、これに尽きます。お互い初対面の見知らぬ者同士が、立場上許されないと知りながらもどんどんと惹かれあっていく中で、相手の気持ちを探る時の息を詰めるような緊張感。このピンッと張り詰めた空気が初日ならではの俳優さんの緊張感と物語上の二人の間の緊張感に相まって、「うわぁあぁぁ」とか「ぎゃー」とか心の中で叫びながら顔を手で隠して指の隙間から覗き見るような気分でずっと観劇していました。一言で言ってしまうと、超エロい。
ウンテロバートの生着替えとか、オクフランチェスカの入浴シーンとか実際にお色気サービスシーンもあって、それも確かにセクシーなのですが、息を飲むような二人の間の緊張した空気がなんともたまらんかったです。いえ、ウンテさんの見事な腹筋とか、開いたシャツの胸元から漂うフェロモンたっぷりの大胸筋とか、知り合いのウンテさんファンのみなさまが鼻血吹いてないか心配になるくらい本当にご馳走様です、という感じだったのですが。二人の間の空気が言葉を交わさずとも色々と濃密すぎて、なんか見てはいけないものを見てしまっているような気にさえしてきました。それが会場一体となって息を飲んでいるのを感じるのですよね。あの緊張感はヤバかったです。
原作の年齢設定よりだいぶ若いオクフランチェスカとウンテロバートですが、オク様のフランチェスカは物語の冒頭では窮屈な田舎暮らしに疲れた中年主婦にちゃんと見え、ロバートと一緒に過ごしているときは10歳若返っているように見えたのでさすがだなぁと思いました。フランチェスカと私では生きてきた人生が違いすぎるので、なかなか感情移入をするのは難しいんですが、ロバートと別れてからの彼女の人生が中心に展開される二幕は、とても切ない気分になりしんみり。フランチェスカの選択を尊重し、最期までただひたすら一途に彼女を想い続けたロバートを演じるウンテさんは細やかな気遣いができる好青年そのもので。そして始終シャツの襟元からダダ漏れてくる色気にのぼせそうに…。二人とも歌唱力は折り紙付きですし、演技もすごくうまいのでぐんぐんと物語に引き込んでくれました。
『マディソン郡の橋』はトニー賞を受賞したジェイソン・ロバート・ブラウンの美しい楽曲もすごくよくて、特にチェロの哀愁漂うメロディが印象的でした。レポではオクフランチェスカとウンテロバートにしか触れていなかったですが、他のキャストのみなさまもめちゃくちゃ歌える実力派揃い。主演の二人以外では特にバドのソヌさんとロバートの元妻のマリアンとフランチェスカの姉のキアラ役のユリアさんが印象に残っているのですが、このユリアさんの配役も実に贅沢。ちょっと変わったところで、フランチェスカがロバートに手料理を振る舞うシーンでは、実際に舞台から料理の匂いが漂ってくるのも面白くて、あまりにもいい匂いがするのでお腹が空きました(笑)
渡韓直前の最後の最後まで他の作品を観ようか悩んでいた上での観劇だったのですが、またとはない貴重なタイミングで、オクフランチェスカとウンテロバートの間に漂う極上の緊張感で張り詰めた空気を体感することができて本当に良かったと思います^^
奇しくも先日 6/18 は『マディソン郡の橋』の千秋楽でした。キャストのみなさま、2ヶ月の公演お疲れ様でした!
#musical#theatre report#The Bridges of Madison County#매디슨 카운티의 다리#옥주현#박은태#Ju Hyeon Ock#Eun Tae Park#オク・ジュヒョン#パク・ウンテ#マディソン郡の橋
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[Theatre-Going Report] June 11th, 2017 ロッキー・ホラー・ショー (록키호러쇼, ROCKY HORROR SHOW) @ Hongik University Art Center, Seoul
2017年6月11日、ソウルで Richard O’Brien のカルト的人気ミュージカル『ロッキー・ホラー・ショー』(록키호러쇼, ROCKY HORROR SHOW) デビューしてきました。私がフルター博士のお城にお邪魔した際のパーティの主賓、もといキャストのみなさまは
フランク・N・フルター (Frank N. Furter) : マイケル・リー さん ジャネット・ワイス (Janet Weiss) : チェ・スジン さん ブラッド・メイジャース (Brad Majors) : ペク・ヒョンフン さん リフ・ラフ (Riff Raff) : キム・チャノ さん マジェンタ (Magenta) : ソ・ムンタク さん
でした。この日のマチネのブラッド役はパク・ヨンスさんが予定されていた回だったのですが、ヨンスさんの体調不良によって急遽ヒョンフンくんの代打登板が決まったのでした。ヨンスさんを初めて観る機会を逃してしまったものの、元々ヒョンフンくんのブラッドもすごく観たかったので結果オーライ。
映画と続編(?)のミュージカル『SHOCK TREATMENT』の方は何故か観たことがあるものの、舞台版のロッキー・ホラーは今回が初めて。韓国公演のキャストが発表された時に、あまりにも観たい配役の俳優様の多さにうれしい悲鳴をあげながら楽しみにしていた作品でした。大劇場を中心に活躍している豪華な顔ぶれの俳優様たちがB級お色気SFホラーを全力のノリノリで演じてくれる本作、必見です♡
作品と俳優様たちのせいにしてしまいますが、ロッキー・ホラーは妙なテンションの脳みその沸いた頭の悪い感想しか書けません(←) 気持ちの悪いニヤニヤ顔をしながら、俳優様たちと一緒に全力でB級テイストとノリノリのロック音楽を満喫するのがロッキー・ホラーを楽しむ正しいお作法のひとつだと思いますので!(←)
さて、文章として読んでも理解できる内容でもないのであまり意味があるのかわかりませんが(←)、一応あらすじをご紹介。
ブラッド・メジャースとジャネット・ワイスは婚約したばかりの若いカップル。二人は恩師のスコット博士に婚約の報告をするために車で出かけるが、道中車のタイヤがパンクしてしまい、雨の中近くの古城に電話を借りるために立ち寄る。不気味な城の使用人のリフ・ラフに招き入れられ訪れた古城では、奇怪なパーティーの真っ最中。ボンテージ姿でトランスセクシュアル・トランシルバニアから来たトランスベスタイト(異性装愛好者)だと名乗る城主のフランク・N・フルター博士は、生命の神秘を解明したといい、パーティ参加者と若いカップルに自分好みの金髪マッチョの人造人間、ロッキーの誕生に立ち会うことを要請するが・・・。
ちなみにご存知の方も多いかと思いますが、「トランシルバニア」(Transylvania) はかの有名な吸血鬼ドラキュラ伯爵が住んでいたとされる国ですね。ロッキー・ホラーのストーリーはこのあらすじの後も、「えーー!?」と叫びたくなること請け合いの奇想天外な超展開。私の中ではマドンクと同じく「考えるな、感じろ」系にカテゴライズされています。この動画を見て、「何これ面白そう!」と思った方は騙されたと思って行ってみてください!
Rocky Horror Show Highlight
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やー、もう本当に楽しすぎました。初めて観るムンタク姐様のマジェンタは塩対応加減が絶妙でかっこいいし、リフ・ラフのチャノさんも不気味さの中に妙なかわいさがあっていい味���アンサンブルのキャストのみなさんが車になったり、ドアになったりする演出も面白い。スジンさんジャネットとヒョンフンくんブラッドのカップルも振り切れてて最高だし、マイコー様のフルターはめちゃくちゃかわいいのに歌声は超絶男前_:(´ཀ`」 ∠): 特にヒョンフンくんのブラッドとマイコー様のかわいさは異常です。マイコー様のプリッとしてキュッとあがったヒップにジェラシー。ヒョンフンくんの白いタンクトップと白いソックス姿からのぞき出ている筋肉質な腕と脚とヘタレでビビリなブラッドにニヨニヨ。堂々たるボンテージ姿のマイコー様フルターにも恥じらいながらのボンテージのヒョンフンくんに萌え。グフフとかそういう感じの笑いが出てくる系です(←)
ロッキー・ホラーは観客参加型ミュージカルでもあるので、劇中のタイムワープのダンスはぜひノリノリでご参加を!YouTubeでも振り付け指導の動画が配信されていますが、劇場に早めに到着するとこの動画が上演前に何回か劇場のスクリーンに映し出されるという仕込みの万全さ。アンサンブルのお姉さまたちも一緒に練習に付き合って踊ってくれます。私が行った回では、一人ノリノリの女の子が通路でアンサンブルのお姉さんと一緒に踊って、あまりのノリの良さに拍手をもらいハグしてもらってました(笑)劇中のロックな楽曲は全部ノリがよくキャッチーで楽しいので、ぜひみなさまも声が嗄れるまでヒューヒューキャーキャー叫んでくださいませ♡
Time Warp Dance 振り付け指導
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SBSラジオにてムンタクさんと、マイコー様以外でフルター博士役にキャスティングされているソン・ヨンジンさんとチョ・ヒョンギュンさんがスペシャルバージョンで歌うTime Warpの動画もあったので、これも貼り付け。三人ともめっちゃかっこかわいい!!Time Warp Dance の振り付けをフライングして、ヒョンギュンさんに「あれれ?」みたいな感じでからかわれてちょっと照れてごまかしてるヨンジンさんがめっちゃかわいい…萌え(*´꒳`*)
Time Warp (조형균, 송용진, 서문탁)
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ロッキー・ホラーは他にも気になる俳優さんがキャスティングされているので、終演までになんとかもう1回観たいなぁとたくらんでいます。特にヨンジンさんのフルターが超絶観たい!!けど、土日ヨンジンさんの登板が少ない…。というわけで、しばらくキャストスケジュールとにらめっこする日が続きそうです。
さあ、あなたもレッツ・ドゥー・タイム・ワープ・ダンス!!!
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