ヘンゼルとグレーテル
檻の中に閉じ込められた
本当は自分で檻に入った
丸々と太った
檻は狭い
丸々と太ったヘンゼル
檻の中のヘンゼル
鍵はとうの昔に開いてた
檻のなかのヘンゼル
食べることをやめられない
少し痩せれば檻の外に出れるのに
グレーテルは冒険に出ます
檻はみちみちだ
魔女は見なかった
ヘンゼルは魔女を見たっていうけど
それは確かに女の姿だったていうけど
見なかった魔女は
ヘンゼルは檻の中にいた
いつの間にか
出ようっていっても
食べ終えた骨を差し出すだけ
グレーテルは旅に出ます
食事の支度は飽きました
あの檻を作ったのが
本当に
本当に魔女なら
あの檻を壊せるのも魔女かもしれない
旅に出よう
旅に
食事の支度は飽きました
ある
月の明るい夜
グレーテルは旅に出る
魔女に会いに
魔女に会いに
ヘンゼルは
怯えながら魔女を待つ
魔女を待つ
怯えながら
はち切れんばかりのこの腹を
満たしても満たしても
食う 空 食う
魔女の顔に見覚えはある
魔女の顔しか
知らない様な気もする
準備はできた
さあ魔女よ
火は燃え盛り
お湯はグラグラ
準備はできた
さあ魔女よ
檻から 折から
降りから から から
宴です
おめでとう
うたげです
歌気です
おめでとう
湯気が昇ります
おめでとう
檻から出て
おめでとう
降りてきた
おめでとう
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いし
つるんとした人が外からやってきて
ツルツルしてたっさ
別にぬめってたわけでないけど
なんかこう
ツルって
掴みどこがなくてさ
いやさ
おかしいっていうわけよ
つるんとした音の言葉で
わかったわけでなくて
言いようでさ
多分おかしいって
そういうことを言おうとしてたんでないべかって
思うんだけども
指を差すんだ
そういう時に有効なのは指差し
そして
片方の頰だけで笑う
効くよ
いや言葉なんて通じなくたって
伝わるから
いやさ
んで
違うべやって思うんだけども
何ってこともねぇんだもの
うん
ただそれは違うの一点張りよ
つるんとした音でさ
一見わかったような感じするのさ
ただあの目つきよ
いや
違和感は特に感じません
そんな
引っかかりもないですよ
摩耗なんていや磨り減ったわけではないんです
磨かれたんですよ
傷もない
いしぃ
石
見つかったんだべ
綺麗な
ひかるってな
磨くな 磨くな
磨けばほれ光らなくなるのさ
そこが光るんだもの
あんたが削ろうとしているそれ
そこが光るのさ
光を受けて
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しゃもじ
しゃもじは悪くない
たくさんの木々たち
たくさんの竹たち
たくさんのプラスチックたち
柔らかいものでさらに柔らかいものを切り混ぜるということ
水をまとった柔らかさで
水気を含んだ柔らかいものを
切り混ぜるとき立ち上ってくる
小さな粒子
白い粒たち
黄色い粒たち
粒たち
粒のまま混じり合う
しゃもじは
下から上へ
切り混ぜる
上から下へ切り混ぜる
混ぜ返し
混ぜ返しして含まれる
柔らかな熱
ほんの少しだけ反った
楕円型に乗る
たくさんの楕円形
まるい まるい まるい
ころがらない 楕円形
運びます
しゃもじ
みたします
しゃもじ
まるいものからまるいものへと
次々に
よそいます
しゃもじ
楕円の循環
鍵穴のような
しゃもじ
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木
いや、いたいんすよね。
いや、いたんすよね。じゃなくいたいんす。
ねてても。
こくし。うーん。まぁ。してるっちゃしてるんすけど。ね。
このごじせい。まぁ うん。らくな商売なほうじゃないすか。
いや。いませんて。
いなかったです。
いたいだけで。
いや、そんなきはないです。
いや、ほんとに。
ええ。みたこともないすよ。
ほんとに。なかったもの。
きであったわけなんて。
枝が切られたって
それで幻肢痛が起こった
あったのよ。そこと、ここと、そこにも
きられてしまって いたみだけのこる
いたみがあったことを いたかったことを
きおくする きお くする
き 臆する
いたいと 全てが億劫
とどまる 丸まって
痛みの中に止まれば
しゅし
いつかは芽生えるの 切られた 枝枝枝
とどまらないで
しゅし
みず たゆたう ゆっくり
すいこむ いたみは中にだけ 外からはやってこない
みず たゆたう ゆっくり すいこむ
あたたかなものは おおいかくす
えだえだは しゅし あなたの中でのびやかに
そのすがたをとりもどす
しゅし そのすがたをとりもどす
無機物
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森と砂漠
鳥は領有する空間を拡大することに貪欲
あんなにどこまでも飛び
あんなにどこまでも声を届ける
あんなにどこまでも声を届けるのは
あんなにどこまでも飛び回るのは
いられなくなったからなんだ
え。
じゃ 私たちは
どこまでもどこまでも
どこまでも延ばす
延伸は合言葉だ
何かの時の 詰まってしまえば
延伸しましょう
それでここもあそこも潤うようになる
どこまでもどこまでもどこまでも
拡大に貪欲だ
鳥よりもタチが悪く
自分の身体を作り変えることすらできないくせに
土地ばかり
土地の形ばかり
え。
あの 砂漠を作ってるとばかり
思ってたんです よ
え。
いやほら せっせせっせと えんやこらと
いやだって 切ったでしょ
いやだって 丸裸にしたのだってほらあの山
作るためでしょ 砂漠
いやだって ほら適応 してるんじゃないんですか
好きですよ 風がビューて強くて
何もかも綺麗にしてくれるでしょう
赤くて 白くて 美しい
砂漠を作ってるんじゃないんですか
うん そうっだった うそだった
口実だった そう 砂漠を作りたかったんだ
鳥は 鳥は また森を運ぶだろう
腹のなかの 森をばらまくだろう
その声は 水を呼ぶだろう
呼ぶだろう 悲しむことなく
呼ぶものをはっきりとわかっているものは
悲しまないものだ
鳥はどこまでもどこまでも飛ぶだろう
さえずりを交わす森を探し当てるだろう
さえずりを交わす森は鳥たちのさえずりから生える
生えればそこは森
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さし木
深く
潜る
で
きるだけ深く
そのほうが水圧がか
かるから
深くふ かく
水中の深いところ
で 切ってください
細かく 回数を重ねて
で きる だ け 斜めに
面積が欲しいので
ええ
吸い上げる
面 広いほうが
いいので なる べく
グ ングングン グン
ギュ ウゥン
ふるえを感じます
手の中で
しおれ 萎びるはずだった のに
水を吸い上げるのを
水が吹き上がるのを
切る 小気味良い
切る切 る切る 切る
枯れるはずだった
それはまず根をはる
根を張るはずだ
水を勢いよく吸い上げ
まず出るのは根だ
深く潜ります
深く 根は
深く潜ります
水脈に届くように
深くふかく潜って冬
春には 芽を���す
ために
深くふかく潜ります
春には めをふくため
涙
春には
しずくのような
め 柔らかで 伸びやかな
まなざし
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きねん日
いのりねんずる
なんつったっけ
いやさ 忘れたのさ
いや うん 調べたんだけれども
いやうんと 調べようとしたんだけれども
読み方さ なんつったっけ
出てこねーのさ うん たいして使う言葉でもねーしさ
でも うん いや大事なんだよ
大事なのに忘れちまってさ
出てこねーのよ 読み方が
出てこねくても
いのればいいよな ねんずればいいよな
読み方さ忘れても
いのり方わかんねくても
いやさ
わかんねのさ
みんな忘れてる
おれだけ 覚えてる
だから祈るよ
いのる
念ずるよ
ねんずる
なんもさ
空見上げんのさ
やり方なんて知らねもの
おれだけ
あの大勢
空の向こうのあの大勢
あの知らせ
あの鈴の音
旗を振り近づく
いつもおもう
おれん中にある
あの大勢
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남편
狼煙をあげてください
すぐに行きますから
その方法は正しくない
正しく伝わらない
距離をとって
狼煙をあげてください
その拳を下ろして
この場をさりなさい
安全な場所へたどり着くにはまず
その拳を下ろしなさい
仲間よ
男の仲間よ
その拳を下ろして あの洞窟を目指して
なんでもあるから
そこで暖かな火を焚いて
炎があなたを温めて
熾になる頃
あなたが暖かな眠りにつく頃
私はたどり着くでしょう
あなたとともに
自由な眠りにつくでしょう
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ミトコンドリア
ミトコンドリアの呼応する
ああ 隠れていたのね
ミトコンドリアの呼応する
アスファルトを破り 萌え出づる
ミトコンドリアの呼応する
呼応 する
こえ それは確かに
わたしの中へ 響く
そこまで 伸びてきた こえ
ミトコンドリアの呼応する 呼応する
敷き詰められた それは ローラーで踏み固められた それらは
圧し おし し しししゅ
種 小さいから
案外潰れないのね ほら隙間 案外
いくらでもあるの ねね ね
根 こえを潜めて
つぶされずに済めば ね 根が
最初にでるでしょう ふふ根は びっくりするほど細い
潜り込むからね ね 根は
音を 潜ませ ミトコンドリア
ミトコンドリアの呼応する
湧き出ずる ミトコンドリア
あなたのミトコンドリアに
照り映えるミトコンドリア
それは声 呼応するおと
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灰
忘却の火で燃されたそれの
灰はのこるだろうか
のこるだろう
灰はのこって
河に
あなたの手はそこで
ひらかれ
灰は河面に 浮かぶか
流れるか
それとも
沈むか
沈んだそれを
のぼってきたもの
が ほり
安全な窪みのために
ほり
灰は巻き上がり
また しずみ
安全な窪みを
埋めもどす
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焚きつけ
ぽぽポポポポおおおぽぽ
炎が消える音がします
お湯が沸く音ではない
あの音は炎が消える音だ
そのままにしておこうかと
思いもしますがでも
ここはあまりに寒い冷たい
そこで私は
問題集を手に取り
国語のだ
国語なはずだ引きちぎる
ページを
そこには
「お母さまがいうところなら良いところだと思います」
と娘らしいヒトがいうのはなぜか
ページはとうの昔に引きちぎられ
その前には何があったかもわからず
その後に何があるかは
問題にもされず
娘のように描かれる人は
「お母さまがそういうなら私はそこに参ります」
私は引きちぎれます
おお おお おお
これは焚きつけに良い文句だ
ごお ごおオオオオ
これは焚きつけに良い文句だ
私は 焚きつけられます
よかった よかった
私自身がほのおになった
これで行きたいところに行けるだろう
煙になって行けるだろ
わたしは本当に消えるだろう
行きたいところに行けるだろう
焚きつける母はお湯を沸かしながら
灰を少し
かき集める
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カニ2
言葉がプクプクと泡立ち
昇りくる
呼吸困難を起こしているのです
だから
泡になる
呼吸が
言葉が
泡になる
水の中に
いるときは 泡
アワなんて吹き
フキませんでした
言葉なん
て て いらなかった
海の底は
わたしの庭で
わたしの体が
わたしの羅針盤
何もかもはっきりと
感じられる
わかっている
言葉なんて知らない
いらない
少しの間なら
ええ
いられるの
この言葉は 水
わたしの命
水
乾かないように
わたしの命
わたしの水
それが言葉に見えるなら
わたしのあぶくはわたしの命
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カニ
カニは海底に集う
地点はあらかじめ決めてある
いや決めてたわけではなく
決まっていたので
カニを食うヒトも
そこに集う
地点はあらかじめ
決めてあった
いや
決めたわけではなくて
そこがカニが獲れる場所だ
たくさんの
国の船が集います
氷の海に
たくさんの言葉が行き交います
氷の海に
たくさんのカニが
海底に集いますが
カニの種は決まっています
いや
決めたわけではない
決まっていた
そこに集うように
底に集うように
知っていた
知らされていた
そこに集うように
底に集うように
その集合
その集合地点
カニは何語を話しますか
国境をまたぎます
海の底で
ある一定の周波数
っカニなんて
なんぼぉでも獲れるさぁ
あいっつら
まぁい年
おんなじとこ 来っからさ
イワ沈めて アバ浮かせて
待ってりゃ獲れるさ
カニは
何語を話しますか
または
話しませんか
カニは
自身が集合であることを
どうやって
知りましたか
決まっていました
カニはいう
皿の上で
カニはいう
それは泡になり
あぶくになり
あぶくは消え
それはあなたの胃の中に
カニの言葉はあなたの
胃の中に
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草を刈る
っわっかりました
ぜっんぶ刈り取りますっ
それっで ぜんっぶ刈り取って かり
とってっっ
私のこの両腕に
抱える
抱える
かっかえて 持てるだけ
もってってって
それで
飛ぶわ
どこまでも飛んで
そっレッで あの星まっでっ運ぶっっ だあんレノっ
手も届かないような あの星までそれと私を連れてってっ
でも
根付くだろうが 刈り取ってしまったそれらから
根を 生やす ことが 可能か
ったねっっ
ったねっっをっまけば っいいっよ
っほらっん あんたの ふぐさについてるそのたねっぐぉ
ンダば
まぐがね んだ マッケ 蒔け
ぅんだもの゛ だぇじょ あったげもの゛
出るさ うん でる
くぉっこら 一体 緑の海だ
大丈夫だ はるには 芽ェふぐ
芽が出る
春は来る
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夏祭り
あまい あまい
あまいもの
ふわふわふわふわ
と
あまいもの
熱で溶かして
ほそいほそいほそい糸にして
それを棒っきれに巻き取りました
あまい
あまい
あまい
あまい
あまい
あまい
それはふわふわとあまいけど
ただの砂糖っちゃ砂糖
それだけで生きていけるわけでもあるめェし
なにそんなものに金払ってやがんのさ
あまい あまい あまい
それを糸として紡ぐために
私たちは熱を帯びる
私たちは熱に浮かされる
私たちは熱量を
ただそれを糸として
ふわふわと
いかにも大きく柔らかで
大事なものだとするように
私たちは熱を帯びる
私たちは浮かされる
隣では誰かが氷をカチ割ってる
だけど間に合わないと思う
私たちは熱を帯びる
熱は伝搬する
私たちはふわふわと糸になり
お囃子の音ももう聞こえない
0 notes
つた
夏の植物たちは
境界線を
はりきって越えていきます
鉄条網なんかは
かえってたやすい
はっきりと越えていきます
塀なんかも
まあまあ楽
きっぱりと越えていきます
一番つらいのは
コンクリで埋め尽くされるのだけど
種子の形になって
たどり着ければ
あとは根で増えるの
夏になれば
栄え広がり這え広がりして
あの線
誰かが勝手につけた
あの線を超えていく
だから
夏生まれの子供たちは
存外で呑気で楽天的だ
はえひろがれ
はえひろがれ
はえひろがれ
とらわれました
だから孕み続け
産み続けました
はえひろがれはえひろがれはえひろがれ
あとかの境目がなくなるまで
我と彼の境目がなくなるまで
はえひろがれはえひろがれはえひろがれ
あちらこちらにとらわれ
あちらこちらで産みました
だから我は彼の兄弟姉妹
はえひろがれ
夏のこ
秋のこ
冬のこ
春のこ
隙間なく繋がって
あなたたちは同じ種であると
そうして自由であると
栄え広がりながら
どうか伝えて
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ひかり
名前をつけました
見るもの全てに
かがやかしくて
あ この現象にも
名前をつけました
光るよりも
もっとまばゆい感じ
あ この感じも
名付けてみました
まあ
語感かな 口に出した時の音のかんじが
まあなんというか
まばゆい
柔らかな気もするど
でも光ってもいて
いいでしょ
この音の並び
楽しかった
名前をつけることは
次から次へ
口からこぼれる音は
名前としてそれを覆う
見るもの全てに
感じたこと全てに
名前をつけた途端
なんだかそれは遠ざかった
ええ
変わらないわ
あんたが音で
衣をつけた
私につけた
きっと
保護 守護 庇護
とかそんなものでしょう
あんたがつけた
私が望んだわけじゃない
いいのよ
ええ
気に入ってはいるけど
違う風に呼ぶのもいる
そうして私の衣は
十重二十重
しらない
え これに名前なんてあるの
いや
だってどこにでもあるから
え
これとそれ
違うのだって どうみたって
同じものじゃないの
いや いやいや
いらない
同じにしないで
これはこの一つ
明滅し
生まれたばかりの
赤色矮星
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