yat-ao
その風景が見える点
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a point in which you can see the scene / written by 夜田
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yat-ao · 2 years ago
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アイコンのイラストは、夜田さんの作品ですか?とても素敵で、一目惚れしてしまいました。もし夜田さんの作品でしたら他のイラストも拝見したいです。
自筆の絵です。過去の写真だけ再掲してみました。すみません、文がメインになります。
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yat-ao · 2 years ago
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単語帖美術館
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yat-ao · 2 years ago
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流し台の前にふたつの丸椅子を並べて、おれたちの台所は完璧になった。俺とカラキは缶ビールで乾杯し、煙草を次々吸いながら、「なんでも作れるな」「おう、なんでも作るぞ」といい合った。カラキはワインの栓を抜き、チーズと大きなソーセージを切った。俺は小鍋に湯をわかし、ゆでたそら豆に塩をふった。夏だ。今までどおり、カラキは朝にパンを焼き、俺は日暮れにスープを作るだろう。しかし時には二人で朝寝坊して、いろんな具のサンドイッチを作るとか、うんと暇な日に冷菜をたくさん作って、その日は全部ちょっとずつ味見するとか、これだけ大きな作業台があれば、カラキが何種類もの練り生地から小さな焼き菓子の形を作る仕事を、隣でちょっと手伝うこともできるだろう。下手だな、と鼻で笑われるだろうが。
冬になったらあそこの隅にストーヴを据えて、チーズや果物を炙って食べよう。ベリーの季節にはジャムを煮て、東洋やインドの茶を淹れよう。ココアパウダーの缶が空っぽになるような、贅沢な濃いホットショコラも作ろう。カラキの驚く顔が見たい。
「いいキッチンだな」とカラキがいった。「いいキッチンだ」と俺もいった。
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yat-ao · 2 years ago
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彼の生活にはガムシロップが欠かせなかった。彼はミルク無しの甘いコーヒーを好んだが、ひどい猫舌のせいで、砂糖がきちんと溶けきるような熱いものは飲めなかった。それにマグの底の砂糖がざりざり鳴るのも、少しでも溶けますようにと祈りながらスプーンでかき回しているのも嫌いだった。だから彼の生活の必需品はガムシロップとコーヒーとマグだった。わたしの必需品はもちろん、コーヒー豆、豆挽きミル、ドリップ・ポット、そしてフラ��パンだった。
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yat-ao · 2 years ago
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乗合バスは、すでに人間に見捨てられたような道をガタゴト走っていった。風景はどんどんひどくなるみたいだ……舗装はひび割れ、赤っぽく変色し、雑草がながく、荒っぽく伸びている。ところどころにぽつんと立っている鉄板製のバス停は、すっかりペンキがはげて、一つの文字も読みとれない……それなのにときどき人が乗りこんでくるのがふしぎだ。いったいこんなところでどうやって生きているんだろう? ジョオの頭の中で、《街》の風景がそれらと比較される。白いなめらかな道路、幾何学形の樹木、蛍光管がやさしく光っている路面電車の駅……
「おお」と、その老人は──受け入れがたいことに、どうやら、おそらく、このひとが彼の祖父だ──にっこりと笑い、大きく手を広げた。「よく来た、よく来た!」心からの歓迎をあらわすポーズは、老人のみすぼらしい身なりをよりはっきりと見せた。流行遅れの天鵞絨のガウンは、継ぎ接ぎと煙草の灰と丸い焼け焦げの穴だらけで、ベルトをしていないので、だらりと開いた襟のあいだから、縞模様の寝巻きが(それも古風な、詰襟で、足もとまでボタン留めの、ネグリジェのような裾の長いものだった)見えていた。スリッパも剥げちょろけだった。それに、家具はみんな埃がつもっている……
……おじさんが煙草を吸いながら鍋をかき回しているのを見て、ジョオはしんからゾッとしたし、「ウウウ」という声を──なかば意図的に──もらしたが、おじさんは気がつかなかったか、それともまったく気にとめていなかった。
「さあ、これがうまいかまずいか、おれにはわからんが、とにかく食べよう」おじさんは意気揚々といったようすでいった。��味見はしないの?」彼はイライラしながら、いちおうというふうに、押しつけるように聞いた。おじさんは笑った。「ぼうず、もしここがおれの台所なら」とおじさんはいった。「スプーンふた匙いっぱい塩を入れるんだ。ところが、おやじは、病気をしてから、うす味のスープしか食べられないんだ。かわいそうにな」おじさんは食器棚から、ちぐはぐなスープ皿を三枚と、すっかり干からびていそうなパンのかたまりを引っぱり出した。「そういうわけだから、この台所で、しかもこのおれが、味見なんてな。いや、むだ、むだ」
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yat-ao · 2 years ago
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……彼女はすぐに見つかった。ほかの生徒たちは、まるで申し合わせたようにみな暗い色のチェスターコートの群れになっていて、そのなかで、クローム黄の登山用レインコートは目立っていた。もちろん、そのコートは、彼女の兄のものだった──何度も見たことがある──わたしはとつぜん、自信が急速にしぼんでいくのを感じた。ここから逃げ出したいと思った。彼女と話したくなかったし、それは耐えがたいことか、またはひどく恐ろしいことに思えた。けれど、わたしはもう引き返せない距離にきていて、彼女と眼が合い、彼女はわたしに気がついて、顔を上げていた。「よう」と彼女はいった──わたしは自分の体がじっさいにぐらつくのを感じた。そのいい方はあまりに彼にそっくりだった。「おじさん、どうしたの?」と彼女はいった。
「迎えにきたんだよ」とわたしはいった。「だれを?」とかのじょはいった。「きみを」わたしは自分の声がとてもかすれて、聞きとりづらいと思った。「あたしを?」彼女はわらった。
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yat-ao · 2 years ago
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織田の食生活とはいえば、たまさか知らずに彼の食事時に顔を出すと、ちょっとギョッとするようなもので、たとえば玉子が一箱丸々買うと安いとなれば、じっさい一箱買ってしまって、五日も六日も白飯と茹で玉子に塩を振ったのだけ食っているという様な奴なのだ。玉子が大根に、或いは鶏に、また菜っ葉やら豆やら芋やらに変りはするが、とにかく五日六日はそればかりで過すのだ。織田の家には鍋二つと、酒、醤油、塩があるきりだ。驚くのはこれでも織田は割烹の職人──私は自分でその店に行ったことはないが、結構なご馳走を振る舞うような料理屋の、少なくとも板場で働く男──なのだ。それでいて織田は、珍味美味どころか、自分の飯の味にさえ興味は無いのだ。無論、板場で偉くなるとか、独り立ちするとか、大将に暖簾分けしてもらうことなど考えもせずに、追い回しと野菜洗いで満足している。織田が店で働いているのも、煮炊きや庖丁が好きだからではなく、大将が──織田は、親方、とつねに呼んだ──好きだからなのであった。織田がしきりに親方を有難がる様子は、私などからすると少し不気味な程であった。
これは断っておくが、織田の煮た玉子だの鶏だの大根だのは、べらぼうに美味かった──織田の投げ遣りな態度にも関わらず、じつに美味かった。それは彼がかならず親方に習ったとおりやるからであった。じっさい彼は私にそう云うのだった。美味いなと褒めると、あたりまえだ、親方のやり方だ、と云うのだった。恐らくそれが彼の敬慕の表明なのだろうと私は思う。かならず習ったとおりやるということが、それをまもるということが、織田の親方への敬意なのだろう。
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yat-ao · 2 years ago
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部屋のドアを叩くと、「入れ、入れ!」と、ルディの荒っぽい声がした。ルディはいつもそんなふうに吠えるような声を出すけれど……これは機嫌が悪い声だ……手あたりしだいに物を投げ散らしているときみたいな声。わたしはおそるおそるドアを開けた。ルディはかつて曾祖母が使っていたという、大きな鏡のついた骨董品のドレッサーの前に座って、怒り狂いながら、くしゃくしゃにからまっ��髪の毛をかきむしっていた。よく見ると、大量のヘアピンを抜き取る作業をしていることがわかった。「まだ」とルディは鏡に向かってうなっていた。「まだ──まだ──まだある──チクショウ!」ルディは刺繍入りクッションの丸椅子に座ったまま、膝をたかく上げて足を踏み鳴らした。靴の先と踵に打ってある鉄の鋲がガチ、ガチ、ガチッと威嚇的に鳴った。「イカれてる──クソが──」
「パーティはどうだった?」わたしは聞いた──勇気をふりしぼって。いまのルディがぜったいに聞きたくない言葉がまさに〝パーティ〟だということはわかっていた、もちろん。彼女の様子を見れば、それに、床に投げ捨てられて踏みにじられたドレスと飾り靴を見れば、なおさらよくわかった。それでもやっぱり、聞かずにはいられなかった。
「どうだって!」とルディはまた吠えた──わたしはビクッとなった。わかってた──わかってる──「馬鹿にしやがって、え? あのにたにた笑いの、能なし仮面の、嘘つきビクつき野郎ども──」
 ルディはとつぜんハッとしたようだった。鏡の中で眼があった。わたしがいることに初めて気がついたようだった。彼女は顔じゅうをくしゃくしゃにした。泣き出しそうに見えた。でも、ルディは泣かない。
「ハニー・ビー、耐えられるか? え?」しばらくそのまま黙っていたあと、ルディはそういった。おし潰されたような苦しそうな小さな声で。そんな声はまったくルディらしくなかった。それにルディの髪──ああ、いつも王様のたてがみのように堂々とふさふさと広がっている、うつくしい麦わらのような金色の髪は、たくさんのピンのせいで惨めにもつれて、みすぼらしくたれ下がっている! 私はルディの髪をこんなにした何もかもが憎らしいと思った……パーティも、「にたにた野郎ども」も、きっとその手で彼女の髪を結い上げたにちがいないジンばあやも、このお屋敷も……何もかも。
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yat-ao · 2 years ago
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彼はあきらかに酷く打ちひしがれていた……苦しんでいた……すすり泣き、しゃくりあげ……獣じみたうめき声をあげたかと思うと、か細い、かん高い、引きつれたような悲鳴のためにながく喉をふるわした。悶えるように身をよじり、時折なにか発作じみたていで、血の気が失せる程にぎりしめた拳で自分の頭や胸をはげしく打ち、そうして不意に力尽きたようにばったりと突っ伏して、また子どものようにすすり泣くのだった。私は非常な不安と恐れと困惑とを感じながら、ただ彼の様子を見まもっていることしか出来なかった。私は自分がみじめに無力だと感じた。その感覚は胃を中心にじわじわと全身を蝕んでいくようだった。息苦しさを感じた。私は突然、自分の両腕が奇妙にだらりとたれ下がっていて、ひどく重いことに気づいた……
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yat-ao · 2 years ago
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彼の容貌はかなり奇妙だった……背が低いうえにひどい猫背で、痩せぎすなので、まるで十ニ、三くらいの子どもに見えた。着ているものは何もかも──だぶだぶのズボンも、たれ下がったシャツも、ポケットだらけの上衣も、穴のあいたスリッパ靴も──色あせ、何かの染みができ、つぎはぎや乱暴な縫い目で歪んでいた。しかし何より目をひくのは、みすぼらしいモップのようにくしゃくしゃに広がっているもつれた長い髪の毛で、まるで雑種のぶち犬のように、黒と白と麦わら色が少しずつ入りまじっていた。髪の毛がすっかり彼の顔をおおってしまっているので、向かい合うと、彼の頭がじつは後ろ前になってるんじゃないかという落ち着かない不安を相手に感じさせた……すべてがあいまって、彼は奇妙な昆虫のように見えた。
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yat-ao · 2 years ago
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そして彼は、子ども部屋のストーヴの前に丸くなり、いちばん親しいボロボロのケットをかぶって、小さなケーキとビスケットを食べるという最高のぜいたくを許された。お祖父さんはいつものようにニコニコして、「大好きな物を食べるんだ。すぐによくなる。」と、いった。いつもの風邪のときには、そんなことは難しい……お腹がムカムカして、何も食べたくないし、��ょっちゅうゲーゲー吐いているからだ……お祖母さんは、いかにも信じがたく、気に入らないという顔をして、だまってお粥のしたくをはじめた。しかし、お祖父さんは、「ケーキが食べたいかい? イチゴ・ジャムのかい、チョコレートのかい?」と、ないしょ話のようにうれしそうに聞いた。そして、彼が小さな声で、「ジャムの。」と答えると、もっとニコニコして、買い物に出かけた。
二日めになると、お祖母さんはやっと、彼がなんでも食べても大丈夫だということを認め、ニンジン入りのホットケーキを焼き、バターの壺とナイフを持ってきてくれた。彼はストーヴの前に丸くなったまま、お祖母さんが編み物をするのをながめたり、お祖父さんの書棚の本のタイトルを、ひとつずつ、目で追いかけたりした……『山野の植物の分布と効能』……『ストラヴィーツエの哲学』……『自由意志に関する考察』……
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yat-ao · 2 years ago
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彼の部屋は常に足の踏み場もない程散らかっていた。煎餅布団を中心に書籍・着物・筆記具・書き散らしの紙・薬瓶・酒類・何か壊れた玩具らしき物その他意味不明のがらくたが堆くなって、彼はその中で常に煙草を吸い、酒を飲んでおり、又ふつう絶望していた。私が頻頻と彼を訪ねたのは専ら、もしも私の足が遠のいた場合にはこの男が死んでしまうのではないかという不安の為だった。それは精神的な或いは空想中の危惧でなく、具体的かつ切実な、そして肉体的な、つまり彼が決して自ら食物を求めないという、明瞭に現実の問題として、私の前にあった。私が握り飯やサンドウィッチや菓子等を持参すると、彼はそれらが何か気味悪い虫でもあるかのように、口を歪め、甚だ厭な眼付きで見たし、いかにも不味そうに不承不承という態で、単に喉に押し込むようにして食うのだが、少なくとも私の数日分の不安は慰められる訳だ。この家に彼が生きていることは、恐らく町の酒屋のほかは、私と織田しか知らず���そして織田の方はとうに彼に愛想を尽かしてしまっているのだったから、彼を飢え死から引き止める者として自分以外にあてがなかった。彼は例えばひと言、有難うとすら云わない。今日はとすら、そんな挨拶すら云わなかった。細細とした声で体の苦しみや痛みを呟くのがせいぜいであった。そんな男だから私も何度もう思い切ろうと考えたか知れないが、それでも二三日すると、彼の蒼白い頬や底暗い眼や折れそうな手頸の有様といった像が脳裏に散らついて、しまいには忘れ難い不安に駆られ、追うように追われるように、その荒れた淋しい小路を踏み直してしまうのだった。じっさい私が通うのでなければ、彼の家は薄芒と毒矯とに呑み込まれてしまったに相違いない……
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yat-ao · 2 years ago
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2022-10-09
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yat-ao · 4 years ago
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(セルフ供花)
つれあいと二人とも たぶんお互いそれぞれのことで 少しつらい時期がつづいていて 「消えたいね」「消えたい」と云い合って、ややフ���ンシーな消失妄想(シャボン液になって混ざり合い、シャボン玉になって風に運ばれて飛んでいき、うんと上空で一緒に消える、など) 今日は二人とも寒さと忙しさ、仕事のしんどさ、などがあいまったのか、ファンシー妄想では我慢できず、もっとリアルな妄想をしたのだった
一番安いレンタカーを借りて、海辺まで行って、近くの店舗で乗り捨てて おいしいコーヒーを買って、ねずみ返しの断崖絶壁まで行って 岩壁のふちに座って(たぶんガードレールの外に)コーヒーを飲んで最後の一服して (きっと嫌がられるだろうけど、)二人分のコーヒーのカップと煙草の箱をそこにきちんと並べて、 あ、そうだ、ついでに小さな花束も買ってって、一緒において(余計なお世話) ギュッてしてドボンする
って話をしたのだった 最後に一服ってのがいいねえ と云われた ひとつ懸案事項を片づけたいま、わたしはドボンしたい気持ちはなくなったけども、レンタカーで海辺のガードレールでコーヒーで一服はいいなあ 帰りは電車がいい
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yat-ao · 4 years ago
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2020.09.11
(さあ はしろう つっぱしろう  めでためでたのちりめん紙の  花ふぶき 房飾り 祝い帯 片結び  雪柳 茉莉花や、  風が吹くから、) 蟲を喰おう 原っぱで 蟲を、喰おう 探しているから きっと丸くて赤い眼の蟲だ 透きとおる黒い翅 折れそうなほそい脚 探しているから 見つからないから 忘れちまうから 風が吹くから 穴を掘って、まるくなって、土の底までもぐってねむろう かわいて割れたくちびるを ひと舐め それで それでひと晩 生きのびるのよ 会いたいの? 会いたいよ さみしいの? さみしいよ 風が吹くから 風が吹くから さみしいよ 風が吹くからさみしくないよ 忘れたよ 知らないよ あなたいつまで突ッ立ってるの 知らないよ いらないよ もう捨てた ここじゃだぁれもうたわない もう、鳥は どこにもいないよ 夢は見ないよ ぐっすり眠るよ いつまで そ��なに 見つめてみたって だれもかわってくれないよ 風が吹くから 探しているから 穴を掘って 土の中で 風が吹くからさみしくないよ
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yat-ao · 4 years ago
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(2020.06.02)
(しんどい) (さみしくてかなしくてこころぼそい) (ねむくてはらがへってつかれたのがほんとうかもしれないけどやっぱりこころぼそい)
あったかい あったかいけどとおい たぶんさわれる でもとおい ほんとうに気づかれないくらいにしか聞こえない
お寺の森に鐘が鳴って とおい 聞こえない 聞こえないのよ 赤いかんざしをまもっている 約束なので 約束だったので 待っている それでも聞こえないけれど やっぱり待っている ひなおくりの日よ 陽がさして、かげになって、月がさすよ そしたら来るのよ 待っている 約束なので わからないので 待っている でも約束なので
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yat-ao · 5 years ago
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2020.04.29
からまわりとからから ビスケットの箱に手紙をたくさんためている 薄荷ドロップ 水さし どくだみの花群れ つまらないいさかい くちばしに雨が降る 雨が降る 灰が落ちる 夢に見る さまようもの さまよいあるくもの かつて探されなかったものたち 探されることのなかったものたち その切れはし からからと雨がさ 泥水のはねる音 鬼と小びと 揺れるぶらんこ ダッタン人の歌 だれかをからかったあと、そのむくいを受ける 見つからなかった どこにもなかった そして呼ぶ声 からまわりとからから 泣くひと 失踪する 飛ばされた編み目 木の靴 羊のはらわた まちがわれぬように注意ぶかく書かれた記号 どこにもなかった 見つからなかった そして呼ぶ声 探す ドアノブと引出し 手紙の束 割れてしまったドロップのかけら だれも見つけない 粉砂糖のあと 引っかききず そうじゃなかった 深いわだち みぞれ 見つけられなかった だれも知らなかった まじないの切れはし 手をつなぐ さし出す まぼろしではない はかる はかりかねる 夢ではなかった その先 つぎ足したところ 長い物語と��の挿画 じいさんの長靴��油の匂い 変わらない床板 階段のすりへったところ 見つからないもの 黙りこむしかないこと
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