#浮き指対策
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・ ちょっと注意! こんな感じの靴 履いていませんか? このような靴は 足にフィットしていないため 腰痛や肩こり O脚、扁平足 膝の痛みなどになりやすいです。 どうぞ 注意されてくださいね。 足の土踏まずは 3〜5歳くらいに形成されていくと言われています。 そして15歳くらいに骨格が形成されていきます。 足のアーチがうまく形成されていないということになりますので 特にお子様には履かせないようにしていただきたいです。 特に浮き指などになりやすく 足の指が使えません。 足のアーチの形成がされないということになるのです。 昔は着物を着られていて 足袋を履いたり 下駄を履いたりしていました。 サンダルを履く場合でも 鼻緒のついたものは 足の指が使えて 姿勢や歩き方にもいいです��! 5本指ソックスが流行りましたが 私は足袋のように二本指ソックスの方が良いと思っています。 つまり 足の指を使って生活するようにしてくださいね! ということになります。 腰痛や膝痛 O脚の方は 参考にされてください。 #サンダル注意 #足の指を使う #腰痛の原因 #膝痛の原因 #O脚の原因 #扁平足 #浮き指注意 #足のアーチが大切 #足のアーチづくり #足のアーチをサポート #足のアーチの崩れ #足のアーチを取り戻す #足のアーチを取り戻す #足のアーチ再生 #浮き指改善 #浮き指矯正 #浮き指対策 #浮き指治したい #浮き指は体のバランスを崩す #浮き指改善エクササイズ #浮き指原因 https://www.instagram.com/p/CnNcRu9SyiF/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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中国の電力支配、
峯村健司
フィリピンの先例警戒 40%株式保有、送電止める危険
峯村健司氏緊急リポート
再生可能エネルギーに関する規制見直しを検討する内閣府のタスクフォース(TF)に、中国の国営電力会社「国家電網公司」のロゴマークが入った資料が提出された問題が収まらない。エネルギー戦略は国家の存立に直結する最重要政策であり、「他国の干渉があってはならない」(高市早苗経済安保相)からだ。林芳正官房長官は28日の記者会見で「河野太郎規制改革担当相のもと、内閣府において中国政府から不当な影響を受けていなかったかなどの調査を行う」と語ったが、議会や第三者機関も調査すべきではないのか。
キヤノングローバル戦略研究所主任研究員、峯村健司氏は、国家電網公司がフィリピンの送電企業の40%の株式を保有し、同国議会が「安全保障上のリスク」を懸念した前例に迫った。
再エネ導入に向けた規制の見直しを検討する内閣府のTFの資料の一部に、中国の「国家電網公司」のロゴマークの透かしが入っていたことが明らかになった。
資料は、民間構成員である財団法人「自然エネルギー財団」事業局長、大林ミカ氏が提出したものだった。大林氏は27日の記者会見で民間構成員を辞任したと発表した。大林氏がTFに入った経緯について、林長官は28日の記者会見で「内閣府事務方が提案した案を、河野規制改革担当相が了承した」と説明した(=大林氏は27日の記者会見で、河野氏の推薦だったと説明)。
「パワーポイント」による事務ミス…内閣府の説明に疑問と矛盾問題発覚後の25日に記者会見した内閣府規制改革推進室の山田正人参事官によると、同財団が2016~19年にかけて開いたシンポジウムに中国企業の関係者が登壇した。その際の資料を大林氏が提供され、別の機会に編集ソフト「パワーポイント」を用いて引用した際、文書のテンプレートにロゴが残った��いう。
山田氏は「内容に問題はなく、事務ミスかもしれない」と説明した。
この説明には早速、いくつかの矛盾や疑問が浮上している。同財団が翌26日、ホームページ上で発表した経緯説明では、大林氏は編集では「パワーポイント」ではなく、「キーノート(Keynote)」を使っていた。金融庁の有識者会議や経産省の小委員会に大林氏が提出した資料にも同じロゴが確認されている。内閣府の調査は不十分と言わざるを得ない。
そして、筆者が最も注目しているのが、中国政府における「国家電網公司」の役割である。02年に設立された中国最大の電力配送会社で、オーストラリアやブラジル、チリなどの発電・送電会社に積極的に出資をしている。
40%株式保有、送電止める危険その中で「国家電網公司」が積極的に進出をしてきたのが、フィリピンだ。親中政策をとったアロヨ政権時代、フィリピン国家送電会社(NGCP)に40%出資し、09年から全国の発電所から配電施設までの送電を受託した。
ところが、19年11月、議員向けの内部報告書で、「フィリピンの電力網が現在、中国政府の『完全な支配下』に置かれており、わが国の電力網に混乱を引き起こす能力を持っている」と警告されていることが発覚した。
NGCPを監督する送電公社の責任者が議会の証言で、フィリピン人技術者が施設への立ち入りを制限されており、中国によって送電を止めることができる可能性があることを認めた。
中国が「国家の悲願」と位置付ける台湾併合に乗り出した場合、米国の同盟国でありバシー海峡を挟んで位置するフィリピンの存在は極めて重要だ。その際、中国がフィリピンの関与を阻止するために、全土を停電にする可能性はあるだろう。
同じく、米国の同盟国であり米軍基地を抱える日本に対して、中国がフィリピンに対して実施したようなアプローチをするリスクを考慮するのは当然のことといえる。
今回の問題を「事務的ミス」で片付けるべきではない、と筆者は考える。電力事業は22年5月に成立した経済安全保障推進法で「特定社会基盤事業」と指定されている。その所管官庁である内閣府は、地政学リスクも含めた徹底した原因究明をすべきだろう。
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高知市で今年7月、小4男児が水泳の授業中に亡くなった。小学校のプールが設備故障し、近くの中学校で授業を行っていた。8月24日に開かれた事故検証委員会では、当日のプールは男児の身長よりも水深が深く、事故以前にも死亡男児を含め3人の児童が溺れかけていたことが明らかになった。関係者が「何度も立ち止まる機会があった」と悔やむ今回の事故。なぜ防げなかったのか。 ■足のつかないプール 事故は7月5日に起きた。市教委によると、当時のプールの水深は114~132・5センチ。亡くなった男児の身長は113・8センチで、一番浅いところでも足がつかない状態だった。水中で足がつかないというのは、大人でも恐怖を覚える環境だ。 市教委は専門家らによる検証委員会を設置、8月24日に初会合が開かれた。会合は冒頭以外は非公開で進められたが、そこで示された事故の経緯や当日の状況などをまとめた資料からは、情報共有の不備と現場の危機意識の欠如が浮かびあがる。 資料などによると、6月上旬に被害男児の通っていた長浜小のプール濾過(ろか)ポンプの故障が発覚。修理に時間を要するとして、1~3年は近隣の別の小学校、4~6年は事故現場となった南海中で授業を行うことを長浜小の校長が提案した。 校長らが南海中のプールを現地調査したところ、満水時には最大水深140センチになるが、6月5日の計測では深いところで120センチ程度と長浜小と同じだった。 市教委は「水深が長浜小と変わらない」との報告を受け、安全性が確保できるとして南海中のプール使用を決定。長浜小は保護者に対し、連絡文書で「南海中のプールは、水深1・2~1・4メートルですが、水を浅く張っているため長浜小のプールの深さ(1・0メートル~1・2メートル)とあまり変わりありません。尚、細心の注意を払い水泳指導を行います」と通知した。 南海中のプールを使った初めての授業は6月11日に行われた。校長はプールの水位が10センチ程度上がっていることを確認。同21日も満水になっていたが、教員らは「苦手な子は浅いところにいること」などと注意喚起し、授業を強行した。 この日、今年度初めての水泳授業を受けた被害男児は、最も浅い場所で浮きの練習をしていたが、水面が頭の上だったため教員1人が「半分付きっきりで対応した」という。また、バタ足練習では被害男児を含め3人が教員に救い上げられる場面があり、校長に「溺れかけた児童がいる」と報告したという。 ■空白の10分 そして事故が起きた7月5日を迎える。授業は2、3時間目に行われ4年児童36人が参加した。教員2人が指導にあたり、教頭1人がプールサイドで監視していた。 授業は午前10時10分から体操、シャワーと進む。教頭によると、被害男児は水慣れの前に「怖い」と言っていたという。授業が進み、泳ぎの得意なグループと苦手なグループに分かれたのは午前10時42分ごろ。教員1人がプールサイドを歩いている被害男児を目撃している。 そして、午前10時52~54分ごろ、児童の「先生」と呼ぶ声を聞いた教員2人がプールサイドに引き上げられた男児を確認したが、すでに意識不明だった。 教員がプールサイドで確認してから約10分の間に溺れたとみられる。 ■「水位変化、考え及ばず」 水位変化などを受け、授業中止を判断できなかったのか。検証委員会のあと、取材に応じた松下整教育長には報道陣から質問が相次いだ。 松下教育長は、中学校での授業実施については「長浜小と水位が同じということで安全と判断した」と説明。授業実施の段階で水位が高くなったことについては「調査後に水を足していて、それ自体は水質管理上適切だったが、その後水位が変化することに考えが及ばなかった」と釈明した。 「いずれにせよ立ち止まる機会は何度もあった」と後悔をにじませた松下教育長。検証委は年度内を目標に報告書を取りまとめる予定だ。 検証委の委員長を務める中内功弁護士は「原因と再発防止策を検討するためにも、事故が発生した経緯をしっかり解明することが重要だ」と話していた。 ■「危機意識が不十分」 安全教育学が専門の桐蔭横浜大スポーツ教育学科の井口成明教授に聞いた。 プールの水深に明確な基準はないが、全く泳げない児童なら身長の半分ぐらいが適切で、足がつかない状態はありえない。本来なら泳力別にグループを分け、底に踏み台を沈めたり腕浮輪を使うなどの対策が必要だった。監視の目も不十分で、児童が恐怖を覚える環境で授業を進めたのは危機意識が不十分と言わざるを得ない。 水泳教育は水の危険から身を守るすべを身に付ける学習で、児童を危険にさらすのは本末転倒だ。学校現場は、水泳授業の基本的な安全対策の在り方をしっかりと研修し実践する必要がある。 (前川康二)
「怖い」中学プールで小4男児死亡、事故前にも3人溺れかけ それでも強行された水泳授業 (産経新聞) - Yahoo!ニュース
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なんで負けて2位にすらなれなかったのかが、マジでわかっていない様子
そりゃ、他人の悪口ばかり言って、政策的知識のなさが素人にも見抜かれて、共産党の全面バックアップで勝てるわけないのに それすらわからないREN4は、高齢前頭葉萎縮サヨクと変わらないレ��ルだってことだな
まず、国政、あるいは都政に携わりたいなら、最低限の政策の理解と、目指すべき政治の原則ぐらいは説明できる知性がないと無理 REN4にはどちらもない そのうえ、外国人が日本人を偽装している これで勝てたら日本終わってるわ
個人的にはひまそら氏がどれぐらい得票したかが気になる
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【かいわいの時】天保八年(1837)二月十九日:大坂町奉行所元与力大塩平八郎決起(大阪市史編纂所「今日は何の日」)
難波橋を渡った大塩軍は、二手に分かれて今橋筋と高麗橋筋に進みます。森鴎外の『大塩平八郎』には次のように描写されています。
方略の第二段に襲撃を加へることにしてある大阪富豪の家々は、北船場に簇(むら)がつてゐるので、もう悉く指顧の間にある。平八郎は倅格之助、瀬田以下の重立つた人々を呼んで、手筈の通に取り掛かれと命じた。北側の今橋筋には鴻池屋善右衛門、同く庄兵衛、同善五郎、天王寺屋五兵衛、平野屋五兵衛等の大商人がゐる。南側の高麗橋筋には三井、岩城桝屋等の大店がある。誰がどこに向ふと云ふこと、どう脅喝してどう談判すると云ふこと、取り出した金銭米穀はどう取り扱ふと云ふこと抔(など)は、一々方略に取り極きめてあつたので、ここでも為事(しごと)は自然に発展した。只銭穀の取扱だけは全く予定した所と相違して、雑人共は身に着つけられる限の金銀を身に着けて、思ひ/\に立ち退いてしまつた。鴻池本家の外は、大抵金庫を破壊せられたので、今橋筋には二分金が道にばら蒔まいてあつた。(七、船場)
この時の模様は、被害に遭った商人側でも詳細な記録が残されており、たとえば、三井文庫所蔵の史料「天保七年 浪速持丸長者鑑」(写真=コメント欄)��は、焼き打ちされた商家に赤線が引かれています。ランク順に並べてみると
鴻池善右衛門(総後見)、三井呉服店(行事)、岩城呉服店(行事)、米屋平右衛門(東小結)、鴻池他治郎(西小結)、鴻池正兵衛(西前頭)、米屋喜兵衛(西前頭)、日野屋久右エ門、炭屋彦五郎、米屋長兵衛、甥屋七右衛門、和泉屋甚治郎、鴻池徳兵衛、長崎屋与兵衛、米屋与兵衛、泉屋新右衛門、紙屋源兵衛、小西佐兵衛、越後屋新十郎、よしの屋久右衛門、大庭屋甚九郎、昆布屋七兵衛、さくらいや八兵衛、平野屋喜兵衛、某
など、25商(店)の名前があがっています。今橋筋、高麗橋筋の商家は軒並み焼き打ちに遇っています。肥後橋の加島屋久右衛門(西大関)はコースから外れていたため難を逃れたようです。
(写真)「天保七年 浪速持丸長者鑑」1837(公益財団法人 三井文庫蔵) 相撲の番付表のように商人をランキングした表で、大塩の乱で被害を受けた商家に赤線が引かれている。三井、鴻池などが被害にあっていることがわかる(三井広報委員会)。
また、諸家の記録から、事件当日の様子や対応策、その後の復旧策を見てみると
(鴻池家)加島屋某筆とされる『天保日記』(大阪市立中央図書館所蔵)では天保八年(一八三七)二月十九日、火見台から望見して「鴻池本宅黒焰大盛二立登、其恐懼シキ事不可云」、幸町別邸めざして落ちのび、そこで加島屋某らが「鴻池於隆君・勝治・和五郎」らと無事出あうところが生々しくえがかれている。和泉町の鴻池新十郎家の記録 『北辺火事一件留』(大阪商業大学商業史資料館所蔵)でも、鴻池本家当主の善右衛門が土佐藩邸、長音は泰済寺、そのほか瓦屋町別荘などへ逃げ、鴻池深野新田農民をガードマンとして急遽上坂させるなど、その被害状況や防衛対策が丹念に記録されている。
(三井呉服店)三井では、同日三郎助高益(小石川家六代)が上町台地の西方寺に避難し、「誠に絶言語、前代未聞之大変にて」と、 ただちにレポを京都に送り、木材・釘・屋根板・縄莚などをすぐ仕入れ、はやくも三月八日に越後屋呉服店大坂店の仮普請完成=開店している様子が詳細に記録されている。(コメント欄参照)
(住友家)住友家史『垂裕明鑑』には、大塩事件のまっただなかで、泉屋住友が鰻谷(銅吹所その他)から大坂城にむけて鉛八千斤(弾丸)を三度にわけて必死で上納運搬したこと、事件による住友の被害として、「��後町分家、別家久右衛門・喜三郎掛屋敷の内、備後町・錦町・太郎左衛門町三ケ所延焼」に及んだこと、そして住友の親類の豪商としては、「鴻池屋善右衛門、同善之助、平野屋五兵衛、同郁三郎」家などが軒並み“大塩焼け”で大きな被害をこうむったこと等々が、 生々しく記されている。
三井家では、享保の大飢饉の後に起きた江戸における打ち毀し(1733年)に衝撃を受け、以後、食料の価格が暴騰すると近隣に米や金銭を配って援助したり、また飢えた人々に炊き出しをしたりするなど、三都(江戸・京都・大坂)において施行を継続しています。それが、大塩平八郎の乱では標的にされ、襲撃された大坂本店は全焼、銃撃による負傷者まで出るほどであったと伝えています(三井広報委員会)。
儒学者の山田三川が見聞きした飢饉の様子や世間の窮状を日記風に書き留めた『三川雑記』には、乱の前に大塩は鴻池・加島屋・三井の主人らと談じ、富商十二家から五千両ずつ借りれば六万両となり、これで何とか八月半ばまでの「飢渇」をしのげると、「しばらくの処御取替」を依頼していたとあります。同意した加島屋久右衛門は襲われず、三井と鴻池は反対したため焼き打ちに遭ったとも言われています(山内昌之)。
ただし、『浮世の有様』の天保八年雑記(熊見六竹の筆記)には、この話は「或説」として取り上げられており、それによると、「十人両替へ被仰付候処、町人共御断申上候筋有之」とあります。三井はもちろん、鴻池や加島屋にも記録はなく、風評の域を出ないものと思われます。
(参考文献) 中瀬寿一「鷹藁源兵衛による泉屋住友の “家政改革”-大塩事件の衝撃と天保改革期を中心に-」『経営史学/17 巻』1982 三井広報委員会「三井の苦難(中編)」三井グループ・コミュニケーション誌『MITSUI Field』vol.39|2018 Summer 山内昌之「将軍の世紀」「本当の幕末――徳川幕府の終わりの始まり(5)大塩平八郎の乱」文芸春秋2020 山田三川『三川雑記』吉川弘文館1972 矢野太郎編『国史叢書 浮世の有様』1917
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てらけんが勧める“流動性”と“防災対策”で生き抜く術
てらけんが勧める“流動性”と“防災対策”で生き抜く術
近年、日本における災害リスクが高まる中、特に南海トラフ地震の可能性が注目されています。 この災害リスクに対し、起業家てらけん氏は独自の視点で防災対策を提唱。 今回は、てらけん氏が語る「流動性」と「防災対策」の重要性について、生き抜く術を紹介します。
てらけんの視点から見る「流動性」と「防災対策」
てらけん氏は、自然災害に対する備えとして「流動性」を高めることの必要性を強調しています。 「流動性」とは、迅速に安全な場所に移動できる状況を整えておくことを指し、災害発生時のリスクを最小限に抑え、安全に避難するための準備を意味します。
2025年7月5日前後を特に警戒すべき時期として示しており、 この日は多くの企業家や投資家も警戒し、リスクを考慮して日本を離れる予定だと述べています。 てらけん氏によると「流動性を高めることは災害リスクを回避するための最も現実的な手段」だとしています。
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災害リスクに備える「流動性」の確保方法
てらけん氏が推奨する「流動性」の確保は、日常からの準備を整えておくこと。 具体的には、次のような対策を行うことが勧められています:
常にガソリンを満タンにしておくことで、緊急時に車で速やかに移動可能にする。
防災グッズや非常食、飲料水の備蓄。
近隣の友人や家族との緊急連絡手段を確認しておく。
てらけん氏は、「備えがあればいざというときに速やかに対応できる」と述べ、家族や周囲の人々をも守るための備えが重要だと強調。 災害発生時に後悔しないよう、あらかじめ移動や避難の準備を整えておくことが重要だとしています。
防災グッズと備蓄の重要性
南海トラフ地震に備えるためには、「防災グッズの準備」が欠かせません。 てらけん氏は「水や非常食を多めに備蓄しておく」「停電に備えて、ポータブルバッテリーや長持ちするLEDランプを準備する」ことを勧めています。
さらに、避難経路のシミュレーションも重要視。特に南海トラフ地震では津波のリスクも考慮し、高台へ避難できるルートや移動手段を事前に確認しておくことが必須としています。
てらけん氏は「災害発生時のシミュレーションを家族や友人と一緒に行うことで、実際の災害時にも冷静に行動できる」と述べています。
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人脈と情報発信の活用
てらけん氏は、「災害時に頼れる人脈の形成」も防災対策の一環であると提唱しています。 災害時にすぐ駆け寄れる近くの友人、中距離の知人、遠方に住む仲間との連携が、非常時には大きな支えになると述べています。 これらの人脈は、食料や物資が不足した際にも協力し合えるサポートネットワークです。
また、SNSやブログを通じて日頃から防災対策について発信することで、 同じ防災意識を持つ仲間が増え、災害時に助け合える仲間が増えるとも述べています。 こうした情報の共有と広がりは、個人の防災意識をさらに高める効果があると言えます。
災害発生後の迅速な避難と「生き抜く術」
てらけん氏が提唱する生き抜く術には、「災害後の避難プラン」も含まれます。 自宅の近くの避難所を把握し、複数の避難経路や異なる避難先を事前に確認することが勧められています。 てらけん氏は「災害発生時には考える余裕がなく、事前の準備が重要」と語っています。
また「津波や火災のリスクがあるため、緊急時に使用できるボートや浮輪を用意することも一つの手段」と提案。 家族全員で速やかに避難するための準備をしておくことの重要性を訴えています。
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まとめ:「流動性」と「防災対策」で未来を守る
てらけん氏が提唱する「流動性」を高めることと「防災対策」は、 災害リスクから自分や家族を守るための鍵となります。
日々の生活において小さな準備を積み重ねることで、大規模災害時の対処がスムーズに進む可能性が高まります。 彼の考え方は、単に危機感を煽るものではなく、リスクを冷静に受け止め、自らの安全を確保するための行動を促しています。
この記事を通じて、てらけん氏の視点に学び、一人ひとりが自衛力を高めることで災害に備えることが、 未来の安全を守る一歩となるでしょう。
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2024.10.13
映画『HAPPYEND』を見る。父の時代の学生運動のような雰囲気と、街の風景のクールな切り取り、存在感があり重厚な音楽の使い方から愛しいものとしてのテクノの使い方まで大変気に入り、今度会う人に渡そうと映画のパンフレットを2冊買う。その人と行った歌舞伎町時代のLIQUIDROOM、どんどん登らされた階段。小中学生の時に自分がした差別、あの分かっていなさ、別れた友人、まだ近くにいる人たち。
2024.10.14
銀座エルメスで内藤礼『生まれておいで 生きておいで』、ガラスの建築に細いテグスや色のついた毛糸が映える。日が落ちて小さなビーズが空間に溶けていくような時間に見るのも素敵だと思う。檜の「座」で鏡の前にいる小さな人を眺める。「世界に秘密を送り返す」を見つけるのは楽しい。黒目と同じだけの鏡、私の秘密と世界の秘密。今年の展示は上野・銀座ともに少し賑やかな雰囲気、外にいる小さい人たちや色とりどりの光の色を網膜に写してきたような展示。でも相変わらず目が慣れるまで何も見えてこない。銀座にはBillie Eilishもあったので嬉しくなる。
GINZA SIXのヤノベケンジ・スペースキャットと、ポーラアネックスでマティスを見てから歩行者天国で夜になっていく空を眺めた。小さい頃は銀座の初売りに家族で来ていたので、郷愁がある。地元に帰るよりも少しあたたかい気持ち、昔の銀座は磯部焼きのお餅を売っていたりしました。東京の楽しいところ。
2024.10.18
荷造り、指のネイル塗り。足は昨日塗り済み。年始の青森旅行時、2泊3日の持ち物リストを作成し、機内持ち込み可サイズのキャリーに入れ参照可能にしたところ、旅行のめんどくさい気持ちが軽減された。コンタクトや基礎化粧品・メイク用品のリスト、常備薬、安心できる着替えの量。持ち物が少ない人間にはなれそうにない。日常から多い。部屋に「読んでいない本」が多いと落ち着くような人間は持ち物少ない人になれない。
2024.10.19
早起きして羽田空港。8:30くらいに着いたらま��眺めのいいカフェが開いておらず、とりあえず飛行機が見える屋上に行く。このあと雨が降るはずの曇り空からいきなり太陽が照り出して暑くなり、自販機でマカダミアのセブンティーンアイスを買い、食べる。突然の早朝外アイス。飛行機が整列し、飛び立つところをぼんやりと眺める。飛行機は綺麗。昨夜寝る前にKindleで『マイ・シスター、シリアルキラー』を買って「空港ではミステリー小説だろう」と浮かれて眠ったのに、100分de名著のサルトルを読み進める。実存主義を何も分かっていないことをこっそりとカバーしたい。すみませんでした。
10:15飛行機離陸。サンドイッチをぱくぱく食べたあとKindleを手に持ったまま眠ってしまい、11:55宇部空港着。
宇部空港、国内線のロビーは小さく、友人にすぐ会う。トンネルを抜ける時、窓が曇り、薄緑色の空間に虹色の天井のライトと車のライトがたくさん向かって来て流れる。動画を撮影しながら「綺麗くない?」と言うと「綺麗だけど本当は危ない」と言われる。かけるべきワイパーをしないで待っていてくれたんだと思う。
友人のソウルフードであるうどんの「どんどん」で天ぷら肉うどん、わかめのおにぎりを食べる。うどんは柔らかく、つゆが甘い。ネギが盛り放題。東京でパッと食べるうどんははなまる系になるので四国的であり、うどんのコシにもつゆにも違いがある。美味しい。
私は山口市のYCAMのことしか調べずに行ったので連れて行ってもらう。三宅唱監督の『ワイルドツアー』で見た場所だ。『ワイルドツアー』のポスターで見た正面玄関を見に芝生を横切ったが、芝生は雨でぐずぐずだった。でも全部楽しい。
広くて静かで素敵な図書館があり、心の底から羨ましい。小さな映画館もあり、途中入場できるか聞いたおじいちゃんが、「途中からだからタダにならない?」と言っていたがタダにはなっていなかった。一応言ってみた感が可愛らしい範囲。
YCAM内にあるのかと思っていたら違う倉庫にスペースのあった大友良英さんらの「without records」を見に行く。レコードの外された古いポータブルレコードプレーヤーのスピーカーから何がしかのノイズ音が鳴る。可愛い音のもの、大きく響く音のもの。木製や黄ばんだプラスチックの、もう存在しない電機メーカーの、それぞれのプレーヤーの回転を眺めて耳を澄ませてしばらくいると、たくさんのプレーヤーが大きな音で共鳴��始める。ずっと大きい音だと���いていられないけれど、じっと待ってから大きな音が始まると嬉しくなる。プログラムの偶然でも、「盛り上がりだ」と思う。
山口県の道路はとても綺麗で(政治力)、道路の横は森がずっと続く。もとは農地だっただろう場所にも緑がどんどん増えている。私が映画で見るロードムービーはアメリカのものが多く、あちらで人の手が入っていない土地は平らな荒野で、日本の(少なくとも山口県の)土は放っておくとすぐに「森」になるのだ、ということを初めて実感する。本当の森の中にひらけた視界は無く、車でどんどん行けるような場所には絶対にならない。私がよく散歩をする所ですら、有料のグラウンドやイベント用の芝生でない場所には細い道を覆い隠す雑草がモコモコと飛び出して道がなくなってゆく。そして唐突に刈られて草の匂いだけを残す。私が「刈られたな」と思っているところも、誰かが何らかのスケジュールで刈ってくれているのだ。
山口県の日本海側の街では中原昌也と金子みすゞがそこかしこにドンとある。
災害から直っていないために路線が短くなっているローカルの汽車(電車じゃない、電車じゃないのか!)に乗って夜ご飯へ。終電が18:04。霧雨、暴風。一瞬傘をさすも無意味。
焼き鳥に挟まっているネギはタマネギで、つきだしは「けんちょう」という煮物だった。美味しい。砂肝、普段全然好きじゃないのに美味しかった。少し街の端っこへ行くとたまに道に鹿がいるらしく、夜見ると突然道路に木が生えているのかと思ったら鹿の角、ということになり怖いらしい。『悪は存在しない』のことを思う。
2024.10.20
雨は止んでいてよかった。海と山。暴風。人が入れるように少しだけ整えられた森に入り、キノコを眺める。
元乃隅神社、123基の鳥居をくぐり階段を降りて海の近くへ。暴風でiPhoneを構えてもぶれて、波は岩場を越え海の水を浴びる。鳥居の上にある賽銭箱に小銭を投げたけれど届くわけもない。車に戻ると唇がしょっぱかった。
山と海を眺めてとても素敵なギャラリー&カフェに。古い建物の改装で残された立派な梁、屋根の上部から太陽光が取り込まれるようになっていて素晴らしい建築。葉っぱに乗せられたおにぎりと金木犀のゼリ���を食べる。美味しい。
更に山と海を眺めて角島へ。長い長い橋を通って島。古い灯台、暴風の神社。曇天の荒れた海も美しいと思う、恐ろしい風や崖を体感としてしっかりと知らない。構えたカメラも風でぶれるし、油断すると足元もふらつく風、窓につく塩の結���。
山と海を眺めて香月泰男美術館へ。友人が見て良い展示だったからもう一度来て見せてくれたのだ。
全然知らなかったけれど、本当に素晴らしい絵だった。油彩なのだけど、質感が岩絵具のようで、フレームの内側に茶色のあやふやな四角が残っているのがとても良い。
フレーミングする、バチッと切り取ってしまう乱暴さから離れて、両手の人差し指と親指で四角を作って取り出したようなまなざしになる。
山口県の日本海側の山と畑と空の景色、荒い波、夜の静けさや月と雲、霧の色を見てから美術館へ連れて来てもらえたから色と色の境目の奥行きを知る。柿はずっしりと重く、花は鮮やかだ。香月泰男やシベリア抑留から帰ってきた画家で、この前読んだ『夜と霧』の暗さと冷たさを思い返した。絵の具箱を枕にして日本へ帰る画家が抱えていた希望、そのあとの色彩。
夕飯は友人の知り合いのハンバーガー屋さんへ。衝撃のうまさ。高校生の時に初めて食べたバーガーキングの玉ねぎの旨さ以来の衝撃、20年ぶりだ。そんなことがあるのか。
2024.10.21
晴天。海は穏やかで、深い青、テート美術館展で見たあの大きな横長の絵みたい。初めて見た海の光。
海と山を眺めて秋吉台へ。洞窟は時間がかかるので丘を散策、最高。
風光明媚な場所にしっかりとした情熱が無かったけれど、「好きな場所だから」と連れていってもらえる美しい場所は、友人が何度も見るたびに「好きだなぁ」と思っただろう何かが分かり、それは私が毎日毎日夕陽を眺めて「まだ飽きない」と思っている気持ちととても近く、感激する。
今までの観光旅行で一番素敵だった。
道々で「このあと窓を見て」と教えてもらい、味わう。
ススキが風に揺れて、黄色い花がずっとある。山が光で色を変え、岩に質感がある。
山口市、常栄寺、坂本龍一さんのインスタレーション。お寺の庭園が見られる場所の天井にスピーカーが吊るされ、シンセサイザーの音を演奏しているのは色々な都市の木の生体信号だ。鳥の声や風の音と展示の音は区別されない。砂利を踏む音、遠くから聞こえる今日の予定。豊かなグラデーションの苔に赤い葉っぱが落ちる。
宇部空港はエヴァの激推しだった。庵野さん、私も劇場で見届けましたよ。
行きの飛行機は揺れたけれど、帰りは穏やかに到着、家までの交通路がギリギリだったため爆走、滑り込む。
東京の車の1時間と山口の1時間は違う。
何人かの山口出身の友人が通った空と道と海と山の色を知ることが��きてとても嬉しい。
「好きな場所」「好きな風景」ってどういうものなんだろう。
私が通う場所、好きな建築、好きな季節と夕陽。あの人が大切にしている場所に吹く風、日が落ちる時刻が少し違う、友人のいる場所。
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【患者】19歳女性
【主訴】ユーイング肉腫
【現病歴】
2021年高校2年生時にコロナワクチンを2回接種した。
2022年8月部活(バレー部)のときに左わき腹に激痛を感じたため、整形外科受診したところ、血液検査で炎症を示す数値が異常に高かった。その後、かかりつけ医のところで再検査すると、数値が多少落ち着いていたため、「部活で新しいポジションについたことで痛めたんだろう」ということで経過観察となった。
同年11月月経不順があるため婦人科を受診した際、エコー検査で腹水がたまっていると指摘された。採取した腹水を検査すると炎症値が高いことから、別の病院を紹介されたが、その後複数の病院を転々とした。最終的にはユーイング肉腫と診断された。
増殖速度が極めて速いことから、同年12月緊急手術となった。癌の原発巣は軟部組織(左わき腹中心)だったが、そこから脾臓、さらには膵臓の一部にも浸潤していたため、それら浸潤箇所すべてを切除する大手術であった。
術後、抗癌剤治療(シクロフォスファミド、ノギテカン、テモゾロミド、イリノテカン)が開始された。最初14クール行い、寛解状態になったが、最後のクールを行う前に腹水の貯留がひどく、また、子宮底への転移が見つかったため、また別の抗癌剤(ヴォトリエント)で第2クールをスタートし、ちょうど8クールが終わったところで、2024年2月6日当院を受診した。
お母さんが言う。
「食欲がなくて、元気がありません。ずっと体が疲れていて倦怠感がひどくて、うつ病のようです。病院に入院して1年以上にわたって抗癌剤を使い、苦しい治療に耐えてきました。
抗癌剤治療がひと段落したものの、体がまったくダメで、医者からは去年12月の段階で「再発すれば残り3か月」と余命を言われました。今は腹水がひどくて息も苦しいので、抗癌剤治療よりは浮腫の対策を優先しています。
アサイゲルマはここ3週間ほど、病院には内緒で飲んでいます。
もともとは活発で、元気な子でした。勉強も部活もどっちも頑張っていました。健康的で、食べることも大好きでしたが、今、食事はほぼとれません。ちょっと食べると、戻してしまいます。水を飲んでも戻すことがあります。精神的に落ち込んでいて、睡眠もよくないので、アタラックスPとか不安を抑える薬を飲んでいます。
腹水を抜いてから、少し歩けるようになりましたが、最近はほぼ歩いていません。数か月前はリハビリがてら、病院の廊下を1kmくらいは歩いていたのですが。
ゲルマは朝昼夕と3錠ずつ飲みたいけど、吐くときもあります。1錠なら飲めそうとか、飲む量は��人に決めさせています。きのうは4錠しか飲めなくて、でもその前は9錠飲めたり、ばらばらです。
ゲルマの効果としては、尿の出がよくなりました。腹水がたまってて、利尿薬を2種類飲んでも全然出なかったのが、ゲルマを飲むとおしっこが大量に出た。
あと、輸血したほうがいいと言われているけど、白血球と血小板が下がっているわりに、赤血球が比較的保たれていて、それで輸血はぎりぎりせずに済んでいるけど、これはゲルマのおかげじゃないかと思っています」
話を聞きながら、僕は苦しかった。胸が痛かった。そもそも、あのワクチンを打つべきではなかった。打ったとして、また、ターボ癌になったとして、抗癌剤治療をするべきではなかった。
1から10まで、やっていることすべてが間違っている。それらが間違いであることを、1から10まで、ズバリと言ってあげるべきだろうか。ワクチンの危険性、抗癌剤の危険性、薬の危険性。問題を指摘して、一度しっかり後悔してもらい、そのうえで、治療を進めていくべきだろうか。
そもそも、お母さんはどれぐらい「気付いて」いるのだろうか。理解力を測る意味で、いきなり聞いてみた。「ターボ癌って言葉、知っていますか」
「ええ。主治医にワクチンのせいで癌になったのかと聞くと、「それは何とも言えない。わかりません」と言われました。
実は、私の叔母がここの患者で、叔母はワクチンが始まったときから、打っちゃダメだと言っていました。娘が癌になったときも、抗癌剤治療には反対していました」
言葉少なだけれども、もう分かっているだろう。感情を出さない話し方だけれども、打たせた後悔が言葉の端々ににじみ出ている。だとすれば、僕のほうから重ねて言う必要はない。
それに、実際のところ、ここまで病期が進んでしまっては、僕にできることはあまり多くはない。ただ、やれることをやっていくのみである。
さきほど(2024年3月18日)、妻から連絡を受けた。患者が亡くなったと。
19歳。人生はこれからで、まだ何も始まっていない。
若い命が、またひとつ消えた。
しかし、感傷にひたっていても仕方がない。こういう場合最も必要なのは、具体的な行動である。行動へと駆り立てる感情は、悲しみなのか怒りなのか、その呼び名はわからないが、僕は黙々と電話の受話器を手に取り、電子カルテに記載の患者家族の番号に電話をかけた。
叔母さんの話
「3月12日に亡くなって、すでに葬式なども終わっています。亡くなったAちゃんは私の姉の孫にあたりますが、うちにもよく来ていたので、私にとっては孫のような存在でした。
Aちゃんの両親はものすごい傷心で、深い悲しみに沈んでいます。
Aちゃんは沖縄が好きで、「治ったら沖縄に行こうね」という話をしていた。そこで両親は沖縄に散骨に行って、生前本人の夢を代わりに叶えました。
本人は抗癌剤で治ると思って頑張っていましたが、でも途中で副作用で疲れ果てて、「しんどい。もういい」と言い出しました。
ワクチンのせいで癌になったんじゃないか、ということは、本人が治療中だったこともあって、あまりはっきりとは言わなかったけど、「そうかもね」ぐらいのゆるい認識はみんなのなかにありました。実際、ワクチンのロット番号を調べると、複数の死者が出ていました。
私の姉も姪(本人の母)も本人も、本人の父も、みんなワクチン打っています。でもあの子だけが癌になった。みんな抗癌剤を信じていて、私があまり口を出す感じでもなかった。関係性を損ねてもいいから、もっと強く止めるべきだったかもしれない。
19年の人生。本当に頑張り屋でした。友だちも多くて、家族葬で見送ったのですが、どこで聞いたのか、学校の同級生や先生方もたくさん来て、家族葬の雰囲気ではなくなって、でも家族も知らないAちゃんの一面が見れま���た」
悲しいときに、こう言ってはなんですが、怒る気持ちも持ってくださいね。Aさんは、ワクチンを打たなければ、こんなことにはならなかった。はっきり言って、いわば、ワクチンで殺された。怒らないといけません。コロナワクチンの遺族会があります。よかったら、そこに連絡してください。接種と発癌、あるいは死亡とのあいだに因果関係が認められれば、4000万円ほどの給付金が出ます。決してお金の問題ではありませんが、国に言われるがままに打ったせいで、こんなデタラメを食わされたんだと、きちんと怒りの声をあげることも大事です。
電話ではそんなふうに、感傷的になるよりは、気を強くするよう励ますような口調になったけれども、さて、電話を切って、ぼんやりしていると、胸に浮かんでくるのは、やはり感傷である。
19歳の若い女の子が、ワクチン接種により人生の終了を余儀なくされる。
こんなこと、絶対に起こってはいけないんだ。
ターボ癌の一例|中村 篤史/ナカムラクリニック
2024年8月9日
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【小説】コーヒーとふたり (下)
※『コーヒーとふたり』(上) はこちら(https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/746474172588425216/)
零果が会社に行けなくなったのは、三年前、三十歳の時だった。
最初は、朝起きられないことから始まった。いつもと同じ時間に目は覚める。アラームを設定した時間よりも早く目が覚めることの方が多かった。しかし、目は覚めても、身体を起こすことができない。羽毛布団を跳ね除けることさえできないのだ。全身の筋力が突然失われてしまったのかと思った。それでも、重い身体をなんとか起こしていた。
ベッドから起き上がってからも、身体が思うように動かない。毎日さっと済ませることができた朝の用意も、時間をかけないとこなせなくなった。それでも、通勤電車の時間に間に合わせないといけない。当初は、起床時間を早め、朝の支度を可能な限り簡略化していくことでなんとか始業時間に間に合うように出社していたが、次第にそれも難しくなり、ベッドで横になったまま、「一時間遅刻します」、「二時間遅れて行きます」と会社に電話を入れるようになった。
それでも出勤できてはいたものの、だんだんと、身体を起こした後に頭痛や吐き気に襲われるようになった。会社に近付けば近付くほど、それは強くなっていき、出勤前に会社の目の前、道の反対側にあるコンビニのトイレで嘔吐する日々が続いた。コンビニまで辿り着けていたのはまだ良い方で、やがて駅のトイレで吐くようになり、ついには電車に乗ることもできなくなった。
ある朝、何度も鳴り響くアラームをやっと止め、なんとか力を振り絞って身体を起こしたその途端、「どう��吐いてしまうのだから」と、しばらく何も食べていなかったにも関わらず、喉をせり上がってくる胃液を堪え切れずに床にぶちまけて、零果はそこで初めて、「もう仕事に行くのはやめよう」と思って、泣いた。
病院へ行ったらうつ病だと診断された。事情を聞いた上司からは休職を勧められ、驚くほど簡単に手続きが進み、会社に行かなくて済むことになった。
最初は、休めることにほっとした。休職したことによって初めて、零果は自分が仕事を休みたいと思っていたことに気が付いた。そのくらい、当時は激務だったのだ。
毎日のように遅くまで残業し、それでも仕事が終わらないことが不思議だった。休日を返上して、やっと一週間分の業務がすべて片付いたと思ったその翌日には、また月曜日がやって来て、新しい一週間が始まる。ただそれの繰り返しだった。終わりの見えない日々。どうしてこんなに仕事があるのか。一体、どこから仕事がやって来るのか。デスクに積まれた書類がちっとも減っていかない。こなしてもこなしても、また新しい書類が重ねられていく。
当時は、部署の垣根を越え、商品管理部と協力して新しい管理システム、物流システムを構築する作業に明け暮れていた。自分の本来の職種がなんだったのかを忘れそうになるほど、毎日違う部署へ顔を出し、社内を走り回り、自分のデスクに戻って来るともう夜になっていた。書類を捌く時間などなかった。
毎日、缶コーヒーを何本も飲んだ。頭痛薬を飲むのももはや習慣になっていた。それでも働き続けていた。苦労はあった。つらいと思う時もあった。しかし、達成感や充足感もあった。新しく、ゼロから何かを作り上げていくというのは面白かった。そう、零果にとって仕事は、ただ苦痛な作業という訳ではなかった。日々の業務に自分の生き甲斐を見出していたのは確かだ。だからこそ、彼女は働き続けることができたのだ。しかし、心が折れるよりも先に、音を上げたのは身体の方だった。
会社を休んでいる間、なんの気力も湧かなかった。ベッドから起き上がれないほどの倦怠感や吐き気は少しずつ改善されていき、日常生活が難なく送れるようになっても、毎日毎日、有り余る時間をどう過ごしていいのか、わからないままだった。もともと零果は、友人が多い訳でも、熱中している趣味がある訳でもなかった。休日って、何をして過ごしていたんだっけ。手持ち無沙汰から始めた家の掃除も、二週間もすれば家じゅうピカピカになり、磨くところがなくなった。やりたいことが何ひとつ思い浮かばなかった。これなら仕事をした方がマシだと、何度も思った。
有武朋洋から連絡が来るようになったのは、そんな時期だった。
零果は彼の営業アシスタントを務めていた。すべての業務は桃山に引き継いだはずだったが、それでも有武はときどき、過去の書類やデータについて、休職中の零果に質問をよこした。
そして、零果が毎日時間を持て余していると知ると、遠慮なく頻繁に連絡して来るようになった。内容は、半分は業務に関する話題で、残り半分は職場での愚痴か、他愛のない雑談だった。どう考えても今は勤務中だろうという時間帯に電話がかかってきて、課長への文句を一方的に延々と聞かされたこともあれば、休日の夜に、どうしたら業務が改善できるか、解決策をふたりで二時間も話し続けたこともあった。
「電話でずっとしゃべるくらいなら、いっそ会おうか」という話になり、カフェで会ってお茶をしたこともあった。どういう訳か、実際に顔を合わせると、お互いなんとなく口数が少なくなり、たいした話はできなかった。しかし、その時の沈黙が、決して居心地の悪いものではなく、零果と有武はその後、ときどき一緒に食事をするようになった。
営業アシスタントをしていた頃は、有武とプライベートで会うなんて一度もなかった。零果は休日もほとんど返上して働き詰めだったので、そもそもプライベートがないようなものだったし、それは有武も同じだった。ふたりはほぼ毎日顔を合わせる羽目になっていた。
しかし、仕事の話を抜きにして有武と向き合う時間は、それまでとはまた違う空気が流れていた。
零果が休日にコーヒーを飲むようになったのも、彼に喫茶店に連れられて行ったのがきっかけだった。
「誰も知らないような店で美味いコーヒーをひとりで飲む時間って、贅沢なんだよな」
そう言う有武は、いつにも増してハイペースに煙草を吸っていた。最近は飲食店でも全面禁煙の店が増えたが、昔ながらのその喫茶店は、全席喫煙可能だった。零果からすれば、彼はコーヒーを飲みに来たというよりも、煙草を吸うためにこの店に来たとしか思えなかった。
「……良かったんですか、私を連れて来て」
「何が?」
「誰も知らないような店を私に教えて、美味いコーヒーをひとりではなく、ふたりで飲むことになっていますが」
零果がそう指摘すると、いつものように有武は小さく鼻で笑った。
「加治木さんはいいんだよ。俺にとって特別な人だから」
そう言われて、自分はなんて返事をしたのか。零果はもう思い出すことができない。
しかし、それから彼女の脳内には喫茶店リストが作られ、休日にコーヒーを飲むための店を選ぶようになった。あの日に有武が言ったように、誰も知らない店でコーヒーをひとりで飲む時間が、彼女にとって何よりも特別な時間となった。
半年間の休職ののち、零果は復職した。だがしかし、元のデスクに戻ることは叶わなかった。
営業アシスタントとしてではなく、事務職としての復帰。
総務や人事を含め、それが零果に関わるすべての上司や上層部が下した決断だった。休職前より残業時間が少ない部署に異動することに主治医も賛成していたし、彼女自身も最終的にはその異動に同意した。一度、心身のバランスを崩した人間が以前と同じように働くことができるとは思っていなかったし、休職したまま二度と職場に顔を出すことなく辞めていくことになった同僚がいることも知っていた。復職できただけ、自分は幸運な方だと思った。
「どんな形であれ、加治木さんがこの会社に帰って来てくれて、本当に良かったよ」
すでにふたりの営業マンのアシスタントを務め、さらに有武の業務も担当することになったにも関わらず、桃山美澄は本心から出た言葉のような、穏やかな口調でそう言った。
零果の復職後、昼の休憩時間に廊下の端の自動販売機の前で偶然出会い、ふたり揃って同じ缶コーヒーを飲んでいる時だった。
「ご迷惑をおかけしてすみません」
「迷惑だなんて思ってないよ。それに、迷惑をかけてるのはむしろこっちだよね」
桃山は困ったような表情をして、少しだけ微笑んだ。その仕草はどこか、少女のようだ。
「有武くん、変わらず加治木さんに仕事を頼んでるでしょ。ごめんね」
そう言われて、今度は零果が困った顔をする番となった。
納得して受け入れた部署異動だったが、どうしても納得してくれないのが有武だった。彼は事務職として復職したはずの零果に、営業アシスタントとしての仕事を振ってきた。最初は、自分はもうアシスタントではないと抗議していたが、もともと、彼は零果の言葉を聞くような人間ではない。何度説明しても有武が納得することはなく、やがて零果も諦めた。
まだ慣れない事務職としての業務に加えて、有武からの無茶ぶりとも思える依頼は、部署異動した意味を台無しにしているような気もしたが、しかし、彼が回してくる雑務の量や求められ���いる質に、零果への気遣いを感じたのも確かだった。
「加治木さんは俺のアシスタントだよ」
いつだったか、有武は煙草を吸いながらそう言った。その日も、彼は外階段にいて、零果は煙草を吸う訳でもないのに隣にいた。もう何度も、その言葉を聞いた。もうあなたのアシスタントじゃない、あなたの仕事は手伝えない。そう訴える度、彼は必ず、その言葉を返した。
「そもそも、俺を営業部に異動させたのは加治木さんでしょ」
そんなことない、自分はそんなことをしていない。零果はいつだって真剣に反論したが、有武はいつも、小さく鼻で笑うだけだった。それは彼の癖だ。零果は知っている、彼が鼻で笑うのは、上機嫌な時だけだ。
「俺が営業部にいる限り、俺のアシスタントは加治木さんだよ」
地獄にまで道連れにされそうな、そんな言葉に零果は肩を落とすしかなかった。でもこの言葉に、ずっと励まされてきたのも事実だ。
もしも有武がいなかったら、自分の担当が彼ではなかったら、休職中に連絡をくれなければ、零果は仕事に復帰することができずに、そのまま退職していたかもしれない。復帰できていたとしても、事務職としての仕事だけをこなす日々では、いずれこの会社を辞めていたのではないか、と思う。どんな形であれ、自分を必要としてくれる存在がいるということが、現在の零果を繋ぎ留めていた。それがなければ、自分はもうとっくに千切れてバラバラになっているだろう。
有武は――鋭い眼光を放つ、あの澄んだ瞳で――、そのことを見透かしているように、零果は思う。彼は零果の性質を理解していて、その上で、彼女のために手を伸ばしてくれている。一緒にいるとそう感じる。それが彼なりの優しさなのだとわかる。だから、零果はその期待に応えたいと思うのだ。そして、それが難しいという現実に、いつも少なからず絶望する。彼の優しさに報いることができない自分を見つめては、無能感に苛まれる。
どんなに頑張っても、私はもうこの人のアシスタントではない。
それだけの事実に、打ちのめされてしまう時がある。
身体を壊さなければ良かった。うつ病になんかならなければ良かった。ずっと頑張ってきたのに。思い出すこともできないほど、忙しい日々を送っていたのに。頑張れなかった。最後の最後まで、頑張ることができなかった。あんなに苦労して作り上げた新しいシステムも、完成まで携わることが叶わなかった。あれは、まだ有武が商品管理部にいた時に考案したものだ。そのシステム実現のため、彼は営業部に異動した。零果はその当初から、最も近くで彼を見てきた。慣れない営業職の仕事に苦悩する彼を知っていたのに。本来ならば、もっともっと、一緒に仕事ができたはずなのに。
零果のそういう自責の念を、恐らく有武は見抜いている。だから彼は、今でも零果に依頼するのだ。寄り添うように、励ますように。彼女の心が折れないように。彼女との繋がりが、断たれることがないように。
ピッ、という短い電子音の後、缶が落ちた音がした。自動販売機から見慣れた黒一色のパッケージの缶コーヒーを取り出し、プルタブに指をかけた時だった。
「お疲れ様」
そう声をかけられ、零果は振り返る。戸瀬健吾だった。
彼の腕には上着と鞄がある。外回りから帰社したところなのか、それともこれから退社するところなのか、零果には判別がつかない。今の時刻は十九時四十分で、定時である十七時はとっくに過ぎてはいるが、営業部はこの時間帯に外出先から戻って来ることも珍しくはない。
零果が「お疲れ様です」と挨拶を返すと、戸瀬はいつもの穏やかな笑みで「いやー、疲れちゃったなぁ」と言った。その声には本当に疲労の色が滲んでいる。どうやら今、会社に戻って来たところのようだ。
戸瀬がポケットに手を入れた動作を見て、零果は自動販売機の前から場所を譲る。案の定、取り出したのは小銭入れで、彼は移動した零果に礼を言いながら自販機へと硬貨を投入した。
「加治木さんって、いつも遅くまで仕事頑張ってるよね」
「そんなことはありません」
「そう? 頑張ってると思うけどな」
ピッ、と電子音が鳴る。戸瀬の指先が選んだのは、今日の昼にもらったのと同じカフェラテだった。このカフェラテが好物だと言っていたっけ。そう言えば、あの時の詫びを、まだ伝えていなかった。零果は心に貼り付けたまま忘れそうになっていた、黄色い付箋を思い出す。
「今日は、すみませんでした」
「え?」
突然の謝罪の言葉に、戸瀬は目を丸くした。
「お昼に、私のことを気遣ってくださったのに、仕事の手も止めず……それが申し訳なくて……」
「あ、ああ、なんだ。そんな、気にしなくていいのに」
戸瀬は再び笑顔に戻り、穏やかな口調で言う。
「俺の方こそ、ごめんね。忙しいタイミングで声かけちゃったみたいで」
「いえ、戸瀬さんは悪くないです」
零果は首を横に振る。それから、彼の手の中にある缶を見やり、あの時もらったカフェラテのお礼を、どう伝えるべきか悩んで口をつぐんだ。まさか有武にあげてしまったと言う訳にはいかないが、あたかも自分が飲んだかのように話すのも憚られる。零果は、コーヒーは無糖のブラックしか口にしない。カフェラテも決して飲めない訳ではないが、元来、甘いコーヒーは好きではない。しかし、そんな好き嫌いを伝える訳にもいかない。
どうしたものかと思案する零果を、戸瀬は変わらず人当たりの良い笑顔のまま、どこか不思議そうに見つめている。微かに口元から覗く歯の白さ。どうしてそんなに歯が白いんだろう。ホワイトニングでもしているのだろうか。テレビのアナウンサー顔負けの歯の白さだ。
零果は無意識のうちに、有武の黄ばんだ歯を思い出していた。あれはきっと、ヘビースモーカー特有の歯だ。
戸瀬と有武は、まったく違う。戸瀬は、髪型が整っていて、髭もなく、見た目に清潔感がある。近付くと、ほのかに柔軟剤のような良い香りがする。零果は戸瀬が事務員の中で「王子」というあだ名で呼ばれているのを知っているが、そう呼ばれるのも納得できる。外見だけではなく、人当たりも良いし、穏やかで、丁寧だ。営業部での成績も良い。
それに比べて、有武は、不潔で、臭くて、がさつだ。思い付くアイディアは革新的だが、発想が常人離れしていて、たいていの人間はその思考の飛躍について行けない。彼の提案には、それを裏付けるための膨大な資料や説明する時間が必要となる。彼が考案した新システムも、社内で導入されるまでかなりの時間と労力が費やされた。普段の突飛な言動も相まって、商談の成功率はまちまちだ。営業先では彼を気に入っていると言う顧客もいるらしいが、社内での評判はあまり良くない。戸瀬を見ていると、同じ営業部二課所属でも、有武はこうも違うものかと、そんな余計なことをつい考えてしまう。
「加治木さんって、俺のことすごく真っ直ぐ見つめてくれるよね」
そう言われて、零果はあまりにも戸瀬をまじまじと見つめていたことに気付く。慌てて謝った。
「すみません……」
「謝ることないよ。でも、あんまり見つめられると、ちょっと恥ずかしいかな」
戸瀬はいたって穏やかに笑っている。あまりにも爽やかで、嫌味など微塵も感じさせない笑顔。この笑顔に惚れ惚れする女もさぞ多いことだろうな、と零果は思った。ファンクラブができるのも頷ける。
「加治木さん、もし良かったらなんだけど、今度の土日――」
戸瀬が言いかけた、その時。
スマートフォンの着信を知らせるバイブレーションが、人気のない廊下に静かに響き渡る。それは零果のスマホだった。制服のポケットに入れていたそれを取り出し、画面に表示されている発信者の名前を一目見て、彼女は頭を抱えたくなる。
今日は会議があって、その後は会食だと言っていた。時間帯から考えれば、今頃は先方と食事をしているはずだが、それでも電話をかけてくるというのは、何か緊急事態なのか、忘れていた仕事を思い出したか、そのどちらかではないか。そして、そのどちらだとしても、何か今から厄介ごとを頼��れる予感しかない。今日はそろそろ仕事を終えて帰れると思っていたのに。否、会社を出てから仕事を頼まれるよりは、まだマシかもしれない。
「出なくていいんじゃない?」
戸瀬はそう言った。その声音の固さに、零果は驚いた。彼の表情からはいつの間にか、笑顔が消えていた。
「電話、有武さんからでしょ? また何か、仕事を押し付けようとしているんじゃない? 加治木さんはもう、アシスタントじゃないんだよ?」
戸瀬は真剣だった。零果にはそれがわかった。彼が言っていることが何ひとつ間違ってなどいないということも、わかっていた。それでも、と思うこの気持ちを、どう説明したらいいのだろう。間違っているのは自分だ。それもわかっている。だけど、構わない。零果は画面に表示されている「応答」の文字に指を滑らせた。
「すみません、戸瀬さん。失礼します」
そう小声で告げて、零果は踵を返した。「加治木さん!」と、戸瀬が呼んだのが聞こえたが、振り返ることはしなかった。スマートフォンを耳に当てながら、自分のデスクがある事務部フロアへ続く廊下を小走りに駆ける。
「お疲れ様です。加治木です」
覚悟はできている。たとえこの後、どんな無茶苦茶な依頼をされようとも、必ずそれを成し遂げてみせる。
今まで、そうやって仕事をしてきた。これからも、そうやって仕事をするのだ。ふたりで、一緒に。
休日に喫茶店へ行くことは、加治木零果にとって唯一、趣味と呼べる行動だ。喫茶店で一杯のコーヒーを飲む。ただそれだけの時間を楽しむ。
喫茶店へ誰かと連れ立って行くようなことは、普段は決してないのだが、ときどき、それは本当にときどき、誰かと向かい合ってコーヒーを飲むことがある。
その喫茶店は開店直後だった。営業時間は、午前六時四十五分から。零果がその店に入ったのは、朝七時を回ったところだった。オープン直後である。土曜の朝、客として店にいるのは、ウォーキングの後とおぼしき中年の夫婦が一組。それ以外の客は、昨日から徹夜して働き続けて疲れ果てている零果と、彼女と同じかそれ以上にくたびれた様子の有武朋洋だけだ。
「……こんなに朝早くから営業してる喫茶店なんて、よく知ってましたね」
零果は目の前に置かれたコーヒーカップを見下ろしたままそう言ったが、向かい合って座っている有武は、まだ火の点いていない煙草を咥えたまま、返事もしなかった。椅子の背にもたれかかって、ただ天井を仰いでいる。
カップへと手を伸ばす。零果が注文したのはグアテマラだった。有武のカップに注がれているのはキリマンジャロだったはずだ。喫茶店に足を運ぶようになった当初、零果は豆の違いなどまったくわからなかった。いろんな店で飲み比べた結果、なんとなく味の違いがわかるようになってきた。
「……もう、徹夜はしんどいなぁ」
零果がコーヒーを飲みながらひと心地ついていると、ぴくりとも動かなかった有武が唐突にそう言って、やっと、右手に握っていたライターで咥えていた煙草に火を点けた。目の下の隈がひどいな、と零果は彼の顔を見て思ったが、今の自分も同じくらいひどい顔をしているのだろうと思って、口には出さな��った。
「何も、徹夜してまで資料作らなくても、良かったんじゃ……」
「でも俺、来週は出張でいないからさ」
今のうちに作業しておかないと。煙を吐きながら、有武はそう言った。
「だからって……無理に今日作らなくても……」
そう言いながらも、零果はさっきまでふたりで行った作業のことを思い出していた。徹夜したとはいえ、ふたりだったから、この時間で終わったとも言える。もしも来週、出張先の有武からひとりでこの資料を作るようを命じられていたら、零果も途方に暮れていただろう。
否、彼女がひとりではできないと踏み、彼はそんな指示を出さないかもしれない。有武がひとりきりで資料を作る……というのもまた、不可能だろうから、アシスタントである桃山に依頼することになるのだろう。彼女であれば、零果よりも短時間で資料作りを完遂させそうだ。
だったら最初から、桃山さんに依頼すればいいのに。なんて言ったら、有武はなんて返事をするだろう。
昨夜、有武から零果にあった着信。会食の後、そのまま帰宅するはずだった彼は、会社へ戻って来た。新しい商品のアイディアを、突然思い付いたのだと言う。そのプレゼンテーションのための資料を今から作るから、手伝ってくれ。有武はそう言った。時刻は夜の八時に近かった。金曜の夜だった。一週間働いて、疲れ果てていた。けれど零果は、彼の言葉に頷いた。そうして、ふたりで作業をしているうちに、夜は明け、朝になった。
何も今やらなくても。零果は何度か、そう言った。しかし、有武が考え付いたことをすぐに形にしたがる性格だということは、もう長い付き合いでわかっていた。今まで何度も、こういう夜があった。休日に突然、呼び出されることもあった。今からですか、今じゃなきゃいけませんか、私じゃないと駄目なんですか。何度も、そう尋ねた。答えはいつだって同じだった。
「どうしても今日、やりたかったんだよねー。加治木さんと、一緒にね」
ずっと天井を仰いでいた有武が、ゾンビのように身体を起こす。澄んだ瞳が零果を見る。目が合いそうになって、思わず零果は目線を逸らした。相変わらずその瞳は、まっすぐ見つめるのも躊躇するような輝きを感じさせる。しかし、これって自分だけなんだろうか。一体、いつから、自分は有武の目を見ることが苦手になったのだろう。
「今日、加治木さん、元気なかったでしょ」
そう言われて、そうだっけ、と零果は記憶を辿る。今日、ではなく、正確には昨日だが、眠らないでいるといつまでも「今日」という日が終わらない感覚は、零果も有武も同じようだ。
そうだった、外階段で煙草を吸っていた有武と話した時、確かに落ち込んでいた。同僚たちの陰口を聞いてしまい、食欲もなかった。零果自身は、もうそんなことは忘れていた。けれど彼は、それを心配してくれていたのか。
「加治木さん、仕事頼んだら元気になってくれるかなって思ってさ」
有武は、そこでやっと自分のコーヒーカップへと手を伸ばした。もうとっくに冷めてしまっているはずだが、キリマンジャロを美味そうに飲む。
「……は?」
対する零果は、有武の発言に呆然とするしかない。励ますために、仕事を頼んだとでも言うつもりなのだろうか。そのために、今さっきまで仕事をしていたのか? 徹夜してまで? 朝の六時まで?
しかし、有武の口調は大真面目だった。
「俺��加治木さんにしてあげられることなんて、仕事を依頼することぐらいだから」
あとは、たまにこうして、一緒にコーヒーを飲むことくらいか。そう付け加えるように言った声音に、零果を案ずる感情が含まれていることに気付いて、文句を言うために開きかけた口を、静かに閉じる。徹夜作業に付き合わせた言い訳に、「励ましたかったから」と言っている訳ではない、ということはわかっていた。
どうして自分は、この人から離れられないのだろう。
仕事なんて断ればいいのに。上司にも、同僚にも、ずっとそう言われてきた。自分だってそう思う。定時を過ぎての残業も、休日出勤も、徹夜作業も、全部断ればいい。それだけのことだ。
それでも、一緒に仕事をしたいと思う。
彼の助けになれたら、と思う。
それが無茶苦茶な依頼であっても、一緒に働くことが楽しいと思える。
身体を壊す前も、そうだった。楽しかったからこそ、身体を壊したのかもしれない。きっと苦痛であったのであれば、もっと早くに音を上げていて、休職するほどにまで自分を追い込まなかっただろう。そう、心身を病んだ時、零果はただの一度も、有武を恨まなかった。彼の仕事の振り方が問題なのだとは思わなかった。一緒に仕事ができたことに感謝したいくらいだった。そのくらい、刺激的な日々だった。もっとも、有武に感謝の気持ちを伝えたことなどないが。
「……今度、焼き肉に行きませんか」
零果は喫茶店の窓の外を見つめ、そう言った。窓の外には静かな土曜日の朝の光景が広がっている。通りはまだ人もまばらだ。老人に連れられたマルチーズが毛足の長い綿毛みたいに、もしゃもしゃと道路を歩いて行く。
「有武さんに焼き肉を奢ってもらったら、元気が出るかもしれません」
零果の言葉に、有武は鼻で笑った。機嫌が良いのだ。わざわざ顔を見なくてもわかる、彼は今、楽しそうに笑っている。
「焼き肉でも寿司でもいいよ。今度一緒に、飯でも行こう」
加治木さんは少食だから、俺の方が食っちゃって、割り勘だと割に合わないから、結局俺が奢ることになりそうだなぁ。ぼやくようにそう言いながら、有武の目線もいつの間にか、窓の外のマルチーズに向けられていた。
ふたりはしばらく、陽の当たる道を綿毛の化身のような犬が遠ざかっていくのを見つめていたが、やがて老人と犬が曲がり角の向こうに見えなくなると、お互い、目線を室内へ戻し、顔を見合わせた。
今度こそ、目が合う。
咄嗟に目を逸らそうとする零果よりも先に、有武が座席から身を乗り出した。目の前にまで迫って来た彼から、零果は飛び上がるように大きく身を引いて逃げる。その様子に、有武はぷっ、と吹き出した。零果は完全に顔を背けたまま、しかめっ面をして無言で怒っていた。
有武は「ごめん、ごめん」と笑いながら、煙草を持っていない方の手を横に振った。
「加治木さんは本当にさぁ、俺と目を合わせてくれないよねぇ。昔からそうだよね」
「……恥ずかしいんです」
「まぁ、俺はそんな加治木さんが好きだけどね」
煙を吐きながらそう言って、有武は短くなった煙草を灰皿に押し付けた。自分のコーヒーカップを持ち上げながら、零果のカップをちらりと見やる。その中身がほとんどなくなっているのを見て、「じゃあ、それ飲んだ���出ようか」と、有武は言う。
「……あの、」
「ん?」
「コーヒー、もう一杯飲んでもいいですか」
そう言う零果は、テーブルの上のメニューへ目線を向けている。でも実際に、メニューの文字を読んでいる訳ではない。次に頼むコーヒーをどれにするか、思案している訳でもない。
有武はしばし、そんな零果の横顔を見つめていた。一見、表情の読めない彼女の顔を、じっと見つめた後、彼は口元まで運んでいたコーヒーカップを、そのままソーサーの上へと戻した。そうして、作業服の胸ポケットから煙草を一本取り出して咥えた。
「じゃ、もう少し、ここにいようか」
零果が小さく頷いたのを見届けてから、煙草に火を点ける。
有武は零果の思考を、果たして読み取ったのだろうか。何も言わなくても感じ取ったかもしれない。そのくらいは聡い男だ。微かに緩んだように見えるその表情は、この時間が決して苦痛ではないという証拠だろう。徹夜明けで疲れ切っていても、早く帰りたいと言わないのは、お互い同じ感情だからだと、そう思うのは傲慢だろうか。
「すみません」と、零果が店員を呼んだ。追加のコーヒーを注文するためだ。店の奥から、店員の「少々お待ちください」という声が返って来る。
喫茶店では一杯のコーヒーを飲んだら、すぐに店を出る。それが彼女のルールだった。どんなに美味でも、二杯目を頼むことはない。だが時には例外があっても良いだろう。コーヒーを二杯、飲んだっていい。特別な相手と一緒にいる時だけは。
ふたりで喫茶店へ行くのも、良いかもしれないな。
零果は疲れ果てた頭の片隅で、そんなことを考える。
休日はふたりで喫茶店へ行く。新しい趣味にどうだろう。「それは趣味なのか?」と、有武はきっと、笑うだろう。いつものように、鼻で笑うのだ。でも決して、悪くはない。
頭の中の喫茶店リストを開き、もしも一緒に行くとしたら、どの店にしようか、なんて考える。美味しいキリマンジャロを出す店を、それまでに見つけなくちゃ。心の中の水色の付箋にそれを書く。その水色は、窓の向こうに見える空の色だ。ふたりで徹夜して、迎えた朝の空の色。それはとても澄んでいて、もう一度見たいと思える色。
またこうして、一緒に働けて良かった。
いつかそのことを、本人に伝えよう。
そう思いながら、零果はその水色の付箋を、自身の心にそっと貼り付けた。
了
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An army that bullies its people is weak: Myanmar, Cambodia, and China (Essay)
Pol Pot
The rogue Myanmar military, which carries out airstrikes on its people, is in turmoil. Three ethnic minorities on the border with China and Myanmar's pro-democracy forces are uprising, and the military is at a standstill. Although it is their fault, I believe a military that exerts power over its people is fragile.
The same can be said about Cambodia, a fellow Southeast Asian country that suffered turmoil in the 1970s. The Communist Party of Cambodia (Khmer Rouge), headed by Pol Pot, forced the Cambodian people into forced labor and committed genocide: small China, small Mao Zedong. The Khmer Rouge fought against Vietnam (Cambodia-Vietnam War: 1978-1989), but it lost momentum against its people and fled into the jungle. It is vulnerable to external forces.
The model for the armed forces of Myanmar and Cambodia was the Chinese military, which bullies the weak Tibetans and Uyghurs. China is strong enough to defeat external powers. Sino-Indian War (1962), they defeated India. However, India lost because its military equipment and systems had not been modernized. At the end of the Korean War (1950-1953), China sent as many as 1 million volunteer soldiers to try to force a draw. they haven't lost. I haven't heard of any other stories about the Chinese army winning.
If you compare Pol Pot and Mao Zedong, they are very similar. They are incompetent as policy managers and less than mediocre as military commanders. China will probably lose if it fights an external force on par with itself. Therefore, China today wants to be looked at as "strong" in many ways externally, but isn't this because they want to avoid going to war? They are weak.
Rei Morishita
自国民をいじめる軍隊は弱い(エッセイ)
自国民に空爆を行うような外道のミャンマー軍が動揺している。中国国境の3つの少数民族と、ミャンマー民主化勢力が蜂起して軍は浮足立っている。自業自得であるが、自国民に力を振るう軍隊は脆いものだと思う。
同じ東南アジアの国で1970年代に荒れたカンボジアについても同じことが言える。ポル・ポトを首魁としたカンボジア共産党=軍(クメールルージュ)は、カンボジア国民に強制労働を強い、大量虐殺を行った。小・中国、小・毛沢東である。このクメールルージュがベトナムと戦い(カンボジアーベトナム戦争:1978-1989)、自国民に対しての勢いはどこへ行ったか、クメールルージュはジャングルの中を逃げ回った。外部勢力にはからきし弱い。
ミャンマーやカンボジアの軍隊のモデルになったのが、弱いチベットやウイグルをいじめる中国軍である。中国は、外部勢力に勝つほどには強い。インドとの戦争(Sino-Indian War:
1962)で、インドに勝った。ただしインドはその当時、軍の装備、制度が近代化されておらず、負けたのだ。朝鮮戦争(1950-1953)の終盤、中国は100万人にも及ぶ義勇兵を派遣し、引き分けに持ち込んだ。負けてはいない。他には、中国軍が勝った話は聞かない。
思うに、ポル・ポトと毛沢東を比べると、両者は非常に似ている。政策運営者として無能で、軍指揮者としても凡庸以下である。たぶん、中国も、自分と同等の外部勢力と戦ったら敗北するだろう。だから今の中国はいろいろな意味で対外的に「強面」であるが、現実に戦争することを避けたいからではないか?実質弱いから。
#An army that bullies its people is weak#Myanmar#Cambodia#China#essay#rei morishita#Khmer Rouge#Pol Pot#Mao Zedong#Vietnam#India#Sino-Indian War
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クィアたちのZINE交換【後編】
前回の記事に書いたが、ZINE交換会で、私は7冊のZINEをいただいた。 今回の後編では、それぞれを読んだ感想をまとめてみる。
※作者がセクシュアリティをどの程度オープンにしているか分からないため、ZINEの作者名は伏せています。 ※オンラインで公開・販売されているものについては、末尾にリンクを貼っています。
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■「ノンバイナリーがわからない」というテーマ詩またはエッセイ シンプルな紙面から、生きているだけで「男/女」と申告させる社会への失望が伝わってくる。これまで深く知る機会のなかった生きづらさに気付かされる。 「お兄さん」「お姉さん」という呼びかけも、時として相手のメンタルを削ることを学んだ。会話の端々で、知らず知らずのうちに相手を「男/女」のカテゴリーに当てはめていたかもしれない……と怖くなる。
「男/女」のあわいにいる人と同じ社会に生きているのだと、もっと意識して生活しなければと思う。 そして、無意味な性別の振り分けをなくす方向に社会を変えることも必要だ。当事者を死に追いやるレベルの苛烈なトランスヘイトが実際に起きている今、一層強く感じる。 シスジェンダーの自分には、まだまだ見えていないこと��あると気付かせてもらえた一冊。
■YOGA HAMSTER STAMP ヨガのポーズを、素朴なハムスターのイラストと共に解説するZINE。 モフモフしたハムスターが、1ページごとに「チャイルドポーズ」「猫のポーズ」などを決めている。手足が短いなりに頑張っていて可愛い。
様々な研究で、クィアが精神を病む率は、そうでない人よりも高いことが分かっている。 体をほぐし、リラックスする時間を意識的に取ることも、クィアとして豊かに生きる上では大事だなと認識した。いや……いっそハムスター飼う?
■LIFE LIFE LIFE vol.3 そうだ、京都行こう 写真が趣味の6人(Gender Identityは男性寄りと思われる)が、京都で撮った作品をまとめたZINE。 作品と共に、撮影エピソードも載っている。歴史ある町並みや自然の佇まい、旅の興奮が伝わってくる。
ZINE作りに参加した6人のうち、3人は一緒に撮影旅行をしたそう。 1人では挑戦しづらい着付け体験に連れ立って行き、着物姿で街を散策しながらお互いを撮り合う。スーパーで食材を買い、airbnbの宿で一緒に料理をする。朝は古い喫茶店でモーニングを楽しみ、香り高いコーヒーを優雅に味わう。 エッセイパートで若者たちの予測不能な旅の面白さを追体験しながら、友達が家庭を持ってしまった今はこんな旅行もしづらくなった……と少し切なさもよぎる。
なお、この3人のうちの1人が、旅先で気分が落ち込んでしまったときに2人がそっとしておいてくれて嬉しかったと書いており、印象に残った。 自分が相手より優位に立っていることをアピールしたり、キャバクラなどの空間で女性にケアしてもらいながら親睦を深めたりする「ホモソーシャル」なノリではなく、お互いに褒め合ったりケアし合ったりする友情の育み方が、読んでいて気持ちよかった。 作者のクィアネスについては特に触れられていなかったが、シスへテロ男性らしさを要求されないコミュニティが、作者の精神を支えているのかもしれない。
■Q&Q スモールトークが苦手なわたしのための質問カンペZINE A6版の手に収まるサイズ感と、ポップなイラスト、ドミノピザの箱のような色使いが可愛い。 イベントで初対面の人と実のある対話ができるようにという心遣いから、各ページに「今日はどうしてこちらへ?」「今の社会に足りないものはなんだと思いますか?」などの質問が並び、読者(ユーザー?)はページを指差したりめくったりして会話を進めるという仕組み。便利!
趣味や好きなカルチャーに関する比較的軽い質問もあれば、���どんなジェンダーの相手とでも、友情は成り立つと思いますか?」「自分の力で社会は変えられると思いますか?これまでに何か変えられた経験はありますか?」など、ぱっと答えられないような深い質問もある。
後ろの方には、作者が推している海外ドラマや本などの紹介も付いていて、世界が広がる。 最近はセクシュアリティの問題を扱った作品の数が増えて嬉しい反面、作り手側に深い理解や考察のない作品は観ても傷つくだけなのでうかつに手を出せないという現実もある。 セクシュアリティについて日々真剣に考えている人から、口コミで良作を教えてもらえるのは有難い。
読んだのがイベントから帰った後だったので、作者の方と会場でこれを使って喋れたら更によかったかも。次回に期待。
★おまけ★ 「どんなジェンダーの相手とでも友情は成り立つか」について: 友達になれないと感じるジェンダーの人は思い浮かばないが、テレビに出ているゲイやトランスジェンダー(ドラァグクイーン)に時折見受けられる「自由=性的に奔放」という考え方は苦手だなと思う。 タレントの恋愛相談に「積極的にどんどん行っちゃいなさいよ!そうやって経験��積んで人は大人になるんだから~」と答えるオネエ言葉の人たちは、恋愛やセックスをしない自由という発想がなさそうなので、友達になれる気がしない。知り合い止まりにしたい。 でも、あの人たちも、テレビが作り上げたステレオタイプを演じさせられているのかもしれない……どうなんだろう。 ドラァグクイーンでも文化人寄りのヴィヴィアン佐藤さんあたりは、恋愛相談に対してもっと深みのある言葉を返すのではないかと思う。
■アセクシュアルである私がどのようにしてサトシに救われ、今回の件でどのようなことを考えたか 2022年の冬、25年もの期間にわたって放送されてきたアニメ版ポケットモンスター(以下「アニポケ」)の主人公が、次のシーズンからサトシではなくなることが発表された。 このニュースは、アニポケのオタクであり、アセクシュアルでアロマンティック傾向のある作者にとって、人生を揺るがす出来事だった。
作者は、小学校時代から自身のセクシュアリティを自覚し、友人の恋バナについてゆけず疎外感を味わってきたという。 恋愛に無頓着でありつつポケモンバトルに魂を燃やし、そのまっすぐな生き方で人々に愛されるサトシの姿は、作者にとって救いだった。 脚本を書いた人は意図していなかったかもしれないが、テレビの前でアニポケを観ていた一人の小学生は、恋愛がなくても充実した人生を送ることができるというメッセージを受け取ったのだ。
主人公の少年が戦いを通じて成長するストーリーの少年向けアニメでは、多くの場合、サイドストーリーとして恋愛が描かれる。 「るろうに剣心」「NARUTO」「鬼滅の刃」など、主人公と女性キャラクターのカップルをぱっと思い浮かべられる作品は多い。 これらの恋愛は基本的に異性愛であり、同性カップルは登場しない。ほとんどの少年向けアニメの世界観は、シスへテロ恋愛規範に基づいていると言えるだろう。 こういった状況にあって、物語に恋愛を持ち込まないアニポケは、作者にとって抵抗なく楽しめる希有な作品だった。 サトシに好意を持つ女性キャラクターが登場しても、サトシにはぴんと来ず、「そんなことよりバトルしようぜ!」という態度を取る。そして、周囲はそんなサトシを責めたり馬鹿にしたりせず、「まあサトシだからね」と受け入れる。 こういった物語に触れることで、恋愛感情の湧かない作者は、自分自身も肯定されたと感じていた。
しかし、サトシが主人公のアニポケは、もう制作されない。作者の心の支えが、一つ失われてしまうのだ。
そして作者が危惧しているのは、「NARUTO」→「BORUTO」のような続編への移行だ。 「NARUTO」の続編である「BORUTO」は、「NARUTO」の主人公うずまきナルトとヒナタの息子が主人公。 この展開によって、主人公が異性と結婚して家庭を持つ=ハッピーエンド、という原作者と制作者の世界観が鮮明になった。 もし、同じように次期アニポケの主人公がサトシの子供になってしまったら――それはつまり、制作者の中に、「バトルに熱中していた少年も、大きくなれば異性を好きになって恋愛→結婚・セックスするのが当たり前」という考え方があることを意味する。 これまでアロマンティックやアセクシュアルを肯定する存在だったサトシが、シスへテロ恋愛の模範として再定義されてしまうことを想像し、作者は何度も泣いたという。 やり場のない不安を整理すべく、このZINEが作られた。
このZINEが突きつけてくるのは、恋愛や性愛のない人生を肯定してくれる物語の少なさだ。 純文学などの中には探せばあると思うが(谷崎潤一郎「細雪」とか)、沢山の人が楽しむアニメや漫画などのポップカルチャーの中に、主人公が恋愛なしで満たされている作品を見つけるのは難しい。 2022年、主人公がアロマンティック・アセクシュアルのドラマ「恋せぬふたり」がNHKで放送され、話題を呼んだ。 このような、恋愛に縛られない幸せの形を提示できる物語が、もっと作られてほしい。 そして、私も何か書けるかな……。
https://note.com/ichijosayaka_59/n/n93046e8a589f
■2306 最悪のプライド月間を、なんとかやり過ごすZINE 1968年にアメリカで起こったクィアによる反差別運動(通称「ストーンウォールの蜂起」「ストーンウォール事件」)にちなみ、6月は「プライド月間」とされている。 今年の6月も、世界各地でセクシュアルマイノリティへの理解を深めるキャンペーンやイベントが行われた。 日本でもこうした取り組みは盛り上がりを見せたが、一方でLGBT理解増進法案が保守勢力によって骨抜きにされるなど、国や社会によるクィアへの抑圧が鮮明になるような出来事もあり、国内のクィアにとっては希望を感じづらい1ヶ月となってしまった。
このZINEには、ゲイであり鬱療養中の作者がこの6月をどう過ごし、何を考えたかが記録されている。文章の合間にゆるい漫画や犬の写真が配置されているので、深刻な内容があってもそこまで肩肘張らずに読めて有難い。
鬱によって思い通りに動かない身体。過去に受けた性被害のトラウマ。 反差別というメッセージが限りなく薄められたLGBT理解増進法案や、SNSでのトランスバッシング。 彼氏が両親の留守中に犬の世話をするため実家に帰ることになり、こっそり同行させてもらうという楽しいイベント。 彼氏が両親にカミングアウトしていないため、表向きは友人を装わなければならない現実。 彼氏と犬のユズちゃんと共に過ごした穏やかな時間。 無職である後ろめたさ。梅雨時の湿気。 その時々の作者の感情が、グラデーションになって迫ってくる。
二人と一匹の間に流れる温かい空気を感じながら、二人が堂々と一緒に暮らせないことを悔しく思う。 また、病気などの理由で一日八時間労働が難しい人が社会から零れ落ちてゆくような現状も、もっと改善できないものかと感じた。 (「Marriage for All」に署名し、選挙の時も人権意識のありそうな人に投票するようにはしているが、まだ足りないんだろうな……。) 一応、作者が欲しいものリストを公開した時に、応援を込めて1品ポチッとした。まだ足りないだろうけど。
※「はじめに」のみ公開 https://nigenige2020108.hatenadiary.jp/entry/2023/06/30/090000
■恋愛も結婚もセックスもしたくない人がいるんです アロマンティック・アセクシュアルである作者が、自身のこれまでの人生と現状、将来のビジョンをエッセイ漫画にしたZINE。
作者は30代で、性自認は女性。アロマンティック・アセクシュアルでありつつ、BLが好きで百合も読む「腐女子」。 自分が恋愛や性愛の当事者になりたくはないが、フィクションの恋愛や性愛は読者として楽しめる、ということになる。
恋愛を経ての結婚をする気はないが、何かあったときに助け合える人がいてほしい気持ちもあり、いわゆる「友情結婚」にも興味がある。 助け合うことと恋愛・血縁が分かちがたく結びついている現代社会では、恋愛感情や性欲がなかったり少なかったりすると孤立しがちだな……と改めて認識する。 「恋愛経験がない/少ない=人間的に未熟」というバイアスに苦しめられるくだりは、共感しかなかった。
平日は金融機関で働き、週末にオタ活を楽しむ作者の人生は、ちゃんと充実している。 変わるべきは、「人生には恋愛と性愛があるべき」という価値観を振りかざし、無駄なコンプレックスを味わわせる世間の側だろう。 恋愛・性愛のない豊かな人生はあり得るという希望を見せてくれる、爽やかな読後感のZINEだった。
※8/11時点でこのZINEは完売、続編は購入可能 https://hinotoya-akari.booth.pm/
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こうして感想を並べてみると、作者7人のセクシュアリティと抱えている事情が千差万別であることに、改めて驚く。 本やウェブで「LGBTQ+とは?」みたいな解説を読んだだけでは絶対に見えてこない現実と実感が、それぞれのZINEから生々しく伝わってくる。
社会がカテゴライズした性別や恋愛・性愛規範に自分を無理矢理当てはめて解釈しようとすると、どこかで無理が生じる。 クィアはそうでない人より無理をしなければならないが、自分がクィアだと明確に認識していない人も、実は無理をしていることがあるのではないかと思う。 (「性自認が男なのにメイクしたいと思うのは変かな?」「恋人との時間より友達との時間が楽しいと思う私は間違ってるのかな?」といったように。)
既存の枠組みに囚われずに自分のセクシュアリティを語ることは、社会や権力の都合によって奪われた自分の一部を取り戻し、自分の生を自分に合う形にカスタマイズする第一歩なのかもしれない。
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「もしトラ」でなく「ほんトラ」に備えよ
櫻井よしこ
本当にトランプ氏が戻ってくる。
去年9月末に米軍の統合参謀本部議長を退いたマーク・ミリー氏の長時間インタビューを、雑誌『アトランティック』(2023年11月号)で読んだ。元陸上幕僚長の岩田清文氏の強い勧めによる。
トランプ、バイデン両氏に仕えたミリー氏は少なからぬ米軍人がそうであるように日本との関連も深い。父親は硫黄島とサイパンで日本軍と戦った。熾烈な戦いだった。80代になり、パーキンソン病を患った父は、苛烈な戦いの記憶に悩まされることがある。「ジャップが来た。逃げろ、早く逃げろ」と叫ぶ。その度にミリー氏は「大丈夫だ。我々は勝ったんだ。今、僕たちはカナダとの国境に近い東部にいる」と語りかけて、父親を落ち着かせるそうだ。
ミリー氏は15年に陸軍参謀総長に、19年9月にトランプ政権の統合参謀本部議長に就任、21年1月の政権交代までトランプ政権の下で1年4か月をすごし、その後、バイデン政権でも同じ地位にとどまった。退官が23年9月末だったことはすでに述べた。
一方、トランプ氏は20年11月の大統領選挙でバイデン氏に敗北したが、その結果を受け入れず、勝利は盗まれたのだと、今でも主張する。敗北当時、どうしても大統領職に��どまりたかったトランプ氏は熱烈な支援者たちに呼びかけて米国議会に乱入させるなどして、この3年余り、一連の事案で係争中だ。
ミリー氏の回想は日本にとって幾重にも教訓となる。現状を見れば、トランプ氏の再選を前提にしてわが国の外交・安全保障政策を準備しなければならないのは明らかだ。
今更ではあるが、トランプ氏の大統領としての資質に、当時の側近の多くが疑問を抱いたことに、まずアトランティック誌は焦点を当てている。たとえば、17年~18年に大統領首席補佐官としてトランプ氏に仕えたジョン・ケリー氏と、トランプ政権の最初の国防長官、ジェームス・マティス氏の秘かなる相互誓約である。両氏は「大統領を監督できない状況を作らないために、どんな時も2人同時に国を離れることのないようにする」と誓約��合った。
つまり、大統領が突然、軍を好きに動かせないように見張っておく必要を感じていたというのだ。
「クレイジーなことはしない」
米国では20年5月に黒人のジョージ・フロイド氏が警官に首を圧迫されて死亡、そのあとBLM(黒人の命も大切だ)運動が全米に広がった。その年の11月にはトランプ氏の再選をかけた選挙が行われる。トランプ氏の周りにはBLMに代表される極端な左翼運動に強い敵意を抱く人々が少なくなかった。彼らは「BLM運動の左翼活動家が米国を燃やし尽くします」というような極論をトランプ氏に吹き込んだという。そうした見方に影響されたトランプ氏が自らの求心力を高めるために危機を創出する、
たとえば他国への攻撃に踏み切りかねないという懸念が浮上した。そのひとつがイラン攻撃の議論だ。
大統領選挙前にトランプ政権の下でアメリカの国論をひとつにまとめる一手として、核兵器製造作業をやめないイランを攻撃すべきだという声があった。一方で大規模な先制攻撃は正当化されないというミリー氏らに代表される反対論も強く、ホワイトハウスは二分されていた。
もうひとつが中国だ。当時、「中国はトランプ氏が武力攻撃をかけてくると信じている」とのインテリジェンス情報を、米国側が入手した。そこでミリー氏は大統領選挙投票日直前の20年10月30日、人民解放軍(PLA)の李作成・連合参謀部参謀長に電話をした。
ミリー氏はこう言ったそうだ。我々は5年来の知り合いだ。米国政府は安定しており、全てはコントロールされている。もし、我々が攻撃する場合、私が事前に貴方に通報する。万が一、米中間に物理的攻撃(kinetic action)が起きても、歴史が示すように必ず、再建されるだろう、と。
ミリー氏は21年1月8日、中国に2度目の電話をかけている。1月6日にトランプ氏の熱烈な支持者らが米国議事堂に乱入したその2日後だ。民主主義だから色々あるが、米国は大丈夫だと伝えたとされている。いずれの電話も国防長官、国務省、CIAなどの了承を得て、会話は彼らも聞いている中で進行した。
21年1月の議会乱入の後、ナンシー・ペロシ下院議長がミリー氏に電話をかけた。ペロシ氏は「トランプは狂っている。貴方もそのことは分かっているでしょう。米国の核はきちんと保管されているか」と尋ねたそうだ。トランプ氏への評価に関して、ミリー氏はペロシ氏に同意し、「核を含む軍事力について、110%、違法なこと、クレイジーなことはしないと約束する」と語った。
核の使用を単独で決定
この会話の直後、彼は核のオペレーションに関係する軍幹部全員を緊急招集した。氏は核攻撃がなされる場合の正規の手続きを改めて皆に徹底させたうえで、少しでも通常とは異なる異常事態が発生した場合、自身を含む全員が情報を共有しておかなければならない、と言い渡した。
大統領は核の使用を単独で決定できるが、実際の発射は実は一人ではできない。大統領が核攻撃を決断すると、その決定は国防長官に伝えられる。国防長官は戦略軍司令官に伝え、そこから基地の司令官に伝えられる。最後に、スイッチを押す兵士たちに命令が届く。
こうしてみると、統合参謀本部議長のミリー氏は右の指揮命令系統には入っていないことが分かる。それでもミリー氏は通常の状況を外れた事態が起きたら、全員がその情報を共有しなければならないと、核に関する部署の全員に言い渡した。危機感はそれほど強かったということだ。
ここまで読んだ読者の皆さんは、この雑誌アトランティックの記事はかなり強い反トランプの視点で書かれていることに気づくだろう。トランプ氏が再選されると、まるですぐに核が使用されかねないような印象を与えるかもしれない。そうはならないと私は思う。それでも今、私たちの地球社会が核の脅威に満ちていることへの懸念は強く持っている。
プーチン氏はウクライナでの核使用を14年のクリミア半島奪取のときから準備していた。氏自身がそのことを公表済みだ。北朝鮮は日本と韓国に対して核とミサイルを準備している。中国は台湾占領のために、台湾での核の使用も念頭に入れている。台湾有事は必ず日本有事に重なる。日本は中国の多層的ミサイル・核攻撃の標的であることを忘れてはならない。
ウクライナ侵略戦争の行方を他人事と考えてはならないように、核の被害を受けた日本だから核廃絶を声高に提唱するだけでよい、と思ってはならない。まず、世界で核・軍事力が実際にどのように使われようとしているか、現実を見て考えることがとても大事だ。
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7日の東京都知事選で15万票超を獲得し5位となったAIエンジニア安野貴博氏(33)が9日放送のTBS系「news23」(月~金曜午後11時)に出演し、キャスターの小川彩佳らと都政や選挙報道などについて語った。 安野氏は、AIエンジニアの他、起業家、SF作家の顔を持ち、選挙中やマニフェストを学習したAIによって24時間対応で有権者質問を受け付け、マニフェストに反映させるなど、テクノロジーを駆使した選挙戦を展開したことを紹介された。 安野氏は「15万票という数字は、全く1カ月前まで無名に近い私だったので、そこからすると、取れたんじゃないかと思っています」と選挙戦を回想。一方、56人が乱立したことを念頭に「やっぱり56人いますと、見つけてもらうのが、すごく難しいなと思ってます。特に私の場合は、選挙期間中にテレビが1秒も取り上げなかったということもございまして、本当に悔しかったのが選挙が終わった後に、7月7日以降にテレビにいくつか取り上げていただいて」と苦言を呈すと、コメンテーターで東大の斎藤幸平准教授も「今ですよね」と相づちを打って、この日の番組に出演している状況を指し示した。 安野氏は「まさに今もそうなんです」と指摘し「そこで見た方が、本当に悔しい話なんですけど『安野を知っていれば絶対入れたのに』という声をむちゃくちゃたくさん頂いているんですよね。そこは何でしょうね、今の『報道しない』というルールが都民のために果たしてなっているのか、と私は思いましたね」と語った。 ここで同局の藤森祥平アナが「ご指摘の通りでして、あらためて、TBSとしては今回の都知事選については主に4人の候補者を取り上げました。まずは、現職の政治家であるかどうか。都知事であったり、現職の国会議員であったり、直前まで広島県の安芸高田市長を務めていた石丸(伸二)さんですとか。さらに田母神さんについては、ご自身が前回出馬された都知事選で60万票あまりを取っていた、という得票の実績などを考慮した…。私たちニュース番組に時間的な制約もあります。その中でいかに総合的に合理的に考えた上で、選挙のたびに基準を設けて、今回はこういった感じで出した」と説明した。 藤森アナは続けて「ただ、これは長年の課題でもありますし、ご指摘の通り、問題がなかったかといえば、当然検証も必要ですし、これからまた再検討しなければいけない、と受け止めています」と言及。小川も「今回、政治的な実績が考慮されたわけですけれども、今、既存の政治にないモノが求められている時代に、この基準で十分だったのか、正解だったのか、というのは検証の必要があると、私自身も感じますし、このように課題がはっきりと浮き彫りとなった今、次の選挙までに、選挙報道をアップデートしていこうという意志が有権者の皆さんに伝わっていかないと、テレビの選挙報道というのが、どんどん信頼を失っていくんじゃないかという危惧を持つ」と語った。 小川は「だからこそ、安野さんにぜひ、お知恵をお借りしたいというところもあるんですよね。どんな風に変えていく必要があるとお感じになりますか」と呼びかけると、安野氏は「伝える価値がある、ニュースバリューがあるモノというのは、ぜひ伝えていただきたいなと思っています。例えば今回『AIゆりこ』の話、小池さんが作ったAIというのはすごく取り上げていたと思うんですけど、私のやっていた方がですね、質問に答えてくれる、であるとか、より技術的には高度な話もしていますので、ニュースバリューもあったと思います」と指摘。また「売名目的の方が問題行動をしているのはテレビで取り上げられていたこともあって、真面目に政策の方をやっている人はとりあげず、問題行動を取り上げる、というのは、これは逆になってしまっているのかな、と思いますね」と持論を語った。
安野貴博氏が苦言「選挙期間中テレビが1秒も取り上げなかった」小川彩佳「お知恵お借りしたい」 - 社会 : 日刊スポーツ
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「カエルはカエる」の話
かなり初歩的なダジャレを使ったタイトルのゲームを作った話。
第15回WOLF RPGエディターコンテスト(ウディコン)に参加しました。 初めてのウディコン参加&ゲームの公開でした。 ゲームのウラガワ的な話はしない方がカッコイイけど、 ストーリーがあるようなゲームじゃないのでテキトーに書いてみます。 (2023-08-17追記) ここでウディコンの結果やコメントの紹介などをしました。見たい方だけどうぞ。
どういうゲーム?
ゲームボーイ風のみじかい横スクロールアクションです。 いろいろな理由からこういう感じになりました。
まず、最初はゲームボーイ風でなく、 ロボットが冒険するシンプルなドット絵のアクションゲームにしようとしてました。メトロイドっぽいゲーム? 「第14回のウディコンにだすぞう」とか言ってました。 ちょうどこの時、洞窟物語に感動してそれっぽいものを作りたくなってたんですよね。
見切り発車で作ってしまったため、システム以外の部分が全く思い浮かばず、開発中止。
せっかく作ったシステムをどうにか活用したいということで、 ストーリーも何もないただのアクションゲームを ミニゲームとしてRPGか何か別のゲームに入れようと開発を再開します。
「ミニゲームだし、絵もほとんど描かなくていいように画面小っちゃくして色も少なくしよう」ということでゲームボーイ風になりました。 とにかく楽をするためのゲームボーイ風です。 ちょうど桜井政博さんの星のカービィ開発秘話を見て、「こんなゲーム作りたい!!」となったのもあります。
ベロ
ロボットのアクションゲーム段階ではワイヤーアクションはありませんでした。弾をうったり、空飛んだり、重力反転したり、そんな感じ。 でも、ゲームボーイで使えるのはAボタンとBボタンくらいで、 何個もアクションを入れるのは違うなーと。 シンプルだけどいろんな遊び方ができるアクションないかなーと過去のウディコンゲームで色々遊んでいたところ、 ボクとハカセと白いハコというゲームに出会います。
伸び縮みするワイヤーでゆらゆら揺れてゴールを目指すゲームで、 いろんなワイヤーの使い方をして先に進む技術が必要とされます。 めっちゃ面白かった。
「ワイヤーアクション、ええやん。」ということで自分もそれっぽいものを作ることにしました。 ワイヤーアクションをするようなキャラクターでドットで描きやすいものを考えた結果「カエル」になりました。 タイトルを「井の中の蛙」とかにして、ベロを使って井戸から出て大きな海をみて終わりとかシンプルでいいじゃん。
しかし、ワイヤーアクション、全然作れない!!!! こんなキモい動きになってしまった…
ということで、ベロで出来るワイヤーアクションをゆらゆら揺れるものから、 つかんだらジャンプするヨッシーストーリーの「!」みたいなものに変更しました。
タイトル
「井の中の蛙」でいいやと思ってたんですけど、ずっと井戸の中って見た目が地味になりすぎるなということで、 井戸から出て外の世界を回る話にしよう!となりました。 結果的に、森とか空とかが出てくる、全体的にカービィっぽい世界観になりました。 そうなるとタイトルが変な感じになるわけで… 冒険の動機付けもよくわからなくなったので、「蛙が家に帰る」でいいじゃんとなりました。 こんなダジャレのゲームは重厚なストーリーなんてないだろうと。 いい感じの安っぽさがあって、変な期待をせずにゲームを遊んでもらえるというハードルを下げる目的もありました。 ちなみに、タイトル画面は「カエルのために鐘は鳴る」っぽい画面を意識しました。 四隅に装飾があってキャラ二人いる感じ。え?全然違う?
音
音楽はかなりこだわって作りました。 曲の内容ではなく、曲の鳴らし方の部分ですが。
ゲームデータ内にある「shobo.html」にも書きましたが、 ぽり0655さんのブログで「ウディタでもレトロゲームのような演奏が可能である」ということが紹介されています。 レトロゲームの音楽が大好きな僕にとってこの機能はロマンの塊でした。 「他の誰かに先を越される前に、ゲームに実装して公開しなくては!!」
ずっと温めていた(?)このシステムをウディコンで披露してやろうという思惑からこのゲームに組み込むことになります。 ゲームボーイ風のゲームと相性が悪いわけないんです。絶好のタイミングでした。
しかし、このシステムを使うということは世にある音楽素材が使えないというわけで… いままで作った曲をシステム用に変換するなどして急ピッチで使う音楽を用意しました。 ゲーム開発で一番時間がかかったところです。
サウンドテストも入れました。 ゲーム本編には全く必要のない機能ですが、視覚的に演奏しているところを眺めるのが僕の趣味なので、ニヤニヤしながら作りました。
ほんとは効果音も演奏させる予定だったんですけど、 さすがに処理が重すぎる気がしたのでDawで作ったものを流すだけにしました。
ちなみに、効果音が鳴っている間はちゃんとそのチャンネルがミュートされるように作りました。 変に音が途切れるのはこれのせいです。
そのほか
ゲームを起動するとウディタのロゴが表示されます。 実はここ、たまにバグったロゴが出てゲームが止まるようになってます。 本家ゲームボーイではここに不正カセット対策が施されていて、 ちゃんとしたカセットじゃない場合、起動できなくなるらしいです。(参考記事) この機能にならい、このゲームをテストプレイモードで起動させると100%バグったロゴが出るようになってます。 ゲームデータを公開してるので意味ないんですけどね。
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マップがテキストだったり、フォントも画像になってたり、 「それホントにやる必要ある?」みたいなことを多くやってますが、 理由はただ一つ、「容量を小さくするため」です。 自己満足でしかないんですけど、 ウディコンに出されたゲームの中で一番容量が小さくなるように頑張りました。 (この目標は多分達成できたと思う!) ちゃんと音楽が鳴って、ちゃんとマップが表示される、 容量以上の動きをするゲームってなんかカッコイイなって…
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マップがピクチャ表示だったり、データベースを全然使っていないのは、 最初の方に書いた「ミニゲームとして何か別のゲームに組み込む」ことを前提に作ったからです。 ミニゲームと本編でマップを移動させたりするのめんどくさそうだなぁと。
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ゲームのグラフィックはできるだけ8×8単位で3色しか使わないようにして作りました。 できる限りゲームボーイの仕様に近づけるようにいろいろ意識しました。 真のゲームボーイ好きに「こんなことはゲームボーイではできない!」と怒られるかもしれませんが… ゲーム部分とは関係のないこだわりが無駄に多いですね。
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あと、ほんとはステージエディタを別で作ってマリオメーカーみたいな遊び方をしてもらおうと考えてました。 エディタは没となりましたが、自分だけのステージとか作って遊んでほしい���と思ってます。
(ウディコンのBBSにて難易度を下げたファイルを公開してくださった方がいました!本来これくらいの難易度で作るべきだったのかと勉強になりました。ぜひプレイしてほしいです!)
最後に
こんなに読みづらい文章をここまで読んだあなたはすごい!
TwitterやBBSで感想などを書いてくれた方がいて、めちゃくちゃ驚いています。 うれしすぎて家族に自慢しました… 本当にありがとうございました!
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サラリーマン新藤剛
1.
男は立ち止まり、目の前にそびえるオフィスビルを見上げた。周囲には真新しいガラス張りの高層ビルがいくつも建っている。それらと比べると背も低く古びたこのビルが、しかし男にとっては一番恐ろしく、雨だれで汚れた外壁に威厳すら感じていた。
新藤剛は墨田商事営業部の部長である。二十五年前に入社して以来営業一筋で、数年前に部署をまとめる立場になってからも、時折こうして自ら取引先に出向くことがあった。
ミネラルウォーターを一口飲み、中身が半分ほどに減ったペットボトルを鞄にしまう。呼吸を整えるように深く息を吐いたタイミングで、後ろから部下が声をかけた。
「部長、大丈夫ですか?体調でも悪いんじゃ……」
いつも闊達で堂々としている新藤の緊張したような様子は、若い部下には見慣れないものだった。急に暑くなり始めたここ数日を思うと、体調を崩したのではないかと想像するのも無理はない。
だが振り向いた新藤は、意外にも普段通りの声色でそれを否定し、にやりと笑って見せた。
「いや、問題ない。……まあ、武者震いというやつかな」
「はあ……」
新藤はそれだけ返すとビルに向き直る。部下もそれ以上何も聞かず、二人は連れ立って自動ドアをくぐった。
2.
受付を済ませるとすぐに応接室へ案内された。新藤にとっては何度も訪れたことのある部屋だが、この場所はいつも新鮮な緊張感を彼に与える。
年季の入った黒い革張りのソファに腰掛けると、わずかに軋む音がした。新藤は案内係が出ていった扉を目の端に入れる。
ここ丸岡社は、墨田商事と付き合いの深い取引先のひとつである。今日は契約の更新と内容確認のため商談の場が設けられていた。新規の契約をとるという訳ではない。しかし新藤は、この商談を重要なものと捉えていた。ある意味では、会社の今後を左右するほどの。こんなとき、新藤はいつも心にある人物の姿を思い浮かべていた。
それは人気ドラマの主人公、高橋真太郎。平凡なサラリーマンでありながら、不正をはたらき私腹を肥やす上司や、理不尽な要求をする取引先と臆せず闘う、熱い男だ。新藤はシリーズを通してこのドラマのファンであることを日頃から公言しており、高橋真太郎は彼の憧れだった。その姿を胸に、新藤は大事な局面を幾度となく乗り切っている。
まるで自分が主人公になったような気分で、この後現れるであろう丸岡社の担当者・戸坂の顔を思い浮かべた。あの食わせ者にしてやられないようにしなければ、と気合いを入れる。
「失礼します」
ノックの音に身を固くしたが、続いて聞こえたのは来客担当であろう事務員の若い声だったので少し肩の力を緩めた。事務員が手に持っている盆から、コーヒーの香りが漂ってくる。
「お待たせして申し訳ありません。戸坂はすぐ参りますので……」
「……いえ、こちらが早めに着きましたので」
実際、約束の時間まではまだ少しあった。新藤は元来せっかちな質で、さらに今日の商談への気合いからかなりゆとりを持って到着していた。待ち時間が生まれるのは想定内だが、こちらがじりじりと時間まで待ってから向こうが現れるとなると、どうも「余裕」を見せつけられているように感じる。しかしそこで動揺しては戸坂の思うつぼだ。新藤はそう思い直し、心を落ち着けて待つべくコーヒーをありがたく頂戴した。
結局、約束の数分前に戸坂が応接室の扉を開くまでに、新藤はコーヒーをほとんど飲み干してしまった。待たせた謝罪を口にしながら戸坂が歩み寄ってくる。彼の後ろに付いて、また事務員も入室した。先ほどとは別の盆を持っている。テーブル上を一瞥して空になったコーヒーカップを引き上げ、代わりに冷水の入ったグラスを置くと、一礼して部屋を出ていった。
「今日は暑い中、ご足労いただきまして」
「いえ、こちらこそ、貴重なお時間をいただいて……」
戸坂が近づくのに合わせて新藤と部下は立ち上がり、三人は互いに挨拶の言葉を口にした。しかし形式ばったやり取りもそこまでで、戸坂は新藤の向かいのソファに腰掛けると、始めましょうか、とやや気軽な調子で新藤を見た。
対して新藤は、目力を緩めぬまま戸坂を見返し頷く。ここで気を抜いて油断を見せてはならない。戸坂は穏やかだが切れ者だ。巧みな話術でそれと気づかぬうちに主導権を握られてしまう。新藤はそう考えていた。
だが逆に、緊張を悟られるのもよくない。冷静に臨むため、新藤はグラスの水を一口飲んだ。
3.
それぞれ手元の資料に目を落としながら、契約内容を確認していく。はじめの二、三ページについて説明している間、新藤は資料をめくる毎にグラスに口をつけた。外の暑さのせいか自身の気持ちの問題か、やたらと喉が渇いたのだ。
途中、増税の影響や原料費の高騰など周辺の話題に寄り道しながらも、話は順調に進んだ。金額が絡む内容になると新藤は身構えたが、戸坂から何か指摘が入ることもない。自身が普段の落ち着きを取り戻しているのがわかる。ひと息つくように口にした水は、先ほどより少しうまく感じた。
「……ところで、前に来てくれた彼、佐々木くんでしたかね?」
「あ、ええ。佐々木がどうかしましたか?」
「いえ、実はこの間、こちらの都合で少し迷惑をかけてしまいまして。しかし彼に対応してもらって非常に助かったんです」
改めて一言お礼をと思っていて、と戸坂は手元のグラスを手に取る。そして休憩の合図とばかりに、脇に寄せられていた菓子盆を引き新藤たちに勧めた。
一見何気ない話題だが、新藤は戸坂の口元に浮かぶ意味ありげな笑みを見逃さなかった。戸坂が特定の部下について発言するのは珍しい。そもそもいつもきっちり仕事をこなす戸坂が、迷惑をかけたなどという状況にほとんど覚えがなかった。
この話題には何らかの意味があるのではないか。戸坂にとってメリットのある、何かが。
落ち着いていた心臓の音がまた煩くなってくる。新藤はそれを隠すようにグラスの水をゴクリと飲み、平静を装って勧められた菓子に手を伸ばした。
取引相手である戸坂から佐々木の名前を出され、礼を伝えたいと言われたことで、新藤としては佐々木にそれを伝言せねばならないだろう。それが戸坂の目的だとしたら。実は佐々木はスパイで、彼のほうから戸坂へ連絡しても不自然でない状況を作るとか、もしくはこの伝言自体が合図で、佐々木は戸坂と共に何か画策しているとか。
いや、佐々木は墨田商社に長く勤めている真面目な男だ。よく気がつく彼に、新藤も助けられてきた。あの佐々木がこんな裏切るような真似をするはずがない。しかし、そういう人物だからこそ疑われにくいとも考えられる……。
気取られずに戸坂の意図を探るには何と返せばよいか。グラスを持つ新藤の手に無意識に力が入る。中身が少なくなったグラスの内で、解けかけの氷がカランと音を立てた。
「そうそう、先ほどのコーヒーはいかがでしたか?」
新藤が探りを入れるより早く、戸坂は話題を変えてしまった。思考を巡らしていたせいで一瞬何のことかと思ったが、待ち時間に出されたコーヒーを思い出す。
「コーヒー、ですか。美味しくいただきましたが……」
「ああ、それならよかった」
満足気に頷いた戸坂と対称的に、新藤は内心の動揺を悟られないよう必死だった。コーヒーが一体何だというのだ。普通、あえて感想を求めるようなことはしないだろう。何の変哲もない美味いコーヒーだったと思うが。
「あれは実は社員が海外で買ってきたものでして。ぜひ味わっていただきたかったんです」
「はあ……」
そう説明されても、新藤は疑いを拭えない。言葉の裏の意味を汲み取る、自分の経験と実力を信じるがゆえだった。まさかとは思うが、薬の類を盛られた可能性はないか。変わった風味には気がつかなかったが、薬の味が分かってしまった場合に備え、ごまかすために海外土産という言い訳を準備していたのではないか。その考えに至ると、緊張感のせいと思っていた動悸も、薬のせいだったのではと思えてくる。
自覚すると、心音はより大きく新藤の身体に響いた。部下はなんともないのだろうか。ちらりと隣に視線を向けると、部下は平気そうな表情で座り戸坂の話に相槌を打っている。手元の水は、新藤ほどではないが減っていた。
それを見て、新藤にある考えがひらめく。そうだ、水だ。薬を飲んでしまったのなら、水で薄めるのは効果的なはずだ。二人ともそこそこ水を飲んでいるから、まだあまり変化がないのではないか。だからこそ焦った戸坂は、コーヒーをちゃんと飲んだか確認してきたのだ。
思うが早いか、新藤はグラスを口元へ運ぶ。しかし冷たい氷が口元へ触れただけで、喉を通る水分はわずかだ。しまった、水はもうほとんど残っていない。こうしている間にさらに薬が回ってしまうのではないかと新藤は焦る。どうする。いや落ち着け、こんなとき高橋真太郎なら……。
「失礼します」
見計らったかのようなタイミングで事務員が扉をノックする。静かに三人の元へ寄ると、グラスへ減った分の水を追加した。まだたっぷり水と氷の入ったデキャンタを机に残し、一礼してまた静かに退室した。
ありがたい。新藤は早速、補充された水を飲み下す。ちょうどいいときに来てくれて助かった。
いや、だがタイミングが良過ぎはしないだろうか。新藤の脳内に新たな疑惑が浮かんでくる。もしかして、この部屋は外から監視されていたのか。もしくは、戸坂が外へ何らかの合図を送ったのではないか。
新藤ははっとして、持ったままのグラスに目をやった。むしろ水のほうに仕掛けがあったらどうする。コーヒーに意識を向けることで、安全なものと思い込ませた水を大量に摂らせる策であったとしたら。戸坂ならば、それくらいの誘導は難なくやってのけるかもしれない。
だがそのとき戸坂自身がグラスから水を飲んだのを見て、新藤は冷静さを取り戻した。そうだ、この水は目の前で同じデキャンタから全員のグラスに注がれていたのだ。そしてそれを戸坂も口にしている。つまり水に薬は入っていない。あるとしたらやはりコーヒーだ。
思い通りになるものかと、新藤はさらに水を飲む。まさかばれているとは思っていないのだろう、怪訝さを隠せていない戸坂の苦笑が可笑しかった。
やがて残っていた書類の確認が済み、商談は終了した。話を終えるまでに新藤は二杯目の水を飲み干し、デキャンタから再度注いでそれも飲んでしまった。
「それでは、本日はありがとうございました」
「こちらこそ。今後ともよろしくお願いいたします」
新藤は部下とともに、丸岡社をあとにした。体調も変化なく、勝ち誇った表情を浮かべ歩く。戸坂は薬でこちらの判断力を鈍らせ、商談を有利に進めようとでも思っていたのだろうか。その企てに勘付き逃れることができたのだ。巨悪に立ち向かう、あの主人公高橋真太郎みたいじゃないか。大仕事をやり遂げた達成感を胸に、来たときよりも堂々とした足取りで新藤は帰っていった。
4.
「失礼します。墨田商社様、お帰りになりました」
「ああ、君もありがとう。すまないがグラスの片付けも頼むよ」
新藤たちを会社の入口まで見送り、来客対応の事務員が応接室に戻った。戸坂は疲れを滲ませた顔で書類を揃えている。
「お疲れさまでした。ところで新藤様、随分険しい表情をされていましたが……商談中に何かありました?」
事務員に尋ねられ、戸坂はため息を吐いて肩をすくめた。
「……何も。なんてことない、ただの定例の商談だ。まったくあの人は、ドラマの見すぎなんだよ」
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旧東隊の小説(二次創作)
ホッケえいひれ揚げ出し豆腐
一月か二月の頃だった。
トリオン測定ですごい数値を叩き出した新人が二人も入るそうだというのが、その夜の話題だった。出水公平と天羽月彦のことだ。
新生ボーダーが動き出して一年半になる。『旧』ボーダーという言葉が定着するほどに、時は勢いを増して流れていく。その間に、一番仕事をしたのは開発室室長の鬼怒田本吉だった。
まず、彼は異世界に通じる門の発生ポイントを特定できるようにした。次に門の発生を抑えるトリオン障壁を一時的ではあるが生成に成功、最後に門発生ポイントを誘導する装置が開発され、三門市の安心を約束する三点セットがわずか一年で出来上がる。元々の研究分野の応用とはいえ驚嘆に値する開発速度だった。
こうして、急務だった門発生のコントロールに成功した後は研究途中で放置されていた擬似トリオン訓練室の完成、隊員増加を見越してランク戦で使う対戦ブースと八面六臂の活躍である。
短期間でこれだけのことをやってのけた彼及び彼のチームは、城戸政宗司令がどこからか連れてきた逸材だった。三門市にやってきた時には一緒だった家族とは離婚している。仕事に打ち込みすぎたせいだと専らの噂だった。
開発室以外も働いた。門がコントロールできるまではいつどこで出現するかわからない。国の機関に代わって街を守るボーダー隊員たちは昼夜を問わずパトロールを行い、近界民と戦った。
三門市民は最初、胡乱な目で彼らを見ていたが、公的機関と連携した規律ある行動に徐々にボーダーの存在は受け入れられていく。根付メディア対策室室長による世論操作も功を奏していた。
出ていく人間は出ていき、かわりに大量の物資と人材が流れ込んでくる。
ボーダーにもまた人材が集まった。
まず、市民志願者第一号として柿崎国治と嵐山准が入隊する。華々しい記者会見の後、志願者はぐっと増えた。
東春秋が部隊を結成したのもその頃だ。
この時期の部隊は自由結成と言うよりは忍田や根付の意向が強く反映していた。東隊も忍田の指示によるものだった。
忍田自身も部隊を持っていたが、本部で戦闘員を統括する役職につくために解散することが決まっている。
ガラリと引き戸をあけて顔を出したのは東春秋だった。いらっしゃいませと店員が声をかけると案内はいらないと手を振って、店内を見渡す。じきに見知った顔の並ぶテーブルを見つけて近づいた。
二十二歳だと言うが、ずっと老けて見える。外見だけではない。彼に接する人間はつい彼が二十代前半の若造だということを忘れてしまう。
後ろには背が高い男女二人がやはり背の高い東を挟んで並び立つようにいた。どちらも目を引く美男美女だ。彼らは近隣の六穎館高等学校の制服を身につけていた。
さらに後ろに中学校の制服を着た少年がひっそりと控えている。前のふたりと違って背は低い。寒いのか、マフラーをぐるぐると首に巻いていた。
三人は物珍しげに店内を見回している。
「なんだ、三人とも居酒屋は初めてか」
テーブルにいた眼鏡の男が声をかけた。既に頬は赤い。手には盃を持っている。日本酒派だ。林藤匠という。ボーダーでは古参の一人だ。歳は三十一になる。そろそろ現役を引退したいとボヤいているが、いかんせん昨今の人手不足だ。
ボーダー本部建物ができたにも関わらず、旧本部ビルから動こうとしない、なかなかの頑固者だった。
「学生ですから」
と、生意気そうに答えるのは、背の高いほうの一人である二宮匡貴だった。
「あれ、根付さんから聞いてないか? ボーダーマークの貼ってある店はボーダーなら学生でも入れるようになったんだぜ」
トリオン器官の性質上、十代の隊員は増えていく。本部でも食堂は設置しているが、彼らは三門市の飲食店にも協力を求めていた。パスポート制で十代への酒類の提供はないなどの配慮がされている。
「知ってますが…」
さらになにか言おうとする二宮を東は遮った。
「今夜は明日の確認だけしに来たんです。本部で聞いたら、ここにいるっていうから」
「明日? ああ、国の視察ね。用事は、唐沢さん?」
「俺?」
テーブルの奥から唐沢克己外務営業部長が顔を出す。彼はビール派だ。既にジョッキをほとんど空けている。まだ三十そこそこだが、やり手の男だ。鬼怒田同様、城戸司令がスカウトしてきた。元ラガーマンだという以外素性を明かさない男だったが、人当たりがよい。
今夜の飲みメンバーは林藤、唐沢に加え、エンジニア冬島慎次、戦闘員の風間蒼也、木崎レイジの三人だった。風間と木崎は二十歳前なので、烏龍茶が並んでいる。
「まあ、たってないでこっちに座れよ、東くん」
「あー、ウチはウチでご飯を食べる予定なんです」
東はお供のように控える背後の三人を見やった。東隊のメンバーだ。
「ここで食べていけばいいよ」
「はあ」
少しだけ、東の心が揺れた。老成しているとはいえ二十二の青年だ。気楽な酒の席は魅力的だ。
「大丈夫です。俺たちは帰ります」
東の心を見透かしたように、二宮が後ろの中学生の背を押して店の入口に向かおうとする。
「東」
林藤は声をかけた。
「みんなで食べてけよ。唐沢さんの奢りだ」
「あなたじゃなくて、俺ですか?」
急に振られた唐沢が満更でもなさそうに笑った。確かにこの男前は今日の面子の中で一番地位が高く、懐も暖かい。
「あら、素敵。せっかくだから、ご馳走にならない? 二宮くん」
そこで初めて、女学生が口を開いた。こちらも生意気な口調だが、軽やかでトゲトゲしいものを感じさせない。
「加古」
「ねえ、三輪くん?」
「……」
急に話を振られた中学生は無表情のまま首を傾けた。
「わかりません」
「東さんがここでお酒を飲んでるとこを見てみたくない? 面白そう」
三輪は悩みながらうなずいた。
「ほら、三輪くんもそう言ってるし」
「言ってないだろう」
「言ってないです」
「わかった、わかった」
いつもの掛け合いが始まりそうになって、東は決断する。一応、上役たちの前だ。
「ごちそうになろう。唐沢さん、ありがとうございます」
東が頭を下げると、揉めていた三人がピタッと止まって、同時に頭を下げた。よく訓練されている。東を猟師になぞらえて獰猛な猟犬を三匹飼っていると言っていたのは誰だったか。
「遠慮せずたくさん食べなよ」
唐沢はいつもの人当たりのよい笑みを浮かべた。
「追い出された」
案内されると同時に、風間と木崎が東隊の猟犬三匹のテーブルにやってきた。テーブルが窮屈になったらしい。
今夜はボーダー戦闘員と唐沢の交流会であるらしかった。
風間の兄は林藤の弟子だった男だ。故人である。木崎は東から狙撃手としてのスキルを学んでいるので、東隊の面々とは面識がある。今は林藤に従い旧本部ビルに寝泊まりしている。狙撃以外の分野では林藤に師事していた。
一方は小柄で華奢、もう一方は筋肉隆々の巨漢だ。正反対の見かけだが、どちらも恐ろしく強かった。さらに木崎はトリオン量は二宮と同程度を持っていて近界のトリガーを使いこなす。
加古の隣に木崎が座り、二宮と三輪の隣に風間が座った。スペースの有効活用の結果である。三輪は隣が風間なので緊張する。風間蒼也は様々な思惑の絡む本部で誰からも重用され、確実に任務をこなすエリートだった。
「もう、頼んだか」
「まだです」
彼らはまだ食べるつもりらしい。
「居酒屋は初めてか」
木崎が気を使って、品書きをテーブルの真ん中におく。
店員がまとめて置いていった突き出し(お通し)を配る。
「飲み物から決めよう」
と、店員を呼んでさっさと飲み物を決めてしまう。さくさくと仕切る姿が頼もしい。三人はジュースにした���、風間と木崎はまた烏龍茶だった。
「おすすめは、揚げ出し豆腐だな。家で作るの面倒だし」
「そういう基準か」
「寺島たちに頼まれて作ったが、たくさん食べるものじゃないし、持て余した」
寺島たちと寺島雷蔵と諏訪洸太郎のことだろう。四人は同い年で気が合うようだった。諏訪は二宮と加古の同期でもある。
「おごりなら諏訪と雷蔵でも呼ぶか」
「来ないだろ」
確かにもう遅い。
「今日の当番は?」
お酒をあおる大人席では、林藤が煙草の煙を吐き出しながら聞いた。
「忍田さんとこと迅です」
迅悠一は木崎隊であったが、先日、晴れて『風刃』所持者となり、隊を離れS級隊員となっている。
「あとは嵐山隊ですね」
なんとなく大人たちは子どもたちのいるテーブルに視線を向けた。三輪がジュースを飲んでいる。迅、太刀川、嵐山と三輪の苦手な三人だ。
「明日は俺らの勤務か」
正直、オーバー���ークだ。ここにいるメンバーは皆、ワーカホリック気味ではあるが、大規模侵攻からずっと働き続けている。
「入隊志願者が増えてますからもうちょっと頑張ってもらって…。部隊が増えてくれば、部隊の輪番制に移行するって城戸さんが言ってます」
「もうすぐですよ」
冬島がエイヒレに手を伸ばしながら言う。
「そう願いたい」
品書きと書かれたメニューには写真がない。並ぶ単語は知らないものが多い。
三輪が大人たちのテーブルをチラリと見れば東は刺身の盛られた皿をビール片手につついていた。嬉しそうだ。確かに、隊長ではない東は不思議な感じがした。
「秀次は刺身か」
二宮がつらつらと品書きを見ながら勧める。二宮も初めてだからよくわかっていない。
「盛り合わせがあるぞ」
「ちょっとずつ色んなのが食べたいわ」
加古がウキウキしている。
「レイジさんおすすめの揚げ出し豆腐は頼むでしょ。風間さんのおすすめは?」
「コロッケと卵焼きだな」
間髪入れずに答える。迷いがない。
「じゃあ、それー」
「また家で作れるようなものを…」
木崎がぶつくさ言うが、三輪は蕎麦を茹でるくらいしかできない。
「二宮は?」
風間が水を向けるが、彼は熟考に入っている。
「先に頼んじゃいましょ。店員さぁん」
「加古、お前なあ」
「大丈夫だ、二宮。何度でも頼めるから」
「風間さんがそう言うなら」
注文を手早く木崎がまとめる。
「三輪は決めたのか」
「じゃあ、刺身盛り合わせ(小)で」
「あと、ホッケ」
「加古、語感で決めただろう」
「干物だな。北の魚だ」
明日、視察団が来るというのに、大人組はまだまだ飲んでいる。タバコの匂いがする。
焼肉屋ともファミリーレストランともバーガー屋とも違う雰囲気にふわふわする。
「秀次」
三輪は、二宮に揺り起こされた。ひと通り食べたあと、いつの間にか眠っていたらしい。
「中学生には遅い時間だな」
木崎が気の毒そうに言う。
「大丈夫です。すみません」
彼らも高校生なのだ。
「ほら」
おにぎりが渡された。大きい。海苔がパリッとしている。
「結局、二宮くんが選んだのがこれよ」
おにぎりを優雅に食べるという器用なことをしながら、加古が教えてくれる。
「悪いか」
「いい選択よ」
「うまいな」
風間はまだ食べている。木崎はカチャカチャと皿を重ねて、テーブルを綺麗にしている。 三輪は散々食べたあとだが、おにぎりを持って、「いただきます」と言った。おにぎりは何も入っていなくて塩がきいている。
「おいしいです」
「そうか」
「東さん、あれ酔っ払ってるわ」
三人が揃って東のほうを向くと、その様子がおかしかったのか、木崎と風間が笑った。
「明日はお前らが頑張れ」
その日はみんなボーダー本部に泊まった。
終わり
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