#関西ママ
Explore tagged Tumblr posts
Text




彼氏と、王子動物園行ってきた☀️
ここ来るのは2回目だと思う。1回目は小学生以前かな、ほぼ記憶にないくらい昔。
残念ながらパンダは居なかった…🐼🪽
パンダは居なかったけど、懐かしさ感じるレトロな良い雰囲気で癒されたし、良かった☺️
小さな子供向けの遊園地もあってレトロで良かった。
関西では、昔からある子供向けの遊園地だとかはどんどん無くなっていってるから、こういう場所ってレアだなぁと思う。
土曜日なのに人少なくて、天王寺動物園の半分くらいの人数だった気がする。寒かったからかな?それと外国人観光客がほぼ居なかったから、それもあるかもね。
動物の数は多くて、園内は広く感じたけど。
これで入園料600円だったら、私近く住んでたらきっと年間パスポート買ってしょっちゅう散歩がてら通ってしまいそう。笑
私的には天王寺動物園より何倍もこっちが好きだなぁ。立地的に観光客が少ないのは勿体無い……無くならないで欲しいなぁ。
子連れが殆どで、小さな子供含め可愛い癒され空間だった。笑
彼氏が早く子ども欲しいなぁ〜って話してて、私も彼と子どもといつかここ来たいなぁって思った☺️
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

お弁当、全部彼氏が作ってくれた🍱☺️✨
本当に美味しかった。
김밥も人生で食べたの2回目だけど、前回の店で食べたものより美味しかった。丁寧で綺麗ですごいな〜と思った。私は大雑把な方だからさ。野菜とかも太さもバラバラな方だ。
제육볶음も、レタスとキムチと一緒に食べるの美味しかった。
日本ではピクニックのお弁当で(外で食べるご飯)でキムチは滅多にないから、こうやってお弁当にキムチがあるのが新鮮だった。笑
でも全然アリだと思った😊
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
いつもマメに作ってくれたりと、優しさが本当に有難いなと思う。本当に感謝の気持ちをどの形で返せばいいのかといつも思う…☺️果たして返せているのか…?とも思う。笑
彼の優しさを当たり前に感じるのではなく、常に感謝を忘れずに私も常に優しくありたいなぁと思った🍀
彼氏だけに限った話じゃなく、周りの人の優しさ全部感じて受け止めて、優しさを返せるようにしたい。
と言うか、率先して自分から優しく行動出来る人になりたいな。
あ、でも最近駅の階段でベビーカー引いたママさんに率先してお手伝い出来て、嬉しい気持ちになった。自己満かもしれないけど相手が笑顔になってくれたらシンプルに嬉しいし幸せな気持ちになるから良いね。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

遊園地の周りも、神戸って感じで、レトロな店も多くて雰囲気良かった。散歩するのに良いねやっぱ神戸は。
31年間ずっと大阪住まいの私、やはり一度くらいは神戸の近くに住んでみたい憧れがある…
中学生の時は将来神戸に住みたいとか言ってたもんな。社会人なってから実現可能な状況もあったけどタイミング逃してきたね。よく会う人が大阪住んでたからなかなかタイミング無かった。
どうなんだろう、大阪市とかと違って人の雰囲気とかって穏やかなのかな……。兵庫県民の人いれば教えて欲しす…。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
王子動物園と言えばパンダだから、あらゆる場所がパンダが看板になってるけど、
でも今はパンダいないからこれからどうするんだろうって思ったけど。笑
また中国からパンダ来るのかしら?🐼笑
来たら良いなぁ。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
動物の写真と動画は次回…🌱
10 notes
·
View notes
Text
02/05/2024 part2 (人は変わる、私も変わる)









先日、自宅に届いたフェスタリアのオリジナルプレミアムカット"Wish upon a star"のダイヤモンド✨ 何度か店舗で見せて貰い、このシリーズが欲しかったのですが値段が…と思って諦めていましたが、ちょうどのタイミングで半額、そしてタイムバーゲンでさらに10%オフというのもあって、思い切って購入しました。 ネックレスは悪目立ちしないサイズなので職場につけて行きます。
*一番下の写真は公式サイトより抜粋した画像です。
今日の夕方、徳丸屋さん訪問後、約1年ぶりに父方の祖父母の墓参りに行ってきましました。 以前も記載しましたが、お墓があるのは2年前にハラスメント被害で退職した町にあります。
✄✄✄
家族も親戚も全員、ハラスメントで退職した事情を知っているので 「無理してこの町に来なくて良いよ」 と言ってくれるので、近付かないようにしていました。 私以外の家族は毎年、お盆・正月には必ず墓参りに行きますが、私だけは行きません。 ただ、今度の職場は遠方ということで、次に墓参りに行くのは何年後になるのか分からない状態。意を決して墓参りに行くことにしました🚶🏻♀️平日ということで誰にも会わずに済みましたが、やっぱり疲れました。
帰りにその役場で在職中にお世話になった人の元へお忍びでご挨拶。 久しく会っていなかったこともありますが、その方の性格がすっかり別人に変わってしまっていました。
今の職場の人員不足の愚痴から始まり、他の会社に勤務しているママ友の職場の時給と待遇が良さから始まり、あの職場の方が良い、働きやすそうなどなど。日本の地方では非現実的な時給ではないと満足しないそうです。以前だったら「大変ですね」って共感する言葉を言っているところですが、表向きはそう言いながら心の中では凄くモヤモヤ。
彼女たちの不満の原因は私のときのような人間関係ではなく、時給の悪さと人員不足です。 公的機関の財源は税金なので、人員を増やすのは容易ではないですが、業務が円滑に進まない、日常生活に支障をきたしているいるなら、上司に相談、提案すべきだと思います。 あの役場なので、モラルはさておいても福利厚生は整っているし、近隣市町村の中では給料の待遇は良い方です。彼女の不満の対価として給料に反映されているはずなんですが(実際同じ役場でも彼女たちの職種は時給は良いです)、数少ない良い所には目を向けることはなく。 そこまで��時給を言われたら、東京の最低賃金にも達していません。ドイツやフランスなど、日本よりも最低賃金の高い西ヨーロッパに引っ越さないと無理ですよ笑 完全に現実逃避の発言に嫌気がさしている自分がいました。
そして、そんなに不満なら転職活動すればいいのに。
私がこの役場を辞めるときはハラスメントということで退職を余儀なくされましたが、退職して切れたご縁以上に、新しいご縁がたくさん出来たので、今は退職して良かった!って思っています。特に私の場合、ハラスメント被害による退職を国と県が認め、ハラスメント被害に理解してくれる方もたくさんいました。 失業保険の認定日翌日にはチュニジアに長期滞在できましたし🇹🇳
退職後に新しく出会った人たちがいつも活き活きと頑張っている姿を見ているだけに、 「解決しないから愚痴、だからと言って上司には相談・進言しない」 のような進歩の無い話を延々と聞かされて物凄く疲れました。 相手が変わったというよりも、私が変わったのが正解なのかもしれません。
でも在職中の大変な時期に助けてくれたのも事実。在職当時の感謝の気持ちは持ちつつも、今後もう会うことは無いだろうと、徳丸屋さんで買った差し入れのお菓子を置いてその場を離れました。
さて来週はいよいよ新しい職場での仕事📚

社労士事務所の仕事を辞めてから法律もかなり変わったので、急いで本を買って読んでいます👀
去年の暮れは神社に恐ろしい勢いでの断捨離がマイブーム。 現��も減量が順調に進んでいるせいか、リングにドはまり、最近はネックレスにも手を出す私。 私の行きつく先はどこへやら…です汗
#備忘録#photography#japan#reminder#kyushu#kagoshima#フェスタリア#festaria#Wish upon a star#Festaria bijou SOPHIA#diamond#🌟#人は変わる#私も変わる#愚痴#ring#necklace#platinum#jewelry#📚#books 📚
48 notes
·
View notes
Text

【かいわいの時】享保十四年(1729)四月二十日:将軍吉宗御用の象、尼崎から大坂に到着。南組惣会所に逗留。
享保13年(1728)にベトナムから牡と牝の象が日本に渡り、長崎に上陸した。この出来事が注目される一の理由は、2頭の象が献上されたものではなく、将軍徳川吉宗(1684-1751)の要請によりもたらされたからであろう。実はその要請が以前から商人のなかで伝えられたようだ。嘉永6年(1853)に林復斎等が編集した『通航一覧』に載せられた第38番東京船主の呉子明の手紙に次のような記述がある《史料9略》結局、2年後象が運搬されて来たが、その船主は呉子明ではなく、享保13年第15番唐船の船主の鄭大威である《略》このことから、当時幕府は多くの商人達に象の要請を伝えたことが考えられる。
黎貴惇は、ベトナムとラオスの国境にあるカムロ(甘露)地方の市場で行った象の売買について次のように述べている。
【史料11】『撫辺雑録』 「一象可載米三十擡、毎擡二十鉢、亦有一市番、駆牛至、三百隻来売、一牛不過十貫、一象價銀二笏」
黎貴惇の記述した「笏」は約10両に相当している《略》つまり、ベトナム国内で売買される象の価格は「二笏」で20 両に相当する。それでは象が日本まで運搬された時、どのくらいの金額がかかったのであろうか。実は、『通航一覧』に載せられた呉子明の手紙には下記のことが書いてある。
【史料12】『通航一覧』 「一象其帯来、小船不��装載、徒新定造大船二艘、毎艘只装得一隻、但欲定造大船二艘、要用銀一萬餘兩、又唐山發船到暹羅、往来雑費、該用銀二萬餘兩」
史料に書いた造船費用1万両余と雑費2万両余は2頭の象を暹羅から日本まで運搬する見積もりである。つまり、1頭の象につき1万5百両がかかる。実際、鄭大威が広南産の象を日本に運んだ時、幕府にいくら支給されたかについての資料がまだ見当たらない。暹羅からと同じような造船費用と雑費とすれば、ベトナ国内で売買する象の価格の20両より700倍以上も上回るのである。そのため、東南アジアから日本までの象貿易は大変だったが、利益が高いことが窺えるのである(ファン・ハイ・リン)。「前近代ベトナムにおける象の国家的管理と象貿易」『専修大学古代東ユーラシア研究センター年報 第4号』2018より抜粋して編集。表記はママ、脚注略。ママ。1万5千両の誤記と思われます。
【見積明細】 ・象(2頭) 銀10両×2=銀20両 ・大船造船費(2艘) 銀1万両 ・運送費 銀2万両 総計 銀3万40両(享保年間)≒銀130貫≒25億円(現在)※銀1両=銀4.3匁=0.07石=2万円で換算。
(写真)尾形探香『象之絵巻物』1848-55(関西大学図書館蔵)部分 享保十四(1729)四月、中御門天皇が京都御所で象を見物する図。ただし、御簾のうしろの天皇の姿は描かれていない。『江戸名所図会』1829によると、天皇と上皇への拝謁のため、象は「広南従四位白象」に叙せられたという。時しあれは 人の国なるけたものも けふ九重にみるがうれしさ 中御門天皇。
20 notes
·
View notes
Quote
関西では片手で持てる小さいサイズの方を「スコップ」、大きい方を「シャベル」と呼ぶのが一般的です。 一方関東では、小さい方を「シャベル」、大きい方を「スコップ」と呼びます。
育児中に「思わず出る関西弁」10選!関東のママ友に伝わらないことも(LIMO) - Yahoo!ニュース
11 notes
·
View notes
Text
2025/5/1 21:00:30現在のニュース
東海大相模の中村ゲーム主将「リーダー陣は正念場」 高校ラグビー(毎日新聞, 2025/5/1 20:59:27) 東海大相模の中村ゲーム主将「リーダー陣は正念場」 高校ラグビー(毎日新聞, 2025/5/1 20:58:43) 北マケドニアと丹下健三の意外なつながり 大臣「強い友情の基盤」(朝日新聞, 2025/5/1 20:58:18) 水着女性の入浴見ながら飲食 東京・渋谷のバー摘発、ペルー人経営者逮捕 無許可接待容疑([B!]産経新聞, 2025/5/1 20:54:33) 三井住友信託銀、元社員インサイダーの調査結果公表 社長ら報酬減額(毎日新聞, 2025/5/1 20:52:14) 「ママ」「何してんねん」児童7人重軽傷の現場は騒然 容疑者は無言(毎日新聞, 2025/5/1 20:52:14) 大統領選出馬方針の韓国首相 保守派から期待の声高まる(毎日新聞, 2025/5/1 20:52:14) <社説>夫婦別姓の導入 国会の怠慢許されない:東京新聞デジタル([B!]東京新聞, 2025/5/1 20:48:10) トランプ氏「愚か者に…」 ウクライナと協定、署名の真意とは(毎日新聞, 2025/5/1 20:44:45) 特集ワイド:マッキンリーから学んだトランプ氏 関税とは武器だ | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2025/5/1 20:42:47) AIベンチャーから体験型の親子向けサービス起業 「真逆」の試みに挑む36歳男性([B!]産経新聞, 2025/5/1 20:42:44) NHK、在日クルド人特集を再放送 「取材を深めたい」延期し再編集:朝日新聞([B!]朝日新聞, 2025/5/1 20:42:37) 読売333終値、136円高の3万4248円…63%の銘柄が値上がり([B!]読売新聞, 2025/5/1 20:39:51) 井原鉄道、10月から運賃平均18%上げ 通学定期は10% - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2025/5/1 20:39:12) 補償や救済拡大には応じず 環境相、水俣病患者らと懇談(毎日新聞, 2025/5/1 20:37:16) 容疑者「ひき殺そうと突っ込んだ」 大阪・西成で児童7人重軽傷(毎日新聞, 2025/5/1 20:37:16) ロナルド封じ「うれしい」 サッカーACLE 川崎の高井、世界的FW抑える([B!]産経新聞, 2025/5/1 20:36:35) 頭上一面咲き誇る「大藤」 薄紫の花房、栃木「あしかがフラワーパーク」([B!]産経新聞, 2025/5/1 20:36:35) JR木次線の利用促進へ補助拡充 協議会、駅からの移動費 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2025/5/1 20:34:07)
0 notes
Text

青山のマクドナルドにて(青山/下北沢)
世田谷に住んでいた時だから、もう確か3年も前の話だけれど、ある出来事があって、マクドナルド芸人(と勝手に呼んでいる)を急に思い出したので書き出している。ある出来事というのは、本当に大したことじゃない。
外苑前にある前職の会社で働いていた時のこと。確か一年目の秋だった。総務から雑誌編集の部署に異動して、何から何まで新鮮で本当に忙しかった時だったと思う。心の余裕なんてものはなく、遅めの昼ごはんのために15時過ぎ、くだんの青山のマクドナルドに駆け込んだ。そこは青山通りに面していて、右手に行けば表参道、左に行けば外苑前駅がある。店の隣には自転車屋があり、道路を挟んではす向かいには今は移転して抜け殻となったエイベックス本社があった。
15時過ぎというのに店はいやに混んでいて、やっとの思いでハンバーガーとチーズバーガーを手にいれた。席に着くやいなやボケーっとした顔でハンバーガーを頬張っていると、大きなテーブルを挟んだ向こう側でガヤガヤ、ガヤガヤ、すごくうるさくて 「ったく、騒ぐなよ。こちとらハンバーガーで束の間のひと時を過ごしてるんだ」 と毒づきながら、ピクルス多めのそれを食べていた。男二人組。マックで男二人が立ちながら話しているなんて、目立つに決まっている。口論。
彼らはどう見ても喧嘩している風だったがなんと無しに盗み聞きしていると(そんなつもりはないのだが、否応無しに聞こえてしまうのだ)たぶん芸人なんだろう。ネタ合わせのために口論しているのだった。必死に。何について話しているのかは、よく聞こえない。でも話の端々が聞こえてきて、
「それはおもんないって」
「視聴者の皆さんは誰もF1なんて興味ないよ」
「俺がヤンキー風で行くから、お前は優等生でおれ」
「さて、ここで雪が降ったらどう?!」
みたいなセリフが店の中で響いた。喧嘩のような口論そのものは面白くなかったんだけど、その光景がやけに面白くて、「それ自体をコントやら漫才のネタにしろ」 と素人ながらに思った。上の口述(セリフ)にもある通り、片方は本当にガラの悪いヤンキーみたいで、髪をだらだらと長く伸ばし、擦れ切った黒いTシャツを着ていた。少なくとも東京のこの青山近辺に住民票を置いている風ではなかった。片方はというと顔も姿かたちも思い出せないくらい印象が薄かったのだけれども、上のセリフでいう優等生キャラをやれと言われたら 「やるよ」 というような、芸人らしからぬ風貌であったことはぼんやり覚えている。
ここでもまた僕は、役割としてヤンキー風が優等生キャラをやり、後者がヤンキー風を装った方が絶対面白い、と素人ながらに思ったのだった。しかし僕は臆病者だし、ここで口出ししたら中身ももうほとんど残っていないマックシェイクを投げられると思って、何も言わず傍観するほかなかった。正しい選択だとは思っている。戦略的傍観。
ただこれはもしかして、僕が知らないだけで有名な芸人なのかもしれない、とも思った。彼らの顔を凝視したけれど、ついにわからなかったししようがない。
・・・
それからどれくらい経ったかわからない。多分季節は変わって冬だったろう。上に書いた彼らの存在も忘れて意識の外にあった時、同僚の男と下北沢をあてもなくブラブラしていた。まだその頃はコロナなんてものもなくて、店で酒を自由に飲めたのだ。信じられるだろうか?
「かわいい女の子いないかな(しかも二人組)」と、チャンスなんてものがそもそもないとわかっていながらも、缶ビールを片手に店の外から店内を品定め(観察)して歩いていた。
「うーん、どうする?」「もう少し粘ろう。まだ10時だから」とか言い合っていた気がする。男二人が駅前の工事中の広場で口論をしていた。「聞き覚えのある声がする!」とかで思い出したわけではない。でも、その姿を見た瞬間に、青山のマックにいた彼らを思い出した。電撃的に、何かが脳を��激した。おお、と思った。同僚の彼が彼らに反応して「芸人みたいなのがなんか言い合ってんでw」と言ったが上に書いた経緯を彼に説明するのも面倒だったので「うわ、うける。シモキタらしいねw」と流した。
ただ、なんというか、心をひくものがあった。それはなぜかというと、第一に、あの青山マックでの口論を経てまだ芸人らしく活動していることに対してで、そしてもう一つはあっち(青山)には馴染んでなかったが、シモキタには本当に馴染んで居てホームグラウンドらしさを醸し出していたからだ。このような断片の集積で東京都心の町は作られているんだ、と拡大解釈したくらいだった。
話のオチを簡単に記すと、シモキタで見かけた彼らはそのあともっと遅い時間にTVの取材を受け、そこにいた姿を僕はTVの画面で見ることになった(もしかすると、「シモキタの駅前でネタ合わせの口論」というのももともとTV仕込まれたものであったかもしれない)。どんな番組であったかは忘れたが、「月曜から夜ふかし」みたいな「街で市民にいきなり話しかけてみた」類のものである。
番組では有名大御所の芸人がたまたまそこにいた彼らとリモートで会話し(その収録自体が夜中にLIVEで行われるものなんだろう)「おいお前ら芸人なんだって?これからどうなりたい?!」「有名になって●●したいっす!」みたいな、つまらないやり取りをしていた。3分くらいは尺があったと思うが、僕はどうしてもあの青山マックでネタ合わせしていた時の方が500倍はおもしろいと思った。ただ、その出演には僕が直接的に彼らをシモキタで偶然見かけた時のようなある種の感動があった。
名前も何も知らないあの二人組はいま何をしているのだろうか。もしかすると僕の知らないうちに売れっ子になっていて、TV画面越しにすれ違っているのかもしれない。僕が見ていないだけでネットで話題になっているかもしれない。
と、取り留めもなく書いてみたがどうしてこれを思い出したかというと、今引っ越してきて家の近所にある根津のカフェで 隣にいた女性二人組がいかにも芸人っぽかったからだった。 片方はクリームソーダを飲み、関西弁を話し、自分のことを「オレ」と呼ぶ。
片方は抹茶ラテを飲み、気弱そうで、ふくよかな体型をしている。彼女らもまた類は違えど意見の相違をお互いの立場を踏まえながらニンシキをすり合わせていた。上に書いたようなことに重なった。結局「オレ」が折れて(上のこととは関係ないけど)ふくよかな彼女の分の抹茶ラテ代を出していた。
たぶん違うけど、たぶんそうだと思うんだよな。
※他のブログサイトより転記。時間軸はその当時のママです
0 notes
Text
2025/03/05
中年男性の見た目をした天使と渋谷の中華バル、山椒をまとった唐揚げが美味しかった ほたるいかの紹興酒漬けも ふたりでいくにはいいかもしれない! 私は性別を感じない年上男性に定期的に会う星にいて毎回すごく良い機会を持ってきてくれる
渋谷のカラオケスナックで終わりかと思いきや西麻布に連行され白いお着物が綺麗なままのいるお店 奥の個室に通されて立派な椅子にドキドキしてしまい姿勢良く座る ハキハキと淡々としゃべる慶應卒のお姉さん
そのまま3分くらい歩いたところの暗くて赤い照明のそれまたスナック 暗くて赤くて怖かった カウンターで仕事の話をしすぎた ちゃんと営業したほうがいいかなと思って 店長はまえに関内で働いていらしい 白楽に住んでるみたいな話をしたような気が 途中でママが来て天使が「はなしたほうがいいよ!!」と気を遣ってもらいとにかく小学生みたいに全部きいた 変なお客っていましたかとか、どうやってお客さんと距離取るかとか 15年も西麻布でやっていて去年独立したらしい とにかくお客とそういう関係にならないのが長く続けるコツだと言っていた 店を出して10年ぶりに顔を出してくれる人がいるらしい すごく綺麗なママだった 色気がすごくて うつくしかったなあ 結局距離を近くすることらしい 西麻布って記号すぎる いいひともいた 綺麗なことも大事だけどやっぱりコミュニケーションなんだからね
3人でラーメン屋に入って柚子胡椒の入ったつけ麺をたべた 背徳感を食べた 朝方のラーメンって美味しいとかじゃなくてきもちよいから啜ってる 渋谷までタクシーに乗り、煌々と光る銀座線の入り口に始発を感じてねむくなる しっかり乗り過ごして横浜まで行き、戻る あと始発までどれくらいかねと思わな買ったのがすごい たのしかった
髭面のオーナーらしきひとに店出るときにフルネーム叫ばれたのなんだったんだ!?!?!?!?
0 notes
Text
悪魔ッ子の孫娘
[1966(昭和41)年]
1. 帝国サーカス団公演。 「次に登場いたしますはー、希代の魔術師、赤沼幻檀(あかぬまげんだん)と悪魔ッ子リリー!!」 円形アリーナの中央に黒ずくめの魔術師が歩み出た。 床まで届く黒マントに黒手袋と黒いシルクハット。 お世辞にもハンサムとはいえない容貌だった。痩せこけた頬の上に爬虫類を思わせる丸い両眼が開いている。 愛想笑いの一つもしないで、ぎょろりと客席を見回した。
魔術師が黒マントの裾を大きく翻すと、その陰から赤いチャイナ服の小柄な人物が出現した。 年端も行かない少女だった。ほんの6~7歳くらいではないか。 客席がどよめいた。 何もないところに少女が出現したことに驚いたのではない。出現した少女の幼さに驚いたのでもない。 観客は彼女の登場を待ちかねていたのだった。 魔術師と少女のショーは新聞に取り上げられるほど話題になっていた。 ほとんどの客は二人を目当てに来ているのである。
少女はお人形のように動かずその場に立ちくしている。 魔術師は白いロープを出すと少女の手首を背中で縛った。続いて足首も縛る。 ��差し指を立てて目の前で振ると、少女は即座に意識を無くした。 その場に崩れ落ちたところを抱きかかえられる。
大きな金庫が引き出されてきた。 その横幅は魔術師が両手を広げた幅で、その高さは魔術師のシルクハットの高さである。 金属製の扉を重々しく開くと中は何もない空洞だった。 そこにロープで縛った少女を転がせた。 頬を軽く叩いて目覚めないことを示す。 扉を閉めて鍵を掛けた。
照明が暗くなって会場全体が薄闇に包まれた。 アリーナ中央の金庫とその横に立つ魔術師がほのかにシルエットになって見えた。 そして──。
おお~っ。 再び客席がどよめいた。 今度は正真正銘の驚きの声。
金庫の上に少女の頭が生えたのである。 その頭はゆっくり上昇し、顔、首、肩、そして胴体から足までの全身が現れた。 手足を縛っていたはずのロープはなくなっていた。 金庫の上に立つチャイナ服の少女。 彼女は硬い金庫の天井をどうやって通り抜けたのだろうか。
不思議なことはもう一つあった。 暗い会場に少��の姿がはっきり見えることである。 スポットライトなどで照らされている訳ではない。 少女自身がほのかに発光していた。まるで幽霊のように。
魔術師が両手を広げて呪文を唱えた。 少女の足が金庫から離れた。 彼女は何もない空間に浮かび上がったのだった。 5メートルくらいの高さまで上昇して静止、すぐに何もない空間を前方へ歩み出す。 観客席の上まで来るとすっと降下した。 真下にいた女性客のすぐ傍に降り、ほんの数センチの距離まで顔を寄せて悲鳴を上げさせた。 少女は会場の空間を上下左右自由自在に移動した。 ワイヤなどで吊られているようには見えなかった。 天井近くまで上ったかと思うと、急降下して客席ぎりぎりで旋回し再びふわりと舞い上がってみせた。
少女が "飛行" していた時間はおよそ5分くらいだろうか。 魔術師が手招きすると彼女は金庫の上に戻ってきた。 ゆっくり金庫の中へ沈み込むようにして消えたのであった。
照明が点いて会場が明るくなった。 魔術師が金庫を解錠して扉を開ける。 中には白いロープで縛られた少女が眠っていた。 最初に閉じ込められたときと何も変わった様子はなかった。
少女は拘束から解放されて目を覚ました。 魔術師と並んで頭を下げる。 満場の拍手と声援を浴びながら彼女は初めて笑顔を見せたのだった。
[2024(令和6)年]
2. 私はテーブルの向かい側に座る男にグラスの水をかけた。 他の女と結婚するから関係を終わりたい? バカにしないで。 「サヨナラ!」 「ちょ、けやき!!」 そのまま席を立ち、小走りでカフェを飛び出した。
金曜日の夜。 私、近本けやきは雑踏の中を泣きながら駆けた。 運命の人と信じてたのに。 とても優しくて、よく笑わせてくれて、どんなグチも聞いてくれて、ベッドの相性も最高で。 大切な話があると言われて、いよいよプロポーズと信じて来たのに。 アラサー女の貴重な2年間を返せ、このバカ野郎ー!! 涙で景色が霞んだ。 私きっとお化粧ぼろぼろだ。
きゃっ。 前から来た女性と当たりそうになって私は転倒した。 歩道に座り込んで腰をさする。 痛、た、た。 「大丈夫ですかっ?」 「だ、だいじょーぶ・・」 その人は私の手を持って立つのを助けてくれた。 赤いチャイナ服を着た女の子だった。 男の子みたいなショートヘア、くりくりした大きな目。 可愛いな。高校生かしら。 いけない、謝らなきゃ。 「ごめんなさいっ、前見ないで走って。そちらこそ怪我とかありませんか?」 「あたしは全然。それよりも」 「はい?」 「変なこと聞きますけど、お姉さん金縛りの癖がありませんか?」 !! 「金縛り!?」 「そんな気がしまして」 「いいえ、そんな癖はないです。失礼しました!」 「あのっ、もしもしっ」 私は顔を背け、女の子を置いて逃げるように走り去ったのだった。
・・金縛り。 布団に入って眠ろうとすると襲われる状態。意識はあるのに身体が動かない。 私は子供の頃によく金縛りをやっていた。 最近は少なくなったけれど、それでもあの感覚は鮮明に覚えている。 やなこと思い出しちゃったな。 ただでさえ男に二股をかけられて滅入っているところなのに。
無性にお酒が飲みたくなった。 飲んでも嫌なことを全部忘れられるはずはないけど、酔えば少しは楽になりそうな気がした。 ・・よぉしっ! 近くにあったファッションビルのパウダールームに飛び込んだ。 泣き崩れたお化粧をちゃちゃっと直して外に出る。 行き慣れたパブに顔を出すのはやめよう。 だって今日は週末の金曜日。絶対に知り合いに会うし、会ったら泣いたでしょって見破られる。
目に留まった雑居ビルの入口にスナックの看板が並んでいた。 いつもなら一人でスナックなんて入らない。 でもその夜の私はひねくれていた。 傷心の女がスナックでカラオケも悪くないわね。 どうせなら一番へんてこりんな名前のスナックに入ろう。 『すなっく けったい』。 よし、ここだ。
3. さほど広くない店内はお客でいっぱいだった。 「ようお越し! ・・お一人?」 カウンターに一つだけ空いていた椅子席に案内された。 とりあえずビールを頼む。
「お姉さんも手品を見に来たのかい?」隣席のおじさんが話しかけてきた。 「あ、いえ」 「違うで。このお客さん今日が初めてやし」 カウンターの向こうのママが言ってくれた。関西弁? 「そうか、ラッキーだね。始めて来て赤沼さんの手品を見れるなんて」 「毎月第3金曜は流しの手品が来るんよ。・・せっかくやから見てってちょうだい」
流しの手品? そんなもの初めて聞いたよ。 言われてみればこのお店、普通のスナックと空気が違った。 カラオケコーナーはあるけど誰も歌ってないし、大声で放談する人もいない。 落ち着いたカフェかバーみたいな雰囲気。 女性も多いな。よく見たらお客の半分が女性だった。 どの人も手品が目的で来てるんだろうか。
しばらくして入口のドアが開き、黒ずくめの男性が現れた。 タキシードの上に黒いマントを羽織ったお爺さんだった。頭にはシルクハット。 ひと目で手品師と分かる服装。 お爺さんに続いて赤いチャイナ服の女の子が入ってきた。大きな革のトランクを両手で持っている。 あっ。あの子! 私が歩道で衝突しかけた女の子だった。
カラオケコーナーのスポットライトの当たる位置まで進むと、二人は並んで頭を下げた。 皆が拍手した。遅れて私も拍手した。 女の子が私に気付いたようだ。胸の前で右手を振って笑いかけてくれた。 困ったな。笑顔を返しにくい。
「今夜もたくさんお集まりいただきましたな。こんな爺の芸がひとときの慰めとなれば幸甚の極み・・」 お爺さんは口上を済ませると、マントの中からステッキを出して振った。 ステッキは一瞬で花束に変わりそれを近くの女性客に渡した。
次に左手を高く掲げた。 何もないはずの手の中にトランプのカードが1枚出現した。 それを右手で取って投げ捨てると、左手にまた1枚現れた。 次々とカードを出現させて投げた。最後の何枚かは左手から直接空中に投げて飛ばした。 「あれはミリオンカードっていう技だよ。あの爺さんの十八番さ」 隣に座るおじさんが教えてくれた。 「へぇ。詳しいんですね」 「まあね。毎月ここで見てるからね」
お爺さんは手品を続けた。 銀色のリングをいくつも繋いで鎖のようにしたり、ピンポン球を指の間に挟んで増やしたり減らしたりした。 それから紙に火を点けそれを口に入れて食べてみせた。 ほとんど笑顔も見せずに淡々と続けた。 マジックとか手品は全然知らないけど、何となく最新のマジックではないような気がした。 昔からある手品をやっているんじゃないかしら。
「レトロだろう?」 隣のおじさんが笑いながら言った。 「やっぱり古い手品なんですか?」 「そうだね。あんなのばかり何十年もやっているらしいよ」 「そうなんですか」 「でもこの後の幽体離脱のイリュージョンはすごいよ。何回見ても不思議なんだ」 幽体離脱? イリュージョンって確か、美女が宙に浮かぶとか、そういうマジックよね?
4. チャイナ服の女の子がカウンタースツール(カウンター席用の背の高い回転椅子)をお店の奥から借りて持ってきた。 トランクの中から薄いカーキ色をしたキャンバス生地の包みを出すと、客席に向けて広げて見せた。 金属の金具とベルトがついていて、先の閉じた長い袖がだらりと垂れたジャケットのような形状。 これは知ってるわ。 病院とか拘置所とかで暴れる人に使う拘束衣ね。
お爺さんが拘束衣を女の子に着せる。 長い袖に腕を入れさせると、背中で編み上げになっている紐を締め上げた。 そして腕を前でクロスさせ袖の先を背中できつく絞って固定した。 腰から下がったベルトも両足の間に通して後ろで留めた。 「どなたか力のある方、お手伝いを」 男性のお客に手伝ってもらって女の子を持ち上げ、カウンタースツールに座らせた。 最後に黄色いハンカチで女の子の足首をスツールの一本脚に縛りつけた。 女の子はにこにこ笑っているけれど、これって割と厳しい拘束じゃないかしら。

お爺さんが前で指を振ると女の子は目を閉じて動かなくなった。 トランクから大きな布を出し、お客さんに再び手伝ってもらって女の子の上から被せた。 女の子の姿は隠れて見えなくなる。 「さぁて・・、」 お爺さんが前に立って両手を広げた。 布の下で動けないはずの女の子がびくっと動いた・・ような気がした。 しばらく何も起こらなかった。 やがて──。
おおっ。店内に驚きの声が響いた。 布の上に薄いもやのような影が現れて、空中に浮かんだ。 影はすぐにくっきりしてチャイナ服の女の子になった。
女の子は拘束衣を着けていなかった。 浮かんだままにっこり笑うと、ゆっくり一回転してみせた。 一度天井近くまで上昇し、それから降りてきてお店の中をふわふわ移動した。 お客の近くに寄ると手を伸ばして一人一人の肩や頭を撫でた。 わっ。きゃっ。 その度に悲鳴が上がる。
女の子が私の傍に来た。 ごく普通の女の子に見える。でも足が床についてない。 いったいどういう仕掛けなんだろう? 彼女は私の耳に口を寄せて囁いた。 「・・あとでお話しさせて下さい」 先ほど歩道で会話したときと同じ声が頭の中に共鳴するように聞こえた。 あまりにもリアルだった。トリックがあるとは思えない。 まさか本物の幽体離脱? 背筋が凍りついた。
5. その夜、私はベッドの中で眠れないでいた。 二股かけられた男のことは、もうどうでもよくなっていた。 それよりスナックで見た幽体離脱が忘れられなかった。 耳元で囁かれた声。 私は怖くなってあの場から逃げ出して帰ってきたのだった。
あの後、女の子は高く舞い上がって元の場所に戻った。 布の下に隠れた本体に重なるように消えると、手品師のお爺さんはその布を外してみせた。 そこには拘束衣を着せられた女の子が何も変わることなく座っていた。 お爺さんが彼女を解放している間に私は立ち上がり、急いでお会計を済ませてスナックから出てきたのだった。
・・金縛りの癖がありませんか? そうだ、私には金縛りの癖がある。 どうして見抜かれたんだろう? あまり考えちゃいけない。考えすぎると金縛りが再発する。
女の子が拘束衣を着せられる光景が蘇った。 長い袖に両手を差し入れる。袖の先を背中に巻き付けられて、ぎゅっと引き絞られる。 私は仰向けに寝たまま、右の掌を左の脇腹に、左の掌を右の脇腹に当てた。 これで強く縛られたら絶対に動けないよね。 腕に力を入れて身体に押し付けた。 ぎゅ。圧迫感。
・・ブーン。耳鳴りがした。 いけない!! 気がつけば私は動けなくなっていた。手も足も���らゆる筋肉に力が入らない。
(拘束衣に自由を奪われた私。あの女の子と同じ)
違う。これは金縛りっ。
(お爺さんが大きな布を広げた。ふわりと覆われる。何も見えない)
だから金縛りだってば。無理に動こうとしないで深呼吸しなきゃっ。
(拘束感が薄れる。布を通り抜けるイメージ)
もやが晴れるように視界がクリアになった。 目の前に見えたのは自室の天井。 私は仰向けに寝た姿勢で浮かんでいるのだった。 腕がだらりと斜め下に開いた。 拘束は・・、されていないみたい。
起きなきゃ。 そう思うと空中でまっすぐ立っていた。 ここは私の部屋。ワンルームマンションの最上階。窓の外には街灯り。 自分に起こったことを理解した。 これは幽体離脱だ。
足元を見下ろすと、目を閉じてベッドに寝ている私が見えた。 上へ。 意識するなり、すっと浮上して天井に当たった。と、天井を突き抜けてマンションの屋上に頭を出した。 真っ暗な空と夜の街が見えた。 いけない。 下へ。 降下して部屋に戻った。 スナックで見た幽体離脱は震え上がるほど怖かったのに、いざ自分に起こると驚きも恐怖もなかった。 こういうものかという感じ。 今の私、どんなふうに見えてるんだろう?
洗面台の鏡の前へ行ってみた。 歩かなくても移動できるから楽だ。 鏡の中によれよれのスウェットとショートパンツの女がいた。私だ。 電気も点けてないのにくっきり見える。 そういえばあの女の子もくっきり見えたな。カラオケコーナーのスポットライトの中で。 灯りを点けたらどうなる? 壁のスイッチを入れようとしたら指が壁の中にめり込んだ。 あら残念。
ベッドの上空に胡坐で浮かび、腕組みをして考えた。 私、どうなっちゃったんだろう。金縛りに加えて幽体離脱まで達成してしまうとは。 そもそもこれは現実なのかしら? ぜんぶ夢の中のような気もするし。 スマホやテレビでチェックしたらと思ったけど、触れないから確認できない。 窓に目を向けた。今の私なら窓ガラスを通り抜けられる。 コンビニにでも行って店員さんに私が見えるか聞いてみようか。 ダメだよ。もし本当に見えたら幽霊が来たって大騒ぎになるでしょ。
今、何時だろう? ベッドサイドのデジタル時計は 2:59。見ているうちに 3:00 に変わった。 じー。枕元のスマホが振動して画面が明るくなった。何かの通知を表示するとすぐに暗くなった。 夢だとしたらすごいわね。むちゃリアル。 スマホに手を伸ばしたら手がスマホをすり抜けた。 やっぱりこうなるか。ばかやろー。
・・
気がつけば朝だった。 私はベッドから起き上がって頭を掻く。ああ、本体に戻ったのか。 時計を見ると7時半。 も少し寝ようかな。今日はお休みだし。 いつもの習慣でスマホをチェックすると飲み仲間の女友達から LIME のメッセージが入っていた。 『水曜いつものパブでどう?』 メッセージの時刻は 3:00。
記憶が鮮明に蘇った。 時計が3時になって、同じタイミングで着信通知。 夢と現実がここまで一致するなんてあり得ない。 あの幽体離脱は現実だったと確信した。
それなら──。 私は思った。 あの子に会わないといけない。あの女の子と話をしないといけない。
6. 土曜のせいか『すなっく けったい』は空いていた。 先客はサラリーマン風の若い男性が二人だけ。 JPOP の音楽が流れていたりして、いたって普通のスナックだった。
関西弁のママは私を覚えていた。 「昨日のお姉さんやね。途中で帰ってしもたから莉里(りり)ちゃんが残念がってたわよ」 「莉里ちゃんて?」 「手品のアシスタントしてた子やんか」 「ああ、チャイナ服の女の子ですね」 「そうそう。莉里ちゃんは赤沼さんのひ孫なのよ」 へえ、孫じゃなくてひ孫さん。
ママによると、あのお爺さん(=赤沼氏)は2年ほど前にふらりと現れて手品をするようになった。 ずっと一人でやってたけど、今年の春になって莉里ちゃんも一緒に来て幽体離脱のイリュージョンを始めた。 それが受けて、今では赤沼氏が来る日は手品好きのお客が集まるという。 「あの人も昔は名のある手品師やったらしいけど、今は道楽でやってる言(ゆ)うて笑(わろ)てはったわ」 「私、赤沼さんと莉里ちゃんに会いたいんです。連絡先ご存知ないですか?」 「お姉さんネットで配信してる人? それともマスコミ関係とか。それやったら会(お)うてもらえへん思うよ」 「違いますっ。あの、個人的に、すごく個人的に会いたいだけなんです」 ママはにやりと笑った。 「それやったら、ボトル入れてくれたら話そかな?」 「入れます!」 「よっしゃ。・・あいにく連絡先は分からへんけど、雲島のほうの公園でストリートなんとかゆうのをやってるのは聞いてるわ」 「ストリートパフォーマンスですか?」 「それそれ。やるのは日曜だけでそれも気まぐれや言うてはったから、絶対に会えるとは限らへんけどね」 「ありがとうございます。行ってみます」
「・・ママぁ、カラオケするでぇ」「はーい、どぉぞ」 サラリーマン組が歌い始めた。
「ところで何飲む?」 ママに聞かれた。 「あ、ボトル入れますから。・・その、一番安いので」 「さっきのは冗談やから無理せんでええよ。そやね、何でもいけるんやったらホッピー割なんかどう?」 初めて飲んだホッピーの焼酎割は爽やかで飲み易かった。 「美味しいです」「やろ?」 ママも自分のグラスに入れたホッピーをぐびりと飲んで笑った。 「お姉さんのお名前お聞きしていい?」 「私、けやきです。近本けやき」 「けやきちゃんね、覚えたで。・・それで二人に会うてどうするの?」 「昨日の手品で聞きたいことがあるんです。特に莉里ちゃんの方に」 「ふーん、さてはけやきちゃんも幽体離脱してもぉたんやな」 ぎっくう!!! 「がはははっ、そんな真顔で驚かれたらホンマに幽体離脱した思てまうやんか」 「いえ、あの」 思い切り笑われてしまった。
「さあ、カラオケ空いたで。あんたも遠慮せんと歌いっ」 「あ、はい。・・じゃあ『ふわふわタイム』を」 「がははっ、アニソン! ええやんっ」 それから私はカラオケでアニソンを歌い、サラリーマン二人と意気投合して歌いまくった。 ホッピー割はいつの間にかハイボールとストレートのジンに変わり、結局ボトルキープと変わらない代金を払うことになった。
7. 翌日はよく晴れていた。 私は『けったい』のママから聞いた公園に来ていた。 そこは野鳥や水鳥の観察ができる貯水池や広葉樹の森が広がる自然公園で、私は赤沼氏と莉里ちゃんを探して歩き回った。 どこにいるのか分からないし、どこにもいないかもしれない。
ふう。疲れてベンチに座り込む。 『けったい』で飲み過ぎたかしら。おかげで爆睡して金縛りも幽体離脱もなかったんだけど。 それにしてもこんなに広い公園って分かってたら、もっと歩き易い格好にしたらよかったな。 私はロング丈のワンピースにヒールを履いて来たのだった。
・・あれ? 遠くに人が集まっている。 なだらかな芝生の丘の上にレンガの壁で囲まれた噴水があって、そこで何かが行われていた。 噴水の上にふわりと浮かぶ人影が見えた。 白いワンピースを着ていて背中に羽根のようなものがついている。
私は立ち上がった。 息を切らせながら斜面を登り、ようやく噴水の端へたどり着いた。 見上げると噴水に虹がかかっていた。 きらきら輝く飛沫と太陽の光。 その光の中、4~5メートルくらいの高さを莉里ちゃんが "歩いて" いた。 肩を出した真っ白なキャミワンピ。大きく広がる天使の翼。ひらひらした裾から伸びる素足。 神々しいくらいに綺麗だった。
「莉里ちゃん!」 私が叫ぶと彼女はこちらを見下ろして驚いた顔をした。 噴水の中を���っくり降下し、それから水面を歩いて外へ出てきた。 彼女の髪や衣装は少しも濡れていなかった。 噴水の畔には大きなキャリーバッグが置いてあって、莉里ちゃんはその中へ溶け込むよう消えた。 取り囲むギャラリーから「ほおっ」という歓声が上がる。 「すごい! このイリュージョン」「どうなってるんだろ?」会話が聞こえる。 そうだよね。イリュージョンと思うよね普通。
キャリーバッグの脇に白髪のお爺さんが立っていた。 それはもちろん赤沼氏だけど、明るい色のシャツとズボンで優しく笑う姿は『けったい』で見たのと全然違っていて驚かされた。 赤沼氏は観客に向けて親指を立てウインクすると、キャリーバッグを横に倒して蓋を開けた。 バッグの中には拘束衣を着せられて丸くなった莉里ちゃんが入っていた。 立ち上がって拘束衣を脱がせてもらう。 弾けるような笑顔。額に汗が光っていた。 やっぱり可愛い子だわ。
拍手の中、二人はお辞儀した。 足元に置いた菓子缶に小銭がぱらぱら投げ込まれる。 莉里ちゃんが私を見て手を振ってくれた。 薄いキャミワンピ1枚だけ纏った背中に天使の翼はついていなかった。
・・
「近本けやきといいます。先日は途中で帰ってしまってごめんなさい!」 ギャラリーがいなくなってから私は二人に挨拶した。 「あたしは気にしてません。それに、きっとまた会えると思ってましたから」 莉里ちゃんが答えてくれた。
「実は私、金縛りの癖があります」 「あ、やっぱり」 「あの夜、久しぶりに金縛りになりました」 「!!」 「それともう一つ、私も本当に驚いたんですけど、えっと・・」 言い淀んでいると赤沼氏が応えてくれた。 「貴女も幽体離脱したのですかな? 先程のこの娘と同じように」 「あ、あれ、やっぱり本物の幽体離脱・・ですか?」 「はい!」 莉里ちゃんがそう言ってにっこり笑った。
あっさり認めてくれてほっとした。マジックじゃなかった。 さっき見たのも、『けったい』で見たのも、どっちも本物の幽体離脱だったんだ。 二人に告白した。 「私も、生まれて初めて宙に浮いて、自分の寝顔を見下ろしました」
8. 狭いキッチンに香ばしい匂いが漂っている。 ここは赤沼氏が暮らす古びた公営団地。 夕食を食べていきなさいと誘われたのだった。
私は莉里ちゃんと並んで座り、準備する赤沼氏の背中を見ながら二人でお喋りした。 莉里ちゃんのフルネームは関莉里(せき りり)。16 歳で高校1年生だと教えてくれた。 ひいお爺さんの赤沼氏はこの団地に一人住まい。莉里ちゃんは近くの一戸建て住宅に両親と住んでいる。 彼女は赤沼氏のアシスタントを春休みの3月から始めた。 「皆さんの前でふわって浮かんでみせるの、楽しいんです」 そう言って明るく笑う莉里ちゃん。 昼間から着たままでいる肩出し白ワンピが眩しい。
「・・さあ、できたよ。こっちは桜海老のビスクと鮭の香草焼き。メインにチキンソテーのクリームチーズソース。バケットを切らしていたからカリカリに焼き上げた食パン。ガーリックバターをつけて食べて下され」 「これ全部赤沼さんが作ったんですか!?」 「びっくりでしょ? ひい爺ちゃんはお料理が得意なんです」 「昔はフ��ンチのシェフをされてたとか?」 「いやいや、メシ作りは好きでやっておるだけだよ」
食卓テーブルはないからと、床に置いた卓袱台(ちゃぶだい)を囲んでお料理をいただいた。 「美味しいです!」 「それはよかった。・・そうそう、ワインは飲むかね? ちょうどドメーヌ・トロテローの白があるんだが」 「い、いいんですか!?」 「遠慮は無用。ただしワインにしてはアルコール 15 度を超える強めの酒だ。いけますかな?」 「いけます!」
赤沼氏は笑って冷蔵庫からワインの瓶を出してくると、プロのワインソムリエみたいにスマートに栓を抜いた 「ではティスティングを・・。おっとその前に姿勢を正していただきたい」 「あ、すみません」 私はきちんと正座して、少しだけ注いでもらったグラスを鼻に近づけた。 「どうだね? 2020 年のロワールで最もリッチなワインだよ。ふくよかで甘い香りがするだろう?」 「そうですね、いい香り」 「ゆっくり口に含んで」 口の中に芳醇な香りが広がった。 「舌の上で転がせば辛口で、凝縮された果実感と酸味がたちまち貴女を酔わせようとする──」 「ああ、本当」 ふぁっと熱いものが広がる感覚。 酔ってしまいそう。 でもほんの一口試しただけなのに、私こんなに弱かったかしら?
ぽん。誰かに肩を叩かれた。 振り返ると、いつの間にか赤沼氏が後ろにいた。 「けやきさん、やはり貴女は暗示にかかり易いようだね」 「?」 「もう一度グラスの中身を飲んでみなさい」 ワインを飲むと味がしなかった。 あれ? 「それはただの水だよ」
「けやきさん、ごめんなさい」 莉里ちゃんが言った。 「あたしからひい爺ちゃんにお願いして確かめてもらったの」
・・
食事をしながら話を聞いた。 暗示は言葉やいろいろな合図を受けて誘導される精神的作用だという。 私はただの水をワインと思い込んだ。 思っただけじゃなくて、本当にワインの味と香りを感じたのだった。 赤沼氏はそうなるように私を導いた。これが暗示。
莉里ちゃんが言った。 「あたし、最初に会ったとき "金縛りの癖がありませんか?" って聞きましたよね。たぶんあれが金縛りの暗示になっちゃったと思うんです。ごめんなさい!」 「でも私にはもともと金縛りの癖があったんだし」 「それも暗示かもしれません。けやきさん、そんなにしょっちゅう金縛りをやってましたか? 癖があるって意識してましたか?」 え? そうだっけ?
「金縛りは睡眠障害の症状の一つと言われるが、それだけではない。暗示が金縛りの引き金になることもあるんだよ」 赤沼氏が説明してくれた。 「起こる起こると思っていると起き易くなるんですね」 「そう。だから逆に金縛りを起きにくくするのにも暗示が使えるし、起こったときに恐怖を感じないようにもできる」 「できるんですか? そんなこと」 「試してみるかね?」 「・・はい。お願いします」
食事の後、食卓を片付けて私は赤沼氏と向かい合って座った。 「貴女が金縛りになったときの状況を話して下さい。できるだけ詳しく、どんな些細なことでもいいから」 「はい、あのときは、」 あのときはベッドに入って、莉里ちゃんの幽体離脱を思い出し��いた。 金縛りの癖があるって言われたことを考えた。 それから莉里ちゃんが拘束衣を着せられるところを思い出して。 そうだ。私、自分が拘束衣を着て動けなくされるのをイメージした。 両手を前で組んで。ぎゅっと。
・・ブーン。耳鳴りが聞こえた。 あぁ、駄目! 身体ががくがく揺れるのが分かった。
「喝!!」 赤沼氏の声が響く。はっとして我に返った。 大丈夫、ちゃんと動ける。金縛りになんかなってない。 莉里ちゃんが横から肩を抱いてくれた。 「大丈夫ですよ、けやきさん」優しい声で言われた。 「怖い思いをさせてすまなかったね。・・しかし記憶を辿るだけで起こりかけるとは。よほど強い暗示か、さもなくば貴女の感受性が並外れているのか」 赤沼氏が言った。 「でも施術の方向は見えたよ。悪いがもう一度やらせてもらえるかね。もう怖い思いはさせないから」 莉里ちゃんに目を向けると、彼女はまっすぐ私を見て頷いてくれた。 私は答えた。 「やって下さい。お任せします」
・・
赤沼氏が奥の部屋から持って来たのは束ねた縄だった。 「背中で手首を交差させて」 手首に縄が巻き付いた。 それから二の腕と胸の上下にも縄が巻き付いて、全体をきゅっと締められた。 がっちり固められて動けない。 私は人生で初めて縄で縛られた。
仰向けに寝かされ、頭の後ろと背中で組んだ手首の上下に丸めた座布団を押し込まれた。 「床に当たって痛いところはないかね?」 「いいえ」 「では目を閉じて、リラックスして。大きく深呼吸。・・そう、ゆっくり、深く」 息を深く吸うと縄の締め付けが強くなった。 辛いとか苦しいの感覚はなかった。締め付けられることに快感すら覚えた。
「けやきさん、今、貴女は縛られている。貴女を包む縄に身を預けている」 「はい」 「貴女が感じるのは穏やかな心地よさ。縄に守られる安心感。とても気持ちよくて、ずっとこのままでいたいと思う」 気持ちいい。まるで抱きしめられているみたいに気持ちいい。 優しくて、暖かくて。 これは、幸福感。
「いい表情をしているね、けやきさん。貴女は縄に守られているんだよ。何も恐れなくていい。あらゆることが気持ちいい」 私は守られている。 この気持ちよさの中にずっといられたら、何も怖くない。
「たとえ金縛りでも気持ちいい。・・悦び、と言ってもいい」 そうか。 今の私にもう金縛りを怖がる理由なんてないんだ。 金縛りが来ても嬉しい。
「準備できたようだね。さあ、迎えたまえ」 ・・ブーン。耳鳴りがした。 私はそれを受け入れた。
目を開けると赤沼氏と莉里ちゃんがいた。私を見下ろして微笑んでいる。 動こうとしたけど動けなかった。 縄で縛られた腕はもちろん、首、脚、指の一本も動かせなかった。 完璧な金縛り。
怖いとは感じなかった。暗示をかけてもらったおかげだろうか。 私は落ち着いて自分の状態を確認する。 どこも痛くない。気持ち悪いところもない。 誰かが上に乗って押さえている感じ・・、なんてものも全然ない。 身体中の筋肉が脱力したまま、脳からの命令を無視しているイメージ。
面白いね。 嫌じゃないぞ、この感じ。 今までの金縛りで味わったことはなかった。こんな感覚は初めてだよ。 確かに悦びかもしれない。 私、マゾのつもりはないんだけど。 「どうかな?」赤沼氏が静かに聞いた。 「・・今、貴女は動けない。動けないが怖くない。金縛りは怖くない。それどころか快適に感じるんじゃないかな?」
・・はい、快適です。 答えようとしたら、ふわりと身体が浮かんだ。 あれ? 私はそのまま赤沼氏と莉里ちゃんを通り抜けて浮かび上がった。 あらら、また幽体離脱しちゃったんだ。
私は仰向けで後ろ縛りのままだった。 そのまま上昇して天井にぶつかる前に止まった。 前、後ろ、右、左。 自由に移動できることを確かめた。前と同じだ。 その場でくるくる回ってみた。 頭を下に向けて倒立した。楽しい。 おっとスカート。 慌てて見下ろしたらワンピースのスカートはめくれ上がることなく足先の方向へのびていた。 引力は関係ないのね。
前を見ると逆さになった二人と目が合った。 いや逆さになっているのは私の方だけど。 縄で縛られた女が倒立状態でふわふわ飛んでいる。暗がりで会ったら腰抜かすかも。 赤沼氏と莉里ちゃんには見えているんだろうか?
「もしもし、私のこと、どう見えてますか?」 「ええっ」「何と・・」 揃って驚かれた。 「聞こえたよね? ひい爺ちゃん」「はっきり聞こえた」 え、聞こえたらびっくりするんですか?
「貴女が逆さに浮かんでいるのはちゃんと見えておるよ」 「びっくりしたのは、離れていても声が聞こえたことなんです」 二人が説明してくれた。 「この間は莉里ちゃんも私に話しかけてくれたと思いますけど」 「あたしは相手の近くで囁くのが精一杯です」 そうだったのか。確かにあれは耳元で聞こえたわね。 「体外に分離した幽体が普通に会話できるのは大変なことだよ。幽体の濃度がとても高いことの証しだ」 幽体の濃度? さっぱり分からない。
「あの私、金縛りに入っただけなのに、幽体離脱までしちゃったみたいですみません」 「金縛りをきっかけにして幽体が分離するのは珍しいことではないよ」 「よくあることなんですか」 「そうなんだが・・、そこでふわふわされていたら落ち着かないな。申し訳ないが本体に戻ってもらえますかな?」 「あ、はい」 私は自分の身体の上に浮かんだ。 そこには後ろ手に縛られた私が両方の眼をかっと見開いたまま眠っている。かなり不気味だ。
「・・あの、どうやって戻ったらいいでしょう?」 「前に幽体離脱したときは?」 「朝、目が覚めたら戻ってました」 「そうか」 赤沼氏はしばらく思案し、それから奥の部屋に行って紙袋を持ってきた。 「莉里、これで戻してあげてくれるかい」 「これを使うの? 久しぶり!」
莉里ちゃんが紙袋から出したのは赤いゴム風船と空気ポンプだった。 「これは手品で使う風船です」 風船をポンプに繋ぐと、レバーをしゅこしゅこ押して空気を入れた。 「これは画びょうです」 左手に膨らんだ風船、右手に画びょうを持ち、眠り続ける私の本体の耳元で構えた。 「ちょ、莉里ちゃん何するの!?」
ぱんっ!! 大きな音がして私は目覚めた。 「つぅ~」 耳を押さえようとして、自分が後ろ手に縛られていることを思い出した。 「驚かせてごめんさない。これ、あたしが幽体離脱の特訓で戻れないときにやってもらってた方法です」 「幽体を元に戻すには聴覚の刺激が最も効くんだよ」 「そ、そうなんですか」
・・
起き上がって縄を解いてもらった。 淹れてもらったコーヒーを飲みながら、赤沼氏の説明を聞いた。 「元々けやきさんには幽体離脱の特別な能力があったんだろうね。��れが急に活性化したのは、金縛りの暗示とおそらくスナックで莉里の実演を見たからだろう」 「私の能力って特別なんですか?」 「そうだね、けやきさんの幽体は濃度レベルが極めて高い。驚くべきことだ」
脳の神経細胞の接点をシナプスと呼ぶ。幽体と肉体の分離はシナプスの活動電位の乱れによって引き起こされる。 分離した幽体の濃度レベルが高いと幽体は可視化され、さらにレベルが高いと音声も伝わる。 レベルが低い場合は本人は離脱の記憶すらあいまいになり、たとえ覚えていても夢を見たと思うだけだ。
「これはわしの知り合いで一ノ谷という学者が提唱した理論だよ。もう何十年も前に死んでしまったが」 「そうなんですか」 「一ノ谷は超短波ジアテルミーという装置を作り、それを使ってわしの娘を訓練した」 え? 娘さんって、つまり莉里ちゃんのお婆ちゃん? 「今のは余計な話だった。忘れて下され」
「ひい爺ちゃん、これからどうするか話すんでしょ?」莉里ちゃんが催促した。 「おお、そうだったね。・・けやきさん、今、貴女が最も注意すべきは金縛りではなく幽体離脱なんだよ。使いこなす訓練が必要だ」 え? 「貴女のように幽体濃度レベルが高い人が無意識に離脱を繰り返すのはとても危険なんだ」 「もし今のまま幽体離脱が続いたらどうなりますか?」 「貴女自身の精神が不安定になる。やがて分離した幽体が独立した人格を得て勝手に行動するようになる。いわゆる生霊だね。娘もそれで危ない目に会った」 ええっ、それは困る。絶対に駄目。
「貴女はお勤めかな? それとも結婚して家庭におられるか」 「独身で勤めています」 男に振られたばかりで来年 30 のアラサーOLだよっ。 「では、後日改めてお越しいただけますかな? 今夜はもう遅い。これ以上続けると明日の仕事に差し障るでしょうから」 「分かりました。・・もしそれまでに幽体離脱が起こったら?」 「貴女の場合は金縛り状態でない限り、幽体の分離は起こらないと思っていい。そして貴女が金縛りになるのは縄で縛られているときに限られる。そういう暗示をかけたからね」 「つまり、縛られなければ安全なんですね?」 「その通り。もし貴女に誰かから緊縛を受ける趣味がおありなら、しばらく控えたほうがいい。その最中に幽体離脱が起こるかもしれない」 「そんな趣味はありません!」
莉里ちゃんが言った。 「けやきさん、実はあたしにも暗示がかかってるんですよ。あたしが幽体離脱するのは拘束衣を着せられたときだけです」 「莉里ちゃんも?」 「だって授業中に居眠りして勝手に離脱しちゃったらヤバイでしょ?」 そうか、だから莉里ちゃんはいつも拘束衣で幽体離脱してたのか。
・・
「では次は土曜日に来ていただくことでよろしいかな?」 「分かりました。時間は?」 「あの、」莉里ちゃんが右手を上げて言った。 「土曜の夜でもいいですか? 日曜日までゆっくりしてもらうことにして」 「夜? ・・なるほど」赤沼氏は何か分かったようだった。 「けやきさん、すまんがこの子の希望に合わせて夜でもよろしいかな?」 次の土曜の夕方6時に再訪の約束をして、私は赤沼氏の住まいを辞した。 すぐ近くにある自宅へ帰るという莉里ちゃんも一緒に出てきて、二人で並んで歩いた。
歩きながら莉里ちゃんは、赤沼氏の娘さん、つまり莉里ちゃんのお婆さんについて教えてくれた。 もう 60 年近い昔、赤沼氏は娘さんと一緒にサーカスで幽体離脱の見世物をやっていた。 娘さんは『リリー』と名乗っていて、彼女が見せる幽体離脱は大評判。当時の新聞に載ったほどだという。 リリーさんは 19 歳のとき父親の分からない女の子を出産し、その翌年に病気で亡くなった。 この女の子が莉里ちゃんのお母さんになる。
「あたしのママに幽体離脱の力はなかったんです。ごく普通に結婚してあたしを生んでくれました」 「莉里ちゃんの能力は赤沼さんが気付いたのね」 「はい。中1のとき金縛りになって固まってるところを見つけてくれました。あれがなかったら、あたし今頃本当に生霊になって飛び回ってたかもしれません」 莉里ちゃんは両手を前で揃えた幽霊のポーズで笑った。
「しばらくして離脱の特訓を始めました。ひい爺ちゃんは急に流しの手品師なんて始めたりして。それまであたし、ひい爺ちゃんが元手品師だってことも知らなかったんですよ」 「昔リリーさんと見せたショー��またやりたかったのかもしれないわね」 「きっとそうです。ママもそう言って、あたしがお手伝いすることに賛成してくれました」
莉里ちゃんの家の近くまで来て、私は莉里ちゃんと LIME のIDを交換した。 「赤沼さんのアカウントも教えてもらっていい?」 「ひい爺ちゃんはスマホ持ってません」「そっかー」
「けやきさん、あたしね、」 「何?」 「ずっと一人だと思ってたんです」 「?」 「こんなことができるの、もうあたし一人だけと思ってたんです。でも、けやきさんと会えました」 「莉里ちゃん・・」 「ものすごく嬉しくて、泣いちゃいそうなんですよ、あたし」 そう言うなり私に抱きついた。 「これからも一緒にいて下さい。お願いします!」 彼女の背中を撫でてあげた。 「私こそお願いするわ。これからもいろいろ教えてね、先輩」 「まかせて下さい! ・・今度一緒に飛びましょね」 え、飛ぶの? 「じゃあ、サヨナラ!」
手を振って走って行く莉里ちゃん。 真っ白なキャミワンピの裾が広がって揺れていた。 ちょっと大人びてるけど、まだ 16 歳なのよね。 素直で明るくて本当にいい子だわ。
ふと気付いた。 あの子、幽体離脱できるのは自分一人って言ってたよね。 ひいお爺さんの赤沼氏自身に能力はないのかしら? リリーさんのパパなのに。
9. 週明けから急に仕事が忙しくなった。 残業が続いて毎夜牛丼屋か深夜ファミレスの生活。 飲み友達を『けったい』に連れて行きたいと思ってたけど、それも叶わずあっという間に週末になった。
SNS であの噴水パフォーマンスの評判をチェックしてみたら、やっぱりイリュージョンだと思われているようだった。 そりゃあれ見て本物の幽体離脱と判る方が変よね。 女の子が可愛い!という書き込みがたくさんあったのは納得したけど。
金縛りはまったく起こらなかった。 一度だけ、ベッドに入って自分が縛られているところを妄想した。 赤沼氏に縛られた縄。身体を締め付けられるあの感覚。 思い出すと少しだけ胸がきゅんとしたけど、金縛りの前兆であるブーンという耳鳴りは聞こえなかった。 ちょっと残念、だったりして。
10. 土曜日。 約束の時刻に赤沼氏を訪ねた。 莉里ちゃんも先に来て待っていてくれた。
私はまだ自分の意志で自由に幽体離脱できない。 前回は赤沼氏に誘導してもらって金縛りになり、その後勝手に幽体が離れてしまった。 自分で幽体離脱って、いったいどうすればいいんだろう?
「・・幽体離脱が起こるのは金縛り中に限ったことではないよ。強い衝撃を受けたとき、意識障害や失神したとき、酩酊したとき、あるいは普通の睡眠時にも起こり得る」 赤沼氏が教えてくれた。 「でも結局、離脱のハードルが一番低いのは有意識下の金縛り中なんだよ。パニックにならず落ち着いて自分を保てばいい。・・けやきさんはもう金縛りに恐怖はないだろう?」 「はい。縄で縛っていただけたら」 「では貴女の目標は、まず緊縛されて誘導なしで金縛りに入ること、それから意識を体外に向けて分離すること。ゆっくり練習すればいいよ」 「はい」
「けやきさん、あたしも金縛りになってから離脱してるんですよ」 「莉里ちゃんも?」 「そうですっ。コツを掴んだら難しくないです。けやきさんなら絶対にできますよ!」 「ありがとう。やってみる」
・・
私は前回のように床に寝るのではなく、椅子に座って後ろ手に縛られた。 手首と腕、そして胸の上下を絞める縄が心地よい。 縄に抱きしめられる感覚。 肉体は自由を奪われるのに、心には安心感と幸福感が広がる。 ほんと暗示ってすごい。 いつか自由自在に幽体離脱できるようになっても、この暗示だけは解いて欲しくない。
自分の胸に食い込む縄を見下ろした。 そうか、こんな風になってるのね。 我ながらセクシー。もうちょっとお洒落してきたらよかったと思ったくらい。 今夜は特訓だからと、私は動きやすいスキニーパンツに半袖のオーバーニットを合わせて着ていた。 せめてノースリーブとか、もちょっと肌を出したトップスにしておけば、・・って何を考えてるんだ私は。 これは真面目な訓練なのに。 「けやきさん、顔が赤らんで綺麗。羨ましいです」 「あ、ありがとう」 莉里ちゃんに指摘されて焦る。 今は邪念を払って集中しなきゃ。深呼吸を繰り返す。
「OKだよ。この先は貴女一人で行くんだ」 赤沼氏が私の肩に手を置いて言った。 「心の準備ができたら、いつでも始めなさい」 「はい」
私は目を閉じた。 身体を絞め付ける縄の感覚。大丈夫、何も怖くない。 これから私は肉体の自由を明け渡す。その代わりに精神を肉体から解き放つのだ。
・・ブーン。耳鳴りがした。 その音は以前より少し柔らかくなって聞こえた。
自分の身体を意識した。 その身体はまるで時間が止まったかのように静止していた。 外の世界を意識した。 そこには私を拒まない自由な空間が広がっていた。 行ける──。
私は虚空を見上げて飛び上がった。 自分が肉体から離れるのが分かった。 「おおっ、飛んだ!」「けやきさーん!」 赤沼氏と莉里ちゃんが私を見上げていた。 「どうですか? 私の幽体離脱」 私は二人の上空に浮かんで微笑んだ。 宙に浮かぶ緊縛美女、なんちて。 ちょっぴり、いや結構誇らしかった。
・・
私はしばらく空中に浮かんで元の身体に戻った。 戻るときもスムーズだった。 幽体を肉体に重ね、じんわり融合するイメージを描けばよかった。 初めての単独幽体離脱は大成功だった。 たった1回のトライで成功するとは正直思っていなかった���赤沼氏にも言われた。
「さて腹が減ったね。けやきさんも夕食はまだだろう?」 「え、また用意してもらったんですか!?」 「好きで作っとると言っただろう?」
私は緊縛を解かれた。 本当は縄に抱かれる快感にずっと浸っていたかったけど、縛られたままじゃご飯は食べられないものね。 赤沼氏が作ってくれたのは和食だった。 大根のべっこう煮、厚揚げと小松菜の煮びたし、鯖塩焼きに豚汁。 「すごいですっ」 「ありきたりの献立だと思うがね。けやきさんは自分で料理せんのかね?」 「あ、私は外食が多くて。・・でも今は家で作らなくても十分やっていけますから。ね、莉里ちゃん!?」 「お嫁に行くならお料理はできた方がいいですよ、けやきさん」 ズキューン。莉里ちゃんを味方につけようとして逆に撃たれてしまった私。
・・
莉里ちゃんが言った。 「けやきさん、次はあたしと二人で飛びませんか?」 「そういえば莉里ちゃん一緒に飛びたいって言ってたわね」 「それはやった方がいい。一緒に行って教えてもらうことがたくさんあるはずだよ」 そうだね。いっぱい勉強することはあるんだ。 よし、空でも何でも飛んでみせるわ。
今日の莉里ちゃんは膝上ショートパンツとボーダー柄のTシャツを着ていた。 その上に拘束衣を着て袖に手を入れ、その袖を赤沼氏が背中に取り回して強く絞った。 だぶだぶの拘束衣がきゅっと締まったのが分かる。 これで莉里ちゃんは両手を動かせない。 「えへへ、ぎちぎちです」 屈託なく笑いながら言われた。
次は私の番。 再び後ろ手で縛られた。 きっちり両手が動かないことを確認して安心する。 いいな。やっぱり嬉しい。 「私もぎっちぎち」 莉里ちゃんにそう言って笑いかけた。
「行きましょ! けやきさん」「うん、行こう」 目を閉じて、深呼吸。
「けやきさん、」莉里ちゃんが小声で言った、 「はい?」 「一緒に拘束されてるの、嬉しいです」 どき。 「もうっ、集中できないでしょ!」「えへへ、ごめんなさい!」
・・ブーン。耳鳴りがした。 莉里ちゃんが少し震えて動かなくなった。隣で私も固まった。 そして──。
私と莉里ちゃんは部屋の中に浮かんでいた。 互いに微笑み合う。 莉里ちゃんが赤沼さんの近くへ行って挨拶した。 「行ってくる、ひい爺ちゃん」 「うん、気を付けてな」
莉里ちゃんは笑って私を手招きすると窓ガラスを通り抜けていった。 私も赤沼氏に会釈して、窓を抜け外へ出た。
11. 夜の空に浮かぶと私たちはとても小さな存在だった。 「うわぁ~~!!」 小さな子供みたいに叫んだ。
天空に瞬く星々。 眼下にはマッチ箱みたいな団地。 そして周囲 360 度に煌めく街の夜景。 ガラスの粒をばらまいたみたいに綺麗だった。 碁盤目に走る道路と車のライトの列。あそこですれ違う光の線は電車。 はるか彼方に見える超高層ビル群。虹色に光るテレビ塔。
「莉里ちゃん今までこんな景色を独り占めしてたの!?」 隣に浮かんでいる莉里ちゃんに聞いた。 「まあ、空に上がれば見放題ですからね」 「すごいなぁ。これ見れただけで幽体離脱に感謝だわっ」 「うふふ。・・よかった!」 「何がよかったの?」 「幽体同士だと普通にお話しできて。私だけけやきさんの傍で囁かないと駄目かもって、ちょっと心配してたんです」 「ああ、そうか」 幽体のときの莉里ちゃんの声は、普通の人間にはよほど近くでないと聞こえないのだった。
「でもほんと夢みたい! 一緒に飛んでくれる人がいたなんて」 莉里ちゃんは笑顔で両手を広げて一回転した。 暗闇の中でくっきり見えた。 ショートパンツとTシャツ。よく見たら髪に白い造花のバレッタをつけていて可愛い。 私も両手を広げようとして、後ろ手に縛られていることに気付いた。 そういえば莉里ちゃん、いつも幽体離脱したときは拘束衣が消えるわね。
「ねぇ莉里ちゃん、今更だけど拘束衣は?」 「はい、これですか?」 莉里ちゃんを包むように拘束衣が出現した。両手が固定されたぎちぎちの拘束。 「ええーっ!?」 「見た目なんていくらでも変えられますよ?」 拘束衣がふっと消えた。 替わりに莉里ちゃんの背中に大きな翼が生えた。噴水の上に浮かんだときの翼だった。 「はいっ、天使に変身です」 「そ、それ私にもできるの?」 「できますよ。頭の中でなりたい姿を思い浮べるだけです」 ・・じゃあ。 私を縛っていた縄が融けるように消えた。両手が自由になった。 「できた!」「はい、よくできましたー」 「どうして言ってくれなかったの? 変身できるって」 「すぐに気が付くと思って。それにけやきさん、縛られたままで嬉しそうだったし」 「う・・。あれは暗示のせい!」 「うふふ」
莉里ちゃんの服装が変わった。 肩出しの白いキャミワンピ。背中に翼も生えて正に天使だった。 「けやきさんも!」「うん!」 私も莉里ちゃんと同じ衣装になった。背中に翼も。 あれ? 翼の先端が薄れて消えかかってる。 「あたしの姿を見て、しっかり隅々までイメージして下さい」 翼がくっきり表れた。 「OKです!」
「ねぇっ、私たちどこでも行けるんでしょ? スカ○ツリー、見下ろしたいな」 「んー、行けなくはないけど、都心まで急いでも4時間くらいかかりますよ」 「え? どうして?」 「地面を歩くのと同じ速さでしか進めませんし、帰りの時間も考えたら朝になっちゃいますね」 「ぴゅーんって飛べないの? そうか一瞬で移動とか」 「そんな魔法みたいなこと無理ですよー」 幽体離脱だって魔法みたいなものだと思うけど。 「スカ○ツリーは無理だけど、お勧めのコースがありますよ! 行きませんか?」
・・
二人で夜の街を飛んだ。 ビルの上、道路の上。駅の上。 翼を広げて飛ぶのは気持ちよかった。
夜の小学校に降りた。 誰もいない校庭で莉里ちゃんと滑り台を滑ったり、ジャングルジムに登って遊んだ。
自然公園の森を飛び抜けた。 高度1メートルで飛んでも木の枝や幹が邪魔にならない。全部通り抜けられるんだ。 森を抜けたところで先を行く莉里ちゃんが貯水池に飛び込んだ。私も続いて飛び込む。 どぶん。 鳴るはずのない水音が聞こえた、ような気がした。 水中で動かない魚の群れを突き抜けて、水面から上空に飛びあがった。 もちろん私たちはぜんぜん濡れていない。
高圧線の鉄塔をネコバスみたいに登り、両手を広げて電線の上を歩いた。 ジャンプしてトトロみたいに回りながら着地した。 楽しい。初めて外に出してもらった子犬みたいにはしゃいだ。
「次はちょっと冒険です!」 莉里ちゃんが指差したのは幹線道路沿いにそびえる巨大なショッピングモールだった。 もう遅い時刻��のに歩いている人が多い。さすが土曜の夜。 誰にも見られないよう物陰に降り、変身を解いて天使から元の恰好に戻った。 莉里ちゃんは膝上ショーパンにボーダーのTシャツ。足元はバスケットシューズ。 私はスキニーパンツと半袖オーバーニットにパンプスを履いている。 さあ、行こう。モールの通路を並んで歩き出した。 心臓がドキドキしてるのが分かる。幽体なのに。
何人もすれ違って誰にも気付かれない。 「意外とばれないものね」「ばれたら大変ですけど」 「そりゃそうだ」「うふふ」 調子にのってエスカレーターに乗ったりベンチに座ったりした。
ベンチにいると、ヨークシャテリアを抱いた女性が前を通りすぎた。 と、その犬が私たちを見て唸り声を上げた。 女性の手から飛び降りて吠え掛かってきた。 やば! 私たちは慌てて逃げ出した。 通路を走り、角を曲がった。きっと床から足が離れていたたと思う。 正面は全面ガラスのテラスになっていた。誰もいない。ラッキー! 私たちは二人並んでガラスを走り抜けた。 3階から外に飛び出すとモールの外壁沿いに急上昇した。 「おっと!」「ひゃあっ」
高く上がって近くを流れる川の上に出ると、すぐに真っ黒な水面ぎりぎりまで降下して一直線に飛んだ。 いくつも橋をくぐって進むと前方に大きな道路橋が見えた。 それは鉄骨を台形に組んだトラス橋で、オレンジ色の照明が鉄橋全体を照らしていた。 「莉里ちゃん、あそこっ」「はい!」 私たちはトラスの一番上の梁に並んで座った。 「えへへ。びっくりしましたねー」 「ほんと、どえらい冒険だったわ。・・いつもやってるの? あんなこと」 「たまに。でも吠えられたのは初めてです」「犬には分かるのかな」 「そうかも。・・驚きました」 莉里ちゃんは自分の胸を両手で押さえた。 「これからは控えることにします。ああいう冒険は」 「その方がいいわね」
足をぶらぶらさせながら見下ろすと、橋の上を車がたくさん走っていた。 誰かが上を見たらきっと気付くだろうね、あり得ないところに座る女の子の姿に。 目立たない恰好に変身した方がいいかな。 いっそ透明なら絶対に見えないけど。
「ね、透明になれないの? 私たち」 「なれません。お婆ちゃんは透明になれたらしいんですけど」 「リリーさんのこと?」 「ひい爺ちゃんから聞いただけですけどね。幽体離脱も特別な暗示なしで自由にできたそうです」 「すごい人だったのね」 「はい。それで暴走したって話も」 「?」 莉里ちゃんはふわりと浮かんで言った。 「もう一箇所だけ、つき合ってもらっていいですか」
12. もう深夜だった。 たった今走って行った電車はそろそろ最終電車ではないかしら。 周囲は街路樹と街灯が整然と並ぶ住宅街。 私たちは電車の線路に降りた。 「昔、この辺りは一面の雑木林で蒸気機関車が走っていたそうです」 「へぇ」 「ここはお婆ちゃんが生霊になった場所です」 「!」
リリーさんは幽体離脱を繰り返し過ぎて精神が不安定になった。 やがて幽体が独立した意志を持ち、勝手に本体から分離して徘徊するようになった。 ある夜、眠っている本体を起こして外へ連れ出した。 赤沼氏が発見したとき、幽体と本体は線路の上を迫りくる列車に向かって歩いていた。 轢かれる寸前、赤沼氏はリリーさんを抱きかかえて救出した。 それから赤沼氏は一ノ谷博士の協力でリリーさんの精神を安定させ、リリーさんが勝手に幽体離脱することはなくなった。
「まさか幽体が生霊になって本体を殺そうとするなんて、思ってもいなかったでしょうね」 「・・」 「だからあたしは暗示をかけられました。勝手に離脱しないように。拘束衣を着たときだけ幽体離脱できるように」 「そうだったのね。私の縄の暗示も同じなのね」 「そうです」 莉里ちゃんは遠い目になって言った。 「暗示の理由を教えてもらったとき、ひい爺ちゃんはこの場所で起こった事件のことも教えてくれました。・・それ以来あたしはときどきここへ来てお婆ちゃんのことを考えています」 「リリーさん、ずっと怖かったのかしら」 「そうかもしれませんね」 「ねぇ、莉里ちゃん。お婆さんはどんな人だったの?」 「無口でおとなしい人だったらしいです。それ以上のことは、ひい爺ちゃんは何も教えてくれません」 「そう」
「・・そうだっ、」 莉里ちゃんは突然にやっと笑った。 「けやきさん、ひい爺ちゃんはずっと独身だって知ってます?」 「あれ? リリーさんがいたのに?」 「ひい爺ちゃんは今年 83 歳です。お婆ちゃんは 19 であたしのママを生んで、ママは 31 であたしを生みました。それで計算すると、ひい爺ちゃん 17 歳でお婆ちゃんが生まれたことになるんです」 「あらら」 赤沼氏、若いときに "やらかした" のかしら? 「じゃあリリーさんのお母さんは」 「分かりません。きっと事情があって結婚できなかったんだろうってママが言ってました」 そうか。それならリリーさんは自分の母親を知らずに育ったのかもしれない。 寂しかっただろうな。
・・
突然風景が変わった。 住宅街が消え、灯り一つない雑木林になった。 電車の線路は木々をかすめるように敷かれたか細い単線の線路に変わった。 私たちの前方に人影があった。 幼い少女が二人、並んで線路を歩いている。 白い寝巻らしきものを来た二人は瓜二つだったけど、片方の少女はぼんやり半透明に見えた。
がしゅがしゅがしゅ。 遠くに機械音が聞こえた。列車が来るんだ。 その音は次第に大きくなった。 やがて黄色いヘッドライトが一つ、こちらに迫ってきた。 少女たちは歩みを止めない。 ボウォーッ!! 汽笛の音。 危ない!!
・・
「見えたんですね?」 莉里ちゃんの声がした。 私と莉里ちゃんは住宅街を抜ける線路にいた。 「残留思念っていうんでしょうか、あたしにも見えるんです。もう 60 年も昔のことなのに」 「幽体になった私たちだけに見えるのかしら」 「たぶん。誰にでも見えたら『幽霊の出るスポット』で有名になるでしょうから」 「それは残念ね。動画に上げたらバズるのに」 「それだったらもっといいネタがありますよ。・・あたし達自身です」 「それもそうね」「うふふ」
・・
二人が赤沼氏の団地に帰りついたのは、日付が替わってだいぶ過ぎた時刻だった。 寝ないで待っていてくれた赤沼氏は叱りもせずに私たちの拘束を解いてくれた。 程なく莉里ちゃんはぐっすり眠ってしまい、それを見届けてから赤沼氏はとっておきのバーボンを開けてくれた。 「水ではありませんぞ」 「あはは、水と判っても騙されたふりして飲みます」
赤沼氏は、莉里ちゃんがこんなに晴ればれした顔で帰ってきたのは初めてだと嬉しそうに話してくれた。 今まで誰にも言えなかった秘密を私に話せた。一人でしかできなかった体験を共有できた。 それは私という仲間ができたからと言ってくれた。 「これからもこの子に寄り添って下されば、こんな嬉しいことはありません」 私は少し考えて返事した。 「これからもお二人のこと、お手伝いさせて下さい」
13. 『すなっく けったい』に行くとさっそくママに声をかけられた。 「けやきちゃん! もう来てくれへんかと思てたわっ」 「すみません、ご無沙汰しちゃいまして」 「ええんよ。はい、こっち座って!」
カウンター席に座りホッピー割を頼んだ。 ああ、美味しいな。 これからも『けったい』に来たら一杯目はホッピー割にしよう。
「さすがに今夜は賑わってますね」 「そら第3金曜やからね。けやきちゃんも手品見に来たんやろ?」 「もちろんです」 「そういえば、あんときは莉里ちゃんと会えたの?」 「おかげさまで、何もかもうまくいきました。・・本当にママさんのおかげです。感謝しきれないくらい」 「何や、気持ち悪い」 ママは不思議そうな顔をしたけど、それ以上は何も聞かずに笑ってくれた。
・・
「こんばんわーっ」 チャイナ服の莉里ちゃんが入ってきた。その後ろに真っ黒なマントとタキシードの赤沼氏。 赤沼氏は年中こんな恰好で手品をするのは大変だと思う。 でも本人に言わすと「これがわしのアイデンティティ」ということらしい。
いつものカラオケコーナーで二人が挨拶すると一斉に拍手が起こった。 莉里ちゃんが私を見つけてウインクしてくれた。 うん、ちゃんと来てるよ!
赤沼氏の手品が始まる。莉里ちゃんはアシスタント。 トランプを扇形に開いたり閉じたり繰り返すとカードがどんどん大きくなった。 財布を開くと中から小さな火が出て燃えたり、両手の間にステッキを浮かせて踊らせたりした。 ハラハラドキドキするような手品じゃないけど、ちょっと不思議で楽しい。 安心して見ていられる手品。 これが赤沼さんのテイストなんだと改めて思った。
さあ、次は幽体離脱イリュージョン。 皆が期待するのが分かる。 莉里ちゃんがカウンタースツールを2脚持ってきてカラオケコーナーに置いた。 「ん? 何で二つ?」誰かが呟いた、 莉里ちゃんは店内をまっすぐ私の方に歩いてきた。 「こちらへどうぞ」 私の手を取って言った。 店内がざわつく。 ・・いつもと違うぞ? 何が起こるんだ?
私は一度は遠慮して断り、再び誘われて首を縦にふった。 羽織っていたジャケットを脱いで席に置く。 立ち上がった私の恰好はノースリーブのブラウスと膝上タイトミニ、黒ストッキングにハイヒール。 今夜のサプライズのために選んだコーデなのだ。 脚を見せるなんて3年ぶりだぞ。
莉里ちゃんに連れられてカラオケコーナーに置いたスツールの片方に座った。 赤沼氏が縄を持っている。 私は黙って腕を背中に回した。 「緊縛!?」 女性のお客さんが両手を口に当てて驚いている。
赤沼氏が耳元で囁いた。 「少々厳重に縛りますよ」 私は無言で頷く。 厳重なのは大歓迎。それだけ私は守られるのだから。
腕が捩じり上げられた。手首を固定する位置がいつもより高いような。 二の腕の外側から胸の上下に縄が回される。 別の縄が腕と胸の間に通されて、胸の縄をきゅっと絞った。 ・・はうっ。 思わず息を飲んだ。こんな縄は初めて。 むき出しの肌に縄が食い込む感触。ノースリーブにしてよかったと思った。 ストッキングを履いた膝と足首にも縄が掛かった。 脚を縛られるのも初めてだった。
気持ちいい。 縄の暗示で導かれる安心感。 それだけじゃない気がした。味わったことのない快感。
隣で莉里ちゃんが拘束服を着せられていた。 袖が強く引き絞られている。 うん、ぎっちぎち。 私も莉里ちゃんも拘束感の中にいるのね。互いに微笑み合った。 大丈夫、いつでも金縛りに移行できるわよ。
赤沼氏が大きな布をふわりと広げ、私たちはその中に包まれた。
・・
チャイナ服の女の子とノースリブラウスの女が空中に出現した。 拘束服も縄も纏っていない。 その代わり二人の背中には大きな翼が生えていた。 お客様の真上で優雅にお辞儀すると、両手を広げてくるくる回った。 私たちは自由だった。 天使のように舞って自由自在に飛び回った。
・・
布が取り払われると、私たちは再び拘束された状態でスツールに座っていた。 お客様全員からスタンディングオペレーション。 赤沼氏がまず莉里ちゃんの拘束衣、そして私の縄を解放してくれた。 「けやきさん!」 莉里ちゃんからハグされた。
それは抱きしめられた瞬間だった。 背筋に電流が走った。 はぁん! 身を反らせて快感に耐えた。 まだ縄で縛られている感覚が残っていた。 気持ちいい。子宮がじんじん震えそうなくらい気持ちいい。 どうしたんだろう。 縄を解いてもらえば暗示は解けるはずなのに。 一歩、二歩、前に進もうとして私はその場に崩れ落ちた。
気が付くとソファに寝かされていた。 まわりを赤沼氏、莉里ちゃん、『けったい』のママ、そして『けったい』のお客さんたちが囲んでいた。 ほのかなエクスタシーが残っていた。 素敵なセックスに満たされた後の余韻のような。 ・・とろけそう。 寝ころんだまま私はだらしなく微笑んだ。
ママが言った。 「・・縄酔いやな。がはははっ。赤沼さん、この人相手に張り切り過ぎたんとちゃう?」 「ううむ。久しぶりの高手小手縛り、つい縄に力が入りましたかな。いやこれは申し訳ない」 「あんた縄師の仕事もしてたん?」 「昔のことです」 莉里ちゃんがきょとんとして聞いた。 「あの、縄師って何ですか?」 小さなスナックに皆の笑い声が響いた。
14. 『けったい』で鮮烈?デビューを果たした私は、それから本格的に赤沼氏と莉里ちゃんのお手伝いを始めた。 二人の手品やパフォーマンスに裏方として同行し、たまにサプライズで幽体離脱イリュージョンに参加する。 主役はあくまで莉里ちゃんだからね。
莉里ちゃんの将来の目標はひいお爺ちゃんのような手品師になること。 赤沼氏に習って手品の練習を始めたし、高校を卒業したらプロについて修行する話もしているようだ。 幽体離脱は大切な自己表現だけど、莉里ちゃん自身はそれを手品のオプションでやる必要はないと考えている。 いつか、超常現象やオカルトではなく、普通の能力として世の中に認められるようになったら、そのとき堂々と見せたい。 それまでに「仲間」が見つかるかもしれないし。 彼女の意見に赤沼氏も私も賛成した。 先は長そうだけど私も全力で応援するつもり。
私は赤沼氏からそろそろ暗示を外してあげようと提案された。 暗示とは、私が金縛り状態に入れるのは縄で縛られているときだけ、という条件付けのことだ。 今の私なら縛られていなくても不用意に幽体が分離することはない。生霊になる心配はないから暗示は不要。 わざわざ申し出てくれたのは、おそらく私の私生活への配慮だ。 一人でいつでも幽体離脱を楽しめるように。 もし私がプライベートでも縛られることを望んだとき、幽体離脱の懸念なく存分にプレイを楽しめるように。
その心遣いにはとても感謝するけれど、私は今のままでいたいと返答した。 誰かに縛られることで幽体離脱の自由を与えてもらう。 とても受動的。でも私はそれが嬉しい。身震いするほど嬉しい。 その「誰か」は今のところ赤沼氏。そしてこれからは莉里ちゃんかもしれないし、未だ現れないパートナーかもしれない。 マゾだね。もう素直に認めるよ。 でもこれは私の特権なんだ。こんな素敵な特権を手放すなんて考えられないよ。
莉里ちゃんからは、けやきさん早く婚活すべきです、と強く言われている。 「けやきさんお料理苦手だからごはんを作ってくれる人、最近けやきさん縛られたらとっても色っぽくて綺麗だから緊縛も上手な人、それと、ときどき幽体離脱しても呆れないでずっと愛してくれる人! この三つは絶対譲れない条件です!」 そんな都合のいい相手が見つかるかしら? でも運よくそんな人と結婚できたら、そのときは赤沼氏に暗示を外してもらおうと思う。 莉里ちゃんに言わせると、ひい爺ちゃんはとても元気で 100 歳まで絶対に死なない! らしいから、まだまだ時間はあるわね。 理想のパートナー探し、頑張ってみよう。
[1963(昭和38)年]
15. その女の子は4歳で、いつも一人でいた。 感情を露わにすることは少なく、話しかけられたときに最低限の受け答えはするけれど、自分から他人に話しかけることはなかった。 この施設にいる子には暴れる子や泣いてばかりの子もいたから、女の子はむしろ手がかからない子として扱われていた。 元々は戦災孤児の保護を目的に設立された施設だが、終戦から 18 年が過ぎた今では親のいない子、育ててもらえない子、その他いろいろな事情の子供がここで暮らしていた。
自由時間になると女の子はよく鉛筆で絵を描いていた。 その絵は人物画のようだけど、いつも顔面がのっぺらぼうで誰だか分からない。 施設の職員から「誰を描いてるの?」と聞かれても、女の子は黙ったままで何も答えなかった。
「上手だねぇ。もしかして君のお母さん?」 突然声をかけられて女の子が顔を上げると、知らない人が微笑んでいた。 その人は 20 歳そこそこの若い男性で、頬がこけていて目だけが大きいちょっと昆虫みたいな顔だけど、笑顔には優しさがにじみ出ていた。 彼女が描いていたのは確かにお母さんだった。 どんな顔か覚えていないから、のっぺらぼうにしか描けない。 でも記憶の中には自分を抱きしめてくれた母親が確実に存在していた。
どうして分かったんだろう? 不思議そうな顔をして男性を見上げる。 「もうすぐ手品をするんだ。見に来てくれるかな?」 その男性は慰問で訪れた手品師だった。
集会室に子供たちが集まって手品を見た。 右手で消えたコインが左手に移動する。手の中からカラフルなカードが何枚も現れる。空の箱から生きたウサギを取り出す。 初めて見る手品に女の子は目を見張った。 最後は大きな黒布を両手に持って広げると、手前に小さなお人形が出てきてふわりと浮かんだ。 お人形はどこにも支えがないのに宙を飛びながら楽しそうに踊った。
まばたき一つしないで見つめながら女の子は思う。 いいなぁ。わたしも飛びたい。 あんなふうに飛んでお母さんに会いに行きたい。
ショーが終わると手品師は女の子にお人形をくれた。 「君が一番熱心に見てくれたからね。そのお礼」 背の高さがほんの 10 センチくらいのセルロイド製の少女人形だった。 手品師は手品で使う人形とは別に、プレゼント用に安価な人形を用意していたのだった。 お人形は女の子の宝物になった。
・・
数週間後、施設で異変が起きた。 深夜、巡回していた職員が廊下で女の子を見た。声を掛けるとその姿はふっと消えた。 さらに数週間過ぎた夜、食堂の天井の近くに女の子が浮かんでいた。腕にあのセルロイドのお人形を抱いていた。 目撃した職員が腰を抜かして動けない間に、女の子は壁の中に溶けるように消えた。 そしてその翌月、2階の窓の外を女の子が飛んでいた。昼間のことであり複数の職員が目撃して大騒ぎになった。 皆で女の子を探すと、女の子は誰もいない遊戯室で一人眠り込んでいた。 慌てて起こして問いただしても本人は何も覚えていなかった。
職員の中に女の子のことを『悪魔ッ子』と呼ぶ者が現れ、やがてその名は子供たちも広がって女の子は苛められるようになった。
・・
女の子が職員室に呼ばれて来るとあの手品師がいた。 人づてに噂を聞いてやって来たのだった。
手品師は女の子の目をじっと見つめて言った。 「きっと飛びたかったんだね。お母さんに会いに行きたいのかな?」 分かるの? わたしの気持ち。 「君は特別な女の子だ。あのとき気付いてあげられなくて悪かった」 この人は何を言ってるんだろう。 でも、いい人だと思った。信じても大丈夫。この人なら大丈夫。
手品師はにっこり笑った。優しくて暖かい笑顔だった。 「僕と一緒に手品をしないかい?」 手品!? あの手品の情景が蘇った。 「自由に飛べるようにしてあげるよ。きっとすごい手品ができる」 ええっ!? 「やりたい。手品も、飛ぶのも、全部やりたい!」 女の子は初めて自分から喋った。
「僕は赤沼っていうんだ。君の名前は?」 「わたしはリリー。リリーだよ!!」
こうしてリリーは赤沼に引き取られた。 翌年正式に養子縁組して親子になった。 二人がサーカスでデビューしたのはさらに2年後。赤沼 24 歳、リリー7歳のときだった。
────────────────────
~登場人物紹介~ 近本けやき (ちかもと けやき): 29歳 独身OL。莉里と出会って幽体離脱の能力が覚醒する。お酒が好き。 赤沼幻檀 (あかぬま げんだん): 83歳。手品師。リリー・莉里・けやきの幽体離脱を導く。 関莉里 (せき りり): 16歳 高校1年生。赤沼のひ孫。赤沼の手品のアシスタントをしている。 『すなっく けったい』のママ: 年齢不詳。豪快なおばさん。 リリー: 赤沼の娘。莉里の祖母。7歳で赤沼と一緒にサーカスのショーに出演する。
タイトルを見ただけでウルトラQを思い浮べた人は何人いらっしゃるでしょうか? この小説は昭和41年に放映されたテレビドラマシリーズ『ウルトラQ』の第25話『悪魔ッ子』(以下、原作) をリスペクトして書いたものです。 小説は原作を知らない方でも読めるように書いていますが、原作も抜群の人気を誇る(と個人的に信じている^^)名作なので、機会があればぜひご覧になって下さいませ。 公式に視聴するには有料配信か円盤購入しかないようです。およその粗筋やシーンの一部ならネットで見られるので、そちらだけでも。
本話は原作の設定を少し変更した上で、魔術師赤沼と悪魔ッ子リリーのその後を描いています。 当初『悪魔ッ子の娘』というタイトルでリリーが生んだ女の子が活躍するお話を書きかけましたが、その娘は2024年の現在では40~50歳くらいになってしまうのでモチベが続きませんでした(笑。 そこで『悪魔ッ子の孫娘』にして女子高生を主人公のアラサーOLと絡ませることにした次第です。 なお名前だけ登場した一ノ谷博士は原作では『一の谷博士』で、シリーズ全体で様々な怪事件を解決に導く学者です。 ちなみにこの人は、ウルトラQの後番組『ウルトラマン』で科学特捜隊日本支部の設立にも関わったそうです。(Wikipedia より)
金縛りと幽体離脱は私の小説では初めて扱った題材です。 自分では体験したことがないので、ネットで調べた内容に作者のファンタジーを加えて創作しました。 肉体から分離した幽体は誰の目にもくっきり見える設定です。 暗いところでも見えてしまうので違和感を感じますが、明るい場所だと普通の人間と区別できません。 (空を飛んだり壁を抜けたりするのを見られたら当然バレます) 肉体から離れられる距離や時間は制限なし。ただし普通に歩いたり走ったりする速度でしか移動できないので遠くへは行きにくい。 あと、幽体時に着用している衣服は本人の脳内イメージで自由に変えられます。 実は主人公のけやきさんが自分の服をイメージし損ねて全裸で空を飛ぶシーンを考えましたが、お話が変な方向に進みそうになって止めました(笑。
もう一つ、暗示も初めてのネタです。 本話ではけやきさんも莉里ちゃんも自分に暗示がかかっていることを認識しています。 二人とも暗示を受け入れていて、しかも解除されることを望んでいない。 無理矢理コントロールされるのではなく、かけられた当人が嫌に思わない、むしろ嬉しい状況が私の好みです。 暗示の与え方についてはいろいろ調べましたが難しいですね。 赤沼氏が暗示をかけるシーン、けやきさんがとても素直な人であるとはいえ、あんな簡単な指示で実際にかかってしまうことはないでしょう。
挿絵は拘束衣を着せられた莉里ちゃんにしました。 自分で描くのは時間がかかりますが、やっぱり楽しいです。
それではまた。 ありがとうございました。
[Pixiv ページご案内] こちら(Pixiv の小説ページ)に本話の掲載案内を載せました。 Twitter 以外にここからもコメント入力できますのでご利用ください。(ただしR18閲覧可能な Pixiv アカウント必要)
1 note
·
View note
Text
四日目に予定していたツアーに行く。アフリカプレートとユーラシアプレートの出会うモロッコ、イタリアは地震が多い。そして、北アフリカのアトラス山脈は、プレート運動によるもの。非常に複雑なプレートなのだ。ちなみに4167mの北アフリカ最高峰のツブカル山近辺では、冬はスキーもできるざます。嫌、ワシはスキー好きだけど、ここにはスキーでは来ないけどね。
そこでワシが見たいのは、ズバリ、プレート運動である。我ながら、なんとマニアックなんだろう。流石、学生時代に地理学者の高木先生と251と言われた国土地理院の25000分の1縮尺地形図を持って藤沢近辺歩きまくったり、ネパールまで一緒に行っただけあるざます。まだ紙の地図の時代。等高線を赤鉛筆でなぞったりして、標高毎の土地利用を見たり、土地利用から地質を推測したりと楽しかった。高木先生は、慶應退官後どっかの大学の学長やってたけど、先生なら当然だろうと思う良い先生だった。そこで、渓谷巡りしながら、アイットベンハドゥというカスバを目指す。カスバとは、アラビア語で城塞、城砦を指す。
一緒に行くのは、ベルギーのリエージュから来た若い夫婦。こんなに乾燥しているのに、嫁は粘度の高そうな鼻水を何度もかんでいた。ワシなんか、乾燥しすぎて鼻粘膜から鼻血が出る上に、勝手に修復活動しているから、ともすると、鼻の奥の粘膜部分にできてしまう巨大鼻くそで窒息しそうになる。鼻かんでも出てこないざます。ので、ベルギー人が羨ましい。ベムでさえ棒よだれタレなさそうな勢いの乾燥度合いの中、さすがエウロッパ人の粘液体質である。感動。ツアーガイド兼運転手のお兄ちゃんには、早々とワシがフラ語をわかっている事がバレる。細かな、例えば地震とかいう単語は知らないけれど、文脈でおおよその予測はつく。だんだんと、フラ語でしか説明されなくなる。汗。


アイットベンハドゥを目指し、午前中は、ツブカル山側の渓谷。山並みが美しい。感動的に不毛な大地。人々は、オリーブやアルガンなどを育てて、羊飼いなどをしながら生計を立てているらしい。でも、段々と都会に楽な仕事と現金収入を求めて出稼ぎに行っているらしい。道路建設や、昨年9月もマラケシュで大規模地震があったが、復旧工事などが地元である間は、生活が潤うのだとか。現金収入を手にしてしまうと、元の生活に戻れなくなるのは世の常なんだなぁ。福島の祖母の家の周りの急速なにわか金持ち達の家々を思い出す。日本は、豊かである。こちらは、家は壊れたまま、未だにテント生活しながら、干し煉瓦と干し草と土で固めた家を、少しずつ、自分の手で再建している。神戸と東北震災の差異を感じたものだったが、ここまで来ると、政府なんてあって無きが如くである。などと思いつつ、絶景を堪能。
午前中にアイットベンハドゥに到着。世界遺産。そして、映画の撮影地でもある。アラビアのロレンスを撮影したのはここ。その後、ハリウッドはここからまだ南下するワルザザートに撮影所を作っている。多くの観光客は、そちらへ行くらしいが、ワシ一切興味無し。入場料払って撮影所に行くのは、太秦でさえ行かないんだから、モロッコで行くわけないでしょ。
太秦といえば、コロナ中に、母を連れて、憧れのトロッコに乗りに行ったっけ。ワシは、予約無しでトロッコに乗れた事に、感動。と同時に、子供の頃、信楽で買ってもらったタヌキを思い出さされるタヌキだらけの駅を通り、タヌキ熱にかかってしまった。今年、久しぶりに車で関西に帰る途中、憧れの信楽タヌキをまたゲット。前回の、つぶらなお目々に惚れて買った子は割れてしまったので、母が随分と前に捨てちゃったのよね。

アイットベンハドゥです。手前は、川。橋もあるのだが通行料を取るらしいので、鴨川のように飛び石になっている無料の渡し場を通って、暑い中、ワシ、頑張って、上のぴょこんとなっている丘の上まで、城塞都市を通り抜けながら、登山。あのぴょこんとなっている所には、攻められた時用の食料が置いてあります。今は半壊になっていました。このカスバには、まだまだ人が生活していて、世界遺産だから、土産物屋とカフェ、ホテルだらけ。ホコリっぽく暑い。けど、おまけに迷路です。
ワシ、道がホウキで封鎖されているので、戸惑っていると、中からこすっからい感じのババァが出てきて、その道通れない。我が家を抜けてこっち通れ。近道あるよ。1ユーロに当たる10ディルハム払え。という。マジかーと思ったが、もう今さら戻る気にすらならないよ。何段階段登ったんだよと愚痴り、お金を払う。もっと最悪な事に、近道という道は、確かに近道だが、上からペットボトルなどのゴミが流れる、いわゆる砂防のような砂利道斜面。膝悪いワシには最悪。ゴミを避けながら、滑り落ちないように、足場を確保しつつ、たまには手もついて、必死に登る。一歩滑ったら、そのまま崖である。冷や汗出まくりだけど、暑い。ワシ、山登りしてて良かった。普通の人なら、無理レベルだと思う位に、斜度がきついし滑る。
興味深くお宅拝見できたのは良かった。水が来ているのだ。どうやって水を上げているのか、不明。気になる。けど、カスバの頂上には何も水関係の施設がなかったので、多分、下から川の水をポンプで汲上げしているのだろう。面白い事に、郵便も届くらしく、玄関と思しきドアの横には、郵便ポストもある。中は、分厚い壁のために、嘘みたいにひんやりと涼しい。そして冬は暖かいのだという。やっぱ壁の分厚さによる断熱だよなーとワシは思う。ドイツとか北欧の家も、壁分厚いもん。日本の薄壁に断熱ウール入れて、断熱してまーすってやっぱ、どう考えてもなんちゃってだろう。ワシは、ワシの部屋のクーラーをママが買い替えてくれたので、国士舘柔道部出身のおッちゃんの工事の一部始終を詳らかに観察したが、これで断熱って、騙されてるーと思ったっけ。
パッシブソーラーハウスの典型として出てくるモロッコの住宅。壁分厚く、中にパティオを作って水を流すので、適度な湿度が保たれ、冬温かく夏涼しいと、建築学の本で読んだ通り。昔の人の方が賢い。風土に合った���築を作っている。え、まてよ。日本は、なぜあそこまで寒さに耐えなくちゃいけない家なんだ。。。東北の家の中にある蔵、内蔵は温かそうだけど、あれが持てるのは金持ちだけだしなぁ。。。オンドル無いし。辛すぎやろ。ワシ、暑いのも寒いのも苦手な段ボール箱の箱入り姫様ですねん。
昼食は道中の村でタジン鍋。ワシ、下痢中なので、控えめに食べる。帰路は、アトラス山脈側の渓谷。運転手が、急遽、古代からの塩田に連れて行ってくれた。白いのは塩。雨が降ると、地面から滲み出て、塩田になるらしい。舐めてみると、とても優しい塩だった。昔、この辺り一帯は海。それがユーラシア大陸とぶつかって隆起している。道端の土産物屋では、アンモナイトに三葉虫などの化石がたくさん売られている。感動しているのは、当然ワシだけ。ベルギー人夫妻の感動ポイントは、良く分からない。向こうも、ワシがなぜ、sel de fleurと大騒ぎしておるのか、さっぱり意味不明だっただろう。ここは、昔、海韃靼だよと言っても、アホにな何も通じない。アホってマジで救いようない。



この上の写真を観ているだけだと、完璧に、アルゼンチンのサルタ、フフイの感じ。ワシ、地球の活動に感動。地球は生きとる。そして、美しい。人間の無知なんて、ここでは、笑いものにすらならない。無知な奴は死ぬだけ。ラクダのキャラバンに必ず一頭はロバをつけるのは、ラクダは水分なら何でも飲んでしまうらしいが、ロバは危険な鉱物が入った水は飲まないらしい。なんなら緊急時、ラクダのオシッコでさえ貴重な水分源になるキャラバン隊にとって、ラクダが飲めるからと言って、オシッコ活用しなきゃいけない時にラクダちゃんの身体がろ過した危険鉱物をいただく訳には行かないのだ。だから、まずはロバに水を飲むか確かめさせてから、人間もラクダも水を飲むらしい。いやぁ、侮れないぞ。ロバ。
0 notes
Text

【かいわいの時】弘仁三年(812)六月三日:摂津国長柄橋を架設(大阪市史編纂所「今日は何の日」)。
長柄架橋の確実な記録としては、まず
1)(812年)弘仁三年六月己丑に使いを遣わして摂津国の長柄橋を造る(訳)。『日本後紀』
が挙げられます。ただし、この橋は
2)(853年)仁寿三年十月戊辰に摂津国より、長柄、三国の2つの川には近頃は橋が断絶していて人馬が通せないので、堀江川に準じて2隻の船を配置して、渡しを設置したいと伺いをたててきたので許可をした(訳)。『文徳実録』
とあり、50年もたたないうちに廃絶されていたと考えられます。以後、再架されることはなかったとみえ、「長柄橋」は伝説の橋となって和歌や屏風絵にわずかに残った橋柱のみが取り上げられる世になります。
3)(905年)世の中にふりぬるものは津の国のながらの橋と我になりけり。難波なるながらの橋も造るなり今は我身を何にたとへん。『古今集』
4)(958年)御屏風の絵に、ながらの橋柱のわづかに残れる形ありけるを 葦間より見ゆるながらの橋柱昔の跡のしるべなりけり。『拾遺和歌集』
5)(1000年初頃)天王寺に詣でしに、長柄の橋を過ぐとて 我ばかりながらの橋はくちにけりなにはのこともふるる悲しな。『後拾遺和歌集』
再架のうわさもあったようですが(3)、天徳二年(958)以前に描かれた「天暦御時御屏風」(現存せず)に「長柄の橋柱のわづかに残れる」風景が取り上げられており(4)、再架はかなわなかったようで、(5)に見るように「往時を偲ぶ」ばかりとなります。
ところが、藤原頼通一行が永承三年に高野山参詣した時の記録では
6)(1045年)過御長柄橋下之比、漸二昏黒鵜飼等各燃笹井火、普照行路(長柄橋下を過ぎると、鵜飼いが篝火を焚き、航路を照らす)。『宇治関白高野山御参詣記』
とあり、同時代の赤染衛門の歌(5)と矛盾しますが、赤染衛門も編集に加わったとされる『栄花物語』の延久五(1073)条には
7)(1073年)此處はいづくぞと問はせ給ふ、東宮太夫ぞつたへ問ひ給ひ此處は長柄となん申すといふ程に、其橋はありやと御尋ねさせ給へば候ふ由申す。御舟とゞめて御覧ずれば古き橋の柱たゞ一つ残れり
となっており、「長柄橋下」は「長柄の橋柱のもと」と解するのが適当と思われます。
この(6)『宇治関白高野山御参詣記』は、長柄橋の位置が相対的にですが特定できるので貴重です。とゆうのは、「長柄橋下」の前・後が
8)弥有往還之煩、而江口瀬間、以葦拵垣、積柴候堰、河流決移、已如旧跡(江口に向けて葦・柴を薙ぎ流路を定めながら進む)
9)入夜着御熊川、国司岸山作茅葺雑舎、為行事所、其西五���段許拵廻葦垣、為御船寄所(夜になり熊川の宿に着く。国司が茅葺きの粗末な屋舎作り、臨時に宿舎とし、その西側に葦垣をめぐらせて船着場とした)
となっており、これから「江口~(淀川)~長柄(橋)~(くま川)~船着場」のラインが確認されます。「くま川」については、鐘成は
10)長柄にては長柄川といひ、いにしえは長柄より下をくま川。『摂津名所図会大成』
としており、「長柄川」はさておき、「中津川」の下流に当たることは間違いないと思われます。
以上より、伝説の「ながらの橋」の架橋位置は
(結論)(旧)淀川と(旧)中津川の分岐点に架けられた。
(写真)▼暁鐘成著・松川半山画『淀川両岸一覧 下り船之部』1861(早稲田大学図書館蔵)より「長柄三ツ頭 長柄川 同渡口」
「三つ頭」をはさんで手前が「淀川」「毛馬の渡し」、向こうが「長柄川」「長柄の渡し」。奥に六甲山、画面の左手が南で大坂市街。「三つ頭」の向こう側「長柄の渡し」のあたりが「ながらの橋」の架橋位置と考えられます。ママ。当時の一般的な呼称は中津川。
12 notes
·
View notes
Text
〈新宿タワマン刺殺〉被害女性(25)の祖父が涙の告白「可愛い孫でした…」2年前に経営するキャバクラに警察が出動していた
5/11(土) 18:12配信961

和久井学容疑者(本人のFacebookより)
5月8日、警視庁新宿署は殺人未遂容疑で1人の男を現行犯逮捕した。川崎市在住で自称配送業の和久井学容疑者(51)は同日午前3時ごろ、無職の平澤俊乃さん(25)が住む西新宿のタワーマンションの敷地内で待ち伏せし、腹部や首など数十箇所をナイフで突き刺したのだ。 【画像】亡くなった平澤俊乃さん 「平澤さんは約1時間後、搬送先の病院で死亡が確認された。和久井は前日の夜から平澤さんを待ち伏せしていたと供述。マンション1階のコンビニから出てきた平澤さんに声をかけ、犯行に及んだ。刺し傷は背中にもあり、逃げる平澤さんを追いかけて刺したものとみられる」(社会部記者) 待ち伏せした理由として「お金を取り返すために行った」と和久井は話すが、もともとガールズバーのキャストと客の関係だった2人の間では、以前から金銭トラブルが燻っていた。 「和久井は平澤さんが出したお店の常連として知られ、オープン時には和久井の名前で花を出したりもしていた。平澤さんに恋愛感情を抱いた和久井は結婚を迫り、自身の車やバイクを売却して約1000万円以上の金を平澤さんに渡している。警察は殺人に容疑を切り替えて捜査を進めています」(同前) 実は和久井は、約2年前にも平澤さんに対してストーカー行為を行い、警察沙汰になっていた。和久井は警視庁人身安全対策課からストーカーの文書警告が出た同日、神奈川県警川崎署に訪れ、こう訴えた。
「被害に遭った自分がなぜストーカーと言われなければならないのか」
「お金を返してもらいたくて女性を待ち伏せしていたら、警察から注意を受けた。被害に遭った自分がなぜストーカーと言われなければいけないのか」 警告を無視して平澤さんの自宅を待ち伏せしていた和久井を、同課はストーカー規制法違反で逮捕している。 そうした和久井の執拗なストーカー行為に悩まされていた平澤さんは、和久井の申し出を拒絶。逆上した和久井は果物ナイフ2本を所持し、平澤さんのもとに向かったのである。 25年の生涯を突然奪われた平澤さんはどんな人物だったのか。新潟県上越市出身の彼女は、18歳のころにはすでに銀座のキャバクラで働いていたという。源氏名名義で作成された自身のSNSでは、当時の奮闘ぶりをこう振り返っている。 〈毎日出勤して指名のお客さん被ってたとしてもフリーが来店したら必ず席付いてお客様ノートと来客、売上を毎日欠かさず手帳に書いてお客さんゼロスタートから4ヶ月目でやっとNo.1になれて辞めるまでずっとその地位を貫いて今の私がいる〉 若くして、キャバクラに関する持論を長文で投稿することもあった。 〈お客様だけ飲んで自分は何も飲まず会話する場所 それはキャバクラではない〉 〈アンジェラベイビーでもあるまいし 黙っててもアルマンドは降ってこない〉 そんなプロ意識を持つ平澤さんは、早々に自分の店を持つことになる。上野・仲町通り。下町ならではの喧騒の中、キャバクラ「C」がグランド���ープンしたのは、2021年の暮れだった。近隣の飲食店関係者が明かす。 「開店当時、お店はすごく繁盛していた。コロナの時期だったからドアは開けっぱなしで、中からポン、ポンとシャンパンボトルを開ける音がひっきりなしに聞こえてきました。業者の車も来ていたので、シャンパンタワーをやっていたのだと思います。ママさんはすごく細くて、海外のモデルさんみたいにスタイルが良かった。いつも白いドレスを着ていて、着物を着ている日もあり���した」 ところが――。
「その翌年の夏前、警察がお店に来ているのを偶然見てしまったんです。黒服のスタッフと警察官が話していて、『ストーカーについて新宿署に相談してます』と漏れ聞こえてきた。その前後くらいからお店は休みがちになって、しまいにはお店のインスタグラムで『ストーカーがいるためしばらくお休みします』と告知をしていました」(同前) 「C」はあえなく2023年1月に閉店。それから約1年半後、平澤さんは件のストーカーにより、その生涯を閉じることになる。
上越市に住む平澤さんの祖父のもとを訪れると……
事件後、小誌記者は上越市内に住む平澤さんの祖父のもとを訪れた。平澤さんの祖父母はかつて園芸店を営んでおり、彼女が「C」をオープンさせた時にも店の名義で開店祝いの花を贈っている。 ――こちらに俊乃さんのお祖父様が住んでいると。 「それでね、僕の方は、何も言うことも、ノーコメントでしてね」 ――俊乃さんに以前お花を贈られている? 「それはね、昔なもんでちょっと記憶がないですね」 憔悴しきった様子の祖父に「俊乃さんの人柄をしっかり伝えたい」と小誌記者が伝えると、俯き、絞り出すようにこう答えた。 「それはね……。可愛い孫でしたよ……。それ以外にはないですね」 身勝手すぎる言い分で命を奪った男の罪は重い。
0 notes
Text
2024/12/10 13:00:08現在のニュース
10月のホテル客室単価最高、夏休み超す インバウンドが押し上げ - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/12/10 12:57:24) 日高屋「中華そば」、開業以来初の値上げ 390円→420円 - 日本経済新聞([B!]日経新聞, 2024/12/10 12:57:24) オープンAI、「Sora」を一般公開 短い指示で高品質の動画作成(毎日新聞, 2024/12/10 12:52:04) リンクサイド:中井亜美 「来季、夢がかなうには…」 ファイナル一夜明け(毎日新聞, 2024/12/10 12:52:04) 経費を架空計上、5100万円脱税の疑い 東京国税局がIT会社を告発(朝日新聞, 2024/12/10 12:49:47) 言葉の幅を広げ続けた谷川俊太郎さん 詩人だから感じる存在の大きさ | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/12/10 12:48:59) 性的暴行で起訴の大阪地検元トップ、無罪主張へ 謝罪から一転 | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/12/10 12:48:59) 「ママ大丈夫だよ」優しかった5歳の長女 虐待止めなかった母の理由(朝日新聞, 2024/12/10 12:42:16) 万博会場までの利便性向上へ 九州新幹線の始発繰り上げ、JR西の運行案判明([B!]産経新聞, 2024/12/10 12:42:14) JR東、輪軸不正で渡利千春副社長をけん責「信頼回復に努める」 子会社も会長ら3人処分([B!]産経新聞, 2024/12/10 12:42:14) [SNSと選挙]インフルエンサー「投稿請け負った」 ルーマニア大統領選([B!]読売新聞, 2024/12/10 12:39:42) リンクサイド:中田璃士「麻央ちゃんが持っていっちゃうので」 ファイナル一夜明け(毎日新聞, 2024/12/10 12:37:02) 2024歳末点描:「殺風景な駅に温かさ」 日豊線4駅に手作り門松 九州鉄道OB会 豊前築上支部 /福岡 | 毎日新聞([B!]毎日新聞, 2024/12/10 12:36:36) JR九州、来春から宮崎で車掌廃止 日豊線延岡―西都城間が対象 津波想定区間も([B!]産経新聞, 2024/12/10 12:36:31) 100年の時刻む 神話の玄関口 旧大社駅、現在は保存修理中 国重文、美しい和風建築 行ってみよう廃線跡([B!]産経新聞, 2024/12/10 12:36:31) 東京駅で国鉄と伊豆急行乗り入れ発車式 1981年には特急「踊り子」も登場 あの日の鉄道風景([B!]産経新聞, 2024/12/10 12:36:31) 前売り低調の万博入場券 大阪の40市町村が「共通返礼品」採用へ 不採用は交野市と吹田市([B!]産経新聞, 2024/12/10 12:30:09)
0 notes
Text
j1039 おいタケシ! ヤバかったぜ2
年齢的にはタケシとテリー伊藤君の間、番組作りはベテラン中のベテランで、不慣れなテリー君のフォローとタケシの間を取り持て、と指示。 またMカメラマンはフジテレビ日曜日ゴールデンタイム8時からの萩本欽一「オールスター家族対抗歌合戦」のチーフカメラをやっていた人物で同時進行中。 収録日程を確認し、民放キー局8チャンネルの裏番組4チャンネル、ゴールデンタイム同時間帯に同一チーフカメラマンを起用したのである。 ひかるはお笑い番組もやっていたのでタケシとは顔見知りだ。 これといった印象はないが関西に対抗する東京のお笑い界の起爆剤人になるのではないかと見ていた。 ひかるは毎日平均して15本前後のスタジオ番組や中継、ロケやニュースの取材等忙しい思いをしていたがMカメラマンにタケシの番組、細かに報告するよう指示してあった。 ロケが終わると必ずMカメラマンとは時間を取り状況報告は受けると同時にMカメラマンには不慣れなテリー伊藤君、タケシとの間をうまフォローするよう、その都度指示していたのだ。 タケシの事故後、雨傘番組が次々とお蔵入り状況時、会社の近くの小料理屋でMカメラマンと報告を聞きながら話をしていると時々首をくねらせるヒュック突き現象が出る。 Mカメラマンに注意すると、全く感じていないし自分は何もしていないと言い張る。 これはタケシが事故の後、首をくるんくるんとヒュック突かせる現象が出、カメラのファインダーを見ていて、そのカメラマンが無意識のうちに移ってしまった職業病である。 ひかるがMカメラマンを番組担当にしている都合上あまり強硬に止めろと言えなかった。 そのうち色んな事が起きた。 飲み屋のママが「あんた達2人何をやってんの?? 首をくるんくるんヒュック突く、気持ちが悪いね」と言う。 な なんとひかるに移ってしまったのだ~ ヒュック突きをひかるとMカメラマンが交互にくねる・・笑い話だ。 その内、何んという事だ! ママに移ってしまったのだ。 料理をしながら、あるいは、いらっしゃいませ、と言いながらくるんくるんとヒュック突きをやっている。 恐るべし・・その内お客までがくるんくるんとヒュック突きをやっている。 店中大騒ぎだ。 これはもうタケシに責任を取って貰うしかないだろうという事になる。 ところがひょんな事にMカメラマンがトイレへ入って居なくなると、全員納まってしまう。 出てくると全員がまた、くるんくるん。 止めろ~タケシ~ 裁判にしてもMカメラマンが証言台に立たないと実証出来ない。 とんでもないタケシ伝染病、ワクチンのないコロナ以上だ!! 本物タケシのヒュック突き病が放送されると、全国でヒュック突きが蔓延し放送局自体がやり玉に挙げられ社会問題化するのでは、と心配した。 このタケシ騒動、タケシ! 責任を取れ! と言いたかったがその内タケシも番組お蔵入り中、徐々に収まりMカメラマンも収まった。 それで一件落着、タケシは人騒がせな奴じゃ。
0 notes
Text
パレスチナ料理を食べてきました(中編):高橋美香さんのスライドトーク
★追記:申し訳ありません。tumblerのアカウントを持ってい���いと記事が途中までしか読めないようなので、noteに記事を移植しました。こちらからお読みいただけますと助かります…
この記事は「パレスチナ料理を食べてきました(前編):申し込みから入店まで」のつづきです。
「パレスチナ料理を食べてきました(後編):いただきます!」へとつづきます。
---
●スライドトーク
美香さんはご自身で撮られた写真をスライドに映しながら、ヨルダン川西岸地区の、ヘブロン、ビリン、ジェニン難民キャンプという三つの地域についてお話をしてくださいました。以下の文章は、伺った内容の一部を私の視点でまとめたものです。
・記憶や理解の不足を補うために、ネット上の記事や美香さんの著書『パレスチナに生きるふたり ママとマハ』(かもがわ出版)を参照しました。当日のお話とは若干の差異があることをご了承ください。
・写真を共有しなければ伝わりにくい話や美香さんご自身の言葉で聞いていただきたいエピソードは除きました。後日アーカイブが公開されるそうなので、そちらをぜひ観てください!!!
よろしくお願いいたします。
【はじめに】
「今起きていることは10月7日に唐突にはじまったことではない」というお話から、トークは始まりました。私の記憶を文字に起こすかわりに、同じ内容について美香さんご自身が書かれた文章を引用します。
"パレスチナの状況がきちんと日本に伝えられることは少なく、空爆や「テロ」のときだけ一時的に注目されてその部分だけを切り取られて、まるで「突然起きたものごと」のように報じられるということが少なくありません。根本的な問題である占領・封鎖・入植・人権侵害といった「問題」を押しつけられたまま、公正な解決もなされず、そのなかでひとびとのいとなみが続いていること、ましてや、そのいとなみがどんなものであるのかということが報じられることは少ないように思います。" (高橋美香『パレスチナに生きるふたり ママとマハ』(かもがわ出版)p43より)
「『パレスチナ』と言われて、みなさんがイメージする地図はどれですか?」
問いかけとともに映しだされたのは、4つの地図でした。

(当日使用された画像と同じ内容を示す図をhttps://altertrade.jp/archives/11771 から転載しました)
緑色の部分がパレスチナの領土です。イスラエルによる侵攻が進むにつれて面積が減り、現在はすっかり狭くなった土地が、さらに虫食い状態になっています。
“虫食いの主な原因が入植地と分離壁の建設です。入植地は国際法では違法とされているにもかかわらず、今や西岸地区では200の入植地に70万人のイスラエル人が住むまでに拡大しています。” (https://altertrade.jp/archives/11771 より)
この分離壁によって分断された街のひとつが、ヘブロンでした。
・分離壁:「パレスチナ人テロリストの侵入を防ぐ」という名目でイスラエルが建設した高い壁。多くの場所で、境界線を越えてパレスチナに入りこみ、その土地を奪っている。
・入植地:イスラエルが占領地に建設する国際法違反のユダヤ人のための住宅など。
(高橋美香『パレスチナに生きるふたり ママとマハ』(かもがわ出版)p6より)
【へブロン】
ヘブロンという地名には聞き覚えがありました。今回のランチトリップの前日に参加した「<パレスチナ>を生きる人々を想う学生若者有志の会」主催のデモで、ヘブロン出身の方のスピーチを聞いていたのです。
「子どもの頃の自分は、人が大人になる前に死ぬのを当たり前のことだと思っていた。パレスチナから出て初めて、外の世界ではそうでないことを知った。ガザの子どもたちは今も、人が大人になる前に死ぬのが当たり前なんかじゃないことを、知らずにいる」
この言葉が頭から消えず、帰りの電車でヘブロンについての記事を読みました。その土地で暮らす人たちが入植者によって自由と尊厳と命が奪われつづけてきたことを知りました。
ですが、美香さんの写真と言葉を通じて知る占領と入植の実態は、私の漠然とした想像を遥かに超えるものでした。
上述の記事にも出てきたシュハダ通りの写真を、美香さんは見せてくださいました。栄えていたというかつての面影はどこにもなく、今はゴーストタウンと化しているとのこと。通りに面した店は軒並み閉店に追いやられ、もともと一階建てだった建物の上に建て増しする形で作られた二階に、入植者が住みつきました。一階と二階のあいだには、二階から投げ捨てられるゴミへの対策として金網が張り巡らされています。
↓は参考画像です。美香さんが見せてくださったのと似た状況を撮った写真を(https://x.com/O_toshihiro/status/1719027240498085921?s=20)からお借りしました。

屋上に設置された生活用水を溜めるための貯水タンクを銃撃して穴を開ける、台所に火炎瓶を投げ込むなどといった入植者による暴力の例が、写真とともに次から次へと挙げられました。こうした命に関わる“嫌がらせ”がひっきりなしに行われている。それがヘブロンの日常なのだそうです。
【ビリン村】
ビリン村と、後述するジェニン難民キャンプは、美香さんが長期にわたって取材されている土地です。ビリンではアブーラハマ家、ジェニンではアワード家の一員として生活をともにしながら、日々の暮らしを撮りつづけてきました。
ビリン村のアブーラハマ一家は、農業やヤギの放牧、養蜂などを生業としています。土地に根づいた暮らしはしかし、入植者によって破壊されました。一家の畑がトラックで踏み荒らされるのを、イスラエルの兵士は止めなかったどころか守るようにエスコートしていたそうです。
村の土地を断ち切る形で鉄条網の分離壁がはりめぐらされ、その向こう、壁を通して見える目と鼻の先に、入植地が作られました。
週に一度、毎週金曜日に、この分離壁に反対するデモが行われるようになりました。壁の前に立って声を上げる住民に向かって、銃弾、催涙弾、家畜の排泄部と化学薬品を混ぜた汚水が飛んでくる。デモの参加者は昼のあいだに記録され、夜中に兵士が家に押し入ってきて連行されたり、逮捕には及ばずとも嫌がらせを受けたりするそうです。催涙弾のガスを吸いすぎて亡くなった方の話や、本人はなんの暴力もふるっていないにも関わらず「言動が周囲の暴力を誘発する」として17ヶ月のあいだ収監された方の話など、耳を疑うような話がつづきました。
かつて鉄条網だった分離壁は、今ではコンクリートの巨大な壁になっています。命を賭けてデモをしたところで堅固な壁は壊せないという諦念から、デモの参加者はめっきり少なくなったそうです。
そんななか、今も毎週デモに参加している人の一人がイランさんです。イランさんはイスラエル人。マイクとスピーカーを持ってやってきて、デモを妨害する兵士たちに向かってヘブライ語で「これが国を守るということか?」と呼びかけるのだそうです。
「少数ではあるけれど、そういう人もいます」美香さんは仰いました。「イスラエル対パレスチナという構図では、とらえきれないものがあります」とも。
ビリン村の話��なかで特に心に残ったのは、アブーラハマ家の息子ハムディさんの言葉です。
「よそからここを訪ねてくる人たちはみんな、金曜日のデモだけ見て帰ってゆく。ミカは日常の暮らしを撮れ。そうでないと、なぜみんなが命がけでデモをやるのかわからないだろう」
そうした日常の話もここに書けたらよかったのですが、美香さんが親しい家族や友人のこととして話してくださったものを私が文字にすると、大切なものが薄まってただの情報になってしまいます。ですのでそちらはぜひ、アーカイブや美香さんのご著書でふれてみてください。ビリン村での日々については『パレスチナ そこにある日常』(未来社)に書かれているそうです。
(できることなら、この文章を読んでくださっているあなたの脳内のスクリーンに美香さんの写真を投影したいです。人物を撮ったものは特に、撮られる側のみなさんが自然なやわらかいお顔をされているものが多くて、すごくよいんですよ。たとえば、ハムディさんがお母さんを抱きしめてキスするところを撮った一枚。ハムディさんとお母さんのあいだの、それから撮られるおふたりと撮る美香さんのあいだの、おたがいを大切に思う気持ちが伝わってきて、大好きです。本の表紙になっているので、よかったらこれだけでも見てください)
入植者のトラックによって土地を踏み荒らされたアブーラハマ一家ですが、その後長い時間をかけて畑を作り直し、家畜小屋を建て、客人にコーヒーをふるまうためのしつらえを整えたとのこと。生い茂る緑にかこまれて飲むコーヒーは、とてもおいしそうでした。
あの畑は今、どうなっているのだろうか。そろそろ見にゆかなければ。ビリン村の話を、美香さんはそんな言葉で結ばれました。
【ジェニン難民キャンプ】
ジェニン難民キャンプは、イスラエル建国によって追放された76万人のパレスチナ人の住居のひとつとして、1953年に作られました。当初は布製のテントだった「仮住まい」は、時とともにコンクリートの建物へと姿を変え、現在はひとつの街のようになっています。
この地域はシオニストのあいだで「テロリストの温床」と目され攻撃に晒されつづけてきました。わけても2002年の第2次インティファーダの際には、イスラエル軍の侵攻によって多くの人が殺されました。こちらの写真は、そのとき破壊された建物の瓦礫や自動車の残骸を集めて作られた、馬のモニュメントです。

(画像は https://note.com/yuki_phototabi/n/n1e4d6e2f0f91 からお借りしました)
馬はキャンプの入り口に立って当時の記憶を伝えていましたが、去る10月末、イスラエル軍によって運び去られました。
ここジェニンで、美香さんはアワード家の人たちと生活をともにしました。狭い家にみんなで雑魚寝、朝は毎日「だれか、朝食のパンを買うための1シェケルコインを持ってない? ポケットのなかとか布団の下とかに?」とごそごそ探しまわるところからはじまる、そんな一家ですが、美香さんが出そうとする自分のぶんの生活費は決して受け取ろうとしなかったそうです。
こちらのアワード家とその周辺の人たちにまつわるエピソードを、美香さんはごくごく近しい大切な人たちのこととして、生き生きと語ってくださいました。なかでも忘れ難いのが、アワード家の次男のムハンマドさんと、その親友マジドさんの話です。
幼馴染のふたりは、大人になってからもトロピカーナというレストランでともに働いていました。仕事が終わったあとはいったん各々の家に帰るのですが、シャワーを浴びて着替えてからまた落ちあい、つれだって遊びに出かけるのが日課だったそうです。「ほんとうにね、朝から晩までずっと一緒で。ムハンマドとマジドは兄弟よりも仲がいいんですよ」ちょっぴり飽きれるような、とびきり眩しいものをみるような、そんな表情で美香さんは話してくださいました。
現在、ムハンマドさんはトロピカーナとは別の店で働いています。マジドさんとの思い出があちこちに残った職場に勤め続けるのが辛くて、仕事を変えなければならなかったためです。
マジドさんは、キャンプに侵入してきたイスラエル兵に射殺されました。ただその場に居あわせたがために、銃撃に巻きこまれて亡くなったのです。
マジドさんだけではありません。別の幼馴染のハムザさんも、「キャンプを占領者から守るために」と戦闘員になり、殺されました。マジドさんやハムザさんのような直接的な形ではないものの、一家のお父さんのイマードさんもまた、第二次インティファーダの際にイスラエル軍から受けた尋問と暴行に心と身体を蝕まれ、数年の後に亡くなっています。大切なものを守るために戦闘員になった若者たちは「テロリスト」の烙印を押され、その捜索過程で身内が殺されることも珍しくないそうです。(戦闘員の親戚の家にミサイルが撃ち込まれて破壊された様子を、スライドで見ました)
「ジェニン難民キャンプにも日常はあります。でもその日常のなかで、一人、二人、三人、ぽつんぽつんと死んでゆく。殺されてゆくんです」
静かに語る美香さんを前に思い出したのは、前日のデモで聞いたスピーチでした。
「子どもの頃の自分は、人が大人になる前に死ぬのを当たり前のことだと思っていた。パレスチナから出て初めて、外の世界ではそうでないことを知った。ガザの子どもたちは今も、人が大人になる前に死ぬのが当たり前なんかじゃないことを、知らずにいる」
自分がこの言葉の意味を抽象的にしかとらえられていなかったことを、突きつけられました。
長男のカマールさんが「武装組織の戦闘員となった友達を支援した」という罪で逮捕された際の、アワード家の話です。本人の身の安否は言うまでもなく、カマールさんのまだ幼い子どもたちが家に残されたという意味でも、一家の大事な稼ぎ手を失ったという意味でも、事態は二重三重に深刻です。ところが、お母さんのマハさんが美香さんに向かって嘆いたのは、ニワトリの餌代のこと。「もう、どうすればいいのよ! カマールが『自分が餌代を稼ぐから』って言うから飼いはじめたのに」
生活だ、と思いました。家族が逮捕されようと続いてゆく生活がここにある。マハさんたちのように、暴力に晒されながらも日常を続けている人たちがいる。糧を得るために働き、死んでゆく命があれば生まれてくる命もあり、瓦礫をどかした裏庭に植えたオリーブやレモンの苗木は子どもたちの背丈とともに伸びてゆく。そうした一日一日のつみかさねが、銃撃で、空爆で、断ち切られる。ジェニンではそれが当たり前のことになっている。
今一度、はじめに引いた美香さんの言葉を、その続きを加えて引用します。
"パレスチナの状況がきちんと日本に伝えられることは少なく、空爆や「テロ」のときだけ一時的に注目されてその部分だけを切り取られて、まるで「突然起きたものごと」のように報じられるということが少なくありません。根本的な問題である占領・封鎖・入植・人権侵害といった「問題」を押しつけら���たまま、公正な解決もなされず、そのなかでひとびとのいとなみが続いていること、ましてや、そのいとなみがどんなものであるのかということが報じられることは少ないように思います。空爆の犠牲者も、「テロリスト」と一方的に断罪されるひとびとも、ただの数ではなく、名前も顔もない「テロリスト」でもなく、わたしたちと同じ時代に生きた個性あるひとびとなのだということを忘れたくありません。" (高橋美香『パレスチナに生きるふたり ママとマハ』(かもがわ出版)p43より)
「10月7日以降、西岸でも260人ほどの人が殺されています。しかしそれは、ほとんどニュースになりません」
ヘブロン、ビリン、ジェニン。三つの地域を、そこに暮らす人たちの営みを、美香さんのガイドを通じて知った今、この事実が今まで以上に重く胸にのしかかります。
ここには書きませんでしたが、美香さんが子どもたちと自由劇場で人形劇を観たときのお話も、そこに至るまでの経緯もふくめ、聞けてよかったです。アーカイブで、たくさんの方に聞いてほしいです。
▶︎「パレスチナ料理を食べてきました(後編):いただきます!」へつづく
0 notes
Text
instagram
母親と私
・
小学生くらいの時に友達の家に遊びに行って「ママ」って呼んでいるのを見かけてテレビだけの世界でなく東京の下町にも存在するんだと驚いたものです。
・
次に驚いたのが関西芸人の台頭。「オカン」という文字だけ見たら「悪寒」か「御燗」くらいしか思い浮かばなかったのが母親を指す言葉として新たに加わりました。
・
一方で、いまいちピンと来ていないのが森進一さんの代表曲にもなっている歌で使われている言い回しですよね。
・
というわけで本日のランチは #おふくろの味爐端 #爐端本店 です。ランチをやっているのに気づき初めて入ってみました。
・
頼んだのは他ではあまり見かけない #オリエンタルめし です。5分ほどでやって来たのは #唐揚げと #ケチャップライス に目玉焼きのせのメニューです。
・
まずは #からあげ 外側がサクッとしていてジューシーな肉汁が出てきて、美味しい。ケチャップライスはご飯の水分量が少し多めですが、もちっとしていていい感じ。
・
目玉焼きも半熟で黄身をどろっとさせながらいただくのが楽しいですね。キャベツもたっぷり、味噌汁も具材たっぷりで800円とはお安いですね。
・
他のメニューも���になりますので、また立ち寄りたいですね。
・
#有楽町ランチ #有楽町グルメ #有楽町和食 #有楽町定食 #有楽町洋食 #銀座ランチ #銀座グルメ #銀座和食 #銀座定食 #銀座洋食 #日比谷ランチ #日比谷グルメ #日比谷和食 #日比谷定食 #日比谷洋食 #とa2cg
0 notes