Tumgik
#跳傘
maasayada · 1 month
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愛と遠視、傷と羽音
ここを開けるのは、久しぶりだ。
ここに載せてきたようなことは、特定の宛先なしにはもう、書かないかも知れない。そう思い、過ごしてきた。
けれども再び開けてみるのは、魂が「必ず終わりをもたらしてやる」と私にかけた言葉が、最後の投稿(二年前)に置かれたままになっていたからである。
そのことは、ずっと忘れていた。それからふと、私の目に留まった。魂は言った通りのことをやってのけ、そして新しい生を贈ってくれた。その遍歴を語ることはできなくとも、しるしづけることはできると思う。
私は人と一緒にやるようになってから、今の自分の言葉でいえば、こんなことを探求してきた。小説と幼年の境界。小説と死者の境界。小説と観者の境界。小説と神話の境界。小説と肉体の境界。小説と因果の境界*準備中。
さいごの「小説と因果の境界」は短いものだが、その時点の私にとっては極限だった。2023年3月に書き終えてから、文字通り彷徨った。多くのことに手をつけ消耗していったが、それらがいずれ小説に資すると、以前のようには思えなくなっても、自力では止まらなかった。だから、こころがブレーキをかけたのである。
もっとも状態がよくなかったときに、間一髪で(自分ではなく)世界を選んだ。
それまでは、自分というブラックボックスを通し、みるものに陰影を纏わせつづけていた。私の文について色々なひとが色々なことを言ったが、概ね共通していたのは、独特な結晶化作用があるということだった。確かに私も信じてきた。その陰影こそがやがて固有の輝きを露わにし、光を集めるのだと。それはしかし、かなり時間のかかる作用でもあった。誇張して言えば〈こちら側(この時)〉では、私はいつもほほえむだけだった。蜜蜂は、蜜を集めることが今を生きることであるのに、わたしはそういう成り立ちをしていなかった。
終わりをもたらすとは、このブラックボックスごと引き潮に渡すことを、決断できるということだった。そのとき圧倒的な苦しさの中で、光や風や、水を感じた。私は人に「生きているだけでいい」と何度も言ってきたけれど、自分自身にそう思うのは初めてだった。
それから、素晴らしいことが起こり始めた。
今日お話ししたいのは8月17日に、生まれ故郷がいつより美しい姿をみせてくれたことだ。冒頭に挙げたものたちと並行して、2021年秋から断続的に「小説ではない文」を書いてきた。その文はあれら境界のすべてと、そのほかの体験とを含んでいる。それがついに成り、人に託した翌日のこと。
私は文の主要な舞台のひとつである公園に行き、小さな川が池に流れ込む様子がよく見えるベンチに座った。文を送る際に添えたメッセージ――花が咲いていると、思わずきれいだねと話しかける身体について――を思い出しながら、樹々を眺めたり、サンダルのまま流水に入ったりした。
開いた本に、ある大小説で主人公が亡くなるのは、作者が次第に苛立ちをおぼえてのことだと言う人がいるが、小説家が主人公を愛さなくてあのようには書けぬ。と書かれていて、涙がこぼれた。
上空を涼しい風が吹きわたった。まるで巨大な湖をまえに、雨が降る先触れをきくようだ。30分はもつと思ったが、もっと早く降り始め、晴雨兼用傘をさしてベンチに陣取ると、叩きつけるようになった。それまで氷の入ったプラカップに麦茶を注いで体を冷やしていたが、飲み口の近くに雨雫が付けば楽しかった。化学繊維の軽いスカートは膝上まで濡れて、抱えた水草のバッグは暖かく守れていたから、真っ直ぐな大雨音は、そのまま安心と結び付いていた。
あめのひは、かさをさしてほんをぬらさず。地元の図書館が子供向けに貼りだしていたポスターは、なぜかブロントサウルスが直立歩行で傘をさしていたな…
後方の東屋を振り返ると、その向こうに誰もみていない空が出現した。
そんな空が、生まれ、住まいを変えつつ暮らしてきた人口の多いこの地に降るとは。山を登るときにだけみられる幻でなくなるとは。神代の、人の手付かずの自然であった頃にまで、生地は戻ることもできるのだ。その記憶の存在を私はしっかりと感じた。
動かぬままで雨が上がると、すっきりと遠くを見ていることに気が付いた。
ひとつ上の友人は、ゴルフを好きになってから視力が1.0に回復したといい、2.0ある同い年の友人は、私は本を読まないからだと結論するが、確かに読み書きを好む者の目は、遠くよりも近くを見ることに適応しやすい。
私の場合、いつも近くに対象物が入るよう、目が無意識に動いていた。一本道を歩くとき、街路樹や自転車や自販機を、たぶん本来は必要のない頻度で見る。身体は真っ直ぐに進みたいし、目も協調しているかのようにふるまうけれども、実は遠くを見据えると疲れるので、目は避けようとする。身体はそれを知っている。
このもどかしさが突然、消えた。目が遠くと和解していた。コンタクトレンズ装着時のような視力の上がり方ではない。あれは眼科医も友人たちも、生活に危険がないように、情報が沢山入るようにとすすめるし、私も長い間、そういうことだと思ってきた。近視は見えるべきものが見えずにつらいのだと。そうではなかった。
全力で書き切った文を贈り、生地が応えて記憶のかぎり遡ったから、私は見晴るかす、すべてがうつくしい、と話しかけていたのだ。それで遠くをみるのを畏れることがあろうか。自分の不調の解消や、情報の取得のためならば、ここに出ることはかなわなかっただろう。
歪みを、遅延を、細部をバネに跳躍するというやり方を手放さなければ、ここに来ることはかなわなかっただろう。だからこそ、話せるようになったのだし、それでも、書けるのだ。たぶん。
数日して、仰向けになった首の付け根で何かが羽ばたく夢を見た。蝉のように力強い振動に驚いた。整体師の方によれば、私の視力と幼い頃つくった首の傷には、なにか関係があるらしいのだが。
即時的にあらわれるものも、遅れを伴ってあらわれるものも、どちらも肯定しきるようなものを書きたい。それはパラレル・ワールドを時間的に翻訳したようなものになるのではないか。今はそのことだけを思っている。
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「被照顧的傻瓜」
重打了兩次 湯不讓真的不要給我搞
總結戀愛小說的重點章節
但我還是要說為了堵他下課我站在他教室門口外三十分鐘
還有因為我弟真的跟他一樣溫柔體貼
害我很習慣被照顧
所以心臟爆擊指數從100%降到80%
但還是一樣喜歡(o^^o)
有一種好像我們早就已經在一起了的感覺
去逛校園 坐電梯的時候我還有話沒講完 但前面有人 所以我們到最後面的角落 我們靠超近然後他還低下頭聽我耳語 心跳快停止了差點忘記自己在講什麼
超喜歡坐他的摩托車! 我不會扣安全帽的扣子 叫他幫我扣 安全帽的帶子太大 他就幫我重調好幾次 每次調完就戴到我頭上扣起來 再調整帽子把我的頭往後仰(雖然我覺得玩我的成分比較大😠)
一開始坐車不太知道要抓哪就抓後面 結果綠燈的時候我一直忘記抓緊就差點往後飛
「你可以抓我」 「可以往前坐一點不用坐那麼後面」
所以我就開始抓他衣角 坐了好幾次的摩托車一點一點往裡面抓 到晚上的時候已經可以差不多環抱起來了
有次前面的車急煞 我就下意識抱緊他
但每次紅燈的時候我還是會ㄙㄨㄥˊ 就會撥頭髮把手拿開之類的 然後他每次要綠燈就會提醒我 我就會說喔 然後再抓緊他
反正我就會在他耳邊一直嘰哩呱啦 聽不清楚的時候就往前靠 好幾次靠在他肩上
兩個人靠很近 安全帽一直撞到 但我懷疑紅燈的時候是他自己偷偷往後靠才撞上
我抱著他的時候他還會偷偷用手臂夾住我的手
可以預感我以後會變成抱抱魔人 好喜歡 有夠喜歡
一起去吃冰 因為我早上跟他說我想吃冰 而且他還懂我不喜歡吃甜筒的點 好幾次我正要講他就把我的話接完了
他真的有幫我刪近百個鬧鐘 還很認真的把我的鬧鐘名稱看完 然後說會把要吃藥的鬧鐘留起來
好喜歡那個很順其自然挖對方冰的感覺
也好喜歡他滔滔不絕地跟我分享他的生活
他還特地拿出平板給我看他上的課的筆記
然後說吃冰前應該要把脈一下 看前後對比因為會不一樣
我就拿出我的手 他頓了一下 一隻手把脈 ���隻手覆上我的手 快要十指緊扣的那種 其實我很常看中醫 知道把脈根本不用兩隻手
後來去勤美逛 文創感超棒 我整個笑得超開心
去上廁所 廁所旁邊有一整排的扭蛋 我其實對扭蛋沒什麼興趣
「那邊有你喜歡的帕恰狗耶」他居然有記得
地下室有幾家看起來很不錯的餐廳 但外面沒有菜單 他在查菜單的時候我坐在他旁邊的高椅 他找到菜單之後我們兩個一起看 他的頭髮碰著我的頭 那個微微搔癢的感覺直接癢到心上 但他也沒有要離開的意思
突然下大雨 我們跑去要買雨傘的街上
淋雨跑步的時候他本來還想幫我遮
有夠浪漫 但他體積也沒多大所以其實沒什麼用 但���可愛
買了一把大傘 他把我撐的好好的 明明傘真的很大 但他自己還是只撐了一半
去吃他來台中吃的第一家餐廳
我想吃鴨血但怕辣 他就點了一份讓我吃
我說我不吃蝦要給他吃
「你是不吃蝦還是不吃沒剝殼的蝦」
我笑了一下 他懂
但我只是想說請他幫忙吃掉
結果他夾走之後 剝好 兩隻都放回我的湯麵裡
我要嫁給他 瘋掉了
他是很不張揚的人
但是他還是發了一個一起吃晚餐的限動
他還主動拿上禮拜打比賽的影片給我看
笨笨的 好可愛
吃完之後的時間有點尷尬 有點長又不夠長到回中國醫
他說他不能喝酒
「如果要喝酒的話就要回中國醫喝」
然後我本來覺得大概是他在中國醫和我說再見我再搭公車之類的
「然後我陪你走回捷運站再回來」
大爆擊
「大不了晚上冷了我的外套給你穿」
早上的時候他說的 我整個人要融化了
但講座太久 他來不及回宿舍就沒拿到外套
晚上坐摩托車有點冷
我們決定去逢甲夜市買外套
『我下次會記得帶外套來』
「我下次一定會記得帶外套來給你穿 下次一定會記得」他還重複保證了一次
好喜歡這句話 有下次 有我
去買帽踢 買好了他就很順手的幫我背包包和拿袋子 穿帽踢的時候他還幫我把帽子用好
真的是好溫柔的一個人
我覺得自己根本被他當成在養女兒了
要分別的時候
真的好喜歡他用很認真的眼神看著我跟我說
「回家小心 到高鐵站的時候跟我說 上高鐵再跟我說一次」
回到家還不忘記問我到宿舍了沒
我下次前面真的不會再在見到他前就把精力都用完 我還是沒辦法玩一整天 續航力好差
但是和他在一起的時候完全不會耗能
不是大起大落的興奮快樂
而是幸福
暖暖的那種
今天還是沒有成功問出三年前的世紀之謎
但那又怎樣 根本不急
這男人我要定了 追個一年以上都不為過
慢慢來沒關係
餘生還那麼長 我想和你一起度過
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fukagawakaidan · 1 month
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「お化けの棲家」に登場したお化け。
1、骨女〔ほねおんな〕 鳥山石燕の「今昔画 図続百鬼』に骨だけ の女として描かれ、 【これは御伽ぼうこうに見えたる年ふる女の骸骨、牡丹の灯籠を携へ、人間の交をなせし形にして、もとは剪灯新話のうちに牡丹灯記とてあり】と記されている。石燕が描いた骨女 は、「伽婢子」「牡丹灯籠」に出てくる女つゆの亡霊、弥子(三遊亭円朝の「怪談牡丹灯 籠」ではお露にあたる)のことをいっている。これとは別物だと思うが、「東北怪談の旅」にも骨女という妖怪がある。 安永7年~8年(1778年~1779年)の青森に現れたもので、盆の晩、骸骨女がカタリカタリと音をたてて町中を歩いたという。この骨女は、生前は醜いといわれていたが、 死んでからの骸骨の容姿が優れているので、 人々に見せるために出歩くのだという。魚の骨をしゃぶることを好み、高僧に出会うと崩れ落ちてしまうという。 「鳥山石燕 画図百鬼夜行」高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編 「東北怪談の旅」山田 野理夫
2、堀田様のお人形
以下の話が伝わっている。 「佐賀町に堀田様の下屋敷があって、うちの先祖はそこの出入りだったの。それで、先代のおばあさんが堀田様から“金太郎”の人形を拝領になって「赤ちゃん、赤ちゃん」といわれていたんだけど、この人形に魂が入っちゃって。関東大震災のとき、人形と一緒に逃げたら箱の中であちこちぶつけてこぶができたから、修復してもらうのに鼠屋っていう人形師に預けたんだけど少しすると修復されずに返ってきた。聞くと「夜になると人形が夜泣きしてまずいんです」と言われた。 (『古老が語る江東区のよもやま話』所収)
3、ハサミの付喪神(つくもがみ)
九十九神とも表記される。室町時代に描かれた「付喪神絵巻」には、「陰陽雑記云器物百年を経て化して精霊を得てよく人を訛かす、是を付喪神と号といへり」 という巻頭の文がある。 煤祓いで捨てられた器物が妖怪となり、物を粗末に扱う人間に対して仕返しをするという内容だ が、古来日本では、器物も歳月を経ると、怪しい能力を持つと考えられていた。 民俗資料にも擂り粉木(すりこぎ)や杓文字、枕や蒲団といった器物や道具が化けた話しがある。それらは付喪神とよばれていないが、基本的な考え方は「付喪神絵巻」にあるようなことと同じで あろう。 (吉川観方『絵画に見えたる妖怪』)
4、五徳猫(ごとくねこ)  五徳猫は鳥山石燕「画図百器徒然袋」に尾が2つに分かれた猫又の姿として描かれており、「七徳の舞をふたつわすれて、五徳の官者と言いしためしも あれば、この猫もいかなることをか忘れけんと、夢の中におもひぬ」とある。鳥山石燕「画図百器徒然袋」の解説によれば、その姿は室町期の伝・土佐光信画「百鬼夜行絵巻」に描かれた五徳猫を頭に 乗せた妖怪をモデルとし、内容は「徒然袋」にある「平家物語」の 作者といわれる信濃前司行長にまつわる話をもとにしているとある。行長は学識ある人物だったが、七徳の舞という、唐の太宗の武の七徳に基づく舞のうち、2つを忘れてしまったために、五徳の冠者のあだ名がつけられた。そのため、世に嫌気がさし、隠れて生活するようになったという。五徳猫はこのエピソードと、囲炉裏にある五徳(薬缶などを載せる台)を引っ掛けて創作された 妖怪なのであろう。ちなみに土佐光信画「百鬼夜行絵巻」に描かれている妖怪は、手には火吹き 竹を持っているが、猫の妖怪ではなさそうである。 ( 高田衛監修/稲田篤信・田中直日編『鳥山石燕画図百鬼夜行』)→鳥山石燕『百器徒然袋』より 「五徳猫」
5、のっぺらぼー 設置予定場所:梅の井 柳下 永代の辺りで人魂を見たという古老の話しです。その他にも、背中からおんぶされて、みたら三つ目 小僧だったり、渋沢倉庫の横の河岸の辺りでのっぺらぼーを見たという話しが残っています。 (『古老が語る江東区のよもやま話』所収) のっぺらぼーは、顔になにもない卵のような顔の妖怪。特に小泉八雲『怪談』にある、ムジナの話が良く知られている。ある男が東京赤坂の紀国坂で目鼻口のない女に出会い、驚き逃げて蕎麦 屋台の主人に話すと、その顔も同じだったという話。その顔も同じだったという話。
6、アマビエアマビエ 弘化3年(1846年) 4月中旬と記 された瓦版に書かれているもの。 肥後国(熊本県)の海中に毎夜光るものが あるので、ある役人が行ってみたところ、ア マビエと名乗る化け物が現れて、「当年より はやりやまいはや 6ヵ月は豊作となるが、もし流行病が流行ったら人々に私の写しを見せるように」といって、再び海中に没したという。この瓦版には、髪の毛が長く、くちばしを持った人魚のようなアマビエの姿が描かれ、肥後の役人が写したとある。 湯本豪一の「明治妖怪新聞」によれば、アマピエはアマピコのことではないかという。 アマピコは瓦版や絵入り新聞に見える妖怪で、 あま彦、天彦、天日子などと書かれる。件やクダ部、神社姫といった、病気や豊凶の予言をし、その絵姿を持っていれば難から逃れられるという妖怪とほぼ同じものといえる。 アマビコの記事を別の瓦版に写す際、間違 えてアマビエと記してしまったのだというのが湯本説である。 『明治妖怪新聞」湯本豪一「『妖怪展 現代に 蘇る百鬼夜行』川崎市市民ミュージアム編
7、かさばけ(傘お化け) 設置予定場所:多田屋の入口作品です。 一つ目あるいは、二つ目がついた傘から2本の腕が伸び、一本足でピョンピョン跳ねまわる傘の化け物とされる。よく知られた妖怪のわりには戯画などに見えるくらいで、実際に現れたなどの記録はないようである。(阿部主計『妖怪学入門』)歌川芳員「百種怪談妖物双六」に描 かれている傘の妖怪「一本足」
8、猫股(ねこまた)  猫股は化け猫で、尻尾が二股になるまで、齢を経た猫 で、さまざまな怪しいふるまいをすると恐れられた。人をあざむき、人を食らうともいわれる。飼い猫が年をとり、猫股になるため、猫を長く飼うもので はないとか、齢を経た飼い猫は家を離れて山に入り、猫股 になるなどと、各地に俗信がある。 このような猫の持つ妖力から、歌舞伎ではお騒動と化け猫をからめて「猫騒動もの」のジャンルがあり、
「岡崎の猫」「鍋島の猫」「有馬の猫」が三代化け猫とされる。
9、毛羽毛現(けうけげん) 設置予定場所:相模屋の庭 鳥山石燕の「今昔百鬼拾遺」に毛むくじゃらの妖怪として描かれた もので、 「毛羽毛現は惣身に毛生ひたる事毛女のごとくなればかくいふ か。或いは希有希現とかきて、ある事まれに、見る事まれなれば なりとぞ」とある。毛女とは中国の仙女のことで、華陰の山中(中国陝西省陰県の西 獄華山)に住み、自ら語るところによると、もともとは秦が亡んだため 山に逃げ込んだ。そのとき、谷春という道士に出会い、松葉を食すことを教わって、遂に寒さも飢えも感じなくなり、身は空を飛ぶほど軽くなった。すでに170余年経つなどと「列仙伝」にある。この毛羽毛現は家の周辺でじめじめした場所に現れる妖怪とされるが、実際は石燕の創作妖 怪のようである。 (高田衛監修/稲田篤信・田中直日編『鳥山石燕 画図百鬼夜行』→鳥山石燕「今昔百鬼 拾遺」より「毛羽毛現」
10、河童(かっぱ) 設置予定場所:猪牙船 ◇ 河童(『耳袋』) 江戸時代、仙台藩の蔵屋敷に近い仙台堀には河童が出たと言われています。これは、子どもたちが、 なんの前触れもなく掘割におちてしまう事が続き探索したところ、泥の中から河童が出てきたというも のです。その河童は、仙台藩の人により塩漬けにして屋敷に保管したそうです。 ◇ 河童、深川で捕獲される「河童・川太郎図」/国立歴史民俗博物館蔵 深川木場で捕獲された河童。河童は川や沼を住処とする妖怪で、人を水中に引き込む等の悪事を働く 反面、水の恵みをもたらす霊力の持ち主として畏怖されていた ◇ 河童の伝説(『江戸深川情緒の研究』) 安永年間(1772~1781) 深川入船町であった話しです。ある男が水浴びをしていると、河童がその男 を捕えようとしました。しかし、男はとても強力だったので逆に河童を捕えて陸に引き上げ三十三間堂の前で殴り殺そうとしたところ、通りかかった人々が河童を助けました。それ以来、深川では河童が人 間を捕らなくなったといいます。→妖怪画で知られる鳥山石燕による河童
11、白容商〔しろうねり〕
鳥山石燕「画図百器 徒然袋」に描かれ、【白うるりは徒然のならいなるよし。この白うねりはふるき布巾のばけたるものなれども、外にならいもやはべると、夢のうちにおもひぬ】 と解説されている。白うるりとは、吉田兼好の『徒然草」第六十段に登場する、 芋頭(いもがしら)が異常に好きな坊主のあだ名である。  この白うるりという名前に倣って、布雑巾 の化けたものを白容裔(しろうねり)と名づけたといっているので、つまりは石燕の創作妖怪であろう。古い雑巾などが化けて人を襲う、などの説 明がされることがあるが、これは山田野理夫 の『東北怪談の旅』にある古雑巾の妖怪を白 容裔の話として使ったにすぎない。 『鳥山石燕画図百鬼夜行』高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編
12、轆轤首〔ろくろくび〕
抜け首、飛頭蛮とも つな いう。身体から首が完全に分離して活動する ものと、細紐のような首で身体と頭が繋がっているものの二形態があるようである。 日本の文献には江戸時代から多くみえはじ め、『古今百物語評判』『太平百物語』『新説 百物語」などの怪談集や、『甲子夜話』『耳 囊」「北窓瑣談」「蕉斎筆記』『閑田耕筆』と いった随筆の他、石燕の『画図百鬼夜行」に 代表される妖怪画にも多く描かれた。 一般的な轆轤首の話としては、夜中に首が 抜け出たところを誰かに目撃されたとする内 容がほとんどで、下働きの女や遊女、女房、 娘などと女性である場合が多い。 男の轆轤首は「蕉斎筆記』にみえる。 ある夜、増上寺の和尚の胸の辺りに人の 首が来たので、そのまま取って投げつけると、 どこかへいってしまった。翌朝、気分が悪いと訴えて寝ていた下総出 身の下働きの男が、昼過ぎに起き出して、和 尚に暇を乞うた。わけ その理由を問えば、「昨夜お部屋に首が参りませんでしたか」と妙なことを訊く。確か に来たと答えると、「私には抜け首の病があります。昨日、手水鉢に水を入れるのが遅い とお叱りを受けましたが、そんなにお叱りに なることもないのにと思っていると、 夜中に首が抜けてしまったのです」 といって、これ以上は奉公に差支えがあるからと里に帰って しまった。 下総国にはこの病が多いそうだと、 「蕉斎筆記』は記している。  轆轤首を飛頭蛮と表記する文献があるが、 これはもともと中国由来のものである。「和漢三才図会』では、『三才図会」「南方異 物誌」「太平広記」「搜神記』といった中国の 書籍を引いて、飛頭蛮が大闍波国(ジャワ) や嶺南(広東、広西、ベトナム)、竜城(熱 洞省朝陽県の西南の地)の西南に出没したことを述べている。昼間は人間と変わらないが、夜になると首 が分離し、耳を翼にして飛び回る。虫、蟹、 ミミズなどを捕食して、朝になると元通りの 身体になる。この種族は首の周囲に赤い糸のような傷跡がある、などの特徴を記している。中国南部や東南アジアには、古くから首だけの妖怪が伝わっており、マレーシアのポン ティアナやペナンガルなどは、現在でもその 存在が信じられている。 日本の轆轤首は、こうした中国、東南アジ アの妖怪がその原型になっているようである。 また、離魂病とでもいうのだろうか、睡眠中に魂が抜け出てしまう怪異譚がある。例えば「曽呂利物語」に「女の妄念迷い歩 <事」という話がある。ある女の魂が睡眠中に身体から抜け出て、 野外で鶏になったり女の首になったりしているところを旅人に目撃される。旅人は刀を抜いてその首を追いかけていく と、首はある家に入っていく。すると、その家から女房らしき声が聞こえ、 「ああ恐ろしい夢を見た。刀を抜いた男が追 いかけてきて、家まで逃げてきたところで目 が醒めた」などといっていたという話である。これの類話は現代の民俗資料にも見え、抜け出た魂は火の玉や首となって目撃されている。先に紹介した「蕉斎筆記』の男の轆轤首 も、これと同じように遊離する魂ということ で説明ができるだろう。 轆轤首という妖怪は、中国や東南アジア由 来の首の妖怪や、離魂病の怪異譚、見世物に 出た作りものの轆轤首などが影響しあって、 日本独自の妖怪となっていったようである。 【和漢三才図会』寺島良安編・島田勇雄・竹 島淳夫・樋口元巳訳注 『江戸怪談集(中)』 高田衛編/校注『妖異博物館』柴田宵曲 『随筆辞典奇談異聞編」柴田宵曲編 『日本 怪談集 妖怪篇』今野円輔編著 『大語園』巌谷小波編
13、加牟波理入道〔がんばりにゅうどう〕
雁婆梨入道、眼張入道とも書く。便所の妖怪。 鳥山石燕の「画図百鬼夜行」には、便所の台があるよう 脇で口から鳥を吐く入道姿の妖怪として描かれており、【大晦日の夜、厠にゆきて「がんばり入道郭公」と唱ふれば、妖怪を見さるよし、世俗のしる所也。もろこしにては厠 神名を郭登といへり。これ遊天飛騎大殺将軍 とて、人に禍福をあたふと云。郭登郭公同日 は龕のの談なるべし】と解説されている。 松浦静山の『甲子夜話」では雁婆梨入道という字を当て、厠でこの名を唱えると下から入道の頭が現れ、 その頭を取って左の袖に入れてまたとりだすと 頭は小判に変化するなどの記述がある。 「がんばり入道ホトトギス」と唱えると怪異 にあわないというのは、江戸時代にいわれた 俗信だが、この呪文はよい効果を生む(前述 ことわざわざわい ●小判を得る話を含め)場合と、禍をよぶ 場合があるようで、「諺苑」には、大晦日に この話を思い出せば不祥なりと書かれている。 また、石燕は郭公と書いてホトトギスと読ませているが、これは江戸時代では郭公とホト トギスが混同されていたことによる。 ホトトギスと便所との関係は中国由来のようで、「荊楚歲時記』にその記述が見える。 ホトトギスの初鳴きを一番最初に聞いたもの は別離することになるとか、その声を真似すると吐血するなどといったことが記されており、厠に入ってこの声を聞くと、不祥事が起 こるとある。これを避けるには、犬の声を出 して答えればよいとあるが、なぜかこの部分 だけは日本では広まらなかったようである。 『鳥山石燕画図百鬼夜行』高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編 『江戸文学俗信辞典』 石川一郎編『史実と伝説の間」李家正文
14、三つ目小僧
顔に三つの目を持つ童子姿の妖怪。 長野県東筑摩郡教育委員会による調査資料に名は見られるが、資料中には名前があるのみ で解説は無く、どのような妖怪かは詳細に語られていない。 東京の下谷にあった高厳寺という寺では、タヌキが三つ目小僧に化けて現れたという。このタヌ キは本来、百年以上前の修行熱心な和尚が境内に住まわせて寵愛していたために寺に住みついたものだが、それ以来、寺を汚したり荒らしたりする者に対しては妖怪となって現れるようになり、体の大きさを変えたり提灯を明滅させて人を脅したり、人を溝に放り込んだりしたので、人はこれ を高厳寺小僧と呼んで恐れたという。困った寺は、このタヌキを小僧稲荷として境内に祀った。この寺は現存せず、小僧稲荷は巣鴨町に移転している。 また、本所七不思議の一つ・置行堀の近くに住んでいたタヌキが三つ目小僧に化けて人を脅したという言い伝えもある。日野巌・日野綏彦 著「日本妖怪変化語彙」、村上健司校訂 編『動物妖怪譚』 下、中央公論新社〈中公文庫〉、2006年、301頁。 佐藤隆三『江戸伝説』坂本書店、1926年、79-81頁。 『江戸伝説』、147-148頁。
15、双頭の蛇 設置予定場所:水茶屋 「兎園小説」には、「両頭蛇」として以下の内容が著してある。 「文政7年(1824)11月24日、本所竪川通りの町方掛り浚場所で、卯之助という男性 が両頭の蛇を捕まえた。長さは3尺あったという。」
文政7年(1824)11月24日、一の橋より二十町程東よりの川(竪川、現墨田区)で、三尺程の 「両頭之蛇」がかかったと言う話です。詳細な図解が示されています。 (曲亭馬琴「兎園小説」所収『兎園小説』(屋代弘賢編『弘賢随筆』所収) 滝沢馬琴他編 文政8年(1825) 国立公文書館蔵
16、深川心行寺の泣き茶釜
文福茶釜は「狸」が茶釜に化けて、和尚に恩返しをする昔話でよく知られています。群馬県館林の茂 林寺の話が有名ですが、深川2丁目の心行寺にも文福茶釜が存在したといいます。『新撰東京名所図会』 の心行寺の記述には「什宝には、狩野春湖筆涅槃像一幅 ―及び文福茶釜(泣茶釜と称す)とあり」 とあります。また、小説家の泉鏡花『深川浅景』の中で、この茶釜を紹介しています。残念ながら、関 東大震災(1923年)で泣茶釜は、他の什物とともに焼失してしまい、文福茶釜(泣き茶釜)という狸が 化けたという同名が残るのみです。鳥山石燕「今昔百鬼拾遺」には、館林の茂森寺(もりんじ)に伝わる茶釜の話があります。いくら湯を 汲んでも尽きず、福を分け与える釜といわれています。 【主な参考資料】村上健司 編著/水木しげる 画『日本妖怪大辞典』(角川出版)
17、家鳴(やなり) 設置予定場所:大吉、松次郎の家の下)  家鳴りは鳥山石燕の「画図百鬼夜行」に描かれたものだが、(石燕は鳴屋と表記)、とくに解説はつけられて いない。石燕はかなりの数の妖怪を創作しているが、初期の 「画図百鬼夜行」では、過去の怪談本や民間でいう妖怪などを選んで描いており、家鳴りも巷(ちまた)に知られた妖怪だったようである。 昔は何でもないのに突然家が軋むことがあると、家鳴りのような妖怪のしわざだと考えたようである。小泉八雲は「化け物の歌」の中で、「ヤナリといふ語の・・・それは地震中、家屋の震動 する音を意味するとだけ我々に語って・・・その薄気 味悪い意義を近時の字書は無視して居る。しかし此語 はもと化け物が動かす家の震動の音を意味して居た もので、眼には見えぬ、その震動者も亦(また) ヤナ リと呼んで居たのである。判然たる原因無くして或る 家が夜中震ひ軋り唸ると、超自然な悪心が外から揺り動かすのだと想像してゐたものである」と延べ、「狂歌百物語」に記載された「床の間に活けし立ち木も倒れけりやなりに山の動く掛軸」という歌を紹介している。 (高田衛監修/稲田篤信・田中直日編『鳥山石燕画図百鬼夜行』、『小泉八雲全集』第7巻)
18、しょうけら 設置予定場所:おしづの家の屋根 鳥山石燕「画図百鬼夜行」に、天井の明かり取り窓を覗く妖怪として描かれているもの。��燕による解説はないが、 ショウケラは庚申(こうしん) 信仰に関係したものといわれる。 庚申信仰は道教の三尸(さんし)説がもとにあるといわ れ、60日ごとに巡ってくる庚申の夜に、寝ている人間の身 体から三尸虫(頭と胸、臍の下にいるとされる)が抜け出し、天に昇って天帝にその人の罪科を告げる。この報告により天帝は人の命を奪うと信じられ、対策とし て、庚申の日は眠らずに夜を明かし、三尸虫を体外に出さ ないようにした。また、これによる害を防ぐために「ショウケラはわたとてまたか我宿へねぬぞねたかぞねたかぞ ねぬば」との呪文も伝わっている。 石燕の描いたショウケラは、この庚申の日に現れる鬼、ということがいえるようである。
19、蔵の大足
御手洗主計という旗本の屋敷に現れた、長さ3尺程(約9m)の大足。(「やまと新聞」明治20年4月29日より)
20、お岩ちょうちん
四世鶴屋南北の代表作である「東海道四谷怪談」のお岩 を、葛飾北斎は「百物語シリーズ」の中で破れ提灯にお岩が 宿る斬新な構図で描いている。北斎は同シリーズで、当時の 怪談話のもう一人のヒロインである「番町皿屋敷のお菊」も描 く。「東海道四谷怪談」は、四世南北が暮らし、没した深川を舞台にした生世話物(きぜわもの)の最高傑作。文政8年(1825) 7月中村座初演。深川に住んだ七代目市川團十郎が民谷伊 右衛門を、三代目尾上菊五郎がお岩を演じた。そのストーリーは当時評判だった実話を南北が取材して描 いている。男女が戸板にくくられて神田川に流された話、また 砂村隠亡堀に流れついた心中物の話など。「砂村隠亡堀の場」、「深川三角屋敷の場」など、「四谷怪 談」の中で深川は重要な舞台として登場する。
21、管狐(くだぎつね)  長野県を中心にした中部地方に多く分布し、東海、関東南部、東北の一部でいう憑き物。関東 南部、つまり千葉県や神奈川県以外の土地は、オサキ狐の勢力になるようである。管狐は鼬(いたち)と鼠(ねずみ)の中間くらいの小動物で、名前の通り、竹筒に入ってしまうほどの大きさだという。あるいはマッチ箱に入るほどの大きさで、75匹に増える動物などとも伝わる個人に憑くこともあるが、それよりも家に憑くものとしての伝承が多い。管狐が憑いた家は管屋(くだや)とか管使いとかいわれ、多くの場合は「家に憑いた」ではなく「家で飼っている」という表現をしている。管狐を飼うと金持ちになるといった伝承はほとんどの土地でいわれることで、これは管 狐を使って他家から金や品物を集めているからだなどという。また、一旦は裕福になるが、管狐は 大食漢で、しかも75匹にも増えるのでやがては食いつぶされるといわれている。 同じ狐の憑き物でも、オサキなどは、家の主人が意図しなくても、狐が勝手に行動して金品を集 めたり、他人を病気にするといった特徴があるが、管狐の場合は使う者の意図によって行動すると考えられているようである。もともと管狐は山伏が使う動物とされ、修行を終えた山伏が、金峰山 (きんぷさん)や大峰(おおみね)といった、山伏に官位を出す山から授かるものだという。山伏は それを竹筒の中で飼育し、管狐の能力を使うことで不思議な術を行った。 管狐は食事を与えると、人の心の中や考えていることを悟って飼い主に知らせ、また、飼い主の 命令で人に取り憑き、病気にしたりするのである。このような山伏は狐使いと呼ばれ、自在に狐を 使役すると思われていた。しかし、管狐の扱いは難しく、いったん竹筒から抜け出た狐を再び元に 戻すのさえ容易ではないという。狐使いが死んで、飼い主不在となった管狐は、やがて関東の狐の親分のお膝元である王子村(東京都北区)に棲むといわれた。主をなくした管狐は、命令する者がいないので、人に憑くことはないという。 (石塚尊俊『日本の憑きもの』、桜井徳太郎編『民間信仰辞典』、金子準二編著『日本狐憑史資料 集成』)
22、かいなで 設置予定場所: 長屋の厠 京都府でいう妖怪。カイナゼともいう。節分の夜に便所へ行くとカイナデに撫でられるといい、これを避けるには、「赤い紙やろうか、白い紙やろうか」という呪文を唱えればよいという。 昭和17年(1942年)頃の大阪市立木川小学校では、女子便所に入ると、どこからともなく「赤い 紙やろか、白い紙やろか」と声が聞こえてくる。返事をしなければ何事もないが、返事をすると、尻を舐められたり撫でられたりするという怪談があったという。いわゆる学校の怪談というものだが、 類話は各地に見られる。カイナデのような家庭内でいわれた怪異が、学校という公共の場に持ち込まれたものと思われる。普通は夜の学校の便所を使うことはないだろうから、節分の夜という条件が消失してしまったのだろう。 しかし、この節分の夜ということは、実に重要なキーワードなのである。節分の夜とは、古くは年越しの意味があり、年越しに便所神を祭るという風習は各地に見ることができる。その起源は中国に求められるようで、中国には、紫姑神(しこじん)という便所神の由来を説く次のような伝説がある。 寿陽県の李景という県知事が、何媚(かび) (何麗卿(かれいきょう)とも)という女性を迎えたが、 本妻がそれを妬み、旧暦正月 15 日に便所で何媚を殺害した。やがて便所で怪異が起こるようになり、それをきっかけに本妻の犯行が明るみに出た。後に、何媚を哀れんだ人々は、正月に何媚を便所の神として祭祀するようになったという(この紫姑神は日本の便所神だけではなく、花子さんや紫婆(むらさきばばあ)などの学校の怪談に登場する妖怪にも影響を与えている。) 紫姑神だけを日本の便所神のルーツとするのは安易だが、影響を受けていることは確かであろう。このような便所神祭祀の意味が忘れられ、その記憶の断片化が進むと、カイナデのような妖怪が生まれてくるようである。 新潟県柏崎では、大晦日に便所神の祭りを行うが、便所に上げた灯明がともっている間は決して便所に入ってはいけないといわれる。このケースは便所神に対する信仰がま��生きているが、便所神の存在が忘れられた例が山田野理夫『怪談の世界』に見える。同書では、便所の中で「神くれ神くれ」と女の声がしたときは、理由は分からなくとも「正月までまだ遠い」と答えればよいという。便所神は正月に祀るものという断片的記憶が、妖怪として伝えられたものといえる。また、「赤い紙やろうか、白い紙やろうか」という呪文も、便所神の祭りの際に行われた行為の名残を伝えて いる。便所神の祭りで紙製の人形を供える土地は多く、茨城県真壁郡では青と赤、あるいは白と赤の 男女の紙人形を便所に供えるという。つまり、カイナデの怪異に遭遇しないために「赤い紙やろう か、白い紙やろうか」と唱えるのは、この供え物を意味していると思われるのである。本来は神様に供えるという行為なのに、「赤とか白の紙をやるから、怪しいふるまいをするなよ」というように変化してしまったのではないだろうか。さらに、学校の怪談で語られる便所の怪異では、妖怪化した便所神のほうから、「赤い紙やろうか、白い紙やろうか」とか「青い紙やろうか、赤い紙やろうか」というようになり、より妖怪化が進ん でいったようである。こうしてみると、近年の小学生は古い信仰の断片を口コミで伝え残しているともいえる。 島根県出雲の佐太神社や出雲大社では、出雲に集まった神々を送り出す神事をカラサデという が、氏子がこの日の夜に便所に入ると、カラサデ婆あるいはカラサデ爺に尻を撫でられるという伝 承がある。このカラサデ婆というものがどのようなものか詳細は不明だが、カイナデと何か関係があるのかもしれない。 (民俗学研究所編『綜合日本民俗語彙』、大塚民俗学会編『日本民俗学事典』、『民間伝承』通巻 173号(川端豊彦「厠神とタカガミと」)ほか)
23、木まくら 展示予定場所:政助の布団の上 江東区富岡にあった三十三間堂の側の家に住んだ医師が病気になり、元凶を探した所 黒く汚れた木枕が出た。その枕を焼くと、死体を焼く匂いがして、人を焼くのと同じ時間がかかったという。 (『古老が語る江東区のよもやま話』所収)
24、油赤子〔あぶらあかご〕鳥山石燕の『今昔 画図続百鬼』に描かれた妖怪。【近江国大津 の八町に、玉のごとくの火飛行する事あり。土人云「むかし志賀の里に油うるものあり。 夜毎に大津辻の地蔵の油をぬすみけるが、その者死て魂魄炎となりて、今に迷いの火となれる」とぞ。しからば油をなむる赤子は此ものの再生せしにや】と記されている。 石燕が引いている【むかし志賀(滋賀) の】の部分は、「諸国里人談』や『本朝故事 因縁集」にある油盗みの火のことである。油盗みの火とは、昔、夜毎に大津辻の地蔵 の油を盗んで売っていた油売りがいたが、死 後は火の玉となり、近江大津(滋賀県大津 市)の八町を縦横に飛行してまわったという もの。石燕はこの怪火をヒントに、油を嘗める赤ん坊を創作したようである。 『鳥山石燕画図百鬼夜行』高田衛監修・稲 田篤信・田中直日編 『一冊で日本怪異文学 100冊を読む」檜谷昭彦監修『日本随筆大成編集部編
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ryotarox · 2 months
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ジョン・コンスタブル - Wikipedia
ジョン・コンスタブル(John Constable RA([ˈkʌnstəbəl, ˈkɒn-][1]、1776年6月11日 - 1837年3月31日)は、ロマン派の伝統を受け継ぐ19世紀のイギリスの画家である。カンスタブルと表記することもある。 同時代のウィリアム・ターナー(コンスタブルより1歳年長[2])とともに、19世紀イギリスを代表する風景画家
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『雨雲のある海景の習作』(1824年頃)ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ所蔵
コンスタブルは、完成版の絵に先立って、構図を確認するために原寸大の習作を数多く描いている。 自由で力強い筆致で描かれたこれらの大きなスケッチは、当時としては画期的なものであり、芸術家や学者、一般の人々の興味を引き続けている。例えば、『跳ね馬』や『乾草の車』の油彩スケッチ(英語版)は、コンスタブルが描いた同じ題材の完成版にはない活気と表現力を感じさせる。 コンスタブルの作品の中でも、これらの油彩スケッチは、彼が「アバンギャルド」な画家であり、風景画がまったく新しい方向に進むことができることを示した画家であったことを明らかにしている。 コンスタブルは、本格的な油彩スケッチ��けでなく、風景や雲の観察を数多く行い、大気の状態をより科学的に記録することを目指していた。1827年の『チェーン桟橋』に対し、ある批評家は「大気には独特の湿気があり、傘が欲しくなるような雰囲気だ」と書いている[46]。 このスケッチは、(ピエール=アンリ・ド・ヴァランシエンヌが1780年頃にローマで描いた油彩スケッチを除いて)屋外で対象物を見ながら直接描かれた初めてのものだった。光と動きの効果を表現するために、コンスタブルは乱れた筆致を使い、しばしば小さなタッチで、明るい部分に散らして、風景全体を包み込むようなきらめく光の印象を与えた。 コンスタブルの習作の中でも最も表現力豊かで力強い作品の一つである、1824年にブライトンで描かれた『雨雲のある海景の習作』(Seascape Study with Rain Cloud)では、海上で積乱雲が湧き上がる瞬間を、切れ味のよい暗い筆致で捉えている
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strabin · 3 months
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 暑いですね。熱中症だけは気を付けたいです。
 全くそんなつもりはなかったのですが、ホセさんと無常さんの漫画もどきは描いているうちにいかがわしくなってきました(いやあの、熱中症だから顔が真っ赤・汗びっしょり・途中から震えと吐き気で胸を押さえて息が荒い、無常さんの顔が遥かに上にあるから上目遣いになっているってだけで決してやましい気持ちがあったわけでは――と言い訳はするけれど、マリーママの「疚しさを感じる時点で罪である」という教えを思い出してお手上げです。ホセさんごめんなさい……実際私は劣情を抱いています……)。
 一か月に一回は無常さんとホセさんの話を読まないと私の飢餓感が凄い。供給はごく僅かなので自分で描くのです。でもやっぱりだめだ、見たいところに重点を置きすぎて話が支離滅裂すぎる。今思えばもっと全体をオレンジ色にして柔らかいよりも暑そうな雰囲気を表現できたらよかったのになぁと思う。説得力のあるイラストや漫画を描ける人すごいや。
 それはそうと、SIZMAさんのサイトで無常さんとホセさんの話がうpされていて嬉しさのあまりhappy catが頭の中で小一時間踊っていました。本当に嬉しい。傘に意識があるという仮説が正と見た時には謝必安が主体だと思っている、かつホセさんに無常さんが能動的に催眠を掛けていたらすごくおいしいなぁと思っているのでSIZMAさんの二人(三人?)の関係性が本当に好きだし嬉しい。こんなに表現力があってキャラの関係性が私の願望を具現化してもらったような作品を見られるなんてこんな幸せあっていいのか……?
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 ホセさんのスーツ姿の絵はこの画像を参考にした。
 描いている途中から彩度を高くして見たいなぁと思って挑戦してみたらいい感じになったけど力尽きた。
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 前回のさよ教の白と黒のアレコレの続き。先生=御幸ちゃんなら、たとえ先生が御幸ちゃんを救えたとしても裏切られた気持ちになってスッキリしなさそうだなぁとか思ったりした。
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 これは磁場、無常さんの吸魂、「雷のように飛び跳ねた」の関連性を追った考察のメモ。全文は以下に書きます。
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 (1)の記述と写真から「無常の緑の光はこれ?鬼火の正体もこれと聞いたことあるな」と思ったけど、体の大部分を占めるリンは骨Ca3(PO4)2らしく、化石が残るように非常に安定。そのためリンによる発光とは考えにくいとのこと。また、鬼火は別の説だとプラズマらしい。「雷のように飛び跳ねた」が関連してる?
 現在ではプラズマによる発光だという説が有力らしく、その正体は球電(雷の一種で雷雨の日に見られることがある)とされている模様。物を透過するけど燃やさない。時には爆発して(しないこともある?)ダイナマイト10kg分のエネルギーを放つとか。
 プラズマ化とは、気体の原子にエネルギーが加えられることで原子核と電子がバラバラになって電荷を帯びた、磁場の影響を受けるようになった状態のことらしい。
 磁気力とは、磁石や電流に働きかける力。しかし目視できないので分かりにくい。そのため、「空間にその力が働く場がある」と見なして磁場と名付けたらしい。これが磁場。磁場の様子は見られないので、磁力線を引くことで可視化する。磁力線は近いほど力が強い。
 磁場は地磁気よりも強いと地磁気異常を引き起こし、コンパスが大きく乱れる。コンパスの乱れといえば謝必安の持つ指南が逆向きなことを思い出す。つまり磁場の乱れがあるのか?現に実験ファイルで磁場についての言及がある。
 強磁性の物質は自ら持続的な磁場を生み出し続ける。電流でも磁場が生まれることがある。
 物質の磁性は温度、圧力、周辺の磁場に依存するので条件が変われば異なる磁性を示す。
 磁力とは電荷の運動によって引き起こされる力(今更か)
 磁場と湿度の関係は実験ファイルにもあるように不明(もしくは私が知らないだけ)
 湿度を変えると傘を置いた環境の磁場が変化する→傘が磁場を生んでいるとしたら強磁性。
 Q.なぜ強磁性?見る限り柄は木製、傘の表面も紙に見える。磁性を持つか?(持ち手の赤い石が怪しくは思う)
「長期的に特殊な生態環境にいた」磁場を生態環境というものなのか?と違和感はあるものの、環境と場に意味の違いはないかも。
 どういうことか。長期的に特殊な磁場のある環境にいたということ?でもそれだと生物エネルギーが関わってこない。ピースが足りない。情報公開を待つか新しい視点が必要。
 結局何が言いたいのまとめ  吸魂の緑色は鬼火の色かも?(原因はプラズマ) →磁場変化つまり電荷の変化が起こったワケ。その理由が雷だったとしたら、磁場の変化も鬼火が起こったことも説明できそう。更に、パトリシアの携帯品やホセの説明の雷のように飛び跳ねたも説明できる →ゲーム時雷雨?
 もうひとつ。
 湿度変化によって磁場が変化した、これは傘の影響なのかそれとも天気や温度など実験で測定していない環境の要因によるものなのかは不明。ただし、もし仮に傘の影響だとしたら磁場変化を起こすに必要な磁場を発すると言える。でも磁性を持つような物質が傘にはないように思える。木の柄と紙だし。強いて言うなら持ち手の赤い石が要因になっているかも。
 でも、「特殊な生態環境にいたことで微弱な生物エネルギーを発するのかも」という情報が浮いている。つながりがない。
 というわけで、磁場変異を起こしたのは雷(もしくは湿度以外の測定していない何らかの要因)と傘(特に赤い石)のどっちかという問題になるかな?ただし、特殊な生態環境や生物エネルギーの事が分からないまま。そういう環境にいた傘が自制を持ったとも言えるのかもという可能性は残る。
 とにかく、湿度を変化させると磁場変化が起こった(ただし湿度と磁場の相関は不明) 記録者は、微量な生物エネルギーは長期的にいた特殊な生態環境と関係があるかもしれないと考えてる・傘が磁場変化を起こしたと考えている。 磁場変化が起こったのは傘によるものだとしたら指南が不定なのではなく逆向きに「一貫している」ことを説明できる。じゃあそうかも。
 あ!! 傘が磁場変化を起こす→空気中の気体の電荷が変化し、プラズマ発生→雷(球電)が起こり、吸魂の緑色の発光が見られた これじゃない? だから雷は元じゃなくて磁場変化の結果起こったもの。で携帯品と説明書きも説明できる。 事の発端は傘だったのかも。
 じゃあ結局、なぜ傘が磁場変化を起こしたのか、なぜ傘が磁気性を持つのかが論点になってくる。 その原因が傘の石(どんな経緯で石がはめられてたのかが知りたい)なのか、それとも特殊な生態環境(とはなんぞ)のせいなのかも。
 そういえば、傘の骨や柄の先端に金属あるや。んじゃ磁場を作るのもあり得るか。
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emeraldecheveria · 4 months
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月の光と海うさぎ【3】
雨の中ひとり
「君は強いね」
 思えば、初めて会ったときから、静くんは私のことをそんなふうに言っていた。
 小学校に上がったばかりの頃だろうか。校庭の砂場でせっせと作っていた山を、小柄な男の子ひとりが、意地悪だと有名な男の子たちに無残に踏みにじられていた。
 それを見かけた私が、「何でそんなことするの!」と声をあげると、男の子たちは「うるせー!」とか言いながらも散っていった。私がそばにしゃがんで「大丈夫?」と訊くと、涙目をこすって彼はうなずき、こちらを向くと言ったのだ。君は強いね、と。
「女の子に、強いなんて言わないでよ」
 私がちょっとだけむくれると、彼は小さく咲って、「僕は弱いから」とぐちゃぐちゃの砂に目を落とす。
「君みたいになりたいな」
 私は男の子の蒼白い横顔を見つめて、「なれるよ」と言った。「なれないよ」と彼はそこは何だか頑固に言い返す。「なれるから大丈夫!」と言い切った私は、立ち上がった。
 私の名前を呼ぶ女の子たちがいる。その頃はまだ私にも友達がいた。
「希夜ちゃんっていうの?」
「うん。あなたは?」
「僕は山田静司」
「静司くん。じゃあ、静くんだね」
「おかあさんもそう呼ぶ」
 私は笑ってしまってから、「またね!」と言い残すと、待ってくれている友達のところへと駆けていった。静くんは私のことを見送っていて、一度振り返ると、手を振ってきた。私は手を振り返した。
「あの子って三組の山田でしょ」「チビだけど顔が大きいよね」とか言った友達には苦笑して、「優しそうだけどね」とだけ答えておいた。
 静くんとは、それからも細くつながっていた。廊下で会えば会話くらいはする。
 私がルルを殺したとうわさになっても、交流は変わらなかった。むしろ、「希夜ちゃんがそんなことするわけない」と言ってくれた。声高に言ってくれることはなかったけど。それでも私は、静くんは私を信じてくれているのだと感動した。
 その頃からだろうか、静くんのことを緩やかに男の子として意識しはじめた。
 静くんとは中学校も同じだった。相変わらず、廊下ですれちがったときにはささやかに挨拶を交わす。いつのまにか、静くんと話すときはどきどきして、視線が定まらないようになった。
「希夜ちゃん、大丈夫? いろいろ言われてるけど」
「ん、まあ。何とか」
「何で誰も、希夜ちゃん自身を見ないんだろうね」
 静くんのそういう、底抜けに私を思いやる優しい言葉が好きだった。
 だが、私たちのそんなやりとりを見かけた野中さんが、目敏く私の静くんへの想いを悟った。私は感情を表情に出すことが苦手なくせに、同時に、感情が表情に出るのを抑えるのも下手だった。静くんと話しているとき、よほど乙女な瞳をきらきらさせてしまっていたらしい。
 野中さんはさっそく行動を起こした。自分のグループの中にいる、男子のあいだでもかわいいと評判の手塚さんに静くんに告白するように命じたのだ。もちろん、静くんを奪って私を孤立させる嫌がらせだった。
 たぶん、告白してきたところで、手塚さんはすぐ手を返して静くんを捨てるとは思う。それでも、内巻きのセミロングや長い睫毛が愛らしい手塚さんに告白されて、断る男の子なんているはずがない。
 ああ、静くんも私を離れていくのか。嬉しそうに「あいつ、山田さえ取られちゃうねえ」と声高に笑っている野中さんたちを虚ろを見て、私はため息をついた。
 手塚さんも、振られるわけがない自負はあっただろう。静くんを取りこめる自信はものすごかったと思う。しかし、静くんはやっぱり変なところで頑固だ。あの手塚さんを振って玉砕させたばかりか、「僕が好きなのは光谷希夜ちゃんだ」と宣言までしたのだ。
 その宣言はすぐ私にも伝わって、動揺しながらも、私は休み時間に静くんのクラスを訪ねた。「手塚の気持ち、何だと思ってんだよ!」という男子の怒声が聞こえた。つくえを囲まれて畏縮しているのは静くんだった。
 私が入口で逡巡していると、「うわ、山田の彼女じゃん」と声をあげた子たちがいて、教室がざわっとこちらにいっせいに注目した。私は恐怖で心臓がきゅっと痛むのを感じながらも、うつむいていた静くんが顔を上げるのを見取った。
 好奇の目にさらされながら、泣きそうにしていた静くんは、私に小さく微笑みかけた。
 ──ああ、この男の子は私の味方なんだ。そう思って、私も微笑み返した。
 ちらほら、うんざりした舌打ちやため息が聞こえた。それはみんな、おもしろくないだろう。私が孤立して、そののち静くんが手塚さんに手ひどく捨てられて、そんなシナリオを、誰もが期待していたのだから。
 その初夏の終わりから、私は静くんの「彼女」になった。私たちが手をつないで歩くと、顰蹙の目や嘔吐の真似を向けてくる人ばかりだった。
 それでも、私は静くんと心がつながって幸せだった。静くんも私の隣にいられて嬉しそうだった。このまま、ふたりの世界閉じこもっていれば、怖いものさえなくなるかもしれない。そんなふうに思っていたけれど──
 そんな私たちが逆鱗に触れたのは、野中さん以上に手塚さんだった。それはいたって凡庸な静くんが、見るからに魅力的な自分でなく、冴えない私を選んだのだから、プライドもずたずただろう。普段から野中さんと一緒に私をいじめていた手塚さんは、それに加えて静くんをいじめはじめた。
「大丈夫だよ、あれくらい」
 心配した私に、静くんはそう言って咲っていたけれど。いじめの内容は聞くに耐えなかった。
 殴る蹴るだけじゃない。教科書をカッターで引き裂かれている。トイレで便器用の雑巾を投げつけられる。階段でゴミ箱で殴られて転げ落ちそうになる。そのときはさすがに、頭から落下する危険で死を感じたのだろうか、静くんは生徒が行き交う前で泣いてしまったらしい。
 いや、咲っているのなんて私の前でだけだった。静くんはいじめられるといつも泣き出していた。
 素直に。心に従って。情けないくらい。
 それが私にはショックだった。私は絶対に泣かないと決めていた。私が泣いたら、いよいよ心に棲むルルが息絶える。
 きっと、静くんが泣くことで、息絶える何かが静くんの中にもあると思った。そんなの可哀想だ。泣くなんて絶対にダメ。ぐっとこらえて、気丈に心の雨に打たれても正気を保つべきだ。
「静くん、私とつきあっててもつらいでしょ」
 六月、梅雨入りしてじとじとまとわりつく雨が降っていた。学校の帰り道、それぞれ傘をさしているから、私たちは手はつないでいなかった。ふと私がそう切り出すと、身長の変わらない静くんが銀色の雨越しにこちらにまばたきをした。
「え、何で──」
「私、静くんがされてること、聞いてるから。聞かされるから」
「………、」
「『あんたなんかの彼氏だから可哀想だね』って、野中さんとか手塚さんが」
「……僕は、」
「私もそう思う」
「え?」
「静くん、私のせいでそんなひどいことされて可哀想だ」
「……希夜ちゃん」
「だから、やっぱりやめよう。私たち、別れたほうがいいよ」
「どっ、どうして? そんな、」
「私のせいだから。静くんがそんなことされるのも、全部」
「違うよっ、そもそも僕が」
「いいから、私たちは別れよう。そしたら、静くん、みんなの前で泣くこともないんだよ」
 静くんは銀糸の向こうで、目を開いて私を見つめていた。それこそ、泣き出しそうな瞳だった。ぱたぱたと雨音が傘を跳ねる。
 私は傘の柄を握りしめて、早足で静くんの隣を離れた。静くんは追いかけてこなかった。靴の爪先が湿って染みこんで冷たい。濡れたアスファルトの匂いが立ちのぼっている中、これでよかったんだ、と唇を噛みしめた。
 しかし、静くんは私が告げた別れに納得しなかった。話しかけられても私は無視したし、見つめてくる視線にも気づかないふりをした。いじめは相変わらず続いているようだった。なのに静くんは私をあきらめようとせず、なかばストーカーのように、気づくと背後からこちらを見ている。
「振られたんだろ、お前」と私を見ているときに周りに揶揄われると、「それでも僕は希夜ちゃんが好きだから」なんて答えているのが聞こえる。
 何で、と私はややいらついて頭を抱えた。あなたが泣かなくていいように、もういじめられないように、私は自分の恋心は踏み殺したのに。これじゃあ、何のために、心の支えとさえ思った静くんへの想いを断ち切ったのか分からない。
 静くんのことも、野中さんも手塚さんも、尾崎くんだって、何もかもが嫌で、学校に行きたくなかった。しかし、学校に行かなくていいなんて、病気のときくらいだ。毎朝ふとんでぐずぐずする私は、起こしにきた母に浅はかにお腹が痛いとか頭が痛いとか訴えた。
 カーテンを勝手に開ける母は、眉を寄せて「熱はあるの?」と私の額に触れる。そして「熱くはないけど」と胡乱そうにして、体温計で平熱を確かめると、私が嘘をついたことに怒りはじめる。
 正直、実際に胃が痛いときはあったのだけど、熱には現れてくれなかった。「だって、学校に行きたくない」とつい本音を吐いてしまったときには、母は平手とはいえ、私の頭をばしっと強くたたいた。
「学校に行きたくないなんて、おかあさんもそうだった! それでも、意地悪されることがあっても、私は行ってたわ。甘えたことは言わないで」
 母には、理由もなく──私にはいじめは立派な理由だったけど──学校に行かないなんて、とんでもないことだった。根性のない甘えでしかなかった。だから、嫌がる私をいつもふとんから無理やり引きずりだし、壁にかけた制服を押しつけて、怖い顔でなじりながら家から追い出した。
 私は重苦しい曇り空を見上げ、制服を鎧みたいに重く感じた。家の前でのろのろしていると、近所の人がひそひそ話をしながら目を向けてくるので、憂鬱に囚われながら学校に向かう。
 学校まで十五分。まるでぬかるみを歩くように、うまく足が地面を進まない。周りにはもう登校する制服すがたの子はいなくて、時計は持っていないけど、遅刻なのは明らかだった。
 そうしてホームルームが終わった頃か、一時間目の途中に私はやっと教室に到着する。途中で何かあったのかと心配していた先生も、遅刻が続いて私がただの常習犯だと判断すると、うんざりしたため息をついて怒るようになった。
 同級生にはいつもいじめられて、大人にはいつも怒られていた。どんどん頭の中がくらくらと重くなっていく。集中力がなくなり、勉強しようとしても眠くもないのに目の焦点が合わない。それでもやろうとしても、吐き気がしてきて休んでしまう。
 やる気がなくなっていった。入学当時は百点に近かった試験の点数は、みるみる落ちた。小学校の復習の過程が終わり、中学の勉強が始まると、成績はすごい勢いで低迷して、一学期の期末考査ではよくても三十点さえ取れなかった。
 先生たちは、しょせん成績で生徒を測る。だから、勉強ができなくなっていく私に、先生たちは「いじめられるのはお前にも問題がある」なんて言葉までぐさりと刺してきた。
 私をなぐさめる人はいない。みんなして無視。陰口ばかり盛んで、「あいつ、どんくさい上にバカとか最悪だな」と嗤っている。せいぜい存在を認識されるのは、ノートに落書きされたり、筆箱を隠されたり、嫌がらせを受けるとき。そんなことをばかりされるためだけに、私は学校に行っていた。
 親は頼りにならないと分かっていた。けど、思いつめた私は改まって母に話しかけ、いじめのことを相談してみた。父は単身赴任でいないときだった。父にはやっぱり、知られたら面倒だなと思ったのだ。
 居間で正座で向かい合い、母は私の話をひと通り聞いた。どんどん眼つきが冷えこんで、ああこれはダメだったとは思った。案の定、母は自分も幼い頃には何かと揶揄われたこと、それでも耐えて登校していた話を繰り返し、「だからあなたも我慢しなさい」と私を厳しく睨みつけた。
 だから、って。だからあなたもって、何で? 何でおかあさんが耐えたからって、私も耐えなくてはならないの。親子だから? できるはずだから? 何それ、わけが分からない。おかあさんが自分はいじめを耐え抜いたことなんか、私には関係ないよ。
「もっと精神的に強くなりなさい」
 母はそう言い、話を切り上げるように立ち上がった。私はうなだれて唇を噛んだ。
 私が弱いっていうの? 私が意気地なしなの? みんなに、先生にさえ、分かってもらえなくて孤立して、それでも私が悪いの? こんなぼろぼろに雨に浸蝕されるまで闘う私が、負けてることになるの?
 違う。そんなわけない。私は弱くなんかない。学校に行きたくないのに、それでも行ってるじゃない。それが、どんな想いで立ち向かっているということなのか──
 朝起きると、今日こそ限界だと思う。だから、相変わらず学校に行き渋った。美夜が「見苦しいなあ」とでも言いだけにこちらを一瞥して登校していく。それを見送った母は、「美夜は行っちゃったわよ!」と私を責め立てる。根性なし、甘ったれ、弱虫。さんざんに言われて、私はもはや哀しくなり、心にぽたぽた雨漏りを感じて、震えるルルを抱きしめて起き上がる。
 いじめられては、雨を降らすルル。そんなルルを、私はまだ守らなくてはならないと思っていた。だから、心は壊れていなかったのだと思う。
 泣かない、と決めていた。絶対に、泣くもんか。泣くことこそ負けだ。そんなのは悔しい。あいつらに負けるのは悔しい。たとえ涙がこぼれるときがあれど、それでも、私は泣いていなかった。心からは泣いていなかった。そして私は、心から泣くという感覚をずっと先まで忘れることになる。
 夏が始まっていた。蝉の声が飛び交い、空は青く突き抜けて晴れわたる。むしむしした風が、草の匂いをまとってゆらりと流れた。しかし、私の眼つきはすっかりじとじとして、陰気な隈が取れなかった。
 この頃、朗報が届いた。隣の町で新築が進んでいた新しい家が、もうじき完成するという。つまり、転校することになったのだ。久しぶりに単身赴任から帰宅した父によると、転居は秋頃になるだろうということだった。
 転校することは、家を建て始めたときから決まっていた。おかげで私の心は折れなかったのだろう。どうせこんな学校、そのうち離れるのだと。どんな嫌がらせをされても、それが永遠じゃないことが最後の砦だった。どうせ私はいなくなる。だから大丈夫。終わることなんだから大丈夫。
 転校のことは、ぎりぎりまで教室には伏せてもらっていた。何なら夏休み中にしれっと消えたかった。けど、二学期も少しだけ登校させられた。
 私の転校は、ほんの数日前にクラスに伝えられた。ふうん、なんていう無関心な反応だと思っていたら、なぜか野中さんも手塚さんも、私との別れを涙をぽろぽろこぼしてまで惜しんだ。
「光谷さん、今までごめんね」
「今度会ったら仲良くしてね」
 私は泣いている彼女たちをぼんやりと見つめた。
 何を言っているのだろう、この人たちは。よく意味が分からなかった。当人はいじめに加担していないつもりでも、しょせんはみんなと同じように私を無視していた子たちも、「寂しくなる」とか「新しい学校でも頑張って」と初めて声をかけてきた。
 本当によく分からないのだけど、転校するクラスメイトを見送る、というありがちな場面に酔っていたのだろうか。
 でも、私はバカだった。本当に、一番バカなのは私だった。最初は唖然としたものの、何だかんだで、みんなにそうやって受け入れられたような感覚が嬉しかったのだ。手紙出すから住所教えてと言われたら、素直に教えたりして。何より、私はみんなの言葉を信じた。
 今度みんなに会ったら、仲良くして、いなくなって寂しかったよなんて言われて、新しい学校が楽しいから、なんて私は笑って見せて……
 そんなことが叶うと思ったのだ。みんながこんなに私を惜しんでくれるなら、そもそも転校なんて必要なかったのかもとすら思った。
 いっとき、心の雨も止んだ。ルルは赤い瞳で空を見上げていた。晴れ間が嬉しかったのだろうか。いや、ひくひくと動く鼻は、さらにひどくなる雨を嗅ぎ取っていたのかもしれない。
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lllusioninthehead · 4 months
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2024/6/5
相続の相手方から調停の申し出があった。
簡単に言うと裁判所でおこなう裁判一歩手前の調停員がこうしたらいいんじゃないの?って強制力のない判決を下すやつ。
結局はどちらかが納得いかなかったら裁判になるわけで。どうなることやら。
実は実家を売ることを決めている自分たちはお前らのために実家売ってやるから減額しろや的な交渉をするつもり。向こうが得をした思えせれれば勝ち。なんでも落としどころが大切。
実家に戻り、母と先行して提出書類を書いた。
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もう、上映終わりかけの話題映画を見る。
下北沢に映画館あったっけ?と向かうとカフェの中にあるミニシアターだった。
グロいけど、面白い。極道の世界の話なんだけど、ありがちな袴のご老人や日本庭園や黒スーツの男なんて出てこない。ただのブルーワーカーの人たちが実は極道の傘下で、その人たちがどう泥水をすすって生きてるのかわかる。
が、そこが物語の本筋ではもちろんない。
単純な復讐劇なのだけど、凝った映像や役者陣のちからのおかげでとても面白かった。主人公がかっこよー。
母は抗がん剤の後遺症からめきめき元気になっている。嬉しいがそうなると癌も元気になってしまうのではないかと複雑な気持ちにもなる。
漫画や映画のように余命宣告をされてまっすぐに死に向かうわけではなく、良くなったり悪くなったりしながら生が進んでいく。
水面に石投げを思い出す。水面(死)に触れては跳ねてを繰り返��ていく。いくつかのバウンドの末に向こう岸につくのか水の底に(死に)沈むのか。
大丈夫かな?やはりだめか…を繰り返すので感情も浮き沈みし、かなりしんどい。
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夜は焼き鳥を。
美味しいけど、パパ活や同伴のお客さんばかりいる変な店だった。
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yuki8563 · 1 year
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2023-07-21
🌧️🌧️🌧️ 🧣📖
Edgar thought Colette wouldn't come to the appointment after arguing with him, but he didn't expect Colette to be more stubborn about this part than anyone.
idea fic:
2023-05-12
🧣📖吵架後鬧矛盾的期間,🧣手機跳出當時約好要一起去看電影的日程,🧣想著對方應該跟自己一樣還在生氣,所以這個約定就作廢了吧,氣象預報看起來也不好,這樣想著的他決定睡了回籠覺,但怎麼都睡不安穩,最後他還是拿著雨傘出門,結果看到全身濕透的📖站在雨中。
🧣衝上去問:妳怎麼在這裡? 📖:我們不是約好了嗎? 🧣:妳從早上等到現在?可是下雨了啊,怎麼不找地方躲雨? 📖:可是我們是約在這裡⋯⋯? 🧣:可是我沒有來,妳就應該回去!或是打給我⋯⋯ 📖:可是我們約在這裡了啊!你也說不要打給你⋯⋯
📖看起來完全不理解🧣的意思,🧣這才發現📖有死腦筋的一面,他咬著牙把📖帶回自己的租屋處,塞了毛巾跟更換的衣物讓她好好的洗個熱水澡並換上。 🧣在這段期間被自己的愧疚壓得痛苦呻吟,📖豪不介意他爽約讓他更加難受。 📖甚至很開心的在他的床上滾來滾去:好大的床哦!
(📖的床上都是娃娃,沒有能讓人平躺的空間。) 🧣:不要把我的房間弄亂! 看著📖嘗試把他的棉被捏成🌵的形狀,他終於忍不住開口阻止。 最後他們在🧣的租屋處一起看了他收藏的演唱會錄影帶結束一天~
另一層私設的部分: 🧣會影響禮品店的營運所以陷入生命危險的時候📖會知道(但沒有契約所以不知道位置在哪裡) 📖的邏輯只有:你沒啥狀況我就繼續等唄。 沒有深入思考🧣鬧彆扭的事情。
ChatGPT translate bc I'm too lazy
🧣📖 had a disagreement and were in a period of discord. During this time, 🧣 received a notification on his phone reminding him of the movie date they had planned together. Assuming that 📖 was probably still angry, and the weather forecast didn't look good either, 🧣 thought that the arrangement was canceled. He decided to take a nap but couldn't sleep well at all. In the end, he grabbed an umbrella and headed out, only to find 📖 standing in the rain, completely soaked.
🧣 rushed over and asked, "What are you doing here?" 📖 replied, "Weren't we supposed to meet?" 🧣 said, "You've been waiting here since morning? But it's raining! Why didn't you find shelter?" 📖 replied, "But we agreed to meet here…" 🧣 argued, "But I didn't come! You should've gone back or called me…" 📖 seemed completely baffled by 🧣's response, and that's when 🧣 realized that 📖 could be quite stubborn. He clenched his teeth and took 📖 back to his rented place, giving her towels and spare clothes for a warm bath.
During this period, 🧣 was tormented by guilt and moaned in agony. 📖 didn't mind at all, making him even more uncomfortable. She even happily rolled around on his bed, saying, "Such a big bed!"
(📖's bed was filled with stuffed animals and had no space to lie down.) 🧣 protested, "Don't mess up my room!" Watching 📖 trying to reshape his bedsheet into a cactus, he finally couldn't help but intervene. In the end, they spent the day together at 🧣's place, watching his collection of concert videos.
Additional private setting: 🧣 can influence the operation of a gift shop, so when he is in a life-threatening situation, 📖 will know (but without a contract, she doesn't know his exact location). 📖's logic is simple: "If there's nothing wrong with you, I'll just keep waiting." She doesn't delve deep into 🧣's sulking.
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caress-a-sad-tree · 1 year
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光影迷離,人影閃爍,我在逃亡中再次看見你
還記得,小台山上的那座空蕩的平台嗎?那些夜晚我們相約在某個不起眼的路口或城市角落,光線常常在沒有日光的角落藏匿,你扣上我為你準備的黑色安全帽,身著深綠色長裙跨上我的白色小機車,夜風足夠清爽嗎?還記得嗎?那段婉轉陡峭的爬山路、周遭呼嘯而過的晚風、一眾黑影里參差不齊的樹杈和你哼起的歌。不記得了吧,畢竟我獨自在此飲醉,風仍舊剛烈,無論我再怎麼追問眼前模糊的你,你都不作答了。 仔細看,你早已同身後閃爍的城市光線模糊在同一幅油畫,我想要伸手去觸摸些什麼,可是卻沒能夠抬起來。為什麼,你忽然手舉香煙安靜地憑空出現於我身後。香煙飄在我的眼前,很快就被山風吹散了,但我卻看到它們凝結成了一條綿白色的圍巾,緩慢地纏繞在了我的肩上。在此回頭看你,你以被自己點起的火燒盡了,那般痛苦又不願呼喊,你掙扎卻強裝鎮定,痛苦卻看似幸福。此刻的我看著你,是多麼心疼,小台山在此刻忽然放大了許多倍,將我們徹底吞沒,這裡的風又這麼大,於是火焰落下又以更高的火勢躍起,耀眼的火光將我照入了某個回憶中的雨天。黑色女士長柄傘、泥土香、雛菊被細小的雨點打得顫抖,我們行走在市郊的那座被雨水侵蝕的小村落。你停下來,在雨棚下坐下,默不作聲,我站立倚靠著雨棚的木柱,與你同樣望向那群在花田裡忽上忽下嬉戲的麻雀。再一次,香煙從某處冒出,我看向你,你用帶有雨汽的表情回應了我。煙的霧在雨天並不顯眼,透過那個村頭的小雨棚,它飄到了很遠。
為什麼,為什麼每個寂寞的午後,你又總在我的眼前復燃。深綠色的牆面、泥紅色的口紅,我總以為,你還藏在這個房間的某處,有些時候我切實地看到了你,你蠻橫卻優雅的在貼地床上翹起二郎腿,眼神無意躲避地落在了窗外飄動的藍白色鬱金香上。的確,我從未搬離過那個地方。那些陽光正好的日子,在這個違規建在老小區頂樓的小房子里,陽光透過落地窗落在床單上,我拉上紗簾,想要遮蔽些光,你卻用嘴唇制止了我。還沒等我問為什麼,香煙再一次侵入了我,伴隨著你堅定得美麗的氣息,我仰頭吸盡了一切。你的顫抖,我的呼吸聲,窗紗從未完整的合起來過,每當我身面著窗外那團黃昏的雲以及河邊零零散散走過的男人女人,你就會從身後將我用力地抱住。可是我的後背從不敏感,無法清晰的分辨出你的心跳,你哪管得了這些,只負責啃咬和蠕動。黃昏的頂樓小樓,那是我最深愛的地方,許多時候,煙霧不知從哪個角落冒出來,多次嗆到了稚嫩的我,從口深入我的體,我的心,我的魂早已和這團來歷不明的煙霧融合、糾纏、打鬥,再也分不清你我。
夜深了,可是我卻沒有感受到夜的到來。直到我獨自從貼滿換鎖廣告的老樓梯走下去,走到那家只會亮著冷光的便利店,在那裡我買了一瓶乾姜味的湯力水。在那些毫無慰及的日子里,我曾依賴著它生活了那麼久。在門口站立,春風雖然並不寒冷,卻也絕不溫暖。面前偶然能夠看到一對身著深色皮衣的年輕戀人,和一輛安靜行駛的老摩托車。晚風仍舊在我的面前,由你吹出的煙霧,仍舊籠罩著這座不眠的小城,山半腰的廢棄遊樂園、那座頂部有船的房子、水窪里紅紅綠綠的夜燈光,讓我對此多麼眷戀。右手中輕鬆地玩弄著一根細制香煙,靠在山頂平台金屬欄桿上,晚風呼嘯飛來卻在我們面前緩緩經過,你難得飽含愛意地回頭望向我,在這座山與小城之間,只有你和我,你面前的陰雨和香煙,我身後摩挲的叢林與寧靜的月。
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ari0921 · 1 year
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「宮崎正弘の国際情勢解題」 
令和五年(2023)7月2日(日曜日)
    通巻第7814号
ミハイル・ホドルコフスキーが沈黙を破って発言した
「プリゴジンを支持すべきだ。彼の行進はプーチンの正統性に大きな打撃だ」
************************
 海外亡命中のミハイル・ホドルコフスキーが沈黙を破って発言し、プリゴジンの反乱を「支持する」とした。これは多くのロシア知識人に衝撃をあたえた。
 ワグネル叛乱を裏で操ったのはCIAだとする説が流れた。「これはロシア国内の内政問題であって、米国がワグネル傭兵部隊の叛乱に関与したことはない」とCIAのバーンズ長官はわざわざ米国陰謀説を否定した。
ことほど左様に奇妙なクーデター未遂事件の謎が謎を呼んでいる。
 たしかにワグネル部隊が対ウクライナ戦争の最前線基地司令部を乗っ取るという叛乱は世界に衝撃を与えたが、政治的見地から言えば驚くべきことではなかった。世界史的にはよくある軍事行動であり、ましてロシアでは。
 驚かされたのはワグネル軍団に対してロシア国民の支持である。おそらく現象的なことであり、参加したロシア人はホンの一部だろうが、プリゴジンを「英雄」として、進軍の町々で歓迎の声があがった。これはクレムリンを震えさせたのではないか。
 これまで反政府勢力は、ワグネルを「悪辣、無謀」と徹底的に批判してきた。ところがモスクワへ向けての「正義の行進」をはじめるや、批判から支持、すくなくとも「理解をしめす」ほどの変化を示した。反戦感情の爆発とクレムリンへの不満がワグネルの叛乱を契機に、ねじ曲がった形で現れたのだろう。
 しかし、亡命中のオルガルヒでプーチン批判の政治活動家だったミハイル・ホドルコフスキーが「正義の行進をほぼ支持する」と発言したことを如何に考えるべきか。
かれはツイート投稿でこう言った。
「奇妙に聞こえるかもしれないが、反戦を考えるロシア人は現時点でプリゴジンを支持すべきだと思う。彼は我々の同盟者ではないし、この支援は非常に一時的かつ条件付きだが、彼の行進はプーチン大統領の正統性にとって大きな打撃であり、体制を崩壊させるものは何でも良いことだ」
 ホドルコフスキーは、プーチン政権を打倒できるのは軍事であり、武力行使でしかないと考えているように思える。
▼プーチンが「最も殺したい男」��衝撃発言の波紋
 ミハイル・ホドルコフスキーとは、そも何者かを振り返っておくべきだろう。
彼はプーチンが「最も殺したい」と思っている人物である。政治家であり、プーチン打倒の政党に巨額を寄付していた。石油会社「ユコス」の社長でもあった。
ホドルコフスキーはユダヤ系の父とロシア人の母との間に生まれた。母方の祖父はボリシェヴィキであり、「階級の敵」との結婚で一家は共産党から追放された。 
 ホドルコフスキーはロシア共産党幹部の隠れ財産を預かったと言われる謎の銀行を跳躍台として、「ロスプロム・グループ」という財閥を形成し、食品、繊維、建材、金属などの企業を傘下に収めた。「ユコス」も金融工学的に吸収し、錬金術の才能を発揮した。
プーチンが激怒したのはユコスが原油の対米直接輸出を開始し、ルクオイルと並ぶロシア最大の石油会社となり、これをメジャーのエクソンに売却しようとしたことだった。
いまから二十年前、2003年10月にホドルコフスキーは脱税などの嫌疑で逮捕・起訴され、禁固10年を言い渡され、殆どの財産を『罰金』として没収されたうえ、シベリア・チタ州刑務所に収監された。
2013年12月19日、プーチン大統領は恩赦を発表した。翌20日にホドルコフスキーは釈放されてベルリンへ向かった。背後にはゲンシャー元独外相が仲介したと言われる。すぐに英国へ移動したが、暗殺を避けるため、亡命先のロンドンから離れ、おそらくドイツ滞在中だと推定されている。 
 ホドルコフスキーは日本の雑誌『文藝春秋』(2022年7月号)のインタビューで、「プーチン大統領は「汚職と犯罪」でロシアを統治しており、経済社会問題を覆い隠すため「外敵」を利用して繰り返し戦争に訴えている。戦争を長期化させて、ウクライナを支援し、ロシアに経済制裁をかけている西側が折れて来るのを待つのがプーチン大統領の目論見である。したがってウクライナを断固として支援し続け、プーチンを止めなければ、西側はおそらく1~2年のうちにもっと大きな代償を払うことになる」などと発言している。
 海外に亡命したロシアの著名人、政治家、オルガルヒのなかでチュバイスはイスラエルで沈黙を守り、アブラモウィッツは発言の場を失いつつあり、ホドルコフスキー発言が大きな発信力をもつことになった。
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stan0000112 · 2 years
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湯姆克魯斯是我朋友難道也要跟你說嗎?
他說他又拍電影大跳傘玩命了👍
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松浦 シオリ(まつうら シオリ) b. 1993, Japanese.
日本插畫家/日本のイラストレーター/illustrator
🌸
🌸 智慧的標誌不是相信你所想的一切。
情商的標誌不是內化你所感受的。
思想和情感都是娛樂的可能性,
並不採用理所當然的確定性。
在接受之前先質疑他們。
A sign of wisdom is not believing everything you think.
A sign of emotional intelligence is not internalizing everything you feel.
Thoughts and emotions are possibilities to entertain,
not certainties to take for granted.
Question them before you accept them.
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🌸
三思而後行...
把需要放在想要之前...
當生活提供降落傘...
不要害怕跳!
Look before you leap...
place needs ahead of wants...
when life provides the parachute...
don't be afraid to jump! 🌸
🌸
- Niko Aleczander -
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ophelia333k-k-k · 2 years
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2022年12月13日
暗闇 見つめている二重らせん 週刊誌の最後のページ 孵化する 孵化させる 目が覚める からっぽのまま 赤ん坊の手を握る 哲学ニュース 強度 占星術師 と打ったら変換される 性占術師 学生時代 最も力を入れたこと 死は幻想である 愛、あ、あ、あ、名前を教えて なりたいもの わたしが 明るい世界 明るい未来 クビになったドラッグストア 礼拝 お好み焼き チューニングの狂った 歌 聴こえなくなるまで 聴こえなくなるまで featuring あなたのこと 声 死について って誰も知らない経験していない から 駆け込み乗車 禁止 お兄ちゃん お兄ちゃん 扉を開けて 機内モードで延命する アジテーション はやくしたい 遅く 結婚 まん防 イデア的には ずっと一緒がいい よね 今だけ無料 アジテーション テナント募集 の 看板 らすとくりすます とぽろじー 言葉で考えるのをやめる あ、あ、あ、 図式化 ズキズキする 監視されていた 白い部屋 女衒 パッチワーク フランケンシュタイン みたいに 愛と幻想と 愛と幻想と 糸 ほどけていく ことを想像する ジャスミンを銃口に 営業系総合職 死んだ瞬間の聴覚について 死んだ瞬間の聴覚について のように のように さようなら 魔法少女 ハートフィールド 歌う メヌエット ピーチ姫の テトラポット アストラル界 あなたの 吸い込まれる ダム 死体画像 すぐ会いたい女子が急増中 アカツクシガモ 京都市植物園 振り回す キャリアチェンジ された アルバイト する このサイトにアクセスできません と 声が して振り向く 昨日 のことを覚えていない 迷宮 のようだと うわさのベーコン クルトン コーラ・パール ゾラ ほら、と 初音ミクの額から垂れる汗 花園神社で 迷い込む 見世物小屋よ 一生バイト ポケットモンスター 正解を引き当てるまで やる気が出ないな 英単語帳 ランボーを読んでしまったなら ロックンロールはそう ホテル暮らし 空調の音 Jアラート 星座を結ぶ ロックマンエグゼ lain rain ruin  ビスク・ドール 野良犬 奈良へ向かう列車 アーレント 現実感 人生攻略サイト 灰と は 意図 思考 回路の中を むさぼり食う 吸う 空気 止まった ままの 子宮的な エリア 嘘をついたまま死ぬ のね ルビンの壺 12ポイント stray sheep と 動詞動詞動詞動詞 同時的に 田中角栄 魔人ブウ 犯す 壊す 作る 波打つ わたしは 殺す 生かす 咲く 咲かす ライフハック 死 冷蔵庫 咲かす 飛び立つ やわらかく もやもやと ばたばたと 解毒する 夏休み 向日葵 消滅した 蝉が鳴く なく 無く 咲く さ さ さ 教育する アナイス・ニン 逃げ出す 逃走する 闘争? 領域を広げていく 閉じる 閉じこめる 閉じ込められた 布団の中 宇宙のように 宇宙そのもの 高橋まつり 滅びた 100年後のことを考えて 文章を書く 脳みそから溢れ出した 白い水着 黒いタイツ 道化のように 大天使のように 借りる 回帰する アカツクシガモ 成長すること 天秤のことを考える by  this river ラブ&ポップ 脳破壊 快楽 シャドウ・ワーク 子宮口から この世界の果てまで 共同体 忙しい 忙しさ exclusive みんなのレビュー 連帯 証明するために ランキング もっと欲しい あなたらしい 瞬間に 祈る手 summer 上映する ロングヘアー 偏差値 ピアス 18個  生き延びる ラリる 刺さった 反射した 発射した 家畜人 ホワイトノイズ 空間 依存症 白い 微分不可能な やわらかい その曲線 エゴサーチ バーモント・カレー 姦淫する 階段 聖書 夢の中に出てくる 中島らも 他人の日記 読む 話す 歌う ような気がする そんな感覚が 一時間天気予報 ペヨーテ ぐるぐる回る 永久に 永久的に 結びつけた 途端に壊れる ぱりん、と ふらっと 消えちゃいそうな気がする 意識が高い 高低差 風圧 やさしい言葉 インターネットのグロサイト 巡る 再度 巡る 繰り返していた クリスマス サンタさん 産道 乱視のまま 今日も生きている 息をする あらゆる 虹色の 永久に理解されることのない強度 氷点 貯金やダイエット レポ漫画 面白くなる 国語辞典 解剖する やまい、だれ 芽殖孤虫 ひらひらと 眠る ゴミ出し 擬音一覧 シーシュポス 間違った注文 集める 女性が一生で排卵する卵子の数は400個~500個と推定され 細胞膜 ずきずきと 痛む手 うつらうつらと その指で 欺瞞 マッサージ されたまま死ぬ アイライナー いつかは終わる 旅 続いていく 気持ち悪い、 と少女 折りたたみ傘 出会う 解剖学の教科書 ホーリー・マウンテン もやし 食物繊維 的な ひらく 伸びる 匂いがする 恥丘 裏切る 一本の木 待ち続けている 市民会館 明かしえぬ共同体 ムーミンたち ムーミン谷へ 向かっている ヤツメウナギ もし仮にそれが ハッとする 気がつく 失う 海のそばで グランドメニュー 幽霊 ピアスの穴 カッターナイフで切る 舌を 下へと 血が出る 地が出る前に ここからいなくなる 踊る 大雨の中 浴びる 天高く 土砂降り もっと 濡れてしまいたい 溶ける あらゆる種類の動詞 固着した エディプス・コンプレックス 身体を売る 眠りにつく べたべたした くすぐる 太もものうぶ毛 のように 行こうね ずっと一緒に 逆にする 黒板に描かれた 天使と怪物 流れとよどみと 恋と革命 そのままの 君でいてね イデオロギー それとも 触れる 手に 手のひらに その温度を そっと撫でる ように見える 青ざめた 顔 目で 浮き上がる 物流倉庫会社 キスをする どこにも行けない どこにも行けない 憂鬱な夫婦 中絶用の 願いを書く 七夕 永遠に落ち続ける夢 人生ゲーム 青いピン そのように 性行為のやり方 鍵付き完全個室 運動会 発熱 保健室 はつなつ 人生経験 終わりゆく 肉の厚さ 海馬 言語野の 衰退 ダウンロード数 数えていた 新しい生活様式 リズム 物語ること 豊かな 再生回数 氷 覆われる 世界すべて 素数のように 感じる 解体 怒らない? 起こらない、何も 可能性が失われていく 研ぎ澄まされていく 失われていくことで 何者かになった その平らな牧場 忘れてきた お持ち帰り する 立派な 飛び降りて 刻まれた 胎児のように さえぎられる 海岸には小屋があって 喧嘩をする 白鳥 食べられる 汚い 穢れてしまった 純粋なもの 銃を撃つ 一発 チェーホフ、どこへ行ったの? と母親が階段を上がってくる 切符をなくしてしまったままで 生き続けている気がする 少女には 晴れ 絵日記は かすれてしまった とうに 音楽にはならない 寒天培地の上で 有性生殖する していた した方がいい 人生経験 ペットボトル HPVウイルス 頭のない 風邪総合 目をさます 神経系 ポーチの中で 白い粉になった 睡眠薬 遠くの方へ、遠くの方へ 並べられている 全校集会 鳴らされて 走る 望遠鏡を 覗き込む もうすっかり 子宮頸がん 夢中になって 標本にする どうやって? 悟りについて 五億年ボタン 走馬灯 一週間くらい考えてもいい? 愛妻弁当 ぷっちょ の容器でオナニーする カンブリア紀の 海中生物やわらかく モニターの奥 夏の光 ぴったりと 豊かに 遅延しながら 本間ひまわり いま、を指差す指の先 爪の長さ 変わって 一括見積もり ふざけているのではなく 頭痛 左側 ありがとう こんにちは おはようございます それは愛ではなく の ような 夜行バス 棺 出生外傷 の あなたは ロビンソン トリップした 虹色の女 devenir ひだ 開く 一枚一枚 めくっていく 匂いがする 工場の赤ん坊が コンクリート 嘘だった あてのない 意味のない 海 潜り続ける 潜水艦の中で 夢を見ている 象徴的に もっと速く 飛び立つ 自壊したい 鯛 平らな 館内における密を避けるため 破れた 四つん這いになって するだろう 想像 するだろう 未完のままの もはや戦後ではない 未亡人 ぷろ、ぱかんだ 重量と恩寵 根を 肉体が壊れていくのは かもめ 肉塊 台風が来る前の夜 アオカビ もっとたくさんの地獄 天国は通り 過ぎては消えていく スーツの人が通り過ぎていったあとの 匂い 大人の匂い 食器返却口 この席の使用はお控えください アルコール消毒 セーブポイント 豚 のような女 と 猿の ような 男が出会う 死体ごっこ バラバラに 組み合わせる 英単語帳の例文みたいに 死に近い コンクリート 裂け目 洗浄液 メリークリスマスの Yahoo知恵袋 真理があると言われている そこにある 死んだあと魂はどうなるの? と子どもが尋ねる 何グラムの 前世の記憶 当たり前の事 トンネル 潜り抜ける音 夢の中の休憩所 自動販売機 光 光 夜の闇に飲み込まれないように コンビニエンスストアは灯台として 鳴りやまない 崩れていく 昨日 来ない 来ている すでに いま 冬の ま、ふゆ ま 電気ストーブ あたたかく すりつぶす 通勤・通学 するための列車 眠る 折りたたまれたヒダ 予言する 1999年 産まれ た 朝 ねむる ねむる もっとよくなる 地方都市
夢の中では 現実的な 現実的なもの 親ガチャ 100年後の 2000万年後の 想像していてね 空っぽの脳 おばさんが入ってくる大量に 魚 飛び跳ねる 誰も見ていないところで 老人の声はデカい 無が無限に膨らんで 恒星たちは爆発し きっと届かないまま ゲーム実況見ていた 二年間 だった気がする だった気がする この区域で路上喫煙をすると 一千円の過料が科されます と どこかに書いてあった 教科書に落書きをしている間に 終わっていた もっと濡れたい 雨に 幼形成熟 恋と革命のために 太郎 花子 由香 香織 紗耶 話題のツイート 温泉むすめ 逃れてゆけ 逃れてゆけ 自撮りしているふたりを 見つめる 目 目玉 浜辺で 白く 白く 白く 白く 境界線はほどけた もう一度 あまい 糖衣錠 統一的な 像 増殖する お支払い方法 まとめサイト この世界の秘密 ねじれたソーセージ 青い 白い 脆い イオン・モール 迷子になる 歌を歌う 歌っていた 冗談でした あらゆる 情報商材のために すべて ひとつの 自己啓発 は はいいろの ノイズで 
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tokyomariegold · 2 years
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2022/10/15〜
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10月15日 修理に出していたカメラを受け取って図書館へ行った。 神保町カレーフェスティバルのポスターにリラックマがいて、san-xに認められた大会になっていてすごい。私が屋台で売り子をしていた時は、小さな公園が会場で知らないコメディアンがMCを務めていたイベントだった(でも入場規制がかかる程混んでいた。)。 図書館で調べものをして、本をただ眺めているだけで、なんだか漠然と、なんでもやろう!という気持ちになれる。多分無理だろうけど、平日の夜にギンレイホールで映画を観る予定と、日曜の夜にライブへ行く予定を立ててみた。 個人空間について書かれたイーフー・トゥアンの本と、女子のSNS投稿について書かれた名物社会学者おじさんの本を借りた。SNSの方は、少し読んでみるとなんだか危なっかしい書きぶり…
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お茶をしよう・写真を撮ろう、の待ち合わせに向かう。 合流できたのは1時間半後。定刻に到着してしまった私は、お祭りを控えた神社の境内を行ったり来たりして、植樹されている木の縁石の上で本を読んだりして、なんだかんだ過ごした。 合流した後、1時間ちょっとお茶をして、30分位お散歩をして別れた。お茶をしましょう、が、成り立つことって凄いな〜、と改めて思う。何を話しても「まぁ皆いろいろ大変だよね」に落としどころをつけられるのが分かりきっているのに、会ってお茶をして近況を話すのって凄い。皆それぞれ衣食住で忙しいのにね。 神保町駅の青山フラワーマーケットに可愛いバラがあったので、ぜひ一輪挿しに!と、購入。お茶の席で「まるで甥っ子と姪っ子にあげるみたいに、お二人にお花を持ってきました…」と、お花を頂いたので、私のバラをあげてしまった。頂いた��わふわの赤いお花は、私の一輪挿しには合わないかもな〜、と思いつつ、帰って生けようとしたら、包装と栄養剤だけを残してお花はどこかへ消えてしまっていた。 作った女の子と写真についてのフォトブックを観てもらった! フィルムカメラが修理から戻ってきて嬉しけれど、自分はもっと喜ぶかと思っていた。 雑司が谷の街は思いがけず人が多くて「アド街効果すごいね〜」と言っていたら「そんなにみんなアド街で生きてない」みたいなことを言われた。 今年初の「よいお年を」を言った。
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10月16日 昨日、残り2つ88円に値引きされたバター餅が気になって、2回スーパーへ行った。午前中の予定を終えて、町のお花屋さんでバラを買う。昨日の分を取り戻す! 紫や青やオレンジのバラがあって、全部名前が違う。オレンジを下さい、と店主さんに言うと「アミナって言います。紙のお包みで良いですか?」と教えてくれた。お会計を済ませて店を出るときに、昨日もらった赤いふわもこのお花がいたことに気がつく。名前を確認すれば良かった…!
エレベーターを待っているとお隣さんと鉢合わせ。このところ結婚式続きなのか、いつも正装をしている気がする。「雨が降りそうですよ〜。傘持ちましたか?お気をつけて!」と言われる。 その後会った人に「目が半分くらいしか開いてなかったけれど、やっと開いてきたね。気をつけて帰ってね。」と言われる。 みんなお母さんみたい。
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セリーヌ・シアマの映画も観たい。借りてきた本も読みたい。あおいちゃんがブルーハーツを歌っていた頃のファッション雑誌を読みたい。 今日は自分の文章を見たくなくて、日記を更新できなかった。 帰りにスーパーへ行くと、バター餅はま���2つ残っていた。でも42円に値引きされていた!セルフレジでお会計をして、スーパーを出るときにもう一度確認すると、1つだけになっている!明日はついて売り切れるかも。 来週は今住んでいる町の市長選なのだけれど、あまり興味を持ちきれない。市民でいるより国民でいたい。
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10月17日 バター餅はちゃんと売り切れていました! 紀の善の閉店を知って、抹茶ババロアを食べたくて仕方がなくなる。もうないものって安心して欲しいって思える。 特別にごほうび!と、修論を終えた時と、夏のなんか冴えないダメダメな日のバイト終わりに食べたことがある。いちごあんみつも美味しかったはず。 今日はつまらなさのターン。でも帰りにトゥアンの本が少し面白く読めた。 人間は神ではないので、複雑な絡みあうものたちを大きくまとめることが苦手。複雑な小さいことを処理することと、大きくて単純な仕組みを作ることが得意(回転寿司?)。社会的である時は全体。生物的、超越的である時は個人。超越的存在でありたいのに、生物的側面があることに恥じて、個を好むことがある、などなど…
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10月18日 昨日の夜、ひどく苦い半額シールのついた豆腐を食べたせいか、胃が気持ち悪い。 趣里ちゃんが根本宗子脚本の映画に出演するようなので是非観たい! 主演の前田あっちゃんを交えた3人でトーク番組に出演していたらしく、Tverで観てみる。おとぎ話のcosmosのPVのこと、おとぎ話みたいの映画のことを3人で「とっても良いよね〜!」と当たり前に話していて「!!!」となった。 10月19日 ライブカメラの映像を眺めるのが好きなマンスーンさんがおすすめしていた演劇をyoutubeで観てみる。 タナダユキの新作映画も観たい。 久しぶりに仕事中に、死んでしまうかも、と思った。 屋上から更に5m上の塔屋の上へ、屋外むき出しはしごで登った。何を考えて、はしごを登り降りすればいいのかよくわからなかった。一通り終えた後、このことを思い出しては、足がガクガクして手に汗を握っていて、心の負債をまた一つ負ってしまったことに気がつく。 紀の善閉店の件を知ってから、抹茶ババロアって他で食べられるところあるの?と検索している。検索結果は紀の善ばかりなので、もうこの世に抹茶ババロアはないのかも知れない!なので、抹茶ババロアが好きな食べ物です!って大声で言えるね。 栗原類って何しているのかな、と調べてみたらyoutubeにラジオをアップしていたので聴いてみている。ぼのぼのが好きすぎて、世の中でつかわれている“ほのぼの”という単語を“ぼのぼの”と無意識に読み違えていた話が良かった。
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10月20日 トゥアンの本、今日はテーブルマナーから個人空間の誕生を考察した章だった。中国では伝統的な、食事の場での作法があり、食べ物を“陰”と“陽”に分けてその案配でもっと健康が維持される、と、考えられているらしい。食事を自然界までひとくくりで考えている。一方で、西洋は、獣をとにかくごった混ぜたご馳走や壺のスープを回し飲む食事から、食事毎に食べ物を切るナイフを用意し、フレーバー毎にワイングラスを用意する程、神経質なテーブルマナーへ変わったために、そこに自意識を持ち出さずにはいられない、らしい。 (中国では穏やかな集団の食事会があるが、西洋にはなく、そこから逃れるために個人空間生まれて…というような流れのようだった。) 明日に予定されていたお部屋の消防点検、時間を早めてもらって午前休をとろうかと思っていたら「いや次回で大丈夫なんで!」と今回は行わなくて良いお返事をもらった。 明日から箱根へ旅行に行く話とこの週末にディズニーランドへ行く話を聞いた。 箱根へ行く方からは、昨日ふいにロイズの小さいラングドシャクッキーをもらって、それが久しぶりにいつもじゃない食べ物過ぎて、自分じゃない人が選んだもので、とても美味しく感じた。そのことを伝えると「いつも何も美味しくないんですか…!」と、今日は塩ちんすこうをくれた。 「箱根でも、美味しいって思ってもらえるお土産を買ってきますね!」と500mlパックの低脂肪乳を飲みながらお話してくれた。
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10月21日 フィルムカメラを持って貴族出勤した日。 同じバスに乗る推している方が、足を引きずって歩いているのに気がついて。大丈夫かしら。 母から珍しくメッセージが入っていて、ちらっと文を見ると、幼馴染(保育園〜中学まで)で家族ぐるみで付き合いのある人達との会が来月に予定されているらしいけれど、知ってた?とのこと。 とっても心がザラザラして、仕事中はなんとなく紛れていたけれど、帰宅してかなり焦っていることを実感している。とにかく掃除をして、爪を切って、体を洗って、さっき届いた新しい服をハンガーにかけて、バタバタしてしまった。 参加してみて何がどうなるのかを確かめたい好奇心があるのが嫌だ。 少し想像すると、その場で、社交無理でした!を120%でしでかして、何となく皆様からかわいそうだから優しくされているのを感じて泣いてしまうのが目に見える。心の負債を負うことなく母のメッセージを一先ず無視しようと決めた。セーフ。 明日は早く起きれたら映画を観に行こう。ダメだったらはとバスに乗って図書館へ予約した本を受け取りに行こう。 ひどくそわそわとザラザラが募り、カメラの前で飛び跳ねたりした。
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flyouthk · 4 days
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去旅行進行 危險運動,有保險 cover 嗎?
很多網友在去旅行前都會問,進行 危險運動 會有保險 cover 嗎? 一般來說,旅遊保險對於危險運動的保障會因保險公司和政策而異。以下是一些常見的情況: 基本保險:大多數基本旅遊保險不會涵蓋危險運動,或者保障範圍非常有限。 附加保障:許多保險公司提供附加選項,允許投保人針對特定危險運動進行額外保障。 專業保險:某些保險公司專門針對極限運動或冒險活動提供專門的保險計劃,這些計劃通常涵蓋更廣泛的活動和情況。 健康要求:有些保險可能會要求投保人提供健康證明或經驗證明,特別是對於高風險的運動。 危險運動 有哪些? 旅遊保險中通常被視為危險運動的項目包括: 潛水(特別是深潛) 滑雪(包括單板滑雪) 攀岩(室外攀岩及高難度攀岩) 衝浪 跳傘 滑翔傘 山地自行車 風帆 白浪漂流(激流泛舟) 動物相關活動(如騎馬、狗拉雪橇等) 極限運動(如Bungee…
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megan3k · 14 days
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09.12 Donnerstag
依舊時差
早上六點起床開始傳訊息給別人(?)
今天想去辦公室放鳳梨酥
約了老湯
沒看過上班這麼隨便的人
九點半說要出門
結果他又睡了回籠覺
十點半還沒看到人🙃
十一點的警報他沒見過世面
果然辦公室總是有善良的人會幫忙開門
老湯擠進會議室參加會議
而我趁著沒人 趕緊去放鳳梨酥
結果他們就散會了 huh?
我匆匆放了一盒 見了兩三個老同學
就離開辦公室了
是說為啥Bence 也在這裡
我們一起走回去宿舍
收信的阿姨不是我想找的人
Info Point今天星期四
我帶著果乾前去預約
順便看看總是記得我的Kian
他們看著果乾 吃得臉歪掉真可愛
走出info point 遇見函瑋就順勢去吃了午餐
怎麼每天都這種菜色🙃
“我覺得他們不認真做飯”
我真的會笑爛
下午趁著天氣晴朗走路去市區
不走沒煩惱 走了不得了
真d遠
於是我到t mobile 塔邊手機就沒電了
我心滿意足走走晃晃
走了從來沒有走過的路
善良的路人總是令人無限感動
我看到以前來過的舞蹈教室忍不住進去買了蠟燭
還有一張漂亮明信片
天氣也很冷 所以回頭去郵局寄信
然後回家
畢竟手機沒電晚上又要出門的人
還敢在哪裡皮?
回學校發現琴房有開
開開心心又練了一回
有夠開心❤️
練完順便去看看日落
Mike說大概約個八點半
我們走在車站旁閒聊等車
還喝了泰式好喝的茶
Mike雨傘還差點被帶走
哈哈哈哈哈哈哈
然後去打桌球順便喝酒
結果全場喝酒的只有我
他們都喝飲料 huh
我們分享音樂的類型
最近的天氣都有點 gloomy
聽的音樂就非常moody
我邊喝邊笑
“You are making me nervous”
😳😳😳😳😳😳
You alright mate?
打了好幾輪桌球
我真爛🙃
又熱又擠
但他真的好溫柔又很紳士
不可多得
還會幫我顧手機
打完桌球發現沒喝完的飲料都被加了花瓣?
直接都不用喝了 (笑)
過馬路他都會幫我看路
會阻止我亂衝🙃
Late night grocery
非常滿意
市場已經是南瓜季節了
我們邊玩
Tobia 只顧自己買巧克力和超大瓶水
好好笑
Mike拿了冰淇淋
巧克力脆皮還有焦糖
原來他也是螞蟻🙃
我們一路從Rudolfplatz 走到下一站
Tobia先回家睡覺了
“He checked out thirty minutes ago.”
Do you want a walk?
我們越走越黑
他走他的
我跟著走
突然有人打電話給他問他要不要去跳舞
I left him so space to be on the phone
但卻向我靠近
後來他問我要不要去跳舞
我說我能看你跳
但我是不會跳的🙃
他說他已經慶祝課程結束已經慶祝五次了
所以如果我不去他就不會去
我們繞過湖泊
坐在長凳上
發現星星很多
他的星星智庫爆發
怎麼有智慧才華樣樣具備的優秀人類
我們起身後走向後面的彩虹森林
Do you want to walk to the forest in the back ?
It’s more nature
I am okay if I am not alone
Obviously you are not alone
😂😂😂😂🤣🤣
天很黑
我聽他說他以前都來這裡吃喝玩樂
美好時光
但真的很黑
我其實看不太到
後段真的太黑
他叫我攙住他
我們才走下小坡
後來他才知道
我一個毛都看不到
Because I have you with me
“That’s bold”
他很熟這裡的路
他說我們來看看末班車時間
我們一路走到Moltkestraße
剛好兩分鐘後車子就來了
我趕緊拿出相機
他請善良的路人幫我們拍照
雖然我的衣服很胖頭髮醜醜的
但我還是很開心
車子來的時候我差一點來不及上車
他居然用手指擋車門???????
彈鋼琴的手指
我要瘋掉了 多珍貴的手指居然這樣用
我真的會暈倒
而且他還跟我一起上車
說一起到下一站
“I live in Deutz”
條條大路通deutz
他下車還目送我
我後來問他
你有搭到車嗎
不要我自己搭上末班車
但他卻錯過就好笑了..
他說我車子走後兩分鐘他就搭上車了
他還跟我要我們的合照
也太可愛了吧
但我馬上就睡著了
他傳來的晚安我還來不及回覆🙂‍↔️
然後隔天就沒有時差
一路睡到八點😉😉
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