#赤兎避難小屋
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--深海人形-- 全人類綜前科者
※天にあるが如く地にも(※知らしめよ。ヒトが生まれ生きる事は完全なる悪である事を)。
※閲覧&キャラ崩壊注意
※ネタも話題も雑多(※闇鍋)。
※本誌バレネタあり。大変御注意を!!!!!!
新田ァアアアアアアアアアアア!!!!!!!!ワイさ、御前の事信じてたぜ!!!!!!!!!!!!!!!(※推し馬の単勝券が万馬券になった時の顔)。
…。
面倒臭い人達「各種リョナ、クロスオーバー、異世界転生&転移パロ、生存パロ嫌いです(※…と言うか、自分の癪に触る他人と解釈違い自体が嫌いです)。」
ワイ「嫌なら見るな(※金輪際見ないで下さい。此方に来ないで下さい。二度と顔を見せないで下さい。御願いします)。」
〜完〜
※…と言うか、最初から、御前に向けて描いてるんじゃねぇ。何底辺の癖に御客様(※=神様)、特権階級気取ってんの(※貴方、鏡見た事ありますか?)?。
…。
メダル自体には性別無くて、其れでもメダルが其々男っぽく、女っぽくなるのはティンペット由来だってアニメで(※博士が言ってた)。
…。
ゴッドエンペラーの足って階段登れないよね?(※…だけど、他のパーツに換装するから…… ※震え声)。
…。
アニメダが後世に与えた影響はマジで絶大で、後の公式(…と他メカ系��ビーアニメもか?)を支えたと言っても過言では無い。其れ程の功績を残した。間違い無く、凄まじい迄によく出来た傑作アニメ。
…。
ワイの場合、メダは、御友達ロボットじゃなくて完全に奴隷ロボットじゃん(※知ってた)。
…。
女みたいな名前をしたあれ「隕石は良いモンですよねぇ、進路決まってて(※因みに、台風は進路決まって無い派)。
ノースリーブグラサン「末路も決まっているがな(笑)。」
…。
バトルガレッガの七面道中ボスブラハ様mk-2カリスマ性が凄過ぎて何時見ても霊(たましい)が震える(※此方の方が後だけど、エスガル2のセセリン味あるのが良い)。
…。
で、シロッコは、あの儘生存してても、一生、一度も、ウェイン兄弟みたいに自分が作った物、兵器について反省する事は無いと思う(※絶対に)。
…。
多分、Team R-TYPEは、 バイド殲滅の為、粗末、只の駒、道具に、使い捨てに、がむしゃらに、自分達ですら其う扱うのだろう(※其うで無ければ、愛する隙無く下衆過ぎる)。
…。
宇宙世紀とかの拙作では、宇宙空間勤務の女は子宮に避妊具入れて居るか無月経ピル飲んで居ると思って欲しい。男には其れを言わない。知られると、性的な関係を強要して来るから。因みに、知って居る男は平気で力づくの行為をして来る事もある。其う言う男は、知らなくてもするが。
其う考えるとリリー・マークレーンの船内やばそう(こなみかん)。
…。
拙作でのガトーとシロッコ等辺は、ゴキブリか害虫並の生命力とAK-47並の適応性と耐久性を誇ってるからサンドバッグ豚としてとても優秀である(※ドS発言)。
…。
※クロスオーバー?注意
※某えろバレー風パロ注意
※坊やとガトー達の話
※色々と過去捏造注意
ガルマは二度咲く
----「…聞こえていたら、君の生まれの不幸を呪うが良い」
----「何、不幸だと!?」
----謀ったな!僕は、あれだけ君の事を信頼して、掛け代えの無い友として居たのに!!
----「私とて、ザビ家の男だ!無駄死にはしない!……ジオン公国に栄光あれーー!!」
…。
「…何時か又会えると良いな……。…彼奴も……。…イセリナも……。」
…。
さて、ある島の海辺で何やら会話をして居る者達が居る。
「地球に住んでるだけで恵まれてるか成功者ぁ?」
「何度も言うが、私は生粋のスペースノイドだ。故に、此う��て、地球に住んで居ると、自分が掛け替えの無い財産を得た成功者か富豪にでもなれた気がして居る。……だが、同胞に其の自慢をする気は無いがな。」
…此のガトーを含む、宇宙世紀のスペースノイド達は、地球に住むアースノイドを特権階級、恵まれた者達と見做して居るが……。
其んなスペースノイド特有のド偏見に呆れたヤザンは、揶揄う様に言う。
「はぁ〜〜、如何しようも無ぇ〜〜、…お前もだけど、…スペースノイドは、皆が皆、地球に家を持って居る、持ってたってだけの奴等を、上流階級、勝ち組、エリートの類扱いして来るよな。…で、其う言う訳で、何故、公国軍が、地球各地の街を執拗に侵略、空襲するかと言うと、其う言う偏見でアースノイドの特権階級振りと恵まれた地位に嫉妬してるからだろ??」
「其う言えば、お前はアースノイド。地球に家があった筈だが。」
「…莫迦か?!??!!地球のスラム街に生まれて住んでた奴の何処がエリートで特権階級なんだよ?!」
「其うだったな。済まない。お前なんぞが、元々からして、其う言う高貴な身分である筈が無い。…然し、今は……、」
「…知らねぇ島に遭難しちまったな。」
「此の島が無人島か如何かも分からん。果たして、我々は、オノゴロ島へ帰る事が出来るだろうか……。」
補足だが、オノゴロ島とは、ガトー達が住んで居る島の名前だ。リゾート施設も其処にある。
「不吉な事言うな!!!!」
此のような無人か如何かも不明な島に流れ付き、難破した船を後にした二名は、島を覆うジャングルの手前で死への恐怖を感じて居た。
「…さて、如何すれば良いものか……。」
以前生きて居た世界では、ほぼ向かう所敵無しのエースパイロットであった二名は、二人して途方に暮れる。
「先刻、難破する前に、遭難信号を出して置けば良かった……。」
其処で、ヤザンは想いに強く耽る。
…此んな時、シロッコ、お前なら如何する……??
其の時、途轍も無く懐かしい感じがヤザンの中に込み上げて来た。
----大尉、此方ですよ〜〜!!!!
「……如何した?急に呆気に取られるとは?」
「……不思議だ。サラ曹長が道筋を教えてくれる気がする。」
「…お前、…ニュータイプだったのか……?」
「確かに、素質には恵まれてるかもな……。」
「されど、僥倖だ!私を逸らせるなよ!」
「だったら、逆にオレが逸れてやる!!」
…小学生男児並の会話。…此れには、サラとシロッコも呆れ笑い。
だが、彼等の助言(※…と言うか、御告げ?)もあって、ヤザンは最速で遭難状��から脱する事が出来た。
…。
其うして、ヤザンが大きくガトーを引き離して辿り着いた先には、兎に角年代モノで古びては居るが、とても、地球の大地に建って居るとは、思えない程に、美しくて、大きな、南国ならではの西洋風屋敷があった。
そして、其処には。
「…何だ。此の島では、見ない顔だね。初めまして。君達は何処から流れ着いたんだい?」
…何処ぞの木星帰りか御兄ちゃん大好き強化人間の様な紫色の後ろ髪を--あのガトーの様に--ポニーテールで纏め、更には大きく黒いレンズのサングラスを掛け、赤いノースリーブアロハシャツを着て木陰でギターを弾いて居る美青年が居た。
「誰だよお前?此処は何処だ?」
…ヤザンが、其う、粗暴にも訊くと、其の青年は此う答えた。
「質問を質問で返して来るのは、育ちが悪いね。実に感心しないが、答えてあげよう。此の島は私の所有物で……、…私は……、」
然し、ヤザンは、其れでも怒り出した。
「……おい!誰の所有かは訊いて無ぇよ!!此の島は何々島で、現在地は何処だって聞いてんだよ。後、お前の事は興味無いから、別に如何でも良いし、誰でも良い。」其の青年は----昔からある癖なのか、自分の髪を、其の彼の神経質な気質を宥める様に----右手で弄りながら、酷く機嫌の悪いヤザンを、後目に、話を優雅に受け流す。
「…嗚呼、噂には聞いて居るよ。…宇宙(そら)から落ちて来た銀髪と金髪の美丈夫が居ると……。…もしかして君は、その片割れの方かい?。」
(やったぜオレ美男子扱いだ!!!!)
自分が、此うして美丈夫扱いされた事で、何時もは顔面偏差値10、ブス扱いされるヤザンが、酷く不機嫌だった先程とは180度変わって、機嫌を大変良くして感動し、其の感動の余りに激しくガッツポーズを取って居ると、
「其の声!其の出立!其の坐作進退!」
後から酷く遅れて来たガトーは、其の美青年を見た途端、急に荒振り出した。
「…如何した、ガトー?」
…ヤザンが、其のガトーの意気揚々さと異様さに反応するが、其んな奴の事は気にせずに、ガトーは、其の青年に恐る恐る畏敬の念を持って話し掛ける。
「あ、貴方が『ガルマ』様ですか……?」
「やぁ、其うだが。」
其の名を聞いたヤザンは思い出す。
……確か、かの国葬演説で自身の兄である公国の総帥に弔われて居た、
「…ガルマと言えば……、…ニューヤークでWB隊との交戦中に戦死したあの有名な大佐本人か……?」
其のヤザンの問い掛けに、『大佐』は気さくに答える。
「其うだが?如何かしたのかい?」
「ガルマ様!…かつて、私は貴方様の御兄弟、ドズル中将麾下だった者です。アナベル・ガトーと申します。最終階級は少佐です。」
其の言を聞いた『大佐』は驚いた様に言う。
「此んな所で、ジオンの軍人に会うとは……。…ところで、アナベル少佐よ。…訊くが、あれから私達は戦争に勝てたのか?」
「…そ、其れは……、」
其うガトーは、ガルマに言われるも、緊張と畏敬の念で思わず口籠る。
すると、代わりにヤザンが名乗りを上げる。
「無理すんな。オレが話す。」
「…おや、君は誰かな?名は?」
「名乗る程の名なんて無ぇよ。」
其処で、ガトーがガルマにボソボソと小声で教える。
「ガルマ様。彼奴はヤザン・ゲーブルと言う元連邦軍人の下卑た輩です。」
「…と言うか、其んなの如何でも良いだろ。…で、良いか。手短にシンプルに話すぞ。はっきり言って、ジオンは戦争に完敗したよ。ドズル将軍は戦死、アンタの父親と他のきょうだい達も 全滅した。…其の後、公国から共和国に……、」
其れから、ガルマは、大きく溜息を吐きながら、此う述懐した。
「…有難う。もう分かったよ。…矢張りか。わざわざ聞く迄も無かったようだ……。あんな戦争、コロニー落としも含めて全部間違って���たのだ。」
「…ガルマ様……。」
「…アナベル少佐よ。貴官もあの戦争の所為で、沢山色々な物を失っただろうし、心にも、決して、浅からぬ傷を負っただろう。…幸いにも、此処に戦争は無い。戦争でボロボロになった魂を癒す為にも、私も、癒しと平和を噛み締めて行きたい所だ。…是非貴官も、其うしてくれると嬉しい。」
「御意!!!!!!!!!!!!」
…『ガルマ様』との宇宙世紀で生きて居た頃では、決して有り得無かった奇跡的で密接な邂逅を経て、感動の域に迄、其のテンションを上げたガトーは、意気揚々と答える。然し、其の一方で、ヤザンは蚊帳の外であった。
「御前等!…オレの事を無視すんな!!!」
…。
※没供養コーナー
其処で、オーナーが何時も通りの口調で言う。
「…『ガルマ様』ね。…あの人は、此の海域界隈では有名だよ。…彼は、民間軍事会社兼海上自警団を作って、不法侵入船やら密漁者やら海賊やらを取り締まって居るんだよ。」
「…流石ガルマ様です……。」
「何だ。…滅茶苦茶偉いじゃねぇか。」
曹長「…可愛いです、パプティマス様人形〜〜!!(※パプティ人形をソロモンの悪夢人形の隣に密着させる様に置く。距離が凄く近い)。」
木星帰り(※凄い悪寒)
野獣「…意外と趣味悪いなサラ曹長(※震え声)。」
…。
交渉人「私は変態紳士だが、お前は只の変態だ(※確信)。」
木星帰り「お前もだろ(※真顔)。」
ドロシー嬢「…貴方達って最低ね(※豚を見る様な目)。」
…。
※引き続きクロスオーバーネタ注意
※メダロットネタ
※夢要素注意
獣王「グォオオオオオオ!!!!」
神帝「リミッターカイジョヲアマクミタナ」
「ワガ マエニ タチフサガルトハオロカナ…」
「グォォォォォオアアアアア!ユ・ル・サ・ン!!」
「ガアアアアア!!ニンゲンメ!イツカ…!」
…、
ガトメダ搭載獣王「鎧袖一触とは此の事だが、心配するな。」
「南無三!!」
シロメダル搭載神帝「落ちろ!カトンボ!」
「私の使命は重力に魂を魅了された人々を解放する事であると思って居る。」
ワイメダロッター「流暢に喋り過ぎだろ。」
…。
ガトメダ非純正獣王「矢張り、スパゲティ(獣王脚部パーツの名前)では上手く歩けん!二脚パーツに換装しろ!」
ワイメダロッター「はいはい〜〜。パーツ転送〜〜。」
※パーツ転送後換装
獣王「此れは二脚では無いだろう?!巫山戯るなぁ!!!!」
脚部戦車なので履帯キュラキュラ。滅茶苦茶遅い。
ワイメダロッター「ハハッ!!ガンタンクみてぇ〜〜!!」
…。
宇宙世紀メダロッターZ&ZZ「我等!宇宙世紀メダロッターZ(ゼータ)!「そしてZZ(ダブルゼータ)!!」
ガトメダ搭載獣王「もう帰って良いか?」
宇宙世紀メダロッターZ&ZZ「我等ロボトルで勝負だ!!」
何時ものおじさん「合意と見て宜しいですね?!」
ワイロッター「宜しく無いです。」
…。
坊やメダル搭載はグレインでも良かったけど、グレインは超攻撃型メダだし、性格的にはプリミティベイビー(※超補助・妨害型)の方が合ってるだろうな?…と(※此処は彼の長兄にすべきだったな……)。
…。
「一人で階段登れるの?」
シロメダ搭載神帝「無理だな。浮遊パーツとかは無いのか?」
ワイメダロッター「此れ付けな。」
ガトメダ搭載獣王「何故だ?!何故、私が付けて欲しいパーツは付け渋って全く関係無いパーツや機体に換装して意地悪するのに、何故!??!」
ワイメダロッター「弄ってて楽しいから。」
…。
PMX型メダロット
PMX-00 メッサーラ N 飛行
PMX-01 パラス・アテネ 女 二脚
PMX-02 ボリノーク・サマーン N 二脚
PMX-03 ジ・オ 男 二脚
PMX-04 MSタイタニア 女 二脚
かつての木星帰りハンドメイドMSを模したメダロットを製作し『(メダロット本来の用途である)御友達ロボット』扱いして悦に浸る姿はメダロット社員の共感を呼……いやドン引きさせた(※本人曰く、自分��、天才だから、凡人は自分に付��て行く事は出来ない。其の為、友人が居ないのは仕方無い事、…なので、此の機械達が私の友達みたいな物、らしい)。
…。
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滝雲流れる紅葉の越後駒ヶ岳
山サークルの企画で新潟県魚沼市の越後駒ヶ岳へ。 今の時期に1番見られる確率が高くなるという滝雲観賞と紅葉登山を堪能して来ました。
魚沼のスーパー「ウオロク」で食材を調達し、銀山平キャンプ場へ。 我々はテント伯ではなく、1棟だけあるバンガローに宿泊。 バンガローに着くと、雲の隙間から越後駒ヶ岳が少しだけ顔を覗かせていました。
ちなみにこちらが今夜のお宿。 バンガローと言っても、元は管理棟だったコンクリートの建物なので遮熱・防寒性はバッチリ! イメージしてたバンガローとはだいぶ違うけど…。
室内は土間のキッチン&ダイニング、6畳ほどの和室、トイレ&洗面所。 和室に持参したマット&シュラフで就寝しました。4人でちょうど良い広さ。 ガスコンロの貸し出しもしてくれました。至れり尽くせりです。
ここを挟んで両側にテントサイトが広がっています。 夜には魚を焼く良い匂いが漂っていました。
バンガローの部屋の窓から撮った景色。 正面に見えるのが、トイレと現在の管理棟。
バンガロー裏手のキャンプサイトは、何だか駐車場みたいな感じ。
お風呂はこちら、管理棟の奥にある「かもしかの湯」。 キャンプ場内に温泉があるって素晴らしい! こじんまりしていますが、清潔感のあるお風呂でした(リンスインシャンプー、ボディソープ、ドライヤーも有り)。
お風呂へは、管理棟を抜けて専用スリッパに履き替えて向かいます。 (入浴料は管理棟の受付にて支払い) 建物の中にはこんな立派な木彫りのイヌワシが…。 私と比較するとサイズが分かりやすいですね。
お風呂から出ると、越後駒ヶ岳方面に掛かっていた雲が晴れて来ました! (でも今度は山頂が隠れちゃってるけど)
翌朝は4時前に白銀の湯駐車場へ向けて出発。 ここで枝折峠行きの第二便のシャトルバスに乗り換え、登山口へ。 枝折峠の道路脇には、既に滝雲待ちの大勢の人達が三脚を構えて待機中。
登山口から歩き始めてすぐ、左手に雲海が現れました! 肉眼では良く見えたのに…これがスマホでの限界ですね〜。
少しずつ空が白んで、越後駒ヶ岳の山頂も見えて来ました。
朝焼けと共に、滝雲がハッキリと見えるように!
アップで撮ってみました!雲が流れ落ちているのが伝わるでしょうか?
雲が朝日に照らされて、綺麗…
滝雲に後ろ髪引かれつつ、木々のトンネルを潜って行きます。
越後駒ヶ岳も朝陽に照らされています。山頂が紅い!
また滝雲が見えるポイントに出ました。いよいよご来光タイム! 紅葉と雲海と日の出。早起きして良かった!
ナナカマドの実も真っ赤!
ほんの30分で、青空に! 山頂に向け、この道を歩いて行きます!
羊雲(鱗雲?)が良い感じに山頂に掛かっています。秋ですね〜
百草ノ池。空が映っています。
池から20分ほど歩いて、振り返ると会津や日光方面の山並みが! 右奥に小さく見えるのが奥只見湖ですね。
紅葉(黄葉)が日に照らされています。
中ノ岳、兎岳の稜線がカッコイイ! 雪渓も少しだけ残っていました。
少々道幅の狭い岩場に、てこずっている人もいました。 前のグループのSLのようにも見えるウチのCL。
駒の小屋。小さくて可愛い避難小屋。 バイオトイレは使用後に自転車を漕ぐという珍しいタイプ。
小屋を後にし���山頂を目指します。 ここの少し前でCLの知り合いに遭遇! 山で知り合いに会うことって、ホントにあるあるなんですね〜
越後駒ヶ岳、山頂にとうちゃこ〜!
謎の小さな銅像もありました。 後から調べたら、山岳信仰の名残で豊斟渟尊(トヨクムヌノミコト)もしくは猿田彦大神で(諸説ありの模様)、以前は手に剣を持っていたようです。 どちらが正解なのかまでは、ちょっと分かりませんでした
雲の影が…
八海山も!
山頂が混み合って来たので、また小屋に向けて稜線を下ります。
山肌がカッコイイ!
こちらの写真は途中で知り合った女性2人組に撮影していただきました。 このお二人からは、有���な情報を色々と教えていただき、後に山のSNSで相互フォローさせていただきました。 こういう出会いも、山の楽しみの一つですね。
白銀の湯への分岐へ入り、少し登り返すと奥只見湖がさっきより大きく見えました。
朝の枝折峠登山口に向けて来た道をピストンするのが一般的なようですが、帰りのバスの時刻を気にしないで済むように我々は白銀の湯へ直接降りるルートを選択しました。
越後駒ヶ岳も見納め!雲の形がどんどん変化して行きます。
���気の少ない急坂を下り、小さな沢を渡って向こう岸へ。
狭くて不安定な道を経て、透明度の高い川沿いにある林道に出ました。 白い石の河原。夏だったら飛び込みたい!
橋の上から覗き込むと、魚影が見えました。 (この写真だとよく分かりませんね…)
その後、朝、シャトルバスの受付をした白銀の湯に戻ってゴール! 10時間半という長い行程でしたが、秋の澄んだ空気の中、朝日に照らされた越後駒ヶ岳はとても神々しかったです。
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赤兎山へ
20160611(日)
白山への登山を前に、足慣らしも考えて標高1,629mの赤兎山(あかうさぎやま)へ登ってまいりました。
いきなり頂上です。バックは白山です。
登山口からほどなくチゴユリを発見。
これはマイヅルソウかな
エンレイソウや
サンカヨウ 雨に濡れると白い花びらの部分が透明になって、シースルーなサンカヨウになるようですが、まだ一度も見たことがありません。まあ、雨に日にあまり登山はしないから、お目にかかる機会がないかもね。
リュウキンカに
何気なく見上げると、木に咲く赤い花も見っけ
ムラサキヤシオも。ちなみにこのムラサキヤシオは濃紅色の花を枝先に2つから6つつけるそうな。
ショウジョウバカマもかろうじて咲いていました。
それと夏山を感じさせる花がこのコイワカガミ。この花をみかけると、いよいよ夏山登山の始まりだ!っていう思いは、ぼくだけでしょうか?
このミツバオウレンとコイワカガミが結構仲良く咲いていましたね。
カタクリさんもなんとか残っていました。皆さん写真を撮っていましたね。
そんな花々に癒されながら赤兎山頂を過ぎ、赤兎平へ。登山道と山小屋、その先には白山連邦が聳え、この景色は本当に最高っす。
赤兎避難小屋近くの池塘と赤兎山頂です。
赤兎避難小屋の先にある白山展望台は人でいっぱいなため、そこからちょっと降りたところに隠れベンチがあり、わたくしめは大概そこで休憩いたします。
ほんとに芸がなく、いつもの「まるごと1個分完熟トマトのスープパスタ」(AJINOMOTO)と、「小さなアップルデニッシュ 4個入」それにバナナと栗、タンブラーに入れてきたコーシー(coffeeです)で、白山連邦に見とれながら小腹を満たします。本日も結構登ってるんだろうな。
休憩場所の横に咲いていた花 ミヤマキンバイ(深山金梅)かな?
本当はこのニッコウキスゲを楽しみにしていたのですが、ちょいとばかり1、2週間時期が早かった。
淡紅紫色のベニバナミヤマカタバミかな
ミヤマカタバミ
渓流
相変わらず赤兎山は人気の山でした。天気もよく楽しかった。
#赤兎山#akausagiyama#登山#ハイキング#トレッキング#trekking#山#mountain#初夏#early summer#白山#hakusan#白山連邦#別山#池塘#赤兎平#赤兎避難小屋#白山展望台#休憩
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裕くんが三日月亭でバイトする話(タイトル)
定晴ルート入った辺りのお話。
委員会イベやら本編の描写やらとあるルートネタバレやら有。
「なぁ裕。お前、数日ここでバイトしねえか?」 「は?バイト?」
いつものように三日月亭に買い物に来ていた俺は、店長から唐突な申し出を受けた。
「お前ドニーズでバイトしてたって言ってたよな?調理スタッフとしてもやれるだろ?」 「はあ。まぁ、確かにキッチンもやってたのでやれなくはないですが。どうしたんです?随分と突然ですね」
三日月亭は店長が一人で回している。 繁盛している時間は確かに忙しそうではあるが��注文、調理、配膳と見事に捌いている。 港の食堂を稼働させていた時の俺のような状態ではとてもない。 これが経験の差というものか。 ��や、それは兎も角人員を雇う必要性をあまり感じないのだがどうしたというのだろうか。
「いや、その・・・ちょっと腰が・・・な」 「腰?店長腰悪くしたんですか?ちょ、大丈夫ですか!?海堂さん呼んできましょうか?あの人ああ見えてマッサージ得意なので」 「あー・・・そういうワケじゃ、いや、元はと言えばお前らがブランコなんか・・・」
なんだかよくわからないが随分と歯切れが悪い。 腰悪くしたことがそんなに言いにくい事なのか? 言葉尻が小さくて上手く聞き取れない。
「・・・あー、海堂の旦那の事は頼む。屈んだりすると結構痛むもんでな。基本はホール、こっちが手一杯になったらキッチンもやってもらうつもりだ。で、どうだ?まかない付きで給料もしっかり出すぜ。時給は・・・こんくらいでどうだ?」 「おお・・・意外と結構な金額出しますね」 「臨時とは言えこっちから頼んでるわけだしな。その分コキ使ってやるが」
海堂さんの事を頼まれつつ、仕事内容も確認する。 まぁ、ドニーズの頃と左程変わらないだろう。お酒の提供が主、くらいの違いか。 時給もこんな離島の居酒屋とは思えない程には良い。田舎の離島で時給四桁は驚きだ。 内容的にも特に問題ない。直ぐにでも始められるだろう。 とはいえ、屋敷に世話になっている身。勝手に決められるものでもない。
「非常に魅力的ではあるんですが、即断即決とは・・・。申し訳ないですが、一度持ち帰らせてください」 「おう。言っとくが夜の居酒屋の方だからな」 「キッチンの話出しといて昼間だったらそれはそれでビックリですよ。わかりました、また明日にでも返事に来ますよ」
話を終え、買い物を済ませて三日月亭を後にする。 バイト、かぁ・・・。
夕食後。皆で食後のお茶をいただいている時に俺は話を切り出した。 夜間の外出になるのでまずは照道さんに相談するべきだし、海堂さんにもマッサージの話をしなければならない。
「成程。裕さんがやりたいと思うなら、私は反対はしませんよ。店長には日ごろからお世話になっていますし」 「ほー。ま、いいんじゃねぇの?懐があったかくなることは悪いことじゃあねえじゃねえか。マッサージの方も受けといてやるよ。店長に借り作っとくのも悪くないしな」
難しい顔をされるかと思ったが、話はあっさりと通った。 海堂さんに至っては難色を示すかと思っていたが、損得を計算したのかこちらもすんなりと了承を得た。 ちょっと拍子抜けしつつ、改めて照道さんに確認する。
「えっと、本当にいいんですか?」 「ええ。ただ、裕さんの事を考えると帰りだけは誰かしらに迎えに行ってもらった方がいいかもしれませんね」
確かに。禍月の時ではなくても、この島は気性が荒い人は少なくない。 まして居酒屋で働くのだ。店長がいるとはいえ何かしらトラブルに巻き込まれる可能性もある。
「じゃあ、俺が迎えに行くぜ。なんなら向こうで普通に飲んでてもいいしな」
お茶を啜っていた勇魚さんがニカッと笑う。 あ、湯呑が空になってる。 急須を取り、勇魚さんの湯呑にお茶を注ぎながら問い返す。
「俺は助かりますけどいいんですか?はい、お茶のおかわり」 「お、さんきゅ。いいんだよ、俺がやりてえんだから。俺なら酔いつぶれることもねえしな。それに、そういうのは旦那の仕事だろ?」
自然な流れで旦那発言が出てきて驚きつつ、その事実に一気に顔が火照る。 うん、そうなんだけど。嬉しいんだけど。そうストレートに言われると恥ずかしいというかなんというか。
「え、と・・・ありがとうございます」 「けっ、惚気は余所でやれってんだ」 「ふふ・・・」
海堂さんのヤジも、照道さんの温かな眼差しもどこか遠くに感じる。 ヤバい。凄い嬉しい。でもやっぱ恥ずかしい。 そんな思いに悶々としていると、冴さんがコトリと湯呑を置いた。
「で、バイトはいいんだけど、その間誰が私達のおつまみを用意してくれるの?」 「はっ、そういやそうだ!オイ裕!お前自分の仕事はどうする気なんだ」
冴さんの一言に、海堂さんが即座に反応する。 ええ・・・酒飲みたちへのおつまみの提供、俺の仕事になってたの・・・?
「それこそ三日月亭に飲みに来ればいいのでは・・・?」 「それも悪くはないけれど、静かに飲みたい時には向かないのよ、あそこ。それに、この髭親父を担いで帰るなんて事、か弱い乙女の私にさせるの?」
確かに三日月亭は漁師の人達がいつもいるから賑やか、というかうるさい。 ゆったり飲むには確かに向かないかもしれない。ましてや冴さんは女性だから漁師たちの視線を集めまくることだろう。 さり気なく、海堂さんを担ぐのを無理ともできないとも言わない辺りが冴さんらしい。
「ふむ。俺が裕につまみのレシピを教えてもらっておけばいいだろう。新しいものは無理だが既存のレシピであれば再現して提供できる」 「それが無難ですかね。すみません、洋一さん。今日の分、一緒に作りましょう。他にもいくつか教えておきますので」 「ああ、問題ない」
結局、洋一さんが俺の代わりにおつまみ提供をしてくれる事になり、事なきを得た。
翌日、午前中に店長へと返事をした後、島を探索。 少々の収穫もありつつ、昼過ぎには切り上げ、陽が落ち始める前には三日月亭へと足を運んでいた。
「説明は大体こんなもんか。不明な点が出てきたら逐一聞いてくれ」 「は��。多分大丈夫だと思います」
注文の仕方、調理場の決まり、会計の方法。 業務の大半はドニーズでの経験がそのまま役立ちそうだ。 むしろ、クーポンだのポイントだのない分こちらの方がシンプルで楽かもしれない。 渡されたエプロンを付けて腰紐を後ろで縛る。うん、準備は万全だ。
「さ、頼むぞルーキー」 「店長が楽できるよう努めさせてもらいますよ」
そんな軽口をたたき合いながら店を開ける。 数分も経たないうちに、入り口がガラリと音を立てた。
「いらっしゃい」 「いらっしゃいませー!」
現れたのは見慣れた凸凹コンビ。 吾郎さんと潮さんだ。
「あれ?裕?お前こんなとこで何してんだ?」 「バイト・・・えっと、店長が腰悪くしたみたいで臨時の手伝いです」 「なに、店長が。平気なのか?」 「動けないって程じゃないらしいので良くなってくと思いますよ。マッサージも頼んでありますし。それまでは短期の手伝いです」 「成程なぁ・・・」
ここで働くようになった経緯を話しつつ、カウンター近くの席へご案内。 おしぼりを渡しつつ、注文用のクリップボードを取り出す。
「ご注文は?まずは生ビールです?生でいいですよね?」 「随分ビールを推すなお前・・・まぁ、それでいいか。潮もいいか?」 「ああ、ビールでいいぞ。後は―」
少々のおつまみの注文を受けつつ、それを店長へと投げる。
「はい、店長。チキン南蛮1、鶏もも塩4、ネギま塩4、ツナサラダ1」 「おう。ほい、お通しだ」
冷蔵庫から出された本日のお通し、マグロの漬けをお盆にのせつつ、冷えたビールジョッキを用意する。 ジョッキを斜めに傾けながらビールサーバーの取っ手を手前へ。 黄金の液体を静かに注ぎながら垂直に傾けていく。 ビールがジョッキ取っ手の高さまで注がれたら奥側に向けてサーバーの取っ手を倒す。 きめ細かな白い泡が注がれ、見事な7:3のビールの完成。 うん、我ながら完璧だ。 前いたドニーズのサーバーは全自動だったから一回やってみたかったんだよなぁ、これ。
「はい、生二丁お待たせしました。こっちはお通しのマグロの漬けです」 「おう。んじゃ、乾杯ー!」 「ああ、乾杯」
吾郎さん達がビールを流し込むと同時に、入り口の引き戸が開く音がした。 そちらを向きつつ、俺は息を吸い込む。
「いらっしゃいませー!」
そんなスタートを切って、およそ2時間後。 既に席の半分は埋まり、三日月亭は盛況だ。 そんな中、またも入り口の引き戸が開き、見知った顔が入って来た。
「いらっしゃいませー!」 「おう、裕!頑張ってるみたいだな!」 「やあ、裕。店を手伝っているそうだな」 「勇魚さん。あれ、勇海さんも。お二人で飲みに来られたんですか?」
現れたのは勇魚さんと勇海さんの二人組。 俺にとっても良く見知ったコンビだ。
「勇魚から裕がここで働き始めたと聞いてな。���子見ついでに飲まないかと誘われてな」 「成程。こっちの席へどうぞ。・・・はい、おしぼりです。勇魚さんは益荒男ですよね。勇海さんも益荒男で大丈夫ですか?」 「ああ、頼むよ」 「はは、裕。様になってるぞ!」 「ありがとうございます。あまりお構いできませんがゆっくりしていってくださいね」
勇魚さんは俺の様子見と俺の迎えを兼ねて、今日はこのままここで飲むつもりなのだろう。 それで、勇海さんを誘ったと。 もう少しここにいたいが注文で呼ばれてしまっては仕方ない。 別の席で注文を取りつつ、すぐさまお酒の用意を準備をしなければ。
「いらっしゃいませー!」 「おッ、マジでいた!よう裕!遊びに来てやったぜ!」 「あれ、嵐の兄さん、照雄さんまで。何でここに?」
勇魚さん達が来てからしばらく経ったころ、店に見知った大柄な人物がやってくる。 道場の昭雄さんと嵐の兄さんだ。
「漁師連中の噂で三日月亭に新しい店員がいるって話を聞いてな」 「話を聞いて裕っぽいと思ったんだが大当たりだな!」 「確認するためだけにわざわざ・・・。ともかく、こっちの席にどうぞ。はい、おしぼりです」
働き始めたの、今日なんだけどな・・・。 田舎の噂の拡散力は恐ろしいな。 そんな事を思いつつ、2人を席に誘導する。 椅子に座って一息ついたのを確認し、おしぼりを渡しクリップボードの準備をする。
「おお。結構様になってるな。手際もいい」 「そりゃ照雄さんと違って裕は飲み込みいいからな」 「・・・おい」
照雄さんが俺を見て感心したように褒めてくれる。 何故か嵐の兄さんが誇らしげに褒めてくれるが、いつものように昭雄さん弄りも混じる。 そんな嵐の兄さんを、照雄さんが何か言いたげに半目で睨む。ああ、いつもの道場の光景だ。
「はは・・・似たようなことの経験があるので。お二人ともビールでいいですか?」 「おう!ついでに、裕が何か適当につまみ作ってくれよ」 「え!?やっていいのかな・・・店長に確認してみますね」
嵐の兄さんの提案により、店長によって「限定:臨時店員のおすすめ一品」が即座にメニューに追加されることとなった。 このおかげで俺の仕事は当社比2倍になったことを追記しておく。 後で申し訳なさそうに謝る嵐の兄さんが印象的でした。 あの銭ゲバ絶対許さねえ。
「おーい、兄ちゃん!注文ー!」 「はーい、只今ー!」
キッチン仕事の比重も上がった状態でホールもしなければならず、一気にてんてこ舞いに。
「おお、あんちゃん中々可愛い面してるなぁ!」 「はは・・・ありがとうございます」
時折本気なのか冗談なのかよくわからないお言葉を頂きつつ、適当に濁しながら仕事を進める。 勇魚さんもこっちを心配してくれているのか、心配そうな目と時折視線があう。 『大丈夫』という気持ちを込めて頷いてみせると『頑張れよ』と勇魚さんの口元が動いた。 なんかいいなァ、こういうの。 こっからも、まだまだ頑張れそうだ。
「そういえば、裕は道場で武術を学んでいるのだったか」 「おう。時たまかなり扱かれて帰って来るぜ。飲み込みが早いのかかなりの速度で上達してる。頑張り屋だ���なぁ、ホント」 「ふふ、道場の者とも仲良くやっているようだな。嵐の奴、相当裕が気に入ったのだな」 「・・・おう、そうだな。・・・いい事じゃねえか」 「まるで兄弟みたいじゃないか。・・・どうした勇魚。複雑そうだな」 「勇海、お前さんわかって言ってるだろ」 「はは、どうだろうな。・・・ほら、また裕が口説かれているぞ」 「何っ!?ってオイ!勇海!」 「はははははっ!悪い。お前が何度もちらちらと裕の方を見ているのでな。あれだけ島の者を惹きつけているのだ、心配も当然だろう」 「裕を疑うわけじゃねえ。が、アイツ変なところで無防備だからよ。目を離した隙に手を出されちまうんじゃないかと気が気じゃねえんだよ」
何を話しているのかはここからじゃ聞こえないが、気安い親父たちの会話が交わされているらしい。 勇魚さんも勇海さんもなんだか楽しそうだ。
「成程な、当然だ。ふうむ・・・ならば勇魚よ、『網絡め』をしてみるか?立会人は俺がしてやろう」 「『網絡め』?なんだそりゃ」 「『網絡め』というのはだな―」
あまりにも楽しそうに会話しているので、まさかここであんな話をしているとは夢にも思わなかった。 盛大なイベントのフラグが既にここで立っていたのだが、この時点の俺にはあずかり知らぬ出来事であった。
そんなこんなで時間は過ぎ、あっという間に閉店時刻に。 店内の掃除を終え、食器を洗い、軽く明日の準備をしておく。 店長は本日の売り上げを清算しているが、傍から見ても上機嫌なのがわかる。 俺の目から見ても今日はかなり繁盛していた。 売り上げも中々良いはずだろう。
「いやぁ、やっぱお前を雇って正解だったな!調理に集中しやすいし、お前のおかげで客も増えるし財布も緩くなる!」 「おかげでこっちはクタクタですけどね・・・」 「真面目な話、本当に助かった。手際も良いしフードもいける。島にいる間定期的に雇ってもいいくらいだ。もっと早くお前の有用性に気づくべきだったな」
仕事ぶりを評価してくれているのか、便利な人材として認識されたのか。 両方か。
「俺も俺でやることがあるので定期は流石に・・・」 「ま、ひと夏の短期バイトが関の山か。ともかく、明日もよろしく頼むぜ」 「はい。店長もお大事に。また明日」
金銭管理は店長の管轄だし、もうやれることはない。 店長に挨拶をし、帰路につくことにする。 店を出ると、勇魚さんが出迎えてくれた。
「さ、帰ろうぜ、裕」 「お待たせしました。ありがとうございます、勇魚さん」 「いいって事よ」
三日月亭を離れ、屋敷までの道を二人で歩いていく。 店に居た時はあんなに騒がしかったのに、今はとても静かだ。 そんな静かな道を二人っきりで歩くのって・・・何か、いいな。
「・・・にしてもお前、よく頑張ってたな」 「いや、途中からてんてこ舞いでしたけどね。飲食業はやっぱ大変だなぁ」 「そうか?そう言う割にはよく働いてたと思うぜ?ミスもねえし仕事遅くもなかったし」 「寧ろあれを日がな一人で捌いてる店長が凄いですよ」 「はは!そりゃあ本業だしな。じゃなきゃやってけねえだろうさ」
勇魚さんに褒められるのは単純に嬉しいのだが、内心は複雑だ。 一日目にしてはそれなりにやれたという自覚もあるが、まだまだ仕事効率的にも改善点は多い。 そういう部分も無駄なくこなしている店長は、何だかんだで凄いのだ。
「にしても、この島の人達はやっぱり気さくというか・・・気安い方が多いですね」 「そう、だな・・・」
酒も入るからか、陽気になるのは兎も角、やたらとスキンシップが多かった。 肩を組んでくるとかならまだいいが、引き寄せるように腰を掴んできたり、ちょっとしたセクハラ発言が飛んできたり。 幸か不幸か海堂さんのおかげで耐性がついてしまったため、適当に流すことは出来るのだが。
「裕、お前気を付けろよ」 「はい?何がですか?」 「この島の連中、何だかんだでお前の事気に入ってる奴多いからな。こっちは心配でよ」 「勇魚さんも俺の事言えないと思いますけど・・・。大丈夫ですよ、俺は勇魚さん一筋ですから」 「お、おう・・・」
勇魚さんは俺の事が心配なのか、どこか不安そうな顔で俺を見る。 モテ具合で言ったら寧ろ勇魚さんの方が凄まじい気がするので俺としてはそっちの方が心配だ。 でも、その気遣いが、寄せられる想いが嬉しい。 その温かな気持ちのまま、勇魚さんの手を握る。 一瞬驚いた顔をした勇魚さんだが、すぐさま力強く握り返される。
「へへっ・・・」 「あははっ」
握った手から、勇魚さんの熱が伝わってくる。 あったかい。手も。胸も。 温かな何かが、胸の奥から止まることなく滾々と湧き出てくるようだ。 なんだろう。今、すごく幸せだ。
「なぁ、裕。帰ったら風呂入って、その後晩酌しようぜ」 「閉店直前まで勇海さんと結構飲んでましたよね?大丈夫なんですか?」 「あんくらいじゃ潰れもしねえさ。な、いいだろ。ちょっとだけ付き合ってくれよ」 「全くもう・・・。わかりましたよ。つまむもの何かあったかなぁ」
という訳でお風呂で汗を流した後、縁側で勇魚さんとちょっとだけ晩酌を。 もう夜も遅いので、おつまみは火を使わない冷奴とぬか漬けと大根おろしを。
「お待たせしました」 「おっ、やっこにぬか漬けに大根おろしか。たまにはこういうのもいいなあ」 「もう夜遅いですからね。火をつかうものは避けました」
火を使っても問題は無いのだが、しっかりと料理を始めたら何処からかその匂いにつられた輩が来る可能性もある。 晩酌のお誘いを受けたのだ。 どうせなら二人きりで楽しみたい。
「お、このぬか漬け。よく漬かってんな。屋敷で出してくれるのとちと違う気がするが・・・」 「千波のお母さんからぬか床を貰いまして。照道さんには、俺個人で消費して欲しいと言われてますので・・・」 「ああ、ぬか床戦争って奴だな!この島にもあんのか」
ぬか漬け、美味しいんだけどその度に沙夜さんと照道さんのあの時��圧を思い出して何とも言えない気分になるんだよなぁ。 こうして勇魚さんにぬか漬けを提供できる点に関しては沙夜さんに感謝なんだけど。 というかぬか床戦争なんて単語、勇魚さんの口から出ることに驚きを感じますよ・・・。 他の地域にもあるのか?・・・いや、深く考えないようにしよう。
「そういえば前にからみ餅食べましたけど、普通の大根おろしも俺は好きですねえ」 「絡み・・・」
大根おろしを食べていると白耀節の時を思い出す。 そういえば勇魚さんと海堂さんでバター醤油か砂糖醬油かで争ってたこともあったなぁ。 と、先ほどまで饒舌に喋っていた勇魚さんが静かになったような気がする。 何があったかと思い勇魚さんを見ると、心なしか顔が赤くなっているような気がする。
「勇魚さん?どうしました?やっぱりお酒回ってきました?」 「いや・・・うん。なんでもねえ、気にすんな!」 「・・・???まぁ、勇魚さんがそう言うなら」
ちょっと腑に落ちない感じではあったが、気にしてもしょうがないだろう。 そこから小一時間程、俺は勇魚さんとの晩酌を楽しんだのであった。
翌日、夕方。 三日月亭にて―
「兄ちゃん!注文いいかー?この臨時店員のおすすめ一品っての2つ!」 「こっちにも3つ頼むぜー」 「はーい、今用意しまーす!ちょ、店長!なんか今日やたら客多くないですか!?」 「おう、ビビるぐらい客が来るな。やっぱりお前の効果か・・・?」
もうすぐ陽が沈む頃だと言うのに既に三日月亭は大盛況である。 昨日の同時刻より明らかに客数が多い。 ちょ、これはキツい・・・。
「ちわーっとぉ、盛況だなオイ」 「裕ー!面白そうだから様子見に来たわよー」 「・・・大変そうだな、裕」
そんな中、海堂さんと冴さん、洋一さんがご来店。 前二人は最早冷やかしじゃないのか。
「面白そうって・・・割と混んでるのであんまり構えませんよ。はい、お通しとビール」 「いいわよォ、勝手にやってるから。私、唐揚げとポテトサラダね」 「エイヒレ頼むわ。後ホッケ」 「はいはい・・・」
本日のお通しである卯の花を出しながらビールジョッキを3つテーブルに置く。 この二人、頼み方が屋敷の時のソレである。 ぶれなさすぎな態度に実家のような安心感すら感じr・・・いや感じないな。 何だ今の感想。我が事ながら意味がわからない。
「裕。この『限定:臨時店員のおすすめ一品』というのは何だ?」 「俺が日替わりでご用意する一品目ですね。まぁ、色々あってメニューに追加になりまして」 「ふむ。では、俺はこの『限定:臨時店員のおすすめ一品』で頼む」 「お出しする前にメニューが何かもお伝え出来ますよ?」 「いや、ここは何が来るかを期待しながら待つとしよう」 「ハードル上げるなァ。唐揚げ1ポテサラ1エイヒレ1ホッケ1おすすめ1ですね。店長、3番オーダー入りまーす」
他の料理は店長に投げ、俺もキッチンに立つ。 本日のおすすめは鯵のなめろう。 処理した鯵を包丁でたたいて細かく刻み、そこにネギと大葉を加えてさらに叩いて刻む。 すりおろしたにんにくとショウガ、醤油、味噌、を加え更に細かく叩く。 馴染んだら下に大葉を敷いて盛り付けて完成。 手は疲れるが、���構簡単に作れるものなのだ。 そうして用意したなめろうを、それぞれのテーブルへと運んでいく。 まだまだピークはこれからだ。気合い入れて頑張ろう。
そう気合を入れ直した直後にまたも入り口の引き戸が音を立てたのであった。 わぁい、きょうはせんきゃくばんらいだー。
「おーい裕の兄ちゃん!今日も来たぜ!」 「いらっしゃいませー!連日飲んでて大丈夫なんですか?明日も朝早いんでしょう?」 「はっは、そんくらいで漁に行けない軟弱な野郎なんざこの打波にはいねえさ」 「むしろ、お前さんの顔見て元気になるってもんだ」 「はァ、そういうもんですか?とは言え、飲み過ぎないように気を付けてくださいね」
「なぁあんちゃん。酌してくれよ」 「はいはい、只今。・・・はい、どうぞ」 「っかー!いいねぇ!酒が美味ぇ!」 「手酌よりかはマシとは言え、野郎の酌で変わるもんです?」 「おうよ!あんちゃんみたいな可愛い奴に酌されると気分もいいしな!あんちゃんなら尺でもいいぜ?」 「お酌なら今しているのでは・・・?」 「・・・がはは、そうだな!」
「おい、兄ちゃんも一杯どうだ?飲めない訳じゃねえんだろ?」 「飲める歳ではありますけど仕事中ですので。皆さんだってお酒飲みながら漁には出ないでしょう?」 「そらそうだ!悪かったな。・・・今度、漁が終わったら一緒に飲もうぜ!」 「はは、考えておきますね」
ただのバイトに来ている筈なのに、何だか何処ぞのスナックのママみたいな気分になってくる。 それも、この島の人達の雰囲気のせいなのだろうか。
「あいつすげぇな。看板娘みてぇな扱いになってんぞ」 「流石裕ね。二日目にして店の常連共を掌握するとは。崇といい、これも旺海の血なのかしら?」 「もぐもぐ」 「さぁな。にしても、嫁があんなモテモテだと勇魚の野郎も大変だねぇ」 「裕の相手があの勇魚だって知った上で尚挑めるのかが見ものね」 「もぐもぐ」 「洋一、もしかしてなめろう気に入ったのか?」 「・・・うまい。巌もどうだ?」 「お、おう」
料理を運んでいる途中、洋一さんがひたすらなめろうを口に運んでいるのが目に入る。 もしかして、気に入ったのかな? そんな風にちょっとほっこりした気持ちになった頃、嵐は唐突に現れた。 嵐の兄さんじゃないよ。嵐の到来って奴。
「おーう裕。頑張っとるようじゃのう」 「あれ、疾海さん?珍しいですね、ここに来るなんて」 「げ、疾海のジジィだと!?帰れ帰れ!ここにはアンタに出すもんなんてねぇ!裕、塩持って来い塩!」
勇海さんのお父さんである疾海さんが来店。 この人がここにやってくる姿はほとんど見たことがないけれど、どうしたんだろう。 というか店長知り合いだったのか。
「なんじゃ店主、つれないのう。こないだはあんなに儂に縋り付いておったというのに」 「バッ・・・うるせェ!人の体好き放題しやがって!おかげで俺は・・・!」 「何言っとる。儂はちょいとお前さんの体を開いただけじゃろが。その後に若い衆に好き放題されて悦んどったのはお前さんの方じゃろ」
あー・・・そういう事ね。店長の腰をやった原因の一端は疾海さんか。 うん、これは聞かなかったことに��ておこう。 というか、あけっぴろげに性事情を暴露されるとか店長が不憫でならない。
「のう、裕よ。お主も興味あるじゃろ?店主がどんな風に儂に縋り付いてきたか、その後どんな風に悦んでおったか」 「ちょ、ジジィてめぇ・・・」 「疾海さん、もうその辺で勘弁してあげてくださいよ。店長の腰がやられてるのは事実ですし、そのせいで俺が臨時で雇われてるんですから。益荒男でいいですか?どうぞ、そこの席にかけてください」 「おい、裕!」 「店長も落ち着いて。俺は何も見てませんし聞いてません。閉店までまだまだ遠いんですから今体力使ってもしょうがないでしょう。俺が疾海さんの相手しますから」 「―ッ、スマン。頼んだぞ、裕」
店長は顔を真っ赤にして逃げるようにキッチ���へと戻っていった。 うん、あの、何て言うか・・・ご愁傷様です。 憐れみの視線を店長に送りつつお通しと益荒男を準備し、疾海さんの席へと提供する。
「よう店主の手綱を握ったのう、裕。やるもんじゃな」 「もとはと言えば疾海さんが店長をおちょくるからでしょう。あんまりからかわないでくださいよ」
にやにやと笑う疾海さんにため息が出てくる。 全く・・・このエロ爺は本当、悪戯っ子みたいな人だ。 その悪戯が天元突破したセクハラばかりというのもまた酷い。 しかも相手を即落ち、沈溺させるレベルのエロ技術を習得しているからなおさら性質が悪い。
「にしても、裕。お前さんもいい尻をしておるのう。勇魚の竿はもう受けたか?しっかりと耕さんとアレは辛いじゃろうて」
おもむろに尻を揉まれる。いや、揉みしだかれる。 しかも、その指が尻の割れ目に・・・ってオイ!
「―ッ!」
脳が危険信号を最大限に発し、半ば反射的に体が動く。 右手で尻を揉みしだく手を払いのけ、その勢いのまま相手の顔面に左の裏拳を叩き込む! が、振り抜いた拳に手ごたえは無く、空を切ったのを感じる。 俺は即座に一歩下がり、構えを解かずに臨戦態勢を維持。 チッ、屈んで避けたか・・・。
「っとぉ、危ないのう、裕。儂の男前な顔を台無しにするつもりか?」 「うるせえジジイおもてでろ」 「ほう、その構え・・・。成程、お前さん辰巳の孫のとこに師事したんか。道理で覚えのある動きじゃ。じゃが、キレがまだまだ甘いのう」
かなりのスピードで打ち込んだ筈なのに易々と回避されてしまった。 やはりこのジジイ只者ではない。 俺に攻撃をされたにも関わらず、にやにやとした笑いを崩さず、のんびりと酒を呷っている。 クソッ、俺にもっと力があれば・・・!
「おい裕、どうした。何か擦れた音が、ってオイ。マジでどうした!空気が尋常じゃねぇぞ!?」
店内に突如響いた地面を擦る音に、店長が様子を見に来たようだ。 俺の状態に即座に気づいたようで、後ろから店長に羽交い締めにされる。
「店長��いてそいつころせない」 「落ち着け!何があったか想像はつくが店ん中で暴れんな!」 「かかかっ!可愛い奴よな、裕。さて、儂はまだ行くところがあるでの。金はここに置いとくぞ」
俺が店長に止められている間に、エロ爺は笑いながら店を後にした。 飲み食い代よりもかなり多めの金額が置かれているのにも腹が立つ。
「店長!塩!」 「お、おう・・・」
さっきとはまるきり立場が逆である。 店の引き戸を力任せにこじ開け、保存容器から塩を鷲掴む。
「祓い給え、清め給え!!消毒!殺菌!滅菌ッ!!!」
適当な言葉と共に店の前に塩をぶちまける。 お店の前に、白い塩粒が散弾のように飛び散った。
「ふー、ふー、ふーッ!・・・ふぅ」 「・・・落ち着いたか?」 「・・・ええ、何とか」
ひとしきり塩をぶちまけるとようやく気持ちが落ち着いてきた。 店長の気遣うような声色に、何ともやるせない気持ちになりながら返答する。 疲労と倦怠感に包まれながら店の中に戻ると、盛大な歓声で出迎えられる。
「兄さん、アンタやるじゃねぇか!」 「うおッ!?」 「疾海のじいさんにちょっかいかけられたら大体はそのまま食われちまうのに」 「ひょろっちい奴だと思ってたがすげえ身のこなしだったな!惚れ惚れするぜ!」 「あ、ありがとうございます・・・はは・・・」
疾海さんは俺と勇魚さんの事を知っているから、単にからかってきただけだろうとは思っている。 エロいし奔放だし子供みたいだが、意外と筋は通すし。 あくまで「比較的」通す方であって手を出さない訳ではないというのが困りものではあるが。 そんな裏事情をお客の人達が知っている訳もなく、武術で疾海さんを退けたという扱いになっているらしい。 けど、あのジジイが本気になったら俺の付け焼刃な武術じゃ相手にならない気がする。 さっきの物言いを考えると辰馬のおじいさんとやりあってたって事になる。 ・・・うん、無理そう。
「おっし!そんなあんちゃんに俺が一杯奢ってやろう!祝杯だ!」 「いいねえ!俺も奢るぜ兄ちゃん!」 「抜け駆けすんな俺も奢るぞ!」 「ええっ!?いや、困りますって・・・俺、仕事中ですし・・・」 「裕、折角なんだし受けておきなさいな」
どうしようかと途方に暮れていると、いつの間にか冴さんが隣に来ていた。 と、それとなく手の中に器のようなものを握らされた。
「冴さん。あれ、これって・・・」
横目でちらりと見ると『咲』の字が入った器。 これ、咲夜の盃・・・だよな?
「腕も立って酒にも強いと知っとけば、あの連中も少しは大人しくなるでしょ。自衛は大事よ」 「はぁ・・・自衛、ですか」 「後でちゃんと返してね」
これって確か、持ってるだけで酒が強くなるって盃だったっけ。 その効果は一度使って知っているので、有難く使わせてもらうとしよう。 店長もこっちのやりとりを見ていたのか何も言うこと無く調理をしていた。
「おっ、姐さんも一緒に飲むかい!?」 「ええ。折角だから裕にあやからせてもらうわ。さぁ、飛ばしていくわよ野郎共ー!」 「「「「おおーっ!!」」」」 「お、おー・・・」
その後、ガンガン注がれるお酒を消費しつつ、盃を返す、を何度か繰り返すことになった。 途中からは冴さんの独壇場となり、並み居る野郎共を悉く轟沈させて回っていた。 流石っス、姐さん。 ちなみに俺は盃のご利益もあり、その横で飲んでいるだけで終わる事になった。
そんな一波乱がありつつも、夜は更けていったのだった。
そんなこんなで本日の営業終了時刻が近づいてくる。 店内には冴さん、海堂さん、洋一さんの3人。 冴さんはいまだ飲んでおり、その底を見せない。ワクなのかこの人。 海堂さんはテーブルに突っ伏してイビキをかいており、完全に寝てしまっている。 洋一さんはそんな海堂さんを気にしつつ、お茶を啜っている。 あんなにいた野郎共も冴さんに轟沈させられた後、呻きながら帰って行った。 明日の仕事、大丈夫なんだろうか・・・。
後片付けや掃除もほぼ終わり、後は冴さん達の使っているテーブルだけとなった時、入り口が壊れそうな勢いで乱暴に開いた。
「裕ッ!」 「うわっ、びっくりした。・・・勇魚さん、お疲れ様です」
入り口を開けて飛び込んできたのは勇魚さんだった。 いきなりの大声にかなり驚いたが、相手が勇魚さんとわかれば安心に変わる。 だが、勇魚さんはドスドスと近づいてくると俺の両肩をガシリと掴んだ。
「オイ裕!大丈夫だったか!?変な事されてねえだろうな!」
勇魚さんにしては珍しく、かなり切羽詰まった様子だ。 こんなに心配される事、あったっけ・・・? 疑問符が浮かぶがちらりと見えた勇海さんの姿にああ、と納得する。 というか苦しい。掴まれた肩もミシミシ言ってる気がする。
「うわっ!?大丈夫、大丈夫ですって。ちょ、勇魚さん苦しいです」 「お、おう。すまねえ・・・」
宥めると少し落ち着いたのか、手を放してくれる。 勇魚さんに続いて入って来た勇海さんが、申し訳なさそうに口を開いた。
「裕、すまないな。親父殿が無礼を働いたそうだな」 「勇海さんが気にすることではないですよ。反撃もしましたし。まぁ、逃げられたんですけど」 「裕は勇魚のつがいだと言うのに、全く仕方のないことだ。親父殿には私から言い聞かせておく。勘弁してやって欲しい」 「疾海さんには『次やったらその玉潰す』、とお伝えください」 「ははは、必ず伝えておくよ」
俺の返答に納得したのか、勇海さんは愉快そうに笑う。 本当にその時が来た時の為に、俺も更なる修練を積まなければ。 ・・・気は進まないけど、辰馬のおじいさんに鍛えてもらう事も視野に入れなければならないかもしれない。
「裕、今日はもう上がっていいぞ。そいつら連れて帰れ」 「え、いいんですか?」 「掃除も殆ど終わってるしな。色々あったんだ、帰って休んどけ」
俺に気を遣ってくれたのか、はたまたさっさと全員を返したかったのか、店長から退勤の許可が出た。 ここは有難く上がらせてもらおう。色々あって疲れたのは事実だ。
「じゃあ、折角ですので上がらせてもらいます。お疲れ様でした�� 「おう。明日も頼むぞ」
店長に挨拶をし、皆で店を出る。 勇海さんはここでお別れとなり、俺、勇魚さん、冴さん、海堂さん、洋一さんの5人で帰る。 寝こけている海堂さんは洋一さんが背負っている。
「裕、ホントに他に何も無かったんだろうな!?」 「ですから、疾海さんにセクハラ受けただけですって。その後は特に何も無かったですし・・・」
で、帰り道。勇魚さんに詰問されております。 心配してくれるのはとても嬉しい。 嬉しいんだけど、過剰な心配のような気もしてちょっと気おくれしてしまう。
「俺に気を遣って嘘ついたりすんじゃねえぞ」 「冴さん達も一緒にいたのに嘘も何もないんですが・・・」 「裕の言ってる事に嘘はないわよ。疾海の爺さんに尻揉まれてたのも事実だけど」 「・・・思い出したら何か腹立ってきました。あのジジイ、次に会ったら確実に潰さなきゃ」
被害者を減らすにはその大本である性欲を無くすしかないかな? やっぱり金的か。ゴールデンクラッシュするしかないか。 あの驚異的な回避力に追いつくためにはどうすればいいか・・・。 搦め手でも奇襲なんでもいい、当てさえすればこちらのものだろう。 そう思いながら突きを繰り出し胡桃的な何かを握り潰す動作を数回。 駄目だな、やっぱりスピードが足りない。
「成程、金的か」 「裕、その、ソイツは・・・」
洋一さんは俺の所作から何をしようとしているかを読み取ったようだ。 その言葉にさっきまで心配一色だった勇魚さんの顔色変わる。 どうしました?なんで微妙に股間を押さえて青ざめてるんです?
「冴さん。こう、男を不能寸前まで追い込むような護身術とかないですかね?」 「あるにはあるけど、そういうの覚えるよりもっと確実な方法があるわよ」 「え?」 「勇魚。アンタもっと裕と一緒にいなさい。で、裕は俺の嫁アピールしときなさい」
嫁。勇魚さんのお嫁さん。 うん、事実そうなんだけどそれを改めて言われるとなんというか。 嬉しいんだけど、ねぇ?この照れくさいような微妙な男心。
「裕。頬がだいぶ紅潮しているようだが大丈夫か?」 「だ、大丈夫です。何というか、改めて人に言われると急に、その・・・」 「ふむ?お前が勇魚のパートナーである事は事実だろう。港の方でも知れ渡っていると聞いている。恥ずべきことではないと思うが?」 「恥ずかしいんじゃなくて嬉しくも照れくさいというか・・・」 「・・・そういうものか。難しいものだな」
洋一さんに指摘され、更に顔が赤くなる。 恥ずかしいわけじゃない。むしろ嬉しい。 でも、同じくらい照れくささが湧き上がってくる。 イカン、今凄い顔が緩みまくってる自覚がある。
「流石にアンタ相手に真正面から裕に手を出す輩はいないでしょう。事実が知れ渡れば虫よけにもなって一石二鳥よ」 「お、おお!そうだな!そっちの方が俺も安心だ!うん、そうしろ裕!」
冴さんの案に我が意を得たりといった顔の勇魚さん。 妙に食いつきがいいなァ。 でも、それって四六時中勇魚さんと一緒にいろって事では?
「勇魚さんはそれでいいんです��?対セクハラ魔の為だけに勇魚さんの時間を割いてもらうのは流石にどうかと思うんですが」 「んなこたあねえよ。俺��ってお前の事が心配なんだ。これくらいさせてくれよ」 「そう言われると断れない・・・」
申し訳ない旨を伝えると、純粋な好意と気遣いを返される。 実際勇魚さんと一緒に居られるのは嬉しいし、安心感があるのも事実だ。
「裕、あんたはあんたで危機感を持った方がいいわよ」 「危機感、といいますとやっぱりセクハラ親父やセクハラ爺の対処の話ですか?」
冴さんの言葉に、2人の男の顔が思い浮かぶ。 悪戯、セクハラ、煽りにからかい。あの人たちそういうの大好きだからなぁ。 でも、だいぶ耐性はついたし流せるようになってきたと思ってるんだけど。
「違うわよ。いやある意味同じようなモンか」 「客だ、裕」 「客?お店に来るお客さんって事ですか?」
え、海堂さんとか疾海さんじゃな��のか。 そう思っていると意外な答えが洋一さんの方から返って来た。 客の人達に何かされたりは・・・ない筈だったけど。
「店にいた男たちはかなりの人数が裕を泥酔させようと画策していたな。冴が悉くを潰し返していたが」 「何っ!?」 「え!?洋一さん、それどういう・・・」
何その事実今初めて知った。どういうことなの。
「今日店に居た男たちは皆一様にお前をターゲットとしていたようだ。やたらお前に酒を勧めていただろう。お前自身は仕事中だと断っていたし、店長もお前に酒がいかないようそれとなくガードしていた。だがお前が疾海を撃退したとなった後、躍起になるようにお前に飲ませようとしていただろう。だから冴が向かったという訳だ」 「疾海の爺さん、なんだかんだでこの島でもかなりの手練れみたいだしね。物理でだめならお酒でって寸法だったみたいね」 「えっと・・・」 「食堂に来てた立波さん、だったかしら。ここまで言えばわかるでしょ?店長も何だかんだでそういう事にならないよう気を配ってたわよ」
あァ、成程そういう事か。ようやく俺も理解した。 どうやら俺は三日月亭でそういう意味での好意を集めてしまったという事らしい。 で、以前店長が言っていた「紳士的でない方法」をしようとしていたが、疾海さんとのやりとりと冴さんのおかげで事なきを得たと、そういう事か。
「えー・・・」 「裕・・・」
勇魚さんが俺を見る。ええ、心配って顔に書いてますね。 そうですね、俺も逆の立場だったら心配しますよ。
「なあ裕。明日の手伝いは休んどけ。店には俺が行くからよ」 「いや、そういうワケにもいかないでしょう。勇魚さん、魚は捌けるでしょうけど料理できましたっけ?」 「何、料理ができない訳じゃねえ・・・なんとかなるだろ」
あっけらかんと笑う勇魚さんだが、俺には不安要素しかない。 確かに料理ができない訳じゃないけど如何せん漢の料理だ。店長の補助とかができるかと言うと怪しい。 この島に来てからの勇魚さんの功績をふと思い返す。 餅つき・・・臼・・・ウッアタマガ。 ・・・ダメだ、食材ごとまな板真っ二つにしそうだし、食器を雑に扱って破壊しそうな予感しかしない。 勇魚さんの事だからセクハラされたりもしそうだ。 ダメダメ、そんなの俺が許容しません。
「様々な観点から見て却下します」 「裕ぅ~・・・」
そんなおねだりみたいな声したって駄目です。 却下です却下。
「裕、なら��俺が行くか?」 「お願いしたいのは山々なんですが洋一さんは明日北の集落に行く予定でしたよね。時間かかるって仰ってたでしょう?」 「ふむ。ならば巌に―」 「いえ、海堂さんには店長のマッサージもお願いしてますしこれ以上は・・・」
洋一さんが申し出てくれるが、洋一さんは洋一さんで抱えてる事がある。 流石にそれを曲げてもらうわけにはいかない。 海堂さんなら色んな意味で文句なしの人材ではあるのだが、既にマッサージもお願いしている。 それに、迂闊に海堂さんに借りを作りたくない。後が怖い。
「洋一も無理、巌も無理とするならどうするつもりなんだ?高瀬か?」 「勇魚さん、三日月亭の厨房を地獄の窯にするつもりですか?」 「失礼ねェ。頼まれてもやらないわよ」
勇魚さんからまさかの選択が投げられるがそれは無理。 冴さんとか藤馬さんに立たせたら三日月亭から死人が出る。三日月亭が営業停止する未来すらありえる。 頼まれてもやらないと冴さんは仰るが、「やれないからやらない」のか「やりたくないからやらない」のかどっちなんだ。
「明日も普通に俺が行きますよ。ついでに今後についても店長に相談します」 「それが一番ね。店長も裕の状況に気づいてるでしょうし」 「巌の話だとマッサージのおかげかだいぶ良くなってきているらしい。そう長引きはしないだろう」 「後は勇魚がガードすればいいのよ」 「おう、そうか。そうだな」
そんなこんなで話も固まり、俺達は屋敷に到着した。 明日は何事もなく終わってくれればいいんだけど・・・。 そんな不安も抱えつつ、夜は過ぎていった。
そしてバイト三日目。 俺は少し早めに三日月亭へと来ていた。
「ああ、だよなぁ。すまんな、そっちの可能性も考えてなかったワケじゃ無いんだが・・・そうなっちまうよなあ」
俺の状況と今後の事を掻い摘んで説明すると、店長は疲れたように天井を仰ぐ。
「何というか・・・すみません。腰の具合はどうです?」
別に俺が何かをしたわけではないけれど、状況の中心にいるのは確かなので申し訳ないとは思う。
「海堂の旦那のおかげでだいぶ良くなった。もう一人でも回せそうだ。何なら今日から手伝わなくてもいいんだぞ?」
店長はそう言うが、完治しているわけでもない。 悪化するわけではないだろうが気になるのも事実。 なので、昨日のうちに勇魚さんと決めていた提案を出すことにする。
「でも全快というわけでもないんでしょう?引き受けたのは自分です。勇魚さんもいますし、せめて今日までは手伝わせてくださいよ」 「心意気はありがてえが・・・。わかった、面倒ごとになりそうだったらすぐさま離れろよ?勇魚の旦那も頼むぜ」 「おう!」 「はい!さ、今日も頑張りましょう!」
昨日話した通り今日は開店から勇魚さんも店に居てくれる。 万が一な状態になれば即座に飛んできてくれるだろう。 それだけで心の余裕も段違いだ。
「裕、無理すんなよ」 「わかってますよ。勇魚さんも、頼みますね」 「おう、任せときな!」
勇魚さんには店内を見渡せる席に座ってもらい、適当に時間を潰してもらう。 俺は店長と一緒に仕込みを始めながら新メニューの話も始める。 途中、勇魚さんにビールとお通しを出すのも忘れずに。
「新しいメニュー、どうすっかねぇ」 「今日の一品、新レシピも兼ねて���ーヤーチャンプルーでいこうかと思うんですよ」 「ほー。確かに苦瓜なら栽培してるとこはそこそこあるしな。行けるだろう」 「スパム缶は無くても豚肉や鶏肉でいけますからね。肉が合わないなら練り物やツナでも大丈夫です。材料さえあれば炒めるだけってのも高ポイント」 「肉に卵にと寅吉んとこには世話になりっぱなしだな。だが、いいねえ。俺も久しぶりにチャンプルーとビールが恋しくなってきやがった」 「後で少し味見してくださいよ。島の人達の好み一番把握してるの店長なんだから。・・・でも、やっぱり新メニュー考えるのは楽しいな」 「・・・ったく、面倒ごとさえ無けりゃあこのまま働いてもらえるってのに。無自覚に野郎共の純情を弄びやがって」 「それ俺のせいじゃないですよね・・・」
調理実習をする学生みたいにわいわい喋りながら厨房に立つ俺達を、勇魚さんはニコニコしながら見ている。 あ、ビールもう空きそう。おかわりいるかな? そんな風に営業準備をしていると時間はあっという間に過ぎ去り、開店時間になる。 開店して数分も経たないうちに、店の引き戸がガラリと開いた。
「いらっしゃいませー!」
「裕、お前まだここで働いてたのか」 「潮さん、こんばんは。今日までですけどね。あくまで臨時なので」 「ふむ、そうか。勇魚の旦那もいるのか」 「おう、潮。裕の付き添いでな」 「・・・ああ、成程な。それは確かに必要だ」
「おっ、今日も兄ちゃんいるのか!」 「いらっしゃいませ!ははは、今日で終わりなんですけどね」 「そうなのか!?寂しくなるなぁ・・・。なら、今日こそ一杯奢らせてくれよ」 「一杯だけならお受けしますよ。それ以上は無しですからね」
「裕の兄ちゃん!今日でいなくなっちまうって本当か!?」 「臨時ですので。店長の具合もよくなりましたし」 「兄ちゃんのおすすめ一品、好きだったんだけどよ・・・」 「はは、ありがとうございます。今日も用意してますから良かったら出しますよ」 「おう、頼むぜ!」
続々とやってくる常連客を捌きつつ、厨房にも立つ。 店長の動きを見てもほぼ問題ない。治ってきてるのも事実のようだ。 時折お客さんからの奢りも一杯限定で頂く。 今日は以前もらった方の咲夜の盃を持ってきているので酔う心配もない。
「おう、裕のあんちゃん!今日も来たぜ!」 「い、いらっしゃいませ・・・」
再びガラリと入り口が空き、大柄な人物がドスドスと入ってくる。 俺を見つけるとがっしと肩を組まれる。 日に焼けた肌が特徴の熊のような人だ。名前は・・・確か井灘さん、だったかな? 初日に俺に可愛いと言い、昨日は酌を頼まれ、冴さんに潰されてた人だ。 スキンシップも多く、昨日の一件を考えると警戒せざるを得ない。 取り合えず席に案内し、おしぼりを渡す。
「ガハハ、今日もあんちゃんの可愛い顔が見れるたぁツイてるな!」 「あ、ありがとうございます。注文はどうしますか?」 「まずはビール。食いモンは・・・そうさな、あんちゃんが適当に見繕ってくれよ」 「俺が、ですか。井灘さんの好みとかわかりませんけど・・・」 「大丈夫だ。俺、食えねえもんはねえからよ。頼むぜ!」 「はあ・・・分かりました」
何か丸投げされた感が凄いが適当に三品程見繕って出せばいいか。 ついでだからゴーヤーチャンプルーも試してもらおうかな。 そんな事を考えながら、俺��井灘さんにビールとお通しを出す。
「む・・・」 「どうした旦那。ん?アイツ、井灘か?」 「知ってるのか、潮」 「ああ。俺達とは違う港の漁師でな。悪い奴では無いんだが、気に入った奴にすぐ手を出すのが玉に瑕でな」 「そうか・・・」 「旦那、気を付けた方がいいぞ。井灘の奴、あの様子じゃ確実に裕に手を出すぞ」 「・・・おう」
こんな会話が勇魚さんと潮さんの間でなされていたとはつゆ知らず。 俺は店長と一緒に厨房で鍋を振っていた。
「はい、井灘さん。お待たせしました」 「おう、来た来た」 「つくね、ネギま、ぼんじりの塩の串盛り。マグロの山かけ。そして今日のおすすめ一品のゴーヤーチャンプルーです」 「いいねえ、流石あんちゃん。で、なんだそのごーやーちゃんぷうるってのは?」 「内地の料理ですよ。苦瓜と肉と豆腐と卵の炒め物、ってとこでしょうか。(厳密には内地の料理とはちょっと違うけど)」 「ほー苦瓜。滅多に食わねえが・・・あむ。うん、美味え!美味えぞあんちゃん!」 「それは良かった」 「お、美味そうだな。兄ちゃん、俺にもそのごーやーちゃんぷうるってのくれよ」 「俺も!」 「はいはい、ただいま」
井灘さんが美味しいと言ってくれたおかげで他の人もゴーヤーチャンプルーを頼み始める。 よしよし、ゴーヤーチャンプルーは当たりメニューになるかもしれない。 そう思いながら厨房に引っ込んでゴーヤーを取り出し始めた。
それからしばらくして井灘さんから再びゴーヤーチャンプルーの注文が入る。 気に入ったのだろうか。
「はい、井灘さん。ゴーヤーチャンプルー、お待たせ」 「おう!いやー美味えな、コレ!気に入ったぜ、ごーやーちゃんぷうる!」 「あはは、ありがとうございます」
自分の料理を美味い美味いと言ってもりもり食べてくれる様はやっぱり嬉しいものだ。 作る側冥利に尽きる。 が、作ってる最中に店長にも「アイツは気を付けとけ」釘を刺されたので手放しに喜ぶわけにもいかない。
「毎日こんな美味いモン食わせてくれるなんざあんちゃんと一緒になる奴は幸せだなあ!」 「はは・・・ありがとう、ございます?」 「あんちゃんは本当に可愛い奴だなあ」
屈託ない笑顔を向けてくれるのは嬉しいんだけど、何だか話の方向が急に怪しくなってきたぞ。
「おい、裕!早く戻ってきてこっち手伝え!」 「ッ、はーい!じゃあ井灘さん、俺仕事に戻るので・・・」
こっちの状況を察知したのか、店長が助けを出してくれる。 俺も即座に反応し、戻ろうと足を動かす。 が、その前に井灘さんの腕が俺の腕を掴む。 あ、これは・・・。
「ちょ、井灘さん?」 「なあ、裕のあんちゃん。良けりゃ、俺と・・・」
急に井灘さんの顔が真面目な顔になり、真っ直ぐに俺を見据えてくる。 なんというか、そう、男の顔だ。 あ、俺こういう顔に見覚えある。 そう、勇魚さんの時とか、立浪さんの時とか・・・。 逃げようと思うも腕をガッチリとホールドされ、逃げられない。 ・・・ヤバイ。そう思った時だった。 俺と井灘さんの間に、ズイと体を割り込ませてきた見覚えのあるシャツ姿。
「なあ、兄さん。悪いがこの手、離してくんねえか?」 「勇魚さん���・・」
低く、優しく、耳をくすぐる声。 この声だけで安堵感に包まれる。 言葉は穏やかだが、どこか有無を言わせない雰囲気に井灘さんの眉間に皺が寄る。
「アンタ・・・確か、内地の客だったか。悪いが俺の邪魔・・・」 「裕も困ってる。頼むぜ」 「おい、アンタ・・・う、腕が動かねえ!?」
井灘さんも結構な巨漢で相当な力を込めているのがわかるが、勇魚さんの手はびくともしない。 勇魚さんの怪力はよく知ってはいるけど、こんなにも圧倒的なんだなあ。
「こいつ、俺の大事な嫁さんなんだ。もし、手出しするってんなら俺が相手になるぜ」
そう言って、勇魚さんは俺の方をグッと抱き寄せる。 抱き寄せられた肩口から、勇魚さんの匂いがする。 ・・・ヤバイ。勇魚さん、カッコいい。 知ってたけど。 知ってるのに、凄いドキドキする。
「っ・・・ガハハ、成程!そいつは悪かったな、旦那!」 「おう、分かってくれて何よりだぜ。さ、裕。店長が呼んでるぜ」 「あ、ありがとうございます勇魚さん。井灘さん、すみませんけどそういう事なので・・・」
勇魚さんの言葉に怒るでもなく、井灘さんは納得したようにあっさりと手を放してくれた。 井灘さんに謝罪しつつ、促されるまま厨房へと戻る。
「おお!あんちゃんも悪かったな!旦那、詫びに一杯奢らせてくれや!」 「おう。ついでに裕のどこが気に入ったのか聞かせてくれよ」
漁師の気質なのかはたまた勇魚さんの人徳なのか。 さっきの空気はどこへやら、そのまま親し気に話始める2人。
「ちょ、勇魚さん!」 「いいぜ!旦那とあんちゃんの話も聞かせてくれよ!」 「井灘さんまで!」 「おい裕!いつまで油売ってんだ、こっち手伝え!」
店長の怒鳴り声で戻らざるを得なかった俺には二人を止める術などなく。 酒の入った声のデカい野郎共が二人、店内に響かない筈がなく・・・。
「でよ、そん時の顔がまたいじらしくってよ。可愛いんだこれが」 「かーっ!羨ましいこったぜ。旦那は果報モンだな!」 「だろ?なんたって俺の嫁さんなんだからな!」
勇魚さんも井灘さんも良い感じに酒が入ってるせいか陽気に喋っている。 可愛いと言ってくれるのは嬉しくない訳ではないけれど、連呼されると流石に男としてちょっと悲しい気分になる。 更に嫁さん嫁さん連呼されまくって複雑な心境の筈なのにどれだけ愛されているかをガンガン聞かされてオーバーヒートしそうだ。
「何故バイト中に羞恥プレイに耐えなければならないのか・・・」 「おい裕、いつまで赤くなってんだ。とっとと料理運んで来い」 「はい・・・いってきます・・・」
人が耐えながらも調理しているというのにこの銭ゲバ親父は無情にもホール仕事を投げて来る。 こんな状況で席に料理を運びに行けば当然。
「いやー、お熱いこったなあ兄ちゃん!」 「もう・・・ご勘弁を・・・」 「っははははは!」
茶化されるのは自然な流れだった。 勇魚さんと井灘さんのやりとりのお陰でスキンシップやらは無くなったが、祝言だの祝い酒だの言われて飲まされまくった。 咲夜の盃が無ければ途中で潰れてたかもしれない。
そんな揶揄いと酒漬けの時間を、俺は閉店間際まで味わうことになったのだった。
そして、もうすぐ閉店となる時間。 勇魚さんと一緒にずっと飲んでいた井灘さんも、ようやく腰を上げた。 会計を済ませ、店の前まで見送りに出る。
「じゃあな、あんちゃん。俺、マジであんちゃんに惚れてたんだぜ」 「はは・・・」 「だが、相手が勇魚の旦那じゃあ流石に分が悪い。幸せにしてもらえよ!」 「ありがとうございます・・・」 「また飲みに来るからよ。また今度、ごーやーちゃんぷうる作ってくれよな!」 「その時に居るかは約束できませんが、機会があれば」
からりとした気持ちの良い気質。 これもある種のプレイボーイなのだろうか。
「じゃあな!裕!勇魚の旦那!」 「おう!またな、井灘!」 「おやすみなさい、井灘さん」
そう言って手を振ってお見送り。 今日の三日月亭の営業も、これにて閉店。 店先の暖簾を下ろし、店内へと戻る。
「裕。そっちはどうだった?」 「こっちも終わりました。後は床掃除したら終わりですよ」 「ホント、この3日間マジ助かった。ありがとうな」 「いえいえ、久しぶりの接客も楽しかったですよ」
最後の客だった井灘さんも先程帰ったばかりだ。 店内の掃除もほぼ終わり、閉店準備もほぼ完了。 三日月亭のバイトももう終わりだ。 店長が近づいてくると、封筒を差し出してきた。
「ほい、バイト代だ。色々世話もかけたからな。イロ付けといたぜ」 「おお・・・」
ちょろっと中身を確認すると、想定していたよりかなり多めの額が入っていた。 店長なりの労いの証なのだろう。
「なあ裕。マジで今後もちょくちょく手伝いに来ねえか?お前がいると客足増えるし酒も料理も注文増えるしな。バイト料もはずむぜ」 「うーん・・・」
店長の申し出は有難いが、俺は俺でまだやらなければならない事がある。 悪くはない、んだけど余り時間を使うわけにもなぁ。 そんな風に悩んでいると、勇魚さんが俺の頭にぽん、と掌をのせる。
「店長、悪いがこれ以上裕をここにはやれねえよ」 「はは、旦那がそう言うんなら無理は言えねえな。裕の人気凄まじかったからな」 「ああ。何かあったらって、心配になっちまうからな」
今回は勇魚さんのお陰で事なきを得たけど、また同じような状況になるのは俺も御免被りたい。 相手に申し訳ないのもあるけど、どうすればいいか分からなくて困ったのも事実だ。
「お店の手伝いはできないですけど、またレシピの考案はしてきますので」 「おう。売れそうなのを頼むぜ。んじゃ、気を付けて帰れよ」 「はい、店長もお大事に。お疲れ様です」 「旦那もありがとうな」 「おう、おやすみ」
ガラガラ、という音と共に三日月亭の扉が閉まる。 店の前に残ったのは、俺と勇魚さんの二人だけ。
「じゃ、帰るか。裕」 「ええ、帰りましょうか。旦那様」 「おっ・・・。へへ、そう言われるのも悪くねえな」 「嫌味のつもりだったんだけどなァ」
そう言って俺と勇魚さんは笑いながら屋敷への帰路につくのであった。
後日―
三日月亭に買い物に来た俺を見るなり、店長が頭を下げてきた。
「裕、頼む・・・助けてくれ・・・」 「ど、どうしたんです店長。随分疲れきってますけど・・・」 「いや、それがな・・・」
あの3日間の後、事あるごとに常連客から俺は居ないのかと聞かれるようになったそうな。 俺がまだ島にいるのも事実なので連れて来るのは不可能だとも言えず。 更に井灘さんがちょくちょく仲間漁師を連れて来るらしく、『姿が見えない料理上手な可愛い店員』の話だけが独り歩きしてるらしい。 最近では聞かれ過ぎて返す言葉すら億劫になってきているそうな。 ぐったりした様子から、相当疲弊しているのがわかる。
「な、裕。頼む後生だ。俺を助けると思って・・・」 「ええ・・・」
それから。 たまーに勇魚さん同伴で三日月亭にバイトに行く日ができました。
更に後日。
勇魚さんと一緒に『網絡め』という儀式をすることになり、勇海さんに見られながら致すというしこたま恥ずかしいプレイで羞恥死しそうな思いをしたことをここに記録しておきます。
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06250159
今となっては人が辿り着けない、忘れ去られた森の奥に、古びた洋館は佇んでいた。
夜には人間ではないものたちの舞踏会。
ひとりでに鳴り響くピアノの音に合わせて、魑魅魍魎は舞い踊る。
それを壁に寄りかかって楽しげに眺めていた男が、ふらりと宴に近づきピアノに触れる。その瞬間、ピアノはポロン、と和音を鳴らし、まるで尻尾を振ってじゃれつく犬のようにポロン、ポロンと楽しげな音を奏でた。
「そろそろ調律が必要だね、ピアノくん。」
ある者は体液を、ある者は魂を、そしてある者は全てを忘れられる魔法の粉を撒き散らしながら、魑魅魍魎は宴に酔いしれる。
その時、騒々しい音を立てて洋館の扉が開かれた。音の正体は何かに躓き派手に転んだらしい。驚いた魑魅魍魎たちが逃げ惑い、さっきまで上品な舞踏会を催していた洋館が、まるでお祭り。どんちゃん騒ぎ。
収集のつかない面々に呆れ顔の男。駆け寄り抱きついた騒がしい男が、太陽のような眩しい笑顔と歯を見せて笑う。
「ただいま!おそくなっちゃった!」
「......もう少し静かに入れないのかな、此岸。おかえり。」
「へへ、ごめんごめん、彼岸くん。ゆかがわれてたよ。なおさなきゃ。」
「そろそろ慣れてくれないと、君が来るたびに皆が驚くよ。」
「はは、だよね。ごめんねー、みんな。」
二人が揃ったのを見て、魑魅魍魎たちは散り散りに自らの住処へと帰っていく。ごめんねー、騒がしかったねー、と声をかける此岸を見ながら、場の温度が冷めていく。後に残すのは静寂のみ。呆気ないものだ。いつもこうして全てが終わった後は、酷く寂しい、心に穴が開いたような感覚になる。
どちゃり、と買い物をしたらしい此岸が戦利品を机に置き、遊び盛りの子供のようにソファーに飛び乗って雪崩れ込む。そこはさっきまで首無しの騎士が踊り狂って倒れ込み鮮血を撒き散らしていた場所だったが、どうせ汚れても洗濯するのは僕だ。と開き直って黙っておいた。
「はぁ、つっかれたぁ。まちってほんと、とおすぎだよね。」
「随分遅かったね。今日はどこで遊んでいたんだい?」
「いろんなとこにおでかけしてきたよ。ほらみて。おさいふすっからかん!」
「......此岸くん。」
「はい。」
「僕が今朝、街に行って買い物がしたい!と強請る君に渡したお金はいくらだったか覚えているかな?」
「えーーーー...っとぉ......かみがごまい、だから、ごせんえん?」
「...此岸。あれは諭吉だ。英世じゃない。君が持って行ったのは5万円だ。」
「あー。」
「あー。じゃないよ君。...まぁ、仕方がないか。こうなることは概ね予測済みだったから。で、何を���ったのかな。」
気まずそうに彼岸の顔を見ながらも、戦利品を早く見せびらかしたかったらしい此岸が、紙袋やらビニール袋やら机に投げ出していたあれそれを開封し並べていく。その楽しげな顔に毒気を抜かれた彼岸は、ため息を吐いて彼の前へと座り、広げられる品物の数々を手に取っては、釣られて笑った。
「これは?」
「かいだんでころがすにじいろのおもちゃ!」
「これは?」
「か��こいいりょうりどうぐだよ。かなものやさんでかったの。おにくをやくまえにたたくものなんだって!」
「もうあるんだけどなぁ。肉叩きなら。」
「えへへ。とげとげつよそうでしょ?」
「これは?」
「きんぎょ!こっちには、きんぎょばちもあるよ。えさも!これね、くろくてめがでてるのがぼくで、しろくてきれいなのが彼岸くん。」
「いいな。名前は?」
「しーちゃんと、ひーちゃん!」
「覚え易くて良い。採用。」
「あとね、これ。彼岸くんがすきっていってた、はなだよ。」
「...あぁ、アングレカムか。母に似て、好きな花だよ。よく覚えてたね。この子は日向が好きだから、枯らさないよう日に当ててやらないとね。」
「なんだかいいにおいがする、とおもって。ぼくちゃんとおみずやるね!」
ふんすふんす、と鼻息を荒げまるで褒美を待つ犬のような此岸の頭を撫で、彼岸はさて、と場を仕切り直した。それは、冒頭からずっと気になっていたことを、指摘すべきかと考えあぐねているうちに此岸のペースに取り込まれていたからだった。
「で。今日は何を連れ帰ったのかな。」
「なんのこと?」
「...君のせいで、僕は血塗れだよ。お気に入りのシャツが真っ赤だ。」
「あー...あは、だよね。ごめんね。すてきなかぞくをつれてきたんだ。といっても、ひとりはかけちゃったんだけど...」
「おや、お客様だったか。なら、おもてなししなきゃいけないね。支度しようか、此岸。」
「はぁい!」
後頭部に鋭い痛みが走ったところまでは覚えていた。が、目を覚ました場所は見知らぬ洋館らしき古い建物。ここがどこで、何月何日の何時なのかも全く分からない。口には猿轡、手足には指錠が掛けられていて、身悶えすることしか出来ない。が、身悶えした瞬間、足首に激痛が走り一瞬息が出来なくなる。足をやられた、と脳内で舌打ちを漏らし、あたりを見回せば傍らには横たわる妻と、そして娘がいた。もう一人の娘はどこに。襲われる直前まで一緒にいたはずだ。とコンクリートが剥き出しの床に頬を擦り付け周りを見回していると、古い扉がギィ、と軋んで開く。
「ほら、おきゃくさんだよ!」
「縛り上げて口枷まで。あぁ、血が滲んでるよ。全く...手口が雑だな。」
「ごめんって。だってあばれるんだもん。」
「そりゃ暴れるだろう。いきなり街中で拉致されるんだから。」
軽口を叩きながら部屋に入って来たのは、小柄で細身な色白の男と、その男よりも背が高く、健康的な身体に笑顔を浮かべた男。神経質そうな細身の男が我々を見て顔をしかめ、心配そうに私の顔を撫でた。気味が悪く避けるように身体をしならせ避ければ、しゅん、と困った顔をして顔を覗き込まれる。異常だ。まるで意味が分からない。
「とりあえず、おはなししないとね!彼岸くん!」
「そうだね。此岸。さぁ、いらっしゃいませ、お客様。」
彼岸、と呼ばれた男が私の後頭部へ手を回し、猿轡代わりに口に詰め込まれ固定されていたタオルを取った。肺に流れ込む新鮮な空気を目一杯吸い込んですることなど、一つしかない。
「っ 、ゲホ...誰か!誰か!!助けてくれ!!!!!」
「うわぁーうるさい!うるさい〜!」
「紳士、お静かに。ここは山奥の洋館。呼んでも誰も来ませんよ。」
「誰か!いないのか!助けてくれ!!!誰か!!!!」
「うるさいっていってるじゃんか!もう!」
髪をグシャリと掻き回して癇癪を起こす子供のように叫んだ此岸、と呼ばれた男が手に持っていた火かき棒を思い切り私の頭に振りかざした。その瞬間、鋭い熱さと、そして世界が揺れる気持ち悪さで目が眩む。振りかぶって頭の左側面を殴られた。耳が酷く熱い。
「コラ!此岸!」
「うぇぇ、ごめんなさぁい...だって、ぼくのみみ、いたくなっちゃうから...」
「すまないね。耳が切れてしまったみたいだ...。止血するから、大人しくしていてください。」
私の隣に蹲み込んだ彼岸がポケットから出した柔らかなハンカチで私の耳あたりを押さえ、「救急箱持って来てくれるかな、此岸くん。」と指示する。脱兎の如く駆け出した此岸を目で追えば、傷の様子を見ていた彼岸にくすくすと横で笑われた。
「可愛らしいでしょう、彼。子供なんですよ。」
「...どう見てもただの、大人の男じゃないか。なんなんだ、ここは。アンタは誰だ。目的はなんなんだ。」
「此岸が連れ帰って来てしまった、と聞いています。心中お察しします。」
「聞いてるのかお前、おい!」
「全く、ゴルフじゃあるまいし、火かき棒を振りかぶるなんて。」
「彼岸くん!もってきたよ〜!」
「ありがとう。」
さて、と、先ほど投げ捨てたタオルを拾い上げた彼岸が、私の口にそれを突っ込み直す。そして、救急箱の中から恐らく医療用の針と糸を取り出し、そしてにこりと気持ちの悪い笑みを浮かべた。
生きながら麻酔なしで耳を縫われる、その感覚は二度と味わいたくものだと、焼き切れそうな思考の中でどこか冷静な私が懐古していた。強張った手足の感覚はもう既に無い。
永遠とも感じ取れる時間の中、終わったよ、という声がどこか遠いところからモヤがかかったように聞こえる。目を開けば、優しそうな笑みを浮かべた彼岸が私の頭を撫で、よく頑張りましたね。と私を褒めている。
「うまいなぁ、さすが彼岸くん!」
「全く、君は火かき棒の使い方が分かってないな。そもそも人に振るうものじゃないし、何のためにここに板がついてると思う?」
「...あぁ、そういうことか!ぼくりかいした!じっせんしていい?」
「また余計なことを思いついたな。此岸。全く...。」
「よーしじっせん!こうでしょ!彼岸くん!!!」
声を発せない状況のまま、此岸が先ほど私の頭めがけて振りかぶった姿とはまた違う、上からストンと振り落とすような仕草で火かき棒を、妻と、そして娘の頭に下ろした。ぐちゃ、と鈍く聞こえたその音で、目の前が怒りにより真っ赤に染まった。びくん!と身体を震わせた妻と娘が目を覚まし、そして光景を見て、痛みに喉から搾り出された金切り声で絶叫する。
「ねぇ彼岸くん、ぼくじょうずにできた?」
「...そうだね、とても綺麗で鮮やかだった。で、誰が治療すると思ってるのかな?此岸くん?」
「��っ...」
「罰として明日の洗濯係は君だ。」
「ちぇっ...でも、てつだってくれるんでしょ?」
「...君に任せていたら、また蝶々やらバッタやらを追いかけて終わらないからね。」
「へへ、やさしいなぁ。ありがと!」
手慣れた様子で妻と娘の耳を止血し、火かき棒がざっくりと切り落とした耳を此岸へと手渡す彼岸の様子に、血の気がザザ...と失せていく音が聞こえた。私達は、来てはいけないところへ来てしまった。連れてこられてしまった。
「さ、皆様が落ち着いたところで、本題に入ろうか。此岸。」
「そうだね、彼岸くん。」
私達の体を起こさせ、壁に持たれさせるようにして座らされる。猿轡は外されたが、叫ぶのが無駄だと実感した3人は黙ったまま、ゲス野郎達を睨んでいる。目の前に置かれたアンティークの椅子に座った2人が顔を見合わせ、まるでパーティーのメニューを決めるかのように軽やかに話し始めた。
「どうやら、此岸くんから見た君達の家族としての姿に何か誤りがあったらしいんです。そこで、君達に、正しい家族の正解を見つけてもらおうと思います。」
「きげんは、えーと、いまがよるのにじだから、あしたのよる、じゅうにじまで!みつけられたら、ぶじただしいかぞくとして、これからもしあわせにくらしてもらうね。」
「彼岸、とか言ったか、お前。」
「はい。何でしょう。」
「もう1人、娘がいたはずだ。どこへやった。」
「あぁ、あのちっさいこ?べつのへやでねてるよ!さっきまで、ぼくとあそんでたんだぁ。」
「......人質から人質を取るなんて、クズだな。」
「あー、ちょっと、彼岸くんのことわるくいわないでよ。」
「此岸。いい。僕が優しいことは、君がよく知っているだろう?」
いきりたつ此岸を制して椅子から立ち上がり、私の目の前へ腰を下ろし、慈愛の目線をもって私を見つめ「大切なお客様なのだから。」と頬を撫でる彼岸。心底気持ちが悪く、強く噛み締めたせいで口の中に溜まった血と唾液を奴の顔へと吐きかけてやった。固まる表情と、彼岸を見て目を見開く此岸の顔。
「ひっ...彼岸くん!」
「はは、大丈夫。大丈夫だよ。明日までゆっくり待って、彼らに正しく生きてもらおう。此岸。」
「うん。かお、きれいにしてあげる。いこう?」
「ありがと。行く。」
閉じられた扉。絶望の音にも聞こえる。正しい家族?そんなもの、それぞれに正解があって然るべきで、そもそも私達は間違った行いをした覚えはない。社会のルールを守り、家族4人で楽しくお出かけしていただけだ。
「あなた...」
「パパ、こわいよ。」
「大丈夫だ。お前達も、あの子も、必ず助ける。」
「うへぇ、つめたーい。」
「温度は仕方がないよ、此岸。ただ、まだ身体は柔らかいだろう。12時間がピークだ、明日の朝ごろにはもう使えなくなってるだろうから、今のうちに楽しんでおきな。」
「うん、たのしむー!へへ、かわいいなぁ、」
ベッドの上に寝かされ、首が雑巾のように捻れた幼女相手に此岸が覆い被さり、意気揚々と腰を振っていた。まるでダンスでも踊っているかのようなその姿に、性的な欲求が生来まるでない彼岸は、命の強さを感じていつも見入ってしまう。
「はぁぁ、やわらかくて、しっとりしてて、きもちいい〜!なんかいでもできそうなきがするよ、彼岸くん!」
「あぁ、楽しめ。存分にな。」
「んんん〜〜ふふ、んふふ、あぁ、あぅ、ぅふふっ」
そっとスマートフォンを取り出し、家族の部屋の監視カメラの映像を覗く。此岸曰く、施錠は勿論彼らのアキレス腱を断っておいたから逃げるのは無理、とのことだった。その言葉通り、彼らは芋虫のように這い回り、そして、時折カメラを睨んでは、顔を突き合わせて何か話し込んでいる。全く、酷いことをする。と、目の前で無邪気に幼女と戯れる此岸を見遣る。壁の時計を見れば、そろそろ眠るべき時間だった。
「僕はそろそろ眠るよ。」
「はぁい!おやすみ、彼岸くん。どうかいいゆめを。」
「叶うことなら醒めない夢を。おやすみ、此岸。」
白濁と血と体液に塗れ、蝋のように強張り白くなった子供を見下ろす。今更何の感情も浮かばないが、唯一、彼岸が嬉しそうにしていたことが嬉しかった、と、此岸は汚れた愚息や身体を拭いながら思い返していた。彼岸は食欲も睡眠欲も、そして性欲も捨てた人間だった。代わりを満たすのが自分であることを、此岸は心から誇りに思っていた。
トン、トン、と家族が監禁された地下の部屋へ向かいながら、此岸は彼岸のことを思っていた。形容することが何もない空っぽの人生を、楽しさと不変で満たしてくれた彼岸に報いたいと思うのは、此岸にとって正しいことであり、それを止められる法もモラルも何もなかった。守るべきは彼岸、そして己の秩序のみ。
キィ、と開いた扉に弾かれたように顔を上げた家族が此岸を睨み付ける。傍らの椅子を引いて座った此岸は、消耗した様子の子供、そしていきり立った両親を見て、チリチリと焼ける胸の音を聞いた。
「幸せな私達がなぜこんな目に、って思ってる?」
「...貴様、さっきの此岸か?別人か?」
「此岸だよ。彼がくれた名前なんだ。覚えてくれてありがとう。」
「気持ち悪い。何なんだ、貴様らは。ホモのお遊びに、私達を巻き込むな!」
「口汚く罵っても、生憎僕らには効かないよ。」
「...目的は何なんだ。」
「彼岸はね、正しいことを正しいと思い続けてきた人なんだ。僕はそれを正しい、と肯定してあげるために、彼の側にいる。」
「何を言ってるのかさっぱり分からんぞ!」
「だろうね。」
「なぁ、逃してくれ、助けてくれ、頼むから。」
「僕にも彼岸にも、逃すメリットがないよ。」
「誰にも言わない、命だけは助けてくれないか、」
「明日答えを見つけたら、助かる。彼岸がそう言ってたでしょ?正しく生きれば必ず報われる。それを証明してあげてよ、彼岸に。」
「さぁ、行こうか。きっと彼らは聡いから、答えを見つけているはずだよ。此岸。」
「うん!彼岸くん、いこー!」
床に垂れ流された排泄物と、微かに血の匂いのするその部屋で3人は転がっていた。バランスを崩して倒れ、起き上がることが出来ないまま期限の12時を迎えたらしい。出したヒントはきっと何も伝わってないんだろうな、と、此岸は今後の行動を頭の中でシュミレートしていた。彼岸が優しい笑顔を浮かべて、彼らを見下ろす。
「さて、正しい答えは見つかったかな?」
「......私達は、共働きで、娘2人を育て、3人目は男の子がいい、と話していた。忙しい時期でも家族と過ごす時間は必ずとった。お出かけだって散歩だって、いつも横並び、皆で手を繋いで進んできた。貴様らの歪んだ正しさなんて、知らない!私達は私達家族として、これからも、皆で幸せに暮らす!これが答えだ!!!」
「...はぁ...はは、そっか、そっかぁ......」
バッドエンド。選択肢を間違えたプレイヤーはどうなるか。幾度となく繰り返したエンドロールを、一からまた見始める此岸の目に映るのは、昨日買ってきた肉叩きを母親に振るう彼岸の後ろ姿だった。
「だから!間違ってるって言ってんだろうが!何が家族だ、何が幸せだ!!お前らの幸せは!!!誰の不幸の上で!!!成り立ってると思ってるんだ!!!そもそも己が幸せだなんて誇らしげに恥ずかしげもなく言い放つその低能さと自惚れ具合の凄まじさに閉口しちゃうよ俺はさぁ。幸せ?はは、笑っちゃうなぁお前らお出かけで電車に乗ってたらしいが皆が皆スマホを見て会話なんて全く交わしてなかったらしいなぁ!それのどこが幸せな家族だ?おかしいだろ幸せなら和気藹々と仲睦まじく電子機器に囚われてないで語り合えよなぁ!ドラマで見たことあるかよ家族が無言でスマホ見てるだけのシーンをさぁ!間違いに気づかず生きてたからこうなったんだお前らは自分たちが間違ってたことを悔いて悔いて悔いて悔いて死ね!死ね死ね!!はははあーーー楽しいなぁ!」
「彼岸くん、」
「お前、安物買ったろ。折れたぞコレ。いつもの寄越せ。」
「へへ、ごめんね。じゅんびしてあるよ!はい、これ。」
こちらを振り向くこともなく彼岸が投げ捨てた肉叩きの柄の部分。折れた重い頭は、恐らく彼岸の前でずたずたのミンチに成り果てた身体のどこかに沈んでいるんだろう。手に持っていた彼愛用のバールを手渡す。
「彼岸くん、ぼく、ごはんつくってくるね!おなかすいちゃうでしょ!」
「あぁ、出てけ。出来たら呼べよ。」
「...うん、ありがとう。」
彼は愛用の道具を握り締め、目の前のミンチとの遊びを再開させた。こうなってしまった彼岸は見ているのが辛い、と、此岸はいつも終わるまでの間は部屋から出ていた。ぱたり、と閉じられた扉の向こうから、穏やかな彼から出たとは到底思えない狂気じみた彼岸の笑い声と、罵倒と、心を絞られそうな叫びが聞こえて、此岸は耳を塞ぎながらその場を離れた。
暫く経ち、肉のスープが完成した此岸が部屋を訪れると、部屋はさっきとは打って変わって一切の静寂に包まれていた。トントン、とノックをし、扉を開ける。返事がなく、鍵が空いている。終わりの印だった。
「此岸...?」
部屋の真ん中で体育座りする彼岸は、何時にも増して小さく見える。彼岸の後ろには赤をベースに構成されたなんらかの塊が飛び散り、固まり、前衛的な芸術のようにも見える100キロ超の肉が散乱している。震える手に握られたバールはひん曲がり、彼の手に血が滲んでいた。早く手当てをしてやらないと。
「彼岸くん、おかえり。ゆめはどうだった?」
「夢...よく、分からない、けど...悲しくて、嫌な気持ちになる、夢だった。」
「そうだね、まちがったゆめだよ。ぼくらのただしいゆめは、いつみられるんだろうね。」
「分からない、怖いよ、此岸...」
「だいじょうぶ。そうだ、きのうかってきたおはながひとつさいたんだよ!」
アングレカム。繊細な彼の正気を保つためのアイテム。花が咲く姿を見る度、「首を吊った母の姿に似ている。」と笑っていた。
「みにいこう!ぼく、ひさしぶりに、彼岸くんのえがみたいなぁ!!」
「此岸、また笑うだろう。僕は絵が下手なのに、描かせようとするのは何故なんだ。」
「みたままかこうってがんばるきもちがね、すきなの!だからほら、おそとであさごはんたべよ?そのあとふたりで、おへやのおかたづけするの!」
「あぁ...うん、そうしよう。」
朝ごはん。壁の時計はもう朝の7時を指していた。今日の舞踏会はとっくにお開きになっていただろう。
魑魅魍魎が夜な夜な集まるこの洋館。頼りない此岸だけじゃ、管理どころか存在を認知することすら難しいだろう。
今日は此岸と共に、舞踏会で自分達が舞うのもいいかもしれない。と、彼岸は立ち上がり、るんるんと楽しそうな此岸の後に続いて、部屋を出た。
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土呂久鉱害事件に関する覚書
(2002年1月22日成稿)
土呂久鉱害事件に関する覚書
宮崎県高千穂町の土呂久鉱山における亜砒酸製造に伴う慢性砒素中毒症は、大正期から戦後に至る長期にわたって継続した鉱害であったにもかかわらず、被害地域が僻遠の山村であったため長らくその存在が知られず、鉱山の閉山から10年近くたってから地元の教師の告発によって実態が初めて認知された特異な公害である。慢性砒素中毒症が4大公害病に続く指定公害病でありながら、現在あまり顧みられることが少ないことも考慮し、本稿では土呂久鉱害の経過を追うことで、近代日本社会の「闇」の一端に切り込みたい。
(1)土呂久鉱山の成立(1920-1933) 宮崎県岩戸村(現・高千穂町)の土呂久鉱山は、貞享年間(1684-1687)に銀山としてスタートしたものの、近代に入ってからは事実上休山状態であった。しかし、1920年、当時佐伯近郊の木浦鉱山で亜砒酸製造を行っていた鉱山師の宮城正一が土呂久鉱山から亜砒鉄鉱を採掘し、土呂久で亜砒酸の精錬を開始したことで一変した。日本の亜砒酸生産は第1次世界大戦期にドイツに代わる形で急成長し、主にアメリカに輸出されて綿花栽培の害虫駆除剤の原料などに使われていた。ところで、宮城が港町で交通の利便な佐伯から山間の土呂久へ移ったのには理由があった。地方紙『佐伯新聞』1917年4月29日付に次のような記事がある。
「懸案となり居りし当町字灘鳥越にある亜砒酸製造所の煙毒問題は今回所主宮城正一が農民に対して損害賠償をなし且つ製造所を移転する事となり、兎も角も一段落を告げるに至った」
宮城は煙害により地元住民から補償と立ち退きを要求されていたのである。つまり宮城は佐伯を追われ、亜砒酸製造が甚大な鉱害をもたらすことを知りながら土呂久へ移転したのであった。
亜砒酸は昇華点の193℃を境にして固体から気体へ、気体から固体へ変化する。この性質を利用し、亜砒鉄鋼を焙焼して砒素分を亜砒酸ガスとして流出させ、ガスを昇華点以下の空間に導き固体に戻して亜砒酸の結晶を採取する。当時、亜砒酸生産量全国一の足尾銅山では、銅の精錬の際に煙に含まれる亜砒酸をコットレル集塵器で回収する方法が採られていたが、土呂久にはそのような設備はなく、煙突に藁の覆いを被せるだけで、砒素を空気中に撒き散らし放題であった。そのため早くも1923年には亜砒酸による農業被害が地元で問題にあった。5月に行われた土呂久の部落自治組織「和合会」総会は鉱山側に「完全ナル設備ヲナシ事業ヲナサレン事」を要求することを決した。これに対し、宮城に代わって経営者となっていた川田平三郎は、1ヵ月50円の「交付金」を和合会に支払うことに応じたが、その見返りとして鉱山へ操業に必要な材料を提供することを求めた。鉱山側は要求��逆手にとったのである。
その後鉱害は甚だしくなり、特に牛馬の奇病が相次いだ。1925年、和合会は岩戸村長の甲斐徳次郎に対策を要求し、甲斐は西臼杵郡畜産組合の獣医である池田実と鈴木日恵に奇病で死んだ牛の解剖と鉱害の調査を依頼した。4月7日、鈴木は警察官立ち会いのもと解剖を行い、「連続セル有害物ノ中毒ニアラサルヤノ疑ヲ深カラシムルモノナリ」との所見を示した。甲斐はこの牛の内臓を宮崎県警察部衛生課に持参し、鑑定を依頼したが、県側は解剖後に内蔵へ亜砒酸が混入した可能性を理由に鉱害を否定し、現地調査を行ったものの調査結果を隠蔽した。一方、池田は「岩戸村土呂久放牧場及土呂久亜砒酸鉱山ヲ見テ」と題する報告をまとめた。池田報告は当時の土呂久の実状を生々しく伝えている。
「二、三十年モ経過シタ植林ノ杉ガ萎縮シテ成長ガ止リ、或ハ枯死シテ赤葉味又竹林ハ殆ンド枯死シ」 「妙齢ノ婦女ノ声ハ塩枯声デ顔色如何ニモ蒼白デアル、久敷出稼デ居ル人ノ顔面ハ恰モ天刑��患者ノ様ニ浮腫」 「山川ノ水ハ清ク澄ミ渡ッテ居ルガ、川中ノ石ハ赤色ニ汚レテ、三年前迄居タ魚類ハ今ハ一尾モ見ヘヌ」 「今ハ椎茸ノ発生デ忙シカラネバナラヌノニ、何ノ果報カ、此地ノ重要物産デアル椎茸ノ原木ヲミレバ、椎茸一ツ見ヘヌ。土呂久名物ノ蜂蜜モ、今ハ穴巣ヲ止ムルノミ」 「小鳥類ガ畑ノ中ニ死ンデ落チテ居ル事ハ年中ノ事で、何時デモ死ンダ小鳥ヲ畑ノ中ヨリ拾ッテ見セル事ガ出来ル」
この池田報告は1972年に高千穂町史編纂室で発見されるまで封殺された。
鉱害が拡大・悪化するに従い、農業では生計を立てられなくなった人々は鉱山で働くようになった。しかし、亜砒酸による健康被害は鉱山労働者に最も顕著であり、皮膚の亜砒負け、色素沈着、黒皮症、角膜炎、結膜炎、喘息、気管支炎、肝硬変などの症状に見舞われた。健康悪化に耐えられずに鉱山を辞め帰農する人も少なくなかったが、農業被害は増大するばかりで生活できず、結局収入を得るために再び鉱山に戻らざるをえなかった。あるいは椎茸の生えなくなった木を木材として鉱山に売却したり、完全に農業ができなくなった土地を鉱山に売却するという例もあった。鉱害はむしろ鉱山の事業を拡大する動因になったのである。
また被害と加害の重層性も深刻であった。鉱山の地主であった佐藤喜右衛門は鉱山から地代を得るのみならず、自ら採掘を請け負い、地元住民を労働者として勧誘し、鉱害に苦しむ農民からは加害者として忌避された。しかし、一方で彼は鉱山のすぐ近くに住んでいたために砒素中毒症に罹り、1930年から32年の2年間に彼の一家7人のうち自身を含む5人が病死した。部落で鉱山から収益を受ける者が増えるに従い、鉱害反対の足並みは崩れていった。
(2)土呂久鉱山の展開と終焉(1933-1962) 大戦景気によって始動した亜砒酸製造は、戦後不況によって急速に不振になった。1926年にはアメリカの綿花不況のあおりで生産量が激減し、土呂久鉱山も生産中止・事業縮小に追い込まれた。一方、1930年代になると、航空機の材料の国産化をねらう中島飛行機が錫を求めて土呂久に目をつけた。1931年、中島門吉(中島知久平の弟)が一部の鉱業権を獲得し、33年には中島商事鉱山部が土呂久鉱山のすべての経営権を取得した(後に岩戸鉱山株式会社設立)。
中島は当初亜砒酸よりも錫を重視し、1936年に錫精錬の反射炉を建設したが、この反射炉は錫から分離された砒素分が煙とともに空気中に飛散するという杜撰な代物であった。翌年、和合会は反射炉の煙害防止を鉱山側に要求し、その結果遊煙タンクが作られたが、煙害対策とは名ばかりで、実際はこれを利用して亜砒酸の採取が行われたため、鉱害はむしろ悪化した。また、経営者が変わったことにより1923年の交付金契約は無効となり、中島が和合会に亜砒酸1箱精製につき12銭の補償金を支払う新契約が結ばれたが、旧契約に比べて被害者が受け取る金額は事実上半減し、しかも補償金の分配を巡り和合会内部で対立が発生した。さらに1937年の岩戸村会議員選挙で、中島側は鉱山の会計係長を出馬させ、鉱山労働者を買収した結果、中島系候補が当選し、和合会系の現職は落選した。明治以来、土呂久出身者が議席を失ったのは初めてであった。鉱山は地方自治をも破壊したのである。
中島傘下となって土呂久鉱山は拡大し、最盛期には約400人の労働者が働いた。特に1930年代末頃から亜砒酸は毒ガスの原料として需要が急増した。「黄二号」ことルイサイト、「赤一号」ことジフェニール・シアン・アルシンが亜砒酸を元に作られ中国戦線に送られた。深まる亜砒酸鉱害に対し、ついに1941年和合会は鉱山との契約破棄を決定した。福岡鉱山監督局は和合会に説明を求め、代表6名が福岡へ行き亜砒酸製造の中止を申請したが、監督局の担当者は「非常時には、部落のひとつやふたつつぶれても鉱山が残ればよい」と言い放ったという。結局1941年11月選鉱場の火災により土呂久鉱山は休山し、所有権も中島から国策会社へ移行した。
土呂久鉱山は戦後1948年、銅や鉛などの採掘を再開した。再び鉱業権を獲得した中島鉱山(旧岩戸鉱山)は亜砒酸製造の再開を計画した。和合会は再開反対を決議したが、宮崎県と岩戸村の斡旋により、1954年、鉱山から和合会への協力金支払を条件に改良焙焼炉建設に同意した。土呂久婦人会は岩戸村に抗議したが、村長伊木竹喜は「鉱山のおかげで、岩戸村には鉱産税がはいりよる」と取り合わなかったという。
鉱山がその後、1958年7月の坑内出水事故により一時休山を余儀なくされ、翌年には住友金属鉱山が中島を事実上買収したが、往時の活性を取り戻すことができず、1962年経営不振により閉山した。その間も鉱害は続き、1959年には和合会が高千穂町(岩戸村吸収)に亜砒酸製造施設の廃止を陳情した。しかし、ついに閉山まで鉱害はやむことがなかった。
(3)土呂久鉱害の告発(1970- ) 1970年、宮崎県高城町の四家鉱山で集中豪雨により鉱滓堆積場のダムが決壊し、砒素を含む鉱毒が河川へ流出するという事故が起き、宮崎県は急遽県内の休廃止鉱山の調査を行った。調査の結果、土呂久川から飲料水基準の2倍の砒素が検出された。同年12月、土呂久在住の佐藤鶴江は、岐阜のカドミウム汚染の報道を聞いて不安を抱き、宮崎地方法務局高千穂支局の人権相談に鉱毒被害を訴えた。支局は土呂久鉱山跡を調査し、彼女に鉱毒被害の事実申立書を発行したが、法務局は専門医による因果関係の証明がないことを理由に申立書を留置した。またしても行政によって鉱害は隠蔽されたのである。
一方、高千穂町立岩戸小学校教諭の斎藤正健は、妻が土呂久出身であったことから鉱害の事実を知り、同僚とともに土呂久全世帯を対象に鉱害調査を行った。斎藤らの調査は1971年11月、宮崎県教職員組合の教研集会で報告され、新聞報道により全国的に注目された。斎藤報告は、①1913-1971年に死亡した92名の平均寿命は39歳である、②土呂久全住民の34%が呼吸器をはじめ疾患に罹っている、③土呂久の児童の体位は劣っている上に眼病が目立つ、④スギの年輪は鉱山創業期に生長が阻害されている、という驚くべき内容であった。大正期以来の鉱害がこの時はじめて公表されたのである。
土呂久住民に不安が高まる中、宮崎県は県医師会に委託して住民の一斉健康診断を実施したが、慢性砒素中毒症に認定されたのは7名だけで、県の土呂久地区社会医学的専門委員会も健康被害と亜砒酸製造との関係性を「現在の知見では十分に説明ができない」と肯定しなかった。宮崎県知事黒木博は住友金属鉱山と認定患者に補償斡旋を提案し、1972年12月、両者間に補償協定が結ばれたが、住友の法的責任には一切触れず、補償金額は平均240万円にとどまり、しかも将来の請求権放棄を定めていた。県側は患者との交渉を外部との接触を絶った密室で行い、十分な説明をしないまま患者に調印を強要した。その後、黒木は新たな認定患者に対しても同じ内容の補償斡旋を5次にわたって続けた。しかも県は斡旋受諾者に対して公害健康被害補償法による給付を含む公的給付を中止するという「いやがらせ」まで行った。知事斡旋は補償額を抑制し、被害者の口を封じることがねらいであった。
1973年、環境庁は慢性砒素中毒症を第4の公害病に指定したが、認定要件を皮膚障害に限定し、内臓疾患を認めなかったため、多くの被害者が認定されなかった。一方でこの頃から県外の医師による自主検診が相次いだ。同年2月には名古屋大学医学部講師大橋邦和が、74年には太田武夫ら岡山大学医学部衛生学教室が、75年5月には熊本大学体質医学研究所の堀田宣之が住民への自主検診を行った。堀田は10月にも同僚の原田正純らとともに1週間にわたる大規模な自主検診を行った。これらの検診結果は環境庁の認定要件とは裏腹に、砒素中毒による障害が皮膚に限らず、呼吸器や循環器などの内臓にまで広がっていることを示していた。
1975年12月、5人の患者と1遺族が住友金属に損害賠償を求め宮崎地裁延岡支部に提訴した(第1次訴訟)。続く76年11月には第2次、77年12月には第3次、78年3月には第4次の訴訟が起こった。土呂久訴訟最大の問題は、1次的に賠償責任を有する鉱山師も中島鉱山もすでに存在せず、被告の住友が正式に鉱業権を得たのが閉山後の1967年で、住友自体は亜砒酸製造を行っていないことにあった。住友側は全面的に争い、訴訟は長期化し、高齢の原告が相次いで死亡していった。1984年3月に下された第1次訴訟の1審判決は「土呂久地区という山間の狭隘な一地域社会が、そのただ中ともいえる場所での本件鉱山操業により、大気、水、土壌のすべてにわたって砒素汚染され、本件被害者らはその中で居住、生活することにより、長期間にわたって四六時中間断なく、且つ経気道、経口、経皮、複合的に砒素曝露を受けたもので」あると土呂久鉱害を正確に認め、鉱業不実施を以って鉱業権者の賠償責任は免責されず、鉱業法115条の時効規定も適用されないことを理由に住友へ損害賠償を命じる画期的な内容であった。
しかし、この1審判決をピークに土呂久鉱害は急速に風化していった。既に1980年頃には被害者の支援組織「土呂久・松尾等鉱害の被害者を守る会」が財政難による活動停滞に陥っていた。また、支援運動の中心であった総評系労組が「反公害」から「反原発」へシフトしつつあり土呂久鉱害への関心は相対的に���下した。1979年、補償斡旋を続けた黒木が受託収賄容疑で逮捕され知事を辞職し、翌年、後継知事松形祐尭は公害認定を巡る行政不服審査で県が敗訴したのを機に被害者へ公式に謝罪したが、依然として知事斡旋受諾者への公健法給付を認めなかった。一方、訴訟は住友の控訴により続き、1988年の控訴審判決は住友の賠償責任を認めたものの、補償額から公健法給付を差し引くよう命じる後退したものだった。住友はさらに上告したため、原告弁護団はついに水面下の和解交渉を行った。原告の高齢化と最高裁の状況を踏まえた苦渋の判断であった。1990年10月最高裁で原告と被告の一括和解が成立したが、住友の法的責任には触れず、賠償義務を否定し、公健法給付とは別に「見舞金」総額4億6475万円(1審判決の仮執行金と同額)を支払うという内容だった。1審判決も控訴審判決も被告の法的責任を認定したにもかかわらず、原告は訴訟の長期化に耐えることができずに訴訟自体には敗北したといえよう。
(4)総括 土呂久鉱山は、日本経済の工業化が急速に進展した第1次世界大戦期に始まり、戦間期の停滞を挟んで、15年戦争期には新興財閥の手で重化学工業の一端を担わされ、そして高度経済成長の開始により終焉した。その歴史は終始日本資本主義の発展過程に強く制約されたと言えよう。故に土呂久鉱害事件は局地的な鉱害ではあるものの、鉱山の杜撰な鉱害対策、鉱山への抵抗と依存の間で揺れる地域社会、一貫して公害の存在を隠蔽し民衆の声を潰した行政、公害反対運動の党派的分裂等々、近代日本の鉱害の一般的特筆を余すところなく有している。そしてついに根本的解決には至らず、現在も土呂久の自然が回復していないことは、鉱害が過去の問題ではなく、依然として現在的問題であることを示していよう。
《引用・参照文献》 斎藤正健「土呂久公害の告発とその後」Ⅰ-Ⅲ 『歴史地理教育』211、212、214号 1973年 川原一之『口伝 亜砒焼き谷』岩波書店 1980年 川原一之「土呂久鉱毒史」『田中正造と足尾鉱毒事件研究』5号 1982年 土呂久を記録する会編『記録・土呂久』本多企画 1993年
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妹のために、妹のために、妹のために。(推敲中)
ふたなり怪力娘もの。血なまぐさいので注意。
扠、ここはある民家の一室、凡そ八畳程の広さの中に机が二つ、二段ベッドが一つ、その他本棚や観葉植物などが置いてある、言つてしまえば普通の部屋に男が二人顔を突き合はせ何やらヒソヒソと、いや、別に小声で話してゐるわけではないのであるが何者かに気づかれないよう静かに話し合つてゐる。一人は少し痩せ型の、黒い髪の毛に黒い縁のメガネが聡明な印象を与へる、如何にも生真面目さうな好青年で、もう一人は少し恰幅の良い、短く切られた髪の毛に色の濃い肌が健康な印象を与へる、如何にも運動が得意さうな好青年である。前者の名は那央と言ひ、後者の名は詩乃と言ふ、見た目も性格の型も違えど同じ高校に通つてゐる仲の良い兄弟である。二人の間にはノートの切れ端と思しきメモと、丁度半月ほど前に買つた十キロのダンベルが、そのシャフトを「く」の字に曲げ事切れたやうにして床に寝そべつてゐた。
何故メモがあるのか、何故ダンベルのシャフトが「く」の字に曲がつてゐるのか、何故二人の兄弟がそれらを囲んで真剣な話し合ひをしてゐるのか、その説明をするにはもう一つ紹介しておかねばならぬ事があるのであるが、恐らく大層な話を聞かずとも直ぐに状況を何となく分かつて頂けるであらう。其れと云ふのも二人にはもう一人血を同じくする、一五〇センチに満たぬ身の丈に、ぷにぷにとした餅のやうな頬、風でさらさらと棚引き陽の光をあちこちに返す黒い髪、触つた此方が溶け落ちるほど柔らかな肌、此れからの成長を予感させる胸の膨らみ、長いまつ毛に真珠を嵌めたやうな黒目を持った、--------少々変はつてゐる所と言へば女性なのに男性器が付いてゐるくらゐの、非常に可愛らしい中学一年生の妹が居るのである。名前は心百合と言ふ。成る程、ふたなりの妹が居るなら話は早い、メモもダンベルも話し合ひも、全てこの妹が原因であらう。実際、メモにはやたら達筆な字でかうあつた。-----------
前々から言ってきたけど、こんな軽いウェイトでやっても意味が無いと思うから、使わないように。次はちゃんと、最低でも一〇〇キロはあるダンベルを買ってください。私も力加減の練習がしたいのでお願いします。曲げたのは直すので、これを読んだら持ってきてください。
あと全部解き終わったので、先週から借りてた那央にぃの数学の問題集を返しました。机の上に置いてあります。全然手応えが無かったから、ちょっと優しすぎると思います。新しく買ったらまた言ってください。
心百合より
このメモは「く」の字に曲がつたシャフトの丁度折り目に置かれてあつて、凡そ午前九時に起床した詩乃がまず最初に見つけ、其の時は寝ぼけてゐたせいもありダンベルの惨状に気を取られメモを読まないまま、折角値の張る買ひ物をしたのにどうして、一体何が起きてこんなことに、…………と悲嘆に暮れてゐたのであるが、そんな簡単に風で飛ぶような物でも無いし、それに落ちたとしても直径二センチ以上ある金属がさう易易と曲がるわけでも無いから何者かが手を加えたに違ひ無く、自然と犯人の顔が思ひ浮かんでくるのであつた。わざわざ此れを言ひたいがためにダンベルを使ひ物にならなくしたのか。俺たちにとつては一〇キロでもそこそこ重さを感じると云ふのに、一〇〇キロなんて持ち上げられるわけが無い、しかもその一〇〇キロも、"最低でも"だとか、"力加減"だとか書かれてゐるので妹はもつと重いダンベルを御所望であるのか。確かにふたなりからすると、一〇〇キロも二〇〇キロも軽いと感じるだらうが、此れは俺たちが自分の体を鍛えるための道具であるからそつとしておいて欲しい。さう彼は文句を言ひたくなるものの、未だ中学一年生とは言へ、本来車でも打つから無ければ曲がるはずも無いシャフトを綺麗に曲げてしまつたと云ふ事実に、ただひたすら恐怖を感じ震える手でこめかみあたりに垂れてきた冷ややかな汗を拭ふのであつた。
一体全体、ふたなりの女の子は力が強いのである。そして其れは心百合も例外では無く、生まれて間もない時から異常な怪力ぶりを発揮してきた。例へば此れはある日の朝のことであつたか、彼ら彼女の父親が出勤しようとしてガレージのシャッターを開けると、何の恥ずかしげもなく無断駐車してゐる車の、後ろ数十センチが見えてゐたことがあつた。幸ひにも丁度車一台分通れるくらゐの隙間はあるし、其れに父親の向かふ方向とは逆の位置にあつたので、何とか避けて車を出せさうではあつたのであるが、如何せん狭いガレージと、狭い通りと、幅のある車であるから、ふとした拍子で擦つてしまふかもしれない。かと言つて警察やらレッカーやらを呼ぶ時間も手間も勿体無い。仕方が無いので父親は、当時十四歳であつた那央と、当時十二歳であつた詩乃を呼び出して、ほんの数センチでも良いからこの車を向かふ側へ押せないかと、提案して自身も全身を奮ひ立たせたのであるが当然の如く動く気配は無かつた。ならばせめて角度だけでもつけようと思ひ、三人で掛け声をかけ少しでも摩擦を減らさうと車の後ろ半分を浮かせようと頑張つたものの、此れまた持ち上がる気配も無くたつた数秒程度で皆バテてしまつた。さうして諦めた父親は携帯を取り出し、諦めた二人の兄弟は数歩離れたところにある壁に凭れ、こんなん無理やろ、何が入つてんねん、と那央が言つたのをきつかけに談笑し始めた丁度其の時、登校しようと玄関から出てきた心百合が近寄つてきて、どうしたの? さつきから何やつてたの? と声をかけてきた。そこで詩乃が其の頭を撫でながら事情を説明して、ま、無理なものは無理だし、今日こそ親父は遅刻するかもな、と笑ひながら言ふと心百合は、
「んー、………じゃあ私がやってみてもいい?」
と言ひながらランドセルを那央に押し付け、唖然とする兄たちを余所に例の車へ向かつて行く。そしてトランクにまでたどり着くと、屈んで持ち易く力の入れ易い箇所を探しだす。----------当時彼女は小学三年生、僅か九歳である。自分の背丈と同じくらゐの高さの車を持ち上げようと、九歳の女の子がトランクの下を漁つてゐるのである。流石に兄たちも其の様子を黙つて見てゐられなくなり駆け寄つて、ついでに電話を掛けてゐる最中の父親も駆け付けて来て、結局左から順に父親、心百合、詩乃、那央の並びでもう一度車と相対することになつたのであるが、那央が、せえの! と声を掛け皆で一斉に力を入れる前に、よつと、と云ふ可愛らしい声が車の周りに小さく響いた。かと思ひきや次の瞬間には、グググ、と車体が浮き上がりたうたう後輪が地面から離れ初め、男たちが顔を見合はせ何が起きてゐるのか理解するうちに、一〇センチ、一五センチは持ち上がつてしまつた。男たちのどよめきを聞きながら、心百合は未だ六割程度しか力を入れてゐないことに少しばかり拍子抜けして、これならと思ひ、
「お父さんも、お兄ちゃんたちも、もう大丈夫だから手を離していいよ」
と言ふと、片手を離しひらひらと振り、余裕である旨を大して役に立つてゐない他の皆に伝え背筋を伸ばした。
「それで、これどうしたらいいの?」
男たちが恐る恐る手を離し、すつかり一人で車の後部を持ち上げてゐる状態になつた頃、娘が其のやうに聞いて来たので一寸だけ前に寄せてくれたら良いと、父親が答えると心百合は、分かつた、とだけ言つてから、そのまま足を踏み出して前へ進もうとした。すると、初めの方こそ靴が滑つて上手く進めなかつたのであるが、心百合も勝手が分かつて来たのか、しつかりと足に全体重と車の重量を掛け思ひ切り踏ん張つてゐると遂には、タイヤと地面の擦れる非常に耳障りな音を立てて車が前へと動き出したのである。そして、家の前だと邪魔になるだらうから、このまま公園の方まで持つて行くねと言つて、公園の側にある少し道が広がつてゐる所、家から凡そ三〇メートル程離れてゐる所まで、車を持ち上げたままゆつくりと押して行つてしまつた。
あれから四年、恐らく妹の力はさらに強くなつてゐるであらう。日常では兎に角優しく、優しく触る事を心がけてゐるらしいから俺たちは怪我をしないで済んでゐる、いやもつと云ふと、五体満足で、しかも生きてゐる。だが今まで何度も危ない時はあつた。喧嘩は全然しない、と云ふより一度も歪みあつたことは無いけれども、昼寝をしてゐる妹の邪魔をしたりだとか、凡ミスのせいでテストで満点を逃し機嫌が悪い時に何時もの調子で話しかけたりだとか、手を繋いでゐる最中に妹が何か、------例へば彼女の趣味である古典文学の展示に夢中になつたりだとか、さういう時は腕の一本や二本覚悟しなければならず打ち震えてゐたのであるが、なんと情けない話であらう。俺たちは妹の機嫌一つ、力加減一つで恐怖を覚えてしまふ。俺たちにはあの未発達で肉付きの良い手が人の命を刈り取る鎌に見える。俺たちにはあの産毛すら見えず芸術品かと思はれる程美しい太腿も、人の肉を潰したがつてゐる万力のやうに見える。……………本来さう云つた恐怖に少しでも対抗しようとダンベルを買つたのであるが、丸切り無駄であつた、矢張り妹には勝てぬのか。直接手を下されたわけでも無いのに、またしても負けてしまふのか。もう身体能力だけでなく、学力も大きな差をつけられたと云ふのに。---------------心百合は元々、小学校のテストでは常に満点を、…………少しドジなところがあるからたまにせうもない間違ひを犯すことがあるが、其れは仕方ないとして試験は常に満点を取り続けてをり、ある日学校から帰つて来るや、授業が暇で暇で、暇で仕方がないからお兄ちゃん何とかしてと言ふので、有らう事か俺たちは、其れならどんどん先の内容をこつそりと予習すると良い、と教えてしまつた。其れから心百合は教室だけでなく家でも勉強を進め、タガが外れたやうにもう恐ろしい早さで知識を吸収したつた一週間か二週間かで其の学年、-----確か小学四年生の教科書を読み終えると、兄から譲り受けた教科書を使って次の学年、次の次の学年、次の次の次の学年、…………といつたやうに、兄たちの言ふ通りどんどん先の内容を理解していき、一年も経たぬ間に高校入試の問題が全て解けるようになつてゐた。かと思えば、那央の持つてゐる高校の教科書やら問題集やら参考書やらを、兄の迷惑にならぬよう借りて勉強を推し進め、今度は半年程度で大学入試の問題をネットから引つ張り、遊び半分で解いてゐたのである。そして此方が分からないと言つてゐるのに答え合はせをして欲しいと頼んで来たり、又ある時は那央が置きつぱなしにしてゐた模試を勝手に解いては、簡単な問題ばかりで詰まんなかつた、お兄ちゃんでも全部解けたでせう? この程度の問題は、と云ふ。そんなだから中学一年生の今ではもはや、勉強をしてゐるうちに好きになつた古典文学を読み漁りながら、受験を控えた那央の勉強を教えるためにも、彼が過去問題集に取り組む前にはまず、心百合が一度目を通し、一度問題を全て解き感想を言つて、時間をかけるべきか、さうでないかの判断の手助けをしてゐるのである。先のメモにあつた後半の内容はまさに此の事で、どんなに難しさうな問題集を持つて行つても簡単だから考へ直すべし��言はれ凹む那央を見てゐると、詩乃は二年後の自分が果たしてまともな精神で居られるのかどうか、不安になつて来るのであつた。
さうすると此の兄弟が妹に勝つている点は何であらうか、多分身長以外には無い気がするが、もう後数年もすると頭一つ分超えられてしまふだらう。聞くところに寄ると、ふたなりは第二次成長期が落ち着き始める一四、五歳頃から突然第三次成長期を迎え、一八歳になる頃には平均して身長一八七センチに達すると云ふのである。実際、那央のクラスにも一人ふたなりの子が居るのであるが、一年生の初め頃にはまだ辛うじて見下ろせた其の顔も今では、首を天井に向けるが如く顔を上げないと目が合はないのである。だが彼らは未だに、こんな胸元にすつぽりと収まる可愛い可愛い妹が、まさか見上げるほど背を高くしないであらうと、愚かにも思つてゐるのであるがしかし、さうでも思はないとふたなりの妹が近くに居ること自体怖くて怖くて仕方なく、心百合を家に残しどこか遠い場所で生活をしたい衝動に駆られるのであつた。
扠、読者の中には恐らくふたなりをよくご存知でない方が何名かいらつしやるであらうから、どうして此の兄弟が、可愛い、たつた一人だけの、愛しい、よく出来た妹にここまで恐怖を感じるのか説明しておかねばならぬのであるが、恐らく其れには引き続き三人の兄妹の話をするだけで事足りるであらう。何分其処に大体の理由は詰まつてゐる。-------------
ふたなりによる男性への強姦事件は度々ニュースになるし、其れに世の男達なら全員、中学校の保健体育で習つた記憶がどこかにあるから皆知つてゐるだらう。本日未明、〇〇県〇〇市在住の路上で男性が倒れてゐるのを誰々が発見し、現場に残された体液から警察は近くに住む何たら言ふ名前の女性を逮捕した。-----例へばさう云ふニュースの事である。凡そ犯人の側に「体液」と「女性」などと云つた語が出てきたら其れはふたなりによる強姦を意味するのであるが、世の中に伝えられる話は、実際に起きた出来事にオブラートにオブラートを重ね、さらに其の上からオブラートで包み込んだやうな話であつて、もはやお伽噺となつてゐる。考へてみると、大人になれば一九〇センチ近い身長に、ダンベルのシャフトのやうな金属すら曲げる怪力を持つ女性が今日の男性を暴行し無理やり犯せば、そもそも人の形が残るかどうかも怪しくなるのは容易に想像できる。実際、幾つか例を挙げてみると、ふたなりの"体液"を口から注ぎ込まれ腹が破裂し死亡した男や、行方不明になつてゐたかと思えば四肢が完全に握りつぶされ、そしてお尻の穴が完全に破壊された状態でゴミのやうに捨てられてゐた男や、ふたなりの"ソレ"に耐えきれず喉が裂け窒息死した男や、彼女たちの異常な性欲を解消するための道具と成り果て精液のみで生きる男、……………挙げだすとキリがない。二人の兄弟は、ふたなりの妹が居るからと言つて昔からさう云ふ話を両親から嫌と言ふほど聞いて来たのであるが、恐ろしいのはほとんどの被害者が家族、特に歳を近くする兄弟である事と、ふたなりが居る家庭は一つの例外なく崩壊してゐる事であつた。と云つても此の世の大多数の人間と同じやうに、彼らも話を言伝されるくらゐではふたなりの恐ろしさと云ふ物を、其れこそお伽噺程度にしか感じてゐなかつたのであるが、一年前、小学六年生の妹に、高校生二年と中学三年の兄二人が揃つて勉強を教えてもらつてゐたある夜、机の間を行つたり来たりするうちに何故かセーラー服のスカートを押し上げてしまつた心百合の、男の"モノ"を見た時、彼らの考へは変はり初めた。其の、スカートから覗く自分たちの二倍、三倍、いや、もう少しあらうか、兎に角妹の体格に全く不釣り合いな男性器に、兄たちが気を取られてゐると心百合は少し早口で、
「しばらくしたら収まると思うから見ないでよ。えっち。それよりこの文章、声に出して読んでみた? 文法間違いが多くて全然自然に読めないでしょ? 一度は自分で音読してみるべしだよ、えっちなお兄ちゃん。でも単語は覚えてないと仕方ないね。じゃあ、来週までに、この単語帳にある単語と、この文法書の内容を全部覚えて来ること。----------」
と顔を真赤にして云ふと、下の兄に高校入試を模して作つた問題を解かせつつ、上の兄が書いた英文の添削を再開してしまつた。が、ほんの数分もしないうちに息を荒げ出し、そして巨大な肉棒の先端から、とろとろと透明な液体を漏らし淫猥な香りを部屋中に漂はせ初めると、
「ど、どうしよう、…………いつもは勝手に収まるのに。………………」
と言つて兄たちに助けを求める。どうやら彼女は五〇センチ近い巨大な肉棒を持ちながら其の時未だ、射精を味はつた事が無かつたやうである。そこで、ふたなりの射精量は尋常ではないと聞いていた那央は、あれの仕方を教えてあげてと、詩乃に言ふと急いでバケツと、絶対に要らないだろうとは思ひつつもしかしたらと思つて、ゴミ袋を一つ手に取り部屋に戻つたところ、中はすでに妹が前かがみになりながら両手を使つて激しく自分のモノを扱き、其の様子を弟が恍惚とした表情で見守ると云ふ状況になつてゐる。----------何だ此れは、此れは俺の知る自慰では無い。此れがふたなりの自慰なのか。………………さうは思ひながら、ぼたぼたと垂れて床を濡らしてゐる液体を受け止めるよう、バケツを丁度肉棒の先の下に置くと、そのまま棒立ちで妹の自慰を見守つた。そしていよいよ、心百合が肉棒の先端をバケツに向け其の手の動きを激しくしだしたかと思えば、
「あっ、あっ、お兄ちゃん! 何これ! ああぁあんっ!!」
と云ふ、ひどくいやらしい声と共に、パツクリと開いた鈴口から消防車のやうに精液が吹き出初め、射精とは思へないほどおぞましい音が聞こえて来る。そしてあれよあれよと云ふ間にバケツは満杯になり、床に白くドロドロとした精液が広がり始めたので、那央は慌ててゴミ袋を妹のモノに宛てがつて、袋が射精の勢ひで吹き飛ばぬよう、又自分自身も射精の勢ひで弾き飛ばされぬよう肉棒にしがみついた。-------
結局心百合はバケツ一杯分と、二〇リットルのゴミ袋半分程の精液を出して射精を終え、ベタベタになつた手と肉棒をティッシュで拭いてから、呆然と立ちすくんでゐる兄たちに声をかけた。
「お兄ちゃん? おにいちゃーん? 大丈夫?」
「あ、あぁ。…………大丈夫。………………」
「しぃにぃは?」
彼女は詩乃の事をさう呼ぶ。幼い頃はきちんと「しのおにいちゃん」と読んでゐたのであるが、いつしか「しのにぃ」となつて、今では「の」が略されて「しぃにぃ」となつてゐる。舌足らずな彼女の声を考へると、「しーにー」と書いたほうが近いか。
「……………」
「おい、詩乃、大丈夫か?」
「お、………おう。大丈夫。ちょっとぼーっとしてただけ。………………」
「もう、お兄ちゃんたちしっかりしてよ。特にしぃにぃは最初以外何もしてなかったでしょ。……………て、いうか私が一番恥ずかしいはずなのに、何でお兄ちゃんたちがダメージ受けてるのん。………………」
心百合はさう言ふと、本当に恥ずかしくなつてきたのか、まだまだ大きいが萎えつつある肉棒をスカートの中に隠すと、さつとパンツの中にしまつてしまつた。
「とりあえず、片付けるか。…………」
「おう。……………」
「お兄ちゃんたち部屋汚しちゃってごめん。私も手伝わせて」
「いいよ、いいよ。俺たちがやっておくから、心百合はお風呂にでも入っておいで。------」
このやうにして性欲の解消を覚えた心百合は、毎日風呂に入る前に自慰をし最近ではバケツ数杯分の精液を出すのであつたが、そのまま流すとあつと言ふ間に配管が詰まるので、其の始末は那央と詩乃がやつてをり、彼女が湯に浸かつてゐるあひだ、夜の闇に紛れて家から徒歩数分の所にある川へ、音を立てぬよう、白い色が残らないよう、ゆつくりと妹の種を放つてゐるのであつた。空になつたバケツを見て二人の兄弟は思ふ。------------いつかここにあつた精液が、ふとしたきつかけで体に注がれたら俺たちの体はどうなる? そもそも其の前に、あの同じ男性器とは思へないほど巨大な肉棒が、口やお尻に突つ込まれでもしたらたら俺たちの体はどうなる? いや、其れ以前に、あの怪力が俺たちの身に降り掛かつたらどうなる? ふたなりによる強姦の被害者の話は嘘ではない。腹の中で射精されて体が爆発しただなんて、昔は笑いものにしてゐたけれども何一つ笑へる要素などありはしない、あの量を、あの勢いで注がれたら俺たち男の体なんて軽く吹き飛ぶ。其れにあんなのが口に、お尻に入り込まうとするなんて、想像するだけでも恐ろしくつて手が震えてくる。聞けば、顎の骨を砕かうが、骨盤を割らうが、其んな事お構ひなしにねじ込んで来ると云ふではないか。此れから先、何を犠牲にしてでも妹の機嫌を取らなくては、…………其れが駄目ならせめて手でやるくらゐで我慢してもらはねば。…………………
だが彼らは此れもまた、わざわざ時間を割いてまでして兄の勉強を見てくれるほど情に満ちた妹のことだから、まさかさう云ふ展開にはならないであらうと、間抜けにも程があると云ふのに思つてゐるのであるが、そろそろなのである。ふたなりの女の子が豹変するあの時期が、そろそろ彼らの妹にも来ようとしているのである。其れ以降は何を言つても無駄になるのである。だから今しかチャンスは無いのである。俺たちを犯さないでくださいと、お願ひするのは今しか無いのである。そして、其の願ひを叶えてくれる確率が零で無いのは今だけなのである。
「------もうこれ以上引き伸ばし��も駄目だ。言いに行くぞ」
ダンベルとメモを持ち、勢ひよく立つた那央がさう云ふ。
「だけど、………それ言ったら言ったらで、ふたなりを刺激するんだろ?!」
「あぁ。…………でも、少しでも確率があるならやらないと。このままだと、遅かれ早かれ後数年もしないうちに死ぬぞ。俺ら。………………」
「くっ、…………クソッ。……………」
「大丈夫、もし妹がその気になっても、あっちは一人で、こっちは二人なんだから上手くやればなんとかなるさ、……………たぶん。………………」
「最後の「たぶん」は余計だわ。……………」
「あと心百合を信じよう。大丈夫だって、あんなに優しい妹じゃないか。きっと、真剣に頼めば聞いてくれるはず。……………」
「兄貴って、たまにそういう根拠のない自信を持つよな。………」
さう言ふと、詩乃も立ち上がり一つ深呼吸をすると、兄と共に部屋を後にするのであつた。
心百合の部屋は、兄たちの部屋に比べると少しばかり狭いが其れでも一人で過ごすには物寂しさを感じる程度には広い、よく風が通つて夏は涼しく、よく日が当たつて冬は暖かく、東側にある窓からは枯れ葉に花を添えるやうはらはらと山に降り積もる雪が、南側にある窓からはずつと遠くに活気ある大阪の街が見える、非常に快適で感性を刺激する角部屋であつた。そこに彼女は本棚を此れでもかと云ふほど敷き詰めて新たな壁とし、嘗ての文豪の全集を筆頭に、古い物は源氏物語から諸々の文芸作品を入れ、哲学書を入れ、社会思想本を入れ、経済学書を入れ、そして目を閉じて適当に選んだ評論などを入れてゐるのであるが、最近では文系の本だけでは釣り合ひが取れてない気がすると言ひ初め、つい一ヶ月か二ヶ月前に、家から三駅ほど離れた大学までふらりと遊びに行つて、お兄ちゃんのためと云ふ建前で、解析学やら電磁気学やら位相空間論やらと云つた、一年か二年の理系大学生が使ふであらう教科書と、あとさう云ふ系統の雑誌を、合わせて十冊買つて来たのであつた。そして、春までには読み終はらせておくから、お兄ちゃんが必要になつたらいつでも言つてねと、那央には伝えてゐたのであつたが、意外に面白くてもう大方読んでしまつたし、途中の計算はまだし終えてないけれども問題はほとんど解き終はつてしまつた。またもう一歩背伸びをして新しく本を買いに行きたいが、前回大量にレジへ持つて行き過ぎたせいで、大学生協の店員にえらく不思議さうな顔をされたのが何だか癪に障つて、自分ではもう行きたくない。早くなおにぃの受験が終はつてくれないかしらん。さうしたら彼処にある本を買つて来てもらへるのに。それか二年後と言はず今すぐにでも飛び級させてくれたらいいのに。…………と、まだ真新しい装丁をしてゐる本を眺めては思ふのであつた。
なので那央が大学生になるまで数学やら物理学は封印しようと、一回読んだきりでもはや文鎮と化してゐた本たちを本棚にしまひ、昨日電子書籍として買つてみた源氏物語の訳書を、暇つぶしとしてベッドの上に寝転びながら読んでゐると、コンコンコン、…………と、部屋の扉をノックする音が聞こえて来た。
「はーい、なにー?」
「心百合、入ってもいいか?」
少し澄んだ声をしてゐるから那央であらう。
「いいよー」
ガチャリと開いたドアから那央が、朝に軽いイタズラとして曲げたダンベルと、その時残しておいたメモを手に持つて入つて来たかと思えば、其の後ろから、何やら真剣な表情を浮かべて居る詩乃も部屋に入つて来る。
「あれ? しぃにぃも? どったの二人とも?」
タブレットを枕の横に投げ出すと心百合は体を起こし、お尻をずるりとベッドの縁まで滑らせ、もう目の前までやつて来てゐる兄二人と対峙するやうにして座つた。
「あぁ、…………えとな。…………」
「ん?」
「えっと、………お、おい、詩乃、……代わりに言ってくれ。…………」
「えっ、………ちょっと、兄貴。俺は嫌だよ。…………」
「俺だって嫌だよ。後で飯おごってやるから頼む。……………」
「………言い出しっぺは兄貴なんだから、兄貴がしてくれよ。…………」
あんなに真剣な表情をしてゐた兄たちが何故かしどろもどろ、………と、云ふよりグジグジと醜い言ひ争ひをし始めたので、心百合は居心地が悪くなり一つため息をつくと、
「もう、それ元通りにして欲しくて来たんじゃないの?」
と言つて、那央の持つてゐるダンベルに手を伸ばし、トントンと叩く。が、那央も詩乃も、キュッと体を縮こませ、
「えっと、…………それは、…………ち、ちが、ちがってて…………」
などと云ふ声にならぬ声を出すばかりで一向にダンベルを渡してくれない。一体何が違つてゐるのだらう、………ま、ダンベルを持つて来たのだから直して欲しいには違ひない、と、云ふより直すと書いたのだから直してあげないと、------などと思つて、重りの部分に手をかけると、半ば引つたくるやうにして無理やりダンベルを奪ひ去つた。
「いくらお兄ちゃんたちに力が無いって言っても、こんな指の体操にもならないウェイトだと意味無いでしょ。今度はちゃんとしたの買いなよ」
さう云ふと、心百合はまず手の平を上にして「く」の字に曲がつたシャフトを、一辺一辺順に掴んでから、ひ弱な兄たちに見せつけるよう軽く手を伸ばし、一言、よく見ててね、と言つた。そして彼女が目を瞑つて、グッ…と其の手と腕に力を込め始めると、二人の兄弟がいくら頑張つても、--------時には詩乃が勝手に父親の車に乗り込んで轢いてみても、其の素振りすら見せなかつたシャフトが植物の繊維が裂けるやうな音と共にゆつくりと反り返つていき、どんどん元の状態に戻つて行く。其の様子はまるで熱した飴の形を整えてゐるやうであつて、彼らには決して太い金属の棒を曲げてゐるやうには見えなかつた。しかもさつきまで目を閉じてゐた妹が、いつの間にか此方に向かつて笑みを浮かべてゐる。……………其のあまりの呆気なさに、そして其のあまりの可愛いさに、彼らは己の中にある恐怖心が、少しばかり薄らいだやうな気がするのであつたが、ミシリ、ミシリ、と嫌に耳につく金属の悲鳴を聞いてゐると矢張り、目の前に居る一人の可憐で繊細で、人々の理想とも形容すべき美しい少女が、何か恐ろしい怪物のやうに見えてくるのであつた。
「はい、直ったよ。曲がってた所は熱いから気をつけてね」
すつかり元通りになつたダンベルを、真ん中には触れないやう気をつけながら受け取ると、那央はすぐに違和感に気がついた。一体どう云ふ事だ、このシャフトはこんなにでこぼこしてゐただらうか。---------まさかと思つて、さつきの妹の持ち方を真似してダンベルを持つてみると、多少合はないとは言え、シャフトのへこんでゐる箇所が自分の手の平にもぴつたりと当てはまる。其れにギュッと握つてみると、指先にも若干の凹凸を感じる。もしかして、--------もしかして、この手の平に感じるへこみだとか、指先に感じるでこぼこは、もしかして、もしかして、妹の手の跡だと云ふのであらうか。まさか、あの小さく、柔らかく、暖かく、ずつと触れてゐたくなるやうなほど触り心地の良い、妹の手そのものに、この頑丈な金属の棒が負けてしまつたとでも云ふのであらうか。彼はさう思いつつ、もしかしたらと自分も出来るかもしれないと思つて力を入れてみたが、ダンベルは何の反応もせずただ自分の手が痛くなるばかりであつた。
「で、他に何か話があるんだよね。何なの?」
「あ、…………えっ、と。…………」
「もう、何なの。言いたいことはちゃんと言わないと分からないよ。特に、なおにぃはもう大学生なんだから、ちゃんとしなきゃ」
と五歳も年下の妹に諭されても、情けないことに兄がダンベルを見つめたまま固まつてゐるので、恐怖心を押さえつけ幾らか平静になつた詩乃が、意を決して口を開けた。
「それはだな。…………えっと、……心百合って、ふたなりだろ? だからさ、今後気が高ぶっても俺らでやらないで欲しい。……………」
ついに言つてしまつた、だけどこれで、…………と詩乃はどこか安堵した気がするのであつたが、
「えっ、…………いや、それはちょっと無理かも。………だって。…………………」
心百合がさう云ふと、少し足を開いた。すると那央と詩乃の鼻孔にまで、いやに生々しい匂ひが漂ふ。
「………だって、お兄ちゃんたちが可愛くって、最近この子勝手にこうなるんだもん」
心百合がスカートの上からもぞもぞと股の間をいじると、ぬらぬらと輝く巨大な"ソレ"が勢いよく姿を現し、そして自分自信の力で血をめぐらせるかのやうに、ビクン、ビクン、と跳ねつつ天井へ伸びて行く。
「ねっ、お兄ちゃん、私ちょっと"気が高ぶった"から、お尻貸してくれない?」
「い、いや、………それは。…………」
「心百合、……………落ちつい、--------」
「ねっ、ねっ、お願いっ! ちょっとだけでいいから! 先っぽしか挿れないからお尻貸して!!」
心百合は弾むやうにして立ち上がると、詩乃の手首を握つた。と、その時、ゴトリ、と云ふ重い物が落ちる音がしたかと思ひきや、那央が扉に向かつて駆けて行く様子が、詩乃の肩越しに見えた。
「あっ、なおにぃどこ行くの!」
心百合は詩乃をベッドの上に投げ捨て、今にもドアノブに手をかけようとしてゐた那央に、勢ひよく後ろから抱きつく。
「あああああああああああ!!!!!!」
「ふふん、なおにぃ捕まえた~」
ほんの少し強く抱きしめただけで心地よく絶叫してくれる那央に、彼女はますます"気を高ぶらせ"、
「しぃにぃを放って、どこに行こうとしていたのかなぁ? ねぇ、那央お兄ちゃん?」
と云ひ、彼が今まで味はつたことすら無い力ではあるが、出来るだけ怪我をさせないような軽い力で壁に向かつて投げつけると、たつたそれだけでぐつたりとし起き上がらなくなつてしまつた。
「もしかして気絶しちゃったのん? 情けないなぁ。………仕方ないから、しぃにぃから先にやっちゃお」
ベッドに染み付いてゐる妹の、甘く芳し��匂いで思考が止まりかけてゐた詩乃は、其の言葉を聞くや、何とかベッドから這い出て、四つん這ひの体勢のまま何とか逃げようとしたのであるが、ふと眼の前にひどく熱つぽい物を感じるたかと思えば、ぶじゅっ、と云ふ下品な音と共に、透明な液体が床にぼとりと落ちて行くのが見えた。--------あゝ、失敗した。もう逃げられぬ。もう文字通り、目と鼻の先に"アレ"がある���俺は今から僅か十三歳の幼い、其れも実の妹に何の抵抗も出来ぬまま犯されてしまふ。泣かうが喚かうが、体が破壊されようが関係なく犯されてしまふ。あゝ、でも良かつた。最後の最後に、こんな天上に御はします高潔な少女に使つて頂けるなんて、なんと光栄な死に方であらうか。-----------------
「しぃにぃ、よく見てよ、私のおちんちん。お兄ちゃんを見てるだけでもうこんなに大きくなつたんだよ?」
さう云ふと、心百合は詩乃の髪を雑に掴んで顔を上げさせ、自身の腕よりもずつとずつと太い肉棒を無理やり見せると、其の手が汚れるのも構はずに、まるで我が子の頭を撫でるかのやうな愛ほしい手付きで、ズルリと皮の剥けた雁首を撫でる。だが彼には其の様子は見えない。見えるのはドクドクと脈打つ指のやうな血管と、男性器に沿つて真つ直ぐ走るホースのやうな尿道と、たらりたらりと垂れて床を濡らすカウパー液のみである。其れと云ふのも当然であらう、亀頭の部分は持ち主の顔と同じ高さの場所にあるのである。------まだ大きくなつてゐたのか。…………彼にはもう、久しぶりに会ふことになつた妹の陰茎が、もはや自分の心臓を串刺しにする鉄の杭にしか見えなかつたのであるがしかし、其のあまりにも艶めかしい佇まひに、其のあまりにも圧倒的な存在感に、手が打ち震えるほど惹かれてしまつてもうどんなに嫌だと思つても目が離せなかつた。
「んふふ、……お兄ちゃんには、この子がそんなに美味しそうに見えるのん?」
「………そ、そんな、……そんなことは、ない。…………」
さうは云ふものの、詩乃は瞬きすらしない。
「でもさ、------」
心百合はさう云ふと、自身の肉棒を上から押さえつけて、亀頭を彼の口に触れるか触れないかの位置で止める。
「------お兄ちゃんのお口だと、先っぽも入らないかもねぇ」
と妹が云ふので、もしかしたらこの、俺の握りこぶしよりも大きい亀頭の餌食にならないで済むかもしれない、…………と詩乃は哀れにも少しだけ期待するのであつたが、ふいに、ぴゅるっと口の中に何やら熱い液体が入り込んで来る。あゝ、もしかしてこれは。………………
「………けど、そんなに美味しそうな顔されたら諦めるのも悪いよねっ。じゃあ、お兄ちゃん、お口開けて? ………ほら、もっと大きく開けないと大変なことになるよ? たぶん」
「あっ、………やっ、………やめ、やめやめ、いゃ、ややめ、あが、………………」
………まだ彼は、心百合が途中で行為を中断してくれると心のどこかで思つてゐたのであらう、カタカタと震える唇で一言、やめてくださいと、言ほうとしてゐるのであつた。だがさうやつてアワアワ云ふのも束の間、腰を引かせた妹に両肩を掴まれ、愉悦と期待に満ちた表情で微笑まれ、クスクスとこそばゆい声で笑はれ、そしてトドメと言はんばかりに首を可愛らしくかしげられると、もう諦めてしまつたのか静かになり、遂には顔が醜くなるほど口を大きく開けてしまつた。
「んふ、もっと力抜いて? …………そうそう、そういう感じ。じゃあ息を吸ってー。………止めてー。………はい、お兄ちゃんお待ちかね、心百合のおちんちんだよ。よく味わってねー」
其の声はいつもと変はらない、中学生にしては舌つ足らずな甚く可愛いらしい声であつたが、詩乃が其の余韻に浸る前に、彼の眼の前にあつた男性器はもう前歯に当たつてゐた。かと思えばソレはゆつくりと口の中へ侵入し、頬を裂し血を滴らせるほどに顎をこじ開け、瞬きをするあひだに喉まで辿り着くと、
「ゴリュゴリュゴリュ………! 」
と云ふ、凡そ人体から発生するべきでは無い肉の潰れる音を部屋中に響き渡らせ始める。そして、彼が必死の形相で肉棒を恵方巻きのやうに持つて細やかな抵抗してゐるうちに、妹のソレはどんどん口の中へ入つていき、ボコリ、ボコリとまず首を膨らませ、鎖骨を浮き上がらせ、肋骨を左右に開かせ、あつと云ふ間にみぞおちの辺りまで自身の存在を示し出してしまつた。もうこれ以上は死んでしまふ、死んでしまふから!止めてください!! ———と彼は、酸素の薄れ行く頭で思ふのであつたが恐ろしい事に、其れでも彼女のモノはまだ半分程度口の外に残り、ドクンドクンと血管を脈打たせてゐる。いや、詩乃にとつてもつと恐ろしいのは次の瞬間であつた。彼が其の鼓動を唇に数回感じた頃合ひ、もう兄を気遣うことも面倒くさくなつた心百合が、もともと肩に痛いほど食い込んでゐた手に骨を握りつぶさんとさらに力を入れ、此れからの行為で彼の体が動かないようにすると、
「ふぅ、………そろそろ動いても良い? まぁ、駄目って言ってもやるんだけどね。良いよね、お兄ち���ん?」
と云ひ、突き抜かれて動かない首を懸命に震はせる兄の返事など無視して、そのまま本能に身を任せ自分の思ふがまま腰を振り始めてしまつたのである。
「〜〜〜???!!!! 〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「んー? なぁに、お兄ちゃん。しぃにぃも高校生なんだから、ちゃんと言わないと誰にも伝わらないよぉ? 」
「〜〜〜〜〜!!!!!!!」
「あはっ、お兄ちゃん死にかけのカエルみたい。惨めだねぇ、実の妹にお口を犯されるのはどんな気分? 悔しい? それとも嬉しい?」
心百合は残酷にも、気道など完全に潰しているのに優しく惚けた声でさう問ひかける。問ひかけつつ、
「ごぎゅ! ごぎゅ! ずちゅり! ……ぐぼぁ!…………」
などと、耳を覆いたくなるやうな、腹の中をカリでぐちゃぐちゃにかき乱し、喉を潰し、口の中をズタズタにする音を立てながら兄を犯してゐる。度々聞こえてくる下品な音は、彼女の陰茎に押されて肺の中の空気が出てくる音であらうか。詩乃は心百合の問ひかけに何も答えられず、ただ彼女の動きに合はせて首を長くしたり、短くしたりするばかりであつたが、そもそもそんな音が耳元で鳴り響いてゐては、妹の可愛らしい声も聞こえてゐなかつたのであらう。
もちろん、彼もまた男の端くれであるので、たつた十三歳の妹にやられつぱなしというわけではなく、なんとか対抗しようとしてはゐる。現に今も、肩やら胸やら腹のあたりに感じる激痛に耐へて、力の入らぬ手を、心百合の未だくびれの無い未成熟な脇腹に当て、渾身の力で其の体を押し返そうとしてゐるのである。………が、如何せん力の差がありすぎて、全くもつて妹には届いてゐない。其の上、触れた場所がかなり悪かつた。
「何その手は。私、腰触られるとムズムズするから嫌だって昔言ったよね? お兄ちゃん頭悪いからもう忘れちゃったの? -----------
……………あ、分かった。もしかしてもっと突っ込んでほしいんだ!」
心百合はさう云ふと、腰の動きを止め、一つ、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになり怯えきつてゐる兄の顔を至極愛ほしさうに撫でる。そして、
「もう、お兄ちゃん、そんなに心百合のおちんちんが好きだなんて早く言ってくれたらよかったのに。昔、精通した時に怯えてたから嫌いなんだと思ってた。…………
--------んふ、んふふ、…………じゃあ心置きなくやっちゃってもいいんだね?」
と変はらず詩乃の頭を撫でながら云つて、彼を四つん這いの状態から正座に近い体勢にし、自身は其の体に覆いかぶさるよう前かがみになると、必死で妹の男性器を引き抜こうと踏ん張る彼の頭を両手で掴み、鼠径部が彼の鼻に当たるまで一気に、自身のモノを押し込んだ。
「~~~~~~~??????!!!!!!!!!!」
「あんっ、……お兄ちゃんのお口の中気持ちいい。…………うん? お口? お腹? ………どっちでもいいや。---------」
心百合は恍惚(ルビは「うっとり」)とした表情で、陰茎に絡みつく絶妙な快感に酔ひしれた。どうしてもつと早く此の気持ちよさを味ははなかつたのだらう。なおにぃも、しぃにぃも、ただ年齢が上なだけで、もはや何をやつても私の後追ひになつてゐるのに、私がちょつと睨んだだけで土下座をして来る勢ひで謝つて来るくせに、私がどんなに仕様もないお願いをしても、まるでフリスビーを追ふ犬のやうにすぐに飛んでいくのに、-----------特に、二人共どうしてこんなに勉強が出来ないのだらうか。私が小学生の頃に楽々と解いてゐた問題が二人には解答を理解することすら難しいらしい、それに、そもそも理解力も無ければ記憶力も無いから、一週間、時には二週間も時間をあげてるのに本一つ覚えてこなければ、読んでくることすら出来ず、しかもこちらが言つてることもすぐには分かつてくれないから、毎回毎回、何度も何度も同じ説明をするハメになる。高校で習う内容の何がそんなに難しいのだらうか、私には分からぬ。そんなだから、あまりにも物分りの悪い兄たちに向かつて、手を上げる衝動に襲われたことも何度かあるのではあるけれども、別にやつてもよかつた。其れこそあの、精通をむかえたあの夜に、二人揃つて犯しておけばよかつた。あれから二人の顔を見る度にムクムクと大きくなつて来るので、軽く手を強く握ったり、わざと不機嫌な真似をして怯えさせたりした時の顔を思ひ出して自慰をし、自分の中にもくもくと膨らんでくる加虐心を発散させてゐるのであるが、最近では押さえが効かなくなつてもう何度、二人の部屋に押し入つてやらうかしらんと、思つたことか。さう云へば他のクラスに一人だけ居るふたなりの友達が数ヶ月前に、兄を嬲つて嬲つて嬲つて最後はお尻に突つ込んでるよ、と云つてゐるのを聞いて、本当にそんな事をして良いのかと戸惑つてゐたが、��ざやつてみると自分の体が快楽を貪るために、自然と兄の頭を押さえつけてしまふももである。このなんと気持ちの良いことであらう、那央にぃもまずはお口から犯してあげよう、さうしよう。…………………
と、心百合は夢心地で思ふのであつたが、詩乃にとつて此の行為は地獄であらう。さつきまで彼女の腰を掴んでゐた手は、すでにだらんと床に力無く垂れてゐる。それに彼女の鼠径部がもろに当たる鼻は、-------恐らく彼女は手だけ力を加減して���るのであらう、其の衝撃に耐えきれずに潰れてしまつてゐる。とてもではないが、彼に未だ意識があるとは思えないし、未だ生きてゐるかどうかも分からない。が、心百合の手の間からときたま見える目はまだ開いてをり、意外にもしつかりと彼女のお臍の辺りを眺めてゐるのであつた。しかも其の目には恐怖の他に、どこか心百合と同じやうな悦びを蓄えてゐるやうに見える。口を引き裂かれ、喉を拡げられ、内臓を痛めつけられ、息をすることすら奪われてゐるのに、彼は心の奥底では喜んでゐる。…………これがふたなりに屈した者の末路なのであらう、四歳離れた中学生の妹に気持ちよくなつて頂けてゐる、其れは彼にとつて、死を感じる苦痛以上に重要なことであり、別に自分の体がどうなろとも知つたことではない。実は、心百合が俺たちに対して呆れてゐるのは分かつてゐたけれども、一体彼女に何を差し上げると、それに何をしてあげると喜んでくれるのか分からなかつたし、それに間違つて逆鱗に触れてしまつたらどうしようかと悩んで、何も出来なかつた。だが、かうして彼女の役に立つてみるとなんと満たされることか。やはり俺たち兄弟はあの夜、自慰のやり方を教へるのではなく、口を差し出し尻を差し出し、犯されれば良かつたのだ。さうすればもつと早く妹に気持ちよくなつてもらえたのに、……………あゝ、だけどやつぱり命は惜しい、未だしたい事は山程ある、けど今はこの感覚を全身に染み込ませなければ、もうこんなことは二度と無いかもしれぬ。-------さう思ふと気を失ふわけにはいかず、幼い顔つきからは想像もできないほど卑猥な吐息を漏らす妹を彼は其の目に焼き付けるのであつた。
「お兄ちゃん、そろそろ出るよぉ? 準備はいーい? かるーく出すだけにしておいたげるから、耐えるんだよ?」
心百合はさう云ふと、腰を細かく震わせるやうに振つて、いよいよ絶頂への最後の一歩を踏み出そうとする。そして間もなくすると、目をギュッと閉じ、体をキュッと縮こませ、そして、
「んっ、………」
と短く声を漏らし快楽に身を震はせた。と、同時に、薄つすら筋肉の筋が見える、詩乃の見事なお腹が小さくぽつこりと膨らんだかと思ひきや、其れは風船のやうにどんどん広がつて行き、男なのに妊婦のやうな膨らみになつて遂には、ほんの少し針で突つつけば破裂してしまふのではないのかと疑はれるほど大きくなつてしまつた。軽く出すからね、と云ふ妹の言葉は嘘では無いのだが、其れでも腹部に感じる異常な腹のハリに詩乃はあの、腹が爆発して死んでしまつた強姦被害者の話を思ひ出して、もう限界だ、やめてくださいと、言葉に出す代はりに彼女の腕を数回弱々しく叩いた。
「えー、………もう終わり? お兄ちゃんいつもあんなにご飯食べてるのに、私の精液はこれだけしか入らないの?」
とは云ひつつ詩乃の肩に手をかけて、其の肉棒を引き抜き始める。
「ま、いいや、お尻もやらなきゃいけないし、その分、余裕を持たせておかなきゃね」
そしてそのままズルズルと、未だ跳ね上がる肉棒をゆつくり引き抜いていくのであるが、根本から先つぽまで様々な液体で濡れた彼女の男性器は、心なしか入れる前よりおぞましさを増してゐるやうに見える。さうして最後、心百合は喉に引つかかつた雁首を少々強引に引つこ抜くと、
「あっ、ごめ、もうちょっと出る。…………」
と云つて、"最後の一滴"を詩乃の顔にかけてから手を離した。
「ぐげぇぇぇぇぇぇぇ…………………!!!!お”、お”え”ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
一体どこからそんな音を発してゐるのか、詩乃が人間とは思へない声を出しながら体に入り切らぬ妹の精子たちを、己の血と共に吐き出して行く。が、心百合はそんな彼の事など気にも止めずもう一つの標的、つまり壁の側で倒れてゐる那央に向かつて歩みを進めてゐた。
「なおにぃ、いつまで寝たフリしてるの? もしかしてバレてないとでも思ってた?」
「あ、…………え、…………や、やめ。…………」
「えへへ、やめるとでも思ってるのん? しぃにぃはちゃんと私の愛を受け止めてくれたんだよ、………ちょっと死にかけてるけど。 なおにぃはどうなるかな?」
那央は体を起こし、そのまま尻もちをついた状態で後ずさろうとしたものの、哀れなことに後ろは壁であつた。
「お、お願いします、………やめ、やめてください。お願いします。………………」
「んー? お兄ちゃんは自分に拒否権があると思ってるのん? それに、私は今、"気持ちが高ぶってる"んだから、お兄ちゃんがするべきなのは、そんな逃げ回るゴキブリみたいに壁を這うことじゃなくて、首を立てに振ることだよ」
だが裂けた口から精子を吐き出し続けてゐる弟を見て、誰が首を縦に振れようか、ヒクヒクとうごめく鈴口からカウパー液を放出し続けてゐる肉棒を見て、誰がうんと頷けようか。彼に選択権は無いとは言つても、命乞ひくらゐはさせても良いであらう。
「お兄ちゃんさ、情けないと思わない? 妹にハグされただけで絶叫して、妹に軽く投げられただけで気絶して、妹に敬語を使いながら怯えてさ、……………そんなにこの子の餌食になりたいのん?」
「こ、心百合、……………頼む。…………頼むから落ち着いてくれ。……………」
「んふふ、お兄ちゃんって諦めが悪いよね。でも嫌いじゃないよ、そういうところ。------」
「あ、あ、…………や、やめて、…………ああぁ、や、やめてくださ…………………」
「もう、しぃにぃと同じ反応しないで! お兄ちゃんでしょ? 弟の方がまだ潔くて男の子らしかったよ? っていうかさっき私に、犯さないで、って言ったのもしぃにぃだったじゃん」
心百合は土下座のやうに下を向く那央の頭を上げさせ、肉棒の先つぽを軽く口の中へねじ込む。
「あ、あが、………。ひ、ひや。……………」
「だからぁ、………バツとしてなおにぃを犯す時は、遠慮しないことにしよっかな。-----えへへ、大丈夫だって、しぃにぃはまだ生きてるし、大丈夫大丈夫。----------」
さうして彼女は本当に容赦なく、那央の頭を手で掴み固定して、一気に自身のモノの半分ほどを突つ込んだ。そして、前のめりになつて暴れる兄の体に背中から覆いかぶさるように抱きしめると、
「よっ、と。………」
と軽い掛け声をかけ、そのままスツと、まるでお腹にボールでも抱えてゐるかのやうに、何事も無く男一人を抱えて立ち上がつた。体勢としては、妹の男性器に串刺しにされた那央が、逆立ちするやうに足を天井へ向けて、心百合に抱きかかえられてゐる、と云へば伝はるであらうか、兎に角、小学生と言はれても不自然ではない小柄な体格の女の子に、標準体型の男が上下を逆にして抱えられてゐると云ふ、見慣れぬ人にとつては異様な状況である。
「~~!!!~~~~~~!!!!!!!」
「こら、暴れないで。いや暴れてもいいけど、その分どんどん入って行くから、お兄ちゃんが困ることになるよ?」
其の言葉通り、那央が暴れれば暴れるほど彼の体は、自身の体重で深く深く心百合のモノに突き刺さつて行く。が、其れでも精一杯抵抗しようと足をジタバタ動かしてしまひ、結局彼女のモノが全部入るのにあまり時間はかからなかつた。
「もう諦めよっ? お兄ちゃんはこれから私を慰めるための玩具になるんだから、玩具は玩具らしく黙って使われてたら良いの」
だがやはり、那央は必死で心百合の太腿を掴んで彼女の男性器を引き抜こうとしてゐる。なのでもう呆れきつてしまひ、一つ、ため息をつくと、
「いい加減に、………」
と云ひながら、彼の肋骨を拉げさせつつ二、三十センチほど持ち上げ、そして、
「………して!」
と、彼の体重も利用して腕の中にある体を振り下ろし、再び腹の奥の奥にまで男性器を突つ込ませた。
「っっっっっっ!!!!!」
「あぁんっ! やっぱり男の人のお口はさいこぉ、…………!」
心百合はよだれを垂らすほどに気持ち良ささうな顔でさう云ふのであるが、反対に、自分では到底抵抗できぬ力で体を揺さぶられた那央は、其の一発で何もかもを諦めたのか手をだらりと垂れ下げ出来るだけ喉が痛くならないように脱力すると、もう静かになつてしまつた。
「んふ、…………そうそう、それでいいんだよ。お兄ちゃんはもう私の玩具なの、分かった?」
さう云ひながらポンポンと優しくお腹を叩き、そのまま兄を抱えてベッドまで向かふ。途中、未だにケロケロと精液を吐き出してゐる詩乃がゐたが、邪魔だつたので今度は彼を壁際まで蹴飛ばしてからベッドに腰掛けた。そして、
「ちゃんと気持ちよくしてね」
と簡単に云つて、彼の腰の辺りを雑に掴み直すと、人を一人持ち上げてゐるとは思へ無いほど軽やかに、------まさに人をオナホールか何かだと勘違ひさせるやうな激しい動きで、兄の体を上下させて自身の肉棒を扱き出したのであつた。股を開き局部を露出してなお、上品さを失はずに顔を赤くし甘い息を吐き綺羅びやかな黒髪を乱す其の姿は、いくら彼女が稚い顔つきをしてゐると云へ万人の股ぐらをいきり立たせるであらう。勿論其れは実の兄である詩乃も例外ではない。どころか、彼はもう随分と妹の精液を吐き出しいくらか落ち着いてきてゐたので心百合と那央の行為を薄れていく意識の中見てゐたのであるが、自身の兄をぶらぶらと、力任せに上へ下へと上下させて快楽を貪る実の妹に対しこの上なく興奮してしまつてゐるのである。なんと麗しいお姿であらうか、たとへ我が妹が俺たちを死に追ひやる世にも恐ろしい存在であらうとも、ある種女神のやうに見えてくる。そして其の女神のやうな高貴な少女が、俺たち兄弟を道具として使ひ快楽に溺れてゐる。………なんと二律背反的で、背徳的で、屈辱的な光景であらう、人生の中でこれほど美しく、尊く、猥りがましく感じた瞬間はない。------彼はもう我慢できなくなつて、密かに片手を股にやり、ズボンの上から己の粗末なモノを刺激し初めたのであるが、ふと視線に気がついてグッと上を向くと、心百合が此方を見てニタニタと其の顔を歪ませ笑つてゐた。
「くすくす、……………お兄ちゃんの変態。もしかして、なおにぃが犯されてるの見て興奮してたの?」
心百合はもう那央の体を支えてゐなかつたが、其れでも其の体は床に垂直なまま足をぶらつかせてゐる。
「ほら、お兄ちゃんも出しなよ、出して扱きなよ。知ってるよ私、お兄ちゃんが密かに私の部屋に入って、枕とか布団とかパジャマとかの匂いを嗅ぎながら自慰してるの。全部許したげるからさ、見せてよ、お兄ちゃんのおちんちん」
「あっ、………えっ、…………?」
自分の変態行為を全部知られてゐた、-----其の事に詩乃は頭を殴られたかのやうな衝撃を受け、ベルトを外すことすらままならないほど手を震えさせてしまひ、しかしさらに自身のモノが固くなるのを感じた。
「ほら早く、早く、-----------」
心百合はもう待ちきれないと云ふ様子である。其れは年相応にワクワクしてゐる、と云ふよりは獲物を見つけて何時飛びかかろうかと身を潜める肉食動物のやうである。
「ま、まって、…………」
と、詩乃が云ふと間もなく、ボロンとすつかり大きくなつた、しかし妹のソレからすると無視できる程小さい男の、男のモノがズボンから顔を出した。
「あははははっ、なにそれ! それで本当に大きくなってるの?」
「う、……ぐっ…………!」
「まぁ、いいや。お兄ちゃんはそこでそのおちんちん? をシコシコしていなよ。もう痛いほど大きくなってるんでしょ? 小さすぎて全然分かんないけど」
と云つて心百合は那央の体を掴み、再びおぞましい音を立てながら"自慰"に戻つた。そして詩乃もまた、彼女に言われるがまま自身の粗末な男性器を握ると悔しさやら惨めさやらで泣きそうになつたが、矢張り妹の圧倒的な巨根を見てゐると呼吸も出来ないほどに興奮して来てしまひ、ガシガシと赴くがまま手を動かすのであつた。だが一寸して、
「あ、しぃにぃ、見て見て、-------」
と、心百合が嬉しさうな声をかけてくる。………其の手は空中で軽く閉じられてをり、那央の体はまたもや妹のモノだけで支えられてゐる。------と思つてゐたら突然、ビクン! と其の体が暴れた。いや、其れは彼が自分から暴れたのではなく、何かに激しく揺さぶられたやうだと、詩乃は感じた。
「ほらほら、------」
ビクン、ビクンと那央の体が中身の無い人形のやうに暴れる。
「------お兄ちゃんのちっちゃい、よわよわおちんちんじゃ、こんなこと出来ないでしょ」
ベッドに後ろ手をつきながら、心百合がニコニコと微笑んでさう云つてきて、やうやく詩乃にも何が起きてゐるのか理解できたやうであつた。まさか妹は人を一人、其の恐ろしい陰茎で支えるのみならず、右へ左へとあの激しさで揺れ動かしてゐるとでも云ふのであらうか。いや、頭では分かつてはゐるけれども、全然理解が追ひつかない。いや、いや、ちやつと待つてくれ、其れよりもあんなに激しく暴れさせられて兄貴は無事であらうか。もう見てゐる限りでは全然手に力が入つて無く、足もただ体に合はせて動くだけ、しかも、かなり長いあひだ呼吸を肉棒で押さえつけられてゐる。……………もう死んでしまつたのでは。----------
「んぁ? なおにぃもう死にそうなの? ………………仕方ないなぁ、ちょっと早いけどここで一発出しとくね」
男性器を体に突つ込んでゐる心百合には分かるのであらう、まだ那央が死んでゐないといふ事実に詩乃は安心するのであつたが、先程自分の中に流し込まれた大量の精液を思ふと、途中で無理矢理にでも止めねば本当に兄が死んでしまふやうな気がした。
「んっ、…………あっ、来た来たっ……………」
心百合はさう云ふとより強く、より包むように那央を抱きしめ、其の体の中に精を放ち始める。が、もう彼の腹がパンパンに張らうとした頃、邪魔が入つた。
「やめ、………心百合、もうやめ、…………!」
「なに?」
見ると詩乃がゾンビのやうに床を這ひ、必死の力でベッドに手をかけ、もう片方の手で此方の腕を握って、しかもほとんど残つてゐない歯を食ひしばつて、射精を止(や)めさせようとしてゐるではないか。兄のために喉を潰されても声をあげ、兄のために激痛で力の入らぬ足で此方まで歩き、兄のために勝ち目など無いと云ふのに手を伸ばして妹を止めようとする献身的な詩乃の姿勢に、心百合は少なからず感動を覚えるのであつたが、残念なことに彼女の腕を握つてゐる手は自身の肉棒を触つた手であつた。
「お兄ちゃん? その手はさっきまで何を触ってた手だったっけ?」
と云ふと、那央がどうなるのかも考えずに無理やり肉棒を引き抜きベシャリと其の体を床に投げつけ、未だ汚い手で腕を握つてくる詩乃の襟首を掴んで、ベッドから立ち上がる。
「手、離して」
「は、はい。………」
「謝って」
「あ、あぁ、……ご、ごご、ごめんなさい。……………」
「んふ、…………妹をそんな化物でも見るみたいな目で見ないでもいいんじゃないのん? 私だって普通の女の子なんだよ?」
「……………」
「ちょっとおちんちんが生えてて、ちょっと力持ちで、ちょっと頭が良いだけなんだよ。それなのにさ、みんなお兄ちゃんみたいに怯えてさ、……………」
「心百合、…………」
「------本当に、たまらないよね」
「えっ?」
「でも良かったぁ、……………もう最近、お兄ちゃんたちだけじゃなくて、友達の怯えた表情を見てると勃ってしょうがなかったんだもん。……………」
「こ、心百合、…………」
「だからさ、今日お兄ちゃんたちが部屋に入ってきて、犯さないで、って言った時、もう我慢しなくて良いんだって思ったんだよ。だって、お兄ちゃんも知ってるんでしょ? ふたなりにそういう事を言うと逆効果だって。知ってて言ったんでしょ? -------」
「まって、……そんなことは。…………」
「んふ、……暴れても無駄だよ、お兄ちゃん。もう何もかも遅いんだよ、もう逃れられないんだよ、もう諦めるしかないんだよ、分かった?」
「ぐっ!うああ!!!」
「あはは、男の人って本当に弱いよね。みーんな軽く手を握るだけで叫んでさ、ふたなりじゃなくっても女の子の方が、今の世の中強いよ、やっぱり。お兄ちゃんも運動部に入ってるならもっと鍛えないと、中学生どころか小学生にすら勝てないよ? …………あぁ、でもそっか、そう云えば、この間の試合は負けたんだっけ? 聞かなくてもあんな顔して夜ご飯食べてたら誰だって分かっちゃうよ」
心百合はさう云ふと、片手で詩乃を壁に投げつけた。
「ぐえっ、…………」
「-----ま、そういう事は置いといて、中途半端に無理やり出しちゃって気持ち悪いから、さっさとお尻に挿れちゃうね。しぃにぃは後でやってあげるから、そこで見てて」
詩乃が何かを云ふ前に心百合は、ひどい咳と共に精液と血を吐き出し床にうずくまる那央を抱えて、無理やり四つん這いの体勢にする。そしてジャージの腰の部分に手をかけて剥ぎ取るように下ろすと、其処にはまるで此れからの行為を期待するかのやうにヒクヒクと収縮するお尻の穴と、ピクピクと跳ねる那央のモノが見えた。
「なぁに? なおにぃも私にお口を犯されて興奮してたのん?」
「ぢ、ぢが、……ぢがう。………」
と那央が云ふけれども激しく嘔吐しながらも自身のモノを大きくすると云ふことは、さう云ふ事なのであらう。
「んふふ、じゃあもう待ちきれないんだ。いいよ、それなら早く挿れてあげるよ。準備はいーい?」
さながら接吻のやうに心百合の男性器と、那央の肛門がそつと触れ合ふ。が、少なく見積もつても肛門の直径より四倍は太い彼女のモノが其処に入るとは到底思へない。
「だめ、だめ、だ、だめ、………あ”ぁ、ゃ、………」
那央は必死に、赤ん坊がハイハイする要領で心百合から逃げようとしてゐるのであるが、彼女に腰を掴まれてしまつては無意味であらう、ただ手と足とがツルツルと床を滑るのみである。しかし其のあひだにも心百合のモノはじつとりと品定めするかのやうに、肛門付近を舐め回して来て、何時突つ込まれるか分からない恐怖で体が震えて来る。一体どれほどの痛みが体に走るのであらうか。一体どれほどの精液を放たれるのであらうか。妹はすでに、俺たち二人の腹を満杯にするまで射精をしてゐるけれども、未だ普段行われる自慰の一回分にも達してをらず、相当我慢してゐることはこの足りない脳みそで考へても分かる。分かるが故に恐ろしい、今のうちに出来る限り彼女の精液を吐き出しておかないと大変な事になつてしまふ。凡そ"気が高ぶった"ふたなりが情けをかけ射精の途中で其の肉棒を引き抜いてくれるなんて甘い希望を持つてはいけない。況してや先つぽだけで我慢してくれるなど、夢のまた夢であらう。…………あゝ、こんなことになるなら初めからダンベルなど放つておけばよかつた、どうしてあの時詩乃に、云ひに行くぞ、などと持ちかけてしまつたのか、あのまま何も行動を起こさなければ後数年、いや、後数日は生きていけさうであつたのに。あゝ、どうして。-------さう悲嘆に暮れてゐると、遊びもここまでなのか、心百合が自身のモノの先端を、グイと此方の肛門に押し付けて来た。そして、
「んふ、ちょっと痛いかもしれな��けど、我慢してね。-------」
と云ふ悦びに打ち震えた優しい声をかけられ、腰を掴んでいる手に力が込められ、メコリと肛門が広がる感覚が走れば直ぐ其の後、気を失ふかと思はれる程の激痛で目の前が真暗になつた。
「ぐごっ、…………ごげっ、ぐぁ、……………」
絶叫しようにも、舌が喉に詰まつて声が出てこない。だけどそんな空気の漏れる音を立ててゐるうちにも妹のソレはどんどん那央の中へ入つて来て、もう一時間もしたかと彼が思つた頃合ひにふと其の動きが止まり、次いで腰を握りつぶしてゐた手の力も抜けていき、たうたう全部入つたんだ、何とか耐えきつた、と安堵して息を吸つたのであるが、しかし心百合の言葉は彼を絶望させるのに十分であつた。
「------ちょっと先っぽだけ入れてみたけど、どう? 気持ちいい?」
「ぅご、………う、嘘だろ…………」
「嘘じゃないよ。じゃ、どんどん入れてくね」
「あがああああああああああっ、がっ、あっ、…………」
那央の絶叫は心百合に再び腰を掴まれ、メリメリメリ、………と骨が軋む音が再びし始めるとすつかり無くなつてしまつた。彼は激痛からもはや目も見えず声も出ず考へることすら出来ない状態なのだが、此れが人間の本能と云ふやつなのであらう、其れでも手を前に出し足を上げ、一人の可憐な少女から逃げようとしてゐるのである。が、いつしか手が空を切り膝が宙に浮くやうになるともう何が起きてゐるのか訳が分からなくなり、心無い者に突然抱きかかえられた猫のやうに手足をジタバタと暴れさせるだけになつてしまふ。そして、さうやつて訳が分からぬうちにも心百合の陰茎は無慈悲に入つて行き、体の中心に赤々と光る鉄の棒を突つ込まれたかのやうに全身が熱くなり汗が止まらなくなり初めた頃、いよいよお尻に柔らかい彼女の鼠径部の感触が広がつた。広がつてしまつた。
「んふふ、どう、お兄ちゃん? 気持ちいーい?」
「………………」
「黙ってたら分からないよぉ?」
と、云ひつつ心百合は腰を掴んでゐた手で那央の体を捻り其の顔を覗き込む。
「あがっ、…………」
「私はお兄ちゃんに気持ち良いかどうか、聞いてるんだけど」
「こ、こゆ、…………」
「んー?」
那央は黙つて首を横に振つた。当然であらう、自分の拳ほどの太さの陰茎を尻にねじ込まれ、体が動かないようにと腰を掴んでゐた手でいつの間にか持ち上げられ、内蔵を滅茶苦茶にしてきた陰茎で体を支えられ、もう今では中指の先しか手が床に付かないのである。例へ激痛が無くとも、腹に感じる違和感や、極度に感じる死の恐怖や、逃げられぬ絶望感から決して首を縦に振ることは出来ないであらう。
「そっか、気持ちよくないんだ。…………」
「はやく抜いてく、…………」
「------ま、関係無いけどね」
気にしないで、気にしないで、ちやんと気持ちよくしてあげるから、と続けて云ふと心百合は再び那央の腰を掴み直す。
「こ、こゆり!!! やめて!!!」
「うるさい! 女の子みたいな名前して、おちんちんで突かれたぐらいで文句言わないで!」
この言葉を切掛に、心百合は骨にヒビが入るほど其の手に力を入れ、陰茎を半分ほど引き抜いていく。そして支えを失つてもはや力なくだらりと垂れる兄を見、
「んふ、………」
と妖艶に色づいた息を漏らすと、彼のお尻に勢ひよく腰を打ち付けた。
「ぐがあぁ!!!!!」
「あぁん、お尻もさいこぉ。……………お兄ちゃんの悲鳴も聞こえるし、お口より良いかも、…………」
さう云ふと、もう止まらない。兄がどんなに泣き叫ぼうが、どんなに暴れようが自身の怪力で全て押さえ込み、其の体を己の腰使ひでもつて何度も何度も貫いて行く。そして初めこそ腰を動かして快楽を貪つてゐたが、次第に那央の事が本当に性欲を満たすための道具に見えてくると、今度は自分が動くのでは無くさつきと同じやうに彼の体を、腕の力だけで振り回して肉棒を刺激してやる。
「あぎゃっ! いぎぃ! おごぉっ!!-------」
「あはっ、お兄ちゃん気持ちよさそう。…………良かったねぇ、妹に気持ちよくしてもらえて。嬉しいでしょ?」
「こ、ごゆぅっ!! ごゆり”っ!!! ぐあぁっ!!!」
「なぁに、お兄ちゃん? 止めてなんて言わないでよね。いつもお勉強教えてあげてるのにあんな反抗的な目で見てきて、悔しかったのか知らないけど、どれだけ私が我慢してたか分かる?」
「じぬっ!! じぬがら!!! ゃめ!!!」
「…………んふ、もう大変だったんだから。毎日毎日、お風呂に入る前の一回だけで満足しなきゃいけなかった身にもなってよ」
「ぐぎぃっ!!こゆっ!!あ”あ”ぁっ!!!」
「でもさ、思うんだけど、どうしてあんな簡単な入試問題すら解けないのん? 私あの程度だったら教科書を読んだら、すぐに解けるようになってたよ? しかも小学生の頃に。入試まで後一ヶ月も無いのに大丈夫?
……………もうお兄ちゃんの代わりに大学行ったげるからさ、このままこんな風に私の玩具として生きなよ。そっちの方が頭の悪いお兄ちゃんにはお似合いだよ、きっと、たぶん、いやぜったい」
傷だらけの喉をさらに傷つけながら全力で叫ぶ那央を余所に、心百合は普段言ひたくて言ひたくて仕方無かつた事を吐露していくのであつたが、さうしてゐると自分でも驚くほどあつと云ふ間に絶頂へ向かつてしまつて、後数回も陰茎を刺激すると射精してしまひさうである。全く、この出来損ないの兄は妹一人満足させることが出来ないとでも云ふのであらうか。本当はこのまま快感の赴くがままに精液を彼の腹の中に入れてやりたい所だけど、折角手に入れた玩具を死なせてしまつては此方としても嫌だから、途中で射精を止めなければならぬ。いや、未だ壁の側で蹲つてゐるしぃにぃが居るではないか、と云ふかもしれないが人の腹の容量などたかが知れてゐて、満杯にした所で未だ未だ此の体の中には精液が波打つてゐる。-------あゝ、ほんの一合程度しか出ない男の人が羨ましい。見ると、なおにぃの股の下辺りに白い点々が着いてゐるのは多分彼の精液なのだと思ふが、なんと少ないことか。私もあのくらいしか出ないのであれば、心置き無く此の情けない体の中に精を放つことが出来るのに。……………
「------そろそろ、……そろそろ出るよ、お兄ちゃん。ちゃんと私の愛、受け止めてあげてね」
さう云ふと心百合は今までの動きが準備体操であつたかの如く、那央の体を激しく揺さぶり始める。そして最後、那央のお尻に自分のモノを全て入れきり目を閉じたかと思ひきや、
「んっ、んっ、………んん~~~。…………」
と、其の身を震わせて精子を実の兄の体の中で泳がせるのであつた。が、矢張り彼女にもどこか優しさが残つてゐたのか数秒もしないうちに、じゅるん、と男のモノを引き抜き那央を床に捨て、どろり、どろりと、止めきれ無かつた精液を其の体の上にかけると、でも矢張りどこか不満であつたのか壁際で自身の小さな小さなモノを扱いてゐたもう一人の兄の方を見た。
「しぃにぃ、おまたせ。早くしよっ」
其の軽い声とは逆に、彼女の肉棒はもう我慢出来ないと言はんばかりに、そして未だ未だ満足ではないと云はんばかりに大きく跳ね床に精液を撒き散らしてゐる。一体、妹の小さな体のどこにそんな体力があるのか、もうすでに男を滅茶苦茶に嬲り、中途半端とは云へ三回も射精をしてゐると云ふのに、此のキラキラと輝くやうな笑顔を振りまく少女は全く疲れてなどゐないのか、これがふたなりなのか。-----------
「あ、えぁ、…………」
「? どうしたの? なにか言いたげだけど。………」
「そ、その、きゅ、きゅうけい。…………」
「--------んふ、何か言った? 休憩? 私、休憩なんて必要ないよ。それにお兄ちゃんも十分休んだんだから良いでしょ。……ねっ、早くっ、早くお尻出して?」
「い、いや、いや、…………………」
起き上がつてドアまで駆け、そして妹に捕まえられる前に部屋を後にする、……………さう云ふ算段を詩乃は立ててゐたのであるが、まず起き上がることが出来ない。なぜだ、足に力が入らない、----と思つたが、かうしてゐる内にも心百合は近づいて来てゐる。其の肉棒を跳ね上げさせながらこちらに向かつて来てゐる。-------もうじつとしてなど居られない。何とか扉まで這つて行き、縋り付くやうにしてドアノブに手をかける。が、其の時、背中に火傷するかと思はれるほど熱い突起物が押し付けられたかと思つたら、ふわりと、甘い甘い、でも決して淑やかさを失ふことの無い甚く魅惑的な匂ひに襲はれ、次いで、背後から優しく、優しく、包み込まれるやうにして抱きしめられてゐた。そして首筋に体がピクリと反応するほどこそばゆい吐息を感じると、
「おにーちゃんっ、どこに行こうとしてるのん? まさか逃げようとしてたのん?」
と言はれ、ギュウゥゥ、………と腕に力を入れられてしまふ。
「ぐえぇ、………ぁがっ!………」
「-----んふふ、もう逃げられないよぉ。しぃにぃは今から私に、……この子に襲われちゃうの。襲われてたくさん私の種を吐き出されちゃうの。------ふふっ、男の子なのに妊娠しちゃうかもね」
「ご、ごゆり、…………あがっ、………だれかたすけて。……………」
と云ふが、ふいにお腹に回されてゐた手が膝の裏に来たかと思へば、いつの間にかゆつくりと体が宙に浮いて行くやうな感じがした。そして顔のちやつと下に只ならぬ存在感を感じて目を下に向けると、すぐ其処には嫌にぬめりつつビクビクと此方を見つめて来る妹の男性器が目に留まる。そして、足を曲げて座つた体勢だと云ふのに遥か遠くに床が見え、背中には意外と大きい心百合の胸の感触が広がる。…………と云ふことはもしかして俺は今、妹に逆駅弁の体位で後ろから抱きかかえられて、情けなく股を開いて男のモノを入れられるのを待つてゐる状態であるのだらうか。まさか男が女に、しかも実の妹に逆駅弁の体勢にされるとは誰が想像できよう、しかし彼女は俺の膝を抱え、俺の背中をお腹で支えて男一人を持ち上げてしまつてゐる。兄貴は心百合のモノが見えなかつたからまだマシだつただらうが、俺の場合は彼女の男性器がまるで自分のモノかのやうに股から生えてゐて、……………怖い、ただひたすらに怖い、こんなのが今から俺の尻に入らうとしてゐるのか。------
「あれ? お兄ちゃんのおちんちんは? どこ?」
詩乃はさつき自身のモノをしまふことすら忘れて扉に向かつたため、本来ならば逆駅弁の体位になつて下を向くと彼の陰茎が見えてゐるはずなのだが、可哀想なことに心百合のモノにすつぽりと隠れてしまつて全く見えなかつた。
「あっ、もしかしてこの根本に感じてる、細くて柔らかいのがそうなのかな? いや、全然分かんないけど」
心百合のモノがゆらゆらと動く度に詩乃のモノも動く。
「本当に小さいよね、お兄ちゃんのおちんちん、というか男の人のおちんちんは。私まだ中学一年生なのにもう三倍、四倍くらい?は大きいかな。…………ほんと、精液の量も少ないし、こんなのでよく人類は絶滅しなかったなぁって思うよ。-----まぁ、だから女の人って皆ふたなりさんと結婚していくんだけどね。お兄ちゃんも見てくれは良いのによく振られるのはそういうことなの気がついてる? 女の人って分かるんだよ、人間としての魅力ってものがさ。------」
「こゆり、…………下ろして。…………」
「あはは、役立たずの象徴を私のおちんちんで潰されてなに今更お願いしてるのん? ふたなりに比べて数が多いってだけで人権を与えられてる男のくせに。お兄ちゃんは、お兄ちゃんとして生まれた時点で、もう運命が決まってたんだよ。…………んふ、大丈夫大丈夫、心配しないで。もしお兄ちゃん達に人権が無くなっても、私がちゃんと飼ってあげるから、私がちゃんとお兄ちゃんにご飯を食べさせてあげるからさ、そんな不安そうな顔する必要ないよ、全然。--------」
「こゆ、り。…………」
「だって私、お兄ちゃんたちのこと大好きなんだもん。なおにぃにはあんなこと言ったけど、なんていうか二人とも、ペット? みたいで可愛いんだもん。だから普通の男の人よりは良い生活をさせてあげるから、さ、-----」
と、其の時、詩乃の体がさらに浮き始める。
「…………その代わりに使わせてね、お兄ちゃんたちの体。--------」
さう云ふと心百合は、早速兄の体を使おうと一息に詩乃を頭上へ持ち上げて、彼の尻穴と自身の雁首を触れ合はせる。意外にも詩乃��大人しいのはもう諦めてしまつたからなのか、其れとも油断させておいて逃げるつもりだからなのか。どちらにせよ動くと一番困るのは内蔵をかき乱される兄の方なのだから静かに其の時を待つてゐるのが一番賢いであらう。
「んふ、…………じゃあ、挿れるね。--------」
詩乃は其の言葉を聞くや、突然大人しく待つてなど居られなくなつたのであるが、直ぐにメリメリと骨の抉じ開けられる音が聞こえ、そして股から体が裂けていくやうな鈍い痛みが伝わりだすと、体全体が痙攣したやうに震えてしまひもはや指の一本すら云ふことを聞いてくれなかつた。其れでも懸命に手足を動かそうとするものの体勢が体勢だけにそもそも力が入らず、ひつくり返された亀のやうに妹の腹の上でしなしなと動くだけである。だがさうしてゐるうちにも、心百合は力ずくで彼の体に男のモノを入れていき、もう其の半分ほどが入つてしまつてゐた。
「そんな無駄な抵抗してないで、自分のお腹を触ってみたら? きっと感じるよ、私のおちんちん」
妹に言はれるがまま、詩乃はみぞおち辺りを手で触れる。すると、筍が地面から生えてゐるやうにぽつこりと、心百合の男性器が腹を突き破らうと山を作り、そして何やら蠢いてゐるのが分かつた。
「あっ、……はっ、………はは、俺の、俺の腹に、あぁ、……………」
「んふふ、感じた? 昔こういうの映画にあったよね、化物の子供が腹を裂いて出てくるの。私怖くて、お兄ちゃんに抱きついて見れなかったけど、こんな感じだった?」
「-----ふへ、………ふへへ、心百合の、こゆり、………こゆ、…………」
「あはっ、お兄ちゃんもう駄目になっちゃった? しょうがないなぁ、………」
と云ふと、心百合は腰を引いて詩乃の体から陰茎を少し引き抜く。
「-----じゃあ、私が目を覚まさせてあげる、………よっ!」
「っおごぁっっっ!!!!!」
其のあまりにも強烈な一撃に、詩乃は顔を天井に上げ目を白くし裂けた口から舌を出して、死んだやうに手をだらんと垂れ下げてしまつた。果たして俺は人間であるのか、其れとも妹を気持ちよくさせるための道具であるのか、いや、前者はあり得ない、俺はもう、もう、…………さう思つてゐると二発目が来る。
「ぐごげぇえええっっっっ!!!!!」
「んー、…………まだ目が醒めない? もしもーし、お兄ちゃん?」
「うぐぇ、……げほっ、げほっ、………」
「まだっぽい? じゃあ、もう一発、………もう一発しよう。そしたら後はもうちょっと優しくしたげるから!」
すると、腹の中から巨大な異物が引き抜かれていく嫌な感覚がし、次いで、彼女も興奮しだしたのか背後から艶つぽい吐息が聞こえてくるようになつた。だけど、どういふ訳か其の息に心臓を打たせてゐると安心して来て、滅茶苦茶に掻き回された頭の中が少しずつ整頓され、遂には声が出るようになつた。
「こ、こゆり。………」
「うん? なぁに、お兄ちゃん」
「も、も、ももっと、もっと、…………」
もつと優しくしてください、と云ふつもりであつた。しかし、
「えっ、もっと激しくして欲しいのん? しぃにぃ、本当に良いのん?」
「い、いや、ちが、ちが、…………」
「----しょうがないなぁ。ほんと、しぃにぃって変態なんだから。……でもさすがに死んじゃうからちょっとだけね、ちょっとだけ。-------」
さう云ふと心百合は、今度は腰を引かせるだけでなく詩乃の体を持ち上げるまでして自身の陰茎を大方引き抜くと、其のまま動きを止めてふるふると其の体を揺する。
「準備は良い? もっと激しくって言ったのはお兄ちゃんなんだからね、どうなっても後で文句は言わないでね」
「あっ、あっ、こゆり、ぃゃ、……」
「んふ、-------」
と、何時も彼女が愉快な心地をする際に漏らす悩ましい声が聞こえるや、詩乃は床に落ちていつた。かと思えば、バチン! と云ふ音を立てて、お尻がゴムのやうに固くも柔らかくもある彼女の鼠径部に打ち付けられ、体が跳ね、そして其の勢ひのまま再び持ち上げられ、再度落下し、心百合の鼠径部に打ち付けられる。-------此れが幾度となく繰り返されるのであつた。もはや其の光景は遊園地にある絶叫系のアトラクシオンやうであり、物凄い勢ひでもつて男が上下してゐる様は傍から見てゐても恐怖を感じる。だが実際に体験をしてゐる本人からするとそんな物は恐怖とは云へない。彼は自分ではどうすることも出来ない力でもつて体を振り回され、腹の中に巨大な異物を入れられ、肛門を引き裂かれ、骨盤を割られ、さう云ふ死の苦痛に耐えきれず力の限り叫び、さう云ふ死の恐怖から神のやうな少女に命乞ひをしてゐるのである。だが心百合は止まらない。止まるどころか彼の絶叫を聞いてさらに己を興奮させ、ちやつと、と云つたのも忘れてしまつたかの如く実の兄の体をさらに荒々しく持ち上げては落とし、持ち上げては落とし、其の巨大な陰茎を刺激してゐるのであつた。
「あがあぁぁぁ!!!こゆ”り”っっっっ!!!!ぅごぉあああああっぁぁ!!!!」
「えへへ、気持ちいーい?」
「こゆりっっ!!こゆり”っ!!!!!こゆっ!!!!」
「んー? なぁに? もっと激しくって言ったのはお兄ちゃんでしょう?」
「あぁがぁぁっっ!!!ごゆ”り”っ!!!」
「んふふ、しぃにぃは本当に私のこと好きなんだねぇ。いくら家族でも、ちょっとドキドキしちゃうな、そこまで思ってくれると。------」
腰を性交のやうに振つて、男を一人持ち上げ、しかも其の体を激しく上下させてなお、彼女は息を乱すこともなく淡々と快楽を味はつてゐる。が、其の快楽を与えてゐる側、------詩乃はもう為すがまま陵辱され、彼女の名前を叫ぶばかりで息を吸えてをらず、わなわなと震えてゐる唇からは血の流れを感じられず、黒く開ききつてゐる瞳孔からは生の活力が感じられず、もはや処女を奪はれた生娘のやうに肛門から鮮血を垂れ流しつつ体を妹の陰茎に突き抜かれるばかり。でも、其れでも、幸せを感じてゐるやうである。何故かと云つて、彼ら兄弟は本当に妹を愛してゐるのである。其の愛とは家族愛でもあると同時に、恋ひ人に向ける愛でもあるし、崇敬愛でもあるのである。そしてそこまで愛してゐる妹が自分の体を使つて喜んでくれてゐる、いや彼の言葉を借りると、喜んで頂けてゐるのである。…………此の事がどれほど彼にとつて嬉しいか、凡そ此の世に喜ぶ妹を見て嬉しくならない兄など居ないけれども、死の淵に追ひ込まれても幸せを感じるのには感服せざるを得ない。彼を只の被虐趣味のある変態だと思ふのは間違ひであり、もしさう思つたのなら反省すべきである。なんと美しい愛であらうか。---------
「んっ、………そろそろ出そう。……………」
さうかうしてゐると、心百合はどんどん絶頂へと向かつて行き、たうたう、と云ふより、此れ以上快感を得てしまつては途中で射精を止める事が出来ない気がしたので、さつさと逝つてしまはうと其の腰の動きをさらに激しくする。
「ひぎぃ!!うぐぇ!!ごゆりっ!!じぬ”っ!!!じぬ”ぅっっっっ!!!!」
死ぬ、と、詩乃が云つた其の時、一つ、心百合のモノが暴れたかと思ひきや、唯でさへ口を犯された際の名残で大きく膨れてゐた彼の腹がさらに膨らみ、そして行き場を失つた精液が肛門をさらに切り裂きながら吹き出て来て、床に落ちるとさながら溶岩のやうに流れていく。
「あっ、あっ、ちょっ、…………そんなに出たら、………あぁ、もう! 」
心百合は急いで詩乃の体から男性器を取り出し床に捨てると、本棚に向かつて流れていく精液を兄の体を使つて堰き止め、ついでにもう殆ど動いてゐない那央を雑巾のやうに扱つて軽く床を拭き、ほつとしたやうに一息ついた。
「まだ出したり無いけど、ま、この辺にしておこうかな。………これ以上は本が濡れちゃう。-------」
続けて、
「なおにぃ、しぃにぃ、起きて起きて、-------」
だが二人とも、上と下の口から白くどろどろとした液体を吐き出し倒れたままである。
「-----ねっ、早く起きて片付けてよ。でないともう一度やっちゃうよ?」
と云つて彼らの襟を背中側から持ち、猫をつまむやうにして無理やり膝立ちにさせると、那央も詩乃も一言も声を出してくれなかつたがやがてもぞもぞと動き始め部屋の隅にある、彼女がいつも精液を出してゐるバケツを手に取り、まずは床に溜まつてゐる彼女の種を手で掬い取つては其の中に入れ、掬い取つては其の入れて"行為"の後片付けをし始めたので、其の様子を見届けながら彼女もウェットティッシュで血やら精液やらですつかり汚れてしまつた肉棒を綺麗にすると、ゴロンとベッドに寝転び、実の兄としてしまつた性交の余韻に、顔を赤くして浸るのであつた。
那央たち兄弟は体中に感じる激痛で立つことすら出来ず、ある程度心百合の精液をバケツに入れた後は這つて家の中を移動し、雑巾を取つて来て床を拭いてゐたのであるが、途中何度も何度も気を失ひかけてしまひ中々進まなかつた。なんと惨めな姿であらう、妹の精液まみれの体で、妹の精液がへばり付いた床を雑巾で拭き、妹の精液が溜まつてゐるバケツの中へ絞り出す。こんな風に心百合の精液を片付けることなど何時もやつてゐるけれども、彼女に犯されボロ雑巾のやうな姿となつた今では、自分たちが妹の奴隷として働いてゐるやうな気がして、枯れ果てた涙が自然と出て来る。-------あゝ、此の涙も拭かなくては、…………一つの拭き残しも残してしまつては、俺たちは奴隷ですらない、人間でもない、本当に妹の玩具になつてしまふ。だがいくら拭いても拭いても、自分の体が通つた場所にはナメクジのやうな軌跡が残り、其れを拭こうとして後ろへ下がるとまた跡が出来る。もう単純な掃除ですら俺たちは満足に出来ないのか。異様に眠いから早く終はらせたいのに全く進まなくて腹が立つて来る。が、読書に戻つて上機嫌に鼻歌を歌ふ妹のスカートからは、蛇のやうに”ソレ”が、未だにビクリ、ビクリと、此方を狙つてゐるかの如く動いてゐて、とてもではないがここで性交の後片付けを投げ出す事など出来やしない。いや、そもそもあれほど清らかな妹にこんな汚い仕事などさせたくない。心百合には決して染み一つつけてなるものか、決して其の体を汚してなるものか、汚れるのは俺たち奴隷のやうな兄だけで良い。-------さう思ふと急にやる気が出てきて、二人の兄達は動かない体を無理やり動かし、其れでも時間はかかつたが綺麗に、床に飛び散つた精液やら血やらを片付けてしまつた。
「心百合、………終わったよ。-----」
「おっ、やっと終わった? ありがとう」
「ごめんな、邪魔してしまって。…………」
「んふ、………いいよいいよ、その分気持ちよかったし。-------」
さう心百合が云ふのを聞いてから、兄二人は先程まで開けることすら出来なかつた扉から出て行こうとする。
「あ、お兄ちゃん、------」
心百合が二人を呼び止めた。そして、
「-----また明日もしようね」
とはにかみながら云ひ二三回手を振つたのであるが、那央も詩乃も怯えきつた顔をさらに怯えさせただけで、何も言はずそそくさと部屋から出ていつてしまつた。
「詩乃、…………すまん。…………」
心百合の部屋を後にして扉を閉めた後、さう那央が詩乃に対して云つたけれども、云はれた本人は此れにも特に反応せず自分の部屋に、妹の精液が入つたバケツと共に入りほんの一時間前まで全ての切掛となつたダンベルがあつた位置に座り込んだ。其のダンベルと云へば、結局心百合の部屋から出る時に那央が持つてゐたのであるが、自室に入る際に階段を転げ落ちてゐく音がしたから多分、兄と一緒に踊り場にでも転がつてゐるのであらう。もう其れを心配する気力も起きなければ、此れ以上動く体力も無い。なのに体中に纏わりつく心百合の精液は冬の冷気でどんどん冷え、さらに体力を奪つて来てゐる。ふとバケツの方に目を向けると、二人の血でほんのりと赤みがかつた妹の精液が半分ほ���溜まつてゐるのが見える。-------一体これだけでも俺たち男の何倍、何十倍の量なのであらうか。一体俺たちがどれだけ射精すれば此の量に辿り着けるのであらうか。一体どれほどの時間をかければ人の腹を全て精液で満たすことが出来るのであらうか。しかも此の液体の中では、男の何百、何千倍と云ふ密度で妹の精子が泳いでゐると云ふではないか。…………恐ろしすぎる、もはやこの、精液で満たされぱんぱんに張つた腹が彼女の子供を授かつた妊婦の腹のやうに見えてくる。もし本当にさうなら、なんと愛ほしいお腹なのであらうか。………だが残念なことに、男は受精が出来ないから俺たちは心百合の子供を生むことなど出来ぬ。其れに比べて彼女の子供を授かれる女性の羨ましさよ、あの美しい女神と本来の意味で体を交はらせ、血を分かち合ひ、そして新たな生命を生み出す、-------実の妹の嬲り者として生まれた俺たち兄弟とは違ひ、なんと素晴らしい人生を歩めるのであらう。だが俺たちの人生も丸切無駄では無いはずである。なんせ俺達は未だ生きてゐる。生きてゐる限り心百合に使つて頂き喜んで頂ける。もう其れだけで十分有意義である。詩乃はパキパキと、すつかり乾きつつある心百合の精液を床に落としながら立ち上がると、バケツに手をつけた。
--------と、丁度其の時、妹の部屋の方向から、ガチャリと扉の開く音がしたかと思えば、トントントン…………、と階段を降りていく軽い音が聞こえてきた。さう云へば、ふたなりも男と同じで射精をした後はトイレが近くなるらしいから、階段下のトイレに向かつたのであらう。と、詩乃は思ひながら其の足音を聞いてゐたのであるが、なぜか途方もない恐怖を感じてしまひ、心百合が階段を降りきるまで一切の身動きすら取らず、静かに息を潜めて心百合が戻つて来るのを待つた。----今ここで扉を開けてしまつては何か恐ろしいことになる気がする。…………其れは確かに、今しがた瀕死になるまで犯された者の「感」と云ふものであつたがしかし、もし本当に其の感の云ふ通りであるならば、先程階段を転げ落ちていつた那央はどうなるのであらう。多分兄貴も俺と同じやうに全く体が動かせずに階段下で蹲つてゐるとは思ふが、もし其処に心百合がやつて来たら? いや、いや、あの心優しい心百合の事だし、しかももう満足さうな顔をしてゐたのだから、運が良ければ介抱してくれてゐるのかもしれない。————が、もし運が悪ければ? 此の感が伝えてゐるのは後者の方である、何か、とんでもなく悪い事が起こつてゐるやうな気がする。さう思ふと詩乃は居ても立つても居られず、静かに静かに決して音を立てぬようそつと扉を開けると、ほとんど滑り落ちながら階段を降りて行く。途中、那央が居るであらう踊り場に妹の精液の跡があつたが、兄は居なかつた。でも其の後(ご)もずつと精液の跡は続いてゐたので何とか階段を降りきつたのであらうと一安心して、自身も階段を降りきると、確かに跡はまだあるのであるが、其処から先は足を引きずつたやうな跡であり、決して体を引きずつたやうな跡ではなくなつてゐる。…………と云ふことは、兄はもしかして壁伝いに歩いたのだらうか、------と思つてゐたら、ふいに浴室の方から声が聞こえてきたやうな気がした。最初は虫でも飛んでゐるのかと思つたけれども、耳を澄ますと矢張り、毎日のやうに聞いてゐる、少し舌足らずで可愛いらしい声が、冬の静寂の中を伝はつて確かに浴室から聞こえてくる。そしてよく見れば、兄の痕跡は其の浴室へ向かつて伸びてゐる。------いや、もしかしたら精液まみれで汚れてしまつた那央を綺麗にしようと、心百合がシャワーを浴びせてゐるのかもしれない、それに自分もティッシュで拭くだけでは肉棒を綺麗にした気がせず、もしかするとお風呂にでも浸かつてゐるのかもしれない。…………が、浴室に近づけば近づくほど嫌な予感が強くなつてくる。しかも脱衣所の扉を開けると、ビシュビシュと何やら液体が、無理やり細い管から出てくるやうな音、-----毎夜、妹の部屋から聞こえてくる、兄弟たちを虜にしてやまない"あの"音が聞こえてくる。
「あ、あぁ、…………」
と声を漏らして詩乃は、膝立ちになり恐る恐る浴室の折戸を引いた。すると心百合は其処に居た。此方に背を向け少し前のめりになり、鮮やかな紺色のスカートをはためかせながら、腕を大きく動かして甘い声を出して、確かに其処に居た。-----
「こ、こゆり。……………」
「うん? もしかして、しぃにぃ?」
心百合が此方に振り向くと、変はらずとろけ落ちさうなほど可愛い彼女の顔が見え、そして彼女の手によつて扱かれてゐる、変はらず悪夢に出て来さうなほどおぞましい"ソレ"も見え、そして、
「あんっ、…………」
と、甲高い声が浴室に響いたかと思えば腕よりも太い肉棒の先から白い液体が、ドビュルルル! と天井にまで噴き上がる。
「あぇ、こゆり、………どうして、…………」
「んふ、やっぱり中途半端って良くないよね。もうムラムラしてどうしようも無かったから、いっその事、我慢しないことにしたんだぁ。……………」
其の歪んだ麗しい微笑みの奥にある浴槽からは、彼女の言葉を物語るかのやうに入り切らなかつた精液がどろどろと床へと流れ落ちていつてゐる。……………いや其れよりも、其の精液風呂から覗かせてゐる黒いボールのやうな物は、其れに縁にある拳のやうな赤い塊は、もしかして、-------もしかして。………………
「あ、兄貴、…………」
もう詩乃には何が起きてゐたのか分かつてしまつた。矢張り、良くないことが起きてゐた。其れも、最悪の出来事が起きてゐた。-------射精は途中で無理やり止めたものの合計で四回も絶頂へ達せられたし、其れなりに出せて満足した心百合は、兄たちが"行為"の後片付けをしてゐる最中に読書を再開したけれども、矢張りどこか不満であつたのか、鼻歌を歌ふほど上機嫌になりつつも悶々としてゐたのであらう。何しろあの時妹の肉棒は、惨めに床を拭く俺たちを狙ふかのやうに跳ねてゐたのである。其れで、兄たちが居なくなりやうやく静かになつて、高ぶつた気もついでに静まるかと思つたのだが、意外にもさうはならない、むしろ妹の男性器はどんどん上を向いていく。あゝ、やつぱりお兄ちゃんたちの顔と叫びは最高だつた。あれをおかずにもう一発出したい。………と思つても、兄たちがバケツを持つていつてしまつたので処理をしようにも出来ず、結局我慢しなければならなかつたが其のうちすつかり興奮しきつてしまひ、ベッドから起き上がつて、一体どうしたものかと悩んだ。------いや別に、バケツはあと一つ残つて居るのだから今ここで出してもよいのだけれども、其れだけで収まつてくれる筈がない。お風呂も詰まつてはいけないとお兄ちゃん達が云ふから駄目だし、外でするなんて、夜ならまだしもまだ太陽が顔を覗かせてゐる今は絶対にやりたくない。そもそも外でおちんちんを出して自慰をするなぞ其れこそ捕まつてしまふ。どうしよう。…………さう云へばさつき、さういえば階段からひどい音が聞こえたのは少し心配である。もう二人は歩くことも出来ないのかしらん。可哀想に、歩くことも出来ないなんて其れは、其れは、……………もはや捕まえて欲しいと自分から云つてゐるやうなものではないか。さうか、お兄ちゃんたちをもう一回犯せば良いんだ。どつちが階段を下りていつたのかは知らないが、歩くことも出来ないのだから下の階には二人のうちどちらかが未だ居るはず、いや、もしかしたら二人共居るかもしれない。-------と、考へると早速部屋から出て、階段を下り、下で倒れてゐた那央を見つけると服を汚さぬよう慎重に風呂場まで運んで、そして、----ここから先は想像するのも嫌であるが、心置きなく犯して犯して犯して犯したのであらう。浴室に散乱するシャンプーやらの容器から那央が必死で抵抗したのは確かであり、其れを己の力で捻じ伏せ陵辱する様は地獄絵図であつたに違いない。いや、地獄絵図なのは今も変はりは無い。何故かと云つて心百合のモノは此方を見てきてゐるのである。ビクビクと自身を跳ね上げつつ、ヒクヒクと鈴口を蠢かしてゐるのである。此の後起こることなんて直ぐ分かる。-------逃げなくては、逃げなくては、………逃げなくてはならぬが、心百合がほんのりと頬を赤くし愉快な顔で微笑んで来���ゐる。あゝ、可愛い、………駄目だ、怖い、怖くて足が動かない。…………と、突つ立つてゐると心百合の手が伸びてくる。そして、抱きしめられるやうにして腰を掴まれるとやうやく、手が動くようになり床に手を付けた。が、もう遅い。ずるずると、信じられない力で彼の体は浴槽の中へ引きずり込まれていく。どれだけ彼が力強く床に手を付けようとも、どれだけ彼が腰に回された手を退けようとも、ゆつくりと確実に引きずり込まれていく。そして、またたく間に足が、腰が、腹が、胸が、肩が、頭が、腕が、どんどん浴室の中へと入つて行き、遂に戸枠にしがみつく指だけが外に出てゐる状態となつた。が、其の指も、
「次はしぃにぃの番だよ? 逃げないで。男でしょ?」
と云はれより強く引つ張られてしまふと、耐えきれずにたうたう離してしまつた。
「やめてええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
心百合と云ふたつた一三歳の、未だぷにぷにと幼い顔立ちをした妹の力に全く抗えず、浴室に引きずり込まれた詩乃はさう雄叫びを上げたが、其の絶叫も浴室の戸が閉まると共に小さくなり、
「んふ、………まずはお口から。-------」
と、思はず恍惚としてしまふほど麗しい声がしたかと思ひきや、もう聞こえなくなつてしまつた。
(をはり)
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経ヶ岳山頂からの白山連峰です。 白山が近い!!w ど迫力だよ~!w この角度からの白山連峰! 良いです!! 別山!! ん?? 手前に避難小屋が見える?? ということは赤兎山かな?? (画像をクリックで拡大表示できます!) 北アルプス方面
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歯車の塔の探空士 「ドーントレス・カリーナ号」の冒険記2
!注意! 公式シナリオ「いつか夢見た空の上で」のネタバレを含みます。 遊ぶ予定のある方は読まないでください。 また、身内ノリ、ゆるい裁定、しょうがっこうれべるのけいさんみすなどが多分に含まれます。苦手な方は回れ右です。
GM : では、本日はフライトフェイズからのスタートです! GM : まず全員、PCが艇内のどこにいるか配置をおねがいしまーす。 莵毘丸 : 見張り台って外なんですよね?この時点でいてもいいところですか? GM : 見張り台、今からいてもOKです! 莵毘丸 : 見張り台にいます^^ カノープス : カノープスはどこにいようか 砲撃担当だし前方のカノン砲かな… カノープス : 湯沸かし器も真下にある 莵毘丸 : わざわざ一番下まで移動するの大変そうなのでいいまのままの方がいいですね! ロア : ですね! カノープス : こんな感じですかね ロア : 初期位置が操舵室なのって利点ありますか? GM : 現時点での現在地は特に関係はしませんので、雰囲気で! ロア : わかりました!ありがとうございます! カノープス : あ、特に関係ないならもう湯沸かし器のところにいよう… カノープス : お茶を淹れよう GM : では…では空路図オープン!
※PLたちの目の前に、空路図が開示される。 内容は、公式ルールブックP159「定期連絡航路」と同様だ。
莵毘丸 : おお~~ ロア : おおお! カノープス : おおー カノープス : 船のアイコンがとてもかわいい 莵毘丸 : うんうん ロア : かわいい! GM : エヘヘ GM : みんなのふねです かわいがってあげてね(耐久度4)
GM : 習うより慣れろなので、今回はまずホークからシーンプレイヤーやらせていただきますね! カノープス : はーい ロア : お願いします! 莵毘丸 : おねがいします!
ホーク : じゃあオイラからいくぜー! ホーク : オイラは初期位置から「操舵室」に移動して航行チェック! ホーク : 1d6 (1D6) > 5 ホーク : 分岐か…本来はシーンプレイヤーに決定権があるんだけど、「大将、アネさん、アニキ、どうしやす?」 莵毘丸 : 上色々起こりそうですね カノープス : 遭遇か航行か…確かに上は色々ありますね 主に困難が ホーク : みんなだいすきイベント表
※大丈夫!冒険企画局のランダム表だよ!!
ロア : うーん……? 莵毘丸 : キズナ深められるなら船内のほうがいいのかな カノープス : みんなの親交を深めるなら下 上は…たぶんなんか手がかりとかが手に入るのではないか… GM : あ、「手がかり」は GM : イベント表を振り直すための共通資産で、「偵察系」パーツにいるPCが「偵察判定」に成功すると入手できます GM : なので、考えるべきはどんな雰囲気のイベントを楽しみたいか、ですね! カノープス : なるほどなるほど カノープス : どちらであっても美味しいのは確かだ どうします皆さん? ロア : どっちも楽しそうですよね……どうしましょうか…… 莵毘丸 : おもしろそうなので遭遇しますか カノープス : いっちゃいましょうか! ロア : そうしましょうか! 莵毘丸 : このキャラならそういうかなw ロア : たしかにそれっぽいですね!
※とてもだいじな視点。
ホーク : 「りょーかい!ヨーソロー!!」 ホーク : おっと、その前にオイラは「コミュ力」のスキル効果でアニキに一方的にキズナを取るぜ!!! カノープス : 一方的にキズナ取るの、押しかけ舎弟っぽくてすごくいいですね… ロア : 素敵だ~! 莵毘丸 : うおおおお何故かチュン助のことをちょっと気になってしまうやつ カノープス : 侮りがたしスズメのコミュ力 ロア : つよい…… GM : ただし、このスキル効果では莵毘丸さん側からはキズナ取得できません 莵毘丸 : wwwwwww ロア : 一方通行ww GM : 基本的に「キズナ」は一方通行です。あしからず 莵毘丸 : 視線を感じる… ロア : そうなのか! 莵毘丸 : なるほどなあ ホーク : そして航行イベント表(遭遇系)を2d6だ! ホーク : 2d6 (2D6) > 8[3,5] > 8 GM : 読み上げますね GM : ソラクジラ 【効果】 船内マップ上にいるすべてのキャラクターは、【生命点】を「1D6点」回復させる。 GM : <フレーバーテキスト> 雲の中から、巨大なソラクジラが浮かび上がる。きゅうんという独特の鳴き声をあげて、ゆっくりと、落ちるように雲の下へ戻っていくソラクジラの雄大な姿は、なかなか見られるものじゃない。息を呑む圧巻の光景に、しばし目を奪われよう。 ロア : おおお……こういう感じなんですね……! 莵毘丸 : おおおお カノープス : これは幸先がよい 莵毘丸 : 「良いもン見たなあ!」 莵毘丸 : 「あー酒持ってくりゃよかった」 ホーク : じゃあ伝声管からチュンす…オイラの声が聞こえるぜ! 「皆さーん!8時方向!8時方向に何かいやすー!!」 ロア : 特に反応が無いように見えてだいぶご機嫌なロア。 ホーク : 言われた方向を見やると、雲海からソラクジラがきゅうん…と鳴き声を空に響かせて、その巨体を空に舞わせるわけです カノープス : お湯沸かしてティーカップ温めたりしていたところ、ふと窓の向こうに雄大なソラクジラの姿を認めて、「これは…」と カノープス : かつてご主人さまに教えてもらった、けれどご主人さまも見たことはないというソラクジラの姿ではないでしょうか、と 瞬きをしない目でじっと見入ります 莵毘丸 : すごい楽しそうな顔で見てます。酒ほしい~ ホーク : 「今日の空はご機嫌でやんすなあ!!」 ホーク : ということで、次のシーンプレイヤーの方にバトンタッチでーす ホーク : あ、アクションの処理してなかった ホーク : 同じパーツ内にいる姉さんに「交流」してキズナします ロア : おお!? 莵毘丸 : ひとりキズナを取っていくチュン… GM : ただしこれも一方通行なんだなあ ロア : www カノープス : コミュ力 #とは ホーク : 「姉さん姉さん!見やしたかさっきの!!」チュンチュン ロア : 絆とは…… ロア : 「ええ、見たわ」 ホーク : 「…姉さん、なんか上機嫌そうでやんすね!」 ロア : 「ふふ、そう見えるのならそうなんじゃないかしら?」 ロア : だいぶ上機嫌です。 ホーク : 姉さんが嬉しそうなのでホークもチュンチュン嬉しそうに鳴いてます ホーク : キズナしました!次の方どうぞ! ホーク : なんかこう、口元がいつもより柔らかかったんだろうなあ姉さん ホーク : 「舵は見ときやす。姉さん、お茶でも飲んできたらどうですかい?」 ロア : シカトしないということはだいぶすごい上機嫌ですね。 ホーク : いつもはシカトされるチュン助…
【リミット:6→5】
カノープス : シーンプレイヤーはどういう順番です? GM : 順番は任意です! GM : 迷うようならアイコンの並びとかでいいとおもいます カノープス : 誰かやりたい方います? ロア : 上から順でよければそれで……! カノープス : 私はそれで構いませんよー 莵毘丸 : では兎からか GM : 最初に移動からどうぞ! 莵毘丸 : 移動はすきなところいけるんですか GM : ですです GM : 使いたいパーツあればそこへ行くのがベターですね 莵毘丸 : うーん図書室入ってみたいんだけど 莵毘丸 : せっかくなので GM : 良いと思います!>図書室 莵毘丸 : では移動!パーツカタログとかねえのかなって(世界観…) GM : アルトオモイマス カノープス : パーツカタログ…なんて夢のある響きだ… ロア : いい……
※飛空艇のすべてが載っている!!「歯車の塔の探空士 基本ルールブック」、好評発売中!!!!(amazon)(DMM)
GM : では次に航行チェックです。1d6どうぞ! 莵毘丸 : 1d6 (1D6) > 1 GM : 1スポット分フネを進めてください! 莵毘丸 : 困難しかねえww ロア : 本当だww GM : ニッコリ
※よりによって困難マスを引き当てる莵毘丸PLさん。内容を知っているGMは内心ドキドキである。
莵毘丸 : まてよ…上に行けば、今後のルートには遭遇がある 莵毘丸 : 上! GM : どうぞ! GM : では航行イベント表(困難系)です!2d6どうぞー 莵毘丸 : 2d6 (2D6) > 6[3,3] > 6 莵毘丸 : どきどき GM : お GM : 読み上げますね GM : 落雷 【効果】 飛空艇は「D/3」のダメージを受ける。このダメージに《回避運動》のスキル効果を使用することはできない。 GM : <フレーバーテキスト> 突如、飛空艇を轟音と、閃光が包む。何事か、とキミが周囲を確認するより先に、フネに稲妻がほとばしり、どこかが焼ける焦げ臭い匂いが、キミの鼻腔をつく。これはまずいぞ。はやくこの空域を抜けるんだ! GM : 莵毘丸さんが図書室のドアを開こうとしたあたりで、ピカッとこう 莵毘丸 : 「うおっ」さすがにびっくり ホーク : 「ヤ、ヤベエー!!」チュンチュン GM : 被害箇所だしまーす
粛々と被害箇所にダメージチェック用のマーカーを配置していくGM。幸いにも一発は外れ、被害箇所は船室、そして…
カノープス : 誰の船室だろうあれ… GM : 誰の船室ですかね きめとくとタノシイデスヨ GM : アッ ロア : あwwww 莵毘丸 : 大変なことにww ロア : ダメージロールですかね?w GM : ですね💗 莵毘丸 : 本当に大変なことにww
なんと、操舵室のロアがいるマスを直撃する。どよめく一同。
GM : ロアさんは1d6点ダメージです ピシャーン ロア : はーい ロア : 1d6 (1D6) > 6
そして最大値を引き当てるロアPL。
莵毘丸 : ひえ カノープス : (自分のシーン時に何をすればいいか確定した顔) ロア : wwwwwwwwwwww GM : スッゴイイタイヨ ロア : めちゃくちゃ直撃してるwwwww 莵毘丸 : やばすぎるww GM : では落雷が操舵室を直撃し、ロアさんは全身を痙攣させてその場に倒れました system : [ ロア ] 生命点 : 10 → 4 ホーク : 「アネさーん!!!」 ロア : ごめんよPLのせいで��サイことにwwww GM : びりびり GM : 立ってた場所が悪かった ロア : (フラッ……ばたーん) 莵毘丸 : 位置をあんまり考えてなかったけどそういうことか・・
※ソウダヨ。
GM : あ、あと「船室」の半分以上が「破損」したので「大破」しました カノープス : 給湯室にいても聞こえるホークさんの声に身構えます 急いで駆けつけねば… カノープス : というか大破が早い! 早いよ! 莵毘丸 : 大破wwww GM : フネの耐久度が-1されます ロア : 大破かぁww カノープス : これが某お船のゲームだったら今すぐ撤退ですよ!!!
※帰ろう。帰ればまた来れるから。
GM : あと、操舵室が一か所「破損」したため「中破」です。回避運動が行えません 莵毘丸 : やべえ ロア : 直さないと(人も船も) GM : うんうん 莵毘丸 : 人の次は操舵室優先ですねこれは ロア : 本当に素晴らしい位置に被弾したんだなぁ…… 莵毘丸 : 私のダイス力で船と人に多大な被害をw ロア : 逆にとても素晴らしいと思いますw最大値引いてしまったのは私ですし……この船なかなかやりますね(?)w カノープス : 順番でいえば次はロアさんのシーンですけど、この状態で何かできるのでしょうか… GM : 船室は…チュン助のかな…一番通り道になってそうだし ホーク : 「オイラ秘蔵のウィスキーがー!!」 GM : アネさんの部屋でもいいのよ ロア : どちらでもww 莵毘丸 : www ホーク : 2d6振って出目悪い方の部屋にしますかw ロア : はいw ホーク : 2d6 (2D6) > 8[5,3] > 8 ホーク : ドヤァ ロア : 2d6 (2D6) > 5[3,2] > 5 GM : wwwww カノープス : お嬢様… ロア : ふふwww今日はやばいなwww 莵毘丸 : wwww ホーク : 「アネさんの部屋がーー!!」どーん カノープス : 「なんということでしょう…折角掃除したばかりのお嬢様の部屋が…」(※紅茶を淹れながら) ロア : これは逆に持ってるよロア……私はワクワクしてきましたよ…… GM : で、下でてんやわんやしてますが。莵毘丸さんはそのまま「アクション」してもらってどうぞ 莵毘丸 : このじょうきょうw GM : なんかしたがさわがしいなーって ロア : wwwwwww 莵毘丸 : 「さわがしいけど 呼ばれてねえし大丈夫だろ」 莵毘丸 : で、パーツ効果w GM : はーい! GM : フネ自慢の蔵書室。機関室の真横だというのに、この部屋に来るとエンジンの音がどこか遠くに感じる気がする。 GM : 喧噪もどこか遠くに。とおーーーくに。 GM : お好きな能力を「得意」にしてください! GM : ちなみに今回、直撃した場所はさておきマシなほうの結果です。困難系。 莵毘丸 : ましだったの・・・ ロア : それはこわい…… カノープス : これでマシなほうかあ…まあダイス次第ではいくつも外れる可能性はあるものねえ 莵毘丸 : はいっちゃったもんねー。技術を得意に GM : はい、どうぞ!パーツカタログを見てインスピレーションを得た感じですかね。 莵毘丸 : 「ぴーんと来たぜ!」 ホーク : さすアニ
※さっすがアニキ!の略である。
GM : で、図書室を出たらなんか焦げ臭い、と ロア : www 莵毘丸 : 「なンだこの臭い…」 ホーク : 伝声管で「アニキー!さっきの落雷でフネが何か所かやられちまいましたー!!アネさんも!」 莵毘丸 : 「なっ!?早く言いやがれチュン助!」 ホーク : 「これでも呼んでたんスよー!!」チュンチュン GM : よければ次の方、ですかね! 莵毘丸 : どうぞどうぞ
【リミット:5→4】
ロア : これロアは手番飛ぶ感じですかね? GM : いえ、動けますよ! GM : フネは傷んだけどヒトは動ける ロア : なるほど!? ロア : 回復手段……はないですよね? カノープス : 休息すれば… カノープス : (お部屋に戻れば3回復かな) GM : ですです アクションの ・休息(生命点を【快適度】分回復する) GM : です! ロア : あ、なるほど! ホーク : 「アネさん、オイラの部屋でよかったら休んできたほうが…」 ホーク : どっちがホークの部屋かな。アニキどっちがいいです? 莵毘丸 : うえ!
※即答するアニキ、好きです。
ホーク : はーい!ではカノン砲真横の部屋がオイラの部屋だ! ロア : そういえばロイくんってNPCどこにいるんでしたっけ? GM : 倉庫、あるいは任意の船室で GM : ホークが羽毛布団に、みたいな話をした気がするのでホークの部屋にいますかね カノープス : 処理的には倉庫だけど、誰かの部屋に入れてあげたいね、って話をしてましたよね ロア : 了解です!では…… ロア : 気絶してたかと思ったら突然ガバッと起き上がって ロア : 「……ふ、ふふふふ……あは、あははははははは!!これだから旅は素敵だわ!!!」 莵毘丸 : やべえw ホーク : 「チュン……」プルプル
ロア : と、大笑いしながら大破してる自分の船室を通り抜け階下のホークの船室のベッドに勢いよくばたんきゅーします。 カノープス : アドレナリンとかに飢えていらっしゃるタイプの方だったか… ロア : たぶんロイくんはとてもびっくりしてしまっただろう……。 GM : ロイくんがあわあわしながら見守ります。「空って怖いなぁ…」 GM : では航行チェックどうぞ!1d6です! ロア : 1d6 (1D6) > 5 GM : お、2スポット進めてください 莵毘丸 : おっ ロア : スキル使ったらもう1マスかと思ったけどチェックマスだなぁ。 GM : ですね GM : ちなみに黄金の羅針盤は出目を操作するので、出目-1(2スポット)か出目+1(3スポット)ですね ロア : はーい GM : ではチェックポイントです。イベントが発生します GM : 描写しますね~
GM : キミたちのフネの頭上に巨大な軍艦が現れて影を落とした。どうやら、空軍の検問のようだ。 GM : しばらく指示通りにフネを停船させていると、赤い軍服を身にまとった軍人が数人、キミたちのフネに降り立ってくる。 隊長なのだろう、恰幅の良いひとりはキミにいくらかの書類を手渡すと、自信ありげな風にこう話しかけてきた GM : 「いやあ、諸君らには手間をかけますな。だがここから先は、お世辞にもあまり治安がよくない空域。用もなく立ち入るものではありませんぞ」 GM : 「まぁ、それももうあと少しの話ですがな!」 GM : ちなみに、全員いることにして良いですよ カノープス : あ、じゃあ一応船長は応対に出てたほうがいいな GM : 甲板かどこかですかね。空軍の検閲なので、さすがに顔は出さざるをえないでしょう 莵毘丸 : なんかあったらなので後ろに居ます GM : 後ろにロイくんもいますね ロア : 寝てたのでちょっと不機嫌にしてます カノープス : お嬢様の容態を心配しつつ、空軍の皆さんに事務的に対応しつつ、ふと「もうあと少し、とは?」と尋ねましょう GM : 尋ねられれば、隊長は誇らしげに胸を張ります 「うむ、よくぞ聞いてくれた!」 GM : 「長年、この空域の空賊は野放しとなっていましたが、軍上層部はついに、ここで大規模な討伐作戦を決行することにしたのです。巡空艦4隻に加え、最新鋭の戦列艦、“クイーン・エスメラルダ2世” 号が、この空域を一掃いたしますぞ!」 GM : 「両舷54 門の艦砲射撃を浴びれば、空賊などどくろ雲ごと消し飛んでしまうでしょうな!」 カノープス : (あっやばいやつだ) 莵毘丸 : 「そりゃまた派手なこって…」 ロア : これはなんか大変そう……? カノープス : 「…さようでございますか。空軍の勇士のかたがたにおかれましては、まことに忠烈なお働きで」 カノープス : 等と返答しつつ、内心では気を揉み始めている カノープス : 下手したら「アニキ」も一緒に消し飛ばされるわけですよねえ ロア : ですよね…… 莵毘丸 : こまる ホーク : 「ヒューッ!クイーン・エスメラルダ2世だって!?あれかあ!でっけえなあ!!」チュンチュン GM : 「うむ!うむ!!諸君らは安心して仕事を続けてくれたまえ!!はっはっは!!」 GM : ロイくんを気にするなら、顔を真っ青にして話を聞いています GM : 彼らはひととおり言葉をかわすと、問題がないことを確認して「女王陛下万歳!」ととなえて去っていきます。 カノープス : 「…急がねばなりません、お嬢様、皆様。彼らは空賊船の乗組員を逐一確認することなど絶対にいたしませんでしょうから」 莵毘丸 : 「参ったねえ。タイミングがよすぎらあ…おまえの兄貴は相当運が悪ぃみてえだな」 ロア : 「そうねぇ……仕事が雑でいけないわ」 GM : ロイくんがカノープスの服のすそをぎゅっと掴みます。「アニキは…アニキはどうなるんです?!」 カノープス : 「彼らにとっては、汚染された麦ひとつぶを取り除くために小麦10ストーンを廃棄するのが道理というものなのです。ですが、」 カノープス : そこでロイくんの顔を優しく覗き込んで(※コッペリアなのであくまで無機質ですが) ホーク : 「どうなるって…そら54門の一斉掃射なんてなぁ」空気を読まずチュン 莵毘丸 : チュン助なぐっとこ ホーク : 「ヂュッ」 ロア : チュン助ww GM : ロイくんは涙をにじませてカノープスをじっと見つめます カノープス : 「この船の乗組員全ては、」(「全ては」のところでホークさんに目配せをしつつ)「あなたの愛する人が、弾かれるべき小石だなどと思ってはおりません。必ず時限までに救い出しましょう」 カノープス : (最後にもう一度ホークさんのほうに「解りましたね」的目配せを送る) GM : ロイくんは「お願いします…!どうか、お願いします…!!!」と力強く頭を下げます ホーク : 「チュン...」涙をほろりと零しながら(たんこぶ) カノープス : 「…さあ、そうと決まればそれぞれの成すべきことを成すまでです。お嬢様、もう少々ご辛抱をお願いいたします」 ロア : 「気にしないでいいわカノープス。大したことじゃないわ」 カノープス : お嬢様についていたいのは山々だが操舵室をなんとかしないとまずい カノープス : 「まことにご不便をおかけします、お嬢様。お気遣い痛み入ります」 莵毘丸 : 「よっしゃ!行こうぜ!」 ロア : 「依頼しておいて、失敗を優先して想像するなんてずいぶんひどいのねぇ」 ロア : と意地悪言っておこう。 GM : ロイくんは困ったような顔を浮かべます ホーク : 「アネさんなりの励ましだぜ。」 ホーク : 背中を軽くトンと叩いて船内に戻ろう(たんこぶゆらゆら) カノープス : 「…お嬢様、小さな子供にそのようなことを仰るものではありません」と小声で耳打ちしておこう ロア : 「ふふ……ごめんなさいね?」と二人に目配せします。 莵毘丸 : 兎はロイくんの頭ガシガシします GM : ロイは、厳しいながらも温かく接してくれるキミたちに、何か輝かしいものを感じたのでしょう。憧れのまなざしで皆さんを見つめます。 GM : といったところで、お嬢様が再び船室にお戻りになってベッドに倒れると ロア : はい!ありがとうございます! ロア : すやすや [情報] system : [ ロア ] 生命点 : 4 → 7 GM : では次の方どうぞ!
【リミット:4→3】
カノープス : はーい! カノープス : さて、どっちのルートを取るかですが… カノープス : 安全にいくなら下ルートなんだけど、いかんせんリミットのことがあるんですよね ホーク : おっと、ここでオイラの出番だな! ホーク : 個人スキル「上質な空路図」を使用するぜ! カノープス : キャーチュンスケー ロア : カッコイー ホーク : 「大将、あっちの空路なら安全そうだ!」2回使用して2スポット分を書き換えました ロア : おおお!
ホークの個人スキル「上質な空路図」が発動。ゴール手前の「困難系」イベントスポット2つを、「船内系」「遭遇系」に書き換えます。
GM : では、カノープスさんはPCの移動からどうぞ! カノープス : な、なんてありがたい…! GM : 1ダサナケレバ チカミチデキマスネ カノープス : じゃあもう上ルート行っちゃっていいですかね? 莵毘丸 : スズメツヨイ GM : カノープスさん、フネの前にPC動かしてネ! カノープス : おっと 莵毘丸 : 2がでれば…上に… カノープス : 操舵室を修理したいので操舵室に GM : おっけーです!航行チェックどうぞ!1d6です カノープス : 1d6 (1D6) > 4 ロア : おお GM : 2スポット進めます! 莵毘丸 : やったー GM : では航行イベント表(遭遇系)です!2d6どうぞー カノープス : お嬢様の手となり足となるのが役目ですので、と操舵室に移って航路を見渡しつつ カノープス : 2d6 (2D6) > 3[1,2] > 3 GM : ンッ カノープス : ンッ? GM : 読み上げますね GM : 敵対的なソラクジラ 【効果】 飛空艇は「D46[大揺れ]/1」のダメージを受ける。 GM : <フレーバーテキスト> 飛空艇乗りに人気のソラクジラにも、機嫌が悪いときがある。こんなときに近づいてしまったのなら、運が悪かったとしか言いようがない。ご愁傷さま。 莵毘丸 : ご愁傷さまww ロア : しぬのか……? カノープス : (うわあ…) GM : では、さっきの落雷に巻き込まれたと思わしき不機嫌そうなソラクジラが、急に雲海から出てきて皆さんのフネに突っ込んできます。どーん GM : おっ 莵毘丸 : おおお カノープス : おお!? ロア : おお???
ダメージチェックマーカーを配置するGM。ソラクジラの巨体は、フネの尾翼すれすれをかすめるように飛んで行った…フネは無傷だ!
GM : が、ソラクジラは皆さんのフネをかすめると、そのまま雲海に姿を消しました 莵毘丸 : やったーー カノープス : 「…なんということでしょう、ソラクジラが…」 ホーク : 「っぶねえ!!なんだってんだ!!」チュンチュン カノープス : 「びっくりした」みたいな顔はしていない、というより自分に「驚き」なんてものは存在しないと思っていたのですが、何故か急に胸を撫で下ろしたくなりました 莵毘丸 : 「2度も見れるなんてなあ!」ちょっと楽しそうに ロア : 寝てます。すやすや……。 GM : 操舵室だけあわあわしてるw ロア : ww カノープス : 首筋からの排気がちょっと、プシュュュュ、みたいな乱れたかんじになる ロア : (素敵な感情表現だ……) ホーク : 「…大将、もしかしてビビったんですかい?」 カノープス : 「ビビ…? 動転した、ということですか? ――我々コッペリアは状況の好悪で機動反応が変化する、ということはないはずです。恐らく振動によって排気パイプに影響が出たのでしょう」 ホーク : 「大将。人間はビビると、そうやって言い繕うんだぜ」ちょっと楽しそうにチュンチュン カノープス : ��…さようでございますね。前のご主人さまも常々、わたくしにさような弁明を繰り返しておいででした」 カノープス : 等と言いつつ、操舵室を修理したいです GM : どうぞ!技術・教養:7です! カノープス : えーっと技術が得意だから3d6ですね? GM : ですね! カノープス : 3d6 (3D6) > 13[3,6,4] > 13 GM : おっ GM : どれを選んでも成功ですね、良い仕事! 莵毘丸 : すばらしい カノープス : 「コッペリアの本分でございます」 ロア : ありがとうカノープスさん ホーク : 「さっすが大将!」 GM : では操舵室は元通りの機能を回復しました カノープス : 「些少な働きに、過分なお言葉を頂戴しまして」 GM : ニッコリ顔グラ差分! ロア : 笑顔だ……! 莵毘丸 : おお カノープス : にっこりもできるのです ホーク : 「やっぱり大将は、空に出ると感情が出やすねえ!」 カノープス : 「…そうでしょうか? 確かに、航行中に皆様と接する際には、顔面パーツの動作を少々大きくするよう心がけてはおりますが」 カノープス : あくまで感情的になっているのではないという立場(本人も自分自身の感情が顔に出ているとは思ってい���い) ホーク : 「まあ、大将がそう言うならそういうことにしときやす!」嬉しそうにチュンチュン GM : では、リミット減らしまーす。1が連続で出てもゴールできますね! 莵毘丸 : よかったよかった ロア : よかった…… GM : シーン区切って大丈夫でしたかね?>カノープスさん カノープス : 大丈夫ですよー! GM : はーい!次動きたい方いれば!
【リミット:3→2】
GM : 一巡したのでどなたからでもという感じ 莵毘丸 : 部屋の破損直せるか微妙なのでこの兎… 莵毘丸 : 教養がない^^ GM : 技術得意だからいけるいける GM : ^^ 莵毘丸 : いってみるか^^ GM : 2ゾロ出さなきゃ大丈夫 ロア : ファイトです! 莵毘丸 : ひぃひぃ GM : ではまず、移動からどうぞ! 莵毘丸 : じゃあ兎いきます! 莵毘丸 : はいここ!
莵毘丸の移動先は、落雷で破損したロアの船室。ここを修理しようという腹づもりです。
GM : はーい!では航行チェックです! GM : 1d6どうぞー 莵毘丸 : 1d6 (1D6) > 6 GM : アッ ロア : おおお GM : 先に船の移動からですね! 莵毘丸 : 2いけるんでしたっけ GM : 6なので3スポットです! 莵毘丸 : wwwww 莵毘丸 : ごーるしちゃう GM : いたしかたなし ロア : あ、なるほどw 莵毘丸 : wwww 莵毘丸 : ごーーーる ロア : これうちの子が行けばよかったのかもしれないw GM : いぇーーー カノープス : 普通にゴールしてしまった… GM : w 莵毘丸 : 跳ねてしまったな^^ ホーク : さすがアニキ^^ ロア : 一度も船内イベが起きなかったww 莵毘丸 : wwwww GM : ではイベントが発生しますよ!
GM : フネを出して丸一日ほど、ついにキミたちは「どくろ雲の空域」へとたどりついた。あたりには怪しい黒雲が立ち込めており、太陽の光は届かず日中だというのに薄暗い。 GM : 空域に差し掛かってすぐ、キミたちに近づいてくる1隻の飛空艇があった。砲身はこちらを向いており、いつでも戦いをふっかけられる状態だ。 GM : 「ヨーゥヨウヨウ! 子猫ちゃんたち。ココがオレたち”バガボンド号” の縄張りだって知ってのお通りかい? 通行料が必要ですって、張り紙に書いとかなきゃならねぇのかなぁ?!」 GM : 拡声器から響く下卑た声、その時、ロイは「あいつだ……!」と怒りに震える声をあげる。キミたちが気づくより前に、彼は倉庫から駆け出し、拡声器を手にとった。 GM : 「アニキを連れ出した人たちですね!」 GM : 怒気のこもった叫びを聞き、空賊はキミたちのフネの周囲を旋回しながら、訝しげな声をあげる。 GM : 「アン? ああ、新入りのお友達かい。おら新入り、かわいいお友達だってよ! ゲヒャヒャヒャ!」 GM : 「ロイ、その声はロイ坊なのか?」 GM : ロイがその声を聞いて、表情を変えた。どうやら、この声の主が、彼の知る「アニキ」のようだ。 ホーク : 伝声管で「じゃあ、あのフネが…!」 GM : たぶん、皆さんも聞き覚えのある声なんじゃないですかね。 ロア : ? GM : 莵毘丸が騙されて仲間にされて、その船にテスト飛行中に襲われたんじゃないですかねみたいな話を GM : セッション開始時にちらっとしたかなって カノープス : ああー、そこの因縁! 莵毘丸 : あーーーー ロア : あ、アニキじゃなくて賊のほうか! GM : だが、再会を喜ぶ暇はない。その場の流れを変えたのは、空賊船に乗る空賊の声だった。 「おい新入り! 卒業試験だ。あのフネを……沈めろ。それで俺たちの仲間入りさせてやる」 GM : 「なんだって……そんな! 僕はただ……!」 カノープス : 誰か真っ先に啖呵を切りたい人ー ロア : ロアは賊の声とか覚えてないですね……道端の石以下……。 莵毘丸 : 「あの声!あんのやろう!」 GM : 「げぇっ!?そ、その声…あのクソ兎か!?」 莵毘丸 : わなわな 莵毘丸 : 「てめえ!まだこンな事やってやがったのか!」 GM : 「テメーのせいで船長はなあ!二か月も入院してたんだぞ!!」 「そうだ!オレたちはその間空賊稼業ができなくてなあ!缶詰工場で…」 「おいよさねえか!!!!」 ロア : あぁ、あの時の……という表情。 カノープス : あっちはあっちで切実なんですね…缶詰工場で… カノープス : ひたすら魚の身をぶつ切りにする仕事とかをしていたんだろうなあ ホーク : カワイソウダナー 莵毘丸 : 「ザマアねえな!そのまま塔にこもってりゃいいもンをよ!」 ロア : ワルイヒトタチジャナイノカナ? GM : 「まあ良い。あン時のお礼参りだ!!坊主!派手にブチかましな!!」 「う、うう……僕は…」 カノープス : じゃあ、一応船長であるところのカノープスは伝声管にちょっと近づいて、あくまでも穏やかな、けれどもよく通る声で呼びかけましょう
カノープス : 「ロイ坊っちゃんのお知り合いの方、――あなた様は『探空士』としての務めを果たせばようございます。この船を沈められるよう尽力なさればよろしゅうございましょう。それがあなた様の望む道であろうと、なかろうと――」 カノープス : 「――"不屈のカリーナ"号は決して退きません。胸を、いいえ、竜骨を貸して差し上げます」
―――その飛空艇の名は、ドーントレス(不屈の)・カリーナ号!!
GM : 啖呵がかっこいい!!! 莵毘丸 : かっこいい!! ロア : カッコイイ!!! GM : では、カノープスの声が空域に響き― GM : ―その直後。 「う、うわあああっ!!!」 「てめえ!何しやがる!!」 GM : 拡声器ごしに喧噪が聞こえ― GM : 少しの後に。 「おい!そいつを倉庫に放り込んでおけ!!」 「へい!!!」 GM : 「ロイ坊!ロイ坊ー!!!」 「アニキー!!!」 カノープス : しかしこれで「アニキ」は攻撃に参加していない、つまるところ連れて帰っても無罪扱いになるわけだ GM : RPが素敵だったので、アニキが単身白兵戦を挑んだことにしましょう。処理します GM : アニキ GM : 2d6 (2D6) > 7[3,4] > 7 GM : 空賊A GM : 2d6 (2D6) > 5[3,2] > 5 GM : カッチャッタ ダメージ出します GM : 1d6 (1D6) > 2 GM : 敗北側は数値そのまま、勝利側も半分の切り上げなので GM : お互い2点ダメージですね
※GMはここで単純な計算ミスをしています。勝利側が1点ダメージ、敗北側が2点ダメージが正解です。…なんで間違えたんですかね??
カノープス : 痛み分けか… ロア : 痛そう 莵毘丸 : ひええ
GM : では、一触即発の空気、いよいよ空戦といったところですが GM : 莵毘丸さんのシーンのアクション処理がまだ残っていたりします。やりたいことあれば! 莵毘丸 : あ、できるんですねww GM : ドウゾー 莵毘丸 : 修理したいなあ GM : はい!では技術・教養:7で「修理判定」です! 莵毘丸 : 技術が得意で教養が苦手の場合はどうなるんです? GM : 3d6が振れて(得意)、かつファンブル値が2(苦手)になります! 莵毘丸 : よしでは 莵毘丸 : 3d6 (3D6) > 12[5,4,3] > 12 GM : 幸先が良い! 莵毘丸 : やったぜ ホーク : キャーアニキー! カノープス : 素晴らしいお仕事ぶりで ロア : よい出目だ!! GM : 張り詰めた空気の中、キミは巧みな手さばきで応急修理をやってのけた! 莵毘丸 : 「よし!こんなもんかな!」 ホーク : 伝声管から「サスガッスアニキー」チュンチュン
【自船耐久度:3→4】
GM : では戦闘フェイズに移りましょう!
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d/sユニバース左銃左
銃→Dom
左→Sub
ストレスの溜まった銃兎が左馬刻に当たったりする話
これは俺の持論なんだが――と、入間銃兎は、丁寧な手つきで肉を切り分けながら話し出した。低温で気が遠くなるほどの時間をかけてローストされたらしい鴨肉は、さほど力を入れていないだろうナイフでも難なくその断面を晒していく。美しいロゼ色だった。果たしてこんなに必要なのかと疑問に思う程多く置かれたカトラリーも、この男にかかればどれもが適切なタイミングで使用されていくようだった。内側から使うのか外側から使うのか、銃兎に教示されるまで迷い続けていた左馬刻とは違って。
「個々人のダイナミクスと人格には少なからず齟齬がある。むしろ、双方が完全に一致していることの方が稀だとすら言えるな。人を痛めつけることを好まないDomだっているし、指図されることを嫌悪するSubだっている」
そこでちらりと鋭い光を放つ瞳がこちらを見る。レンズ一枚を隔ててもなお輝くグリーンガーネットが、白いテーブルクロスと映えて眩しかった。左馬刻は努めて興味のないそぶりを見せながら、フォークに刺した肉���を口の中に放り込んだ。美味い物を食べているときに小難しい話をするな。
「だから」そんな左馬刻の願いも虚しく、スーツに身を包んだ男は淡々とした口調で続ける。「DomやSubにふさわしい環境や教育や職業なんて、あるはずもないんだ。Domだからこういうことが適していて、Subだからこういうことをさせた方がいいなんて。この社会で、一概にDomとSubで区別しようとすること自体が非効率的なんだよ。男か女かで教育や職業を変えるか?それと同じだ」
銃兎は、そこで初めて手元に注がれたワインに気付いたかのようにしゃべるのをやめた。いつもと違って革手袋の嵌まっていない、しなやかな指をワイングラスの脚に添えると、その優雅な動作とは反して勢いよくボルドー色の液体を煽った。
「機嫌が悪いな、銃兎」
柔らかな肉片を味わい、付け合わせのマッシュドポテトにまで手をつけたあとで左馬刻は目も合わせずに言った。「てめえが選んだ店だろ」
一日中仕事に忙殺されたことが伺える、疲れた顔をした男は――現に、この店の予約も一時間後ろ倒ししなければならなかった――ばつが悪そうに目を逸らすと、短くため息を吐いた。右手に持っていたフォークを音を立ててテーブルに置くと、前髪に指を差し入れて項垂れる。かろうじてセットの保たれていた髪も台無しになってしまった。これでもう、この男の中で完璧なものは、着る人間にはお構いなく何時間経とうともぱりっと糊を効かせ続ける、オーダーメイドのスーツだけだ。
「美味いな、ここのソース」
「そうだな」
「悪い、左馬刻」
「別に」
自分の前でこの男の機嫌が悪いことなんて今に始まったことではないので、本心からそう答えた。一緒に食事をする人間の様子によって口に入れるものの美味しさが左右されるほど繊細な神経をしているつもりもなかった。敢えて言うなら、うるさい環境音楽がなくなってやっと落ち着いたというくらいだ。左馬刻は無言で新しく肉を切り分けた。
「今日、俺が身柄を押さえた被疑者の尋問から外された」
口に入れる予定だったフォークが皿の上で止まる。ゆっくりと目を上げると、銃兎は先ほどより幾分かは落ち着いた様子で、ワイングラスを弄んでいた。
「被疑者の精神が不安定だっていう理由で。俺がDomだから、相手を威嚇して、混乱させて、言いたいことも言えなくさせちまう可能性があるんだってよ」
は、と諦めたように笑う。
「俺がいつ、そんなことをした?何年この仕事をやってると思ってるんだ。俺は、まともに相手の事情聴取ができないほどバカじゃない。Domだからとか以前の問題だ」
左馬刻は何も言わなかった。続きがないことを悟ると、伏せられた翡翠色の双眸から目を逸らし、残りの肉に集中することにした。左馬刻の皿が空になり、ウェイターがさりげなく水を追加しにくる頃になってようやく、銃兎はカトラリーを持ち直し、何事もなかったかのように、音もなく食事を再開した。
特別な日だったわけではない。銃兎が火貂組に便宜を図って、それは些細なことではあったのだけれど、義理を重んじる左馬刻が自分がホストとなる食事を提案したのだ。――表向きはそういうことになっているが、実際は借りを作るのが癪だったという方が正しい。そんな話が決まったのはかなり前で、二人が互いに都合を付けているうちに実現するまでに相当の時間が経ってしまった。今となっては、本当に意味や理由のないただの食事だ。
店からは、左馬刻のどのセーフハウスよりも銃兎の自宅の方が近かった。料金を全て左馬刻が持った代わりなのかどうかは知らないが、珍しく宿泊の許可が下りたので連れ立って歩く。エントランスに入るところで、銃兎は何かを思い出したように駐車場の方へと足を向けた。定位置に止めておいたレクサスから膨らんだビジネスバッグを引き出している。不思議そうに見ていると、歩み寄ってきた銃兎が仕事の書類とパソコンだと説明した。
「家に帰っても仕事すんのか?公僕はご苦労なこって」
多忙な警察官は肩を竦めただけだった。「商売繁盛なんだよ」
おかげさまでな、と続けなかったのは、しばらく目の前の男が面倒ごとを引き起こしていないことを思い出したからかもしれない。悪い気分はしない。左馬刻は腕を伸ばすと、銃兎の手から鞄をかすめ取った。
「あ?」不意を付かれて、銃兎は素っ頓狂な声を上げた。片手で鞄を上げ下げしてみて、無駄に重いことに呆れる。こんなに持ち帰っても、一晩では終わらないだろう。
「何するんだ?返せよ」
銃兎は全く意味が分からないという様子で、左馬刻を見上げてくる。それを無言で睨みつけた。訝しそうに歪む顔は、空いている方の手でゆっくりと銃兎の寄れていたシャツの襟を直してやったところで、ようやく合点がいったように和らいだ。
「ああ、そういうこと……」
やっと大人しくなった男を置いてさっさとエレベーターに向かう。ボタンを押したところで追いつかれた。こうして気まぐれを起こすSubとしての行動に対しては、銃兎は最初こそ驚いた顔をするものの、やがてすぐに受け入れる。気まぐれの予測がつかないだけなのだろうと思われた。そして、それ以上を求めてくることもほとんどなかった。左馬刻がしたいときに、したい程度のことをそのままさせる。その距離感はこの上なく心地が良かった。
「お前って」到着したエレベーターに乗り込んだタイミングで、食事中とは打って変わって機嫌の良い声が言った。「けっこう、尽くすタイプだよな」
稀にこうしてからかってくることを除いては。
「気色悪いこと言ってんじゃねえわ」
**
入間銃兎という男は、いかにも処世術に長けていますといったスマートな見た目をしているが、その実、とことん組織とは相性の悪い人間だと左馬刻は思っている。大多数と足並みを揃えるという発想がそもそもなさそうであるし(これは「空気を読む」というのとは別の能力だ)、ルールや法は網目をかいくぐるものだと思っている。拘りが強いことに関しては頭に血が上りやすく、往々にして独断専行も辞さない。自分が入間銃兎なら、絶対に警察組織の中になどいられないな、と左馬刻は思う。本質を見れば、彼だってこちらの側なのだ、結局。
舎弟からの報告を聞き終えると、左馬刻は一度だけ頷いて、部屋から出ていくよう頭の動きだけで促した。付き合いの長い部下なので、すぐに察してその場を後にする。端末を取り出してすっかり馴染みとなった電話番号を呼び出した。呼び出し音は煙草に火を点け一服をする間のBGMにしかならなかった。何回鳴ったかも分からない音に飽き、呼び出しを終了させると革張りのソファに端末を投げ捨てた。
薬物の取引に関する情報を銃兎に売ったのは先週のことだ。中身を咀嚼し、少し考えるような仕草をしたあと、「分かった」と言って落ち合っていた路地裏を離れた。それが銃兎と会った最後だ。それから連絡もなければ、なんとかしてコンタクトを取ろうとしても応じる気配がない。先ほどの報告によれば、こちらが提供した情報を元に警察が動いていることは間違いないらしかった。左馬刻は面白くなかった。
左馬刻は待たされることと、指図されることと、抑圧されることが嫌いだった。そういう場面に遭遇するたびに、相手が誰であろうと構わず怒鳴ったし当たり散らした。我慢するということは覚えなかった。それが、周りからいつの間にか当然のごとくDomであるとみなされるようになった所以なのだと気付いたのは最近になってからだ。なんでだ?と、純粋に疑問に思う。自分のダイナミクスが何であろうが、嫌いなものは嫌いだし、好きなものは好きだと思って生きてきた。左馬刻はSubだったけれど、痛いことや苦しいことは苦手だし、なるべく避けて通りたかった。避けて通れないから、諦めているだけだ。
ふと、少し前に銃兎と食事をしたときの会話を思い起こした。やたら不機嫌な声で、眉間に深く皺を刻みながら、何かの仇であるかのように上等な肉にナイフを入れながらまくし立てていたこと。確かあいつも、DomがどうとかSubがどうとか言っていた。いつものように回りくどい言い方をするので癇に障ったが、なぜか、言っていることは理解できた。
「おい」左馬刻はドアのすぐ向こうで待機しているはずの舎弟を呼んだ。「車回せ」
「は」遠慮がちに重厚な扉が開いて、舎弟が顔を出す。その戸惑った表情に向かって「今日は終いだ」と言い、ジャケットを羽織る。ついでに放っておいた端末を拾い上げるが、もちろん折り返しのメッセージが届いているわけもない。裏口を出ると、迅速に用意されていた車に乗り込んだ。後部座席に身を預けながら、「行先は指示する」と低く言った。
「え?ご自宅ではないんですか?」
振り向いた舎弟から目を逸らして、窓の外の暗闇に目をやった。そういえば今は何時だっただろうか。それなりにいい時間のはずだ。
「まあ、自宅と言えば……自宅だな」
路駐させた先のマンションを確認して、運転手は瞬時��理解したようだった。間違った方向に。車を降りた左馬刻に「ごゆっくり」と言って走り去っていく。それを見送るともなく眺めてから、勝手知ったエントランスに侵入した。
いるかどうかについて予測はなかった。ただ、警察署に乗り込むよりは建設的だと思っただけだ。まあ、そうすることも時間の問題のような気はしたが。目的の扉の前に立って呼び鈴を押す。中で微かに椅子を引くような音がした。左馬刻は仁王立ちのまま扉に空いた穴を睨み続けた。おそらくは数秒で痺れを切らした。
「オラァ銃兎、いるんなら開けろや」
エイトホールブーツの底で思い切り扉を蹴る。思いの他立派な音が外廊下に反響した。すぐさま焦ったように扉が開かれ、見慣れたダークグレーのスーツが視界に広がった。銃兎、と呼びかけようとした言葉が途中で止まる。目の前の男は想像していたよりもはるかに酷い顔をしていた。盆と正月と地獄が一緒に来たような。
「左馬刻」ざらついた声が言う。「帰ってくれ」
「あ?」
「帰ってくれ。頼む」
左馬刻は目を細めた。相手の意図を推し計ろうとする。「命令か?それ」
レンズ越しの瞳が歪んで、周囲を泳ぐ。左馬刻にはひどく長く感じられた逡巡のあと、良く知るDom���男は、喘ぐようにして「命令じゃない。お願いだ」と答えた。
「じゃあ聞けねえなあ」
扉を掴んで無理やり引くと、虚を突かれたのか銃兎がバランスを崩した。その隙に玄関に足を踏み入れ、自分よりはいくらか背の低い身体を押しのけると、後ろ手に扉を閉める。意図せず闖入者を迎え入れることとなった男は、不満を隠そうともせず左馬刻を見上げてきた。それに少なからず苛立ちを覚える。こっちはてめえにくれてやった情報が有効に活用されているのか、報告を受ける権利があるはずだが。
「ずい分とお疲れみてえだな、銃兎。でもその様子だと、俺からの電話を取る余裕くらいはあるんじゃねえか」
「悪かったよ」
「何がだ」左馬刻は銃兎の細い肩をつかんだ。「てめえの悪い癖だぜ。後ろめたいことがあるとすぐに謝る」
ぱしっと音を立てて腕が振り払われる。その瞳は、怒りとも哀しみとも取れる何かを湛えていた。
「お前の情報のおかげで、組対はちゃんと動いてるよ。だが、俺はその捜査から外されてる」
「はあ?」
「俺の……自業自得だ。でかい捕り物で、薬物が絡んでて……入れ込み過ぎた。私情を挟んでいると言われて反論ができなかったし、実際、間違いじゃない」
そう言って自嘲気味に笑みを浮かべる。
「そんなわけで、せっかくお前が提供してくれたネタなのに、捜査状況がどうなってるか俺には分からないんだよ。訊かれても答えられないんだ」
だから帰ってくれ。革手袋の嵌まったままの手が肩を押し返す。少し震えている気がした。この男のことだ、上層部の決定とはいえそう簡単に了承したとは思えない。一体どれだけの反論をして、どれだけの手段を試みた後なのだろうかと考えたら気が遠くなった。そうやって、今日もコントロールの効かない組織の中で信念を貫こうと躍起になっている。
「帰ってくれ。頼むから」
「聞けねえっつってんだろ」
「今の俺に命令させないでくれ」
「すればいいだろ」
はっとしたように伏せっていた顔が上げられる。意味が分からないという表情が乗っていた。
「なあ、ちょうどいいと思わねえのかよ。散々な目に遭って、溜まってんだろ?目の前にSubがいるんだから使えよ」
「左馬刻」
「遠慮してんだか何だか知らねえが、我慢なんて毒だぜ。今なら何でもしてやるよ。どんな命令でも――」
「うるさい!」
突然発された怒鳴り声に左馬刻の身体がびくりと跳ねた。大声など聞き慣れているはずなのに、普段の冷静で計算高い声音とも、相手を煽る高圧的なハイトーンとも違う銃兎の声に一瞬で身体が動かなくなった。
「黙ってくれ、左馬刻」
ゆらりと、獲物を追い詰めるような動きで銃兎が近づいてくる。左馬刻は後ずさろとして、玄関の固い扉に阻まれた。明らかなDomからの威嚇を受けて、両足から一気に力が抜けていくようだった。Subの本能と、自らの理性やプライドがせめぎ合ったのはほんの一瞬で、左馬刻の脳はさして時間をかけずにすべてを明け渡す方の選択を取った。冷たい扉に背をつけたままずるずると床に座り込む。まずい状況だな、と思った。Domが目の前でSubに跪かれているのだ。命令したくて仕方ないだろう。朦朧とした視界の中で、歩み寄ってくる銃兎の脚を捉える。それがすぐ目の前でしゃがんだ。
「顔を上げろ、左馬刻」
命令に身体が震える。Domからコマンドをもらっているはずなのに全く気分が良くなかった。むしろその逆だ。左馬刻は本来、人から指図を受けることを好まない。合意のない中でこのようなコマンドを受けたところで、脳はそれを苦痛としてしか認識しなかった。ぐっと床の上で握った拳に力を入れると、のろのろと上半身を起こした。赤い手が顎を掴んで無理やり銃兎の方を向かせた。
「何でもするって言ったな」
冷たい声が狭い玄関に響く。とっさに頭を振って手から逃れようとしたけれど、思った以上に強く掴まれていてびくともしなかった。
「言ったな?」
顎を掴む手に力を込められて痛かった。今自分はどんな顔をしているんだろうと思いながら、目の前の男を覗きこむ。眼鏡の奥の瞳が、晴れた日の木漏れ日を閉じ込めたように輝いていた色が今は見る影もなくて、左馬刻はそれが好きだったことに気付いた。
「ああ」ようやく喉から声を絞り出せた。「何でもするよ」
表情のなかった顔が不思議な感じに歪んだ。一瞬、その大きな瞳が水を這ったように光って、泣き出すんじゃないかと思った。なんて顔してんだよ。せっかく俺がここ��で言ってやったんだ、有難く思えよ。ああ、でも、そんなにハードはプレイには自信がないからそこは多めに見て欲しい。そんなことを呑気に考えていて、気がついたら手は解かれて頬が床のタイルの冷たさを感じていた。
玄関の脇にかかっていたコートが乱暴に取り払われる音がした。視界の端で、上等な革靴に脚が突っ込まれる。大きな音を立ててドアが開け閉めされ、外の廊下を性急な足音が遠ざかって行った。待て、銃兎、逃げんな。声にならない悪態を吐きながら左馬刻は意識を手放した。
次に目を開けたとき、額にはひんやりとした何かが押し当てられていた。温度の低いそれは存外に気持ちがよく、自分の身体が熱を持っているのかもしれないと思った。触れているのが手のひらだと分かったのは、細い指が目にかかる前髪を遠慮がちにどかしたからだ。そのころには、自分の身体が玄関の固い床ではなくスプリングの効いたシングルベッドに横たえられていることに気が付いていた。白い天井から視線を移すと、ちょうどよくベッドの持ち主と目が合って、充血した瞳がばつが悪そうに泳いだ。ベッドの脇にあるカーテンはすっかり開けられていて、窓からは高く昇った陽射しが入ってきていた。左馬刻は腹筋に力を入れると、上半身を起こした。
「頭いてえ……」
起き上がったせいでずしりと重い感覚に襲われたが、少しの間じっとすることで幾分かマシになる。「おい、大丈夫か」隣で銃兎が心配そうな声を上げる。目線が変わらないことを怪訝に思ったら、台所からでも出してきたのだろう低いスツールに腰掛けているのだった。グレーのシャツは昨夜のままだが、いつもはきっちり絞められているネクタイが首から取り払われ、めちゃくちゃになって胸ポケットに突っ込まれていた。センスよく無造作にまとめられているはずの髪も、何度も乱雑に掻き回したのかあちこちで跳ねている。「悪かった」と明瞭な声が言った。
「昨日、怒鳴って悪かった。無理やり命令聞かせて、一人で残して悪かった」
「は」声に出して笑ってしまった。「本当だよ。あそこまでやっておいて放置するか?俺じゃなかったらサブドロップしてるぜ」
銃兎は言葉に詰まったようだった。唇を噛み締め、言うべき言葉を探して目をさまよわせている。何かを取り繕う術ならいくらでも用意している、普段のこの男からは考えられないことだった。左馬刻は口を開いた。
「まあ」努めて何でもないような声で言う。「俺も悪かった。お前を煽ったのは事実だしな」
驚いたような瞳が左馬刻を捉える。
「最初に帰れって言われたときに、素直に従っときゃ良かったんだ」
「お前は悪くない。左馬刻」何とも言い難い困惑したような顔が、一呼吸置いて、怒ったような表情を作った。「けどな……なんであんな風に言ったんだ。何でもしてやるなんて。お前は、そんなことしちゃだめなんだよ。何でもするなんて言うな。冗談でももう二度と」
左馬刻は返事をしなかった。黙って銃兎の眼を見つめていた。いつものようにそれは命令かと訊くこともできたが、そうしなかった。命令ではないことは分かっていた。この男がしたいのは契約ではなくて、約束なのだと思った。
「お前、どこにいたんだよ」
代わりにしたのはそんな質問だった。
「は?」
「部屋を出て、一晩中どこにいた。どっかの店で、相手してくれるSubでも探してたのか」
「なんでそうなるんだよ。ジムだよ」
は?と、今度は左馬刻が目を丸くする番だった。目の前の男はあっけらかんとして、「二十四時間営業のジムが近くにあるんだよ」と続ける。そこでずっとサンドバックを殴っていたのだと説明した。オーナーとは馴染みで、銃兎が警察官であることも知っているし、仕事などで行き詰ってむしゃくしゃした際に似たようなこと��した前科があるため、特に気にもされなかったという。「まあさすがに、一晩中なんてのは初めてだったけど。おかげでずい分スッキリしたな」
「……ふっ」
左馬刻は我慢しきれずに噴き出した。身体を折ってベッドの上で肩を震わせる。
「お前……バカだバカだとは思っていたが、ここまでとは」
「なんだって?」
「健康的すぎんだろ。部活動やってる高校生か」
「それのどこが悪い。お前に首輪付けて契約書結ばせて、この先一生俺の命令しか聞けないようにするところだったんだ、こっちは」
さらりとなかなかにすごいことを言う。それを実現されたら、俺は確実に今の生活を送れなくなるが。一通り笑い終えて、ヘッドボードに背を預けて息を吐く。ちらりと銃兎を盗み見ると、先ほどより威勢は取り戻したようだったが、未だに居心地が悪そうにしている。ずっとジムにいたというし、帰って来てすぐに左馬刻のためにベッドを明け渡したのなら、おそらく一睡もしていないはずだった。心なしか香る石鹸の匂いは、ジムを出る際にシャワーだけでも浴びたからだろうと思われた。鋭さのない目元には疲労が見てとれる。
銃兎、と左馬刻は静かに名前を呼んだ。「コマンドくれよ」
「え?」眼鏡越しの瞳に困惑の色が浮かぶ。昨日の今日でそんなことを言われると思わなかったのか、探るようにじっと見つめてくる。左馬刻は肩を竦めた。
「なんでもいい。お前からのコマンドが欲しい」
もう一度はっきりと言うと、いよいよ困ったように身を引いた。もしかしたら、自分はもう二度と目の前の相手に命令をする権利などないと思っていたのかもしれなかった。そんな殊勝なことを考える奴だったかよ、と思う。無言のまま数秒が経ち、元来左馬刻と同様こらえ性のない男は、諦めたようにため息を吐いた。のろのろと胸元に手を伸ばすと、ポケットに突っ込んでいたものを引きずり出し、ベッドの上に置いた。
「ネクタイ」
「は?」
「ネクタイ、締めてくれ。出勤しないと」
「いや、寝ろよお前は」
思わず呆れた声を出してしまうと、銃兎は初めてリラックスしたような表情を見せた。
「一つ捜査から外されたって、仕事は無限にあるんだよ。心配しなくても、今抱えてるものを片付けたらちゃんと帰って休むさ」
別に心配しているわけじゃないと言いたかったが、言ったところで「そうか」と頷かれるだけなのでやめておいた。こんなところで些細な見栄を張っても仕方なかった。掛け布団の膝のあたりに放られたネクタイを見つめると、そっと手を伸ばす。いつもはこの男の首もとで存在感を発しているそれは、今は左馬刻の手のひらの上でやたら頼りなく見えた。目で合図すると、素直にこちらに向けて頭を傾ける。無防備になった頸にネクタイを回した。
襟の下をくぐらせ、両手で結び目を作る間、僅かに顎を上げた姿勢でじっとしているので、その従順さがおかしくなってしまった。「急所だぞ」と指摘してみる。
「いいのかよ、何するか分かんねえぞ。昨日の仕返しに」
「別にいい」
即答されて、手の動きが止まった。見ると、目の前の白い壁をぼんやりと眺めていた瞳がゆっくりと閉じられるところだった。気持ちよさそうに。刃が振り下ろされるのを待つ殉教者のような穏やかさだった。左馬刻は視線を手元に戻し、次の手順を思い出そうとした。感覚で覚えているはずの行為の続きが、考えなければできなかった。不自然なほど時間をかけてやっと出来上がった結び目を持ち、長さを調節する。ひどく緊張した。
「銃兎」聴こえるか聴こえないかの声で言う。「いいぜ。首輪くらいならしてやっても」
「あ?」
目を瞬かせた銃兎がこちらを見る。その口が何かを問う前に、���馬刻は完璧な角度で結ばれたネクタイを叩き、その身体を向こうへ押しやった。
「ばーか冗談だわ」
驚いた顔をしていた男は、呆けたように数秒固まった後、まるで子供みたいにくしゃりと表情を綻ばせた。何かを背負ったような重苦しさはもうなかった。すっかり生気を取り戻した目が、窓から差し込む黄金の光を受けて輝いた。水をはじく若葉のような鮮やかな緑。
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2020.12.23-28 南アルプス 聖岳東尾根〜赤石岳東尾根
聖岳東尾根から赤石岳東尾根を縦走してきました。 メンバー:桑田
1日目 12/23(水) 静岡駅〜千頭駅〜9:00 畑薙第一ダム沼平ゲート〜13:00聖沢登山口〜16:45 1900m付近(泊)
前夜のうちに静岡駅へ移動し始発電車とタクシーを乗り継いで沼平ゲートへ。聖沢登山口まで林道歩き約14km。赤石ダムで遠くにこれから向かう山が望める。「雪ないなー。楽勝かも」と思い、「雪がないと手応えないなー」などと思ったりもする。聖沢登山口にも雪はなし。2,000mくらいまで上がれば雪が出てくることはわかっていたが、今日はそこまではたどり着けないと思い、出会所小屋跡付近の沢で水を2リットル確保して夏道を外れ東尾根に突き上げる尾根を登る。雪がほとんどないのでラッセルの苦労はないが、初日のザックの重さに苦労した。
沼平ゲート。雪は全くない。
赤石ダムから。雪少ないなー。
2日目 12/24(木) 7:30 1900m付近〜9:00 ジャンクションピーク〜14:00 東尾根森林限界あたり(泊)
4:00に目覚ましをかけたが5:20まで寝てしまった。ひとりだとダラダラとしてしまう。雪が出てくるとまさかの先行者の足跡が。比較的新しく、登りの足跡しかない。シーズン一番乗りを期待していたがまさか先行者がいたとは…。途中、先行者のテントを発見。どうやら聖岳をピストンしてテントの中で休んでいるらしい。ということは聖岳以降のトレースはないはず。「よしよし」と思う。 出発時は良い天気だったが正午くらいから風と雪に。このまま進んで聖岳を越えると、兎岳避難小屋までビバーク適地はないと判断して、森林限界まで引き返してテントを張った。
2日目の出発。このときは良い天気だった。
白蓬ノ頭あたりから赤石岳。雪が少ない。
聖岳東尾根。雪が少ない。
3日目 12/25(金)
6:30 東尾根森林限界あたり〜10:00 奥聖岳〜10:40前聖岳〜14:50兎岳避難小屋(泊)
今日も出発時は良い天気だがすぐに雪と風のコンディションに。昨日からの雪もあって、これで先行者のトレースはリセットされたはず。東尾根は昨年と比べると雪がとても少ない。夏道が判別できる。「ていうか、東尾根って夏道あるの? 雪で藪が覆われるから冬季ルートになるのでは?」と思う。昨年はナイフリッジだったところが、「ナイフリッジ育成中」みたいな感じで容易に通過できた。奥聖岳への最後の登りも雪があまり付いていないので難しくはなかった。とは言え、東尾根はとても長く、ヘロヘロになって奥聖岳山頂に到着。雪、風強く写真一枚撮って前聖岳へ。前聖岳山頂でコンパスを合わせ、兎岳への縦走路を確認して先に進む。こちらも夏道が判別できる程度の積雪。降り始めは特に問題はなかったが、急斜面を避けるように付けられたトラバース道は雪が深く、脛から膝くらいのラッセルでかなり消耗する。ヘロヘロになって兎岳避難小屋に到着。昨日、悪天候のなか無視して突っ込まなくて良かった。
3日目スタート。この日も朝は天気が良かった。
東尾根核心部も雪が少ない。
奥聖岳山頂。
前聖岳山頂。
聖岳〜兎岳避難小屋のあいだは余裕がなく写真なし。
4日目 12/26(土) 8:00 兎岳避難小屋〜11:00 中盛丸山〜11:30 百間洞下降点〜13:00 百間洞山の家(泊)
この日は快晴、風弱し。百間洞へは大沢岳を経由せずに中盛丸山を少し降ったところから下降した。途中から夏道を見失い、いくつかの支沢と支尾根を横切りながら谷底(百間洞山の家)までトラバースしながら下降した。百間洞山の家には13:00頃に到着。進むべきか、留まるべきか。赤石岳避難小屋まではハイキングマップのコースタイムで3時間10分。雪は少ないとはいえ標高差600mUPしなければならない。疲れもあるので、今日はここまでとした。
4日目。聖岳と兎岳のギャップのあいだから太陽が昇る。
中盛丸山、大沢岳、百間平。右のデカイ塊が赤石岳。
真ん中あたりにポツンと百間洞山の家が見える。
百間洞山の家。2階部分が開放されている。
5日目 12/27(日) 7:00 百間洞山の家〜8:20 百間平〜10:50 赤石岳〜12:10 小赤石岳〜17:40 富士見平〜18:30 赤石小屋(泊)
赤石岳まで雪は少なく夏道も明瞭。ただ、かなり疲れていて歩みは遅い。無風、快晴の赤石岳避難小屋で大休止して小赤石岳へ。ここから核心のラクダノ背の下降。トレースはなく期待していた状況。前後に他のパーティーはなく、万一落ちても誰も気付いてくれないので最大限安全サイドに振った行動で慎重に進んだ。降り始めて間もなくして出てきた雪壁はダウンクライミングできそうではあるが懸垂下降で突破(登りならなんてことはない傾斜なのだが)。雪の付き方が中途半端で、ときに脆い岩に気を使いながら、ときにハイマツをほじくり出しホールドにしながら下降していく。2回の懸垂下降(50mロープ使用)を終えると難所もひと段落といった感じだが、今度は雪に埋まっていないハイマツに苦しめられる。降りなので重力に身をまかせて(ハイマツに身をまかせて)ガンガン降って行けばいいのだが、ここを登るとなるとかなり体力を吸われるだろう。ラクダの背の通過にかなり時間をかけてしまい、赤石小屋に着く頃には日が沈んでしまった。この日は今山行最長の11時間行動。
百間平から赤石岳。
赤石岳のトラバース道がはっきりとわかる。
赤石岳山頂。
小赤石岳から右に落ちるラクダノ背。これを下降する。
ラクダノ背終盤。ハイマツが埋っていない…。
赤石小屋に着く頃には完全に日が沈んでしまった。
6日目 12/28(土) 9:00 赤石小屋〜12:30 椹島〜17:20 沼平ゲート
前夜から降り始めた雪は朝になってもやまない。テント撤収が億劫だが今日は下山するだけ。何でもかんでも適当にザックに突っ込んで歩き始める。椹島までの登山道は枯葉の上に昨夜からの雪が薄く積もっているだけでとても歩きずらい。そして天気予報通り正午くらいから晴れてきて、地面はグチャグチャ、上からは木に積もった雪が溶けて雨のように水が落ちてくるという、とても不快な状況。けど、今日で下山だと思えば許せてくる。ようやく椹島に到着。行きの林道では工事車両がひっきりなしに行き交っていたが、今日は一台の車しかすれ違わなかった。もう仕事納めだろうか。沼平ゲートの登山指導センターにも人はおらず、下山届をポストに投函して山行を終えた。
冬季小屋泊ではなくテントを張った(冬季小屋があることに気付かなかった…)
ようやく椹島まで降りてきた。ここから16.7kmの林道歩き。
沼平ゲート。もう歩かなくていい。
今回の山行は雪が少なかったのと、ラクダノ背通過のタイミングが穏やかな天候だったのが成功の要因だったが、全体的に体力不足だった。今年は夏の縦走以外はあまり山に入っておらず、やっぱり山の体力は山でしか身につかないということを改めて実感した。ただ、体力以上に重要なのはモチベーションだ。登山家・冒険家の田中幹也氏はこう言っている。「高いモチベーションはしばしば技術や体力や経験を凌駕する。モチベーションはある種の生き物だ。やがては衰える。一生のうちでチャンスが一度きりということもないだろうが、そう多くもないだろう」(ROCK & SNOW #87 P65)また、今回は単独だったが、喜びと苦しみと荷物を分かち合える仲間との登山が理想だ。
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200題(カメリア)
めちゃくちゃ暇な人向け。
●キャラについて語る200題
01:身長/体重 157cm/45kg
02:字のうまさ 文字が小さくて丸っこい字。よく綴りは間違えている。
03:絵のうまさ 自称うさぎが変なクリーチャーに見えるくらいには絵心はない。
04:歌のうまさ 音痴ではなさそうだけど自分の歌声を聞かれるのは若干恥ずかしい。 昼間はお客さんがいない時には鼻歌とか歌を歌っているかも。
05:視力 視力はいい。特に夜目が効く。
06:香り 花に囲まれているし、フローラルな香り。
07:声質 ちょっと高めの可愛い声?CV当てていただいたので 三森すずこさんの役とか歌聞いた感じの私の感想なんですけど。 ラブライブの海未ちゃんくらいしかまともに聞いたことがないのですが、 どちらかというと三森すずこさんの元気な女の子役のイメージなのかも?
08:髪質 やわらかくて細かい、プラチナブロンドの髪。毛先に行くにつれてゆるくウェーブがかっている。
09:美人(美形)度 顏が良いプロバンス兄弟の一人なので整っているのかなと。 昼の方が美人には見える…。
10:プライド 結構一度決めたら貫くタイプなので高い。
11:ハマっていること 枯れてしまった花でドライフラワーを作ること、商品に出せない花を押し花にしてしおりを作ること。出来は微妙。
12:チャームポイント おくち(・ω・)
13:甘党辛党 甘党。
14:自己紹介の内容 昼「カメリア・プロバンスと申します。兄と弟と一緒に花屋をやっています。よろしければお越しください^^」 夜「グッドイーブニング!皆ご存知の怪盗ブーケ参上~!!今日もこの花と引き換えにお宝を取り戻すからよろしくね!」
15:最近の悩み クロワッサン頭のケーサツちゃんによく怪盗活動を邪魔される。当たり前だ…
16:嘘の内容と上手下手 嘘も欺くのも平気、むしろ武器かな…怪盗だしね(?) 本音はあまり見せない。
17:給料(小遣い)の額 自営業どうなんだろ?お兄ちゃんが生活費とは別に少額でもきちんと分配してそうだけど…。
18:特技 瞬間鍵開け。ろくでもねぇ…
19:寝相 よ、横向き? 夜活動した後疲れてるときはうつぶせに突っ伏してそうでもある(笑)
20:最長不眠時間 24時間が限度。お肌にもきっとよろしくない
21:平均睡眠時間 普通に疑問だけどあの世界皆寝てるの??? 怪盗やっているのは毎日ではないと思っているので何もない日は7時間くらいは寝ているのではと 思っているのだけど。警察側はそうもいかないのかなと…大変そうだ(小並感)
22:パジャマ シンプルなネグリジェ、生地は薄い。
23:鞄の中身 昼:持っていない。 夜:脱出用小道具、鍵開け用のピックとかは隠し持っている。
24:いつも身につけているもの 花の髪留め
25:休日の過ごし方 兄弟で買��出しとかちょっとしたお出かけしていたらいいなぁ。 買い出しの途中でたまにトレモロとかでお昼してたら私は幸せ。
26:毎日の習慣 花に水やり、そして毎日どこかでへまをする。
27:集めているものと所持数 リボン。花束用に使うリボンとかの余ったやつを集めている。
28:心から気を許している人 うーん…家族以外はいないかなぁ
29:会ったことがないけど気が合いそうな人 フォロワーかよ…笑
30:本気で嫌っている人 お金を持っているだけでただ威張っている人たち。権力をかざして弱者を虐げる人たち。
31:警戒する人への態度 基本的に普段通りに接するけど 隙を見せないようにしたり、その場にいたら見失わないように視界の端で追ったりはしそう。
32:尊敬する人 幼少期に読んだ絵本の主人公の怪盗
33:客観的に見た性格 昼:落ち着いてて穏やかそう 夜:子供っぽい(笑)
34:他人に持たれている印象 ローカルアイドルっぽい
35:プレゼントしそうなもの 無難にブーケか押し花のしおり…後は大穴で手料理。 36:貰うと喜ぶもの 何でも喜ぶけど、花束かな。
37:お礼を言うときの言葉と態度 昼「まぁ、ありがとうございます!」ってニコニコしながら嬉しそうに 夜「気が利くわねサンキュー!」って軽く言ったり 「あ、ありがとう…」って少し恥ずかしそうに言ったり
38:謝り方 昼「きゃっ!ごめんなさい!私ったらまたやっちゃった…」って申し訳なさそうに 夜「今日も私の勝利みたいね!ごめんね~!!」多分思ってない
39:足の速さ 夜は速い。身体が軽いのか、軽やかにちょこまかとぴょんぴょん飛び回るイメージ。
40:勘の良さ 鈍い。特に自分の事になると。
41:器用さ 怪盗関連のあれこれ以外は基本的に不器用。
42:礼儀正しさ 花屋店員やっているときはそれなりに。
43:涙もろさ/泣く頻度 幼少期とかは弟と兄弟喧嘩したときに泣いてそうだけど 両親が亡くなってからはあまり泣いてないです。
44:大人度/子供度 大人になろうとしてるけどまだ子供
45:オシャレ度 こだわりはなくあまり気にしてない。服は箪笥に入ってた母の昔の服を主に使っている。 でもひそかにコレットちゃんのお店は憧れ…
46:ロマンチスト度 奪還屋みたいな怪盗やっている時点で結構高いのでは?
47:負けず嫌い度 高い。ムキになるし負けるとめちゃくちゃ悔しがる。
48:子供好き度 子供は好き、ただ純粋すぎてあまり自分からは接しない。
49:他人の外見を気にする度 あまり気にしない。本人が好きなものを着ればいいと思う。
50:ツンデレ度 ちょっと夜はっぽい…
51:知名度 怪盗ブーケをよろしくね☆!!!
52:気持ちが顔に出る度 夜は結構表情豊か。嫌そうな顔とかすぐしちゃう(笑)
53:ボケ度ツッコミ度 昼:ボケ 夜:ツッコミ
54:ワガママ度 口には出さないけどそれなりに…?
55:友人が愚痴ってきたら 友人いない疑惑が私の中で高く…
56:旅行するなら プロバンス(フランス)のラベンダー畑
57:疲れたときは 何も考えず咲いてる花をぼーっと眺める
58:他人にされると嫌なこと 身近な人が悪く言われてるのは好きじゃない。 あと、咲いてる花を踏んでいく人たち
59:恐れていること(もの、人) 捕まること
60:言われ慣れていること 「また?」(やらかした時) 「出たな怪盗ブーケ!」(出くわした時)
61:無人島に三つ持って行くなら 瓶とペンとメモ帳 無人島に咲いているかもしれない花と植物をできるだけ記録して死ぬ。
62:秘密の数と内容 秘密♡
63:実現不可能な願い 殺人のない世の中になること 弱者が虐げられず、皆平等に生きられる世の中になること。
64:神や悪魔の存在について いないと思っている。いたら両親だって生きているはずだから。
65:幽霊の存在について 信じていないけど、未練を残して死んだら化けて出そうとかは言いそう。
66:虫嫌い度 花屋なので好きではないにしてもまぁまぁ平気。G以外は…
67:好きな時間帯 花が咲いている昼間
68:現在までの経歴 あまりにもふわっとしか考えてないためわからなくて… 学校とか行ってたのか微妙で?行けた? とりあえず名護さん設定でカメリア4歳���時に両親が何者かに殺されて 亡くなっている事だけ(事故死って兄に言われてるけど) 15前後から花屋の手伝いやってるんじゃないかな(適当)
69:幼少時代 どちらかというと今の夜姿が近く、結構元気で物怖じせずやんちゃ。
70:二年前 きっと花屋にいる
71:黙っているときの雰囲気 美人
72:トラウマやコンプレックス コンプレックスは昼間が無能なこと
73:暑がり寒がり 暑がり
74:目と髪の色 目は赤。髪色は兄弟お揃いのプラチナブロンド。
75:似合わない服 カッコイイ服…とか男らしい服?スーツは似合わなそう。 でも遊びでヴォルフラムさんの女装の対で男装とかはさせてみたいね!
76:怪我する頻度と原因 昼間に何もないところでつまずいて転ぶなどのくだらない理由で小さい怪我はしてそう。 77:スタイル/体つき 良い。細身でグラビア体型
78:服の選び方 母のおさがりなので、流行り要素などはなさそう…
79:喧嘩を売られたら 基本スルー。無用なことにはかかわらない。でも、しつこいと買っちゃう。
80:将来の子供の数 男の子2人女の子1人欲しいという…願望だけなら・・・
81:何歳まで生きそうか なんとなく両親が死んだ年齢よりは長生きしたいとは思っている。
82:機械操作 アナログ人間なもので
83:自信 ある。特にビオラくんとタッグ組んでるときは基本負ける気がしない。怪盗ブーケは最強だもんね。
84:自分の好きなところ 決めたことは貫こうとするところ
85:自分の嫌いなところ 頑固ゆえあまり柔軟な考えができないところ
86:好きな/嫌いな季節 好き:春、花がいっぱい咲いてるから 嫌い:冬、植物が枯れてしまうから
87:好きな/嫌いな色 好き:赤 嫌い:特にない
88:世界一綺麗だと思うもの プロバンスのラベンダー畑(多分、写真でしか見たことないだろうけど)
89:一度は言ってみたい台詞 縁がないからこそ『盗まれちゃった』とか言ってみたい ビオラ君は奪われちゃってて可愛いなっていう
90:一度はやってみたいこと 美術館とかにある展示を奪うとかの大型奪還イベントやりたいね! めちゃめちゃ怪盗っぽくてスリリング!そんな依頼をお待ちしてま~す!
91:動物に例えると リボンとお口がとてもうさぎ(ミニレッキスあたり)
92:色に例えると 赤
93:使えそうな魔法 逃走成功UP、回避能力UPとかの補助魔法、もしくは相手からのアイテムゲット…これは物理か
94:驚いたときに上げる声 昼「きゃっ!」 夜「えっ!!??!」「嘘でしょ!!!」
95:笑い声 昼「ふふっ」控えめ 夜「あははははっ…!!」気持ちよく笑ってそう
96:よく行く店/場所 たまに買い出しに町へ行く以外はあまり外でない引きこもり。 夜はターゲットの住居付近を偵察。
97:よくする表情 (*´ω`) (`・ω・´)
98:よく取るポーズ 在さんが描いてくれた腕を腰に手を当ててどや顔してるポーズが私の中で一番しっくり来てる!
99:漢字一文字で表すと 花
100:キャラに合う四字熟語を作るなら 狡兎三窟 ?ごめんなさい詳しくなさ過ぎてめちゃくちゃググりました…
101:好きな音楽 クリスマスの時期に協会から聞こえるキャロル
102:好きな/嫌いな言葉 好き:花言葉 嫌い:死を彷彿とさせる言葉
103:好きな/嫌いな天気 好き:快晴 嫌い:嵐
104:好きな/嫌いな食べもの 好き:お兄ちゃんの作る料理 嫌い:嫌いなものはあまりないけどフランスパンは苦手、硬すぎて中々食べるのに苦労する
105:好きな花 チューリップやガーベラ。カメリアはあんまり好きじゃない。
106:好きな/嫌いな動物 好き:雀 嫌い:カラスはちょっと怖くて苦手
107:好きな作品の傾向(小説、映画、美術etc。「シリアスな映画が好きそう」みたいな) 今はそんなに活字を読んでいる印象ないけど、 幼い頃に読んだ絵本の印象は強く残ってそう…ファンタジーやわくわくするような冒険もの。 後は花や植物の図鑑とかかな…
108:好きな/嫌いな飲みもの 好き:ローズティー 嫌い:特にない 109:悩みができたら 誰にも何も言わない
110:運命の存在について 運命は自分で切り開く(強い)
111:自分の容姿への感想 「そりゃ当然かわいいに決まってるでしょ!」
112:自分の能力への感想 「昼も夜くらいの精度をキープできれば完璧だったんだけどねぇ~まぁ仕方ないかしら 人間多少欠けてる方が魅力的なものもあるしねぇ~えっ違う?」
113:恋への興味 したことはないけど他人の恋模様とか見てるといいなぁとは思っていそう
114:恋をしたときの様子 無意識だけどきっと相手のことばかり考えているし、別れた後にちょっぴり寂しくなるし 早く会いたいなぁって思う
115:恋をしたときのアプローチ方法 よく喋ることで、引き留めようとする
116:異性への耐性 兄と弟がいるので耐性はある
117:モテ度 本人は気づいてないけど夜より昼の方がモテている。
118:性的なテクニック お゛お゛ぉ゛ん…(困ったときのにゃんちゅう)
119:告白するときの言葉 「えへへ…好きになっちゃったみたいです」 な、なんつって…
120:フェチ(マニア) 香り?
121:愛し方 控えめ、そっと寄り添う
122:甘え方 袖を引っ張る
123:一途さ 夜はファンたちが~とうるさい奴だけど、好きになれば一途
124:体の丈夫さ 普通、健康体
125:体力 あまりない。夜活動してる時は感じないけど、昼間に疲れとか反動がくる、次の日に筋肉痛がくるみたいなもん(?)
126:記憶力 悪い、人の名前とかもあまり覚えられない
127:リーダーシップ ブーケやってるときは(二人しかいないし)お姉ちゃんだしそこそこ発揮される、はず。 でも基本は兄弟の真ん中なのもあって丸投げマン
128:社交性 花屋にいる時くらいの…最低限の社交性。 129:下着 お゛お゛ぉ゛ん…(困ったときのにゃんちゅう) 19世紀の一般的な下着だよきっと
130:誕生日と血液型 1月2日/A型
131:教え方 花の事なら色々優しく教えてくれますよ
132:詳しい分野 植物
133:これのためなら死んでもいい 「自分の死と引き換えにこの町が良くなるなら考えるわよ」
134:体温(平熱) 36.5度
135:世間知らず度 自分の身近ばかりしか見えてないから世間全体を本当に知っているとは思えない
136:外出頻度(ペース) 週1、2くらいは昼間も外に出てほしい…
137:声の大きさ 大きくないし、昼は強弱もあまりない。夜はよく叫んでる。笑
138:ゲームの強さ 強い、あまり頭脳戦は向いてないけど筋と運がいい
139:化粧 夜は薄く口紅を引いてる
140:ご飯を一緒に食べる人 兄弟と
141:物を買うときに重視する点 長く使えるものかどうか
142:心の中で認めている人 めげずに自分を捕まえようとしている警察のあの子
143:気の合う/好きなタイプ 自分の信念を持っている人、諦めずにチャレンジする人
144:合わない/嫌いなタイプ すぐ人の悪口を言う人、弱い者いじめする人
145:色々な相手への二人称(目上、部下、友人、敵etc) 基本的には昼間はさんづけ、夜は呼び捨てか勝手に変なあだ名をつけたり
146:寂しがり度 たまに家族連れとか見ると寂しくなる
147:ドジ度 一日一ドジ。もはや日課。
148:好みじゃない物を貰ったら ありがとうと言ってもらう。何でも貰ったらきっと喜ぶ。
149:カラオケに行ったら デンモクの使い方に苦戦して序盤で詰む
150:上機嫌なときの様子 すんなり奪還成功した後とか…得意げな顔しながら鼻歌混じりにスキップしながら帰りそう(イメージ)
151:不機嫌なときの様子 逃走邪魔されそうになった時とか…チッって普通に舌打ちとかしちゃう
152:(学生だった場合に)入りそうな部活 園芸部
153:つい他人にやっちゃうこと 人助け
154:実は嫌いじゃない人 何だそのフェイント…嫌いか、興味ないか、好きかははっきりしている
155:周囲からの人気 現在ファン急増中(本人談)
156:常識人度 普通
157:他人の目を気に��る度 自分の事とかは気にしないけど、ヴォルフラムさんと並んだときはあまりにも自分が庶民すぎて気にするかも。 (そんなシーンあるかは別として)
158:可愛いもの好き度 可愛いものも好きだけど変なものとかちょっと変わったものも好き
159:考えを口に出す度 あまり出ないけど、相手に求められたらぽつぽつしゃべるかな。後はそれこそカッとなるとペラペラ喋りそう
160:冷徹度 低い…からアンチヒーローになってでも誰かを助けたくなるのだろうね
161:執着心の強さ 強い、一度決めたもの・引き受けたものは守る
162:持病 なし、健康体。
163:純情度 唯一の女の子だし…良くも悪くもピュアに育ったかと…
164:腹黒度 グレー
165:本(書類)を読むスピード 遅いし中々一冊読み終わらない
166:起きたら最初に カーテンを開ける
167:告白されたら ありがとうございますと言って流す
168:精神の強さ 強め
169:敏感な場所 首筋
170:読んでいる雑誌 新聞くらいかな?ブーケの記事ないかついつい見ちゃう
171:必殺技 ビルからビルへハイジャンプ
172:雑学の量 ほぼなし。
173:恋愛遍歴 お゛お゛ぉ゛ん…(困ったときのにゃんちゅう)
174:S度/M度 どちらかと言えばS?
175:好きな数字 12
176:料理の腕 聞いちゃいます…?作るのは嫌いじゃないけどセンスが…
177:運動神経 夜はいい
178:部屋の様子 こざっぱりしていて必要最低限。あまり女の子らしい部屋じゃないかな? 唯一、大きな鏡が一つあるくらい。
179:癖 よく頬に手当てたり、髪をくるくるいじったりする
180:口癖 「~でしょ!」とか「当然!」とか…断定系…どこからくるのその自信は
181:あだ名 ブーケ、ブーケさん
182:メールアドレス bouquet4649あっとまーく…嘘です。
183:メールの内容と文体 業務用の短いで簡単なメール、もしくは楽なスタンプとかの一言(OKとか)
184:(学生だった場合の)得意教科/苦手教科 得意:生物 苦手:体育
185:性経験 お゛お゛ぉ゛ん…(困ったときのにゃんちゅう)
186:腕力 ない
187:趣味 お花の雑貨づくり
188:お金の使い道 食費や花束用のリボン
189:起床・就寝時刻 7時起き、夜は早い日は22時には寝ているのでは
190:家族構成 兄、自分、弟。 弟の事はあまり心配してないけど、お兄ちゃんが地味に心配だよ…
191:怒り方 喧嘩になるくらいなら怒りは軽い、 本当は泣きながら怒るタイプ
192:酒の強さ 弱い。どちらかというと笑い上戸だし唐突に絡む
193:RPGのキャラだった場合の職業 盗賊(笑)私のイメージ、テイルズオブデスティニーのルーティ
194:頭の良さ もうここまで読んでくれていたらお察しできるかと
195:運の良さ 運はいい
196:もしも現実にいたら 私は、やじうま根性でブーケの活躍を見に行く……!! 昼間は普通に花屋のアルバイトのお姉さんしてそう
197:コーヒーの飲み方 砂糖多め、猫舌なので少し冷ましてから飲む
198:自覚してない欠点 察しがよくない
199:ここ一週間で一番幸せだったこと 窓際で育ててたサボテンに花が咲いたこと
200:キャラへのメッセージ ブーケ窃盗ライブ会場どこ・・・
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【黒バス】no day but today/只今日已ガ或
2017/01/29 発行コピー本web再録
明日も明日も明日も来ずとも
今日と今日と今日が在ります
明日も明日も明日も死すとも
今日と今日と今日を逝きます
「先生、センセ、どこにいるんですか」
「もう見つけている癖にわざとらしい。さっさと来い」
四月の頭は春の狂乱。薄青い空は、桜花の気配を反射して柔らかく香る。春の季節は花よりも短い命だ。先生はこの季節が一等お好きなので、常日頃閉じこもる部屋から、この時ばかりは、あちらこちらへと、凧より不確かに、童より落ち着き無く彷徨っている。
春。あらゆる芽生え。美しき目覚め。
「たまには、先生の方からお越し頂いても良いと思うんですけどね」
サテ、どのようにあんな所へ登られたのかしらん、と丁寧に手入れされた庭をぐうるり見渡せば、咲き終えた桃の木の陰に梯子が立てかけられている。どれだけお誘いしても動こうとしない偏屈な男は、こんな時ばかり行動をするのでこちらとしても苦笑いを浮かべるより他に無い。初めて雪に出会った犬が、気でも違ったかのように走り回るように、初めての衝撃は人を狂わせるものだ。先生は、何年を過ぎても、春に初めて出会う獣だ。所々の釘に緑青が浮き出た屋根の上、黙ったまま遠吠えをする。
「先生、今月の原稿」
「そこにある」
高台にある先生の屋敷の屋根からは、東京の平屋が見渡せる。えいやらこいやと屋根を登った功労者を労わることもなく、先生は眼下の街を指差した。否、指したのは、己の書斎の、黒檀の書斎机なのだろう。目を閉じるまでも無く、あの沈黙に包まれた部屋で沈黙を守る原稿が見えた。
「なんというか、これは、アレだ」
「なんだ」
「優秀過ぎてつまらないなあ」
緑間先生が、〆切を過ぎたことは一度も無い。俺が先生附きになってから、本日まで。三度目の春を迎えても尚。
何を馬鹿なことを、という目で先生は俺を見た。この国には珍しい、否否、恐らく唯一であろう、明るい若葉の瞳が俺を写して瞬きをする。それ以上言葉を接ぐのは億劫になったのか、先生は花に霞む橙色の街を見ながら呟いた。
春は五月蝿いな。春ばかりは、こうも五月蝿い。
*
「なんと言いますか、編集になったら、というか、他の輩はね、先生の原稿を追っかけ東奔西走、京都の旅館で芸妓さんと戯れてる所をとっ捕まえ、陸奥の炉利端で魚焼いてる所をとっ捕まえ、浅草で芸妓と戯れ等してるのをとっ捕まえね、必死に連れ戻しちゃあ見張って、追い立て、原稿を取り立てているんですよ」
「芸妓ばかりか」
「そうですね、真ちゃん以外はね」
半時ほど屋根の上で黙りこくっていた先生は、突如立ち上がると俺に一言も告げずに、その大きな身体に見合わぬ機敏な動作でひょういひょいと梯子を降りて屋敷の中へ戻っていってしまった。慌てて追いかければ、台所でじいっと鉄瓶を沸かしている。思考の一つもその原動力も解らないけれど、何故だか先生の原稿だけは西洋の錬金術かと紛うばかりの不可解さでもって、〆切までに現れている。そうしてまた、尚の事不可思議を極めることに、この原稿がまた読みやすく、人の情緒に潜り込むのである。
「その呼び方はやめろと何度も言っているだろう、高尾」
「はいはい」
実際の生活に於いて、人の心など微塵も解するつもりの無い先生は、二人分沸いた湯でもって、己の分の茶だけを点てた。矢張りその侭、俺を無視して部屋へ戻るので、こちらも此の呼び方を変えるつもりはない。というのも、元はと云えば、冬だから酔わねば為らぬ、付き合えと突如言い出した先生が、存分にしこたま酒を喰らい、湯水のように酒を煽り、泥酔の挙句、飲んだ酒の分だけ語り、笑い、己でこの愛嬌ある呼び名を漏らしたのが悪いのである。
高尾、お前は己がまだ罪悪に目覚めていなかった頃を覚えているか。幼い頃? それは幾つだ? 五つか六つ? 馬鹿を言うものじゃない。子供など罪悪の根源なのだよ。悪辣の化身よ。それより以前だ。尤も最たる無罪は生まれた瞬間だ。その時だけが赦されている。はは、ははは、俺もその頃は、先生等という、何者でも無い呼び名など無かったが、ふん、今や名前に意味など無いな。お前もそうだろう? お前の名前は『文芸青い森』氏だろう。人など、どうせ記号と象徴に消えて逝くだけだ。足掻いてもがいて縋らなくては、己の名前など、母しか知らん物になる。何だ其の顔は。俺にも母くらい居るに決まっているだろう。お前は珠に俺を神か悪魔かと勘違いしている。母だけが俺の名前を知っている。ははは、真ちゃんとしか呼ばれなかったがな。ははははは。笑い声は母の連なりだ。はははは。
翌日、記憶を無くさなかった真ちゃんが、悪鬼も裸足で逃げ出す形相で、昨晩は忘れろと迫ってきたのも懐かしい。
「真ちゃんは面白いなあ」
「そうか。お前は大概失礼な奴なのだよ」
曲がりなりにも、文士と編集という関係で、そこまで砕ける奴がいるか、と、そう言いながら真ちゃんは原稿を投げて寄越す。俺の無作法を許容しているのだから、なかなかどうして、そちらも同じ穴の狢と思う。原稿の枚数だけを確認して鞄にしまいこんだ。まだ日にちは有るので、ゆっくり線を引けば良い。つくづく、人間性は置いておいて、優秀すぎる男だった。
「そもそも、文を書くため文を書き、文に殉じて文士になったのに、何故書かない? その時点で理解に苦しむな」
「学生になったからって、勉学に励む奴ばかりとは限らないでしょ?」
「ああ。確かに居るな。ふむ、懐かしい。赤司なんかは、貴方達に教わることなど無いと、教授を片端から論破して、後は圖書館に引き篭るか、どこかへ流れてばかりいたし」
「そうじゃあない。そんな飛び出した奴のことじゃない」
赤司といえば、恐ろしく有名な華族の一派だと思うが、まさかそこの嫡子のことではないだろう。先の戦争でいち早く物流に目を付けて、いざ火薬が飛び交う頃には全ての武器から薬剤、食料、布、それらの元締めを押さえていたという恐ろしい先見の一族。緑間という苗字も相当名の知れた家であることは間違いないのだが、赤司と繋がりがあるというのなら、それは兵器と身内ということだ。その経歴から只者ではないことは知っていたが、この男は想定を簡単に超える。
「そもそも、何故、作家になぞなろうと思ったかね」
「何度も話しただろう。生きる意味だ」
「何度も聞いたけど、全く解りませんね」
「わからなくていい。お前とは考え方が違う。お前もそう思っているのなら、お前は作家になっている」
高尾、俺はな、人として生まれたからには、何かを残さねばならないと信じているのだよ、と真ちゃんは説く。何かを生まねば、生まれてきた甲斐が無い、と。
「俺は、今しか信じない」
此処に存在するものが全てで、此処で己が感じたものが全てで、それ以外は存在していないのだと。故にその存在を残すのが、己が役目だと彼は信じている。
「未来などなくていい。永遠に訪れないものになど興味は無い。俺は今生きていればそれでいい。今、生きているのだから、人として生きた証を残せればそれでいい。それが、俺が死んだ未来も残るというのなら面白い。それだけだ」
「そんな生き方、苦しくねえの」
「明日は死ぬかもしれないが、昨日は既に夜かもしれないが、何、どうせ生きるのは今日だけなのだよ。何を気負うことがある」
縁側で茶をすする姿は、一見して平穏の象徴のようだ。陽射しが反射して黄金に降り注ぐ庭は赤詰草が地面を覆い尽くし、小さな丸い花を細かくつけている。桃の木の下には薄紫の碇草、垣通。黄色い鬼田平子は縁側から飛び出すように伸びているし、廂の下には烏柄杓が弦を巻いている。
春は目覚めで、春は狂乱だ。緑に埋もれて、緑の人は、静かに目を細めている。その中身が烈火よりも尚熱いことを、どれほどが知るだろう。迂闊に触れれば火傷どころか、その覚悟の前に骨から燃やし尽くされることを。
「…………それじゃあ今回も完璧な完成原稿をありがとうございました」
「はい、お粗末さまでした」
「今、何を考えてるの?」
「春は五月蝿いなということを」
この五月蝿さは、どうすれば伝わるのだろうな、という真ちゃんの目には、静寂ばかりが見える。
*
「仕事を寄越せ」
「先生が仕事人すぎて俺は本当に怖い」
一週間ぶりに真ちゃんの書斎を訪れれば、原稿用紙およそ三百枚の束を押し付けられながら、淡々とそんなことを言われるので思わず頬が引き攣るのを感じる。物量はそのまま圧力である。質量保存は精神に及ぶ。たった二枚半の書評を書くのに三ヶ月先延ばしにしている作家もいる中で、この男は一週間でこれを書き上げ、次を求める。先生の全集の編集作業だけはやりたくない。
「っていうか、そもそも俺、こんな原稿依頼してたっけ」
「自主的に書いただけだ」
「嘘だろ」
「別に載せろというつもりはない。が、一応渡しておく」
「『春について』か。まんまだね」
「己でまとめられそうに無いから三百で書いた。捨ててもいいし、どこぞの穴埋めにしても良い。使う時の許可もいらん。ただ、使うなら半分は削れ。この話に三百は無駄だ。削る場所はお前��決めていい」
「珍しいね、真ちゃんが最後を人に任せるなんて」
「まだ俺には早かったんだろうな」
欠伸をしている所を見ると、どうやら完成したばかりらしい。人間として規則正しい生活が最も原稿を進めるのに適していると信じているこの人は、朝は必ず六時に目覚め、夜は十一時に床につく。お役所の方だって、ここまで時計に忠実には動くまいという正確さだ。ただし、どうも先生の中では、最終の区切れ目があるらしく、その一線を超えると、後は書き終えるまで一睡もしない。それが例え残り三枚であろうが、五十枚であろうが、関係なく。それはただ彼の心の中にのみ存在する線であるので、俺から調節することは不可能だ。今回は、どうやらその線を随分と早く踏み越えたようだった。
興味本位でぱらぱらと原稿をめくるが、几帳面な文字が整然と並び、所々自身で入れている赤ですら、列を成して整っている。いつも通りの、緑間先生の完成稿である。性分とはいっても、これはあまりに厳格が過ぎる。
「真ちゃんの原稿、誤字脱字なぞは勿論あるけどさ、全部自分で赤入れてあるから、それ以外の、つまり、真ちゃんも気づいていない誤字、一度として、見つけられたことが無いんだよなあ」
「当たり前だ。読み直した時に気がつくだろう」
「普通は見落とすんだよ。普通はね」
この、自主的に書いたという、いうなれば仕事でも何でもない手遊びの原稿だって、どうせ一文字も狂いが無いに決まっているのだった。
とはいえど、俺の担当している文芸でこれ以上真ちゃんの頁を増やした日には、雑誌の名前を『月間緑間』に変える必要が出てしまう。一度も原稿を落とさないから、重宝されているのだ。重宝しすぎた。一人だけ、連載のように一定の頁を持っているから、完全にうちの紙面は緑間で成り立っている。成り立ちすぎて、緑間専用誌にならぬように編集長まで確認しているくらいなのだ。どこか別の所で、今月穴を開けそうな所はあったかと皮算用している俺に、真ちゃんは淡々と繰り返した。それで、仕事はないか。
「真ちゃん、うちで長期の連載もあるし、随筆も持ってるし、他誌でも連載してるし、珠に寄稿なんかもして、若手の同人の書評もしてるでしょう」
「別にそれくらいだろう」
「それのどこがそれくらいなのか教えてくれ」
間違いなく、今、真ちゃん以上に書いている輩などいない。あまりに節操なしに手当たり次第に書くものだから、批判的な所からは「飢えたハイエナ」「そこにあるものは全て食らおうとする卑しさが見える」とか好き勝手言われているほどである。実際は超上流階級特権階級育ちの、血統でいうならこの日本でも十には入る一族の嫡男なのだが。
「書かせろ。何でもいい」
確かにこの欲求は、そう評されても仕方が無い程過激である。というより、そんな事を適当に並べ立てる彼らの中の誰も、緑間真太郎がここまでの基地外じみた文字狂いとは思っていないだろう。文字を食らって、文字を吐いて呼吸しているような人だ。その姿勢を知っているひと握りは、こと緑間真太郎に対しては口をつぐむ。触れたくないのだ。その真摯さは、その一途すぎる情熱は、少しでもその道に足を踏み入れたことがある者からすれば恐怖の対象である。
「真ちゃんは、もう少しばかり、遊びっていうものを覚えてもいいんじゃないの?」
「遊び?」
「うーん、座敷遊びとか」
「お前、経費で行きたいだけだろう」
「そんなことありませんよ」
本当だ。真ちゃんと一緒にそこに行って、面白いとは思えない。いいや、綺麗な人の形をした花に囲まれて、ずっと物騒な顔をしているこの男を見るのは面白いかもしれないが、それは花遊びではないのだ。どうせなら俺は花を愛でたい。日向の庭に咲く小さな明かりではなく、夜の行灯の下で賑やかに艶やかに咲く方をね。まかり間違っても、この男ではない。
この男を見るのは楽しいが、夜の花と一緒に愛でる、ものでは、無い。
「興味が無いな。そんなことに時間を割くなら、一文字でも多く書くし、一つでも多く学ぶだけだ」
「でも、世界が広がるかもよ?」
「何だと?」
今まで全く反応を示さなかった真ちゃんは、ぴくり、と眉をあげた。この男は、兎角、視野だとか世界だとかの広さを気にする。見えなければ書けない、俺は見たことが無いものを書く事はできない、というのが口癖だ。そもそも、俺がこの偏屈に最初に認められたのも、俺の視野の広さによるものなのだから。徹底しているといえば徹底している。
「そういった、遊びだとかに興味が無いって云うのはさ、其れ等のものに命を賭けている人や、それに関わる物事を無視してるってことだろう? 人間の命題の一つとして、堕落だって書かないといけないんじゃあないの?」
「もう堕落を題材にした話は書いたのだよ」
「そうでした」
半年前の原稿を思い出して肩を落とす。あらゆる堕落の果てに辿りついた人生のどん底で、男が周囲を恨み妬みながら、次第にその気力すら無くしていく話。最後は真冬の酒場の前で、真っ白な雪に埋もれて息絶える。読んでいるだけで、こんな人間の屑がいるものかと呆れ果てたし、其の男と己の共通点を、読み進めるほどに見つけ出してしまって苦しくなっていった記憶。
「何で真ちゃんは或れが書けたんだ……」
「周囲に堕落している人間が多かったからな」
見たことがあるものは書けると言っているだろう、という真ちゃんは、何を思っているのだか、暫く難しい顔で考え込んでいた。
「しかし、お前の言うことも一理ある」
「お?」
「そういった遊びも、知識として必要なのかもしれん」
「いいねいいね」
「黄瀬にでも連絡をとって」
「却下」
突然出てきた名前に慄きながら、俺は咄嗟に真ちゃんの肩を掴んだ。不満げな顔が俺を見下ろすが、今、俺はお前の心の大事な、こう、柔らかい部分を守ろうとしているのだ。少女が一人物騒な夜道を歩こうとするのを引き止めるのと同じ理である。そんな顔をされる筋合いは無い。
「黄瀬クンは止めよう」
「何故」
「何で先生は突然そう、段階をすっとばすかな!」
「こと遊興にかけて、あいつに適う者はいないだろう」
「いないよ。いませんけどね? いきなり上級者の最高級品にいってどうするのって話」
「どうせなら最高のものを体験したほうがいいに決まっているだろう?」
「先生は本当に頭が良いのか、俺は突然わからなくなる」
黄瀬といえば今、帝国劇場で押しも押されぬ一の役者だが、その分、女遊びも派手なことで有名だ。というより、女の方から寄っては散り、寄っては散りしているのだろう。一度だけ、真ちゃんに連れて行かれて楽屋まで行ったが、あれは他人に興味など全くない類の人種だった。というより、懐いた人間以外、全て同じに見える、という、素直すぎる男である。この世は好きか無関心。
あらゆる人間の細かな差異に、いちいち目くじらを立て腹を立て、文句を言うような真ちゃんとは真逆に位置しているのだろう。故に、思考は合わないが相性は良い。好かれた人間にのみ構って欲しがる男と、誰にでも平等に構うが、一見ではその意味に気がつけない男。
だからこそ、黄瀬は、誰彼構わず、請われるがままに適当に相手をし、そして何彼問わず、適当に流してあらゆるものをやってのけるのだ。そんな男に任せたら、間違いなく戻って来られないような世界に案内される。それも善意で。黄瀬にできるあらゆる接待で歓待するのだろう。
「高尾?」
「赤司といい黄瀬といい、どうして他者巻き込み破滅型の人間が真ちゃんの周りには多いんだ……? 普通作家自身がそうであるものじゃないのか……? それともやっぱり真ちゃんが実は破滅型で、類は友を呼んで……?」
「高尾、聞いているのか」
「はい、すみませんなんでしょう」
「それならお前が連れて行ってくれるのか?」
「はい?」
「お前もなかなか遊び慣れていそうではある」
「何ソレ。真ちゃん、そんな風に俺のこと思ってたの?」
「違うのか?」
「若い頃は色々やりました」
「だろうと思っていたのだよ」
黄瀬と比べるべくもないが、しかし周りと比べれば、どうだろう、なかなか俺も堕落した人生を過ごしていたことには違いなかった。金になるならと闇まがいのこともしたし、その辺の店で得体の知れぬ使いっぱしりをしたり、野菜をかっぱらったり、適当な女の家に厄介になったり、まあ、それなりに。嗜みとして。
「俺は若い頃に何もできなかったからな」
そう、しみじみと漏らす真ちゃんは、まるでもう寿命を終えるような口ぶりで話す。まだ二十も半ば、男の盛だというのに。まだ世間では若いと言われるような歳で、真ちゃんが振り返る過去は学生の頃のことなのだろう。
「家のことだけだ。言われるがままに言われたことをこなしただけだった。俺自身のものなど何も無い」
「それも十分立派だと思うけどね」
「そうだな。悪くない。それは決して悪いことではない。俺は赤司の生き方を否定はしない。家を守り、家に殉じ、家を遺す生き方は誠実であるだろう。だが俺は我が儘なのだよ」
「存じ上げていますけどね」
「俺が遺したかったのは緑間の家ではなく、『緑間真太郎』という存在だったからな。フン、ついぞ理解されなかったが、仕方が無い。誰も間違っていないのならば、そこにはただ違いが残るだけだ」
「しかしまあ、よく出してもらえたよな」
「というより、作家になると言ったら絶縁されたからな、なんとも気楽な自由の身なのだよ。最高だ」
「最高とか言うなよ。周囲から見たら驚きの凋落だわ」
「そうか? 誰だって自由には憧れるものだろう? 俺ほど羨ましがられる人間は他にいるまい」
「その自信も凄いけどね」
それで、お前はどこに連れて行ってくれるんだ、と言う真ちゃんの中で、もうどこかへ遊びに連れて行かれることは確定しているらしい。何で俺が、と思わなくもないが、何せ言いだしっぺが此方なので、何とも断りにくかった。かといって、彼と花街には行きたくない。絶対に。絶対にだ。ならば残る選択肢は少なかった。
「……すき焼きでも食べに行く?」
「すき焼き」
「食べたことある? 流行りだして店も増えているけど」
「無い。うまいのか」
「まあ、うまいね。牛肉をね、こう、甘っからく煮て、そこに生卵をかけてね、白米かなんかと一緒にかっこむの」
「行く」
「先生は、案外、食に対して貪欲だよなあ」
*
最近は晴れてばかりの陽気だから、地面は乾いて歩きやすい。乾きすぎて土煙が上がっているくらいだ。真ちゃんは歩く時、あまり音を立てないが、そのあまりに高い上背と、緑の出で立ちは人目を引く。俺も背は高い方だけれど、真ちゃんの隣では子供のようだ。
人目を引くから外に出たくない訳ではなく、単純に不精なだけの真ちゃんは、先程からすれ違う女生徒達の一種の欲を秘めた瞳にも全く気がつかないらしい。やれやれ。どれだけ若くても女は女。そして朴念仁は朴念仁らしかった。
「真ちゃんは、だれかとお見合いとかしないの」
「何故見合いなんだ」
「真ちゃんが自主的に自ずから恋に落ちると思えない」
「失礼だな」
「恋に落ちるの?」
「女とそんな関係になったことはないな」
あっさりとそんなことを言ってのける、この男の作品の中には、男女間の恋愛を描いたものもそれなりにあった筈だが、当の本人はこの言い草だ。恋は目に見えない。彼にとって、堕落を知るのが周囲の人間を介してであるように、恋愛も、周囲を介して学んでいるのだろう。
あまりにも人間としては不適当だが、それが文壇にて脚光を浴びるのだから世も末である。
「しかしまあ、見合いも無いな。家からはもう一切の連絡が来ないし、たいした関係も無い輩から持ってこられても断るだけだ。かといって、世話になった人からそういった話が来るとも思わんしな」
「何で」
「お前は、見合いの相手として俺を紹介したいと思うか」
「思わない」
「そういうことだ」
それは自分で言って悲しくなりやしませんか、と思うのだが、真ちゃんからすれば、それはただの事実、の一言らしい。客観が過ぎるのも考え物だと思う。簡単に言えば、可愛げがない。指摘されて慌てふためく姿に人は愛嬌を覚えるのであって、開き直られたのでは腹が立つだけである。彼は圧倒的に後者だった。それも、特別に質が悪い。
「真ちゃんが誰かとお見合いなんてすることになったら、真っ先に教えてくれよ」
「何故」
「真ちゃんの悪口を百個くらい言って、期待の度合いを下げておいてあげるからさ」
「迷惑極まりないな」
花の香りと砂交じりの風に巻かれながら辿り着いたのは、最近このあたりにできたばかりのすき焼き屋。幟が風にはためいて、白く抜かれた文字が裏返っている。
俺の隣にいた真ちゃんは、「ここだよ」と指し示す俺を追い抜かすように暖簾をくぐりながら、
「そもそも俺は、女に対してそういった欲求を抱いたことがない」
「え?」
そんな意味深長なことを言って俺を困惑させるのだった。
暖簾は紺で、緑はとっくに女中の案内を受けている。
*
「うまい」
「良かった」
「これは良いな。良いものが来た。良いものが現れた。これは残るぞ。これは残る」
「意外だな。真ちゃんは、こういうハイカラな物は嫌いだと思ってたけどね」
「嫌いなことがあるものか。新しいというのは、それだけで意味があることだ」
すき焼きが出てきた瞬間、眼鏡の奥の瞳がきらめいたと思えば、そこからは一言も喋らず淡々と箸を進めるだけだったので、これは気に入ったのだろうなあと眺めていたら、締めの雑炊まで食べ終わって、真ちゃんはやっと満足げな息を漏らした。そしてこの言いざまである。どうやら相当に、お気に召したことは間違いなかった。
「あんまり、新しいものが好きっていう印象は持っていなかったけど」
「新しい文化はいつだって迫害される。迫害され、追いやられ、蹴落とされても残ったものは本物だ。ただそれを待てばいい。自ら追いかけるほど暇ではない」
本物は残る。本物はいずれ耳に届く。お前が俺をこの店に連れてきたようにな、と続ける姿は、堂々としていていっそ小憎らしい。俺が一度ここに来ていて、ここなら出汁も効いているし、真ちゃんも好きだろうなあと、思ったことまで見透かされているようで猶更である。
「それにしても、そんなに新しいものに興味はないだろ」
「ただ、俺は新しいものに自分の調子を崩されるのが嫌いなだけなのだよ」
「それって結局嫌いなんじゃん」
「そうかもな」
新しくなくなればいいのだから、時は偉大なのだよ、と言う、真ちゃんは手元に運ばれてきた茶碗を確認している。藤色に瑪瑙のような緑色。今までこんな色の茶碗を見たことは無かったけれど、これも西洋の文化と共に流れてきたのだろう。まるで俺の考えていることがわかるかのように、真ちゃんは呟く。新しいな。これは新しいものだ。
「新しいものがどんどん流入してくる」
「そうね」
「悪いことではない。ことここにいたって、日本の遅れは目に余る。日清で勝ったからといって、この浮かれ様はなんだろうな。皆、心の奥にある不安を、黙って見過ごすこともできず、話を恐れて、綺麗に話題を避けた結果がこれだ。戦に勝った。日本は選ばれた。馬鹿馬鹿しい。一時の盛況は未来の浪費だ。自分の意見が無いというのは、迷惑をかけないという意味ではない。むしろ真逆だ。全ての罪悪は相手由来になる。新しいものを手にしなければ時代に取り残されるが、ただ流すのでは、いずれどこかでしっぺ返しを食う。それだけのことなのだよ」
「次の話の題はそれ?」
「『古き悪しきもの、新しき良きもの、愚か者』か? 語られ尽くしたという感は強いがな」
すき焼きの話から、また真ちゃんの好きな原稿の話になってしまった。なってしまったというか、俺がそうさせてしまった。どうもつい、俺は彼の仕事癖に呆れている反面、先生にはこうであって欲しいという気持ちがある。どうしても。書いていて欲しい。何もかも。全て。
*
「それで真ちゃん、すき焼きで何か学べた?」
「うまかったな」
「真ちゃん結局それしか感想言ってないけど」
「何だ? あそこのすき焼きの店でエッセイでも書けと? それならばそうと言え」
「違う。何で先生にそんな大衆雑誌の穴埋めみたいなもの書かせないといけないの」
「大衆誌は偉大だろう。結局、聖書を除けば一番読まれているのは新聞なのだから。大衆こそ国で、大衆こそ世界だ。大衆向けに作られているものは強い」
何だかんだと食後のお茶までして、真ちゃんの家へと戻る道は、もう夕暮れの終わりだった。空は赤紫と濃紺の間で、複雑に折り重なっている。太陽はいくつもの細かい線になって、折り重なり絡み合い、木々の隙間を通り抜ける。家々は、夜より一足早く、軒先に行灯を下げていた。がらがらと、手水の水を捨てる音。豆腐屋の喇叭がどこかから木霊して、小石が小さく反射している。
あたりが丸くぼんやりと光る中を、男二人でぽちりぽちりと歩いていく。
「そういえば、官能小説のようなものには、手を出していなかったな」
「何を突然」
「お前が言ったのだろう。花街に行くのも勉強だと。お前の所に、これ以上俺の話を載せるのは、紙幅の関係上無理であろうことは分かるし、他誌にも限界がある。しかし、俺はその分野には一切手を出していないからな。参入の余地はあるだろう?」
「何でそこに参入の余地を見出したんですかね」
まるでさも名案を思いついたと言わんばかりの顔で、密やかに頷くものだから脱力してしまう。参入の余地があっても、入るべきでない場所は沢山ある。
貴方は麻薬の密売の人手が足りないからといって薬を売りさばくだろうか? いや、別に官能小説が麻薬と言っている訳では無いけれど。けれど似たようなものだろう。
「今日は行かなかったが、次回、行ってもいいかもしれん」
「何でいきなりそんな乗り気なんですか」
「食欲性欲睡眠欲は、人類の三大欲求だろう。人類から性欲が無くなれば、それは滅びの時だ。逆に、性欲について傑作が書ければ、それは永遠になるのではないか?」
「先生は本当に馬鹿だなあ」
「何だと」
鼻白んだ様子で真ちゃんが俺の顔を見やった時、丁度真ちゃんは屋敷の門を開けようとしていた。夜は徐々に深まっているとはいえ、まだ宵の始まりだ。行こうと思えばこれからだって、街にもう一度繰り出せるだろう。繰り出せる。俺たちは遊興に行けるだろう。
「嫌です」
「何故。遊べと言ったのはお前だろう」
「否、そうだけど、然様ですけど、真ちゃんと行っても、楽しくなさそうだし」
「別に、お前は帰るか、別の店にでも行くかすればいいだろう。というより、同じ場所にいることは無いと思うが」
「いやいや、それでも」
真ちゃんと一緒に行って、真ちゃんを、見るのは、面白いだろうと、思う。思うが、俺は、どうせなら花を愛でたい。日向の庭に咲く小さな明かりではなく、夜の行灯の下で賑やかに艶やかに咲く方を。まかり間違っても、此の男ではない。此の、人では、無い。
「俺、先生のこと好きなんですよ」
「そうか」
此の人では、無いと思うのに、此の人が、女を抱いている所を想像したく無かった。それが嫉妬でなくば何だろう。
この様な形で自覚をするのは、自分としても御免被りたかったのだが、しかし己の思うままに己が動いてくれるのならば、人が過ちを犯すことなど無いのだった。
「だから、先生のこと連れて行きたくないです」
「そうか」
俺は此の人に世界を見て欲しいと望むが、その世界に俺がいないことが耐え難い。其の我が儘な感情を、俺は知っている。恋だ。これは紛うこと無き愚かな恋だ。周囲を巻き込んで、破滅していく、はた迷惑な恋なのだ。
「……それで、何だ高尾その顔は」
「なんか、思いのほかあっさりと受け入れられてびっくりしてる顔ですね」
「何を言う。お前は俺をどんな朴念仁だと思っているのか知らんが、曲がりなりにも作家だぞ。人の気持ちが繊細なものであることはわかっている」
「真ちゃん……」
淡々と告げる瞳に、侮蔑や嫌悪は見えない。本当に、真ちゃんは気にしていないのだろう。周囲が暗くなっていく中、まだ明かりを灯さない緑間宅の前は一層と暗い。ただ緑の光だけが、爛爛と輝いている。
「此れはあれだろう? 俺がお前からの告白を勘違いした所、『友達としてに決まっている』と言われ、恥ずかしい思いをするという」
「ちげえよ馬鹿! お前に期待したのが馬鹿だった! っていうか逆だろそれ!」
「はあ?」
真ちゃんは突然罵倒されて意味がわからないのか、一人で首を傾げているが、俺からすればその思考がわからない。何故だ。今のは話の流れでわかるだろう。返す返すも、何故ここまで人の心が読めない男が、作家などをやっているのか理解に苦しむ。
その作品に雷鳴を撃たれ、こうして編集にまでなって追いかけている俺だって、他所から見れば、理解に苦しむのだろうけれど。
「恋愛として! 好きだって言ってんの!」
「は?」
これだけ直截的に伝えているにも関わらず、全く理解が追いついていない様子なので、却って此方の方が落ち着いてきてしまった。開け放たれた門を挟んで、一人と一人。
「もういっかい言います?」
「頼む」
「恋愛的に、恋愛として、性的欲求の対象として、真ちゃんが好きです。だから真ちゃんを花街に連れて行くのは嫌なのでお断りします」
しばしの沈黙。これは間違えた���と思ったけれど、真ちゃんは体中の錆び付いた螺子をぎしぎしと動かして、掠れた声で呟いた。
「帰れ」
「え?」
「かえれ。かえれかえれかえれ」
門が唸りをあげて、あらゆる軋みを訴えながら勢いよく閉じられる。がしゃん、という音が地球の裏まで響き渡って、俺は少しはみ出していた脚を強く打ち付ける羽目になった。脛である。人体の急所である。
「原稿は来週の水曜日には仕上げておく!」
その叫びは、家の中へと走り込みながら発されたのであろう。俺が顔をあげた時に、後に残るは舞い上がった砂と哀れな男、則ち、俺のみであった。
「逃げ足、早すぎるだろ……」
ああ言われてしまえば、俺は来週の水曜以降に訪れることしかできない。基本的に、困難には拳で立ち向かっていくような男だと思っていたのだけれど、流石に同性に告白されて、尚立ち向かうことは出来なかったか。
しかしそれにしても、ハテ、「俺がお前の告白を勘違いする」というのは、どういう意味なのだろう。
勘違いの仕様が、無いではないか。勘違いする筈が無いのである。何故って、「高尾和成が緑間真太郎のことを友情として好きである」或いは「恋愛として好きである」のどちらの解釈をしたとしても、それを「勘違い」と、真ちゃんが思う筈が無いのだ。「『高尾和成が緑間真太郎を恋愛として好きである』という『勘違い』をしてしまう」ためには、それには、つまり、真ちゃんが、俺のことを、好きでなくては、いけないじゃないか。そうでなくては成立しない。己の内に秘めた恋心に、迂闊に触れられそうになった時、「勘違いしてはいけない」と、人は己を守るのだろう。
真ちゃんが、俺のことを好きで、好きだから、俺からの告白を「これは友情の告白なのだから勘違いしてはいけない」と解釈したの、だと、すれば。
「ええ……」
顔が、首から段階を踏んで熱くなっていく。今すぐこの門を乗り越えて会いに行きたいのだけれど、恐らくそんなことをすればあの先生は本当に拳で殴ってくるに違いないので、此度は大人しく退散するより他に無い。
*
「二科展に行く」
「珍しい」
「どうしても野暮用でな」
覚悟をして出向いた水曜日、出不精である筈の男が珍しく外套などを着て、今にも発たんや、と謂わんばかりの出で立ちで門を開けてくるので、すわこれはまた逃げられるのか、と思いきや、どうやら本当に用事らしい。珍しい。
「紫原の作品が出ているらしい」
「紫原ってあの?」
「あのがどのかは知らないが、そうなんじゃないか」
紫原といえば、これもまた古くからある名家の一つである。一つであるが、最近はそこの嫡男が、春季賞を二期連続で受賞したと新聞に載り、そちらの方が有名である。
「俺の家の茶器は全てあいつのものだぞ」
「やめてやめて知りたくありません。俺、普通に脚で押したりしていた」
「茶菓子が好きだったから、それが高じてそこまで行き着いたらしいが、詳細は知らん」
「知らないのかよ」
「黄瀬と青峰が話をしていたのを聞いただけだからな」
「今、日本国軍陸軍長官の家名が聞こえた気がするのは無視させて頂きますよ俺は」
玄関先の立ち話で、出すような名前では無い。つくづく、目の前の男は、圧倒的な権力の知己が多過ぎる。数える程しか友人などいない癖に。
「真ちゃんの交友関係が恐ろしいのだよな、俺は」
「そうか?」
「あらゆる世界のトップと繋がっているだろう」
「腐れ縁だ」
「腐れ縁って」
「初等部の時に同じ組だった」
「恐ろしい場所だなそれは」
別に、五歳だか六歳だかの子供に、何が出来たということも無いのだよ。肩をすくめながら、真ちゃんは奥の書斎へと消えていく。原稿は案の定仕上がっているらしい。このままここで待ちぼうけても良いのだが、何とはなしに落ち着かず、後を追いかけて書斎へ入った。途端、投げて寄越された原稿用紙の束。
「『改題、春の目覚め』?」
「以前お前に『春について』を渡しただろう。まだどこにも出していないな? あれは捨てておけ。こちらに差し替えろ。書き直した」
「あゝ、自分で削ったのか」
「そうだな、それに、少々足した」
以前の原稿は既に下読みを終えてあるが、半分削るというのはそう簡単に出来る作業でもなく、未だどこにも出されず俺の机に眠っている。最初の数ページを読めば、出だしから既に変わっていたので、これは削ったというよりほぼ書き直しに近いのであろう。
「今回の原稿」
「何だ」
「珍しく、こう、表現が柔らかいというか、迷っているというか、これはこれで人間味があって俺は好きなんだけど、真ちゃんらしくないというか」
「五月蝿い」
「これってもしかして俺のせい?」
「五月蝿いと言っている」
俺を無理矢理押しのけて、真ちゃんは出かけようとする。構いはしない。どうせこの家に戻ってくるのだろうし、緑間真太郎は書かずにはいられない。それを載せるのは俺の仕事だ。けれどしかしまあ、成程。知っていなければ書けないと、真ちゃんは何度も繰り返し言っていたが、他人から聞いていたものが、いざ自分のものとなると、文章はここまで変わるものだろうか。
「認めちゃいなよ。俺のこと好きでしょ、先生」
「うるさいうるさい黙れ死ね」
春はうるさい、と真ちゃんは叫ぶ。もう既に桜は殆ど散り終えて、木には濃い紅の萼を残すばかりだ。それでも空気は柔らかく、庭の雑草は軒並み空に向かって体を伸ばしている。春。春。この世の春。
「世界も広がるんじゃないの。今までに無い恋愛体験、禁断の恋、参入の余地が」
「…………それでどういう話を書けというんだ」
「ううん、そうだなあ。お話にするなら悲恋? 考えようによってはね、相当の悲劇を演じられるとは思うけど」
「周囲に理解されず心中?」
「そうそう、そんなの」
「つまらないな。つまらない話だ。そんなもの」
「ありゃ」
ばっさりと、切って捨てられ俺は思わず笑ってしまう。まあ、己の告白を悲恋に昇華しろというのもノンセンスな話ではあった。門を開けば、悲劇など起こりそうに無い、春の一途。
「俺はな、人間が強いという話を書きたいのだよ。どれだけ脆かろうが弱かろうが、最後には立ち上がり、己が道を掴むという話だ。俺はそれが好きだ」
「俺には好きって言ってくれない癖に」
「馬鹿だな。たった今、お前が好きだと言ったのに」
読解力を養った方が良いんじゃないか、とおもしろそうに笑って、真ちゃんは俺を置き去りに、馬車を呼び止めて乗り込んでいってしまった。滝のような言葉に、俺はただ呆然と立ち尽くしている。春が五月蝿いと文句を言っていた男は、それこそ、その象徴のような嵐であった。
門の内側に取り残された俺は、彼が帰ってくるまで、良い子に留守番などしていないといけないのだろう。手の中に残された原稿を、めくる。改題、春の目覚め。もともとは三百枚あった原稿は、随分と薄くなっており、俺はあっという間に半分以上読み進めてしまう。
「……あ、誤字」
皆が浮かれて騒ぎ立てる、春は今、目覚めたばかり。
―――春の陽気を長閑等と形容する者も居るが、私にはどうもそれが理解し難く感ぜられる。先ず、目を開けた瞬間の眩しさがいけない。冬などは慎ましく、夜明けは暗闇からじわじわと染み入って来るものを、春に成った途端、光は遠慮無しに襖の紙を透かして部屋の中を踊ってゐる。それではと硝子戸を開けてみれば、庭には繁縷や鬼田平子が我先にと手を延ばし、虫の羽音や近所の子供の数え歌、此方は一人だというのに、彼方からも其方からも、やれ花の香りだ絹の空気だと、全身に春を訴えて来る。之を如何に長閑と形容しよう。私は春に対し五月蝿いとしか思わない。穏やかと云う優しさは、冬にこそ已、赦される可きで或る。冷たく密やかに息づいていた心は、有無を言わさず起出され、其処ら中を跳ね回って、己が物とは思えぬ程掴み難く辟易する。口は勝手に賛美歌を歌い、足は気が付けば屋根へと登る。其れ等全て、春の成す業で或る。春の所業で或る。此れを五月蝿いと形容せず如何に成ろう。私はこの五月蝿さを、愛してゐるに違い無いのだから。
緑間真太郎著『春の目覚め』より抜粋
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20180923(日、秋分の日)
秋の青空に誘われて、赤兎山(Mt.Akausagi、標高1,628.7m、勝山市)へ登ってきた。登山口に着くと70、80台位の車がすでに駐車していた。9時過ぎに登り始めたが、すでに下山してくる方もいて、混雑を予想して早めに登られたんでしょうか。
赤兎山の魅力は山頂から続く赤兎平(あかうさぎだいら)と赤兎避難小屋、白山連邦の景色、池塘(ちとう)やニッコウキスゲ、今の時期ではオヤマリンドウ、アキギリ、カメバヒキオコシなど春から秋にかけて咲く花々だと思うんですが、何といっても整備された登山道と登りやすさでしょう。標高が1,628.7mといっても登山口から山頂までは500m位なので、子ども連れの登山者も結構多く、幼児を背負っているお父さんや赤ちゃんをおんぶしているお母さんなど、タフな方もいらっしゃいました。
この日は同じ町に住んでいて、たまに山でお会いするKさんに、赤兎平付近でバッタリ。なんでも地区で山歩き会があって(彼が仕切っているんだろう)、マイクロバスで十数人を連れてきているとのこと。みんな秋の山を楽しんでいます。
そういえば今年はフルーツゼリーというかフルーツジュレといいますか、そういう種類のものを一晩冷凍庫で凍らせて、100均のセリアで買ったスクエア型クーラーバッグに入れて山行に持って行っています。凍らせても溶けてくるので山頂では食べやすくなるんです。以前いっしょに登った方にあげたところ評判がよかった。汗をかきますからね、冷たいものは喜ばれるんです。
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2019年・夏【往路】
【はじめに】
8月9日、仕事を片付けて帰宅。さて、明朝から旅に出るぞ!と、上機嫌に洗濯を回していると何やら・なぜか・何かがおかしい。アマゾンプライムで流していた「いろはに千鳥」の音が急に消えたのだ。アレ、アイフォンで流してるはずだけどな?そろっとアイフォンに目を遣ると画面は真っ暗、全く充電されていないのである。アラ、旅直前にして壊れちまった!これは困るなあ、とトチ狂ったようにガシャガシャ充電のケーブルを抜き差し。しばらく格闘し爽やかに汗を流した直後、気付く。愕然。もしかすると。ハア。ご名答である。普段、マックにぶっ刺したハブ経由でアイフォンを充電しているのだ。その通り。なんと「ひんし」だったのはアイフォンではなくマックの方だったのだ(通りでアイフォンまで電気が通らない)。さて、ド真夜中。ポケモンセンターなら24時間営業・無償かもしれんが、アップルストアは要予約、はてさて一体おいくら万円掛かるのかしら。どうあれ、マックをマサラタウン(実家)まで連れて行くのは取り止めだ。旅行先で細かい仕事を片付けるつもりだったのになあ。しかし、自宅に置いておくとはいえ旅から戻ってもマックが壊れたま��ま、というのは色々とマズイ。ライトニングケーブルと闘い続けたボクサーは、明朝アップルストアに殴り込むべく改めて拳を高く掲げるのであった。余談だが、ポケモンセンターのお仕事って、とってもブラックではないだろうか。ずっとナースのネーチャンいるよなあ。兎にも角にも、明日はホワイトな林檎マークに向かい「めざせ!ポケモンセンター」すると決めて、私は軽やかに寝落ちしたのであった。
【1】
明朝。日付で言えば8月10日。フツーに寝坊した。11時半、めちゃくちゃ素敵なお昼時である。マックどうのこうの、の件で出発を遅らせたが、そもそも朝の出発は難しかったのではないか、いやはや。さて、9時過ぎ。早速アップルストアに問い合わせる。お姉さんの声・電子音ver.が流れた後、人間のお姉さんが対応する。「あの、マックがブチ壊れてしまって」(中略)「赤坂見附のビックカメラであれば本日受付可能です」。というわけで、「まずは湘南を目指して」「熱海をカメラに収めたい」はずの青春のひとり旅は、「まずはポケモンセンターを目指して」「赤坂のビックカメラに任せたい」を経由して始まることが確定。マック赤坂当選ならぬ、マック・赤坂見附・通せんぼである。
最寄りの中野駅発、中央線・丸ノ内線を乗り継いで赤坂見附へ。ビックカメラに到着するや否や、特筆すべき話題もなく私のマックはカウンターの奥へと引き取られ消えて行った。達者でな、というかお前壊れるタイミング考えろや、という本音ダダ漏れで見送った後、急に腹痛が。こちらのダダ漏れはヤバイ。一旦四ツ谷駅まで移動し、やけにオシャレなトイレへと駆け込んだ。ハイ。ここまでの文章を、電車を乗り継ぎ、だらだらと、最終的にはトイレでウ◯コしながら書いている。この上「性春18禁」などとタイトルを決めてしまったので最早ほとんどスカトロAVである。フツーに出発してフツーに終わると思っていたけれど、どうも私はいつでも地獄を突き進むらしい。こんな調子ではございますが、「性春18禁ひとり旅」開幕です。
【2】
四ツ谷で始まるとは思っていなかった「性春18禁ひとり旅」。元々1日目で京都まで行きたい!と思っていたけれど本日の残された時間を考えると中々に難しい。難しいならいっそ四ツ谷でめしを食ってしまうか!と思い切り、街へと飛び出した(「飛び出した」と言っても駅前の横断歩道を一本、二本渡っただけだが)。パッと目に入った店に入ろう、と決めてテキトーに歩いていると「アジア大衆料理」を謳う独特なカラーリングの看板を見付けた。冷静に考えると、「アジア料理」って何やねん。店の前にはベトナムと書いてある。ドアにはパッタイの写真。最早和食すらあるんちゃうか?という謎の店構え。ええやん、入ったるわ、と猛スピードで飛び込んだ。横断歩道を渡るのとはワケが違う。店に入ると気のイイ感じのオバチャンが「イラッシャーイ」とお出迎え。「アジア料理屋のオバチャン」って一体ナニジンやねん、というツッコミは色々とアレなので避けておき、颯爽と席へ着く。一人も客おらんがな。オバチャン大丈夫かいな。メニューをパッと開いて目に入ったのはパッタイ(タイ風やきそば)だった。どうやらイチオシらしくデカデカと載っているのだ(キャッチコピー付き)。なるほどタイ人の方なのね、とアジアンオバチャンを呼ぼうとしたその時。オバチャンが客入っとんのに華麗にYouTubeをみているではないか。「オイ注文やで」と声を掛け「コレくださいな」とオーダーするその間、私はタイ風焼きそばのことなど一寸と考えていない。オバチャンが何を視聴しているのかが気に掛かって仕方ないのだ。目を細めて画面をみる。みえないので姿勢を変える。おっ、みえた。アレ?並んでんの漢字だな。ん?コレ中国版「朝まで生テレビ!」的なヤツじゃね?うむ、どうやらオバちゃんは中国の方らしい。しかし中華料理はメニューに並んでおらず、「エスニック」と括られる系の異国の料理の写真ばかりが載っている。一体全体彼女はどういうルーツの方なのよ、と小さな飲食店で「坩堝」的な何かすら感じてしまっている。
【3】
色々な生き方があるもんだね、と妙に感心して間もなく気付く。アレ、この店厨房ないやんけ!ぐるぐる店の中を見回しても、ない。暫くぎょろぎょろと周りを眺めているとアジアンオバチャンが、私が口を開くまでもなく質問事項を読み取り、「リョウリハ、ウエヨ」と先回りして教えてくれた。二階で料理しとんのかいな。わざわざ持って降りるんかいな?と思ったその時。ウィーン。リフトである。こういうタイプの店でリフト採用しとんのかいな。高架下と駅二階両方に入り口あるタイプのマクドナルドかい。
色々とツッコミどころのある店だったが、こういう類のぐちゃぐちゃ感はなぜか憎めない。遂にオバチャンはYouTubeをみながらめしを食い始めた。ぜんぶ許しましょう。もう暫く滞在したい気持ちもあったが、せめて今日中に熱海までは出てしまいたいのである。金を支払い出発する直前、オバチャンが話し掛けてきた。「ナツハ、オヤスミカイ」「あい、休みでこれから旅しますねん」。そう伝えると急にオバチャンが奥からゴソゴソと箱ティッシュを取り出した。旅にティッシュ?旅人を見送る中国特有の伝統か?ワケもわからずティッシュを引き出す私。困惑する私に、オバチャンが「ハナミズ」と。私が鼻水垂らしてるだけかいな。気付かんかったわ。どんなタイミングでティッシュ差し出しとんねん。ありがとう。
やることなすこと一つとして納得できない店だったが、妙に愛らしく思えてしまう。今回の旅はこんな素朴な出会いから始まった。いや、まだ始まってないのか。ちなみにマクドナルド四ツ谷店のパッタイは大変すこぶるビミョーであった。
【4】
「青春18きっぷ」には、「四ツ谷」と判子が押されている。さて、まずは新宿へ。湘南新宿ラインと東海道本線を乗り継ぎ熱海を目指すのだ。そう言えばフツーに「性春18禁ひとり旅」なんて言っているが、これって一体なんぞやと。ハイ、私の故郷は東京より西に下ったその先の、鳥取という地にありまして。そちらを終点と定めて夏・冬に鈍行ひとり旅(帰省)を決行しているのでございます。この度も御多分に洩れず東京は四ツ谷を始点(図らずも)として旅が始まろうとしているのでした。「性春18禁」に深い意味・意図はございませんので悪しからず。
さて、熱海に着いた後間に合えば名古屋まで走りたいところだが、はてさてどうするか迷いどころ。ビミョーなパッタイを濃い味・名古屋めしで搔き消したいのだが、そもそも電車の本数があるかないか次第なのである。一旦流れに身を任せ。
ひとり旅漸くスタート!と言ってもぶっちゃけ電車の中は暇。今回はマックがブチ壊れてしまったので、車内で映画みる・ゲームするなんてことも難しい。もうホント、やることがない。画面真っ暗のせいで、お先真っ暗である。
代わりにいくらか本棚から摘んだエッセイを持ち込んだ。この辺りを読み込んで時間を潰したが、暫くして飽きた。コーヒーを飲んだ。お茶を買い忘れた。もうそろそろ熱海に着く。名古屋まで行きたいな、などとぼやいていたが辿り着くにはやっぱり時間が足りないらしい。というワケで、本日の終着点を浜松と定めた。その前に、どうあれ熱海で2時間ほど休むことにしたのである。
【5】
間もなくして熱海に到着した。大して歩いてもいないのに、身体が痛い。さてこの地では何が起こるか。地獄へGOしてしまう性分の私に何が待ち受けているか。地獄巡りとは、本来そんな意味ではないのだが。温泉だよなあ、温泉。温泉?いや、やっぱり熱海に来たからには海なのか?海に臨まねば。テキトーに歩いている内に、目的地は海へと変わっていた。しかし土地勘のない私はひたすらに歩き回る。テキトーに辿り着けない立地ではないはずだ。潮風の方へ(グーグルマップを見ろよ)。
暫くして海に到着した。しかし、防音壁なのか何なのか、真っ白の壁に覆われているではないか。壁の向こうに海があるのに見えない状況。思い付いたのは超古典的「高台」作戦である。シンプル���高い所から見下ろせばいいのでは?と、目に入った「何に繋がるのかワカラナイ階段」を登った(今思えばアレ、廃病院とかだったんちゃうか)。まあ良き夜景の広がること。スゲー!と言いたいものだが、流石に熱海じゃ街の光量が足りず、海は真っ暗、街明かりもまあまあ許せる程度といった感じである。この弱さ・儚さがイイんだよな、と私はにやけているが、私の周りにいたお兄さんお姉さん方はこの夜景をどう思っているのかしら。隣りのニーチャン・ネーチャンは海を見ながらラーメンの話をしていた。
【6】
海を見たら満足した。やけに満足してしまった。折角来たのに熱海は終わりかなあ。しかし、海だけで終わらせるのはどうにも勿体ない。時間もあるのでフラフラと散策した後、軽食を摂ることにした。道中、坂を登ったり階段を走ったり。熱海特有・街の高低差に体力を奪われながら、昭和の香り漂うスナック喫茶「くろんぼ」へと辿り着いたのである。
渋さと可愛らしさを兼ね備えた看板を眺めつつ階段を降りていくと、「よくある喫茶」と「よくあるスナック」が融合した憩いの空間が広がっていた(当たりだ!)。出迎えてくれたのはアジアンオバチャンとは異なるタイプのお淑やか・オバチャンだった。このオバチャンも看板・内装に負けず劣らず渋&キュートを極めている。席に着いて思わず「フーッ」と息を吐いた私に、「旅です?」と投げ掛ける渋キュー。「ええ、東京から来てんス」と返すとその後は特に何を語ることもなく、一人微笑んでいた。
ザ・日本食、花柄の皿に盛られたカレーライスと緩く冷えたアイスコーヒーをいただく。渋キューさんに向けて道中について話そうと試みたが、ぶっちゃけ道中であったことなど何もなかった(マックが壊れた、パッタイがビミョーだったなどは決して旅の話ではない)。ふと我に返る。そっか、まだ旅してないんだなコレ。そう思い始めると少し笑ける。目的も持たず、観光地を巡らず、ただ歩く。一般的に言えばコレは旅ではないのかもしれん、と思うと笑けてきた。どうせフツーに旅などできないのだ、もうこの砕けた旅を続けるのも一つアリではないか。そんなことをぼうっと考えている内に、緩く冷えたコーヒーは放ったらかしすぎて半分水になっていた。
また来ますねえ、と目処の立たない口約束を交わして喫茶「くろんぼ」を後にする。てくてくと熱海駅に戻る道中にホンモノのマクドナルドを発見した(パッタイはない)。立ち寄らねば。決してハンバーガーを食べたいわけではない。充電がないのだ。先程コーヒーを飲んだところなので、またコーヒーを頼むのと胃が破れる。紙パックのミルクをオーダーし、暫し場を繋いだ。結局充電は10%ほどしか溜まらず、胃の中の水分だけが増えたのだった。
【7】
さて。電車は走る。お次は沼津へ向かうのだ。時刻は22時。現在静岡。近くで花火大会があったのだろうか、電車の中は浴衣を纏った中高生やマイルドヤンキーたち(見た目の話)で溢れている。マイルドヤンキーといえば、いつの時代もその類の人々は見た目で何となしに分かってしまうものだが、随分私のガキの頃とはルールなのか、流行りなのか色々と変わっているらしい。昔はキティちゃんのサンダルにプーマのジャージを着た輩風のニーチャン・ネーチャンがなんかイケてる扱いをされていた。当然私は、といえば冴えないフツーの子だったために(エッヘン)。そんな文化に染まることなくコンバースのスニーカーを履いていたのだった。
充電の溜まらなかったアイフォンを触っていては後々困るからと、手持ちの本を読み進める。しかし一度読んだ本。流石に早々飽きが来る。満員電車内で座ることもできず、いつの間にか旅が面倒臭くなっている自分がいる。誰が決めたんだ、ああ。お前がやる言うたからやんけ、と自身を奮い立たせるべく、ウコンの力スーパーを激しく一気飲みした。効果は未知数(何もない)。旅に対するだらけた気持ちが芽生えた頃、取り敢えず身体だけでも沼津へと到着した。さて、ここから静岡・浜松と移動して今日の旅はお終いなのだ。後一踏ん張り、飽きずに頑張って欲しいものである。ぜひ良ければ心も、追い付いていただきたい。
【8】
浜松に到着、日付変わって8月11日0時26分。青春18きっぷに2つ目のスタンプが押された。この時期はやっぱり18きっぷで旅する人々が多いらしい。改札にスイカを翳して(あるいはイコカなのか)、すっと抜けて行く人々の横、駅員さんによる目視での確認を待つ行列が伸びていた(青春18きっぷはJR一日中乗り放題の権利を、なんと5日分も手に入れられるという魔法の切符なのである。使い方は簡単。1枚の切符に例えば「8月10日」のスタンプが押されれば、後はそのスタンプを駅員さんに見せることでどこへでも行けてしまうのである)。もちろん私も青春18きっぷを確認していただくべく、その行列に追随する。おや、私の前のオッチャンが何やら揉めているのだ。どうやら、8月10日中に浜松に到着したかったのに乗り換え等々失敗してしまったらしい。繰り返すが、日付変わって8月11日0時26分。たったの26分過ぎたことで、青春18きっぷには次の日のスタンプを押されてしまうのだ(私の場合は明日もどうせJR乗り回すからスタンプ押されてもオッケーなのだ。どうもこのオッチャンは翌日JRを乗り回す予定がなかったらしい。すると1日分の切符が無駄になってしまうんだね)。どうもこの仕組みに納得できず、ギャーギャーごねていたのだ。遂には話を捻じ曲げて、「電車が遅延したんだ!」と言い出す始末。スタンプ押さずに通せ!と。おお、駅員さんも大変やね、という気持ち半分。早くしてくれ、という気持ち半分以上(足して100%越えているのは悪しからず)。しかし強面の駅員さんは、青春18切符にそんなルールはねえんだ、とハードボイルド対応で眉間に銃を突き立てていた(嘘ですよ)。結局たったの26分にスタンプ1個を捺印され、オッチャンは儚くも浜松の地に散っていった。次に並んでいた私もスタンプを1個押されてしまう。ま、先述の通り、私は明日も旅をするので全く関係ないのだけれども。
さて、浜松に着いたはいいが、ここから何をするということもあるまい。お宿を探すのだ。残り数%しかないアイフォンでグーグルマップ。近くのカラオケを探し出す。北口に「まねきねこ」があったので今夜はここで歌い叫びながら一泊することにした。烏龍茶を注いで、14号室へ。よし、折角歌える宿に来たのだ。何か歌ってから寝よう、と何も考えなくても歌える、くるりやら何やら数曲を予約した。「ロックンロール」を歌っていると、途中金髪のニーチャンが間違えて入って来た(天国のドアを叩いている途中に地獄のドアを開くなよ)。歌い疲れて靴を脱ぐ、靴下を脱ぐ。ソファの上に横になる。グー。就寝前、タオルで身体を拭き、Tシャツを着替えたが、本当は流石に一風呂浴びたかった。明日は米原経由で京都に向かう。京都に着いたらサウナに行こう。梅湯に行こう。
【9】
アラームが鳴る。5時40分。さて、3時間ほど寝れたので旅を再開する。浜松駅から米原までは直通で2時間半。寝ようと思ったがどうも寝付けず、じゃあ本でも読むか、と読み始めて間もなく眠気が襲った。ふと目が覚めた時には既に米原。車内の人々が乗り換え時の席の奪い合いのためか、ほとんど競走馬然としている。ここが勝負だからな、とハイテンションに語るジーチャンはいざドアが開くと若者たちにガンガン抜かれていった。京都駅まで1時間。米原まで散々寝た私は、まあ座れんでもええか、くらいに考えていたのでこの熱気に共感できなかったが、案の定座れなかったジーチャンは、悔しそうに、クソ、クソ、などと申していたのが逆に笑けてしまった(言葉、ママではない)。とはいえ、ジーチャンなのですから誰か譲ってあげてもいい気がするが。
座れなかった、もとい座らなかった私は、本を読んだりアイフォンを突っついたりして時間を潰す。すると、急にオッサンがマスターベーションに興じている動画がエアドロップで送り付けられてきた。ははん、最近巷で噂のエアドロップ痴漢ってヤツだな、と若干興奮を覚えながらも充電食いそうだったので拒否しておいた。スマンな、オッサンのチ◯コ。躍動感ある下腹部の様子はサムネイルのみ拝見させていただいた。
そんなこんなで松沢呉一を読み耽り1時間を費やす。
【10】
いよいよ古都・京都府へと馳せ参じたのだった。駅構内を進んでいると、ぽてっと落ちている免許証を発見。改札出るついでに渡しておいた。これは割とどうでもよい話。
まだまだ発育している途中、伸び続けていると噂の京都タワー(嘘です)。デカブツを横目に東へと、北へと進み目指すは「サウナの梅湯」である。「性春18禁ひとり旅」の際、毎回立ち寄る素朴な銭湯。その名の通り、レトロな浴槽並ぶ向こうにサウナが併設されているのだ。カラオケで一夜を過ごした私は、汗ばんだ身体を癒すべく、この古びた湯屋の暖簾をくぐるのであった。
至福の瞬間である。汗を流して、湯に浸かる。壁面にはスタッフが手作りで仕上げた新聞が並んでいた。他に眺める物もないので、手書きの文字をじーっと追う。「京都に住んでいたわけではない、大学に入ってはじめてこの土地に来たのだ」という女子学生の手記。暫く読んで、「最近くるりの“京都の大学生”を聴く」、と続く。わかっているねえ。京都の大学生、心に来はったわ。
サウナと水風呂を繰り返し、腕時計(防水)に目を遣る。そろそろか。実はこの無計画の旅にも多少の計画が成されておりまして。なんと、同期のイラストレーター・もちがわが、丁度京都��て個展を開いているのであった。折角なら酌み交わそうと、電車乗り換え・梅湯の隙間に時間を作り、フラフラ新京極へと向かう。
【11】
五条から四条。地下鉄で走り新京極に降り立つ。「この店で昼呑みをしたい」と事前にもちがわから提案されていた酒屋(定食屋?)があった。「京極スタンド」である。12時開店に合わせて行ったのだが既に行列が続いている。早めに向かって正解だった。ちなみにスタンドへ向かう途中に、有名な判子屋さんで「ターバン男」という名の判子を買った。これもそこそこどうでもよい話。
中は素朴。「イイ意味で」小汚い単なる定食屋である。昼呑み目的で来ていることは店員・顧客ともに同意の上なのか、席に着くや否や酒のオーダーについて声を掛けられる。大瓶とグラス2つ、暫くしてポテサラ・ハモ天・冷やしトマト・うにくらげ・ホルモン焼き・ハムカツという奇跡の役満オーダーを叩き出した。いつも東京で呑んだくれている二人が敢えて京都の地でアルコールを摂取する。
「昔から京都にちらほら来てたんよねえ」「そうそう」同期・もちがわのこれまで、などというと大袈裟か、どうか。そんな類の話を聞いた。いつも会っている同期のはずが、場所と食事を変えればまた違う。そして、どう話しても、どう黙っても塩山椒の乗るハモ天は旨い(旨いなあ、と思いつつ最後の一切れをもちがわに譲った私はとてもエライのである)。ホルモン焼きはこれまでか!という量のガーリックにまみれていた。うにくらげも、クセなく絶品。
【12】
ごちそうさんでした、と出口へ。そろばんでのお会計。丁度よい程度に酔いが回った。地下鉄が来ちまうから一旦四条駅近くまで移動しよう、と炎天下のアーケードを闊歩する。東京のカラっとした熱気とは異なる、じんわりと体力を奪う熱、夏。会話も、あっちいなあ、あっちいなあ、ばかり。途中、言うても次の列車まで時間あるよなあ、ということでパッと目に入った喫茶に入った。夏バテ予防に、普段頼まないトマトジュースを注文し、飲み干す。程良い酸味が頭をしゃっきりさせる。書き忘れていたが、京極スタンドに入店する直前に八つ橋を買った。東京からの帰省なのだから、実家で待つ家族たちは東京土産を待っているだろう。依然無視して土産は京都の生八つ橋である。正直有り難みはない(地元鳥取は言うても関西が近いので、八つ橋くらい簡単に入手できてしまうのである)。でも旨いよなあ、ニッキの八つ橋。色もイイよなあ。
さて、「めざせ!ポケモンセンター」から始まったこの旅も終盤に差し掛かっている。マサラタウン(実家)に戻るため、改札前、もちがわに見送られつつ私はエンジュシティ(京都)を旅立つのであった(というと、そもそもマサラタウンのモデルは静岡県だったはずだ。マサラタウンに向かう、というのは、はてさて「カラオケ「まねきねこ」まで戻るという意味に捉えられるのではないか。いえ、それはご勘弁願いたい)。
京都から姫路、姫路から上郡。上郡からは智頭急行に乗り換える。JRではないため、上郡から鳥取までは青春18きっぷが使えない。とはいえ、1200円のフリー切符で移動で��てしまうのだから、お安いもんである。今回タイミングが合わなかったのか、上郡から鳥取まで直通で移動できる列車に乗れなかった。一旦「大原行き」に乗り込んで降車。大原から鳥取まで向かう列車を待つ。その間、何となしに待合室にあったご当地鉄道ピンズガチャガチャを回す。「スーパーはくと」が当たった。ちょっとカワイイ。
【13】
最後の列車に乗り込んだ。流石にもう何もない。後はこの列車に乗っていれば故郷、鳥取に辿り着くのだ。寝るか。ちょっと本読むか。旅の終わりをどう過ごすか考えていた、その最中。ボックス席に一人で座っている私に、一人のオバチャンが近付いてきた。私の向かいの席にドーン!と何かを投げ付ける。からあげクンである。「これ、ローソンに売っててん」。うん、からあげクンはローソンに売ってるだろね。「食べ物に悪魔ってネーミングしてんねん!(ガチギレ)」。おう、めっちゃキレてんな。その後暫く黙っていたが、車内の全員に向けて演説を始めたのだ。「コンビニは変なものを売っている!日本を取り戻せ!」といった趣旨のお話である。添加物がどうのこうの!この話をSNSで拡散しろ!だの色々とまくし立てている(正直笑い話に昇華してよいのか甚だ絶妙なラインである)。散々お言葉を述べられたオバチャンは結局、再び私の元へ来て、からあげクンを回収した(くれないのかよ)。その後、なぜか裸足で大量のおかきを食べ漁っていたのである(おかきはいいんだね)。しかし、他にも乗客がいた中でなぜ私が「からあげクン事件」のターゲットになってしまったのか。そして、なぜコンビニ嫌い・悪魔ネーミング嫌いのオバチャンは、このからあげクンを購入し売り上げに貢献してしまったのか。平和に終わると思われた私の旅は幾多の謎を残したまんま、やっぱり地獄に終わってしまうのだった。食べ物に対する意見は様々だろうが、公共の場を荒らすのはなるたけご勘弁いただきたい。ここまで書いて、今度はオバチャンから「スパイシーひまわりの種」が飛んで来た。はてさて。他の人を当たってくれ。
【おわりに】
途中、列車に乗っているだけの時間が続き張り合いのない文章になってしまうなあと思っていたところに、最高に悪魔風でスパイシーな話題が飛び込んだのだった。事故である。それはさておき、知らない間に故郷へ着いてしまった。
さて、「おわりに」という形で〆にしようとしているが、どうせ実家に滞在している間もたくさんの地獄に出会うのであろう。ちょこちょことメモして残しておくとする。さて、長々と書きましたが一旦この辺で終わります。
一体何のために書いたのか。実はこの性春18禁ひとり旅、実に3回目なのである。毎度それぞれドラマが生まれるので文章で記録したら面白そうだなと。本当にそれだけの気持ちで始めたものだったのだが、多少は笑けるエピソードが生まれたのではなかろうか(やけにオバチャン多めだったのはなぜだろうか)。ぜひぜひ、復路もご期待いただきたいのである。こんな形で「往路」編、終わります。再び地獄で会いましょう。
フチダフチコ
0 notes
Text
妹のために、妹のために、妹のために。(推敲中)
ふたなり怪力娘もの。わりかし血なまぐさいので注意。
扠、ここはある民家の一室、凡そ八畳程の広さの中に机が二つ、二段ベッドが一つ、その他本棚や観葉植物などが置いてある、言つてしまえば普通の部屋に男が二人顔を突き合はせ何やらヒソヒソと、いや、別に小声で話してゐるわけではないのであるが何者かに気づかれないよう静かに話し合つてゐる。一人は少し痩せ型の、黒い髪の毛に黒い縁のメガネが聡明な印象を与へる、如何にも生真面目さうな好青年で、もう一人は少し恰幅の良い、短く切られた髪の毛に色の濃い肌が健康な印象を与へる、如何にも運動が得意さうな好青年である。前者の名は那央と言ひ、後者の名は詩乃と言ふ、見た目も性格の型も違えど同じ高校に通つてゐる仲の良い兄弟である。二人の間にはノートの切れ端と思しきメモと、丁度半月ほど前に買つた十キロのダンベルが、そのシャフトを「く」の字に曲げ事切れたやうにして床に寝そべつてゐた。
何故メモがあるのか、何故ダンベルのシャフトが「く」の字に曲がつてゐるのか、何故二人の兄弟がそれらを囲んで真剣な話し合ひをしてゐるのか、その説明をするにはもう一つ紹介しておかねばならぬ事があるのであるが、恐らく大層な話を聞かずとも直ぐに状況を何となく分かつて頂けるであらう。其れと云ふのも二人にはもう一人血を同じくする、一五〇センチに満たぬ身の丈に、ぷにぷにとした餅のやうな頬、風でさらさらと棚引き陽の光をあちこちに返す黒い髪、触つた此方が溶け落ちるほど柔らかな肌、此れからの成長を予感させる胸の膨らみ、長いまつ毛に真珠を嵌めたやうな黒目を持った、--------少々変はつてゐる所と言へば女性なのに男性器が付いてゐるくらゐの、非常に可愛らしい中学一年生の妹が居るのである。名前は心百合と言ふ。成る程、ふたなりの妹が居るなら話は早い、メモもダンベルも話し合ひも、全てこの妹が原因であらう。実際、メモにはやたら達筆な字でかうあつた。-----------
前々から言ってきたけど、こんな軽いウェイトでやっても意味が無いと思うから、使わないように。次はちゃんと、最低でも一〇〇キロはあるダンベルを買ってください。私も力加減の練習がしたいのでお願いします。曲げたのは直すので、これを読んだら持ってきてください。
あと全部解き終わったので、先週から借りてた那央にぃの数学の問題集を返しました。机の上に置いてあります。全然手応えが無かったから、ちょっと優しすぎると思います。新しく買ったらまた言ってください。
心百合より
このメモは「く」の字に曲がつたシャフトの丁度折り目に置かれてあつて、凡そ午前九時に起床した詩乃がまず最初に見つけ、其の時は寝ぼけてゐたせいもありダンベルの惨状に気を取られメモを読まないまま、折角値の張る買ひ物をしたのにどうして、一体何が起きてこんなことに、…………と悲嘆に暮れてゐたのであるが、そんな簡単に風で飛ぶような物でも無いし、それに落ちたとしても直径二センチ以上ある金属がさう易易と曲がるわけでも無いから何者かが手を加えたに違ひ無く、自然と犯人の顔が思ひ浮かんでくるのであつた。わざわざ此れを言ひたいがためにダンベルを使ひ物にならなくしたのか。俺たちにとつては一〇キロでもそこそこ重さを感じると云ふのに、一〇〇キロなんて持ち上げられるわけが無い、しかもその一〇〇キロも、"最低でも"だとか、"力加減"だとか書かれてゐるので妹はもつと重いダンベルを御所望であるのか。確かにふたなりからすると、一〇〇キロも二〇〇キロも軽いと感じるだらうが、此れは俺たちが自分の体を鍛えるための道具であるからそつとしておいて欲しい。さう彼は文句を言ひたくなるものの、未だ中学一年生とは言へ、本来車でも打つから無ければ曲がるはずも無いシャフトを綺麗に曲げてしまつたと云ふ事実に、ただひたすら恐怖を感じ震える手でこめかみあたりに垂れてきた冷ややかな汗を拭ふのであつた。
一体全体、ふたなりの女の子は力が強いのである。そして其れは心百合も例外では無く、生まれて間もない時から異常な怪力ぶりを発揮してきた。例へば此れはある日の朝のことであつたか、彼ら彼女の父親が出勤しようとしてガレージのシャッターを開けると、何の恥ずかしげもなく無断駐車してゐる車の、後ろ数十センチが見えてゐたことがあつた。幸ひにも丁度車一台分通れるくらゐの隙間はあるし、其れに父親の向かふ方向とは逆の位置にあつたので、何とか避けて車を出せさうではあつたのであるが、如何せん狭いガレージと、狭い通りと、幅のある車であるから、ふとした拍子で擦つてしまふかもしれない。かと言って警察やらレッカーやらを呼ぶ時間も手間も勿体無い。仕方が無いので父親は、当時十四歳であつた那央と、当時十二歳であつた詩乃を呼び出して、ほんの数センチでも良いからこの車を向かふ側へ押せないかと、提案して自身も全身を奮ひ立たせたのであるが当然の如く動く気配は無かつた。ならばせめて角度だけでもつけようと思ひ、三人で掛け声をかけ少しでも摩擦を減らさうと車の後ろ半分を浮かせようと頑張つたものの、此れまた持ち上がる気配も無くたつた数秒程度で皆バテてしまつた。さうして諦めた父親は携帯を取り出し、諦めた二人の兄弟は数歩離れたところにある壁に凭れ、こんなん無理やろ、何が入つてんねん、と那央が言つたのをきつかけに談笑し始めた丁度其の時、登校しようと玄関から出てきた心百合が近寄つてきて、どうしたの? さつきから何やつてたの? と声をかけてきた。そこで詩乃が其の頭を撫でながら事情を説明して、ま、無理なものは無理だし、今日こそ親父は遅刻するかもな、と笑ひながら言ふと心百合は、
「んー、………じゃあ私がやってみてもいい?」
と言ひながらランドセルを那央に押し付け、唖然とする兄たちを余所に例の車へ向かつて行く。そしてトランクにまでたどり着くと、屈んで持ち易く力の入れ易い箇所を探しだす。----------当時彼女は小学三年生、僅か九歳である。自分の背丈と同じくらゐの高さの車を持ち上げようと、九歳の女の子がトランクの下を漁つてゐるのである。流石に兄たちも其の様子を黙つて見てゐられなくなり駆け寄つて、ついでに電話を掛けてゐる最中の父親も駆け付けて来て、結局左から順に父親、心百合、詩乃、那央の並びでもう一度車と相対することになつたのであるが、那央が、せえの! と声を掛け皆で一斉に力を入れる前に、よつと、と云ふ可愛らしい声が車の周りに小さく響いた。かと思ひきや次の瞬間には、グググ、と車体が浮き上がりたうたう後輪が地面から離れ初め、男たちが顔を見合はせ何が起きてゐるのか理解するうちに、一〇センチ、一五センチは持ち上がつてしまつた。男たちのどよめきを聞きながら、心百合は未だ六割程度しか力を入れてゐないことに少しばかり拍子抜けして、これならと思ひ、
「お父さんも、お兄ちゃんたちも、もう大丈夫だから手を離していいよ」
と言ふと、片手を離しひらひらと振り、余裕である旨を大して役に立つてゐない他の皆に伝え背筋を伸ばした。
「それで、これどうしたらいいの?」
男たちが恐る恐る手を離し、すつかり一人で車の後部を持ち上げてゐる状態になつた頃、娘が其のやうに聞いて来たので一寸だけ前に寄せてくれたら良いと、父親が答えると心百合は、分かつた、とだけ言つてから、そのまま足を踏み出して前へ進もうとした。すると、初めの方こそ靴が滑つて上手く進めなかつたのであるが、心百合も勝手が分かつて来たのか、しつかりと足に全体重と車の重量を掛け思ひ切り踏ん張つてゐると遂には、タイヤと地面の擦れる非常に耳障りな音を立てて車が前へと動き出したのである。そして、家の前だと邪魔になるだらうから、このまま公園の方まで持つて行くねと言つて、公園の側にある少し道が広がつてゐる所、家から凡そ三〇メートル程離れてゐる所まで、車を持ち上げたままゆつくりと押して行つてしまつた。
あれから四年、恐らく妹の力はさらに強くなつてゐるであらう。日常では兎に角優しく、優しく触る事を心がけてゐるらしいから俺たちは怪我をしないで済んでゐる、いやもつと云ふと、五体満足で、しかも生きてゐる。だが今まで何度も危ない時はあつた。喧嘩は全然しない、と云ふより一度も歪みあつたことは無いけれども、昼寝をしてゐる妹の邪魔をしたりだとか、凡ミスのせいでテストで満点を逃し機嫌が悪い時に何時もの調子で話しかけたりだとか、手を繋いでゐる最中に妹が何か、------例へば彼女の趣味である古典文学の展示に夢中になつたりだとか、さういう時は腕の一本や二本覚悟しなければならず打ち震えてゐたのであるが、なんと情けない話であらう。俺たちは妹の機嫌一つ、力加減一つで恐怖を覚えてしまふ。俺たちにはあの未発達で肉付きの良い手が人の命を刈り取る鎌に見える。俺たちにはあの産毛すら見えず芸術品かと思はれる程美しい太腿も、人の肉を潰したがつてゐる万力のやうに見える。……………本来さう云つた恐怖に少しでも対抗しようとダンベルを買つたのであるが、丸切り無駄であつた、矢張り妹には勝てぬのか。直接手を下されたわけでも無いのに、またしても負けてしまふのか。もう身体能力だけでなく、学力も大きな差をつけられたと云ふのに。---------------心百合は元々、小学校のテストでは常に満点を、…………少しドジなところがあるからたまにせうもない間違ひを犯すことがあるが、其れは仕方ないとして試験は常に満点を取り続けてをり、ある日学校から帰つて来るや、授業が暇で暇で、暇で仕方がないからお兄ちゃん何とかしてと言ふので、有らう事か俺たちは、其れならどんどん先の内容をこつそりと予習すると良い、と教えてしまつた。其れから心百合は教室だけでなく家でも勉強を進め、タガが外れたやうにもう恐ろしい早さで知識を吸収したつた一週間か二週間かで其の学年、-----確か小学四年生の教科書を読み終えると、兄から譲り受けた教科書を使って次の学年、次の次の学年、次の次の次の学年、…………といつたやうに、兄たちの言ふ通りどんどん先の内容を理解していき、一年も経たぬ間に高校入試の問題が全て解けるようになつてゐた。かと思えば、那央の持つてゐる高校の教科書やら問題集やら参考書やらを、兄の迷惑にならぬよう借りて勉強を推し進め、今度は半年程度で大学入試の問題をネットから引つ張り、遊び半分で解いてゐたのである。そして此方が分からないと言つてゐるのに答え合はせをして欲しいと頼んで来たり、又ある時は那央が置きつぱなしにしてゐた模試を勝手に解いては、簡単な問題ばかりで詰まんなかつた、お兄ちゃんでも全部解けたでせう? この程度の問題は、と云ふ。そんなだから中学一年生の今ではもはや、勉強をしてゐるうちに好きになつた古典文学を読み漁りながら、受験を控えた那央の勉強を教えるためにも、彼が過去問題集に取り組む前にはまず、心百合が一度目を通し、一度問題を全て解き感想を言つて、時間をかけるべきか、さうでないかの判断の手助けをしてゐるのである。先のメモにあつた後半の内容はまさに此の事で、どんなに難しさうな問題集を持つて行つても簡単だから考へ直すべしと言はれ凹む那央を見てゐると、詩乃は二年後の自分が果たしてまともな精神で居られるのかどうか、不安になつて来るのであつた。
さうすると此の兄弟が妹に勝つている点は何であらうか、多分身長以外には無い気がするが、もう後数年もすると頭一つ分超えられてしまふだらう。聞くところに寄ると、ふたなりは第二次成長期が落ち着き始める一四、五歳頃から突然第三次成長期を迎え、一八歳になる頃には平均して身長一八七センチに達すると云ふのである。実際、那央のクラスにも一人ふたなりの子が居るのであるが、一年生の初め頃にはまだ辛うじて見下ろせた其の顔も今では、首を天井に向けるが如く顔を上げないと目が合はないのである。だが彼らは未だに、こんな胸元にすつぽりと収まる可愛い可愛い妹が、まさか見上げるほど背を高くしないであらうと、愚かにも思つてゐるのであるがしかし、さうでも思はないとふたなりの妹が近くに居ること自体怖くて怖くて仕方なく、心百合を家に残しどこか遠い場所で生活をしたい衝動に駆られるのであつた。
扠、読者の中には恐らくふたなりをよくご存知でない方が何名かいらつしやるであらうから、どうして此の兄弟が、可愛い、たつた一人だけの、愛しい、よく出来た妹にここまで恐怖を感じるのか説明しておかねばならぬのであるが、恐らく其れには引き続き三人の兄妹の話をするだけで事足りるであらう。何分其処に大体の理由は詰まつてゐる。-------------
ふたなりによる男性への強姦事件は度々ニュースになるし、其れに世の男達なら全員、中学校の保健体育で習つた記憶がどこかにあるから皆知つてゐるだらう。本日未明、〇〇県〇〇市在住の路上で男性が倒れてゐるのを誰々が発見し、現場に残された体液から警察は近くに住む何たら言ふ名前の女性を逮捕した。-----例へばさう云ふニュースの事である。凡そ犯人の側に「体液」と「女性」などと云つた語が出てきたら其れはふたなりによる強姦を意味するのであるが、世の中に伝えられる話は、実際に起きた出来事にオブラートにオブラートを重ね、さらに其の上からオブラートで包み込んだやうな話であつて、もはやお伽噺となつてゐる。考へてみると、大人になれば一九〇センチ近い身長に、ダンベルのシャフトのやうな金属すら曲げる怪力を持つ女性が今日の男性を暴行し無理やり犯せば、そもそも人の形が残るかどうかも怪しくなるのは容易に想像できる。実際、幾つか例を挙げてみると、ふたなりの"体液"を口から注ぎ込まれ腹が破裂し死亡した男や、行方不明になつてゐたかと思えば四肢が完全に握りつぶされ、そしてお尻の穴が完全に破壊された状態でゴミのやうに捨てられてゐた男や、ふたなりの"ソレ"に耐えきれず喉が裂け窒息死した男や、彼女たちの異常な性欲を解消するための道具と成り果て精液のみで生きる男、……………挙げだすとキリがない。二人の兄弟は、ふたなりの妹が居るからと言つて昔からさう云ふ話を親から嫌と言ふほど聞いて来たのであるが、恐ろしいのはほとんどの被害者が家族、特に歳を近くする兄弟である事と、ふたなりが居る家庭は一つの例外なく崩壊してゐる事であつた。と云つても此の世の大多数の人間と同じやうに、彼らも話を言伝されるくらゐではふたなりの恐ろしさと云ふ物を、其れこそお伽噺程度にしか感じてゐなかつたのであるが、一年前、小学六年生の妹に、高校生二年と中学三年の兄二人が揃つて勉強を教えてもらつてゐたある夜、机の間を行つたり来たりするうちに何故かセーラー服のスカートを押し上げてしまつた心百合の、男の"モノ"を見た時、彼らの考へは変はり初めた。其の、スカートから覗く自分たちの二倍、三倍、いや、もう少しあらうか、兎に角妹の体格に全く不釣り合いな男性器に、兄たちが気を取られてゐると心百合は少し早口で、
「しばらくしたら収まると思うから見ないでよ。えっち。それよりこの文章、声に出して読んでみた? 文法間違いが多くて全然自然に読めないでしょ? 一度は自分で音読してみるべしだよ、えっちなお兄ちゃん。でも単語は覚えてないと仕方ないね。じゃあ、来週までに、この単語帳にある単語と、この文法書の内容を全部覚えて来ること。----------」
と顔を真赤にして云ふと、下の兄に高校入試を模して作つた問題を解かせつつ、上の兄が書いた英文の添削を再開してしまつた。が、ほんの数分もしないうちに息を荒げ出し、そして巨大な肉棒の先端から、とろとろと透明な液体を漏らし淫猥な香りを部屋中に漂はせ初めると、
「ど、どうしよう、…………いつもは勝手に収まるのに。………………」
と言つて兄たちに助けを求める。どうやら彼女は五〇センチ近い巨大な肉棒を持ちながら其の時未だ、射精を味はつた事が無かつたやうである。そこで、ふたなりの射精量は尋常ではないと聞いていた那央は、あれの仕方を教えてあげてと、詩乃に言ふと急いでバケツと、絶対に要らないだろうとは思ひつつもしかしたらと思つて、ゴミ袋を一つ手に取り部屋に戻つたところ、中はすでに妹が前かがみになりながら両手を使つて激しく自分のモノを扱き、其の様子を弟が恍惚とした表情で見守ると云ふ状況になつてゐる。----------何だ此れは、此れは俺の知る自慰では無い。此れがふたなりの自慰なのか。………………さうは思ひながら、ぼたぼたと垂れて床を濡らしてゐる液体を受け止めるよう、バケツを丁度肉棒の先の下に置くと、そのまま棒立ちで妹の自慰を見守つた。そしていよいよ、心百合が肉棒の先端をバケツに向け其の手の動きを激しくしだしたかと思えば、
「あっ、あっ、お兄ちゃん! 何これ! ああぁあんっ!!」
と云ふ、ひどくいやらしい声と共に、パツクリと開いた尿道から消防車のやうに精液が吹き出初め、射精とは思へないほどおぞましい音が聞こえて来る。そしてあれよあれよと云ふ間にバケツは満杯になり、床に白くドロドロとした精液が広がり始めたので、那央は慌ててゴミ袋を妹のモノに宛てがつて、袋が射精の勢ひで吹き飛ばぬよう、又自分自身も射精の勢ひで弾き飛ばされぬよう肉棒にしがみついた。-------
結局心百合はバケツ一杯分と、二〇リットルのゴミ袋半分程の精液を出して射精を終え、ベタベタになつた手と肉棒をティッシュで拭いてから、呆然と立ちすくんでゐる兄たちに声をかけた。
「お兄ちゃん? おにいちゃーん? 大丈夫?」
「あ、あぁ。…………大丈夫。………………」
「しぃにぃは?」
彼女は詩乃の事をさう呼ぶ。幼い頃はきちんと「しのにいちゃん」と読んでゐたのであるが、いつしか「しのにぃ」となつて、今では「の」が略されて「しぃにぃ」となつてゐる。
「……………」
「おい、詩乃、大丈夫か?」
「お、………おう。大丈夫。ちょっとぼーっとしてただけ。………………」
「もう、お兄ちゃんたちしっかりしてよ。特にしぃにぃは最初以外何もしてなかったでしょ。……………て、いうか私が一番恥ずかしいはずなのに、何でお兄ちゃんたちがダメージ受けてるのん。………………」
心百合はさう言ふと、本当に恥ずかしくなつてきたのか、まだまだ大きいが萎えつつある肉棒をスカートの中に隠すと、さつとパンツの中にしまつてしまつた。
「とりあえず、片付けるか。…………」
「おう。……………」
「お兄ちゃんたち部屋汚しちゃってごめん。私も手伝わせて」
「いいよ、いいよ。俺たちがやっておくから、心百合はお風呂にでも入っておいで。------」
このやうにして性欲の解消を覚えた心百合は、毎日風呂に入る前に自慰をし最近ではバケツ数杯分の精液を出すのであつたが、そのまま流すとあつと言ふ間に配管が詰まるので、其の始末は那央と詩乃がやつてをり、彼女が湯に浸かつてゐるあひだ、夜の闇に紛れて家から徒歩数分の所にある川へ、音を立てぬよう、白い色が残らないよう、ゆつくりと妹の種を放つてゐるのであつた。空になつたバケツを見て二人の兄弟は思ふ。------------いつかここにあつた精液が、ふとしたきつかけで体に注がれたら俺たちの体はどうなる? そもそも其の前に、あの同じ男性器とは思へないほど巨大な肉棒が、口やお尻に突つ込まれでもしたらたら俺たちの体はどうなる? いや、其れ以前に、あの怪力が俺たちの身に降り掛かつたらどうなる? ふたなりによる強姦の被害者の話は嘘ではない。腹の中で射精されて体が爆発しただなんて、昔は笑いものにしてゐたけれども何一つ笑へる要素などありはしない、あの量を、あの勢いで注がれたら俺たち男の体なんて軽く吹き飛ぶ。其れにあんなのが口に、お尻に入り込まうとするなんて、想像するだけでも恐ろしくつて手が震えてくる。聞けば、顎の骨を砕かうが、骨盤を割らうが、其んな事お構ひなしにねじ込んで来ると云ふではないか。此れから先、何を犠牲にしてでも妹の機嫌を取らなくては、…………其れが駄目ならせめて手でやるくらゐで我慢してもらはねば。…………………
だが彼らは此れもまた、わざわざ時間を割いてまでして兄の勉強を見てくれるほど情に満ちた妹のことだから、まさかさう云ふ展開にはならないであらうと、間抜けにも程があると云ふのに思つてゐるのであるが、そろそろなのである。ふたなりの女の子が豹変するあの時期が、そろそろ彼らの妹にも来ようとしているのである。其れ以降は何を言つても無駄になるのである。だから今しかチャ��スは無いのである。俺たちを犯さないでくださいと、お願ひするのは今しか無いのである。そして、其の願ひを叶えてくれる確率が零で無いのは今だけなのである。
「------もうこれ以上引き伸ばしても駄目だ。言いに行くぞ」
ダンベルとメモを持ち、勢ひよく立つた那央がさう云ふ。
「だけど、………それ言ったら言ったらで、ふたなりを刺激するんだろ?!」
「あぁ。…………でも、少しでも確率があるならやらないと。このままだと、遅かれ早かれ後数年もしないうちに死ぬぞ。俺ら。………………」
「くっ、…………クソッ。……………」
「大丈夫、もし妹がその気になっても、あっちは一人で、こっちは二人なんだから上手くやればなんとかなるさ、……………たぶん。………………」
「最後の「たぶん」は余計だわ。……………」
「あと心百合を信じよう。大丈夫だって、あんなに優しい妹じゃないか。きっと、真剣に頼めば聞いてくれるはず。……………」
「兄貴って、たまにそういう根拠のない自信を持つよな。………」
さう言ふと、詩乃も立ち上がり一つ深呼吸をすると、兄と共に部屋を後にするのであつた。
心百合の部屋は、兄たちの部屋に比べると少しばかり狭いが其れでも一人で過ごすには物寂しさを感じる程度には広い、よく風が通つて夏は涼しく、よく日が当たつて冬は暖かく、東側にある窓からは枯れ葉に花を添えるやうはらはらと山に降り積もる雪が、南側にある窓からはずつと遠くに活気ある大阪の街が見える、非常に快適で感性を刺激する角部屋であつた。そこに彼女は本棚を此れでもかと云ふほど敷き詰めて新たな壁とし、嘗ての文豪の全集を筆頭に、古い物は源氏物語から諸々の文芸作品を入れ、哲学書を入れ、社会思想本を入れ、経済学書を入れ、そして目を閉じて適当に選んだ評論などを入れてゐるのであるが、最近では文系の本だけでは釣り合ひが取れてない気がすると言ひ初め、つい一ヶ月か二ヶ月前に、家から三駅ほど離れた大学までふらりと遊びに行つて、お兄ちゃんのためと云ふ建前で、解析学やら電磁気学やら位相空間論やらと云つた、一年か二年の理系大学生が使ふであらう教科書と、あとさう云ふ系統の雑誌を、合わせて十冊買つて来たのであつた。そして、春までには読み終はらせておくから、お兄ちゃんが必要になつたらいつでも言つてねと、那央には伝えてゐたのであつたが、意外に面白くてもう大方読んでしまつたし、計算も終えてしまつたし、問題もほとんど解き終はつてしまつた。またもう一歩背伸びをして新しく本を買いに行きたいが、前回大量にレジへ持つて行き過ぎたせいで、大学生協の店員にえらく不思議さうな顔をされたのが何だか癪に障つて、自分ではもう行きたくない。早く那央にぃの受験が終はつてくれないかしらん。さうしたら彼処にある本を買つて来てもらへるのに。それか二年後と言はず今すぐにでも飛び級させてくれたらいいのに。…………と、まだ真新しい装丁をしてゐる本を眺めては思ふのであつた。
なので那央が大学生になるまで数学やら物理学は封印しようと、一回読んだきりでもはや文鎮と化してゐた本たちを本棚にしまひ、昨日電子書籍として買つてみた源氏物語の訳書を、暇つぶしとしてベッドの上に寝転びながら読んでゐると、コンコンコン、…………と、部屋の扉をノックする音が聞こえて来た。
「はーい、なにー?」
「心百合、入ってもいいか?」
少し澄んだ声をしてゐるから那央であらう。
「いいよー」
ガチャリと開いたドアから那央が、朝に軽いイタズラとして曲げたダンベルと、その時残しておいたメモを手に持つて入つて来たかと思えば、其の後ろから、何やら真剣な表情を浮かべて居る詩乃も部屋に入つて来る。
「あれ? しぃにぃも? どったの二人とも?」
タブレットを枕の横に投げ出すと心百合は体を起こし、お尻をずるりとベッドの縁まで滑らせ、もう目の前までやつて来てゐる兄二人と対峙するやうにして座つた。
「あぁ、…………えとな。…………」
「ん?」
「えっと、………お、おい、詩乃、……代わりに言ってくれ。…………」
「えっ、………ちょっと、兄貴。俺は嫌だよ。…………」
「俺だって嫌だよ。後で飯おごってやるから頼む。……………」
「………言い出しっぺは兄貴なんだから、兄貴がしてくれよ。…………」
あんなに真剣な表情をしてゐた兄たちが何故かしどろもどろ、………と、云ふよりグジグジと醜い言ひ争ひをし始めたので、心百合は居心地が悪くなり一つため息をつくと、
「もう、それ元通りにして欲しくて来たんじゃないの?」
と言つて、那央の持つてゐるダンベルに手を伸ばし、トントンと叩く。が、那央も詩乃も、キュッと体を縮こませ、
「えっと、…………それは、…………ち、ちが、ちがってて…………」
などと云ふ声にならぬ声を出すばかりで一向にダンベルを渡してくれない。一体何が違つてゐるのだらう、………ま、ダンベルを持つて来たのだから直して欲しいには違ひない、と、云ふより直すと書いたのだから直してあげないと、------などと思つて、重りの部分に手をかけると、半ば引つたくるやうにして無理やりダンベルを奪ひ去つた。
「いくらお兄ちゃんたちに力が無いって言っても、こんな指の体操にもならないウェイトだと意味無いでしょ。今度はちゃんとしたの買いなよ」
さう云ふと、心百合はまず手の平を上にして「く」の字に曲がつたシャフトを、一辺一辺順に掴んでから、ひ弱な兄たちに見せつけるよう軽く手を伸ばし、一言、よく見ててね、と言つた。そして彼女が目を瞑つて、グッ…と其の手と腕に力を込め始めると、二人の兄弟がいくら頑張つても、--------時には詩乃が勝手に父親の車に乗り込んで轢いてみても、其の素振りすら見せなかつたシャフトが植物の繊維が裂けるやうな音と共にゆつくりと反り返つていき、どんどん元の状態に戻つて行く。其の様子はまるで熱した飴の形を整えてゐるやうであつて、彼らには決して太い金属の棒を曲げてゐるやうには見えなかつた。しかもさつきまで目を閉じてゐた妹が、いつの間にか此方に向かつて笑みを浮かべてゐる。……………其のあまりの呆気なさに、そして其のあまりの可愛いさに、彼らは己の中にある恐怖心が、少しばかり薄らいだやうな気がするのであつたが、ミシリ、ミシリ、と嫌に耳につく金属の悲鳴を聞いてゐると矢張り、目の前に居る一人の可憐で繊細で、人々の理想とも形容すべき美しい少女が、何か恐ろしい怪物のやうに見えてくるのであつた。
「はい、直ったよ。曲がってた所は熱いから気をつけてね」
すつかり元通りになつたダンベルを、真ん中には触れないやう気をつけながら受け取ると、那央はすぐに違和感に気がついた。一体どう云ふ事だ、このシャフトはこんなにでこぼこしてゐただらうか。---------まさかと思つて、さつきの妹の持ち方を真似してダンベルを持つてみると、多少合はないとは言え、シャフトのへこんでゐる箇所が自分の手の平にもぴつたりと当てはまる。其れにギュッと握つてみると、指先にも若干の凹凸を感じる。もしかして、--------もしかして、この手の平に感じるへこみだとか、指先に感じるでこぼこは、もしかして、もしかして、妹の手の跡だと云ふのであらうか。まさか、あの小さく、柔らかく、暖かく、ずつと触れてゐたくなるやうなほど触り心地の良い、妹の手そのものに、この頑丈な金属の棒が負けてしまつたとでも云ふのであらうか。彼はさう思いつつ、もしかしたらと自分も出来るかもしれないと思つて力を入れてみたが、ダンベルは何の反応もせずただ自分の手が痛くなるばかりであつた。
「で、他に何か話があるんだよね。何なの?」
「あ、…………えっ、と。…………」
「もう、何なの。言いたいことはちゃんと言わないと分からないよ。特に、なおにぃはもう大学生なんだから、ちゃんとしなきゃ」
と五歳も年下の妹に諭されても、情けないことに兄がダンベルを眺めたまま固まつてゐるので、恐怖心を押さえつけ幾らか平静になつた詩乃が、意を決して口を開けた。
「それはだな。…………えっと、……心百合って、ふたなりだろ? だからさ、今後気が高ぶっても俺らでやらないで欲しい。……………」
ついに言つてしまつた、だけどこれで、…………と詩乃はどこか安堵した気がするのであつたが、
「えっ、…………いや、それはちょっと無理かも。………だって。…………………」
心百合がさう云ふと、少し足を開いた。すると那央と詩乃の鼻孔にまで、いやに生々しい匂ひが漂ふ。
「………だって、お兄ちゃんたちが可愛くって、最近この子勝手にこうなるんだもん」
心百合がスカートの上からもぞもぞと股の間をいじると、ぬらぬらと輝く巨大な"ソレ"が勢いよく姿を現し、そして自分自信の力で血をめぐらせるかのやうに、ビクン、ビクン、と跳ねつつ天井へ伸びて行く。
「ねっ、お兄ちゃん、私ちょっと"気が高ぶった"から、お尻貸してくれない?」
「い、いや、………それは。…………」
「心百合、……………落ちついt。……………」
「ねっ、ねっ、お願いっ! ちょっとだけでいいから! 先っぽしか挿れないからお尻貸して!!」
心百合は弾むやうにして立ち上がると、詩乃の手首を握つた。と、その時、ゴトリ、と云ふ重い物が落ちる音がしたかと思ひきや、那央が扉に向かつて駆けて行く様子が、詩乃の肩越しに見えた。
「あっ、なおにぃどこ行くの!」
心百合は詩乃をベッドの上に投げ捨て、今にもドアノブに手をかけようとしてゐた那央に、勢ひよく後ろから抱きつく。
「あああああああああああ!!!!!!」
「ふふん、なおにぃ捕まえた~」
ほんの少し強く抱きしめただけで心地よく絶叫してくれる那央に、彼女はますます"気を高ぶらせ"、
「しぃにぃを放って、どこに行こうとしていたのかなぁ? ねぇ、那央お兄ちゃん?」
と云ひ、彼が今まで味はつたことすら無い力ではあるが、出来るだけ怪我をさせないような軽い力で壁に向かつて投げつけると、たつたそれだけでぐつたりとし起き上がらなくなつてしまつた。
「もしかして気絶しちゃったのん? 情けないなぁ。………仕方ないから、しぃにぃから先にやっちゃお」
ベッドに染み付いてゐる妹の、甘く芳しい匂いで思考が止まりかけてゐた詩乃は、其の言葉を聞くや、何とかベッドから這い出て、四つん這ひの体勢のまま何とか逃げようとしたのであるが、ふと眼の前にひどく熱つぽい物を感じるたかと思えば、ぶじゅっ、と云ふ下品な音と共に、透明な液体が床にぼとりと落ちて行くのが見えた。--------あゝ、失敗した。もう逃げられぬ。もう文字通り、目と鼻の先に"アレ"がある。俺は今から僅か十三歳の幼い、其れも実の妹に何の抵抗も出来ぬまま犯されてしまふ。泣かうが喚かうが、体が破壊されようが関係なく犯されてしまふ。あゝ、でも良かつた。最後の最後に、こんな天上に御はします高潔な少女に使つて頂けるなんて、なんと光栄な死に方であらうか。-----------------
「しぃにぃ、よく見てよ、私のおちんちん。お兄ちゃんを見てるだけでもうこんなに大きくなつたんだよ?」
さう云ふと、心百合は詩乃の髪を雑に掴んで顔を上げさせ、自身の腕よりもずつとずつと太い肉棒を無理やり見せると、其の手が汚れるのも構はずに、まるで我が子の頭を撫でるかのやうな愛ほしい手付きで、ズルリと皮の剥けた雁首を撫でる。だが彼には其の様子は見えない。見えるのはドクドクと脈打つ指のやうな血管と、男性器に沿つて真つ直ぐ走るホースのやうな尿道と、たらりたらりと垂れて床を濡らすカウパー液のみである。其れと云ふのも当然であらう、亀頭の部分は持ち主の顔と同じ高さの場所にあるのである。------まだ大きくなつてゐたのか。…………彼にはもう、久しぶりに会ふことになつた妹の陰茎が、もはや自分の心臓を串刺しにする鉄の杭にしか見えなかつたのであるがしかし、其のあまりにも艶めかしい佇まひに、其のあまりにも圧倒的な存在感に、手が打ち震えるほど惹かれてしまつてもうどんなに嫌だと思つても目が離せなかつた。
「んふふ、……お兄ちゃんには、この子がそんなに美味しそうに見えるのん?」
「………そ、そんな、……そんなことは、ない。…………」
さうは云ふものの、詩乃は瞬きすらしない。
「でもさ、------」
心百合はさう云ふと、自身の肉棒を上から押さえつけて、亀頭を彼の口に触れるか触れないかの位置で止める。
「------お兄ちゃんのお口だと、先っぽも入らないかもねぇ」
と妹が云ふので、もしかしたらこの、俺の握りこぶしよりも大きい亀頭の餌食にならないで済むかもしれない、…………と詩乃は少しだけ期待するのであつたが、ふいに、ぴゅるっと口の中に何やら熱い液体が入り込んで来る。あゝ、もしかしてこれは。………………
「………けど、そんなに美味しそうな顔されたら諦めるのも悪いよねっ。じゃあ、お兄ちゃん、お口開けて? ………ほら、もっと大きく開けないと大変なことになるよ? たぶん」
「あっ、………やっ、………やめ、やめやめ、いゃ、ややめ、あが、………………」
………まだ彼は、心百合が途中で行為を中断してくれると心のどこかで思つてゐたのであらう、カタカタと震える唇で一言、やめてくださいと、言ほうとしてゐるのであつた。だがさうやつてアワアワ云ふのも束の間、腰を引かせた妹に両肩を掴まれ、愉悦と期待に満ちた表情で微笑まれ、クスクスとこそばゆい声で笑はれ、そしてトドメと言はんばかりに首を可愛らしくかしげられると、もう諦めてしまつたのか静かになり、遂には顔が醜くなるほど口を大きく開けてしまつた。
「んふ、もっと力抜いて? …………そうそう、そういう感じ。じゃあ息を吸ってー。………止めてー。………はい、お兄ちゃんお待ちかね、心百合のおちんちんだよ。よく味わってねー」
其の声はいつもと変はらない、中学生にしては舌つ足らずな甚く可愛いらしい声であつたが、詩乃が其の余韻に浸る前に、彼の眼の前にあつた男性器はもう前歯に当たつてゐた。かと思えばソレはゆつくりと口の中へ侵入し、頬を裂し血を滴らせるほどに顎をこじ開け、瞬きをするあひだに喉まで辿り着くと、
「ゴリュゴリュゴリュ………! 」
と云ふ、凡そ人体から発生するべきでは無い肉の潰れる音を部屋中に響き渡らせ始める。そして、彼が必死の形相で肉棒を恵方巻きのやうに持つて細やかな抵抗してゐるうちに、妹のソレはどんどん口の中へ入つていき、ボコリ、ボコリとまず首を膨らませ、鎖骨を浮き上がらせ、肋骨を左右に開かせ、あつと云ふ間にみぞおちの辺りまで自身の存在を示し出してしまつた。もうこれ以上は死んでしまふ、死んでしまふから!止めてください!! ———と彼は、酸素の薄れ行く頭で思ふのであつたが恐ろしい事に、其れでも彼女のモノはまだ半分程度口の外に残り、ドクンドクンと血管を脈打たせてゐる。いや、詩乃にとつてもつと恐ろしいのは次の瞬間であつた。彼が其の鼓動を唇に数回感じた頃合ひ、もう兄を気遣うことも面倒くさくなつた心百合が、もともと肩に痛いほど食い込んでゐた手に骨を握りつぶさんとさらに力を入れ、此れからの行為で彼の体が動かないようにすると、
「ふぅ、………そろそろ動いても良い? まぁ、駄目って言ってもやるんだけどね。良いよね、お兄ちゃん?」
と云ひ、突き抜かれて動かない首を懸命に震はせる兄の返事など無視して、そのまま本能に身を任せ自分の思ふがまま腰を振り始めてしまつたのである。
「〜〜〜???!!!! 〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
「んー? なぁに、お兄ちゃん。しぃにぃも高校生なんだから、ちゃんと言わないと誰にも伝わらないよぉ? 」
「〜〜〜〜〜!!!!!!!」
「あはっ、お兄ちゃん死にかけのカエルみたい。惨めだねぇ、実の妹にお口を犯されるのはどんな気分? 悔しい? それとも嬉しい?」
心百合は残酷にも、気道など完全に潰しているのに優しく惚けた声でさう問ひかける。問ひかけつつ、
「ごぎゅ! ごぎゅ! ずちゅり! ……ぐぼぁ!…………」
などと、耳を覆いたくなるやうな、腹の中をカリでぐちゃぐちゃにかき乱し、喉を潰し、口の中をズタズタにする音を立てながら兄を犯してゐる。度々聞こえてくる下品な音は、彼女の陰茎に押されて肺の中の空気が出てくる音であらうか。詩乃は心百合の問ひかけに何も答えられず、ただ彼女の動きに合はせて首を長くしたり、短くしたりするばかりであつたが、そもそもそんな音が耳元で鳴り響いてゐては、妹の可愛らしい声も聞こえてゐなかつたのであらう。
もちろん、彼もまた男の端くれであるので、たつた十三歳の妹にやられつぱなしというわけではなく、なんとか対抗しようとしてはゐる。現に今も、肩やら胸やら腹のあたりに感じる激痛に耐へて、力の入らぬ手を、心百合の未だくびれの無い未成熟な脇腹に当て、渾身の力で其の体を押し返そうとしてゐるのである。………が、如何せん力の差がありすぎて、全くもつて妹には届いてゐない。其の上、触れた場所がかなり悪かつた。
「何その手は。私、腰触られるとムズムズするから嫌だって昔言ったよね? お兄ちゃん頭悪いからもう忘れちゃったの? -----------
……………あ、分かった。もしかしてもっと突っ込んでほしいんだ!」
心百合はさう云ふと、腰の動きを止め、一つ、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになり怯えきつてゐる兄の顔を至極愛ほしさうに撫でる。そして、
「もう、お兄ちゃん、そんなに心百合のおちんちんが好きだなんて早く言ってくれたらよかったのに。昔、精通した時に怯えてたから嫌いなんだと思ってた。…………
--------んふ、んふふ、…………じゃあ心置きなくやっちゃってもいいんだね?」
と変はらず詩乃の頭を撫でながら云つて、彼を四つん這いの状態から正座に近い体勢にし、自身は其の体に覆いかぶさるよう前かがみになると、必死で妹の男性器を引き抜こうと踏ん張る彼の頭を両手で掴み、鼠径部が彼の鼻に当たるまで一気に、自身のモノを押し込んだ。
「~~~~~~~??????!!!!!!!!!!」
「あんっ、……お兄ちゃんのお口の中気持ちいい。…………うん? お口? お腹? ………どっちでもいいや。---------」
心百合は恍惚(ルビは「うっとり」)とした表情で、陰茎に絡みつく絶妙な快感に酔ひしれた。どうしてもつと早く此の気持ちよさを味ははなかつたのだらう。なおにぃも、しぃにぃも、ただ年齢が上なだけで、もはや何をやつても私の後追ひになつてゐるのに、私がちょつと睨んだだけで土下座をして来る勢ひで謝つて来るくせに、私がどんなに仕様もないお願いをしても、まるでフリスビーを追ふ犬のやうにすぐに飛んでいくのに、-----------特に、二人共どうしてこんなに勉強が出来ないのだらうか。私が小学生の頃に楽々と解いてゐた問題が二人には解答を理解することすら難しいらしい、それに、そもそも理解力も無ければ記憶力も無いから、一週間、時には二週間も時間をあげてるのに本一つ覚えてこなければ、読んでくることすら出来ず、しかもこちらが言つてることもすぐには分かつてくれないから、毎回毎回、何度も何度も同じ説明をするハメになる。高校で習う内容の何がそんなに難しいのだらうか、私には分からぬ。そんなだから、あまりにも物分りの悪い兄たちに向かつて、手を上げる衝動に襲われたことも何度かあるのではあるけれども、別にやつてもよかつた。其れこそあの、精通をむかえたあの夜に、二人揃つて犯しておけばよかつた。あれから二人の顔を見る度にムクムクと大きくなつて来るので、軽く手を強く握ったり、わざと不機嫌な真似をして怯えさせたりした時の顔を思ひ出して自慰をし、自分の中にもくもくと膨らんでくる加虐心を発散させてゐるのであるが、最近では押さえが効かなくなつてもう何度、二人の部屋に押し入つてやらうかしらんと、思つたことか。さう云へば他のクラスに一人だけ居るふたなりの友達が数ヶ月前に、兄を嬲つて嬲つて嬲つて最後はお尻に突つ込んでるよ、と云つてゐるのを聞いて、本当にそんな事をして良いのかと戸惑つてゐたが、いざやつてみると自分の体が快楽を貪るために、自然と兄の頭を押さえつけてしまふももである。このなんと気持ちの良いことであらう、那央にぃもまずはお口から犯してあげよう、さうしよう。…………………
と、心百合は夢心地で思ふのであつたが、詩乃にとつて此の行為は地獄であらう。さつきまで彼女の腰を掴んでゐた手は、すでにだらんと床に力無く垂れてゐる。それに彼女の鼠径部がもろに当たる鼻は、-------恐らく彼女は手だけ力を加減してゐるのであらう、其の衝撃に耐えきれずに潰れてしまつてゐる。とてもではないが、彼に未だ意識があるとは思えないし、未だ生きてゐるかどうかも分からない。が、心百合の手の間からときたま見える目はまだ開いてをり、意外にもしつかりと彼女のお臍の辺りを眺めてゐるのであつた。しかも其の目には恐怖の他に、どこか心百合と同じやうな悦びを蓄えてゐるやうに見える。口を引き裂かれ、喉を拡げられ、内臓を痛めつけられ、息をすることすら奪われてゐるのに、彼は心の奥底では喜んでゐる。…………これがふたなりに屈した者の末路なのであらう、四歳離れた中学生の妹に気持ちよくなつて頂けてゐる、其れは彼にとつて、死を感じる苦痛以上に重要なことであり、別に自分の体がどうなろとも知つたことではない。実は、心百合が俺たちに対して呆れてゐるのは分かつてゐたけれども、一体彼女に何を差し上げると、それに何をしてあげると喜んでくれるのか分からなかつたし、それに間違つて逆鱗に触れてしまつたらどうしようかと悩んで、何も出来なかつた。だが、かうして彼女の役に立つてみるとなんと満たされることか。やはり俺たち兄弟はあの夜、自慰のやり方を教へるのではなく、口を差し出し尻を差し出し、犯されれば良かつたのだ。さうすればもつと早く妹に気持ちよくなつてもらえたのに、……………あゝ、だけどやつぱり命は惜しい、未だしたい事は山程ある、けど今はこの感覚を全身に染み込ませなければ、もうこんなことは二度と無いかもしれぬ。-------さう思ふと気を失ふわけにはいかず、幼い顔つきからは想像もできないほど卑猥な吐息を漏らす妹を彼は其の目に焼き付けるのであつた。
「お兄ちゃん、そろそろ出るよぉ? 準備はいーい? かるーく出すだけにしておいたげるから、耐えるんだよ?」
心百合はさう云ふと、腰を細かく震わせるやうに振つて、いよいよ絶頂への最後の一歩を踏み出そうとする。そして間もなくすると、目をギュッと閉じ、体をキュッと縮こませ、そして、
「んっ、………」
と短く声を漏らし快楽に身を震はせた。と、同時に、薄つすら筋肉の筋が見える、詩乃の見事なお腹が小さくぽつこりと膨らんだかと思ひきや、其れは風船のやうにどんどん広がつて行き、男なのに妊婦のやうな膨らみになつて遂には、ほんの少し針で突つつけば破裂してしまふのではないのかと疑はれるほど大きくなつてしまつた。軽く出すからね、と云ふ妹の言葉は嘘では無いのだが、其れでも腹部に感じる異常な腹のハリに詩乃はあの、腹が爆発して死んでしまつた強姦被害者の話を思ひ出して、もう限界だ、やめてくださいと、言葉に出す代はりに彼女の腕を数回弱々しく叩いた。
「えー、………もう終わり? お兄ちゃんいつもあんなにご飯食べてるのに、私の精液はこれだけしか入らないの?」
とは云ひつつ詩乃の肩に手をかけて、其の肉棒を引き抜き始める。
「ま、いいや、お尻もやらなきゃいけないし、その分、余裕を持たせておかなきゃね」
そしてそのままズルズルと、未だ跳ね上がる肉棒をゆつくり引き抜いていくのであるが、根本から先つぽまで様々な液体で濡れた彼女の男性器は、心なしか入れる前よりおぞましさを増してゐるやうに見える。さうして最後、心百合は喉に引つかかつた雁首を少々強引に引つこ抜くと、
「あっ、ごめ、もうちょっと出る。…………」
と云つて、"最後の一滴"を詩乃の顔にかけてから手を離した。
「ぐげぇぇぇぇぇぇぇ…………………!!!!お”、お”え”ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
一体どこからそんな音を発してゐるのか、詩乃が人間とは思へない声を出しながら体に入り切らぬ妹の精子たちを、己の血と共に吐き出して行く。が、心百合はそんな彼の事など気にも止めずもう一つの標的、つまり壁の側で倒れてゐる那央に向かつて歩みを進めてゐた。
「なおにぃ、いつまで寝たフリしてるの? もしかしてバレてないとでも思ってた?」
「あ、…………え、…………や、やめ。…………」
「えへへ、やめるとでも思ってるのん? しぃにぃはちゃんと私の愛を受け止めてくれたんだよ、…��…ちょっと死にかけてるけど。 なおにぃはどうなるかな?」
那央は体を起こし、そのまま尻もちをついた状態で後ずさろうとしたものの、哀れなことに後ろは壁であつた。
「お、お願いします、………やめ、やめてください。お願いします。………………」
「んー? お兄ちゃんは自分に拒否権があると思ってるのん? それに、私は今、"気持ちが高ぶってる"んだから、お兄ちゃんがするべきなのは、そんな逃げ回るゴキブリみたいに壁を這うことじゃなくて、首を立てに振ることだよ」
だが裂けた口から精子を吐き出し続けてゐる弟を見て、誰が首を縦に振れようか、ヒクヒクとうごめく尿道からカウパー液を放出し続けてゐる肉棒を見て、誰がうんと頷けようか。彼に選択権は無いとは言つても、命乞ひくらゐはさせても良いであらう。
「お兄ちゃんさ、情けないと思わない? 妹にハグされただけで絶叫して、妹に軽く投げられただけで気絶して、妹に敬語を使いながら怯えてさ、……………そんなにこの子の餌食になりたいのん?」
「こ、心百合、……………頼む。…………頼むから落ち着いてくれ。……………」
「んふふ、お兄ちゃんって諦めが悪いよね。でも嫌いじゃないよ、そういうところ。------」
「あ、あ、…………や、やめて、…………ああぁ、や、やめてくださ…………………」
「もう、しぃにぃと同じ反応しないで! お兄ちゃんでしょ? 弟の方がまだ潔くて男の子らしかったよ? っていうかさっき私に、犯さないで、って言ったのもしぃにぃだったじゃん」
心百合は土下座のやうに下を向く那央の頭を上げさせ、肉棒の先つぽを軽く口の中へねじ込む。
「あ、あが、………。ひ、ひや。……………」
「だからぁ、………バツとしてなおにぃを犯す時は、遠慮しないことにしよっかな。-----えへへ、大丈夫だって、しぃにぃはまだ生きてるし、大丈夫大丈夫。----------」
さうして彼女は本当に容赦なく、那央の頭を手で掴み固定して、一気に自身のモノの半分ほどを突つ込んだ。そして、前のめりになつて暴れる兄の体に背中から覆いかぶさるように抱きしめると、
「よっ、と。………」
と軽い掛け声をかけ、そのままスツと、まるでお腹にボールでも抱えてゐるかのやうに、何事も無く男一人を抱えて立ち上がつた。体勢としては、妹の男性器に串刺しにされた那央が、逆立ちするやうに足を天井へ向けて、心百合に抱きかかえられてゐる、と云へば伝はるであらうか、兎に角、小学生と言はれても不自然ではない小柄な体格の女の子に、標準体型の男が上下を逆にして抱えられてゐると云ふ、見慣れぬ人にとつては異様な状況である。
「~~!!!~~~~~~!!!!!!!」
「こら、暴れないで。いや暴れてもいいけど、その分どんどん入って行くから、お兄ちゃんが困ることになるよ?」
其の言葉通り、那央が暴れれば暴れるほど彼の体は、自身の体重で深く深く心百合のモノに突き刺さつて行く。が、其れでも精一杯抵抗しようと足をジタバタ動かしてしまひ、結局彼女のモノが全部入るのにあまり時間はかからなかつた。
「もう諦めよっ? お兄ちゃんはこれから私を慰めるための玩具になるんだから、玩具は玩具らしく黙って使われてたら良いの」
だがやはり、那央は必死で心百合の太腿を掴んで彼女の男性器を引き抜こうとしてゐる。なのでもう呆れきつてしまひ、一つ、ため息をつくと、
「いい加減に、………」
と云ひながら、彼の肋骨を拉げさせつつ二、三十センチほど持ち上げ、そして、
「………して!」
と、彼の体重も利用して腕の中にある体を振り下ろし、再び腹の奥の奥にまで男性器を突つ込ませた。
「っっっっっっ!!!!!」
「あぁんっ! やっぱり男の人のお口はさいこぉ、…………!」
心百合はよだれを垂らすほどに気持ち良ささうな顔でさう云ふのであるが、反対に、自分では到底抵抗できぬ力で体を揺さぶられた那央は、其の一発で何もかもを諦めたのか手をだらりと垂れ下げ出来るだけ喉が痛くならないように脱力すると、もう静かになつてしまつた。
「んふ、…………そうそう、それでいいんだよ。お兄ちゃんはもう私の玩具なの、分かった?」
さう云ひながらポンポンと優しくお腹を叩き、そのまま兄を抱えてベッドまで向かふ。途中、未だにケロケロと精液を吐き出してゐる詩乃がゐたが、邪魔だつたので今度は彼を壁際まで蹴飛ばしてからベッドに腰掛けた。そして、
「ちゃんと気持ちよくしてね」
と簡単に云つて、彼の腰の辺りを雑に掴み直すと、人を一人持ち上げてゐるとは思へ無いほど軽やかに、------まさに人をオナホールか何かだと勘違ひさせるやうな激しい動きで、兄の体を上下させて自身の肉棒を扱き出したのであつた。股を開き局部を露出してなお、上品さを失はずに顔を赤くし甘い息を吐き綺羅びやかな黒髪を乱す其の姿は、いくら彼女が稚い顔つきをしてゐると云へども万人の股ぐらをいきり立たせるであらう。勿論其れは実の兄である詩乃も例外ではない。どころか、彼はもう随分と妹の精液を吐き出しいくらか落ち着いてきてゐたので心百合と那央の行為を薄れていく意識の中見てゐたのであるが、自身の兄をぶらぶらと、力任せに上へ下へと上下させて快楽を貪る実の妹に対しこの上なく興奮してしまつてゐるのである。なんと麗しいお姿であらうか、たとへ我が妹が俺たちを死に追ひやる世にも恐ろしい存在であらうとも、ある種女神のやうに見えてくる。そして其の女神のやうな高貴な少女が、俺たち兄弟を道具として使ひ快楽に溺れてゐる。………なんと二律背反的で、背徳的で、屈辱的な光景であらう、人生の中でこれほど美しく、尊く、猥りがましく感じた瞬間はない。------彼はもう我慢できなくなつて、密かに片手を股にやり、ズボンの上から己の粗末なモノを刺激し初めたのであるが、ふと視線に気がついてグッと上を向くと、心百合が此方を見てニタニタと其の顔を歪ませ笑つてゐた。
「くすくす、……………お兄ちゃんの変態。もしかして、なおにぃが犯されてるの見て興奮してたの?」
心百合はもう那央の体を支えてゐなかつたが、其れでも其の体は床に垂直なまま足をぶらつかせてゐる。
「ほら、お兄ちゃんも出しなよ、出して扱きなよ。知ってるよ私、お兄ちゃんが密かに私の部屋に入って、枕とか布団とかパジャマとかの匂いを嗅ぎながら自慰してるの。全部許したげるからさ、見せてよ、お兄ちゃんのおちんちん」
「あっ、………えっ、…………?」
自分の変態行為を全部知られてゐた、-----其の事に詩乃は頭を殴られたかのやうな衝撃を受け、ベルトを外すことすらままならないほど手を震えさせてしまひ、しかしさらに自身のモノが固くなるのを感じた。
「ほら早く、早く、-----------」
心百合はもう待ちきれないと云ふ様子である。其れは年相応にワクワクしてゐる、と云ふよりは獲物を見つけて何時飛びかかろうかと身を潜める肉食動物のやうである。
「ま、まって、…………」
と、詩乃が云ふと間もなく、ボロンとすつかり大きくなつた、しかし妹のソレからすると無視できる程小さい男の、男のモノがズボンから顔を出した。
「あははははっ、なにそれ! それで本当に大きくなってるの?」
「う、……ぐっ…………!」
「まぁ、いいや。お兄ちゃんはそこでそのおちんちん? をシコシコしていなよ。もう痛いほど大きくなってるんでしょ? 小さすぎて全然分かんないけど」
と云つて心百合は那央の体を掴み、再びおぞましい音を立てながら"自慰"に戻つた。そして詩乃もまた、彼女に言われるがまま自身の粗末な男性器を握ると悔しさやら惨めさやらで泣きそうになつたが、矢張り妹の圧倒的な巨根を見てゐると呼吸も出来ないほどに興奮して来てしまひ、ガシガシと赴くがまま手を動かすのであつた。だが一寸して、
「あ、しぃにぃ、見て見て、-------」
と、心百合が嬉しさうな声をかけてくる。………其の手は空中で軽く閉じられてをり、那央の体はまたもや妹のモノだけで支えられてゐる。------と思つてゐたら突然、ビクン! と其の体が暴れた。いや、其れは彼が自分から暴れたのではなく、何かに激しく揺さぶられたやうだと、詩乃は感じた。
「ほらほら、------」
ビクン、ビクンと那央の体が中身の無い人形のやうに暴れる。
「------お兄ちゃんのちっちゃい、よわよわおちんちんじゃ、こんなこと出来ないでしょ」
ベッドに後ろ手をつきながら、心百合がニコニコと微笑んでさう云つてきて、やうやく詩乃にも何が起きてゐるのか理解できたやうであつた。まさか妹は人を一人、其の恐ろしい陰茎で支えるのみならず、右へ左へとあの激しさで揺れ動かしてゐるとでも云ふのであらうか。いや、頭では分かつてはゐるけれども、全然理解が追ひつかない。いや、いや、ちやつと待つてくれ、其れよりもあんなに激しく暴れさせられて兄貴は無事であらうか。もう見てゐる限りでは全然手に力が入つて無く、足もただ体に合はせて動くだけ、しかも、かなり長いあひだ呼吸を肉棒で押さえつけられてゐる。……………もう死んでしまつたのでは。----------
「んぁ? なおにぃもう死にそうなの? ………………仕方ないなぁ、ちょっと早いけどここで一発出しとくね」
男性器を体に突つ込んでゐる心百合には分かるのであらう、まだ那央が死んでゐないといふ事実に詩乃は安心するのであつたが、先程自分の中に流し込まれた大量の精液を思ふと、途中で無理矢理にでも止めねば本当に兄が死んでしまふやうな気がした。
「んっ、…………あっ、来た来たっ……………」
心百合はさう云ふとより強く、より包むように那央を抱きしめ、其の体の中に精を放ち始める。が、もう彼の腹がパンパンに張らうとした頃、邪魔が入つた。
「やめ、………心百合、もうやめ、…………!」
「なに?」
見ると詩乃がゾンビのやうに床を這ひ、必死の力でベッドに手をかけ、もう片方の手で此方の腕を握って、しかもほとんど残つてゐない歯を食ひしばつて、射精を止(や)めさせようとしてゐるではないか。兄のために喉を潰されても声をあげ、兄のために激痛で力の入らぬ足で此方まで歩き、兄のために勝ち目など無いと云ふのに手を伸ばして妹を止めようとする献身的な詩乃の姿勢に、心百合は少なからず感動を覚えるのであつたが、残念なことに彼女の腕を握つてゐる手は自身の肉棒を触つた手であつた。
「お兄ちゃん? その手はさっきまで何を触ってた手だったっけ?」
と云ふと、那央がどうなるのかも考えずに無理やり肉棒を引き抜きベシャリと其の体を床に投げつけ、未だ汚い手で腕を握つてくる詩乃の襟首を掴んで、ベッドから立ち上がる。
「手、離して」
「は、はい。………」
「謝って」
「あ、あぁ、……ご、ごご、ごめんなさい。……………」
「んふ、…………妹をそんな化物でも見るみたいな目で見ないでもいいんじゃないのん? 私だって普通の女の子なんだよ?」
「……………」
「ちょっとおちんちんが生えてて、ちょっと力持ちで、ちょっと頭が良いだけなんだよ。それなのにさ、みんなお兄ちゃんみたいに怯えてさ、……………」
「心百合、…………」
「------本当に、たまらないよね」
「えっ?」
「でも良かったぁ、……………もう最近、お兄ちゃんたちだけじゃなくて、友達の怯えた表情を見てると勃ってしょうがなかったんだもん。……………」
「こ、心百合、…………」
「だからさ、今日お兄ちゃんたちが部屋に入ってきて、犯さないで、って言った時、もう我慢しなくて良いんだって思ったんだよ。だって、お兄ちゃんも知ってるんでしょ? ふたなりにそういう事を言うと逆効果だって。知ってて言ったんでしょ? -------」
「まって、……そんなことは。…………」
「んふ、……暴れても無駄だよ、お兄ちゃん。もう何もかも遅いんだよ、もう逃れられないんだよ、もう諦めるしかないんだよ、分かった?」
「ぐっ!うああ!!!」
「あはは、男の人って本当に弱いよね。みーんな軽く手を握るだけで叫んでさ、ふたなりじゃなくっても女の子の方が、今の世の中強いよ、やっぱり。お兄ちゃんも運動部に入ってるならもっと鍛えないと、中学生どころか小学生にすら勝てないよ? …………あぁ、でもそっか、そう云えば、この間の試合は負けたんだっけ? 聞かなくてもあんな顔して夜ご飯食べてたら誰だって分かっちゃうよ」
心百合はさう云ふと、片手で詩乃を壁に投げつけた。
「ぐえっ、…………」
「-----ま、そういう事は置いといて、中途半端に無理やり出しちゃって気持ち悪いから、さっさとお尻に挿れちゃうね。しぃにぃは後でやってあげるから、そこで見てて」
詩乃が何かを云ふ前に心百合は、ひどい咳と共に精液と血を吐き出し床にうずくまる那央を抱えて、無理やり四つん這いの体勢にする。そしてジャージの腰の部分に手をかけて剥ぎ取るように下ろすと、其処にはまるで此れからの行為を期待するかのやうにヒクヒクと収縮するお尻の穴と、ピクピクと跳ねる那央のモノが見えた。
「なぁに? なおにぃも私にお口を犯されて興奮してたのん?」
「ぢ、ぢが、……ぢがう。………」
と那央が云ふけれども激しく嘔吐しながらも自身のモノを大きくすると云ふことは、さう云ふ事なのであらう。
「んふふ、じゃあもう待ちきれないんだ。いいよ、それなら早く挿れてあげるよ。準備はいーい?」
さながら接吻のやうに心百合の男性器と、那央の肛門がそつと触れ合ふ。が、少なく見積もつても肛門の直径より四倍は太い彼女のモノが其処に入るとは到底思へない。
「だめ、だめ、だ、だめ、………あ”ぁ、ゃ、………」
那央は必死に、赤ん坊がハイハイする要領で心百合から逃げようとしてゐるのであるが、彼女に腰を掴まれてしまつては無意味であらう、ただ手と足とがツルツルと床を滑るのみである。しかし其のあひだにも心百合のモノはじつとりと品定めするかのやうに、肛門付近を舐め回して来て、何時突つ込まれるか分からない恐怖で体が震えて来る。一体どれほどの痛みが体に走るのであらうか。一体どれほどの精液を放たれるのであらうか。妹はすでに、俺たち二人の腹を満杯にするまで射精をしてゐるけれども、未だ普段行われる自慰の一回分にも達してをらず、相当我慢してゐることはこの足りない脳みそで考へても分かる。分かるが故に恐ろしい、今のうちに出来る限り彼女の精液を吐き出しておかないと大変な事になつてしまふ。凡そ"気が高ぶった"ふたなりが情けをかけ射精の途中で其の肉棒を引き抜いてくれるなんて甘い希望を持つてはいけない。況してや先つぽだけで我慢してくれるなど、夢のまた夢であらう。…………あゝ、こんなことになるなら初めからダンベルなど放つておけばよかつた、どうしてあの時詩乃に、云ひに行くぞ、などと持ちかけてしまつたのか、あのまま何も行動を起こさなければ後数年、いや、後数日は生きていけさうであつたのに。あゝ、どうして。-------さう悲嘆に暮れてゐると、遊びもここまでなのか、心百合が自身のモノの先端を、グイと此方の肛門に押し付けて来た。そして、
「んふ、ちょっと痛いかもしれないけど、我慢してね。-------」
と云ふ悦びに打ち震えた優しい声をかけられ、腰を掴んでいる手に力が込められ、メコリと肛門が広がる感覚が走れば直ぐ其の後、気を失ふかと思はれる程の激痛で目の前が真暗になつた。
「ぐごっ、…………ごげっ、ぐぁ、……………」
絶叫しようにも、舌が喉に詰まつて声が出てこない。だけどそんな空気の漏れる音を立ててゐるうちにも妹のソレはどんどん那央の中へ入つて来て、もう一時間もしたかと思はれる頃合ひにふと其の動きが止まり、次いで腰を握りつぶしてゐた手の力も抜けていき、たうたう全部入つたんだ、何とか耐えきつた、と安堵して息を吸つたのであるが、しかし心百合の言葉は彼を絶望させるのに十分であつた。
「------ちょっと先っぽだけ入れてみたけど、どう? 気持ちいい?」
「ぅご、………う、嘘だろ…………」
「嘘じゃないよ。じゃ、どんどん入れてくね」
「あがああああああああああっ、がっ、…………」
那央の絶叫は心百合に再び腰を掴まれ、メリメリメリ、………と骨が軋む音が再びし始めるとすつかり無くなつてしまつた。彼は激痛からもはや目も見えず声も出ず考へることすら出来ない状態なのだが、此れが人間の本能と云ふやつなのであらう、其れでも手を前に出し足を上げ、一人の可憐な少女から逃げようとしてゐるのである。が、いつしか手が空を切り膝が宙に浮くやうになるともう何が起きてゐるのか訳が分からなくなり、心無い者に突然抱きかかえられた猫のやうに手足をジタバタと暴れさせるだけになつてしまふ。そして、さうやつて訳が分からぬうちにも心百合の陰茎は無慈悲に入つて行き、体の中心に赤々と光る鉄の棒を突つ込まれたかのやうに全身が熱くなり汗が止まらなくなり初めた頃、いよいよお尻に柔らかい彼女の鼠径部の感触が広がつた。広がつてしまつた。
「んふふ、どう、お兄ちゃん? 気持ちいーい?」
「………………」
「黙ってたら分からないよぉ?」
と、云ひつつ心百合は腰を掴んでゐた手で那央の体を捻り其の顔を覗き込む。
「あがっ、…………」
「私はお兄ちゃんに気持ち良いかどうか、聞いてるんだけど」
「こ、こゆ、…………」
「んー?」
那央は黙つて首を横に振つた。当然であらう、自分の拳ほどの太さの陰茎を尻にねじ込まれ、体が動かないようにと腰を掴んでゐた手でいつの間にか持ち上げられ、内蔵を滅茶苦茶にしてきた陰茎で体を支えられ、もう今では中指の先しか手が床に付かないのである。例へ激痛が無くとも、腹に感じる違和感や、極度に感じる死の恐怖や、逃げられぬ絶望感から決して首を縦に振ることは出来ないであらう。
「そっか、気持ちよくないんだ。…………」
「はやく抜いてく、…………」
「------ま、関係無いけどね」
気にしないで、気にしないで、ちやんと気持ちよくしてあげるから、と続けて云ふと心百合は再び那央の腰を掴み直す。
「こ、こゆり!!! やめて!!!」
「うるさい! 女の子みたいな名前して、おちんちんで突かれたぐらいで文句言わないで!」
この言葉を切掛に、心百合は骨にヒビが入るほど其の手に力を入れ、陰茎を半分ほど引き抜いていく。そして支えを失つてもはや力なくだらりと垂れる兄を見、
「んふ、………」
と妖艶に色づいた息を漏らすと、彼のお尻に勢ひよく腰を打ち付けた。
「ぐがあぁ!!!!!」
「あぁん、お尻もさいこぉ。……………お兄ちゃんの悲鳴も聞こえるし、お口より良いかも、…………」
さう云ふと、もう止まらない。兄がどんなに泣き叫ぼうが、どんなに暴れようが自身の怪力で全て押さえ込み、其の体を己の腰使ひでもつて何度も何度も貫いて行く。そして初めこそ腰を動かして快楽を貪つてゐたが、次第に那央の事が本当に性欲を満たすための道具に見えてくると、今度は自分が動くのでは無くさつきと同じやうに彼の体を、腕の力だけで振り回して肉棒を刺激してやる。
「あぎゃっ! いぎぃ! おごぉっ!!-------」
「あはっ、お兄ちゃん気持ちよさそう。…………良かったねぇ、妹に気持ちよくしてもらえて。嬉しいでしょ?」
「こ、ごゆぅっ!! ごゆり”っ!!! ぐあぁっ!!!」
「なぁに、お兄ちゃん? 止めてなんて言わないでよね。いつもお勉強教えてあげてるのにあんな反抗的な目で見てきて、悔しかったのか知らないけど、どれだけ私が我慢してたか分かる?」
「じぬっ!! じぬがら!!! ゃめ!!!」
だが其の悲痛な叫びもまた、間接的に彼女の肉棒を刺激するのである。
「------んふ、もう大変だったんだから。毎日毎日、お風呂に入る前の一回だけで満足しなきゃいけなかった身にもなってよ」
「ぐぎぃっ!!こゆっ!!あ”あ”ぁっ!!!」
「でもさ、思うんだけど、どうしてあんな簡単な入試問題すら解けないのん? 私あの程度だったら教科書を読んだら、すぐに解けるようになってたよ? しかも小学生の頃に。入試まで後一ヶ月も無いのに大丈夫?
……………もうお兄ちゃんの代わりに大学行ったげるからさ、このままこんな感じで私の玩具として生きなよ。そっちの方が頭の悪いお兄ちゃんにはお似合いだよ、きっと、たぶん、いやぜったい」
傷だらけの喉をさらに傷つけながら全力で叫ぶ那央を余所に、心百合は普段言ひたくて言ひたくて仕方無かつた事を吐露していくのであつたが、さうしてゐると自分でも驚くほどあつと云ふ間に絶頂へ向かつてしまつて、後数回も陰茎を刺激すると射精してしまひさうである。全く、この出来損ないの兄は妹一人満足させることが出来ないとでも云ふのであらうか。本当はこのまま快感の赴くがままに精液を彼の腹の中に入れてやりたい所だけど、折角手に入れた玩具を死なせてしまつては此方としても嫌だから、途中で射精を止めなければならぬ。いや、未だ壁の側で蹲つてゐるしぃにぃが居るではないか、と云ふかもしれないが人の腹の容量などたかが知れてゐて、満杯にした所で未だ未だ此の体の中には精液が波打つてゐる。-------あゝ、ほんの一合程度しか出ない男の人が羨ましい。見ると、なおにぃの股の下辺りに白い点々が着いてゐるのは多分彼の精液なのだと思ふが、なんと少ないことか。私もあのくらいしか出ないのであれば、心置き無く此の情けない体の中に精を放つことが出来るのに。……………
「------そろそろ、……そろそろ出るよ、お兄ちゃん。ちゃんと私の愛、受け止めてあげてね」
さう云ふと心百合は今までの動きが準備体操であつたかの如く、那央の体を激しく揺さぶり始める。そして最後、那央のお尻に自分のモノを全て入れきり目を閉じたかと思ひきや、
「んっ、んっ、………んん~~~。…………」
と、其の身を震わせて精子を実の兄の体の中で泳がせるのであつた。が、矢張り彼女にもどこか優しさが残つてゐたのか数秒もしないうちに、じゅるん、と男のモノを引き抜き那央を床に捨て、どろり、どろりと、止めきれ無かつた精液を其の体の上にかけると、でも矢張りどこか不満であつたのか壁際で自身の小さな小さなモノを扱いてゐたもう一人の兄の方を見た。
「しぃにぃ、おまたせ。早くしよっ」
其の軽い声とは逆に、彼女の肉棒はもう我慢出来ないと言はんばかりに、そして未だ未だ満足ではないと云はんばかりに大きく跳ね床に精液を撒き散らしてゐる。一体、妹の小さな体のどこにそんな体力があるのか、もうすでに男を滅茶苦茶に嬲り、中途半端とは云へ三回も射精をしてゐると云ふのに、此のキラキラと輝くやうな笑顔を振りまく少女は全く疲れてなどゐないのか、これがふたなりなのか。-----------
「あ、えぁ、…………」
「? どうしたの? なにか言いたげだけど。………」
「そ、その、きゅ、きゅうけい。…………」
「--------んふ、何か言った? 休憩? 私、休憩なんて必要ないよ。それにお兄ちゃんも十分休んだんだから良いでしょ。……ねっ、早くっ、早くお尻出して?」
「い、いや、いや、…………………」
起き上がつてドアまで駆け、そして妹に捕まえられる前に部屋を後にする、……………さう云ふ算段を詩乃は立ててゐたのであるが、まず起き上がることが出来ない。なぜだ、足に力が入らない、----と思つたが、かうしてゐる内にも心百合は近づいて来てゐる。-------もうじつとしてなど居られぬ。何とか扉まで這つて行き、縋り付くやうにしてドアノブに手をかける。が、其の時、背中に火傷するかと思はれるほど熱い突起物が押し付けられたかと思つたら、ふわりと、甘い甘い、でも決して淑やかさを失ふことの無い甚く魅惑的な匂ひに襲はれ、次いで、背後から優しく、優しく、包み込まれるやうにして抱きしめられてゐた。そして首筋に体がピクリと反応するほどこそばゆい吐息を感じると、
「おにーちゃんっ、どこに行こうとしてるのん? まさか逃げようとしてたのん?」
と言はれ、ギュウゥゥ、………と腕に力を入れられてしまふ。
「ぐえぇ、………ぁがっ!………」
「-----んふふ、もう逃げられないよ。しぃにぃは今から私に、……この子に襲���れちゃうの。襲われてたくさん私の種を吐き出されちゃうの。------ふふっ、男の子なのに妊娠しちゃうかもね」
「ご、ごゆり、…………あがっ、………だれかたすけて。……………」
と云ふが、ふいにお腹に回されてゐた手が膝の裏に来たかと思へば、いつの間にかゆつくりと体が宙に浮いて行くやうな感じがした。そして顔のちやつと下に只ならぬ存在感を感じて目を下に向けると、すぐ其処には嫌にぬめりつつビクビクと此方を見つめて来る妹の男性器が目に留まる。そして、足を曲げて座つた体勢だと云ふのに遥か遠くに床が見え、背中には意外と大きい心百合の胸の感触が広がる。…………と云ふことはもしかして俺は今、妹に逆駅弁の体位で後ろから抱きかかえられて、情けなく股を開いて男のモノを入れられるのを待つてゐる状態であるのだらうか。まさか男が女に、しかも実の妹に逆駅弁の体勢にされるとは誰が想像できよう、しかし彼女は俺の膝を抱え、俺の背中をお腹で支えて男一人を持ち上げてしまつてゐる。兄貴は心百合のモノが見えなかつたからまだマシだつただらうが、俺の場合は彼女の男性器がまるで自分のモノかのやうに股から生えてゐて、……………怖い、ただひたすらに怖い、こんなのが今から俺の尻に入らうとしてゐるのか。------
「あれ? お兄ちゃんのおちんちんは? どこ?」
詩乃はさつき自身のモノをしまふことすら忘れて扉に向かつたため、本来ならば逆駅弁の体位になつて下を向くと彼の陰茎が見えてゐるはずなのだが、可哀想なことに心百合のモノにすつぽりと隠れてしまつて全く見えなかつた。
「あっ、もしかしてこの根本に感じてる、細くて柔らかいのがそうなのかな? いや、全然分かんないけど」
心百合のモノがゆらゆらと動く度に詩乃のモノも動く。
「本当に小さいよね、お兄ちゃんのおちんちん、というか男の人のおちんちんは。私まだ中学一年生なのにもう三倍、四倍くらい?は大きいかな。…………ほんと、精液の量も少ないし、こんなのでよく人類は絶滅しなかったなぁって思うよ。-----まぁ、だから女の人って皆ふたなりさんと結婚していくんだけどね。お兄ちゃんも見てくれは良いのによく振られるのはそういうことなの気がついてる? 女の人って分かるんだよ、人間としての魅力ってものがさ。------」
「こゆり、…………下ろして。…………」
「あはは、役立たずの象徴を私のおちんちんで潰されて何今更お願いしてるのん? ふたなりに比べて数が多いってだけで人権を与えられてる男のくせに。お兄ちゃんは、お兄ちゃんとして生まれた時点で、もう運命が決まってたんだよ。…………んふ、大丈夫大丈夫、心配しないで。もしお兄ちゃん達に人権が無くなっても、私がちゃんと飼ってあげるから、私がちゃんとお兄ちゃんにご飯を食べさせてあげるからさ、そんな不安そうな顔する必要ないよ、全然。--------」
「こゆ、り。…………」
「…………でもその代わりに使わせてね、お兄ちゃん達の体。--------」
さう云ふと心百合は、早速兄の体を使おうと詩乃をさらに高く持ち上げて、彼の尻穴と自身の雁首を触れ合はせる。意外にも詩乃が大人しいのはもう諦めてしまつたからなのか、其れとも油断させておいて逃げるつもりだからなのか。どちらにせよ動くと一番困るのは内蔵をかき乱される兄の方なのだから静かに其の時を待つてゐるのが一番賢いであらう。
「んふ、…………じゃあ、挿れるね。--------」
詩乃は其の言葉を聞くや、突然大人しく待つてなど居られなくなつたのであるが、直ぐにメリメリと骨の抉じ開けられる音が聞こえ、そして股から体が裂けていくやうな鈍い痛みが伝わりだすと、体全体が痙攣したやうに震えてしまひもはや指の一本すら云ふことを聞いてくれなかつた。其れでも懸命に手足を動かそうとするものの体勢が体勢だけにそもそも力が入らず、ひつくり返された亀のやうに妹の腹の上でしなしなと動くだけである。だがさうしてゐるうちにも、心百合は力ずくで彼の体に男のモノを入れていき、もう其の半分ほどが入つてしまつてゐた。
「そんな無駄な抵抗してないで、自分のお腹を触ってみたら? きっと感じるよ、私のおちんちん」
妹に言はれるがまま、詩乃はみぞおち辺りを手で擦つた。すると、筍が地面から生えてゐるやうにぽつこりと、心百合の男性器が腹を突き破らうと山を作り何やら蠢いてゐるのが分かる。
「あっ、……はっ、………はは、俺の、俺の腹に、あぁ、……………」
「んふふ、感じた? 昔こういうの映画にあったよね、化物の子供が腹を裂いて出てくるの。私怖くて、お兄ちゃんに抱きついて見れなかったけど、こんな感じだった?」
「-----ふへ、………ふへへ、心百合の、こゆり、………こゆ、…………」
「あはっ、お兄ちゃんもう駄目になっちゃった? しょうがないなぁ、………」
と云ふと、心百合は腰を引いて詩乃の体から陰茎を少し引き抜く。
「-----じゃあ、私が目を覚まさせてあげる、………よっ!」
「っおごぁっっっ!!!!!」
其のあまりにも強烈な一撃に、詩乃は顔を天井に上げ目を白くし裂けた口から舌を出して、死んだやうに手をだらんと垂れ下げてしまつた。果たして俺は人間であるのか、其れとも妹を気持ちよくさせるための道具であるのか、いや、前者はあり得ない、俺はもう、もう、…………さう思つてゐると二発目が来る。
「ぐごげぇえええっっっっ!!!!!」
「んー、…………まだ目が醒めない? もしもーし、お兄ちゃん?」
「うぐぇ、……げほっ、げほっ、………」
「まだっぽい? じゃあ、もう一発、………もう一発しよう。そしたら後はもうちょっと優しくしたげるから!」
すると、腹の中から巨大な異物が引き抜かれていく嫌な感覚がし、次いで、彼女も興奮しだしたのか背後から艶つぽい吐息が聞こえてくるようになつた。だけど、どういふ訳か其の息に心臓を打たせてゐると安心して来て、滅茶苦茶に掻き回された頭の中が少しずつ整頓され、やつと声が出るようになつた。
「こ、こゆり。………」
「うん? なぁに、お兄ちゃん」
「も、も、ももっと、もっと、…………」
もつと優しくしてください、と云ふつもりであつた。しかし、
「えっ、もっと激しくして欲しいのん? しぃにぃ、本当に良いのん?」
「い、いや、ちが、ちが、…………」
「----しょうがないなぁ。ほんと、しぃにぃって変態なんだから。……でもさすがに死んじゃうからちょっとだけね、ちょっとだけ。-------」
さう云ふと心百合は、今度は腰を引かせるだけでなく詩乃の体を持ち上げるまでして自身の陰茎を大方引き抜くと、其のまま動きを止めてふるふると其の体を揺する。
「準備は良い? もっと激しくって言ったのはお兄ちゃんなんだからね、どうなっても後で文句は言わないでね」
「あっ、あっ、こゆり、ぃゃ、……」
「んふ、-------」
と、何時も彼女が愉快な心地をする際に漏らす悩ましい声が聞こえるや、詩乃は床に落ちていつた。かと思えば、バチン! と云ふ音を立てて、お尻がゴムのやうに固くも柔らかくもある彼女の鼠径部に打ち付けられ、体が跳ね、そして其の勢ひのまま再び持ち上げられ、再度落下し、心百合の鼠径部に打ち付けられる。-------此れが幾度となく繰り返されるのであつた。もはや其の光景は遊園地にある絶叫系のアトラクシオンやうであり、物凄い勢ひでもつて男が上下してゐる様は傍から見てゐても恐怖を感じる。だが実際に体験をしてゐる本人からするとそんな物は恐怖とは云へない。彼は自分ではどうすることも出来ない力でもつて体を振り回され、腹の中に巨大な異物を入れられ、肛門を引き裂かれ、骨盤を割られ、さう云ふ死の苦痛に耐えきれず力の限り叫び、さう云ふ死の恐怖から神のやうな少女に命乞ひをしてゐるのである。だが心百合は止まらない。止まるどころか彼の絶叫を聞いてさらに己を興奮させ、ちやつと、と云つたのも忘れてしまつたかの如く実の兄の体をさらに荒々しく持ち上げては落とし、持ち上げては落とし、其の巨大な陰茎を刺激してゐるのであつた。
「あがあぁぁぁ!!!こゆ”り”っっっっ!!!!ぅごぉあああああっぁぁ!!!!」
「えへへ、気持ちいーい? 」
「こゆりっっ!!こゆり”っ!!!!!こゆっ!!!!」
「んー? なぁに? もっと激しくって言ったのはお兄ちゃんでしょう?」
「あぁがぁぁっっ!!!ごゆ”り”っ!!!」
「んふふ、しぃにぃは本当に私のこと好きなんだねぇ。いくら家族でも、ちょっとドキドキしちゃうな、そこまで思ってくれると。------」
腰を性交のやうに振つて、男を一人持ち上げ、しかも其の体を激しく上下させてなお、彼女は息を乱すこともなく淡々と快楽を味はつてゐる。が、其の快楽を与えてゐる側、------詩乃はもう為すがまま陵辱され、彼女の名前を叫ぶばかりで息を吸えてをらず、わなわなと震えてゐる唇からは血の流れを感じられず、黒く開ききつてゐる瞳孔からは生の活力が感じられず、もはや処女を奪はれた生娘のやうに肛門から鮮血を垂れ流しつつ体を妹の陰茎に突き抜かれるばかり。でも、其れでも、幸せを感じてゐるやうである。何故かと云つて、彼ら兄弟は本当に妹を愛してゐるのである。其の愛とは家族愛でもあると同時に、恋ひ人に向ける愛でもあるし、崇敬愛でもあるのである。そしてそこまで愛してゐる妹が自分の体を使つて喜んでくれてゐる、いや彼の言葉を借りると、喜んで頂けてゐるのである。…………此の事がどれほど彼にとつて嬉しいか、凡そ此の世に喜ぶ妹を見て嬉しくならない兄など居ないけれども、死の淵に追ひ込まれても幸せを感じるのには感服せざるを得ない。彼を只の被虐趣味のある変態だと思ふのは間違ひであり、もしさう思つたのなら反省すべきである。なんと美しい愛であらうか。---------
「んっ、………そろそろ出そう。……………」
さうかうしてゐると、心百合はどんどん絶頂へと向かつて行き、たうたう、と、云ふより此れ以上快感を得てしまつては途中で射精を止める事が出来ない気がしたので、さつさと逝つてしまはうと其の腰の動きをさらに激しくする。
「ひぎぃ!!うぐぇ!!ごゆりっ!!じぬ”っ!!!じぬ”ぅっっっっ!!!!」
死ぬ、と、詩乃が云つた其の時、一つ、心百合のモノが暴れたかと思ひきや、唯でさへ口を犯された際の名残で大きく膨れてゐた彼の腹がさらに膨らみ、そして行き場を失つた精液が肛門をさらに切り裂きながら吹き出て来て、床に落ちるとさながら溶岩のやうに流れていく。
「あっ、あっ、ちょっ、…………そんなに出たら、………あぁ、もう! 」
心百合は急いで詩乃の体から男性器を取り出し床に捨てると、本棚に向かつて流れていく精液を兄の体を使つて堰き止め、ついでにもう殆ど動いてゐない那央を雑巾のやうに扱つて軽く床を拭き、ほつとしたやうに一息ついた。
「まだ出したり無いけど、ま、この辺にしておこうかな。………これ以上は本が濡れちゃう。-------」
続けて、
「なおにぃ、しぃにぃ、起きて起きて、-------」
だが二人とも、上と下の口から白くどろどろとした液体を吐き出し倒れたままである。
「-----ねっ、早く起きて片付けてよ。でないともう一度やっちゃうよ?」
と云つて彼らの襟を背中側から持ち、猫をつまむやうにして無理やり膝立ちにさせると、那央も詩乃も一言も声を出してくれなかつたがやがてもぞもぞと動き始め部屋の隅にある、彼女がいつも精液を出してゐるバケツを手に取り、まずは床に溜まつてゐる彼女の種を手で掬い取つては其の中に入れ、掬い取つては其の入れて"行為"の後片付けをし始めたので、其の様子を見届けながら彼女もウェットティッシュで血やら精液やらですつかり汚れてしまつた肉棒を綺麗にすると、ゴロンとベッドに寝転び、実の兄としてしまつた性交の余韻に、顔を赤くして浸るのであつた。
那央たち兄弟は体中に感じる激痛で立つことすら出来ず、ある程度心百合の精液をバケツに入れた後は這つて家の中を移動し、雑巾を取つて来て床を拭いてゐたのであるが、途中何度も何度も気を失ひかけてしまひ中々進まなかつた。なんと惨めな姿であらう、妹の精液まみれの体で、妹の精液がへばり付いた床を雑巾で拭き、妹の精液が溜まつてゐるバケツの中へ絞り出す。こんな風��心百合の精液を片付けることなど何時もやつてゐるけれども、彼女に犯されボロ雑巾のやうな姿となつた今では、自分たちが妹の奴隷として働いてゐるやうな気がして、枯れ果てた涙が自然と出て来る。-------あゝ、此の涙も拭かなくては、…………一つの拭き残しも残してしまつては、俺たちは奴隷ですらない、人間でもない、本当に妹の玩具になつてしまふ。だがいくら拭いても拭いても、自分の体が通つた場所にはナメクジのやうな軌跡が残り、其れを拭こうとして後ろへ下がるとまた跡が出来る。もう単純な掃除ですら俺たちは満足に出来ないのか。異様に眠いから早く終はらせたいのに全く進まなくて腹が立つて来る。が、読書に戻つて上機嫌に鼻歌を歌ふ妹のスカートからは、蛇のやうに”ソレ”が、未だにビクリ、ビクリと、此方を狙つてゐるかの如く動いてゐて、とてもではないがここで性交の後片付けを投げ出す事など出来やしない。いや、そもそもあれほど清らかな妹にこんな汚い仕事などさせたくない。心百合には決して染み一つつけてなるものか、決して其の体を汚してなるものか、汚れるのは俺たち奴隷のやうな兄だけで良い。-------さう思ふと急にやる気が出てきて、二人の兄達は動かない体を無理やり動かし、其れでも時間はかかつたが綺麗に、床に飛び散つた精液やら血やらを片付けてしまつた。
「心百合、………終わったよ。-----」
「おっ、やっと終わった? ありがとう」
「ごめんな、邪魔してしまって。…………」
「んふ、いいよいいよ、その分気持ちよかったし。-------」
さう心百合が云ふのを聞いてから、兄二人は先程まで開けることすら出来なかつた扉から出て行こうとする。
「あ、お兄ちゃん、------」
心百合が二人を呼び止めた。そして、
「-----また明日もしようね」
とはにかみながら云ひ二三回手を振つたのであるが、那央も詩乃も怯えきつた顔をさらに怯えさせただけで、何も言はずそそくさと部屋から出ていつてしまつた。
「詩乃、…………すまん。…………」
心百合の部屋を後にして扉を閉めた後、さう那央が詩乃に対して云つたけれども、云はれた本人は此れにも特に反応せず自分の部屋に、妹の精液が入つたバケツと共に入りほんの一時間前まで全ての切掛となつたダンベルがあつた位置に座り込んだ。其のダンベルと云へば、結局心百合の部屋から出る時に那央が手に持つてゐたのであるが、詩乃が自室に入る際に階段を転げ落ちてゐく音がしたから多分、兄と一緒に踊り場にでも転がつてゐるのであらう。もう其れを心配する気力も起きなければ、此れ以上動く体力も無い。なのに体中に纏わりつく心百合の精液は冬の冷気でどんどん冷え、さらに体力を奪つて来てゐる。ふとバケツの方に目を向けると、二人の血でほんのりと赤みがかつた妹の精液が半分ほど溜まつてゐるのが見える。-------一体これだけでも俺たち男の何倍、何十倍の量なのであらうか。一体俺たちがどれだけ射精すれば此の量に辿り着けるのであらうか。一体どれほどの時間をかければ人の腹を全て精液で満たすことが出来るのであらうか。しかも其の精液の中では、男の何百、何千倍と云ふ密度で妹の精子が泳いでゐると云ふではないか。…………恐ろしすぎる、もはやこの、精液で満たされぱんぱんに張つた腹が彼女の子供を授かつた妊婦の腹のやうに見えてくる。もし本当にさうなら、なんと愛ほしいお腹なのであらう。………が、残念なことに、男は受精が出来ないから俺たちは心百合の子供を生むことなど出来ぬ。其れに比べて彼女の子供を授かれる女性の羨ましさよ、あの美しい女神と本来の意味で体を交はらせ、血を分かち合ひ、そして新たな生命を生み出す、-------実の妹の嬲り者として生まれた俺たち兄弟とは違ひ、なんと素晴らしい人生を歩めるのであらう。だが俺たちの人生も丸切無駄では無いはずである。なんせ俺達は未だ生きてゐる。生きてゐる限り心百合に使つて頂き喜んで頂ける。もう其れだけで十分有意義である。詩乃はパキパキと、すつかり乾きつつある心百合の精液を床に落としながら立ち上がると、バケツに手をつけた。
--------と、丁度其の時、妹の部屋の方向から、ガチャリと扉の開く音がしたかと思えば、トントントン…………、と階段を降りていく軽い音が聞こえてきた。さう云へば、ふたなりも男と同じで射精をした後はトイレが近くなるらしいから、階段下のトイレに向かつたのであらう。と、詩乃は思ひながら其の足音を聞いてゐたのであるが、なぜか途方もない恐怖を感じてしまひ、心百合が階段を降りきるまで一切の身動きすら取らず、静かに息を潜めて心百合が戻つて来るのを待つた。----今ここで扉を開けてしまつては何か恐ろしいことになる気がする。…………其れは確かに、今しがた瀕死になるまで犯された者の「感」と云ふものであつたがしかし、もし本当に其の感の云ふ通りであるならば、先程階段を転げ落ちていつた那央はどうなるのであらう。多分兄貴も俺と同じやうに全く体が動かせずに階段下で蹲つてゐるとは思ふが、もし其処に心百合がやつて来たら? いや、いや、あの心優しい心百合の事だし、しかももう満足さうな顔をしてゐたのだから、運が良ければ介抱してくれてゐるのかもしれない。————が、もし運が悪ければ? 此の感が伝えてゐるのは後者の方である、何か、とんでもなく悪い事が起こつてゐるやうな気がする。さう思ふと詩乃は居ても立つても居られず、静かに静かに決して音を立てぬようそっと扉を開けると、ほとんど滑り落ちながら階段を降りて行く。途中、那央が居るであらう踊り場に妹の精液の跡があつたが、兄は居なかつた。でも其の後(ご)もずつと精液の跡は続いてゐたので何とか階段を降りきつたのであらうと一安心して、自身も階段を降りきると、確かに跡はまだあるのであるが、其処から先は足を引きずつたやうな跡であり、決して体を引きずつたやうな跡ではなくなつてゐる。…………と云ふことは、兄はもしかして壁伝いに歩いたのだらうか、------と思つてゐたら、ふいに浴室の方から声が聞こえてきたやうな気がした。最初は虫でも飛んでゐるのかと思つたけれども、耳を澄ますと矢張り、毎日のやうに聞いてゐる、少し舌足らずで可愛いらしい声が、冬の静寂の中を伝はつて確かに浴室から聞こえてくる。そしてよく見れば、兄の痕跡は其の浴室へ向かつて伸びてゐる。------いや、もしかしたら精液まみれで汚れてしまつた那央を綺麗にしようと、心百合がシャワーを浴びせてゐるのかもしれない、それに自分もティッシュで拭くだけでは肉棒を綺麗にした気がせず、もしかするとお風呂にでも浸かつてゐるのかもしれない。…………が、浴室に近づけば近づくほど嫌な予感が強くなつてくる。しかも脱衣所の扉を開けると、ビシュビシュと何やら液体が、無理やり細い管から出てくるやうな音、-----毎夜、妹の部屋から聞こえてくる、兄弟たちを虜にしてやまない"あの"音が聞こえてくる。
「あ、あぁ、…………」
と声を漏らして詩乃は、膝立ちになり恐る恐る浴室の折戸を引いた。すると心百合は其処に居た。此方に背を向け少し前のめりになり、鮮やかな紺色のスカートをはためかせながら、腕を大きく動かして甘い声を出して、確かに其処に居た。-----
「こ、こゆり。……………」
「うん? もしかして、しぃにぃ?」
心百合が此方に振り向くと、変はらずとろけ落ちさうなほど可愛い彼女の顔が見え、そして彼女の手によつて扱かれてゐる、変はらず悪夢に出て来さうなほどおぞましい"ソレ"も見え、そして、
「あんっ、…………」
と、甲高い声が浴室に響いたかと思えば腕よりも太い肉棒の先から白い液体が、ドビュルルル! と天井にまで噴き上がる。
「あぇ、こゆり、………どうして、…………」
「んふ、やっぱり中途半端って良くないよね。もうムラムラしてどうしようも無かったから、いっその事、我慢しないことにしたんだぁ。……………」
其の歪んだ麗しい微笑みの奥にある浴槽からは、彼女の言葉を物語るかのやうに入り切らなかつた精液がどろどろと床へと流れ落ちていつてゐる。……………いや其れよりも、其の精液風呂から覗かせてゐる黒いボールのやうな物は、其れに縁にある拳のやうな赤い塊は、もしかして、-------もしかして。………………
「あ、兄貴、…………」
もう詩乃には何が起きてゐたのか分かつてしまつた。矢張り、良くないことが起きてゐた。其れも、最悪の出来事が起きてゐた。-------射精は途中で無理やり止めたものの合計で四回も絶頂へ達せられたし、其れなりに出せて満足した心百合は、兄たちが"行為"の後片付けをしてゐる最中に読書を再開したけれども、矢張りどこか不満であつたのか、鼻歌を歌ふほど上機嫌になりつつも悶々としてゐたのであらう。何しろあの時妹の肉棒は、惨めに床を拭く俺たちを狙ふかのやうに跳ねてゐたのである。其れで、兄たちが居なくなりやうやく静かになつて、高ぶつた気もついでに静まるかと思つたのだが、意外にもさうはならない、むしろ妹の男性器はどんどん上を向いていく。あゝ、やつぱりお兄ちゃんたちの顔と叫びは最高だつた。あれをおかずにもう一発出したい。………と思つても、兄たちがバケツを持つていつてしまつたので処理をしようにも出来ず、結局我慢しなければならなかつたが其のうちすつかり興奮しきつてしまひ、ベッドから起き上がつて、一体どうしたものかと悩んだ。------いや別に、バケツはあと一つ残つて居るのだから今ここで出してもよいのだけれども、其れだけで収まつてくれる筈がない。お風呂も詰まつてはいけないとお兄ちゃん達が云ふから駄目だし、外でするなんて、夜ならまだしもまだ太陽が顔を覗かせてゐる今は絶対にやりたくない。そもそも外でおちんちんを出して自慰をするなぞ其れこそ捕まつてしまふ。どうしよう。…………さう云へばさつき、さういえば階段からひどい音が聞こえたのは少し心配である。もう二人は歩くことも出来ないのかしらん。可哀想に、歩くことも出来ないなんて其れは、其れは、……………もはや捕まえて欲しいと自分から云つてゐるやうなものではないか。さうか、お兄ちゃんたちをもう一回犯せば良いんだ。どつちが階段を下りていつたのかは知らないが、歩くことも出来ないのだから下の階には二人のうちどちらかが居るはず、いや、もしかしたら二人共居るかもしれない。-------と、考へると早速部屋から出て、階段を下り、下で倒れてゐた那央を見つけると服を汚さぬよう慎重に風呂場まで運んで、そして、----ここから先は想像するのも嫌であるが、心置きなく犯して犯して犯して犯したのであらう。浴室に散乱するシャンプーやらの容器から那央が必死で抵抗したのは確かであり、其れを己の力で捻じ伏せ陵辱する様は地獄絵図であつたに違いない。いや、地獄絵図なのは今も変はりは無い。何故かと云つて心百合のモノは此方を見てきてゐるのである。ビクビクと自身を跳ね上げつつ、ヒクヒクと尿道を蠢かしてゐるのである。此の後起こることなんて直ぐ分かる。-------逃げなくては、逃げなくては、………逃げなくてはならぬが、心百合が頬を赤くし愉快な顔で微笑んで来てゐる。あゝ、可愛い、………駄目だ、怖い、怖くて足が動かない。…………と、突つ立つてゐると心百合の手が伸びてくる。そして、抱きしめられるやうにして腰を掴まれるとやうやく、手が動くようになり床に手を付けた。が、もう遅い。ずるずると、信じられない力で彼の体は浴槽の中へ引きずり込まれていく。どれだけ彼が力強く床に手を付けようとも、どれだけ彼が腰に回された手を退けようとも、ゆつくりと確実に引きずり込まれていく。そして、またたく間に足が、腰が、腹が、胸が、肩が、頭が、腕が、どんどん浴室の中へと入つて行き、遂に戸枠にしがみつく指だけが外に出てゐる状態となつた。が、其の指も、
「次はしぃにぃの番だよ? 逃げないで。男でしょ?」
と云はれより強く引つ張られてしまふと、たうたう離してしまつた。
「やめてええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
心百合と云ふたつた一三歳の、未だぷにぷにと幼い顔立ちをした妹の力に全く抗えず、浴室に引きずり込まれた詩乃はさう雄叫びを上げたが、其の絶叫も浴室の戸が閉まると共に小さくなり、
「んふ、………まずはお口から。-------」
と、思はず恍惚としてしまふほど麗しい声がしたかと思ひきや、もう聞こえなくなつてしまつた。
(をはり)
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