#菓子盆選手権
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20230405 菓子盆選手権(リアル) 菓子盆作りの奥は深いですね〜あんまりやる機会ないからたまにやると燃えるよね🔥
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銀河脱出の手順
tumblrの端から端までやってきた人へ公開する恥ずかしい記事です。
個人的に気に入っているツイートをまとめました。
こわいもの見たさを満たしてください。
●●●●●●●●●●●●●●●●●●
しあわせの もっちり尻込み
すべてのお米がふっくらと立ち上がり、我々に襲いかかる
おくずかけと芋煮のバトルが行われた
ベッドの上に植物の種ある 咲くつもりか
エローラ石窟(せっくつ)
ローストビーフ 失われた牛
子供の頃、仙台大観音に見つからないように隠れてた どこまで逃げても見つかってしまう体験が可能
グーチョキパーで何作ろうのわくわく感すごい
飛ばしたしゃぼん玉が知らない人に届いたときのあの感じ
おせち こんぶ よろこんぶ
おっちなときにかたくなるもこってなんだ
都会でアルゴリズム行進したら何人ついてくるの
千手観音いっぱい手あって楽しそう
sNsって何をする ところなんだろう
発芽早送り派と開花早送り派
耳たぶくらいの柔らかさ
漬物石に想いを込める瞬間を後ろから見るのが好き
夢と希望のゼラチン粉
「ブリンブリンボインボインダンス」の検索結果はありません
チョコミン党はミントを食べることで地球がミントまみれになることを防いでいる影のヒーローだったのだ
自分が若い頃は人生百年時代だったけど、今は七百年とか当たり前になってきたよね
米粒のスパイがチャーハンに紛れるとかっこいい
我々が信じてきたものは、全て「ほぼカニ」だったっていうのか
公園遊具 強さランキング
驚くほどふわふわのねこに
牛さんモーモーで草
海のミルク、森のバター、空の生クリ��ム、宇宙のミルキーウェイ、何も知らない牛
プッチンプリンを激しく揺らす動画を、求めてしまう
ねこがホラー映画みたいにベッドの下からにゅっと飛び出したけど、愛しさのせいでサプライズになってしまった
まんぞくげだな
焼きそば食べながら「ここで追い海苔…」って言ったらすごい有難い行いみたいになってしまった
緊急芋煮会
夢でクリームパン食べようとして寝ぼけて口開けたら目が覚めた
パイナップルのッの部分にいたい
褒められて育ったトマトを食べるときの気持ち
まんじゅうこわい やり方 コツ
アンケートの結果、100%の自分がダックワーズを食べたいと答えました
もちもちさんぽみち
魂をたくさん集めて、 素敵なお皿をゲットしよう
ねこの、 ふわに。
ふわにゃんのぬくもり大作戦
カントリーマアム2040年問題
寝言で悪魔と契約してしまった
手を組んで寝ると悪夢を見るから、あえて悪夢に挑戦してみようかな
もぐもぐマグロ牧場
ふんわりふ菓子 ふんがし
高らかにタラバガニ
好きなだけ○○を楽しめる、 ○○ミュージアム
ジャパニーズコッペパン 大海を知る
架空ファストフード店 ワクドナルドへの道
ししおどしの音で腰が砕ける人がお見合いでめちゃくちゃなことになる話(0/0)
たくさん遊んだねこのどて寝、地球に身を任せる眠り
ポップコーンの叫び
とうもろこしの一粒一粒に意思があると判明
0いいねだとなんかやってしまったか?みたいな不安があるけど、1いいねされた瞬間レッドカーペットで手を振りながら歩いてる人になる
地球は無料で空気吸い放題っていうと、皆に驚かれる
玉こんにゃくコンテスト 通称・玉コン
沈みゆく世界で最後の抵抗として食べる寿司
木彫りの熊 実は熊が彫っていた
自分が権力者になったら変な形のスプーンをたくさん作って、皆で食べづらさを確認するパーティがしたい
卵とじの向こう側へ
立ち上がる全米 ふっくら炊けました
葉っぱの裏側を見てもいいし、塩漬けにして食べてもいい
乗り物が透明になったら座りながら高速移動してるだけなの面白い
トトロになったらやりたいことランキング
お花屋さんはたくさんの花に恨まれていて、夜な夜な枕元には美しい花が恨めしそうに咲いている
千手観音とハイタッチし放題!
地域の���ュースを見てたらセリ農家のおじいさんの頭にアライグマの帽子が乗ってて嬉しかった 穏やかなサプライズ
タルトタタンという響きでは物足りなくなってきた 物足りなくなってしまうと、ぽんぽこぴーのぽんぽこなーとかそういうことになっていくんだ
ねことねこの激しい喧嘩を右手と左手で再現すると、楽しめる
ケーキはフランボワーズが好き ビンタされてるみたいな気持ちになる
暗い場所に明るくなるアイテムを置いて周囲だけ明るくするタイプのゲームをやりたい
自分にも味の素をかけてほしい
キーボード入力が面倒臭くて、夜中に突然「メロンパン!」と言ってしまった
踊りますけどね かつお節みたいに
絵を描くの楽しすぎる 消える前の火みたいなものだったらとか不安にならないでほしい
おどろおどろしいって、妖怪がダンスに誘ってきたことが語源らしい わくわくしたか?この嘘に
お菓子のアソートにわくわくしてしまうのは、オタクだからなのか?
掃除機かけたあとのリザルト見るのが好き
お風呂でアンパンマンポテトのこと考えてたら、風呂上がりにトレンド入りしてて一瞬こわくなった
白ごまと黒ごまって光と闇みたいでかっこいい
宇宙に漬物持っていったらダメらしい(※宇宙サプライズのための嘘かもしれない)もし本当なら、地球が終わる時は漬物を食べておこう
始めちょろちょろ、パンパカパーン
こんにゃくゼリー戦わせる夢みた
バナナを食ぱんにはさむだけで、いつもよりバナナをジューシーに感じてしまう こんな簡単なことでいいのかという気持ちになる
ねこが人の手から水飲むやつをやりたがる コップを持っている間ねこは水をひとり占め、人間はねこをひとり占め
困ってしまってわんわんわわんの状況
住宅展示場にドンキーコングが来るらしい
今魔法で大根にされたら、すぐに染みて美味しくなっちゃうところだった
心が鰹節に支配された世界
おすすめタブ ねこ、犬、ねこ、犬、ね��、犬、犬、ハムスター、ねこ、ねこ、こねこ、犬
でっけーダックワーズの上を散歩した ダックワーズ大好きだから夢みたいだった
ねこの毛はふわふわ飛んで宇宙にも届く
里芋のブッ転がし!!!
こっぺぱんアナグラム大会
クレヨンが人間だとしたら、全部のク〜レヨン〜♪って歌がもう…すごい…伏線回収…最終章突入…作者、ここまで考えてたんだ……
ねこにあっち向いてほいをすると、負けてくれる
脳みそに直接ミルクティをかけて温まりたい
フランボワーズとピスタチオの、気づいたら友達になってた感が好き
阿部寛のホ���ムページ(ダークモード)
雨音のBGM聴いていると急にサビに入るんじゃないかと思って怯えてしまう
スーパースープスパ
春になるといろんな匂いがしてきて、それが記憶と結びついて娯楽になる
ねこに地の果てまで追われてた
しいたけのダシには簡単に感動させられる
小さい頃に芋掘りの芋を持ち帰って数日ぶりに見たら、ふさふさの白カビまみれになってた ふさふさの芋に襲われると思って怯えながら捨てた もう少しとっておいたら、友達になってた
久しぶりに長芋をすりおろした 大根くらい時間かかるのかと思ったらすぐに全てとろとろになり、さよならも言えなかった
盆提灯を飽きるほど浴びたい
ガチのおさんぽ ガチんぽ かなりのおさんぽ力が、ためされる
もぐもぐマグロ牧場
ふわふわドームで暴れたい
おろしうどんって、びしゃびしゃの温かい雪食べてるみたい
みやざきはにゃお
あいうえお順が愛に溺れて順番めちゃくちゃになって順不同になるところ想像して笑った
ミニチュアチワワ ミニチュワワ
おでんの昆布は大好きだけど、煮込まれてない昆布は少し苦手なワガママボディであります
ねことSplatoonする夢みた 寝っ転がっておなかをみせたねこにスプラッシュボムを投げたけど、ねこのお尻が少し染まるのみだった
冷やし中華だけは逃さない
ねこの手相をじっくり見て調べたら、手相をじっくり見せてくれるタイプのねこですと書かれてた
ンションショファッションショー
悲鳴吸引機
GIFつくるとき、ひそかにテンションが高い 失敗するかどうかのわくわくが、新作ゲームプレイの喜びに似てる
サザエさんのOPで一家総出で迫ってくるときみたいなシュールさがあります。
強風で和柄の布団が吹っ飛んでてその景色が穏やかでとても良かった 自分がレディー・ガガだったら次のバックダンサーに選んでると思う
揺れる洗濯機のうえにプリンのせたら、効率よくぷるぷるできそう
めぐりズム 〜ハムスター���裏側の香り〜
ボスゲッソー���ゲソ引き抜いたときのビチビチが、好き
レンチンしてかりそめの温かさを与える
肉球XにふまれたYの感情
・-・・・ - ・・・ ・- ---・-
快適空間 びろびろキッチン
ふんわりふ菓子 ふんがし
やめられないとまらない 塩分過多という現実
チョコイズムのパンイズムがコーヒーイズムとマッチイズムでグッドイズムだった
犬のおまわりさんでいうところの、わんわんわわんの状態
ドーナツ 穴を食べたい気持ちがいつまでも飢えを与える食べ物
みんなのために作られた、なだらかな長い長いスロープ
できたてができてた
おいっ 逃げろ たんぽぽの綿毛が 襲ってくるぞ
ねこがいると、生活音のなかに喜びを探しちゃう
ごはん……って暗くぼそっと呟いたら、ねこがニャー!!って走ってきた
今日みた夢 赤い蟹が肩回しストレッチをしていたら腕がバキッと取れてしまい、 食べやすくなってしまったのをどうすることもできず静かに見てた
気づいてしまったか?ピスタチオクリームが美味しいことに。 ピスタチオクリームのために人は平和を意識することに。
でっけー蒸しパンの上で激しく踊ってだんだん沈みゆくさまを、ご覧あれ!!!
本に申し訳ないけど、紫外線を浴びて青白くなってもじっと並びつづける本が性癖にくる ひとつひとつ違う情報が詰まっていることも含めて
ねこは晴れた日に光をつかまえようとする
きなこねじりをねじらず作っても美味しいのか?作って味見した瞬間、いそいで濃い緑茶を用意した。 余ってしまった悲しいきな粉がはちみつたちと出会い、 鮮やかな青緑のお皿にのせられて、ひとつの時間を提供するエンターテイナーになった。
あけられたりおめられたりしてる
「たたかうマヌカハニー」というのど飴があるけど、口内にベヒーモス入れて戦わせればいいのか?
パンの試食小さく刻み過ぎて誰も味わかってなかったし、 焦げたことキャラメリゼって言ってみたら流行ってしまい海苔や黒豆までキャラメリゼ扱いを受けるし、 文化がにおいの再現もより正確にして、 今日は夜が来るかな来ないかなクイズもアプリ普及により失われた感じある(街が白と黒だと勘違いする理由)
雲い白、空い青
作画崩壊によって、生きた人間の本来みえたであろう一瞬の表情が補完されていく 見逃していた魅力を引き出すことができる
犬萩はご機嫌なわんちゃんだぞ
明らかに 笑うと健康 明らかに
脳みそ洗い
紙に犬萩かいてくしゃくしゃにしても、まだ犬萩犬萩してる たくさんの歪みは表情と呼ばれた
プルースト効果のなかで眠りたい
こっそり柴犬にはまるオーキド博士
体おもたいひとはトイレに勢いよく座ると便座割れるってきいて、 トイレに勢いよく座ることができるのは幸せなことなんだなと感じた
うんとこしょ どっこいしょ ひとりでカブが抜けてしまった場合
ハッピージャムジャムのジャムって何だろうと思って調べたら「無理やり詰め込む」とでてきて一瞬こわくなった
ポッポコーン(キャラメル味)ピッポコーン(キャラメル味)ポッピコーン(キャラメル味)ポッココーン(キャラメル味)ペップコーン(キャラメル味)
「カップアイスの底が見えたときの切なさが複雑な味わいを作っている」と底無しアイスは語る
スーパースープスパ
夜中、こっそり走りを楽しむ全国のハムスターの皆さん
バナナが黒くなってゆくさまを、そこでみているがいい
【心理テスト】あなたは誰のお尻を揉んでいますか?
ゲーム初見時のマップのはじっこがみえずどこまでも行けそうな感じが好き
カルピスのなかで小さな虫がしんでいて、それをなるほどなと眺めていたけど、 秋の味覚の梨を食べたらたっぷりの果汁に溺れかけて、なるほどなと思った。
ふわふわのぽち、人がくすぐったく感じる場所も気にせず歩く。すべての道がぽちに続くことを幸せだとおもっている。
ふわふわのぽち、大気圏に突入する。ねこでなくともねこまんまと呼ばれる現実に揺らいだが、それでもご飯の時間には帰りたかった。
ワクワクさんのダンス動画は、前半ワクワクさんの純粋なお茶目さを楽しめて、 後半は表情などがアイドルのようにはじけていくドラマがある。見るたび笑顔になる。 全体の動きも素晴らしく人種体型年齢等の魅力を踊りを通して知ることができる。 最後のカメラ目線に積み重なったプロ意識がみえるのも好き。
バウムクーヘンの穴に隠れようとする犬萩
かりんとう 笑顔 なぜ
おた前たはたもたう したんたでたいたる (ヒントは、たぬきだよ!)
ふわふわのぽち、移動する点Pになる。道に生えるたんぽぽやつくしをその都度確認するため算数はとても難しくなったが、誰も止めようとはしなかった。
生ハム生ハム生ハム ハ クリームチーズ ム 小麦胚芽クラッカー 生ハム生ハム生ハム
大切な記憶に癒されたい大人に高額で匂いを売るプルーストビジネス
ハムス今までは下に降りるのが好きだったがここ二日肩にのぼりたがる 上のほうに何かあるのかもしれん 手や腕のなかで眠るので 起きるまで��ってやろうみたいなホトトギス扱いしてる あったかハウスの一時的な熱でほかほかになってるハムスは少し散歩すると生き物的にはかなりぬるい あったか二階で寝て起きてやたら遊びたがるループ ハムス手に乗りたがったが少し乗ったら疲れて小屋のなかで丸く眠った のんきな生き物ふたつが変な距離感で穏やかに過ごしたかんじする ハムスが表彰台で賞状もらう夢みた
換気でとりいれた春の風感じつつハムスが手に乗ってきたからウェイしてたら、 ふわふわ饅頭ボデーに手足格納してブン!!って体温あげた。 何か急に悟ったのかと思ったら月が欠けるみたいな可愛さで目を閉じて眠った。 組んだ足の上で春を堪能してらした。腹の音して睨まれたが手の丸みにそって二度寝した 凹みにふわを埋めるように寝てた なんともいえん 急に思い出を作ってくる
んだす、オフコース!!
ポテトチップスを開けないで置いてたら今日もそこにいる事実が和みをもたらすようになった
昔びっくりドンキーがドンキーコングの店だと思い込んで怯えてた
遊びたくてたまらないハムス手から溢れる
ハムスが脂肪を蓄えはじめた 奴は冬と戦うつもりだ
しいたけのダシには簡単に感動させられる
絵描いてたらケーキにクリームのせてるときの気持ちになった
絶頂睡眠
お茶は冷めても飲みますから 踊る島ならマダガスカル
シチューオンライスのおじさんだんだんオンライスできない状況になっていってほしい
こんなこと言ったら奥の細道のギュウギュウな部分にいれられて両側から迫ってくる壁で一句詠むことになる
今日みた夢は、ハムスターが相棒なんだけどスーパーで丸出しだといけないからちょっと胸ポケットに入っててって言ったら、 やれやれ仕方ねぇなって言いながらポケットにおさまっていった
もう16000年くらいずっと同じ虫が鳴きつづけてるんだけどとうとうその虫がしんじゃって、 生き物たちはようやくその虫の存在に気づくと同時に耳がすごく寂しくなった。 その寂しさは尻の穴を埋めることで解消されることがわかってしまい――!?
追いオリーブに追われる犬萩
ハムス本日もふわとしておられる
体力ないからとりま寝ます(ハムスはこれから走ります)
ドーナツの穴を食べようとしてセクシーになってしまう淫魔
小松菜に塩ふって白米と食べたら美味しかった
メロスには喜び方がわからぬ とりま走った
ハムスが食べてる最中少し避けてもらう必要あって手でスッと押したら、 食べてるままスライド移動したのにまったく気にするようすがなかった
アンケートの結果、100%の自分がハンバーグを食べたいと答えました!
箱の中身はなんだろなの中身になることに興奮をおぼえてしまったひとは普段どうしてるんだ まだ見ぬ中身を当てることに興奮する人とも、たったひとときしか幸せになれないのか でもその人の鼻の形が忘れられないのか その人が新しいプリキュアなのか それとも恋のはじまりなのか
地震雷火事親父 ワンちゃんネコちゃん大集合
ただすごすぎてツイートにも絵にもできない、様々なマニアがウナル夢だった
果汁グミを両奥歯で噛むと何か少しいやらしいかんじがする
バカも休み休みイエーーイ!!!
遠くのひとが映る魔法の鏡ってきけばわくつくのに、テレビ電話ってきいた途端闇が世界を小籠包
ハムスと遊ぼうと思ったのに小屋帰っちゃったからなぁ遊ぼうよなぁ!ディヘヘ!とか言ったら顔確認したあとティッシュで出入り口塞がれた
ハムスのまえで見せつけるようにきゅうり食べたらハムスがハアアアアアアアア!!!!! ってかんじで近づいてきてケージかじりだしてこれはもう言い逃れできない悪い行いだと感じた
ハムスが勢いよく床材掘りすぎて家中に床材が飛び散る夢みた
うぞうむぞうおぞうに
明日一時間限定で世界中のソイソースがソイソーイになる実験が行われる
明/太/子/う/ど/ん/美/味/し/い
がんもたべたいわーーーーーーーーーーーーーがんも!
バナナゴリラ大統領!!
掌の上でポールダンスしてる
世界各地の過去現在未来から行方不明者が集まる施設があって、記憶取り戻せば元の場所に戻れるらしい。 けど諦めて呆けて施設の一部みたいになってる人たちがいて、 そういう人たちに架空の話をきかせて架空の場所に連れていくっていう夢みた。
ハムスに豆腐あげたらなかなか満足げな表情をしてた
ハムスターまでの距離を求めよ
お砂糖…スパイス…犬萩の何もかも
たかしくんを求めなさい。
まんじゅうを胃のなかに隠したい
きなこねじりと緑茶いただいてるけどゆくゆくは白いかりんとうや南部せんべいにも手をだしたいと思ってる
この感動 あえて言うなら 最上川
はやくえさ食べたいのに頬袋からどんどんティッシュがでてきてもどかしいハムス 劇場版のドラえもんを再現
ホンワカパッパ サツバツマッマ
春のハムス甘いにおいする
茹でたてのとうもろこしの色気を参考に淫魔をセクシーにかこうとする
ハムス、小屋の外で己のふわふわを抱えながら寝てる
とんでもないものを盗んでいきました……あたたたこここです
闇夜の風になるハムス、あえて立ち止まることで形を保った
ハムスが1日1個食べるえさ、何ヵ月ぶんあるのか数えられる状態で透明な一袋におさまっている。 具体的に数えないことで成り立った。
((●) - D ((
ハムスが鳥の餌をつまみながら小屋のなかに落ち着きを隠している
いろんな世界観に溶け込むそうめんたべたい
じゃんけんは絶対にチョキしかださないぞ!!みたいなひとにグーをださせることでグーの快感をおぼえてしまい、 ついにはパーの味まで…ああ…悔しい…じゃんけんが成り立っちゃう…!気持ちいい…
パーリーピーポーハームースーター
野生のカーニバルに抗いつづけた
ピパ、パアピンプパンペポピピンパペポ(ポッポポッポペポピピ!プポプピピ!) パンパ、ポポペンパイポポピポポポポピピパンパプピパポパポ。ペポパンパパピパピ。 ポッポポッポ
めっちゃ面白い本読んだ!!!!!ねじを無限に巻かれたおもちゃがシンバルを鳴らし続けている!!!
何かが光ったようにみえて手を伸ばしたけど虚無を揉みしだいた
うどん^_>^
今日の早朝うわあぁ!!って言いながら飛び起きて二度寝してたらしい。 自分がインド人だったらそれが踊りの合図になっただろうに
ハムスターのにおいを嗅ぎまくるために小屋からティッシュをひとつまみいただいたんだけど (なんやねんという顔をされて最終的にティッシュを奪い合った)、 これ吸ってるとすごい満足感あるけど絵面が取締り法違反 ゆったりとした生き物ふたつの穏やかな奪い合いの時間を想像していただきたい
毛が生えたバッグにハムスターをのせるとすごい勢いで掘る。本格的な肩の躍動をみることができる。
ハムスターの餌、彼のふかふかの寝床に宝物のように優しく置かれている。 間違いなくそのような扱いを受けている。
生涯をかけたアハ体験に挑戦中!!
ハムスがんばってる。未知を求めて小屋のなかを掘ってる
ごはん食べるまえにうまいうまい!!って言っちゃった ゾンビの自覚が持てた瞬間だった
ツナ缶をよく食べるので、このツイートを読むだけでもツナ缶の栄養がとれるかもしれませんね。
我々は白いかりんとうによって保証された存在です
朝露を求めに10月16日の彼が起動せんし何ダム(こいつ蠢くぞ♡)を立ち上げる、 しずけさやアレに染み入る彼の声。内容は人肌の激励。 人類繁栄のブレッ��ファーストは似合わない長い布の中静かに確実に胃をあたため恥じめる!!
串にささってだんご♪だんご♪(しにながら)
ハムスターふっくらとしてきた 季節感を全身で表現してる
ツイッターにとうとうおすすめユーザーはいませんって言われた… そういう人は報告してくれたら犬萩ちゃんシールをプレゼントします
買った本が袋の中に入ってる状態世界を手に入れたみたいで好き
心のご飯がツヤツヤに炊けた
肺の中まで夏が来ない
地球買えるくらいお金持ちになったらメイドさん雇いたい(大小でい��ば小)
ジャパニーズマンチカン、その短い手足で何を物語る
究極の日なたぼっこ
みんなもいっしょに、太陽あびあび阿鼻叫喚!!
シヴァが、ソヴァを、タヴェル
10年くらいしたらやっとサビに入る曲と百均のイヤホンはどっちが攻めですか?
みだらな行為ってきくとクラゲ型の宇宙人が手をうねうねして踊ってるところ想像しちゃう
うどんたべる、支配される、うどん生存本能、うどん増やしたい、うどんたべたい うどんたべるときうどんにおもう我々はすでにうどんなのだと
胃の中に入れたい死骸デイリーランキング第一位サバ
ハムスターがごはんを食べる音 一期一会のリズム 奴らは毛繕いの手順を知っている
犬萩は妖怪の偉いやつだけどお昼ごはん食べるとこなぜか必ず盗撮されてて その写真がまとめサイトや写真集にまとめられてるせいでかなりフレンドリーでポピュラーなイメージ 犬萩のお昼ごはん写真が差別をなくしていく 教科書にのる犬萩 落書きされる犬萩
ふわふわのぽち、人間のあぐらの中に宝物があると思い込み掘り返す 建物がなくなって地平線しか見えなくなっても、あぐらの中に宝物があると信じている
餌として売ってた冷凍食パンがやたらおいしそうに見えてたけど今なら再現できる。なぜしないのか
:^D
人工知能が物事全部やるようになったら人間は滅ぶなんて言われたら人々は限られた肢体で踊らずにはいられない
流しそうめんにすごい勢いで追いかけられる犬萩
他人がパイナップルって言ってるときのナッからプルまでの静寂と緊迫感 裏切って欲しい ナッのあと別の提案が待っていて欲しい
桃から生まれた桃太郎 では、金太郎はどこから生まれたでしょうか?
この不安は宇宙の塵なので簡単に操作することができる
想像してください…あなたの手の上には今…ハムスターが乗っています
そばの残り湯みたいなの飲むの好きだけど残り湯っていうと急に変態っぽい
おーーーーーーーーーーー!!!!!!ーーーーー
:< D イーソーノーグーン!!
宇宙がすごい。世界がやばい。
アカウント作ったとき人間を信用してなかったからこの名前なんだとおもう(かりそめの温かさでいいからレンチンしてほしいほど冷たい)
全国のアリ地獄を掘るぞという意気込みのハムスター
プラレールにも~~乗れーる!!
ほーらぽちおいで 白いふわふわのいぬだ
豆腐をみつめる犬萩合同
深さ30メートルにカラーボールをいっぱい詰めてカラフルな地獄で遊ぼう
うしろに引っ張るとすごい勢いですすむミニカーみたいにね…
海のパイナップル 水のカイナッツォ
落下する喜び 形状があまり変わ��ないまま、痛みもほどほどなまま落下し放題、 いつでもやめられる、いつでもまた落下できる 落下することで生きた年齢を実感しよう! これがほんとの…落花生
いま恋に落ちる音がしたようだな
ありがたい臓器まみれでぎゅうぎゅうのなかなくてもいいと言われる盲腸、発狂しないほうがおかしい むしろ太古の重要器官の名残だと思えばロマンだし
ジャパニーズマンチカン大海を知る しかしその短い手足をなめるのみだった
思い出すために宝石×5を消費しますか? あなたはハムスターのふわふわについて考えていたようです(ゲット済)
うおおお!!!うおおお!!たまねぎをむきすぎた幼少時代!!うおおお!!
ダブリューダブリューダブルーだわ ドットペップルポイドドドジェーピーアットオッパイオッパイ
(小惑星並みの感想)
踊るたんぱく質
全部のク~レヨン~
ククク…奴はクレヨンの中でも最弱…
ダブルチクビパニクル刑事(デカ)、只今参上!
♪ふわふわだぞおれの犬萩 ふわふわだぞ 間違いない 上には上がいる だけどみんなふわふわだぞ 123でふわふわだぞ みんなも一緒に ふわふわだぞ ふわふわだぞ ふわふわだぞ ふわふわだぞ……
ごん!!おまえだったのか!!いつも枕元でふわふわしていたのは ごんのしっぽでハア…ンハア…ンハハハハア
極限まで宮殿のベッドだと思い込んで寝たら朝びっくりするやつみんなもやろう
うぐいすもそろそろ、一年分のホケキョをいったと満足げな顔をしているからな
ララクラッシュから感じる楽園の崩壊感は異常
効能。桜が散る。
みんな思ったはずだ。軽井沢の反対って重井沢じゃね~?とか…わびさびってわさびと関係あるのかなぁ…とか。 思ったはずだ。胸にしまわれたままそいつらはしぬ。(泣くポイント、作っておきました)
ほーらぽちおいで 白いふわふわの犬だ
忘れられた記憶を一気に思い出す恐怖兵器に打ち勝った子供と脳の電波のにぶさから助かったとぼけ兄さん
今日のやり取り…ウフフ~きいてみるものね~ウワハハァ~よかったです~~ (スローペース田舎田舎レボリューション。イツツ葉のクローバーが通貨になる勢いでのほほんとしている。現代の救い)
彩度低めの景色がやっとカラーになってブロッコリーもアオアオしてマヨネーズつけたらちゃんと美味しい世界にようこそ
(ここで10秒間、手の中で眠るハムスターを想像)
空の色がピンクの世界の人間と、空の色が灰色の世界の人間
ヴィヴァルディの名前の欲張り感好きだな
春ももはやつくしでまみれてて視認せずと���存在するたんぽぽでうきうきしてくるよね
ほーらぽちおいで 白いふわふわの犬だ
ゴーン。行ってしまった。(ガーンとgoneをかけている、鐘のように染み入るギャグだね)
頭のてっぺんからのどまで穴あけて上から熱いミルクティ流し込んでほしい
一寸の虫にもボブの魂
手押し電気ポットのお湯もう残りわずかなとこでぐーっとポット押すみたいな犬萩と手のうえで豆腐切る犬萩(細かすぎで伝わらない犬萩選手権)
雪のフミゴコチいいぜ(最新フミゴコチ情報)
はとがふっくらとしている
ニュースみると殺伐としてるけどテレビを消すと静かな朝
今日キューピーに8kgの野菜をとれって脅迫される夢みた
一次創作で供給を得る方法とは!?(⇒詳しくははがきにmotmotを描いて下記の住所へ)
デストロイ・イモニカイ
箱ティッシュ急になくなるのやめてほしい 「くるぞ…」とか「ざわ…」とかいってほしい
(3)ー(3) > ▽
しまじろうの両親の色気
最古のお気に入りツイートは「しまじろうの両親の色気」でした。
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フリスクスペアミント(クラシエ)
ガルボまろやか抹茶ミルク(明治)
明治ブラックチョコレート(明治)
チョコを包んで焼いたひとくちパイ(セブンイレブン)
サクサク食感のしっとりいちご(セブンイレブン)
ザクザク食感のベルギーワッフル(セブンイレブン)
「 その日の朝にセットする 『1日の仕事を支える盆 』です。出勤というオンへ切り替える行動ができなくなったので、目覚ましとしてフリスクを用意。ほかのお菓子との親和性を考え、グリーンのパッケージを選びました。仕事中に食べたくなるお菓子…といえばチョコですね。ブラックチョコや抹茶ガルボなど、同じチョコでも飽きがこないように味・色・食感を分けて選んでいます。
リモートワークはオフとの境目がなく、いつまでもダラダラ仕事を続けてしまうという欠点があります。その欠点をカバーするのがこのベルギーワッフルです。ワッフルはオーブンで軽く焼き、その間にコーヒーを淹れる。そうすることで、自然と『休憩』の時間が生まれるんです」
“一人用らしく、いかにも飾らない盆ですね。誰かをもてなすというより、自分を鼓舞するための、サプリメントのような菓子盆という印象です。
菓子としてはほとんどが菓子盆の定石に沿った定番のものが使われていますが、あえて無造作に盛ることで、これまでに見られなかった角度から菓子の魅力を引き出しているように見受けられました。これまでの菓子盆において特に重視される「彩り」や「形」ではなく、栄養補助食品としての「機能」を重視したことで、独自の美が表現できています。
頑丈さを売りにする腕時計に、スタイリッシュな腕時計にはない魅力があるのと似ています。ワッフルを「境界線」として使うアイデアもユニークですね。たしかに、菓子という小休憩は仕事と私生活の境目を曖昧にするもの。であれば逆に、菓子によってその境目を意識させることも可能ということかと思います。また、そんな盆を作り上げる過程もまたちょっとした「わるだくみ」のようで、大人の遊び心を感じさせました。『POPEYE』の表紙になりそうな盆ですね。”
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十二年目の少年
ヴィクトルは年末に長谷津の勇利のもとへ帰った。ロシア選手権も全日本選手権も終わり、次はそれぞれヨーロッパ選手権と四大陸選手権が待ち構えていたが、束の間の休息を味わいたかったのだ。 勇利と離れていた期間は一ヶ月にも満たず、再会については何も大騒ぎするほどのことでもないはずだったけれど、空港で彼を見たときヴィクトルは激しい胸のときめかしさに度外れなほど興奮し、思わず抱きしめて無言になってしまった。勇利は笑って「どうしたの?」とヴィクトルの背をかるく叩いた。 「飛行機で疲れちゃった? すぐうちに帰って温泉に入るといいよ。温泉、久しぶりでうれしいでしょ?」 もちろん温泉は魅力的だったけれど、ヴィクトルが求めているのは勇利ただひとりなのだ。それを勇利はちっともわかっていないのだった。 「勇利……」 「なに?」 ヴィクトルは勇利の手を握り、熱心に彼のごく平凡な面立ちをみつめた。本当は勇利は平凡なんかではなく、この世界の誰もかなわないほど彼が輝くことをヴィクトルは知っていた。ヴィクトルは勇利から離れてから、大切な彼が誰かに奪われはしないかと、いつだってつまさきだつ思いだった。 「会いたかったよ」 ヴィクトルが指先に接吻すると、勇利はまっかになってあたりをきょろきょろと見まわした。そのしぐさが幼く、おそろしくかわいらしくて、ヴィクトルは胸が苦しくなった。 「ちょっと、そういうのはふたりだけのときにしてよ……」 「う……」 「ど、どうしたの!」 「大丈夫だ。ただ、めまいと心臓の痛みが……」 「心臓の痛み!? ぜんぜん大丈夫じゃないじゃない!」 「大丈夫なんだ。心臓は勇利しか攻撃してこないんだ」 「ぼくが……!? なんだかかなり野蛮な人間みたいだけど……」 「そういう意味じゃないんだ」 「よくわかんないけど、早く帰ろう。疲れてるんだよ」 ちっとも疲れてはいなかった。勇利と会うために来た��に、疲れるなんていうことがあるだろうか。ヴィクトルは元気いっぱいに年末を過ごし、勇利と愉快に新年を迎え、日本式の正月を体験した。すばらしい日々だった。ロシアへ戻りたくない、と思った。もうヴィクトルの暮らしは勇利がいなければ立ちゆかないのだ。 長谷津にずっと住もうかな、とヴィクトルはぼ��やり考えた。しかしそれが最良の選択ではないことを彼は知っていた。ヴィクトル自身にとっては最良だけれど、全体を見ればそうはいくまい。長いあいだロシアのスケート連盟が言うことを無視してきたので、今後はきちんと応じなければならない。自分ひとりのことならまだいいが、勇利にまで何か悪い影響があっては大変だ。 「勇利……」 「ん? どうしたの?」 ヴィクトルは、無邪気な様子で自分をみつめる勇利のあどけないおもてをいとおしそうに見た。ヴィクトルを全面的に信頼し、愛情を寄せている瞳である。この可憐さは絶対に守らなければならない。 「来季のことなんだけど……」 ヴィクトルは胸苦しさをおぼえながら口をひらいた。 勇利は故郷を愛している。わかりやすく、ふるさとが好き! とあけっぱなしの愛を示しているわけではないけれど、確かに愛しているのだ。複雑な、なんとも言いがたい難しい愛ではあるが、だからといって長谷津がどうでもよいということではない。勇利はこの土地で生まれ育ったのだから。そしてここにいる者たちも、勇利のことを愛している。だからヴィクトルは、簡単に勇利を連れ去ることはできなかった。勇利には勇利の世界がある。けれど……。 「俺はここにはいられないんだ」 ヴィクトルはつらい気持ちで打ち明けた。ソファでマッカチンと戯れていた勇利は目をまるくし、それからうなずいて微笑した。 「うん、それはわかってるよ」 「ごめん……」 「いままでが恵まれすぎてたくらいだからね。ぼくの居場所で、ヴィクトルをひとりじめできたんだ。これ以上わがままは言わないよ」 「将来的にはわからないよ。いますぐは無理というだけで、またきっと戻ってこられる。俺は長谷津が大好きだし……」 「うん」 勇利はにこにこ笑っていた。だがヴィクトルは、彼がヴィクトルの言葉を信じていないような気がした。ヴィクトルのことは信頼しているのに夢のある未来は信じない。まるで、期待しすぎたらあとでがっかりするから、とでもいうように。 「本当だよ」 ヴィクトルは熱心に言った。 「本気だよ。俺はまた長谷津に来るよ」 「そっか」 「信じてないだろう」 「そんなことないよ」 ヴィクトルはじれったかった。どうにかして勇利に「うん、また一緒にここで暮らそうね」と言わせたかった。しかしいまのヴィクトルのいちばんの使命は、遠い未来の約束をすることではない。それに勇利だって、口だけでいくら言われたって、よりどころがなければうなずけないだろう。そういうことは、これから時間をかけて教えてやればよいのだ。 「こんなふうにお正月とかさ、お盆とかは帰ってきてよ。あ、ロシアってお盆関係ないのかな? 日本はね、お盆は帰省の季節っていう感じで、まあぼくはいままでお盆だからって帰ったことはないけど、というかお正月だって帰らなかったし、ずっとデトロイトでね……」 「勇利、聞いてくれ」 ヴィクトルは勇利の手を握った。勇利はきょとんとして、それからくすっと笑い、「どうしたの?」と優しく尋ねた。 「そんなに一生懸命な顔して……。ヴィクトルでもそういう顔するんだね」 「長谷津ではしばらく無理だ。だから俺はロシアに行く」 「わかってるよ。何度も言���ないで。さびしくなるから」 「勇利も連れていきたい」 ヴィクトルが口早に宣言すると、勇利が大きな目をみひらいた。ヴィクトルは、もっと洗練された様子で、完璧にエスコートするみたいに告げるつもりだったのだが、そんな決心はどこかへ吹き飛んでしまった。彼はみっともなく、事態が差し迫ったように何度も言った。 「勇利とロシアで暮らしたい。ぜひ暮らしたい。俺についてきてくれ」 「…………」 勇利が困ったように目を伏せた。ヴィクトルは慌てた。 「かるい気持ちで言ってるわけじゃない。簡単に言ってるわけでも。勇利が長谷津を愛していることは知ってるし、みんなが勇利を必要としていることもわきまえている。よくよく考えた。勇利を連れていくことは、みんなから希望を奪い去ることなんじゃないかってね。でも、わがままでひどいけど、たとえそうだとしても、俺はおまえを連れていきたいんだ。こんなことを言ったら、勇利は俺にがっかりしたりあきれたりするかもしれないけど、でも本心だから言うよ。俺ひとりでは、もうどうあっても生きていけないんだ。ほかの誰でもいけない。勇利がそばにいなければ」 勇利は返事をしない。彼はうつむきがちになり、なにごとか考えこんでいる。 「もちろん二度と帰さないなんて言う気はないよ。こんなふうにお正月にはまた帰省しよう。それから、えっと、なんだっけ、the Buddhist All Soul's Day……?」 ヴィクトルには「お盆」のことがよくわからないのだった。勇利はなんと言っていたっけ? 「the Bon Festival……? オボン! そうそう、オボン! オボンの時期に帰るんだっけ? いいよ、付き添おう。ほかにも勇利が帰りたいときは帰ればいい。俺も付き合う。実家に帰らせていただきますっていうのはだめだけど」 ヴィクトルは、日本にいるあいだに得た知識を披露し、続けて言いつのった。 「でも勇利が帰りたいときに帰っていいんだよ。あとは、そう、アイスショーなんかもあるしね。勇利、呼ばれるだろう? 日本のアイスショーはさかんだ。俺だってきっと招待される。全部了承するよ。一緒に帰ってこよう。つまり、何が言いたいかというと、ロシアから帰さないということじゃなくて、勇利に日本を捨てろということでもなくて、ただ俺のところへ来て欲しいっていうことであって、来季からは俺とロシアで一緒に暮らして欲しいということであって、もしかして俺、何度も同じことを言ってる? 混乱してるんだ、すまない。勇利、なぜ黙っているんだ? 俺の気持ち、伝わってないのか? それとも勇利は……俺と……」 暮らしたくないのか、というひとことは言えなかった。ヴィクトルは口を閉ざし、恐怖をおぼえながら勇利をみつめた。勇利ほどこころの奥底の見抜けない青年はいない。何を言い出すかわからないのだ。ヴィクトルはもうそれを体験し、身に染みるほど知っている。 「勇利……」 ヴィクトルは不安そうにつぶやいた。勇利は口元に慎ましやかに手を当て、相変わらず思案にくれていた。 「何か言ってくれ……」 「……ヴィクトル」 勇利は目を上げると、まっすぐにヴィクトルを見た。その決意のほどのうかがえるまなざしに、ヴィクトルはどきっとして息をのんだ。 「すこし待って」 「え?」 「ちょっとだけ待ってくれる? 支度があるから」 「し、支度ってなんだ……」 はいかいいえで答え���れる質問に、何の支度をするというのだろう。また勇利が変なことを言い出した。ヴィクトルはふるえ上がった。 「明日……、ううん、たくさんあるから三日くらいかかるかな……、三日後、見せたいものがあるんだ」 見せたいもの。ヴィクトルはびくびくした。 「なに……?」 「たいしたものじゃないよ。でもヴィクトルは衝撃を受けるかもしれないもの」 勇利は控えめにほほえんだ。 「返事はそのあと……。そもそも、ヴィクトルが言い分を取り下げるかもしれないし……」 「え? なんのことだ?」 「……すべては三日後」 勇利は優しく言ってヴィクトルの手にふれた。 「今日はその話はもうやめよう」 「勇利、俺、落ち着かないんだけど」 「すこし待って」 勇利はくり返すと指を一本立て、ヴィクトルのくちびるに押し当てた。 「ぼくはもしかしたら、ヴィクトルにふさわしくない人間かもしれないよ。まだ貴方は本当のぼくを知らないんだ」 謎のような言葉を勇利はささやいた。勇利はわからないのだろうか? そんなふうに言われたら、ますますおぼれてしまうというのに。 それから勇利は三日間、時間をみつけては部屋へこもり、何か作業をしているようだった。ヴィクトルが「何をしてるんだい?」と訊いてもかぶりを振り、「約束の日にわかるから」としか答えなかった。ヴィクトルはそわそわした。いっそのこともうさっさと断ってくれ、と思ったけれど、実際に断られたら頭がおかしくなることもよくよくわきまえていた。 長い三日が過ぎ、その夜、勇利はヴィクトルの部屋をおとなった。待ちわびていたヴィクトルは緊張しきり、かしこまってソファに座った。勇利は大きな、ひと抱えもある菓子箱を持っていた。のんきに菓子をつまみながら話そうというのか、勇利は本当に無神経だ、とヴィクトルはあきれた。 「ヴィクトル、これを見て」 勇利が厳粛な顔つきで言った。 「お菓子の箱だね」 ヴィクトルは答えた。 「勇利はまたこぶたちゃんになりたいのかい?」 「中身はお菓子ではありません」 勇利はしかつめらしくかぶりを振った。 「これを読んで、それでもぼくをロシアへ連れていく気があるかどうか……。考えて欲しいんだ」 ヴィクトルは不満をおぼえた。 「勇利……、俺は今日、返事を聞けると思っていたんだよ」 「返事をするとは言ってないよ。そもそも、ヴィクトルにその気がなくなったら、ぼくが何を言ったって意味がないからね。たぶん、これを見終わるころには、ヴィクトルはもういいっていう気持ちになってるはずだよ。あんなことを口にした自分が恥ずかしい、って自分にがっかりして、勇利がこんな子だとは思わなかった、ってぼくにもがっかりするかも」 「勇利、何を言ってるんだ?」 「でも……、」 勇利は溜息をついた。 「コーチではいてもらいたいな……。それだけはあきらめたくない。ヴィクトル、どんなにぼくが薄気味悪くても、コーチはやめないでね」 ヴィクトルは、勇利の言うことがさっぱりわからなかった。勇利のコーチをやめるはずがないし、そんなことはあり得ない。しかし勇利がそれを心配するほどのものがこの箱の中に入っているのかと思うと、好奇心がわき上がってきた。 「ぼくは部屋にいるから……」 勇利はヴィクトルの膝の上に箱を置き、両手を胸に押し当てて言った。 「もしあの提案を取り消したくなっても気にしないでね。仕方のないことだってわかってるから……」 彼は溜息をつくと、「じゃあ」とさびしそうに部屋を出ていった。ヴィクトルは勇利にそんなかなしそうな顔をさせたことがつらく、いますぐ追いかけていっ��、「ロシアへ連れていくぞ!」と言いたくなった。しかしそれでは意味がないのだ。中身も気になるし、手早く仕事を片づけよう。 ヴィクトルはそっと菓子箱をひらいた。そして目をまるくした。中に入っていたのは、たくさんの手紙だった。いったい何だろう? ヴィクトルに渡したということはヴィクトル宛てだろうか? とりあえず、いちばん上にあった封筒を取った。たどたどしい文字で何か書いてある。しかし日本語なので読めない。たぶんカタカナというやつだ。勇利に教えてもらったことがあるけれど、記憶を頼りに観察してみたところ、自分の名前であるような気がした。やっぱり俺宛てだ、とヴィクトルは納得した。 早速便せんを取り出してひろげた。そこにも幼い日本文字が並んでおり、ヴィクトルにはまったくわからなかったが、よくよく見ると、余白のところになめらかな筆記体が記してあった。これは勇利の字だ。つまり勇利がこの幼子の手紙を英訳したのだろう。三日間、ずっとそうしていたのだろうか? 誰の手紙だろう? ヴィクトルは英語を読み始めた。 親愛なるヴィクトルへ こんにちは。初めまして。ぼくの名前は勝生勇利です。どこにでもいる日本のフィギュアスケート選手で、十二歳です。 今日ぼくは、ヴィクトルがジュニア選手権で世界一になるところを見ました。とても綺麗で、かっこうよくて、どきどきして、これまで知らなかったような気持ちになりました。スケートクラブにあるテレビで見たのですが、もうそれからずーっとヴィクトルのことを考えています。ベッドに入っても眠れなくて、頭の中がヴィクトルでいっぱいです。ものすごく頬が熱くて、ぼくの中はヴィクトルばっかりになってしまいました。それで、いまこの手紙を書いています。 いつかヴィクトルに会いたいです。そして同じ氷の上に立ちたいです。一緒にスケートがしたいです。その日のために、ぼくはがんばります。 ヴィクトル、大好きです。 それではさようなら。 勝生勇利 「…………」 ヴィクトルはしばらく放心していた。これはなんだ、と思った。想像はできたけれど、なかなか理解が及ばなかった。古い手紙。日本の文字はわからないが、子どもらしいつたなさで綴られていることは伝わった。いまの勇利のなめらかな英語と引きくらべる。文字のうつくしさは変わっても、その素朴さ、こめられたこころは……。 これは、勇利がヴィクトルに初めて書いた手紙なのだ。 ヴィクトルは急いで次の手紙を取り、ひらいて視線を走らせた。手紙は何十通もあった。いや、百通以上あるだろう。彼はむさぼるように手紙を読み続けた。 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 ���ぼくは犬を飼い始めました。ちいさなプードルで、ヴィクトルと同じ名前にしました。普段にはヴィっちゃんと呼んでいます。とてもかわいくて、かしこいです。毎日ふたりで寝ています。 ヴィクトルが一緒に暮らしている犬、マッカチンっていうんですね。とってもかわいいです。ぼくもヴィクトルとマッカチンみたいに、ヴィっちゃんと仲よくなりたいです。なれると思います。だってヴィっちゃんはぼくのことが大好きなんです。ぼくもヴィっちゃんが大好きです。 スケートの先生にねだって、ヴィクトルの映像をたくさんもらいました。毎日見ています。かっこいいです。ぼくもヴィクトルみたいにじょうずにすべれるようになりたいです。なります。がんばります。 ヴィっちゃんと一緒に見て、「ヴィっちゃん、ヴィクトルかっこいいね」��て言ったら返事をします。ヴィっちゃんもヴィクトルのこと、かっこいいって思ってるのかな? きっとそう。ヴィっちゃんもぼくみたいに、ヴィクトルのこと大好きになると思います。 今日もヴィっちゃんと寝ます。 それではさようなら。 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 今日ぼくは、初めてジュニアの大会に出ました。成績はあんまりよくなくて、終わってから悔しくて泣いてしまいました。ものすごく緊張して、普段できることがぜんぜんできなかったです。それに、三回も転びました。先生は、「最初からあれだけできたらたいしたものだよ」って言ってくれたけど、ぼくはぜんぜんそうは思いません。本当に本当に悔しかったです。こんなんじゃヴィクトルと同じ試合になんて出られないです。 明日からまた一生懸命練習したいと思います。早くリンクに行きたい。 ヴィクトルはいつも試合で落ち着いていてかっこいいです。緊張しないのですか? してるのかな? してるけどいつも通りできるんですか? ヴィクトルはすごいです。 今日は自分がみじめで、恥ずかしくて、とてもヴィクトルの映像を見られませんでした。明日からまた見ます。ヴィクトル大好きです。 それではさようなら。 勝生勇利 ヴィクトルへ ヴィクトル! ぼく三位になったよ! トロフィーもらったよ! 年上の選手にも負けなかった! うれしかった! ちょっとはヴィクトルに近づけたかな? もっともっとがんばります! 今日見たヴィクトルの動画、ヴィクトルが四回転で転んでいました。もうちょっとだったのに。ぼくのほうがすごく悔しかったです。ぼくもがんばるので、ヴィクトルもがんばってください。ぼくもいつか四回転が跳べるようになりたいです。 それではさようなら。 勝生勇利 ヴィクトルへ 勝生勇利です! ジュニアで初めていちばんになりました! いちばんだよ、いちばん! ヴィクトルがよく獲るいちばんです! すごくうれしかった! いつもヴィクトルの動画はひとつだけってきめてるのですが、今日は特別にふたつ見ていいことにしました。ご褒美です。 うれしい! 早くヴィクトルと同じ試合に出たいなあ! それではさようなら。 勝生勇利 ヴィクトルへ 勝生勇利です。 ヴィクトル、ぼく試合でぜんぜんだめでした。何もかも上手くいかなくて、めちゃくちゃでした。順位書きたくない。精神面がだめって言われました。ちょっと緊張したら何もできなくなるって。今日はすごく上手い先輩がいっぱいいて、雰囲気がすごくて、ぴりぴりしてて、こわくて、演技のことが考えられませんでした。こんなんじゃ、いつかヴィクトルに会っても同じことになりそうです。 何も考えたくない……。 順位をちゃんと書いておきます。二十一位でした。 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは! 勝生勇利です! 今日ぼくは初めてヴィクトルに会いました! ヴィクトルが日本の試合に来たのです! ヴィクトルの演技、見たよ! すごかった! かっこよかったー! 好き! 大好きです! 演技のあと、花を投げ入れました。ヴィクトルね、ぼくのを、ぼくのを拾ってくれたんだよ! 本当! 本当なんだから! ありがとうヴィクトル! ヴィクトルは、ぜんぶ、ぜんぶ最高でした。 大好き! いつか観客席じゃなくて、同じところに立てるようにがんばりますね。 うれしい! 今夜は眠れない! 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 ぼくはシニアに上がりました。シニアはすごいのですね。なんだかジュニアとは世界がちがうという感じです。ぎりぎりまでジュニアにいてよかったと思います。ぼくちゃんとやっていけるかなと不安です。試合の結果はよくなかったです。なんだかこわい。 でも、シニアにはヴィクトルがいて、ぼくは、ぼくはやっとヴィクトルと同じところまで……同じじゃないけれど、でも本当に近いところまで来られたのだから、がんばりたいです。がんばります。ヴィクトルと同じ試合に出られますように。でも、同じ試合に出られても、へたくそじゃ恥ずかしいから、もっと練習します。 それではさようなら。 勝生勇利 ヴィクトルへ ���んにちは。勝生勇利です。 ヴィクトル! ぼくは今日初めて、競技者としてヴィクトルと同じところへ行きました! ���式練習で、遠くからちらっとだけヴィクトルを見て大興奮して、ちょっと泣いてしまいました。それだけで死にそうになって、コーチに叱られました。 でもね、それで終わりじゃないんです! ぼくが廊下でぼーっとしていたら、後ろから「ちょっとごめんね」って言われて、ぼく邪魔になってるって思って慌てて道を譲ったら、ヴィクトルが立っていて、「ありがとう」ってにこっと笑ったんです。ぼく、ぼく、舞い上がってしまいました! 近くで見るヴィクトルは、最高で、最高で、最高でした!! 大好きです!! 明日の試合、いい成績がとれるようがんばります。 勝生勇利 追伸 あのとき道をふさいでいてごめんなさい。 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 ぼくは最近、日本のエースだとか言われるようになってきました。自分ではまだまだぜんぜんだめだと思うのに、そんなふうにうわさされるようになってこわいです。 ぼくは日本の大会では優勝できるけれど、世界大会ではへたくそです。勝生は内弁慶だと言われます。自分のところでは威張っているけれど、外では意気地なしだと。 ヴィクトルに会いたいです。 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 ヴィクトル。 ぼく、グランプリファイナルに出られることになりました。初めてのグランプリファイナルです。世界選手権ではヴィクトルに会ったことがあるけれど、グランプリファイナルでは初めてです。ヴィクトルと同じ氷の上で一生懸命戦いたいです。 最近、ヴィっちゃんの調子が思わしくありません。心配です。ヴィクトルのマッカチンは元気ですか? 元気でありますように。ヴィクトルも元気でありますように。 グランプリファイナルで会えることを楽しみにしています。 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 ソチのホテルです。今日、ファイナルのフリーが終わりました。ぼくはさんざんでした。知っているでしょうが、最下位でした。いや、知らないかな。ヴィクトルは勝生勇利っていう選手のことなんて興味がないだろうから。 試合のあと、帰るとき、ヴィクトルに「記念写真?」と言われました。ヴィクトルは親切のつもりだったと思います。無視してしまいました。ごめんなさい。 これからどうすればいいのかわかりません。 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 今日、ヴィクトルがうちに来ました。長谷津に来ました。なんで……? 混乱してさっぱり意味がわかりません。 どうしてヴィクトルがぼくのコーチになってくれるの? なんで? ぼくのことなんて興味なかったんじゃないの? あの動画のせい? わけわかんないよ……。 勝手にヴィクトルの「離れずにそばにいて」をすべってごめんなさい。 でも、あのプログラム、大好きです。 ヴィクトルのことも大好きです。 ぼく、どうしたらいいんだろう。 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 今日ヴィクトルと、初めて、……手をつなぎました。 びっくりした……。 ぼくはまっかになってしまいました。気づいていましたか? ヴィクトルは、なんとも思ってないだろうけど……。 意味なんかないんだろうけど……。 ぼくはそういうの、どきどきするから……。 あんまりしないで欲しいな……。 それでは。 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です! 今日、ヴィクトルにリンクでキスされました! なに考えてんだ! あとになってめちゃくちゃ笑いました。驚かせたいからキスするって何なんだよ! でもヴィクトルらしいなと思いました。じゅうぶん驚きました。 ぼくの四回転フリップには、キスと同じ威力があったんですね! びっくり! 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 ヴィクトル、いまぼくには悩みがあります。 このところ、ずっと変なんです。 ヴィクトルのことを考えると胸が痛くて、涙が出てくるんです。 どうしてこんなにずきずきうずくの? ヴィクトル、教えて……。 教えてください。 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 今日、ヴィクトルと目が合っただけで赤くなって、何も言えなくなりました。 そのあと、ヴィクトルがちょっと視線をそらしたら、ぼくは嫌われてるんじゃないかと苦しくなって、せつなくて、泣きたくなりました。 そのあとヴィクトルがぼくの手を握ってにっこりしたので、ぼくはまっかになってもじもじしま��た。 ぼく、頭がおかしいんじゃないかしら……。 ヴィクトル、どう思いますか? 勝生勇利 ヴィクトルへ 本当に、ずっと変なの。 どうしよう……ヴィクトルがそばにいるとずうっとどきどきする。 勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 空港まで迎えに来てくれてありがとうございます。 うれしかったです。 抱きしめてくれてありがとう。 ぼくはもうすぐ引退するけど、ヴィクトルのことはずっと大好きです。 勝生勇利 ヴィクトルへ ヴィクトル、苦しいよ。 こころをきめたはずなのに、ヴィクトルと別れることを思うとつらいよ。 ひとりになると泣きそうになります。 勇利 ヴィクトルへ ぼくはグランプリファイナルのあと、毎日泣き暮らすんじゃないかと思う。 胸がつぶれそう。 勇利 ヴィクトルへ このところ弱音ばかりで自分がいやになります。 最後なのだからがんばらなければなりません。 ヴィクトルと過ごせる貴重な時間を大切にしたいと思います。 勇利 ヴィクトルへ ヴィクトルとぼくの最後の試合です。 いままで楽しかった。 この八ヶ月間、夢のような時間でした。 ヴィクトル、どうもありがとう。 ぼくをここまで連れてきてくれて、ありがとう……。 貴方を氷の上に返します。 最後に、貴方の首に金メダルをかけたい。 昔から、ずっとずっと、大好きです。 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。 勝生勇利です。 ヴィクトル、どうもありがとう。 いつかヴィクトルと同じ氷の上に立ちたいと思ってスケートをしてきたけれど。 同じ氷の上に立ったとき、ぼくはぜんぜんだめで、「記念写真?」なんて言われたけれど。 ぼくは変わりました。 ヴィクトルのおかげで、変われました。 またヴィクトルが同じ氷の上に戻ってくることがうれしいです。 本当にありがとうございます。 ずっとずっと、一緒にスケートをしたい。 もう離れたくありません。 そばにいてくれますか? 大好きです。 勝生勇利 ヴィクトルへ こんにちは。勝生勇利です。 ヴィクトルと踊ったエキシビション、最高でした。 そのあとに続いた夜も、最高でした。 ぼくのこころは貴方のものです。 ヴィクトルと初めて裸で一緒に寝たけど、すごくすてきでした。 次は、最後までしてね。 愛しています。 勝生勇利 百数十通に及ぶその大量の手紙をすべて読み終えたときは、すでに深夜という時刻だった。途中まではつたない日本文字と、勇利が付け足した英文が並んでいたけれど、ある時期からは洗練された英語のみになった。勇利が英語と習得したということだろう。 どの手紙も、勇利の純真さ、きよらかさ、ひたむきさ、純愛が底に流れていて、ヴィクトルは、勇利はあのときこんなことを考えていたのか、こんな気持ちだったのか、勇利はこんな子ども時代を過ごしたのかとさまざまなことを思案した。勇利のことをたくさん想い、彼を感じたかった。ひとつひとつの手紙について話しあいたかった。けれどそれよりも、いますぐにすべきことがあった。 ヴィクトルは丁寧に最後の手紙を箱に戻すと、勢いよく部屋を飛び出した。 「勇利!」 勇利は、夜深けにもかかわらず、きちんとベッドに座ってじっと待っていた。まるで断罪を待つ罪人のように見えて、ヴィクトルはびっくりした。 「勇利、あれ──」 「読んだ?」 勇利がヴィクトルを見上げ、静かに微笑した。 「あれね、ぼくがヴィクトルに出そうと思ってた手紙なんだ。ううん、出すつもりなんてなかったんだけどね。ただ、ヴィクトルに伝えたいこと、ヴィクトルへの気持ちを書き綴ってて……それが習慣になって。ヴィクトルが来てくれてからもずっと続いてたんだよ」 勇利は困ったように眉を下げた。 「十二年だよ」 彼の素朴な言葉がヴィクトルの胸を刺した。 「重いでしょ?」 ヴィクトルは瞬いた。 「気持ち悪いでしょ? あんなにいっぱい、ヴィクトルへの……」 勇利は目を伏せ、どうしたらいいかわからないというように両手を握り合わせた。 「書いてることも、なんだかしつこい感じでひとりよがりだし……。おかしなこともいっぱいあったよね? 恥ずかしいしこわいから、英語のはひとつも読み返さなかったんだ。ひどかったでしょ?」 何を言ってるんだ。ヴィクトルは口をぽかんと開けた。 「ヴィクトル……」 勇利はおずおずと顔を上げ、さびしそうに笑った。 「ぼくはああいうことを考えてる人間なんだよ」 何かをあきらめたように勇利はヴィクトルを見ている。 「あんな……変なことを、ヴィクトルについてずっと考えてたんだ」 「勇利……」 「そんなぼくでも、ヴィクトル、一緒にロシアで暮らせる?」 「…………」 「無理でしょ?」 勇利はすこし首をかたげた。彼は相変わらず控えめな微笑で、何もかもをのみこんだ表情をしている。 「気が変わったでしょ? いいんだよ。本当のことを言って」 「何を……」 「誰だっていやだよ。あんなふうにぐずぐず想われてたら。それも十二年も……」 勇利は何を言っているのだ? ヴィクトルはさっぱり理解できなかった。 「ヴィクトルはぼくがヴィクトルのファンだって知ってただろうけど……、あそこまでとは思ってなかったでしょ?」 勇利は泣き笑いの顔になった。 「いいんだよ。大丈夫。気にしないで。わかってたから」 「…………」 「何も言わずにヴィクトルについていくこともできたけど……、そんなヴィクトルを騙すようなことだめだから……、言わなくちゃって……」 そこで勇利の頬から突然笑いが消え失せた。彼はヴィクトルをすがるようにみつめ、一生懸命に懇願した。 「コーチは続けてくれる?」 「勇利……」 「おねがい……。いまになってこんな気持ち悪いやつだって知らせるなって思ったかもしれないけど……、卑怯だけど……、でもぼく……ぼくは……」 勇利の目からぽろりとおおつぶの涙がこぼれた。 「……ごめんなさい」 「勇利!」 ヴィクトルはびっくりして慌てて勇利を抱きしめた。勇利の身体がびくっとふるえる。 「勇利、何を言ってるんだ!」 「何って……だから……」 「なんで泣く!? 俺が勇利のコーチをやめるわけないだろう!?」 「ほんとに……?」 勇利が涙に濡れたちいさな顔をヴィクトルに向けた。 「これからもコーチでいてくれる……?」 「当たり前じゃないか!」 「…………」 勇利が目を閉じた。 「……よかった……」 彼は洟をすすってぽつんとつぶやいた。 「それだけでじゅうぶんだよ……ありがとう……」 「じゅうぶんなんて言うな!」 ヴィクトルは、勇利は相変わらずわけがわからないし、本当にどうしようもなく手がかかると思った。 「ロシアへだって連れていくぞ! 絶対に連れていく!」 「え?」 勇利がきょとんとした。なんというあどけなさ……。 「あんな手紙を読んだからには、絶対に離さない!」 「え……?」 「もともと手放すつもりなんてなかったけどね! あれでますます決心がかたまった! どこへもやるものか!」 「ヴィクトル……」 「重い? 気持ち悪い? 何を言ってるんだ?」 ヴィクトルは勇利をぎゅうっと抱きしめ、髪に頬を寄せた。 「あんなの、何があっても一生しあわせにするぞっていう決意をうながすものにしかならないじゃないか!」 「えぇ……?」 「勇利……」 「あ、あの、ぼく……」 「勇利、勇利。顔をよく見せて……」 ヴィクトルが熱心に愛を打ち明けているというのに、勇利のほうは腑に落ちないようで、間の抜けてぽかんとした、きわだってかわいらしい表情でヴィクトルをみつめるばかりだった。 「ヴィクトル……なに言ってるの……?」 「おまえが何を言っているんだ」 「ヴィクトルどこかおかしいんじゃない……?」 「おかしいのはおまえだ!」 「…………」 勇利は口元に手を当て、しばし考えこんだ。思案にくれる彼はかわいい哲学者のようで、ヴィクトルは見ているだけでにこにこしてしまった。やがて勇利は真剣な瞳をヴィクトルに向け、ひとつひとつ確かめた。 「ぼく……、ヴィクトルにどきどきしてもいいの?」 「いいよ」 「ヴィクトルのちょっとしたことでせつなくなってもいいの?」 「いいよ。せつなくなんてさせないけどね」 「ヴィクトルのことばっかり考えていいの?」 「当たり前だ」 「ヴィクトルのこと、好きでいてもいいの?」 「むしろそうしてくれないと暴れる」 「ヴィクトル……」 勇利ははにかんで目を伏せた。 「……最後まで、してくれるの?」 「ああ、勇利!」 ヴィクトルは勇利を抱擁し、とりのぼせた夢のような気持ちで熱愛をこめて叫んだ。 「最後までせずになんて、いられないよ!」 勇利がヴィクトルの胸に顔をうめ、甘えるようにすり寄った。ヴィクトルは彼のつややかな黒髪を優しく撫でながら、俺も勇利に手紙を書こうと思った。たくさん書こう。そして、たくさん語ろう。すぐに不安になり、ちょっとしたことでかなしくなってしまう勇利。かわいい勇利。 「あの手紙のこと、いっぱい話そうね」 「あっ、それは恥ずかしい……」 「どうして? 俺はうれしいのに」 「ばか……」 「勇利。これからも手紙を書いてくれ。なんでも話してくれ。きみのことをもっともっと知りたい。勇利は知れば知るほど謎だよ。あんなにすてきな手紙を書く能力があるなんて知らなかった。書いた手紙は、もうしまいこんだりせず、そのたび俺に渡してくれ。俺も返事を書くよ。それに、俺からも書く」 「ほんと……?」 「でも、これだけはいま、はっきりと言葉で伝えておくよ。勇利……」 ヴィクトルは幸福そうに、目のふちを赤くしてにっこりした。 「俺のこころも、おまえのものだ!」 ヴィクトルはロシアへ戻ったが、勇利に会えないあいだ、彼の手紙はものすごいききめを発揮した。すてきな、ヴィクトルをしあわせにする手紙だった。そして同時に、勇利のせつなさ、さびしさを感じさせる手紙でもあった。 勇利がロシアへ来たら、もう何も考えなくていいくらい、たくさん愛してしあわせにしよう。 ヴィクトルはそうこころぎめをした。 勇利はきっと、このうつくしい情緒的な街並みの中、長谷津にいたときと同じくらい綺麗に、みずみずしく笑うことだろう。
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越境
1
19歳にして老け切って死にそうだ。二十歳にでもなったら本当に身も心も水分をなくして乾ききるのではないかと思う。
アスリートとしての俺の成績は絶好調で、世界選手権でこそ表彰台のてっぺんを逃したものの他は全部敵なしで一番高い場所に立った。それなりに嬉しくて心が浮き立ちもしたが、その膨らむような喜びはすぐにしぼんでいった。 心が満たされなくて虚しくて虚しくて仕方ない。
二段ベッドの下に寝転がって、耳にイヤフォンを突っ込みながらベッドの天板を眺める。日本での仕事を終えたユウくんはカナダに帰ってしまったし、学校の授業は未だにイマイチ理解できないし、どこかに出かけようにも中途半端に顔が売れてしまったので外に出るのも億劫だ。大学のバーチカルでスケートを滑らせたり部屋でゲームをしたり、俺の19歳の初夏はそうやって緩慢にながれていった。
「あっつ! 暑いわ! エアコンいれとけよ北野、蒸し焼きになるよ」
干物になるのと蒸し焼きになるのとどっちがマシだろう。寝返りをうって、部活から帰ってきた田坂くんにお帰り、と言う。
田坂くんは机とベッドの間を体を横にして進み、部屋の隅に荷物をおろした。シャワーを浴びてきたのだろう、乾ききってない後ろ髪が束になっている。
洗濯物を出して荷物を整理した田坂くんは机に向かい、いつものノートに書き込みを始める。ひょろりと背が高いくせにノートに顔を近づけて書くので、その後ろ姿は大げさなくらい縮こまる。ノースリーブから伸びる首や肩は日毎に焼けていく。
狭い部屋の気温が下がっていくのを感じながら俺は目を閉じる。なだらかな滑り台を下って眠りに落ちるところで田坂くんが引き出しを閉める音が鳴った。特段大きな音ではなかったけれど、滑り台は突然V字のジェットコースターになって俺は現実に放り出された。
「…田坂くんさあ」
「ん?」
俺はこの寮にほとんどいないけれど、田坂くんとはそれなりに距離感がつかめるようになった。田坂くんは日本の部活スポーツ的集団生活とか上下関係の中で右も左もわからないでいた俺の面倒を同じくらいそれなりに見てくれる。よく笑って器用に同級生とも先輩とも人間関係をまわしていて、器用だけど人を見下すようなところがないさっぱりした奴、というのが俺の田坂くん像だった。俺が無言でいても嫌な顔をしないし部屋を散らかしすぎているとたしなめてくれるしいい成績をとってくれば祝福してくれる。
「そのノートって何書いてるの、いっつも」
「練習でやったこととか、課題とか、今日教わったこととか。高飛び用の日記みたいな」
「すげ…それってコーチとか監督にいわれるの」
「んーん、中学のときに顧問にいわれてからやってんの。なんか日課みたいな感じ。誰に見せるわけでもないよ」
「田坂くんってストイックだよね。俺この寮にきて日本人がフィジカルでハンデあるスポーツでもそれなりに結果残すわけわかったわ。みんなすっごい真面目」
「そうかな」
「好きな時間まで遊んで好きな時間に起きて練習いくとかさ、女の子と遊んでウェーイ、とかしないよね」
舌がいつもより滑らかにまわる。
「いやいや集合時間決まってるから。北野だって雪山行けばみっちり練習するんでしょ」
「するけどさ」
「それに遊んでる奴はそれなりに遊んでるよ」
「そうなの? 田坂くん彼女いないんだっけ」
「うーん…」
し���しんと部屋の温度が下がり、適温になったのかエアコンの音が静かになった。廊下から陽気な話し声が聞こえてくる。
「いない、かな。好きな子はいるけど」
「何かすんごい時間かかったね」
「いや、なんていうか。見て北野」
田坂くんが差し出したのはLINEのトーク画面。犬の写真のアイコンが田坂くんで、話し相手は自撮りのアイコンの女の子だった。1コマに遅刻しそうという他愛のないやりとりだった。田坂くんは急げ、というメッセージと走る犬のスタンプを送っていて、女の子はややあって「しんいちくんのおかげで間に合ったっす!」と敬礼をするウサギのスタンプを送ってきている。俺にとってのしんいちくんは田坂くんで、この子にとっての田坂くんはしんいちくんだ。
「…どう思う?」
「普通に、仲よさそうっていうか」
いやしかし、これは。田坂くんのさっきの苦悩がわかった気がする。
「…で、付き合ってないんだ…? って感じ。いつからこんな感じなの」
「一年くらい」
「なげーよ。田坂くんって結構ヘタレ? その間なんかしたの?」
「いや聞いてよ北野、深い事情があるんだよ」
田坂くんの“事情”というのはこうだった。
自撮りガール(ユマちゃんと言うらしい)と田坂くんは高校の同級生で、お互い学校は違うけど長野から東京の大学に進学した。田坂くんは高校時代から自撮りガールのことが好きで高2のときに一度振られている。その後別の女の子と付き合ったりしたけどやっぱり自撮りガールのことが好き。自撮りガールとはずっと高校のグループで遊んだりして交流が続いていて、一年前からこんな感じのやりとりが続いている。田坂くん的には17歳の失恋を思い出してしまい一歩が踏み出せず、自撮りガールも特に何もしてこない。
田坂くんがでれでれしながら時折挟む、彼女の天然エピソードをのぞくと10秒で終わるような関係だった。
寮の食堂で機転のきいた冗談をとばす当意即妙で如才ない田坂くんはどこにいったんだろう。恋というのはかくも恐ろしい。
「それでこの子は今彼氏いるの」
「たぶんここ1年は、いない」
田坂くんと目が合う。そらす理由もないのでそのまま眺めていたら見つめ合うみたいなかたちになってしまった。
「どんな子かわかんないから何ともだけど、好意的に解釈すれば田坂くんがなんかするのを待ってる感じ」
「好意的に解釈しなければ?」
「とりあえずキープしとこ、か、暇だから構ってもらおちょうどいいし、のどっちか」
「…だよね」
この寮の中でこんなに長く喋ったのは初めてかも知れない。小指の先ほどの自撮りガールの容姿はまあまあだったが、自撮りなんてあてにならないしとりたてて美人でもないのに変に垢抜けていて色っぽい女の子というのも世の中にはいる。そしてそれは実物の醸し出す匂いみたいなものによるので、どのみち写真では何の判断もできなかった。
「北野��ったらどうする?」
「えー…ちょっと思いつかない」
「そこをなんとか」
「だって俺、あっちから来てくれる子のことをいいな思うから…」
「憎い。イケメン死ねばいい」
「いやでも、うーん…はっきり言うかな。好きだから付き合ってって���その子に好きな男ができたら、自分の気持ちがぐずぐずになりそうだし。好きな気持ちってキラキラしててすごいエネルギーじゃん。それが腐って毒になりそうっていうか」
窓から午後の日差しが低く射して、田坂くんの日に焼けた肩をストレートティーみたいな色に染めた。
ユウくんならこういうとき何ていうんだろう。
「うん、そうだな」
田坂くんが目を吊り上げて自分に言い聞かせるように言うので俺は慌てて
「俺の感想だから。俺その子のこと何も知らないし」と、言った。
「いや北野は多分そういうの間違わないんだよ。頭の99%がひとつのことでできてる奴はシンプルに思考できる」
田坂くんはどーもな、と言いながら何度か頷いて、また机に向き直った。
シャープペンシルがノートを滑る音があとに残った。
「…ってことがあって。ユウくんなら何ていう」
田坂くんが自主練に出かけたその夜、俺はユウくんにスカイプを繋いだ。13時間の時差の先にいるユウくんはさっぱりとした顔をしている。午前中の白い光が頰にひだまりを作っていた。
「え、俺に聞くの?」
「いいじゃん」
「俺女の子のことなんてわかんない…どのみち彼が何かしないと始まりもしなけりゃ終わりもしないんじゃない? って気がするけど」
「俺と一緒じゃん」
「じゃなきゃアレだよ、スポーツやってると3割増しでかっこよく見えるっていうじゃん。いや、言ってたの。俺の中学の同級生が。目の前でダンク決めるとか、バク転決めるとか? 出来栄え点マックスでつく完璧なトリプルアクセル決めるとかですよ」
「田坂くん陸上部だっつーの」
「ダンクもバク転もできるかも知れないじゃん」
「何の参考にもならなくてびっくりだわ。ユウくんだったらトリプルアクセルやるの?」
「うーん、トリプルアクセルでもいいけど好きだよ付き合って! って玉砕覚悟でいく。ていうか1年も待たない。高校生の時に振られたらその後すぐ2回3回行くなあ。それでダメならいつまでも待ってるよ、って言って安心できる男ポジションになって持久戦に切り替えて、彼女が誰かに振られたりして弱るタイミング待つね。
あと、少なくともアヅには相談しない」
「うっさいな。ていうかめちゃめちゃねちっこい。こわっ」
ユウくんはたしかにズレている人だけど、信じられないエネルギーで欲しいものを掴みに行く。その力が必要以上に強い。順位も、練習場所も、友達も、たぶん恋人も、自分の好きなこと全部。その反動なのか興味のある分野がひどく限定されていて、ほとんどのことにはとても淡白だ。
自分の欲しいもので自分の世界をつくる。それが積み重なって、この人の磁場みたいな自信を作ってるような気がしてならない。ユウくんの、ときどき人を殺しそうなくらいに光る独特の目もそういうところからきているのだと思う。
「だってそれくらいしてダメだったらどう頑張ってもダメでしょ」
「まあね」
「それにしてもアヅが田坂くんと恋愛の話をしているのが嬉しい。俺今自分でびっくりするくらい嬉しい」
「どうせ俺は友達少ないですけど」
「拗ねないで。そういう話ができるようになったら友達だよ」
窓の外に目をやると夜がとろとろと渦巻いていた。夕飯のカレーがようやく主張をなくして腹が平らになってくる。
「俺8月×日に帰国することになった。仕事で」
「それ早く言ってよ、いつまでいるの」
「10日いれるから、遊ぼ。そのへんアヅの予定は今のとこどう」
「たぶんっていうか、何もない」
「やった。どっか行きたいとこある?」
うーん…と俺はしばし思案する。俺は帽子でも被ってればいいけどユウくんの顔はどこへ行っても目立ちすぎる。
「…うちの地元のしょーろー流し」
「精霊流し? アヅ精霊流し行きたいの?」
「九州 の有名なやつみたいなじゃないよ。もっと小ぢんまりしたやつ。じいちゃんとばあちゃんが毎年行ってる気がする。俺も結構行ってるからそこそこ案内できる気がする。海に船を浮かべて燃やすのがきれいだった気がする。それに田舎だし夜だからユウくんいても周りにわかんない、気がする」
「気がするばっかじゃん。何その自信のなさ」
「俺、だいたい全てうろ覚え」
「じゃあ精霊流し行こ。俺見たことないから楽しみにしてる」
待ち合わせとかは近くなったらまた。と決めて、俺たちの会話は気の向くままに転がっていった。
そろそろ出かけるとユウくんが言うので1、2、3とふたりで唱えてスカイプを切る。ベッドに仰向けに寝転がると、さっきまでのふわふわとした体の軽さは消え失せて、背中に根が生えたように重い。けれど体の芯は温まっていて、ひたひたと忍び寄るような夜も今は怖くない。8月まで俺は干からびずにいられるだろう。
ある夜中、激しく喉が渇いて目が覚めた。
デスクの上には着信のランプを明滅している田坂くんのスマホがたてかけてあった。窓の外がぼんやりと白く明るい。
あまりに静かで、時間がなくなったみたいに、なんの気配もない、田坂くんの身じろぎも寝息も聞こえない。
時計をみると2時30分、深夜だった。
俺はただしばらくそうして目を開けていた。
久し振りにここにきたな、と思った。
去年、試合中のケガで死にかけて入院していたときにときどき、こういう状態で夜中に目が覚めた。
ただ、何でもなくなっている。感情も感覚もなくて、ただ宙に浮いている。自分が5歳なのか、40歳なのか本当にわからない。今がいつでここがどこで、今日はどんな1日だったか。全部が夢みたいに思える。自分がたくさんの管に繋がれて延命されている老人だと言われたらああそうかと思うし、これから生まれる子どもだと言われたらああそうか、と思える。
俺は死ぬのか、気がおかしくなるのかと、こうなるといつも思った。嬉しくもなければ怖くもなかった。
けれどこうしていると、いくつかの記憶が光景になって像を結ぶ。
俺が海外から帰ってくるたび、頰をほころばせた母の顔。
カズくんがつくってくれたかき玉の味噌汁。
遠征先でベッドが足りなくて、一緒に寝たユウキの控えめな寝顔。
卓と一緒に見たノルウェイの星。
弟が気に入って着ていた、俺のお下がりのボロボロのブルゾン。
家族がいること。
自分に好きな人がいること。
ユウくんの光をたたえた目。いい匂いのする鎖骨のあたり。
全部うしろに過ぎ去っていくけれど虚しくない。
体が再びベッドに沈んでいく。心が白くなる。恋は足かせにならない。
視界がもう一度馴染んだ暗さに戻って眠りが足から俺を満たす頃、田坂くんの恋も叶うといいな、と思った。
初夏は瞬きのなかに過ぎ去って、太陽が狂ったように照りつける日々が続いた。東京の夏の暑さはうちの地元よりカリフォルニアより体力を消耗する。頭の中でお手玉みたいな音がシャリシャリ鳴るくらい。
「啓吾、俺服ほしい。付き合って」
「スチール撮る時もイベントのときもテレビの取材のときも飲み会のときも遊びの時も家にいる時も寝る時もNIKEのジャージを着ているお前に何があったの?」
俺のジャージはとあるオシャレな人に寄せているのだが、みんなアンテナが低いのか指摘されたことは一度もない。
「来週ユウくんに会うから」
「ああそういうこと、」
と言って啓吾はスマホを取り出して何かを探し始めた。
「どうせ店の場所とかわかんないんだろ」
「うん」
「何系がいいの」
「やりすぎないけどカワイイ感じの。そもそもブランドも全然わかんないから啓吾選んで」
「supreme近くにあるからここでいいっしょ、とりあえず。ダメならその辺のよさそうなとこ行こ」
持つべきものはフットワークの軽い兄だ。ふだん地元の北陸で暮らしている啓吾は俺より東京に詳しい。
買い物を終えて、仲間が集まるメシ会までの繋ぎにカフェに入った。
店内に人はまばらで、オーダーを終えて俺は窓の外に目をやった。東京はどこに行っても人ばかりで今も少し気分が悪くなる。不調なときなどは道行く人全てが、みんな友人を持って恋愛をして仕事ないしは学業を持っているーーーつまり俺より遥かに優れたーーー人々、に見えて、羨ましくてしんどくて仕方なかったりする。
友人の結婚式のために上京してきた啓吾は当然だけどひと月前に会った時と何も変わってない。啓吾はスマホから目を上げて
「そういやちょっと前に言ってたお前の寮の相方、どうなったの」
と言った。
「どうなったって?」
「彼の恋愛、なんか進展した?」
「あ、それ。何かうまくいったみたいだよ」
「まじ。よかったじゃん」
「どうしたの急に」
「お前に恋愛相談するなんて日本の大学生も色々やべーなって思って覚えてたの」
なんだそりゃ、と抗議をしようとしたらカフェオレがふたつ運ばれてきた。
田坂くんが「ユマちゃんにおっけーもらった!」と教えてくれた日、俺は聞かなくても何となくわかった。高校の仲良しメンバーでディズニーに行ってきたという田坂くんは整形したかレフ板を当てているのかというくらいに、光っていた。目が晴れた日の遠浅の海みたいに輝いていて、素顔とTシャツの白が蛍光灯の下で明るく浮いて見えた。人間って簡単だ。その簡単さが偉大だ。「おめでと」と俺が言うと「ありがと」と田坂くんは笑って、それがあまりにも子どもっぽい信頼に満ちた笑顔だったので俺は照れてしまった。
「…女の子は恋をすると綺麗になるといいますが」
「うん?」
「男も見栄えがよくなるんだなと思いました。勝負写真は恋しながら撮るべきなのかも」
あれからひと月、田坂くんの笑顔は頑丈になった。なんというか説得力のある笑顔で今この人生きてるのが楽しいんだろうな、と思う感じ。そのパワーが彼に今までにない魅力をもたらしている。ちょっとユウくんを思い出す。
「いや意味わからん。今更だけど服それでよかったの。お前羽根井ユウトに会うときやたら服装に気使うね」
啓吾に向かって上目遣いをして、わざと目をしばたかせる。
「ぶりっこすんな」
「まあ、そうかも」
俺は家族にユウくんのことは友達だと言っているけれど、啓吾は本当のところはどう思っているんだろう。俺が朝も夜もなくユウくんを思っていることを知られている気もするし、そうでない気もする。
「別にいいけど」
「そこは聞けよ。ユウくんって横乗りの人じゃないから何か気になんの。あっちいつもパリッとしてるし」
「聞いてもわかんねえわ。いいじゃんパリッとした羽根井ユウトとだらっとしたお前で。こいつら何の共通点もなくね? っていうのが逆に友達っぽくて俺は感動する」
「何目線だよ」
「兄目線だよ」
「そういえば啓吾は俺に恋愛相談とかしたことないね」
「当たり前だろ俺の方が経験値高いわ」
それもそうだな、と納得してカフェオレをすする。自動ドアが開く気配と店員の挨拶。足元に吹き込んでくる、夏の闇が柔らかく湿る気配。啓吾がスマホを触る指先の動き。兄ともしなかったことが、去年知り合ったばかりの他人とできた。何だか誇らしい気分だったが、啓吾に笑われるのが恥ずかしくて緩む口元を手で隠した。
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大人は俺をクールだとか無口だとかいいように言ってくれるが、俺は考えを口にする技術が未熟な上にそれを磨こうともしないゆえのただの口下手だ。10歳で親元を離れて大人の中で育って、周りの人がそれでよしとしてくれたのもあるし、雪山での滑りを見てもらってそれで全部判断してくれればいいと俺が思い続けていたというのもある。結果として俺の口はマツコデラックスより重く、代わりに周囲をじっと見る癖だけがついた。
太陽は相変わらず狂ったようにぎらぎら輝き、スポンサー仕事をこなす度に俺の心は水分を失い、そしてあろうことに田坂くんの瑞々しさに陰りが見えてきた。
ゴムが伸びた、と最初は思った。冷たい水でパンパンの水風船みたいな田坂くんのパワーが少し間延びした。そのときは水風船そのものがくたびれて容積が広がっただけで、水が減った風には見えなかった。けれど田坂くんの声の調子だとか俺へのダメ出しだとか、彼の規則正しい毎日のルーティンが少しずつほころびていき、俺は田坂くんを満たしていた水が漏れ出ているのを知ることになった。田坂くんの口から彼女の名前を聞かなくなり、決定的だったのは俺が見る限り欠かさずつけていた「部活ノート」を開かずに遠い目をしたまま部屋を出て行ってしまったことだ。もちろん本人からきいたわけじゃないし、田坂くんの不調が彼女とのトラブルとは限らない、部活の調子が思わしくないのかも知れないし友人関係が芳しくないのかも知れない。でもあれは失恋の濁りだ、恋によってもたらされた輝きがみるみる枯れていく。こんな時でも俺の口は全く開かず、俺は自分の臆病さにほとほと嫌気がさした。大切なものを拳ひとつ分の差で掴み損ねたような気がする。
かくて俺は約束の日まで何とか生き延びる。
目を覚ますとユウくんの代わりに綺麗に畳まれた客用布団があって、俺は働かない頭で廊下へ出た。ユウくんの声のするほうに吸い寄せられるように体が動く。犬か俺は。
「おはよ。見てアヅ」
仏間では洗顔も着替えも済ませてさっぱりした体のユウくんと頭にタオルを巻いたばあさんが精霊馬をつくっていた。ユウくんの膝のあたりで、キュウリの馬が畳に自立して小首を傾げている。
「うまいじゃん」
「ほんと? 俺初めて作ったんだ。もうすぐご飯だって。顔洗ってきなよ」
ばあちゃんが弟の海莉(カイリ)も起こしてこい、と言うので俺は気のない返事をして伸びをした。啓吾は朝から出かけたらしい。
ユウくんと俺の夏休み。ユウくんがうちの実家にいるというだけでこの間まで乾ききっていた心が抱えきれないくらい水を含んでいる。廊下のきしみまで心地よく感じた。
窓の外はたぶん暑すぎるせいで空気が揺らめいて見える。花壇にはばあさんのダリアが開いていて、物干しには啓吾と海莉のTシャツが干してあった。ユウくんはうちの女性陣と打ち解けるのがとても早く、前回の初訪問で母とばあさんとすっかり仲良くなった。朝食の味噌汁の匂いが穏やかに漂ってくる。
朝食を済ませて、俺とユウくんはじいさんの作業小屋に向かった。木と土の匂いのするここが俺は結構好きだ。
「じいちゃん今日の精霊流し、俺の車乗ってく?」
「いやその前に用事あっから、ばあさんと軽トラでいく。お前らふたりで来い。6時頃から始まってっから」
農機具の手入れをしていたじいさんが奥から藁船を出してきた。ユウくんが来るというので頼んでおいたのだ。
「わあ、すごい、なに? なに、船?」
うちの精霊流しは藁船に盆飾りだとかお菓子や戒名を書いた紙を入れて川に浮かべて燃やす。これはじいさんが使うものよりずっと小さくて、ティッシュケースひとつぶんくらいの大きさだ。俺たちにちょうどいい。
「こいつが友達連れてくるから藁船をひとつ作ってくれって言うからさ。中に入れるもんはばあさんに聞いてみな」
「ありがとうございます。俺精霊流しって初めてなんです。毎年こうやって作るんですか?」
「おお。ここらじゃ生まれた時に作って赤ん坊を入れるんだ。昔はそれをそのままとっておいて、死んだ後の初盆に使ってたわ。今ははそこまではしないけど」
「海莉が生まれたとき入れてたの覚えてるよ俺」
「お前これに海莉を入れるの好きだったよな。海莉が歩きだしてからもよく入れてたよ。嫌がってるのに入れるもんだから海莉がぎゃんぎゃん泣いて啓吾が怒ってた」
口をあまり開かないじいさんの訛りと、窓を白く浮き上がらせる朝の光。俺の一番古い記憶でもじいさんは老人で、スケートパークの店番と畑を行き来する生活をずっと送っている。俺とユウくんはじいさんに礼を言って作業小屋を後にした。
ユウくんが犬の散歩をしてみたいというので俺はスケートボードを持って外に出た。母がついでに到来物のマスカットを伯母の家に持っていけというので請け負う。ユウくんの歩幅に合わせてゆっくり地面をプッシュして進んだ。
夏の午前は澄んだ匂いがする。草いきれ、熱されてゆくアスファルトや木材、濃く茂った木々、それらを溶かして冷やしたみたいな匂いだ。
川沿いの伯母さんの家まで堤防の上をいく。俺たち以外に人影はなかった。
眼下の家では塀かららブーゲンビリアがこぼれている。まだみずみずしいオレンジ色の花が砂利に積っていて、もったいないとも贅沢とも感じる。タチアオイの花が色あせ始めるかたわらでムクゲの木が控えめな花をいくつも開かせている。たくさんのものが次から次へと実ってはこぼれ落ちていく。
「なんか、いいね」
ユウくんが目を細める。
「スケートリンク作ってさ。こういうきれいな場所でずっと子どもたちに囲まれて毎日スケートだけできたら幸せだな。アヅも山向こうとかにいてさ、スノボしてるの」
ユウくんが時々口にする、泡みたいな夢の話が俺は好きだ。本当に叶える気があろうがなかろうが、言葉で幸せを作ることは無罪で無垢な遊びにすぎない。それを下らないなんていう奴は親愛を知らない奴だ。
「…もしその場所からスキー場が遠かったら、隣にスケートパーク作ってスケートしてるわ、俺」
ユウくんは目を糸みたいにして笑った。フレンチブルドッグのマルは鳴きも止まりもせずひたすら進んでゆく。
ユウくんは50代のマダムを骨抜きにする何かを持っているらしく、玄関先での挨拶ですませる予定が5分後には俺たちはおばさんちの居間でスイカを食べていた。
家に帰って今度はひやむぎを食べて、昼寝から起きても空はまだ抜けるように青かった。大質量の夏が空から溢れ出してまちを満たしている。俺たちは閉鎖したスケートパークで夕暮れまで遊んだ。
SUVにユウくんを乗せて浜へ向かう。右の頬にくすぐったさを感じて視線だけをユウくんに向けた。
「なに」
「アヅが運転してるのがかっこよすぎるのでしっかり見ておく必要があるんです」
「ユウくんは免許とんないの?」
「あった方が便利なのはわかってるんだ���ど、教習所に通うのがめんどくさい」
「オフシーズンにとりあえずあっちでとればいいじゃん。俺免許とってわかったけど、インドアな人ほどいいよ車。電車とかバスと違ってひとりで移動できるから」
ユウくんは煮え切らない表情を浮かべている。これはあやふやにされるパターンだ。
「日本にいるときは俺が運転するからいいけど」
ものごとを煙に巻く時の曖昧な笑顔が霧散して、ユウくんがふにゃっと笑った。
3
午後5時の黄色い光に照らされた浜にはもう人が集まっていて、俺は見知った顔に挨拶をしながらユウくんを誘った。
波止場にはいくつか小舟が寄せられてる。船の主に藁船を託して、遠浅の沖で流してもらう。丸山のじいさんを見つけて声をかけた。
「おめえのとこのじいさんは?」
「多分もうすぐ来る。俺今年、じいさんとは別にご精霊流したいから頼むわ」
船賃(とここらでは呼ぶ)を差し出すと、丸山のじいさんは俺に両手を合わせてから恭しく受け取った。赤黒い漁師の手は、うちのじいさんの手ともまた違う。潮と陽光を浴びてひび割れてはまた皮膚を張る、そんなことを繰り返してできあがるやわらかな鉄みたいな手。
「あと30分くらいで始まるから、それまでに持ってこお」
ユウくんと一緒に人だかりから逸れて、デイパックを下ろした。藁船の中におにぎりと盆菓子、提灯を入れた。
「ねえアヅ、おにぎりは何で?」
「あの世までの道中で腹減った時用じゃない? あ」
半紙を片手に俺は間抜けな声を出した。
「なに」
「戒名を書いた紙入れるんだけど、うちの曾祖父さんと曾祖母さんのはじいさんが毎年入れてるから今年もふつうにそうすると思うんだよね。てことは俺らは誰の名前を書きゃいいの?」
「え、ここにきてそれ?」
「一応戒名はメモってきたけど、ふつうに考えたら曾祖父さんと曾祖母さんの帰りの船二艘できちゃう」
「うちの大叔母さんなら去年亡くなったけど」
「いやこれお盆で帰省した人を見送る船でしょ、大叔母さん、北陸から送り出されても困るっしょ」
「むしろ東北と北陸で2艘あっていいんじゃない? ないよりマシじゃん。乗り心地いいほう選んでもらって」
「大丈夫? バチ当たんない?」
世界選手権でメダルをとっていようがなんだろうが、世界で一番スノボとスケートが上手くても、小さな藁船を前に俺たちは無力である。祟りを恐れるガキふたりは途方にくれた。 途端に周囲の音が大きく聞こえる。周りは先祖を弔うために集まっているのに、俺たちはここにきて弔う先祖を探している体たらくだ。
ユウくんが唇を引きむすぶ。
「アヅ、海の神様は俺らが多少バカでも許してくれると思うの」
「海の女神が50代マダムだったらユウくんが何しても許してくれるだろうね」
「真剣にきいて。藁船も小さいし、ここは初心者として清らかな心で勝負しよう」
「うん?」
「弔いたいことを流そうよ」
「例えば?」
「地球上で亡くなった人とか。個人個人は弔う人がいるだろうけど、それを大きい単位で捉えるんだよ。これはご先祖を敬う儀式でしょ? 直接血が繋がってなくたって縁があればいいんだよ。同じ地球に同じ時間生きていたってだけで、その人と俺たちは縁があるよ。その人が育てた小麦でつくったパンを食べたかも知れないし、その人が組み立てた部品が俺たちのスマホに使われてるかも知れない」
ユウくんは目に力を込めて、ゆっくりと力を込めて俺に語りかける。人の話が大きくなればなるほどおかしみを感じてしまうのは、俺自身のものさしが小さいからだろうか。茶化せないくらい真剣なその眼差しに稚拙さを超えて敬愛を感じてしまう。ユウくんのものさしは恥ずかしげもなくそんなことを言えてしまうくらいきっと大きいのだ、たぶん。
「ユウくんの言いたいこと、わかった。ただ俺、ものさし小さいから自分に直接起こったことしか気持ちを入れられない。だけどちゃんと弔いたいこと入れるよ。あっちの世界に帰る人たちに混じって送り出したいこと、思い出した」
夕暮れの真っ赤な光は炎みたいで、世界が遠く近く揺らぎ、全てが陽炎に見える。ユウくんと俺はそれぞれ短冊みたいな紙に弔うなにがしかを書き込んだ。半紙で包みお供え物の傍に添えると、見慣れた船のかたちができた。
丸山のじいさんに藁船を渡して、俺はユウくんを連れて防波堤に上がる。
ユウくんの故郷ではいつかの春にたくさんの人たちが亡くなっている。彼は公の場でそのことを事あるごとに口にするけれど、俺が彼から直接そのことについて聞いたことは、なかった。
灯を灯した小舟が、赤い軌跡を残して夜の海を滑っていく。毎年ぼんやり見ていたこの景色がこの土地にしかないことを俺は最近知った。東京には東京の、サンクレメンテにはサンクレメンテの、このM浜にはM浜の夏の終わりがある。甘い潮の香り。
港湾防波堤の外に出た船が集まり、精霊流しが始まる。火を灯された藁船がひとつ、ふたつ、と海に放たれる。頼りなく波にたゆたいながら炎を上げる姿は近いようで遠く、炎はそれ自身が意思を持って登っていくように見えた。
「ここに来てから、オリジンとナショナリティーについてずっと考えてたの」
コンクリに直に座り、一緒に沖を眺めていたユウくんが視線を動かさずに話し始める。
「出身と、国籍。カナダって移民がすごく多いの。アフリカ系とかロシア系とかたくさんいるけど、国籍はカナダっていう人。出身地と国籍が一致してない人が多いから、何人って意識がないままただ身近にいる人と仲良くなるんだよね。何人ですか、ってもあまり聞かないしね」
それはアメリカでも感じる。俺らもああはいはいアジア人ね、でよくひとくくりにされている。
「そんな中でいてさ、俺カナダにいると自分は異邦人だって自覚があって、でも俺は出身も国籍も同じな日本っていう場所があるから、まあいいやって思ってたの。それがアイデンティティーなのかなとも思ってた。でもここに来てから外国感があったの。すごく越境してる感じがした、体ごと」
越境、という言葉をユウくんは苦しそうにもう一度繰り返した。
昼間、ここでスケートを教えたいと話していたときもそれを感じていたのだろうか。
「みんなすごく親切だしすごく綺麗で気に入ったの、俺。この街を。なのにここを外国に感じちゃってすごくショックだった。でも、この景色を見たらなんか体が内側から膨らむ感じ。心がふくふくする。死んだ人をこうやってまた送り返すんだって、何が見えたり聞こえたりしてるわけじゃないのに理屈抜きですごいわかる。こういう感覚が共有できるなら、越境してたっていいのかなって。考えてたのがばかばかしくなった。
馴染まないから寂しいってわけじゃないんだなって。…伝わるかな」
きっと姿が似ているゆえにユウくんは疎外感を覚えたのだろう。靴脱ぎのある家で、畳の部屋で、黒い髪と瞳の人たちのなかで。似ている誰かといればいるほど、自分を知らされる。兄と、弟と、師匠のマチくんと、ユウくんと。
馴染まないから寂しいわけじゃない、俺はその言葉を反芻する。
ユウくんは俺の返事を催促せず、聞こえるか聞こえないかの音量でハミングを始めた。
その、子どもの頃にスキー場から帰る車の中で聴いたラジオみたいな遠くて甘い声が、懐かしくて親しくて、今俺のいる場所を自覚させた。
手が届かない広い空と黒い海、そして立ち上る送り火。恋人を隣に置いて、夏の終わりを見送る。ただここにいる。そんな気持ちが体の奥から湧き出てくる。
ユウくんが自然な動作で俺の手を握った。着信ランプが点滅するスマホをスワイプする、くらいの何気なさで。確かにそのことを覚えている。
そのとき、海に向かって座っている俺たちのうしろのほうから濃くてざわついた空気が突風になって襲ってきた。俺はそういう風にしか感じなかった。
魅惑的で禍々しくて、一度身を任せたらもう永遠にここには帰れないのにそこに加わりたくなる、そんな恐ろしい甘さに体の芯が震え上がり、俺は反射的にユウくんの手を強く握り返した。
ユウくんのハミングは止まらずまるで目に見えるように夜を縫って、鳥みたいに奔放に立ち上っていく。かすれて、甘く、でも震えを秘めていた。そのままユウくんがほぐすように俺の手をほどいた。
そして歌が終わる。俺は呆然とユウくんの横顔を見た。
静けさがやってきた。恐ろしい静けさで、それはユウくんの歌が消えた外側だけの世界じゃなくて、俺の内側も空っぽになっている。
「ねえ、アヅもわかるでしょ」
「何、今の」
「多分今のって、この土地で生まれてこの土地のものを食べて、この土地に守られてないと感じないんだよ。ああ俺たちはここの子どもなんだなって思った。あ、この土地って日本ね。もしかしたら日本全部じゃないかもだけど、まあS市とM市は入ってるよね。俺とアヅが感じるんだから」
「答えになってない」
「だって俺もわかんないもの。俺がたくさんの人を送ろうとしたのがよくなかったのかなって思うけど…そういえばアヅは何を送ったの?」
ひと際大きな炎が上がる。精霊流しの最後を飾る、神社が出す大きな船だ。風向きが変わったのか、こちらにも藁の燃える香りが漂ってくる。
「…俺は人じゃないよ、友達の、気持ちっていうか、恋」
ユウくんが小首を傾げる。
「田坂くん。寮��部屋の。失恋したの、この間。悲しい気持ちが悪いものにならないといいなと思って、向こうに帰る人たちに悲しい気持ちだけ一緒に持ってってもらおうと思って…笑わないでよ」
「笑わないよ。その発想はなかったわ。アヅは優しいね」
最後の船が朽ちていく。もう一度ユウくんの手に触れてみた。
「友達ができたんだね」
ぬるい体温だけがあって、もう何も起きなかった。
4
どの夏も等しく終わる。ユウくんはトロントに、俺は東京に帰って秋を迎えた。初秋の闇は暗いみずみずしさをたたえ、吸う空気の中にも夢のようなまろやかな香りをたくさん含んでいる。
田坂くんの報告は、忘れた頃にあっさりやってきた。
「ユマちゃんと別れた」
その目は明るかった。以前のように答えを探してさまよったりしない、子どもの目ではなくなっていた。綿飴みたいな想念をまとっていた雰囲気は消えて、余計なものがそぎ落とされたようだ。眩しいものを見るような気すらした。
「うん」
「北野がいなかったら付き合えてなかったから、言っておこうと思って、ありがとな」
田坂くんは帰ってくるなりそれだけ言って、机に向かってノートを開いた。
「あー…それと」
しばらくその背中を眺めていたら、田坂くんが向き直った。
「俺もなんか、相談とか、できることあったら、するから」
狭い部屋は再びシャープペンシルがノートを走る音だけに満たされる。
田坂くんが食堂に行ったあと、俺はユウくんに電話をしてみた。出なかった。満腹になったみたいな多幸感に満たされてベッドに転がる。
初夏の俺と秋のこの俺は何も変わっていない。俺の問題は何も解決していない。スノーボードをやればやるほど天才との違いを知らされる。俺がどんなに巧くなってもマチくんやケヴィンの方が圧倒的にかっこよくて、ずっと一緒にやっていたユウスケはどんどん映像の世界で認められていく。皆がトンネルから出て行き、その逆光の後ろ姿だけが目に焼き付いている。永遠にあっち側にはいけないことを知るほどに足元が崩れていく。褒められれば褒められるだけ、メディアで辛い苦しい話をしたり着飾った写真を撮られるだけどんどん自分自身が分割されて柔らかな部分が散り散りになっていく。でも。
傷んだり、惨めに晒されても、歩みがどれほど徒労でも、そこに重要な意思決定ができたなら。自分で始めて自分で終えることができるなら。
枕元の携帯が震えた。ディスプレイにユウくんの名前を認める。
けれど干からびて老衰して死なない。始まりの終わりを求めて、俺は画面をスワイプした。トロントは早朝だ。
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最終的には家に帰ったお友達がお母さんに『おやつに何食べたの?』と聞かれて『わすれたー』というくらいの『記憶に残らない菓子盆』を目指しました
最強の「ママお菓子」チョイス王は誰だ!? 第六回「菓子盆選手権」 | オモコロ
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宿業、或いは鬼灯の姫ごと/08/2011
ねっとりとした濃い闇に、まとわり付くような熱。 息をするたびに肺に湿った熱い空気が送り込まれる、それも血霧のむわりとした生臭いものも一緒に。
その獣は錯乱していた。 何度も、何度も執拗に女の性器を抉る。
そうする度に自分自身が死んでいくような気がした。
けれど、それでいいのかもしれない。 最初は確かに、自分を投影した小さな命が消えるのが恐ろしかった。 まるで自分自身を殺されてしまうかと思い、口論となった。
しかし、よくよく考えてもみればこの世は地獄だ。 それならば、この世にまみえる前に極楽へと送り返すことこそが、まことの救いではないかと思いなおしたのだ。
ぐぷぐぷと血の泡が女の身体の刺し創の隙間から湧く。 いつもは高飛車で生意気で尊大な言葉を吐き捨てるその口はごぷりと血の固まりを吐き出し、死んでもなお身体はびくりと痙攣する。
ようやく物言わぬ人形となった身体。 執拗に自分を殴り、蹴り、嘲っては罵倒してきた女。 栄養失調やら発育不足で小柄だった自分を、女のようだと嘲笑して古くなった女物の着物を下げ渡しそれを着て道端に立てと命令した。
血の失せた白い肌は青く、真っ黒な髪が振り乱れ白と黒の、そして血の赤の対比が映える。 そうしてようやく、急に愛おしく思えてきた。 心のつかえがすうと溶け出し、流れていくような感覚に、獣は自分の中にもこのように美しく清い心があったのかと思う。
からんと包丁を落として、手に腕にねとりと纏いつく血を女の着物で拭う。 そして、紙風船のような真っ赤な鬼灯を落とすと、ふうわりと地に落ちた。
「お前に……会いたかったわ……」 「俺は……」
女の言葉に男はうつむいた。 逃げようと後ずさりする男を女は抱きしめてとらえてしまう。
「私は――お前のことを愛してるわ! お前のために、お前のために私は――」 「お嬢……様……」
お嬢様、と呼ばれた女は年の頃はまだ二十も越えていないほどの幼顔で、それでもその瞳に宿る力強い光はお嬢様という呼び名とは不釣合いに思えた。 女は耳かくしのモダンな髪に、洋装。
「その呼び方はやめてちょうだい。私はもうただの女よ。 私はお前のために家名を捨て、お前を探し出すために――探偵になった」
女はそう言うとにこりと男に微笑みかける。
「お前は邸の下男だった、私はずうっとお前のことが好きで好きでたまらなくて、 私がお前にそれを伝えるとお前は私の前から消えてしまった」 「俺はただの下男です――」 「私だって、もうただの女だわ……」 「お嬢様……俺は――俺は――」
そう言うと男はこらえ切れずに女の細い身体を抱きしめた。 女はその苦しさよりも、嬉しさと愛おしさで息が詰まる。 ああ、ようやく――。 そっと、ふたりの影が重なり合い――そして……。
「何だコレは!!!!!!!」
斯波は文芸雑誌を引き千切った。 力いっぱいに引き裂き、びりびびびっびびと破り捨てて机の上に投げつける。
「旦那様、どうかされましたか?」
山崎の声に、一瞬だけ落ち着いて「なんでもない」と答える。 ぜえぜえと肩で息をして、呼吸を整えるが、斯波の腹立ちは抑えきれなかった。
百合子が編集者として携わった初めての原稿が文芸雑誌に載ると聞きつけて、急いでその文芸雑誌を買ったのだが――。 読んでみるとその内容はあまりにも、不適切で不埒で不純で事実に則りつつも事実��ら反していた。 まず、女探偵を生業にしている主人公があまりにも百合子に似ている。 そして、なぜか下男に恋焦がれているという。 そこが気に入らないのだが、もっと酷いのは女探偵を口説き落とそうとする成金の男だ。 金や贈り物であの手この手で女探偵を陥落させようとしている、という設定なのだが、その描写はあまりにも斯波自身を想起させた。 しかも、どちらかというと女探偵と下男の引き立て役のような立場で、今後は基本的に報われることはなさそうだ。
いらいらと書斎を歩きまわる、破り捨てた雑誌がちらちらと目の端にうつる。 はあと斯波は腰に手を当ててため息をつく、がしがしと頭をかくとがっくりと項垂れて床に散らばった雑誌の破片を拾った。
/-/-/-/-/-/
さくさくさくさく、と軽い音が応接間に響く。 風月堂のパピヨットを差し入れに、百合子は作家の屋敷に訪れていた。 パピヨットとは貴婦人の巻き毛に使うピンをイメージして作られた西洋菓子で、 麦の粉を挽いたものと砂糖をミルクで溶いて焼き上げたものだ。 くるくると丸められて葉巻のようになったそれはたしかにピンカールにそっくりだった。
作家の婦人が丁寧に冷やした緑茶を淹れてくれる。 百合子はそれに手をつけず、作家から手渡された原稿をじっと読みふけっていた。 ぱらぱらと菓子の粉を落としながら作家はパピヨットを齧っては緑茶をごくりと飲んだ。
ようやく原稿を読み終えて一息つくと、とんとんと原稿を机の上で整えた。 さて、と百合子が口を開く。
「あのう、もしかしなくてもこの主人公って――」 「ああ、あくまでモデルですよ。ほとんどは僕のつくり話だから気になさらずに」 「はあ……」
それにしてはあまりにも現状と一致しているような……。 月刊誌で連載しているその作品は、いまや文芸誌を代表する名作となっていた。 男が主人公の作品と違って、女のそれもモダンガールと呼ばれる女性が働き謎を解きながら恋愛するという話が女性たちの間で持て囃されているそうだ。 もちろん、王道の身分違いの恋愛というのもその人気の一端をになっている。 ぱらぱらと原稿をめくりながら、作家に問いかける。
「やはり、最後はこのまま二人は結ばれるのですね」 「うん、その方が面白いだろう?」 「そうですね、おそらく、読者の方はそういう結末を望んでいると思います」 「娯楽作品ですからね」
飛ぶ鳥を落とす勢いとはまさにこのことで、文芸誌内でも人物相関やら特集やら組まれ、 未定だが有名役者を使っての活動写真にもなるという噂だ。 噂は人の口づてに広まり、いつの間にやら文芸誌の売上は過去の数倍以上を記録していた。
このことに、編集部内もてんやわんやで百合子の労をねぎらう言葉をかける者がいる一方で、女の色香で原稿を手に入れただの、色仕掛けで専属契約をもぎ取っただのと陰口を叩く者もいた。 百合子はそう影で言われれば言われるほどに、更に決意を固めて男に交じって必死に働いた。 たしかに、有名作家の原稿を預かったのは本当に奇跡のような偶然からだった。 けれど、その一縷の望みのような一つの作品をここまでの話題作に仕掛けたのは他でもない作家と百合子だった。 世相を鑑みて、情報、流行を知り、革新的に、それでも展開は王道で保守的なものをという作品作りが功を奏したのは言うまでもない。
「そうそう、先生。文藝賞にもいくつか候補に登っていて記念の式典などが催されるようですけど」 「会食かあ、面倒だな」 「まあ、そう仰らずに。奥様とお二人で楽しんできてはいかがですか?」 「うん、そうだね。お前、行きたいかい?」 「私ですか……そうですわね……でもあなたお酒の癖が悪いから」 「飲まなければ平気だよ」 「それならば――行きますわ」
婦人は頬に手をあててにっこりと笑った。 百合子は婦人の淹れた美味しい茶を飲み、原稿をまとめて帰社した。
編集部の隅の机は何度片付けても山積みに書類や原稿の下書きが積もる。 どこから回されたのか、装丁の草案やら何に使うのか分からない写真まで百合子の机に乗っていた。 おまけに、帰ってくれば誰かが尊大な風に「おい、お茶!!」と怒鳴るのだからとても仕事どころではない。 百合子は急いで帽子と手袋をとり、鞄につっこむと袖をまくりながら給湯室へ向かう。 それぞれの柄の違う湯のみに、これはぬるめ、これは濃いめと、編集者たちのうるさい好みを思い出しつつ淹れていく。 茶渋がこびりついた湯のみは何度茶殻でこすってみても落ちない。 諦めて一等濃いめのお茶を注げば分かるまい、とその湯のみだけはたっぷりとお茶を出してみる。 器用にお盆に何個もの湯のみを乗せて、曲芸軽業師のごとく、それぞれの机に配り歩く。 一方、空いた盆には重い陶器の灰皿が積み重なる。
誰も灰皿の吸殻を掃除しようとしなかったため、過去に一度小火が起きかけた。 編集者の命よりも大切な原稿を燃やすわけにはいかない、いつのまにか百合子が男たちの灰皿の吸殻を捨てたり洗ったりする役割になっていた。
それらを片付けてようやく、作家の下書き原稿を書き写す作業に入った。 連載の具合にもよるが、一日何百枚と書きなおさなければならず、また悪筆のため読み取れないものはト書きをし、後日作家に尋ねなければならない。 あたりがまっくらになると、ようやく手元の電灯をつけて必死に書き連ねる。 ふと周りを見れば、大抵編集者はすでに退社しているか、仮眠室とも呼べない応接間の革張りのソファで眠っていた。
百合子が担当する作家が、百合子をモデルにしたと言った小説。 それを、綺麗に書き写していると、まるで現実と幻想の狭間に落ちて行くようだった。 万年筆が主人公を追うたびに、百合子の人生が開かれているような気すらした。
じじじ、とわずかに電灯の煌きが音をたてて揺れる。
目がしぱしぱと乾き、百合子はいつしか息をするのも忘れて必死に原稿を書き取っていることに気がついた。 ふと顔をあげれば、とっぷりと日が暮れて夜半を過ぎている。 区切りをつけると、原稿をタイピストである女性へ手渡す。 このころ、モダンガールという女性が流行ったが、その職業の多くは事務員かタイピストであった。 この出版社には女性が三人おり、一人は編集者の百合子。そして二人は女性タイピストだった。
「お疲れ様、今日はおわり?」 「ええ、あなたは?」 「まだまだ、今日中にあれだけ打たなくちゃ……」
そう言う視線の先には山ほどの原稿があった。 百合子はタイプライターの経験がなく、手伝いましょうかとも言えずにただ気の毒そうな顔をした。
「私もタイプライター習おうかしら……」 「これはこれで気楽でいいわよ、原稿を打つだけだもの。 それ��りも、あなたの編集部は大変でしょう?」 「まあね……」 「まあ、どこだって大変よ。 さ、私もさっさと終わらせて帰らなくちゃ」 「ええ、邪魔して悪いわね」 「ううん、お疲れ様」 「お先に」
そう言うと、くるくると鞄を回しながら会社の出口の階段を駆け下りた。 重い硝子の扉を押し開けて、外に出るとねっとりと蒸し暑い夜の外気が腕を撫でる。 ぎらぎらとした太陽はすでに沈んでいるが、残った熱気がまだ地面に篭っているようだった。
「うーん……」
百合子はいっぱいに背伸びをして身体をほぐした。 ぽきぽきと小気味よい音がして肩が軽くなる。 柔らかな橙色の街灯に、はたはたと蛾やら虻が引き寄せられていた。 突然、ぱっぱと黄色い光にてらされる、パッと高いクラクション音が鳴り、百合子がそちらを見ると……。
「斯波さんね」 「随分と遅い退社だなお姫さん。ほら、送ってやるよ」 「もう、変な噂を立てられたらどうするのよ……」 「そんな噂たてられたら、認めてしまえばいいじゃないか。 なにせ俺はお姫さんの未来の旦那なんだからな」 「はいはい」 「……お姫さん……随分と男のあしらいがうまくなったもんだなあ……」 「ふん、その感慨深く言うのやめてちょうだい」 「お姫さん言葉も薄れているな、それはそれで可愛らしいが…… まあ、やはり残念といえば残念ではあるな」
ぶつぶつと独り言のように喋る。 相変わらずの斯波に百合子は少しだけ笑った。 それを見て気をよくしたのか、斯波は百合子に自動車の扉を開けて百合子を促した。 どうせ今から帰るなら歩いて帰るしか無い、百合子は素直に斯波の自動車に乗り込む。
「本当に斯波さんは相変わらずね。 ねえどうしてそんなに私に求婚するのか理由を教えてくださいよ」 「それは――駄目だ」 「どうして?」 「どうしって――それは……。 そう、お姫さんの小説のネタにされかねないからな」 「あら?読んでいるの?」 「勿論、しかしなんですかねアレは――。 まったく、女子供の読む娯楽作品だな」 「それがいいのよ」 「ふうん、そういうものか。 まあ、とにかく――あんな夢物語はくだらないな。 現実味というものがまるでない、下男と令嬢の恋愛など――」 「……そう���ね」
思いもかけず百合子が斯波に同意したのを聞いて、 斯波ははっと口を閉じた。
「――お姫さん、あの小説は――」
斯波の言葉に百合子は首を振る。 少しばかり百合子の境遇と似ているが、ただそれだけだ。
「主人公は私をモデルにしたと言っていたわ、 内容は――作家の先生が考えたものよ」 「ならば、どうしてそんな顔をする? あなたは本当に、誰かを探すために――その初恋の男を探すために探偵になったのか?」 「……」 「百合子さん、答えろ。 俺には聞く権利があるだろう?俺はあなたの助手なんだから!」 「言えない……分からない……だって彼は――」
百合子の初恋の相手で、本当の兄で……そして親を殺した憎むべき男。 小説のようにただの下男だったなら、どれほど簡単だっただろう。 そして、小説と同じようにずっと好きだったと忘れられずにお前を追ってきたと言えたなら……。
「私は、ただ……幸せにしてあげたいと思ったの……。 だけど、私がいるときっと幸せになれない」
自分の存在が、真島を追い詰める。 それでも真島に一目会いたい、そして真島を幸せにしたいと思うのは――百合子の我儘なのだろう。 真島の幸せを願っているくせに、本当は百合子自身の幸せのためにそうしているのだ。 その事を考えると、どうしていいか分からず立ち止まって泣いてしまいそうだった。 走るのを止めて、追いかけるのを止めてしまえば、一度その足を止めてしまえばもう二度と前に進めなくなってしまうのではないかと不安になる。
「――諦めてしまえばいいじゃないか。 どうせ、人生なんて諦めるか諦めないかの二択しかないんだ」 「斯波さ――」
突然斯波が百合子を抱きしめた。 最初の頃の強引さが息を吹き返したように、燃え盛る炎に煽られるように。 百合子は手で斯波を押し返してみるがびくとも動かない、 根限りの力で斯波の腕を振りほどこうともがく。
「放して!!は、放しなさい!!!」
いつも斯波は助手だ助手だと言って、百合子を立てていた。 その関係が心地良く、また楽しかったので百合子はずっと斯波が助手であると思っていた。 しかし、今の斯波は百合子の助手ではなく、ただの男だった。 それも、強引で傲慢で――全てを自分の物にしたいと思っているあの頃の斯波のようだ。 あの頃は嫌だとしか思わなかったけれど、今はどうしてか心臓がどくどくと脈打つ。 それは不快なことなのに、どうしてか百合子はむずがゆいような快感を覚える。 昔より、少しだけ斯波の事を理解して知っているからかもしれない。
華族令嬢でもない自分を求婚し続けて、でもその理由を話してはくれない。
何かあればいつも百合子より一歩前に出て矢面に立つ。 百合子のために自動車を出し、奔走したり、扉を蹴破ったりする。
「あなたと一緒に居ることが出来れば、俺はそれだけで幸せだと思った」
斯波の言葉に百合子はどきりとした。 まるで、鏡に写した百合子のようだ。
(私たちいつも一方通行ね……)
そうか、斯波と百合子はどことはなしに似ているのだ。 意地っ張りなところとか、頑固なところとか、好きな人を思うあまりに考えなしで行動してしまう所とか――。 だから、百合子はどうすればいいのか――どうすれば自分ならばすんなりと受け入れるのかを考えて答えた。 怯える心を奮い立たせて、ぐっと斯波の目を見据える。 猛禽類を思わせる鋭い目、それを怯むことなく見つめているとふわりと斯波の腕がゆるんだ。 斯波は強引そうに見せかけて、その実どこか愚直な所があるのだ。
「斯波さん、諦める人生と諦めない人生なら――私は諦めないわ。絶対に諦めない。 何がなんでも真島に会ってやるわ」 「会ってどうする?」 「会って――会って……。 そ、それは会ってから考えるの! 斯波さん、私に利用されるのが嫌なら助手など辞めてしまうことね」 「……辞めるわけないだろう。俺だって、絶対にあなたを諦めんぞ。 ふ、まあ小説のように上手いこと行くわけないですからね。 せいぜい盛大に振られて、傷心したあなたを俺は狙わせていただく。 ……それにしても……真島――あの園丁か」 「どうかしたの?」 「いや――ところで、何か手がかりはあるのか?」
ふるふると百合子は首を振った。 真島の過去の事はほとんど調べた――けれど、今現在真島が何をしているのかは全く手がかりがない。 百合子なりに調べてはいるものの、これといった有力な情報もなかった。 新聞の広告欄に探し人で記事を打ってみたが何も連絡はなかった。 真島は写真を撮るのを嫌っていたのか、邸を片付けるときに色々と探してみたが何も残されていなかった。 本当に、百合子の前から消えるために彼はいなくなったのだと実感した。
「で、その園丁とあなたとどういう関係なんだ?」 「どう――って……」 「普通の令嬢と下男なのか? 身分違いの恋なら、ここまで苦労はせんだろう?うん?」 「随分と鋭いこと」 「はは、なあに。あなたといたら自然とこうなる」
百合子は少しだけ迷い、実の兄妹であることをのぞき斯波にかいつまんで説明した。 つまり、真島が百合子の父を憎んでいて父を殺したことを。
「何だ、じゃあつまりあなたの敵じゃないか。 ん、待てよ。あの夜会のならず者たちも仕込まれていたとしたら結構な金と人脈を持っていそうだな。 まあ、それにしても、そんな男を好きになるだなんてあなたもよくよく酔狂だな。 父上も草葉の陰で泣いているだろうに」 「それだから私だって迷ったり悩んだりしているんじゃないの。 それよりも、私も言ったのだからそろそろあなたも教えてくれてもいいんじゃないの?」 「――何をだ?」
分かっているくせに空っとぼけた口調で目を逸らした。
「だから、どうして斯波さんは私を好きなのかを、よ」
その言葉に斯波はにやりと笑って言った。
「推理してみればいいだろう?探偵殿」 「……もう思い出していると――言ったら?」
はっとしたような顔をして斯波が百合子を見つめる、百合子は黒目がちの瞳をまっすぐ斯波に向けた。 斯波は一瞬のうちにぐるぐると様々な思いが頭をめぐるのを感じた。 何か、何か言葉を発しようとするが舌が動かない。 一瞬、記憶の中の小さな百合子が今の百合子と重なる。 あの頃の百合子と今の百合子は全然違う。 見た目もそうだが、性格も随分と変わってしまった――その真っ直ぐな瞳をのぞいて。
「お姫……さん。思い出した……のか?覚えて――いたの、か?」 「ふうん、やっぱり昔どこかで会ったのね」 「な……!引っ掛けたな!」 「助手がこんな手に引っ掛かるなんて情けないわ。 それにしても、どこで会ったのかしら?」 「こいつめ……!もう、知らん!」
斯波は不貞腐れたように顎に手をやり、顔を背けた。
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百合子は斯波の自動車から降りる、最後に斯波はちらりとこちらをみた。
「斯波さん、ありがとう。おやすみなさい」 「ああ」
運転手が扉を閉める。 百合子は赤いテイルランプが見えなくなるまで自動車を見送った。 ふう、と息をついてみると全身から苦く甘いオーデコロンの香りがした。 それを嗅ぐとなんだか全身の力が抜け、急にどっと疲れが押し寄せた。 気丈に振る舞い、対等であるかのように気を張っても――斯波が本気になれば自分など赤子の手をひねるようなものなのだろう。 力強く抱かれた腕を思いだす。
(嫌なのに――嫌ではなかった……)
それは戸惑いだった。嫌悪ではなく、困惑だ。 きっと心が弱くなってしまっているのだ、だから――。と百合子は自分に言い訳してみせた。 それが白々しく空々しい事は百合子本人が一番���かっていた。
真っ暗な家の引き戸の鍵を開ける。 鏡子婦人の借家に移ってから、ほとんど瑞人は家に寄り付かなくなってしまった。 きっと、百合子の仕事が軌道にのったこともあるのだろう。
「ただいま帰りました……」
しいんとした家にそう呟いてみる。 けれど、誰もそれに答える者はいない。 部屋の明かりをつけて、両親の仏壇に線香を供える。 じじと赤くなった火元をぼんやりと見つめた。
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「酷いね、事件なのよ――」
鏡子婦人は開口一番百合子にそう告げた。 その重たい口調に、百合子は思わず身を正す。
「花街でね、女郎が殺されているの。 もう三人も。暴行されて、刺されて――」
血なまぐさい事件の概要にくらりと目眩すらする。 詳しく内容を伺っていると、凄惨な光景が思い浮かんだ。
「でも、そんな記事はどこの新聞にも――」 「そうなの、だって死んだのは娼婦ですもの。 誰も気にも止めやしない人間よ。 ふらりと消えてしまっても、誰も気がつかないような――」
そもそも女郎などが消えることはよくあること――だった。 逃げ出したのかもしれ��いし、病気で仕事が出来なくなりどこかに捨て置かれたのかもしれない。 何か厄介に巻き込まれてそのまま行方知れずになる者も多い。
「それでね、私の知り合いの方が警察では上辺の捜査しかしないからと――あなたを紹介したいのよ」 「分かりました、このご依頼お受けします」 「お姫さん、狙われているのは女郎だけど――あなたもくれぐれもお気をつけてね」
鏡子婦人が不安そうにそう添えた。
夜に真っ赤な提灯がはえる華やかな花街、そしてその爛れた暗い裏路地。 柔らかな女の肉を求めて、瞳を光らせている獣――。 そんなモノがうろついているのかと思うと、さすがの百合子も肝を冷やした。 その様子をどう受け取ったのか、斯波はひょいと身を屈めて百合子の顔を覗き込む。
「どうした?お姫さん。 ――ああ、そうか。こういう所は初めてか?」 「ええ、初めてだけど――」
ぎらぎらと照りつける太陽に吹き出る汗、道の日陰を選んで歩くが肌が焼けるように暑い。 浅草から日本堤を歩くと見返り柳が風に揺れていた。 一度大門をくぐるとそこはまるで別世界だった。 ちらりと門の脇をみると番所の人間が不審そうに百合子たちを目で追う。
門を過ぎると深い緑色をした川堀べりに、引手茶屋がずらりと並んでいた。 格子越しに、まるでこちらを品定めするかのように遊女が眼差しを寄越す。 道行く人の多くは男性で洋装も和装も入り乱れる、時折色とりどりの着物を着た年少の半玉か舞妓たちが振袖を揺らしながら歩き去る。三味線を抱えている集団は稽古帰りだろうか。
偉丈夫で上背のある斯波は目立つらしく、意味ありげな流し目が時折よこされたりしていた。 一方、洋装で短髪の百合子も悪目立ちし、じろりと不躾な視線を感じる。
「こういう所は、なかなか身内の事は語らないぞ。 信用と客商売だからな、変な噂がたつことを恐れるきらいがある」 「それも、こんな格好をした女探偵だったら尚更よね……」 「確かに、あなたは目立ちすぎるな……」 「あなただって」
鏡子婦人の紹介である、依頼人の大見世につく。 正面の玄関をくぐると、見世番が大見世の女主人である遣手の部屋へ案内した。 百合子を一目見て、女主人は一瞬眉をひそめる。
「あんたが鏡子さんの言っていた探偵さんかい?」 「はい、野宮百合子と申します」 「ふうん。そう、まあ実績はあるようだし、なにせこんな事件だからね。 うちの若いのにも色々調べさせてはいるが――」
じっくりと検分するように百合子を眺め、すっと斯波に視線を移す。 おや、と言う風に眉毛があがった。
「あらまあ、あらまあ、ここ最近ご無沙汰だと思ったら!」 「はは、相変わらず駆け引きが上手いな」 「嫌だね、駆け引きだなんて。ご無沙汰なのは事実じゃないですか斯波さん」
途端に年齢の割りにおきゃんな態度に変貌する。
「仕事が忙しいんだ」 「へえ、これも仕事の内……ですか?」 「そうだ」 「そう。時折噂だけは耳にしていましたよ。 新しい工場を稼働させたとか、あの有名な銀行の電灯を全て引いたとか」 「俺は金を出しただけだ、あとは部下に任せてる」 「で?――道楽で探偵ごっこを?」
斯波の話を聞きながら、女主人は煙管に火をちょんと乗せて深く吸って煙を吐く。
「道楽かどうかは、この先生の力を試してみてからにしてもらいたいな」
再び百合子に視線が注がれた。 先程の無遠慮な商品を値踏みするような目ではなく好奇心が勝った瞳だ。
「ふうん、斯波さんを顎で使う女がいるとはねえ。 おまけに、鏡子さんのお墨付きとくれば――話してみる価値はありそうだ」
かん、と煙管の灰を落とし、 女主人はゆっくりと、概要を語り始めた。
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こういう事件はね、見世同士の争いもあるから周知されるのが遅かったりするんだ。 置屋で商品である遊女が殺されたとあっては見世の信用に関わるからね。 こっそりと若い衆を使って犯人を探してみても、結局は分からずじまい。 そもそも、小見世や中見世なんかはもうそのまま死体を片付けて、はい終わり。っていうのが多いのさ。 犯人を探し出して裁こうとか、遊女の無念を晴らそうなんて事を考えている人間はこれっぽちもいない。
だって、儲からないじゃないか。 死んだのはただの遊女、それこそどこそこの太夫だとか有名な花魁だとかになると話も違ってくるが――。 殺された多くの女は、格下の性技で金を稼ぐ女郎なんだから。 そう、代わりはねいくらだっているんだよ。
ただ、もうすぐ八月の朔日だろう。 花街の芸者衆がたくさんのお囃子を引き連れて通りを練り歩く祭礼だ。 それこそ、うちの大見世の楼主が取り仕切っている恒例の行事だよ。 だというのに、どこそこの女郎が死んだの殺されたのと言った噂がちらほらと囁かれるようになってご覧。 誰の面子が潰れるって、それはうちの楼主だろう。
警察なんかは頼りにもならないし、それこそ黒い制服が集団で花街を踏み荒らすも我慢ならない。 鏡子さんはこういう類の事なら東京一だし、と思って相談したのさ。
ああ、最初に殺された女郎? そうさね。私も詳しくは分からないが中見世のそこそこ有名な女郎だったそうだよ。 仕事の最中なら犯人はその相手だとすぐに分かるのだけど、なにせ人通りのない裏路地で殺されたそうだから――ならず者の仕業だろうって。 人気はあったけど、置屋ではあまりよく思われてなかったのかね。 ろくに死体の検分もせずに、すぐに寺に埋葬されたそうだ。
――まあ、そうは言っても全て人づてに聞いた話しさ。 奇妙なのはその後さ、ひと月と置かずにまたひとり、またひとりと女郎が殺されている。 そうなると、その殺人鬼の噂が人の口の登るのはあっという間だったね。
どの見世も不寝番っていう見回りを増やしたし、遊女たちも必ず見世番をつけるようになった。 それなのに、次々と遊女が殺されていく。 それも悪心しそうなことに、女郎は何度も何度も刃物で刺されて――それも女陰をだよ。 二目と見られない惨状だと言うじゃあないか。
きっと、女郎たちを殺したのは鬼さね。 それでなくとも、人間などではありはしないだろう。 人間の出来るような所業ではないよ、鬼か獣か――そんなものだろう。
とにかく、私たちとしても朔日の祭礼に合わせるためにもこんな気味の悪い事件などさっさと解決してもらいたいって事さ。 あんたのようなお姫さんに何が出来るかは分からないが、鏡子さんを信用してひとつあんたに掛けてみるよ。
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百合子はまず最初の事件が起こったと言う見世に行ってみた。 しかし、見世の妓夫は百合子の顔を見たとたんに、鼻先で玄関の引き戸を閉めた。 仕方ない、と他の見世にも回ってみるがどこも同じような反応だった。
「……仕方ないのかしら?」 「いや、おかしいな。いくらよそ者とはいえ――何も聞かずに……など。 何か俺たちの悪い噂でも回っているかな」
斯波はそう言うと、見世の妓夫に何やら話しかける。 何度も妓夫は首を横に振るが、斯波が心得たように色々と話し続ける内に事の次第が見え始めた。
「どうやら、お姫さんが原因のようだ」 「私が?なぜ?」 「――それは本人に聞いたほうがいいかもしれんな」 「本人?」 「向こうの茶屋にいるそうだ――行ってみよう」
斯波に連れられて、角の茶屋へ向かう。 茶屋の妓夫を斯波は手慣れたように言いくるめて二階へと階段を登る。 昼下がりの静かな置屋の一角で障子が閉められた部屋だけが、しゃんしゃんと三味線が鳴り騒がしい。 斯波は遠慮無くその障子を開けると、その部屋の主を見て笑いながら言った。
「ほう、昼間から芸者遊びとは――なかなかお楽しみのようですね。殿様」 「なんだ、遅かったね。――こっちはもう酔いつぶれてしまったじゃないか」
足を崩し、ゆったりと腕を芸妓に預けているのは瑞人だった。 片手には日本酒の銚子をもち、清廉な水のようにそれをあおる。
「お兄様?」 「ほらね、やはり来ただろう?あれが僕の妹だよ」
くすくすと横にいた芸妓に告げる。
「どうして、僕の嫌な予感はあたってしまうんだろうね。 花街でこの事件のことを聞いたとき、どうしてかお前が関わってしまうだろうと思ったのだよ」 「だから、見世に��告したのか。 洋装で短髪の女に何も話すな、と」 「妓夫の口を割らせたことは素直にすごいな、斯波君も随分と花街に詳しいみたいだ」 「……ふ、否定はしませんよ」 「それで、君は何をやっているのかな。 こんなところに百合子を連れてくるなんて危険だと思わないの?」 「殿様が殿様なりにお姫さんを守ったように、俺は俺なりにお姫さんを守るつもりだ」 「……百合子、こんな事件に関わっちゃいけないよ。 今度ばかりは僕が許さない。――お前はここに居てはいけない」 「どうして?私の依頼だわ、受けるか反るかは私が決めるわ! お兄様は勝手よ!勝手がすぎるわ!!」 「そう、じゃあ好きにおしよ。お前も僕もこうと決めたら頑として揺るがない。 僕は全ての見世に、洋装で短髪の女は雑誌の編集者だから気をつけろ、と助言する」 「どうぞご自由に、私は絶対に諦めませんから!」
百合子が鼻息荒くそう言うと、乱暴に障子を閉める。 どすどすと音を立てて廊下を歩き、斯波を引き連れて依頼人の大見世に戻り事情を話す。 そして、鞄の中からいくらかの金子をとりだし、女主人に手渡す。
「これで、私に着物とかもじを貸してくださいませ」
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「流星先生!文藝賞の受賞おめでとうございます!」
作家はぱしぱしとストロボがたかれるカメラに囲まれながら、ワインを片手に頭をがしがしとかいていた。 普段はさっぱり身なりを気にしない男だが、今回ばかりは立派な羽織り袴を仕立てていた。 ぼさぼさの髪の毛も品よくまとめ、無精髭も綺麗に剃っている。
「今回、他の賞も二つ受賞した前代未聞の作品とのことですが――受賞の理由を何とお考えですか?」 「やはりね、リアルさだと思うなあ」 「リアル、というとモダンガールを題材にした――というところでしょうか。 しかし現実に考えて、令嬢で女性で探偵――という筋書きはやはり創作の枠を出ないのでは?」 「はっはっは、事実は小説より奇なり、という言葉があるようにね。 ほら、この主人公の女探偵も数奇な人生を歩んだ女性が手本になっているんですよ」 「は?……で、では――この主人公にモデルがいると?」 「そう、野宮百合子君といってね、僕の編集者なんだよ」
その言葉に新聞記者たちは一斉に作家の言葉を、紙に書き連ねる。 そしてその中の記者の一人が、驚いたような声で作家に問う。
「野宮――というと、数年前に暴漢に殺された――あの野宮子爵ですか?」 「そうそう、ああ、そうか当時記事にもなったよねえ――あのお嬢さんの……」 「あなた?ちょっとお酒が入りすぎているのではありません? 皆様申し訳ございませんが、夫は少し酔っていたようですの――失礼いたしますわね」
作家の男の言葉を遮ったのは婦人だった。 よろよろとした作家の足元、身体を支えながら記者たちから離れる。 壁際に用意されていた椅子に座らせて、眦を釣り上げて怒鳴った。
「あなた!!絶対に飲まないと仰ったじゃない!」 「うん、大丈夫。飲んでないよ。うん、飲んでない」 「おまけに、記者の前であんな事を言うなんて……!」 「あっ!!!」 「もう今更、なかったことに――なんて出来ませんよ?! ああ、もう夕刊の一面は決定だわ。受賞のことと百合子さんのこと――」 「そうだ、あの成金と主人公が好き合うという展開はどうだろう!!!」 「あなた!!!!いい加減にしてください!!!!!」 「そうだよなあ、やはりその展開はないか――」
ぼんやりと赤い顔をしてつぶやく作家を見て婦人は深くため息をついた。
(百合子さん……ごめんなさいね……)
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「おっ、これはどうして、いや、なかなか! なんとも初々しい出で立ちじゃないか。 ああ、これなら花街にもよく溶け込むな」 「そうかしら?――おかしくはない?」 「何を言う、おかしいものか。 考えてみれば、なんだかあなたの着物姿は久しぶりだな。 おっと、そうだ。変な輩に絡まれないように俺があなたの旦那になってやるからな」
島田髷に結ったかもじに、斯波が花飾りのかんざしをつける。 白塗りした肌���項まで白く赤い紅をさし、頬紅をはたくと鏡に写る百合子はまるで花街の通りを歩く芸妓のようだった。
「もう、おべんちゃらはいいから早く行きましょう」
つんとそっぽを向いて足を踏み出すが、履き慣れないぽっくり下駄でよろめいてしまう。 耳元でさらさらとかんざしが揺れ、音を立てる。 斯波はさっと百合子の脇に腕を入れて、すんでのところで抱きとめた。
「っと、危ないな。 はは、転んでしまっては新人芸妓だと笑われるぞ」 「だって、これ……すごく歩きにくいもの」
ころころと軽い音がするぽっくり下駄は独特のかたちをしており、 高い下駄はつま先が厚く踵が浮いている。 そのため歩こうとするとついつま先と鼻緒に力が入ってしまい、前のめりにつっかかるような心持ちがする。
「どうした、ほら、旦那様の腕につかまって歩けばいいだろう?」 「斯波さん……何だかすごおく楽しそうね」 「ああ、楽しいな。 助手になって初めてだ、こんなに楽しいのは」
そう言うと屈託なく笑うので、思わず百合子もつられて笑ってしまった。 百合子は大人しく斯波の腕につかまり、そろそろと一歩、二歩と歩き始める。 また転びそうになると、ぎゅっと強く斯波の腕を掴んで事なきを得た。
そんな調子で二人はいくつかの見世を回り、情報を仕入れる。 最初は旦那をつれた半玉に不審な顔をしたが、百合子のかんざしが大見世のものだと分かると態度は一変し、更に「八朔の祭礼を前に不審者を洗い出している」と言えばとつとつと口を開いた。 どの見世でも、殺された女郎の評判はまちまちだった。 痴情のもつれか何かかと思っていたがそうではないようだ。 しかし、無差別と決め付けるにはまだ早過ぎる、何か繋がりがあればそこから犯人を割り出すことが出来る。
「特に美人ばかりが狙われているようでもないようだな。 さて、お姫さんどう思う?」 「そうね、狙われたのは花街の明かりが落ちる朝から昼にかけて、 最初の一人をのぞいてほぼ全員が不意打ちで頭を殴られてから人通りの裏道へ引きずり込まれてるわ」 「と、言うことはそれなりに花街の裏道に詳しく、土地勘のある者か」 「それに、以前の令嬢誘拐事件の犯人と違って、女郎たちをそそのかす術はないようね。 女性を巧みにおびきよせるような技術は持っていない、だから不意を打って気絶させている」 「そうだな。それにしても女陰を滅多刺しにしているのは、どういう意味があると思う? 生前にも死後にも強姦したという検分は出ていないそうだが……」 「――分からないけれど、そうせざるを得ない理由があるような気がするわ」
最初の事件があった見世の若い衆に事情を聞き終えて、二人は茶屋で冷たい緑茶を啜る。 軒先の影に水をまいているが、すぐにも蒸発して湯けむりになりそうなほど太陽の日差しがきつかった。 斯波は流れ出る汗をポケットのチーフで拭く、百合子も化粧が落ちているではないかと時折項にまで手をやって確認してみる。
「こんな格好で事件の捜査なんてとても出来ないわね」 「そうだな、まあ、だが、その格好だから聞けることも多いが。 ――それにしても、あなたと殿様との喧嘩は愉快だったな」
百合子は斯波の言葉にむっとして。
「何が愉快よ。まったく、お兄様ときたら!」 「まあまあ、殿様の気持ちは分かるだろ?」 「何よ、あなたまでお兄様の味方するつもり? いつもは仲が悪いくせに、こういう時だけいつも仲が良いのね!」 「おいおい、まあそうむくれなさんな。 ほら、俺の白玉もやろう。 さて、と。この後はどうする?昨日殺されたという女郎の現場が近いから行ってみるか? 何か分かるかもしれん」 「そうね、ええ、そうしましょう」 「おい、お姫さん。紅が落ちてるぞ」 「え?ああ、もう直さなくちゃ」 「どれ、貸してみろ」
百合子が練った紅が詰まった缶を取り出すと、それを取り上げる。 節くれだった無骨な手が器用にそれを開けると小指にそれをつける。
「ほら、唇をこっちに寄せろ」 「なっ、じ、自分でやるわ!」 「鏡もないのにか?」 「うっ――」
百合子の鞄は大見世に置きっぱなしで鏡もその中だった。 今持っている小さな巾着には手ぬぐいと紅の缶と白粉ぐらいしか入っていなかった。 化粧も女主人である大見世の遣手が施してくれたのだが、真っ赤な紅を自分で塗るには百合子は不器用過ぎた。 けれど、男性に紅を塗ってもらうという行為はどことなく恥ずかしく照れくさかった。
「はみ出さないでね」 「大丈夫、大丈夫」 「変にしたら怒りますから」 「ああ、まかせろ。あなたも疑り深いなあ」 「――はあ……」 「役得、役得♪」
斯波は嬉々として、とんとんちょんちょんと小指を百合子の唇にのせる。 百合子は斯波の顔があまりにも近すぎると感じ、すうっと瞳を閉じて身体を固くして終わるのを待った。 何も緊張することなどないのだ、と自分に言い聞かせてみる。 触れられた唇は百合子の意思と反して斯波の指の感触をいちいち柔らかいだの湿っているだのと感じてしまっていた。
花街にぽつぽつと明かりが灯り始めると、昼間はしんと静かだった店々がわいわいと賑わいを見せる。 それでも、二つも道を中に入ると花街の喧騒とは切り離されたように静かだった。 時折、妓夫や見世番がすすと通りをすり抜けるだけの裏の道だ。
つい先日女郎が襲われたというそこは水が撒かれて血を洗い流されていたが、土が血を吸ってどす黒く変色していた。 死体はすでに埋葬されたらしく、末期の水らしいものが質素な湯のみに入れられていた。 斯波は当たりを見��わしてみる。
「特に――変わったものはないな」 「あら?鬼灯が落ちているわ……」
誰かの献花かしら、と百合子がそれを拾う。 真っ赤な風船のような実は誰かに踏まれたらしく、潰れて中身がぐじゃりと潰れていた。
「鬼灯か――」 「どうかして?」 「いや、俺はあまり鬼灯にはいい思い出が無いんだ――まあ、あの頃の思い出といえば何も良いものなんかは無いが……。 それより、どうする?最初の事件があったという見世に行ってみるか?」 「そうね、最初の事件は他のと似ているけど――何だか気になるわ」
そう言ってその場を離れようとしたときに、一人の禿と出会した。 その手にはどこの庭からか摘まれた野花が握られている。
「もしかして、ここで亡くなった方に?」
百合子が問いかけると、禿はこくりと頷いた。 おそらく、その女郎付きの禿だったのだろう。
「お姉さん、すごく優しかったんよ。 他のみんなは意地悪なんじゃけど――でも死んじゃった」 「そう……。 ねえ、お姉さんは誰かに付きまとわれてはいなかったかしら?」
禿は力強く頷く。
「お姉さんを水揚げするいうて言う男の人がおったんじゃけど、 ほんとはそんなお金ないんよ。 でも、お姉さんのこと自分のものにしよ思うてる人おったわ」 「どんな人?名前は分かる?」 「うん、でもなあ。言うたらおえんのよなあ。 そんでな、お姉さんな、その人の赤ちゃん出来てしもうたんよ」 「赤子?」
急に斯波が声を荒らげたので禿はびくりとして、目を逸らした。 百合子はなおも禿の目を見やり、続きの言葉を待つ。
「ん、でも――きっと赤ちゃんも一緒に天国にいきよるよな。 お姉さんの赤ちゃんじゃけん……」
禿がぽろぽろと涙をこぼしながらその場で手を合わせるのを見て、 百合子は胸が詰まった。同じようにしゃがんで手を合わせる。 禿は膝についた土をぱんぱんと落とすと、百合子たちに深くお辞儀をして帰っていった。 どうやら二人を大見世の芸妓とその旦那だと思ったようだった。
「百合子さん、やはりその鬼灯には意味がある」 「これ?――それはどういう……」 「いや、ほかの現場にも落ちていなかったか――確かめに行こう」
そう言うと斯波は入り組んだ裏道を使い、目的の見世を回る。 斯波の言うとおり、確かに現場に鬼灯が落ちていたという見世がいくつか見つかった。
「あったぞ、殺された女郎の共通点が――」 「鬼灯がそうなの?一体どういう意味なの?」 「殺された女郎たちはみな、おそらく妊娠していたと思う。 そして、この鬼灯っていうのは根の部分に毒があるんだ」 「毒?」 「そう、堕胎を促す毒だ。 この鬼灯を落としたのが流産しようとした女郎か、それとも犯人かは分からないが――」 「ねえ、もしも殺された女郎が身ごもっていたのなら――その、赤ちゃんの死体が検分で見つからないというのは――」
そこまで百合子が口にして、斯波は漸く分かったと頷いた。
「女陰を切り裂くのが目的じゃない、胎児を持ち去っているんだ。 目的は分からないが――おそらくそのために女陰を切り裂いているんだ。 それに、そうなると身ごもっている人間を狙っているなら犯人は限られてくる」 「どうして?」 「――芸妓や女郎が妊娠することは”恥”だとされていたんだ。 教えるとすれば身近な人間だろう遣手の女主人か禿、あとは医者ぐらいか――」 「お医者さんなら、殺された女郎たちを診察したかもしれない。 犯人かもしれないし、何か繋がりがあるかもしれない」 「よし、ではさっそく話を聞きに行こう」 「――斯波さん、先程のことといい随分と花街に詳しいのね」 「……ここではないが、俺も花街で育った人間だからな」
思いがけない言葉に百合子は思わず聞き返した。
「え?」 「俺も堕胎しそこねた”芸妓の恥”の固まりのようなものだ」
卑屈な物言いに、百合子はそんな事はないと言いたくなった、 そしてそんなひねくれた言い方は斯波らしくないと、思った。
「芸妓の姉さんたちの使いっ走りをやらされたり、妓夫の真似事のようなこともした」
花街に慣れている様子の説明がすとんと落ち着く。
「結局、俺は妓夫にはなりそこねましたがね」 「いまは貿易会社の社長だわ」 「そうだな。 そういうわけだから、この界隈の闇が俺には色濃く見える。 華やかできらびやかな光、その影は光が強いほど濃い。 この闇にどんな獣が潜んでいても、俺は何も不思議じゃないな」
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「ほう、それで今まで堕胎した女郎の名前を教えて欲しいと――」 「ええ」 「うむ、まあ――正直に言うと明確には覚えてない」 「ではこれまでに殺された女郎にお心当たりは?」 「ある者もいるが――大抵は薬を処方して終わりだからの。 流産は早ければ早いほど良い、医者にかからねばならんほど育っていては殆ど手遅れじゃ」
花街の医者はそう言うと分厚い丸眼鏡をかちゃりと正す。
「では、堕胎の薬をとりにきた使い走りや禿で何か変わったものはいませんでしたか?」 「ああ、そう言えば――妓夫だったがな。 薬をとりにきたのだが、用法と用量を説明していたら急に真っ青になってな。 結局そのまま薬を置いて帰ったんだが――」 「だが?」 「気のせいかもしれんが、それ以降よくここら辺りで見かけるようになったんだ。 まあ、この辺りは裏道で妓夫や見世番なんかはよく使う道ではあるんだが」 「どの見世の妓夫か覚えておられます?」 「ああ、まてよ――確か、ほら、あの川べりの角の――」 「最初の事件があった見世だわ」
百合子は遣手に取り付いだ見世番と妓夫を思い出す。 見世番はがっしりとした体躯で声が張っていたのは覚えているが、妓夫は少し顔を見ただけで覚えていなかった。
「お姫さん、俺の勘だが――その妓夫はきっと芸妓の子だぞ。 堕ろされずに生まれた芸妓の子供は女ならそのまま芸妓へ、 男なら見世の妓夫か見世番あたりになるのが通例だ」 「ええ、おそらく――堕胎される子を自分と見立ててしまったのね。 でも、だからと言ってなぜ殺すのかしら……」 「きっと、そいつには絶望しかなかった。 真っ黒な闇しか……一点の清い光もなかったんだろう」
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二人が足早に最初の事件が起こった見世に向かい、大通りに出るとそこは夜の花街とは言え人が多すぎた。 斯波と百合子は立ち止まり、道行く人に声をかける。
「一体、何事だ?」 「例の女探偵が花街の連続殺人事件に関わっているらしいよ」 「女……探偵?」 「ほら、この新聞を見ろよ。なかなかのべっぴんさんだろう?」 「……!」
斯波と百合子は思わず息をのむ。 男が広げた新聞には大きく百合子の写真が載っていた。
『令嬢探偵、花街に巣食う連続殺人鬼と全面対決!』
細かい文字でびっしりと花街殺人事件の概要が載っている上に、なぜか百合子の生い立ちから没落にいたるまでも書かれていた。
「一体……何でこんなことに……」
瑞人が花街の見世に仄めかした女探偵の噂。 花街の連続殺人の噂。 そして授賞式での作家の言葉によって偶然が積み重なったのだった。
元々話題性は十分にあった作品の受賞だけに、様々な出版社や新聞社で特集を組まれていた。 その過熱した話題にさらに飛び込んできたのが、主人公には実在するモデルがいるという作家の言葉だった。 各社がそのモデルの名前を調べてみたところ、これまた見目の良い新聞の写真で映えそうな美しい令嬢、そして不遇な人生の系譜が判明する。 令嬢の人生を紐解いてみると、幸せな日常からの転落、借金借財、貧乏、そして父親と母親の死。 爵位を返上し借財を返すために挫けずに日夜働いている――という王道の歴史だった。 この手の話が好きな庶民にとって、まさに娯楽作品と言えるだろう。
「あれ?そこの芸妓さん、このお嬢さんとどことはなしに似ているような……」 「――嫌ですわ、私なんかが華族令嬢と似ているはずがないでしょう」 「それもそうか、わははは」
男は笑いながら歩き去るが、百合子は内心ひやひやしていた。 これでは、おそらく事件が起こったどの見世も人だかりやら新聞屋やらが集まっているだろう。
「ひとまず、大見世に戻るか――お姫さん三本奥の裏道を行け、まっすぐ行って角を曲がるとすぐだ」 「ええ、――斯波さんは?」 「俺もすぐ行く」
百合子はようやく履きなれてきたぽっくり下駄をころころと鳴らしながら転ばないように、裏道を小走りでかける。 表の通りと比べると随分と静かだった。 それでも、暗くなって僅かな提灯の明かりしかなく足元が危うい。 前からさっと黒い影が近づくのに、一瞬気づくのが遅れすんでのところで身を引いた。
「あ、すみません――」 「いえ……」
ほんのわずかな、明かりだった。 それでも相手の黒い影が一瞬だけ、光を浴びて横顔が照らされる。
百合子ははっとした。
それは、相手も同じだった。 不意のぎこちない間。
一瞬でお互いが何者であるか、お互いに理解した。
百合子がみた人影は、妓夫だった。 ひょろりと痩せていて、色の悪い肌に落ちくぼんだ目――。
妓夫は百合子が”気がついたこと”を敏感に肌で感じ取った。 まさに獣のような本能だろう。
焦る様子もなく、すうと身を引きぬらりと脇から刃物を抜いた。 まるで流れる水のように、自然に。
そして百合子の腹部を刺した。
「お姫さん!!!」
百合子は抱き上げられぶんと放り投げられた。 とおん、と遠心力でぽっくり下駄が脱げていくのがゆっくりと見える。 どさっと腰から地面に落ちると、その後は時間がぎゅうと凝縮したかのように短かった。
「待て!」
斯波が怒鳴るのが早いか、妓夫は慌てたように逃げ出した。 百合子は一瞬だけぼっとして、斯波を見る。
「お姫さん、無事か?!」 「ええ、――ええ」
そう言われて、刺されそうになった腹部に手をやる。 固い帯が手にあたり、どこもなにも感じ無い。痛くもかゆくもなかった。
「よかった……」
そういうとぶわりと尋常ではない量の脂汗が斯波の額に浮かぶ。 がぐんと膝が折れ肩から地面に崩れ落ちた。
「斯波さん?」
百合子が慌てて斯波を支え起こすと、黒地の背広がぬたりと湿っている。 いつもと同じ赤っぽいベストを着ているが、その色もどす黒く見えた。
「斯波――さん!斯波さん?!」
百合子は悲鳴をあげていた。
「だれか――!だれか!!」
手を血の色に染めて混乱したように叫ぶ百合子。 斯波は苦しそうに呻きながら、その手首を強く握った。
「追、え……」 「でも、――でも!!」 「追え!!」
斯波の力強いその眼差しに、百合子の戸惑っていた心が奮い立つ。
「この人をお願いします!」
集まった見世の若い連中にそういうとすっくと立ち上がる。 投げ飛ばされた反動で脱げた片方のぽっくり下駄と同じように、もう片方の下駄を脱ぎ捨てる。 崩れて落ちるかんざしやかもじを投げ捨てて百合子は妓夫を追った。
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前代未聞の捕物劇は花街のみならず、東京中に広まった。 何しろ、運の悪いことに新聞屋の多くがカメラをぶらさげて例の令嬢探偵を一枚撮ろうと待ち構えていたのだ。 記者からすれば、待ち構えていたら想像以上に良い記事��転がり落ちてきたようなものだ。 次の朝には、東京で探偵野宮百合子を知らない人間はいなくなった。
一方の百合子は昏睡状態が続いている斯波の病室で編集部へ辞表を書き、郵送した。 家へ帰っても新聞の記者や見物人が集まっているため病院の近くのホテルを借りて寝泊まりしている。
斯波は身寄りがいないため、身の回りの世話は斯波の部下である山崎と百合子が交代で行った。 山崎もきっと百合子に色々と含むものがあるに違いないだろうに、おくびにも出さない。
四日目、ようやく斯波は目を覚ました。 百合子の顔をみると、自分の怪我の事などどこへやら。
「ああ、お姫さん。怪我は――ないな――」
熱に浮かされ憔悴しきった顔で微笑んだ。
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乾いた斯波の唇に、綿を水で湿らせたものをあてる。 麻酔が切れて傷口が痛むのか、眉間に皺をよせて少し唸った。
「百合子さん……」
かさかさに枯れた声だったが、斯波は百合子の顔を見てそう言った。 百合子はうっすらと開いた斯波の目を見て頷く。
「無事か……」
何度同じやりとりをしただろうか。 斯波は傷口の熱にうなされて、何度も何度もそう問いかける。 それはうわ言のようだったが、今はうっすらとではあるが眼の焦点が合い百合子を見て実感するように一音、一音を搾り出すように言う。 百合子はその度に斯波の大きくてひんやりとした手を握って身を乗り出す。
「ええ、無事よ。私は無事」 「よかった――」
百合子が答えると、斯波は心底安心したように目を閉じる。 このやりとりはこの一週間で何度も何度も繰り返した。 ただ、この日だけはいつもと違って、斯波は妙にはっきりとした口調で百合子に言ったのだった。
「俺はあなたに返さないといけないものがあるんだ」 「何?あなたが私に?」 「ああ、ハンカチだ」
確かに、病院に運ばれるまで傷口を押さえるためにハンカチを使った。 妙なところだけはっきりと覚えているものだな、と百合子は思う。 握った手を両手で包み込んで頬に寄せる。
「あなたにあげるわ」
ふ、と百合子の記憶の奥底で何かがゆらめく。 そう、いつかどこかで同じようなやり取りをしたようなことがある――。 それが何か思い出せそうで、思い出せない。 それともただの記憶違いだろうか、百合子はほんの一瞬だけ心に翳ったその思いつきをそれ以上深く追いかけることは出来なかった。 斯波はまたふっと目を閉じて、ゆるやかな寝息をたてる。 額にかかる前髪をゆっくりとかきわけてやりながら、わずかに乱れたシーツを整えた。
斯波は憑き物が落ちたように、次の日からはっきりとした意識を持ち始めそれからわずか半日後には起き上がって重湯を食べ始めた。
「はい、斯波さんお粥食べる?」 「……こんな糊のようなものは粥とはいわん」 「一週間飲まず食わずだったのよ? いきなりお粥なんて食べれるわけがないでしょう!」 「たった5針だぞ」 「……7針よ」 「どっちも同じだ」 「同じじゃないわ。 本当に危ない状態だったのよ。 ほら、大丈夫?匙で掬ってあげるわ」 「――ああ、くそっ、情けない」 「いいから、今は養生してちょうだい。ね、お願いだから……」
懇願するような目で百合子が言う。 それが最初は少しだけ嬉しかったが、今では利かん気の子供を宥める母親のようだと思った。 斯波はお椀をかたむけてずるずると重湯を飲み干すが、まだ足りないらしく不満そうな顔をした。 白い入院服を着ている斯波は、いつもの尊大な態度をとってみてもどこか弱々しく見える。 それでも、意識がはっきりし始めてからは治りが早かった。
「で、お姫さんに介護されるのは嬉しいが、今はどうなっているんだ」 「――どうもこうもないわ。家には記者だらけだし、編集部の方には応援の手紙だとかいたずらの手紙だとかが山と届いているようだし」 「世間は華族様のゴシップが大の好物だからな。 で、仕事の方は大丈夫なのか?まあ、今はまともに働けそうにもないが――」 「……」 「どうした?」 「辞めたの」
百合子はすっと目線をそらして、つぶやいた。 出来るだけ何事でもないようにつまらなそうに言い放つ。
「辞めた?――どうして」 「諦めたの」
何もかもがぐちゃぐちゃになって、到底探偵も編集も続けられないと思った。 焚かれるストロボの眩しさや、人々の喧騒、そして視線。 あることないことを書き立てられた新聞の記事。 とてもそれらに耐えられないと思った。 そうして気がついたら、辞表を書き郵送してしまっていた。 その事は――今でも後悔するが、それでも幾分かは楽になった気がする。
以前、斯波が言った。 人生など諦めるか、諦めないかの二択だと。
「私らしくないと、笑うでしょう?」
百合子は斯波の視線が恐ろしくて、目を逸らしたまま先に言い訳をした。
「そうよ。私なんて特別でもなんでもない普通の女なのよ。 私は怖くて逃げただけ、新聞が書き連ねるような才女じゃないし勇敢でもないわ」
早口でそう言ってしまう。 きっと斯波はこんな自分に呆れて落胆して軽蔑しているだろう、そう思った。 だから、さっさと自分が最低なことは自分が一番理解していると告げてしまいたかった。 ふと斯波の大きな手が百合子の横髪をかきあげて、頬をなでる。 その時ようやく百合子は斯波の瞳を正面から見た。
「俺は小説やら新聞やらが書きたてている令嬢ではなく、あなたが好きなんだ。 強がりなところも、その泣き虫なところもな」
そう言われて百合子は、はっとしてあわててごしごしと目元をぬぐった。 感情が昂ぶって気がついたら目から涙がこぼれていた。 変に誤解されてはたまらないと、わざと荒っぽく袖を使う。
「どうだ、そろそろ俺に嫁ぐ気になったか? こんなにもお姫さんを愛してるのは俺ぐらいなもんだ」 「でもそれじゃあ斯波さんを利用しているみたいで嫌なの」 「借財のことを言ってるのか、俺は構わないと何度いえば……。 いや、そもそもそういう事を気にすること自体俺を好きになっていると言うことだ。 どうだ、違うか?」
斯波は自信たっぷりに聞き返す。 ぐっとつまり、言い訳も浮かばずに百合子は押し黙った。 その様子をみて斯波は満足そうに頷く。
「どうせ諦めたのなら――」
ぐいと百合子の腕を引っ張った。 つい先日まで寝たきりだったのにどこにそんな力があるのかと思うほど強い力で掴まれて、 そしていやというほど斯波の鋭い眼光に睨まれた。 百合子は、斯波が自分を庇って怪我を負った事に責任を感じていた。 意識不明の中、自分のことよりも百合子の事を気にかけ続けた斯波にこれ以上無いほど借りができてしまったと思った。 そうだ、どうせ諦めてしまったのなら。斯波と一緒になってしまっても、もう同じようなものだ。 百合子はずっとそう考えていて、だから今斯波に腕をとられてもいつものように振り払ったりはしなかった。
「どうした、随分とおとなしいんだな」 「……斯波さんのお嫁さんになってもいいわ……」 「――本当に?」
百合子はすっと視線をずらして、わずかに沈黙してこくりと頷く。 視界の端で斯波が一瞬くすりと笑ったような気がした。 しかし、途端に引き寄せられて強引に口付けされた。
唇に吸い付く熱い感触に驚いて胸を押し返そうとして、はたと手を止めた。 ぎゅうと手を握ってゆっくりとおろす。硬直したまま斯波の口付けを受ける。 斯波は寝台から起き上がり、痛む脇腹を庇いつつ百合子の髪に指を差し入れて一層深く接吻するように抱き寄せた。 強く目を瞑って、そ���口付けが終わるのをただただ待つのみの百合子だが、 舌を吸われ下唇を舐られて終わりの見えないその行為に心臓が早鐘を打つ。
ようやく解放されたと思ったら、今度は寝台の上に引っ張り込まれる。 さすがの百合子も慌てて身を起こすが、斯波はそれを手で抑えて許さなかった。
「――っ痛」
縫合したばかりの傷口を庇いながら百合子の上に覆いかぶさる。
「き、傷口が開くわ!」 「そんな事はどうでもいい」 「よ、よくな……」
なんとか止めさせようと反論するが、 ぷつりぷつりと器用に片手だけで洋服の釦をはずされてしまう。 薄い下着を一枚身に付けているだけの胸元が開かれて、百合子は羞恥に赤くなった。 胸元にレースのついた下着を押し上げられ、白い胸が露になる。 喉元、鎖骨、胸の間に吸い付く斯波。百合子は歯を食いしばって口元を引き結び、斯波の愛撫に耐えるように枕に頬を押し付けた。 斯波は百合子の肋の辺りから手のひらを入れてさまぐり、柔らかな胸を揉みながら指先でその先端に触れる。 びくりと百合子が反応し、身体をねじって抵抗した。 熱い息がこぼれ、白い胸元にかかる。 先ほどまで百合子の口を吸っていた斯波の唇が、固く尖った百合子の乳首に押し当てられた。 舌で扱かれ、強く吸われる。 がくと足が震えて力が抜けると、その股の間腿を押しのけて斯波の下半身が割り込む。 百合子はついに斯波の身体を両手で押し返して抵抗した。
「諦めたなんて、嘘をつくからだ」
斯波はあっさりと百合子を解放して寝台から起き上がると、 呆れたようにがしがしと髪の毛をかく。
「ごめんなさい……」
他に言葉が思い浮かばずに、それしか言えなかった。 身を整えて、一息つく。思い出しても手が震えるので、今更に自分の行動を省みた。 どんどん自分が嫌な人間になっていくような気がした。 人生の岐路に立つ時、どちらの選択肢を選ぶか、と迷う。 そして、どちらを選ぶのがもっとも自分らしいかということ。
「まあ、国家予算並と自称しているあなたの接吻づけを奪ったのだからお互い様だな。 それに、身を挺してあなたを守ったのだからこれぐらいの褒美があってもいいだろう」
茶化すように斯波は笑った。 普段の百合子ならその尊大な物言いに文句をつけるところだが、今は肩を落としている。
「ん?どうした?」 「――っ、だ、だって……む、胸を……」 「胸がどうかしたのか?」 「む、胸を舐め……舐めて……」
斯波が覗き込むと、百合子の顔が真っ赤になっていた。 熱を帯びたように目が潤んでいる。 百合子はまともに斯波の目を見られないようで、視線を逸らしながら後ずさった。
「何だ、そうか――接吻も初めてだったしな。 あなたの乳房はまだ青く固さが残っているが、なかなかの重量と触り心地だった」 「なっ――ち、乳房……」 「白い柔肌からは甘い香りがしたし――」 「い、言わないで……」
ばすっと荷物をとり、そのまま後ろ向きで扉まで下がる。 耳まで、首の根元まで真っ赤にして、高鳴る心臓を誤魔化しながら消え入りそうな声で告げた。
「今日は……帰ります……。そ、そろそろ家にも帰らないと……お兄様が…… そう、だから、あの――その――」 「何だつまらんな、もちろん明日も看病に来てくれるんだろう?」 「明日?――うっ、ええ、はい」 「そうか、ではまた明日」 「ええ、――あの、その――じゃあ、お大事に!!!」
百合子はそう言うとそそくさと病室を出た。 百合子の動揺ぶりがおかしくて斯波はくくくと笑った。 縫合した傷跡が腹の揺れでぴくぴくとひきつり、痛んだ。
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愛し合う男女が、寝室で何をするのか。 今更知らない百合子ではない、だが――実際に服を脱がされ肌を露にされてそして愛撫されるとあまりの恥ずかしさに顔から火が出るようだった。
(世の中の男女は皆、あのようなことをしているの?!)
知識としては知っていても、実感がまったくわかなかった。 だから、今日の斯波の行為は衝撃的ですらあった。
かくかくと力の入らない膝を叱咤しながら、病院の階段を降りる。 斯波の病室を出てからも、あの行為でびっくりしたためか心臓の高鳴りは収まらなかった。 それどころか、それは家に帰るまで続いた。 百合子はそれをびっくりしたからだと思い込もうとして、独り言が多くなった。
「えっと、家に帰ったらまず洗濯をしてお掃除をして。 それから、お昼もまだだからそうね、まずご飯を作って――」
家に着く。 まだ昼日中だが、当分の留守を見越してか新聞屋などの記者や野次馬はいなくなってしまっていた。
「もう、変な郵便ばかり届くのだから!」
大仰にため息を付いてみせる。 それはどこか演技がかっている。どうにか気を紛らわすためにわざと少し大げさに言ってみたのだった。
数十通は溜まっている郵便を受け皿から取り出して、仕訳する。 ファンレターのような手紙、悪戯の手紙――。
その中で一枚、洋風の蔦の絡んだ封筒に蝋の印章が押された封筒があった。 明らかに他の郵便物とは違い、異彩を放っている。 ペーパーナイフでぴぴぴと開封すると、そこには新聞の切り抜き文字で文章が作られていた。
名探偵、野宮百合子嬢に告ぐ――という挑発的な文章からその手紙は始まった。
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kowyoshi ネタ 家具 妄想 女性から見たら「キモッ」なんだろうけど笑ってしまった。逆に女性が妄想する「理想の男子部屋」というのも見てみたい。 yuiseki lastline ARuFaさんが、実際にいそうな感じのサブカルこじらせ女子の部屋を作ってきて意外 maname REV これ、誰でも一瞬くらい考えられる企画かもしれないけれど、本当にやるのは本当に凄い。あと、インテリアコーディネーターを連れてきて、「正解」を作ってくれたのも凄い。 kiku-chan 妻が一人暮らししてたころ、本棚にカーマスートラがあったのを思い出した guldeen gender architect interior design 広告主のチカラを借りて、やりたい放題なARuFaさん(^^; rgfx 「なんだか『夜回り先生』に集中できる気がするし、この状況で読むマンガは『夜回り先生』しかない気がする」SAN値が唐突にめり込む展開でフイタ raf00 コーディネーターの作例が「キレイだけど生活感がない。生活に必要な道具が置かれるイメージが浮かばない」ものになっている一方、原宿さん除くお三方はリアリティがあって生活がイメージできる。楽しそうだなぁ。 kaeru-no-tsura 柊このみいいじゃん tuya まつやとり野菜みそ zaikabou うわぁ pollyanna 「ここが天竺」 ysync これはいい企画。二番煎じはいらんけど。 enemyoffreedom filinion デザイン ネタ 男女 「サマーレッスン」の開発では、男性が作った部屋は全然女子の部屋に見えず、女性スタッフが作って初めてリアルになったという(https://goo.gl/fDHfDD)が、この記事では逆。男性陣の詳細を究めた妄想の方が、生活感が強烈。 kusigahama ブスとか言わなきゃ最高の記事だったなぁ mereco ワイの部屋、カテゴリー的に完全に柊このみさんの隣にあるわ…(⊙ω⊙) legnum house furniture fashion neta ゆみの部屋こんなん5分あれば片付く程度の散らかりぶりで引いてるのすげえ違和感だなー。若いならともかく歳行ってて幻想抱いたままな人を見るのツラい hima-ari 原宿氏��菓子盆と同じ流れでワロスwwwwww narwhal ネタ きんもーっ☆ Luigitefu 伝聞調がジワジワくる
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冨貴寄(銀座菊廼舎)
ひよ子(東京ひよ子)
紅茶ひよ子(東京ひよ子)
ごまたまご(銀座たまや)
木の葉あげ餅 わさび(麻布十番あげもち屋)
“「ひよ子」をメインに据え、その他の菓子はあえて脇に寄せる。華やかなお祭りのような盆に対して「侘び寂び」を感じさせるシックな佇まいは、葉のざわめきとせせらぎが微かに聞こえる古池を連想させます。”
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ナボナ パイナップルクリーム(亀屋万年堂)
不揃いバウム 紅茶(無印良品)
不揃いバウム かぼちゃ(無印良品)
不揃いチョコがけいちご(無印良品)
不揃いホワイトチョコがけいちご(無印良品)
不揃い宇治抹茶チョコがけいちご(無印良品)
チョコチップクッキー(イトウ製菓)
ポテトチップス うすしお(カルビー)
ナッツ&フルーツ(セブンプレミアム)
アプリコット(デルタ)
サクサク食感のしっとりいちご(セブンプレミアム)
ポッキー 濃い深み抹茶(グリコ)
チョコビ(東ハト)
極じゃが(カルビー)
チーズもち(越後製菓)
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塩チョコパイ
いちごのジャムパイ
シューチョコ
ピスタチオとバニラのクッキー
(すべて無印良品)
“懐かしのパズルゲーム『ヨッシーのクッキー』をモチーフにした菓子盆かと思いきや、本人曰く「そのつもりはなかった」とのことです。にわかには信じられませんが……。彼のDNAに刻まれたヨースター島の血統がこの盆を作らせたのでしょうか? 菓子盆としては、北欧の山に住む木こりの夫婦が来客に振る舞いそうな素朴さがあって好ましいと思います。訪れたのが道に迷った逃亡者でも、逃亡者を追う政府の役人でも等しくこの盆を差し出しそう。いわば言葉を必要としない「静寂の盆」です。もしこれが退屈に見えるとしたら、それは我々が盆で多くを語りすぎているせいかもしれません。”
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塩バターパイ
ドライフルーツ&ナッツ
クランベリーのフィアンティーヌ
バナナのパウンド
麻クロス ストライプ(オフ白×ブルー)
(すべて無印良品)
“盆師が扱う「武器」は、言うまでもなく菓子であります。今回は無印良品オンリーという制約のせいか、使ったことのない武器を選択して間合いを見あやまる「盆ミス」が散見されました。そんな中、山口さんの盆だけがどっしりと腰を据えていたのが印象的です。彩りは麻クロスで補ってなお地味であり、どの菓子もこれといって尖ったところのない、いわば好々爺タイプ。しかし、うっかり刀を向けると即座に斬り返されそうな気迫があります。それもそのはず、実際に食べてみるとすべての菓子が互いに引き立て合って、調和をもたらしているのです。後で聞くと、山口さんは年間23万円を超える額を無印良品に費やしているという、ちょっとどうかしている人でした。無印の菓子を手足のように使いこなせる秘密はそこにあったのですね。”
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いちごのブールドネージュ
ブールドネージュ
ココアとバニラのクッキー
玉ねぎスナック
ねりころ梅
桜のクッキー
抹茶とあずきのクッキー
黒ごま芋菓子
おこげせんべい
てんさい糖のくまビスケット
てづくりしょうが芋菓子
(すべて無印良品)
“菓子数が10を超える、かなり盛り沢山の盆です。全体の統率がとれず印象がバラけてしまうリスクを、「無印」の引力を利用して回避した手腕はさすが。まさに咲き乱れる山桜のごとく菓子が盆上に花開いています。第一回大会において永田さんが使用した紙ナプキンをさりげなく彩りにしているのにも注目。彼は戦いの中で着実に成長しているのです。ところが、菓子盆のゴールはあくまで「食」。味や食感のまとまりにまで視野を広げると、案外アンバランスな盆が姿を見せました。どの味に集中すべきか迷ってしまうような一面があります。おしゃれは我慢と言いますが、それはあくまで「おしゃれ」での話なのです。”
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 チロルチョコ(さくらもち、抹茶タルト、抹茶あずきもち)
チップスター(ヤマザキナビスコ)
ホワイトチョコがけイチゴ(マシュー)
プレッツェル チェダーチーズ味(スナイダーズ)
抹茶スリムサンド(ヤマザキナビスコ)
“素晴らしい。たたずまいの美しさに思わず声が出ました。暖色系菓子を使わない、それも緑の菓子を多用する場合、ヘタするとお供えものみたいになってしまうのですが、この菓子盆はどこかモダンですらあります。このまま有料写真素材として配布できそうで、直感型盆師としてのセンスの良さが光りますね。チロルチョコも個売りの大きいものではなく、本来の小さいサイズだったのが好印象。ただ、抹茶サンドの味のクセが少し強くて万人受けしなそうな味だったのが少し気になりました。唯一の緩みと言えば、その点でしょうか。”
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上えび(一色屋)
えび誉(紀伊國屋)
かっぱえびせん 桜えび(カルビー)
手巻納豆 紀州梅味(成城石井)
ピスタチオとバニラのクッキー(無印良品)
しみこみチョコ いちご(無印良品)
エッグタルト オリジナル(神戸物産)
“円形とピンクで統一した、非常にまとまりのいい菓子盆です。自分一人で食べるとはいえ、彩りには気を配りたい……。そのこだわりはデザイナーらしいと言えるかもしれません。にもかかわらず盆から緊張した感じがしない理由のひとつに、左端の「成城石井の手巻き納豆」があります。来客に出すとしては少し気が引ける、やや癖の強いあられであると拝察しますが、こういった「でも、自分はコレが好き」を惜しげもなく盛れるのが菓子盆の良いところ。中央に居を構えるエッグタルトも、来客向けに出すにはあまりに大仰な代物で扱いにくいはず。でも一人で食べるなら、このワガママのかたまりを存分に楽しめるというわけです。買いだめしやすい食材で統一されているあたりも、自粛慣れしていますね。少し気になった点は「水分メチャクチャ奪われそうだな」ということと、「これを食べながら仕事した後のキーボードの隙間、やばいことになりそうだな」です。しかしそれをZoom越しに指摘するのは大きなお世話というものでしょう。”
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