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#網膜色素変性
harawata44 · 1 year
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「視力1.0」でも突然失明することはある…健康診断ではわからない「失明原因トップ5」の恐ろしさ - ライブドアニュース
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写真=iStock.com/Krisada tepkulmanont※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Krisada tepkulmanont
以下引用
目の健康を保つには、何が大切なのか。眼科医の平松類さんは「失明原因のトップ5である緑内障、糖尿病網膜症、網膜色素変性症、加齢黄斑変性、網脈絡膜萎縮は、末期になるまで視力が落ちることはない。視力検査で失明の危険性はわからないため、必ず『眼底検査』を受けてほしい」という――。 ※本稿は、平松類『眼科医が警告する視力を失わないために今すぐやめるべき39のこと』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■いたずらに「眼圧」を上げるような行動は控えたほうがいい
会社の健康診断などで眼科検診に行くと、視力検査と一緒に必ず「眼圧」の測定も行われると思います。しかし、その意味合いをいまいち理解していない人がほとんどではないでしょうか。 眼圧測定とは、空気を軽く当てて「眼球の圧力」を測ることで「眼球の硬さ」を調べるものです。 なぜこの検査が重要かというと、眼圧が高い、つまり眼球が硬いと、失明原因の1位である緑内障のリスクが高くなることがわかっているからです。近年では眼圧の高さと近視の進みやすさの相関も指摘されています。 ここから言えるのは、「眼圧が高くなるような行動」は、できるだけ避けたほうがいいということです。日常生活のなかにも、知らないうちに眼圧を上げてしまう行動がけっこう潜んでいます。 その筆頭が、「水の一気飲み」です。水分補給は目の健康にとっても重要ですが、汗をかいたり、脱水症になったりしたときを除いて、一般的に水の一気飲みはよくありません。 体に水分が入ると、血液中の水分量が増えます。ごく単純にいえば血管を流れる液体の量が増えるため、血管に圧がかかります。これは大半の臓器にとっては大した問題ではないのですが、ごく微細な毛細血管が張り巡らされている眼球には、過度な圧力をかけてしまうのです。
■水の一気飲みはNG、マメな水分補給を
いたずらに眼圧を上げないよう、「水分補給は少量ずつ」が鉄則です。 例えば500ミリリットルの水を一気に飲むと、平均で3~4、最大で7ほども眼圧が上がることがわかっています。 眼圧の正常値は10~20ですから、その30~40パーセント、最大で70パーセントほども眼圧が上がるというのは、いわば収縮時血圧(最高血圧)が正常値の130から一気に170くらいまで上がるようなものです。 1回に飲む量は、200ミリリットル程度が適当です。もちろん1回の摂取量を抑えたせいで水分不足になっては本末転倒ですから、1時間に1回くらいを目安に「マメな水分補給」を心がけていきましょう。
■「過度な運動」は目をいじめる行為
「水の一気飲み」に加えて、気をつけたいのが運動習慣です。 運動のすべてが悪いわけではありません。「筋トレ」の場合、自重トレーニング程度ならば問題ないのですが、重すぎるウエートを用いた筋トレだと「いきむ」たびに眼圧が上昇するという研究があります。 意外なところでは、「ヨガ」も要注意です。 さまざまなポーズをとることで、ほどよく体全体がストレッチされ、呼吸を繰り返す有酸素運動でもあるヨガが概して体にいいことは確かです。ただし、唯一、目の健康を考えるうえで懸念されるのは「頭が心臓よりも下になるポーズ」です。 頭が心臓より下になると、当然ながら、頭に血が上ります。すると眼球にも圧力がかかってしまうのです。ヨガをやめる必要はありませんが、目の健康を思うのなら、頭が下になるポーズは避けたいところです。 逆に、目にいい運動もあります。体に酸素をふんだんに取り入れ、巡らせる「有酸素運動」(ウオーキングや軽いジョギング)は、必然的に目への酸素供給にもなり、目の健康維持に寄与します。 目安は「週3回、1回あたり30分以上、合計で週に90分ほど」、運動の強度は「ゼエハアと息が上がらず、会話できる程度」。これくらいの有酸素運動が緑内障などの防止になるという研究データもあります。
■「ストレス」も眼圧を上げる一大要因
眼圧には自律神経も関係しています。 ストレスを感じると、緊張状態を司(つかさど)る交感神経が優位になるのですが、このとき体中の血管が収縮します。眼球も例外ではありません。交感神経が優位になると眼球の毛細血管が収縮するし、そこで眼圧が上昇するのです。 現に、緑内障に処方される目薬は、交感神経を鎮める効果のある成分が使われています。交感神経を鎮めることで眼圧を低下させ、緑内障を軽減する狙いがあるわけです。 ストレスには、仕事やプライベートでの人間関係のストレスもありますし、騒音や急激な冷えといった環境的なストレスもあります。冬場は眼圧が高くなるという研究報告もあるほどです。 すべてのストレスを取り除くのは難しいものですが、自然に触れに行く、自宅でのんびりする、ゆったり入浴するなど、適宜、自分に合ったリラックス習慣を取り入れましょう。
■眼圧を上昇させる「睡眠姿勢」に要注意
みなさんのなかに、「睡眠時はうつぶせ」という人はいるでしょうか。 問題は、うつぶせになったときの顔の角度です。心臓より眼球が下にならない顔の角度ならば、ギリギリセーフです。 しかし、心臓より眼球が下になる顔の角度で寝ると、眼球の中の水晶体というレンズが本来の位置から少しだけ下に落ちることになり、眼球から余分な水分を排出する箇所がふさがれてしまいます。そして余計な水分が排出されないことで、眼圧が上昇してしまうのです。 年に数回ならばいいのですが、毎日、ランチ後にデスクに突っ伏して仮眠を取るなどの行為は、眼球にとっては最悪の習慣です。 同じ理由で、マッサージ店や整骨院によくある「顔のところに穴が開いているうつぶせ用のベッド」や、理髪店の「顔を下に向けるシャンプー椅子」も好ましくないのですが、それほど高頻度でなければ、あまり心配はありません。 また、横向きで寝るのはいいのですが、枕の硬さ(柔らかいほうが目に圧力がかかりやすい)や顔の角度によっては、眼球が枕に押し付けられるような感じになってしまいます。これはよくありません。目にかかる圧力上昇は、眼圧の上昇を意味するからです。 まとめると、睡眠時の姿勢は「あおむけ」がベストです。とはいえ眠りやすい姿勢は人それぞれでしょう。今後は目の健康のために、とにかく「顔が下向きになる」「眼球が枕に押し付けられる」ことだけは避けるよう、意識してみてください。 ただ、これらの生活上の注意は可能であればというレベルですので、無理せず取り組んでいただければと思います。
■視力は「いい・悪い」で判断してはいけない
これもありがちな誤解なのですが、視力(メガネやコンタクトレンズによる矯正のない「裸眼視力」)がいいから検診を受けなくても大丈夫、とはいえません。 そもそも一般的には何をもって「視力がいい」と思われているのでしょう。0.8や0.9まで見えれば「視力がいい」のでしょうか? 専門的には「視力」とは相対的な指標です。現時点で「いい・悪い」という話ではなく、「以前と比較してどうか?」という変化こそが重要です。 例えば、一般的には視力0.9は「視力がいい」ほうに入るのかもしれませんが、昨年は1.0だったところから0.9に下がったのなら、それは「大丈夫」とは言い切れません。視力が下がった場合は近視の進行も考えられますし、何らかの病気になっている可能性もあります。
■失明原因トップ5の病気は「末期まで1.0くらい見える」
「視力がいいから検診を受けなくても大丈夫」とはいえない理由は、これだけではありません。失明原因のトップ5である「緑内障」「糖尿病網膜症」「網膜色素変性症」「加齢黄斑変性」「網脈絡膜萎縮」は、実はかなり進行するまで1.0くらいは見えていることが珍しくないのです。 1位の緑内障の場合、いよいよ重度になり一人では歩けないくらいにまでなって初めて、1.0から視力が下がってくるケースがよく見られます。 2位の糖尿病網膜症も同様です。糖尿病により、ものの色や形をハッキリ捉える黄斑の中心部「中心窩」がむくむと早期に視力が低下する場合がありますが、そのむくみが起こらなければ、末期までは視力1.0くらいが維持されます。 3位の網膜色素変性症は、暗いところでものが見えなくなったり(夜盲)、視野が狭くなったりする遺伝性・進行性の疾患です。こうした症状が出てもなお、明るいところや、視力が届く範囲ではハッキリとものが見えるので、視力検査値としては「悪くなっている」わけではなく、1.0くらいは余裕で見えるケースが多いのです。 4位の加齢黄斑変性は少し例外で、早期から視力が下がるケースのほうが多く見られます。とはいえガクンと視力が下がるのは、だいぶ黄斑変性が進行した末に、合併症により網膜中心部に発生した新生血管から出血したときです。 そして5位の網脈絡膜萎縮もまた、早期からゆっくり視力が下がっていきますが、やはりガクンと下がるのは、かなり進行した後です。
■定期健診には「本当に必要な検査」が含まれていない
このようにたどる経過はそれぞれ違うものの、基本的には、末期になるまでは1.0くらいの視力が続きます。1.0というと、一般的には自信をもって「私は目がいい」といえる数値だと思いますが、ご覧のとおり、「大丈夫」といえる根拠にはなりえないのです。 企業や地方自治体の定期健診の眼科項目は「視力検査」「眼圧検査」だけで終わってしまう場合がほとんどでしょう。しかし前項で見たように、たとえ視力が1.0以上あっても失明の危険のある病気にかかっている可能性は消せないため、視力検査にはあまり意味がありません。視力検査が役立つのは白内障の診断です。 また、かつては「眼圧が上がると緑内障リスクが高くなる」のは確かだったのですが、日本人は神経が弱いため、緑内障患者の8割は眼圧が低いのに緑内症になっていることがわかっています。したがって、緑内障の診断に必須とされてきた眼圧テストの意味も、薄れてしまいました。 今後、罹患するリスク判定も含め、失明原因トップ5の疾患の診断には、眼底カメラで眼底の血管、網膜、視神経などをチェックする「眼底検査」が欠かせません。 追加料金が必要になる場合もありますが、これらの疾患の早期発見、早期治療のために、今後の眼科項目では、ぜひ「眼底検査」のオプションをつけることをおすすめします。
■「片目だけの悪化」は自覚しづらい
失明原因トップ5の疾患の早期発見、早期治療には眼科検診(特に眼底検査)が欠かせないと述べたことには、あと二つほど理由があります。まず一つめは、一般の方の「見えている」は、実は「片方しかちゃんと見えていない」可能性がゼロではないからです。 日常生活のなかで「片目ずつ何かを見る」という場面は、ほとんどありません。誰もがたいていは両目を開いて、ものを見ています。とはいえ両目が等しく、ちゃんと見えていないと生活できないわけではありません。 試しに片目をつぶって歩いてみてください。あまりふらつくことなく、真っ直ぐ歩けるはずです。つまり両目で見ているようでも、極端なことをいえば、仮に片目を失明していても生活には大して支障が出ないのです。 そのため、意外と多いのが、片目の視力の急激な低下にずっと気づけないというケースです。不調を感じなければ眼科を受診することもなく、病気の発見が遅れてしまいます。そういう患者さんが一定数いるのです。 眼科検診では、必ず片目ずつ検査を行います。片方の目は健康でも、もう片方の目は不健康という自覚しづらい事態もたちどころに明らかにし、早期に手を打つことができるというわけです。
■「緩やかな悪化」は自覚しづらい
そしてもう一つ、目の疾患の早期発見、早期治療に眼科検診が欠かせないと述べた理由は、人は「緩やかな変化(悪化)」を自覚しづらいからです。例えば、もし、昨日は1.0だった視力が、今日は0.2になっていたら、視力検査を受けずとも、誰だってすぐに異変に気づけるでしょう。 しかし、白内障では徐々に視力が低下していきます。しかも、ちょっとくらい視力が落ちたところで、急に日常生活が送れなくなるわけではありません。それなりに何とか補正しつつ、生活を送ることができてしまうのです。 緑内障も同様です。両目の視野が半分くらいになっても、見えていない分を脳が補正してくれることで、何ら支障なく暮らせてしまいます。視野はたしかに半分になっているのですが、脳が情報を補い、「見えているように」認識するのです。 まったく人間の脳の補正力とはすごいものだと感心してしまいますが、そのために何も手を打たないまま日常生活を送っている間に、病気が進行してしまうというケースは決して少なくありません。 さらに、目の不調を単なる「疲れ」と捉える人も多いようです。 本当は病気による不調なのに、「今日は目が疲れる」「最近、目が疲れやすい」「ここのところ、ずっと目が疲れている」とすべてを疲れのせいにして、徐々に病状が進行していることに気づけないケースもあります。こうして早期発見のタイミングを逃してしまうのです。 上記すべてに共通しているのは、自分の体のことは自分が一番わかっているというのは錯覚である、ということです。こう言ってはなんですが、「自分が支障を感じていないから大丈夫」という感覚は、実はほとんどアテにならないのです。
■人生100年時代には目の健康は欠かせない
食料事情の改善、医学・医療技術の発達などにより、人間の寿命はどんどん延びてきました。そして寿命が延びたことで、体のさまざまな臓器や器官は、より長期にわたって働かねばいけなくなりました。特に、目は過酷な状況に置かれています。 寿命が延びたことで使用期間が延びただけでなく、例えば本を読むようになった、車に乗るようになった、デジタルデバイスを使うようになった……といった人間の生活の変化により、目はどんどん酷使されるようになってきたからです。それだけに、私たちはいっそう目の健康に気を使わなくてはいけない時代になっていると思います。 目の病気には、死に直結するようなものはありません。しかし、どの目の病気も、悪化するほどに生活の質は大きく損なわれます。 しかも目の病気は総じて神経のダメージであり、一度ダメージを受けた神経を元通りにするのは、ほぼ不可能です。となると、ダメージを受けていない神経を守り、残っている機能をできるだけ保全することが重要になってきます。病気の進行を食い止めたり遅らせたりするためには、検診による早期発見が欠かせません。 人生100年時代だからこそ、年に一度の眼科検診で専門医による客観的な診断を受けることが、いつまでも、より快適に暮らしていけることにつながるのです。
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平松 類(ひらまつ・るい) 眼科医 医学博士 愛知県田原市生まれ。二本松眼科病院副院長。「あさイチ」、「ジョブチューン」、「バイキング」、「林修の今でしょ! 講座」、「主治医が見つかる診療所」、「生島ヒロシのおはよう一直線」、「読売新聞」、「日本経済新聞」、「毎日新聞」、「週刊文春」、「週刊現代」、「文藝春秋」、「女性セブン」などでコメント・出演・執筆等を行う。Yahoo!ニュースの眼科医としては唯一の公式コメンテーター。YouTubeチャンネル「眼科医平松類」は20万人以上の登録者数で、最新情報を発信中。著書は『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる! ガボール・アイ』『老人の取扱説明書』『認知症の取扱説明書』(SBクリエイティブ)、『老眼のウソ』『その白内障手術、待った!』(時事通信出版局)、『自分でできる!人生が変わる緑内障の新常識』(ライフサイエンス出版)など多数。 ----------
(眼科医 医学博士 平松 類)
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terrahumanity · 6 months
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テラヒューマニティ・星海殉葬
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「なんて、エキゾチックなの」と母は言った。
異国風という言葉選びは、果たして正鵠を射たものなのか。判断しかねた俺は、沈黙を保つ。
部屋には、三人がいる。自分、母、そして一人の少女だ。
少女は、その外見に人類にはない色彩を持っていた。それは、彼女が異星種……つまり宇宙人の血を引いているということを示していた。
地球以外の星に知的生命は存在するか、という宇宙に関する問いは、新天地よりも、ゴールド以上の価値がある物質よりも、強く人を惹きつける命題の一つだった。その一方で、決して実在が確認されることもなく、専ら、フィクションの中だけの存在だと目されてきた過去がある。未解決問題、だったのだ。
今、その結論が目の前にあるという事実に、母は目を輝かせていた。
ひょっとすると、人は無意識レベルで宇宙人と出会うことを渇望していたのかもしれない。何せ、そうすることでしか、宇宙の知的生命のスタンダードを知ることなどできないのだ。
人は古来より、異人との接触によって、自身の性質や、自身の所属する集団の特徴を俯瞰してきた。他所の人と話をしている時、ふと「これは、うちだけのローカル・ルールらしい」と気づくみたいに、だ。これが何を意味しているかと言えば、人は宇宙人を見ることで、地球人らしさというものを、初めて自覚するだろうということだ。
いずれにせよ、宇宙開拓時代を迎えてから百年以上の月日が経った太陽系圏でも、地球人らしさというものは未だ存在しているらしい。
母の言葉は、その実在を証明するものだと言えた。
彼女を見て「自分とは異なる存在だ」と、確かにそう評したのだから。
1.
 小さなモニタを光点が滑る。世間では空間投影だの、網膜投影だのとモニタの流行は移り変わっているが、目の前にあるのは溜息が出るほど古いタイプの板だ。コクピットのシート右側からアームで支えられた、それは、機体が向きを微調整する度に慣性で軋んで揺れていた。
左舷スラスタの反応もやや鈍い。きっちり整備しているはずだが、これはもう、こいつが年寄りだからとしか言えないだろう。
両手のコントロール・スロットルを微細に動かして、今後こそ、光点をモニタの中心に。三次元レーダーで、飛来する目標物を正面に捉えた。
「FL1からFL2、及びFR1からFR2マニピュレータ展開」
 呟きながら、指差し、ワンテンポ置いてからトグルスイッチを上げる。搭載された四対八本のマニピュレータのうち前面側四本で、捕棺網を展開した。ここまで異常無し。長めに息を漏らし、中ほどまで注意力を落とす。
手元のモニタから目を離し、前を見る。そう広くないコクピットの前面を、星空を映すメインモニタが占めている。
漆黒の宙に、星々が瞬いていた。目標物は、まだ視認可能範囲外にあるが、三次元レーダーで正面に捉えている限り、待っていれば、向こうからやって来るだろう。
俺は、棺を待っていた。チタニウムの棺だ。何の比喩でもない。
宇宙を漂う棺を、中型の作業ロボット……汎用船外作業用重機コバンザメに乗って、待っている。
 平らな面を上とした正三角錐に、楕円柱状の胴がくっついたようなロボットだ。コバンザメという俗称に反して、マニピュレータ四本で網を張る様子は、深海に漂うクラゲのように見えるかもしれない。
 こうして指定ポイントで網を展開し、彼方から飛んでくる棺をキャッチする。
それが、俺の仕事だった。人類が地球から宇宙に進出したばかりの頃、このような仕事が生まれることを、誰が想像しただろう。
「ダズン、聞こえていますか?」
 無線から、名を呼ぶ声がした。少女の声だ。
母船シーラカンスで留守番をしている同居人の声だった。
「どうした、シャル」と名前を呼ぶ。発音としてはシヤロに近い。
「どうしたということはありませんけど」
通信の向こうで、逡巡するような間が空く。別に騒がしくしている覚えもないが、静かな艦に残されて、やはり落ち着かなさを感じているのだろう。脳裏に、少女が、話題を選んでいる様が思い浮かんだ。輝くような金髪が目を引くハイティーンである。
「これってやっぱり、地球方向に飛んでいるんでしょうか」
 数瞬して、いつもの話題に行き着いた。これというのが、レーダーに映る光点……チタニウムの棺を指すことは明らかだ。
「多分な」
 第一に肉眼で地球が判別できる距離ではないし、シーラカンスにしろ、コバンザメにしろ、ヘリオスフィア規模の分解能を持つ絶対座標系の航路計なんて高級品は積まれていないので、確かめようもない。
だが、星海葬という性質上、恐らくそうなのだろうと思う。
星海葬。それは、人は地球に属し、地球に還るべきだという思想から生まれた、人が地球へ還るための儀式だ。
彼女はこれに、少しばかり疑問を持っているのだろう。
「何故、人は星海葬の魅力に囚われるのでしょう」
「……地球をルーツとする知的生命だからだろう」俺は答えた。
宇宙で死期を迎えた人間は、その魂が地球へ帰還することを望むという。
人類がまだ地球を主な生活圏としていた頃、地球上で死んだ人間が地球の生命に転生するという考え方は普通だった。実際、物質的に見ても、人が死んだ時、人体を構成する元素は別の地球上の物体へと姿を変えていくのだから、魂の循環という考え方は感覚的にイメージしやすかったはずだ。
しかし、地球を遠く離れた場所で人体が処分されれば、地球に還ることはない。その事実は、魂もまた、還れなくなるという自然な連想を生んだ。人類が地球を離れて活動するようになった時、転生という宗教概念は破綻したのだ。
実際、宇宙開拓初期における、地球の神々の凋落はシリアスな問題だったらしい。地球が宇宙に浮かぶ光点の一つに過ぎないと分かった時、たかだか半径六千三百キロの岩石塊の表面で謳われていた神々に何ができようか……と思うのも、無理からぬ話ではある。宇宙開発黎明期、ソ連の宇宙飛行士チトフもこう言ったという。「私はまわりを見渡したが、神は見当たらなかった」と。
あるいは、いやだからこそというべきか──そう認めるからこそ、神の恩寵の届く星に還りたいという欲求は強まるばかりだったのだろう。
「そうまでして地球に還りたいのでしょうか」
「宇宙で死んだ人間の灰を、地球に持ち帰ることが禁止される程度には」
 それが一般的だった頃、いずれ地球は灰まみれになるのではと揶揄されていた。
地球行の宇宙貨物艦の荷に占める灰の割合は加速的な増加傾向にあった。宇宙規模で繁殖し始めた人類が、帰属意識と伝統と宗教心のままに灰を地球に送るようでは、当然そうなる。そして、今後も増えていくことを危惧した連邦により禁止された。当時は反発もあったというが、長期的に見て公益性は高く、今では妥当視されている。
 星海葬なるものが市民権を得たのは、その頃からと聞いていた。
 物質的な帰還が叶わぬ以上、魂だけは帰還できるように。人々はそう願いを込めて、地球へ向けて棺を打ち出すようになった。
「そうしたら、今度は金属資源の散逸だ、なんだという話になった」
広大な宇宙空間に棺という形で無作為に金属資源が散らばる傾向は、嬉しい事象ではない。単に資源の有無だけで言うなら、適当な地球型惑星から採掘し続ければいいわけだが、それを無駄にしていいかは別だ。
保安上の都合から見ても、意図的にデブリを増やす行為が推奨されるわけはなく、星海葬もまた、連邦によって禁じられる瀬戸際にあった。
「しかし、それは今でも行われています」
「そうだな」誰が見ているというわけでもないが、俺は頷いていた。「スペース・セクストンと呼ばれる団体が生まれ、星海葬をシステム化した」
 スペース・セクストンは、宇宙教なる宗教機関として星海葬を斡旋し、宇宙に流された棺を適切に回収する役目を公然と担うこととなった。
今では、星海葬は宇宙で最もポピュラーな葬儀だ。純粋な地球生まれの地球人がほとんどいなくなった現在でも、セクストンはしっかりと存続しており、多くのエージェントが所属している。
俺もその一人だ。改装した古い小型貨物艦船で、棺を回収している。
連絡艦、旅客艦、貨物艦、遺棄船漁りのスカベンジャー、宇宙海賊、軍艦。宙を往く船にもいろいろあるが、セクストン認可艦の辛気臭さは最高峰だろう。他人を乗せることもなく、華やかな客室もなく、積荷は棺で、一攫千金の夢もなく、争いもなく、地位も名誉もない。
「私がいるではないですか」
どこからか、口に出していたらしい。
不意に、そう言われた。何故だか慰めるような言葉を投げ込まれ、俺は笑う。
2.
 コバンザメの狭いコクピットから這い上がり、シーラカンス艦内に戻ってきた。艦内の人工重力に気怠さを感じながら、ヘルメットを外し、後部右舷通路を歩く。流れで首元に手をやりかけて、直ぐに下ろした。
「やれやれ」と口の中で呟き、そのまま、棺を運び入れた格納庫へ向かう。
棺の回収が終わったら仕事が終わるかと言われれば、そうでもない。
 回収した棺自体は最終的にはセクストンの溶鉱炉で生まれ変わるわけだが、受け渡す前には、中身のチェックをする必要がある。
セクストンの仕事は総じて気乗りしないが、個人的に一番気乗りしない作業だ。人によっては、一番ワクワクするらしい。死者が生前愛した何某を棺に入れる……という風習は根強くあり、炉に入れると不純物になるからというような大義名分の下、懐に入れることが認められているからだ。
以前、少しばかり同業の集まりに参加する機会があったが、それで美味しい思いをしただとか、そういう話は聞く。俺はその説について賛同できないが、昨今の情勢は安定しているので、腐乱しているだの、欠損しているだの、そういう死体を目にすることは、あまりない。それだけが唯一の救いだ。
梯子を下りると、格納庫��前には黒いボディスーツに身を包む少女が待っていた。
彼女……シャルは、しなやかなボディスタイルを露わにする、いつも通りのスーツ姿である。宇宙での活動は今なお、決して安全ではないが、古典映画で見るようなモコモコとした着ぐるみは廃止されて久しい。今の主流は、生命維持デバイスと防護外骨格の展開機構が備わった汎用スペーススーツである。俺や、彼女が着ているそれだ。
彼女は手にしていた情報端末からこちらに視線を動かすと、壁から背中を離した。
「お帰りなさい、ダズン」
「ああ。どうも、異物反応があるらしいな」俺が言うと、彼女は頷いた。
棺をシーラカンスの搬入口に運び入れた時にアラートが鳴ったかと思うと、すぐにシャルから通信が来たのだ。棺の中に、何かがいる、と。
気が重くなる。
異物反応センサーは棺内をスキャンした結果、動体と熱源が確認された場合にアラートを出す。そういう意味では、しょうもない悪戯(例えば、熱を出して動くおもちゃが入っていたとか)の場合もある。
しかし、棺の中に、もしも生きている人間が入っていたら? 放っておけば、そのまま焼却されることになる。寝覚めは最悪だ。
「じゃあ、始めましょうか」
彼女は首元にあるパネルをトンと叩いた。そこには防護外骨格を着脱するためのパネルがあって、青く点灯する。シャクシャクと小気味のよい金属質の擦過音が響き、彼女の体表を、背中から包むようにアーマーが広がっていた。
防護外骨格は、背骨に沿って等間隔に配された六つの小さな突起パーツ内に圧縮格納されているため、展開する際には背面から広がるようなプロセスを踏む。
俺は、自身のアーマーを確認しながら、シャルの展開を待つと、格納庫のシャッターにアクセスした。
ブザーの音。大仰な開閉音。一瞬遅れて、照明が点灯する。
「また家族が増えるかもしれないですね」シャルはそう言いながら、格納庫に入った。
「それは、ゴメンだな」
そう返すと、彼女は苦笑した。
 俺たちは、いくらか積まれている棺たちを見ながら、最後に格納した棺の方……つまり、搬入口に近い方へと足を向けた。
棺は、基本的に幅二メートル、縦三メートルのサイズだ。その大きさの大部分は装甲/気密機構/保冷材/副葬品というように、遺体以外の要素に由来する。遺体を入れるスペースは必要以上に広くする理由もなく、人が最後の旅に出る船としては、適度なサイズとも言えるだろう。
見栄っ張りな富豪が、とてつもない大きさの棺で星海を往くこともあるが、そういう手合いはVIPなので、俺みたいな末端のエージェントが担当することはない。
これらの棺は、この後、金属製の外装部と内部の有機物フレームに分別される。外装は溶鉱炉へ、内容物は焼却炉へ投入されることになる。しかし、回収してすぐに炉に行くというような感傷的なスケジューリングは基本的に認められないため、回収された棺はこうして庫内で並べられて、その時を待っているのだ。
「これですね」「ああ」
 棺を挟んで、立ち止まる。
俺は腰の自衛用のハンド・レーザーウェポンを抜いた。マニュアルによれば、棺の中に異物反応がある時、それはセクストン・エージェントの脅威となる可能性もある。本人が死んでない場合。遺体が別のものにすり替わっている場合。遺体もあるが、別の生物が紛れ込んでいる場合。それぞれ事情は異なるが、どの場合でもレーザーウェポンによる対象の殺傷がベストプラクティスとなるケースは多い。結局のところ、棺の中にいるのは死んでいるはずの存在なのだから。死人に口なしだ。
向かい側に立ったシャルに目を向けた。
金色の髪に、金色の瞳。色白の肌。整った美貌は作り物めいている。彼女は、俺の視線に気づいて、こくりと頷いて見せた。
「……では開けよう」
 棺にアクセスし、アンロックコードを送信する。セクストンの関係者だけが取得できるコードだ。このロックの施錠もセクストンが司っているため、セクストンが開けられる棺は、セクストンが斡旋した正規の棺である、という証明ともなる。
 ピッという簡素な認証音。
何かの手続きを無視した葬儀ではないようだった。少なくとも今回は。
 スライド式のドアが開き始めて、冷気が漏れる。
「顔を近づけすぎないように」
腐敗を防ぐためにドライアイスが入っているのが通例だ。濃い二酸化炭素は一瞬で好気性生物の意識を刈る。別れを告げる遺族が棺に溜まった二酸化炭素を吸引して意識不明となり、そのまま死亡するケースは多い。
「……異物反応があるんですよね?」
「一応だ」確かに、棺内の空気成分自体に問題はない可能性は高い。紛れ込んでいる異物が生きているということは、逆説的に空気に問題ないとも取れる。
 いよいよ、ドアは完全に開いた。
初老の男性だ。体格はいい。髪は白髪交じり。確かに、生命反応が無いとしても、今にも動き出しそうではある。新鮮な死体だ。
「今のところ、異変は無い」
「そうですね」
 と言った舌の根も乾かないうちの話だった。視界の隅で、黒い何かが蠢く。
 瞬間的に、レーザーウェポンを向けて、スイッチする。青いエネルギー弾が瞬き、遺体の腕を焼いた。黒い何かは、素早く這い回っている。大きさは三、四十センチに達する。大型の齧歯類ないし、比較的小型の猫科。そう思い、いや、と否定する。
黒毛のずんぐりと��た胴。手足には毛がなく、灰色で、不気味なほどに細長い。脳内の何にも該当しない生物だ。
そいつがガサゴソと棺の中を這う音は、耳障りで、嫌悪感を抱かせた。
「閉じろ!」俺は怒鳴っていた。
 シャルが頷くと、ガコンと力任せにドアが閉じた。だが、棺が閉じきる前に、そいつはもう、飛び出していた。
「ちっ……!」
目の端に映った影に、エネルギー弾を叩きこむ。
棺が積まれた庫内に火花が散った。だが、それだけだ。
当たろうはずがなかった。この倉庫には、棺があり、死角が多すぎる。
 俺は、そのクリーチャーを捕捉できていなかった。
 事実、そいつの鳴き声は背後から聞こえた。
「ダズン!」
 その声に振り向いた時、目の前にそいつが迫っていた。
黒い毛の中に、醜悪なまでに開いた口が見えた。口蓋が見えるほどだ。汚れのこびりついた不清潔な牙が、ずらりと二重に並んでいる。明瞭に見えた。それは紛れもなく、死の前にある体感時間の伸長体験のように思えた。
だが、幸い死ぬことはなかった。怪我をすることも。
透明な何かに弾かれたように、そのクリーチャーが吹き飛び、強かに、床に叩きつけられたからだ。
「捕えます」少女の声。そして、手のひらを、下から上に。握る仕草をする。
不可視の尾の如き力場が、クリーチャーを巻き上げた。
黒い毛が不自然に押さえられ、手足があらぬ方向に曲がっている。その様が、よく見えた。目の高さに浮かんでいる状態だからだ。その様はまるで、見えない蛇に巻き付かれて、全ての動きを封じられた哀れな被捕食者だった。いや、全てではない。活路を探しギョロつく眼球、手足の指はもがき、そしてその心臓は動いている。
 そいつは、潰されまいと懸命に爪を立てるが、抵抗は無駄だった。
彼女の力場には、痛覚も実体もない。それは彼女の尾骶骨の延長上から伸び、自由自在に動く第三のカイナだった。出し入れ自在かつ、最長で十メートルに及ぶ、純粋なる力の尾である。
「ふー」
 それが、彼女の……血統(ジーン・)加速者(アクセラレイテッド)、シャル・ラストテイルの異能だった。
彼女は、地球人と異星種との交配種だった。
異星種のサイキック遺伝子を継承し、研究施設で生まれた実験体である。それだけでも驚いたが、彼女はただの交配実験体ではない。血統加速……時空歪曲を利用した人為的な世代交代の加速による特定能力の選択的先鋭化実験……によって現代に生まれた、約五千年後の世代と推定される超能力者だった。
本来ならば、交配種に連なる者たちが五千年の月日の中で獲得する超強度サイコキネシスを、現代に持ち込む技術。それは、彼女に超越的な力と、絶対的な孤独を与えている。
「ありがとう。助かったよ、シャル」
 少女は前に出していた手を下ろした。クリーチャーは宙に捕えたままだ。力の尾は、彼女の手の動きに同期するものではないので、手を動かすのは、近くにいる俺に注意を促す意味が強い。
「これ、どうしますか?」彼女は言った。
「始末しよう」
 特に、他の選択肢はない。明確な対人凶暴性を発揮した危険生物だ。特に、生きたまま保護して提出するような義務もない。
 俺がレーザーウェポンを構える前に、彼女はこくりと頷いた。
「グギィ……ッ」
 なんとも耳に残る断末魔だった。尾が締まり、クリーチャーが弾けた。付近の棺に、床に、赤い血肉が飛び散る。
「……ああ、うん。ありがとう」
「ううん」彼女は顔色一つ変えず、軽く頭を振るう。
既に尾は消えていた。それ自体は間違いなく不可視だが、斥力の集合体なので、周囲の空気を押しのける。発生や消滅は空気の流れで何となく分かる。避けられるかと言われれば、俺には不可能だが、有無の変化くらいは分かるものだ。
「シャルは先に戻っていいぞ」
「ダズンは?」
「掃除だ。シャルも、興味あるか?」
 彼女が微妙な顔をするので、俺は笑った。
 彼女を見送り、改めて惨状を確認する。どんな寄生虫を持っているかも分からないクリーチャーだ。消毒も必要だろう。肉塊にくっついたままの眼球が、こちらを恨めしそうに見ていた。無論それは主観的な感想に過ぎず、それは既に絶命している。
3.
 片付けを終えて通路に出ると、そこは既に暗くになっていた。足元にはぼんやりと光る非常灯が、点々と続いている。夜になったらしい。
宇宙において昼夜という概念は希薄だが、人間の営みには、昼夜という概念が必要である。それは宇宙開発が進み、宇宙が一時的にいる場所ではなく、生活圏へと次第に変わっていくなかで、明確にルール化する必要が出た事柄だった。人は一時的に昼夜のない場所で過ごすことはできるが、それがずっととなれば話は異なる。
地球人は、地球上の環境に適応した地球生物種の一つであり、地球で生きていたからこそ、今の形になった。となれば、地球環境の一要素である昼夜が消滅した時、人はその異常にストレスを感じるし、その環境で世代を重ねるごとに、地球人ではない別の何かへと変貌していくことになるだろう。
人が人として種の形を保つための法。それは連邦により規定された照明制御規則として、宇宙船やコロニーで運用されている。ライフライン設備、防災上の事情により特別に規定された区画を除き、約十三時間の連続した活動タームにつき、十一時間の休息タームを設け、当該施設内共用部分の照明を規定光量まで落とさなくてはならない。
 このルールは制定以来、その制定理由の尤もさから重要視されており、少なくとも、民間モデルの宇宙船にはデフォルトで採用されている。当艦……シーラカンスも、もちろんそうだ。
 目が慣れて来たので、俺は非常灯の明かりを頼りに歩きだす。
別に、手動で点灯させることはできるが、最近は、そういうことはしない。同居人がいるからだろうか。自問しながら歩く。
しかし、そういう気遣いは、とりあえず今回は無駄だったらしい。
居住区画に入ると、明るい光が俺を出迎えた。
「お帰りなさい。シャワーにしますか? サンドにしますか? それとも練・り・餌?」
 目の前にシャルが立っていた。逆光のためか、不思議な圧がある。
 その右手には、トレーに乗ったサンドイッチが。左手には、銀の包装に包まれた手のひら大のパックが乗っていた。
「……なんの真似だ、それは」
 俺がトレーを受け取りながら横を抜けると、彼女は「同棲する地球人の男女は、古来より、このようなやりとりをしていたそうですよ」等と言った。
「そうか」と流した。俺も別に、地球生まれではない。だから、絶対に嘘とも言いきれないが、無論、本当とも思えない。あと、同棲ではなく同居が正しい。
「練り餌は違うんじゃないか」
 その名の通り、ペースト状であることが特徴の宇宙糧食だ。銀色の密閉されたパッケージに入っており、保存性に富む。もちろん、それは俗称であり、非常に長く厳とした公式名称も、公式略称もある。だが、その風情なさとネットリとした食感から、専ら溜息混じりに練り餌と呼ばれるのが常だ。
 談話スペースにある背の高いスツールに腰かけると、向かいにシャルが座る。
「確かに、これでは食の選択肢が被っていますしね」
 そう言いながら、彼女はその話題には大した興味も無いようだった。
「というより……起きてたんだな」
「先に消灯するのも申し訳ないなと思いまして」そう言いながら、手伝おうという方向にはいかないのが、彼女の意外と強かなところか。
 サンドイッチを口に入れる。
パサパサした合成パン。風味のない合成バター。ひたすら特徴のない辛味を放つ合成マスタード。コクがなく、平面的な合成マヨネーズ。脂っこいだけのベーコン。しんなりした食感の合成レタス。青臭さがオミットされ、味が単純化した合成トマト。フードプリンターが有機フィラメントから生み出す食材は、全てがオリジナルに劣る胡乱な複製物だが、それでも練り餌よりかはマシだった。
「美味しいですか?」彼女は言った。
「ああ」と俺は返す。
 それは、彼女を料理係として雇った時から、繰り返しているやり取りだった。
「……客観的に見て、美味しそうに食べているようには見えませんけど」
 確かに不味い。それは、シャルの料理の腕とは別の部分にある問題だ。すなわち、食材の限界である。
だが、スペースを取り、保存コストも嵩む天然食材の貯蔵には限度がある。仕入れても、一、二週間もすれば、また合成食材の生活になるだろう。中途半端に積むより、オフや寄港の楽しみにしておく方がメリハリになろうというものだ。
それに、彼女には、複雑な味わいの食材を上手く扱うことはできないだろう。
「手料理なのが重要らしいぞ」
目の前に料理があるなら、いつもの二倍幸せだ。それが手料理なら、さらに二倍。自分以外の手によるものなら、そのさらに二倍。つまり八倍の幸せだ。それは、父親の言葉だった。とても古い記憶の一つだ。父が、まだ明朗だった頃の。
尤も、その言葉の続きには「だが不味ければ零倍」というオチもあったが、言わぬが花という言葉の意味は知っているつもりだ。
「私も、少し、喉が渇きました」
 彼女は言った。どうでもよさそうな声色だ。
そのくせ、金の瞳は輝いていた。
「そうか」
 予想外ではなかった。力の尾は、彼女の体力を消耗させるからだ。
折よくサンドイッチを食べ終えた。
俺が立ち上がると、シャルも椅子を降りた。
 特に言葉は必要ない。それはすでにルーティーンとなっていたのだから。
「じゃあ、シャルも食事にするか」
 彼女は頷いた。シーラカンスには、それぞれに個室を用意してあるが、今日は二人で俺の部屋に入ることになった。
そこはこぢんまりとした部屋であり、備え付けのベッド、棚、情報端末だけが置かれており、古の単位で言えば、六畳ほどだ。これは、シャルの部屋でも同様だった。宇宙船の設計というものは、有限のスペースを活動空間/装置/リソースで取り合う陣取りゲームである。精神健康上の観点から、登録乗員に対する最小の居住区画容積と、人数分の個室の設計が遵守されているが、削減されやすいのは個室のサイズだった。
そんな狭い室内で、俺は汎用スペーススーツを脱ぎ始めた。といっても、大袈裟な話でもない。肩を抜いて、上半身を開けるだけだ。
 隣で、シャルもスーツに手をかける。
彼女の、白い肢体が露わになった。
金の髪、金の瞳、いっそ不自然なまでに整った美貌。華奢な首元には鎖骨がくぼみを作っており、乳房がふっくらと佇んでいた。薄い胴はしなやかに伸びており、まるで無意識下にある理想を彫像にしたようだ。
その途中、鳩尾辺りから、肌がすっと透け始めている。幾重もの白い半透明の表皮が覆うようになっており、その下にある、青い筋肉が見えていた。彼女の下半分は、シルエットこそ人間のようだが、異星種の特性を確実に受け継いでいる。
背中側はお尻のすぐ上までは人肌で、前後で変貌の境界は異なっていた。ただ、頭から肋骨の辺りまでが人間で、腹から下が異星種であるという意味では、一定のルールの下で明瞭に分かれている。
白いショーツだけになった彼女が、じっと、俺を見ていた。
ベッドサイドのパネルを操作して、光量を落とす。仰向けに寝転ぶと、シャルがゆっくりと俺の上に覆い被さって来た。まるで恋人同士がそうするみたいだったが、彼女の瞳に宿るのは愛だの肉欲だのではないようだった。
ゆっくりと俺に体重を預けてくる。青い筋肉が透ける下半身も、見た目の印象からは想像もできないほど熱い。彼女はそ��まま、俺の首元へと唇を寄せてきた。俄かに、甘い香りが鼻腔を擽った。
そう思うのも束の間、じくりとした痛みが首に広がった。我慢できないほどではないが、気にせず無視しようというのも難しい、痛痒にも近い、鋭い感覚。しかしその感覚も、熱で曖昧なものへと変わっていく。牙で穴が開いているのか、血に濡れているのかも、はっきりとは分からなかった。
 ただ、こくんと、嚥下する音が響いた。その音は小さかったが、血が飲まれていることを自覚するのには十分だった。音は静かな部屋の中にあって、強く耳に残る。
彼女は血を飲んでいた。
彼女が引��継ぐ異星種の遺伝子がそうさせた。シャル・ラストテイル��、地球人と同じ方法で栄養補給をすることができない。内臓の作りが異なるからだ。彼女にとって食糧とは哺乳類の血であり、そのことが判明した時から、俺はこうして、彼女に血を飲ませていた。
俺は上半身を開けて。彼女は下着姿になって。
しかしそれは、儀式めいた行為だった。
やがて彼女が口を離すと、身体を起こした。
ぽたりぽたりと、赤い雫が落ちた。彼女の口元から滑り落ちた血がしずくになって俺の胸元に落ちた。
 首元に手を伸ばすが、そこに傷はない。傷が塞がった後みたいな滑らかな膨らみの感触が、指先に小さく残るだけだ。
 不思議なものだ。これは彼女が引き継ぐ吸血種の性質なのだろう。彼女たちは、ある種の麻酔成分と、血液の凝固を防ぐ成分を送り込む。多くの吸血生物と同様に、だ。それと同時に、牙を引き抜く時には傷跡の再生を促す。
尤も、彼女も最初からそれができていたわけではなかった。
彼女には、それを伝える親がいなかったからだ。
食事には、痛みと、今くらいでは済まない多くの出血を伴った。
彼女が自分の性質に気づき、慣れるまでは。
4.
 ぼたぼたと血が滴った。シーツに赤い染みが広がっていく。
 先ほどまで彼女が噛みついていた場所から、急速に痛みが広がっていた。
 俺は用意していたタオルで押さえて、開けていたスーツを着込んだ。その手首にあるコンソールで、ナノマシン統制プロトコルを小外傷整形モードにする。普段は待機状態で循環/代謝されている医療用ナノマシンが、傷を察知して人体の働きを補助することで、通常の何十倍もの自然治癒力を発揮できる。
「……ごめんなさい」と彼女は言った。
 その少女はシャル・ラストテイルと名乗った。美しい少女だ。正直なところ、彼女の口から謝罪の言葉が出ることにすら、俺は驚きを感じていた。
 彼女は殉葬者だった。
かつては別の意味もあったが、我々の業界では、捨て子という意味になる。
彼女は、俺が回収したチタニウムの棺の中で、深い眠りについていた。
 セクストンのライブラリによれば、そういった事案は稀にあるという。政治的な事情から、食糧事情……いわゆる口減らしまで。
宇宙開拓時代にもなって、望まれない境遇に生まれるケースというものは変わらずあるらしい。いずれにせよ、殉葬者らにとって、それは死んで元々の旅ではあるが、立ち会ったセクストンの匙加減次第では、生きる道が開かれることもある。
 彼女は、棺で、俺の船にやってきた。
そして、その前は「ヒト殺しだった」という。
 シーラカンスで目覚めた彼女の一言目は、それだった。
『二人の部屋は、ガラス張りの部屋。そこは白くて清潔で、狭くて、周囲にはいつも誰かがこちらを見ていた。食べる姿、寝る姿、彼らは何にでも興味があるようだった。時には血を奪われた。痛めつけられた。尾の力を見たがった。妹は、籠から出るには籠を壊すしかないと言った。だから、私はみんな殺して自由になった』
それは、彼女の観測する現実の話で、事実とは異なるかもしれない。
しかし、実際に超越的な力は彼女に宿っている。
それ故、彼女の事情も、また真なるものだと明らかだった。
俺は、その境遇から考えて、他人の痛みに対する常識レベルの配慮が欠けている可能性は決して低くないだろうと思っていたのだ。
「いや」と俺は少女に返していた。
何が「いや」なのだろう。俺は誤魔化すように続けた。
「だいぶん、体重は戻ったか?」
「……そうですね」と、シャルはスーツに包まれた自分の身体を、緩く抱く。
 そんな彼女の肢体は、俺の目にも、最初に見た時より幾分か健康そうに見えていた。
 シーラカンスで目覚めたばかりの彼女は、酷く痩せていた。生きていたのは、その身体に流れる異星種の血がもたらした強靭性の賜物だろう。
 俺はシャルを引き取ってから、違法な情報屋を少しばかり頼った。
 彼女は研究施設で生まれた実験体であり、地球人と異星種の交配実験体で、血統加速実験の被験者だった。試験管から生まれ、妹とされる存在とペアで生きてきた。そして妹と共に研究所を破壊し、外の世界へと飛び出した。一方は当局により身柄を確保されたが、もう一方は現在も行方不明である……。
それは推測だらけで、不確かで、そして馬鹿げたレポートだった。
だが、疑う必要があるだろうか。
彼女を棺から出して、ベッドに寝かせる前に、俺は外傷の有無を確認するために、その肢体を診る必要があった。その時から、彼女に人並み外れた事情があるだろうことは、明白だった。
 上半身は地球人で、下半身は異星種。
彼女の身体には、それがハッキリと形として表れていたのだから。
 シャル・ラストテイルは人ではない。
 不意に目の前に現れた異形様の少女に、驚きがなかったわけではなかった。
彼女が持つ力に恐れがなかったわけでもない。
宇宙開拓時代でも、人殺しは罪である。それでも、殺すことでしか救いが得られないこともある。実験のために生み出された彼女が、実験のない日々へと至る道を、殺し以外で掴む方法があったかは分からなかった。
そうして外の世界に出ても、彼女たちには行く当てというものが無かった。
だから、棺の中にいたのかもしれない。
星海を漂い、殉葬者としてセクストンを頼る。その切符は一枚しかなかった。死者を納める棺に、内側の取っ手は不要なのだから。
彼女は多くを殺め、最後には、妹の献身によって、ここに至った。
それが、彼女の生だった。
人には人の生があり、実験体には実験体の生があるとも言えるだろう。そして、それを逸脱するには、罪を犯し、死に、そして生まれ変わる必要があったのだとも、解釈できた。彼女と人の差は何かと問えば、生まれとしか言いようがないのだから。
 それは上手くいくだろう。
このまま地球人らしく振る舞うことを覚えれば、彼女は人の隣人になれる。
彼女は明らかに異星種の特徴を有しているが、人前で服を脱がなければ露見することはない特徴だ。人としての振る舞いを覚えれば、秘密は秘密のまま、人の輪に溶け込める可能性が残されている。
ただ、彼女の方は、そう思ってはいないようだった。
彼女の瞳には絶望があり、声は暗く、その立ち姿は、人間らしさからいっそ遠く空虚だった。
俺一人では、彼女をどうこうするのは難しいのかもしれなかった。
そう思ったのを、覚えている。
……。
「ありがとう、ダズン」
「ん、ああ……」
少しばかり、ぼうっとしていたらしい。
 すでに彼女はベッドを降り、床に落ちたスペーススーツに手を伸ばしていた。
 スーツと一体型となったショートブーツを揃えて、足を入れた。さらりと流れた金髪を少し押さえてから、彼女は足元でひと塊になっていたスーツに取り掛かる。脱ぎっぱなしにしていたそれを整えて、袖の位置を確かめると、ゆっくりと引き上げていく。丸まった背中に肩甲骨が浮かびあがり、揃えた脚を、ぴったりとした黒い布地が徐々に、包んでいった。
青い筋繊維が透ける白いヒップは、見た目の印象とは裏腹に、確かな女体の柔らかさを持っていた。スーツへと収まっていきながら、少し窮屈そうに形を変える。その肉感は、色彩を無視できうるほど艶めかしいものとして、目に映っていた。
実際、そこまでスーツを着ると、彼女は普通の……というには語弊のある美貌ではあるが……地球人の女性に見えた。
 だが、そのスーツの下の秘密は、無かったことにはならない。
その事実を忘れさせないために、彼女はその美しい裸身を晒し、俺の血を飲むのかもしれない。
5.
 汎用スペーススーツの上に羽織ったジャケットが、歩くのに合わせて揺れる。俺は腰までの黒い上着で、シャルはクロップド丈の白い上着。
 セクストンのオフィスに、俺たちは連れ立って入った。
 ホールには、数人のエージェントの姿がある。目は合うが、顔見知りはいない。そこで、シャルが視線を集めていることに気付く。
「あまり離れるなよ」耳打ちすると、彼女は心得たように頷いた。
同じエージェントとは思いたくない素行の人間は多い。
 スペース・セクストンは、宗教団体と考える人もいるし、極めて物理的な、死体処理機関であるとも言える。いずれにせよ、地球人の勢力圏であるヘリオスフィア全域で星海葬を管理しており、単一の組織が影響する範囲としては、連邦に次ぐ。人類の宇宙開拓の総指揮を執り、渉外にあっては人類の意思決定機関として働く連邦という機関に次ぐと聞けば、高尚な感はあるが、実際に所属する人間はぴんからきりまでだ。
 セクストンの人事は来るもの拒まず。それは、いい面もあり、悪い面もある。悪い面の一つが、末端ほど、何某崩れしかいないという点。良い面は、社会信用度ゼロの人間でも、エージェントとして生きていける点。つまりは、セーフネットとしての面。俺もその面には少しばかりの恩恵を得た身だった。
 シーラカンスは、荼毘炉に寄港していた。
ここしばらくの回収にひと段落がつき、一度、荷を下ろす必要があったからだ。
荼毘炉は、セクストンが経営する小さなコロニーの総称だ。ヘリオスフィア全域に点在しており、どこでも同じ機能を備えている。宇宙港、簡単な整備ドッグ、精錬プラント、遺体焼却炉、一時滞在用のホテル、エージェントを管理するオフィス、オフィスワーカーたちの居住区、マーケット、食糧生産プラント、小規模な歓楽街等があり、収容人数は場所によって異なるが、最小では数万ほど。
オフィスの窓口に近づくと、カウンターの向こうにいる男性は肘をついてこちらを見た。妙に若く、気怠そうな表情だが、小規模な荼毘炉オフィスの窓口係としては、やはり珍しくない。隣のシャルは何か言いたげにして、黙った。
「……納入ですかね?」
「ああ。艦名は、シーラカンス」
 情報端末を差し出す前に、食い気味にピピッという認証音がした。本当に確認しているのか怪しい速度だが、手続きは済んだ。
しばらく待っていれば、セクストンの分柩課が勝手にシーラカンスの体内に貯め込んだ棺を運び出し、代わりに連邦クレジットが口座に入る。
分柩課は、文字通り棺を分別する役目を担っている連中だ。金属として溶かして再利用する部分と、遺体を焼くための部分を分別し、炉に投じる準備をする。
「他に何か?」
「報告があるんだが」
 俺が言うと、彼は「はあ」と気の乗らない声。
「棺から、このくらいの獣が現れて、襲われたんだ」
 言いながら、両手でサイズを示していると、その係員はやっと俺の顔を見た。彼の瞳が初めて俺を映す。面倒くさそうに、鼻を鳴らした。
「防疫課は向こうだよ」
「怪我はしてない。そうじゃなくて、例えば、似たような報告は? ああいうのを棺に仕込むのは流行りだったりする���か? 何か情報は?」
「さあね」
 シャルがほとんど溜息のような、長い息をついた。
 やれやれ。        
オフィスを出て、メインストリート・ブロックに入る。通常のコロニーは、いくつかのモジュールの集合体である。いわゆる隔室型宇宙都市だ。屋内/屋外という概念は無いため、隔室型宇宙都市の全ては屋内だが、どの施設でもない接続用モジュールも存在しており、それらはストリート・ブロックと呼ばれている。
「やる気がなさすぎると思いませんか?」
「セクストンとは、結局、そういうものだ」
「それにしてもです」
「まあな……」と俺は空を見上げた。
空と言っても、天井の映し出された空だ。閉塞感を緩和しようとしているもので、その努力を考慮しないとすれば、モジュール単体のサイズは、さほどでもない。上方向だけで言うなら、三階建て以上のビルは入らない程度だ。
二人でメインストリート・ブロックを歩く。
宇宙都市内には当然のように空気があり、疑似重力によって、地球人にとって都合のいい環境が整えられている。宇宙都市というのは何型であれ、どこもそうだ。空気がなかったり、無重力だったりする環境は、人間種の正常な生育にとって都合が悪いのでコロニーとして認められない。
通りは晴天状態で、通行人はぼちぼちと行き交っていた。荼毘炉にはセクストンやその関係者しか近づかないが、閑散としているわけではない。エージェントにはそれなりの人数がおり、そしてそれぞれに家族がおり、空腹になれば、食欲を満たす必要があるからだ。昼時になって、人々の動きは活発だった。
「……仮想レストランですね」と彼女が言う。
「だな」
軒先から見える限り、どの店もそれなりに盛況なようだ。客がスツールに座り、虚空に向かって見えないフォークを繰っている様子が見えた。一見すると、少し滑稽なようにも見えるが、彼らには美味しそうな料理が視えていることだろう。
ミクスト・リアリティによる食事提供は、現代では一般化した光景だ。彼らは、網膜に投影されたホログラムを現実に重ね、レストランのネットワークとナノマシン統制プロトコルを連携することで、任意の味覚/食感データを脳内に再生している。
「入ります?」
「いや」
「私の作る料理より、あっちの方が美味しいのでは」
「そうかもな」
味覚/食感はデータで楽しみ、栄養補給は練り餌で済ませるというのは、コストパフォーマンスに優れた食の形式だ。データは買えばコピーペーストできるし、練り餌も完全栄養食として流通している。本来論で言えば、こうして店先にいる必要性もないのだが、友人と食事している、とか、外食している、といった事象自体にバリューがあるのだろう。会計時に渡される練り餌をそっちのけで、味覚の摂取と世間話に集中しているようだった。そして、店側としても、調理によってハイクラスな味と栄養を両立できる形に加工するのは、よりコストが必要となってしまう。
総じて、料理というものに、こだわりがある人というのは少ない。
 俺がそこに拘泥しているのは、親の教育の成果だろう。
 ふと、シャルを見ると、彼女は少しばかり面白くなさそうな顔をしていた。
「どうした」
「美味しくないけど、作れと言っています?」
「まあ、そうだ」
「あまりに悪びれもなく言いますね」
「不味いとは言ってない。プロの域には達してないというだけだ」
 自分からそう言うよう誘導したくせに、とは口にはしない。
 そもそも彼女は料理に関してはハンディキャップがある。
 彼女は地球人とは栄養補給方法が根本的に異なり、従って、人と同じ体系の味覚器官も持っていない。それでも、食べられるラインのものを作ることができるのは、分量の計算で味の着地地点をコントロールできうるからだ。
とはいっても、言うは易く行うは難しというもので、実際にそれをハズレなく遂行できるのは彼女自身の努力の結果であり、師が良かったという面も多分にあるだろう。
 それから、有機フィラメント食材の味が単純化されているという面も。辛いものは辛く、甘いものは甘く、酸っぱいものは酸っぱく、各食材の個体差や複雑な要素は、詳細には再現されていない。よって、甘いものと甘いものを合わせれば、もっと甘い……くらいの解像度でも、想定と大きくずれる味になりにくいらしい。
「でも、言うなれば、私もプロですよ」
「……」と黙る。彼女の良い分も尤もだった。
俺と彼女の間にあるのは、まさにそのサービスを供給する契約だ。
シャル・ラストテイルは料理係として雇った。
「別にいいだろう。雇い主がいいと言っているのだから」
 そういうと、彼女は「まあ……」と煮えきらない返答。
 噛みついてはみたものの、料理を今以上の仕上がりにすることが困難であることは分かっているだろう。そして、それが原因でクビにされても困るということも。
そもそも、何か仕事を……と言い出したのはシャルの方からだった。シーラカンスに乗っていたい。そして、乗るからにはクルーとしての仕事を熟さなければならないのだと、そう思ったのだろう。
 別に、捨てられて生きていけないということもないだろうに。彼女の容姿と能力を以てすれば、それなりの待遇を得られる可能性は高い。単に荷運びとして考えても、彼女の力は非常に有用だ。服の下がどうなっていようと運送に支障などない。
確かに血を飲むが、別に輸血パックでもいいとも言っていたし、実際、施設にいた頃はそうだったと本人も言っていた。
「あの……ダズン?」
 どこかに行こうとしていた思考が、その声で帰って来た。
 シャルは路地の方を指さしていた。そこにはフードを被った男がいて、こちらを見ていた。人通りの中から、自分たちを見ているのだと、何故か理解できる。彼は、そのまま、お辞儀をするような仕草をして、踵を返した。
「追おう」
「う、うん」
 路地に入る。どこの路地裏もそうであるように、表に入りきらずに溢れた猥雑さが溜まっている。勝手口に、室外機に、ゴミ箱に、非常階段。少し歩くと、フードの男が俺たちを待っていた。彼はフードを被っているばかりか、サングラスと、マスクを着けていた。これでは黒い肌を持つことしか分からない。この手の、身元グレーなメッセンジャーの正体を暴くことに何の意味もないが。
「誰かが、お前たちを狙っている」と男は告げた。
その誰かとは、恐らく、シャルの行方を捜す者たちだ。
しかも、多分、思っていたのとは違うタイプの。
脳裏に二つの声が響く。これまでバレなかったのに、という声と、それから、ずっとバレなければよかったのにという声だった。
6.
「どこに向かっているのか、教えてくれてもいいんじゃないですか?」
 艦橋に響くシャルの声は、少し非難の色を帯びていた。シーラカンスくらい小型の宇宙船でも艦橋というものはあり、コクピットとは異なるものとして定義される。立派ではないが、そこには艦長の席があり、オペレーターの席がある。前方には、シアターのようなサイズのスクリーンがあって、最低限ながら、宇宙船の艦橋というものの体を成していた。
そして、スクリーンには航路図が表示されているが、今は、コンソールの向こうに立ったシャルが視界を塞いでいた。
「そうだな。別に、教えたくないということもなかった」
「なら、もっと早く言ってくれて、よかったじゃないですか」
 そう言われてから、どうにも気が急いていたのだなと、ついに初歩的な自己分析に達する。しかし、それを正直に言うのも憚られた。憚る理由の方は分からない。自己分析が足りないのかもしれないが、もはや手遅れだろう。思考を放棄する。
 荼毘炉を去ってから、すでに三日経っていた。そのことから、彼女の忍耐力は非常に高いといって差し支えないと言えた。
「ワイズマンズ・シーサイドスクエアだ」
「月ですか」
「正確には月の裏側だが」
「……それ、どこから見た時の話ですか?」
「地球だ」
 シャルが「ふーん」と俺を見た。言いたいことは分かる。別に地球生まれというわけでもないくせに、というような顔だ。
「生まれがどうとかではない」
「じゃあ、なんです?」
「連邦の定義だ」
この連邦の定義というのが、重要なのだ。何しろ、ヒトが人類史の中で学習したものは、その大半が地球環境を前提に語られる。代表的なのは、暦や時間だ。地球から遠く離れた場所でも、太陽暦や地球時間は基準として大きな意味を持っている。宇宙開拓による混乱を避けるため、連邦が基準として定めたためだ。
そう言いながら、航路計をチェックする。ヘリオスフィア連邦相対航路計だ。
艦の進路と、進行中の航路との誤差を割り出し、必要があれば軌道修正する。航路線と呼ばれる、宇宙空間に便宜的に引かれた線との退屈な比較/修正作業だ。
それをしなければ、シーラカンスが宇宙を飛びまわることはできない。連邦の定義する航路線が一定範囲に無い場所では、航行できないとも言う。
 これは特にシーラカンスが旧式だからというわけでもなく、ほとんどの宇宙船は同じだ。相対座標系の航路計しか積んでいない。ヘリオスフィア内の艦は、どのみち、星々を最短経路で結んだ航路網に基づいて運航するものだ。航路線に関わらず自身の座標を知ることができるという絶対座標系の優位性を、航路網が充実しているヘリオスフィア内で感じることはない。道具は、それを役立てる機会のある船にこそ意味がある。例えば、ヘリオスフィア外を往く、連邦開拓局の艦とか。
「里帰りですか」と彼女は言った。
「そうだ」
 ワイズマンズ・シーサイドスクエアは、月の裏に作られた都市だった。
 そして、俺の両親が住んでいる。
「半年ぶりくらいですね」
 言われてから、そうなるかと、表情には出さないままに自問した。
シャルと出会って、すぐ後に、一緒に訪れたことがあった。助言をもらいに、あるいは、そのまま実家に置いて行こうかと考えて。
その頃の俺は、シャルの扱いに迷っていた。どうにも、年頃の女の扱いが分からなかったというのもある。幼少から、周囲には女ばっかりだったはずなのに。長いセクストン生活が祟ったとでも言うのだろうか。
もちろん今も、分かってはいないが、仕事仲間だと思えば、何とかはなった。
俺がそう扱えば、こいつもそう応えてくれた。
「真顔で、えっと、日数でもカウントしているんですか?」
 もちろん違う。
「……月に行く理由は、あれが父からのメッセージだと思うからだ」
 心裡にある感慨のようなものについて、あえて彼女に告げる必要はなく、俺は話の流れを元に戻した。少女は思案顔。
「そうだとして、どうして、その……怪しいメッセンジャーを?」
 丁寧にオブラートに包んだ表現だ。コロニー内という安定環境下で目深にフードをしており、さらにサングラスとマスクで人相を隠している様を、不審ではなく、怪しいという範疇に留めておくのは理性的である以上に、少し面白くはあった。俺は一目で違法メッセンジャーの可能性を考えたが、彼女の目に、オブラートに包むことに足る何かが映っている可能性も皆無ではない。
「まず、普通に艦載通信システムが疎通できる距離ではないからだろう」
 あの荼毘炉と月は距離が離れていた。航路線上で、七単位以上だ。航路線単位は、航路上の中継となりうる惑星間の距離である……という規定であるから、実際の距離としては、かなりタイミングによる揺らぎが大きい。普通の艦載通信であれば、航路線上で一・五単位も疎通できればいい方だった。
「では、連邦公共通信を使うとか」
「それが普通だな」と俺も思う。時空歪曲を利用した超長距離通信だ。
地球人が実効支配できる宇宙規模は一日以内に通信が届く距離に依存し、宇宙開拓の速さは通信技術の発展速度と相関するだろう……という宇宙進出前の未来予測は尤もなものだった。そして、それを乗り越えたからこそ、人類に宇宙開拓時代が訪れたとも言う。現代では、お金さえ払えば、民間でも利用できる類のサービスだ。
それならば、七単位も一瞬ではある。
含みのある俺の返答に、彼女は議論を諦めたようだった。
「それは、会えば分かるという判断ですか?」
「そうだ」
 本当は、シャルの身柄を追う者には心当たりがある。父以外のイリーガルな存在が俺たちに警告を行った可能性もゼロではないが、あえてその可能性ではなく、父がグレーなメッセンジャーを用いた可能性を追求することについて、十分な説明ができる。
だが、それを口にするには時期尚早のようにも思えた。推測に過ぎず、何ら確信もない。父を訪ねようと決めたのは、確信を得るためとも言える。
「跳躍潜航に入る」
 会話を断ち切るように俺が告げると、彼女も黙って定位置に着いた。
7.
 到着には、それからさらに数日を要した。
ともあれ、延べ七単位分の超長距離移動が数日レベルの旅行で済むのは、跳躍潜航の恩恵と言えるだろう。これも、時空歪曲技術の進歩が地球人に齎したものだ。
そうして俺たちは、月の裏側最大の都市に降り立った。
 直径百キロ余りもある冷えた溶岩による湖。その岸に、巨大ドームに覆われた月面都市がある。月の都、ワイズマンズ・シーサイドスクエアだ。宇宙開拓が始まって間もない頃、そこは新しいもの好きが集まる最先端の宇宙都市だった。地球から最も近く、遠い都市として人気となり、栄華を極めていたらしい。今となっては、偏屈の巣窟だ。
「相変わらず、継ぎ接ぎだらけですね」
「旧い宇宙都市の特徴だからな」
都市内部には、どこもかしこも、その施行年の新旧が年輪のように表れている。それが、時代遅れの天蓋型宇宙都市の特徴だった。
宇宙都市の寿命は決して長くない。外に空気が無いからだ。大気がない環境というのは、温度にも課題が生じる。月面では、昼夜で摂氏三百度近い温度差がある。そのような酷環境では、人工の殻の綻びが、そのまま人の死を意味する。安全基準は厳しく、経年劣化で問題が起こる前に改修することになる。ワイズマンズ・シーサイドスクエアだけでない。現存する天蓋型都市というものは、常に改修を続けている。全体のドームとしての機能を維持しながら、内装も外装も、だ。
 港からキャリヤーを乗り継ぎ、俺たちは、一際寂れた区画に降り立った。
 すん、と隣を歩く少女が小さく鼻を鳴らす。
「慣れないか」
「ええ、まあ」
人の生活の匂い以上に、都市工事用の重機による排気や、建材の加工時に生まれる粉塵、真新しい金属部品が放つ独特な臭いが、この都市の空気というものを構成している。俺にとっては慣れたものだが、彼女にとっては違うのだろう。
「この町は、やはり人の気配というものがありませんね」
「それなりに多く住んでいるはずだが」
「荼毘炉などよりも、むしろ陰気なほどです」
エアクリーナーも働いているが、健康への影響を軽微なレベルに抑える以上の効果を期待するのは難しい。この都市の空気で病にはならないが、別に快くもない。
だから、この都市には往来の人間というものがない。
人々はフィルターを通した無味無臭な空気を堪能するため、室内に籠っている。家同士を直接繋ぐ回廊文化ができるほどだ。高い天蓋に建ち並ぶビル群。その間を繋ぐチューブのシルエット。改修工事ですぐに書き換わる交通標識。道を往くのは、無人重機たちばかりだった。ビルは人々の生活の明かりを漏らすこともなく、暗いモノリスのように沈黙している。
かつて、このいかにも先鋭的な天蓋型宇宙都市を設計した天才たちも、ワイズマンズ・シーサイドスクエアの人々がドームの強みを捨て、このようなゴースト・タウンを作り上げるとは考えていなかっただろう。
「俺の故郷なんだ。手加減してくれ」
 そう言うと、彼女はフームと頷いた。
ともあれ、ワイズマンズ・シーサイドスクエアが初期の宇宙開拓の失敗であったという点は明らかだった。この反省を活かして、以降の宇宙都市開発では、モジュール毎に安全な付け外しが可能な隔室型へと立ち戻っている。ここのように、ドームを維持するためにドームの改修を続けるような、財的にも住環境的にも高い負荷の生じる都市の在り方は、早々に否定されていた。
この都市の最大の悲劇は、宇宙開拓ペースが、多くの地球人の想定を遥かに上回っていた点にあるのだろう。ワイズマンズ・シーサイドスクエアが出来上がった後、連邦はその版図を爆発的に拡大し、すぐに多数の宇宙都市が出来上がった。かつてワイズマンズ・シーサイドスクエアに集まっていた人も、財も、果てなき宇宙に拡散したのだ。
流行に見放され、商業的な意義を失った田舎は、顧みられることなく廃れゆくはずだった。それでも未だワイズマンズ・シーサイドスクエアが存続しているのは、この都市を維持せんとする、血よりも濃い連帯があるからだ。
「皆は、元気にしているでしょうか」
「恐らくな」
 角を曲がると、下品なネオンに彩られた店が姿を見せた。
 店の外観など、回廊が整備されたワイズマンズ・シーサイドスクエアにあっては、どうでもいいだろうに。いや、どうでもいいからこそ趣味に走れるのだと、父は言っていた気もする。看板には、裏月酒店の文字。
ホテル・リーユェンと呼んでもいい。食と性を満たすための店。それが、俺の実家とも言える場所だった。
 裏手に回って、勝手口のドアを開くと、ちょうど一人の女性と目が合った。彼女の手から、空の小型コンテナが落ちるのを、力の尾が掴んで、床に軟着陸させる。
「ダズン」とその女性は俺を呼んだ。恰幅のいい立ち姿。白髪交じりの、ざっくばらんなショートカット。目尻に小皺を作り、笑んだ。母だ。
「……父は?」
「上よ」
 彼女は頷いて、俺に近づいてきた。
「前より健康そうに見える」そう言って、両側から腕をパンパンと叩く。
「……だとしたら、シャルのお陰だ」
「ふうん」と母は薄く笑んだ。「それは、師である私のお陰とも言えるね」
そうかもしれないなと、俺は苦笑した。彼女が、シャルの料理の師だった。それと同時に、シャルをヒトとして教育したのも母だった。ヒト殺しであり、殉葬者であり、地球人ではなかったシャルを、今の彼女にしたのは母の功績だと言える。
 俺は、シャルを母に押し付けて、一人でエレベーターに乗った。
8.
 父の私室は、ビルの上階にある。月面都市の街並みを眺望するのにうってつけの場所だが、肝心の景色がよいというわけでもない。それだけが残念だった。ドームが気密性を失ってしまった時に備えて、ワイズマンズ・シーサイドスクエアの建物には隔壁を閉じる機能が備わっている。裏月酒店のそれは開いているが、ここから見える建物のほとんどは完全に閉じていた。開いているとしても、中に火は灯っていない。この数年で多くの仲間を失ったと、父は言っていた。最後にこの景色を見た時のことだ。その時も、こうして向かい合って、俺はシャルをここに残して、去ろうとしていた。
 俺が部屋に入ると、父は応接用のソファに座って、俺を迎えた。
「来ると思っていた」
 父の声は、深い溜息混じりだった。まだ背筋はしゃんと伸びており、耄碌しているという雰囲気ではない。そのことに俺は、少しばかりの安堵を感じている。
 テーブルを挟んで向かいのソファに座り、父と相対する。
「訊きたいことも分かっているつもりだ。メッセージのことだろう」
 全くその通りだ、と頷く。
「私が送った」
「俺たちを狙う誰か、とは?」
 俺が聞くと、父は眉を顰めて逡巡するように顔を俯かせた。それから、一度は床まで落とした視線を、じっくりと俺の顔に戻す。
「あの娘の言っていたことは、嘘偽りではない」
「最初から、そこを疑ってなどいない」俺はそう断って左膝に肘をつく。「何を濁す必要がある?」
「分かるだろう。うちを継がず、家の力も借りずに、独力で生きる道を選んだお前になら。お前は、結局、聡明で正しい」
「……」
「確かに、この月の裏に未来はない」
 かつて俺がこの家を飛び出した時には、ついぞ認めなかった言葉だった。
 俺がセクストンとして生きることになった切欠となる口論、その結論だ。家業を継げと言う父と、このワイズマンズ・シーサイドスクエアに未来はないと言う俺。あの頃は一致しなかった意見が、ついに合意に至ったらしい。
十余年という月日は、父の考えが変わるのに十分な歳月だというのだろうか。
それとも、父が納得するまでに十年以上もかかったというべきか。
「だが、今は、あのままお前と縁を切っておけばよかったのにと思う。そのくらい、あの娘は危険だ」父は吐き捨てるように言った。
シャルと一緒にいることを選ぶのなら、裏月酒店に迷惑をかけないよう、縁を切れと言っているようにも聞こえた。
「危険? あの尾が?」
「馬鹿なことを言うな。あの娘には、理性がある」
その言葉に俺は頷いた。否定の余地もなかった。危険な力を持つだけで制御の利かない少女であるなら、俺はすでに死んでいてもおかしくはないだろう。
「だが、やはり、関わるべきではなかった」
「母は、そうは思ってないみたいだが」
「あいつもあいつだ」父は自身の胸元を指先で小突いた。「情が深すぎる」
ワイズマンズ・シーサイドスクエアは、その維持を連邦から第三セクターの管理下に移譲されて久しい。現在その維持を担っているのは、まさにここに住む市民たちだ。この天蓋型宇宙都市の莫大な維持費を賄うため、市民は掟を作り、団結する必要があったはずだ。外貨を稼ぎ、都市に富を齎す。その一点で、都市はまとまっていた。幼い頃、父もその情とやらを大事にしていた。それは今や、呪いと化して、目の前の壮年の男を苛んでいるのだろうか。
「誰がお前たちを狙っているか、答えは明白だろう」
「……」
「お前が、今、考えていることを言ってみろ。ダズン」
「それは」と逡巡する。それに何の意味がある?
推論がお互いに一致していようと、それが事実であろうと、なかろうと、もう話は決裂しているように思えた。
 しかし、その推論を披露する前に、扉は開いていた。
 お盆にドリンクを載せ、女性が入って来た。彼女は、その女体のほとんどを見せつけるような、シースルーの挑発的なドレス姿だった。裏月酒店の女だろう。
「レイシィ」父が咎めるような声音で、その名前を呼んだ。レイシィと呼ばれた女性は肩を竦める。「奥様に頼まれたんです」
彼女はドリンクを二つ、ゆったりとした動きで差し出す。
一つは父の前に、一つは俺の前に。
 それから、俺に妖艶な笑みを向けて、囁く。
「お姫様をお連れしましたよ」
 彼女は再び扉が開いた。
 そこにはシャルが立っていた。薄藍のドレスを着こなしている。いわゆる、チャイナ・ドレスだ。薄い布地の下に、美しい曲線が浮かび上がっており、スリットから覗く脚は、白いタイツに覆われている。彼女の特徴的な下半身の彩りさえ、それを薄っすらと透けさせたタイツによって、艶めかしく活かされていた。
 幸い、シャルが俺に感想を求めるような言葉を告げることはなく、ただ彼女の視線がゆらゆらと俺の右耳と左耳の辺りを掠めるだけだった。
 二人はそのまま俺の両隣を挟むように座った。
今、俺たちは重要な話をしている。とは、言えなかった。邪魔をするな、とも。レイシィは兎も角としても、拳四つほど離れて控えめに座るシャルに対して無関係だから離席するよう告げるには無理があった。他ならぬ彼女の話だからだ。
母は、俺と父の話し合いが険悪なものになることを予見して、二人を送り込んだのだろうか。そうだとしたら、その効果は覿面だと言える。
父が立ち上がった。
「話は終わりだな」
「待ってくれ」
 腰を浮かせて、後を追おうとする。父が扉に手をかける前に。
 何かを告げようとして、その前に変化が起きた。
そこで再び、扉が開いたのだ。
 男が、父を押し退けて部屋に入って来た。
その大男ぶりと言ったら、そう低くもない扉を、上半身を傾げて通るほどだ。縦に大きいだけでなく、横幅もあり、筋骨隆々という言葉で評するのに相応しい。彼が入って来ただけで、部屋は狭くなり、その厳めしい顔を見るだけで、息が詰まるような錯覚を覚えた。
それからもう一人、その後について、女性が入って来る。先に入った男の後では小柄にも見えるが、その実、しっかりと身体を鍛えているようだった。ヒールを履いているが、その足運びには安定感があり、タイトスカートの稼働範囲をいっぱいに使った大きな歩幅で、ほとんど部屋の中ほどまで進入する。
二人は汎用スペーススーツの上から、黒いスーツを着ていた。
そして、腕には連邦捜査局の腕章を着けていた。
「貴様らは……」
 父の誰何に、その女性は小首を傾げた。結い上げた金髪が、肩を撫でて滑った。
「私は連邦捜査官、エスリ・シアンサス。彼は、部下のア・スモゥ」
 連邦捜査官。
 そうだ。
「連邦宇宙開拓秩序に基づいて、シャル・ラストテイルの身柄を拘束する」
 彼女たちこそが、シャル・ラストテイルを追っていた。
それは、全く意外ではない。
言うまでもなく、時間と空間は、世界の最重要ファクターである。時空歪曲は、宇宙開発においてブレイクスルーを引き起こす技術であり、超長距離通信や、跳躍潜航が生まれる端緒であった。そして、それにまつわる全ての研究は、連邦が主管している。全ては宇宙開拓秩序の為だ。
そして、宇宙開拓の先に、地球人と異星種の交流という大きなマイルストーンが想定されていたことは想像に難くない。地球上での開拓史ですら、開拓者と原住民の出会いというものは、あったのだから。
同時に、地球人と異星種が交わることが可能なのかという命題も存在している。
血統加速という技術には、それを測る意図があったのだろう。少なくとも、研究が始まって、間もない頃は。それがいつから能力開発の側面を持つようになったのか、あるいは、最初からそれを期待した交配実験だったのか……その委細にそれほどの興味はないが……いずれにせよ、その成果物であるシャルを追うのは、連邦だったのだ。
「よろしいですね?」
エスリ・シアンサスが、無造作にハンド・レーザーウェポンを抜いた。
9.
「お二人とも、逃げてください!」
 鋭い、レイシィの声。彼女の手には、どこからか取り出したハンド・レーザーウェポンが握られていた。
「あああ、馬鹿者が」頭をガシガシと掻き乱し、父も懐から銃を抜いていた。
 無論、俺も。
逃げる? それはいかにも考えられない選択肢だった。
「ナノマシン統制プロトコル、戦術モード!」
 俺と父の声が響く。汎用スペーススーツを着ていないシャルとレイシィを、背に隠した。ナノマシンがアドレナリンを合成して、身体を戦闘モードへと切り替えていく。そのまま銃を構えながら、肩で首元のコンソールを圧迫した。
防護外骨格が、全身をアーマーのように包んでいく。その装甲展開の隙間を縫うかのような眼光の鋭さで、エスリ・シアンサスはトリガーを引いていた。
そして、それに応じる形で、室内に多数のレーザーバレットが飛び交う。
 エスリは、ア・スモゥの巨躯を盾にしていた。
 光弾を生身で受けたように見えた大男だが、恐るべきことに、些かも痛みを感じたようになかったし、その活動に支障が生じたようにも見えなかった。
「かぁああああああああ!」
 それどころか、エスリを守るために広げた腕をそのまま振り回し、こちらに飛びかかって来た。大男の体重の乗った振り下ろしを受けても、外骨格を破壊せしめることはないだろう。だが、そのまま拘束される愚は犯したくない。
 逃げるしかない。だが、後ろにはシャルもいる。
 迷いで、身体が硬直する。それは命取りになるような隙だった。
「……ダズン!」
 少女の声。
 ア・スモゥの巨躯が、何かにぶつかった。まるで室内でトラック同士が正面衝突を起こしたように、爆ぜるような空気の振動が巻き起こった。
力の尾だ。
不可視の尾の如き力場が、巨漢を受け止めた。
彼女の力場は、疾く奔り、破壊される心配もない。それは彼女の心のままに動く、自由自在の第三のカイナだった。
自分が把握する限り、その上限を感じさせないほど力強いものだ。
「う、ん!?」
だが、シャルは疑問と、そして苦しそうな声を漏らした。
「ん・ん・ん!!!」
拮抗し、しかしそれでも、尾を振りぬく。
 ア・スモゥは弾き飛ばされて、壁に背中から激突した。
 この一瞬、形勢は逆転した。
 エスリはそれを理解していた。タタタンと素早く部屋を走り、父とレイシィに狙われながら、レーザーバレットをやり過ごす。これで、位置関係が逆転した。今、俺たちの方が出入口に近くなっている。尤も、それは相手も承知している。
「ア・スモゥ、起きなさい!」
 エスリの声で、大男が起き上がった。まるで効いていないとでも言うのか。
そう思うが、彼は頭から流血していた。血が滴り、床を汚す。それでも、その歩みは止まらなかった。傷つかないわけではない。だが、歩みを止めるには至っていない。
「……もう一度……」シャルが言った。
俺は彼女の肩を掴んだ。
「ダズン、邪魔しないで!」いつになく悲痛な声に聞こえた。
いや、と俺は逡巡していた。レーザーウェポンが効かない相手に対して、結局、戦力として期待できるのは彼女の超常の力だ。だが、彼女に「ア・スモゥをぶちのめしてくれ」と願うのが本当に正しいことなのだろうか。
「このデカブツめが!」
 父がレーザーウェポンを乱射した。
その言葉に反し、エスリの方に向かって、だ。それは有効な目論見だった。大男はエスリを守るために歩みを止めざるを得なかった。
「お二人とも、逃げて!」
 レイシィが叫んだ。彼女の妖艶なドレスは何かに引っ掛けてボロ布のようになっており、父もすっかり埃で汚れている。ソファは破れ、テーブルは盾の如く立てられたままだ。ひび割れた床のタイル。へこんだ壁。部屋は、何もかもが滅茶苦茶だった。
 それらは全て、連邦捜査官の来訪により引き起こされた。
「いや……」
 俺がシャルを保護しようと考えたことが、この状況を招いたのだ。
そうであるのだとしたら。ヒトならざる存在であるシャルの扱いに困り、この都市に連れて帰ったことが間違いだったのだろうか。
あるいは、棺の中で深く眠っていたシャル・ラストテイルを、そのまま殺していればよかったというのだろうか。
 俺はシャルの腕を取って、走り出していた。
 表は、さすがに見張られているだろう。裏口から出た。ワイズマンズ・シーサイドスクエアの暗い路地裏が、今は有難い。
「とはいえ、どうする」
「逃げましょう」シャルが言った。「宇宙に」
「……まあ、そうなるか」
 だが、ここから港までは遠い。
 シャルが不意に俺の手を振り払った。
「どうした」
「では、急ぎましょうか」
「あ、ああ? そうだな」
 何だ、このやり取りは、と首を傾げた瞬間、俺はシャルに足払いされていた。
 視界がほぼ半回転する。
「は?」
そして気付くと、俺は、横抱きに抱え上げられていた。シャルに。
力の尾を使っているのだろう。不思議と、落とされそうだという不安感は無い。
「舌を噛まないでくださいね」
「何をするつもりだ、お前は」
 少女の金の瞳が、俺を見下ろしていた。その後ろに、星海を背景に黒いビルが浮かび上がっている。その壁面からガシャンと音がして、何かが弾けた。
「……来たぞ、シャル!」
 その言葉で、すっと滑るように横に避ける。
 先ほどまで俺たちがいた場所に、黒い塊が落ちて来た。タイルが砕ける。
 ア・スモゥだ。そしてその肩には、エスリが座っていた。
 俺たちは、そのまま見合っていた。
「……滑稽ですね」ぼそりと、エスリは呟いた。明らかに俺を見ていた。
「何だと、お前」
「貴方も、我々と同じですよ」
 彼女の目には、犯罪者を捕まえよう、みたいな色は無かった。
 哀れだとか、そういう心情がありありと浮かんでいるようだった。
 その手にあるハンド・レーザーウェポンが、ゆっくりとこちらを向いた。
「跳びます!」
 シャルが叫んだ。その瞬間、俺は、俺たちはワイズマンズ・シーサイドスクエアの空に投げ出されていた。飛んでいると言ってもいい。いや、跳躍と言うべきか。
ともかく、大気がうるさいくらいに耳元で荒んでいた。
「……追っては、来ないみたいですね」
「真似できるものなのか」
俺たちは、ゴースト・タウンを俯瞰する身にあった。
これを生身の人間に?
「分からないですけど」と彼女が呟いた。「彼も、血統加速者かもしれません。彼の拳は明らかに重かったですし」
 確かに、そのような節はあった。謎の頑強さは、レーザーバレットを受け止めることから、裏月酒店の最上階からの着地まで、ハッキリと示されていた。それを血統加速者の何らかの特質によるものだと仮定した場合、俺たちを追って跳躍できる可能性は何パーセントあったのだろう。
「……」
「全く的外れなのかもしれませんけど」
 俺は流れていく景色を見ながら、そうなんだろう、と思った。彼女が思うなら。
 次に、そうだとして、と考えた。血統加速者の連邦捜査官がいる。
 それは、血統加速者の力を連邦が利用しているということだ。
 そんな話は聞いたことがない。
 脳裏の誰かが警告する。一介のセクストンに過ぎない俺が、連邦の何を知っているのだと。俺は描きかけた邪推を掻き消して、あとはされるがままになった。
 一度の跳躍で港までは辿り着けないので、俺たちはもう既に何度か弾んでいた。
 全く苦に感じないのは、シャルが慎重に力場を操っているからだろう。
 途端に手持ち無沙汰となり、その顔を眺めてみた。
 以前に聞いたことがあるが、力の尾という念動は、野放図的にパワーを引き出すことよりも、精密に制御する方が大変なのだと言っていた。星海の下の彼女の顔は、眉を顰めて凛々しく歪んでいる。
彼女はもう、棺で目覚めた頃のままではない���かもしれない。
「……あの、そう見られると、集中力が乱れます」
「すまん」
10.
都市の出入口たる宇宙港は、ワイズマンズ・シーサイドスクエアの中で最も活発な施設だった。ゴースト・タウンじみた都市の様子とは裏腹に、多数の宇宙船が普段からそこを利用している形跡がある。それは、この天蓋型宇宙都市の維持資金を稼ぐための選択肢に出稼ぎというものがあるからだろう。あるいは、資材の搬入である。
 シャルを連れて、運送業者側の通用口から港に入る。シーラカンスは輸送船の一種と言えるので、正当な入り方と言えるだろう。まあ、俺が運ぶのは棺だが。
いずれにせよ宇宙港の宇宙港の構造と、俺たちの進路は単純だ。このままターミナルビルを抜けて発着場に進入し、そこにあるシーラカンスに乗り込む必要がある。
 だが、シーラカンスの前には、連邦捜査官たちが詰めていた。
 それはそうだ。
「……見張ってますね」
「そうだな」
「艦まで着いたとして……かもしれませんけど」
彼女がそう言った理由は、よく分かった。物陰に隠れながらでも、はっきりとその理由は見えた。連邦の艦が、その巨体で離着陸用ゲートをブロックしている。これでは、宙に逃げることはできないだろう。
 俺はハンド・レーザーウェポンを抜いて、残弾を見た。
「……それでも行きますか?」
「それでも、だ」
 連邦捜査官は三人いた。ア・スモゥのように無茶をしてくることはなさそうだ。油断ならない雰囲気もない。有り体に言えば弛緩しており、エスリ・シアンサスのような真剣さがなかった。少なくとも彼女の部下には見えない。一人を撃って無効化する。もう一人は、力の尾が吹き飛ばしていた。
 異変に気付いた三人目が武器を構える。ライフル型だ。
 銃口がこちらに向く。シャルの方じゃなくて幸いというべきか。
 力の尾でレーザーバレットが防げるかというと、そうもいかない。
 力の尾は力場であって、物質的な特性はない。実弾ならば防げるが、レーザーバレットは防げないのだ。できるとしたら、マイクロブラックホールレベルの力場を生成し、空間ごと光弾の軌道を歪曲する方法だけだ。
だが、血統加速者であっても、できる事とできないことがある。つまるところ、彼女の出力では、レーザーウェポンを防ぐことはできない。
 身を盾にする。不運にも、光弾は装甲の間を抜けて、左肘を僅かに焼く。
 だが、二発目は来なかった。
 シャルが打ち倒したからだ。
「大丈夫ですか?」
「…………俺のセリフだが」
「私は後ろにいただけですから」
「違う。力を使いすぎじゃないのかってことだ」
 彼女は言われてから、ニコリと笑んだ。
「それこそ大丈夫です。普段から余分に飲んでいますし」
「お前……、……まあいい」
 とりあえず、平気ならいい。だが、溜息はついた。
「とはいえ、さすがに宇宙船サイズのものは」
「だろうな」俺は頷いた。「コバンザメを使おう」
今もシーラカンスの船底にくっついているソレに、シャルはなるほどと頷いた。
コバンザメの逆正三角錐の頭には、船底のポートに接続するためのジョイントと乗降用のハッチが備わっている。これにより、艦の外部に連結した状態で運搬・必要に応じて稼働できる仕組みだ。船内に格納スペースを設けなくても配備可能な汎用船外作業用重機だとして、小型輸送艦の類では定番なのである。
 コバンザメのサイズは全高五メートルほど。シーラカンス自体のサイズとは比べるべくもない。ブロックを抜けることができるだろう。
 シーラカンスに乗り込み、コバンザメの搭乗ポートに向かう。
 その途中で、防護外骨格を格納した。
「ヘルメット、どうします?」
「要らん」コバンザメの気密性は十分安全とは言えないが、二人で乗り込もうという時には、邪魔にしかならないだろうからだ。
「言っておくが、狭いからな」
「まあ……そう……ですよね」
 床のハッチを開く。
コバンザメは船底にくっつくようになっているので、梯子を降りる格好だ。
今はワイズマンズ・シーサイドスクエアの重力下だから関係はないが、艦の装甲内には、艦載重力機関による疑似重力域の境界がある。宇宙空間では、そこを行き来する際に重力を感じることができた。例えて言えば、プールで水面に出たり入ったりするような感覚だ。だから梯子を降りる……つまりコバンザメに乗る……のは楽だが、梯子を上がる……つまりコバンザメを降りる……のは、しんどくなる。
「……よし、いいぞ」
 まず俺が座り、そこへシャルが降りて来る。脚の間に座らせる形で考えていたが、すぐにその計画は修正することになった。膝の上に座ってもらうしかない。二人乗りが想定されていない、狭いコクピットの中だ。スペースはギリギリだった。
「どこかに掴まってくれ」
「どこかって、どこにですか?」
「とりあえず、変なところを押したり引いたりはしないでくれ」
「それは、難しい注文ですね」シャルはそう言いながら、狭い機内で器用に身体を反転させた。そうしてそのまま、ぎゅっと俺に抱きついてきた。柔らかい肢体が、先ほどまでよりも克明に感じられる。
「……、……何をしているんだ……お前は」
「論理的に考えて、これが一番安全ではないですか?」
 そう、かもしれない。
 コバンザメの内部には様々なコンソールが並んでいて、どこを触れても何かを操作してしまいそうだった。論理的に考えて、触れる場所の選択肢はそう多くない。
「……このまま出発するからな?」
 どうぞ、と彼女は言った。
「システム起動」
 コンソールを小突く。
機体コンディションチェック、エネルギー残量チェック、ハッチ閉鎖、気密確認、分離準備。一つ一つ確認していると、不思議と落ち着いてきた。
 いつもと何ら変わらない。
 腕の中のシャルも、口を挟まず、邪魔をすることもなかった。
狭いコクピットの前面は、メインモニタになっている。
船底は床面より下に位置するから、ここからは港の下部構造が見えた。
「メインモニタよし」
それから、両手をコントロール・スロットルに置いてみた。
操縦には問題なさそうだ。
問題は、三次元レーダーモニタが使えないことだ。さすがにシャルを抱える形になっている現状では、アームを動かして見える位置に固定しておくというのも難しい。目視で何とかするしかないだろう。
「分離するぞ」
 呟きながら、指差し、ワンテンポ置いてからトグルスイッチを上げる。
 ガクンと、重力に引かれてコバンザメが落ち始めた。耳元で、シャルが息を吸う音が聞こえた。
 スラスタを噴かす。
 重力と推力が均衡する。
「さっさと出よう」
 目論見通り、コバンザメの小さい機体ならば、連邦艦の進路妨害は何の障害にもならなかった。だが、何かしようとしていることはバレたらしい。
 メインモニタの左隅で、同系の汎用船外作業用重機のシルエットが動き出した。
連邦捜査局のそれだから、対重機用戦闘機と言うべきかもしれない。その腕には大口径のレーザー・キャノンが装着されている。
もっと言えば、その腕の大口径のレーザー・カノンはこちらに向いており、その銃口は既に瞬いていた。
「う、おお!?」
 メインモニタが青く輝く。即座に輝度補正が掛かるが、何も見えない。それから、強烈な横Gが掛かっている。どうやら、左に大きく移動しているらしい。被弾したわけではない。その証拠に、俺はまだ生きているし、シャルの熱も感じている。
 一瞬して、揺さぶられるような衝撃が全身を貫いた。衝撃アラート。機体コンディションの左半分が赤い。何が起こった?
考える前に、脳裏に閃きが起こった。左舷スラスタだ。
どうも調子が悪いと思っていたところだった。このタイミングで、ダメになったらしい。それで、バランスが崩れて左に滑ったのだ。いや、ダメになったお陰で、銃撃には当たらなかったと捉えるべきかもしれない。悪運だ。
 だが、左舷スラスタが使えない状態で、キャノンを装備した戦闘機から逃げおおせることができるかと聞かれると、それは疑問だった。
「……大丈夫ですか?」
「どうも、駄目そうだ」
 メインモニタが復活した。目の前に、戦闘機が近づいていた。
「貴方には、私がいるではないですか」
 お前は、勝利の女神か何かなのか?
 俺が問うと、彼女は笑った。
「私は、シーラカンスのクルーです」
 力の尾が、取りつこうと近づいてきた戦闘機を薙ぎ払う。
 そいつは、反射的にスラスタの出力を上げるが、それはわずかな抵抗だった。
彼女の力場には、物理的な隔たりも意味をなさない。それは彼女の尾骶骨の延長上から伸び、自由自在に動く第三のカイナだった。出し入れ自在かつ、最長で十メートルに及ぶ、純粋なる力の尾である。
 それが、シャル・ラストテイルの異能だった。大型の宇宙船をどうこうはできなくとも、コバンザメと同程度のサイズならば、排除できうる。
「クルーとして迎えて、良かったでしょう」
「そう……らしいな」
 俺は苦笑して、コントロール・スロットルを握り直した。
「このまま港を出よう。手伝ってくれるか」
「ええ、もちろん」
11.
港を脱出した勢いで、月面を行く当てもなく、進む。
だが、それに限界があることは明らかだった。汎用船外作業用重機であるコバンザメには、宇宙空間を長距離航行できる能力はない。空気も燃料も数日は持つが、それだけだ。
「これから……どうするかな」
「もし行けるなら、月の表に行ってみたいです」
 彼女は言った。
 幸い、追手はない。今の時点では、と悲観的な補足をしておくべきだろうか。
「分かった」
 左舷スラスタは沈黙したままだ。
だが、急がないなら、それを補って進むことはできる。
 シャルの尾を借りる必要もない。
「行くか」
「はい」
 逃亡の終わりは、すぐそこに迫っているはずだった。
 その終着が、地球を臨む丘なら、それもいいのかもしれない。
 月の裏で生まれた俺には、地球への帰属意識なんて無いし、シャルにだって、そんなものはないのだろうけど。それでも。
 やがて、白い大地と黒い星海だけの世界に、青い星が現れた。
「……」
 随分と久しぶりに、しっかりと地球を見た気がした。
「なんで、こちら側に都市を作らなかったんでしょう」
もし、そうしていたら、いつでもこの美しい星を眺めることができる都市になったのに、と彼女は言った。
 そうかもしれない。もし月の都が、地球側にあったら。
 ワイズマンズ・シーサイドスクエアの空には、青い星が浮かんでいただろう。
「地球人の月への興味は、美的なものに留まっていたんだろう」
「美的、ですか」
「夜空に浮かぶ月が綺麗なままであることは、地球人にとって一番重要だったんだ」
「地球人っていうのは、ロマンチシストなんですか?」
「俺は、現実的だったんだろ���と思っている。綺麗な景色に意味を見出すというのは、一見、ロマンに見えるかもしれない。だが、綺麗な海を守ろう、綺麗な川を守ろう、綺麗な町にしましょう……宇宙開拓前時代の地球では、そういったスローガンの下、環境問題に取り組んでいたという。これは、ロマンだと思うか?」
「……いえ」
「対象への美意識を意識させるというのは、最も基本的な環境保護施策だ」
だから、ワイズマンズ・シーサイドスクエアは月の裏にある。
月の表では大規模開発をしない。それが、宇宙開拓時代に入るに先立って連邦が決めたルールだった。地球の総意だったのだ。
実際には、月は巨大だ。仮にワイズマンズ・シーサイドスクエアが表にあったとしても、地球から見れば、ひとかけらの黒い点にも見えないことだろう。しかし、一を許せば、それはいずれ千になり、億にもなるかもしれない。地球人には、地球でそれを証明してきた歴史があった。空き缶一つで直ちには環境が破壊されないからこそ、そこを意識することには意味がある。
「……詳しいですね」
 シャルが俺を見ていた。その表情には見覚えがある。別に、地球生まれというわけでもないくせに、という顔だ。
「生まれがどうとかではない��
「じゃあ、なんです?」
「父の影響だ」
父のする、地球の話が好きだった。
もっと言えば、海の話だ。地球の生命は海から生まれ、やがて生命は陸上を支配し、宙を目指し、ついには月に根差した。そんな、壮大な生命と人類の物語を聞くのが好きだった。
「そういう、気の利いたお話しをするタイプの方だったんですね」とシャルは言った。
「はは」
 彼女にとって、父は気難しい人間に見えたかもしれない。そもそも父は、あまり彼女と顔を合わせないようにしていたみたいだった。
シャルを可愛がっていたのは、母の方だった。
まるで娘が出来たみたいだと喜んでいたのを覚えている。そうして短い期間で、人形のようだったシャルを随分と表情豊かなヒトにしてみせたのだから感心する。そして、そんな母の様子を見ながら、父は深すぎる情を案じていたのだろうか。
父が、彼女は危険な存在だと言い、縁を切れと言ったことを思い出した。そうしないのなら、俺との縁を切るとすら言ってみせた。
 それでも、仲が悪かったというわけではない。良かったはずだ。
「……ただ、意見が合わないだけだ」俺は言った。「昔からそうだ。俺がセクストンになる前、ワイズマンズ・シーサイドスクエアの将来について二人で話していた時もそうだった。でも議論での対立は、決して仲の良し悪しとは関係ないだろう?」
「……それは、希望ですか?」
「そうかもしれない」
 だが的外れとも思わなかった。土壇場で銃を抜いたからだ。
 父は、俺を連邦に突き出すことも、静観することもしなかった。そうすることもできたはずだ。事実、そうすると思っていた。
でも、抵抗を選んだのだ。
議論の上では、俺たちは対立していた。父はシャルのことを危険視していた。俺と同じように、違法な情報収集手段を活用したかもしれない。父からすれば、自分や母を守るのに支障がない限りで、俺を守り、俺を守るのに支障がない範疇ならば、他人に手を貸してもいいとするのは当然の順位付けだ。
意固地になっているのは俺の方なのだろうか、と、ふと思った。
 じゃあ、シャルを見捨てれば良かったのか?
それも甚だ馬鹿らしい話だ。
 最初から確固とした理由があって彼女を助けたわけではない。敢えて言うなら、放り出すことを選ぶのには不快感があったからだ。そこには意外と同情も憐憫もなく、俺の考えの芯には、いつも俺自身がどう思うかが根差している。
 それは、そんなにダメなことなのだろうか。大したワケもなく人助けしてはならないという理由で、見捨てることを選ぶべきだと言うのなら。
これからがあれば、の話だが……俺は、これからも偽善だと言われるような行為をするだろう。コバンザメの狭い筒状のコクピットの中で、そう思った。
「暑くないか?」俺は言った。
「そ……うですね。空調、強くできないんですか?」
「やろうと思えばできるが、それだけバッテリーを食う」
 端的に返すと、沈黙があってから、彼女は小さく言った。
「それは、よくないですね」
 シャルも、終わりを理解しているのだろう。それが近づいていることも、それを早めることをしても、しんどいだけだとも。
空気も燃料も有限だし、コバンザメは故障しており、ワイズマンズ・シーサイドスクエアに残していった父や母や、裏月酒店の皆だって連邦に拘束されただろうし、俺たちが月の表に来ていることも、もう明らかになっているだろう。
 だから、俺たちの時間は、あと僅かしかないだろうと思う。
「次は、どうする?」と俺は聞いていた。
「次……ですか?」
「やりたいことはないのか?」
 しばし、沈黙に包まれた。それから、遠慮がちに声がした。
「最後に……貴方の、ダズンの血が飲みたいです」
「そんなことか」
 思えば、彼女はここまで何度も力の尾を行使していた。
 スーツの首元を開けてやる。
 シャルも、いつも通り、するりとスーツを脱ぐ。狭い機内の中、メインモニタいっぱいに広がる青い星を背景にして、彼女は白い肌を晒していた。
 窮屈そうに腰の辺りまでスーツを下ろして、綺麗な裸体を晒す。
「ダズン」
 唇が近づいてくる。首元にしっとりとした感触が触れた。
そのまま抱き合うようにして、俺たちは密着していた。隔てるものはなく、肢体の柔らかさがダイレクトに伝わってくる。
じくりとした痛みが首に広がった。牙が首元を小さく穿つ感触だ。
それから、こくんと、嚥下する音がコクピットに響いた気がした。
「いっそ、全部飲んだっていいんだ」
 彼女が弾かれたように顔を離した。
 唇の端からつうと血が垂れて、酷く苦しそうな顔で、俺を睨んでいた。
「そんなこと、私は望んでいません」
「……そうだな」
「本当に分かってますか?」彼女が詰め寄ってきた。「私が何を望んでいるか」
「多分、分かっていないんだろう」
 俺が白状すると、彼女はそれほど気を悪くした様子もなく、しかし、あっさりと頷いた。気を悪くした様子もないというのは、希望的観測かもしれないが。
「私が、なんで、こうして脱ぐのかも?」
「分かっていない」
 分かっていないのだ。
以前からずっと、俺はただシャルの裸身を眺めていたわけではない。
予想してきた。そして、自分で、その予想が嘘くさいとも気づいていた。
 普段から一緒にいたら半人半異星種であることを忘れられそうだから、肌を見せているのだなんて、酷い、こじつけだ。
 それと伝える為だけなら、もっと相応しい手段があり、脱ぐ必要はない。
そもそも俺は、常から彼女がそうだと感じているのだ。外見や、力の尾は、その認識に直接的に関係ない。そもそも食べるものが違う。それに付随する、生活様式が異なる。彼女の振る舞いは、やはり純粋な地球人とは異なる。
 然るに、その問題をクリアできずして、彼女は人の輪の中に混ざることができない。
 俺は常にそう思っていて──彼女も理解しているだろう。だから、わざわざ肌を見せる必要などなく、お互いが違うことは、お互いが一番分かっている。
「私は別に、ヒトの輪の中で隣人として生きたいなんて、思ってないんです」彼女は自分に言い聞かせるようだった。それから、俺に伝えるよう、声を大きくした。「ただ、貴方と一緒が良いんです」
彼女はそう言った。
言われながら、俺は今、彼女にとても人間を感じている。
そのことに気付いた。
「……そうか」と、動揺から声が揺れないように努める。
「俺のことが好きだって言いたいのか?」
「そう……なのかもしれませんね」
そのような煮えきらない返事にさえ、生々しさがあり、つまり、血統加速者だとか、半分は宇宙人なのだとか、問題はそういうことではないのだった。
そういう思想に傾倒して、彼女の感情から逃げていたのは俺自身だ。
目の前にいる女性が、ずっと俺の情欲を引き出そうとしていたのだと気付いた。
今になって。
「ダズンは、どう思ってますか? 私のこと」
 どうだろう。
俺は、ついに戸惑いを隠そうとも思えず、逡巡していた。
 口を半端に開いて言葉を見失った俺を、シャルは真っ直ぐに見つめてくる。彼女は意外にも微笑を浮かべており、その身は青い地球を背負っていた。
指先に、何かが触れる。彼女の手だ。指先が絡み合い、その美しすぎる貌は間近に迫って来た。
「……どう、なんですか?」
彼女の掠れるような声が脳に染み、痺れるような錯覚を覚えた。
そうだな。
結局のところ、俺は彼女に情を持っていると思う。だが、それが友情なのか、愛情なのか、あるいは色情なのかというところを断ずるには、至れなかった。
単純な話ではなく、それは、渦巻いている。
混ざり合った青なのだ。
だが、あえて遠くからそれを眺めるとするならば。
絡み合った指先に力を入れると、彼女はそっと瞼を閉じていた。
テラヒューマニティ・星海殉葬(了)
2024.1.16 - 3.31 first draft(35k) 2024.4.8 update
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chishiru61 · 9 months
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2023年下半期に見た展覧会
0701 ガウディとサグラダ・ファミリア展@MoMAT 0702 イギリス風景画と国木田独歩@茅ヶ崎市美術館 0702 生誕110年 傑作誕生・佐藤忠良@神奈川県立近代美術館 葉山 0706 ブルターニュの光と風@福島県立美術館 0708 谷川俊太郎 絵本☆百貨展@PLAY!MUSEUM 0711 テート美術館展 光 — ターナー、印象派から現代へ@国立新美術館 ☆0721 甲斐荘楠音の全貌 ― 絵画、演劇、映画を越境する個性(前期)@東京ステーションギャラリー *1 ☆0729 ソール・ライターの原点 ニューヨークの色@ヒカリエホール *2 0729 平間至展 写真のうた@ヒカリエホール 0804 「あ、共感とかじゃなくて。」@MoT ★0804 デイヴィッド・ホックニー展@MoT *3 0805 ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム@アーティゾン美術館 0806 蔡國強 宇宙遊 ―〈原初火球〉から始まる@国立新美術館 0812 特別展「古代メキシコ」@東京国立博物館 0812 スペインのイメージ:版画を通じて写し伝わるすがた@国立西洋美術館 0813 私たちは何者?ボーダレス・ドールズ@渋谷区立松涛美術館 *4 0820 フィンランド・グラスアート 輝きと彩りのモダンデザイン@東京都庭園美術館 0825 甲斐荘楠音の全貌 ― 絵画、演劇、映画を越境する個性(後期)@東京ステーションギャラリー 0826 生誕100年 山下清展―百年目の大回想@SOMPO美術館 0902 挑発関係=中平卓馬×森山大道@神奈川県立近代美術館 葉山 ★0902 吉村弘 風景の音 音の風景@神奈川県立近代美術館 鎌倉別館 *5 0907 三沢厚彦 ANIMALS@千葉市美術館 0917 虫めづる日本の人々@サントリー美術館 0920 版画家たちの世界旅行 -古代エジプトから近未来都市まで@町田市立国際版画美術館 1022 杉本博司 本歌取り 東下り@渋谷区立松濤美術館 1029 デイヴィッド・ホックニー展(2回目)@MoT ☆1029 ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン@アーティゾン美術館 1119 開館35周年記念 福田美蘭―美術って、なに?@名古屋市美術館 1121 テオ・ヤンセン展@千葉県立美術館 1122 展覧会のちょっといい話 絵本と近代美術のあれこれ@板橋区立美術館 1125 装飾の庭 朝香宮邸のアール・デコと庭園芸術@東京都庭園美術館 1202 「パルコを広告する」 1969 - 2023@PARCO MUSEUM 1203 「横尾忠則 寒山百得」展@東京国立博物館 表慶館 1203 開館記念展「皇室のみやび」(第1期:三の丸尚蔵館の国宝)@皇居三の丸尚蔵館 1203 生誕120年 棟方志功展 メイキング・オブ・ムナカタ@MoMAT 1207 イン・ビトウィーン@埼玉県立近代美術館 1209 永遠の都ローマ展@東京都美術館 1209 大巻伸嗣 Interface of Being 真空のゆらぎ@国立新美術館 1209 イヴ・サンローラン展 時を超えるスタイル@国立新美術館 1214 モネ 連作の情景@上野の森美術館 *6 1216 「前衛」写真の精神: なんでもないものの変容@渋谷区立松涛美術館 ☆1216 「鹿児島睦 まいにち」展@PLAY! MUSEUM *7 1223 吉田ユニ「PLAYING CARDS」@ラフォーレミュージアム
*1 御多分に漏れず「あやしい絵」展でファンになってから待望だった個展、こんなに早く見ることができるなんてありがたい。ただ、やっぱり結構残っている作品は少ないんだなあ、というのが一番の感想で、そして作品のアクが強くて初めのインパクトや中毒性は強い分、慣れてくるとそこまでじっくり見るような感じにはならないなあ、とも思ったり(音楽とかでもそういう曲ってあるよね)。一方で、メインビジュアルにもなっていたメト所蔵の「春」なんかは特有のケレンを上手く折衷させた見ごたえの絵のある絵に仕上がっているんだけれども、結局それより先が無かったという。。展覧会中でも識者の言葉として紹介されていたけれど、ちょっと惜しかったというか、あともう少し絵師として活躍してほしかったなあと。でも、図版でしか知らなかった作品をいっぱい見られて嬉しかった。 *2 ソールライターの「良さ」がようやくわかってきたような気がします。残されていたフィルムをデジタル現像して順番に映し出していく大画面スライドショーのインスタレーションがとても面白くて、美術館ではない空間になった分、こういう演出ができるようになったのは良いなあと思いました。 *3 この夏のナイスワン。自分の中の「とても楽しかった展覧会」の1つの基準が、「一通り見終わった後に展示室で延々ゆらゆらしていられること」なんですが、久しぶりにそのトリップがきました。ホックニー特有のポップで人懐っこい色彩がやはり素晴らしく、いつまでも網膜にうつしていたくなるんですね。特に大型作品の展示空間に入ったときは、その色彩感に包まれるのが嬉しくて、思わずくるくると踊りだしそうになりました(?)。 展覧会は、初期から始まってロンドン、カリフォルニア、イギリスの田舎町、そして最近移り住んだノルマンディーと、活動場所で区切られた作家のキャリアを一通り追う構成。昔メトで大規模回顧展を見たはずなのですが、あまり記憶になく、、今回改めて見て、初期はかなりベーコンの影響を感じるなーとか、やっぱり色彩はマティス、後期のボナールっぽいなーとか、いろんな発見がありました。 この10年来ハマっているというiPad絵画は、長生き作家にありがちの、晩年にどんどんと・・・よく言えばダイナミック、悪く言えば大味というか雑になっていくアレなんだけども(ピカソとか)、ただ色彩だけで言うと、やはりホックニーそのものなんですよね。近づいてみると、マジで点とか線は小さい頃にwindows95のペイントソフトで遊んだ、落書きライクな感じなんだけども、遠くから見るとちゃんと「らしい」作品になっているのはさすがだなと思いました。 以下は蛇足なのですが、作品構成は、大型の油絵作品10点余りがテートから、それから複数のパネルを組み合わせた作品が同じくテートとポンピドゥーから1点ずつ、あとは作家蔵の超大型作品がメインで、その間を都現美所蔵の版画コレクション(これ一度まとめて見たかった!)で埋めていく、という感じ。つまり単に金にあかせてガサっと作品を連れてきたのではなく(それでも相当お金かかってると思うけど)、館にあるものが起点になっているのが良かったな。欲を言えば、作家のキャリアハイである西海岸時代の作品(プールとか彼氏とか出てくるやつ)が手薄な感は否めなかったですが、まあ贅沢を言うとキリがない。 *4 古今東西における「人形」の役割を紹介する展覧会で、人形と言えばやっぱりセクシャルな意味合いもあるけどさすがにそれは展示できないよねー、と思いながら見てたら、最後にばっちりあって、ここ(渋谷区)は本当にすごいなと思った。もっとやってください。 *5 環境音楽家・吉村弘の回顧展。展示室に直接音楽が流れているのかと思いきやそうではなく、しかし音楽を喚起させるような愛らしい絵楽譜や、それぞれの映像から聞こえる微かな音楽によって、展示室全体がとても豊かな音楽に包まれていた。そしてそこに、微かな外音や、来場者の衣擦れや足音、小さな話し声が「環境音楽」として響いている、というわけ。写真2枚目のサウンド・チューブという展示があって、観客がめいめいにこの筒を揺らしたり、ひっくり返して、筒の中に入った水音に耳を澄ましている(そして、とても良い音だなと思う)。しかしよく考えれば、聞いている音はありふれた水音であり、つまり世界には、このように耳を澄ますべき音に溢れているんだ、ということがメッセージされている。そうして美術館の外に出るとあら不思議、外を通る車の音や風で葉がさわさわと擦れる音、いつもこの美術館の帰りに寄る鶴岡八幡宮の階段を登る自分の足音、美術館のコインロッカーで使った百円玉をそのまま賽銭箱に投げた時のコツンという音などが、全てビビットに聞こえてくる。つまりこの展示は、美術館の中でだけで完結せずに、観客の日常に対する知覚を変えることで、展示室外にもその世界がずっと続いていく、ようである。言うまでもないけれど、そういう展覧会はとても良いものだと思う。 *6 展示自体はなかなか豪華なモネ展だと思うんだけども、チケット代とか人の捌き方とか借用元とか企画元とかそういう本筋と関係ない部分がやたら気になってしまったい。でも、3,000円払って美術展を見たい、という層がこれだけ(しかも若年層も多かった!)いるというのは、ある種の救いなのかもしれぬ。 *7 PLAY!特有の見せ方のうまさと、展示されている作品群の愛らしさが上手に噛み合った、とても視覚的に幸福感のある展覧会でした。見られて良かった。
<海外編> 1104 Rijksmuseum/Museum Boijmans Van Beuningen At Rijksmuseum 1104 Van Gogh Museum/Van Gogh along the Seine 1105 Stedelijk Museum/Nan Goldin – This Will Not End Well 1107 Musées royaux des beaux-arts de Belgique 1107 Musée Magritte 1108 Musée de l'Orangerie/Amedeo Modigliani. A painter and his dealer 1108 Musée du Louvre ★1109 MARK ROTHKO Retrospective@Fondation Louis Vuitton 1109 Musée Marmottan Monet/Berthe Morisot and the Art of the 18th Century ★1109 Musée d'Art Moderne de Paris/Nicolas de Staël 1109 Musée d'Orsay/Van Gogh in Auvers-sur-Oise,Peter Doig 1110 Musée de Cluny 1110 Bourse de Commerce/MIKE KELLEY Ghost and Spirit, LEE LOZANO "Strike" etc. 1110 Centre Pompidou/Over the Rainbow 1111 Musée d'Orsay
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circleaki-portal · 1 year
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プロフィール詳細(Detailed Profile)
同人サークル「AKI」は、3人のメンバーで構成されています。 本投稿では、活動内容とメンバーについて紹介します。
活動方針
二次創作をメインに取り扱います。 Web掲載または同人誌の頒布にて作品を発表します。
ジャンル傾向はほぼ百合(恋愛に限定されない意味合いの方)です。 カップリング(恋愛)を含む場合もあります。
注意書き、左右表記などは可能な限り適切に出来るよう心がけています。
リクエストは原則不可です。 活動ジャンル内の依��や合同誌のお誘いは受付していますが、受諾可能かどうかは状況次第です。
有償での感想依頼サービスを利用しての感想送付はおやめください。
作品利用に関する注意事項はこちら
頒布方針
Web:Tumblr(本サイト)、Twitter、pixiv(各メンバーアカウント)
同人誌:即売会、書店委託(メロンブックス)
連絡手段
主に主宰が返信しますが、他のメンバーにも主宰経由で連絡・質問は可能です。 糸麦くん個人宛は本人のTumblrの質問箱宛が早いです。 すべてメインジャンル以外のことでも大丈夫です。 ☆質問:基本的に答えます。質問の意図が不明な場合は答えない場合もあります。 ☆感想:確認して返事をいたします。(有償での感想依頼サービスを利用しての感想送付はおやめください) ☆リクエスト:原則リクエストおよびリクエストに当たるものは受付しておりません。お返事もいたしかねます。
マシュマロ(Twitter経由での返答)
質問箱(Tumblr)
メンバーについて
菊花さつき(サークル主宰)
重度のトマトジャンキー。
担当範囲:運営、小説、組版
好きなもの:トマト、鰹節、ビーフジャーキー
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糸麦くん(サークル副主宰)
重度の豆乳ジャンキー。
担当範囲:イラスト・デザイン周り、漫画。主宰のストーリーや、キャラ考察の相談相手、発破かけなど。たまに小説。
好きなもの:豆乳(爽香杏仁、チョコミント味以外)
網膜色素変性症持ちのため、イベント会場では白杖を持っている可能性があります。
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バイク(サークルメンバー)
重度のもふもふジャンキー。
担当範囲:イラスト、猫の写真を見せてくれる
好きなもの:ポトフ
即売会には基本的にあまりいないレアキャラ
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awesomenothinggg · 1 year
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障害年金
視覚障害・網膜色素変性症専門の社労士です。視野計算・等級認定を無料で行っております。お気軽にご相談ください。視覚障害の障害年金請求はかなり複雑です。年金事務所の職員でもわからない部分が多く、ご本人もご家族も大変な思いをされるのは当然です。過去にご相談いただいた方の中にも、本当は障害年金を受給できるにもかかわらず、請求できなかったという方がたくさんいらっしゃいました。
10-2プログラム 障害年金
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borderlessartorg · 1 year
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龍と富士山
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全盲ですが、絵を描くことに挑戦しています。網膜色素変性症という難病が16歳に発病し苦しい思春期を過ごしましたが、息子の薦めなどで絵を描くこととInstagramを始めました。社会の中でとても小さな存在の私にとって今は絵を描き、少しでも自分を表現できることが生きることそのものと感じています。今回の干支である龍は、私にとって有利なお題かもしれません。誰も本物のその形を見たことがないので、見えないというハンディキャップが関係ないからです笑 私は自分の完成品は見れませんが、何か感じてもらえる作品になっていると嬉しいです。 https://www.borderlessart.or.jp/ https://artnowa.org/ #障がい者アート  #アート #芸術 #イラスト #絵 #絵画 #アウトサイダーアート #アールブリュット #Art #paint #picture #SDGs #福祉 #社会貢献 #CSR #障害者 ----------------------- 新作アートをFacebookでチェック! ----------------------- 日本最大数の障がい者アートが掲示される 障がい者アート専門ギャラリー「アートの輪」の作品は 毎日アートの輪フェイスブックページで公開中です! 「いいね!」いただければ新作がチェックできます!  コチラから→ https://www.facebook.com/BAOArtNoWa Read the full article
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okumaseitai · 2 years
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・ セロトニンが分泌されるまでには色んな条件や栄養素が必要です。 そして そのセロトニンが物質変換されてメラトニンになるまでにも道のりは遠いです。 セロトニンとメラトニンは 自律神経の安定と 深い睡眠に関係しております。 セロトニンの役割 ドーパミンやノルアドレナリンを制御して精神の安定を促してくれる脳内の神経伝達物質です。 ・朝の覚醒(ボーとしている人はセロトニンが不足している可能性がある) ・心の安定、意欲、ポジティブ思考 ・自律神経の安定性(不足するとダルい) ・姿勢や表情(不足すると猫背になったり、どんよりした表情になる) ・痛みのコントロール(不足すると痛みを抑制できず痛みを感じやすくなる) セロトニンを分泌させるには ・朝日を浴びる ・同じリズムの運動をする ・タンパク質を摂取する ・ストレスを溜め込まない ・スキンシップやハグ、癒しが必要 ・パソコンやスマホを使いすぎず自然を感じる、マインドフルネス ・咀嚼も大切、よく噛んで食べる しっかりと タンパク質を摂取したいと思います。 タンパク質からアミノ酸に分解されます。 アミノ酸がトリプトファンになります。 そこに 葉酸、鉄、ナイアシンが加わり 5HTPになります。 そこにビタミンB6が加わり セロトニンになります。 そこにマグネシウムが加わり メラトニンになります。 だから ミネラルも豊富に摂取することが大切ですね。 メラトニン 睡眠誘発物質です。 溜め込まれているセロトニンから変換して作られます。 スマホのブルーライトは目から網膜に刺激が入ります。すると脳は覚醒してしまい、メラトニンを分泌しなくなります。すると眠れなくなってしまうのです。 だから寝る2時間前には絶対にスマホやパソコンは見ない方が良いのです。 私は 有田秀穂先生から直接指導を受けました。 有田秀穂先生は日本で屈指のセロトニン研究者です。 特別なことではなく 朝日を浴びて タンパク質を食べて 運動して グルーミングのように人と触れ合うことが大切なのです。 SNSばっかりに囚われず たまには外で好きな人と一緒に歩いてみませんか! 気持ちも幸せになりますよ。 #セロトニン #メラトニン ・ 【当院の理念】 ・ 不調のために諦めていたことや、 やりたかったことを 気兼ねなくできるように なっていただき 一緒に笑顔になっていただく ・ 【ご挨拶】 ・ いつもご覧くださいまして ありがとうございます😊 心より感謝いたします🙌 ・ 病院に行っても 原因がわからない場合は 自律神経の不調かもしれません。 ・ 《あなたのお悩みを解決します!》 自律神経の症状、お悩みを解決するブログを書いております。 ・ どうぞプロフィールから一番上のブログをタップしてご覧ください。 ↓↓↓ @wakae_ookuma_seitai ↓↓↓ タップしてください ↓ 一番上の「ブログ」をタップ! ↓ 記事をご覧ください❗️ ・ また 自律神経症状の解決の 体操などを動画にしております。 ・ ホームのプロフィールから YouTube動画のチャンネル登録を お願いいたします。 ・ どうぞ よろしくお願いいたします🤲 ホームページはこちら 東大阪市の自律神経専門整体のおおくま整骨院|若江岩田駅徒歩3分 ・ 🌟私が今できるベストを尽くすことをお約束いたします🌟 ______________ あなたが心身ともに健康になれる ✨情報を更新しております✨ ・ フォローよろしくお願いいたします。 ↓↓↓ @wakae_ookuma_seitai ・ Instagramのプロフィール欄のリンクを タップしていただきますと 悩み解決ブログがご覧になれます。 ・ 《ご相談・ご予約》 ご相談などございましたら LINE@への登録お願いいたします。 https://line.me/R/ti/p/%40vtd9415n ______________ 東大阪市若江岩田の自律神経専門整体 おおくま整骨院 東大阪市瓜生堂1-3-27リベラルコート1F 完全予約制 📞 072-968-8139 施術時間 ☀️10:00〜12:30 🌠15:00〜20:00 休:日曜日・祝日、土曜日午後18:00まで HPはプロフィール欄からご覧ください。 ______________ 【こんなことでお困りではないですか】 #自律神経失調症 #パニック障害 #頭痛 #めまい #不眠症 #更年期障害 #冷え症 #息苦しい #うつ病 #強迫性障害 ______________ 【当院の場所や特徴など】 #若江岩田整骨院 #東大阪市整骨院 #若江岩田整体 #東大阪市オステオパシー #東大阪市整体 ______________ 【好きな歌手は】 #ミスチル #福山雅治 #浜田省吾 #尾崎豊 #MISIA #長渕剛 ______________ 【趣味は】 #マウンテンバイク #ガンプラ #サッカー #釣り (若江岩田駅から徒歩3分のおおくま整骨院) https://www.instagram.com/p/CpOHSSmyL7H/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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uro-9000 · 2 years
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おはようございます 1月29日(日) #西多賀眼科医院 日曜日と祝日は休診となります ⁡ #タウン情報 の日 1973(昭和48)年のこの日、日本初の地域情報誌『ながの情報』が発行された。 ⁡ 1993年 誕生日 #きゃりーぱみゅぱみゅ (モデル,歌手) ⁡ 【医学生応援週間】 2月4日と5日に医師国家試験が行われます。 直前の詰込みをしましょう! 医学生の皆さん、応援しています! 頑張ってください!! ⁡ 2020-A54  22歳の男性。視力低下、昼盲を主訴に来院した。幼少時よりアトピー性皮膚炎を指摘されていた。15歳ころから眼瞼および結膜の瘙痒感が強くなり、副腎皮質ステロイド外用薬および点眼薬を使用してきたが、瘙痒感が消失しない時に眼部を叩打してきた。年ほど前から視力低下および昼盲を自覚するようになったという。視力は右0.1(0.9×-3.0D)、左0.1(1.0×-2.5D)。眼圧は右13mmHg、左17mmHg。両眼の散瞳後の前眼部写真を示す。細隙灯顕微鏡検査で右眼の前部硝子体に色素散布を認める。 緊急に処置・手術が必要な合併症はどれか ⁡ a 結膜炎 b 白内障 c 円錐角膜 d 網膜裂孔 e 後部硝子体剥離 ⁡ ↓ ⁡ ↓ ⁡ ↓ ⁡ ↓ ⁡ 【正解】d ⁡ 【診断】アトピー性皮膚炎の眼合併症 ⁡ 【解説】アトピー性皮膚炎の定義は増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つとされています。 原因はわかっていません。眼合併症が多く、①眼瞼炎、②結膜炎、③円錐角膜、④白内障、⑤網膜剥離を引き起こします。 ⁡ ①眼瞼炎…皮膚のバリアが破綻しているので細菌感染を起こします。またヘルペスウイルスに感染してカポジ水痘様発疹を起こします。 ⁡ ②結膜炎…結膜炎を引き起こしやすく、重症型が眼瞼が乳頭増殖を起こし、春季カタルの状態となります。 ⁡ ③円錐角膜…原因は不明ですが、角膜コラーゲンが脆弱になり、角膜が突出し強い近視と乱視を引き起こします。 ⁡ ④白内障…水晶体が混濁し白内障が起こります。通常加齢による白内障は全体的に濁ってきますが、アトピーの場合は水晶体の前の方が濁ってきます(前嚢下白内障)。 ⁡ ⑤網膜剥離…顔面皮膚が痒くて、掻きたいけど掻くと皮膚がボロボロになるので叩く人がいます。それを何年も続けていると網膜がはがれてきます。網膜がすべて剥離してしまうと失明します。自然治癒はしませんので、手術治療が唯一の治療となります。 ⁡ ⑥(緑内障)…直接ではありませんが、アトピー治療に通常用いられる薬、ステロイドの副作用で眼圧が上がる場合があります。そうすると目の奥の神経を圧迫する病気、緑内障になります。眼科クリニックでプシュっと空気があたる検査がありますよね。あれは眼圧を測定しています。ステロイドを使用している人は定期的に眼圧を測定する必要があります。 ⁡ 以上のように、アトピー性皮膚炎のある方は、眼合併症が起こす可能性があるので、眼科へ定期通院をお勧めいたします。 ⁡ 本題の解説です。 緊急に処置手術が必要な合併症と聞かれていますので、実は問題を詳しく読まなくても網膜剥離を考えます。 最初は網膜の周辺部に穴があいて網膜裂孔となります。この段階だとレーザー治療で済む場合もあります。 その穴から徐々に水が浸入してきて、網膜剥離となります。こうなると手術が唯一の治療法となり、放っておくと失明してしまいます。 問題中に前部硝子体に色素散布を認めるとあります。これは網膜裂孔から散布された色素が眼内にただよっている所見で、本人は蚊が飛んでいるように見えます(飛蚊症)。これはどこかに網膜裂孔がある重要なサインとなります。 ちなみにeの後部硝子体剥離はひっかけです。年齢により硝子体は縮んできます。網膜にくっついている硝子体がはがれることが後部硝子体剥離で生理的なものです。 ⁡ 本日も長文になりました。最後までお読みくださりありがとうございます。 また明日も問題を出しますので、楽しみ?にしてください! ⁡ #医師国家試験 #国家試験 #国試 #アトピー性皮膚炎 ⁡ 西多賀眼科医院ホームページも、どうぞよろしくお願いいたします↓ https://nishitaga-ganka-clinic.com/ ⁡ #眼科 #仙台 #宮城 #白内障 #結膜炎 #緑内障 #ドライアイ #眼鏡 #メガネ #コンタクトレンズ #眼瞼下垂 #太白区 #鈎取 #西多賀 #長町 #八木山 #富沢 #名取 #秋保 #秋保温泉 #長町モール #誕生日 #今日は何の日 (西多賀眼科医院) https://www.instagram.com/p/Cn-mcp4yZNG/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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russellkowalski204 · 2 years
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レビトラの用法・用量
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バルデナフィル塩酸塩またはレビトラは経口錠として、2.5mg、5mg、10mg、20mgと様々な強さの錠剤があります。スタキシンは塩酸バルデナフィルを溶解錠の形にしたもので、10mgの強さの錠剤のみがあります。
多くの人にとって、バルデナフィルの開始用量は10mgが推奨されています。性行為の60分前後前に服用する必要があります。レビトラは食事の有無にかかわらず服用できますが、空腹時に服用するとより早く効く可能性があります。食事、特に高脂肪食がレビトラの効果を遅らせる可能性があることを示唆する研究があります(Zucchi, 2019)。
レビトラの1日の最大用量は20mgです。
レビトラの副作用
レビトラは副作用を引き起こす可能性があり、高用量であればあるほどその可能性は高くなります。バルデナフィルの最も一般的な副作用は以下の通りです(DailyMed, 2021)。
頭痛
顔面紅潮
鼻水
胸焼け(消化不良)
副鼻腔炎
インフルエンザ様症状
吐き気
めまい・ふらつき
背中の痛み
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まれにバルデナフィルは、以下のようなより深刻な副作用を引き起こすことがあります(DailyMed, 2021年)。
緊急の治療が必要な長時間の勃起であるプリアピズム
視力低下または色覚変化
聴力の低下または耳鳴り(耳鳴り)
血圧の低下(低血圧)
これらの気になる副作用が発生した場合は、すぐに医師の診察を受けてください。
レビトラの薬物相互作用
すべての薬と同様に、バルデナフィルを始める前に医療従事者に相談してください。薬物相互作用の可能性を避けるため、病歴や服用中の市販のサプリメントや処方薬について話し合ってください。特定の薬は、レビトラと一緒に服用すると、以下のような副作用の可能性が高まります(DailyMed、2021年)。
硝酸塩。胸の痛み(狭心症)の治療に使用されるニトログリセリンや、「ポッパーズ」と呼ばれる人気のクラブドラッグである亜硝酸アミルなどの医薬品は、硝酸塩のクラスに分類されます。レビトラと一緒に硝酸塩を服用してはいけません。一緒に服用すると、致命的な血圧の低下を引き起こす可能性があるからです。
リオシグアト グアニル酸シクラーゼ(GC)刺激薬であるリオシグアト(商品名アデンパス)は、両方の薬物が血圧を下げ、組み合わせがレベルを下げすぎる可能性があるため、レビトラと一緒に服用してはいけません。
CYP3A4阻害剤。ある種の薬剤は、CYP3A4酵素系に影響を与えることによって、肝臓での薬剤の処理方法を乱し、濃度を変化させ、副作用のリスクを高める可能性があります。例えば、ケトコナゾール、リトナビル、インジナビル、エリスロマイシンが挙げられます。グレープフルーツジュースもこの酵素に作用し、バルデナフィルの薬物濃度に影響を与える可能性があります。
α-ブロッカー。これらの薬は血圧を下げ、前立腺肥大症(BPH)のような特定の前立腺疾患の治療に使用されます。例えば、ドキサゾシン、テラゾシン、アルフゾシン、タムスロシンなどです。α遮断薬とバルデナフィルの併用は、血圧の低下を招く可能性があります。
このリストにはレビトラとの潜在的な薬物相互作用がすべて含まれているわけではありません。質問や懸念がある場合は、薬剤師または医療専門家の助言を仰いでください。
レビトラに関する警告
性行為ができるほど健康でない場合は、レビトラを服用してはいけません-これに関する質問には医療従事者がお答えします。
バルデナフィルの服用は副作用のリスクが高まるため、特に以下のような方は避けた方がよいでしょう(DailyMed、2021年)。
低血圧(低血圧症)。レビトラは血圧を下げるので、副作用のリスクが高くなる可能性があります。
心臓の問題。心臓病や心不全の既往歴、またはQT間隔の延長(心臓の電気系統の問題)など、心臓に問題がある場合、レビトラを使用すべきかどうか医療専門家と相談してください。
目の問題。非動脈炎性虚血性視神経症(NAION)の既往歴や危険因子を持つ方は、バルデナフィルを使用する前に医療従事者に確認する必要があります。視力低下のリスクを高める可能性があります。科学者たちは網膜色素変性症のような遺伝性の目の問題を持つ人々に対するバルデナフィルの影響について確信を持っていませんので、医療提供者に相談してください。
バルデナフィルまたはレビトラの非有効成分に対してアレルギー反応を起こしたことがある方はレビトラを服用しないでください。
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lienguistics · 2 years
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加齢黄斑変性
この間、寝れなかったから、日本語で加齢黄斑変性について読んでちょっとだけ自分で書いてみようと思ったら…
加齢黄斑変性 (かれいおうはんへんせい) は、高齢者の中に、視覚障害者を引き起こす主要原因で、「滲出型(しんしゅつがた)」と「萎縮型(いしゅくがた)」の2種類があります。 滲出型では、網膜のすぐ下に新生血管が進展しますが、脆弱なので、出血します。現在のところ治療は血管内皮増殖因子のVEGFというたんぱく質を抑える薬剤を毎月注射することです。 萎縮型では、ドルーセンという小さな累積が網膜の下に発生しつつ、光受容細胞に依存される網膜色素上皮に被害を与えるから、黄斑部の変性が生じるということです。効果的な治療はないので、私たちのラボが開発できた動物モデルについて論文を書いているだけではなく、低侵襲手術としてCRISPRを使う治療法の開発も研究しています。
だったけど、友達に添削してもらった後に
加齢黄斑変性は、高齢者に視覚障害者を引き起こす主要原因で、「滲出型(しんしゅつがた)」と「萎縮型(いしゅくがた)」の2種類があります。 滲出型では、網膜のすぐ下に新生血管が進展しますが、脆弱なので、出血します。現在治療法は血管内皮増殖因子のVEGFというたんぱく質を抑える薬剤を毎月注射することです。 萎縮型では、ドルーセンという脂質沈着が網膜の下に発生し、光受容細胞を支える網膜色素上皮に被害を与えることにより、黄斑部の変性が生じます。現在効果的な治療法はありませんが、私たちのラボが動物モデルだけではなく、低侵襲手術としてCRISPRを使う治療法も開発しています。
になってきた!
加齢黄斑変性 (かれいおうはんへんせい) 高齢者 (こうれいしゃ) 視覚障害者 (しかくしょうがいしゃ) 主要(しゅよう) 滲出型(しんしゅつがた) 萎縮型(いしゅくがた) 網膜(もうまく) 新生血管(しんせい・けっかん) 進展 (しんてん) 脆弱(ぜいじゃく) 出血(しゅっけつ) 血管内皮増殖因子(けっかん・ないひ・ぞうしょく・いんし) 薬剤 (やくざい) 脂質沈着 (ししつちんちゃく) 発生 (はっせい) 光受容細胞(ひかりじゅようさいぼう) 網膜色素上皮(しきそうじょうひ) 黄斑部 (おうはんぶ) 変性 (へんせい) 生(しょう)じる 効果的 (こうかてき) 低侵襲手術 (ていしんしゅうしゅじゅつ) 開発(かいはつ)
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studiocorbro · 4 years
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ちょっと暗い気持ち。 ごめんなさい😧 視覚障害と闘い続ける。 笑顔でいたい。描き続けたい。 うーむ、 色々な不安に押し潰されそうだ。 表現出来る道にやっぱりい続けたいなぁ。 My eyes are incurable. Actually I'm scared every day. Not being able to see, and not only that, but not being able to draw. I want to continue painting. . . #視覚障害 #網膜色素変性症 #visuallyimpaired #originalpainting # #絵画 #アニミズム #animism #corbro #抽象画 #ファンタジー #fantasy #artistlife #artwork #painting #watercolor #illustration #myworld #artgallery #画家 #抽象画 #青 #風景 #風景画  https://www.instagram.com/p/B_e-SAGHxV1/?igshid=a30tb1tichy1
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hitodenashi · 4 years
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28/海に屍と濡羽菊
(SILENTにおける全てのネタバレが存在します)
(2021年7月某日の話)
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 きっとそれが黒い大輪の菊に見えたのは、炎天下で首裏が焼かれる感覚と、足首が波に冷やされる感覚が起こした倒錯のせいなのだ。
 波音にのって、生ぬるい潮風が鼻先を撫でる。七月の海辺、日差しは朝だというのに既に強い。これが浜辺いっぱいにうざったい椰子の群れでもずらりと並んでとかいるのであれば影ができて話が別なのだろうが、本土の海岸でそんな植生は見たことがない。精々がシュロ、或いはマングローブ。それがあるにしても亜熱帯の地域だけ。こんな東海の片田舎の海辺にそんな耐塩制植物の群れが生えているわけもなく、よって首筋は陽に晒された結果じわじわと焼かれている。  七月、朝の日差し。生えかけの入道雲が山並みに沿って起き上がっている。  フィールドワークは私の日課だ。本業と言ってもいい。海洋生物群の調査、兼磯釣り、兼浜辺散策。SILENTからの任務が特にない週、そのうちの数度はフィールドワークに出かける。部屋に閉じこもって研究するのも良い――特にクソみたいに暑い日は――が、自分の分野は実地でのデータを得ないとまずはじまらない。釣りや磯漁りは趣味のようなものだが、得られないものがないわけではない。魚はおいしい。自分で捌いて食べるものはもっと。  だからその日磯に向かったのは偶然であり、運命だった。竿先の糸をのんびり垂らしているのにも飽きて、ぶらぶらと向かった先の潮だまりはすでにぬるくなっていた。岩場いっぱいに磯の匂いがじらじらと立ち上り、鼻の奥に潮を塗り付けてくる。  岩礁を二、三歩海側に跳ねるように歩いたところで、波打ち際になにか黒いものが打ち上げられているのが見えた。大輪の花のような黒い何か。  それはちょうど岩礁に乗り上げたような格好で岩に引っかかっており、波が何度か柔らかくさらって行こうと泡を投げかけていたけれど、黒い大きな花弁はふわふわと濁った泡の網の間にゆれるばかりだった。  一抱えもあるそれをぱっと見て、私はそれを海中に落ちた菊のようだと思った。細長く薄い花弁は濃い青の上に艶をもって浮かんでおり、波に揺れてふわふわと佇んでいた。  岩のふちには近づきすぎず、タモ網を伸ばしてそのかたまりを慎重に掬いあげると、確かな肉の重さが手の平に伝わってきて目を見ひらいた。やがてそれが大輪の花などではないことに気が付いた。それは、大きなカラスの亡骸だった。 「……なんで、海なんかに」  水を含んだ体を網から外して、抱きあげた。その拍子に翼がだらりと垂れ下がり、屍はいやに大きく見えた。  死んでしばらく経っているのか、からだは硬直が解けて僅かに柔らかかった。炎天下の潮水に晒されていたせいか微かに肉が生ぬるい。羽は潮水にもまれたのか一部があちこち変な方向にねじれ、痛んでいた。  頭部の形はあまり見慣れないもので、くちばしの形はハシブトガラスやハシボソガラスにしては整っている。在来種でないことは一目で解った。喉の羽毛が逆巻いており、濡れたせいでいっそうオパールのような七色に艶めいていた。彼は、ワタリガラスだろうと思う。北国の鳥であることはたしかで、どうしてこんな真夏の、よりにもよって辺境の海辺なんかに。  私は思わず周辺を見渡した。カラスの群れはどこにもいない。ざあんと波が岩場にうちつける音ばかり轟いている。沖合からミャウミャウとウミネコの声がした。背後を仰げば遠くに鳶の影が見えた。黒い翼は、案の定どこにも飛んではいない。  羽織ったパーカーが濡れるのも構わず、私は反射的にその遺骸を抱いていた。胸元はすでに水を吸い、じっとりと布がよれている。濡れた肌に海風が吹き付けてようやく私は亡骸の冷たさを感じた。翼の形が崩れてしまわないよう、慎重に彼の翼を折りたたんで抱きなおした。  若い個体のようだった。堕ちてしまったにしては外傷はなく、きれいな体をしている。岩礁に打ち上げられたときに擦れてしまったのかくちばしの端だけが少し欠けていた。瞼はぴっちりと閉じられて開かない。潮だまりで水浴びをしようとして、波にさらわれてしまったのだろうか。こんなところで、一羽きり、誰もいないところで。  日はじりじりと首を焼いている。太陽は中天に近づくにつれいよいよ勢いを増していた。ワタリガラスからは、まだ死臭がしなかった。  私は汐で痛んだ体を抱きかかえて車に戻った。急いでトランクからクーラーボックスを取り出すと、黒い遺骸をタオルと防水シートでくるみ、氷の内側に埋めるようにしてから蓋をした。内径90センチのクーラーボックスは彼の尾羽を折らないぎりぎりの大きさだった。それから磯に戻って、バケツの中に入ったイサキ二匹をしぶしぶ海に放流した。銀のうろこがやがて海底に沈んで見えなくなったところで、車のエンジンを掛けに戻る。時刻は九時四十分を指していた。普段家に帰るにしては、あまりにも早すぎる時間だった。
 家に着いてまず行ったことは着替えることでもシャワーを浴びることでもなく、亡骸の洗��だった。石鹸水を含ませたタオルで綺麗に全体をぬぐう。全身潮びたしなので、羽の隙間や翼の関節、足のつけねまで塩を取り除くように丹念に手入れした。  このとき微かに腐敗が始まったようで、肉の解けるにおいが作業場に籠り始めていた。過剰に冷やした暗室はばかみたいに涼しくて、私の乾いた足には砂がまだまとわりついたままだった。  翼を開いたり閉じたりしながら、写真を撮り、記録を付ける。体長79センチ、翼開長150センチ、オス、年齢不明だが二歳程度、くちばしに微細な欠け。  同定にさほど時間はかからなかった。確かに彼はワタリガラスだった。紙面にCorvus coraxと走り書いて、まじまじと閉じた瞳を覗き込んだ。東海の沿岸部にワタリガラスが飛来したことはもしかしたらどこかを探れば履歴が残っているのかもしれないけれど、私は一例だって知らない。不勉強を嘆くべきなのだろうか、それともこのようなイレギュラーに知識なしで遭遇したことを僥倖と思うべきなのだろうか。  慣れない夏の、冬のそれとはまったく様相の違うぎらつく太陽の下、ふらふらと一羽(ひとり)でこんなところまで翼をはためかせて飛んでいたのであろうことを思うと、私は自分の呼吸が浅くなるのを感じた。唐突に両の肺が痛んだ。  石膏粉をはたくと、まるで埃をかぶったように姿がみすぼらしくなる。水気をとってから一度粉を落とし、今度はまんべんなく駆虫粉をまぶす。潮ざらしになっているからそこまで虫はついていないと思うけれど、野生種はダニなどに食われやすいので丁寧に殺虫をする。毛の流れに逆らって粉をはたくと、時折やわらかな灰色の羽毛がふわりと抜けて私の鼻先をくすぐっていった。  粉をきれいに払ってから、体を台の上で仰向けにする。私はその広い胸にゆっくりとメスを埋めた。正中線に沿う腹と胸をつなぐ場所に羽毛の無い部分がある。肌は柔らかな灰青色をしており、つぷ、と刃先を飲み込んだ。  腹部を切り開いて、こんどは首と両肩に向かって皮を剥いでいく。腹膜と皮下脂肪の間の腱を切るようにしてメスを少しずつ滑らせていく。皮が剥がれた裏側にミョウバンを刷り込みながら、肉の塊と皮を丁寧に分離させる。  かるく私の身長ほどはある両翼は大きく、肩の骨もそれに見あって立派だった。骨を折らないように慎重な手つきで関節を根元から抜く。くちばしの真下まで慎重に切れ目を入れ、頸椎と食道を分離させる。思っている以上に綺麗に骨が抜けたので、骨格標本も作れるかもしれないとふと思い立った。喉の羽毛は切り開かれてもなお逆巻いて、玉虫色の渦のようにきらきらと光っている。ただ、きれいだった。  白い脂肪を掻き出しながら、ゆっくりと背側を剥いていく。首と胸を繋ぐ筋を切り落とし、服を脱がせるようにして皮を裏返した。私は彼を暴いている。  内側の肉たちは思っているより静かだった。腹膜の内側でころりところげるのに時折どきっとするけれど、それらは存外おとなしく、じっと皮が分離していくのを見つめていた。腐敗のせいで肉は少しだけ酸っぱいにおいがした。夏は足がはやい。もう少しはやく見つけてあげればよかった。それでも潮溜まりより、ずっと腹膜は冷たかった。  私は無言で皮を剥ぐ。やがて油脂腺の油でメスがどろどろになった。尾羽の付け根を切る。綺麗な濡羽色をしている。一つだったからだと内臓が分離していく。  弾力のある腹膜ごと内臓を左手でそっと支えると、指の腹が肉に埋もれて脂肪で濡れた。人の肉もこれくらい柔いのだろうか? 無心で皮を剥ぐ。やがて直腸を総排泄孔の手前で切断する。鉗子で先端を抑え、静かに抜け殻から肉を引き抜く。アルミトレイの上に乗せられた体内は、羊膜が破れていないままの胎児にも似ていた。腹膜を透かして素嚢が見えている。胸でようやく抱きかかえられるほどの大きさだから、人間の嬰児よりは少し大きかった。  まだ翼と脚と頭の肉が残っている。肩口から皮を裏返しながら肉を削ぎ、慎重に骨を抜いてはホウ酸の粉をはたく。代わりに針金の骨を入れて翼を固定する。  学術用の剥製にしたほうが楽なことは解っているが、立派な体なのだから本剥製にしたかった。腿の肉を掻き出して骨を抜く。上体に再度手をのばす。キジやサギにくらべ、首が短いカラスは頭骨を剥ぐのがやりやすい。首を裏返す。賢い頭蓋が剥き出しになり、隙間から脳が見えた。  眼窩にピンセットを差し込んで視神経ごとちいさな丸い眼球をずるりと抜き出す。黒曜石のような、小さくて綺麗な黒い色だった。あらかた顔まわりの筋肉を削ぎ終えたら、最後に脳を掻き出す。針に通した糸でまんべんなく、こそげとるようにさらう。  剥製を作るとき、頭骨だけは皮の内側に遺しておくことになる。余った肉を削いでいく。ミョウバンとホウ酸粉を丹念に塗りつけて、脂肪を慎重に削いで、最後に骨を拭って除肉は終わる。  抜いた骨たちは別のトレイに置き、皮を乾かしながら一度休憩をとった。午前中から作成を始めたのに、すでに日暮れに近い時間になっている。集中が切れたせいか唐突に異様なほど空腹を感じた。台所にいくと、妹が作りっぱなしのサンドイッチが冷蔵庫に放置されていたので勝手にいただく。クリームチーズが塗ったくられていることだけはとりあえずわかった。やはり不味い。おそらくあいつは料理の才能がないのだろうと結論をつけて、胃にパンを落とすことだけを考え、口元をぬぐった。皿を洗ってから作業部屋に戻る。  皮が変に縮まないうちに形を整えなければならなかった。翼などの一部を除いて内容物をあらいざらい引き抜かれたからだは二次元のように平らだ。骨の代わりに針金を、脂肪の代わりにわたを、臓器と筋肉の代わりに綿(めん)を入れ、生前の容貌を再現していく。そこに魂が宿らないことは知っていても、還ってこないことはわかっていても、可能な限り精巧なすがたを作り上げたかった。生きていたということを遺したかった。  そんなこと誰に頼まれたわけでもないのに。  そうやって作業に没頭し続けて数時間、すでにとっぷりと日が暮れ切った夜半にようやく剥製の全体が整った。切り開いた場所を簡単に縫合して、形が崩れないようにガラス棚の中へ保管しておく。  そこで初めて息をついて、ガラスの向こうに閉じ込められた濡羽色のきれいなからだを眺めた。死体とは思えないほど美しいそれは、しかしどうしたって死んでいた。からっぽのからだ。からっぽののうみそ。動かないつばさ。欠けたくちばし。  飛んでいるときの姿を知らない私にとって、その翼がどうやって風を切るのか、瞳はどう海を映したのか、止まり木をどうしならせるのか、梢と尾羽の擦れあう音がどんな高さなのか、それらのうち一つきりさえわかることはなかった。  私は彼を知らない。死体はもう鳴き声の一つも上げない。  恐る恐る手を伸ばして、くちばしの先から根元までをそっと撫でた。なめらかなくちばしは、しかし欠けた部分だけがざらついていた。あごの付け根を軽くさすって、そっと手を離した。ガラス戸を閉める静かな音が濃い潮の匂いに染まる部屋のなかに響いて消えた。私はアルミトレーの上に放り込まれた骨々を溶液に漬け込んで、部屋の電気を消す。
 彼の剥製を教授に譲ることにしたのは、研究室で暇を持てあましてパソコンを抱えながら遠心分離機とにらめっこしていたときに教授が構われたがりそうに話しかけてきたことが発端だった。会話の中で駿河湾の話になって、不意にこの間ワタリガラスが飛来していたことを思い出したのでそれをいうと、彼はひどく興味津々にその話題に首をつっこんできた。 「飛来、って言っても、拾ったのは死骸ですよ」 「どちらにしても珍しいことには変わりないよ。剥製にできるほど状態がよかったということでもあるし」 「トキやらなんやらだったら生息域のマーキングに使えますけど、ワタリガラスですよ。北海道にでも行けば冬場死ぬほどいる」 「はは、謙遜するなあ。そういう珍しいものを珍しいと理解して、適切に判断、処理できることを褒めているんだから、素直に受け取れば良いのに。とても珍しいことだよ、私も直に見たかった」  謙遜なんていわれても、私はみつけただけであってここまで飛んできたのは彼自身である。僅かな空しさを感じて私は返答に困り、「はあ」とだけ零してまた遠心分離機の液晶パネルを見た。残り時間はまだ二分もある。この後もう一回遠心分離をかけないといけない。パソコンの画面と液晶パネルを無産的に交互に見てから、ぼんやり口を開いた。 「差し上げましょうか、剥製。気になるのなら」 「え、良いのかい」 「別に……。それに作ったのはいいですけど、家にあったって、管理しきれないですし。本剥製に仕立てちゃいましたけどそれでいいのなら」  どうします。と聞くまでもなく、彼の返答は「勿論」だった。研究室に飾ってくれるのであれば、虫に食われることも、腐敗してカビだらけになることも懸念しなくていい。四角いガラスケースの中で、作り物の止まり木に掴まってはばたく直前の格好をしながら、朽ちるまで永遠の沈黙を貫いていることができる彼のことを想像すると、安堵の隙間にどこか血の匂いのする溜め息が滲んだ。  教授は別れ際に、私に向かってこう言った。「そもそも、君がしっかり作り上げる本剥製自体珍しいから、それがよほどきれいな個体だったのだろうなと気になったのは否定しないよ」と。
 その日家に帰ってから瞳に埋め込むための石を取り寄せることにした。実のところ、本剥製はまだ完成させていなかった。けれど他人に渡すのであれば面倒臭くとも仕上げをしなければならない。私は剥製職人ではないが時間をかければそれなりのものは作製できる。性格ゆえに、作りきる根気が滅多に出ないだけであって。  やることを整理する。まずパーツが届く間に、ポーズを整えて、縫合をしっかりして、毛並みをもう一度整えて。そうやって手を尽くして、ガラス越しに見る誰の目にも君が凜々しく見えるように。  だからこそ二も三もなく、彼の眼窩にぴったりな黒い瞳を探すつもりだったのだけれど、どうしてかふいに私の無意識が抵抗して、勝手に動作の主導権を握った。腕は勝手に、月色の丸い石のページを表示させていた。  数秒、その画面を見て固まる。まぶたの閉じないくぼみに嵌められた良く晴れた夜半の空のようなそれを脳裏で一瞬再生してしまい、引き攣るように笑って無理に頭を振った。濡羽に金の目。その文字列が、文字列以外のイメージに行きつかないよう強制的に思考の根をシャットアウトして、私はページを反射的に閉じる。その後は余計なことを何も考えず、黒曜石を選択してカートに入れるだけだった。だって、黒いワタリガラスに金色の目を持つ個体なんていない。 「きれいっつったって、そう見えてるのは多分、見てんのが自分だからですよ、教授」  誰に聞かせるわけでもない独白は部屋の中に溶かして、チェアをリクライニングぎりぎりまで傾ぐ。背もたれはギィ、と音をたてて軋む。LEDの柔らかな白色が、いたいくらいに眩しくて顔を覆った。エアコンの風が虫の声のように静かに空気をふるわせている。  夜の窓辺に、青白いシルエットのワタリガラスの骨格標本が静かに佇んでいる。肉と皮の一切を剥奪され、頭部さえもすっかり喪われたそれは、もはや私に何も語りかける言葉もなく、ただじっともう二度と手が届かない空を、ガラス窓越しに見上げるばかりだった。
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silvercloud-mini · 5 years
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1.3 キャブスプ ミッションO/H編
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お預かり中のキャブスプライト。クラッチの状態は良好で次はミッションとデフのO/Hです。
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まずは分解して点検
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前回O/H時にセンターピックアップパイプに変更されてました。そして網目には色んな異物が張り付いてます。硬い素材の物も有りちょっと嫌な予感がします。
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ミッションケース底部にも多くの異物が目につきます。
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まずは軽く洗浄してから各部点検
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レイギアやレイシャフトは変な摩耗は無く良好ですが・・・
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スモール側のニードルベアリングはよろしく無い物が入ってました。
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という事は此処も。当時はコレしか無かったのかもしれませんが、現在はもっと耐久性があるパーツがあるので交換しましょう。
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一度組み戻してレイギアのスラスト測定。
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各シフトフォークやリバースギア・ブッシュも摩耗は少なく良好ですが・・・
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こういったバリが残っているので
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撤去しながら進めていきます。
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同様にミッションケース本体の・・・
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バリを・・・
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落としていきます。
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バリ取り完了。
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ネジ山にはロック剤が残っているので全数・・・
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クリーニング。
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クラッチハウジングも同様に施工しますが、2箇所ほどオイルが流れ込みやすいように追加工しておきます。
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ケース内側・外側の取りきれない汚れをウェットブラストにてクリーニング。
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エアブローして乾燥させたら・・・。
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今回はアルミ地を保たせるように塗膜の硬いクリアーを吹いてみました。少々黄色味が掛かりますが気にならない程度です。
外堀の仕込みはこんな感じで、お次はデフから始めます。
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おはようございます 1月24日(火) #西多賀眼科医院 午前9:00〜12:00 午後14:30〜17:00 ⁡ 【医師国家試験】 来月4日から医師国家試験が行われます。 一緒に眼科のお勉強をいたしましょう! 医学生の皆さん、頑張ってください。 ⁡ 2021-D41 44 歳の女性。咳嗽と血痰を主訴に来院した。2か月前から左頰部痛、両耳痛、難聴および鼻出血が出現するようになった。その後、難聴は悪化し、 4日前から咳 嗽および血痰が出現したため受診した。意識は清明。体温 37.7℃。脈拍 84/分、整。血圧 132/68mmHg。呼吸数 18/分。SpO295 %room air。左眼瞼下垂と左眼球突出を認める。左眼球結膜には充血と浮腫を認める。瞳孔の大きさや対光反射に異常を認めない。眼球運動は保たれているが左方視で複視を認める。両側鼓膜に発赤と腫脹を認める。鼻根部は軽度陥凹し、同部に圧痛を認める。鼻中隔孔を認める。心音に異常を認めない。右胸部背側下部の呼吸音の減弱を認める。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。表在リンパ節を触知しない。尿���見:蛋白袷、 潜血袷、沈渣に赤血球 20〜29/HPF、赤血球円柱を認める。血液所見:赤血球468万、Hb13.9 g/dL、Ht42 %、白血球 10,100桿状核好中球30%、分葉核好中球 45%、好酸球1%、好塩基球1%、単球 6%、リンパ球17%、血小板 41万。血液生化学所見:総蛋白 6.7g/dL、アルブミン2.8g/dL、AST11 U/L、ALT7 U/L、LD173 U/L基準 120〜245、ALP217 U/L基準 115〜359、γ-GT14 U/L 基準〜50、CK42 U/L基準 30〜140、尿素窒素18mg/dL、クレアチニン0.7mg/dL、Na137 mEq/L、K3.6mEq/L、Cl97 mEq/L。CRP21 mg/dL。眼 窩・ 副鼻腔単純 CTの冠状断像別冊No.12A及び胸部単純CT別冊No.12Bを別に 示す。 最も考えられるのはどれか。 ⁡ a 肺 癌 b 悪性リンパ腫 c サルコイドーシス d 播種性真菌感染症 e 多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症) ⁡ ↓ ⁡ ↓ ⁡ ↓ ⁡ ↓ ⁡ 【正解】 e 多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症) ⁡ 【診断】 多発血管炎性肉芽腫症(Wegener肉芽腫症) ⁡ 【解説】ウェゲナー肉芽種症という、全身疾患があります。 原因不明で、上気道(鼻やのど)と肺と腎臓に炎症を起こす病気です。 ⁡ ANCAとは抗好中球細胞質抗体(antineutrophil cytoplasmic antibody)の略で、 白血球の1種、好中球内の顆粒に対する抗体です。 このANCAが関係して血管に炎症を起こす病気をANCA関連血管炎といい、3種類あります。 ①顕微鏡的多発血管炎 ②多発血管炎性肉芽腫症(以前の名称は、ウェゲナー肉芽腫症) ③好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(以前の名称はチャーグ・シュトラウス症候群) この違いひとつずつ詳しく解説すると大変ですので、簡単に言うとANCAの種類と炎症を起こす血管の太さが違います。 ⁡ ANCAは蛍光染色パターンからP(perinuclear)-ANCAとC(cytoplasmic)-ANCAに分類されます。 P-ANCAはmyeloperoxidase(MPO)を、 C-ANCAはproteinase3(PR3)を主に抗原としています。 要するに P-ANCA = MPO-ANCA C-ANCA = PR3-ANCA なのです。 こんなややこしいことがありますでしょうか! 普通PR3-ANCAがP-ANCAだと思いませんか?!! ⁡ ようやく本題です。 多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)はC-ANCA(PR3-ANCA)によって、上気道(鼻やのど)と肺と腎臓に炎症を起こす病気です。 ⁡ 鼻に炎症を起こし、鼻が低くつぶれたような形になります。 これを鞍鼻(あんび)といってWegener肉芽腫症の人に特徴的な所見です。 肺炎を引き起こしX線やCTで結節影を認めます。 急速進行性糸球体腎炎を引き起こし、むくみや高血圧、尿の泡立ちを認めます。 ⁡ 目の血管にも炎症を起こし充血します。 これはただの充血ではありません。 結膜の奥、眼球を構成する強膜の炎症(強膜炎)です。 重症例では壊死性強膜炎となり失明する場合もあります。 また網膜や視神経の血管に炎症を起こすと視力も下がってきますので注意が必要です。 ⁡ 昔は難治性の疾患でしたが、現在は採血にてこの病気が早期に判明し治療を始めた場合は寛解(病気が落ち着いた状態)まで持っていくことができるようになってきました。 ⁡ かなりの長文をお読みくださり、ありがとうございます。 一緒に眼科のお勉強をいたしましょう! ⁡ #医師国家試験 #医学生 #医学部 #眼科 #仙台 #白内障 #結膜炎 #緑内障 #ドライアイ #眼鏡 #メガネ #コンタクトレンズ #眼瞼下垂 #太白区 #鈎取 #西多賀 #長町 #八木山 #秋保 #秋保温泉 #日帰り手術 #白内障手術 #誕生日 #今日は何の日 (西多賀眼科医院) https://www.instagram.com/p/Cnxfb1uSOPr/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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