#浴衣の時の髪型
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wip
ハロウィンイデアの髪型で着物(浴衣?)のイデア氏を妄想。
あと数時間で完成しそう
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汚辱の日々 さぶ
1.無残
日夕点呼を告げるラッパが、夜のしじまを破って営庭に鳴り響いた。
「点呼! 点呼! 点呼!」
週番下士官の張りのある声が静まりかえった廊下に流れると、各内務班から次々に点呼番号を称える力に満ちた男達の声が騒然と漠き起こった。
「敬礼ッ」
私の内務班にも週番士官が週番下士官を従えて廻って来て、いつもの点呼が型通りに無事に終った��辻村班長は、これも毎夜の通り
「点呼終り。古兵以上解散。初年兵はそのまま、班付上等兵の教育をうけよ。」
きまりきった台詞を、そそくさと言い棄てて、さっさと出ていってしまった。
班付上等兵の教育とは、言い換えれば「初年兵のビンタ教育」その日の初年兵の立居振舞いのすべてが先輩達によって棚卸しされ、採点・評価されて、その総決算がまとめて行われるのである。私的制裁をやると暴行罪が成立し、禁止はされていたものの、それはあくまで表面上でのこと、古兵達は全員残って、これから始まる凄惨で、滑稽で、見るも無残なショーの開幕を、今や遅しと待ち構えているのであった。
初年兵にとつては、一日のうちで最も嫌な時間がこれから始まる。昼間の訓練・演習の方が、まだしもつかの間の息抜きが出来た。
戦闘教練で散開し、隣の戦友ともかなりの距離をへだてて、叢に身を伏せた時、その草いきれは、かつて、学び舎の裏の林で、青春を謳歌して共に逍遙歌を歌い、或る時は「愛」について、或る時は「人生」について、共に語り共に論じあったあの友、この友の面影を一瞬想い出させたし、また、土の温もりは、これで母なる大地、戎衣を通じて肌身にほのぼのと人間的な情感をしみ渡らせるのであった。
だが、夜の初年兵教育の場合は、寸刻の息を抜く間も許されなかった。皓々(こうこう)とした電灯の下、前後左右、何かに飢えた野獣の狂気を想わせる古兵達の鋭い視線が十重二十重にはりめぐらされている。それだけでも、恐怖と緊張感に身も心も硬直し、小刻みにぶるぶる震えがくるのだったが、やがて、裂帛(れっぱく)の気合
怒声、罵声がいり乱れるうちに、初年兵達は立ち竦み、動転し、真ッ赤に逆上し、正常な神経が次第々に侵され擦り切れていった。
その過程を眺めている古兵達は誰しも、婆婆のどの��画館でも劇場でも観ることの出来ない、スリルとサスペンスに満ち溢れ、怪しい雰囲気につつまれた素晴しい幻想的なドラマでも見ているような錯覚に陥るのであった。幻想ではない。ここでは現実なのだ。現実に男達の熱気が火花となって飛び交い炸裂したのである。
なんともやりきれなかった。でも耐え難い恥辱と死につながるかもしれない肉体的苦痛を覚悟しない限り抜け出せないのである。ここを、この軍隊と云う名の檻を。それがあの頃の心身共に育った若者達に課せられた共通の宿命であった。
この日は軍人勅諭の奉唱から始まった。
「我ガ国ノ軍隊ハ代々天皇ノ統率シ賜ウトコロニゾアル……」
私は勅諭の奉唱を仏教の読経、丁度そんなものだと思っていた。精神が忘れ去られ、形骸だけが空しく機械的に称えられている。又虐げられた人々の怨念がこもった暗く重く澱んだ呻き、それが地鳴りのように聞こえてくるそんな風にも感じていた。
勅諭の奉唱が一区切りついたところで、一人の古兵が教育係の上等兵に何か耳うちした。頷いた上等兵は、
「岩崎、班長殿がお呼びだ。すぐ行けッ」
全員の目が私に集中している。少くとも私は痛い程そう感じた。身上調査のあったあの日以来、私は度々辻村机長から呼び出しをうけた。あいつ、どうなってんだろ。あいつ班長殿にうまく、ゴマすってるんじゃないか。あいつ、俺達のことを、あることないこと、班長殿の気に入るように密告してるんじゃないか。同年兵も古兵達も、皆がそんな風に思っているに違いない。私は頑なにそう思い込んでいた。
つらかった。肩身が狭かった。
もともと私は、同年兵達とも古兵達とも、うまくいっていなかった。自分では余り意識しないのだが、私はいつも育ちや学歴を鼻にかけているように周囲から見られていたようである。運動神経が鈍く、腕力や持久力がからっきし駄目、することなすことがヘマばかり、ドジの連続の弱兵のくせに、その態度がデカく気障(きざ)っぽく嫌味で鼻持ちがならない。そう思われているようだった。
夏目漱石の「坊ちゃん」は親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしていたと云うが、私は生まれつき人みしりのする損なたちだった。何かの拍子にいったん好きになると、その人が善人であれ悪人であれ、とことん惚れ込んでしまうのに、イケ好かない奴と思うともう鼻も引つかけない。気軽に他人に話しかけることが出来ないし、話しかけられて���、つい木で鼻をくくったような返事しかしない。こんなことではいけないと、いつも自分で自分を戒めているのだが、こうなってしまうのが常である。こんなことでは、同年兵にも古兵にも、白い眼で見られるのは至極当然内務班でも孤独の影がいつも私について廻っていた。
あいつ、これから始まる雨霰(あめあられ)のビンタを、うまく免れよって――同年兵達は羨望のまなざしを、あいつ、班長室から戻って来たら、ただではおかないぞ、あの高慢ちきで可愛いげのないツラが変形するまで、徹底的にぶちのめしてやるから――古兵達は憎々しげなまなざしを、私の背に向って浴せかけているような気がして、私は逃げるようにその場を去り辻村班長の個室に急いだ。
2.玩弄
部屋の前で私は軽くノックした。普通なら「岩崎二等兵、入りますッ」と怒鳴らねばならないところだが、この前、呼び出しをうけた時に、特にノックでいいと辻村班長から申し渡されていたのである。
「おう、入れ」
低いドスのきいた返事があった。
扉を閉めると私はいったん直立不動の姿勢をとり、脊筋をぴんとのばしたまま、上体を前に傾け、しゃちこばった敬礼をした。
辻村班長は寝台の上に、右手で頭を支えて寝そべりながら、じっと私を、上から下まで射すくめるように見据えていたが、立ち上がって、毛布の上に、どっかとあぐらをかき襦袢を脱ぎすてると、
「肩がこる、肩を揉め」
傲然と私に命じた。
私も寝台に上がり、班長の後に廻って慣れぬ手つきで揉み始めた。
程よく日焼けして艶やかで力が漲っている肩や腕の筋肉、それに黒々とした腋の下の毛のあたりから、男の匂いがむっと噴き出てくるようだ。同じ男でありながら、私の身体では、これ程官能的で強烈な匂いは生まれてこないだろう。私のは、まだまだ乳臭く、淡く、弱く、男の匂いと云うには程遠いものであろう。肩や腕を、ぎこちない手つきで揉みながら、私はふっと鼻を彼の短い頭髪やうなじや腋に近づけ、深々とこの男の乾いた体臭を吸い込むのだった。
「おい、もう大分、慣れて来たか、軍隊に」
「……」
「つらいか?」
「いエ……はァ」
「どっちだ、言ってみろ」
「……」
「つらいと言え、つらいと。はっきり、男らしく。」
「……」
「貴様みたいな、娑婆で、ぬくぬくと育った女のくさったようなやつ、俺は徹底的に鍛えてやるからな……何だ、その手つき……もっと、力を入れて……マジメにやれ、マジメに……」
辻村班長は、岩崎家のぼんぼんであり、最高学府を出た青白きインテリである私に、マッサージをやらせながら、ありったけの悪態雑言を浴びせることを心から楽しんで��る様子であった。
ごろりと横になり、私に軍袴を脱がさせ、今度は毛深い足や太股を揉みほぐし、足の裏を指圧するように命じた。
乱れた越中褌のはしから、密生した剛毛と徐々に充血し始めた雄々しい男の肉茎が覗き生臭い股間の匂いが、一段と激しく私の性感をゆさぶり高ぶらせるのであった。
コツコツ、扉を叩く音がした。
「おお、入れ」
私の時と同じように辻村班長は横柄に応えた。今時分、誰が。私は思わず揉む手を止めて、その方に目を向けた。
入って来たのは――上等兵に姿かたちは変ってはいるが――あっ、辰ちゃんではないか。まぎれもなく、それは一丁目の自転車屋の辰ちゃんなのだ。
私の家は榎町二丁目の豪邸。二丁目の南、一丁目の小さな水落自転車店、そこの息子の辰三は、私が小学校の頃、同じ学年、同じクラスだった。一丁目と二丁目の境、その四つ角に「つじむら」と云ううどん・そば・丼ぶり物の店があり、そこの息子が今の辻村班長なのである。
私は大学に進学した関係で、徴兵検査は卒業まで猶予されたのであるが、彼―― 水落辰三は法律通り満二十才で徴兵検査をうけ、その年か翌年に入隊したのだろう。既に襟章の星の数は私より多く、軍隊の垢も、すっかり身についてしまっている様子である。
辰ちゃんは幼い時から、私に言わせれば、のっぺりした顔だちで、私の好みではなかったが、人によっては或いは好男子と言う者もあるかもしれない。どちらかと言えば小柄で小太り、小学校の頃から既にませていて小賢しく、「小利口」と云う言葉が、そのままぴったりの感じであった。当時のガキ大将・辻村に巧みにとり入って、そのお気に入りとして幅をきかしていた。私が中学に入って、漢文で「巧言令色スクナシ仁」と云う言葉を教わった時に「最っ先に頭に想い浮かべたのはこの辰ちゃんのことだった。ずる賢い奴と云う辰ちゃんに対する最初の印象で、私は殆んどこの辰ちゃんと遊んだ記憶も、口をきいた記憶もなかったが、顔だけは、まだ頭の一隅に鮮明に残っていた。
辻村班長は私の方に向って、顎をしゃくり上げ、辰ちゃん、いや、水落上等兵に、「誰か分かるか。」
意味あり気に、にやっと笑いながら尋ねた
「うん」
水落上等兵は卑しい笑みを歪めた口もとに浮かべて頷いた。
「岩崎、裸になれ。裸になって、貴様のチンポ、水落に見てもらえ。」
頭に血が昇った。顔の赤らむのが自分でも分った。でも抵抗してみたところで、それが何になろう。それに恥ずかしさに対して私は入隊以来もうかなり不感症になっていた。部屋の片隅で、私は手早く身につけていた一切合切の衣類を脱いで、生まれたままの姿にかえった。
他人の眼の前に裸身を晒す、そう思うだけで、私の意志に反して、私の陰茎はもう「休メ」の姿勢から「気ヲ付ケ」の姿勢に変り始めていた。
今日は辻村班長の他に、もう一人水落上等兵が居る。最初から突っ張ったものを披露するのは、やはり如何にもきまりが悪かった。しかも水落上等兵は、私が小学校で級長をしていた時の同級生なのである。
私の心の中の切なる願いも空しく、私のその部分は既に独白の行動を開始していた。私はどうしても私の言うことを聞かないヤンチャ坊主にほとほと手を焼いた。
堅い木製の長椅子に、辻村班長は越中褌だけの姿で、水落上等兵は襦袢・軍袴の姿で、並んで腰をおろし、旨そうに煙草をくゆらしていた。班長の手招きで二人の前に行くまでは、私は両手で股間の突起を隠していたが、二人の真正面に立った時は、早速、隠し続ける訳にもいかず、両手を足の両側につけ、各個教練で教わった通りの直立不動の姿勢をとった。
「股を開け。両手を上げろ」
命ぜられるままに、無様な格好にならざるを得なかった。二人の視線を避けて、私は天井の一角を空ろに眺めていたが、私の胸の中はすっかり上気して、不安と、それとは全く正反対の甘い期待とで渦巻いていた。
二人は代る代る私の陰茎を手にとって、きつく握りしめたり、感じ易い部分を、ざらざらした掌で撫で廻したりしはじめた。
「痛ッ」
思わず腰を後にひくと、
「動くな、じっとしとれ」
低い威圧的な声が飛ぶ。私はその部分を前につき出し気味にして、二人の玩弄に任せると同時に、高まる快感に次第に酔いしれていった。
「廻れ右して、四つん這いになれ。ケツを高くするんだ。」
私の双丘は水落上等兵の手で押し拡げられた。二人のぎらぎらした眼が、あの谷間に注がれていることだろう。板張りの床についた私の両手両足は、時々けいれんをおこしたように、ぴくッぴくッと引き吊った。
「顔に似合わず、案外、毛深いなアこいつ」
水落上等兵の声だった。突然、睾丸と肛門の間や、肛門の周囲に鈍い熱気を感じた。と同時に、じりッじりッと毛が焼けて縮れるかすかな���が。そして毛の焦げる匂いが。二人は煙草の火で、私の菊花を覆っている黒い茂みを焼き払い出したに違いないのである。
「熱ッ!」
「動くな、動くとやけどするぞ」
辻村班長の威嚇するような声であった。ああ、目に見えないあのところ、今、どうなってるんだろう。どうなってしまうのだろう。冷汗が、脂汗が、いっぱいだらだら――私の神経はくたくたになってしまった。
3.烈情
「おい岩崎、今日はな、貴様にほんとの男ってものを見せてやっからな。よーく見とれ」
四つん這いから起きあがった私に、辻村班長は、ぶっきらぼうにそう言った。辻村班長が水落上等兵に目くばせすると、以心伝心、水落上等兵はさっさと着ているものを脱ぎ棄てた。裸で寝台の上に横になった水落上等兵は、恥ずかしげもなく足を上げてから、腹の上にあぐらを組むように折り曲げ、辻村班長のものを受入れ易い体位になって、じっと眼を閉じた。
彼白身のものは、指や口舌で何の刺戟も与えていないのに、既に驚くまでに凝固し若さと精力と漲る力をまぶしく輝かせていた。
「いくぞ」
今は褌もはずし、男一匹、裸一貫となった辻村班長は、猛りに猛り、水落上等兵を押し分けていった。
「ううッ」
顔をしかめ、引き吊らせて、水落上等兵は呻き、
「痛ッ……痛ッ……」と二言三言、小さな悲鳴をあげたが、大きく口をあけて息を吐き、全身の力を抜いた。彼の表情が平静になるのを待って、辻村班長はおもむろに動いた。大洋の巨大な波のうねりのように、大きく盛り上がっては沈み、沈んでは又大きく盛り上がる。永落上等兵の額には粒の汗が浮かんでいた。
凄まじい光景であった。凝視する私の視線を避けるように、流石の永落上等兵も眼を閉じて、烈しい苦痛と屈辱感から逃れようとしていた。
「岩崎、ここへ来て、ここをよーく見ろ」
言われるがままに、私はしゃがみこんで、局部に目を近づけた。
一心同体の男達がかもし出す熱気と、激しい息づかいの迫力に圧倒されて、私はただ茫然と、その場に崩れるようにすわりこんでしまった。
戦いは終った。戦いが烈しければ烈しい程それが終った後の空間と時間は、虚しく静かで空ろであった。
三人の肉体も心も燃え尽き、今は荒涼として、生臭い空気だけが、生きとし生ける男達の存在を証明していた。
男のいのちの噴火による恍惚感と、その陶酔から醒めると、私を除く二人は、急速にもとの辻村班長と水落上等兵に戻っていった。先程までのあの逞しい情欲と激動が、まるで嘘のようだった。汲(く)めども尽きぬ男のエネルギーの泉、そこでは早くも新しい精力が滾々(こんこん)と湧き出しているに達いなかった。
「見たか、岩崎。貴様も出来るように鍛えてやる。寝台に寝ろ。」
有無を言わせぬ強引さであった。
あの身上調査のあった日以来、私はちょくちょく、今夜のように、辻村班長の呼び出しをうけていたが、その度に、今日、彼が水落上等兵に対して行ったような交合を私に迫ったのである。しかし、これだけは、私は何としても耐えきれなかった。頭脳に響く激痛もさることながら、襲いくる排便感に我慢出来ず私は場所柄も、初年兵と云う階級上の立場も忘れて、暴れ、喚き、絶叫してしまうので、辻村班長は、ついぞ目的を遂げ得ないままであった。
その時のいまいましげな辻村班長の表情。何かのはずみでそれを想い出すと、それだけで、私は恐怖にわなないたのであるが、辻村班長は一向��諦めようとはせず、執念の劫火を燃やしては、その都度、無残な��折を繰り返していたのである。
その夜、水落上等兵の肛門を責める様を私に見せたのは、所詮、責められる者の一つの手本を私に示す為であったかもしれない。
「ぐずぐずするな。早くしろ、早く」
ああ、今夜も。私は観念して寝台に上がり、あおむけに寝た。敷布や毛布には、先程のあの激突の余儘(よじん)が生温かく、水落上等兵の身体から滴り落ちた汗でじっとりと湿っていた。
私の腰の下に、枕が差し込まれ、両足を高々とあげさせられた。
「水落。こいつが暴れんように、しっかり押さえつけろ。」
合点と云わんばかりに、水落上等兵は私の顔の上に、肉づきのいい尻をおろし、足をV字形に私の胴体を挟むようにして伸ばした。股の割れ目は、まだ、水落上等兵の体内から分泌された粘液でぬめり、私の鼻の先や口許を、ねばつかせると同時に、異様に生臭い匂いが、強烈に私の嗅覚を刺戟した。
「むむッ」
息苦しさに顔をそむけようとしたが、水落上等兵の体重で思うにまかせない。彼は更に私の両足首を手荒く掴んで、私の奥まった洞窟がはっきり姿を見せるよう、折り曲げ、組み合わせ、私の臍の上で堅く握りしめた。
奥深く秘められている私の窪みが、突然、眩しい裸電球の下に露呈され、その差恥感と予期される虐待に対する恐怖感で、時々びくっびくっと、その部分だけが別の生き物であるかのように動いていた。
堅い棒状の異物が、その部分に近づいた。
思わず息をのんだ。
徐々に、深く、そして静かに、漠然とした不安を感じさせながら、それは潜行してくる。ああッ〃‥ああッ〃‥‥痛みはなかった。次第に力が加えられた。どうしよう……痛いような、それかと云って痛くも何ともないような、排泄を促しているような、そうでもないような、不思議な感覚が、そのあたりにいっぱい。それが、私の性感を妖しくぐすぐり、燃えたたせ、私を夢幻の境地にさそうのであった。
突然、激痛が火となって私の背筋を突っ走った。それは、ほんのちょっとした何かのはずみであった。
「ぎゃあッ!!」
断末魔の叫びにも似た悲鳴も、水落、上等兵の尻に押さえつけられた口からでは、単なる呻きとしか聞きとれなかったかもしれない。
心をとろけさせるような快感を与えていた、洞窟内の異物が、突如、憤怒の形相に変わり、強烈な排便感を伴って、私を苦しめ出したのである。
「お許し下さいッ――班長殿――お許しッ ――お許しッ――ハ、ハ、班長殿ッ」 言葉にはならなくても、私は喚き叫び続けた。必死に、満身の力を振り絞って。
「あッ、汚しますッ――止めて、止めて下さいッ――班長殿ッ――ああ――お願いッ――お許しッ――おおッ――おおッ―― 」
「何だ、これくらいで。それでも、貴様、男か。馬鹿野郎ッ」
「ああッ、……痛ッ……毛布……毛布……痛ッ��―汚れ――汚れますッ――班長殿ッ」
毛布を両手でしっかりと握りしめ、焼け爛れるような痛さと、排便感の猛威と、半狂乱の状態で戦う私をしげしげと眺めて、流石の辻村班長も、呆れ果てで諦めたのか、
「よしッ……大人しくしろ。いいか、動くなッ」
「うおおおー!!!」
最後の一瞬が、とりわけ私の骨身に壊滅的な打撃を与えた。
「馬鹿野郎。ただで抜いてくれるなんて、甘い考えおこすな。糞ったれ」
毒づく辻村班長の声が、どこか遠くでしているようだった。
終った、と云う安堵感も手伝って、私は、へたへたとうつ伏せになり、股間の疼きの収まるのを待った。身体じゅうの関節はばらばら全身の力が抜けてしまったように、私はいつまでも、いつまでも、起き上がろうとはしなかった。
班長の最後の一撃で俺も漏らしてしまったのだ。腑抜けさながら。私はここまで堕ちに堕ちてしまったのである。 瞼から涙が溢れ、男のすえた体臭がこびりついた敷布を自分の汁と血で汚していた。
どれだけの時間が、そこで停止していたことか。
気怠(けだる)く重い身体を、もぞもぞ動かし始めた私。
「なんだ、良かったんじゃねぇか、手間取らせやがって」
おれの漏らした汁を舐めながら辻村班長が言った。
そして汚れたモノを口に突っ込んできた。
水落上等兵は、おいうちをかけるように、俺に覆い被さり、聞こえよがしに口ずさむのであった。
新兵サンハ可哀ソウダネ――マタ寝テカクノカヨ――
(了)
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世の中は空前のサウナブームらしい。各種情報メディアを駆使して街の銭湯にたどり着いた全国の猛者たちが昼夜問わず約50 - 120 ℃の高温室内で肌を触れ合わせる姿を想像してゾッとしない訳がない。合言葉は「整いました」とのことで、僕はこれを珍奇サウナ偏愛者による「型に嵌ったフロー」と誤読して勝手に溜飲を下げている。チンコだけに、風呂だけに。これはなにもサウナ好きを揶揄しているのではない。むしろ彼らは街の銭湯の隆盛に大いに貢献している。そんなサウナブームを皮切りにして、いまでは銭湯での音楽ライブやDJイベント、更にレコードや書籍を販売する催事までもが行われて、みな一様にそれなりの賑わいをみせているようだ。この数年で銭湯を舞台にしたMVや楽曲がどれだけ製作されたことだろう。これについても、関わった人たちは広義の意味でのリノベーションに一役買っている。公共性の再編とでも形容しておこうか。因みにカセットテープレーベル”Ital.”を主催するケイタくんはサウナ好きではなく、古参にして無類の(ただの)風呂好きである。とある書籍の記述により誤解を招いている可能性があったので、一応。かくいう僕も幼少期に住んでいた家の並びに銭湯があったので週の半分くらいは利用していた。お尻に石鹸を塗りたくって誰が一番速く床を滑ることができるかを競い合う「尻軽レース」���挑戦したり、友人とタッグを組んで肩車をする、もしくは自力で壁をよじ登って女湯を覗くなどの愚行三昧で、いずれも店主にこっぴどく叱られた。16-18歳の頃にはいまも豊津駅の近くにある福助温泉で深夜の清掃アルバイトもさせてもらっていた。誰もいない時間帯の業務目的とは言え、禁断の女湯に足を踏み入れるのは、性欲みなぎる多感な時期の男子として、当たり前にドギマギした記憶がある。ロッカーの片隅に置き去りにされた下着を見つけたときは興奮を抑えきれなかった。いま思い返せば老婆が使用している類の肌色のそれであったが、当時の自分としては貧相な妄想に薪をくべるものであれば、なんでも良かったのだ。バイト終わりにはトイレにこもって自身の陰茎を握り締めた。そんな日の翌朝は決まって寝坊してしまい、定刻の登校に間に合わなかった。そういう小さな欲望の積み重ねが、人を大人にするのだ。僕はいまでも家族で福助温泉に通っている。番台では当時と変わらぬ寡黙な女将さんが節目がちに帳面を捲っている。いまも昔もこの人に向かって性器をさらしているかと思うと、未熟な僕は今更ながらに不思議な感慨に浸ってしまう。女将さん、俺はちゃんとやれただろうか?やるべきこと、果たすべきことを全うできましたか?女将さんは大人になった僕を認識している筈だが、なにも言わない。もともと極端に口数の少ない方だったので、僕の方からも敢えて話題を持ち出すこともない。30年前、父親と一緒に股間を露わにしていた僕がいつしか父親になり、今度は自分の息子たちと共に股間を露わにしている。女将さんはすべてを見て、知っている。心底かなわないと思う。数十年間ずっと変わらぬ姿勢でペンを握る女将さんの手許にある帳面、あそこに世界の秘密、いや、もっと言えば「世紀の発見」がしたためられているのではないかと勘繰らせるほどの圧倒的な寡黙。安易に適温を求めてはならない。���寂の裏側で、湯は激しく沸いている。
もう一件、自分が子どもの頃から足繁く通い、お世話になっていた近所の銭湯、新泉温泉があったのだが、昨年惜しくも閉館してしまった。電気風呂の横に鯉が泳ぐ大きな水槽があって、息子たちも一番のお気に入りだったので、残念で仕方がない。隆盛と没落。この世の均衡が保たれたことなど、かつて一度もなかった筈だ。そもそもフロー(風呂)強者が言うほど簡単に物事が整う訳がない。新泉温泉の最終営業日、もちろん親子で最後の湯に浸かりに行った。しかしそんな日に限って長男がロッカーの鍵を紛失してしまい、浴室や脱衣場を血眼になって探し回るも見つからない。僕ら家族の異変に気がついた店主やその場にいたお客さんも誰が言い出すともなく、一緒になって鍵を探してくれた。床を這いずって探しているうちに銭湯の老朽を伴う歴史が手のひらを通じて伝わってくる。今日限りでもうこの場所には通うことができないことがわかっているので、自ずと込み上げてくるものがあった。鍵は古びた体重計の裏側から発見された。その瞬間、店主以外の全員が全裸のまま快哉を叫びハイタッチした。長男もほっと胸を撫で下ろしていた。これこそが裸の付き合いというものだ。帰り際、息子たちは自分たちで描いた新泉温泉の絵と手紙を店主に手渡した。僕は「実は子どもの頃から通っていたんです」と伝えると店主は「わかってたよ、自転車屋さんのとこの」と言ってくれた。適温を求めてはならない。いつだって現実は血反吐が出るほど残酷だ。それでも僕たちは新泉温泉の湯を忘れない。店主はその日の入浴料を��け取らなかった。
このように僕個人にとっても銭湯には様々な思い入れがあり、いまでも大好きな場所に変わりはないが、それは昨今のサウナブームとはまったく関係がないし、死んでも「整いました」とか言いたくない。そもそもが自分の性器を他者にさらすことも、他者によってさらされた性器を目の当たりにすることも得意ではない。むしろはっきりと苦手だ。世の男性の数だけ多種多様な性器が存在する。サイズ、形状、カラーバリエーション、味、ニオイ等々、どれをとってもふたつとして同じものがない。股の間にぶら下がっているという設置条件がこれまた滑稽で、あのルックスのあの人にあんな性器が、とか、あのガタイのあの人にあんな性器が……みたいな、得たくもない新規情報が視覚を通して脳内に流し込まれるので、煩わしいことこの上ない。挨拶を交わす程度だった近隣の人々とばったり銭湯で遭遇してしまったら、その日を境にして、顔を合わせるたびに性器が脳裏にチラついてしまう。実際に息子の同級生の父親数名と銭湯でチンコの鉢合わせしてしまったのだが、以降、なかなかパパたちのチンコの造形を払拭できなくなる。これはまさに不慮の追突事故、ごっチンコというやつだ。会社員時代、憧れの上司と出張先で入浴を共にする機会があったのだが、どちらかと言えば華奢に分類されるであろう上司の股間には目を覆いたくなるくらいに巨大なふたつのフグリがblah blah blah、いや垂れ下がっていたのだ。洗髪の際にバスチェアに腰掛けておられたが、信じられないことに巨大すぎるフグリはべちゃりと床に接地していた。以来、上司がどれほどの正論を振りかざそうが、客先でのプレゼン時に切れ味鋭くポインターを振り回そうが、どうしたってスラックスの内側で窒息しかけてい���であろう巨大なフグリを想起してしまう。程なく僕は退職した。とにかく性器というのにはそこにあるが故に素通りすることが難しく、極めて厄介なシロモノである。それが「ない」ことで逆に「有して」しまう諸問題と真摯に向き合ったOBATA LEOの最新作『目下茫洋』は、数多あるフェミニズム関連のテキストとは一線を画する。あまりにグロテスクでおぞましい、だからこそ美しいなどという常套句を粉砕する「弱さ」に貫かれた思考の遍歴。貫く我々♂ではなく、貫かれる♀の身体から滴る分泌液で書かれた紋様のようで、誌面に一定の形状で留められている訳ではない。読む者の素養に左右されるようにして、その形状は刻一刻と微細に変化するだろう。こちらは無数に排泄するが、あちらはたったひとつで対峙している。なにも戦地は彼の地だけではない。戦場は僕やあなたのすぐそばで、いまもネバっこく股を開けている。
臍の下に埋め込まれた爆弾を抉りとるための努力を続けながら、同時にあるのかわからない最終地点に向けて爆弾を運ぶ。本当は抉り取ることはできないとわかっていても、背骨を曲げて運び続けることが、すなわち生きることになっている。『目下茫洋』
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5月31日(金)初日舞台挨拶レポート in ユナイテッド・シネマ豊洲
台風1号の影響により、あいにくの雨模様となったにもかかわらず、この日の舞台あいさつのチケットは完売。映画上映後、登壇者たちがステージに登壇すると客席からは万雷の拍手が鳴り響いた。そんな満員の観客を感慨深い様子で見渡した高畑は「本日は台風の中、こんなにたくさんの方に来ていただいてうれしい限りです。ご覧の通り、お終活の映画とは思えないほどに華やかな女優陣、そして華やかな男優陣が登壇しております。今日はどうぞお付き合いのほど、よろしくお願いします」とあいさつ。続く剛力も「満席はうれしいですね。本当にしあわせです」と語りつつも、ピンクの髪型に触れながら「グレました、娘。本当にすみません」と冗談めかすと、母親役の高畑も「ビックリしちゃった」と笑顔。さらに剛力が「ただ青春というか、再春というか、熟春というか、いろんなものにふさわしい、華やかな感じになったんじゃないかなと思います」と付け加えた。
さらに水野が「先ほどスタッフが、途中まで皆さんと一緒に映画を観ていたとのことで、たくさん笑っていたよ、という声を聞きました。特に(水野たちが出演する)野球のシーンはたくさん笑っていたと聞きまして。非常にうれしく思います」と続けると、凰稀が「皆さん楽しんでいただけましたか?」と質問し、会場からは大きな拍手が。その様子に笑顔を見せた凰稀は「楽しんでいただけたならわたしもすごく胸がいっぱいでございます」と晴れやかな顔を見せた。
一方の、香月監督の熱烈なオファーで友情出演を果たすこととなった藤原は「わたしは前作を観て、とても大好きな映画だったので、オファーをいただいた時はめちゃくちゃうれしかったです。皆さんと同じように、この映画のファンのひとりです。今回はバーのママの役をやらせていただいたんですが、本当に貴重な経験をさせていただきました」とあいさつ。さらに長塚が「こういう機会はあまりないので本当にうれしいです。皆さんがご覧になった通り、楽しく撮影をさせていただきました。この作品は続編ができるんじゃないかなと思っています���、そうしたらそちらの方にも参加したいなと思いました」とさらなる続編に期待を寄せるひと幕もあった。
そして香月監督は「この映画は第二弾ですが、第一弾の1年後という設定でつくりました。第一弾の時はコロナの真っ最中で、公開の初日に9都道府県で映画館が閉まりました。われわれとしては、産んだ子どもが世に出なくて終わるんだろうなと思い、ものすごく落ち込んでおりました。その後、1年から1年半がたち、ホールとか、公民会など、いわゆる非劇場で映画を上映していただきまして。そこから7万人ちかくの方に観ていただいて。全国ナンバーワンになったと連絡が来ました。それで、みんなが観たがっているから、ぜひパート2をお願いしますということになり、この作品は生まれました。今日も朝から台風ということで、この映画はなんと七難八苦であることかと思い、心配していたんですが、これだけのお客さまに集まっていただけて感謝しております」としみじみ。高畑も「うれしいですね。第二作がつくられるということは、(今後は何本も続編がつくられて)寅さんになるんじゃないかと思ったりして。それはうれしいことでした」と笑顔を見せた。
そしてこの日のイベント中には、「私の青春時代こんなにも輝いてました」と題して、登壇者たちの若き日の写真を披露することに。まずは高畑が高校時代の写真を披露。「生徒手帳の写真です。(校則で)パーマをかけちゃいけないのに、わたしは天然ですと言いはって、毎日お母ちゃんのカーラーを借りて、クルクルさせて学校に行ってました。水泳部なので泳ぐと直毛になるんですけどね。」と語り、会場を沸かせると、「当時は大人になりたいというか、ませてましたね。ただその時に陸上部に好きな人がいたんですけど、しゃべれなかった。彼の前に行くと貝みたいになってしまって。だから彼の前でもしゃべれるような開放的な人間になりたいと思って演劇の世界に飛び込んだんです」と女優としてのルーツを明かした。
続く剛力は小学校低学年で、おそらく7歳か8歳ごろと思われる頃の写真を披露。「この時にはじめて子供用の浴衣を着たんですけど、この頃は子供用があまりなくて。旅館に行ったときに子ども用サイズがありますと言われて、着させてもらったらものすごく気に入っちゃって。もともとお洋服は好きだったんですけど、ここからさらにオシャレに目覚めたというか。浴衣にときめいていた瞬間の写真を持ってきました」。
そして水野はサッカーをしている時の写真を披露。「僕は5歳から18歳までサッカーをやっていました。僕が5歳の時から、365日ずっとサッカーをやり続けて。中学校くらいまでは一生懸命やっていたんですけど、高校が『ROOKIES』みたいな学校で。顧問がユニホームを忘れて棄権とか、ファウルで乱闘になって中止とか。入ったのがそういうサッカー部だったので。最後の方は大好きなサッカーをなまけていしまったんです。でも今、僕はそれをちょっと後悔しているんです。13年近く続けたものの最後が、非常に後味が悪いなと思って。だから今の仕事は絶対にそういう風に、なまけないようにしたいと思い、真面目にやっています」と学生時代を振り返った。
さらに凰稀は、宝塚歌劇団宙組トップスター時代の写真を披露。「これは2015年、宝塚大劇場を卒業した日のセレモニーですね。紋付袴を着て、ファンの皆さんの前を練り歩きながら、ありがとうございましたとお辞儀をしたんですけど、わたしは中学生から宝塚に青春をささげたので。本当になつかしいです」としみじみ。
そして藤原は、公には“初出し”となる大学時代の写真を披露。「これは92年で、20歳の時の写真です。わたしはこの世界に入ることを夢見ていて、この頃にデビューしたんですけど、親には(芸能界入りを)反対されていました。わたしは大学の英米文学科に通っていたんですけど、この頃は兵庫県の西宮から東京に通っていて。両親からは一個でも単位を落としたら芸能界入りは許さないと言われて。円形脱毛症になるくらい必死に通っていました。だからこの時代の写真を見ると本当に頑張ったなと思いますし、今でももっと頑張らないとなと思わされます」。
長塚は「俳優になったか、ならないかくらいの写真です」といいながら、およそ50年前のパリ留学時代の若き日の写真を披露。それを補足するように香月監督が客席に向かって「この写真、見たことありますよね?」と尋ねると、「実はこの写真に赤ん坊の写真を合成して、映画でつかわせていただいたんです。その赤ちゃんというのが僕の孫でございます」と意外な裏話を明かして会場を驚かせた。そして最後は香月監督の助監督時代にカチンコを手にした写真を披露。「わたしは京都の撮影所で助監督をしておりまして。頭はリーゼントでヒゲ姿でした。当時、京都の撮影所は、なめられたら終わり、ケンカが強いヤツが一番偉い、という時代でしたから。ツッパってました」と笑いながら明かした。
そして最後にキャストを代表して高畑が観客にメッセージを。「今日こうして皆さまとお会いできまして。『お終活』の船出です。世の中はいろいろありますけど、映画を連れ立って観て、見終わったあとにああでもないこうでもないと。あの人は好きだとか、そうでもないとか話し合うこと。それは罪のないことですから。それも含めて楽しんでいただきたいと思います。おしゃべりはとても大事です。閉じこもって出掛けていない人のことを思い出したら、ぜひその方を誘っていただいて。この映画が多くの皆さまの目に触れますことをせつに願っております」と呼びかけた。
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20240507≠ME 全国ツアー2024「やっと、同じクラス」福島公演
福島に来ました。美玲ちゃんの��旋コンサート。
郡山駅に掲載されている有志の方が準備したサイネージと一緒にセルフィーをしました。福島で美玲ちゃんがライブをしたんだ、って証が確かにそこにはあった。嬉しかった。
いつかのshowroomで福島にファンを連れて行きたいと美玲ちゃんは言っていた。 それを実現するone of themになれたんだ。嬉しかった。 みれいおかえり、と会場で叫べたんだ。嬉しかった。 恩返しが出来たような気がした。
喜多方ラーメンと白河ラーメンもお店に行って食べた。オバサーだからチャーシューがいっぱいの喜多方ラーメンはめちゃめちゃ胃がもたれる。(そうですか)
ままどおるもクリームボックスもゆべしも浪江焼きそばも酪王カフェオレもお土産で買った。クリームボックスと酪王カフェオレは東京帰ってから直ぐに食べたけど、賞味期限めっちゃ短いんだね。食い合わせは凄く良い。美味しかった。
あと、郡山のコンビニで買った緑茶割りを東京に帰ってから飲んでいます。美味しい。日本酒とかも買えば良かったかな。(アル中)
私の身体の細胞が福島の食べ物で構成されているんです。福島に連れて来てくれたんだ。美玲ちゃん、ありがとう。
しおちゃん推しの優しいオタク(以下、「△氏」)が「twelve_secが福島に行くなら俺も見届ける」と最初で最後の連番をしてれる予定っだったのですが、運よく(?)仙台に住んでいる"元"早耶ちゃん推しの見た目が確実にカタギではない気の良いオタク(以下、「ヤクザ氏」)がたまたま郡山に寄る予定があったので、早朝6時から3人でノイミー同窓会、もとい、朝練@「やっと、同じクラス」福島校をすることになりました。(6時~8時なら空いてるよ~、ってヤクザ氏アホなん。結局、集まる我々もアホなん。)
ヤクザ氏は朝練が終わったら颯爽と「じゃあ俺、授業サボるわ」と東京へ好きな人に会いに発って行きました。ハッピーオタクライフ。
彼らと出会ったのは≠MEを通じてです。
ヤクザ氏とは2022年の幕張で。ライブ後、席に座っていたら「もしかして12秒さんですか?」と跪いて私に訊いてきました。黒服か。幕張メッセ近くの中華屋さんでいっぱいお酒を飲んでいたら「オタクで俺より飲む人間初めて見た」とえらく感動していた。福岡公演でカメコのやり方を教えてもらった。彼が応援しているアイドルを一緒に観に行った。DJがELLEGARDENを掛けた瞬間イントロ即最前で暴れた。Supernova、大好きです。イイ曲だからみんなも聴いてね。
△氏と出会ったのは、まほろばアスタリスクの解釈ツイートがとても良くて、
https://x.com/kak_not/status/1445067377180176387
私から声掛けて2022年のツアーの埼玉公演かどこかの公演で初めて会ったんだっけか。△氏とヤクザ氏が応援しているアイドルが同じで、不思議な三角関係だったと思う。(△!?!?)ノイミーの歌詞解釈でしのぎを削っていた時、めちゃめちゃ楽しかった。意外と酒飲む。私は△氏のオタクスタイル凄く好き。みんなも大好きでしょ。2023年のツアー武道館公演が終わった後にオタク達と一緒に鳥貴族で飲んでその後早朝の東京ドーム行って「次はここです」みたいな話したよね。福島での最初で最後の連番で私の観劇スタイルがニヤニヤオタクスマイル双眼鏡キンブレ単振動だとバレたのちょっと恥ずかしい。まぁ、ええか。△氏はパワー系振りコピスタイル。広島でしおちゃんソロで「前髪」やってくれると良いね。やるかな?アイルネの超初期の水色のTシャツ貸すで〜。17歳のCDも貸すで〜。たこ焼きは別腹やで〜。(おジャ魔女舞台の亡霊)
書いている途中で思い出したんけど、私達はもう少し前に、2022年のTIFで出会ったんだった。細かいことは端折るけれど、そういえば△氏はHOT STAGEでアイマスの曲でガン踊っていたし、ヤクザ氏は私がTIF観ながらしたツイートふぁぼってくれてFFになったんだっけ。
書ききれないこと、いっぱいあるや。
美玲ちゃん。貴方のおかげで不思議な出会いが、ここには書ききれないものも含めて、本当に沢山あったんです。私の人生にとって、絶対に忘れられない出会いが沢山あったんです。 美玲ちゃんと≠MEに出会わなければ絶対に無かった出会いがあったんです。
意味わからん出会い方をした3人が、意味わからん時間に、美玲ちゃんの凱旋コンサートの日に、私が福島にいるからという理由で、コンビニ前でお酒を飲みながら他愛もないことを話しながら笑いあったんです。凄いでしょ。美玲ちゃんは凄いんだよ。
コンサートの話をします。 昼、夜、両公演参加しました。
昼。2階席のやや下手。一番後ろの席、△氏と連番でした。我々より前の席は着席だったので、とても見やすかった。(△氏振りコピし放題。)
美玲ちゃんのソロ、可愛かった。ハート型ウイルスの冒頭、オリジナルではセンターの小嶋陽菜さんの名前を「は~るなは~るな、はるなは~る~な~」と叫ぶお約束があり、周りは誰一人やっていなかったけれど、美玲ちゃんバージョンで「み~れいみ~れい、みれいみ~れ~い~」としっかり叫ぶことができた。(アケカス老人)。
昔、2年間ぐらい引きこもりニートをしていた。平日が怖くて、何で生きているのか分からなくて。それを紛らす為に「神曲たち」というAKB48のアルバムを無限にループして、ベッドの上で誇張なく一日中ヘッドホンでずっと聴いていた。アイドルソングを聴きすぎて、自分と違って一生懸命に生きているアイドルを好きになって、そのアイドルをキラキラ輝かせるお手伝いをするアイドルソングを死ぬまでに作りたいなと思った。 自分で作ったアイドルソングをライブで爆音で聴いて、自分でMIXを打ったことがある?私はあるんだ。
私のルーツである48の曲を、福島で美玲ちゃんが歌ってくれたのがとても嬉しかった。ヒキニート時代の私が、少しだけ、浮かばれた。
昼公演の最後あたりで団扇にレスを貰った。イコノイジョイ2022の団扇。赤い浴衣がとて見つけやすい、と、いつかのshowroomで美玲ちゃんが言っていたから、それからずっと、どのライブでも持参した。想い出がいっぱい詰まっている。今日もちゃんと見つけてくれた、嬉しかった。
夜。アリーナ。後方ブロック下手、最前列。すぐ右隣りには通路があった。よく見える席だった。去年の仙台の夜公演も、同じようによく見える席だったことを思い出していた。大好きなマシュマロフロートの「恋の駆け引きが上手かどうかなんて君次第」のところで美玲ちゃんから指差しを貰ったことも、そのときの笑顔も、想い出した。
あれから1年近く経った。 私は美玲ちゃんを裏切ってしまった。 勝手に彼女を作って、勝手にオタクを辞めた。 キャラアニで同じCDを沢山買うとき、これからの季節を美玲ちゃんとの想い出で彩ることが出来ることが嬉しくてたまらなかった。カレンダーの予定が美玲ちゃんとのオンライン2ショットで埋まってくのが嬉しくたまらなかった。それなのに私は、カレンダーの予定を勝手に書き換えた。本当にごめんなさい。「Thank you」のスタンプが押されないままの参加券がMeet Passに沢山残っている。本当に酷い仕打ちをしてしまった。最悪だと思う。
最後に対面で会った時に「彼女が出来たから今までのようにオタクが出来ない」と伝えた。美玲ちゃんは「でも、幸せならOKです。」とネットミームで返してくたけれど、美玲ちゃんに出逢えた美玲ちゃんのファンは絶対に幸せになる、と、ボケを潰して支離滅裂に気持ちを伝えたっけ。美玲ちゃんが一番苦しかった時期だと思う。美玲ちゃんから沢山貰って、沢山幸せにしてくれたのに、私は本当に、本当に、酷い仕打ちをしたと思う。
ソロ曲、「帰り道は遠回りしたくなる」 歌詞の全てが美玲ちゃんと私の為にあるような、美玲ちゃんと私の為に美玲ちゃんが選曲したような気がしてならなかった。身勝手なオタクの戯言だと思われても構わない。ラストサビ��"大切な思い出"と美玲ちゃんが歌う時にこちらを向いた気がした。気がしたんだ。 戻れなくたって、それが知らない道だって、それぞれが選んだ道を進んで、それで良いんだって、そうすることに決めた、って。美玲ちゃんが言ってくれた気がした。 私にとって大切な曲になった。
本編最後の曲は「ラストチャンス、ラストダンス」 この曲とまほろばアスタリスクが歌われている時だけは、美玲ちゃんのことを大好きな自分に、大好きな気持ちに戻ることに決めていた。 美玲ちゃんと私の為の曲だと個人的に思っています。 最後サビで美玲ちゃんから指差しを貰いました。 指差しの後に続く歌詞は、
"君の全部が好きだ 最後ぐらい言わせて ラストチャンス、ラストダンス 片想い"
そのあとの美玲ちゃんは、それまでの、どの美玲ちゃんよりも笑っていたんです。世界で一番可愛かったんです。美玲ちゃんと心が通じ合えたような気がして、曲が終わったあとに思わずフフッと笑ってしまった。ズルいよ、美玲ちゃん。
身勝手にオタクを辞めた、身勝手に貴方を好きになることを諦めた私に、どうして貴方はそんなに優しくしてくれるの?どうして、初めて出逢ったときからずっと優しいの?
私は貴方のことを、ずっとずっと忘れられないです。今日起こった事、目に見えた事、感じたこと、ずっとずっとずっと、忘れないです。私がどれだけ幸せになっても、貴方が誰か一人を愛することになっても、私だけは今までのことをずっとずっと、忘れないです。
貴方が私に向けたその笑顔で、私がどれだけ救われたか。その笑顔を見て、想い出して、どれだけ私が笑顔になれたか。どれだけ赦されたか、貴方は知っていますか? 心の底から大好きでした。 私は貴方に感謝してもしきれないです。私は絶対に、絶対に幸せにならなくちゃいけないんです。貴方に出逢えたのだから。貴方に出逢えた人間は、貴方の力で必ず幸せになります。本当です。沢山の人を幸せに、笑顔いっぱいにする才能が美玲ちゃんにはあります。
福島公演の2日後、美玲ちゃんはshowroomの配信をしていました。 公演の感想を配信を観てるファンに美玲ちゃんは訊いていました。
「幸せでしたか?」
美玲ちゃんに初めて出逢ったときから、今日までずっと、そしてこの先もずっと、私は幸せです。 ありがとう。
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浦沢直樹は崖職人
この世には二種類の人間がいる。風呂で本を読む人間と、読まない人間である。
後者は口を揃えて言う。「本がふやけちゃう」「落として濡れたりしたらやだ」
前者は言う。「それめっちゃわかる」
風呂で本を読まなければならない理由は別にない。しいて言うなら、ただ浸かっているだけだと飽きてすぐ上がりたくなっちゃうからかな。 お風呂好きな人は、お風呂に使っている時間そのものを楽しむのだろうが、風呂漫画好きは、風呂に入ってる間なんだか手持ち無沙汰だから漫画を読んでいるのではないだろうか。長風呂も好きだし、漫画も好きだから、両方一緒にやっちゃえ~みたいなタイプもいるかもしれない。
私は風呂漫画派の父の背中、もとい、背表紙を見て育った。 父は漫画がないと風呂に入れない体質だった。(現在は普通に入れるようになったらしい。)
いつも自分のブログには金玉の話とかボタン電池飲んだ話とかあまりにも取り留めのない話ばかり書いてしまうので、たまには人様の役に立つ記事でも書くかと思��立ち、今回は私が独断と偏見で選ぶ「風呂で読むのにいい感じの漫画5選」をご紹介したい。
鎌倉ものがたり(西岸良平)
最初にご紹介するのは、ハンサムなミステリ作家の一色先生と童顔の妻・アキコの二人が、人間と妖怪(またはそれに類するもの)が共生する鎌倉の町で、毎度なんやかんや事件に巻き込まれる漫画『鎌倉ものがたり』だ。
作者の西岸良平の代表作『夕焼けの詩』は『ALWAYS 三丁目の夕日』として映画化されているし、あの特徴的な輪郭のキャラクターたちを見れば「あ〜この絵、コンビニの分厚い漫画で見たことあるわ〜」という人もいるはずだ。『三丁目の…』の映画のイメージから、なんか昭和のノスタルジー的な漫画を描いている印象が強いかもしれないが、『鎌倉ものがたり』は時代設定が現代で、バリバリ時事ネタも取り入れられている。何より、西岸良平の最大の武器(私調べ)であるオカルト要素が満載であることを強調しておきたい。人間ならざるモノが持つ怖さ・優しさ・不気味さ・可笑しさを絶妙なバランスで物語に入れ込んでくる。さすが西岸良平。よく知らないけど。
ちなみに実家にはなぜか鎌倉物語の4巻と5巻だけがあり、小さい頃から何十回も繰り返しお風呂で読んできたので、風呂漫画といえば真っ先に一色先生の顔が浮かんだ。特に心に残っている話といえば、鎌倉中の有名な僧侶たちを殺しまくる残忍な魔物が出てくる第51話「地上最強の魔物」(第5巻収録)で、小2の私は「煩悩」という言葉の意味をこの漫画から学んだ。ありがとう光輪和尚。ずっと大好きだよ。
西岸良平の絵は一目見ただけでこの作者の作品だとすぐにわかる「クセがすごい」タイプの絵で、不思議な魅力がある。キャラクターのほとんどは長靴みたいに顔の下部がぽっこり左右のどちらかに突き出しているフォルムで、頭身も三頭身くらいのめちゃくちゃデフォルメされたキャラクターデザインなのだが、ハンサムはハンサムに、美女は美女に見えるのがすごいし、キャラクターの描き分けが半端ではない。目・輪郭・髪型には何パターンかあって、アバターのようにそれを組み合わせているのだが、ちゃんとキャラが一人一人立っているのが本当に不思議だ。
何巻から読んでも大丈夫なので、早速コンビニの分厚いやつを買ってみてくれ!(廉価版のほうが濡れたときの精神的ダメージが小さい。)
私のお気に入りエピソードは、第61話「遺産相続人」(第6巻収録)、第300話「ハンプティ・ダンプティ殺人事件」(第6巻収録)、第347話「魔界転生II(猫編)」(第6巻収録)。
リストランテ・パラディーゾ/GENTE(オノナツメ)
この漫画を読んだ私の友人の感想は、大体次の3種類しかない。
「ジジがかわいい」
「テオが性癖」
「ジジがかわいい」
「ルチアーノはもっと押せばいける」
「ジジがかわいい」
そう、この漫画は、つまるところ、ジジがかわいい漫画なのである!
皆さんにとって「ジジ」といえば、「私、魔女のキキです。こっちは黒猫のジジ!」のジジでしょうが、我々の業界でジジといえばソムリエのジジ、つまみ食いのジジ、まかないでめっちゃいいワイン開けちゃう初老のジジです!
でも、レストランの漫画だったら、読んでるとお腹すいちゃうんじゃない?僕は食後にバスタイムってタイプだから食欲をそそるような漫画ちょっと……。
ご安心あれ!! この漫画に出てくる料理は一つも食欲をそそらないし、別に美味しそうに見えない!ジェラートも、なんか四角い。(でも、本格的なイタリアンジェラートって、31みたいに丸く盛り付けないで角ばった感じでよそってくれること結構あるよね。ないか。)
これはオノ・ナツメの画力の問題ではなくて、料理が美味しそうかどうかはあんまり関係ないからである。この漫画で大切なことは何か。老眼鏡をかけた初老の紳士たち(複数形)である。 老眼鏡の初老の紳士が料理したものを、老眼鏡の初老の紳士がサーブする。それだけで、いいッッッ!!!!!!!
先に連載されたのは『リストランテ・パラディーゾ』で、アニメもこのタイトルだったため、本家はリスパラ、『GENTE』は番外編扱いらしい。物語の中の時系列はGENTE→リスパラ→GENTEだけど、読む順番はどっちが先でも大丈夫だよ!
読み終わった方は、どの紳士の虜になったか教えてほしい。
私?愚問!ジジに決まってんだろ!
マリーマリーマリー(勝田文)
作者の勝田文の作品にはお風呂で読みたいものが多い。線はシンプルなのに画面がにぎやかでかわいく、コミカルな話の展開の中に差し込まれるロマンチックでちょっぴりエモーショナルなモノローグが胸に染みる。夕方や夜のバスタイムにはぴったりだ。一話完結型なのもお風呂向きな点である。
主人公は針の先生リタとギタリストの自由人・森田さんの新婚カップル。松田聖子もビックリのビビビ婚(古っ)で結ばれた二人の、ドタバタのほほんキュートアンドエキサイティングな日常を描いた作品である。
勝田文の漫画は、その緩急がたまらない。わちゃわちゃコメディ展開が続いていると思ったら、急に心にじんわりとクるシーンが差し込まれてきたり、いつも何を考えているのかわからないテキトーな森田さんがその顔面のポテンシャルを最大限に活かしたハンサムムーブで魅せるセクシーな雰囲気にきゅうううううんとさせられたり、とにかく心臓が忙しい。
笑える話、優しい話、切ない話、どんな回でもマリーマリーマリーは読後感がいい。こういうところもお風呂向きな漫画である理由かもしれない。
この作者といえば『あの子にもらった音楽(愛蔵版)』もお風呂漫画としては捨てがたいのだが(通算20回くらいお風呂で読んだ)、コミックスがかなり分厚いので、風呂ではちょっぴり読みにくい。愛蔵版とか完全版とかはたいてい風呂向きではない。文庫版はいいよね。
岸辺露伴は動かない(荒木飛呂彦)
漫画好きを自称しながら実は読んでこなかったモンスター級冒険漫画『ジョジョの奇妙な冒険』、結局読んでみて、一番好きになったのが第4部に登場する漫画家・岸辺露伴だった。ネットミームと化した有名過ぎる台詞「だが、断る」でお馴染みの人気キャラクターである。ここで紹介する『岸辺露伴は動かない』は『ジョジョの奇妙な冒険』のスピンオフ作品、好奇心旺盛過ぎるが故にやばいことに巻き込まれがちな露伴先生の冒険譚である。
ちなみにジョジョが敬遠されがちな理由の一つに、シリーズが長すぎて最初から読む気がしないというのがあるが、ご安心あれ。このスピンオフはジョジョ本編を読んだことがなくても、楽しめる作品だ。
荒木飛呂彦の漫画は、視覚的に情報量が多すぎるのでお風呂でリラックスして読むような漫画じゃあないよな、とは思うものの、一話で完結してくれるという安心感を支えに読み切ることができる。あと、露伴先生が狼狽えている姿を見るのは、なんか、こう、あれだ、グッとくる。
血がいっぱい吹き出したり、謎の虫がいっぱい蠢いていたり、身体を鍛えすぎて人格が壊れてしまう人が登場したりするので、ショッキングな描写が苦手な人にはお勧めできないが、異常現象とか都市伝説とかそういうものが大好きで、お風呂タイムをゾクゾクとワクワクで満たしたい人にはぴったりな漫画だろう。
このスピンオフ漫画は残念ながら2巻までしか出ていないので、露伴先生のお話がもっと読みたい!と思ったら今年実写映画化もされた『岸辺露伴ルーヴルへ行く』や小説版のスピンオフシリーズも読んでみてくれよな。(実は結構小説版が好き。)
ミワさんなりすます(青木U平)
入浴時間は人によって違うので、キリの良いところでお風呂から上がれるように、ここまでは基本的に一話完結型の漫画をお勧めしてきたわけだが(リスパラはそうでもないが)、この『ミワさんなりすます』は続きがめっちゃ気になるタイプの漫画だ。
この物語において、「映画」は非常に重要な存在である。そして、この作品そのものが、多くの「魅せゴマ」や文学的なモノローグといった漫画的表現で「映画が持つ魅力」を描こうとしている(気がする)。説明的なセリフは少なく、絶妙なコミカルさと程良いスリルが詰まったストーリーにどんどん引き込まれ、知らないうちに読み終わってしまっている。しかし、印象的な場面(コマ)は、確かにあなたの脳裏に刻まれている。映画館から出た直後の、少し地に足がつかない、あの感じだ。これは、読む漫画じゃなくて、観る漫画だ!だから続き物でもお風呂で安心して読める、はず。
あらすじは書かないから、とりあえず第一話を着衣のまま読んでみて、気になったら続きは裸で読んでくれ。(四話まで読めるよ↓)
ミワさんなりすます — pixivコミック
(知らない間にドラマ化していたらしいけど、俺は見んぞ!)
番外編:お風呂で読んだらしんどい漫画5選+殿堂入り
『銀魂』空知英秋 字が多い。字が小さい。ギャグ回かと思いきやいきなりシリアスな長編バトル展開に入るので油断できない。私は服部全蔵が好きです。
『ジョジョの奇妙な冒険』荒木飛呂彦 スタンド使いのオランウータン(3部)とか水を自由に移動できるスタンド(4部)からの攻撃が怖くて入浴中全然リラックスできない。とにかく長い。
『青野くんに触りたいから死にたい』椎名うみ シャンプーしてる時、後ろが怖くなる。「いーれーて」って言われても入れちゃだめだよ……。
『血の轍』押見修造 この漫画はいつどこで読もうがしんどい。気分が落ち込んでる時には読んだらあかんで。
『ひとりでしにたい』カレー沢薫・ドネリー美咲 めちゃくちゃギャグテイストが強いけれど、孤独死や終活をテーマに社会制度や人との関わり方を冷静に読み手に突きつけてくる漫画なので、とにかく入浴との相性が悪すぎる。 一巻の叔母さんの孤独死の話はトラウマになる。
浦沢直樹全般(殿堂入り) クリフハンガー*がうますぎて、読み終えるタイミングを失う。とにかく物語の続きが気になりすぎて、風呂上りも服を着ずに読み続けてしまうので、湯冷めすること必至。まとめ買いするか漫喫とかで一気読みしたほうが良い。
以上、私の独断と偏見で選んだお風呂漫画5選でした。 最近は防水のKindleペーパーホワイトの導入を検討するなど、風呂漫画もデジタルに移行しようとしております。
みんなもおススメの風呂漫画があれば、教えてくれよな。
*映画やドラマなどにおいて、物語が気になるところでわざと終わらせる手法。日本語の「引き」。(クリフハンガーの原義は解釈を観客に委ねるような結末の見せ方だだそうです。)
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ある画家の手記if.93 告白
つい先日までホテル暮らしだったけど生活圏内から出たとはいえない程度の距離だったし、こういう遠くまで旅行に来るのは初めてだ、仕事の行き帰りとかじゃなくて旅行が主目的。 部屋に戻ってから、二人で話しながら夕飯をゆっくり突つくように味わって食べた。 さっきの不愉快な男相手に香澄が萎縮してないか、たまに頭を撫でながらじっと見つめて様子を見てたけど、食事も美味しかったし、もう忘れてくれたみたいで良かった。
香澄が奮発して家族風呂にも入れるようにしてくれたから、二人で手を繋いでお風呂まで移動する。 家族風呂を覗いてみたら露天風呂だった。 温泉が初めてだから物珍しくて、あちこち眺めてしまう。 ブーツを脱いで裸足になってお湯のはられたお風呂場の中まで入っていく。外気の冷たさに混じってあったかい湯けむりが足元を浚っていく。 懐手でお湯や外の景色を眺めてたら香澄も裸足になってついてきた。 「気に入った?」 「うん。空間がひらけてて風が気持ちいいね… って 香澄の頭に手を伸ばそうとして懐手にしてたの忘れてて体勢を崩しかけた「わ、危な…「ちょ、」 僕を支えようとした香澄を支えようとして二人で慣れない着物に足をとられて横のお湯の中に盛大に倒れこんだ 「…」 ぽたぽた、髪から湯に水が落ちる とっさに庇おうとして腕で香澄を抱き込んだ、お湯の中で倒れこんだ状態の身を少し起こす。 香澄も僕も背中までお湯に浸かったまま 跳ねたお湯に濡れて二人とも頭からお湯をかぶった 「な、直人だいじょうぶ?!」 「ん… どこも打ったりはしてないよ。急に熱いお湯に入っちゃったね… 火傷しなかった?」 香澄の濡れた頬を親指でなぞりながら訊く。 香澄の下敷きになってるけど、着物の重さを合わせても全然重たくない。肩や腰を抱いてた感触や着物のラインからそんなに痩せちゃってるわけじゃないのは分かってるけど、こんなに軽かったっけ。 かわいいなぁ… 「着物…どうしよう…」香澄がぐっしょり濡れた着物の袖を持ち上げて全身を見ながら呟いた。 「…買い取るしかないね」観念したみたいに僕が片眉だけ少し上げて笑ったら香澄が僕の首筋に顔をすり寄せてきた。香澄の体に両腕を回して体をさする。 着物を着たまま、二人で脱力してお湯のあったかさに少しぼんやりする。 「…」 濡れた着物が香澄の肩や体にはりついて、お湯に浸かった袖や裾が水の浮力で揺れる 香澄の伸びた前髪が顔の輪郭に沿って、毛先から僕の体に水を滴らせる 体を這って伝い落ちてお湯に紛れていく 乱れて頰にかかった部分の赤い前髪を顔の輪郭に沿わせるように指先でなぞって整えながら、顎をとって僕のほうを向かせた 「…やらしいね」 「え、 …え?!」 背中を後ろの岩に預けながら香澄の腰を抱いて体勢を安定させる。着物の上から香澄の背中をなぞり上げて体のラインを刺激するように撫でた。高い着物だけど買うのをいいことに開き直って堪能する。 少し頰を紅潮させた香澄のおでこにキスする。 「え、エロいって… 俺そういうこと言われたの初めてな気がする…」 「僕の前以外ではエロくない方がいいかな…」言いながら香澄の唇をぺろっと舌先で舐めた。 片腕で香澄を抱いたまま、もう片手で着物の懐を探る。濡れてだめになっちゃったかな… さっき館内で見かけて買った、綺麗な缶に入った練紅。袖に入れたままにしてたから取り出してみた。缶にしっかり密閉されてて開けると中身は無事だった。 紅を親指の腹ですくって香澄の唇にそのままおし当てる。 薄い唇に少し雑にひかれた鮮やかな赤色が扇情的で 香澄が少しだけ唇を開いたから口の中に親指を突っ込んで白い歯の内側を撫でると、無邪気に戯れるみたいにして笑いながら僕の親指に軽く噛みついて舌先でくすぐってきた。…。 「…」 白い首筋に手を回して撫であげながら髪に刺さった簪を引き抜いて後ろの岩の上に置いた。 濡れた髪の毛を指に絡ませるみたいに後頭部を弄って頭ごと引き寄せる。そのまま顔を傾けて舌を差し入れて深く口付けた。 「…、……ん…、」 何度も軽く唇を離しては舌でお互いの口内を絡めとって お互いの唾液を飲みたがってるみたい 僕の前髪から香澄の頰に水滴が落ちた。邪魔な前髪を片手でかきあげる。 「……ふ… …ぅ、…」 間近にある香澄の目が気持ちよさそうに緩んで、涙で潤む 口づけをやめないまま腰に回してた手で体をさらに抱き寄せて僕の膝の上に跨らせた 僕の胸に香澄が両手をつく 控えめな仕草がかわいい… ゆらゆら水中で揺れる着物の合わせから白い脚が伸びる 手を太腿に這わせていって、まだ下には触らない 「……っふ…ぁ …」 香澄の目の焦点が一瞬揺らいだのを見逃さない 「…香澄、ちょっと冷えるけどじっとしててね」 香澄の両脚を揃えさせて片腕を僕の首に回させて横抱きにして立ち上がると、一度お湯��ら上がる。水を含んだ着物が乾いた床を濡らしていく。 お風呂場の中の段差に香澄を抱いたまま腰を下ろして、しばらくその体勢であやすみたいに香澄の体を撫でる。 「…直人…?」 見上げてくる綺麗な瞳に優しく微笑み返しながら言う。 「ちょっとのぼせかけたね。もう少ししたら着物は脱いじゃおう」 僕は平気な気がするけどこのままだと香澄が体冷やすからね。 プロに着付けてもらったままだったから、帰りにあそこまで上手く着付けられなかった時のためにと思って一応部屋の浴衣持ってきててよかった。 香澄は少しのぼせたのが冷めるまで僕の腕の中でぽわんとした目で結われたままの僕の髪の毛の紐をいじってた。 たまに僕の髪の毛の先を掴んで口元に引き寄せるのがかわいくて、支えるために回した手で香澄の頭を撫でては髪の毛の中に鼻筋を埋めてあちこちにキスした。
濡れた着物を脱いでもう一度二人でお湯に浸かってあったまってからお風呂を出た。 部屋に戻ったらもう布団が敷いてあって、ふかふかの羽毛布団に二人でダイブして布団の感触を楽しんだ。 マンションではいつもベッドにマットレスだから、それも柔らかいけど敷布団の心地よさとは種類が違う気がする。 「きもちいいね」 一緒に布団の上で寝そべってごろごろしながら、いつものストールの代わりみたいに香澄を掛け布団で包んで布団の上から抱きしめてぎゅっとする。 布団から顔だけ出した香澄がちいさな声をあげて笑う。かわいいな。ふわふわする… 二人だけの場所だと少し気が緩んで顔から力が抜ける。緊張したり疲れるほど気を張ってたわけじゃないけど、外でも館内でも人の目がある場所ではそれなりに気を引き締めてたから。 「そういえば、肖像画家になるって。肖像画ってどんなのだろ… 俺が聞いてもいいこと?」 布団から出てる香澄の髪の毛をいじりながら優しく笑って答える。 「もちろん」 それから、大晦日の夜まで何してたかを香澄に雑談交じりに話した。
クリスマスに香澄と会ってから、少し考えて、先輩の肖像画家の人の家に訪ねていったりしたよ 僕はずっと静物…果物とかグラスとか無機物とかが並んでるような絵ばっかり描いてたから でも結局自分のやり方でやるしか納得できないみたいで、 ほんの数日だったけど木炭紙や鉛筆や木炭を買ってきて、ホテルの部屋にこもってずっと素描描いてた タクシー捕まえて半日ずっと無作為に走ってもらって車窓に流れる景色を休みなくクロッキーして描くスピード上げたりもしてた これからは相手が人間だから相手の負担も考えないと… これから描く人たちは描かれる前提で暮らしてないから、モデルみたいに専用の体力備えてる人ばかりじゃないしね チェックアウトの時間すっかり忘れてて、仕方なく部屋に二千枚くらいの素描を散らかしたまま出てきたから流石にホテルの人にちょっと申し訳なかったな でも描いてたらすぐに筋肉ついたから痩せてたのが少し引き締まったよ 腹���割れてたかも
触る?って聞いたら香澄が布団から腕を伸ばして僕の胴に触れた 「わー…硬い…」 「ボディビルダーみたいに筋肉大きくする鍛え方じゃないから見た目はそんなに変わってないかも」 筋肉を肥大させる鍛え方はプロテイン使ったり工夫がいるし、僕は痩せてもあんまり筋肉は落ちないから、体型だけならスラムにいた頃と少し近いのかな 僕も布団をどけて香澄の体に触れる。相変わらずちょっと痩せ気味だけど不健康ではない感じで安心する。 もう一度布団を一緒にかぶって香澄にくっついて目を閉じる …香澄の匂いに温泉のいい匂いが混じってる… 香澄の頰に触れたら外気で冷たくなってた 「香澄の体ひんやりしてて好き」 香澄の鼻先に僕の鼻先をあてたら鼻も香澄は冷えてた もう一枚、僕の布団のほうの掛け布団を香澄の体にかけてあったかくさせる 布団の中で香澄が僕の着物の合わせに手を入れてきた 「…直人の体いつもぽかぽかしてて好き」 香澄の体に腕を回して脚を絡めてぎゅっと抱きつく 「…これであったかい?」 「…あったかい」 香澄があったまるまでじっと抱きしめる 僕の肩口に口元押しつけて目を閉じてた香澄が目を開けて僕のほうをじっと見る。僕を抱きしめ返しながら言った 「…しないの?」 僕は横目で香澄を見つめて穏やかに笑って聞き返した 「…抱いてくれる?」 香澄の手首を掴んで、ごろんと寝返りをうって仰向けになりながら香澄の体を引き寄せて僕の上に導く 僕の体の上に寝そべりながらキスしてくる、口を開けたら絡んでくる舌に応えながら掛け布団をどけた
香澄に頭を抱き込まれるみたいに腕で囲まれて枕に押しつけられるみたいにキスが深くなる 香澄が体を通しやすいように脚を開いたら太腿の裏を撫でられた「ふ……、……」溜め息みたいな声が喉から漏れる 唇を追いながら上体を起こして膝立ちに��った香澄の脚に触れる そっと浴衣の合わせから手を差し入れて香澄のを優しく撫でた「……」 香澄の浴衣の帯を引き抜いて外す 浴衣の前が開いて白い体が中途半端に露わになる 障子の淵に浅く腰掛けられそうだったから一緒に立って香澄の手を引いてそこに座らせた 向かいに立って少し屈んでキスしながら手に持ってた帯を香澄に握らせた「僕の腕、後ろで縛って」 香澄が目を丸くして、なんで?って表情するから「そのほうが僕が楽しいから」って言ってみた せっかく浴衣だし、景観も綺麗で、本当は香澄を縛ったほうが見目美しいと思うけどね 香澄の前で背中を向けて膝をついて後ろで両腕を合わせたらスルリと帯が手首に回る感触がした 何周か巡らせたところで手が止まったから「もっときつく絡めて」って言った 僕の力だと巻いただけじゃすぐ解いちゃいそう キュッと帯が締まる衣摺れの音がして背中でしっかり縛られた 「…苦しくない?」 「全然平気」 膝立ちのまま障子の淵に座る香澄のほうに向き直る 帯のとれた浴衣の布を鼻先でわけて、合わせの中に顔を突っ込んだ そのまま少しだけ反応してる香澄のを舌でなぞり上げてから口に含んで唾液でたっぷり湿らせる そのまま頭をゆっくり上下させて柔らかく唇で包んだま��扱く 少ししたらしっかりたってきた 手が使えないから深くまで咥え込んで伸ばせるだけ舌を伸ばして袋を刺激した 香澄の手が僕の顔まわりに落ちてきた髪の毛を梳いて片側にまとめて流してくれる 浅くまで一度引いてから先端だけ舌でちろちろくすぐって刺激したらさらにかたくなった 舌に絡んでくる先走りの苦みも甘いような気がする 髪に指を通すように優しく頭を撫でられる 褒められてるみたいでうっとりして、咥えたまま夢中でしゃぶり付いてたら途中で肩を掴まれて体を離された 口が離れると同時に唾液と先走りの混じったのがだらだら畳と僕の胸に糸を引きながら垂れた 「…香澄…?」 口寂しくて見上げたらなにか訊く間もなく唇を合わせられて塞がれた 障子の淵に腰掛けたまま上体を折って斜め上から口付けられる いつもと違う角度で僕が頭を大きく仰け反らせないとうまくキスできない ほとんど香澄を見上げるみたいな姿勢で舌を絡ませてたら、倒れないように香澄が背中を腕で支えてくれた 滴ったぶんも舐めとるみたいにキスされて、もともとたってた僕のがもっと反応して浴衣の布を押し上げる 溢れるほどになった先走りが浴衣を湿らせながら一筋つたって足の付け根から太腿にゆっくり落ちていく 香澄が障子の淵からおりて僕の向かいに一緒に膝立ちになった 優しく抱きしめられてから、ローションを絡めた香澄の手が僕の腰を撫でて、浴衣の中に入ってきた手がお尻を撫でながら僕の後ろに触れた 「…ぁ……、」腕を縛られてるからか、思うように動けなくてもどかしくて自然と普段より抑えられたか細い声になった もう片手で浴衣の前を取り払われると恥ずかしいくらい主張した僕のが外気に晒される そっと片手で覆われて扱かれて「…ふ…ぅ……っ、…」気持ちよくて脚が崩れそう 香澄にもたれかかって肩に口元を押しつけた ぎゅっと閉じた目尻から涙が落ちて香澄の浴衣に染みていく そのまま支えるように片腕で背中を抱かれて、もう片手で前と後ろを交互にいじられる 濡れそぼった後ろがぐちゅぐちゅ音を立てて、脚から垂れていく 香澄の指が入ってくるたびになかが吸いつくように指を締めあげる さっきからわざと触れられてなかった僕の好きなところを香澄の指先が軽く抉るように擦った 「…っ!か…かすみ、…ぁ… だめ、僕…」「イっていいよ…」背中に回ってた手で顎をとられてキスされた 「ん…んぅ……」キスしながら後ろの好きなところをずっと刺激される ぎゅっと抱きしめられるのと同時に吐き出して、くっついた体で僕と香澄の腹部が浴衣ごと濡れて滑った
一度布団の上に移動してから、力が入らなくなって崩れた脚を折って布団にぺったりつけて開く 浴衣から脚が出ちゃってる 一度吐いてもすぐかたくなって 後ろで手を縛ってるから何もできない「香澄…触って」 向かい合って座った香澄にそっと前を扱かれる 首を伸ばして香澄にキスする …香澄は気持ちいいかな 腕を縛ったら僕ばっかりになるの忘れてた 部屋は薄暗くて僕の目じゃしっかり表情が確認できない 香澄の背後の窓の縁に��った雪が月明かりを含んで淡く光ってる 僕が無意識に後ろを布団に擦りつけようとしてたら、香澄に折ってた両脚を一度前に伸ばされて、下から手で持って軽く持ち上げられた 体の前で立てた脚の間に香澄が入ってきて、「少し腰浮かせる?」って聞いてきた 頷く 腰を持ち上げられながらあぐらを組んだ香澄の膝の上に脚を開いて乗る お互いの反応してるのが擦れ合って少し顔があつくなる あついのと一緒に目に涙が溜まる 香澄もちゃんと気持ちいいのがわかると安心する 僕が乗ると重たいだろうから重心をうまく乗せてなるべく体重そのままが香澄にかからないようにする 膝を布団について、腰を浮かせると香澄を見下ろして、濡れて緩んだ後ろに香澄の先をあてた「っ…、ふ……」ゆっくり腰を沈めていくと香澄のが入ってくるのがわかって、気持ちよくてなかが締まる 「んん… ぁっ、」脚から力が抜けて一番奥まで入る、香澄に触りたい… 触れられないから香澄にもたれて顔を首筋に擦りつける ちょっとでも動くと奥に当たって その度に小さな喘ぎをあげて顔をぐりぐり香澄の体に押しあてて なんだかわからない涙が溢れてだんだん涙声になる 香澄が下から腰を突き上げてきて悲鳴をあげた 繰り返し何度も突かれて、気持ちよすぎて一度自分から抜いて、香澄の上から退くようにして布団の上に離れた …触れたい 「香澄… 」僕の顔に伸びてきた香澄の手を、自分の肩と頰で挟むようにして顔をすり寄せながら手のひらを舌で舐めてくすぐってねだる「…後ろからして」 前にしてくれたとき気持ちよかったから、香澄に好きなように扱われるのがすき、僕は香澄に犯されるのがすき …って 思ったこと言ってたら自分で言いながら顔がもっとあつくなる 恥ずかしくてうっすら目が潤む 香澄の指先を舐めて口に咥えたら指を抜かれて、かわりに顔を両手で引き寄せられて噛みつかれるようにキスされた 体をひっくり返されてうつ伏せの体勢にさせられて、僕が両膝を立てる 腕がつけないから上体は布団にうつ伏せたまま、横顔で後ろの香澄を見上げる …引かれてないかな…不安で眉が下がる さっきより涙目になってたら腰を両手で掴まれて、一気に香澄のを押し込まれた「あああぁっ…」 全身が仰け反ってなかが締まる 一度浅くまで抜かれて、また深く突かれて その度に全身がずっとぼんやり痺れたみたいで 頭が快感でまっしろになる いつの間にかイってて着物も布団もぐしょぐしょに濡れてた いつイったのかわからないくらいずっときもちよくて このまま意識飛んじゃいそうだ …縛られて、身動きできない状態で僕がねだったように犯してくれてるのは香澄だ… そう思ったら胸がきゅうっとあっためられたみたいに 苦しいようなきもちいいような 酸欠かな 耳が遠くなる どこも痛くない 香澄が根元まで押しこんで一度僕の体を後ろから抱きしめた 胸やお腹を指先が這って刺激していく 僕の体もあつくてぐっしょり汗もかいてるけど、入ってくる香澄のもあつい きもちいい… すき… 香澄 きもちいい やめないで もっと…
どこまでちゃんと言葉になってるかわからない きもちいいのは波を超えたら静まるかと思ったのに香澄がなかでイって動くのをやめても抜かなかったから、香澄のが入ってるってだけでずっと感じてしまって 思ったこと全部言ってしまうつもりで嬌声の合間に蕩けたような声で言いつづけた
香澄視点 続き
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立ち絵が出来てきたというハナシ 9月の卓に行く子です
結局ラフの見た目が気に入って突っ走りました キャラデザ、現代っぽくないものが混じってないか? 外套はカッコいいので着てもらいます (出番があるかは知らない) 髪型は3種類くらい描いたんですがね、 これが一番しっくりきたワケです
短髪も描くには描いていて、そっちの方が 支持率が高そうだなとは思った(?)のですが、 やっぱり黒髪って風を受けて 綺麗になびいていて欲しいじゃないですか
分からない、悲しい結末※になったりしたら 断髪してショートヘアになるかも知れない✂ 大丈夫、使わなくても差分は用意するから
※悲しい結末 =誰かがバックトラックに失敗する など
差分と言えば、今回も作るわよ 表情集&戦闘差分(通常+被弾の2種)
もう既に洋服と扇子の開閉差分を 作っているのにまだやるか はい、やります
実際はある程度まで表情差分を作ってあるので 被弾ver. を描くだけなんですがね、 被弾って割合と度合が難しいので よくわからんくらい時間がかかるんですよ
至近で殴るタイプならちょっとくらい 派手にやってもいいかな?とか思うんですが、 今回は遠距離タイプなので控えめ��なぁ…
戦闘マップで使うちびキャラ交換もやるので あんまり時間をかけちゃいけないとは 思うし分かってはいるんですがね、 納得いくかは別なのでね…! (凝り性 Lv. 最大)
余談ですが暫定でヘッダーを変えました さすがに9月なので浴衣はな… 秋っぽいヘッダーを描くか、 ないしは看板息子のディスプレイでも 置いておこうかなと考え中です
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私事ですが,うちの親父殿が亡くなりまして。 満年齢で85歳,数え年で86歳。 医師の診断書にも自然死とか書いてあったので,世間的には大往生といったところだろう。 長文なのでご注意を。 これまでのあらすじ 親父殿はそれはもう色々と持病持ちで,入れ歯や差し歯がないことが身体的な自慢だったそうだが,それ以外はなかなか苦労していた。 きっかけは,この春にネフローゼ症候群が発覚したこと。 そこから色々と検査して腎臓以外にもあちこち問題があることが分かったので優先順位を決めて治療していくことになったのだが,そのうち自力で歩くことができなくなってベッドで寝たきりおむつ生活になった。 さらに食べ物や飲み物を自力で嚥下できなくなって,最後の方は点滴頼りになっていた。 実は,春の時点で主治医に「ま,ちょと覚悟はしておけ(←超意訳)」と言われていて,家族内では覚悟完了していた。 積極的な延命治療もしないと随分前に合意済みだったので,酸素マスク以外,あの物々しい生命維持装置の類もなし。 まぁ,アレですよ。 五体満足で死ぬ人はいない。 それは大往生と言われる人でも同じ。 月曜日(前日) 弟が昼に見舞いに行った際に,主治医から「そろそろ葬儀屋やお寺さんを決めておいたほうがいい」と言われたそうで,本家の従兄にアドバイスしてもらいながら(本家の伯父は12年前に亡くなっていて葬儀屋の選定とか親戚への周知とか親の口座の管理とか色々アドバイスしてもらった)準備を始めることになった。 月曜日深夜〜火曜日薄明 したらその日の深夜に病院から弟に連絡があり,私と同居している母親を途中で拾ってもらって(私も母も車を持ってない),入院先の病院へ。 親父殿は(苦しむ様子もなく)眠るように逝ったようだ。 死にゆく人の気持ちなど分かりようもないが,苦しまずに逝けたのならよかったのだろう,多分。 でも,まだ身体は暖かくて実感がわかない。 その後,酸素マスクや尿道カテーテルや点滴針や心電図のプローブなどのエンチャントを外してもらい,浴衣(買い取り)に着替えさせてくれた。 主治医の先生,看護師さん,ありがとう。 うちの親父がお世話になりました。 当直医による死亡診断後,葬儀屋さんに連絡したら1時間半後に引き取りに来てくれた。 考えたら葬儀屋って凄い大変な職業だよな。 親父の身体はそのまま葬儀会場に運んでもらった。 もちろん私たちも同行する。 葬儀会場は家族が寝泊まりする(ただし最大3人まで)部屋が併設されており,納棺前の身体も置いてもらうことができる。 会場入りした頃には身体も冷たくなっていて,本当に亡くなったんだな,とジワジワくる。 その後,葬儀屋さんと軽く打ち合わせて大体の方針を決めたところで薄明時間になったので,いったん解散。 私と母親も自宅に帰って2時間ほど横になった。 でも神経が高ぶって眠れん… 母は葬儀まで会場で寝泊まりするというので諸々を準備していた。 ありゃあ,寝てないな。 火曜日(1日目) 夜が明けて,再度葬儀会場へ。 おっと,その前に勤務先とお客さんに3日ほど休むと連絡を入れておかないと。 家族の部屋に着くと,親父の床が整えられていた。 めっさ綺麗にしてもらってる。 顔もいい感じにしてもらってる。 ありがたや 🙇 弟が早朝にお寺さんへ連絡し,まずは枕経(臨終勤行)を上げてもらった。 そこから葬儀屋さんと坊さんと弟とで打ち合わせに入る。 そうそう,今回は弟が喪主ね。 葬儀屋さんにもちょっと怪訝な顔をされたが(まぁ長男が健在なのに次男にやらすってのはないわな,普通),私は数年前まで広島にいて今も実家から少し離れて生活しているので,ご近所や自治会の運営周りは疎いし,従兄弟・従姉妹連中とコミュニケーションをとるにも弟の方が上手くやれるので,丸投げしてしまった。 ごめんペコン 私はこのスキに諸々の用事を済ませるためにお出かけする。 いったんバスで自宅に帰って(葬儀会場がバス路線上にあってよかった),そこから自転車に乗り換えてあちこちグルグル周り,そのまま葬儀会場に戻る。 よし,葬儀会場周辺の自転車ルートは覚えたぞ。 自転車に優しい道でよかった。 またサイクリングで走ってみよう。 あと,葬儀の日が通院日と被るので病院に連絡して1日ずらしてもらった。 薬 (ヤク) が切れるので処方箋を書いてもらわないと。 午後からは従兄弟・従姉妹連中が勢ぞろいした。 こんだけ集まるのは正月以来だな(笑) 親父は末っ子で,私ら兄弟も従兄弟・従姉妹の間では最年少なのね。 そんな私も五十路後半ということで驚愕されてた。 みんな年とったよな。 そりゃあ,親も死ぬよね。 ちうわけで,親の葬式経験も豊富な従兄弟・従姉妹のアドバイスをもらいながら段取りの微調整を行う。 いや,まぁ,都会の人はピンとこないかもしれないけど,田舎の「ご近所」はマジ大変なのよ。 煩わしいけど,(特に弟の)円滑なご近所づきあいのためには必要なことなので。 夕方になったので泊まり込む人以外はいったん解散。 私も自宅に帰った。 朝は眠れなかったが,メシ食って,風呂入って,洗濯物を片付けて,家事を終わらせて寝転んだら秒で寝落ちしたようだ。 水曜日(2日目) 午前中に納棺を行うので,間に合うように移動。 実家からの車を私の自宅経由にしてもらい,便乗する(礼服で自転車に乗れないし)。 お手数かけます。 あれっスよ。 リアル「おくりびと」っ���よ。 自力で移動できなくなった親父は,入院中は全くお風呂に入れなかったそうな(清拭だけ)。 なので湯灌 (ゆかん) もしてもらった。 風呂好きだったしね。 空気で膨らます簡易浴槽を作ってシャワーしてもらったですよ。 (ほとんどない)髪も洗ってもらった。 かゆいとこないですかー 髭も剃ってもらってスッキリ。 「それ」に敬意を払い,とても丁寧に扱っていただいた。 でも,丁寧に扱っていただくほど「それ」がどうしようもなく「物体」であることを意識させられる。 そう考えると納棺も大事な「お別れ」の儀式なんだなぁ,と痛感した。 夕方からお通夜の儀式を行った。 お坊さんのスケジュールの関係で,早めの開始。 今回お世話になったのは浄土真宗大谷派のお寺さん。 浄土真宗のなかでも本願寺派と双璧になってるところですな。 葬儀屋さん曰く,浄土真宗の読経は(他と比べて)短めなんだそうな。 いや,短いのありがたいっス。 儀式が終わって,参列者に食事代わりのお弁当を持って帰ってもらって本日の予定は全て完了。 木曜日(3日目) 朝から土砂降り。 涙雨? 葬儀会場に泊まってる母親から傘を持ってくるよう要請がかかる。 昨日のうちに弟が市役所に死亡届を出し,今日の新聞の「お悔やみ」欄にうちの親父の名前が載ったことで(つか,新聞の「お悔やみ」ってそういうシステムなんだと初めて知ったよ)朝っぱらからケータイが鳴りっぱなし。 ご近所と親戚筋には通知済みだったが,それ以外の両親や弟夫婦の交友関係から電話の嵐。 新聞すげーな。 ちょっと侮ってたよ(笑) この日も実家からの車を私の自宅経由にしてもらい,便乗して葬儀会場へ。 今回は家族葬で,家族と親しい親族のみの葬儀・告別式ということで,その前に流れ焼香を行うことになった。 受付は従兄弟にお願いする。 ありがたや。 流れ焼香に来られる人数が読めなくてねぇ。 香典返しとか多めに頼んだのだが,思ったより(弟や甥っ子が勤める)会社関係の方が多く,慌てて追加発注してみたり。 そういうの即座に柔軟に対応していただける葬儀屋さん,ホンマ凄いわ。 ちなみに,松江市では火葬してから葬儀するパターンが多いらしい。 うちは今回変則的で,先に葬儀を行って,その後に霊柩車で火葬場に向かう際に実家に寄ってもらうことにしている。 入院中は「帰りたい」を連呼してたからね。 生きてるときに帰らせてあげられなくてゴメンな。 流れ焼香が終わる頃には雨は上がっていた。 持ってきた傘は要らんくなったねぇ(笑) 流れ焼香のあとは準備のための休憩を挟んで葬儀・告別式を行う。 やはり読経は短め。 その後,(主にお坊さんの)休憩を挟んで初七日法要も済ませてしまう。 やっぱり読経は短め。 それから昼食。 お弁当なので,都合で火葬に参加されない方は持ち帰ってもらい,ここでお別れ。 ありがとうございました。 午後から火葬場に向かう前に「お別れの義」として棺に副葬品やお花を入れる。 実家の畑で採れたきゅうりやトマトを入れてみたり。 陶器の湯呑みもOKと言われたので,ビールを入れて棺に入れてみた(ガラスや金属はNGなので瓶ビールや缶ビールのままでは入れられない)。 あとは,葬儀会場に届けられた花を片っ端から入れて花まみれにする。 花まみれの親父は女性に好評でした。 棺の蓋を閉じて霊柩車へ。 2人まで霊柩車に同乗できるけど,火葬の後は現地解散なので,移動の足のない私と母が霊柩車に乗ることになった。 おー。 霊柩車に乗るのは人生初! 途中に寄った実家の前で挨拶したのち,火葬場へ。 今は葬儀屋さんは火葬場の中に入れないんだそうな。 なので,ここで葬儀屋さんとはお別れ。 まぁ,ちょっと前まで(新型コロナ対策で)家族も入れなくて,収骨まで火葬場の職員の方がされて,骨壷だけ渡されるという味気ないものだったらしい。 さすがに火が入ったときはクるものがあったけど,甥っ子と姪っ子が号泣しちゃってねぇ。 逆に冷静になってしまったよ。 すまんね,代わりに泣いてもらったみたいになっちゃって。 1時間半の休憩を挟んで収骨。 流石,歯が自慢だったというだけあって綺麗に残ってた。 無事に火葬も終わり現地解散。 私と母は実家の車に便乗して実家へGo。 四十九日まで使う祭壇を用意しないといけないんだけど,葬儀屋さんが貸し出してくれるんだって。 葬儀会場の祭壇に飾っていた花やお供え物も持ってきてもらってデコレーション完了。 飾ってもらった親父を囲んでみんなで晩飯。 ホンマにお疲れ様でした。 「目一杯の祝福を君に」 なんちうか怒涛の3日間だった。 これは悲しんでる暇なんかないわ。 あと,葬儀屋さんすごいな。 うちは親父の代からの分家で仏壇も墓もないのね。 なので今回はとても助かった。 葬儀の段取りだけじゃなくて,お役所手続きのアドバイスとか,お坊さんとの折衝とか,各種手配の手際とか… 色々色々。 ホンマありがとうございました。 親父の死を惜しんでくれる人がいて,悼んでくれる人がいて,送ってくれる人がいる。 これって実は,かなり幸せなことなんじゃないだろうか。 そして,それは遺される私たちにとっても救いになる。 そう思うことにした。 これも祝福なんだと。 翌日 ずらしてもらった通院日。 有給休暇をとって病院へ。 この夏は心臓の手術(厳密にはカテーテル治療)を行う予定なので,スケジュールを含めた打ち合わせを行う。 手術日までの処方箋と入院の手引をもらって終了。 同意書に署名しないとな。 …と思ったのだが,自宅に帰ってからどうにもダウナーモードで何もする気が起きなかった。 自分で思ったよりキてたのかな。
怒涛の3日間 —または「目一杯の祝福を君に」— | text.Baldanders.info
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美少女野外露出 : 本澤朋美 - 無料動画付き(サンプル動画) スタジオ: ピンク シャンパン 時間: 120分 女優: 本澤朋美 長い黒髪がとっても清楚な雰囲気の超美少女「本澤朋美」ちゃん。可愛らしいちっぱいに迫力の安産型巨尻というコントラストもたまりません。おま○こも薄毛に綺麗なビラビラが男根を気持ち良く包み込みます。そんな朋美ちゃんが野外に挑戦。素で虫を怖がる朋美ちゃんですが、体は正直な様で、段々と可愛い声で感じ始めてしまいます。お次は露天風呂付き温泉旅館でプライベートセックスを存分に満喫してもらいます。浴衣姿からマイクロビキニと非日常的なセックスに朋美ちゃん我を忘れて大興奮。あそこも美しい黒髪清楚系淫獣の朋美ちゃんに��情移入しちゃってください。 DVD・DVD販売サイト【DVD村】 DVD正規販売のDVD村です。動画ダウンロード$1.49!サンプル動画あり、ブルーレイ、DVDあり。
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TGismはビニールハウス?
どうも元気にしていますか?私はさっきまで暖房も付いてない部屋で、寒い寒い言いながら三島の東大全共闘論争のドキュメンタリーを見ていたんだけど、ああいう活発に議論しあってるのを見ると脳と知性が活発になってインスピレーションが起こってきて自分も言葉にして思考を何か言いたくなる気持ちが起こってくるね。
本当は生と性と三島の文学とかについても書きたいけど、そこじゃなくて今回は事物との関連からTGismってもしかして?とひらめいたのでそのことについて書きます。
東大生たちと三島由紀夫は主に事物と関係、思想と国家、自然というものについて形而上学的なやりとりをしていたんだけどそっから私はTGismっていうのは要はビニールハウスだと感じたんですね。とっぴな例えでごめんね。
まあ、そんなにおかしいことを言うつもりはないからお茶でも飲みながら、気楽に読んでください。
トランスジェンダリズムがなぜビニールハウスであるのか?
ビニールハウスっていうのはもちろん、例えです。ビニールハウスは、畑の中の温度を適切に保つためにかけてある、あれです。
私は子ども時代たまに、家族でいちご狩りだとかに出かけていたんだけど、ビニールハウスを普段見かけるところに住んでいなかったから、ビニールハウスのかかった半円で半透明の畑の群れを車の窓や電車の窓から見つけると (ああ、私はいま知らない遠くの街に来ているのだなぁ)とワクワクしたものでした。
…もちろんだけど、なにも私がビニールハウスそのものにワクワクして心を弾ませてるんじゃないってことはわかりますよね?
私は当時、そこに会ったことのない知らない誰かの生活が根付いていて、その人たちの作る野菜や果物を私も知らないうちに口にしているということが不思議になったのです。
世界に知らない人々のいくつもの生活が同時に存在しているということや、どんな他者がどういう暮らしをしてるのか?そんなふうに、想像の水路を広げて遊んでいました。
ビニールハウスは、いわば他者の想起と連想の装置でもあり、過ぎた楽しかった記憶を結ぶものとして当時の私の中に存在していました。楽しい過去があったからこそ、私の心の中にそうした良い印象が形作られているのです。
同時に私はビニールハウスをただのビニールの膜じゃなくって、果物や野菜を育てるためにビニールの膜で覆っているもので、畑を覆っているものだということも認識しています。ビニールハウスを見てなんだあのでかい袋?!とはならないのはあの中に畑があるとわかっているからです。
TGismに置き換えてみます。これは外形としての例えであると理解してくださいね。
生物学的な身体そのものを畑であるとしますね、するとその上に被さっているジェンダーというのはビニールハウスであるといえます。
で、TGismはこのジェンダー(ビニールハウス)そのものを身体の性別(畑)より優先するべきで畑を覆ってるビニールハウスそのものも畑である、畑は包括的で多様なのだと言っているようなものなのです。ああ、��痛がしてくる…
次にジェンダー(ビニールハウス)というものが持つ役割そのものについてです。
ビニールハウスは野菜や果物を育てるために適温や湿度を保って外気の影響を遮断する役割があります。ジェンダーというものは女性身体を持って生きている個人の能力を遮って疎外し、家父長制によって構築されたジェンダーロールを保つ役割があります。要は、皮膜ということです。
例えば、女性は感情的で大袈裟で論理的ではないというジェンダーがあるせいで、日頃から例えば医師にかかった時に主訴をきちんと聞いてもらえないだとか、例えばなんらかのトラブルに巻き込まれた時警察にきちんと話を聞いてもらえないとかあるいは適当にはいはいと流されてしまうだとかいうことがあります。(ちなみに前者も後者も私は経験があります。)
女性は痴漢にあった時、あるいは学校や会社でセクハラや腕力や体格差では叶わない女性の身体であるがゆえにその劣位を逆手にとったさまざまな暴力の被害に女性は遭いやすいです。
被害を上司や学校の先生などに相談すると、相手は「あなたはこういうことをされたというけど、あなたの勘違いなんじゃないの?」「いや、それはきっと、相手はそんなつもりではなかったはずだよ」とあなたの認識が間違っているか、それが大袈裟なのではないかというふうに言われたり間違いであるという前提あっての指摘をされることが多いです。セクハラ・パワハラは立場や社内の関係性を利用したものであるため
また女性は細やかであるとされて女子力ということばや美に対する関心を持つことを人並みの感覚だというふうに押し付けられて美に関する感情労働をしなくてはいけません。
それらは自身の容姿を常に検閲しないといけないという苦痛をもたらします。時間や心や肌の健康を奪います。毎日、崩れないように仕上げた化粧を落とすのにクレンジングで水をたくさん使うので、環境にも悪く、結果的に女性の未来を悪化させています、首を締めているようなものです。
こうした女性の意識や身体の健康を悪化させる悪循環が存在している理由は女性が実力や能力を男性よりも求められず、容姿に価値があるとされているからです。美の基準も男性の主観が主軸となったものです。女性はこの社会の中で無徴だからこそ、装った姿でないと認められないという背景があります。
そうしたジェンダーロールやジェンダー規範の有害さというものは、まさに私たちの生命や人生を歪めているのに、はっきりと個人の生活の中に、社会の中に公然と存在しています。しかしそれを感受しているのは身体が女性である女性たちだけです。男性の場合はそれに共感を寄せたり胸を痛めることができても同じような体験や体感を持つことはできません。想像力豊かであっても難しい問題です。もし、ジェンダーが性別より優越する、あるいはジェンダーは性別そのものであるということになると身体にジェンダーが覆い隠されていることがいかに女性の生活を侵犯しているかという問題や女性の生活が脅かされているかといった問題を指摘できなくなります。
そうした明らかに存在してるのに透明なもの扱いになっている点も含めてジェンダーの有害さは半透明のビニールハウスのようだと私は感じるのです。
ビニールハウスの中ってとても暑いですよね。単純に、暑くて汗をかくし外の気温によっては息が苦しく詰まって不快です。しかし、ジェンダーに覆い隠されなくちゃならない女性の苦悩というのは不快で苦痛というだけのものではありません。誰しもが気づかないうちにジェンダーを主軸とした社会の影響を受けてそれらを再生産しながらいきています。
個人の意思や選択で脱出できるジェンダー規範もあるけれど、例えばルッキズムやエイジズムが意識の基盤や価値観に与えた影響から完全にキッパリと全てを脱することはほとんど不可能といえます。
例えば髪を切るとか服を着ると言った外形的な行為で断ち切れたとしても、行為だけでとどまってしまうこともあります。なぜならば行動によってジェンダー的な観念の拘束から離れたとしても、毎日のように脱毛やエステや、体型のわかりやすい服などジェンダー記号に溢れた広告や創作を目にしなくてはいけないためです。影響は残り続けるからです。
また、個人ではちょっとやそっとではどうにもならない問題もあります。例えば、男女で生涯賃金に格差がある状況から私がよしここからさっさと脱しようと思っても、まず生活があるから出られませんよね。作物を育ててるビニールハウスは、外に出れば湿気や暑さの不快さから離れられて逃れられるけど、ジェンダーの場合は不快どころではありません。変えるには社会全体が変わる必要があります。けれど家父長制社会は子宮や卵巣があって月経があり力が弱く、実力や能力を求められない私たちの身体を覆っているジェンダーを内面化するように迫ります。社会的にも立場が弱い私たちはそこに適合することを求められれば受け入れざるを得ないのです。立場が弱いからです。
次にT女性についてです。おそらく彼らは本気で本当にお化粧や女性ジェンダーの織り込まれた女性服やネイルや「女性的」なフレーバーの香水やロングヘアやロリータ服や、浴衣などの服や化粧を女性そのものだと思っているわけではなくって、それらが布や顔料であるというのは当然だけどわかっています。
それらをまとったりしている時の心理的な安心感だとか楽しさだとかあるいは女性の方になんとなく帰属意識があるという感覚を感じとって、自身は女性だというふうに感じとっているわけです …は?って話ですよね。
ジェンダー(ビニールハウス)と性別(畑)の例えでいうならば、彼らはビニールハウスそのものではなくて、ビニールハウスを起点として自分自身の中にある記憶や思い入れ感慨を引き出しているんです。つまり、それってメイクやファッションが好きな人であって、女性ジェンダーのカルチャーが好きで思い入れがある人たちなんですよね。
…というかそもそも……婦人服を着てお出かけしたりメイクしたりして、なんとなく帰属意識を持ってそっちの方がしっくりくる!というのは女性になったことがないからこそ出てくるあり得ない感覚なんですよ。
身体が男性であるからこそ、社会的に女性ジェンダーの差別性に直面することなく、命を脅かされる危険を体感しないからこそ出てくる感覚なんですよ。
ビニールハウスの中にお邪魔して、ただちょっといちご狩りしにきてわかったつもりになってるだけみたいな感じなのになにが女性だ。
Q.あなたはビニールハウスと例えで言ったけど強度的にはビニールハウスなんて壊せるのに、そこは考慮しないんですか?例えがめちゃくちゃです!
A.女性身体に覆い被されているジェンダーというものを視覚的に理解するためにビニールハウスと言っただけです。
また書きます。
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supernova (summer of 21)
7月の終わりにはアスファルトにこぼれ落ちるくらい咲いていたノウゼンカズラが、今では数えられるほどの花だけを残して静かに夏の終わりを見つめている。9月を過ぎて残った花は私の手には届かない高いところで、太陽を向いて、じっと静かに。 ノウゼンカズラは凌霄花と書く。あの橙色と桃色が混じったやわかい色の花と、咲いたそばからアスファルトにこぼれ落ち、そしてなお蔓いっぱいに咲き続ける生命力と、太陽を見つめる眼差しを、「霄を凌ぐ花」だと大昔の誰かが名付けた。私の生家から二軒離れた家の塀をはみ出して、毎年をこぼれ咲く凌霄花。リョウセンカ。
生家の町で、蝉の声をもう聞かない。大阪の街で毎日毎日、脳を破壊せんとするばかりに鳴いていたクマゼミの大群はここにはいない。8月の終わりに一匹だけのミンミンゼミの声を聞いた。最後の振り絞った声を。誰も応えてはくれないであろう孤独な声を。生まれるのが、生まれるのがあと少し、一週間でも早かったなら、きみを誰かが見つけただろうか。 私は蝉の声をもう聞かない。あのミンミンゼミの声ももう聞こえない。 昼間は長い雨が降り続いて、水と風の音以外には、全てがアスファルトと用水路に流されていくばかり。
雨の止まない真夜中に、死を思って一人横たわる私に虫の声がやってくる。秋の虫の声が、雨をやり過ごし窓の隙間からそっと入り込んでくる。私はタオルケットをかぶり、天井を見つめている。どうしたら死ねるだろうと考え、その気さえあればきっと私はいつでも死ねるのだという安堵とともに眠りにつく。悲しくて午前3時にひとり睡眠薬をぱちぱちと、一粒ずつ出していき、右手いっぱいになった錠剤を一気に飲み下した夜。抽斗のカッターナイフが全然切れなかった夜。悲しみを足に縛り付けて引きずって、戻ってきた部屋に鳴り響いている虫の声。全てが夢みたいに、私は何もしなかったのだと錯覚するほどに、昨日も今日も明日も、静かに部屋を満たす虫の声。 液体のような夜。冷たい空気に肌を浸ける。もうエアコンはいらない。
夏は燃え上がり、私は部屋を閉め切ってエアコンを入れた。蝉の声も、工事現場の音も、まとめて遠ざける。私は私をこの夏から切り離す。燃え上がる夏を前にして、こうする以外に私の生きる術はないから。 エアコンの効いた部屋からベランダに出て洗濯物を干し、布団を頭からかぶって昏々と眠る。照りつける太陽も夕立も何もいらない。彼らに早くいなくなって欲しいから、私は明るい間をずっと眠る。夏はいつも、どうやって生きるのがいいのか途方に暮れる、やり過ごすより他にない季節。 今年の私は歯車が急に噛み合わなくなったように、がたついて、倒れ込んで、いきなり立ち上がって走り込んで、また動けなくなって、倒れるしかない、足元のおぼつかないからくり人形のようで、ちょうど今年二度目の不調に突き落とされたとき、世界は夏になっていた。燃えるような快晴の日々から一転し、長い雨の降りしきる曇天の夏になっていた。 長雨のせいで、梨が不作らしいんだよねと母が言った。
ついぞ、オリンピックもパラリンピックも観なかったと書こうとして、パラリンピックの車椅子バスケットボールの決勝だけは試合開始から試合終了まできちんと観たことを思い出した。この地元から選手が出場していると聞き、車椅子バスケットボールのルールなんて何も知らないのに40分間をじっと観た。結局この地元から出場している選手がどの人なのか画面に見つけることはできなかったし、試合は負けてしまったけれど、これが私の唯一のTOKYO2020の記憶。嵐の歌う「カイト」が耳に残る。風が吹けば歌が流れる。歌っているのは嵐の5人なのに、紛れもない米津玄師が体に持つメロディで、消し切れない、あるいは消そうともしない彼の存在感を、ほんの少し、可笑しく思う。らる、らり、ら。
オリンピックもパラリンピックもどっちも中止になればいいと、なるはずだと、ずっと願っていたけれど、9月も半ばに来て、どちらもスケジュール通りに開催されて、終わってしまった。オリンピック開会式に抱いた悲しみと、車椅子バスケットボール決勝のほのかな高揚感と、パラリンピック閉会式に抱いたあらゆることへの諦念。何をやっても覆らないことがあるのだと、鉄壁の権力をまざまざと見せつけられれば刃も折れた。残された「カイト」のメロディ。糸が切れて、あとは自由に飛んでいくカイト。らる、らり、ら。
働き、歩き続けることが困難になった体を抱えて生家に戻ってきた。
18歳までを育てられたこの生家で、私は18歳までの記憶を絶えず語りつづける。この家にいて無限に溢れ出てくる10代の記憶。あらゆるところに残る、10代だった私の存在感。
命ばかりを燃やして、日常に使い切れなかった分の全てを部活動に注いだ夏。矯正器具にマウスピースを押し付ける痛みに耐えながら、思い通りに吹けない悔しさに泣きながら鳴らし続けたトロンボーン。心はとっくに絶交しながらも同じ音楽を完成させるために隣に座り続けたファースト・トランペットの彼女の横顔。彼女の口が吹くトランペットの高らかな、風のような主旋律と、その下を川のように流れる私の副旋律。離れた心を誰にも悟られないように、互いに不可侵を貫いた3年間。
昼も夜もなく脚本を書き続け、何度も迎えた夜明けの薄明かり。平気で遅刻して向かった部室。いつも靄がかかったような頭で、次はどこを直すべきかを考えている左手。全ては私の脚本にかかっているのだと、私が完成させられなければ全てが終わってしまうのだと、崖の端に置き去りにされたような日々。
自分が作った役を演じるために、自ら長い髪を切り落として「男」になった夏の終わり。白いオーバーブラウスに紺のプリーツスカートを履いて、そのちぐはぐな姿がとても、怖かったこと。
随分、髪が伸びた。 7月の終わりに切り落とした私の髪は、もう物珍しくもない長さへ落ち着きつつある。 髪型を変えるとき、ここでも夏が私の背中を押す。暑さを乗り切るためと周りに上手に半分ほどの嘘をつき、私は「女性」からの脱出を図る。ささやかに、私は私を女性から切り離す。 髪を切り落とすことに、怖いことなどもう何もない。16歳で私は男になった。17歳でも18歳でも、私は男の子だったのだ。その度に髪を切り、その度に、髪はまた伸びるのだ。スカートの裾は揺れるのだ。
冬を迎える頃には誰も、私が男だったことなんて、覚えていないのだ。誰も。
31歳の命は静かに燃えている。ただその日を生きながらえるだけの分の火が、毎日静かに揺れている。頭を駆け巡る記憶の映像を映画館に一人座って眺めるように、終わらない上映に席を立てないままでいる。
夏は燃え上がり、爆発し、収縮して死を迎える。 小学校へ向かって自転車を走らせていた私の車輪めがけて、一匹の蝉が突っ込んできたことがあった。 慌ててブレーキをかけてももう遅く、一瞬で蝉は砕け散って、残骸のひとかけらさえも見つけることができなかった。自転車に跨ったまま呆然とする私に、蝉時雨が降り注ぐ。真夏の太陽が肌を灼く。 少女だった私は、一体何匹の蝉をあの自転車で轢き殺してきたのだろう。一体何匹の蝉がそうやって、人間の自転車に突っ込んでいったのだろう。
夏の死は鮮烈だ。砕け散って跡形も残らない。破片は真っ黒なアスファルトに焼かれて腐ってゆく。耳をつんざく蝉時雨に燃え上がる太陽の日差し、陽炎とともに揺れる死の光景と腐臭。
一瞬を輝いて燃え尽きてしまう花火と火薬の匂い。慣れない浴衣に汗を滲ませて、足を痛めながら歩いた河川敷。人の群れに押し流されるようにして帰った熱帯夜。友達の恋を手伝うことにばかり一生懸命で、自分の恋をついに叶えられなかった。これもまた鮮烈に死んでいく夏の断片、今も忘れない。
「弱った夏に秋は背後から忍び寄り、気付いた時には首元にナイフを突き立てられている」
16歳の夏、終わりゆく夏を見つめて日記に書いた。けれど秋は、夏の首元にナイフなど立てたりしない。夏は燃え上がり、爆発し、収縮して死を迎えるのだ。その収縮した死を、秋はただ包み込むだけだ。収縮が永遠のものとなる前にその手に捕まえて、胸に抱きしめて、空を押し上げて太陽を遠ざける。
夏は秋の胸の中で眠る、燃え上がった火をそっと吹き消して。 秋は夏を抱いて目を閉じる、夏の残した生命が実りを成すことを祈って、いずれ自分を迎えに来る冬を思って。
今年も夏は逝ってしまった。 田園の稲穂は皆深くこうべを垂れて、国道沿いに広がる林檎園は赤く色づいて、しめやかに収穫のときを待っている。 私は夜の声に満たされた部屋でひとり眠る。明日を目覚めるために、もう少し、生きるために、今夜もそっと目を閉じる。
ノウゼンカズラが咲いている。9月を過ぎて残った花は私の手には届かない高いところで、離れゆく太陽を見送るように、ただ静かに。
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結婚したら…
厳しい注意をし、それを直すように言ったあと、勇利は確かによくなかった点を修正し、さらに、ヴィクトルが期待したり想像したりした以上の出来映えですべって見せた。ひとみをきらきらと輝かせ、はしゃいだように戻ってきた彼は、「どうだった!?」と声をはずませて尋ねた。 「よかったよ、勇利! すばらしかった! おまえは最高だ!」 ヴィクトルは勇利を抱きしめ、感嘆の吐息をついた。 「いまの感覚を忘れないようにね。誰もを惹きつける、魅惑的な演技だったよ」 「ほんとに? ヴィクトルのことも?」 「もちろんさ。俺がいちばんとりこになるんだよ」 ヴィクトルは勇利の額にキスし、それからつややかな黒髪をいいこいいこと撫でてやった。勇利は頬を紅潮させ、うれしそうににこにこした。 「もう一回すべってきていい? いまのを身体にしみこませるから」 「いいとも。すてきな勇利をたくさん見せてくれ」 勇利は注意されたこともそれで上手くいった演技も忘れることなく、練習時間が終わるまで充実したすべりを見せた。ヴィクトルは更衣室で着替えるときも勇利を褒め、引き寄せて髪に頬を寄せた。 「どんどんよくなってきてるね、勇利。俺は鼻が高いよ」 「試合のときもそう言われるようがんばるよ」 勇利が更衣室から出ようとしたので、ヴィクトルは引き止めて彼と向かいあった。 「ちゃんとしなくちゃだめだ」 ヴィクトルは適当にぐるっと巻いただけだった勇利のマフラーをぐるぐる巻き直して、隙間ができないように工夫した。ヴィクトルにはなんともないけれど、ロシアは寒いので、勇利にはつらいだろうと思ったのだ。ニット帽も耳がきちんと隠れるようにひっぱってやり、眼鏡が曇らないために気遣ってマスクの位置も変えた。 「勇利のかわいい顔が見えなくなるのはさびしいけど、仕方ないね」 「なに言ってるの?」 勇利は本気にしていないようで、楽しそうに笑うばかりだった。勇利に夢中のヴィクトルは本気で言っているのだった。 「それから手袋も……、勇利、なんてことだ、手がつめたいじゃないか」 「えっ、そう? 感覚としてはあったかいんだよ。たくさん動いたから」 「でもふれるとつめたい」 ヴィクトルは大きな手で勇利の手を包みこみ、丁寧にあたためてやった。 「いいよ、そこまでしなくて」 「俺がしたいんだ。おとなしくしておいで」 「ヴィクトルは過保護なんだよ」 「こんな手をしておいて何を言ってるんだ?」 「だから、ぼくとしてはつめたくないんだってば……」 「油断はいけない」 「油断じゃないよ。事実」 「すこしは俺の言うことも聞いてくれ」 「聞いてるよ。いつも」 「いつも……?」 「いつもじゃん」 拗ねて頬をふくらませる勇利が、たまらなくいとおしかった。ヴィクトルは自分の満足がゆくまで勇利の手をあたため、それからふたりでクラブを出た。 「夕食の材料を買って帰ろう」 「ぼくあれ食べたい。ビーツが入った……」 「いいとも」 ヴィクトルは勇利が希望したスープの材料をたっぷりと買いこみ、勇利と連れだって帰宅した。こうして勇利と買い物をして歩くのは、ヴィクトルのもっとも好きな勇利との行動のうちのひとつだ。ヴィクトルは勇利とすることはなんでも好きなので、「もっとも」も何もないのだけれど。 「着替えたら居間でのんびりしているといい」 「ぼくもつくるよ」 「いいんだ。勇利はマッカチンと遊んでてくれ。さびしかっただろうからね」 「うん……」 ヴィクトルが忙しい時期は勇利が毎日食事をつくっていた。それ以外にも家のことをすべてこなして、ヴィクトルの生活がとどこおりないようにしてくれていた。だからヴィクトルは、自分に時間があるときは、できるだけのことをしたいのだった。勇利が来るまで料理なんてしたいと思ったことはなかったし、そうしようという発想すら持っていなかったけれど、いまはちがう。勇利との暮らしをいとなむためならどんなことでも楽しい。 「さあできたよ。こっちへおいで」 「お皿並べる」 「いいよ。席について」 「並べる!」 そう言い張って手伝う勇利があまりにもかわゆく、ヴィクトルはきゅんとして胸を押さえた。かわいい俺の勇利……。 ヴィクトルのスープを、勇利は「フクースナだよ」と言って食べてくれた。そう言うときの笑顔の可憐なことといったら……。 「それはよかった」 「でも、ここのところずっとヴィクトルにつくってもらってる。明日はぼくがやるよ」 「いいんだ。好きでやってるんだ」 「ヴィクトルって料理好きだったの?」 新しいことを知った、と勇利はにこにこした。ヴィクトルにあこがれているあいだに彼が得た情報では、料理好きなんていう項目はなかったらしい。当然だろう。 「好きだよ。日夜研究に励んでいる」 ヴィクトルは胸を張った。そっかー、と勇利は笑った。「そっかー」という発音がかわいいといったらなかった。 入浴はふたりでするようにしている。「温泉とはちがう」と勇利も最初は抵抗したけれど、度重なると慣れたらしく、何も言わなくなった。 「今日も一緒に入るの?」 「入るよ。当たり前だろう」 「はいはい」 初め、身体を洗ってあげるということを提案したのだけれど、それだけはいやだと勇利は激しく反対し、結局、ヴィクトルが彼の髪を洗うということで落ち着いた。ヴィクトルはなぜだめなのかわからなかった。 「そんなに気にすることじゃないだろう」 「気にすることだよ……どういう考え方してるの……」 「俺は洗ってあげたいけどな」 「けっこうです」 ずいぶん前、そんな会話をしたのをおぼえている。 今夜も勇利は身体は自分で洗い、そのあとちいさな椅子に座ってヴィクトルに背を向け、ヴィクトルのしたいようにさせていた。勇利の髪を洗っていると、ヴィクトルは、これがあのさらりとしたつややかな髪か、とときめかしさで胸がいっぱいになる。使うのはもちろんヴィクトルの選んだシャンプーだ。勇利の髪質を考え、いろいろなものをためした結果、これにきまった。勇利はヴィクトルがたくさんのシャンプーの中から選んだことを知らない。一度、シャンプーが切れそうだと言ったとき、彼が「じゃあこれ」と自分で買おうとしたことがある。ヴィクトルからするとそれを使うなんてとんでもないという代物だった。急いで大反対し、俺が買うと主張してシャンプー選びから手を引かせた。勇利は、どれでも同じなのに、という顔つきだった。 「勇利、もうすこし頭を上げてくれ」 「んー……」 ヴィクトルが丁寧に撫でるようにしながら頭皮を指先でこすっていると、勇利が眠そうな声を上げた。ヴィクトルはふわふわした泡を勇利の髪からすくい上げた。 「眠いかい?」 「ヴィクトルのシャンプー眠くなるんだよね……気持ちよすぎて……」 「それは光栄だね」 「ん、口が半開き……」 ヴィクトルは笑いながら、勇利の耳の後ろをそっと掻き上げた。そのついでに、耳のかたちもなぞって綺麗にしておく。 「あ、それ好き」 「そうかい?」 「うん。ヴィクトルに耳さわられるの好き」 「どきっとするせりふだね」 「どうして?」 ヴィクトルはちょうどよい温度でシャワーを使い、「洗い流すから目を閉じて」と注意した。 「はーい」 「口も閉じて」 「よだれは出してないんだよ」 ふくれて言う勇利を抱きしめて髪に頬ずりしたい。泡だらけでもかまうものか。 しかしヴィクトルはその誘惑に耐え、勇利の髪を綺麗に洗い流した。 「さあ、終わりだよ。あとはゆっくりつかってあたたまろう」 浴槽に入るときは、ヴィクトルが後ろから勇利を抱く姿勢だ。勇利はヴィクトルの胸にもたれかかってよい気持ちそうにする。これもヴィクトルがしあわせを感じる瞬間だった。 「もっと脚を伸ばして。身体をこっちへ」 「あんまりもたれると重いかと思って。こぶただからね」 勇利はヴィクトルが「こぶたちゃん」と言うことをいつまでも恨みに思っているのだった。こころのこもった愛称なのだけれど、彼にはわかってもらえない。 「俺は勇利をリフトできる男だよ。勇利は羽のようにかるい。いや、勇利には羽が生えているのかもしれない。なにしろ天使だからね」 「何を言ってるのかわからない」 「いや……、天使以上にかわいいから天使ではないな……そんなものではない。もっと……」 「何を言ってるのかわからない」 ヴィクトルが引き寄せると勇利は素直にもたれかかり、完全に身体をあずけた。ヴィクトルは彼のすらっとした痩身を抱き、ちいさな顔に頬を寄せてまぶたを閉じた。なんてしあわせなんだ……。ヴィクトルは、勇利といつか結婚するということを考えた。 風呂から上がると、勇利は寝巻を着、簡単に髪を拭いただけで部屋へ引き取ろうとした。 「勇利!」 ヴィクトルは呼び止めて居間へ連れていった。勇利はいつもそうなのだ。こんなことをして平然としている。 「ちゃんと乾かさないとだめだ」 「大丈夫だよ。ほうっておけばすぐ乾くから。ロシアはいつだって部屋の中はあたたかいじゃない」 「それでもだめだ。風邪をひくかもしれないし、髪だって傷むんだよ」 「傷まないよ。そうだとしても気になるほどじゃない」 「だめだ! きみはいつもそうだ。俺の言うことを聞くんだ」 「わかったよ……」 ヴィクトルが叱りつけるようにとがめると、勇利はしおらしくうなずいた。しかし内心ではめんどうだと思っているにきまっている。ヴィクトルがいろいろ言うので反省したふりをしているだけだ。 「おいで。俺がやってあげる」 「自分でするよ」 「勇利は信用できない」 「ヴィクトルがぼくを信じないなんて」 「勇利のこういうことに関してはすべて疑ってかかるよ俺は」 ヴィクトルは勇利をソファに座らせ、ドライヤーで丁寧に髪を乾かした。勇利はヴィクトルの手がふれるあいだ、よい気持ちそうに目を閉じてじっとしていた。きっと髪を洗ってやっているときもこんな顔をしているのにちがいない。言うことを聞かない大変な子だけれど、このあどけない表情を見ているだけでヴィクトルは幸福を感じるのだった。 「かわいいな……」 「んー……? なに……?」 「なんでもないよ。すこし髪が伸びたね」 「へん?」 「いや、綺麗だ。勇利はいつも魅力的だよ」 勇利が笑いだした。どうやら冗談だと思っているらしい。 「��あ、これでいい」 ヴィクトルは納得してうなずくと、ついでに自分の髪もさっと乾かした。勇利はそのあいだぼんやりとテレビを眺めていたけれど、ヴィクトルがドライヤーを止めたところで立ち上がって、「じゃあ寝ようかな……」とつぶやいた。 「何を言ってる。まだすることがあるだろう」 「なんだっけ」 「毎日やってるのに勇利はおぼえていない」 「眠いんだよ」 確かに、あれほど練習しているのだから、疲れて眠りたくもなるだろう。しかし、だからといってじゃあおやすみと譲れるものではない。 「こっちへおいで。ここへ座るんだ」 ヴィクトルはソファの上であぐらをかき、膝を叩いた。 「やだよ、もう、そんなの……」 「何を恥ずかしがってる? 毎日裸だって見てるのに」 「変な言い方しないでよ。お風呂に一緒に入ってるだけじゃん」 「それでも裸を見てる」 「いちいち言い方が誤解を招くんだよ、もう……」 勇利はぶつぶつ言いながらヴィクトルのあぐらの上に横向きに座った。ヴィクトルは彼を自分に寄りかからせ、ほっそりした手を取って引き寄せた。この手が演技のときしなやかに動くのが、どれほど可憐でうつくしいことか。 「ほら、もっと手を出して……」 「くすぐったいよ」 「勇利が抵抗するからくすぐったいんだ」 ヴィクトルはききめのあるハンドクリームをすくい、それを勇利の手に伸ばして両手で包みこんだ。優しく、静かに揉むようにすると、くすぐったがっていた勇利がぴたりと黙った。 「痛くないかい」 「うん……」 「指先まで綺麗に……」 「こんなことしなくてもいいよ」 「だめだ。勇利は自分に無頓着すぎる」 「ヴィクトルがこだわりすぎなんだと思う」 「おまえはほうっておいたら何もしない」 勇利は溜息をつき、どうでもいいというようにヴィクトルにもたれかかって無抵抗だった。もっと自分のうつくしさについて考えればよいのにとヴィクトルは思った。もっとも、何も考えていなくても勇利は綺麗でかわいい。それに、こうしてなにくれとなく彼の面倒を見るのがヴィクトルは好きだった。可憐な勇利を、さらにうつくしくするのだ。 「もういい?」 「まだだ。片手しか終わってないだろう」 「ぼく、左手は何もしなくても大丈夫なんだ」 「何をわけのわからないことを言ってるんだ」 「ヴィクトルにわけわからないって言われたらおしまいだね……」 「俺こそ勇利にそう言われたらおしまいだ」 ヴィクトルは眠いとぐずる勇利をなだめすかして保湿をした。彼が黒髪やこめかみにキスすると、勇利は「そういうので騙されないから」などとかわゆいことを言った。 「勇利は俺をなんだと思ってるんだ」 「少なくとも、こんなにいろいろ言ってくるひとだとは思ってなかった」 勇利にだから言うのだし、世話を焼くのだけれど、この妙な子はそれをわかっているのだろうか。ヴィクトルは甚だ疑問だった。 「さあできた。勇利、もういいよ」 満足してヴィクトルがクリームのふたを閉じたとき、勇利はヴィクトルにもたれかかったまま動きもしなかった。 「勇利?」 顔をのぞきこむと、彼はすうすうと子どものような寝息をたてて眠っていた。ヴィクトルはほほえんだ。 「おいで、マッカチン」 ヴィクトルはあかりを消し、勇利を抱き上げて寝室へ行った。そして彼を慎重にベッドに横たえ、自分も隣に落ち着くと、優しく抱き寄せて髪を撫でた。 「んー……終わったの……?」 「ああ、終わったよ。もうベッドだ。寝ていいよ」 「そっか……おやすみ……」 勇利は深い眠りに落ちたようだった。ヴィクトルは彼を守るように抱きしめ、鼻先に接吻して目を閉じた。 「ジャージで行くの?」 「ううん、今回はスーツ」 勇利の全日本選手権に付き添ったヴィクトルは、滑走順抽選に向かう勇利がスーツの覆いを取るのを見て溜息をついた。 「俺が贈ったやつにしなさいと言っただろう」 「あんな高価なの、普段遣いにできないよ」 「普段遣いにするために買ったんだ」 勇利は何もわかっていない。しかも彼は、自分で以前から持っている、ヴィクトルには信じられない型のスーツを手に取って気楽そうだ。 「勇利、だめだ」 ヴィクトルは注意をうながした。 「だめだっていっても、これしか持ってきてないんだから」 「そうじゃない。スーツはもう仕方ない。俺はゆるせないけど、いまから買いに行くわけにもいかないしね」 「当たり前じゃん」 「バンケットの前に考えよう」 「バンケットのスーツもこれだよ!」 「とんでもないしろものだ」 「失礼なんだよ」 「ネクタイはちゃんと結ぶんだ」 「結んでる」 「勇利はいつもすこし斜めになる」 「だってこうなるんだよ」 「きちんと丁寧に結べばそうならない。来てごらん」 「ヴィクトル、ぼく時間ないから」 「まだ三十分ある。予定表を見てちゃんと知ってるぞ」 勇利は頬をふくらませた。彼は、いつも予定なんて考えないヴィクトルなのに、とぶつぶつ言った。 「勇利のことではこまやかになる」 「無理しないほうがいいよ」 「好きでやってるんだ」 ヴィクトルは後ろから勇利を抱きこみ、彼のネクタイをゆっくりと結んでやった。勇利はうつむいておとなしくしていた。 「あの、抱きしめないとできないの?」 「勇利、前からネクタイを結べるかい?」 勇利はしばらく思案し、「できないね」と素直に答えた。 「そうだろう」 ヴィクトルはきちんとしたかたちをつくって結び終えると、優しく上着を着せかけ、すぐ前の鏡を示した。 「ほら、見てごらん。うつくしいだろう」 勇利はよくよく自分の姿を観察し、「確かに、ネクタイはいつもより綺麗だね」と同意した。 「俺が言ってるのは勇利自身もふくめてだ。さあ、もういいよ。そんなに時間が気になるなら行っておいで。迷子になりそうならついていこうか?」 勇利は何か言いたげな表情でヴィクトルをじっと見た。 「なんだい?」 「……ヴィクトルってさ……」 「うん?」 勇利は彼独特のうつくしい澄んだ目でヴィクトルをしばらく眺めたあと、「なんでもない」とつぶやいて部屋を出ていった。おかしな子だ。もっとも、勇利はいつでもおかしいけれど。 試合当日も、ヴィクトルは勇利の支度をいろいろと気にした。 「そろそろ着替えるかい?」 「うん。更衣室へ行ってくるよ」 「俺も行こう」 「ひとりで大丈夫だよ。迷子にもならない」 「そういうことを心配してるんじゃない。いつだってそうしているだろう?」 ヴィクトルは更衣室で勇利の着替えを手伝った。彼の後ろから衣装のファスナーを上げてやるとき、つややかな肩がキスしたいくらい綺麗だといつも思うのだ。しかしそうはしなかった。それは演技のあとにとっておこう。 「どこも窮屈じゃないかい」 「うん」 「じゃあこっちへおいで。髪をやってあげよう」 勇利はもう何も言わず、ヴィクトルの言うとおりにした。ヴィクトルは鏡の前に座る彼の背後に立ち、勇利の朱塗りの櫛で髪を梳き上げた。これはまるでおごそかな儀式のようで、ヴィクトルはこうすることをたいへん気に入っていた。勇利もこのときこころを研ぎ澄まし、演技のためにととのえているようだ。ヴィクトルは満足すると、勇利の頬を両手で包んで前を向かせ、彼と一緒に鏡をのぞきこんだ。 「うつくしいよ、勇利」 「そう……」 衣装を身にまとい、こうして戦うための姿になった勇利は、本当に凛々しく綺麗なのだ。 「これからおまえはすてきな演技をするよ。俺を魅了し、勇利自身もどきどきする演技をね。俺にはわかってる。勇利は俺の生徒だ。そして俺の誇りだ。俺のかわいい子だ。愛してるよ、勇利」 ヴィクトルはそう言って勇利を氷の上へ送り出した。 ヴィクトルの予言どおり、勇利はすばらしいプログラムを演じ、ショートプログラムもフリースケーティングも終えた。ヴィクトルは自分のもとへ戻ってきた彼を抱きしめ、頬ずりをしてささやいた。 「すばらしかった。アメージングだよ、勇利。おまえは最高だ! 勇利、俺の勇利。俺はおまえに夢中なんだ……」 勇利が汗にひかるちいさなおもてを上げたので、ヴィクトルは彼の顔じゅうにせわしなく接吻した。勇利が笑いだした。 「みんなが見てるのに……」 「かまうものか」 「カメラもいるよ」 「知ってるよ」 ヴィクトルは勇利にジャージを紳士的に着せかけ、ひざまずいてエッジカバーを左右ひとつずつつけてやった。それからキスアンドクライで膝にマッカチンのティッシュボックスを置いてやり、ファンから贈られたぬいぐるみをまわりに丁寧に並べた。さらに、勇利が飲み物を飲みたそうにしたので、キャップを外して渡した。彼が飲み終えるのを待って、ひとつまだ持っていたおむすびのぬいぐるみを腕に抱かせた。 「大丈夫だったかな。点数悪くない?」 「あんな演技をしておいて何を言ってる?」 「ちゃんとできたつもりだけど不安で。自分でわかってない失敗があったかも」 「何もおそれることはない」 ヴィクトルは勇利を引き寄せ、髪にキスして優しく撫でた。勇利は笑い、それから輝くひとみでヴィクトルをみつめた。 「なんだい?」 「ヴィクトルってさ……」 ヴィクトルは勇利の言葉を聞き逃さないよう、彼の口元に耳を寄せた。そのとき、得点が出、歓声が上がって、勇利がうれしそうに白い歯を見せた。 あのひどいスーツにもかかわらず、バンケットのために着飾った勇利はひどくうつくしかった。ヴィクトルはこのときも勇利のために髪を梳いてやり、すらっとした彼の姿勢と装いに陶酔したように見蕩れた。 「綺麗だよ、勇利」 「ありがとう」 「さあ行こう」 ヴィクトルは会場で勇利をエスコートし、影のように寄り添って離れなかった。勇利はヴィクトルの腕に指をかけ、ほかの選手に話しかけられるとひかえめに返事をした。 「みんな、勇利に声をかけてもらいたいんだね。何か自分から言ってあげればいいのに」 「人が寄ってくるのはヴィクトルがいるからだよ」 「勇利……おまえは何もわかっていない」 「なんのこと?」 「何か食べるかい? 取ってあげよう」 勇利はすこし緊張しているようだ。食べさせないと、自分では何も取ろうとしないだろう。立食形式なので、自分で好きに食べ物を選んでよい。ヴィクトルは勇利が気にしたものをひとつひとつ皿に取り、甲斐甲斐しく彼に差し出した。 「美味しいかい?」 「うん」 勇利は口をもぐもぐさせながらこくっとうなずいた。そのいとけなく愛らしいしぐさにヴィクトルはたまらない気持ちになった。早くこのかわいい子と結婚したいものだ。今回は日本の大会だったけれど、いずれ世界大会で彼が金メダルを獲れたなら……。 「食べてばかりじゃ喉が渇くだろう」 ヴィクトルは水のグラスを取り、勇利に差し出した。勇利は礼を述べてそれを受け取ると、大きな目をぱちりと瞬いてヴィクトルに向けた。 「ヴィクトルってさ……」 「なんだい?」 そのとき、「勇利くん!」とやってきた後輩があったので、勇利はふしぎそうにそちらを向いた。声をかけられてふしぎそうにするのは勇利くらいのものだとヴィクトルは思った。 時間が経つと、勇利がふうと息をついてつぶやいた。 「なんか酔ってきた」 「勇利、飲んだの��い?」 「水だけだよ。でも人いきれで……」 「もう引き上げよう。じゅうぶんだろう。帰ってる人もいるみたいだ」 「うん……」 勇利の頬がほてっている。ヴィクトルは彼を外へ連れ出し、庭をすこし散策することにした。 「風が気持ちいい」 月明かりを浴びた勇利はうつくしかった。ヴィクトルは彼に見蕩れていたけれど、どこからか話し声が聞こえてきたので、ほっそりした腰を抱いて奥の道へと導いた。こんなとき勇利は人に会いたがらない。 「こっちへおいで。静かだよ」 「うん……、ヴィクトルってさ」 勇利はぱちぱちと瞬いて言った。 「優しいよね」 「突然なんだい?」 「すごく親切だなあって……。もともとファンに優しい人だから当たり前なのかもしれないけど、それだけじゃなくて……。生徒にこんなに優しいなら……ヴィクトル……」 勇利はくすっといたずらっぽく笑った。 「結婚したらどうなっちゃうの?」 ヴィクトルはほほえんだ。もちろん、ずっと、もっともっと勇利に優しくするのさ。そう答えようとした彼に勇利は言った。 「相手の人、びっくりするだろうね」 「……え?」 「ヴィクトルにこんなに優しくされたら舞い上がっちゃうだろうな。生徒にこうなんだから、結婚相手にはもっとでしょ? どんなふうにするの? 想像もつかない……。いったいどうなるんだろ?」 ヴィクトルはぽかんとした。勇利の言う意味がわからなかった。もしかして彼は、生徒だからヴィクトルがこんなに優しくしていると思っているのだろうか? 結婚相手にはそれ以上のことをすると? まさか──。 冗談じゃない! 「結婚相手はおまえだよ!」 ヴィクトルは叫んだ。突然大きな声を出した彼に、勇利は驚いたように目をまるくした。 「え?」 「俺はおまえと婚約してるつもりだし、愛してるからそんなふうに接してるんだ!」 「え……えっ……?」 「結婚したら優しくするよ! もっと別のことでもね!」 「うそ……えっ……ほ、ほんとに……?」 勇利は口元を押さえ、信じられないというように瞬いた。つめたい風でおさまりかけていた彼の頬が、また赤く紅潮した。まったく……自覚のない子だと思ってはいたけれど、まさかこんなことさえわかっていなかったとは……。 「え……うそ……やだ……そうなの……?」 「いや!? 俺と結婚するのがいやなのか!?」 「これ以上優しくされたら……」 勇利はひとみを大きくみひらき、ほのかにきらめかせてつぶやいた。 「ぼく堕落しちゃうじゃない……どうしたらいいの?」 ヴィクトルは驚いた。こんなことを言われるとは思わなかった。さっきから勇利はびっくりさせることばかり言う。 ヴィクトルは笑いだした。 「ヴィクトル、ぼくのこと好きなの?」 「言葉でも態度でもあらわしてたつもりなんだけどね」 「やだ……もう……」 「何がいやなんだ」 勇利はまっかになって両手で口元を覆った。 「そんなの……、照れるよ!」 世界選手権でクリストフに会ったとき、「ヴィクトルは勇利をうつくしくするのに余念がないね」とからかわれた。ヴィクトルは笑い、勇利は頬をうすあかくして答えた。 「このひと、ぼくのこと愛してるんだって……だからこんなふうなんだって。結婚したら別のことでも優しくしてくれるつもりらしいよ」
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鎖を花に 縄を糸に
何もしてないのに、全部が解決してハッピーエンドで永遠に。そんな日が来ないことは重々承知していた。だからこそ、緩慢で怠惰で堕落した生活を受け入れようとしていたんだ。
いつものように同じベッドの上、二人で寝ようとしていたある日、晴ちゃんが少し悲しそうに、でも何かを決心したような強い瞳でこちらを見てきた。
「頼みがあるんだ」
「……なーに?」
一瞬だけ返事をためらってしまう。晴ちゃんはこの生活の中でずっと怯えているのか、話しかけてくるときはあたしの名前を呼んでから話すようにしていた。それなのに、どうして今日は呼んでくれないのだろう。こちらの様子を窺う余裕もないくらい、いや、窺う必要がないくらいに決めたことがあるのだろうか。
ある程度ついている予測と嫌な予感を交えながら、晴ちゃんの口が動くのを待った。
「もう、こんな生活、やめたい……」
「…………そう」
「でも、わかんないんだ……どうしてこんなことになってしまったのか……プロデューサーも……家族も怖くて、ファンの人たちのあたたかった言葉が全部感じ取れなくなって……オレになにがあったのか……オレだけがわからなくて……このままじゃいけないって……わかってるのに……ごめん、ごめん……」
せぐりあげる声で紡がれる謝罪の言葉が、あたしの心も心臓も切り刻んでいくようだ。あんなこと、その場凌ぎでなんの糧にもならないってわかってた。それでも、晴ちゃんにいつものように笑ってほしかった。何もかもが上手くいって、また日常に戻れるはずだという淡い期待が、今あたしも晴ちゃんも傷つけている。
「しきぃ……おしえて……オレ……どうすれば……���
きっと、誤魔化すことだってできる。なんともないよ、あたしがなんとかするからって言ってもいい。でも、その先は?ずっとこのまま一生嘘をついて、地獄の釜で煮られるような苦痛を二人で共にしてていいのだろうか。自分は耐えられる。だって全部自業自得だから。でも、目の前の愛しい恋人は一体なにをしたというのだろうか。酷い目に遭わされて、記憶を無理やり封じてしまってまた苦しんで、今もこうして震えてる。
……大丈夫、細心の注意を払おう。できることさえちゃんとしてれば、きっとなんとかなるはずだ。
「あのね、晴ちゃん。前に交通事故にあったって言ったじゃん?」
「うん……?」
「あれはね、全部嘘。晴ちゃんが傷つかないように、またいつもの日常に戻れるようについたんだ。ごめんね」
「……そっか」
初めて話したはずなのに、さほど驚いた様子がない。きっと薄々察してはいたのだろう。
「だから、これから本当のことを話すね?ずっとずっと残酷で、悲しい話をするけどいい?」
言葉の代わりに、ゆっくり頷いてくれた。
落ち着いて、できるだけマイルドに。変な表現を使いすぎないように。そのせいか、思考のために酸素を使ってしまって、声が上手く出ない。話をする度に晴ちゃんの顔がどんどん青ざめる。あたしに向けられたものじゃないってわかってるのに、胸が締めつけられるように痛い。
「あたしが助けられたら良かったんだよね……ごめんね……」
そんな言葉で強引に話を打ち切った。話が終わって様子を見ると、両腕で自分を抱きしめるようにして震えている。
特になにかを考えたわけじゃないけど、その震えを包み込むようにして抱きしめる。
「……思いだした……」
ぽつりと零れたその言葉に少しだけ解放された気になる。
「ウソだろ……なんで、アイツが…………アイツがぁっ!!?」
「っ!!!」
想像したくはなかった。晴ちゃんがこんなに傷ついてる理由。
晴ちゃんを襲ってナイフで傷つけた犯人は、晴ちゃんが知ってる人だったということ。
晴ちゃんが机の上に立っている。危ないよ、と駆け出そうとした足が動かない。天井から長いものがぶら下がっている。太くて長いソレは、人がぶら下がったとしても切れることはないだろう。
嘘だよね?声を出そうとしているのに、口が開いたり閉まったりするだけで音が出ない。目の前の恋人の身長が少し伸びる。そして、少しだけ宙に浮かんだままになって空中で重力を失ったかのようにぶらん、と横に上下に揺れる。ぎし、ぎしと言う音が痛々しすぎる。まだ間に合う。まだ応急処置をすれば間に合うはずだから、動いてよ、ねえ。
「晴ちゃん!」
はっ、となって目が覚める。今まで見た夢の中で間違いなく最悪の夢だ。背中も手も冷や汗が伝って、びしょびしょだ。両腕で包んでいたぬくもりはまだ確かにそこにあって、大きな息とともに安堵を覚える。ただし、その顔には涙の跡がしっかり残っていて、悲しい気持ちに襲われる。
あの後、ひたすら晴ちゃんを落ち着けさせようと背中を一定のリズムで叩いてかけられる慰めの言葉をずっとかけていた。夜が明けてもずっとそうやって必死に声を出したせいか、喉が少し痛い。アイドル失格だな、なんてもう辞めてしまった世界のことに少しだけ思いを馳せる。
でも、起きた晴ちゃんになんて声をかければいいんだろう。結局二度晴ちゃんを傷つけただけで、これからのことなんて何も考えられない。すぅ、すぅという寝息がなんとも愛おしくて今はこれだけでもいい。
今のあたしにできることは、夢が現実にならないように、強く抱きしめて離さないことだった。
不意の感触で目が覚めると、晴ちゃんの顔が目の前にあった。柔らかい感触があたしの唇に当たっている。
「起きたか?」
口が放され、少し寂しそうな声でそう聞かれる。
「王子さまはお姫さまのキスで目覚めるのでした、あれ?逆だったっけ?どっちでもいいか♪」
わざとらしく明るい口調でそう言うと、少しだけ微笑んでくれた。晴ちゃんの笑顔が見れたことで、少しだけ安心する。
「……どうすればいいんだろう、オレ」
顔見知りの相手、程度だったらこんな風には思わないだろう。きっと晴ちゃんにとって身近な人間が関係しているのかもしれない。あまりこういう時に名案が閃くタイプじゃないから、とりあえず常識的な返答をすることにした。
「とりあえず……警察に行こうか?」
旅館でチェックアウトを済ませて、タクシーを呼んで駅へと向かう。荷物は場所を転々としているのもあるけど、必要な時に必要なものだけ買っているので小さなリュック一つに収まる程度だ。できるだけ現場に近い警察署の方がいいだろう、ということで新幹線で晴ちゃんが元々住んでいたあたりまで戻ることにした。切符の買い方……というか乗り方は正直覚えてはいないけど、晴ちゃんがいればなんとかなるだろう、と思った。
なんだかんだベッドの上で時間を使ってしまったせいか、駅に着いたころには日が落ちてしまっていた。ただ、そのおかげか人が少なくて晴ちゃんが怯えずに済みそうで良かった。もちろん、夜というより土地柄のせいもあるのだろうけど。
券売機の前でフリーズしてると、晴ちゃんがさっさと操作してくれて支払い画面になった。金額が表示されて、少しだけ申し訳なさそうにする姿が少し愛らしい。カードを入れて支払いを済ませると、切符が四枚出てくる。晴ちゃんが取って、あたしに二枚渡してくれる。
「これ、ここに二枚同時に入れればいいから」
改札に入れて晴ちゃんがホームの方に向かって行く。同じようにしてついていこうとすると、振り向いた晴ちゃんが目を見開いて驚いた。
「志希!切符取り忘れてるぞ!」
「あれ?持っとかなきゃいかないの?」
「ったく、しっかりしてくれよな……」
なんだか慌てたり焦ったりしてるものの、少しずつ晴ちゃんが元々の話し方とか喋り方に戻ってる気がする。あたしといることでそうなってるなら、たまらなく嬉しいことだ。とっとと戻って改札から出てたそれをポケットにしまって、晴ちゃんの元へと向かう。
「なんか不安だから、オレが持っておくよ……」
「わーお、一蓮托生だねっ!」
ポケットから切符を差し出して、晴ちゃんについていく。全然人がいない構内を進んで、エスカレーターに乗ると目当てのホームにたどり着いた。なんとなく贅沢、というか移動で不満を抱えたくなくてグリーン車の席をとった。夜の新幹線を待つ人はまばらにいるが、わざわざグリーン車に乗るような人はいなさそうだ。待ってる時間にも人が傍にいると、晴ちゃんが不安がってしまいそうなのでありがたい。
十分ほどして、アナウンスが流れる。晴ちゃんが前に出すぎてたあたしを引っ張ってくれて、黄色い線の内側まで戻される。新幹線が目の前を高速で通って行って、髪型と服がたなびく。速度を落ちていって、静止したかと思うと扉が開いた。
「ねえ、本当に大丈夫?乗ったらもう引き返せないよ?」
別にそんなことはない。途中下車したっていいのだから。これは、ただの確認だ。
「大丈夫、だって今度は志希がいるから」
手を繋いで新幹線へと乗り込む。廊下側だと通る人が近いことがあるため窓側の席に座ってもらう。景色を見るのにも丁度いいし、気晴らしになってくれたらいいな、程度のものだ。しかし、晴ちゃんは席について早々眠ってしまった。そりゃそうか、気疲れもあるだろうしいっぱい泣いてたから。
手を繋いであたしは起きておくことにした。しっかり寝ていて眠くないのもあったが、この二人だけの時間を少しでも長く感じていたかったから。
数時間して、目当ての駅まで来た。晴ちゃんの家まではまだ大分距離があるが、眠そうにしていたため近くのビジネスホテルで一夜を過ごすことにした。さすがに都心に近いせいか、夜中に近い時間だというのに、人がそれなりにいる。人が降りて進んでいくのを見ながら、人ごみにぶつからないように待つ。少しすると、ホームに人っ気が少なくなって進みやすくなった。晴ちゃんの近くに人が来ないように警戒しながら、切符をうけとって改札から出る。
こういう駅の近くには、格安のホテルが複数並んでいることが多い。別にわざわざ安いところを選ぶ理由もなかったが、晴ちゃんを早く寝かせてあげたかったため、とりあえず近場のホテルに駆け込んだ。未成年だからなにかうるさいこと言われないかな、と心配だったが向こうも慣れているのか問題なくチェックインできた。エレベーターに乗って、部屋へと向かう。明日はどうしようかな、シャワーは……明日でいいや。
あたし自身も疲れていたのかもしれない。晴ちゃんを連れて部屋に入った途端に、二人共々ダブルベッドに倒れて意識を失ってしまった。
目が覚めると、全く同時に起きたのか寝ぼけまなこの晴ちゃんと目が合った。
「おはよ、シャワー浴びよっか」
「うん……」
二人で寝ぼけながら、服を脱いでシャワー室へと向かう。ユニットバスなのが少し嫌だけど、今更そんなことを気にしてもしょうがない。服を脱いで、狭い浴槽で二人重なるようにしてシャワーを浴びる。
「なんか……恥ずかしいんだけど」
晴ちゃんとはずっとこうやって一緒にお風呂に入って、身体を洗ってあげたりしたけど、そんなことを祝てたのは久々だ。恥じらい、という感情が生まれたことが嬉しくもあり寂しくもある。
「まぁまぁ、疲れてるだろうしあたしが洗ってあげるから~♪」
「んぅ……」
体に触れると、確かな体温と反応が伝わってくる。恥ずかしいところを手で隠そうとするのがなんともいじらしくて意地悪したくなっちゃうけど、今はまだ抑えておくことにした。一通りボディーソープで身体を包んで、シャワーで一気に洗い流す。身体から滴り落ちる水と泡が、垢を巻き込んで流してくれる。
「次はオレがやるから」
「そう?じゃあお願い♪」
浴槽に座り込んで、目を閉じて待つ。晴ちゃんの指があたしの髪を掻き分けて、ごしごしと洗ってくれる。髪が長いせいで大変だろうに、しっかり洗ってくれる。こうしているときのあたしの背中は無防備だろうけど、後ろにいる恋人はきっと信頼に応えてくれるって思えるこの時間が心地いい。
そんな時間に浸っていると、シャワーが頭の上から降り注ぐ。しゃあー、という水の音と共に頭が軽くなってスッキリしていくのがわかる。頭を振って目を開けると、晴ちゃんは自分の頭にシャワーを当てていた。
シャワーを元にあった場所に戻して、一緒に浴槽から出る。ホテル特有の大きめのバスタオルが身体を包んでくれる。しっかり拭き残しがないようにして、着替える。朝食をとるには既に時間は過ぎている。今日のやるべきことは決まっているが、さてどうしようか。
「早く行こうぜ、こういうの後に残しとくと気持ち悪いしな」
「そうだねー」
身支度をして、ホテルをチェックアウトする。向かうべきは、とりあえず警察署だろう。
途中のハンバーガー屋さんで遅い朝食を取ってから、警察署で事情聴取を受けた。本当はあたしが付き添って上げたかったけど、守秘義務とかなんとかで同席させてもらえなかった。対応してくれたのは優しそうな婦警さんで、ちゃんと話を聞いてくれたらしい。どうやら騒動も知っていたらしく、ずっと心配していたとのことだった。正直そこまでいくと口だけじゃないのかな、って疑ってしまうのはあたしの悪い癖だ。
「それで、どうだったの?」
「うん、心当たりがある人がいるなら捜査しやすいから助かるって……でもやっぱり証拠がないと大変だって……」
「……そうだよね」
あたしが余計なことをしなければもっと捜査が早くなって、意外にあっさりと事件が解決したのかもしれない。自分の身勝手さに嫌になる。
「あのさ、志希」
「なーに?」
あたしの名前をわざわざ呼んだ。なんとなく嫌な予感がする。
「オレ、そいつの家に行きたいんだ。誤解ならいいんだけど、どうしてそんなことをしたのかって……聞かなくちゃ」
その一軒家はオレの家の近くにある。アニキの友達で、家が近いこともあってかよく遊んでもらっていたんだ。これならプロデューサーの名刺を持っていたことも説明がつく。オレの家に遊びにも来ていたし、名刺を盗んだりこっそりコピーするのもそんなに難しくないだろう。オレが狙われたのも……わからなくもない。ただ、もちろん他人の空似だって可能性がある。その微かな可能性を信じて、呼び鈴を押した。少しして、インターホンがつながる。
「どなたですか?」
「結城……晴です」
「晴ちゃん!?ちょっと待ってね!」
どたどたと音がして、玄関を開けて出てきたのは昔からのアニキの友達で、オレもよく遊んでもらった相手だ。アニキの一つ上だから、大学に入ったばかりだったっけ。髪は茶髪になってるしどことなく遊んでいる雰囲気がある。
「急にどうしたの?まぁいいや、上がって上がって!」
「……っす」
前の印象通り、どちらかというと気のいい兄ちゃんって感じで、とてもオレを襲うようには見えない。家に上がらせてもらおうとすると、靴の様子から一人しかいないことがわかる。
「……一人なんすか?」
「ああ、両親は仕事でね。お茶とお菓子をもってくから先に部屋に行っててよ」
少し古い木材でできた階段を昇って、部屋へと向かう。8畳の狭すぎず広すぎない部屋には、本棚と机とベッドがある。ただ、本当になんとなく机の上の写真立てに目線をやると、そこに映っていたものに驚いて思わず駆け寄ってしまう。
「オレだ……」
そこに入っていた写真は、アイドルをやっているときのオレだ。よく机の上を見てみると、プラスチックの敷台の下にオレが載っている週刊誌の記事や写真が所狭しと敷き詰められている。疑念が確信に変わって、身体に力が入らなくなる。腰が抜けて膝から下の感覚がなくなって、その場に崩れ落ちる。
「あー、見ちゃったか」
振り返ると、そいつは部屋の入口にお茶とお菓子を盆に乗っけてやってきていた。
「せっかくお茶に色々仕込んだのに……無駄骨になっちゃたな」
盆をその場に落として、派手に食器が割れる。お茶とお菓子が飛び散って辺りを汚した。
「なんで……こんなことするんだよ……」
その言葉に口端を歪める。汚い大人のような笑みを浮かべてこちらを見る。
「君と会ったのは、三年くらい前だったね。あの頃は小さい子供……弟みたいな子だと思ったんだよ。失礼かもしれないけど、見分けがつかなくてね。でも、そんな君がアイドルになったっていうじゃないか!驚いたね!サッカー仲間だった君が可愛らしい衣装を着てステージの上に立っていたんだから!その時の興奮といったら……もう言葉じゃ言い表せないほどだった。会って話をするために家にも行ったんだけど、忙しそうな君とは中々会えなかったんだ。そんなときにたまたまあいつの部屋で名刺を見つけてね。もう僕にはそれが天国へのチケットに見えたよ!あとはそういうことに詳しい友達に頼んで君を襲ったってわけさ!」
あまりにも衝撃的な言葉が流れてきて、理解が追いつかない。
「そんな……理由で……オレを……」
「君はもっと自分が魅力的だということと、無防備であることを自覚した方がいいよ。あの時の続き……ここでさせてもらおうか!」
そいつがオレに近づこうとした瞬間、声も出さずにその場に前向きに倒れた。立っていた場所に代わりに立っている人物がいる。
「正義のヒーロー志希ちゃん、ここに参上!……こういうのはキャラじゃないけどね」
「……ありがとな」
こっそり家に入ってくれていた志希はぎりぎりのところで助けてくれた。後少し早かったら証拠が掴めなかったし、遅かったとしたらまた酷い目に遭わされていただろう。もっとも、志希がいるってわかっていたから、後者の状況になることは初めから頭になかったのだけれども。
「ナイスタイミングだったね~♪」
志希がこちらに近づいて、オレのポケットからボイスレコーダーを取り出す。
「これがあれば警察もちゃんと動いてくれるでしょ~♪ささ、通報通報」
確かにボイスレコーダーがあれば、さっきの発言で捕まえることができるだろう。しかし、よくよく考えるとなぜオレのポケットにそんなものが入っているのだろう。録音するなら別に志希が持っててもよくないか?確かにオレが持っていた方がちゃんと録音できるだろうけど、壊されでもしたらどうするつもりだったんだろうか。
「大丈夫、予備のボイスレコーダーを晴ちゃんに仕込んでるから♪」
「……なあ、それ聞いてねーんだけど」
気まずい沈黙が流れる。そのうち、どちらからともなく笑ってしまって、全てが解決したことをお互いに喜び合った。
あれからアニキの友達は逮捕されて、押収されたパソコンからもう一人の共犯者も逮捕された。何日も事情聴取に付き合った後、オレは家族の元へと帰った。両親もアニキ達も一日中泣いて、片っ端から出前をとったり、オレの好きなものばっかりの料理で祝ってくれた。ひたすらに喜んで騒いで、戻ってきたものをひたすらに喜んだ。いや、まだ取り戻してないものがある。それを埋めるため、今オレは志希と共に事務所の前にいる。ある資料を持って。
「晴ちゃんとアタシのアイドル復帰から二人の新ユニット結成と新楽曲!これは沸き立つよね!」
今例の二人逮捕されて、またオレの名前が悪い方向に広まってしまっている。それを全部吹き飛ばすために、二人であれこれ作戦を練った結果これしかない!となった。
「でも上手くいくかな……オレら結構サボってたし」
「ん~?事前に連絡したけど別にいいって!アタシこう見えて優秀だからね~♪」
ちゃっかりしている。でもそのおかげで、緊張とか色々そういうのが抜け落ちてしまった。
「……晴ちゃん、本当にいいの?」
「何がだよ」
「アイドル活動してたら、またああいうことになるかもしれないよ?」
「その時は、志希が守ってくれるんだろ」
返事の代わりに、ウィンクで返される。
「せっかくならさー、付き合ってることも公表しちゃおうよ♪そっちのがやりやすいし」
「……好きにしろよ」
「あれ?否定しないんだ」
当たり前だ。というか二人で失踪して復帰してって時点で、なにかあると勘繰られるのは普通だろう。
だけど、本当の理由はそうじゃない。偶然降り注いだ不幸で鳥籠の中に一緒に縛られるよりか、お互いがお互いを愛し合って思いあって縛りあうように生きていくほうが何倍も何十倍も何百倍もいいから。
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日下部愛菜さんのツイート: オンラインおしゃべり会 朝から夜までずっと笑ってたし ほんっとうに楽しい時間でした😻 1日ありがとうございました🌼 浴衣似合ってるってたくさん言ってもらえて嬉しすぎた〜〜! 髪型はのえちゃんがとっても可愛くしてくれました🥺❤︎ https://t.co/Wf6Wq8EJKe
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