#昼食にビールが出てよかったが、いい気持になったその後に地震と台風の体��は「なんだかな~」という感じであった
Explore tagged Tumblr posts
papatomom · 3 months ago
Text
Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media
2024.10.13(日)
連合区「まちづくり協議会」主催の防災研修会に参加した(役員的に半強制的な研修です)。
福井市防災センターで職員からの説明や映像研修に震度7の地震と風速20mの台風等を体験してきた。時間的には45分程度で終わるので、残りはなぜか恐竜博物館や県立歴史博物館の見学ツアーでした。
37 notes · View notes
kurock-969 · 4 years ago
Text
先週、実家の猫が死んだ。名前はキキ。
元々ここしばらく具合が悪かったのだが、母から早朝に状態が急変したとの連絡があった。
日曜日の事で私は寝ていてそれに気付けず、確認したのは昼過ぎのことだった。
私が住んでいるのは埼玉、実家は兵庫。
飛び起きて支度をし、祈りながら新幹線へ乗った。
途中、お別れを言うために帰ることが辛くて仕方なかった。
約5時間後の18時、何とか間に合ったが既に息も絶え絶えで、わかってはいたがもう長くない事を悟る。
実家には母と姉と姪2人がいて、みんなでキキを囲っていた。
私もその輪に加わる。
今朝からもう歩けなくなっているそうで、目は焦点があっていない。
水を飲もうとしているのか立ち上がろうとするも、すぐにへたりこんでしまう。
やせ細って骨ばってしまった身体を床に打ち付ける音がコツンと響く。
見かねて水を注射器で口に注いだ。ペロペロと舐める様子が愛らしかった。
その後は少しの間おだやかな時間が流れた。
その後数時間経ってキキに痙攣が起こる。
呼吸がうまくできないのか、聞いたことのない鳴き声で苦しんでいた。
母が病院からもらってきた座薬を入れようとするが姉が止める。
私も同じ気持ちだった。もういたずらに苦しい時間を延ばしてやりたくない。
みんなで声をかけながら撫でていると、次第に呼吸が落ち着いた。痙攣も収まったようだ。
移動で疲れていたのもあり、私はキキの顔を撫でながら少し眠った。
それから少し経って、また痙攣がはじまった。
さっきと同じ鳴き声だ。みんなで駆け寄って様子をみる。
時折苦しそうに力なく暴れ、息をしようとするも肺に空気が入っていないようだった。
今度はもう収まらない。涙が止まらなかった。
私は、「もう大丈夫、もう大丈夫」と念じながら顔や背中をなで続けた。
次第に目の光が消えていき、最期は一人で熱心に看病を続けていた母の腕の中で呼吸が止まった。
日付が変わる直前の事だった。
本当に長い間苦しかっただろう。よく頑張ったね。
母の次に私が抱いた。ぐったりとしてしまってグラグラ動く首を支えて顔をうずめる。
そこにはいつも嗅いでいた日光浴の後のお日様の香りはなく、獣のにおいがした。もう死体になってしまっていた。
それでもそのにおいも愛したかった私はその香りをいっぱいに吸い込んだ。
涙と鼻水がたくさんついてしまっただろうと思うけど許してね。
その次は姉、その次は姪と順番に抱いていく様子を眺める。
死に顔もうちの子らしく、とっても綺麗だった。
一巡してまた私が抱き、どんどん硬直していく身体を感じながら、ずっと毛並みを整えていた。
グリーンのビー玉のようだったキラキラした目もだんだんとくすんで鈍い水色になっていく。
でもその目の色も綺麗な顔に似合っていたように思う。
抱っこが嫌いな猫で、1分と抱っこさせてくれる事はなかったけど、初めてずっと抱いたままでいられた。
同様に触らせてくれなかった肉球もたくさん触ってやった。1時間ほどそのまま過ごした。
先に母にシャワーを浴びさせ、その後私も続く。
戻った時には完全に身体が固まってしまっていた。
身体をゆっくりと開いて保冷剤を抱かせ、最後の夜は母と一緒に眠ってもらい、私も布団に入った。
朝、帰省している時恒例の姪の騒がしい声で起きる。
キキの身体は保冷剤によって凍ったように硬く、冷たくなっている。
会社に休みの連絡を入れて、別れまでの少しの時間キキを撫でて過ごした。
ふわふわの毛並みを少しでも手に覚えさせておきたかった。
しばらくして手向けの花を買いに行っていた母が戻ってきた。
それを棺代わりの箱に入れる。美人に見合うよう、綺麗に整えて入れた。
死臭をスイートピーの香りがやわらげてくれる。
花に囲まれることで、本当に死体ぜんとしてしまってまた涙が溢れた。
火葬の時間が迫る。
母の「行こっか。」という淋しげな声に付いて行き、キキを納めた箱を抱いて車に乗る。
前日の大雨の尾を引く曇り空が、昼には快晴になっていた。
風は強かったが爽やかな天気だった。
火葬場はすぐ近くで、10分ほどで到着した。まだ桜が咲いていた。
箱の蓋を開き、ずっと家猫だったキキに初めての花見をさせてあげる。
一度帰宅していた姉家族が来るまでの数分、椅子に腰掛けて顔を見つめる。
本当にいい天気で、陽の光が反射して顔の周りの白い毛がキラキラとしていた。
キキと桜と青空を収めて写真を撮った。
姉家族も到着し、みんなで桜の元で写真を撮る。
そのままみんなで順番に抱いて別れのあいさつをした。辛くて辛くて身体が震えた。
焼き場につれていく。ペットは後部座席を火葬炉に改造したワゴン車で焼くようだ。
ただ、箱のままでは焼けないらしい。母はこういうところがある。ちゃんと事前に聞いとけ。
箱から出して、火葬炉に続く台に乗せる前にもう一度強く抱きしめる。キキの顔に私の顔をうずめる。
悲しみが何よりも先にきて、最後に何を伝えればいいかわからなかった。
ただ、ありがとうとは伝えられた気がする。
台に乗せて、箱の中の花を取り出し、もう一度囲んであげる。
母や姪が書いた手紙を乗せて、さらにその周りを好きだったご飯やおやつで囲む。
キキはかなり偏食で好きなものしか食べなかった。お嬢様である。
腕に火葬場の方からいただいた数珠を巻いて、最後に母が木から取った桜の花を一輪、首元に添えた。
ピンク色がグレーと白の毛並みによく映えた。
これで最後だ。
最後の別れを順番に告げる。お別れなんかしたくないのに。
ずっと同じ調子で泣いていた母も、最後は堰を切ったように嗚咽をもら��ながらキキに顔をうずめ、泣いていた。
涙と鼻水でキキの顔がぐしゃぐしゃだ。
綺麗に毛並みを整えた後、姉が若い頃の毛並みを再現するように顔周りの毛をたてる。
私は最後に頭をひと撫でした。
いつもそこを撫でるとゴロゴロと甘えてくれた場所だった。
火葬炉に係の方がゆっくりと台を進めていく。
本当に綺麗で眠ったような顔のまま入っていく。
途中どうにも耐えられなくなって下を向いてしまった。
その間に扉が閉まり、お別れとなった。
ご好意で桜の木の下でお別れをさせてもらったので、本来火を付けるすぐ近くの駐車場へ車が向かう。
火葬が始まったとの知らせを係の方に聞いた後、
15分ほどその場で車を見つめ、キキを想った。
1時間後、火葬が終わった。
風が強い日だったので、骨が飛んでしまわないようガレージの中でお骨拾いをするとのことだった。
変わり果てた姿になってしまったショックを受ける覚悟をしていたが、存外平気だった。
あまりにも違った姿だったからかもしれないし、その姿で家に帰って来てくれる少しの嬉しさがあったからかもしれない。
係の方に部位の説明をしていただいた後、骨壷とは別の、小さなカプセルに収めていただく。
私が持って帰る物だ。
途中コロンと転がった頭蓋骨が、本当にモノになってしまったことを実感させ心が痛む。
係の方がカプセルに収め終えた後、参列したみんなで骨壷へ骨を収めていく。
私は、手触りが好きだった足、ゴロゴロと心地よい鳴き声を聞かせてくれた喉仏、よく撫でた下顎、触ると怒られる尻尾の骨を選んで骨壷に入れた。
最後に頭の骨で蓋をす���前に、ふと目に止まった部位があった。
係の方にどこの部位か伺うと、尻尾の付け根の物だった。
ここも撫でると気持ちよさそうに喉を鳴らしていた場所だった。気付けてよかった。
ここも壺に収める。
別れの直前に撫でた頭の骨を最後に被せて、骨揚げは終了した。
係の方にお礼を告げて家へと帰る。
行きはキキの亡骸を乗せていた私の膝の上に、今度は骨壷があった。
車の揺れに合わせて蓋がカタカタと音をたてていた。
その日の晩に埼玉に帰る予定だったので、あまり時間はなかったが、キキを偲んでみんなで夕飯を食べることになった。
母が台所で支度している途中、私が買ったビールを渡し、一緒に飲んだ。
散々泣きじゃくったせいで乾いていた喉に沁みる。
母もたいそう嬉しそうに、美味しそうに飲んでいた。
あまりゆっくりできないまま夕飯を済ませ、帰路についた。
新大阪へ向かう電車と新幹線でまた1度ずつ、涙が出た。
持ち帰った遺骨は玄関に置いて、出かける時と帰宅した時に声をかけている。
実家にいた猫が自分の家にいるのは、少し嬉しかったりもする。
歳が離れている事で兄と姉が早くに家を出てしまっており、母も���事で家を空ける事が多かった高校・専門学生の頃、家に一人の私にとってキキは同じ時間を過ごした唯一の家族であり兄妹だった。
私が一人暮らしを始めてからは、いつか来る死に目に逢えるかが不安でしょうがなかったが、しっかり看取る事ができて本当に良かった。
独り身の母を支えていてくれてありがとうね。
こうやって感謝を述べたところで、結局は人間側のエゴかもしれないけど、
残された家族として、これからも感謝の念と思い出を忘れずに生きていきたいと思う。
Tumblr media
4 notes · View notes
38nakao · 5 years ago
Text
目が休まらない
2020.06.25(木)雨のち曇り
 いやな夢を見た。
 わたしは電車に揺れている。緑の長椅子はまばらに席が空いていたから、多分昼過ぎくらいの設定だったんだと思う。何故か親子連れに挟まって座っている。しばらくすると、右手にいたお父さんらしきひとがうろたえ出した。見ると子どもを抱きしめて顔を覗き込みながら揺さぶっているのだが、子どもは目を閉じて全身の力が抜けているようだった。左手、��の端っこで手すりに体を預けて寝ているお母さんが徐に起きて、目に映った光景をようやく頭で処理できた瞬間、大声で泣き叫んでいた。
 この前、親孝行のこととか孤独死のこととか考えちゃったからかしら。夜中地震速報も鳴ってたし、防災アプリが大雨注意で警報鳴ったし、寝覚めが悪い。起きてケータイの時計を見ると6時40分とかだった。友だちからメッセージ来ていて明るい内容だったから、それだけで気持ちが落ち着いた。本当に助かった。
 突然に死んでしまったあの子は何歳くらいかはよく分からなかったんだけど、赤ん坊にしてもそれより大きい子どもだとしても、夢診断からするとどちらも良い知らせの予兆ではあるみたい。[参考:https://spicomi.net/media/articles/799]
 あの子が赤ちゃんであれば生まれ変わりや成長の象徴(生まれ変わりの象徴って変な日本語)で、子どもであればあの子はわたし自身であり未熟さの象徴らしい。子ども(=未熟さ)が死ぬというとこは、わたしが過去を反省し、生まれ変わることを暗示しているとのこと。まあ言われてみれば。ちょっと悟るの遅いよね。
 今日は有給をとってお芝居を観に行った。割と近所に住んでる子の知り合いが出てる演劇。演劇観るのもその子と会うのも久しぶりだ。会場のお客さんも舞台に立つ役者さんも若い子が多くて浮いていないか心配になった。若い女子たち、みんな洋服の袖が肩口あたりまでしかなくて、なんかフリフリしたのついてるし、なんかフリフリしたのはちょっと透ける素材で、二の腕をすらっと見せてた。見る立場だというのに、スマホのインナーカメラで仕切りに前髪をチェックしてる子もいた。わたしは絶賛半ズボン、化粧もしてない。
あれ…?この学校って…、去年まで女子高で、今年から男女共学になったんだよね…?なのにさ、どうして一人も女子居ないの…?いや、僕は別に、いいんだけどね、女子なんか居なくてもさ…。そうだよ、女子がたくさん居ると思ったからこの学校に入学した訳じゃないんだからさ。でもさ…、なんで居ないの?…それから、モテない男子たちによる、女子を探す冒険がはじまった。
未来演劇部公演「ドレミの歌〜男子校版〜」HPより
 先生が誰かがいたずらで割った校舎���窓ガラスを片付けているシーンから始まった。その後、ドノウエという男の子、その後にソリマチ、レンゲくんと続々と学生が現れるのだけど、最初は上記のあらすじのように淡々と話していた理屈っぽいドノウエくんも、隠していた欲望という疑問が溢れ出して三人声を張り上げて「女性がいないこと」を嘆いていた。
「女子なんかか弱いし力がないから僕が手伝ってあげなきゃいけないんだー!!」
「邪魔だし、女子なんていたら進学出来なくなっちゃうー!!」
 みたいな深夜ラジオの芸人のイケてないエピソードを地でいく感じ。ドノウエくんとレンゲくんは勉学が出来るがこじらせていて、ソリマチくんは良い具合に頭が足りてないから理解できず混乱する。絶叫に次ぐ絶叫、これが開始30分以内くらいかとにかく序盤なもんで、心配になった。役者陣の喉が。
 ドノウエくんらはどうやら高校2年で、劇中は2学期の途中くらいの設定だった。学校の前には大きな壁が立ちはだかって外の様子は見えず、彼らは校舎の1階よりも上の階に上がったことがない。校則で禁止されている。でも、彼らが1年時に共学になったのだから、上の2学年は女子だけのはず。でも彼らは学校で女子を見たことがない。なので、ドノウエくんらは女子は上の階にいるのではないかと推測した。先生にも問い詰めるが、先生もよく分かってないようだった。でも、先生は女子を見かけたことがあるという。
 ここら辺でミズノくんという風紀委員の男の子が出てくる。今から1時間は校舎から出たらいけないと言う。ドノウエくんらは「女子をそのうちに帰らせて僕たち男子とエンカウント出来ないようにしてるんだろ」と問い詰める。シラをきるミズノくんは風紀委員なので、校則を侵す者を許さない。冒頭の割れたガラスの片付けで残っていただけの先生すらも閉じ込めようとする。風紀委員は常にテストで10番以内に入らなければならず、そのうえ校長先生のお眼鏡に適わないといけない。その選考基準は校長の好みだそう。今出てる男の子らはイケてない役なのにみんな鼻が高くて眉を揃えた垢抜けた見た目なので「校長先生はジャニーさん的な立ち位置なのかな」と勘ぐってしまった。その勘はたぶん外れた。その後全然そんな描写は欠片も出て来なかった。わたしの頭がちょっと穢れてるだけだ。
 でもかつてはミズノくんもエロ本を集めてる健全な男の子(中学が同じだったレンゲくん暴露)で、三人から説得され、冒頭の先生も何故か女子探しに巻き込まれる。ここらへんで青いツナギを着た納品業者が、これまた���性なのだけど、その人が荷物を届けに来る。段ボールに梱包されてるので中身は分からないが音楽の先生宛のもの。でも職員室も音楽室もドノウエくんが知ってる1階にはなく、女子が生息してるであろう2階以上。納品業者のためと称して未知の上の階を探索していく。
 2階にフワくんという男の子が真っ直ぐ遠くを見つめながら歌っている。フワくんは転校生らしく、他のメンバーが白いシャツにネクタイ姿なのに彼は学ランだった。隣にはシロタくんという唯一白っぽい青という明るい髪色で、FILAの赤いジャージ姿にゴム手袋を両手に嵌めて、水詰まりを直すスッポンを持っていた。で、1階から2階に上がってきたドノウエくんらと出くわすのだ。今思うと、トイレ掃除係は上の階に行ってもいいのかしら。フワくんは転校生で校則のこと知らないから上の階にいたのかしら。ちょっとその辺は分からなかった。
 フワくんは歌が好きで、モテたいなら合唱部に入れという。「ミスチルを歌え」と真面目にアドバイスするので笑ってしまった。生徒一人一人の名前を読んで、大声で返事するドノウエくんらの右頬を順番に殴り、「でもおれの拳の方が痛い!」と叫んだフワくんに期待した。みんな鬼の形相でドタンバタン暴れ回るのでめちゃめちゃ笑っちゃった。ここでタイトルの『ドレミの唄』がようやく出てきたので、歌が好きなフワくん、しかも転校生だから、ここは彼が中心になって学園、ていうか女性に興味ないふりして女体に興味しかないモテないくんたちを指揮して成長させていくアツい展開になる。そう思ってた。
 2階には目当ての音楽の先生はいなかったので、3階に上がる。彼らの学園生活は残り1年と少しなので、1人1曲を完璧にマスターする時間はないと踏んだフワくんは、1人1音、幼稚園か小学校のハンドベル演奏みたいに、全員で音階をつくり演奏しようと提案した。ここで問題が発生、ドレミファソラシは7音なのに、ドノウエレンゲミズノフワソリマチシロタの6人しかいないのだ。先生を全力で説得しにかかるが応じない(部活動の顧問は言わばサービス残業に近いからだ)。何度も説得するのに先生の冷めっぷりは変わらず何故か納品業者の男が「やってあげましょうよ!」と立ち上がるパターンになった。しかも納品業者の男の名はランバシなので、確実にイケてないズの仲間になる奴なのだ。ランバシは納品業者からカントクになり段ボールの中から楽譜を取り出して配る。確か『天国と地獄』、運動会のかけっこでお馴染みのやつ。結局ランバシはカントクで歌わないので、先生を上手く口車にのせて合唱部に入らせた。
  イケてないズが揉めてい���ときに、隅の方で納品業者のランバシに「この学校には校歌がない」と先生が話していた。卒業式のときに締まらない、ドレミの歌の替え歌でいいから校歌をつくればいいのに。例えば、「ドはドリームのド」「レはレインボーのレ」などなど、夢と希望いっぱいのちょっとダサい替え歌(本人は至って真面目そうだが)。でも「シはなし!縁起悪いから!」と先生が言うと、イケてないズの中で全く女子に興味がなく合唱に魅かれて付いて来たようなシロタくんが熱く語り出した。彼だけは、未だ絶叫シーンがない。「シ=死」に付いてちゃんと向き合うことが生を感じること。「僕からすると『生まれ変わったら何になりたい』というのは今の人生から逃げている」うんぬんかんぬん。派手な髪もトイレ掃除で漂白剤に触れ過ぎだからというのも判明、見た目に反して敬語キャラであるシロタくん。わたしは結構気に入っている。
 下の階から上の階に行く場面に変わるときに、舞台上には女子高生がふたり出てくる。彼女らの腰には数字が大きく載った紙がついている。たぶん紙の番号が「2」なら今のシーンは2階、「3」は3階にいるということなのだと思う。彼女らは一言も喋らないで、何か戯れて袖に消えていく。3階ではシャボン玉を飛ばし、4階では去り際に髪留めを落としていく。そのあとでドノウエくんたちがやって来る。
 3階にも4階にも音楽の先生も女子たちもいない。上の階に登りながら「ド!」「ラ!」「シー!」とか担当の音階を張り上げながら『天国と地獄』を歌っている。わたしは益々役者陣の喉の調子が心配になる。ここまでしても女子の姿はない。怒るドノウエと仲間たち。が、ソリマチくんがシャボンの匂いに気づくと、「僕たちの合唱を聞いて気になってるのではないか」と彼らは歓喜。その上の階では女子が使いがちな髪留め、おそらく100均でよく見かける黒い針金みたいなやつを発見し、女子の本体に着実に近づいていることを感じる。
 遂に、校舎の一番上の階まで来てしまった。でも彼らには女子を見つけられない。ここまで探したのに会うどころか視界にも映らないので、ドノウエくんらは愕然とするしかなかった。実はここで、うなだれて床しか見えなくなってるドノウエくんたちの後ろに女子2人が立っているのである。たった一人、シロタくんだけ気づいて、腕をあげちらちら指さして知らせようとするのだが、他の子たちも先生もランバシも気づかない。
「まだ屋上があるじゃないか」
 ここで先生が言う。あれだけ合唱部に入るのに全く乗り気でなく、たまたまオフの日に忘れ物を取りに来たら騒動に巻き込まれただけの冷めた先生が、彼らと行動を共にしたことで意識が変わったのか、まさかそのセリフを言うとは思わなかった。立ち入り禁止のロープを外し、屋上へ。
 ここで怒涛の合唱が始まる。ドからシまで横一列に並んで座る。観客と演者がまるで戦前のように対峙する。自分の音階を椅子から立ち上がって叫んで、また座る。しかもこの屋上での合唱は主旋律だけでなく、ハモリの部分とおそらく副旋律とかいうのも「ド!」とか「ラララララ」で表現している。大の男7人が黒ひげ危機一髪のように飛び上がりながら歌う、というか叫ぶ様子はもうすごい。なんか異様。上下の動きしかしていないのに、声はこちらに向ってすごい量のが来る。ギャートルズのロゴみたいな感じ。ここのシーンで笑いまくった。
 歌いきり後ろを振り向いて、シロタくん以外の男子も、二人の女子に気づく。彼らは合唱が届いたのだと確信し、成長した己に気づき、同志を讃え合う。『蛍の光』がかかり、男子も下校していい時間になった。彼らは帰って行く。ここでゆっくり暗転し、合唱でも歌わず『蛍の光』でもなく、何か賛美歌のような歌が流れた。「アーメン」と最後に言うのが聞こえた。
 ここで物語が終わるのかと思いきや、舞台が明るくなって先生と椅子に座っているランバシが立っている。ランバシは先ほどまでずっと着てた青い作業着ではなく、黒いジャケットで首からペンダントみたいのをぶら下げてピカピカの靴を履いてたから、最初誰だか分からなかった。「あ、このひともしかして校長だったのか!?」と思ったけど、どうなんだろう。何か違うっぽい。
 奥から例の女子が2人出てくるが、先生は「ああごめん、もう合唱部は解散しちゃったんだ」と言ってたか、そう言うと女子生徒は帰っていった。ランバシも退出すると、急に先生の顔色が変わった。たまにはっきりした物言いはするけど喜怒哀楽どれにしても表情が変わらない、何を考えているか分からない人がいると思う。そういうひとは常識はあるので敬語を誰にでも使えるのだが、そんな感じの先生。その先生が苛立ちなのか不満なのか、強張った顔になって怖かった。次に何かを投げるジェスチャーをして、窓ガラスが割れる音がする。
「また閉じ込められちゃうよ」で、この物語は終わる。
 セリフを一言一句覚えてるわけじゃないし、話を前後して覚えてしまってるかもしれないが、完全にコメディだと思ってたからこんな気味の悪い終わり方をするとは思わなかった。冒頭で割れた窓ガラスを掃除してる時点で、後で何か関わってくるじゃないかと思ったけど、まさか先生が自作自演してたなんて。なんで?  なんでランバシは着替えたのか? 本当にただの納品業者だったのか? 何で女子は一言も言葉発さなかったのか、何で背後にいて見えなかったとはいえシロタくんしか最初女子の気配に気付けなかったのか。解散って卒業しちゃったってこと? 最後の暗転時に聞こえた「アーメン」は? 「閉じ込められる」の意味の本質は?
 ひとつ気になるとどんどん引っかかるところが出てくる。正直合唱部なのに、わたしが学生時代に歌った合唱曲は1曲も出てこない。クラシック(オ��ラ?)を歌わせたのか。あまり意味はないのかもしれないけど、この学校、元々はキリスト教系の女学校か何かだったんじゃないか。わたしの穿った見方をすると、「アーメン」とか「閉じ込められた」とかそういう言葉から登場人物は誰か死んでいる設定なのだと思う。ドノウエたちは新入生、元は外部の人間だから生人だろう。2人の女子生徒は一言も喋らなかったから、単純に考えるとこの2人は死んで地縛霊かなにかなんじゃないか。シのシロタくん、しかもこの子は急に死生観を語り出したりしたので、この子は霊感を持っている。だから、最初シロタくんしか女子生徒の存在に気付けなかった、と辻褄が合う。けど、最後の合唱後にみんな女子生徒が見えるようになったこと、先生はこの探検の前から女子生徒を見たことがあったこと、「閉じ込められた」と言っているのは先生や男子生徒だったこと、これはまだ説明できないし「地縛霊が女子生徒」という推測から矛盾している。先生も見える人なのか? エクソシスト的な? うーん、わかんない。
 こんだけ長く書いたのは、この説明でなんとか劇の大枠を考察してわたしと謎を解いてくれるひとを探しているからだ。物語が終わって、舞台に誘ってくれた子ともあーじゃないかこーじゃないかと探り合って見たけど、さっぱり分からなかった。謎は深まるばかりだ。すべてに意味を求めすぎて、こんがらがってるのかもしれない。
 演劇が終わると、電車で仙川に行った。ふたりともこの周辺に住んでいるので、先日見つけたエモいリサイクルショップを見に行こうと話したのだ。仙川には演劇の学校があるってのもこの散歩で知った。意外となんでもあるぞ、この街。
 残念ながらリサイクルショップはまだ空いてなかった。しかも今日までが閉店期間。明日だったら入れた。きーーー、タイミング悪い。「また今度リベンジしましょうねえ」と言って、とりあえず何か座って食べられそうなところを探すけど16時過ぎだからお酒を飲もうとするとまだ開いてないお店が多かった。行くあてもないので、おすすめのインドカレー屋さんに入った。16時代にだけどランチがやってて、そのランチをわたしたちは晩ご飯にした。ややこしい。こんな時間に晩ご飯なんて、おじいちゃん家に遊びに行ったみたい。
 我慢できなくてビールを飲んだ。背徳感。しかもナン1枚おかわりして半分こして食べた。背徳感。わたしはランチセットのビール(+300円)にもう1本黒ビールを頼んじゃったので、ありとあらゆる大きさの小麦でお腹がパンパンになった。美味しかった。
 それでもまだ18時前で胃袋の中身を消化すべくテキトーに二人で散歩した。向こうが聞き上手なので「最近、わたし世界史ベンキョーしてんすよ!」って話をしっかり聞いてくれてお酒も入ってたし気分が良くなってしまった。それでも気になることが満載で、世界史の最初の最初は歴史学のほかに考古学や地質学要素もあって、すごく面白かったんだ��の。まだ最初も最初、ドリルの見開き2ページめ。ひとつ勉強すると、ちゃんと理解するために他のこともやりたくなるから、勉学というのは際限��ない(元々知識量はないのもある)。
 帰りの電車でゲームしたいと話した。わたしはゲーム機を一切持ってないけど、向こうは持ってるらしい。ゲーム強いひととゲームしたいから、気長に超内輪大会を待つことにする。
1 note · View note
mepapa388 · 5 years ago
Text
2019年夏の終わり、扇沢から爺が岳、鹿島槍ヶ岳、八峰キレットを越えて五竜岳へ至るルートを歩いてきました。
後立山連峰の山はどこも大好き。
もう2020年になってしまいましたが、何かの参考までに。
八峰キレット縦走ルートの紹介
八峰キレット(はちみねキレット)は、北アルプス後立山連峰の鹿島槍ヶ岳と五竜岳の間にある場所。富山県、長野県の県境に位置しています。
キレットというのは山の尾根のⅤ字状に切れ込んだ場所のことで、一般的に「難所」と言われることが多いですね。
大キレット(穂高岳(北穂高岳)-槍ヶ岳(南岳))、不帰キレット(唐松岳ー白馬岳(天狗の頭))と共に日本三大キレットの一つに数えられる八峰キレットは他のキレットと同様に鎖場やハシゴが連発し、通行には細心の注意を必要とするのですが、だからこその絶景と歩きごたえがあるんですよね。
五竜岳よりキレットを望む
  五竜岳は長男が小学5年生の時に一緒に上った山。思い入れの強い大好きな山の一つです。
[clink url=”https://mepapa388.com/%e3%80%8c%e8%a6%8b%e3%81%9f%e3%81%8b%e3%81%a3%e3%81%9f%ef%bc%81%e3%80%8d%e7%b5%b6%e6%99%af%e3%81%8c%e5%be%85%e3%81%a3%e3%81%a6%e3%81%84%e3%81%9f%e2%80%95%e5%b0%8f5%e3%81%a8%e7%99%be%e5%90%8d%e5%b1%b1/”%5D
鹿島槍ヶ岳~五竜岳 ルート詳細
鹿島槍ヶ岳と五竜岳の間にある八峰キレット。もちろんどちらから歩いても八峰キレットなわけですが(笑)、今回は鹿島槍ヶ岳方面からアクセス。
総距離は約24km、コースタイムは19時間37分。1泊2日でも歩けますが、ガイド本などでは2泊3日が推奨されています。今回はテントを背負って1泊2日です。
今回結果的にとったコースの標準コースタイムは以下の通り。
扇沢~冷池山荘テン場  1日目 5時間57分 / 7.7km
04:30柏原新道入口 -(1時間20分)-5:50ケルン -(2時間30分)-8:20種池山荘 -(57分)-9:17中峰 -(1時間 -10:17冷乗越 -(10分 -10:27冷池山荘(1泊)
鹿島槍~五竜岳~下山口  2日目 13時間40分 / 14.6km
04:10冷池山荘 -(1時間20分)-5:30布引山 -(50分)-6:20南峰 -(40分)-7:00北峰 -(2時間)-9:00キレット小屋 -(1時間)-10:00口ノ沢のコル -(30分)-10:30北尾根ノ頭 -(2時間30分)-13:00 2798m地点 -(3分)-13:03五竜岳 -(2分)-13:05 2798m地点 -(40分)-13:45五竜山荘 -(1時間30分)-15:15大遠見山 -(1時間20分)-16:35小遠見山 -(1時間)-17:35地蔵ノ頭 -(15分)-17:50アルプス平駅
扇沢から出発し、初日の宿泊を鹿島槍ヶ岳手前の冷池山荘テン場にしましたが、小屋泊であればキレット小屋まで足を延ばすのが一般的?
実は当初はこの先の唐松岳、不帰キレットを経て猿倉までつなげて1泊2日で歩こうと思っていたのですが、初日であえなく断念しました(笑)。理由は本文で。
初秋の後立山連峰(鹿島槍ヶ岳~五竜岳)を歩く(初日)
2019年夏の一つの目標にしていた鹿島槍から八峰キレット、不帰キレットを通して歩く計画。
8月31日から9月1日、夏の終わりに歩いてきました(扇沢から五竜岳までですが)。
扇沢・柏原新道登山口
登山口となる扇沢駅
扇沢駅(標高1433m)は、長野県大町市にある、関西電力が運営している関電トンネル電気バスのバス停留所である。 かつては関電トンネルトロリーバスの鉄道駅であったが、2018年11月に鉄道事業廃止、翌2019年4月より電気バスに転換され、当駅は事実上の「自動車駅」となった。 ( ウィキペディア)
到着したのは午前4時頃。夏とは言えまだ真っ暗闇。立山黒部アルペンルートの長野県側の出発地にもなっていますが、この時間ではまだまだヒッソリと静まり返り、川の音だけがひときわ大きく聞こえていました。
扇沢駅から少し戻った「柏原新道入口」まで移動し、道路脇の駐車スペースに車を停めます。本当は仮眠をしたかったのですが、予定では五竜山荘まで歩き切ってしまおうと考えていたので、コンビニで購入したパンを食べてすぐに出発です。
標高差1,000mの柏原新道
柏原新道登山口 4時30分
「新道」名の付く登山道はキツイと言われるようですが、柏原新道は整備が行き届いていて歩きやすい。蒸っとした空気の中を階段状になった登山道をヘッドライトの明かりだけを頼りに。
左手には暗闇の中に光る扇沢駅がハッキリと。ヘッドライトが動いて登山準備が進んでいることが見て取れます。
暑い・・・
午前5時40分 朝焼けに照らされた針ノ木岳
柏原新道は危険個所はどこにもないものの、最初の目的地になる尾根上にある種池山荘までは標高差で約1,000m。標高が上がってくるとヒンヤリした空気が体を包んで気持ちい。でも結構シンドイ(笑)それでもこれはまだまだウォーミングアップ。
種池山荘から爺ケ岳
午前6時30分 視界が開け、視線の先に赤い屋根が飛び込んできました。最初の目的地となる種池山荘に到着。
ユックリ登ってきたと思っていたら、コースタイム3時間50分を2時間で歩けていました。ただ眠い・・・(笑)
何度か来ているものの、一歩も足を踏み入れたことのない種池山荘。そういう小屋って何故かあります。入りたくないわけではないのですが、到着する時間がいつも早すぎて、どうしても通過ポイントになってしまう場所。
今回は休憩しましょう。
ザックは山と道のMINI。テント装備を詰めても9kgぐらい。
[itemlink post_id=”73119″]
針の木岳方面の稜線を眺めながら山荘前のベンチで食べるオニギリが最高。実はこの日の天気予報はあまり良くなかったのですが、外れてくれました!
30分程ノンビリして出発。
#gallery-0-9 { margin: auto; } #gallery-0-9 .gallery-item { float: left; margin-top: 10px; text-align: center; width: 50%; } #gallery-0-9 img { border: 2px solid #cfcfcf; } #gallery-0-9 .gallery-caption { margin-left: 0; } /* see gallery_shortcode() in wp-includes/media.php */
種池山荘の周りはチングルマの群生地。
これから向かう爺ケ岳
  爺ケ岳へは緩やかな登り。振り返ると種池山荘と雲に��れた剱岳。
午前7時47分 爺ケ岳到着
写真では穏やかそうに見えますが、かなりの強風です。ファイントラックのフロウラップを羽織ってちょうどいいぐらい。
[itemlink post_id=”73121″]
しなやかで、適度な撥水性もあるずっと着ていられるミッドシェル。
[clink url=”https://mepapa388.com/finetrack%e2%80%90flow-wrap/”%5D
冷池山荘でギブアップ
それでも風に吹かれ続けていると流石に寒いので、すぐに次の目的地である冷池山荘へ。爺ケ岳南峰からは約1時間10分ほど。
稜線上に赤い屋根の冷池山荘が見えています。
鹿島槍ヶ岳がグッと大きく迫ってきます。稜線に強い風が当たって次々と雲が沸き上がっていました。
振り返って爺ケ岳とそこから延びる稜線。
鹿島槍ヶ岳もカッコいい山です。
  午前9時 冷池山荘到着。
This slideshow requires JavaScript.
  泊ったことはないのですが、とても立派で清潔感漂う山小屋です。
快適テント泊生活
まだまだ時間は早いのですが、あまりの眠気でもう倒れそう・・・(笑)。仮眠を取れなかったのがダメでしたね。ということでアッサリここでテン泊決定です。
小屋からテン場までは登りで5分ほど。トイレは小屋横にしかないので行ったり来たりが面倒ですが、景色は最高。目の前には剱岳が。
カミナドームをサッと設営完了です。
マットは軽量化のためニーモの半身用と山と道のミニマリストパッドを併用。
[itemlink post_id=”73125″]
岩稜歩きでも夏場はスポルティバのシンセシス。軽くてゴアテックスサラウンドが蒸れ知らずで快適。
[itemlink post_id=”73128″]
随分後からですがテン場全景 平坦地は少ない
  昼食は小屋のカレーとビール!最高(笑)
テント泊ですが積極的に小屋の食事を利用します。単独行ですし、食事ぐらいは出来るだけ豪勢に。とは言っても重くするのは辛いので小屋ご飯はありがたい存在。これはこれでいいんじゃないかなと思います。
食べて寝て食べて・・・山の上でノンビリ何もせずに至福の時です。移り行く景色の色合いを見ながら本当にボーっと。
山の上で飲む冷たいビール。山小屋ありがとう!
でもビールを飲むと当然トイレには行きたくなるわけで、何度かテントとトイレを往復(笑)
時間とともに雲の比率が多くなってきました。
気温もぐんぐん下がってきます。いい色に空が染まりました。ちょっとノイズが・・・
シュラフはナンガの「UDD380DX」。我が家のシュラフの中で最も出動回数が多いシュラフです。北アルプスの秋の始まりはもう結構寒いので、しっかり保温性もありながら、軽量コンパク��なバランスのいいモデルです。
何もやることがないので早々に寝ます。贅沢ですよね。寝るなんて言っていますが、実は翌日の天気が気になってなかなか眠れなかったのです。翌日は3時台に出発して八峰キレットを越えて行こうと思っていましたが、雨の可能性もあるとのこと。初めて歩く岩稜帯なので、出来れば晴れて欲しいですね。
何とか持ってほしいと祈りながら眠りました。
初秋の後立山連峰(鹿島槍ヶ岳~五竜岳)を歩く(二日目)
翌朝、3時半に目を覚ますと周りはすっかりガス・・・。少し考えましたが、行けるところまで行くことに。サッと朝食をとってテントを畳みます。
4時10分 冷池山荘テン場出発
暗闇の中をヘッドライトの明かりを頼りに進みます。道は一本道で分かりやすく整備されているのでまず迷うことはありません。鹿島槍ヶ岳南峰まではコースタイムで2時間10分。
今にも雨が降り出しそうな中なのでノンビリと行きましょう。鹿島槍の前衛峰である布引山を越えるとすぐ目の前は鹿島槍。少しずつ明るさが広がる空は雲で覆われているものの、何とか持つか???
鹿島槍ヶ岳山頂から朝焼けに染まる山々を望む
午前5時3分 鹿島槍ヶ岳南峰到着 標高2,889ⅿ ガスガス・・・。
しかし、しばらく待つとガスは徐々に切れはじめ
朝日が差し込む前の短い時間の淡い色に見とれてしまいました。
歩いてきた爺ケ岳方面。
これから歩く八峰キレットと五竜岳方面。
  午前5時18分 日の出
    ブルブル震えるほど寒かったのに、太陽が出たとたんに生き返るような温かさに包まれてホッと。
    さあ行きましょうか。
八峰キレット編へ続きます。
【登山】鹿島槍から八峰キレット越えて五竜岳~1泊2日テント泊縦走(1) 2019年夏の終わり、扇沢から爺が岳、鹿島槍ヶ岳、八峰キレットを越えて五竜岳へ至るルートを歩いてきました。 後立山連峰の山はどこも大好き。 もう2020年になってしまいましたが、何かの参考までに。 八峰キレット縦走ルートの紹介 八峰キレット(はちみねキレット)は、北アルプス後立山連峰の鹿島槍ヶ岳と五竜岳の間にある場所。富山県、長野県の県境に位置しています。 キレットというのは山の尾根のⅤ字状に切れ込んだ場所のことで、一般的に「難所」と言われることが多いですね。 大キレット(穂高岳(北穂高岳)-槍ヶ岳(南岳))、不帰キレット(唐松岳ー白馬岳(天狗の頭))と共に日本三大キレットの一つに数えられる八峰キレットは他のキレットと同様に鎖場やハシゴが連発し、通行には細心の注意を必要とするのですが、だからこその絶景と歩きごたえがあるんですよね。 五竜岳は長男が小学5年生の時に一緒に上った山。思い入れの強い大好きな山の一つです。 鹿島槍ヶ岳~五竜岳 ルート詳細 鹿島槍ヶ岳と五竜岳の間にある八峰キレット。もちろんどちらから歩いても八峰キレットなわけですが(笑)、今回は鹿島槍ヶ岳方面からアクセス。
1 note · View note
gohan-morimori · 4 years ago
Text
アジャラカモクレンニセンニジュウイチネンニガツヨウカカラジュウヨッカマデノニッキ
2月8日(月)
 今日は早めに起きて出勤前に皮膚科に行くぞ、と諦め半分で思っていたのだけど諦め半分だったからやはり起きれず。尿意を無駄に我慢しながらだらだら起床してゆるゆると準備をしていそいそと豆腐を食べて出勤。先週は毎日ほんとだめだめだったな、今週はちょっとはましな一週間にしたいな、と思いつつ。自分の不調をもっとロングスパンで見たほうがいいのかもな、とぼんやり思う。働く。やることが増えてきた、と��うより、やらなければいけないことと、やったほうがいいことがすこしずつ見えるようになってきた、といった感じか。めちゃくちゃ忙しい、というわけではぜんぜんなかった一日だったのだけどずっとせかせか動いていて、だからこの「見えるようになってきた」のと並行して「もっと無駄なく動く≒働く」ことを意識しないといけないのだけどそれがむずかしいというかわたしは苦手で、最近凹んでばかりの原因は主にこの「もっと無駄なく動く≒働く」ことがなかなかできないからで、うーん。わたしのこれまでのささやかな人生の処世術というか、それは悪い癖でもあるのだけれど、「(一見)無駄に見える所作や状態に心のお守りを見出す」みたいなところがわたしにはあり、その悪癖が最近は勤務の中で思考を邪魔している感がある。一度癖づいた悪いフォームを直すような作業が必要とされている。気がする。小学生のころの習い事(硬式テニス)、中学のころの部活動(卓球)、などでもその悪癖は発動されていたように思う。いろんなことを毎日思い出す。自分を責めるのはカンタン。カンタンなことはつまんない。つまんないことはやめたほうがいい。だからやめよう。明日から二日間は休みだから今日こそは早めに家に帰ろう、という強い気持ちでいそいそと帰宅。クラブハウスで子供鉅人の人たちのわちゃわちゃした即興芝居を聴いて何度も笑ってかんじさん進藤さんと話したりもして、それから久々にしけこと通話をしてしけこは漫画などのネタバレを率先して読むタイプらしく話の要点にしか興味がないとしきりに言うので「いっとくけど話の要点に話の要点はないからな」とやや苛ついて応えた。苛ついている自分にちょっとびっくりしつつわちゃわちゃ話していたらもう早朝みたいな時間になっていてわたしは数時間前からずっと布団にくるまった状態で通話をしていてもう眠かった。通話を切って、ふよふよとした感情を可愛がっていたら寝ていた。
2月9日(火)
 皮膚科に行こうとしていた、午前中に。行けなかった。去年読んだ本をようやく本棚に収めた。収めるついでに本棚の整理もして、見えやすい位置と奥まった位置の本の配置をああでもないこうでもないと動かしたり、自分の芯、みたいな本をまとめ直したりした。楽しい。時間が溶けるような作業。そのあと床掃除をして、溜まっていた洗濯物をがんがん洗濯して、干して。午前中に皮膚科に行けないならもう今日は一日中家にいようという気持ちでいたのだけれど、まおさんとLINEをしていたら今日はビールだビールだ慰労だ慰労だという気分に。米を5合研いで炊飯器のスイッチを入れて冷蔵庫にあったカブの葉をゴマ油と塩コショウで炒めて家を出て、自転車の鍵を外したあとに「やっぱ歩いていけるほうのスーパーにしよ」と思ってまたすぐに鍵をかけて歩き出した。イヤホンをつけずに外を歩くのは久しぶりのような気がする。��今日は外に出る日(もしくは、人と会う日)」とあらかじめ決めておかないとなかなか外に出られない人間だし、「今日は一日家にいる」という日が週に1度はないと具合が悪くなる人間なので、毎週の休日はけっこう切実に深呼吸みたいな感覚がある。今日はもともと「午前中に皮膚科に行くぞ」と思っていた日だったからスーパーに行くために外に出られた感じがする。スーパーの中で散々ふらふらした結果、黒ラベル6缶パック、ミックスチーズ、フライドチキン6個入り、カニクリームコロッケ、コロッケ、メンチカツ、を買ってほくほくした気分で帰宅。黒ラベルとミックスチーズは冷蔵庫に入れて、フライドチキンとカニクリームコロッケとコロッケとメンチカツを温めて、どんぶりにご飯を山盛りにして、その上にカブの葉の炒めたやつをのっけて、平皿にフライドチキンとカニクリームコロッケとコロッケとメンチカツを盛って、おうち麺TV.の動画を流し見しながら、ああそうだそうだソースだソース毎回ソース買い忘れるんだよな〜〜〜と思いながら、なにもかけずにコロッケたちをガツガツ食べてフライドチキンもご飯もコロッケたちもたいらげて、おなかを休めていたら眠気がやってきて、シャワーを浴びた。寝ようか、どうしようか、と思いながらビールを開けてかぷかぷ飲んで、クラブハウスで中橋さんたちのルームを聴いていたり途中で参加してふざけあったり。すっかりクラブハウス厨だ。きっと良くない。柴崎友香『春の庭』所収「春の庭」「糸」読む。ななえちゃんとメッセージでやりとりしたり(遊びにいきたいよ〜)、『春の庭』所収「糸」の蛙のメタファーに震えて衝動的にみのりさんにLINEを送ったり。しているうちに外が明るくなってきていてほんとうによくない。休日に疲れてどうする。寝る。
2月10日(水)
 昨日皮膚科に行けなかったということは今日も皮膚科に行けないということで、それは「今日は外に出る日」とあらかじめ決めていなかったからで、だから今日はわたしは家を出ない。というのはちょっと意固地が過ぎるような気もするが。だからもうそれはしょうがない。明日早めに起きて行けるか、どうか。今月のlook(s)も早めに撮っておきたい。
 オリンピックをどうにかしてやりたい人らの発言への抗議のひとつとして「変わる男たち」「わきまえない女たち」みたいな言葉がツイッターで散見されるようになって、もやもやしている。「男たち」、「女たち」。いつまで「男」と「女」なんだろう、と思う。「変わる私たち」「わきまえない私たち」では駄目なのだろうか。「変わる」「わきまえない」という言葉にももやもやする。何にもやもやしているのかうまく掴めていないけど、もやもやする。それでいいんか、それで、みたいな気分。変わる/変わらない、わきまえる/わきまえない、という言葉、軸、で、いいのか、本当に。「変わる男たち」は、「わきまえない女たち」は、「それ以外たち」のことをどれくらい視認しているのだろうか。「男たち」にも「女たち」にも入れない/入らない人のことについては、どう思っているのだろうか。
 わたしは、わたしの性別についても、もやもやしている。それは子供のころからだけど、そのころから、形を濃度を揺らぎの種類を変えて、ずっと。「男たち」はもちろん、「女たち」という言葉を扱う人たちの輪には入れない���、と思うし、「女たち」という言葉が扱われるときに想定される「女たち」の中に、わたし(みたいな人)はいないんじゃないかな、と思う。でも、わたしは、わたしのことも(も?)「女」だと思う。と同時に、わたしは、わたしのことを「わたし」だとも思う。ときどきは限りなく男に近い気分にあるのかもしれないと思うこともあるし、どちらでもない存在なんだろうな、と思うこともある。でも、クエスチョニングである自覚はない。「女」だと、思ってる。でも(以下無限ループ)。みたいな状態で生きている。だれかに、(こういう想像をするときの「だれか」は顔の見えないぼんやりとした像の男性であることが多い)一度でいい、しっかりと抱きしめられたら、わたしはわたしを「女」だと思うだろう。思いたい、と思う。ああわたしは(うだうだ考えていても「結局は」、)「女」なのだ、と甘美な諦めに似たよろこびを実感するために、抱きしめられたい。さみしい、とも違う。実感を伴いながら生きるための寄る辺が、あまりにも少ない。気がする。甘えなのかもしれない。何への?誰への?どこへの?
 明日は祝日だということに気がついた。ということは、明日も皮膚科に行けないということだ。ばかやろー。金曜日には行かねば。
 昼過ぎに起きて、「たぬきゅんの仲良し放送局」の新しい回が更新されていることを知って、それを聴きながらクイックルワイパーで床掃除をしてキッチンと風呂場のゴミをまとめてゴミステーションにぶちこみに行って、その帰りに郵便受けを見たらON READINGから『歌集 ここでのこと』が届いていてうれしいうれしい気持ちになった。家に入ってから封を開けて手に取るとずいぶん美しい装丁で、良い意味で、贅沢品、といった感。すべすべと表面を撫でたりぱらぱらとめくったりしていると藤原印刷という文字を見つけて、そうか、藤原印刷なんだな、と思った。いつ読もう。ちょっと寝かせておきたい。冷凍庫から先週買って冷凍しておいたトーストを1枚と、1ヶ月ほど前に作り置きしておいたトマトソースを取り出して、軽く解凍したトーストの上に同じく解凍したトマトソース、そしてミックスチーズを盛って、トースターで焼いて、ピザトーストを作って食べた。職場のメニューの簡略版。職場のピザトーストを、そういえばまだ食べたことがないな、と思った。簡略版でもずいぶんと美味しくて、ちょうどよくお腹が満たされる感覚があった。家でトーストを焼いて食べるのもずいぶん久々だ。この家で暮らしはじめてからは初めて。笹塚に住んでいたときは、結局一度もトーストを食べなかった気がする。だとすると前回おうちトーストを食べたのは、京都のアパートか。柴崎友香『春の庭』をじりじり読んだり、コーヒーを飲んだり煙草を吸ったりしているうちに、不意にショートスパンコール94篇目の形が自分の中でまとまり、いそいそとパソコンの前に座って、書いた。その流れで95篇目も書けて、書けた書けた、よしよし、と思いつつ公開する。94篇目ではずっと老人ホームでの一幕を書きたいと思っていて、誰の視点でどういう書き方でい��かをずっと決めかねていて、どういう選択をしてもなにかいやらしいというか、書きたいと思っているシーンがゴテゴテとしつこくなりすぎたり、説明説明しすぎる感じになりそうな予感があって、手を付けられずにいた。今日書けた方法でその予感が無事払拭されたのかどうかは正直ちょっとわからないが。今日書けるとは思わなかったな、とぼんやり思っていると眠たくなってきてまだ夜も早い時間帯で、気圧が下がっているのかもしれなかった。だるくて、眠くて、キッチンで立ったまま納豆ご飯を食べて、歯を磨いて、布団にもぐって『春の庭』の残りを読んでいたら突然せつなくなって貪欲の手を握ったり頬をうずめたりして感情をやり過ごした、「やっぱり湯船に浸かって身体をあっためよう」という気分になり、起き上がって風呂場へ行って浴槽を洗ってからお湯をためはじめて、たまるまでの間、キッチンに置いてあるキャンプ用の椅子に座って、昨日買った黒ラベルを1缶開けて、ヤマシタトモコ『違国日記』7巻を読んだ。お湯がたまって髪をまとめてシャワーキャップを被って入水。入湯? 入浴か。入浴。お湯に浸かりながらオーレ・トシュテンセン『あるノルウェーの大工の日記』を読む。ちびちび、ゆるゆる、じわじわ、あったかくて、おもしろい。「あったかくて」と感じるのはわたしがお湯に浸かりながらこの本を読んでいるからなのかもしれないけれど、あったかい。あったかくて、おもしろい。知らない言葉、知らない仕組み、知らない態度がどんどん出てくる。そうか、インテリア、という言葉はあたりまえに知っていたけれど、エクステリアという言葉があるのか……。のぼせそうになるまで浸かっていて、ふらふらとお風呂から出て、眠くて仕方がなかったのに読みたい気持ちが勝ってきて、煎茶を淹れて飲みながら土岐友浩『Bootleg』と永井祐『日本の中でたのしく暮らす』を読む。度胸、みたいなことを思いながらずんずんたのしく読む。読んでいる途中、不意に「あ、いま作れる」という状態になって短歌連作を作った。「洛中」と名付けてiPhoneをたぷたぷいじってTwitterに投稿する。してから、引き続き読むモード。
短歌連作「洛中」 自重から解き放たれることはなくあくまで吊り上げられる口角 黒ラベルロング缶なら許されたあの数秒の無言であるとか 頼まれたときから既にできていて知っていたって素振りの中華屋 拒否いずれ許容になって山と山の間に例えば宿があること お買い物までの準備に旅支度らしさ伴う私服のあなた
 今日はショートスパンコールも書けて短歌も作れて上出来。ずっとゆるく頭が重くてだるいのだけど、眠ればどうにかなるでしょう。たぶん。
 そして午前4時。寝よう。馬鹿。寝ろ。寝る。
2月11日(木)
 先週の日記で短歌を作るときに最近思っていることを書いたけどそんなん関係なく素直に作ったらええ、素直に作ること以外なんも考えんでええ、みたいな気分に昨日からなっていてわたしの気持ち、考え、感情なんて信用ならない。
 11時半ごろ目が覚める。6時間くらいしか眠っていないはずだけどやたらと長く眠ったような感覚があってそれは眠りが深かったということか。起き上がって、昨日そのままにしていた洗い物をしつつお湯を沸かして白湯を2杯立て続けに飲んで昨日の出涸らしで煎茶を淹れてくぴくぴ飲みながら煙草を吸いながら永井祐『日本の中でたのしく暮らす』読む。祝日で皮膚科と耳鼻科は閉まっているから、今日は出勤前にそれ以外の用事をこなせたら、と思っている。look(s)を撮って、通帳記入をして、お金を公共料金用の口座から生活費用の口座にすこし移して、入金作業をして、連絡しないといけない人に連絡をして、自転車に空気を入れて、スーパーで魚の切り身でも買いたい。魚の切り身は必須ではない。昨日というか一昨日の深夜に作ったプレイリストを昨日から延々リピートしている。私的懐メロの羅列、みたいなプレイリストになった。
 シュトーレンがまだ冷蔵庫にあって、まだちびちび食べている。次のクリスマスシーズンまで思い出す人がいなくなってきた、いまくらいのシュトーレンが美味しい。 
 納豆ご飯をがつがつ食べ、出勤。働く。久々初台デー。働き終え、ご飯をばくばく食べ、家に帰って夜ふかしをして眠る。
2月12日(金)
 なんだかとても幸福な夢を見てあわてて起きて支度をして出勤。下北。明日明後日はBONUS TRACKで催事なのできっと猛烈に忙しい、はず。いそいそあわあわと二日間に備える。閉店間際にやってきたななえちゃんとしゃべりながら発注などしていると阿久津さんがやってきて明日明後日売る台湾ウィスキーの写真などを撮りはじめてななえちゃんと楽しげに構図を考えていてその光景がなんだか良かった。ショートスパンコール更新デー。阿久津さんは仕事でZOOMだということで2階へ行き、わたしとななえちゃんは1階でナマケモノの動画をYouTubeで観て愛くるしさに悶絶していた。しばらくしてななえちゃんが帰り、わたしもわたしでごはんを食べて帰ろう、と思っていたら阿久津さんが降りてきて面白いものが見れるからおいでと言われてひょこひょこついて行ったら面白いものが見れた。デイリーコーヒースタンドのゆうさんとZOOM越しにはじめましてをした。お互い文字上では知っていてなんだか不思議な気分。楽しくわちゃわちゃと話しているうちに阿久津さんはがんがんにお酒を飲んでがんがんに酔っ払っていって終いにはその場で眠り始めた。ZOOMが終わり、阿久津さんは起きそうになかった。電気を消して、片付けをして、さあ帰ろうか、と思っているとみのりさんから電話がかかってきて、出る。みのりさんとわちゃわちゃ話をしながら職場を出て、自転車を押して、1時間ほどかけて職場から家まで、歩いて帰った。家についてもみのりさんとのおしゃべりは止まらず、たのしいたのしいと思っているうちに4時とか5時とかになっていて、ふたりしてあわてる。電話を切って、ふらふらと着替えて、寝よう、寝よう、と思っていたらなぜか頭が短歌を作るモードになっていて、寝たい、寝ないと、寝ろよ��と身体が言っているのに頭が言うことを聞かなくて折坂悠太『平成』を流しながら聴きながらどんどん短歌ができていって笑った。寝ろよ!!!!
短歌連作「都内」 坂道を駆け降りるためなだらかな身体でなだらかに眠らねば 自転車にエアー と打たれたリマインダー 覚えがなくて告知がきてる 低く深く都内に風が吹いている おそらく右翼の車で目覚める 物流はとても座りがいい言葉 幹線道路の砂利蹴り上げて 昔の写真(写真は昔だ)親元を離れてからブラジャーを買うこと すごいことだ射精しなくていい肉体ってやつはほんとに 国道 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12月やさしいね Amazonだ と思うときAmazonはあなたに灯す魂を持つ 殺したい奴いるくらいあたりまえですか?健康ですか?      へえ
 壊れてしまう。ベッドにインしてスリープ。
2月13日(土)
 起きてすぐ昨日作った短歌をまとめ直して1首追加で作って連作をもうひとつ作って起き抜けにしては旺盛な創作意欲だった。
短歌連作「眠りの圏外」 怒りから光に変わるゲートまで導かれている、いま、この人に 歌い方声高に言う人といて天上天下が旋律になる ほんとうは夜は幼な子たちのもの幸せはおれたちに降るもの 欲望に貴賤はなくて米を炊く前に無意味なくちづけをする 韻律を整えようとするようにきみはわたしの名を諳んじた 眠りから遠いところに立っていてだから遥かな道のりでした
 洗顔をして(お風呂に入りたい。入れない。)お湯を大量に沸かしてパスタを大量に茹でてバターと醤油と納豆とゆかりと海苔でぐちゃぐちゃにしたものを急いで食べて出勤。いそがしいそがしいそがしいそがしあわあわあわあわあわあわあわあわすごいすごいすごいすごいいそがしいそがしいそがしいそがしあらあらあらあらあらほいほいほいほいせいせいせいせいそれそれそれそれいそがしいそがしいそがしいそがし閉店時間。踊るように働いた。チーズケーキを次々焼いてカレーの仕込みを途中までやってまるでお店だねと阿久津さんと笑い合った。昨日の痛飲で阿久津さんはへろへろの様子で、いつもより早く帰っていった。阿久津さんが帰ってからごはんをばくばく食べ、明日の準備をすこしして、永井祐『日本の中でたのしく暮らす』を読む。読んでから、長らく積んできた『仕事本』を読み始めようとぱらぱらしていると酒瓶の中の酒がぐらぐら揺れだして地震だった。あっこれは、おっ、えっ、となってすぐにテーブルの下に隠れた。くらくらする。iPhoneでTwitterを開くとどうやらかなり大きな地��で、しかも福島。あんまりいろんな情報を見ないようにしよう、と思いつつ目はタイムラインを追っていった。ゆかちゃんから「だいじょうぶですか!」というLINEがきた。こわかった!と返事を打った。みうらさんと石川くんからもそういったLINEが来て同じような返事を打った。これはもう、帰れ、ってことだな、ということで帰り支度をして職場を出る。なんとなく、自販機でオロナミンCを買った。帰宅。すこしまえに買ったラジカセをつけてAMラジオをつけた。洗濯物をとりこんだ。ラジオを流しっぱなしにしながら、お風呂に入って、貯水とか一応したほうがいいんかな、という気になり、髪と身体を洗ってから浴槽を洗ってお湯を張って、湯に浸かる。浸かりながらオーレ・トシュテンセン『あるノルウェーの大工の日記』読む。アツい本だなあと思いつつ屋根裏の改築についてのあれこれを読んでいるとふわふわ眠たいような気になってきて湯船から出て浴槽に蓋をして身体を拭いて寝間着を着て髪を乾かしてオロナミンCを飲みつつ永井祐『広い世界と2や8や7』を読み始める。煙草を吸って歯を磨いていま。エレ片のラジオを聴きながらこれを打っていて、もう寝ないと。明日は1日中下北で働く。きっと猛烈に忙しい。大丈夫。早起きしなきゃ。
2月14日(日)
 早起きでーきた!せっせと準備をして家を出て、買い出しを済ませて朝の職場へ。即座に仕込みを開始して開店前を慌ただしく過ごして、開店して回転して踊るように忙しく閉店まで働く。すっかりへとへとになって、逆にハイ、みたいな状態になっていて閉店後の店内でしばらく呆然としたり阿久津さんとたのしく話したり。阿久津さんが帰ってから、ごはんをどっしり食べて、短歌を作った。バレンタイン短歌。
短歌連作「千とバレンタイン」 愛されたビス愛された室外機愛された飲みさしのピルクル 巻き爪に拍車がかかり側面の皮かたくなる たまに食べちゃう ビタミンって人間に発見されるまでビタミンじゃなかったんだって え? つむじからさわさわ音が出るような生え方ですね 髪の そう、毛 わかんないけどなんとなくこの命終わるまで見ない気がする 修羅場 テレアポを初回の座学でばっくれるきみこそ神になるべきなのに 考えるワシでありたい(いま葦って言うと思ったじゃろ。がはははは) おふざけは個々までにして景観のいいエレベーター越しの森ビル ライフ、ワーク、バランスでじゃんけんしようなんどもライフであいこにしよう
 と、バレンタインとはあまり関係ない短歌。
短歌連作「水筒と自戒」 いきたいものだ400字詰め数枚で数万円が相場の立場 水筒に白湯入れるのだ御守りの中身はどうでもいいようなもの 揺れてから揺れに過敏になるくせに/だからこそ強く貧乏ゆする 漠然と いやはっきりと 眼の位置にあなたの眼があること うれしいな 怒りって場所がこわれる 人がこわれるのはそれから それは嫌です 勤労がおもしろいのかおもしろいから勤労なのか 髪を結う 些事ばかり間違えながら生きていて昨日滑った口の復唱
 永井祐『広い世界と2や8や7』読む。土岐友浩『僕は行くよ』読み始める。ずいぶん遅くまで職場にいて短歌を作る状態から抜け出せなくなっていた。2時だか3時だかに職場を出て、���通りのない帰り道を自転車で。空気がぬるい。雨が振りそうだったというかもう降り出していた。粉みたいな雨。帰って、しんどいな、と思う。気圧が下がっているというより落下している。だれかを、特定のだれかを気になり始めること、すきだとはっきり思い始めること。東浩紀が突発的にニコ生配信をしていて、それをずっとワイヤレスイヤホンで聴いている状態で寝支度を済ませて、布団に入ってもずっと聴いていて、東浩紀の声質は気持ちいいな、はじめて知った、心地いい、耳にやさしい、言葉の連続を聴き続けたい、このまま……と思っていたらいつの間にか意識を失っていた。
Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media
1 note · View note
toubi-zekkai · 4 years ago
Text
 2月の末、冬も終わりかけたこの季節に、消え入る蝋燭の最期の煌めきのような寒さがここ数日続いている。そして、今日は昼を過ぎた頃に強くなり始めた雨の音で目を覚ました。薄暗い部屋を覆う厚い布地のカーテン越しにもはっきりと聞こえる雨の音が覚めかけた意識を再び混濁とした暗闇のうちに沈めようとしたが、喉の渇きがそれを阻止した。重たい上半身を起こしてベッドの上に座ると、目の前のテーブルの上に置かれたグラスを目で探した。
 黒い下地に白い薔薇が刺繍された布に覆われた長方形のテーブル、その上辺には枯れかけた花をいけた花瓶が3つ、大きな白い貝殻、鋭い角を持った山羊の横顔が描かれた今は亡き国家の紙幣の上に二つの銀細工の指輪に嵌められた緋色とサファイアのビー玉、錆びた銀色のハーモニカ、濃いピンク色をした霧吹きなどが置かれていた。テーブルの真ん中には空になったウィスキーの小瓶が二つとまだなみなみ入っているウィスキーの小瓶が一つ、空になったチリ産赤ワインの瓶が一つ、飲み残した氷結とビールの缶が一つずつ、ターボライター、金色の小型懐中電灯など置かれ、その隙間に時折硝子のグラスを見つけることが出来る。硝子のグラスは全部で三つあって、二つは空で一つは黒い液体が注がれてあった。黒い液体の入ったグラスを手に取ると、そのままそれを口にして、喉の渇きを舌先で潤した。冷たいコーヒーの苦味のあとにほんのりとウィスキーの香りが鼻先に抜けていった。これは最近、考え付いたカクテルで、まずはグラスにアイスコーヒーを8分目まで注いで、それからグラスの縁から零れない程度にウィスキーを注ぎ込み、スプーンを使ってそれを混ぜる。コーヒーの艶のない黒色にウィスキーの煌めく琥珀色を注入すれば、黒い艶を放つ、この美しいカクテルは完成する。これを飲めばカフェインによる意識の覚醒とアルコールによる沈静という相反する矛盾が一瞬の間に完成する。それは酔っているという状態でもなければ覚醒しているという状態でもなく、かといってこれを飲む前の平常の状態では更にない。明晰な意識を持ちつつも幻想的な夢のなかへ、この感覚を喩えるならばそんな言葉になるだろう。  一杯、二杯と喉元に黒いカクテルを流し込みながら、タバコの煙を吸っては鼻と口から吐き出している。降り続く雨音の休符を縫うように昨夜の記憶が断続的に現れては消え、倦怠を伴った影となって目の前に重たく横たわる今日の姿を浮かび上がらせた。それは巨大な体躯を横たえた豚の死体で、腐りかけ始めた身体からは胸をむかつかせる腐臭を放っているのだった。こいつをどうやって調理し、食べるのか、それもなるべくなら美味しく。一日の命題はそこで始まりそこで終わっていた。しかし調理方法がわからず途方に暮れているというのが現実で、とりあえずアルコールと白い煙で死んだ豚が放つ悪臭を消してごまかしているというのも現実だった。外に出ようか、家に居て本を読もうか、それとも絵を描こうか、いや友達と飲みに行こうか、豚を調理する方法を考えながら一日の大半は過ぎていき、食べきることの出来ない腐った豚に怯えながら眠りに落ちる、すると翌日更に巨大で更に強烈な腐臭を放つ豚の死体が目の前に置かれているのだった。しかし一日を一週間、或いはもっと長い年月で俯瞰してみれば事実は逆で、巨大で豊満な豚の肉体に潰された自分の腐乱死体の山が一枚の絵として浮かんでくるのだった。  部屋の空気が紫煙に満たされ始めたので、厚いカーテンの布地を捲り、窓を開けて外の空気を部屋に入れる。白雨に包まれた街の姿が茫漠と浮かび、網戸の網には張り付いた雨が光の粒となって輝いている。雨の音に混じって鳥の鳴く声が聞こえてきて、「今日は、昼間公園に集まり野を歩いて餌を探す鳩たちも休日だな」と思い、それから駅舎の天井の隅で寒さに震えて身を寄せ合う鳩たちのことを考えた。薄暗く冷たい天井の片隅で鳩たちはただひたすら雨が上がり今日一日が終わり太陽が戻ってくるのを待っている。  テーブルの左隅には文庫本が五冊積まれていた。下から、生田耕作「ダンディズム 栄光と悲惨」内田百間「ノラや」内田百間「第一阿呆列車」ボードレール「悪の華」ヘミングウェイ「移動祝祭日」。ヘミングウェイの「移動祝祭日」を手に取って読んだ。1920年代のパリでヘミングウェイはサン・ミッシェル通りのカフェに座って、カフェオレやラム酒を飲みながら、小説を書いている。キューバの年老いたヘミングウェイが小説家として売れる前の青春時代のパリを思い出を綴るように綴ったヘミングウェイの遺作。削ぎ落とせるだけの無駄つまりは感傷をを削ぎ落とした白く逞しい骨格のようなヘミングウェイの文体という勝手な妄想と1920年代のパリという芸術を愛する者ならば誰もが羨望の眼差しを送る時代と場所の幸福な結合点が舞台とあって近所の古本屋で手に入れた本。章ごとに表題があって最初の「サン・ミシェル広場の気持ちのいいカフェ」という章だけを読んだ。「それから、天気が悪くなった。」で始まる出だしは確かに簡潔明瞭で無駄がない。それから天気が悪くなったのだろう。まず、怠惰な芸術家の出来損ないや何をしているのかわからない不潔な身なりをした酔っ払いたちが真昼間から日が沈むまで飲んで騒いでいる不潔で退廃的で賑やかなカフェを描き、それと対比して清潔で静かなサン・ミシェル通りのカフェを描写する。ヘミングウェイは清潔で気持ちのいいサン・ミシェル通りのカフェで、時折目の前に座った黒髪の美女に気を取られたりしながらも、せっせと執筆に励む。一仕事終えてラム酒の酔いも手伝って気持ちよくなりながら、妻と一緒に暮らすホテルへと帰る。訳注は読み飛ばして一気に約20ページの一章を読み終える。途中に出てきた蹲踞式便器という言葉に躓き、頭の中で想像してそれが和式便器のことだと理解し、少し笑った。  ヘミングウェイの小編を読み終えて、その20ページは全部で何文字あるか計算してみたら約14700文字で、400字詰め原稿用紙に換算すれば約36枚。文章を書いてみればわかるが、これだけ書くのはなかなか大変な作業で、それが冗漫な文章でなく簡潔明瞭な文章であったら尚更の如くである。その事実に触発されて、こうして文章を書き始めたのだが、今のところ約3000��字、原稿用紙に換算すればまだ7枚弱である。ヘミングウェイには程遠い。  ヘミングウェイに限ったことではないと思うが、ヘミングウェイの小説を読んでいて、段落というものの効用や意味というものについて考えた。段落は、最初の退廃的で不潔なカフェから道に、道からサン・ミシェル通りのカフェに、場所や視点が移り変わったときに設けられる区切りのようなもの。段落から段落への移り変わりはそれだけで小さな旅ともいえる。  テーブルの上に置かれた三つの花瓶の水を替える。三つの花瓶を持って階段を降り、水を替えて、また階段を登るという作業はなかなかに面倒くさい。それでも毎日水を替えている、にも関わらず花瓶にささった花の多くは黒ずみ枯れてきてしまった。全身を蝕まれ、病室で弱っていく患者を毎日世話する看護師のような憂鬱に襲われる。そこに進行する黒い死を間近に毎日見なくてはならない。  しかし、今日は家に人の気配がない。いつもなら誰かはいるはずなのだが誰もいない。猫は毛布にくるまって寝ている。その横で昨夜食べなかった夕飯を食べている。白い大きな皿にはソースで味付けされた肉のカルビとレタスや黄色いパプリカを細かく刻んだサラダが載っている。レンジで温めると器によそったご飯と一緒に食べている。白い湯気を漂わせ、甘いソースと肉汁に包まれた豚の肉は旨く、ご飯を食べる速度も早くなる。サラダには黄色いからしをつけて食べる。お酒は控え、烏龍茶を飲む。物を食べている気配がしているのにも関わらず、猫が毛布から出てくる気配はなかった。起きているならば、皿の置かれたテーブルの近くに顔を寄せて「くんくん」と匂いを嗅ぐのだが、きっと熟睡しているのだろう。  食いしん坊な猫だが、料理の匂いを嗅ぐ以上のことは決してしない猫だった。内田百間の「ノラや」のノラも同じだったので、これは猫全般の特質なのかもしれない。餌を食べる場所、トイレをする場所、眠る場所、爪を研ぐ場所がいつも同じなのもノラと一緒だった。自分の決めた、或いは慣れ親しんだ方法は決して曲げない、ある種のストイックさが猫たちにはあるのかもしれない。百間先生自身も決して走らないという信念から、走れば間に合う汽車に乗り遅れ、約二時間も駅舎で汽車を待ったという逸話を「第一阿呆列車」のなかで披露している。  猫のストイシズムも百間先生のダンディズムも、時間的資源的効率を第一に掲げそれに基づいて暮らす現代人の目には甚だ効率の悪いある意味意固地なある意味怠惰なものとして映るのかもしれない。同じ仕事を完成するということにしても、1時間でそれをやってのけるという人の方が1日かかってそれをやる人よりも尊ばれるというのは現代における自明の理である。時間的効率を上げるということは無駄を減らすということであり、無駄のなかには物事に対するこだわりも這入るのである。こだわり、という言葉を云うとき、それは極めて個人的な感覚を指すだろう。客観的なこだわり、などという感覚は想像することも出来ない。共通のこだわり、ということなら少しわかるかもしれない。だが、それも個人的なこだわりの感覚がたまたま共有出来ているに過ぎない。こだわりの集団も、それに属さずそれを解さない人々にとっては滑稽な姿でしかない。こだわりと滑稽、ストイシズムと滑稽、ダンディズムと滑稽は切り離すことが出来ない。  ダンィズムの祖イギリスのブランメルは徹底した美意識を持ち、ネクタイの結び方について何通りも考案したと云うが、それもブランメル流の美意識を持たない人々にとっては滑稽な姿として映るだろう。ネクタイが美しく結べても何の役に立つこともなければ、そんなことを考えていること自体時間を無駄にしているように見える。しかし、そんなに早く急いで君はどこに辿り着くのか?答えは明白、墓場だ。人間ならば生物ならば死を避けることなど出来るはずもない。速く生きるということは喩えるなら新幹線に乗って墓場に直行するようなもので、それは確かに効率的かもしれない。しかし歩いて行けば見える風景や感じられる感情も新幹線に乗ってしまっては見たり感じたりすることは出来ない。それは目的や結果だけで、プロセスのない人生と云える。要するに中身のない人生。  谷崎潤一郎の短編小説「刺青」の冒頭は「其れはまだ人々が愚かと云う貴い徳を持って居て…」という一文で始まる。愚かとは損得及び利害を越えて人を支配し魅了する状態だと云える。わかっているけど、やめられない、そんな状態とも云える。このわかっているけどにおけるわかっているとは、それをすれば損をする、時間的資源的効率を甚だ害する、という意味に他ならない。愚かであることは滑稽であるし、滑稽なことは愚かでもある。ともに効率を重視する現代社会では避けなくてはならないこととされている。谷崎があの一文を書いたということは谷崎が生きていた時代には既に現代の効率功利主義が社会に根付いていたことを想像させる。  生活は確かに便利になった。百年前、二百年前の生活を考えれば想像を絶する進歩である。しかし、それは愚かさや滑稽さ、つまりはこだわりと美意識を犠牲にして獲得した進歩である。獲得した進歩が最後にもたらしたもの、それは中身のない人生であり、空虚さ、虚無である。そして進歩した人々は埋まらない空虚さを埋めようとして、美意識やこだわりをもった芸術家や職人が作った作品、或いは愚かな人間が話す滑稽な物語を、金で買うのである。それは自ら殺してしまった自分の人生を赤の他人に演じてもらうという、ただの偽装に過ぎない。ブランメルの美意識はあくまでブランメルの美意識に過ぎないし、百閒先生の滑稽さはあくまで百間先生の滑稽さに過ぎない。  もっと言ってしまえば、進歩主義の行く末は昆虫類いやウィルス類の生と云える。効率の良い生という意味ではウィルスや病原菌ほど効率の良い生はない。単��胞生物から始まった人類の生が再び単細胞生物へと還っていくのである。ジョルジュ・バタイユは人間の美しさの定義について「動物からどれだけかけ離れた存在か」ということが一つの基準になると云った。その定義から云えば、効率功利的な人間は単細胞的生物に近く、これほど醜い種は存在しない。しかし、これらの醜い種は数限りなく繁栄している、ウィルス類や病原菌類が繁栄しているように。効率功利を重視する進歩主義者たちが、愚かで滑稽でこだわりをもった美しい種族に、生存競争をして勝つことは当たり前かもしれない。だからこそ、「滅びゆくものこそ美しい」のだ。  
0 notes
kurihara-yumeko · 4 years ago
Text
【小説】フラミンゴガール
 ミンゴスの右脚は太腿の途中から金属製で、そのメタリックなピンク色の輝きは、無機質な冷たさを宿しながらも生肉のようにグロテスクだった。
 彼女は生まれつき片脚がないんだとか、子供の頃に交通事故で失くしたのだとか、ハンバーガーショップでバイト中にチキンナゲット製造機に巻き込まれたのだとか、酒を飲んでは暴力を振るう父親が、ある晩ついに肉切り包丁を振り上げたからなのだとか、その右脚についてはさまざまな噂や憶測があったけれど、真実を知る者は誰もいなかった。
 ただひとつ確かなことは、この街に巣くう誰もが、彼女に初めて出会った時、彼女はすでに彼女であった――ミンゴスは最初から金属の右脚をまとって、我々の前に現れたということだ。
 生身である左脚が描く曲線とはまるで違う、ただの棒きれのようなその右脚は、しかし決して貧相には見えず、夜明け前の路地裏を闊歩する足取りは力強かった。
 脚の代わりでありながら、脚に擬態することをまったく放棄しているその義足は、白昼の大通りでは悪目立ちしてばかりいた。すれ違う人々は避けるように大きく迂回をするか、性質が悪い連中はわざとぶつかって来るかであったが、ミンゴスがそれにひるんだところを、少なくとも俺は見たことがない。
 彼女は往来でどんな目に遭おうが、いつだって澄ました表情をしていた。道の反対側から小石を投げてきた小学生には、にっこりと笑って涼しげに手を振っていた。
 彼女は強かった。義足同様に、心までも半分は金属でできているんじゃないかと、誰かが笑った。
 夏でも冬でも甚平を着ている坊主崩れのフジマサは、ミンゴスはその芯の強さゆえに、神様がバランスをとる目的で脚を一本取り上げたのだ、というのが自論だった。
「ただ、神様というの��どうも手ぬるいことをなさる。どうせしてしまうのならば、両脚とももいでしまえばよかったものを」
 そう言いながら赤提灯の下、チェ・レッドを吸うフジマサの隣で、ミンゴスはケラケラと笑い声を零しながら、「なにそれ、チョーウケる」と言って、片膝を立てたまま、すっかりぬるくなったビールをあおった。
 彼女は座る時、生身である左脚の片膝を立てるのが癖だった。まるで抱かれているように、彼女の両腕の中に収まっている左脚を見ていると、奇抜な義足の右脚よりも、彼女にとって大切なのはその左脚のような気がした。それも当然のことなのかもしれなかった。
 彼女も、彼女を取り巻いていた我々も、彼女が片脚しかないということを気にしていなかった。最初こそは誰しもが驚くものの、時が経てばそれは、サビの舌の先端がふたつに裂けていることや、ヤクザ上がりのキクスイの左手の指が足りていないこと、リリコの前歯がシンナーに溶けて半分もないこと、レンゲが真夏であっても長袖を着ていることなんかと同じように、ありふれた日常として受け入れられ、受け流されていくのだった。
「確かにさぁ、よく考えたら、ミンゴスってショーガイシャな訳じゃん?」
 トリカワが、今日も焼き鳥の皮ばかりを注文したのを頬張ってそう言った。発音はほとんど「超外車」に近かった。
「ショーガイシャ?」
 訊き返したミンゴスの発音は、限りなく「SHOW会社」だ。
「あたし障害者なの?」
「身体障害者とか、あるじゃん。電車で優先席座れるやつ」
「あー」
「えー、ミンゴスは障害者じゃないよ。だって、いっつも電車でおばあちゃんに席譲るじゃん」
 キュウリの漬物を咥えたまま、リリコが言った。
「確かに」
「ミンゴスはババアには必ず席譲るよな、ジジイはシカトするのに」
「あたし、おばあちゃんっ子だったからさー」
「年寄りを男女差別すんのやめろよ」
「愚か者ども、少しはご老人を敬いなさいよ」
 フジマサが呆れたように口を挟んで、大きな欠伸をひとつした。
「おばあちゃん、元気にしてんのかなー」
 まるで独り言のように、ミンゴスはそう小さくつぶやいて、つられたように欠伸をする。
 思えばそれが、彼女が家族について口にしたのを耳にした、最初で最後だった。
 俺たちは、誰もろくに自分の家族について語ろうとしなかった。自分自身についてでさえ、訊かれなければ口にすることもなく、訊かれたところで、曖昧に笑って誤魔化してばかりいた。
 それでも毎日のように顔を突き合わせ、特に理由もなく集まって酒を飲み、共に飯を食い、意味のない会話を繰り返した。
 俺たちは何者でもなかった。何かを共に成し遂げる仲間でもなく、徒党を組んでいたというにはあまりにも希薄な関係で、友人同士だと言うにはただ他人行儀だった。
 振り返ってみれば、俺がミンゴスや周りの連中と共に過ごした期間はほんの短い間に過ぎ��、だから彼女のこと誰かに尋ねられる度、どう口にすればいいのかいつも悩んで、彼女との些細な思い出ばかりを想起してしまう。
    ミンゴスは砂糖で水増ししたような甘くて怪しい錠剤を、イチゴ柄のタブレットケースに入れて持ち歩いていた。
 彼女に初めて出会った夜のことは、今でも忘れられない。
 俺は掃き溜めのようなこの街の、一日じゅう光が射さない裏路地で、吐瀉物まみれになって倒れていた。一体いつからうつ伏せになっているのか、重たい頭はひどく痛んで、思い出すのも困難だった。何度か、通りすがりの酔っ払いが俺の身体に躓いて転んだ。そのうちのひとりが悪態をつき、唾をかけ、脇腹を蹴り上げてきたので、もう何も嘔吐できるものなどないのに、胃がひっくり返りそうになった。
 路地裏には俺のえづいている声だけが響き、それさえもやっと収まって静寂が戻った時、数人の楽しげな話し声が近付いて来るのに気が付いた。
 今思えば、あの時先頭を切ってはしゃぎながら駆けて来たのはリリコで、その妙なハイテンションは間違いなく、なんらかの化学作用が及ぼした結果に違いなかった。
「こらこら、走ると転ぶぞ」
 と、忠告するフジマサも足元がおぼつかない様子で、普段は一言も発しないレンゲでさえも、右に左にふらふらと身体を揺らしながら、何かぶつぶつとつぶやいていた。サビはにやにやと笑いながら、ラムネ菓子を噛み砕いているかのような音を口から立てて歩いていて、その後ろを、煙管を咥えて行くのがトリカワだった。そんな連中をまるで保護者のように見守りながら行くのがキクスイであったが、彼はどういう訳か額からたらたらと鮮血を流している有り様だった。
 奇妙な連中は路地裏に転がる俺のことなど気にも留めず、よろけたフジマサが俺の左手を踏みつけたがまるで気付いた様子もなく、ただ、トリカワが煙管の灰を俺の頭の上めがけて振るい落としたことだけが、作為的に感じられた。
 さっきの酔っ払いに蹴り飛ばされてすっかり戦意喪失していた俺は、文句を言う気もなければ連中を睨み返してやる気力もなく、ただ道に横たわっていた。このまま小石にでもなれればいいのに、とさえ思った。
「ねーえ、そこで何してんの?」
 そんな俺に声をかけたのが、最後尾を歩いていたミンゴスだった。すぐ側にしゃがみ込んできて、その長い髪が俺の頬にまで垂れてくすぐったかった。
 ネコ科の動物を思わせるような大きな吊り目が俺を見ていた。俺も彼女を見ていた。彼女は美しかった。今まで嗅いだことのない、不可思議な香水のにおいがした。その香りは、どこの店の女たちとも違った。俺は突然のことに圧倒された。
 彼女は何も答えない俺に小首を傾げ、それからおもむろにコートのポケットに手を突っ込むと、そこから何かを取り出した。
「これ舐める? チョー美味しいよ」
 彼女の爪は長方形でピンク色に塗られており、そこに金色の薔薇の飾りがいくつもくっついていた。小さな花が無数に咲いた指先が摘まんでいたのはタブレットケースで、それはコンビニで売られている清涼菓子のパッケージだった。彼女はイチゴ柄のケースから自分の手のひらに錠剤を三つほど転がすと、その手を俺の口元へと差し出した。
「おいミンゴス、そんな陰気臭いやつにやるのか?」
 先を歩いていたサビが振り返って、怪訝そうな声でそう言った。
「それ、結構高いんだぜ」
「いーじゃん別に。あたしの分をどうしようと勝手じゃん」
 彼女が振り向きもせずにそう言うと、サビは肩をすくめて踵を返した。連中はふらふらと歩き続け、どんどん遠ざかって行くが、彼女がそれを気にしている様子はなかった。
「ほら、舐めなよ」
 差し出された彼女の手のひらに、俺は舌を突き出した。舌先ですくめとり、錠剤を口に含む。それは清涼菓子ではなかった。これはなんだ。
「ウケる、動物みたいじゃん」
 からになった手を引っ込めながら、彼女は檻の中の猛獣に餌をあげた子供みたいに笑っていた。
 口の中の錠剤は、溶けるとぬるい甘みがある。粉っぽい味は子供の頃に飲まされた薬を思わせ、しかし隠し切れないその苦味には覚えがあった。ああ、やはりそうか。落胆と安堵が入り混じったような感情が胃袋を絞め上げ、吐き出すか悩んで、しかし飲み込む。
「ほんとに食べてんだけど」
 と、彼女はケラケラ笑った。その笑い声に、冗談だったのか、口にふくまないという選択肢が最良だったのだと思い知らされる。
 それでも、目の前で楽しそうに笑っている彼女を見ていると、そんなことはどうでもよくなってくる。こんな風に誰かが喜んでいる様子を見るのは、いつ以来だろうか。笑われてもいい、蔑まれても構わない。それは確かに俺の存在証明で、みじめさばかりが増長される、しがない自己愛でしかなかった。
 からかわれたのだと気付いた時には彼女は立ち上がっていて、俺を路地裏に残したまま、小さく手を振った。
「あたしミンゴス。またどっかで会お。バイバーイ」
 そう言って歩き始めた彼女の、だんだん小さく、霞んでいく後ろ姿を見つめて、俺はようやく、彼女の右脚が金属製であることに気が付いたのだった。
 人体の一部の代用としては不自然なまでに直線的で、機械的なシルエットをしたその奇妙な脚に興味が湧いたが、泥のように重たい俺の四肢は起き上がることを頑なに拒み、声を発する勇気の欠片も砕けきった後であった。飲み込んだ錠剤がその効用をみるみる発揮してきて、俺はその夜、虹色をした海に飲み込まれ、波の槍で身体を何度も何度も貫かれる幻覚にうなされながら眠りに落ちた。
 その後、ミンゴスと名乗った彼女がこの街では有名人なのだと知るまでに、そんなに時間はかからなかった。
「片脚が義足の、全身ピンク色した娘だろ。あいつなら、よく高架下で飲んでるよ」
 そう教えてくれたのは、ジャバラだった。ピアス屋を営んでいる彼は、身体のあちこちにピアスをあけていて、顔さえもピアスの見本市みたいだ。薄暗い路地裏では彼のスキンヘッドの白さはぼんやりと浮かび上がり、そこに彫り込まれた大蛇の刺青が俺を睨んでいた。
「高架下?」
「あそこ、焼き鳥屋の屋台が来るんだよ。簡単なつまみと、酒も出してる」
「へぇ、知らなかった」
 そんな場所で商売をして儲かるんだろうか。そんなこと思いながら、ポケットを探る。ひしゃげた箱から煙草が一本出てくる。最後の一本だった。
「それにしても……お前、ひどい顔だな、その痣」
 煙草に火を点けていると、ジャバラは俺の顔をしみじみと見て言った。
「……ジャバラさんみたいに顔にピアスあけてたら、大怪我になってたかもね」
「間違いないぞ」
 彼はおかしそうに笑っている。
 顔の痣は触れるとまだ鈍く痛む。最悪だ。子供の頃から暴力には慣れっこだったが、痛みに強くなることはなかった。無抵抗のまま、相手の感情が萎えるのを待つ方が早いだとか、倒れる時の上手な受け身の取り方だとか、暴力を受けることばかりが得意になった。痛い思いをしないで済むなら、それが最良に決まっている。しかしどうも、そうはいかない。
「もう、ヤクの売人からは足を洗ったんじゃないのか?」
「……その仕事はもう辞めた」
「なのに、まだそんなツラ晒してんのか。堅気への道のりは険しいな」
 掠れて聞き取りづらいジャバラの声は、からかっているような口調だった。思わず俺も、自嘲気味に笑う。
 学んだのは、手を汚すのをやめたところで、手についた汚れまで綺麗さっぱりなくなる訳ではない、ということだった。踏み込んでしまったら二度と戻れない底なし沼に、片脚を突っ込んでしまった、そんな気分だ。今ならまだ引き返せると踏んだが、それでも失った代償は大きく、今でもこうしてその制裁を受けている現状を鑑みれば、見通しが甘かったと言う他ない。
「手足があるだけ、まだマシかな……」
 俺がそう言うと、ジャバラはただ黙って肩をすくめただけだった。それが少なからず同意を表していることを知っていた。
 五体満足でいられるだけ、まだマシだ。特に、薄汚れた灰色で塗り潰された、部屋の隅に沈殿した埃みたいなこの街では。人間をゴミ屑のようにしか思えない、ゴミ屑みたいな人間ばかりのこの街では、ゴミ屑みたいに人が死ぬ。なんの力も後ろ盾も、寄る辺さえないままにこの街で生活を始めて、こうしてなんとか煙を吸ったり吐いたりできているうちは、まだ上出来の部類だ。
「せいぜい、生き延びられるように頑張るんだな」
 半笑いのような声でそう言い残して、ジャバラは大通りへと出て行った。その後ろ姿を見送りながら、身体じゅうにニコチンが浸透していくのを脳味噌で感じる。
 俺はミンゴスのことを考えていた。
 右脚が義足の、ピンク色した天使みたいな彼女は、何者だったのだろう。これまでどんな人生を送り、その片脚をどんな経緯で失くしたのだろう。一体、その脚でなんの代償を支払ったのか。
 もう一度、彼女に会ってみたい。吸い終えた煙草の火を靴底に擦りつけている時には、そう考えていた。それは彼女の片脚が義足であることとは関係なく、ただあの夜に、道端の石ころ同然の存在として路地裏に転がっているしかなかったあの夜に、わざわざ声をかけてくれた彼女をま��一目見たかった、それだけの理由だった。
 教えてもらった高架下へ向かうと、そこには焼き鳥屋の移動式屋台が赤提灯をぶら下げていて、そして本当に、そこで彼女は飲んでいた。周りには数人が同じように腰を降ろして酒を飲んでいて、それはあの夜に彼女と同じように闊歩していたあの奇妙な連中だった。
 最初に俺に気付いたのは、あの時、煙管の灰をわざと振り落としてきたトリカワで、彼はモヒカンヘアーが乱れるのも気にもせず、頭を掻きながら露骨に嫌そうな顔をした。
「あんた、あの時の…………」
 トリカワはそう言って、決まり悪そうに焼き鳥の皮を頬張ったが、他の連中はきょとんとした表情をするだけだった。他は誰も、俺のことなど覚えていなかった。それどころか、あの夜、路地裏に人間が倒れていたことさえ、気付いていないのだった。それもそのはずで、あの晩は皆揃って錠剤の化学作用にすっかりやられてしまっていて、どこを通ってどうやってねぐらまで帰ったのかさえ定かではないのだと、あの夜俺の手を踏んづけたフジマサが飄々としてそう言った。
 ミンゴスも、俺のことなど覚えていなかった。
「なにそれ、チョーウケる」
 と、笑いながら俺の話を聞いていた。
「そうだ、思い出した。あんた、ヤクをそいつにあげてたんだよ」
 サビにそう指摘されても、ミンゴスは大きな瞳をさらに真ん丸にするだけだった。
「え、マジ?」
「マジマジ。野良猫に餌やってるみたいに、ヤクあげてたよ」
「ミンゴス、猫好きだもんねー」
 どこか的外れな調子でそう言ったリリコは、またしても妙���ハイテンションで、すでに酔っているのか、何か回っているとしか思えない目付きをしている。
「ってか、ふたりともよく覚えてるよね」
「トリカワは、ほら、あんまヤクやんないじゃん。ビビリだから」
「チキンだからね」
「おい、チキンって言うな」
「サビは、ほら、やりすぎて、あんま効かない的な」
「この中でいちばんのジャンキーだもんね」
「ジャンキーっつうか、ジャンク?」
「サビだけに?」
「お、上手い」
 終始無言のレンゲが軽い拍手をした。
「え、どういうこと?」
「それで、お前、」
 大きな音を立てて、キクスイがビールのジョッキをテーブルに置いた。ジョッキを持っていた左手は、薬指と小指が欠損していた。
「ここに何しに来た?」
 その声には敵意が含まれていた。その一言で、他の連中も一瞬で目の色を変える。巣穴に自ら飛び込んできた獲物を見るような目で、射抜かれるように見つめられる。
 トリカワはさりげなく焼き鳥の串を持ち変え、サビはカップ酒を置いて右手を空ける。フジマサは、そこに拳銃でも隠しているのか、片手を甚平の懐へと忍ばせている。ミンゴスはその脚ゆえか、誰よりも早く椅子から腰を半分浮かし、反対に、レンゲはテーブルに頬杖を突いて半身を低くする。ただリリコだけは能天気に、半分溶けてなくなった前歯を見せて、豪快に笑う。
「ねぇ皆、違うよ、この子はミンゴスに会いに来たんだよ」
 再びきょとんとした顔をして、ミンゴスが訊き返す。
「あたしに?」
「そうだよ」
 大きく頷いてから、リリコは俺に向き直り、どこか焦点の定まらない虚ろな瞳で、しかし幸福そうににっこりと笑って、
「ね? そうなんだよね? ミンゴスに、会いたかったんでしょ」
 と、言った。
「あー、またあのヤクが欲しいってこと? でもあたし、今持ち合わせがないんだよね」
「もー、ミンゴスの馬鹿!」
 突然、リリコがミンゴスを平手打ちにした。その威力で、ミンゴスは座っていた椅子ごと倒れる。金属製の義足が派手な音を立て、トリカワが慌てて立ち上がって椅子から落ちた彼女を抱えて起こした。
「そーゆーことじゃなくて!」
 そう言うリリコは悪びれた様子もなく、まるでミンゴスが倒れたことなど気付いてもいないようだったが、ミンゴスも何もなかったかのようにけろりとして椅子に座り直した。
「この子はミンゴスラブなんだよ。ラブ。愛だよ、愛」
「あー、そーゆー」
「そうそう、そーゆー」
 一同はそれで納得したのか、警戒態勢を解いた。キクスイだけは用心深く、「……本当に、そうなのか?」と尋ねてきたが、ここで「違う」と答えるほど、俺も間抜けではない。また会いたいと思ってここまで来たのも真実だ。俺が小さく頷いてみせると、サビが再びカップ酒を手に取り、
「じゃー、そーゆーことで、こいつのミンゴスへのラブに、」
「ラブに」
「愛に」
「乾杯!」
 がちゃんと連中の手元にあったジョッキやらグラスやらがぶつかって、
「おいおい愚か者ども、当の本人が何も飲んでないだろうよ」
 フジマサがやれやれと首を横に振りながら、空いていたお猪口にすっかりぬるくなっていた熱燗を注いで俺に差し出し、
「歓迎しよう、見知らぬ愚か者よ。貴殿に、神のご加護があらんことを」
「おめーは仏にすがれ、この坊主崩れが」
 トリカワがそう毒づきながら、焼き鳥の皮をひと串、俺に手渡して、
「マジでウケるね」
 ミンゴスが笑って、そうして俺は、彼らの末席に加わったのだ。
    ミンゴスはピンク色のウェーブがかった髪を腰まで伸ばしていて、そして背中一面に、同じ色をした翼の刺青が彫られていた。
 本当に羽毛が生えているんじゃないかと思うほど精緻に彫り込まれたその刺青に、俺は幾度となく手を伸ばし、そして指先が撫でた皮膚が吸いつくように滑らかであることに、いつも少なからず驚かされた。
 腰の辺りが性感帯なのか、俺がそうする度に彼女は息を詰めたような声を出して身体を震わせ、それが俺のちっぽけな嗜虐心を刺激するには充分だった。彼女が快楽の海で溺れるように喘ぐ姿はただただ扇情的で、そしていつも、彼女を抱いた後、子供のような寝顔で眠るその横顔を見ては後悔した。
 安いだけが取り柄のホテルの狭い一室で、シャワーを浴びる前に外されたミンゴスの右脚は、脱ぎ捨てられたブーツのように絨毯の上に転がっていた。義足を身に着けていない時のミンゴスは、人目を気にも留めず街を闊歩している姿とは違って、弱々しく薄汚い、惨めな女のように見えた。
 太腿の途中から失われている彼女の右脚は、傷跡も目立たず、奇妙な丸みを帯びていて、手のひらで撫で回している時になんとも不可思議な感情になった。義足姿は見慣れていて、改めて気に留めることもないのだが、義足をしていないありのままのその右脚は、直視していいものか悩み、しかし、いつの間にか目で追ってしまう。
 ベッドの上に膝立ちしようにも、できずにぷらんと浮いているしかないその右脚は、ただ非力で無様に見えた。ミンゴスが義足を外したところは、彼女を抱いた男しか見ることができないというのが当時囁かれていた噂であったが、俺は初めて彼女を抱いた夜、何かが粉々に砕け散ったような、「なんだ、こんなもんか」という喪失感だけを得た。
 ミンゴスは誰とでも寝る女だった。フジマサも、キクスイも、サビもトリカワも、連中は皆、一度は彼女を抱いたことがあり、それは彼らの口から言わせるならば、一度どころか、もう飽き飽きするほど抱いていて、だから近頃はご無沙汰なのだそうだった。
 彼らが彼女の義足を外した姿を見て、一体どんな感情を抱いたのかが気になった。その奇妙な脚を見て、背中の翼の刺青を見て、ピアスのあいた乳首を見て、彼らは欲情したのだろうか。強くしたたかに生きているように見えた彼女が、こんなにもひ弱そうなただの女に成り下がった姿を見て、落胆しなかったのだろうか。しかし、連中の間では、ミンゴスを抱いた話や、お互いの性癖については口にしないというのが暗黙の了解なのだった。
「あんたは、アレに惚れてんのかい」
 いつだったか、偶然ふたりきりになった時、フジマサがチェ・レッドに火を点けながら、俺にそう尋ねてきたことがあった。
「アレは、空っぽな女だ。あんた、あいつの義足を覗いたかい。ぽっかり穴が空いてたろう。あれと同じだ。つまらん、下種の女だよ」
 フジマサは煙をふかしながら、吐き捨てるようにそう言った。俺はその時、彼に何も言い返さなかった。まったくもって、この坊主崩れの言うことが真であるように思えた。
 ミンゴスは決して無口ではなかったが、自分から口を開くことはあまりなく、他の連中と同様に、自身のことを語ることはなかった。話題が面白かろうが面白くなかろうが、相槌はたいてい「チョーウケる」でしかなく、話し上手でも聞き上手でもなかった。
 風俗店で働いている日があるというリリコとは違って、ミンゴスが何をして生計を立てているのかはよくわからず、そのくせ、身に着けているものや持ちものはブランドもののまっピンクなものばかりだった。連中はときおり、ヤクの転売めいた仕事に片脚を突っ込んで日銭を稼いでいたが、そういった時もミンゴスは別段やる気も見せず、それでも生活に困らないのは、貢いでくれる男が数人いるからだろう、という噂だけがあった。
 もともと田舎の大金持ちの娘なんだとか、事故で片脚を失って以来毎月、多額の慰謝料をもらい続けているんだとか、彼女にはそんな具合で嘘か真実かわからない噂ばかりで、そもそもその片脚を失くした理由さえ、本当のところは誰も知らない。訊いたところではぐらかされるか、訊く度に答えが変わっていて、連中も今さら改まって尋ねることはなく、彼女もまた、自分から真実を語ろうとは決してしない。
 しかし、自身の過去について触れようとしないのは彼女に限った話ではなく、それは坊主崩れのフジマサも、ヤクザ上りのキクスイも、自殺未遂を繰り返し続けているレンゲも、義務教育すら受けていたのか怪しいリリコも、皆同じようなもので、つまりは彼らが、己の過去を詮索されない環境を求めて流れ着いたのが、この面子という具合だった。
 連中はいつだって互いに妙な距離を取り、必要以上に相手に踏み込まない。見えないがそこに明確な線が引かれているのを誰しもが理解し、その線に触れることを極端に避けた。一見、頭のネジが外れているんだとしか思えないリリコでさえも、いつも器用にその線を見極めていた。だから彼らは妙に冷めていて、親切ではあるが薄情でもあった。
「昨日、キクスイが死んだそうだ」
 赤提灯の下、そうフジマサが告げた時、トリカワはいつものように焼き鳥の皮を頬張ったまま、「へぇ」と返事をしただけだった。
「ドブに遺体が捨てられてるのが見つかったそうだよ。額に、銃痕がひとつ」
「ヤクの転売なんかしてるから、元の組から目ぇ付けられたのか?」
 サビが半笑いでそう言って、レンゲは昨日も睡眠薬を飲み過ぎたのか、テーブルに突っ伏したまま顔を上げようともしない。
「いいひとだったのにねー」
 ケラケラと笑い出しそうな妙なテンションのままでリリコがそう言って、ミンゴスはいつものように、椅子に立てた片膝を抱くような姿勢のまま、
「チョーウケるね」
 と、言った。
 俺はいつだったか、路地裏で制裁を食らった日のことを思い出していた。初めてミンゴスと出会った日。あの日、俺が命までをも奪われずに済んだのは、奇跡だったのかもしれない。この街では、そんな風に人が死ぬのが普通なのだ。あんなに用心深かったキクスイでさえも、抗えずに死んでしまう。
 キクスイが死んでから、連中の日々は変化していった。それを顔に出すことはなく、飄々とした表情を取り繕っていたが、まるで見えない何かに追われているかのように彼らは怯え、逃げ惑った。
 最初にこの街を出て行ったのはサビだった。彼は転売したヤクの金が手元に来たところで、一夜のうちに姿をくらました。行方がわからなくなって二週間くらい経った頃、キクスイが捨てられていたドブに、舌先がふたつに裂けたベロだけが捨てられていたという話をフジマサが教えてくれた。しかしそれがサビの舌なのか、サビの命がどうなったのかは、誰もわからなかった。
 次に出て行ったのはトリカワだった。彼は付き合っていた女が妊娠したのを機に、故郷に帰って家業を継いで漁師になるのだと告げて去って行った。きっとサビがここにいたならば、「お前の船の網に、お前の死体が引っ掛かるんじゃねぇの?」くらいは言っただろうが、とうとう最後まで、フジマサがそんな情報を俺たちに伝えることはなかった。
 その後、レンゲが姿を見せなくなり、彼女の人生における数十回目の自殺に成功したのか、はたまたそれ以外の理由で姿をくらましたのかはわからないが、俺は今でも、その後の彼女に一度も会っていない。
 そして、その次はミンゴスだった。彼女は唐突に、俺の前から姿を消した。
「なんかぁ、田舎に戻って、おばあちゃんの介護するんだって」
 リリコがつまらなそうに唇を尖らせてそう言った。
「ミンゴスの故郷って、どこなの?」
「んー、秋田」
「秋田。へぇ、そうなんだ」
「そ、秋田。これはマジだよ。ミンゴスが教えてくれたんだもん」
 得意げにそう言うリリコは、まるで幼稚園児のようだった。
 フジマサは、誰にも何も告げずに煙のように姿を消した。
 リリコは最後までこの街に残ったが、ある日、手癖の悪い風俗の客に殴られて死んだ。
「お前、鍵屋で働く気ない? 知り合いが、店番がひとり欲しいんだってさ」
 俺は変わ��ず、この灰色の街でゴミの残滓のような生活を送っていたが、ジャバラにそう声をかけられ、錠前屋でアルバイトをするようになった。店の奥の物置きになっていたひと部屋も貸してもらい、久しぶりに壁と屋根と布団がある住み家を得た。
 錠前屋の主人はひどく無口な無骨な男で、あまり熱心には仕事を教えてはくれなかったが、客もほとんど来ない店番中に点けっぱなしの小型テレビを眺めていることを、俺に許した。
 ただ単調な日々を繰り返し、そうして一年が過ぎた頃、埃っぽいテレビ画面に「秋田県で殺人 介護に疲れた孫の犯行か」という字幕が出た時、俺の目は何故かそちらに釘付けになった。
 田舎の街で、ひとりの老婆が殴られて死んだ。足腰が悪く、認知症も患っていた老婆は、孫娘の介護を受けながら生活していたが、その孫に殺された。孫娘は自ら通報し、駆けつけた警察に逮捕された。彼女は容疑を認めており、「祖母の介護に疲れたので殺した」のだという旨の供述をしているのだという。
 なんてことのない、ただのニュースだった。明日には忘れてしまいそうな、この世界の日常の、ありふれたひとコマだ。しかし俺は、それでも画面から目を逸らすことができない。
 テレビ画面に、犯人である孫娘が警察の車両に乗り込もうとする映像が流れた。長い髪は黒く、表情は硬い。化粧っ気のない、地味な顔。うつむきがちのまま車に乗り込む彼女はロングスカートを穿いていて、どんなに画面を食い入るように見つめても、その脚がどんな脚かなんてわかりはしない。そこにあるのは、人間の、生身の二本の脚なのか、それとも。
 彼女の名前と年齢も画面には表示されていたが、それは当然、俺の知りもしない人間のプロフィールに過ぎなかった。
 彼女に限らない。俺は連中の本名を、本当の年齢を、誰ひとりとして知らない。連絡先も、住所も、今までの職業も、家族構成も、出身地も、肝心なことは何ひとつ。
 考えてもしょうがない事柄だった。調べればいずれわかるのかもしれないが、調べる気にもならなかった。もしも本当にそうだったとして、だからなんだ。
 だから、その事件の犯人はミンゴスだったのかもしれないし、まったくなんの関係もない、赤の他人なのかもしれない。
 その答えを、俺は今も知らない。
   ミンゴスの右脚は太腿の途中から金属製で、そのメタリックなピンク色の輝きは、無機質な冷たさを宿しながらも生肉のようにグロテスクだった。
「そう言えば、サビってなんでサビってあだ名になったんだっけ」
「ほら、あれじゃん、頭が錆びついてるから……」
「誰が錆びついてるじゃボケ。そう言うトリカワは、皮ばっか食ってるからだろ」
「焼き鳥は皮が一番美味ぇんだよ」
「一番美味しいのは、ぼんじりだよね?」
「えー、あたしはせせりが好き」
「鶏の話はいいわ、愚か者ども」
「サビはあれだよ、前にカラオケでさ、どの歌でもサビになるとマイク奪って乱入してきたじゃん、それで」
「なにそれ、チョーウケる。そんなことあったっけ?」
「あったよ、ミンゴスは酔っ払いすぎて覚えてないだけでしょ」
「え、俺って、それでサビになったの?」
「本人も覚えてないのかよ」
「リリコがリリコなのはぁ、芸能人のリリコに似てるからだよ」
「似てない、似てない」
「ミンゴスは?」
「え?」
「ミンゴスはなんでミンゴスなの?」
「そう言えば、そうだな。お前は初対面の時から、自分でそう名乗っていたもんな」
「あたしは、フラミンゴだから」
「フラミンゴ?」
「そう。ピンクだし、片脚じゃん。ね?」
「あー、フラミンゴで、ミンゴス?」
「ミンゴはともかく、スはどっからきたんだよ」
「あれじゃん? バルサミコ酢的な」
「フラミンゴ酢?」
「えー、なにそれ、まずそー」
「それやばいね、チョーウケる」
 赤提灯が揺れる下で、彼女は笑っていた。
 ピンク色の髪を腰まで伸ばし、背中にピンク色の翼の刺青を彫り、これでもかというくらい全身をピンクで包んで、金属製の片脚で、街角で、裏路地で、高架下で、彼女は笑っていた。
 それが、俺の知る彼女のすべてだ。
 俺はここ一年ほど、彼女の話を耳にしていない。
 色褪せ、埃を被っては、そうやって少しずつ忘れ去られていくのだろう。
 この灰色の街ではあまりにも鮮やかだった、あのフラミンゴ娘は。
     了 
0 notes
guragura000 · 4 years ago
Text
世界にごめんなさい
あたし達は駅前の安っぽいチェーン店で、ハンバーガーを食べていた。この店は繁華街と通りを一本隔てた場所に建っている。横断歩道を渡れば、そこは猥雑な世界だ。ハイヒールのお姉さんが生足をブリブリ出して闊歩している。男どもが万札ばりばり言わして女を買いにきてる。まるで薄汚い森のようだ。あたし達はそんな大人の事情なんて知りませんよという顔をして、だらだら話をしていたんだ。制服から誇らしげに生やした太腿を、忙しなく組み替えながら。学校をさぼったわけではない。今はれっきとした放課後。ヤンチャが格好いいなんて価値観、もうダサいんだ。
「彼氏とのセックスが良くないんだよねえ」
とアコは言った。あたしは、
「当たり前じゃん」
と相槌をうつ。
「世の中、そういうもんなのだ」と、あたし。
「それでいいのだ」と、アコ。
「西から昇ったお日様が」
「違くて。そういうもんってどういうもんよ。ミイはすぐ煙に巻くような言い方するんだから」
「そういうもんなんだよ。愛に運命があるのと同じように、セックスにも運命があると思うのよね。あたしは二つ同時に当たりを引くなんてこと、まずないと思ってるの」
アコは「あ、そうなの」なんて、分かったような分かっていないような返事をする。仕方がない。アコは彼氏とのセックスの記憶をなぞるので忙しいのだ。あたしはアコに聞く。
「ていうかあんた、彼氏いたっけ?」
「向こうがそう言い張るからもしかして彼氏なのかなって」
「じゃあんたは心の底では、その人のことを彼氏だと思ってないんだ」
「めんどくさー。別にどうでもいいじゃん。彼氏なんてさ、セックスした相手に貼るレッテルよ」
そうね。ほんとそうだわ。あたし達はこの話題をゴミ箱に捨てた。
アコはチープな紙コップからコカコーラを啜っている。席を陣取るために飲み物頼んだのに、それじゃあすぐになくなっちゃうよ。それに見てみろ、このどす黒さ。見るからに不健康な色をしている。あたしは得体の知れない飲み物を美味しそうに啜ってるアコが信じられない。あたしはストローでオレンジジュースを掻き回しながら言う。
「そうして世の中回ってるのね。くるくるくるくる」
「だーかーら、それが分かんないの。全然納得いかないよ」
アコはぶりっと頬を膨らませる。可愛くねえ。
「あーあ、セックスがスーパーマン並に上手い男捕まえて、朝から晩までイかされたい。どっかにいると思うんだよね、そういうバカ野郎が」
「いねーよ」
あたし達はげらげら笑った。
アコは氷が溶けて地獄の釜のようになった紙コップをぐしゃっと握り潰した。あたし達はとっくに冷めてるテリヤキバーガーにかぶりつく。お腹は空いてないんだけど、それとこれとは関係がないんだ。あたし達は性欲のまま行きずりのサラリーマンとセックスするように、物を食べまくる。あたし達は満足するまで食べたいんだ。色んなものを。与えられるものがあったら、全部ぺろっとたいらげたいんだ。
「誰か与えてくれないかな。何かを」
あたしが呟くと、アコが神妙にうなずいた。おっかしいの。バンズの端っこから茶色い汁がこぼれ落ちる。アコはそれを人差し指ですくい上げ、べろっと舐める。
「アコ、あんたその仕草似合ってるよ」
「うそ。あたしエロい?」
「はは。それ、男の前で言えよ」
「そうねえ。確かに」
あたし達はしょっぱい唇をぺろぺろ舐めながら、チェーン店を後にした。
俗っぽい店に行った後は、こんな風景が頭に浮かぶ。ソースまみれの包み紙が、店員の手で無様に捨てられるの。あたしはその光景を思い浮かべると、少し興奮するんだ。それがあたしだったらいい。見知らぬ男のたくましい手で、骨まで丸めこまれて血みどろのまま捨てられたい。
「ねえねえ、あたしちょっとセックスしてくから、ミイ先に帰ってて」
目を離した隙に、アコは見知らぬサラリーマンと腕を組んでわくわくしている。いつもこんな調子だ。あたしは舌を出して言う。
「ばーか。殺されても知らないからな。えんじょこーさい、不倫、殺人事件だ、アホ」
「うわっ。ださー。九十年代的な退廃の香りがぷんぷんするよ」
「バブル崩壊の年ですからね、荒みもします。エヴァンゲリオン然り」
サラリーマンが口を挟む。うるせーお前は黙って七三になっていればいいんだよ。あたしはアコに囁く。
「その男、鞄に包丁忍ばせてるかもよ」
「な、何を言ってるんだ君は。ぼくは根っから真面目で爽やか彼女と妻を大事にする健全にスケベの……」
と、リーマン。うるせーっての。
「ホテル入った途端、後ろからぶすっ。あんたの動脈から血が噴き出るよ。ダブルベッドが血染め。大きな青いゴミ箱、満タンになっちゃうくらいの血液」
「うわあ、そしたらアコ、蝋人形みたいに青白くなっちゃうね。王子様のキスを待つ眠り姫みたい。最高にきれいじゃん。名前が可愛いからラプンツェルでもいいけどぉ」
「こいつはアコがあんまり美しいから、内臓ずるずる啜って、お尻の肉を持ち帰ってホルマリン漬けにして、毎日眺めながらオナニーしちゃうんだから」
「うひひ。何それ。あたしサイコホラー映画のヒロインになれるの? うれしー。ね、こいつのあだ名エド・ゲインにしようよ。3Pしながら羊たちの沈黙見よう?」
アコが背広に皺が寄るほど男の腕を抱きしめるから、サラリーマンはぎょっとして脂汗をかく。あたしはごめん、のポーズをする。
「遠慮しとく。想像したらお腹がもたれてきた」
「あそ。じゃね、ミイ。今日も黙って死ねよ」
「うん、アコも耳噛まれて死ねよ」
眠りって死と似てない? つまり、死ねはおやすみの挨拶。あたし達は毎日こうしてさよならするんだよ。年に何度も生命の終わりがくるのって、いいじゃん。
 あたし達は壊れた人形みたいにぶらぶらと手を振りあった。男のよれよれした革靴と、アコの見せかけの純潔じみたピカピカのローファーが立ち去るのを見送りながら、あたしはコインパーキングにだらしなく生えてる雑草になりたいと思った。あーあ、めんどくさ。
 兄ちゃんの部屋は男臭い。机にもベッドにも、わけ分からんものが山積み。兄ちゃん、教科書はどこにあんの? 辞書は? 鉛筆は? この人ちゃんと勉強してんのかなあ。山の中から煙草をパクってふかしていたら、兄ちゃんに後ろから蹴り飛ばされた。あたしは盛大にテーブルの角に頭をぶつける。
「いてーっ。死ねっ」
「オマエは二の句に死ね、だ。芸なし。つまんねー女」
「そりゃあんたの前ではつまんねー女だよ。面白さはとっておくんだ」
「知らん男のために? オマエの面白さって使い捨てなんだな」
「そりゃそうよ。言葉や価値観なんてツギハギで使い捨てなのよ。哲学者も心理学者もいっぱいいるんだから、どんな精神論だって替えがきくわよ。少し本読みゃね」
「まー確かに」
兄ちゃん拳骨であたしの後頭部を叩く。あたしはいてっと叫びながら、もっとしてと思う。あたしってヘンタイだ。
あたしってヘンタイだ。兄ちゃんに服を脱がされている。これからセックスするんだ。こういうのって気持ちいいんだよなあ。背徳的ってやつ? 法律なんてどうでもいい。こんなの当たり前だから。近親相姦なんて虐待や売春と同じで、常識という絨毯をめくれば白アリみたいにありふれてんだ。
「ねえ兄ちゃん」
「うるせー集中できないだろ」
頬を叩かれる。わーい、もっとして。
あたしの脱ぎ散らかしたスカートと兄ちゃんの学ランが、床の上で絡まりあっている。靴下の跡がかゆい。兄ちゃんの背中に腕を回す。熱くて湿ってる。何で兄ちゃんの背中はいつも湿っているんだろう? 一つ屋根の下に住んでいるのに、兄ちゃんって分かんないんだ。
兄ちゃんは眉間に皺を寄せてあたしを睨みながら交わる。だからあたしはいつも、兄ちゃんが気持ちいいのかそうでないのか分からなくなる。それでなくてもあたしは時々、観察されている気分になるんだよ。色んな人から標本みたいにね。
あたしは揺すぶられながら兄ちゃんを罵る。
「くず。くず。ばかばかばか。何十人もの彼女がいるのに妹と浮気する男のくず! バカ野郎、嬉しそうに腰ふってんじゃねーよ」
「そういうバカに抱かれて嬉しそうにしてるオマエは何なんだよ。ハツカネズミか。年中発情期か」
まあ性欲強いのは確かなことよ。真昼間の光の中で、あたしの体はよく見えているだろうか。あたしの肋や乳首やお尻のラインが、兄ちゃんの網膜に突き刺さって一生消えなくなればいい。兄ちゃんは制服のネクタイをあたしの首に巻きつけて、顔が鬱血するまでぎりぎり絞めあげる。
「兄ちゃん、こんなので興奮すんの? ヘンタイだね」
「悦んでるのはオマエじゃん」
「分かってらっしゃる」
「死ね、死ね、死ね。黙って死ね、このバカ女」
思いっきり絞め上げるから、あたしはげえげえ喘ぐ。色気も何もあったもんじゃない。けれども兄ちゃんだらだら汗かいてるし、まあいいか。
兄ちゃん、このまま殺してよ。あたしは誰からでもいい、愛されたまま死にたいんだ。目を瞑ってるうちにさ。抱きしめてもらってるうちにさ。あたしは人込みにいても、ぎゅうぎゅうの満員電車に乗っていても、体を冷たい風がひゅうひゅう通り抜けていくみたいなんだ。あたしの周りには常に小さな隙き間があって、それが疾風を呼び寄せる。
あたしは兄ちゃんの耳に頬を寄せて呟く。
「兄ちゃんも寂しい?」
「だからしたくねえやつとセックスしてんだよ」
ああ、兄ちゃん大好き。兄ちゃんの寂しさに包丁を突き立てて抉ってあげたい。兄ちゃんとあたしはキスして殴り合ってぶつかり合って静かにイきました。笑えます。
した後の朝日はだるい、ってどっかの歌人が詠んでたよ。あたしはセックスした後に朝日なんて見たことないな。だってするのってだいたい誰かのアパートかラブホテルか兄ちゃんの部屋だからさあ。アパートかホテルだったとしたら、さっさと家に帰ってだらだらして寝ちゃうからさあ。兄ちゃんと致す時は大抵お昼だしね。した後にピロートーク、そんな愛が詰まったお泊まりはしたことないんだ。
「愛なんていらねーよ」
ガン、また兄ちゃんからぶたれる。あたしは悦んでにこにこ笑いながら、心底、
「いらねーね」
と言う。あたしと兄ちゃんはこういうところで血が繋がっているんだなあ。神様いらんことしい。
兄ちゃんは毛布に包まって、まるで芋虫みたい。あたしはぐったりソファーに落ち着いている。お昼からどろどろに絡まり合うのって、気持ちのいいものなのよ。
明るい光に照らされて、身体中顕になるとあたしは、もう誤魔化しがきかないと思っちゃうんだ。あたしは紙の上のテリヤキバーガーで、色んなところから汁垂れ流しながら誰かに食べられる。兄ちゃんはあたしの肩を齧って歯型をつけるけれど、あたしは、そうされていると訳が分からなくなるんだ。あたしの腹に収納された小腸がもぞもぞもぞもぞ蠢き出すからさあ。
あたしは己の心の構造を突っつき回す度、いても立ってもいられなくなるんだ。あたしの心臓には歯がついていて、触れる人あらば噛みつこうとする。いつだってかっちかっちと牙が鳴る音が、胸のあたりから聞こえてくる。兄ちゃんもあたしの胸に頭を乗せて聞いてみてよ。
兄ちゃんはあたしが腕を突っついても振り向いてくれない。分かっている。つれない男だ。あたしはセックスした相手が思い通りにならないことにイライラして、こいつの気を引くのを諦める。
そうこうしてるうちに凶暴な心臓はどんどん歯を鳴らし始め、犬歯が刃になって、舌が三十センチも伸びた。あたしの心臓は下品な獣のように、舌をべろべろ出しながら涎を垂れ流している。全身がわなわな震えだす。あたしはたまらず兄ちゃんの腕にしがみつく。
寂しい。寂しい。兄ちゃん。寂しいよ。
こういう時だけ兄ちゃんは優しくて頭を撫でてくれるけれど、しばらくすると煙草吸いにどっか行く。突然放り出されたあたしの両腕、ドチンと地面に落ちる。
 あたしは汗も流さずに外に出た。セックスしてる間にアコから連絡が来てた。やり終わったから踊ろうって。アマチュアかプロか分からない人がイキってる、クラブという煙たい場所で。あたし達は繁華街で合流する。アコがつまらなそうに言う。
「なーんだ。まだ生きてたの?」
あたしもやり返す。
「あんたこそ。この死に損ないっ」
虫食いだらけの街路樹が、あたしの肩に葉を落とす。やだ、全然しゃれてないんだな。そもそもこいつら、兵士みたいでいけすかないんだ。どこぞのエラい建築家が、景観がどうのとうそぶいて植えたけれど、夏になれば虫食いで茶色くなるし、秋になれば銀杏が臭う。冬は落ち葉の大洪水だ。だからおせっかいな市の職員が、定期的に丸ハゲにしちゃう。その結果みっともなくぽちょぽちょと葉がついているだけなので、景観を整えるという前提そのものがどこかにいっちまってる。この辺に巣食う太った芋虫、見捨てられた街路樹を食いつくしてよ。食いつくしたらパワーアップして、ビルの鉄骨も食べつくして、モスラになって飛んでってしまえ。
あたしの思考の如くもつれた電線を見上げながら歩いてたら、アコがぺちゃくちゃ喋りだした。
「またミイ、兄ちゃんとセックスしたんだね。残り香で分かるよ」
「んー」
あの電線が切れたらいいのに。あたし、それを噛んで感電死したい。山田かまちみたいにかっこよく死にたい。アーティスティックに死ねる人こそ、真の芸術家。
「ね、ミイ。さっきのサラリーマンとのセックスだけどね。気持ちよかったけど気持ちよくなかった」
「どゆこと?」
「分かんない。あのさあセックスって、してる間は相手のこと凄く好きだって思うけど、終わるとサーッと冷めるよね」
「あんたは男か」
「そうだったらよかったなあ。だって簡単じゃん。終わったら何もかもスカッと忘れてさ、どこへだって行けちゃうんだよ。あたしたちって穴ポコだから、洞窟に潜むナメクジみたいにうじうじするしかないじゃん。それに愛液とひだの形がそこはかとなくあの虫と似てるし」
「ははは。ばーか」
信号が凶暴な赤を点滅させ始めたので、あたし達は青を待つ。あたしは横断歩道のサイケな白黒が、シマウマを連想させるから好きなんだ。あたし達もシマウマと同じだから。孤独という猛獣から逃れるために、制服を着て普通の女の子のふりをして、コンクリートジャングルに溶け込もうとしている。保護色を必要としているから、同じ。
信号待ちの間、あたしもアコも横目で男を品定めしていた。そいつらの顔見るだけであたし、セックスしてるところを想像しちゃうんだ。どういう強さであたしのこと押さえつけるのかな、とか。アコも絶対そうだよ。
「あたし生まれ変わったらかっこいい男になる。地上にいる全ての女の子とやりまくって、無様に捨ててやるんだ」
お、それいいね、と振り向く。アコは魔法みたいにどこからか取り出したリップを唇に塗りたくっていた。その赤いいな。思いっきり下品で。
どうしてクラブの壁ってどこもマットな黒なんだろう。病院みたいな白でもいいじゃんかねえ。ま、見た目がどうであろうが、豚骨ラーメン屋に似た油の臭いがしてようが、何もかもふっとばしてくれる爆音が鳴ってればそれでいいよ。そうでしょ?
パッと見何人か分からないオーナーは、いつもあたし達に酒を奢ってくれる。この人絶対あたし達が高校生だと知ってるよな。いいんだけどね。あたし達はこっそり二人でトイレに篭って、コップの中身を便器にぶちまける。おしっこみたいに流されてゆくビールを見ながら、ざまあみろってケタケタ笑う。余計な優しさなんてクソったれだ。壊すのって面白い。それが大事なものほどね。
あたし達は踊り狂う。踊り狂う。発情モードに入った男がグラマーな女の尻を眺め回している。ああいいな。あたしもあの男に見つめられたいな。あたしは常に誰かに恋される人間になりたくなっちゃうんだ。誰もが愛する理想の女になりたい。セックスの相手が変わる度、あたしの体も変形するのならよかったのにな。あたし、そういうラブドールならよかった。
スピーカーから音の水を浴びながら、あたし達は狂ったように笑う。何もかもどーってことないみたいに。どーってことないんだけどさ。深刻な悩みがあるわけじゃないし。ミラーボール以外は床も壁も黒だ。黒、黒、黒。あたし達の制服がくっきりと浮かびあがる。あたしこのまま、光になって消えちゃいたい。
あたしが寂しがる、消えたがる、殺されたがる理由なら、シンリガクの本読みゃ理解できるんじゃないかな。だいたいの本には親が原因って書いてるよ。そうでなけりゃ肛門がどうとか。昔の人もたいがいスケベだよねえ。髭生やした爺ちゃんが赤ちゃんの下半身にばっかり注目して。そんなのってどうでもいい。いっそあたし達、下半身だけの化け物になっちゃえばいいんじゃない?
アコがふざけてあたしの腹をぶった。あたしもぶちかえす。アコは言う。
「ねえ、こないだあたしの彼氏貸したじゃん。どうだった?気持ちよかった?」
「それって今の彼氏? それとも前の? それとも前の前の……」
「えーと、分かんなくなっちゃった。いっか。誰だって同じだし」
「やっぱあたしら気が合うな」
ヘドバンしてると頭に脳内物質が溢れて、ボルチオ突かれるより気持ちよくなれるんだ。クソみたいな曲でも、そうしちゃえばどれも同じだよ。あたしもあなたも恋も愛も、爆弾で吹っ飛ばして塵にしてやる。
「アコ、あたしの彼氏はどうだった?」
「どうだったろ。ていうかどれだっけ」
「どれ」だって。笑える。
「ミイ。あたし達も数々の男に『どれ』って呼ばれてるのかな?」
「女子高生A、Bみたいに?」
「そうそう」
「そうだったらいいね。あたし、そうなりたいなあ」
「あたしも。あたし達、消えちゃいたいね」
「うん。消えて、きれいな思い出になりたい」
「天気のいい日だけきらきらして見えるハウスダストみたいにね」
「普段は濁っているのに、台風の後だけ半透明になる川の水みたいに」
「あたし、雫くんになりたい。知ってる? 絵本だよ。雫くんがさ、川に流されて海に到着して蒸発して、また雨になるの」
「それって話が違くなってない?」
「あ、そう?」
あたし達は全然センチメンタルじゃないダブステに貫かれながら手を繫いだ。アコの手のひらだけがあったかい。
あたし達はフライヤーをハリセンのように折り曲げ、互いの頭をはたきながら帰った。夜のネオンっていいよね。泣いてる時に見える風景みたいに潤んでてさ。ネオンを見ながらしみじみしてると、ひょっとしたらあたしも純情な女子高生なんじゃって思えてくるんだ。肩書き的には正真正銘の女子高生なんだけど、すれっからしだから、あたし達は。アコはにかっと笑い、尖った八重歯を両手の親指で押した。
「あたし、死んでもいいくらい好きな人ができたら、八重歯をペンチで引っこ抜いてプレゼントしたいな。世界一大好きな人に抜歯した箇所の神経ぺろぺろ舐めてほしい」
システマチックな街灯の光が、アコの横顔を照らしている。彼女はぼやっと言った。
「あたし愛されたいんだ。本当はね。それなのになぜか行きずりの人と寝ちゃうんだよねえ。あたし好きな人ができても、隣に男の人いたらエッチしちゃうんだろうなあ」
「別にそんなこと考えなくてもよくない? 無意味だよ。してる間、気持ちよければいいじゃん。黙ってりゃ誰も傷つかないし」
「んーまあそうなんだけど。あたし時々ね、どっちなのか分かんなくなるんだ。エッチして自分を悦ばせているのか、傷つけているのかがさ」
「大丈夫だよ。誰もアコのことなんかそこまで気にしてないから」
アコは子犬みたいな目であたしを見た。あ、地雷踏んだかも。アコがチワワのようにぷるぷる震えだしたので、あたしは彼女をそっと抱き寄せ、おでこを優しく撫でてあげた。
「ごめんね。あたしだけだよ。アコの気持ちを知ってるの。あたしだけがアコを見守ってあげるね。きれいだって思ってあげるね。アコが何人もの男から忘れられようとも、あたしは覚えててあげる。あたしに八重歯くれたら、あんたの望み通り神経舐めつくしてあげるよ」
「ほんと?」
アコはあたしの胸に頭をすり寄せてくる。この子を絶対に不感症のロボットなんかにさせないんだから。あたしはありったけの体温でアコを包み込む。この子が気持ち良さそうに目を細めてくれたらいい。そしたらあたし久々に、幸せってやつを味わうことができるから。
「あたしねえ、アコとセックスしたいな」
「あたしもミイとセックスしたい」
「しよっか」
「いえーい」
わはは、なんて簡単なんだろう。
「あたし、ミイを愛してる」
あたしはうんと返事をしようとして、黙った。愛がどういうものなのか分からなかったから。
ラブホテルのベッドでアコの体を舐めながら、色白いなあ、と思う。
「ミイ女の子とするの初めて? あたしは初めて」
「ふーん」
いつもスマホに貼り付いてる親指をがじがじ齧る。あ、ここだけ爪のびてる。
「ミイはどういうの好みなの?」
「どういうのって?」
「体位とか」
「うーん、何だろ、分かんない」
「兄ちゃんとしてる時ってどんな感じ?」
「あたしが上に乗るの」
「へえー、意外」
「意外もクソもある?」
「分かんないけどさ」
アコの耳を齧る。皮膚が歯茎に気持ちいい。アコは、あんた歯が痒い犬みたいだねえ、なんて言ってる。あんたも一度人を噛んでみろ。あたしがアコの胸をむにむにしていると、彼女はまた喋りだす。あたしの涎が潤滑油になってんのか、この子の口はさあ。
「兄ちゃん、あんたにどんなことするの?」
「スリッパでぶつよ」
「えっ」
「枕で窒息死させようとしてくる」
「それって気持ちいいの?」
「どうでもいいの。されてる間はさ。どうでもいい方が気持ちいいんだ」
「ミイが自分を粗末にするのって、近親相姦してることに罪悪感があるから?」
「何フロイトみたいなこと言ってんの。あたし、そういうのって嫌いなんだ。中学生の頃に腐るほど心理学の本読んだけど、読めば読むほどあたしを狂わせた原因が憎らしくなってくるからさ」
「えっ、憎らしくなるように書かれてんじゃないの、ああいう本って」
「マジ?」
「マジマジ。きっと昔の人はあたし達に親殺しさせようと思ってあの本書いてんだよ」
「それマジかもねえ、だったら面白いし」
「きゃはきゃは」
あー、くだらねえ。
「ねえねえ、じゃあやってみてよ。あたしの首、絞めてみて」
あたしは自分がアコの言葉にぎょっとしたことに気がついて、奇妙な気持ちになった。ああ、あたしってまだぎょっとするんだなあ。色んなセックスしててもさ。あたしは目をきらきらさせてるアコが無償に「愛おしく」なっちゃったりして、彼女の胸に顔を押し付けた。
「アコにはできないよ」
彼女はあたしの珍しく真面目で優しい声に目を丸くした。
「どおして?」
「うーん」
「あんた誰にでも残酷なことしそうなのにね」
「そうなんだけどねえ」
「どうしてあたしにはしてくれないの? あたしとするのが気持ちよくないとか? それともあたしが嫌いなの?」
アコは、嫌いにならないで、と泣きそうになる。ああ、そうじゃない。今この瞬間、彼女と一つになれたらいい。物理的に一つになって、ぐちゃぐちゃになって、疲れ果てるまで喚きあいたい。ああ、あたし男だったらよかったのに。そしたらアコのこと、一時しのぎでも悦ばせてあげられたのに。今ほどこう思うことってないよ。あたしはとりあえずデタラメな文句パテにして、二人の隙き間を埋める。
「だってアコの肌ってふわふわしててきれいだからさ。傷つけたくないんだもん」
「それを言ったらミイだって、殴られたりしてるわりに肌きれいじゃん。だからあたしの首を絞めても大丈夫だよ」
「嫌」
「どうして?」
あたしはアコをぎゅっと抱きしめた。そうすることしかできなかった。
「ミイがあたしの超絶技巧スーパーマンになってよ」きゃはきゃは。
まだ言ってるこいつ。バカだなあ。
これを愛と呼ぶのかどうなのか。あたし、世に蔓延るほとんどの概念が嫌いだけど、「愛」は殊更に嫌いなんだ。だって得体が知れないんだもの。
あたしは感情ってやつが嫌い。思考ってやつも嫌い。人間が地球にのさばる繁殖菌であるのなら、知能なんかなければよかったんだ。子供を作る行為をするために些細なことに頭を悩ませるなんて、全く時間の無駄すぎるよ。それが人間のいいところなんてセリフ、よく言えたもんだ。人間は動物達を見下す限り、地球に優しくなんてなれない。本来の優しさは無駄がなく、システマチックなものなんだ。
そうでしょ? 兄ちゃん。
「うわ、指先紫になってる。いい感じに動脈つかまえたかも」
手首に巻かれた紙紐が食い込んで痛いけど、それがまた興奮するんだなあ。兄ちゃんガンガン口の中で動かすから、思わずえずきそうになる。ここでゲロ吐いたらどんなに気持ちいいかしら。兄ちゃんは咳き込むあたしを足で踏み付けて、死ね、死ね、シネって怒鳴る。あたしは毛だらけの兄ちゃんの足首に縋り付く。
「兄ちゃん。殺して。今すぐ包丁持ってきてあたしを殺して」
「はいはい」
兄ちゃんは白けた目であたしをいなす。彼の瞳から放たれるレーザービームで粉々になりたいわ、あたし。
「兄ちゃん。あたしの心臓どうにかして。兄ちゃんがこいつを握り潰してくれたら、あたし、あたし」
あたしの喉がひいっと鳴いた。あたしはバーガーソースみたいな涙を滴らせながらズルズル泣いた。兄ちゃんが濡れた頬をぺろぺろ舐めてくれたので、あたしは少し嬉しくなった。
兄ちゃんは今に包丁を持ってくる。兄ちゃんも本心では死にたいんでしょ? 知ってるんだから。二人で汗だくになって死のうよ。それであたしを、あたしだけのものにして。
あたしは愛という建前に摩耗しないため、行きずりの男に抱かれる自分が嫌いなんだ。あたしは愛を忘れたいんだ。忘れたらもう苦しまなくてすむもん。兄ちゃん、アコ、あたしは、あたしのこの心臓は、いつか満たされる日がくるのかなあ。たくさんの人とセックスしたら、寂しくなくなる日がくるのかなあ。誰かを愛しいと思える日がくるのかなあ。キスをしたら少し楽になれるから、誰彼構わずキスをねだることも、それで長く続いた友情をぶち壊すことも、先生から不倫を強要されることもなくなるのかなあ。
あたしの皮膚は涙と一緒にズルズル溶け落ちてゆく。兄ちゃんが思いも寄らぬ優しさであたしを抱きしめて「泣くな」なんて言うから、あたしはますます感動してしまう。けれどその昂りもすぐ「ばからしー」に冷まされる。お願い兄ちゃん、早く包丁、としゃくりあげながら、あたしはこのまま永遠に彼に頭を撫でられていたいと思った。
兄ちゃん、煙草吸いに行かないで。ずっとあたしの傍にいて。
けれど兄ちゃん煙草吸いにきっとどっか行く。
0 notes
hh1987zhonguo · 5 years ago
Text
戦後初めてやって来た日本人
外国に行って自分の国を知る、学ぶ、ということも良くある話。 この日はそういう一日だった。 教科書では学べない歴史を生き証人たちとともに学んだ。 歴史とは人間の営みの足跡だと思う。 多くは時の権力者、指導者に導かれ、翻弄されて作られた時間。 でも後世の人間が知るのは、ほとんどが大きな歴史的出来事や表面的なもの、一部でしかないように思う。 僕が魅力を感じる歴史とは、英雄や豪傑の話ではなく、その時代を生きた市井の名も無き人たちの悲喜こもごもとした日常の営みだ。 ここ光昭村では、短い滞在だったけれど旧満州国時代のそんな歴史の一部に触れることができた。
8月27日(木) 22日目
「もう7時よ!哥哥(お兄さん)、起きなさい!」 妹妹(妹)の善子ちゃんの声で叩き起こされた。 朴さん一家の朝は早い。みんな5時頃から起きている。 外は曇り空。 そして朝からスゴイご馳走。ビールまで出てくる。。。 昨夜も上にも下にも置かない歓迎ぶりで、たらふくご馳走をいただいた。 善子ちゃんは僕より二つ下の18歳。茶目っ気があり、一生懸命、日本語で話しかけてくる。ちょっと化粧が白すぎるのが気になるが、いい子で良かった♪ お父さんも村の書記長(村長)=共産党幹部、とは思えないような面白い人、お母さんも迫力のある肝っ玉母さん的な人で、仲の良い家族だった。朴という姓から分かるように、一家も朝鮮族の中国人だ。 中国旅ではほとんど朝飯抜きで過ごしてきた僕に、朝からご馳走、ビールは大変ありがたいが、満腹になっても「もっと食べて、もっと食べて」と何度も言うのは勘弁してほしい。 食後は居間にあるちゃぶ台で日記を書いたり、絵葉書を書いたり。善子ちゃんが興味深そうに覗きこんで、 哥哥 は何を書いているのか?と尋ねてくる。居間には直に座っているが、オンドルで床が温められケツがほんわかする。 オンドルとは朝鮮族の住居にある床下暖房。朴家では煮炊き用の大きな釜があり、そこから排出する熱や煙を床下を這わせて外へ放出している。合理的ないい機能だと思う。
Tumblr media
↑ちゃぶ台
我が村を案内しよう、ということでお父さん、善子ちゃんに連れられ、何故か幼稚園へと出かけた(下の写真)。
Tumblr media
幼稚園の教室に入ると、可愛い園児たちが、みんな立ち上がって挨拶をしてくれた。ヒデキ感激(下の写真)
Tumblr media
そして始まった記念撮影大会。 昔も今も、我々アジア人は記念撮影が好きだが、朴さん一家も大好きだった。
Tumblr media Tumblr media
↑そして何故かいつも右前方を見つめる そういう文化らしい 背景は長白山?
Tumblr media
↑幼稚園内の遊具 戦闘機で愛国心を育むのか??
Tumblr media
↑善子ちゃん 謎のポーズ連発  僕の靴は2年前にNZで買った学生靴
Tumblr media
↑作り物ではなく本物の牛
Tumblr media
↑飛ばすぜイエ~~~イ
Tumblr media
↑お父さんもノリノリ
家に戻り、一休み。 善子ちゃんに日本語教科書を見せてもらった。 「我が共産党は、日々、人民のために奉仕しています。」 「ソビエト連邦は、思想的に同志であっても、時折、敵になることもある」 という日本語が例文として載っていて驚いた。。。中国のようなイデオロギー国家では、あらゆる場面で思想教育が行われていることを感じた。
それとは別に朴家の人々は僕に親切だった。 お父さんは唯一覚えている日本語「今日は暑いな、きついな」という言葉を連発しては笑っていた。この日本語は満州時代の幼少だったころ、近くに住んでいた日本人が夏場に良く言っていたもので、今でも記憶に残っているということだった。そんなお父さんは僕の顔をニコニコみながら、僕の頭を何度も撫でるので困った♪ お母さんも常に笑みを浮かべていて、こちらが下痢していると伝えると、物凄い力で僕の頭を抱え込み、その手で額の熱を計った。 昼飯は、近所に住みお父さんの実兄宅でご馳走になった。 お兄さんは医師でもあり、満州時代に日本語教育を受けているため、流暢な日本語を話した。体格の良い、穏やかな表情の男性で、僕は植民地化で日本語教育を受けた外国人の日本語に、この時初めて触れた。それは少し古風ではあるけれども、日本人が喋る日本語と変わりなく、とても驚かされた。 その朴医師と幾つか言葉を交わすと、流暢な日本語で「君の服装は香港人のようだね」と言った。ジーンズにTシャツ、羽織っていたのは西寧で買ったカーディガンだが、ジーンズにTシャツが「香港的」に見えたらしい。それはいわゆる西側諸国では、普通の若者のファッションでもあるわけだけれど、当時の中国では、そういった日本を含む外国情報は少なかったのだと思う。 ここでもスゴイご馳走だった。朝鮮族の食事方法は床に腰を下ろし、食卓に並ぶ大皿から料理を取って食べる。そして最後に白飯で〆る、という流儀のようだった。
Tumblr media
↑朴医師宅での昼飯にご招待 僕の右側が朴医師
ここでもビールが出るし、ブドウ酒も出てきてと、家族総出で歓迎してくれた。 「戦争が終わって、日本人が引き上げて、そのあとこの村へやって来た日本人は君が初めてだよ」 と言われたのにも驚いた。 当時、この村に住んでいた細川という日本人にはとてもお世話になった。君は細川さんを知りませんか?と聞かれ、もちろん知らないので困った。 「一度、日本へ行ってみたい。日本へ行くのが念願です」 としきりに繰り返し、 「日本に行くには日本に住んでいる保証人が必要なんだけれど、君、保証人になってくれないですか?」 と言われ、世の中のことを全然知らない、そして、人に頼まれたら嫌とは言えない当時の性格の僕は二つ返事でいいですよ、と答えた。帰国後、父親にその話をすると叱られた。「保証人ってのは法的に責任取らされるんだから、そんなもん簡単に引き受けるな!」ってことだった。そりゃそうだ。 以下、朴医師宅での写真
Tumblr media Tumblr media
↑ビデオデッキがある
Tumblr media Tumblr media
↑一緒にいる子は善子ちゃんの従姉か? 記憶に無い
再び家に戻り、一休み 今度は歌合戦が始まる♪善子ちゃんは歌が上手い。高いキーをキレイな歌声で軽やかに歌う。楽しいお父さんも、これまた歌がうまく、電子キーボードを引っ張り出し、軽やかに歌うのには驚いた。何だかクレイジー・キャッツのようだ。おまけに僕の両親宛にと言ってカセットテープに伴奏つきで歌を吹き込んでくれた。ヘイララララララ~~ヘイララララ~~~という歌声が、30数年経った今でも耳の奥に残っている。 「四季の歌、 哥哥 、わかりますか?」 と善子ちゃんが尋ねるので、デュエットすると、お父さんが最高、最高!!と囃し立て、今夜の歓迎会でも歌いなさい(^^♪という話になった。 歓迎会というのは、戦後初めてこの村にやってきた日本人青年男子のため、村人有志が村の人民政府集会所で熱烈開催するものだ。何だか凄いことになってきたぞ、と日頃、スポットライトが当たるのが苦手な僕は狼狽したものの、断る理由も無いので流れるままに身を任せた。
Tumblr media
↑親切で楽しい朴さん一家 何故かカメラ目線にしない♪
Tumblr media
↑この青年が誰なのか全く記憶に無い 兄さん? 彼だけはいつもカメラ目線♪
Tumblr media
↑すごい構図の写真 足元の2つの釜がオンドルへ熱を供給 右は玄関
そして夜がやってきて、日本人青年男子の歓迎会が村の人民政府集会所でにぎにぎしく開催された。 40人ぐらいの村人が集まってくれたのには驚いた。女性たちが手料理を持ち寄り、男性たちは酒など抱えてやって来る。 「え?日本人どこにいるの?いないじゃないの!?」 「何言ってるの、ここにいる彼がそうよ!」 「え?その子、朝鮮族の顔よ!!」 「そうね、確かに!!」 と言って、早速、爆笑渦巻き、和やかな雰囲気で歓迎会は始まった。
Tumblr media
↑日本人?朝鮮人? ちなみに服部という姓は大陸からの渡来人の姓
Tumblr media
↑ここでもスゴイご馳走(^^♪
Tumblr media Tumblr media
↑左は朴医師 記憶に無いあの青年は、どの写真もキャラ立ちしている♪
料理も酒も美味く、ほんと感激的な光昭村の夜だった。 弾んだ会話も今となってはほとんど記憶に残っていないが、鮮明に覚えているのは村の学校で校長をしている日本語世代の男性との会話だ。校長は終始、探るような上目遣いで僕の顔を見ていた。会話のきっかけは、この村での白飯が、北京や他の中国の街の物と違い、日本のように艶やかで美味い!という僕の発言だった。 「そんなの当たり前だ!俺たちは昔はお前たちの天皇のために米を作っていたんだ!」 「ああ、そうなんですね。。。」 少し怒気を含んだような突然の物言いと表情に僕は少しうろたえ、中国旅出発前に父に言われた言葉を思い出した。それは、日本と中国は昔、戦争で戦った悲惨な歴史があり、犠牲を受けて、今でもそのことを忘れていない人たちがいるだろうから、気を付けろ、というものだった。 校長は立て続けに、 「日本人は今でも、食事の時に、いただきます、を言うのか!?」 「はい、言いますよ。。。」
校長は僕の答えに心底驚いた顔で目を吊り上げ、
「そ、それは誰に対して言うんだ、天照大神(アマテラスオオミカミ)か天皇か!!??」 と震えるような声で言った。 「ええと、神様とか天皇に対してとかじゃなくて、食事そのものや、その恵みや作ってくれたお百姓さんにだと思いますよ、人それぞれ違うかもしれないですけど」 校長はしばらく驚いた表情で僕の顔を見つめていた。 流暢だけど棘のある日本語でこんなことを尋ねられた僕もいろいろと考えさせられた。この村では日本に関わるそんな歴史があって、今でもこんなことを思っている人がいる、という事実は深く印象に残った。 食事が終わると宴会のハジマリハジマリ。 朝鮮族の皆さんは歌や踊りが大好きなようだ♪ もう主賓は「食え、食え」と言われたあとは「歌え、歌え」となる。歌うのは嫌いじゃないんで歌わせてもらう♪
Tumblr media Tumblr media
↑オバサンたちに囲まれてリサイタル(^^♪
Tumblr media
↑「日本で今一番の流行歌を!」と言われ「科学忍者隊ガッチャマン」を子門真人ばりの声で熱唱。ややドン引きされた・爆
Tumblr media
↑善子ちゃんたちの軽やかな朝鮮民謡と踊り(^^♪ いい絵だ そしてこの盛大な熱烈歓迎会を〆てくれたのは、もちろん、善子ちゃんのお父さん。 朝鮮民謡を歌って踊るお父さんは、まるで植木等が光臨してスーダラ節を歌っているかのような雰囲気で場内は爆笑。腰をクネクネ、ケツをフリフリ。村長である書記長としての仕事がまるで想像できないが、こんな共産党のトップであれば村人も楽しくシアワセだろうと思う。 そして笑いすぎて涙がこぼれた僕におじさんは力を込めて言った。 「中国へ来て、今夜が一番楽しいだろう??」 はい、異議なし、書記長同志!! 忘れられぬ一日となった。ホントにありがとうございます~。
0 notes
mashiroyami · 5 years ago
Text
Page 116 : 空と底
 ブラッキーの牙が、アランの身体に突き刺さった。  激しい飛沫が五感を遮ろうと、栗色の双眸は獣の動きを克明に捉えていた。直前の行動は意志というよりも反射であった。アランは辛うじて身を捩り、それは首ではなく左の肩口を襲った。致命傷こそ避けたが、アランは堪らず痛みに声をあげた。深く、ヤミカラスを食い破ったいくつもの牙が穿たれたまま離れない。ブラッキー自身から溢れるものと合わせて、赤い色水をぶちまけていくように傷からあっという間に赤が広がっていく。  それでもアランは強くブラッキーを頭から抱擁した。しかし、服が水を吸い込み、痛みは一気に体力を奪う。だんだんブラッキー諸共、沈んでいき、辛うじて顔を出すのに精一杯であった。  湖畔から呆然と見つめていたエクトルは水タイプのポケモンを持ち合わせていない。だが、漸く脳内でスイッチが入ったように、背後を見やった。 「ガブリアス、来い!」  背中越しにドラゴンを呼ぶと、逆鱗直後とは考えられぬほど従順に命に従い、涙目で地面にへたり込んだフカマルを置きざりにしてガブリアスはすぐさまエクトルの傍へ来た。一瞬振り返った後にまた湖面に視線を投げると、目を疑った。  平穏な湖に異変が起きている。  彼女らを中心として、湖面にゆるやかに渦が発生している。いわば渦潮である。ほとんど水流の生まれていない今、それも比較的浅い岸辺、自然現象としては起こるはずのない出来事だった。  しかし、エクトルはその光景に対して既視感を抱いた。何故と動揺し判断を失念した間に、初めは細波程度であった勢いが、瞬く間に強くなった。見えない巨大な力で乱暴に掻き回される。上空は不変に広がる蒼穹、照る太陽の光が波間で反射する。まるで湖にだけ嵐が起こり始めたようだった。勇敢なヒノヤコマやピジョンが柵を越えて救助を試みようとするが、水の勢いがあまりに強く近付くことすら叶わない。  二対の声が小さくなって、とぷん、と、中心に吸い込まれるように、不意に掻き消された。  ざわめくのは、渦巻く激流の荒れた音と、空疎な羽ばたきと、錯乱するエーフィの叫び声のみ。  エクトルの脳裏で湖へと引き込まれていく主人の姿が重なった。  浮かんでいた血は荒い白波にほだされて、深い青に沈んでいった。
 *
 湖面が遠ざかっていき、鮮血が煙のように上がっていく。  突如として襲った渦潮に巻き込まれ、激しく突き動かされながら、その流れから漸く手を離された時には、戻りようもないほど深い場所へと彼等は身を沈めていた。  身体を覆う服が重く、浮き上がることは叶わない。  傷つけられた身体は更に渦潮に打ち付けられ、空気を吸いこむ間もなく水中に引き摺り込まれた。少女は獣を離さなかったけれど、最後に苦しげに口から水泡が絞り出されて水面へ浮かんでいった頃には、とうにはっきりとした意識は失われていた。  晴天が放つ陽光が遙か遠くで木漏れ日のように輝いていた。誰も居ない暗闇へと誘われていく。月輪が朧気に光り、暗闇で位置を示しながら、抵抗無く沈みゆく。底に向かう程に冷たくなっていく感覚を、彼等の肌は感じていることだろう。
 *
 きっかけは、地震だった。  吉日と指定されて熱に浮かれた秋季祭の中心地にも、その地響きは僅かに伝わった。静かに一人座り込んでいれば辛うじて感じ取れるかといったような、ほんの少しの違和だった。だから、ザナトアはその不自然な一瞬を自らの足先から電撃のように伝わった直後は、気のせいだと思った。ポッポレースを終えて選手も観客も労いの空気に包まれていて、誰も気付いていなかったからだ。  揺れる直前には、ザナトア率いる野生ポケモン達のチームが参加する自由部門のレースは殆ど終了していた。  ポッポレースが終わってしまえば、ザナトアにとって秋季祭という大イベントは殆ど終わる。  ヒノヤコマを初めとして、群れを牽引する者の不在を、ザナトアは少しも不安に思っていなかった。たとえ群れに馴染めなかったとしても厳しい野生の世界で逞しく生きていくために育成を施してきた子達の、集大成にあたる舞台なのだ。結果的に、誰一匹として離脱することなく、チェックポイントを全て回り、ゴール地点まで還ってきた。順位は下の上といったところだろう。充分な結果だ。遠くないうち、冬が本格的に始まる前に野生に返す準備をしなければならない。彼等にとってのザナトアの役割は終わりを迎えようとしている。喜ばしいことだ。しかし少しだけ寂しい。彼女はおやではないが、おやごころが芽生えるのだ。たまにヒノヤコマのようにそのまま卵屋に棲み着いて離れない者もいるけれど、ザナトアは微妙な胸中に立たされる。複雑なおやごころである。  当初の予定よりずっと少ない面子の乱れた羽毛をブラシで丁寧に梳かしてやり、一匹一匹に声をかけていた最中だった。 「……地震?」  ぽつりと呟いて、周囲を見渡した。  だが、誰も顔色を変えずに歓談している。地面が、一瞬だけ突き上げるような、浮かぶような力が加わったように感じた。視線が上がり、白く塗られた電灯同士を渡る旗の飾りが、揺れているのを発見した。留まっていたポッポが羽ばたいたために大きく揺さぶられていた。  果たして、ブラッキーはどうなっただろうか。水面下での懸念事項がはっきりと浮かび上がる。  ザナトアは、アラン達なら大丈夫だと考えていた。楽観的だととられるかもしれないが、アランは依然未熟なトレーナーであるものの、ポケモン達は彼女を見捨てていなかったからだ。獣が強いほど、弱い人間は嘗められる。だが、エーフィ達は決してトレーナーを見下しているわけではない。  アラン達が寂れた育て屋を訪れた日、ザナトアはかのポケモン達に問いかけた。あのトレーナーのことが好きか、と。アメモースはどっち付かずな反応を見せたが、エーフィとブラッキーはすぐに首肯した。良くも悪くも複雑な思考をする人間より、獣はずっと素直で正直だ。彼等の詳しい経緯をザナトアは知らない。これからも知ることはないかもしれないが、ただ一つ確実なことがあったとすれば、あのトレーナーとポケモン達の間には、ザナトアが一瞥しただけでは理解できなかった繋がりが存在している。  ポッポレースの表彰式を促す放送が周囲に響き、熱気の冷めやらない人集りが移動し始めた。  顰めた面をしたザナトアの手が止まったことに不満を抱いたのか、毛繕いを受けていたムックルが鳴いた。声に弾かれ、ザナトアは我に返る。  不意に気付く。大丈夫だと思い込みたいだけなのだ。  無性に胸が掻き立てられて仕方がなかった。
 *
 薄暗くなってきた祭の露店に明かりが灯る。自然公園に設営された屋外ステージで行われたポケモンバトルも幕を閉じ、熱い拳握る真昼から一転、涼やかな秋風が人々の蒸気を冷まし、ちらほらと草原に人が集まり始める。子供から老人まで、配布された色とりどりの風船を持つ姿は微笑ましい光景だ。  秋の黄昏はもの悲しさを秘める。生き生きとした夏が過ぎて、豊かな穂先は刈られ、花々は枯れ、沈黙の冬に向けて傾いていく。雨は冷たくなり、やがて雪に変わる。積雪の下には、次の春へ向けた生命がひそやかに眠る。季節は循環する。儚く朽ちてゆく間際、最も天高くなる時期、人々の願いと感謝が込められた風船は夕陽が沈む瞬間を見計らって、高々と空へ昇る。来る瞬間へ向け、準備が個々で進められていた。  その中には、エクトルの友人であるアシザワの姿もある。  幼い子供は沢山貰ったお菓子をリュックに詰めて、同じ年頃の友達と自然公園を無邪気に駆け回っていた。きゃあきゃあと黄色い声が飛び回る。  湖面に迫る夕陽を前にして一人佇んでいると、普段は思い出しもしないことが浮かんでくる。たとえばそれは聞き流していた音楽だったり、記憶だったり、要はノスタルジーに包まれる。思い出といえば、大役を解かれ休暇を貰ったというのだから無愛想なあの男も暇潰しにでも来るかと思ったが、的外れだったようだ。 「何をぼーっとしてるの」  ぼんやりと芝生に座って三つ分の風船を持ち子供達の姿を眺めていたところ、声をかけられて顔を上げた。朱い夕焼けより少しくすんだ、けれど綺麗な赤毛をした女性に、アシザワはおどけた表情を返し、アンナ、と呟いた。 「何も」 「そう? なんだか珍しく寂しそうだった気がしたけど。はい」  と言って、アンナはアシザワに瓶ビールを手渡した。既に王冠は外されている。湖面を渡るポッポの絵が描かれたラベルが貼られた限定品だ。 「ありがと。お、ソーセージ」 「美味しそうでしょ。列凄かったんだから」 「かたじけない」  アシザワが仰々しく頭を下げると、わざとらしさにアンナは吹き出した。 「李国式だ」 「古風のな」  にやりとアシザワは笑む。  彼女は大ぶりのソーセージがいくつも入ったパックを開ける。湯気と共に食欲を刺激する強い香りが漂う。祭で叩き売りされる食事というのは、普段レストランで味わうものとは違った、素朴でジャンクで、不思議な希望が詰められた味がするものだ。子供も大好きな一品。添えられたマスタードをたっぷり絡めるのがアシザワは好きだった。その良さを知るには子供はまだ早いのが残念なくらいである。 「風船持とうか」 「いい、適当にするから」  瓶を傾け、一気に喉にビールを流し込む。まだ明るいうちに喉を通る味は格別だ。これもまた子供には早い。無邪気に遊び回る子供は自由で時折羨ましくなるけれど、不自由なことも多い。やがて適当に流すことを覚え、鬼ごっこやおもちゃとは違う楽しみを覚える。 「手紙、書いた?」  風船に括り付けるもののことである。人によっては、感謝だったり、祈願だったり、愛の告白だったり、様々な思いをしたためる。  昔は、湖に沈んだ町や大洪水に呑まれた魂を悼み、天空へ誘うポケモンを模していたと聞いている。だが、現代になるにつれ外部の観光客も楽しめるポップな様相へと変わっていった。それでいいとアシザワは思う。水神の未来予知だって、現代は科学が発展して天気予報は殆ど当たる。災害予測も技術が進めば可能だろう。宗教を盾に権力を振りかざして胡座をかいているクヴルールは正直気に入らないところがある。若者を中心に、そう考えている人間は少なくはない。時代が変われば文化も考え方も変わる。  瓶ビールを半分ほど一気に流し込んだところで、口を離した。 「そんな恥ずかしいことはやらねえ」 「ええ? 去年は書いたじゃない。家内安全って」  アシザワは苦い表情を浮かべる。 「そうやって覚えられるから嫌なんだよなあ」 「子供みたい」  くすくすと笑う。真新しい薬指に銀の輪が嵌められた左手が夕焼けに煌めいて、金の輝きを放つ。  赤と、青と、黄色、三原色の風船が穏やかな風に揺れている。湖面の方角からやってくる秋風が心地良い。  秋季祭が終わっていく。 「あーっチューしてる!」  目敏く幼い少年が叫んだ。  いつの間にそんな言葉を覚えたんだ、と思いながら、アシザワは振り返った。その先で黒い影法師が二人分ずっと伸びているのを見て、これは風船があってもばれるなと気付いた。まあいいか。ビールを置いて、走っても走ってもなお体力を有り余らせている子供に向けて、誤魔化すようにソーセージを高々と見せた。ご馳走を目にして歓喜の声をあげながらやってくるユウにも、隣で笑うアンナにも、思いがけず強い感情が込み上げる。この瞬間を、幸福と呼ばずしてなんとするだろう。
 *
 長い時を経て、縁の途切れていたエクトルとザナトアが再会したのは、秋季祭が夜に沈んでいこうとする頃。   喚くようにヒノヤコマ達がザナトアを探しに来た。宥めても混乱が収まらず、明らかに様子がおかしかった。彼等に連れられて、老体に鞭打ち、通行規制が解かれた湖畔に足を運んだ。場は騒然としていた。罅の入った道路を早急に隠すように工事準備が進められ、車道は片面通行となっている。エーフィは芝生に座りこみ、憔悴した顔で、鳥ポケモン達の声に気が付き縋るように振り向いた。隣にはアメモースもいる。目玉を模した触角は垂れ下がって動かない。彼女の傍をフカマルも離れないようにしていた。腕白小僧には似つかわしくない気落ちした表情をしている。鮮明なテールランプが夕焼けを切り取って回転している。ザナトアは立ち尽くし、言葉を失った。更に奥で、水ポケモンに指示を終え、救急隊が全身ずぶ濡れになって蒼白になった少女と黒い獣を担架で運んでいる。その様子を、嘗ての愛弟子は、ザナトアが本当の息子のように想っていた男は、至極冷静な表情で見つめていた。 ��遙か向こう、祈りの風船が群を成して、夕景に昇っていった。 < index >
0 notes
localventurelab · 7 years ago
Text
ローカルベンチャー最前線:HOTEL NUPKA 総支配人 坂口琴美さん(後編)
東京で縮まった、ふるさととの距離。 十勝の魅力をどう表現し、伝えていくかーー。
東京の下町で飲食店の経営に成功し、順風満帆な10代、20代を過ごした坂口さん。「すべてが初めての経験だったけれど、怖いもの知らずだからできたことがたくさんありました。ひとつひとつ壁を乗り越えて物事を理解したり、仕組みがわかったり。いろんな人に助けられて……そう考えると、私はただのラッキーな人なのかもしれませんね(笑)」と冗談っぽく笑う。向き合って話していると、つい���テルのオーナーであることを忘れてしまうくらい自然体。が、一方でしなやかでありながらブレない「芯」の強さが垣間見える。
千駄木のハンバーガーショップが軌道に乗り始めたころ、東京に居住する十勝出身の若手が集う「とかち東京クラブ」のメンバーが集まる機会があった。それは昼夜を問わず、夢中で働いてきた坂口さんが当時の“自分らしい”ワーキングスタイルを実現できた頃だった。「それまでは特に地元に強い思いもなく、今、目の前にある暮らしが精一杯。でも仕事が充実していて、体も心もきっと少しだけラクになったときに、ふと地元のことを思ったり、高校時代のお友達と会って懐かしいなぁという気持ちになりました」と振り返る。
「とかち東京クラブの定例会(飲み会)で、私のお店を利用してくれたりすることもあって、うれしかったですね。みんなの話を聞いていたら、やっぱり十勝はいいところだなって。あらためて気づくことがたくさんありました」と語る、坂口さん。次第に「じゃあ、十勝の魅力をどうやって表現して、発信していったらいいんだろう」と考え始めたのだと言う。
Tumblr media
▲「旅のはじまりのビール」を販売している東京根津にある「HOTEL GRAPHY(ホテルグラフィ)」でクラフトビールと十勝短編映画「my little guidebook」上映会を開催した時の1枚。グラフィーのメンバーに支えられ、東京と十勝が一つになる夜。
十勝を元気にしたい!という思いで つながった同志に誘われ、ホテルの共同オーナーに!?
Tumblr media
▲農水省主催のフードアクション・ニッポン アワード授賞式にて。地元十勝の農家さんと造るクラフトビール「旅のはじまりのビール」が、全国1008商品の中から10品に選ばれました。創業前からともに事業の運営や夢を共有する十勝出身の柏尾哲哉氏(左)、「旅のはじまりのビール」のレシピ開発や醸造責任を担っている本庄啓介氏(右) 。本庄氏は元キリンビール、アウグスビールの醸造責任者であり、柏尾さんの大学時代の先輩でもある。
とかち東京クラブで、いつも話題にのぼっていたのは十勝の魅力をもっと、より多くの人に発信できないかということ。 「国内だけでなく世界に向けた発信をしたいという思いがありました。そこで思いついたのが、十勝を舞台にしたストーリーと映像を作って発信しようと」。
なかなか大胆な発想にも思えるが、坂口さんはニューヨークから東京に拠点を移していた後輩の映像作家、逢坂芳郎さんに話を持ちかけた。そこから仲間を募り、映画『マイ・リトル・ガイドブック』を完成させた。台湾の旅行会社で働く主人公が、まだ知られていない北海道の観光資源を見つけるために十勝に派遣され、地元の人との出会いの中でドラマが生まれるストーリーだが、思った以上の反響があったのだそう。
この映画づくりの中心となったのが、同じ十勝出身の柏尾哲哉さん。柏尾さんは東京で弁護士として働く一方、生まれ育った帯広の、中心市街地の空洞化が進んで人通りが減り、かつてのにぎわいを失った景色を憂いでいた。「映画を通じて十勝を訪れる新しい人の流れを作り出したい!」。それは坂口さんと柏尾さんの共通の思いだった。
そんなとき柏尾さんが、帯広駅から徒歩3分の飲食街の一画で昭和48年から営業を続けていた老舗「ホテルみのや」が廃業しているという情報を入手。
「ここなら帯広の中心市街地から、十勝に何か貢献できるかも知れない」と感じた柏尾さんは、坂口さんに「帯広のまちのまん中で宿をやりませんか?」と声をかけた。
「学生時代のアルバイト、東京での自営を経て、日々お客さまと接することにやりがいを感じていた中、いつか宿を開こうと思っていた私は、東京・谷中の寺町にある長屋で、宿を開く準備に取りかかろうとしていた時期がありました」という坂口さん。 「ところが、ちょうどそのタイミングで東日本大震災が起きて、計画は白紙に。柏尾さんはそのことも知っていたので、声をかけてもらった時はうれしかったけれど、正直迷いました。東京の仕事もあるし、資金の準備も必要だし……」。
ところが柏尾さんは一歩先をいく行動に出る。ホテルみのやの所有者に相談し、「まちづくりのために生かしたい」という思いを丁寧に伝えた。結果、土地と建物を譲ってもらうことになり、「琴美さん!買って来ちゃいました!帯広でやりませんか、宿?」と声をかけたのだ。 このひと言が、現在のホテルヌプカに至るストーリーの始まりだった。
廃業したホテルに新たな価値を創造し、帯広の中心市街地を 盛り上げたい。共同経営という決断
Tumblr media
▲旧ホテルみのや=写真左=オープンしたのは、坂口さんが生まれる前の昭和48年。スクエアな外観に、風合いのあるタイル張りが印象的な外観は当時のまま。右の写真は現在のホテルヌプカ。
「そこからはもう、またまためまぐるしくて(笑)。『私、委託で運営はしません。やるなら共同オーナーにさせてください』って柏尾さんに(言いました)」と坂口さんは振り返る。面白い場所を点で作るのではなく、中心地全体を盛り上げて、面白い人がたくさん集まってくるエリアにしたいという大きな理想がある中で、「いざ2、3年経って、すぐに辞められるという状況にもしたくなかったし、東京のお店を犠牲にして取り組まなければならない部分も大きかったので、リスキーですけど、そう決めました。それくらい責任を持たないと、たぶん続けられないと思うから」。
そこで坂口さんは、柏尾さんとともに共同代表として、「十勝シティデザイン株式会社」を立ち上げ、いよいよ一大プロジェクトのスタートをきる。同社の事業は、宿泊施設やカフェの運営をはじめ、音楽やアート、セミナーなどのイベント運営、十勝に来た旅行者の旅のお手伝いなどだ。   以降、東京で購入��た古いマンションと、帯広の賃貸マンションを頻繁に行き来する、忙しい日々に突入した。
しかしながら、オープンまでの道のりは決して平坦ではなかった。ホテルみのやが廃業するまでの数十年間は、まったく設備投資がなされていなかったため、老朽化した設備を再稼働するためには大工事が必要だったのだという。よって、オープンまでに2年の月日を要し、フルリノベーションの末にようやく完成。「ホテルヌプカ」は平成28年3月、開業した。
全国・世界から訪れる旅人を「暮らすような旅」で おもてなしするホテルヌプカを、十勝の新たな魅力に
Tumblr media
▲帯広の中心市街地をほっこり灯すホテルヌプカの1階部分。「まち・ひと・もの・こと・場所」をつなぐ拠点=Urban Lodgeを目指している。
宿泊施設とカフェ/BARの複合施設「ホテルヌプカ」は今、十勝・帯広への自分らしい旅の拠点として、まちの中から自然の中へバウンドする発着点として、さらに地元の人が集まる場として活用され、坂口さんの活動や発信は“感度”の高い道民や旅人たちからの注目を集めている。
一階はホテルのロビーであり、カフェやバーを併設。入り口には薪が置かれ、ぬくもりを感じられる空間に。奥のカウンターでは十勝産大麦麦芽100%を使用したオリジナルのクラフトビールや十勝の食材をふんだんに使った美味しいおつまみを食べることができる。ここはホテルのゲストだけでなく、地元の人も気軽に入ることできる。坂口さんや柏尾さん、スタッフ、また外部企画のイベントも随時開催され、全国、全世界から十勝を訪れるゲストと地元の人との交流の場にもなっている。
「十勝と世界をつなげる役割を果たしたい」という思いから「十勝の自然と街を旅するホテル」をイメージ。それは確かなカタチとなって、人と人、まちと人をつないでいる。    ちなみに2〜5階はシンプルで温かみのあるデザインを基調としたドミトリーと個室、それぞれのタイプの客室やランドリールームがあり、アートやグラフィック等のディレクションには十勝出身の若手クリエイター達をパートナーに迎えて、十勝に暮らす人々の日常の視点からホテルを作り上げた。
“外からの視点”を大切に、いいところ探しをして 十勝の無限の可能性をカタチにできたら
Tumblr media
▲ホテルヌプカで働くスタッフと。前列中央が坂口さん。
坂口さんが今、大切にしているのは、“外からの視点”。「地元の人にとってはあまりなじみのないことや、逆にあたりまえすぎることも、別のまちではわりと普通っていうことって、たくさんあるような気がします。そう考えると、まちの可能性は意外と外から入ってきた人たちの視点によって、広がることも多いのかなと。例えば、私が東京出身の人に、地元の話をすると『すごいね、それ!』って驚かれたりすることが、結構多いんですね。『こんなに美味しいチーズを作る工房が、そんなにいっぱいあるの?』とかね。最初は私自身も、“中の視点”で『何がすごいの?』って感じなんですけど、言われてみたら『確かにすごいじゃん』っていう気持ちになっていて」。
とかちの“いいところ”を笑顔で語る彼女の表情を見ていると、なんだかわくわくする。そんなふうに思っていたら、「すごい!って思う人の伝えるパワーって、とっても強いし、輝いていますよね。でも当たり前と思っているとなかなかパワーには結びつかない。田舎ほど、“外からの視点”に気付きをもらえたら、どんどん可能性は広がりますよね」。まさにその言葉を、坂口さん自身が無意識に体現していると筆者は感じた。
そういう意味においても全国、世界から訪れる旅人と出会えるホテルヌプカは、坂口さんにとって職場でありながら、情報の発信基地にもなっている。そして何より、今一番心地のいい“居場所”になっているのかも知れない。旅人と地元をつないで、一緒に楽しい時間を過ごせる場所に、そしていつでも戻ってこられるみんなの居場所にーー。
【プロフィール】 坂口 琴美(さかぐちことみ) ホテル&カフェ ヌプカ総支配人 。十勝シティデザイン株式会社 代表取締役。幕別町出身。2000年より東京都内にて飲食店の運営に携わり、2003年に個人事業主として自身がオーナーを務める飲食店をオープンさせる。2014年にホテルヌプカのプロジェクトを立ち上げ、2016年3月に開業。現在に至る。
会社名:十勝シティデザイン株式会社 所在地:北海道帯広市西2条南10丁目20-3 設立:2014年8月19日 資本金:50,000,000円(パート・アルバイト含む) 従業員数:社員12名 事業内容:不動産賃貸業、不動産管理業、飲食事業、広告業、ホテル業、旅行業、酒類の卸売及び販売、人材派遣業及び人材紹介業、レンタカー業及びその仲介 www.nupka.jp
取材・ライター:市田愛子 編集:伊藤衝
1 note · View note
thyele · 5 years ago
Text
2020年5月1日
有村竜太朗、品川教会ライブを収録した映像作品の詳細発表 教会で、って言うのはこれから選択肢に上がるかな。 https://www.barks.jp/news/?id=1000182011
日本経済新聞 電子版さん「ナイキの新シューズは「ほぼゴミ」から再生 夏発売」 https://twitter.com/nikkei/status/1242622730974855169
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版さん「米海兵隊の組織刷新 「中国の脅威」対応に軸足」 https://twitter.com/WSJJapan/status/1242622808611577858
毎日新聞さん「性的動画を拡散 高校の元同級生らに賠償命令 名古屋地裁判決」 https://twitter.com/mainichi/status/1242979582241910786
杏 to the coreさん「わー...この広告もう一回出してくれないかな。この国にはこの歌が必要だよ😢」 https://twitter.com/hmmmmm000/status/1242777455519129603
忌野清志郎 Officialさん「RCサクセション『COVERS』各サブスクリプション配信スタートしました!皆さんご利用のサブスクからぜひお聴きください!」 https://twitter.com/I_Kiyoshiro/status/1243046188506443782
ロイターさん「フィンランド上空に、神秘のオーロラ。美しい緑色の光がまたたく。」 https://twitter.com/ReutersJapan/status/1243047528733573120
ロイターさん「原油安、間違いなく日本経済にプラス=麻生財務相」 https://twitter.com/ReutersJapan/status/1243048997918593024
鉄道事故関連ニュースさん「#箱根登山鉄道 、7月下旬に運転再開へ 予定を前倒し - 神奈川新聞/Yahoo!ニュース(3/26 14:00) …初は今年秋ごろの再開を見込んでいたが、復旧工事が順調に進んだため前倒ししたという。 同鉄道は昨年10月…」 https://twitter.com/TrainAccident/status/1243049378375294978 鉄道事故関連ニュースさん「#箱根登山鉄道 、台風被害の復旧費35億円 行政半額負担 - 日本経済新聞(2/18 18:00) …て箱根湯本駅―強羅駅間で運休している。被災現場の復旧作業は順次始まっており、秋の全線運転再開…」 https://twitter.com/TrainAccident/status/1229696264926715905 COVID-19でどうなるだろうね。
毎日新聞さん「京都・女性死体遺棄 ケースワーカーに有罪判決 京都���裁」 https://twitter.com/mainichi/status/1243050045181747205
HAUNTED HOUSEさん「イカす!」 https://twitter.com/hauntedhouse666/status/1243049854588211200
朝日新聞(asahi shimbun)さん「競馬場の宿舎が縁 稀勢の里の元付け人、厩務員に転身」 https://twitter.com/asahi/status/1243057611601215490
時事メディカルさん「◇ 台所・住宅用洗剤の材料「界面活性剤」など3品目に消毒効果 市販の消毒液が品薄な場合、これらの品目で代用可能 界面活性剤のほか、「次亜塩素酸水」とウエットティッシュに含まれる「第4級アンモニウム塩」」 https://twitter.com/jijimedical/status/1250376177824350208
門田隆将さん「東アジア全域で中朝露が軍事圧力を強化。中国が空母打撃群を宮古海峡から太平洋に出し、空軍も領空侵犯に近い飛行を繰り返す。北朝鮮はミサイル発射を止めず、ロシアも領空侵犯ぎりぎりの飛行を続行。一方、感染者相次ぐ米空母。コロナ禍の今、絶対に"隙"を見せてはならない。」 https://twitter.com/KadotaRyusho/status/1254069135039856643
ABEMAニュースさん「【ニュース速報】 コロナ対策の感染職員 発熱2日前に西村大臣に同行 新型コロナウイルスに感染した内閣官房の職員が発熱する2日前に西村経済再生担当大臣の視察���同行していた事が明らかになった。 #アベマニュース」 https://twitter.com/News_ABEMA/status/1253901425660194818
NHK科学文化部さん「新型コロナウイルスに感染するリスクを減らすため「オンライン診療」を導入した医療機関が全国で1万余りに上ることが、厚生労働省のまとめでわかりました。医療機関のリストは、厚生労働省のホームページで見ることができます。」 https://twitter.com/nhk_kabun/status/1253852665248755716
地震・ニュース速報@Yahoo!ニュースさん「【速報】長崎での客船クラスター、新たに57人感染確認 計148人に」 https://twitter.com/YahooTopicsEdit/status/1253866241833361408
日本経済新聞 電子版さん「新型コロナ死者、米で5万人超 全世界で20万人に迫る」 https://twitter.com/nikkei/status/1253769933130891264
NHK国際部さん「イスラム教徒が日中の飲食を断つ断食月、ラマダンがアジア各国でも24日から始まり、イスラム教徒の人口が世界で最も多いとされるインドネシアでは、新型コロナウイルスの感染防止のためモスクが閉鎖され、閑散としていました。」 https://twitter.com/nhk_kokusai/status/1253692571664044032
町山智浩さん「サンフランシスコではマスクしてない人に警察官がマスクを配ってます。」 https://twitter.com/TomoMachi/status/1254252430121811968
町山智浩さん「みんなで励まそう」 https://twitter.com/TomoMachi/status/1254252590918844417
D.Tommyさん「新型コロナ禍で休業要請された事業者は家賃を支払う義務が無いらしい これは朗報だね 不動産を貸して収益を得る事は不労所得で憲法の労働の義務にも反するし金も持ってるんだから問題も無いと思う これが自宅の家賃にまで普及するといいな 拡散希望! #新型コロナ #家賃」 https://twitter.com/tommy_f_w/status/1254315435081625601
自粛無視してGW沖縄に6万人…玉城デニー知事「どうかキャンセルして」 | ENCOUNT https://encount.press/archives/42502/
日本財団さん「新しい地図と日本財団は、「LOVE POCKET FUND」を始めます。 同時にFUND内に『新型コロナプロジェクト』を立ち上げ、医療関係者やそのお子さんを含めたご家族の支援や両親・ひとり親感染家庭の児童の預かりなどの支援を行います。 #lovepocketfund #ラブポケットファンド」 https://twitter.com/NipponZaidan/status/1254591092156018688
大童 澄瞳 SumitoOwara【公式】さん「動かなくなった敵を前に「・・・やったか・・・?口程にもねえな」と言ったらアウトだってよく知ってるだろ。コロナも「やったか・・・?もう外出しても平気そうだな」は死亡フラグ。落ち着いて来たらトドメの自粛だぞ。」 https://twitter.com/dennou319/status/1254260965454934017
NY市、消毒液の事故が急増 トランプ氏の発言誘発か https://www.47news.jp/4756473.html
新型コロナ終息後、中国人旅行者に排斥される国々―中国メディア|ニフティニュース https://news.nifty.com/article/world/china/12181-800534/
𝙼𝚊𝚛𝚜𝟾𝟿さん「マジでふざけんなよ。休業指示するなら相応の補償を出さないと話にならないだろ。それ無しで罰則とかクズ過ぎる。 休業指示従わなければ法改正で罰則規定も | 2020/4/27 - 共同通信」 https://twitter.com/_Mars89/status/1254747784508399616
Yahoo!ニュースさん「【刺傷 男「コロナで生活苦」】横浜市で女性を刃物で刺すなどしたとして、強盗殺人未遂容疑で逮捕された男が「新型コロナウイルスの影響で働けなくなり、生活が苦しかった」と供述。神奈川県警への取材で分かった。」 https://twitter.com/YahooNewsTopics/status/1254613303969509376
NHKニュースさん「東京 新たに39人感染確認 都内計3947人に 新型コロナウイルス #nhk_news」 https://twitter.com/nhk_news/status/1254672388764995585
毎日新聞さん「「感染しないように気をつけると同時に、うかつな行動により、感染させる側になってしまうことをどうか忘れないでください……」 今月7日に退院した脚本家・俳優の宮藤官九郎(49)が、ラジオに出演。準備していた文章を読み上げました。 #新型コロナ」 https://twitter.com/mainichi/status/1254711890900430848
やす。はなはかせ?うたうたいかな。さん「ドイツ在住のフリーランスの日本人ピアニストさん。申請手続きはインターネットで10分程度で終わり、3ヶ月分60万円が2日後には振り込まれる、ベルリンの支援制度。外国人は対象外にしろ!とかほざいとる日本人がいんの、ほんま恥ずかしいわ。」 https://twitter.com/YASU8utautai/status/1254812619334025216
アイアムリザルトさん「コロナ禍で家連するスティーブ・ガッドさん。」 https://twitter.com/iam_result/status/1254639675660091392
毎日新聞ニュースさん「首相ら300万円超を返納へ 全閣僚が申し合わせ」 https://twitter.com/mainichijpnews/status/1255085024660996096
ライブドアニュースさん「【利益なしで販売】「原価マスク」登場、転売防止でパッケージに価格を印刷 https://t.co/ijAzjeBNUm 50枚入りで2176円。原価構造がはっきりと印刷されているため、高額転売は困難な仕様となっている。」 https://twitter.com/livedoornews/status/1254977736335953920
ニューズウィーク日本版さん「アメリカで相次ぐ病院閉鎖、コロナ患者は儲からない パンデミックが地方に及ぶのを前に、地域で唯一の病院が突然閉鎖するケースが続出。コロナ患者が入院すると利益が上がらないからだ、と地元議員は批判する」 https://twitter.com/Newsweek_JAPAN/status/1255086862261198848
井上純一(希有馬)さん「消費税を上げると上げた以上に経済が冷え込むので、税収も下がる。コロナショック直前とはいえ、皆忘れてないですよ。いやもうさすがに騙される人いないでしょう。」 https://twitter.com/KEUMAYA/status/1255342223060881409
町山智浩さん「「野党は何もしてない」「野党は代案を出してない」と言っている人たちは覚えておきましょう。」 https://twitter.com/TomoMachi/status/1255338786159984640
日本経済新聞 電子版さん「「暇になり昼からビール」「夫が会社を休み、朝から飲酒」。依存症のケア団体に相談が急増しています。外出制限や休業のストレスが一因。「オンライン断酒会」の取り組みも出ています。 #新型コロナ #COVID19 #緊急事態宣言」 https://twitter.com/nikkei/status/1254953195849293824
日本経済新聞 電子版さん「Jリーグ、200億円強の融資要請 観戦収入消え苦境」 https://twitter.com/nikkei/status/1255036025803440129
ライブドアニュースさん「【新型コロナ】「緊急事態宣言、延長を」と小池知事 小池百合子都知事は29日、都庁で報道陣に対して「東京はまだ厳しい状況。緊急事態宣言の時期は延長をお願いしたい」と話した。」 https://twitter.com/livedoornews/status/1255318045637193728
大阪観光局【公式】さん「門外不出のホテルレシピが、期間限定で公開中🍴✨ ホテルニューオータニ大阪では、#おうち時間 を楽しんでいただけるように、春の季節にぴったりのメニューをご紹介しています🙂 ▼外出自粛応援!門外不出のホテルレシピ▼ #うちで過ごそう」 https://twitter.com/Osaka_Tabilog/status/1253156641928699904
鉄道事故関連ニュースさん「空港に旅客機がずらり 車両基地には #新幹線 が 新型コロナ - NHK(動画)(4/29 13:51) …合わせるなどしているためで、中には、駐機場に旅客機3機が並んでとめられている様子や駐機場から滑走路につながる誘導路…」 https://twitter.com/TrainAccident/status/1255369382047428608
朝日新聞(asahi shimbun)さん「NYの医師自殺 自らも感染、PTSDとうつで退院後に #新型肺炎 #新型コロナウイルス」 https://twitter.com/asahi/status/1255385845621809152
ニューズウィーク日本版さん「インドネシア、隔離要請に従わない場合は「幽霊屋敷」に収容 <世界でさまざまな懲罰付きの「外出禁止令」が出ているが、インドネシアの一風変わった対応策が話題になっている......>」 https://twitter.com/Newsweek_JAPAN/status/1255383871077732352
毎日新聞さん「消費減少が懸念されている牛乳を「1本まるごとすぐに消費できちゃう」レシピを集めました。」 https://twitter.com/mainichi/status/1255386332257533953
ユルクヤル、外国人から見た世界さん「新型コロナの検査風景。恐ろしすぎて声出た(´;ω;`)ブワッ」 https://twitter.com/Yurukuyaru/status/1255066474655256576
指南役さん「マジか。CSとは言え、再放送は初めて。いっそ地上波でやればいいのに。/最高視聴率41.9% 伝説の歌番組『ザ・ベストテン』6月から再放送決定 | ORICON NEWS」 https://twitter.com/cynanyc/status/1255131477882228739
NHKニュースさん「重症化の前兆となる「緊急性の高い13の症状」を厚生労働省が公表しました。」 https://twitter.com/nhk_news/status/1255443411756290050
ウォール・ストリート・ジャーナル日本版さん「米で「家賃不払い」スト、コロナで生活困窮 #新型コロナウイルス #新型肺炎」 https://twitter.com/WSJJapan/status/1255485763816480768
読売新聞オンラインさん「緊急事態宣言「47都道府県で延長を」…全国知事会、政府に求める方針決定 #社会」 https://twitter.com/Yomiuri_Online/status/1255485751648825344
毎日新聞さん「新型コロナ感染拡大で、毎年夏に「かるたの聖地」とされる近江神宮などで開かれてきた「かるたの甲子園」が中止になりました」 https://twitter.com/mainichi/status/1255492028646830081
池田清彦さん「コロナに勝つまでは我慢しましょう、って雰囲気は気持ち悪いね。太平洋戦争中の、欲しがりません勝つまでは、っていう標語に似てきた。まずは政府に、勝つような戦いをしろ、ってハッパをかけるのが先だろ。ダラダラと負け戦を続けていてもラチが開かないよ。」 https://twitter.com/IkedaKiyohiko/status/1254961569827393538
Tadさん「志位和夫委員長 「総理がPCR検査センターをつくると表明したにもかかわらず、補正予算案にはその予算がまったく含まれていない。新たな予算措置をとるべき」」 https://twitter.com/TadTwi2011/status/1255423854119456768
ハフポスト日本版 / 会話を生み出す国際メディア / 世界各国に広がるニュースサイトさん「日本医師会会長が会見  ・東京オリンピックの開催、有効なワクチンなければ「難しい」 ・緊急事態宣言の一斉解除は「できない」」 https://twitter.com/HuffPostJapan/status/1255288704429625344
時事ドットコム(時事通信ニュース)さん「安倍晋三首相は参院予算委員会で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言に関し、「5月6日にこれで終わったと言えるか、依然厳しい状況が続いている」と述べ、全面的に解除することは難しいとの見通しを示しました。」 https://twitter.com/jijicom/status/1255387941649645568
中国への賠償請求、合計額はなんと1京円超え!中国GDPの7年分 -- Record China https://www.recordchina.co.jp/newsinfo.php?id=799450&ph=0&d=0135
北海道で新たに1人死亡、40人感染(共同通信) - Yahoo!ニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/73664846e5bc8ff290a8ba1f7bb481b497acdfaa
新型コロナ感染者数が答えられない 安倍首相答弁に不安の声(女性自身) - Yahoo!ニュース https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200430-00010006-jisin-pol
産経ニュースさん「新型コロナ、持続的対策1年以上は必要 専門家会議の提言案判明 →新規感染者数に「辛うじてオーバーシュートを逃れ、減少傾向に転じるという一定の成果が表れ始めている」 →「オーバーシュートの兆候を見せ始めた3月中旬前後の新規感染者数の水準までは下回っていない」」 https://twitter.com/Sankei_news/status/1256003609986097152
藤井聡さん「既にタイではコロナ対策の活動制限によって、仕事を失い貧困やストレスで追い詰められた人たちの自殺が相次いでいるそうです 日本も"補償無し自粛要請"を続けていては確実にこうなります 政府やTVコメンテータの皆さん、是非総合的な視野からの対応,発言をお願いします....!」 https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1255681635090968576
辻田 真佐憲@『古関裕而の昭和史』(文春新書)発売中さん「いまはコロナ禍でどんどん新しいニュースが報道され、古いものはすぐ流れ去ってしまうので、あえて振り返りました。たった1ヶ月でこの惨状です。 脅迫・中傷・投石・落書き・密告…多発する「コロナ差別事件」の全貌 @gendai_biz #現代ビジネス」 https://twitter.com/reichsneet/status/1255693682147160065
毎日新聞ニュースさん「新型コロナ便乗詐欺被害 13都道府県で3000万円超 給付金、マスク販売口実に」 https://twitter.com/mainichijpnews/status/1255784245089275907
朝日新聞(asahi shimbun)さん「「マスク500万枚売った」 中国人業者が明かした事情 #新型肺炎 #新型コロナウイルス」 https://twitter.com/asahi/status/1255809635824529408
朝日新聞(asahi shimbun)さん「「自宅や勤務先特定された」 感染者が徳島県に申し入れ #新型肺炎 #新型コロナウイルス」 https://twitter.com/asahi/status/1255809638827614209
毎日新聞ニュースさん「軽症者療養先で働く「掃除ロボット」公開 東京都内2ホテルで運用」 https://twitter.com/mainichijpnews/status/1255848419634995201
産経ニュースさん「新型コロナ、持続的対策1年以上は必要 専門家会議の提言案判明 →新規感染者数に「辛うじてオーバーシュートを逃れ、減少傾向に転じるという一定の成果が表れ始めている」 →「オーバーシュートの兆候を見せ始めた3月中旬前後の新規感染者数の水準までは下回っていない」」 https://twitter.com/Sankei_news/status/1256003609986097152
BUSHBASHさん「医療現場の最前線で戦う人たちに、感謝のエールを。Yahoo! JAPANで「のりこえよう」と検索された方おひとりにつき10円を、Yahoo! JAPANから医療従事者の支援活動に寄付いたします。 #新型コロナ #みんなでのりこえよう #医療従事者感謝検索 https://t.co/YgkztJINqh」 https://twitter.com/KOIWA_BUSHBASH/status/1256027546090483713
藤井聡さん「昨日京大ユニットからプレス発表した、「政府補償無し自粛要請」が続けば、最低でも14万人も自殺者数が増えるという話の報道. そもそも97年増税によるデフレ化不況でも自殺者増加量は14万人.だからこれは何も極端な数字ではありません. 感染死も自殺も防がねばなりません! https://t.co/4jjDBlAKB9」 https://twitter.com/SF_SatoshiFujii/status/1255994515418054658
杉本善徳さん「あ、平成最後の日から1年か。早いような、そうでもないような、よくわからんね。 とりあえず今日は朝からずっとバタバタしてます。 渋公の先行よろしく。」 https://twitter.com/ys1126/status/1255779925543358464
RISさん「【RT頂けましたら🙏】 「音楽を纏う」がコンセプトのアパレルブランド”SSS”とのコラボでTシャツのグラフィックの世界観をイメージしたサントラ制作しました🥀 是非 聴いて/纏って 下さい ■SSS FLOWER 012’ featuring RIS 【T-shirt + CD】 ■期間限定販売 受注5/31迄 🛒https://t.co/c2IGl40X8z https://t.co/11qvgBk1Zk」 https://twitter.com/RIS_707/status/1255706868376207361
村本大輔(ウーマンラッシュアワー)さん「なんだかやってるぞ、本物の芸人が https://t.co/PSWD4HFe35」 https://twitter.com/WRHMURAMOTO/status/1255784248574803969
UNCLOCK LOVER 頼田陵介さん「-重要- 5/5柏Thumb upで予定しておりましたライブはイベント自体延期となりました。 告知が遅くなり申し訳ありません。 ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。 https://t.co/L2ke5F75TV」 https://twitter.com/yorita_ryosuke/status/1255786520344055809
BUCK-TICK OFFICIALさん「5月2日(土)より「BUCK-TICK LIVE STREAMING SPECIAL」の開催が決定! YouTubeでプレミア公開される"BUCK-TICK SATURDAY LIVE STREAMING"と、 ニコニコ生放送で配信される"BUCK-TICK LIVE STREAMING WEEK ON ニコ生"にて、 貴重なライブ映像を一挙配信! https://t.co/ROAfyXGpdp #BUCKTICK #バクチク」 https://twitter.com/BUCKTICK_INFO/status/1255784159970123776
lucy+peter=esolagotoさん「昨日の師匠達の謎の既視感、DISTURBEDでした https://t.co/39tt51FdWb」 https://twitter.com/lucy_peter/status/1255812817044701185
ラルベラ_officialさん「2.26 高円寺HIGH Larme Belladonna「Veronica」 フルVer. YouTube→https://t.co/EmlxQSmlR1 next...2020.05.07 https://t.co/bm1L3HvDK3」 https://twitter.com/LB0328_official/status/1255814244538281984
METROPOLICEさん「本日もありがとうございました。 大事な事を言い忘れていました… こちらのCDをお求めの方に先着でステッカーが付きます! ※数に限りがございます。 どうぞ宜しくお願い致します。 https://t.co/yE1ti2mzeB https://t.co/oudB5vkQl5」 https://twitter.com/_METROPOLICE_/status/1255784445421862913
大塚Welcome backさん「【いよいよ開始!】 ふたたびみんなに「Welcome back」と言いたい! ウェルカムバック、クラウドファンディングに挑戦します!! ☆4月30日(木)、20時スタート☆ https://t.co/eb5A4CawVl 皆様のご支援よろしくお願いいたします! RT・いいねも力になります! #ウェルカムバックおかえり https://t.co/wq7V2iOQgt」 https://twitter.com/Welcomebackwb/status/1255814226259525632
寛/寛詞@Mi-Rock.御剣-Mitsurugi-さん「今日から5月ですね! こんな状況ですが、 無事誕生日を迎える事が出来ました😊LIVEが出来ない状況ですが、 曲作り、YouTube動画作成に精を出してこれからも活動して行こうと思います! これからも寛をよろしくお願いします! https://t.co/wZuG1y3CAo」 https://twitter.com/Hiroshi_0501/status/1255905127589769216
niguさん「今更中西圭三さんの曲のコードをさらうモーニング朝。 おはようございます。」 https://twitter.com/nigu_chang/status/1255970818942627840
🕸𝔛𝔛𝔛𝔄𝔗𝔖𝔘𝔖ℑ🕸さん「noteってあるでしょ そこにブログみたいに長文をたまに書いています 何個かすでに色々書いてるので時間ある時に興味あったら覗いてみて下さい topにもaddress載せておきました よろしくお願いします https://t.co/PokqP666By」 https://twitter.com/xxxxvalentine/status/1256045678607822849
MASK SANAさん「4年前の同じ日 Rewind 未公開レア映像と共に #MASK #Zepptokyo #GOAL #ダイジェスト https://t.co/mxSV3EMtjP」 https://twitter.com/MASK_SANA/status/1256055777573449728
ZIZ.officialさん「ZIZ OFFICIAL SITE はじめました https://t.co/W73Py7V78e https://t.co/9rO2UF8wHK」 https://twitter.com/ZIZofficial/status/1256055781046267911
キリ(luin/…。【サイレンス】)さん「最近可愛いな〜と思ってる、 にわねこちゃんの公式LINE〜話しかけるとご飯スタンプで返信してくれるというのでやってみたら突飛で可愛い(´ω`)そしてもう昼ですね。5月ですね。 https://t.co/i9PF6Z828w」 https://twitter.com/kiri_drums/status/1256063740056764417
0 notes
kkv-main · 6 years ago
Photo
Tumblr media
MAGAZINE - 2018.12.13
Killerpass 2017 US TOUR日記 by  kazukick
3月いっぱいでギターのkenchanが家業を継ぐ為に地元の青森に帰ることが決定した。どこかツアーに行こうよ。アジアは今後行けるかもしれないしヨーロッパって感じの音でもないしなー。
『アメリカとかどうよ?誰か一緒に行きたいよねー、、、Hi.killerpassの7インチも出ることだしハラダくんとかどうかな?』
そんなスタジオでの何気ない会話から決定した今回のツアー。ハラダくんに声を掛けたところ『行きたい!!』ということでkillerpassの3人とHi how are you?ハラダくんとのアメリカ行きが決まった。
2017年3月18日から3月26日にかけてアメリカのカリフォルニア州でトータル一週間で5つの街でライブをしてきました。このメンバーとしての国外でのライブは、THE ACT WE ACTと行った台湾へのショートツアーぶり。ツアーって感じのツアーは今回が初めて。たった一週間のツアーではあるがそこで観たり、聴いたり、触れたりしたもの、などなど、、、全てが刺激的なことばかりだったので今回ツアーレポートを書くことにしました。このツアーレポートからアメリカの土地でぼくたちが体感してきたものを少しでも感じ取ってもらえたらな。と思います。(とか書きながらも私の携帯の中のメモ帳に一年以上も眠っていましたが…滝汗)
3月18日 土曜日の朝。killerpass 3人とハラダくんの計4人でいよいよ出発。中部国際空港から3時間かけ北京へ。北京からアメリカ行きの飛行機の待ち時間があったので、北京の空港にて中華料理を食べる。あまり美味しくなかった。ハラダくんはパンダに乗って、はしゃいでいた。
Tumblr media
北京からアメリカはロサンゼルス空港へ向かう。12時間半のロングフライト。機内食を食べ、ビールを飲み、映画を見る。そして寝る。を繰り返していたら、いつの間にかロサンゼルス空港に到着していた。しかし、まだ着いただけで安心はできない。入国審査がクリア出来なければ意味がない。
ここで入国できな��れば全てが水の泡になってしまう…。
私の身近なバンドでアメリカツアーをしたバンドはいるもののここ数ヶ月の間にアメリカツアーをしたバンドがいなかったし 念には念を。ということで全員楽器は持って行かず、物販もアメリカでTシャツを作りツアー初日に現地で受け取る。SNSは一時的にログアウト。
『僕が入国できなかったらハラダくんがギター弾いてねー。ハヤシくんがダメだったらぼくがベース弾くよー。』なんて冗談を言うケンタさん。いざ、ゲートへ。
『滞在期間は?』『仕事は?』などの通り一遍な質問を他のメンバーは、されたそうだが私に関しては何も聞かれず ハンコを押されただけ。呆気なく4人とも入国審査クリア!(笑)
Tumblr media
到着ゲートを出ると今回のぼくたちのツアードライバーをしてくれるボブが待っていてくれていた。ボブはkilikilivillaの安孫子さんが銀杏BOYZでアメリカに行った頃くらいからの付き合いらしく安孫子さんにボブを紹介してもらい今回のツアーを同行してくれることになった。しかもボブは日本語も話せるという事で英語にめっぽう弱い僕たちにとっては、本当に心強い存在。車に乗り込みエクスプローディングハーツをBGMにボブの運転でハリウッドへ向かう。道路の幅も看板の大きさも何もかもが日本とは違い、それだけでテンションが上がる僕たち。
ハリウッドに着き、まずハンバーガーを食べようというボブの提案でIN-N-OUT BUGERというハンバーガー屋へ。ここでもハラダくんは、店員さんが被っている店のロゴが入った帽子をもらい、店のロゴが入ったロンTを買い、はしゃいでいた。
Tumblr media
すぐ近くにあるAmoeba Musicという超巨大なレコード屋に行き…散財。店の外でボブが遠くを見て指差している。よーく見るとハリウッドサインが見えていました。
Tumblr media Tumblr media Tumblr media
Amoeba Musicに行った後は車で数十分離れたところにあるボブの家に行く。『今夜は、キラーパスがツアー最終日にライブをするVLHSというところにライブを見に行きましょう。日本のバンドも出ますよ。』とボブ。
夜になりボブの家から車で数十分の位置にあるポモナという町のVLHSというDIYライブスペースに行く。すると、見覚えのある女性がいた。
Tumblr media
PEACH KELLI POPのALLIEさんでした。PKPが来日ツアーをした時に名古屋編をkillerpassとして企画をしたので、それぶりの再会。こういう再会って本当に嬉しい。ライブは東京のPENs+というバンドの方がソロとして出ててPENs+とsplit 7インチをリリースしているLEERという激情/ポストハードコアをミックスしたようなサウンドのバンドなどが出演してました。LEERかっこよかった。あとRafas Tacosというメキシコフードの出店がありすごく美味しかった。JOYCE MANORのメンバーがいて、興奮した。日本とアメリカは時差が17時間もある為、本当に1日が長く感じた。ボブの家に帰宅し乾杯しつつ、1日目が終了。いよいよ、明日からツアースタート!
Tumblr media Tumblr media
3月19日 日曜日。昼頃に起床。ボブの家の前にかなり大きいバンが停まっていた。『いよいよ今日からライブですね。このバンはToys That Killも使ってたバンなんですよ。』と言うボブにテンションの上がる日本人チーム。機材を積み込み、いざ出発!
(※Toys That KillはF.Y.P.から改名したカリフォルニア州サンペドロのpop punkバンド。1999年から現在も活動中。記憶に新しいGEZANのUS tourでも共演してたバンドですね。)
Tumblr media
ライブまでは、まだ時間があるということでヨーク・ブールバートというところにあるドーナツ屋へ連れてってくれることに。その名も『DONUT FRIEND』
Tumblr media Tumblr media
店に入ると人気店なのかわりと賑わっていた。若者に人気なドーナツ屋なんだなー。くらいにしか思ってなかったんですが、とある事に気付く…。
Tumblr media Tumblr media Tumblr media
ドーナツの名前、全部バンド名モジってる!
私はJAVA-BREAKERとSTIFF LITTLE BUTTERFINGERSをチョイス。他にも色んなバンド名をモジったドーナツがあり面白かった。ドーナツも、もちろん美味しかったですよ。
その後は、すぐ近くの楽器屋へ。
その名も『ZEPPELIN MUSIC』
Tumblr media
先ほどのドーナツ屋に続き、楽器屋もこんな名前かい。笑
僕たちがライブで使うギターやベースなどはボブが用意してくれていたのですがドラム関連の物は用意出来なかったとのことだったので、新古品のスネアとスティックを購入。
今夜のライブ会場であるサンディエゴのche cafeに向かう。2時間くらいかかった。
Tumblr media
ライブ会場のche cafeに到着。che cafeは大学のキャンパス内にあるボランティアで運営されているDIYライブスペース。日本では味わうことの出来ないような雰囲気にテンションの上がる日本人チーム。近くの店で食事を済ませ、気付けば夜になっていた。ライブスタート!
Tumblr media
今さら気付きましたがフライヤーに日付載ってませんね。笑  
1番目は、我らがハラダくん。ギターと歌だけの彼だが会場を沸かせていた。さすが!としか言いようがない。凄く良いライブをしていて見ているこっちまで気合いが入る。
Tumblr media
2番目はPEGGY183というバンド。良い意味でヘロヘロなボーカルなインディーギターポップという感じのバンドでした。The CureのBoys Don't Cryをカバーしてたりしてて好感が持てました。
Tumblr media
そして3番目がkillerpass。見慣れないアンプ、割れたシンバルなどいつもと違う環境に苦戦しながらもツアー初日にしては、なかなか良いライブが出来たんではないかと我ながら思いました。ハヤシックの思い付いたままのような英語をひたすら吐き出すMCには不安すら感じましたが、とにかく彼の“気合い!”は、あの場にいた人達には伝わっていた様子でしたね。笑  
トリはSPIRITED AWAYというサンディエゴのバンド。女性ボーカルの4人組ハードコアバンドで会場は盛り上がっていました。
Tumblr media
ライブが終わりライブを見に来てた人たち数人と会話を楽しむ。あと、この日じつは愛知県は豊田市から友人の山口さん(ex.VIDEO GIRL)が1人旅行のタイミングと僕たちのツアーのタイミングが良かったので、ということでライブを観に来てくれたのもすごく嬉しかった。
ツアーをしていく途中で気付く事なんですがアンプやドラムセットなどの機材は基本的には出演バンドの持ち込みなので(ツアーで行った会場は、どこもそうでした。日本のライブハウスのように機材があらかじめ用意してもらってるわけでは、ないんです。)帰る頃にはステージ上には何もありませんでした。
Tumblr media
数時間かけボブの家に帰宅。就寝。
3月20日 月曜日。ツアーの日程の調整をしている段階でこの日はライブが出来ないかもしれない。とボブから言われていた通り、この日はオフ日でした。ロングビーチという街へ行く。天気も最高で本当に気持ちが良い。海だー!!!
Tumblr media Tumblr media Tumblr media
killerpassの3人は、ズボンの裾を膝くらいまでまくり上げ、控えめにアメリカの海を感じていましたが、ハラダくんは、いつの間にかこんな格好になっていました。笑  最終的に私以外の日本人3人はパンツ一丁で海に入ってました。私も入っておけばよかったと今さらながら思ったり思わなかったり…。
ここでボブの友人のチェイスさんと合流。チェイスさんは僕たちがアメリカに着いた日のVLHSでRafas Tacosのスタッフをやっていた人で、来日ツアーもした事があるJOYCE MANORというバンドをやっています。来日ライブに何処にも行けなくて悔しい思いをしてた私としては、まさかこんなタイミングでJOYCE MANORのメンバーと遊べると思ってもいなかったので嬉しかった。ビーチから歩いてすぐのとこにあるバーで乾杯。
Tumblr media
チェイスさんとボブが好きなゲーセンがあるということで行く。日本で例えるならすごく寂れた遊園地とか温泉地とかにあるようなゲーセンというか…。新しい機種は全く入らない、ずっと古いゲーム機が置きっ放しのゲーセンってな感じで雰囲気最高だった。
Tumblr media
メキシコ料理を食べながら乾杯。
Tumblr media
その後は、チェイスさん家にお邪魔させてもらう。すると、チェイスさんがおもむろに何かを巻いて火をつけて吸い始めた。…独特な、においが部屋に充満する。そう。カリフォルニア州は大麻合法地域なので何も問題ないが僕たち日本人にとっては、あまり馴染みのない、におい。『吸うかい?』と聞かれたが『お酒で大丈夫だよ。』と断った。
Tumblr media
チェイスさんの愛犬の散歩にみんなで行くことに。気付けばもう太陽が沈み夜になっていた。ロングビーチで犬の散歩をするという最高なオフ日の〆。この日もボブの家に帰り就寝。
3月21日 火曜日。本日ライブをするSan Joseという街まではボブが住んでいるロサンゼルスからは350マイルほど。(約600キロ!)日本で例えるなら、名古屋から福島県に行くような距離。ボブ1人の運転での超ロングドライブ。ボブは休憩しつつエナジードリンクを飲みまくってました…。
Tumblr media
いくら昼間の移動とはいえ、なるべく寝ないように気を付けながら(途中で寝落ちしてしまってましたが…)車窓からの景色を楽しむ。
ライブ会場に到着。スーパーやらメキシコ料理屋やら様々な店が入っている複合施設の中にあるカフェがライブ会場のクロマティックカフェなのです。ほんとにここでライブやって大丈夫なの?と思ってしまうほどティータイムを楽しみに来ているような一般のお客さんで賑わっているカフェでした。コメダ珈琲とかスターバックスに機材持ち込んでライブするような感じですね…。
Tumblr media
フライヤーの横に注意書きが貼られていた。笑
Tumblr media Tumblr media
ライブを見に来てるお客さんと、お茶をしに来てるお客さんが混在している中、ライブスタート。
Tumblr media
1番目がKITTY KAT FAN CLUB。ASIAN MAN RecordsのオーナーMike Park率いる女性ボーカルギターポップバンド。ツアーに行く前からじつは7インチを持っていたので今回のツアーでかなり楽しみにしていたバンドの1つでした。お洒落なカフェの生演奏BGMとしてはバッチリ!なグッドメロディな楽曲の数々で凄く良かったです。
Tumblr media
次。2バンド目はBEST BUDS。MOM JEANSのアルバムのタイトルからバンド名を取ったかどうかは、不明。ANNABELをより男臭くした雰囲気。熱く歌い上げるエモ要素有りのメロディックパンクって感じでカッコ良かったです。メンバーもナイスガイでした。
Tumblr media
3番目がハラダくん。観ている人達の心を完全に掴んでました。やっぱりスゴイ。カフェで聞くハラダくんの音楽も最高だった。
Tumblr media
そしてトリはkillerpassでした。あの、お洒落なカフェには、マジで相応しくない爆音BGMになってしまったとは思いますが(笑)初日よりも凄く気持ち良いライブが出来た夜でした。『エナジーしか感じなかったぜ!』と話した人達からは口々に言われたのでアメリカの人たちに気合いが伝わったようで本当に良かった。この日のライブ映像はハラダくんがyoutubeにアップしてくれてるので是非観てみて下さい。少しは雰囲気伝わるかと思います。
Tumblr media
ライブ後はKITTY KAT FAN CLUBのギターのSimさんの家に泊めて頂くことに。Simさんの友だちも何人か来てライブの打ち上げのような感じ。楽しい夜だった。
3月22日 水曜日。Simさんの家から歩いて数分の位置にあるSimさん行きつけ?の店に行き朝食を食べる。
Simさんとは、一旦お別れしThe Starving Musicianという名の楽器屋へ。
Tumblr media
入店してわずか数十分…『これにする!』とハヤシック。彼は今回のアメリカツアー中に春からの新体制のkillerpassで使うギターを買うんだ。と渡米前から意気込んでいた。
Tumblr media
新体制になってからしばらく使ってましたが、ここ最近は違うギター使ってますね。そのうち、またこのギターも再び登場することでしょう!
Simさんの家があるサンノゼから今晩のライブ会場がわりと近いこともあり時間に余裕があるという事で『観光しましょう。』とボブ。
ライブ会場があるレッドウッドシティーを通り越して気付けばサンフランシスコにいました。GOLDEN GATE NATIONAL PARKSという公園へ到着。
Tumblr media
THE観光地!て感じの場所でしたが天気も良く最高でした。園内を歩きまわる。
Tumblr media
少し遠かったですがゴールデンゲートブリッジとやらが見えてました。
Tumblr media
3人とも見事に目が開いてませんね。太陽が眩しかったんです。ハヤシックが花のようなものをくわえているのは、ナゼなんでしょうね。笑
少し移動し、Amoeba Musicサンフランシスコ店に行く。アメリカに到着した日に行ったロサンゼルス店と比べると少し小さめだった(とはいえ、かなりデカイですよ。)が、ここでも、またもや私は散財しました。
Tumblr media
レコードディグ後は中華料理を食べる。北京の空港で食べた美味しくない中華は、いったい何だったんだろうと思ってしまうほど、美味しかったです。
Tumblr media
本日のライブ会場に到着!レッドウッドシティーという街にあるMardi Gras Loungeというバー。
Tumblr media
ビリヤードが出来るバーの隅っこに機材を持ち込んでライブをやるスタイル。テンションが上がる。
Tumblr media Tumblr media
フライヤーには書かれてませんがハラダくんも、もちろん出てましたしDick Fightという地元のバンドも出てました。ライブは、ちょいと遅めの21時スタート。
ハラダくんは、この日のフライトで一足先に帰国することになっていたのもあり1番目に出演。
Tumblr media
酒場の楽しく賑やかな雰囲気に合わせてプレイスタイルを変えていたのか昨日よりも少し荒い感じのハラダくん。今まで何度も彼のライブを見てきたんですが、この日のハラダくんのライブは超かっこよかった。
ライブ後は、泥酔してる?おばさんがハラダくんに駆け寄って写真を撮っていた姿が凄く微笑ましかった。
Tumblr media
ハラダくんとの日本での再会を約束しハラダくんを見送り、引き続きライブ。
その後はTeenage Sex、Dick Fightというバンドがプレイしていた。4番目はkillerpassでした。連日のライブで勢いがかなり出てきているな。と我ながら感じるライブが出来た。トリはサクラメントという街のJesus and the Dinosaursという3人組のバンド。野生感剥き出しなドラムの叩きっぷりが最高なスペイン語ロックンロールパンクって感じでかっこよかった。
Tumblr media
『ワタシ、ニホンゴペラペラデース!』と話しかけてきたクリスというボブの友人が来てくれていたんですが日本に住んでいたこともあるらしく、キラーパスとは別で私がドラムを叩いているSKIZOPHRENIA!のライブを岡山県は津山で見た事あると話していた。(ほんまかいな?と思い、帰国後パソコンの写真フォルダを見ていたらスキゾフレニアのメンバー宅で撮ったクリスが写っている写真が発見されました。笑)
Tumblr media
コラプテッドのパーカー羽織りセブンティーンアゲインのシャツを着ているナイスガイでした。
21時スタートだったこともありライブ終演したのは24時をまわっていました。昨夜泊めて頂いたSimさんの家に帰る。ボブが『明日のライブ会場がギルマンに変更になるかもしれません。』という爆弾発言をし就寝。
3月23日 木曜日。朝に起床。ボブとSimさんオススメのメキシコ料理にて腹ごしらえ。美味しいし量も多いしマジで最高!
Tumblr media
Simさんとはお別れ。
Tumblr media
Simさんの家を出発しオークランドという街に向かう途中ボブが何やら電話をしている。電話を切りボブが僕たちに言う。
『会場変更になりました!ギルマンになりました!』
『ええええええええええ!?マジで!?』
キラーパス一同、驚嘆。
当初の予定では、オークランドのVamp Vintageという古着屋さん?でライブをする予定でした。ギルマンがわりと近いという事だったのでボブには時間があれば見に行きたいので連れてって欲しいという話は、してあったのですが、まさかそんな憧れの場所でライブが出来ることになるなんて…。
オークランドに到着しボブがやっているTADAIMAというバンドのメンバーのユイさんと合流。彼女は母親が日本人で日本産まれ。幼少期以外は、ほぼアメリカで育ったそうだ。
Long Knivesというバンドをやっているコナーさんがやっているバーに行き、器の真ん中に火がついてるアルコール度数の高い酒で乾杯。
Tumblr media
その後は巨大霊園?のような墓地 兼 景色が良い観光スポットのような所に行き芝生の上で昼寝したり、のんびりタイム。
Tumblr media Tumblr media
1-2-3-4 Go! Recordsというレーベルの実店舗に行き散財。すぐ近くにはグリーンデイのビリージョーが経営しているギターショップもあったので行ったりしました。
Tumblr media
いざ、924Gilmanへ!
Tumblr media
到着!ハードコアパンクの聖地924Gilman。
ここはFUGAZI、operation ivy、MDC、GREENDAY、RANCID、FIFTEEN、YOUTH OF TODAY、DESCENDENTS等々の数多くのバンドがライブをしてきたという伝説の場所。ギルマンでのライブを音源化してる作品も沢山ありますね。
ファンジンとかで読んだり行ったことがある人から聞いたりしていた、メッセージの書いてある壁を見た時は本当に震えました。
Tumblr media
ライブスタート時間が近付いてるのにステージには何1つ機材がなく、とりあえず呑気に記念撮影。笑
ボブに聞くとステージでのライブではなく今日は、いつもはライブでは使わない部屋を使ってのライブとのこと。『レアですよ!』とボブ。地元の人たちもそんな使い方する日もあるんだねー。という感じの様子でした。
Tumblr media
ライブスタート!!
Tumblr media
手違いでフライヤーにハラダくんの名前が書かれていましたが帰ってしまっているので7時スタートで計3組出演。
1番目がJOY CYRという女性のソロ。どうやらソロ活動がメインのようですがこの日は数曲やった後にバンドバージョンとしてもプレイしてました。
Tumblr media Tumblr media
2番目がkillerpassでした。正直ライブのことは、何も覚えていませんが今まで数々のバンドがここでライブやってきたんだな。と思いながらで全力でプレイしました。
トリがSNOOZEというバンド。この日の企画は、このバンドのボーカルのSamさん。ウィーザーからの影響大ってな具合のサウンドで個人的には結構好みでした。
Tumblr media
ライブ後は、ツアー中全くと言っても過言じゃないほど撮ってなかった集合写真。
Tumblr media
ライブ後はボブのバンドメンバーのユイさんの家に行きアニメを見たり飼い猫と遊んだりしてから就寝。
3月24日 金曜日。
Tumblr media
ユイさん家の飼い猫に起こされ目を覚ます。
ユイさんが住むオークランドからライブ会場があるポモナのVLHSまでは6時間ほどの距離という事もあり、午前中にはVLHSに向け出発。ユイさんとは、ここでお別れ。
道中のことは、あまり覚えてませんがツアー最終日ということもありアメリカツアーでの出来事や今までこの3人でのkillerpassとしてやってきたことなどを思いながら車窓からアメリカの風景を見ていました。
VLHSに到着!あとは、やるだけだ。
Tumblr media Tumblr media Tumblr media
地元のバンド4バンドと僕たちの計5バンドでのライブ。killerpassは3番目に出演しました。
Tumblr media Tumblr media Tumblr media Tumblr media
1.レイジズム
2.アイランドインザサン
3.自分の言葉で話したい自分言葉で伝えたい
4.Do The Best Thing
5.偽善者でかまわない
6.マイアンサー
7.リスタート
8....is over
--------
9.First Contact(ワンモア)
ワンモア含む全9曲をプレイしました。
Tumblr media
この日のライブは過去最高のライブができたと我ながら思いましたし、ハヤシックとkenchanもそう感じてたと思います。ライブ後は色んな方が物販を買ってくれたり話しかけたりしてくれて、本当に嬉しかった。
ボブの家に帰宅し帰国する準備をしつつボブとkillerpass3人でツアー最後の乾杯をして就寝。
3月25日 土曜日。
早朝に起床。ボブの飼い猫のワイヤーとも、この日でお別れ。
Tumblr media
ボブの運転でロサンゼルス空港に向かう。
18日から初対面の僕たちに1週間フルサポートしてくれたボブには本当に感謝しかありません。ボブ本当にありがとう!
Tumblr media
日本かアメリカか何処かでの再会を約束し僕たちはロサンゼルス空港から飛行機に乗り込む。ツアーが終わったのと日本に帰るという安心感からか飛行機の中では爆睡。
行きと同じルートの為、ひとまず北京に到着。乗り換え時間があまりなかったので、すごく忙しなかった。予定していた中部国際空港行きの飛行機に全力疾走したりしながらギリギリで乗り込む。
中部国際空港に到着した頃には、アメリカで買った沢山のレコードを聞くことや、久しぶりの日本食は何を食べるか等の事で頭が一杯だった。
バゲージクレームにて自分の荷物が流れてくるのを待つ、killerpass一同。
同じ飛行機の乗客たちは自分の荷物を受け取り、その場を1人、また1人と去っていくのに僕たちの荷物がいつまでたっても流れて来ない。。。
そして最終的にバゲージクレームには何も荷物が流れて来なくなってしまった。
航空会社のフロントに聞きに行くと、数人分の荷物が北京で積み替え出来ていなかった。という事が判明。
Tumblr media
ツアー中に買ったレコードやお土産などが入ったカバンは全て北京空港に取り残されており、結局 書類を書くハメに。笑  
家に無事に帰宅したが何とも言えない後味の悪い感じで就寝。後日、荷物は無事に郵送してもらいました。
『あとがき』
僕たちのUSツアーレポート楽しんで頂けましたでしょうか。たった1週間の出来事で毎日が本当に刺激的で楽しくてあっという間すぎる1週間でした。アメリカの地でツアーを出来たのもkilikilivillaやボブ、そして各地でサポートしてくれた方たちの協力なしでは実現しなかったと思います。今回途中まででは、ありましたがハラダくんと行けたというのも本当に良かったですし、そしてバンドメンバーのハヤシック、kenchanと一緒にkillerpassとして活動できたことに感謝してます。
このツアーの事を唄っているのが今回の新譜『delayed youth e.p.』に収録されている『アメリカンドリーム』という曲です。僕たちが感じたアメリカの風を少しでも感じ取ってもらえれば嬉しく思います。
Tumblr media
1 note · View note
kurihara-yumeko · 8 years ago
Text
【小説】鳴かない (上)
 あと何回だろう。
 そんな風に、「残り」をカウントするようになったのはいつからだろうか。
 新しい場所に足を運んだ時、私はあと何回、死ぬまでにここを訪れるだろうかと考える。二回目はないだろうなと思う時もあれば、数え切れないくらいの回数だろうと思う時もある。
 仲間と楽しく談笑している時、こんな風に心から笑って人と語り合えるのは、あと何回だろうと考える。
 何か良いことがあった時、悲しいことがあった時、あと何回、と考える。
 こうやって、自分の人生にあとどれだけ可能性が残っているのか考えるのは、やっぱりおかしいことなのだろうか。自分の余命が宣告されている訳でも、近いうちに世界が滅ぶ訳でもなく。それとも、長い長い学生生活の終わりが、もう足音が聞こえてきそうな距離にまで迫って来ている大学四年生というこの時期が、私をそういった思考に導いているのだろうか。
 夏の夜は暑い。
 雑音のような蝉の鳴き声も、気付けばすっかり耳に馴染んでいて、もう五月蠅いと感じなくなってしまった。熱を孕んだアスファルトが、一歩一歩と歩く度、ビーチサンダル越し、足の裏に熱烈なキスを繰り返す。見上げた銀河は何もかもが遠い。ミルキーウェイは滲んでいて、存在自体がどこか頼りない。
 身体は重く、足を引きずるようにして歩いていたら、左足が蹴り上げた小石が右足に当たった。いて、と思わず独り言を零すと、私の背中に乗っている、大きな熱源が言葉を返してきた。
「すいません先輩、こんなに酔っ払っちゃって……」
 私は考える。
 こうやって酔った人間をおぶって道を行くことは、人生であと何回あるのだろう。酔った、年下の男をおぶるのは。
 サークルの後輩である彼は、酒にめっぽう弱い。本人はもちろん、サークルの仲間たちも皆そのことを知っている。彼は飲み会ではいつも壁際の席にひっそりと佇み、周りがどんなに騒ぎ立てようが、ウーロン茶片手にいつも静かににこにことしている。無理に酒を勧められることもない。文化系のくせに飲み会のノリだけはやたら体育会系なうちのサークルで、上級生から酒を無理強いされない彼は、珍しい存在だった。
 根暗な訳ではないけれど、声を上げてはしゃぐような人種ではなく、じっくりと人の話を聞き、柔らかい返事をするにも関わらず、あまり多くは語らない。人の輪の中心にいるけれど、いつもどこか遠くに思いを馳せているかのような、どれだけ一緒にいても決してその実像を掴むことのできない、影のような人。それでも彼が周囲に遠ざけられることなく、集まりの席に必ず呼ばれるのは、その優しい表情と、柔らかい物腰のためだろうと思った。
 そんな彼は今、私の背中に揺られながら、私の家へと向かっている。
 部の飲み会に現れた彼は、いつものように隅に座って、声を立てずに笑っていたのだけれど、いつの間にかその手にはビールジョッキが握られていた。向かいの席に座っていた私が気付いた時には、彼はもう呂律が回らず上手く話せないほど酔っていた。
 どうして気付かなかったのだろう。飲み会での光景を思い返して、そういえば、いつもは私に一言、二言は話しかけてくる彼が、今日は一度も私に声をかけてこなかった。そして私自身も、どこか無意識のうちに、彼を意識しないよう、視界に入れてはおくものの、深く触れないように、頭の奥底の方に仕舞ってしまったようだった。
「紡紀(つむき)が飲むなんて珍しいな」
「お酒飲んでるとこ、初めて見たかも」
 そんなことを仲間たちは口にしたが、彼はもうへらへら笑った顔で、無言のまま頭をぺこぺこ下げるのが精いっぱいだった。
 飲み会が終わり、二次会へ行こうかと、皆が席を立った時、今まで壁に頭を預けてうとうとしていた彼が目を開き、向かいにいる私を見つめ、酒に飲まれた真っ赤な顔で、やけにはっきりした声で言った。
「美茂咲(みもざ)先輩、僕を連れて帰ってくれませんか」
 それはつまり、「お持ち帰りしてくれませんか」というお願いだった。
 その場にいた誰もが、その発言にぎょっとした。彼はそういう浮ついた雰囲気が一切なく、恋愛のにおいを窺わせる素振りも全くなかった。見てくれも悪くないし、誰にでも優しい彼のことだから、恋人がいてもおかしくないとは皆思っていたけれど、実際のところは誰も知らなかった。
「どうするんだ」
 私の右隣の席に座っていた、同じ学年の鷹谷が、いつもの仏頂面のまま、無骨な声で私に訊いた。柔道部とうちのサークルを兼部しているこの男は、いくら酒を飲んでも顔色ひとつ、声音ひとつ変わらない。
「じゃあ家まで連れて行くよ。こんなに酔ってるんじゃひとりで帰せないし、ここからだと私の家が一番近いから」
 そう答えると、鷹谷は無言のまま私を見つめ返し、そして、
「大丈夫か」
 とだけ言った。
 その声の硬さに、鷹谷が何についてそう尋ねているのか、一言に込められたいくつもの意味を感じ取った。大学一年生の頃からずっと一緒の相手なだけに、お互いの考えていることは大抵わかる。私は静かに頷いた。
「大丈夫だよ」
 男性としては小柄で華奢な後輩が自分の足で歩けたのはわずか五分ほどのことで、私はすぐに彼に肩を貸すこととなった。さらに��の五分後には、支えても自立できなくなり、彼を背負う形となった。女の割には上背があり、力もある私は易々と彼のことを背負えてしまった。いくら二つ年下とはいえ、成人男子を、だ。私が今日、たいして酒を飲んでいなかったことも少なからず関係しているのだろうか。
 酒のせいだろうか、彼の身体は熱を帯びていた。密着している背中が、じっとりとした汗をかいている。
「先輩、すいません……」
 まだ酔いが醒め切らぬ声で詫びる、その首筋にかかる吐息さえも熱い。
「大丈夫だよ」
 私はそう返す。
 思う。あと何回、私はこの言葉を口にするのだろう。何回、誰かをそうやって安心させ、自分にそう言い聞かせるのだろう。
 聞き取ることができない、不意に眠りを妨げられた人間が発するような、意味のない小さな呻き声を上げ、彼は火照ったその腕で、後ろから私をきゅっと抱いた。彼の骨ばった両腕は、月明かりと道端の電灯の濁った白い光に照らされて、はっきりとした明暗を持って私の視覚に迫りくる。
 私が男性というものを意識するのは、決まって、その身体に触れた時、その身体をまじまじと見た時だ。そこには確かに、女の人にはない質量と感触、造形がある。
 ああ、男の人の腕だ。
 この人、男の人なんだ。
 そんな当たり前のことを改めて思いながら、私は彼を部屋へ運ぶ。
 彼を背負ったままアパートの階段を上るのには苦労した。やっとの思いで私の部屋へと運ぶと、恥ずかしいことに、朝起きた時のまま敷きっぱなしだった布団へと彼を寝かせる。すいませんすいません、と繰り返し口にし続けている彼をなだめ、台所でコップに水を汲んでやった。
 戻ると、彼は布団から起き上がり、神妙な面持ちで正座をし、私のことを待っていた。渡した水を、喉を鳴らして飲み干し、深い溜め息をついて言う。
「すいません、突然お邪魔してしまって……。どうしても先輩にお訊きしたいことがあって……」
「何?」
 脳裏を掠めた嫌な予感に、目を向けないように発した私の声をまるで無視するかのように、彼は言った。
「先輩の、手帳に挟めてある写真の、あの人は誰ですか」
 ああ。
 やっぱりそうだ。
 諦めにも似た後悔が、私の胸の中を濡らしていく。
 近いうちにこういう日が来ることは、以前から薄々わかっていた。
 いつもにこやかに、親しげに接してくれる彼が、最近になって突然、妙によそよそしくなったこと。仲間たちと大勢で話をしている時、いつも何か言いたげに、じっと私の表情を窺っていること。そんなことが、彼が私に抱いている疑念の存在を感じさせていた。
 私は、そんな彼の変化に気がついてはいたが、それをずっと黙殺してきた。私に何か言いたいことがあるのを知っている上で、彼と目を合わせず、そのきっかけを与えなかった。彼が人のいるところでその話を持ち出すような人間でないことは、もうとっくに知っていた。
 うっかり、持っていた手帳を落としてしまい、挟み込んでいた一枚の写真が彼の足下にはらりと落ちたのは、つい先週のことだ。
 大切な写真であるが故に、手帳に挟んでどこへ行くのにも持ち歩いてはいたが、裏を前にして挟めたそれを、取り出して眺めるということは日頃ほとんどしない。久しぶりに見たあの人は、写真の中で相変わらず優しそうに笑っていた。
 写真を拾ってくれた後輩の彼は、複雑な表情をしていた。何か言いたげな顔で手渡され、ありがとう、と私が礼を言った時、側にいた鷹谷が私の手元を覗き込み、「郡田さんか、懐かしいな」とつぶやくように言った。
「郡田さん?」
 後輩の彼がそう訊き返した時、鷹谷は三白眼で彼を睨みつけるかのように見やり、「この部の設立者だよ」とだけ低く答えたのだ。
「――あの人は郡田さん。私たちが一年生の時に、四年生だった人」
 布団の側に立ったまま、私は答える。正座したままの彼は、湿った目で私をじっと見上げていた。
「どうして先輩は、その人の写真を持っているんですか」
「どうしてって……。彼は、私のことを一番可愛がって下さった先輩だったんだ。親しい人の写真を持っているのって、そんなに変かな」
「変です」
 はっきりと、通る声で彼は言う。
「美茂咲先輩がその人の写真を大事に持っているなんて、絶対おかしいですよ」
「……どうして?」
「だってその郡田って人、部内の女性、全員抱いたんでしょう?」
 吐き捨てるかのような、声音。
 そのくせに、彼は今にも泣きだしそうな表情をしていた。
「……知ってたんだね」
 私の口からは、自然とそんな言葉が零れた。
 郡田さんの存在は、もう長いことサークル内で最大の禁忌とされていた。彼が大学を卒業しサークルと疎遠になって以来、仲間内でその名を口にすることも、彼について話をすることも禁止となった。誰かがそう命じた訳でもないのに、自然とそうなった。それは暗黙の了解だった。
 彼のことはもう忘れよう。彼とのことはなかったことにしよう。それは容易いことではなかったが、ただ過ぎて行く年月は、少しずつそれを可能とした。
 今年度、私たちが卒業すれば、もうサークル内に郡田さんを知る人はひとりもいなくなる。ただのひとりも。口をつぐむことで過去を清算しようというこの計画は、私の代がこの秘密を守り続けることで完了するはずだった。
 私が誰にも言わず、手帳に挟んで隠し持っていた、たった一枚の写真。郡田さんの存在を抹消するように、過去の名簿も書類も写真も、全て処分してしまったうちのサークルで、恐らく唯一、彼の存在を示すもの。
「先輩は、その人と付き合っていたんですか」
「付き合ってないよ」
「その人に、抱かれたんですか」
 感情をじっと押し殺すような声で、彼は言う。机の上を這う小さい羽虫を、爪の先で押さえつけ、あと少し力を加えれば虫が圧死してしまうであろう、そんなぎりぎりの力加減の、声。
「抱かれてはいないよ」
「嘘だ」
「嘘じゃない」
 彼は私の言葉を信じなかった。騙された、裏切られたと、怒りで小さく震えていた。
 私はできるだけゆっくりとした口調になることを心がけて口を開く。力加減を間違えて、彼を潰してしまわぬように。
「郡田さんがサークルの女子全員を抱いたなんて、そんなの嘘だよ」
「そんなはずはないです、僕は四年生の先輩がOBの人と話しているのを聞い――」
「郡田さんは、私だけは抱かなかったよ」
 遮るようにそう言った私の言葉に、彼の目が大きく見開かれる。彼の顔をじっと見下ろしていられたのはそこまでだった。私は目を逸らし、自分の足の剥げかかったペディキュアを見つめることに専念する。
「だから、全員を抱いたっていうのは、嘘なんだよ」
「そん……な…………」
 彼の声は、震えが大きくなっていた。けれど混じる感情は怒りではない。それは落胆のようにも聞こえたし、屈辱のようにも思えた。もしかしたら、泣いているのかもしれなかった。
「そんな、そんなことって…………先輩は……」
 彼はそこまで言って、口をつぐんだ。私は彼の方を全く見ないままに、リモコンをローテーブルから拾い上げ、エアコンを稼働させた。小さな唸り声を上げながら、やや緩慢な動作で、今まで閉め切られていた室内に、冷気を排出し始める。
「先輩は、その人のこと、好きだったんですか」
 絞り出すかのような、声だった。
 私はその問いに、すぐに答えることができなかった。彼に背を向けて台所へと戻り、そこでやっと、どうだろうね、と曖昧な返事をして、蛇口を捻った。マグカップに、今度は自分のための水を汲む。後ろからは彼の泣く声が、私を責めるように背中を叩いてくる。
 私は考える。
 一体、私は人生であと何人と出会い、そして別れていくのだろう。
 ひとつだけ確かなことがある。たとえあと何人に出会おうとも、残りの人生で、郡田さんのような人間に出会うことはもう二度とない。
 郡田さんは私の、人生、最初で最後の人だ。それだけは、間違いない。
 ***
「文化部」に入りたいと言い出したのは、私ではなく由美の方だった。
 由美は私と同じ女子校からこの大学に進学してきた友人で、高校時代は二年間クラスが同じだった。
 大学に入学した当初から、お互い以外に知り合いがいなかった私と由美は、「サークルに所属して友達を作る」という話をよくした。といっても、中学・高校と万年帰宅部で、運動が得意な訳でも、絵が上手い訳でも、楽器が演奏できる訳でもない私たちに向いていると思われるサークルを探すことは、容易ではなかった。
 高校の三年間を女子まみれの環境で、恋など知らずに過ごしてきた私たちは、男子と何かを一緒にするということがどんな感覚だったのかも忘れかけていたし、酒を飲んだこともなく、「飲み会」の三文字は恐怖でもあった。
 活動が頻繁ではなく、飲み会や合宿などお金がかかる行事が少なく、強制参加でもなく、それでいて運動部でも美術部でも音楽系でもない、男子が優しくしてくれる、そんなサークルを私たちは求めていた。
 二百近いサークルが存在しているというのに、理想のサークルをなかなか見つけられないまま、一年生の四月がもうすぐ終わるという頃、由美はそのサークルについての情報をどこからか仕入れてきた。
「ねぇ、みもちゃん、文化部に入らない?」
 各サークルが配布していたチラシを収集し、どれが良いか吟味をし、気になったサークルには連絡をしたり食事会に行ったりしていたにも関わらず、私はそのサークルの存在を知らなかった。なんでも、新入生を積極的に勧誘する活動は、ほとんどしていないのだという。
「なんかね、いろんなサークルを見て回っても、『なんだかここじゃないんだよなぁ』って入りたいサークルが見つけられない人たちが集まってるサークルなんだって。『ここじゃない同好会』っていう別名なんだって、学科の先輩が言ってた」
 どんな活動をしているサークルなの、という私の問いに由美はそう答えて、目を輝かせて言った。
「私たちにぴったりなサークルだと思わない?」
 ここじゃない同好会こと、文化部の部室は、サークル棟の最上階である五階の最奥、玄関から一番遠い、北向きの部屋だった。割れたガラスにガムテープが貼られているドアには、「文化部」と書かれた紙が貼られている。
 ドアを叩くと、はーいはいはいはい、と男の人の声がして、思わずどきりとした。開いたドアから顔を覗かせたのは、ひとりの男子学生だった。
 最初に思ったのは、背が高い人だ、ということ。身長百六十八センチに加え、十三センチヒールの靴を履いている私よりも背が高い。百九十、もしかしたら二百センチあってもおかしくないほど、長身な男性だった。身体つきは、ひょろっこい訳でもがっしりしている訳でもなく、適度な筋肉と適度な脂肪がついているのが一目でわかった。手足がそんなに長いようには感じられず、けれど身のこなしは軽やかで、それは人懐っこそうな彼の顔つきにも影響しているような気がした。
 彼が郡田三四郎さん。文化部の設立者である、大学四年生だった。
 私と由美が初めて文化部のドアを叩いたその日、部室には他にも部員が何人かいたはずだけれど、今となっては誰がいたのか思い出せない。部室に私たちを招き入れてくれた郡田さんから部の活動――活動といっても特にこれといって何かをする訳ではなく、時間が空けば部室に集まり、人が集まればカードゲームに興じたりどこかへ出掛けたり、飲み会をしたり食事会をしたりするだけなのだという――について説明を受け、その場で入部することに決めたのだった。
 居場所がない人にとっての居場所をつくりたい。
 そう思って、文化部を創設したんだと語る郡田さんに、少なからず感銘を受けたのもあった。
「ちょうど、明日、新入部員の歓迎会をしようと思ってたんだ。二人も良かったらおいでよ。大学の近くのタコーズっていう居酒屋で、午後六時からね。上級生のおごりだから、お金の心配はいらないよ。まぁ俺らは酒飲むけど、一年生は飲まなくても全然かまわないからさ」
 郡田さんは優しそうな笑顔でそう言った。私は始めたばかりのバイトのシフトが入っており、行けないと言ったが、由美は行きますと活き活きした顔で答えた。
 その歓迎会で由美は郡田さんから、肩を抱かれたり太ももを撫でられたり、胸を触られそうになったりキスされそうになったりして、すっかり嫌気が差したのだろう、一ヶ月もしないうちに文化部を辞めて去って行った。
 文化部が性行為を目的としたサークル、いわゆる「ヤリサー」だと周囲からは思われていること、そして、それが事実ではないにしても、所属部員に異性交遊関係の乱れている人間が何人かいるということ、中でも郡田さんは、ずば抜けた女たらしの遊び人であるということを私が知ったのは、ちょうどその頃だった。
 夜九時以降、文化部の部室の前に来たら、まず、部屋の灯かりが点いているか否かを確認する。
 入口の扉にはめ込まれた、割れかけている曇りガラスから灯かりが漏れていたら、誰かいる。真っ暗だったら誰もいない。でもこのことに、ほとんど意味はない。この部室で行われているかもしれない行為は、灯かりを点けたままのこともあれば、わざわざ消して行っていることもある。
 だから重要なのは、いかに耳を澄ますかだ。部室の隅に置かれた、古いソファのスプリングが軋む音なんかが微か���でも聞こえたら、ドアを開けてはいけない。何も言わずに引き返す。
 一年生の頃は、そんなことの連続だった。誰に教わった訳でもなく、自然とその癖が身についた。私と同じように文化部に入部した一年生の女の子が、中で行われている行為に気付かずにドアを開け、思わず呆然と立ち尽くしていたら、手を引かれるがままに室内に入り、行為に参加させられてしまった、という真偽が定かではない話も聞いた。
 部室に集まる人たちも、昼間は和やかに談笑しているのに、飲み会に行けば上級生が下級生を酔わせては「お持ち帰り」している。皆が皆、そうだという訳ではなかったが、「要注意人物」と呼ばれている部員は実際、何人かいた。そしてその「最要注意人物」が郡田さんであるということも、とっくに知っていた。表向きは別として、活動内容という内容がないサークルだけに、自分が何故このサークルに所属しているのか、入って二ヶ月もした頃には、その意味を完全に見失っていた。
 大学で友達を作るという名目だけは、かろうじて達成された。同じ学部のみならず他学部の先輩とも知り合い、どの教授がああだとか、どの講義がこうだとか、何年生の何月はこうだからああした方がいいだとか、このバイトは良い、これは駄目、何年生の何月までにいくら貯金した方が良い、など、いろんな話を聞かせてもらった。
 同じ学年の部員たちとは、先輩たちとよりもさらに仲良くなった。「一年飲み」と称して、皆ろくにお酒も飲まないのに、一年生の部員だけで居酒屋に集まり、まさかこんなに乱れたサークルだとは思わなかったよね、という話でひそひそと盛り上がった。
 一年生の部員の大半は、「もうこんなサークル辞めたい」と口々に言っていた。けれど、「どのサークルにも馴染めそうにない」という理由で文化部に流れ着いた者が大半だったので、
「でもなんだかんだ、居心地いいんだよね」
「先輩たちも、優しいしね」
「そうそう、トラブルに巻き込まれたりしなければ、結構良い環境なんだと思う」
 なんて話に流れていってしまい、きっぱりと退部を決意する子は少なかった。
 私が特別親しくなったのは鷹谷で、彼は一年生の中では珍しく、他のサークルと兼部していた。坊主頭に、がっしりとした筋肉質な身体つき。目つきが悪く、顔が怖い彼は、言葉の選び方や態度のぶっきらぼうさも相まって、仲間内では恐れられ、敬遠されがちだった。どうして文化部に入ったの、と私が訊くと、彼は無骨に「逃げ場が欲しかった」と答えた。
「逃げ場?」
「ひとつの集団にずっと属しているの、苦手だ。嫌気が差してくる。二つ入っておけば、片方嫌になったらもう片方、って、ふらふらしていられるだろう」
 十八歳の私には苦すぎて飲めなかったビールを、まるで水のように飲み干していく鷹谷は、眉間に皺を寄せた表情のままそんなことを言った。
 鷹谷とは少しずつ親しくなり、部室で二人きり、話をすることも多くなった。彼は見た目によらず思慮深く、がさつだけれどもその行動には、他者への優しさが満ちていた。
 よく夜に部室で出くわし、そこから遅くまで話が盛り上がる、なんてこともあったが、彼は必ず日付が変わる頃になると、「そろそろ帰れ」と言い、そして例外なく私を家まで送ってくれた。
「美茂咲のこと、押し倒せよ」
 あれは一年生の夏休みが始まったばかりの、ある夜ことだった。
 私と鷹谷が二人きりで部室にいた時、たまたまやって来た三年生の男子が、鷹谷にそんなことを言った。その先輩は郡田さんほどではないにしろ、要注意人物と言われているひとりだった。
「お前ら、よく二人で一緒にいるよな。デキてんだろ、ホントは」
 その言葉に、鷹谷が明らかに不機嫌になったのがわかった。鷹谷の全身がわっと殺気立つ。それをまるで面白がるかのように、その先輩は言った。
「なぁ鷹谷、美茂咲のこと、押し倒してみろよ。俺の目の前でヤッてみろ。簡単だろ、好きなんだから。あ? それともあれか? 童貞にはまだ難しいか?」
 鷹谷は何も言い返さなかった。先輩はそれを、図星だと判断したのだろう、この後も畳みかけるように鷹谷を挑発する言葉を連発し、けれど何も言わずただ睨みつけるだけの彼が気に食わなかったのか、最後は殴る蹴るの暴行を加え始めた。
 鷹谷は、一切抵抗しなかった。私は彼が、高校時代、全国でもトップクラスの柔道の実力者であることを既に本人から聞いていた。けれどその本人は、ただ大人しく暴力を振るわれるがままになっている。きつく噛み締めた唇の端が切れて、血が滲んでいるのを見ていられず、私は誰か人を呼ぼうと廊下へ飛び出した、のだったが、ちょうどすぐそこに、部室に向かおうとしていた郡田さんがいたのだった。
 当時の私は、郡田さんに全くと言っていいほど、良い印象を抱いていなかった。
 一緒に入部した由美が彼のセクハラに耐えかねて退部したというのが理由としては大きかったが、やはり彼の女たらしぶりは、目を背けたくなるほど激しかった。
 夜中に部室で性行為を行っているのも十回に九回は郡田さんだったし、飲み会の席で女の子を「お持ち帰り」するのもほとんど彼だった。飲み会の後、酔っ払って彼について行ってしまった一年生の女子部員を、その後部室でとんと見かけなくなってしまうという事例も、もはやひとつ二つどころではなかったし、郡田さんが一年生の女子全員を「いただいて」しまうのも時間の問題だ、なんて上級生の間では噂されていた。二年生以上の女性部員は皆、彼と肉体関係を持ったことが一回はある、なんて話もあった。
 私は郡田さんを極力避けて行動していた。彼が「出席」の欄に丸をつけた飲み会には何がなんでも行かなかったし、彼が部室によく来る月曜と金曜の夜は、もうサークル棟にすら近付かなかった。
 だから、私が彼と関わりらしい関わりを持ったのは、この時が初めてだった。
 郡田さんは、部室から飛び出してきた私の顔を一目見るなり何か察したのか、部室に飛び込んで行き、鷹谷に馬乗りになってぼこぼこにしていた先輩に飛び蹴りを食らわせ、逆にぼっこぼこのばっきばきにしてくれたのだった。その部員は、郡田さんに襟首を掴まれてどこかへ連れて行かれてしまったかと思うと、一体どんなことを言われたのだろう、帰って来た時は顔面蒼白で、鷹谷に、すいませんでした、もうしません、と土下座をして去って行った。
「悪いことしたな。よく我慢したね」
「郡田さんのせいではありません」
 唇から垂れた血を手の甲で乱暴に拭いながら、淡々とした声でそう言う鷹谷に、郡田さんは言った。
「あいつ、最近彼女ができて調子乗ってるんだ。そのうちあいつの彼女を寝取って、こらしめておくから」
 そんなことをあっさりと言って、けらけらと笑う、そしてそれを本当に実行してしまう、郡田さんはそんな人だった。
 鷹谷に暴力を振るったその先輩は、後に文化部を辞め、さらに大学まで自主退学した。退学時は重度のうつ状態だったというが、その原因が郡田さんであったのかどうかは、私の知るところではない。
 その一件以来、郡田さんは鷹谷を気に入ったようだった。本来は力があるにも関わらず、挑発に乗らずに、一発も殴り返さず、暴力に耐え続けた鷹谷の姿勢に、心の琴線が触れたのだろう。郡田さんは彼をよく遊びに誘うようになり、そして鷹谷と親しい私にも、その声がかかるようになった。
 鷹谷と一緒に郡田さんの待つ居酒屋に顔を出しても、彼が私に手を出すことはなかった。部員が大勢集まるいつもの飲み会では、女の子に次々と酒を飲ませ、家まで送るからという名目でことに及ぶというのに、三人で飲む時の郡田さんは、酒を勧めてこないどころか、自身が飲まない時さえあった。
 郡田さんは、鷹谷のやや無骨すぎる態度にも��嫌な顔は全くせず、常に寛容であったし、私たちに何かを無理強いすることはなかった。だからだろう、他人に頑ななところがある鷹谷も、郡田さんには心を開いていた。部で郡田さんが何か指示した時、いつも真っ先に従うのは鷹谷だった。
 郡田さんと私のアパートが近所だったということがわかってからは、飲み会の帰りに郡田さんが送ってくれるようになった。部室で遅くまで過ごした日に送ってくれるのは鷹谷であったが、彼のアパートは私のアパートとは反対方向なので、申し訳ないといつも思っていた。送りは必要ないといくら言っても、鷹谷は絶対に言うことを曲げない。他の人が代わりに送ると言っても、いや俺が行きますと断ってしまうほどだった。けれど鷹谷は郡田さんにだけは、私を送る役目をあっさりと譲った。
 部室にいれば毎日のように、郡田さんの女性事情の噂を聞くだけに、彼に送ってもらうのは不安もあったが、彼はここでも私に何もしなかった。
 飲みすぎてべろんべろんに酔っ払ってしまった日も、郡田さんは私を部屋まで連れて行き、布団を敷いて寝かせてくれただけだった。私の部屋を出て玄関の鍵を閉め、ドアの新聞受けの中に鍵を落としてくれるほどの親切ぶりで、家まで送った後、酔って抵抗できない女子を押し倒すという、話に聞く彼の手法がまるっきり嘘のように思えた。
 その年の夏休みはほぼ毎日のように、郡田さんと鷹谷と顔を合わせた。文化部の皆で海へ行ったり花火大会へ行ったりしたのに加え、親しい部員何人かに声をかけて、飲みに行ったりカラオケに行ったりという個人的な遊びにも、郡田さんは私と鷹谷を呼んでくれた。郡田さんがそうやって私たちを可愛がってくれていたおかげか部の「要注意人物」たちがちょっかいを出してくることは全くなくなった。
「美茂咲ちゃんと鷹谷くんに何かしたら、郡田さんに何されるかわからないって、皆そう思ってたんだよ」
 先輩のひとりにそう言われたのは、ずっとずっと後のことだ。
 結局、郡田さんは夏休みの間に、私を除く一年生の女子全員に手を出した。今まで「なんだかんだ居心地が良い」という理由で残っていた部員たちも、それを機に何人か退部していった。何もかもを割り切って部に残り続ける子もいたが、それは少数派だった。
 ここまでやっておきながら、誰にも訴えられることなく、咎められることのない郡田さんが、不気味で恐ろしくもあった。彼に抱かれた女の子たちは皆、彼の罪を訴えることができないような、弱みでも握られていたのだろうか。でもそのことを、女子たち本人に尋ねることはためらわれた。
 こないだの飲み会で誰々が郡田さんと寝��らしいよ、という噂を口にする女子部員自身も、彼と関係を持ったことがあるにも関わらず、そんなことを平気で言う。へぇ、そうなんだ、びっくりだね、あの子、清純そうに見えるのに。なんてことを返す子もまた、先月は違う誰かに、同じように話のネタにされていたりする。
 それでも、郡田さんは部の誰からも嫌われているようには見えなかった。
 郡田さんが来れば誰もが笑顔で彼に挨拶をしたし、三年生の部長よりも彼の方が部員に慕われていた。彼が遊びに行こう、飲みに行こうと一声かければ、何人もの部員が行きますと言い、それは口先だけではなく実際に人が集まった。
 郡田さん自身が、自分の女性関係について気にしている節は全くなかった。誰といつ、どんな一夜を過ごしても、その後、本当に何事もなかったかのように振る舞う彼からは、サークルの女子を次々と食い物にしていく人だなんて印象は全く感じられなかった。彼はサークル内のみならず、同じゼミの女子とも関係を持っていたし、バイト先でも手を出していたというが、きっと誰に訊いても、郡田さんはそういう人に見えない、と答えるだろう。けれど恐らく誰もが、彼のそういう一面を、意外だとは思わない。ああ、そういう人なのか、と妙に納得してしまう。
 郡田さんは、そんな不思議な人だ。
 夏休みも終わりの頃だった。
 私は郡田さんに誘われて、部員の何人かと一緒に河原に花火をしに来ていた。バーベキューも兼ねて夕方から始まったこの集いに、鷹谷は柔道部の合宿が被り、参加していなかった。
 始まって早々に酒が配られたこともあり、九時くらいになって、花火をやろうかとなった頃には、私はすっかり酔ってしまっていた。楽しそうに水辺ではしゃぎ回る部員たちを、河原に敷いたブルーシートの上でひとりぼーっと眺めていた。「飲みすぎだ」と注意してくれる鷹谷がいない結果だった。
 灯かりなどない、私たちの他には誰もいない夜の河原では、河川敷に生えた背の高い草たちが黒い大きな影となって、まるで一匹の生き物のように、そのたてがみを風に揺らしていた。さっきまで私も人の輪の中にいたというのに、そこから一歩外に出てしまえば、孤独と暗闇の中に背中から吸い込まれて落ちて行ってしまうような、そんな錯覚に心が震える。
 立ち上る煙の向こうに、眩しいほどの光を放つ花火が見える。光に照らされる部員たちの笑顔と歓声が、今は眩しい。その火花が川の水面に反射して、揺れる波間に煌めく。花火のにおいは、もう終わりかけの夏の存在を確かに感じさせた。
 どこかで蝉が一生懸命鳴いている。短い命を燃やして鳴いている。この夏が終わるまでに、ひとりぼっちの暗闇を抜け出るための伴侶を求めて、ただただ身体を震わせている。
「魚原」
 名字を呼ばれて振り向くと、そこには郡田さんが立っていた。美茂咲なんて名前のせいか、友人には名字よりも名前で呼ばれることの方が多い。私のことを名字で呼ぶのは、しかも呼び捨てでそう呼ぶのは、鷹谷と郡田さんくらいだった。
 郡田さんは、この日、珍しくかなり酔っ払っていた。いつもは白い顔が、今日はほんのり赤味が差している。さっきまで他の部員と一緒に花火に参加していたはずだが、ふらふらとした足取りはどこかおぼつかなく、少し休憩したいのだろうと思った。
 郡田さんは私の隣にすとんと腰を降ろし、そして何を思ったのか、そのまま私に横から抱きついてきた。身体に伝わる感触は、それが確かに男の人の身体だと、頼みもしないのに教えてくれた。回された腕も、肩に触れた彼の胸板も、思っていたよりもずっと、「男の人」のそれをしていた。どきっとして息が止まりそうになる。彼がこんな風に私に触れるのは初めてで、思わず身体が硬直した。彼の女性関係のことが一瞬で頭を過ぎり、まさか、と思った。
 咄嗟に、花火をしている部員たちがいる川面の方に目を走らせたけれど、こちらを気にしている人はひとりもいないようだった。皆、それぞれの手元で燃え盛る夏の最後に夢中だ。
 郡田さんは、いつものなんてことのない声で私に言った。
「魚原さぁ、背高いし、女の子の割にはガタイいいけど、何かスポーツしてた?」
 高校まで空手と剣道を十年ほど、と正直に答えると、へー、かっこいい! と郡田さんは笑う。
「じゃあさぁ、もし俺が魚原を押し倒しても、抵抗できるよね?」
 その言葉に、背筋がぞっとした。
 私の頭に自分の頭をもたれさせるようにして、身体を密着させている郡田さんが、今、一体どんな表情をしているのか、私にはわからない。腕の重みも、伝わってくる鼓動の音も、全て初めての感覚だった。毎日のように会っている人なのに、私は彼を何も知らない。ただただ、いつもと同じ熱量を持った声だけが、私の耳には聞こえる。
「――できると、思います」
 私はそう答えた。うん、と郡田さんはすぐに頷く。
「もし、俺が魚原を押し倒そうとしたら、抵抗して。遠慮なくやっちゃっていいよ、骨、二、三本折られても、文句言わないから」
「……どうして、ですか」
 私の喉は渇いていた。酒ばかり飲んでいたからだろうか。それとも、彼に触れられていると、身体の熱が上がるのだろうか。夏の終わりの夜は涼しいのに。蝉の鳴き声に混じって、鈴虫が鳴いている声がする。
「どうして、だろうねぇ」
 郡田さんは酔っ払った時特有の、くくくくく、という笑い声を漏らした。それと同時に、私のことを抱き締める腕に力が入る。けれどそれは、決して振りほどけないほどの力ではない。まるで愛しいものを壊さないように、慎重に抱きかかえようとしているかのような、そんな力の入れ具合だった。優しい力の使い方だ。世界の誰のことも傷つけない抱き締め方だ、と思った。
「郡田さんは、私を抱かないんですか」
 そんなことを訊いたのは、きっと酔いのせいだろう。普段なら、絶対にこんなことは口にできない。
 私には、女としての魅力がない。私は小柄でもなければ華奢でもない。女の子らしい丸みのある身体でもないし、服や持ち物の選び方も機能性ばかりを重視している。髪だって、肩につくほど伸ばしたことなどないし、化粧道具すら持っていない。多くの女を抱いてきた郡田さんは、きっとこんな女には興味がないのだ。
「魚原は俺に抱いてほしいの?」
 郡田さんの返事は、声音ひとつ変わっていなかった。
 尋ねられてから考えた。彼に抱いてほしいのだろうかと。
「わかりません」
 私はしばらく考えた末、そう答えた。うん、とまたすぐに郡田さんは返事をしてくれる。
「魚原にだけ手を出さなかったから、傷ついた?」
 その声が少しだけ悪戯っぽく響いたのがわかった。
 ――傷ついた?
 私は彼に抱かれなくて、傷ついたのだろうか。彼に抱いてほしかったのだろうか。他の女の子たちと同じように。
「ごめんね」
「どうして謝るんですか」
「気にさせて、悪かったよ」
 気にしていません、と言おうとして、口をつぐむ。本当に気にしていないのか、それとも気にしているのか、もうそれすらわからなかった。
 風に揺れる葉の音が、耳の奥で響く。花火を振り回している部員たちが、今はあんなにも遠い。ここは世界の果てみたいだ。
 何を言っていいのかわからなくなり黙っていると、不意に、私の火照った頬に、何かが触れた。ひんやりと冷たく、柔らかい弾力のあるそれが、ちゅっ、と音を立ててついばむような動作をし、離れていった。
「魚原」
 彼が私を呼ぶ。私は返事もできない。振り返る勇気もなかった。微塵も動けずただ黙っていると、彼はまた少し両腕に力を込める。
「すきだよ」
 なんて優しい暴力だろう。
 ああ、この人の優しさは、きっと人を殺せる。
 <続く>
1 note · View note
kurihara-yumeko · 7 years ago
Text
【小説】満ちない (上)
 夢を見ていた。
 大好きなあの人と、雪のちらつく夜の街を歩いている。
 うっすらと雪が積もり始めている道を注意深く歩きながら、背の高い彼を仰ぐことは難しい。私はちらりちらりと彼を見上げるが、不思議と鼻くらいまでしか視界に収めることができない。目を合わせることなど不可能だ。あの貫くような真っ直ぐな瞳に見つめられるのかと思うだけで、盛大に転びそうになる。
 どこかへ向かって歩きながら、彼と話をしている。けれど夢の中は不思議となんの音も聞こえない。何を話しているのかはわからないが、私の口の動きに応えるように彼の口元も小さく動き、本当にときどき、微笑む。力が抜けて気が緩んだような彼の笑みを見ていると、しゃっくりでもしたように胸の奥がぎゅっとする。
 隣を歩く彼の左手が、ほんの少し手を伸ばせば届く距離にふらふらと揺れていて、私はそれに触りたいと思う。でもどうしても、触れることができない。勇気が出ないのだ。触れてしまえば、きっと彼をびっくりさせてしまうだろう、と私は考えている。驚かせてはいけない、と思っている。そんなことをしては壊れてしまう。まるで薄い氷の上を渡っているかのように、静かに、淡々とした緊張感が流れている。
 不意に、道の途中で彼は立ち止まった。
 私も一歩遅れて立ち止まる。前を向いたまま動かない彼の視線の先に目を向けると、道の向こうから誰かがやって来るところだった。
 ああ、来てしまった。「彼女」が来てしまった。
 私は反射的にそう思う。向こうからやって来る人物のシルエットは、不自然なほどにぼやけていて、誰だかわからない。男なのか女なのかも曖昧だ。なのに私は、それが一体何者なのか理解している。彼女を知っている。そして、絶望している。この後に起こることを、既に知っているからだ。
 隣にいる彼はゆっくりと歩み始める。こちらへやって来る彼女に向かって、一歩一歩、足を踏み出していく。すぐ側にいる私のことなど、この一瞬で忘れてしまったとでも言うように、まるで吸い寄せられるように行ってしまう。
 行かないで。
 そう言いたいのに、私は言うことができず、少しずつ遠のいていくその広い背中をただ見つめている。否、夢の中では声を上げているのかもしれないが、世界からは一切の音が消え去っているのでわからない。
 彼と彼女は道の真ん中で出会い、そしてどちらともなく腕を伸ばし合い、抱き締め合う。私が見ている目の前で、いつの間にか二人は裸になっていて、そうして彼の肩越しに、彼女の顔が見える。こちらを見つめている彼女は何も言わないが、意地の悪い笑みを浮かべている。彼の背中に回る彼女の白い腕。その指先が、愛おしいものに触れるように彼の背を撫でる。
 やめて。
 私は呆然と、その光景を見つめている。身体が少しも動かない。寒さに縛り付けられてしまったかのように、一歩も動けない。その光景から顔を背けることもできない。さっきまではあんなに胸の辺りが温かい気がしていたのに、今は頬を刺すように吹く風の冷たさが痛い。
 舞う粉雪がだんだんと吹雪へと変わっていく。二人の姿が、霞んでいく。見えなくなっていく。
 やめて、行かないで。
 声が出ない。足が動かない。吹雪の向こう、裸の二人はそのまま向こうへと歩き出している。私が触れることさえできなかった彼の左腕に、彼女が自分の腕を絡みつけて歩いている。
 白く煙る視界の中、二人の姿がどんどん遠く、小さく、霞んでいく。音が消えたはずの世界で、私の喉が高くか細く、ひゅーと鳴るのがやけにはっきりと聞こえた。
 先輩、行かないで。
 先輩。
 やっとの思いで瞬きをひとつしたら、凍りついた睫毛の先に付いた雪が、目尻から水となって頬の上を流れ出した。
 不意に、何かが頬に触れたことに身体がびくんと震え、そうして私は、夢から覚めた。
 目に飛び込んでくる光が眩しい。思わず強く目をつむる。その時、またひとつ、涙が溢れ出るように零れていくのを寝起きの頭の片隅で感じた。そして、その涙の跡をなぞるように、また何かが頬に触れる。反射的に身じろぎをしてしまった。
「すみません」
 そう声をかけられたのと、私がもう一度まぶたを開けたのはほぼ同時だった。目の前には、人間の顔があった。白目がちな三白眼がこちらを見ている。
「起こしてしまいましたか」
 低い声。抑揚がない。少しも申し訳なく思ってなさそうな声音。眩しい光は天井の照明だとわかる。白い天井、白い壁。ここは室内。私の身体は仰向けに横たわっている。そして彼はすぐ側に座っていて、心配そうにこちらを覗き込んでいた。
「どうして……」
 私はここにいるのだろう。
 湧いた疑問は途中から声にならなかった。喉が渇いている。身体を起こそうとしたら、視界がぐらりと揺れた。頭が痛い。
「大丈夫ですか。今、水を持ってきます」
 彼はそう言って立ち上がり、どこかへと向かう。私の視界から消えた。辺りを見回す。ここはどこだ。小さなテーブル、背の低い本棚、床にそのまま置かれたテレビ、コンビニの袋、破れた網戸、表紙の取れたノート、散らかっている紙はプリントだろうか、それともレジュメか。
 振り返ると、台所に立つ彼の後ろ姿が見えた。ペットボトルからコップへと水が注がれている。さっき、水を持ってくると言っていた。水。水瀬。水瀬政宗。それが彼の名前。ああ、ここは水瀬の部屋だ。
 自分がどこにいるのかわかったことへの安心感からだろうか、それとも、悪い夢から覚めたことへの安堵か。彼が水を持って戻って来るよりも早く、私は再び布団に倒れ込んで眠ってしまった。そうして、そんな夢を見ていたことはすっかり忘れてしまった。
 私が水瀬政宗と出会ったのは、今年の夏のことだった。
 大学二年生の夏休み、私の所属するサークルのコンパがあった日のことだ。
 夏休みコンパと呼ばれるそのコンパには、毎年多くの部員が参加する。例年、大学の近くの飲み屋で行われるそれに向かうため、待ち合わせ場所の大学正門前に向かった時、まだ集合時間には早いというのに、そこには既に大半の部員が集まっていた。親しい顔をすぐに見つけ、雑談をしながら時間を潰していると、そのうちに、部長で三年生の岩下先輩が点呼を始めた。
 最初に名前を呼ばれたのは、この春に入部したばかりの一年生たちだった。
 私たちのサークルは、その名を「文化部」という。名前だけでは一体どんな活動をするのか不明瞭なこのサークルは、実際、明瞭な活動なんてひとつもしていない。
 サークル棟五階の角部屋、北向きの一室が部室として宛がわれ、私たちは時間があるとそこに集い、他愛のない談笑やカードゲームに興じている。それが活動といえば活動だ。年間行事としてコンパやら合宿やらが設けられているが、それ以外にも部員同士で飲み会や旅行など、遊んでばかりいる。
 どうしてこんなサークルが設立されたのか、どうして存続が認められているのか、そこが疑問ではあるけれど誰もその点には触れない。私たちはただただ、貴重な大学生活をそうやってだらだらと過ごすことで食い潰していた。
 こんな非生産的なサークルだというのに、毎年二十名ほどの一年生が新入部員として入部する。春にあった新入部員歓迎コンパに続いて二度目のこのコンパには、この年のほとんどの新入部員が参加しているようだ。岩下先輩が名簿を読み上げる声を聞きながら、私はこっそりと人数を指折り数えていた。
「――水瀬、水瀬政宗くんは?」
 その名前を呼んだ時、岩下先輩は名簿からふっとその目線を上げ、辺りを見回した。
「水瀬くんは、来てる?」
「来てませーん」
 一年生のひとり、髪を明るい色に染めている、威勢の良さそうな男子――名前は確か、倉木だった。さっきそう呼ばれていた――が、そう答えた。
「そうなんだ。今日は来ないのかな。実は彼からだけ、出欠の連絡をもらっていなくて」
「来ないんじゃないスか。あいつ、そういうの来ないっぽい感じでしたし」
 岩下先輩はちらりと倉木の顔を見て、一瞬口をつぐんだ後、「そう」とだけ言った。
「誰か、水瀬くんから連絡をもらっている人はいる?」
 部長のその問いかけに、一年生たちは皆静かに首を横に振った。誰もその水瀬という部員から今日のコンパの出欠について連絡を受けていないようだった。
「っていうかさ、ミナセって誰だっけ? そんな人、一年の中にいた?」
 私から比較的近いところにいる一年生の女子三人のうちのひとりが、他の二人に向けて小声でそう言っているのが聞こえてきた。
「えー、いたじゃん、すごい目つきが悪い人だよ」
「んー……新歓コンパの時、いた?」
「いたいた、ずっと壁際の席に座ってたよ。全然しゃべってなかったけど」
「あ、もしかして、あの、粗大ゴミみたいな人?」
 三人のうちのひとりがそう言うと、残りの二人が小さく噴き出すように笑った。
「粗大ゴミみたいな人って、何? ちょっとさぁ、ひどくない?」
「いや、でも、そんな感じだよ、ほんとほんと」
「なにそれー、全然わかんないんですけど」
 女子三人はくすくすと笑っている。
 私はどこかうわの空で彼女たちが話しているのを見つめていた。すると、三人のうちのひとりがふとこちらを振り返り、たまたま彼女たちを見つめていた私と目が合ってしまった。するとたちまち、その子は頬を真っ赤にして黙り込んでしまう。彼女の異変に気付いた他の二人も、同じように私を振り返り、うつむいて黙り込んだ。どうしたのだろう。何か悪いことでも、あったのだろうか。
「ちょっと世莉、」
 隣にいた夏希が私の腕を肘で突いてきた。
「なに一年生にガン飛ばしてんの。やめなよ」
「別にそういうつもりじゃ……」
 私は慌てて否定したが、夏希は睨むように私の顔を見て、ふん、と鼻を鳴らした。
「その気がなくても、世莉みたいな美人の先輩に見つめられたら、びびって当然だよ」
「もう、またそうやって馬鹿にして」
「僕は思ったことをただ言ってるだけ」
 夏希はそう言って私から目線を逸らしてしまう。私より頭ひとつ分背の高いこの友人がそうやってそっぽを向く時、大抵、私の意見など聞き入れてはくれない。何を言っても無駄なことはわかっているので大人しくしていることにした。
 三人の女の子たちもすっかり静かになってしまった。私のせいなんだろうか。だとしたら、なんだか申し訳ない。ただ、彼女たちの言う「粗大ゴミみたいな人」というのが一体どんな人なのか、気になっただけなのだけれど。
 結局、岩下先輩は水瀬という一年生のことを欠席扱いということにしたようだ。点呼が再開され、二年生の名前が呼ばれていった。私は「粗大ゴミみたいな人」について考えていたせいで、自分の名前が呼ばれた時に咄嗟に返事ができなかった。夏希にやはり肘で突かれて、慌てて返事をした。
 その夜のコンパは楽しかった。私は基本的に、飲み会というものが好きだ。皆でわいわいとお酒を飲んでいるうちに、酔いが回って何も考えられなくなる。何も考えなくていいというのは都合がいい。人見知りで、人と話したり関わったりすることが不得手だと感じている私にとって、アルコールはそういった問題を些細なことだと錯覚するのに便利だ。だからいつも、ついつい飲み過ぎてしまう。最近は夏希が程良いところでたしなめてくれるので、ありがたい。
 ただ、この日は厄介なこともあった。それは一年生の、先程の威勢の良さそうな男子学生、倉木だった。彼は自ら私の隣の席に座ることを志願し、積極的に話しかけてきた。知り合いという訳ではない。今まで言葉を交わしたことは一度もなく、もちろん面識もほとんどないに等しい。何度か部室や部の行事で顔を合わせたことはあるのかもしれないが、そこでは挨拶をした程度の関わりしかないはずだ。
 自分に興味を持たれるというのは苦手だ。倉木が軽快に飛ばしてくる、「休みの日は何をしているのか」や「今度一緒にどこかへ遊びに行かないか」という質問に、私は上手く答えることができず、しどろもどろになってしまった。途中、夏希が半ば強引に倉木と席を交換して隣に来てくれてほっとした。
 それでも、私がお手洗いに席を立ち、お手洗いから廊下へ戻ると、まるで待ち伏せするようにそこに倉木がいて、「コンパなんか抜け出して、二人で飲みに行きませんか」と声をかけられて、私はほとんど半泣きになって逃げるように席へ戻った。大学入学当初から、男性からこんな風に誘われることは度々あったが、一度も上手く対処できたことがない。
 その後、何もなかったような顔で自分の席へ戻って来た倉木は、一度もこちらを見ることなく、他の部員たちの輪の中で笑っていた。
 コンパがお開きになった後、鞄からスマートフォンを取り出そうとした時、私は部室に忘れ物をしていることに気が付いた。
「なに、忘れ物って。何を忘れたの」
 二次会には行かず、家に帰る前に大学に戻ると告げると、私を送ろうとしてくれていた夏希が、眉間に皺を寄せてそう訊いてきた。嘘をついて誤魔化してもどうせすぐにバレると思ったので、私は観念して正直に答えることにした。
「夏希のノート……」
「は?」
「だから、夏希のノートだよ」
「もしかして、今日部室で会った時に、僕が渡したやつ? 補修講義のノート?」
「そう……。部室で受け取って、その後、別れたでしょ? その時に、部室にそのまま置いてきちゃったみたい……」
「サイテー」
 夏希は露骨に嫌そうな顔をして、大きな溜め息をついた。私は黙って肩をすくめる。自分でも情けないと思う。
「世莉が、僕のノートはわかりやすくて参考にしたいって言ったから貸したのに。それを忘れたの? 馬鹿なんじゃないの?」
「ごめん……」
「ひとりで部室まで戻って取ってくれば? 僕はもう帰る」
 どうやら、本当に夏希を怒らせてしまったようだ。ただでさえ歩くのが早いのに、いつも以上に早足で去って行ってしまった。私はいつも夏希のことを怒らせている気がする。
 とぼとぼと、大学へ向かってひとり歩いた。
 昼間の熱気が夜になっても冷め切らず、地上付近をうろうろとしているような気温だった。酒に浮かされた身体には暑い。ときどき吹いてくる風は生ぬるく、首の後ろに汗で貼り付く髪が鬱陶しい。蝉の鳴き声が幾重にも重なって、渦を巻くように耳の中で響く。見上げた空には星も月も見えやしない。
 ああ、どうして忘れ物なんてしてしまったんだろう、そう思いながらサークル棟の玄関をくぐり、電球が切れがちな暗い階段を五階まで上っていく。この建物にはエレベーターというものがない。入部したばかりの頃は、部室に辿り着くまでに息切れしていたものだけれど、最近になってようやく、途中で休憩を挟まなくても上り切れるようになった。
 夏休みだというのに、サークル棟の中は静まり返っていた。私を迎え入れた静寂に、今が夜遅い時間なのだということを思い出す。それに加え、学生たちの多くは故郷へ帰省しているのだろう。私は今年の夏も、実家には帰らなかった。大学に進学してひとり暮らしを始めて以来、一度も故郷へ帰っていない。
 部室の前まで来て、私は一瞬、足を止めた。部室の扉に嵌め込まれたヒビの入った曇りガラスからは、室内の明かりが漏れていた。中に誰かいるのだろうか。私は手首の腕時計に目線を落とす。夜は更け、もう日付も変わっている。こんな時間に人がいるなんて、珍しい。
 ドアノブに手をかけ、扉を少しだけ開けた時、私は思い出す。こんな時間に、よくあの人はここにいた。ひとりで、何をするでもなく、誰かを待っている訳でもなく、来訪者を拒むでもなく、ただこの部屋にいた。
 そんな彼の後ろ姿を思い出しながら扉を開けたが、そこには誰の姿もなかった。なんだ、誰かがここを後にする時、照明を消し忘れたのか。そう思いながら部室へ入り、窓辺に置いてある小さなテーブルへと近付くと、そこには私が忘れていった夏希のノートが置いてあった。良かった。やはり部室に忘れて行ったのだ。万が一ここになかったら、どうしようかと思っていた。
 ノートを手に取った時だった。その声は唐突に、私の耳に届いた。
「小堺夏希さん、ですか」
 声のした方を振り向くと、部屋の隅、壊れかけている古いテーブルの上に、ひとりの男子学生が腰をかけていた。散らかったテーブルの上で、まるで置物のようにひっそりと膝を抱えている。物に紛れていて、存在に気付かなかった。
 見覚えのない男だった。ここ、文化部の部室にいるということは、恐らくは部員なのだろうけれど、知らない人だ。今日のコンパにももちろん来ていなかった、と思う。本当に部員なのだろうか。部員だとしたら、どうしてコンパには顔を出さないで部室にひとりでいるのだろう。
 誰もいないと思っていただけに、驚いて何も言えないでいると、この男はもう一度尋ねてきた。
「小堺夏希さん、ですか」
 私は息を呑み、それから、「違います」とだけ言った。ノートの表紙には夏希の名前が書いてある。この男は、恐らくそれを見たのだろう。そして私を、ノートの持ち主だと、つまり夏希だと思い込んでいる。
 この人は、私のことも夏希のことも知らないのだ。知っていれば、私たちのことを間違えるはずがない。
「違うんですか」
「これは、友達のノートなんです」
「そうですか」
 男の顔はどこか爬虫類に似ている。目がやや離れている点だろうか。目つきが悪い。こちらを窺うように見つめるその瞳は、上目がちなせいか、黒目よりも白目が大きいように見える。
「では、あなたは?」
 男の膝を抱えている手に、何かが握られている。あれはなんだろう。瓶だ。ウィスキーの瓶。瓶の口は開いている。さっきまでそれを飲んでいたのだろうか。だが男の周囲を見てみてもコップやつまみの袋などは見当たらない。瓶から直接、口をつけて飲んでいたのだろうか。深夜に、誰もいない部室の片隅で?
「……これ、ですか? 飲みます?」
 私の目線に気付いた男が、手に持っていたそれを掲げるようにしてこちらへ見せる。
「いいですよ、飲んでも。でも、気を付けて下さいね」
 気を付ける? 一体何に気を付けろと言うのだろう。
 そんなことを考えながら、私は夏希のノートを鞄に仕舞ってから、男の方へと歩み寄った。これでまたノートを忘れてしまったら、もうあの友人はしばらく口を利いてくれなくなるだろう。それは避けなければならない。
 私は男の手から瓶を受け取り、くんくんとにおいを嗅いでから、瓶に口をつけ、その琥珀色の液体を喉に流し込んだ。
「あ、そんな勢いよく飲んだら――」
 目の奥で花が咲くような強烈な熱さが、舌を焦がすように喉の奥へと通り抜けていく。ああ。なんだこれは。とんでもなく、強い酒じゃないか。こんなものを、水で割ることもつまみで誤魔化すこともしないで、ちびちびやっていたのだろうか。変な男だ。
 ぐらりと地面が揺れるような気分がした。なんだろう、毒でも入っていたんだろうか。
 なんだかどっと酔いが回ってきた。そういえば飲み屋を出る前、飲めもしないビールを一気飲みしたんだっけ。夏希が見ていない隙に、一年生が先輩に注がれて困っていたのを飲んであげたのだ。その分の酔いかもしれない。アルコールはいつもそうだ。気持ちが良いのはほんの短い間だけで、後からどんどん悪いものがやってくる。
 気が付いた時には、床に膝を突いていた。なんだか少し横になりたい。目の前がぐるぐると回って、気分が悪い。
「あの、大丈夫ですか。酔っているんですか」
 全く酔いを感じさせない声でそう言われ、手から瓶が奪われる。「大丈夫です」と答えようとして、自分の言葉が舌足らずになっていることに気付く。テーブルの上に座っていたはずの男は、いつの間にかそこから降り、床に座り込んでしまった私の目の前にしゃがんでいた。
「だいぶ酒臭いですよ。飲んで来たんですか。ああ、そうか、今日はコンパだったな」
 男は私に顔を近付け、鼻をひくひくさせてからひとり言のように、「参ったな」と言った。
「酒を勧めるべきではありませんでしたね」
 身体が熱くて泥のように重い。頭が痛い。何か言わなきゃと思うのに、上手い言葉が何も出て来ない。横になりたい。少し眠りたい。
 溶け出すように��勢が崩れていく私を、いつの間にか目の前の男が支えてくれている。その腕に抱きつくように身体を委ねながら、もうほとんど回らなくなった頭で考える。
 一体誰なんだろう、この人。
 さっきまでこの部屋には、誰もいないんだと思っていた。部屋の片隅に、まるで物みたいに座っていた。まるで、この部屋に置いて行かれて、忘れ去られてしまったみたいに。
 ああ。そうか。わかった。わかったぞ。
 それは確信だった。思わず笑い出してしまった。そういうことだったのか、と思う。そういう意味だったのか、なるほど、確かに、彼にはそういう雰囲気がある。
「あなたが、水瀬くんなんだね」
 ぽつりと私が口にした時の、彼の表情が忘れられない。
 豆鉄砲を食らった鳩は、きっとこんな顔をしているんじゃないだろうか。
 恥ずかしいことに、私の記憶はそこで途切れている。
 次に目が覚めた時、私は水瀬の部屋にいて、彼の布団に横になっていた。すぐ目の前には、クッションを並べた上に寝転んでいる彼の背中があった。腕時計を見ると、時刻は朝の五時半だ。
 痛む頭を押さえながら起き上がり、規則正しい寝息を立てている彼の寝顔を肩越しに覗き込んだら、起こすのが申し訳ないような気がした。しかし、かと言って見知らぬ男の部屋ですることもなく、私ももう少し眠ろうか、それとも今のうちに出て行った方がいいのだろうか、ということに悩んでいるうちに、彼は目を覚ました。
 起き上がった水瀬は、自分と私にコップ一杯の水を用意してくれてから、簡単に事の成り行きを話した。
 記憶が途切れた後、私はしばらく部室の長椅子に寝かされて休んでいた。一時間ほどして目を覚まし、家に帰ると言い出したが、とても自力で家に帰れる様子ではなく、彼は送りますと言ったが私がそれを受け入れなかったので、なら自分の部屋に来ないかと提案した。何故なら彼は、大学の裏門を出て百メートルも歩かないところにアパートを借りていたからだ。彼に半ばおぶわれるようにしてこの部屋に来て、そうして、私は敷いてもらった布団で眠った。
 その後、一度途中で夢にうなされて目を覚ましたのだというが、私はすぐにまた眠ってしまい、そして、今やっと起きたということだった。
 私は話を聞いているうちに、申し訳なさと恥ずかしさで死んでしまいたくなった。すみません、すみませんと謝ったが、水瀬は難しい顔をしているままだった。怒っているのだろう。当然だ。初対面で、酔い潰れられて、自分の部屋に連れて帰る羽目になるなんて、不遇以外の何物でもない。
「ひとつ言っておきますが、」
 水瀬がどこか苦しげに、呻くようにそう言ったので、私はちらりと彼の顔を見上げた。何を言われるのだろう、と内心、心臓が痩せ細るような心境だった。彼は眉間に皺を寄せたまま、
「あなたには、やましいことは何もしていません」
 と言った。
 私はその瞬間、呆気に取られた。
「あなたを俺の部屋に連れて来たのは、あのまま部室で寝かせ続ける訳にもいかないだろうと思っただけで、その、深い意味はなく……」
 何も言えずにぽかんとしている私の顔を見もしないで、彼は続けて言う。
「まぁ、そりゃ、男女ですから、こういったことはしない方が良いということはわかっていますが、でもやはり酔い潰れたあなたをあそこに放っておく訳にも……」
「あの、」
 私が声をかけると、彼はやっとこちらを見た。
「なんでしょう」
「あの、私、信じますから」
「何をですか」
「あなたのこと。あなたの言葉、信じますから。だからそんなに、弁解しなくて大丈夫です。助けて下さって、ありがとうございました」
 頭を下げて、もう一度顔を上げると、今度は彼がぽかんとした表情をしていた。
「…………そう、ですか」
 まだどこか納得していないというような顔で、だけれども彼はそう言って、きまり悪そうに頭を掻いた。
「まだ、名乗っていませんでした。水瀬といいます」
「はい、知っています」
「そういえば、昨夜も俺の名前を呼んでいましたね。どうして、俺のことを」
「文化部の人たちが、あなたのことを話しているのを聞いたので」
「そうですか。どうせ、良い話ではないのでしょうね」
 それはあまりにも自然に、平然と彼の口から発せられた言葉だった。その声音にはなんの感情も含まれていないように思えた。
「それで、あなたの名前は?」
「田代です。二年の田代世莉」
「田代さん、ですか」
 彼はそう言ってから、小さく息を吐いた。
 部屋のカーテンは閉められていたが、隙間から朝の光が射し込んでいた。今日も外は暑そうだなという夏の予感に気が滅入りそうになる。
「田代さんの鞄は、そこです」
 彼が指差した先は、居間から台所への入り口付近だった。そこには確かに、私の鞄が置いてある。
「帰るなら、どうぞ。俺は、もう少し寝ます。寝不足なので」
 水瀬はそう言いながら、再び身体を横にしようとする。こちらに向けられたその背中に、「あの、」と声をかけると、その動きは止まった。
「私も、もう少し、眠っていってもいいですか」
 あまりにも図々しいお願いだった。だけれど私も眠たかったのだ。彼はしばらくそのままの姿勢で止まったまま、黙っていたが、やがて、「どうぞ」と一言だけ言って、座布団の上に転がった。
「あの、今度は水瀬くんが布団に――」
「眠るので、静かに」
 そう言ってから、一分も経たないうちに、再び規則正しい寝息が聞こえ始めた。
 私もさっきまでと同じように、布団に横になる。身体が疲れているのか、すぐに眠気が襲ってきた。まぶたを閉じる少し前、そういえば、彼とは初対面なのに気負わずに会話ができていたことに気が付いて、それだけが少し、不思議だった。
「馬鹿じゃないの?」
 私の話を、夏希はそう言って一刀両断した。
「どうして初対面の男の部屋ですやすや眠れる訳? 危機感なさすぎでしょ」
「水瀬くんは、やましいことは何もしてないって言っていたし……」
「だから、それを鵜呑みにするのが馬鹿だ、って言ってるんだけど」
 目の前の友人は苦い顔をして私のことを見ていた。その表情の原因は、飲んでいるコーヒーのせいではないだろう。
 大学の学食。私と夏希は向かい合うように座り、自動販売機で買った紙コップのアイスコーヒーを飲んでいた。夏希はブラック、私はミルク入りだ。こんな不味いコーヒーを飲むくらいなら泥を舐めた方がましだ、なんてこの友人は言うけれど、泥水より不味い液体を啜りながらもここにいるのは、ここが冷房の効いた場所だからだ。
 夕方の学食には私たちの他にも人の姿がちらほらあって、夏休み中の補講が終わったものの、真昼の熱気を忘れられずにいる外気温にうんざりして、皆行くあてもなくここにいる。
「それで、そのまま昼過ぎまで一緒に眠って、お詫びに昼食をご馳走して、それから別れたってこと?」
「そうだよ」
 私が頷くと、夏希は深い溜め息をついた。
「……送って帰ればよかった」
「夏希は私のこと、置いて帰ったくせに」
 冗談半分にそう言うと、途端に夏希は私を睨み、
「世莉が僕のノートを部室に忘れてきたりするからでしょ」
 と怒った。私は笑いながらそのノートを鞄から取り出し、差し出す。
「本当に助かったよ、ありがとう。また借りてもいいかな」
「もう二度と貸さないから、不必要な期待はしないでくれる?」
 ひったくるように私の手からノートを奪い、夏希はすぐに自分の鞄に仕舞い込んでしまう。不機嫌そうな表情。どうやら本当に怒っているようだ。私は小さく肩をすくめた。
「これでも、反省してる。酔っ払って、水瀬くんに迷惑かけちゃったこと」
「水瀬なんてどうでもいいんだよ」
 そう言う友人の声は、明らかにいらいらしている声音だった。
「僕が怒っているのは、見知らぬ男の家にほいほいついて行く、世莉の無神経さについてだよ」
「別にほいほいついて行った訳じゃあ……」
「酔ってて記憶がないからって、許される訳じゃないからね」
「そんなこと言われても……」
「もう二度と、他の男の部屋に泊まらないで」
 切って落とされたように発せられたその言葉は、私の胸に重く響いた。
 夏希はどこか思い詰めたような顔をしている。その表情は、既に怒りの形相ではなくなっていた。諦めと悲しみが入り混じっているような、そんな風に見えた。私は何かを伝えなくてはと思いながら、なんて言えばいいのかわからないまま、ただ黙っていた。
「ごめん」
 やがてそう口にしたのは、私ではなく夏希の方だった。その言葉を聞いて、自分はこの友人が謝罪の言葉を口にするのを待つために沈黙していたのではないか、という考えが私の脳裏をかすめた。
「世莉の彼氏でもないのに、僕がそんなことを言う権利、なかったね」
 苦笑いをしながらどこか気まずそうにそう言う友人に、「ううん、そんなことない。こっちこそごめんね」と言いながら、私は卑怯な人間だ、と思った。
「でも、世莉にあんまり軽率な行動をしてほしくないっていうのは、本当」
「うん、わかった」
「何かあってからじゃ、遅いんだからね」
「うん」
 夏希は心配性だな、と思ったが口には出さなかった。余計なことを言うと友人をまた怒らせてしまうような気がして、そしてそれ以上に、悲しませてしまうような気もした。
「僕は、」
 夏希の細い指が、コーヒーの紙コップをテーブルの上に戻す。空になったそのコップを、軽く握り潰すようにしながら、
「世莉が傷つくの、見たくないんだよ」
 と、言った。
 友人の手の中でだんだんと潰れていくコップから目を逸らして、私は「わかった」と返事をする。自分の手元のコップの中には、白と茶色が混ざり合った不味い液体が、半分以上も残っていることに、飽き飽きした気持ちになりながら。
 確かに、私は軽率だったのかもしれない。文化部の部員たちで誰かの部屋に集まって飲み会をして、そのまま泊まることはあっても、異性の部屋にひとりで泊まることなんて、そうそうないことだ。他の部員にこのことが知れたら、夏希が私を怒ったのと同じように、決していい顔はされないだろう。
 文化部はほんの数年前まで、不特定多数の異性との性行為を目的としたサークル、いわゆる「ヤリサー」だと呼ばれていたというが、少なくとも私が入部した時には、そういった雰囲気はなくなっていた。夜になると部室をラブホテル代わりに使う部員がいたというが、今は夜間に部室で誰かと出くわすことさえ稀だ。
 それでも私は、夜の部室についつい足を運んでしまう。そうすれば、会いたい人に会えるような気がするからだ。以前から、私は���かに会いたくて、夜の部室の扉を開いてみることが多々あった。
 だが、本当に私が会いたいと思う人には、部室に足を運んだところで、もう会うことはできない。あの人に最後に会ったのは、彼が大学を卒業していった日だった。あれから、まだ半年も経っていない。今でもときどき、夜に部室を覗けば彼がそこにいるんじゃないかと思ってしまう。そんな訳はないのに。
 あの人に初めて会ったのも、私が部室に忘れ物をした夜のことだった。
 忘れ物を取りに部室へ向かった時、部室の照明が点いていることに気が付き、扉の前で思わず足を止めた。ああ、誰かいるんだ。そう思うだけで気が重かった。大学一年生の五月。私は未だ、大学生活にも文化部での活動にも慣れることができずにいた。
 文化部の人たちは明るく親切で、私に対してもよく話しかけてきてくれた。私はそれに自分なりに精いっぱい明るく礼儀正しく答えていたつもりだったけれど、正直、話しかけてもらえることに嬉しさと同じくらい申し訳なさを感じていた。私は気の利いたことや面白いことは何ひとつ言えなかったし、訊かれたことにさえ満足に答えられなかった。今は親しげにしてくれる人たちも、そのうち私に飽きて近寄ってくれなくなってしまうのではないか。そう思うことも恐ろしかった。
 その夜、部室にいたのはひとりの四年生男子だった。もちろん、初めて彼と出会ったその時は、学年など知る由もなかった。だが、年上の男性であるということは一目でわかった。彼には年上の威厳たるものがあった。屈強な身体つきに、鋭い目を持つ彼は、運慶と快慶の金剛力士像を連想させた。彼は静かに読書をしていて、部室へ入って来た私の方をちらりとも見やしなかった。
 私はいつの間にか忍び足になっていて、そろそろと部室の中を歩きながら、「おひとりのところすみません、ちょっと忘れ物をしてしまって……」と言った。「そうか」と彼は答えた。その目線は手元の本に向けられたまま、ほとんど動かない。
「私、間抜けですよね、部室に忘れ物をするなんて……」
 この時部室に忘れていったのはペンケースだった。私のペンケースは誰かが途中まで遊んだままのボードゲームが占領しているテーブルの片隅に置いてあった。ゲームの駒を落としたりずらしてしまったりしないように気を付けながら、それをそっと手に取る。
「ここ、五階じゃないですか。階段の上り下りだけでも大変なのに……」
 私の話を聞いているのかいないのか、彼は返事をしなかった。ただ黙って本を読んでいる。無言でいるのも気まずいかと思って話しかけてみたが、かえって読書の邪魔だったかもしれない。自分の安易な考えを反省しつつ鞄にペンケースを仕舞い、しかし、ここまで話しかけたのにこの後無言で部室を出て行くというのも、なんだか変なのではないか、と悩み始めた時、彼は言った。
「無理に、話さなくていい」
 思わずびっくりして彼を見たが、あの人は未だこちらを見ようともしていなかった。その表情からはなんの感情も読み取れなかったが、それでも、どうやら怒っているという訳ではなさそうだった。
 私は急に頬が熱くなるのを感じた。そのまま無言で彼に向かって一礼をし、「お疲れ様でした」の挨拶もしないで、ほとんど走り去るように部室を後にした。もう顔から湯気が出るくらい、恥ずかしかった。
 彼に見抜かれていた。無理をして話しかけようとしていることが、バレていた。そして、そんな私を彼は許してくれていた。私はそう思った。かけてくれた言葉はぶっきらぼうなものだったが、その声音は彼の見た目に似つかず穏やかで、私を安心させてくれた。それが嬉しかった。
 息が上手くできなくなるまで猛烈な勢いでサークル棟の階段を駆け下り、���ャンパスを全力疾走した。講義棟の近くまで走って来た時、ぜえぜえと荒い息を吐きながらついに立ち止まり、そうして私は泣いた。恥ずかしくて嬉しくて、頭の中は大混乱していた。そんな私の頭上では、大きな満月がまん丸い顔をして、街じゅうを柔らかい光で照らしていた。
 それが、私があの人と初めて出会い、そうして彼に恋をした、その最初の夜だった。
  <続く>
0 notes