#好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く
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asagaquru · 1 year ago
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寝る前に1時間の切タイマーをつけたクーラーが切れている。部屋が蒸し暑くなってきた。眠れない。起き上がってまたクーラーをつけるのもめんどくさくて、隣で寝ている恋人を起こさないよう背を向け、携帯を弄る。画面照度を最低にしても、ぼぉっと青白い光が部屋に浮かぶ。起こしてしまわないか心配したが大丈夫だった。
背後から一定のリズムで寝息が聞こえる。胸に顔を寄せて息を吸ってみてもなんの匂いもしない。付き合い始めて春から夏へ初めて季節を跨いだ。週に2.3度、うちで寝泊まりするようになって、部屋には服や下着やヘアワックスなど彼のものが増えた。うちから出社して、帰ってくるような連泊も増えた。洗濯もうちでして、シャンプーも同じものを使っているから、わたしと同じ匂いになってしまうのも当たり前だ。なんだか寂しくなって、半袖から伸びる腕に唇をつけると少しひんやりとしていた。
寝返りを打った拍子で、わたしの腰に彼の手が置かれる。どきりとしたけれど、本当にただの寝返りだったようだ。胸の内から爛々として上気するような触れ合い方がめっきり無くなった。仕事に行く前に軽くキスをして、外ではどちらともなく手を繋いで、一緒にシャワーを浴びて、ソファで横に座りながらピクミンをして、夜遅くなければさらっと肌を合わせる。好きでなくなったという訳ではないだろう。ただ、欲しくて欲しくて堪らないといった感じではないのだ。明日仕事なのに寝不足だよ、と深夜まで裸で抱き合ってた頃が既に過去だ。女性として見られることで、愛を測る節がわたしにはよくある。可愛いって思わなくなったのかなと仄かに不安が過ぎる。
今までの元恋人たちと違って、今の恋人は恋愛に対してクールだなとずっと思っている。好き好きされていたかったが、それもそれで鬱陶しくなってしまうこともあるだろう。このくらい朗らかに好き合うくらいがちょうど良いのかもしれない。少しずつ慣れて行く。
「***ちゃん、7時20分だよ」と彼の声で起こされる。今日は夜勤なのと返してまた眠りにつく。結局4時過ぎまで起きていた。開かない瞼の隙間から彼がポロシャツに袖を通すのを見る。シュッシュと音がして、すかさずこっちにも振るってと声をかける。3プッシュほど彼の香水をベッドにかけてもらう。付き合った当初もこんなことをしていたなと思う。この香水の名前はジャズクラブだ。練習の時間が取れないから次のライブでサックスを辞めるとこの前言われた。彼の一番の趣味だからこそ、中途半端な出来でステージ立つと自己嫌悪してしまうらしい。ジャズが好きなのは変わらないけどねと笑っていた。彼がジャズからプレイヤーとして身を引いても、引け目なく��の後の人生を許容できる未来でありますように。その香水はずっと変わらず彼の匂いでありますように。人との関係なんてくっついたり離れたりの連続で、移ろいやすいことはわかっているけれど、なんとなくその未来にわたしもいられたらいいなと思う。
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chaukachawan · 2 months ago
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オオバコ、それは踏まれて喜ぶ草
金木犀めっちゃ匂ってますね。花が全く見えない場所にまで香りが漂ってくるからすごいものです。でも、強い香りといってもぼくの苦手な柔軟剤やシャンプーの人工的な強い香りとは違い、花とかアロマといった自然物の香りは強くても心地良いから不思議です。秋は息を吸うだけでおいしい空気が味わえてお得ですね
こけです。10/14(月)、栞の稽古日誌です。祝日なので一日稽古ができました。スポーツの日だったみたいですね
午前 シーンをさらに短く切って試行錯誤
午後 シーン練続き→最後に1回だけ前半の長回し
シーンごとに分かれ、タイミングを整えたいところや動きが物足りないところを繰り返しやってみました。特に午前、夢中でやってたらあっという間に2時間経っててびっくりしたよね。苦手なところは何回やってもクセが出て難しかったりしますが、何度も練習することで矯正されたり、忘れづらくなったりして直っていくのではないかと思います。また、一気にたくさんのことを直そうとすると何かしらが抜けますが、これも稽古を重ねて無意識にできることが増えていけば、今まで割けてなかったことに注意資源が割けるようになってやりやすくなると思うよ。知らんけど。ダンスの振付覚えるのと同じだね
B脚が粗通ししてて軽く焦ったりもしましたが、今はシーンひとつひとつのクオリティ上げに専念していきましょう
PV撮影初日でもありました。晴れた日の屋外での撮影は気持ちいいですね。あと仲間たちの衣装姿は何回見てもやっぱりテンション上がってしまいます。今日撮った素材たちがどんな映像に仕上がるのかとっても楽しみ
余談。
皆さん、部屋って整頓されてる方がいいと思いますか。いや片付いてないよりは片付いてる方が普通はいいはずなんですが、文豪とか発明家の汚部屋ってちょっと憧れませんか。一見ただ散らかってるだけなんだけど、本人は何がどこにあるか完璧に把握してて超効率的な配置、みたいな。資料が積み上げてあって壁には大量のメモ用紙、みたいな。
もちろん衛生的な意味で「汚い」のは嫌ですが、整頓されてないだけのとっ散らかった部屋には自分はちょっと憧れます。何かに没頭していることの象徴みたいで格好いいとさえ思います。
ぼくの部屋はと言うと今忙しさのあまりだんだん洗濯物が畳まれなくなったり、よく使う物が出しっぱになったりと散らかり気味でして、これはもしや散らかり部屋実現の兆しか?ってちょっと楽しみにしてたんですよ。でもここで気づいたことがあって。「散らかってるけど効率的な部屋」は、自分の部屋でやってもあんまり面白くないんです。片付けたいなあと思うだけです。自分はやっぱり整頓好きで、汚部屋はあくまで他人事として見る場合にのみイイということが分かりました。
昨日は月と木星とアルデバランがひとつの視界に収まってなかなか贅沢な夜空でしたな
休憩は、取ってもいいし、とっても良い
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nrksrk · 2 months ago
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お仕事履歴
〇漫画のお仕事   ●イラストのお仕事
2024 〇●まんがタイムきらら展FINAL 新キービジュアルイラスト一点   企画本「SHINE」 幸腹グラフィティ四コマ漫画 ●文庫版 ニセコイ ウラバナ(1) トリビュートイラスト一点 ●ホロライブゲーマーズ×いきなりステーキ コラボ   キービジュアルイラスト、ミニキャラ衣装デザイン担当 ●劇場総集編 ぼっち・ざ・ろっく!Re: 応援イラスト
2023 ●Fate/Grand Order 概念礼装『マッシュルーミング』 イラスト担当 ●Fate/Grand Order 『FGO カルデア放送局 ライト版』  アイキャッチイラスト
2022 ●きららファンタジア イラスト・キャラクターデザイン  (正月町子リョウ、正月ライネ、森野きりん)  (温泉ライ���、水着椎名)
2021 ●映画 きんいろモザイクThank you!! 応援イラスト ●きららファンタジア イラスト・キャラクターデザイン  (椎名、内木ユキ) ●きららファンタジアFAN BOOK CONNECT イラスト一点
2020 ●きららファンタジア イラスト・キャラクターデザイン  (町子リョウ、森野きりん、椎名、ライネ)  (運動会森野きりん、水着町子リョウ) ●化物語  化物画廊 イラスト一点 ●ユリトラジャンプvol.3 表紙イラスト ●荒ぶる季節の乙女どもよ。公式ファンブック第0巻 イラスト一点 ●『5分後に美味しいラスト』(5分シリーズ) 表紙イラスト
2019 ●Fate/Grand Order 概念礼装『正月の神秘』 イラスト担当 ●シナモン Cinnamon 人外×人間百合アンソロジー  イラスト一点 ●ユリトラジャンプvol.2 表紙イラスト ●「スロスタ×甘そば合同フェア」 イラスト数点 〇幸腹グラフィティ×甘えたい日はそばにいて。  コラボストーリー漫画・四コマ漫画
2018 〇TVアニメ スロウスタート 制作現場レポート漫画 ●TVアニメ スロウスタート エンドカードイラスト ●ユリトラジャンプvol.1 表紙イラスト 〇●まんがタイムきらら展  キービジュアルイラスト一点、イラスト一点、四コマ漫画 ●きららファンタジア 1st ANNIVERSARY MEMORIAL BOOK   イラスト一点
2017 ●Fate/Grand Order 概念礼装『フード・コロシアム』 イラスト担当 〇まんがタイムきらら『甘えたい日はそばにいて。』  (~2019 コミックス全3巻) ●きららファンタジア ライネ キャラクターデザイン・イラスト担当
2016 ●Fate/Grand Order 概念礼装『花より団子』 イラスト担当 ●TVアニメ 三者三葉 エンドカードイラスト ●三者三葉 アンソロジーコミック (1) イラスト一点 〇まんがタイムきららフォワード   読切ストーリー漫画『はためきしんぱしー』
2015 ●幸腹グラフィティ画集『幸腹コレクション』   表紙イラスト・描きおろしイラスト数点 ●TVアニメ 幸腹グラフィティ エンドカードイラスト ●TVアニメ 城下町のダンデライオン エンドカードイラスト ●TVアニメ ニセコイ: エンドカードイラスト 〇●TVアニメ 幸腹グラフィティ BD・DVD   表紙裏イラスト・小冊子四コマ漫画(全6巻) ●TVアニメ 幸腹グラフィティ 公式ガイドブックGirls&Cooking! イラスト一点 〇●『ガールフード〜おんなのこ、お食事アンソロジー〜』   表紙イラスト・ストーリー漫画 〇城下町のダンデライオン アンソロジーコミック (1)   ストーリー漫画『あなたとでーと』 ●まんがタイムきらら☆マギカvol.22 表紙イラスト
【省略】幸腹グラフィティ関連にてコミケなどイベントグッズ・特典用イラスト複数
2014 ●TVアニメ桜Trick エンドカードイラスト ●TVアニメご注文はうさぎですか? エンドカードイラスト ●『センターをめざせ!KRR48』 表紙イラスト
2013 ●瀬那 和章 (著)『好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く』  表紙イラスト・挿絵(※旧バージョン) 〇ひだまりスケッチデイズ-TVアニメ公式ガイドブック-   対談レポートカラー漫画 ●TVアニメ<物語>シリーズ セカンドシーズン   エンドカードイラスト ●<物語>シリーズヒロイン本 其ノ壹 羽川翼 イラスト一点
2012 〇電撃4コマ大王こもえ2012春号   あの夏で待ってるアンソロジー『取っちゃダメ!』 ●高村 透 (著)『金星で待っている』 表紙イラスト・挿絵 〇まんがタイムきららミラク『幸腹グラフィティ』  (~2016 コミックス全7巻) ●TVアニメ ひだまりスケッチ×ハニカム エンドカードイラスト 〇まんがタイムきらら☆マギカvol.4   ゲストアンソロジー四コマ『食欲マミドモエ』
2011 〇まんがタイムきららミラク『にじげんめのうた』 〇『放課後の紙芝居部』 ゲーム内四コマ漫画作画
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tkism24 · 5 months ago
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「チームともだち」
ほしまゆ改めあおまゆ?こへまゆです。
ポケモンの課外授業受けに行ってきたぞー!予定決まってからずっと楽しみにしてた!この日真弓さん5時起きでした。流石に移動時間寝たけどテンション上がりっぱなしでワクワクしてた。ポケモン自体はそこまで通ってないしゲームに関してはほぼ知識もない、なんならダイパリメイクをこんぺーにやれよって脅されて初めてポケモンのゲームをやった人やったし今回のSVも発売から1年経ってやり始めたくらいには疎い人やねん。ダイパに関してはやるだけやってポケモン交換で知らん外人に伝説のポケモンパルキアをど年末に盗まれた記憶がありまして(かなり嫌な記憶)絶対もうポケモンなんかやらん!とか言うてたのにまんまとまた罠に嵌められSV買ってましたがガチ楽しすぎて一生やってた。追加盤まだ進めてないからそろそろやりたいって話は置いといて。(書いてる途中でやめたから今はめっちゃ進んでる)今回はそのSV関係やったからほんまに楽しくてしゃあなかった。入って早々俺らもとうとうポケモントレーナーか!とか言うてはしゃぎまくってた。ちなみに大雨やったしたけもう傘捨てるから!とか言う時ながら割とちゃんと傘ささないとやばいくらいの雨が降ってたから刺してはいた、濡れたけど。ほんま至る所にポケモンおってさー、あれや!これや!いいながら色々見回ってん。シャリタツ見つけて走っていくこんぺーとラウドボーン見つけて階段駆け上がる真弓。キョジオーンどこやねん!って走り回るこんぺー。遠くから見つけてこれか!ってまた走るしこんぺーの最推し見つけた時のこんぺーの嬉しそうな顔めっちゃ良かった。走らない!ってよく末澤さんに言われるんを今回は真弓が言いまくってた。この日めっちゃ走り回ったし歩き回ったし、宝探し終わって1時間余ったから乗り物も乗って���きなチュロス食べてパルデア地方を去りました。そこから帰るまで時間あるしー言うてゲーセン行ったんやけどそこにこんぺーの最推しのぬいぐるみあってめっちゃ必死に取ってた。最後はお店の人にめっちゃ忖度されて取れてたんやけどあの忖度ほんまおもろかった!ちなみにパルデア入る前に真弓はポカブとなんかもう一匹(名前出てこん)取ってるんるんやってんけどどう考えても荷物やしなんならパルデアでホゲータのぬいぐるみ買ってぬいぐるみ抱えながら帰った。しかも真弓の地元でどんだけ探しても見つからんかったホゲータのシャンプー見つけてくっそ重いのに持って帰ったのに数日後地元で見つける意味わからん出来事もありました!雨やったから晴れてる時にまた行こうって約束したから次は9月にまた行くよー!その前に8月もこんぺーが来てくれるのでポケモンカフェ勝ち取りたいと思います。(結果:負け)
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kosuke-nakatsuka · 7 months ago
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短編小説書きました!
初めての作品です。これで俺も作家レビュー。。。!
これからも漫画やゲームといったメディアにアダプトできると良いなと思っています。
よろしくお願いします!!👍👍👍
________暗い真夜中。
ある一軒家の中に、大人1人、子供が1人いた。キッチンやバスルームを繋ぐ少し広めなリビングルームを、電球やシャンデリアたちが琥珀色のか弱い光で照らす。
男性なのか女性なのか、2人の関係は、親子なのか、兄弟/姉妹なのか。どう捉えるかはあなた次第。
大人はスマホを、ただただ弄っている。その画面に向けられている表情は、
穏やかな気持ちなのか、無心なのか。それともどこか怒りを抱いているともいえる複雑な顔つきだった。
子供が歩く。それはほふくではない。
何かに掴まったり、体を揺らしつつも、足のみで歩けているため少なとくも生後9月以上といったところか。
口を半開かせ、ふらつきながらも腕を前に上げ、早く早くと大人の方へと進む。
手が座っていた大人の膝に当たる。その時既に深夜に差し掛かかろうとするころ。
疲れからか、子供はソファや膝の上にはあがれず左頬を膝の先に軽くぶつけながら座り込んでしまった。
大人がスマホを閉じて左に置く。
自身の右脚なのか虚空なのか。柔らかな絨毯の上に座りながら1点を見つめる子供の両脇に、それなり���血管や骨組みが浮き出た両手を引き伸ばす。
耳に聞こえるのは、注意を向けても電気の通う音や時々の暖房、偶に雪を潰し駆け回る車の音ぐらいか。
殆ど無音な室内に、腕と袖の生地が擦れ合う音が目立ち響き渡る。
子を持ち上げながら振り返らせ、腰の上に座らせた。
そのまま脇に右手を通してお腹を支え、左手ではスマホをまた取って、一緒に見るような形で再びいじり始めた。何をそんなに見ているのか。大事な情報やそのやり取り等ではなさそうだ。
すると、腕を伸ばしたために手首が少し。露わになる。
なんてこたあない、よくある光景のはずだったが、子供の脳がある違和感を察知させた。普段は手首など見ても気にしかったが、その内側が、子供の注意を引いた。
そこには、横に引いた線のようなものが、幾つもあった。スマホを持つ左手だけじゃない。右手にさえもあった。
そう、それらは傷跡だ。普通なら何があったか聞くかも知れんが、やはり子供か。直ぐにその傷跡に触れる、大人の左手首を、優しく左手で掴み、右手ですりすりと撫でていく。その感触は、他の肌と同じようにつるりとはしていたものの、軽く赤みがかっていたり、でこぼこしていたりと、やはり自分にはない、どこか異常なものだと確信した。
直感と言うべきか本能とでも言えるのか。子供が持つ小さな心臓は徐々に徐々にとその心拍の稼働する頻度を上げていった。
 ドキドキしている。
子供が膝上に座り始めて少しが経ったか、すりすりとしていた手を止め、当てた状態でゆっくり、大人の方へ顔を向ける。
視界に下目使いの顔が映る。眼が数ミリ移動し、こちらと目があった。子供の視線を感じてスマホに向けていた視線を、子供に向けたのだろう。
子供が口を開ける。
大人の目を見て、喋り始めが掠れながらも、今見ているものは一体何だと質問を投げかける。
ねぇ、、、。どうしてここ、線が着いてるの?  目を八の字に、少しだけ寄せながら言った。
大人は口をほんの少し開け、丸くした瞳を軽く細め、1呼吸して優しく答える。
それはね・・・
大人はスマホを切ってもう一度、左側のソファに置いた。
もう一度視線を合わせる。
これは・・・私が自分を傷付けたの。嫌なこと、辛い出来事がたくさんあってね。自分を痛めつけて楽になろうと。。 
               死んやろうと、思ってやったことなの。
  ___なんてことだ。
嫌な予感。直感が的中してしまった。
重いものを持ち上げたり、知らないことを教えてくれた。誰よりも強く、何にだって負けず、支えてきてくれた。
愛してくれていたと思い込んでいた人が、自分を切って血を流していた。
 そんな人だったなんて、子供は当然、思いもしなかった。空いた口は、塞がらなくなる。
し・・・ぬ・・・・?
そんな言葉、0歳児だって知っている。簡単な単語だ。
上がり始めた鼓動が、呼吸に現れ始める。
もし死んでいなくなってしまえば、自分は何も出来なくなる。呼んだらいつだって来てくれて微笑みかけてくれた人が死んでしまったら、夜中に電気もつけられない。1人で寂しく名前を泣き叫びながら、恐らく自分も続いて死んでくのだ。
そんな幼きながらの想像が不安を誘い込み、やがて涙として姿を現す。
や、、、やだよ。。そんなの、嫌だよ〜!
 声を荒がせ、体を揺らす。それでも視線は、ずっと合わせたまま。
大人は軽く目で微笑んだ。子供をまた持ち上げると、向き合うように振り向かせる。
そして小さな体を、その両手ですグッと抱き寄せた。
目を閉じて微笑み、顔を頭にあてる。昨日した、優しいシャンプーの匂いだ。
心臓の鼓動を感じる。寝る時いつも感じている、なんでなんだろ・・・何故か安心する音だ。
声がおさまり始めると、大人は目を開いて顔に両手を当てながら、親指で涙を拭った。そして再び優しく微笑み、穏やかな声で、語りかける。___
フフフ・・・。
 でもね、そのとき我慢できたおかげで、乗り越えてきたおかげで、今の時間を生きれて、今の私があるの。
この世で出会う多くの人、
人間というのは、みんな弱くてもろい生き物なの。
1人じゃ生きていくどころか、産まれて存在することすら出来ない。
誰だって、君がいつしか見た怖いと感じた人だって、誰かに支えられたから生きているし、誰かを支えたいという、思いやる気持ちだって、きっとどこかに必ずあるはずなの。  
いつしか子供の表情は、悲しみや恐怖よりも好奇心のような、ポカンとした顔に変わって見つめ続ける。
どんなに辛いと思っても、立ち去りたいと思っても。。。
私は生きていくことができた。
今のひととき。
この嬉しさ、喜びや幸せの恵みを目一杯、感じられるの。
子供を自身の目線へ抱え上げ、大きな笑顔で言う。
         
だから君に出逢えた。_____
その口調や表情は子供にとって、初めてと言って良いほどに幸せそうで、明るげな声だそうな。
子供の顔はさらに力が抜け、うっすらつ目と口を閉じ始めた。
自らを傷付けて死のうとしていたとしても、強くいてくれたからそばにいられる。その安堵感か。
長い話で難しかったのか。
ただ単に夜遅くで眠くなってしまったからのか。
理由は我々には分からない。
その子供を大人は優しく肩に抱き寄せて、背中をポン ポンと叩いた。2人の肌が触れ合う。
・・・もう寝る?
ほっぺとほっぺをくっつけたまま目線を向けて、そう言った。
      ���・・ん。
そのままゆっくり立ち上がり、2人は寝室へと向かった。
子供は今回のことを覚えていてくれているのだろうか。
一元一句は覚えていなくとも、こんな話を交わした、といった程度には心���留めてくれてるだろうか。
定かでは決してないが、本人には至って重要なことではない。
何故なら時間という命、人生を共有して過ごすことが出来たのでだから。
例え誰にも覚えられなくても、一緒にいたという事実は変わりない。
勿論、憶えているならいるだけで嬉しいけどね。
_____________________________〜〜おまけ〜〜______________
   
そして月日が経ち、子供は大人になり、大人は老人となる。
日の明るい光が差し込むある一室の白いベッドで青い毛布をかけて寝る老人。
隣にはその老人と接続されたコードや医療器具と、その機械。
ダークオークの焦げ茶色で暖かい雰囲気と、医療機械やベッドの冷淡な色の対比(コントラスト)が不釣り合いってやつだ。
___そこにコツコツと足音が鳴り始める。
ゆっくりとこちらへ向かっているようだ。
姿を現したのは、かつて子供だった大人。ジーンズにパーカー、ジャケットとモダンな服装をしている。
部屋の端にあるパイプ椅子を片手でベッドの脇に移動させると、そこに腰をゆっくり下ろす。目線は相変わらず、合わせたまま。
老人が目を開けた。いや、閉じているように見えていただけで、ちゃんと最初から開けてたかも。
2人は微笑みあっいる。
首もろくに動かせないため、近くに来て座った人が誰なのかを知ると、老人はさらに笑顔を見せた。あのときのままだ。
すると大人は老人の上がりかけていた右手をサッと取る。メロンの筋のようにシワがある。強く生きてきたことを示す証拠だ。
老人の口がゆっくりと開く。
だが何も喋らない。筋肉が衰えているのだ。無理して喋ろうとするものなら心臓に負担がかかっちまう。
大人は顔を近づけて、ゆっくりと、優しい顔、口調で言った
    もう・・・大丈夫だよ。
少し震えがある。瞳も輝いたと思ったら、やっぱりか。涙が溢れ出てしまった。
老人は右手を触れられている大人の両手と共に動かし、大人の頬へと寄せる。
また、あのときみたいに。
涙を拭ったのだった。
老人は更にはにかみ笑う。昔と変わらない。幸せそうな目だ。
右手はゆっくりと腰に降りていく。
この時、2人は最後まで笑顔を欠かさなかったのであった。
終わり
うんこうんこ。
うんこっこ。
なう(2024/05/25 02:05:07)
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silent19nights · 1 year ago
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2023.08.07〜09
京都旅行
前日はまったく眠れなくて、ほぼ寝てない状態で朝を迎える。今までにもよくあった、大事な予定があるときのアドレナリン効果?
予定よりもひとつ早い電車に乗り、乗り換え駅で何本か電車を見送る。通勤ラッシュということもあり、人が多い。電車のなかで恋人と合流。二人して寝不足でとろとろの目で向かう。想像以上にスムーズに進み、新幹線乗り場ですこし時間を持て余す。おにぎりをひとつずつ買い、新幹線に乗車。おにぎりを食べ、話しているとすぐに静岡に突入。やっぱり大きい〜などと話しているうちに眠くなり、眠る。あたたかい手に包まれて幸せをひしひしと感じる。これからの3日間へのたのしみが溢れて、自然と笑みがこぼれ落ちていた。
あっという間に京都に到着し、荷物を預けに宿泊先へ。まだまだ京都に来た実感が湧かないね〜などと言いながら、中心部を移動。ホテルはなんとなくで選んだわりにはとても良い場所で一安心。荷物を置いて、昼食をとりにうどん屋さんへ。かき卵うどんが沁みる。食後は鴨川へ。念願の鴨川を目の当たりにし、京都へ来た実感が一気にわく。鴨川の河川敷を恋人と歩くのが長らくの夢であったから、ふとにやけてしまい恋人に不思議がられる。暗くなってからもまた来ようね、と約束する。その後、白川通りや花見小路通りへ。いかにも京都らしい街並みに感激し、手を繋いでいろいろなところを散策。人の多さに圧倒されつつも、脇道に逸れると一気に人が減り、落ち着くねと言いながら歩く。小腹が空き、散策のはじめのころに見つけた甘味処へ並ぶ。なんとなく良さそうだね、と決めた入ったところ、二階のお座敷の部屋に通され、想像以上に趣のある店内に二人で興奮する。ずっとここにいられるね、などと話しながらわらび餅を注文する。今度はお座敷のある旅館みたいなところで、宿泊先に重きを置いた旅行もしたいね、などと話す。再び鴨川沿いを歩き、能面を探しに五条通りへ向かう。到着するも能面工房は展示がされておらず、すこし残念であったが、しょうがないかと切り替え、京都駅方面へ向かう。途中で東本願寺を見つけ、参拝する。大きな本殿に圧倒され、すこし休憩する。古くに建てられた建築物内は風通しがよく、何時間でもいられそうなくらいの心地よさに感動する。そろそろ出ようかといったころに、何人もの僧侶見習いのような人たちの波にのまれ、驚く。キッザニア的なやつ?とつぶやくと、バチがあたるよと怒られる。その後、地下鉄に乗り、ホテルでチェックインを済ませてすこし休憩。きれいなお部屋でまた安心。ひとつのベッドに3つも枕が用意されていて、枕投げするか!と話す。お互いアレルギー持ちだから死んでしまうぞ、と笑う。そんなくだらない話をしながらソファに横に並んで座って、室内で二人きりになることがはじめてだね、と触れ合う。長旅の疲れと寝不足で今にも眠ってしまいそうになり、夕���をとりに餃子屋さんへ向かう。餃子屋さんではカウンター席に通され、二人並んで餃子を食べる。恋人が注文した黒いチャーハンは見た目に反してシンプルな味わいであとを引く。餃子は想像通りおいしかった。恋人の眠気がピークに達し、少し不安になるも、さっと食事を済ませ、約束していた夜の鴨川へ向かう。鴨川に到着すると、川沿いの床料理の飲食店の提灯や照明に照らされ、まだ少し明るく、河川敷に座って辺りが暗くなるのを待つ。その頃も恋人はとっても眠そうで何度もうとうとと持たれかかってきて、かわいらしかった。今日はいつもみたいに帰りの時間を考える必要はないんだね、と旅行ならではの喜びを噛み締める。そうも話しているうちにすっかり暗くなり、雰囲気のある情景に。いつもみたいに恋人がわたしの腕をふにふにと触り、愛おしそうに見つめてくれて、横にいられる幸せを感じる。お話をしたり触れ合ったりと存分に鴨川の雰囲気に酔いしれ、ホテルへ戻る。あまりそのつもりはなかったがたくさん甘えてしまって、甘えなれていなくてよくわからなくなりつつも、眠い時だけではなくていつもこうやって甘えてほしい、眠いときだけ?と言われ、甘えるのも悪くないかも、と思う。同時にいつもそういうことを任せきりにしてしまうことに反省。その道中、コンビニでアイスを買い、帰って食べようねと約束する。んたしのシャンプーの香りが好きだとずっと言ってくれるので、シャワーはあとに入ろうか?と聞くと、その香りがいっぱいになったシャワールームに入りたい、と照れながら伝えてくれたのでその通りにする。メイクを全て落とした状態で対面するのは不安だったけれど、その姿も肯定してくれてうれしい気持ちでいっぱい。そういえば、香りは覚えているしもうわかるよ、と教えてくれた。香りっていちばん記憶に残るよね。わたしもわかるよ。二人ともお風呂から上がり、アイスを食べて歯を磨く。寝る支度を済ませて布団に入るか〜などと言いながら、準備をしていると枕をぶん投げられる。わしゃわしゃとすこし遊んでいると、同じベッドで寝る?と一つのベッドに入る。ホテルを予約した時点でもこういうことは少しだけ考えてはいたけれど、恥ずかしくて、寝相が悪いことにして別のベッドにしたことを思い出す。シングルに二人はきついかな〜と思いつつも、くっついているのでぎりぎりセーフ。好きな人といっしょに寝るのってこんなに幸せなんだと漫画みたいなことを思う。あまりの近さに照れてしまって枕に顔を埋めてしまう。でもいつも寝る時もけっこう顔を枕に押し付けているような気もする。これまで、外でしか二人きりになれなかった分、存分にくっつき合える場を楽しむ。恥ずかしくて仕方がなくなるも、こっち向いてよと何度も囁かれ、見つめ合う。どんな人であっても、身体に触れられることは今まで苦痛で苦手だったのに、ゆっくり少しずつ、安心できるように触れてくれることへの感謝を伝えられてよかったな、と思う。
気がつくと朝で、それでもまだ二人とも眠たくて夜の続き。ワン��ースだけになり、いつも嫌だと避けてきた脚を触られる。ぶにぶにだから、とよけるもそれがいいのと言われ、ならばよいか、と許す。そんな自分が単純すぎておもしろい。
よい時間になり準備を済ませ、朝食をとりにパン屋さんへ。外は前日と打って変わって暑く、蝉の鳴き声が鳴り響き、京都の夏を見せつけられる。パン屋ではお互いが好きなクロワッサンとわたしはカレーパン、彼は好きな大葉のパンとナッツのパンを選び、珈琲とともに店内でいただく。朝から優雅な時間を過ごし、旅行気分を味わう。
2日目は彼の行きたいところメインで回ろう、と決め、嵐山方面へ。その道中の電車は外国人観光客で溢れかえっており、代表的な観光地であることを再認識する。到着後はトロッコの乗車券を購入。トロッコはこれまた外国の方だらけで日本人のほうが少数なのでは、というくらい。トロッコから見える景色は美しく、鹿がいるのも見えた。なかでもわたしはトロッコ保津峡駅の吊り橋がお気に入り。サスペンスドラマの撮影地にもなったと言っていたとおり、いかにも人が突き落とされそうな感じ。トロッコから下車し、竹林の道へ。竹って一日でものすごく伸びるから安易な気持ちで植えたらいけないんだよ、と教えてもらう。パセリも無限に繁殖するからだめらしい、よく知ってるね。竹林の道を抜け、渡月橋へ。恋人の念願の場所ということもあり、いかにもテンションが上がっている姿が見られて、こちらも嬉しくなる。お互いにインスタグラムのストーリーに投稿し、橋の下の川へおりる。彼は石を渡って中洲のようなところへ。その姿を動画に撮っているとこちらに気づいてにこにこ。かわいい。水切りをしたりふらふらしたりとなにやらたのしそうでよかった。その後は休憩がてら和菓子屋さんへ。わたしはみたらし団子、彼はわらび餅を注文し、店の奥にある椅子で食べる。良い雰囲気だね、と話す。嵐山を楽しんだあとは金閣へ。電車とバスを乗り継いで到着すると、いかにも大切にされていそうな雰囲気の鹿明寺に背筋が伸びる。拝観料と引き換えて渡されたチケットがお札のようになっていて、こういうのいいねと話す。金閣はほんとうにぴっかぴかでびっくり。特に写真で掲示されていた内部の最上階の壁や床が全て金箔で埋められた洗練された部屋が圧巻。足利義満の派手さに圧倒される。敷地内が一方通行に規制されており、人を避けて進まなくてよいことのストレスの少なさに二人して感じていた。進むと蝋燭や線香をお供えできる場所を見つけ、二人でストレス封じの線香を供える。効果があるといいな〜。金閣を見終えたあとは夕食のために京都駅方面へ。京都駅はやっぱり人が多い。いろいろと迷った挙句、夕食は地下街のお好��焼き屋さんで済ませることに。チーズが存分にかけられたお好み焼きが想像以上に美味しかった。ボリュームのわりにはおなかによくたまり、大満足。ホテルへ戻るには少し早かったので、夜の千本鳥居に興味が湧き、伏見稲荷大社へ。勝手に人が全くいないことを想定していたけれど到着するとそれなりに同じような人たちがいて、みんな考えることは一緒か、となる。やはり夜はライトアップされていることからきれいで、感動する。マップを見ると、最後まで行くとすると稲荷山を登頂することになるようで、全く想像がつかなかったがとりあえず行けるところまでいってみるか、と意気込み、千本鳥居へ。途中で花火の音が聞こえ、そういえび今日は琵琶湖の花火があるんだったね、と思い出す。はじめの方は連なった鳥居が魅力的でどんどんと進んでいけたが、途中から険しい坂道となり、それなりのところで引き返す。疲れたけれど手を繋いで散歩できてとってもうれしかったなあ。電車で烏丸御池まで戻り、コンビニで飲み物とヨーグルトを買ってホテルへ戻る。昨日と同じように順番にシャワーを浴びて寝る支度をする。昨日は持参のパジャマを着たが、今日は備え付けのほうにしてみようか、とお互い前開きの浴衣のようなものを着る。あたりまえのように同じベッドに入る。昨日のこともありより積極的ですこし驚く。気がつくと服を身につけていない状態になる。何度も綺麗だと言ってくれて恥ずかしいけれどうれしい気持ち。
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lienguistics · 1 year ago
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裏表
2023.09.30
章1
撮らせてもらった僅かな彼の写真の中には、一緒に過ごせた日々が色褪せないまま残っていた。特に懐かしく思いを馳せさせるのが、信号待ちをしていたときだった。目が合ったとき、噛み殺そうとしたのにクスッと笑わずにはいられなかった私に「何だ?」と彼は眉をつり上げながら聞いた。
「別に何でもないよ」とあどけなく言い返したが、納得させることができなかったのは目つきで察した。 「 俺の影で涼しむために寄ってきたんだろ?」 「まあ、確かにそんなメリットもあるけど、なんでそう思うの?」 「お前の顔にできた影が不自然だったから」
ふふっと笑い返しながら携帯を取り出して構えたら、写真を撮れないように彼に手でカメラを塞がれた。
「なんでぇ〜」と口を尖らせる私に彼は「汗かいてるし、疲れた顔してるし」とぼやいて拒んだ。 「それでも、私にとってはどうしたって可愛いと思うのよ」と私はそっと呟いたら、彼が徐々に気を許してくるのに気づいた。
照れ笑いと優しい眼差しでこちらを眺めてくる。 夕方の日差しに包まれる輪郭が柔らかく輝いている。 茶色くふわふわの巻き毛がボサボサになってしまい、日光で背後から照らされ、薄茶色やきつね色に毛先を彩り、ポカポカと暖かい焚き火のイメージが蘇る。
通りを横断しながら、私は一瞬肩越しに振り返って彼の表情をまた一目見ようとして「楽しんでるの?」と聞いてみた。
「君のそばにいるだけで幸せだよ」
如何にも素敵な写真なんだ。
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章2
立ち去ってからもう2週間以上経ったのに、彼の名残りがまだ私のアパートに撒き散らされている。自分の所持品に限っては��つも通りに整えているが、彼との過ごした日々によって増えたものは、どこに収めたらいいのか考えて決める気になれなく、そのまま残る。時間が経つにつれて、自分の常識や判断力も変わってきたことを悟った。
スキンケア用品のサンプルセットは、すでに様々な言語の著書をいっぱい抱えている本棚の端に乗せられるのがおかしいどころか、あっさりと拾い上げられるので便利のよくて相応しいじゃない。
ある美容化粧品店の表札を見かけた瞬間に、私は「あっ」としか発せず出し抜けにその店に向けて雑踏の潮をすり抜け出した。
「おススメしてもらった銘柄だから実際にどんな魅力があるのか気になったんだ」と説明しても、彼は別にこんなところに興味がないと推定してしまい、とりあえず好奇心を満足させるためにさっさと見回してすぐ出ようと自分に言い聞かせた。
だが、知らないうちに彼はビアードオイルやクリームを手にして「いい匂いするし、肌触りも気に入ったし、後で買おうかな」とぶつぶつ独り言したのが聞こえた。
彼から少し離れて、エッセンスやセラムの棚に近づいて、諸々な商品にゆるりと目を通して、シャンプーやコンディショナーまで視線を向けたとき、店員さんに「よかったら、サンプルを差し上げましょうか」と提供された。
「あっ、ほ、本当いいんですか」とどもったが、店員さんが頷いてから、「じゃあ、お願いします」と私は返して、受け入れるしかなかった。
えっ?当時の彼にすぐ一つ渡すのを忘れてしまったからといって、この二つを果てしなく保たなければならないわけではない上に、同居人の一人と一緒に暮らしているので、せめて一つをあげてもいいって?なんて非常識な提案。
ガラステーブルの片端を飾っているのが花輪のレイ。天命ゆえに冬を春に向き合わせたと言わんばかりに、ピンクと水色が僅かに交流する花壇は殺風景な凍った湖の縁に降臨して根付き出した。当該の性格が絡み合っていると仄めかすように。
ダウンタウンでぶらぶらしていたとき、ハワイをテーマにした居酒屋に行こうと気まぐれに決断をして、入店する前に歓迎の一環としてスタッフにレイをかけてもらった。
献立を見据えながら、「何を注文するの?」と彼に聞かれたら「うーん、パイナップルのスムージーとかなんとか…かな。そっちは?」と答えた。 「マイタイ飲んでみようと思うけど…とにかく、空席を見つけてくれない?」 「おおっ、いいよ」
一回りしてから「そこのテーブルで大丈夫だと思うよ」と提案するために合流したとき、私がお酒に弱いと知っている彼はさっき言った通りの飲み物をすでに手にしていて、テーブルまで��内してもらうのを待っていたようだ。
「えっ?!いいの??」と慌てて聞いたが、「普通はかわりばんこに払うんだろうし」という正論で立ち止まって屈した。 「とりあえず、飲んでみない?酒の味が思ったより弱いから君も耐えられるかも」と彼は言いながらガラスを渡してくれたが、私が一口飲んでみたなり、「弱いどころか…結構味わえるじゃん!」という愚痴を溢して舌をすばやく出した。 「あ、そう?」 「ほら、私のを飲んでみぃ〜」 「俺のよりもうまいね」 「飲み干すな!」
レイをかけるとかゆいし、どこかに置いて自分にかけない方がいいんじゃない。それに萎まない花束と見做すのが妥当なの。
食卓の上で同居人の植物に付き合っているのがペロペロキャンディの一本。元々は二本だったが、好奇心と口寂しさに負けてしまったんだ。こんなお菓子をどこの店でも買えるのは一目瞭然だが、不憫な褒美として、ゲームセンターで楽しく過ごせた時間の象徴で、ダンスダンスレボリューションで心ゆくまで精一杯勢いよく踊った証明だった。
歌の知識で私の方が有利だったはずなのに、動きがぎこちないせいで何回も彼に負けた。むしろ、まるでそもそも負けなかったかように感じるほどゲームにすっかりと夢中になってしまったのは、さも10年以上ぶりに遊ぶのがさすがだね。
ロリポップはどうだったって?まあ、案の定、結構平凡で、食べたことを微塵も後悔していないよ。ちょっとでも片付けたと見做させられるかな。
こちらを未練がましいと決めつけるとしたら、どうせなら両成敗ということにしようか。
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章3
積み重ねたレシートをより分けたら、まるで束の間だけでも過去に遡ることができるかような感じがして、懐かしい雰囲気がひとしきり漂ってきて、余韻に浸れずにはいられない。
と、君へのメッセージをうっかりと送ってしまった。そんな恥ずかしいことを自分の胸にしまっておいたらよかったかな。
ちなみに、今回の方が俺たちに関心を向けてる人って多かったんだね?君は本当に何も気づかなかったって?
だってさ、あるときなんか、商店街で見て回りながら、店員さんに「何かお探しですか?」と質問されて、俺は「丈91センチのズボンが店内にありますか?ウェブサイトで見かけたんですが、自分で履いてみたかったので…」と説明したのに、戻ってきた店員さんが「誠に申し訳ございませんが、そのサイズが店内にございません。ひょっとしたら、オンライン限りに在庫があるかも知れませんが」と君に正面切って相談したんだ。俺より頭一つ以上背が低い君の方がさすがにそんな長さに合ってると言わんばかりに。
笑いながら、次の店に俺の袖を掴んで引きずって行った。ハワイ風の服ばかりに囲まれて、漆黒でガバガバなパーカーや濃紺のコンバーススニーカー���をからだじゅう身につけた君とため色のシャーツをしわくちゃなジーンズと合わせた俺は、一目瞭然でわかる場違いな雰囲気を受け入れきれないうちに、君があれよあれよという間に近付いてきた店員さんと喋り始めた。
えっ?俺たちはオアフ島に行く予定があるって?確かに夜のイベントとかなんとか行ったら、こんなふうに厚手の生地の方がいいし、お洒落な色も選んだなぁ… あっ、おい!調子乗りすぎじゃない?カクテルのガラスの模様も?何、その生意気な目つき…
旅行が数日だけと言ってしまった君は、「もったいないわ〜」と疑問を抱く店員さんに直面したらどうする?
少しでも休みを取らせてもらうように許可を得る過程が大変だっただけではなく、二人とも働いていて一緒に同時に休めるため、両方のスケジュールを調整することに取り組んだが、結局なんとかできたと真剣に言い逃れるお前、えらいじゃないか!
すでにアロハシャツを4枚持っている俺を試着室まで店員さんは案内してくれたが、君が辿るのを���躇ったのに気づいたので、「廊下の突き当たりが二人で入ることができるほど広いですよ」と声かけた。君は俺に面食らった眼差しでちらっと見たが、やっと向かってきた。背後にドアを閉めた後に「お前、本当に信じられない」と俺が苦笑いして、自分でまったく抜き出さなかったシャツを羽織ってみた。
この経験でどんなスタイルや模様や色と似合うのかてっきりとわかってきたに違いない。
「晩ご飯は何を作ろうか」と悩んでいた君に「パスタだったらどう?」と提案したら、咄嗟に「じゃあ、頼むよ!うわぁ〜、料理してくれる人がいるのって最高!めっちゃラッキーだわ」と大はしゃぎで歓声を上げられて「えっ、ちょっと!料理してあげるって言ったわけではないよ」と拒むに拒めなかった。 おせっかい焼きの君がニンニクと野菜を切るのを許したが、食後に皿洗いにも手をつける前に俺はすぐ自分で洗い始めたのに、食卓を雑巾で拭く姿が横目で見えたきっかけで「疲れた?」と声かけた。 君は首を横に振った。「ううん、別に」 「そう?」 「晩ご飯の献立を考えて決めた上に、準備とか料理をきちんと果たしたのはあんただから、私の方が本当に楽なの」 一瞬の間を置いてから「いつかこんな風に一緒に暮したらどうだろう」と思いつきをぽつんと漏らした。 「本当に一緒に暮らすことを検討してる?」 「君ならいけると思うけど」 「お前は野菜が嫌いだから、八百屋に行ったらどうする?別々に買ったり払ったりするの?だって、私はね、野菜をそんなにあっさりと手放さないよ」 「食べれる野菜もあるけど!理想的には二人でお金を少しずつ出し合って、欲しいものを揃えて買おうと思ってたんだ」と言ったら、納得させることができた。「まあ、確かに、そんなことは恋人とか家族との生活みたいだけど、お前なら…」 「もうずーっと付き合ってる感じ��ゃない?私たちってさ、幼馴染から恋人に実際になれたら、都合のよくない?」とそっと笑った。 「30歳になっても未だ独身だったら、とにかく結婚しよう…とかなんとか?」 「おおっ、ロマンティックじゃん〜 じゃあ、あと6年だね」 「5年じゃない?6年間待つしかなかったらしょうがないけどぉ」 「 私は29歳に、お前は31歳になる年に決めるとしても、条件が特に一つあって、即ち、夫婦別姓にしたいって。私は博士を取得できたら、お前が博士で私は単純にお前と結婚してるという誤解のないようにね」 「いいよ。ハイフンが付いた名字もいけるかな?」 「んー、それはもうちょっと考えないと〜」 「まあ、5年間あって余裕だね」
最後の夜に「死んで永遠に会えなくなるわけではないから、泣く理由なんて何もないよ」と慰めようとしたのに、君の目に涙が湧き溢れていたのを見てから、涙を親指でスイスイと拭って、頰をひとしきりそっと撫でていた。
「遠く離れた場所に引っ越しても、お願いだから訪問してくれると約束してね。必ず空港に迎えに行くよ」
本当に、一ヶ月間も滞在しても、構うどころか、嬉しい。 君がすすり泣きながら体を震わせるのを鎮めるためにぎゅっと抱き締めようとしたが、俺もべそかいてきたんだ。
「泣くなって言ってたんだろう、アホ」とぶつぶつ言いながら、自分の頰からも涙をぬぐった。
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章4
オフィスに迎えに来てもらってアパートに帰ってからすぐにお互いに抱きしめ合おうとした。最初は両腕を彼の腰に巻きつけると、自分の顔が直接に胸に埋まったので、代わりに肩越しに回すためにつま先で立とうとしたが、私は長い時間そのままバランスを保つことができなかった。彼もずっと身を屈めるのは無理だったので、結局腰に私の脚を巻きつけて、私を一気に優しく持ち上げた。
「よっしょ!これでいいかな?」と彼はそっと笑った。 「重くない?」と私は眉を顰めながら聞いた。 「かなり軽いよ」 「ふーん」と勘繰るような表現で口を尖らせた。
目を逸らさず、鼻先をくっつけて、すりすりしてきた。
「ここまで来てくれて本当に嬉しいの」と私は囁いた。 「めっちゃ会いたかったよ」
「君に最も幸せになって欲しいし、いつも応援してるけど、そんなに幸せにしてあげることができる人って俺じゃない」と彼に言われたときに最初は面食らったが、一瞬の間を置いて我に返ってから「うん、自分自身の気持ちを抑え込むよりちゃんと伝えたり、相手の感情もよく理解したり、相当に対応したり、またはせめて誤解があったら前向きに積極的に話し合ったりすることができる人の方と気が合うよね」と頷いた。「だって、ここ一ヶ月間お前に言うに言えなかったことあるの。会話が静まった咄嗟に、お前は他の他愛のないことで気が紛れるから、こっちはゆっくりと切り出せる余裕がなかったし」 「ん?」 「ね、お前にいきなり電話した夜、覚えてる?結構遅かったから、そろそろ寝ないと、ってお前に言われたもん」 「ああ、覚えてるよ。めっちゃ眠かったんだ」と彼はそっと笑った。 「当時は、まあ、今でも、すごく言いづらくて喋り方が毎回ぎこちなくなってしまうけど、なんだろう、お前に電話かける数時間前に父にも電話してひとしきり最近の出来事についてやり取りして、母が父と絶交したのは二ヶ月前だと初めて聞いた。原因は散々愚かだったが、…母は私が大学院の代わりに就職活動に目を向けると聞いたとき、ひどく落胆してきて、私にまた大学院に申し込むように言い聞かせてくれとすぐに父に訴えようとしたが、『うちの娘にもうそんなことを言い付けられない 』と父に反対された。再話でこの部分でおそらく父に庇ってもらえていいねって思ってるんだろう?当時の私もそう思ったが、父はその舌の根も乾かないうちに、ろくでもないと見做す生物学の学士号で私が就職活できないと最初に諭そうとしたのに、結局父の主観を理解できるようになるまで何目の面接にも落ち続ける私を傍観するしかないとも吐き捨てた。その警告に従わなかったゆえの自業自得だと言わんばかりに。両親の落胆に圧倒されたから、気が紛れるために、お前に話してみようと思ってたのに…その瞬間にどれほど死にたかったのか口にすることができなかった」 「君がそんな気持ちを抱いてたって言ったらよかったのに。俺はたまに上手く慰めることができないのが他のことに気を取られているからだけど」 「大抵自分自身で処理した方がマシだというタイプにしては、さすがだよ」
困るときに友達に相談する私と、縁のない人からの視点や意見は無益だと思っている彼が、ずっとこのままにしては言った通りに幸せにしてくれない。一人は過酷に厳しい監視で絶え間なく見据えてくれる両親、もう一人はよそよそしい断続的に不在の両親から産まれ育たれたのが、あがり症のかまってちゃんと孤高の気取り屋の二人となってきた。
いきなりに「天然ボケ」と言い放たれた瞬間に、「で?」と私が言い返すところだったが、彼は私の首に顔を埋め込んできて「で、可憐」ともごもご打ち明けた。
「俺のタイプは… クール系女子かな?」と言われたとき、ああ、確かにその「クール系」というのは「可愛いだけ」の私に当てはまらないのが、なぜそもそも腑に落ちなかったんだろう?両方のアピールができると私は自慢に思ってしまったから。
幼い頃から完璧ではないと愛に値しないと教え込まれた私は、サイコホラーの深刻で不気味な執筆で自殺などの話題を読むことにより、自分の自殺念慮を理解してもらえて安堵感を感じさせる。仕事で手術を焦点にするのは、頭が良くないとしても、せめて手際よくなるまで練習できると自分に思い込んでいる。即ち、自尊心を誰でも否めないほどまで徐々につけるということ。
その一方、なぜ彼がラブコメやテイラー・スイフトにすごく目がないのか決して理解できない。首を傾げて「魅力ってどこだったっけ?」と素直に聞くと「素敵なところはどこでもあるから、美術を見る目がなくてもったいない」と窘められてしまう。少なくとも「救い難いロマンチスト」と彼が自称することによりの自覚で少し許せる。
彼は若いときから自立しなければならなかったのが、自分だけではなく妹たちのお世話する責任も負うようにさせられ、自分のことを考える余裕がなかった。交際ではやっと気を許して自分らしくしてくるたびに、すぐにガラッと当時の恋人に振られたのは追い討ちをかけるじゃないか。 両方とも無条件に愛されたいという皮肉なんて。
背後から急にぎゅっとされたとき、私は肩越しに「ん?」と振り返った。 「今まで本当にありがとう」 「なぁに〜、その真剣な口調?」 「いつもお世話になりました」 「おお、丁寧語を使ってまでか」 「本気で言ってるよ!俺のために君がする些細なこと、俺が毛布を充分に持つかどうか見定めるために角からこっそりと覗いたり、外食に行くときに紹介してくれた食事がほとんど俺の口に合ったりするって、全部認めてるよ」 「友達だから当然でしょ」とにっこりと笑いかけた。 「それもあるけど、お前が特に優しくて俺にとって本当に大切なんだ」
彼に抱いてもらったままに「正直にいうと、ここ一年間半ぐらい私たちは少しずつ絶交してくる感じがするの。私をだしにしてお前はひっきりなしに容赦なく冗談を作って大笑いしてるから、まるで時間が経つにつれて私のことがどんどん嫌いになっていくのかように、本当に訪れてきてくれたくなかったではないかと勘ぐらずにはいられなかった」と私はおどおどと打ち明けた。 「俺はただ普通の友達に会うためにも、自分の心地良い家を出るわけではないよ、ましてや六時間運転することなんて。現在にお前と一緒にいるのは、心底から会いたかったんだ」 「と私に言い聞かせようとしてるけど、理解と納得できないのは私を酷く馬鹿にする所謂冗談を連発するところなの!」 「打ち解ければ打ち解けるほど本音を自由に引き出して冗談がますます激しくなってくるけど、俺が言ってた間抜けな事を、お前は真面目に受け取ると思わなかった」
というわけで、建前はほとんど無関心だと見做すほど内向的で冷静沈着だが、本音はふざけてばかりいるというのは、両方とも主観を露にしないじゃない。
「何回も同じいわゆる冗談を繰り返したら、本気で言ってると考えてくるのは不合理ではないの」 「じゃあ、これから君と話したら、そんな冗談はちょっとでも控えるように心がかけていけるけど、本当の自分はいつもふざけたりからかったりしがちだし、誰のためにも自分を変えないよ」 「��は、心ゆくまでたっぷりとふざけることができないと、完膚なきまで自分らしく生きることもできないのは、厳密にいうと、お互いに相性が合わないじゃない」 「��うとも言えるけど…議論すると、相互理解まで徹底的に話し合ったら大丈夫なはずだと思うよ」
彼は正面切って認めないが、ごく稀に気が緩むと、心の裏を見透かせるようにその少ない規範に基づくことができる。真夜中に空気が澄んできたときに、カップが半分しか入ってなくなって、私たちを囲まった虚空を懺悔室にした。 「怖いよ、付き合う相手を選び間違うのって」 「… 誰かを愛したことあるの?」 「ある」と彼は頷いて「永遠に一緒に暮らすのを仮にも考えてきたほど恋してた」ともぽつんと呟いた。 「何が起こったの?」 「手遅れになるまで心を開かなくて話さなかったのはすごく後悔しているんだ」 …が、矛盾的には心を開くと、自分自身を完膚なきまで拒否される機会も与えるので、そもそも自分のことを表さない方がいい、と暗黙的にわかってきた。 「だから、今度こそ、疑問を微塵も抱きたくない」 「そんなに紛れもなく納得させるまでかなり時間かかりそうじゃない?」 「また間違えたくない、むしろ、また間違えるわけにはいかない」
なのに「ね、一緒に暮らしたら、ウサギを飼える?子供の頃から俺はずーっとウサギが欲しかったよ!」と彼は軽々に提案したときもあった。 「私はジャンガリアンハムスターが欲しいの」 「うわっ、それもなんて可愛い!」 「だろー!」 「じゃあ、二匹とも飼おう!」 「オッケ〜、猫も二匹しよう。一匹だけだったら寂しいから」 「まったく同感」 「じゃあ、アパートを借りたら部屋はいくつ?」 「1部屋でいいかな」 「ほほう、やんわりと断りたいと思います。お前は他の友達とビデオゲームをすると、夜遅いだけではなく、みんなめっちゃくちゃうるせぇ!私が大切な睡眠を妨げられるなんてまっぴらだよ」ときっぱりと拒否した。 「おおっ、確かに…ちなみに、お前の台所の現状はダメだよ」 「何だって!」 「鉄製フライパンはおろか果物ナイフ以外は持ってない!」 「三徳包丁を一本持ってるし、今までずっとなんとかできたし、それ以外には必要ではないという証明になるじゃないか。それより、逆にお前は超便利な泡立て器とかゴムベラも持ってるわけではないし」と私は生意気にあかんべをした。 「そう。だからお前は俺の厨房に入ったらまったく場違いな気がするけど、俺たちの別々の調理道具を一つの台所で組み合わせたら、徹底的に完璧な台所になるよ」 「もう高齢の夫婦のように間抜けなことについて口論してるなんて」と私はため息して首を左右に振りながら、彼は肩をすくめてニコニコした。
「で、私のこと本当にどう思ってるの?」私はひたすら問いかけて��たとき、彼の唇から流した答えを頑張って把握しようとしたのに、まるで私の体が透明なのかようにすんなりと通り抜け、何も聞き取れなくて済んだ。
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二人とも未練がましいというのは間違いないんだが、相互的だというわけではないね。
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shukiiflog · 1 year ago
Text
ある画家の手記if.125  告白
夏場だからそんなにいくつも着込めなくて、悩んだ末に結局昨日と変わり映えしないシャツ姿になった。
まことくんを送ってから家に帰って、一人じゃ何しても味気なかったからクッキーを焼いた。かいじゅうくんとノエルと絢ちゃんとかすみ、それから香澄と絢と光くんと雪村さんも。全員造形だけなら把握してるからクッキーに似合うようにデフォルメした。少し凝ってたらひとつずつがクッキーにしてはちょっと厚くて大きめになった。
焼きあがったクッキーを包んで車に乗せて、香澄の部屋からノエルを連れてきて助手席に乗せてシートベルトを���けさせて、ノエルと二人で出発する。 香澄から迎えの連絡がきたから、雪村さんの家まで。僕は行くのは初めてだ。 香澄が自慢できるようなかっこいい格好していきたかったけど、ちょっと迎えに行くだけなのにキメすぎてても変だから、かわりにノエルにタキシードを着てもらった。 運転してて昨日の通話を思い出してちょっと顔が熱くなる。そういうこと今考えてたら運転ミスしそうだからよそう…。
香澄から聞いた住所はうちからそんなに遠くなかった。電車で何駅かってくらいで、行きがけには僕がずっと前にいた療養施設の近くの道も通った。 着いたらパーキングエリアに車を停めてノエルとクッキーと一緒に車を降りる。 荷物がたくさんあるみたいだったから僕も荷物持ちに部屋まで行く。その僕がノエル抱えてるのってちょっと変かな。 誰かの家に自分から訪ねていくことがなかなかなくて少し緊張してるかもしれない。 部屋の前まで通されて、玄関のドアを開けてくれたのが香澄だったから、笑顔で持ってたノエルの両手を広げて香澄の頭を正面からノエルでもふっと包みこむ。 「ノエルだ!」 「一日ぶり、香澄。楽しく過ごせたかな。体調崩したりはしなかった?」 「うん、げんき。楽しかった」 「……」 ノエルの手を動かして香澄の髪の毛をぽふぽふ撫でる。そのままノエルの手と一緒に腕をまわして抱き締めてにっこり笑ったらノエルに埋もれた香澄も眉を下げてほわほわ笑った。 「ひとんちの玄関先でイチャつくのやめてくんない?」 部屋の奥から絢が出てきて横の壁にもたれながらちょっと皮肉げに半目で笑ってつっこんでくる。 その後ろに隠れるようにしてぴょこっと顔だけの���かせた光くんが三つ編みを重力に従って傾けた頭から垂らしながら僕に言う。 「ラプンツェルヘアーだよ」 「ラプンツェル…グリム童話の?」 「うーん、ちょっとちがうけどそう。わたしが編んだの」 香澄の髪の毛はたしかにかわいく編み込まれててところどころに小さな花が挿してある。似合っててかわいいな。 「なおとくんもお茶する? コーヒーいれたとこだよ。オーストラリアの豆の。」 僕が少し迷ってたら絢と光くんに強引に腕ひっぱられて部屋の中にあがらさせられた。後ろからノエルを抱いた香澄もついてくる。 この家の絢と光くんがいいって言ってるんなら僕も上がっていいのかな…
雪村さんの座ってたソファに全員座って、絢と光くんがみんなのぶんのコーヒーを運んできてくれた。 コーヒーの入ったマグカップを見る。質素でシンプルなものが多いけど雪村さんのだけシャチのマグカップだ。絢のプレゼントかな? 今日はクッキーだけど今度はマグカップを作ろうかな。既製品の中から自分のイメージにぴったりのものを探すよりずっと早いし。 片手に下げてきた袋からクッキーの包みを取りだしてテーブルの絢の前に置く。 「おみやげ。昨日焼いたんだけど一個ずつが大きいぶん数が少なくなっちゃったから、譲りあって食べてね」 ちょうどコーヒーに合いそうなものでよかった、って笑ったら、絢がさっそく開けて秒速で持ち去ってレンジであっためてまた持ってきた。ひとつずつを改めて見てる。 「モチーフ俺らじゃん、直にぃこういうの凝るよね〜食べたらなんも残んないのに」 ひとつずつ絢が取りだして香澄が受けとってテーブルのお皿の上にクッキーを並べていく。 どれが誰かはだいたいみんな一発でわかったみたいだった。 香澄のぴょこっと跳ねた髪の毛と光くんの三つ編み、細いこの二つを割れないように焼きたくてぜんぶ揃えてたら厚くて大きめのクッキーになった。一種類につき一個。 かすみのクッキーに絢が「これが通話で言ってた金魚?」って香澄に訊いたりしてる。 サイズ感からか香澄が僕の横で「おせんべい?」って言う。光くんが「クッキーだよ~」って笑ってる。 「直人のはないの…」 香澄にちょっとしょんぼりした顔で言われてようやく気づく。そういえば自分のは作らなかったな…。 「俺香澄のやつ欲しい」 真っ先に絢が手を伸ばして香澄クッキーをとっていった。…僕も香澄のがほしかったな。 「俺は絢のにしよー」ってご機嫌で絢クッキーに手を伸ばした香澄がなぜか雪村さんからテーブルの下で足を蹴られた。 蹴…? と思ってたら香澄が負けじと蹴り返した。…僕が香澄を庇わなくていいようなこと…か…な? これは香澄が攻撃されてるというよりは… 「…香澄、喧嘩しないの。帰ったら香澄用に絢クッキー作ってあげるから」 横から香澄の頭を撫でながら言ったら、香澄はテーブルの下の攻防をやめてちょっとむすっと唇引きむすんで、絢クッキーを雪村さんにゆずった。撫でるごとに逆立ってる毛がおさまっていく猫みたい。かわいい。不服そうにして膝の上に抱いてるノエルの頭の上に顎を乗っけてる。 「いいこ」コーヒーをいただきながら香澄の頭を撫でてたら正面から乾いた派手な破砕音が響いた。 コーヒーから視線を上げたら光くんが絢クッキーを真っ二つにした音だった。 「絢クッキーかくほ!真澄はんぶんこね」 「うん」 真っ二つになった絢クッキーと僕を交互に見ながら香澄がまんまるにした目で僕に何か訴えてる…  困惑…?悲しい…?わからなかったけど深刻じゃなさそうだったし、かわいいからよしよししておいた。 「豪快だね光くん」 初対面のときから小さな体のわりにやることが思い切ってたね。小さいから動きのほうが大きく派手になるってことかな。 「まあ食えばカタチはなくなるからね」 他のノエルやかすみのクッキーも絢が次々平らげていく。絢のほっぺたがリスの頬袋みたいに膨らんでる。 「かたちには模した原型のたましいがやどったりするね」 光くんがしれっと言った。…。絢クッキー真っ二つになったけど大丈夫? 「そらやるよ」 雪村さんから香澄に真澄クッキーが皿ごとぞんざいに渡される。香澄がクッキーを遠慮なく両手で掴んで、なんなら膝も使いそうな勢いで真っ二つに折った。 …何かその香澄の行動の潔さと躊躇いのなさに私怨みたいなものすら感じる気がするんだけど…雪村さんと香澄はお互いに大事な存在なんじゃ…? 喧嘩するほど仲がいいとか…? 「絢あーん」香澄が絢の口に向ける。「あー」絢もくるみ割り人形みたいにぱかーって口開けてる。 「絢これも〜」香澄が光クッキーも続けて絢の口に入れてる。 どんどん食べ物がもらえる絢は機嫌よさそうにしてた。 クッキーがきれいに食べ尽くされて、作った僕はなんとなく満足。絢が��るから何持ってってもこうなる気もしてたけど。 のんびりコーヒーの残りを飲みながら雑談する。 絢はもう通話で香澄と話したかもしれないけど、絢がいない間に僕らは夏祭りに行ったり、香澄はイキヤと仲良くなったりしたこと。 「空港でまことくんと二人になったから一緒にご飯を食べて帰ったよ」 そう言ったら絢は目を丸くしてた。 「…直にぃとまこ… 磁場が狂いそうな組み合わせ」 あはは、実際そうだったのかもしれないなぁ。 それと気になってたことをとなりの香澄に、少し声色を変えてしっかりした声で訊いてみる。 「香澄。目がちょっと充血してるね。薄いけど少し隈もできてる。うまく寝付けなかったか、なにかあったかな?」 場が深刻な雰囲気にならないように穏やかに笑って訊く。 肌も少し荒れてるし髪の艶も少し落ちた。髪はここのシャンプーが合わなかったのかもしれないけど、目の充血は、泣いたんじゃないかな。目にゴミが入ったとか、嬉し泣き…とかだといいんだけど。 訊いたら香澄はノエルから顔を上げてぱっと笑った。 「なにもないよ、大丈夫、目は今朝こすってて赤くなったのかも」 この場では正直に話すってわけにもいかなかったかな…と思って少し反省する。 自分の中に溜めていっていずれ非常事態を招くようなストレスは、香澄はもう放置しないでくれると思うし、話し相手もたくさんいる。今ここで追及することじゃないか。 香澄の顔にかかった前髪を輪郭に沿ってきれいに避けながら優しく微笑みかける。 「そう? なら良かった」 そう言っても香澄が少しだけしゅんとしたから、紙袋に潜ませてた鍋つかみかいじゅうくんを手にはめて香澄の鼻をはむはむさせる。香澄がくすぐったそうにして笑顔が戻った。 いつのまに香澄から取り上げてたのか、絢が唐突にノエルを僕の顔面にボスッと投げつけてきた。
「それじゃあ今日はこのあたりで失礼します。これから香澄と約束がありますので」 お互いにひとしきり話し終えたあたりで、長居せずに席を立つ。 僕のとなりでノエルの頭に口元埋めてきょとんとした目をしてる香澄に、玄関先にあった荷物を指さして「荷物はこれで全部?」って確認する。香澄はこくこく頷いた。 僕が持ってきたノエルは香澄が抱いて、香澄の荷物は僕が持って、雪村さんの部屋を後にする。 外の道まで送ってくれた絢に「いつでも遊びにおいで」って言ったら、「直にぃの留守中とかね」って返された。 パーキングエリアに停めた車の後部座席に荷物を乗せて、ノエルも帰りは後部座席。香澄と二人で車に乗り込む。 助手席に座った香澄が僕のほうを見て無邪気ににこにこしながら訊いてくる。 「今日これからどっかいくの?」 なんにも答えずに運転席から体を伸ばして香澄の顔の横に腕をついて唇を奪った。顔を傾けて舌で歯を舐めて、その隙に薄く開いた唇の隙間から舌を入れて貪る。 まだ外は暗くもないし人が通れば見られておかしくないからか香澄の反応は控えめで、何度か息継ぎしてもお互いに息が上がりだした頃に僕から唇を離した。 繋がって垂れ落ちそうな唾液を舐めとって、至近距離で眉を下げてちょっとだけ笑って訊く。 「…約束、思い出した?」 香澄はぐ、と堪えるみたいに口元に力を入れて、膝にきちんと両手をまっすぐに乗せて、真剣な顔で何度もかくかく頷きながら「うん」て小さな声で返事した。ちょっと照れてる?かわいい。
帰り着いてから荷物は香澄の部屋に置いて、リビングのソファに座った香澄の体を押し倒すようにして覆いかぶさる。 香澄の頭の横に両手をついて顔や髪に雨みたいにたくさんキスしてたら香澄に頭を撫でられた。 「犬みたいでかわいい」 キスにちょっとくすぐったそうに照れながら僕の頭をよしよし撫でてくれる。 犬みたい…か 舌で香澄の頬を顎から目元まで舐め上げてみる。こめかみあたりの髪の毛を鼻先でかき分けていくみたいにして香澄の頭に顔を突っ込んで額を擦り付ける。 香澄が僕の髪の毛をほどいてわしわし乱すみたいに撫でてくる。僕の髪はもうすぐ腰に届きそうなくらいの長さだから上に乗ってると背中から溢れて香澄の体にもかかる。 犬の真似してじゃれてたら体が熱くなってきた。 唇を合わせて何度も繰り返しキスしてるうちに表情が蕩けて目が潤んでくる。 股がられた香澄が片脚を曲げて刺激してきた。思わず声が漏れてまっすぐついてた腕ががくっと崩れる。 倒れかけた姿勢を香澄が抱きとめてソファから二人で起き上がった。 「ソファ汚すからここはだめ」って言われて、お風呂に行く香澄の背中から両腕をまわして僕もひっついて一緒に歩く。 肩に額を擦りつけて甘える。童話のお姫様みたいにかわいく結われた髪の毛にはむはむ噛みついて飾りつけられた生花を一本ずつ口にくわえて髪からはずしてお風呂場までの床に口から落としていく。 「散らかさないの」って言ってくる香澄の口調はなんとなくちょっと楽しそう。本気で怒ってるというより犬に叱ってるみたいな。 僕の頬を撫でてくる白い手にパクッと食いついて甘噛みする。 脱衣所で服を脱ぎながらも香澄の服の裾を口でくわえてひっぱったりして「服が伸びる」って香澄に怒られながら二人でじゃれる。 この家のお風呂も前のマンションと同じで全体的に広め。旅館に行ったときの檜風呂みたいにしたいって希望を出したんだけど、素人には木造のお風呂は維持管理が難しいからって建築士に却下された。それで仕方なく普通のバスルームになった。 簡単に体にお湯をかけてから香澄と小さな椅子に向かいあって座ってお互いの体を洗う。 僕はもこもこたくさん泡を作って香澄の体に乗せていく。香澄はボディソープをそのまま僕の体にかけて体を摩って泡立たせる。 香澄の洗い方が僕は好き。全身くまなく触ってくれるし気持ちいいから。 香澄の手のひらが僕の体をこすってお湯で泡を洗い落としながら撫でていく。このタイミングじゃどうしても触られたら体が反応する。 隠しようもなくて、横のバスタブの縁を掴んで支えにして体を伸ばして香澄の口に食いついた。 深くしないでわざと唇の上から戯れに軽く食むみたいなことしてたら香澄にシャワーで体を流されながら「もうちょっとで泡落ちるから」って言われて「待て。」って鼻先を指でおさえられた。 やだ。って言葉では口に出さないで香澄の腕を引き寄せる、椅子から下の柔らかいマットの上に座って香澄の体を抱き寄せてちょうど口元にきた首筋に吸いつく。 「…っ」香澄が小さな声をあげた。僕の体にはまだ痕があるけど、香澄の体にはつけてなくて寂しかったから、見えやすい位置につける。 お互いの体が近くて固くなった僕のが香澄のお腹のあたりに触れる。 首筋に痕がしっかり残ってもまだ食いついたまま、赤くなった痕を労るみたいにペロペロ舌で舐めながら口を離さないでいたら香澄に少し体をおされて、後ろの壁に背中がついた。 僕の口が離れた隙に香澄が壁に両腕をついて、僕の頭を壁で挟んで囲いこむようにしてキスしてきた。両脚の膝裏に香澄の膝があたって 脚の間から体が割り込んでくる 「……、壁痛くない?」 唇が触れてる距離でキスだけやめて香澄が訊いてきた。大丈夫。っていう代わりに香澄の唇を追って啄む。 頭を傾けて舌を絡ませてキスを深くして 香澄の体の表面にあたってるだけで体勢を少し変えるたびに擦れて出そう 僕のが香澄の体に触れてる… 手を伸ばして香澄のを軽く扱いたらしっかり固くなった 数え切れないくらい何度も見てるのにもろに目に映るといつも顔が熱くなる はやく挿れてほしくて泣きそうになる 腕を香澄の背中に回したら香澄が僕の片脚を持ちあげてそっと後ろに触れてきた 指先で入口をくすぐられて、��んだそこにすぐ指が増やされる 浅く指が入って 僕の好きなところを弄られる …あ  「ーーあ、ぁ…っ」 これだけの刺激で思わずイって出した体液が香澄の下腹と膝の上あたりにかかって流れ落ちる いつもよりあまりに早かったからか香澄が指を抜いて少しびっくりしたような目をした 「直人…「やめないで」 僕がイったからここでやめようって言われそうで先に言う 離れていかないように両脚を香澄の背中で絡める 「…香澄に、僕の中でイってほしい ちゃんと繋がりたい …して」 香澄がいなくて寂しかった って、いっぱい涙が溜まった目で香澄に言ったらキスと一緒にぎゅって抱きしめられた。僕も抱きしめ返す。 入口にそっとあてられた感触がして、抱きついたまま香澄の肩口に顔をすり寄せてねだる。少しずつ挿れられて埋め込まれていくのが僕の心も体も溢れるくらい満たしてくれる ほとんど絶え間なく喘ぎながら反った体を後ろの壁につけて身悶える 体が痺れて くらくらする…目の焦点が合わなくてぼんやりしてたら、ふいに少し遠い場所で焦点があった バスルームの僕の向かいの壁に、鏡 が ちょうど香澄の背と 香澄にされてる僕が正面から映り込んで 合っちゃった焦点が角度によって僕らの接合部まで詳細に見せる 同時に香澄がゆっくり体を揺さぶり始めて どうしようもなく口から嬌声が漏れる、香澄の体に縋りついてなんとか正気を保ちながらこれ以上ないほど情けない顔した自分と目が合う 香澄に言ったら場所変えてくれるかも でも知られたくない 恥ずかしい … どうにもならない状況になぜか僕の体は反応して、香澄に揺さぶられながら前からもう一度だらだら吐き出す 僕は 香澄と お互いに同時に繋がりたい 背中に縋ってた手を片方ずらして動いてる香澄の後ろを探った なかを弄って香澄の好きなところをくすぐったら香澄がビクッと体を痙攣させて少し顔を顰めた 気持ちいいと香澄は体が強張ったり眉根を寄せたりするよね 鏡に僕が香澄の後ろを弄ってるところもしっかり映って 恥ずかしさでどうかなりそうだけど、香澄の体は見てたい気もして でもこんなのは盗み見してるような気もする 香澄は写ってるのをきっと知らない 背反する気持ちに鏡から視線をそらして香澄の瞳を見つめた 鏡に写ったのは香澄の後ろ姿で そこには大きな刺青がある …僕の知らない誰かの痕跡
お風呂から上がる前に二人とももう一度体を流して綺麗にした。 香澄の体をバスタオルで包んで拭きながら細い鼻筋にパクッと噛みつく。 「直人 犬になっちゃったの?」 僕が拭いてるバスタオルで顔まわりもこもこさせた香澄が言う。 「香澄はいつからお姫さまになったの」 香澄の濡れた髪を丁寧にバスタオルで握って水気を落としていきながら言ったら、香澄が「おひめさま。」て何のことか分からないみたいに目を丸くして復唱した。 「髪の毛。もう解いちゃったけど、光くんが編んでくれてたのかわいか��たね。よく似合ってた」 髪型いじらなくても香澄はお姫さまみたいに綺麗だけどね。って言って柔らかく微笑んで額にキスしたら香澄が照れたみたいにちょっと頬を染めて俯いた。 その拍子に二人同時に床に落ちた花を見つけた。僕がくわえて落としていったやつ。 廊下に点々と続く小さな花を二人で拾い集めていって、最後の一本をリビングで拾った。 まだどれも綺麗だったから、花たちは小さなグラスに水を注いで生けておいた。
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nh1026 · 2 years ago
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6.3~6.4
突然会いに行った日!前日の18時くらいに決めたことです!22時までにはるちゃんが帰ってきたら会いに行く!って。もうそんなのほぼ100なのに一向に帰ってくる気配なくて焦ってたら22時ぴったりに帰って��た!行く前までは行ってびっくりさせよーって思ってたんだけど考えれば考えるほどいきなり行くほど迷惑なことないよねって。迷惑だよねー、でも会いたい!会いたいのははるちゃんも一緒だろうからいきなり行ってもいいよね?あーーでも迷惑だよね…って無限ループなの(笑)もういいやー!って。来週は会えないし、17日ははるちゃんが予定あるし!月末ははるちゃんが三連休だから長く一緒にいれるかなっても思ったけど突然行っといて長く居座るのも申し訳ないし。あれ、明日しかなくない?ってそんな感じで決めた。バレてたらしいけど!でも会えたからいいの。むしろ途中途中でバラしてたけど。引き返すなら博多だよね。あー新幹線乗っちゃった!じゃあ次は岡山駅だなーって考えてた(笑)博多から岡山行く時に倉吉駅に行くバスの切符は買っちゃったから!もうどうしても迷惑かなって気持ちが勝ったら倉吉着いてそのへんぶらぶらして実は来てたよーって言おうとも思ってたんだけど想像以上に移動が長くて疲れて改めて距離の長さを感じてた。せめて、せめて岡山だったらなーって!せめてせめてせめてせめてせめて!!!!!くらいの岡山(笑)倉吉駅着いてぼーーって外のベンチに座ってたらすごい鳩寄ってきたしバス調べたら10分後くらいだったからもう行くしかなーい!って行った。
ドキドキワクワク。なんかいかにも泊まります!って感じの荷物だし嫌われないかなーって。はるちゃんのアパートが見えて、あーここだ!って。緑の自転車もある!って嬉しくなった!でもなかなか行けなくて!ピンポン押して違う人出てきたらどうしよーとか、あーなんか面と向かって話せないよーってなってた。家におじゃましてからもなんかずっと恥ずかしくて。恥ずかしいっていうか引っ付けない、顔みれないってなってた。初めましてで腕組んで歩いたくせに!(笑)あーはるちゃんがいるってずっとなってた。はるちゃんの家だから当たり前だよーって言ってたけど!そうじゃないじゃん!はるちゃんの家にいるんだなぁって。ずっとなってた。はるちゃんは倍速でテレビ見てた。ちょっとずつ慣れてきてちゅーもした。なんかの話の時に1週間ぶりってはるちゃんが言ってて。なんか、まだ1週間しか経ってなかったんだってびっくりしたの。暫く会ってなかった気分。それからなんかお箸とお茶碗買いに行った!あのお箸どこに置かれるのかな、2本立ててる?それとも棚にしまう?(笑)外2人で歩いてる時手繋ぎたいなってずっと思ってたんだけどはるちゃんは地元中の地元だから知ってる人に見られたら嫌だよねって我慢してた。偉い?ご飯買っておうち帰ってきて。はるちゃんがご飯の用意してくれた!いっぱい動画撮ったよ。準備係と撮影係。あーなんかいいなって思いながら見てた。はるちゃんと一緒に夜ご飯食べて、食べたら眠くなってきて。その後ははるちゃんと一緒にシュークリーム食べて。美味しかった!はるちゃんが買ってくれたご飯とはるちゃんが買ってくれたシュークリーム。ありがとう。ついてるよーって。なんかはるちゃんの口の端にクリームじゃなくてシュークリームの皮がついてた(笑)かわいい!
それからお風呂先に入らせてもらって!なんかなんか変なこと考えてたの!あーはるちゃんがいつも入ってるお風呂なんだって(笑)わぁ。わぁ。えーこういうとこが変態なの?一緒のシャンプーとかで洗ったら同じ匂いになるのかなって考えながら自分の持ってきたので洗ってた。お風呂上がって、はるちゃんもお風呂入って。ここでも変なこと!あー水の音がしてるーって(笑)あ、しなくなったから湯船浸かってるのかなって。スマホ弄ることなくぼーっとしながらはるちゃんの音聞いてた。ガチャって聞こえたからやばい!ってスマホ見始めたけど(笑)それからはるちゃんは牛乳飲んでた。それでそれで!!!もう寝る時間。ほんとに同じベッドで寝ていいのかなって。なっちゃんは見えないからって先に寝室の電気つけてくれてたの。知ってるよ。やさしいね。すき。ベッド連れてってもらって!シングルベッドってこんな小さかった?って。
色んなことした。はるちゃんは割愛してた!(笑)なんだろ、なんだろう。なんか前から思ってたことがあるんだけど。わたし別に潔癖症って訳じゃないんだけどはるちゃんのほっぺ触ったり唇とか触ったりする時にあーこれなんかすごいなって(笑)人のやつとか触りたくないじゃん!普通!でも触りたくないとか思ったことないむしろ触らせてって感じ。あーはるちゃんは割愛してたけど書いていいのかなあ。なんかもうとにかく可愛くて、全部。もうなんか。なんか!声とか息とか全部かわいい。もっと聞きたいって思ってた。ちゅーしながら触ってたらはるちゃんの意識がそっちにいってるっていうのがちゅーに応えてくれなくなるからすぐ分かった。かわいい。ちゅーするときに我慢できてない声も可愛い。漏れる声?息?(笑)息が切れてるのもかわいい。我慢してるはるちゃんもかわいい。はるちゃんが上に乗ってる時に足で押したらすごい動いてるの。かわいい。あーなんなんだろ。触るのも触られるのも全然嫌じゃ無かった。もっとってはるちゃん言ってたけど私も思ってたよ。もっとって。はるちゃんと初めてちゅーしたときも思ったんだけどあー全然怖くないなって。好きな人とこういうことするのはこんなに幸せなんだぁって。ずっと思ってた。はるちゃんがずっとなんか、なんかって言ってたから同じなのかなぁって思いながら変な気分?って聞いたらなんで言うのーって言ってたけどそれも可愛かった。あーどうしよう、ますます年上に見えない。かわいい。なんかもうとにかくかわいかった。暗くて顔見えないけど絶対今すごい可愛い顔してるんだろうなって。私の手首とか服とかぎゅって掴んでくるのも堪らなく可愛かったし愛おしかった。あー変態?やばい?恥ずかしい?(笑)恥ずかしいなら消すから言って。夜と朝のやつごちゃごちゃになってるかも。夜はいつ寝たのかなぁ。分かんない。なんか1回ほっぺ手で包まれてる感覚で起きたんだけどそれ言ったら夢って言われて。あーすごい鮮明な夢!こんないい夢見るなら家で見たいって思ってた!そしたらはるちゃんはなっちゃんが出てきたって。どんな夢か聞かなくても分かったけど聞いちゃった。夢の中のなっちゃんに勝ちたかったからどんなことしたのって聞いてもこれは教えてくれなかった!はるちゃんは今日もえっちな夢見るね。だってなっちゃんとあんなことしたベッドだもん。変な気分で寝る?(笑)あー昨日なっちゃんとえっちなことしたベッドだぁって。きゃーーー。1人でしちゃうのかなー、かわいい。しちゃったら報告待ってるね!!なんか人の触ったことない…っていうか当たり前なんだけど!触ったことないし自分のも触ったことないから気持ちいいのかも分からなくて探り探りだった。あーかわいい。はるちゃんがこうなってるの全部私のせいって考えたらかわいい!!音がーってはるちゃんは恥ずかしがってた。分からないって言ってたけど直接触る前から分かってたよ。あー濡れてるかわいいって(笑)そんなはるちゃん見てわたしもたいへーんってなってた。知ってたー?(笑)あの時のはるちゃん思い出すだけですごいかわいい。声と顔と息と私の手とか腕とか服ぎゅってくるの。あと毛布もぎゅって握ってたね。うわー、なんでぎゅってしてくるの?ここ気持ちいいのかなって。はるちゃんのあんな声聞いたのも初めて!かわいい!声、我慢してるのかなー、しなくていいのにーって思ってた。あーすき。あーそろそろ怒られちゃう!(笑)でもほんとのほんとにかわいかったのは伝わって欲しいし、ますます独占欲が強くなりそう。あんな顔これから先誰にも見せたくないし声も聞かせたくない。私だけがいい。私だけに見せて。はるちゃんが変なこと覚えたから男の人がいいってならない事を祈ってるよ!!(笑)あーかわいかったなぁ。すき。だいすき。
朝も夜も時間が秒だった。あっという間に帰る時間。メイクしてる時も髪の毛してる時もはるちゃんのこと考えてた。はるちゃんのためにメイクも髪の毛もした。あ、行ってきますっておうち出たよ。これはLINEでも言った!いつかただいまって帰ってくる日はくるかなぁって。ちょっと泣きそうにもなったけど。弾丸で会いに行って不安の方が多かったけど会いに行ってよかった。もっと好きになった。もっともっと好きになった。あともっともっと私のこと好きになってって思ってた。次はいつ会えるのかなあ。あ、この前ホテルで寝た時より全然寂しくならなかった。シングルベッドで距離が近いからなのかな。ずっとはるちゃんがそばにいてすごい安心した。はるちゃんのぐーぐーもしっかり聞いた。寝顔は見れなかった!あーかわいい。かわいいね。毎日一緒に寝れたら幸せなんだろうなぁ。あ、話が終わらなくなっちゃう!(笑)なんかもう今日はありがとうって言い始めたら出会ってくれてーから始まっちゃいそう。はるちゃんと出会えてよかった。会いに行ってよかった!いきなり行ったのににこにこで迎えてくれて嬉しかった。ご飯もシュークリームもバスタオルも!(笑)駅まで送ってくれたのもありがとう!似合わないって言ってたけど運転してるのちょっとかっこよかった。初めて言われた?あ、靴履いて運転するんだって思って。あー発券機とれるのも駐車もかっこいい!って(笑)なんかすごくいい意味で?かっこいい車似合いそうーって思ってた。じゃあ最後!かっこいい話をしたけどやっぱりはるちゃんはすごいかわいかったよ。あーー!かわいかったよ!!こんなに全身で愛おしいって思える人に出会えてほんとにほんとに幸せ。あ、泣きそう。だいすきはるちゃん。あいしてる。ずっとそばにいたいな。ずっとそばにいてね。(これ読んでまた変な気分になっちゃうはるちゃんえっちだね!)(これ書いててまた変な気分になりそうななっちゃんもえっちだよ!)
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qsfrombooks · 5 years ago
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好きな人に、好きって言ってもらえたら、みんな幸せになれるんですけどね。
好きと嫌いのあいだにシャンプーを置く / 瀬那 和章
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aoi1217 · 3 years ago
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なんでもルーティーン化しようとしてしまうことについて
(無駄に)迷うことが嫌いだ。
特に、日常生活においての迷う、が嫌いだ。
まず、服はシーズン毎に5パターンあればいい。
(無駄に増えるのも嫌い。もはや、5パターンもない時もある。そのパターンには、それなりのこだわりがある。基本は、黒白。大切な仕事の日は、ジャケット。白シャツが好き。洗濯した順に着る。)
家で食べる食事は、決まっている。
朝は、コーヒーに季節のフルーツとヨーグルトにシリアル
(いずれも決まった銘柄じゃないと嫌だ。コーヒーに関しては話は別で、津々浦々のコーヒースタンドによるコーヒー豆をバラエティ豊かに数種常にストックしておきたい。コーヒーは、ブラック。)、
もしくはコーヒーにチョコレート。
(これも気に入っているチョコレートがあり、見つけたらまとめ買い。箱にきっちりと納められた御育ちの良いチョコレートも、家に1箱は置いておきたい。基本間食はしないけれど、心の平安の為、チョコレートとパルムは常備。)
夜は、一汁一菜。ご飯と味噌汁、漬物 or 魚。
(献立や���材の買い物に、迷う時間も嫌い。日常必須の日用品や水はAmazonの定期便で届くように設定し、基本的な食材の買い物もAmazonのネットスーパーで済ませる。無駄な買い物をせず、毎度決まった物を決まっただけ買い物カゴに追加し注文すると、早くて2時間後には玄関に到着する。物流に感謝。
このことは前に、GREEN SPOON MAGAZINEのインタビューにも纏めて頂いた。インタビューを受ける機会を頂く度、改めて自分とは。となり、考え直すいい機会になる、こちらにも感謝。)
起きてからのルーティーンも、通常版と時短版、この決まった2パターンのうちいずれかで動きたいし、(朝も必ずお風呂に行きたい、夜も朝もシャンプーをしないと気が済まない。)
眉毛とまつげ、そして肌は、時短とこちらも心の平安の為、プロの元で定期的にメンテナンス。
ここに、昨年の後半から新たに加わったのが、月2度のネイルサロン。という新しいルーティーン。
一度ジェルネイルをやめてしまってから、手の爪にジェルが付いていることに我慢ならず、長年ポリッシュ派だったのですが、
(何が嫌って、ジェルによる厚みや一定以上の長さに伸びることがストレスMAX。キーボード、かちかちいうし。でも、おんなじくらい、毎度まあまあな時間を割いて塗った割に2・3日で剥がれ、(しかも大切な日に限って、突然欠けたり剥がれたりするの、なんでなの)やっと乾いた!と思ったらヨレ、利き手じゃない方のガタガタになる、ポリッシュも相当なストレスであった。)
それが!manucurist(マニキュリスト)のグリーンフラッシュ(半分ジェルで半分ポリッシュ?ちょっと詳しい説明は公式サイトをご覧ください。笑)と出会い、
私の迷いとストレスが取り払われ、月に2度のルーティーンが日常生活に組み込まれたのです。
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10〜14日間程、ちゅるんと綺麗に保つ。
(やはり、途中で一部欠けちゃったりすることもある。逆に言えば、これ以上伸びると耐えられなくなる!という一歩手前でメンテナンスが必要になる。)
ポリッシュを毎度塗り直し、乾かす時間のロスを考えると、月に2度1.5時間ネイルサロンに時間を割く方が、効率が良い。
プロの仕上がり感動だし。甘皮処理やケアもしてもらえるし。やっぱりなんでもプロに任せる方が良い。餅は餅屋。
多少潔癖なところがあり、
(とか書いてたら、きっとほんとどんだけ生きにくそうなんだよって感じなのですが。毎度ながら話は逸れるけど、MBTI診断って知ってますか?
K-POPアイドルたちのプロフィールでも公開されている、16パターンに分けられる性格診断テストなのだけど、私は、何度やってもINTJ(建築家型)という全人口の3%、女性にすると0.8%しかいない、謎の生きにくさNo.1の性格らしい。
妹曰く非常に当たっていて(自分でも当たっていると思う)私のINTJタイプにとって1番相性が良いのが妹のタイプらしく、仲の良い友人たちにもこのタイプが多く、補って生きていけているよう。神様に感謝。)
で、マニキュリストのサロンは、BALの中にあるので(TODAY'S SPECIALや無印カフェがある4階)、綺麗衛生的お洒落で安心。
1.5時間必然的に拘束される空間が不衛生だと我慢ならない。価格重視でネットで探して初見で行くと、我慢ならない時がある。(粉舞ってたりさ、謎の有線かかってたりさ。)
カラーも基本迷いたくないので、毎度決まったカラーをオーダー。
カラーは、昔からダークチェリーのような赤がMy 定番カラーなので、マニキュリストの“Hollyhock”。
(ホリーホックって、アオイ科の花の名前。だから、余計に勝手にMy カラー。笑)
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(こんな感じで数日すると中指欠けちゃったのだけど、そこが普通のジェルとはちょっと違うところかも。でもそのデメリットも踏まえても、私は絶賛グリーンフラッシュ推奨派。個人的にあんまり熱心に通っていたら、今回の施術をプレゼントしてくれたmanucuristさん。嬉しい。笑 そして、この写真のジュエリーはずっと悩んでいたのだけれど、なんだか試着してみたら自分にしっくり来ずだった。)
ヘアカラーも金髪から黒髪に戻したことで、伸びてくるプリンヘアーに苛立つ必要もない。
(長年黒髪だった最大の理由は、プリンヘアーにならずに済むことと、毎度美容院でどんなカラーにするか迷う必要が無いから。)
そんなこんなで、まあ、迷うのが嫌いと言いながら、日々いろんなことに悩んでいるのだけど。
そ��もまた人生。
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(最近、カメラを買い(RICOHのGR IIIx)、iPhoneでも十分綺麗と思ってたけど、格段に良い写真が撮れる〜。嬉 暗いところで見たら、ネイルのカラー黒にも見えて、それもまたお気に入り。)
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tausendglueck · 4 years ago
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一匹の魚 / 20201229
12/25が仕事納めだった。本当は昨日までが勤務日だけど、誰も出勤しようなんて思わない。
12/24の夜からちょっと笑って済ませられるレベルではない頭痛に苛まれて、結局頭痛が引いて寝入ったのが3時頃で、仕事納めの日は完全に寝不足でぼんやりしていて、大した仕事をしたわけでもなく、頭痛は相変わらず続いていて、外が暗くなる頃には悲しくて仕方がなくなって、終業の音楽が鳴って1時間後くらいに、机の整理もろくにしないまま同僚の人たちに年末の挨拶をして退社した。そうだったクリスマスなんだったな、と思い、コンビニに寄ると一人分のショートケーキとチョコレートケーキが並んでいて、チョコレートケーキの方を選び、アイスクリームを2個買って帰った。コンビニの入り口ではわざわざフライドチキン売り場ができていて、だけどコンビニにチキンを買いに来るような人なんて、それこそ私のような孤独な人ばかりなんじゃないのかなと思うとますます悲しくなった。頭が痛かった。部屋に帰ってケーキをひとりで食べて、頭痛薬を飲み下して、やっぱり、悲しくて寂しいままだった。
それから土日を映画と読書と買い出しのために使って、なんだかんだと一日中外出していて、街や駅前を歩く人の多さにぞっとする。それでも外に出ているのは、ここに来ているのは自分も同じであって、皆して同じ罪に加担しているのだった。ただ何も考えないようにしてユニクロで下着まわりを買い込み、Tabioでタイツとレッグウォーマーを買い込み、CA4LAでニット帽を一つ買った。やっぱり体が痛かったのでオイルマッサージを受けた。帰省しているであろう従妹ふたりへレターパックで古着を送り、私はそれから自分の服をゴミ袋二つ分ほど捨てた。
帰省しなくても良いとなれば、ばたばたと急いで掃除を済ませる必要がなくて、そのゆっくり流れる時間の中で、ひたすら私は服を捨てた。新入社員の頃に買った仕事用のワンピース、もう随分着込んでしまって、度重なる洗濯で生地が薄くなってしまったワンピース。同じく仕事用の七部丈パンツ、気に入っていてよく履いていた、けれど染みを作ってしまってそれ以来着なくなってしまった七部丈パンツ。同じく仕事用のワイドパンツ、適度に薄くて、夏には重宝した、これも目立つ場所に染みを作ってしまって着なくなってしまった。パンツを仕舞っている衣装ケースをひっくり返してみれば、奥から出てくる数々のジーンズ。生地が固いままであまり着なかったもの、もともとダメージジーンズだったけれど自分でさらに破いてしまってみっともなくて着なくなったもの、大学生の時に気に入ってずっと履いていたホットパンツ。切り返しの水玉模様に胸が締め付けられる。きみにニーソックスを合わせて、セクシーダイナマイトロンドンのTシャツを着て、学校に行っていたものだよね。あの時の私も、今と同じくらい、とても細かったね。別の衣装ケースの奥の奥から出てきたエスニック柄のロング丈のトップス、中学生の時に着ていたものだ。あの時はこの柄にもこの色味にも何も思えなかったけれど、いつだったか矯正歯科の定期検診に着て行ったとき、看護師さんにおしゃれな服だねと褒めてもらえたんだったよね。クローゼットの隅に並んで掛けられていたカッターシャツ、どれも黄ばんでしまってもうどうしようもない。けれど私はきみを着て、この大阪の街に就職活動をしに行っていたんだよね。きみの下にヒートテック、きみの上にスーツを着て、私は、就職活動をしていたんだったね。
どれもに、私の人生がある。あった。私は次々に服たちをゴミ袋に入れていく。ありがとうねと声をかける。涙が滲む。ありがとうね、私を助けてくれて、ありがとうね。さようなら、それぞれに、愛していたんだよ。
月曜日は郵便局に出かけてつみたてNISAの開設手続きをした。私が女だったからか、年齢のわりにいつも若く見られてしまうからなのか、ひとりで来たからか、応対した窓口の人は一通りつみたてNISAの概要を説明して、まだお若いですし、一度ご家族と相談されてから決められてもいいと思いますよと、どのみちマイナンバー入りの住民票がなくては開設できませんからと、やんわりと私を追い返した。けれど私は郵便局を出たその足で区役所へ向かい、言われた通りにマイナンバー入りの住民票をもらい、30分後には郵便局に引き返していた。手続きには結局1時間ほどは優にかかった。その間にも郵便局には絶え間なく人が訪れて、古びた自動ドアががこんがこんと大袈裟な音を立て続けていた。
お金を運用して少しでも資産を増やして、40歳くらいで家を買う、という人生設計で生きていこうかな、と思う頭で、だけど私は40歳くらいで死ぬだろうなと漠然と思っている。何も食べたくない、食べられない、体重を増やしたくない、食べ物なんて要らないと思っているのに、鉄不足で頭痛がひどいと日々に差し障るからサプリでも買おうかなと、同じ頭で思っている。体なんてどうだっていいと思っているのに、同じ頭でオイルマッサージの予約を入れてしまう。
全部が矛盾している。私は私の体を、人生を、どうやって扱うべきなのか、未だわからずに生きている。だから先のことが何も考えられない。家もサプリもオイルマッサージも、何にも、辻褄が合わなくて、静かに混乱が深まるばかり。年の瀬に、静かに、混乱を深めて部屋にひとり。
今日はようやく外出の予定が終わったので朝から部屋の掃除をしていた。洗濯槽にお湯を溜めて過酸化ナトリウムをぶち込んでひたすらぐるぐる回して放置して、水浸しになりながら台所を掃除して、スピーカーを持ち込んででかい声で歌いながらお風呂の排水溝の掃除をして、重曹とクエン酸が混じってしゅわしゅわと泡が立っていくのをぼんやりと眺めて、パイプユニッシュをぶち込んでまた放置して、でかい声で歌いながら細い腕を千切る勢いで床を拭いて、放置していた排水溝に水を流して、ゴミ袋を4つ持って部屋を出て、近所のお菓子屋さんに行ってマフィンとクッキーを買って、良いお年をとご挨拶をして帰ってきて、ほうじ茶ラテを入れて一緒に食べた。それからGガンダムのDVDラスト3巻を見た。途中でペペロンチーノを作って食べた。インスタントソース系を入れている箱を探ってみると賞味期限が2019年で止まっているものがごろごろ出てきて全部捨てた。箱はずいぶんすっきりした。
お風呂に熱いお湯を溜めて、バスソルトを使い切った。これは今年の4月、外出自粛要請が出てテレワークが導入された時期に、時間ができてお風呂を入れるようになって、それから使い始めたものだった。もらいものの大袋で、ひとりで使い切れる量じゃないとずっと思っていたけれど、案外、なくなってしまった。今年のうちに、消えていくものたちは思ったよりも多かった。
洗剤やシャンプーの詰め替え用を入れた引き出しの中を整理していたらいつかの出張で青森に行ったときにもらった入浴剤が一袋出てきた。これは大晦日の夜に使おうかと思う。仕舞っておくと忘れるので、洗面台の鏡の下の、化粧水なんかを置いている収納スペースに見えるように置いておいた。
そうやって生きている。家族もいない部屋にひとり、静かに生きている。じっと本を読んで、たまにお菓子を食べて、じっと、生きている。
昨夜、母と電話した。宵っ張りの母なので電話を切る頃には日付が変わっていた。話の流れで、今、私が恋をしているかもしれない人は女性であることを告げると、それは友達として好きというわけではないの? 男の人は嫌いなの? と言われた。まあ、そうなるよね。男の人が嫌いなわけでもないし私もわからないままでいるから、そうならそれでも��いけれど、電話を切った後に、別に言わなくてもよかったなと思った。ただ母を困らせるだけに終わってしまった、後悔している。私のセクシャリティなんて別に母には関係のないことだった。家を買おうと思った。
明日は午前中に、料理をしない私のために母が作ってくれたおかずのクール便が届く。私は自分が生きたいのか死にたいのかわからないまま、周りに生きてくれと言われるままに生きているような気がする。無理に生きなくていいと周りに言われたとしたら、もしかしたら死ぬのかもしれない。けれど私のような人間こそがなんだかんだでだらだらと死なずに生きていくのだ。生き続けることにもピンと来なければ、死ぬことにもピンと来ないのだから。
それ以外に予定はない。じっと、静かに、過ごすのだと思う。積み残している諸々はいくつかあるので、どれか一つでも、消化できればそれでいいと思う。
さみしいし、悲しい。けれど同時に私はこの静かな時間の中で満ち足りていて、さみしさと悲しさが流し込まれた水槽の中で泳いでいる、一匹の魚でいる。ゆらゆらと、行き先もなく、この年の瀬を、漂うばかりの。
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hotelroyal-news · 4 years ago
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10/26  完成報告会を開催! 波瑠さん、安田顕さん、夏川結衣さん、岡山天音さんが登壇!
この度、東京のスペースFS汐留にて完成報告会を実施。
波瑠さん、安田顕さん、夏川結衣さん、岡山天音さん、武正晴監督が登壇し、松山ケンイチさんからはビデオメッセージが届きました。
日時:10月26日(月) 場所:スペースFS汐留 登壇ゲスト:波瑠さん、安田顕さん、夏川結衣さん、岡山天音さん、武正晴監督 ビデオメッセージ:松山ケンイチさん
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ホテルローヤル経営者の一人娘・雅代役の波瑠は、直木賞受賞直後に原作を偶然にも読んでおり「自分の知っている作品の台本をいただけて光栄でした」と運命的に感じるも「台本を読んだら雅代のセリフに『……』が多くて。これは下手したら立っているだけの人になるぞと焦り、しっかり役の内面と向き合う作業をしました。緊張感ある撮影になりました」と難役挑戦を口にしていた。舞台となるラブホテルのセットは、原作者である桜木氏の実家のラブホテルを忠実に再現。波瑠は「ラブホテルをよく知らないのに、見た瞬間、『うわ!ラブホテルだ!』と。大げさで煌びやかでなんだかちぐはぐで凄く不思議。リアルだと思わせる説得力がありました」と驚き。武監督は「桜木先生からホテルの部屋の配置を聞いたりして作っていきました。また、そこでどんな苦労をされたのかなど働いていた当時の様子を聞いてシナリオにも反映させていきました」とこだわりを明かした。
雅代の父・大吉役の安田は実年齢よりも上の年齢を演じたが、「僕の親父は室蘭市で溶接工だったので、演じる上では自分の親父を思い浮かべながらやっていました。実際に映画を観たら違和感なく親父でしたね」と照れていた。雅代の母・るり子役の夏川は「るり子は少し身勝手でもある母親だったのですが、最後に雅代に告げる『幸せになんなさいよ』という言葉は本当に彼女の心の底からの言葉だったんだなと思います」と印象的なセリフを振り返った。ラブホテルの客で教師・野島亮介役の岡山は「生徒役の伊藤沙莉さんとは同い年ですが、今回は教師と生徒。その関係性を作るのは面白いものになりそうだと思いました」と演技の上で刺激を受けたよう。
一方、アダルトグッズ製造会社の営業マン・宮川役の松山はビデオレーターで参加。「北海道でのロケは東京での撮影とは違います。場所によって見方も考え方も変わりますし、それが地方ロケのいいところです」と話した。また、台本にはなかった方言で演じたことについて「これは内緒なんですけど、僕は青森出身なんですが、地元の言葉でやっちゃったんですよね。でも誰にもツッコまれなかったので、そのまま最後までやりきりました(笑)」と裏話を語った。また、波瑠は印象深いシーンについて、ラブホテルの従業員のたまり場になっているボイラー室を挙げ、「冬は暖かくて夏は暑くて、従業員のお茶会の場所でもあります。雅代にとっては安心感を持てる空間。温も��もありました」と懐かしそう。安田は「見晴らしのいい部屋で雅代が描く釧路湿原の絵を親父が見ている。そのシーンがあるのとないのとでは、作品のイメージが違ってくると思います」と見どころに挙げていた。
映画の内容にちなんで「心が満たされる瞬間」について聞かれた波瑠は「お腹が満たされると心も満たされる。私はお腹が空くとわかりやすく機嫌が悪くなるタイプ。北海道の撮影ではあれもこれも食べたいと思ったけれど、時間がなくて」と照れ笑い。安田は「自粛期間明けにスーパー銭湯に行って、ザバッと風呂に入って、サウナに入って、垢すりもした。最高でした!」とデトックスに歓喜していた。夏川は「自粛後に久しぶりに友達と食事をした時に、人と直接話すことがこんなに自分に幸せをもたらしてくれるのかと驚いた」とコミュニケーションの大切さを実感。岡山は「僕は匂いフェチで、コインランドリーの前を通ると一気に幸せな気分になる。夜の9時くらいに歩いていると下水道からシャンプーの匂いがする。それが好き」と変わった嗜好をカミングアウトしていた。
最後に武監督は「出演者が素晴らしい仕事をしてくれて、その結果いい作品になった。観る人それぞれが幸せを見つけるようなきっかけになってくれれば嬉しい」と思いを込めた。主演の波瑠は「この映画のラストが好きで、一人の人間が自分の人生を初めて自分で受け入れて、そして家族からも愛されていたと気付く。そんな尊い瞬間が描かれています。雅代の再スタートがとても胸に響きました。キャンペーンで原作者の桜木先生と話していたとき『なにかから積極的に逃げることは、変換するとものすごく前向きなんだ』と仰っていました。その言葉って目から鱗だったのですが、そんなメッセージが込められている映画です」と熱い気持ちを吐露していた。
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sorairono-neko · 5 years ago
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勝生勇利の愛情講座
 その少年は、チムピオーンスポーツクラブに通うジュニアクラスの選手だった。彼は、ユーリ・カツキの話を最初を聞いたとき、まず、「ジジイじゃん」と思った。だって二十三歳だというではないか。ヴィクトルがわざわざ競技を休んでコーチをするというから、どんな将来有望な選手かと思ったら、二十三歳……。彼はあきれてしまった。リンクメイトのあいだでは、「そんなジジイに教えてどうするんだろう」とヴィクトルを心配する声が多かった。もちろんヴィクトルは別だ。彼は神様だから、年齢など関係ない。でも、一般のスケーターならば、二十三歳は、いつ引退してもおかしくない年齢なのだ。とくに、ジュニアにいる者たちにとっては。二十三歳なんて、相当年上に思える。  ロシアでは、ユーリ・カツキは有名な選手ではなかった。ヴィクトルがコーチをするために日本へ行った、と聞いたとき、少年をふくめ、リンクメイトたちは「誰それ?」という評価だった。ヴィクトルの生徒ということで、中国大会は見たし、ロシア大会でも演技を確かめたけれど、どちらもショートプログラムはなかなかのものだったが、フリースケーティングがふるわず、普通よりちょっと上手いくらいの選手じゃないか、ヴィクトルがコーチをしてこれじゃあ……、とがっかりしてしまった。四回転フリップは跳んだけれど転倒だったし、目を惹くジャンプを持っているわけでもないし、少年は、なかなかユーリ・カツキのよさがわからなかった。  しかしグランプリファイナルでは、その苦手に見えたフリースケーティングでヴィクトルの持つ記録を更新したので、彼もそれには驚いた。なんだ、やればできるじゃないか、とえらそうに批評したことをおぼえている。ヴィクトルがうれしそうだったのが印象的で、少年はユーリ・プリセツキーによってショートプログラムの記録も更新されたということに興奮しており、それほどユーリ・カツキのことは目に入らなかった。そのあとはヴィクトルが復帰し、彼がロシアじゅうの話題をかっさらっていったので、ユーリ・カツキについては忘れ去られたままとなった。  シーズンが終わり、選手たちが新しい目標を立て始めたころのことだ。その日、ヴィクトルはひどくはしゃいでにこにこしていた。なにごとだろうと思っていたら、総合コーチのヤコフが、リンクの選手を全員集めて発表した。 「今季から、日本のユーリ・カツキがこのクラブにやってくる」  一気にリンクメイトたちがざわめいた。ヴィクトルだけが相変わらずにこにこしていた。 「カツキはわしの生徒ではないが、みんなも知っている通りヴィクトルの教え子だ。だからここで練習することになった」  説明は続いていた。少年は上の空で、あのジジイ、来るのか、と思った。二十三歳……いまは二十四歳だったろうか。そんな歳でまだ続けるつもりなのか。それも新しい場所で。できるのかな……。若い彼には、経験による成熟というものがわからなかった。 「いったいどんな選手なんだろうな」  ユーリ・カツキは、リンクメイトたちのあいだで興味の対象になった。ヴィクトルがことさらに喜んでいるようなので、余計にそういう空気があった。 「ヴィクトルがすごく浮かれてる。機嫌がいい」 「そんなにカツキが大事なのかな」 「カツキってどんな選手だっけ?」 「演技は悪くなかったけど、顔はあまり印象に残ってないな……。テレビじゃ顔なんてそんなに映らないし」 「カメラはカツキっていうよりヴィクトルばっかりだったもんな」 「ヴィクトルと色ちがいの衣装を着てたのはおぼえてる」 「俺も」 「それもすごいよな。そんなこと、あの皇帝がゆるすんだ」 「デュエットしてたじゃん」 「してたしてた。でも俺ヴィクトルだけ見てて、カツキに注目してなかったなあ……」  そんな選手ばかりだった。  いよいよユーリ・カツキがリンクへやってくる日、いったいどんな選手なのだろう、とみんな興味津々だった。おずおずと前に進み出、はにかんだようにほほえんだユーリ・カツキに、誰もがあぜんとした。ジジイだろ、もう引退だろ、年寄りじゃん、という目を向けられていた彼は、どう見ても少年たちより年下のようなあどけない顔立ちをしていて、困ったように下がる眉と、誰にでも見せる日本人的な笑みが印象的だった。カツキはへたくそなロシア語で「ユーリ・カツキです。よろしくお願いします」と挨拶し、日本の作法でぺこりと頭を下げた。 「あれ、ほんとにユーリ・カツキ?」 「誰だよ、ジジイだとか言ったやつ」 「ガキじゃん……」 「見ろよ、女子が『かわいい』って騒いでるぞ」 「二十四とか、うそだろあれ」  少年が、本当にユーリ・カツキだろうか、別の人間なのでは、と疑っていたら、ヴィクトルが「勇利!」と叫んで彼を抱きしめた。 「勇利、やっと来たんだね。勇利、俺の勇利……」 「なんで急に高揚してるの? さっき一緒にここまで来たじゃない」 「リンクにいる勇利を見たら気持ちがみだれて……、勇利」 「ちょっとヴィクトル」  ユーリ・カツキはヴィクトルの胸をかるく押しやり、上目遣いで優しく彼をにらんで甘く叱った。 「まだ挨拶中」 「ああ……わかってるんだけど」 「話はあとでいっぱいできるでしょ?」 「待ちきれないよ」 「ヴィクトル」  勇利はヴィクトルのくちびるに指を当て、くす��と笑った。 「おとなしくしてて……」  見ていた選手たちは、みんな顔を赤くしてしまった。子どもみたいに見えたユーリ・カツキが、どうしても大人にしか思えなくなった瞬間だった。彼はただ、ヴィクトルがはしゃぐのをとがめ、それを押しとどめたにすぎないのだけれど、なんとも言いがたい色気のようなものを感じ、全員がぽーっとなってしまったのだ。 「なんだ、あれ……」 「ちょっとセクシーじゃないか?」 「ちょっと? いや、かなりだろ」 「へえ、おまえ、ああいうのが好みなんだ」 「そうじゃないけど! なんだよ、おまえこそ顔が赤いぞ」 「だってなんか……」  ジュニア選手たちの意見は一致をみた。すなわち、「ヴィクトルが溺愛するのもうなずける」である。  その日、少年たちは、「ヤコフコーチも手を焼くヴィクトルを操縦できるのはユーリ・カツキだけなのではないか」という予感をおぼえ、実際、それ以降、ふたりの様子を観察しているとその通りだった。すごいな、やっぱりそうなんだ、ユーリ・カツキってぜんぜんジジイじゃないし、やけに子どもっぽいし、でもセクシーで大人だし、いったいどういう人なんだろう……。そう思っていた少年は、ある日、偶然ユーリ・カツキとふたりになる機会があり、尋ねることに成功した。 「どうやってヴィクトルを操縦してるの?」 「え?」  ユーリ・カツキはきょとんとし、いつもみたいに、困ったように眉を下げて笑った。 「ぼく、ヴィクトルの操縦なんてできないよ。彼は好き放題してる。ぼくは振りまわされっぱなし。でも、そういうところがすてきだからいいんだ」  ユーリ・カツキの物言いには、「ヴィクトル大好き」という愛情があふれていた。きっとヴィクトルとふたりきりになったときは、もっとそれが色濃くなるのだろう。少年は、なるほど、こういうところがヴィクトルをめろめろにするんだな、と思った。  その少女は、才能を見出され、この春、チムピオーンスポーツクラブに通い始めたばかりだった。ヴィクトルのことは以前から知っていて、なんてすてきな人なのだろうとあこがれていた。数日前、彼が黒髪の日本の男子を連れてきて、「俺の生徒なんだ」と言ってまわっているのを目にした。少女は昨季の試合の映像をくり返し鑑賞していたので、ユーリ・カツキのことをよく承知していた。実際に会った彼は、試合のときほどきらきらしてはいなかったけれど、優しげな感じでとても気に入った。少女は、ヴィクトルのほうがすてきかユーリ・カツキのほうがすてきか、なかなかきめられなかった。  ヴィクトルに話しかけてみたいが、彼は忙しいし、たまにリンクに来るとユーリ・カツキにつきっきりである。それならと思い、少女はユーリ・カツキと友達になることにした。彼がリンクサイドからリンクを眺めているときに近づき、「ヴィクトルのこと好き?」と訊いてみた。彼は最初、自分が話しかけられたとは思わなかったみたいで、しばらくぼんやりしていたけれど、「ねえ」と重ねて問うと少女を見下ろし、「あ、ぼく?」と言った。 「そう」  ユーリ・カツキは二、三度瞬き、かすかにほほえんで「大好きだよ」と答えた。普段、リンクメイトに何か声をかけられたときとはちがう、やわらかい笑みだった。 「私も」  そう告げると、彼はもう一度笑った。 「どこが好きなの?」  尋ねられて、少女はヴィクトルの好きなところを話した。ユーリ・カツキはいちいちうなずきながら聞いていた。彼はすべてに反論せず、「ぼくもそう思う」と答えた。 「あなたはいつからヴィクトルのことが好きなの?」  彼は、ヴィクトルがジュニア時代に世界チャンピオンになったときのことを語り、「そのときに夢中になったんだよ」と言った。 「本当に大好きなのね」 「そうだよ」 「その指輪、何か約束してるの?」 「べつにそういうわけじゃ……。おまもりだよ」 「そうなの。好きなひとと同じ指輪がおまもりって、すてきね」 「そう思う?」 「うん」 「ありがとう」  ユーリ・カツキは可憐で初々しい笑みを浮かべた。少女は尋ねた。 「ヴィクトルのこと、愛してる?」  率直な質問に、彼は、少女よりずいぶん年上だというのに、おさなげな様子でまっかになった。 「結婚したいくらい愛してる?」 「…………」 「どれくらい愛してる?」  彼は困ったように笑うと、ちょうど扉を通り抜けて入ってきたヴィクトルを見やり、ひそやかに打ち明けた。 「もう、ヴィクトルを知ってからのぼくの人生を全部捧げてるくらい、ぼくはヴィクトルにめろめろなんだよ」  ちょっと聞いて。もう信じられない。きまってるでしょ、ヴィクトルとユーリ・カツキのことよ!  このあいだ、休憩室のソファでやすんでたの。ほんのしばらくのつもりだったんだけど、気がついたら何時間も経ってたわ。起きたら練習しようと思ってたのに、そんな時間なくって、もう帰ることにしたのよ。でも部屋の中に誰かの気配がするじゃないの。ほら、あの部屋、飲み物つくったりできる給湯の場所があるでしょう。そこを通らないと扉にたどり着けないじゃない。普段ならべつに気にせず行くんだけど、なんとなくひみつめいた感じがして、すぐには動けなかったわ。だって、カーテンの向こうで何かひそひそ話してるのよ。困るじゃないの。よくよく聞いてみると、「だめだよ」とか「ちょっとだけ」とか、そういう会話なの。がぜん興味がわいたわ。誰と誰なんだろうってね。  もちろんもうわかってるでしょうけど、ヴィクトルとユーリ・カツキだったのよ。話してる内容はよく聞こえなかったけど、きぬずれの音のあとの、「愛してるんだ」っていう熱っぽいせりふは聞き取れたわ。それからくちびるがふれあう音! わかるでしょ? 私はそろそろと床に足を下ろして、給湯場所の仕切りのカーテンに近づいたの。そーっとのぞこうと��たんだけど、なかなか姿が見えなくて……苦労したわ。堂々とやるとみつかっちゃうし。  でもどうにかふたりが見える位置まで移動して、こっそりのぞいたの。そんなに接近してはいないわよ。そこまでばかじゃないわ。だけどちゃんと見えた。もう大興奮。ヴィクトルがユーリ・カツキを抱きしめて、壁に押しつけてるの。もちろん熱烈にキスしてるわけ。カツキのほうもいやがってはいなかったわよ。ちらっとだけ見えた顔は、ぎゅっと目を閉じてて、ヴィクトルに全部まかせてゆだねてます……みたいなふうだったわ。でもね……、私も好奇心が勝ちすぎて、ちょっと出過ぎちゃったのね。気配を感じたんだと思う。ふっとカツキがまぶたをひらいたのよ!  もうあせったわぁ……怒られるってどきどきした。カツキはヴィクトルを押しのけて、ヴィクトルがなにごとかと振り返って、私はみつかっちゃうってね……。でもちがったの。カツキはね……、私と目が合うと、ゆっくりと手を上げて、カーテンの端をつかんだのよ。そしてさっとそれを引いて……ふたりの世界から私を追い出したの……。  そのときの目つき……。いま思い出してもぞくぞくするわ。べつににらまれたとか、邪魔者扱いされたとかじゃないのよ。ただ、ちらっと見ただけ。感情的じゃなかった。でもね……、その流し目がすごいのよ! ちょっとつめたい感じで、私には関心がなさそうで……けど色気があふれてるの。愛する男にキスされてるからね、きっと……。  普通、同じ部屋に人がいると知ったら、逢い引きなんてさっさと切り上げるものでしょ? でもそんなことぜんぜんないの。ヴィクトルがものすごく熱烈だったから、それを��断させられなかったのか……それとも、カツキ自身もおぼれてたのか……どっちかはわからないけど。それからたっぷり十分近くふたりは抱きあってキスしてたわ。姿は見えなくなったけど、物音でわかるわよ。ちいさくお互いの名前を呼びあったりして……。あんまりにも熱狂的だから、こっちのソファで「始める」ことにしたらどうしようかと思っちゃったわよ。  結局そういうことにはならずに、ふたりは出ていったけど……、もう、私のほうがまっかだったわ。私だって未経験じゃないし、人のキスシーンを見るのだって初めてじゃないのよ。みんなわりとあちこちで平気でしてるしね。でも、その中のどれよりも熱愛的だったわ……。  この話にはおまけがあるのよ。それから何日かあと、たまたま廊下でカツキに会ったの。緊張したわ。怒られるかもしれないとか、あからさまに避けられるかしらとか、そんなことを想像して……。でも彼、何も言わないの。ただ私をちょっと見て、日本式にぺこっと頭を下げてどこかへ行っちゃった。すごくない? あんなところ目撃されて顔色ひとつ変えないの。もうしびれちゃった。  ──彼が私の顔をおぼえてなかっただけ?  …………。  あり得るかもしれないわね……。  氷の上での指導中は厳しいものの、ヴィクトルの愛情は見ていて薄気味悪いほどであり、常に勇利に寄り添い、優しくささやき、熱烈にみつめ続けているので、ユーリは胸が悪くなる一方だった。かつてはあれほど超然とし、ひとり高い理想と志を保ち、孤独に王座を守ってきたヴィクトル・ニキフォロフがこのていたらくだ。いまは向上心がないとは言わないが、とにかくヴィクトルは変わってしまった。  勇利は皇帝ヴィクトル・ニキフォロフの熱狂的なファンなので、この変貌を嘆いてはいないのかと疑いたくなるのだが、当人はいたって日常的な態度をしており、ヴィクトルに何をされても平然と受け流している。だが、ときおり「黙ってて」「すこしはまわりを見て」「ちょっといま着替え中!」と手厳しくヴィクトルを叱っているので、もしかしたらうんざりしているのかもしれない。 「おまえ、ああいうのいいのか?」  気になり、つい尋ねてしまった。 「何が?」 「さっきもおまえのことさわりながらジャンプの動画見てたじゃねえか」 「もう普通のことだし……。ヴィクトルがヴィクトルでいてくれるならぼくはそれで……」 「でも内心うぜえと思ってんだろ?」 「なんで?」 「そんな感じだぜ」 「そうかなあ」 「ヴィクトルの本性を知って幻滅してんだろ」 「確かに思ってた彼とはちがうかも」  勇利は言ってくすくす笑った。 「でもそれがヴィクトルの愛嬌だよ。ユリオだって親しみやすくなってうれしいんじゃないの?」 「なんで俺があんなジジイと親しんで喜ばなきゃなんねえんだよ」 「わかるよ……ヴィクトルって最高にかっこいいしすてきだけど、近寄りがたかったもんね……。気取ってない、うちとけてるヴィクトルもいいよね……もちろん、孤高のヴィクトルもかっこいいからたまらないけど……」 「おまえとヴィクトルのことを話した俺がばかだった」  うっとりしている勇利を見て、ヴィクトルよりもこいつにあきれる、とユーリは思った。どうやら勇利はヴィクトルならなんで���いいらしい。まあ勝手にすればよいが。  しかしそれはつまり、ヴィクトルをいまだに神聖視し、神としてあがめ、あこがれ続けていることの証拠ではないか、という気がした。確かに勇利は、わがままでおかしなことを言うヴィクトルを受け容れてはいるけれど、こういう言い分を聞いていると、神様の言うことだから、という心構えがある気がしてならない。ヴィクトルはどう見ても人間的な愛情で勇利を愛しているので、こいつらいつかこじれるんじゃ、とユーリはすこし気がかりだった。  ヴィクトルは、ロシアの英雄という立場上、ほかにも仕事を持っているため、たまに練習をやすんだりする。そういうときは、当然ながら勇利はヴィクトルの指導を受けられず、彼は変わらずきまじめではあるものの、いささかしょんぼりしているように見受けられた。あるとき、一週間ばかりもヴィクトルが留守にしたので、ユーリは、勇利が落ちこんでしまうのではないかと思ったが、意外にもそんなことはなく、すこしおとなしい様子ながらも、彼は勤勉に練習に励んでいた。なんだ、やるときはやるんだな、とユーリは感心した。反対に、こいつヴィクトルがいなくてもさびしくないのかよ、と妙なところで引っかかったりもした。  練習を終え、更衣室へ行く。さきに切り上げたはずの勇利がいない。 「カツ丼は?」  そばにいたリンクメイトに尋ねてみると、「シャワーじゃないかな」という答えだった。ユーリは首をかしげた。勇利は普段はシャワー室を使わない。家に帰ってお風呂に入るほうがいいから、と言っていた。なぜ今日に限って使っているのだろう。家の風呂が故障しているのだろうか。  ユーリはそのあとトレーナーに呼ばれ、二十分ばかり話をし、また更衣室へ戻った。荷物の整理をしていると、勇利が扉を開けて入ってきたのでびっくりした。 「おまえ、まだいたのか?」 「え?」  勇利はぱちりと瞬いた。 「シャワー使ってたんだろ?」 「うん……」 「もう三十分くらい経つぞ」 「あ、まあ……ちょっと長かったかな……」  勇利が気恥ずかしそうに時間を気にした。 「なんでそんな念入りにやってんだよ。気持ちわりいやつだな」  ユーリはベンチをまたぐようにして座り、かばんの中に手をつっこんだ。 「風呂なんか家で入ればいいだろ。壊れてんのか?」 「そんなことはないよ……」  勇利からはシャンプーやせっけんの匂いがした。ユーリは顔をしかめた。 「こんなとこでそんなにがっつり洗うなよ。何やってんだ」 「うん、ごめん……」  勇利は歯切れが悪い。 「なんだ? 何なんだ? なんかあんのか?」  いつもとはちがう彼の態度に、ユーリは不審をおぼえた。 「いや、何もないよ……」 「だったらこんなとこで清潔ぶるのやめろよな。気色悪いんだよ」 「う、うん……」  勇利は赤くなってうつむいている。ユーリはいらいらしてきた。 「何なんだ! 理由があるなら言えよ! 俺が理不尽に怒ってるみたいじゃねえか!」 「え、えと……」 「正当なわけがあるなら俺も何も言わねえよ! ただおまえが、普段はなんもせずに帰るくせに、今日に限ってそういうことするから──」 「だ、だって」  勇利は頬をまっかにし、もじもじしながら言い訳した。 「今日はヴィクトルが帰ってくるから……」 「は?」  なんだ。ヴィクトル帰ってくんのか。そりゃよかったな。ユーリは他人事だったのでそういう感想しか持たなかった。 「……あいつが帰ってくんのとおまえのシャワーと、なんか関係あんのか?」 「……帰ったら、ヴィクトルいるから」 「あいつのほうがさきか」  納得しかけたが、やっぱりよくわからない。 「べつにいいだろそんなの……。なんだ? ヴィクトル、汗くさいおまえはいやだとか言ってんのか?」 「そうじゃないよ……。ただ、ぼくが気になるっていうか……」 「いいだろ。練習のあとなんだから汗かいてんのは当たり前だ。ヴィクトルだってそう言うだろ」 「でもいやなんだ」 「おまえそんな潔癖症だったか? ヴィクトルの前では綺麗でいたいとかいう乙女っぽい思考か? ばかばかしい」  勇利は気恥ずかしそうに指をいじっている。ユーリはさらにいらだった。 「だいたい、そんなに汗くせーのがいやなら、帰ってすぐ風呂入りゃいいだろ。何もここでごしごし洗わなくても……」 「……だってヴィクトル、帰るなり抱きしめてくるから」 「は?」 「そんな暇与えてくれないから……」 「…………」 「そのまま、あの、その……いろいろ……」 「…………」 「だから……」  勇利は耳まで赤くなっている。真相を知ったユーリは、自分で尋ねたこととはいえ、頭に来たので勇利に向かって怒鳴った。 「とっとと帰れ! この色ボケ野郎!」  ユーリ・カツキっておもしろい。それが彼とリンクメイトになったミラの率直な感想だった。どうやら勇利は深くヴィクトルのことを愛しているらしく、彼といるとしごくしあわせそうにしている。とろとろにとろけた表情で、もう貴方だけしか見えない、といった具合である。かと思えば、練習のときは真剣な顔つきになり、甘えた空気などいっさい見せない。ヴィクトルに意見したり、強い口ぶりで言い返したりする。それなのに、練習が終わるとまたにこにこし始め、ヴィクトルが近づいてきて腰を抱くのに身をまかせている。ところが、たまにヴィクトルがやりすぎると、「そういうのやめてって言ってるでしょ」とそっけなくなることもある。  おっかしいの。ミラは楽しくてたまらなかった。 「カツキはヴィクトルがいやになることってないの?」  そう訊いてみたら、勇利は不思議そうな顔をして瞬いた。 「いやになるって?」 「だから、もう顔も見たくないとか、口も利きたくないとか、ここだけはゆるせないとか、あと自分の時間を持たせて欲しいとか」 「え? なに? なんのこと? どういう意味?」 「もういいわ」 「勝手に完結しないで」 「あなたに訊いた私がばかだった。あるわけなかったわね……」 「えぇ……?」 「喧嘩しないのね」 「ヴィクトルと? そんなのしょっちゅうだよ」  勇利は笑って言った。ミラには信じられなかった。 「うそでしょ」 「本当」 「どういう理由で喧嘩するわけ?」 「それはその……」 「あ、わかった。ベッドの中であまりにも泣かせてくるとかそういうことでしょ」 「…………」  勇利はまっかになって黙りこんだ。冗談だったのに当たってしまった。ミラはこの手の話でからかうのはよそうと思った。おもしろいのだけれど、反対にこちらが照れてしまうことになる。  ある日の練習中、いつものようにヴィクトルと勇利が議論を始めたのだが、最初は静かに意見を述べあうだけだったのが、だんだんと激しくなり、白熱してきたためミラははらはらした。そのとき彼女はヤコフとタブレット型端末をのぞきこみ、ジャンプの型を確認している最中だったので、思わず言ってしまった。 「大丈夫でしょうか……」 「たいしたことなかろう」  なぜかヤコフはうれしそうだった。 「ヴィクトルにあれほど言い返す選手、初めて見ました」 「あれくらいでなければヴィクトルの生徒にはなれん。そもそもコーチが未熟だ」  リンクメイトやトレーナーたちも、ちらちらとふたりの様子をうかがって気にしているようだったが、間もなくその話しあいは終了し、勇利はバレエの講義を受けるためにリンクを出ていった。ミラには喧嘩別れのような終わり方に見えたので、すこし心配だった。  数時間後勇利は戻ってき、そのときヴィクトルは、ヤコフの見守るさきで通し稽古をしているところだった。勇利はリンクサイドに立ち、フェンスにもたれてヴィクトルをみつめた。ミラは休憩中だったので、彼の隣まで行き、さっきのことを怒っているのか尋ねようとした。しかし、勇利の横顔を見た瞬間、ぽかんとして何も言えなくなった。 「ヴィクトル、かっこよすぎない……?」  勇利は頬に手を当て、とろんととろけた目つきでヴィクトルを見ていた。ミラはぱちぱちと瞬いた。 「うそ……この人がぼくのコーチなの……? 信じられない……」 「は……?」 「え? ほんとに……? ほんとにかっこよすぎない? 大丈夫? あんなにかっこいいひとがそばにいて、ぼくは精神を正常に保ったまま生きていけるの……? だって……」  勇利はまっすぐにミラを見た。 「あのひとぼくのコーチなんですよ」 「知ってます」  彼はヴィクトルに視線を戻し、うっとりとした。 「うそ……もうあり得ない……好き……どうしよう……」 「おかしくなったの?」 「なってる……ヴィクトルがかっこいい……あんなにかっこいいひと……存在していいのかな……」 「…………」 「まあヴィクトルがかっこいいのは知ってましたけど」  そのとき、すべり終わってからヤコフと話していたヴィクトルがさっと振り向いた。彼は勇利に向かってにっこり笑いかけた。ミラは勇利が気絶するのではないかと心配した。案の定、勇利はふらっと身体を揺らし、慌ててフェンスにつかまった。そのまま、まっかになるかと思ったのだが、勇敢にも勇利は顔を上げた。彼はヴィクトルをじっとみつめ、くちびるに二本の指を当てた。そして一瞬まぶたを閉じ、ちゅっ、とくちびるを鳴らして、指をヴィクトルのほうへ差し出してキスを投げた。ヴィクトルは目をまるくし、笑いながらくちびるをとがらせ、ちゅっ、と同じようにくちびるを鳴らして、勇利のキスを受け止めた。勇利は口元に手を添えて、赤い頬でうれしそうにうつむいた。  ミラは、リンクでこれだけいちゃついてるんだったら、家でどんなふうなのかしら、と思った。  勇利はぬくもりの中でゆっくりとまぶたをひらいた。彼の頭の下にはヴィクトルの力強い腕があり、もう一方の腕では腰をしっかりと抱き寄せられていた。ヴィクトルはまだ眠っているようである。そのうつくしい寝顔に勇利はうっとりと見蕩れた。ゆうべのことを思い出すと、勇利の口元に笑みが漂い、頬にはあかみが差した。ヴィクトルはとても優しく、情熱的で、甘かった。甘美な時間だった。  勇利はヴィクトルのすばらしいおとがいの線にくちびるを押し当て、あえかな吐息をついた。ふいにヴィクトルの腕がぎゅっと勇利を抱きしめた。 「あまりかわいいことをしないでくれ」  ヴィクトルがくすくす笑った。 「また一から愛したくなるよ」 「ヴィクトル、起きてたの?」 「いま起きた」  ヴィクトルの長いまつげが上がり、その向こうから、青くきらめく瞳がのぞいた。その目は、きわだった熱意を帯びており、勇利の胸をときめかせた。 「ゆうべはすてきだったよ」  ヴィクトルがかすれた声で低くささやいた。勇利はまっかになった。 「勇利は……?」 「う、うん……」  勇利はヴィクトルの胸に顔をうめた。 「よかったよ……」 「それはうれしいな」  ヴィクトルは優しく勇利におもてを上げさせた。勇利はヴィクトルの目をじっとみつめ、誘われるようにまぶたを閉じた。ヴィクトルがくちびるを重ねる。最初は控えめについばみ、そのうち音をたてて情熱的に……。 「ん……んっ、ヴィクトル……」 「勇利……」  ヴィクトルが勇利の手を取り、指をからませた。勇利は力が入らず、握り返すことはできなかったけれど、その代わり、夢中で彼のくちづけに応えた。いつの間にか身体がすりよってしまい、素足がヴィクトルの足にからんだ。ヴィクトルは熱心にキスしていたが、そのうちせっぱつまったように「我慢できない」とつぶやき、勇利のしなやかな身体をひらかせた。  しばらくののち、勇利はヴィクトルの胸に頬を寄せながら、速い鼓動を聞いていた。だんだんと平常に戻ってゆく心音。この音を聞いていると、安心してねむくなる。みたされたばかりならばなおさら……。 「そういえば……」 「なんだい?」 「昨日、また、言われちゃった……」 「誰に? 何を?」 「誰だったかな……リンクで……」  勇利はうとうとしながらつぶやいた。 「『ヴィクトルと付き合ってるの?』って」 「へえ」  ヴィクトルはくすくす笑った。 「何回目? 多いよね」 「うん……。そんなふうに見えるのかな……みんなそういうこと、興味あるんだね……」 「勇利はなんて答えたんだい?」 「いつもと同じだよ……」  勇利は舌足らずに言った。 「付き合ってないよ、って……」 「そうか。それで相手は納得した?」 「えっと、うーん……」  ねむい。話していられなくなってくる。勇利は吐息をついた。 「……もう一度寝ていい……?」 「いいよ……」 「ん……」  勇利は口の端を吸いこむようにして笑い、ヴィクトルにさらにくっついた。 「……あ、そうだ……」 「うん?」 「相手、納得してた……」 「そうかい? 珍しいな……。勇利、何か言ったの?」 「……えっと……そう……」  勇利はすでにとろとろとまどろんでいた。 「付き合ってないけど、愛し合ってるって……」
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sina1986 · 6 years ago
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パッケージイラストを担当させていただいた水鳥のシャンプーに
新たに水鳥のトリートメントが誕生しました🐣🐣🐣
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製造元のTIA HAIR DESIGNは実家の近くにあり、縁あって初めて訪れたのはもう10年くらい前かもしれない。
TIA HAIR DESIGNの大井さんは寡黙な人で、髪の毛のことを本当に大事に考えて��る方。人それぞれの髪質に真摯に対応してくれるから、例えばパーマとかカラーとか髪にダメージあることはあんまりさせてくれません。
お洋服と違って、髪の毛はとっかえひっかえ、ということができず、ずっと身に付いている物だからノリでおしゃれな処置をすることを嫌うのです。
そんな大井さんは髪の毛に本当によい事や物を極めてらっしゃいます。シャンプーとトリートメントを開発したり、ドライヤーやヘアブロードライヤーをこだわったり。髪に対する追求の仕方が神なんですよね。
だから大井さんに髪の毛のこと聞くのすごく大好きです。
尊敬する人です。
そんな大井さんのシャンプーとトリートメントのパッケージイラストを描くことで関わらせていただけて本当に誇りに思います。
わたしももちろん使っていますが、皆さんにもぜひ一度使ってみていただきたいです。初めて使った次の日の朝に鏡見て、指で触って、びっくりすると思う!
こちらのサイトでネット販売しています。
☆水鳥のシャンプー&トリートメントネットショッピング☆
効果的な使い方の漫画も描いたので参考ください。
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綺麗な髪の毛の人に憧れますよね…
私も一時期、綺麗な髪の毛を手に入れるためなら死んでも良いくらいの気持ちになっていました。思春期というやつです。
いまたどり着いた考えとしては、綺麗な髪の毛を手に入れるためにはシャンプートリートメントなど髪の毛のケアはもちろんのこと、髪の資材となるタンパク質やビタミン類などを積極的に取り入れること、(バランスのよい食事)血行を良くするための程よい運動、そして何より、気にしすぎないこと!楽しく毎日笑って暮らすことがイチバン!ってことになりました。いたってフツーの結論です☆
お取り扱いのお店も募集中とのことです。
美容院でなくても、もし水鳥のシャンプートリートメントお取り扱いしたいなあとか、興味あるという方は是非TIA HAIR DESIGN TEL:0743-54-0403までお問い合わせお願いします!
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pinoconoco · 6 years ago
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しあわせの在処 4
「お湯を、使ってくださいな」
住職はそう言うと、湯気の立ち上る桶を俺の横にそっと置いた。
「ありがとうございます、気を使わせて申し訳ない」
「いいえぇ、その方がお嬢様も喜びますって。あなたが眉間に皺を寄せて冷たい水を堪えているのをやめてくれと、私にはやめさせろって言ってますよ」
そうですかね、そんな優しかったかなと二人で笑いあう。
ごしごしと石碑を磨きながら、小さな背中を洗ってやっていたことを思い出す。ルキアと一緒に風呂に入っていたのはいつまでだったか。石鹸で泡を作るのに夢中になったり、シャンプーで変な髪型を作ったり。いつも一時間以上は風呂場にいたような気がする。最後に見たルキアの背中は痩せて骨が浮き出ていたが、それでもシミ一つない真っ白な背中だった。
「そう言えばアタシが最後にお会いした時、お嬢様面白いこと言ってましてね」
「お嬢はいくつになってもどこか天然だったからな」
「いえ、生まれ変わりのお話をしていました」
「生まれ変わり?」
「はい。それからパラレルワールドというのは本当にあるのかとか」
「何だそりゃ」
ククッと笑えば住職も柔らかく微笑んだ。
「私が朽木の家に生まれてなければ、どんな一生を送ったのかな、と。彼女は最期まで自分が養女だと知らなかったのですね」
「‥‥あぁ。言うタイミングを逃したんだ、白哉が。でもまぁ、知らないなら知らなくてもよかったんじゃねぇかな」
「そうでしょうか。彼女はもっと違う生き方をしたかったみたいですけど」
「‥‥幸せじゃぁ、なかったのかな、お嬢は」
気がつけば雪が舞っていた。どうりで寒いわけだ。花を替えてから途中で買ってきた苺大福を皿にのせた。
「いいえ、彼女は幸せの在処をちゃんと知っていましたよ」
「幸せの在処?」
「はい。死ぬ直前まで、人間は自分が幸せなのか不幸なのかわからないものだと仰ってまして。けれど彼女は途中で死を覚悟しなければならなくなりましたでしょう?その時に、自分の幸せの在処はどこだったのか、どこなのだろうと考えたそうです」
「そんな話、俺にはしてくれなかったけどな」
「貴方を困らせたり苦しめたりしたくなかったのでしょう。だから彼女は最期まで「我儘なお嬢様」を演じてまで貴方の傍にいたんです。彼女の幸せは貴方が傍にいることだったのですから」
それじゃぁ俺と同じじゃねぇかとは住職には言わずに曖昧に笑った。そしてそれはどこかで知っていた気もする。
ルキアが離婚して朽木の家に帰ってきたのは、結婚して10年以上過ぎた頃だった。
子供を身籠ることができなくて申し訳ないしいたたまれなくて、と言われてしまえば白哉も会長(結局百歳越えるまで存命した)も何も言えずにルキアを受け入れた。
「お帰りお嬢」
「ただいま一護、また世話を頼む」
嫁に行く前にまともな会話もできないままだったが、昔と同じように俺達の関係はその後も続いた。
ルキアが留守の時、一度、ルキアの元夫が訪ねてきた事があった。白哉も仕事上重要な会議の最中であった為、かなり待たせてしまう事になると差し出がましいとも思ったが自分が対応に応じたのだ。
「只今朽木が会議中でして、取り急ぎご用件だけでも私が伺いますが」
「いえ、黒崎一護さんに、貴方にお会いしたくて参りました」
え?俺?と構えたが、元夫は柔らかく微笑んで
「彼女は貴方を愛してました、最初からずっと。それでもかまわないから結婚してほしいと言ったのは私なんです。一度、貴方とお話がしたかったのです」
「!?」
何と返事をしていいのかわからず更に固まってしまうも、元夫はふる、と首を振った。
「貴方を恨んだりしてません。1人の人間として彼女は私ときちんと接してくれました。私は最初から彼女に一目惚れでしたからそれでも充分だったのです。けれど彼女の病気が発覚してからは、離婚をするほうが私達にとって正しいと判断したのです」
「‥‥病気?」
病気とはなんだ、と思うより早く身体に鳥肌がたった。嫌な、とても嫌な予感がした。
「彼女の余命はもう短い。もしも子供を生んでもいつまで育てられるかもわからない、跡取りを望む私の両親にも申し訳がないと彼女は言いました。それが彼女の本心から言葉というのはちゃんとわかってました‥‥元々私の両親は孫が早くみたいとそればかり言って彼女にはプレッシャーだったはずですから‥‥」
元夫は辛そうに目線を下げた。そうだったのかと思うと同時にそれよりも病気とは、それも余命が短いってどういうことなのだと問い詰めれば、元夫は更に辛そうに眉をひそめた。
「‥‥聞いて、ないのですね」
「何も、知らない、いつからなんです?病院にはー」
そこでルキアの病名を聞いて、ルキアが2年前から病院通いをして症状を抑えていること、不治の病であることを初めて知った。吐きそうになり思わず口許を手で押さえた。
「‥‥私は、彼女と過ごしたこの10年とても幸せでした‥結婚してからの彼女は1度も貴方の話をしませんでしたし、朽木の家に帰りたいとも言いませんでした。子供を産めない身でありながらも両親とも仲良くしてくれました‥‥だから、離婚をしようと私から言ったのです。最期は貴方の傍にいたいと思いましたし、私も彼女の幸せを本当に望んでの、離婚だったのです」
そんな、と今度は涙まで溢れそうになり顔全体を両手で覆った。話が頭に追い付かないぐしゃぐしゃのままなのが多分顔にも出てしまっているはずだった。言葉もでてこない、ルキアが死ぬ?この世からいなくなる?そんなの、絶対に絶えられないー
膝をついて踞って動けない自分の背中を、元夫は優しく撫でてくれた。どうしてこの人はこんなに優しいのか、落ち着いていられるのか。
「貴方の立場から、ルキアさんと恋仲になることが許されないぐらいはわかります‥‥けれど結婚することだけが全てでもゴールでもありません。彼女はそれを正しく知っています。どうか、この先ずっと、彼女の傍にいてあげてください」
ルキアの本音がわかったと言ったように、自分もこの元夫の言葉は彼の本音なのだとわかった。落ち着いた声はゆっくりと脳内に届き染み渡り、今後のルキアは任せてくださいと最後にきちんと言葉にすることができた。
ルキアの口から病気の事を聞かされたのはその数年後だった。病院に行ってるし薬も飲んで、無理をしなければ大丈夫なのだとそれだけ言うも、死期が近いという話はしなかった。それでも病名だけで白哉なぞ卒倒しかけていた。俺は普通に「大丈夫なのか」「辛いときは直ぐに言え」とだけ伝えた。それ以上の詮索はしたくなかった。ルキアが言いたくないのだろうという気遣いもあったが、それ以上自分が知るのも怖かったのだ。
朽木の家に戻ってからの俺とルキアはよく二人で外出した。それはデートというような甘いものではないが、送り迎えから荷物持ちでも呼ばれればすっ飛んで行ったし、自分から声をかけて出掛けたりもした。
ルキアは薬のせいかよく眠るようになっていた。助手席で眠るルキアの頬を何度かそっと触れては、泣いた。
30を過ぎた大人になっても、俺からすればルキアは小さな女の子のままだった。彼女にとって俺は物心つく前からいるのに、それでも父親でも兄でもなく俺を好きというルキアが堪らなく愛しかった。この想いに何も応えてやらない事は正しいのだろうか、拐って、抱き締めて、愛していると伝えたらルキアをもっと幸せにしてやれるんじゃないだろうかと自惚れもした。けれど先行き短いルキアに白哉と離れさせる事は決して良いことではないし心残りにさせてしまうと思えば何も事を起こせなかった。
俺にできるのは
ルキアの傍にいることだけだった
「昔な、凄く悲しかったことを思い出したんだ」
「へぇ?いつの話だ?」
微熱が続くようになって、ベッドで寝てばかりになっていた頃だった。フラフラする以外はそんなに辛くないと言っていて、顔色もそんなに悪くなかった。だからその日もいつものようにルキアに紅茶を入れて運んだ夜だった。
「井上が屋敷に来て、一護��私に紹介しにきただろ?」
「��ぁって、随分昔の話だな」
「あの時、一護が井上を名前で呼んだんだ。すごく羨ましかったんだ‥‥」
「え?そんなこと?」
「ふふ、そんなことなんだが、まだ幼かった私にはなぁ、そのお互いが名前で呼びあうのが羨ましくて悔しくてな‥‥だって一護は1度も私を名前で呼んでくれなかったから」
「そりゃぁ呼べないだろって‥‥あ、思い出した!あの頃お前が俺をシカトしたのって理由それ!?」
そうだ、そんな事があった。ルキアが俺を避けていた時期があったのだ。まさかそんなつまんないことだったのか?
「そうだぞ、拗ねたのだ。おまけに松本が二人は恋人同士みたいですよとか言うから‥‥あの頃はなぁ、幼心に貴様に恋をしてたのだ、今だからこっそり教えてやるが」
「こっそりじゃねーじゃんかよ」
二人でクスクスと笑う。知ってたよ、とも俺もだよ、とも言えずただ笑いながらルキアの長い前髪を横にかきあげてやった。
「俺は俺で傷ついてたんだぞ?おまえに突然無視されて」
「乙女心がわからん奴だからな貴様は。井上は貴様を好きだったぞ、本当に。それも気がつかなかったみたいだな。私でも気がついてたのに」
「あ~、まぁそうだな‥」
井上は5年前に結婚して朽木家から出ていった。「お嬢様がいなくなっても、一護君は私を見てくれなかったね」と言われて初めて、井上の想いを知ったぐらいだった。
「俺に恋愛とか結婚は無縁なんだ。この家に支えている限り、朽木の人間に振り回される運命だからさ」
「それは申し訳ないなぁ。でも死ぬまで私に紅茶を淹れ続けてもらうがな」
「あぁそのつもりだよ」
「なぁ、もう名前で呼んでくれないか?」
「は?白哉に俺殺されて欲しいわけ?」
「むぅぅ。だってもう38になるのだぞ?お嬢様なんて言われる年齢ではないではないか」
「俺にはおばあちゃんになってもおまえはお嬢様だよ」
「喜ぶところか?」
「喜ぶところだ」
そっか、ならいいかな
それじゃぁおやすみ
早く寝ろよ
そう笑って部屋を出た。
部屋を出てから、会長ももういないし白哉が怒っても、明日からルキアと名前で呼ぼうと決めた。そのぐらいいいだろう。何よりきっと「やっと呼んでくれたのか、なんだか生意気に聞こえるがな」とか言いつつルキアは喜ぶに違いない。朝一番に「おはよ、ルキア」と起こしてみるかと考えほくそ笑んだ。
でもそれを実行することはなかった。
翌朝、ルキアは目を覚まさなかった。
彼女を名前で呼ぶことなく、彼女は俺の前からいなくなってしまった。
「私はこんな仕事をしているせいか、凡人には視るどころか感じることもできないものが視えているんですよ」
そろそろ帰ろうかと立ち上がった時、住職が白い息を吐き出しながら空を見上げた。
「幽霊?お嬢の幽霊がいるんですか?」
「いいえぇ、幽霊というよりは‥死神?」
「死神!?」
俺は死神にとりつかれているのか?と顔をしかめれば住職は少しだけ悪戯に笑った。
「違いますよ、とても可愛らしい死神さんがね、貴方の傍にいまして。でもまだお迎えまで時間がかかるそうです‥でも迎えにくるときはその死神さんが貴方を連れて逝くと決めているみたいですけど」
「それ、結構恐いんですけど?」
ほほほ、と住職は楽しそうに笑った。恐がる俺に、大丈夫ですよいい話なんで貴方にお話したんですから、と意味のわからないことを言った。
また来るからな、ルキア
と、心のなかで呟いて墓を後にした。
住職の言う死神が、ルキアのいる場所に連れて行ってくれたらいいなと思ってから、俺も大概ロマンチストだなと独り笑った。
そこでルキアと再開したら、ずっと、死ぬまでお前のことしか考えられないほど愛してたんだぞといってやろう。
雪が冷たくも、照れた頬に触れては解けていくのを気持ちよく感じ、幸せな気持ちになりながら冬の道を歩いた。
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