#八畳一間
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営業中。金麦CMの舞台となった江古田ゆうゆうロードの八百屋「フクミ青果」当店の斜め向かいのお店。
昨年末、街路灯に桜の装飾が掛かっていたのはこの撮影の為だったのか!と種明かしを見た気分でした。
金麦『八百屋にて(彼女)』篇 15秒 黒木華 サントリー CM
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金麦『八百屋にて(彼)』篇 15秒 柳楽優弥 サントリー CM
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元々江古田市場の店だったんですが、市場が廃場になったのを機にうちの商店街に引越し。市場の頃と変わらず新鮮でお買得、スーパーの野菜より絶対新鮮で美味しい(間違いない)
特におすすめは果物。
贈答発送もやってます♪
フクミさんは子供好き。自然に下校時の見守りをやってます。子供達はお母さんと買い物に来たりで顔見知りも多い。散歩で毎日通る犬にまで好かれるおじさんです。
そして、時々ぽろりの笑える八百屋トークが最高。
いつだったか自分とこの焼き芋はかなり美味しいから寿命が延びる、万病治ると言われて爆笑。
そんな事言われたら買わずにはおれないじゃないですか。そして確かにフクミさんの焼き芋はねっとり甘くて美味。
でもフクミさん、シャイだから、見知らぬ方からいきなり親しみこめて絡まれると戸惑う方だと思うので、そこは気を使ってくださいね。大人なら誰でも知らない人との距離感は、計りながら縮めるのが吉です。
私達不特定多数を相手にする個人商店主ですが、所詮は一般人。いい商品を仕入れて適正価格で売ることが本業。
明るさや面白さは、通って仲良くなれば自然と出るもの。
商店街は大手と違ってマニュアルないからその店のオーナーがお客様に好意を持てばどんどんえこひいきする。そのやり取りが魅力でもあると思います。
3大学ある江古田、春になれば新入生や新社会人が増えるかと思いますが、地場のペタペタした商店街には、地場ならではの知識と経験と人脈持った個人商店主がいますから、学校や先輩に聞いても分からない時には商店街の店の人に聞いてみるとナイス情報が手に入る可能性もあるですよ(お試しあれ
#金麦CM #八百屋 #六畳一間のような街 #江古田いいとこ一度はおいで #雑貨屋 #和雑貨 #江古田 #新桜台 #西武池袋線 #練馬区 #商店街 #贈り物 #プレゼント #ギフト
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夏旅2024 新潟散策 - 新発田 清水園
今年の夏は昨年に続き日本海側、新潟県へ。最初の経由地は新発田 清水園。
久々の遠出旅、急遽決まった休みの都合上あまり考える時間もないまま、そういえば昨年の夏、庄内へ出かけた際に通過した新発田が面白そう、ということで新潟方面の旅に出ました。
旧新発田藩下屋敷庭園 清水園
清水園は新発田駅から徒歩10分弱。江戸時代、新発田藩の庭園として造園されたとのこと。このような地方の大名庭園のうち現存しているものは少なく、北陸ではこの清水園と金沢 加賀藩の兼六園だけという貴重な名勝。
まずは書院から。靴を脱ぎ、内部を拝観可能。縁側の畳に腰を下ろし、盛夏の庭園の美しい緑を楽しみます。吹き抜ける優しい風とともに心が和む。贅沢な時間。
引き続きお庭へ。琵琶湖をかたどったと伝わる池の周遊。池の周りには近江八景を模したしつらえも。鮮やかな緑の木々と歴史を感じさせる東屋、それらが水面に映り込む光景。自然と歴史が調和した静かで厳かなな空間が息をのむ美しさでした。お庭の満足度しては過去一な気がします、来てよかった。
蛇足
今年も酷暑で日中 外を出歩くのはしんどい、でもどこか出かけたい、と考えた際にずっと電車に乗っていれば涼しく快適にお出かけできるのでは?とよくわからない発想に至り。。。今回は青春18きっぷを使い在来線(高崎線 - 上越線 - 羽越線)経由で都内から7時間強かけていきました。
結果、新発田へはお日様もやや陰りはじめた程よいタイミングに到着できました(それでも一通り散策して駅に戻ったころに汗びっしょりでしたが)。道中の車内は流れる景色を眺めながらうたた寝もでき最高の時間でございました。
新発田を出た後は白新線にて宿泊地 新潟へ。新潟にてへぎそばとタレかつ丼の夕食。つるつるっと食感のよいお蕎麦と甘辛いタレかつが美味でした。
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公開された情報には「ありえない」日本が多く描かれている。「日本の専門家が監修した」といっても、「日本人」の監修者は入っていないのだろう。畳は正方形ではない。畳の縁は踏まないし武士は正座をしない。家紋の扱いが違う。世が世なら打ち首だ。左右反転した中国の仏像も写りこまれている。これは、中国のものが日本の背景に使用されたことだけが問題ではなく、左右の概念に大きな意味を持つ仏教に対する冒涜である。 コンセプトアートにはAI生成だからだろうか、1500年代が舞台であるにもかかわらず1700年代から現代のものが描かれる。農作業の風景が現代のミャンマーやタイの写真の複製であることも判明した。ガードレールや軽トラックが戦国時代に「存在しなかった記録」はないので、「想像で補った」のだろうか。 これだけなら、歴史フィクションのトンデモ描写として笑い飛ばせるかもしれないが、著作権違反も判明している。関ケ原のPRのため平成元年より活動している関ケ原古戦場おもてなし連合“関ケ原鉄砲隊”の旗が無断使用されており、UBI日本支社はXで「当該アートはコレクターズエディション内のアートブックに収録されることを除き、以降は新たな使用・配布等は行われません」と謝罪した。同団体はアートブッ��からも削除を依頼している。 また、複製が許可されていない文化財の「二条城の屏風画」「東大寺の八角燈籠」と思われるものが画像内で確認されており、盗用の疑いがもたれている。 さらに、日本向けに公開した動画(英語音声)が中国語字幕���ったことなども重なり、日本だけでなく中国や韓国からも「アジア軽視だ」と批判の声が上がった。日中韓の意見が一致するという異例の事態となった。 先日パリで開催されたジャパンエキスポのUBIブースでは、「弥助の刀」として日本刀が展示されたが、すぐに漫画『ワンピース』のゾロの特徴的な刀「三代鬼徹」と指摘された。ワンピースの作者「尾田栄一郎」を「織田信長」と間違えたのだろうか。
『アサシンクリードシャドウズ』が炎上する理由 | JAPAN Forward
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2024年5月18日(土)
上方落語協会が主催する<彦八まつり>、4年ぶりのリアル開催ということで初めてやって来た。お目当ては<奉納落語会>の第4部、露の新治師匠の出番があるからだ。とは言え真夏のような暑さ、夕方までの時間つぶしに<高津神社><四天王寺>へお詣りしてきた。私にとっての大阪は点は理解できても、面としての把握は難しい。おかげで大分地理的理解を身体に染み込ませることができた。しかし暑かったなぁ、会場でビールを我慢した自分を褒めてやりたい!
4時45分起床。
日誌書く。
洗濯機回す。
朝食。
珈琲。
酢タマネギ仕込む。
麺つゆ仕込む。
今日は<彦八まつり>、17時開演の<奉納落語会>のチケットをとっているので昼頃に出発する。
会場は<生國魂神社>、以前にも来たことはあるが谷町九丁目駅から来るのははじめてのこと、少し迷って到着。<米澤彦八の碑>にお詣りする。
軽口噺[かるくちばなし]や役者の物まねを���じていた米澤彦八は、京の人気者、露の五郎兵衛とともに元禄年間(1688~1703年)にここ生玉さんの境内で活躍した。五郎兵衛が「聴衆を前にして口演する」というスタイルを打ち出し、現在の落語の形態を��くる。このため「上方落語の祖」と仰がれ、彦八は「大坂落語の始祖」と位置づけられている。二人の芸風はどう違ったか。「五郎兵衛が先行の噺から材料を多く得ていたのに反し、彦八のは創作が多く、この点などに彦八の意気ごみがうかがえる。彦八はただ軽口噺を口演するだけでなく、むしろ身振りをまじえた『しかた物真似』を本領とした」と、大阪の郷土研究家・肥田晧三氏は『上方学藝史叢攷』で考証する。 (https://www.westjr.co.jp/company/info/issue/bsignal/05_vol_99/feature03.html)
まずは腹拵え、<笑福亭仁鶴一門>でたこ焼きを購入、8個で400円、二人で半分こ。<桂米二一門>でふぐの唐揚げ、800円といい値段。
この熱気の中で夕方まで過ごすのは辛い、落語に縁のある場所ということで<高津神社>と<四天王寺>へと向かう。
お詣り済ませてから再び生玉さんへ、なぜか鳥取県八頭町のブースがあって、ツレアイは<エリンギつかみ取り>に挑戦している。
会場の日射しを避けて<参集殿>前で待機していると、イベント会場からNさんが出てこられてご挨拶、近くのビジネスホテルが取れたとのことで明日も楽しまれるそう。
奉納落語会、前から2列目で楽しんだが、畳敷きの和室では1時間が限界だ。
月亭秀都「秘伝書」、桂八十八「釜猫」、露の新治「中村仲蔵」。
新治さん、十八番を途中で絶句するハプニング、<柳島の妙見>が出てこない。流れでMRIの結果で脳梗塞が起こっているとの説明で会場びっくり、何とかサゲまでたどり着いたが汗の掻き方も酷くて一寸心配。
自宅に戻ったのは19時50分、あり合わせで晩酌開始。
録画番組視聴。
桂三幸「天井高い」
初回放送日:2024年5月18日 土曜の早朝は関西の笑いをたっぷりと!▽今回は桂三幸の創作落語「天井高い」▽第1回「あさわら“まくら”大賞」視聴者投票で優勝が決まる…投票は番組ホーム���ージから!
秋田 真夜中のそば屋で
初回放送日:2024年5月17日 秋田市にあるちょっと変わった、おそば屋さんが舞台。開店は夜の10時で、夜通し営業して閉店は翌日お昼ごろと、まさに昼夜逆転。そばだけでなく、お酒とつまみもいっぱいある。ここにはさまざまな人たちが集う。お酒を飲んだあと、そばをシメにという人たちや、歓楽街で接客の仕事を終えた人たち、また3月は就職や転勤での別れを惜しんで飲みあかす人たちの姿も。なごり雪の舞う季節、真夜中のそば屋に密着する。
片付け、入浴、体重は二日前から350g減、順調だ。
連日の12,000歩越えは嬉しい。
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20240407
「東京の街に出てきました。相変わらずワケの、わからないこと言ってます。」というのはくるりの東京という曲の歌詞だが、20代前半に北海道から東京に戻ってきたよりも一層色濃く、この歌詞が身体に馴染んで俺はいつまでも相変わらずワケのわからないこと言っていますなんだろうなと思う。
東京での暮らしが始まって1週間が経った。歳を重ねれば重ねるほど、時間が過ぎる速度は加速していくものだが、この1週間はこれまでの北海道での一ヶ月よりも一年よりも長く感じた。その理由は二つあって、一つは家の問題と一つは仕事の問題だった。
つまらない方から書く。仕事の問題だ。俺は北海道の職場ではそれなりにブイブイ言わせて活躍することができていたが、東京の仕事を知って感じたことは無力さだった。大学で人気者だった新卒の男の子たちが一般的に感じる無力さ同様、俺は東京の仕事量や周りのスキルにきちんと圧倒され、あーばばばと宣うこととなった。
具体的に言えば、Excelでピポットテーブルを使いこなすことなぞしたこと���なかったが、周りのみんなはそれを呼吸するがの如くできる。他部署や他社との電話での"お話"をすることなんて今まで俺には無く、急にやらざるを得ない状況になった時に無意味なエヘヘへ〜という不気味な笑みを電話相手に聞かせてしまい気色の悪い結果となるが、周りの人はそんなことを普通にやってのけてしまう。そんな環境であることを期待していたにも関わらず、今の周りにとって普通のことを普通にできないという事実に直面してきちんと落ち込んでいるし、まあ新卒みたいなもんだからいずれできるようになるっしょという気持ちでなんとか乗り切ろうときちんと四苦八苦している。
業務量も北海道の頃の体感比4倍で、午後になるともう頭がピヨピヨしてしまう。労働時間もこれまでは19時まで残業したら俺は今日頑張った!と思っていたが、今は朝6時に起き19時半まで働くことがデフォルト。19時半からが残業だよなあと錯覚してしまうような環境がまだ1週間も働いていないのに当たり前と化している。
「なんで東京で働きたいの?」と質問されたらどう答えよう。理由は死ぬほどある。前の日記に書いたように、若かりし頃に得た東京の暮らしへの憧憬だとか、父親が高卒ででかい会社の偉い人になったからその視点や世界を味わってみたいだとか、目標や乗り越えなくてはいけない壁のようなものがないと退屈してしまう俺の性質だとか、社会人として北海道時代の俺への評価は果たして適切だったのか知りたいというような自身の社会性への期待だとか、シンプルに金が欲しいという浅ましい気持ちだとか。
それらさまざまな理由をもって東京に来たはずだったが、現実はそう甘くはない。今はなんとか、持ち前の「全員殺すぞ」という気持ちと、「なるようにしかならない」という適当な気持ちで4月1日からの1週間を乗り越えることができたが、今後どうなっていくのかは正直わからないという気持ちもあるし、まあ俺はなんだかんだで上手いことやっていくでしょうという根拠のない自信も微かにある。アサハラ鬱病編が人生に無いことを祈りつつも自分自身に健闘を祈る。
二つ目が家の問題だ。北海道では綺麗な1LDK、浴室乾燥機付、エアコン付、札幌中心まで徒歩5分で家賃7万円程度という、こと"家"という観点では何不自由ない暮らしをしていた。東京に引っ越すとなった時に、選択肢としては自身で賃貸を借りる、社宅に住むという2択があった。今でこそ思考停止していたなと反省することではあるが、奥さんと2人で住めるような家で、俺が住みたいエリアに住む家を借りて住むとなると家賃は最低でも12万円ほど必要だった。それに比べて、社宅は家賃1万円。年間コストで言えば120万円社宅に住む方がお得だった。その120万円という暴力にあえなく屈し脳死で社宅を選んだが、これがとんでもない物件だった。
駅徒歩15分、は最悪許せる。6畳間の和室が二つあることも最悪許せる。エアコンやガス台がないことも最悪許せる。部屋の壁と床に隙間があり、そこから冷気が流れ込んでくることや、小さな蜘蛛たちがどう頑張ってもそこかしこで跳梁跋扈してることも全然許せる。なぜなら俺は元無職だから。汚い家にはそれなりに慣れているつもりだから。が、しかし社宅のそれは俺の想像を悠々と超えており、初めて家に対して生理的に無理という気持ちを抱いた。
問題は水回りにあった。まず風呂がバランス釜。バランス釜って言葉みんな聞いたことある?少なくとも俺はこの家に住むまでなかったよ。加えて風呂の床は汚い雑巾みたいな色をした石でできており、シャワーの水圧は猫のおしっこよりも弱い。キッチンは一切水を流してなくとも時折ゴポッという音を立てて、ゲロを煮詰めたような香りが定期的に部屋に供給される。洗濯機置き場という概念が部屋に存在せず、今も洗濯機はキッチンの片隅で深い寝息を立てている。形として家のていをなして入るものの、昭和末期の団地の暮らしに時間軸を移行された感触がして、住めるような努力の手段も考えたが、とても住めたものではないというのが率直な感想だった。
可哀想なのは妻だった。俺の目的で東京の正社員を辞め北海道で暮らし始め、結婚して生活が安定してきたと思ったらまた俺の目的で東京に連れ戻され、住んだ家はゴミ廃墟、在宅勤務の妻にとって家というものがどんなに重要かは計り知れないが、結果的に相当量のストレスを与えることになった。
今日4月7日はそんな現状を打破すべく、2人でヘロヘロになりながら不動産屋を駆け巡り、ようやく良さそうな家を見つけたものの、いつも通り俺のキモさのせいで妻との話し合いがうまくいかずに喧嘩になって引越しの話は宙空に霧散した。
自分の嫌なことの話、お金の話など、すったもんだの言い合いの末、妻は俺に対して「決めて欲しい」と言った。俺は「引越しをしよう」と言った。その後に俺は自分だけが責��を取るのは嫌だと思いその浅ましい気持ちを忌避するために「その上で最終決定をして欲しい」と妻に言った。それまでの流れから、最終的には2人で引越しを決めるという大円団を想定していたが、妻は少し逡巡したのちに「この家で頑張って暮らしていこう」という結論を俺に伝えた。
新しい生活には不安はつきものだ。俺は自身の自己肯定感と全能感でそんなものはお釣りがくるもんだと鷹を括っていたが、何事もそんなにうまくはいかないらしい。ひとまず明日の朝までに俺はこのゴミみたいな家で、これから暮らす覚悟をしないといけない。今日の日記は本当につまらないな。
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2023-12月号
アンビグラム作家の皆様に同じテーマでアンビグラムを作っていただく「月刊アンビグラム」、主宰のigatoxin(アンビグラム研究室 室長)です。
『アンビグラム』とは「複数の異なる見方を一つの図形にしたもの」であり、逆さにしたり裏返したりしても読めてしまう楽しいカラクリ文字です。詳しくはコチラをご参照ください⇒アンビグラムの作り方/Frog96
◆今月のお題は「時事」です◆
今月は参加者の皆様に「時事」のお題でアンビグラムを制作していただいております。 2023の出来事を振り返りながら作品の数々をご覧ください。
今回は諸事情により簡単なコメントとさせていただきます。自身で隅々まで味わっていただけましたら幸いです。
「二刀流」 図地反転回転型: いとうさとし氏
大谷翔平選手がWBCでもMLBシーズンでも二刀流で躍動。
細くなっている部分、付くか付かないかの微妙な調整が巧みです。
「YOASOBI/アイドル」 回転共存型:ヨウヘイ氏
YOASOBIがアニメ「推しの子」のOP曲として制作した楽曲。
手書き風にすることでやや乱れた文字の流れもあまり気にならなくなります。
「アンビグラム情報局」 回転型:Σ氏
Discordサーバ「アンビグラム情報局」開局。
濁点のお作法が揃っているのが気持ちよいです。
「平面/充填」 回転共存型:うら紙氏
アインシュタイン問題の解決。
かなりの変形具合ですが読めるところへの落とし込みが巧みです。
「君たちはどう生きるか」 回転型:オルドビス紀氏
宮崎駿監督の新作映画が公開。
書体の選択と文字の配置が絶妙です。
「青い鳥消失事件」 回転型:くりまろん氏
青い鳥(Twitter)がなくなってしまった。
文字の大きさや形状など大胆な対応付けが面白いです。
「別班」 重畳型:douse氏
ドラマ「VIVANT」放送。
縦画をやや斜めにしているのと右下の点を分割しているのがポイントですね。
「熊出没注意」 図地反転回転型: いとうさとし氏
今年は非常に熊の被害が増加した。
「出/注」の対応はどうやったら思いつくのかわからない複雑さですね。
「音乃瀬奏」 回転型:douse氏
9月デビューのVTuber。
「乃」とさんずいの重なりを許すことですべてぴったり対応しています。
「鵺の碑/京極夏彦」 回転共存型:兼吉共心堂氏
京極夏彦氏の小説。
大きく崩していても読めるバランスに調整されています。
「將棋」 回転型:kawahar氏
将棋の藤井聡太竜王・名人が八大タイトル全冠制覇。
「将」ではなく「將」にすることで対応がつけやすくなっています。
「#ハナミズキ語」 振動式複合型:海氏
海氏が「ハナミズキ語」の命名。
「#ハナ���/「ミズキ」/「語」の三面相です。どこを拾うか、どのように解釈するかが楽しいです。
「葬送のフリーレン」 回転型:ぺんぺん草氏
「葬送のフリーレン」がアニメ化、放送開始。
姫森ルーナ型。柔らかな書体により読みやすさが増しています。
「令和の虎」 回転重畳型:ちくわああ氏
チャンネル登録者100万人、総再生回数6億回突破。
「和」と「虎」が読みやすいので一目で読める作品になっています。
「物価高騰」 鏡像型:.38氏
今年はずっと悩まされた物価高騰。
物騰 高価 という並び。文字送りの常識に縛られないことで文字の過不足のやりくりをしています。
「特殊詐欺」 図地反転型: いとうさとし氏
特殊詐欺グループの摘発が相次いだ。
「特/殊」「詐/欺」の組で図地反転になります。すべての文字が読みやすいです。
「観光公害」 敷詰回転共存型:螺旋氏
オーバーツーリズムによる一連の問題。
正位置で横書き、逆位置で縦書きに読みます。「光」がこの形で読めてしまう驚きがあります。
「生成AI」 鏡像型:douse氏
今年も大きく成長を遂げた。
「成」の斜め対称性の高さに驚きます。
「生成系AI」 鏡像型:Σ氏
「系」をつけた呼び方も。
くるんとしたあしらいが各所でぴったりはまっています。
最後に私の作品を。
「アイドル」 回転型:igatoxin(既発表作)
今年の一曲といえばこれでしょう。
「変な家/変な絵」 鏡像共存型:igatoxin
雨穴氏の小説がヒットし映画化もされました。
時事がお題のアンビグラム祭、いかがでしたでしょうか。今年を振り返るといろいろな事柄がありましたが、月刊アンビグラムも今年も無事に一年間発行できました。ひとえに参加者ならびに読者の皆様のおかげだと感謝しております。
さて次回は例年通り「お題フリー」です。締切は12/31、発行は1/8の予定です。それでは皆様 来月またお会いしましょう。
——————————–index——————————————
2023年 1月{フリー} 2月{TV} 3月{クイズ} 4月{健康} 5月{回文} 6月{本} 7月{神話} 8月{ジャングル} 9月{日本史} 10月{ヒーロー} 11月{ゲーム}
※これ以前のindexはこちら→《index:2017年~》
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2023.9.14thu_tokyo
ーーーーーーーーーーー この日記を読むあなたへ スマートフォンを横向き にして閲覧してください ーーーーーーーーーーー
昨晩は疲労困憊なのに百万遍を歩き回ったのち村屋※で飲んだ 帰りに天下一品に寄ったせいか 今朝は二度寝していた
二度寝して現場に到着
午前中はトイレ前にあったデカい鏡を移設する準備をしていた ラジオは「今夜アレになる」「18年ぶりのAREだ」と繰り返す
鏡を取り外すと朽ちた内壁がバリバリと剥がれたので修復 車があるうちに2枚多めに合板(畳サイズ)を買っておいてよかった
京都「西ノ京」に開店する珈琲ヤマグチ※の工事を請け負っている 最高気温が35度を超えたことを意味する猛暑日は37日を数えた
クライアントと友達
午後は昨日に引き続きクライアントが友達2人と助っ人に来てくれた ニュージーランド在住?サービス業従事者&僕の母校の教員
クライアントは真名美という 5年位まえ僕の飲み屋の客だった 真名美が現場に来るとアイデアを伝えてどう形にするか相談する
京都入りしてから2か月と1週間が経つ 7月7日に銭湯で買った石鹸はすっかりちびてしまった
7月8日天井落とし
今日はこういうかたちで「回想」することをみとめられたので 日頃反芻していた言葉の断片を1行31文字以内で書き留める
高井戸ICからイッチー※のハイエースに工具を満載し片道460km 物件は元米屋でその前はパン屋 餅屋いずれも貸主の商売だった
東京から京都へたった1人で移住した借主の行動力に感服する 工事の相方で��のイッチーと真名美で3人であちこち飲み歩いた
METROでのGiftやKyoto TSUBAKI fm 3rd anniversaryは楽園だった 京都にいる内にできるだけ多くのリスニングバーやクラブを回りたい
DJで一級建築士のタムラさん(DoitJAZZ)
築90年の町家建築を相手に序盤のほとんどは解体で難儀した 天井を落とし壁をめくり床をこじあけた裏側に幾千の生き物の痕跡
イッチーと彼が連れてきたアルバイト
仕事終わりには若松湯で埃りと汗を流している 町場に用事があればその周辺の銭湯巡る 10数軒は回ったか
文化財で銭湯にプチ遠征
ひと月かけて執り行われる祇園祭にも少し詳しくなった 通りの名前も徐々にしみついてきている
祇園祭はカッコよかった
コーヒーを淹れる台は材木屋で50年眠り続けたラワンの一枚板 材木屋は現場の近くにあり親切※美大関係者へのサーヴィスが手厚い
材栄さん
京都入りと同時に2級建築士製図試験対策の日曜講座に通い始めた しかしオンもオフもやることが満載で宿題の半分もままならなかった
めくった壁から90年前の大工さんがつくった壁がでてきた 新しく造る壁と並列させて見えるように設えている
A剥がして現れた壁
B古い壁と新しい壁
8月22日 イッチーはトリツカレ男の店番と都立家政での新しい 案件に着手すべく一足さきにハイエースに工具の半分を載せて帰った
いったん東京に戻り9月10日に製図試験挑んだが十中七八アウトだ 12月7日に結果が出る そのころには珈琲ヤマグチも板についている
二級建築士製図試験問題
言葉を尽くし手を動かし工夫を重ねた内装工事も終盤 準備した200枚の名刺は徐々に京都人たちの名刺に換わっている
いろんな店で顔なじみになり「工事終わったら帰りはるんですか」 惜しんでくれるのは嬉しいが工事はあと1週間半くらいで終わらせたい
サウナで声をかけてくれた51才の紳士は音楽通だった いまやかけがえのない京都のともだちになっている
レコード棚も造っています
場所柄外国人とも酒を酌み交わした フィンランド人、チリ人 トルコ、中国人、モンゴル、アイルランド…7か国位?
芸大(先端芸術表現科)の同級生や先輩とも久しぶりに会えた なぜか同級生の2人が医師免許をとっているが明日その彼らに会う
先端の先輩が自転車に載せられる美術館をつくっていた
16時半 真名美は同級生と自然派ワインの店coimo wine & cafeへ 僕は若松湯のラジオで阪神タイガースの優勝の瞬間を見届けた
最寄りの定食屋兼飲み屋「たいたん はちべゑ」へ行くと 「あとアウト1つやで」と狂喜乱舞するファンに迎えられた※
あれに乾杯
京都でピザ屋を開きたいという同い年の夫妻に出会った※ 早く眠るつもりがCOMOGOMO JURAKUで2人の夢を語りあった
もしかしたら彼らの店を造ることになるかもしれない 25時 今日も倒れるまで眠らなかった
灼ける盆地の風にも秋の成分がだいぶん添加されてきた もう猛暑日の38日目をカウントすることはないだろう
イッチー、フィンランド人のイラリくん、やぎ
ーーーーーーーーーーー 注釈
※村屋 出町柳のカオスな飲み屋。自然派日本酒が豊富。
※珈琲ヤマグチ 現在自家焙煎コーヒーのオンライン販売とイベント出店。 2023年9月現在。中京区西ノ京左馬寮町にて喫茶店を開業予定。 御前丸太町下ル 若松湯東入ル。 https://www.instagram.com/_3_yamaguchi/
※イッチー 高円寺のタパスバー「トリツカレ男」店主。 2017年末この店をイッチーが造っているのを手伝わせてもらったことが 僕が内装を始めたきっかけのひとつになっている。 https://www.instagram.com/toritukareotoko/
※親切な材木屋 材栄 https://zaiei.shopinfo.jp/
※阪神タイガースのリーグ優勝 日記の中にアレの瞬間が2回あるのは ラジオ放送に遅れてテレビ放送がついてくる。 タイムラグは2分近くあったと思う。 その間検閲できちゃうのでは?という時間差。 ラジオは昔も今も最速のメディア。現場でもラジオが相棒。
※ピザ屋 ヨロシクピッツァ。 ポップアップ出店と窯ごと出前ピザしている。 https://www.instagram.com/yoroshiku_pizza/
※COMOGOMO JURAKU 現場から近いし深夜遅くまで開いているので 製図試験対策で力尽きたらここで晩酌していた https://www.instagram.com/comogomo_juraku/
-プロフィール- やぎ 38歳 東京 とんち造作計画・内装業
ペーパードライバーの個人事業主の内装業。 店舗設計、解体、壁の造作、什器製作、左官、給排水配管 などおおよそ全て自前で施工している。 佐橋※介���※の部分を景に替えてお読みください。 http://instagram.com/tonch_keikaku/ http://tonch.tokyo/
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混迷した世界の指南書 『武士道』 藤原正彦(2008) 『この国のけじめ』 文藝春秋
新渡戸稲造『武士道』が売れているという。昨年末(二〇〇三年)公開されたアメリカ映画 「ラスト・サムライ」の影響もあるとかで、数社から合わせて百万部以上が出ているそうだ。 これを聞いて意を強くした。 『武士道』が英語で書かれたのは明治三十二(一八九九) 年であ る。百年以上前の本を現代日本人がこぞって読むのは、健全な危機感のあらわれと思うから (5)である。 庶民は知識や理屈を持っていなくともときに鋭い感覚を示す。多くが「いまの日本は何かが おかしいぞ」という素朴な実感をもっている。グローバルスタンダードを取り入れるといって、企業はリストラをする。学校では「ゆとり教育」を取り入れる。その結果、職のない中高年があふれ、地方の駅前商店街はさびれ、小学校では国語や算数の時間が減らされ、小学生から大(10) 学生に至るまでの学力低下は著しい。庶民はこうしたことに「自分たちの親や祖父が大切にしてきたものが壊されつつある」と感ずるのだろう。我々のよってたってきた価値観とは何だったのか、(1)というルーツ探しに似た感覚が『武士道』を手にとらせているのだろう。 『武士道』の著者・新渡戸稲造は幕末の南部藩(いまの岩手県)で下級武士の子として生まれ、札幌農学校(現・北海道大学)で農業を学んだ後、アメリカに留学しキリスト教クェーカー派 の影響を受けた。アメリカからドイツへ渡り、研鑽を積んだ後、札幌農学校教授、台湾総督府技師、(5)京都帝国大学教授、第一高等学校校長などを歴任、農学者および教育者として活躍するかたわら、東西思想の調和を目指し「太平洋の懸橋たらん」ことを悲願とした。東京女子大の初代学長、国際連盟事務局次長なども務めた日本の誇る国際人である。 『武士道』が書かれた明治三十二年は日清戦争と日露戦争の中間期で、清を破った新興国家日本に世界が注目しながらも警戒心を持ちはじめた時機である。新渡戸はベルギー人法学者夫妻と散歩中(10)、日本には宗教教育がないと話したところ、「宗教なし! それでどうして道徳教育を授けるのですか」と驚かれた。その後いろいろ考えた結果、自身の正邪善悪の観念を形成しているものが幼少期に身につけた武士道であることに気づいたのである。 同時代人である内村鑑三や岡倉天心にも共通するが、新渡戸には日本人の魂を西洋人に理解させたいという熱い思いがあった。そして英語で武士道を紹介することを決意する。西洋人に(15)も理解しやすいよう、ギリシアやローマの哲学、聖書、シェイクスピア、ニーチェなどと我が国の本居宣長、平重盛、頼山陽、吉田松陰らを比較しながら武士道精神の本質について説いた。 (1)『武士道』初版は一九〇〇年にアメリカで出版され、たいへんな賞讃を受けた。感激したセオドア・ルーズベルト大統領などは、何十冊も買い、他国の首脳に送ったという。その後多くの言語に訳されたが、日本語訳は明治四十一年以来、新渡戸の弟子で東大総長を務めた矢内原忠雄訳(岩波文庫)をはじめとしてさまざま出ている。 (5) 私は勤務する大学の学部一年生に対して、日本の名著を講読するゼミを担当している。こと十年近く、真っ先に学生たちに読ませるのが『武士道』である。受験戦争をくぐり抜けて大学に入学したての学生たちは、『武士道』を読んで一様に驚く。高校までに習ってきたこととあまりに違うことが書いてあるからである。とくに戸惑いを見せるのは、(10)名誉に関する部分である。 武士道では、名誉はしばしば命よりも重いとされる。「そ���故に (武士は)生命よりも高価であると考えられる事が起れば、極度の平静と迅速とをもって生命を棄てたのである」(矢内原忠雄訳・以下同)という箇所を読むと、戦後民主主義の教育にどっぷりつかった学生たちは、「名誉より自分を大切にすべきだ」とか「生命は地球より重い」などと拒否反応を示す(むろん(15)新渡戸は「真の武士にとりては、死を急ぎもしくは死に媚びるは等しく卑怯であった」とも述べており、いたずらに死を賞讃しているわけではない)。 (1)学生たちのそうした批判に対して、私は「それではあなた方は一体どうやって価値判断をするのですか」と問う。すると「自分の理性で考えます」「主体的に考えています」などと答える。「すごいなあ、なぜそれほど自分の理性に自信が持てるんですか」と問うと学生は困ってしまう。人間には、理性や論理だけでなく、価値判断の基準となる倫理的な座標軸がなければならない。(5)それがない論理的思考は単なる利益追求とか自己正当化に過ぎない。座標軸の役割を果すのは、外国の場合、主に宗教だから、外国人は宗教のない人間を信用してよいものか訝る。 宗教の力がそれほど強くない我が国でその役割を果してきたのが武士道である。武士道は平安時代末期から鎌倉時代にかけて、「戦うものの掟」として生まれた。それはいわば(10)戦闘におけるフェア・プレイ精神だった。卑怯な振る舞いはしてはならない、臆病であってはならない、という観念である。 騎士道がキリスト教の影響を受けて深みを得たように、単なる戦闘の掟だった武士道にも、さまざまな「霊的素材」が注入されたと新渡戸は言う。 まず仏教、なかでも禅が「運命を任すという平静なる感覚」と「生を賤しみ死を親しむ心」(15)を武士道に与えた。 そして主君に対する忠誠、祖先に対する尊敬、親に対する孝行という他のいかなる宗教でも教えられなかった美徳が神道からもたらされた。さらに孔子と孟子の教えが、(1)君臣、父子、夫婦、長幼、ならびに朋友の間の五倫の道、また為政者の民に対する仁慈を加えた。 こう書くと外国のものが多いようだが、禅にしても孔孟の教えにしても、中国ではごく一部の階層にしか広まらなかった。これらの思想は日本人が何千年も前から土着的に持っていた(5)「日本的霊性」 とびたりと合致していたから、武士の間にまたたく間に浸透したのである。 江戸時代になると実際の戦闘はなくなった。それとともに武士というエリート階級の行動指針であった武士道は、物語や芝居を通して次第に庶民にまで行き渡り、戦いの掟から精神へと昇華し、日本人全体の道徳的基準となった。武士道精神はこうして「遂に島帝国の民族精神を表現するに至った」のだ。 (10)武士道は成文化されていない。聖書やコーランのような経典がない。武士道は「書かれざる掟、心の肉碑に録されたる律法」として親から子へ、口から口へと伝えられた。そして知識よりその実践こそが本質とみなされたのである。 私の父・新田次郎は、幼いころ父の祖父から武士道教育を受けた。父の家はもともと信州諏訪の下級武士だった。生家の二階には三畳の間があり、子供は容易なことでは入らせてもらえなかった。(15)なぜならそこは切腹の間だったのである(実際に使われたことはないらしい)。幼少の父は祖父の命で真冬でも裸足で『論語』の素読をさせられたり、わざと暗い夜に一里の山道を(1)上諏訪の町まで油を買いに行かされたりした。父は小学生の私にも武士道精神の片鱗を授けようとしたのか、「弱い者が苛められていたら、身を挺してでも助けろ」「暴力は必ずしも否定しないが、禁じ手がある。大きい者が小さい者を、大勢で一人を、そして男が女をやっつけること、また武器を手にすることなどは卑怯だ」と繰り返し言った。問答無用に私に押しつけた。 (5)義、勇、仁といった武士道の柱となる価値観はこういう教育を通じて知らず知らずに叩き込まれていったのだろう。義とは孟子が言うように「人の路」である。卑怯を憎む心である。林子平は義を「死すべき場合に死に、討つべき場合に討つこと」と言っている。勇とは孔子が「義を見てせざるは勇なきなり」と言ったように、義を実行することである。そして仁とは、「人の心」。慈悲、愛情、惻隠の情、「強きを挫き弱きを助ける」などがこれに含まれる。 (10)他にも、礼節、誠実、名誉、忠義、孝行、克己など大切な徳目があった。なかでも名誉は重要で、恥の概念と表裏をなし、 家族的自覚とも密接に結ばれていた。前述したように名誉はしばしば生命より上位にくるもので、名誉のために生命が投げ出されることもたびたびあった。 武士道精神の継承に適切な家庭教育は欠かせない。戦前に国や天皇に対する「忠義」が強調 された、という反省から戦後は日本の宝物ともいうべき武士道的価値観がまったく教えられなくなったのは不幸なことである。(15)戦後教育しか受けていない世代が親となり先生となっているから、いまでは子供にこれを教えることも叶わない。 (1)新渡戸の『武士道』は日本人の美意識にも触れている。 武士道の象徴は桜の花だと新渡戸は説く。そして桜と西洋人が好きな薔薇の花を対比して、「(桜は)その美の高雅優麗が我が国民の美的感覚に訴うること、他のいかなる花もおよぶところでない。薔薇に対するヨーロッパ人の讃美を、我々は分つことをえない」と述べ、本居宣長の歌、(5)敷島の大和心を人間はば、朝日に匂ふ山桜花、を引いている。 薔薇は花の色も香りも濃厚で、美しいけれど棘を隠している。なかなか散らず、死を嫌い恐れるかのように、茎にしがみついたまま色褪せて枯れていく。 (10)それに比べて我が桜の花は、香りは淡く人を飽きさせることなく、自然の召すまま風が吹けば潔く散る。桜の時期にはしばしば雨が降り、ときには数日で散ってしまう。自然の大きな力に逆らわず潔く散る。 「太陽東より昇ってまず絶東の島嶼を照し、桜の芳香朝の空気を匂わす時、いわばこの美しき日の気息そのものを吸い入るるにまさる清澄爽快の感覚はない」、つまりこの清澄爽快の感覚が(15)大和心の本質と新渡戸は説く。 (1)日本人は、このような美意識を持ち、いっぽうで行動原理としての武士道を守ってきた。新渡戸はまた、吉田松陰が刑死前に詠んだ、かくすればかくなるものと知りながらやむにやまれぬ大和魂、(5)を引く。吉田松陰は黒船来航以来の幕府の政策を痛烈に批判し、安政の大獄の際に死罪に処せられた。この歌は、たとえ行き着く先は刑死とわかっていても、正しいと信ずることをせずにはおれないという松陰の告白である。名誉のためには死も恐れないという態度である。 こうした「大和心」といい「大和魂」といい、武士道精神の精華といえよう。これを世界の人に知らしめた新渡戸の功績は訳者の矢内原忠雄の言うように「三軍の将に匹敵するもの」がある。(10)日清戦争後の三国干渉等で世界が日本に警戒心を強めていたときに、軍事力でなく、誇るべき民族精神によって日本を世界に伍する存在としたのである。 明治維新のころ、海外留学した多くの下級武士の子弟たちは、外国人の尊敬を集めて帰ってきた。彼らは、英語も下手で、西洋の歴史や文学もマナーもよく知らなかった。彼らの身につけていたものといえば、日本の古典と漢籍の知識、そして武士道精神だけであった。それでも彼らは尊敬された。(15)武士道精神が品格を与えていたのである。 世界は普遍的価値を生んだ国だけを尊敬する。 イギリスは議会制民主主義を、フランスは人権思想を、(1)ドイツは哲学や古典音楽を作った。自然科学のうえでもこれらの国は多大な貢献をした。現在経済的にも軍事的にもたいしたことのないこれらの国が国際舞台で主要な役割を果せるのは、彼らの創出した普遍的価値に世界が敬意を払っているからである。 私は、日本の武士道精神と美意識は、人類の普遍的価値となりうるものと思う。 (5)二十一世紀は、武士道が発生した平安時代末期の混乱と似ていないでもない。日本の魂を具現した精神的武装が急務だ。 切腹や仇討ち、軍国主義に結びつきかねない忠義などを取り除いたうえで、武士道を日本人は復活するべきである。これなくして日本の真の復活はありえない。国際的に尊敬される人とは、自国の文化、伝統、道徳、情緒などをしっかり身につけた人である。武士道精神はその来歴といい深さといい、身につけるべき恰好のものである。 (10)新渡戸は「武士道の将来」と題した最終章にこう書いている。「武士道は一の独立せる倫理の掟としては消ゆるかも知れない、しかしその力は地上より滅びないであろう。(中略)その象徴とする花のごとく、四方の風に散りたる後もなおその香気をもって人生を豊富にし、人類を祝福するであろう」 世界はいま、政治、経済、社会と全面的に荒廃が進んでいる。人も国も金銭崇拝に走り、利害得失しか考えない。 (15)義勇仁や名誉は顧みられず、損得勘定のとなり果てた。 ここ数世紀の間、世界を引っ張ってきたのは欧米である。 ルネッサンス後、理性というものを他のどこの地域より(1)早く手にした欧米は、論理と合理を原動力として産業革命をなしとげ、以後の世界をリードした。論理と合理で突っ走ってきた世界だが、危機的な現状は論理や合理だけで人間はやっていけない、ということを物語っている。それらはとても大切だが、他に何かを加える必要がある。 (5)一人一人の日本人が武士道によりかつて世界の人々を印象づけた高い品格を備え、立派な社会を作れば、それは欧米など、荒廃の真因もわからず途方に暮れている諸国の大いに学ぶところとなる。これは小手先の国際貢献と異なる、普遍的価値の創造という真の国際貢献となるであろう。この意味で、戦後忘れられかけた武士道が今日蘇るとすれば、それは世界史的な意義をもつと思われる。
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三輪隊の小説(二次創作)
三輪隊で、たこパなんてどうだろう?
「たこ焼きを食べよう」
という話になったのは、三輪隊といえば焼肉、三輪隊といえばたけのこの里、三輪隊といえばコーヒー、三輪隊といえばカレーを食べたあとのお冷、である同隊にしては非常に珍しいことなのだが、いつも焼肉を遠慮する(おそらく苦手)月見蓮が珍しく興味を示したからである。
三輪隊オペレーター月見蓮は高嶺の花とも称される美しい令嬢ではあるが、同隊においてはクールな指導者で、かつマイペースな年長者だった。
皆に好みを合わせてまで一緒に食事はしない。以前、ハンバーガーを食べたことがないと聞いたことがある。飲食を伴うフランクな交流は作戦室のお茶の間まで。要は線引きがきっちりできている。
その月見がたこ焼きについて興味を持ったのだ。
元々は何の話だったか。場所はいつものお茶の間だった。
「お��りの屋台で見たのよ」
出店は、チョコバナナにベビーカステラ、りんご飴と甘いものが多いが、たこ焼きのソースの香りと丸い見た目が印象に残っているという。
焼きそばは食べたことがあるというが、高級中華の色がついてないやつだと察せられた。
「そうなんですか? じゃあ、一緒にたこ焼き食べましょうよ?」
同隊狙撃手の古寺章平がそう誘ったのは軽い気持ちだった。買ってくればいい。チンでもテイクアウトでも、お茶の間で食べられる。今は十一月、日に日に寒さが増してくる季節だが、来年の夏になればお祭りに誘ってもいい。未成年者が多いこともあり、ボーダーにおける隊の結成期間はだいたい半年から一年と短いが、古寺には、この三輪隊が来年の夏までも、いやもっとずっと続くように思えた。
「ありがとう」
月見は微笑み、次のお茶菓子は菓子ではないけどたこ焼きだな、飲み物は何が合うだろうと考えていたところ、同隊攻撃手の米屋陽介がうなずいた。
「章平、いいこと言うじゃん。どうする? たこ焼きプレート、うちにはないぜ」
「え?」
「うちにある」
同隊狙撃手の奈良坂透が応じる。
「ええ?」
「奈良坂の家からじゃあ、ちょっと遠くねえ?」
「章平と運ぶ」
「えええ?」
古寺の驚きなどお構い無しに会話が進む。同隊隊長の三輪秀次は、そうかと言って腕組みをした。
「奈良坂、ガスか? 電気か?」
「電気だ」
「ていうか、作戦室でそういうのやっちゃっていいの?」
「加古さんだって、炒飯作ってるんだ。使ってもいいと思うが…」
三輪が顎に拳をあてて天井を仰いだ。
「…狭い」
ここで、ようやく古寺は口を挟んだ。
「作っちゃうんですか?」
「え?」
先輩三人は、意外なことを言われたような顔をして一斉に古寺を見た。顔の圧がすごい。
助けを求めて月見を見るが、抜群の指揮能力を持つ才媛もたこ焼きに関する知識がないので、頭の上にはてなマークを浮かべて、にこにこしている。
「作んないの?」
米屋が代表して無邪気に聞いた。
古寺はぐるりと狭い部屋を見渡した。狭いと言っても、作戦室のお茶の間よりはずっと広い。
(ここが三輪先輩の部屋)
たこ焼きパーティーの会場は本部住まいの三輪の部屋となった。
(シンプルだ)
予想通りというべきか。若くして人生から様々なものを削ぎ落としているひとつ歳上の隊長の私室は作戦室より更にすっきりしていた。仮設住宅住まいの古寺の部屋は二人の弟と一緒だ。漫画とトレカとゲームとランドセル、あと何だろう。様々なものが散らばる雑多な部屋とは大違いだ。
八畳程の広さのフローリングにソファと机、丸椅子ひとつ。それだけだ。どこで寝ているのか? 真ん中に折りたたみのローテーブルがある。みんなでおじゃましたあと、部屋の主である三輪がクローゼットから出してきたから、おそらく常日頃は仕舞われている。
その上に、
「四十個も焼くの?」
おっかなびっくりプレートをセットした月見がくぼみの数を数えている。
「四十個じゃ足りないですよ」
奈良坂がコードをセットしながら言う。米屋が家から持ってきた大きなボウルを取り出している。
「章平ん家、たこ焼き焼かねーの」
月見と一緒にたこ焼きの調理家電を覗き込んでいる古寺に米屋が聞いた。
「そもそも、うちにないですね」
両親は共働きだし、収納の少ない仮設住宅の台所で母親はなるべく物を増やさないようにしている。だから、こんな巨大なものが同じく仮設住宅の奈良坂の家にあったのは驚きだ。料理好きのお姉さんとお母さんがいるせいだろうか。
「あ、奈良坂、チョコを入れるつもりなわけ?」
「定番だろう」
各々手分けして買ってきた買い物袋を整理しながら米屋と奈良坂が会話している。
「オレもチーズとカニカマ買ってきた」
「生地を作るのはそっちの部屋でやってくれ」
台所から三輪が顔を出す。
「あ、おれは何をしましょうか」
古寺も立ち上がった。
「月見さんは机周りで進行状況の確認、奈良坂と米屋は具材のセットと生地作り、古寺は材料を切ってくれ」
「了解よ」
「わかった」
「オッケー」
的確に指示を出す隊長に古寺が声をかける。
「三輪先輩、慣れてますね」
「前にいた隊ではこういうことがたまにあった」
旧東隊のことだ。現東隊の奥寺と小荒井もそうなのだが、最初の狙撃手、東春秋を隊長とする東隊に所属していた事に古寺は憧れを感じる。
「よく作ってたんですか」
「いや、たこ焼きは初めてだ」
広いとは言えない台所で、まな板を古寺に渡しながら三輪は答える。
「でも、チームメンバーだから任務と同じに考えればいいかと思った」
「そうですか…」
古寺は不覚にもじんときた。不器用、と背中に大きく書いてあるような先輩に成長を感じる。
ネギを切って、蛸を切って、カニカマを切って。一心に切っていると目の前に花があるのに気づいた。
小さな花瓶に小さな花が無造作に挿してある。十七歳男子の台所にしては違和感があった。この後、テーブルに飾るには、既にたこ焼きプレートが占拠している。
「秀次、水と泡立て器だってさ」
そのとき、計量カップとボウルを持って米屋がキッチンにやってきた。
「泡立て器はないから箸でやってくれ」
三輪が言われた分量をしかめっ面できっちり測っているのを横目に米屋が花に向かって片手をあげた。
「お邪魔してまーす」
「先輩、何をしているんですか?」
古寺の疑問を受けて代わりに三輪が答える。
「ああ、陽介は姉さんに挨拶したんだ」
「お姉さん…ですか?」
四年前の近界民侵攻で、三輪は姉を目の前で亡くしたことは知っている。
しかし、目の前には花が一輪、写真も何も無い。
「前は写真立てがあったんだが、濡れるからしまったんだ」
なんでもないように古寺に説明する。しかし、それは本末転倒である。写真が本体ではないのか。
「台所にあるのは水が汲みやすいからなんだってさ」
米屋は付け加える。
「秀次って大雑把なとこあるよな」
三輪はムッとした。
「こういうのは気持ちだ」
さらに米屋が混ぜっ返そうと口を開けたとき、ピンポンとインターホンが鳴った。モニターを見る。
「弾バカだ」
A級一位太刀川隊の天才シューター出水公平である。彼は三輪と米屋の通う第一高等学校の同級生でもある。彼も参加することはあらかじめ聞いていた。
しかし、
「なんで太刀川さんまで」
一緒にモニターをのぞいた三輪はあからさまに嫌な顔をする。隊長はこのボーダー一位のアタッカーが苦手なのだ。
『餅を持ってきたぞ』
モニターの向こうでレジ袋を振っている。
「ごめんなさい。太刀川くん、私が話したから、羨ましかったのね」
月見が奥の椅子から立ち上がってやってくる。月見と太刀川が幼なじみの関係であることを三輪隊の誰もが失念していた。
「どうする? 三輪くん」
暗に追い返してもいいと提案するオペレーターに三輪はため息をついた。
「材料も持ってきたみたいですし、いいですよ」
「あんた、たこ焼きに入れるってわかってて、なんで、でかいまま持ってくるんだ」
「これしか、売ってねえもん。それにチンすりゃいいだろうと思ったんだ」
「レンジなんてない」
「普通、あるだろ。おまえ、弁当温めないのか?」
「コンビニで温めてもらうから必要ない」
「や、ちゃんと切りますから大丈夫ですから!」
古寺は隊長二人に挟まれて泣きそうである。古寺が餅を細かく切るのに苦労しているのを見た太刀川が俺がそういうの得意と言い出し、三輪があんたがやったらまな板も切れると断って、太刀川が反論して今に至る。
「太刀川さぁん、そろそろ焼きますよぉ」
出水が助け舟を出す。
「おう」
太刀川がのっそりとキッチンを出ていって、古寺はほっとした。
「俺が切っておくから古寺も行ってこい」
三輪に促される。
「先輩はいいんですか?」
「…俺は疲れたから休んでる」
冷蔵庫から買い出しのジュースをひとつ取り出して栓を開けた。
早速チョコを入れようとする奈良坂を抑えて、最初の四十個は全て蛸である。正統派だ。このあともチョコを始めとして、様々な材料が控えている。ネギと天かすを上から振る。たこ焼き用のピックは人数分買ったので全員が持っている。
最初の一口はもちろん月見へ。三輪もペットボトルを持ったまま、キッチンから眺めている。
大騒ぎを伴って作成されたそれはパラリと青のりが振られ、かつお節が踊っている。
月見は品よく口に運んだ後、熱さに苦戦しながらひとつを食べ終わり、
「とても美味しいわ」
と、頬に手を添え微笑んだ。
(終わり)
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【小説】非・登校 (中)
※『非・登校』(上)はこちら (https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/766014791068319744/)
静まり返っているアパー���の駐車場に砂利の音を響かせながら、ママが運転する車は細い路地へと出て、遠慮がちな速度でそろそろと、僕が普段なら歩いている通学路を走り始める。
桜並木に繋がる道の角、いつもならそこにクラスメイトのハカセとボーロ、そのふたりが立っているはずだが、今日は誰もいなかった。家を出る前、ママが携帯電話でふたりの母親それぞれと話していたことを思い出す。ハカセもボーロも、きっと両親のどちらかが、車で学校まで送ることになったのだろう。
学区内にある、あるアパートの一室で、変死体がふたつ見つかったというニュースがテレビで放送されたのは、昨日の昼のことだった。死体のひとつは、そのアパートに暮らしている中年の男。そしてもうひとつは、小学生の女の子。彼女は僕と同じ小学五年生で、同じ学校に通う、同じ五年二組の、ナルミヤだった。男も、ナルミヤも、どうやら殺されて死んだらしい。そして殺した犯人は、まだ捕まっていない。
昨日、給食を食べた後、僕たちは午後の授業がなくなり、全校児童が集団下校となった。そして翌日の今日、登校する際は保護者が学校まで児童を送迎するように、と学校から連絡が回った。だからこうして僕は、学校までの道のりをママの車に揺られている。
ナルミヤは昨日、学校を休んでいた。おとといの月曜日もそうだった。いつも朝早く登校して来る彼女の席が八時になっても空っぽなのを見て、「あ、ナルミヤは今日休みなのか」と思っていた。朝の会で行われた健康観察で彼女の名前が呼ばれた時、担任の先生は「今日は、ナルミヤさんはお休みです」と言っていた。昨日の火曜日もそうだった。学校を休む時は、朝八時までに学校に保護者が連絡しなければいけないことになっている。だから、先生がそう言うということは、彼女の両親から学校に連絡があったのだと思っていた。
だけどナルミヤは死んでいた。殺されていたのだ。いつ殺されたのかは、知らされていない。もしかしたら、月曜日にはもう死んでいたのかもしれないし、火曜日の朝までは生きていたのかもしれない。
昨日の昼、給食を終えて昼休みを楽しもうとしていた僕たちに、ナルミヤが亡くなったこと、彼女が事故や病気ではなく、殺されて亡くなったらしいこと、その犯人が未だ捕まっていないこと、そんなショッキングなニュースを伝え、僕たちに下校の準備をするように伝えた担任の先生は、ひどく青ざめた顔をしていた。
だから僕は、そのニュースの内容よりも、先生の様子に驚いてしまった。いつも明るく朗らかで、僕たち五年二組を導いてくれていた先生も、今回のことばかりは、どうしたら良いのかわからないようだった。しかしそれを表に出さないようにしようと努めていることさえもわかってしまうほどの困惑ぶりで、そんな先生を見ているクラスメイトたちも動揺していた。
友達のハカセはさっき食べ終えたばかりの給食を机に吐いていたし、校庭でドッチボールをしたがっていたボーロは、昼休みのチャイムが鳴るよりも早くロッカーから取り出していたボールを手から落としていた。ボールは床で何度かバウンドしたのち、教室の後方へ片付けられていた机たちの下へと転がっていったけれど、誰もそれを拾いに行くことはなかった。教室の中は凍り付いたかのように静かだった。やがて誰かが小さな声で、「嘘でしょ……」と言ったのが聞こえた。先生は少しだけ首を横に動かして、今伝えたことが何ひとつ嘘ではないということを、かろうじて僕たちに伝えた。
「ケイちゃん」
僕が窓の外、いつもと何ひとつ変わらない朝の通学路の風景を眺めながら、昨日のことを思い返していると、ママが唐突に声をかけてきた。
「大丈夫? 学校に行きたくなかったら、今日はお休みしてもいいわよ。ママが学校に電話しておいてあげる。リスコはあの様子じゃ、今日は学校に行くの難しいと思うし……。ケイちゃんも休んだっていいのよ」
車のルームミラーに映っているママは、両手でハンドルを握ったまま、真剣な眼差しで前だけを見つめていた。後部座席の方を見ている様子がなかったので、僕はただ首を横に振るのではなく、「ううん」と声に出してママに答えた。
「学校に行くよ」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「そう……」
そう言いながらも、ママはまだ悩んでいるようだった。
昨日、集団下校で妹と一緒に家に帰ると、出迎えたママは両目に涙を溜めていた。ナルミヤが殺されたというニュースに、彼女とクラスメイトである僕よりも、ママは動揺しているようだった。
そんなママを見たリスコは、たちまち表情を曇らせ、自室に閉じこもったまま、ダイニングに夕飯を食べに来ることもお風呂に入ることもなかった。気難しい僕の妹は、ヒステリックになっているママを見ることを何よりも嫌っている。僕はそんな妹の判断が正しいと思う反面、そんな僕たちの姿がママを悲しませているとも思う。
パパと離婚してからママは少しずつおかしくなっていって、夜にひとりリビングでお酒を飲んで、ワインの瓶を抱いたまま朝までソファーで寝ていたり、手料理をまったく作らなくなって、定期的に届く冷凍食品を順番に食卓に並べるようになったり、洗濯物がいつまでも畳まれることなく部屋の隅に山になっていて、僕たちはそこから衣類を取って着るようになったりしていた。使われることがなくなった掃除機は、僕と妹が交代でかけるようにした。
ママの変化に対して、僕よりもリスコの方が過敏に反応した。妹はママの言うことをほとんど聞かなくなり、ママが家にいる時間は自室にこもることが多くなった。学校に行くのは二日に一度、それも遅刻することなく登校できるのは三回に一回程度。ママが仕事へ向かうために家を出た後、やっと自室から出て来るからだ。
ママは、娘が閉じこもるようになった原因が自分にあるということを気付いている。そして妹も、実の母親のことを心から拒絶している訳ではない。だからリスコは自室の扉の鍵を常に開けておくし、ママはそんなリスコの部屋の扉を開けることはあっても、その中に踏み込むことは決してしない。それでも、ママは昔のようには戻らないままだし、リスコもママの前に姿を見せようとしないままだ。ふたりとも、解決策など見つからない袋小路に迷い込んだまま。そしてそれは、僕も同じだ。
ママに「しっかりして」と言うべきなのか、妹に「ちゃんとしよう」と言うべきなのか、ふたりともに言うべきなのか、僕は家族のために何をするべきなのか、何ができるのか、一体どうすれば、この状況を変えることができるのか、考えれば考えるほど、わからなくなってしまう。わからないからといって、何もしなくて良いということにはならないと、頭ではわかっているけれど、僕はまだ、何もできていない。もしもパパがいてくれたなら、どう行動しただろう。でも僕は、自分の父親がどんな人だったのか、もはや思い出せなくなっていた。
曲がり角でもないのに、車のウィンカーの音がして、うつむいていた僕は窓の外へと目線を向けた。ママが運転する車は、コンビニエンスストアの駐車場へと曲がって行くところだった。何か買い物をするのか、それとも、急にトイレに行きたくなったのだろうか。ルームミラー越しにママの表情を窺ってはみたものの、そのどちらでもなさそうだった。
「ケイちゃん、ちょっと、コンビニ寄って行こうか。何か欲しい物あったら、買ってあげるからね」
ママはそう言って、駐車場に車を停めると、さっさとエンジンを切ってしまった。「別にいいよ」と言おうか悩んだけれど、ママはあっという間に車から降りて行ってしまったので、僕も急いで車から降りることにした。
ママの後ろについてコンビニに入ろうとした時、ちょうど中から、買い物を終えた人が扉を押して出て来るところだった。僕は偶然にも、その人物を知っていた。同じクラスのヒナカワだった。
「ヒナカワ……」
「ケイタくん」
ヒナカワも僕に気が付いた。コンビニの入り口の前で見つめ合ったまま、黙ってしまった僕らを、ママは少しの間待っていたけれど、結局、僕たちをそこに残してひとりコンビニの中へと入って行った。
「ここ入り口の真ん前だから、ちょっと、そっち寄って」
ヒナカワが口を開いたのは、ママが雑誌コーナーの角を曲がって、その姿が外から見えなくなってからだった。僕たちはコンビニの正面から少し離れたところで向かい合って立った。
ヒナカワはTシャツとデニム姿で、僕のように学校の制服を着ている訳でもなければ、ランドセルを背負っている訳でもない。首から下げているタコのキーホルダーが付いた鍵だけが、普段教室で見ている彼女の姿と同じだった。
「ヒナカワ、今日、学校は?」
「行かないよ」
「どうして?」
「どうしてって……」
彼女は眉をひそめて僕を見た。そこで、僕は初めて、今目の前にいるヒナカワは、眼鏡を掛けていないのだということに気が付いた。
「だって、クラスメイトが死んだんだよ」
「うん……」
「殺されたの」
「うん……」
「だから、学校、行かなくてもいいでしょ」
「うん……」
返事をしてはいたが、僕はヒナカワの言葉の意味を今ひとつ理解できていなかった。でも恐らく、学校を休む理由に匹敵するには十分すぎるくらいの出来事に見舞われている、ということが言いたいのだろうな、と推測した。
「ヒナカワの……親は?」
「親?」
ヒナカワは右手に財布、左手にコンビニの袋を持っていて、袋の中には弁当が入っているようだった。周りに彼女の保護者らしき存在は見当たらず、どうやら、ひとりで買い物していたようだ。
「パパは夜勤から帰って来て、今から寝るとこ」
ヒナカワの右手に握られている、成人男性の所有物だろうなという印象の、黒くてごわついている重たそうな長財布に目をやりながら、僕はヒナカワの家には母親がいないのだということを思い出していた。そんな僕の目線を読み取ったのか、彼女は左手の弁当の袋を少し掲げて、「これ、私の今日のお昼」と言った。
「今、お昼ご飯買ったの?」
「だって、今から家に帰ったら部屋にこもってゲームするし。ゲームの途中でご飯買いに行くの面倒じゃん」
「ゲーム?」
「スタストだよ、スタスト。知らない? スターストレイザーってゲーム。ケイタくん、ゲームとかやらないんだっけ?」
「うちはゲーム禁止なんだ」
禁止、という言葉に、彼女は「オエッ」という顔をした。ヒナカワは筋金入りのゲーマーなんだって、ハカセが言っていたような気がする。
そういえば、ハカセもスタストというゲームを遊んでいると、以前、話していた。僕もボーロもテレビゲームであまり遊ばないから、詳しく教えてくれた訳ではなかったけれど、ハカセの口ぶりから、彼がそのゲームに夢中なのだということはよくわかった。
「スタストって、あれだよね、第八都市とか、なんとかドラゴンとか……」
ハカセが言っていたことを思い出しながら僕がそう言うと、ヒナカワは再び眉をひそめるようにして僕を見た。
「トチコロガラドンでしょ」
そう訂正されても、それが正しい名前なのかどうか、僕には判断ができない。
「そう……そのドラゴンがどうしても倒せないんだって、ハカセが言ってたんだ」
「キョウイチロウくんも探してるんだ、トチコロガラドンを倒す方法」
その時。そう言った時、ヒナカワはほんの少しだけ笑った。
「ケイちゃん、お待たせ」
コンビニの扉が開き、ビニール袋を手にしたママが出て来た。ママの顔を見た途端、ヒナカワは黙ってくるりと踵を返し、「じゃあね」とだけ言って歩き出してしまう。僕はそんな彼女の背中に何か言わなきゃいけないと思ったものの、上手く言葉にすることもできず、ただ見送ってしまった。僕はいつもそうだ。何をすれば良いかわからなくて、考えているうちに、時間だけが過ぎてしまう。
「やっぱり、今日は学校お休みしない? ママが学校に電話しておいてあげる。おうちに帰って、アイスクリームでも食べようよ」
ママはそう言って、コンビニの袋を左右に揺らして、かしゃかしゃと鳴らした。袋の中にはママがよく買ってくれる、いつものチョコレートアイスクリームが入っていた。
学校を休みたいとも、学校に行きたいとも、どちらも特別思っていなかった僕は、ママの提案に黙って頷いた。アイスクリームが食べたいとも思わなかったし、ママが思っているほど、僕はそのアイスクリームを好きじゃないけれど、それを伝えようとも思わなかった。
再び車に乗り込んで、ママの運転で来た道を引き返して行く。窓から、ヒナカワの姿を探したけれど、もう彼女の姿はどこにも見つからなかった。家に帰ったのだろう。家に帰って、今日は一日中、ゲームをするに違いなかった。
「ねぇ、ママ」
「なあに?」
「僕のパパって、どんな人だったんだっけ」
僕がそう尋ねた途端、ママの表情が凍り付いたのが、わざわざルームミラーに映るママの顔を確認するまでもなく、わかった。まるでこの車内だけが重力が強くなったかのように、空気が重苦しく感じる。
ママが僕の質問に答えることはなかった。こちらを見ることも、何か声をかけてくることもなかった。車のエンジン音、エアコンの音、ウィンカーの音、ブレーキの音、アクセルを踏む音。ママが運転をしている音だけが、僕の耳に届き続けた。
このまま家に帰っても、妹はさらに不機嫌になるだけだろうな、と思った。こんなママの姿を見て、部屋から出て来る妹ではないだろう。でもママが今こうなっているのは、僕の発した言葉のせいなのは間違いないから、リスコに申し訳なく思った。気難しい僕の妹は、謝ったところで許してはくれないだろう。
どうして僕は、いつもわからないのだろう。どうしたら良いのか、どうしたら良かったのか、わからないままだ。
ドアの内側にもたれるように、窓ガラスに頭を預けながらうなだれていると、視界の隅にさっき出て来たばかりの、僕たちのアパートが見えてきた。
と、いうのはすべて、僕の妄想だ。
現実の僕は、電車に揺られながら、窓から射し込む朝陽に照らされたナルミヤの影が床の上を滑るように移動しているのを見つめている。
彼女が乗って来る駅は、僕らの町と隣の町を分ける大きな川、その川を越えるための橋梁に差し掛かる手前にある。停車していた電車が駅を発ち、橋の前にある緩やかで大きなカーブを曲がる時、車両内の影たちが一斉に同じ方向へと動いていく。
車両に乗り込んでから、電車がその大きなカーブを曲がり切るまで、ナルミヤはいつも、入り口近くのバーを掴んだまま、突っ立っている。彼女が座席に腰を降ろすのは、いつも電車が橋梁に差し掛かってからだ。小学一年生の時、走り出した車両内を移動しようとして、よろけて盛大に尻もちをついてしまった記憶が、五年生になった今も、彼女の手をきつくバーを握ってやり過ごすように仕向けているらしい。
やっと歩き出した彼女は、他に空いている席もあるのに、なんのためらう様子も見せずに僕が座る座席の前にやって来て、今日も僕に尋ねる。
「おはよう、ケイタくん。隣、座ってもいいかな?」
「どうぞ」
どうぞご勝手に。膝の上に抱えているランドセルに顎を乗せたまま、いつものように僕はそう答える。
僕の座席は右隣も左隣も空席で、ナルミヤは僕の左側の座席を選んだ。僕と同じように、背負っていたランドセルを一度降ろし、膝に乗せて彼女は座った。
太陽に背を向けて座っている僕とナルミヤの影が、床にあった。その影の形から、今日はナルミヤの長い髪が左右に分けられ、それぞれ耳の上で結ばれているのだとわかった。僕は、その髪型をしている彼女があまり好きではなかった。
髪を結ばずにおろしている方が、僕は好きだ。透き通るような白い頬に、彼女の艶やかな黒髪が淡い影を作っているのを見つめるのが好きだ。だけどナルミヤは、最近髪を結ってばかりだ。だから僕は、最近彼女を見ると落胆してばかりいる。
「ケイタくん、今日の一時間目の国語は、漢字のテストだよ。勉強してきた?」
「してない」
「勉強しなくても、もう、ばっちり?」
「漢字ドリル、教室に置きっぱなしで、持って帰ってないから」
下を向いたままそう答えると、ナルミヤが僕の隣で小さく笑ったのが聞こえた。
「ケイタくん、いつも置き勉してるんだ、いけない子だね」
がたん、と。
電車が少し大きく揺れた。橋梁を渡り終わった時だった。窓の外へと目の向けると、川の水面が遠ざかっていくところだった。川岸に生える葦が堤防まで延々と続いている。毎日のように、登校の時に見る風景。
だけど、なぜだろう。僕はその時、これを見たことがある、と思ったのだ。この風景を、見たことがある。いや、当たり前だ。昨日だって僕は、今日と同じように電車で登校していた。先週だってそうだ。なのに、この既視感は一体なんだろう。まるで、夢の中で見たことが、そのまま現実世界に起こったかのような感覚だった。
目に映る風景に、大差はないはず。そうだ、目じゃない。視覚じゃないんだ。僕が既視感を覚えたのは。僕は聞いたことがある。ナルミヤのさっきの言葉を。
そのことに気付いた僕は思わず、隣に座っているナルミヤの顔を見ようとした。そのために左側を向いた。すると彼女は、僕を見ていた。まるで今、僕が向くのを待っていたみたいに、真正面から、その大きな瞳でじっと僕を見つめていた。目と目が合った、そう思った瞬間、僕は全身に電流が駆け巡ったような衝撃を受けた。
「なっ……」
思いがけず叫んでしまった。同じ車両にいる周囲の数人が不思議そうに僕の方を見て、何事もなかったとわかると、すぐに視線を逸らした。その間も、ナルミヤは僕を見つめたままだった。僕の目だけが、彼女に視線を合わせたり逸らしたり忙しくうろたえていて、そんな僕を見てもなお、ナルミヤの目線はちっとも動じない。
目を合わせていることがつらかった。耐えられない。いや、実際は耐えられないほどの苦痛など微塵も感じていないのに、それでも目線を合わせ続ける勇気がない。そう、勇気がなかった。ナルミヤと見つめ合うだけの勇気が僕にはない。そうやって見つめ合っているだけで、身体じゅうが燃えるように熱くなって、焼け死んでしまうような気がするのだ。別に、ナルミヤの瞳からレーザー光線が出ている訳でもないのに。
「な、なんだよ……」
僕はそう言いながら、膝の上のランドセルを抱え直すようにして前を向き、今までのようにうつむくしかなかった。そうすることで、僕の視界は元通り床だけになり、ナルミヤの目線から顔を背けることになる。それだけで、一気に跳ね上がった体温が、静かに下降していくように感じる。自分の顔が熱くなっていることを自覚した。耳まで赤くなっているかもしれない。ナルミヤはそんな僕を見て、どう思うだろう。変な人だと思うかもしれない。
ナルミヤはまだ僕を見つめているようだった。床に伸びている彼女の影は、横顔のまま動いていない。先程の、正面から僕を見つめるナルミヤの顔。白い肌、長い睫毛、ぱっちりとした瞳、ほんのり赤い頬と唇。左耳の上には、水色の水玉模様のパッチンヘアピンが留まっていた。彼女は小学一年生の時から、そのヘアピンを愛用してい���。視界には影が投影された床しかなくても、僕はナルミヤの顔を細かく思い出すことができる。眉毛の形、鼻の形、顎の形。彼女が目の前にいなくても、正確にその顔を思い出せるようになるほど、僕は彼女を見つめてきた。
「一緒に見る?」
ナルミヤは、唐突にそう言った。
「え?」
思わず、僕は訊き返す。
「漢字ドリル、学校に置きっぱなしなんでしょ? 私、今持ってるから、一緒に見る?」
横目でちらりと窺ったナルミヤは、まだこちらをじっと見つめているままだった。その表情は真剣そのものだ。
「…………いや、いいよ」
僕は再び電車内の床へと目線を落としながら、そう答えた。
「いいの?」
「うん」
「……そっか」
ナルミヤはそう言って、やっと正面へ向き直った。膝の上のランドセルを開けて漢字ドリルを取り出している。降りる駅に着くまでの間、ドリルを見返して漢字の復習をするつもりらしかった。
僕は隣のナルミヤにわからないように、本当に小さく、肩をすくめた。急に馬鹿馬鹿しく思えて、なんとも言えない空しさが込み上げてきた。僕は見つめ合うだけで、今にも爆発してしまいそうな気持ちになるのに、彼女は一時間目の漢字テストのことに、意識が向いているようだった。
漢字のテストが、なんだと言うのだ。テストと言っても、成績の評価に直接的に影響するようなテストではなく、今まで習った漢字の復習を皆にしてもらうのが目的ですと、先週、担任の先生は言っていた。テストの出題範囲に指定されたページは、あらかじめ見ておいたけれど、復習が必要なほど難しい漢字も特に見当たらなかった。たいしたテストではないのだ。なのに、ナルミヤは漢字テストの心配をしている。どうしてなのだろう、僕はそのことに、無性に腹が立っていた。
僕は、ナルミヤにも同じように、苦しくなってもらいたかった。人の不幸を願うなんて、褒められたことではないとわかってはいるけれど、それが僕の本心だった。ナルミヤに僕と同じ思いをしてほしかった。僕にとって彼女が特別であるように、彼女に僕を特別と思ってほしかった。でもナルミヤは、そんな僕の感情なんて知るはずもなく、隣で漢字ドリルを見つめている。
電車が止まった。いつの間にか、駅に着いたみたいだ。でもこの駅は、僕たちが降りるべき駅ではない。車両の扉が開いて、数人の乗客が降りて行く。代わりに乗り込んで来たのは、見慣れたクラスメイトだった。ヒナカワだ。
赤いランドセルを背負っているヒナカワは、こちらへと真っ直ぐ歩み寄って来て、僕の右隣の席へ何も言わずに腰を降ろした。
「おはよう、ヒナカワ」
「……ん」
ヒナカワは小さな声でそう答えた。漢字ドリルへ視線を落としていたナルミヤは、僕がヒナカワに声をかけるまで、彼女が電車に乗り込んで来たことに気付いていなかったようだ。顔を上げると、きょとんとした表情で、「あれ? おはよう、ヒナカワさん」と言った。ヒナカワは、それには返事をしなかった。
ヒナカワはランドセルを背負ったまま、座席に腰掛けていた。背中と座席の背もたれの間にランドセルがつっかえて、尻が半分くらいしか座席の上に乗っかっていないはずだが、彼女がそれを気にしている様子はなかった。
ヒナカワはどこかぼんやりした表情で、足元の方を見つめていた。毛先がいつもあちらこちらに跳ねている彼女の髪は、今日は一段と好き勝手に暴れているようだったし、掛けている眼鏡のレンズには指紋の跡がくっきりと付いたままになっていた。そばかすが散った顔をくしゃくしゃにするように、大きな欠伸をしている。寝不足なのか、目の下にはうっすら隈ができていた。
「ヒナカワ、眠いの?」
「んー……」
僕の質問に、ヒナカワは緩慢そうな動作で目元を擦りながら、そう小さくうなっただけだった。どうやら、相当眠たいらしい。
電車は再び走り出している。電車の揺れに合わせて、ヒナカワの頭が規則的に揺れている。彼女の瞳が開いていなければ、眠っているのだと思っただろう。薄暗い光を灯したその目が、ちらりと僕の方を見やった。
「あれ……?」
ヒナカワの細く開いた唇から、転げ落ちるように言葉が出て来た。
「生きてるの……?」
「え?」
僕は思わず、訊き返した。ヒナカワの瞳を見つめ返して気付く。彼女は、僕を見ていた訳ではなかった。僕の左隣に座る、ナルミヤを見ていた。
「死んじゃったんじゃなかった?」
「え……?」
「ああ、そうか……」
ヒナカワは眠たそうに目をこすった。
「それは、ケイタくんの妄想だったんだっけ」
ヒ���カワが何を言ったのか、わからなかった。僕は彼女の言葉の意味を理解することができなかった。
ナルミヤは漢字ドリルを眺めることに夢中になっていたらしい、そこでようやく顔を上げたようだ。電車の床に落ちている影から、彼女がヒナカワの方に顔を向けたのがわかった。
「うん? ヒナカワさん、なんの話してるの?」
「なんでもない」
ヒナカワはそう言うと、ナルミヤから目線を外した。先程までと同じように、自分の足元を見つめ続ける。電車の揺れに合わせて、また頭が揺れている。
ナルミヤは不思議そうに首を傾げているようだったが、それ以上何も話そうとしないヒナカワの様子を見て、再び漢字ドリルへと向き直った。そういう風に、床の影が動いていた。
僕はただ、床を見つめていた。
僕の妄想だと、ヒナカワは言った。まるで、僕の妄想の中でナルミヤが死んでいることを、知っているかのような口ぶりだった。
ナルミヤは、もう何度も死んでいる。彼女は数え切れないほどの死を迎えている。
たとえば、水泳の授業中にプールで溺れて死んでしまう彼女。学校の屋上から落下して死んでしまう彼女。横断歩道を渡る途中でダンプカーに撥ねられて死んでしまう彼女。校庭で遊んでいたら野良犬に襲われ噛まれて死んでしまう彼女……。
それらはすべて、僕の妄想の中における出来事だ。僕は彼女が死ぬところを、今まで幾度となく妄想してきた。
しかし、そのことを誰かに打ち明けたことはない。誰に話したとしても、僕は相手から異常者だという目で見られてしまうに違いない。僕はナルミヤと見つめ合う勇気もないくせに、彼女が死ぬところばかりを妄想してしまうのだ。どうしてなのかは、自分でもわからない。ナルミヤを見ていると胸が苦しくなってしまうから、彼女なんていっそ死んでしまえば良いと、心のどこかでそう思っているのかもしれない。
ヒナカワは、僕がしている妄想のことを知っているのだろうか。いや、知っているはずはない。そのことを誰にも漏らしたことなどないのだから。それは僕だけの秘密なのだ。だが、だとすれば先程の彼女の言葉は、一体なんだと言うのだろう。ヒナカワは、僕の秘密を知っているとしか思えない。ただでたらめを言って、それがたまたま合致したなんて、そんな偶然はありえない。
「ヒトシくんと、キョウイチロウくんは?」
「え?」
考え込んでいた僕は、突然のヒナカワの言葉に再び驚いた。彼女は相変わらず、うつむいたまま、自分の足元を見つめていた。
「ケイタくんが、ボーロとハカセって呼んでるふたりだよ。あのふたりは、一緒じゃないの?」
「一緒じゃないの、って、どういうこと……?」
「どういうことって…………」
訊き返した僕に、ヒナカワは不審そうな顔をした。眉間に皺が寄っている。
「ケイタくん、いつもそのふたりと一緒だったじゃない」
ヒナカワの声は、そう言いながらもだんだん音量が小さくなっていった。
ボーロとハカセ。それは僕の友達のあだ名で、僕たち三人は、学校ではよく一緒につるんでいる。昼休みに遊ぶのも、いつもこのふたりだ。だけど、「一緒じゃないの?」というのは、一体、どういう意味なのだろう。確かに、僕たち三人は、学校ではいつも一緒にいるけれど――。
「ヒトシくんは徒歩通学で、キョウイチロウくんはバス通学だよ」
そう答えたのは僕ではなく、漢字ドリルのページに目を凝らしているはずのナルミヤだった。
「私たちみたいに電車通学じゃないから、今は一緒にいない。そうでしょ、ケイタくん」
ナルミヤは凛とした声でそう言った。僕は振り向けなかった。僕は自分の右側に座る、ヒナカワを見つめたままだった。
「ヒナカワさん、なんでそんなこと訊くの?」
「……じゃあ、リスコちゃんは?」
「え?」
「ヒトシくんとキョウイチロウくんは電車通学じゃないからここにいない、それはわかったよ。じゃあリスコちゃんは? リスコちゃんはケイタくんの妹なんだから、同じ電車通学のはずでしょ? 見たところ、この車両にはいないみたいだけど。違う車両に乗っているの?」
「……ヒナカワさん、一体どうしたの?」
ナルミヤの声が、小さく震えていた。まるで怯えているみたいだった。
「ケイタくんに、妹なんていないよ?」
その言葉に、ヒナカワの瞳が見開かれる。
「ケイタくんは、ひとりっ子だよ? ねぇ、ケイタくん?」
僕はナルミヤの言葉に、頷こうとして――。
空をふたつに引き裂くような、咆哮が聞こえたのはその時だった。
電車が盛大なブレーキ音を立てながら大きく揺れる。緊急停止したその衝撃で、ヒナカワは座席から床へと転がり落ちていった。ナルミヤの身体もバランスを崩す。僕が咄嗟に受け止めなかったら、ナルミヤも座席から転がり落ちていただろう。
「大丈夫?」
僕の問いに、ナルミヤは小さく頷く。周囲の乗客たちも、予期せぬ衝撃にバランスを崩す人がほとんどだった。停止した車両のあちらこちらから、気遣う言葉や謝る声が聞こえる。
「ケイタくん……あれ、見て…………」
ナルミヤが、窓の外を指さしていた。僕はそちらを見る。同じように窓から空を仰いだのは、僕たちだけではなかった。同じ車両に乗り合わせている他の乗客たちも同様だった。そして全員が、「それ」を目撃した。
「それ」は破壊者だった。僕は一目見てそう思った。「破壊神」と呼ぶこともできるのかもしれないが、「それ」が神であるとは到底思わなかった。
巨大な身体は鱗と羽毛に覆われていた。顔には目玉が五つあった。八本の手足にはそれぞれ大きな鉤爪があるのが見えた。二対の翼で羽ばたき、「それ」は空に浮かんでいた。どのくらいの大きさなのかはわからなかった。しかし「それ」は、今まで見たことのある、宙に浮かぶ生き物たちの何よりも巨大だった。旅客機くらいの大きさがあるかもしれない。
「それ」がなんていう生き物なのかは見当もつかなかった。ただ、僕たちに友好的な生き物とは思えなかった。「それ」は破壊者だった。僕はそう思った。
「ケイタくん……あれ、何……?」
乗客の誰もが言葉を失っていた。窓から見える「それ」が現実だとは思えなかった。だからそう尋ねたナルミヤの言葉に、車両の誰もが答えられなかった。その、はずだった。
「トチコロガラドンだよ」
ヒナカワだった。彼女は立ち上がりながらそう言った。背負ったままだったランドセルが緩衝材となり、背中から床に落ちても無事だったようだ。見たところ無傷のようだったし、身体のどこかが痛そうな素振りもなかった。
ヒナカワが口にした耳慣れない言葉が、ナルミヤの問いへの答えなのだということに、僕は遅れて気が付いた。
「トチ……? 今、なんて……?」
「トチコロガラドン。わからないの? それも、ケイタくんの妄想のはずでしょ?」
吐き捨てるようにヒナカワはそう答える。
「あれはスターストレイザーってテレビゲームに登場する、敵モンスター。名前はトチコロガラドン。第八都市を見捨てることが、あのモンスターを倒すための唯一の方法だった。多くのプレイヤーが挑戦していたけれど、他の方法はまだ誰も見つけていない。少なくとも、ケイタくんの妄想ではそうだった」
僕の妄想?
ヒナカワは、一体何を言っている? あの巨大な怪物が、僕の妄想だと言うのだろうか。
違う、あんな怪物、妄想なんかしていない。
僕が妄想していたのは。
思い描いていたのは、ナルミヤが死ぬところだ。ナルミヤが、溺れて、あるいは落下して、もしくは撥ねられて、そうでなければ噛まれて、刺されて、潰されて、刻まれて、吊られて、焼かれて、埋められて、死ぬところ。ひどい目に遭って、可哀想な姿になり果てて死ぬ。そういう妄想だ。テレビゲームのことも、あの怪物のことも、都市のことも、怪物の倒し方も、僕は知らない。そんなこと、妄想をしたこともない。
「キョウイチロウくんは?」
ヒナカワがもう一度、そう訊いた。
「本当に、キョウイチロウくんはここにいないの? 彼は、トチコロガラドンを倒す方法を探していたはずだよ」
「キョウイチロウくんは、バス通学なんだってば……」
そう答えたナルミヤの声は、もはや涙ぐんでいた。
ヒナカワの瞳は、僕を見ていた。ナルミヤのことは一切見ていなかった。窓の外で二対の翼で羽ばたき、八本の手足を垂らし、五つの目玉をギョロギョロと動かしている怪物にも、見向きもしなかった。僕だけを見ていた。まるで彼女の世界には、今や僕しか存在していないかのようだった。
「リスコちゃんはどこへ行ったの?」
ヒナカワが僕を食い入るように見つめたまま、そう言う。
リスコ。誰だそれは。僕の妹。違う、妹なんかいない。いつも寝起きがあまり良くない、僕の妹。僕はひとりっ子だ。起こそうとすると噛みついてくる、気性が激しい妹。僕にきょうだいはいない。気難しく、繊細で、環境の変化に敏感なリスコ。そんな人、僕は知らない。
「ケイタくん、思い出して」
僕は、何かを忘れているのだろうか。
何か思い出さなければいけないことが、あるのだろうか。
僕は。
目が覚めたのは目覚ましが鳴る前だった。朝食はトースト、ハムエッグ、オレンジジュース。赤、青、白の歯磨き粉。エプロンをしているママ。背広を着ているパパ。時計が止まった部屋。ガスも止まった部屋。黄ばんだタオル。ベランダで吸った煙草。葉桜の桜並木。途中で寄ったコンビニ。ママがよく買ってくれるチョコレートアイスクリーム。
僕は。
床にできた血溜まりでヘアピンを拾った。水色の水玉模様のヘアピンには見覚えがあった。アパートの一室には死体がふたつあった。パパのくたびれた革靴は玄関にあった。ママはワインの瓶を抱いて眠っていた。ナルミヤは美人で、ヒナカワはブス。
僕は。
十二人の操作キャラクターと十二種類の使用武器。宇宙から飛来する巨大で不可思議な敵の倒し方は数十通り存在し、その選択によって物語は細かく分岐していく。しかし、どんな経緯を辿ったとしても、第八都市は必ず壊滅してしまう。第八都市を犠牲にしなければ、トチコロガラドンを倒すことはできない。
僕は。
一体、何を犠牲にしたのだろうか?
と、いうのはすべて、僕の妄想だ。
現実の僕は、プラコマティクス溶液が満ちた培養ポッドの中をぷかぷかと漂いながら、短い夢から覚めた時のような感覚を味わっていた。授業中、眠ってはいけないと思っていながらも、眠気に抗えず一瞬、かくんと身体が震えるようなその感覚に、学校に通っていた日々のことを懐かしく思う。
ほんの一瞬に過ぎなかった僕のその感覚は、ポッドに接続されている測定器にすぐさま検知され、実験室にはアラーム音が流される。それは、まるで居眠りしていたことを教師に告げ口されたかのような、そんな居心地の悪さだった。
「被験者番号百零七、ケイタが覚醒しました」
モニターの前でそう告げたのは、ナルミヤだった。僕のポッドと接続されている唯一の視覚デバイスは、彼女の後ろ姿を捉えていた。今日の彼女は、腰まである艶やかな黒髪をポニーテールにしていた。
「ケイタが起きたか」
そう答えたのは、ナルミヤの隣に佇む男だった。ナルミヤと同様に白衣を着ているようだが、僕の視覚デバイスである小型カメラでは、その男の細かい風貌まではわからない。しかしその背格好から、恐らくは、ナルミヤが「博士」と呼ぶ男に違いない。
この実験室にいるのは、ナルミヤとその男、ふたりだけだった。たくさんの培養ポッドが並べられ、機器に接続されていた。ふたりはモニタ��に映し出される各ポッドの数値を見ているようだった。
「ケイタはずいぶん奇妙な夢を見ていたようだな。現れた波形も妙だ」
男はモニターを覗き込み、何やら感慨深そうに頷いている。ナルミヤはバインダーを手に、用紙に何か記録しているようだった。ペンを持っている右手が小刻みに動いている。
「覚醒には至らないが、半覚醒状態を何度も経験している……。わかるかねナルミヤくん、波形の、ここ、この部分だ。ここも、ああ、ここもそうだ。この波形の動きは、覚醒時に見られる形と全く同じだと思わないか。しかしこの程度の数値の変動では、覚醒とは呼べない。疑似的な覚醒状態を睡眠中に何度も体験しているということだ。夢の中で夢を見ている、とでも言えばいいのか……」
「ええ、博士。これは番号百零七にのみ現れる、彼特有の波形です」
「ふむ……。君が先週の報告書に記載していたのは、まさしくこの件だった訳だ」
男はモニターから目を離さないまま、腕組みをした。また、ひとりで何度も頷いている。
「ナルミヤくん、君は一体いつ、この波形に気が付いたのかね?」
「最初に疑念を抱いたのは三週間前のことですが、記録を確かめたところ、およそ八週間前から兆候はありました」
ナルミヤの凛とした声は聞いていて心地が良かった。僕のポッドに接続されている聴覚デバイスは、彼女の音声を捉えること、それ自体を喜びだと認識しているのではないかとさえ思う。もちろん、デバイスはただ機械的に音を捉えているだけに過ぎない。
「過去のデータは?」
「こちらです」
ナルミヤが端末を操作すると、モニターの表示が切り替わった。
「八週間前からのデータがこれか?」
「そうです」
「ずいぶん滑らかに数値が動いているな……いや、新しい記録になればなるほど、乱れが出てきている」
「乱れ、ですか?」
「そうだ。先程のデータで言うと、この、覚醒直前のところに最も顕著に出ている。ほら、数値が突然、跳ね上がっている箇所があるだろう」
「確かに、一度は上昇していますが、またすぐ元の数値に戻っていますし、その程度の振れ幅は誤差の範囲内のはずですが……」
そう言うナルミヤの横顔。多少、眉間に皺が寄ってはいるが、そんなことがまったく気にならないほど美しい、整った造形。
「確かにこれは誤差の範囲だ。しかし見なさい、八週間前のデータには、そんな誤差さえもない。数値の上昇と下降は常に一定の波を描いている」
男はモニターばかりを見つめている。ナルミヤの美しさになど、少しも気に留めている様子がない。
「この誤差とも言える『乱れ』は、徐々に増えてきている。これは一体、何を表しているのか、それが問題なんだ……」
男は、それからしばらくの間、黙ったままだった。ナルミヤはそんな男を見つめていた。まるで、男が何かの答えを口にするのをじっと待っているかのように見えた。
もしも、あんな風に見つめられたら。そう想像するだけで、震えそうだった。きっと僕はナルミヤに見つめられたら、何か答えに辿り着いたとしても、それを彼女に伝える勇気など持たないだろう。彼女を前にして、伝えられる言葉など、いずれもたいした価値を持たない。何を発しようとも、彼女の前では敵わない。僕の存在など、あまりにも無力だ。彼女の瞳には、それぐらいの力がある。
だから僕は、「博士」と呼ばれる男がナルミヤを前にして平然としていることが不思議でならなかった。彼女の声を直に聞き、その瞳に見つめられ、すぐ隣に彼女の存在があっても、動じないのはなぜなのだろう。あの男はよほどの異常者に違いなかった。人として必要な感覚器官が欠けているとしか思えない。彼女の魅力を感じることができないとしたら、それは五感があったとしてもなんの意味もない。目も、耳も失っている僕が、接続されたデバイスを通じてのみでさえ、ナルミヤの存在にこれほど感銘を受けているというのに。
「博士、八週間前は、新しい被験者がここに運ばれて来た時期とちょうど合致します」
沈黙を破ることをどこかためらうように、ナルミヤは囁くようにそう言った。
「新しい被験者……?」
「被験者番号百十三、ヒナカワです」
男が振り返った。並べられている培養ポッドを見ているのだ。僕が漂っている培養ポッドの六つ隣、ヒナカワの脳味噌が浮かんでいるはずのポッドを。僕に接続されている視覚デバイスが男の顔を捉える。男は眼鏡を掛けていた。そのレンズが照明を反射していて、表情はよくわからない。
「ヒナカワ……この被験者がここに来てから、ケイタの波形に変化が現れ、疑似的な覚醒を繰り返すようになった……と、いうことなのかね」
ナルミヤは頷く。
「因果関係はわかりません……ただ、番号百十三が来た時期と、番号百零七の波形に変化が生じた時期が合致する、というだけです」
「他の被験者の波形は? 変化は見られないのかね」
「二十週間前から遡ってデータを確認してみましたが、特には……」
「ふむ……。このふたりの被験者たちだけが特別、という訳か……」
男の顔の角度が少しばかり変わった。照明を反射していた眼鏡のレンズの向こうに、男の瞳が見えた。その瞳は暗い闇を湛えたように虚ろで、しかし、目線は鋭かった。
「このふたりの共通点はあるのかね?」
「あります。出身地です」
「出身地か……。どこの出身なんだ? ケイタとヒナカワは……」
「第八都市です」
ナルミヤは手元のバインダーに挟められている用紙を二、三枚めくりながら答えた。男は一瞬、それを聞いて言葉に詰まった。
「第八都市……そうか、このふたりは……あの壊滅した街の、生き残りという訳か……」
「被験者の中で、第八都市の出身者はこのふたりだけです」
「生き残った者同士が……被験者同士が、なんらかの影響を及ぼしているということかもしれないな……」
男はひとり、小さく何度も頷きな��ら、再びモニターへと向き直る。
「ナルミヤくん、君はもうしばらく、観測を続けてくれ。私は検証してみたいことがある」
「わかりました」
「何か異常が出たら、すぐに知らせてくれ」
「ええ、すぐにご連絡します」
男は実験室を出て行った。ひとりとなったナルミヤは、モニターと手元のバインダーの書類を見比べながら、端末の操作を始める。
ヒナカワが僕に話しかけてきたのは、その時だった。
――ケイタくん、聞こえる?
それは突然、背筋を指でなぞられた時のような不快感だった。僕に肉体があったら、大きく震わせて驚いていたことだろう。しかし、今の僕には身体がない。触覚と呼べる物もない。あるのは、プラコマティクス溶液に浮かぶ脳味噌だけだ。接続されている視覚デバイスと聴覚デバイスから、外部から映像と音声を取り込んで感知することがかろうじてできているけれど、それは僕の肉体を通してではなく、カメラとマイクが検知したデータが電子刺激となって脳で感じているだけに過ぎない。
しかし僕は、ヒナカワの声を感じるのだ。デバイスを通じてではなく、自分の肉体で、つまりは脳で直接、ヒナカワが僕に語りかけてきているのを感じている。
――ケイタくん、思い出した? 私たちはトチコロガラドンに襲われて、でもかろうじて生き残ったの。家族も、友達も、先生も、皆死んじゃった。街は壊滅状態になってしまった。私たちだけがこうして助かったの。
直接感じさせられている、ヒナカワの声は不快だった。聞いているだけで、身体じゅうを虫が這い回っているかのようだった。そんな経験をしたことは一度もないけれど、そうだとしか言いようがなかった。それは、ヒナカワを嫌悪しているという訳ではなく、恐らくは、他人が僕自身に直接入り込んでいる、そのこと自体の気味の悪さだった。
――ケイタくんが今までしてきた妄想はすべて、現実から目を逸らすためのものだったの。ケイタくんはトチコロガラドンのことも、第八都市が滅ぶことも、全部ゲームの中のことだと思うことにして、自分は普通に、普段通りに学校へ行って、生活しているんだと思い込もうとしていたの。それは卑怯なことなんかじゃないよ、ケイタくんの心を守るためには、必要なことだったの。
耳を塞ぐことでその声が聞こえなくなるのであれば、どんなに良かったのだろう。しかし僕には耳もなければ、声を遮るための両手もない。聴覚で感じている訳ではないその声を、聞こえないようにする手段はない。衣服をすべて剥ぎ取られ、陰部を撫で回されている。そんな不快感で僕は死にたくなっていた。
――でもケイタくん、そろそろ目を覚まして。私たちに起こったことを思い出して。現実と向き合って。私たちは身体を取り戻さなくちゃいけないの。そのためには、トチコロガラドンを倒さないといけない。
もはや僕の五感はすべて、ヒナカワに支配されていた。全身でヒナカワを感じていた。僕には耳も目も鼻も舌も皮膚さえもないというのに、そのすべてで彼女の存在を感じていた。彼女以外に何ひとつ、感じられる物がないと言ってもいい。この世界にはヒナカワしか存在していないのかと思うほど、すべてが彼女だった。
僕は彼女の白い肌を見た。鼻先にまで迫って来た彼女は、良いにおいがした。口の中にねじ込まれた「それ」は温かくて柔らかく、舌は微かな甘さを感じた。肌と肌が触れ合った。彼女の身体は僕よりも体温が少しばかり低かった。
彼女が僕の中に侵入して来たのを感じた。それを受け入れたつもりはなかった。しかし、抵抗する術もなかった。
――わかるでしょ、ケイタくん。私と力を合わせるの。一緒にトチコロガラドンを倒す。そのためには、こうするしかない。私たちは、ひとつになるの。
僕の中から、彼女の声が聞こえた。彼女は僕の中に侵入し続けていた。脳で感じられるところよりもずっと奥深いところまで、彼女が注がれて、満ちていくのがわかった。もはや彼女は液体で、僕はただそれを受け入れる容器だった。
――私と一緒に戦って。ケイタくん、お願い。
彼女の声は、どこか涙で潤んでいるように聞こえた。
その時だった。
彼女は短い悲鳴を上げて、僕の中から一瞬で消え失せた。
何が起こったのか。正常を取り戻した聴覚デバイスが実験室に鳴り響くアラームを捉えたが、それがなんの警告音なのか、すぐにはわからなかった。僕のすべてを支配していたヒナカワは、今はもう影も形もない。僕の視覚デバイスはモニターの前のナルミヤを捉えた。ナルミヤの右手は何かのボタンを押したままになっている。それが「緊急停止」のボタンであると、かろうじてわかった。どうやらナルミヤが、ヒナカワの侵入を阻止してくれたことは間違いなさそうだ。
ナルミヤは振り返った。僕を見ていた。僕の脳味噌が浮かんでいる、プラコマティクス溶液で満たされた培養ポッドを見つめていた。僕の視覚デバイスはナルミヤの視線の先にはない。だから、彼女がいくら僕の脳味噌を見つめても、目線が合うことはない。しかし、それで良かったのかもしれない。僕はナルミヤと見つめ合ったりしたら、正気を保っていられる自信がなかった。
「ヒナカワさんの培養ポッドを停止させたよ、ケイタくん」
ナルミヤはそう言った。それは凛とした声だった。
「再起動の処置をしなければ、ヒナカワさんの脳は機能停止に陥るよ。もって、あと五分ってところかな。そしたら、ヒナカワさんは死ぬの。もう二度と、ケイタくんの邪魔をすることもない」
ナルミヤは僕を見つめていた。目も耳も鼻も口も舌もない、手も足も何もない、ただ脳味噌でしかない僕を見ていた。
僕は視覚デバイスを通して、そんなナルミヤをただ眺めているしかなかった。僕はずっとそうだった。ナルミヤと同じ教室で過ごしていた、あの頃。当時から、僕は彼女を見つめていた。その横顔を、あるいは後ろ姿を。僕の目線はいつだって彼女のことを探していた。近くから、もしく���遠くから、彼女を見つめていた。今と同じだ。五体満足だった頃から、脳味噌だけになった今と変わらない。
あの時と同じだ。薄暗い台所の入り口に立ち尽くしていた、あの時。床に広がっていく赤い水溜まりの前で、僕は手を貸すことも叫ぶこともしなかった。何もせず、ただナルミヤを見ていた。汚れた鈍い銀色。水玉模様のヘアピンが落ちて、乱れた黒髪が横顔を隠していた。あの時、泣いていたのだろうか、それとも。今となってはわからない。あの時と、同じ。
実験室には警告音が鳴り続けていた。ヒナカワの気配はもうどこにも感じられなかった。ナルミヤがポッドを再起動させる様子はない。やがて、ヒナカワの脳は停止するだろう。
「私がケイタくんを守ってあげる。だから大丈夫。何も心配いらないよ」
ナルミヤの言葉はどこか厳かに響いた。彼女は微笑んでいた。それはどこか、神聖さを感じさせる笑みだった。彼女は天使みたいだった。女神なのかもしれなかった。
僕は夢の中にいる時のように、不思議な気持ちでナルミヤの言葉を聞いていた。
彼女は一体、何から守ろうとしてくれているのだろう? 誰かが、あるいは何かが僕を脅かそうとしているのだろうか。実際のところ、僕は何ひとつ、心配などしていなかった。たとえ僕の身がどんな不幸に見舞われるとしても、僕以外のすべてのものがどんな事態に陥るとしても、遠い国で戦争が始まったというニュースをテレビで見た時のような、ただ「そんな感じ」でしかなかった。 培養液にぷかぷかと浮かぶ脳味噌だけの僕にできることなんて、何もないのだから。
※『非・登校』(下) (https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/766016265929310208/) へと続く
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大学会館の裏の展示スペースの、その淡い青みがかった透明なガラス張りの壁の、そのむこうに見える環状道路の、おそらくは十メートルはゆうに越えているだろうプラタナスの並木と、その枝から盛んに舞い落ちる小鳥ほどの大きさの枯葉と、その下を通り過ぎていく何台もの銀色の自転車を、今はもうその街を離れて故郷に帰り小さな会社で仕事をしていてその街との関わりなどもはや本当になにひとつもっていないはずなのに、ふと顔をあげた拍子に窓のむこうで上下にゆれている櫟の枝を目にした途端、まるで茶をそそぎ入れた瞬間に陶器の中でやおら開き始めてたちまち匂いやかに咲く水中花のように、わたしは思い出す、枝から盛んに小鳥ほどの大きさの枯れ葉を舞い散らせている巨大な丈高いプラタナスの並木がそびえ立つ環状道路は、その大学会館の裏の展示スペースのあたりで陸橋になっていて、それというのも秋になるたび黄金いろに燃える葉を空にむけて突き上げる公孫樹の並木がえんえんと続く東西に伸びて大学を横断する通りがそのあたりでちょうど環状道路と直角に交差するからなのだが、その陸橋を南に下りてすぐのところにある陸橋の下にぐるりと回り込む小さな道を進むとサークルの先輩が住むアパートがあってそのアパートで夜な夜な飲み会(その頃はまだ二十歳を過ぎたばかりでウイスキーというものがもの珍しかったものだからとにかくいろんな種類のウイスキーを飲んでみたい一心でわけもわからず片っ端から飲んでいった、ジョニーウォーカー、バランタイン、シーバスリーガル、ジャックダニエル、ワイルドターキー、フォアローゼス、カティサーク、ブッシュミルズ…… ウイスキーの固有名詞はわたしをふしぎと陸橋の下にぐるりと回り込む小さな道を進んだところにあるアパートの一室へとひき戻す)をしたものだったけれど、先輩の部屋は大学生向けのよくあるワンルームの八畳ほどの部屋で玄関のドアを開けるとすぐ左手がキッチンで右手が浴室とトイレのドアになっていてその間の細長い狭い空間を抜けると居室で、その居室は南が窓で西と東は天井まで続く大きな本棚になっていてその本棚にはぎっしりと本が収納してあって先輩これ全部読んだんですかとわたしが訊くとそんなわけないじゃないですかと先輩は言うのだったが、その先輩は普段は同期や後輩に対してはタメ口なのになにか皮肉めいたことを言うときだけ敬語になる癖があったからこの場合のそんなわけないじゃないですかはもちろん全部読んであるということなのだった(その先輩とはもう長いこと連絡を取っていなくてたしか最後に連絡を取ったのは今から五、六年前のことだったはずで、あの頃はあんなにも多くの本をあんなにも情熱的に読んでいたはずの先輩は結婚し公務員になっていて、ざまもなく脂下がった顔でいやあこの齢になると本を読む暇もなくてね、あの頃の本もみんな捨ててしまったよ、今から思えば本なんて読んでもなんの役にも立たなかった、あの時間を使って資格の勉強でもしておけばよかったと心から思うよ云々とのたまってわたしを幻滅させた)、有名な建築家が建てたというコンクリート打ちっぱなしのおよそ飾り気というものがない塔は栓抜きの形によく似ているから栓抜きタワーと呼ばれていて、栓抜きタワーは松見公園というその名の通り松ばかりやたらと植えてある公園の池の中央に建っていたのだが、この公園には街を南北に真っ直ぐ貫いて街の背骨のように長く続くペデストリアンデッキが通っていたこともあって街の人々はいつもいやおうなくこの公園を通り過ぎなくてはならずしたがって自然と栓抜きタワーも毎日見ることになった、その栓抜きタワーのある松見公園と一本道を隔てた反対側はこの街唯一と言ってもいいだろう繁華街になっていてそのあたりは住所としては天久保一丁目で、もちろん繁華街といってもごくつつましやかなものでほんの何軒か風俗店やキャバクラがあるだけであとは居酒屋やバーやスナックやカラオケや中華料理屋があるくらいなのだが、鶏の骨がそのまま溶け込んでいるのではないかと思うほどに濃密などろりとした鶏白湯スープに整然と折り畳まれて盛りつけられた小麦の香りがにおい立つかのような中太麺、淡い桃いろがかった赤身と真っ白い脂身が幾重にも連なり地層を描く豚肉の叉焼の上におそらくは無塩バターとパセリとエシャロットとにんにくを混ぜ合わせて冷やし固めてから四角く切り出したのであろう黄いろがかったクリーム色にパセリのさわやかな緑いろが入り混じったエスカルゴバターが載せてある一風変わった拉麺が食べられる店は天久保一丁目の路地を少し入ったところにあってその拉麺を食べるためだけに幾度となくこのあたりまで足を運んだものだった、その拉麵屋の隣りのとなりはふくろうという美味い焼き鳥を出す居酒屋でその居酒屋も好きでよく訪れていたのだが、ペデストリアンデッキを南にむけてもう少し下ったところにある中央公園の一画は文化会館アルスという図書館と喫茶店とコンサートホールと展示場の複合施設になっていて、そのアルスで開かれていた大学院の卒業制作展で見た作品に感動し連絡を取ったところ意気投合し友達になったMさんとそのふくろうという居酒屋を訪れたら折あしくなにかの祝賀会と重なって店に入れなかったことがあって、そのときは松見公園に面した居酒屋というには小洒落ているがバーというには騒がしいなんだかよくわからない店に仕方なく入ったのだが、その店ではなぜかくり返し何度もディズニーの子どもむけのコメディ映画が流れていて、わたしとMさんはピーナッツをかじったりビールを飲んだりよしなしごとを話したりしながら夜が更けるまでそのコメディ映画をながめ続けていた。
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■令和3年9月新規内装リフォーム完成!クロス全室新品です♪
『■令和3年9月新規内装リフォーム完成!クロス全室新品です♪ ■閑静な住宅地に92m2以上の室内です!南東角部屋で気持ち良く新生活を♪ ■人気の対面式キッチン♪コンロ・換気扇も新品交換済みです! ■和室の畳、襖などもすべて新品で井草の良い匂いが漂います♪ ■学校、スーパー、ドラッグストア、コンビニ等生活施設が徒歩圏内でとっても便利♪ ■専用庭付きなので大切なペット飼育(細則有)も一緒にお引越しができますよ♪ お問い合わせはもちろん、その他ご質問等も大歓迎です。ぜひお気軽にスタッフにお問い合わせくださいませ。 物件概要 マンション名 ライオンズヒルズ新八柱弐番館 所在地 松戸市牧の原1丁目 交通 武蔵野線「新八柱」駅徒歩13分 引渡時期 即時 専有面積 92.74m² 建物構造 鉄筋コンクリート造6階建て 所在階 1階部分 築年月 2003年2月築 新築・中古 中古 間取り 3LDK 間取り詳細 現況 空室 土地権利 所有権 用途地域1/2 / 駐車場 管理形態 全部委託 管理費 14,700円/月 その他費用 取引態様 媒介 内装リフォーム年月 2021年9月 外装リフォーム年月 小学校区 小学校区:松戸市立牧野原小学校 距離:270m 中学校区 中学校区:松戸市立牧野原中学校 距離:1400m 設備 都市ガス 東京電力 公営水道 排水(下水) #松戸 #松戸マンション #松戸中古マンション #松戸不動産 #松戸3LDK #牧の原小学校 #牧の原中学校 #八柱駅近くにあります #ペット可マンション #ペット可マンションに引っ越したい #不動産業 #不動産仲介 #不動産仲介業 #不動産売買 #不動産相談 #不動産購入 #マイホーム #マイホーム計画 #マイホーム購入 #マイホーム計画中の人と繋がりたい #マイホーム検討中の方と繋がりたい #ピタットハウス #ピタットハウス松戸 #ピタットハウス松戸6号店』
■令和3年9月新規内装リフォーム完成!クロス全室新品です♪ ■閑静な住宅地に92m2以上の室内です!南東角部屋で気持ち良く新生活を♪ ■人気の対面式キッチン♪コンロ・換気扇も新品交換済みです! ■和室の畳、襖などもすべて新品で井草の良い匂いが漂います♪ ■学校、スーパー、ドラッグストア、コンビニ等生活施設が徒歩圏内でとっても便利♪ ■専用庭付きなので大切なペット飼育(細則有)も一緒にお引越しができますよ♪ お問い合わせはもちろん、その他ご質問等も大歓迎です。ぜひお気軽にスタッフにお問い合わせくださいませ。 物件概要 マンション名 ライオンズヒルズ新八柱弐番館 所在地 松戸市牧の原1丁目 交通 武蔵野線「新八柱」駅徒歩13分 引渡時期 即時 専有面積 92.74m² 建物構造 鉄筋コンクリート造6階建て 所在階 1階部分 築年月 2003年2月築 新築・中古 中古 間取り 3LDK 間取り…
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2023-10月号
アンビグラム作家の皆様に同じテーマでアンビグラムを作っていただく「月刊アンビグラム」、主宰のigatoxin(アンビグラム研究室 室長)です。
『アンビグラム』とは「複数の異なる見方を一つの図形にしたもの」であり、逆さにしたり裏返したりしても読めてしまう楽しいカラクリ文字です。詳しくはコチラをご参照ください⇒アンビグラムの作り方/Frog96
◆今月のお題は「ヒーロー」です◆
今月は参加者の皆様に「ヒーロー」のお題でアンビグラムを制作していただいております。 古今東西のヒーローにまつわる逆さ文字の数々をご覧ください。
「勇者」 回転型:peanuts氏
勇者といえばヒーローの筆頭ですね。ゲームだけではなく神話においても英雄としての勇者は数多く語られています。 全体を斜めにすることで「勇」のパーツのずれの違和感を和らげています。正統派で王道を行く作品だと思います。ペンで書いたような作字もステキです。
「正義」 回転重畳型:いんふぃにてぃ氏
正義こそヒーローの行動原理ですね。正義の反対はまた別の正義、という言葉もあり、真実と同じような意味合いを持つ言葉かもしれません。 「正」「義」それぞれを回転重畳型にしています。「回転重畳型×2」として並べることもできましたが、縮尺を変えることで一つのアンビグラムにまとめ上げているのが作者の工夫ですね。
「英雄」 回転型:海氏
ヒーローは日本語で「英雄」ですね。 英雄という言葉にまつわる作品はいくつか寄せられましたが、まず正統派の回転型です。字画密度の差は「厷」を中心に据えて解決、字画の角度を一定のルールに揃えることで読みやすくまとまっています。
「必殺技」 図地反転回転型:いとうさとし氏
ヒーローならば必殺技の一つや二つ使いたいものです。 見事な「殺」を中心に読みやすい図地反転アンビグラムに仕上がっています。ドット表現がゲームにマッチしそうで、必殺技を決めるヒーローの背景で光らせたくなるデザインです。
「自己犠牲」 図地反転型:梅氏
自己犠牲の精神はよくヒーローと共に語られますね。 こちらのデザインは「犠牲」のほうに字画の区切り線があるため完全な図地反転の関係にはなっておりません。その意味で純粋なアンビグラムではないのですが、アンビグラム的表現の一つとして面白いデザインになっており作者の工夫が光っています。
「大活躍」 回転型:lszk氏
ヒーローならば大活躍が確約されているものなのか、大活躍したからヒーローなのか。 氏には久しぶりに作品を寄せていただきましたが、相変わらずデフォルメした形状による作品が絶妙に読めるバランスで素晴らしいです。本作では翼のような形状が万能ですね。
「ひろいんとひいろう」 旋回型:kawahar氏
ヒーローとともによく語られるヒロインですが男女の違いだけではなく非対称性がある点は興味深いところ。 氏は多面相旋回型を得意としていますが本作でも六面相に仕上げていて感心します。鏡像と回転により文字が変化する、バランスの調整具合をご覧ください。
「スーパーヒーロー」 回転型:lszk氏
スーパーヒーローは主にフィクションで超自然的な力を持つヒーロー。人により思い浮かべるスーパーヒーローも違うでしょう。 デザインとしては中央に力が集中していくかのよう。後半「ーロ」の部分の重ね処理を自然に見せるため「パーヒ」の部分も重ね処理をしており、文字列の配置が絶妙です。
「英雄/色を好む」 振動型:ヨウヘイ氏
「英雄色を好む」とは「英雄は活力にあふれ何事にも精力的に活動するため女性関係も積極的で派手」という意味。英雄ならそれでも許される、というニュアンスもあります。 「英/色」の下部分の処理、「隹/好む」の対応がうまく調整されています。太い文字なので切り欠きをうまく使うことができるのですね。言葉の選択が面白いです。
「ダークヒーロー」 回転型:mishima氏
ダークヒーローは正義の味方として描かれない主人公でアンチヒーローとも。 ダークヒーローのシルエットをロゴに取り入れていてかっこいいですね。オーラのように燃え上がる形状が文字のゲシュタルトにうまく取り入れられておりステキです。
「剛烈/疾風」 回転共存型:兼吉共心堂氏
仮面ライダージオウに登場する「仮面ライダーゲイツ」の強化フォーム「仮面ライダーゲイツリバイブ」の二つの変身フォームが「剛烈&疾風」だそうです。 この二つの言葉の相性が良すぎますが、氏の書道風の筆致によりより自然な仕上がりになっていると思います。気持ちよい作品です。
「響鬼」 振動型:.38氏
「仮面ライダー響鬼」より。 決して近くはない「響/鬼」の二文字の中間点をうまく探し出して仕上げられています。実際のタイトルロゴに似せたデザインなのもよいですね。
「科学忍者隊ガッチャマン」 図地反転回転型:いとうさとし氏
1974年から放映された変身ヒーローアニメ。タツノコプロの代表作の一つです。 「科学忍者隊」「ガッチャマン」がそれぞれ図地反転回転型の作品になっています。「ガッチャマン」はカタカナで字形を崩すと読めなくなりやすいのですが、しっかり読めるようになっている配置が魔術的です。
「僕のヒーローアカデミア」 鏡像型:ぺんぺん草氏
ヒーローと名の付く漫画といえばこれでしょう。種々メディア展開された人気作です。 本家ロゴに似せたステキな作品ですね。「僕/デミア」のハマり具合が楽しいです。本家ロゴのテイストでアンビグラム化できるかは運命的なところもあり、奇跡的な作品ともいえます。
「秘密戦隊ゴレンジャー」 図地反転型:いとうさとし氏
所謂「スーパー戦隊もの」の第一作。集団戦隊ヒーローのフォーマットが第一作にして確立されました。 「秘/密」「戦/隊」「ゴレン/ジャー」がそれぞれ図地反転の関係です。対応付けの仕方に統一性がありながらどの文字の可読性も確保されており、さすが達人の仕事です。
「シン・仮面ライダー/第1バッタオーグ」 回転共存型:兼吉共心堂氏
シン・仮面ライダーと、それに登場するショッカー上級構成員の対応。「第2~」でもできそうです。字画密度の差がある言葉同士を対応付けようという発想がいつもすごいと思いますし、それを作品に仕上げる力量が素晴らしいです。
「五右ヱ門」 鏡像型:うら紙氏
安土桃山時代の盗賊の首長であった石川五右衛門、彼を創作材料とした作品は多くその中にはこの表記としたものもあります。 環状配置の作品ですが、上下左右に文字が配置される点が珍しいです。略字の「门」にしているのがぴったりですね。左に45度回転させると隈取のようにも見えてきます。
「天下人」 鏡像型:.38氏
天下人は全国の政権を掌握した人のことで、ヒーローともダークヒーローとも見ることができそうです。 「天/下人」でシンプルな対応ながらパースをかけたようなデザインにより「天」第2画の短さと「下」の点の突き出しが自然に見えるようにしています。周りにある隠し文字もよいですね。
「桃太郎」 回転型:オルドビス紀氏
おとぎ話のヒーローといえば桃太郎を連想する人が多そうです。 余る字画がほとんどなく仕上がっているのにも驚きですが、余った分も横画が細い様式と左上優先の法則の活用で全く気にならないですね。美しく素晴らしい作品です。
「野茂英雄」 回転型:douse氏
「英雄」といえばこちらに発想を飛ばすのも自然。名前もさることながら野球選手としての実績もヒーローといってよいでしょう。 「野茂/英雄」がハマりすぎで気持ちよいです。作字としても最高ですね。ストレートとフォークボールを連想させるモチーフがステキです。
「さらば一昨日殺人ライナー」 回転型:Σ氏
HACHI(米津玄師)の楽曲「パンダヒーロー」の一節。 巧みな文字組と掠れ処理の組み合わせで文字の切れ目をコントロールしています。中央の「日」を「昨」のひへんの字形と揃えているのは作字面でのこだわりですね。カッコいいです。
「Q.17 ヒーローを右のコンテナに入れろ」 回転型:いんふぃにてぃ氏
パズルゲーム『Q』より、17問目からの引用とのこと。 180度回転型というのは解き方を示唆している、のでしょうか……? 発想の飛ばし方がさすがです。長い文字列への挑戦もよいですね。
「痛みを知るただ1人であれ」 回転型:螺旋氏
シン・ウルトラマンの主題歌『M八七』の中の一節。映画の内容にマッチした印象的な歌詞です。 とにかく細かいところの対応をじっくり見てしまいます。特に曲線がきれいに調整されていてので見ていて気持ちよく、カッコいい作品です。
最後に私の作品を。
「英雄/悪役」 回転共存型:igatoxin
ヒーローと対立するものとしてヴィランが描かれますが、対極にあるものではないのかもしれません。
ヒーローがお題のアンビグラム祭、いかがでしたでしょう。皆さんの発想に触れヒーローとは何たるものかに思いを馳せ、幾重にも楽しめるものになったのではないでしょうか。お忙しい中 御参加いただいた作家の皆様には深く感謝申し上げます。
さて次回のお題は『ゲーム』です。ゲームから連想する語句、ゲームタイトル、ゲームキャラクター、なんでもOKです。締切は10/31、発行は11/8の予定です。それでは皆様 来月またお会いしましょう。
——————————–index——————————————
2023年 1月{フリー} 2月{TV} 3月{クイズ} 4月{健康} 5月{回文} 6月{本} 7月{神話} 8月{ジャングル} 9月{日本史}
※これ以前のindexはこちら→《index:2017年~》
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各地句会報
花鳥誌 令和6年9月号
坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和6年6月1日 零の会 坊城俊樹選 特選句
切り通し省線吹きし若葉風 軽象 蜘蛛の囲に閉ざす社の狐たち きみよ ことごとく夏蝶となる水飛沫 緋路 白あぢさゐ女ばかりに愛でられて 和子 黴の間の亡者に点るシャンデリア 光子 夏の子はジャングルジムに天下とる きみよ 飛鳥山生まれ育ちの蟻の列 三郎
岡田順子選 特選句
乾きたる蛇口の先は夏の雲 緋路 黒南風やおづおづ開くみくじ歌 昌文 南天の花棲み古りし街の隅 美紀 黴の間の亡者に点るシャンデリア 光子 途切れなき列車音聴く四葩かな 風頭 ががんぼ来オルガンの鳴り止みてより 緋路 葉脈の青き稲荷の額の花 小鳥
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月1日 色鳥句会 坊城俊樹選 特選句
たてがみに綺羅したゝらせ競べ馬 かおり 負馬の負けを恥ぢざる眼の涼し たかし ユーミンの曲初夏の競馬場 美穂 負馬の誰にともなく息一つ 成子 鬼瓦の鼻ふくらめる若葉風 愛 熱砂駆け鼻息荒し佐賀競馬 たかし 競べ馬シャガールの馬天を駆く 修二 薔薇園にダイヤモンドのやうに雨 愛 勝馬に寄り添ふ笑顔女騎手 久美子 楽屋口より美しき絽の裾捌き かおり バンクシー赤い風船追ふ少女 修二 萍の沈黙にある水一枚 朝子 鞍壺に託す一戦競べ馬 久美子 蟻は蛾を人は柩をかかげゆく 睦子 早苗田の水の世界を行く列車 愛 紫陽花やすこしはなれて宇宙船 睦子 ひつそりと咲くこと知らず濃紫陽花 たかし
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月3日 花鳥さざれ会 坊城俊樹選 特選句
短夜の沖に生活の灯のともり かづを 短夜や和尚偲びて尽きぬ宿 笑子 黒南風の精舎を昏め沈めをり 希子 十薬や花明りして父祖の墓地 匠 網を引く明易き浜声合はす 同 悠久の光を溜めて滴りぬ 泰俊
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月6日 うづら三日の月花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
麦の秋鳥の旋回しばし見ん 喜代子 黄金を刈り取る如き麦の秋 由季子 短夜に一夜の旅の用意せる 都 麦秋の大地を分ける鉄路かな 同 逝きし人思ひ起せる虹の橋 同
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月7日 鳥取花鳥会 岡田順子選 特選句
体内のおほかたは水田水張る 都 湯上りの鏡を閉ぢて蛍見に 美智子 麦秋の金波を運ぶ風頰に 宇太郎 春雨にすつかり濡れて泣黒子 悦子 杜深しすだまの降らす花樗 美智子 校庭に名札を付けたミニトマト 佐代子 南天咲く早世力士悼みては すみ子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月8日 枡形句会 栗林圭魚選 特選句
空晴れて植田始まる農学部 亜栄子 一村に水ゆきわたり植田かな 百合子 としあつ師偲ぶ薄暑の石仏 教子 枡形の山気を吸ひて蝸牛 三無 下闇や気づけば猫の傍に 白陶 紫陽花の青き滴を受ける句碑 三無 月光をのせて十薬母の逝く 幸子 奥信濃瀬音まじりに河鹿鳴く 美枝子 故郷は懐深く初夏の旅 教子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月10日 なかみち句会
老鶯の声高らかに姿なく 廸子 老鶯や森の静けさ澄み亘る 聰 網戸開け小さき一匹逃しけり 貴薫 書を開く網戸の風の良き加減 三無 緑陰の間の光踏み遊ぶ のりこ 緑陰や刹那休らふ盲導犬 美貴 緑陰の森歩す空気異次元へ ます江 緑陰に入れば降るもの香るもの 怜
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令和6年6月10日 武生花鳥俳句会 坊城俊樹選 特選句
風鈴を今年は出さうかと思ふ 昭子 石庭の砂紋に僧や水を打つ 時江 麦秋や己は小作小百姓 世詩明 万緑の真つ只中で友となる 三四郎 玻璃に付く守宮の目玉大きかり ただし ぬけぬけと嘘吐く男草虱 世詩明 堰音の六月の水裏返す ただし 田植済み静かな寝息一村に みす枝 一望の青田や下校チャイム鳴る 時江 野仏の一重まぶたや著莪の花 ただし サングラス外して白き歯を見せる 昭子 音もなく崩れる雲の峰一つ ただし 僧逝きて幾年寺の木下闇 英美子 緑蔭の不開の門や鐘響む 時江 菖蒲の湯頭脳ゆつくり休ませり みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月11日 萩花鳥会
久々の娘とのドライヴ花菖蒲 祐子 夢誘う伊豆の旅寝の夕河鹿 健雄 薫風に一味添へてウイスキー 俊文 能登思ふ絆の祭始まりて ゆかり 太陽の恵み包みし枇杷すゝる 吉之 夕立の雲が覆ひし我が旅程 明子 鮎解禁河原で塩焼き白むすび 美恵子
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令和6年6月11日 さくら花鳥会 岡田順子選 特選句
黒い線行つたり来たり蟻の道 紀子 内緒話浜昼顔がそつと聞き 同 初夏や日々の葛藤過ぎゆきて 光子 畳紙に包まれし物黴にほふ あけみ
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月16日 風月句会 坊城俊樹選 特選句
紫陽花のしづくを朝日移ろへる 千種 木道の谷戸田の隅に余り苗 幸風 木下闇これより先は獣道 慶月 夏草や弥生時代の息遣ひ 三無 水無月の木��に道を迷はされ 千種 里山の道標なる立葵 ます江 濃あぢさゐ彩を増す夜半の雨 幸風 半夏生白く人声遠くせり 千種 夏蝶の白の大きく森に消ゆ 慶月 木道に釣り糸垂らす夏帽子 経彦
栗林圭魚選 特選句
鳴き交はす鴉に梅雨の森深く 要 滑り台順番を待つ夏帽子 経彦 今年竹撓ひて風の行方追ひ 三無 雨上るもりの朝やねむの花 芙佐子 紫陽花や森の匂ひに深呼吸 ます江 万緑や森に命を繋ぐ雨 亜栄子
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月17日 伊藤柏翠記念館句会 坊城俊樹選 特選句
露草に一輪挿の織部かな 雪 白鳳の野々宮廃寺跡 同 僧偲ぶ僧の手描きに絵団扇に 同 夏蝶の祈るが如し辻地蔵 同 終電の汽笛編戸を通し聞く 英美子 竹落葉散る音を聞く真昼時 同 毛虫焼く南無阿弥陀仏唱へつつ みす枝 咲いてをり咲きかけてをり七変化 かづを 白寿まで闘志抱きて更衣 清女 鷺一羽思考してをり青田中 やす香 売れ残る金魚に疲れ見えにけり 世詩明
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月19日 福井花鳥会 坊城俊樹選 特選句
青葉木菟夜を鳴かねばならぬかに 雪 五右衛門の煙管煙を吐ける山車 同 籠枕夫の遺せし油の香 清女 短夜を添ひ寝の犬に鼾きく 同 蜘蛛の囲の細きにかかるものは何 啓子 懐しき人に逢ふ夢明易し 笑子 風鈴の音とはならぬほどの揺れ 希子 短夜や星を眺めて聴く話 隆司 浴衣着て祭囃子の音に酔ふ 同 風鈴もそれぞれの色兄妹 和子 雨欲しきあぢさゐに色無かりけり 同 今夜だけ風鈴しづか話さうよ 令子 短夜や時の静かに広ごりて 千加江
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
令和6年6月21日 さきたま花鳥句会
刺身盛り紫蘇一枚の境界線 月惑 路地裏の暮色に媚びる七変化 八草 夏見舞幼き文字に磯の風 裕章 草刈りの終へて現はる地平線 紀花 麦秋の風入れカフェの読書会 康子 梅漬けの重石に亡夫の酒の瓶 恵美子 たまゆらの時をあづけて啼く河鹿 みのり 麦の秋うねる大地の広々と 彩香 地に影を一瞬黒く夏つばめ 良江
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令和6年6月21日 鯖江花鳥句会 坊城俊樹選 特選句
白鬼女の渡しと伝へ草茂る 雪 欠け初めし月に崩るる白牡丹 同 尻重な返事のいまだ梅雨に入る 同 山笑ふ声に呑まれてしまひさう 同 高層のビルに飛び込む夜這星 世詩明 夏旅に背中合せの駅の椅子 同 風遊ぶままに青田の百面相 同 極楽の風吹く寺に夕端居 ただし 朝倉の水の音する青蛙 同 音もなくむくりむくりと雲の峰 みす枝
(順不同特選句のみ掲載) ………………………………………………………………
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溜まったやつは全放出!
これで最後だ&追加ネタだ!! 写真は後ほど追加します!!!!!!!!
・下北半島一周の話 ・バイクのヘルメットの話 ・水筒の話 ・竜飛岬の補足(階段国道とか) ・ようやく複利投資を始めた話 ・弘前城の桜を見た話 ・青森の日本海側をちょびっと行った話 ←これ ・クレカのポイント特典がしょぼくなった話
というわけでようやく溜めてたやつを全部消化。 まぁ書けてないネタはまだあるので、そっちもいずれ……
よし、最後またバイクで青森県内うろうろした話!!
◯青森の日本海側をちょびっと行った話
青森県に来てから半年以上経ちましたが、バイクでちょくちょく観光には回ってるけど、日本海側ってほとんど行ってないんですよね。じゃあ太平洋側行ってるのかっていうとそうでもないんだけど。。。とりあえず、日本海側は全然行ってなかったので、行ってきました。4月と5月にとりあえず1回ずつ。行ったのは、十三湖と千畳敷です。ちなみに十二湖もあります。白神山地の近くまずは4月。十三湖は汽水湖だったかな。しじみが有名なでっかい湖です。昔はもっと湖が大きかったらしいですが。この日はバイクで行ったんですが、ちょうど花粉全盛期に行ったせいで死にかけてました。花粉やばすぎ。道の駅でしじみラーメン食べようとしてたのに、花粉の症状が全く改善しなかったので泣く泣く諦めました。で、そのあとは近くをバイクでぶらぶらしつつそのまま南下。近く、でもないけど比較的近傍にあった高山稲荷神社に行きました。ここは千本鳥居があります。ちなみに京都生まれ京都育ちのくせに伏見稲荷には行ったことがないので、比較はできません。まぁとりあえず、こんな感じかーって体験がてら行きました。ぼちぼち人がいたけど、そこまで沢山じゃなかったので助かりました。やっぱこのくらいよな……。 次に5月。どこらへん行こうかなーって職場で話してると千畳敷の話が出てきたので、せっかくだし行ってみるかってことで向かいました。全く潮の満ち引きのこと調べてなかったけど、比較的潮が引いてるタイミングだったのでいい感じで見れました。飯もついでに食べたので、2時間近くいたけど、だんだん潮が満ちてきて行こうと思ってたところがいけなくなったりはしたけど、とりあえず楽しみました。ただ、ちょっと見た目のインパクトには欠けるかなーって感じ。今の所、見た目のインパクトは仏ヶ浦が一番です。恐山もいい感じだったけど。この日は千畳敷以外はいってないですね。ちなみに千畳敷へ向かう途中に日本一のイチョウの木がありました。秋はすごいらしいですね。まぁ木は大きかった。またその時期に行こうかな。大人だと何気なくいっても経験として楽しめるけど、子供の頃にここ連れられても記憶に残るかなとちょっと思いつつも、まぁそんなの俺には関係ないや!と思ったくらいです。 終わり!
とするのはアレなので、そのままバイクでいろいろ行った話ね。追加というか日記
◯久々にバイクに乗った話+α
上の千畳敷行ったのち、2ヶ月ぶりにバイクに乗���ました。5月に乗ってから、いろいろあって乗ってませんでした。単純に休日に動くのが面倒だっただけなんですけどね。6月はまーまじでなんもしてねえ。7月になってからさすがにそろそろ一回くらい乗らないとなって危機感もって適当に目的決めて走りました。まぁ暑かったけど結果的には正解でしょ!で、目的。とりあえずそこまでしっかり決めてた訳じゃないんだけど、夏泊半島行こうかなと。どこだよって話ですよね! 青森の真ん中で湾に向かってちょこっともっこりしてるところです!まぁ何かがあるって訳じゃないんですけどね。家からちょうどいい距離だったから行ってみた、くらいです。行った結果、まじで特に何かある訳じゃなかった! もう少し調べてからいってもよかったかな! で、次。実は青森県には知られざ���有名なB級スポットがあるの知ってますか?知られざる、なのに有名ってなんだよって話ですが。そう、キリストの墓ですね。知ってる人はあぁ……、ってなる、知らない人は、は?ってなる、実にいい具合のB級スポットです。行った結果、うーん、B級感はんぱねぇ〜! 絶妙なこの感じサイコ〜!!って感じです。ただ伝承館という名前の資料館が500円もするのはちょっとあれだったな。半額でしょあれは… で、だいたいやること終わったしいいかなと思って帰路。ほんとはキリストの墓関連でパワースポットにも行こうかなと思ったんだけど、思いのほか暑くて疲れてたから諦めました。スマホに自宅までのルート設定して帰ってる中で途中で気づきました。ここ八甲田のアレのルートじゃね!?とという訳で来ました八甲田旧陸軍の八甲田演習の話は聞いたことある人も多いのかなと思います。ちなみにこっちは300円しなかった。値段設定逆でしょ! むしろこっち500円くらいとれよ!! このあと一度通り過ぎて後藤伍長の像まで行きました。ぐるりと周りみて思ったのは、ここ冬で閉ざされた時に歩くの無理っしょ!って感想。ぜったい吹雪いて死ぬ・・・としか思えんかったね その日の分はおわり!で、一度バイク乗るとまた乗りたくなるんですよね。という訳で8月に入っても速攻バイク乗りました。場所はどこへ? 下北半島の端っこです。そう、下北半島で行けてなかった尻屋崎に行ってきました。みちのく有料道路という有料道路も去年の暮れにETC対応したし、バイクに優しい(路面を除く)有料道路になったので、せっかくだしこれに乗って行くか!と。この有料道路自体は去年も乗ってるんだけどね…。小銭出すのに手間取って渋滞を作りだす男!いえーい で、尻屋崎へ。青森市からはそれなりに時間かかります。暑いのも相まって、休憩多めにしないとなぁと思いつつ移動。結局途中休憩一回、コンビニで休憩したくらいだけど、こういう時のファミマのフラッペは最高です。ちなみに尻屋崎って何があるの?って話なんですけど。何があると思いますか?何もないんですけどね。馬がいるくらいしか事前情報取ってなかったので特に何も気にすることなく行きました。尻屋崎に向かってる途中。え、ここって採石場あんの!? って感じのでっかい工場が登場。写真撮りたかったなぁ…… と言ってる側から馬がいるエリアに到着。馬を逃がさないようにするためにゲートで管理しています。ゲートを通って間もないうちに馬エリア到着。ちなみに灯台もありました。灯台あったんだ…初耳……ところでここ、灯台の手前にトイレと駐車場があるんだけど、これ以降に車とか停めるとこがないかと思って停めちゃってたけど、普通に駐車場あります。灯台とちょっとしたお店用のが。 まぁその辺みて終わり。たいして感動はなかったな……。一番驚いたのが採石場あった事実だし……
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三輪隊の小説(二次創作)
三輪隊の四畳半
「広いな」
広くはない。
︎ しかし、三輪秀次の独り言に奈良坂透は同意した。
「確かに広い」
「ま、広いな」
︎ 米屋陽介も同意する。
「いつもが狭いのよ」
︎ 控えめに月見蓮もうなずく。
︎ 全員意見は一致しているが、本来ならば広くはない。
︎ 三輪隊作戦室の奥まった場所にひっそりと存在する四畳半の部屋だ。
︎ この作戦室に入室して最初に目に入るオフィス然とした大部屋と対照的に、奥にある四畳半の小部屋はのんびりとした空間だ。畳の間に座卓を置いている。
︎ なぜそうなったかは、三輪隊以外の者は誰も知らない。壁際には渋い色の階段タンスが配置され、︎日本画の色紙も額縁に入って飾られ、その風景はノスタルジーさえ感じさせる。
「サザエさんかよ」
とは、A級太刀川隊隊員である出水公平のツッコミだった。
しかし、磯野家の居間も八畳である。カツオとワカメの子ども部屋だって六畳もある。
︎ 狭い四畳半が広く感じられるのは、三輪隊狙撃手である古寺章平の昨日からの不在によるものだった。
︎ 兄さんたちは寂しいのだ。
︎ 当の古寺は本日は遠征選抜試験初日で、寂しさなど感じている暇は微塵もないだろう。昨日は隊長面接のために休みをとっていた。
︎ 古寺は試験のために編成された臨時部隊の隊長を務める。それが意味する未来を考えると三輪は寂しい。
︎ 遠征よりもっと先の未来の話だ。上層部が最終的にどのような決定を下すかは分からないが、四人がバラバラで活動することになっても、遠征が終わればチームに戻る。
︎ しかし、古寺が本当に隊長になる未来は思っていたよりもきっと早く来るのだろう。
︎ とうとう、ちゃぶ台に頬っぺたを載せて、突っ伏してしまった奈良坂を眺めた。こたえている。日浦も行ってしまったあとだしな。米屋はニヤニヤと笑って頬杖をついた。
「動画残しとく?」 ︎
︎「やめてやれ」
「章平、喜ぶんじゃねえ」
「喜ばないだろう」
「章平のことわかってねえなあ。秀次じゃねえんだから」
それはその通りで、三輪なら困惑するだろう。
「話を混ぜっかえすな」
「米屋、りょーかい」
︎ 米屋は最後のバームクーヘンの切れ端を口に放り込んで、ちゃんと残してあった緑茶の冷めたのをごくごくと飲み干してご馳走様と言った。︎
「んじゃ、ま、個人戦行ってくるわ」
「遅番だからあまり時間がないぞ」
「ブースに行っても審査と試験で誰もいない」
︎ 三輪と奈良坂に同時に言われても、わかってるってと立ち上がる。
「太刀川さんは、いるっしょ」
「太刀川隊は早番だから、任務中よ」
︎ タブレットを見ながら、月見も声をかける。
「はーい」
︎ それでも、出かけようと��る米屋に三輪はついに名前を呼んだ。
「陽介」
︎ その声の調子を汲んで、
「りょーかい」
︎ 米屋はストンと腰を下ろした。そのまま、三輪を見る。表情は読めない。これは文句を言いたいのだろうと三輪は見当をつけた。
︎ 米屋は未来を憂えて寂しがるなんてことに価値を見出さない。今、古寺がいなくて寂しいのは共有できても、それ以上の共有はお断りなのだ。
︎ しかし、米屋はそうでもこちらにも都合がある。だから、三輪は米屋を引き止めた。
「お前までいなくなったら寂しいだろう」
「なんだよ、そりゃ」
「そのままだ。部屋が広くなって、寂しいという意味だ」
︎ 米屋はそれ以上は突っ込まなかった。
︎ 奈良坂が不機嫌そうに顔をあげる。
「別に俺は寂しくない」
「奈良坂だって引き止めていただろう」
「忠告だ」
「はいはい、りょーかい、りょーかい」
︎ 米屋はもう一回立ち上がると、すぐ脇の冷蔵庫から紙パックの緑茶を取り出してきた。
「狭い部屋が好きだねえ」
狭い部屋だ。
︎ 四畳半の畳部屋ができたのには理由という程のものはない。
︎ A級にあがった時は皆とにかくテンションが高かった。
︎ 憧れの部隊章、トリガー改造、作戦室も引越しになる。
︎ 部隊章のデザインについては大いに盛り上がり、めちゃめちゃかっこいいのが出来たと全員自負している。
︎ トリガー改造は米屋が張り切った。前々から考えていた槍型のトリガーを実装して、学業そっちのけで訓練室にこもってしまうほどだった。これは三輪にとっても待望の実装だったので、相当付き合った。
︎ 一方で、さほど、盛り上がらなかったのは部屋のインテリアである。そこは高校生男子のチームだ。
︎ 大部屋もオペレーター室も広くなり、小さいながらもキッチンもついた。そして、その横に申し訳程度の小さな部屋がひとつ増えることとなった。
︎ B級時代、作戦室でも︎受験勉強が出来るようにと購入した古寺の机はそのまま大部屋に置くこととして、増えた一部屋を何に使おう。
︎ まず、面々は月見に相談した。三輪隊がB級ランク戦を勝ち抜き、晴れてA級部隊になったことについて、月見が最大の功労者であることは戦闘員全員の意見が一致していた。
「月見さんが好きに使えばいい」
︎ しかし、月見は辞退した。本部にあるオペレーターのスペースで身支度するから、自分用はいらないと言う。彼女の幼馴染である太刀川慶曰く『結構、すごいとこのお嬢様』だ。作戦室で身支度したり休憩するのはかえって落ち着かないものかもしれない。
︎ そこで、︎応接室にしたらどうですかと言ったのは古寺だ。
こみ入った話をする面談室のイメージだ。しかし、却下された。
「客こねーだろ」
「俺たちに客? ないな?」
「ラウンジで済む話しかないだろう」
︎ 米屋、三輪、奈良坂に順に言われて、古寺は先輩たち、自己評価低くないですか?と思ったが、実際、用事があってもA級新参部隊はこちらから出向くことが多いし、相談事も滅多になかった。あってもラウンジで済むことばかりだ。
︎ 次に、奈良坂がテスト前に作戦室で勉強したいと言い出した。古寺の受験勉強が捗ったのを見ていたからだ。しかし、目の前でダラダラされると集中できないからあのスペースを勉強部屋にしたらどうかという高校生らしい提案だ。それを聞いて、勉強のほうが大事だ、古寺の机も大部屋にある事だし、ダラダラするほうが狭い部屋でいいと三輪が言い切り、ダラダラするんだったら靴を脱ぎたいと米屋が希望し、そしたらフローリングか畳ですね��古寺が提案し、畳のほうが省スペースよと月見がまとめて、トントン拍子に狭い部屋の処遇は決まった。
︎ そこまで、決めてしまうと、みんなもう什器備品のことなどどうでも良くなって、
「今まで通り、タブレットあるし、モニターはまあ、なくてもいいな」
「タブレットの方が使いやすかったりしますしね」
「章平のパソコンもあるしな」
「必要になったら買えばいいんじゃね? 」
大部屋は作戦机、ロッカーからソファまでB級時代の作戦室から持ってきたものそのままざっくりと配置し、今に至る。モニターは未だに購入に至っていない。タブレットを持ち寄り、額を集めて相談する。
︎ 雑に決まった割には、四畳半はうまく機能し、それぞれダラダラもするし、全員でお茶もする。
長期遠征選抜試験が終わったら、まずはここで座卓を囲むことだろう。
終わり
︎ ︎ ︎ ︎ ︎
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