#ポーランド食器の専門店
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一つづつ焼くのは面倒なので オーブンでガツンと一気に焼いてみた! もちろんポーランド食器に並べて #230度で15分 #ハンバーグ #いい焼き加減 #pygmalionshokai #ポーランド食器の店 #食洗機オーブン電子レンジok #ポーランド食器の専門店 #新商品順次アップしております #polishpottery #ピグマリオン商會 #ポーリッシュポタリー #potalovealeksandra (ピグマリオン商會|ポーランド食器と雑貨) https://www.instagram.com/p/Bo6a6JwgcKM/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=1py8ukepmrzan
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⁑3月ぴ店スケジュール ・ いよいよ次の金曜から3日間がオープン日です☆ 初のアウトレットセールもやりますのでぜひお越しくださいね〜! (セール品はスタンプポイント除外、現金のみとなります) ・ 2日目の土曜日は夕方の17〜19時と短いオープンですがどうぞよろしくお願いいたします。 ・ #ピグマリオン商會実店舗 #pygmalionshokai#ポーランド食器 #ポーリッシュポタリー #食器大好き#暮らし#poland#boleslawiec#polishpottery#polskaceramikaboleslawiec#ピグマリオン商會#名古屋市千種区#ポーランド食器専門店#おうちカフェ#ポーランド食器のピグマリオン商會 #名古屋雑貨屋 #名古屋食器屋 #ぴ店 #2018年3月のぴ店は30から3日間#30日はナイト営業のみ ※IGプロフィール欄に営業日あり (ピグマリオン商會|ポーランド食器と雑貨)
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あなたにだけは忘れてほしくなかった
アメリカ合衆国、ニューヨーク州、マンハッタン、ニューヨーク市警本部庁舎。 上級職員用のオフィスで資料を眺めていた安藤文彦警視正は顔をしかめた。彼は中年の日系アメリカ人である。頑なに日本名を固持し���いるのは血族主義の強かった祖父の影響だ。厳格な祖父は孫に米国風の名乗りを許さなかったためである。祖父の信念によって子供時代の文彦はいくばくかの苦労を強いられた。 通常、彼は『ジャック』と呼ばれているが、その由来を知る者は少ない。自らも話したがらなかった。 文彦は暴力を伴う場合の少ない知的犯罪、いわゆるホワイトカラー犯罪を除く、重大犯罪を扱う部署を横断的に統括している。最近、彼を悩ませているのは、ある種の雑音であった。 現在は文彦が犯罪現場へ出る機会はないに等しい。彼の主たる業務は外部機関を含む各部署の調整および、統計分析を基として行う未解決事件への再検証の試みであった。文彦の懸念は発見場所も年代も異なる数件の行方不明者の奇妙な類似である。類似といっても文彦の勘働きに過ぎず、共通項目を特定できているわけではなかった。ただ彼は何か得体の知れない事柄が進行している気配のようなものを感じ取っていたのである。 そして���彼にはもうひとつ、プライベートな懸念事項があった。十六才になる姪の安藤ヒナタだ。
その日は朝から快晴、空気は乾いていた。夏も最中の日差しは肌を刺すようだが、日陰に入ると寒いほどである。自宅のダイニングルームでアイスティーを口にしながら安藤ヒナタは決心した。今日という日にすべてをやり遂げ、この世界から逃げ出す。素晴らしい考えだと思い、ヒナタは微笑んだ。 高校という場所は格差社会の縮図であり、マッチョイズムの巣窟でもある。ヒナタは入学早々、この猿山から滑り落ちた。見えない壁が張り巡らされる。彼女はクラスメイトの集う教室の中で完全に孤立した。 原因は何だっただろうか。ヒナタのスクールバッグやスニーカーは他の生徒よりも目立っていたかもしれない。アジア系の容姿は、彼らの目に異質と映ったのかも知れなかった。 夏休みの前日、ヒナタは階段の中途から突き飛ばされる。肩と背中を押され、気が付いた時には一階の踊り場に強か膝を打ちつけていた。 「大丈夫?」 声だけかけて去っていく背中を呆然と見送る。ヒナタは教室に戻り、そのまま帰宅した。 擦過傷と打撲の痕跡が残る膝と掌は、まだ痛む。だが、傷口は赤黒く乾燥して皮膚は修復を開始していた。もともと大した傷ではない。昨夜、伯父夫婦と夕食をともにした際もヒナタは伯母の得意料理であるポークチョップを食べ、三人で和やかに過ごした。 高校でのいざこざを話して何になるだろう。ヒナタは飲み終えたグラスを食洗器に放り込み、自室へ引っ込んだ。
ヒナタの母親はシングルマザーである。出産の苦難に耐え切れず、息を引き取った。子供に恵まれなかった伯父と伯母はヒナタを養子に迎え、経済的な負担をものともせず、彼女を大学に行かせるつもりでいる。それを思うと申し訳ない限りだが、これから続くであろう高校の三年間はヒナタにとって永遠に等しかった。 クローゼットから衣服を抜き出して並べる。死装束だ。慎重に選ぶ必要がある。等身大の鏡の前で次々と試着した。ワンピースの裾に払われ、細々としたものがサイドボードから床に散らばる。悪態を吐きながら拾い集めていたヒナタの手が止まった。横倒しになった木製の箱を掌で包む。母親の僅かな遺品の中からヒナタが選んだオルゴールだった。 最初から壊れていたから、金属の筒の突起が奏でていた曲は見当もつかない。ヒナタはオルゴールの底を外した。数枚の便箋と写真が納まっている。写真には白のワイシャツにスラックス姿の青年と紺色のワンピースを着た母親が映っていた。便箋の筆跡は美しい。『ブライアン・オブライエン』の署名と日付、母親の妊娠の原因が自分にあるのではないかという懸念と母親と子供に対する執着の意思が明確に示されていた。手紙にある日付と母親がヒナタを妊娠していた時期は一致している。 なぜ母は父を斥けたのだろうか。それとも、この男は父ではないのか。ヒナタは苛立ち、写真の青年を睨んだ。 中学へ進み、スマートフォンを与えられたヒナタは男の氏名を検索する。同姓同名の並ぶ中、フェイスブックに該当する人物を見つけた。彼は現在、大学の教職に就いており、専門分野は精神病理学とある。多数の論文、著作を世に送り出していた。 ヒナタは図書館の書棚から彼の書籍を片っ端から抜き出す。だが、学術書を読むには基礎教養が必要だ。思想、哲学、近代史、統計を理解するための数学を公共の知の宮殿が彼女に提供する。 ヒナタは支度を終え、バスルームの洗面台にある戸棚を開いた。医薬品のプラスチックケースが乱立している。その中から伯母の抗うつ剤の蓋を掴み、容器を傾けて錠剤を掌に滑り出させた。口へ放り込み、ペットボトルの水を飲み込む。栄養補助剤を抗うつ剤の容器に補充してから戸棚へ戻した。 今日一日、いや数時間でもいい。ヒナタは最高の自分でいたかった。
ロングアイランドの住宅地にブライアン・オブライエンの邸宅は存在していた。富裕層の住居が集中している地域の常であるが、ヒナタは脇を殊更ゆっくりと走行している警察車両をやり過ごす。監視カメラの装備された鉄柵の門の前に佇んだ。 呼び鈴を押そうかと迷っていたヒナタの耳に唸り声が響く。見れば、門を挟んで体長一メータ弱のドーベルマンと対峙していた。今にも飛び掛かってきそうな勢いである。ヒナタは思わず背後へ退いた。 「ケンダル!」 奥から出てきた男の声を聞いた途端、犬は唸るのを止める。スーツを着た男の顔はブライアン・オブライエン、その人だった。 「サインしてください!」 鞄から取り出した彼の著作を抱え、ヒナタは精一杯の声を張り上げる。 「���いけど。これ、父さんの本だよね?」 男は門を開錠し、ヒナタを邸内に招き入れた。
男はキーラン・オブライエン、ブライアンの息子だと名乗った。彼の容姿は写真の青年と似通っている。従って現在、五十がらみのブライアンであるはずがなかった。ヒナタは自らの不明を恥じる。 「すみません」 スペイン人の使用人が運んできた陶磁器のコーヒーカップを持ち上げながらヒナタはキーランに詫びた。 「これを飲んだら帰るから」 広大な居間に知らない男と二人きりで座している事実に気が滅入る。その上、父親のブライアンは留守だと言うのであるから、もうこの家に用はなかった。 「どうして?」 「だって、出かけるところだよね?」 ヒナタはキーランのスーツを訝し気に見やる。 「別にかまわない。どうせ時間通りに来たことなんかないんだ」 キーランは初対面のヒナタを無遠慮に眺めていた。苛立ち始めたヒナタもキーランを見据える。 ヒナタはおよそコンプレックスとは無縁のキーランの容姿と態度から彼のパーソナリティを分析した。まず、彼は他者に対してまったく物怖じしない。これほど自分に自信があれば、他者に無関心であるのが普通だ。にも拘らず、ヒナタに関心を寄せているのは、何故か。 ヒナタは醜い女ではないが、これと取り上げるような魅力を持っているわけでもなかった。では、彼は何を見ているのか。若くて容姿に恵まれた人間が夢中になるもの、それは自分自身だ。おそらくキーランは他者の称賛の念を反射として受け取り、自己を満足させているに違いない。 「私を見ても無駄。本質なんかないから」 瞬きしてキーランは首を傾げた。 「俺に実存主義の講義を?」 「思想はニーチェから入ってるけど、そうじゃなくて事実を言ってる。あなたみたいに自己愛の強いタイプにとって他者は鏡でしかない。覗き込んでも自分が見えるだけ。光の反射があるだけ」 キーランは吹き出す。 「自己愛? そうか。父さんのファンなのを忘れてたよ。俺を精神分析してるのか」 笑いの納まらないキーランの足元へドーベルマンが寄ってくる。 「ケンダル。彼女を覚えるんだ。もう吠えたり、唸ったりすることは許さない」 キーランの指示に従い、ケンダルはヒナタのほうへ近づいてきた。断耳されたドーベルマンの風貌は鋭い。ヒナタは大型犬を間近にして体が強張ってしまった。 「大丈夫。掌の匂いを嗅がせて。きみが苛立つとケンダルも緊張する」 深呼吸してヒナタはケンダルに手を差し出す。ケンダルは礼儀正しくヒナタの掌を嗅いでいた。落ち着いてみれば、大きいだけで犬は犬である。 ヒナタはケンダルの耳の後ろから背中をゆっくりと撫でた。やはりケンダルはおとなしくしている。門前で威嚇していた犬とは思えないほど従順だ。 「これは?」 いつの間にか傍に立っていたキーランがヒナタの手を��る。擦過傷と打撲で変色した掌を見ていた。 「別に」 「こっちは? 誰にやられた?」 キーランは、手を引っ込めたヒナタのワンピースの裾を摘まんで持ち上げる。まるでテーブルクロスでもめくる仕草だ。ヒナタの膝を彩っている緑色の痣と赤黒く凝固した血液の層が露わになる。ヒナタは青褪めた。他人の家の居間に男と二人きりでいるという恐怖に舌が凍りつく。 「もしきみが『仕返ししろ』と命じてくれたら俺は、どんな人間でも這いつくばらせる。生まれてきたことを後悔させる」 キーランの顔に浮かんでいたのは怒りだった。琥珀色の瞳の縁が金色に輝いている。落日の太陽のようだ。息を吸い込む余裕を得たヒナタは掠れた声で言葉を返す。 「『悪事を行われた者は悪事で復讐する』わけ?」 「オーデン? 詩を読むの?」 依然として表情は硬かったが、キーランの顔から怒りは消えていた。 「うん。伯父さんが誕生日にくれた」 キーランはヒナタのすぐ隣に腰を下ろす。しかし、ヒナタは咎めなかった。 「復讐っていけないことだよ。伯父さんは普通の人がそんなことをしなくていいように法律や警察があるんだって言ってた」 W・H・オーデンの『一九三九年九月一日』はナチスドイツによるポーランド侵攻を告発した詩である。他国の争乱と無関心を決め込む周囲の人々に対する憤りをうたったものであり、彼の詩は言葉によるゲルニカだ。 「だが、オーデンは、こうも言ってる。『我々は愛し合うか死ぬかだ』」 呼び出し音が響き、キーランは懐からスマートフォンを取り出す。 「違う。まだ家だけど」 電話の相手に生返事していた。 「それより、余分に席を取れない? 紹介したい人がいるから」 ヒナタはキーランを窺う。 「うん、お願い」 通話を切ったキーランはヒナタに笑いかけた。 「出よう。父さんが待ってる」 戸惑っているヒナタの肩を抱いて立たせる。振り払おうとした時には既にキーランの手は離れていた。
キーラン・オブライエンには様々な特質がある。体格に恵まれた容姿、優れた知性、外科医としての将来を嘱望されていること等々、枚挙に暇がなかった。だが、それらは些末に過ぎない。キーランを形作っている最も重要な性質は彼の殺人衝動だ。 この傾向は幼い頃からキーランの行動に顕著に表れている。小動物の殺害と解剖に始まり、次第に大型動物の狩猟に手を染めるが、それでは彼の欲求は収まらなかった。 対象が人間でなければならなかったからだ。 キーランの傾向にいち早く気付いていたブライアン・オブライエンは彼を教唆した。具体的には犯行対象を『悪』に限定したのである。ブライアンは『善を為せ』とキーランに囁いた。彼の衝動を沈め、社会から��を排除する。福祉の一環であると説いたのだ。これに従い、彼は日々、使命を果たしてる。人体の生体解剖によって嗜好を満たし、善を為していた。 「どこに行くの?」 ヒナタの質問には答えず、キーランはタクシーの運転手にホテルの名前を告げる。 「行けないよ!」 「どうして?」 ヒナタはお気に入りではあるが、量販店のワンピースを指差した。 「よく似合ってる。綺麗だよ」 高価なスーツにネクタイ、カフスまでつけた優男に言われたくない。話しても無駄だと悟り、ヒナタはキーランを睨むに留めた。考えてみれば、ブライアン・オブライエンへの面会こそ重要課題である。一流ホテルの従業員の悪癖であるところの客を値踏みする流儀について今は不問に付そうと決めた。 「本当にお父さんに似てるよね?」 「俺? でも、血は繋がってない。養子だよ」 キーランの答えにヒナタは目を丸くする。 「嘘だ。そっくりじゃない」 「DNAは違う」 「そんなのネットになかったけど」 ヒナタはスマートフォンを鞄から取り出した。 「公表はしてない」 「じゃあ、なんで話したの?」 「きみと仲良くなりたいから」 開いた口が塞がらない。 「冗談?」 「信じないのか。参ったな。それなら、向こうで父さんに確かめればいい」 キーランはシートに背中を預け、目を閉じた。 「少し眠る。着いたら教えて」 本当に寝息を立てている。ヒナタはスマートフォンに目を落とした。
ヒナタは肩に触れられて目を覚ました。 「着いたよ」 ヒナタの背中に手を当てキーランは彼女を車から連れ出した。フロントを抜け、エレベーターへ乗り込む。レストランに入っても警備が追いかけてこないところを見ると売春婦だとは思われていないようだ。ヒナタは脳内のホテル番付に星をつける。 「女性とは思わなかった。これは、うれしい驚きだ」 テラスを占有していたブライアン・オブライエンは立ち上がって��ナタを迎えた。写真では茶色だった髪は退色し、白髪混じりである。オールバックに整えているだけで染色はしていなかった。三つ揃いのスーツにネクタイ、機械式の腕時計には一財産が注ぎ込まれているだろう。デスクワークが主体にしては硬そうな指に結婚指輪が光っていたが、彼の持ち物とは思えないほど粗雑な造りだ。アッパークラスの体現のような男が配偶者となる相手に贈る品として相応しくない。 「はじめまして」 自分の声に安堵しながらヒナタは席に着いた。 「彼女は父さんのファンなんだ」 ヒナタは慌てて鞄から本を取り出す。 「サインしてください」 本を受け取ったブライアンは微笑んだ。 「喜んで。では、お名前を伺えるかな?」 「安藤ヒナタです」 老眼鏡を懐から抜いたブライアンはヒナタに顔を向ける。 「スペルは?」 答える間もブライアンはヒナタに目を据えたままだ。灰青色の瞳は、それが当然だとでも言うように遠慮がない。血の繋がりがどうであれ、ブライアンとキーランはそっくりだとヒナタは思った。 ようやく本に目を落とし、ブライアンは結婚指輪の嵌った左手で万年筆を滑らせる。 「これでいいかな?」 続いてブライアンは『ヒナタ』と口にした。ヒナタは父親の声が自分の名前を呼んだのだと思う。その事実に打ちのめされた。涙があふれ出し、どうすることもできない。声を上げて泣き出した。だが、それだけではヒナタの気は済まない。二人の前に日頃の鬱憤を洗いざらい吐き出していた。 「かわいそうに。こんなに若い女性が涙を流すほど人生は過酷なのか」 ブライアンは嘆く。驚いたウェイターが近付いてくるのをキーランが手を振って追い払った。ブライアンは席を立ち、ヒナタの背中をさする。イニシャルの縫い取られたリネンのハンカチを差し出した。 「トイレ」 宣言してヒナタはテラスを出ていく。 「おそらくだが、向精神薬の副作用だな」 父親の言葉にキーランは頷いた。 「彼女。大丈夫?」 「服用量による。まあ、あれだけ泣いてトイレだ。ほとんどが体外に排出されているだろう」 「でも、攻撃的で独善的なのは薬のせいじゃない」 ブライアンはテーブルに落ちていたヒナタの髪を払い除ける。 「もちろんだ。彼女の気質だよ。しかし、同じ学校の生徒が気の毒になる。家畜の群れに肉食獣が紛れ込んでみろ。彼らが騒ぐのは当然だ」 呆れた仕草でブライアンは頭を振った。 「ルアンとファンバーを呼びなさい。牧羊犬が必要だ。家畜を黙らせる。だが、友情は必要ない。ヒナタの孤立は、このままでいい。彼女と親しくなりたい」 「わかった。俺は?」 「おまえの出番は、まだだ。キーラン」 キーランは暮れ始めている空に目をやる。 「ここ。誰の紹介?」 「アルバート・ソッチ。デザートが絶品だと言ってた。最近、パテシエが変わったらしい」 「警察委員の? 食事は?」 ブライアンも時計のクリスタルガラスを覗いた。 「何も言ってなかったな」 戻ってきたヒナタの姿を見つけたキーランはウェイターに向かい指示を出す。 「じゃあ、試す必要はないね。デザートだけでいい」 ブライアンは頷いた。
「ハンカチは洗って返すから」 ヒナタとキーランは庁舎の並ぶ官庁街を歩いていた。 「捨てれば? 父さんは気にしない」 面喰ったヒナタはキーランを窺う。ヒナタは自分の失態について思うところがないわけではなかった。ブライアンとキーランに愛想をつかされても文句は言えない。二人の前で吐瀉したも同じだからだ。言い訳はできない。だが、ヒナタは、まだ目的を果たしていないのだ。 ブライアン・オブライエンの実子だと確認できない状態では自死できない。 「それより、これ」 キーランはヒナタの手を取り、掌に鍵を載せた。 「何?」 「家の鍵。父さんも俺もきみのことを家族だと思ってる。いつでも遊びに来ていいよ」 瞬きしているヒナタにキーランは言葉を続ける。 「休暇の間は俺がいるから。もし俺も父さんもいなかったとしてもケンダルが 相手をしてくれる」 「本当? 散歩させてもいい? でも、ケンダルは素気なかったな。私のこと好きじゃないかも」 「俺がいたから遠慮してたんだ。二人きりの時は、もっと親密���」 ヒナタは吹き出した。 「犬なのに二人?」 「ケンダルも家族だ。俺にとっては」 相変わらずキーランはヒナタを見ている。ヒナタは眉を吊り上げた。 「言ったよね? 何もないって」 「違う。俺はきみを見てる。ヒナタ」 街灯の光がキーランの瞳に映っている。 「だったら、私の味方をしてくれる? さっき家族って言ってたよね?」 「言った」 「でも、あなたはブライアンに逆らえるの? 兄さん」 キーランは驚いた顔になった。 「きみは、まるでガラガラヘビだ」 さきほどの鍵をヒナタはキーランの目の前で振る。 「私が持ってていいの? エデンの園に忍び込もうとしている蛇かもしれない」 「かまわない。だけど、あそこに知恵の実があるかな? もしあるとしたら、きみと食べたい」 「蛇とイブ。一人二役だね」 ヒナタは入り口がゲートになったアパートを指差した。 「ここが私の家。さよならのキスをすべきかな?」 「ヒナタのしたいことを」 二人は互いの体に手を回す。キスを交わした。
官庁街の市警本部庁舎では安藤文彦が部下から報告を受けていた。 「ブライアン・オブライエン?」 クリスティナ・ヨンぺルト・黒田は文彦が警部補として現場指揮を行っていた時分からの部下である。移民だったスペイン人の父親と日系アメリカ人の母親という出自を持っていた。 「警察委員のアルバート・ソッチの推薦だから本部長も乗り気みたい」 文彦はクリスティナの持ってきた資料に目をやる。 「警察委員の肝入りなら従う他ないな」 ブライアン・オブライエン教授の専門は精神病理学であるが、応用心理学、主に犯罪心理学に造詣が深く、いくつかの論文は文彦も読んだ覚えがあった。 「どうせ書類にサインさせるだけだし誰でもかまわない?」 「そういう認識は表に出すな。象牙の塔の住人だ。無暗に彼のプライドを刺激しないでくれ」 クリスティナは肩をすくめる。 「新任されたばかりで本部長は大張り切り。大丈夫。失礼なのは私だけ。他の部下はアッパークラスのハウスワイフよりも上品だから。どんな男でも、その気にさせる」 「クリスティナ」 軽口を咎めた文彦にクリスティナは吹き出した。 「その筆頭があなた、警視正ですよ、ジャック。マナースクールを出たてのお嬢さんみたい。財政の健全化をアピールするために部署の切り捨てを行うのが普通なのに新しくチームを立ち上げさせた。本部長をどうやって口説き落としたの?」 「きみは信じないだろうが、向こうから話があった。私も驚いている。本部長は現場の改革に熱意を持って取り組んでいるんだろう」 「熱意のお陰で予算が下りた。有効活用しないと」 文彦は顔を引き締めた。 「浮かれている場合じゃないぞ。これから、きみには負担をかけることになる。私は現場では、ほとんど動けない。走れないし、射撃も覚束ない」 右足の膝を文彦が叩く。あれ以来、まともに動かない足だ。 「射撃のスコアは基準をクリアしていたようだけど?」 「訓練場と現場は違う。即応できない」 あの時、夜の森の闇の中、懐中電灯の光だけが行く手を照らしていた。何かに��つかり、懐中電灯を落とした瞬間、右手の動脈を切り裂かれる。痛みに耐え切れず、銃が手から滑り落ちた。正確で緻密なナイフの軌跡、相手はおそらく暗視ゴーグルを使用していたのだろう。流れる血を止めようと文彦は左手で手首を圧迫した。馬乗りになってきた相手のナイフが腹に差し込まれる感触と、その後に襲ってきた苦痛を表す言葉を文彦は知らない。相手はナイフを刺したまま刃の方向を変え、文彦の腹を横に薙いだ。 当時、『切り裂き魔』と呼ばれていた殺人者は、わざわざ文彦を国道まで引きずる。彼の頬を叩いて正気づかせた後、スマートフォンを顔の脇に据えた。画面にメッセージがタイピングされている。 「きみは悪党ではない。間違えた」 俯せに倒れている文彦の頭を右手で押さえつけ、男はスマートフォンを懐に納める。その時、一瞬だけ男の指に光が見えたが、結婚指輪だとわかったのは、ずいぶん経ってからである。道路に文彦を放置して男は姿を消した。 どうして、あの場所は、あんなに暗かったのだろうか。 文彦は事ある毎に思い返した。彼の足に不具合が生じたのは、ひとえに己の過信の結果に他ならない。ジャックと文彦を最初に名付けた妻の気持ちを彼は無にした。世界で最も有名な殺人者の名で夫を呼ぶことで凶悪犯を追跡する文彦に自戒するよう警告したのである。 姪のヒナタに贈った詩集は自分自身への諌言でもあると文彦は思った。法の正義を掲げ、司法を体現してきた彼が復讐に手を染めることは許されない。犯罪者は正式な手続きを以って裁きの場に引きずり出されるべきだ。 「ジャック。あなたは事件を俯瞰して分析していればいい。身長六フィートの制服警官を顎で使う仕事は私がやる。ただひとつだけ言わせて。本部長にはフェンタニルの使用を黙っていたほうがいいと思う。たぶん良い顔はしない」 フェンタニルは、文彦が痛み止めに使用している薬用モルヒネである。 「お帰りなさい、ジャック」 クリスティナが背筋を正して敬礼する。文彦は答礼を返した。
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北朝鮮の錬金術 暴かれる実態サイバー攻撃で他国中央銀から巨額資金奪取 フロント企業駆使し不正な国際金融取引 2017年6月7日
核兵器や弾道ミサイルの開発を加速させる北朝鮮に対し、国際社会の懸念が日々高まる。国連安全保障理事会は繰り返し制裁決議を採択し、包囲網を狭める。だが、北朝鮮はフロント企業を利用した不正な国際金融取引や、他国の金融機関を標的にしたサイバー攻撃による資金奪取など錬金術を駆使し、包囲の網をくぐり抜ける。���ワシントン会川晴之、岩佐淳士】
制裁かいくぐり、核・ミサイル資金を調達
試射が行われた地対地中長距離戦略弾道ミサイル「北極星2」型=2017年2月13日、朝鮮中央通信=朝鮮通信
「北朝鮮と見られる金融機関へのサイバー攻撃は、失敗に終わった米国向けなどを含めて世界31カ国、被害総額は1億~1億2000万ドル(約110億円~130億円)にのぼる」
米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のサイバー・セキュリティー専門家、ジェームズ・ルイス副所長は毎日新聞の取材にこう答えた。
被害額が最も大きかったのは2016年2月のバングラデシュ中央銀行の8100万ドル(約89億円)。ルイス氏によると、手口は日本でもよく使われる「フィッシングメール」と呼ばれる偽メールを中銀の行員に送りつけ、それとは知らずにメールを開いた行員から、ユーザーネームや暗証番号を盗み出して銀行内のシステムに侵入。行員を装いバングラ中銀がドル資金を預けてあるニューヨーク連銀の口座からフィリピンの銀行への送金を指示して奪い取った。14年のソニー・ピクチャーズエンタテイメントなどへの攻撃と同じ手法で、北朝鮮の関与が確実視されている。
IDカードを盗み出し、それを使って入り口を通り抜けたり、車のキーを盗み、車を持ち逃げしたりする手口と同じだ。100本のメールを送りつければ「5~20人が引っかかる」ほど成功率が高い。その上「映画に出てくるような銀行強盗と違い、身を危険にさらす必要もない。極めて簡単で安価。これを使わない手はない」と、ルイス氏は解説する。
北朝鮮は同様の手口で、東南アジアやインド、中南米諸国の金融機関にも攻撃を仕掛け、毎回、数百万ドル(数億円)規模の資金を盗み出した。ルイス氏は、資金の受取人が北朝鮮が長年の間に世界中に構築したマネーロンダリング(資金洗浄)の関係者と見て「伝統的な手法にサイバー攻撃という新しい手法が重なった高度なオペレーションだ」と分析している。
北朝鮮は、海外の租税回避地(タックスヘイブン)などに設立した多数のフロント企業を駆使して国際金融取引も続ける。安保理決議が禁じる武器や鉱物資源取引で稼いだ資金を本国に送金、核・ミサイル開発資金に充てるほか、必要物資を海外から調達する際の国際送金に利用している。
特に、米財務省が北朝鮮の主要行を制裁し、国際金融システムから締め出された09年以後にその活動を本格化させた。米司法省によると、北朝鮮は中国企業「丹東鴻祥実業発展」(DHID)に不正取引を依頼。昨年9月に摘発されるまで、少なくとも22社を英領バージン諸島やセーシェル、香港などに設立して巧みに国際監視網をくぐり抜けていた。
米上院外交委員会のマルコ・ルビオ上院議員らは「この事例は氷山の一角にすぎない」と指摘、ムニューシン米財務長官に、不正取引に関わった中国の主要行への調査開始など、中国への圧力強化を求めている。ティラーソン米国務長官は「中国を試している」と述べ、当面は中国の対応を見守る一方、状況が改善しない場合は中国にも制裁を科す構えも示すなど、米中間でも激しい駆け引きが続いている。
北朝鮮ハッカーが「フィッシングメール」 狙うはドル資金
北朝鮮の書籍などを取り扱う貿易業者の事務所内
犯行は2016年2月4日(木)の午後9時前に始まった。イスラム教国のバングラデシュは、翌日から休日。多くの中央銀行の行員が仕事を切り上げ家路についていた。その間隙(かんげき)を突き、北朝鮮のハッカーが「フィッシングメール」と呼ばれるサイバー攻撃の手法で盗み取ったパスワードで、中銀のシステムに侵入する。標的は、バングラ中銀がドル資金決済用に米ニューヨーク連銀に預けてある巨額のドル資金だ。
バングラとの時差が11時間あるニューヨークに最初の送金指示書が届いたのは、4日午前10時前。指示通りに4件、8100万ドル(約89億円)がフィリピンの銀行に振り込まれた。4時間にわたり計35件の送金指示が届いたが、その多くは送金を経由する米銀行が「マネーロンダリング(資金洗浄)の疑いがある」と送金を拒んだため不首尾に終わる。すべてが成功していたら、被害総額は約10億ドル(約1100億円)に達していた。
フィリピンでは翌5日(金)以後、次々と資金が引き出される。だが、バングラ中銀幹部は、この日午前に休日出勤したものの、サイバー攻撃のため送金指示を印刷するプリンターが故障していたため事件に気づかなかった。���の幹部はプリンターの修理を指示して昼前に銀行を後にする。
ようやく不正に気づいたのは8日(月)。バングラ中銀はNY連銀やフィリピンの銀行に至急電を送り、預金凍結などの措置を求めた。だがニューヨークは未明の時間帯。フィリピンも、この日は春節を祝うための休日で、いずれとも連絡が取れない。全世界250カ国・機関のドル決済口座があるNY連銀は事件後に休日でも24時間、連絡を取り合う態勢を整えるが、後の祭りだった。
フィリピンの銀行に振り込まれた8100万ドル(約89億円)は、いったん偽名口座に振り込まれた後、仲介人を通してカジノの経営者など賭博施設関係者に振り込まれた。賭博会社を経営する中国籍実業家が約1500万ドルを返還したものの、残りの6600万ドル(約73億円)の行方は、いまだに不明だ。
フィリピンをはじめ各国はマネーロンダリング(資金洗浄)を取り締まる法律を整備している。だが、カジノなど賭博施設はマフィアが絡むためなのか、フィリピンでは規制対象外となっている。北朝鮮は、その「穴」を巧みに突いた可能性もある。
バングラ中銀が狙われた約3週間前、南米エクアドルでも同様の手口で900万ドルが奪い取られる事件があった。被害にあったのは地元の民間金融機関。1月14日深夜に140万ドルを香港の口座に不正送金されたのを手始めに、10日間で12回の疑わしい送金が繰り返された。いずれの送金も業務時間外で、一度も振り込まれたことがない振込先だった。
サイバー・セキュリティーの専門家であるCSISのルイス副所長は毎日新聞の取材に「北朝鮮のサイバー攻撃技術は、過去5年間で進歩を遂げており、技術水準は比較的高い」と解説。バングラ中銀などの金融機関から多額の資金を盗み出したことについて「国家による初めての国際的金融機関に対する犯罪」と指摘した。国連安全保障理事会などによる制裁が強化されても、サイバー攻撃は「極めて制約もなく、制裁を受ける危険も少ない。北朝鮮が諦めるはずがない」と、今後も同様の攻撃を仕掛ける可能性が高いと懸念を示した。
租税回避地のペーパーカンパニー 監視網を容易にくぐり抜け
金正日総書記誕生75周年(2月16日)を祝う氷の彫刻祭典に展示されたミサイル、水爆などを模した作品=両江道三淵郡で2017年2月6日、朝鮮中央通信=朝鮮通信
「北朝鮮の銀行口座を開きたい。協力してくれないか」。米東部ニュージャージー州連邦地裁の資料によると、2011年6月、こんなメールがパナマの法律事務所に舞い込んだ。発信元は北朝鮮国境の町、中国遼寧省丹東で幅広く中朝貿易を営む「丹東鴻祥実業発展」(DHID)の総支配人(45)だった。
だが、パナマの法律事務所は「国際的な制裁を受けている北朝鮮の企業や役員は口座を開設できない」と断った上で、こんな提案をする。「租税回避地のペーパーカンパニーならいくつでもご用意できる」。昨年、富豪や企業が資産隠しや税逃れで利用したとして世界を揺るがした「パナマ文書」に書かれた手口と同じだ。
総支配人は2日後に返答を送り、2週間後に提示されたリストから、セーシェル、英領バージン諸島の5社を購入することを決めた。「サクセス・ターゲット・グループ」(英領バージン諸島)、「ベスト・フェイマス・トレーディング」(セーシェル)などと名付けられたこれらの企業は、転売目的に設立された企業。業界では、本棚に並ぶ本を販売することに例えて「シェルフ(本棚)企業」と呼ばれる。取得にかかった手数料は、1社につき、わずか1100ドル(約12万円)だった。
こうしたフロント企業を駆使し、DHIDは北朝鮮との交易を拡大する。創業者である馬暁紅会長(45)は、「北朝鮮と世界を結ぶ黄金の橋」と自らの会社を位置づけ、石油や石炭など対北朝鮮貿易を幅広く手がけた。中朝貿易の2割以上を1社で手がけたと言われ、昨年9月に中国当局に摘発されるまで遼寧省の全人代代表を務めた。中朝両国の実力者に「トヨタの高級乗用車」を配るきめ細かい気配りも功を奏し、丹東一の女性富豪として名を上げていく。
北朝鮮の金融取引を代行するビジネスに手を染めたのは09年8月に、米財務省が北朝鮮の主要銀行に制裁を科したのがきっかけだ。米ドルを使う金融取引は、必ず米国を経由する必要があり、これが禁じられた。中国人民元やユーロなどの他の通貨での取引は可能だが、面倒な手続きを嫌う相手が多いのが実情で米ドル取引は不可欠だ。当初は、DHID自体が代行業を務めていたが、国際的な監視網強化を背景に11年以後、足がつきにくいフロント企業の設立を進めた。
フロント企業は、セーシェル、バージン諸島のほか、香港など22社にも及んだ。いずれの企業も中国など国内外の金融機関に口座を開設、北朝鮮との金融決済に使った。国連安保理や米財務省の制裁対象となっている北朝鮮の金融機関や企業の名前が一切出ないため、国際的な監視網を容易にくぐり抜けることができる。中国では、4大銀行に名を連ねる中国工商銀行など12行に口座を開設した。
「香港に設立された13社のフロント企業のうち11社が登記されている場所を訪ねた。だが登録された別の会社の名前がかかっているだけだった」
香港の繁華街ワンチャイ(湾仔)にあるフロント企業。その所在地を16年6月に訪ねた米司法省の担当者は、報告書にこう記した。「しばらく待機したが、ビルは閑散としており、一人として出入りするのを見つけられなかった」。実態のないペーパーカンパニーが密集するビルだった可能性が高い。
米司法省係官は、英領バージン諸島に登記されたフロント企業も訪ねている。だが香港と同様の状況で手がかりは見つけられない。「登記簿を見ると、同じ住所には制裁対象の北朝鮮の銀行のフロント企業もあった」と記し、北朝鮮がDHIDだけでなく独自のフロント企業も使い国際的な闇取引をしている可能性を指摘している。
実態は「抜け穴」だらけの安保理「制裁決議」
平壌の氷上館(アイススケートセンター)で開幕した金正日総書記の誕生日(2月16日)を祝う第25回白頭山賞国際フィギュアスケート祭典=2017年2月15日、朝鮮中央通信=朝鮮通信
国連安全保障理事会は、核兵器や弾道ミサイル開発を加速する北朝鮮に対し、06年10月以後、7回の制裁決議を採択している。中でも16年3月に採択された決議は「かつてないほど強力な制裁」と言われ、北朝鮮の経済活動を締め上げる要素が多数盛り込まれている。だが国連加盟国の関心は低く、実態は「抜け穴」だらけの状態が続く。
ティラーソン米国務長官は5月3日、国務省での演説で「どの国として安保理決議を完全に実施している国はない」と怒りをぶちまけた。安保理制裁の実施状況を監視するため09年に設立された国連専門家パネルは毎年、300ページにも及ぶ報告書を発表する。現地調査に基づく綿密な内容だが、目立つのはほころびばかり。ある専門家は「国連決議の文面は立派だが、絵に描いた餅にすぎない」と指摘する。
今年2月末に公表された報告書では、東南アジアやアフリカ諸国の実態があぶり出された。中でも2月に金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の義兄である金正男(キムジョンナム)氏が暗殺されたマレーシアの実態が目を引く。
国連報告書が注目したのは、軍事用通信機器メーカーの「グローコム」。少なくとも05年ごろから営業を開始した。香港などアジア市場で格安の部品を買い集め、これを組み立て途上国に売る。不正行為が発覚したのは昨年7月。中国から、アフリカ北東の小国、エリトリア向けの航空貨物から、軍事用無線機器などが見つかった。
この会社を実質支配するのは「パン・システムズ」平壌支店。シンガポール企業の「平壌支店」の形を装うが、実態は朝鮮人民軍の工作機関・偵察総局の傘下にある。平壌支店の代表を務めるリャン・スニョ氏(57)は、日本生まれの北朝鮮人女性。14年2月、マレーシア国際空港で仲間2人と共に現金45万ドル(約5000万円)を持ち出そうとして一時拘束されたこともある。このネットワークは、武器密輸に限らず、秘密資金の移動にも手を染めていた可能性が指摘されている。
マレーシアは1973年に北朝鮮と国交を樹立、反米主義者だったマハティール政権(81~2003年)時代に政治���経済両面での交流を活発化させた。金正男氏暗殺までは、双方の国民はシンガポールなどと同様、ビザ無しで渡航ができる関係にあった。
国連パネルの調査団は、専門家が「北朝鮮にとって『天国』のような地域だ」と表現するアフリカ諸国にも足を運んだ。
アンゴラを訪問したのは16年9月。北朝鮮の軍人が大統領警護隊にマーシャルアーツ(東洋の武術)を教えているとの情報を確認するためだ。だがアンゴラ政府は「1990年から続いているものだ」と返答、調査団は「安保理決議で禁止されている」と伝えたものの返事は無かった。このほか▽モザンビークへの戦車など武器輸出▽コンゴ民主共和国への拳銃や軍事訓練の提供▽ナミビアでの大規模な軍事施設建設への関与――などが指摘されている。
米国務省で長年、不拡散を担当した元高官は、取材に「アフリカには東西冷戦時代から北朝鮮に軍事支援を受けた国も多い。現在も、北朝鮮の安価な武器や労働力は、そうした国々にとっては魅力的に映る」と解説した。
米国「北朝鮮包囲網」構築へ欧州外交を本格化
米国は、こうした穴をふさぎ、北朝鮮「包囲網」を築くため外交を本格化させている。従来は、どちらかというと北朝鮮問題への関心が薄かった欧州諸国を説得するため、北朝鮮問題担当特使をブリュッセルに派遣。北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)の会議に参加させた。ドイツでは、ベルリンにある北朝鮮大使館が旅行者向けの宿泊施設に転用されるなど、安保理決議違反がまかり通っている実態もあるためだ。
アジア諸国にも圧力をかける。ワシントンで5月初旬に開いた東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会合で、制裁の完全実施を呼び掛けた。ティラーソン米国務長官は「毎日5~6カ国に電話」し、「制裁強化策をお手伝いする」と呼び掛けている。
米国の努力が実を結ぶか。ティラーソン氏は、米国の努力不足などもあり、国連制裁の達成度は「まだ20~25%にある」と述べ、包囲網構築に執念を燃やしている。
ポーランドの北朝鮮技師 実態は「奴隷労働者」
金日成主席の誕生105周年慶祝閲兵式に登場した砲=平壌・金日成広場��2017年2月15日、朝鮮中央通信=朝鮮通信
1980年代初頭、ワレサ議長率いる自主管理労組「連帯」発祥の地となったポーランド北部の港町グダニスク。2006年、かつて「レーニン造船所」として知られた造船所に、北朝鮮造船技師が働くと聞き、現地を訪ねた。
28人の北朝鮮労働者は、ポーランドの派遣業者が借り上げた郊外にある一軒家に居住する。中には卓球台などの娯楽施設もあるという。毎日、リーダー役がマイクロバスを運転して通勤、食事は自炊だ。月に2回、監視を兼ねてワルシャワの北朝鮮大使館員が「キムチを持ってやってくる」。
欧米では「奴隷労働者」と呼ばれる北朝鮮労働者。派遣業者によると月給は円換算で16万円。このうち5万円を労働者に支払い、残りは北朝鮮の国営企業に直接、振り込まれる。だが公務員の給与が月額10ドル(約1100円)未満と言われる北朝鮮の労働者には、魅力的だ。
取材に応じた「ツバメ」と呼ばれる精悍(せいかん)な顔つきのリーダー役は「家族と離れて暮らすのはつらいが、腹いっぱい食べられるしビールも飲める。毎日、誕生祝いをしているようだ」と笑顔を見せた。夢は、稼いだ資金を元に祖国でビジネスを始めることだ。
北朝鮮の実情に詳しい東アジア貿易研究会の報告書によると、平壌では食生活向上を背景に、キムチや麺などを市場で買い求める世帯が半数近くに達するという。その中でもブームは「腰のある」細麺。従来は太麺が主流だったが、電圧が弱いため「腰のある」麺がなかなか打てず、時には麺が溶けおかゆのように溶け出してしまう。中朝貿易を幅広く手がけた丹東鴻祥実業発展の主要取扱品の中にも、この中国製の製麺機が登場する。スモールビジネスでひともうけしたい。「奴隷労働者」だけでなく、多くの庶民がそんな夢を抱く。
ポーランドでの北朝鮮労働者の評判は上々だった。造船所の副所長は「腕が立つ職人ばかりだ。もっと増やしたい」と取材に答えた。その言葉通り、この造船所で働く北朝鮮労働者は156人に増え、ポーランド全体で800人に増えたと言われる。
米国務省でマネーロンダリング(資金洗浄)対策を長年手がけたアンソニー・ルッジェーロ氏は「少なく見積もって年5億ドル(約550億円)の資金が本国に送金されている」と、派遣労働者からの送金が北朝鮮の核・ミサイル開発に役立っていると指摘する。米国務省の「北朝鮮に関する人権報告書」によると、中国、ロシアなどを筆頭に、中東、アジア諸国、アフリカ諸国など23カ国で派遣労働者が働く。
ロシアの資料によると、15年には約4万7000人の北朝鮮労働者の就労が認められた。中国人の約8万人、トルコ人の約5万5000人に次ぐ規模で、その3分の1が北朝鮮と国境を接するロシアの沿海州。農閑期に当たる冬に「出稼ぎ」として建設業を中心に携わる。「北朝鮮���働者は習熟度、規律、賃金の安さが魅力」と、ロシアでの評判も上々だ。
国連安保理は昨年11月に採択した6度目の北朝鮮制裁決議に、こうした派遣労働者の存在に「留意」するという言葉を盛り込んだが、禁止には踏み込まなかった。中露両国の反対が背景にあったとの指摘もある。業を煮やした米議会は、不当に安価な賃金で派遣労働者を雇う企業や個人を米政府が「制裁対象にする」という新法の制定を目指している。近い将来、こうした労働者の海外派遣が禁止される可能性がある。
「BDAの教訓」各省庁の利害がぶつかる金融制裁
平壌の4・25文化会館で行われた朝鮮人民軍協奏団の建軍85周年慶祝音楽舞踊総合公演=2017年4月25日、朝鮮中央通信=朝鮮通信
ブッシュ(息子)政権は2005年9月19日、マカオにある金融機関「バンコ・デルタ・アジア」(BDA)を、マネーロンダリング(資金洗浄)に関わっているとして制裁を発動した。同行には北朝鮮指導部の対外活動資金があったため、北朝鮮は強く反発。翌06年10月の初の核実験に向けて動き出すきっかけになる。
「あの時は、北朝鮮が関わる5~10の金融機関を制裁候補に挙げて議論を重ねた」。当時、米国家安全保障会議(NSC)で担当者を務めた米中央情報局(CIA)のデニス・ワイルダー前副次官補(東アジア・太平洋地域担当)は、毎日新聞の取材に答え始めた。金融制裁をめぐる議論には、NSCだけでなく財務省、国務省、司法省、CIAなど情報機関など多数の政府機関が参加した。だが、金融制裁実施という総論では一致するものの、各論に入ると各省庁の利害がぶつかる。
この議論に参加した国務省元高官(不拡散担当)は取材に「制裁の実効性を高めるためには他国の協力が不可欠だ。そのためには各国に情報を提供しなければならない。だが機微な情報を他国に渡すと漏れてしまう危険がある」と説明する。こうした議論を経て「結局、候補のうち真っ黒なBDAが選ばれた」と話した。
「制裁実施は狙いを絞ることが重要だ」。この決定に関わった米財務省のダニエル・グレーザー前次官補(テロ資金担当)は指摘する。「我々の目的は、北朝鮮の核・ミサイル計画を止めること。それに尽きる」と取材に答えた。制裁候補には一時、ウィーンを本拠地に、欧州のぜいたく品を買い付ける際の決済銀行である「金星銀行」の名も挙がったが、「核・ミサイル開発に関係ない」という理由で退けられた。
グレーザー氏は「BDA制裁は予想以上の効果を上げた。その成果はいまも生きている」と話す。最大の効果は、米国からの制裁を恐れて世界中の金融機関が北朝鮮との金融取引を避ける���うになったことだ。例として挙げられるのが14年、シンガポールで摘発された事件だ。
シンガポールの海運代理店は、1980年代から北朝鮮との取引があった。外航船の運航には入港料や水先案内人への手当支払いなど外貨取引が必要だ。だが05年のBDA制裁を機に、多くの金融機関が北朝鮮との金融取引を拒否する。ミサイルや武器の輸出などで外貨を稼ぐ北朝鮮にとって、海運が滞るのは一大事となる。
窮地を救ったのがこの代理店だ。「1回につき50ドルの手数料」を取り、北朝鮮の業務を代行した。13年7月にキューバからミグ21戦闘機2機やエンジンなどを砂糖袋の下に隠して輸送していたとしてパナマ当局に摘発された北朝鮮船籍の貨物船「清川江(チョンチョンガン)号」のために、パナマ運河の通航料7万2000ドルを立て替えたことで足がついた。立件直前まで、この海運代理店は605回、4000万ドル以上の送金の肩代わりを務めた。手数料だけで3万ドルを稼いだことになる。
「北朝鮮制裁はモグラたたき」表情曇る専門家たち
中国・丹東の「丹東鴻祥実業発展」(DHID)のように制裁をかいくぐる例は後を絶たない。その理由について、元米財務省のグレーザー氏は「中小銀行が取引の中心を占めることが最大の理由だ」と解説する。4大銀行など中国の主要金融機関は、米国をはじめ国際的な取引が多いため、米国当局の制裁を極度に恐れる。このような金融機関にとって「北朝鮮との取引は無視できるほど小さい」ため、リスクの大きい北朝鮮取引を避けようとする。
だが中小金融機関の事情は違う。米国どころか海外に支店を持たないため、米国の制裁対象になることを恐れる必要がないからだ。こうした事情を知り尽くす北朝鮮は、取引のあるなじみの業者やフロント企業を使い、国際金融取引を続ける。
では、追加制裁を準備する米国の次の一手は何か。長年、国務省で北朝鮮などのマネーロンダリング対策を担当したアンソニー・ルッジェーロ氏は「財務省、国務省が各国政府や企業と協議し、もう大目には見ないと圧力をかけ続ける。さらに違反した金融機関に課徴金をかける手段が有力」と見る。
米司法省は、イランやキューバ制裁に違反したとして14年にフランスの金融機関大手BNPパリバ銀行に約90億ドル(約1兆円)の罰金を科した。今年3月には、米商務省がイランや北朝鮮に不正に通信機器を販売したとして中国の大手企業に過去最大の11億9000万ドル(約1360億円)の罰金を科した例もある。これと同様の手法を使うという読みだ。
もし4大銀行など主要行を制裁し、米国内の資産凍結などに踏み切った場合、中国経済は大きな打撃を受ける。下手をすれば世界金融恐慌の引き金にもなりかねず、米国や日本、欧州諸国も大きな「返り血」を浴びる。1997年11月、日本の4大証券の山一証券は倒産ではなく「自主廃業」という異例の措置を取った。当時の大蔵省幹部は取材に「倒産を選べば、山一に巨額の債権を持つ中国銀行の経営不安につながる。金融危機が拡大することを恐れた」と説明した。
それから20年。中国の金融機関は世界の主要プレーヤーに育った。当時以上に、本格的な制裁は世界の金融システムを揺さぶる。
米国の新たな一手は、北朝鮮の国際的な不正行為撲滅につながるか。その効果を尋ねると、専門家たちの表情は曇る。北朝鮮は生き残りをかけて、抜け穴を探し回っているためだ。
元米国務省のルッジェーロ氏は「北朝鮮制裁はモグラたたきに似ている。ひとつをたたくと、ひとつが浮かぶ」と話し、新たな制裁後も北朝鮮が新たなフロント企業や協力者を作り上げ、数カ月以内に同様の取引を再開するに違いないと見る。「難しい過程だが、ためらってはいけない。行動に移さなければ事態は悪化する一方だ」。ルッジェーロ氏はそう力を込めた。
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ポーランド食器
去年のクリスマスくらいに神戸元町のトアウエストを歩いていてポーランド食器のお店『ケルセン』を見つけました。 ここ数年、流行っていますよね。(似た感じの食器を100均でも見かけます。) 今回は、かわいらしい箸置きを購入。 オープン記念ということで、うさぎさんをいただきました!(箸置きより高いかも、、、) 次は、持ち手つきの小鉢かグラタン皿が欲しいなぁ。。。 このショップの本店は、自由が丘だそうです。 神戸には他にもポーランド食器専門店『ツェラミカ』があるようです。 そっちも行ってみようっと。
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11月11日はマッチ棒の日!? •ポーランドの独立記念日 そして今年は100周年でした!! 日本でも大阪湾にポーランドの帆船「ダル・ムウォジェジ」が寄港、かっこよい船 生で見たかった!! #ポーランドの帆船 #ダルムウォジェジ #Darmładziezy 察してか 娘 ママへのアクセサリーを作ってくれました✨ 偶然にもポーリッシュカラー 下が赤がポーランドだよ!って教えてあげたら そのように向きをしてくれました❤︎ #ポーランド独立記念日 #lovemydaughter #ぴ店スタッフ #100周年 #pygmalionshokai #実店舗ぴ店 #名古屋千種区 #ポーランド食器専門店 #polishpottery #ピグマリオン商會 #ポーリッシュポタリー #11月のぴ店は毎金土営業します (ピグマリオン商會|ポーランド食器と雑貨) https://www.instagram.com/p/BqLeWWHgI_D/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=154yokkat6wr9
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ぴ店の営業日はもう今週末ですょ〜✨ 1ヶ月あっという間ですね! そしてもう10月 その後11月−12月−1月とニューイヤー迄あっという間に違いありませんが! それって一年の1/3でしょー!? おーコワコワ⛄️ 年末年始が充実してう〜まく過ごせると一年ちゃんと過ごせた気がする!! 翌年も良き出足になりそう♫ 皆様も1日1日を大切に過ごしましょう! ピグマリオン商會も皆様のひとときを〜 素敵な彩りに関わらせてもらえて幸せですー #❤︎柄 #コストコマフィン #ラフランス食べ頃 #pumpkin #halloweeniscoming #コストコ旅 #pygmalionshokai #今週末実店舗ぴ店オープン #polishpottery #ピグマリオン商會 #ポーリッシュポタリー #ポーランド食器専門店 #可愛いものに囲まれて❤︎ #過ごす1日は幸せ #potalovealeksandra #ぴ店オープン19日20日26日27日28日 (ピグマリオン商會|ポーランド食器と雑貨) https://www.instagram.com/p/Bo-TztWgJw2/?utm_source=ig_tumblr_share&igshid=p7r6hebq0bdu
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