#ポケット図鑑
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9月8日(金)open 12-19
曇り空。 涼しい一日です。 今日はお客様の出入りの間隔がとても良く、数年振りに会う写真学校時代の同級生がやってきてくれた時もゆっくり話���ことができました。 (まだまだ話し足りなかったけど) この後19時まで皆さまをお待ちしておりますよ!
ミサさんの作品やスケッチの中でも、私がすぐに目がいってしまうのはいきものや花たち。 この作品は南アルプス北岳の固有種、キタダケソウです。 光が透けると綺麗だろうなぁ...と思って、ライトのそばに飾らせてもらいました。 写真では伝わりきらない美しさ、ご来店の際にじっくりご覧ください。 2枚目の写真は文一総合出版さんのポケット図鑑『日本の高山植物400』より。 かわいい花なのに、過酷な環境に生きているのだなぁ。 そしてミサさんの切り絵の表現にほぅ...とため息が出ます。
さてそして速報です! 最終日の影絵の会は満員となりましたので、募集を締め切らせていただきます! 万が一、キャンセルが出ることがありましたら、またお知らせいたしますね。 お申し込みの皆さま、ありがとうございます!
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1月13日(土)ヴィンテージ新入荷
1890s US Army Cotton Infantry shirts
¥340,000
19世紀に陸軍歩兵隊が着用したコットンプルオーバーです。様々な形があるチェンジボタンは米国のオフィシャルユニフォームのボタン図鑑に記載がありました。
アパッチ戦争の時代はプルオーバーの同型ですが、これよりあとに作られたものでしょうか。
全てシングルで縫製された細かい運針や、ポケットの形状など、量産型とはおもえない丁寧なつくりは、この時代ならではです。
*販売は2024年1月13日(土)よりウエアハウス東京店にて。
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2022/11/12〜
11月12日 たぶん最後のギンレイホールへ行った。 アルバイトをしていた時、地下鉄の出口の案内をさんざんしていたのに、B4のbだったかB3のbだったか分からず、B3で地上へ出ると一つ道を間違えていた。やっぱり紀の善は閉店していて、細い道を通ってギンレイホールへ到着。 お世話になった社員さんへご挨拶をした。 「君、意外とよく来るな!」と言ってくれた。 今回の閉館のことは突然決まったことらしく、次の場所の目処は立っていないらしい。社員さん方もほとんどこれで退社されるとのこと。 久しぶりにロビーの内側から、ガラス扉越しに犬を連れた人々が通り過ぎるのを見ながらお話をした。 グッズの缶バッチをいただいて、あ、もう会えないんだろうな、と思いながら「お元気で」と言い合って別れた。
ギンレイのみなさんに差し入れを、と、近江屋洋菓子店でお菓子の詰め合わせを購入。いちごのケーキがたくさん並んでいてかわいい。いちごのショートケーキは日本人が作った可愛さがある。
ガーディアン・ガーデンで写真の1wall 展を鑑賞。最後の1wall 展で、今日は最後が多い日。 いわゆる家族、を、冷静に観察させてくれる展示だった。 取り留めのない会話が流れる居間。 私の祖母は物静かだったので、ひとりでに語り始めることはなかったし、母も余計なことをあまりたらたら話すことはなかったので、適当に何か会話が生まれている、いわゆる居間っぽい感じは、少し羨ましいかもしれない。
gggではデザイン対象の展示を鑑賞。 キコフの器がかわいい。 年賀状を作り始めたところだったので、いろいろなパッケージデザインを観て、あれで良いのかな…と、悩み始めた。
4ヶ月ぶりに髪を切って染めた! こんな場所にも安心感がある美容室ってあるのね〜、とフランクでおしゃれでヤスミノさんのヴィジュアルっぽいお店だった。 髪色を白っぽくしたい!と伝えていて、頑張って座り続けて、出来上がりがピンクっぽくて、あれ?でもかわい〜、となった。 自分が白って言ってなかったことにしていたら、色が抜けると白っぽくなるとのこと。なるほど。 年末年始金髪計画も相談させてもらった。(もったいないという結論。)
初めて“おうちクリーニング”モードで洗濯してみる。ヒートテックなんてクリーニングモードでなくて良いのにね〜、と干してみるとカイロを貼ったまま洗濯していて残念な気持ち。
11月13日 ギンレイホールの支配人からお礼のショートメールが入っていた。いつまでもお世話になってしまって、でも、アルバイトを辞めても少しだけ繋がりを持たせてもらえて幸せ。 来週、ハロウィンのキャンディを持って、研究室にもう一度行って、ちゃんと挨拶しようと思えた。
気圧がだめっぽい感じは当たっていて、湿度が高くて呼吸がしづらい。
フィルム現像を出したデパートの、物産展かいつまみ食材売り場みたいなところに、マンスーンさんがラジオでおすすめしていたとり野菜みそがあった。パッケージの金髪お母さんキャラもちゃんといる。参考書でワンポイントアドバイスをくれるキャラみたい。
年賀状はやっぱり指向を���えて“ポップをはかる年賀状”にしようかな。年末年始も開館している図書館でお正月を過ごしたい。
今日は何もなかった。
11月14日 実家の忘れ物を送ってもらって、実家と関わりを持ったことで何かざらざらした気持ちになる。“ありがたい小包”が届いた。
とても忙しなく1日を過ごして帰宅した今も息が上がっていて呼吸が不自然。 昨日届いた新しいルームフレグランスがいい香り。
朝のバス停に何かのカードが裏返しで2枚落ちていた。 発車したバスの車内で、ずっとリュックの全てのポケットを探ったり、荷物の中身を取り出してはしまっている人がいて、あ!と思った。さっきのカードは、バスの乗車証も兼ねている職員証だったのかも知れない…特段拾い上げもせずに見過ごしたこと、何か悪いことをしてしまった人でなしの気分になった。
2023年ポップをはかる年賀状をつくる…
11月15日 久しぶりにmoney treeを開いて、もうダメ。お金がない、というより、電気代がとっても値上がりしていたり、カードの引き落とし額が増えていたりで少し落ち込む。お金を使い果たす豊かさを知りたいです、バタイユ先生。 でも、今のところ節約すべきポイントがないのでこのままずるずるまたmoney treeをアインストールする日々を送ってみる。
前の職場でとってもお世話になった上司へメッセージを送る。近々お会いできるかもしれないので、その旨を連絡してみた。 今の職場の上司から、奥さんが4月に出産予定である報告を受け、育休をとるつもりであることを相談してくれた。男性が育休を取るには、証明書類が必要で手続きが少し面倒らしい。でも、出産とか子育てってそれに比べられない大変さがありそうで、その手伝いを友人や他人がもっとライトにできるシステムってあるのかな?身内でそんな手続きが必要なら、他人ならどうなるのかしら。考えながら、昔、都写美のトークイベントで志賀理江子がぬらりひょんみたいにそんなことを言っていたのを思い出した。
来週予定されている職場の食事会の件で、私は人前で食事が取れないことを伝えてみると「ちょうど良かった!今回はやっぱりバルにしたので、みんなで取り分ける感じで残す心配をしなくても大丈夫ですよ。」と言ってくれた。 自分の食事のことは、自分でももうどうにもできないので、人に伝えることをあきらめていた(理解してもらえはしなくても、それ以上に距離を置かれることしかないと思っていた)。 初めて社会の場で伝えてみて、その相手がこの方でよかった。
11月16日 乗り換え駅で忙しなく乗り換えの道を歩んでいたら「あ!ちょっと!!」 みたいな感じでおじさんが正面から声をかけてきて、反射的に立ち止まらず視線を向けずまっすぐ通り抜けてしまった。よく街でいたずらに声をかけられる事があるので、自分のペースを崩さないで歩く癖がついている。たぶん今回もからかいっぽさがあったので正解だったと思うけれど、朝の通勤時間帯になんだったんだ…と、私に何を伝えたかったのか後々気にしている。
国宝展のチケットの予約をすっかり忘れていたことを、相手からの“忘れていてごめんなさい”メッセージで思い出す。 よくない感じで仕事の忙しさに、(文化的)生活が壊されている!
2期下の方のデスクにかわいいマスコットがいるのが気になっていて、今日やっとそのことを話せた。 バイエルみたいな名前(忘れてしまった)の水属性のポケモンらしい。イグアナがモチーフとか。クリスマス仕様で白のふわふわのマフラーを巻いていてかわいい。私が知る限りだと、その方が退勤した後はデスクからいなくなっているので、持ってきて持ち帰っているという、とても愛な感じ。
ネコのチーズケーキが再販されていた! コンビニご飯は心が枯れるけれど、でも、アイテムとして買ってしまうこともあるよね。
11月17日 乗り換え駅にちいかわのガチャガチャが入ったと思ったら、売り切れて、今日はもう他のキャラクターのガチャガチャが入っていた。
ポケモンって動物の野生の要素を残しつつキャラ化しているので、変に平面化されたり擬人化されていなくてかわいいかも。ちいかわは人間社会の世知辛さをやってる感じが受けていると思っていて、それ以外で純粋に外面だけで愛でている人もいるのかな。
髪をすかれす��て悲しかったけれど、すぐ乾かせる様になった。あとカラーシャンプーに戻したらきしまなくなった。
せっかくバラを買ったのに、それを楽しむ余裕がないほど何かに呑まれている1週間。 ポップをはかる年賀状を作りながら、全くポップじゃなかったな〜2022年、と反省している。
空腹を紛らわすためにナイアシンフラッシュして、ナイアシンフラッシュで頭痛を起こし、イヴを飲んで胃が痛くなって胃腸薬を飲む訳の分からないループをしている。
11月18日 疲れすぎたので今日は日記お休みです!と、するつもりだったけれどちゃんと今書いている。 掃除もしてしまったし、ウォークインクローゼットの中のいらないものを少し捨てた!えらい!
大人の防災訓練は、ここぞとばかりにみんな喋りまくっていてその相槌で忙しかった。こうゆうとき思ったもの見えたものをフィルター通さずぱっかりみんな喋り始めて、社会人じゃなくなって、でも社会をするために集められた人達なので、本当に何も生まれない会話がずーっと同時多発的に発生していてすごかったし、私も海外旅行でカップ麺と非常食(まずい)を交換させられた話などをした。
保存食の配給を無視して受け取らないでいたら「何で!?持って帰ろうよ!どうしてそんなことするの?」と少し怒られ口調も入れて問いただされてしまう。食べ物のストックは大切!と力説された。私はそうゆうものを、あ!!と、なって一気に捨てたことが何度もある。
午後休みをとって表参道でネイルをしてもらって、町が平日にも存在していて、帰りに混んだ電車で暖房���浴びて、とっても疲れてしまった22時。これから今日の一食目。
仮囲いの中のクリスマスツリーが、今日のポップ。
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【レポート】6.8(土)公開記念舞台挨拶
6月8日(土)に公開記念舞台挨拶を開催いたしました!
杏さん・中須翔真さん・奥田瑛二さんという“疑似家族”となるキャスト陣と、関根光才監督が登壇した本舞台挨拶の様子をお届けします!
劇中で誰もが涙するような結末を迎える3人の登場に、本作鑑賞直後の客席からは高ぶる感情を表すような大きな拍手が!
まずは公開を迎えた感想を尋ねると、杏さんは「いよいよ初日を迎えることができて万感の思いでございます」と、関根監督は「昨日の初日にこの劇場で一観客として観させていただきました。今日は満席で、キャスト・スタッフ一同感激しております」と喜びをあらわにしました。
虐待の���がある少年を守るために母親だと噓を吐く千紗子。杏さんに彼女がどういう女性だと思うか尋ねると、「強い女性だなと。いろんなことをねじ伏せて、拓未を守りたいという気持ちでやってのける。自分だったら途中でブレーキをかけてしまうなと。映画の中でできてすっとしました」と印象を語ります。
千紗子の“息子”となる拓未を演じた中須さんにも、千紗子がどんな母親だったか聞くと、「物語が進んでいくにつれて、拓未の接し方も変わっていたと思うんですが、最初は知らない人に拾われて不安だったと思います。けど、最終的には『僕はこのお母さんがいいな』と思うようになっていったのかなと。最終的には優しいお母さんだと思っていたと、思います!」と息子としての心情の変化を語ってくれました。
千紗子と確執がある認知症��父・里谷孝蔵を演じた奥田さん。孝蔵を演じていた際の心境について「初めての役柄だったので、どうしたら孝蔵の出自から、どんな人生の男なんだと暗中模索しながら、まずは、施設にうかがって、認知症の方々と友達になって、話をさせていただいて。びっくりするようなことが本当にたくさんあって、その経験を持って現場に行きました。撮影の数日前から妻が『もう役をやってるの?』と言うくらいの入り込みようでしたので」と述懐。観客から拍手があがりました。
SNSでラストシーンにまつわるコメントが多数見られる本作は、原作とは異なるラスト展開となっています。脚本も手掛けた関根監督にその意図を尋ねると、「原作では後日談も描かれますが、僕はあえてそこを切って、皆さんに想像をふくらませていただきたいと思って。誰が罪を犯したのかとか、愛情という言葉で片づけられるのかとか、考えていただきたいと思ってあのラストにしました」とこだわりを明かしました。
ここで、『かくしごと』というタイトルにちなんで、公開後だからこそ明かせる撮影時の<かくしごと>を聞きました!
杏さんのかくしごとは『川あそびのシーンのあと、本当に子供と川あそびをしていた』。「子供も一緒にロケ地に来ていたんですけど、作品の雰囲気やスケジュールの都合もあって現場に子供を連れていくというようなことはしていなかったんですが、ちょうど時間があったので、楽しい川あ��びのシーンを撮ったあと、川辺でピクニックしてあそんでいました」とエピソードを披露。
中須さんのかくしごとは『ダイエット』。「役が役だったので、痩せなきゃいけなかったんですが、直前にコロナにかかってしまって。皆さんもご迷惑をおかけしてしまったんですが、そのおかげでちょうど痩せられました」と真相を明かしてくれました。
奥田さんのかくしごとは『撮影中の出来事をほとんどなにも覚えていない』。「セリフ以外になにを喋ったのか本当になにも覚えていないし、覚えていないまま家に帰って寝て、起きて、また現場に行くという繰り返しでした。ひとつだけ覚えてるのは、毎日縁側に座って眺めていた山の景色と蝶々!それくらいしか覚えてない」と驚きの告白。
関根監督のかくしごとは『中須翔真くんにもらったモノに依存しています』。「クランクアップのときに翔真くんが離れがたく思って泣いてくれて、僕までもらい泣きしてしまって。そのときにハンカチをもらったんですが、それがすごく尊いものに感じてしまって、しばらく誰かに芝居をつけたりするときのお守りのようになっていたんですが、もう手放せなくなってしまいました。ライナスの毛布みたいな感じですね。娘からもらったミサンガと一緒に、どの現場にも持っていっています」と話すと、なんとそのハンカチがポケットから登場!中須さんも笑顔で「持ち歩いていただいて、今日も持っていてくれて、嬉しいです。ありがとうございます」と関根監督に感謝を伝えていました。
最後に、杏さんが「たとえば自分だったらどうするか、あなただったらどうするか。誰かと話したくなる映画だと思います。誰かと話していただいたり、どう思うか疑問を投げていただいたり、そういう形で2度3度と味わっていただければと思います。本日は本当にありがとうございました」とメッセージを送り、舞台挨拶は幕を下ろしました。
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2023年7月21日に発売予定の翻訳書
7月21日(金)には20冊の翻訳書が発売予定です。
ビジュアル NASA図鑑 宇宙開発65年の全記録
ビル・シュワルツ/著 岡本由香子/翻訳 ナショナルジオグラフィック/編集
日経ナショナルジオグラフィック社
エキスパートPythonプログラミング 改訂4版
Michal Jaworski/著 Tarek Ziade/著 新井正貴/翻訳 稲田直哉/翻訳 ほか
ドワンゴ
バイオリン狂騒曲
ブレンダン・スロウカム/著 東野さやか/翻訳
集英社
新訳 ナルニア国物語7 最後の戦い
C・S・ルイス/著 河合祥一郎/翻訳
KADOKAWA
ザ・シークレット・オブ・ジ・エイジズ 成功者たちの不変の法則
ロバート・コリアー/著 茂木靖枝/翻訳
KADOKAWA
作家の仕事部屋
ジャン=ルイ・ド・ランビュール/編集 岩崎力/翻訳
中央公論新社
射精責任
ガブリエル・スタンリー・ブレア/著 村井理子/翻訳 齋藤圭介/解説
太田出版
ビリー・ジーン・キング自伝
ビリー・ジーン・キング/著 池田真紀子/翻訳
辰巳出版
マネーセンス 人生で一番大切なことを教えてくれる、「富」へ導くお金のカルテ11
吉田利子/翻訳 ブラッド・クロンツ/著 テッド・クロンツ/著
KADOKAWA
図説 世界の神獣・幻想動物
ボリア・サックス/著 大間知知子/翻訳
原書房
魔女書ものがたり 上
クリス・コルファー/著 田内志文/翻訳
平凡社
中国の情報侵略 世界化する監視社会体制
ジョシュア・カーランツィック/著 前田俊一/翻訳
東洋経済新報社
2050年の世界 見えない未来の考え方
ヘイミシュ・マクレイ/著 遠藤真美/翻訳
日経BP 日本経済新聞出版
スパイダーマン:クローン・サーガ
J・M・デマテイス他/著 ジョン・ロミータ・Jr.他/イラスト 小池顕久/翻訳
小学館集英社プロダクション
ベスト・オブ・キャプテン・アメリカ
ジャック・カービー/著・イラスト ジョー・サイモン他/著・イラスト 石川裕人/翻訳
小学館集英社プロダクション
星をつかんでポケットへ
アイシャ・ブシュビー/著 吉井知代子/翻訳
ほるぷ出版
ユンヌ・アンケット・ア・ロクマリア(仮)
マルゴ・ル・モアル&ジャン・ル・モアル/著 浦崎直樹/翻訳
二見書房
最���AI TikTokが世界を呑み込む
クリス・ストークル・ウォーカー/著 村山寿美子/翻訳
小学館集英社プロダクション
才有る人の物語
オクテイヴィア・E・バトラー/著 大島豊/翻訳
竹書房
種播く人の物語
オクテイヴィア・E・バトラー/著 大島豊/翻訳
竹書房
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貝塚市水間寺会館リフォーム工事
貝塚市木積小屋修復工事
貝塚市水間町 新築 リフォーム坂口建設
私が小学生1年のはじめの頃
帰り道のお地蔵さんまで迎えに来てくれてる母のもとにトボトボ歩いていた。
すると道端に百円玉が。
何故か百円を拾ったことより、母にそれを自慢できる気持ちが大きく、走ってお地蔵さんに。
「みてみて百円拾った」
と報告すると、それを派出所のお巡りさんに渡しておいでと言われ、近所の派出所に。
恐る恐る派出所に入ると奥から子供やっからかがたいの良いお巡りさんが出てきて、どうした?と聞かれた。
なんとか拾った時の説明をしたと思う。
するとお巡りさんはニコニコしながら大きな手で頭を何度も撫でられ
ひとしきり褒めてくれた気がする。
そして褒め終わると、
「よしっ、着いといで」と言って派出所を出ると私の手をひいて、近くの八百屋さんに連れていかれた。
ちなみに日高の八百屋さん。
お店に入ると、八百屋さんですがお菓子の棚があり、お巡りさんはその棚から3つほどのお菓子を選んで素早く会計を終えると、
店先でボッーと立っている私の前にかがんで、両手にそのお菓子を持たせてくれこう言った
「お金を正直に届けてくれたお礼や、家に持って帰ってたべや」
そのお菓子がロリータとルマンド、もうひとつはカステラだったような。
あの百円はどうなったかのかは、分からない。
でも50歳になった今でもエエ思い出。
善き頃の日本もうないかな?
とそしてこの今日のお話
昨日仕事帰りにホームセンターにネジを買いに、ホームセンターでの支払いはホームセンターの専用クレジットカードを使う、
いつものようにカバンから財布を出して決まったポケットからクレジットカードを、
精算を終えてまたカードを財布に、財布をカバンに入れて車で帰宅。
その後夕食を終えてコンビニに買い物に行き支払いをと財布を取り出そうとカバンを見ると財布がない?
おかしいなと思いつつも精算はスマホで決済!
家に帰って財布を探すが見当たらない。
落とした??
と記憶をたどり最後に財布をだしたホームセンターにと思ったが既に閉店。
そして今日、朝から起きてホームセンターの開店と同時に向い、昨日車を���めた駐車場あたりを見回すがあるわけがない。
店内で知り合いの店員さんを呼び止めて、事情を話して落とし物を調べてもらうがやはり届いてない。
財布には免許証に保険証、クレジットカードと、ありとあらゆる個人情報が、
たいしたことないんですけど、いやいや現金が、
それもあんまりたいして入ってないけど一万円未満かな?
諦めて近所の先程の三ケ山派出所に紛失届を出しに、
もちろん免許証がないのでジュディーの介護付き(-_-;)
クレジットカードを一時停止してもらうにも、警察にまず紛失届を出してそこで受理番号が必要。
三ケ山派出所は警察官が常駐してなく、留守の時はそこにおいてある固定電話から決められた番号に連絡すると貝塚警察署に繋がり、近くにいる連絡を受けた警察官が来てくれる。
待つこと10分、一人の警察官がバイクに乗ってきてくれた。
中に入って一通り説明をして書類を作成してもらう、そして警察官が貝塚警察署に受理番号をとるのと同時にとりあえず落とし物のとどけがないか確認の電話をしてくれた。
その会話を少し遠くで聞きながら壁に貼ってある三ケ山派出所周辺の大きな地図を眺める。しかし頭の中では帰ってからのクレジットカードの停止の電話や免許証の再交付などの手順を考えていた。
すると電話してる警察官の声のトーンが一気にあがり
「はいっ!えっ、えっ、えーー!」
このリアクションはまさか?財布あったとか?
いやいやそんなはずはない、変に期待をするのはやめよう、警察官同士の別件の話をしてるのだろうとまた地図をながめようとしたら警察官が受話器を外し手でおさえながら私に
「坂口さんに財布にICOCAカード入ってました?」
確かにはいってた、警察官には財布の中身を聞かれて、クレジットカードや免許証などの説明はしたが、どうせ見つからない財布にポイントカードや少額しかチャージされていないICOCAカードの説明は省略したのだ。
そしてICOCAカード入ってましたと伝えると続けて
「印鑑証明証カードとかも?」
と聞かれ少し前に印鑑証明証を上げることがあり財布に入れたままの事を思い出す。
入ってました!!
そして警察官はこう続けた
「財布ありましたよ、届けがあったみたいです、ただ、坂口さん濃い緑とおっしゃったんですが、なんか焦げ茶と言ってるんですが?」
と不思議そうな警察官。
それを聞いた私は恥ずかしくなった。
というのも、皮の財布が好きで使い込むと馴染んで使いやすい形になるのが好きで結構使い込む。
今回のやつも最初は綺麗なオリーブ色。
それが作業着のポケットに入れたり長年持つとどうしても汚れがでてくる。
���ュディーにも変えたらと言われつつも今に至る。
オリーブ色が焦げ茶か!
「すいません、焦げ茶でした(^o^;)」
その後電話で少し話した警察官、その電話の内容を親切に説明してくれた。
「昨晩、財布を拾ってくれた方が、この派出所に届けに来てくれたのですが、警察官がやはり居なくて、私と同じように置いてある電話で貝塚警察署に電話をかけた、そして電話に出た警察官が対応するとどうも外国人の方らしく日本語がカタコトで話せず、とりあえず財布を拾ったのでここに置いておきますといって電話をきったらしい。
貝塚警察署から付近にいる警察官に連絡が入り慌てて三ケ山派出所に来るも、既にその人はいなかった。」と言う。
えっ?お礼も言えないのですか?
しかも日本語を話せない外国人の方が、派出所まで来て財布を届けてくれた?
なんとも、私にとっては偶然とはいえ感謝の言葉しかありません。
最近 家の近所にも外国人労働者の方が沢山来ていて、勝手な想像で少し治安の面なども気になっていた。
そんな私の財布を届けてくれたのが、外国人の方とは、
ダメですね、何でもひと括りにして決めつけてしまうのは、反省です。
お陰様で今日はお昼から嫌な気持ちで地味な作業をしなければと思っていたのが、
それがそれが、ゆっくりハートフルな気持ちで過ごさせていただきました。
ちなみに拾得物のお礼は5%〜20%というような説明も警察官からうけたのですが、今回はそれすらもお返しすることができませんでした。
どうか皆様、三ツ松付近で知り合いの外国人の方が財布拾って三ケ山派出所に届けたという話を耳にしたら、是非教えて下さい。
ちゃんとお礼をお伝えしたいと思ってます。
善き日本、いや、善き世界!
明日からも真面目に頑張ります。
神様今日もありがとう。
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入院グッズ記録𓍯 また万が一のこともあるかも知れないので 自分用の備忘もかねて 4歳の付き添い入院グッズをまとめました。 ◯救急車に乗ったときの持ち物 あわてていたので以下だけ持って出ました。 スマホ充電器と上着が自分的にグッジョブでした。 靴はスニーカーで出ちゃったけど、入院になると部屋でスリッパ代わりに履けるフラットパンプス(かかとつぶせるタイプ)が大正解だったので後から持ってきてもらいました。 ・保険証 ・医療証 ・母子手帳 ・おくすり手帳 ・財布 ・スマホ ・スマホ充電器 ・会社携帯 ・イヤホン ・オムツ、おしりふき、着替え1セット(いつもマザーズバッグに入ってるモノ) ・母上着(フリース系のビッグサイズのやつ羽織って出たら、病室で毛布代わりにもなり◎付き添い入院の親の分は掛布団もないのね…) ◯後から持ってきてもらった物 旦那さんに翌日持ってきてもらいました。 家のネットをポケットwifiにしておくとこういうときは助かりますね。 ・iPad(YouTube、知育系アプリ、お絵描きアプリなど暇つぶしと私のリモートワークにと大活躍でした) ・iPad充電器 ・会社携帯充電器 ・ポケットwifi ・wifi充電器 ・オムツ(トイトレ進んでるけど点滴繋がれてるうちはベッドから動けなかったので結構大量に必要) ・おしりふき ・ボックスティッシュ ・2人分着替え一式 ・マスク替え ・フラットパンプス ・子の靴 ・保湿クリーム、歯ブラシ、歯磨き粉(子用、母用) ・キシリトールタブレット ・母スキンケア類、シャンプーリンス(試供品) ・身体拭きシート ・ドライシャンプー ・タオル ・子用コップ、スプーン、フォーク ・余分の紙袋、レジ袋(荷物仕分け、院内コンビニ買い出しに便利でした) ・家にあったバナナ、みかん、おやつ、のりなどむすこの好きな食べやすいもの ・お気に入りの図鑑 ・クレヨン、色鉛筆 ・トミカ少し ◯院内コンビニで調達した物 ・割り箸、プラスチックスプーン(お弁当とか買えば貰えるけど、自分と子どもで使い分けたり余裕欲しかったんで買いました。病院食にはカトラリーついてこなかった泣) ・インスタントコーヒー ・母用コップ(コーヒー飲んだり歯磨きしたり) ・こむぎねんど(暇つぶしにめちゃくちゃ活躍) ・知育ドリル ◯あればよかったものなど ・子用スリッパor室内履き ・爪切り(病院で借りれたけど、使い慣れたものが◎) ・片手で遊べるおもちゃ��点滴やらモニターやらで手が塞がりがち。利き手塞がってるとクレヨンも持ちにくいのでお絵描きもしにくい) ・給水マット的なもの(洗ったコップやカトラリーを置いておける場所) 旦那さんが いろいろ家の中からリクエストしたものかき集めてくれたけど 大変そうだったので いざというときのために どこになにがあるか分かりやすくする収納は 改めて大事だなと思いました。 --- #入院グッズ #入院準備 #入院準備リスト https://www.instagram.com/p/ClgW-ufpqBH/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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【小説】The day I say good-bye (3/4)【再録】
(2/4)はこちらから→(https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/647000556094849024/)
「あー、もー、やんなっ��ゃうよなー」
河野帆高はシャーペンをノートの上に投げ出しながらそう言って、後ろに大きく伸びをした。
「だいたいさー、宿題とか課題って意味がわからないんだよねー。勉強って自分のためにするもんじゃーん。先生に提出するためじゃないじゃーん。ちゃんと勉強してれば宿題なんて出さなくてもいいじゃーん」
「いや、よくないと思う」
「つーか何この問題集。分厚いくせにわかりにくい問題ばっか載せてさー。勉強すんのは俺らなんだから、問題集くらい選ばせてくれたっていーじゃんね」
「そんなこと言われても……」
僕の前には一冊の問題集があった。
夏休みの宿題として課されていたものだ。その大半は解答欄が未だ空白のまま。言うまでもないが、僕のものではない。帆高のものだ。どういう訳か僕は、やつの問題集を解いている。
その帆高はというと、また別の問題集をさっきまでせっせと解いていた。そっちは先日のテストが終わったら提出するはずだったものだ。毎回、テスト範囲だったページの問題を全て解いて、テスト後に提出するのが決まりなのだ。帆高はかかとを踏み潰して上履きを履いている両足をばたつかせ、子供みたいに駄々をこねている。
「ちゃんと期限までにこつこつやっていればこんなことには……」
「しぬー」
「…………」
つい三十分前のことだ。放課後、さっさと帰ろうと教室で荷物をまとめていた僕のところに、帆高は解答欄が真っ白なままの問題集を七冊も抱えてやってきた。激しく嫌な予感がしたが、僕は逃げきれずやつに捕らえられてしまった。さすが、毎日バスケに勤しんでいる人間は、同じ昼休みを昼寝で過ごす僕とは俊敏さが違う。
帆高は夏休みの課題を何ひとつやっていなかった。テスト後に提出する課題も、だ。そのことを教師に叱責され、全ての課題を提出するまで、昼休みのバスケ禁止令と来月の文化祭参加禁止令が出されたのだという。
それに困った帆高はようやく課題に着手しようと決意したらしいが、僕はそこに巻き込まれたという訳だ。一体どうして僕なのだろうか。そんな帆高だが、この間のテストでは学年三位の成績だというので、教師が激怒するのもわかるような気がする。
「…………どうして、保健室で勉強してるの」
ベッドを覆うカーテンの隙間から頭の先を覗かせてそう訊いてきたのは、河野ミナモだった。帆高とは同じ屋根の下で暮らすはとこ同士だというが、先程から全くやつの方を見ようとしていない。
そう、ここは保健室だ。養護教諭は今日も席を外している。並んだベッドで休んでいるのは保健室登校児のミナモだけだ。
「教室は文化祭の準備で忙しくて追い出��れてさ。あ、ミナモ、俺にも夏休みの絵、描いてよ。なんでもいいからさ」
帆高は鞄からひしゃげて折れ曲がった白紙の画用紙を取り出すと、ミナモへ手渡す。ミナモはしばらく黙っていたが、やがて帆高の方を見もしないまま、画用紙をひったくるように取るとカーテンの内側へと消えた。
帆高が僕の耳元で囁く。
「こないだ、あんたと仲良くなったって話をしたら、少しは俺と向き合ってくれるようになったんだ。ミナモ、あんたのことは結構信頼してるんだな」
へぇ、そうだったのか。僕がベッドへ目を向けた時、ミナモは既にカーテンを閉め切ってその中に閉じこもってしまっていた。耳を澄ませれば鉛筆を走らせる音が微かに聞こえてくる。
「そう言えば、あんたのクラスは文化祭で何やんのー?」
「なんだったかな……確か、男女逆転メイド・執事喫茶?」
「はー? まじでー?」
帆高はけらけらと笑った。
「男女逆転ってことは、あんたもメイド服とか着る訳?」
「……そういうことなんじゃない?」
「うひゃー、そりゃ見物だなーっ!」
「あんたのとこは?」
「俺のとこはお化け屋敷」
それはまた無難なところだな。こいつはお化けの恰好が似合いそうだ、と考えていると、
「そういやさ、クラスで思い出したんだけど、」
と帆高は言った。
「あんたのとこ、クラスでいじめとかあったりする?」
「さぁ、どうだろ……。僕はよく知らないけど」
いじめ、と聞いて思い出すのは、あーちゃんのこと、ひーちゃんのこと。
「なんか三組やばいみたいでさー。クラスメイト全員から無視されてる子がいるんだってさ」
「ふうん」
「興味なさそうだなー」
「興味ないなぁ」
他人の心配をする余裕が、僕にはないのだから仕方ない。
そうだ、僕はいつだって、自分のことで精いっぱいだった。
「透明人間になったこと、ある?」
あの最後の冬、あーちゃんはそう僕に尋ねた。
あーちゃんは部屋の窓から、遠い空を見上げていた。ここじゃないどこかを見つめていた。どこか遠くを、見つめていた。蛍光灯の光が眼鏡のレンズに反射して、その目元は見えなかったけれど、彼はあの時、泣きそうな顔をしていたのかもしれない。
僕はその時、彼が発した言葉の意味がわからなかった。わかろうともしなかった。その言葉の本当の意味を知ったのは、あーちゃんが死んだ後のことだ。
僕は考えなかったのだ。声を上げて笑うことも、大きな声で怒ることも、人前で泣くこともなかった、口数の少ない、いつも無表情の、僕の大事な友人が、何を考え、何を思っていたのか、考えようともしなかった。
透明人間という、あの言葉が、あーちゃんが最後に、僕へ伸ばした手だった。
あーちゃんの、誰にも理解されない寂しさだった。
「――くん? 鉛筆止まってますよ?」
名前を呼ばれた気がして、はっとした。
いけない、やつの前で物思いにふけってしまった。
「ぼーっとして、どした? その問題わかんないなら、飛ばしてもいいよ」
いつの間にか帆高は問題集を解く作業を再開していた。流れるような筆致で数式が解き明かされていく。さすが、学年三位の優等生だ。問題を解くスピードが僕とは全然違う。
「……この問題集、あんたのなんだけどね」
僕がそう言うと帆高はまたけらけらと笑ったので、僕は溜め息をついてみせた。
「最近はどうだい? 少年」
相談室の椅子にふんぞり返るように腰を降ろし、長い脚を大胆に組んで、日褄先生は僕を見ていた。
「担任の先生に聞いたよ」
彼女はにやりと笑った。
「少年のクラス、文化祭で男がメイド服を着るんだろう?」
「…………」
僕は担任の顔を思い浮かべ、どうして一番知られてはいけない人間にこの話をしたのだろうかと呪った。
「少年ももちろん着るんだろ? メイド服」
「…………」
「最近の中学生は面白いこと考えるなぁ。男女逆転メイド・執事喫茶って」
「…………」
「ちゃんとカメラ用意しないとなー」
「…………先生、」
「せんせーって呼ぶなっつってんだろ」
「カウンセリングして下さい」
「なに、なんか話したいことあるの?」
「いや、ないですけど」
「じゃあ、いーじゃん」
「真面目に仕事して下さい」
そもそも、今日は日褄先生の方から、カウンセリングに来いと呼び出してきたのだ。てっきり何か僕に話したいことがあるのかと思っていたのに、ただの雑談の相手が欲しかっただけなんだろうか。
「昨日は市野谷んち行ってきた」
「そうですか」
「久しぶりに会ったよ、あの子に」
僕は床を見つめていた目線を、日褄先生に向けた。彼女は真剣な表情をしている。
「……会ったんですか、ひーちゃんに」
日褄先生のことを嫌い、その名を耳にすることも口にすること嫌い、会うことを拒み続けていた、あのひーちゃんに。
「なーんであの子はあたしを見ると花瓶やら皿やら投げつけてくるのかねぇ」
不思議だ不思議だ、とちっとも不思議に思っていなそうな声で言う。
「あの子は、変わらないね」
ありとあらゆるものが破壊され、時が止まったままの部屋で、二度と帰ってくることのない人を待ち続けているひーちゃん。
「あの子はまるで変わらない。小さい子供と同じだよ。自分の玩具を取り上げられてすねて泣いているのと同じだ」
「……ひーちゃんをそういう風に言わないで下さい」
「どうしてあの子をかばうんだい、少年」
「ひーちゃんにとって、あーちゃんは全てだったんですよ。そのあーちゃんが死んだんです。ショックを受けるのは、当然でしょう」
「違うね」
それは即答だった。ぴしゃりとした声音。
暖かい空気が遮断されたように。ガラス戸が閉められたように。
世界が遮断されたかのように。
世界が否定されたかのように。
「少年はそう思っているのかもしれないが、それは違う。あの子にとって、直正はそんなに大きな存在ではない」
「そんな訳、ないじゃないですか!」
「少年だって、本当はわかっているんだろ?」
「わかりません、そんなこと僕には――」
僕を見る日褄先生の目は、冷たかった。
そうだ。彼女はそうなのだ。相変わらずだ。彼女はカウンセラーには不向きだと思うほど、優しく、そして乱暴だ。
「少年はわかっているはずだ、直正がどうして死んだのか」
「…………先生、」
「せんせーって呼ぶなって」
「僕は、どうすればよかったんですか?」
「少年はよく頑張ったよ」
「そんな言葉で誤魔化さないで下さい、僕はどうすれば、ひーちゃんをあんな風にしなくても、済んだんですか」
忘れられない。いつ会っても空っぽのひーちゃんの表情。彼女が以前のように笑ったり泣いたりするには、どうしても必要な彼はもういない。
「後悔してるの? 直正は死んでないって、嘘をついたこと」
「…………」
「でもね少年、あの子はこれから変わるつもりみたいだよ」
「え……?」
ひーちゃんが、変わる?
「どういう、ことですか……?」
「市野谷が、学校に行くって言い出したんだよ」
「え?」
ひー��ゃんが、学校に来る?
あーちゃんが帰って来ないのにどうして学校に通えるの、と尋ねていたひーちゃんが、あーちゃんがいない毎日に怯えていたひーちゃんが、学校に来る?
あーちゃんが死んだこの学校に?
あーちゃんはもう、いないのに?
「今すぐって訳じゃない。入学式さえ来なかったような不登校児がいきなり登校するって言っても、まずは受け入れる体勢を整えてやらないといけない。カウンセラーをもうひとり導入するとかね」
「でも、一体どうして……」
「それはあたしにもわからない。本当に唐突だったからね」
「そんな……」
待つんじゃなかったのか。
あーちゃんが帰って来るまで、ずっと。
ずっとそこで。去年のあの日で。
「あたしは、それがどんな理由であろうとも、あの子にとって良いことになればそれでいいと思うんだよ」
日褄先生はまっすぐ僕を見ていた。脚を組み替えながら、言う。
「少年は、どう思う?」
僕の腕時計の針が止まったのは、半月後に文化祭が迫ってきていた、九月も終わりの頃だった。そしてそれに気付いたのは、僕ではなく、帆高だった。
「ありゃ、時計止まってるじゃん、それ」
「え?」
帆高の課題は未だに終わっておらず、その日も保健室で問題集を広げて向き合っていた。何気なく僕の解答を覗き込んだ帆高が、そう指摘したのだ。
言われて見てみれば、今は放課後だというのに、時計の針は昼休みの時間で止まっていた。ただいつ止まったのかはわからない。僕は普段、その時計の文字盤に注意を向けることがほとんどないのだ。
「電池切れかな」
「そーじゃん? ちょっと貸してみ」
帆高がシャープペンシルを置いて手を差し出してきたので、僕はそっと時計のベルトを外し、その手に乗せる。時計を外した手首の内側がやつに見えないように気を付ける。
黒い、プラスチックの四角い僕の時計。
僕の左手首の傷を隠すための道具。
帆高はペンケースから細いドライバーを取り出すと、文字盤の裏の小さなネジをくるくると器用に外していた。それにしてもどうして、こんな細いドライバーを持ち歩いているんだろうか、こいつは。
「あれ?」
問題集のページの上に転がったネジを、なくさないように消しゴムとシャーペンの間に並べていると、文字盤裏のカバーを外した帆高が妙な声を上げる。
そちらに目をやると、ちょうど何かが宙を舞っているところだった。それは小さな白いものだった。重力に逆らえるはずもなく、ひらひらと落下していく。帆高の手から逃れたそれは、机の上に落ちた。
「なんだこれ」
��それは紙切れだった。ほんとうに小さな紙切れだ。時計のカバーの内側に貼り付いていたものらしい。僕はそれを中指で摘まんだ。摘まんで、
「…………え?」
摘まんで、ゴミかと思っていた僕はそれを捨てようと思って、そしてそれに気が付いた。その小さな紙切れには、もっと小さな文字が記されている。
図書室 日本の野生のラン
「……図書室?」
どくん、と。
突然、自分の心臓の鼓動がやけに耳に響いた。なぜか急に息苦しい気分になる。嫌な胸騒ぎがした。
――うーくん、
誰かが僕の名を呼んでいる。
「どうした?」
僕の異変に気付いた帆高が身を乗り出して、僕の指先の紙を見やる。
「……日本の野生のラン?」
――うーくん、
僕のことを呼んでいる。
「なんだこれ? なんかの暗号?」
暗号?
違う、これは暗号じゃない。
これは。
――うーくん、
僕を呼んでいるのは、一体誰だ?
「日本の野生のラン、図書室……」
考えろ。
考えろ考えろ考えろ。
これは一体、どういうことだ?
――うーくん、
知っている。わかっている。これは、恐らく……。
「図書室……」
今になって?
今日になって?
どうしてあの日じゃないんだ。
どうしてあの時じゃないんだ。
これはそう、きっと最後の……。
――うーくん、この時計あげるよ。
「ああ……」
耳鳴り。世界が止まる音。夏のサイレン。蝉しぐれ。揺れる青色は空の色。記憶と思考の回路が全て繋がる。
「あーちゃんだ…………」
「英語の課題をするのに辞書を借りたいので、図書室を利用したいんですけど、鍵を借りていってもいいですかー?」
帆高がそう言うと、職員室にいた教師はたやすく図書室の鍵を貸してくれた。
「そういえば河野くん、まだ宿題提出してないんだって? 担任の先生怒ってたわよ」
通りすがりの他の教師がそう帆高に声をかける。やつは笑って答えなかった。
「じゃー、失礼しましたー」
けらけら笑いながら職員室を出てくると、入口の前で待っていた僕に、「じゃあ行こうぜ」と声をかけて歩き出す。僕はそれを追うように歩く。
「ほんとにそうな訳?」
階段を上りながら、振り返りもせずに帆高が問いかけてくる。
「なにが?」
「ほんとにさっきのメモ、あんたの自殺した友達が書いたもんなの?」
「…………恐らくは」
僕が頷くと、信じられないという声で帆高は言う。
「にしても、なんだよ、『野生の日本のラン』って」
「『日本の野生のラン』だよ」
「どっちも同じだろー」
放課後の校内は文化祭の準備で忙しい。廊下にせり出した各クラスの出し物の準備物やら、ダンボールでできた看板やらを踏まないようにして図書室へと急ぐ。途中、紙とビニール袋で作られたタコの着ぐるみを着た生徒とすれ違った。帆高がそのタコに仲良さげに声をかけているところを見ると、こいつの知り合いらしい。こいつにはタコの友人もいるのか。
この時期の廊下は毎年混沌としている。文化祭の開催時期がハロウィンに近いせいか、クラスの出し物等もハロウィンに感化されている。まるで仮装行列だ。そんな僕も文化祭当日にはクラスの女子が作ってくれたメイド服が待っている。まだタコの方がましだった。
がちゃがちゃ���と乱暴に鍵を回して帆高は図書室の扉を開けてくれた。
閉め切られた図書室の、生ぬるい空気が顔に触れる。埃のにおいがする。それはあーちゃんのにおいに似ていると思った。
「『日本の野生のラン』って、たぶん植物図鑑だろ? 図鑑ならこっちだぜ」
普段あまり図書室を利用しない僕を帆高がひょいひょいと手招きをした。
植物図鑑が並ぶ棚を見る。植物図鑑、野山の樹、雑草図鑑、遊べる草花、四季折々の庭の花、誕生花と花言葉……。
「あっ…………た」
日本の野生のラン。
色褪せてぼろぼろになっている、背表紙の消えかかった題字が僕の目に止まった。恐る恐る取り出す。小口の上に埃が積もっていた。色褪せていたのは日に晒されていた背表紙だけのようで、両側を園芸関係の本に挟まれていた表紙と裏表紙には、名前も知らないランの花の写真が鮮やかな色味のままだった。ぱらぱらとページをめくると、日本に自生しているランが写真付きで紹介されている本。古い本のようだ。ページの端の方が茶色くなっている。
「それがなんだっつーんだ?」
帆高が脇から覗き込む。
「普通の本じゃん」
「うん……」
最初から最後まで何度もページをめくってみるが、特に何かが挟まっていたり、ページに落書きされているようなこともない。本当に普通の本だ。
「なんか挟まっていたとしても、もう抜き取られている可能性もあるぜ」
「うん……」
「にしても、この本がなんなんだ?」
腕時計。止まったままの秒針。切れた電池。小さな紙。残された言葉は、図書室 日本の野生のラン。書いたのはきっと、あーちゃんだ。
――うーくん、この時計あげるよ。
この時計をくれたのはあーちゃんだった。もともとは彼の弟、あっくんのものだったが、彼が気に入らなかったというのであーちゃんが僕に譲ってくれたものだ。
その時彼は言ったのだ、
「使いかけだから、電池はすぐなくなるかもしれない。でもそうしたら、僕が電池を交換してあげる」
と。
恐らくあーちゃんは、僕にこの時計をくれる前、時計の蓋を開け、紙を入れたのだ。こんなところに紙を仕込める人は、彼しかいない。
にしてもどういうことだろう、図書室 日本の野生のラン。この本がなんだと言うのだろう。
てっきりこの本に何か細工でもしてあるのかと思ったけれど、見たところそんな部位もなさそうだ。そもそも、本を大切にしていたあのあーちゃんが、図書室の本にそんなことをするとは思えない。でもどうして、わざわざ図書室の本のことを記したのだろう。図書室……。
「あ……」
図書室と言えば。
「貸出カード……」
本の一番後ろのページを開く。案の定そこには、貸出カードを仕舞うための、紙でできた小さなポケットが付いている。
中にはいかにも古そうな貸出カードが頭を覗かせている。それをそっと手に取って見てみると、そこには貸出記録ではない文字が記してあった。
資料準備室 右上 大学ノート
「……今度は資料準備室ねぇ」
ぽりぽりと頭を掻きながら、帆高は面倒そうに言う。
「一体、なんだって言うんだよ」
「……さぁ」
「行ってみる?」
「…………うん」
僕は本を棚に戻す。元通り鍵を閉め、僕らは図書室を後にした。
図書室の鍵は後で返せばいいだろ、という帆高の発言に僕も素直に頷いて、職員室には寄らずに、資料準備室へ向かうことにした。
またもや廊下でタコとすれ違った。しかも今度は歩くパイナップルと一緒だ。なんなんだ一体。映画の撮影のためにその恰好をしているらしいが、どんな映画になるのだろう。「戦え! パイナップルマン」と書かれたたすきをかけて、ビデオカメラを持った人たちがタコとパイナップルを追いかけるように速足で移動していった。
「そういえばさ、」
僕は彼らから帆高へ目線を移しながら尋ねた。
「資料準備室、鍵、いるんじゃない?」
「あー」
「借りて来なくていいの?」
「貸して下さいって言って、貸してくれるような場所じゃないだろ」
資料準備室の中には地球儀やら巨大な世界地図やら、あとはなんだかよくわからないものがいろいろ入っている。生徒が利用することはない。教師が利用することもあまりない。半分はただの物置になっているはずだ。そんな部屋に用事があると言ったところで、怪しまれるだけで貸してはくれないだろう。いや、この時期だし、文化祭の準備だと言えば、なんとかなるかもしれないけれど。
「じゃ、どうする気?」
「あんたの友達は、どうやってその部屋に入ったと思う?」
そう言われてみればそうだ。あーちゃんはそんな部屋に、一体何を隠したというのだ。そして、どうやって?
「良いこと教えてやるよ、――くん」
「……なに?」
帆高は僕の名を呼んだのだと思うが、聞き取れなかった。
やつは唇の端を吊り上げて、にやりと笑う���
「資料準備室って、窓の鍵壊れてるんだよ」
「はぁ……」
「だから窓から入れるの」
「資料準備室って、三階……」
「ベランダあんだろ、ベランダ」
三階の廊下、帆高は非常用と書かれた扉を開けた。それは避難訓練の時に利用する、三階の全ての教室のベランダと繋がっている通路に続くドアだ。もちろん、普段は生徒の使用は禁止されている。と思う、たぶん。
「行こうぜ」
帆高が先を行く。僕がそれを追う。
日が傾いてきたこともあり、風が涼しかった。空気の中に、校庭の木に咲いている花のにおいがする。空は赤と青の絵具をパレットでぐちゃぐちゃにしたような色だった。あちこちの教室から、がやがやと文化祭の準備で騒がしい声が聞こえてくる。ベランダを歩いていると、なんだか僕らだけ、違う世界にいるみたいだ。
「よいっ、しょっと」
がたんがたんと立て付きの悪い窓をやや乱暴に開けて、帆高がひょいと資料準備室の中へと入る。僕も窓から侵入する。
「窓、閉めるなよ。万が一開かなくなったらやばいからな」
「わかった」
「さて、資料準備室、右上、大学ノート、だったっけ? 右上、ねぇ……」
資料準備室の中は、物が所せましと置かれていた。大きなスチールの棚から溢れ出した物が床に積み上げられ、壊れた机や椅子が無造作に置かれ、僕らの通り道を邪魔している。どんな物にも等しく埃が降り積もっていて、蜘蛛の���が縦横無尽に走っている。
「右上っちゃー、なんのことだろうな」
ズボンに埃が付かないか気にしながら、帆高が並べられた机の間を器用にすり抜けた。僕は部屋の中���見回していると、ふと、棚の中に大量のノートらしき物が並べられているのを見つけた。
僕はその棚に苦労して近付き、手を伸ばしてノートを一冊取り出してみる。
「……昭和六十三年度生徒会活動記録」
表紙に油性ペンで書かれた文字を僕が読み上げると、帆高が、
「生徒会の産物か」
と言った。
「右上って、この棚の右上ってことじゃないかな」
「ああ。どうだろうな、ちょっと待ってろ」
帆高は頷くと、一番下の段に足をかけて棚によじ登ると、最上段の右側に置いてあるノートを無造作に二十冊ほど掴んで降ろしてくれた。それを机の上に置くと、埃が空気に舞い上がる。ノートを一冊一冊見ていくと、一冊だけ、表紙に文字の記されていないノートがあった。
「それじゃね?」
棚からぴょんと飛び降りた帆高が言う。
僕はそのノートを手に取り、表紙をめくった。
うーくんへ
たったそれだけの、鉛筆で書かれた、薄い文字。
「……これだ」
次のページをめくる。
うーくんへ
きみがこれを読む頃には、とっくに僕は死んでいるんだろうね。
きみがこのノートを手に取ってくれたということは、僕がきみの時計の中に隠したあのメモを見てくれたということだろう? そして、あの図書室の本を、ちゃんと見つけてくれたということだろう?
きみがメモを見つけた時、どこか遠いところに引っ越していたり、中学校を既に卒業していたらどうしようかと、これを書きながら考えているけれど、それはそれで良いと思う。図書室の本がなくなっていたり、このノートが捨てられてしまったりしていたらどうしようかとも思う。たとえ、今これを読んでいるきみがうーくんではなかったとしても、僕はかまわない。
これでも考えたんだ。他の誰でもなく、きみだけが、このノートを手に取る方法を。
これは僕が生きていたことを確かに証明するノートであり、これから綴るのは僕が残す最後の物語なのだから。
これは、僕のもうひとつの遺書だ。
「もうひとつの、遺書……」
声が震えた。
知らなかった。
あーちゃんがこんなものを残しているなんて知らなかった。
あーちゃんがこんなものを書いているなんて知らなかった。
彼が死んだ時、僕はまだ小学校を卒業したばかりだった。
あーちゃんは僕にメモを仕込んだ腕時計をくれ、それを使い続け、電池が切れたら交換すると信じていた。僕が自分と同じこの中学校に通って、メモを見て図書室を訪れると信じていた。あの古い本が破棄されることなく残っていて、貸出カードの文字がそのままであると信じていた。この部屋が片付けられることなく、窓が壊れたままで、ノートが残っていることを信じていた。
なによりも、僕がまだ、この世界に存在していることを信じていた。
たくさんの未来を信じていたのだ。自分はもう、いない未来を。
「目的の物は、それでいーんだろ?」
帆高の目は、笑っていなかった。
「じゃ、ひとまず帰ろうぜ。俺の英語の課題、まだ終わってない」
それに図書室の鍵も、返さなくちゃいけないし。そう付け加えるように言う。
「それは後でゆっくり読めよ。な?」
「……そうだね」
僕は頷いて、ノートを閉じた。
うーくんへ
きみがこれを読む頃には、とっくに僕は死んでいるんだろうね。
そんな出だしで始まったあーちゃんの遺書は、僕の机の上でその役目を終えている。
僕は自分の部屋のベッドに仰向けに寝転がって、天井ばかりを眺めていた。ついさっきまで、ノートのページをめくり、あーちゃんが残した言葉を読んでいたというのに、今は眠気に支配���れている。
ついさっきまで、僕はその言葉を読んで泣いていたというのに。ページをめくる度、心が八つ裂きにされたかのような痛みを、繰り返し繰り返し、感じていたというのに。
ノートを閉じてしまえばなんてことはない、それはただの大学ノートで、そこに並ぶのはただの筆圧の弱い文字だった。それだけだ。そう、それだけ。それ以上でもそれ以下でもなく、ただ「それだけ」であるという事実だけが、淡々と横たわっている。
事実。現実。本当のこと。本当に起こったこと。もう昔のこと。以前のこと。過去のこと。思い出の中のこと。
あーちゃんはもういない。
どこにもいない。これを書いたあーちゃんはもういない。歴史の教科書に出てくる人たちと同じだ。全部全部、昔のことだ。彼はここにいない。どこにもいない。過去のこと。過去のひと。過去のもの。過去。過去そのもの。もはやただの虚像。幻。夢。嘘。僕がついた、嘘。僕がひーちゃんについた、嘘。あーちゃんは、いない。いない。いないいないいない。
ただそれだけの、事実。
あーちゃんのノートには、生まれ育った故郷の話から始まっていた。
彼が生まれたのは、冬は雪に閉ざされる、北国の田舎。そこに東京から越してきた夫婦の元に生まれた彼は、生まれつき身体が弱かったこともあり、近所の子供たちとは馴染めなかった。
虫捕りも魚釣りもできない生活。外を楽しそうに駆け回るクラスメイトを羨望の眼差しで部屋から見送る毎日。本屋も図書館もない田舎で、外出できないあーちゃんの唯一の救いは、小学校の図書室と父親が買ってくれた図鑑一式。
あーちゃんは昔、ぼろぼろの、表紙が取れかけた図鑑をいつも膝の上に乗せて熱心に眺めていた。破けたページに丁寧に貼られていたテープを思い出す。
学校で友達はできなかった。あーちゃんはいつもひとりで本を読んで過ごした。小学校に上がる以前、入退院を繰り返していた彼は、同年代との付き合い方がわかっていなかった。
きっかけは小さなことだった。
ひとりの活発なクラスメイトの男の子が、ある日あーちゃんに声をかけてきた。
サッカーをする人数が足りず、教室で読書をしていた彼に一緒に遊ばないかと声をかけてきたのだ。
クラスメイトに声をかけられたのは、その時が初めてだった。あーちゃんはなんて言えばいいのかわからず黙っていた。その子は黙り込んでしまったあーちゃんを半ば強引に、外に連れ出そうとした。意地悪をした訳ではない。その子は純粋に、彼と遊びたかっただけだ。
手を引かれ、引きずられるようにして教室から連れ出される。廊下ですれ違った担任の先生は、「あら、今日は鈴木くんもお外で遊ぶの?」なんて声をかける。あーちゃんは抵抗しようと首を横に振る。なんとかして、自分は嫌なことをされているのだと伝えようとする。だけれどあーちゃんの手を引くそのクラスメイトは、にっこり笑って言った。
「きょうはおれたちといっしょにサッカーするんだ!」
ただ楽しそうに。悪意のない笑顔。害意のない笑顔。敵意のない笑顔。純粋で、率直で、自然で、だから、だからこそ、最も忌むべき笑顔で。
あーちゃんの頭の中に言葉が溢れる。
ぼくはそとであそびたくありません。むりやりやらされようとしているんです。やめてっていいた��んです。たすけてください。
しかしその言葉が声になるよりも早く、先生はにっこり笑う。
「そう。良かったわ。休み時間はお外で遊んだ方がいいのよ。本は、おうちでも読めるでしょう?」
そうして背を向けて、先生は行ってしまう。あーちゃんの腕を引く力は同い年とは思えないほどずっと力強く、彼の身体は廊下を引きずられていく。
子供たちの笑い声。休み時間の喧騒。掻き消されていく。届かない。口にできない言葉。消えていく。途絶えていく。まるで、死んでいくように。
あーちゃんは、自分の気持ちをどうやって他者に伝えればいいのか、わかっていなかった。彼に今まで接してきた大人たちは、皆、幼いあーちゃんの声に耳を傾けてくれる人たちばかりだった。両親、病院の医師や看護師。小さい声でぼそぼそと喋るあーちゃんの言葉を、辛抱強く聞いてくれた。
自分で言わなければ他人に伝わらないということも、幼いあーちゃんは理解していなかった。どうすれば他人に伝えればいいのか、その方法を知らなかった。彼は他人との関わり方がわからなかった。
だからあーちゃんは、持っていた本で、さっきまで自分が机で読んでいた本で、ずっと手に持ったままだったその分厚い本で、父親に買ってもらった恐竜の図鑑で、その子の頭を殴りつけた。
一緒に遊ぼう、と誘ってくれた、初めて自分に話しかけてくれたクラスメイトを。
まるで自然に、そうなることが最初から決まっていたかのように、力いっぱい腕を振り上げ、渾身の力で、その子を殴った。
あーちゃんを引っ張っていた手が力を失って離れていく。まるで糸が切れた人形のように、その子が倒れていく。形相を変えて駆け寄って来る先生。目撃した児童が悲鳴を上げる。何をやっているの、そう先生が怒鳴る。誰かに怒鳴られたのは、初めてだった。
倒れたその子は動かなかった。
たった一撃だった。そんなつもりではなかった。あーちゃんはただ伝えたいだけだった。言葉にできなかった自分の気持ちを、知ってほしいだけだった。
その一撃で、あーちゃんの世界は木っ端微塵に破壊された。
彼の想いは、誰にも届くことはなかった。
その子の怪我はたいしたことはなく、少しの間意識を失っていたけれど、すぐに起き上がれるようになった。病院の検査でも異常は見つからなかった。
あーちゃんの両親は学校に呼び出され、その子の親にも頭を下げて謝った。
あーちゃんはもう、口を開こうとはしなかった。届かなかった想いをもう口にしようとはしなかった。彼はこの時に諦めてしまったのだ。誰かにわかってもらうということも、そのために自分が努力をするということも。
そうしてこの時から、彼は透明人間になった。
「ママがね、『すずきくんとはあそんじゃだめよ』って言うの」
「うちのママも言ってた」
「あ���つ暗いよなー、いっつも本読んでてさ」
「しゃべってもぼそぼそしてて聞きとれないし」
「『ヨソモノにろくなやつはいない』ってじーちゃん言ってた」
「ヨソモノって?」
「なかまじゃないってことでしょ」
あーちゃんが人の輪から外れたのか、それとも人が離れていったのか。
あーちゃんはクラスの中で浮くようになり、そうしてそれは嫌がらせへと変わっていった。
眼鏡。根暗。ガイジン。国に帰れよ。ばーか。
投げつけられる言葉をあーちゃんは無視した。まるで聞こえていないかのように。
あーちゃんは何も言わなかった。嫌だと口にすることはしなかった。けれど、彼の足は確実に学校から遠ざかっていった。小学二年生に進級した春がまだ終わり切らないうちに、あーちゃんは学校へ行けなくなった。
そしてその一年後に、あーちゃんは僕の住む団地へとやって来た。
笑うことも、泣くことも、怒ることもなく。ただ何よりも深い絶望だけを、その瞳に映して。ハサミで乱暴に傷つけられた、ぼろぼろのランドセルを背負って。
彼のことを、僕が「あーちゃん」と呼んでいるのはどうしてなんだろう。
彼の名前は、鈴木直正。「あーちゃん」となるべき要素はひとつもない。
あーちゃんの弟のあっくんの名前は、鈴木篤人。「あつひと」だから、「あっくん」。
「あっくん」のお兄さんだから、「あーちゃん」。
自分でそう呼び始めたのに、僕はそんなことまでも忘れていた。
思い出させてくれたのは、あーちゃんのノート。彼が残した、もうひとつの遺書。
あーちゃんたち一家がこの団地に引っ越して来た時、僕と最初に親しくなったのはあーちゃんではなく、弟のあっくんの方だった。
あっくんはあーちゃんの三つ年下の弟で、小柄ながらも活発で、虫捕り網を片手に外を駆け回っているような子だった。あーちゃんとはまるで正反対だ。だけれど、あっくんはひとりで遊ぶのが好きだった。僕が一緒に遊ぼうとついて行ってもまるで相手にされないか、置いて行かれることばかりだった。ひとりきりが好きなところは、兄弟の共通点だったのかもしれない。
あっくんと遊ぼうと思って家を訪ねると、彼はとっくに出掛けてしまっていて、大人しく部屋で本を読んでいるあーちゃんのところに辿り着くのだ。
「いらっしゃい」
あーちゃんはいつも、クッションの上に膝を丸めるようにして座り、壁にもたれかかるようにして分厚い本を読んでいた。僕が訪れる時は大抵そこから始まって、僕の来訪を確認するためにちらりとこちらを見るのだ。開け放たれた窓からの逆光で、あーちゃんの表情はよく見えない。かけている銀縁眼鏡がぎらりと光を反射して、それからやっと、少し笑った彼の瞳が覗く。今思えば、それはいつだって作り笑いみたいな笑顔だった。
最初のうちはそれで終わりだった。
あーちゃんは僕がいないかのようにそのまま本を読み続けていた。僕が何か言うと、迷惑そうに、うざったそうに、返事だけはしてくれた。それもそうだ。僕はあーちゃんからしてみれば、弟の友達であったのだから。
だけれどだんだんあーちゃんは、渋々、僕を受け入れてくれるようになった。本や玩具を貸してくれたり、プラモデルを触らせてくれたり。折り紙も教えてもらった。ペーパークラフトも。彼は器用だった。細くて白い彼の指が作り出すものは、ある種の美しさを持っていた。不器用で丸々とした、子供じみた手をしていた僕は、いつもそれが羨ましかった。
ぽつりぽつりと会話も交わした。
あーちゃんの言葉は、簡単な単語の組み合わせだというのに、まるで詩のように抽象的で、現実味がなく、掴みどころがなかった。それがあーちゃんの存在そのものを表しているかのように。
僕はいつの頃からか彼を「あーちゃん」と呼んで、彼は僕を「うーくん」と呼ぶようになった。
うーくんと仲良くできたことは、僕の人生において最も喜ばしいことだった。
それはとても幸福なことだった。
うーくんはいつも僕の声に、耳を傾けようとしてくれたね。僕はそれが懐かしくて、嬉しかった。僕の気持ちをなんとか汲み取ろうとしてくれて、本当に嬉しかった。
僕の言葉はいつも拙くて、恐らくほとんど意味は通じなかったんじゃないかと思う。けれど、それでも聞いてくれてありがとう。耳を塞がないでいてくれて、ありがとう。
ノートに記された「ありがとう」の文字が、痛いほど僕の胸を打つ。せめてその言葉を一度でも、生きている時に言ってくれれば、どれだけ良かったことだろう。
そうして、僕とあーちゃんは親しくなり、そこにあの夏がやって来て、ひーちゃんが加わった。ひーちゃんにとってあーちゃんが特別な存在であったように、あーちゃんからしてもひーちゃんは、特別な存在だった。
僕とあーちゃんとひーちゃん。僕らはいつも三人でいたけれど、三角形なんて初めから存在しなかった。僕がそう信じていたかっただけで、そこに最初から、僕の居場所なんかなかった。僕は「にかっけい」なんかじゃなくて、ただの点にしか過ぎなかった。
僕が死んだことで、きっとひーちゃんは傷ついただろうね。
傷ついてほしい、とすら感じる僕を、うーくんは許してくれるかな。きっときみも、傷ついただろう? もしかしたら、うーくんがこのノートを見つけた時、きみは既に僕の死の痛みから立ち直っているかもしれない。そもそも僕の死に心を痛めなかったかもしれないけれどね。
こんな形できみにメッセージを残したことで、きみは再び僕の死に向き合わなくてはいけなくなったかもしれない。どうか僕を許してほしい。このノートのことを誰かに知られることは避けたかった。このノートはきみだけに読んでほしかった。
きみが今どうしているのか、僕には当然わからないけれど、どうか、きみには生きてほしい。できるなら笑っていてほしい。ひーちゃんのそばにいてほしい。僕は裏切ってしまったから。あの子との約束を、破ってしまったから。
「約束」という文字が、僅かに震えていた。
約束?
あーちゃんとひーちゃんは、何か約束していたのだろうか。あのふたりだから、約束のひとつやふたつ、していたっておかしくはない。僕の知らないところで。
うーくん。
今まできみが僕と仲良くしてくれたことは本当に嬉しかった。きみが僕にもたらしてくれたものは大きい。きみと出会ってからの数年間は、僕が思っていたよりもずっと楽しかった。うーくんがどう思っているのかはわからないけれどね。
ひーちゃんも、よくやってくれたと思ってる。僕が今まで生きてこられたのは、ふたりのおかげでもあると思ってるんだ。
けれど僕は、どうしようもないくらい弱い人間だ。弱くて弱くて、きみやひーちゃんがそばにいてくれたというのに、僕は些細な出来事がきっかけで、きみたちと過ごした時間を全てなかったことにしてしまうんだ。
気が付くと、自分がたったひとりになっているような気分になる。うーくんもひーちゃんも、本当は嫌々僕と一緒にいるのであって、僕のことなんか本当はどうでもいい存在だと思っている、なんて考えてしまう。きみは、「そうじゃない」と言ってくれるかもしれないが、僕の心の中に生まれた水溜まりは、どんどん大きくなっていくんだ。
どうせ僕は交換可能な人間で、僕がいなくなってもまた次の代用品がやってきて、僕の代わりをする。僕の居た場所には他人が平気な顔をして居座る。そして僕が次に座る場所も、誰か他人が出て行った後の場所であって、僕もまた誰かの代用品なんだ、と考えてしまう。
よく考えるんだ。あの時どうすれば良かったんだろうって。僕はどこで間違えてしまったんだろうって。
カウンセラーの日褄先生は、僕に「いくらでもやり直しはできるんだ」って言う。でもそんなことはない。やり直すことなんかできない。だって、僕は生きてしまった。もう十四年間も生きてしまったんだ。積み上げてきてしまったものを、最初からまた崩すなんてことはできない。間違って積んでしまった積み木は、その年月は、組み直すことなんかできない。僕は僕でしかない。鈴木直正でしかない。過去を清算することも、変更することもできない。僕は、僕であるしかないんだ。そして僕は、こんな自分が大嫌いなんだ。
こんなにも弱く、こんなにも卑怯で、こんなにも卑屈な、ひねまがった僕が大嫌いだ。
でもどうしようもない。ひねまがってしまった僕は、ひねまがったまま、また積み上げていくしかない。ひねまがったままの土台に、ひねまがったまま、また積み上げていくしか。どんなに新しく積み上げても、それはやっぱりひねまがっているんだ。
僕はもう嫌なんだ。間違いを修正したい。修正することができないのなら、いっそなかったことにしたい。僕の今までの人生なんてなかったことにしたい。僕にはもう何もできない。何もかもがなくなればいい。そう思ってしまう。そう思ってしまった。泣きたくなるぐらい、死にたくなるぐらい、そう思ったんだ。
うーくん。
やっぱり僕は、間違っているんだろうと思う。
もう最後にするよ。うーくん、どうもありがとう。このノートはいらなくなったら捨ててほしい。間違っても僕の両親や、篤人、それからひーちゃんの目に晒さないでほしい。きみだけに、知ってほしかった。
きみだけには、僕のようになってほしくなかったから。
誰かの代わりになんて、なる必要ないんだ。
世界が僕のことを笑っているように、僕も世界を笑っているんだ。
そこで、あーちゃんの文字は止まっていた。
最後に「サヨナラ」の文字が、一度書いて消した痕が残っていた。
あーちゃんが僕に残したノートの裏表紙には、油性ペンで日付が書いてあった。
あーちゃんが空を飛んだ日の日付。恐らく死ぬ前に、これを書いたのだろう。そして屋上に登る前にこのノートを資料室の棚の中へと隠した。その前に図書室の本に細工し、それ以前にメモを忍ばせた時計を僕に譲ってくれた。一体いつから、あーちゃんは死のうとしていたんだろう。僕が思っているよりも、きっとずっと以前からなんだろう。
涙が。
涙が出そうだ。
どうして僕は、気付かなかったんだろう。
どうして僕は、気付いてあげられなかったんだろう。
一番側にいたのに。
一番一緒にいたのに。
一番僕が、彼のことをわかったつもりになっていて、それでいて、あーちゃんが何を思っていたのか、肝心なことは何もわかっていなかった。
僕は何を見ていたんだろう。何を聞いていたんだろう。何を考えていたのだろう。何を感じていたのだろう。
僕は何を、していたのだろう。
何をして生きていたんだろう。
あーちゃん。
あーちゃんあーちゃんあーちゃん。
僕は彼のたったひとりの友達だったというのに。
言えばよかった。言ってあげればよかった。言いたかった。
あーちゃんはひねまがってなんかないって。
あーちゃんはひとりなんかじゃないって。
あーちゃんは、透明人間なんかじゃ、ないんだって。
今さらだ。ほんとうに今さらだ。
僕は知らなかった。わからなかった。気付いてあげられなかった。最後まで。本当に最後まで。何もかも。
わかっていなかった。何ひとつ。
ずっと一緒にいたのに。
僕があーちゃんをちゃんと見ていなかったから、僕があーちゃんを透明にして、彼の見る世界を透明にしたのだ。
僕が彼の心に触れることができていたならば、あーちゃんはこんなもの書かなくても済んだのだ。わざわざ人目につかないところに隠して、こんなものを、こんなものを僕に読ませなくても済んだのだ。
僕は、こん��ものを読まなくても済んだのに!
あーちゃんがたとえ、ひねまがっていても、ひとりぼっちだったとしても、透明だったとしても、それがあーちゃんだったのに。あーちゃんはあーちゃんだったのに。あーちゃんの代わりなんて、どこにもいないというのに。
ひーちゃんは今も、あーちゃんのことを待っているというのに。
あーちゃんはもういないのに。全部嘘なのに。僕がついた嘘なのに。あんなに笑って、でも少しも楽しそうじゃない。空っぽのひーちゃん。世界は暗くて、壊れていて、終了していて、破綻していて、もうどうしようもないぐらい完璧に、歪んでしまっているというのに。それでも僕の嘘を信じて、あーちゃんは生きていると信じて、生きているというのに。
僕はずっと勘違いをしていた。
あーちゃんが遺書に書き残した、「僕の分まで生きて」という言葉。
僕はあーちゃんの分まで生きたら、僕があーちゃんの代わりに生きたら、幸せになるような気がしていたんだ。あーちゃんの言葉を守っていれば、ご褒美がもらえるような、そんな風に思っていたんだ。
あーちゃんはもういない。
だから、誰も褒美なんかくれない。誰も褒めてなんてくれない。褒めてくれるはずのあーちゃんは、もういないのだから。
本当の意味で、あーちゃんの死を理解していなかったのはひーちゃんではなく、僕だ。
ひーちゃんはあーちゃんの死後、生きることを拒んだのだから。彼女はわかっていたのだ。生きていたって、褒美なんかないってことを。
それでも僕が選ばせた。選ばせてしまった。彼女に生きていくことを。
あーちゃんの分まで生きることを。
褒美もなければ褒めてくれる人ももういない。
それでも。
でもそれでも、生きていこうと。生きようと。この世界で。
あーちゃんのいない、この世界で。
いつだってそうだ。
ひーちゃんが正しくて、僕が間違っている。
ひーちゃんが本当で、僕は嘘なんだ。
「最低だな……僕は」
あーちゃんにもひーちゃんにも、何もしてあげられなかった。
「あーーーーーーーーーーーーーーーっ!」
廊下どころか学校じゅうにまで聞こえそうな大絶叫を上げて、帆高が大きく伸びをした。
物思いにふけっていた僕は、その声にぎょっとしてしまった。
「終わったあああああああああああああああーっ!」
「うるさいよ……」
僕が一応注意しておいたけれど、帆高に聞こえているかは謎だ。
「終わった終わった終わったーっ!」
ひゃっほぉ! なんて言いながら、やつは思い切り保健室のベッドにダイブしている。舞い上がった埃が電灯に照らされている。
「帆高、気持ちはわかるけど……」
「終わったー! 俺は自由だああああああああーっ!」
「…………」
全く聞いている様子がない。あまりにうるさいので、このままでは教師に怒られてしまうかもしれない。そう、ここはいつもの通り、保健室だ。帆高のこの様子を見るに、夏休みの課題がやっと終わったところなのだろう。確かにやつの手元の問題集へ目をやると、最後の問題を解き終わったようだ。
喜ぶ気持ちはわかるが、はしゃぎすぎだ。どうしようかと思っていると、思わぬ人物が動いた。
すぱーんという小気味良い音がして、帆高は頭を抱えてベッドの上にうずくまった。やつの背後には愛用のスケッチブックを抱えた河野ミナモが立っている。隣のベッドから出てきたのだ。長い前髪でその表情はほとんど隠れてしまっているが、それでも彼女が怒っているということが伝わる剣幕だった。
「静かに、して」
僕が知る限り、ミナモはまだ帆高とろくに会話を交わしたことがない。これが僕の知る限り初めてふたりが言葉を交わしたのを見た瞬間だった。それにしてはあまりにもひどい。
ミナモはそれだけ言うとまたベッドへと戻り、カーテンを閉ざしてしまう。
「……にてしても、良かったね。夏休みの宿題が終わって」
「おー…………」
ミナモの一撃がそんなに痛かったのだろうか、帆高は未だにうずくまっているままだ。僕はそんなやつを見て、そっと苦笑した。
僕は選んだのだ。
あーちゃんのいないこの世界で、それでも、生きることを。
※(4/4)へ続く→https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/649989835014258688/
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Facebookで7日間ブックカバーチャレンジという、いわゆるバトンが回ってきたので今日までやっていました。
バトンが流行っていたあの時代、最初はノリノリでやっていたものの次第に面倒くささや少しのモヤモヤに飲み込まれ遠ざかっていきました。
正直なところ今でも少し苦手ですが、基礎疾患が多く厳重に引きこもる何も起きない日々……苦手なルールを排除してやってみようと思った訳です。
以下敬称略です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1
『寺山修司少女詩集』 角川文庫
著:寺山修司
とある病気で手術をし入院生活を送っていた時に常に持っていた詩集。短い詩も多いため音読をしたり書き写したりと、リハビリの供として大変お世話になりました。
『ヒスイ』という詩が作曲家の信長貴富によって合唱曲と独唱曲になっており、主メロがとても好きなのでいつか歌えないものかと思って楽譜を眠らせています。合唱になっている詩なら『飛行機よ』も好きです。曲がまた最高なんですよ、冒頭のアカペラがホールに響く気持ちよさ……いかんいかん、合唱ができない日々に悶々として合唱の話をしてしまう……。
2
『これは のみの ぴこ』 サンリード
作:谷川俊太郎 絵:和田誠
表題の「これは のみの ぴこ」から始まる壮大な言葉遊び(ネタバレになるので言葉遊びとしか言えません)……黄金コンビの谷川俊太郎と和田誠による詩の絵本です。和田さんがレタリングしたのだろうと思うのですが、絵にぴったりのフォントが良いです。
四歳頃全文を暗記、今でも暗唱出来るというのが私の地味な特技です。ページを繰るごとに一文が増えていくこの絵本、繰り返し繰り返し読み聞かせをする側は大層地獄だったと思います。ごめんなさい。でもまあ、あくまでも絵本なのでそんなにお時間は取りませんから、うんざりせずに読んでください。全文暗唱出来るという地味な特技が出来るかもしれません。
3
『指輪物語』評論社
著:J・R・R・トールキン 訳:瀬田貞二・田中明子
映画『ロード・オブ・ザ・リング』の原作で文庫版は全10巻にも及ぶ超大作ファンタジー小説です。全ファンタジー小説の始祖的な物語。前日譚の『ホビットの冒険』も含めた中つ国の物語がとても好きです。文字や地図に歴史、文化。その全てが著者による創作なのに、隙を感じさせないところが最高。この長さで挫ける人もいるとは思います……でも、面白いです!こんな時にファンタジーはいいかもしれませんね。
映画も好きで何度も観ていますが、小説版は映画を観たあとでも十分楽しめます。レゴラスはいいぞ!!もう、映画だけでもいいから!映画もめちゃくちゃ長いけど!!映画だったら、王の帰還でピピンが宰相の前で歌う曲がいいです。作業中に映画のサントラを流すと壮大な気持ちになれておすすめ!
4
『七色いんこ』秋田文庫
作:手塚治虫
手塚治虫といえば火の鳥、ブッダ、アトム……いろいろありますがあえての七色いんこです。漫画類が禁止されていた幼少期に祖父がぽんとくれたのが七色いんこ5巻でした。火の鳥は親と共に行った人の家に全巻あり貪るように読んでた気がします。ブッダは小学校の時教室にあったなあ。あれは何故だったんでしょう。
七色いんこの話に戻ります。なんと言っても、いんこがカッコいいんですよ。あとトミー。ルパン三世しかり、世界各地にある秘密基地、老若男女誰にでも変身出来るマスク……ロマンが溢れます。こういうの、憧れる時があると思うんですが、え?ないですか?またまたぁ。ラストに犬のタマサブローが主人公のお話があり、そこに私の推しのタコブネ(のようなもの)が出てきます。タコブネ、かわいいタコブネ……。
5
『学研の観察図鑑2 昆虫2・クモ』学研
監修:国立科学博物館 友國雅章
小学生時代、旅行でも持ち歩いていたポケット図鑑です。自然についてや、カメラやボードゲームについて教えてくれた方との思い出もたくさん詰まっています。これは○○アブ!あれは△△アブ!それはハエ!それはハチ!!とかやってましたね……。
幼少期に愛読書=図鑑の時期があると思うんですが、それが昆虫倶楽部という特殊な部活に入部したことも相まって相当長引いていたように思います。ビビりなので普通に害虫(Gとか)は嫌いですが、無駄に知識だけはモリモリあります。そういえば、昔ディスカバリーチャンネルでGの研究者がその身体能力について嬉々として語るとか見てたな……あいつら脚の動きがね、すごいんであんなに速いらしいっすよ。
6
『鳥の王さま ショーン・タンのスケッチブック』
著:ショーン・タン 訳:岸本佐知子
アニメーション作家でもある著者に��る画集です。眺めているだけで本当に幸せになれる本。去年、ちひろ美術館東京で開催された展覧会も見に行きましたし、翻訳されている絵本はかなり持っています。ちひろ美術館では展覧会の画集と『セミ』という絵本を買いました。可哀想で可愛いセミ。自由だ!セミ!
風景や人物スケッチは当然素敵なのですが、何より不思議生物達が可愛い。本当に可愛い。大してない語彙力が消滅します。眼福眼福……。いつかこんな絵が描きたいけれど、描けないだろうなあと思って寂しくなるくらいお気に入りです。この人の毒はゴーリーのような即効性はありませんがじわじわと優しく効く毒です。絵本『エリック』もいいぞ!(ゴーリーだったら『うろんな客』がいいぞ!)
7
『アヒルと鴨のコインロッカー』創元推理文庫
著:伊坂幸太郎
伊坂幸太郎の小説が好きでこれまたたくさん読んでいるのですが、ここは一番最初に読んだ本を。
新幹線の中で読もうと東京駅の本屋で手に取ったのがこれで、ここだけの話旅行より夢中でした。以来、伊坂幸太郎に限らず、ばらまかれた伏���達が最後に集合し結実するカタルシスの虜です。映画もいいよ。他におすすめするなら、初期作品は当然なんですが是非『フィッシュストーリー』を。短いのですんなり読めます。映画も最高。もうすっかり結末はわかってるのに何度も観ちゃう。斉藤和義の作った劇中歌も最高なんで。止まらなくなるので切り上げますね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以上、ブックカバーチャレンジは終了です。
1、詩集
2、絵本
3、ファンタジー
4、漫画
5、図鑑
6、画集
7、ミステリー
このようにジャンル分けをし、思い出のあるものを中心に無理矢理絞り出しました。なのでちょっと中途半端な気もします。
図書館に行ったら上限冊数借りてきてしまうような、いわゆる本の虫には酷なバトンでした。他にもオーデュボンの祈りとかボッコちゃんとか儚い羊たちの祝宴とかぶらんこ乗り、エッシャーの画集、やっぱりオオカミ、ことわざ辞典、伝記類……はてしない物語ギリシャ神話ラブクラフト全集バスカヴィル家の犬青い鳥聖☆おにいさんオズの魔法使い怪盗探偵山猫不思議の国のアリス腕貫探偵おおきな木福家警部補……切りがないので解散!!
お付き合いくださいましてありがとうございました。最後に、今読んでいるのは
『不穏な眠り』文春文庫
著:若竹七海
探偵葉村晶シリーズ最新刊です。葉村晶シリーズ一巻目『依頼人は死んだ』は短編集なので入りやすくこのシリーズの醍醐味が詰まっていて、導入として最高です。ドキドキハラハラ……えっ……あ……うわあああああああああってなれます。
以上です。では。
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バックパックの持ち物をさらしてみる
以前1泊2日で、京都にて開催されたハッカソンに行った際、ほぼ普段と変わらない荷物の量だったのですが、ハッカソン参加者の一部は結構興味津々な様子でした。
そこで、「いつかバックパックの中身をさらす」エントリを書くぞ、ということを公言していましたので、ここで実行しておきます。
所持品に関するテーマ
私はバックパックに入れるものについて、一定のテーマをもって選定しています。
そのテーマとはバーチャル性。ここでいうバーチャル性とはひと手間かけることで、本来のものと比較して仮想的に同じ体験を提供する性質を指します。
バーチャル性の高いものは、バーチャルな〇〇として機能しますので、バーチャルではない本来のものの持ち運びを省略することができます。
使っているバックパック
私が使っているバックパックはGobigというメーカーの安価なものとなります。Amazonで簡単に手に入り、軽く薄いのが特徴です。
薄いため当然荷物はあまり入りません。通常のバックパックよりも荷物を絞らなくてはなりません。いわゆるミニマリズム強制バックパックと考えていただいてよいでしょう。
それでは内容物を紹介していきます。
写真に写っていないもの
まず写真には写っていないものが数点ありますので、こちらから紹介します。
PC (RAZER Blade Stealth)
撮影時、別で使っていたので、ここでは枠に収めることはできませんでした。
私の商売道具であり、かつゲームも支えてくれているゲーミングPC、それがRAZER Blade Stealthです。見た目、質感、性能、どれをとっても妥協のないマシンで、とても気に入っています。
印鑑・メイン銀行のトークン
セキュリティ上の都合により、撮影を差し控えました。
個人事業をやっている関係で、出先にて契約書を確認して捺印するシーンもそれなりにあり、認印は持ち歩くことにしています。
また、送金などの手続きもスムーズに済ませるためネットバンキングを利用していますが、どの端末からでも同じ操作感で操作したいため、銀行の公式アプリは利用していません。
Bluetoothイヤフォン
elecom LKBT-HPC12を使っています。この時は充電中のため枠外にありました。
普通に音楽聞いたり、skypeで電話かけたりするのに使います。
写真に写っているもの
いよいよ写真に写っているものを、想定されているシチュエーションごとに紹介していきます。
風呂に入る・身支度をする
カミソリ
化粧水 (容器は MUJI ポリエチレン小分けボトルワンタッチキャップ 18ml)
シャンプー(容器は MUJI ポリエチレン小分けチューブ 30ml)
30g固形石鹸
歯磨き粉
歯ブラシ
泉州タオル(よく記念品なんかでもらえるアレ)
ハンドクリーム
ポリエステル 吊るせるケース小物ポケット
要するに風呂道具、ボ��ィケア用品です。
私は銭湯に好んで行くので、この辺の装備は欠かせません。しかし普通に風呂道具を持ち運ぶとかなりかさばってしまいますよね。
私は風呂道具一式を、無印良品のポリエステル 吊るせるケース小物ポケットで極限まで小さくまとめています。かさばりがちなシャンプーなどはバーチャルなシャンプーとして、すべて30ml以内のミニサイズのボトルへ詰め替えています。
石鹸はミニサイズ(30g)のものを使っており、ビニール袋に入れて保管しています。以前はボディソープを使っていましたが、洗い上がりが段違いにすっきりするので、今は固形石鹸を愛用しています。これぞバーチャルな石鹸ですね。
バスタオルも省略しました。風呂上がりに泉州タオルをよく絞って身体の水を拭き取ることを繰り返せば大丈夫。泉州タオルはバーチャルなバスタオルとして機能しますので、バスタオルは不要となります。
ちなみに私はエニタイムフィットネスの会員なのですが、日本全国どこにでもあって全店舗シャワールーム完備&24時間利用可能なんですね。しかもどこの店舗も利用可能な契約なので、この風呂道具さえあれば、実質バーチャルなシャワールームがいつでもどこでも利用可能ということです。バーチャルな風呂をいつでもどこでも利用できるのはとても良いものですよ。
本を読む
Kindle Paperwhite
本はたいていKindle Paperwhiteで読んでいます。Kindle Unlimitedにも加入しているので、比較的新しい目のタイトルは大体これで読みました。主にライフスタイルや経済論、技術書、一部新書などを読み漁ります。
コミックはマンガ喫茶で読みますし、どうしても電子書籍にないものは図書館で読んだり借りたりします。紙の本はお気に入りの本以外自宅に置かないようにし、なるべくバーチャルな図書室を意識しています。
働く・遊ぶ
RAZER Blade Stealth
WiMAX2+ モバイルルータ
USBチャージャー Anker PowerPort+ 5 USB-C USB Power Delivery
USB-Cケーブル
USB-MicroBケーブル
モバイルバッテリー Maxell MPC-C6700WH
iPhone7用充電器
iPhone7用充電ケーブル
名刺ケース
Bluetoothイヤフォン elecom LKBT-HPC12
仕事も遊び(ゲーム)もSNSも大体PCかスマフォで完結していますので、その周辺機器が並んでいる感じです。なるべくバーチャルな自室を作り出せるようなラインナップで占めています。
モバイルルータは大井競馬場のフリーマーケットにて300円で購入したものですが、そこにWiMAX2+のSIMを刺して使っています。タッチディスプレイに横線が入ってしまっていますが、実用には全く問題ありません。
役割が被っているものが一部ありますが(USBチャージャーとiPhone7用充電器)、USBチャージャーを取り出すほどではないケースではiPhone7用充電器をそのままUSBチャージャーとして転用することがあります。
移動する
バイク関連書類(自賠責など)
降雨が予想されているケースでもない限り、普段の移動はHonda FTR223というバイクを使っています。ほぼ自動車とおなじ使い方です。
バイクは(お勤めの会社が問題さえなければ)通勤に利用することで満員電車と無縁でいられますし、夏場は暑さを束の間忘れることができます(冬場は寒いですが・・・)。たまに遠出するときにも、便利な翼として利用できます。普通自動二輪(125ccを超える自動二輪車)であれば、高速道路を走ることもできます。私もFTRで80~90km/h程度の速度で東名高速を巡行することがあります。
交通ルールとマナーを守ることは非常に重要であることは言うまでもないことですが、とくにバイクでマナーを徹底的に順守していると、周りのドライバーからの好感度が高いような気がします。
ともあれ、200cc以上の普通自動二輪をバーチャルな自家用車として利用するために、自賠責などの書類を常に持ち歩いています。
運ぶ
大風呂敷
バイク用ネット
不意にかさばるものを入手してしまった場合、大風呂敷で包んであげるとエコバッグよりも容量があって便利です。大風呂敷はそのほかにもブランケットの代わりとして使うことができます。創造力次第で無限に利用方法が編み出せるのが良いですね。まさにバーチャルなバッグと言えます。
もし荷物をバイクに括り付けたい場合でも、バイク用ネットがあれば大丈夫。大風呂敷ひと包み分ほどの荷物であれば、タンデムシートに安全に積載することができます。
衣類をメンテナンスする
洗濯洗剤
ソーイングキット
特に旅先で有用なのが洗濯洗剤です。旅行時の荷物において、その体積の多くは衣類によって占領されてしまいます。旅行時に荷物を減らすには、いかに衣類を持たないかが重要となります。とはいえ、毎日洗濯もせずに同じ服を着ていてはさすがに清潔感に乏しくなりますよね。
そんな時、洗濯洗剤を持っていれば、ホテルの洗面台やコインランドリーなどで肌着や靴下、Tシャツを洗濯することができます。幸いなことにたいていのビジネスホテルにはガウンなどの館内着が備え付けられていることがほとんどですので、うまく調整することで、6泊7日ほどの長旅でも着替えはTシャツ1枚と肌着、靴下一組だけ、という構成で乗り切ることができます。
旅先では自宅と同じクローゼットを再現するのではなく、洗濯をすることでバーチャルなクローゼットを広げておく事が重要だと思います。
ソーイングキットは普段なかなかお世話にならないかと思いますが、持っていると、ボタンが外れてしまったときやスキニーパンツがほつれてしまったときに応急処置することができます。これもバーチャルなクローゼットを広げるための工夫です。
普段は入れないが状況によって入れることがあるもの
おもにビジネスホテルへの宿泊や長時間移動を含むときには、これらを入れることがあります。
食べる・飲む
マイ箸
三徳
マグボトル
バーチャルなキッチンを意識したアイテム達です。宿泊先近くの飲み屋やレストランが閉まってたり、パッとしなかったりするときには大活躍。コンビニはどこにでもあります。でも、せっかく購入した「さば缶」がプルタブ式じゃなかったら?買ってきたワインがコルク式だったら?ビジネスホテルでは居室内に食器が置いてないこともザラですよね。
そんな時にはこれらのアイテムが大活躍します。マグボトルには温かいお茶かコーヒーを入れておくと、長時間温かいままですので、冬場の寒い朝でもゆっくりしたティータイムを楽しむことができます。
眠る
アイマスク
耳栓
バーチャルな寝室を意識したアイテム達ですが、枕はどうした?とお思いでしょう。
枕はバックパックと大風呂敷を駆使しつつ中の荷物を調整して枕とします。バーチャルな枕がちゃんと含まれていましたね。
ただし、本気の寝室には程遠いので、長距離移動のうたた寝だとかちょっとした昼寝程度に使うことを想定しています。
まとめ
バックパックの中身について、バーチャル性をテーマに取捨選択すると、旅行時と普段の荷物に差をなくすることができます。
ぜひ皆さんもバーチャル性に着眼して、あなたならではのバーチャルな〇〇を作ってみてください!
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【新・再入荷】
文一総合出版の本
ハンドブック
「里山の地衣類」「タカ・ハヤブサ類飛翔」
「新 庭に鳥を呼ぶ本」
「季節とフィールドから鳥が見つかる」
ポケット図鑑
「日本の昆虫1400①チョウ・バッタ・セミ」 「都市の樹木433」
大人気のクリアファイルも再入荷。
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原色オジイ図鑑
Vol.5 トングの爺
ミックスされた楽曲のサウンド・チェックを複数の人間で行なっていると、ときどき不思議な現象が起きる。
例えば、ひとりのメンバーが「最初から最後までイン、イン、イン、という感じの、なんとも言えない異音が聞こえて不快である」とか言い出す。ところが、他のメンバーはおろか音響のプロである録音技師も、その音を聞き取ることができない。
「何を言っているのだ、コイツは」と思って即座にメンバーを解雇したりできないのは、経験則として、そうした現象がスタジオでは頻発するからで、特定の個人にしか聞こえない音があるくらいでメンバーやスタッフの首をギッチョンギッチョン切っていると、いずれ自分の首も同じ理由によってスパッと切られてしまうことがわかっているからだ。
聴こえている音がそれぞれ違う。音楽にはそうした多面的な魅力があって面白い。
こうした事例は、何も音楽だけに限られたことではないのかもしれない。
と言うのも、以前に住んでいた町をプラプラと散歩していたときのことだった。
なんでもない交差点で信号待ちをしていると、ギリギリのところでズングリとは呼べないくらいにズングリとした小柄な爺が、銀色の棒を使って交通整理のようなものを始めた。
善意で町内のパトロールや、通学路の見守り隊を行なっている爺さんたちと同じような社会的回路から露出した爺だと思ったけれど、少しだけ様子がおかしいのは、この交差点にはガッツリと信号が設置され、交通整理の必要性がまったくないところだった。
ちょっと変だなと思いながら観察していると、爺のあたりからカチ、カチ、カチ、と軽い金属音が聞こえてきて、数秒前に思った「ちょっと変だな」が、いや、「かなり変だな」に塗り替えられて、俺より先に横断歩道を渡って転がって行ってしまった。
先に横断してしまった違和感を追いかけながら、爺の側を過ぎて道路の反対側に渡った。すれ違うときに爺が握っている金属製の棒を凝視した。
爺が持っていたのは大きめのトングだった。
爺のトングは焼いた肉をひっくり返すには少し大きく、七輪に燃え残った木炭を拾うには少し小さい、みたいな絶妙なサイズのものだった。爺は信号が青になる度に、トングをカチカチと鳴らし、どうぞ、みたいな高さまで振り上げて通行人たちに横断を促していた。
爺はとてもにこやかだった。トングを持っていること以外は、どこにでもいる爺が履いているような地味なズボンに、どこにでもいる爺が着ていそうなセーターを着て、どこにでもいる爺が羽織っていそうなポケットの多いベストを羽織り、どこにでもいる爺が被っていそうなキャップを被った、どこにでもいる爺だった。
ところが、通行人たちは爺に一瞥もくれずに去って行く。そこには何も存在しないというような感じで、中年女性は平然と自転車のペダルを漕ぎ、親子連れの子のほうが謎のトングに注目するのではないかと思ったが、親子ともども完全にスルーして過ぎて行った。
恐ろしいことだなと思った。
トングの爺の不思議な感じにヤられて、俺は爺のいる交差点を散歩道に採用した。平日や休日を問わずランダムに爺は交差点に��れ、毎日ではなく、なんとなく気分で交通整理をする日を決めているようだった。爺に会えた日は嬉しく、会えない日は悲しかった。
散歩というよりはトングの爺を見に行くことが日課になってしまった時期もあった。
ある日、トングの爺と交差点で二人きりになった。信号は赤になったばかりで、爺さんはトングを下に降ろして、車道の遠くに連なるいくつもの青信号を眺めていた。俺は勇気を出して「こんにちは」と声をかけた。
爺は俺のほうを向いてニコリと笑った。近くで見ると紅潮していないニホンザルのボス、みたいな顔をしていた。
そして、爺はおもむろにトングを振り上げ、ここから見え得る限りで一番遠い信号をトングで指し、「ちょっと待っててなぁ」と俺に告げ、カチ、カチ、カチとトングを閉じたり開いたりしながら軽い金属音を出しはじめたのだった。
「今、あっちから順番に赤に変えるから」
爺に超人的な力があるのか、単に時間が過ぎただけなのかはわからないが、遠くの信号機から順々に青信号が黄色を経て赤になり、目の前の歩行者用の信号が青に変わった。そして、爺は遠くの車道に向けていたトングを横断歩道のほうに向けて、カチカチと音を鳴らしながら、朗らかにいつもの交通整理をはじめたのだった。
俺はキツネにつままれたような気分になりながら、散歩道へと戻って行った。
振り返ると爺は何やら怒声を発し、交通のマナーを守らない自転車を追いかけて、ゆっくりと路地へ消えていった。いつものにこやかさからは想像しがたい爺の激情に驚いいたのだった。
しばらくして、爺は忽然と姿を消した。
あまりにも静かに爺はいなくなり、���とからここにはいなかった、かのようでもあった。いくつかの季節を見送ったあとで、トングの爺はもう交差点には現れないと俺は悟ったのだった。
イラスト:コバヤシカナコ
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Vol.130 死をヘッドマウントディスプレイに映して
「死をポケットに入れて(邦題)」 チャールズ・ブコウスキー
という本がある。10年前くらい前に読んだので 内容はさっぱり覚えていないが、タイトルが好きで ずっと記憶に残っている。
しかし、この死というものが遠い感じというか、 バーチャル感というか、 リアリティーの欠如というか… それが最近強化されてきている気がする。 この感覚は何なのだろうか?
昨今(2022年8月)でも、多くの著名人や、ウイルスや戦争で、 多くの死が情報としては共有されているというのに。
死というものが、猫やお役立ち動画や政治のニュースや経済の不安や生活の大変さや無修正ポルノと一緒に流れて咀嚼する間もなく消化不良になっているような、この手触り感の無さは何なのだろうか。僕だけなのか?
最近は、
虐殺器官の主人公みたいに、 プライベート・ライアンの冒頭30分、 オマハビーチの上陸シーンだけを定期的に観たりしてしまう。
古代生物図鑑を観ながら、 ダンクレオステウスの泳ぐデボン紀の海に放り出されてしまう妄想をしながら、命の危機に直面するという感覚を確かめたりしている。
死をポケットに入れるくらいじゃ、 この情報爆発の時代の忘却力には対抗できない。
ああーみんな死ねばいいのにー! よう、まだくたばってないのか? 万死に値する まじか〜ほんと死ねばいいと思う♡ 惜しい人を亡くした。ご冥福をお祈りいたします。 合掌
なんて死を感じさせるセリフや言い回しは日々溢れているが、 言語化は思考の体現と考えれれば、 現代の日本において「死」という存在は なんてカジュアルで軽くてリアリティが無いのだろう。 地震も原発事故もあって、戦争の気配までし始めているというのに。
戦争をしたがるのは、死の実感を得られない想像力の欠如した権力者の病だ!
なんて人間至上主義的な物語で考えたくもなるが… 単純にセレンゲティー・ルールと同じような増えすぎた個体数調整のためのトリガーにすぎないのかもしれない。
そうだとするなら、この死に対する現実感の希薄化は、 悪の組織や強欲な権力者による陰謀とか、SNSなどテクノロジーの進歩による精神病とかいろいろな視点で色々な解釈ができるかもしれないが、結局は、マクロ規模の生物的反応ということかもしれない。
そう考えると、結局この事態を生み出したのは、 知恵のりんごを食べたイブじゃないか…! ということになってくる。
こういう仕組みを理解してしまうことも、その仕組みに気づかずそれに付随する個別の物語に囚われパラノイアに陥ることも、全部中途半端な知恵があるからだ。
個体数調整の仕組みを埋め込まれた生を、 理性を抱えて生きるのは辛すぎる。
やはり今ボクに必要なのは、 三つ目がとおるで、写楽がつくった「脳みそをところてんにする機械」なのか?
それより、本当は、電車で見かけたカワイイあの子に同化して、カワイイあの服をきて、かわいい仕草で、可愛く生きたい。
メタバースやVtuberの盛り上がりで、バ美肉など男性は美少女になりたいというのが可視化されたのは人類の思想的な明るい兆しかもしれない。
浮世を変えられないなら、自分が変わるのが一番だしね。 江口寿史も女性になりたいって言ってるし。
そういえば昔、政治への興味をあげるために政治家は美少女アバターを纏うことを義務化すべし、という記事を書いたけど、ギャグで���なく意外とありえそうになってきたな。
エリカ・チェノウェスのいう「3.5%ルール」で考えれば、3.5%の人々が非暴力的な方法で本気で立ち上がれば社会がかわるらしい。 ポスト資本主義や、気候変動への対応や、民主主義の正常化は残念ながらめちゃくちゃ時間がかかりそうだが、人類の美少女化は加速的に進むかもしれない。
そうすれば、美少女(アバター)を分断した思想の代弁者として、相互に語り合うツールとできたら… 分断した人たちが相互に建設的に考えをすり合わせて、大きな問題をいい感じに解決する世界になるかもしれない。もしかしたら、美少女アバターこそ、J・D・バナールの「宇宙・肉体・悪魔」で書かれていた、複数の脳みそをダイレクトにつなげるというアイデアの具体化なのでは…
とか、よくわからなくなってきたが、まとめると、 美少女アバターが世界を救う!
…かもしれない
※イデア 会田誠
by タロ吉 美少女になれる!と思ったらなんとなく生きる気力が湧いてきた
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