#オレンジ担当
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溢れる感情に耐えられず傘を捨てて走りに走った。好きな人が私の目を見て発する言葉すべての響きとそのやさしい眼差しと細い睫毛と照れるときに伏し目になる癖とかその一切を心に封じて忘れたくなくて何度も頭の中で繰り返した。好きだ、好きだ、好きだ。わたしは君が好きだ。どんどんと激しさを増す雨はひたすら冷たいのに身体だけが熱くなっていくのを感じながら、それでも走り続けた。鞄の重さとか捲れるスカートとか靴擦れの痛みとか通りすがりの人の目とか全部どうでもよかった。なんでも出来る気がした。そう信じて疑わなかった雨の日の十四の夜がわたしにもあった。初めて乗った飛行機から見下ろした小さな街の灯りと海の広さと雲の上の世界に胸を躍らせ、天使とか妖精とか永遠とか運命の王子様とかを新品の12色のカラフルなクーピーで描いては大人に見せて得意げにしていた幼少期がわたしにもあった。異国の地で朱色の民族衣装に身を包んで、爪と唇に紅色を塗って、ヘナをした手に煌びやかなアクセサリーを付けた。久しぶりに降る雨を喜んで屈託のない笑顔を浮かべて踊る男の人たちを綺麗だと思った。わたしも、あんな風に雨と仲良くなりたいと思って濡れた長い黒髪を乱して踊った。割礼を終えたばかりの男の子の涙の意味を知った。脚首にロープを巻かれたあと逆さに吊るされて目の前でさばかれた羊の生肉を薄いビニール袋に入れて渡された。男の子の手の温度を知った。街中を歩く牛や犬の匂いと流れる川の音。あの頃の私はそのすべてに美しさを見出せていた。汚れるということは、綺麗なことの証明だと思う。わたしは汚れているのかもしれない。保健の教科書を広げて赤いマーカーを引いた。射精。コンドーム。欲求不満。自分を汚い奴だと思いながら、寝る前に未だ知らなかった快感を覚えた十五の夜がわたしにもあった。赤、オレンジ、黄色、緑、青、紫、カラフルな旗や服で溢れた音楽ライブ。目の前で成人した男のひとと男のひとがキスをしていた。飲み干されたビール缶は臭かった。挙げられた数百ものスマホのスクリーンに映る舞���の光はちゃんときらきらしていた。何にでも名前をつけたがる世界に��書があるなら片っ端から斜線を引いてって新しいぴかぴかの世界でわたしは自分の書きたいことを書きたい。自分の心の底で光る甘い色をした海を、自分の唇の柔らかさや温度を、身体を駆け巡る血の赤を、これからの未来と築き上げてきた過去を、わたしは誰にも触れさせずに愛したいと思う一人の人間のために取っておいている。でも、本当はそんなの早く壊してほしい。粉々になった「処女のわたし」越しに新しい広い世界を見てみたい。今にも震えて壊れそうで怯えている幼い自分の手を離して、愛する人の手を握りたい。なんてことを考える夜はもうこれで何回目だろうか。なんてことを考える自分の愚かさに何度も救われた。二年前の夏、スーパーマーケットで一枚の五百円玉を差し出して買った花束を片手に持って、一人で電車に乗った。中学の頃に出会った恩師が「時間があれば是非お見舞いに行ってください」と言っていた人の元へ赴く。今考えたら名前も顔も知らない人の元へお見舞いに行くなんて変な話だ。はじめて行く病院の場所を何度もマップで確認しながらメモに取っておいた女性の名前を看護師に伝え、病室を案内してもらった。女性はミャンマーの人だった。花束をあげて、少しお話をした。彼女はわたしの手の甲にキスをしたあと、静かに泣いて何度も抱きしめてくれた。聖典の一章を朗読してくれた。帰り道、傘で顔を隠しながら泣いた。純粋な愛だった。美しいひとときだった。今、彼女が生きているのかそれともその命を引き取ってしまったのか、わたしには分からない。けれども、あんな風に泣ける真っ直ぐな生き方をしたいという想いはずっと変わらない。その日の天気は雨だった。雨は好きだ。雨は、全てを洗い流してゆるしてくれるから。初めて音響を担当することになった「虹」というタイトルの演劇では雨の降るシーンがいくつかあった。震える指先でたった一瞬の動作でわたしはちいさなちいさな世界に雨を降らす。雨の帝王だ、と心の中で反芻してはニヤついた。辛いことを乗り越えたあとには必ず幸せがやってくるということの例えで、よく雨が降るから虹が見える、って言うじゃないですか。でもそんな例えに騙されて虹をみるために涙を流し続ける人生より、自分で雨の中に虹を描いちゃいたい。馴染みのある、12色のクーピーで。子供心に戻って楽しめたもん勝ち。受験生の頃、夜、傘を忘れ��自転車で濡れながら塾から帰った日があった。どんどん浮き彫りになっていく周りと自分の学力の差に悔しくて、偏差値が低く出た模試はあとでシュレッダーにかけた。三者面談。志望校欄。願書。併願。見飽きた言葉たちに翻弄され、泣いてばかりいた。でも自販機で買うあったかいココアの程よい甘さとコインランドリーの優しい香りと無数の街灯、ちゃんと減っていくカレンダーの枚数と増えていくばつ印の日付に救われた。ちゃんと受験は終わったし、わたしは高校に入学できたし、もうあれから一年が経つ。十六歳になった日、結婚ができるのだと改めて感じてそわそわした。長いようで早くて、早いようで長かったし、楽しくって悲しかった。そんな風に過ぎていく時間をひとつずつ捕まえて名前を付けたりして愛でてあげたいのに、形のないそれらは風みたいにその温度だけ残してどこかまた違うところ、もっと遠いところに行ってしまう。かけがえのない、忘れないと心に誓った記憶ですらもどんどん薄れていくのを痛感するたびに自分が少しずつ死に近付いていっているのを感じてやるせない気持ちになる。かなしいね。かなしいと思えるくらいにはきっと美しい日々をわたしは送ってきたのだと思う。その嬉しさをエネルギーにして、これからも真っ直ぐ生きれたらなあと思う。なりたい人間像がたくさんあって、未来に求めるものが有り余るほどあって、やってみたい仕事も選びきれなくて、それを世間とか大人とか過ぎ去っていく時間は「理想が高い」なんて言うかも知れないけれど、広い世界は泳ぎがいがある。さようならと言うのは悲しいことじゃないし、別にすべきことじゃない。そこで泣けないのは純粋じゃないことの証明にはならない。受け入れてきたものも切り捨ててきたものも今のわたしを構成しているものの一部であって、それだけでわたしたちは経験してきたことに、出会ったものに、本当の意味でさようなら出来なくて、だからわたしは気兼ねなく前を向いて走れる。だいすきな友達と一緒にみた海の波のきらめき。船が海を分けていく音。風に草木が揺れる音。春の優しい花の匂い。パラパラと降る雪を見ては笑顔を浮かべて窓から手をのばす同級生たち。突然の豪雨に濡れちゃったと言って教室に並べられた何枚ものセーターと靴下。腹を仰向けにしてすやすやと眠るわたしのことが大好きな野良猫くん。わたしの指先を嗅いでその耳を擦り付ける。彼の毛並みを整える時間が好きだ。絨毯みたいに地に張り付いた銀杏の葉と黄色がかった君の手のひらを比べては微笑んだ。何枚ものワンピースを着て青い空の下をお気に入りの音楽���聴きながら過ごした。父はいつも愛してるといっておでこにキスをしてくれる。叱られた夜は悪い子になってヤンキーが聴いてそうな音楽をわざとリピートして何度も聴いた。すれ違っては仲直りした友達。新しい出会いに戸惑って変にこだわりを持つ自分に自惚れて人を傷つけては泣かせてきた。調子に乗って取り返しの効かない大事なものを失って苦しんだ夜もあった。登れそうな木を見つけては登って、自転車で団地の周りを競争して漕いで、ララポートにイケア、コストコが並ぶ街へと続くうねうねした三郷にある一本道を何度も渡って欲しいものを買ってもらって、いつも家に帰る前にその包みをこっそり開けたりした。新品の制服をはじめて着たときは受験で落ちたことが思い浮かんで嫌になった。今ではシャツは少し色褪せ、セーターは伸びて、わたしの匂いがする。川のせせらぎの音を聴きながら揺れる木々を眺める、それだけで神様とお話しできた気でいた夏。線香花火をして蟻にとっては雷だねなんて話した。花束を貰って泣いていた先生。正反対の向かい合わせの新宿の駅のホームで手を上げて揺らして交わすバイバイの合図は一瞬で電車にかき消された。こんなに語ってしまった。でもさ、仕方ないじゃんね、あちこちで平成最後とか言ってんだもん。色々考えちゃったじゃん。ばーか!名前があっても無くても変わっても変わらなくても、わたしはわたしの時間を生きていて、それはずっと変わることはないから、わたしは自分の決断をこれからも信じていけたらいいなって思うよ。まあタチの悪いのが今年はいくつかあったけれどまあもう終わったので、きらきら一年生、友達何人出来るかな、みたいな心構えで広い器で程よく頑張れたらと思う。平成、送辞、終。
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役者紹介🚃💨🍩🍗
どうも、らびです。ビアゲ編も書き足したぞ。34期の皆さんは最後まで読んでくれると嬉しいな
【栞編】
今回のキーワードとなる「環状線」にちなんで、おそらくこの中で最も環状線を知ってるであろう私が、皆さんに似合いそうなオススメの大阪環状線の駅を書いていきたいと思います。被っても知らん。
〇園堂香莉
大阪城公園
お散歩してそう。あの辺はお散歩にちょうどいいですからね、自然も綺麗でお城もあるし。かなりオススメです。古墳好きな人はお城も好きなんでしょうか
〇近未来���イラ
寺田町
あの、ほんま、この駅ってなんも無…簡素で素朴なエリアなんですよね。素朴な舞台が好きなみーらのセンスと近しいものがあるような気がしなくもない。それにしてもほんまに何も無いこの駅。でもみーらなら独自の着眼点で何かを見出せそう
〇たぴおか太郎
大阪
キディランドもユザワヤもありますからね。間違いなく大阪駅でしょう。それはそうと、あそこのちいかわらんどって絶対にもっと広くするべきだと思いませんか?
〇錫蘭リーフ
福島
オフィスカジュアル的な衣装がとても似合ってるのでオフィス街でおなじみのこの駅で。でもほんまにあのオシャレなオフィス街歩いてそうなんだよな
〇帝京魂
京橋
京橋怖いよな。特に夜なんて怪しげな人が沢山いるし…でもこの辺色々ラーメン屋さんとかあるイメージですね。でもあんまり知らない。京橋怖いので
〇森々仙入
西九条
ユニバが似合いそう。ということでユニバに繋がってる西九条駅をチョイス。ユニバのクルーにいそう。私もユニバ行く時にしか使ったことないので西九条に何があるかが分かりません。
〇箏
福島
中之島の近くでもあるのですが、中之島のあたりは景色が美しいですねー。川沿いにおしゃれな建物が沢山立ち並んでいて緑も多くて…そんな景色がルーベにピッタリではないかなと
〇苔丸
弁天町
駅に隣接して空庭温泉という大型温泉施設があります。温泉だけでなく写真スポットやらレストランやらが沢山融合していて楽しい場所なので是非
〇響夜
芦原橋
ここには教習所があります。ここの教習所はなかなか難易度が高く、普段から千日前筋など大都会を走ります。ここに最狂のドライバーなびやをブチ込んだら一体どうなるんでしょうか。
〇ミル鍋
桃谷
この辺はオシャレなお家が多いですからね〜お金持ちの凝りに凝った家がちらほらあります。建築巡りしても楽しそうです。
〇あろハム権左衛門
福島
福島には美味しい飲み屋が沢山あるので、オーストラリアのパーリーで初手ジントニックをキメたあろハムならやっていけるでしょう。
〇アリリ・オルタネイト
玉造
住宅街のイメージなので街にいるネコちゃんと触れ合いますね。あと近くの空堀商店街には猫カフェがいくつかある。オススメです。
〇〆切三日前
天満
商店街があって美味しい飲食店が沢山あります。かなりオススメ。市場もあるから芋も売ってるかも…新鮮な食材が勢ぞろいしてま��
〇黒井白子
��ノ宮
森ノ宮には実は漫才劇場があります。ここでよくお笑いライブがやってるんですよねしかもなかなか豪華!あと普通に劇場もある。演劇も観れてピッタリやん
〇中森ダリア
鶴橋
コリアタウンあるからね、間違いない。鶴橋は少々治安が悪いのですが、あのゴチャゴチャ感はアウトロー好きのひらりなら問題ないでしょう。
〇きなこ
桜ノ宮
環状線で春にここを通ると川に沿って桜がいっぱい咲いててすごい綺麗なんですよね。雰囲気的に桜が似合いそうだなぁと思ってのチョイスです
〇暁レミエル
天王寺
放課後の天王寺にいそう〜〜JKが似合うのでJKが沢山いる天王寺です。画材屋さんもあるよ。あとアクセスが良い!でも阪大からは遠い
〇肆桜逸
大阪
都会の眩しさに圧倒されてほしいです。ちなみに大阪駅には「LUCUA1100」って建物があるのですがこの読み方ご存知ですか?
〇埖麦
天王寺
めっちゃ放課後天王寺にいそう2。高校生が似合うからかな。この辺の高校生は放課後天王寺のフードコートやらでたむろしてます。いそう
〇紫苑
新今宮
カオスと混沌の街、新今宮———。こんな場所になつめを突っ込んだらどうなってしまうのでしょうか…そのカオスさを見てみたいですね。でも新今宮に行くのはオススメしません。どっちやねん。オススメしろよ。
〇水琴冬雪
大阪城公園
カメラをやっているので。何と言っても景色が綺麗で撮りごたえのある場所なのではないかなと思います。春は梅や桜が沢山咲いててカメラマンも多いですよ
【BE YOU AGAIN 編】
BE YOU 「揚げ」INということで、みなさんにオススメの揚げ物を書いていきたいと思います。みなさんにオススメのと言いつつも、みなさんを揚げ物に例えると、みたいな趣旨になっているかもしれません。
東愛莉
ごまだんご
おさげ髪がよく似合うので。両手に持ってて欲しい
大良ルナ
ハムカツ
ピンク色がよく似合うので。頬張っててほしい
児
カキフライ
独特の雰囲気がありつつも魅力的である
うみつき
白身魚のフライ
サッパリしている、ぽい
統括のフォーニャー
チーズホットグ
キラキラしているから
緒田舞里
エビフライ
みんな大好きで華がある
白
大葉の天ぷら
爽やかだが渋さもある
埖麦
ポテトフライ
若者のジャンキーな雰囲気がぽい
岡崎仁美
竜田揚げ
唐揚げではなく竜田揚げ
雨々単元気
ししとうの天ぷら
辛いやつに当たって良い反応しそう
舞原の絞り滓
オニオンリング
めっちゃなんとなくやけど、ぽい
じゃがりーた三世
串カツ
中身が全然わからない
オーム
コロッケ
声の雰囲気がコロッケの中身の感触に近い感じがするので
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ごぼうのの唐揚げ
細い
縦縞コリー
唐揚げ
唐揚げバカ
大福小餅
揚げパン
甘党すぎるから
叶イブ
チュロス
甘くて可愛いものが似合う
アリリ・オルタネイト
揚げ春巻き
グローバルな感じがするからです
はぜちかきつ
カツ
王道。似合う。
おや…役者紹介の様子がおかしいぞ…
▶︎役者紹介が団員紹介に変化した!
という訳で34期の皆さんには真面目なやつを書いていきたいと思います。
◯たぴおか太郎
稽古日誌とかコラ画像の感じとか見ていたら一見激ヤバな狂人だと思いきや、誰よりも優しくて気遣いの天才で努力家な素敵な方です。なすかさんがいないと成立しなかった事、沢山あるかと思います。あとセンスも大好き。今度の公演も楽しみにしています!
◯岡崎仁美
もはや友達。いっぱい遊びに行ってるもんね〜☺️時にはズバッと厳しい意見も言い場を締める役割は、下手したら嫌われ役になってしまう可能性もあるのに、それが出来るのは普通じゃないです。すごい。ヌピというデカい柱が無くなってしまうことは少し不安もあります。引退しても遊びに行きましょうね!
◯水琴冬雪
オムニに出てなかった私にとっては感謝してもし足りない人です。「らびはもうオレンジ班だからねー」って終礼に入れてくれた事にも大入りを書いてくれた事にも助けられました。嬉しかったです。今役者を出来ているのもベガさんのおかげだと思っています。宣美も、最後にまたベガさん脚本の担当が出来て良かったです。
◯緒田舞里
色んな意味でこうなりたい人。活動内容の特性上でしょうか、ちゃうかを楽しいとは思いつつもその下にはずっとしんどさもあって、でも外公終わりに色々お話しした時にそんな自分がなんかもう色々成仏しました。ありがとうございます。まりおさんは、「この人にそう言ってもらえるなら」と思わされる位偉大で、でもどんな人にも寄り添える素晴らしい先輩です。こうありたいと思う人です。
◯肆桜逸
絶対稽古場作業場吹田にいて欲しい。この人がいれば絶対その場が面白くなるからです。今年入ってから急激に仲良くなった気がします。インターネットの話するの楽しいですね😃引退しても吹田支部(旧)しましょうね。俺は吹田が大好きなんだよ!!
◯児
もう奇怪な動きをしたり美声を響かせてるこたちさんの姿が稽古場から無くなると思うと寂しいですね。自分の中でがっころの演出を出来た事は色んな意味で大きかったと思っていて、その点ではめちゃくちゃ感謝しています。次の公演も楽しみです。
◯らっしー
座長になるべくしてなった方ですね。らっしーさんのホワッとした雰囲気はちゃうかに安寧をもたらしていることでしょう。個人的には私服がカッコよくてめっちゃ好きです。進撃の巨人の服もかっこいいと思ってます。本当です。
◯統括のフォーニャー
なんでも肯定してくれる優しいネキ。個人的にはもっとお話ししてみたかったし、役者ももっと見てみたかったなと思っています。全然関わりの強い訳でもない私が言うのもなんですが、強くてしたたかな方だなと思っています。
◯舞原の絞り滓
外公で共演できて嬉しかったです。もっとお話ししたいと思ってたので。横から聞こえるまほろさんのクソデカ声、いまだに恋しいです。だーがーしかーし‼️まだまだ知らないこともあると思います。願わくばまたその機会があらんことを…
◯じゃがりーた三世
結局この人のことを何も分からないまま引退してしまいそうです。本当不思議な方です。なんでそんな、後輩にもめちゃくちゃ敬語なんですか…?でも時々芯食ったことを言うので怖い。
◯アリリ・オルタネイト
ボス。舞美のね。猫みたいにフラッとどっかに行ったかと思えばフラッと戻ってきて頼りになる人。かっこいい。よくよく考えたらめちゃくちゃハイスペックなことを思い出してすげぇ…となるやつを何回もやってます。
34期、フォーエバー
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チャンネル登録しているYoutuber(Vtuber)です❗😊(第2弾)
⇧英語になってますwww
第3弾も作ります❗(タグとかリンク第1弾より結構多かった…)
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⇩すとぷりのメズマライザー歌ってみたです❗
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⇩主
るぅとが終わってるw
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ずっとそばに
きっとふたりは、もっと近くて
ゆっくり、夜の街に明かりが戻ってきたと感じる。居酒屋やスナックが夜遅くまで光を灯している。 そんな通りに並ぶ、とあるバーに大学時代からよく行っている。ゲイバーじゃないけど、ママがニューハーフで、トークがなかなか愉快なのだ。そんなママを気に入って、店によく来る奴のメンツもだいたい決まっている。 その人々の中に、いつからそのカップルがいたのかは憶えていない。自然と、名前と顔は一致するようになっていた。長身でワインレッドのメッシュを入れた男が真寿、黒髪ショートのきりっとした女が寧々だ。真寿は二十六の俺とタメくらいで、寧々はそれより年上で三十手前だろうか。 見ている感じ、真寿は寧々の尻に敷かれている。寧々が何かしら一方的に言うと、真寿はしゅんとして謝っている。 あんな女、俺なら嫌だな。そう思うけど、だからこ���、好きこのんで寧々とつきあう真寿は、よほど彼女が好きなのだろうと俺は思っている。
「あの子も、あんなモラハラみたいな女、やめとけばいいのに」
その日も仕事を終えて、帰宅前にカウンターで一杯飲んでいた。すると、大学時代に同じサークルだった茅乃も顔を出し、俺の隣でカクテルを飲みはじめた。お局に対する愚痴をひと通り述べたあと、ボックス席にいる真寿と寧々を一瞥して、茅乃はそう言った。
「モラハラって」 「いつも怒られてるじゃん、あの子」 「あいつが彼女のこと好きなら、勝手なんじゃね」 「克宏も、好きな女だったらああいうのOKなの?」 「……俺は嫌だけどな」 「ほら。あーあ、真寿くんならもっといい女がいるのにさ」
俺は静かにハイボールを飲んだあと、「それは、お前が『いい女』だと自称してるのか?」と眉を寄せた。
「悪い?」 「お前は『いい女』ではないな」 「克宏にはそれでいいけど」 「真寿くんに興味あんの?」 「私は可哀想な男が好きなの」 「可哀想って……」 「放っておけない。私が幸せにしたい」 「本人は幸せだと思うぞ」 「あれを見て、本気でそう思う?」
真寿と寧々がいるボックス席をちらりとした。寧々は腕を組んでソファにもたれ、何か言っている。真寿はやっぱりうなだれている。会話はジャズと客の話し声に紛れている。
「絶対モラハラだわ、あれは」
茅乃はひとりうなずき、オレンジ色のカクテルを飲んだ。「そうですか」と俺は聞き流して、スマホを手に取っていじる。 今まで、真寿と寧々のそういう関係は、当たり前のように見ていた。でも、実は真寿は寧々に負担を感じているのだろうか。だとしたら、別れない理由が俺には分からないけど、真寿は別れたいと切り出せるタイプじゃなさそうだなとは思う。 やがてアルコールが軆にまわり、ほどよいほてりを覚えてきた。茅乃には「あんま野暮なこと考えんなよ」と釘を刺し、俺はママに支払いをしてバーをあとにした。 びゅうっと寒風が吹きつけてくる。十二月になって、一気に冷えこむようになった。マスクが隠れるくらい、マフラーをぐるぐるに巻いて、駅へと革靴の足を向ける。 この通りは、パンデミック前は酔っ払いもかなりふらふらしていて、やや治安が良くない感じだった。でも、時短営業を機に閉じた店も多く、現在はそこまでうるさくない。灯っている明かりは増えたけど、活気が戻るのはまだもう少し先なのかなと思う。 恋人もいない俺は、毎日会社で仕事をやるしかない。リモートワークも選べるけど、実家住まいの俺は、フルリモートが解除されたら、さっさと出社するようになった。リモート授業の大学生の妹に、「満員電車に乗ってきて、そのまま近��かないでよね」とか言われるが、そもそもお前がそんなふうに生意気だから家でゆっくりできねえんだよと思う。そして、これを口にしたら、両親は確実に妹の味方をするのも鬱陶しい。 年末感が濃くなる金曜日、俺はまたバーにおもむいた。今年は土日がクリスマスなので、何となくうんざりしていた。彼女持ちの後輩は、「彼女とゆっくり過ごせるから最高ですよね」とか言って、俺は引き攣った苦笑いをするしかなかった。
「今年は久しぶりにオールのクリスマスイベントやるから、うちに来たら? 出逢いもあるかもしれないわよ」
ママになぐさめられて、それもありかもしれないと深刻な面持ちで検討していると、からん、とドアベルが響いた。ついで、「こんばんは」と誰か店に入ってくる。
「あら、真寿くん。寧々ちゃんは?」
俺はグラスから顔を上げ、入ってきたのが紺色のコートを羽織った真寿であることを認めた。彼は相変わらずな印象の弱気な笑みを見せると、ホールのボックス席でなく、俺のいるカウンターにやってくる。 手にしたメニューを見つめた真寿は、吐息をついて、「とりあえず水を……」と言った。
「いいの? お水でもお金はいただくわよ」 「分かってます」
ママは肩をすくめ、ミネラルウォーターをペットボトルごと真寿に渡した。しかし、受け取った真寿は、それに手をつけようとしない。
「何かあったの?」
スツールがあいだにふたつあるけど、その横顔を見兼ねて、俺は声をかけてみた。はっと真寿はこちらを見る。女顔だなあと失礼ながら思っていると、「……克宏くん」と真寿はつぶやく。話すのは初めてだが、名前ぐらい把握されていても驚かない。 真寿は視線を下げると、「あの子……」とぽつりと口を開いた。
「君の恋人ではなかったんだね」 「はい?」 「茅乃さん。ずっと、そう思ってたよ」 「………、え、茅乃と何かあったのか?」
真寿はやっとペットボトルを開封すると、ごくんと喉仏を動かして、ミネラルウォーターを飲みこんだ。
「夕べ、茅乃さんと一緒だったんだ」 「はっ?」 「それが寧々に見つかって、怒られちゃって」
え……と。 何言ってんだ、こいつ。茅乃と夕べ一緒だった? もしや、この男、おとなしそうな顔して下半身は緩いのか。一緒だったということは、まあ、そういうことだろう。そりゃあ寧々も怒る。 いやいや、待て。茅乃は先日、モラハラとかめんどくさいことを勝手に言っていた。
「もしかして、茅乃に無理に迫られた?」 「……まあ」 「マジか。それは……何か、あいつの友達として謝らないとな」 「いやっ、僕が流されただけで」
そこは確かにお前も悪い。と言うのはこらえて、「真寿くんって、寧々さんとうまくいってなかったりする?」と問う。
「え? そんなことはないけど」 「じゃあ、あんまり……良くはなかったな」
あんまりというレベルじゃないが、そう言っておく。真寿は黙りこんでしまい、ただ不安そうな顔で水を飲む。
「茅乃は、その──あいつなりに、真寿くんを心配にしてたみたいだから」
沈黙が窮屈になった俺の言葉に、「心配?」と真寿は首をかたむける。ワインレッドのメッシュがさらりと流れる。
「真寿くんが、寧々さんにモラハラ受けてんじゃないかって」
真寿は心底驚いた丸い目になって、「それはないよっ」と身まで乗り出してきた。
「確かに、寧々は僕のダメなところに目敏いし、よく指摘するよ。でも、それはほんとに僕が直さなきゃいけないところで」 「お、おう」 「ふたりきりになれば、寧々は僕のいいところもたくさん褒めてくれるんだ。すごく厳しいけど、すごく優しいんだよ」 「そう、なのか……」 「寧々はかっこいい。ずっと僕の憧れだった」 「ずっと?」 「うん。友達のおねえさんだったんだ、もともと。何年も、すれちがうときに挨拶するだけで。寧々からお茶に誘ってくれたときは、夢みたいに嬉しかったなあ」
真寿は幸せそうに寧々との馴れ初めを語り、俺は臆しながらそれを聞く。 何か、こんなに寧々にベタ惚れしていて、こいつ、本当に茅乃と寝たのか? そこのところを、具体的に訊けずにいたときだった。
「やっぱりここにいた」
からん、とベルを鳴らして、店に入るなりそう言ったのは、カーキのオーバーと細いデニムを合わせた、いつも通りボーイッシュな寧々だった。 真寿ははたと寧々を振り向き、口ごもる。
「ねえ、あんたの部屋にあたしとあの子とふたりきりにして、あんたは逃げ出すって何なの?」
おいおい、そんな修羅場を投げてきたのかよ。ついそう思ったが、同じ男として、そんな現場は逃げたくなる気持ちも分からなくはない。 真寿は気まずそうにうつむいているので、思わず「友達が失礼したみたいで」と俺は口をはさんだ。寧々はこちらに、長い睫毛がナイフみたいにも感じる鋭利な目を向ける。
「あの女の子の友達?」 「そうです」 「友達は選んだほうがいいわよ。で、真寿、あんたはあたしに言い訳ぐらいしたらどうなの?」 「言い訳なんて……悪いのは、僕だし」 「それで、何も説明しないのはもっとずるい。あたしがどうでもいいってことなら別だけど」 「それはないよ! 僕が好きなのは寧々だよ、絶対に。寧々のこと、大好きだよ」 「あの子にも同じことを言ったの?」 「言うわけないっ」 「じゃあ、それは、あたしにきちんと説明してほしかったな」 「……ごめん」 「あと、一緒に過ごしたくらいで、だいぶ大ごとに捕えてるみたいだけど、何もなかったならあたしは怒らないわよ」
え�� 俺は思わずぽかんとして、真寿もまばたきをする。
「あの子が言ってた、『相手にされなかったから』って」 「信じて……くれるの?」 「むしろ、信じないと思われるほうが不愉快ね」 「ご、ごめんっ。僕だったら、寧々がほかの男とふたりで過ごしたら許せないし、たぶん、何もなかったなんて信じられないから。そんなの、頭が変になると思う」 「……あたしも、頭は変になりかけたけどね」
むすっとした感じで寧々が言うと、真寿はぱあっと笑顔になり、スツールを立ち上がって「ごめんね」と彼女を抱きしめた。「あらあら」なんてママはにっこりしてい���けど、俺にしたら痴話喧嘩なので、しょうもないと思いながらスマホを取り出す。 いつのまにか、通話着信がついている。茅乃からだ。俺はいったん席を立ち、壁際で茅乃に通話をかけた。奴はワンコールで出た。
「真寿くんとひと晩過ごして、何もなかったことは聞いた」
俺が開口で言うと、茅乃は『ありえないでしょ……』と絶望的な涙声でつぶやいた。
「だから、真寿くんはそれだけ寧々さんに惚れてんだよ」 『うー、つらいよお。私、真寿くんのこと、けっこうマジで好きだったんだよ?』
俺は壁に背中をもたせかけ、けっこうマジで好きなのはこっちもだけどな、と思う。 本当に、見る目がない女だ。そんなお前に恋をした俺が悪いんだろうけど。マジで、鈍感すぎる。 俺がいつも隣にいるって気づいてくれよ。何だかんだ、ずっとそばにいるじゃないか。でも、こいつはおもしろいくらいに気づいてくれない。 真寿と寧々は、いつも通りのホールのボックス席に移動している。寧々が何か言っても、真寿はいつになく嬉しそうだ。 あのふたりは、ずっとお互いのそばにいるんだろうな。茅乃の泣き言を聞きながら、そんなことを思う。 俺が茅乃とあんなふうになれるかは分からないけど、憂鬱だった週末のクリスマスは、ひとまず彼女のやけ酒につきあって過ごすことになりそうだ。
FIN
【THANKS/診断メーカー『お題ひねり出してみた(ID:392860)』】
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無題
出先から直帰で、日暮前の住宅街をてくてく歩いた。缶ビール買って、本当ならバスを使うべき道のりを、30分くらい、狂い候へ。結構な高級住宅街で、瀟洒な意匠のいじらしいばかでかい邸宅が一軒一軒鎮座ましましているその隙間に、古ーいアパートが傾いて建っていたりする。家賃いくらなんだろう、別に安くもないんだろう。十字路の一角を担って開けた公園があって、そこで小用を足した。真ん中に池を囲ってベンチが並んでいて、釣り竿を垂らして呆けているおっさんや、石でできたスツールみたいな腰掛けに板きれの将棋盤を乗せて、黙々と指し合っているじじい2人がいた。松浦寿輝の小説みたいだった。下校する中学生と目が合ったのは、俺も彼を見ていたから。あの訝る目。だせージャージ。低気圧で頭痛かった。でぶの猫がいた。比較的背の高い建物の頭の方がオレンジ色に色付いていて、しかしちょっとにわか雨も降るなどして、わけのわからない空模様だった。綺麗だった。高い建物に登って西の空を見晴らしたら、さぞかし綺麗であることだろうと思って歩いていたら、果たして4、5階建ての団地があった。一杯気分も手伝って、階段の方まで行って1段目に足をかけたら、目線の先の踊り場の壁に無断侵入は警察に通報しますという主旨の張り紙があったから俺は水を差された気分で踵を返した。西の空を見上げると今やオレンジとピンクと水色が混じり合いそうで混じり合わない、団地の無機質な四角い灰色がそこへ食い込んで、その隅っこの方だけ俺はかじるように見つめるしかなかったんだった。ここが街の底だ、と思った。
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2023/9/16〜
9月16日 思いつく行きたいこと、やりたいことをした日。 シーツや枕カバーを洗い、ヨガに行って久しぶりに汗をかく運動をした。 昨日のギャラリーからのメールに返信をして、乗り換え駅で24時間メトロパスを買って、六本木のタカイシイギャラリーで野口里佳の“虹”を観た。 良いな〜写真撮りたくなる。ほとんど砂丘の写真だけど虹。 そこから恵比寿へ移動して渋谷の植物園へ。リニューアルオープンしてやっと行くことができた。 とても小さなスポットで、ナツメヤシやオレンジやグアバなど聞き覚えのあるフルーツの植物が多かった。裏に都バスの駐車場があり、みんくるスポット。 渋谷で阿波踊りのパフォーマンスを横目で見ながら、踊っている人たちも、まさか渋谷で踊るなんて…と思っている気がした。 銀座に移動して、ソニーのギャラリーを確認しててらおかさんの原画展に行った。 なぜか蔦屋書店で開催していると思い込んでしまいGINZA SIXへ行ってから伊東屋さんだと気がつく。 職場のデスク用にカレンダーを購入し、もうそんな時期! 六本木も渋谷も銀座も人が多かった。外国人の方がとても増えた。 渋谷のペデストリアンデッキの上で、この近くにオフィスを構える某企業の方に、研究なんて何の役にも立たないアドバイスいただいたことや、大学時代の職員さんに、渋谷とかとりあえずたくさん転職先ありそうだよね(転職先を探すのならとりあえず渋谷ならどっかしらは見つかるのでは?の意)と言われたこと、大阪の友人が東京って本当に何もない、と大阪のお部屋で泣いた話を思い出す。
帰りながらソニーの応募ようにキャプションを考えて、帰宅して提出データをそろえた。とりあえずニコンの公募に少し肉付けをした程度のものを提出する感じになりそう。
明日はIKEAで写真を撮れたらいいな。
9月17日 24時間メトロパス2日目。 でも朝はヨガへ行ってしまった。終わって残りは2時間。とりあえず今日のしたかったことはできて、今までで一番有意義なメトロパスの使い方ができた。でも降り立ったどの地点でも目的以外に心惹かれたものがなかった気がしていて(何なら、本当に何もない…と思っていたりしていて)これはただ疲れているせいだと(本当に疲れてる?)いいな。東京、好きだよね?
日本橋をふらついつ、行ってみたかったバナナジュースのお店で黒ゴマのジュースを買った。暑くてすぐデロデロになってしまい半分だけ飲んだ。 もう一つ行ってみたかったリニューアルオープンしたコ本やへ。神楽坂で下車して江戸川橋方面へ行くとあまり見たことも来たこともない街過ぎてどきどきした。コ本やで展示されていた本にまつわるインスタレーション、よくわからなくて面白かった。 自費出版の本や雑誌もたくさんあって、何だか学生の時にお茶の水のヴィレッジヴァンガードにいた時の気分になった(今は亡き…)。
次の目的地の途中、池袋で乗り換えをしてとてつもない人の多さ(西武デパートや東武デパートはそんなに人多くなかったのに)に帰りたくなってしまう。 今日も東京は至る所でお祭りをしていた。 夕方の予定で下りた街でもおみこしが担がれていて、ずーっと笛や太鼓の音がしていた。 引っ越しして東京の東側(下町)のお祭りの大きさに驚いている。 道を曲がった先におみこしを見つけて小学生の男の子2人(走って先を急いでいた様子)が「最悪だ……」と言っていておかしかった。 来月頭に今住んでいる町で花火大会があるらしいので最悪じゃないといいな。
デフォルトでついていたお部屋のシーリングライト、外し方を調べた簡単に外すことができた!照明を買いたい!
STORESに登録したけれどギャラリーから実家へ配送してもらった作品や写真集が昨日から受け取られていないらしく(私のところには不在通知のメールだけが来ている)どこか旅行にでも行っているのかな。
昨日からTverで“鹿男あをによし”を観始めてから奈良にも行きたくなる。このドラマ受験生の時にリアリタイムで放送されていて、木曜日だけはこれを観るために少し早く塾の自習室を出ていた。
明日は起きれたら成田空港へ行く。
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私の話
最初は5歳の秋か冬、長袖の季節だった。幼稚園生だった私はおたふく風邪だか水疱瘡だかに罹り、しばらく園を休んでいた。その時期園では、同じ組の子たち同士でなんとなくチームを組んで、ロボットやら指輪やらを工作してそれを下級生向けに販売しよう(もちろん紙でできたおもちゃのお���だ)という、ものづくりやチームメイトと協力す���力を伸ばし、お金の使い方や年下の子への振る舞いを学ぼうといった趣旨のイベントがあった。準備期間もそれなりにある季節の一大イベントで、みんな楽しみにしていたように記憶している。そして私はチーム決め直前に園を休み、戻ってきたとき��は先生によってすでに振り分けられたチームで行動することになっていた。どんなチームに割り当てられているのだろうと不安な思いで登園すると、私は牛乳パックでロボットを作る、「男の子」しかいないチームにひとり放り込まれていた。どんな経緯でそうなったのかはわからないが、最初は憂鬱だったのをなんとなく覚えている。自分だけ違うところに混ぜられてしまったのだと感じた。 しかしそこにいるうちに、いつも一緒にいる「女の子」たちといるときとは違う感覚になった。彼女たちといるときとは違った居心地の良さ、安心感。ロボット作りには最後まで楽しさを見出せなかったけれど、その空間は身の置き所としてはこれまで感じたことのない高揚感としっくりくる感じを覚える楽しい場所だった。自分と違うと思っていた属性の中に放り込まれたはずなのに、「自分も『(女の子ではない存在としての)男の子』側なのだ」と感じた。自分に割り当てられている属性は自分のものではないのだと、こんなふうに明瞭に言語化はできなかったけれど、自分に割り当てられてきた属性とその扱われ方に対する違和感を、感覚として初めて理解した初めての経験だった。ひとまずそのときの私は、自分のことを「『女の子っぽい女の子』ではない」のだと理解した。特に仲のいい関係を築いてきたのは「女の子」との方が多かったけれど、チラシで剣を作ったり体育館の大きな積み木で遊んだりするときは「男の子たち」の中にいる方が安心した。人間関係と所属意識の違いが少し明らかになり始めた。その年の七五三、赤い着物を着て髪をセットされた(当時は髪が肩まであった)が、ものすごく居心地が悪くて嫌だったことを覚えているし、親によるとかなりごねて不機嫌だったらしい。
次は10歳、小学4年生の秋。私の地域では毎年4年生が地域の学校で集まって合唱コンクールに出るという行事があった。最初は何とも思わなかったが、単純な子どもだったので練習するたびに課題曲も歌うことも好きになっていくし、本番が待ち遠しかった。 本番が目前に迫ってきたある日、合唱指導担当だった先生から当日の服装についての説明があった。男の子は白い上に黒のズボン、女の子は黒いスカート。それを聞き、どう表せばいいかわからない不快感が湧き上がってきた。スカートを履きたくない。どうして私はスカートを履く側なのか?どうしたら履かなくて済む?あれだけ楽しみにしていたのに、その日を境に本番が近づくのが嫌でたまらなくなった。親が買ってきたスカートを履いたときの違和感は強烈に残っている。しかし音楽会は例年より少し早めのインフルエンザ流行のため中止になった。その報に泣いている子もいたし、私も残念な気持ちはあったが、それ以上にスカートを履かなくて済んだことに安堵した。まさかそんな理由で中止が嬉しかったなんて言える空気ではなかったので、友達に合わせてがっかりした表情を浮かべていた。またこの頃から身の回りの物へのこだわりが出始めた。最初は親に言われるがままに着ていた「弟へのおさがりでも使えるような服」を自ら選んで着るようになり、「女の子」でひとりだけ青い習字セット、青い裁縫セットを使い、家庭科で作った巾着も白と黒のドラゴンモチーフの布を使っていた。常に短い髪、同年代の平均より常に高い身長、青やグレー、黒のパーカーやトレーナーにジーンズ、手提げ袋に至るまで「女の子」っぽさを排除した見た目の中で、ランドセルだけがずっと浮いていたように思う。入学前親に連れられてランドセルコーナーに行ったとき、漠然と赤は嫌だという思いがあったが、「女の子」用のものは赤やピンク、オレンジしかなく、色ではなく大人っぽい響きの名前が気に入ったという理由と、言葉にならないけれど確かにあった何かを諦めたという思いで、渋めのローズピンクのランドセルを背負っていた。年齢が上がっていくにつれ「女の子らしさ」がなくなっていく見た目の中、ずっとランドセルだけが私の「本当の」所属を周囲に示すもので、これを背負う限り私は何をしようとも「女の子」にカウントされるということを思い知り、「そうじゃないと思うんだけどな」のような微妙な気持ちでいた。どうして自分がそう思うのか、というところまでは考えられなかったけれど、「女の子っぽい」という記号を身に付けることへの拒否感は確固たるものになっていた。
次は中学生。当然制服のスカートが嫌だった。小学校の卒業式のときもスカートは確かに嫌だったけれど、上にはおるグレーのジャケットがかっこよくて気に入っていたため一日だけなら、となんとなく乗り越えたが、これからずっと着なければならない制服は本当に嫌だった。でも登校したらほとんど毎日午前中にジャージに着替えていたし(時間割の関係でそうだった)、運動系の部活をやっていたため下校は毎日ジャージだったので、憂鬱感は徐々にごまかせるようになっていった。 小学校からほとんど持ちあがりの、狭く密接で固定的な人間関係という土壌がある中でのクラスメイトからのまなざしは、嫌でも表面的なもの以外の情報も伝えてくるもので、この頃になってくると自分が周囲からどう見られているかを何となく察するようになっていった。周りは段々と女/男の境界がはっきりしたものになりそれぞれの文化が別のものになっていく中で、「女の子」への所属意識をどうしても持てず、「そうではない」存在��近づこうと「男の子」たちのコミュニケーションをロールモデルとして振舞い方を学習した結果、「女の子」たちからは自分たちのメインストリームからは外れていて色々と変だけれど、一応同じ場所にいる他者として、「男の子」たちからは他の「女の子」と比べると自分たちの文化にどこか(「理解している」ではなく)近いけれど、でも同じ存在ではない他者として、「女の子っぽくない・男の子っぽい女の子」のような、どちらからも微妙に浮いた存在として認識されていたように思う。加えて恋愛の話題に絡んでくる子/そうじゃない子の新たな境界も生まれるようになり、誰が付き合っている、デートに行った、夏休みどうするのように話題になる内容が具体的になり、その話題を中心に人間関係の構図が作られ、恋愛との距離感によってヒエラルキーが生まれるようになり、それに伴い会話のあらゆるところに理解できない目配せや気配り、謎のルールも絡まってくるようになると、恋愛ごとを面倒に感じ、それらの事象に巻き込まれるのが嫌な 「男の子」 たちは、 相変わらず髪が短くてクラスの中で3,4番目に背が高い、見た目が「女の子」的ではない、自分たちと近い「男の子」的なコミュニケーションをとって接してくる、一切恋愛の話をしない私を他の「女の子」ほどは警戒せず(「恋愛的な文脈での楽しさを見出せず・高揚せず」とも言い換えることができる)、「女の子」たちも、 恋愛の話題を振られても求められていたような回答をできなかったことでそのルールを理解していないことを見抜き、普段の様子から関心があるようにも見えなかったであろう私なら男の子のそばに置いていても面倒なことは起こらないだろう(ライバルになったり、噂話をして余計な広がり方をさせたりしないだろうのような)と、どちらにとっても曖昧で便利な側面を持っている存在だったと思う。それによって、「男女」間で起きるであろう揉め事を減らせると考えた(であろう)班を決める係のクラスメイトによって、校外学習や修学旅行といったイレギュラーでトラブルをなるべく起こしたくないイベントでの班編成では、いつも男子の中にひとり放り込まれる役だった(3年間「女子」が奇数のクラスだったため)。班を決めた子から「女子一人でごめんね」と謝られたが、なんて返せばいいかわからなかった。そう扱われることに慣れていたし、そう扱われることが嬉しかった。「女の子」の中に入れられる方が自分との差異やそこにいることの違和感を強く感じさせられるから、 「男の子」たちとともに「あっちが何考えてるかわからない」と振る舞うことで、自分の「女の子ではない」感覚を正当化できる環境の方がずっと楽だった。だからといって自分を「男の子」だとは思えず、「女の子ではない」存在として「男の子になりたい」と素朴に願っていた。
「女の子ではない」という思いは自分の肉体にも向くようになっていった。胸が大きくなるにつれブラジャーをしないと揺れて邪魔だし痛いしで毎日つけていたが、ある日その工程がどうしても嫌になり、素肌にジャージの半袖を着て、その上から��つも通りの制服を着て登校した。いつものように1時間目の授業を終えジャージに着替えたときの、何とも言えない嬉しさと居心地の悪さが混ざった感覚。本来こうあるべきだったという感覚と、いつもより肌にまとわりつく気がするせいでより目立ってしまう気がする身体の丸み。念のため学校にブラを持っていこうなんて微塵も思わなかった(これは決意というよりそこまで考えが至らなかった、着替えの肯定をすっ飛ばした瞬間の満足ですっかり忘れていたという不注意によるものだった)ため、一日中居心地の悪さを引きずって猫背で過ごすことになり、それ以降ブラをつけることは諦めて受け入れた。「女の子じゃない」存在として扱われるためにできる方法を探し、少しでも「男の子」的になろうとそちら側に行動を寄せ、しかしどうしても「男の子」にはなれず、「男の子」のアイデンティティを自分の中に見つけることもできず、「女の子」の記号を与えられているのなら結局私は「女の子っぽくない女の子」なのかな、と思っていた。6年間制服のスカートを履いているなかで、自分のアイデンティティをいったんそうやって理解することにした。そうであるだけでも浮いていたけれど、恋愛の話題に関わらない限り目立つことはなかったので、基本的には地味な子どもとしてどうにかやり過ごすことができた。 私が高校まで暮らしていたところは東北の田舎で、そこは非常にシスヘテロ的でバイナリーで、女/男しか存在せず、恋愛、性愛をする人しか存在しないところだった。そんな中で私は「ボーイッシュな女の子」という言葉で済まそうとするにはあまりにも色々な要素が浮いていて、しかしそれはただ私が浮いているパーソナリティである以上の意味を持たなかった。(そして、そこでは障害や家庭環境、それらによっておこる不平等も単に個性でしかなかった。)どんな装いをしようと、どんな振る舞いをしようと、どんな思いで生活していようと、私は「女の子」としてカウントされ、「女の子」というアイデンティティを持ち、その規範に沿って生きていくべき存在でしかなかった。
高校を卒業し地元に比べると圧倒的に都会だった地域で暮らし始め、新たな生活を過ごすなかでAロマンティック、Aセクシュアルと出会い、これまで感じてきたわけのわからなさにセクシュアリティという名前がつくことを初めて知ることができた。 大学生になり自分で服を買うようになると、スカートを選ぶことができるようになった。家ではジャージかジーンズしか履かなかった娘が、帰省してきたときにスカートを履いている姿を見た親がびっくりした表情を浮かべ、「似合うじゃん」と言われて微妙な気持ちになったのを覚えている。相変わらず髪は短かったし、身体への違和感が爆発し、思いつく解消案としていわゆるナベシャツを着るようになったのもこの時期だった。でも、あれだけ嫌だったスカートを履けるようになったことに自分自身も理解が追い付かず、だからと言って「完全に」女の子になることができたとは到底思えず、「女の子」の記号を自分から選ぶ自分自身に戸惑ったこと。重ね着をし身体のラインを見えにくくする装いをしたことで安心すること。電車に乗っていてふと「こいつは女か?男か?」という視線を感じ(中学生頃から「女ではない」と認識される経験を幾度となくしており、胸部を探る目が顔に移動する不躾な視線の動きがどういうものかを体感として知っている)、隣に座ってきたサラリーマンは今私を何者と判断したのだろうと不快感を覚えたこと。同時にその困惑を引き出せたかもしれないことにうっすら喜びを感じたこと。成人式で振袖を着るのがどうしても嫌で、別の予定を入れ地元に帰らなくて済むようにしたこと。この時期に#Metoo、フラワーデモに出会い、そしてフェミニズムに出会うことで、服装や身に付けるものも社会によってジェンダー化されていること、誰でもその規範から自由になれることを知った。セクシュアリティとフェミニズムは不可分であるし、本の中に書かれている社会構造の不平等や差別は私の身に降りかかるものとも似ている部分があったため、やっぱり私は「女」というジェンダーにカテゴライズされる人間なのかと思うようになった。
私が参加したフラワーデモでは、何度かトランスジェンダーの方がマイクを取っていた。またそこで出会った人に紹介されたコミュニティにもトランスジェンダーの方が何人もいて、書籍の中だけでなくリアルな存在として、シスジェンダーではない人は決して遠い存在ではなかった。それだけでなく、当時セクシュアリティに関する情報のほとんどはオンラインで手に入れており(地元を出るまでLGBTという単語にすら触れたことのないような人間が、いきなりどの本を図書館で探せばいいのかわかるわけがなかったし、オフラインでAセクシュアリティに関する情報を探すのはさらに至難の業だった)、本で語られることを吸収することも大事だったけれど、YouTubeやツイッターを見れば本当に性的マイノリティの人間が生きていることを感じられることがあまりにも新鮮で、文字通り生きる希望になった。今はもう更新していないが、noteという媒体では今に続く私にとっても本当に大切な出会いをすることもできた。その人の文章を読むことで、Aセクシュアリティ、そして「男でも女でもない」と説明されることの多い、バイナリーな性別二元論では語ることができないアイデンティティの存在を知った。私が生きてきた、そして今も生きているこの社会がどれほど性別二元論に支配されており、それがどれだけの人を差別し、苦しめ、傷つける構造になっているのかを知り、彼らと連帯しなければならない、伴走者にならなければならないと強く思った。
同時に、性別二元論への馴染めなさは、私自身の体内にもずっと昔から近からず遠からずの距離感で確かに存在していた。フェミニズムを学び、「『自分はフェミニストではないけれど』と言いながらフェミニズム的な発言をする人が多い」と、どちらかといえば批判的な文脈で語られているのを見かけ、確かにそうだよなと思う一方で、自分は完全に「女」を引き受けるのはしっくりこないな、という思いもずっとあって、「フェミニスト」と名乗るまでにかなり時間がかかった(し、���直今も名乗ることに抵抗感というか戸惑いがある。それは私のアイデンティティによるだけでなく、私があまりにもフェミニズムのことを知らな��ぎることも大いに関係している)。フェミニズムが指摘する構造的な差別において、私は【「女」が受ける差別】を受ける立場にいたと思う。だけど、私がこれまで自分に感じてきた違和感は「女じゃない」という感覚によるもののはずだった。私なりにではあるがセクシュアリティやジェンダーなどに関することを学んできた中で、これを「女」の多様性の枠で語ることはできるのだろうかと改めて自分に対し疑問を持つようになった。でも、「女じゃない」なら何なのだとか、これまで「女」に馴染んで生活しているじゃないかとか、「女」の枠にいるからこその語られ方をしているじゃないかといった考えを拭えず、もやもやした思いは残るけれど、これまでのように、そういう違和感を一生抱えたうえで私は「女」をやっていくしかないのだと、諦めと不本意な受容が混ざった覚悟を決めた。
その後、感染症流行による人との接触の減少、それに加えて鬱を発症したことで人と会わ(え)ない期間を長く経験して、就職活動が始まった(めちゃくちゃしんどかった)。何もわからなかったので学校のキャリアセンターに1から10まで頼りっぱなしだったのだが、そこで「スーツは黒で、スカートでもパンツでもいいけど今から買うならスカートが無難」というようなことを言われた。そのとき、久しぶりにスカートへの嫌悪感を強く感じた。私服でスカートを着るくらいになっていて嫌悪感はだいぶ薄くなっていたはずなのに。 フェミニズムを学んだことでシンプルに最悪なセクシズムが働いている発言だということを昔より高い解像度で理解し、そのことで怒りを覚えた感覚もあったけれど、 どうしてこんなに、あの頃と同じくらい嫌だと感じるているのか、自分に戸惑った。 スーツを売っている店の前を通ったり配られたチラシを読んだりしてみたけれど、無理だという思いがあまりにも強固で、どうにかしてスカートを履かないでやろうと決めた。就活のためにお金を使いたくなかった(鬱が治りきらないまま就活→実習→試験勉強というルートでバイトに避ける時間が減っていくのがわかっていた)し、なにより黒のスカートに脚を通すたびにおしまいの気持ちになりそうで、規範へのささやかな反骨心と心を守る方法として、 大学の入学式のときに親から譲り受けたグレーのパンツスーツで就活を乗り切った。
現在フルタイムで働いている。いわゆるケアワークと呼ばれる業種だ。職場は「女性」しかおらず、ほとんどが既婚者で、世間話としてされる会話は異性愛規範に塗れていて、「私は異性愛者じゃない!」と心の中で唱えない日はないような環境にいる。そして、新しい利用者と会うたびに新しい関係を作っていく中で「女」として自己紹介したり、「女」と認識され、「女」だから任された仕事をすることが、徐々に違和感としんどさを生むようになった。職場での自分のありかたがわからなくなって、仕事で疲れて帰ってきても夜眠れない泥の中のような日々がまた戻ってくるようになった。眠れないままとにかく横になってスマホを眺めていたある日、ふと思い出した人のブログを読み返したとき、唐突にす��んとおさまる感覚があった。そうやって私は、女ではないというアイデンティティをようやく受け入れ、自分を表す言葉としてAジェンダーと出会った。
本当に急に腑に落ちた。あまりにも呆気ないような、それでも20数年に及ぶ私のアイデンティティの居心地の悪さを理解するための、救いのような受容感だった。私が「男の子」にカウントされようと必死で、もしくは無意識的に渇望しやってきたことは、「女の子」と認識されることが苦痛でその記号を外すために、非常に強固な性別二元論が敷かれた、男と女しかいない社会の中で、「女の子ではない」をやろうとした結果「『そうではない』存在としての『男』」であろうとするしか抵抗の方法が、そして自分自身のアイデンティティとの向き合い方がわからなかったためだった。 このバイナリーな世界では性別欄は二択しか用意されておらず、「女」ではないなら「男」だし、「男」ではないなら「女」だ。必ずどちらかじゃないと存在を認識されず、そんな世界で生きてきたら「どちらでもないなら何なのだ」と、誰よりも私が私自身に問いかけ、二元論を押し付けてきた。そっち(女)じゃないというアイデンティファイしか方法を知らなかったけれど、そっちじゃないなら何なんだという問いかけにはバイナリーを前提とした答えを持たなくてはならず、その世界では私を語る言葉は存在しなかった。社会からやることを要請されてきたのは「女」で、これまで時になんとなく、時に必死に、時に絶望しながらそれをやってきたけれど、物心ついたときからずっとそこにあったここではないという感覚を、やっと信じることができるようになった。「女ではない」「どの『性別』にも当てはまらない」「女を引き受ける」。どうしてこれが同時に成り立つのか、今までこれらをセクシュアリティの問題ではなく個人の問題として引き受けてきた。共存するしかなかったうちに自分に馴染んできた部分も確かにある。シスジェンダーであることを求められ、受容する時間もあったけれど、それでもこれまでの人生すべてをシスジェンダーと理解することはできないし、そうしなくていい。そう思えることで、ずいぶん救われる思いでいる。
書いてきたこれらのことは、他者に対する私の性別に関する証明のためのエピソードではなく、私がどう生きてきたかのごく個人的な話でしかない。このような道筋を辿るのが、Aジェンダーパーソンにとって典型的なのか、特異なのかすらわからない。ただ、性別二元論が私のことを語りづらくさせ、アイデンティティを受容するのを遅れさせ、受容しても尚戸惑わせ、未来の見えなさに仄暗い気持ちにさせ、傷つけてくることはどうしたって否定できない。それだけではなく、今もまだ「私はAジェンダーである」ということが、「私は自分自身の性別を意識したことがない」という、Aジェンダーへの差別的発言になるのではないだろうかと恐れる気持ちがある。アイデンティティを獲得しても、それをまっすぐ祝福できるようになるには正直まだ学び、話を聞き、自分を語るための時間が必要だと思っている。私自身の、私のための話なのに、それを語ろうとすることで差別構造に加担してしまうのではないだろうかと、そしてその言葉は私自身にも向いてしまうのだろうと、ためらいと恐怖を覚えてしまう。この社会に強固すぎる性別二元論が敷かれており、あらゆる社会規範や制度、社会保障にまでそれを前提として設計をされているがために。非シスジェンダーなど存在しないと乱暴な口を開く人々がいるために。
これらは私の話だが、同時に私を取り巻く性別二元論の話でもある。非シスパーソンの尊厳を損ね、存在ごと居場所を奪い、攻撃の対象に仕立て上げ分断させ、そうすることによって大きな顔を保とうとしている、性別二元論の話だ。私にアイデンティティと出会うことを困難にさせ、規範から外れる存在として生きづらくさせ、やっと見つけたと思えても獲得するまでに本来必要だった以上に惑わせ、ようやく手にしてもそれを祝福することを難しくさせ、語ろうとする言葉を口篭らせる、性別二元論の話だ。シスジェンダーをやろうと頑張ってきた長い闘いが終わり、そして今度は非シスジェンダーの存在を許さない社会との闘いが始まる。それも今から始まっているのではなく、ずっとずっと前から傍にあった濁流の中に巻き込まれるような感覚だ。苦しいけれど、私はそこで私と出会った以上逃れることはできないし、したくない。私はこれまでもこれからも、こうのままで生きていく。私自身のことを言葉にするのがまだ難しくても、私が私のアイデンティティを信じられるようになっただけで、それはあの頃の5歳の私を救うことができるし、これからの私自身の希望になる。一度諦めたことがあったけれど、また出会うことができて本当によかった。
私はAジェンダーだ。
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P3 Club Book Akihiko Sanada short story scan and transcription.
真田明彦の難攻不落伝説
某日深夜---ここ、月光館学園巌戸台分寮のと ある一室で、その恐ろしくもおぞましい謀略は、徐々に形を現わそうとしていた。
「許せねえ······絶対に許せねえぜ、真田サン。いや、真田明彦ぉ!」
「じゅ、順平くん。そこまで怒らなくても······」
「甘いわよ、風花!私も順平に同感。食い物の根みが恐ろしいってこと······真田先輩の骨の髄まで思い知らせてやらなきゃ!」
「別に僕は、甘いものがそれほど好きって訳じゃないですが······美味しそうでしたよね。お土産のー日限定100個の特製プリン」
「わん!」
「コロマルさんも、ひとりで10個は食べすぎだと申しているであります」
「トレーニングで疲れてたか何だか知らねえけどよ、フツー全部食うか?俺たち仲間だろ?みんなの分残しとくとか考えるだろ!?」
「あ、あうう。り、リーダー、皆さんを止めなくていいんですか?え?······別にどうでもいい? ううううう······」
あまり恐ろしくもおぞましくもないようだが、ここからが恐ろしい。
「よっし!んじゃ、満場一致で “真田先輩をギッタンギッタンにしてギャフンといわせてグウの根も出なくさせる計画”、略してトリプルGプロジェ クトの発動を宣言します!」
「おーっ!」
この今どきどうよ、というネーミングセンスのなさが恐ろしい。
ともあれ、真田の天然ぶり---というより鈍感さに端を発する、特別課外活動部メンバーの怒りの鉄槌が、真田の頭上に振るわれようとしていた。だが彼らはやがて思い知る。真田明彦の天然もまた、ボクシングの腕前と同じように、超高校級であるということを······。
~フェイズ1 伊織順平&山岸風花~
「オレの武器は······これだ」
そう言って順平が取り出したのは、普通ならスポーツドリンクなどを容れるのに使う、ストローつきの白い円筒形のボトルだった。
「トレーニングで疲れたセンパイに飲ませるための、特製栄養ドリンクって訳だ」
「あんた······敵に塩送ってどうすんのよ?」
ゆかりの言葉に、順平はちっちっちと指を振って、恐るべき事実を公表した。
「これはな 風花の······手作りだ」
「そうなの。頑張って、作ったんだよ」
どよつ。
場の温度が下がり、驚愕のどよめきが走る。
「そ、そんな······順平さん。そこまで酷いことをしなくてもっ······!」
「こ、これは、ワシントン軍縮条約に抵触する可能性すら考えられるであります!」
「きゅ~ん······」
「順平······本気ね······?恐ろしい男······」
この液体がもたらす惨劇の予感に、その場にいた全員の顔が着白と化す。ちなみに、兵器開発もとい調理担当の風花は、皆の評価によって心に深い傷を負い、壁際でしくしく泣いていた。
「お!来たぜ!」
順平の言葉どおり、朝のトレーニング帰りの真田が寮の玄関から姿を現わした。すかさず順平がタオルとボトルを持って歩み寄る。
「センパイ!お疲れさんッス!どうスか?運動あとに特製ドリンクなんて?」
「おお、順平。ありがたいな、ちょうど喉が渇いていたところだ」
「しめしめ······じゃなくて、どーぞ!いい感じに冷えて、飲み頃ッスよ!」
何の疑いもなく、真田は順平からボトルを受け取ると、ストローに口をつけて中の液体を勢いよく吸い込んだ。
ずずずずずずずず!
何だか、嫌な感じに粘度を感じさせる音が響き······そうして、真田が口を開いて叫んだ。
「美味い!これはいけるな!」
「······へ?」
予想を裏切る真田のセリフに、唖然とする順平。そこに、真田の歓声を聞きつけ、何ごとかといった表情で桐条美鶴が現われた。
「どうした、明彦?」
「いやな、順平が作ってくれた特製ドリンクが、なかなか美味だったからな。美鶴も飲むか?」
ごく自然に、真田が美鶴にボトルを手渡し、そしてごく自然に、美鶴もストローを口にくわえる。付き合いが長い上、精神年齢的に成熟しているふたりは、間接キスなど気にはしない。······してくれれば、順平の制止は間に合ったろうし、その後の悲劇も防げたのだが
ずずずずず······。
やや飲みにくそうに、美鶴は頬に力を込めて体を吸い上げ、次の瞬間。
ぶびっ。
表情を変えないまま、美鶴の鼻の穴から腐った沼のような色の液体が噴出した。
「き、 桐条センパイっ!!」
美鶴の顔色が、黄土色から紫色、さらにはオレンジ色から緑色へと目まぐるしく変化する。そして最後は、ぐりんと白目を剥き、棒が倒れるような勢いでばたんと倒れ伏した。
「せ、せんぱぁあああいっ!!」
順平の悲痛な叫びがこだまする。それは、この後に来るはずの、美鶴の報復を予感し
ての、早すぎる断末魔のように聞こえた······。
~フェイズ2 岳羽ゆかり~
「えー、牛丼をプロテイン茶漬けで食べる、真田先輩の味覚を甘く見すぎてました。そこで、食欲以外のアプローチで行きたいと思います」
「順平さんはどうしたでありますか?」
「解凍に、あと半日はかかります。ついでに、風花も部屋にこもってしまい戦力外です」
計画の第1フェイズで、すでに彼らの戦力は激減している。あまつさえ、善意の第三者であるところの美鶴まで巻き込み、もはや失敗は許されない状況へと追いやられていた。
「で、あの······ゆかりさん、今度の作戦は?」
そう言う天田は、ゆかりから目線をチラチラと外しては戻すという、不審な動きを続けていた。し かし、それも無理からぬことだった。
「ズバリ!色気で落とすっ!」
きっぱりと宣言したゆかりの服装��、いわゆるボンデージ風のタイトな超ミニワンピース。服というより、数枚のラバー生地を紐で大雑増に繋ぎました、という感じの露出過多のデザインである。胸元や背中そして左右のサイドから、これかというくらいに眩しく、白い素肌を見せつけている。日ごろ弓道部で鍛えた均整の取れたプロポーションを誇るゆかりが着ると、これが意外と悪くなかった。第二次性徴期が来たかどうか微妙な年頃の天田ですら、頬を赤らめてぼうっとなるほでの色香を放っている。
「これで真田先輩をメロメロにして、さんざんしてあそんだ挙句に捨てるという、自分の非情が恐ろしくなるほどに完璧な作戦よっ!メイクバッチリ、ヘアスタイルもオッケー!」
「胸部の追加装甲も問題なしであります」
「アイギス、ひと言余計! 」
ちなみに、いま彼女らがいる場所は、白昼のポロニアンモールのど真ん中。真田は辰巳東交番の中で、黒沢巡査と話している。出てくるところを狙って、作戦開始という段取りである。
「あ、出てきた出てきた。んじゃ、みんな。行ってくるよーっ!」
何も知らずにやってくる真田を確認し、ゆかりがゆっくりと接近していく。2メートルほど近づいたとき、ついに真田がこちらに気づき、ゆかりと目が合う。すかさず身体をくねらせ、ほどよい弾力を感じさせる太ももを見せつけるように、グラビアアイドル風のポーズを取った。
「······」
つゆつゆつゆ。
······見事に、真田はそれをスルーした。
「んなっ!?」
たとえ色気が多少足りなかったとしても、後輩このゆかりをシカトするとは······。プライドを傷つけられ、ゆかりの中の女の意地が覚醒した。
立ち去ろうとしつつある真田をダッシュで追い抜き、くるりと振り向いて真田の進路を塞ぐように対峙する。さすがに歩みを止める真田。そしてその真田の目の前で、ゆかりは前かがみになり左右の腕でバストをぎゅっと中央に圧迫した。寄せて底上げした胸が、さらに押し付けられて豊かな双丘を形作る。そして---。
「セ•ン•パ•イ (はぁと)」
微動だにしないまま沈黙する真田。手ごたえあり!と、ゆかりが心の中でガッツポーズをしかけたとき、真田がゆかりに話しかけた。
「あー······月光館の生徒か?すまんな、覚えがない。しかし平日は制服着用が定められているはずだぞ?生活指導に見つからないうちに着替えに戻ったほうがいい。それじゃ、な」
つかつかつかつか。
再び見事にスルーし立ち去る真田。取り残されるゆかり。ひゅるりら~と風が吹いた気がした。完敗、というか惨敗、というか勝負にすらなっていなかった。あろうことか、ちょっと髪型を変えて化粧をし、いつもと違う服を着ただけで、真田はゆかりを知人だと認識できなかったのだ。よく年配のオジサンたちが、若い女の子はみんな一緒に見える、などと言うが、それのさらに酷いやつである。予想の斜め上を突っ走る真田の朴念仁ぶりと言��よう。
「せ、せんぱい······会ってからもう半年たつっていうのに······もてあそばれたー!酷いぃぃ!!」
真田の無心ゆえの見事なカウンターアタックで、ゆかりは精神を破壊されかねないほどの敗北感を感じていた。その再起には、まだしばらく時間がかかりそうだった······。
~フェイズ3 アイギス&コロマル~
「ホントに、大丈夫ですか?」
残る戦力となる、天田、アイギス、コロマルの3者が、夕方のランニングをしている真田を遠くから追跡しつつ作戦会議を行なっていた。
「大丈夫であります。私とコロマルさんがいれば、十全と言えるでしょう」
今度の作戦はシンプル。真田にコロマルをけしかけ、ズボンの尻でも破いてトホホな目にあわせてやろうというものだ。
「では、アイギス行きます!」
コロマルの首に結びつけたリードをしっかりと握り、アイギスが走り始める。さすがに運動性能が高いアイギスは、天田が見守る中、どんどんと真田に接近していく。
あと20メートル。10メートル。5メートル。4、3、2、1······あっさり追い抜いた。
「あ······」
見ている天田の額から、汗が一筋垂れる。その間も、アイギスとコロマルは走る走る。どうやら、久々の広い場所が嬉しくてしかたないコロマルが、目的を見失って猛ダッシュしているようだ。念入りにリードを手に絡めていたアイギスは、前に倒れそうになりながら振り解くことも止めることもできずに引っ張られ。
コケた。
そしてそのまま。
ずるずるずるずるずるずるずる。
1機と1匹が巻き上げる砂煙が、遠く地平線の向こうに夕陽とともに消えていくのを、ただ天田は見つめるだけしかできなかった。
~最終フェイズ 総攻撃~
「正攻法で行きましょう」
各々の理由で叩きのめされ疲れ果てた面々に、天田は溜め息交じりに提案した。だが。
「ダメだ······勝てる気がしねえ······」
「見た目はともかく声ぐらい覚えててよ······」
「ぜっはっぜっはっ (散歩して満足)」
「もはや、ベコベコであります······」
部隊の士気は、嫌が応にも低かった。
ちなみに、前髪が長い現場リーダーは、フェイズ2の頭あたりで、ばったり会ったクラスメイトの友近と、はがくれのラーメンを食べに行ってまだ帰ってきてはいない。ぐだぐだである。
全員が集まった寮のラウンジに、どよんと重く苦しい空気が沈殿する。と、そこに。
「おう、みんな。何だか元気がないようだが、どうした?風邪か?食中毒か?」
攻撃目標 • 真田明彦が現われた。トラウマがかった「ひぃ」という悲鳴を、誰かが上げる。
いったい、どうやって戦えば······どうすれば、勝てるんだ······。この、痛みを感じない (それ以外のものもあまり感じない) バケモノのような人に、どうやって太刀打ちすれば······?いっそ復讐代行サイトにでも依頼を······。
そこにいる全員が、絶望に覆われ心を闇に��食されかけた、そのときである。
「おう、こら、アキ!」
「ん?どうしたシンジ?」
今日は朝からどこかに出かけていた荒垣真次郎だった。いつの間にか寮に帰ってきていたらしく、二階からドスドスと音を立てて降りてくる。そして、鋭い声がラウンジに響いた。
「てめぇ······昨日美鶴が買ってきた限定プリン、全部食いやがったんだってぇ!?」
「ああ、悪かったな。まぁでも普通のプリンと味は変わらなかったぞ。牛乳と卵と砂糖の味だ。今度コンビニで代わりを買ってきて---」
順平たちが問い詰めたときと同じ。謝っているようで、まったく謝罪の意味をなさない、それどころか被害者の神経を逆なでする、無神経な言葉の羅列。昨日は、この真田の態度にさんざん文句をつけたのだが、“たかがプリン” に目くじらを立てるということが、どうしても真田には理解できず、最後までこちらの怒りが伝わらなかったのだ。荒垣も真田の無反省な態度には怒り心頭に······発してはいなかった。むしろ、またかよ、と呆れたような 顔。そして。
「おい、アキ。ちゃんと謝らねえと······」
何を怒られているのか、わからない風の真田に、荒垣が投げかけた言葉は。
「絶交だぞ」
「ごめんなさい!」
真田のリアクションは、これがまた早かった。
「もう、人の分まで食うんじゃねえぞ」
「あ、ああ、わかった」
「食った分、おめえが買ってこいよ?」
「もちろんだ!」
その様子を見て、呆然となるラウンジの面々。
「あんなんで······良かったんですか?」
「今度から······荒垣先輩に頼もうね」
「その作戦を推奨するで、あります······」
そして、力尽きた後輩たちは、バッタリとソファに倒れこみ、そこからしくしくとやるせない泣き声が漏れ始める。その泣き声は、翌日の朝から行列に並んだ真田が、限定プリンを人数分買ってくるまで続いたのだった。
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20230518thr
左から私、夫、長女
家庭菜園(ほぼプランター菜園)の水やりを日替わりで子どもたち担当にした。当番の日に水やりをしたら翌日のテレビチャンネル権獲得というルールなので、今のところ率先して取り組んでいる。よしよし。まあ、テレビはほとんど観てなくて、YouTubeかアマプラなんだけど。
鶏の大葉チーズ焼、卵焼き、アスパラベーコン炒め、ブロッコリー、ミニトマト。長女にはデザートにオレンジ。部活後の補食用塩むすび。
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演劇サイボーグ、白子です。
…実はまだどの公演の役者紹介もしていないという事実を横置きにしておいて、新人公演の役者紹介をしていきます。
皆が人柄などについて書いてる中、演技のことばっかり書いちゃう私をどうか許してください。
折角なので白デミー賞の授賞式も一緒に行います。
●縦縞コリー:父(川上一雄)
主役は君しかいないで賞
1番1緒にご飯を食べてる気がします。食べるのが早すぎて、いつも待ってもらってますが…。やっぱり自分で考えて演技してくれる役者はいいよなぁと、こりちゃんの演技を見る度に思います。上手なんですよ、本当に。もっと言うと、こなれていて、直ぐにそのキャラクターになってしまうんですよ。いやぁ、羨ましい。最高の主役です。こりちゃんが主役でよかったなぁといつも思ってます。新人公演のクオリティーを担保してくれるのは、彼の演技力だと常々思っています。そのうえで、彼のどこか子供っぽいところが好きです。お父さん、イヤーカフ付けてるの見た時はちょっとだけ君が遠くに行ってしまったみたいで悲しかったよ。
●あろハム権左衛門:母(川上なぎさ)
使いたい役者ナンバーワンで賞
ちゃうかで1番好きな役者を聞かれた時、いつもあなたの名前を出しています。本当に大学からか?と思わせる圧巻の演技力と声の圧。なのにどんな役でもスルッと自然体でこなしてしまう感じ。とっても好きです。個人的には今公演で一番好きなシーンは動物園のあそこです。オレンジの時からいい役者だなぁと思っていたのですが、今回の母は抜群に上手です。でも何よりも、こうしたらどう?という提案をすれば次の瞬間には120%の状態で持ってきてくれる吸収力と再現性。アローが主人公・ヒロインの劇、一緒に作ってみたいなぁ。いつかまたシャボン玉で一緒に遊びたいです。
● 海泥波波美:子A(川上ひろし)
圧倒的吸引力、みんなの意識と視線を鷲掴みで賞
君に好かれたい。メンヘラな僕でごめん。私は君のことが好きです。でも、どうやったら皆みたいに君と仲良くなれるのか分からない。一緒にいる時間はだいぶ長いけど、まだ君が麻雀と競馬が好きだという事くらいしか理解出来てないです。でも好きなんです。いや、これは嫉妬に近い感情かもしれません。何でそんなに人を惹きつけ、みんなを巻き込んで楽しい空間を作れるのか。近づきたいのに、どう近づけばいいのかまだ分からないです。大道具も子Aも私の分かりずらい口出しを理解することも、全部大変だったと思うけど、お疲れ様。最高の舞台をありがとう。これからも一緒に大道具頑張ろうね。
●苔丸:子B(川上たくや)
役者にスタッフに、二刀流で大谷越えてるで賞
帰りの方向が一緒で話すことが多くて凄く嬉しいです。喋ってて落ち着くし、心地良い合いの手をくれるとこがすごく好き。やっぱり香夜から一緒やと他の人よりも何となく結束力(?)みたいなのが1段階上な気がします。いやぁ、声出るようになったね。演技の幅の広がり方は指数関数的で、キャスパ師としてもそうだし、演技指導の方でもちゃうかをリードしていって欲しいなぁとよく思います。いやぁ、いいですよね苔丸。皆さんどうですか?苔丸のこと好きになりませんか?一緒の座組でいてくれる事の安心感。敵になったら厄介なタイプですよ、ホントに。小道具、あなたがいないとどうにもならないです。今後ともよろしくお願いします。
●衿君:遠藤圭一
緩急の魔術師であり、誰よりも一緒に稽古したくなる人で賞
エリちゃん、大好きです。何かね、凄い好き。役者としても話し相手としても、いやぁ、いいですよね、彼。周作の時から上手だったのに、謙虚で努力家で、何より伸びようとする強い意志を持って稽古に来てくれてるのが、一緒に練習していて凄く伝わってくるんですよ。そりゃ一緒にいて好きになるに決まってますわ。動きやリアクション、声色ももがきながら手探りで見つけていった最善手って感じがしてね、いいんですよね〜。個人的には、声や演技が爆発しているエリちゃんも好きだけど、普段の大人しめなエリちゃんの方が好きなんですよね。声を聞いていると心が落ち着くんです。だからこそ、今回の遠藤はね、すっごく良いんです。あぁ、あと一週間あったらもっともっと良くなってますよ。けど、彼は私が教えられることは全て教えてきたといっても過言では無いので、彼の才能に乗っかって生産者の顔しときます。
●冊まいむ:子C (瀬尾マイ)
舞台上に自分の世界を作り出すマイペースクイーンで賞
最初はね、霧島みたいな感じで博士やってもらうかなぁとか考えてたの。でも、あなたは子Cです。あなたにしか子Cの無邪気さと心の奥底にある物憂げさは出せません。ダメも演技指導も何にも出来なかったけど、それだけみそかが完成していて、求めていた子Cを見せてくれたということです。なのに忙しい中たくさん練習してくれるじゃん。そりゃ好きになるしかないでしょ、君のことを。初めてな上にパソコンも壊れて大変な中、立派に音響チーフを全うしていたのも最高にえらいです!私が無理に納期を早めさせようとしたり、稽古でサンプラー使わせろとか言っても、真剣に悩んでくれて本当に信頼できて一緒に作品作りをしたいと思える仲間なんだなぁと思いました。役者としてもチーフとしても、どんどん成長していくみそかが楽しみで仕方ありません。君が娘でいてくれて、お父さん本当に嬉しいです。
●ミル鍋:博士
言葉に誰よりも説得力をもたせられるで賞
言わずもがな演技が上手なんですよね、はい。でもね、ゆにの凄いところは、自分の演技だけじゃなくて他の人の演技プランも考慮しながら、全体が動きやすく見やすいものになるよう動けるところなんですよ。アドバイスが思いつかなくて逆に困りました。凄いです。あと、エンディングの映像や舞台装置、その他色々な宣伝美術等に関して美的センスをいかんなく発揮していて、毎回圧倒されます。でも、何気に一番好きなのは点つなぎの表紙です。可愛い動物たちを全員が互いを尊重し合うように配置されていて、センスがあるってこういうことなのかと思いました。何より、食欲に忠実なところが可愛くて好きです。美味しそうにご飯やお菓子を食べているところを見るとこっちも幸せになります。誰よりも気が使えて周りを見れるところも、演技にも表せていますが、稽古場の雰囲気をすっごく暖かくしてくれるので居てくれるだけでThank you!です。
●大福小餅:助手1
可愛くてかっこいい最高の舞台監督で賞
多分仕込み期間中、君と1番練習した気がします。私は小福ちゃんの真っ直ぐに話を聞いてくれる目が好きです。君がぐんぐん成長してくれるから、私も指導に熱が入っちゃいます。ラップ、上手になったね!カレーライス、最高のスタンドだったね!自然なお喋り、力まなくなったね!褒め出したらキリがありませんが、それも全てこふくの絶え間ない努力の賜物です。仕込み週も暇になったら自主練してて、かっこいいライムを学生会館で響かせていて、聞く度に笑顔になりました!演技だけじゃなくて、舞台監督としても超有能で、私の手の届かない仕事を全部こなしてくれて、君がいるから私が好き勝手できたんです。自信を持って!今後も舞台監督チーフ、頑張ってください!!!私も微力ながらお手伝い致しやす!!
●中森ダリア:助手2
魅せる演技が誰よりも上手いで賞
言わずもがなのラップの名手。曲のセンスとフロウのカッコ良さは聞いた人全員を虜にしちゃうと思います。でも、私の推しポイントは何も言わなくとも大胆に、でも正確に動いてくれる身体表現のうまさです。カレーライスのシーン、いいですよねぇ。クラムボン名付けるとことかもめっちゃ好きなんですよね。こふくとは真逆みたいな動きや声色なはずなのに、舞台は統一感があって、華があるのに荒々しくもなれて、すっごく素敵な役者さんだと思います。でも、皆が書いていることですが、ひらりの周りの人のエピソードがどれも強すぎて、丸山ゴンザレスのインタビューに答えられそうで聞いてて楽しいです。ひらりの個性が爆発するような、素敵なキャラを演じて欲しいなと心から願ってます。
●帝京魂:作業員
フラットな喋り方が誰よりも上手で賞
コンちゃん、いいですよね。やっぱり彼は何気ない台詞をスルッと言う技術に長けてるんですね。くどくなくて、でもちゃんと心に残るような、そんな話し方がで��るコンちゃんの演技が大好きです。耳あたりもすごくいい声で、でもはっちゃける所はめっちゃ遊びがあって、作業員・飼育員・素の姿の3つのどれもに味があって、ちーちゃんカンパニーがコンちゃんで良かったなぁと常々思います。しかも、細部の動きも本番当日でも試行錯誤していて、演技上手なのに努力家だからこそ、安心して演技が見れるよなぁと感じます。真面目な一面と遊び心が良い塩梅でまたコンちゃん主演の劇も見たいなぁと思っておりますが、その時もまた一緒にエモい感じをね、作れたらなぁと、華月での去り際、めっちゃかっこいいじゃないですか…あぁ言うのをね、やってほしいなって、思うわけですよ。
●鴨兎春:読み聞かせの人
関西人の血があなたの個性を伸ばしているで賞
読み聞かせのビジュ、最高にいいですよね。可愛いのにちょっと怖くてかっこいい。読み聞かせやりたいなぁって読み合わせの時から言っていて、いざなってみたら改訂後はどんどんセリフ量が増えて、でもそれに対応して演技力もぐんぐん伸ばして、読み聞かせの冷徹な感じとお喋りを演じているっていう雰囲気が、今となってはらびにしか出せんなぁと白子は感服しております。今回は誰よりも一緒に舞台にたったと思うんですけど、安心して隣で演技出来ました。母のナレーションもいっぱい練習してて、最初に比べて格段に良くなってますよ!舞美作業とかで話すこともわりかし多くて私は凄く嬉しいです。センスを爆発させているあの立て看板も最高にかっこいいよね!もっともっとらびと稽古をして、最高の役者に育てたいと、私は切に願っております。漫才劇場、一緒に行こうね!
●黒井白子:道化師
もっと自分の演技も指導も上手になりたいで賞
私(白子)です。道化師、すっごく楽しかったです。いい舞台だったなぁとたまにニヤニヤしてます。こういう馬鹿馬鹿しいけどちょっと良いとこあるみたいなキャラをね、今後もやれたら本望ですわ。
●しょこら:ルロイ修道士
君にしかできない役がいっぱいあるで賞
ある意味今公演で1番振り回されたのは君かもしれません。でも、ルロイを演じれるのも君しかいかったです。だからこそ、舞台に立ってルロイを演じてくれてありがとう。良い演技でした。皆が言っている通り、こらしょにはこらしょにしか出せない独特の雰囲気があります。それが役とマッチした時、黒閃みたいな感じで、ポテンシャルが何倍にも増幅されたものを、君は表現できるんです。だからこそ、今後も技を磨いて欲しいし、役者をやって欲しいなぁと思います。その時は、いくらでも稽古に付き合いますんで、今後ともよろしくお願いします!
●園堂香莉:照明オペ
臨機応変で準備も万端って、有能すぎで賞
本番直前なのに、読み聞かせの照明を足してくれなんて言ってしまい申し訳ありませんでした。でもなぽりなら、きっと叶えてくれるかなって、信じてたから。仕込み週とか、ずっと大集にいて、シュートに明かり作り、場当たりの後はキャスパ照明の練習と連日大忙しなはずなのに、焦りを一切見せずにケロッとボケる感じが凄く安心感があって良かったです。外公の時、こんなに演技上手なんだって感心したけど、オペとしても照明チーフとしても有能すぎて、分身してくれたら最強なのになぁとか考えてました。
●まろん:音響オペ
どんなオペでも安心して任せられるで賞
体調悪いのに引っ張ってきちゃった様ですごく申し訳なさを感じています。でも、とってもいい音響オペでした。通しに来てくれる?とかサンプラー使って稽古したいんだけど?とか色々投げても丁寧に対応してくれて、雑な白子は見習わなきゃなぁと脱帽しました。折角なら引退までのどこかの公演で役者もやってくれればね、嬉しいんですけど。私が演出補佐になることがあれば、オペに対して無理難題を押し付けることもあると思いますが、その時もどうぞよろしくお願いします。
●テキストを入力:映像オペ
映像、プロとして食べて行けるで賞
PVが神すぎて、本番当日の昼、皆でPVを見た時の感動は今でも忘れられないわ…。世界取れるなって、思っちゃいました。前説の前に流して本当に正解だと思うわ。だってお客さんの期待感と盛り上がりをMAXまで高められるじゃない!もう最高。私、エピとはあんまり話した事がないから、君が最近ちゃうかが楽しくなってきてるって話を小耳に挟むくらいしか知らないんだけど、それでも凄く嬉しいです。是非、最強の映像班員としてちゃうかを盛り上げて欲しいですわ!
●紫仏瑠唯:有能スタッフ
誰よりも話を聞いて欲しくなるで賞
私のしょうもない愚痴を聞いてくれ、その上でアドバイスや訂正何かもしてくれたおかげで、私は演出補佐をら続けられました。本当にありがとう。私が一方的に話しただけだけど、るいは話を聞くのが上手だなぁと感じましたわ。先生、向いてるんじゃなくって。でもね、私はるいの世界史話を聞きたいのよねぇ。私はウィーン会議以降の帝国主義が闊歩し衰退するまでの100年半くらいが好きなので、ぜひお話聞かせてください。
●近未来ミイラ:脚本・演出
次回作、本当に本当に楽しみで賞
我らが最強の脚本家兼演出家。君がちゃうかに入ってくれて、筆を執ってくれて、新人公演を最高の舞台にしてくれて、感謝してもしきれません。皆そうだけど、みーらの言葉遊びと小ボケは無限に読みたくなるし見たくなります。として突っ込む時は誰よりも声を張る感じがすっごく好きです。合宿で仲良くなれて本当に良かったな。こんな私を演出補佐に選んでくれて本当に嬉しいです。少しでも君の期待に応えられたのなら幸いです。もしね、今後も脚本を書いて演出したいなぁって時、私に演出補佐やらない?って声掛けてくれたら二つ返事で喜んで承諾しますんで、是非是非。あと、勝手に私が思っているだけかもだけど、感性があんまりズレていない気がするのよね。まぁそれは縦置き、個人的にはちゃうか1の文才を君は持っているでしょうし、ちょっと優柔不断だけど、その分誰よりも優しくて気を使えて、誰も傷付けずに周りを元気にしてくれる君が大好きです。脚本・演出、共に本当にお疲れ様でした!
他の人みたいに上手いこと書けないし、書き足りないことも沢山あるけど、ひとまずこんな感じで良いでしょう。
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# 1話 新手のナンパ師
「おーいギスケ!それは下手(しもて)に運んでくれ」
「はい源さん」
商店街から少し離れた小さなビルの窓には『劇団みかん』の文字が一枚ずつ貼られている。今時の、目立つフォントを用いたカラフルに洒落込んだ看板とはほど遠く、黄色やオレンジの画用紙を用いた手作り感あふれるその『看板』が主張する一室がわたしの居場所だ。
今は3ヶ月後に迫った発表に向けて役者さんたちとの最終調整中で、舞台での立ち位置の把握だとか、それに合わせた照明の明るさやタイミング、それから舞台美術の配置…などなど、この劇団の裏方を担当するわたしは確認する事が沢山ある。
と言っても恥ずかしながら裏方のいろはを学んだ事はなく、さっき言われた「しもて」の場所もここに来てから学んだ事だ。たまたま、この劇団の座長がわたしの両親の知り合いであり、たまたま、高校を卒業後も進路に迷って暇を持て余していたわたしが、たまたま、人員不足のこの劇団に声を掛けてもらった。ただそれだけであって、ただそれだけなのに、気付いたらわたしはこの劇団の裏方としてもう3年ほど働き続けていた。そんな理由から始まったとはいえ、わたしはこの仕事がいつの間にか『当たり前』になっていて、好きか嫌いかと言われたらまあ…うん、そんな感じだけど、でもこの仕事は確かにやり甲斐を感じている。
…なんて言ったら本業の人に叱られそうだけど。
「いつも重いもんを運ばせて悪いなぁ」
「気にしないでください。仕事ですから」
「お!言うようになったなぁギスケ!えぇ?仕事もサマになってきたんじゃないか?」
しゃがれた声を跳ねるように弾ませて話すこの人こそ、この劇団の座長である源さんだ。ざっくり纏められた白髪混じりの髪と少し色黒な肌が特徴的で、どこまでも通りそうな声を放つ大きな口には真っ白な歯が際立って見えている。笑うとシワが刻まれる源さんの顔はいつ見ても元気が溢れていて、生命力を感じるとはこの事を言うんだろうと毎度感心する。
あ、そうそう。この劇団では劇団員との距離を作らない事をモットーとしているらしく、皆平等にあだ名をつけられる。この場で呼ばれる「ギスケ」とはわたしの事だ。
他にも、ふわふわとしたミルクティーのような色の髪が彼女自身をよく表している主演女優の舞さんは「まいやん」、そんなまいやんとは対照的に艶の良い真っ黒な髪を大胆に束ねて縛り上げている助演女優の聡美さんは「さとみん」、いつも劇団のムードメーカーな洋(ひろし)さんは「ようちゃん」…などなど、全て源さんと劇団員が決めたあだ名で呼び合っていて、源さんはみなもとと書いて「げんさん」と呼ばれている。
それにしても何故わたしは「ギスケ」なのか。そのルールなら幾らでも可愛いあだ名があったろうに…と少し不満に思っている事はここだけの秘密。
「そんな働き者のギスケに追加で頼みたい事があるんだがな、」
「じゃあわたしは定時なので上がります!お疲れ様でした!」
「なに?!お前さん帰る気か?!みんな残ってリハーサルを続けるのに?!」
信じられん!とわざとらしく息巻く源さんを横目にお先に失礼します、と急いでこの場から立ち去った。勿論毎回定時で上がるわけでは無いけれど、今日は事前に残業が出来ない事を伝えていたので何も気に病むことはない。暇な私にだって予定はある。
だって今日は!待ちに待ったササキベーカリーの新作、オレンジピールパンの発売日なんだから!!
「ごめんなさいねえ…ついさっき完売しちゃって…」
申し訳なさそうに答えるパンのように優しそうなこの方は、このササキベーカリーのブーランジェ。その印である白い帽子がよく似合う、まるで某あんぱんを作る有名なおじさん…を女性にしたかのような可愛らしい人。わたしはこのお店の常連であり、今、新作のオレンジピールパンが手に入らなかった事実に絶望している。
「ほ、本当に…一つもありませんか…?」
「そうなのよ〜ほんとについさっき、ついさっきだったんだけどね!若い男性が買われていって、あ、男の人にもオレンジって人気なんだわ!って思ってたところでねえ〜!」
常連客のわたしだから知っている。この先、ブーランジェの話は止まらない。見覚えのない人だから新しいお客さんかしら、だの、背がスッと高くてなかなかハンサムだったのよ、だの、最早コンプライアンスが怪しいマシンガントークが炸裂するのだ。お目当ての商品が買えなかったわたしはその話も早々にお店を後にする事にした。また来ます、と常連アピールは欠かさずに。
しかし、常連客であるわたしを差し置いて新作パンを買っていくとはなんと許し難い!…いや分かっている、全ては平等であってその人は1ミリも悪くない。悪いのはただ運が無かった自分だ。あーあ、もう少し早く着いていたらなあ、と、どうにもならない仮定を巡らせながらお気に入りの場所ーー…近所の堤防の草むらに寝転んだ。
この堤防下に流れる川は綺麗に整備されていて、早朝にはジョギングをする人、夕方には子供たちの駆けていく声、夜は犬の散歩をする人も多く、人々の憩いの場とされている。そこそこ名の知れたこの場所では稀にドラマの撮影なんかもしているらしい。今の時期は川の優しい音色と初夏を匂わせる風が心地良くて、わたしの好きな場所だ。いつも仕事を終えるとこの場所に来てのんびりしてから帰路に着く(雨の日だけはまっすぐ帰るけど)。幸いな事に今日は晴れているので、整備されたばかりのチクチクする草を背に感じながら帰る間際に遮った源さんの言葉を思い出す。
源さんの言う『頼みたい事』は分かっている。きっと『役者のオーディションを受けないか』って話だ。
話は戻って、わたしが裏方として所属する『劇団みかん』はいつだって絶賛劇団員募集中で、つまるところ役者が足りていない。そしてオーディションを受けたい人は決まって名の知れた劇団を求めているので、画用紙で看板を作るような小さな劇団はお呼びではないのだ。だから源さんはいつも懲りずにわたしに同じ話を持ち掛ける。
だけどね源さん、わたしは役者を志した事は一度もないし、そもそも劇団みかん以外の演劇には興味が無い。テレビ番組もニュースくらいしか見ないのでドラマや映画も勿論観ない。そんなわたしが役者なんて冗談が過ぎる。最初こそ丁重にお断りしたものの、あまりにもしつこいので最近はその話題から逃げるようになっている。それでも源さんは懲りてくれない様子だけど…明日はどうやってその話題からすり抜けようか…
そんな事を考えていると、ぐるる…と腹の虫がないた。
そうだ、今日はササキベーカリーの新作を食べる為に朝も昼もご飯の量をいつもよりうんと減らしていた。全てはオレンジピールパンの為に…それにありつけなかったお腹は悲しみの音で空腹を主張する。お目当てのものが買えなかったショックで忘れていたこの空腹も、一度気付いてしまうとどうしようもなく体の力が抜けていく。
「ああ…お腹すいたあ…」
「どうぞ」
ありがとう、と渡された紙袋を受け取る。ああ、どこからか香るパンのいい匂い……空腹で回らなくなった頭が優しい���りに包まれた事で一瞬鮮明になる。
……え?なにこれ?え、だれ??
「こんにちは、また会ったわね」
起き上がって渡された方を見ると見覚えのある人物がいた。
この時期だってのに黒いニット帽を深く被り、茶色と灰色を混ぜたような色の髪が少しだけゆるく癖をつけて左眉の上に飛び出ている。その上どこで買ったのか綺麗な形の丸メガネとマスクでほとんど分からない顔に、どこでも売ってそうな至ってシンプルな黒と白の長袖ジャージをキッチリと着た、どこからどう見ても怪しい男性。
わたしはこの不審者を知っている。その瞬間、一気に湧き上がる恐怖心に思わず大声を上げた。
「ぎゃあああああああ!!!!で、出たああ!!」
受け取った紙袋を持ったまま叫ぶわたしに相手は目を丸くしながらも、次の瞬間右手でわたしの口を塞いだ。反対の左手は人差し指をマスクの上に当てて、しっ!騒がないで!なんて言っていた。が、こちらとしてはそれどころではない。そもそも大声をあげた理由は全部この人物のせいである。何が騒がないで、だ!と腹が立ったわたしは、口を塞いできた奴の右手に思いっきり噛みついた。
「いたっ!!」
「き、気安く触らないでよこのナンパ師!昨日に懲りずしつこいんだよ!!」
間違いない。この不審者は昨日、わたしに声を掛けてきたあのナンパ師だ。いきなりわたしの腕を掴んだと思いきや「前に会った事ない?」なんてナンパの決まり文句をふっかけてきたあの忌々しい男!
あの時は何せ生まれて初めてのナンパに遭遇したので、思わず「知らない!」とだけ告げて全力で掴まれた手を振り払い、全力で逃げた。まさかそれがこの再会と結びつけてしまうなんて、こんな事ならあの時にもっと強く断っておくべきだった。いや、なら今言えばいい。こんな失礼極まりないナンパ師なんぞ他の被害が出る前にわたしがキッチリとカタをつけてやる!!そう意気込んだわたしに、今まさに手を噛まれた痛みに耐えている目の前のナンパ師は飛び出すほどに目を大きく見開いてとんでもないことを言ってきた。
「な、ナンパって…私が?!そんなわけないじゃない!!まったく…失礼しちゃうわね」
し、失礼しちゃうわね?って、こっちの台詞でしょ?!意味がわからない。そしてシンプルに腹が立つ。あなたが昨日わたしにあんな事をしなければこんなに大声を出すことも噛み付くこともなく、多分存在すら気にも留めなかったはずで、それをそうしなかったのは全部この人物なのに、失礼しちゃうわね、なんてどの口がそれを口にするのか。
それとも、もしやこのわたしがそんな言葉に怯むと思っているのだろうか。わたしが何も言い返せないような大人しい人間に見えるってこと?そういえばナンパって断れないような大人しい子を狙う場合もあるって聞いた事がある。そうか、なるほど。それなら仕方ない。奥の手を使ってやろう。
「わかりました。そっちがその気なら警察呼びますから!今更逃げたってあんたが2度とナンパできないようにこの場所に不審者が現れるってビラをばら撒いてやるんだからね!!」
「え?!ちょ、ちょっと待って!誤解よ、お願いだから話を聞いてちょうだい!」
「はあ?人に付き纏っておいて何が誤解だよ!そもそも、それがお願いする人の態度かって言ってんの!!」
この不審者を突き放すために、ほんの1ミリでも大人しいとは思われないよう思い付く限りの強い単語を更に力強くぶつけていく。最早何を言っているのか自分ですら理解していないけどそんな事はどうでもいい。とにかくこの不審者に負けられない、その気持ちだけで歯向かっていると、相手は少し考えたように地面を眺めて、そうよね…なんて呟きながら小さくため息をついた。いや、ため息をつきたいのはこちらなんですが?と思うや否や、その人はその場で正座をして両手を地面につけて頭を下げた。
そこではっとした。これは土下座だ。
「怖がらせて申し訳な…」
「ま、待って待って!ストップ!!」
土下座というのはそう簡単にするものではなく、心からの気持ちを表す時にするもので、変な話、強要なんてした日には罪に問われるくらいには意味が重いもの…という程度の認識をしている。いくらなんでも土下座をしてほしいとは1ミリも思っていないので思わず肩を掴んで止めてしまった。しかしそれは間違いだった。相手はガバッと顔を上げたかと思うと「話を聞いてくれる?」と尋ねてきた。
その顔が少しでも笑いを含んでいれば前言撤回をしたはずなのに、向けられたその綺麗な切れ長の目に輝く瞳があまりにも不安でいっぱいだったので、わたしはもう何も言い返せなくなってしまった。と、同時に何故か凄まじい罪悪感に襲われた。
自分がナンパの被害者だと思っていたのに、これじゃあどっちが被害者かわからないじゃん…。
その、『不安でいっぱい』の瞳はわたしには効果覿面だったようで、わたしときたら自分の言いすぎたことを反省した上に、気付いたら相手の話を聞く体制をとっていた。しまった、チョロい奴だと思われただろうか。と一瞬考えがよぎったが、相手も安心したかのように瞳の緊張を緩めて体制を整えた。そして正座をしたまま、まっすぐ伸びた姿勢の良い背を折り曲げ、ごめんなさいと謝ってから話を始めた。
まず、自分はナンパ師ではないという事(これには念を押していた)。そしてわたしに声を掛けた理由は至ってシンプルで、昔の知り合いと間違えてしまっただけ、との事だった。ふぅん、なるほど、そうなんだ…と、思いかけたものの、いやいや、そんなに簡単に他人を信じて良いのか、と再び考えを巡らせる。だとしたら何故2度もわたしに声を掛けたのか。間違いだったなら再び声をかける必要なんて無いのではないか。ナンパ目的でないのなら当たり前の考えが頭をよぎる。やはりこれはナンパの類で、それはまだ続いているのではないか。そう問い詰めてやろうとした刹那、彼はふたたび姿勢を正して話を続けた。
「だからね、昨日の事を謝りたくて、もしかしたらまた此処に来るんじゃないかと思ってあなたを待っていたの。で、渡したそれはお詫びの品」
そう言って指を刺した紙袋を見て、渡されたままだった事を思い出した。お詫びの品って…なんて律儀な人なんだろうか。いや、ちょっと待って。ただ人間違えをしただけでそこまでするものだろうか?それって逆に怪しくない?と、わたしの中で気持ちがせめぎ合う。こういう時、なんとかは疑いやすい…と言うけれど、でももし、この袋の中にヤバいもの…ほら、盗聴器とか監視カメラとか…もしくは白いお粉が万が一入っていたら…?と最悪の事を考えながら再び紙袋に目をやる。薄くクリームがかった色の紙袋の中心には見覚えのある名前が印刷されていて、中には可愛らしい絵柄の、でもどこか見覚えのあるクッキーの箱が入っていた。
『おやつに最適。ササキベーカリーのやさしい味⭐︎クッキーアソート』
「ササキ…ベーカリー…って…」
「あら、知ってるの?さっき見つけて寄ってみたのよ。色んなパンがいっぱいで思わず自分用にも買っちゃったのよね。この新作って書いてあった…」
「お、オレンジピールパン?!」
その人はわたしに渡した紙袋とは別に、同じフォントが刻まれた紙袋をゆらりとかざして見せた。まさか、まさか。こんなところで出会うなんて!わたしが食べたくて仕方なかった、ササキベーカリー新作のオレンジピールパンは今、目の前にいる人物の持つ紙袋の中にある。最初に香ったパンの香りはまさしくこれだった。オレンジと焼けた小麦粉、そしてバターの香りが忘れていた空腹を再び刺激する。ほぼ無意識のうちにぐるる…と再び腹の虫が鳴いた。
「…こっちの方がいい?」
「え?!」
「このパンが好きならこれも受け取ってくれる?」
駄目、駄目だよそんな、幾らわたしがこのパンを欲しているったって、そんな、ず、図々しいにも程があるし、第一どこの誰か知らない人から食べ物を恵んでもらうなんて…といった気持ちとは裏腹に口から出た言葉といえば「いいの…?」と、情けない回答で、それにも関わらず目の前の人は丸いメガネ越しに目を山形に細めてどうぞ、なんて言っていた。
「お腹空いてるんでしょ。良かったら食べて」
「…へ、変なもの入ってないよね…?」
「……要らないならいいのよ?」「いただきます!」
今までの申し訳なさを言葉で表現したような話し方から一変して少し意地悪に言うもんだから、目の前に差し出されたお目当てのパンに咄嗟に食らいついてしまった。瞬間、ふわりと香る爽やかで少し苦味を感じるオレンジピールの香りと表面にコーティングされたザラメが溶けた甘いパンの食感に思わず魅了される。そうそう、これ!まさに想像していたとおりで今わたしが欲していた、ササキベーカリー新作のオレンジピールパン!
待ち望んでいたその香りと味に、先程までせめぎ合っていたいろんな感情がふっと解れる感じがした。
「…美味しそうに食べるのね」
だって美味しいし、と言いたかったけど口いっぱいに頬張ったせいで話せそうになく、声のした方をちらりと見る。そこには随分と優しい顔でこちらを眺めるその人がいて、その瞳と目が合った。なんだか小っ恥ずかしくなって紙袋に目線をそらすと、紙袋の中にはもう一つ、オレンジピールパンが入っていた。
そもそも、このパンはこの人が自分用に買ったものなのにわたし一人が頂くのはいかがなものか。今食らいついたパンを味わいながら、この妙な小っ恥ずかしい空気を逃れる��うに紙袋からもう一つのパンを取り出して差し出した。
「あ、あの!これ…良かったら…一緒に」
「ありがと。でも私はパンは食べないから気にしないで」
「え?」
さっき自分用��て言ってなかった…?と尋ねると、職場の差し入れに渡す予定だったと返されたので慌てて最初に受け取ったクッキーをお返しした。別に良いのに…と言っていたけどさすがに差し入れを再び用意させるわけにはいかないので、と半ば強引に受け取ってもらった。この人がどんな仕事をしているのかは全く想像がつかないけど、差し入れをするような人なのだから真面目に働いているのかもしれない、し。
しかしこの…どう見ても男性のこの見た目とはあまりリンクしない話し方で一体どんな仕事をしているのだろう。バーとかかな。なんて勝手に少しだけ考えてみたところで、ふと、気が付いた。
「昨日会った時と話し方が違う気がするけど…」
「え?やだ、今気付いたの?」
昨日声を掛けられた時は確かに自分の事を「俺」と言っていたし、言葉ひとつひとつの発音もハッキリと強くて、今のような艶やかな話し方とは真逆だった。
当の本人はその問いに対して、とっくに気付いてると思ったのに、と少し寂しそうに遠くを見て呟いた。気づいて欲しかったのだろうか。いやいや、知らないし。なんて考えていると、少し、ほんの少し寂しそうな瞳で、この話し方が嫌なら直すけど?と聞いてきた。状況が理解できないまま首を横に振って答えるとさっきまでの寂しそうな瞳が優しく代わり、目をにこりとさせて「なら良かった」なんて言っていた。
「昨日は知り合いだと思ったからああ言ったけど、オフの時はこっちの方が楽なのよ」
「オフ…?」
「まあプライベートってとこかしらね」
はあ、そうですか。まあ正直言うとどっちでも良かった。というのもこの人の言葉を信じるならばただ人違いをしただけで、こうしてお詫びもしてくれたわけで、多分、もう、この先話す事も会う事も無いんだろうから。この人の話し方や立ち振る舞いなんてわたしには関係のない事なわけだし。
あれ、でも待って。それでいいのかな。わたし、結構この人に酷い事言っちゃったけど、わたしは謝らなくていいのか?それこそ何かお詫びが必要なんじゃないか?というか、このパンもお詫びとはいえ貰いっぱなしで良いものなのだろうか。ふたたびその人に目をやるとやはり優しい瞳でこちらを見ていて、急に目を合わせたわたしに少し首を傾げていた。
よし、やっぱり謝ろう。
「あの、さっきは酷い事を言ってすみませんでした。パンまでいただいて…その、なんとお詫びしたら良いのか…」
勿論心から申し訳ない気持ちで伝え���ものの、幾つになってもこういう場面は慣れない。勢いで話してしまったので口篭ってしまった。そしてこれに対する返答といえば大体誰に伝えても同じで、許してくれるか許されないかのどちらかしかない。少し嫌な話をすると、言う前にどちらの返答をもらえるかは大体分かっているものだと思う。今回の場合もそうで、多分この人は気にしないで、と言うだろう。わざわざお詫びまで持ってわたしに謝罪をしてくれたということは、きっと本人も気が咎めていると思うからだ。
とはいえあれだけ好き勝手言ってしまったのだから、万が一許されなくても仕方はないとは思うし、その時は要求を呑むつもりではいる。
…でもこの人は許してくれる。勝手にそう思っていた。
しかしこれが甘かった。
思ったとおり相手は気にしないで、と、言いかけた。確かに言いかけたのに、言いかけて言葉を止めた。その沈黙に恐る恐る下げた頭をあげると、その人は左手を顎に近づけて何やら考えている素振りを見せ、そしてこの数分の一連の流れを思い出すかのように目を閉じて話し出した。
「そうねえ…私が悪いとはいえナンパ師扱いされたわけだし、危うく警察呼ばれちゃうところだったし…あ、別に詫びてほしいってわけじゃないのよ?でもその気持ちを無下にするのも…ねえ?」
ちらりとこちらを見ている目はいやらしく輝いている。なんっって!なんてわざとらしい!!もしこれでオーディションを受けたなら間違いなく不合格だと素人のわたしですらわかる程に嘘くさい演技!ねえ?じゃないよ無下にしてくれ。いっそキレてくれた方がいい。だってこれはどうみても何かを要求される前兆だ。
確かに許されなければどんな要求でも飲む気でいたよ。でもこれは予想していた詫びを超えたものを要求される。絶対そう。上手く言葉にできないけど今までの経験上、絶対面倒な事を要求される確信がある。いや、面倒な事だけならまだ良い。パシリだとかその程度で納得するならいくらでもやってやる。
だけど今回はそうじゃない気がする。パンをくれた事で忘れていたけどよくよく考えたら見ず知らずの人物に何を要求されるかなんてわかったもんじゃない。まさか、まさか身売りとかだったらどうしよう?!やっぱりあの時、警察に突き出しておくべき人物だったとしたら…?
再び最悪な考えが頭を過って、つう、と背中に汗が伝う感覚を覚えた。その漠然とした恐怖に飲み込まれてしまいそうで、思わず食べかけのオレンジピールパンをぎゅう、とキツく握りしめた。
「そうだ。じゃあ私の話し相手になってくれない?」
「…はい…?」
この辺りに知り合いが居なくて心細かったけど話し相手ができて嬉しいわ、とそれはそれは楽しそうに付け加えた。ちょっと待って、脳の整理が追いつかない。は、話し相手って…どういうこと?それに、あれ?わたしって一言も承諾していないよね?いやまあ拒否権はないといったところなのかもしれないけど…取り敢えず怖い事ではなくて良かったのかな…いや、知らない相手が満足するまで話し相手を務めるってそれはそれで恐怖なのでは…?と、再び混乱していると、この脳内を読み取ったのか相手はさも当然かの如く続けた。
「私に詫びたいんでしょ?自分の言った事には責任を持たないとね」
言ったけど。ええ、確かに何かお詫びをと言いましたけど。良くも悪くも全てが予想外と言いますか…だって今から一体何を話せばいいわけ?!はい、おはなしスタート!で始まる会話なんてお見合いじゃあるまいし何の意味があるっての?!そもそも何をどれくらい話せば満足するの?!なんて言いたくても責任を持てなんて言われたら下手に言い返すことすらできず、悔しい思いで口篭っていると、もう行かなくちゃ、と、相手が慌てて帰る準備をはじめた。
え?じゃあ今の提案はジョーダンって事??なんだ、びっくりした。そりゃそうか、話す事なんかお互い無いだろうし。渾身のジョークなら最後に大袈裟にリアクションでも取ってあげていれば良かったかな…なんて少し思って、へへ、と愛想笑いをしておいた。
この数分でドッと疲れたわたしは、帰り支度をする目の前の人物の背中をぼんやり眺めながら自身も帰りたいと心の底から強く思った。たった1人の見知らぬ人に昨日のナンパだけではなく今日もこんなに振り回されるなんてどうして想像できただろう。そしてこの時間は一体何だったんだろう…まあ、お目当てのパンにありつけた事だけは良かったんだけどね、と握りしめたせいで少し潰れてしまった食べかけのオレンジピールパンを残さずペロリと頬張った。
「じゃあ、またね」
「…え、」
今、またね、って言った…?え、またね、って何?ねえ!またねって何なの?!話し相手って今だけのことじゃなかったの?!
またもや口いっぱいに頬張ってしまったせいで伝えられなかった心の叫びは届くわけもなく、謎の人物は軽く手を振り小走りで去っていく。あんなに脚が長くては走りにくそうだと、おおよそ走る体制ではない、やたら良い姿勢のまま離れていく背中を眺めながら、どうする事も出来ないわたしは口いっぱいに含んだそれを飲み込んだ後、紙袋から最後のオレンジピールパンを取り出して思いっきりかぶりついた。
「やっぱりあれ、新手のナンパだったんじゃん」
.
.
.
ゆるやかな時間が流れる河川敷から少し離れた、ビルが立ち並ぶ道路の脇に一台の車が身を隠すかのようにひっそりと停車している。中には長方形の黒縁眼鏡とスーツ姿を着こなした男性が分刻みにビッシリ書かれたスケジュール帳と左腕に光るシンプルな時計を交互に眺めながら今か今かとその時を待っていた。
そのうち、ドアをコンコン、と叩く音を合図に車中の男性はスケジュール帳から目を離して窓を覗き込んだ。ドアの向こうには180cmほどあろうかと思われる男性が立っていて、深く被った黒いキャップの下からは肩までまっすぐ流した暗い胡桃染の髪が背後からの夕日に輝き、カーキ色のジャケットから伸びる右手には薄いクリーム色の紙袋をぶら下げている。
待ちくたびれた(と言っても約束の時間より5分ほど)車中の男性は急いでドアを開け、君が遅れるなんて珍しいじゃないか、と長髪の男性に釘を刺す。刺された本人は走ってきたのか、息を少し整えながらも至って真面目な顔で謝罪をしながら車の助手席に乗り込み、差し入れです、と持っていた紙袋を差し出した。
「このお店、この近辺では人気らしいですよ。なんでも…新作のオレンジピールパンが絶品だとか」
これはクッキーですけどね、と付け加えた彼の表情はほんの少し綻んでいるように見えた。
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『ライク・ア・デート!』
ご依頼者:夢乃つむぎ 様(サークル名:Blue Earendel)
サイズ:A6(文庫サイズ)
2024年8月発行。 同人誌の表紙デザインを担当いたしました。
ーーーーーーーーーー
・御本のあらすじ ・青、オレンジ、明るく爽やかで可愛い感じ。 などの事前に頂いた内容を踏まえて構成しております。 一目でデートを計画している最中のような・デートをしている最中のような……いろんなワクワク感が受け手に伝わるよう、爽やかに可愛くを重視して制作しました。
【デザインのポイント】 写真が持つ鮮やかなイメージをイラスト風に加工した上で、爽やか可愛い系に振ったデザインです。 基本は爽やかな水色、黄色・オレンジで可愛さを上げながら、青で絞めることで、メインに据えた写真が持つカラフルさで楽しい雰囲気を底上げしました。
タイトルは手書き文字、サブで可愛い・賑やかな雰囲気のデザインフォントを用いて、H1H4それぞれで違いを出しながら双方共にハッピーさが出るよう制作しています。
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会社の歌仲間3人で歌いに。
「きまぐれ⭐︎オレンジロード」と「機動警察パトレイバー」をテーマにお送りしました。
ただ、冬がはじまるよ はカレンダーに合わせて秋冬になって欲しくて。ALIVE はJOYSOUNDの担当別色分けされた歌詞表示だというので片パート担当して合唱。
オレンジ・ミステリー/長島 秀幸『きまぐれオレンジ☆ロード』1987
NIGHT OF SUMMER SIDE/池田 政典『きまぐれオレンジ☆ロード』1987
冬がはじまるよ/槇原敬之 1991、2008 サッポロビール「冬物語」CMソング 1991
夏のミラージュ/和田 加奈子『きまぐれオレンジ☆ロード』1987
鏡の中のアクトレス/中原 めいこ『きまぐれオレンジ☆ロード』1988
悲しいハートは燃えている/和田 加奈子『きまぐれオレンジ☆ロード』1987
Dance in the memories/中原 めいこ『きまぐれオレンジ☆ロード』1988
ALIVE/ClariS『リコリス・リコイル』2022
未来派Lovers/笠原弘子『機動警察パトレイバー』 (OVA"アーリーデイズ")1988
MIDNIGHT BLUE/KISSME QUICK『機動警察パトレイバー』1989
コンディション・グリーン~緊急発進~/笠原 弘子TV版『機動警察パトレイバー』 1989
約束の土地へ/笠原弘子『機動警察パトレイバー the Movie』 1989
2024/10/31カラオケセットリスト|妖怪帽子 #note #今日の振り返り #カラオケ #アニソン https://note.com/funtail_the_cat/n/n4bb5b4dbf0cb
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『オトメ世界の歩き方』オルトロス
nyaon先生とmignon先生のタッグでゲームを作ると噂に聞き。 ほのぼのしたオト●ドメインみたいな作風で来るのかな~と思っていた私です。作品の形になってきた段階で驚きましたヨ。
2人の先生+終末世界+メカ!??
想像の斜め上の要素が多過ぎて・・・でも面白そうだから!イイと思います。むしろ自分も参加させてください・・・だったか不明ですが仕事させて頂きました。 個人的に武器・メカ・メカという担当をこなしまくりました。 オレンジのタチコマというかやわらか戦車みたいな造形?のメカが好きで楽しく彩色させていただきました。 エロゲでメカ塗るの少ないので貴重な経験ありがたす。
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TEDにて
ケイティ・バウマン: ブラックホールの写真を撮影する
(詳しくご覧になりたい場合は上記リンクからどうぞ)
天の川銀河系の中心には、超大質量ブラックホールがあり、回転している円盤状の熱いガスを吸い込んでいます。
そのブラックホールは、近づくものは何でも、光でさえも飲み込んでしまいます。そのため、ブラックホールを見ることはできません。
しかし、その「事象の地平面」は、ガスに影を落とすので、その影の写真を撮ることで、宇宙についての重要な謎を解く鍵が得られるでしょう。科学者は、その写真を撮るには、地球サイズの望遠鏡が必要だと考えてきました。
しかし、ケイティ・バウマンと天文学者たちのチームは、賢い解決策を見出しました。どのように究極の闇を見ることができるかをご覧ください。
インターネットとエクサフロップクラスのコンピューターがなければ実現しなかった方法です!
必見です!
映画「インターステラー」では、超大質量ブラックホールの姿を間近に見ることができました。
明るいガスを背景として、ブラックホールの巨大な重力によって光がリング状に曲げられています。
しかし、これは実際の写真ではなく、コンピュータグラフィックによるもので、ブラックホールの姿についてのイラストレーターによる想像図です。
数値を視覚化してコンピューターで処理した映像。
100年前に、アインシュタインが一般相対性理論を発表しました。それ以来、科学者は、この理論を裏付ける様々な証拠を発見しています。
しかし、この理論で予言されたブラックホールはまだ直接は観測されていません。
ブラックホールの姿についてのアイデアはいくつかあるのですが、まだ、実際の写真は1枚も撮られていません。
しかし、まもなく可能になるとすれば皆さんは驚かれるでしょう。
この数年の間にブラックホールを撮影した初めての写真を見ることになるでしょう。最初の1枚の撮影は、世界中の科学者からなるチームと地球サイズの望遠鏡と1枚の写真に構成するアルゴリズムによるものです。
今日、皆さんにブラックホールの写真を実際にお見せできませんが、その最初の1枚を撮るための舞台裏をちらりとお見せします。
私は、ケイティ・バウマンと申します。MITの大学院生でコンピュータサイエンス研究室でコンピューターに写真やビデオを認識させる研究をしています。
私が天文学者ではないのにこの刺激的なプロジェクトにどのように貢献してきたかをお見せします。
今夜。都会の明かりから逃れて郊外へ行けば、天の川銀河系の素晴らしい姿を、目にすることができるでしょう。何百万もの星を通り抜けて、2万6千光年先にある渦巻き銀河の中心を拡大して見られれば、最後には、中心にある星の集団にたどり着くことでしょう。
天文学者たちが、宇宙空間の塵に隠れて見えにくいこれらの星を赤外線望遠鏡で観測し始めてから、16年以上経ちます。
しかし、一番見たいものを見てはいません��銀河系の中心の星は、見えない物体の周りを周回するように見えます。
この星々の軌道を追跡した結果。
天文学者は、この運動を引き起こすようなサイズと質量の天体は、超大質量ブラックホールだけと結論づけました。
それは、密度がとても高いため近づいたものを全て光さえも飲み込みます。
もっと拡大して見たらどうなるでしょう?定義からして見えるはずのない物を見ることはできるでしょうか?
電波望遠鏡で観測すれば、ブラックホールの周囲の高温プラズマが重力で曲がることによってできる光のリングを観測できるはずです。
つまり、ブラックホールは、この明るい物質を背景に影を作り球状の暗闇を作りだすのです。この明るい輪は、ブラックホールの事象の地平面と呼ばれ、ここから先はあまりに重力が強いので光でさえ逃れられなくなります。
アインシュタインの重力方程式でこの輪の大きさと形が数値で予測されます。
ですから、その写真を撮ることは、とてもかっこいいだけではなく、アインシュタインの重力方程式が、ブラックホール周辺の極限状態でも成り立つかを確認するのに役立ちます。
しかし、このブラックホールは、私たちの地球からとても遠いので、この輪は信じられないほど小さくしか見えません。月の表面にある1個のオレンジを観測するのと同じ位に小さいのです。ですから、この輪の写真を撮るのはとてつもなく難しいのです。
どうしてでしょうか?その答えは、一つの単純な方程式によって示されます。
回折という現象のために、私たちが観測できる対象のサイズには根本的に限界があります。
その方程式によれば、小さいものを見ようとすればするほど、望遠鏡を大きくしなければならないのです。
しかし、地球上の最大の光学望遠鏡でさえ、月の表面の写真を撮るのに必要な解像度に近づくことさえできません。
これは、現時点での最高の解像度で撮影された地球から見た月の写真です。この写真は約1万3千画素ですが。1画素に150万個以上のオレンジが収まってしまいます。
月面にある1個のオレンジを、さらに、あのブラックホールを観測するには、どんな大きさの望遠鏡が必要なのでしょうか?
まじめに計算してみると地球と同じ大きさの望遠鏡が必要であることが簡単に分かります。
もし、地球サイズの望遠鏡を建設できれば、ブラックホールの事象の地平面を示す特別な光の輪を見分け始められるのです。
この写真は、コンピュータグラフィックほど詳細ではありませんが、これによって、初めてブラックホールの周辺の状況を確実に一目見ることができます。
しかし、ご想像の通り地球と同じ大きさの一枚の反射鏡で望遠鏡を造ることは不可能です。
でも、ミック・ジャガーも歌っているように「欲しいものがいつも手に入るわけではない。でも、何度もトライすれば、必要なものは手にいれられるだろう」
そして、世界中の望遠鏡を繋ごうという「事象の地平面望遠鏡」という国際プロジェクトでは、地球サイズの望遠鏡をコンピューターの力で実現し、ブラックホールの事象の地平面を捉えられる解像度に達しようとしています。
2017年には、この望遠鏡ネットワークを使って、最初のブラックホール写真の撮影を計画しています。
この計画では、世界規模で繋いだ望遠鏡を連動させます。原子時計による精密なタイミングで同期させ、各々の観測点では、研究者のチームが、光を全部捉えて数千兆バイトのデータを収集します。
それから、このデータは、ここマサチューセッツの天文台で処理されます。
仕組みをもう少し説明します。
私たちの銀河系の中心にあるブラックホールを観測したいなら、有り得ないほど大きい地球サイズの望遠鏡が必要ですよね。
でも、一旦、地球サイズの望遠鏡が造れるとしましょう。地球を巨大な回転するミラーボールだと考えてみましょう。
各々の鏡が、光を集め1つにまとめられて1枚の写真となります。ここで、ほとんどの鏡は無くして、ほんの少しだけ残しましょう。まだ、これらの情報をまとめることはできますが、今回は多くの穴があります。この残った鏡が、望遠鏡のある観測点を示しています。
1枚の写真にするには、信じられないほど少ない観測データです。望遠鏡が設置されている数少ない場所でしか、光を集めることはできませんが、地球が自転するので別の観測データを得られます。
つまり、ミラーボールが回転すると鏡は場所を変えるので像の別の部分を観測することができます。
開発中の画像処理アルゴリズムによって、ミラーボールの欠けている部分を埋めて、そこに隠されているブラックホールの像を再現します。
もし、地表の全面に望遠鏡を設置できたとして、つまり、ミラーボールが完璧ならば、この作業は難しくはありません。
しかし、手に入れられるのは、わずかな観測データだけなので望遠鏡によるわずかな観測データと完全に一致する像は無限に存在します。しかし、全ての画像が同等ではありません。私たちがブラックホールだと考える姿に他のものよりも近い画像があります。
最初のブラックホールの写真を撮るために、私が担当をしているのは、望遠鏡の観測データに合致する最も合理的な画像を見つけるためのアルゴリズムを開発することです。
似顔絵捜査官が、わずかな特徴の情報から顔の構造についての知識を用いて、1枚の絵を描きあげるのと同じように、私が開発中の画像処理アルゴリズムを使って、限られた観測データを宇宙にある天体としてふさわしい1枚の絵にまとめます。
このアルゴリズムを使うと、このまばらでノイズだらけのデータを写真へとまとめあげられるのです。
では、天の川銀河系の中心にあるブラックホールに望遠鏡を向けたとするシミュレーションのデータを使った再構成の例をお見せします。
これはシミュレーションに過ぎませんが、このように再構成できることで、まもなく初のブラックホールの写真を確実に撮影し、その輪の大きさを決められるという希望を持てます。
このアルゴリズムの詳細を全てお話ししたいのはやまやまなのですが、皆さんには幸いなことに十分な時間がありませんが。
宇宙の見え方を決定する方法やアルゴリズムを再構成や結果の確認に使う方法をざっと紹介します。
さて、望遠鏡の観測データに完全に合う画像は、無限にあり得るので何らかの方法で、その中から選び出さなくてはなりません。ブラックホールの像に近い度合いに応じて、これらの画像をランク付けして最も適切な1枚を選びだします。
もう少し分かりやすくして、フェイスブックにある写真が、ありそうかどうかを決めるモデルを考えましょう。このモデルを使った場合、左のノイズだらけの写真が投稿された可能性はほとんどなく、右の自撮り写真が投稿された可能性がかなり高いという結果を期待します(注意、プライバシーの侵害になるので現実は訴訟に発展します)
真ん中の写真はぼやけていて、フェイスブック上に、左のノイズの写真よりは見られそうですが、自撮り写真と比べると可能性は低そうです(注意、プライバシーの侵害になるので現実は訴訟に発展します)
ブラックホールの写真となるとこれは難問です。なぜなら、私たちはブラックホールを見たことがないからです。この場合、ブラックホールの像らしいのは、どれで、その構造として仮定すべきなのはどれでしょうか?
「インターステラー」のブラックホールのイメージ��ようなシミュレーションは使えるでしょう。
しかし、そうすると重大な問題が起きます。もし、アインシュタインの理論が成立しなかったらどうなるのでしょうか?私たちは、今起こっていることの正確な写真を再構成したいのです。
もし、私たちのアルゴリズムにアインシュタインの理論を反映させすぎれば、予想した通りのものを見ることになってしまいます。つまり、銀河の中心には、大きな象がいるという可能性を残しておきたいのです。
異なるタイプの画像は全く別個の特徴を持ちます。ブラックホールのシミュレーションの画像と地球上で日常的に撮る写真の違いは明らかです。そこで、特定のタイプの特徴を強調しすぎていない画像はどのようなものかアルゴリズムに教えてやらなければなりません。
その方法の1つは、各種ある中からある画像タイプの特徴を強調して用い、それが再構成にどのように反映されるかを調べる方法です。もし、それぞれの画像タイプ全てから同じような画像が得られれば、出来上がった画像が私たちが設定した仮定から、大きな影響を受けていないだろうという確信を強める方向です。
このことは、世界のあちこちから集められた3人の似顔絵描きに同じ情報を提供するのに少し似ています。もし、3人ともが非常に似た顔を描けば、出来上がった絵が各々の文化の影響を受けていないという確信を強める方向です。色々な画像タイプが持つ特徴を反映させるには既にある画像の部分を使う方法があります。
画像を大量に集めて、小さな画像のかけらに分解します。そうすると一つ一つの画像のかけらをパズルのピースのように使えます。そのよくあるパズルピースを使って望遠鏡の観測データに合致する画像をまとめあげます。
異なるタイプの画像からは、違った特徴のピースセットが得られます。同じ観測データに基づいて異なるピースセットを使い、画像を再構成するとどのようになるのでしょうか?ブラックホールのシミュレーションから取ったピースを使いましょう。
まあ、妥当ですね。これは、私たちが思うブラックホールの姿と似ています。でも、こうなったのは、ブラックホールのシミュレーションのピースを使ったからでしょうか?では、別のセットを使いましょう。今度はブラックホールではない 天体からのものです。いいですね。よく似ています。
最後に、自分のカメラで撮影したような日常の写真から作ったパズルピースではどうでしょう?やりました。同じ写真が出来ました。異なるパズルピースのセット全てから同じ画像が出来上がれば、最後に得られた画像が、私たちが設定をした仮定から大きな影響を受けていないと確信を持てるようになり始めます。
もう1つの方法は、ある1つのパズルピースのセット。例えば、日常の写真から得られたセットを使って、色々な種類の画像を再構成する方法です。シミュレーションでは、ブラックホールがそれ以外の天体と似ているという仮定だけではなく同様に象のような日常の写真と似た形が、銀河系の中心にあることも仮定します。
図の下にあるアルゴリズムを使ってできた画像が、図の上の本当の写真とよく似ていれば、このアルゴリズムの確信を強める方向です。皆さんにお伝えしておきたいことは、この全ての画像には、皆さんがご自分のカメラで撮った日常の写真からのピースが使われたことです。
私たちが見たこともないブラックホールの写真は、人々や建物、木、犬、それから猫のようないつも見ているような写真をまとめあげれば最終的にできるでしょう。このような画像処理の考え方によってブラックホールの最初の写真を撮り、さらには科学者たちが常に根拠としている有名な理論を裏付けることができるでしょう。
もちろん。このような画像処理のアイデアは、光栄なことに私が一緒に働ける素晴らしい研究者のチームなしには不可能でした。素晴らしいことに、私はこの仕事を始めた時には天文学の素養がありませんでしたが、この他に類をみない共同研究を通じて、最初のブラックホールの画像に至ることができるかもしれません。
この「事象の地平面望遠鏡」のような大規模な共同研究は、様々な人が学際的な専門知識を持ち寄ることで、成功へと繋がります。私たちのチームは、天文学者と物理学者。数学者と技術者のるつぼです。かつては不可能と考えられていたことがもうすぐ可能になります。
皆さんにも、外に出て、科学の限界を広げるのを手伝っていただきたいのです。たとえ、それがブラックホールのように初めは不可思議に見えても。
ありがとうございました。
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