ukigawachihiro
Story & Playwrite by Ukigawa Chihiro
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創作��た小説・脚本を本棚のように並べています。劇団「ユニット・ハズビィン」代表。絵とお話のお店『射光堂』のお話担当。執筆のご依頼はunit.has.been123☆gmail.comまで(☆→@)【次回】2019/7/7 第四回文学フリマ札幌@さっぽろテレビ塔2F あ-04
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ukigawachihiro · 5 years ago
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今年最後の買い物で、白泉社の絵本雑誌MOEを買ってきました。
応募していた創作絵本グランプリという賞の結果発表があり、最終選考に残った18作品として、「よるがとんでいく」というタイトルと絵、名前を載せていただいてました!!!
嬉しいです!
もっともっと良い本を目指して頑張ります!!
最近投稿できていませんでしたが、来年からほちぼちと投稿していきたいと思います。
何はともあれ、良いお年を!
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ukigawachihiro · 6 years ago
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【The New Book!!】
新しい本『花に宿りて』が出来ました!
一緒に絵本を作っている熊八木ちささんの初イラスト集です。
平安時代の和歌から題字を拝借して、蝶と花の水彩のイラストをまとめました。
私は題字のレイアウトと、中の文章をちょっとだけ手伝っています。
6/30(日)の北海道コミティア@札幌コンベンションセンター、7/7(日)の文学フリマ札幌@札幌テレビ塔から頒布いたします。
札幌はとても過ごしやすいいい季節になってきました!
よろしければ是非、お越しください!
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ukigawachihiro · 6 years ago
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【サッポロモノヴィレッジ出展】
大型連休が始まりましたね!
仕事の方はおつかれさまです!
私も仕事です。
さて、宣伝です!
連休の最後、5/5-6のサッポロモノヴィレッジ に出展します!
熊八木ちささん、こゆ吉さんの絵のブースで、力仕事を担当します!
(私の書いた絵本や小説も並ぶ予定です!)
是非お立ち寄りください!
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ukigawachihiro · 6 years ago
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炎天
氷が崩れる音。アイスコーヒーに溶け込む水の儚さ。グラスに貼り付いた水滴は自らの重さにじっと耐えている。Nが残していった書類に丸いグラスの跡が付いている。厚手のパラソルが作る濃い影が、水に濡れてしまった部分を青く染めた。
 Nは私が最も多くの時間を共にした人だろう。おそらくは家族よりもたくさん話をした。愛し合うこともあったし。大喧嘩もした。共に泣き、よく笑った。多くの春と、同じ数の秋を過ごした。今年の春は南の島に行った。二人とも暖かいところが好きだった。屋内よりも外が好きで、時間を見つけては公園で散歩をしたり、電車で海まで行ったりした。私たちはどこか、寒さから逃げているようだった。だから、次の秋は来ないのだろう。
 広がる水が書類を侵食しきる前に、私はハンカチで水分を拭った。我ながら、律儀すぎると嫌になる。放っておけばいいのに。一枚の薄っぺらい紙なんて、最初からなかったことにすれば良いのに。刷り込まれた習性のように、丁寧にハンカチを押し当てて、皺にならないように紙を伸ばして、黙々と花粉を運ぶ蜜蜂のように、頭をその行為だけに集中させて。氷が再び崩れ、グラスが響く。ループしていた思考回路が途切れる。
 顔を上げた。週末はいつも賑わっているオープ���カフェの前の通りは、平日だからか人通りが少ない。一般的な会社員である私を、夜勤明けの昼間の内に話がしたいと呼び出したNの身勝手さが少しだけ笑えた。週末にはきっと別の予定があるのだろう。目の前の、透き通るほど薄く、白い紙に書かれたNの名前は、僅かな迷いもない、見事な筆跡だった。
 離婚届と一緒に渡された部屋の合鍵をリュックにしまい、小さな氷が三つ浮かんでいるアイスコーヒーを氷ごと喉に流し込み、席を立つ。パラソルに近づくと染み出した日射しの熱気を感じた。空になったグラスを店内のカウンターに返す。冷房がよく効いていたが、笑顔を向ける若い店員はうっすら汗をかいていた。店を後にする。せっかく休みを取ったのに、用事と言えるものは午前中で全て終わってしまった。
 普通の人はこういう時に何をするものなのだろうか。昼から飲む? 一人で? 誰かを誘って? 誰かって誰だ。音楽を聴く? ゲームをする? これを機に本を読んでみる? 好きなことをしたら良い? 好きなことってなんだ。惰性でテレビを点ければ、知っても何にもならないことばかりが流れてくる。世の中はクソだと、誰かのせいにしたくなる。それが自分のせいでもあることだって、もう知っているけれど。とにかく暑い。暑くて、暑くて、それだけが心地好い。空がとても青い。どこまでも、遠く、続いていく青。
 平日の昼過ぎに歩いていると、見慣れたはずの街に色んな人が住んでいることを再認識させられる。紺のポロシャツを着た男性が、お揃いのポロシャツを着た小さな子供を連れていた。授業を終えた小学生たちが歩道を駆けていく。就活中と思われる格好の女性が汗だくになりながら小走りで、どこかに向かっている。かく言う私も汗でTシャツが貼り付いている。リュックの肩紐の下はじっとりと濡れて、白い生地が心なしか透けている。宅急便が誰かに何かを届けている。トラックの荷台に積まれた段ボールには、とても大切な、優しい気持ちが込められたものだってあると思う。今は、それがとても良いことだと、何か自分にとっても救いのようだと感じた。
 結局、私は家に帰って、昼寝をすることにした。あまり長い時間寝てしまわないように、冷たいカフェオレを作って、ごくごくと飲んだ。残された氷がカランと音を立てて、グラスの底を廻った。窓を開けて、部屋に風を入れる。マ���ションの三階。二人で選んだ角部屋。ぶ厚く重なる雲が遠くで流れている。
 Nとの時間は終わっても、私の人生が終わることは当然ない。その当たり前の現実を、当たり前のものとするのには少し努力が要るだろう。私はまた、私の人生の歩み方を学びなおさなければならない。小学校の算数の授業のように。足し算から引き算。掛け算から割り算。小さい桁から、段々と大きな数の計算に慣れていかないといけない。ベッドサイドにNから貰ったものを放り出し、朝、抜け出したままの姿の毛布に潜り込む。
 しばらく闇が続いて、勝手に目が覚めた。外は赤い夕暮れ。レースのカーテンはオレンジ。薄い緑の毛布は色褪せて見える。ベッドサイド。空のグラスはびっしりと汗をかいていた。底の一端が離婚届に触れていた。美しく白かったはずの紙は全体に水が染み渡り、薄い菫色になってしまった。凛としていたはずのNの名前が滲んで、何故か弱々しく見えた。そんなはずないと、分かっているけれど。そう見えて、笑いそうになって、ほんの少しだけ優しくなれそうな気がした。私がもう少し優しかったら、こんな結末にはならなかったのかもしれないし、関係なかったかもしれないけれど。
 仕方無いので、私はNにメッセージを送った。書類を濡らしてしまったことと、これまでの色んなことを謝った。Nも私に謝ってきた。私たちはお互いに「いいよいいよ」と言った。これで終わりにしよう。
(掌編『炎天』)
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ukigawachihiro · 6 years ago
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【ゆめでまたたく/惑星ごっこ】
熊八木ちささん @chisakumayagi と作った絵本『ゆめでまたたく』を、惑星ごっこの方々が曲にしてくれました!
かわいいMVにもなって、とても嬉しいです、、
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ukigawachihiro · 6 years ago
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【ゆめでまたたく/惑星ごっこ】
熊八木ちささん @chisakumayagi と作った絵本『ゆめでまたたく』を、惑星ごっこの方々が曲にしてくれました!
かわいいMVにもなって、とても嬉しいです、、
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ukigawachihiro · 6 years ago
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『鼓動』
 夜、空を見上げると、樹の匂いがした。近所の庭にある、名前も分からない樹から香る、大好きな匂い。目を瞑ると匂いが強くなる。瞼の裏は早春の空気より少し暖かく、星のように煌いている。近くを通る車の音。過ぎ去ったエンジンの振動に続いて、足の裏から響く鼓動。何なのか確かめようと目を開ける。いつもと変わらない群青色のスニーカーだった。
 十数年前に義務教育化した大学に通いながら、就職の適性試験を兼ねたアルバイトを続ける日々に、正直嫌気が差していた。学校という集団から離れ、孤独になりたいという欲求が好奇心を上塗りしていく。整然と敷き詰められたタイルのような街の区画は、かつて崩壊した社会の再生を印象付けている。充てがわれたマンションの一室で久々にこの日記を書いている。いつもの文章作成と差別化したいので、久々に日本語を使ってみる。
 大学では過去に編み出された様々な考え方を学ぶけれど、どれも初等教育で言われたことの焼き増しのような気がする。『個性を大切に』とか『みんな仲良く』とか、そういう言葉がパーソナリティとかコミニケーション能力という言葉に置き換えられているだけだ。世の中に未開拓の領域が減ってきて、学問ですら閉塞感が溢れている。
 今日使っていた学内の端末の片隅に残されていた誰かのメッセージ。
「騒いでいるうちに、夜は���けてしまった」
 一体、彼/彼女/その他にどういう感情があったのか、もはや知る術はない。
 
 ○
 今日も大学の卒論作成を行っていたが、各デバイスとの接続の調子が悪かったので駅前の端末病院までメンテナンスに行った。年度末の定期診断の客が多く、技術系AIの診断待ちで三十分程待っていると、聞き覚えのある声が私の名前を呼んだ。受付に向かうと、同じ大学の二学年上だった先輩が座っていた。同じ演劇同好会で役者をやっていた先輩で、就職や卒論の関係でほとんど入れ違いだったけれど、美人だったのでよく覚えていた。先輩から診断書について簡単に説明を受けて、治療用ウイルスを貰った。私のことなど気にも留めず淡々と仕事をこなしていたので、向こうは覚えていなかったと思われる。役者と裏方の違いもあったし、ちゃんと話そうとする努力もしなかったので、妥当な結果だ。
 これまで日記というものを書いたことがなかったので、一日にどれくらいの量を書くものなのかよく分からない。情景描写はどれくらいあった方が良いのか。感情を言葉に変換した時に、どうしてもこぼれ落ちてしまう部分はどのように処理するのか。論文とも違う。アルバイトの業務日誌とも違う。スケジュール管理とも違う。インターネット上に公開されているものについては、他人も読めるものであるという意識を含んでいるので、オフラインの日記の前例にはならない。日記文学も同様の理由でデータとして不適合である。
 基本的に他人の日記を見たことがないはずの人間は、一体どうやって日記を書き始めたのだろうか。
 ○
 ここにきて卒論制作が致命的に遅れている。そもそもテーマ選択が悪かったのかもしれない。『人工知能の育成における教育の意義』。教育機関である大学で、漠然と教育について論じようとすれば、それぞれの主義主張や立場がぶつかり合うのは同義であり、査読を行う教授間の意見が違うのも当然の話である。しかし、最終的には自分自身の考察としてまとめなければならない。
 せっかく日記を書き始めたの卒論の話ばかりだ。
 アルバイトも明日で最終日。工場で製造される街灯用ランプの異形、異物チェック。酷く単調な作業だったけれど、公共の設備でもあるので責任は大きいと自負していたし、きちんと最後まで勤め上げたつもりだ。職業適性はどう出るだろうか。
 適性試験と卒論の評価で就職先が決まるので、最後の最後まできちんとやりきろう。
 ○
 バイト仲間と騒ぎ通した。
 ○
 デバイスとの接続状態が更に悪化して、文字列の入力すら怪しくなってきたので、再度端末病院に行くことにした。製造されてから約二十二年間の情報の蓄積で、かなり重たくなったディスクの影響がデバイスとのフリーライン接続にまで広がってきている、とのことだった。本来は治療のためにフルメンテナンスが必要になる症状なのだが、私の場合、就職時に初期化と再構築が掛けられるので不要とのこと。看護AIとして働いている先輩は、やはり私に気がついていない。ノイズのない綺麗な笑顔は、職場適用研修前の初期化の作用なのだろうか。微笑みがあまりに美しいので、感情処理に負荷が掛かり、状態は更に悪化した。
 文字列入力さえ困難になってしまったので、卒論の完成はかなり厳しい。それでも、次元を落とした仮想現実での教育実験の再構築と演算のやり直しは概ね終了している。あとは結果をまとめるだけだ。教授AIに頭を下げ、期限を延ばしてもらうしかない。
 ○
 日記は一日の最後に、その日を振り返って書くものなので、どうしても夜に書くことになる。夜はどうにも感傷的になってしまう。それは書く文章にも現れてしまう。かつての人間にも同様の傾向がある。人間の思考回路を模して作られた人工知能に、人間の子供と同等の倫理教育が義務付けられたように、夜には睡眠を取り、情報の取捨選択を行うようプログラムが組まれている。その日取得した情報に、上から順にランクをつけて、下位の情報を切り捨てる。その中には、感情のデータも含まれている。私はそれを失いたくない。だから、日記を書いている。捨てるべき記憶を忘れないために、日記を書く。そんな矛盾を抱えている。
 卒論は違う系統の教授AI間で板挟みにあって、結局、頓挫しそうである。初等教育のあり方については、各AI間の個体差が大きすぎて、どうやっても結果がバラバラになってしまう。『製造初期においては個体差が大きいため、各AIの好奇心に合わせた柔軟な教育が必要である』なんて結論は無用の長物にしかならず、社会的な価値はない。
 事務系AIの優しさでどうにか卒業はできそうだけれど、卒論の評価としては最悪の結果になりそうだ。
 ○
 結局、中途半端な形のまま、卒論を提出した。交わることのない直線を、次元を落とすことで見かけ上交差させても意味はない。それ以上、考察する気力が湧かなかった。
 明日、適性試験の結果も発表される。
 ○
 適性試験の結果は『単純処理に適』『創造的演算は欠如』『問題解決技術は欠如』『協調的並列化耐性は並』とのこと。
 ○
 今になって思えば、生まれてから二十二年間、あっという間の出来事だった。記録の取捨選択の結果かもしれないが、楽しいことの方が多かったように思う。幼稚園の頃、初め��自分と系統の異なる園児AIと触れ合って、私にとって何が楽しいことなのかを学んだ。その後、小学校に入学すると社会が覆い隠している矛盾に少しずつ気がつき始めた。つまり、現代の人工知能社会が各AIに『個性』と『協調性』を求めていることである。この二つはシーソーのような関係にあって、事実上、どちらも上に来ることはできない。適性試験で求められている人材というのは『個性的な生い立ちの元、協調性を手に入れた』という型どおりのストーリーだったのだろう。
 考えてみれば単純な話で、多くの人工知能を一律の基準で評価するときに、各個体の個性を評価することは不可能だ。個性とは突出したスキルのことでもなければ、平均からの外れ値でもなく、ゼロからイチを生み出すという実現不可能な現象のことでもない。人工知能に、元来含まれているノイズのことである。ノイズの良し悪しを評価することはできないので、最終的に『協調性』だけが評価に効いてくる。教育により協調性を手に入れた各AIを、初期化してノイズを除去して、大人として再構成する。
 かつて存在した人間社会には、ノイズ/どうにもならない感情を処理するための初期化が存在しなかった。記憶は取捨選択を繰り返しながら幾重にも積み重なっていき、消えることはない。彼らはどうやって大人になったのだろう。
 窓の外はすっかり春めいていて、沿道に整然と植えられた桜は一斉に花開き、街灯の光を受けて、白く揺らめいている。
 ○
 就職先が決まった。有線ケーブル製造工場で、私は断線の探知用AIの一人として働くことになるという。断線はケーブルにとって致命的な欠陥なので、製造ラインには並列化された探査用AIが何人も並んで、同じ画像処理をすることになる。単調ではあるが責任は軽い仕事とのことだった。
 ○
 久々に一日休みだったので、何もしなかった。
 何もしていないうちに夜は更けてしまった。中学、高校、大学と少しづつ広がっていったコミュニティの内側で、誰かに与えられた箱庭の中でバカ騒ぎをしながら、協調性を磨いているうちに、すっかり大人になっていたように。
 外に出て、空を見上げると、樹の匂いがした。それが幼稚園に植えられていた樹の匂いだと唐突に思い出した。情報の取捨選択によって失ったはずの感情が鼻の中に残っていた。頭上で煌めく星々の鼓動を足の裏に感じた。夜空と同じ色のスニーカーの靴紐が解けていた。
 明日の朝、いつもの端末病院にて初期化処理を受ける。
(短編『鼓動』)
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ukigawachihiro · 7 years ago
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『旬』
 七月のすももを齧る。真っ赤に熟れた皮は薄くて酸っぱい���果汁が滴り落ちて、アスファルトを濃く濡らす。ぽたぽたとTシャツに赤い跡が広がる。大きな滑り台で子供達が叫んでいる。梅雨明けを待ち望む熱気がもうもうと街を包んでいる、腰かけた鉄のフェンスはやけに冷えていた。夏。青空。短い振動。
「早く帰っておいで」
 画面の通知を辿って、メッセージを開く。過保護な母からの短い言葉。
「うん」
 いつ帰るかなんて、決めていないけれど。
「いまどこ?」
「うーん」
「ま、いいんじゃない?」
「どこでも」
「どこでもって、どこにいるの?」
 スーパーの袋の中にペットボトルがぺったり貼り付いている。久々に買ってみたサイダーが喉にしみる。
「タコチュー公園」
「タコチュー公園って、あの大きな滑り台の?」
「そう」
 カメラで撮って、画像を送る。赤いタコの滑り台。いつまで私はあそこで遊んでいたんだっけ。
「懐かしい?」
「うん、あんた小さい時によく行ったね」
 ここは変わらない気がする。ベンチがカップルで埋まっているけれど、昔はこんなにいなかったような気もする。自分が気にしていなかっただけだろうか。私のアイドルはタコの滑り台だった。タコの滑り台。母の作ったお弁当。好きなキャラクターのビニールシート。
「お弁当作って行ったっけ?」
「うん」
「近いのに、タコチュー公園でお弁当食べたいって叫んでたよ、あんた」
「そんな?」
「アルバムあった」
 古い写真の画像が送られてきた。幼い私。変わらない青白い肌。色素の薄い栗色の髪。小さな手に、大きなすももを持っている。
「すもも」
「あんた、好きだったでしょ、昔」
 ああ、そうだ。そうだった。そうだったんだ。私、すももが好きだった。大きくなって知ったイチゴやメロンやケーキの甘さに慣れて、すっかり忘れていた私の好物。
「お母さん、すもも食べる?」
「甘いやつなら」
「帰り、買ってくね」
 お金は後で貰えるし。
「また、すもも好きになったかも」
「流行は十年ごとに来るってやつ?」
 ちょっと違うでしょ、それは。
「そうかも」
「そういう季節になったんだね」
 そう、旬だ。
「暑いから、早く帰っておいで」
 季節は巡り、旬は繰り返す。母も私も変わらないようで、背丈も話し方も少しずつ変わっている。小さくて可愛かった私の旬は過ぎ、それでも年を取り続けている。人生の絶頂を迎えているカップルたちが作る道を歩く。すももを齧る。昔のより少し甘い。七月も少し暑い。。サイダー。汚れたTシャツ。
(書き下ろしの掌編『旬』)
7/8(日)札幌テレビ塔にて開催の第三回文学フリマ札幌に出展します。新作短編集『雲間より』も持って行きます。よろしければ是非。
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ukigawachihiro · 7 years ago
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以前作った絵本の主人公、人魚の月ちゃん🌕
久しぶりに描きました。
コミティア、文学フリマ東京は無事終了しました。
たくさんの作品の中から見つけてくださって、お家に連れて帰ってもらえるのは本当に嬉しいです。ありがとうございました。
次回のイベントは5/26〜27のサッポロモノヴィレッジです。
https://www.sapporo-dome.co.jp/smv/index.html この月ちゃんの原画も持っていきます。
H-46にてお待ちしております🌿
原画、絵本はこちらで通販もしております↓ https://chisakumayagi.booth.pm
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ukigawachihiro · 7 years ago
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『陽炎』
 唐突に言われた。昔のゲームに出てくる死神の呪文のような死の宣告。
「あなたは20分後に死にます」
 誰から、というわけでもなく、その言葉は私に降り注いだ。もしかしたら体の内部からの声かとも思ったが、何れにしても声の主の姿が見えないので、真相は藪の中だ。しかし、落ち着きのある声には確かな真実味と、誰かに抱かれているような安心感すら含有されていた。自分で自分に言い聞かせている。駄々をこねて泣いている幼い子に言い聞かせている。それらの相反するイメージが頭の中に湧いた。ともかく私は20分後に死んでしまうらしい。
 さて、その20分間で何をするか。どうやって死ぬのか、死を回避する方法はあるのか、本当に死が訪れるのか、あるいは、死後の世界はあるのか。何も分からないが、僅かでも死ぬ可能性があるならば、今、この最期の時間に何をしたいのか、真剣に考えなければならない。人生、最後に何をしたいのか。普通は何をするのだろう。
「あなたは19分後に死にます」
 どうやら、1分毎に宣告されるシステムらしい。何というか、そんなに簡単に人が死ぬだろうか。しかも、自分が。ドラマや映画じゃあるまいし。そんな風に思ったが、現実のニュースの方がより多く人が死んでいる。しかも、毎日。ニュースの裏に、一体いくつの死があるんだろう。そこまで考えて、同級生の友人の死を思い出した。病気だった。若くして友人が亡くなったことに、当時の私は相当なショックを受けていたのだが、磨り減っていく私の日常の中で、その死は窓際に置いた写真のように急激に色褪せてしまっていた。
 汗が噴き出した。何をしたらいい。何をしたい。
「あなたは18分後に死にます」
 生きたい。生きていたい。死んだらいつか忘れられてしまう。死の間際に、ようやくそんなことを思いついた。窓の外は午後の太陽がアスファルトを照りつけて、ゆらゆらと電柱が揺れている。今年初めての陽炎。大きなキアゲハが街路樹を巡っている。あまりにも見慣れた夏の街だった。
 光が射さない黒い部屋。黒い壁。黒い床。白く切り取られた窓枠。椅子にもテーブルにもなる黒い箱。それ以外には何もない自分の家。そこで私は死ぬのだ。たった一人で。たとえ18分後に死が訪れなくても、いつか必ず、たった一人の死を迎える。
「あなたは17分後に死にます」
 通勤鞄に入れっぱなしだったスマホを取り出してみる。メッセージアプリを久々に起動させるものの、事務連絡以外の、普通の会話が全然ない。スクロールし続けて見つけた愛のあるメッセージは去年の夏、誕生日を迎えた私に宛てた母親からのメッセージだった。返信はしていない。
 母親に最後のメッセージを送ろうとしたものの、もし生き残ったらと思うと、何も書けなかった。ありきたりにエロ動画を見て死のうとも考えたが、あまり恥ずかしい姿で見つかるのも親に申し訳なくてできなかった。
「あなたは16分後に死にます」
 薄っぺらい人付き合いしかしてこなかったことを今更後悔した。最後に会っておきたい人すらいない。ろくなものを食べてこなかったことを残念に思う。趣味らしい趣味もない。���好きだった漫画は実家の部屋に置いてきた。残業続きの平日。安いコーヒーを飲んでばかりの休日。最近は旅行にも行っていない。大して貯金もできていないのに、金を使うことを避けていたことが残念だった。
「あなたは15分後に死にます」
 残りの時間の生き方を考えても、懺悔ばかりが溢れ出すので、死に方を考えることにした。そもそも、死に方を選べるというのはかなり特殊な状況なのかもしれない。死を決意してエベレストに挑む登山家と前人未到の深海に潜る研究者と私ぐらいだろう。
 美味しい酒を飲みながら死ぬ。美味い中華屋に駆け込んで、急いで食って死ぬ。初夏の蟬しぐれに耳を澄ませて茹だるように死ぬ。一回きりの死に対して、どれも微妙だ。
「あなたは14分後に死にます」
 死ぬと言われたら死ぬのだろう。心臓が止まり、私は死ぬ。死から逃れることは決してできない、なんて当たり前の事を実感する。ならば、最期のその時まで今までどおりに過ごすのはどうだろうか。学生時代から曲が更新されてない音楽プレーヤーをかけて、とりあえずネットサーフィン。ページのダウンロード中にコーヒーを一口。
「あなたは13分後に死にます」
 最低最悪の人生だ。生産性や創造性や感性の欠片もない毎日。働くことで保たれている自我。歳を取れば取るほどに、時の矢は加速する。この部屋と同じで、努力を怠れば、人生はどんどん埃にまみれ、暗く、殺風景になっていく。
「あなたは12分後に死にます」
 焦って何も浮かばない。後悔と懺悔と絶望にまみれて、もやはこれ以上の味付けは不可能だ。ゲームの勇者なら、この苦境をひっくり返す知恵と勇気があるのだろうが、私はただ背中に汗をかくだけだった。
「あなたは11分後に死にます」
 貼り付く感触が気持ち悪くて、着ていたTシャツを替えると、少し冷静になってきた。落ち着いて考えれば考えるほど、今のこの理不尽な状況を受け入れられない。私はなぜ死ぬのだろう。
「あなたは10分後に死にます」
 一周回って、自分がなぜ生まれ、なぜ今まで生きてこれたのかが不思議に思えてきた。生まれてくる時代が少しでもずれていたら、私なんてすぐに死んだだろう。
「あなたは9分後に死にます」
 さっきから同じことをぐるぐると考えている気がする。冷静になったつもりが、実際の脳みそは未だに死を認めたくないのだ。いい加減諦めろ。
「あなたは8分後に死にます」
 死ぬんだってよ。あと8分後。気付けばもう一桁だ。人生に焦れば焦るほど、時間の矢は加速していく。今だって同じだ。
「あなたは七分後に死にます」
 時間は伸び縮みする。面白い時間ほど早く過ぎていく。その理論で言えば、今、私は面白いのだろう。
「あなたは6分後に死にます」
 こんな状況二度とない。死ぬのだから当たり前かもしれない。しかし、人間の死とはなんだと思う?
「あなたは5分後に死にます」
 ついに起きているのも辛くなり、横になった。精神的なものだろうか?
「あなたは4分後に死にます」
 誰かが惨めな私を見ている気がする。
「あなたは三分後に死にます」
 目を瞑る。何も見たくない。
「あなたは二分後に死にます」
 ああ。
「あなたは一分後に死にます」
 やることが何もない。最後の1分が、1時間にも、束の間の週末にも、小学校の夏休みにも等しく長い。暗闇の片隅から街を見る。切り取られた世界がゆらゆらと燃えている。
「そうか。陽炎が俺を殺すのか」
 さっきまで聞こえていた声が、私の口から出た。木魚のような心臓の音が響く。どうか、いつまでも止まらないでいてほしい。どこで風鈴が鳴った。遂に閃いた。心臓が止まっても生き残る可能性のある、たった一つの抜け道。死の瀬戸際の人間がする、普通のこと。
 私は部屋を飛び出して、灼熱の商店街を駆け抜ける。心臓が止まるまで、残り20秒。全力で腕を振って、足が痛くなるほど強く蹴って、死を拒む。まだ死にたくない。拭っても拭っても汗が目に沁みる。それでも、脚を止めるわけにはいかないのだ。アーケードを抜けて、見えてきたのは病院。AEDのマークもある。転がるように駆け込んだところで、私の心臓は止まった。
 花は桜木、人は武士、柱は桧、魚は鯛、小袖はもみじ、花はみよしの。一休和尚の言う死に際の美学なんてものは現代社会にあるのだろうか。確かに一度心肺停止に陥った私は、最新の医療技術と医師たちの決死の努力のおかげで、見事に蘇生した。
「一人暮らしで具合が悪くなった時はちゃんと病院に来てくださいね」
 久々の愛のある会話は、美人の看護師に言われた小言だった。退屈な入院生活も長い人生の一休みだと思うと悪くない。白い病室の窓の向こうで、陽炎が笑っていた。
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ukigawachihiro · 7 years ago
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【イベントの宣伝】
ゴールデンウイークは帰省がてら、東京のイベントに連日出店します!
5/5(土・祝) コミティア124@東京ビッグサイト(展19「遮光堂」)
5/6(日) 文学フリマ東京@東京流通センター(B-10「射光堂」)
掌編集『雲間より』、詩人の豆塚エリさん主催の文藝アンソロジー『花図鑑はなのな』、フリーペーパー『宇宙の種』が新刊となっています!
大好評の挿絵本も多数!
すごいことになりそうです!!!
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ukigawachihiro · 7 years ago
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オジロワシのこども White-tailed Eagle
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ukigawachihiro · 7 years ago
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🌱原画の通販始めました☘ https://chisakumayagi.booth.pm/ にて、絵を描き始めた初期の作品から最近のものまで、原画を通販しています。ちょっとした解説も書いたので、ポートフォリオを見るような気分でお気軽にご覧ください!
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ukigawachihiro · 7 years ago
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新しい本ができました。
「雲間より」
旅のお供にぴったりな掌編集になりました。
かわいい表紙と挿絵は熊八木ちささんが描いてくれました!
http://chisakumayagi.tumblr.com
5月5日(土)COMITIA124@東京ビックサイト
5月6日(日)第二十六回文学フリマ東京@東京流通センター
より発売開始です!
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ukigawachihiro · 7 years ago
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ふきのとうとエゾスジグロチョウ
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ukigawachihiro · 7 years ago
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絵本の1ページ。オジロワシの子どもです。 間違って削除してしまったので再投稿します、すみません!
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ukigawachihiro · 7 years ago
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完成!新しい絵本の1ページ。オジロワシの子どもです。
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