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先日、とても悲しい知らせを受け取った。 私の著作『ハリスツイードとアランセーター』で取材させて頂いたアランセーター伝説の編み手、モーリン・ニ・ドゥンネルさんが今年の1月に亡くなっていたことを、イニシマン・ニッティング社のターラック・デ・ブラカン氏が教えてくれたのだ。 アイルランドの西端にあるアラン諸島のひとつ、イニシマン島に住んでいたモーリンさんは1934年生まれ。6歳から家計を助けるためにニッティングを習い始めた。アランセーターを島の産業として世界に売り出したゴル��ェイ・ベイ・プロダクツ社は1960年代後半に飛躍的に業績を拡大し、モーリンさんは1995年まで同社のために働き、1981年にはローマ教皇にそのセーターが献上されるなど、その技術と創造性は高く評価され、数々の賞も受賞していた。ご健在であれば今年で86歳のはずだった。 アランセーターの伝説の謎を解き明かす取材の旅に出た私達は、アラン諸島随一の編み手であるモーリンさんをどうしても取材する必要があった。ブラカン氏の協力があって、モーリンさんに取材することができたことを今でも幸運に思う。編集者の沼尻賢治さんとフォトグラファーの阿部雄介さん、万来舎の方々、多くの方々の協力があって、本としてこの世にあることに改めて感謝している。 実際にお会いしたモーリンさんのまさに名人級のニットを編む速さと正確さ、温かな笑顔を今でも鮮明に覚えている。そして島で過ごした時間のことも。 ブラカン氏は週末にこの本を読み返して、私に知らせなければと思い立ったのだという。この本にこうして彼女の功績が遺されていることを喜んでくれた。 今、オンラインで人々は繋がることができるようになり、わざわざ現地に赴いたり、人に会うことの意味が問われている。情報収集はオンライン上で誰もが可能となり、情報は均一化され、誰が書いても同じものとなる。そうした時代に私が書き続ける意味というのはどこに在るのだろうかと自問自答する。 しかし、もし私があの島に行き、ひとりひとりの編み手に会い、インタビューし、撮影しなかったとしたら、過酷な人生の末にたどり着いた、島に住む人々のあの穏やかな微笑みをみることができただろうか。モーリンさんがニットを編む時に宿る、あの目の輝きを知ることができただろうか。私たちの本の中に、今もモーリンさんは生きていて、ひとが手でものを作る美しさを読者に語りかけている。 時代に逆行しているのかもしれないが、やはり私は取材に行かなければならない。その地に降り立ち、空気を吸い、人々の言葉を聞いて、人生の一片を読者に伝える。それが私の仕事だと思う。 モーリンさんの魂が安らかに天国にありますように。#harristweedandaransweater #ireland #aransweater #beauty #craft #craftsmanship @inis_meain #yoshimihasegawa #travelphotography #aranislands https://www.instagram.com/p/B_1wMdVp6Hd/?igshid=zralulacfclb
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