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tkatsumi06j · 7 years ago
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She Broke Japan’s Silence on Rape
彼女は日本のレイプに対する沈黙を破った
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[写真] 伊藤詩織さんは警察に、当時TBSワシントン支局長で、安倍晋三首相の伝記作家である、山口敬之氏によりレイプされたと訴えた。(ジェレミー・スーテイラットが本紙のために撮影)
(東京 29日)日本の最も著名なテレビジャーナリストに数えられる人物が伊藤詩織さんを飲みに誘ったのは、春先の金曜の晩のことだった。東京の通信社でのインターンが終了するからと、その人物の局で新たなインターンをやる機会を探っていた。[訳注: 探していたのはプロデューサー枠の仕事]
二人は、東京都心にあるバーでは焼き鳥とビールだけで済ませ、その後夕食を共にした。のちに伊藤さんが警察で供述したことによると、彼女が最後に記憶しているのは、気分が悪くなってトイレに行かせて貰い、そこで意識を失ったことだった。
伊藤さんは、その夜が終わる頃にはその男のホテルの部屋に連れていかれ、彼女が無意識である間に男にレイプされたと主張している。
当時TBSワシントン支局長で [のちの] 安倍晋三首相の伝記作家であるジャーナリストの山口敬之氏は、起訴内容を否��。二か月にわたる警察の捜査の結果、検察は事件を不起訴処分とした。
すると伊藤さんは、日本の女性のほぼ誰もがけっして行わないことを実行に移した。声を上げたのである。
5月に行った記者会見と10月に出版された著書で伊藤さんは、山口氏が意識を失っている彼女を抱え上げ、ホテルのロビーを通り抜けた様子がわかる防犯カメラの映像を警察が入手したと述べた。また警察はさらに、彼女が気を失っていたことを証言したタクシー運転手を特定して事情聴取を行っていた。伊藤さんによると、警察の捜査官らは山口氏を逮捕すると彼女に告げていたのだが、突如、取りやめとなったのだという。
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[写真] 伊藤さんは自身の経験を綴った手記を出版した。写真提供、文芸春秋株式会社。
他の国ならば、彼女の訴えは騒動を引き起こしていただろう。だが、ここ日本では、わずかに耳目を集めたにすぎなかった。
米国が政界、芸能、産業、報道の各界における性的加害行為の噴出に直面しているのとは対照的に、伊藤さんの身に起きたことは、日本において性暴力がいかに忌避される話題であるかを如実に物語っている。
統計上、日本は比較的低い性暴力の発生率を誇る。14年度に内閣府が実施した世論調査では、日本で生涯を通じてレイプを経験したことがあると答えた女性が15人に1人であるのに対して、米国でレイプされたことがあると答えた女性は5人に1人であった。[訳注: 但し、米国の統計は2010年度のもの]
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(参考)内閣府男女共同参画局、14年度調査の結果報告書 『男女間における暴力に関する調査』報告書(平成26年度)より
しかし研究者らは、日本女性は西洋の女性に比べて「同意なき性行為」を「レイプ」と表現することがはるかに少ないと言う。また日本の対レイプ法には同意に関する記載がなく、「デートレイプ」は外来の概念で、日本では性暴力に対する教育も最低限しかされていない。
むしろ、本来ならば性教育を行うための文化的に重要なチャンネルである筈の漫画コミックやポルノという素材において、 性的欲求を満たす延長としてレイプが描かれることがよくある。
警察や裁判所はレイプを狭義に捉える傾向があり、一般的には、物理的な暴力が確認でき、自衛の努力 [抵抗] が行われたことの痕跡がある場合にのみ訴追を行い、 加害者・被害者のいずれかが飲酒していた場合は告訴を思い留まらせようとする。
先月、横浜の地方検察局は、女子学生の一人に酒を飲ませた後で性的暴行を加えた容疑で書類送検された6人の大学生を不起訴処分にした。
レイプ犯が起訴され有罪判決を受けても、日本では懲役刑すら課せられないこともある。法務省の統計によると、およそ10��に1件が執行猶予付きの判決で済まされるという。
たとえば今年、東京近郊の千葉大学で二人の学生が女学生を輪姦した事件では、被告の一部は懲役刑で収監されたが、他の共犯者��は執行猶予付きの判決となった。昨年秋、別の輪姦事件で有罪判決を受けた東京大学の学生にも執行猶予付きの判決が下された。
「活動家たちが「ノーはノー」というキャンペーンを立ち上げたのはごく最近のことです」
東京の上智大学で政治学を教える三浦まり教授はこう語った。
「だから日本の男性は、同意に対する意識が浸透していない現状にあぐらをかけるのだと思います」
内閣府の世論調査で「レイプを経験したことがある」と答えた女性のうち、その3分の2以上が友人や家族にさえも、けっして「誰にも言わなかった」と答え、「警察に相談した」と答えたのは4%をわずかに超える程度だった。対照的に、米司法統計局がまとめたところによると、米国ではレイプ経験の約3分の1が警察に報告されている。
「女性に対する偏見は根深く、深刻です。性犯罪による被害はまったく真剣に受け止められていません」
早稲田大学でジェンダーと法を教える谷田川知恵教授はこう語る。
山口氏に対する民事訴訟を起こした伊藤さん(28)は、日本で性暴力に悩む女性たちが直面する数々の課題に光を当てるために、本紙に自身の事件の詳細を語ることを承諾してくれた。
「私がこのことを語らなければ、性暴力をめぐる酷い状況はけっして変わることはないだろうと感じたのです」
伊藤さんは語った。
山口氏(51)も、取材に応じることを承諾した。レイプを行ったことは否定し、次のように語った。
「性的暴行は行われていない。あの夜、犯罪行為は行われなかった」
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[写真] シェラトン都ホテルの外に停車するタクシーの車両。警察は、伊藤さんと山口氏をホテルに送り届けたが、女性は電車の駅に行くことを要求していたと証言するタクシーの運転手を事情聴取した。本紙のためにジェレミー・スーテイラットが撮影。
‘Not a Chance’ 「あなたが勝つ事はあり得ない」
2015年4月3日に再会する以前、伊藤さんは山口氏に二度会ったことがある。ニューヨークでジャーナリズムを学んでいる間のことだ。
伊藤さんによれば、彼女が東京で再び山口氏に連絡をとると、山口氏は自身の支局で仕事を見つけてあげられるかもしれないと答えたという。山口氏は彼女を飲みに誘い、その後で流行りの恵比寿界隈の寿司屋『鮨の喜一』に食事に連れて行った。
伊藤さんが驚いたのは、ビールと酒を飲んだ後の食事も二人きりだったことだった。彼女は途中で気分が悪くなりトイレに行かせてもらったのだが、トイレの給水タンクに頭をもたれかけながら、そのまま意識を失ってしまったという。
意識を取り戻した時には、ホテルの部屋のベッドの上で山口氏が自分に覆いかぶさっていたという。彼女は裸で、痛みを感じていた。
日本の法律では、"quasi-rape"(準強姦罪)を当該女性の「心神喪失若しくは抗拒不能」に乗じて当該女性と「姦淫すること」と定義している。米国では州によって法律には差異があるが、同じ犯罪を第二級の強姦罪もしくは性的暴行罪と定義している州もある。(参考)旧刑法第百七十八条2「女子の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、姦淫した者は、前条の例による」
警察はのちに、伊藤さんと山口氏を乗せ、山口氏の宿泊先である『シェラトン都ホテル東京』で二人を降ろしたタクシーの運転手を特定した。
運転手の証言記録によれば、伊藤さんは、最初は意識があり、地下鉄の駅に連れ行ってほしいと運転手に懇願していたが、山口氏にホテルに向かうよう指示されたという。
運転手は、山口氏がまだ二人で仕事の話をしなければいけないと話したことを記憶しており、また山口氏が「何もしないいから」という��うなことを言っていたと証言している。
運転手によると、ホテルに着いた頃には伊藤さんは5分ほどの間「静か」になっていて、その時に彼女が後部座席に嘔吐していたことに気付いたのだという。
記録によると、運転手は次のように証言している。
「男は彼女をドアの方向に動かそうとしたんですけど、彼女は動きませんでした。そこで男は、先に降りてカバンを地面に置いてから、女性の脇の下に肩を通して、車から彼女を引き出そうとしました。彼女は1人で歩けそうには見えませんでした」
警察が入手したホテルの防犯カメラに映る伊藤さんも、意識がないように見える。本紙が入手した動画の写真からは、午後11時20分頃に、山口氏が彼女を抱えながらロビーを通り抜けていく様子がうかがえる。
伊藤さんによれば、彼女が意識を取り戻したのは午前5時頃だったという。彼女は山口氏の下からなんとか這い出して、トイレに駆け込んだ。トイレから出てくると、「彼は私をベッドに押し付けようとしました。やはり男性なので、力がかなり強く、押し付けられてしまったので私は彼を怒鳴りつけました」
いったい何が起こったのか、男は避妊具を使ったのか、伊藤さんは答を要求した。男は彼女に落ち着くようにいい、モーニングアフターピルを買うことを提案した。
彼女はこれに応じることなく、服を着て、ホテルから逃げ出した。
伊藤さんは薬物を飲まされたと確信しているが、この疑惑を証明する証拠は何もない。
山口氏は、彼女がただ飲み過ぎただけだ、と主張する。
「居酒屋で彼女は相当なペースで飲んでいたので、私は実際こう聞いたんですよ。『大丈夫かい?』と。でも彼女は「私はけっこうお酒強いんです。それに喉が渇いているので」と答えました」
「彼女も子どもではないので、自分をしっかりコントロールさえしていれば、何も起こらなかったでしょう」
山口氏はこう述べ、彼女をホテルに連れて行ったのは彼女が家に帰れないかもしれないと思ったからで、ワシントンの仕事の締め切りに間に合わないから急いで部屋に戻らなければならなかったからだと語った。
山口氏は、伊藤さんを部屋に連れ込んだのは「不適切だったかもしれない」と認めつつ、「彼女を駅やホテルのロビーに置き去りにすることも不適切だと思った」と語った。
山口氏はその後で何が起きたかについては弁護士の助言により語ることを控えた。伊藤さんの民事訴訟に提出された書類によると、山口氏は伊藤さんの衣服を洗い流すために彼女の服を脱がせ、ホテルの部屋のベッドの一つに寝かせたという。山口氏は、さらにその後、伊藤さんが目を覚ましてベッドの脇にひざまずき、彼に謝罪したことを付け加えた。
提出書類では、伊藤さんにベッドに戻るように伝えたが、自身で彼女のベッドに腰掛��、性行為を始めた、とある。彼女に意識はあったが、抵抗も拒絶もしなかったという。
ところが、その夜以降に伊藤さんとの間で交わされたメールで山口氏が語った内容は、これとは多少異なる。
彼女が自分で彼のベッドに潜り込んできたと書いているのだ。
「だから、意識不明のあなたに私が勝手に行為に及んだというのは全く事実と違います」
2015年4月18日付けのメールにはこう書いてあった。
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(参考)伊藤詩織著『Black Box』88頁における実際の記載。
「私もそこそこ酔っていたところへ、あなたのような素敵な女性が半裸でベッドに入ってきて、そういうことになってしまった。お互いに反省することろはある」[※著書『Black Box』記載の原文ママ ]
別のメールで山口氏は、レイプの訴えを否定し、互いに弁護士に相談するべきだと提案する。
「あなたが準強姦の主張しても(原文ママ)、あなたが勝つ事はありません」
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(参考)伊藤詩織著『Black Box』112-113頁における実際の記載。
本紙が一連のメールについて尋ねたところ、山口氏は、伊藤さんとのやりとりの全記録が、自分の立場を利用して彼女を誘う「意図はなかった」ことを証明するだろうと答えた。
「彼女に迷惑をかけられているのは私のほうです」
山口氏はそう付け加えた。
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[写真] 「私は何も違法なことはしていない」「性的暴行は行われていない。あの夜、犯罪行為は行われなかった」と山口氏は語った。本紙のためにジェレミー・スーテイラットが撮影。
Shame and Hesitation 恥とためらい
伊藤さんはホテルを出た後、急いで自宅に帰り体を洗い流したという。
彼女はいま、そのことを後悔している。
「警察に行くべきでした」
彼女のような「ためらい」は典型的といえる。
「性的暴行の被害に遭った日本女性の多くは『私のせいに違いない』と自分を責めます」
お茶の水女子大学でジェンダー法学を研究する戒能民江名誉教授はこう語る。
性暴力救援センター・東京(SARC東京)でレイプ・カウンセラーを務める田辺久子氏は、ホットラインに電話してくる女性に警察に行くように勧めても、警察が信じる筈がないと拒まられることがよくあるという。
「彼女たちは、自分が間違ったことをしたと指摘されると思っているんです」
伊藤さんも、自らを恥じ、口を閉ざしつづけることを考えた。男社会の日本のメディア業界で成功するためには、このような扱いでも耐え忍ばなければらないのかと、悩みつづけた。しかし、事件の5日後、彼女は警察へ行くことを決心した。
「真実と向き合わなければ、私はジャーナリストとしてやっていけないと思ったんです」
伊藤さんは当時を振り返った。
伊藤さんが相談した警官らは当初、彼女が泣かずに話を伝えたため彼女を疑い、被害を届け出ることを思い留まらせようとしたという。ある警官は、山口氏の業界での地位を考えると、事件の追及は困難であろうという見方すら示した。
しかし伊藤さんがホテルの防犯カメラの映像を確認してほしいと訴えつづけた結果、警察は最終的に彼女の話を真剣に受け止めたのだという。
二か月にわたる捜査の末、フリーランスとしてベルリンでプロジェクトに参画していた伊藤さんに捜査主任から連絡が入った。捜査官は彼女に、タクシー運転手の証言やホテルの防犯カメラ映像、そして彼女の下着(ブラジャー)に付着したDNAが検出されたことから、山口氏を逮捕する準備を進めていることを伝えた。
捜査官は、2015年6月8日にワシントン発東京行きの便で空港 [訳注: 成田空港] に到着する山口氏を逮捕する計画なので、取り調べへの協力のために日本に帰国するよう伊藤さんに要請したという。
しかし当日になると、その捜査官が再び電話をかけてきた。空港内にいると言う捜査官は、たったいま、上から逮捕を行わないよう指示を受けたと伊藤さんに伝えた。
「私は彼に尋ねました。『どうしてそんなことが可能なのですか?』と。でも、彼は質問に答えることができませんでした」
伊藤さんはその捜査官を守りたいと、捜査官の名を明かすことを拒んだ。
警視庁の広報官は、山口氏を逮捕する計画がとん挫したことについては言及を控え、次のようにコメントした。
「われわれは法令に基づき必要な調査を行い、すべての文書と証拠を東京地方検察庁に送付しました」
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[写真] 恵比寿界隈に佇む「シェラトン都ホテル東京」。本紙のためにジェレミー・スーテイラットが撮影。
‘I Have to Be Strong’ 「私が強くあり続けなければ」
最新の2016年度の政府統計によると、警察は日本国内989件のレイプ事件が起きていることを確認している。女性10万人当たりおよそ1.5件の割合で事件が生じているということになる。これと比較して、米連邦捜査局(FBI)の統計によると、米国内では11万4730件のレイプ事件が発生しており、男女含めた全住人の10万人当たりおよそ41件の割合で事件が生じていた。
研究者らは、日米の犯罪率の差は、実際の犯罪率ではなく、被害者による過小な報告や日本の警察・検察の態度を反映したものだ主張する。
日本の国会は今夏、この110年間で初めて、性犯罪処罰法の改正を受け入れ、 レイプ [訳注: 新罪名「強制性交等罪」] の定義を拡大した。口淫と肛門性交が加えられ、潜在的な被害者 [訳注: 客体] に男性が含められた。また最も軽い処罰の刑期を増やした。ただし、同意については依然として明記せず、執行猶予判決を下す余地も残した。
また、最近事件が起きたばかりであるにも関わらず、大学構内での性暴力に関する啓蒙はほとんど行われていない。千葉大学の新入生を対象とした講義では、最近起きたばかりの輪姦事件を『不幸なケース』と教えるのみで、「犯罪を行ってはならない」と漠然と促すに留まっている。
伊藤さんの事件では、果たして山口氏が首相との繋がりによって特別に待遇されたのかという点についても疑問が残る。
伊藤さんが事件のことを公に訴えた後、ほどなくして日本人ジャーナリストの田中敦(あつし)氏が警視庁の最高幹部に直撃した。
幹部の名は中村格(いたる)。安倍首相の官房長官を務める菅義偉官房長官の元秘書官で、捜査官らが山口氏を逮捕する準備を進めていたところ、それを差し止めたことを中村氏自ら誌面で認めた。『週刊新潮』にその記事を書いたのが、田中氏だった。
伊藤さんの訴えは山口氏のTBSでの立場には影響しなかった。ただ、山口氏は昨年、問題となる記事を発表したことで局から辞職に追い込まれた。現在はフリーランスのジャーナリストとして日本で活動している。
10月、伊藤さんは自身の経験を綴った手記を出版した。だが、日本の主要メディアはあまり関心を寄せていない。
伊藤さんの事件を調査する数少ないジャーナリストの一人である望月衣塑子(いそこ)氏は、自身も職場の報道フロアの同僚男性らの抵抗に遭っているという。彼らは、伊藤氏がただちに病院に赴かなかったことを理由に事態を軽視していた。
「メディアは性的暴行に関することをほとんど報道しようとしません」
望月氏は言う。
だからこそ、声を上げたのだと、伊藤さんは言う。
「私はまだ強くあり続けなければならないのだと、そう感じます。そして、なぜこれを容認できないか、語り続けなければならないのだと思います」
執筆協力:上乃久子
本記事の紙面版は2017年12月30日付けのA1面ニューヨーク版に「彼女は訴えた。彼女の母国はこれを黙殺した」と題して記載されている。
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tkatsumi06j · 7 years ago
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She has dared to be the first Japan's #MeToo
日本で初の #MeToo となることを選んだ女性
December 22 , 2017
2017年12月22日
ダーゲンス・ニュヘテル
By Hanna Aqvillin 原著:ハンナ・アクヴィリン
英訳: Ulrika Ehrensvärd 和訳: @tkatsumi06j
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00.30 Shiori Ito accused a high-profile media director of raping her - for that she had to pay a high price.
00:30 著名なメディア幹部をレイプで訴えた伊藤詩織さんは、高い代償を払うことになった。
Shiori Ito put everything at stake when she accused a high-profile TV newsman of raping her. She was hated and stood alone in a country where nobody wants to talk about sex crimes.
彼女をレイプしたとして著名なTVジャーナリストを訴えたとき、伊藤詩織さんはすべてを投げ打つ覚悟で臨んでいた。だが彼女は誰もが性犯罪に口を噤む国で、忌み嫌われ、孤立した。
When Shiori Ito was ten years-old, her mother took her to Summer Land, an outdoor swimming pool complex. She was playing happily in the new bikini she had been nagging about since the day before, when a man suddenly came up behind her in the water.
詩織さんは10歳の時、母親に屋外遊泳場の『東京サマーランド』に連れて行ってもらったことがある。前から欲しがっていた新しいビキニを着ながらプールで楽しんでいたら、突然、彼女の背後の水の中に男が現れた。
"His hands touched every part of my body," she said.  
「男の手が私の体のあらゆるところをまさぐったんです」
詩織さんは言う。
She hurried back to the adults to tell what had happened. Their reaction left a scar in her heart that remains till today, when her mother's friend explained that this happened because she had such a sweet bikini.
大人たちの元へと駆け戻った彼女は、彼らに何が起きたのかを伝えようとした。その時の大人たちの反応は、いまも詩織さんのトラウマとなっている。母親の友人の女性はこう言い放った。
「かわいいビキニなんか着ているからよ」
[参考記事] 
Japan Times(2017/7/13付)
Japan Focus (2017/8.1付)
"I should have known better."
「わかりきっていたことでした」
The same sense of powerlessness and fear came back to her when Shiori, now 28 years old, held a press conference for Japanese media this year in May 2017.
28歳になった詩織さんが今年5月に日本の記者団に向けて会見を行ったとき、彼女には当時の無力感と恐怖がよみがえったという。
With a background of having studied in the United States,  Shiori is a freelance journalist who has written for Reuters, Al-Jazira and The Economist, among others. She stands out like an odd bird in Japanese society where most neither speak English or identify with the outspoken culture of the West.
アメリカに留学した経験のある詩織さんは、『ロイター』『アル・ジャジーラ』『エコノミスト』等に寄稿するフリーランスのジャーナリストだ。ほとんどの人が英語を話さず、また欧米のように公に自分の意見を言わない日本社会では、彼女はまるで場違いな鳥のように際立つ存在だ。
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Shiori Ito has become the symbol of the # metoo movement in Japan.  Photo: Lars Lindqvist
伊藤詩織さんは日本の #MeToo ムーヴメントの象徴的な存在となった。 (��真:ラーズ・リンドクイスト)
- "I've reported from the FARC's guerilla in Colombia's jungle and cocaine trafficking scene from Mexico, but it is here in Japan - the supposedly world's safest country - which I've felt most afraid," she said at the beginning of her press conference.
「私は反政府ゲリラ組織FARCが根城とするコロンビアのジャングルからも、メキシコの麻薬取引の現場からもレポートしてきたことがありますが、もっとも恐怖を感じたのは、世界でもっとも安全といわれるこの日本でした」
会見の冒頭で詩織さんはこう語り出した。
Ref: https://tkatsumi06j.tumblr.com/post/166495534736/translation-why-shiori-decided-to-publish-her
In front of flashing cameras, she accused the bureau chief of one of Japan's biggest television channels for raping her in a hotel room. He is a well-known name in the media industry and had published two books on Prime Minister Shinzo Abe. The last thing she remembered was that they had dinner at a sushi restaurant, then everything blacked out.
カメラのフラッシュを焚かれまくるなか、詩織さんは日本でも最大級のテレビ局の支局長を、彼女をホテルの一室でレイプしたとして告発した。その男は安倍首相に関する著作を2冊も発行している、メディア業界では有名な人物だった。詩織さんが最後に覚えていたのは、寿司店でこの男と食事をしたことだった。その後、彼女の記憶は途絶えた。
- At 5:00 am, after I regained my consciousness, I found myself being naked in a hotel bed and a man was inside me against my will, she told the astonished journalists -  no Japanese woman had previously talked so openly about a rape case.
「午前5時頃、意識を取り戻すと私は裸でホテルのベッドに寝かされており、私の意志に反して男が私の中に入ってきていました」
詩織さんはどよめく記者団を前にこう語った。これほど公に、かつオープンに、レイプ事件について語る日本人女性はこれまでいなかった。
Shiori had summoned the country's media hoping to break the taboo and to question why her rape case was dropped, according to her sources, after "orders from  above".
彼女が全国のメディアを呼んだのは、タブーを破ること、そしてなぜ彼女のレイプ事件が、彼女の言う「上からの指示」により、逮捕執行停止となったのか、その疑問を唱えることにあった。
After the press conference there were only a few in the media that supported her story or wrote about Shiori's case. Instead, the media focused about the public discussing her attire - that she had not clipped the top two buttons on her shirt - than what she actually said at the press conference.
会見後、彼女に同情的なメディアや彼女の事件を扱ったメディアはごくわずかだった。むしろメディアは、詩織さんがなぜブラウスの上の2つのボタンを止めなかったのかをいぶしがる大衆について取り上げ、彼女が会見で述べたことは報じなかった。
"A journalist colleague had advised me to wear my suit to the press conference, but I refused. I was tired of being told how to behave like a victim, says Shiori.  
詩織さんは語る。
「ジャーナリストの知人が、会見にはスーツを着るようにとアドバイスしてきました。でも私は拒否しました。被害者のように振る舞うことにうんざりしていたのです」
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Shiori Ito eats lunch in central Tokyo.  Photo: Lars Lindqvist
東京の都心の飲食店で昼食をとる詩織さん。 (写真:ラーズ・リンドクイスト)
I met Shiori Ito for the first time in August this year [2017], two months after the press conference. She was sitting at the kitchen table in her studio apartment in central Tokyo and from time to time she looks through the slit between the long curtains, down towards the rushing traffic.
私が初めて詩織さんにあったのは今年 [2017年] の8月。会見の2か月後のことだった。 彼女は都心にある彼女のアパートのキッチンテーブルに腰かけながら、たびたび長いカーテンの隙間から、混雑している道路の様子をみやった。
She was too scared to go outside.
彼女は外に出るのを怖がっていた。
After the press conference, her Inbox were filled with death threats, unknown numbers had called her phone and lies about her privacy had been posted online along with pictures of her family and friends.
会見後、彼女のメールには、犯罪予告メールが溢れ、彼女の電話に非通知の番号から謎の電話がかってきたり、家族や友人の写真を含む彼女のプライベートに関する出鱈目な情報がネット上にばら撒かれた。
A woman criticized her for failing to protect herself. Speculations were abound suspecting she had a political agenda to remove the right-leaning Prime Minister Shinzo Abe from power, because a Japanese woman would never talk openly about something so shameful. Sometime,  isolating herself from the rest of the world was so difficult that she thought about taking her life.
ある女性は、彼女が自分自身を守れなかったのが悪いと、詩織さんを責めたてた。右寄りの安倍晋三首相の政権を倒すための政治的な意向があるのではないかという憶測も流れた。日本女性がこのような恥ずべきことを公に話すことがないと。世界から自分を切り離すことが苦しすぎて、なにかも終わらせようと考えた時もあった。
"I was called a whore and prostitute and they said I should die. It was a horrible time," she says.
「私は売女で、売春婦で、死ぬべきだと言われたこともありました。おぞましい日々でした」
詩織さんは当時を振り返る。
"I had to do everything I can before getting help from anyone. I was so dejected that I could not get myself out of bed."
「なにをするにしても、まず自分で行って、それから初めて助けを求めることができました。あまりにも落胆して、ベッドから抜け出せないこともありました」
Friends and family advised her not to speak publicly.
友人や家族は、公に話すことをやめることを彼女に勧めた。
- I think they wanted to protect me, but they also want to protect themselves. They fear of losing their jobs or getting cast out of society because of me ... which from Western eyes is completely absurd, Shiori told me while her eyes were filled with tears.
「私を守ろうしてくれてはいたのですが、自分たちのことも守りたかったのだと思います。私のために仕事を失ったり、社会からつまはじきにされることを恐れていたから…欧米の考え方からすると、異常でしかないですよね」
彼女は瞳に涙をためながらそう語った。
"It hurt to see that people close to me were being hurt badly because of me."
「でも、私のために、私の大切な人たちが酷く傷づくのを見るのは辛かった」
- Police investigation was inadequate due to political pressure. But even health care, justice, and the social safety net were unhelpful. 
「政治的な圧力により、警察の捜査は不十分でした。しかしそれ以外にも、医療も、司法も、そして社会のセーフティネットまでもが、まったく助けにならなかったのです」
I had to do everything I can before getting help from anyone, says Shiori, recollecting on the days after she woke up in the hotel room.
「なにをするにしても、まず自分で行って、それから初めて助けを求めることができました」
あのホテルの一室で目を覚ましてからの数日間を振り返りながら、詩織さんはこう語った。
She first visited a gynecologist who could not help. Then she called SARC, Tokyo's only help center for the rape, to find out which hospital she could go to because only 14 of Japan's 47 prefectures - in urban areas - have hospitals equipped with rape kits to take samples and secure evidence.
詩織さんはまず産婦人科を訪れたが、役に立たなかった。都内唯一のレイプ救援センターである『SARC』にも電話し、どの病院に行けばよいか相談した。証拠の確保に必要な「レイプキット」を備えた病院は、47都道府県中14の県(しかも都会)にしか存在しなかったからだ。
The staff woman who responded to her call  said that Shiori had to make reservations for evaluation before they could give her any information.
電話に出た担当の女性職員は、役に立つ情報を提供するには予約して審査を受ける必要があるとしか言わなかった。
"I was so dejected that I could not get myself out of bed," said Shiori.
「あまりに落胆して、ベッドから抜け出ることすらできませんでした」
詩織さんは語る。
Five days later , she decided to go to the local Takanawa police station, and there she met with police officers who did not want to accept her filing damages because it is difficult to investigate.
その五日後、彼女は最寄の高輪警察署を訪れることを決意する。そこで彼女は警官らに、捜査・立件するのは難しいからと被害届の提出を拒まれる。
Shiori, who had hoped that the job dinner with a senior manager in the TV industry could help her put a foot into the industry, suddenly saw her dreams crumble.
詩織さんは、TV業界の支局長クラスと仕事に関する食事をすれば、業界に入る一歩となるかもしれない、という淡い望みが突如崩れ去るのを感じていた。
"The police officer said that I could forget about my career being a journalist after this, because nobody would like to hire me. They said my life will be over. But ... I couldn't keep being silent," she said.
「その警官は私にこう言ったんです」
”この後は誰も雇ってくれなくなるから、ジャーナリストになる道は諦めたほうがいいと。人生が終わってしまうよ”と。
「でも私は黙っていられませんでした」
彼女は話を続けた。
(2)へつづく
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tkatsumi06j · 7 years ago
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She has dared to be the first Japan’s #MeToo
日本で初の #MeToo となることを選んだ女性(2)
December 22 , 2017
2017年12月22日
ダーゲンス・ニュヘテル
By Hanna Aqvillin 原著:ハンナ・アクヴィリン
英訳: Ulrika Ehrensvärd 和訳: @tkatsumi06j
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A SOCIETY OF TABOO
タブーが蔓延る社会
It is unusual to report rape in Japan, the stigma makes women silence and only 4 percent exposed to sexual violence choose to report, according to a government survey from 2014.
日本では通常レイプが通報されることは稀で、汚名というスティグマを恐れる女性は沈黙を選ぶ。2014年の政府調査によると、性暴力にさらされた経験のある者のわずか4%しか通報していない。
" Many believe that rape only happens on films. This is worsened by the fact that media does not even use the terminology of 'rape', but calls it 'only' as a molesting. I love my country but this has to stop, says Shiori.
「多くの人は、レイプは影像の中の出来事でしかないと思っています��さらに悪いことに、メディアは”レイプ [強姦] ”という用語を使わずに、単に”性的暴行”と表現しています。私は自分の国を愛していますが、これは止めなければなりません」
詩織さんは語る。
When the victim decides to go public, it is common that they are subjected to harsh blame from the society. The phenomenon goes under the term "second rape" [in Japan]. Shiori talks about the grueling interrogation by the police , about questions that were repeated over and over again: Was she a virgin? What kind of man does she like? What was her love life like?
[性暴力の] 被害者が公表に臨むと、往々にして社会から酷く責め立てられる。この現象は「セカンド・レイプ」と呼ばれている。詩織さんは警察の執拗な聴取の仕方について語った。何度も繰り返し質問されたこと。処女であるか。どんな男性が好みか。どんなセックスライフを送ってきたかなど。
And then, in front of a crowd of police officers, she needed to perform a walkthrough with the aid of a body-sized doll in body size to show how the rape had happened.  Getting a female police officer to be present is virtually impossible in Japan, where only 8 percent of the police force are women.
次に詩織さんは、多くの警官の前で、実物サイズの人形を使って、どのようにレイプされたかを再現しなければならなかった。女性の警官に立ち会いを求めることは不可能に近かった。日本の警察では女性は全体の8%しかいないからだ。
"They said I did not look sad enough to have been raped. I should cry more, act like a victim," she said.
「彼らは、レイプされた被害者のようには見えない。もっと悲しまなきゃ。もっと涙を見せなきゃ。被害者らしく振る舞って、と私に言いました」
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Shiori Ito says that there are special places, rooms built as subway cars, where men go and pay to grope the girls. Shiori Ito has tried to interview the men who go there, but it was difficult.  Photo: Lars Lindqvist
詩織さんは、地下鉄に模して作られた部屋が置かれた特殊な店が存在するという。男性客はそこで金を払って、[スタッフの] 女性たちの体をまさぐる。そういう場所を訪れる男性客に取材を試みたが応じてもらうのは困難だった。(写真:ラーズ・リンドクイスト)
When she eventually convinced a police investigator to watch the surveillance camera from the hotel, her case accelerated and more evidence was collected.
詩織さんがようやく警察の捜査官を説得してホテルの防犯カメラの記録映像を見せると、捜査が加速し、より多くの証拠が収集された。
The video record showed how she was brought into the hotel by the TV manager the that night. Even the taxi driver who drove them from the restaurant to the TV manager's hotel room testified that she behaved in a drunk and confused way and repeatedly asked to be released at a subway station. But the TV manager had insisted she would remain in the taxi. Even DNA proofs were secured from her underwear.
記録映像には、TVジャーナリストの男があの夜、どのようにして彼女をホテルに連れ込んだかが記録されていた。二人をレストランから男の泊まるホテルへと運んだタクシーの運転手も、詩織さんが泥酔して混乱した様子だったことや、地下鉄の駅で彼女を降ろすように何度も懇願されたことを証言している。しかし男は執拗に彼女にタクシーに残るよう説得した。彼女の下着からはDNA証拠も検出された。
A few weeks after notification , Shiori was informed that a warrant had been issued by prosecutors and that they would interrogate him. But only hours before the arrest would take place, the case was dropped without warning. A senior police chief, who previously worked for the prime minister's chief of staff, told the Japanese media that it was he who ordered to drop the case because there was insufficient evidence. Even though he has not previously been involved in her case, or usually works with that type of police procedure.
通知を受けた数週間後、詩織さんのもとに、検察により逮捕状が発行され、聴取が行われるとの連絡が届いた。だが逮捕が行われるほんの数時間前、なんの事前の通告もなく逮捕取りやめとなった。現首相の官房長官の下で働いたことのある警察上層部の高官は、日本のメディアに対し、証拠不十分のため捜査を取りやめることを指示したのは自分であると自ら伝えた。しかしこの高官は、これまでその捜査に関わっておらず、またそうした警察の手続にも関わることのない人間であった。
The police inspector who had collected evidence of her case was transferred to another department. Shiori and her lawyer then appealed to the police's decision to drop the case to an independent justice committee. But even there it was decided that the investigation will not be raised again. Something that did not surprise her lawyer, as only one percent of all cases are reopened.
詩織さんの事件で捜査を行い証拠を集めた捜査官は別の部署に異動された。詩織さんは弁護士とともに、警察が捜査を取りやめた件について独立した司法委員会 [訳注: 検察審査会] に不服申立てを行った。しかしそこでも捜査の再開は行わないことが決定した。詩織さんの弁護士はとくに驚かなかった。捜査が再開される割合は全体の一割でしかないからだ。
- The police refuse to say why they dismissed the arrest warrant. Everything happens behind closed doors without transparency.
警察はなぜ逮捕状が執行停止になったのか答えようとしません。すべては密室の中で、透明性のない中で進められました。
Shiori will never forget the disappointment she felt afterwards: now once and for all she thought that it was proved the society was not on the victim's side.
詩織さんはその時に感じた失望感を忘れない。社会が被害者の側に立たないということが完全に示されたのだと。
- If what the law says does not matter and the police have such a great power that they can suppress an arrest warrant without holding anyone accountable, I wonder what sort of society we live in?
「法律にどう書かれているかに関係なく、誰も責任を問われることなく警察が逮捕状を制止できるようならば、私たちの住む社会って一体どういう社会なんでしょうか」
Shiori felt like the society has ignored her, as if someone had placed a gag on her. She was once again the ten-year-old girl in the swimming pool looking for protection.
詩織さんはまるで猿ぐつわを口にはめられたように、社会に無視された気持ちになった。彼女はまたもや、10歳の少女の頃の、あの誰かに守ってもらいたいと思っている心境に陥っていた。
But perhaps it was her background, the years she spent in the United States, which gave her courage to continue the fight for justice. She wondered how far people with power were willing to go to silence her.
それでも彼女が勇気を持って正義を求めて闘うことができたのは、アメリカで過ごした月日があったからかもしれない。力ある者がどこまで彼女を沈黙させられるのか、彼女は疑問に思ったのである。
(3)へつづく
全記事・モーメント収録の総合モーメント(随時更新)
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tkatsumi06j · 7 years ago
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The Asia-Pacific Journal: Japan Focus
August 1, 2017 Volume 15 | Issue 15 | Number3
アジア太平洋ジャーナル「ジャパン・フォーカス」
2017年8月1日 第15集|第15号|No. 3
Murder of the Soul - Shiori and Rape in Japan | 「魂の殺人」──詩織さん事件と日本におけるレイプ事件の実情
2017年7月26日
著:デビッド・マクニール
よみがえるトラウマ The traumatic childhood experience
When Shiori was 10, her mother took her to Tokyo Summerland, an indoor pool. Wearing a new swimsuit, she splashed happily in the water until she was sexually assaulted. “A man came from behind and touched me on every part of my body,” she recalls, crying at the memory. Shaking and terrified, she told the grownups but their response was bewildering. “My friend’s mother said it was because I was wearing a bikini.”
屋内にプールがある「東京サマーランド」に彼女の母親が連れていってくれたとき,詩織さんは10歳だった。新品の水着を着ながら水の中で楽しく遊んでいると,とつぜん,男から性的暴行を受けた。
「男の人が私の後ろから,体のあらゆるところをまさぐったんです」
詩織さんは泣きながらその時のことを語った。
恐怖に怯えながら周りに大人に訴えたが,その反応は思いがけないものだった。
「友だちの母親が,それはあなたがビキニを着てるからよと言ったんです」
The emotions forever associated with that incident – powerlessness, fear, humiliation – flared again after a press conference in June this year, where Shiori, (she wants her last name concealed) now 28, told fellow reporters she had been raped. She had hoped to trigger a debate about the treatment of victims in Japan. Instead, she says, the response was a flood of hate mail. She was a ‘prostitute’ who had brought it on herself. Among her sins, it seems, was unbuttoning the top of her blouse during the press conference.
そのときに彼女の心に永遠に刻みつけられた無力感,恐怖,そして屈辱の感情が,あの会見を行った後で,6月に一気に噴き出した。
28歳になった詩織さん──姓は伏せたいと本人が希望──は今年の5月末,会見を開き,同僚の記者たちの前で自分がレイプされたことを告白した。彼女が期待していたのは性暴力被害者の待遇について改善を求める議論が高まることだった。だが,彼女のもとに洪水のように寄せられたのは,大量のヘイトメールだったと,詩織さんは言う。その多くは彼女を「自分から誘いをかけた”売春婦”」として捉えていた。記者会見でブラウスの一番の上のボタンを外していたことも,彼女の『罪深さ』として受け止められたようだった。
あの日に起きたこと What happened on that day two years ago
Shiori says she awoke in an upscale Tokyo hotel in the small hours of Saturday April 4th, 2015 to find a man lying on top of her, inside her. She pushed him off and fled to the bathroom. Groggy and in pain, she tried to remember where she was. She’d had a night out with the man in Ebisu during which she believes her alcoholic drink was spiked. Her last memory was using the bathroom in the sushi restaurant. 
2015年4月9日の土曜の深夜,詩織さんが都内の高級ホテルの一室で目を覚ましたとき,男は彼女の上に跨がり,彼女の中に入っていた。詩織さんは男をはねのけ,トイレに逃げ込んだ。足元がおぼつかず,痛みをおぼえながら,彼女はなぜそこにいるのかを思いだそうとした。
その夜,詩織さんはその男と恵比寿で外食をしていた。その時に酒に薬物を入れられたのだと彼女は確信している。詩織さんの最後の記憶は寿司店のトイレを使用したところで止まっている。
In the bathroom she realized she was naked and had to return for her clothes. “Everywhere was hurting,” she says. When she went back to the bedroom, she says the man tried to rape her again. “I had a really rough fight with him and I was hurt. He said: ‘I have your underwear as a souvenir.’ I didn’t know how to curse in Japanese so in English, I said, ‘What the fuck are you doing?’ And he hadn’t worn a condom. I asked: ‘What did you do to me?’ He said, I’m sorry, let’s go and get the morning-after pill at the pharmacy. Then he starts saying, ‘Oh, I like you. I’m going to take you to the States. You always look so strong but now you look almost like a kid.’ He completely changed his tone and I was so confused. All I could think was, ‘I want to go to a safe place and wash myself.’”
トイレの中で詩織さんは自分が裸であることに気付き,服を取りに戻ろうとした。「体のあちこちが痛みました」と彼女は言う。
部屋に戻ると,男は再び彼女をレイプしようとしたと,詩織さんは言う。
「激しく抵抗しましたが,痛めつけられました」
男は,「君の下着,記念にもらっておくよ」と言ったという。
「日本語でどう罵ればいいのかわからなかったので,英語でこう言いました。”What the fuck are you doing!(何てことすんだこの野郎!)”と。男がコンドームをしていなかったのでこう訊きました。”私に何をしたの?!”と。すると男はこう言いました。”ごめん。アフターピル (morning-after pill) を後で薬局に買いに行こう」と,そしてこんなことを言い始めたのです。”ぼくは君,好きだなあ。アメリカに連れて行ってあげるよ。君はいつも強そうにしているけど,今はまるで子どもみたいだね”と。彼のトーンがこれまでとまるで違ったので,私は混乱しました。とにかくそのとき考えていたのは,”早くどこか安全な所に行って自分を洗い流したい”ということでした」
警察や周囲の反応
How doctors, nurses, the police, and friends responded
Later, alone at her apartment, she called a rape helpline. The woman on the other end said she would have to come into the office for counseling. Shiori did not have the strength to get up from her bed. A doctor prescribed the morning-after pill, barely looking up from his notes or bothering to ask why she needed it. Friends told her to get on with her life; a nurse said all traces of the drug had already left her body and she would never be able to prove it had been there. It was five days before her mind cleared and she went to the Harajuku Police Station.
その後,ひとり自分のマンションに戻った詩織さんはすぐにレイプのホットラインに電話したが,応答した女性は,カウンセリングするから事務所にきてほしいと伝えたという。だが彼女はベッドから起き上がることもできない状態だった。後で婦人科医を訪ねたときに「アフターピル」 を処方してくれたが,医者はカルテを見つめるばかりでロクに彼女の方を見ることも,なぜピルが必要なのかを尋ねることもしなかったという。看護師は,薬物の痕跡はすべて体から消え去っており,それが体内にあったことを証明する術はないと言った。友人たちは「[諦めて] 前に進むしかないよ」と言ったという。
詩織さんの頭がはっきりして,原宿警察署に向かったのはそのさらに5日後だった。
“At the reception desk, I asked to talk to a female cop. I talked to her about what had happened. It was really hard. After two hours she said, ‘Well, I’m from the traffic department, you need to speak to an investigator.’ She retold her entire story to a male police officer who said she was at the wrong place and needed to file a complaint at the Takanawa Police Station, closer to where the assault occurred. And so, she again found herself explaining the assault to another male officer, who paused sympathetically before telling her to forget about what had occurred. “He said, ‘These things happen a lot and there is no way to prove it. Your life will be ruined.’”
「警察署の受付で,私は女性の警察官に話したいと伝え,その婦人警官に何が起きたかを話しました。とても辛い経験でした。2時間も話すと,その婦人警官はこう言いました。”私は交通課の担当なので,捜査官に話してほしい”と」
詩織さんは男性の警察官に最初からすべてを話した。すると,その警察官は管轄が違うといって, 彼女が暴行された現場により近い 高輪警察署に訴えを出してくれと言う。詩織さんは高輪��察署で再び,男性の警察官にいちから,暴行の件をすべて話す羽目に陥った。
その男性警官は親身になって話を聞いてくれたのだが,最後にはこう言って詩織さんにすべてを忘れなさいと伝えたという。
「その警官はこう言ったんです。”こういうことはひじょうによく起きるんです。でも証明する術がない。人生が台無しになりますよ”と」
日本のレイプ被害対応の実情
How rape victims survive in today’s Japan
One of the first things many Japanese women do while still shivering and bleeding at home is to read online about the experience of others – and deciding it’s just not worth pursuing. Even when the police and prosecutors can be persuaded to take up a rape case, the odds against conviction are high. In many cases, they will try to broker a financial deal between the rapist and victim rather than risk airing their testimony in court. In the most recent high-profile example, actor Takahata Yuta apologized for raping a hotel maid last year but escaped trial because Maebashi District Public Prosecutors Office in Gunma Prefecture waived prosecution. In 2015, the Tokyo High Court acquitted a man of attacking a 15-year-old girl because it said she hadn’t fought hard enough.
[被害を受けた直後に] 自宅で血を流し,震えながら,日本の被害女性の多くが最初にすることのひとつが,ネット上で他者の経験を読み比べることだという。そして,最終的には追究する価値はないと諦める。仮に警察や検察がレイプの立件にまで至ったとしても,有罪判決に至るまでのハードルは依然高い。多くの場合,警察や検察はレイピストと被害者の間で何らかの金銭的和解が成立するように導き,法廷で証言がなされるリスクを避けようとする。
著名人が関わった最近のケースでは,昨年,ホテルのメイドをレイプしたことを謝罪した高畑裕太容疑者のケースが挙げられる。群馬県の前橋地方検察庁は [容疑者と被害者の間に示談が成立したため] 高畠容疑者を不起訴とし,高畠は公判を免れた。前年の2015年には,15歳の少女に暴行を加えた男を, 少女が「十分に抵抗しなかった」ことを理由に 無罪とした事件もあった。
Still, Shiori persisted. A sympathetic officer in the Takanawa Police Station was persuaded to watch footage at the Sheraton Miyako Hotel, which proved at the very least that she had not been a willing participant. A taxt driver later confirmed that she pleaded to be dropped off at a train station. The plea was ignored. Video footage from the hotel lobby would later show her being carried through the hotel lobby. The taxi driver testified to several unusual details, including Shiori’s verbal pleas, and the fact that she had vomited undigested sushi on the taxi floor. The hotel bellman recalled the man struggling for three minutes to get the unconscious Shiori out of the taxi. A DNA sample was collected from her underwear. She endured a humiliating ritual in the careful marshaling of evidence: reenacting the rape using something resembling a crash-test dummy as male officers looked on, taking photographs.
しかし,詩織さんは食い下がった。高輪警察署で親身になってくれた警官に,暴行の現場となった「シェラトン都ホテル東京」の監視カメラの映像を見るよう説得したのである。その映像は,少なくとも,詩織さんが任意でホテルに連いて来たのではないということを証明していた。
タクシーの運転手が後に語ったところでは,詩織さんは最寄りの電車の駅で降ろしてくれと懇願していたという。だが,その願いは無視された。ホテルのロビーにある監視カメラの映像は,詩織さんがホテルのロビーを担がれて連れられていく様を映し出していた。
またタクシーの運転手は,詩織さんが口に出して訴えていたことや,車内で消化されていない寿司を吐き出したことなど,状況の異常さを伝えるいくつかの詳細を明らかにした。 ホテルのベルボーイは,意識を失っている詩織さんをタクシーから出すのに,連れ込んだ男が3分ほど奮闘していたことを証言している。
詩織さんの下着からはDNAが採取され,その検証作業中に詩織さんは一連の屈辱的な”儀式”に付き合わされることになる。男性の警察官らが見下ろしながら写真を撮影するなか,自動車事故で使うダミー人形のようなものを相手に,レイプの状況を再現させられたのである。
Rape statistics in Japan are among the lowest in the developed world. Victims of sexual assault in Japan are even less likely to tell the police than elsewhere; fewer then 5% of Japanese women officially report rape. Less than a third even talk about it to friends or relatives, according to a 2014 Cabinet Office survey. Campaigners say the actual numbers of rapes and sexual assault far exceed the roughly 1,300 cases sent to prosecutors per year.
日本におけるレイプの件数は,先進国の中でも最も低い水準にある。同時に,日本で性暴力の被害に遭う者は,他のどの先進国よりも警察に訴える可能性が低い。公式な統計によれば,レイプ被害を通報する日本女性は5%に満たないという。2014年に内閣府が行った調査によると,家族・親戚���友人に被害の事実を話す女性は三分の一に満たないという。活動家たちは, レイプや性暴力被害の実際の件数は,検察に送致される年間1,300件といわれる件数をはるかに上回ると訴える。
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The vast discretionary powers of Japanese prosecutors mean that conviction rates are high - if the decision is made to proceed with a criminal rape case. “The highest hurdles to getting justice…occur in the pre-trial stages,” according to a paper by Harriet Gray, School of East Asian Studies, University of Sheffield. Of particular concern, says Yamamoto Jun, a campaigner and herself a victim of sexual assault, are the actions of the police.
日本の検察が有する広範な裁量権は,検察側がレイプ犯罪を起訴するという決定にさえ至れば,有罪になる確率が高いことを意味している。
「正義がなされることへの最も高い障害は……公判前の段階にある」
“The highest hurdles to getting justice in a rape case, then, occur in the pre-trial stages, which is why this paper focuses on the early stages of the legal systems relating to rape and sexual assault.”(※記事には全文は未記載)
英シェフィールド大学東アジア学科に在席 (当時) したハリエット・グレイ(Harriet Gray)博士は,論文でこう述べている。 [現在はスウェーデンのヨーテボリ大学でポスドク研究員を務める]
とくに懸念されるのが警察の対応,と言うのは,自身が性暴力の被害者でもある活動家の山本��さん。
Victims often describe their first visit to a police station as traumatic. There are few officers trained to deal with victims. In many cases, the reaction of beat cops is to treat women victims as suspicious. Potentially recoverable DNA evidence is routinely neglected. Shiori’s experience of having to announce her assault to a room full of uniformed men is typical, says Yamamoto, as is the advice to forget what occurred. Many cases conclude with “suspended prosecution,” meaning guilt is assumed but the perpetrator is not charged, often in return for financial compensation.
被害者の多くは,初めて警察に通報しに行く経験を辛いものとして記憶している。被害者に対応できるよう十分に訓練された警官は少なく,多くの場合,街を巡回するお巡りさんたちは,女の被害者を疑いの目で見るのだという。採取可能な筈のDNA証拠等は,ほぼいつも無視される。
部屋一杯の男性警官たちの前で性暴力の被害を訴えるという詩織さんがした経験や,「忘れなさい」という助言を受けるのは典型的な対応であると山本さんは言う。多くの事案は,金銭による示談成立に基づく「起訴猶予処分」,すなわち容疑は認められるが起訴はしないという処分に終わると。
Shiori’s decision to badger the police into investigating her assault, then to publicize it, is very rare. She says she too might never have said a word but for her budding career as a journalist. If she couldn’t face the truth of what had happened to her, how could she continue? Whatever her attacker did to her, she says, it could never be worse than the psychological damage of running from herself.
詩織さんは,性暴力被害の捜査を行うよう警察に疑問を浴びせ続け,そしてこれを公表するというひじょうに希な決断を行った。詩織さん自身,何も言わずに終えていたかもしれないという。 しかし芽を出したばかりのジャーナリストとして,この事実と向き合わずに,どうしてこの道を続けられるのか,という思いがあった。加害者が彼女に何をしようとも,自分から逃げるという精神的痛みに勝るものではなかったと。
逮捕執行停止にまつわる疑惑
Suspicions surrounding the retracting of arrest warrant
Two months after the assault, the arrest warrant was issued for quasi-rape (where consent is impossible) against Yamaguchi Noriyuki, then the Bureau Chief of Tokyo Broadcasting System (TBS)’s Washington Bureau. On June 8, 2015, investigators waited to serve the warrant to Yamaguchi at Narita Airport. Instead, Shiori says, one of the investigators called her and said he had been ordered to let Yamaguchi go. “Even now, I have vivid recollections of this call,” The investigator said: “He just passed right in front of me, but I received orders from above not to make the arrest. I’m going to have to leave the investigation.” The case was transferred to the Tokyo Metropolitan Police. In July last year, it was dropped by prosecutors at the Tokyo District Court. Shiori was offered a ‘settlement’ from Yamaguchi via her lawyer and the police. “I couldn’t believe it,” she says.
暴行のあった2か月後,同意が不可能な状況での準強姦であるとが認められ,当時TBSワシントン支局長であった山口敬之に対する逮捕状が発行された。2015年6月8日,捜査官たちは成田空港で山口を逮捕すべく待機していた。しかし詩織さんによると,捜査官の一人が彼女に電話をかけてきて,山口の逮捕を見送るよう指示されたことを伝えてきたという。
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山口敬之氏(※オリジナルの記事には記載なし)
「いまでもあの電話のことははっきりと覚えています」と詩織さん。「その捜査官はこう言ったのです。”山口は私の目の前を通り過ぎるところでした。しかし上から逮捕するなという指示がありました。私は捜査から外れます”と。」
捜査権は警視庁に移り,昨年7月,東京地方検察庁は本件を不起訴とした。詩織さんには,弁護士と警察を介した山口から「和解金」の申し入れがあった。
「信じられませんでした」と詩織さんは言う。
That startling denouement, which the police deny (though they won’t discuss it) had the whiff of political conspiracy. Yamaguchi is the author of two soft-focus books about Abe Shinzo, the prime minister, and the men reportedly became close. He had won praise from Abe supporters for reporting on allegations that the South Korean military had operated military brothels across South Vietnam during the Vietnam War, which they saw as a riposte in the long diplomatic battle over Japan’s wartime system of brothels in Korea. Now, this star reporter of the nationalist right was himself accused of sexual assault.
この政治的な策動の匂いが漂う衝撃的な幕引きについて,警察側は否定するが反論もしていない。山口は安倍晋三首相のことを持ち上げる書籍を2つ出版しており,二人は近しい仲にあるという。  山口は,ベトナム戦争時に韓国軍が南ベトナムで軍の慰安所を運営していた疑惑を報道し安倍の支持層から称賛を持って迎えられた。彼らからすれば,日本が戦時中に朝鮮で運営した軍の慰安所に関する長きにわたる外交戦で相手に事実を突き返す決定打になると思ったのだろう。そうして国粋右翼らのスター記者となった山口が,今では性暴力を行った疑��をかけられているのである。
報じようとしない日本のマスコミ
The uninterested media
The story was largely ignored by the mainstream media but taken up in Japan’s weekly tabloid magazines. On May 18, 2017, Shukan Shincho published the rape allegations in detail, including comments from Nakamura Itaru, the senior detective who had cancelled Yamaguchi’s arrest overruling the Takenawa Police Station. The article carried a photo of Yamaguchi and described him as ‘bettari’ (tight with) Abe. The claims spread rapidly online, fuelling criticisms that the Abe administration was remote and corrupt; that it protected its cronies and smeared its enemies.
日本の主要マスコミがほとんど無視するなか,タブロイド誌(週刊誌)はこの事件を報じた。2017年5月18日付の『週刊新潮』は,レイプ疑惑を詳細に報じた。この報道には,高輪警察書の権限を越えて,発行された山口への逮捕状を取り消した中村格刑事部長のコメントも含まれていた。記事には山口の写真が掲載されており,安倍と「ベッタリ」であると書かれていた。疑惑はネット上で急速に広がり,安倍政権は身内は助けるが敵は誹謗中傷するとして,人心を疎かにし腐敗しているという批判が吹き上がった。
As the Diet prepared a rare revision to the legal provisions for rape crimes in May this year, Shiori decided to go public. Before her press conference at the Ministry of Justice, friends told her to wear a business suit, and to shed a few tears or she ‘wouldn’t be believed.’ “That made me very sad,” she said. “If that’s the way people see me what chance have I got? This is how I look; I wear jeans and T-shirts. Someone said, ‘button your shirt’ but I said ‘no.’ There were 50 journalists in the room, with cameras and lights…I couldn’t breathe.”
今年5月,国会でレイプ犯罪に対する処罰法の改正準備が進められるなか,詩織さんは事件を公にすることを決断する。法務省で行った記者会見の直前,詩織さんの友人たちは,ビジネス・スーツを着て,「でないと信じてくれないから」と,涙も少し見せるようにとアドバイスしたという。
「これはとても悲しかったです」と詩織さんは振り返る。
「そんな風に見られてしまうのならば,私に何ができるのというのか。ジーンズやTシャツしか着ない。それが私なのだから。 ある人は,"ボタンを最後まで閉めて"と言いましたが,私は”イヤ”と言いました。50人からのジャーナリストが部屋に詰めかけていて,カメラがこっちを向いていて,フラッシュを焚かれるのだから,息が出来なかったんです」
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Shiori (right) 詩織さん(右)
“Becoming a rape victim myself made me realize just how small our voices are, and how difficult it is to have our voices heard in society,” she told the reporters. “I know there are countless women who have gone through the same experience, leaving them hurt and crushed. I know that, both in the past and today, many of these women have given up. How many media have published this story? When I saw Mr. Yamaguchi repeatedly broadcasting his side of the story through his powerful connections, I couldn’t breathe. Where is the freedom of speech in this country? What are the laws and media trying to protect, and from whom?”
「自分自身がレイプの被害者となることで,私たち [被害者] の声がどれほどか細く,そして社会になかなか伝わらないものであるかを思い知らされました」
詩織さんはこう,記者団に語った。 [※訳注: 実際の日本語での発言ではなくあくまで英文を日本語に翻訳しています]
 「同じ経験をして, 深く傷つき,打ちのめされてきた女性は数え切れないほどいるでしょう。そして過去から現在にわたって諦めてきた女性たちも。いったいどれだけのメディアがこれらの出来事を報道してきたのでしょうか。山口さんが強力なコネを通して自分側のストーリーを展開していたとき,私は息ができない思いをしました。言論の自由はどうなっているのでしょうか?法やメディアは何を,誰から守ろうとしているのでしょうか?」
From her perspective, the subsequent media coverage was thin: Most of the big media outlets ignored it; Nippon News Network interviewed the head of the criminal investigation department at Tokyo Metropolitan Police, who said there was insufficient evidence to prosecute. The backlash, however, was excruciating. She was accused of inviting the assault, and of political opportunism. She had connections to the Democratic Party, some said, which wanted to unseat Abe. Her family name was revealed, despite her pledge to protect her parents from the glare. Broken, she went to hospital and stayed in bed for four days. “I had a panic attack; I thought I could deal with it but I couldn’t.” In trying to show women they could talk about rape, she says, crying again, “I instead showed that what happens is this.”
詩織さんから見ると,会見の後に行われた報道の中身は「薄かった」という。主要マスコミのほとんどは事件を黙殺し,日本テレビは当時の刑事部長にインタビューを行い,起訴するには証拠不十分(嫌疑不十分)であるという言質をとった。  
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一方で,[会見への]「反発」は凄まじいものであった。自ら暴行を誘い込んだのではないか,政治的思惑があってのことではないかと批判された。一部では,倒閣を目指す民進党との繋がりがあるのではないかと疑う声もあった。
両親や家族が好奇の目に晒されないよう,姓を隠していたのに,あっという間に暴かれてしまった。憔悴した詩織さんは,病院に行き,4日間ベッドに引きこもったという。
「パニック発作を起こしました。自分なら耐えられると思ったのですが,耐えられなかったんです。レイプ被害に遭っても声に出して訴えていいんだということを他の女性たちに示したかったのに,逆にこんな惨めな姿を晒してしまいました」 と言いながら,詩織さんは再び涙を流した。
詩織さんがやり遂げたいこと
Shiori’s goal
 Yamaguchi, who denies rape, has since been fired by TBS and has largely disappeared from public view. Shiori has filed a request with Tokyo prosecutors to reinvestigate the case.1 She says she has no interest in revenge against the government, or even the man she says raped her. “Everyone wants to take me to a place where I am fighting against Abe Shinzo; I don’t care,” she says. “I don’t even care about Yamaguchi. I do care that the justice system works. The people around me are furious but I don’t have that emotion because it is so hard to deal with.”
レイプを行ったことを否定する山口はTBSの職を追われ,公にはほとんど姿を現さなくなった。詩織さんは東京検察庁に対して [検察審査会による審査を通して] 再捜査を求める申し入れを行った[1]。詩織さんは,政府や,彼女をレイプしたと信じる男に対してでさえ,復讐する気持ちはないという。
「誰もが,私が安倍晋三と戦おうとしているように見せようとします。私にはどうでもいいんです。山口すら,どうでもいいんです。私にとって重要なのは,司法制度がちゃん��機能しているかなんです。 私の周りの人は怒り狂っています。でも,私はとても堪えきれないので,そういう感情を持たないようにしているんです 」
性犯罪の厳罰化に対する思い
Her thoughts on the expanded sex crime law
The day of our interview at a friend’s house, the 1907 sex crime law was amended, mandating tougher sentences and allowing for broader definitions of rape, including assaults on men. The revisions, welcome though they are, would not have helped Shiori, says Yamamoto. “For that to happen, we must change how things are done, and that takes time.”
詩織さんの友人の家でインタ��ューを行った日はちょうど,1907年の性犯罪を処罰する刑法の改正がなされた日だった。これにより,罰則が強化され,レイプ(強姦)の定義が,男性も含むものへと拡大された。改正は歓迎すべきことだが,詩織さんのケースには役立たないと前出の山本さんは言う。
「それが起きるには,色々なことを変えていかなくてはなりません。時間がかかります」
絶望と向き合うということ
Facing the sense of helplessness
Shiori says she will “never forget” her sense of helplessness when told the police had stopped her case. Like the frightened 10-year-old girl at the pool, she had looked for protection that was not there. “Laws do not protect us. The investigation agency has the authority to suppress its own arrest warrants. I want to ask…all people living in Japan. Are we really going to continue to let this happen?
警察が捜査を取りやめたときの無力感は「決して忘れられない」と,詩織さんは言う。かつてプールで怯えていた,あの10歳の少女の頃のように,与えられない保護を [誰かに] 求め続けている。
「法律は私たちを守ってはくれません。捜査当局に自ら逮捕状を取りやめにすることができるなんて。私は,日本に住むすべての人びとに訴えたいです。本当にこのままでいいのですか?と」
She now waits for the results of a review by the Committee for the Inquest of Prosecution – she must convince eight of the 11 members to pursue an indictment. “For the past two years, I often wondered why I was still alive,” she said in May. “The act of rape killed me from the inside. Rape is murder of the soul. Only my body was left, and I was overwhelmed by the feeling that I had become a shell.”
詩織さんは現在,検察審査会の審査結果を待っている。立件するには,11人いる審査会のメンバーのうち8人を納得させなければならない。
「 過去2年のあいだ,私はなぜ自分が生きているのか不思��でした」
5月の会見で,彼女はこう語っていた。
「 レイプという行為は、私を内側から殺しました 。 レイプは魂の殺人です��もう肉体しか残っていませんでした。私は,抜け殻になってしまったという思いに苛まれていたのです」
Notes 注記
[1] In May, Shiori applied to host a press conference at the Foreign Correspondents’ Club of Japan, which declined (full disclosure: I am one of 12 journalists who sit on the FCCJ’s Professional Activities Committee, which votes on press events). Letters and emails flooded into the inboxes of FCCJ members, falsely accusing them of buckling to political pressure from the Abe government. Katsumi Takahiro, a former aide to a DPJ senator with the Democratic Party, sent an open letter demanding to know why Shiori’s request had been turned down.
[1] 5月,詩織さんは日本外国特派員協会(FCCJ)に対し記者会見の開催を申し入れたが却下されていた(全面告白すると,筆者は記者会見等について評決をとるFCCJの報道企画委員会(PAC)の12人の委員の一人である)。安倍政権の政治圧力に屈したのではないかと,FCCJの各メンバーを中傷する抗議のメールが殺到した。旧民主党参議院議員の元秘書である勝見貴弘氏 [←本記事の訳者] はわれわれに公開書簡を送りつけ,詩織さんの申し入れがなぜ却下されたのか回答を求めた。
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tkatsumi06j · 7 years ago
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Saying #MeToo in Japan
日本で #MeToo を語るということ
By Shiori Ito
Translated by @tkatsumi06j
TOKYO — In late May, at a press conference in the Tokyo District Court, I went public about being raped.
(東京)17年の5月の終わり頃、東京地裁で行った記者会見の場で、私はレイプされたことを公表した。   
In Japan, it’s unthinkable for a woman to do this, but I didn’t feel brave — only that I had no other choice.
日本では、女性がこのようなことを行うのは考えられないことだとされている。だが、私にとくに勇気があったわけではない。それしか選択肢がなかったのだ。
On April 4, 2015, as I regained consciousness in a Tokyo hotel room, I was raped by Noriyuki Yamaguchi, a former Washington, D.C. bureau chief for the Tokyo Broadcasting System and a journalist with close ties to Prime Minister Shinzō Abe.
2015年4月4日に私が東京のホテルの一室で意識を取り戻したとき、私はTBSの元ワシントン支局長で、安倍晋三首相に近いとされるジャーナリストである山口敬之氏にレイプされていた。
I met Yamaguchi the night before to discuss work opportunities. My last memory of that evening is feeling dizzy in a sushi restaurant. As I went through the ensuing criminal case proceedings, I came to realize how Japan’s system works to undermine survivors of sexual assault.
山口氏には職の相談でその前日の夜に会っていた。私の最後の記憶は、寿司屋で気分が悪くなっていたことだった。 刑事事件の捜査手続きを経験するうちに、私は日本の制度が性暴力の被害者であるサバイバーの気力を徐々に奪うものでしかないことがわかってきた。
When the arrest was canceled, I thought my only recourse was to speak to the media.( 逮捕が執行停止になったとき、私は頼れるのはメディアしかないと思った。)
The investigation was scuttled throughout. This was, I and others suspect, partly due to political pressure, but also because of a medical, investigative, legal and, ultimately, social system that marginalizes and fails victims of sex crimes. I’ve had to fight every step of the way.
捜査は終止穴だらけだった。これは、私や他の人びとが疑うように一部は政治的な圧力によるものであったかもしれないが、それだけではなかった。医療、捜査、司法、そして最終的には社会のシステムそのものが性犯罪の被害者を矮小化し救済を怠るものだったからだ。 私はすべての節目で主張し続けることを余儀なくされた。
When I came forward, my case had been closed and I had just filed an appeal to have it reopened. This was rejected in September.
すべてを公表したとき、私は事件が不起訴とされたことを受けて捜査再開を求めて申し立てを行ったところだった。この申し立ても9月に否決された。
I went public to say that the entire mechanism of handling sexual crimes must change, and to ask that the Diet, as our parliament is known, stop delaying the proposed amendments to Japan’s 110-year-old rape law. To say that sexual violence is a reality that we need to talk about.
私が公表に臨んだのは、性犯罪を取り扱うあらゆる仕組みについて変革が必要であることを主張し、そして110年前に作られたレイプに関わる法律の改正をこれ以上遅らせることのないよう、日本の国会に訴えるためだった。性暴力は現実の問題として存在し、そのことを議論しなければならないということを訴えたかったのだ。 
The investigation
事件の捜査  
From the medical professionals to the police, I encountered a lack of understanding about sexual violence and inadequate support for survivors.
私は医療のプロフェッショナルから警察に至るまで、性暴力への理解不足と、サバイバーに対する支援が足りていないことを実感した。
After fleeing the hotel, as I became aware of the physical pain, I realized what had happened. The gynaecologist I visited provided little assistance. I called the hotline for Tokyo’s only 24-hour rape crisis center to ask which hospital to go to (rape kits are only available in certain hospitals in 14 of Japan’s 47 prefectures). I was told to come in for a preliminary interview before I could receive any information. I was too devastated to move.
ホテルを逃げ出した私は物理的な痛みをおぼえはじめ、その時はじめて何が起きたのかをはっきりと認識した。訪ねた産婦人科はろくな助けにならなかった。 (レイプキットは日本の47都道府県のうち14都道府県のいくつかの病院にしか存在しないため) どの病院に行けばよいかを訊こうと、東京唯一の24時間レイプ相談センターに電話してみたが、情報を提供する前にまず事務所を訪ねて初歩的な面談を受ける必要があると伝えられた  。
しかし、私は憔悴していて動ける状態になかった。
Five days later, I went to the police. I was starting out as a journalist, and although I was scared, I didn’t want to hide the truth.
五日後、私は警察に向かった。ジャーナリストとして活動し始めたばかりで、怖���気持ちもあったが、真実に蓋をしたくはなかった。
Initially, the police officers tried to discourage me from filing a report, saying my career would be ruined and that “this kind of thing happens often, but it’s difficult to investigate these cases.” I persuaded them to obtain the hotel’s security camera footage. The taxi driver’s testimony disclosed that I was carried inside the hotel. Eventually, the police took on my case.
当初、警察官らは被害届の提出を思い留まらせようと努めた。「こうしたことはよくあるが、捜査をするのは難しい」「人生が台無しになる」と。しかし私は、ホテルの防犯カメラの記録を入手するよう彼らを説得した。タクシーの運転手の証言で、私がホテルに担いで連れられたことがわかり、最終的に警察は捜査を行うことを決めた。
I had to repeat my statement to numerous police officers. One investigator told me that if I didn’t cry, or act like a “victim,” they couldn’t tell if I was telling the truth. At one point, I had to reenact what happened with a life-size dummy at the Takanawa police station while officers took photographs. It was traumatizing and humiliating. A former colleague once referred to this procedure as “second rape” because it forces the victim to relive their ordeal.
私は複数の警官に何度も供述を繰り返さなければならなかっった。捜査官のひとりは、私が泣いたり『被害者』らしく演じてくれなければ、事実を言っているようには伝わらないと言ってきた。ある時には、実物大サイズのダミー人形を使って何が起きたかを再現しなければならなかった。高輪警察署の捜査官らは、その様子をカメラで撮影していた。トラウマとなる、とても屈辱的な経験だった。私の元同僚はこの手続きを『セカンドレイプ』と呼んでいた。被害者に苦しい体験を追体験させることを強いるものだからだ。
In early June 2015, officers at Takanawa police station obtained a warrant for Yamaguchi’s arrest for incapacitated — or what is called “quasi” — rape.
15年6月の始め、高輪警察署の捜査官が準強姦(自律能力のない状態での強姦)の容疑で山口氏の逮捕状を取得した。
Police planned to arrest him at Narita airport on June 8, but in a highly unusual move, the then chief of criminal investigation at the Tokyo Metropolitan Police canceled the arrest. My case was transferred to that department, where I was asked to settle out of court. Prosecutors filed papers against Yamaguchi, but in July 2016, they dropped all charges, citing insufficient evidence.
警察は6月8日に成田空港で山口氏を逮捕する予定だったが、きわめて異例なことに、当時の警視庁刑事部長により逮捕の執行が停止された。私の事件は警視庁に移管され、示談を勧められた。検察は山口氏を書類送検したが、16年7月に証拠不十分として不起訴とした。
When the arrest was canceled, I thought my only recourse was to speak to the media. I spoke to journalists I trusted. No outlet, except weekly news magazine Shukan Shincho earlier this year, ended up reporting this story. The circumstances were politically sensitive, but Japanese media are usually silent about sex crimes — they don’t really “exist.”
逮捕が執行停止になったとき、私は頼れるのはメディアしかないと思った。信頼する何人かのジャーナリストに話したが、週刊誌の『週刊新潮』以外に、その年の前半に事件を報じれてくれたメディアはなかった。政治的にセンシティブな状況だったこともあるが、日本のメディアは、性犯罪については沈黙を保ち、それを「存在しなかったもの」にしてしまう傾向がある。
It is taboo to even use the word “rape,” which is often replaced by “violated” or “tricked” if the victim was underage. This contributes to public ignorance.
メディアでは「レイプ」という言葉を使うことすらタブーとされており、大体の場合において「暴行された」あるいは被害者が未成年者の場合は「いたずらされた」と形容される。 こうした姿勢が社会的な無知の蔓延に繫がっている。
Going public
声を上げる
My coming forward made national news and shocked the public.
私が声を上げたことは全国的なニュースとなり、社会に衝撃を与えた。
The backlash hit me hard. I was vilified on social media and received hate messages and emails and calls from unknown numbers. I was called a “slut” and “prostitute” and told I should “be dead.” There were arguments over my nationality, because a true Japanese woman wouldn’t speak about such “shameful” things. Fake stories popped up online about my private life with photos of my family. I received messages from women criticizing me for failing to protect myself.
その反動は強く私に叩きつけられた。ソーシャルメディアでは中傷され、憎悪に満ちたメッセージやメール、そして見知らぬ番号からの電話が寄せられた。私は「売女」「売春婦」などと罵られ、「死ねばいいのに」とまで言われた。 私の国籍について疑問視する声もあった。本当の日本女性だったら、そのような「恥ずべき」ことは口に出さないと。���ット上で、私の家族の写真とともに私生活に関する偽りのストーリーが流されるようになった。ある女性は、自分で自分を守らなかった私が悪いと責め立てた。
The mainstream media discussed what I wore. On social media, people said leaving the top buttons of my shirt undone undermined my credibility or explained why I was raped. One journalist had advised me to wear a suit to the press conference, but I refused. I was tired of being told how a victim should behave.
主要なメディアは私が何を着ていたかに注目した。ソーシャルメディア上では、私がブラウスの上のボタンを二つ開けていたことが、私の信頼性を貶め、私がレイプされた理由だと揶揄された。 あるジャーナリストに会見にはスーツで臨むようにとアドバイスされたが、私は拒否した。いかに被害者らしく振る舞うべきかを求められるのは、うんざりだったからだ。 
After the press conference, I avoided going out. When I did, I wore glasses and a cap to disguise myself, but people still recognized me and took pictures.
会見の後、私は外出するのを避けた。出かけるときには、グラス をして帽子を被り、変装した。それでも私だと気付き、写真を撮られることもあった。
Those close to me supported me. I was heartened to hear from women who thanked me and said they’d experienced sexual assault, but felt unable to say anything.
私の近しい人たちは私を支えてくれた。複数の女性から、性的暴行を受けた経験があるがこれまで何も言えなかったと感謝されたときには、勇気を貰った気がした。
Rape myths
レイプに纏わる日本の神話
I grew up in a culture and society where women are exposed to sexism and harassment from a young age. When I was 10 years old, I was groped by a man at a Tokyo swimming complex. My friend’s mother said it was my fault for wearing a “cute bikini.” Sexual molestation on public transport is a common problem that society trivializes. In high school, my friends and I faced this on a daily basis.
私は、女性が幼い頃からセクシズムやハラスメントにさらされる文化と社会の中で育った。 私が10歳の頃、私は東京のプールで男に体をまさぐられた。その時、私の友だちの母親は「かわいいビキニ」を着ていた私のせいだと言った。 公共交通機関での痴漢行為は普通にある問題で、社会では些細なこととされている。高校の頃、私の友だちはほぼ毎日のようにこの行為にさらされていた。
There is a strong social stigma associated with speaking out against sexual assault and a common perception that victims are less valuable to society. This is why many stay silent. Just 4 percent of survivors report rape to the police and when arrests are made, more than half the time prosecutors drop the charges.
日本では性暴力に対して声を上げることにより強烈な社会的烙印が捺され、被害者は社会にとってあまり価値のないものだとされてしまっている。だから多くの被害者は沈黙を保ち��づけている。日本ではレイプ被害者のわずか4%しか警察に通報せず、逮捕が行われたとしても、検察はその半数以上を不起訴とする。
Rape myths are widespread. Japanese society blames victims, saying it’s the woman’s fault — what they wear, where they go, how they behave.
レイプに纏わる神話が蔓延しており、日本の社会では被害者が責められる。何を着ていたか、どこへ行ったか、どう振る舞ったかなど。女性のせいであると。
It’s not that victims haven’t come forward; Japanese society wants them to stay silent.(被害者が名乗りを上げないのではない。社会が沈黙を守ることを望んでいるのだ)
When women speak out, their allegations are decried by dominant counter-narratives of “false accusations” or “false reports” in mainstream and social media. Men can even take out insurance against these accusations.
女が声を上げると、彼女らの訴えは主要なメディアやソーシャルメディア上で「濡れ衣」だとか「虚偽報告」といった逆方向のナラティブにより打ち消される。保険でカバーできるだろうという主張が飛び出すことすらある。
There is little concept of sexual consent in the law or in society. We need education about this in schools because we live in a society where “no” means “yes.” Rape is a genre in pornography. In relationships, some women think mimicking rape is desirable. People I’ve spoken to say they know when “no” means “no.” That’s a very Japanese way of communicating — not saying much but trying to read what the other person is saying.
According to a 2017 poll by NHK, Japan’s national broadcaster, 27 percent of respondents believed that sharing a private drink signaled sexual consent, while 25 percent took getting into the same car as a sign.
17年に日本の公共放送のNHKが行った世論調査によると、回答者の27%が「二人きりで飲酒」することは「性行為の同意があったと思われても仕方がない」と捉え、25%が「二人きりで車に乗る」ことが同様に同意の印であると捉えているという。
Tumblr media
Many of the women who have shared their stories with me were assaulted in their workplace by their bosses. Sexual abuse happens whenever there is a power imbalance — which is everywhere in our male-dominated society.
私に自らの経験を話してくれた女性たちの多くは、職場で上司に性的暴行を受けたと話していた。性暴力は、常に力の不均衡があるところに現れる。男社会の中ではこれは、あらゆる場所を意味する。
In mid-October, around the time the Harvey Weinstein story broke, my book “Black Box” was published. Editor Izumi Ando had encouraged me to write about my experiences, saying that by going public, I’d cracked the door open.
10月の中頃、ちょうど、ハーヴィー・ワインスタイン氏に関する報道がなされた頃、私の著書『 #BlackBox 』が出版された。編集者の安藤泉氏は、私が公表に踏み切ったことで扉をこじ開けたと、私の経験を書籍にまとめることを私に提案してくれた。
The book’s title comes from the term prosecutors and police officers used to describe how rape happens behind closed doors. They kept saying: “We still don’t really know what happened; only you two know that sort of thing.”
本の題名は、レイプがいかに密室で行われるものであるかを説明した検察官や警察官らの言葉が由来となっている。彼らはしきりに「本当に何が起きたかはわからない。二人にしかわからないことだから」と言いつづけた。
I am still fighting for justice. In late September, I filed a civil suit against Yamaguchi.
私は未だ、正義がなされることを求めつづけている。9月の終わり頃、私は山口氏に対して民事訴訟を起こした。 
He has publicly denied my rape allegations and written against me.
山口氏は私のレイプ被害の訴えを公然と否定し、反論を展開した。  
Change, slowly
ゆるやかな変化
In the past year in Japan, we’ve made some progress. In July, our lower house of parliament (where just 10.1 percent of seats are held by women) amended the law pertaining to sexual assault to increase minimum sentences from three to five years, recognize male victims and widen the definition of what constitutes rape. But we need to keep pushing for more change. The age of consent is still 13. To establish a case, victims need to prove “violence and intimidation,” something that is virtually impossible.
昨年、日本ではすこし進展があった。7月には国会の衆院(議席の10.1%のみが女性)は性的暴行に関わる法律を改正し、最も軽い量刑で3年だったものを5年への改訂し、男性被害者を被害者と認め、レイプの定義をより広義なものへと作り替えた。 しかしさらなる変化を求め続ける必要がある。依然として性的同意年齢は13歳に留まっているし、被害を訴えるには「暴行または脅迫」行為を受けたことを被害者側が立証しなければならないことも変わらない。これは、ほぼ不可能なことである。
Japan hasn’t had a big #MeToo movement, but what’s happened in the United States and elsewhere has provided an opening in our media to discuss sexual harassment and assault here, and to raise awareness. Some well-known authors — Mayumi Mori and Kyoko Nakajima, who contributes to Asahi newspaper, for example — have criticized society’s silence and are writing about their own stories of harassment. Journalist Akiko Kobayashi wrote in Buzzfeed about being sexually abused as a child. In private, women’s solidarity groups and others are quietly saying “me too.” But for now, most can only whisper it.
日本では大きな『MeToo』のムーヴメントは未だ起きていない。しかし、アメリカや他の国々で起こっていることが、私たちのメディアに、セクハラや性暴力の問題を提起し、意識向上を図る機会をもたらしている。 たとえば、作家の森まゆみ氏や、朝日新聞に寄稿する中島京子氏などの著名な作家が、沈黙する社会を批判し、自らのハラスメント体験を掲載し始めている。 ジャーナリストの小林明子氏は、子どもの頃に性的虐待を受けたことを 『バズフィード』の記事に掲載した。また個々にも、女性団体や個人が静かに『Me Too(私も)』と語り始めている。 しかしいまのところ、囁く程度でしかない。
Some MPs are now hoping to introduce a new bill to support survivors that would mandate, for instance, that rape crisis centers are installed in every Japanese prefecture. But for any real change to happen, society needs to get behind it.
国会議員の中には、全都道府県にレイプ救援センターを設置するなどして、性暴力被害者を支援しようと新たな法案を国会に提出しようと動いている者もいる。しかし、真の変化をもたらすには、その動きを支援する姿勢を社会が持たなければならない。
We haven’t really had a #MeToo movement not because victims haven’t come forward, but because Japanese society wants them to stay silent. Society needs to listen, and the onus of breaking this silence shouldn’t just come from survivors. We have to change the system and the law in a big way and we can’t wait another 110 years to do this.
日本で真に『#MeToo』といえるムーヴメントが起きていないのは、被害者が名乗りでないからではない。社会が沈黙を守ることを望んでいるからだ。社会は被害者たちの声に耳を傾けるべきであるし、「沈黙を破る」重荷は被害者のみが負うべきものではない。私たちは法や制度を大きく変えなければならない。そのためにさらに110年待つことはできないのである。 
Tumblr media
Shiori Ito is a freelance journalist, documentary filmmaker and the author of “Black Box” (2017). She is currently working on a documentary about sexual violence in Japan.
伊藤詩織氏はフリーランス・ジャーナリストで映像ドキュメンタリー作家。『Black Box』(2017)の著者であり、現在は日本における性暴力に関するドキュメンタリーの制作に携わっている。
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