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#顔料染め帽子
milkteabonbon · 2 years
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2023.1
1/1
あけましておめでとうございます。久しぶりに自分の家でお正月を迎えました。おぜんざいをいただいてからちょっと遠くの神社まで腹ごなしに歩いて初詣。お屠蘇が三種類くらいから選べました。いい神社だ。
1/2
釣り始めしてくる!と家人が出かけて行ったので刺繍始めでもしよう…と図案を写す。この布、雰囲気あるけど全然チャコが乗らない!ひえ〜と鳴きながら必死に写しました。消えたところはイメージでなんとかします。ハートの葉っぱのニオイスミレの図案でハッピー気分。
1/3
前厄の年なのでお世話になっている神社で御祈祷してもらう。苗字を三回くらい間違えられて笑ってしまった。神様にちゃんと伝わったかなぁ。御祈祷のあとに御神酒をいただいたのですがさすがお酒の神様の神社、ものすごーくおいしいお酒でした。帰りにいつもの山の中のお店でおぜんざいと飲み比べセットをいただきお正月大満喫。
1/4
冬休みどうして行ってしまうん……。あまりに辛いので顔剃りとまつパに行きました。気合いが入った。えがったです。
1/5
久しぶりに仕事着を着たらパツパツになっており冷や汗が出た。冬ッ!
1/6
明日のためのパン生地を仕込んだ。
1/7
ピクニック始めをした。年末に謎のテンションで買った高いロースハムをリュスティックに挟んでサンドイッチに。熱々のコーヒーとりんごを携えて河川敷までてくてく歩く時間がたのしい。七草見つかるかなーって探してみたのですがだめでした。家人が作ったバードコールを鳴らしてみたらシジュウカラに返事をされて面白かった。
1/8
薔薇の剪定。人のを預かっているのでただいま4鉢育てている。勢いが良いので深めに切ったんだけど大丈夫かしら。春に答えが出るでしょう。ビオラと一緒に植えたムスカリの葉っぱがどんどん伸びてきてたのしい。チューリップ 買い足したい。
1/9
オーダーの御依頼が舞い込んできてうれしい年始。今年はどんどん頑張りたい。
1/10
手羽先が安かったのでいっぱい買ってきてお酢とお醤油でほろほろ煮。なんでも圧力鍋で炊くと美味しい。
1/11
なんだか捨て鉢な気持ちでお仕事をこなした。お昼に食べたバナナブレッドが気持ちを明るくしてくれた。作ってよかった。
1/12
コンテストまで残りわずかなのでグラスアイを探しにテディベアーズクラブへゆく。やっぱり茶色のポンチ目が好き!単色で買ってフェルトで白目つけても良いんだろうけど。今回の子は新しいヴィンテージがテーマです。
1/13
なんだかあったかい日だったので春の服を買いました。気づけばワードローブに黒がほぼない。
1/14
自分の作品に自信が持てない期(よくある)に入ってしまった。とぼとぼとお教室に向かうと先生があれこれ提案してくれたり他の生徒さんの作品を見せてもらったりして元気をもらいました。可愛い子ができるよ。
1/15
オーダーの御依頼を受けにカフェへ行く。本物のクランペット初めて食べた!自分で作ったのとけっこう似てたな〜。依頼主様の思いがこもった子を作るよ。がんばろう。
1/16
豚のすね肉が安かったのでアイスヴァインとはほど遠いがポトフのいとこ関係くらいの煮込み料理を作って食べました。白ワインで煮るととてもおいしい。家人がバゲット浸してもくもくと食べていてかわいい。たくさんお食べ。BSで「西の魔女が死んだ」のレターボックス版をやっていて、やっぱり画面がきれいな映画が好きだなあと思った。
1/17
家人と震災の思い出話をするなど。今朝偶然目が覚めた時間がちょうど5時40分くらいでした。
1/18
仲良し育休同僚ちゃんとランチ。ベビーの帽子を編むことになりました。魔女はこういうの大好きなのでセレモニードレスも編みたくなるわよ。
1/19
二件目のオーダーを受けました。なんだか楽しいくまができそう。直接会って話してオーダーを受けるのって、今の時代と逆行してないかなと思うけど、会ってみないと分からないことたくさんあるし、話していると思わぬところからインスピレーションを受けたり、依頼主さんも自分の心に気づいたりする瞬間があって、それがすごく尊い時間に感じるのです。誰かのためにものをつくることの意味にすこし触れられるというか……。今後も当面はこのスタイルです。
1/20
ハンドクリームがなくなってしまいました。一度良いやつを使うともうドラッグストアの商品で満足できない。学生の頃はハンドクリームやボディクリームをもらっても持て余していたのに、今や必需品となっています。楽しみが出来てうれしいね。
1/21
休日だけど早く目が覚めたのでひとり朝ごはん。静かな冬の朝が好き。静謐で厳か。シナモントーストと紅茶が聖餐に変わる。
1/22
同僚ベビーへの贈り物完成!編み物の達人のお友達に教えてもらいながら編みました。喜んでもらえるといいなあ。
1/23
寒波が来る来ると言うのでお昼休みに気まぐれでスティック粉末タイプのロイヤルミルクティーを買いました。お湯で溶かしてもいまいち薄くてこれじゃないんだよな……て感じなんでしょ?と思っていたら知らんうちに技術革新されていたようで買い置き決定のお品になりました。これは特別な時に飲むやつだ。普段はトワイニングのティーバッグです。
1/24
去年から悩みに悩んでいたコートを買っちゃった!キャメル色のロングトレンチコートです。襟を立てるとスパイ風になれる。買ってよかった。来冬はオフホワイトの襟巻きと合わせたいです。
1/25
大寒波到来。すべての電車が止まっているので家でのんびり過ごしました。氷を踏んで遊ぶ小学生たちに混じってそっと足を乗せてみる大人。
1/26
アールグレイブーケティーラテが美味しすぎるので定番にならないかな?と思いつつ寒いホームで電車を待っている。
1/27
目が覚めるとしんしん雪が降っていた。はしゃぎながら歩いていたら家人が「この人遅刻するわ……」の顔をしていました。ギリギリ間に合いました。
1/28
髪の毛をチョコレートブラウン(ラベンダー入り)に染めてもらいました。もうすぐバレンタインです。
1/29
ヘリックス開けたくなって病院に行ったら今日の分のニードルが無くなったからピアスガンのみという旨が書かれた札が提げてあって大分ガッカリしながら帰りました。
1/30
アトリエでお茶をいただきながらよもやま話。コンテストに出したテディベアのことや近くのおいしいケーキ屋さんの話など。
1/31
百貨店のバレンタインフェアでソフトクリームを食べ、焼き菓子をニヤニヤしながら買いました。会期中あと二回は行きたい。かわいいクッキー缶は心の癒しよ。
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gallerynamba · 1 year
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◇Vivienne Westwood(ヴィヴィアン ウエストウッド)◇2023年秋冬新作帽子が入荷致しました。 2023年AUTUMN&WINTER最新作 【PIGMENT DYEING HAT】 定価:8,800円(税込) 素材:コットン100% カラー:ヴィンテージブルー×ブルー サイズ:M~S 頭周り:約 57.5cm、高さ:約 8cm、ツバ:約 7.5cm ※アジャスターで約57.5cm~約55.5cmまで調整可能 ヴィンテージの風合いを出すために顔料染めをした布地を使用したバケットハット。 ヴィヴィアンらしい、インサイドアウト(裏返し)デザインに仕上げています。 ブリム部分(つば)は生地を2枚重ねて縫うことでハリ感があります。 男女兼用で御使い頂けます。 弊社は正規取扱店で有り、勿論未使用、新品です。 ※ご覧頂いている媒体により、色の見え方が多少変わる場合がございます。 Gallery なんばCITY本館1F店 〒542-0076 大阪府大阪市中央区難波5-1-60なんばCITY本館1F 【営業時間】11:00~21:00 【休館日】10月無休 【PHONE】06-6644-2526 【e-mail】[email protected]
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satoshiimamura · 1 year
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雨濡れ色のペトル 雨笠煙蓑
期待と諦観の邂逅あるいは金属板の踏み鳴らし
 傷みかけた林檎が皮付きのまま、四等分に切られて出てきたとき、ジーナ・チャイカは、ひくりと頬を引き攣らせた。
 都会への憧れで、故郷から延々と、かつてあった鉄道の跡を歩いていた中で、ようやく雨に降られていなかった町に出た。そこで、唯一無事らしい飲食店の店主に哀れまれた彼女は、到底年頃の女の子が使うようなものではない、物置のような寝床が提供された。
 これまで全く感じなかった疲労と、眠気、そして空腹感を覚えたジーナは、文句も言わずに眠りに落ちる。いつの間にか、黒いブラウスは白に戻っていて、綺麗な青のリボンも褪せた臙脂色になっている。それらの原因は、雨の外だからだ、と漠然と彼女は悟っていた。
 そして、目覚めたばかりの彼女に提供された食事が、傷みかけた林檎だったのだ。
 タダで提供された、一文なしの彼女は文句など言えない。それでも、少し躊躇うように手が伸ばされた。
 一口、喉を通り過ぎれば、それまでほとんど感じていなかった渇きを実感した。先程までの忌避感などなかったかのように、次々と口に含む。が、それは唐突にやってきた乱暴者たちによって止められた。
 ジーナよりも少しばかり年上の、二十歳そこそこの青年たちが、凶悪な顔をして店主へと詰め寄る。
 曰く、隣町への道のりを教えろ。
 曰く、そこでの殺し合いを勝ち抜けばジープが手に入る。
 曰く、そうすればすぐに大陸から脱出できる。
 曰く、そのためにも食料品を渡せ。
 ジーナは彼らの言い分が馬鹿馬鹿しいと思っていた。楽観的で、行き当たりばっかりで、何も考えていないような彼らの態度に、彼女は冷ややかな視線を向ける。
 その侮蔑の感情に気づいたのか。青年たちの一人がジーナに近づいてきた。そして、脅しのように彼女の頬を殴りつける。
 店主が慌てたように駆け寄ろうとするが、それを男たちが許すわけもなかった。どころか、ジーナを人質のようにして、これ以上の暴力を認めたくなければ食料品を出せと告げる。
 歳のわりには痩せたジーナは、綺麗に吹き飛ばされて、店の壁に叩きつけられた。ゆらりと立ち上がった彼女は、どうにか自制心で舌打ちを我慢した。けれど、その反骨芯あふれる視線を隠すことはできなかった。
 馬鹿の一つ覚えのように、先程殴ってきた男が、再度ジーナに暴力を振るおうと近づく。
 痛みは、雨の中では勝手に薄れる。
 怪我は、雨の中では自然に治る。
 こんな低俗な連中も、雨の中ではジーナの足元にも及ばない。
 それがわかっているだけに、彼女は少しばかり自分の無力さを噛み締める。選別を突破したにも関わらず、こんな事態になるだなんて不甲斐ないと思っていた。
 そんな彼女の相手にしていない、見下した態度が、男の琴線に触れたのだろう。何考えてやがると怒鳴りがらも、大ぶりなモーションで彼女の顔を狙った。
 が、ビシリと小さな何かが彼の手の甲に当たる。ギャッと汚い悲鳴が店内に響いたと同時に、パチンコ玉が一つ、床に落ちた。
「よぉ、久しぶりだなぁ」
 その一声でようやく、全く毛色の違う男がいつの間にかいたことに全員が気づいた。真っ赤な布地のアロハシャツ、クリーム色のズボン、白いパナマ帽、カラコロとなっておかしくない下駄に、感情を読ませないサングラス。見目は派手だし、その言動もまた、まともな大人だとは思えない。そして、静かに開け放たれた店の扉の前に立つ偉丈夫の登場に、青年たちはたじろぐ。
「あ、あんたは……」
 先程まで店主を詰めていた男が、青白い顔色をしたまま、偉丈夫を指差す。
 ニヤリと笑った突然の闖入者は、次の瞬間ジーナには見えないほどのなめらかさでーーそして男たちが反応できないほどの速度で、力を振るった。
 一人は顎を砕かれ、一人は足を踏みつけられて鈍い音をさせ、先程ジーナを殴った人物など手の甲に穴が開けられていた。最後の一人は、襟元を締め上げるようにして持ち上げられている。
 ヒッと持ち上げられた男の口から、小さな悲鳴があがった。
「報告だぜぇ。お前たちが引っ掻き回してくれたお陰で、もうあの集団はダメだ。ほぼほぼ壊滅、リーダー以外は全員雨の下だ」
 爛々とした目が、横顔のためにわずかに見えた。
 その怒気なのか、覇気なのかわからない男のオーラに当てられて、か細い声で「許して」と持ち上げられた青年は零した。が、派手な見目の男は、懇願を聞き遂げる様子は全くなく、さらに持ち上げる。
「俺が怒っていると思ったか? いいや、これは諦観だよ。お前たちの未来を俺は諦めたんだ」
 青年が何か弁明をしようとした、ようにジーナは見えた。が、男は躊躇なく手にした人間を壁に叩きつけた。ずりずりと叩きつけられた青年が力なく倒れていけば、壁に血の痕が、適当に筆を滑らせた絵の具のように残る。
 青年たち全員が床に崩れ落ちたのを確認して、男は店主に向かって「悪りぃな、汚しちまった」と謝罪した。先程までの恐ろしさが形を潜め、カラリとした笑みを浮かべる彼が、逆に異様に思えるほどだった。現に、店主は青白い顔をして、肩を小刻みに震えさせている。
 怯えているのを感じ取った男が、再度謝った。
「見苦しいもんだったな、すまねぇ」
 そして、彼はようやくジーナを見た。
 男のサングラス越しの目が何色なのか、分からない。今、どのような感情を浮かべているのか、それさえも分からない。
「嬢ちゃんも、怖い思いさせて悪かったな。殴られたところは、難しいかもしれないが、よく冷やしておきな」
 他意はないつもりだったのだろうが、男のジーナを子供扱いした言動に苛つきを覚えた。強ばった表情のまま、彼女は「大丈夫よ」と返す。「そうかい」と言った彼は、そのまま青年たちを引きずって店の外に出ていった。
 大丈夫か、と店主の心配する言葉に、ジーナは再度安心するように問題ないと告げる。そして丁寧に礼を告げると、彼女は足早に先程の人物の後を追いかけた。
 店の外には、もう誰もいない。……が、昨晩はなかった車の轍が続いている。
 ジーナは、その轍の上を走る、走る、走る、息切れしながら、走る。徐々に雨雲に近づいていき、町の建物は閑散としている……というよりも崩壊の度合いが激しくなっていった。そして、車が乗り捨てられているのを見つけ、さらに彼女は雨雲へと足を進める。
 雨の幕が張る境界の手前に、一人の大人が立ち尽くしている。先程の、派手な見目の男ではない。
 ジーナは走るのをやめて、ゆっくりと背後からその人間へと近づいた。何かあれば、雨の中に逃げ込もうと思いつつも、驚かせないように声を掛ける。
 緩慢な動作で振り向いたのは、随分と顔色の悪い男だった。これまでジーナが見てきたどんな人間よりも、青白い顔、真っ黒な隈、生気をなくした唇を持ったその人は、彼女の姿を認識すると「どこに行くんだい?」と、掠れがかった声で尋ねてきた。
「ここは、危険だよ。雨が全てを奪っていく、何も残らないんだ。君はまだ若いんだから、すぐにここから逃げるべきだ」
 どうやらジーナを自殺志願者だと勘違いしたらしい。その幼児に語りかけるような口調に、彼女は言葉では何も言わず、胸を張って雨の幕へと入っていく。ジーナを止める言葉を吐きながら、けれど彼女の歩みを指一本動かさずに眺めていた彼は、まざまざと彼女の変化を観察できた。
 期待の文字が頭の上から滑り落ちる。目を閉じ、意識を遠くへ持っていき、一瞬だけ眠るような夢心地になれば、傷もまた薄れていく。いくつもの期待が、彼女の頭から滑り降り、その跡が黒くなっていった。一筋、一筋と染まっていく彼女の身から、白はなくなり、黒に染め上げられ、そして特徴的な目がきらりと光った。それはロゴスが起きてから、久しく見ることのなかった色だ。真夏の青空、昼の容赦ない陽光を宿した色。
 呆然とした男は、やはり何も言わずに立ち尽くしていた。ジーナは一瞥し、さらに先に進む。
 何もない場所だ。
 ただ、雨が降り続けるだけの場所で、その存在はすぐに分かった。
 何かの結晶の山を見下す男の姿は、ジーナと同様に、黒く染め上げられている。黒いパナマ帽、鮮やかなパイナップルが目立つ黒地のアロハシャツ、黒スキニーに下駄の鼻緒さえも黒だった。
 ジーナが雨音に交えて、水溜りを踏んだ。規則正しく、一定のリズムの中での水音が崩れる。その音に反応して、男が振り向いた。
 やはりジーナからは、サングラス越しのその目は見えない。だが、何か呟いた男は、目を隠し続けたものを取った。
 鮮烈な色がそこには収まっていた。キラキラと太陽のように輝く、炎を彷彿とさせる色だ。赤ではない。燃えるように煌めく、その色の名前をジーナは知らない。
「さっきぶりだな、お嬢ちゃん。傷はもうよさそうだ」
 男が笑って挨拶をしてきた。それにジーナもまた答える。
「ええ、先程ぶりですね。こんな風なので、心配は無用でしてよ」
 同族との邂逅に、ジーナは精一杯の口調で、対等に見せかける。
 互いに笑い合って、そうして男から名乗りをあげた。
「諦観、の円城寺吾郎だ。お嬢ちゃんは?」
「期待、のジーナ・チャイカです」
 互いになるほどと思ったが、同時に疑問も抱く。
「期待のわりには、物悲しそうな雰囲気だ」
「なら、諦観にしては前向きすぎませんか」
 両者ともに答えがないのは、一瞬にして理解できた。自分たちは、そういう者だと既に知っている。そこに、それ以上を求める意味などなかったのだ。
「初めてです、同じ選別をくぐり抜けた人に出会えたのは」
「俺も同じ存在がいるとは思ってたが、会ったのは初めてだな。なんだ、一人でここまで来たのか」
「ええ、そうです。見かける人は、殆どロゴスに耐えられなかった。私以外、誰も」
「そいつは難儀な旅路だ。……失うだけの光景だったのか」
 吾郎の同情するような眼差しに、凛とした顔でジーナは言い返す。
「失うだけでしたが、それも選別の結果なのでしょうがないです」
「……さっきから、お嬢ちゃんはロゴスのことを選別って言ってんな。なんだ、その選別って」
「なんでも何も、ロゴスは選別でしょう?」
「ほう、なんでまたそんな風に思ったんだ」
 吾郎の纏う雰囲気が変わった。彼の態度の変化に、ジーナは嬉々として得られるものがあり、選ばれるのたる理由を述べていく。
「だって、この世の中にある、大半の下らない物を全て無くしてくれましたから。ロゴスは不要なものは全てなくすのです、私たちの飢えも、傷も何もかも」
 ニヤリと彼は笑う。笑うだけで、なんだか本当に、心の底からの喜びのようには、彼女は感じなかった。ただ、顔を歪めたような印象を抱く。
「じゃあ、お嬢ちゃんは大切な身内を失った連中に、それらが不要だって言うのか?」
 ジーナは、吾郎の質問に、なんだそんなことかと思った。
「私も母が選別に通らなかったことが悲しいです。でも、それがあの人の精一杯で、限界だっただけ」
「俺たちみたいなのは選ばれたって思っているのか」
「思っているも何も、それが事実でしょう。だから私はロゴスに、私たちと同じ存在に期待するんです。新しい時代、新しい世界がやってきたのだから、私たちは使徒になれるのです」
 起きた出来事は事実として解釈し、そこから先を向いていく。過去は変えようもなく、失われたものは戻らない。失われた理由を、失われても問題のない理由を、誰もが探しているのだ。
 ジーナは、だからこそあれが選別なのだと思っている。
 彼女の故郷は、誰一人として生き残らなかった。彼女だけが生き延びたその理由は、世界が彼女を必要だった、からだ。だが、彼女と相対する男は、その考えをハッキリと否定する。
「俺はロゴスによる新しい世界だなんて思わねぇ。ロゴスは天災だ。どうしようもねえ部分はあるが、俺たちのような存在は、その天災を鎮めるための手段であり、駒だ。英雄でも使徒でもねぇし、そんな大層な役割ができるはずがない」
 ある意味、自らの力を弁えた発言であった。諦観の灯り言に相応しい評価だ。だが、天災を鎮めると願うほどの期待と自信が込められた言葉でもあった。ついでに、彼の思った以上に冷酷な側面も見られる。
「冷めていらしてるのね」
「諦観の通りだ」
「雨が憎いのかしら?」
「憎いとは思わない。天災だから、しょうがねぇって思ってるだけだ」
「けれど、今は雨を利用していますわ」
「……ああ、そうだな」
 文字の山が何を意味するのかなど、ジーナはよく知っていた。彼女は、山を生み出したこともあるし、道中でいくつも似たようなものを見ている。吾郎が連れていった四人の姿はなく、文字だけがあるのならば、もう答えは出ていた。
 しばしの沈黙。やがて、吾郎が戻ろうと言う。雨の外に、人を待たせているから、と。彼は振り向きもせずに、雨の外へと歩きだす。ジーナは、それ以上何か発言することはなく、男の後を追った。
 雨の切れ目。あるいは、世界を隔てる銀幕。選別の違えた道。選ばれた者だけの大地、選ばれなかった者の土地。なんだっていい、なんだって本質は変わらない。ただの切れ目なのだ。
 そこにいたのは、先程と同じように立っているだけの男。顔色の悪さも、先刻と何も変わっていない。
 吾郎は男の名前を呼んだ。男の視線が吾郎へと向けられて、しかしすぐにジーナへと移る。
「君は」
「同類ってヤツさ」
 吾郎の説明で、男は納得したようだった。
「そうか……そうだな。コイツのようなヤツが他にいてもおかしくないのか。だ��、こんな子供が」
「子供扱いしないでください」
「……すまない。少し、娘に似ていたものだから、つい」
 素直に謝ったので、それ以上ジーナは何も言わなかった。男は首を一度だけ横に振り、何かの雑念を払う。そして、今度は吾郎を真っ直ぐに見て、問うた。
「終わったのか」
「ああ、終わったよ」
 その過程や様子を一切省略した、簡潔すぎる返答に、男は一歩、二歩と後退り、そして力を抜いて座り込んだ。
「そうか……そうか、そうか! 終わった、終わったんだな」
 顔を手で覆い、同じ言葉ばかりを口にしながらも、やがて音は変化し、嗚咽ばかりとなっていく。大人の、それもたった今まで冷静に話していた人間が、あっという間に幼児のように泣き崩れる様を見たジーナは、少しばかり居心地が悪い。
 対し吾郎は、慰めるように男のそばにより、肩を優しく叩いていた。苦楽を共にした仲のように、互いの傷を知り合った彼らの言葉にならない情動は、ますます彼女の疎外感を煽る。
 だが、その疎外感は思ったほど長くは続かなかった。
 鼻を啜り、掠れ切った声で「もういい」と告げた男は、腫れぼったくなった目を何度も拭いて、立ち上がる。
「すまない、少し感情的になってしまった」
 そうして、先程とは真逆に大人の顔を男はする。
「円城寺もここまでありがとう。あんなにも我々の手助けをしてくれたというのに、こんな結末になってしまって、すまない」
「どうってことはねぇよ。旅は道連れ、世は情けって言うだろう。それに、最後は俺も謝るべきだ。すまねぇな、お前以外……助けられなかった」
 吾郎の言葉に、男は「しょうがないことだった」と慰める。
「それと、円城寺と同じ存在のお嬢さん。最後の最後で、君を巻き込んでしまったようだ。騒がしくしてしまったようで、申し訳ない」
「いいえ、大丈夫ですわ。あの騒動のおかげで、同じパドルに出会えましたもの」
 ジーナの零したパドルの言葉に、男は満足そうに微笑む。
「なるほど、君たちはパドルというのか。円城寺は頑なに教えようとしなかったから」
 スッと視線を向けられた吾郎は、そのまま顔を逸らし、弁明した。
「パドルって存在に、変に期待されたくはなかったからな。俺にだって限界はあるし、人間であることは変わらねぇぜ」
「……そういうことにしておくさ」
 穏やかなやりとりに、先程までの悲壮感は感じられない。男の、今にも倒れそうなほどの、鬼気迫る雰囲気はなくなり、それほどまでに終わったものの重さは測り知れない。
 何があったのだろう、とジーナの好奇心がもたげたが、先刻までのなりふり構わない号泣の様子を見れば、さすがに遠慮した。
「それで」
 男が微笑みながらも、話を続ける。
「君たちは、これからどうするんだい」
 これからの一語に、ジーナと吾郎は互いに視線を合わせる。それはまだ確認していないことだったが、しかし二人とも同種であるが故に、ほぼ確信していた未来でもあった。
「漠然とだが、行くべきだと思っている場所がある。お嬢ちゃんも、そうだろう?」
「ええ、同じく。でもその前に、お嬢ちゃん、て呼び方辞めてくださらない? 私には、ジーナという名前がありますわ」
「じゃあ、ジーナ嬢ちゃん」
「馬鹿にしているのかしら」
「そのつもりはないさ。俺の歳からすれば、お嬢ちゃん呼びの方がしっくりくるだけだ」
「まるきり、子供扱いなのですね」
「ジーナ嬢ちゃんは正真正銘ガキだろう」
 ざわりと嫌なものがジーナの喉を通り過ぎた。圧倒的なまでの余裕の表情を浮かべて、それでいて軽薄な様を見せつける諦観のパドルに、無性に苛つく。
 スッと彼女の目が細められるも、吾郎はその様子を無視する。
「で、話を戻そうか。俺も、ジーナ嬢ちゃんも、漠然とだがロゴスの中心へ行くべきだと感じている。感じると言うよりも、呼ばれるってのが正確だがな」
 吾郎の説明に、男が無言でジーナを見た。期待に応える様に、ジーナもまた頷く。
「ええ、私も感じています。あちらの方に向かうべきだと」
 ジーナが指さした方角は、雨雲が広がっていた。それを見た男は「真逆だな」と呟いた。この言葉に、もしかして着いてくる気だろうか、と一瞬だけジーナは心配した。だが、即座に吾郎が心配の芽を摘み取る。
「お前は、さっさとここから脱出した方がいい。もうなりふり構ってはいられない程度には、雨の侵食は進んでいるようだ」
 この町自体どの程度保つか、と三人の背後に広がる何もない場所を見て呟く。
「分かっているさ。私はパドルじゃない、人間だ」
「なら、いいんだが」
 大人たちの睨み合いに、ジーナは肩をすくめる。冷静なはずの彼らのやり取りは、時に回りくどく、そして面倒だ。
「パドルの私たちは向かうべき場所があり、人間のあなたはそこへは向かえない。なら、合理的に考えましょうよ」
「……ジーナさんに言われたら、もう諦めるさ」
「大変素直でよろしくてよ」
 ふふふ、と笑う彼女の様子に、吾郎は何か言おうとして、けれど全く別のことを話し始めた。
「それで、だ。今後の移動手段とやらで、確認したいことがある。俺たちが乗ってきた車は、そのままお前が使え」
「だが、」
「ああ、ああ。気にするな、移動手段はもう目処がついてる。あいつらが言ってただろう? 隣町では、殺し合いで優勝したやつにジープを一台進呈ってな」
 その話は、ジーナも覚えていた。あの不快な四人組の男たちが言っていた情報。
「あんな与太話を信じていらっしゃるの? しかも勝ち上がるつもりだなんて、諦観らしくないわ」
 雨の中でなら、ジーナとて自信がある。だが、未だ町として体裁が整っているのならば、まず間違いなく雨の外だ。その場合、パドルである彼女たちは、特殊な力を思う存分奮えない。もしかしたら、吾郎は何かしらの自信があるのかもしれないが。
「そうだな、諦観らしくねぇ。とは言っても、こんな指摘をするジーナ嬢ちゃんだって、期待らしくはねぇな」
「余計なお世話だわ」
 ふん、と鼻を鳴らしたジーナと、カラカラと笑う吾郎のやり取りを興味深そうに男は眺めていた。
「まぁ、さすがにそんなもんに参加するつもりはねぇよ。ただ、その噂話は結構広まっていたようでな。ちょいと、調べてみたことがあったんだ。そうすると、」
「なにかしら」
 わざと区切った彼に焦ったくなって、ジーナが問いただす。その様子を確認した吾郎は……。
「ジーナ嬢ちゃん、今の世界情勢ってヤツは分かるか?」
 と、全く違うことを話し始めたように思えた。
「突然なんですか」
「いや、ジーナ嬢ちゃんはロゴスを選別って言ってるからな。選別は選別らしく、現状の勢力図を理解してんのかと思って」
「私は、ほとんど人に出会ってないのですよ。数少ない出会った人々のほとんどは、パドルでもなく、雨に消えていきました。町についたのもここが初めてでしたし」
 ジーナの説明に、それまで黙って聞いていた男は口を挟む。
「円城寺。お前が何に警戒しているのかは分からないが、何でもかんでも察してもらえると思うな。話を進めたらどうだ」
 その指摘に、吾郎は小さな声で「すまん」と謝ったあと、すぐさま説明した。
「現状から考えてみれば、大国ナルツィアーゾは崩壊したとみていい。となると、序列的にはロヴィエが世界の王者にきて、その次がクリザミアだろう。向こうは、ほとんど被害がないって話だしな。これまで四カ国は、仲良しこよしで成り立っていたし、長いこと戦争なんかねぇ。なら、軍隊ってヤツは必要なかった。でも、国を超えた警察組織はあるし、組織犯罪ってのもなくならねぇ。組織犯罪の中には思想犯てヤツもいて、ここで国に煙たがられるのは、何だと思う?」
 再度の問いかけに、ジーナは考えてみた。そして、ロゴスが起きる前に見た映画を思い出す。
「……できあがった国家体制への反抗」
「そうだ、不平不満は誰だってあるし、完璧な国家なんてもんはない」
 そこまで説明して、ようやく本題へと戻ってくる。
「何が言いたいかってことなんだがな、こんな大混乱な最中でも、ジーナ嬢ちゃんみたいな考え方ーーロゴスが選別であり、そこに選ばれた連中がいる--は、そう珍しくもないってことだ。終末思想とでも言うのか、大変換への憧れか、或いは強制的な変化への希望かは知らんが、一定数の共感者たちがいる。その中には、表じゃ大成功している人間もな。だからこそ、ここへやってくる連中がいるし、ここでことを始めようとする連中もいる」
 吾郎は、そのまま耳にした如何様にでも捉えられる教義と演説を脳裏に思い出した。だが、それを目の前にいる、真っ先に共感しそうな少女には伝えない。
「隣町の件も、おそらくこの手の奴らが裏で動いてる。でなけりゃ、こんな状況で垂涎もののジープをアッサリと手放すかよ」
 ついでに、と続く吾郎の言葉で、ようやくジーナは彼の狙いがわかった。
「あいつらが持っているのは、少なくともジープ一台じゃねぇだろうな」
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その後の話1
「そういえば君の目は、雨の中だと随分と鮮やかな青になるのだね」
「そうですの? 私、鏡を見ていなかったので気づきませんでしたわ。いったい、どんな色なのかしら」
「真夏の空の色のようだよ。透き通るような海ではないし、ただただ突き抜けるほどの真っ青な色だ。アウィンに似ているな」
「アウィン?」
「美しい石の名前だよ。アピスラズリの主成分でもあるんだ」
「まぁ、素敵」
「君たちパドルの目は、本当に美しい宝石のような目だね。円城寺の雨の中の目も見たことがあるんだが、ファイアオパールのよう��と思ったさ。できれば、ずっとその色なら良かったのに、残念だ。ああ、雨の中で奪われたなら、もしかしてずっとその色のままなのだろうか。先程、君の頬にあった傷は治っているが、もしかして雨の中なら治癒するのかい? そうなら、目を貰えないだろうか」
「え、あの……え?」
「ジーナ嬢ちゃん、そうなったら離れときな。この大災害の中で、ネジが外れちまっただけだ。普段はリーダーらしい奴なんだが、どうにも俺たちの目に関してはこうなりがちでなぁ。始めは口説かれてるのかと思ったが、途中でこれは違うって気付いたんだよ……」
「円城寺の目は本当に綺麗だからなぁ。妻と観に行く予定だった宝石展の目玉の一つだったんだ。なぁ、本当にダメなのか? どうにかして美しいままに保てないか努力するから。ああ、ジーナさんの目もダメなのかい? その色は娘の好きな色だったから」
「……無理です」
「ほら、ジーナ嬢ちゃん泣きそうだぞ。やめろや」
「酷いなぁ、私はただ君たちの目の色が本当に美しくて好きなだけだよ」
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その後の話2
「本当に予想通り、車があるとは思いませんでしたわ」
「予感的中ってな」
「そういえば、運転は吾郎おじ様がなさるのですよね」
「ジーナ嬢ちゃんは免許持ってんのか?」
「持っていませんわ。でも今この時に、それが重要と思いですの?」
「そりゃそーだ……興味あるなら、道中どこかで運転してみるか」
「良いのですか」
「こんな状況で物損も人身事故もねえだろ」
「ふふふ、車の運転は映画を見てて憧れていました」
「へぇ、どんな映画がジーナ嬢ちゃんのお眼鏡に叶ったんだか」
「崖の間際でのカーチェイス」
「うーん、やっぱり辞めさせようか」
 実際問題、普通にジーナは壁にぶつけたし、おそらく何もなくても免許はとれないんじゃないかと吾郎は思った
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shukiiflog · 1 year
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ある画家の手記if.33   告白
僕の好きなお店っていうのは、冷泉の親戚がオーナーをしてる小さなリストランテで、百貨店や大型デパートが立ち並ぶビルだらけの街の中心の、煉瓦造りの小さな路地の隙間から入っていった場所にある。 僕は背を少しかがめないと路地で頭を打つ。
料理にはさっぱり詳しくないけど、ここは雰囲気もいいし、調度品も綺麗に磨かれたアンティークが活きてて、いつきても騒々しすぎなくて、人とゆっくり話ができる。冷泉が小さな頃からここに出入りしてたらしい、冷泉とこの店には納得できる良い親和性があると思う。
香澄はこういうところがあんまり慣れないのか最初は少し緊張してたけど、僕が寛いでるのにつられてだんだん馴染んだみたいだった。 確かに大学生だけで入れるお店ではないかも。僕たちも普段より少し品のある服を着てきたし。 「直人、メニューに値段書いてない…」 香澄が困った顔でメニュー表を見る。 「ん…?気にしなくていいよ。好きなの食べて」 値段聞いたら食べてくれなくなりそうなので黙っておく。 いつも食事は家で作るばっかりだし、せっかくだからこういうときは贅沢なもの食べてほしいな。 注文して食事が運ばれてくるまで、僕はテーブルの上で香澄の片手をとって指を見ていた。綺麗な指だな。きめが細かくて白くて、爪の形も綺麗な楕円形で、女性みたいだ。 「…直人?」 「…どんな指輪が似合うかなと思って」 「ほ、ほんとに買うんだ…」 香澄は僕の金銭感覚に若干引いてる。僕がかなり高価なものを買うと知ってる顔だ。僕にわりとお金の余裕があるおかげもあるけど、僕は買うときは中途半端なものは買わない主義。 「学校であんまり目立たないようなやつがいいな…」 「学校行くときは外してていいよ」 「それもなんかなー…」 「鎖とおしてネックレスにするとか」 二人で駄弁ってたら料理が運ばれてきて、僕はいつもみたいにゆっくりペースでもそもそ食べる。 香澄は美味しいって喜んでくれた。食べるペースもいつもより心なし早いような気がする。 僕は冷泉に連れられてここを知って、大学の頃からよくここにこっそりきてたから、香澄もここに連れてこれてよかった。 僕が知ってる好きなものを、香澄にも知ってもらえたら嬉しい。好いてもらえたらもっと嬉しい。 僕は食べてる間、香澄を見てずっとにこにこしてたと思う。 デザートは今日はケーキだって聞いてたけど、僕と古い知り合いのオーナー自らが運んできてくれたケーキは、いつもの美味しそうな小ぶりのケーキの上に、ちょっと不似合いな小さなサンタさんが乗っていた。 こっちに腕をいっぱい広げた、赤い服と白いひげの砂糖でできたサンタさんだ 「わぁ……」 僕のにも香澄のにも一人ずつ乗ってる。このお店はなんでも綺麗に雰囲気を統一するからちょっと俗っぽいサンタさんなんてクリスマスでも普通のメニューでは使われないんだけど 「直人くん、昔からこういうのに弱いよね」 長いブロンドを後ろで一つに結んだオーナーが笑って言った。僕は頷くしかなかった。自分でも目がうるうるするのがわかる。 「他のお客には内緒にしてね。今日のお連れ様はなんだか特別みたいだから、俺も嬉しくてさ」 「ありがとう、咲さん」 「恋人?」 香澄のことだ。僕は笑顔で頷いた。 食べるのがもったいなくてサンタさんを長い間じっと見てた。香澄はそんな僕をじっと見てた。
デザートを食べ終わって、香澄がよそ見してるうちに会計を済ませた。 手を繋いで路地を出る。 外は雪が降っていた。わきに抱えていたマフラーを香澄の首に通して巻く。去年も僕、何度かこれやったね。 香澄の方が指先が冷たい。僕の手で覆うように手を繋いで温める。 「直人は次、どこ行きたい?」 「…。」 「わ、わかってるよ、指輪でしょ」 香澄は指輪になのか、買いに行くことになのか、少し照れてる感じがする。 二人ですぐ近くのデパートに入る。夜だけど中は明るくて、香水や化粧品の匂いが漂う。 絵を描いてた頃は展示スペースを借りる時くらいしか縁のない場所だったけど、今の生活になってから服とかはこういう場所で買うようになった。おかげで僕は身なりだけ少し上等になった。一緒にいる香澄にそんなことで恥をかかせたくないし。
探さなくても入ってすぐ見える位置にそういうお店があるのが見え���から、香澄の手を引いて迷わずそっちへ行く。 キュッと香澄の靴底が音を立ててその場で止まった。 「あの店に入るの…?! 俺、無理、だって凄い高級ブランドじゃん、俺でもあの名前知ってるよ、もっと安いとこ…」 「かーすーみ、往生際が悪い。僕がこういうものには出し惜しまないの知ってるくせに」 香澄の首を掴んでグイグイ押すようにして歩く。 「えええ、だって、不相応だよ、俺大学生だよ?!」 「僕は今年で41だ。相応じゃない?」 「ちょちょ、えええ」 いつまでも入店をためたう香澄に背中からのしかかって入店する。奇妙な入店にも店員はまったく驚かずに丁寧に対応してくれた。 シンプルなデザインがいい。ということで巨大なダイヤがついてるほどの凄い値段にはならなかった。僕もお揃いで買った。
店から出て、二人で嵌めた指輪を手を広げてしげしげと見る。 「これって直人は情香さんとダブっちゃわない?」 「情香ちゃんは引っかかって仕事の邪魔だって言って買わせてくれなかったよ…」 「そ、そう…情香さんらしいな」 情香ちゃんとは一緒にクリスマスを過ごす、なんてこともしたことないな。 「香澄はクリスマスってこれまで何をして過ごしてた?」 「うー…ん、何してたっけ…  彼女がいたときは一緒に遊んだりしてたんじゃないかな」 「去年のクリスマスごろに僕と二人で出かけたりもしたね」 僕が香澄にサンタの帽子をかぶせたり、クマを持たせたり、あの日初めてメガネを買ったり。 あの頃の香澄は何度訪ねてきてくれても必ず帰っていってしまう存在だった。 まるで帰ってきたような温かさでいつもきてくれるけど、僕の部屋ではない場所へ帰る。でも今は僕が香澄の帰る場所だ。 嬉しくて香澄を後ろからぎゅうぎゅう抱きしめながら、デパートの真ん中の大きなクリスマスツリーを二人で見る。そこだけ吹き抜けで、雪が少し積もってて綺麗だった。 一年前… 「ーーー…。」 思い出した。一年前、あのあとなぜか急に香澄が僕の部屋に泊まるって言い出して、あの日初めて香澄にキスされて……… 「〜〜〜…。」 今度は恥ずかしくなって香澄のマフラーに顔を埋めた。僕なに考えてたんだあれ… 今は香澄とするだけでいちいちドキドキするのに、あの頃は気持ちいいだけでなんとも思ってなかったな… 挙動不審な僕を背中にくっつけた香澄は、マフラーを一度とると僕の首と一緒にぐるぐる巻いて、二人でバランスを崩してよろけながら笑ってた。
続き
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arara1212 · 4 years
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長野市「メタフォール」うまいメシ、よきスタッフ 場所 長野県長野市鶴賀高畑752-8 ホテル メルパルク長野 1F 電話 026-225-7806 ジャンル レストラン(ホテル内) バリアフリー ◯ URL https://www.mielparque.jp/nagano/restaurant/guide/c1.html 駐車場 あり  相変わらず面白くない状況が続いているが、ひとつ良い事が出来た。 マスクが無駄な高騰を気にせずに買えるようになった事が安心といえば安心だ。私は1月末に『こりゃ何かあるな』と野生のカンが働いたので安いうちに手に入れられたが、よそ様はいっ時50枚入りで5000円近い価格で購入された方がいるというからまことに腹正しい。高い在庫を抱えた店舗がいまだにあるようだ。ざまをみろ、とは言わないが少しは溜飲が下がる気もしている。とはいえ、輸入状況にも関連するのでいつまで続くかわからないので、密かに安いマスクを見つけては買い込むという事をしている。  マスク、マスクと書いたがそもそもどこまで感染対策に有効なのか、という事も実証されて久しい。別にマスクしていたところで、感染率が下がることはない。ただ飛沫拡散を防止する効果は確実にあるとの事だから、みながみなしていなければ無意味なある種のマナーと化してしまっている。したがって鬱陶しく暑くるしいのに我慢してつけている。  ただ車にうっかり忘れるなんて事はあるではないか、人間だものそういう事もある。ちょっとだしすぐに出てくるからいいやとコンビニに入ったりすると、にらみつけてくる者がいる。お前の目の前で咳やクシャミをしたわけではないし、絶対にしないからやめろよその怖い顔。と言ってやりたくなる時がある。同調圧力もいいところだ、いい加減にしてもらいたい。   「メタフォール」 ホテルメルパルクに併設されたレストランだ。ホテル中央部のアトリウムと同じく、高い吹き抜けとそこから入る明るい陽射しが心地よい。こちらの高グレードかつ安価なランチバイキングは長野在住の大喰らいどもにとっての聖地ともいえる。しかし、不幸なコロナ禍のためランチバイキングは数ヶ月の間中止に嗚呼 そしてこの度、装いも新たにバイキング風なランチが始まったという。これは喜ばしい、行くしかなかんべ。という事でお邪魔した次第だ。  「メタフォールランチ」1480円 6種のメイン料理から一点選択し、食べ放題のオードブルバー(6種)、サラダバー、ドリンクバー、デザートが搭載される。以前にも似たようなパターンがあった。これだとメインが軽いのでその他がたくさん食べられてよいのだ。 6種のメイン料理とは以下を指す。 ・豚肉のココットチーズ焼き 野菜添えカレー風味 ・海老と旬のお野菜たちのフリット ・パスタアマトリチャーナ バジル風 ・牛スジ肉のステーキ 温野菜添え ・お子様プレート そして様々な逡巡と優柔不断の果てに選んだのは  「豚肉の夏野菜スパイスの効いた黒酢酢豚風」 夏野菜というフレーズにピピピっときた。というのが選択の理由だ。緑、紅、黄のパプリカと夏野菜の王者なすたちをバシっと搭載した酢豚は最高に美味い!カリッとして、粘度高くほどよい酸味と甘味のタレが絡まる豚肉のは最高の仕上がりといえる。  そして6種のオードブルバーとは以下となる。  「県産野菜のレモン煮」 大根、きゅうり、セロリなどの野菜にレモンを加えさっと煮つけたもの。ちょっとしたクセのあるさっぱり味でよかった。  「ラタトゥイユ」 トマト、玉ねぎ、パプリカなどをオリーブオイルで煮込んで煮込んで。これまたシンプルな料理だが美味い。冷たいので余計と美味い  「ブロッコリーとかぼちゃのガーリック風味」 名の通りブロッコリーとかぼちゃのガーリック炒めだ。これはまぁ普通であるかと  「アボカドのサラダ」 アボカド入生野菜サラダ。これも普通。  「豚肉のしゃぶしゃぶ」 豚肉バラ肉の薄切りにシメジ類をさっとしゃぶしゃぶして水菜とともにポン酢をかけて。こういうのを出されると脱帽してこうべを垂れるしかないではないか。  「丸茄子の田楽」 いわゆる油味噌である。世の中にこれほど美味い料理はないと確信するが、さすがホテルレストランはやる事が違う。濃厚な味噌味の上に砕いたナッツをふりかけ、香ばしさと歯ごたえそしてナッツの脂が加わることによって、より複雑な味わいとなる。素晴らしい   基本的に席以外ではマスク着用となる。 幾度かおかわりのためふらふらしたのだが、何度目かのときゴムが取れてしまった。安物はダメだなぁ、といってマスクってもともと安物だしな。片手でマスク押さえながら歩いていたら、スタッフさんが「よかったらこちらをお使いください」とマスクを1枚くれた。さすがホテルマン。このようなよい対応をされると言いふらしたくなるではないか。みんな!メタフォールに走れ!   #長野  #長野県  #長野市  #長野グルメ  #長野市ランチ  #長野市カフェ  #長野ランチ  #コロナに負けるな #좋아요_한국 #좋아요_일본 http://araralunch (メタフォール) https://www.instagram.com/p/CDE8sPzASR8/?igshid=1wes6dii6aw77
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shiatblueperidot · 4 years
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Shadow Huntersの超簡易な相関図
タイトル通りの相関図を作成しました。ちょちょいと説明文を付加します。
■ さえずりとあゆみ
大量の悪魔が蔓延る館を統治する吸血鬼一族、荒木一家の長女がさえずりちゃんです。そして悪魔を浄化させる使命を負っているのが聖都白川王国でありその王族の正統な次期王女があ���みちゃんです。
本来全く以て相容れないふたりですが、荒木一家と白川王国はご近所に存在し、大分前に停戦の調停を行っています。そして近年は自分達にとって脅威になるであろう余所の勢力から自衛できるようになろうということで仲良し同盟になろうという調停も行いました。片方が襲われているときに、本来は敵であるもう片方が相乗りして来ず逆に背後から奇襲を行い援護に入るという不意打ちを狙う奇抜な戦略も兼ねています。
そんな訳でさえずりちゃんとあゆみちゃんは生まれたときから知った顔です。超腐れ縁です(設定上では誕生日も同じなのですが具体的な数値は決めていません!)。2人とも、互いの一家・王国の重鎮クラスが顔を揃える大きな会議に普通に招集されたりします。聖都に吸血鬼、悪魔の集団に吸血鬼討伐者。一緒に紅茶とか飲みながら仲良く喋り合っているのですからかなり変な絵面です。
超余談ですが、荒木家のパパとさえずりちゃんは高価な(しかも突拍子もない)お買い物を突然やってのけるなど家計を逼迫させたりする困ったちゃんですので、館に悪魔が蔓延るとか言ってますが実のところ館の秩序を保とうと日夜奮闘しているのは下っ端や上位の悪魔の皆さんだったりします。
■ しのぶとかなで
人里離れた森の中に潜む忍の里、須藤一族の正統な現族長がしのぶちゃんです。一方で数多の亡霊死霊悪霊が跋扈する半ば広大な墓場めいた屋敷にドンと腰を据える一族が彩藤一家であり、その一家の一人娘がかなでちゃんです。
忍者は人目を忍んだいわゆる隠密行動を得意とします。最前線で力を振るうパワーファイターという位置づけとは少し異なります。死霊使いも本質的には似ており、アンデッドを使役することに長ける一方であまり表舞台で大っぴらに己の物理的な腕っぷしで戦うタイプではありません。故に忍者と同じく隠密めいた行動を取る場面が多いのです。
これら共通点を見出した両一族は、かなり昔から互いの手の内を共有する関係を築き上げてきました。死霊使いは如何に自身の存在・気配を周囲から隠しつつ戦況を有利に持ち込めるか、忍者は遁術の他に周囲の存在をどれだけ上手く操り(=使役)有利な戦い方を行えるかどうか、それぞれのノウハウを共有しながら切磋琢磨してきたのです。その結果として、須藤一族は式神などの使役能力が相当に叩き上げられ、彩藤一族は忍者に追随するほどの動きの素早さを会得したのです。コワイ!
しのぶちゃんとかなでちゃんはこの両一族の末裔で、ご家族ぐるみでのお付き合いがある関係ですから当然ながら幼馴染であり気の知れた仲です。彩藤一家は幽霊屋敷みたいとはいえお上品な屋敷であり、先祖代々室内音楽の演奏を行えるよう楽器の教養を鍛え上げる伝統があります。かなでちゃんはこの関係上色んな楽器をマスターと言える程度に操ることができます(実は指揮者としての技量もあり、それは戦闘に活かせるのですがそれはまたの機会に)。しのぶちゃんも彼女とよく一緒に居るので幼少期に彼女のレッスンにお邪魔して絶対音感を身に付けることが出来たのです。その割に扱う楽器はクラシックなものではなく歪みギターですが。
これも超余談ですが、かなでちゃん一家の「彩藤」という氏はかなり特殊です。通常は「斉藤」辺りでしょう。これはかなでちゃん原作の共同制作者ろろさんから頂戴した資料通りのお名前です。かなでちゃんのおじいちゃんくらいの代の王様辺りが役所に無理くり改名を強引に迫ったという体の感じにしておこうと思います(市役所かどっかの窓口で「彩り豊かな一族にしたいんだワシは!」とか言いながら迫ったのかな…)。
■ さめ
鮫島王国、通称「さめちゃん王国(国民も王族も皆この名前で通しています)」の王族の末裔、その一人娘がさめちゃんです。実は父子家庭という設定があり、これが故にさめちゃんはそよこちゃんにベタベタに甘えに行くという感じです。彼女は次期の頭領であることが既に正式に決定しており、王国としては初の女性頭領だそうです。故にさめちゃんも他の子同様、人の上に立つという重い立場を担っており、民の統治などといった知識や経験を既に有しています。思ったよりオトナなんです。
彼女はさえずりちゃん・あゆみちゃん・しのぶちゃん・かなでちゃんのような誰かとの昔からの繋がりを有していません。Shadow Huntersのメンバーとしては最後に参入(正確には無理矢理に放り込まれた)した身ですから事実上は他の子全員からしても新参です。
しかしお互い身の上は何かと似ていますのでさめちゃんがこのチームに馴染むのに時間は全くかかりませんでした。かなでちゃんと即刻悪友になりました(なんかベクトルが合ったんでしょう)。そよこちゃんのようにめちゃくちゃに甘えることの出来る人に対して駄々こねる際に(迷惑)何かと目的が一致するさえずりちゃんともすぐ仲良くなりました(超迷惑)。
■ そよこ
みんなのおねえさんです。
そよこちゃん始め他のメンバーもみんな一人っ子です。やっぱり頼りになるお姉ちゃんが欲しいという願望はあったようです。さえずりちゃんとあゆみちゃん、しのぶちゃんとかなでちゃんは互いにペアですが、さめちゃんは本当に一人っ子ですから特にその思いが強いです。
20歳とは到底思えない、物凄く大人びた女性のイメージ。とてもおしとやかで優しい。八方美人ではない、誰に対しても本当に優しい。身長が181cmと日本人女性としては大変に長身。黒い帽子を被れば超絶カッコイイ寄りの人物像。親身に相談に乗ってくれる。文武両道。理系。概ね何でも知っている。天は2物も3物も与えた。
こんなおんなのこがリーダーにアサインされたのです。みんな大喜びです。正に願ったり叶ったりのおねいさんです。みんな彼女に懐きます。ごろごろ。
但しそよこちゃんはおっぱいがF(少しGに寄っているかも知れないと当人は危惧しています)であることを茶化されると沸点が極めて低くなります。これに絡みさえずりちゃんはしょっちゅう完膚なきまでにしばかれます。懲りない彼女を見て、他のメンバーはさえずりちゃんを反面教師にしています。
■ その他の繋がり
あゆみとしのぶ:オーディオマニア話をよく行う
さめとかなで:しょーもないイタズラをよく一緒に行う
そよことしのぶ:全員の仲でも特に仲が良い
さえずりとしのぶ:音響工学の話をよく行う
あゆみとかなで:かなではあゆみからよく対戦ゲームの指南を受ける
さえずりとさめ:そよこちゃんの寝床に押しかけに行く(添い寝?)
さえずりとあゆみとそよこ:夜にベランダでよくお酒を飲む
思い付いた限りはこんなところです。
■ 余談:楽器演奏
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彼女達はバンド演奏もやります。上記の通り!
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sorairono-neko · 5 years
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きみのすてきな流行感性
 ロシアへ来てから、勇利は毎日の生活に夢中で、ヴィクトルとゆっくり話す時間がなかった。リンクでも町でもおぼえることが山ほどあるし、新しい人間関係や環境に慣れなければならない。ヴィクトルはヴィクトルで、この時期だからこそできる仕事に駆けまわっているので、話ができるのは、都合があう朝と夜の食事のときだけだった。勇利は、ヴィクトルの身体が心配だった。誰かに会ったり人前に出たりするのが好きなひとだし、楽しんでいるとは思うのだけれど、しかしあまりにせわしないとやすんで欲しくなる。そろそろのんびりできるかなと勇利はぼんやり考えていた。 「勇利、今日、わかってる?」  ヴィクトルが朝食のときに言い出した。 「わかってるよ。テレビの収録でしょ?」 「よかった。おぼえてた」 「ぼくは忘れないよ。忘れんぼなのはヴィクトルじゃない」 「よくそういうことが言えるよね。まあいいけど。すべて英語で話すし、関係者も知り合いばかりだからね。大丈夫さ」  ヴィクトルは勇利にほほえみかけた。 「久しぶりに一緒にいられてうれしい」 「仕事でしょ」 「それでもだよ」  勇利は練習を休み、ヴィクトルと一緒にテレビ局へ出掛けた。堅苦しい番組ではなく、ヴィクトルとその生徒である勇利を招いて談話するというだけの簡単なものだった。短い番組で、ヴィクトルの言った通り英語で構わなかったし、それに司会者も気さくなたちだったので、勇利は安心して話すことができた。時間はあっという間に過ぎ、「じゃあ最後に」と司会者が楽しそうに切り出した。 「お互い、気に入らないところはある? これは直して欲しい、改善して欲しい、というようなものは。まず……ユーリはどう?」 「そんなのあるわけないさ。勇利は俺のすべてを愛している」 「ヴィクトル、君には訊いてないんだ。ユーリ、どうだい?」 「そうですね……」  勇利は考え深そうに口元に手を当てた。 「あの、私的なことでもいいんですか?」 「もちろんだよ! むしろそういうのが聞きたいね!」  司会者は歓迎するように両手をひろげた。 「勇利、俺の日常生活を暴露するつもりなのか?」  ヴィクトルはおもしろそうに勇利の顔をのぞきこんだ。 「ヴィクトル、買い物が長すぎるんだよね」  勇利はヴィクトルの目を見て言った。司会者が大笑いする。 「しかも速いの。あっち見たいこっち見たいあれもいいこれもいいって。疲れるから、ちょっと控えて欲しい」 「そういうのが楽しいんだよ、買い物は」  ヴィクトルが反論した。司会者が訊いた。 「ヴィクトルは普段なにを買ってるわけ?」 「いろいろです。多いのは洋服かな。最近は一緒に買い物はしてないんですけど、たまに行くとすごくて」 「買い物か。そろそろまた勇利と行きたいね。勇利のものを買いたいよ」 「いらない」 「いるよ」 「はいはい、痴話喧嘩は終わってからね。ヴィクトルがユーリに直してもらいたいところは?」 「俺かい? 俺はね」  ヴィクトルは胸を張った。 「勇利ってダサいんだよね、はっきり言って」 「なんで得意そうにしてるの?」 「だからそれをやめてもらいたい。勇利の服は燃やしてしまいたい」 「すぐそういう物騒なことを言う」 「勇利のものを買いたいのはそのせいだよ。勇利、変な服しか着ないからね」 「失礼だな。普通だよ」 「ダサいニット帽かぶってマスクしてるんだよ、普段。信じられる?」 「見たところ問題ない……というより、上品でおしゃれだと思うけどね」  司会者が、勇利のスーツ姿を手で示して言った。ヴィクトルはおごそかにかぶりを振った。 「ちがう。これは俺が選んだんだ」 「なるほど」 「勇利はおしゃれな服なんて絶対だめなんだから。そういうのを買っちゃいけない呪いにでもかかってるのかと思うよ。俺がといてあげようか? キスしたらもとに戻る?」 「うるさいなあ」  勇利はヴィクトルをにらみつけた。 「ぼくみたいな地味なやつが変におしゃれな服着てるほうがおかしいでしょ。不釣り合いじゃん」 「そんなことを言うのか? きみはとても綺麗なのに」 「そういうのいいから」 「頑固でね」  ヴィクトルはどうだというように司会者のほうを見た。勇利は拗ねた。 「何なの?」 「だが勇利、その理論だと、自分ではなくかっこいい者が着るのなら、勇利の感性もダサくならず、ちゃんと容貌に見合うものを選べるということになるね」  ヴィクトルが突然妙なことを言い出した。 「え? いや、そういうつもりはないんだけど」  そんなことを考えて発言したわけではない。勇利はすこし慌てた。 「でもそういうことだろ?」 「そうじゃないよ。ただぼくは、ぼくが地味なやつだって言いたいだけであって──」 「いい男が着るならしゃれたものを選べるんだね?」 「ちがうって言ってるじゃないか」 「もし──」  ヴィクトルは口元を上げてほほえんだ。 「もし俺が着るなら、勇利はとびきりの服を選んでくれるんだね?」 「えっ」  思わぬことを言われて勇利は絶句した。 「勇利なら、俺を超一流の男に仕立ててくれるんだね」 「な、なに言って……」 「俺はできるよ」  ヴィクトルはにやっと笑った。 「俺は勇利を最高にうつくしくすることができる。勇利の魅力は俺がいちばんよくわかってるからね」 「そりゃヴィクトルはそうかもしれないけど──」 「勇利にはできないのか?」  ヴィクトルは嘆くように言った。 「俺を輝かせることができない? 何年も俺を追いかけてきたのに?」 「そ、それは……」 「勇利は俺の魅力を世界一わかってくれてると思ってたんだけど」  ヴィクトルは急にいたずらっぽい顔をした。 「そうでもないのかな?」  からかうように言われて、勇利の闘争心に火が点いた。彼は思わず叫んでいた。 「そんなことないよ!」 「本当に?」 「できるよ! ヴィクトルのかっこよさはわかってるよ!」 「うれしいな。絶対だね?」  勇利は鼻息も荒く、こっくり大きくうなずいた。ヴィクトルはにっこりした。 「聞いたかい?」  彼は司会者に視線を向けた。 「勇利、俺と勝負するってさ」 「え?」  勇利はきょとんとした。 「俺は勇利に合う服を選ぶ。勇利は俺にいちばん似合う服を選ぶ。どっちが相手のことを理解しているか、一対一の勝負だ!」 「ちょっと!?」  勇利はうろたえた。そんなことをするなんて聞いていない。 「俺��勝ったら勇利のダサい服、全部燃やすからね!」  ヴィクトルは片目を閉じて魅力的に笑った。 「勇利が勝ったら──、どうする?」 「ヴィクトル、なに言ってんの?」 「おや? 俺のかっこよさはわかってるんだろう? やっぱり無理なの?」  勇利はむっとした。無理なのかと言われると腹が立つ。もちろんできる。無理じゃない。 「いいよ! ヴィクトルが勝ったらそれで! ぼくが勝ったら──」 「勝ったら?」 「……ぼくの言うこと、なんでも聞くこと!」 「乗った!」  ヴィクトルはおおはしゃぎで手を打った。 「そうこなくちゃ、勇利!」  大変なことになった……。帰宅した勇利は、ソファにつっぷし、ぐったりしていた。勢いで余計なことを言ってしまった。すぐにむきになるのは悪い癖だ。いまさら言っても仕方がないけれど。  結局、ヴィクトルと勇利のおしゃれ対決は、撮影され、テレビ放映されることになってしまった。なんでそうやっておおごとにしたがるんだよ、ヴィクトルは! 勇利は温泉オンアイスのときを思い出した。うかつだった。ヴィクトルがそういう性質だとわかっていたのに挑発に乗ってしまった……。 「勇利、楽しみだね!」  ヴィクトルはずっとうきうきしており、たいへん機嫌がよかった。 「勇利が俺のために選んでくれる服か! いったいどんなものなんだろうね」 「…………」  勇利はうらめしそうにヴィクトルをにらんだ。しかし、自分でうなずいたことなので文句を述べるわけにもいかない。 「すごくダサ���の着せられても知らないからね」 「あれ? 勇利は俺の魅力がわかってるんじゃなかった? かっこよくしてくれるんだよね?」 「…………」  はあ、と勇利は溜息をついた。憂鬱だ……。 「楽しみだね」  勇利はちっとも楽しみではなかったけれど、収録の日はあっという間にやってきた。規則は簡単で、指定された店でそれぞれ相手に似合う服を選び、交換して着て勝負するのだ。勝敗をきめるのはスタジオに集められた観客だ。彼らは、スタジオに設置されたモニタで、買い物をしているふたりの様子を見られるしくみである。  はあ、おなかが痛くなりそう……。  勇利はヴィクトルと一緒に店の前に立ち、例の司会者に「意気込みは」と質問されて「がんばります」と力なく答えた。 「ユーリ、元気がないみたいだね」 「そんなことありません」 「勇利、かっこいいの選んであげるからね!」  ヴィクトルが明るく言った。 「こっちはものすごく元気だね」 「どきどきが止まらないよ! 勇利はいつも俺をときめかせるんだ!」 「のろけが始まりそうなのですぐに移動してもらおう。ちなみにユーリ、今日の服は……」 「ヴィクトルが選びました」  勇利は店に入った。ヴィクトル行きつけの店である。もちろん彼の指定だ。ヴィクトルは別の店で選ぶことになっているので、相手がどんなものを持ってくるかはわからない。 「えっと、こんにちは……」  勇利はおそるおそる言った。雰囲気だけで圧倒されそうなブランド店である。ヴィクトルと出会っていなければ、一生縁などなさそうな店だ。 「いらっしゃいませ」  訓練された店員は、笑顔で丁寧に挨拶した。 「どうぞご自由にごらんになってください。ご質問などございましたらなんなりと」 「ありがとうございます……」  勇利はきょろきょろと店内を見まわした。どれもヴィクトルが身につけそうな、高価そうな服である。この店で選ぶ限り、「ダサいのになっても知らないからね」といったような状況になることはないだろう。 「うんと……」  やっぱりヴィクトルはスーツかなあ、とそちらを見てまわった。でもそれじゃ変わり映えしないのかな、と堅苦しくないものも見てみる。しかし、眺めれば眺めるほど、ヴィクトルならどれでも似合うじゃん、という気持ちになってきて困ってしまった。  これって、結局どれ選んでもすごい服なんだし、ぼくがきめる意味あるのかな……だってヴィクトル全部着こなせる。それとも、やっぱり上と下でちぐはぐになるっていうことはあるんだろうか。勇利はおおいに悩んだ。 「迷ってます?」  ディレクターが笑顔で尋ねた。 「はい。どれも似合いそうで……」 「テーマは?」 「テーマ……テーマは……」  そうか。テーマか。それを考えれば方向性もきまる。勇利は口元に手を当てた。 「……ないしょです」  ディレクターが笑った。  テーマ……。  勇利は店内をぐるっと見まわした。この中から、ヴィクトルに似合うものを選ぶ。そのためのテーマは……。 「……よし。きめた」  選んだ服を抱えて勇利がスタジオに行くと、ヴィクトルはすでに戻っていた。これからそれぞれ相手の選んだ服に着替えなければならないけれど、見てしまってはおもしろくないので、目隠しをすることになった。そこでヴィクトルが「俺が勇利を着替えさせたいし、勇利以外に着替えさせられるのはいやだ」と言い出し、勇利を赤面させた。 「ヴィクトルあのさ、そういうこと言うのよしてよ……」 「ほら、勇利、早く」  ヴィクトルははしゃぎきっている。 「俺、楽しみにしてたんだから。まあ勝つのは俺だけどね」 「はいはい」  勇利はヴィクトルとふたりきりで控え室に入り、着替えにかかった。 「俺からにしようか。勇利、頼むよ」 「はい」  勇利はヴィクトルの目元をタオルで隠し、高級な紙袋から衣服を取り出した。 「ヴィクトル、腕上げて」 「ワオ、これ、なんだか楽しいね」 「楽しくないよ。ほら、こっち通して」 「俺は楽しい。これはシャツ?」 「考えなくていいから。今度は足。足上げて」 「こう?」 「バレエじゃないんだよ」 「あ、これはネクタイ? そうだろう」 「考えなくていいって言ってるじゃん」 「なんだこれ。ふわふわしてるね。ぬいぐるみ?」 「そんなわけないでしょ」  勇利は苦労しながらヴィクトルに服を着せた。ヴィクトルは質問が多かった。最後に長いコートを着せる。こうしておけば、着替えたあとの服がヴィクトルにわからない。 「じゃ、次、勇利ね」  勇利に目隠しをすると、ヴィクトルは鼻歌を歌いながら、手際よく服を着せていった。下着一枚になってヴィクトルに衣服を着せてもらうなんて、なんだか変な感じだ。 「刺激的だろう?」 「思ってません」 「いや、勇利は思ってるよ」 「勝手にきめないで」 「キスしちゃおうかな」 「ばか!」  軽口を叩いてはいるけれど、ヴィクトルの手つきはどこまでも丁寧で優しい。勇利は、まるでいつくしまれているようだと妙なことを考えた。 「うん……、やっぱりいいね……」  ヴィクトルが感慨深そうにつぶやく。 「ああ、早く素顔の勇利でこの服が見たいよ」  その気持ちは勇利にもわかった。  それほど時間はかからなかった。シャツ一枚とボトムスのみだ。ただ、コートを着せる前に、ヴィクトルは念入りに皺を整え、襟元にもふれた。 「……できた。あとは髪だね」  ヴィクトルは手に整髪料を取ると、両手をこすり合わせ、かるく梳き上げるようにしながら勇利の髪を上げた。試合のときよりすこし崩している。幾筋かふわっと前髪が下りた。 「俺の髪はこのままでいいかい?」 「いいよ」 「よし。じゃあ行こうか、勇利」  ヴィクトルがにっこり笑った。 「靴は見えてもまあ仕方ない。でも、できるだけ見ないようにしよう」 「うん」  勇利がヴィクトルの前に靴を置くと、ヴィクトルはそれに足を入れ、それから勇利の足元にひざまずいた。 「さ、勇利、足を上げて」 「え、自分で履くよ」 「いいから」  結局、靴まで履かせてもらってしまった。勇利は赤くなった。  ふたりを迎えたスタジオの興奮は最高潮だった。 「お待たせ。ごめんね、ちょっと着替え以外のこともしてたものだから、時間がかかっちゃって……」 「ヴィクトル!」  意味のありそうな物言いに、観客たちが冷やかすような声を上げた。 「してません! してませんから!」 「おや、勇利、何をしてないっていうんだい?」 「もう!」  勇利が口をとがらせると、ヴィクトルはくすくす笑い、勇利をかるく抱き寄せて、「怒らない、怒らない」となだめた。冷やかしの声がますます大きくなった。 「このふたりに合わせてたらいつまでも終わらないから、さっさと進めようか。じゃあまず、……ユーリのほうから見せてもらおうか? つまり、ヴィクトルがユーリに何を着せたのか、ということだね」  拍手が起こり、勇利は赤くなった。べつに勇利自身に向けたものではなく、ヴィクトルへの拍手なのだろうけれど、なんとなく照れてしまう。 「ヴィクトル、ユーリのテーマは?」 「セクシー&クールかな」  ヴィクトルはよどみなく答えた。セクシーでクールとか、いちばんぼくに似合わないんじゃ、と勇利は不安になった。ヴィクトルの選ぶものはまちがいがない。それはわかっている。しかし、自分がそれに見合う人間かどうかはまた別問題である。 「不安そうな顔してるね」  ヴィクトルが片目を閉じた。 「大丈夫だよ勇利。俺が勇利に似合わないものを選ぶわけがないだろう? 勇利の昨季のフリー衣装だって、俺が全部監修したんだ。綺麗だっただろ?」 「う、うん……」 「みんな、勇利に期待してるよね?」  ヴィクトルが問いかけると、拍手と歓声が起こり、ユーリ、ユーリ、とみんなが呼んだ。勇利はますます赤くなった。 「よし、じゃあ見てくれ。俺の勇利の姿を」  ヴィクトルが声高に宣言すると、司会者が自分を指さした。 「ヴィクトル、司会は僕の役目だから。取らないでくれ」 「失敬」 「では……、セクシー&クールなユーリをどうぞ!」  ヴィクトルが勇利の後ろに立ち、コートをするっと脱がせた。勇利は舞台の中央から、どきどきしながら会場を見渡した。自分の姿を見る勇気はなかった。モニタも見られない。 「勇利、もっと堂々として! 氷の上に立ったときみたいに!」 「む、無理だよ……」 「ポーズをきめて!」 「無理だって!」  みんながロシア語で何か言っている。似合わないって言われてるんじゃ、と勇利は不安になった。しかし、女性たちは笑顔だし、男性も好意的だ。 「ユーリ、みんなはね、『かっこいい』って言ってるんだよ」  司会者が教えてくれた。勇利は、ほんと? というように観客を見た。また彼らが騒いだ。 「今度は『かわいい』だって。かっこいい姿でそういう顔をされると母性本能をくすぐられるのかな」 「でもごめん、勇利は俺のだからね」  すかさずヴィクトルが笑いながら言い、勇利はようやくそろそろと視線を動かすことができた。モニタに映っている自分の姿をじっと見る。ヴィクトルのことだから、いかにも高価だとわかるものを選ぶのではないかと思っていたのだけれど、そんなことはなかった。飾りけのない真っ黒なシャツと細身のボトムス。それに、白くて細い線がわずかに入った黒い革靴だった。ただ、型はおそろしくしゃれていて、かたちがいかにも洗練されている。生地はやわらかく、極上の感触だった。 「どう? 俺の勇利。うつくしいだろう?」  ヴィクトルが勇利に寄り添い、得意げに言った。みんなが拍手しながら笑っている。同意しているようだ。勇利はみじめな気持ちにならなかったのでほっとしたが、それでも言いたいことがあったので急いで口をひらいた。 「で、でも!」  観客たちが静かになる。 「ヴィクトルはもっとかっこいいので!」  勇利の言葉が通訳されると、みんなは楽しそうに手を叩いた。司会者が言った。 「会場の雰囲気はヴィクトル優勢だが、確かにヴィクトルならなんでも着こなせるからね。難しいところだな。しかしこの勝負、ちょっと複雑だね。うつくしいほうが勝つんじゃなく、似合うように着飾らせたほうが勝つわけだ」 「でも勇利の感性だからな」  ヴィクトルが楽しそうに言った。 「本当にすごいんだよ。ダサいんだ。バンケットのときに着てたスーツなんてもう最悪」 「ヴィクトル、そういうのいいから!」  勇利がまっかになって怒ると、ヴィクトルは笑いながらコートの合わせ目に手をかけた。 「じゃあ、見せてもらおうかな。俺もすごくわくわくしてるんだ。だって、勇利が俺のために服を選んでくれるなんて初めてだからね」 「そうなのかい?」 「そうさ。俺がコーチとして最初に帯同したときだって、何を着て欲しいか訊いたら、ひとこと『普通でいい』とこうだよ。ああいうのがいい、こういうのが好きだという言葉は聞いたことがない」 「だってヴィクトルはなに着ても似合うから……」  それじゃあぼくがヴィクトルに興味ないみたいじゃないか。勇利はほっぺたをふくらませた。 「わかってるよ。勇利が俺を愛してるのはね」  ヴィクトルは勇利の耳元にささやいた。彼のきざなしぐさを見て、観客からまた冷やかしの声が上がった。 「もう、そういうのほんといいから!」 「わかったよ。じゃあ俺のいとしい勇利が選んでくれた服をお披露目しよう」 「ユーリがきめたテーマは?」  司会者に尋ねられ、勇利は頬をほんのりと赤く染めた。 「……『大人』です」 「では、『大人』のヴィクトルをどうぞ!」  ヴィクトルがコートを脱ぎ、後方へほうり投げた。彼はすらっとしていながらも逞しい、すばらしい身体つきで舞台の真ん中に進み出ると、姿勢よく、品格のある姿でまっすぐに立った。勇利は思わず両手で口元を押さえた。想像よりずっとかっこいい、と思った。 「おやおや、これは……」  司会者の言葉が途中で途切れた。ヴィクトルも何も言わない。勇利は最高にかっこいいと感激したけれど、ヴィクトルが黙っているので、よくなかったのかとうろたえておずおずと口をひらいた。 「あ、あの……、ヴィクトル……?」 「…………」 「だめかな……?」  ごく普通のうすいブルーシャツに黒みを帯びた赤のネクタイ、濃い灰色のスラックス、そして──シャツの上に着ているのは、スラックスよりも明るい灰色のカーディガンだった。 「あ、あの、ヴィクトルはよくスーツ着ててすごくかっこいいんだけど、もうちょっとくつろいだ感じになるのもいいかなと思って。正装がクッソかっこいいのは知ってるけど、ヴィクトルのこういう姿は見たことないし、絶対似合うって、そう……」  勇利は急いで説明したが、話しながら、だんだん頬が熱くなってきた。いつも優雅で高貴なヴィクトルが、カーディガンだなんてよくなかっただろうか。かっこうよいと思うのだけれど。 「……だ、だめかな。だめですよね。あの……」 「すごくいい!」  突然ヴィクトルが声を上げた。勇利はびくっとした。それに応えるように観客たちがうなずく。 「これいいよ、勇利!」  ヴィクトルが勢いよく振り返った。勇利は戸惑い、ぽかんとして、「そ、そうですか……」としか言えなかった。 「すてきだよ。確かにカーディガンを合わせたことはない。初めてだ」 「そう……?」 「勇利は最初からこうしようときめてたの?」 「迷ったんだけど。カーディガンの代わりにセーターとかベストとかでもいいかなって……」 「それもいいね!」  ヴィクトルは笑顔で言い、気取った姿勢をとって勇利を見た。 「どうだい、勇利。似合うかい?」 「う、うん……すごく……」  勇利は両手を握りあわせ、夢見るようにヴィクトルをみつめた。 「……いいと思う」 「みんなはどうだい?」  ヴィクトルがはしゃぎながら両手をひろげた。誰もが褒めるように歓声を上げる。勇利はすっかりうれしくなった。 「あ、あのさ、これは腕を見せるのもいいんだ。袖をまくったときのヴィクトルの腕の感じが絶対にかっこいいから、腕まくりもしてもらいたいなって。だってヴィクトルの腕って筋が入ってて男っぽくて、もうすごいから」 「出たね、勇利のヴィクトル大好き病が」 「いいじゃん! ちょっとめくってみてよ」 「しょうがないなあ……こうかい?」 「そう! それ!」  勇利はヴィクトルのすばらしくかっこうよい姿を堪能し、満足だった。やっぱりヴィクトルはどんな姿でもすてきだ、とうっとりした。 「じゃあそろそろ、勝負をきめたいと思うんだけど」  司会者が笑顔でうながした。勇利ははっとした。そうだ。ヴィクトルがどれほどかっこうよいかを鑑賞する会ではない。これは勝負なのだ。 「洗練された黒を着こなすセクシー&クールのユーリと、初めて我々にカーディガン姿を披露してくれた大人のヴィクトル。さあ、よく見て。見蕩れすぎちゃだめだよ」  司会者が会場に向かって尋ねた。 「みんなは、どちらがより相手に似合っていると思う?」 「──うれしいけれど悔しいね」  勝ったのは勇利だった。つまり、ヴィクトルの姿が評価されたのである。 「なんだか複雑な気分だよ」  ヴィクトルはそう言いながらも結局はうれしそうだった。 「オレは勝ったんだろうか、負けたんだろうか」 「負けたんだよ」  司会者に言われ、ヴィクトルは楽しそうに声を上げて笑った。 「でも、みんな、勇利も似合ってただろ?」  大きな拍手が起こり、勇利は照れてぺこぺこと頭を下げた。 「しかしひとつ疑問がある」  ヴィクトルが指を一本立てた。 「勇利……、俺のテーマの『大人』って、いったいどういうこと?」 「え?」  勇利はきょとんとした。 「これって大人のするかっこうなのかい?」 「いや……よくわかんないけど……なんとなく……」 「なんとなく!」 「大人っぽいでしょ?」  ヴィクトルは大笑いし、勇利のことを抱きしめた。 「いちゃついてるところ悪いけどね、ヴィクトル、負けたからには約束は守ってもらうよ」  司会者に言われて、ヴィクトルは大きく肩をすくめた。 「わかってるよ。勇利の服を燃やすのはなしだ。勇利、こんなにいいものを選べるんじゃないか。これからは自分のことにも意識を向けて欲しいよ」 「ヴィクトルのだから考えられるんだよ。自分はいいの」 「これだ」 「それよりヴィクトル、ユーリの望みをかなえてあげなきゃ」 「ああそうだ。うん、なんだい? 四回転、練習で何度も跳んで欲しいとか?」 「それはべつにここで勝たなくてもやってもらいます」 「厳しいんだよ」  ヴィクトルは観客に向かってぼやいた。勇利は改まった態度で言った。 「ヴィクトル、なんでも言うことを聞いてくれるって言ったよね」 「こわいな。俺が恐妻家だということがみんなに知れ渡る瞬間だ」 「……貴方、そろそろ仕事は楽になってきた?」  突然の勇利の質問に、ヴィクトルはきょとんとして瞬いた。 「……そうだね。もう落ち着くんじゃないかと思うけど」 「やすめそう?」 「ああ、大丈夫だよ」 「ヴィクトルはぼくといたら癒やしになる?」 「もちろんだよ。なぜ?」 「だったら……」  勇利は微笑を浮かべ、ヴィクトルの腕をとって彼にもたれかかった。 「……ぼくとデートして。一日じゅう。それがぼくのおねがいです」  ヴィクトルが目をみひらいた。観客たちが、ふたりを祝うように騒ぎ立てた。ヴィクトルは「ワーオ……」とつぶやき、それから勇利を引き寄せて耳元にささやいた。 「一日って、零時までってことかい?」 「それはべつに、そのときの状況によるけど……」 「なるほど」  ヴィクトルは神妙な顔をしてうなずいた。 「朝まで一緒にいてもいいってことだね」  勇利は間もなく、望み通り、ヴィクトルと朝まで一緒のデートをした。ちゃんと約束を守ったよ、という証拠として、ヴィクトルはうれしそうにデート中の写真を公開した。それは、勇利の選んだ衣服を身に着けているヴィクトルと、ヴィクトルが改めて選び直した服──シャツにネクタイにベストという、ふたりそろえたような服を着ている勇利が並んだ写真だった。  それから、シャツにネクタイにカーディガンという服装がしばらくロシアでは流行した。
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kahi-kohi · 5 years
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旅する珈琲 Vol.4
さてさてどうしたものかな、とサーチャー氏は首を傾げました。 友人の待つ北の街に向かっていた列車が、途中の小さな駅でどうにも立ち行かなくなってしまったのです。 この雪じゃあね、と車掌さんが帽子をあげ、申し訳なさそうな顔になりました。 「しかたがないですよ」 その帽子にはこんもりと雪が積もっています。 サーチャー氏がそこに視線を移したものですから、車掌さんは気恥ずかしそうに苦笑いして帽子を脱ぐと雪をはらいました。きっとさっきまで外で雪かきをしていたのでしょう。 ふわふわのマシュマロのように見えますが、こういう雪は指にくっついてとても冷たいものなのです。サーチャー氏は気の毒に思う気持ちと感謝の気持ちでいっぱいになりました。 「除雪車が来てくれますから明日には動くでしょう。でもとにかく今日はこの駅で足止めです」と車掌さんが言います。 「駅の近くには宿もありますから、温かいベッドで眠れるはずです。そちらへどうぞ」 「ありがとうございます」 サーチャー氏は丁寧にお辞儀をしました。それから「車掌さんや機関士さんたちはどうするんですか?」と尋ねます。 この列車の乗客はサーチャー氏をいれても3人ほどです。ほとんどのお客は1つ手前の大きな駅で降りてしまっていました。 3人くらいなら小さな駅にある町の小さな宿でも泊まれるでしょうが、この列車を動かしている人たちは車掌さん以外にも機関士や運転士たちといった鉄道員が何人もいるはずです。 車掌さんはちょっと驚いたように目を瞠ってから肩を揺すって笑い出しました。 「さあさあお客さん、私たちのことは心配せんでもいいんです。どのみち私たちは列車から離れるわけにはいきません。でも冬のたびにあることですからね。駅舎には毛布もストーブもあります。慣れていますよ!」 サーチャー氏は「そうですか」ともうひとつお辞儀をして客車を降りました。
空からはしんしんと真綿のような雪が降り続いています。 サーチャー氏はマフラーをしっかり巻き直して毛織りのコートの襟を立て、駅から出ました。 振り返ると鉄道員たちが雪かきをしている姿が見えます。丁寧に列車の雪を払っている姿は頼もしいものでした。 遠くに除雪機関車の汽笛が聞こえてきましたから、確かに明日には動けそうです。 無理しなくてもいいのになあ、とサーチャー氏は思いました。クリスマスまでには間に合うようにたっぷりと余裕を持って列車に乗りましたから2、3日遅れたところでどうということもありません。 けれど、すぐに思い直します。 隣の客車に乗っていたえんじ色のコートを羽織った背の高い紳士は、小脇に大きなぬいぐるみを抱えていました。もしかしたら彼は出来るだけ早く家族のもとに帰りたいかもしれません。 サーチャー氏の友人はいい大人ですから、サーチャー氏の訪れが少し遅れたところでお土産話がひとつ増えたくらいに思ってくれますが、ぬいぐるみを待っているのが小さな子供ならそんな風には思えないでしょう。子供の世界はいつだってとても小さくて大切なものばかりで、はち切れそうなのです。 きっと、列車を動かす人たちはそういうことがよくわかっているのです。だからあんな風に懸命に雪を除けてくれているのです。駅はいつだってそんな人たちの群像劇で溢れているのですから。 サーチャー氏は鉄道員という仕事に改めて深い敬意を抱きました。幸せを運ぶ人のことをサンタクロースと呼ぶのなら、彼らだって立派なサンタクロースに違いありません。
そんな風に考え事をしていたせいでしょうか。サーチャー氏はいつの間にか小さな町の外れに出てしまっていました。 真っ白な雪景色の木立がずっと向こうまで続いています。 (おやおや) いつのまに駅前の通りを過ぎてしまったのでしょう。もしかしたら宿屋のあるほうと反対側へ歩いてしまったのかもしれません。雪の日というものはいろんな感覚を不思議な方へと引っ張ってしまうので油断は禁物です。 急がないと夕暮れになってしまいます。引き返そうかと思いましたが、もう少し歩いた辺りの木立の影に、ちらりと家の灯りが見えました。 他に家らしきものはありません、ぽつんとひとつだけ小さな屋根が見えます。窓には灯りが点っていました。 サーチャー氏はその家で少し温まらせて貰おうと考えました。 何故って、その家の窓辺の灯りがとても素晴らしく居心地良さそうに見えたのです。洋燈の光以外に赤や緑や金色の小さな灯りがきらきらしていて楽しそうです。そんな風に窓辺を灯りで飾っている家の住人がひと嫌いであるなんて思えません。 サーチャー氏は雪に滑ったりしないよう慎重に、けれど足早に近づいて行って扉をノックしました。とても古風な石造りの家ですが、扉は綺麗で明るい緑色です。 「すみません、こんにちは!」 扉はすぐに開きました。 「こんばんは、いらっしゃい!」 なかから出てきたのは驚いたことにトロルでした。サーチャー氏は目を瞬きます。トロルはふつう南の国にいるものです。こんな雪深い町に好んで住んだりしません。とても寒がりなのです。 「ははあ」 トロルはサーチャー氏の顔を見てにこにこしました。 「僕がトロルなので驚いているんですね! 僕は変わりもので、南の国と北の国と行ったり来たりしているんです。さあさあお入り下さい。旅の話を聞かせて頂けるなら、美味しい晩ごはんと温かい寝台がご用意出来ますよ!」 もちろんサーチャー氏は大いに感激してトロルの招待を受けることにしました。
 「僕はチョコミントロルのフォラステロといいます」 トロルは自己紹介しました。 なるほど毛並みはチョコレート色ですし、鼻の色は爽やかなミントの色あいです。 「僕は一年の半分をカカオの農園で過ごして、もう半分をこの辺りの森で過ごすことにしているんです。何しろいい香りのミントの葉がつめるのでね!」 フォラステロは素晴らしく滑らかなホットチョコレートにマシュマロをたっぷり浮かべてくれました。 ひと口飲んだだけで体の内側からぽかぽかしてきます。 「こいつは凄い」 サーチャー氏は冷えた鼻先までかっかとしてくるので驚きました。 「そうでしょうそうでしょう」とフォラステロは得意そうです。 「最高の金色のカカオで作った特製のホットチョコレートです。唐辛子を少し入れるんです。冷えた時にはこいつが一番ですよ!」 それからフォラステロはとても美味しい料理を次々に振る舞ってくれました。 カカオで煮込んだ肉料理はスパイスとカカオの良い香りがして柔らかく美味でしたし、添えられていた芽キャベツとジャガイモはちょうど良いゆで加減でほくほくでした。鱈とリーキのスープも思わずおかわりをしてしまうほどの美味しさでした。 デザートはもちろんチョコレートのケーキです。 濃いチョコレートが染みこんだ生地にキルシュに漬けたさくらんぼが挟まっていて、生クリームと一緒に食べるのです。 サーチャー氏は大喜びで、「御礼に、ぜひ君に珈琲をご馳走したい」と申し出ました。 一緒に食事をして打ち解け、すっかりくだけた物言いになっていました。 「このケーキに最高にあう、おすすめの珈琲豆があるよ!」 サーチャー氏が旅をしながらあちこちで集めてきた鞄一杯の珈琲豆は、生の豆と焼いてあるものと両方あります。どちらも大切な友人へのお土産ですが、旅の途中で良くしてくれたひとたちにいれてあげることはちっとも惜しくはありません。そんな話をこそ、友人は喜んで聞いてくれるはずだからです。 フォラステロは大喜びでした。 サーチャー氏が丁寧にいれた珈琲の香りにミントグリーンの鼻をひくひくさせて、「やあこれは素敵な香りだぞ!」と手を打ちます。 それから何かに気付いたように、ぱっと明るい顔になりました。 「君はなんて素敵な珈琲を持っているんだろう。これは僕がいた国の珈琲だね!」 もちろんそうなのです。料理を食べながらカカオ農園の話を聞いていたサーチャー氏には、それがどこの国のことなのかわかりました。大小の島がいくつも集まって出来ている国です。海に囲まれ、濃い緑と濃い色の花とたくさんの動物たちがいる国です。そこでは果物と一緒にカカオがつくられていますが、珈琲もたくさんつくられていました。 サーチャー氏は友人から貰った愛用のポットで珈琲をたてながら片目を瞑ってみせました。 「君さえ良かったら、僕がこの珈琲豆を手に入れた島の話も聞いてくれないかい」 「もちろんだとも!」 フォラステロは身を乗り出して、にっこり笑いました。 それから少し茶目っ気のある顔になりました。 「その前に、ちょっとした提案があるんだ」 「なんだい?」 「ゆっくり君の話を楽しむ前に、珈琲を飲んで体を温めてから、僕の家の大きな魔法瓶にホットチョコレートをいれて、駅に差し入れにいかないか。そろそろ本格的に冷え込んでくる時間だろう?」 サーチャー氏はびっくりしました。 それはまさしく、「そう出来たらいいな」と思っていたことだったからです。 ホットチョコレートを飲んだ時、頭に浮かんだのは雪まみれで働いている鉄道員たちのことでした。彼らがこの素晴らしいホットチョコレートを飲むことが出来たら、どんなに喜ぶだろうと思ったのです。 「どうしてわかったかって顔をしているね」 フォラステロはミントグリーンの鼻を得意そうに動かしました。 「簡単だよ。僕はトロルだから君が『いいやつ』だってことはすぐわかる。そして君は食事の時にどうしてこの町に来たのか話をしてくれたね。その時、列車の車掌さんや鉄道員さんたちの話をしてくれたろう。彼らの帽子の上に積もった雪のことや、ぬいぐるみを抱えた紳士のことも」 フォラステロはにっこりと笑顔になります。 「『いいやつ』の考えそうなことはたいてい決まってるものなんだ。だから僕はホットチョコレートのちょっとした配達を提案してみたってわけだよ!」 サーチャー氏はすっかり感激してフォラステロの手を握りました。 「嬉しいな! 君はなんていいひとなんだ」 「僕らは『いいやつ』同士ってわけだね!」 気に入った冗談のようにふたりは笑い合いました。 そうときまれば善は急げです。 サーチャー氏のいれた香り高い珈琲を飲みながら、ふたりは大きな魔法瓶を用意し、特製ホットチョコレートをたっぷりと入れました。それから、サーチャー氏が鉄道員たちの珈琲をいれて別の魔法瓶にいれている間に、フォラステロはベーコンとチーズとチコリのサンドイッチを手早く作ります。それをチョコレートのケーキの大きな塊と一緒に布に包み、ついでに林檎のジェリーボンボンもおまけにして支度はすっかり出来上がりました。
ふたりは荷物を持ち、コートを着込んで夕闇に沈んでいく雪の世界に足を踏み出しました。 「心配はいらないよ!」と、帽子を被ったフォラステロがカンテラを持って笑います。 「このカンテラは特別製なんだ。僕の一番の友達が、僕が決して迷わないようにって火と水と鉄で作ってくれたものなんだ。友達が願いを込めて作ってくれたものはいつだってそのひとを守るものだよ。知ってるだろう?」 もちろんサーチャー氏にも分かります。サーチャー氏もそういうものを大切に持っているからです。
2人は雪降る夜の中に歩き出しました。雪は相変わらず静かに落ちてきていましたが、お腹のなかが温かいせいで、あまり寒さは感じません。一面の雪景色でしたが、道がわからなくなるようなこともありません。ふたりは北の国の歌と南の国の歌を2つづつ歌い、そうしているうちにちゃんと駅に着きました。 駅と列車の周りでは幾人もの鉄道員たちが総出で線路の雪かきをして働いています。 彼らは、サーチャー氏とフォラステロからの思いがけない贈り物に大層驚き、歓声をあげました。 小さな駅舎のなかにはストーブがありましたから、鉄道員たちはみなそこに集まり、寄せ集めた大きさの違うカップでホットチョコレートを飲みました。ふわふわの雪に覆われた手袋の下の冷たく固まってしまった指先も、ホットチョコレートが溶かしていきます。あっという間に体中が火照ってくることに、鉄道員たちは驚いたように顔を見合わせました。非常用の冷たいパンと薄い豆のスープでは物足りなかったお腹も、フォラステロのサンドイッチとチョコレートケーキ、サーチャー氏の珈琲で満たされました。 鉄道員たちは嬉しそうに目を細め、いくにんかは目尻を拭っていました。とても寒いときに温かいものを体に入れると、じんわりと涙が滲むものです。それは天国のように幸せな心持ちなのです。 みんなチョコレートや珈琲をおかわりしていました。 カップを両手に持ち、「ああ温かいですねぇ」と白い髭の機関士さんが目を細めます。 「ありがとう。お二人のご親切でお腹も心もとても幸せです」 口々に御礼を言いながら幸せそうに溜息をつく鉄道員たちに、トロルとサーチャー氏もすっかり満たされた気持ちになって顔を見合わせました。 「そう言って貰えて、僕らもとても幸せな気分です」 「幸せはいつだってお互い様で、かわりばんこですからね」 フォラステロが哲学者のような顔で言うと、みんなの間に優しい笑いが零れました。 黒い眉毛の機関士さんは逞しい胸を叩き、「こんな素晴らしい贈り物を貰ったのだから、一晩中だって私たちはあの列車のかまどくらいに赤々と燃えて頑張る事ができますよ! 今度は私たちがお客さんに幸せを贈る番です。かわりばんこです!」と言いました。
 駅舎を去るころには雪はすっかりやみ、夜空には満天の星が広がっていました。これならば明日は列車も動きそうです。 フォラステロは「明日、君の見送りに一緒に駅へ来るよ。その時に魔法瓶を持って帰れば良い」といい、ホットチョコレートと珈琲のはいった魔法瓶を鉄道員たちのために二つばかり置いてきました。 「ねえきみ、僕は今日とても素敵な友人を得たよ」 「奇遇だね、僕もそう思っていたところだよ!」 サーチャー氏とフォラステロは握手をしてうなずき合いました。
 新年を迎えたらお互いの友人も連れて4人でお祝いをする約束をして、サーチャー氏は翌日、もっと北の街へと出発しました。 きっとあちらでは友人のロースター氏が首を長くしてサーチャー氏の訪れを待っていてくれるに違いありません。珈琲豆も土産話も新しい友人のことも喜んでくれるでしょうけれど、ロースター氏が何より喜んでくれるのはサーチャー氏の元気な姿です。 サーチャー氏はかたんかたんと揺れる温かい列車の��かで帽子を顔に下ろして微笑み、短い眠りについたのでした。
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sakyowonder · 5 years
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糺の森ワンダーマーケット2019 10月27日開催!
左京ワンダーランドpresents 糺の森ワンダーマーケット2019
日時:2019年10月27日(日)9:00〜16:00 会場:下鴨神社 糺の森 (〒606-0807 京都市左京区下鴨泉川町 59) 入場無料/雨天決行(荒天の場合11月10日に延期) ================================ 「糺の森ワンダーマーケット」とは、左京ワンダーランドの大祭り。2019年も、この大祭りを左京区の特別な場所「糺の森」で開催します!この素晴らしい森に包まれ、心穏やかに賑やかに、そして豊かに過ごす貴重な1日。左京区で活動する個性的なアーティストや店主たち、また左京��繋がったアーティストや店主たちも駆けつけ、多種多様なおもしろヤバ素敵な出来事が溢れる楽しくカオスな空間は真に左京ワンダーランド!「左京から繋がる終らないお祭り」秋の左京ワンダーランドもお楽しみに! ================================ ◆左京ワンダーランド公式WEB(糺の森ワンダー2019の項目で紹介) https://sakyo-wonder.com/ ◆糺の森ワンダー2019のFacebookイベントページ https://www.facebook.com/events/375517956690215/ 下のようなフライヤーの配布と、左京ワンダーMAP2019秋号の配布も始まっておりまーす。どこかでお手に取っていただければ〜。 そして、このフライヤー画像の下に、糺の森ワンダー2019のエリア・出店・出演・パフォーマンスの皆さんをザザザっと紹介しております。
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★糺の森馬場会場 西側の北からエリア・出店紹介 ——————— 左京ワンダー presents お皿だ恒星
喫茶ホーボー堂(お􏰉はぎ、お弁当) ナチュラルフーズ ドングリ(オーガニック食品) 古道具店呱々(古道具) toya(金工アクセサリ) Us Vintage IMPERIAL(USA雑貨、古着) elin&soleil(帆布鞄、布ナプ) まえだのドーナツ(ドーナツ) ビンタン食堂(アジア料理) 仔鹿(ワイン提供)
——————— 虹色パンダ presents スピカ
虹色パンダ(ケーキ) 古道具ツキヒホシ(古道具) aima(靴、ヒーリング) 森のようちえん どろんこ園おやこ会(輪投げ) 菜食印度カレー いなほ屋(カレー) Terra(草木染衣) ムスヒテラス(整体) 水本旬代 潜在数秘術カードセッション(スピリチュアル) 若石リフレクソロジー きよみん(足ツボ) ほしのすけ(占星術) みーtooLabo(紙雑貨)
——————— ホホホ座 presents 星空ぶっちぎりエリア! ホホホ座浄土寺店(本、CD、雑貨、お菓子) マヤルカ古書店(古書) 恵文社一乗寺店(本) シュクル(布小物、パン雑貨) FOLK old book store+スケラッコ(本、雑貨、サイン会) POP.POP.POP(ZAKKA) niwa(雑貨) (本)ぽんぽんぽんホホホ座交野店(古本、雑貨) 100000tアローントコ(中古レコード) 102(焼菓子) 島光(米、麹、南印度カレー) swiss coffee,plants(焼き菓子、ドリンク) チプカとプクチカ(服、雑貨、紅茶葉)
——————— caffè micio presents ワープゲートTADASU
caffè micio(コーヒー屋) 木下実験室(テンペ・惣菜) Yomomacha(山のリース、農産物) ablabo.(食用オイルの販売) 山の薬膳ごはんよもぎ(カフェ、薬膳ご飯) ハッピー太郎醸造所(発酵食提供) タローベーカリー(パン、焼き菓子) 栗本家具工房(木工) psycho  channel(グッズ) フランク菜ッパ(野菜、加工品) HUMAN LOVE(酵素ジュース販売)
——————— 左京ワンダー presents 相撲かみ芝居ビッグバン! (バラエティ・ステージ)
ターケン(紙芝居) ごっちゃんこ(相撲) こっきり(音楽) マジカル エミ(magic show)
——————— suzmenba presents 糺のワンダーステージ
スズメンバ 賢いユリシーズ トンチトリオ and More…
——————— 左京ワンダー presents 宇宙五丁目
AVRIL(糸、キット) りてん堂(紙モノ雑貨) Routes*Roots(衣類、雑貨) あかつき写房(写真雑貨) aco wrap(キッチン雑貨) アンジーナ(スキンケア) トリバザール(生活雑貨) 23 fumi(Jewelry) コーヒーとパン otimo(パン屋) cafe dining mArk(カフェ) ぐるぐるかふぇ(ケバブ屋) 三代目カレー舎、NANDI。(カレー屋) fabbrica(雑貨販売)
——————— 左京ワンダー presents ギャラクシーギャラクシー
棘屋(サボテン) 失われた時間と百年の孤独(煮込み等) 金曜カレー(カレー) 天然酵母パンPirate Utopia(パン) スリランカカレー地球号(カレー屋) 山福(特製オムライス) くらしごと(雑貨) ままや(飲食、雑貨) asian chample foods goya(沖縄そば) 中川酒店(焼鳥、ポーク玉子おにぎり)
——————— Peace flag presents ムルカ菜祭マーケット
Peace商店(雑貨、食堂) 富屋(漬物、味噌、軽食) つくだ農園(大原の有機野菜) 水田家の食卓(菓子農産加工品) ヒトテマ(カフェ) Fon Din(タイ料理) このちから(WS、書籍販売) アネキノ(food、sweets) ハトエビス(手つくり品販売) ぼっかって(自然農) 糀qotoriya(糀販売) ‘apelila(パン、焼菓子) 生活クラブ京都エル・コープ(ジュース、菓子他) パタゴニア京都(食品販売)
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★糺の森馬場会場 東側の北からのエリア・出店紹介 ——————— やまのは presents ジャコビニ流星群
やまのは(コーヒー) 小麦小店(焼き菓子) 瀬口航日(珈琲屋) 花屋にち(植物) 四月の魚(ホットドッグ) 濵口商店(パン屋、昭和レトロ雑貨) ぷくわらい(発酵食品、おやつ) 旅する布 yattra(旅、布、雑貨) アカツキコーヒー(コーヒー、焼き菓子) メメントモリ(カフェ) ダルマワークス(雑貨) uskabard(アクセサリー) 世界文庫(古書、雑貨) 世界文庫アカデミー(お菓子) maktub&Co.(陶磁器の販売、ポートレート撮影) △sui(雑貨) komame(真鍮アクセサリ) アレクサンダー・テクニーク屋(体の使い方) 助産師Obiの会@Kyoto(妊婦さん育児相談) 穀雨食堂(雑貨) ハーブティーcocecco(茶葉)
——————— すみれや presents 惑星サバラン すみれや(乾物、雑貨) Au Bon Miel(はちみつ店) 美し山の草木舎(野草茶販売) キッチンハリーナ(ごはんや) 米農房そまねこ(お米、野菜、お菓子) 上野藤右衛門(こんにゃく販売) 朽木まるきゅう(無添加和菓子) ウエンダ・アラヤファーム(無農薬野菜) はまさき農園(無農薬野菜) 大見新村プロジェクト(雑貨、農産物) うまし漁村の会(乾物) ことりね(農産物加工品)
——————— モアレ presents 水金地火木土天モアレ
モアレ(ナイスの森) このえのこ 妃屋(マクロビ&ナチュラル sweets+drink) om niv o rou s(Objects) 日の出PRODUCTS(生活雑貨) iplikten(雑貨、アクセサリー) HELLOAYACHAN(アクセサリー) まてりあほるま(古物) ●hiwa☆(菓子)
——————— 左京ワンダー presents ペガサス彗星
たこ焼きみはし屋(無添加たこ焼き) ガラムマサラ(カレー) 音吹畑(野菜、ハーブ、ハーブティー) 喫酒菓子三茶(酒のアテ焼菓子) くすのきなぎさ(陶器アクセ、雑貨) キッズTシャツ􏰀と雑貨 Flipps(雑貨) LOCAL~baking treats~(焼き菓子) カッチャン工房(手作り楽器) Cosmic Family(アートクラフト) VINA SANTI エスニックザッカアンドイリョウポカラ(衣料) oeufcoffee(コーヒー屋)
——————— Frau Pilz presents 火星人とキノコ
Frau Pilz(ドイツのお菓子) SPORE(きのこ本、雑貨) ナカガワ暢(雑貨) mushroom_room(布雑貨) よこづな文庫(バッグなど諸々) Watte chai(チャイ、スパイス) KIJIRUSHI(雑貨) まゆらう(雑貨、Tシャツなど) tani house(布物雑貨、似顔絵) 岡田染工場(染色雑貨) ものつくりびと 京都(限界封筒工作室) よくわからないもの しいたけダンス
——————— 左京ワンダー本部 so-zai capra  a.k.a. BTC八木 (生ビール、酒、ワイン、ワインワークショップ)
——————— AOW presents 青い空と白い月
AOW(タイ料理) greenpeace_farm(農作物) JUANA(カフェ) 出町座のソコ(カフェ、カレー) 花m(雑貨) 菊屋雑貨店(雑貨) tuki-izumi(ワークショップ) いろんな国の雑貨と衣料RAKUDA(アジア雑貨衣料) はいのわ(洗剤) インドカレーじぶちゃん(カレー屋) 茶楽園(お茶たい焼き) cafe home(お菓子)
——————— ビオチェド presents 底抜け宇宙船 ビオチェド(洋服、器、雑貨) のんびり家(衣類、雑貨) MYHOUSE 山の麓の雑貨と喫茶(焼き菓子、雑貨) 工房カモ(オリジナル手ぬぐい、雑貨、衣類) 道草屋(ナシチャンプル、自家製お塩) KINOTO-乙Co.,Ltd.(陶芸作品) パxセxリ(刺繍もの) Tik(ヒマラヤ水晶、アクセサリー、チャイ) ナ��イロつーしん(木版画、雑貨) あまいろ探偵団(ミツロウラップ) warung roti(パン、珈琲、チヤ) chill no ki(ろうけつ草木染めの衣類、雑貨)
——————— タコとケンタロー presents 銀河急行、再び発車します!
タコとケンタロー(たこ焼き) 町家サロンふ和り(マッサージ) gorey(パスタ屋) 焼きそば専門 オーライ!(焼きそば屋) 靴磨屋circus(靴磨き) 山ぐるみ(ぬいぐるみ) 3mitts(アクセサリー) 元橋みぎわ(アクセサリー) 地球の幸せを夢みるバク(カレー) ビニョ食堂(韓国料理) モンゴルパン(ホットサンドイッチ) café TIGER(まぜそば)
——————— 左京ワンダー presents スペース宇宙
食堂souffle(カフェ) ヨコシマ珈琲(珈琲) ilsou(帽子、アクセサリー) Omatsu(イラスト、紙雑貨) STOCK(器屋) SOAPHEADS(天然素材石鹸) みやざき眞・じゃむんち(木工) 珈琲焙煎所旅の音(コーヒー) LITTLEWONDERS(ハーブティー) 菓舗カワグチ(菓子) ゆるマクロビ屋台 naturemian(スパイスカレー) 焼肉屋いちなん(飲食店) カフェウルクス タイカレー専門店アオゾラ(タイカレー屋)
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milkteabonbon · 4 years
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十一月後半日記
11/16
今日は結婚記念日。休みを取っていたので家でゆっくりスープを炊いた。朝市で買ってきたかぶらと���羽先をことこと煮て出来上がり。ほろほろに崩れた鶏肉がおいしかった。午後は馴染みのケーキ屋で一人二つのケーキを選んで食べる。
11/17
モヘアは明日届くらしい!うきうき。帰りに綿買おうかな。グロウラーも入れてみたい。でもそうすると「にぎやかなお友達」になっちゃうなあ。少し考えておく。
11/18
さっそくモヘアを切り抜いた。もうこの時点でかわゆい。二体分切ったので結構時間がかかってしまった。さてさて明日から縫製です。
11/19
毛まみれになりながら縫い代の毛をカット。実は裁断のとき、ものすごく頭痛とくしゃみが出るのよね。アレルギーか?ともかく作業は進めるのであった。デュアルデューティのハンドキルティング、意外と色展開が少ない。仕方ないので薄めの色の生地は肌色っぽい糸で縫っています。デュアルデューティはシャキシャキして絡みにくく丈夫なのでおすすめです。
11/20
やっと金曜日にたどりつけたわ。明日はお教室があるので早く寝ますたぶん。もう眠いもの。
11/21
午前はシェービングサロンに行きました。保湿頑張ってるね!この調子!とお褒めの言葉をいただく。顔剃りするとお化粧の持ちも良くなるし化粧水をどんどん吸うようになるし大オススメです。午後はキャンドルレッスンで大きいのと小さいのを二本製作。教室の中がすっかりクリスマスムードになっていました。
11/22
ふと家人に「キャンドルを飾る棚が欲しいなー」と話すとしばらく部屋に引っ込んだあとひょいとあらわれ「こんな感じ?」と設計図を見せられる。ホームセンターで材料を買っておうちで組み立て。ステインを塗るところだけ手伝いました。なかなかおしゃれで良いではないか!
11/23
針仕事を進めねば、と生地と格闘。レッスン用のクロスに刺繍もしたいんだけど、時間あるかなー。薔薇のつぼみを散らしたい気分。つまり赤毛のアンですね。昨日仕込んでおいたクッキーを焼いたり、花の手入れをしたり。
11/24
そろそろシュトレンを買いに行こうとデパ地下情報を調べる。このお菓子も近年定着してきましたね。アドベントが始まる前に買いたい。
11/25
モヘアって縫いにくいところと縫いやすいところがある気がする。さくさく針が刺さると気持ちがいい。今はボディを縫っています。四枚はぎ初めて。ぬいぐるみを作り始めるととにかく早く顔が見たくて夜なべしてしまう傾向がある。(ただし小さい子除く。彼らはちまちましているため途中で休憩期間が必要なのです)
11/26
シュトレン買いました!一本は多いしどうしようかと思ったらカット売りがあるんですね。色んなお店のを四枚買いました。主日に一枚ずつ食べるぞ。キャンドルもあるし今年はクリスマスの当たり年。
11/27
急に在宅勤務に……。しかし、あさイチで宮本浩次が出演していて大喜び。転職してからはじめての在宅ですがオフィスにいないと出来ない仕事ばかしなので、とりあえずいつも使っているExcelの整備をするなど。
11/28
編み物欲とテディベア欲を戦わせています。アンの帽子、絶対今冬中に編みたい。しかしテディベアは〆切まであと一ヶ月。黙って綿を詰めています。ガラスペレットよりステンレスボールかな。腕の中でずっしり重い子が好き。
11/29
第一アドベント。昨年作ったクリスマスリースを押入れから引っ張り出したり、小さなツリーを飾ったり。お楽しみのシュトレンはショコラ味をアッサムCTCのチャイとともに。
11/30
ミトンはZoom編み物教室にてマジックループで編む方法を教わったので今冬中に出来上がりそうです。(一生出来上がらないかと思った)一目ゴム編みが8段編めたらまた!
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gallerynamba · 1 year
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◇Vivienne Westwood(ヴィヴィアン・ウエストウッド)◇2023年秋冬新作帽子が入荷致しました。 2023年AUTUMN&WINTER最新作 【PIGMENT DYEING HAT】 定価:8,800円(税込) 素材:コットン100% カラー:ヴィンテージブラウン×ベージュ サイズ:M~S 頭周り:約 57.5cm、高さ:約 8cm、ツバ:約 7.5cm ※アジャスターで約57.5cm~約55.5cmまで調整可能 ヴィンテージの風合いを出すために顔料染めをした布地を使用したバケットハット。 ヴィヴィアンらしい、インサイドアウト(裏返し)デザインに仕上げています。 ブリム部分(つば)は生地を2枚重ねて縫うことでハリ感があります。 男女兼用で御使い頂けます。 弊社は正規取扱店で有り、勿論未使用、新品です。 ※ご覧頂いている媒体により、色の見え方が多少変わる場合がございます。 Gallery なんばCITY本館1F店 〒542-0076 大阪府大阪市中央区難波5-1-60なんばCITY本館1F 【営業時間】11:00~21:00 【休館日】10月無休 【PHONE】06-6644-2526 【e-mail】[email protected]
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2ttf · 12 years
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see also How to Edit a Glyph that is not listed on iFontMaker
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snk-u · 6 years
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プリンストン大学訪問
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1/19の土曜日、朝一でボストンを出て名門プリンストン大学に向かった。ハーバードからプリンストンまで263mile(430kmぐらい)で東京-京都(460km)ぐらいある。ほぼマサチューセッツ州から出たことがない(むしろケンブリッジ市からすら出ない)私にとって、久々の遠出であった。
経路としてはボストンからNYまでバスで行き、そこからNJ Transitという電車に乗り換えて、Princeton Junction駅まで向かう。ボストンのSouth StationからNYの中心まで、Peter Pan Busを使えば片道$25(日によって変動)で4~4.5hで到着する。バスは結構広々としてて、無線LANと電源も使え、トイレもあり、頻尿の私も安心・快適だった。
ところがNYにつき、Penn StationでNJ Transitに乗り換えようとするも、どこに乗り場があるのかわからず迷子に。結果的に一時間後の一本後の電車に乗ることになってしまった。新宿駅でJR構内で探していたのに、実は乗るべきは新宿小田急だった、みたいなことを想像していただければわかりやすいと思う。PennからPrincetonまでだいたい1hで、$14だった。こちらもトイレが付いていて、頻尿の私にはうれしい。
大学時代の後輩夫妻が駅まで迎えにきてくれて、そのままプリンストン大学に直行し、ラボを見学させてもらった。建物はとても綺麗で天井が高く研究に集中できるような環境が整っていた。研究所の建物の入り口は天井が高くあってほしい(低いと気が滅入る)という持論があるので、まさしく理想の研究棟であった。そして、トイレもとても綺麗であった。トイレの綺麗さは研究業績に直結するという持論もあるので、こちらもまさしく理想通りだった (アメリカだとトイレがボロボロのケースが多い。TOTOはもっと北米で仕事してほしい。)
土曜日であったが、ラボスペース(いくつかのラボが仕切りなしで相乗りしている)では結構な数の人がハエをせっせとチューブからチューブに移し替えたり、クローニングっぽい作業をしたりしていた。後輩が最近飼っている(ハエは飼っているでいいのか?笑)ハエのコレクションをいくつか顕微鏡で見せてもらい、ハエのgeneticsに使われる表現系について簡単なティーチングをしてもらった。遺伝研時代に同じ棟の4Fに住んでいたハエマイスターのT氏に色々と教わった以来で、やっぱりおもしろいなぁと思いながら見入った。成虫はいいんだけど幼虫がねぇ...と思いながら、エタノールになってる幼虫の山を見て少しゲンナリする。
ハエの餌も見せてもらったが、以前かいだよりも独特の匂いがしていた。隣のラボの人からも匂いが違うと言われたことがあると言っていたので、何かの配分が違うのだろうか。とにかく、ハエのgeneticsは本当によくできていてうらやましい。そして染色体の本数が少ないのも、クロマチンイメージング屋としてはうらやましい限りだ。
プリンストンにはハエの大御所ラボがたくさんあるらしく (僕はMike Levineしかしらないんだけど...)、昔仕入れた単語であるfly pusher(ハエの研究者の事)にとって天国だねという話をしたらfly pusherってなんすか?という顔をしていた。fly pusherってハエ業界共通の言葉じゃないのかな...???
その後、僕の希望でプリンストン美術館に行って、色々と探索して後輩の家にお邪魔した。プリンストンはアメリカでも屈指の美しさを誇る大学と呼ばれているようだが、本当に美しく、こういう静かな場所でポスドクをやりたかった、と正直羨ましく思った (まぁハーバードはハーバードでいいところもある。)
後輩が、唐揚げ欲求に毎日押しつぶされそうになってyoutubeをひらいては他人が唐揚げを食べる動画ばかりを見て、youtubeをおかずに飯を食う私を不憫に思い、唐揚げをつくってくれた。他にも色々と出してくれて本当に最高の夕食となった。後輩はアメリカにきて二年弱でCellの姉妹紙にこの前論文をpublishしたのでそのお祝いをした。怪物くんはどこにいっても怪物くんであり、自身の研究人生の初期に一緒に研究できたのは幸運だったなとおもう。
最近、夫婦共々料理を結構やっているという話をしていたので@naotaco氏が執筆した至高の傑作本たちを普及しておいた。驚くことに、奥様は@naotaco氏のサークルの後輩だというではないか。世界は狭い。そして、kindleで買えるのは超便利だね。久々に日本語で話すと話はとまらず、PM5:00ぐらいから���めた夕食もいつのまにかPM11:30になっており、奥様に促��れる形でホテルに戻った。ホテルも快適で(一部屋$100ちょっと、二人で泊まれば一人$50なので、一人だとちょっと割高)、最高だぜ!という感じ。
二日酔いもなく、朝起きて、ボストンに帰る準備をしていると、 問題は起こった。 コーヒーを飲みながらtwitterを見ていると@MIT_museumが何やら不穏なツイートをしている。「今日は悪天候のためお休み���ます。」 おいおい、外はvery fineだよ?気温も0度ぐらいだし、と思いつつ、gmailをチェックするもバス会社からのメールは無し。念の為、Peter Pan busのウェブにいくと「今日のNYからマサチューセッツ便は全部キャンセルになりました。」と一言書いてあった。な、な、なんだって!!!と思い、すぐさまPeter Pan busにコール。メールはまだマシだが、英語の電話は未だに全然ダメなんだよなと思いながら繋がるのを待っていると「あなたは48番目のキューに追加されました。お待ちください。」のありがたいお言葉。いやいや、えええ?と思いながら、翌日、月曜日のNY初ボストン行きをチェック。いくつかの路線でSOLD OUTが既に出ていたので速攻、お昼の便を購入する。
せめて、キャンセルするならメールぐらいはくれよ... peterpan busの説明を読み進めていくと、スケジュールの変更なら差額出すだけでOKだけど、キャンセルの場合はいかなる理由があってもrefundはできない!の一点張り。いや、そっちがキャンセルしたんじゃん...しかも、変更したければ電話かメールフォームのみ。メールフォームで送ったとしてもどれぐらいの速度で対応してくれるのかわからない(かつ日曜日)ため、泣く泣く新規購入した (まぁ$25なら心は結構穏やかです。) 新規で買った後に、一応refund please的なメールを送っておいたが、しばらく経った今も返信すらない。どうなってるんだ...
まぁ格安バスはそんなもんかな。そんなこんなでプリンストンにもう一泊する羽目になってしまったため、後輩夫妻と買い物にいったり、プリンストンで一番おいしい飲茶を食べに行ったりした。飲茶美味しいんだけど一品一品の料理名などは未だにわからず。白い米で作った膜みたいなのにエピが入ってるやつは無限に食える。夜はメチャクチャ寒くなったため、ホテルで適当に論文を読んで過ごした。 実はアメリカでは1/21の月曜日はキング牧師の誕生日ということで祝日だった。アメリカの祝日は日本と比べてとても少ないので、ラッキーだった。朝一でPeter Pan busのウェブをチェックすると「今日は気合い入れて走らせてもらいます!」的な文章があったのでホッとした。後輩がホテルに来てくれたのでコーヒーを飲みながらいくつか研究のことについて話し合って帰路についた。 が、記録的な寒波でNYも-13度に達していた。Penn Stationからバス乗り場まで歩いて15min程度なのだが、死ぬほど寒い。途中のCVSでこういう時のためにと準備しておいたユニクロウルトラライドダウンをインナーとして着込み、解決。「NYでRed Soxのニット帽をかぶってるやつは怖いおじさんたちに路地裏に連れていかれる」という迷信など構っている余裕はなく、全身防寒でなんとかNew York Times本社前のバス乗り場までたどり着くことができた。帰りは隣のお姉さんがカイロをくれるなど、かなり破茶滅茶な弾丸プリンストンツアーであったがとても楽しむことができた。今シーズンはこれまで全く雪が降ってなかっただけに、なんとも運が悪いな、とヘトヘトになって帰宅した。
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shnovels · 6 years
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新しい住人について
 この冬、二人暮らしを始めた。  親元を離れて、一人暮らしの期間が長かったものだから、どうやって二人で暮らしていくのかということに不安があったけれど、始まってしまえばなんでもない。生活というのはその場の人間に合わさるように出来ているのだと、つくづく思う。  二十五歳で二人暮らし。順調な生活具合だ。世間一般に言うまっとうな人生、そういうものに似ている。  いつものようにすぎるはずだった日々に、あるいはなんてことのない生活に、人と人の化学反応が起きれば、そこには記憶が生まれていく。これがそのうち思い出になったりするのだろうと思うと、どこか面映ゆくなる。同居人の存在をそばで感じながら巡っていく日々は、いつかなんでもない映画のようになっていくのかもしれない。  大切なことを言うのを忘れていた。  同居人の名前は、ギブソン・レスポール・スペシャル、イエローという。  身長は62センチメートル。体重は3キログラム。  普段は大人しめの黒い衣服を脱ぐと、それはそれは眩しいばかりの肌が見える。光が反射してイライラするのでケースにしまいっぱなしだけれど、黒ずくめの人間が部屋にいるのは、それはそれで威圧感がある。不審者と一緒に暮らしていたら、こんな気分なんだろうか。  一緒に生活しているのに同じ食卓を囲まないなんて、と、この前の休日の夕食の際は、一緒にテーブルについてみた。  「いただきます」までは済ませたけれど、作ったキーマカレーを口に含んだ瞬間に耐えられなくなった。  傍から見たら、ギター眼の前に置いて、食事をつまらせるおかしな人間だっただろう。いや、実際にそれ以外の何者でもないのだけれど。  話しかけるようにしてみたこともある。観葉植物に話しかけるとよく育つみたいな噂と同じ要領でやれば、少しは二人暮らしらしくなると思ったのだ。 「元気?」  当然返事はなかった。  一緒に暮らしている人に元気かどうかは尋ねないということに気がついたので、やめた。  冗談はさておき。  今の私の部屋には、ギターがある。  それなりに重い、整理しづらい物体が、一人暮らしの1LDKに存在するときのことを考えてほしい。当然急に押し掛けてきた来客に寝床なんて用意していないから、どこかに重ねたり隠したりもできない。悩んだ末の結論として、ギターは作業机の隣、曖昧に空いていたスペースの観葉植物を押しのけて座っている。  本当に邪魔だ。  特に掃除をしているときは酷い。休日、掃除をしているときに動かない旦那さんを前にした奥さんというのは、こういう気分なのだろうかと思う。  でも旦那さんはホコリをかぶらないし、いくらものぐさでもどけと言ったら動くだろうし、まだマシな気がする。と、わざわざ動かして床のホコリを掃除して、少し乗っかったホコリを拭く度に思っている。週に1度は掃除をしているから、まあそこまでひどくなることはないのだけど。  すっかり習慣として身について、今では土曜日の朝が来ると勝手にハンディクリーナーを持ち出すこの体は、毎度こまった同居人にため息をつくことになるのである。これでいて、勝手に音楽の一つでも流してくれたら良かったのだけれど、残念ながらギターは勝手に鳴ったり、メロディを奏でたりしない。ただそこにあるだけで、自分を使う人が現れるまで、ただただ沈黙し続ける。果たして待ち人が誰なのか、その答えも分かってしまっているから、余計に気まずい。  つまるところケースから出されることもなく、ただオブジェとして置いていかれるだけのそのギターは、部屋の片隅を彩ることもなく、ただただのっぺりとした印象だけがそこに存在している。招く人もいないからよかったけれど、これで部屋に遊びに来る人がいたら「ギター弾くの?」と質問されることは間違いないだろう。なにせ見逃せない程度に大きいから。そのときのことを考えて、私は勝手に冷や汗をかいているわけだ。  彼女――もしかしたら彼かもしれないが、あまり男性と二人暮らしをしているとは考えたくないから、私はこのギターのことを女の子だと思うことにした――がやってきたのは、もう一ヶ月も前になる。  ある日の朝、突然彼女はやってきた。正確には「運ばれてきた」のだけど。  二日酔いが残る朝方に、インターフォンの音で起こされたと思ったら、寝ぼけている間に玄関に大きな箱が広がっていた。何も覚えがなくて開けたら、そこには彼女がどんと構えていたわけである。これにはびっくりした。なにせ箱の中身にも覚えがないとは思わなかった。調べてみたらたしかに深夜の購入履歴が残っていて、確かに注文はしていたらしい。全く記憶がないのだけれど。  その前の日は会社の送別会で、職場でも親しい年の近い人たちしかいなくて。大きな仕事が終わって、一段落ついて。つまり酔うためにはもってこいの条件だったわけである。質が悪いのは、無事に家についた途端平気だと思い込んで――何なら足りないと思いこんで――貰い物のワインを開けてしまったことで。あっという間に真っ逆さま。気がついたら見に覚えのないギターの解説ページと、注文を知らせるブラウザの履歴が、新品そのもののギターと一緒にニヤニヤと私に笑いかけていたわけである。  そのときすぐさま|追い出して《返品して》やらなかったのは、今思えば失敗だった。圧倒的に合理的なその行動を取らなかったのは、私がこの同居人にどこか責任のようなものを感じていたからかもしれない。買ってしまったのは事実なわけだし。高価なものを何度も行ったり来たりさせてしまったら悪いし。もしかしたらキャンセル料とか取られるかもしれないし。  そういった憶測と役に立たない感傷をいくつも並び立てて、調べもせずに考えるふりをしている間に、一般的な返却期間は過ぎていき、キャンセルのボタンが注文詳細から消える頃にはすっかりギターはこの部屋に馴染んでいた。日々目にするものへの慣れというのは恐ろしく、いつの間にかずっと前からそこにあるような、そんな顔をしているように私には見えている。  酩酊した私が丁寧なことに購入していたアンプとピックは機能していて、音は鳴る。それだけは一応確認した。それ以来、一度も触っていない。やらない理由はいろいろあって、例えば防音はどうだとか、教材をどうしようかとか。いくらでも正当な理由は並べられた。それでも置きっぱなしにしてしまっているということ――つまりやらない決断をすることが、やる決断をすることと同じぐらい難しいことを思い知らされているわけで。  一年ぶりに夏紀に出会ったのは、鳴らすこともないのにしまい込むことも出来ないそのギターを、まるで自分のように持て余していたときのことだった。 ★  私も二十五年生きてきたわけで、様々なものの実在を確かめる経験があった。  嬉しくない誕生日だとか、 特別じゃないクリスマス。捨てられないCDとか、そういうものだ。大人たちが語るそういった哀愁の匂いが取れないものを子ども心に笑っていたはずの私は、いつのまにかその実在を確かめては、手触りの感触を記憶するようになってしまっていた。  「何をやっているのかよくわからない友人」なんてものが存在するということもわかったし、高校時代にあれだけ近かったはずの夏紀が、いつの間にかそういう立ち位置に落ち着いていることもあるのだとわかった。あの頃と気持ちの距離感は変わっていないはずなのに、彼女を取り巻くものだけはいつも移り変わっているから、好きだったバンドの数年ぶりの新譜に手を付けるときのような不安が、彼女を前にするとやってくる。  たまたま駅で見かけた彼女は、そのときはギターケースを背負っていて、それ自体は大学生の頃から見慣れた景色だった。土産屋の邪魔にならないような隅にいるのも彼女らしい。あの髪色も柔らかな目もあまり変わっていなくて、ただ違うのは、彼女が見たこともない女の子二人に囲まれているということだ。  囲い込まれていると言った方が正しいかもしれないその様子は、傍から見ると微笑ましいような、そうでもないような、しかしただ対等ではないことだけはわかった。夏紀を見つめる目にはそれぞれ羨望が乗っているのがよく見えた。駅を急ぐ人たちも、心なしか彼女たちを避けて通っているよ���に見える。午後四時の京都駅に在っていい雰囲気じゃなかった。  話し込んで気づかない夏紀達の横をなんでもないように通りながら、彼女に気づかれないぐらいの距離に立って、様子を見守ることにした。頼まれてチケットを買った大学の同期のコンサートが、休日を無駄に過ごしてしまったと少しでも思ってしまうようなものだったから、このぐらいの時間のロスはいいだろう。後ろからじゃ彼女の表情は見えないが、別に見えなくてもよいぐらいには、親しいと自負している。  夏紀は渡されたCDにサインをしていて、それが彼女がやっているインディーズバンドのものなのだろうということには想像がついた。 (CDって持ち歩いているものなのかな)  素朴な疑問を持て余しているうちに、夏紀は一人になっていた。曖昧に手を振る方向にさっきまでいた女の子二人がいるのが見える。彼女たちが夏紀の方を振り向かなくなって十分経った所で、彼女の肩の力が抜けていくのが見えた。わかりやすい力の抜け方を見ながら、少しだけ生まれた悪戯心のまま、彼女の背中に近づく。夏紀がマスクを付け終わるのを待ちながら、花粉症だったかどうかまでは忘れてしまったことを思い出した。 「久しぶり」  後ろから声をかけると、力の抜けた肩が強張るのが見て取れる。俊敏な動きでこちらを振り向くと、私だとわかって安心したのか、少し大きく息を吐いたのがわかった。 「希美」 「お疲れ。どうしたの?」  私が省略した主語を恐らく理解した彼女は、しかしそれには答えず、腕時計で時間を確認した。大学時代からつけているものだとわかって、私はやっと本当に目の前の彼女が夏紀なのだと安心する。確か、優子からプレゼントで貰ったもののはずだ。 「このあと時間ある?」  曖昧な記憶が一致していくのを確かめている私に、夏紀は少し籠もらせた声で答えた。 「あるよ?」 「じゃあお茶しない?久しぶりだし」 「いいよ」  頷いた私に、夏紀は安心したように笑った。 「自意識過剰だってわかってるんだけどね」  そういいながら鬱陶しそうにマスクを外す夏紀は、至って健康体だった。花粉症じゃないという私のおぼろげの記憶はまちがっていなくて、つまりそれは変装のためのものだった。 「大変だね」 「ありがたいことなんだけどね」  そう言いながら力を抜いて椅子に寄りかかる彼女は、この至近距離で見ても、あまり変わったところを見つけられなかった。いつかの冬の彼女と同じように、夏紀はその髪の毛を下ろしていた。あのときからずっと変わっていないような気がして、すこし怖くなる。いつの間にかあの頃に取り残されてしまったような、そんな気がして、慌てて違うところを探す。彼女の目の前に置かれた紅茶とミルクレープを見出して、なんとか安心した。 「よくあるの?」  私の質問に、夏紀は苦笑いで答える。 「メジャーデビューもしてないバンドで、そんなによくあったら大変だよ」 「そうなの?」 「三ヶ月に一回もないはずなんだけど、ここのところ連続してて」  そういう彼女が嬉しく思っているのは、鈍いらしい私でもわかってしまう。友人の��直じゃない幸福をどう扱ってやろうかと考えていると、目線に意図が乗ってしまったらしい。夏紀は私から目線をそらして、取り繕うように紅茶を口にした。 「熱っ」  その様子に、からかう言葉を投げかけられるほどみっともなくはなかった。高校の頃よりずっと自覚的になった意地悪さを、私は急いでしまいこんだ。 「じゃあバンド続いてるんだ」 「お陰様で」 「なにそれ」  笑いながら、ひどく安心した。夏紀の席のとなりに立てかけられたギターは、生きているような、そんな感じがしている。同じようにケースに入っているはずなのに、私の家で黙ったままのあいつとは、あまりにも違う。 「久しぶりだね」 「一年ぶりぐらいだっけ」 「もうそんなになるのか」 「前、いつだったっけ」 「なんだっけなぁ」  夏紀が考え始めた隙を見て、頼んだカフェラテを口にする。てっきり甘いものだと思っていた舌が、苦味に驚いたのを隠しながら、自分の記憶を取り戻そうと躍起になる。 「前、みぞれが帰ってきた時じゃなかったっけ?」 「そんなになるっけ」  喫茶店のロゴの入ったカップをテーブルに戻しながら、夏紀の奥にいる家族のパスタを見つめる。カレンダーを出すのはなぜだか冷たい気がして、私は記憶の景色から季節を当てる。 「去年の1月だよ」  言葉にして引っ張り出すと、曖昧にぼやけていたはずの記憶が引きずり出された。 「思い出した。雪降ってて、優子が帽子被ってた」 「なんでそんな細かいとこ覚えてるの?」 「どうでもいいことってよく覚えてるじゃん」  夏紀の疑問を解決したふりをして、哀愁に浸るふりに勤しむ。 「もうそんなになるのかぁ」 「今年は私が都合つかなかったからね。そういえば、誕生日おめでとう」  誕生日はもう一週間前で、つまり今年ももう終わりだった。自分の部屋で一人で迎えたそれよりも、ずっと嬉しい気がした。 「ありがとう。もう25ですよ」 「私もですけど」  口を抑えて互いに笑い合う。特別じゃない誕生日も、祝われれば嬉しいもので、何気ない拾い物をした気持ちだった。目を細めて笑っていた夏紀は、ふと気がついたように私に向き直った。 「今日夜空いてる?ご飯奢るよ。大したことじゃなくて悪いけど」 「えっ、いやいいよ。ご飯は行きたいけど、夏紀の誕生日私何もしてないし。普通に食べに行こ」 「まあまあ、じゃあ来年覚えてればなんかしてくれればいいよ。こういうのはタイミングだし」  そうやって笑う夏紀は、本当になんでもないように人に与えるのが得意だ。一生敵わないんだろうな、なんて考えながら、それでも引き下がるわけにはいかない。私の曖昧なプライドもあるし、何よりなんか、悪いし。 「でも」 「ご飯以外でもいいんだけど、私ができることってギターぐらいしかないし」  そういいながら、夏紀は隣にあるギターケースを引き寄せた。その手に、あることを思いつく。 「じゃあさ、夏紀に頼みたいことがあるんだけど」
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fushigilabyrinth · 2 years
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囚われた竜がいる街
昔々、あるところに囚われの竜がおりました。海の底のような紺碧の瞳を持った、とても大きな黒い竜でした。その竜は城壁に囲われた街の真下にある陽の光も届かぬ地下空洞で、鎖に繋がれて囚われておりました。 どうして囚われているのか、その街の人々にはわかりませんでした。なぜならその竜が囚われてからすでに何千年もの時が過ぎてしまって、誰もが竜を捕らえた理由を忘れてしまったからです。でも一つだけ伝わっていることがありました。それは「この竜を逃がしてはいけない」という言い伝えでした。どうしてなのか、どういう経緯なのか、何一つわからないけれど、この竜を逃すな。それが竜が囚われた街に住む人々の決まり事でした。 ある日、一人の子供が竜に供物を捧げに来ました。竜に供物を捧げることは、この街においては神さまに祈りを捧げることと同義でした。 やって来たその子供は菫色の髪を帽子に押し込めた、黄金の瞳を持った少年でした。見るものすべてを暖かく照らし出すように、少年の瞳は太陽の輝きを内側に宿していました。少年はその瞳で竜を見ると少しだけ悲しそうな顔をして大切に抱えていた一輪の薔薇を、そっと冷たい地下の地面に置いて竜に捧げました。竜はその様子を青い瞳で眺めていましたが、それだけです。もう何千年と松明と蝋燭の灯りだけで照らされる暗くて狭い地下空洞にいるのですから、竜はほとんど眠ったようになっていて反応らしい反応を示すことはなかったのです。少年はそのままじっと竜を見つめていましたが、半刻ほど経つともと来た道を名残り惜しそうに帰っていきました。 竜の前には、ありとあらゆる供物が捧げられていました。世界中から集められた珍しい絹の織物や不可思議な香料に、華美な装飾が施された箱いっぱいに収められた眩い宝物の数々。角と体格が立派な雄々しい闘牛に、どの馬よりも速く戦場を駆ける駿馬。天国に一番近いと謳われる南方の島々から取り寄せた極彩色の鳥と花々。そして極めつけは艶やかに着飾った見目麗しい生きた人間。 竜に捧げるものの価値が高ければ高いほど、願いが叶うと言われていたため竜の前には本当に色々なものが折り重なっておりました。けれど、どれも竜の瞳に映ることはありません。竜は遥か昔からずっと、重い鎖に蝕まれた微睡みの中で何も見ず何も感じず、ただ長い時をこの地下で生きているだけでした。死んだような生。だからこそ、竜の瞳に何かが映ることはなかったのです。 数日後、再びあの少年がやって来ました。今日も胸元に一輪の薔薇を抱え、それをそっと竜の前に置きます。祈ることもなければ、願いを語ることもなく、少年はただただその黄金の瞳で竜を見つめて、そしてまた名残り惜し気に帰っていきました。 そんなことが何度か繰り返されたある日、少年はいつものように薔薇と共に竜のもとへとやって来ました。薔薇を地面に置き、竜を見つめる。それはこれまでと何ら変わりない行動でした。けれど、今日はそのあとに続きがありました。 少年は一歩、踏み出しました。いつもはまるで見えない壁でもあるかのように捧げた薔薇より向こう側には行かなかった少年が、その壁を越えて竜のもとへと歩みます。目も眩むような財宝と、かつてそれはそれは誉れ高い栄誉に浴したであろう何かの死骸の合間を、誘われることもなければ臆することもなく突き進んで少年は竜のそばへと向かいました。そうして、ようやく供物の山々を越えて辿り着いた先で少年は竜に触れました。 触れた掌から、竜のぬくもりが伝わってきました。それはとても低い温度でしたが、確かに生きている温かさでした。滑らかな黒い鱗から伝わる、人間の体温よりも低いそれ。けれど、少年を安心させるには充分なぬくもりでした。 少年は何度も竜の鱗を撫でては、愛おしそうに眼を細めました。そうしていつもよりもずっと長い時間、そうやって竜を撫でて過ごしました。まるで壊れ物に触れるように少年は竜に触れていました。触れるうちに少年の指先は冷たくなってゆきます。少年よりも竜の体が冷たいせいでした。冷え切った鉄に触れると体温が奪われてしまうのと同じ原理です。しかし少年は、自分の体温が冷たい竜の体に奪われて馴染んでゆくことがとても喜ばしく思えました。自分の一部が、それがたとえ体温だとしてもこの美しく雄大な生き物の一部になっている。そう思うと、少年は嬉しくて仕方ありませんでした。 その日以降、少年は薔薇を捧げた後は時間が許す限り竜を撫でました。鱗は黒く艶やかで、けれど透かして見ると限りなく透明な不思議な色合いを持っていました。そんな鱗に覆われた竜の巨体に時には頬を寄せ、時には両手で抱きしめて少年は竜に触れ続けました。 そうして月日は流れ、少年は一人の立派な青年へと成長しました。帽子に押し込めていた菫色の髪は獅子の鬣のように豊かに長く伸び、風に靡くと紫炎が揺れ燃えている様を彷彿とさせます。か細い苗木のようだった体は逞しく育ち、まるで昔の神々を刻んだ彫刻がそのまま生きて歩き出したようでした。顔立ちには幼かったころの面影がありましたが、やはり随分と大人の男の顔になって、所々に酸いも甘いも知った荒々しさが垣間見えます。けれど両の眼窩に納まった黄金の瞳はあのころと同じ太陽の輝きを宿し、優しく暖かにその瞳に映るすべてを包み込んでいました。 少年だった青年は、かつてと同じように一輪の薔薇を胸元に携え竜のもとへとやって来ました。少年だった昔と何一つ変わらずに、青年はずっと竜のもとへ通い続けていたのです。薔薇の花を捧げた数は、もうわかりません。とにかく、たくさんの薔薇を青年は竜のもとへ来るたびに捧げ、そうして愛おしげに竜を撫でては名残り惜し気に去る。その繰り返しを続けてきました。ずっと微睡みのなかで揺蕩っている竜は青年に対して何かしらの反応を示すことは一度もありませんでしたが、それでも青年は構いませんでした。 青年は自分が竜へと向ける感情が愛であることを、このころには理解していました。大人になってようやく自分の感情に名前を付けて整理することを覚えたからです。初めて竜へと供物を捧げたあの日、青年はこの竜に恋をしました。地下へと続く長い長い階段を下りた先、松明と蝋燭の灯りだけで浮かび上がる巨大な何か。重々しい鎖に繋がれ囚われた黒い竜。薄っすらと開いた瞼の合間から海の底の色をした瞳で地下を眺めているのに何も見ていないことがわかるほど微睡みの中にいるその姿に、青年は子供ながらに胸を掻き毟られるような激しい感情を覚えました。 荒れ狂う大波に襲われて溺れてしまう。けれど、怖くもなければ辛くもない。むしろ、その波にのまれて溺れてしまいたい。その感覚が恋だと気づくのはもっとあとになってからでしたが、確かに青年はあのとき竜に恋をしたのでした。 今日も青年は竜のその体を愛おしげに撫で、慈しむように瞳を見つめ、いつまでも飽きることなく竜のそばにいました。一方的だったとしても青年は竜を愛していました。何も返ってこなくてもそれで構わない。愛し続けることさえできるのなら、他のものは何もいらない。そう思えるほどでした。  けれど、もしも何かを願うなら、そう他の人々が竜に供物を捧げて祈り、願うように自分もそのようにするのなら、青年はこの竜に愛を伝えたいと思ました。眠った竜にではなく、目覚めた竜に自分の想いを伝えたいと強く感じました。青年はこれまで竜に供物を捧げても何かを願ったり祈ったりしようという気持ちが起こったことはありませんでした。竜に会って触れることができる。それだけで青年の願いも祈りも満たされていました。 しかし、青年は自分の願いに気づいてしまいました。この竜に愛しているのだと伝えたい。この溢れんばかりの愛で包み込んでやりたいと、そう思いました。だから青年は初めて祈り、初めて願いました。この竜を、この美しい生き物を心の底から愛している。眠り続ける愛おしい命に、自分の愛がどうか届くように。そう願いを込めて、青年は初めて竜に口付けました。 するとどうしたことか、竜の瞳が見開かれて深い海の底をした瞳に鮮やかな光が宿り始めました。青年は驚きながらもその瞳を見つめました。竜も青年を見つめます。竜の意識が、そこに確かにありました。死のような眠りの底に横たわっていた竜が、まるで泡粒が海面を目指すかのように現実へと浮上してくる様子が青年には感じ取れました。 「きみを、愛している」 そう囁いて青年はもう一度、竜に口付けました。それは、世界で一番優しい口付けでした。青年が口付けた場所を発端に、竜の体からまるで花吹雪が舞うように鱗が弾けてゆきます。美しい竜の鱗がまるで雪の結晶のようにも、舞い散る花びらのようにも、そして恵の雨のようにも見えながら青年の視界を覆いつくしてゆきます。 すべてをかき消すように竜の鱗が青年の視界を奪ったのち、霧が晴れたようになるとそこにいたはずの竜の姿が消え、代わりに青年と同じ年頃ほどの男が裸で蹲っておりました。青年は供物の山から適当な織物を見繕って、その男の体にかけてやりました。そうしてまだ覚醒しきっていないのか、ぼんやりと項垂れる男の顔を覗き込みました。美しいつくりの顔の中に、深い海の色がありました。間違いなく、竜の瞳の色でした。この男は、青年が愛した竜でした。 青年は竜が人の姿になったことにも驚きましたが、その姿が竜のときと同様にとても美しいことに感動もしていました。青年が愛した黒い竜。その美しさが人の姿に宿るなど、ありえることなのか。しかし事実、目の前にその人はいる。深い肌の色は上質なチョコレートのそれに似て、しかし手触りは鞣革のように柔らかで張りがありました。黒い髪は艶やかに光り、耳にかけてやると流れるようにするりとした感触で指の合間をすり抜けます。四肢は長く伸びやかで立てばきっと青年よりも大きいのでしょうが、今はまだ小さく折り畳まれたままです。竜の姿の名残りがそこかしこにありながら、それは紛れもなく人の姿でした。ただ異様なほどに美しいだけです。 「竜が、逃げる」 誰かの声でした。きっと竜が人に変わる様子を見ていたのでしょう。竜が眠る地下空洞はいつ何時でも祈り、願えるように開け放たれていました。だから青年以外の人間がいても不思議ではないのです。その誰かの声を皮切りに、その場に居合わせた人々の疑念や不安が声になって表れ始めました。この街は囚われた竜がいる街。どうして囚われているのか理由は知らずとも、竜を逃すことが許されない街。人々の感情の行き着く先は、決まっていました。 「竜を逃すな!」 また誰かの声でした。もう誰が何を語り、何を悲しみ、何を叫んでいるのかわかりません。青年にわかることは、このままにしておけば人の姿に変わった竜は再び重い鎖に繋がれて地下に囚われることだけでした。竜はもう充分に長い時間この地下に囚われ、他者の祈りと願いを聞き続けてきました。そんな竜を再び捕らえて暗いこの場所に押し込めることが、青年にはできませんでした。たとえそれがこの街の決まり事だとしても、愛しい竜をそんな場所に置き去りにはできません。 青年は竜を抱えて立ち上がりました。竜はお世辞にも軽いとは言えませんでしたが、家業の牧畜を手伝っている青年には重いわけでもありませんでした。牛や羊に比べれば軽く、山羊や鶏に比べれば重い。その程度のことでした。そのまま騒ぎ立てる人々の間を全速力で走り抜けます。青年はこの竜を連れて逃げることをすっかりと心に決めていました。そして竜のために何もかもすべてを打ちやる覚悟もしていました。竜のためになら自らの人生を捧げてしまえる。竜に捧げる供物は自分なのだと、青年はそう思いました。 後ろから人々が追ってきます。罵声が飛び、恐怖に震える嘆きが聞こえ、青年を恨む言葉も聞こえます。憎まれても呪われても構わない。街の人々すべてを敵に回してでも、青年は竜をこの地下から救い出したかった。腕に抱いたぬくもりがあるかぎり青年は追われ続ける道を自ら、選びました。 青年は走り続けました。街は広く、また高く堅牢な城壁に囲まれています。ここから出るには東西南北それぞれに作られた門のどれかをくぐるしかありません。しかし青年が門をくぐるのが早いのか、それとも竜を連れ出して逃げたことが知れ渡り門が閉じられてしまうほうが早いのか、誰にもわかりません。だから青年は走り続けました。竜を抱えて走りました。そして一番近い門に辿り着いたとき、それは閉じられる間際でした。門番たちは皆、一様に興奮していました。竜が逃げ出すという一大事に誰もが浮足立ち、またその事実が本当なのかそれとも嘘なのか、それよりも竜が逃げだすと何が起こるのか、そんな混乱に振り回されていました。 青年は門番たちを薙ぎ払うようにして体ごと、門が閉まるぎりぎりの隙間に体をねじ込みました。失敗すれば青年も竜も門に挟まれて死んでしまいます。それでもその一瞬に賭けました。そしてその賭けに、青年は勝ちました。門番たちは青年の姿が門の向こう側に消えてゆくのを眺めているしかありませんでした。門は、二人を城壁の外へと逃して固く閉ざされてしまいました。壁に作られた見張り塔の上から街の外を監視していた門番だけが、竜を抱えた青年がそのまま広い平野のその先へと駆けてゆくのを見ましたがその姿も地平線の彼方へと消えてゆきました。 それ以来、二人の姿を見た者は誰一人としておりません。また街がどうなったのかも、わからないままです。
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maison-malta · 2 years
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@midorinocraft 4月17日 16:30 まで ※羽根木のお店は臨時休業とさせて頂きます maltaからは、植物、無農薬ハーブ苗、切り花、ドライフラワーに加え @ltshop_fete さんが取り扱う @mycupoftea_japan もご紹介します。 暮らしを豊かにするアイテムをお持ちします。 のんびりした稲荷山公園へ 是非ピクニックしにいらしてくださいね。 #Repost @midorinocraft with @make_repost ・・・ . __________________ 狭山稲荷山公園 みどりのクラフト 2022 __________________ 2022年 4月16日(土)17日(日) 10:30 - 16:30 埼玉県 狭山市 狭山稲荷山公園内 市立博物館前広場 *入場無料・事前予約不要 *少雨決行、荒天の場合のみ中止 *新型コロナウィルス感染拡大に伴う要請により延期、中止する場合がございます。 *当日は基本的な感染予防(不織布マスク着用・アルコール消毒・人とはなるべく距離をとる)などのご協力をお願い申し上げます。また、不織布マスクが体質に合わないなどの理由がある方は、ご自身の感染対策に合うマスクのご着用をお願いいたします。 *専用駐車場はございませんので、車でのご来場はお断りしております。電車・バスをご利用ください。(電車の場合、西武池袋線「稲荷山公園駅」で下車し、横断歩道を渡るとすぐ目の前が狭山稲荷山公園です) *会場内は飲食を扱う関係上ペット同伴でのご入場はお断りしております。沿道などは差し支えございません。 *ご飲食の際は、同居ご家族以外の方との距離を取り、黙食で味わう、またはできるだけ控えめな会話でお楽しみください。 出展者予定一覧(順不同・敬称略) <陶磁器> 寺村光輔 中園晋作 戸田文浩 清岡幸道 関口憲孝 掛江祐造 Keicondo 下村淳 田谷直子 原田七重 髙橋亜希子 加藤かずみ 竹本ゆき子 櫻井美奈子/oruminakiln <木・漆> 萩原英二 菅原博之 工房イサド 只木芳明 土田和茂 <金属> 羽生直記 <ガラス> さこうゆうこ 津村里佳 <革> pota paisano ヌイトメル hitotsubusha <竹> ひごかど 細川由紀子→出展辞退 <ジュエリー> accessories mau (16のみ garage coffee campanyとの共同ブース) yokoyano(17のみ) <ガーメンツ・服飾小物> sensense 中村章洋 | 洋服 ATELIER5・5 伊藤あけみ | 洋服 IRIES H.M. | 帽子 atelier coin 大護慎太郎 | 時計 wicagrocery | 帽子 (16のみ solxsolとの共同ブース) <キャンドル> lau <植物> malta solxsol(16のみ wicagroceryとの共同ブース) <造形物・インスタレーション> 柳弘之とFAM FARM 「家具と野菜と」 <チンプラ | プラ板似顔絵> 堀道広(17のみ) <飲食> maruto(16のみ) afterhours(16のみ) 三好焼菓子店(16のみ) あたらしい日常料理 ふじわら(16のみ) 菜と果 セトキョウコ(16のみ) garage coffee campany (16のみ accessories mauとの共同ブース ) すーっとするごはんとおやつ やまもと のりこ(16のみ) 武山ふみえ aalto coffee 升尾珈琲 珈琲笠間 アグネスパーラー ゼルコバ (17のみ) 北川ベーカリー(17のみ) tiny little hideout SPOONFUL(17のみ) negombo33(17のみ) たしろりな(17のみの予定) #狭山稲荷山公園みどりのクラフト #みどりのクラフト  #midorinocraft #みどりのクラフト2022 #craftfair #クラフトフェア #クラフトフェア2022 #craftfair2022 #狭山稲荷山公園 #稲荷山公園 (狭山稲荷山公園 みどりのクラフト) https://www.instagram.com/p/Ccb8rIDPDE0/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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