#雛鶴愛
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kachoushi · 3 months ago
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虚子自選揮毫『虚子百句』を読む Ⅷ
花鳥誌2024年8月号より転載
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日本文学研究者
井上 泰至
14 道のべに阿波の遍路の墓あはれ
 初出は『ホトトギス』昭和十一年四月号「句日記(昭和十年四月)」。「四月二十二日。風早西ノ下に句碑を見、鹿島に遊ぶ。伊豫松山、黙禅邸。ホトトギス会」と前書き。『五百句』にほぼ同文の注記あり。
 この句の詠まれた事情については、『ホトトギス』昭和十三年十二月号巻頭に虚子自身が書いた「阿波のへんろの墓」の一文がある。虚子が新田宵子夫妻・池内友次郎夫妻・高濱(当時)章子と故郷西ノ下を訪ねた消息を書いたものである。まずは決まって訪れる大師堂の大きな松に佇み、裏手にある「阿波のへんろの墓」を確認したが、なかったのであった。虚子の証言によれば、江戸時代の標準的な書体である御家流で書かれた古いものであったという。
 虚子は碑が無くなっているのを嘆きつつ、恐らく行き倒れの曰くなどがあろうことを想起し、子供時代に目撃した遍路の一行を回想している。二、三歳の頃、遍路の女に抱き上げられ、大師堂まで連れていかれた想い出を語り、おそらくその女は、自分と同じくらいの子供を無くしていたのだろう、と語っている。このエピソードは、その後自分の人��を振り返った『虚子自伝』(昭和二三年刊)でも書き記されており、虚子のふるさとの記憶として刻印されていたことがうかがえる。
 「遍路」は『ホトトギス』雑詠欄によって季題になった。一見古そうに見えて新しい季題である。西村睦子『「正月」のない歳時記』(本阿弥書店)によれば、大正十三年に三句登場して以来、昭和九年までに二六〇句も載る人気の季題となったと指摘されている。虚子が季題を選んだ改造社版『俳諧歳時記』春の巻(昭和八年刊)に、虚子の詳しい解説と例句の二七が確認でき、出典はすべて『ホトトギス』からである。虚子編『新歳時記』(昭和九年刊)にも同様に詳しい解説付きで立項され、例句二二を数える。つまり、伊予出身の虚子によって「遍路」は季題になったのであり、この句はその例句として加えられ、そのトドメを打ったのである。
 『俳諧歳時記』の解説につけば、春の、しかも女性の景物としてのこの季題のイメージが確認できる。弘法大師の巡礼にあやかって、四国に散在する八十八か所を順拝する全道程一二〇〇キロ、日数四〇日余りを要する。宗旨・老若男女を問わず、服装は軽いが、三月から四月の季節がよくなる時期に、菜の花・青麦・紫雲英の鮮やかに彩られた道をぞろぞろと通る。この風景との一体化が単なる「巡礼」でなく、季語としての「遍路」の拠って立つところであると特記する。
 特に若い娘たちは華やかなセルの着物に、白木の納札挟みを胸高にかけ、鬱金や浅黄色の手甲脚絆をつけ、同じ色の姉さま冠りの上に真っ白な菅笠をかぶり、緋の腰回しもあらはに裾を端折り、白木の杖をついた姿を虚子は詳細に活写している。高濱年尾の次の句などは、この虚子が特記した美しさの方に拠ったものであろう。
  お遍路の美しければあはれなり
 虚子の句にもどれば、山本健吉『現代俳句』に的確な評がある。まず「遍路の墓」とだけあって無名であることがかえって叙情を増すこと、「阿波」の地名から、浄瑠璃でよく知られた、長年別れた母と出会うもそれと気づかない巡礼お鶴(「傾城阿波之鳴門」)の連想で、子別れの哀話が想像されることを指摘する。
 さらに健吉は重要なことを言っている。「遍路の墓」そのものに、春の季感はない。むしろ春の季語「遍路」が置かれることで、子供時代の春遍路の記憶と現在の春とが結び合わされるのであって��新興俳句の中でも有季定型を守った水原秋櫻子の流れの季感主義を批判している。季語は言葉そのものに意味があるのか、言葉の背後にある季感に意味があるのか? これは有季定型俳句の一大論点である。
 過剰な、「今」「此処」にこだわる季感主義では、この虚子の句などは取り落とされてしまう。言葉が残ることによって、過去の季感を学び、それを想起し、対話する。下手をすると昨今頻出する「昭和の日」俳句の甘い回想句の氾濫のような惰性に堕ちてしまうのだが、言葉の由来や歴史性を無視しては、多くの俳句の財産を無くすことも自覚しておくべきだろう。掲句はその文脈において、今日重要な意義を持っていると言えよう。
15 白酒の紐の如くにつがれけり
 この句の成立は若干の問題を含む。『ホトトギス』昭和二十年六月号の「句日記(昭和十九年三月)」には、「三月四日句謡会。鎌倉要山、香風園」の前書に「白酒の餅の如くに濃かりけり」「瓶のまま白酒供へ雛は粗画」と併記される。
 しかし、『六百句』には、前日の「(昭和十九年)三月三日 家庭俳句会。日比谷公園。丸之内倶楽部別室」と注記され、〈洋服の襟をつかみて春寒し〉と共に掲載される。
 「句日記」では、「洋服の」の句の他、「春草を踏まえて鳩の足あかし」「斯く行けば春風寒し斯くは行く」「その中に大樹芽ぐは物々し」といった吟行句が並び、「白酒」句はない。
 すなわちこの句は当初、雛祭を題詠的に詠んで四日の鎌倉の句会に出したものだったが、後に三日の家庭俳句会での作、ということにしてしまったものなのである。
 虚子の句集における注記は、必ずしも実際に忠実なわけではなかったことが知れるが、これは掲句を三日の発表ということにした方が、効果があると考えたからであろう。なお、家庭俳句会は、婦人俳句会などとともに『ホトトギス』に立ち上げられた、女性中心の句会で名句が多く生まれている(『俳壇』二〇二四年七月号「座談会」(西村和子・井上・堀切克洋)。そのこともこの発表時期の変更という「操作」の理由ではなかったかと思う。
 掲句は、端的にして的確な比喩によって、「白酒」の様態を鷲つかみにした写生句で、間然とするところがなく、名句としてはよく引かれるものの、解説は意外に少ない。
 ポイントは「白酒の」の「の」である。これが「や」では、なぜいけないか?「や」「けり」と切れ字が重なることを嫌ったのは、すぐわかる。
  降る雪や明治は遠くなりにけり 中村 草田男
 この句のように上五とそれ以下の間に「飛躍」があるなら、切れ字が重なっても問題はないが、「白酒」の句は典型的一物仕立てで、「や」では煩い。
 「の」の効果はそれだけではない。「紐の」と「の」を畳みかけることで、「白酒」の様態に焦点を当てることができる。
  鴨の中の一つの鴨を見てゐたり   この庭の遅日の石のいつまでも   蛍火の今宵の闇の美しき   立秋の雲の動きのなつかしき
 以上のような虚子の作例につけば、上五の下に「の」を軽くつけて、以下で「の」を繰り返して、リズムを作り、対象にフォーカスを当てていったことに気づかされる(井上『俳句のマナー、俳句のスタイル』)。
 「白酒」の句の主題は、液体の動きにあるので、「つがれけり」と用言でまとめた。虚子は「眼」の詩人ではあるが、これをことさらに強調せず、さりげなく、品よく提示してみせる。鷲づかみの「写生」にありがちな生々しさを包むデコレートの感覚(井上「品格ある写生」『俳句』二〇一九年四月号)こそ、作家虚子の「写生」を代表するものとして、ここに指摘しておきたい。
*先月号記事に脱落がありました。「紅梅の苔は固し不言」の句は『ホトトギス』九年二月号で『五百句』同様「二月二十二日。臨時句会。発行所。」と前書きされています。記してお詫び申し上げます。(筆者)
『虚子百句』より虚子揮毫
15 白酒の紐の如くにつがれけり
16 紅梅や旅人我になつかしき
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国立国会図書館デジタルコレクションより
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井上 泰至(いのうえ・やすし)   1961年京都市生まれ 日本伝統俳句協会常務理事・防衛大学校教授。 専攻、江戸文学・近代俳句
著書に 『子規の内なる江戸』(角川学芸出版) 『近代俳句の誕生』 (日本伝統俳句協会) 『改訂雨月物語�� (角川ソフィア文庫) 『恋愛小説の誕生』 (笠間書院)など 多数
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hinazuru67 · 10 months ago
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metaleft · 1 year ago
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リアタイ企画【ユエヒト】
キャラクターシート
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@Ohmypopopo @yoqips様のテンプレートをお借りしました (https://privatter.net/p/10318628)
◆身上調査書
姓名:黒鶴庵��(旧姓:木々須)
年齢:33歳
性別:男性
血液型:B型
誕生日:7/19
身長:175cm
体重:65~70を行き来している
体型:薄っぺらい。在宅仕事のため体力も無い。
髪色:焦茶
瞳の色:グレーっぽい黒
視力:普通(たまにメガネかける)
きき腕:右
声の質:落ち着いた声色。すこし高い声。
身体的特徴:目の下の傷
出身:東京都足立区
家族構成:妻・娘
職業:大手ファッションブランド取引会社
恐怖:自分のせいで相手が不幸になること
癖:頬をぽりぽりする(^^ゞ
酒癖:弱い。カクテルや甘い酒が好き。
*交流向け恋人/許婚:黒鶴家の婿養子。妻・白菊 一人称:俺 二人称:~さん、~ちゃん 呼び方:苗字+さん 年下には名前
*好きなもの
食べ物:家庭料理、温かいおばんざい
飲み物:紅茶派
気候:春から夏にかけての暖かさ
色:紫
香り:ムスク等スモーキー系
書籍:ファッション系
動物:全部好き!猫派
ファッション:会社制服スーツがオシャレ。私服もオシャレ。
場所:仕事用部屋
愛用:
趣味:
黒鶴(旧姓:木々須)庵治は1990年7月19日東京都生まれ。 鈴代服飾大学卒業後、株式会社ミンスキー・ジャパンに就職。 世界的な高級ファッションブランドを扱う通販事業部に所属し海外出張も多かったが2020年からは情勢に伴いリモート業務がメインになっている。 同会社の日本支部総務部の吉良万裏と出会ったのは2015年の冬の初め。 毎年クリスマスは二人で祝う約束していた。吉良は友人と連帯保証人について揉めており、友人が事故死した事件の捜査で第一容疑者に上がっていた。裁判で庵治が当時のアリバイとして電話履歴を公開し吉良の容疑は晴れたが直後吉良は辞職し庵治の前から姿を消した。のちに風の噂で亡くなったことを知るが気持ちの整理はついていない。 兄弟の友人のつてで縁談を持��掛けられ現在は黒鶴家の婿養子として妻・白菊、娘・雛と生活している。白菊の地元を離れたい意思を汲んで都会のマンションの一室を購入した。 傷は子供の頃サッカーボールで割れた窓ガラスの破片で切った痕。傷跡が深く見られて気遣わされるのも面倒なので隠している。
【関係】 妻・黒鶴白菊
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leoayanime · 4 years ago
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龍王的工作GIF動態圖 表情包2 The Ryuo's Work is Never Done/Ryuuou no Oshigoto GIF2
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missmyloko · 5 years ago
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What’s In a Book? Part 29
While going through my collection I managed to find a few books that have yet to be featured on here yet. I decided to go with this one as, upon further review, I noticed that it actually contained a wealth of information that I had previously ignored ^^;
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Image of book’s cover courtesy of myself. Hana Akari: Showa Meigiren (はなあかり: 昭和名妓連) - Brilliant Flowers: The Showa Period’s Finest Geisha by Kobunshi Katsura (桂小文枝) (ISBN Unknown). Date of Publication: 1988 Language: Japanese and English (Some Essays and Names Only) Format: Hardcover Availability: Can be found up for auction on a fairly regular basis Price: Anywhere from $30 - $80 Errors: 0 This book is interesting, and that’s putting it mildly. Basically, it provides us with some of the best raw data for its time: The names of the most prominent geisha in each district of each city across all of Japan. It is a literal who’s who guide to the karyukai across the country in the late 1980s and is illuminating both in small essays that can be found at the front and back of the book explaining various schools and styles, but especially because it provides us with images, most in full color, of these amazing women.  The book overall is divided into regions which are then broken down further from there. The regions, cities, and districts of each named geisha are: Part 1: Hokkaido (北海道) Set 1: Asahikawa (旭川) - Kofune (小舟) Set 2: Sapporo (札幌) - Onobu (お信), Itoko (い登子), Izumi (いづみ), and Charako (茶良子) Set 3: Otaru (小樽) - Komomo (小桃), Mametarō (豆太郎), Kiku (㐂久), and Gorō (吾朗) Set 4: Muroran (室蘭) - Chonko (﹅子) Set 5: Hakodate (函館) - Nantoki (喃登希) and Kohide (小ひで)  Part 2: Tohoku (東北) Set 1: Morioka (盛岡) - Tsutamaru (都多丸)   Set 2: Hanamaki (花巻) - Kimiko (君子) and Keiko (桂子) Set 3: Aomori (青森) - Chame (茶目) Set 4: Yamagata (山形) - Kochō (小蝶) and Kinta (金太)   Set 5: Akita (秋田) - Chiyogiku (千代菊) Set 6: Obara (小原) - Ikkyū (一休), Aki (秋), and Kogiku (小菊) Set 7: Fukushima (福島) - Sakura (さくら) and Hidemi (秀美) Part 3: Kanto (関東) Set 1: Takasaki (高崎) - Kiyoko (清子) Set 2: Kusatsu (草津) - Sankoma (三駒) and Harumi (春美)   Set 3: Sarugakyo (猿ヶ京) - Kikutaro (菊太郎), Koshizu (小静) Set 4: Minakami (水上) - Yutaka (ゆたか) Set 5: Oyama (大山) - Kunika (くに香) Set 6: Tokyo (東京) - Fumie (冨美江) and Wakaryū (若龍) Set 7: Yugawara (湯河原) - Okame (お加目), Matsue (松栄), and Taeko (多恵子) Part 4: Chubu (中部) Set 1: Niigata (新潟) - Chiyogiku (千代菊) Set 2: Takada (高田) - Kazuko (加津子) Set 3: Shibata (新発田) - Renko (れん子) Set 4: Kamidayamadatogura (上山田戸倉) - Senryū (泉竜), Suzuyakko (鈴奴), Saizō (才三), and Utamaru (歌丸) Set 5: Kamisuwa (上諏訪) - Chiyomaru (千代丸) Set 6: Isawa (石和) - Miki (美樹) and Koyakko (小奴) Set 7: Kōfu (甲府) - Misako (美佐子), Kimika (君香), and Hisayo (久代) Set 8: Inuyama (犬山) - Misako (みさ子) Set 9: Hamamatsu (浜松) - Gonza (権三), Ichitarō (市太郎), Otomi (乙美), Koman (小萬), Eiko (栄子), Hatsutarō (初太郎), Tsuruchiyo (鶴千代), Yasuyo (泰世), Sakura (佐久良), Sachiko (幸子), Toshie (利枝), Komomo (小百々), Momoko (百々子), Fumiya (二三弥), Mitsugiku (光菊), Azuma (吾妻), Akiko (明子), and Ichiha (市羽) Set 10: Kanazawa Higashi/East (金沢東) - Koman (小まん) Set 11: Kanazawa Kazuemachi (金沢主計町) - Hitoha (一葉) and Kyōko (京子) Set 12: Kanazawa Nishi/West (金沢西) - Mineko (峯子), Sachiyo (幸代), and Marichiyo (まり千代) Set 13: Fukui (福井) - Makiko (真㐂子) and Yurako (由良子) Set 14: Yuzawa (湯沢) - Katsumaru (勝丸) and Hiromi (弘美) Set 15: Nagoya (名古屋) - Fukuchiyo (福千代), Takako (敬子), Tsuruko (つる子), Mitsuyo (光代), Kiku (喜久), Emiya (英美弥), Sanchō (三長), Satoyo (里代), Mitsu (未津), Ayako (あや子), Kinmaru (金丸), Naoe (直枝), Fukuwaka (福若), Hisae (比三枝), Mako (間子), Yasuko (康子), Toshino (とし乃), Koie (鯉恵), Mariko (まり子), Katsuko (かつ子), Maiko (舞子), Kingyo (金漁), Hideka (秀佳), Chiyoe (千代江), and Motoko (素子) Part 5: Kinki (近畿) Set 1: Osaka (大阪) Part A: Osaka Minami (大阪南) - Yukiharu (雪春), Kikutsuru (菊つる), Kikue (菊恵), Rikimaru (力丸), Kinko (きん子), Yukiji (ゆき路), Kōjirō (廣二郎), Yoshiko (よし子), Terugiku (照菊), Midori (美登利), Hankō (はん幸), Kazumi (かず美), Yukie (ゆき恵), Yūka (勇花), Suzuka (鈴佳), Masako (まさ子), Fukuemi (福笑), Masachiyo (政千代), Kikufumi (菊二三), and Yūko (祐子). Part B: Osaka Horie (大阪堀江) - Temari (てまり) Part C: Osaka Shinmachi (大阪新町) - Hatsuko (はつ子) and Tamao (玉緒) Part D: Osaka Kitashinchi (大阪北新地) - Komaka (駒香), Umesada (梅さだ), Umetomi (梅十三), Suzume (寿々女), and Umemitsu (梅充). Set 2: Kyoto (京都) Part A: Gion Kobu (祇園甲部) - Komame (小まめ), Hisae (久栄), Katsuyū (かつ勇), Haruyū (春勇), Miyokazu (美代一), Fukusono (フク園), Satoharu (里春), Yoshigiku (義㐂久), Kōsono (晃園), Teruha (照葉), Mamekō (まめ晃), Fukuyū (福勇), Kanoko (かの子), Machiko (真知子), Kumiko (玖見子), Kohana (子花), Takayū (孝友), Teruchiyo (照千代), Takeha (竹葉), Nakako (奈加子), Mameyū (まめ勇), Sonoko (その子), Tomichiyo (斗美千代), Yoshimame (芳豆), Kofumi (小富美), Kanoju (かの寿), Mamechiyo (豆千代), Katsufuku (かつ福), Mameji (豆爾), Toyochiyo (豊千代), Katsuji (佳つ二), Ichigiku (市季久), Mamezuru (まめ鶴), Koman (小萬), Michiko (道子), Miyokichi (美与吉), Aika (愛香), Teruyo (照代), Fumichiyo (富美千代), Kikuharu (菊春), Masuko (ます子), Momoko (桃子), Kosode (小袖), Chōji (長治), Tomigiku (冨菊), Komasu (小ます), Emiji (恵美二), Dan-e (だん栄), Koyū (小ゆう), Yukiryō (幸良), Hanachiyo (花千代), Miyuki (美ゆき), Masaru (勝), Kanoji (かの次), Hiromi (廣美), Kotomi (小とみ), and Ainosuke (愛之介). Part B: Pontocho (先斗町) - Miyofuku (美代福), Hisakō (久幸), Raiha (来葉), Momiha (もみ葉), Ichiko (市子), Shinatomi (シナ富), Mameharu (豆治), Hisafumi (久富美), Ichisen (市扇), Mameyuki (豆幸), Umeyū (梅佑), Ichitoyo (市豊), Mameshizu (豆志津), Ichisono (市園), Mamechiyo (豆千代), Hisaroku (久ろく), Ichimitsu (市光), Momizuru (もみ鶴), Hide-e (英江), Tomizuru (富鶴), Emiju (笑寿), Fudeya (フデ哉), Miyosaku (ミヨ作), Ichihiro (市宏), and Shinateru (シナ照). Part C: Gion Higashi (祇園東) - Toyoji (豊治), Fumie (章栄), Chika (ちか), Tsurukazu (つる和), Tsunekazu (つね和), Tsunehisa (つね久), Masuko (ます子), Toyohisa (豊寿), and Masako (満佐子). Part D: Miyagawa Cho (宮川町) - Wakaharu (若晴). Kanae (叶恵), Fumichō (富美蝶), Mikiryū (三木竜), Wakachika (若千加), Fukukazu (ふく和), Toshiyū (敏祐), Suzuchiyo (鈴千代), Hinachō (雛蝶), Chikayoshi (千賀俊), Mieko (美恵子), Fukusome (冨久染), Tane-e (種栄), and Tanekazu (たね和). Part E: Kamishichiken (上七軒) - Tei (てい), Emi (恵美), Katsukiyo (勝��代), Tamafuku (玉福), Fukuzuru (福鶴), Hisazuru (久鶴), Tsuruzō (鶴三), Hisawaka (久若), Tamaryō (玉龍), Shimeyo (〆代), Katsumaru (勝丸), Naoko (尚子), Kokimi (小㐂美), and Kohan (小はん). Set 3: Nara (奈良) - Suzumi (須寿美) Set 4: Genrō (彦桹) - Kikuyū (菊勇) and Masaya (政弥). Set 5: Otsu (大津) - Omasa (おまさ) Set 6: Kinosaki (城崎) - Tomiyū (富勇) and Kanoko (佳乃子) Set 7: Wakayama (和歌山) - Kikuchiyo (菊千代) Set 8: Shirahama (白浜) - Tsutagiku (蔦菊) Set 9: Osaka Imasato (大阪今里) - Koito (小糸) and Kichihide (吉秀) Set 10: Imasato (今里) - Kichitama (吉玉) Set 11: Kyoto Shimabara (京都島原) - Hana Ōgi Tayū (花扇太夫) Part 6: Chūgoku (中国) and Shikoku (四国) Set 1: Tamatsukuri (玉造) - Naoko (尚子), Yae (八重), and Kishi (貴志). Set 2: Okayama (岡山) - Yakko (奴) and Chizu (知寿) Set 3: Takamatsu (高松) - Hamachiyo (浜千代) Set 4: Matsuyama (松山) - Ippei (一平) Set 5: Tokushima (徳島) - Fukuyo (福代) and Akiyo (明代) Set 6: Kochi (高知) - Kimiryū (君龍) and Sadamaru (貞丸) Part 7: Kyushu (九州) Set 1: Hakata (博多) - Mieko (美恵子) Set 2: Kurume (久留米) - Okiyo (お清) Set 3: Ureshino (嬉野) - Hisamatsu (久松), Komatsu (小松), Koshin (小新), Hisaryū (久竜), and Marikō (まり幸). Set 4: Isao (武雄) - Fumiya (文弥) Set 5: Beppu (別府) - Mitsugiku (光菊), Fujikatsu (ふじ勝), Umesono (梅園), and Tomiko (富子) Set 6: Kumamoto (熊本) - Ayako (あや子) Set 7: Kagoshima (鹿児島) - Aimaru (愛丸) The only areas that I noted are missing are some of the hot springs towns. I’m not too sure why they were skipped over, but it’s possible that the author did not have any connections to them. The most informative part that I admit I skipped initially is the small print under each geisha’s name: their natori specialty, natori teachers, and natori names. This means that we can trace back what schools were the main specialty of each region going back decades. Since this is invaluable for anyone studying geisha over time, I’ll write in what schools were followed, but I will keep names a secret. Districts are as follows: Part 1: Hokkaido (北海道) Set 1 Asahikawa (旭川) - Kineya (杵屋) Set 2: Sapporo (札幌) - Wakayagi (若柳) for dance and Tadeko (蓼胡) for song Set 3: Otaru (小樽) - Fujima (藤間) for dance and Tadeko (蓼胡), Kineya (杵屋), Kiyomoto (清元), Shunnichi (春日), and Tokiwazu (常磐津) for song. Set 4: Muroran (室蘭) - None Given Set 5: Hakodate (函館) - Tanaka (田中) for dance and Matsunaga (松永) for song. Part 2: Tohoku (東北) Set 1: Morioka (盛岡) - Tokiwazu (常磐津) for song. Set 2: Hanamaki (花巻) - Wakayagi (若柳) for dance and Kineya (杵屋) for song. Set 3: Aomori (青森) - None Given. Set 4: Yamagata (山形) - Fujima (藤間) for dance.    Set 5: Akita (秋田) - None Given.  Set 6: Obara (小原) - None Given Set 7: Fukushima (福島) - None Given. Part 3: Kanto (関東) Set 1: Takasaki (高崎) - Hanayagi (花柳) for dance and Okayasu (岡安) for song. Set 2: Kusatsu (草津) -  Hanayagi (花柳) for dance.    Set 3: Sarugakyo (猿ヶ京) - Kineya (杵屋) for song. Set 4: Minakami (水上) - Kineya (杵屋) for song. Set 5: Oyama (大山) - Kineya (杵屋) Set 6: Tokyo (東京) - Taguchiko (田口湖) for dance and Kineya (杵屋) for song. Set 7: Yugawara (湯河原) - Tanaka (田中) and Fujima (藤間) for dance and Tokiwazu (常磐津), Kineya (杵屋), and Tadeai (蓼相) for song. Part 4: Chubu (中部) Set 1: Niigata (新潟) - None Given. Set 2: Takada (高田) - None Given. Set 3: Shibata (新発田) - Okayasu (岡安) for song. Set 4: Kamidayamadatogura (上山田戸倉) - Bandō (坂東) for dance and Tōsha (藤舎), Shunnichi (春日), Kineya (杵屋), and Kiyomoto (清元) for song. Set 5: Kamisuwa (上諏訪) - Kineya (杵屋) for song. Set 6: Isawa (石和) - Hanayagi (花柳) for dance and Mochizuki (望月) for song. Set 7: Kōfu (甲府) - Hanayagi (花柳) for dance and Kiyomoto (清元), Okayasu (岡安), and Nagami (長巳) for song. Set 8: Inuyama (犬山) - Nishikawa (西川) for dance and Kineya (杵屋) for song. Set 9: Hamamatsu (浜松) - Fujima (藤間) and Fukuwara (福原) for dance and Kiyomoto (清元), Yoshimura (芳村), Shunnichi (春日), Nishikiharu (錦春), and Tokiwazu (常磐津) for song.    Set 10: Kanazawa East (金沢東) - Kamizaki (神崎) for dance. Set 11: Kanazawa Kazuemachi (金沢主計町) - Fujima (藤間) for dance and Kineya (杵屋) and Mochizuki (望月) for song. Set 12: Kanazawa Nishi/West (金沢西) - Nishikawa (西川) for dance and Tōsha (藤舎), Okayasu (岡安), and Kashida (堅田) for song. Set 13: Fukui (福井) - Fujima (藤間) for dance and Utazawa (哥沢) for song. Set 14: Yuzawa (湯沢) - None Given. Set 15: Nagoya (名古屋) - Nishikawa (西川) for dance and Kiyomoto (清元), Tokiwazu (常磐津), Sumida (住田), Kineya (杵屋), Kishizawa (岸沢), Shunnichi (春日), and Fujimatsu (ふじ松) for song. Part 5: Kinki (近畿) Set 1: Osaka (大阪) Part A: Osaka Minami (大阪南) - Onoe (尾上), Fujima (藤間), Bandō (坂東), and Hanayagi (花柳) for dance and Kiyomoto (清元), Kondo (今藤), Mochizuki (望月) and Tokiwazu (常磐津) for song. Part B: Osaka Horie (大阪堀江) - Nishikawa (西川) for dance. Part C: Osaka Shinmachi (大阪新町) - Nishikawa (西川) for dance and Kineya (杵屋), Shunnichi (春日), and Ogie (荻江) for song. Part D: Osaka Kitashinchi (大阪北新地) - Nishikawa (西川) and Hanayagi (花柳) for dance and Kineya (杵屋), Tamura (田村), Uji (宇治), Tokiwazu (常磐津), Tagawa (田川), Kiyomoto (清元), and Yoshimura (吉村) for song.  Set 2: Kyoto (京都) Part A: Gion Kobu (祇園甲部) - Inoue (井上) for dance. Part B: Pontocho (先斗町) - Onoe (尾上), Nishikawa (西川), and Wakayagi (若柳) for dance and Tōsha (藤舎), Kondo (今藤), Nakamura (中村), Ogie (荻江), Bungo (豊後), Kineya (杵屋), and Tokiwazu (常磐津) for song. Part C: Gion Higashi (祇園東) - Fujima (藤間) for dance and Tokiwazu (常磐津), Yanagi (柳), Nakamura (中村), Kineya (杵屋), and Tōsha (藤舎) for song. Part D: Miyagawa Cho (宮川町) - Umemoto (楳茂都), Wakayagi (若柳), and Rokugō (六鄕) for dance and Kondo (今藤), Bungo (豊後), Kiyomoto (清元), Yanagi (柳),  Yamakishi (山岸), Utazawa (哥沢), Tadeko (蓼胡), and Umeya (梅屋) for song.    Part E: Kamishichiken (上七軒) - Hanayagi (花柳) for dance and Tokiwazu (常磐津), Shunnichi (春日), Toyomoto (豊本), Kiyomoto (清元), Tōsha (藤舎), and Kiyoyuki (清之) for song. Set 3: Nara (奈良) - Kineya (杵屋) for song. Set 4: Hikone (彦桹) - None Given. Set 5: Otsu (大津) - Yanagi (柳) for song. Set 6: Kinosaki (城崎) - Wakayagi (若柳) and Onoe (尾上) for dance. Set 7: Wakayama (和歌山) - Onoe (尾上) for dance. Set 8: Shirahama (白浜) - Okayasu (岡安) for song. Set 9: Osaka Imasato (大阪今里) - Kineya (杵屋), Shunnichi (春日), and Kiyomoto (清元) for song.     Set 10: Imasato (今里) - None Given. Set 11: Kyoto Shimabara (京都島原) - None Given. Part 6: Chūgoku (中国) and Shikoku (四国) Set 1: Tamatsukuri (玉造) - Fujima (藤間) for dance and Kineya (杵屋) for song. Set 2: Okayama (岡山) - Onishi (小西) for dance. Set 3: Takamatsu (高松) - Kiyomoto (清元) for song. Set 4: Matsuyama (松山) - Kiyomoto (清元) and Tamura (田村) for song. Set 5: Tokushima (徳島) - Yoshitō (芳膛) for dance and Kiyomoto (清元) and Tamura (田村) for song. Set 6: Kochi (高知) - Kiyomoto (清元) and Tamura (田村) for song. Part 7: Kyushu (九州) Set 1: Hakata (博多) - Kondo (今藤), Shunnichi (春日), and Kashida (堅田) for song.   Set 2: Kurume (久留米) - Tokiwazu and Shunnichi (春日) for song. Set 3: Ureshino (嬉野) - Hanayagi (花柳) and Fujima (藤間) for dance and Matsunaga (松永) and Tagoto (田毎) for song.   Set 4: Isao (武雄) - Fujima (藤間) for dance. Set 5: Beppu (別府) - Tokiwazu (常磐津), Kiyomoto (清元), and Hisago (瓢) for song. Set 6: Kumamoto (熊本) - Hanayagi (花柳) for dance and Kondo (今藤) for song. Set 7: Kagoshima (鹿児島) - Kineya (杵屋) and Tagoto (田毎) for song. The reason why this book has no ISBN is because it was self published. The original cover price was ¥30,000, which is almost $300 USD. This price was likely set due to the vast amount of research done, including acquiring the many photographs, and printing costs. This price was also likely due to it being targeted at serious karyukai connoisseurs as that price in the 1980s would have been much higher now due to inflation. Nowadays you don’t have to pay as much for this book as most Japanese sellers see it as outdated and it can be found quite regularly on Japanese retail sites, such as Yahoo Japan Auctions or Rakuten.   The only “errors: that I could find were some spelling issues, but that’s because they’re using the Japanese way of writing Romaji and not the Hepburn System. So, I’m not counting them as errors, but rather just making note of them to anyone who purchases this book. Rating: ✪✪✪✪ (out of 5)
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myonbl · 5 years ago
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第15回露新軽口噺@動楽亭
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露の新治・新幸師弟の研鑽の場「露新軽口噺」も数えて15回、会場である動楽亭に着くと、今後のスケジュールが張り出されていました。8月はお休みで、それ以降毎月開催で来年1月まで。目指せ、皆勤賞!
「子ほめ」桂雪鹿(14分)
勉強に来たとこ��急に上がれと言われたとのこと、私は初見。桂文鹿師に入門して1年3ヶ月、元小学校教師という変わり種。教える側から教わる側へ、今後の奮闘を期待しましょう。
「風呂敷」露の新治(21分)
狭い「太陽と月」から広い「動楽亭」に会場を移したにもかかわらず、入りが薄いとボヤキ節。ま、それはそれ、継続は力なりと信じて、こちらも通い続けましょう。1席目は十八番からの軽めのネタ、例によって、扶けを求めに来たにもかかわらず兄貴分の説く故事来歴に見事な木瓜を返す弟分の女房。いつも「そんなこと言うてる場合やないやろ」と心の中で突っ込みを入れつつ笑ってしまいます。
「七度狐」露の新幸(27分)
このネタは去年の雛祭り、第7回露新軽口噺で聴いています。東の旅で「煮売屋」から続く展開、旅ネタとは言えハメモノが入り場面転換も多くて難度は高いですね。私にとっては、高校生の頃ラジオで聴いた笑福亭仁鶴さんの口演がいまも鮮明に残っています。しかしラジオでは所作は見えませんから、噺の世界はついつい自分勝手に想像してしまいがち。大井川擬きの川渡りの場面で着物を脱いで傘に入れて頭から被る、2本の竹を持って怖々川を渡る、おさよ後家が伊勢音頭に合わせて手を振る、サゲで狐の尾ならぬ畑の大根を抜く。やはり、ライブで所作を観てこそ噺の世界を満喫することが出来ます。噺家さんもよく「お客さまの想像力」と仰いますが、これも実際に演者を目の前にするからこそ適切なイメージが膨らむわけです。つまり、みんなもっと「露新軽口噺」の会場へ来て楽しみましょう(笑)。
「三年目」露の新治(28分)
上がるなりメクリをさして「ここに私の戒名が書いてあります」、客席が沸く、そこから「戒名」「法名」の本来の意味を説かれます。葬儀にまつわる諸々の因習を紹介しつつ、その問題点を指摘されます。門徒(西本願寺)の端くれである私にとっては、快哉を叫びたくなるマクラですね。髪の話題をいつもの自虐ネタとは違う方向に導いて本編へ、非常に自然な流れと感じましたが、ひょっとするとネタおろしのために周到に準備され��のかも知れませんね。恋女房が病気になって余命幾ばくもない、心残りの告白に対して、後添えを貰ったとしても幽霊となって化けて出てくれと約束。ところが、当夜待ち続けるが出てこない、どうなっているのか・・・。と、ここで意外な展開、なんと露の都師の(再婚)初夜のエピソード! もちろん、ここには書けません(笑)。幽霊が登場する噺は沢山ありますが、夫婦愛と女性のいじらしさが相まってほのぼのとするいい噺であり好演でありました。
仲入り
「宿屋仇」露の新治(45分)
三席目ということで軽いものかと思っていたのですが、なんとエネルギー大量消費の大ネタが来ました。このネタの魅力は何と言っても下座との掛け合い、侍の部屋と三人連れの部屋、間を取りつぐ伊八、ハメモノの音量を調節して空間を見事に表現します。できれば、もう少し大勢の人に聴いてもらいたかったなぁ(笑)。
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今夜いただいたチラシの中に、新幸さんの勉強会記念公演が開催されるとのこと。読者の皆様、こちらもよろしくお願いします。
三味線:はやしや薫子
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kachoushi · 5 months ago
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雑 詠
花鳥誌 令和6年6月号
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雑詠巻頭句
坊城俊樹主宰選 評釈
雑詠巻頭句
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春疾風街揺さ振りてまだ飽かず 渡辺 彰子
 春一番よりも少し後か。この時期も荒々しい風が吹く。この「飽かず」は春風であって作者そのものかもしれぬ。街の中を縦横自在に吹く風はどこか獣のようでもある。
湧水の始まる石と春の草 渡辺 彰子
 湧き水というものは地���の鼓動。生きている物である。それは春の石からも。そして春の草を浸して行く。これは地球の鼓動なのであり、石そのものにも生命を感じる。
抱き上げてみて恋猫の鼓動聞く 渡辺 彰子
 恋の猫とは雄猫だろう。もの凄い生殖感に満ちた雄猫を抱くと荒々しい鼓動が聞こえる。人もそうだが皆動物の生命感。そこに春の胎動を感じる作者。
春耕や地熱放ちて土孵る 伊藤 裕章
 いよよ地熱を持つものを耕す。すると土そのものもまた動物のように孵化するというか孵ってくる。春耕という季題の本意をすべてあらわした世にも珍しい句。こんな本意本情に出逢うことはそうない。
雛箱に折り手の知れぬ古き鶴 伊藤 裕章
 この折り紙の鶴は誰が折ったのか。とんと覚えが無い。雛人形とともにだから母か祖母か叔母か。それそのものが百年くらい生き続けている。しかし案外こういうことは皆経験があるかも。
折り目立つセーラーの襞芝青む 伊藤 裕章
 セーラーたちは私は海上自衛隊の諸君のものかと思った。一部の􄼱も無いかれらのユニフォームの折り目もきちんと整えて整列をする。一糸乱れず行進してゆくか。
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寒ざらへ武原はんの御引摺り 加納 佑天
 地唄舞の人間国宝の武原はん。私もお目にかかったが、ほんとうに引き摺るような微動。
如月の古き宿には小さんの画 渡辺 炳子
 「小さん」は柳家小さんか。はて何代目か。漱石と親しかった小さんか。
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春の海灯台一つ島二つ 松本 洋子
 これこそ長崎の海の風景であり、日本でも其処しか考えられない微動だにせぬ絶景。
椿落つ足利の世へ吉良の世へ 馬場 省吾
 椿はやはり武将の首を思う。それぞれの時代の交代とその象徴が戦陣にあるから。
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陽炎ひて坂の向かうは夢の中 粟倉 健二
 この陽炎はことのほか四次元のもの。そこに夢さえ介在する幽玄の世界観。
子等飲みし蛇口全開水温む 大和田 博道
 これは誰しも共感するだろう。学校の校庭にある蛇口は上を向いていた。
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楊貴妃の衣かさねて薄紅梅 緒方 愛
 なんとまあ豪華で贅沢な紅梅の形容。楊貴妃なのだから最高の美意識にある梅。
息を止めて雛に持たせる笛鼓 栗原 和子
 これはひとつの美意識の極限。その時人は息を止めて雛へ生命を吹き込む。
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nekonekoneeko1 · 3 years ago
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niwatoritori1 · 3 years ago
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aikider · 3 years ago
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[ネタバレ注意]りゅうおうのおしごと![ラノベ書評]
書評と称してはいるが、思い入れが強すぎて実際のところ感想にとどまってしまうであろうことは先に断っておく。
昨年からラノベに溺れ続ける日々が続き、その中で出会ったのがりゅうおうのおしごと!である。
そもそもは月姫リメイクをプレイしてシエルノーマルエンドで号泣して多大な精神的ダメージを負ったことがきっかけである。あまりにつらかったのでエクストラエンドを進めることができず、別のものを読もうと思ってソードアート・オンラインを読み返したのだが(しかも紙が面倒くさいのでKindleでも買ってしまった)、今���はSAOが楽しすぎて2ヶ月近くにわたり何度もSAOを周回してしまった。プログレッシブとユナイタルリングが面白すぎるのがあかんのや。劇場版プログレッシブを控えていたので予習としてはちょうどよかったのだが、映画を2回見たあともSAOばっかり読んでるのはどうなんよ、と思っていくつかラノベの傑作を漁る旅に出たのだ。もともとKindleでは歴史と経済と哲学の本しか読まず、小説はほとんど読まないし、ラノベは紙のみとしていたのだが、その縛りをSAOで捨てた。その後は冴えない彼女の育て方、キノの旅、青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない、狼と香辛料などを買って、今回取り上げるりゅうおうのおしごと!に至る。
ただし自分は原作から入ったわけではなく、コミック版から入った。そもそもこの作品はアニメ化されていたので、アニメ全録している(のにほぼ見てない)自分はタイトルぐらいは知っていたのだが、『まんがタイムきららあたりが将棋4コマでもやってんのをアニメ化したのかな』という程度の認識しかなかった。そして昨年(2020年)夏、DMMが電子書籍で無料だの50%オフだのの大盤振る舞いを続けていたので、そのときにコミック版1巻が無料だか半額だかになっていたのを買ってあったのだ。それをいつか読むつもりで1年以上も積んであったことになる。自分はDMMはコミック専用としており、セールで買っておいて後から読むというのを繰り返しているためDMMだけで凄い量になりつつある。その中から「次に何読もうかな」と思ったときに「そういえばDMMでコミック1巻だけ買ったな」と思って読んだのがりゅうおうのおしごと!との出会いである。これが意外に面白くて最新刊まで読んでしまった。
先にコミックの感想を言ってしまうと、悪くはないがもう一つ足りない感じ。あるいは、小説を漫画化する上で困難な部分をあえて避け(特に戦法の描写で盤駒がほとんど出てこない)、比喩表現で押し通している。また、要所ではおおむねきちんと描いているが、ちょくちょくキャラクターの作画が崩れる。それでも最新巻まで買ってしまったのは、キャラクター造形が優れており、さらにそこにあるドラマが熱いからである。これは明らかに原作を読んでみなくては、と思ってKindleストアで5冊まとめて買った(10分以内に買えば5%ポイント還元なので)。
で、ようやく原作である。将棋+ロリ+ハーレムもの+浪花節+ヴァンガード+VIPネタ+ニコ生ネタという闇鍋感ハンパない組み合わせのだが、蓋を開ければ���れぞれの要素が驚くほど噛み合っている。16歳の若き竜王・九頭竜八一が連敗続きのところ、転がり込んできた9歳の女子小学生・雛鶴あいを内弟子に取る。そこで重要なのが八一の師匠・清滝鋼介。トッププロではないものの、幼少期の八一が指導対局を何度も申し込んだ結果、内弟子になったというプロ棋士である。さらに、八一の2週間前に入門していた年下の姉弟子・空銀子は14歳、かつ奨励会員ながら、女流のタイトルを2つも保持する史上最強の女性棋士。清滝は自分を超える八一の才能を育てることができるのか悩み、兄弟子である月光会長に託すことも考えたが、月光の説得で結局は自らの弟子とすることを決意し、八一と銀子は卓越した才能で切磋琢磨して強くなった。幸運もあって史上最年少竜王となった八一は連敗するが、師匠である清滝に背中を押されてあいを弟子に取り、あいの応援(対局室に迷い込んだあいが読み始めたことで相手に詰みがあることに気付く)で連敗をストップし復活する。それなんてロウきゅーぶ?と思うところだが、今や絶滅した内弟子制度と師弟愛を熱く丁寧に描写することで説得力を持たせている。八一は弟子を迎えたという責任感だけではなく、あいの指し手から吸収した新たな戦術でさらに強くなる。八一はあいをどう育てるか悩むが、月光会長から依頼された指導対局で神戸の極道(廃業済み)の頭目の孫にして9歳の天才少女・夜叉神天衣(あい)を弟子に取る。卓越しているがゆえに競い合う相手のいなかったあいは、天衣というライバルを得て強くなり、孤高だった天衣も少しずつ心を開いていく…というストーリー。
とにかく全編浪花節で泣かせに来る。師弟愛を始めとした将棋の絆、そして将棋という熱い勝負の世界である。
主観を八一だけでなくすべてのキャラクターに振り、さまざまな視点から物語を描いている。それによりほぼすべてのキャラクターが主人公かというくらいキャラ立ちしている。もちろん八一が主人公ということになってはいるが、実際には八一は主人公の一人にすぎず、あい、天衣、銀子も主人公と言ってよいであろう。そのため、描かれるテーマも女性棋士である。
女性棋士といえば女流棋士が想起されると思うが、両者は異なり、女流棋士の地位は特殊である。プロ棋士と同じように対局はあるし、女流タイトル戦もある。しかし女流棋士は棋力においてプロ棋士に劣る。それどころかプロ棋士の養成機関たる奨励会の底���にも劣る。にもかかわらずなぜ女流棋士という存在があるのかといえば、一つは女性への将棋の普及のため、もう一つは将棋ファンにと��てのアイドル的な役回りである。将棋ファンの大半は基本的に男であり、である以上きれいどころがいたほうが喜ばれ金も集まるという大人の事情がある。
たとえば作中に登場する鹿路庭はその美貌とスタイルを十全に生かしたあざといキャラ作りとトークと立ち回りで将棋ファンの人気を集め、言わば『オタサーの姫』のように見える。さらにあいたちを盤外戦術で追い込むなど序盤では悪役のように描かれる。しかし本人は勝負としての将棋を諦めておらず、強くなるために男性プロ棋士の研究会に参加するが、周囲からは『婚活』などと陰口を叩かれ、その影響で研究会が消滅するため『研究会クラッシャー』などと呼ばれる。また普及の仕事に活かすため司会者養成講座を受けるなど仕事熱心な人なのだが、そのプロ意識が逆に批判を引き寄せてしまい、女流棋士への批判を一身に引き受ける。そういう状況を全て知っていながらも、あくまでも将棋アイドルとしての立ち居振る舞いを貫き、弱音を吐かずに戦い続ける。のちに関東へ移籍したあいに女流棋士のお仕事を叩き込むという重要なポジションでもあり、さらに本当に惚れた相手に告白するシーンは泣きますよ。
そうした女流棋士の有り様を、女流名跡釈迦堂は『晒し者』と表現する。女性であるというだけで見下され、しかし将棋普及のために利用される女流棋士は、いうなれば客寄せパンダに過ぎないとも言える。その有り様を変えるには女流棋士ではない女性プロ棋士を生み出すほかない。釈迦堂はそのためならば自らが踏み台となっても構わないと考え、他門の空銀子を指導して史上初の女性プロ棋士に育てようとする。のみならず、女流棋士として初めて弟子をとり、『女流棋士に育てられた初めてのプロ棋士』神鍋歩夢は『次の名人』とまで言われるほど将来を嘱望されるという熱い展開。『女だって将棋はできる』という理念をすでに半分は実現してみせたわけである。脚に障害を抱えながらも、己を犠牲にしてでもその信念を貫く釈迦堂さんがかっこよすぎて惚れる。そりゃ歩夢くんもプロポーズするわね。
釈迦堂に夢を託された空銀子は、女流棋士ではない奨励会員でありながら、女流タイトルを2冠持つ史上最強の女性棋士。しかし銀子は先天性の心疾患を患っている。自然治癒することがあると記載されているため、中隔欠損を伴うような心奇形の一種だろうか。ただし中隔欠���だけでは五生率50%とならないので、複合的な心奇形であろう。ついでに言えば銀子はアルビノで、他の疾患を合併している可能性がある。銀子の主治医である明石は元奨励会員であり、将棋の才能を持つ銀子を、療養のため清滝に託す。そして八一と二人で最強の棋士に成長する。一足先にプロ入りした八一を追って、銀子はプロ入りを賭けた3段リーグで戦う。
銀子はその中で、元奨励会員でアマチュアで抜群の成績を残して奨励会に戻ることを許された辛香と戦うことになる。辛香は盤外戦術で銀子を揺さぶるが、戦いの中で実は辛香と銀子の意外な接点が明らかになる。
辛香は奨励会退会後、学歴がないこともあって底辺職を転々としたが、「二番目に辛い職場は将棋を知っている人のいる職場」と語るほど将棋に苦しめられた。しかし辛香によれば一番辛い職場は人が死ぬ職場であるという。辛香はかつて己が清掃員として務めた施設で子どもたちにせがまれて将棋を教えていたのだが、実はこの施設は難病の子どもたちが療養するホスピスであり、幼い銀子とも戦ったことがあるのだ。そもそも辛香が明石の同期で、同じ大阪に住んでいるのだからありうる話である。ホスピスの子どもたちは退所できたとしても、それは死の直前に家族と過ごすための短い期間に過ぎない。あまりの残酷な事実にその施設をやめたが、のちにメディアで有名になった「浪速の白雪姫」がかつて将棋を教えた銀子であることを知り、一念発起して再び将棋に挑むのである。
三段リーグではさらに、年齢制限を迎えても延長で粘りついにプロ入りできなかった鏡洲、天才ゆえ孤独を抱えていたが奨励会で鏡洲と親友になれた小学生プロ棋士椚創多、鏡洲が落ちたことで想定外のプロ入りをしてしまい混乱する坂梨、かつて奨励会員であったが現在は将棋会館の職員となった《校長先生》峰など、数々の魅力的なキャラクターと濃密なドラマが展開される。ここではひとりひとりのキャラクターが生々しさをもって描かれる。さらに三段リーグは奨励会員が本気で殺し合う「地獄の三段リーグ」であり、その過酷さを容赦なく描き出すところもこの作品の優れた点である。おそらくプロ棋士や奨励会員、元奨励会員たちに膨大なインタビューを行ったからこそ描けるものであろう。
《校長先生》こと峰の口からは、奨励会に入ったときには将棋が大好きだった子どもたちが、辞めるときには二度と駒も見たくないというほど苦しみ、せっかく強くなったのにその強さすら恨むようになるという奨励会制度の残酷さが語られる。
しかし銀子の三段リーグの裏で行われる、八一と於鬼頭の帝位戦では、奨励会制度の問題点に対する問題提起もなされる。於鬼頭はプロとして初めて将棋ソフトと戦って敗北したが、ソフトの序盤の構想力に衝撃を受け、序盤で独自性を出せないのであればもはやプロ棋士である意味がないと考え、プロ棋士になれなかった奨励会員に対する責任として一度は死を選んだ。だが結果的に救命された於鬼頭は、それまでの自分の将棋を全て捨て、将棋ソフトだけを使って研究することで帝位��獲得するレベルに上り詰める。於鬼頭の面白いところは、単に将棋ソフトで研究するのみならず、棋譜から将棋の才能を数値化するソフトを開発してしまう。それによって奨励会で苦しむ奨励会員が減るのではないかというわけだ。隠者のような生活をしながらもそうした考えに至るのは、自らが踏み台にしてきた過去の奨励会員たちへの贖罪なのか、未来の奨励会員たちへの優しさゆえか。いずれにせよ機械のような於鬼頭の裏には意外な情の深さがあって面白い。さらに彼を慕う若手の二ツ塚未来との会話も、どこか優しさを感じさせる(というか於鬼頭の子供はたぶん二ツ塚であろう)。
現代将棋が研究会によって短期間で変遷してきた歴史を織り交ぜ、戦型の流行や革命をドラマに絡ませるなど筆力が非常に高い。同時に、研究会によって定跡が整備される一方、それが名人が統治する中世的世界であると批判するのが、おそらく作中最高の才能を持つ天才少年、椚創多であるところが面白い。さらに将棋ソフトによって変容した将棋界、そしてAIによってこれから起こる将棋界の革命も示唆している。とはいえ硬い話は一部であり、冒頭からJS研などロリネタ、アニメ・マンガ・ラノベ等のオタクネタ(もちろんロウきゅーぶネタも入る)、2chネタ(今となっては懐かしいVIPのノリ)、ニコニコネタを散りばめているので基本的にはやわやわのやわめ。適当に読んでも面白いので手軽にどうぞ。
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relaxationspace-cocoyou · 4 years ago
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日曜日は、
鶴岡の助産院 なんばサロンWhite さんでの
施術日。
いつもよりも、あったかいなぁ〜♡と
リンパケア後のお客様と、ほっぺをピンクに
しながらポカポカしていたら
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施術部屋のドアを開けると
ペレットストーブが付いていて、
サロン全体が温まっていたという訳♡
隣のお部屋からは、赤ちゃんのかわいい
泣き声が聞こえてきて、
それはそれは癒される♡
お客様と、赤ちゃんの泣き声に癒されつつ
いつもとはひと味違った素敵な施術タイムを
送ることができましたよ^^
他にも、可愛い♡ちびっこ姉弟を
一緒にお連れしてお越し頂いたお客様や
星読みに感激してくださり、
美味しいリンゴジュースを差し入れに
持ってきてきださり(ありがとうございます!こちらこそ感激!!星よみは心を調えられるよね!)
ハーバル蒸しを堪能して下さったり、
今日は終始穏やかなにぎやかさが漂う
素敵な一日でした♡
みなさんのおかげさま♡
いつも、ありがとうございます♪
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なんばサロンWhiteに飾ってある
可愛いお雛様♡
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pinoconoco · 7 years ago
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Mother Complex 8(-1)
リビングを開ければぐぅぐぅと鼾をかくのが聞こえてきた。部屋が少し酒臭い。テレビをつけて、パタパタと支度をするのに動き回っても全く起きる気配すらない。家を出る直前、ソファで綺麗な顔をして鼾をかく一護の傍にしゃがみこみ顔を見つめた。
ルキア大好き
なぁんて、甘い声を出して手を握ってきた昨日の夜のコイツは一体何なのだ。なんて狡い甘えん坊だったことか。
内緒の彼女とは誰なのだろう?なんとなく、井上ではないような気がした。でも昨日あの店にいたのは井上だった。
一護は
そんなに難しい子でも狡賢い子でも無い気がするのは私の欲目なのだろうか
私に「彼女」の存在を隠すのは何故だろうかそんな存在を感じさせたことなどなかったように思う。というか学生だった頃は女の子と遊ぶのを隠してなどいなかったように思う。どちらかと言えばいろんな女の子と遊んでいなかっただろうか。少しがっかりするくらいに。
でもそれは私が鈍いのかもしれないし
一護がどうしても隠したかったのかもしれないけれど
そうだとして何故そこまで隠すのか
私にそんなに気をつかっているのか
それともー
それとも、なんて考えは思うことすら許されることでは無い気がして頭から追い出した。
ばか息子
起こさぬよう小さく声をかけて
鼻を指で弾いて家を出た。
◾◾◾
土曜日は顧問をしている合唱部の為だけに学校に行くだけなので、5時には家に帰ることができたが帰りたくなかった。
《何時に帰る?》
スマホを見れば一護からいつもと同じメッセー���がきていて、いつもならふわっとした気持ちになるはずなのに今日は何故かその言葉がとても煩く感じてしまった。
彼女が、来てるのだろうか
そう思ってしま��ばモヤモヤとして少し意地悪な気持ちにもなる。
《今日は桃の家に遊びに行く。ご飯も桃と食べる。夜中まで帰らぬから》
それまでどうぞご自由に、というのは消してから返信した。そこまで書いたらいやらしいし惨めな気がした。
何時に帰る?とか今どこ?とか、一護は毎日のように聞いてきてそれを可愛く感じていたなんて本当に自分は間抜けだ。
《やべ、7時に帰ってくるみたいだ》
《じゃあ帰るね》
《ごめんな、また今度な》
なんて、きっと本当はそんな会話をしていたのだろうかと思うと、騙されていたわけでもないのに悔しいような寂しいような気持ちになる。もちろん一護は悪くない、そんなことも頭では理解しているのに心がついていかない。
お年頃だしな
息子は母親を嫌いじゃなくても疎ましいものなんだろうし
というか私を母親としてみてくれてたのかな
でも一護はたくさん喋ってくれるし自分から買い物にもついてくるし仲は良いと思うのだが
……私と一護はなんなのだろう
兄様や空鶴さんの言うことはわからなくなかった。多分いい環境ではないのだろう、他人から見て私と一護は。
でも私は、そういう意味で一護に海燕殿を重ねて見たりしたことはなかった。彼等が心配している事は的はずれではなくても根本的に間違っている。
そしてそれは誰もわからない
その間違いを正しく知っているのは私だけなのだ。
それでも狡い私は今のままを望んでいた。このままでいたかった。
でも一護に彼女がいるのなら
兄様達の言うように
私はあの家を出たほうがいいのかもしれない
まとまらない頭は鉛のように重く、考えることを放棄したがり足はどうしても家に向かうことを拒否した。今日は土曜日だから彼が来てるだろうなと思うと申し訳ない気持ちになりながら、それでも親友の家にと向かった。
「よぅ」
と玄関を開けて出迎えてくれたのは日番谷君だった。やはり来ていたか、と思ったまま言葉にしてしまえば日番谷君はなんだよ、と少しムッとした顔をした。
「いや、邪魔して悪いなと思ったのだ」
「別に。アイツ朽木来るって喜んでるし」
「ちょっと桃と話したら早々に帰るよ」
「…今日は鍋にしようって喜んでるから夕飯も一緒に食ってけよ」
唇を尖らしながらストレートな言葉を伝えてくるこの子はやはり可愛い、と思う。ありがとう、では夕飯もご一緒させてもらうかなと礼を言えばこくんと頷いた。
「こらぁ!シロちゃんてばまた呼び捨てにしてぇ」
パタパタとスリッパを鳴らしながら桃が鍋つかみをしたまま現れた。日番谷君はいーじゃん今更さん付けでなんて呼べるかよとブツブツ言って、桃に鍋つかみをした方の手でポカッと柔らかく叩かれた。たいして痛くもないだろうに、いてぇ!と声を上げる日番谷君をスルーして桃は私に顔を向けるといつもの柔らかい笑顔をみせた。
「ルキア久し��りだねぇ~今日はルキア来るって言うから嬉しくて奮発してすき焼きにしたんだぁ」
「おぉ、それは嬉しいな。とりあえずビールとそれから日番谷君用にコーラも買ってきたぞ」
「おいなんだよその馬鹿にした言い方は…俺、最近飲めるようになったんだけど」
「なぬ?本当か?」
「そーなの、飲みの席でコーラを飲む自分がカッコ悪くて嫌だったみたいでね~シロちゃんお酒呑むようになったんだけど、そしたら全っ然酔わないの。実は強いみたいでつまんなぁい」
「いいではないか、桃が弱いのだから。安心して一緒に外で飲めるではないか」
「だろ?心配なんだよコイツ。ってもやっぱコーラのが好きなんだけどさ」
お子様め、と呟くとうるせぇチビと悪態をついては「こら!」とまた桃に叩かれている。
大学からの友人の桃とその彼氏の日番谷君の二人は、いつでも仲良くて可愛らしくて何とも和む。この二人の間にいても、居場所が無いなんて拗ねることも気を使うこともないのは二人ががきちんと周りをも気を使っているからなのだと思う。
最初は驚いた、桃が「彼氏ができたの」と言ってきた時は。
音大を出て、同じく音楽教師となった桃の赴任先は男子校だった。日番谷君はそこの生徒だったのだ。素行の悪い生徒でも真面目というわけでもリーダー的でもないのに、目立つ子だというのは後に彼と会ってすぐに理解した。とてつもなく小さく(私に言われたくはないだろうが)とてつもなく綺麗な顔をしている日番谷君は、桃に一目惚れをしたのだと言う。
桃は最初、私にも誰にも日番谷君のことを相談出来なかったと笑いながら後から言っていた。
「いけないことのような気がして、誰にも言えなかったの」
わからなくはない、いやとてもよくわかると思った。自分より6つも年下のそれも生徒という立場の少年に、そんな気持ちを抱くのはおかしいようないけないことのような気持ちになるのは当時の私にとても理解はできた。
それを貫いても「シロちゃんとずっといたいと思ったから」と言った桃は自分の気持ちに正直で、どこか尊くさえ感じた。
「雛森も飲む?」
「うん、今日はあたしも飲もうかな」
狭いキッチンで残りのビールを冷蔵庫にしまいながら聞く日番谷君とてきぱきと葱を切る桃を炬燵に入りながらぼんやりと眺める。
「そういえば未だに雛森と呼ぶのだな」
「あ?」
「いや、名前で呼ばないのかなと」
「最初から雛森だったからな」
「そーなの、シロちゃんてば雛森先生とも呼んでくれなかったんだよねー」
「へぇ。でももう何年もつきあってるのになぁ」
「あ、でもシロちゃん甘えてくるときはね、桃って呼ぶんだよ」
「うるせぇな!余計なこと言うなよバカ森!」
「ほ~ぉ?」
朽木もやらしー顔するなと赤くなる日番谷君とバカ呼ばわりされても何ともなく笑っている桃がおもしろくてスマホが振動していたのは気がついていたが取り出さなかった���
一護だろうとは思ったが、今は一護のことを忘れたかった。
本音を言えば、桃に胸のうちを話したくて会いに来たが、すき焼きのいい匂いや日番谷君と桃と話していると何だかどうでもいいような、話すほどのことでもないような気持ちになっていた。
きっと、大丈夫
なんでもない、とるにたらないことなのかもしれない
ぼんやりとそんなことを思いながらも、笑いながら二人と食べるすき焼きは美味しくて、出されたスパークリングワインも美味しくて気がつけばかなり飲んでしまったらしい。カチャカチャと洗い物をする気配を感じても、炬燵に寝転んで起き上がれなくなってしまっていた。
「なんか、あった?」
「ん……」
隣から桃の優しい声が聞こえてくる。
ということは洗い物をしているのは日番谷君なのか。
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missmyloko · 5 years ago
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Mizuekai みずゑ会 - 2019
The annual fall dances by the maiko and geiko of Miyagawa Cho are upon us once again!  Mizuekai will take place from October 10th to 13th at the Miyagawa Cho Kaburenjo. Participants Geiko: Chizuru (ちづる), Fumiyū (富美祐), Fukuha (ふく葉), Fukuka (ふく佳), Fumimari (富美毬), Kanachisa (叶千沙), Kimina (君奈), Kosen (小扇), Fukuteru (ふく光), Kikutsuru (菊つる), Yachiho (弥千穂), Miehina (美恵雛), Fukunao (ふく尚), Kimiyū (君有), Fukuhiro (ふく紘), Fukuai (ふく愛), Kimiaya (君綾), Kofuku (小ふく), Fukusuzu (ふく鈴), Toshikana (とし夏菜), Toshimana (とし真菜), Tanefumi (田ね文), Satoharu (里春), Koume (小梅), Toshisumi (とし純), Fukuchō (ふく兆), Fukune (ふく音), Yoshika (吉華), Toshiteru (とし輝), and Fumika (富美夏). Jikata Geiko: Kanae (叶恵), Fukuha (ふく葉), Fumiyū (富美祐), Chikafuku (千賀福), Chizuru (ちづる), Fukuka (ふく佳), Haruyū (春勇), Kanachisa (叶千沙), Fumimari (富美毬), Kimina (君奈), Kosen (小扇),  Fukuteru (ふく光), Kikutsuru (菊つる), Yachiho (弥千穂), Miehina (美恵雛), Fukunao (ふく尚), Kimiyū (君有), Fukuhiro (ふく紘), Fukusuzu (ふく鈴), Fukuai (ふく愛), Toshikana (とし夏菜), Toshimana (とし真菜), Tanefumi (田ね文), Toshisumi (とし純), Fukuchō (ふく兆), Fukune (ふく音), Yoshika (吉華), Toshiteru (とし輝), and Tae (多栄). Maiko: Koharu (小はる), Kanako (叶子), Fukutama (ふく珠), Toshiemi (とし恵美), Fukuya (ふく弥), Chikaharu (千賀遥), Chikasaya (千賀明), Kikuyae (菊弥江), Koen (小えん), Fukukana (ふく香奈), Fukuna (ふく那), and Kikusana (菊咲奈).  Scene 1: Kotobuki Sanbasō (寿三番叟) - Celebratory Three Scenes Set 1: October 10th and 12th Dancers: Fumiyū (富美祐) and Fumimari (富美毬) Singers: Fukuha (ふく葉), Yachiho (弥千穂), Haruyū (春勇), and Kimina (君奈) Shamisen: Chikafuku (千賀福), Fukuka (ふく佳), Fukuhiro (ふく紘), and Kanae (叶恵) Fue: Yoshika (吉華) Kotsuzumi: Fukuteru (ふく光) and Fukusuzu (ふく鈴) Otsuzumi: Toshisumi (とし純) Taiko: Kanachisa (叶千沙) Set 2: October 11th and 13th Dancers: Fukuka (ふく佳) and Kanachisa (叶千沙) Singers: Fumiyū (富美祐), Chizuru (ちづる), Haruyū (春勇), and Fumimari (富美毬) Shamisen: Chikafuku (千賀福), Kosen (小扇), Kimiyū (君有), and Tae (多栄) Fue: Toshikana (とし夏菜) Kotsuzumi: Kikutsuru (菊つる) and Tanefumi (田ね文) Otsuzumi: Kimiaya (君綾) Taiko: Fukuai (ふく愛) Scene 2: Tanchō No Tsuru (丹頂の鶴) - Red Crowned Crane Set 1: October 10th and 12th Maiko: Koharu (小はる), Toshiemi (とし恵美), Fukuya (ふく弥), Chikaharu (千賀遥), Kikuyae (菊弥江), and Fukuna (ふく那) Singers: Haruyū (春勇), Kimina (君奈), and Fukune (ふく音) Shamisen: Tae (多栄), Fukunao (ふく尚), and Fukuteru (ふく光) Set 2: October 11th and 13th Maiko: Kanako (叶子), Fukutama (ふく珠), Chikasaya (千賀明), Koen (小えん), Fukukana (ふく香奈), and Kikusana (菊咲奈) Singers: Haruyū (春勇), Miehina (美恵雛), and Toshimana (とし真菜) Shamisen: Tae (多栄), Kosen (小扇), and Toshiteru (とし輝) Scene 3: Oridono (織殿) - The Weaver Mansion Set 1: October 10th and 12th Dancers: Kikutsuru (菊つる), Fukuai (ふく愛), Toshikana (とし夏菜), Toshimana (とし真菜), Tanefumi (田ね文), Koume (小梅), and Toshiteru (とし輝) Singers: Fukuha (ふく葉), Haruyū (春勇), Yachiho (弥千穂), and Fukune (ふく音) Shamisen: Fukuka (ふく佳), Chikafuku (千賀福), Fukuhiro (ふく紘), and Tae (多栄) Set 2: October 11th and 13th Dancers: Fukuteru (ふく光), Fukusuzu (ふく鈴), Satoharu (里春), Toshisumi (とし純), Fukuchō (ふく兆), Fukune (ふく音), and Fumika (富美夏) Singers: Fumiyū (富美祐), Haruyū (春勇), Chizuru (ちづる), and Miehina (美恵雛) Shamisen: Chikafuku (千賀福), Kimiyū (君有), Toshimana (とし真菜), and Tae (多栄) Scene 4: Gonin Shōjō (五人猩々) - Five Orangutans  Set 1: October 10th and 12th Dancers: Kosen (小扇), Miehina (美恵雛), Kimiyū (君有), Kimiaya (君綾), and Kofuku (小ふく) Singers: Yachiho (弥千穂), Fukuha (ふく葉), Haruyū (春勇), and Kimina (君奈) Shamisen: Fukuka (ふく佳), Chikafuku (千賀福), Fukuhiro (ふく紘), and Fukuchō (ふく兆) Fue: Yoshika (吉華) Kotsuzumi: Fukuteru (ふく光) and Fukusuzu (ふく鈴) Otsuzumi: Toshisumi (とし純) Taiko: Kanachisa (叶千沙) Set 2: October 11th and 13th Dancers: Kimina (君奈), Yachiho (弥千穂), Fukunao (ふく尚), Fukuhiro (ふく紘), and Yoshika (吉華) Singers: Chizuru (ちづる), Fumiyū (富美祐), Fumimari (富美毬), and Miehina (美恵雛) Shamisen: Kosen (小扇), Chikafuku (千賀福), Kimiyū (君有), and Toshiteru (とし輝) Fue: Toshikana (とし夏菜) Kotsuzumi: Kikutsuru (菊つる) and Tanefumi (田ね文) Otsuzumi: Kimiaya (君綾) Taiko: Fukuai (ふく愛) Scene 5a: Eiju Shochikubai (栄寿松竹梅) - Prosperous and Long Lived Pine Bamboo Plum Set 1: October 10th and 12th Dancer: Chizuru (ちづる) Joruri Singers: Fukuha (ふく葉), Yachiho (弥千穂), Kimina (君奈), and Fukune (ふく音) Shamisen: Chikafuku (千賀福), Fukuhiro (ふく紘), Fukuchō (ふく兆), and Kanae (叶恵) Koto: Fukunao (ふく尚) Scene 5b: Kairaishi (傀儡師) - The Puppeteer  Set 2: October 11th and 13th Dancer: Fukuha (ふく葉) Joruri Singers: Fumiyū (富美祐), Haruyū (春勇), Fumimari (富美毬), and Miehina (美恵雛) Shamisen: Kosen (小扇), Kimiyū (君有), Toshimana (とし真菜), and Toshiteru (とし輝) Scene 6 - Miyagawa Kouta (宮川小唄) - Song of Miyagawa Cho All geiko who performed on stage that day will gather and perform this piece.
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enkelereis · 4 years ago
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香川旅行の記録🌪 桃太郎さんをチェックアウトしてランチはすぐ近くの #一鶴 へ🍗雛鳥にしました😋こちらも美味しゅうございました😀 台風の影響でそろそろ雨風が強くなってきたので、道の駅でお土産を買ってから淡路島方面へ🚙 屋根付きでペットOKでお茶ができる場所といえば1択、#グリナリウム淡路島 へ🍓 いつも人気のお店ですが、さすがに台風直前だったのでガラガラでした🌪パフェもやはり美味しゅうございました😋ここのスタッフさんも素敵な人ばかり✨ そして淡路島でみどさんと解散🚙エドもみどさんにいっぱい可愛がってもらって帰宅後は心地良い疲労感だった模様です😊 一番最後の写真は桃太郎さんでの夕食後のデザートの時、ミドさんが撮ってくれたエドのショットです😆幼稚園のお歌の発表会で一生懸命歌ってる子みたいなお顔🤣 #一鶴屋島店 #greenarium淡路島 #淡路島 #犬連れ旅行 #chihuahua #チワワ #3歳 #ロングコートチワワ #ブラックタンホワイト #longcoatchihuahua #blackandtan #dog #わんこ https://www.instagram.com/p/CGkgr-TJui6/?igshid=e9ywsydvlrqa
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humax-cinema-008 · 4 years ago
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・世界観 ・絵 ・全体的な描写・キャラクター・キャラ設定 
・各呼吸の描写(水だったら水流等の場面)・それぞれの兄弟(姉妹)愛
 ・刀自体が好きなのでそれぞれ色が違ってかっこいいと思いました。
 ・冨岡さんの「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」のシーン
・手鬼を倒したことを見届けて鱗滝さんが待つ狭霧山へと帰る錆兎、真菰、弟子たちのシーン
・炭治郎が最終選別から狭霧山へと帰り禰豆子が抱きしめ、2人を抱きしめ泣きながら「よく生きて戻った!!!」と鱗滝さんが言うシーン 
・善逸が鬼と知りながらも伊之助から禰豆子が入る箱を体を張って守るシーン ・宇隨さんの嫁 雛鶴が妓夫太郎に殺られそうになるが炭治郎が助け、炭治郎に感謝するシーン 
・剣士達が無限城へと落とされたときに扉が消える前に頑張って後を追う鎹鴉たちが本当に優秀で好きです(16巻140話前扉絵) 
・上弦の弐 童磨戦での胡蝶姉妹のシーンは本当に感動しました。カナエさんがしのぶさんを叱責しながらも信じ応援してる姿に涙しました。
・童磨を撃破後、しのぶさんの髪飾りを探し出したカナヲを撫で「頑張ったね、カナヲ」のシーンと胡蝶家が集まったシーン 
・上弦の壱 黒死牟戦で玄弥が胴を切断されたあと助けにきた���弥が怒るシーン ・実弥が玄弥を抱きしめ泣きながら神様に弟を連れていかないでくれと叫ぶシーン
・輝利哉様が指揮をとる無惨戦で無惨が復活し、剣士達が虐殺され自分のせいと自暴自棄になりかけたとき、くいな様にビンタと叱責され自分の役割を全うして、くいな様とかなた様に感謝したシーン
・禰豆子がお父さんの呼びかけに反応し目を覚まして兄·炭治郎の元へ行くときに誰かに追わせようとする輝利哉様に輝哉様が制止し「禰豆子は好きにさせなさい大丈夫だから」のシーンとそのあとに泣きながら父の言葉を信じるシーン 
・伊黒さんが炭治郎を庇い両目を失い鏑丸と目を共有したあと炭治郎に感謝したシーン(竃門呼びだったのが炭治郎に変わったのも良い)(20代・女性)
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kachoushi · 3 years ago
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雑 詠
花鳥誌 令和3年6月号
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雑詠巻頭句
坊城俊樹主宰選 評釈
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駄菓子屋や故郷の夏の出入り口 粟倉 健二
 この句は重層的なものがある。駄菓子屋が過去のものと現在のものを繋ぐ出入り口。故郷の小さい頃の思い出を行ったり来たり。その故郷とは遥かな場所にある。そしてそれは夏休みの思い出か。それを繋ぐ誠にロマンティックな句。俳句の可能性に挑戦したと言えよう。
己が身によしずを巻いてかくれんぼ 粟倉 健二
 これもまた同様の句。かくれんぼは誰でもした。葦簀を巻いて隠れたという子も居たろう。葦で編んだ日よけを、身体に巻いて隠れていたのか。子供たちの知恵や遊び方の世界が古き良き日々を彷彿とさせる。何十年も前の夏の日。
向日葵や郷里へ続く地平線 粟倉 健二
大きな句となった。向日葵畑の一面の大地。そこは過去の故郷への道を隠している。地平線という壮大なものが、時間と空間を隔て、現在と過去の時間を思わせる。壮大で普遍的な句だ。
陽炎の伊良湖に在す幾みたま 馬場 省吾
 愛知県の伊良湖岬。芭蕉の句でも有名だが、そこにはまた海難や戦争、そして歴史的な武将たちの御霊たちが宿っている。陽炎という季題はむろん気象上のことであるが、同時に過去や未来への道として使われよう。
沈みつつ椿垣間に島暮し 馬場 省吾
 南方の島を思うのだが、椿の咲くころ、その垣根は石積みであって、大風や雨を防ぐために屋根を低くし、沈んだような家屋が見られる。石や瓦のくすんだ色に咲く深紅の椿が美しく、島民の血潮のようでもある。私はゴッホやゴーギャンの絵のような句を思った。
重畳の霞杜国をねむらせて 馬場 省吾
 芭蕉の弟子の杜国。ことにこの弟子は曰く付きであって、犯罪に加味していたという説もある。だが俳諧は真面目であったろう。その彼は幾重にも重なる分厚い霞の中に眠るのが幸福だろう。哀しいが大きくて深く重い句。
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曳く網の形(なり)に光るや蛍烏賊 岩原 磁利
 蛍烏賊の漁は日本海の富山湾あたりで有名。それは暗いころから出て、闇の中へ入れた網を曳いて漁をする。幾度か見たが、蛍烏賊の発する青白い光が幻想的であった。網そのものが、その光に包まれる。こんな景色をみごとに表現した。そして類句類想を見ない絶品となった。
霾や外人墓地の鉄鎖 岩原 磁利
 黄砂というものは中国からやってくる。この外人墓地はしかし白人のものである。祖国から帰ることのなかった人の無念も感じる。鉄鎖はしかしその人の意思の強さでもある。余韻が深い。
大極拳復習ふ城址や花の塵 岩原 磁利
よく見る風景。昔はあまりなかったが、いまは老若男女ともこんな風景がある。そこに花が塵のように吹いている。写生句としての大きな道を踏まえて作ったような、しっかりした景色。
卒業しどこのものでもない私 村山 弥生
 どこでもだれでもないという事の不安。肩書きも無いし、何処に居るべきものでも無い。
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鳥雲に天守の鯱を置き去りに 高木 朱星
 鳥たちとともに飛翔したかった鯱だったかも。跳ねることさえままならぬ。
雛僧に警策うけて寺涼し 進士 里昇
 警策の音はまこと涼しい。虚子も京都や山寺でそれを受けていた。ぴしりぴしりと。
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銅鑼の音や島に一礼卒業生 鈴木 経彦
 この卒業生の心の清らかさと逞しさに惹かれた。いよよ大都会へと戦いに行く。
時計屋の時計遅日を刻みつつ 岩佐 季凜
 時計屋の時計春の夜どれがほんと、という句を思い出す。遅日という時間の弛みが見事。
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凍鶴として人の世を凍るのみ 村上 雪
 人の世と凍てる鶴とは無限に遠い。しかし、人はその鶴をこうして虜にする。
切り立ての年輪匂ひあたたかし 山崎 肆子
 年輪は切り立てでも生きている。その瞬間はまだ血脈が通うように暖かい。
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