#赤ちゃんが食べられるタオル
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0721
昨日は財布とスマホを忘れて労働に出かけてしまった。気づいたのは電車の中で、あちゃーとは思ったけどまあでもパスモ(クレカと一体型のやつ)があるからべつに平気だなと思ってすぐあきらめた。待ち合わせの予定とかもなかったし。こういうときに限って何か緊急の連絡が…とはちょっと思ったけど、一月に義父が亡くなったばかりだからしばらくそういうことはあるまいと思った。またそういうことがあるかもとはあんまり考えない。こういうのって性格なのかな。誰からも何も来ないに千円と頭の中で賭けた。 つまりわたしは労働に遅刻しないよう、わざわざ引き返さなくたって平気だと自分に言い聞かせているのだろうかとちょっと思った。そんなに遅刻をおそれているのか。ちょっとくらい遅刻したって気にしない感じの方がいいのになと思う。自分も周囲も。わたしは電車とか待ち合わせとか映画の上映開始時間とか、いつもいろんなことがギリギリで、ギリギリまで仕度ができないタイプなんだから大手を振って遅刻しちゃえばいいのに毎度バタバタ走って大汗をかいている。悪あがき。一生こうやって走っているんだろうかとときどき恥ずかしくなる。
さっき電車に乗り込むとき、ホームと電車のすきまに靴を落としてしまった人がいた。すきまにかかとを引っかけて転んでしまったようで、一瞬迷ったけどわたしも電車を降り、大丈夫ですかと声をかけた。このときはまだ自分が財布とスマホを忘れてきたことに気づいていないのが、なんか昔話の正直者っぽいムーブだな……。人助けってほどのことでもないけど、うっかり者で正直者のなんとか太郎的な。 でもそんなんではないな、昔話の無償の正直さではないな。自分も乗りたい電車に遅れそうでしょっちゅう走っているタイプだから味方したくなったってだけかもしれない。自分ももうずっと前、学生時代、靴をホームのすきまに落としたことがあって、東中野の駅で足を踏み外して体ごと落っこちかけたのを近くにいた人がすぐ引っ張り上げてくれた。そのときは演劇のフライヤーを業者に届けに行く用事でかなり重たい紙袋を持っていた。よく引っ張ってもらえたなと思った。そういう善意の循環……みたいなことを考えると��んかちょっと気味が悪いような気もする。これはわたしがひねくれているだけかも。 転んだ人は声をかけられてかえって恥ずかしいかもしれないと思って、駅員さんが来るまでなんとなく近くで見守り、駅員さんはすぐ来たので車輌ひとつぶんくらい離れたところに移動した。そして、電車一本くらい見送ったっていいや、多少遅刻してもいいやという判断をした自分に酔っていないか?みたいなことも思った。多少の遅刻は気にならない自分をやりたかったんではないか。なんだか心臓がばくばくし、さっきその人が転んで尻もちをついたとき、プリキュアみたいな絵面と一瞬重なった。スカートが広がった感じと手に握ったままのハンディ扇風機がなんか魔法少女みたいだなと思った。それがうしろめたくて声をかけたのかもしれない……とかも考えた。 なので財布もスマホも忘れてきたと気づいたときちょっとほっとした気持ちもあった。慣れない善意のようなことをしたからそれと釣り合いがとれているような気がした。バチが当たるの逆みたいな。
そういうことを考えていたら電車はすぐ着いて、財布もスマホも持っていないのに水筒と読みかけの本は持って会社に出かけるのなんか優雅だな…と思った。あとタオルと日傘と飴。リュックの中で水筒の氷がカラカラ鳴って、このごろ水筒には冷たいお茶を入れているから、歩くたび遠足の子どもみたいな音がする。 読みかけの本はレアード・ハント『インディアナ、インディアナ』。柴田元幸訳。柴田元幸だから読んでみるというのは武豊が乗るから買っておくみたいな感じ? わかんない。インディアナ〜は難解な小説ではないと思うんだけど、ゆっくり読まないとすぐなんだかよくわからなくなる小説。もうあと少しで読み終わるんだけど、読み落としているところがたくさんある気がして行きつ戻りつ読んでいて、今はもっかい最初からゆっくり読み直している。 「ヴァージルの死ぬ間際にノアはもう緑の印は見つかったかとヴァージルに訊いて見つかったならどこにあるのか教えてくれと頼んだがヴァージルは長いあいだノアの顔を見てそれから眠りに落ちそれから目ざめてノアの顔を見てそれからまた眠りに落ちた。」だいたいこういう感じ。辛抱強く話を聞くみたいな小説で、いつかこういうの書きたいな、書けたらなあと思う。このそれからが3回続くの、自分だと書くのに勇気がいると思うし、書いたとしても書いたぞってあざとさが出てしまう気がする。
お昼は会社の横に来ていたフードトラックでタコスを食べた。パスモで支払えた。白いタコスには鶏肉、ピンクの生地には牛肉の赤ワイン煮込み、黒っぽい生地にはサボテン?を何か和えたやつ。三個入り。キウイのサルサが辛くて美味しかった。スマホを持っていたらぜったい写真を撮っていたなと思った。 並んでい���とき、トラックに据えた鉄板の火が消えてしまったようで店の人が五分くらい格闘していた。しばらくチャッカマンをカチカチやっていたけどたぶんチャッカマンも燃料切れのようで、ぜんぜん火がつかない。ライターでやろうとしてなかなかうまくいかず、昼休みの五分くらいってけっこう長く感じるしかなり人も並んでいたんだけど、その人はまるで焦らず黙々とやっていたのですごいなーと思った。焦りが顔に出ないタイプなだけかもしれないけど。べつに誰にも謝らず、普通に注文を受け普通にタコスを包んでとやっていて、そうだよなあと思った。
労働を終えまっすぐ帰宅したらスマホにはやはり誰からも連絡は来ていなくて、千円勝ったと思った。千円くらい何か食べようと思った。わざわざ夜出かけるのめんどくさいなとは思ったけど、金曜の夜でほんとは寄り道したかったのだから出かけたい気持ちが勝った。 ぶらっと出てみたらいつもより涼しくて、どこまでも散歩できそうな気持ちのいい晩だった。ぶらぶら歩き、なんとなく電車に乗っていた。夜だから上り電車は空いていて、定期圏内の、でもあまり降りる用事がない駅のちょっと歩いたところにある中華料理屋というか定食屋というか、カツカレーが美味しいらしいので前から行ってみたかった。ふだんぜんぜん用事のない、買い物に行くような街でもない、誰も知り合いもいない駅。ここでわたしが何か交通事故とかにあって死んじゃったりしたら、なんであんなところにいたんだろうと家族は不思議に思うんだろうな……とあまり行かない場所に出かけるたび思う。 駅を降りたら書店があったので覗いてみた。雑誌と漫画と学参の棚が大きい、ちょっと広めの店舗の懐かしい感じの書店。気になっている本のリストを頭に浮かべながら物色し、目当てのいくつかは置いていないようだったけど、そういえばしゃしゃさんの本が今日発売日じゃなかったっけと思って探した。『蒼き太陽の詩』。1,2巻は棚に差してあったけど今日発売の3巻はなかった。レジに持って行って、これの3巻もありますかと尋ねたら奥から出してきてくれた。ラスト一冊でしたと教えてくれた。あっ善意と思った。カツカレーを食べながら読んだ。 『蒼き太陽の詩』は、アラビアンファンタジーというのかな、双子の王子が国王の座をめぐって殺し合う……というワクワクハラハラする物語。砂漠の王国が舞台の大長編で、読みやすくてぐいぐい進んだ。『インディアナ、インディアナ』を読んでいたから余計にそう思うのかも。壮麗な織物みたいな物語で、読んでいるとキャラクターたちの声が聞こえてくるし人や周りの風景が目に浮かぶ。生き生きとしている。これアニメになったらいいなーと思った。赤将軍のユングヴィはファイルーズあいさんがいいな……。
���ツカレーの店は、客はわたしだけで、店のおじいさんは座敷でテレビを見ていた。テーブルにハイボールのコップとつまみがいくつか並んでいて、わたしが来たのでおじいさんはちょっと慌てたようすで、でもにこやかに注文をとってくれた。すっかりすり減った畳が赤くなっていて、ちょっと緊張した。あまりきれいでない状態に緊張するのもあるし、よそものが入ってきてすみませんみたいな緊張感もある。テーブルはきれいに拭かれていた。揚げたてのカツが大きくて、油と肉汁がジュワッと溢れてきてすごく美味しかった。カレーは濃くて、柔らかくほぐれた牛肉もけっこう大きいしたくさん入っていた。たしかにうまい。がつがつ食べるうちにだんだん体のこわばりがほどけた。 テレビの音がものすごく大きくて閉口したけど、カツを揚げ終えたおじいさんが汗をぬぐいながら夢中で見ているのがなんかよかった。『チコちゃんに叱られる』というやつ?初めて見た。音が大きいから見てしまう。ボーッと生きてるんじゃねえよってこれかと思った。Vtuberっぽい。おじいさんが何度もはははと笑った。どうしてゴルフボールの表面にでこぼこがあるのかというのをとても真剣に見ているので、ひととおり解説が終わるのを待って会計を頼んだ。
家に帰ったら板垣さんがツイッターでスペースをやっていたので、洗い物や洗濯物などを片付けながら聞いた。どうやら同じ大学出身だったことがわかって思わず話しかけてしまった。一日いろいろカラフルでなんか気持ちが興奮していたのか、やけにたくさんしゃべってしまって、恥ずかしくなって寝た。文フリの話とか小説の話。 千葉雅也『エレクトリック』、わたしは父親がエロいのがいいと思った。と言ったんだけど、なんていうの、エロいって言い方はちょっとちがう気もするんだけどエロく書くことのすごさがあってそれをそう受け取りたいというか……。これは『サバービアの憂鬱』で読んだんだったかな、「男性は会社(仕事)に嫁ぐ」というのを思い出したの。大場正明『サバービアの憂鬱 「郊外」の誕生とその爆発的発展の過程』。うろおぼえだからちょっとちがうかもだけど、男性が会社(仕事)に対して「嫁」になってしまう、みたいな。父親の人妻的な感じ。そういうエロさ。舞台の宇都宮も郊外(サバービア)だなと思った。そしてそういう小説の、文章自体がヘテロでない感じがあって、すごくよかった。多くの小説の文章が意識的にも無意識的にも備えている、当然の「調べ」みたいなものがあんまりない文章だと思った。
『エレクトリック』の前後で読んでいた、数年前の文藝賞の作品が、なんかこうすごくどヘテロだったのもあってそう思ったんだと思う。ヘテロが悪いわけではもちろんないけどよくもわるくもどヘテロ、ザ・調べという感じで、この作品のどこらへんがわたしは苦手だったのかを語ろうと��ると、そこに糸口があるみたいな話。 なんていうの、村上春樹に文句言ってる場合じゃないくらい若い作家の新しい作品がめちゃめちゃ古いジェンダー観で、読んでいて作品の面白さとかすごさはわかるような気はしたんだけど、でもこれをよしとするんだなあ、帯に誰々氏が激賞と書いてあるけどそうなんだ?!みたいな驚きは、やはりあった。ジェンダー観もそうだし、地方や精神障害者への偏見を強化するような感じもあって気になった。「壮大な作品」「圧倒的な熱量」「知識と想像力を駆使し」と帯に書かれていたけど、わたしは読んでいて小ささや狭さの方が目についた。 いやわざとそう書いている、いかにもなステレオタイプをやることに意味がある作品なんだろうとは思った。仕掛けというか。でも意味があるんですよと書くずるさというか……。ステレオタイプをなぞり続けたい、そのようにして書けるものに作家は意味を見出したいし、どうしても興味がある。それってフェチではあるよなあと思うんだけど、ステレオタイプをフェチと指摘されることってあんまりない気がする。 偏見の強化によって生まれる痛み、それを感じない場所に作家は立っていて、痛みを感じる人のこともあまり見えない。いや見えてはいるかもしんないけど、自分の書くこの作品とはさほど関係ないと思っている? それは別の作家、何かそれにふさわしい属性を持った作家がやることであって自分の作品では関係ない。おそらくは無自覚な特権があり、特権って言うと反発したくなると思うけど……みたいなことを思って、うーーんとなった。やつあたりかもしんないけど。作品名出さずに書いてるからなんのこっちゃって感じだ��思うけど。 まあ小説ってそんなに読まれないんだろうなと思った。読む人そんなにいないから、これのここってどうなのみたいな話題にのぼることってあんまりない。漫画とはそこがちがう。あとまあわたしが純文学、文芸誌とその賞にそれなりに夢をもっている(もっちゃっている)ふしはあるな…。
そしてこの作品の直後にC・パム・ジャン『その丘が黄金ならば』を読んであーーーこういうのが好きだ〜〜と思って、なんかそういう不満のようなものはふっとんだ。大きい。大きい小説。こういうのがいい。小さい小説がだめなわけではぜんぜんないけど、大きい話を書こうとしたものが狭苦しく感じられるのはやはりつらい。あと長さもよかった。四六版で384ページ。父親が亡くなり子どもたちが埋葬の旅に出る…という筋書きで、本のけっこう前半で埋葬は済んじゃう。その後が長いのがよかった。純文学系の賞はちょっと短いのかもしれない。「自分の書くこの作品とはさほど関係ない」と書いたけど、まあだって短いもんなー。読む人にも書く人にも。この長さの話はもうちょっと掘り下げたい。日記に書きたいことっていろいろあるな。長くなったのでまた今度。
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濡れた鼓動
「みんな」の中で染まれないのに染められて
倒れこんだ地面は、朝から降っている小雨で湿っていた。
べちゃっと、頬や服に泥が飛び散って染みこみ、思わずついた手のひらのせいで、爪の中まで黒くなる。でも、そんな地面から立ち上がる前に、スニーカーの靴底が僕の肩を踏みつけ、じっとりした落ち葉の中に顔を抑えつけられ���。
冷たい泥の匂いが、味に感じるほど鼻腔に雪崩れこんでくる。
「泥に顔突っこんで、土下座しろよ」
雨が沁みる目だけでも上げようとすると、がっと後頭部を硬い靴底で蹴られる。その衝撃に小さくうめいて、頭の痛みを抑えたい手をこらえて、落ち葉に額をこすりつける。
「ご、ごめ……ん、なさ……」
「はあ? こんな雨の中、お前なんかといてやってるんだぜ。『ありがとうございます』だろ」
「あー、担任マジムカつく。何でこいつの世話を、俺らにさせんだよ。ぼっちのまま、ほっとけばいいのに」
「まあまあ、こいつを助けてやったら、内申書良くしてくれるらしいからいいじゃん」
そう笑った声が、「ぼっちじゃなくなって嬉しいだろ?」と続けて、爪先で僕の顔を上げさせる。
「うわ、顔きったねえ」
「ったく、何で転ぶんだよ。担任には、自分でつまずいたって言えよ」
「妙な言い方したら、お前のこと不登校にして、人生終わらせるからな」
傘の下から唾が飛んできて、ぬるい粘液が首筋を流れた。
一月の雨は静かだけど、冷えきっていて、服を透けて肌を凍てつかせる。視界も灰色がかっているけど、手元の朽ちた枯葉は生々しく茶色だ。
「なあ、言わねえのかよ。塾もあるのにさあ、お前なんかの相手してやってんだぜ」
「あ……ありが、と──」
「聞こえねえんだよっ」
背骨にぎしっとかかとが刺さって、声がもれた。僕はやけに熱い涙をこぼしはじめながら、それに気づかれないようにうなだれて、自分を辱める言葉を口にする。
「ありがとう、ございます。……僕、なんかを、助けてくれて」
三人の傘が、ぱたぱたと雨粒をはじく音が響く。ひとりが噴き出すと、残りのふたりもげらげらと笑い出した。
「ヒくわ。泣きながら礼言ってるぜ」
「頭おかしいよなー」
「こいつは、こういうのが嬉しいってことじゃん? これからもよろしくなっ」
地面に伏せた頭を躙られ、顔面に泥と落ち葉が広がる。
やがて三人は、塾がうざいとか女子とつきあいたいとか言いながら、裏庭から立ち去っていった。僕はぼやける視界の中で、校舎沿いの椿が落ち、毒々しく赤く崩れているのを見つめていた。
雨が、軆の温柔を奪っていく。震えた息が白い。脳もこわばって痛い。
ゆっくり、科された攻撃に障らないように、身動ぎして起き上がった。ぐちゃ、ぐちゃ、と不潔な音が所作に絡みつく。
地面には、剥き出しの土より落ち葉が多かったせいか、思ったより服は黒くなかった。それでも、顔はひどく汚れていると、臭いで分かる。雨に打たれてびしょびしょだし、体操服に���替えて帰ったほうがいいかもしれない。
がくがくする膝を、時間をかけて整えると、僕はよろめきながらその場をあとにした。
手洗い場で手や顔を洗って、三階に向かう。
五年一組が、僕の教室だ。あの三人も同じクラスだから、びくつきながらドアをゆっくりすべらせた。
教室には誰もいなくて鍵は締まっているかと思ったけど、ドアは開いた。誰かいるのかと、おそるおそる隙間から教室を覗くと、後方のロッカーの前に黒髪の後ろすがたがあった。
女子だ。誰だろ、と一瞬思ったけど、その日本人形のように綺麗に長さが揃った髪で、クラスメイトの羽森さんだと分かった。
どうしよう。こんなすがたで入れない。やっぱこのまま帰ろうかな、とランドセルを持ち直した拍子に、残したパンの入った給食ぶくろが、重みでごそっと垂れ下がった。
その音に羽森さんが振り返って、澄んだ声で僕の名前をつぶやいた。僕はなぜか恥ずかしくて、頬をほてらせて、後退ろうとした。すると、「待って」と羽森さんは僕を呼び止めた。
「何かあったんでしょ、それ」
僕は、濡れて泥があちこち染みた自分の服を見下ろした。ぎゅっと、ランドセルの肩ベルトを握る。
「……着替え、ようって。体操服と」
「いいよ。私、リズを見てるだけだから」
「り、リズ?」
「エリザベスのこと。女子はリズって呼んでる子が多いんだよ」
羽森さんの前には、そういえば、ロッカーの上の置かれた飼育ケースがある。
このクラスは、その中で���エリザベス」という謎の名前をつけられた蜥蜴を飼っていた。この学校は校庭に面した野原があって、そこで簡単に蜥蜴が捕獲できる。
でも、今は冬眠していた気がするけれど。冬眠前に野原に逃がしたほうがいいと先生は言ったものの、絶対死なないように世話をするとか一部生徒が主張して、人工冬眠させているらしい。
「羽森さん……も、エリザベスの世話、してるの?」
「うん。わりと」
「冬眠中も、見れるんだね」
「すがたは見れないよ。ただ、この土が乾いてたら、霧吹きとかしてあげて、水分に気をつけなきゃいけないの」
「……はあ」
僕は、エリザベスに触らせてもらったこともないから、よく分からない。ただ意外に思いながら、そろそろと教室に踏みこみ、自分の席にランドセルを置く。
紺色のランドセルには、何枚か枯葉が貼りついていた。弱いため息をつきながら、それを剥がす。
羽森さんが、また飼育ケースを眺めているのを確認してから、湿った服を体操服に着替えた。タオルで軆についた汚れも拭くと、ランドセルを背負って、羽森さんを振り返った。
羽森さんは、腰をかがめて、腐葉土がつまった飼育ケースを眺めている。
「いつ、起きるの?」
何となくそう問いかけると、羽森さんは振り向いてくる。
「あったかくなってからだから、三月頃かなあ」
「……そっか。詳しいね」
「��虫類とか好きだから」
「す、好きなんだ」
臆面のあまり、どもってしまう。僕は子供の頃、ロープと思ってつかんだものが蛇だったことがあって、正直、爬虫類はあんまり得意ではない。
僕の反応に羽森さんは笑い、「変わってると思っていいよ」と言った。そして、かがめていた背筋を正し、こちらに歩み寄ってくる。
「ついてる」
僕はまだ身長があんまりないから、羽森さんと目線が変わらない。もしかしたら、羽森さんのほうが高いかもしれない。羽森さんは、僕の髪から、かたちの崩れた枯葉をはらいおとしてくれた。
「あ、……ごめん」
「ううん。こういうの、先生には言わないの?」
「先生が、みんなと仲良くしなさいって、あのグループに僕を入れたから」
「そういうの、違うと思うけど。離れていいんじゃない?」
「そしたら、先生が親に言うって言ってて。その、協調性がないとか、僕のせいでクラスがまとまらないとか」
羽森さんの綺麗な二重まぶたの瞳が、僕を映す。
僕はうつむいて、「帰らないと」と言った。「分かった」と羽森さんも引き止めず、「私が鍵預かってるから、帰っていいよ」と言った。僕はこくんとすると、何となく「ありがとう」とかぼそくだけど言って、背中を丸めて教室をあとにした。
それからも、相変わらず、イジメは続いた。
気をつけてみると、羽森さんは、確かによく飼育ケースの前に立っていた。ほんとに好きなんだな、と思った。女の子は、爬虫類とかは嫌いだと思っていた。
変わってると思っていいよ。
羽森さんの言葉がよみがえって、そうじゃない、と思った。「みんな」と違う。それは変わっているのではなく、自由だということだ。
みんなと仲良くしなさい。先生にそう言われて、こんなグループの中にいて、僕はぜんぜん自由じゃない。縛られて、捕らわれて、「みんな」の中で染まれないの染められて、僕は羽森さんみたいに強くなれない。
どんな状況におちいっても、周りに流されない自分を持てなかった。殴られても蹴られても、やり返せない。取られる程度のお金を持っておいてしまう。体育倉庫に閉じこめられても声が出なくて、見つけた先生には、なぜ早く叫ばなかったのかと怒られる。
こんな自分が嫌いだ。こんな自分でいることが苦痛だ。みんなに抗えない自分が憎い。イジメてくるみんなを、抑えつけてくる先生を、怨んだり殺したりする勇気はない。代わりにどんどん自分を憎む。
僕が悪いから。僕が弱いから。僕が情けないから。
全部僕のせいだ。すべては僕が引き起こしているのだ。誰も悪くない。僕のせいだ。僕のせいだ。僕のせいだ。
だったら、僕は自分を殺してしまえばいいのだろうか。そしたら、すべて解決するのではないか。誰も僕の存在で不快な思いをせず、わざわざ痛めつける手間も省ける。僕が死ねば、世界はうまくいくのではないか。
『死ねばいい僕に
生まれてきて
本当にごめんなさい
死ねばいいと
教えてくれた人
ありがとうございます』
五年生が終わった春休み、六年生もこのクラスで一年間過ごすのかと考えて、脳が粉砕されるように途方に暮れてしまった。
宿題がない代わりに、ノートに何度も文章を書き殴って、遺書を考えた。先生が切っかけだと書��うか。あの三人の名前を書こうか。された仕打ちについて書こうか。
いろいろ考えたけど、もし自殺が失敗したとき、余計なことを書いていたら、いっせいに世界を敵にまわすことになるのを案じてしまう。絶対に、確実に、死ねばいいのだけど。その覚悟さえあるなら、せめて告発できるのだけど。僕の手は、本当に死ぬと思うとがたがた震えてしまう。
ほんとに死ぬわけない。簡単に死ねるわけがない。そんな気休めをどこかで握りしめて、遺書でさえ、みんなに怒られないような、そんな内容しか残せなかった。
おとうさんはいつも通り会社で、おかあさんは買い物に行っていた。
僕は片づけたつくえに遺書を置いて、リュックを背負って、一階に降りた。玄関で、いつもの黒いスニーカーを履く。
外に出ると、少し曇っていたけど、四月にも入ったから風は温かかった。おかあさんの趣味のガーデニングから花の香りもする。
これから僕は、住宅街の裏手の未開発の森に行く。僕のこの家がある住宅街も、以前は森だったらしい。伐採をくりかえしているけれど、森はまだ鬱蒼としている。
奥のほうで、手首をしっかり切って、風邪をひくと飲まされる眠気が強烈な薬を飲む。そして眠ってしまえば、寝ているうちに出血多量になれるかもしれない。
いや、かもしれないでなく、そうならなくてはならない。何でこんなことをしたんだと訊かれたくない。訊かれたら全部、話さなくてはならない。先生やみんなが悪いみたいに、僕が被害者であるみたいに、おとうさんとおかあさんに知られてしまう。
薄い雲が太陽をさえぎる下で、アスファルトを歩きながら、不思議とさわやかな気分だった。学校に行くときの、どろどろした感じがまったくない。
これから死ぬ。僕が終わる。やっとみんな僕を認めてくれるかもしれない。僕なんか死ねばいいと言った人、思った人、そんな人たちに褒めてもらえる。本当にやってみせたら僕に気づいてくれる。死ぬしか能がないのだから、全力で僕は僕を殺しにいく。
家並みが途切れて、野菜畑の中を進むと、道がなくなってきて木が生い茂ってくる。ぱき、ぽき、とスニーカーが枝を踏んで、乾いた音が響く。
冬の枯葉が残っているけど、地面に土は覗いている。空気が澄んでいて、木の匂いや鳥の鳴き声が立ちこめている。人影がないのを確認しながら、どんどん進んでいった。
そのうち、突き出した枝が頭に当たったり、蜘蛛の巣が大きく張ったりしてくる。茂る木の葉も頭の上を覆って、雲がたなびく空が小さく遠くなる。木陰が増えてきて、ちょっとだけ風が冷めていても、寒いほどではなかった。いつのまにか、地面は冬の枯葉がまだこんもり重なっているようになって、足音もざくざくという音に変わった。
そのへんに来て、ようやく立ち止まった。靴底が少し地面にめりこむ。
このあたりで、木の陰に隠れてやればいいだろう。今何時なのか分からないけど、翠蓋もあって薄暗い。
木と木のあいだに軆をひねりこんで、低木をがさがさとかきわけて、枯葉が降り積もった小さな空間を見つけた。そこに木のあいだから軆を通して踏みこむと、息をついて座りこんでみる。茶色に朽ちた枯葉と小さな枝がクッションになって、柔らかかった。深く息を吸いこんで、よし、とリュックからカッターと風邪薬とペットボトルのお茶を取り出す。
先に手首を切ろうとしたけど、薬でうとうとしてから切ったほうが、加減が分からなくなって深く切れるかもしれない。風邪のときに一回一カプセルの薬を、とりあえず一シート、お茶でちょっとずつ飲んでいった。
ちゃんと眠くなるかな、とそわそわして、横たわったほうがいいかと思って、落ち葉の中にそっと倒れこむ。
土の匂いが優しかった。蹴り倒されて、頭を踏まれて、いつもはあんなに、鼻の面膜を痛めつけるのに。
ゆっくり頭を地面に埋めると、まだ生きている鼓動が、耳元まで響いてきた。血の流れている音まではっきり聴こえる。首筋や胸元が、どくん、どくん、と脈打って、その音を聴いていると、それがこもりうたになって意識も視界もぼんやりしてくる。
意外と効いてきた、と思い、頭のそばに置いていたカッターに手を伸ばそうとしたときだ。
突然、何かの感触が手の甲の上を走った。大袈裟にびくっとして、つい身も起こしてしまった。一瞬、何だったのか分からなかったけど、僕が寝転がっていたあたりの枯葉がかさこそ動いたので、やっとそれが何なのか分かった。
小さな蜥蜴だった。黒い目と短い脚を動かし、ささっと走っていく。僕は目をこすって、それを見つめた。蜥蜴は転がるカッターの上も乗り越えていき、枯葉と同じ色なので、すぐ見分けがつかなくなってしまった。
羽森さんを、思い出した。たいていの女の子は好まないと思っていた爬虫類を、好きだと言っていた女の子を。
でも、変わっているのではないと僕は思った。そう、彼女は自由で、自信があって、自分を大切にしているのだ。僕は自分が窮屈で、嫌いで、殺そうとしている。
視線を落として、小さく息を吐いた。
だけれど、こんな僕でも、たいていの人が好きにならない僕でも、愛してくれる人がいたら……僕が死んだら、たとえば、おとうさんとおかあさんは──
ぽっかりした胸の穴が、突然、息を絞めつけてきた。僕が死んだあとの、僕が遺すことになるかもしれない人を想うと、涙があふれてきた。
薬でぐらぐらする頭で、わけが分からないほど泣いていた。痛々しい嗚咽が、深い葉擦れの中を彷徨う。顔を地面に伏せると、やっぱり土の匂いが優しい。枯葉が僕の涙を含んで、少し黒ずんでいく。そこに顔をこすりつけ、鼻をすすって僕は泣きじゃくった。
やがて、ひた、ひた、と冷たい感触がふと触れてきたかと思うと、曇っていた空が雨を落としはじめた。僕の涙だけでなく、春雨も枯葉を濡らしていく。
すっかり周りが湿った匂いに囲まれ、枯葉もべちゃりと僕の軆に絡みつく。僕はごろんと、その濡れた地面に仰向けになると、正面から雨を受けた。
切断しようとした血管が、軆に張り巡っているの���感じた。泣いたせいで、心臓が早く打って脈を刻んでいる。僕は、まだ傷つけていない左手首を目の前に持ってきて、蒼い血管を見つめた。
ここを切ったら、自分を逃げられる?
違う。それは、自分を捨ててしまうということだ。
魂が能面のようになって、みんなと同じになる。あんな奴らと同じ、正体のない奴らになる。
それは、嫌だ。僕はもっと、「僕」を生きていいのだ。そう、僕を愛して、僕を信じて、僕を生きる。
冷たく濡れていく枯葉の中に沈みこみ、その朽ちた匂いに目を閉じた。
深呼吸して、鼓動を聴く。血にまみれた、僕の生きている音。本当に、あの日落ちていた椿のように、毒々しいほど傷ついている。
それでも生きている。
血を通わし、赤く濡れて、僕はまだこんなに鮮明に生きている。
FIN
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P3 Club Book Akihiko Sanada short story scan and transcription.
真田明彦の難攻不落伝説
某日深夜---ここ、月光館学園巌戸台分寮のと ある一室で、その恐ろしくもおぞましい謀略は、徐々に形を現わそうとしていた。
「許せねえ······絶対に許せねえぜ、真田サン。いや、真田明彦ぉ!」
「じゅ、順平くん。そこまで怒らなくても······」
「甘いわよ、風花!私も順平に同感。食い物の根みが恐ろしいってこと······真田先輩の骨の髄まで思い知らせてやらなきゃ!」
「別に僕は、甘いものがそれほど好きって訳じゃないですが······美味しそうでしたよね。お土産のー日限定100個の特製プリン」
「わん!」
「コロマルさんも、ひとりで10個は食べすぎだと申しているであります」
「トレーニングで疲れてたか何だか知らねえけどよ、フツー全部食うか?俺たち仲間だろ?みんなの分残しとくとか考えるだろ!?」
「あ、あうう。り、リーダー、皆さんを止めなくていいんですか?え?······別にどうでもいい? ううううう······」
あまり恐ろしくもおぞましくもないようだが、ここからが恐ろしい。
「よっし!んじゃ、満場一致で “真田先輩をギッタンギッタンにしてギャフンといわせてグウの根も出なくさせる計画”、略してトリプルGプロジェ クトの発動を宣言します!」
「おーっ!」
この今どきどうよ、というネーミングセンスのなさが恐ろしい。
ともあれ、真田の天然ぶり---というより鈍感さに端を発する、特別課外活動部メンバーの怒りの鉄槌が、真田の頭上に振るわれようとしていた。だが彼らはやがて思い知る。真田明彦の天然もまた、ボクシングの腕前と同じように、超高校級であるということを······。
~フェイズ1 伊織順平&山岸風花~
「オレの武器は······これだ」
そう言って順平が取り出したのは、普通ならスポーツドリンクなどを容れるのに使う、ストローつきの白い円筒形のボトルだった。
「トレーニングで疲れたセンパイに飲ませるための、特製栄養ドリンクって訳だ」
「あんた······敵に塩送ってどうすんのよ?」
ゆかりの言葉に、順平はちっちっちと指を振って、恐るべき事実を公表した。
「これはな 風花の······手作りだ」
「そうなの。頑張って、作ったんだよ」
どよつ。
場の温度が下がり、驚愕のどよめきが走る。
「そ、そんな······順平さん。そこまで酷いことをしなくてもっ······!」
「こ、これは、ワシントン軍縮条約に抵触する可能性すら考えられるであります!」
「きゅ~ん······」
「順平······本気ね······?恐ろしい男······」
この液体がもたらす惨劇の予感に、その場にいた全員の顔が着白と化す。ちなみに、兵器開発もとい調理担当の風花は、皆の評価によって心に深い傷を負い、壁際でしくしく泣いていた。
「お!来たぜ!」
順平の言葉どおり、朝のトレーニング帰りの真田が寮の玄関から姿を現わした。すかさず順平がタオルとボトルを持って歩み寄る。
「センパイ!お疲れさんッス!どうスか?運動あとに特製ドリンクなんて?」
「おお、順平。ありがたいな、ちょ��ど喉が渇いていたところだ」
「しめしめ······じゃなくて、どーぞ!いい感じに冷えて、飲み頃ッスよ!」
何の疑いもなく、真田は順平からボトルを受け取ると、ストローに口をつけて中の液体を勢いよく吸い込んだ。
ずずずずずずずず!
何だか、嫌な感じに粘度を感じさせる音が響き······そうして、真田が口を開いて叫んだ。
「美味い!これはいけるな!」
「······へ?」
予想を裏切る真田のセリフに、唖然とする順平。そこに、真田の歓声を聞きつけ、何ごとかといった表情で桐条美鶴が現われた。
「どうした、明彦?」
「いやな、順平が作ってくれた特製ドリンクが、なかなか美味だったからな。美鶴も飲むか?」
ごく自然に、真田が美鶴にボトルを手渡し、そしてごく自然に、美鶴もストローを口にくわえる。付き合いが長い上、精神年齢的に成熟しているふたりは、間接キスなど気にはしない。······してくれれば、順平の制止は間に合ったろうし、その後の悲劇も防げたのだが
ずずずずず······。
やや飲みにくそうに、美鶴は頬に力を込めて体を吸い上げ、次の瞬間。
ぶびっ。
表情を変えないまま、美鶴の鼻の穴から腐った沼のような色の液体が噴出した。
「き、 桐条センパイっ!!」
美鶴の顔色が、黄土色から紫色、さらにはオレンジ色から緑色へと目まぐるしく変化する。そして最後は、ぐりんと白目を剥き、棒が倒れるような勢いでばたんと倒れ伏した。
「せ、せんぱぁあああいっ!!」
順平の悲痛な叫びがこだまする。それは、この後に来るはずの、美鶴の報復を予感し
ての、早すぎる断末魔のように聞こえた······。
~フェイズ2 岳羽ゆかり~
「えー、牛丼をプロテイン茶漬けで食べる、真田先輩の味覚を甘く見すぎてました。そこで、食欲以外のアプローチで行きたいと思います」
「順平さんはどうしたでありますか?」
「解凍に、あと半日はかかります。ついでに、風花も部屋にこもってしまい戦力外です」
計画の第1フェイズで、すでに彼らの戦力は激減している。あまつさえ、善意の第三者であるところの美鶴まで巻き込み、もはや失敗は許されない状況へと追いやられていた。
「で、あの······ゆかりさん、今度の作戦は?」
そう言う天田は、ゆかりから目線をチラチラと外��ては戻すという、不審な動きを続けていた。し かし、それも無理からぬことだった。
「ズバリ!色気で落とすっ!」
きっぱりと宣言したゆかりの服装は、いわゆるボンデージ風のタイトな超ミニワンピース。服というより、数枚のラバー生地を紐で大雑増に繋ぎました、という感じの露出過多のデザインである。胸元や背中そして���右のサイドから、これかというくらいに眩しく、白い素肌を見せつけている。日ごろ弓道部で鍛えた均整の取れたプロポーションを誇るゆかりが着ると、これが意外と悪くなかった。第二次性徴期が来たかどうか微妙な年頃の天田ですら、頬を赤らめてぼうっとなるほでの色香を放っている。
「これで真田先輩をメロメロにして、さんざんしてあそんだ挙句に捨てるという、自分の非情が恐ろしくなるほどに完璧な作戦よっ!メイクバッチリ、ヘアスタイルもオッケー!」
「胸部の追加装甲も問題なしであります」
「アイギス、ひと言余計! 」
ちなみに、いま彼女らがいる場所は、白昼のポロニアンモールのど真ん中。真田は辰巳東交番の中で、黒沢巡査と話している。出てくるところを狙って、作戦開始という段取りである。
「あ、出てきた出てきた。んじゃ、みんな。行ってくるよーっ!」
何も知らずにやってくる真田を確認し、ゆかりがゆっくりと接近していく。2メートルほど近づいたとき、ついに真田がこちらに気づき、ゆかりと目が合う。すかさず身体をくねらせ、ほどよい弾力を感じさせる太ももを見せつけるように、グラビアアイドル風のポーズを取った。
「······」
つゆつゆつゆ。
······見事に、真田はそれをスルーした。
「んなっ!?」
たとえ色気が多少足りなかったとしても、後輩このゆかりをシカトするとは······。プライドを傷つけられ、ゆかりの中の女の意地が覚醒した。
立ち去ろうとしつつある真田をダッシュで追い抜き、くるりと振り向いて真田の進路を塞ぐように対峙する。さすがに歩みを止める真田。そしてその真田の目の前で、ゆかりは前かがみになり左右の腕でバストをぎゅっと中央に圧迫した。寄せて底上げした胸が、さらに押し付けられて豊かな双丘を形作る。そして---。
「セ•ン•パ•イ (はぁと)」
微動だにしないまま沈黙する真田。手ごたえあり!と、ゆかりが心の中でガッツポーズをしかけたとき、真田がゆかりに話しかけた。
「あー······月光館の生徒か?すまんな、覚えがない。しかし平日は制服着用が定められているはずだぞ?生活指導に見つからないうちに着替えに戻ったほうがいい。それじゃ、な」
つかつかつかつか。
再び見事にスルーし立ち去る真田。取り残されるゆかり。ひゅるりら~と風が吹いた気がした。完敗、というか惨敗、というか勝負にすらなっていなかった。あろうことか、ちょっと髪型を変えて化粧をし、いつもと違う服を着ただけで、真田はゆかりを知人だと認識できなかったのだ。よく年配のオジサンたちが、若い女の子はみんな一緒に見える、などと言うが、それのさらに酷いやつである。予想の斜め上を突っ走る真田の朴念仁ぶりと言えよう���
「せ、せんぱい······会ってからもう半年たつっていうのに······もてあそばれたー!酷いぃぃ!!」
真田の無心ゆえの見事なカウンターアタックで、ゆかりは精神を破壊されかねないほどの敗北感を感じていた。その再起には、まだしばらく時間がかかりそうだった······。
~フェイズ3 アイギス&コロマル~
「ホントに、大丈夫ですか?」
残る戦力となる、天田、アイギス、コロマルの3者が、夕方のランニングをしている真田を遠くから追跡しつつ作戦会議を行なっていた。
「大丈夫であります。私とコロマルさんがいれば、十全と言えるでしょう」
今度の作戦はシンプル。真田にコロマルをけしかけ、ズボンの尻でも破いてトホホな目にあわせてやろうというものだ。
「では、アイギス行きます!」
コロマルの首に結びつけたリードをしっかりと握り、アイギスが走り始める。さすがに運動性能が高いアイギスは、天田が見守る中、どんどんと真田に接近していく。
あと20メートル。10メートル。5メートル。4、3、2、1······あっさり追い抜いた。
「あ······」
見ている天田の額から、汗が一筋垂れる。その間も、アイギスとコロマルは走る走る。どうやら、久々の広い場所が嬉しくてしかたないコロマルが、目的を見失って猛ダッシュしているようだ。念入りにリードを手に絡めていたアイギスは、前に倒れそうになりながら振り解くことも止めることもできずに引っ張られ。
コケた。
そしてそのまま。
ずるずるずるずるずるずるずる。
1機と1匹が巻き上げる砂煙が、遠く地平線の向こうに夕陽とともに消えていくのを、ただ天田は見つめるだけしかできなかった。
~最終フェイズ 総攻撃~
「正攻法で行きましょう」
各々の理由で叩きのめされ疲れ果てた面々に、天田は溜め息交じりに提案した。だが。
「ダメだ······勝てる気がしねえ······」
「見た目はともかく声ぐらい覚えててよ······」
「ぜっはっぜっはっ (散歩して満足)」
「もはや、ベコベコであります······」
部隊の士気は、嫌が応にも低かった。
ちなみに、前髪が長い現場リーダーは、フェイズ2の頭あたりで、ばったり会ったクラスメイトの友近と、はがくれのラーメンを食べに行ってまだ帰ってきてはいない。ぐだぐだである。
全員が集まった寮のラウンジに、どよんと重く苦しい空気が沈殿する。と、そこに。
「おう、みんな。何だか元気がないようだが、どうした?風邪か?食中毒か?」
攻撃目標 • 真田明彦が現われた。トラウマがかった「ひぃ」という悲鳴を、誰かが上げる。
いったい、どうやって戦えば······どうすれば、勝てるんだ······。この、痛みを感じない (それ以外のものもあまり感じない) バケモノのような人に、どうやって太刀打ちすれば······?いっそ復讐代行サイトにでも依頼を······。
そこにいる全員が、絶望に覆われ心を闇に侵食されかけた、そのときである。
「おう、こら、アキ!」
「ん?どうしたシンジ?」
今日は朝からどこかに出かけていた荒垣真次郎だった。いつの間にか寮に帰ってきていたらしく、二階からドスドスと音を立てて降りてくる。そして、鋭い声がラウンジに響いた。
「てめぇ······昨日美鶴が買ってきた限定プリン、全部食いやがったんだってぇ!?」
「ああ、悪かったな。まぁでも普通のプリンと味は変わらなかったぞ。牛乳と卵と砂糖の味だ。今度コンビニで代わりを買ってきて---」
順平たちが問い詰めたときと同じ。謝っているようで、まったく謝罪の意味をなさない、それどころか被害者の神経を逆なでする、無神経な言葉の羅列。昨日は、この真田の態度にさんざん文句をつけたのだが、“たかがプリン” に目くじらを立てるということが、どうしても真田には理解できず、最後までこちらの怒りが伝わらなかったのだ。荒垣も真田の無反省な態度には怒り心頭に······発してはいなかった。むしろ、またかよ、と呆れたような 顔。そして。
「おい、アキ。ちゃんと謝らねえと······」
何を怒られているのか、わからない風の真田に、荒垣が投げかけた言葉は。
「絶交だぞ」
「ごめんなさい!」
真田のリアクションは、これがまた早かった。
「もう、人の分まで食うんじゃねえぞ」
「あ、ああ、わかった」
「食った分、おめえが買ってこいよ?」
「もちろんだ!」
その様子を見て、呆然となるラウンジの面々。
「あんなんで······良かったんですか?」
「今度から······荒垣先輩に頼もうね」
「その作戦を推奨するで、あります······」
そして、力尽きた後輩たちは、バッタリとソファに倒れこみ、そこからしくしくとやるせない泣き声が漏れ始める。その泣き声は、翌日の朝から行列に並んだ真田が、限定プリンを人数分買ってくるまで続いたのだった。
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なんとか生後100日を過ぎたので、入院中~退院して数日間書いていた日記を今更見返したりしている。なかなか貴重な体験をしたので自分のために残しておこうと思う。
───────
いよいよ予定日が近づいてきて、私はと言うと出産が怖くなり突然泣いたりと、かなりはちゃめちゃな精神状態になっていた。
予定日の10日前、旦那とおなかいっぱい夕飯を食べた夜中の0時頃、そろそろお風呂に入らなきゃなどと話していたら突然破水した。びっくりしたのは本当にお腹で破裂音が鳴ったこと。話には聞いていて半信半疑だったが音がするのって本当だったんだ。
陣痛タクシーで産婦人科へ。
旦那が居ない時に破水か陣痛が来たら怖いな…と不安がっていたので家にいるときで良かったと思った。おチビ、空気読んでくれてありがとう。
緊張なのか急に手足が冷えて車内で震えが止まらなかった。
産院に着いて試験紙で破水と確認。即入院。
陣痛がまだ来てないので旦那は一時帰宅。 配車したら行きと同じタクシーの運転手さんで旦那だけ帰るかもと思い近くを流してくれていたらしい。感動…なんていい人なんだ。
その後軽い陣痛のような痛みが始まる。
痛いのに不思議と眠くなる。少し寝る。
起きると痛みが10分~5分間隔になっていたが耐えるしかないらしく陣痛室でなんとか過ごす。心細くて長い長い夜だった。
朝7時頃、子宮口3cm。まだまだ。
とにかく痛くて寝てられない。座ると楽なので座って小刻みに寝た。
10時前に子宮口7cmくらいになったので旦那に連絡して産院に来てもらうが、なぜか陣痛が弱まり室内を永遠歩かされる。これがしんどすぎて「痛いよ~」「嫌だよ~」と子供のように泣きながらとぼとぼ歩いていた。
子宮口は開いてきたけれど陣痛間隔が開きすぎてて分娩はまだ出来��、ただ時間が過ぎてゆく。
わたしの体力がもう限界のため促進剤で促すことにして分娩室へ。やっと終わる~~~と思ったのもつかの間、地獄へようこそ!!!!
こんな痛みがあるのかという痛さだった。
いきむのは本当に便秘うんちを出す感覚だった。これも聞いていたのでまあまあ上手くできた気がする。
しかしなかなか出てこず、赤ちゃんの心拍が少し弱まってしまったので最後は吸引に切り替え。
吸引でも上手くいかなさそうな気配でなにやらわたしの股の前で先生と助産師さんがあーだこーだ言っている。なんかでっかい銀の怖い器具みたいなのがチラッと見えた。なにあれ?
汗と涙といろいろでべちょべちょだし下半身がどうなってるかもうわからん。
本当に痛い時は声が出ないなどと聞いていたが声を出さないと気絶してしまうと思ったので声を出したらスパルタドクターに「声出す暇があったらイキむ!!」と言われ続け泣きながら息を止めて頑張った。
最後はドクターの全体重でわたしのお腹をおしつぶしてちびを出す作戦。いやあんなにお腹大切に守ってきたのに最後の最後そんなことしていいの?????
ぎゅうぎゅう押されてもうダメだと思った瞬間に「ひぎゃ…」と小さな一声を聞いてその時だけ痛みもなにも感じなくなった。
終わった…!!!!!!!!!!
姿はまだよく見てないけど今この瞬間初めて肺呼吸をした人は元気に大声で泣いている。
いろいろネットで見て恐れていた会陰縫合はもちろん痛いけど、お産に比べたら「いた~い」てくらいのレベルだった。アドレナリンすげえ。トイレもめちゃくちゃ怖かったけどさほど痛くない。終わったから言えるけど陣痛の方が辛かったかもしれない。
身体を拭いてもらったチビがわたしの上に乗せられた。に、人間だ…………。目を開けて、息をして、頭からつま先までしっかり人間だ。
はじめまして。
部屋に帰って少しご飯を食べて旦那は帰宅。
気絶するように少し眠った。
出産直後は涙なんて出なかったのにベッドに入ったら疲れと安堵と寂しさが一気に押し寄せてきて涙が止まらなかった。
部屋に連れてこられたチビはすごくかわいい。本当にさっきまでお腹にいたの? 目が大きくて髪の毛がファサファサで耳の形がとっても綺麗。
あなたに何かあったらどうしようと毎日気が気じゃなかったけれど、とりあえず健康そうで安心したよ。
どこにいてもチビと身体を共有してずっと2人一緒だったのに胎動のしない空っぽのお腹 少し寂しいような気もする。でもこれからは毎日顔を見られる。嬉しい!
長い長い時間そばに居てくれた旦那には心から感謝。この人と結婚して本当に良かったと改めて思った。
助産師さんも先生も全力で私とチビを会わせてくれて感謝してもしきれない。
産後ハイやマタニティブルーなどあまり信用していなかったが、実際そうだった。
産後1日目は痛みがまだアドレナリンで緩和されていた感じがするが2日目は全身激痛だしもう理由も無く涙腺から溢れ出る涙。毎日夜中2時間くらいずっと泣いていた。
時間が無くて自分達で地面にカメラを置いて撮った斜め構図のど素人マタニティフォトを見返していて、もう夫婦2人だけの時間は二度と戻らないのだと思ったら更に涙が止まらなかった。
決してマイナスの意味では無く、抗えない時の流れを実感した。
3人になったこれからの一日一日も二度と同じ日は来ないし、過ぎ去るばかりで時間は有限だということに改めて気が付かされた。大切に大切に上書きしていかなければ。
───────
出産は痛くて怖くてどろどろで発狂寸前の誰にも見せたくない姿になってしまうけど何かすごい経験をしたことは確か。
神秘的などとよく言うが、神秘的というよりあれは紛れもない医療現場。全員で頑張る医療現場だった。
この子がこの先苦しくて辛いことを経験した時、それを親は代わってあげられないけれど、出産だけは苦しみを半分受け持ってあげられる唯一の瞬間だと助産師さんから聞いて、あの痛みに耐えた苦しみが報われた。
人生で1番頑張ったと言える壮絶な18時間だった。
そして顔も声も知らなかったはじめましての人間を心から愛せることに驚いた。可愛いと思えるかどうかなんて不安は瞬く間に消え去り、わたしは母になったのだ。
───────
●持ちもの評価
・おうちの香りのするバスタオル◎
産後枕に敷いてよく眠れた
・お茶◎
水は味気ないしポカリは甘くて受け付けなかったのでお茶は絶対あったほうがいい
・ウィーダーインゼリー△
甘いしなんか飲み込めん
・ストローキャップ◎
絶対絶対絶対いる!!!!!!!
・レッグウォーマー◎
寒かったので助かった
・お菓子×
ネットでは持ってくといいと書いてあったけど食べる気力無いし産院でおやつが出た!
バッグは分けて用意しておいてかなりスムーズだった。
・入院バッグ
パジャマ/バスタオル/靴下/レッグウォーマー/生理用品/箱ティッシュ
・陣痛バッグ
スマホ/母子手帳などの基本品/飲み物/充電器/ティッシュ/タオル
常に枕元に置いておきたいものを入れれば間違いない
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退院日はクリスマスだった。
ベタなこと言うようだけれど我が家にかわいいクリスマスプレゼントがやってきた。
そして先日100日目を迎え、毎日たくさん笑い、たくさん泣いて、たくさんミルクを飲んでふくふく元気に育っている。
ゆっくり成長しておくれ。
そんなこんなで忘れる前の産後メモ。
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本格的な冬がやってきました。寒い季節は、布団やブランケットに包み込まれる時間が恋しくなるという方もいるのでは?
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愛媛県今治市にあるイケウチオーガニックは、ものづくりへの強い意志を貫き、徹底した安全性の追求を掲げている今治のタオルメーカーです。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=2109411
製造過程における排水処理や風力発電で全ての電力をまかなうなど、できるだけ環境負荷をかけないための取り組みも行っています。創業120周年を迎える2073年までに、「赤ちゃんが食べられるタオル」を作ることを目標の1つに掲げる人と未来に向き合った企業。
イケウチオーガニックの想いと技術力が結集して作られた商品は、自分用にはもちろん、大切な人に贈りたい一品です。
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軽く、吸水性と速乾性に優れた人気商品「オーガニックエアー」をより使いやすく、ふわふわの贅沢仕様にしたのが「オーガニックエアープレミアム」のタオルケット。 https://wazawaza.shop-pro.jp/?pid=145639130
特殊な糸を絶妙な設計で仕立てているため、温かいパウダースノーのような風合いになっています。しっかりとした肉厚生地なので、季節を問わず1年を通して極上の肌触りに包まれて幸せな気持ちで眠れる、そんなタオルケットです。
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わざわざでは、寝具の他にもタオルやハンカチ、手ぬぐいなども取り扱っています。どれも、ものづくりと真摯に向き合う真面目な企業の商品です。ぜひ、わざわざのオンラインストアを覗いてみてくださいね。
・・・・・・・・・・・・・・・ ▼わざわざオンラインストア https://waza2.com/
▼わざわざのパン・お菓子 https://kinarino-mall.jp/brand-2482
▼【限定クーポンが届くかも】メルマガ登録はこちら https://wazawaza.shop-pro.jp/secure/?mode=mailmaga&shop_id=PA01189522
#パンと日用品の店わざわざ #イケウチオーガニック #オーガニックエアープレミアム #タオルケット #ブランケット
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残暑と私
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9月に入っても暑い日が続くので手持ちのタオルを買い足しました。毎年、7月8月の丑の日に鰻が需要のピークを迎えるらしいのですが、今年は9月も賑わっているそうです。
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「暑さ寒さも彼岸まで」というのはもう過去のものですね。本来であれば秋の気配を感じる彼岸花と呼ばれる埼玉方面で有名な曼珠沙華も開花が遅れているそうです。
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曼珠沙華と言えば赤い花のイメージですが、サラリーマンが定年退職を迎え、赤いちゃんちゃん��と頭巾を被るイベントがある年齢と言えばこちらですね。
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というわけで本日のランチは今年で60周年を迎える昭和39年(1964年)創業の #とんかついけだ です。半蔵門付近をウロウロして気になり入店です。
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ランチタイムはサービスで #ロースカツ定食 は150円引きで頂けるようでしたが、大盛りを頼んだら定価となり、米不足もあり仕方ないかなと思います。
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丁度ピークタイムでしたが10分ほどで提供されました。きめ細やかな衣が印象的な #とんかつ です。卓上のソースをかけて頂きます。
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脂身の感じと肉の柔らかさ、そしてパン粉が細かいのが食べた瞬間のサクッとした食感でわかります。続いて、漬物が自家製のぬか漬けでしょう。
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塩味以外にきちんとクセのある美味しさでご飯が進みます。キャベツは濃厚で甘味のあるソースで食べるのが本当に美味しいですね。
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#ロースカツ の厚みはそれほどでもありませんが、しっかりと美味しいお肉でブランド豚であるTOKYO Xを使ったメニューでなくともしっかりと美味しく頂けました。
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隣のおじさんが、ロースにアジフライを追加というメニューに載っていない頼み方もできるようなので、次回はそれを真似してみたいなと思います。
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#半蔵門ランチ #半蔵門グルメ #半蔵門とんかつ #半蔵門トンカツ #半蔵門豚カツ #麹町ランチ #麹町グルメ #麹町とんかつ #麹町トンカツ #麹町豚カツ #とa2cg
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2頁
また今日も残業だった。クソ上層部のクソ女との接待。俺がテメェみてぇな女好きになるかよ。アイツのキツい薔薇とホワイトリリーの香水の匂いがまだする。吐き気がする。
深夜1時。外は雪がちらつき、空は雪が街の光に反射してか薄明るい。そのせいで回りがよく見える。歩いているのは俺一人。足跡も俺の後以外には雪が覆ったんだろう、見当たらない。頭に雪を散らし、疲れ切った男が一人ただ家路に向かっている。それだけの悲しい風景。
雪が浅く積もった階段を、重い足を引きずりながら3階まで上がる。一段、一段上がる事に口から湯気が立っては消えを繰り返す。手すりを掴む手は凍え、痛みさえある。やっと自宅の所々赤錆びたドアの前に着いた。換気扇からまた別の匂いがしている。
ホワイトムスクの匂い。これは嫌いでは無い匂い。
そして微かな血………生臭く、錆びた、喉に張り付き締め付けるような…同棲者からよくする、もう嗅ぎなれた匂い。
凍える手でベルトに付いた小物入れから家の鍵を探し出し、少し回しにくくなった鍵穴に差し込む。5、6回揺らしただろうか、スンと鍵が回りその勢いに体が傾く。
「ただいまぁ。帰ったで」
玄関で革靴を脱ぎ廊下に上がる。寝室から明るい光とゲームの音が漏れている。また遊んでる。こちとら散々疲れてやっとこさ帰ってもう1時だってのに。腹は空いたわ、眠いは、風呂入りたいわ…。廊下は冷たく、棒になり感覚が薄れた足裏に痛みという感覚を取り戻させた。ため息を吐きつつキッチンを抜け、寝室を開ける。
「おかえり。遅かったねー」
ソファーに腰かけこっちをチラリとも見ずにテレビ画面を凝視し、コントローラーをポチポチしている「嫁」がいた。
鼬。俺の親友兼嫁である。人生どういう事か俺は股間に逸物の付いている人間と籍を入れたのだ。
白銀の腰程までに長い髪。異様なまでに整った中性的な顔。長い睫毛。細い指としなやかで柔らかい、筋肉があまりない女性的な身体。余りにも綺麗で魅入ってしまう高価な人形の様な見た目。それなのに俺の前だと何を言ってるのかさっぱり分からない宇宙人になる。いっそ自分は金星人だと言ってくれれば俺は納得するだろう。あぁ、実に勿体ない。
「血の匂い。残っとる」
「狼ちゃんは鼻ええよね。ウチわからんで」
声を返すもテレビの画面を見たまま。俺の疲れ切った顔をちらりとも見ずに。
「ゲーム、止めろよ」
「ちょっとまって今セーブ出来るとこ行ってるから…。はい。終わり。お疲れ様ー。ご飯あっためるね。お風呂も沸かし直してくる。その間に別データの雑魚狩りしてくれると嬉しい…けどその顔、怒ってる?」
眉間にシワが寄っているのに気が付いた。怒ってる?あたりめーだろ。のんきにゲームしやがって。キレてるよ。黙ってソファに座って手袋を脱ぎ、ポケットに捻じ入れる。手際よく目の前のテーブルにお茶、箸、白米、卵スープ、空芯菜の炒め物、回鍋肉が並べられる。食欲をそそる匂い。ついがっつく。だが回鍋肉にレンジの熱が行き渡っていないのか冷たい所がある。噛む度に熱すぎる所と冷えきった所が口の中で場所を取り合い、とても不快に感じる。イライラが募る。
「風呂出来た。んじゃ、ゲームしてるから。お風呂は抜いて洗っといて。んで先寝てて」
俺はゲームより存在下なのかよ。脱衣所で服を脱ぎながら自分の情けなさに辛くなった。タオルを取り、鉛のように重くなった腕で体を洗うのは面倒だと感じながらも、なんとか体を洗い終えた。ピンク色のラベンダーの匂いの湯船から湯気が上がっている。色も匂いも嫌いだ。しかも長い髪の毛が1本浮いている。なんで最後に取らないんだ。湯船に浸かった胸にピチャリとその髪が張り付く。つまみとり浴槽の縁に貼りつけようとするも指に白銀の髪がまとわりつきなかなか取れない。諦めてその指を浴槽に沈めた。
このまま寝てしまいそうだ。しかし寝ぼけて溺死するのはあほらしいので渋々浴槽から出た。栓を抜き、いつの間にか指から離れたあの忌々しい髪の毛は排水溝に渦を巻いて意図も簡単に吸い込まれていくのが見えた。そのまま海まで流されろ。
柔らかいバスタオルで体を拭き、畳まれたいつものルームウェアに着替える。サングラスはなく眼鏡が畳まれてタオルの上に置いてある。人のものかってに触るなよ。髪を乾かし、重い足を引きずってどうにかソファーまで辿り着き、横になる。同居人はまだフローリングに座り、のんびりとゲームをしている。それを横目に見ていているとさらにイライラが増していく。
いつの間にか睡魔に襲われる。重い瞼を閉じかけた時、鼬がソファーに手をかけて覗き込んできた
「狼ちゃん、お疲れ様。…まだ怒ってるん?何に?」
何?何っててめぇの中途半端な家事やゲームばっかりやってる態度にだよ。本当は俺の事どうでもいいんだろ。俺はお前が言う理想を演じ続けてるだけだしな。昔のひ弱だった「オレ」なんか嫌いなんだろ。…俺はあの頃と変わっちゃいない。どうせお前は「オレ」を見てない。「オレの全部」を。そんなお前の態度や言葉や…全部。全部が腹立たしい
「全部」
「全部か…。そっか。ごめんね。いつも完璧じゃなくて」
「完璧を求めてんじゃねーよ!お前さ、俺に色々指示だけしやがって。んでなんだ?自分は遊んでばっか、我儘三昧か?俺の事少しでも考えた事あるんか!?…どうせ『オレ』の事どうでもいいんやろ」
「狼ちゃん、ウチってそんなに…本当に狼ちゃんの事、少しも考えてないように見える?本当にどうでもいいなんて…考えてるように思える?」
鼬の口が固く結ばれて、手は震えている。金と紫のガラス玉の様な眼には雫が溜まり始めて、1粒俺の左手の甲に落ちた。その冷たい雫に我に返る。雫が心にしみていく。怒りは徐々に静まり焦りが生まれる。そして気が付く。俺の言葉はナイフになって鼬の心を刺してしまった。そのナイフの柄を持っているのは俺だ。俺は…
また俺は鼬を泣かせてしまった。
俺のことを少ししか考えてない?どうでもいいように思ってる?軽率な言葉だったかもしれない。 そうだ。飯は作ってあった。飯食った後に直ぐに風呂も入れた。風呂に入ってる間に服は仕舞われて、着替えと眼鏡は出してある。俺が気がついてないだけでまだ沢山気を遣われてる。
きっと鼬ちゃんは俺が計り知れない程に「俺」も「オレ」の事も考えている。
「…泣くなよ。鼬ちゃん、俺の事思ってくれてるんだよな。俺、家帰って何から何まで鼬ちゃんにしてもうてた…。それやのに酷い事言ってしまった…ごめん。鼬ちゃんも疲れとるのに…俺の事思ってくれて、しかも疲れてるのを気遣って全部面倒見てくれて、…ありがとう」
鼬は赤くなった目を丸くしてる。両手で顔をぐしぐし拭いさる。そこには涙が止まり頬を赤らめたなんとも愛らしい笑顔があった。少し驚いたし腹の当たりがじんわり熱くなった。 俺、やっぱり鼬ちゃんの事好きなんだな。
「んへへ、狼ちゃんが分かってくれて凄く嬉しいです!あのさ、嫌じゃなかったら…今日は一緒に寝る?」
霜の降りた窓からは、雪が降っているのが見える。月光は部屋に差し込みベッドに柔らかな光の毛布を敷く。狭いベッドに大人二人。窮屈だが握ったその手は暖かかった。
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超電波油「腕立てキッツ💦 45、46🥵」〜電話が鳴る〜 ガチャ、 ???「もしもし、アンタッチャブルっていう男の子で合ってる?」超電波油「ふぁ〜い、起きてまーすむにゃむにゃ🥱(キャラ作り) む?誰ですか」???「私の事は疾風の柊と呼んで。貴方は御茶ヶ滝君の親友なのよね?」超電波油「…(こいつ、何を企んでる)何が言いたい?」疾風の柊「………酷い思いをさせてしまったあの子に、恋を叶えて欲しくて。私は奪ったものを戻した形で幸せにしなきゃいけないの。今日はここまで…またね」プツッ…ツーーーー 超電波油「なんだったんだ今の🤯、御茶ヶ滝を何かしらの被害者と間違えてるなこれ。��ライドポテトオイルの逆探知も通じない、悪意が全く伝わらないのに汗だくだ。
戦闘力で侵食する“””””DIO様(トゥルーグランドの頂点)”””””と違い電話越しのオーラのみでこのプレッシャー。表版、いや”””霧島04(裏ストボス)”””よりは圧倒的に強い しかもメンヘラの可能性まである。得体が知れない 怨霊だったら??……こんな時は目立つか…」
〜そして何となく大切な相棒の為に頭に来て本当にライブ放送をする超電波油〜
超電波油「女性はある空間では不浄の器と評価されてる。だから①クリスマスにポケモンを最高に楽しんで色違いを自慢する口実の為に彼女が欲しいといえば彼女が欲しい負け組の出来上がりだ②全く興味がない結婚がしたいと大嘘を言えば結婚したがってる負け組の出来上がりだ 女性は他者の評価についてカッコ悪い方の捉え方しかしないから→③あの子とデートしたい、気になってると大嘘を言えば簡単に騙せる 結果いつだってツケを払うのは男性を食い潰そうとしてきた女性なんだよ、自分達の妄想を信じたその果ての虚無感なんて知ったこっちゃない」 これが、俺の歴史だと言わんばかりにYouTuberとして放送した訳である 複製電脳軍要塞は総人口300億人以上いるのに極度の人材不足で、地球なら再生回数1000がかなり良いところを美少年の見た目がブーストして100万を突破した🎊
御茶ヶ滝「カチカチ (本当に冷酷な眼だ(^◇^;) なんでこんなにイカれてるんだろう、だが……その調子だもっと俺を上げてくだせえ😀) ん?メールだ、ど��どれ……
げっ🥶 バックれるか、風呂があったら入りたい (相棒の恐ろしさを思い知れ(T ^ T)) ………あ!相棒だ😊」
超電波油「ガタガタガタガタ(殺される、まず俺がベールさんに殺される😨) まあ良いのか?大丈夫…相棒が今に目にモノ見せてくれるわ😡(魔王と同一化)」
〜そんなこんなで〜
頬を赤らめながら恥部をタオルで覆って胸を手で隠してみんなとアニメが見れる大浴場に行く御茶ヶ滝ウォーターワールド。 御茶ヶ滝「(ホントは1人で入りたいけど、べるべるの恋バナ攻めが怖いから仕方ない(・・;))」
キモオタ「みろよ、また頭のおかしいサイコパスの相棒が乙女男子ごっこしてるよw」知球GrassShining1 チー牛「羞恥心があるフリをすれば羞恥心があるやつの出来上がりだ(笑) 俺達まで騙される訳ないのにww」
御茶ヶ滝「なんか周りと親しくしてからどんどん親交が深まってるのに 安心感でもある孤独感を感じる( ;´Д`)」超電波油「一緒にハイローぜえええ‼️😆👍」スッポンポーン🌟 ばしゃーん🧼
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御茶ヶ滝はお風呂上がりにワイルダーネスに自家製の旨い寿司を持って走ると複製電脳軍要塞に住んでいて、優しそうな人、とお腹を空かせて擦りよってきたカラカラに””””ぼっちドラゴ””””っと愛称を名付けてペットにした 御茶ヶ滝「(撫で撫でナデナデ( ◠‿◠ )/)」カラカラ「キュゥーー、(><)💚」超電波油「なんだそいつ(゚o゚;;可愛いなあ」防聖孤島「うりゃうりゃ。テメェみたいな可愛いせーぶつは、愛でられ、もふられ、大切にされ、もてなされ、褒められ、背中を流され、ぐっすり寝かされ、暖められ、祝われ、祝福されて、長生きしてしゅーりょうだ\😆/」ざわざわざわ…… 超電波油「む、ちょっと行ってくる👋」
キモオタ「俺達が踏み越えた訳じゃないけど”高級ゴールドバズー”の兵団は遠くの次元でもまた全員死んでくれて良かったよ」
知球GrassShining1 チー牛「表版仮想大鉱山はこんなに可愛いポケモンに””ホネのおむつ””とか”””くわれるWC”””って名付けるでしょうからね」超電波油「情けねえな、完全に悪い意味で。誰が殺してやったんだ?」GrassShining1「共有緑知(ヴァストローデ)です、彼女達は”””””トゥルーグランドの頂点”””””には到底及ばないけれど充分一級品で相手との力の差がない場合はB(バグ)の家族達を上回るお姉さんの一族と言われてます、しかもこれは”””””シックス(裏ストニューボス)”””””の発した赤き真実です」超電波油「なあ、…今朝知らない人から電話掛かってきたんだけどそのヴァストローデが御茶ヶ滝に過去、酷いいじめをした可能性はないか?」中年童貞「いやいや、それはありえないよ。あの女共は人を傷つけるのを激しく嫌ってる 基本的には本当に優しくて善良なんだ、ただ一人の例外もなく」超電波油「……線が繋がらねえ😦 (いや待て 疾風の柊は奪った物を戻すと言っていた 家族を人質に取られた時に目的が身代金以外だったケースの場合、殺される可能性が非常に高いと言う。一人にさせちゃいけない “””鮙〆香氣”””にも頼るべきだ。レンタルヒーローのA級上位はマジで最強だからな)
ゾクッ‼️ 超電波油「でももし本当に無自覚なだけで疾風の柊が怨霊だったら……シアワセって、何を意味してる…」
〜今日の夜、寝室〜 超電波油アンタッチャブルの哲学日記 前を向こうよ、の相棒サイン入り✍️
神になれるのは寧ろ⤴️の御方。強いべくして強い 下記を読めばそれがどれだけ素晴らしいかが解る
「“ゴールドバラバズー500F”達は何もこの世を作った理だけに差別されてるわけじゃ無いんだぜ。心の知能が貧弱じゃなきゃ耐えられないから、幸せを消費する思考の螺旋に呑み込まれて鬱病になるから、敢えて左脳以外が総て常人より劣るように出来てる 腕力の方も同じだ。高等になるほど全力を出すのがより苦しくなり強い精神力が必要になる 自分達(卑猥型絶対悪)より上にいて嫉妬させてくる嫌な奴”””(狂気系絶対悪)”””には…そいつらを箱庭の様にいじめてやれる自分達のような上(卑猥型絶対悪)が何処かには必ず居るってもしもの立場を考えた事はあるか?いいや、最上位現実に表版仮想大鉱山みたいな連中は一人も居ない。
{{{こいつら等みたいなのはもれなく一人残らず、一生””””右代宮譲治さん””””には勝てないんだよ}}} 理だけじゃない 神に、宇宙に、遺伝子に、自分自身によって大いなる知性と筋力を幸福に生きていける為に没収されてる 今は完全に死んだ”””霧島04(ラスボス)”””には決して届かない”ゴールドバズー(クソザコ)”が知恵の実を食べたら罪の意識に押し潰されて頭脳が人並みになった瞬間に自殺する。心の器そのものが失敗作で小さいからこそ生命の実を高次元に届くまで食べてしまうと何かある度いつでも背負う人生の一生分の痛みに耐えられず精神崩壊
“””””獅童正義(裏ストチートボス)”””””が特別な例外 Nightmareなのは当たり前として
実質、軽度の知的障害 身体障害を背負ったeasyなリミッターに守られてるから小さな世で憎まれる憚りが出来てるんだよ(それがあるべき自然の姿、氣力に特化してるのも開放型のパラメーターとして存在させる事が最小限の根性でお手軽に闘えるような夢を無意識に見ているから) 本当に嫌な奴っていうのは善と悪を理解した暗黒卿だ。何千年も沢山の人生を果てまで見といて人間は愚かだ❗️、とか至極当然の事を言いながら、滅びよ‼️とか殺そうとするイカれぶっ壊れてる”””””正統派絶対悪”””””。心まで数値的に大きすぎて邪悪レベルが二つの意味でカンストしてるからフェードアウトした”””霧島04”””まで[俺が、可愛く見える。本当はもっと深刻な事態なのが読み手に伝わらない、]と鬱になるんだ」 “”””B(バグ)の家族達””””は産まれた瞬間から能力に必要な資質を手に入れてる。ここまで強くあれるのはこの子達👇以外の誰かじゃ駄目なんだ(黄金の真実)、
これ以上の敵が実在するならそいつは紛れも無く絶対神だ。世界を箱庭にして破滅させる物理的な資格を有している、多分一人ではもう誰にも止められない」
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ジョセフ・ライト・オブ・ダービー『トスカーナの海岸の灯台と月光』テート美術館展
体調不良でろくにものが食べられなかった誕生日
届いた救援物資に涙が出た
ありがとうアンダーカレント
わたしと一緒にどんどん枯れてく人参…ネキリムシのせいだと気づいた時には遅かった
紅三太 きみは元気で うれしいよ(俳句)
広がりまくるキャベツ
おいしすぎるお菓子たち
せっかくいただいたのに写真を取りそこねましたが、せっせと育ててるタオルもあるよ
ありがとう、ありがとう
歯医者で喉がずっと赤いね〜と言われ、さすがにおかしいんじゃないかと思うので、近々耳鼻咽喉科��行ってみようと思う
やっていこうと思う!
という近況報告でした
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ザアザア主催フェスツアー 遣らずの雨音楽祭〜2023〜 新宿BLAZE
2023と付くイベントは2024もあるに違いない
名阪行けなくてファイナルのみの参戦 サーキット型じゃないのに10バンドも出るイベント自体初めて観るかもしれないびじゅ祭より多いw
①NIGAI
1曲目に間に合わず着いた時には蟻地獄始まるところ
友我さんグラサンして派手なグリーンのギター持ってる
志輝 「スペシャルゲスト呼ぶぞ!」
断罪 Needlesのスカジャン姿の春さんギターを持って乱入 いつもみたくフォーーーー!って叫ぶ春さんにしっきーがマイクを向けると再びフォーーーー!(耳栓突破dBw)
最後にNIGAIサイコー!!!✌︎
②透明少女 ※セトリ出てたら教えてください
お客さんがフラッシュリングをしてて細かい振りが難しい
リズム隊→ギター隊→ボーカル っていう5人編成ならではの登場と思ったけどリズム隊はサポートさんなのかも
3曲目?でボーカルさんもギターを持ちトリプルギター
その後電車が通り過ぎる音がしてMC
nao「今日 こんな大きな所に立たせてくれて ザアザアにリスペクトして 感謝したいと思います
ありがとうございます」 再び電車が過ぎる音がして(終電?て聴こえたけどわからない空耳かも笑)いう曲が演奏されました
女性の歌声に被せて口パクで演奏される曲もあった ラストが定番曲みたいだったけど"うどん食べたい"連呼したあとうどんをこねる振りなのかなあれは(笑)春さんとしっきーフェスTで現れ一緒にこねてた(2人して可愛かった)
③OLD CIRCUS
転換中のサウンドチェックでごめんね
確か板付き 6月に1度観たきりなのに聴けば思い出せる曲調 透さんがかっこいいので観たいのにセンターが何してるか気になるから結局たかぴーに視線を奪われるもあの人歌上手いし何かと見応えありすぎる
青いパズル だと思うけど指揮者みたいな振りがあって一緒にやりたくなった
たかぴ「今日 なんか歌舞伎町騒がしくない?なんか 俺より派手な人達がいっぱいいて怯んだ」
(歌舞伎町タワー前で二丁目系のイベントやってた)
たかぴジャケット脱いだらほぼ裸w
ラストのワンシーンすごく良かったです
普通にかっこいいバンド
④孔雀座
今日一番観たいと思ってたバンド
奇抜な衣装に身を包んだ或さん…(久しぶり)楽器隊が揃うとボーカルさんが転がる勢いでステージに現れた
5人全員インパクトあるけど上手のギターの人がちょいちょい髪に付いたエクステパーツをフロアに投げたりするパフォーマンスというかステージングというか インディーズ時代のhideちゃんみたいな突飛具合で目を引く
Tシャツ短パンサングラスでやる曲だって以前ポストしたチェケラッチョノリの曲も聴けたけど生歌も満足できる声量歌唱力
WoD始まりの曲はボーカルさんがフロアへ飛び込む勢いで2柵まで走るとお客さんに紛れて少しモッシュしてから光の速さでステージへ 瞬発力すごい (若さか…)
確か最後の曲の最後のサビ?でまたまた春さん出てきた記憶(笑)マイマイク持参だったと思う
孔雀座かなり良かった サウンドも好みだしライブもかっこいいから今日から横目で監視します
⑤Chanty
サウンドチェック:スライドショー(今日スライドショーやらないのかっっ、、)
楽器隊板付き アウター無しの状態で現れた芥さん スタンドからギターを取りストラップをくぐるとセンターへ 綺麗事からスタート
魔がさした かな 芥さんが「白さんお願いします!」と言ってからソロ 、ギターを一度上に持ち上げてから弾き出したんだけど細いシルエットに纏う白い衣装が照明で光って美しすぎた
アイシーは綺麗な照明に楽しそうな振りで揃うフロアが照らされて夢のような一時 ここは天国か
今日もかっこよかった
⑥ Develop One's Faculties
最初で最後のDOF ようやく観れる
ヨハネス氏がちゃんと演奏してて(当たり前)相当技術ないと叩きこなせなそうな曲ばかりなのにとてもケツ出してるとは思えないプレイでかっこよかった ベースも上手い ギターも上手いし華がある
1曲目から演奏力高すぎて何を書いていいかわからない 通常のボーカルギターに比べて圧倒的にギタリストなんだけど歌も上手いし余裕がある
手元見ずにタッピングしながら歌が上手い(笑)
メインギター弾きながらメインボーカルこなすみたいな音楽の変態(天才)感滲み出てた
yuyaさんとruiさんで向き合って演奏したあと拳を合わせる場面も
yuya「一番やべーギター聴かせてやるよ」のギターまじでやべーだった
何かしら音楽齧ってないとハマらないだろうなぁ 一般層(バンギャの)には曲が難しいすぎるけど見応えあるから1時間ぐらいじっくり観てみたい 辞めちゃうの勿体ないと思うけど残念だな
終わる頃にはまだどこかで見れるチャンスあるかなとか思う程に1格上のクオリティー
フロアの混雑含めすごい貫禄でした
最後にyuya「こんな素敵なフェスティバルに呼んでくれて ありがとうございました
これからもかっこよく 音楽の雨を降らしてやってください
ザアザアはもっと上がるぞ!」
、、涙目(笑)
⑦鐘ト銃声
若年バンドの何でもあり我武者羅な雰囲気から少し落ち着いて見えてきて、それに比例してかっこいいと思う場面も増えてきた鐘銃
衣装にも少しずつ金がかかってきた感じがします(笑)
マントを羽織って出てきた4人、2曲目?入る手前でマントを脱ぎ捨ていつもの学生服へ
知らない曲だったから褪色かなぁ?百合子さんのソロに早弾きがあって衝撃 そうゆうギターも弾くのね
私ノ死二方 赤い拡声器で煽られる ちるさんのシャウトかっこいいな と思いながら
サビを歌う時お立ち台で脚をクロスさせて立つちるさん 綺麗なサビで良い曲
一番好きな贖罪も聴けて満足 あんな振りがあるんだね
あの人こうゆうイベントだとパンツ見せないのか
⑧BabyKingdom
虎丸さんがセーラームーンみたいなツインテールで出てきて時が止まった 美しい
細身で中性的な体型だけど誰よりもパワーあるドラムで相変わらず演奏力めちゃ高い
アリスワンダーランドみたいな衣装 赤 青 緑 黄色 これメンカラなのかな?こちらもマントを羽織って登場からの2曲目?で脱ぎ捨ててた (もにょさんはずっと羽織ってたと思う)
しょご「皆さん 手をこうしてもらっていいですか?」って幽霊の振りさせておいて「ハッハー↑気持ち悪!w」 ユーレイの曲何故か知ってた
「我々、大阪は警察の格好で出させて頂いたんですが、今日は 怪盗。皆さんの 心という宝石 を盗みたいと思います」ふぅぅ~♡
(今回もハートで写真撮ったって言ってたよね?)
主催 ザアザアへの感謝の意を述べつつ "負けるつもりはないから"を噛んで"負けるつもりだから"って言ってどよめいてた(笑)
⑨THE MADNA
板付き 涼太さんはsupremeのターバン巻いてピンク髪のツインテール adidasの異色組み合わせの衣装がオシャレ
朋さんはパリコレメイクでしたw
涼太「やっぱいいなぁブレイズのステージ…こっから見るとお前ら… 倍可愛く見えるぞ?
なんかあの … プロポーズとかしちゃったらごめんな?」
話面白いよなぁいつも涼太さん と思えば
「大阪 名古屋って3箇所廻ってきて 観れるバンド 観れるだけ見たのよ。そしたらみんなすげーかっこよくてさ
特にMADNAが
でね?これだけかっこいいバンドばっかりで トリのザアザア 大丈夫なのか!?って、ちょっと調子乗ったのよ俺。
そしたら ザアザア始まって一瞬で勘違いしてたって思った。」
もう。。泣いちゃう。笑
OUTLAW 最前柵の内側だけど涼太さん下に降りてきてた
「ラスト1曲 調子乗らしてもらってい? 」極彩色
主催リスペクトを伝えてくれて最高のトリ前 ほんとに泣いちゃうくらい素敵でした
⑩ザアザア
サウンドチェック:カメレオン女
BGMの雨音にさえ主催の貫禄を感じる ラスボス
無音で幕が開くと後ろ向きに重暗く座っている一葵さんの背中 朗読スタート これは排水口
振り向くと目の上下真っ黒メイクの一葵さん
お立ち台がいつものじゃない CAUTIONテープ巻いてないし低い その低いお立ち台を這い蹲るように使って演じる姿は排水口に吸い込まれていく髪の毛のようだった
名前を呼べ もっと呼べと煽る様子もいつもと違う フロアの反応を伺う余地もない100%の支配力(かっこいい)
ラブレターの同期でめっちゃ沸くフロア ニヤリと笑顔を見せるとAメロに入る手前で春さんがタイミング良く何か叫んでたw
この後のMCで一葵さん、ずっと前に主催イベントやろうとして 声掛けたら、全然誰も出てくれなくて、主催辞めるって会社に言ったことがあるって話をしていました。
タイトルコールして、スリーパー タオル回すのかと思ったけど手をくるくるさせるだけだった
これドラム大変そうだ(笑)かっこいいし楽しい、良い曲だしライブ定番曲になりそうな匂い。もっともっと聴いて一緒に育てていきたい曲でした
最後のMCはシャツのボタンがいっぱい外れてるのに気付いてパチパチ留めながらwでもいいこと言ってたのでブログに書きたい(時間あるかな)
七色に差す照明の中で演奏される光 泣かされた 後半のドラムあんなに凄かったっけな
全部かっこよかったけど捨て身で臨むザアザア圧倒的だった
不安と寂しさが溢れる毎日でも、今日もザアザアがこんなにかっこよくいてくれることが頼もしくて嬉しかった
湧き出る感情ひとつひとつを大切に
この世界で生きた証達を愛でるように
どんな感情もすべて、しっかり感じたいと思ってます
ザアザアだけじゃなくて、ヴィジュアル系の世界と音楽が大好きで、大好きで大好きで
同じように音楽を愛する天才達へ伝えては受け取って、そんなやり取りに見えない絆を感じるこの幸せは、ライブハウスの中でしか得られないもの
こんなに素晴らしいフェスを開催して下さりありがとうございました。
来年もツアーにするなら全通します。
MC掻い摘んでしか書けてないからブログにしたいけどハロウィンも上げれてない(笑)ハロウィンライブは明日アップします。
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この季節になると無性に昆布茶飲みたくなる。
貝塚市塗装塗替え工事
貝塚市水間寺境内観音院リフォーム工事
富田林古民家まるっとリフォーム工事
大工見習いの頃、建前が終わるとその家の座敷になる場所にみかん箱を縦に置き台にしてその上に合板を並べて即席のテーブルが作られ、次はみかん箱を横にして足場板を並べて椅子ができる。
それは大工がするのではなく、お施主さんの親族で必ず1人2人と手際よく段取りと指図する人がいた。
テーブルができると、待ってたかのように白い前掛けエプロンをした女性陣がお弁当におむすび、煮しめにお酒とこれまた手際よく並べていく。
余談ですが、若奥様やちょっと田舎やけどおしゃれな奥さんは赤いエプロンをしている。
そしてみんな着席し、コップにお酒がつが注がれると祝の宴が始まる。
最近ではすっかりなくなりましたが、家族や親族、隣近所という小さな輪の中で、親から子に子から孫にと伝えられてきた1つの地域の文化だったんですかね。
今こんな事言うたらなんとかハラかしらんけど、男性は酒で宴会の接待、女性は一段落してお茶とお菓子をつまんで世間話、子供達はルール決めて走り回って怪我して怒られる。
懐かしく良い風景でした。
そしてその宴が終わると、必ず出てくるのが「昆布茶」。
呑んだあとに、これがまた美味しいんですよね。
昆布は「よろこぶ」として古くから祝いの席ではふるまわれるお茶だったみたいです。
家に帰って食事するときに、冷たいお茶から温かい玄米茶に変わると昆布茶飲みたくなるんですよ。
最近は玄米茶に昆布茶を入れて飲んでます。
コップに粉末の昆布茶を入れて玄米茶注ぐんですが、うまく入れないと粉末残るでしょ、そうなるとかき混ぜるのにスプーンやお箸使うと洗わなあかんから、
急須を高いところから湯呑みにお茶を注いで昆布茶がうまくとけるようにね、
そう!
右京さんですよ!
負けませんよw
とまた、くだらん話をダラダラとすいません。(-_-;)
富田林のリフォーム工事の写真もう少しだけのせておきますね。
そういえば、水間で天井張り替えたお宅の写真ビフォーアフター見てください。
よく見てもらったら竿と言って横に入ってる木も綺麗になってるでしょう。
天井板は交換するので、もちろん綺麗になってるんですが竿天井の竿も日焼けやホコリで汚れてるので、洗剤を使って綺麗にしてるんです。
わたくしのLLの手袋てす(^o^;
たまに説明させてもらってるんですが、むづかしいことではないんです、バケツに半分くらい水を入れて洗濯用洗剤で漂白剤の入った洗剤をキャップ1杯入れて混ぜるたけ。
タオルにそれを染み込ませてふきます、次は洗剤のついていない水だけのタオルでもう一度拭いて、最後に水で硬絞りしたタオルで拭き取るだけ。
3回拭くとこんなに綺麗に。
また右京さんとか使うから観音院の写真まで到達しなかった(^_^;)
また掲載するので見てくださいませ。
本日もお疲れ様でした。
貝塚市 岸和田市 泉佐野市 泉大津市 和泉市 泉南市 阪南市 熊取町 忠岡町 田尻町
天然素材スイス漆喰カルクオウォール
リボス自然塗料取扱店
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ある画家の手記if.117 行屋虚彦/名廊直人視点 告白
一度実家に帰って制服とってきた。 俺は今高校生だったらしい。入学式にも出てねーからなんの実感もなかった。一昨日、担任からケータイに電話きて、夏休み前に宿題とかいろいろ渡すもんがあるからって言われて、学校に呼び出された。
学校に行かないのはそこまで気が回らねえっつーか…普通に暮らしてて学校に行く時間とか体力の余地がどこに出てくんだよ…とかもそんなに思ったことないな、学校とか通学とかの概念からねえし完全に忘れきってて。 でも周りの大人は初対面だとけっこうな高確率で訊いてくる。「学校に行きながら絵も描いてるのか?」そう訊かれるたびに、学校ってのは人間が生きてくためにそんな重要なもんなのかなとか、こうやってテキトーに抜かしてっとなんかまずいことになんのかなとか。わかんねえけど。 それでたまーに小・中の頃も顔出す程度には行ったりしてた。それでも俺に友達とかができないのは、俺がコミュ障だからなのか、滅多にいないやつだからなのか、イライラしてることが多いせいか、目つきが悪いせいか、友達欲しいわけでもないからか、全部かもしれねえし…とか思って��。視界の暗さの正体と、あからさまな嫌がらせみたいなのされるまでは。
高校がどこかわかんねーからタクシー使って学校の名前言ったら門のとこにつけてくれた。 俺の今日の行動はどうもこっからマズかったらしい。 教師には徒歩で通学して心身を鍛える目的がどーのこーの、クラスのやつにはあいつタクシーで来てた、って言われて、教師のはなんか言い分があんだなと思ったけどクラスのやつのは完全に謎だった。タクシーで来た、その通りだけど、それがなんなんだよ…タクシー代はちゃんと自分で稼いだ金で払ってるっての… 教師のは黒じゃなかったな…クラスのやつのはかなり黒に近くて、黒板が見えにくいレベルだったから授業中に一人で教室を出た。なんか言われた気がするけど誰の声かも分からなかった、他の教室からも声がしてて、なんでこれを… いや… 普通は取捨選択して不必要な情報は意識から落ちる…んだっけ、あの人が言ってたっけ、知るか、俺はそうなんないんだから普通が俺を どう助けてくれるんだよ
教室から出て校庭の鉄棒の横の花壇のレンガに座って、ぼんやりしてた。春に飽和して人体との境界線を曖昧にしてた白い空気が夏に向かって少しだけ引き締まってる。心地いい温度に融ける人間。耐えられないやつは死ぬ。これを五月病とかいうんだっけ。違うっけ。 今日はもう七月でだいぶ暑い。でも外にいたら問答無用で熱中症になるってほどでもない。風が鉄紺色、少し冷たい心地いい風。 ポケットに入れてた小さなルーペを出して、地面に当てて見る。このルーペはずっと昔に直人さんがくれたもの。俺がイライラしてた時、視野のスケールを極端に変えたらどうかなって、言われて。広く見るのは難しいから極小の世界を、こうしてたまに見る。…ルーペの向こうには普通にしてて俺に見えないものが、たくさん見える。 花壇に咲いてる花はたぶんどれも綺麗ってやつなんだろうな、じゃなきゃわざわざ植えねえのか。花をよく見ようとそばに手をついて少しかがんだ、手元に、ぼたっと落ちてくるみたいに黒が 咄嗟に立ち上がって何歩か退いたけど 遅かった 頭にバシャっと水かけられた …いってーな…3階以上の高さからやったろ今の… でも不潔な水とかじゃないな、水道水か?それだけでもまだマシか…今のは回避できなかった俺のミスだ、見えてんのに反応遅かった。最近ガチで学校きてなくてこういう危機意識鈍ってたかな。 と、思いながら頭上を咄嗟に庇おうと掲げた片手に、ぶっすり尖った鉛筆が一本、貫通して突き刺さってた。水は綺麗でも異物混じってたか。…ギリギリ貫通はしてなかった。手のひらから抜いてその辺に鉛筆を放る。 はー…制服は濡れるし、散々かよ。
一度鞄とりに教室に帰ったらいろいろ言われてた。黒の濃さからして水落としてきたのは隣の教室っぽいけど。 あえて意識して声を言葉として拾ってみるよう意識を集中する。 ーーー画家って普段なにしてんの? ーーーさあ好きな絵描いてるだけじゃね ーーーそれで学校休んでいいことになるんだ ーーーそういうんじゃなくてただの不登校だろ ーーーあいつべつに画家じゃないだろまだ学生だし ーーー稼いだ金どうしてんの ーーー画家って儲かるの~ ーーー才能とかあれば高く売れるんじゃない ーーーあいつのはあれだろ、ガキの頃から描いてるってのが売りポイントっつーかそこがまず高ステータスになるみたいな ーーー才能関係なくね?子タレと同じ ーーー小さい頃から好き勝手してもなんも言われなかったんだね ーーー父親のほうが名前売れてるからそういう家にいたら流れで子どもも描いたりすんじゃね ーーーお家柄ってやつ ーーー売れる絵の書き方とか小さい頃から教えてもらえそうだもんね、そりゃ上手いに決まってるわ ーーーさっき水かけたやつってあれだろ、隣のクラスの美術部の、中学ん時あいつと比べられて学祭のポスターこき下ろされたとかいう
ここまで ここまで! これ以上は聴かねえ 走って教室を出る 俺はただ描いてるだけなのに 誰を蹴落としたこともねえよ ただ描くだけがどうしてもそうなるから昔から嫌なんだこんな場所 画家同士なら ただ描くことが誰も誰かを傷つけないのに 知るか どいつもこいつも勝手に潰れろ
そのあと職員室いって、受けとるもん受けとって帰った。帰り際に担任にあれこれ言われた。曰く、 母親が亡くなって生活は大変かも知れないが自分で稼げるからってなんでも金で解決しようとするな、タクシーも使うな、もっと運動しろ、もっとよく食べろ、健康的な生活しろ、なるべく学校にきて同世代の友達と交流を持て、勉強もしろ、今が楽しいからって絵ばっかり描いてるといつか後悔するぞ、高校は義務教育じゃないのに通えるありがたみを知れ、親御さんに感謝しろ、画家なんて仕事は卒業してから始めたって遅くない、でも同世代との学校生活というものは今しかないんだぞ …赤と青が声と扇風機の風に乗ってひらひら天井に向けて舞い上がってるのを見てたら、ちゃんと顔見て話を聞けって言われた。なんで濡れてるのか訊かれたから、暑かったんでペットボトルで水かぶりましたつっといた。
帰り道は学校から見えない距離まで歩いて、そっからタクシー使った。 行きは場所がわかんなかったからだけど、今は濡れてるから電車とか乗るとちょっとこのままじゃ風邪ひきそう。 帰ってから制服をハンガーにかけて壁にかけて、ドライヤーをあててたらインターホンが鳴った。 出てみたら香澄さんだった。
「すみません、俺も今帰ったばっかで」お茶菓子とかなんも用意できてないしちょっと散らかってます、って続けようとして黙る。 「……」 香澄さんの いつもと色が違う。表情も違うせいか?…なんかあったのか 「香澄さん? ここ来るまでに、なんか…ありました?」 「…え?」 やべ…やらかした。相手が自覚ないときはそういうの言わなくていいんだっての… とか思ってたら香澄さんが少し首下げて俺の髪の毛に顔近づけてきた。そういや濡れたままだった。 「水…? 手も怪我してる」 言われていろいろ思い出す、手も今の今まで忘れてた…。ドライヤー片手にどう返そうかと思ってたら風呂に直行することになった。俺が。…なんでだ。 「怪我してるし、風呂入るの手伝うよ」 「… え、 …手伝… え」 「髪洗ったりタオルしぼったり…」 「え…いやそれは、…え…っと、」 「…ごめん 他人に頭とか触られんの嫌かな」 「そういうこと…じゃなくてですね、」 香澄さんが風呂に入るの手伝うっていうのをめちゃめちゃ遠慮してなんとか一人で風呂に入る。 手伝うってあれか、前に俺が母さんにやってたようなことか。俺はそんなに抵抗なくやってたけど、…あれって結構ハードル高い人には高いらしいからな…。そうじゃないから申し出てくれたのかもだけど。…わかんねー… 風呂入る前に香澄さんに穴あいてるほうの手を清潔なビニール袋で包まれて、手首にゴムみたいなのでしっかり固定された。防水? 「困ったことあったら呼んでね」って言われて、ようやく香澄さんはちょっと普段の表情に戻った、けど、色は来たときと何も変わってなかった。 湯船に2分くらい浸かってただけでもう逆上せてきた。くらくらしながら風呂から上がる。 髪をタオルで拭きながらリビングに行ったら嵌めたままのビニール袋とられて治療?がはじまった。…そんなたいした怪我じゃねえんだけど… 手当てされながら「何があったの?」って訊かれた。 「学校行って宿題受けとってきました」深いとこに折れて埋まった鉛筆の芯はどうもならなさそうだな。なんかちょっと大袈裟なくらいに包帯が巻かれていく。 「学校…」 手元狂わせずにどんどん処置を進めながら香澄さんが呟いた。そういや俺、今日まで学校行ってる素振りとか全然なかっただろうし実際行ってないからただの無所属ニートと思われてたかもな。画家ってそんなもんではあるけど。 「もらっても宿題やんないですけどね」ちゃんとやったことは一度もない。それで殺されるわけでなし、毎年違うスケジュールとかぶるんだよな。公募とかもこの時期多いし。 「うつひこくんはいま…高校生?どうして学校いくの?」 「普段は行ってない不登校児ってやつですよ。でももうすぐ夏休みだから、たまには顔見せないとっていう程度の」 …ん?今のって、今日なんで学校行ったかじゃなくて、俺が学校行ってる理由全体を聞かれたのか?俺…日本語が不自由か… 「そうなんだ …俺高校って行かなかったから、どんなかわからなくて…ごめんね」 謝られた。やっぱなんか俺が間違ってた気がする。こういうとこに学校行く意味とか意義とかがあんじゃねーの…とか思う。日本語での円滑な意思疎通みたいな…。 「この怪我はどうしたの?」 包帯を巻き終わった俺の手をじっと見て香澄さんが言う。…利き手じゃねーし、まあ利き手でもか、そんな痛くはないし平気だし、…こんなじめっとした話聞かされても困るんじゃねえの。 でもこういうこと訊かれんのも久しぶりだ。香澄さんがそういう界隈の人じゃないからか。 「そういう風に訊いてもらえるだけでだいぶ救われます」 包帯が巻かれたほうの手を俺も見ながら、ちょっと俯き加減になる。 「自傷で片目がこうなったの、俺の周囲はだいたい知ってるんで、そっからはなんか怪我しても自分でやらかしてんだろってスルーか嗤うかくらいしか誰からも反応ないから」 どういう経緯で片目潰したか知ってる少数の人間は別だけど、その人らも忙しいからなかなか会わなかったりで、結局一番接してる人間は名前も覚えてないような個人的な付き合いのない人たちばっかだ。だからこそ言えるし嗤えるってとこはあんだろう��ど。 ーーーーでも、そういう人たちも… 「…。」 なんか裸足の足裏…足元が湿ると思ったら、香澄さんが目の前で悲しそうな顔してた。…来たときの色が、落ちてる。 「自分でやったの…」 …どっちだこれ…迂闊に目のこととか話題にしないべきだったか…せっかく …いや、事実は事実でどうにもなんねえしな。 「…手ですか、目ですか」 香澄さんは一度顔上げて俺のほう見たけど、喋るごとに俯いてく。 「え、あ、どっちも…?どっちっていうか、ごめん…えっと…」 …俺が完全に取りちがえて主旨ずらしたっぽいよな、たぶん。 楽しくもない、じめっとしてて、いい気分にはならない、そういう話を、聞いてくれようとしてた…のか 「夏休み前だから夏休みの宿題取りに来いって担任から呼び出しの電話きたんで久しぶりに行ったんです。教室の中は俺の噂か陰口か微妙なので溢れてて、校庭に逃げてって。そしたら上階の窓から水かけられて、水はただの水だったけど中に鉛筆とか釘とか混ぜてあって、俺が咄嗟に頭庇おうとして手をかざしちゃったから、手のひらに降ってきた鉛筆が刺さったんです。 …それだけです。」 「……そう」 香澄さんがまたちょっと表情強ばらせてる。…こんな詳細まで言わなくてもはしょればよかったかと思ってたら頭にそっと手が乗った 「………」 「お疲れさま、…今日はもうのんびりしよ」 優しい感じの撫でかたで頭を撫でられる …。 「頭庇ったのは偉いよ、すごいねえ俺たぶん咄嗟に動けないや」 俺的には失敗…いや…大差ねえか…でも顔とか頭とかより手を庇うべきだった気もしないでもない… 立ててた片脚に体を乗せてぐたっと項垂れる 香澄さんの撫でかた、ちょっと母さんと似てるな …黒 「やったのが誰かは分かってるから、怒るとか、教師に言うとか、…そいつが悪いって言えれば… … 」 言うべきなのかもしれない。それとか他のなんか、行動起こすとか。俺にそういうことやるんなら他の人間にも平気でやってんのかもだし、とか、俺一人で片付けていい問題じゃない、みたいな。よく知らねえけど、いろんな意味で。…でも、 「でもみんな… 何かあるじゃないすか ゲームの敵キャラみたいに俺を痛めつけるだけに生きてるわけじゃない 今日の俺にとってはそうでも … …みんなにそれぞれのここまできた時間と色があって …俺は誰かを指差せないです、おまえが悪いとかっては そうしたほうが …みんなのためによくても… …」 今日の俺に…とっても、か…。 「…… 誰のどんな事情もうつひこくんに怪我��せていい理由にはならないよ」 理由… …走ってったとき隣の教室から出てきた一人の黒いやつ、たぶん間違いねえと思うけど、降ってきた黒と同じだった、黒にもいろいろある 廊下でちょっとだけ睨まれた気がする。 黒いけど、他の色もあった、入り混じって、俺への悪意だけでできた存在じゃないのは見ればわかった、あいつにもいろいろあるんだ、何があるのかまでは俺には分からねえけど みんなにそれがある 俺はあれでいいと思った 美しいと あれが俺への悪意や複雑な感情の現れたものなら あのままがいいな 美しくはないよ、そんなこと言ったら現実はなにも美しくない でもそう思う以外にどうすれば 俺は ……………… ……… ………
包帯巻かれてなければ普通めに動かせるんだけどがっちり巻かれてガードされてて、今日もう何もできなさそーってことで、俺は例の人をダメにするクッションの上に大の字に寝そべって首のけぞらせて香澄さんのしてることを上下逆にぼんやり眺めてた。こいつマジで人をダメにすんな… 香澄さんはキッチンで今日の夕飯作ってくれてた。 さっき手当てしてもらってて服の裾からちょっと覗いた香澄さんの地肌、なんか古傷みたいなのあった。白い光を放ってて、それが白く見えてたんじゃないかと思って一瞬ぞっとした。 朱の中の、白い筋、人体の脂肪分みたいな …どういう事情かなんてそれこそなんも知らないけど、白く見えてるのがなんかの傷か傷跡なら大量の傷が頭から爪先まで全身にある…もしくはあった、のかもしれない。 事情は知らない、でも…学校で地味な嫌がらせされてるとかって話題は香澄さんの前ではテキトーな嘘ついてでも避けたがよかったんじゃねえの…今更だけど… とかぼんやり考えてたら夕飯ができた。 香澄さんと二人で向かい合って食べる。美味そうだけど見たことないオシャレな感じの料理。赤いな 「うつひこくんは好きな食べ物ある?」 「肉ですね」 「肉。」 「焼いた肉ならなんでも」 「人と食事したりは平気かな」 「全然です。食えないもんもないし。一人でいるとダルさが勝つんで食事抜きがちなだけで」 「そのソファちょっと気に入った?」 「はい。ここ来るまではアトリエで描いてそのままコンクリとか板の床にぶっ倒れて寝て、ってののエンドレスリピートだったんで、このソファやばいすよね。座ってると自分がこれまで石器時代と同じ生活レベルで生きてたの実感します」 二人でなんてことない会話をして夕飯食べて、食べ終わったらまた香澄さんが食器洗ったりとか全部してくれて、 俺は誰かが俺のかわりに家事とか全部やってくれる不思議空間でそれをじーっと見てた。 ……………… ……… ……… 俯いたまま床を見つめ続けて、 さっき見た色 黒に … ……… ……… … 無理だ なんとかしようとしたけど俺一人の手に負えるものじゃない
「香澄さん 直人さんちに連れてってください」
***
急に香澄から連絡がきて、今からイキヤがこの新居に来るらしい。 僕は描いてたのを中断して、屋根裏部屋のアトリエを少し整理して整える。越してきたばかりだけど既に描いた紙が山のようにあちこち積まれてたから雪崩を起こさないように。 イキヤも無意識にうろうろするほうだけど、僕より半径が広かった気がするな。寄せて置いてた木製のラックを端のほうに避けて少し広めに空間を空けておく。 …30… いや、イキヤの身長が170ないくらいだから、腕の長さ的にはP20か…短時間勝負なら15号がいいかもしれない、どれもここにあるから一応15号をイーゼルにセットしておいて本人に聞いてみるかな。 そうこうしてるうちに外と玄関で音がして、玄関からすごい勢いでイキヤが走って入ってきた。「アトリエは3階、階段はそこ。F15?」「15です、ありがとうございます」 その一言だけで素早く階段を上っていった。追加で背中に投げる。「コバルト使うのに変な遠慮するなよ」「しないすよ」 後ろからついてきた香澄がきょとんとしてる。 苦笑い、とまでもいかないけど、腕を組んで笑いかける。 「描かないと処理できなかったかな」 アトリエのほうを見上げて続ける。 「イキヤなら一時間かからないから、そのあたりで様子見に行こうか。たぶんそのまま床で寝てるから、せめて客間に布団敷いて転がしておこう」
きっかり一時間経った頃に様子を見に行こうとしたら僕より先に香澄がアトリエに行って、やっぱり床で寝てたイキヤを抱え上げてた。 僕が客間に布団を敷いて、香澄がそこにイキヤを寝かせる。イキヤは一度眠ったら気絶したみたいに何しても起きない。 起きるまで客間についてようとする香澄を「今日はもう目を覚まさないから」って説得して、自分の部屋に寝かせる。 僕は今夜は睡眠薬を飲まないでコーヒーを啜りながら、イキヤの寝てる客間と隣接した部屋で夜通し仕事の続きをした。
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出会い
1
太陽が姿を見せるより前の、薄暗い夜明けの時間帯が好きだ。 今の時期は特にそう。こんな寒い明け方に誰かと毛布にくるまって、温もりを分かち合えたなら、それが愛する人だったなら、最高に幸福ってものだろう。 「レオン、そろそろ閉めるぞ」 「……はーい」 声を掛けられ、返事をしながら店内へ視線を戻す。 外の青く光るような夜明けの暗がりとは対照的に、店内はオレンジの暖かい光が満ちている。土地柄、今の季節は夜明けが長い。朝の十時頃まではどこの屋内も陽が入らない。手元がとくに暗いから、こんな酒場は客が帰ってから片付けが終わるまで煌々と灯を点している。 今が一番ぼんやりした時間帯。 「隅の席で寝こけてる奴、あいつを起こしてやってくれ。うちは宿屋じゃねえからな」 「オッケー」 声を掛けてきた彼はここの主人だ。どうやら仕事上がりに酔い潰れた客を回収していけ、ということらしい。 主人に示された隅の席へテーブルをぬって歩み寄る。「寝こけてる」その客は、この地域には珍しい黒い髪と、異国に多い細身の骨格をしてた。 "黒い髪は…影をつくる、顔を隠す、妖しげな魅力があっていい。目元まで伸びた前髪が首を振る度に揺れて、影の形を変えて。黒髪じゃないとこの雰囲気って出せないぜ"……って、こないだ来た客が俺にそう言ってた。 俺と一緒の黒い髪。 一方的な親しみを覚えて、眠っているらしい客の肩を叩く。両腕の上に突っ伏したその顔が、少し揺れた。 「ハーイ、お客さん!もう夜の時間はおしまい。街が目覚めるまでちゃんと家の寝床で休みな?霧の中は歩いたことある?あれってストリートの目蓋みたいだと思わない?」 声を掛けて反応を待ちながら、ここに来るのは初めての客だな、と思う。 黒髪はこの辺りでは珍しい、俺以外は初めて。だから、一度見かけたら忘れない。この人のこと。もう忘れないだろう。 そうでなくても酒場の常連は覚えてるけど、この人はその中の誰とも違った。異質、だった。 色だけじゃなく長さも珍しい肩を流れおちる長髪。前はいつハサミを入れたんだかわからない。ボサボサで、仕事に邪魔になりそう。肌は青白く、日に焼けてない。目元には隈。上下の顎には無精髭が生えている。 この街は夜の方がみんな元気で、仕事の後、その日一日のシメに酒場を訪れる時にこそ身なりを整える。でも、この人は普段から酒場に出入りしてる感じがしない。 それに、彼が着てるだぼだぼの白いパーカーの袖、そこから覗く手首は平らで細かった。これも珍しい、オッサン方はみんな大抵恰幅よくって、俺より身長無い人だって俺の倍近い体重してんのに。痩せてるってのはこの街じゃ、今にも死にそうってふうに見られる。このオッサン大丈夫なのかな。浮浪者かな? 良くない酔い方してなきゃいいけど。 「……体調悪いなら家まで送ろうか?」 口を耳元まで近づけ囁いた時、ようやく彼が身じろいで目を開いた。 ゆっくりとした動作で腕を解き、身を起こす。ぼさぼさになった前髪が掛かった額に片手を当てながら 「……本当に?」 寝起きの掠れた声で呟いてきた。 「送ってくれる?助かるよ」 「……」 思わず、一瞬彼の声と動作に意識を奪われた。 特別なことなんて何もない、少し身を起こして視線を逸らしたまま返事をされただけ。なのに 仕草や雰囲気が妙に静かな人だった。 あまり酔っているようには思えないのにどうにも危うい気がして、俺はそれが当然であるかのように「ああ勿論」、と請け合ってしまった。 「ありがとう」 そう言って立ち上がった彼は座っている時の印象より長身で、俺とほぼ同じくらいの位置に顔がきた。即座に肩を組むようにして俺は彼の身体を支えた。彼が少し顔色を悪くしてふらついたから。 ……抱き寄せた腰に腕がめり込むみたいだ。立ったことで見えた両脚も細くて、黒いジーンズの幅が余っていた。全身痩せていて、埃っぽい。 「家あんの?」 およそ衣食住満ち足りた生活をしているとは思えなくてそう訊いてみたら、意外なことに相手は 「あるよ」 と答えた。 俺の肩に悪びれる風もなくもたれ掛かりながら、吐息混じりの掠れた声で「スラムか公園にでも連れてく羽目になるかと思った?」なんて軽口まで返してくる。彼がふ、っと笑ったような呼気が俺の頬を撫でた。 その返事と一連の遣り取りで、ふと、彼の細い腰を抱きかかえながら、違和感に気付いた。 ……匂いがしない。 これだけ身体の密着した状態で彼が息を吐き出しても身動きしても、酒の匂いが一切しない。酒場からの帰りなど、みな吐く息は酒臭くてかなわないのに、酒の口臭はおろか汗の匂いも体臭らしいものすらも感じなかった。 不潔そうなのに意外、と思ってから、このオッサンはこの場で一体何をしていたんだ?という疑問が湧く。酒場に居たのに食い物の匂い一つしないなんて。 そうしたら店を出たところで、まるでその疑問に答えるみたいに、彼は唐突に肩に掛けた手で俺の背中を叩いて上機嫌に言った。 「君の演奏は素晴らしかった。聴きに行ってよかったよ、レオン」 「……え?」 演奏。 ……演奏だって? この街で演奏って言ったら、俺が酒場で弾く古いピアノしかない。 娯楽の少ない街だ。みんな働いて、食べて寝て、また働いて。遊ばなきゃ気持ちが持たないから酒を飲みにくるけど、それ以上の余裕はない。 俺は体力だけは人よりあるから、踊ったり歌ったり、ピアノを弾くこともある。 ピアノは街の中であの酒場にただ一台だけ。だから確かに「聴きに行く」ならあの酒場に行けば��い。 「オッサン俺のピアノ聴きに来てたの?」 「うん」 あっさりと肯定した彼は顔に笑みこそ浮かべていないものの、願いが叶ったかのような浮ついた、夢みるような声音で続けた。 「君のピアノは夜の街じゃ名物だ。冬の酒場は君に似合うな。にぎやかで、閉ざされた熱が混じり、酔いそうな赤い灯が路地裏に満ちる」 身なりからは想像できない詩的な表現。彼が話す言葉は最初からこの地域の言語だったけれど、今はっきりと耳にしたそれはよどみのない美しい発音をしていた。彼がこの土地に馴染んで長い証拠のように聞こえた。
送り届けることになった住居は、街をずっと上がっていったところにあった。 防音に特化したミュージション。周りは見慣れない、広々とした閑静な街並み。まだ暗い明け方、道にいる人影は俺達二人だけで、他に誰も居ない。 「5階だよ。エレベータがある……もう立てるよ。世話かけたね。ああ、シャワーでも浴びていきなさい、ぼくに触って汚れたろ」 エレベータ前で帰ろうとするとそう言って引き留められた。特に断る理由もなく、興味が勝ってついていくことにする。5階に着くと彼は三部屋並んだ一番右奥の部屋へ歩き、首から提げていた鍵を取り出して差し込むと、ガチャリと回してドアを開��た。 「どうぞ」 と声だけ掛けて彼が先にすたすたと室内へ入っていく。その後ろをついて入った。 室内は広くて雑然としていた。床に直接紙類が積まれ、やけに大きなローテーブルの上にごちゃごちゃと物が大量に出しっぱなしにされている。 右と左に別の部屋へ続くらしいドアがあり、右の壁際に寄せてピアノが置かれていた。 白い、ヴァーチカル。 「楽にしてて」 彼は自分から誘ったわりに構うこと無く、部屋の電気も点けないまま、左のドアの奥へ姿を消してしまった。 「……不用心だなぁ」 これだけごちゃごちゃと物が散らかっていて、何か盗られたら気付けるんだろうか。俺は何も悪さする気は無いけれど。ああ、いや、向こうには俺の顔も職場も知れているから、何をされてもやり返せるのかな。 ならば。 気を楽にして部屋の中を歩き回る。奥の棚に入っているのは大量の本と、CDやレコード盤。隣の棚は開け放されていて、ヴァイオリンのケースとクロスや樹脂などの手入れする道具類が仕舞ってあり、ヴァイオリン本体はどこかと見回すとローテーブルの上で紙の下敷きになっていた。 興味を惹かれるものばかりだ。俺は店の主人が楽器好きで、雑誌類の写真を見て楽器を知ってるけど、本物が手の届くところに置いてあったことはない。それも、こんなにたくさん。 部屋中を散策して、最後に白いピアノの前に立つ。 「……綺麗だ」 白いピアノは、初めて見た。 ピアノは黒くて大きくて、ずっしりと重厚感のある、頼もしい王様だと思ってた。鏡のように赤や金色の照明を吸い込み、夜の酒場をその体に鮮やかに映し出すキング。 けれどこの白いピアノはまるでお姫様のようで、まったく別の音を奏でそう。 「弾きたいかい?」 唐突に耳元で声がした。 びくっと肩が跳ねる 驚いて振り返ると、いつの間に戻ってきたのか、彼が背後に立っていた。黒髪からぽたぽたと雫を垂らしてる。タオルを掴んでいた細い指が一本、すっと前へ差し伸べられて、ピアノを示した。 「触れてもいいよ。君のシャワーの後でね」 細く白い指が俺にタオルを渡して離れていく。 ……なんだか、動けなかった。両眼を瞬かせて、彼を見詰めてしまう。ピアノに向いてた関心が一気に彼の方へ持って行かれたのを感じた。 シャワーを浴びてきたらしい彼は清潔な白いシャツを着ていて、髭も綺麗に剃っていた。思ってたよりも若い。平らな顔立ちから突き出た下向きの鼻、薄い唇、寄せられた眉、針のようなまつ毛に縁取られた目。どれも神経質そうな、アンニュイな雰囲気を漂わせている。 「オッサ……君って本当は何歳くらいなの?」 「今年で二十三」 聞かれたから答えた、それ以上何もない返事をして彼はテーブルの上の瓶を取り、中身を煽った。それからテーブルに腰掛け、ヴァイオリンの上に重なった紙を読み始める。俺への注意は完全に失くしてるみたい。 俺は今年二十一、いま二十歳。それと大差ない。オッサンどころか、友達だ。 「君、ぜったい髭剃ってた方がいいよ。そっちの方が似合う」 「…………」 返事してくれない。あー。彼ってかなりマイペースなんじゃないかな。会ったばかりで勘だけど。 話し掛けても反応がなくなってしまった彼を置いて、大人しくシャワーを浴びにいった。
遠慮なく石鹸やシャンプーを使って身体を洗い、存分に温まってから、シャワールームを出る。ガラス戸を開くと、四角いボックスの内側で溜まっていた蒸気がふわっと解き放たれる。 明かりがどこにあるのかわからず点けないままだったけれど、次第に日の光が差し込んできていた。朝の青みがかった、白い、けぶるような光が、浴室のタイルや水滴に反射する。脱いだ服をもう一度着て、靴と靴下は指に引っ掛けて持った。 ひんやりしたタイルに裸足のまま降りる。 ドアを開けると、音色が聞こえた。 「…………」 震えるように繊細な、高い音色。美しい――――ヴァイオリンの調べ。 そっと指先でドアを押す。音を立てないよう。無意識にそうしていた。 押された分、ゆっくりと静かにドアが開いていく。隙間から覗き込むようにして視線を さしいれて 室内を見る。 正面の壁にピアノ、視界の淵にカーテンのレース。開け放された窓から朝陽がすうっと差し込んで、照らし出された部屋の中央は清らかな薄い光のベールが掛かって、そこだけ別の空間だった。 その中に一人の青年が立ち ヴァイオリンを弾いている。 逆光に透けたシャツが、奏者の動作と、波打つカーテンと共に揺れる。彼は室内の何よりも白く見えた。
彼の音がなかったら、 冬の朝をこんなにも静かだとは思わなかっただろう。
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暑さをしのいで快適LIFEに
毎日あっちぃ〜ね💦💦
皆さんはどんな対策で暑さしのいでますか?
クーラー?扇風機?
私のマンション 古いからクーラーないです😅
元々、クーラー得意じゃないから
どうしたら快適にかつ健康的に過ごせるかなぁって。。。
クーラーが得意じゃないのは、体温調節不得意分野?で汗が出なくなったり、冷えが辛くて、、、
⚫︎汗が出ない:熱中症になりやすい
⚫︎冷え:風邪や病気になりやすくなる
実は、扇風機もないんです💦
もともとはあったけれど、引越のときにでも忘れてきたのかな?
今、何区にお住まいなんだろう?笑
今のところ、扇風機の代用品(うちわ)で暑さしのげてます☺️
母親と「あっちぃねぇ 気温更新したって」
「クーラーやパソコンなどの電化製品で気温上がってるのかもねぇ」
って話から
昔は、扇風機もそこまで使わなくても、
「うちわ片手にベランダで、スイカ食べたりしてお話しながら過ごしたよね」
って
今は、すごく便利な世の中だけど、
「熱中症にならないように水分補給を」ってニュース番組で言ってはいるけど、
もう少し具体的に言ってあげないと、子供や若い子わからないだろうなぁって。
母親世代は、汗拭きシート説明してもわからないだろうから、、、
例えば、
⚫︎夏の食べもの
スイカ、トマト、きゅうり、バナナを食べると暑いのすこし和らぐよ。
とか
⚫︎汗たくさんかいたら、
塩分や酸っぱいもの取るといいよ(梅干し、漬物、レモンetc)
とか
⚫︎汗が でたら
タオル水に濡らしてしぼってカラダ��くとさっぱりするよ。
とか、
⚫︎汗かいたほうが熱がカラダにこもらないからこまめに水分とってね。
とか、
⚫︎質の良い睡眠するためにアイスノーして寝たり(頭寒足熱)、お風呂入って汗流して寝ると疲れとれるよ
とか
これぜーんぶ私が子供の頃、祖母や母が私にしてくれたこと。
今の世の中に慣れすぎて母も、私も忘れかけていました😅
先日、目の当たりにして。。。
小さな赤ちゃんがクーラーの中に一日中いると、
お風呂入っても足が、しゃっこいんです。
ビックリです。
赤ちゃんって体温高いイメージだったので。
青ちゃんが増えてるって聞いたことあって、意味がわからなかったけれど、
もしかしてって思いました。
風邪もひきやすくなっちゃうし、体温調節もしづらくなっちゃう😭
クーラー、電子機器、文明の力を
全部をなくしたり、やめたりとかは、無理だと思うし、必要な時も必ずあると思うんです。
でもいつかまた 日が沈んですこし涼しい時間帯は、(文明の力にたよらず)
うちわ片手にベランダでスイカ食べながら家族で1日の出来事話しながら、
笑って過ごせる時が来るのも、わるくないよなぁ。って思い願う今日この頃。。。
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2023.7.8sat_tokyo
朝7時くらいに起床。 簡単に身支度をして散髪に行った。 通っているセブン理容館は西武新宿線沼袋駅近くのバス通りに面したいわゆる床屋っぽいところで、朝9時(土日は8時)から営業している。カットとシャンプー込みで2000円というとっても良心的な価格と、年配男性理容師3人(マスター+スタッフ2人)でやっているのんびりした空気感が好きで、近くに引っ越してきてからは散髪と言えばここと決めている。 今日は8時過ぎに行ったらまだ空いていなかったので一旦家に戻り(以前も空いてなくて少し待っていたらマスターが急いでやってきて「スタッフみんなでお茶してたら思ったより時間が過ぎちゃってた」というほっこり遅刻もあった)、8時50分くらいにまた来てみると看板が出て、赤白青のサインポールが回っていた。 入店するとマスターが先客の相手をしながら「いらっしゃいませ」と声をかけてくれた。 待合のベンチに座って店内に目をやると、他の理容師2人が見当たらなかった。階段上のスタッフルームにいるのだろうか。 マスターが先客としている話に耳を傾けると、今日は桜台店の方に少し寄ったから遅くなってしまったそうだった。またマスターは今年で88歳だと話していた。お客さんは82歳で、マスターの奥さんと同い年らしい。元気に仕事をして長生きって本当にいいなあ。会話の間に入ってくる、お客さんの白髪の襟足を綺麗に刈り込んでいくハサミの音が小気味よい。 付いているテレビに目をやった。旅サラダが流れている。三船美佳がいなくなってるな、バチェロレッテに出てた男の人が神田正輝の横に並んで座っていて、「カズキ!」とかいじられてる、かっちゃん(勝俣州和)もそれに加勢してる、てか男全員何かしらの「かっちゃん」じゃんとか思って見てたらスタッフ用の通用扉が開き、理容師2名が入ってきた。 いつも見ていたユニフォーム姿ではなく私服で、70代くらいに見えるお二人のうち、背の高い方の人は、えんじ色のバケットハットに茶色のTシャツ、カーキのハーフカーゴパンツと、フェスにいそうな人の格好みたいだった。このままminaとかにありそうなちょいおじコーデとして取り上げられても良さそうだなとか考えていたら、いつものユニフォーム姿に着替えてお二人は戻ってきた。 散髪は小柄な方が担当してくれた。 襟足を短くしてほしいことだけを伝えて切ってもらった。 理容師3人それぞれカットにも違いがあるが、シャンプーはより各々のやり方がある気がする。マスターは力強い指使いとシャンプーブラシを使ってグワシグワシやるマッサージっぽいスタ���ルで、大柄な人はちょっとたまに痛い時があるくらいのパワー系、小柄な人は優しく泡で洗ってくれる感じ。また洗面台に突っ伏して、少し髪を濡らしてから洗髪に入るタイプと、座った状態で一回シャンプーが始まるタイプもある。やり方を統一してない感じがいいなと思う。 シャンプーの後は椅子を倒し、温かいタオルを顔に当て、白い生クリームみたいなシェービングクリームを塗ってもらい髭剃り。ドライヤーで乾かしてもらい終了。 立ち上がって、小さいほうきみたいなので服に付いた髪の毛を叩いてもらってからお会計をした。お会計の最中、小柄な理容師の方がおでこに絆創膏を貼っているのに気がついたので、ぶつけちゃったんですか?と聞くと、ああまあこれは仕方ないから、みたいなことを言いながらニコニコしてくれた。
家に戻ってまた身支度をして職場へ自転車で向かった。軽く仕事をして、お昼ご飯は妻と親子丼(お弁当)を食べた。 午後は所沢航空公園で開催されたトノフォンフェスに行って友人たち(松園量介、木下ようすけ、いづみれいな)とライブを聴き、所沢の地下大箱居酒屋「百味」で友人知人(松園量介、木下ようすけ、ゆいさん、うきさん)とゴシップを中心に話し、その後所沢駅の屋上庭園みたいなところで、たむろする不良少年少女たちの中、友人(松園量介、木下ようすけ)と缶チューハイを飲んだりした話を記しておきたかったが、セブンについて随分書いてしまったし、何より午後の話の大半は痛飲のため忘れてしまったような気がする、、サマーアイの牧野さんかっこよかったし、トノフォンフェスは変わらずのんびりしてて好きなイベントだった。 久しぶりに音楽を外で聴いて過ごした。蝉の鳴き声も今年初めて聞いた気がする。 とても蒸し暑い1日だったが、まだ暑い盛りは先なので、体力をつけて行こうと思う。
-プロフィール- 山口晋似郎 39歳 東京 グラフィックデザインと音楽の制作をしながら箱入れ物容器等の日用品を集めて販売するスペース(売店)をたまに開けています。 @shinjiroyam
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スタントマン傭兵×舞台俳優リッパーの傭リ
リッパーは、それなりに知名度のある舞台俳優で、主演を演じた事も少なくはない。 映画やドラマといったものより、舞台を好んだ。やり直しが出来るものより、自分の人生の一節を直に観客へと見せつけ、それに触れた観客の感情の揺れを直接感じられるのが好きだった。 それでも、舞台一本でやっていくのは難しい。もっと名を広めるには、メディアへの進出が欠かせない。 ---- リッパーは、ある夜に知人の開いたホームパーティーに参加する。 面倒だと思いつつも、彼は最近映画で顔を広めた人物だ。彼の知り合いに愛想でも振りまけば、仕事にありつけるかもしれないとリッパーは考えた。 パーティーには、舞台仲間からTVで露出している様な俳優までもが揃っていた。背が高く顔立ちも良く、立ち振舞も紳士的なリッパーの存在は華やかで目を引き、俳優までもが一目を置き話しかけた。 パーティーは、リッパーにとって酷くつまらないものだった。 辟易してきたリッパーの目に、黙々と肉を焼く男の姿が留まった。 最初、リッパーは彼の事をスタッフか何かだと思っていた。しかし、彼は自分が焼いた肉を人に振る舞ったかと思えば、人が居なければビールを片手に一人黙々と食っていた。 「ねぇ貴方。」 リッパーが声をかける。すると、彼はビールを飲みながらトングで肉を差し出してきた。皿を出せというのだろう。 「いりませんよ、そんなもの。貴方スタッフじゃないですよね?」 そう問い掛けると、男は肉を喰いながら「俺はスタントマンだよ」と返した。リッパーは、自分の役に他人が入り込むのを酷く嫌悪していた。そして、見下してもいた。自分の役に命を賭けれず、他人の命に任せるなど、愚の極みだと考えていた。 傭兵はスタントマンだった。 ���画やドラマで仕事を貰う事はあれど、業界の中でも知名度は決して高くなかった。 動きはとても良いんだがねぇ。 何度��う言われたか分からなかった。 傭兵は、男性としては小柄な方だ。それ故に、与えられる仕事が限られていた。 リッパーは、いい役者ではあったが、女関係もだらしなかった。どちらかというと、女は嫌いだった。だから、自分の見目に擦り寄ってくる女を組み敷いて、自分勝手に抱くのが好きだった。そんなセックスをするリッパーの事だから、女との関係は長くは続かなかった。それで良かった。 ある女が、リッパーに話し掛けた。 知名度は高くないが、ローカル番組などで見る顔だった。 女は、明らかにリッパーを誘っていた。こういう女の方が、リッパーの様な男を誑かしても痛手は少ないのだろう。 本当はもっと顔の広そうな女が良かったが、まぁ良いだろうとリッパーは考えた。 その時、酔いが回った誰かがリッパーにぶつかり、ビールを被せてしまった。それは、あの小柄な肉焼きのスタントマンだった。 あ〜…悪い。 赤ら顔で居心地悪そうに頭を搔きながら傭兵は、そう謝った。女は興が冷めたのか居なくなっていた。 クリーニング代を渡したいから、うちに来ないか?男はリッパーを誘った。 それで傭兵の部屋に行く事になる。 傭兵は、少し待っていてくれ。と言い部屋から出る。 部屋の中は筋トレ用具や映画のポスターやBDが並べられていた。彼は、趣味を仕事にしたタイプなのだろう。と、部屋の中を観察したは考えた。 その一角に、自分の出演した舞台も並べられている事に気付く。 彼がこの様な舞台を見るのは意外だった。自分が出演した作品が揃えられている中で、一つだけ別の棚に立てられている事にリッパーは気が付く。 それは、ある殺人鬼の人生を描いた三部作の序章だ。 その第二部の公演が近々始まる予定であり、その日もリッパーはその殺人鬼に扮して舞台上で練習していた。 そのBDが、下品なAVの隣に置かれていたのだ。きっと元の場所に戻すのが面倒だったのだろう。リッパーがそう怪訝そうに顔を顰めながら考えていると、真新しいシャツとタオルを抱えて男が戻ってきた。 未使用だから使ってくれ。とそれらを渡してくる傭兵に、貴方、私の舞台を見ているんですよね。と話を振る。 あぁ、実はファンなんだ。だから、こんな形とはいえあんたが此処に居るのは夢みたいだ。 特に、殺人鬼の役が良い。あんたの良さを最大限に活かされていて綺麗で恐ろしかった。次回作もチケットを取っているんだ。 そう語る彼は、照れ臭そうにはにかんだ。 その殺人鬼を演じる事は、リッパーも好きだった。 それはどうも。 で、そのDVDがあんな所に置かれているのは、ちょっとどうかと思いますがね。 そう言って棚を指差すと、それを視線で追った傭兵があぁ。と短く息を漏らした。 あれはあそこで良いんだ。 実は、その、あの舞台で抜いた。 照れ臭そうに男が吐いた言葉を、リッパーはすぐには理解出来なかった。 女を殺して恍惚に笑うお前の表情が、えろくて抜いた。あれでしか抜けなくなったんだ。だから保管用にもう一つ買った。 男が話す言葉を理解したくないと、リッパーは思ったが、一度理解したそれは否応なしにリッパーの脳へと滑り込んできた。 お前に会えたら聞きたかったんだ。 なぁ、実際に殺してみたくはないか? そう問われて、一瞬思考が止まった。 この男は、私になんと言った? いつの間にか力の抜けていた手の中から、持っていたシャツとタオルが地面へと落ちていた事にも気が付かなかった。 大丈夫か? そう、あたかも普通に問いかけてくる男が、得体の知れないものに見えた。 「か、帰ります!」 震える声で絞り出すと、シャワー浴びないのか?せめてクリーニング代だけでも。と、体温の高い掌が自分の手に触れた。 生暖かく少し無骨な指は、軽く握る形となっていたリッパーの指の隙間に差し込まれ、ゆっくりとその指を割り開き万札を数枚握らせる。 まるで、体温を分かち合っているみたいだ。性交のように。 そう思うと背筋に這い寄る不快感に居ても立っても居られず、金を握り締めたままリッパーは逃げる様に部屋を飛び出した。 帰りしなに、目についコンビニへと足を踏み込む。 リッパーを見た瞬間、店員は一瞬だけ眉間にしわを寄せた。 青い顔で酒の染みたシャツを着て、万札を握り締めた男などどう見てもたちの悪い酔っ払い客だ。 リッパーは、レジに置かれている募金箱に無理矢理万札を捩じ込み、コンビニのトイレに駆け込みげぇげぇと胃の中のものを吐き出した。 ---- 初日公演が差し迫る。 この物語の主人公の事を、リッパーは好ましく思っていた。演じれば演じる程、彼のことを理解し、一つに混ざり合っていく様な感覚に陥った。 それが、恐ろしくもあり心地良くもある。 しかし、その片隅で、あの男の視線が脳裏から離れなかった。 ---- 初日公演の幕が上がる。 舞台の上で殺人鬼として振る舞うリッパーの挙動の一つ一つで、観客の感情が揺れ動くのを肌で感じる。 怯え、憧憬、嫌悪、好奇、畏れ…様々な視線が纏わり付くこの瞬間が、リッパーへ役者としての輝きを与える。 その中を縫う様に向けられた、異質な感情を孕んだ視線をリッパーは感じてしまった。 役者の女の上に跨り、肉の感触を楽しむ様に手にしたナイフで滅多刺しにする。そして、恍惚に濡れた表情を浮かべ客席を見回す。 ここまでは完璧だ。完璧だった。 一つの視線が、リッパーに纏わり付いて離れない。 背筋を撫でられ、まるで愛撫でもされているかの様に、怖気が走る。 舞台上での私は、誰もが畏れる殺人鬼だ。そんな私が、他の何かを畏れて良いはずがない!!そう考え、リッパーは視線���元を探る様に観客席を見回した。 はたりと、目が合う。 視線の先には、あの男が座っていた。 男は、あの日と変わらない表情で、真っ直ぐと視線を向けていた。 その視線は全身を這い、弄る様に蠢く。不快感に、背に汗が伝う。 彼の視線に暴かれてしまう。 私は、殺人鬼■■■なのに。あの視線の前では、ただのジャックに戻ってしまう。脚が竦み胃液が込み上げ、その場に倒れ込む様にえづいた。 そこからは大変だった。 さっきまで死体に扮していた女が起き上がり、倒れ込んだリッパーに呼び掛け背を擦り始めた。 舞台の端から様々な人が現れ、殺人鬼の惨めな末路のまま舞台は幕を閉じた。 ---- そんな感じで、殺人鬼の素質がある舞台役者なリッパーと、スタントマンでありながらリッパーのファンであり、リッパーが人を殺す様に興奮して抜く傭兵の傭リ。多分紆余曲折でくっつく。
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