#讃喫茶室
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スクレイピング・ユア・ハート ― Access to SANUKI ―
あらすじ 平凡な大学院生である丸亀飛鳥。 新規気鋭のイラストレーターで、飛鳥の後輩である詩音。 四年ぶりの再会を経て、二人は奇妙な出来事に巻き込まれていく――――
物語の始まりなんて、なんでもよかった。 偉人の言葉を引き合いに出して、壮大な問題を提起する冒頭が思いつかない。洒落た言い回しを使った、���華絢爛な幕開けが思いつかない。ああ、思いつかない。とにかく、思いつかないの。 一般教養が足りないとか、センスがないとか、そんなんじゃない。 ただ、平坦。二十三年生きた人生に山も谷もない。 一般的な都内の中流家庭に産まれ、すくすくと成長し、苦難なく小中高大を卒業。 特に研究したいこともないが、働くのが嫌で大学院へ。研究生活の中で平均くらいの能力を身につけ、今でもゆるゆると日常を謳歌している。 そんな人間が想い描く物語だ。たとえ始まりを豪華絢爛にしたところで、面白くともなんともない。 だから、始まりなんてなんでもいいん『そんなことないわ』 ……そうかしら。それなら、もう少し頑張ってみ「お願いだから止まって、止まって!」 ……どっちよ。 これは、寝る前にするちょっとした妄想。クラスを占拠した悪漢を一人でやっつける、みたいなもの。 目を瞑っているのだから周囲は真っ暗だし、私以外の声が聞こえるわけ「先輩!先輩!しっかりして!」 うーん。うるさいわね。 聞き覚えがある女の子の声。少しガサついていて綺麗な声音ではないのだが、なぜか心地よくて、落ち着く。 ……寝る前に聞く、ちょっとえっちなASMRの切り忘れね「先輩!?」。面倒だけど一度起き『ダメよ』
身体がビクン、ビクンと震える。
表面上は高潔な雰囲気を纏っているものの、ねっとりとした厭らしさが滲みでて、根底にある魔性を隠しきれていない女性の声。 今まで一度も聞いたことがない。声の主なんて知るはずがない。それでも狂しいほど切なく、堪らないほど愛おしい。 そんな声が全身を駆け巡り、電撃のような痺れとなって身体を激しく愛撫したのだ。 『貴女の全てが欲しいの』 唐突に発せられた媚薬のような愛の囁きに、動悸が早くなって頬が火照る。恋愛感情に近い心の昂りが瞬く間にニューロンを焼き焦がして、身体にむず痒い疼きを与えた。 『貴女は快楽の熱で、ドロドロに蕩かされていく』 そう告げられると、容赦ない快感が次々と身体に打ちつけられ始めた。 堪らず身を捩ろうとするが、金縛りに遭ったように手足が動ない。舐めしゃぶられるように身体中が犯され、許しを乞うことすらできない。ただ一方的にジュクジュクとした甘ったるい快楽の波が全身に蓄積していく。 やがて許しを懇願することさえ忘れ、頭の中が真っ白に染まってしまう。もう耐えきれない、決壊してしまう。 『そして、深く深く流れ落ちていく』 そのタイミングを見透かしたように、許しの言葉が告げられる。同時に、心の器が壊れ、溜め込んだ全ての快感が濁流のように全身を駆け巡った。 意識が何度も飛びそうになって、頭のチカチカが止まらない。獣のように声にもならない嬌声をあげながら、やり場のない幸福感に身を委ねて甘く嬲られることしかできない。何もかもがどうでもよくなる程、気持ちがいい。 永遠に思えるような幸福な時間を経て、すぅっと暴力的な快楽が引いていくのを感じた。代わりに、深い陶酔の中へ身体が沈み始める。 そして、自然と強張っていた身体から力が、いや、もっと大切な何かが抜けていく。でも危機感はない。 たとえ声の主が猛獣で、彼女に捕食されている最中であっても、私は目を開けず身を任せてしまうだろう。 ゆっくりと身体の輪郭が曖昧になり、呼吸が浅くなっていく。意識が朦朧として何も考えられない。ただ、恍惚たる快楽の余韻に浸りながら、彼女の言葉の通り深く深く、流れ落ちていく。 『おやすみなさい、愛しい貴女』 赤ん坊に語りかけるような優しい声音で別れが告げられる。そして、私の意識はブレーカーが落ちたようにプツンと切れた。 遠くからぼんやり響いた悲痛な叫びは、もう私に届くことはなかった。
*** もしあたしにインタビュー取材依頼がきて、最も影響を受けた人物を聞かれたら、間違いなく先輩と答えて彼女への想いを語り続けるだろう。 コラム執筆依頼がきたら必ず先輩の金言を引き合いに出して最高のポエムに仕上げるし、ラジオに生出演したら「いぇい、先輩、聴いてるー?」が第一声と決めている。 現に初めて受賞した大きなイラストコンテストの授賞式の挨拶では、会場にいない先輩に向けて感謝の気持ちを述べた。それほどまで、高校で先輩と過ごした二年間はかけがえのない宝物だったのだ。 だから、あたしという物語の始まりは必ず先輩との思い出を引き合いに出すと決めている。 そんな小っ恥ずかしいことを寝巻き姿で平然と考えてしまう程、あたしこと讃岐詩音は浮かれていた。 なんせ今日は先輩と四年ぶりの再会である。 窓から差込む小春日和の暖かな日差しが、今日という素晴らしい日を祝福しているようにも思えた。
「詩音、朝ごはんできてるわよー」 「うん」 一階から聞こえたママの呼びかけに応じる、蚊の鳴くような声。自分のガサつい��地声が嫌で、どうしても声量が小さくなってしまう。 おそらくママには聞こえていないので急いで自室から出て階段を降り、リビングに移動する。閑静な高級住宅街に建つ一軒家に相応しくないドタバタ音が鳴り響いた。 「危ないからゆっくり降りてきなさいって言ってるでしょ」 ママのお小言に無言で頷きながら、焼きたてのバターロール一個とコップ一杯のスープをテーブルに運ぶ。いつものご機嫌な朝食だ。 「バターロールもう一個食べない?消費期限今日までなの」 ママの問いかけに対して首を横に振って拒否した。少食なあたしにとって、朝の食事はこの量が限界。これ以上摂取すると移動の際に嘔吐しかねない。 「高校でバスケやってた時はもっと食べてたのに。ママ心配よ」 そう言われてしまうと気まずいが断固としてNOだ。先輩との大切な再会をあたしの吐瀉物で汚したくない。 話題を逸らすためテレビをつけると、ニュースキャスターが神妙な面持ちで原稿を読み上げていた。 「横浜市のアトリエで画家の東堂善治さんが倒れているのが見つかり、病院に搬送されましたが意識不明の重体です」 たしか、以前参加したコンテストの審査員だったような。国際美術祭で油彩画を見たような。あと生成AI関連で裁判がうんたら。 「東堂さんは世界的に権威のあ……また、スポンサー契約を交わしていたFusionArtAI社に対して訴……捜査関係者によると奪われた絵……」 ニュースの内容を聞き流していると、概ねの内容は記憶と合致していた。どうやら、高校を卒業してから勉学の道には進まず、創作活動に勤しむようになったあたしの記憶力はまだ健在らしい。少しだけ、ホッとした。 「最近物騒ね。よく聞く闇バイト強盗かしら。ほら、この前も水墨画の先生が殺されたじゃない。詩音も今日のおでかけ、気をつけなさいよ」 「ん、気をつける」 ママを心配をさせないために少しだけ大きな声で返事をして、深く頷いた。 食事を終えた後、アイロンがけされた一張羅に着替えて身なりを整え、先輩が待つ喫茶店へ向かった。 *** ――――ちょうど三週間前のこと。 本業のデジタルイラストの息抜きとして始めた水彩画にハマりにハマって、気がつけば丑三つ時。ふと先輩の顔が頭に浮かんだのだ。 丸筆とパレットを置いてから勢いよくベッドにダイブして寝転がり、流れるようにエプロンのポケットからスマ���を取り出す。 先輩はSNSを実名で登録するタイプではない。それでも広大なネットのどこかに先輩の足跡みたいなものがないか、淡い期待を抱いて名前を検索してしまう。 そんな自分がちょっと気持ち悪い。 自己嫌悪に陥りつつ検索結果を眺めていると、思いもよらない見出し文を見つけたので間髪入れずにタップした。
「情報システム工学専攻修士1年生の丸亀飛鳥さんが、AIによる雛の雌雄鑑別システムに関する研究で人工知能技術学会最優秀論文賞を受賞しました」
ゆっくりとスクロールしながら情報を集める。やがて研究室のホームページに掲載された集合写真にたどり着く頃には、これが先輩の記事であることを確信した。 ……正直言って自分がだいぶ気持ち悪い。 「やっぱり先輩はすごい。うん、とてもすごい人だ」 先輩の活躍ぶりに足をばたつかせながら興奮していると、ピコンと仕事用のアドレス宛に一通のメール。見慣れないアドレスだったが、ユーザー名が目に入った瞬間飛び起き、正座になる。 「marugame.asuka0209って、これ絶対に飛鳥先輩だ!」 偶然にしては出来すぎているが、なんの警戒もなく開封をして内容を隈なく読み込み――――読み終える頃には呆然としていた。 要約すると研究協力の依頼であり、可能であれば一度会って話せないか、という非常に堅苦しい内容である。 気がつくと涙が頬を伝っていた。 四年ぶり、つまり先輩が卒業してから初めて貰った連絡。元気?今度ご飯でも行かない?みたいな、そういうのを期待していたあたしがおバカじゃないか。 ――――いいや、先輩が悪いわけではない。これが普通。むしろ、あたしがおかしい。 何を隠そう、あたしと先輩の間に特別な繋がりはない。友達でもなければ恋人でもない。ただ、バスケ部の先輩後輩というだけで、練習と試合だけが共に過ごした時間の全て。連絡も練習に関することだけ。そんな程度の仲。 「……それでも好き」 あたしに手を差し伸べてくれた先輩に対する想い。四年経ってもこの気持ちは色褪せていない。 でも、これが最後になるかも。もし拒絶されたら、ただの先輩後輩ですらなくなってしまったらどうしよう。そう思うと、胸が苦しくなる。だから今まで一度も自分から連絡できなかった。 ――――涙を拭い、ありったけの勇気を振り絞る。 先輩に会ってお話しがしたい、その気持ちだけで震える指をどうにか動かし、書いては消してを繰り返す。文面が完成しても、何度も声に出して読み上げ続け、早三時間。返信を完了する頃には外が薄明るくなりつつあった。 急にドッと疲れが出て、��びベッドに倒れうつ伏せになり、顔を枕に埋める。そのままうめき声を上げて、湧き出る混沌とした感情を擦り付けていく。 このあられもない姿がママに目撃されていたことは、あたしの人生最大の汚点となるのだった。 *** ――――いつの間にか私はドアの前に立っていた。 温かみを感じるレトロな木製のガラスドア。ここは大学から離れた場所に佇む、少し寂れた喫茶店の玄関前だ。私の憩いの場の一つで、よく帰り道に訪れている。 ぼーっとしていると、店内が薄暗いからか自分の姿がガラスに反射していることに気がついた。 ガラスに映る、ケープを羽織ったおさげ姿の美少女。うどんのように白い肌が彼女の纏う儚さに拍車をかけている。 彼女の名は讃岐詩音。 私の一個下で、高校バスケ部の後輩だ。 某バスケ漫画に憧れて入部したという詩音は、初心者という点を考慮しても信じられないほど下手だった。 ドリブルやパスはへんてこだし、一番簡単なレイアップシュートすらろくに出来ない。おまけに口数が少ない不思議ちゃんで、趣味と特技がイラストときた。 そのため、次第に周囲から腫れ物のように扱われるようになる。 それでも詩音は部活を辞めず、直向きに人一倍努力を続けた。 しかし、周囲からの扱いは変わることはない。下手っぴが一人で頑張っても嘲笑の対象になるだけだ。 だから私は、詩音に手を差し伸べた。少しでも彼女が笑顔になれるように。 ――――精一杯頑張る彼女の姿が、どこか冷めていた私の憧れだったから。 原因は不明だが、今、私は『詩音』の姿になっている。まる��VRを体験しているようだ。なんにせよ、玄関前で棒立ちを続けるのは迷惑だ。 混乱しながらドアを開けて入店すると、店員がにこやかに迎え入れてくれた。 「いらっしゃいませ、讃岐さんですね。丸亀さんはあちらの席でお待ちです」 会釈をするも、妙な違和感。戸惑いながら店員の案内に従い、席に移動した。そして私は大っ嫌いな女と対面することになる。 緑色の黒髪が綺麗な、リクルートスーツ姿の美女。気品のある見た目をしているが、中身は空っぽ。連絡が来ないから嫌われたと思い込み、自分を慕う後輩を四年間も放置したクズ。そんな女性が私を見て微笑む。
『久しぶりね、詩音』
そう、『『私』』だ。まるで鏡を見ているかのように、『私』が机を挟んだ向こう側に存在している。 詩音と四年ぶりに再開したあの日の夢を見ているのだろうか。 唖然とする私を無視して、目の前に座っている『私』は一方的に話を進めていき、本題に移り始める。
『研究室が推進するイラスト生成AIプロジェクトが難航しているの』
原因は技術の普及と発展に伴って、目視であっても判別できないAIイラストがウェブ上に溢れかえったことだ。 その結果、クローラープログラムがウェブを巡回してイラストを収集するスクレイピング技術で作られた学習データにAIイラストが混入し、AIプログラムが崩壊する報告が多数出ている。 余談だが、私の研究は養鶏農家から提供される写真を使用しているため、全く影響を受けなかった。それゆえ、最優秀論文賞を繰り上げ受賞してしまったのだ。
『研究用のデータ加工が大変なのよ』
これはイラストレーター達が自衛として、データをそのままウェブにアップロードしなくなったからだ。 近頃はデジタル画像を紙に印刷した作品やアナログ作品を造花などで飾り付けてからカメラで撮影する、2.5次元作品が主流となっている。 イラスト本体の解像度劣化やカメラフィルターによる色合の変化、装飾物による境界の抽象化などが原因で、2.5次元作品はAIで学習できない。 修正AIで2.5次元作品を2次元作品に加工しようとしても、誤認識のパレードである。そのため、ゆうに一万を超える大量のデータを人力で加工するしか手立てがないのだ。
『FusionArtAI社のデータも法外的な値段で八方塞がりなの』
FusionArtAI社は唯一ピュアなイラストデータを扱っているユニコーン企業だ。東堂善治のような大御所アーティストらと契約し、安定して高品質なデータを取得しているらしい。 AIやらNFTやらを壮大に語っているが事業内容がよく理解できない。それに莫大な資金が何処から出ているのか非常に疑問である。 加えて詩音がモニターとして、AIの学習を阻害する絵具を貰ったのだとか。胡散臭すぎる。
『だから詩音のイラストのデータを全て譲って欲しいの』
「……は?ちょっと待ちなさい」
今まで無言で頷いていたが、思わず声が出てしまう。
『貴女の全てが欲しいの』 「そんなこと言っていない!私は研究協力の依頼を断るように警告したのよ!!」 ことの発端は詩音がイラストコンクールの授賞式で私の名前を出したことである。偶然その授賞式に私の指導教員も来賓として出席していたのだ。 後日、ゼミで彼女の挨拶が話題に出され、私は迂闊にも恥ずかしさのあまり過剰に反応してしまった。 指導教員は詩音が語った人物が私のことだと察した。そして詩音宛に研究協力の依頼を出すよう、私に指示を下したのだ。 なんせ、詩音は今や業界を席巻する超新星。その作品を利用できれば、データの質の担保だけでなく、研究に箔をつけることができる。 下手をすれば詩音が筆を折りかねないその指示に対し、私は強い憤りを感じた。 しかし、上の言う事は絶対。だから大学から離れた喫茶店に呼び出し、密かに依頼を断るように警告したのだ。 ……加えて、授賞式のようなオフィシャルな場で無闇矢鱈に人様の個人情報を出さない���う、情報リテラシーの講義もみっちり実施した。 詩音は私の言葉を素直に聞き入れてくれた。ただし、研究室の厄介事に巻き込んだお詫び?として、週末に作品撮影のアシスタントをする約束をした。 ――――その撮影日が今日。 そこは、誰も寄りつかない瓦礫まみれのビーチ。 遥か昔、海辺に栄える水族館だった場所。 青空の下、詩音が無我夢中になって作品の飾り付けをしている。 装飾材を補充するため、彼女が水彩画に背を向けた刹那。 額縁からコールタールに似た漆黒の液体が勢いよく溢れ出し、彼女を襲う。 だから私は彼女を突き飛ばして。 悍ましく蠢く闇に、『食われた』。 「……ようやく思い出したわ」 これは、妄想でも夢でもない。相対する『私』の皮を被る怪異が起こした現象だ。 理解不能な存在に生殺与奪の権を握られている。その事実を認識した途端、体に悪寒が走り、鳥肌が立つ。今にも腰が抜けそうだ。 怪異は恐れ慄く私の眼をじっとりと見つめながら、ブリーフケースから同意書とペンを取り出し、机の上に置いた。 『貴女とはいい関係になれると思うの』 そう言いながら、怪異は小指を立てながら厭らしく微笑む。 私の生存本能が、この文字化けした書類にサインをしてはいけないと警鐘を鳴らしている。サインをすれば、死ぬ。 それでも私は震える手でペンを掴んでしまう。 ……だって、私なんかが敵う相手じゃないもの。 怖くて泣きじゃくる無様な私に何ができるの。 そうね。きっと、あっけなく死ぬのよ。 ――――そうだとしても 「大切な後輩を襲ったお前だけは、絶対にぶっ殺してやる!!」 私は決死の覚悟を決め、一世一代の大啖呵を切った。瞬時に怪異に対する怒りの炎が燃え上がり、滞っていた思考が急激に動き始める。 相見えるは常識の埒外の存在。裏を返せば奇想天外な自由解釈が可能であり、不格好でもそれっぽい仮説を立ててしまえば、私にとっては常識の埒内の存在になる。 きっとそう強く信じなければ、目の前の『私』は倒せない。 唇に人差し指をあてながら、ただひたすらに、常識や記憶の間に無理やり関連性を見出して理屈をこじつけることを繰り返す。 やがて、その思考過程を経て、一つの結論に辿り着く。 この怪異の正体は、『クローラーを模した淫獣』だ。 こいつは複数回にわたって人を襲い、心の記憶から作品を抽出していくタチの悪い存在。全ての作品を取り込み終えると、獲物に大量の快楽成分を流し込んで再起不能にする恐ろしい習性を持つ。 おそらく詩音も何度か寄生されていて、今日が最後の日になるはずだった。 ところが、すんでのところで私が身代わりになったため、情報の吸い残しがあると誤認が生じてしまった。それは淫獣にとって重大なエラーである。 そこで、やり直しを試みるも、改めて詩音の同意が必要となってしまった。 だから先日の会話に基づいてこの空間を生成し、『私』の皮を被ってサインを迫っているのだ。――――今、自分が捕食している獲物が『丸亀飛鳥』であることに気が付かずに。 そして、最も重要なことは淫獣が人工的に作られた存在という点である。 これまでの同意書に重きを置くような言動を見ると、魑魅魍魎の類とは思えない。何より、元凶に心当たりがある。 そう、FusionArtAI社だ。淫獣の正体が例の胡散臭い絵の具であり、密かに多数のイラストレーターを襲っているとしたら、全て辻褄が合う。 ――――そうであると信じるの。そうすれば、こいつに一矢報いることができるはずよ。 汗ばんだ手で同意書を手繰り寄せ、ゆっくりとペン先を近づける。 すると、自分勝手に喋っていた淫獣が口を閉じ、紙面をじっと凝視し始めた。それだけではない。空間を構成する全てが、その瞬間を見逃すまいと監視している。 張り詰めた空気の中、私は素早く紙を裏返して、こう書き記す。 robots.txt User-agent: * Disallow: / その意味は、『クローラーお断り』。 今や対魔の護符に等しい存在となった同意書を握りしめ、勢いよく席を立つ。 「私の全てが欲しい……そう言っていたかしら?」 沈黙。詩音の好意や才能を踏み躙った淫獣は、口を開かない。 『An error occurred. If this……』 どこからともなくアナウンスが聞こえるが今はどうでもいい。
「これが私の答えよ」
大っ嫌いなクソ女の顔面が吹き飛び、振り抜いた私の拳が漆黒の返り血に染まる。 一呼吸おいた後、心から詩音の無事を願い、静かに目を閉じた。 *** 茜色の空。漣の音。磯の香り……それと、ちょっと焦げ臭い。 そして、私の身体に縋って嗚咽する大切な後輩。 どうやら私は死の淵から生還できたらしい。無事を知らせるため、詩音の頭を優しく撫でる。それでも泣き止まないので、落ち着くまで背中をさすってあげた。 「心配かけたわね。詩音が無事でよかった」 詩音は私の胸に顔を埋めたまま、コクリと頷く。 「先輩も無事?」 「ええ、大丈夫よ」 これ以上、詩音を不安にさせないように気丈な態度をとるものの、重度の疲労を感じ、もはや立つことすらできない。 「ここはまだ危ないから、早く詩音だけでも逃げて」 「やっつけたから、モーマンタイだよ」 詩音が指差す方向を見ると、黒い液体��塗れた水彩画が静かに燃えていた。焦げ臭い匂いの原因はこれか。……やっつけたってどういうことかしら。 些細なことに気をとられている場合じゃない。 先ほどから微かに聞こえる、複数の物音。 何者かが物陰で息を潜め、私たちの様子を窺っている。 今や炭になりつつある淫獣の回収が目的か。いや、それは私がでっち上げた荒唐無稽な陰謀論にすぎない。 ここは、電波が届かない人里離れた廃墟。無防備な女二人がいつ襲われてもおかしくない、危険な場所だ。 詩音も気が付いたのか、私に抱きつく力が強くなる。意地でも私から離れないつもりのようだ。高校の時から感じていたが、この子は気が弱いわりに頑固だ。 ――――息が詰まるような空気を、遠くから鳴り響くサイレン音が切り裂いた。 同時に複数の人影が足音と共に遠ざかっていき、私は安堵の息を吐いた。 「もう大丈夫。定刻を過ぎても私から連絡がなかったら、警察と救急に通報するよう、母さんに頼んでいたの」 半分は今のような不足の事態に陥った時の保険として。 「やっぱり先輩はすごい。うん、とてもすごい」 もう半分は、尊敬の念を向けている後輩から刺された際の保険として。……絶対に黙っておきましょう。 *** ――――事件から三か月後。 結局、私たちを襲った存在の正体は分からず終い。一方、あの場にいた不審な人影は東堂善治を襲撃した闇バイト強盗であった。そのため私達の不法侵入は霞んでしまい、一切お咎めなし。私達の身に何があったか、深く聞かれることもなかった。 まぁ、警察に事情を説明するにしても―――― FusionArtAI社が作ったスライム型の淫獣に襲われてデスアクメしそうになりました。奴らはアーティストの心の記憶に存在する作品データを狙っています。 という私の支離滅裂な説は口が裂けても言えない。それに、FusionArtAI社が不正会計絡みで呆気なく倒産したため、もう追及のしようがなかった。 ちなみに、詩音は黒い液体の正体が亡霊の祟りだと思い込んでいる。だから制汗スプレーとライターで除霊?しようとして、そのまま引火。あの有様となったそうな。 「貴女のおかげで助かったのかもしれないわね」 私の言葉に首を傾げる後輩は、今日も美少女だ。 あの事件以来、私達はお互いの身を案じて一週間に一回は会うようになった。といっても、毎回普通に遊んでいるだけだ。 今日は私の行きつけの喫茶店でまったりとお茶をしている。お紅茶がおいしい。 紅茶の香りの余韻を味わっていると、詩音の手招きが。 またか、と思いつつ耳を寄せる。
「先輩のケーキ、一口欲しい」
耳元で囁かれる妙に蠱惑的な声と熱の籠った吐息にゾクッとしてしまう。あの事件で私が晒した醜態から、余計なことを学んでしまったのだろう。 悪戯っぽく笑う詩音。本音を言ってしまうと非常に嬉しいのだが、どうも照れ臭くて顔を背けてしまう。 でも、これから時間をかけて慣れていけばいい。あの事件が私という物語の始まり、いや、――――私達という物語の始まりと決めたから。 二人に降り注ぐ優しい木漏れ日が、これからの日常を祝福しているように思える。 ――――そんな気恥ずかしいことを考えてしまうほど、私こと丸亀飛鳥は幸せだった。
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尾山台にある讃 喫茶室 尾山台。 こだわりのコーヒーや紅茶、軽食やスイーツを楽しめるお店。 コーヒーを使ったコーヒーフロートあったり、ぶどうジュースなどもありドリンクメニューは豊富です。 特にコーヒーは自家焙煎しており、オーダーメイドでコーヒー豆を焙煎してくれます。 今日はブレンド深、たまごのサンドイッチ、チーズケーキをいただきました。 ブレンド深はコクがあるけど、酸味と苦味のバランスが良いです。 甘さもほんのりあって、香りもフルーティーで良いですね。 たまごのサンドイッチは玉子の味が濃くて美味しかったです。 チーズケーキは今までとは違う味! とてもクリーミーでミルクの香りと味が濃くて美味しい! これはちょっと新しい! 店内も落ち着いた雰囲気で1人でも楽しめます。 孤独のグルメみたいに雰囲気も味も楽しんじゃいました(笑) #讃喫茶室 #喫茶店 #自家焙煎珈琲 #カフェ #カフェ巡り #尾山台 #尾山台カフェ #尾山台グルメ #尾山台ランチ #チーズケーキ #玉子サンド #カフェ飯 #東京カフェ巡り #自由が丘カフェ #美味しいお店を紹介しますよ #東京グルメ #尾山台スイーツ #自由が丘スイーツ #genic_food #genic_cafe (讃喫茶室) https://www.instagram.com/p/CSb4DxYlxsF/?utm_medium=tumblr
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2021.07.30fri_tokyo
この家に居候させてもらって1ヵ月ほど経った。訳あっていま自分の家では暮らさずに、1階には信子さんがいて、私は2階で生活させてもらっている。 天井が高くて、台所やお風呂もトイレも洗濯機も1階とは別に2階に全てあり、広いリビングの他に寝室もあり、その他に部屋が2つ、その上にはミニ3階がある。 とてもいいおうちなので数日でもう帰りたくないという気分になった。いつまでいてもいいからね、と言ってくれるがずっといるわけにもいかない。これからどうしようか、ぼんやりし生活をしていたら梅雨がパカッと明けて夏になった。 クーラーが壊れているのでたくさんある窓を全開にし、扇風機をま��して過ごしている。朝はかなり早い時間から鳥たちが鳴いていて、それから蝉が。あるとき玄関からワンワン、と犬のなき声がして、しばらくしてもワンワン、ワンワン、と妙なリズムで聞こえるので何かと思ったらこの家のインターフォンの音だった。
2年ほど前、はじめてこの家に遊びにきたとき、まだここに住んでいたあいちゃん、お母さんの信子さんと、家が火事で燃えたあいちゃんの友人夫婦が一時的に住んでいた。 あいちゃんは私と歳はひとつ違い。東京生まれ東京育ちだが、信子さんは北海道出身だと言う。私は札幌で、同郷ですね、と話していると、出身の美術短大が同じということが判明した。歳は30歳以上違うけどかぶっている先生が2人ほどいた。 この家に私を連れてきてくれた人が、あいちゃんに「カエデちゃんを見せてあげてほしい」と言い、信子さんが「��しかこのへんに..」と引き出しからマッチ箱を出してきた。 ここに来る途中、その家で飼われていたというカエデちゃんというゴキブリのことを電車の中で少し聞いていた。信子さんがマッチ箱をスッとスライドさせて開けると、そこにはもう動かないゴキブリが静かに収まっていた。カエデちゃんの亡骸である。 私は人並みにゴキブリが苦手だが、そのマッチ箱のゴキブリは不思議とぎゃあ!とは思わなかった。大切に扱われているからだろうか。 もちろんこの家では全てのゴキブリをそのように丁寧にコレクションしているわけではなく、他のゴキブリは普通にやっつけるが、カエデちゃんは飼っていたという。 聞いてみるとある日庭でゴキブリが倒れていて、(倒れていた?)それで信子さんがご飯をやると食べて少し元気になり、おいで、と呼ぶとこちらに来たりと懐くようになったらしい。 自分の家でゴキブリが出たら私はちまなこで息の根をとめるため戦うが、この家は何が出てもあんまりびっくりしない気がして安心して暮らすことができる。 ちなみに最近は近くに住む藍ちゃんが家に来て掃除や整理をしていて、信子さんが「そういえばあのボタンみたいの何?」と聞いていてあいちゃんが「コンバットだよ。初めて置いた。」と答えていた。たしか建て替えをして20年くらいと聞いた気がする。コンバットもなく虫たちにとっても居心地のいい家だったろう。
7月30日朝、ベッドから降りてコーヒーを入れて本を読みながら、寝てる間に蚊にさされたのをかく。どうやらずっといる1匹が日々地道にに刺してくる。 見つけてパチンと両手を叩いたが捕まえられず、1匹だし蚊取り線香をたくほどでもない気がして、私はただ身を差し出し、かいたりキンカンを塗ったりやり過ごしている。 小さいロールパンを焼いて、余っていた豚肉と豆苗を軽く湯に通したものをはさんでポン酢とマヨネーズをぴゅうとかけたらとってもおいしかった。 コーヒーの続きを飲みながら昨日の撮影のデータを急ぎ��セレクトして送信。すごくいい撮影だった。友人がやっているリソグラフスタジオ、Hand Saw Pressが毎年参加している秋のイベントのビジュアル撮影。すばらしき5名の被写体が集結してくれ、撮った写真を見て自分も元気になる。
今日は金曜日なので、信子さんが毎週代々木公園に行ってやってるホームレス支援のある日だ。予定があえば私も同行させてもらっている。 11時半、信子さんの車に前日にフードバンクでもらってきた食糧や、信子さんのところに集まってきた衣類や生活用品を積んで、出発。 今日はあいちゃんともうすぐ1歳のピピちゃん(ニックネーム)も一緒に行くので車で5分ほどの家に迎えにいく。 先週の代々木公園はやたら人出が多く、何かと思ったらオリンピック開会式の日でちょうどブルーインパルスが上空を飛行する時間帯だった。みんなスマートフォンやカメラを空に向けて、夢中になっていた。私も車の窓から少し見えた。 きれいな虹が出たとき、わあ、と、近くにいる知らない人と同じ気持ちでその虹を眺めているのはとてもうれしい気持ちになる。このブルーインパルスだって、虹を見るみたいに見れたら。へんなオリンピックが開催中。
現地に到着。ホームレスの方や、元ホームレス、生活保護を受けていて住まいはあるがあまり余裕がない人などが並ぶ。今日は先週より人がたくさん来ている。女性も数人。 顔を覚えてくれた元気なおっちゃんにヨオ!と肩を叩かれてうれしくなる。 元々ここはキリスト教の牧師さんが主体の支援活動で、信子さんはクリスチャンではないけれど縁があり一緒にやっている。牧師さんは先に到着していて、おにぎりやゆで卵を配る用意をしていた。コロナの前は讃美歌を歌ったり、ポットからお茶を入れて配ったりしていたが、いまはシンプルに行っていて、讃美歌は歌わず牧師さんが短くお話をされ、「アーメン」と言って配布を始める。私もみんな一緒になり「アーメン!」と言うのだが、これがなんとなく楽しい。 彼らのファッションが私はかなり好きだ。こだわりがあったり、可愛い帽子をかぶってたり見たことないバンダナの巻き方をしていたり、生活と服がより密着している感じがする。特に冬の重ね着テクはどこのストリートでも見られない秀逸なものがたくさん見られる。 先週、帰り際に目があって手を振った、ワンピースを着た男の人と、今日初めておしゃべりしたら心が女性というかかなり乙女で、気持ちがまあるくやさしい雰囲気だ。女の子としての困りごと、トイレの話に自然になったので、銭湯はどうしているのか気になって聞いてみると色々と話してくれた。ピンクのポーチの中身も教えてくれた。 「おねえさんのお友達で、私とお友達になってくれる人はいないかなぁ?」 ���聞かれ、あれ?私ではなく?という気持ちになり答えに困る。照れ隠しか。お茶したり、ご飯食べたり、どこかに出かけたり、どの洋服が似合うかとかおしゃべりして一緒に買いものに行ったりしたいのだそうだ。自分にはそんな友だちがいないのだという。 私は今日はこのあとは難しいけれど、今度もしよければお茶とか..というようなことをぼそりと言ってみると、 「うん、ぜひ。ほかのお友達も。」 と言うので、やっぱり私ではだめなのか..?と思いつつ、今日はなんとなく別れた。ポケットティッシュを1つくれた。
ここに来ている間に会えないかなと思っている人がいるのだが、まだ会ってない。 一昨年の年末に別の団体の、食事をみんなでつくって食べる、という場に私は一人で毛布の寄付がてら参加したときにいた人で、そのとき話したりはしなかったのだけれど、去年の春に代々木公園をたまたま通りがかったらその男の人がみんなといて、私のことを覚えてたらしく声をかけてくれたのだった。一昨年の年末のとき、車椅子のその彼はみんなが切った肉や野菜が入った鍋を火の前でときどきかき混ぜたりする係をしていて、出来上がっておいしく食べたのだがだがジャガイモがまだ硬かったことをちょっと悔しがっていた姿が印象的でよく覚えていた。 再会したときはたしか平日の午後で、「今日夕方このへんでご飯でるよ」と誘ってくれたのだが、用事があったので公園には戻らず、それ以来会っていない。 一般的な炊き出しだと、配る人ともらう人、という関係があるけれど、彼のその誘いは、私が普段ご飯を自由に食べられるかどうか、家があるとかないとか関係なく言ってくれた誘いのように聞こえた。もちろんどこかの誰かが食料を調達して準備してくれて成り立っているものだから誰でもかれでも並んじゃうわけにもいかないけれど。「今日夕方このへんでご飯でるよ」という、おなかが空いてたら一緒に食べよう、というふつうの誘いが嬉しかった。
行きは荷物でパンパンだった車の荷台も軽くなり、代々木をあとにして経堂の喫茶店マレットへ。信子さんも藍ちゃんもマレットいく?とか言わない。いつもここと決まっている。 初めてここに連れてきてもらってメニューを見たとき、たとえばハンバーグカレーがS、MS、M、Lとかなり刻まれているな!というサイズ展開に心が踊った。 そしてせっかくならMではなくMSにしようと思って食べたらこれがちょうどいいのである。おなかいっぱいだ..!の一歩手前がMSなのである。 今日私はロコモコのMS。藍ちゃんはそれのM。信子さんがハンバーグライスのM。ピピちゃんは持ち込みのミニおにぎり。 顔なじみの常連さんばかりでだいたい白髪で、ときどき若い男の人がカウンターで一人なにか食べてたりする。 大きいテーブル席には1人できたマダムが、順番に、ここいいかしら?と言って座る。誰かが帰るとみんな手を振ったり会釈したり、私もついついそうしてしまう。歳をと���ても近所にこういうお店があるのはいいなあ、と思う。 今日代々木公園で、お友達がほしいの。と言ってたあの人のことを考える。 窓際の席にまんまるのアイスがのった美味しそうな何かが運ばれるのを見て私が「すごくまるい!」と言うと、信子さんがここはアイスも黒蜜も寒天もご主人が作っていてとっても美味しいの。食べる?と言い、フルーツあんみつを3人分注文。そして信子さんの言うとおりとっても美味しかった! 急に雨が降ってきて、通り雨かもしれないからもう少し待とうかと話していたが私が今日データを送らなければいけない仕事のタイムリミットが迫ってきており、駐車場まで信子さんが傘をさして行き車に乗ってマレットの前まで来てくれた。私が店を先に出て後ろを振り返ると、藍ちゃんに抱かれて眠っていたピピちゃんが起きて眠気まなこのままお店に残ってるおばあさま達にバイバイと手を振ると店内が沸いた。ベイビーの存在は偉大。
帰宅。2階に上がりこないだ灼熱の海で撮影した写真を仕上げてメールで納品。 それからこの日記を書いている。雨が降ったせいか少し涼しく感じる。涼しくてきもちがいいと暑い日のあの暑さをうっかり忘れて、来週届くというクーラーもなくていいんじゃないかと思ってしまうがきっと違う、やっぱりクーラーをくださいと懇願することになるだろう。8月もこの家で過ごさせてもらう予定。ありがたい。 今日はマレットでたくさん食べたので、夜は冷蔵庫にあったもずく酢や冷や奴を軽く食べる。 足を伸ばせる湯船にぬるいお湯を入れて入る。この家での7月も明日で終わり。蚊がいる。
-プロフィール- 南 阿沙美 39 東京 写真家 写真集「MATSUOKA!」「島根のOL」 http://minamiasami.com/ @minamiasami
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詩集『消費期限』
詩集『消費期限』
1.感謝 2.青春の光陰 3.朝に向かって 4.指環はもう要らない 5.枝豆とビールの協奏曲 6.タバコが煙る喫茶店で 7.妄想でぃすとらくしょん 8.サヨナラは言わない 9.小歌劇「自己責任」 10.落陽の季節 11.少年よ栄光あれ
1.感謝
恋人とは音信不通のまま 友達には地雷系女子と罵られ 将来の夢もなく TOKYOでひとり彷徨う
どっちつかずの人生じゃ どうにもならないと悟ったけど 今更何かを始める訳でもなく OSAKAでひとり涙する
同情してほしいわけじゃない 助けてほしいわけじゃない 私をダメ人間にしてくれた人へ 心からの感謝を
自虐するしか能がない 生きてるだけの人間です 人を笑うしか能がない 生きてくだけの人間です
キミに逢いたい人がいると 小学時代の友からの電話 待ち合わせ場所へ赴いた瞬間 身体目当てだと悟った
大切だった黒い靴を落とし リップもグロスも剥がれたまま なんとか飛び込んだホテルの一室で 裏切られたことにただ涙する
FUKUOKAに来てまで どうしてこんな目に遭うのか 口を開けばマルチに起業に 所詮人間は金の亡者
求められたら行ってしまう 軽薄すぎる人間です 恋に溺れて愛に飢える 軽蔑すべき人間です
死にたいけれど死にきれない 生きたいけれど生ききれない 中途半端な人生じゃ 何にも出来ぬと知ってても
何かを始める勇気もなく ここから逃げる力すらない 生きてるだけの人間です 私はただの人間です
あの夏に還れるなら あの日からすべてを変えてみたい シュプレヒコールが破れた日 私は私の理想と未来を確かに抱いてた
傷だらけの身体と 汚れた心で 新たな私を私が 創り出していこう
これまですべての裏切りに 心からの感謝を
ショートもロングもミディアムも どんな髪型だって私です ブラックもブラウンもブロンドも どんな髪色だって私です
パンツもスカートもワンピースも どんな服装だって私です 素直も小悪魔も優柔不断も どんな性格だって私です
もう一度走り出せ どんな私だって私です もう振り向かない いつだって私は私です
2.青春の光陰
今日も透明な血が 国会前を埋め尽くしてゆく 見知らぬ若者がそれに 心を痛めている
政治家たちは善人のフリをして 口を開けば政敵のスキャンダルを 必死に暴こうとするけど 本音を言えば 被害者のことなんかどうでもいい 一千万の給料があれば 政治家ごっこをしてりゃいい
ニュースは若者たちを ピエロのように扱い 私たちは扇動されるがまま 就職できなくなる
あいつらのことを誇らしいと思ったり 時には憎んだり 時には共に怒ったり
嗚呼人は気まぐれすぎる 社会には誰も善人などいないと 気付くのは十五の夏
君たちはよくやってると 学者が若者を讃える だから君たちはもっと怒れと 溶けない飴で釣ろうとする
新聞記者や物書きは 表現の自由を振りかざし 男や女の諍いを ドヤ顔で社会に投げかける 本音を言えば 嫌いな奴の平穏を壊したいだけ 右翼も左翼も中道もどうでもいい 私がやってるのは報道ごっこだから
コメンテーターは昨夜のことを ピエロのように扱い 私たちはいつしか幻となり 大人になれなくなる
誰かのことを殺したいと思ったり 時には愛したり 時には共に声を上げたり
まっとうな言葉を信じちゃいけない すべてに裏切られ たしかに燃えていた十五の夏
総理大臣は118回も国会で嘘をついたらしい 僕らも毎日嘘をつき続けてる 本音で話せる人なんかいないさ LINEもStoryも晒されてしまうから ご飯の写真くらいしか載せられないのさ
政治家たちは若者に願う 政治に無関心であれと その結果が今の社会だ
でも僕らだって気付けなかったのさ 誰かを生贄にしてばかりで 何もやろうとしなかったのさ
あいつのことを誇らしいと思ったり 時には憎んだり 時には共に怒ったり
嗚呼人は気まぐれすぎる 嗚呼人は優しすぎる
夢は終わった 気付くのは十五の夏
僕らがどんなに声を上げようとも 何かに怒りをぶつけても 社会はこれまでと同じように歩み続ける
夢は終わった 気付くのは十五の夏
3.朝に向かって
この素晴らしき 朝が待つ 君の姿を 探してる 約束の地に 君はいない 私はずっと 待ち続けた
星空に描く 未来予想図は なんの意味もなく 待ち人は来ず
空想少年 そう呼ばれても 信じてきたのは 君がいたから 夢に破れて 心は折れて それでも私は 生きるしかない
この愛おしい 夜が待つ 君がいた夏に 想い馳せる さよならくらい 言ってほしかった ネットの恋の 終わりは儚い
曇り空に描く 明日の予定は なんの意味もなく 虚しくきらめく
空想少年 そう呼ばれても 生きて来たのは 君がいたから 夢のない奴は だいたい友達 それでも私は 死��うと思わない
涙が溢れて 笑顔が溶ける夜空に 私は愛を投げ捨てて 目の前の一日を乗り越えてゆく
空想少年 そう呼ばれても 目にも留めぬ季節は もう終わりだ それが「大人になる」という意味 太陽は私に 語りかけてる
空想少年は 荒野を目指す 新たな夜明けを 心に描いて さらば友よ 家族よ恋人よ 私はひとりで これから生きていく 朝に向かって 時を舞う
4.指環はもう要らない
夏に踊る街 そして、人よ 君は誰を待つ そして、愛する
ココナッツミルクの香り 僕の心を嘲笑い ひと夏の空夢に酔いしれる
未来はどこにあるのと 君がつぶやいた アパートの一室にはもう誰もいない
最後の花火は 涙で濡れていた
夏は早すぎる そして、気まぐれ 君は誰を選ぶ そして、抱きしめる
明日はその時計の中 僕を嘲笑う言葉 ひと夏の空夢に夜を明かす
既読を待つほどに 君がつらくなり アパートのドアをそっと開けば……
最後の手紙は 笑顔で濡れていた
夏は淡すぎる そして、はっきりと 君を待てなくて そして、別れた
純情色の心は すっかり疲れ果て 淀んだ川を無理やり 昇ろうと決めたのは僕だった
スピーカーから流れるラブソング そのアパートには愛の痕跡がある
最後の一夜は ぬくもりで濡れていた
5.枝豆とビールの協奏曲
どれだけ声を張り上げても 国民は振り向いてくれない どんなにコッカイで暴れても 誰もが冷ややかな眼
アナタの時代は終わった あの国の使いだろ 根拠なき噂は拡散され いいねマークでラベリング
一万回叫んだって 変わりはしないから 週末は枝豆とビールで 友と乾杯しよう
この国の行く末は 国民が決めるんだよ 私は私の理想を 霞ヶ関で叶えてみせる
だからアナタは私に 代表の席を譲ってください
恋愛も子育てもそこそこに 国民のために闘う 息抜きはカラオケで不協和音 アナタのための福祉
どんなにバラバラになっても 諦めきれない国がある だから残り少ない政治家人生 私はこの使命を果たす
百万回叫んだって 変わりはしなくとも 今ここに��る限りは やるべきことをやるんだ
与党も野党も関係ないでしょ? 向くべき方向が同じなら アナタはアナタなりの正義で 良い国を一緒につくりましょう
未来へのニューディール 始められるのは今だけ
霞ヶ関のビル群が 時々切なくなる 誰のために働いているのか 真夜中に光るネオン
それでも朝になれば 政治家たちのレクへ ここで生きる人たちも 幸せになる権利がある
さらば利権よ癒着よ宗教よ 私たちには要らない 綺麗事ばかりじゃ叶わない それでも綺麗事なんだ
明日は何処へ向かうのか 誰にもわからない 突然何かが起こった時 すべては変わっていくだろう
だから私は私なりに その瞬間に備えているのです 枝豆をビールの肴にして
6.タバコが煙る喫茶店で
隣の客がふかした煙草を 灰皿に投げ捨てる どうやら商談に失敗したらしい 私にはどうでもいいこと
少し煙たい店で クリームソーダを口に運ぶ 少女の黒髪は 憂いで泣いている
この街は一体どこへ向かうのか 誰も何も知らない
踊っているだけで幸せになれた 昭和にもう一度還りたい 笑っているだけで一日が過ぎた 高校時代にもう一度還りたい
懐かしさに浸るには 旧友との会話で十分さ どんな形であれ前を向く必要がある 国会前のアジテーションを見ると
白ヘルが眩し過ぎて すべてが輝いて見えたあの夏 大学の割れたガラス窓 ふと我に返った……
この国は一体どこへ向かうのか 答えは今も見えない
怒っているだけで幸せになれた 昭和にもう一度還りたい 叫んでいるだけで思い出が出来た 大学時代にもう一度還りたい
遠い昔のことだよ 私がそこにいたのは もう何も出来ることはない このまま老いていくしかない
あいつはあいつなりに頑張ってる 無垢な気持ちでよくやっている
何もやる気がしなかったあの夏の話 私たちの青春は1969にある この夏ならもう一度やり直せるさ だけど……
かつての仲間は冷ややかだった それでも忘れられない夏が私にはある
7.妄想でぃすとらくしょん
この夜だけは 騒いでもOK! 仮装にパーティー 何してもOK!
スクランブル交差点 仲間と繰り出そう 見知らぬ男も女も 気分はお祭り
太陽が沈みかけた頃から 始まる伝説の日 人が人を煽り倒して やったもん勝ちの夜になる
ハロウィンパーティーは 若者たちがタガを外し 街に家にどこでも 自由に騒げる瞬間(とき)
何をしたって許される そんな気がした青春
バーボンを飲み干せば 気分は超ハッピー! 仲間と踊り明かせば バイブスは超アガる!
意味のわからない 言葉をたくさん並べ立てて 今日やるべきことは とにかく暴れること
明日からはまた普通の人になる 良い人であり続けるために 今夜は一年分の 鬱憤を晴らすのだ
ハロウィンパーティーは 若者が社会への怒りをぶつけ 仮装という名の偽装して 世界に問いかける
何をしたって許される そんな気がした青春
毎年のことさ この夜が明ければ 空虚な気持ちが 脳を覆い尽くす
それでも騒がなけりゃ 人生やってけない
沈みゆく船に乗るには 正気じゃ生きていけない!
ハロウィンパーティーは 若者たちがタガを外し 街に家にどこでも 自由に騒げる瞬間(とき)
ハロウィンパーティーは 若者が社会への怒りをぶつけ 仮装という偽装を着て 世界に問いかける
何をしたって許される そんな気がした青春
大人になれない子どもたちが もう一度始める青春
8.サヨナラは言わない
時の魔法は 川の流れに似て 君が呼吸するうちに 少女を大人に変えてゆく
手を伸ばせば 太陽に手が届きそう 何度も折れた翼を縫い合わせるうちに 君は空を飛べる鳥になった
裸足で駆け抜けた 海岸線に行く度 あどけない微笑みが美しすぎて 涙が止まらなくなる
今際の別れではなくとも 君と別れるのがつらいよ サヨナラは言わない また逢おうと伝えたい 僕は君を愛していたから
初めて逢った日は忘れられない 今日もこの先もずっと
君がここにいたこと 僕は永遠に語り継ぐから
何度も涙した Graduation 春は待たない Destination 心がつらくなる Sensation 君の時代 My Generation
愛する意味さえわからず 涙色の雨に溺れて 絶望に打ちひしがれた日々よ そんな時も君がいたから 僕は強くなれたんだ
あの舞台で歌う君に 青春を重ねた
風に吹かれて 揺れるカーテン 春の夜明け前は静寂の中
ここから君は夜明けを待ち 大いなる翼を広げて旅立つ 涙も憂いもすべて置いてゆけ どんな嵐も糧になるさ
初めて逢った日は忘れない 今日もこの先もずっと
君がここにいたこと 僕たちは永遠に忘れない
梅の花が咲く 美しい満月の夜 桜はその時を待ちながら 別れを見送る 君はもう飛べる鳥だ この坂道から……
9.小歌劇「自己責任」
【1.家出少女】
幼馴染が髪を染めた ブロンドの君は 別人のようで 私はどう接したらいいのか わからなくなった
そいつの親は少女の髪を見ると 眉を顰めて 元に戻せと咎める
子どもは大人の心がわからず 大人も子どもの心は見えない だから互いの普通で語るしかない 家庭という社会の落日よ
君が家出したと聞いた夜 私は少女を探すフリをして こっそり匿っていたのは 普通に反抗したかったから
【2.別離】
今、あなたを抱きしめられるなら こんなに淋しくはならないでしょう
今、あなたと恋人のままなら こんなに悲しくはならないでしょう
あの日、一瞬の過ちがすべてを 変えてしまったと気付くまでは
あの日、僕はあなたを傷つけてしまいました 別の人の彼氏になったと伝えたのです
もう、幼馴染でいられない 僕はあなたを裏切って恋をしました
もう、元のふたりには戻れない 僕はあなたとの未来を捨てました
せめて、地元を出た後なら あなたを泣かせなかったのかもしれません
【3.新しい恋人に】
足元に映る影が ほんのり薄く見えるのは 僕の信念の揺らぎを ここに示す実像
出逢いはマッチングアプリでした ひと目で惚れてしまいました あっという間にリアルで逢いました そして付き合うことになりました
あれもこれも早過ぎて 心も身体もついてゆけなくなり あなたをブロックしようと決めたのは 昨日の夜でした
せめて最後に別れをちゃんと言おうと いつものホテルに誘う でも、あなたには別の男がいたのです 僕も裏切られていました
【4.愛してたのに】
あれほど愛を注いだのに なぜ行ってしまったの 愛おしくて愛おしくて 私も後を追いたいわ
あなたに恋人ができたと 聞いた日は驚いたの 哀しくて悔しくて あんなことを言ってしまったわ
空に浮かぶ雲の群れに 遠い世界を捜す もう還る場所を失くしたあなたは 誰にも頼れなかったのね
私があなたを殺したのです あなたは私に殺されたのです 首元に残る紅い傷は 死にきれない迷いの証明
あなたは生きろというけれど 頑張れと背中を叩くけれど 大切な人を殺してしまった後悔は もう消せない罪です
10.落陽の季節
あの頃すべてが 燃えていたよね 隣の女が 嘆き悲しむ せっかくのバーボン まずくなったよ 店を出た後も 心は晴れず
仙台行きの フェリーは過ぎて 僕は僕なりに この道行くよ ほんとうの事は 誰も知らない
涙が溢れて 夢は破れて 何もしたくない 十九の秋に 君と出逢って ふたり恋して さすらう気持ちは 癒えていった
忘れてたのに 思い出したのは 君の声が 胸に響くから
かつては僕も 怒りに震えた 声を上げれば 社会は変わるはず 政治の時代は とっくに終わり 僕らはどこへ 向かえばいいのか
壊れた針は 空虚な叫び 僕は僕なりに 生きて来たけど ほんとうの事は 誰も知らない
時が流れて 夢を忘れた 誰も知らない 広島の街で 君と出逢って ふたり恋して 目前の落陽は すべて思い出さす
忘れてたのに 思い出したのは 君の声が 胸に刺さるから
すべての声が 夜の闇溶けてく 僕たちの季節 終わりを悟る 若さは怒りを 抱きしめきれない
涙が溢れて 夢は破れて 何もしたくない 十九の秋に 君と出逢って ふたり恋して さすらう気持ちは 癒えていった
忘れてたのに 思い出したのは 君の声が 胸に響くから
いつかの夏に 愛するがままに 走れたのは 怒りに恋してたから
11.少年よ栄光あれ
何度死にたいと思ったか もう数えられないほどになる
一睡も出来ぬまま 不安に苛まれて 碧空に涙を溢した朝
生きてるだけでもいいじゃない 頑張れなくても君のせいじゃない あなたがいたからもう私は 悩むことを怖がらなくなった
頭上から落ちる水に怯えて 通気口に差し込まれる箒は痛切で 何気ない違いが不安を生み出し いつしか私は独りになった
仲良かった友人とも疎遠になり 孤独になることに極端に怯え 虐められても無視されるよりはマシだと 汚れた制服をこっそり綺麗にした
何度死にたいと思ったか もう数えられないほどになる
一睡も出来ぬまま 不安に苛まれて 碧空に涙を溢した朝
そんなのは普通じゃないよ 君のことを守ってみせる あなたがいたからもう私は 孤独を恐れなくなった
ほんとに好きだった 素直に��かれてた あなたのような人を知らない ずっと傍にいたくて 少し上の志望校に受かった時は 思わず涙を流した
あんなに輝いていて 私にも優しかったあなたが なぜ自分を殺してしまったの?
私がいちばん傍にいたのに なぜ何も言ってくれなかったんだろう?
十五の春は涙に暮れて 新しいクラスでも塞ぎ込むばかり でも新たな友は皆が優しくて 次第に馴染んでいった
そして恋人ができて 親友もできた 今の私は満たされている
それでも私は あなたの傍にいたかった 微かな光を信じてみたかった
今はなき少年に栄光あれ 次の人生で もう一度逢えたら せめて夢で逢えたら……
【Credit】 原作・詩・デザイン:坂岡 優 共作詩:S.Horita(#2) 言語協力:M.Takahashi(#1), N.Kanazawa(#7) 写真:Takayuki Miyazaki(From Unsplash)
Thank you my family, my friends, and all my fan!!
2022.11.10 坂岡 優
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香川旅行記
ゴールデンウィーク後半を使って香川を旅行した。計画したのは出発前日の夜中で、今回のテーマはうどん巡りと温泉だ。私は昨年末に二泊三日で高松、琴平、直島、豊島を巡り、うどん7杯を食べて大満足で帰ったのだが、以来香川のことが忘れられず、また行きたいと思っていたところだった。
1日目(5月2日)
午前4時という、朝がひどく苦手な私にとっては信じがたい時刻に友人の車で出発。9時ごろ善通寺に到着し、食べログ一位のうどん屋、長田 in 香の香へ。巨大な駐車場と50mにも及ぶ行列を目の前にして一軒目ながら若干ひるむ。待ち時間を使って宿探しをするも、さすがGWだけあってどこも満室。無計画な私たちも悪いが、10軒ほど電話して空いていたのは一室のみだった。しかし結局宿泊料があまりにも高かったため断念し、並んでいた他のお客さんに健康ランドに泊まれることを教えてもらったので、最悪の場合そこにすることに。一時間弱待った後入店し、釜揚げ大と冷やし大を一杯ずつ注文。各1.5玉で350円だ。つゆはいりことかつおのダシがよく利いており、もちもちの麺からは小麦の香りが強く感じられたいそう美味かった。皆うどんだけ食べてさっさと出るおかげで回転率がかなり良く、11時ごろには食べ終えることができた。
続いて二軒目のはなや食堂へ。地元に愛されるおばあちゃんのお店といった印象。冷やしとタコ天を注文。うどんは200円、天ぷらは300円と安い。小ぶりなタコを丸々一匹揚げた天ぷらは衣が黄色くふわふわの食感。うどんも無論美味い。食後に宿探しを再開し、栗林公園近くのところに電話するとあっさりOKが出た。電話口の主人の対応が少し気になったが、���人一泊2600円、ガッツポーズだ。せんべい布団でも座布団でも部屋でゆっくり寝られるだけありがたいので、即座に予約した。
腹ごなしがてら金蔵寺(こんぞうじ)を覗く。お遍路さんが多くおり、皆お堂の前で一心に真言を唱えていた。友人曰く「水曜どうでしょう」に出ていた寺とのことで、ファンである彼の記念写真を撮った。ここに至るまでの道端の電柱には、八十八か所巡りの巡礼者を図案化した標識があった。小さなところにご当地感があってほんわかした。
次はこんぴらさんにお参りすることに。 暖かくなったのと休暇も重なったことで人がごった返している。登り口にあるアカボシコーヒーで一服してからほぼ休みなしで駆け上がる。中腹では神馬2頭を見た。その隣には大型船のスクリュー(直径6m)とアフリカ象の像があった。前者は94年に今治造船が奉納したそう(今治造船HPより)で、当社が海の神を祀っていることやお座敷遊びのこんぴらふねふねでお馴染みの金比羅船に因むことが予想できたが、後者の意図はわからず、奉納品であれば何でも良いのかと思った。関連するとすれば、この山の名が象頭山であることぐらいか。
程なくして本宮へ到着し、参拝の列に並ぶ。普段神社で手を合わせる時は何も祈らないようにしているが、今年に入ってからずっと精神が低調なままので、久しぶりに願をかけてみた。神様はこういう時の心のよりどころなのでありがたい。どうか届きますように。今回は、前回その存在を知らなかった奥社まで行こうとしていたが、道が閉鎖されていたためあえなく断念、またまた次回への持ち越しとなった。さて、全785段の石段往復は少々足に応え、途中で石段籠を見かけた時には思わず乗せてくれと言いそうになるくらいだったが、良い運動になったと思えば悪くはない。籠は参拝客の会話によれば片道3000円程だそうだ。乗っていたのはお婆さん、担いでいたのはお爺さんだった。
麓に下りてから、こんぴらうどん参道店でとり天ぶっかけを食べる。一杯690円だ。二人とも腹が限界で、なぜここまでしてうどんを食べているのかわからなくなっていた。最早それはこの旅のテーマとして設定したうどん巡りの義務感からでしかなかったと言える。満腹中枢が刺激される前に片付けねばならないと、タケル・コバヤシ(※フードファイター)並みの速度でかき込んだ。とり天はジューシーで、麺にはコシがあって美味かったが、胃の圧迫で心臓が止まりそうになり、「うどん死(デス)」という言葉が頭をよぎった。
疲労が甚だしかったため、喫茶店でまたも一服。琴平駅周辺には、「カキ三(さん)コーヒー使用���を看板に掲げた店が多くあり、前回の旅行でもそのオタフクソースのパッケージのようなオレンジと黒の色合いに親近感を覚えつつずっと気になっていた。おそらくそのカキ三を使ったであろうアイスコーヒーで意識を保ちながら、風呂にでも入ってリフレッシュしようということに話がまとまり、近くにあったこんぴら温泉湯元八千代へ。屋上に市街が一望できる露天風呂があるのだ。塀が低く、少しでも浴場のへりに近づけば周囲からは丸見えとなる(といっても建物より標高が高い所からだけだが)ため、内心ヒヤヒヤしていたが、やはり最高に気持ち良かった。受付で混浴と聞いて下品な期待もしていたが、二人組の女の子が少し覗いて引き返していったくらいで、終始客は私たちだけであった。なお、内風呂はごく普通の湯船がひとつあるだけだった。
体力をわずかばかり回復し、瀬戸内の眺望を求めて五色台を目指す。16時半頃、大崎山の展望台に到着し、青空から海へと沈む夕日を眺めた。なんとも雄大なパノラマだ。遠くを見やると、薄水色の瀬戸大橋があやとりの糸のような慎ましさで陸地を繋いでいる。カメラで何枚も写真を撮った。ふと、ここ数日間で覚えた個人的な悲しみに対して、目の前に開けた海は、その豊満な胸で以て私を迎え、倒れ掛かる身体を圧倒的な光景によって生に押し戻してくれているような気がした。そうして下を見れば、山と山に挟まれた湾内の湿地に、草の生い茂る田んぼのようなものが広がっていた。これは木沢塩田跡地といい、秋頃にはアッケシソウという好塩性植物が紅葉することで一帯が赤く染まるそうだ(大崎山園地の説明看板より)。一度そんな不思議な絵を見てみたいと思った。この日は風が非常に強かったため、目だけでなく全身で自然を感じられて嬉しかったが、そのせいで体が冷えたのと日没直前に雲がかかったため、18時半頃に引き上げた。
高松市内中心部に車で乗り入れ、今宵の宿へ。見るからに怪しげな建物に三友荘という傾いた看板がかかっている。隣の広東料理屋の前に中華系とみられる男が3、4人たむろしており雰囲気が悪い。中に入ると、フロントというよりは雑然と物が置かれた生活スペースが大きく広がっており、その山の中から主人が顔を覗かせて、一言いらっしゃいと言った。それから、かなり雑な態度で駐車場を案内され、やべーところに来てしまった、と思う間もなく会計を済ませて鍵を受け取り3階へ。廊下は廊下で床がはがれていたり、アメニティが散乱していたりとさながらお化け屋敷に入ったような気分になる。部屋に入ると、これまた昭和から時間が止まっていると思われるほど古くカビ臭い和室で、その異様さに一瞬たじろいだ。とにかく寝られれば良いのだと割り切ることにして、外へ風呂に入りに行った。
車を20分ほど走らせて向かったのは、市内中部にある仏生山温泉だ。前回も訪れて、その泉質と洗練された建築様式が気に入っていた。町の歴史が古いため、ここも昔からあるのかと思いきや、2005年開業と比較的新しい温泉らしい(仏生山温泉FBより)。入浴施設とは思えない白い箱のような建物入り口の外観が特徴だ。中に入ると、ドーンと奥行きのあるシンプルな休憩スペースがお出迎え。端には小洒落た物産品が並んでおり、また壁伝いには文庫本の古本が並べられている。客がひっきりなしに出入りし、脱衣場と浴場はまさに芋の子を洗うような状態であった。なんとか湯船の空いたスペースに身体を沈め、一日で溜まったとは思えないほどの疲れを癒す。とろりとした湯で肌がツルツルになり気持ちが良い。露天風呂のある広い空間は現代的な中庭といった印象で、入浴体験を一段上のものへ引き上げてくれる。インスタレーション的な、「空間そのものに浸かる」といった感じだろうか。内部はそのように隅まで配慮が行き届いており、とても面白く楽しめた。
さっぱりした後、宿に車を停め、土地の名物である骨付鳥を食べるために歩いて片原町近くの居酒屋蘭丸へ。本当は一鶴という店に行きたかったのだが、長蛇の列を目の前にして断念、ここに並ぶこととした。小一時間ほど待って入店し、とりあえずビールと親鳥・若鳥、それから鰆のタタキ、造り4種盛り、サラダを注文、香川の味覚に舌鼓を打った。特に親鳥は肉がぶりんぶりんの食感で旨味が凝縮されている。スパイシーな和風ローストチキンといった感じで、下戸なのに否が応でもビールが進む。皿にはたっぷりと鶏油が溜まっているが、それにキャベツをつけて食べるとまた美味いのだ。この骨付鳥の他にうどんと言い今日の行程と言い、なかなか歯応えのある旅だと思った。最後に親鳥をもう一皿と焼酎水割り、注いだ先から凍る日本酒を追加し、11時半頃ほろ酔いで宿に戻った。部屋では撮った写真を整理した後、もう一杯酒を飲んでから眠りについた。夜通し風がごうごうと窓を揺らしていた。
2日目(5月3日)
7時半、なぜか小学校の廊下でスーフィーの集団と象に追われるという夢を見て飛び起きた。昨日神馬の横で象の像を見たせいか。しかしスーフィーは全くわからない。2か月ほど前に蠱惑的なズィクル(※スーフィズムの修行)の動画を見たからなのか。とにかく旅にはふさわしくない目覚め方だ。最近何かに追われる夢をよく見るのだが、おそらく疲れているのだろう。今日もよく眠れなかったようだ。他の理由としては強風もそうだが、宿が高架下にあるため電車が通るたび振動で部屋が揺れるのだ。夜中と朝方に何度か覚醒した気がする。昨日20時間近く活動した身体は、子供騙しのような睡眠では回復しきれなかったようだ。
さて、今日は9時出発の船に乗り、犬島へ渡る予定だ。重い身体を叩き起こし、さっさと準備を済ませて高松築港へ。船の時間が近づいている。車を停めてから本気ダッシュで駅のそばにあるうどん屋味庄へと向かうも定休日だったため、近くにあったさぬきうどんめりけんやに入る。待ち時間にやきもきしながら冷肉ぶっかけ小を注文。430円だ。しっかり美味い。ここでも前日のごとくモリモリ腹に押し込み約3分で退店。ひょろい男の異常な食いっぷりに他の客は少なからず引いていたことだろうが、そんなことには構っていられない。再度、悪心を催すほどの全力疾走でフェリーの切符売り場へ。出航3分前、なんとか間に合うことができた。やる時はやる男なのだ、私たちは。などという安堵感も束の間、ここで無情にも定員オーバーが告げられる。肩で息をしながら愕然とする私たち。あーやってもうた、としか言えず、無意識に抑え込んでいたであろう胃の中で暴れるうどんに気付き普通に吐きそうになる。ただ次の便でも行けることが判明したことで難を逃れた。そうでなければ危うく待合所の床にBUKKAKEするところであった(読者よごめん)。そんなこんなで泣く泣く次便のチケットを買い、待つ間しばしの休憩タイムとなった。負け惜しみを言わせてもらえば、朝の海を見ながら飲んだコーヒーと吸ったタバコは格別に美味かった。これも良い思い出だ。
10時過ぎの便に乗り込み、豊島の唐櫃港に到着。レンタルサイクルを借り、次便の出航する家浦港まで急ぐ。豊島美術館に寄ろうとしたが、1時間待ちと聞きパスした。せっかくの機会にもかかわらず無念だ。前回は誰も客がいなかったというのに、やはりGWは恐ろしい。立ち漕ぎで先を急ぐ。山のてっぺんまではギアなしの自転車と寝不足のエンジンにはかなりきつい坂が続いたが、なんとか越えることができた。途中、唐櫃聖水という空海伝説もある井戸に沸く、不思議なほど青々とした水を拝んでから家浦へ。初便に乗ることができていればこのように複雑な乗り継ぎも必要なかったが、私の性格上致し方ない。人生はエクササイズだと考えれば万事ハッピーだ。そうして無事チケットを買い、物産品店を冷かす。豊島の民謡集に熱を感じ、買おうか迷って結局やめた。そしてしばらくして船に乗った。
13時前に犬島着。昼飯に港すぐの在本商店にて犬島丼なるものを食べた。白飯に甘辛く煮た大根や人参とともに舌平目のミンチを乗せ、甘めの汁をかけた瀬戸内の家庭料理だ。これに舌平目のフライと犬島産テングサを使用したコーヒーゼリーが付いたセットで1000円。どれも田舎風の優しい味わいで満たされた。出てから他の店も覗いてみたが、どこもコーヒーゼリーを出していた。単にさっきの店のデザートというわけではなく、これもご当地グルメのひとつのようだ。
そしてようやく楽しみにしていた犬島精練所美術館へ。ここはかつて銅の精錬を行っていた跡地で、美術館内部は入り口から出口まで一定方向に自然の風が流れるように設計されているという。詳細は省くが、三島由紀夫の作品がモチーフになっており、意表を突くような仕掛けが多く、かなり強烈な印象を受けた。しかしその中でも悔しかったのが、便器の枯山水と銅製の文字が文章となってぶら下がる部屋があったことだ。この二つは自分の内に展示のアイデアとして全くと言っていいほど同じものを密かに温めていたのに、こんなにも堂々かつ易々と先を越されていた。やはり所詮は人が考えること、どんなにオリジナリティを確信していたとしても結局は似てしまうのだ。しかしちゃんと形にした人はすごいし、その点素直にあっぱれと言いたい。やや興奮した状態のまま外に出て周辺を散策する。レンガ造りの廃墟にノスタルジーを感じ、その歴史を想像した。少し歩いて砂浜へ行き、海を眺める。風が強いので瀬戸内の海といえど波が高く荒れていた。夏に来て本来の穏やかさを取り戻した海を一度泳いでみたい。その後、定紋石や家プロジェクトという名のギャラリー数軒を見て回る。F邸にあった名和晃平「Biota (Fauna/Flora)」が個人的にグッと来た。発生は常に見えない、と私は詩に書いたことがあるが、言いたいことがそのまま形になっていた。2つの小部屋にはそれぞれ植物相と動物相のバイオモーフィックなモニュメントが数点あった。シンプルな発想ながらそこから湧き出す観念とイメージ喚起力の豊かさに驚かされた。創作において見習いたい点だ。
船の時間が迫っていたため、港まで早歩きで向かった。全体的に時間の流れがゆるやかで静かな島であった。ここからは直島を経由して高松まで戻る。船内では景色も見ずに二人で眠りこけていた。直島に着くぞ、との声で飛び起き、本村港のチケット売り場へ猛然と走る。乗り継ぎ便が10分後に出るためだ。しかしここでも昨日と同じく定員オーバー、30分後に出る次便を待つこととなった。大型フェリーの前にはゆうに200mを超える列ができており、この���の人気の高さが伺える。そうして、ふと並んでいる時に自分のカバンが思ったより軽いことに気が付いた。はてなと思い中を探るとカメラがない。目の前が真っ白になった。置いてきたのは犬島か、船の中か、それとも盗られたか。考える間もなく、カメラ忘れた! と友人に叫びながら乗ってきた高速船乗り場へとダッシュした。出航していたらどうしようかと思ったが、一条の光が見えた。まだ停泊したままだったのだ。息も絶え絶えに駆け寄る私を見た人民服風の上下を着た船員が、カメラの忘れ物ですかあと声を上げる。良かった。あったのだ。すみませんでしたあ! と謝って相棒を受け取る。ほっと胸をなでおろした。どうやら寝ぼけて置き去りにしていたようだ。私は普段あまりものをなくさないので、こういう時必死に探して見つからなければひどく狼狽してしまう。特にカメラのような高価なものだとその後の旅に影響が出るほどだったのではないかと思う。今回は本当にラッキーだった。友人に詫びてから並び直し、島を後に。航行中は展望デッキからモノクロで日を撮った。夜のような昼の写真が撮れた。
16時頃高松に着いた。後は帰るのみだ。最後にご飯を食べようということで、屋島を過ぎたところにあるうどん本陣山田屋本店へ。大きな屋敷を改築した店構えは壮観だ。本陣と名付くのは屋島の合戦ゆえか。前回の旅で、仏生山で終電を亡くした時に乗ったタクシーの運転手が、うどんならここらが本場だと言っていたため期待度が高まる。ざるぶっかけと上天丼を注文。うどんは570円、丼は720円だ。麺はもちもちとしており、良い塩梅にダシの利いたつゆと絡んですこぶる美味い。天丼にはサクサクの天ぷらがこれでもかと乗っており、ご飯が足りないほどだ。今流行りのロカボの逆を行く、ハイカーボダイエットにより思考が停止するほどの満腹感が得られた。これでコシの強いうどんともお別れかと思うと寂しい。京都の柔いうどんも薄味のダシがしみて美味いのだが、やはり一度讃岐のものを食べると物足りなく感じる。またすぐにでも来よう。次はざっくりと計画を立てて。それでは、さようなら香川。
高速道路は予想通りところどころで渋滞が起こっていた。運転は最初から最後まで友人に任せっぱなしだったため大変な苦労を掛けた。ここに感謝したい。約5時間かけて京都に到着。0時半頃に岡崎で蛸安のたこ焼きを食べた。京都の味だ。ようやくカーボ地獄から抜け出すことができ��と二人して喜んでいたが、よく考えなくともたこ焼きは炭水化物であった。うどんのオーバードーズのせいで腹だけでなく思考能力さえもやられてしまったようだ。���茶店はなふさでマンデリンを飲み、旅費の精算をして解散となった。
今回の旅も、弾丸(もはや散弾)にしてはうまくいった方ではないだろうか。休みに行ったのか疲れに行ったのかわからないが、気を紛らわすには最適な強行軍であった。うどんは5杯も食べられたし、その他のグルメも満喫できた。全ては偶然尽くしだったが、無計画だからこそ楽しめたものもある。私の場合は、ある程度見たいところを決めるだけで、そこに行っても行かなくても良いのだ。というよりはその方が楽だから、皆そうすればいいのにと思う。そこには予想もしない出会いがきっと多くあるはずだ。ただ、GWの人出を完全に舐めていたため、宿に関してだけは事前予約の必要性を痛感した。あと、食べ過ぎは単純に苦しいのであまりおすすめない。今回の旅でもうしばらくうどんは結構だ。などと思いつつ、翌日の昼には冷凍うどんを食べていた。どうやら脳までうどんになっていたようだ。しかし季節はそろそろ梅雨(つゆ)に入るので、ある意味おあつらえ向きなのかもしれない。
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ずーっと気になっていた、等々力通りの喫茶店に来てみた ・ 香ばしい香りと、静かな店内に流れるジャズ、思い思いのお客さんと、意外にもマスターは若い男性だった ・ 最初なのでマイルドなブレンドから ・ また、別宅が出来た さっき古本屋で出会った本に、延々と深々と (讃喫茶室) https://www.instagram.com/p/BxzXMxMpiaN/?igshid=12dfgy2e50r5w
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2018年、行ってよかった日本の風景・ベスト5【車中泊女子の全国縦断記】
■念願の「松前城の桜」など、さまざまな風景を満喫 2018年の旅の総まとめ、第2回は「行ってよかった日本の風景ベスト5」です。膨大な想い出の中から「ベスト5」に絞るのは、なかなか大変です。 【その1 北海道】 1年のうち約8ヶ月を旅生活してるとは言え、そのうち4ヶ月を北海道で過ごしました。毎度のことながら北海道ばかりになってしまうので、北海道内5ヶ所をとして、ひとまとめに紹介しちゃいます。さすがに広大な北海道、枚挙にいとまがありません。 今年こそはと渡道を早めて、松前城の桜を初めて堪能しました。ゴールデンウィークを過ぎた頃だったので時季的には少し遅かったのですが、それでもまだ「これから咲く」品種があるほど多くの桜が植えられていて、早咲きから遅咲きまで1ヶ月は楽しめるように造られています。 道の駅【北前船 松前】から城下町を通って松前城公園まで徒歩約10分。松前城(資料館)は入館料 大人360円、小・中学生240円です。 海岸線に奇岩が多く、青い海と相まって最高のドライブを楽しませてくれるのが国道229号線『追分ソーランライン』。特に瀬棚〜寿都あたりがオススメです。寿都には風車群も建ち並んでおりフォトジェニックな風景が広がっています。 写真は、大成地区から海岸沿い道道740号線。海岸線の向こう、まだ雪を被っている山は狩場山ではないでしょうか。 積丹半島を走るなら足を延ばしていただきたいのが、こちらの神威岬。尾根沿いに遊歩道「チャレンカの道」(全長770m、強風時は立入禁止)が整備されています。透き通ったセルリアンブルーの海��「積丹ブルー」と称され、天気の好い日中は特に目を見張るほど鮮やかな色彩に感嘆します。 根室へは何度も訪れているのに今までスルーしていた、千島の砦オーロラタワー(旧称:望郷の塔)。高さ96mの展望台からは、納沙布岬を眼下に見下ろせ、遠くには北方領土も一望できます。入館料500円。展望台には無料の望遠鏡が設置されており、北方領土を間近に見る事ができます。 キャンピングカー旅生活13年目にして、ようやく、ようやく念願の利尻島・礼文島へ渡りました! 長年の苦悩の元だったキャンピングカー(全長7m未満)のフェリー乗船料は、稚内→礼文島29,090円+礼文島→利尻島9,370円+利尻島→稚内25,680円=合計64,140円でした。まさに清水の舞台から飛び降りる思い。 しかし飛び降りた先には楽園が待っていました。美しい景色、とびきりの海の幸、優しい島民の方々、旅人との交流などなど、間違いなく今年一番の想い出となりました。(写真は礼文島・澄海岬。ちなみに、この記事の1枚目の写真は利尻島です。) 【その2 山形県・山寺(立石寺)】 さて、ここから本州です。 閑(しず)かさや 岩にしみ入る蝉の声 ── 松尾芭蕉も詠んだ立石寺(りっしゃくじ)。寺伝では貞観2年(860)に清和天皇の勅命で円仁(慈覚大師)が開山したとされています。入山料は300円。1015段の石段、ひとつひとつ登ることによって欲望や穢れを消滅させ、明るく正しい人間になるといわれています。 写真は、慈覚大師円仁を祀る開山堂(右)と、この山内で最も古い建物である納経堂(左)。お堂の向こう側は断崖絶壁! 開山堂の右脇から、さらに上へ石段を登ると天空に突き出るように五大堂が建っています。 周囲の岩壁に空いた岩穴の石塔には亡くなった人のお骨が今も安置されているそうで、ここが霊場であることを改めて実感します。 【その3 宮城県・松島】 日本三景の一つであり、また国の特別名勝にも指定されている松島。今年は久しぶりに雄島(御島)を歩きました。 松島の海は実はあまり綺麗ではないし、埋め立てばかりで風情がないのが難点なのですが、雄島の周辺には今なお砂浜が少しばかり残っています。雄島は『霊場』としての雰囲気が色濃く、観光地として整備されているわけではないので訪れる人も少なめ。 余談ですが『松島』という地名の由来は、ここ雄島で見仏上人が12年間も修行した偉業を讃え、後鳥羽上皇から千本の松を贈られたことから「千松島」と呼ばれるようになり、それが転じて「松島」となったと伝えられています。 【その4 長野県・白馬】 こちらの【落倉自然園水芭蕉】には、全国でも珍しい「2枚のホウ(白い花びらのようなもの)」をもつ水芭蕉が咲いています。宝探しのように、よ〜く目を凝らすと見つかります。更には3枚のホウがある水芭蕉もあるそうです。 近隣の方々が、無料でお茶とお漬け物のサービスをしていたことにも感動しました。地域に愛されている証ですね。 同じく白馬、【貞麟寺(ていりんじ)】の枝垂桜とカタクリの群生も見事でした。これだけのカタクリが咲きそろっている様は、なかなか見応えがあります。 昨年は立ち入り規制がなかったのですが、今年はロープで歩道がきちんと分けられたのでカタクリも踏まれずにのびのびと育っているようでした。来年はもっと数が増えるかも知れませんね。 【その5 奥日光】 日光も毎年のように訪れるお気に入りの場所です。主に奥日光、中禅寺湖周辺を散策することが多く、今年は10月下旬に赤沼〜小田代ヶ原ハイキング、日光白根山トレッキングなど満喫しまし���。 例年なら12月ともなると冬期閉鎖もありうるのですが、小春日和が続いたお陰で12月5日に奥日光から金精峠(写真)を越えて群馬側へと降りることができました。紅葉シーズンだった10月下旬の光景と見比べることができて、菅沼〜丸沼付近のお店は軒並み冬期休業しておりガラーンとしていましたが、秋晴れのドライブはとても気持ちがよかったです。 山が好きなので、「行ってよかった日本の風景」というと、どうしても山の風景が多くなってしまいます。次回は風景の中でも「山岳」ベスト5をお送りします。 (松本しう周己) あわせて読みたい * 2018年、心に残った出来事・ベスト5【車中泊女子の全国縦断記】 * 「苔の生えた」キャンピングカーを徹底洗車。光触媒コーティング施工で生まれ変わった!?【車中泊女子のキャンピングカー生活】 * キャンピングカーのリアラダー修理顛末記【車中泊女子のキャンピングカー生活】 * 【車中泊女子のキャンピングカー生活】凡ミスから4ヶ月、ついにサブバッテリー交換 * 災害時、キャンピングカー(車中泊)旅で困ったこととは?【車中泊女子のキャンピングカー生活】 http://dlvr.it/QvRL09
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クトゥルフTRPG シナリオリスト
☆—PL経験済みシナリオ ★—KP経験済みシナリオ (黒星が付いているとKP安定しやすめです)
【通常シナリオ】
☆★毒入りスープ ☆★首切り様 ☆★お地蔵さま ☆★どきどき★執筆活動 ☆★鳥籠のカナリア ☆★花ノ揺リ籠 ☆★みかん箱 ☆★スープの証明 ☆★人と機械のあいだ ★焼肉に行こう! ★15の扉が紡ぐ恋 ★狂親者 ★キャットインザボックス ★見られている。 ★(四面の部屋) ★ピザって10回言って ★ねこの気持ちになるですよ ★或る彼は美食家 ★時かけそば ★Hangman ★人生邪神に愛されゲーム ★マシュマロの弾丸は撃ち抜けない ☆猫の小道 ☆駅での短い話 ☆死にたがり電車 ☆カット ☆雪の日のクリームシチュー ☆泉の底 ☆満(みちる) ☆メランコリー・キッチン ☆幸福な悪夢の夜 ☆茂が見たもの ☆カラオケルーム ☆知を孕む母よ ☆ロッカー ☆神赦病棟 ☆無貌の大女優 ☆等価の天秤 ☆脱法ジャンキーダメ、ゼッタイ ☆美容外科クリニックの謎を追え ☆夕暮れの向こう側 ☆美味しいね、もぐもぐ ☆鏡の中 ☆この部屋は誰の部屋 ☆魔法少女の宴 ☆Sing for ☆ともだち切符 ☆ねないこだれだ ☆壁の中にいる ☆ラジオ・ミッドナイトラヴァーズ ☆飛竜の卵 ☆謎のオレサマン ☆わすれもの ☆赤い靴 ☆食事の時間 ☆気付かせてはいけない ☆コロッケを買いに ☆5000兆円が欲しい! ☆赤い月 ☆赤ずきんちゃん ☆厳正なる選考の結果、貴殿を採用いたします。 ☆パンケーキ夜行 ☆繰り返す夢 ☆マジで銭湯で戦闘すんの!? ☆願いを叶える薬 ☆白の代行者 ☆色とりどりな夢の宝探し ☆りんごはあまい ☆お客様は神様ですか? ☆おとぎの国へようこそ ☆もう寝なさい ☆さよならの意味を教えて ☆死神に花束を ☆ファンブル食堂 ☆料理教室 ☆君が死ぬまで殴り続ける ☆ベスベマンジュウガニとネギとカモを ふんだんに使ったおいしい鍋をみんなでつつく午前2時 ☆自己愛 ☆おままごと ☆コンビニエンス・ストア ☆居酒屋ニャルラト亭 ☆Hのあとには… ☆カリプソの島 ☆悪食の館 ☆天使は誰だ ☆神様ゲーム(仮) ☆密室シェアハウス ☆知ラナイ家 ☆かわいいお前が一番かわいい!!!! ☆首吊りアパート ☆ガラスの電車 ☆時給1650円 ☆ねこねこ☆パニック~殺すぞまじで~ ☆ゴリラホスト ☆オハナシ ☆オレンジジュースが飲みたい!!! ☆白夜の歌 ☆僕は、バニー・ラビットソン(仮) ☆瑠璃色絵画 ☆はなひらり ☆リボルバー ☆ベビーインコインロッカー ☆ダンジョンエレベーター ☆バベル ☆アリエル ☆砂糖菓子7つ ☆MMM! ☆仰ぎ見る遡行 ☆火点し頃の蜘蛛踊り ☆正気の街 ☆生命の軛 ☆ヨグ=ソトースの迷宮 ☆天露尋 ☆memento mori ☆ストックホルムに愛を唄え ☆絶望の偽母 ☆キラメキスムージー ☆狂気御膳 ☆楽園パラノイア ☆Gooddusk me ; gooddown me ☆まれびとこぞりて ☆流星群と機関銃
【タイマン・ソロシナリオ】
ソロ ☆★扉を開いて���に7歩 ☆★脳みそとおりみち ☆★死にたがり電車 ★My name is ★闇に鈍痛 ☆room ☆CoffinofXXX ☆Wakey wakey! ☆自殺駅 ☆白地図 ☆青と融合 ☆ココロコネクト ☆隠れん坊 ☆とある旅人の選択 ☆赤いスペード ☆N=R*fp*ne*fl*fi*fc*L ☆サイキックにゃんこ ☆其の危機は厠にて ☆モブおじさん10分クトゥルフ集 ☆アイ -eye-
タイマン(KPPC同伴) ★☆火水の地下室 ☆★夜と絵画と君と ★☆Bacchus ☆★X´の埋葬 ★真夜中のサルーテ ★水中密室 ★君におはようと言えたら ★氷鏡の城 ★何階から落ちますか ★魂の破片 ★マネキンな彼女 ★ミルキーウェイで抱きしめて ★ハロウィンの夜に渋谷なんか行くから ☆祈り願う為の共鳴 ☆繋がる仲で ☆In the cage. ☆太陽と月と眼 ☆小さな君 ☆No-tice! ☆その恋に終止符を ☆溶けるような愛をあなたに ☆結婚(仮) ☆ドスケベスタンプラリー (R-18) ☆扉を開けば (R-18) ☆真夜中のサルーテ ☆長く短い夜想曲 ☆月と羊 ☆天落の暁星 ☆盤上の一歩 ☆心臓がちょっとはやく動くだけ ☆雨夜のおしゃべり ☆Kの独白 ☆ぎこちない同居 ☆999本のリンボ ☆目が覚めたら箱詰めにされていた (2PL可) ☆愛すべき馬鹿と知的な時を ☆灯火色のタワーライト ☆フレンドシップシュミレーション (2PL可) ☆ぴったんこかんかん (2PL可)
KPレス まんだらかばら ひとりだけ はい集合!今から会議を始めます
【救済・SAN値回復シナリオ】
☆★デリヘル呼んだらキミが来た (R-18) ★お寿司食べたい ★ 喫茶WIND ★ 和食堂「湯後子」 ★ 深夜三時のスウィートパイ ★ 秘密のトワレ (R-18) ☆貴方に花束を ☆ロストしちまっただ! ☆湯けむりの隙間から ☆1000円あるからラーメン食べたい! ☆THE サイゼリヤ ☆She Wore a Yellow R ibbon ☆アドレナリン ☆ワイルドローズのお茶会 ☆紫陽花屋敷
【自作シナリオ】
★COC~カップヌードルオブクトゥルフ~ ★迷探偵の密室(公開) ★チンダロスのバター猟犬(公開) (R-18) ★魔女の夢 ��mischief2/1 ★遺産相続人
(参加済みの未収得シナリオ)
リビングデッドはかえりたい ウドマドルドモ 賽ノハコベヤ あの空はきみのために ボクのセカイのそのさきに 彼方からのメッセージ Life goes on~人生は続く~ グリッチ SH LOVER ホテルで夕食を 月見うさぎ カリリ・クルル 脳筋夜行列車 ゆくさの渦 魔法少女パラレル☆すてら 受胎聖告 ジングルベルが聞こえない! クルクルン 唐揚げ食べたい おくすりのめたね 山猫館 月面世界 神明鏡 純潔の証明 羅生門 シャンハトピア レインレインダウンタウン 大正一二年の空になく 天露尋 X2U アイドル×マネージャー 人類讃歌
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2020.6.6sat_tokyo
なんの予定もない日。
前日にFlussで初めての配信イベントがあったので、それまではつつがなく放送できるのか。満足のいくものになるかとっても不安だったのだけど、素晴らしいライブでその不安から解放された今、脳みそにも余裕がある気がする。良い週末。
しかし、こういう日ほど、時間を持て余してしまう。 無駄にダラダラして、日が暮れてから自分の怠惰具合に落ち込む。忙しい時は「1日なーーーんもない日が欲しいなぁー」とか思ってるくせに。今日がほら!あんなに欲しがってた何にもない日だぞ。
今日やったほうがいいことなかったっけな?と、気になってることを書き出してみる。TO DO LISTは、「やりたかったこと」が「やらなきゃいけないこと」になってしまう気がして苦手だ。でも、書き出さないと忘れちゃう。忘れないために、義務感と共にとどめてるような感覚。わるく言い過ぎかな。
お昼を過ぎて、夫婦揃って食べたいものが「そうめん」に一致したので、素麺を茹でる。大葉と梅干し、漬けたきゅうりをお供に。
茹でた素麺をザルのまま出していい?と聞くと、「このお皿に盛って」とお皿を差し出されたので、水を切って丁寧に盛り付けていたら「素麺はそんな丁寧にする必要ない」とお叱りを受ける。なるほど。
午後、取り置きをお願いていたお皿をokuさんへ取りに伺う。奥沢にあるokuさんまでは自転車で10分。道中には踏切が5つ。見事に5つとも踏切につかまる。
okuさんで3RD CERAMICSさんのお皿を受け取る。少しだけ小さめで、使い勝手が良さそう。okuさんも今週からお店を再開。またみんなで飲みに行きたいですねーー!と話をして、お店を後にする。
帰りも全部の踏切にひっかかったらいいのに!と、思うと今度は全然引っかからない。途中からどっちでもよくなる。
まっすぐ帰るのもあれなので、尾山台にある喫茶室、讃でひとやすみ。これまでなら土曜日の夕方は満席なのに、席数を減らした店内にお客さんは3人。アイスコーヒーを頼んで、リストのお皿を受け取るにチェックをつける。チェックをつける瞬間のTO DO LISTは好きだ。勢いに任せて、億劫だった事務仕事もいくつか片付ける。
夕飯に、安くなっていたハマグリと銀ダラを買う。砂抜きしようと3%の食塩水を作っていたら、50度のお湯につけると良いと教えてもらう。給湯器の温度設定を50度にセットして、蛇口をひねるだけ。これは確かに早い。お風呂入る前までに、設定温度を戻すことだけ忘れないようにしなくては。
-プロフィール- 黒川成樹(37) 東京 尾山台 Flussオーナー/経理者 小さな制作会社を経営しつつ、夫婦でFlussというピアノアトリエを運営しています。尾山台のまちで、暮らしを面白くするチーム「一般社団法人おやまちプロジェクト」の事務局長でもあります。 @n_krkw @nrk_krkw http://fluss.es/
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尾山台駅にある讃喫茶室。 尾山台は最近カフェがめちゃくちゃ多くなりました。 しかも自家焙煎してるお店が多い。 知ってるだけでも3件あり、カフェはこの2年くらいで5件くらい増えたと思います。 そんな中でも尾山台に寄ると7割くらいの確率で、こちらのお店でお茶して軽食をしてます。 珈琲や紅茶など種類豊富。 でもおすすめはやっぱり自家焙煎珈琲。 深煎りが好きだけど、気分に合わせて少し変えてます。 でもどれもその時の気分にマッチする感じで好きですね。 サンドイッチ��たまごサンドはよく食べますが、このハムサンドも美味しい。 パンが厚切り、外はサクッと中はフワッとしてます。 これを食べて、珈琲を飲んで、たまにおかわりして、作業したり本を読んだりするのが楽しい時間です。 (讃喫茶室) https://www.instagram.com/p/CZE2SyKPm9V/?utm_medium=tumblr
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