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天皇氏族の特徴
天皇氏族―天孫族の来た道 (古代氏族の研究⑬) | 宝賀 寿男
ここでは、天照大神や神武天皇の日本列島内における祖系を遡って探究するとともに、この天皇氏族・天孫族の様々な特徴を���り、それに関係した諸氏についても見ていく。検討すべき問題が多種多様で、それぞれが大きい問題を含むから、本書が紙数の制約のもとにあることを念頭におき、これまで検討してきた結論的なものを整理して、予めある程度示さざるをえない(このことを先ずお断りする)。
わが国天孫族の主な動向
これまで公刊してきた拙著『「神武東征」の原像』や『息長氏』など古代氏族シリーズ)を通じて、天皇氏族の基本的な人物たる神武天皇と一族近親、臣下・関係者について、各々の原像を具体的に示してきた。それらなどを踏まえて、以下に要点を記す。
神武天皇などの初期天皇:神武は、当初に居た北九州の筑前海岸部(天孫降臨伝承にいわゆる「日向」。具体的には筑前の早良・怡土両郡あたり)から、兄・彦五瀬命とともに畿内に東征を試み、紀伊の紀ノ川滞上ルートで大和侵攻に成功して、奈良盆地南部地域あたりを押さえ、大和朝廷の初代の大王(天皇)となった。治世時期は概ね紀元一七五~一九四年の約十九年間とみられる(資料編に掲載の表「古代天皇の治世時期の推定」を参照)。この東征は、邪馬台国本体の東遷ではなく、筑前の支分国の庶子・一族関係者による小勢力の東征活動にすぎない(要は、「神武東征」という事件はあったが、それは「邪馬台国本国の東遷」ではない。当地での前途を悲観した庶子たちによる他地への分岐活動という意味)。
神武に関連して現れる随行・敵対の人々と崇神天皇関係者とを比べれば、それぞれがまったく異なっており、「神武=崇神」という同一人物のはずがない(神武は崇神の五世代ほど前の祖先る)。鏡を象徴とすろ太陽神信仰(この奉祀勢力)の中心が北部九州から畿内に移動したと認めても、それが直ちに邪馬台国東遷だとみるのは論理の飛躍である(筑後川流域と大和盆地の地名の類似も、物部氏東遷の影響のほうが強いか)。
北九州の在地には、神武東征当時はまだ邪馬合国もその怡土支分国もともに残り。その後の一世紀半ほどの期間は、北九州と畿内に各々の王権勢力が列島内に並存した(三世紀中葉頃は、畿内のほうの勢力はまだ小さいから、列島内で二強の王国が並立という構造。規模ではない)
神武の後のいわゆる「闕史八代」の諸天皇は、実在性を否定する根拠に乏しい、。邪馬台国の九州残滓勢力は四世紀中葉頃には滅ぼされたが、これは、最終的には畿内王権・景行天皇の九州巡狩に因る(従って、古田武彦氏の言う「九州王朝説」は成り立たない)。大和王権がほぼ確立した崇神天皇の時代には、日本列島のうち本州主要部を版図としたが、西側は吉備ないし安芸くらいが西限であって、その勢力は北九州にはまだ達していなかった。
神武の父はは、天孫・瓊瓊杵尊の子の彦火火出見尊(山幸彦)で、母は海神族首長の娘・玉依姫である。
『記・紀』に神武の父とされるウガヤフキアエズノ尊(彦波瀲尊)は山幸彦嫡出の長子であって、実際には神武の嫡兄である。その子孫が怡土支分国の王家を継いでいったとみられるが、後裔の系譜や存続の詳細は不明である。
天照大神:高天原を主宰する男性神であり、名を天活玉命(生国魂神)ともいう(論拠は様々に異なるが、山片蟠桃以降、男性神説もかなり多い。天照大神は、卑弥呼ではないし、推古天皇や持統天皇など実在者の反映でもない。後世に造作された架空の人物でもない。本書では詳説しないが、拙著『「神武東征」の原像』『息長氏』等を参照のこと)。天稚彦の親として神代紀に記される「天国玉」や、天照御魂神にも相当する(鈴木真年著の『古事記正義』)。
天照大神は天皇家の遠祖だが、決して抽象神ではなく、神武の四代祖先という具体的な生身の人間である。長子の天忍穂耳尊(天忍骨命)の嫡子が天火明命(この神は物部祖神ではないことに注意)で、この系統が本国・高天原(筑後川の中下流域で、久留米市の高良山麓に本拠)の邪馬台国王を継いでいった(これも後商やその存続の詳細が不明で、大和王権側の記録には残らない。景行天皇の九州巡狩や神功皇后遠征の時の討滅対象のなかにあったものか)。
天火明命の弟が、高天原から筑前の「日向」へ天降り(移遷)した者で、これが瓊瓊杵尊である。祖先の居住地から支庶の者が分かれて新天地に遷ることを、東北アジアのツングース系の上古伝承では、「天からの降臨」という形で把握する傾向があり、日本列島でもその例にもれない。東北アジアの習俗・伝承を視野に入れない議論だから、こんなことは実際にありえず、後世の造作��と安易な速断をすることになる。東アジアの太陽神は、殷の太陽神俊や高句麗の例のように、全てが男性神であった。なお、記紀のいう「高天原」及び「日向神話、出雲神話」の舞台は、全て北九州にあった。
日本列島への到来者:本書では、以下に具体的に検討を加えるが、天孫族の分派が初めて分かれるのは、天照大神の諸子から始まるという形の分支流の系譜などから見て、天照大神のあまり遠くない祖先が北九州に到来したとみるのが自然であろう。
「倭人」を江南にあった呉の太伯(周王朝ど同族で姫姓)の裔とする伝承は、『魏略』逸文などに見えるが、種族・経路や時期等から見て、その支配層については疑問が大きい。すなわち、上古の「倭人」』の人々の大宗を占める海神族が越人(タイ系種族)と同種族とは認められるとしても、二世紀前半以降に北部九州における倭国連合体の長たる地位についた天皇家の先祖は、これとは系譜・種族が異なる。国の主な住民とその上に立つ支配層とは、朝鮮半島古代の例を見ても、別途考えることが必要である。
弥生時代に日本列島に渡来した主な種族・人々では、江南から(朝鮮半島南部を経て、稲作・青銅技術などの弥生文化をもって渡来した部族と、これにかなり遅れて、東北アジア地方(とくに中国東北部及び朝鮮半島)から渡来して鉄鍛冶技術をもった部族という二系統の部族があった、これら種族と、縄文時代から列島原住の人々(一種族ではないかもしれないが、とりあえず一括して「山祇族」としておく。総じて、クメール系種族)との混合体が「弥生人」とされよう。だから、単一種族として弥生人を捉えてはならない。なお、始皇帝によって東海に派遣され斉国の琅邪郡から船出した徐福が日本列島にある国の祖となったと言う「徐福伝説」は、肥前佐賀や紀州熊野などにあるが、とるにたらない。
天孫族の始祖・スサノヲ神
わが国における天孫族(皇統)の具体的な始祖から検討に入ろう。この始祖神としては、天照大神ではなく、「五十猛神(伊達神、射楯神)」(イタケル、イタテ)があげられる。この神は、『書紀』に言う、たんなる新羅からの渡来神ではない。別名を「渡し神(和多志神)、度津神」と言い、これは外地の韓郷から渡来してきたことに因る。佐渡一宮で式内社の度津神社(新潟県佐渡市羽茂飯岡)は海上交通の守護神として五十猛命を祀るなど、日本各地で同名で祀られる(『神道大辞典』など)。
この神の記事は少ないが、『書紀』第八段(宝剣出現)の一書第四および第五の記事に見える。素戔��尊が子の五十猛神を率いて先ず新羅国に天降り、そこから舟を作って出雲に渡ったとあり、また、五十猛神が天降りの際に多くの木種を将来したが、韓地には植えずに、筑紫より始めて列島内に木種を播いたとある。そうすると、韓地からの最初の到来地はむしろ筑紫になるし、渡来航路的にはそのほうが自然である。このように、韓地(朝鮮半島南部)からの渡来が『記・紀』に明確に記されるのは、天日矛(天日槍)より前の時代の神・人では、ほかにいない。五十猛神と妹二神(大屋姫命、抓津姫命。実態は妻神か)が「伊太祁曽三神」として紀伊国名草郡の名神大社で篤く祀られており、奉斉者が紀伊国造よりも紀臣氏(系譜は皇別とされるが、実態は天孫族系)とみられる事情にも留意される。
記紀神話では、その父「スサノヲ」は、高天原にあっては天照大神を困らせる暴れん坊神で、天照大神と争って敗れており、それによる追放後の「出雲」では開拓者的に描かれる。その終焉の地が出雲という伝承もあり、出雲市佐田町須佐の須佐神社(風土記・延喜式に記載)が祀られる。その攝末社に天照社・厳島社・須賀社などがあり、境内に千数百年という老杉や蘇民将来の祭もある。スサノヲの子の大国主神の子、加夜奈留美(女神?)の子孫と称する須佐氏が永年奉斎するが、少なくとも系図の初期段階などには疑問があり、出雲国造一族が祭祀に関与したか(瀧音能之氏が須佐神社周辺の地をスサノオ神の本貫とみるのは疑問で、ここには同神は到来しておらず、子孫と称する家が祀っただけのこと。出雲国造一族が奉斎した神社も当初は熊野神社が主で、杵筑神社(現・出雲大社)でも長い間、祭神がスサノヲであった)。
スサノヲは、その子孫という大国主神を通じて地祇の三輸氏・賀茂氏や住道首などにつながるという系譜を伝える。これが『姓氏録』大神朝臣条や『旧事本紀』地祇本紀などに見える子孫の系譜であり(前者の大神朝臣条では、素佐能雄命の六世孫が大国主と記される)、『古事記』では「いわゆる出雲系」の多数の神々に通じる系譜が紀載される。しかし、五十猛神と大国主神との関係はこれら系譜では不明なままである(五十猛と大国主とは、祖先・子係の関係にない。出雲の大国主神の父は天冬衣命と伝え、その祖系のなかにも五十猛は見えない)。
このため、「スサンヲ」という神には複数の神格(人格)がおるようにみられている。実際には、このような名・通称で呼ばれる者が一族・同系統で複数いたり(部族長の通称的な使用もあるがか)、子孫が祖先の伝承を伴って各地へ移遷、展開したともみられる。朝鮮神話に見える檀君も、スサノヲに擬せられたり、高句麗からの渡来系氏族・八坂造氏が京都祇園(感神院祇園社)で祀る「牛頭天王」も、中国神話で牛首人身神とされる炎帝神農氏(赤帝)や蚩尤(兵主神)という頭に角をもつ武神(戦神)、兵器製造神にも通じる。わが国ではこれら神々の実体がスサノヲ神(ないし大己貴命)に通じるとされることが多い。蚩尤が鉄神とも言われる。
この「スサノヲ」の名は、同一部族(天皇氏族)の根幹系統を通じて、遠い祖先から見える「通称」ではないかと把握される。すなわち、五十猛神自身がスサノヲ(の一人)に相当するとしたほうがよい。五十猛神を祀る式内社は、出雲六社、播磨二社、紀伊二社など全国合計で十五社もあり、これら地域分布からは天孫族系の出雲国造族が主に奉斎したことが窺われる。これに関連して、わが国で兵主神を祀る式内社は、近江国野洲郡及び大和国磯城郡など名神大社三社を含め、合計で十九社もあり、うち但馬七社、因幡二社、近江二社、播磨二社、丹波一社などという地域分布に留意される(この辺に着目すると、但馬出石に落ち着いた天日矛一族が、韓地の新羅あたりから当該兵主神をもたらした可能性も考えられる)。
兵主神社の祭神は、いまは大己貴命、素戔嗚神などとされて、特に前者とされることが多い。これは、本来の祭神で鍛冶神たる八千矛神が、大穴持命に通じる大己貴命と混同され、出雲に兵主神の神社分布が多い事情に因るものか。八千矛神という神は、『書紀』には見えず、『古事記』で高志の沼川比売の求婚譚などに見えて、大国主神の別名として扱われる。同神の子には、「御井神」も見える。御井神は木伺神ともいわれ、多くの樹種をもって天降り、広く大八洲に播種したと伝える五十猛神の縁者というのがふさわしい。滋賀県蒲生郡日野町の八千鉾神社は、大屋彦神(五十猛神のこと)を祭神とする。銅矛・銅戈や銅剣は分布が北九州に多くあり、銅矛の出雲出土はあまり多くないので(最多出土の荒神谷遣跡でも、銅矛十六本に対し、銅剣が三五八本の多数で出土)その意味でも出雲の大国主神が八千矛神とされるのにはしっくりこない。
八千矛神とは、実はイタテ神(伊太弓、伊達、射楯こと五十猛神)のこととみられる(その場合、御井神とは高魂命〔高木神〕のことか)。銅矛・銅戈の出土が肥前唐津辺りに多く、銅剣も含めて銅製武器が北九州に多く出て、これが「銅剣銅矛分布圏」という把握もある。日本列島では、弥生Ⅰ期に朝鮮半島から銅矛が到来し、鉄矛は同Ⅲ期に出現して古墳時代中期以降盛行した(『日本考古学事典』)、とされるから、鉄矛も併せ持って渡来したのが天孫族か。天孫族の広い範囲に入るとみられるのが、新羅からの渡来を伝える天日矛(天日槍)である。唐津市の宇木汲田遺跡からは多数の銅剣・銅矛や多鈕細文鏡などが出土しており、天孫族の足跡を示すものか。
イタテの神は新羅系の韓鍛治の奉祀した神だと窺えると、真弓常忠氏は指��する(『古代の鉄と神々』)。中国の原型である「兵主神」が額に角を持ち鉄を食べる蚩尤(上記)とされており、わが国で同神にも比定される五十猛神が角凝魂命(「角+鉄塊の意味の凝」)という別名をもつのも肯ける。吉野裕氏は、『風土記』の研究などから、早くに『風士記世界と鉄王神話』(一九七二年刊)や『素尊鉄神論序説』(一九七三年刊)を著し、スサノヲが鉄神だとみた。この鉄神性を同神に認める見解が多い。
端的にいえば、複雑な性格ゆえにスサノヲ神(素戔嗚神)の位置づけが難解であり、たいへん重要なのである。これが、記紀にイザナギ・イザナミニ神の子で、皇祖神たる太陽神・天照大神の「弟」とされたり、大己貴命の祖先とされたりと様々に混同が生じた(実際、記紀で天照大神と争った「戦った」という意味をもつ「スサノヲ」は、大己貴など海神族系の祖という性格では、別神としたほうがよい。現実の出雲と、実体が葦原中国〔筑前海岸部の那珂川波域〕たる記紀神話の「出雲」とを、八世紀段階の記紀の編者たちは混同したことなどに因る。
人皇ノ鼻祖という鈴木真年の指摘
一般には、記紀神話の影響で、スサノヲ神の子ないし子孫(六世孫『姓氏録』ないし七世孫)が大己貴命(大国主神)で、いわゆる「出雲族」(あるいは海神族)の祖神がスサノヲ神と受けとられている。
しかし、大己貴命は海神族の系統の祖神であるが、そうであっても、スサノラヲ神とは男系血筋でのつながりがなく(スサノヲ神後裔の女性を妻の一人としたことは考えられるが)、両神が血統一系というのは原型・実態とは異なる(両神の血縁関係を否定する先学の見解はかなりある。例えば、瀧音能之・藤岡大拙氏など。スサノヲの子に「八千矛神」がおり(五十猛神のことか)、兵主神社で該られるが、これが大己貴命と混同された結果、スサノヲの子ともされたものか)。ともあれ、「出雲神族」という概念は紛らわしく、使用には留意される。
スサノヲによる八俣大蛇(八岐大蛇)の退治の伝承も、竜蛇信仰をもつ種族のトーテム獣を退治したのだから、海神族の祖神であるはずがない。もっとも「八俣大蛇=九頭竜」という見方もあるようである(ギリシャ神話に出る竜迷体の巨大怪物ヒュドラーも九つの首をもつ)。これが、『古事記』では「高志之八俣遠呂智」と表記されるが、「高志」が越すなわち北陸地方とまでは、スサノヲの活動地域から読みとれない。ともあれ、皇威に抗う荒神(荒ぶる水神)の象徴として大蛇がでてくることになる。
この伝承も、同神が居て活動したのが北九州だとしたら、竜蛇信仰をもつ種族・国々(海神族系種族の国、主に奴国か)の退治・平定を意味したのだろう.スサノヲについて、韓地から渡来の鉄器鍛冶集団が信奉する神という説はかなりある。火山の神という見方もあるが、これは火に関わる鍛治神の祖神、竃の神からの転訛の可能性もあろう。
明治期の国��者で系図研究者の鈴木真年��、その著書『日本事物原始』や『古事記正義』で、この神について概ね次のような主旨で記している。
「素戔鳥命トハ人皇ノ鼻祖二坐シテ、二神ノ真名子タリ。故二、天神此葦原中洲ヲ賜テ、国土ツ開闢セシム」(適宜、句読点を付した)と切り出し、高天原から天降って新羅の牛頭方(楽浪郡のうちの地)に至り、伊太氐命(亦名を五十猛命、大屋毘古命、伊太祁曽命、神平多命)・速須勢理比売を生み、その後、太白山(平安北道寧辺の妙香山に比定。平壌の東北方)の下に至り檀木の下に互市(陸上での交易)するなど人事や社会運営を教え、これを国人が追末して檀君という。また神櫛玉命(亦名を櫛御気野神、気津御子神。すなわち、熊野大神)ともいう。
その子の伊太氐命を率いて東海に入り、多くの樹木種ををもって出雲国に着き、須賀の地に宮居したが、伊太氐命は妹と協力して樹木の種を各地に分布した。素戔鳥命の子の天忍穂耳命を、天照大神は子として養って天子の位につけた。」(ここで天忍穂耳命を「子」とするのは、天安川の河原における天照大神との伝承から、スサノヲの実子と考えたものか。ただ、この見方には疑問あり、実際にはスサノヲの子孫となろう。後述)
こうした真年の把握には疑問な点もいくつかあるが、スサノヲ神がわが国の「人皇ノ鼻祖」だという基本は妥当な線だとみられる。天照大神が男神だという性格(夫婿が知られずに子孫を残す女性が古代大族の祖先系図にはまったく現れない事情もある)や忌部氏の上古系図等を参考にして、これら記紀の記事を総合的に考え併せる必要がある。そうすると、韓地から日本列島に渡来してきた、わが国天孫族の始祖(天照大神の更なる違い祖先)こそがスサノヲ神であって、五十猛神とも同神(ないしその父神)だとみるのが適当となる。朝鮮の始祖とされる「檀君」(後述するが、後世の造作神となろう)とほぼ同種の性格をもつ神という程度は認めて良い。
十世紀後葉の北宋に、日本の東大寺の僧・奝然らが雍熙元年(九八四)にやって来て、銅器や『王年代紀』などを献上したが、天御中主を初代とする皇統譜には、第十八代に素戔鳥尊(その前代が伊奘諾尊)、第十九代に天照大神尊、第二四代目に神武天皇の名前が記される(『宋史』日本伝)。平安中期の円融天皇治世のときに存在した『王年代紀』が何に基づくかは不明だが、天照大神の先代に素戔鳥尊があげられることに留意される。
スサノヲがスガの地に居たという上記伝承からか、全国の須賀神社はスサノヲを祭神とする例が多い。同社は、牛頭天王・須佐之男命を祭神とする祇園信仰の神社で、全国に広く存在し、島根県・高知県に特に多い。これら須賀神社の多くは、明治の神仏分離まで「牛頭天王社」「天王社」と称していた。���頭天王は、播磨の広峯神社などでも祀られるが、同社は天孫族の針間国造の領域にあって、同じく凡河内国造一族が長く奉祀した。
なお、素戔嗚命の実体について、卑弥呼と対立関係にあった「狗奴国王」を考える説もあるが、これは根拠に乏しい想像論である(狗奴国の性格・習俗についての誤解が基礎にある)。また、習俗・祭祀やトーテムが異なる大国主神(海神族系氏族の祖)の父祖でもない。
八幡神の実体
豊前の宇佐八幡でも、祭神たる八幡神の実体が五十猛神だとみられる。応神天皇家や宇佐国造など天孫族の一派の実際の遠祖として、八幡神が考えられる。字佐国造は、高魂尊の裔孫の宇佐都彦(菟狭津彦)を国造初祖とするが、高魂尊の先が五十猛神とみられる。
弘仁五年(八一四)の太政官符や『宇佐託宣集』等に拠ると、字佐郡の小倉山の麓に八つの頭が一つの身体についた奇異な風体をもつ鍛冶翁がおり、金色の鷹となって示現し、その姿を見ようと近づく者の半数が死亡したが、神官(辛島勝乙目とするのが原型か)の祈持に応じて三歳児童の姿で八幡神が出現し、「我は始め辛国に八流の幡となって天降り、日本の神となって一切衆生を度する釈迦菩薩の化身なり」と託宣したという。こうした伝承などから、八幡神はもともと鍛冶神とする見方も古くからある(柳田国男氏ほか)。
後世では八幡大神にも擬せられる応神天皇は、実際の系譜は宇佐国造一族の支流の流れをひく鍛冶部族の息長氏に出ており、遠祖は神武に始まる王統と同じで、高魂命であった。金色の鷹は、金鵄や八咫烏にも通じる天孫族のトーテムである。
素盞嗚神という神は、海神族たる大己貴神(大国主神)の父祖としても伝えるが(記紀ともに見えるが、『古事記』のほうに多く伝える傾向)、その一方、熊野大神として、天孫族系統の物部連や鳥取部によって祖神として広く奉斎された。これら氏族の祖たる天津彦根命(天若日子)やその兄弟神は、素盞嗚神と天照大神との天安河原の誓約の際に息吹きのなかから誕生したと神話に伝える。
こうした両様の複雑な性格をもつ素盞嗚神は、本来は性格ごとに別々の人格神かとも考えるのがよいかもしれない。そのなかでも、最も主なものとしてはわが国天孫族の祖となる(こうした見方は、私の氏族研究の結論的な部分だけを記したので、分かり難いかもしれないが、紙数制約や論旨展開上の見地から、本書ではこのくらいに止める。以上の記述に関連して、本シリーズの『息長氏』『三輪氏」』などをご参照)。
天孫族の祖系と祭祀
現存の天孫族系統の系図では、天照大神より先へ遡る神統譜を記すものは少ないが、『姓氏録』では若干は記事が遺る。それが、角凝魂命を遠祖とする系譜をもつ諸氏(鳥取連・鳥取、委文連・宿祢〔倭文連・宿祢〕、竹原、美努連、税部〔鴨県主一族〕や額田部宿祢〔物部氏同族〕、雄儀連などで、殆どが���彦名神の流れ)である。
角凝魂命を祀る神社は全国で少ないが、鳥取連が奉斎した和泉国日根郡の式内社、波太神社(大阪府阪南市石田に鎮座。もと桑畑村、東鳥取村で、同国神名帳に従五位上波太岐社と記載。府社)の祭神として鳥取連の祖・天湯河板挙が垂仁朝に祖神を創祀したと伝える。波多の地名は肥前国松浦郡にもあり、当地に波多八幡神社(佐賀県唐津市北波多稗田で、宇木汲田遺跡の西南近隣)が鎮座する。「波多」は秦韓・辰韓に通じるものか。
忌部氏の系図(「斉部宿祢本系帳」」や「宮中八神」などを基礎にして、始祖の五十猛神以降の初期段階の歴代を整理、推定してみると、概ね次のようになる(第1図)。ただ、妻神(后神)は難解であり、推定の度合いが大きい。
各々の遠祖神が異なる複数の神名をもつことに留意されるが、天照大神は「斉部宿祢本系帳」では「天庭立命」として表記される(この名に近い「天壁立命」も天背男命の父神で左京神別の宮部造の祖とされるから同神となる)。
この神は、大阪市天王寺区の生国魂神社(東生郡の難波坐生国咲国魂神社)で奉音される神であるこれが、信濃国小県郡では名神大社の生島足島神社(長野県上田市下之郷)でも祀られて、その祭神が大八嶋を統べる「生島神・足島神」とされる。摂津国川辺都(兵庫県尼崎市栗山町)の生島神社では、生島神・足島神、天照大神、須佐男神、八幡大神、伊邪那岐・伊邪那美神をいま祀る(祭神の名に重複がある)。
この生島神・足島神は、天皇の国土支配権の裏付けを企図する祭祀ともみられる八十島祭の主神とされる(この祭は、文献初見が文徳天皇の即位時の嘉祥三年〔八五○〕九月で、鎌倉前期まで廿二回確認されると言うが、由来は上古に溯るのだろう)。『延喜式』神名帳には、宮中八神殿で御巫祭神八座のなかで生産日神・足産日神(『古語拾遺』では生産霊・足産霊)として祀られ、神祇官に坐しては生島巫祭神二座として生島神・足島神があげられる。両名は併せて夫婦神(その場合、足島神のほうは妻神か)とみられ、男神は伊久魂命とも天活玉命ともいわれる。天照大神という名では、『延喜式』神名帳では宮中坐神三六座のなかに見えないし、『姓氏録』にも諸氏族の祖先として見えないことに留意される。なお、天活玉命を祀る神社は少ないが、越中の高瀬神社(富山県南砺市高瀬。同社は五十猛神も合祀)や讃岐の大麻神社(寒川郡の大蓑彦神社。香川県善通寺市大麻町)という式内社があげられる。
『書紀』には生申の乱の時(天武天皇元年〔六七二〕七月廿三日条)に生島神が見える。そこでは、高市社に坐す事���主神と牟狭社に坐す生霊神が神憑りして、神日本磐余彦天皇之陵(神武陵で、『書紀』にいう��傍山東北陵か)に馬と種々の兵器を奉納すれば、両神が天武軍の前後に立って守護すると告げたが、この生霊神が生島神(生国魂神)に当たる。いま畝傍山の東北の裾、橿原市大久保町域(旧洞村)にある神武陵旧跡と伝える地の近隣には、生玉神社が鎮座する。
『古事記』には「天津国玉神」とも表記されるが、これは、天若日子(天稚彦。天照大神の子で別名が天津彦根命、天背男命、天湯河桁命であり、出雲国造や物部氏など鍛冶部族や鳥取部等の祖)が大国主神のもと(葦原中国)に派遣された事件に関連して見える。
その父神が高皇産霊尊であり、上記の宮中八神殿で祀られる高御産日神にあたる。この神のときころに筑後川流域に至って定着したとみられる。この神を天孫降臨の指揮者として皇祖神のはじめに置く見方が学究には多いようだが、上記系図に見るように更に父祖の神々を伝えることに多意される。
「宮中八神」の意義
ここまでに宮中八神にも触れてきたが、『延喜式』神名帳の冒頭に掲げる「宮中八神」には十分留意される。
すなわち、宮中神として大社三十座小社六座があり、そのうちの筆頭に「御巫等祭神八座」並大、月次新嘗とある神々で、①神産日神、②高御産日神、⑤玉積日神(玉積産日神)、④生産日神、⑤足産日神、⑥大宮売神、⑦御食津神、⑧事代主神、の八神があげられる。さらに、「座摩巫祭神五座」並大、月次新嘗として生井神、福井神、綱長井神、波比祇神、阿須波神の五神、「御門巫祭神八座」並大、月次新嘗として、櫛石窓神と豊石窓神が四面門各一座、「生嶋巫祭神二座」並大、月次新嘗として並大の生嶋神、足嶋神の二神があり(ここまでが「神祇宮西院坐御巫等祭神」とされて、合計が二三神)、更に、「宮内省坐神三座」並名神大、月次新嘗として薗神社、韓神社二座、「造酒司生神」大四座、並大、月次新嘗として大宮売神社四座が掲載される。
「宮中八神」の次ぎにあげれる神々は、御門神(八座)を除くと、おそらく八神の異名・異称で重複するものだろう(ただ、座摩巫が祭る五神は、「大宮地を守り坐す霊神」とされるが、その実体は難解・不明。五神はみな始祖神関係の異名かもしれず、「生井、福井、綱長井」で三井・御井、「波比祇、阿須波」が五十猛神に通じるか)。そして、その皇統譜のなかで大祖先神としての位置づけにあった神々ではなかろうか。具体的には、天照大神夫妻を含めそれ以前の三代の夫妻神とみられる。上記の「第1図天孫族の初期段階の系譜」は、こうした見方のうえで推定記載をした。
注意すべきは、最も重要な天照大神にあたる神の名が二つ(玉積産日神、生産日神)あり、対偶を持たない「事代主神」があって、合計で「八神」となっている点である。天孫族系統では、「八」という神聖数をもっていた。
さて、ここの「事代主神」の実体は何だったのだろうか。抽象神としての意味は、「神憑りして神託をくだす神」であり(松前健、佐伯有清などの諸氏)、特定の固有名詞とされる必要はない。ところが、この神は、一般には地祇(国津神)・三輪氏族の祖で、神武天皇の皇后の父神が��される。これは、後代の諸天皇の母系祖神として理解が出来ないわけでもないが、それならば、天照大神の邊遥か後代の神であって、宮中祭祀のバランスを欠く。
そこで、「姓氏録』を見ると、天神としての「天事代主命」(天辞代主命、天辞代主命)が存在したとわかる。この神を祖神とするのが、左京神別の畝尾連、右京神別の伊与部、大和神別の飛鳥直の三氏であり、これら諸氏の系譜を考えると、みな中臣連一族の初期分岐となる(伊与部条には高媚牟須比命の三世孫と記載も、これは疑問)。畝尾連の一族は和泉神別にもあげられ、そこでは「大中臣朝臣同祖。天児屋命之後也」と記載がある。しかも、高市郡明日香村に鎮座の飛鳥坐神社(並名神大)では、事代主神、高皇産霊神、飛鳥神奈備三日女神を祭神とする。すなわち、天事代主命とは中臣氏の大祖神(天孫降臨痔の天児屋根命の父祖神か)の位置づけということになるが、そうすると、天照大神も含め、この神から遡って三世代の夫神の誰かの舅神で、天孫族系統の母系の祖として特掲された可能性があり、この場合には「宮中八神」に所掲の神々の活動年代とも符合するものとなろう(現在の当該飛鳥神社の祭祀では、転訛された影響で、有名な三輪の事代主神と混同されている)。
なお、{宮中八神」のなかに、元は「倭大国魂神」(実体は九州所在の大己貴神)も含まれていたとみる見解(若井敏明氏『「神話」から読み直す古代天皇史』)には反対である。天照大神以前の上古歴代の舅神の位置にはいないからであって、『書紀』崇神天皇大年条の記事には疑問がある。不祭祀のイザナギ・イザナミの諾冊二神も、実体をもつ神ではなかった。
韓国イタテ神の列島渡来
『延喜式』神名帳のはじめに、宮中で祀られる神々が「宮中坐神三十六座」としてあげられる。そのなかに宮内省に坐す神の三座(並名神大)があって、薗神(園神)の社と韓神の社の二座がある。この「韓神」こそ韓(伽耶)から渡来した五十猛神を指す。ちなみに、御巫等祭神の八座にあげる神産日神も大始祖たる五十猛神にあたるとみられ、五十猛神の妻神の御食津神(御膳神)も同八座のなかに見える。この女神は豊受大神でもあり、食物主宰の倉稲魂神(稲荷神)で保食神なのだから、薗神にあたるとみるのが自然である。織物と酒造を司る女神、大宮売神にも当たりそうな可能性もあるが、それを留保しつつ、この関係では別神としておいた(関連して言うと、丹波国多紀郡式内社の大売神社【兵庫県篠山市寺内]は、大宮売神を祀るが、「オーヒルメ」神社と読まれている。大宮売がアメノウズメの別名だとする平田篤胤説や、これに通じる『古語拾遺』の記事は誤りとみられる)。
かつて、黒板勝美博士は、天照大神より前の神々が皇室の祖先として奉斎されていないとの理由で、それらの実在性は認めがたいと考えた。しかし、上記のように現実に別の神名で宮中で永く奉斎されてきた。出雲でも、神産日神も神魂神社の名で、意宇郡六社の一としてあり(松江市大庭町)、出雲国造が長く奉仕した。同社は神火相続の神事で知られる。
「園韓神」には一に大己貴神・少彦名神・大物主神をあてる説もあり、平安京遷都以前に京の地を支配したのが渡来系の秦氏だとして、園神・韓神は元々は秦氏が奉斎した神とみる説(水谷千秋氏)もあるが、ともに論拠薄弱である。
園韓神社は宮中では唯一の名神大社であり、応仁の乱頃までの宮殿の宮内省に鎮座した。この神格・鎮座地からみても、秦氏にふさわしいとはとても言えない。例祭は園韓神祭といわれ、『江家次第』では神部四人が榊・桙・弓・剣を持って神楽を舞ったと見え、『百錬抄』では大治二年(一一二七)の大内裏火災で園韓神の御正体を取り出そうとした折に神宝として剣・桙があったと見える。帝王鎮護の神という役割や、皇祖神の系統からみても、これは始祖神の五十猛神夫妻とするのが妥当であろう。もとからこの地にあって平安遷都に伴い遷座させようとしたら、帝王を護りたいという託宣が韓神からあったとも伝える(本来は鴨県主奉斎か)。
御食津神はオオゲツヒメ(保食神)でもあり、穀物神(稲倉魂命)でもあった。五十猛神は大屋毘古神とも呼ばれ、一緒に植樹につとめた妹・大屋毘売(大屋津姫)は、名前の対応から考えて、「妹」とは実際には「妻」の意であろう。紀州にはこの女神を祀る神社もある(和歌山市字田森に鎮座の大屋都姫神社など)。この妻神は白山信仰の菊理媛命にも通じ、水神の罔象女神であり、多様な神格と名をもつ。八幡大神の妻神たる比売大神でもあって、宇佐八幡宮で祀られる。水神が竜神に通じ、仏教での同種の弁財天にも通じる祭祀もある。
筑後国御井郡や豊前国田川郡(豊比咩命神社という名で、いま香春神社に合祀)など各地の「豊比咩神社」の祭神であって(神武天皇の祖母とされる「豊玉姫」ではないし、「神功皇后の妹」のことでもない)、伊勢神宮外宮の豊受大神にあたる。香春の豊比咩神が宇佐の比売大神に相当すると岡谷公二氏も指摘する(上掲書)。豊比咩(豊姫)については、高良神の妻神という見方もあり、この辺の可能性を留保しつつ、比売大神という見方で一応、考えたい。
比売大神については宗像三女神説(宇佐神宮・石清水八幡宮の立場か)もあるが、大分県杵築市の奈多宮では、沖合の市杵島(または厳島)と呼ぶ岩礁に比売大神が降臨したと伝えるから、主祭神八幡神(=五十猛神)の后神で、端的に市杵島姫神と考えたほうがよい(その系譜は不明だが、天照大神の娘のはずはなく、海神族的な色彩があるものの、幹地から共に渡来したか、既に北九州にあった種族の出かは判じがたい)。
この女神は、水神の性格からは淀姫(興止姫神、世田姫)にもあたる。肥前国一宮たる佐嘉郡の與止日女神社(河上社。佐賀市大和町川上)、予賀神社なども含め、肥前中心に二十数社の多くで祀られ、とくに佐賀県の嘉瀬川流域に六社もあって祭祀が集中��る���夫神・五十猛神と同様、石神の性格ももつ(脊振山に鎮座の脊振神社は、弁財天社ということで本地垂迹で市杵島姫を祀るが、この神にもあたる〔瀬織津姫や蛇神の宇賀神にもあたる〕。山城国乙訓郡の式内社、与杼神社〔京都市伏見区淀〕でも写る。安芸宮島の上厳島神社〔伊都岐島神社〕や近江の竹生島神社〔浅井郡式内社の都久夫須麻神社〕、相模江ノ島でも、市杵島姫【弁財天】を祀り、竹生島では、併せ宇賀神・浅井姫・龍神も祀る。淀姫が、一に「八幡大神の叔母、神功皇后の妹」とされるのは訛伝)。
唐津市呼子の加部島(別名が姫島)の宮崎鼻に鎮座する田島神社(松浦郡の式内名神大社の田島内神社)は、肥前最古といわれ唯ーの大社とされる。本殿の裏には磐境(祭場)とみられる地があり、立った三個の巨石や二個の平石、太閤祈念石と呼ばれる巨石もある。
加部島は、韓地・大陸への交通を考えると「道主貴(ちぬしのむち)」の鎮座地にふさわしく、市杵島姫を含む宗像三女神が礼られる(神名帳には「一座」と表記)。そうすると、韓地釜山(ないし対馬)辺りから筑前大島・沖ノ島を通る海路が「海北道中」と一般に解されるが(「海北」=は朝鮮半島を指す)、当該経路は、倭韓間の海上交通における当初のメインルート「壱岐・対馬を経由の線」だとみる田中卓博士の見方のほうが正しいものか。宗像大社では、九州本土の宗像市田島の地に辺津宮(総社)として現在、市杵島姫を祀る(『古事記』では、市杵島姫は中津宮、辺津宮鎮座は田寸津比売と記す)。
道主貴は、『書紀』(巻一第六段の一書第三)に「筑紫の水沼君等が祭る神」と見えており、水沼君(水沼県主)は佐賀君(佐喜県主)と同様、火国造同族とみられるから、これら諸氏の祖神でもあろう。『旧事本紀』天皇本紀には景行天皇の皇子のなかに武国表別命をあげ、筑紫水間君の祖と記される(同人は、「円珍俗姓系図」に讃岐の和気公・因岐首の始祖とされ、九州の阿蘇君・火君らの祖とみられる。『書紀』景行段に見える水沼別の始祖・国乳別皇子かその近親にあたる。同書の記事では、「弟の豊戸別皇子。是火国別之始祖世」と続ける)。
水沼君氏一族は、筑後国三潴郡の豪族で、久留米市西南部の大善寺町にある大古墳、御塚(全長約一二〇詩という帆立貝式古墳。中期古墳か)及びその北隣の権現塚(外径が全長約一五〇計かともいう。後期古墳か)の築造者とみられている。東北方近隣の同市高良内町には、これらに先立つ石櫃山古墳(全長が百計超【最大で一一五潮というで、境輪式を出土)もあったが、消滅した。久留米市北野町赤司に鎮座の赤司八幡宮(御井郡惣廟を称)がもと豊比咩神社といわれ、與止比咩命・高良大神や道主貴(��女神)、すなわち宗像三女神が祭神で、祠官家が水沼君氏との伝え(境内碑文)もあるが、領域からやや離れる感もある。
「韓」を冠する五十猛神
延喜式の神名帳には全国各地の官祭に関わる多くの古社があげられるが、そのなかで「韓」が頭につけられる神は五十猛神のみである。多くの樹木の種を持って大八洲に植えたと伝えて、紀伊国をはじめ各地で多く祀られる。わが国では伊達神(射楯神)とか韓国伊太神、伊太祁曽神ともいわれて、延喜式内社の奉斎神としてはかなり多くあり、全国で十五社を数える。
とくに、出雲には最多で合計六社もある。それが意宇郡・出雲郡に集中するが、意宇郡では玉作湯社や揖夜社に付属して鎮座する。これらは出雲国造一族の奉斎に係るものか。そして、これら出雲国内の六社が全て、韓国伊太氐神と記されて、式内社では類例���少ない「韓国(辛国)」が冠として付けられる。当地の曽枳能夜神社境内の韓国伊太氐夫神社(島根県出雲市斐川町神水)揖夜神社境内の韓国伊太氐神社(同県松江市東出雲町揖屋)など、韓国伊太所神社が出雲国の九郡中で意宇郡と出雲郡とに三社ずつ見られる(出雲国意宇郡の条に、①玉作湯神社、②揖夜神社、③佐久多神社に「同社坐韓国伊太氐神社」があり、西側の出雲郡条にあっても、「同社(神)韓国伊太氐神社」としての阿須伎神社、⑤出雲神社、⑯曽枳能夜神社が同様)。
このほかの式内社では、薩摩国曽於郡の韓国宇豆峯神社(鹿児島県霧島市国分上井)も、五十猛神(又の名を韓神曽保里神)を祀る。ここでも、とくに「韓国」を冠した神社の名前になっていることに留意される。これらの事情も、ての神の韓国からの渡来を示唆する(千家俊信『出雲式社考』にほぼ同旨)。出雲の西隣、石見国では現大田市五十猛町に近隣して韓神新羅神社・五十猛神社の両社が鎮座する。
この朝神新羅神社、出雲国出雲郡の韓竈神社(産銅遺跡のなかに鎮座)や安芸国御調郡の賀羅加波神社のほうは、素戔鳴命を屯るというが、五十猛同神か。
五十猛神については、記紀に見えるのは上記の一箇所だけであるが、イタテ神としては、『播磨国風土記』餝磨郡の因達里(姫路市街地の北部)の条に伊太氐之神が見える。因達里の伝承が、神功皇后が韓地征討で渡海する際、先導神としてその御船の上に鎮座したのがこの神である、という内容なのだから、「韓国」を冠しないイタテ神の場合にも韓国との関係がみられると石塚俊氏は指摘する。これが、餝磨郡式内の射楯兵主神社(姫路市本町に鎮座)である。イタテ神が神功皇后の先祖・天日矛にも通じるとしたら、祖神たちの加護を受けてその祖国の韓土に進攻したことになる。関連して、九世紀後半の貞観期当時の対新羅関係の悪化という背景のなかで、日本を新羅から守る目的で韓国伊太氐諸社が建立されたという説(瀧音能之氏)は疑問が大きく、この神の祭礼の由来は更に古かった。
伝承では、イタテ神は韓地の新羅から直接渡海し、日本列島に着いて出役に入り、そ��から紀伊に遷ったようにうけとられる。出雲・紀伊には関係社が多くあり、出雲の西隣の石見国安濃郡にも、現・大田市五十猛町に五十猛神社と韓神新羅神社がある。五十猛命の降臨地としては、奥出雲、出雲国仁多郡の鳥上峰(船通山、鳥髪山)という伝承もある。これも、天孫族関係者が高山に天降りするという所伝の一環である。
九州の太宰府付近にも鳥髪山に相当するような山(例えば基山〔後述」」とか砥上岳(遠賀川源流地)がある。一方、対馬、壱岐を経由して九州の有明湾岸に上陸とも伝えるから、多くの関係請社や遺跡などの分布を具体的に見ると、やはり韓地→対馬→筑紫という地理的に自然な経路をとったとみられる。そこで、次ぎに北九州の分布を見てみる。
九州の五十猛神
対馬では、対馬島の北端で河内湾に臨む地に鎮座する岩立神社(岩楯神社ともいう。対馬市上対馬町大字河内)がまずあげられる。素戔嗚尊が韓土よりお帰り(到来か?)の時に、この浦に船を寄せたと伝える。元来、本社は岩楯の地に在って神籠磐境だといい、社殿がなく森の中に磐石があって、これを神位とする。
同名社では、備前国和気郡にも、磐梨別君氏(垂仁天皇後裔と称するが、実際には息長氏の一支流の和気氏)の奉斎とみられる同名の石立神社(現・備前市麻宇那)があり、社殿の下に大磐石があって、岩石崇拝に創まるとされる(『神道大辞典』)。姫大神も祀られ、近隣の北側対岸には祇園神社・磐井神社、稲荷神社や荒神社もある。石立神社の南方の備前市域、日生には高良八幡もあって、その社叢もウバメガシが占める海岸林で知られる。対馬の那祖師神社(対馬市上対馬町豊。島大国魂神社も合祀)など数社も、五十猛神を祭祀する。
大和にも同名社が添上郡式内社であり、「天乃石立神社」と記載される。現社名を天石立神社(戸磐明神)といい、奈良市柳生谷、戸岩山の北麓(奈良市柳生町の岩戸谷)にあって、本殿をもたず、鎮座する巨岩を直接拝する形態をとる。四つの巨石の総体が天石立神社と呼ばれるが、なかでも中心の丸い巨岩(きんちゃく岩と呼ぶ)が日向神社で、これが天照大神を祀り、他の三つは門神(豊磐門戸命、櫛磐門戸命)と天岩戸別命に当てられる。地域的に考えると、同社は磐梨別君同族の山辺県主一族が祭礼に関与したものか。
北九州の五十猛神祭礼では、筑前国御笠郡の筑紫神社(福岡県筑紫野市原田)や同国早良郡の五十猛神社(同県福岡市西区金武)が著名である。前者では、筑前・筑後・肥前の交通要衝に、筑紫の国魂たる筑紫大明神として祀られる。その別名の白日別神は、太陽神にも「日向」になも通じる。早良郡の西職りの怡土・志摩両郡(現・糸島市域)にも、五十猛神を写る神社が多い。王丸の白木神社前原の酒神社、草場や西浦の白木神社などがそれであり、潤神社も含め、その���名が「白木神社」とするものも多い。これらの白木神社の群や、密集する白木の地名は新羅に因むといい、朝鮮半島由来の遣跡や伝承に彩られる。
肥前では、基山を神体山とする荒穂神社(佐賀県三養基郡基山町宮浦)がある。筑紫神社の後背地にあたる基肄郡の基山山頂には五十猛神が祀られ、玉々石という巨石の磐座や五十猛神伝承による「日本植林発祥之地」という石碑がある。同名社は、基山の別宮として、遠賀川上流域の福岡県嘉麻市牛隈(旧・嘉穂郡)にもあるが、祭神がニニギの尊で、元宮が馬見神社という。
『筑後国風土記』逸文には、荒ぶる「麁猛神」が筑前と筑後の境界に居て、往来の人々の半数を殺すので、筑紫君等の祖・甕依姫を祝にして祀ったと見え、麓の荒穂神社で祀られる。この実体が五十猛神とみられる。この地に朝鮮式山城の基肄城が築かれ、瓊瓊杵命が基山で国見をしたとの社伝もある。アラは伽耶の安羅(慶尚南道の咸安あたり)にも通じるし、「基肄」は紀伊国造の紀直氏や武内宿祢後裔と称した紀臣氏の「キ」にも通じる。杵島郡の稲佐神社・妻山神社(ともに同県杵島郡白石町域)なども、五十猛神やその眷属神の祭祀で知られる。
日本列島に杉などの樹種をもたらしたことで、各地の紀伊神社や杉山神社の祭神とされることも多い。とくに武蔵南部(旧都筑・橘樹両郡や横浜市港北区域)には、五十猛神を祭神とする杉山神社の分布が多い。これは、五十猛神を奉じた人々・部族がこの地域の開拓を進めたことに因るものであろう。
九州に戻って、五島列島、福江島の北部に位置する五島市(前・南松浦郡)岐宿町岐宿に巖立神社(岩立三所大権現)があり、社叢は椎の大木やナタオレの木などの原生林として長崎県文化財に指定される。対馬のイワタテ同名社に通じ、ここでは宗像三女神等を礼るが、本来は市杵島姫を祀るものか。長崎市香焼町の岩立神社では、境内に樹齢推定二百年という古木のエノキ(市指定天然記念物)がある。
岩立神社について言えば、このほか、出雲の東隣の伯耆西部にも同名社があり(祭神はいま大山祇命とされるが、疑問)、大山中腹の鳥取県西伯郡伯耆町岩立に鎮座する。ここでも、樹齢推定二百年、という樅・杉・銀杏の巨樹群が社を深く覆うことで有名で、裏山には「岩滝さん」と呼ばれる古くから信仰の対象とされた巨石があり、周辺に岩立古墳群もある。近隣の金持神社(同県日野郡日野町)や石見の物部神社別天神(島根県大田市川合町)などに祀られるのが、天之常立神である。この神は天地開闢の際に、別天津神五柱の最後に現れた神で、天(高天原)そのものの神格化ともされるから、具体的には五十猛神を指すのかもしれない。国常立神は、国土守護神ともされる。
これら五十猛神と眷属神を祀る神社や関連遺跡は、北九州では天山を含む背振山地の���囲に濃密に点在する。天山は、同山地の西部側、佐賀県のほぼ中央部に位置し、唐津・小城・佐賀・多久の各市に史る。その標高一〇四六㍍は、同山地東部の最高峰、脊振山(標高一〇五五㍍)に次ぐ。
この辺の事情を踏まえ、天孫族の様々な特徴を次ぎに見ていくことにしたい。
鳥トーテミズム
天皇家・天孫族には、鳥トーテミズムや、始祖の卵生伝承らしきものなど、鳥にまつわるものが多くある。古くは「天の鳥船」や「八咫烏の先導」の伝承があり、倭建命の霊魂が白鳥となって飛び去ったという白鳥伝承も代表的であって、その墓の候補のいくつかには「白鳥陵」という命名がある。
河内の古市古墳群にある津堂城山古墳は、前期末頃の巨大古墳で、倭建命の陵墓に擬される。すくなくとも、当時の大王一族関係者の陵墓とみられており、辺十七㍍の方墳状の特殊な施設には、巨大な水鳥形埴輪三体が配されている。この水鳥はおそらく白鳥ではなかろうか。烏型の埴輪は全国的に分布するが、応神天皇陵に比定される誉田山古墳や継体天皇供の可能性が大きい今城塚古墳でも見られ、これらに先行する。古墳の周濠から鳥形木製品が出土した例もあり、天上と地上を結ぶ聖なる動物という意味以上に、こうした鳥トーテミズムが大王一族にあったから祭祀に使われたものだとみられる(鳥形木製品や鳥装シャーマンは弥生時代から見られるが、穀霊信仰の現れとするのは疑問か)。中国の長江中・下流域にあった河姆渡文化期には鳥と太陽が象徴化されるとの指摘もある。
こうした鳥トーテミズムは、同族の息長氏から出た応神王統にあっても同様である。『記・紀』などに見える大雀・隼・雌鳥・鷺などを名にもつ応神・仁徳近親の王族も、鳥トーテミズムの現れであろう。この系統の遠祖、少彦名神は鳥の神様ともいえ、天日鷺翔矢命の名ももつ鳥取部造の祖神でもあった。
応神天皇自体が、宇佐八幡の伝承に、金色の鷹が金色の鳩に変じし、さらに小児となって現れて「誉田天皇広幡八幡麻呂」と名乗ったと伝える(『八幡宇佐宮御託宣集』)きも。この金色の鷹は、菱形池のほとりにいた鍛治翁の化身とされる。応神の前身(若い頃)は、垂仁天皇の皇子・ホムチワケ(品遅別、誉津別)として記紀に登場する(「ワケ」の名からして、垂仁の皇子ではありえないが)。ホムチワケは成人してもものを言わなかったが、空をいく白鳥の声を聞いて初めて話をしたので、山辺の大鶙が命をうけ捕らえたとの伝承がある(記紀に多少差異があるが、捕獲者は少彦名神後裔の鳥取部造の祖)。「大鶙」は鷲鷹類の鳥を表す名(通称)であり、これに対応して『書紀』に見える名の「天湯河板挙」とは、実際には祖神の名であって、少彦名神の親・天若日子(天稚彦)の別名とみられる。
全国各地には白鳥神社が多くあり、日本武尊(倭建命)の伝説に因むとするものが多い。これらは、総じて天孫族諸氏の祭祀にかかるとみられる。福岡県にも白鳥の地名や同名社が多く鎮座する。順不同であげると、朝倉市白鳥・柳川市三橋町白鳥・京都郡みやこ町節丸字白鳥など白鳥の地名や、久留米市荒木町白口、田川市猪国、嘉穂郡嘉穂町馬見、八女市黒木町大淵、八女郡矢部村北矢部などに白鳥神社が鎮座する。大分県にも同名社が多い。久留米市白山町や神埼市神崎町城原にある「白角折神社」(前者の地ではシラトリ、後者ではオシトリと訓む)も関係社とみられ、後者には樹齢千年起という楠の巨木がある。
神武の大和侵入に際しては、八咫烏が道案内し、金色に輝く霊鵄(実体は八咫烏同神で、少彦名神後裔によるトーテム表示)が皇弓の筈(弓の弦をかける所)に止まって、抵抗する長髓彦軍の平定に助力したという伝承もあり、天孫の徵表が天羽羽矢であったとも記される(『書紀』)。天日鷲翔矢命(少彦名神の別名)の后裔には、長白羽神(天白羽鳥命)、天羽槌雄神や鴨族諸氏がいる。鍛冶神たる天目一箇命や少彦名神兄弟の父・天若日子(天津彦根命)は、自ら雉を射抜いた「反し矢」によって殺害されたが、その葬儀に際して、川鴈・雀など多くの鳥が役割を担ったと『書紀』に記される(割註では、本文より多くの鳥の名をあげる)。
これは、『春秋左氏伝』の昭公十七年条に見える山東省南部の夷系の国、郯子国の多くの鳥の名を付ける官名に通じるようであり、松本信広氏は、死者の魂を他界に連れていく鳥の観念と関連すると説く。朝鮮半島南部の弁辰(弁韓)でも、死者を天上に飛揚させるため、大鳥の羽根を用いて死者を送るという風習があった(『三国志』魏書弁辰伝)水上静夫氏も、中国の中原東方には郯子国など鳥トーテムをもつ諸氏族があり、殷族がこれらと一群の種族だとみる(『中国古代王朝消滅の謎』ー九九二年刊)。郯子国(郯国)は山東省郯城県(山東半島の基部の南方)の西南境に位置し、春秋時代に魯の属国であったが、東夷族の祖・帝少昊の後とされ、嬴姓の国とされるから、秦・趙や徐、黄、江、李などの国・君と同族である。山東にあっ���大国・斉は、もとは秦と同じく嬴姓の蒲姑(薄姑。殷代の侯爵国)の領域といい、少昊自体もその別名の「鷙」が手で鷹鷲をしつ執るという意味だとされる。
白川静氏も、金天少昊氏と山東の郯子とは同じ系列に属するとみる。殷は種族的には夷系に属するとし、殷の王朝的規模は、倭の五王期とあまり異なるものではなく、���墟に残される十三基の地下王陵は、わが国の仁徳、応神の諸陵にほぼ匹敵し、殷が直接支配した地域も、西日本の全域程度のもので、絶対年代の異なることを除けば、両者の条件はきわめて似ている、と指摘する(『中国の神話』)
殷の始祖の舜には、もと太陽神であったらしい形跡があり、アマテラスの信仰と似ているといえよう、とも言う。
中国では、『春秋左氏伝』より更に古い『逸周書』の「王会編」に、鳥トーテムをもつ異族が見える。周王が成周(いまの洛陽)に壇を築いて万国を会集する状況を記述するなかに、森林が密集する山陵地帯の異族が多く奇鳥喘禽を献じており、鳥トーテミズムをもつ秦の出自がこの方面たあると白川静氏も指摘する(上掲書)。これら西方の庄爽は、黄河上流域山陵部の森林密集地帯(上古代の当時。内蒙古のオルドス地方か)のあたりに居たとみられる。
日本では、天若日子は、子の少彦名神を通じて、鳥取部造の遠祖でもあった。鳥の名をもつ人名(神名)も天孫族系統にかなり見られる。先にあげた天日鷲翔矢命の一族のほか、素戔嗚尊自体が須佐能烏命とも書かれる。出雲国造の遠祖・天夷鳥命(天鳥船命、武日照命)の実体が、鍛冶部族の祖・天目一箇命に通じると、別書(『越と出雲の夜明け』)で述べた。同国造の初祖の名は崇神朝の鵜濡渟命と伝える。国造家の遠祖・櫛八玉命(伊佐我命のことで、天夷鳥命の子)は、鵜となって水に潜り、水底で採取した埴土(赤土)で「天八十毘良迦」(多くの平たい土器)を作り、料理人となって大国主神に供膳したと伝えるが(『古事記』の国讓りの段)、その伝承を思わせる名である(すなわち、「鵜が潜く沼」だから、一種の通称か)。
これと同祖の鍛冶部族・三上祝氏一族でも、鳥鳴海命(三上祝の祖)、速都鳥命(穴門国造の祖)、意富鷲意弥命(師長国造の祖)等の鳥の名の人々が見える。長門の穴門国造の系譜は、「国造本紀」には桜井田部連と同祖と見えるくらいだが、鍛冶神天目一箇命の後裔で天孫族たる近江の三上祝の一族であり、代々が式内の住吉坐荒御魂神社(現住吉神社。山口県下関市一の宮)に奉仕した。その由来は、託宣を行って韓地征討に功績のあった住吉三神の荒魂を、践立が神主となって当地の山田邑に祀つた、と『書紀』神功皇后摂政前紀に見える。同社(長門一の宮)及び近隣の忌宮神社(二の宮)では、特殊神事「スホウテー(数方庭)」があり、竹竿の頭に羽根を挿し鈴をつけた道具を用いる風習がある。
北九州でも、吉野ヶ里貴跡を始め弥生時代の出土品には、杆頭にとりつけられる木製の鳥製品が頻出する。このような竹竿は、朝鮮半島の「鳥杆」(鳥竿。杆頭に木製の鳥をつけて寺院の入口等に立てられ、「ソッテ」などとも呼ほれた)や「蘇塗」(大木���鈴鼓を懸けて鬼神を祭祀った)につながる。鳥杆に似たものが、佐賀県神埼郡千代田町の託田西分遺跡でも出ている。こうしたソッテの習俗は、ウラル・アルタイ族に普過的な信仰である北方的祭天儀礼と位置づけられ、シャーマニズム文化に帰属する(萩原秀三郎氏の「稲と鳥と太陽の道」)。
始祖の卵生神話
高句麗の祖・朱蒙(東明王)は、日の光に感精して生まれた卵から成長し、弓の名手であった鶏卵のような精気が天上から降りてきて女が妊娠し生まれたとも伝える。こうした所伝は早く、「好太王碑文」等にも見えており、始祖鄒牟(朱蒙のこと)は天帝(ないしその太子の)の子で卵を割って出生したとある。東夷の祖神・帝少昊の子(一に子孫)の揮は初めて弓矢を作り、張姓を賜ったと伝えるが、わが国の鳥取部・弓削部・矢作部を管掌した氏(鳥取連・弓削連・矢作連)は天孫族の出で、いずれも遠祖が少彦名神であった。
『魏書』やっ『隋書』等の高句麗伝では、高句麗の高官や使者は冠に「二本の鳥の羽」を挿すと記されており、これも鳥トーテミズムに関係しよう。「東明編」(高麗の李奎報の叙事詩。一一九四年成立)には夫余の祖・解慕漱(へ・モス)が頭に鳥羽冠をかぶり五竜車に乗り、百余人のお供はみな白鵲に乗って天降りしてきたと記される。この解慕漱が河伯の娘・柳花を娶るに際して、河伯との変身合戦で最後に鷹に変じて圧倒したので、ほんとうに天帝の子だと認めたという記事もある。高句麗には烏骨という城(遼寧省鳳城市に残る鳳凰山城で、高句麗最大の山城)、烏拙という大官(十二官位のうち第六)もあり、鬼神・社稷・霊星(農業神)を祀った。
古くは『逸周書』」王会篇に、周王朝第二代の成王が諸侯を招集したとき、高夷が見えており、これが高句麗族の源流だと、『隋書』を編纂した唐代の孔穎達が言い、鵠(白鳥類-のトーテムを祀るとする。「高夷」は遼寧省撫順市周辺に居たともいう。
新羅の国王初代で朴王家の祖・赫居世、金王家の祖・金閼智や昔王家の祖・脱解や、伽耶の金官王家の初祖・首露にあっても、卵生神話や誕生時に鳥にまつわる伝承(金閼智の場合は、その到来を白鶏が告知)がある。
わが国の天皇家には、鳥類にまつわる卵生伝承は端的な形では見られないが、これが天孫降臨の際の真床覆衾に関連するといわれる。この真床覆衾は、殷の王権・即位の儀礼に見られる「綴衣」という先王の用いた衾に通じると白川静氏がいう(『中国の神話』)。殷は東夷系で、玄鳥(燕)の卵を呑んで懐妊した女性の子・契(『荀子』に「契玄王」という表記あり)という者が始祖で、商の地に封じられたという���生説話をもった。先祖の王亥は鳥形神の字形で表され、その神像は両手で鳥を操り、まさにその頭を食らう、と白川氏が『山海経』やト辞を踏まえて表現する。鳥トーテムの強い色彩があり、王は巫祝としてシャーマニズムが盛んであった。殷の子孫が周王朝の祭儀に客神として参加して降服の儀礼を再演し白鷺の舞を献じたことは同様に記される。
殷の伝承などから、この殷族を貊民族の一分派とかツングース族とみる見解(文崇一や、シロコゴロフの『北方ツングース族の社会構成』)がある。殷の起源は、祭祀・主食(オオムギ)などから考えて、西方からの侵入説(西方系の遊牧民族の一派とみるもの)を水上静夫氏が唱えており、これもおそらく妥当であろう。この場合、西戎は東夷に通じる模様である。
鳥のトーテムとシャーマニズムの関係でいうと、もとの筑前国怡土郡にあたる糸島市有田の上鑵子遺跡では、鳥の羽飾りをつけた鳥装の司祭の絵を刻んだ木板が出ている。これは弥生中期頃からの遺跡とされる(奈良時代の製鉄跡もある)。佐賀県神埼郡吉野ヶ里町大曲の瀬ノ尾遺跡(旧東脊振村域で、吉野ヶ里遺跡の東側の丘陵に位置)からも、羽飾りをつけた烏人とみられる絵を刻んだ弥生期の土器が出土した。吉野ヶ里遺跡の西方近隣、神埼市神埼町竹にある川寄吉原遺跡からも、頭に羽をつけた人物を刻んだ鐸形土製品や銅鏃が出た。韓国のシャーマン(巫師・祈祷師。「シャマン」とも表現される)は、今日でも雉の羽がついた帽子をかぶる。吉備でも、弥生中期頃の新庄尾上遺跡(岡山市北区御津新庄)から出た絵画土器には、鳥に扮した人(嘴とトサカ状の装飾がついた人)が描かれる。烏スタイの9シャーマンには山口博氏も注目するが(『大麻と古代日本の神々』、}、わが国の祭祀担当の忌部氏一族(中央及び阿波・安房に分布)は天日鷲命の後裔であった。
中国・吉林省南東部の集安市は高句麗の旧都だけあって、同市人民政府の庁舎前には高句麗の象徴である「三足鳥」(太陽に住むとされ、足が三本あるカラス。林巳奈夫氏は、実は龍山文化から伝統のある大型猛禽のイヌワシだという)の銅像が立つという。その案内板には「太陽鳥(三足鳥)は中国古代の伝説に登場する。高句麗の壁画の三足鳥は高句麗民族と中原民族が同じ太陽鳥を崇拝したことを示す」と書かれていた。現実に高句麗の古墳壁画に太陽の中に描かれた三足鳥が見られる。これは、わが国鴨族の祖・八咫烏にも通じ、三足鳥で描かれる。
イヌワシ(金雕)を現在でもトーテムとすることで知られるのが、中国・新疆ウイグル自治区に西隣する中央アジア・カザフスタンのカザフ族で、古代鳥孫の末后裔という(二〇一五年一月二九日のNHK第一テレビで、イヌワシを扱う少女鷹匠の話が「世界最古のイーグルハンターモンゴル・カザフ族」として放映された)。ウイグル族・タジク族や清朝(満州人)、エヴェンキ族・ホジェン族などのツングース種族も鷹をトーテムとした。鷹が天神テングリの使者であり、女人との間に生んだ男子が最初のシャーマンだと伝える(以上はネットの「百度百科」)。イヌワシをトーテムとする信仰が上古の華北文化に存在したとの指摘もある。四川省広漢市の三星堆遺跡(約三千年前の殷代晩期のものか)から発掘された青銅神樹(扶桑樹、太陽樹)の枝には九羽のイヌワシが止まっており、この鳥が太陽を表すとみられている。
太陽神の祭
鳥トーテミズムは、世界各地で太陽神信仰や鍛冶屋伝承に結びつくことが多い。中国の射日神話では、弓の達人・羿(ゲイ。后羿ともいう)が帝堯の命を受け、人々を苦しめる十個の太陽のうち、一つだけ残し九個の太陽を射落としたが、この射落された太陽の実体が三本足のカラス(火鳥)だつたという。鳥が霊魂を運ぶ太陽の使者だとする中国の神樹思想にも通じる。殷の王族は太陽の末裔だと当時考えられていた。十個の太陽(十日)は、帝俊(帝舜)と妻・義和との子とされる(『山海経』大荒南経)。なお、帝俊の妻・常羲(嫦娥)は天照大神に通じるともみられ、また、后の妻ともいわれ、これが月神ともされる。
わが国の天孫族もこの例に漏れず、鍛冶部族で鳥トーテミズム、太陽神祭祀をもった。皇祖神の天照大神が天岩戸に神隠れしたことで、高天原を含め世界が真っ暗になったという天岩戸神話が有名である。もっとも、こうした「日隠れ神話」は世界中にあり、上記の射日神話にも通じるから、わが国天孫族に限った話ではないが、天皇家が祭祀などで太陽神信仰セをもったことは疑いない。太陽神を祀る朝鮮半島・日本の巫覡に女性の数が多かったこともあり、これが推古・皇極・持統などの女帝出現とあいまって(推古女帝の出現が直接の契機か)、日本では太陽神が後に女性神に転化したが、原型は男性神であった。三浦茂久氏も、天照大神は本来、月神であったとみており、高天原神話に見える天照大神の機織りは月神の特徴だとされる(『古代日本の月信仰と再生思想』二〇〇八年刊)。
天照御魂神こと天照大神に代表される太陽神を、天皇家は伊勢皇太宮などで奉斎し、これに奉仕する日置部も天孫族の流れから多く出た。日置・日置部を名乗る氏には諸流あるが、応神天皇皇子の大山守王の後(『姓氏録』右京皇別)、忌部首の一族(同・未定雑姓和泉の日置部)や土師連の一族(出雲国造袋)などが知られる。
渡来系にも日置があって、高句麗に出自の日置造(左京・右京・大和・摂津の諸蕃)、日置倉人(大和諸蕃)の諸氏が「『姓氏録』に見える。こちら諸氏は高句麗の権臣・淵蓋蘇文(泉蓋蘇文、蓋金、伊梨柯須弥)の族裔であり、高句麗王家と同族の蓋(盖)氏の流れ��あった(遙かな遠祖は、天孫族と同じか)。この一族は、京都に居住して八坂造氏となり、祇園で牛頭天王ことスサノラヲ神を祭礼した。日本での先祖で、『書紀』斉明二年条に見える高麗の副使の伊利之とは、権臣の泉蓋蘇文の従弟の蓋須のことであった。その子孫には、日置造と八坂造との二大系統があって、後世に永くつながった。八坂造は後に紀朝臣氏と通婚し、紀姓を称した。泉蓋蘇文は高句麗五部のうちの順奴部の出で、父は東部大人、大対慮の宮職にあり、父の職務を承け高句麗軍事の大権を握り、主君栄留王と多数の支持者を殺害し、宝蔵王を擁立して大莫離支(宰相)にもなって、唐と対抗した。
天孫族の一派、鴨族の祖・鴨健角身命(天日鷲命ともいい、実体は少彦名神)は異名が「八咫烏」ともいわれる。その子孫が、神武の大和侵攻を先導した伝承のある八咫烏(先祖と同じ通称)であり、光り輝いて敵の戦意を消失させた金鵄にも化身した「(「金鵄=八咫烏」の平田篤胤等に同意。この「烏」の実態がイヌワシなら、後頭部の羽衣は光沢のある黄色で、英名〔Golden Eagle〕の由来でもある。林巳奈夫氏の著『中国古代の神がみ』では、青銅神樹に止まる「太陽の鳥」は、体つきから見ても、龍山文化から伝統のあるイヌワシだとする)。この八咫烏が、忌部首や日置部の遠祖でもあった。律令時代において、主殿寮に仕える名負五氏のなかに日置・鴨県主があり��日置氏と鴨県主が火を受け持つ類縁の間柄にあった。葛野郡の名神大社、木嶋坐天照御魂神社も鴨氏族の奉斎にかかる。
各地に多く針座する天照御魂神社は、祭神が物部氏祖神(饒速日命)とか天火明命だと受けとられることが多いが、基本的には皆、男神の天照大神のことである(穗積氏の伝えた系図には、天忍穗耳命の父として「天照御魂太神」と記される)。対馬の天道(天童)信仰も特徴的で(日ノ神、殻霊、祖霊の信仰という)、当地には扶余と同様な太陽感精神話も伝えられる。天孫族は渡来の経路として一族や祭祀・習俗を対馬に遺した。「国造本紀」には、津嶋縣直をあげ、始祖の建弥己己命は高魂尊の五世孫で、橿原朝(神武天皇)の頃に置かれたと記される。この官の設置の時期はに早すぎるが、系譜は出雲国造の同族の出であった。
太陽神信仰と鳥トーテミズム・卵生神話が合わされば、霊山信仰・霊鳥伝承や「天帝」の子孫の降臨・天降りやゃ国見の伝承にもつながる。広く伽耶まで含む東北アジア地方諸国の王家や天皇家について、祖先が高山(ないし、その山頂の高い樹)に降臨したという伝承が多い。それ故に、これら各々の国の聖山(新羅の吐含山、百済の北漢山〔高木山〕、金官伽耶の亀旨峰〔金海の亀���洞〕、大伽耶の伽耶山や、日本のクシフル岳(糸島市の高祖山のことで、原田大六などが言う。南九州の日向国ではない〕)として祭礼対象とされる例が多い。匈奴や鮮卑(遼西の朝陽付近の弾汗山)・烏丸、扶余などでも各々が聖山をもち、山上祭天の儀式をした。『三国遺事』には、天帝桓因の子、桓雄は父から三つの天符印(「鏡・剣・鈴」という)を授かり、大勢を率いて太伯山(今の妙香山〔平壌の東北方〕とされる)の頂上の神檀樹の下に天降っており、その教示に基づき人間になることに成功した「熊女」(熊トーテム族の女性と解する李丙燾氏に同意)との間に檀君を生んだ、という神話が見える。新羅の脱解王は、高麗時代にも「東岳神」と言う山神として祀られた。東嶽(東岳)とは、慶州市街地の東方の吐含山のことであり、新羅五嶽のうちに数える同市の最高峰で、日本海を展望できる護国の鎮山として神聖視され、天に祭祀を上げた聖山として知られる。脱解については、日本列島の出身で海路到来と伝えられ、天孫族や天日矛と同族の出とみられる(後述)。
ここまで、天孫族の祖系や祭祀・習俗などを見てきたが、天皇氏族の特徴的なもののうち、主に考古遺物・遺構などに絡まる関係は次の章で見ることにしたい。
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詩集「異銀河旅行」
詩集「異銀河旅行」
1.異銀河行きの片道切符
異銀河行きの片道切符 ぎゅっと握りしめ 僕らは異銀河への旅に出るのです
リュック���背負った青年たち お弁当はハンバーグ 水筒にたっぷりのお茶 そして 胸いっぱいの夢を詰め込んで 僕らは異銀河への旅に出るのです
アポロの遺志を受け継ぎ 僕らは異銀河への旅に出るのです
2.スペースシャトルが見つめるもの
抱きしめたい あなたを
みんなの夢 母なる大地の希望 この手で……
恋人と最後の口づけ 「行ってらっしゃい」と 震えるのは 甘く儚い声
生きて帰れぬと覚悟を決めたら 明日は異銀河旅行の始まりだ
あの地に佇む スペースシャトルが見つめるもの 玉虫色の愛は何を想う?
3.地球最後の夢
こちらを見つめるのはアジア 布団の中の夢幻界 長年寄り添った君とも今日が最後か やけ酒を煽るわけにもいかず 普段飲まない緑茶をぐいっと飲干す 地球最後の夢 ぽつりぽつりと現実が消えていく 頬を摘まれても何も感じない 色とりどりの花束に囲まれた理想郷 見つめるのはユリコとモンロー あゝ セックスシンボルが懐かしい 燃えたぎる走馬灯 自由への長い旅 遥か彼方の新世界を目指して ヒットを求めて闘い続けた男たち 今夜は精神媚薬をたっぷりと飲み込み とっておきの最後の夢を見ようじゃありませんか
4.緊張感ブルース
秒読みが始まる…… 僕らの心拍数は人知を越えた 夢が始まる…… 僕らの期待感は限界を越えた 見つめるだけでも 愛し合うだけでも始まらない 夢があるなら 真っ先に走り出すべきなのだ
ブルースは緊張感の詩 この音に悲しみは似合わない ただ 目の前の道なき道を突き進め!
ブルースは緊張感の詩 この音に憂いは似合わない ただ 目の前の道なき道を突き進め!
スペースシャトルは大気圏を越えていく 半分ずつの期待と不安 すべてねじ伏せ 希望の旅を始めよう
ブルースは緊張感の詩 この音に躊躇いは似合わない ただ 目の前の道なき道を突き進め!
5.異銀河旅行
目の前に見えたのは まだ見ぬ浮遊都市 不確かな声が聞こえたら 着陸準備を始めよう
惑星Aに降り立つ 五人の若人が これから目にした物語を ぜんぶ君に伝えよう
地球人を宇宙が迎えている 確かなぬくもりで迎えている 身体と身体で抱きしめなくても Side by Side 心の距離は隣人同士さ
ボウルに注がれた紫に たじろぐ若人たち 空想のような宇宙人は こちらを優しく見つめた
惑星Bに降り立つ 五人の若人が これから遭遇する嵐を ぜんぶ君に伝えよう
ほんとは敵なんていないのさ 勝手に敵だと思い込んでるだけ 身体と身体で確かめなくても Fire by Fire 心の距離は隣人同士さ
僕らが金色の惑星で思い出したものは 長らく人類が忘れていた 愛と希望と優しさ……
異銀河で眠る夜は 地球と変わらず安らかに 「明日になれよ」と神様が 夜の闇に祈りを捧げている
地球人を宇宙が迎えている 確かなぬくもりで迎えている 身体で身体で抱きしめなくても Side by Side 心の距離は隣人同士さ
ほんとは敵なんていないのさ 勝手に敵だと思い込んでるだけ 身体と身体で確かめなくても Fire by Fire 心の距離は隣人同士さ
Heart to Heart ココロぶつけろ わかり合うために!
6.異銀河紛争に巻き込まれて
だから もたもたしちゃダメさ ― 宇宙人の忠告 素直になれそうでなれない ― 欲張りな地球人
ここは宇宙海賊の縄張りだから 速やかに立ち去り 白旗をマストに掲げろ!
終わりなき闘争 僕らの逃走 ― 宇宙船を護れ 生かしちゃおけない 逃しちゃおけない ― 疼くのは本能
それでも僕らは生きて帰るんだ このまま ここで散るわけにはいかない
いつか 奴らに追いつかれる ― 宇宙人の忠告 あの時 ああすれば良かったのに ― 後悔する地球人
ここは銀河帝国の支配地だから その身をもって償え 反旗を翻した罪を!
根拠なき論争 僕らの戦争 ― 帝国から逃げろ プライドを護れ 死ぬまで闘え ― 欺瞞の忠誠心
それでも僕らは生きて帰るんだ このまま ここで散るわけにはいかない
自由なき生活 明日なき生活 ― 目にした現実 涙は流れ 染まる紅 ― 歴史は繰り返す
それでも僕らは生きて帰るんだ このまま ここで散るわけにはいかない
7.陽気な宇宙人
宇宙バーで出逢ったのは 底抜けに陽気な宇宙人でした
ワルツのリズムに乗れば まるでシンデレラみたいね 身に纏うは黒のボンテージ 妖艶に腰を振る
遊びすぎて 疲れすぎて ぐっすり眠るあいつに 「今日もありがとよ」とチップを オーバーオールの金具に置いてきた
宇宙バーは秘密基地 最高で最低の遊び場さ
ウォッカを片手に叫ぶのは 愉快な冗談好きの宇宙人でした
メデューサの媚薬を飲めば 私も即席のエピキュリアン ホテルに突き刺さる悲鳴が 現実に連れ戻す
遊びすぎて 愛しすぎて 私がわからなくなるのは あなたが私を惑わすからなの 全部あなたのせいなの
宇宙バーは秘密基地 最高で最低の遊び場さ
彗星のように現れて 一夜で去っていく その場限りのダーリンに 今日も堕ちてくわ
遊びすぎて 疲れすぎて ぐっすり眠るあいつに 「今日もありがとよ」とチップを オーバーオールの金具に置いてきた
宇宙バーは秘密基地 最高で最低の遊び場さ もういっそ帰りたくない 宇宙人に僕もなりたい
8.ココロヲサケベ!!
ロックスターの叫びが君に聞こえるかい? どんな星でも同じさ “音楽”は世界の共通語
想いを乗せて 掻き鳴らせばいい 自由の詩に乗せて 掻き鳴らせばいい
剥き出しの愛を君にぶつけよう 気分はもぎたて ありのままの唄で Water as Rock!! ……これが俺の気持ち
愛する人の悲鳴が君に聞こえるかい? がぶっとコーク飲み干せば 君の元へ一目散 時代に乗せて 掻き鳴らせばいい 風の詩に乗せて 掻き鳴らせばいい
出来立ての夢を君にぶつけよう 気分はもぎたて ありのままに謳え Water as Rock!! ……これが俺の気持ち
目の前で誰かが困っているなら 手を差し出して助けるのが スーパーヒーローの務めだろ??
たとえ下手でもいいんだ 音程なんて合わなくていい コードがわからなくてもいい ココロヲサケベ!!
剥き出しの愛を君にぶつけよう 気分はもぎたて ありのままの唄で Water as Rock!! ……これが俺の気持ち
出来立ての夢を君にぶつけよう 気分はもぎたて ありのままに謳え Water as Rock!! ……これが俺の気持ち
9.悲しみは朝焼けの彼方へ
ディストピアの砂漠 沈む夕陽は 水平線に眠ったままの舟を映す 誰かの夢が埃を被っている 自由への旅が未遂に終わったのか?
メビウスの輪に僕らは囚われたまま 真実の姿を目前にして眼を閉じる 悲しみは朝焼けの彼方へ 消えていけばいい やすらぎは夜明けと共に ここに響けばいい
未来の子供たちへ この声が届きますように
僕は唄に乗せて この声で伝えよう
10.異銀河旅行はどこまでも
翼がなくても飛べるぜ 生き物の息吹が聞こえて 新たな世界の扉をこじ開ける音がする 涙などいらない 過去に置いてゆけ 無理はしなくていいが 君ら��くゆけ
大切なものはここにあるさ ハートを信じろ 銀河を越えた大冒険 胸に秘めたガッツを燃やせ 異銀河旅行はまだ終わらない
たとえ雨が降ろうとも 僕らがいればなんとかなる そんな気にさえしてくれる仲間が僕にはいる 心配はいらない きっと守ってくれる いつか翼が折れても 僕らならまた飛べるんだ
必要なものはここにあるさ 仲間を信じろ 銀河を越えた大冒険 そこに広がる道を飛ばせ 異銀河旅行はまだまだ終わらない
11.明日行きの希望に乗って
アジアの風に憧れて 旅に出た マルコ・ポーロのように 僕らも道なき道を行こう この宇宙船に乗って
何度目かの次元を越えた先には 黄金の惑星が広がっていた そこにほんの少しの隙間 勇気を振り絞って潜り抜ける
目の前に広がるのは銀世界 どうやら雪の星に来たらしい 巨大ペンギンがお辞儀をする 律儀なカラスが礼を言う
さらに前へ進むと 今度は時の惑星が現れた 時計と時計のカーニバル 僕らの知らない僕らがいる
そろそろこの銀河も終わりだ 次はどんな世界が広がっているだろう? 暗闇の中に微かに見える希望 そこには僕らが夢見た明日がある 明日行きの希望に乗って
12.エデンの悲劇
いきものが生きられず 放棄された惑星 虚無の中に見えたのは たったひとつのやすらぎ 僕らが信じていた 豊かさの法則 粉々に散っていく 常識の在処は 探せば探すほどわからなくなるもの いつも目にしているはずの穏やかな楽園 だけど虚無の前では悲劇になる
ここが最後のエデンと呼べるのならば 僕らの幸せはどこに消えるのか 嗚呼 神よ 応えておくれ
絶望を知らずに 生きて来たわけじゃない 何も考えずに 生きて来たわけでもない 僕らの法則をすべて無視して ほんとうの声が胸を抉る 僕らが求めていた エデンの正体は 説明不能な豊かさに満ちていたのさ
ここが最後のエデンと言うならば 僕らの夢はどこに消えるのか 嗚呼 神よ 応えておくれ
13.地球は碧かった
時は流れて 希望は掴めず 道なき道を 僕らは帰還する
求めてたものは 何もなかった 信じてたものは 何もなかった
事実を受け入れ 胸に仕舞い込んで 伝えるのは林檎 腐った林檎だ
最初に通った 異銀河を越えて 目の前に見えるのは母なる星
夢見てたものは 何もなかった 望んでたものは 何もなかった
地球は碧く 美しく輝く……
地球は碧く 優しく輝く……
それでも地球は碧く 宝石のように……
それでも地球は碧く 楽園のように……
清く美しく ぬくもりを求めて
地球は碧く 美しく輝き続ける……
14.異銀河旅団の帰還
ひかりが現れ すべてを飲み込んでいく 僕らの翼は 宇宙に消えていく
終わりが来たのさ 還る日が来たのさ 僕らは役目を終え 宇宙に還るとき ブラックホールに吸い込まれる仲間へ 静かな歌声 天使の微笑み 目の前に広がる ひかりがささやかな贈り物になる
希望を持って帰ろうか 自由になって帰ろうか
語らうのは…… 幸せと僕らが犯した罪 微睡むのは…… 愛しさと僕らが犯した罪
舟は語るよ ひかりは語るよ
異銀河旅行を僕らに贈ってくれたのは 明日への希望と その先にある“期待”を 抱きしめるためなのだろう
やさしさの祝福 ぬくもりのファンファーレ
僕らが旅に出てから 母なる星が選んだ道は 何も知らない僕らの舟を 抱きしめることだった 絶望した神々は再生を選んだ
見たこともない渦に 僕らは吸い込まれていく 何千兆のひかりは 僕らに語らずに 人がすべてを悟ったとき 息の根をとめるだろう
地球は碧く 美しく輝く……
地球は碧く 美しく輝く……
喜びも 怒りも 哀しみも 楽しさも 誰かのタクトに導かれて 結末へ向かうだろう
もう誰にも 止められはしない 手遅れになったとき やっと人は気づくだろう
仲間たちの涙が 真実を示すだろう
地球は碧く 美しく輝く……
地球は碧く 美しく輝く……
これが涙か 地球の涙なのか
嗚呼…… 嗚呼…… 嗚呼……
詩集「異銀河旅行」 1.「異銀河行きの片道切符」 2.「スペースシャトルが見つめるもの」 3.「地球最後の夢」 4.「緊張感ブルース」 5.「異銀河旅行」 6.「異銀河紛争に巻き込まれて」 7.「ココロヲサケベ!」 8.「陽気な宇宙人」 9.「異銀河旅行はどこまでも」 10.「悲しみは朝焼けの彼方へ」 11.「明日行きの希望に乗って」 12.「エデンの悲劇」 13.「地球は碧かった」 14.「異銀河旅団の帰還」
【Credits】 Written / Produced by Yuu Sakaoka Photo by 水透 @__suiso0O
Special Thanks to My Family, my friends and all my fans!!
2023.3.23 坂岡 ユウ
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「ととと便り」 『3年ぶりの黒川さんさ門付け』 先日14日、大慈寺界隈で3年ぶりに黒川さんさ門付けが行われました。 連日雨でしたが、この日だけ奇跡的に晴れ。 いやほんと、できてよかったですねー。 最初は大慈寺から。 道沿いに舟っこ流しの船が飾られていたので、それを見てから境内へ。 18時開始に向けて17時半過ぎに行きましたが、待っている人たちはそこそこいましたね。 黒川さんさの踊り手の皆さんの中に 紫波町で「はこや」という宿をされている木戸さん夫婦を見つけ挨拶。 初めて会ったのは3年前の黒川さんさ。 とととで語り合ったものでした。 あれから3年。 オープン日も一緒の同期生と再会できたのは嬉しかったですねー。 実は「はこや」は一棟貸しなのでまだ泊りに行けてません。 誰か一緒に行きましょー! 門付けは大慈寺から始まり、あさ開、町家物語館と場所を移しながら 景色が段々と暗くなっていき 町家物語館では篝火も炊かれていて勇壮でした。 黒川さんさの由来は鎌倉武士の戦勝祈願で 三ツ石神社由来のさんさ踊りとは違うそうです。 これは今年知りました。 でも、どうして戦勝祈願の踊りがさんさ踊りになったんでしょう? 機会があったら聞いてみたい。 写真は明るい時間にできるだけ撮り、 町家物語館ではもはやボクのスマホではまともな写真を撮れないと諦めて 自分の目でしっかりと踊りを堪能しました。 見ているとどんどん引き込まれていきます。 とにかくかっこいい! 個人的にオススメの瞬間は 踊りが始まる前の腰を落とす瞬間。 静から動へ切り替わる前の一瞬の静止がかっこいいんです。 素晴らしくて素晴らしくて 最後の方はただただ感動していました。 ゲストの皆さんも口々に絶賛。 中には踊り手をじっくりと見て、推しの踊り手を見つける方も。 ほとんどの方が偶然にこの日に泊った皆さんでしたが、 皆さん、この日に泊れてよかったと言っていました。 これはやっぱり毎年行われなきゃいかんですよ。 そして来年こそ、ととと近くの細重酒店前で篝火を焚いての輪踊りが見たい! 今年のさんさ踊りのパレードや門付けを見て ボク自身がもっとさんさ踊り���知る必要があるし、踊れるようになるべきだなと思いました。 さんさ踊りの勉強、始めたいと思います。 来年はパレードの後の輪踊りで踊りたい! 「黒川さんさ門付け」は毎年8月14日開催。 とととに泊まって見たい皆さん、御予約はお早めに! #ととと 盛岡の泊まれるたまり場 #ととと盛岡 #ととと便り #黒川さんさ門付け #大慈寺 #鉈屋町 #黒川さんさ #門付け 旅のひとと地元のひとがつながる場 泊まらなくても使えるたまり場(シェアリビング&キッチン) 飲食物持込自由 自炊可能 街歩きが楽しい町、盛岡 岩手山がきれいに見える町、盛岡 南部藩の城下町、盛岡 古い趣のある建物が多い町、盛岡 素晴らしい庭園のある町、盛岡 素敵な喫茶店が多い町、盛岡 秋には鮭が遡上する町、盛岡 樹木を見て歩くのも楽しい町、盛岡 盛岡町家のあるまち並み、鉈屋町(なたやちょう) #鉈屋町 #natayacho #なたやちょう #盛岡 #岩手 #morioka #iwate #もりおか #iiiwate #岩手においでよ #盛岡のととと #盛岡ゲストハウス #岩手ゲストハウス #iwatehostel #moriokahostel ご予約はHPから! https://bokunohosomichi.fun/ (大慈寺 (盛岡市)) https://www.instagram.com/p/ChUR5r4h9gY/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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D&D イニストラードセッティング セッションその5 レポートその15
「フレッド、左を頼む!」
「……わかった」
兄弟はそれぞれ左右に分かれてエルドラージの群れに斬り込んだ。フューゴは大型のドローンの群れを斧で薙ぎ払い、フレッドは変異した人間の頭を踏みつけながら触手や腕を切り落としていく。
掬い上げるような一撃でドローンを叩き割ったフューゴが、横から別のドローンに突撃されて体勢を崩す。
「クソッ!」
斧でバランスをとって立て直すが、その一瞬の隙にさらに別のドローンが触手を伸ばした。その紫色の皮膚が触れた瞬間、フューゴの頭の中に歪んだ精神の奔流が流れ込むのを感じた。
「――うあああ、あああ、わ、われは、えええええむむらああああああ」
自我が溶け行く感覚で、目の前の光景が虹色に瞬く。巨大な存在の一つになり、目の前の小さな生命を喰らうことだけを考えろ。我らがエムラクール。我こそがエムラクール。全ては我に回帰していく。全ては永劫なる無へと。我はエムラクール。我は――
「フューゴ!!」
何か巨大なものに接続されていた意識が切断され、元の肉体へと弾き飛ばされる。一瞬ふらつき、フューゴは自分の置かれた戦場に視線を戻した。トーベエが二刀を我武者羅に振り回してドローンを切り捨てる。致命的な攻撃だけは避けているが、しかし棘のように突き出された触手や足がその身体に血を流させる。
フューゴは再び斧を振り上げてドローンに斬りかかる。トーベエに絡まる一体を引きはがし、その足を切り裂く。さらに、二人の上から炎の弾丸が降り注いだ。トライアとグリムが呪文を詠唱し、絶え間なく雷や炎の斉射を繰り出していく。彼らの姿はその瞬間は、優勢に見えた。
太陽を覆うように翼を広げた天使のまがい物が、波のように蠢くドローンの上を飛んでいくまでは。それは声ならぬ声を上げ、赤く光る瞳でフューゴを見た。
その瞬間、再びフューゴの意識が何者かによって浸食され、身体の自由が利かなくなった。それと同時に紫色に脈打つブリセラの腕が槍のように伸び、フューゴの肩を貫いた。
「―――――!!!!!」
呼吸することも、悲鳴を上げることもできない。触手が身体の中でうねり、腕と身体を分離させようとする。
「っらぁ!」
刀が紫色の腕に傷をつけると、それはたやすく引き抜かれた。片方の頭がぐにゃりとトーベエを向く。視線が交差した瞬間にトーベエもまた精神に何かが入り込むのを感じた。ブリセラが腕を振り上げるのが見えた。精神と肉体の両方をバラバラに動かさねばどちらかが死ぬと分かっているが、そのどちらも言うことを聞こうとしなかった。ならば刺し違えてでも、と思った瞬間、空中から飛来した雷がブリセラの翼を焼き焦がす。
「見ろトライア、こっちを向いたぞ」
「さっきのを喰らったら僕ら死んじゃいますよ!?」
「そのときはそのときだ。覚悟を決めろ」
トライアとグリムは魔術書から燃えるような光を迸らせながら、再び詠唱を始める。
「二人とも下がれ、少しでも前線の援護を!」
変異体を鎚で潰し、聖印を掲げながらアーロンが前に出る。彼もまた、トーベエの二刀にかかる祝福の術を維持しながら戦い続けている。
風を切って絶望が飛来した。虚ろに燃える瞳がアーロンとトライアを捕らえた。聖印に阻まれたか、アーロンは意識を保った。だがトライアは意識を掻き乱され、その場に倒れ伏した。
グリムは戦場を見渡した。フレッドが躍るように敵を切り刻むが、まるで砂糖に群がる蟻の群れのようにとめどない。狂った人間たちの波は本物の海のように終わりが見えなかった。もしかしたら、と錬金術師は別の巻物を引き抜いた。師匠モーダミアの持ち物から失敬したそれを紐解き、魔力を込める。もはや大地から引き出せる魔力はもうなく、己の中に残ったわずかな残滓を集中させていった。
「生けるすべてを永久なる休息へ誘え、《睡眠》!」
薄い靄がフレッドの周りの狂える異形を覆っていく。ブリセラの羽ばたきで靄が晴れると、そこには折り重なって眠る怪物たちの姿があった。フレッドは空中で回転して音もなく着地。バネが飛び出すように素早く、アーロンと切り結ぶブリセラの背後へと到達した。
「フューゴ、ここは俺に任せろ! フレッドたちを助けてくれ!」
トーベエはドローンを切り払い、フューゴの背に声をかける。
「――死ぬなよ」
後ろを振り返ることなく、フューゴはブリセラへと突進した。
振り回される斧がブリセラの下半身から伸びた触手を切り落とす。フレッドが斧の柄に乗り、さらに跳躍して翼に刃を振り下ろす。ブリセラと視線が合えば身体が石のように固まり、触手が剣の壁のように襲い掛かる。アーロンのハンマーがそれを叩き、何本かはそらすことができるものの、一歩間違えば致命傷という場所を綱渡りですり抜けていく。
グリムは戦闘から離れ、魔術書の残りを漁った。恐らくこれが、最後の魔法になる。
無限に続くかと思われた打ち合いの中、変化は突然に現れた。天に浮かぶ月に、見たこともない文様が輝いていた。塔の上にジェイスとタミヨウ、そしてもう一人、緑の服を纏った魔術師が立って魔力を放っていた。
トライアは巨大な魔力の流れを感じ、天を見上げた。その瞬間、彼の視界を塞ぐように燃え立つ瞳と目が合った。
「しまっ……!」
明らかにブリセラの動きは遅くなっていた。だが、その腕の一撃は容易くトライアの命を奪ってしまうだろう。
「トライア!」
青いローブの錬金術師が、トライアの前に滑り込んだ。グリムの手には、開かれた魔術書が赤い光を放っていた。
「燃えろ!」
グリムが付き出した掌から炎が迸る。それは迫りくる腕を焼き焦がし、黒い炭に変わる。
視界の中で、エムラクールの山のような身体が再び空中へと浮かんでいく。それは輝く月に吸い込まれるように、急速に小さくなっていくように見えた。
歪んだ天使が驚愕と恐怖の混じった声を上げる。そこへ、アーロンの鎚が、フレッドの短剣が、フューゴの斧が叩きつけられた。
翼が裂け、腕が斬り飛ぶ。銀の血が流れる両の眼窩に、光り輝く魂が映った。それは大きな白い翼を広げ、歪み切った姉妹のなれの果てを悲しげに見つめた。魔力そのものの腕を伸ばし、歪んだ肉体に残った魂を解いていく。エムラクールの一部となっていた肉体がゆっくりと落下し、二人の天使の魂だけがそれのてのひらに収まった。
偉大なる魂は翼をはためかせると、まだそれが地上に存在したころと同じように、姉妹の魂をあるべき場所へと導いていった。
ブリセラが落下し、動かなくなる。皆倒れて、一歩も動くことができない状態だった。エルドラージの不気味な死体の上に横たわるトーベエの視���の中で、エムラクールが月に飲み込まれていくのが見えた。
「やったのか…」
そうして目を閉じた瞬間、その場に爆発が巻き起こった。
エムラクールを銀の月に封じ込めたことで、謎の石によって歪められていたマナの力線が元に戻った。ネファリアにダムのように集められていたマナが噴出し、その到達地点であったスレイベンで爆発を起こしたのだ。
ネファリアのいつもの酒場で、フレッドとフューゴの兄弟は杯をあおって、残った酒を呑みほした。
「じゃあ、俺たちはもう行く」
「……ヘンリー領主どのが心配だからな」
入口で待つマービン爺さんに声をかけ、二人は酒場のドアに手をかけた。
「アーロン、トライア! またどこかで!」
「アーロンさん、私たちも行きましょうか。まだまだ、イニストラードには希望が必要です。それに、吸血鬼の連中がサリア様を狙ってくるか分かったもんじゃないですからね」
二人も立ち上がり、荷物を背負った。
真新しい銀の鎧を整えて、アーロンとトライアはケッシグの森の中を進んでいた。
「ウルリッチ! どこだ!」
アーロンの声が森の中に響く。
「騒がしいな。喰われに来たのでもない限り、その声は腹の中にしまっておけ」
狼の群れとともに、白髪の大男が姿を現した。
「新しい寝床の調子はどうかと思ったんだが、その様子なら心配はないな」
「お前たちさえこなければな」
ウルリッチは懐から何かを取り出すと、アーロンに投げてよこした。それは戦いによって傷つき見るも無残な姿になった、シガルダの聖印であった。恐らく幾度となく、持ち主の命を救ったのだろう。
アーロンが顔を上げると、狼たちの姿は風のように消え去っていた。
強い風が吹きつける甲板に、トーベエは顔を出した。はるか空には雲が渦を巻いている。エメラルド色の海には小舟が浮かび、霊気駆動のプロペラが回転して船を前へと進ませていた。
遠くに見える街には高い塔が並び、青い水のようなものを溜めこんだ不思議な建物が宝石のように輝いていた。
「珍しい恰好だね、旅の人。商人かなにかかね?」
同じ飛空艇の甲板にいた、平服のドワーフが話しかけてくる。
「俺はサムライ。武芸者だ。ちょいと、人探しをしているんだ」
ひたすらに太陽が照りつける砂漠を、一人の錬金術師が彷徨っていた。遠くに都市と思われる影と、そこから伸びる河川。
「川へ行かないと干からびてしまう。命あっての研究だからな……」
都市の方を見ながら、足は川へと向かう。人の姿が見えない。まるで死者の世界のようだ。あるいは本当にそうなのかもしれない。
都市の影の中に、二本の歪んだ塔のようなものが見えた。グリムにはそれがなんなのか皆目見当もつかなかったが、何かとても不吉で邪悪なもののように見えた。
不気味なスカーブが引く大八車には、さらに禍々しい歪んだ死体が山と積まれている。スカーブの横ではゲラルフとギサが何やら陰湿な罵り合いをしていた。わずかに生き残った聖戦士たちは鎧を脱いで、瓦礫をどけたり人々の治療をしたりと忙しく走り回っている。
守護者を失った世界は今、自らの力で立ち上がろうともがき、その一歩を踏み出したところだ。
(了)
DMの視点から:
おわったあああああ!!おつかれさまでしたー!!!!完!!!!じゃねええ!!!!!次はあなたがダンジョンマスター!!!!なんか聞きたいことがあったらツイッターでいいから聞いて!答えるから!!!!
さて、今回のシナリオは大元の���トーリーにある程度沿う流れになりましたが、もっと小規模な冒険を遊んでも面白いですよ。フリーインフリーアウトのキャンペーンも久々に試しましたが、なかなかうまく行ったのではないかと思います。参加回数にバラつきがでそうな場合にはDMGに載っている「セッションごとにレベルアップする」形式が足並を揃えやすくていいんじゃないかなーという意見もあったので、次回はそれで。
そうそう、ブリセラのデータは「スペクテイター」をいじったものを使用しました。大天使のデータはギセラ、ブルーナ、シガルダは「デーヴァ」、アヴァシンは「プラネター」ってことなので、そのまま使ったら3レベルパーティなんぞ鼻息で吹き飛びますからね。
このあとですが、長いキャンペーンはちょっとの間お休みとなり、その間に色々またコンテンツの用意をいたします。モチベーションアップのため、このキャンペーンや各種翻訳、記事についてのご意見ご感想もお待ちしております。最後に、参加してくれたみなさん、読んでくれたみなさん、ありがとうございました! また次の冒険で!
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好きなシナリオ_過去ログ
2013~2016年頃にサイト移転前にメモしてたのを格納。 年代はうろ覚えです。 プライベッターに格納してしまってもいいかもしれない。
■ 好きなシナリオ シナリオ感想というより、好きなシナリオをただただ上げているだけのページ。 ユーティリティシナリオと店シナリオ以外は、ネタバレを避けるためコメントは少なめに。 通常、VIP、兄貴わりとごちゃまぜですのでご注意ください。(狂い、地雷はたぶんあまりあげてない、はず) ※各サイト管理人様へ。勝手にご紹介してすみません。ご迷惑でしたらご連絡ください。削除等の対応をいたします。随時更新。
◆好みな傾向(特に一番上。それ以外はあったら嬉しいな程度) ・PCメインで進行 ・口調設定有、口調対応有り ・PC同士の会話が多い ・PC同士の関係反映
◆少し苦手… ・NPCとの恋愛 ・PT内が非常に険悪になる
【はじめての方向け 】 ■チュートリアル ※一通りの遊び方を確認できます。 ■カードの世界 ※カードの使い方を実際に遊びながら確認できます。 ■ASKシナリオ ※公式サイト様のシナリオ。様々なシナリオでクロスオーバーされています。 ■さくっと寝る前カードワース ※良作の短編シナリオ詰め合わせ。
■制作者向け ※ありがたくも便利なテンプレートシナリオ(遊ぶのではなく、)WirthBuilderでこれをもとにシナリオを作ったりするのを目的に配布してくださっています。NEXT用と明記がないものは、当方はver1.50で動作確認しています。
■一人称・二人称自動設定リソース 一人称と二人称、そして口調自動設定処理まで実装されている寺雨さんのテンプレートシナリオです。口調設定の処理を組むときにすごく参考にさせていただいてます。 ■二人用テンプレートシナリ(NEXT用) 二人用シナリオを制作する上で、キャラクターの役割分担、口調分け設定、3人以上で入っても問題なく開始可能な処理まで実装されているサンガツさんのテンプレートシナリオです。
【ユーティリティ】 ※口調、性格、種族、嗜好とか自分のキャラに細かい設定ができます。 シナリオによって対応してたりしてなかったりしますが、自己満足できていいかも。 これ以外にも沢山公開されてます。 ただ、個人サイトに控えめにあげられてるのが多い。
■VC2 ※年齢、性別、特徴、口調、種族、職業、役割、恋愛関係設定可能。 これ以前に上げられているユーティリティシナリオのクーポン配布がまとめて出来るので、 このユーティリティシナリオである程度クーポンをPCに配布しておけば、にやっとできるかも。 (口調、種族、職業、役割、恋愛関係は特に。) ■初期クーポン編集 ※年齢、性別、特徴設定可能。 ■称号登録所 ※口調・職業・役割などに加え、酒豪・方向音痴といったフレーバー的なクーポンを配布するシナリオ。 ■VIP Wirthクーポン配布 ※口調、性格、嗜好とか。現在入手不可ですが↓のシナリオで一部のクーポンは入手可能。 ■宿の自室 ※一人称、二人称、口調、性格(例:知識人、ツンデレ/素直、大人/子供など) それとこの方の「一人称二人称自動設定リソース」がとても参考になるしありがたいです。 ■風聞の暗躍者 ※口調、性格、味覚、生い立ち、性癖、職業、役割等色々設定可能。かなり他種類のクーポンが配布できます。 ■夢クーポン配布所 ※冒険者達が抱く夢をクーポンで配布。PCの個性付けに。 ■アスカロン教会跡 ※冒険者の心の闇を付与するクーポン。PCの個性付けに。 ■冒険者の心得 ※これで配布されている「料理上手、料理下手、デスコック」 は他のシナリオで見かけたりします。デスコックいいよね!! ■非公式種族登録所 ※いろんな種族クーポンを設定できます。鑑定を使うと・・・?作者様のシナリオはこれら種族に対応してることが多いので、より楽しめますよ! ■Adventurer’s Spice ※特徴付けクーポン配布シナリオ。食事傾向と関係設定が色々あって素敵! ■英知の書 ※異言語クーポン。 このPCはこの言語に精通している・・・とかとてもいいなっておもいます。 ■クーポンマガジン CW号 ※ユーティリティシナリオの称号はかなりの数網羅されている。もう手に入らないシナリオのものもあるので有り難いですね! ■星の距離を超えて ※人外PCの人間に対する思想や態度を決定するクーポンを配布されています。種族に寄って複数パターンにわかれているので突入するだけでも楽しいです。 ■その鏡に写るのは ※髪色、瞳色クーポンを配布されています。さりげに吸血鬼クーポン反応して嬉しかった…。
【 街・店 】 ※街中でイベントをこなしていったり、スキルを購入がメインのシナリオ。 好みが分かれるので色々探してみるといいかも。
■交易都市リューン #C2 ※画像差し替え、口調設定可能なリューン ■轗軻の人 ※美麗で心くすぐられる魔術 ■碧海の都アレトゥーザ ※港町で買い物とクエスト。舞踏家スキルときめく ■メレンダ街 ※買い物と数え歌を巡る謎。多種多様お洒落なお店とスキル達 ■隠者の庵 ※他のシナリオで対応されているスキルが沢山 ■水は流れず ※吸血技能販売シナリオ。PT内で吸血契約可能。 ■思い出は緑 ※植物系スキル。グラフィックが綺麗。温室とかいいなあ ■死霊術師の館 ※死霊術師、吸血鬼技能の販売+α。職業、種族クーポン配布有り ■4色の魔方陣 ※幽閉された魔術師からスキルを教わる。格好いい系魔術 ■城館の街セレネフィア ※多種多様スキル。銃スキル好きだなあ ■明けの森の花屋 ※精神適正、花スキル ■魔女のビブリオテカ ※セイレーンやエルフ専用スキル。種族クーポン配布有り。綺麗! ■きつねのパン屋さん ※妖狐技能とアイテム(パン)販売。妖孤クーポン配布有り。可愛い! ■WELCOME TO ADROAD! ※種族クーポン配布有り。グラスホッパーとライカンスロープいいぞ・・・いいぞ・・・ ■万魔の街シュカー ※人外向けクーポン盛りだくさん!!人外好きさんにおすすめです。 ■闘者の杯 ※アイテムとスキル。アンティーク調で高性能。リューンスキルのアレンジがすごいかっこいいです。渋いぞ!! ■時計塔と霧の街 ※吸血鬼や歌劇、機甲技師、医療系、童話モチーフ。見て回るだけでも楽しい作りこまれたスキルカードがたくさん。 ■夜渡る鬼 ※短剣技能に加えて、吸血鬼PCがいると…。【器用】適正の吸血鬼技能が嬉しい!局外者経由PCでぜひ! ■忘れ水の都 ※時空魔法(隠し)とか舟歌技能が好きです!斧とオカリナ技能も好きだ。 ■魔光都市ルーンディア ※血液パックが売ってるのがすごい。吸血鬼PCもにっこり! ■リューン互換+α ※リューン互換の美麗スキルカードにうっとりします。宝石モチーフになってたり、エジプト風になってたりとても素敵。 ■湖水都市カスケード ※ここの教会区の技能が好きで…。神官戦士達の槌、斧、槍、鎌、剣が特に好きです! ■万色の魔術師、その遺産 ※火・土・光・風・水・氷・雷・闇・無��星の全部で10種類の属性の美麗な技能が。魔術師PCの得意属性を考えながら買い物したらとても楽しいと思います! ■うさぎ小屋 ※器用適性の超能力・双銃・香水・家政婦・舞踏スキル。双銃かっこいいー!!
【クエスト】
■新月の塔 ※塔に囚われた五人の仲間を助け出せ!仲間を助けていく課程がたまらない。 ■アゼリナを翔る者達 ※船旅と港町、観光したり、謎を解いたり。壮大。キャラの人格設定が合致するととても燃える。 ■深き淵から ※PTに関係設定してプレイをおすすめ。PT会話豊富。最初の選択肢は是非大事な相手がいるキャラで。 ■桃源郷の恋人 ※PTに関係設定してプレイおすすめ。PT会話豊富。所持クーポン分岐、イベント分岐が作り込まれていて何周やっても楽しいです。
■廃墟のひとり子 ※姿を消した仲間を残りの5人が捜す。姿を消した側の仲間の場面もみれてときめく。 ■悪夢の地※PC達のかっこよさ。壮大で燃える展開。マルチエンド。一番長い展開のエンドは本当に熱くなります。 ■見知らぬ仲間 ※リーダーを気遣う参謀と盗賊が一癖あってたまらない。 ■帰らずの遺跡 ※参謀かっこいい。自キャラの参謀がリアリストというか冷血タイプなら是非。 ■碧眼の瞳 ※幾度も試行錯誤しながら頑張るPC。シリアス。徐々に広がる展開。 ■冒険者の宿で ※ある程度散策進めていくと、釣り、散策、ダンジョンなんか色々出来る。時々墓地の教会で…? ■砂を駆る風となれ ※PCの魔術師役メイン。カンタペルメのネタで雑談可愛かった。砂漠はロマン。 ■敵意の雨※シリアス。数々の強敵を倒してきたPTで是非。 ■協奏曲<FATE> ※6話完結。作り込みが凄い。リーダーメイン。2話目は是非リーダと仲の良いPCで。吟遊詩人反応有り。 ■キカイジカケ ※口調対応はそれなり。演出が凄く好き。リーダーと相棒がとても仲良しなので、そういう二人を選択するといいかと。 ■紫紺に染まる真紅都市 ※ファッションショー開催までに事件解決するシナリオ。多数のクーポン対応によるPCとNPCの反応の多さに脱帽と感動。調査楽しいいい ■凍える湖城 ※冒険者たちがわいわいしながら街を助けるのがとても好きです!サブイベントあったりする!かわいい!! ■幻牢の王国 ※見知らぬ土地で散り散りになった仲間を探しにいく…冒頭からときめきますね。仲の良いPTの軽いやりとりがすごく楽しいです! ■ 銀の小袋亭※暗殺者タイプの盗賊キャラで是非 ■ジェーンシリーズ ※コミカル。PCとNPCのやりとりが楽しい ■相棒捜しの依頼 ※親友、片思い、恋人設定で楽しめる ■ 汝は王様なりや?※さくっと笑いたい方。テンション高いパーティが好きなら。パイルドライバー!!!! ■屍の恋人※お互い大事に思っている相手がいる2人をパーティに入れて是非 ■よいこの雑貨※保護者とマスコットのある日。可愛い。ほんとかわいい!! ■幸福な関係 ※大事な相手を看病する話。親友、片思い、恋人で楽しめる ■盗賊物語 ※盗賊、盗賊スキル大活躍。潜入捜査とか好きな方向け ■B.U.Gallery ※ちょっと背筋が寒くなる話。PT内の会話多くて楽しい ■記憶は洞窟の中に…… ※仲間の1人がうっかり記憶喪失に。コミカル ■紅し夜に踊りて※紅い夜に戦う冒険者達。最後の敵は…! 人外PCいたら本当滾りますよ。 ■劇団カンタペルメ※演劇しようぜ!! 大好き!!! ■にわか雨の英雄 ※コミカルな立ち位置のPCがいれば是非。娘さんとの攻防! ■局外者 ※じんわりと雰囲気が大好きなんです……。PC1人が吸血鬼になってしまうのでご注意ください ■木の葉通りの醜聞 ※知識人、参謀系PCがとても格好いい。ちょっとした推理。 ■虹色の魚 ※海に潜って魚探し…だったんだけれども! ■がたごと。 ※おだやかにべた甘ですね…。お互い素直で甘い関係のPCがいるなら ■喧嘩にかぶる笠はなし ※ツンデレ口調が、なんかもう…好きです(真顔)くだらないことで喧嘩するけど仲良し冒険者達で是非 ■交易都市の一夜※追っ手をまいて書類を届けろなシナリオ。PCが帰らぬ人にならないようルート選択は慎重に… ■寸劇剣戟バレンタイン※しゃべりまくるPC達が楽しい!寸劇しながらチョコを依頼人にあげるシナ。クールなPCだとイメージに注意かもしれない。 ■月下美人 ※仲良しな二人組で。親友、恋人設定と口調設定可能。ツンデレも付与できます。ときめきます。 ■相棒捜しの依頼※2人用。恋人、片思い、親友関係設定+喧嘩仲間、普通、主従、暴走選択可能。口調設定もできるので、PCに関係設定考えてれば是非。可愛い。 ■ゴブリンの洞窟coolREMIX ※お前等…クールすぎるぜ ■アンタレス ※この世界観、雰囲気が凄く好きです…。静かな夜の街を一人で歩く。 ■盲目の道筋 ※すごい緊張感。低レベル向けとのことですが、高レベルでも楽しめるんじゃないかな。背筋が寒くなる演出が凄い。 ■美酒は魅惑の味わい ※兄貴系シナリオです。しかし、お酒の材料集め楽しい。 ■ザベリヤ村の攻防戦 ※緊張感ある村探索とギミックや建物を利用した篭城戦にときめきました…。 ■施錠された小屋 ※みんなで小屋掃除。丁寧な作りです。どうしようもなくなったばあいもちゃんと脱出できますが、色々とアイテム利用していく課程楽しい。 ■雨宿りの夜 ※この静かにぞくりとする雰囲気が大好きです…。探索ほんのりホラー好きにお勧めしたい…! ■ガラス瓶の向こう ※深い絆で結ばれた二人の冒険者でどうぞ。たのしみすぎてDLからしばらくプレイできなかった。ときめきますね。 ■賢者の果実 ※受難の主人公(戦士タイプ、あまり頭良くないの推奨)と仲間の掛け合いが凄く楽しいです。 ■My Own World ※恋人、仲が良すぎな親友とかの二人でプレイを是非。片方が依存気味なのがすごくたまらんです ■祝日のネットワヤージュ ※パーティがわいわいしながら、年末大掃除。保護者とマスコットの間柄設定できるノ嬉しいな。クロスオーバーの会話もいい。 ■ネムリヒメ ※仲の良い2人でぜひ。 ■わっしょい! ※わっしょい!!わっしょい!!そいや!!そいや!!(かなりルート分岐があるので狂い系大丈夫ならぜひ) ■アッチャラペッサー ※アッチャラペッサーアッチャラペッサーアッチャラペッサーアッチャラペッサーアッチャラペッサーアッチャラペッサーアッチャラペッサーアッチャラペッサーアッチャラペッサー ■聖北屋敷(仮) ※吸血鬼が主人公ですよ!!吸血鬼PCをコミカルに大変な目に会わせたい人あつまれー!! ■魔導書解読の依頼 ※次第に様子��おかしくなるPCの1人。PT同士の会話がいろいろ考えられていて楽しいです! ■赤い花は三度咲く ※戦士がかっこいいーー!!戦士と参謀の互いを考えてこその喧嘩から始まり、救出、その後の展開が素敵。 ■毒を食らわば ※2人シナリオ。皮肉屋参謀とちょっとお人好しの戦士がかなり危険な目に。シリアスでややグロ。なんだかんだ信頼しあってる感じがすごく良いです。あと全体の雰囲気が好き。 ■In the mirror ※とあるNPCはわかるひとにはわかるあの方。巻き込まれたPCを助けるために仲間ががんばる展開大好きです。 ■Through the hole ※↑の続き。切り替えながらダンジョンの謎を解いていくのが楽しいです。バッドエンドはなかなかぐろいので注意。 ■アケロンの渡し ※最後の台詞がかっこいいです。幽霊船探索は楽しいぞ! ■老婦人と絵画 ※老婦人と1人のPCの短いふれあい。長命種でやるとまた感慨深いかもしれない。私はひねくれ系のやつ突っ込ませました。 ■ウニ退治 ※狂い系なのかな・・・?な、なんかすきです・・・。 ■まどろみは竜の夢 ※依頼先で病に倒れた主人公を救うべく、仲間たちが探索へ。PTの会話が主体。雰囲気が素敵です。 ■船出の歌を歌うという事 ※1人用。目が冷めたら見知らぬ船にいた。魂を救ってあげる話。静かで切ないですが、美しい雰囲気です。 ■碧落飛翔 ※竜と共にレースに挑む話。主人公だけじゃなく他の仲間との連携や支え合いが描写されていてたまらない。後半の流れは鳥肌ものです・・・! ■Mimic ※参謀かっこいいーー!!後半の台詞ははまるかたにはがっつりはまるとおもいます。あと全体のつくりがとても丁寧だなあと感じます。 ■ごく普通のゴブ洞 ※これだけ大量のフレーバークーポンに対応しているシナリオを今まで見たことがない。すべてのPCでいきましょう!!ぜひ!! ■ハロウィンカーニバル!!(仮)企画サイト ※限られた素材を生かして各々がシナリオを作り、一箇所のアップローダーにまとめあげる企画。楽しいハロウィンシナリオいっぱい。 ■Wolf’s Night ※狼男の足取りを追うシティアドベンチャー。PTのキャラ付けがしっかりされているので合致すればかなり盛り上がるかと! ■ワナ罠 ※カードワースならではの楽しさ。まずはぜひやってみてほしいです。楽しい! ■まどろみは竜の夢 ※主人公と相棒の掛け合いを中心としたシナリオ。とある竜との邂逅。展開によっては…? うおお好きだ。 ■ねことぼうけんしゃと ※猫に触りたい冒険者とそれを見守る冒険者かわいい!!保護者とマスコットみたいな間柄で遊ぶと暖かい気持ちになります ■日記 ※同じ組み合わせで周回プレイでなるほどとなる感じ。PC同士のやりとりが、お互い信頼しあってるんだなあと感じて嬉しいです。 ■夜と私と吸血鬼と ※メンタル弱い吸血鬼ってかわいいとおもいます…。いつもは不遜な子がよわるとこうなるでも、もともとちょっと打たれ弱いタイプでも私は美味しいなと!! ■パーティ名会議(新) ※素養クーポンたくさんあればあるほど会話の幅が広がってすごくたのしい!!です!! ■夜闇を駆ける ※親友な間柄でやりました。視点切り替えと時間制限の緊迫感がすごい。頭脳担当の方のリドルは右の部屋に苦戦しつつなんとかなったのでよかった! ■金の鍵の部屋の恋人 ※内側にこもらせる系PCが好きだとときめきます。表面は落ち着いた水面みたいというか、感情を爆発させず、淡々とした態度をとってる相方が愛しい ■黄昏の恋人 ※仲間の逢引(?)現場に遭遇した主人公の胸中がみていてにやにやしてしました。相方が主人公を少し子供扱いしてるのが好きです。あとさりげに素養とか吸血鬼クーポン反応してるっぽくてウワアア! ■隣りにいるのは ※無音と効果音で構成された場面と、要所要所でかわされる会話で、じわじわと這いよってくるような恐怖とか狂気とか執着が垣間見えて、心臓を鷲掴みにされます。 ■より道 ※子供PC2人をつっこんだら大変かわいいリリカル空気になってこっちがにやにやしました…。好意をオープンにしてるほうのPCの可愛さ。と内省的な方のむずむずした感じがすごくいいです。 ■鋏 ※戦闘狂と飼い主の組み合わせがまず大好きです!!まさにそういうPCが自PTにいたので嬉しい…。戦闘狂の方を表現する文章一つ一つが、目を通す度に染みこんでくるような感覚になりました。 ■たなごころ ※長命種と短命種の組み合わせがまず大好きだし、この短命種の包容力と長命種の普段はそうでもないかもしれないけれど、ふと未来に不安を感じている臆病さが大好きだなあと思いました。 ■木漏れ日の雫 ※さりげない会話に気心知れた2人という印象を受けて穏やかな気持ちになりました。無礼講!という事でで酒癖暴露されてると楽しいです…ww ■6月末の簡易ブライド ※かーーーわーいかっっっったーーー!!冒頭のやり取りが大好きです。ドア「(解せぬ)」 ■なんかヤバイ洞窟 ※なんかヤバイので、いかないとまずい的な(たとえ脳筋戦士でも落ち着いたリーダーでもクールな参謀でも語彙って大事なのがわかる)
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85 Spates
ルドが握りこんだ雲の小舟の舵は、ただ人の操る舵ではなく、ひとりでに左右に揺れ、錯覚でないならみずから進路を定める心あるものだった。だがすぐに、ディオレがなぜあえて操舵を任せたのかを知ることになる。舵の表面もまた、なめらかに磨かれた雲の結晶を着せられており、手のひらを通じて伝わる流動的な霊力はまさに刻々と変幻する雲のようにつかみどころがなかったが、ルド元来の素直な心はさまよえる舟のかすかな呼びかけを聞きとった。
「……そうか、僕がきみの風になればいいんだね」
雲の結晶の張る不可視の障壁に守られながら、前方では時化に揺れる舟にも動じず、ディオレがサーベルを口にくわえ、空いた両手に取りあげた弓矢で金の羽の精霊に狙いを定めている。その矢じりは七色の石から削り出され、だが脅威をしりぞけるため今は七色を縒り合わせた白光を鋭く放っていた。ルドが操舵に集中すると、舟に張り巡らす結晶を通じて、降りしぶく風雨や砂粒の細部にいたるまで鋭敏に感じ取れる。砂は彼らのまとう棘であり、風は刃であり、���は敵に重圧をもたらす大楯だった。その敵意を受け流すようにルドが舵を切ると、舟の揺れがつかのま消え失せ、この機をディオレが逃すはずはなかった。
限界まで引き絞られて解放された弓弦より、光の矢は暴風を切り裂いて飛び、幻妖の抜きん出た感覚のもたらす必殺の技が、金の羽の精霊、その中心を果然として貫いた。狂おしく混沌めく飛翔に踊っていた精霊の羽はみるみる色を失い、幻のように掻き消えていく――すると絶え間なく船体にぶつかる波濤と化していた砂嵐は鎮まり、直接に肌や装備を傷つけるものも無くなった。金の羽の精霊は砂を司っていたのだ。
砂の精が散るとともに、結晶の舵があからさまに重くなった。ルドは魔力に乏しい代わりに持ち前の腕力でどうにか支えたが、わけがわからず当惑する。
「今、雲の小舟は、彼らの怒りや悲しみを――霊力をエネルギーにしているんだ。どうか耐えきってくれ!」
サーベルを手にしながらディオレがそう叫んでいた。オアシスで眠っていた時は柔和な乳白色だった雲の結晶はいま、その内部に禍々しい紫黒色に渦巻く乱気流をうならせ、嵐の智慧と稲妻の慧眼を映して、不吉な、だが偉大なる自然の力を宿していた。だが砂の精の情動が失われ、雲の小舟は別離を哀れむようにか細く明滅する。ルドは痛む胸を押し黙ってこらえ、舵を握りなおした。
砂の暴威は去り、だが雨と風は止まなかった。疾走する舟を、二匹の精霊が猛然と追撃する。銀の羽の精霊が次々に射かける稲妻を、バルナバーシュはアルドゥールを振るって弾き返していた。
「バルナバーシュさん、その子は雨です……!」
弱まった舟の障壁をすり抜けて、横殴りの豪雨が一行を打ちすえる。舟と完全に心を通わせたルドの言葉を聞き、バルナバーシュは帆柱につかまりながら、アルドゥールの切っ先を天へ差し向け、呼吸と心気を静め――来たる痛みを耐え抜くべく――精神を統一させた。雨の精が放ったひとすじの太い稲妻を、避雷針とした剣尖がとらえ、激しい衝撃と焦熱がバルナバーシュの身内を走り抜けた。踏みしめて弾かれずにすんだ全身に、電光の鎖が絡みつく。限界まで見開かれた碧眼はユンデルスの流す血の色を放ち、髪は紫電の光に逆立った。船体の雲の結晶が呼応してまばゆく輝き、膨大な霊力の集束に、バルナバーシュの体は想像を絶する慟哭を上げて負荷に軋んだ。
「ぐ、おぉおッ!!!」
骨が砕けんばかりの痛みを超え、精霊の怒りを帯びた全身から叫びをほとばしらせながら、彼は雷撃のまつろうアルドゥールを大上段から振り抜いた。宙を裂く剣閃から放たれた稲妻は竜を象って嵐を翔け、翼が雨粒を吹き飛ばし、雨の精にあぎとが食らいつく――その身を貫く、己れの怒りの凄絶さを知りながら、雨の精は火花のあとに音もなく塵と消えていった。
「ああ、舟が!」
原動力を失いつつある舟が大きくかしぎ、ルドはついに舵の重さに堪えられなくなった。だがそれでもなお放さない彼の手に、くすぶる身を引きずって駆け寄ったバルナバーシュの手が重ねられる。過酷な反撃を果たして満身創痍のバルナバーシュにはもたれかかるしか出来なかったが、瞳の奥では暗い焔が静かに燃えたぎっていた。
バルナバーシュは眠るように目を閉じ、瞼の裏では、かつて悪友のウィローと連れ立って嵐の夜の郊外へ飛び出して、かの精霊たちが乗りうつったように、全身で風雨を受け入れ、稲妻に総毛立ち、むせかえる大地の匂いへの悦びに打ち震えた若き日を安らかに思い起こしていた。それは自分たちを脅かす者へたけりたつ挑戦でもあり、果てない闘争の活力だった……。
その彼の魔力とイメージが可塑へ昇華したか、あわや地に落ちかけた雲の小舟は浮力を取りもどし、ルドはバルナバーシュの肩を担いながら片手で舵を切る。雷雨は去り、視界は開け、暴風がわずかな雨粒を運ぶまでになった。ただひとり残されながらも、青い羽を持つ精霊が後方より舟を追いすがる。ディオレはサーベルをおさめると帆柱によじ上り、柱に絡ませた脚で体を支えながらふたたび弓に矢をつがえた。
(我らの見知らぬ、我らの遠く悲しき化身たちよ――)
金の瞳が、孤高の空を司る最後の精霊を見据える――全ての嵐には悲しみが隠されている。蝶のはばたきが、運命の分かれ目が、誰かの死が、やがて遠い地で竜巻と変わる、混沌の力がはたらいているのだとすれば……。ゆえに、嵐の前に倒れてはならない。生きて、許し、立ち向かい続けるのだ。ありとある悲嘆もまた、宇宙を創り、我らがそこに生きる者ならば――我らの中に流れるかけがえのない一部、血に継承された――(遺志)――意志なのだから。
(焦がし、焼きつくせ。いつか光になるために)
祈りの句を編み上げて放たれた一条の矢は、狙いたがわず空の精の中心を射抜き、青い羽を生み出していた光の線が切れ切れにほどけて宙に散っていく。精霊は最期の時に、己れの霊力――荒れ狂う情動を爆発させた。すさまじい衝撃波と変えてフェレスの主らを後方より叩きつけ、船体ごと大きく持ち上げる――雲の結晶がはち切れんばかりに鼓動し、暴走して制御のきかなくなった舵にルドは慌てふためくしかなかった。天地が逆さまになり、荷が舞い、翻弄の勢いのまま舟が沙漠に転覆しようとしている。
「投げ出される――皆、身を守るんだ!」
ディオレはいちはやく帆柱を蹴り、軽やかに宙を舞って受け身と変える。ルドもマックスを抱えて舵を手放したが、バルナバーシュだけが艫に寄りかかったまま立ち上がれないでいた。
「バルナバーシュさん!!」
片手で彼の腕をひっつかんで、ルドもまた舟板を蹴って脱出した。雲の小舟は地上から三十フィートを超えたところを飛んでおり、眼下には闇沙漠が広がっていた。ルドはマックスとバルナバーシュを胸に抱きながら、地に背を向け、心を無にした――空は嵐が過ぎさり、薄れた雲の間、その天高くに永く隠されていた星空がきらめいていた。この光景はほんのいっときで、ふたたび女神の流す涙の彼方へと秘められるのだろう。雲の小舟が光の尾を引いて翔け、その影が小さくなるのを見届けながら、ルドは沙漠へと落下した。高所から背を打ったが、機械の装甲と厚い砂の層が彼を負傷から守ってくれた。
「無事か……!」
目の前の砂丘を、必死の形相のディオレが越えてくる。ルドはバルナバーシュをそばに横たえると、返事がわりに手を振った。
「嵐を越えるのは無理無体な判断だった。すまない」
ひざまずいたディオレが重く頭を垂れる。咳込みながらバルナバーシュが身を起こすと、気づかわしげにディオレを見つめた。
「たしかに、案内にしてはあまりに危険だったかもしれない……少なくとも君にとっては、我々の命を守るのが主義だろうから。だが、あの道を取るほかになかったとも思う。結果論だがね」 「僕も、バルナバーシュさんと同じ気持ちです」
ルドがやや遠慮がちに言った。
「きっと、避けては通れなかった。そう思うんです」 「ルド、バルナバーシュ。君たちは転落した瞬間から異なる次元に飛んでいたようだった。向こうでなにがあった? 現次元ではたった数分のことだったのだが」
ディオレの問いに、バルナバーシュはうなずきを返した。
「ハキュスの次元のように、過去にさかのぼったのかもしれない。そこではハインがイープゥを狩っていた……私は嵐のはじまりに遭遇したんだ」 「ハインさんに会ったんですか?!」
ルドが驚く。その生存に、彼の中では安堵と懸念が入り混じっているようだった。
「ああ。あの時ははぐれていたが、彼はナナヤを連れている。それと、グレイスカルも生きているはずだ……姿を確認しないままこちらへ戻ってきてしまったが」
ルドとディオレはただ顔を見合わすしか出来ず、バルナバーシュもまた、この異様な体験について、いくばくかの考える時間を必要としていた。あたりは茫洋とした砂丘群が広がっていたが、つかのま雨雲が流れたことで星月が光を投げかけ、地平線を見晴るかせるほどに冷たく荒涼としていた。はるかな稜線を往く、ゆるやかな夜気に舞う砂塵が銀鱗のごとく濡れた光を放ち、秘密めいてはためく天然のベールの様相を生み出している。闇沙漠の宵はいっそう深く、いまだ眠り続ける神に魅入られた悪夢のなかにあった。
バルナバーシュの治癒と休息を終え、三人と一匹が砂丘のいくつかを越えると、マックスが何かに気づいて尾を振り、我先にと駆けていく。
「待って、マックス!」
ルドが追いかけ��さきの砂地には、指につまむほどの小さなガラス玉が散らばっていた。多様な色合いがあり、藍色の闇をたたえたひとつを手のひらに載せてみると、球体のなかで雨の波紋が無数に広がり、耳を澄ませば水滴のしたたる音さえも聞こえてくるのだった。他にも、油然とわく積乱雲を閉じ込めたもの、過渡する沙漠の風紋を閉じ込めたもの、ひりつく稲光を閉じ込めたもの――追いついたディオレも手に取ると、これはみな飴玉なのだと言った。
「闇沙漠の嵐のあとに残される、精霊たちの遺物だ。食べられるものだよ。どんな味がするかは口にするまで分からない。ただし、眠りにつく前には注意が必要だ。自分ではない誰かの夢を見た者も過去にいたらしい」
「ディオレさんも食べたことがあるの?」
「沙漠を往く戦士になるための儀礼でな。闇沙漠がいかなる地なのかを学び、また永劫に探究を続ける道を望む者だけが、その儀礼をおこなう。むろん、みなが戦士にならずともよい……それは選択であって、掟ではない。掟によってでは、沙漠にある悲しみを知ることはできないから」
望めば誰もが戦士になれるし、そうでなければオルトフのある次元のなかだけで、生業をさがし、人生を営んでいくのだともディオレは語った。三人は飴玉をすべて回収し、保存がきく、特別な食料として分け合った。バルナバーシュによれば、魔力の補填や心の鎮静にも役立ちそうだという。
「パワースポットまではまだ遠いのか?」
バルナバーシュの憂慮に、ディオレは思案顔を見せる。
「道を外れたが、近づいてはいる。ここは……おそらく<蜃気楼の夜>と呼ばれる地だ」
ディオレが先だって砂丘を駆け上がり、高所よりしばし地勢を調べていたが、その認識を確かにすると「ついてこい」と二人をうながし、砂丘の向こうへと消えていった。バルナバーシュとルド、そしてマックスは、まだ見ぬ展望をさしてディオレの足跡を辿っていった。
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シネマ歌舞伎『海神別荘』 原作:泉鏡花 制作:松竹(株) シネマ歌舞伎で泉鏡花原作の『海神別荘』を観ました。いつもながらの役者たち、とりわけ玉三郎の演技には心底感服します。また、2009年の上演とはいえ、海老蔵はあんなに男前だったかと、あらためてその整った容姿にほれぼれしました。 ただ、この『海神別荘』、同じ泉鏡花の作品でも、前回観た『天守物語』とはかなり趣が異なります。『天守物語』は異界の者たちを描きながらも、観る者に人間の奥深さを知らしめるようなところがありました。しかし、今回の『海神別荘』ではもっぱら、人間界とは相容れない異界の姿が描かれています。
物語のあらすじ 物語の舞台は海底にある別荘(宮殿)です。そこは公子(おうじ)と使いのものたちが、陸(くが)とは別世界を生きています。そこでは思うがままに姿形は変わり、事物は極限まで美しく、剣を手にすれば忽ち敵を殲滅する武の力を備えています。そして公子の美と愛の形もまた、人間界と似て非なるものです。 人間界から一人の美女が公子のもとへ嫁入りをします。海の財宝と引き換えに娶られた美女は、波に飲まれて死んだはずの自分が、海底の宮殿で生きていることに驚きます。美女はその姿を陸で嘆き悲しむ父にひと目見せたいと懇願するのですが、公子はできないといいます。そして、貴女は陸では蛇なのだからと打ち明けます。 しかし、美女の願いは止まりません。公子は万物を自在にあやつることができます。貴女は陸に行けぬことはない、行くがいいと美女に許しを与えます。 忽ちにして美女は陸で蛇と化します。それを見た父の妾は卒倒し、父は下男とともに鉄砲で蛇を狙います。その仕打ちに美女は再び海底にもどり、泣き伏します。泣き果てて死にたいといいます。しかし、公子はここでは悲哀のあることは許されぬと、忿怒の形相をあらわに、美女を剣で殺そうとします。 しかし、剣が美女を切り裂こうとしたそのとき、美女は公子のあまりの美しさに、故郷を忘れました、さあ殺してと至福の笑みを浮かべるのです。その刹那、陸への執着を断ち、海神世界の美に目覚めた美女は公子に見初められ、男女未分の世界に生きる竜となるのでした。 人間世界とは異なる海神世界 『海神別荘』の面白いところは、海底世界の価値観が、多くの点で人間世界の常識とはかけ離れていることです。 第一に、人間は美を十分に見ることができない存在として描かれています。人間界に美がないというのではありません。公子は「陸は尊い、景色は得難い」と陸の美を認めつつも人間はその美を見ることができず、見ることができるのは海底に住む者たちだといいます。これは、美女が陸の者であり、その父が財宝と引き換えに美女を波に飲ませたことに象徴されています。海神世界の美が陸では蛇に倒置されていることもその現れでしょう。 第二に、海神世界では人間につきものの悲哀が許されていません。このことは、例えば、浄瑠璃に描かれたおさんやお七の引廻しの刑に悲を認めず、それがなぜ刑罰なのかと難詰する公子の考え方に現れています。最後の場面で美女が陸の記憶を忘れ人情や悲哀が消え失せ、公子に認められる場面はそのピークといえるものです。 第三に、海神世界は人間界に勝る武の力を備えています。これは津波を起こして美女を拐う自然現象に見立てた場面だけでなく、「敵に勝てば可いのだ。私は、この強さ、力、威あるがために勝つ。」と語る公子の思想にも現れています。 第四に、海神世界には男女がいません。物語の最後で「女の行く極楽に男は居らんぞ。男の行く極楽に女は居ない。」と語る公子の言葉がこれにあたります。人情や悲哀が否定されているのですから、人間が心に浮かべる男女は居ないということなのでしょう。この台詞にはつぎのような状況描写が添えられています。
鎧の結目を解きかけて、音楽につれて徐ろに、やや、ななめに立ちつつ、その竜の爪を美女の背にかく。雪の振袖、紫の鱗の端に仄に見ゆ。(No.834)
公子の正体は竜と思わせる記述です。また使いの博士が語る「竜胆(りんどう)と撫子(なでしこ)」のように、美を象徴する植物に「竜」が使われています。おそらく公子は竜なのでしょう。そうであれば、男女の人心を持たないという公子の言葉も納得がいきます。 本作に込められた異界の世界観 わたしたちは異界の目で異界を見ることはできません。それどころか、公子によれば、人間は陸にもある美を見分けることすらできないといいます。上に述べた本作の第一の特徴がこれにあたります。 しかし、すべての人間に美が見えないわけではありません。公子と美女の俤(おもかげ)が姿した竜胆と撫子に、「人間にそれがわかるか。」と問われた博士が「心ないものには知れますまい。詩人、画家が、しかし認めますでございましょう。」と答えたように、一部の人間に美は見えるというのです。 それではどのようにして、人間は美が見えるようになるのでしょうか。『海神別荘』ではその重要な要素に死が位置付けられています。このことは、陸から嫁入りする美女を通じて、二つの場面で描かれています。 まずひとつは、津波を受けて小舟から波に飲まれ、美女が海中へと逆さまに落ちていく場面です。その様子を目の当たりにした娘の父は、陸にあった娘の死を嘆き悲しみます。このとき美女は人間として死んだのです。 二つ目は、公子の剣で美女が切り裂かれる刹那です。このとき美女は「早く殺して。ああ、嬉しい。」と笑みを浮かべます。このとき美女はふたたび死んだといえるでしょう。海底の宮殿で生きている美女は波に飲まれて海中に沈んだとき、人間界の死を体現しました。しかし、冥界で生きるための第二の条件、悲哀の排除は叶えていません。悲哀を抱いたままでは生きられない美女は、人間界だけではなく、冥界でもふたたび死ななくてはならなかったのです。 この二度の死を経て美女は公子に認められます。こうして美女は公子とともに異界の生きものとなったのです。そして恐らくは雌雄のない番いの竜として、公子同様に武をまとい異界に生息することになるのでしょう。物語の第三と第四の特徴が美女にもそなわり、あらたな竜の誕生を予見してみせたのが、『海神別荘』の最後の場面なのだと思いました。 泉鏡花にとって異界とは 泉鏡花にとって異界とは何なのでしょう。容易にイメージできるほど作品に接しておらず、いずれもシネマ歌舞伎で観た『天守物語』と『海神別荘』からの想像でしかないのですが、冒頭に書いたように本作では、異界の実相がかなりしっかりと書き込まれていると思いました。 その描き方も特徴的です。「美は人間には見えない」に代表されているように、異界は人間界と対照する形で描かれています。そうでありながら、両者を媒介するかの詩人や画家、あるいは竜胆や撫子もしっかりと配置されています。見えないものには美は見えないと突き放す一方で、覚悟をもってすれば見る手がかりはあるというのです。 鏡花にとって異界とは、だれにでも容易には到達できない美の象徴なのでしょう。異界は死を経てなお超えていく至難の道の果てにありながら、山河や野に咲く花にすでに姿している、それは見えないだけなのだと。そこには不可視の美の実相があります。 おそらく鏡花は、死を美に至る不可欠の条件とは考えていないのだと思います。数多の宗教家たちが観てきたように、答えは本来そこにあるのだと。 公子と美女、互いの血を盃に交わし終生の誓いが交わされた途端、陸の故郷の野に紫と赤の花が咲きます。しかし、すでに美女は、見覚えたはずの花を忘れています。公子は美女に語りかけます。
お前、私の悪意ある呪詛でないのが知れたろう。(No.813)
異界が幻想的な美で描かれるのも、そこにないものの美を描いて見せるという、美の実相への逆説なのかもしれません。公子と美女が番いの竜となり、竜胆と撫子に花を咲かせたところに、美の思い出を訪ね歩き止まらない、鏡花の人生と深い人間味を思いました。
1)本稿で引用した台詞は「泉鏡花『海神別荘』青空文庫, Kidle版.」を参考にしました。 2)引用番号はKindleの表示に基づきます。 3)冒頭の画像は下記の画像に文字を追加したものです。 シネマトゥデイ「シネマ歌舞伎『天守物語』『海神別荘』『高野聖』予告編」YouTube. https://youtu.be/ZD3sn8CSHcE
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