#早朝青の洞窟
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2024.10.13
映画『HAPPYEND』を見る。父の時代の学生運動のような雰囲気と、街の風景のクールな切り取り、存在感があり重厚な音楽の使い方から愛しいものとしてのテクノの使い方まで大変気に入り、今度会う人に渡そうと映画のパンフレットを2冊買う。その人と行った歌舞伎町時代のLIQUIDROOM、どんどん登らされた階段。小中学生の時に自分がした差別、あの分かっていなさ、別れた友人、まだ近くにいる人たち。
2024.10.14
銀座エルメスで内藤礼『生まれておいで 生きておいで』、ガラスの建築に細いテグスや色のついた毛糸が映える。日が落ちて小さなビーズが空間に溶けていくような時間に見るのも素敵だと思う。檜の「座」で鏡の前にいる小さな人を眺める。「世界に秘密を送り返す」を見つけるのは楽しい。黒目と同じだけの鏡、私の秘密と世界の秘密。今年の展示は上野・銀座ともに少し賑やかな雰囲気、外にいる小さい人たちや色とりどりの光の色を網膜に写してきたような展示。でも相変わらず目が慣れるまで何も見えてこない。銀座にはBillie Eilishもあったので嬉しくなる。
GINZA SIXのヤノベケンジ・スペースキャットと、ポーラアネックスでマティスを見てから歩行者天国で夜になっていく空を眺めた。小さい頃は銀座の初売りに家族で来ていたので、郷愁がある。地元に帰るよりも少しあたたかい気持ち、昔の銀座は磯部焼きのお餅を売っていたりしました。東京の楽しいところ。
2024.10.18
荷造り、指のネイル塗り。足は昨日塗り済み。年始の青森旅行時、2泊3日の持ち物リストを作成し、機内持ち込み可サイズのキャリーに入れ参照可能にしたところ、旅行のめんどくさい気持ちが軽減された。コンタクトや基礎化粧品・メイク用品のリスト、常備薬、安心できる着替えの量。持ち物が少ない人間にはなれそうにない。日常から多い。部屋に「読んでいない本」が多いと落ち着くような人間は持ち物少ない人になれない。
2024.10.19
早起きして羽田空港。8:30くらいに着いたらまだ眺めのいいカフェが開いておらず、とりあえず飛行機が見える屋上に行く。このあと雨が降るはずの曇り空からいきなり太陽が照り出して暑くなり、自販機でマカダミアのセブンティーンアイスを買い、食べる。突然の早朝外アイス。飛行機が整列し、飛び立つところをぼんやりと眺める。飛行機は綺麗。昨夜寝る前にKindleで『マイ・シスター、シリアルキラー』を買って「空港ではミステリー小説だろう」と浮かれて眠ったのに、100分de名著のサルトルを読み進める。実存主義を何も分かっていないことをこっそりとカバーしたい。すみませんでした。
10:15飛行機離陸。サンドイッチをぱくぱく食べたあとKindleを手に持ったまま眠ってしまい、11:55宇部空港着。
宇部空港、国内線のロビーは小さく、友人にすぐ会う。トンネルを抜ける時、窓が曇り、薄緑色の空間に虹色の天井のライトと車のライトがたくさん向かって来て流れる。動画を撮影しながら「綺麗くない?」と言うと「綺麗だけど本当は危ない」と言われる。かけるべきワイパーをしないで待っていてくれたんだと思う。
友人のソウルフードであるうどんの「どんどん」で天ぷら肉うどん、わかめのおにぎりを食べる。うどんは柔らかく、つゆが甘い。ネギが盛り放題。東京でパッと食べるうどんははなまる系になるので四国的であり、うどんのコシにもつゆにも違いがある。美味しい。
私は山口市のYCAMのことしか調べずに行ったので連れて行ってもらう。三宅唱監督の『ワイルドツアー』で見た場所だ。『ワイルドツアー』のポスターで見た正面玄関を見に芝生を横切ったが、芝生は雨でぐずぐずだった。でも全部楽しい。
広くて静かで素敵な図書館があり、心の底から羨ましい。小さな映画館もあり、途中入場できるか聞いたおじいちゃんが、「途中からだからタダにならない?」と言っていたがタダにはなっていなかった。一応言ってみた感が可愛らしい範囲。
YCAM内にあるのかと思っていたら違う倉庫にスペースのあった大友良英さんらの「without records」を見に行く。レコードの外された古いポータブルレコードプレーヤーのスピーカーから何がしかのノイズ音が鳴る。可愛い音のもの、大きく響く音のもの。木製や黄ばんだプラスチックの、もう存在しない電機メーカーの、それぞれのプレーヤーの回転を眺めて耳を澄ませてしばらくいると、たくさんのプレーヤーが大きな音で共鳴を始める。ずっと大きい音だと聞い��いられないけれど、じっと待ってから大きな音が始まると嬉しくなる。プログラムの偶然��も、「盛り上がりだ」と思う。
山口県の道路はとても綺麗で(政治力)、道路の横は森がずっと続く。もとは農地だっただろう場所にも緑がどんどん増えている。私が映画で見るロードムービーはアメリカのものが多く、あちらで人の手が入っていない土地は平らな荒野で、日本の(少なくとも山口県の)土は放っておくとすぐに「森」になるのだ、ということを初めて実感する。本当の森の中にひらけた視界は無く、車でどんどん行けるような場所には絶対にならない。私がよく散歩をする所ですら、有料のグラウンドやイベント用の芝生でない場所には細い道を覆い隠す雑草がモコモコと飛び出して道がなくなってゆく。そして唐突に刈られて草の匂いだけを残す。私が「刈られたな」と思っているところも、誰かが何らかのスケジュールで刈ってくれているのだ。
山口県の日本海側の街では中原昌也と金子みすゞがそこかしこにドンとある。
災害から直っていないために路線が短くなっているローカルの汽車(電車じゃない、電車じゃないのか!)に乗って夜ご飯へ。終電が18:04。霧雨、暴風。一瞬傘をさすも無意味。
焼き鳥に挟まっているネギはタマネギで、つきだしは「けんちょう」という煮物だった。美味しい。砂肝、普段全然好きじゃないのに美味しかった。少し街の端っこへ行くとたまに道に鹿がいるらしく、夜見ると突然道路に木が生えているのかと思ったら鹿の角、ということになり怖いらしい。『悪は存在しない』のことを思う。
2024.10.20
雨は止んでいてよかった。海と山。暴風。人が入れるように少しだけ整えられた森に入り、キノコを眺める。
元乃隅神社、123基の鳥居をくぐり階段を降りて海の近くへ。暴風でiPhoneを構えてもぶれて、波は岩場を越え海の水を浴びる。鳥居の上にある賽銭箱に小銭を投げたけれど届くわけもない。車に戻ると唇がしょっぱかった。
山と海を眺めてとても素敵なギャラリー&カフェに。古い建物の改装で残された立派な梁、屋根の上部から太陽光が取り込まれるようになっていて素晴らしい建築。葉っぱに乗せられたおにぎりと金木犀のゼリーを食べる。美味しい。
更に山と海を眺めて角島へ。長い長い橋を通って島。古い灯台、暴風の神社。曇天の荒れた海も美しいと思う、恐ろしい風や崖を体感としてしっかりと知らない。構えたカメラも風でぶれるし、油断すると足元もふらつく風、窓につく塩の結晶。
山と海を眺めて香月泰男美術館へ。友人が見て良い展示だったからもう一度来て見せてくれたのだ。
全然知らなかったけれど、本当に素晴らしい絵だった。油彩なのだけど、質感が岩絵具のようで、フレームの内側に茶色のあやふやな四角が残っているのがとても良い。
フレーミングする、バチッと切り取ってしまう乱暴さから離れて、両手の人差し指と親指で四角を作って取り出したようなまなざしになる。
山口県の日本海側の山と畑と空の景色、荒い波、夜の静けさや月と雲、霧の色を見てから美術館へ連れて来てもらえたから色と色の境目の奥行きを知る。柿はずっしりと重く、花は鮮やかだ。香月泰男やシベリア抑留から帰ってきた画家で、この前読んだ『夜と霧』の暗さと冷たさを思い返した。絵の具箱を枕にして日本へ帰る画家が抱えていた希望、そのあとの色彩。
夕飯は友人の知り合いのハンバーガー屋さんへ。衝撃のうまさ。高校生の時に初めて食べたバーガーキングの玉ねぎの旨さ以来の衝撃、20年ぶりだ。そんなことがあるのか。
2024.10.21
晴天。海は穏やかで、深い青、テート美術館展で見たあの大きな横長の絵みたい。初めて見た海の光。
海と山を眺めて秋吉台へ。洞窟は時間がかかるので丘を散策、最高。
風光明媚な場所にしっかりとした情熱が無かったけれど、「好きな場所だから」と連れていってもらえる美しい場所は、友人が何度も見るたびに「好きだなぁ」と思っただろう何かが分かり、それは私が毎日毎日夕陽を眺めて「まだ飽きない」と思っている気持ちととても近く、感激する。
今までの観光旅行で一番素敵だった。
道々で「このあと窓を見て」と教えてもらい、味わう。
ススキが風に揺れて、黄色い花がずっとある。山が光で色を変え、岩に質感がある。
山口市、常栄寺、坂本龍一さんのインスタレーション。お寺の庭園が見られる場所の天井にスピーカーが吊るされ、シンセサイザーの音を演奏しているのは色々な都市の木の生体信号だ。鳥の声や風の音と展示の音は区別されない。砂利を踏む音、遠くから聞こえる今日の予定。豊かなグラデーションの苔に赤い葉っぱが落ちる。
宇部空港はエヴァの激推しだった。庵野さん、私も劇場で見届けましたよ。
行きの飛行機は揺れたけれど、帰りは穏やかに到着、家までの交通路がギリギリだったため爆走、滑り込む。
東京の車の1時間と山口の1時間は違う。
何人かの山口出身の友人が通った空と道と海と山の色を知ることができてとても嬉しい。
「好きな場所」「好きな風景」ってどういうものなんだろう。
私が通う場所、好きな建築、好きな季節と夕陽。あの人が大切にしている場所に吹く風、日が落ちる時刻が少し違う、友人のいる場所。
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2024白化の記録(9)・9/11
全記録はこちら
水温
29度台。この10日は28度に下がることもなく、30度後半に上がることもなく、安定して29度後半くらいです。
もう9月なので水温は下がります。これは温暖化とか関係なく地軸の傾きの問題なので下がります。
海面水温の30度ラインは一時期北朝鮮&伊豆まで上がっていましたが(◎_◎;) 今は奄美大島まで下がっています。
もう今から30度後半にはならないでしょう。
しかし台風が来なければ緩やかに下がるため、29度以上が9月末まで続いてしまいます。それではサンゴの死亡率が上がるなぁ
やっぱり台風・・・。
概要
水温が29度台では、もう劇的に白化が進行しません。
現在元気なサンゴ、薄色があまり進んでいないサンゴは、高水温に強い白化しにくいサンゴ、または、水温が上がりにくい場所のサンゴです。これらはもう大丈夫です。9月だし、もう逃げ切り決定です。
白化しやすいサンゴ(トゲサンゴやハマサンゴ被覆型のサンゴ)、白化が進み薄色が進んでいるすでに弱っているサンゴは29度でも白化が緩やかに進行しています。
29度では褐虫藻が帰ってくる温度ではありません。すでに白いサンゴは、絶食状態です、その期間が長くなります。すぐ死なないサンゴでもだんだん限界を迎えてきています。
今後29度以上が1日長くなれば、サンゴの死亡率は少し上がります。
8月に起きたようにミドリイシが面で一気に白くなるようなことはもう起きませんが、弱ったサンゴが地味に少しづつ死んでいく状態です。
台風・秋で水温28度になるまでは続くでしょう。
詳細
最も白化しやすい場所、新田などの水深1mのリーフは98%死亡済み。もう白はありません。藻が付き緑か黒。でもこんなところでもなぜか少数生きてるんだよなぁ~。
白化しやすく弱い種、トゲサンゴは。白化しやすい場所は99.9%死亡済み。5m以内は全域で、80~90%死亡済み。5m以上の場所も50%は死にそう。10m以上は生き残っているものが多いが、今そのゾーンが緩やかにまだ白化進行している状態。
今僕が心配なのはショウガサンゴです。薄色になりながら多量には死んでいなかったのですが、ここにきて藻が生えてきました、耐えられ��かったのでしょう。大量死はしないで欲しいけど、今からの10日が勝負かも?
白化しやすいけど強い種、ハマサンゴや被覆型のサンゴ、ハマサンゴは青いけどまぁ余り死なない。被覆型サンゴで白くなりながら生きていたものが絶食期間が長くなり、浅場を中心に死に出しています。かなり増えてきました。心配ですが死亡率はまだ不明。藻が付かないと生き返るか死ぬのかわからないので10月にならないと死亡率ははっきりしません。
アナサンゴモドキが白化がひどく大量死です。浅場は全域でほとんど死にそう。ウフタマは白化が進んでいる場所なので水深10mでも80%以上死にそう。アダン前はまだ色が残ってたりするので50%くらい死ぬあたりで止まってほしいな。
イソギンチャクも一気に白化しました。白化しても死なないけど。
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今の焦点は、水深3~5mのミドリイシ、ハナヤサイサンゴなどが死ぬかどうかです。ここはサンゴのボリュームゾーンですし、レジャー的にも目立つゾーンです。
29度でこの種はもう劇的に白化は進行しません。
今元気なものはもう大丈夫です。
弱ったもの、その中でもチリメンハナヤサイサンゴや枝状のミドリイシが緩やかに白化進行しました。
白化の進行の速い場所、灯台下、シル東、ウフタマ、新田の洞窟などはこのゾーンもミドリイシ・ハナヤサイサンゴ。8月後半から29度なので水深1mゾーンのようには全面純白にまでは進行しませんでした。全滅はしません。良かった良かった~~でも50%以上は死ぬでしょう。割合は、今からの状況次第。
他の場所、アダン前、イボイボサンゴ、阿真ビーチ、宇論の崎、嘉比前などは・・・弱ったものが徐々に死んでいってます。8月中、薄色化は進んでいるが頑張っているからまだまだ死なない~と言っていた奴らが徐々に死んでいってます。
死亡率20%程度で収まるんじゃないかと期待してましたが、台風来ないので、30%になりそうです。それでも大半は大丈夫ですけどね。
一気に純白になって劇的に死んでいくのではなく、薄色が長く続き、その薄色のまま、端っこから、下から、藻に覆われて少しづつ死んでいきます。
Acropora verweyサンゴの産卵でも使うサンゴです。薄色になりながら頑張ってるなぁと見ていたら今、薄色のままどんどん藻に覆われていきます。半分死んじゃった・・・。こういうのが今多いですね。
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展望
9/10、もう水温下がります。今粘って29度キープ状態ですが、もうすぐです。
28度になれば、もう進行はしません。
その後は弱ったものが死んでしまうか、復活するかに分かれます。白化したサンゴはいずれ死ぬか復活するかで白化したままの物などありません。
それがはっきりするのは10月以降ですね。
1mの浅場や白化の進行が早い場所は、かなりひどいなぁと思います。皆さんが次潜っても、「あら、変わっちゃったなぁ~」とすぐわかると思います。新田の洞窟part2はもうポイントではなくなりました。シル東も最後に遊ぶ浅場がだめですアカネダルマが住む場所がありません、使いにくくなりました。
座間味の内海は、ま���大半のミドリイシは生き残る訳でそこまで激変はしません。皆さんは来年見ても気づかないかも?トゲサンゴが大半なくなり、今ショウガサンゴが減りつつあります。ガイドの仕方は変わっちゃいますね。
もちろん10m以上のミドリイシやハナヤサイサンゴはほとんど生き残ります。阿真牛瀬などはトゲサンゴ以外は90%健全のままです。佐久原漁礁の10mのサンゴも白化したハマサンゴが目立ちますが大きく変わらないでしょう。
まぁ1998年を超えると言われてる白化としては、そして台風が少なかったことを加味すれば・・・かなり頑張ったんじゃないかなぁと思います。
他の地域の情報を見る限りましな方なのかなぁ?とは思います。
現在、座間味はステージ3と4の境目です。まぁ実際はそんなにひどくありませんが、計測データではこうなっています。これはいずれ現実になります。
座間味は運よく1998年以来の白化です。
石垣は1998,2016,2022,2024と4回目の大規模白化です。この10年で3回です。すでに常態化しています。
今の石垣は明日の座間味です。
僕も残りのダイビング人生は短くなりました。でも、またこのような白化に会うんだろうなぁと思います。数年以内にね・・・。
そしていずれ、34度になったシミラン諸島や去年のフロリダのような白化が起きるんだと思います。
34度後のシミラン諸島にはいきました。今沖縄で起きているサンゴの白化はあくまで弱い所、弱い種が中心です。まぁ死に方のレベルが違いました。強い種キクメイシ、ユビエダハマサンゴでさえ深場まで全域ですべてが全滅してました。何も残っていません、イソバナだけ残ってたな。いずれ、そういうのも来ちゃいます。
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2021/7/24
朝、目覚ましより先に目を覚ます。相変わらず遠足が楽しみで早起きしてしまう子どもです。すると雨が降りはじめ、なぬ! と思っていると、すぐに雨は止んで、むしろ陽射しが窓から注いでくる。浮きうきで支度をしていると、Nから連絡が来ている。Tが美容室に行くから午後からにしてほしいと。それならカリー食べられるじゃん、となり、予定通りに家を出る。今日も積雲の多い晴れ。上昇する夏のイマージュ。熱気球や光のきらめきを感化しながら、ふたりに会えるのが楽しみで仕方ない。
オープンと同時にOさんのお店に入る。今日は早いですねって驚かれる。この時間はいつもお客さんが少ないらしく、ほんとうにひとりもお客さんがやってこない。久しぶりに音楽談義に華を咲かせる。一昨日ひさしぶりに聴いたAC/DCが凄いかっこよかったってはなしから、Oさんは意外にもAC/DCの大ファンだと知れる。こう言っちゃあれですけど、AC/DCってバカのひとつ憶えっていうか、そんな感じだからバカにされがちだと思うんですけど、あの潔いギターがかっこいいですよねって。すると、Oさんも同じ意見で、そうなんですよ、アンガス・ヤングって腹くくってギター弾いてるんですよね、そういう姿勢に惹かれるんですよ、どの曲も同じような感じなんですけど、ある意味でミニマルミュージックなんですって、かなり良いことを言う。ものすごく共感する。アンガス・ヤングのように腹をくくっているギタリストをもうひとり思い付き、キース・リチャーズもそんな感じですよねって。すると、Oさんも同じ意見で、そうなんですよ、僕のなかではアンガスとキースは同類ですね、キースのギターもミニマルミュージック、ひとつのことをどこまでも突き詰めた職人芸ですよねって。お客さん、ほんとうに一人もやってこず、音楽談義が白熱する。
湘南新宿ラインで待ち合わせ。毎度のこと待ち合わせがめちゃくちゃ下手くそなわれわれ。時間を過ぎても誰とも会うことができず、平行世界(パラレルワールド)のことを考える、じぶんだけがいま待ち合わせの存在していない世界線にいるのではないか、と。偶然会うことは得意なのになぁ。そしたらNから連絡が来ていて、Nの居るらしいプラットホームの場所に向かう。Tにも連絡をする。遠足スタイルのNにようやく会うことができる。TからはOKサインがきている。ところが待てども待てどもTの姿が見えない。乗るつもりだった電車が行ってしまったそのあとすぐにTがひらひらとやってくる。バッド・タイミングすぎて、ある意味でグッド・タイミング。そんなのも関係なくTが久しぶりのNをわぁーーっと抱きすくめる。こんな光景を見られただけで大いに大満足で、わざわざこれから海に行かなくてもいいくらいに今日という一日を達成してしまう。これは勝手な偏見かもしれないけれど、ふたりはいい意味に左右対称というか左右非対称で、たぶん、おたがいに自覚していない長所をそれぞれに強く持ち合っている(コントラの感想もきれいさっぱり真逆だったし)。だから、ふたりが一緒にいると最強(最狂?)という感じがするし、ふたりはほんとうにいい友であると思う。
湘南新宿ラインのボックス席、昨日セブンでNに教えてもらったアンダー・ザ・シーをTも知っているかどうか5月8日のピアノの録音をTにも聴いてもらう。録音の日付を見ながら2カ月以上も気になり続けていたんだなぁと思う。電車で音が聴こえ辛いこともあってか、Tはまったくわからない��様。Nにも聴いてもらうと、すぐに昨日のあれねっとなる。Nとふたりでメロディを口ずさんでTに聴かせる。そんなこんなでディズニーやジブリのはなしになる。すでに何回も観ている映画にコメントを付けたり、ツッコミを入れながら観るやつやりたいなぁと思う。窓の外は積乱雲がものすごい。移動の時間が大好きだなぁとあらためて思う。どこかに行くっていう目的も目的でいいけれど、それに伴う移動の時間は目的に付随する二義的なものではなくて、むしろ、移動の時間のなかにこそ目的の限定的な立場からはみ出してそれを包摂するような自由な豊かさがあるような気がする。究極的には行って帰ってくるだけで充分なのかもしれない。
京急線に乗り換える。新幹線スタイルの座席、しかも、先頭車両の一番前の座席がロマンスカーのような展望座席になっている。生憎、展望座席は埋まっていて、後方の席に三人横並びで座る。トンネルの多い路線、トンネルの影のアーチが見えてきて、列車がトンネルの外に走り出て車内がそぞろ明るくなるたびに『恋恋風塵』の冒頭のショットを思い出す。Nは席を離れて、展望座席の後ろから展望窓の風景を覗いている。Tが今日のNちゃんの後ろ姿って小学生の遠足みたいだよね~って。前々からNが何かに似ていると思い続けてきて、ついにこの謎が解けた、トトロだってことを打ち明ける。展望座席が空いたから、そっちに移動する。窓の外は積乱雲がものすごい。線路の周りは緑にあふれ、山間の町並みは茶畑のように段々に家々が連なっている。遠くのほうに海が見えてきそうで、なかなか見えない。停車駅のひとつで、Tがその町並みを眺めながら、すごーい外国に来たみたいって。それは言い過ぎかってすぐに撤回する。大笑いしながら、まあ、イオンあるからねって。ついに車窓から海の濃いブルーが見えて三人とも大はしゃぎ。
三崎口駅に到着。電車から降りると、線路の途切れる終着地がある。バスで水族館に行く。終着点の水族館の名前のバス停で下車すると、空き地みたいなところにマリモをでかくしたみたいな変な植物たちが疎らに群れをなしている。なにこれかわいいと三人とも大興奮。植物が生えているというより、植物のような動物がジッと立ち止まって群れをなしているというほうがピンとくる。もののけ姫のこだまみたいな感じでジッとこちらの様子を窺っている。基本的には疎らに群れをなしていながら、三体がぴったりくっついて仲良し三人組みたいになっているのもいる。マリモのなかからエノコログサが飛び出ている。Tが夜になったらきっとここには誰もいないよ、みんな森に帰っちゃうんだ、みたいのことを言う。大笑いしながら、ほんとうにそんなふうに思われる。水族館のバス停のはずなのに、水族館はまだ先にあって、しかも、けっこうな距離がある。なんで水族館の前まで行ってくれないのって何度もブーたれる。入園してすぐ、でっかいアシカが眠っている。アシカってこんなにでかいんだってびっくりする。Nはアシカにも似ているような気がする。なんだろう、ヒゲの雰囲気がそう感じさせるのかな。まずは、当水族館の押しであるらしいカワウソの森に行く。想像とだいぶ違っていて、カワウソも一匹しか見られず、ちょっとショックを受ける。自然公園みたいなところに野生のヘビに注意の看板が出ていて、さっそくハンターことTの心が燃え上がっている。ヘビ捕まえていいの?! って言うから、野生のヘビならいいんじゃないって。水族館の屋内に入る。入口のところにサメの口の骨のとげとげしい模型があって、すぐ近くまできて、その大きさにびっくりして思わず仰け反るような姿勢になると、Nになんで~って突っ込まれる、ずっと見えてたのにって。いや、近くまできたら思ったよりでかいのにびっくりしてって弁明する。館内に入るなり、いきなりでっかいチョウザメがいて目が点になる。数体の古代魚が水槽のなかでゆらゆらと身を踊らせている。それから個々の小さな水槽を順番に見てまわる。大勢の魚がスクランブル交差点のように錯綜と泳ぎまわっている水槽で、TかNのどっちだったかが全ての魚たちが誰ひとりとしてぶつかることなく泳ぎまわっていることに感心している。チンアナゴがエイリアンみたいな動きでおもしろい。二階に上る。二階は円形の壁沿いにぐるっと大きな水槽が張り巡らされていて、魚たちが回遊できるようになっている。水槽の上からは太陽の光が注いでいて、フロアのあっちこちに光や虹のきらめきが踊っている。サメが特に目を引く。凶悪そうなギザギザの口に、何よりも眼球がひっくり返ったような冷徹な目。鼻に瘤のようなものを付けているサメがいて、あれは何だろうとしばらく後を追ってみるも、よくわからない。ノコギリザメがいて、ふたりにも声をかける。ノコギリザメはけっこうかわいい感じ。見にいくとノコギリザメは泳ぐのやめて、ジッとこちらの様子を眺めている。その瞳の動きで三人を順番に見渡しているのがわかる。ノコギリザメから離れると、ノコギリザメのほうも泳ぐのを再開させる。一階に戻ると、シマ吉くんの催しが行なわれている。魚も芸を覚えることにびっくり仰天。シマ吉くんかわいい。館内を出て、キムタクみたいなペンギンを見に行く。からだを唐突にブルブルッと震わせたり、羽を暢気にひよひよさせたり、ペンギンの動きには変なメリハリがあって見応えがある。そしたら、一羽だけ気ちがいのようにからだを意味不明にくねらせながら泳いでいるペンギンがいる。意味不明に水飛沫を立てるその一羽に三人とも釘付けになる。Nが私もこんなふうに動いてみたいけど人間だからなぁ、みたいなことを残念そうに口にする。でも、Nはたまにいきなり唐突に、衝動的に常軌を逸したような動きを見せるよなぁと思う。件のことで警察署に行くまえ、小川のところで連絡待ちしているときに、いきなりNがわあああっと���に持っていた葉っぱを小川に投げつけたのはほんとうに美しかった���いったん駅に戻って、三戸浜を目指すことにする。なんでバスは水族館の前まで来てくれないんだって相変わらずブーたれながら歩いていると、車がきて道を開ける。車が過ぎて、遠いバス停に向けて再発進しようとすると、Nがいきなり手に持っていたエノコログサをわああっと振り乱しながら急接近してきて、うわわわっと腰を抜かしそうになる。なんで、なんで、いきなりそんなことするの?! Nは悪い笑みを浮かべ、だってKさん、とここでいったん絶妙な間を置き、素直にそのことを言うべきか言わないべきか迷っているような、あえて間を置くことでそのことを強調するような感じで、ビビりなんだも~ん! って。この野郎、ひとをバカにしやがって、いつかぜったい仕返ししてやるからなって心に強く思いつつ、ほんとうに最高だなって思う。ビビりなんだも~ん! いままでNからもらった言葉でいちばん嬉しいかもしれない。
バスで駅に戻り、三戸浜を目指す。収穫が済んで畑にきれいに整列しつつも朽ち果てている植物たちの残骸をTが戦時中の死体のようだと形容する。あるいは向日葵の蛍光色の質感、夜になったら光り出しそう。子猫の亡骸。急に夏の終わりが顕在化する。いまが夏でよかったと思う、すぐに骨に還ってしまうから。Nが持ち歩いていたエノコログサを子猫に捧げる。持ち歩いていて、よかったなぁと心の底から思う。ねこじゃらしはそこらへんにも普通に生えていて、すぐにでも摘んでこられるけども、これは人間側のエゴかもしれないけれど、大事に持っていたそれを捧げるというのはせめてもの救いになる。意気消沈しながらも海への歩みは止まらない。海への入口の畦道を通り抜けると、大きな海が広がっている。夕陽を受けた波のまにまが橙色の光のすじを浮かべている。三人とも大はしゃぎで海のほうに駆けてゆく。サンダルのNが早速パンツの裾をたくし上げて海のなかに入っていく。勢いのある波を受けたNがこっちへ振り返って驚きと喜びの入り混じったようなとってもいい笑顔をみせる。さらにずいずい海のほうに身を入れてゆく。Nのからだが踊っている。このあいだと同じくらいの時間なのに波の寄せ方がぜんぜん違っている、浜のかなり深いところまで波が来ていて、くつで歩ける場所がほとんどない。そればかりではなく、このあいだは空の高いところにずっと見えていた月がどこにも見当たらない、昨日の感じからして今日はおそらく満月だろうと思われるけれど。じぶんもスニーカーと靴下を脱いで波打ち際を歩く。波はけっこうな勢いで、裸足だからと油断していると下半身がびしょ濡れになってしまう。びしょ濡れになって色々諦めたらしいTがサンダルを脱いで裸足になる。Nも裸足のほうが気持ち良さそうとサンダルを脱ぐ。まずは廃墟を目指す。でっかい丸太が波打ち際に落ちている。海のほうに蹴ってみるものの、重すぎてぜんぜん動いてくれない。それだというのに、ひとたび波が丸太に届くと、波は��とも簡単に丸太をさらって、さらに次の波が丸太を波打ち際に叩きつける。あっぶな! と三人で丸太をよける。Tが海の殺意を感じるよーとはしゃいでいる。波打ち際をずいずい歩いていると、後ろのふたりから何これすごーい! 魔法使いみたいって歓喜の声があがる。何かと思えば、じぶんの足が濡れた砂浜に触れるたびに、フワッと空気の膨らみのようなのがあたりに拡がっている。まさに魔法使いが歩いているかのよう、もののけ姫のシシ神様の歩き方みたいってはなしにもなる。波の勢いにかなり苦戦しながらも廃墟が近づいてくる。廃墟の辺りを境に砂浜が岩場に変わっていて、岩にぶつかった波が壮絶な潮砕けとなって舞い上がっている、絶句して、ゴクンと唾を飲み込む。廃墟に到達。Tからもらったウエットティッシュで足の砂を落として靴下とスニーカーを履き直す。いざ、廃墟に潜入! 底の抜けた階段の脇をロッククライミングのように慎重によじ登る。続いてTも。続くNが半ばの空中で動けなくなってしまい、あわわ、あわわ、この次どこに足をもっていったらいいのー?! って。どうにかこうにか登りきる。廃墟にもかかわらず落書きなんかがいっさいない、純然たる野生の廃墟。下から見る限り、底が抜けそうな感じがしたけれど、踏んでみるかぎり最初のフロアは問題なさそう。ところが、その先に伸びている廊下は底抜けしそうというより、すでに床の木肌がひび割れて底が見えている。あっぶな! と咄嗟に引き下がって、そばに来ていたTにも注意を促す。ここで行きにも少し話題になった(そんなことはすっかり忘れていた)Nの「ばけたん」なるお化け探知機がついに初お目見えになる。「ばけたん」が赤く光れば悪霊がいる、青く光れば天使がいる、緑に光れば平常でとくに何もない。どう考えても赤く光りそうなシチュエーションでありながら、どういうわけか青く光る。底抜けの大丈夫そうな場所をひと通り探索して外にもどる。出るときもNは半ばの空中で動けなくなってしまい、あわわ、あわわ、どうにかこうにか地面に帰ってくることができる。続いて洞窟。入り口の岩場にはでっかいフナムシが無数に蠢いている。ふたりから虫がだめなのに、なんでフナムシは平気なのって不思議がられる。セミが夏の天使なように、フナムシは海の天使だからって思っていることを素直に応えながら、でも、だとしても何で平気なんだろうって不思議に思う。ひとりでは怖すぎて一歩しか中に入れなかった洞窟も三人いれば心強い。スマホのライトで先を照らしながら、ちょっとずつ、ちょっとずつ、中のほうに入ってゆく。洞窟の側面にも天井にも隙間なく無数のフナムシが蠢いている。Nがここでも「ばけたん」を発動させてみる、結果は緑の光。洞窟は大広間の先に細い小路が続いている。その入口まで行って引き返そうとすると、Tがこの先まで行ってみようよって。もう無理、もう無理、これ以上は無理って断ると、さすが度胸のあるTはひとりで小路��入ってゆく。小路の突き当たりまで行ってもどってくる。小路の突き当たりはさらに左右に枝分かれしているらしい。
夕陽は海上の雲にのまれ、空は暗くなりつつある。岩場をさらに進んでゆくと、一人キャンパーが三組だったか四組、おたがいに微妙に距離を取りながら座っている。焚火のいい匂いがする。岩場にはフナムシなかにカニもたくさんいる。そんな岩場の一角にどんなカニとも比べものにならないでっかいカニをTが発見、すぐさまハンターの心が燃え上がり、捕獲に向かう。カニの捕まえ方なんて知らないよ~(だったらヘビの捕まえ方は知っていたのか……)と弱音を吐きながらも果敢にカニに立ち向かってゆく。数分の格闘のすえ、見事にカニを捕獲、持っていたビニール袋に入れる。Nはその場に腰掛け、じぶんは岩場の先端のほうまで行き、Tはその中間くらいから三者三様に暮れてゆく空と海を眺める。岩にぶつかる波の潮砕けがもの凄い。しばらく経って、Nのいる地点まで戻ろうとすると、Nが大きく手を振る、大きく手を振り返す。ふたたび三人が集まると、Nが家が恋しくなっちゃうって泣きそうな声で言う。たしかにそうなのだ。こんな最果ての辺境で、しかも、もうすぐ夜が来ようとしている。どうして、じぶんはいつもこんなところにわざわざひとりで赴いているのかってことをこのとき初めて考える。それからNがいい写真撮れたよって、ふたりがそれぞれに海を眺めている写真を見せてくれる。そろそろ帰ろうか、来た道を引き返すことにする。廃墟の辺りで海を離れて、上の道路を歩くことにする。Nだけ足の砂を落としていなくてどこかで洗いたい、いちどは海に下りていこうとするけれど、あいだには砂浜があるから海で洗ってもまた砂だらけになってしまう。きっと、そこらへんに水道があるでしょってことになり、そのまま上の道路を歩いてゆく。しばらくすると、マリンスポーツの拠点みたいな施設がある。水道はありそうでなくて、人間はじぶんたちを除いて人っ子ひとりいない。そんな施設のさなかに芝生のお庭がある。芝生のお庭になら水道あるでしょって探すけど、水道はどこにもない代わりに芝生の隣に敷居に囲われたプールがある。その敷居は簡単に跨いでいける感じで、だあれもいないし、あのプールで洗っちゃえば。Tが敷居を跨ぐまでもなく普通に入口を発見して、勝手に入口の鍵みたいのを開けて中に入っている。足を洗ったNがプールの水すごいきれいだったって戻ってくる。ふふ。とうに日は暮れて、暗い夜の山道を駅に向かって引き返す。Nが暗いよぉ、怖いよぉと頻りに泣きそうな声で連呼する。そんなつもりじゃなかったけども、仕返しを無事に達成。Nのスマホのライトでできるでっかい影。とりわけ樹々の左右から覆い被さる真っ暗な坂道、ここで「ばけたん」をやってみようになるけれど、Nのかばんから「ばけたん」が消失してしまう。どこかに落としてきちゃったかなぁ。自動車のヘッドライトからほとばしる影に驚いたりしながら、街灯のある明るいところに移動して「ばけたん」の捜索。かばんを隈なくひっくり返しても見つからず、「ばけたん」の性能には半信半疑ながら三千えんのお買い物がたったの二日で消失してしまうのにはさすがに気の毒な感じがして、色んな可能性を示唆していると、かばんのポケットのひとつから「ばけたん」が発見される。よかったぁ。その場で「ばけたん」を発動させると緑色に光る。山道を経て、畑道のところまで来ると、びっくりするぐらい赤い光線を発する怪しい満月が空のかなり低いところにのぼっている。Tがどこかのタイミングで(たぶん廃墟だったかな)口走った『夕闇通り探検隊』の一言が胸に突き刺さる。月のなかを鉄塔の陰翳が横切る。
帰りの電車でも頻りに「ばけたん」のはなしになる。乗換駅でも発動させてみる。緑色。廃墟でいちどだけ出た青以外はぜんぶが平常の緑色を示す。Nから、こんな胡散臭い商品なのに何故か高評価のアマゾンのレビューを見せてもらう。それでもまだ胡散臭さは拭えなくて、いっぽうで廃墟のときだけ色が変わったことがどうも引っかかっている。帰り際になってNがぽろっと口にした「乱数の偏り」という言葉にアンテナがビビッと反応して、これはきっと何があるぞと思う。帰ったらじっくり調べてみようと心に決める。
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Gold can Stay #12
テレビの天気予報なんかでよく見かける江ノ島の姿にひのでは興奮し、写真を数枚撮ってクロッキー帳を出した。 ざっと描き終え周囲を見渡すと人混みに三郷が突っ立って手帳に絵を描いていた。きっと自分と同じように橋の入り口から見た江ノ島を描いている。ひのでが覗き込むと三郷は手帳を隠した。 「下手だから見ないで」 「上出来上出来」 退屈しのぎだとしても三郷が筆を取ったことに頬が緩んだ。 ライバルが増えるのは困るけれど人間はもっと気軽に絵を描くべきだとひのでは考えている。下手でも上手くても構わない。美術科と音楽科。専門は違えど創作意欲は移るのだと確信し、しめしめと喜んだ。
橋を渡る。まずは腹ごしらえだ。せっかくなので��らす丼を食べられる店を選びしばらく列に並んでようやく朝食兼昼食にありつけた。 「僕、行ってみたいところあるんだ」 ひと先早くしらす丼を食べ終えた三郷が観光パンフレットを広げた。 「ここ、岩屋。洞窟みたい。深川君は暗いところ大丈夫?」 最後の一口をもぐもぐ噛んで飲み込み、ひのでは返答する。 「大丈夫だと思うけど」 ひのでは昔から一人でお化け屋敷に入ることができる子供だった。目をきらきら輝かせて意気揚々と入って、いつまで経っても出てこないと出口で待つ親を不安がらせたこともある。どういうわけか作られた恐怖が好きであった。 自然にできた洞窟はどうだろうか。観光地なら不安に思うこともないだろうと承諾した。
岩屋は地図で見るより遠かった。長く続く階段が食後の運動になったようで、ひのでの左の横腹が痛み出していた。このことは三郷に伝えなか���たが、途中で猫の写真を撮ったり土産屋を覗いたりゆっくり歩いたおかげで悪化することはなかった。 「深川君、あれ見て! 富士山かな?」 「おお……富士山だ……」 階段を上りきって海の向こうの存在を眺めた。天気がいいと学校からでも見えるが見え方は頭抜けていた。 「やっぱ本物はでっかいなぁ」 「昔、岩屋の洞窟の奥と富士山のどっかが繋がってるって聞いたことある」 「ええ? 本当かよ」 目で確認できる範囲に富士山はある。しかし流石に距離がありすぎるだろうとひのではその話を信じなかった。そしてここでも写真を複数枚撮っておいた。
入場料を払ってパンフレットを渡される。壁に歴史や自然について説明が書かれているパネルがかけられていた。三郷が真剣に読んでいるようだったので、ひのでもざっと目を通す。徐々に涼しくなってきた。 第一岩屋への分かれ道を進んで行くと随分暗くなり案内人に蝋燭を手渡された。 「未開の地への冒険みたいだね」 満員電車のように混雑はしていないものの自分たちの他にも人はいるし、照明もあるので蝋燭は必要ないだろうとひのでは思ったが、三郷が楽しそうにしていたので黙っていた。雰囲気作りには小道具も大切だ。 「ほら! 深川君! ここが富士山の氷穴に続いてるんだって!」 三郷が見つけた説明文を読むとその通り書かれていた。柵がありその先には進めない。 「え~? 言い伝えみたいなもんだろ~」 「きっと繋がってるよ! 繋がってるといいなぁ」 二人が軽い問答をしていると後ろから大きく高い複数の声が近づいてきた。振り返ると六、七人の集団がいた。年は二人より少し上の大学生くらいの若者だ。聞きたくなくても聞こえてくる彼らの話によれば岩屋にさして興味はないようである。それでいて非常に楽しそうに騒いでいる。 これにはひのでも不愉快になり三郷を気の毒に思った。二人は何も言わずアイコンタクトを取り��二岩屋もささっと見てすぐに出た。外がとても明るく感じられた。
その後は花を見たり鐘の音を聞いたりしてしばらく歩いた。心残りはないとお互い確認して江ノ島を出てイタリアンのチェーン店に入る。おやつと夕飯の間の中途半端な時間だった。食事を終えて店を出るとすっかり夕方だ。二人は海辺を歩いた。 海も空も雲も夕日に染まりかけている。青空が夕と夜に溶けそうだ。ひのでは写真と絵に残そうと考えることもせず目を凝らしていた。陶然としているとシャッター音が真横で鳴った。 「うわ⁉ びっくりした!急になんだよ! 消せ!」 「変な顔してたから」 珍しいこともあるものだ。三郷がひのでをからかっている。 向きになりかけたが一瞬で小さい驚きと怒りはどこかへ消えた。笑っている三郷と見事な夕日が追いやった。こういう彼を描きたいとずっと思っていた。 自分の手で収める他に映像で残しておきたいとも思った。ふと八㎜フィルムという単語が思い浮かぶ。昔のものだけど、とてもいいもののように思えた。 きっといつか思い出す。悲しくて仕方がない日なんかは今日を振り返ってなおのこと寂しがりながら慰めにするに違いない。明るさと暗さが混ざった空も、周りではしゃいでる人々の声も、潮の匂いも波の音も、口の中にまだ少し残ってるチーズと卵の味も全部きっかけになるはずだ。 「泳がなくていいからさ、また海来ようよ」 短い歌を口ずさんだように三郷は言った。海へ行くのにお前は泳がなくていいのかとひのでは疑問を持ったが別の問いを投げかけた。 「いつ?」 「秋とか! 文化祭終わった後くらい」 「秋かぁ」 逆のことを考えるといくらか気分が変わるものだ。 「秋の海。いとをかしだな」 「あはは。風流でしょ」 空も夜に変わっていた。
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【S/D】サムと忘却の呪い(仮)1~4
ツイッターに画像で投稿しているS/D小説です。一万文字超くらい。まだ続きます。
もし魔女のロウィーナが、将来自分を殺す男になると知って攫い、殺してしまうつもりだった幼少のサムに情がわいて、自分の子として育てることにしたら? そしてハンターが”魔女狩り”に特化した集団だったら? という妄想から生まれた小話です。シーズン12の11話「忘却の呪い」をオマージュしています。アリシアやマックスという12から登場する魔女キャラにも出てもらってます(彼らはハンターだけどここでは魔女として)。
連載中の小説を書きたいとは思うんだけど宿便状態なので、ガス抜きに小話を書いてる現状です。なのでお気楽な感じで読んでもらえると。。
1
サムの養い親である魔女いわく、日のあるうちの森は獣の領域。だから理性ある魔女や魔法使いは夜に活動し、昼間のうざったい太陽が地上を照らしている間は絹のシーツに包まって体力の回復に努めるのだという。サムにいわせれば怠惰の言い訳にすぎないが、夜更かしな魔女たちの生態がいとおしくもあった。何より夜の彼女��はサムなど足元にも及ばぬほど鋭い英知と魔力の使い手だ。ならば彼女たちと少しばかり生態の異なる自分が、早起きして夜の”活動”の手助けをするのは義務であるし喜びでもある。獣の領域というなら早朝の森は狩りをするのに恵まれた環境だ。彼女たちはウサギのシチューが大好きだけど、そのウサギがどこで泥の毛皮を脱いできて鍋に飛び込んでくれたのかは考えたがらない。
自分が何者であっても、森を歩くのが好きな男に変わりはなかっただろうかとサムは想像する。下草を踏むたび立ち上る濡れて青い土のにおい。罠にかけた小さな獣をくびくときすら、森はサムと獣のどちらをも憐れんで祝福してくれる。森はサムのびっくり箱だ。彼は自分の生まれた場所を知らない。だけど彼の親がこの森の入口に彼を捨てたとき、赤ん坊と森のあいだに絆が生まれ、その瞬間から森がサムの故郷になったのだ。※
そうだ。森はいつもサムを驚かせてくれる。かくれんぼで遊んでいた七歳の彼を、その懐の深さで半月のあいだかくまってくれ、養い親をすっかりやつれさせてしまった時のように。
その日、狩りを終えたサムの目の前を、遅寝のウサギが飛び跳ねていった。茂みの奥に逃げ込んだウサギを彼は追いかけた。腰には今日のぶんの収穫が下げられていたけれど、もう一匹恵まれたって困ることはない。
茂みの中から黒い毛皮が現われた。サムは手を伸ばそうとしてひっこめた。黒くもなかったし、毛皮でもなかった。朝露で濡れた短いブロンドがゆっくりとサムのほうを向いて、彼はアッと息をのんだ。魔女がウサギを化かして僕をからかおうとしているのか。そうでなければなぜこんな場所に、サムの知らない男がいる?
ところがブロンドの男の懐からさっきのウサギがぴょんと飛び出して、サムの脇を通ってどこかへ行ってしまった。「バイ、うさちゃん」と男はいった。寝ぼけたように、低くかすれた、それなのに、ぞっとするくらい、やわらかな声だった。
「僕はサム」と、サムはいった。まぬけ、と森がささやくのが聞こえた。もしくは自分自身の心の声だったかもしれない。
男は重たげなまぶたを持ち上げて、サムを見上げた。
「やあ、サム」
新緑、深い湖、砂金の流れる小川。男の瞳は輝いていた。
森はまたもサムに驚きを与えてくれた。彼は恋多き魔女たちに囲まれながら、自分が恋することが出来るとは思っていなかった。
この時までは。
2
昼過ぎから始まるブランチの席で、気もそぞろなサムに、養い親のロウィーナはけげんな視線を送る。
「今朝のウサギ、ちょっと血抜きが甘いじゃない? 生臭いのは嫌よ、われわれは吸血鬼ではないのだから」
「そう?」 サムはぼんやりと答える。「そうかな? それ、缶詰の肉だけど」
「サミュエール」 ���ウィーナの視線がますます冷たくなる。
「今朝の狩りは空振りだった?」 行儀よくパンをちぎってアリシアがたずねる。彼女は見た目だけではなく、実年齢もサムとさほど離れていない若い魔女だ。母親のターシャ、双子のマックスとともに、ここロウィーナの屋敷に下宿している。
「今朝の狩り……」 思いもかけぬ収穫があったことを姉弟子にどうやって伝えればいいだろう。いや、とサムは意識の中で首を振る。
魔女のなわばり意識の強さといったら、狼人間が可愛く思えるほどだ。人間が――しかもどうやら”記憶があやふや”な、身元の怪しい――神聖な魔女の森に入り込んだと知れたら、ロウィーナははっきりと戦化粧をして森へ勇み、彼を排除しかかるだろう。双子のアリシアとマックスも、彼らは敵とみなした人間に容赦はしない。つまり、明日のシチューの中身が決まるってことだ。
サムはぶるっと震えた。靴の底から顎の奥まで震えは伝わってきた。春の始まりに色づく枝先のように初々しく、美しい彼の瞳が、よく炒めてから煮込んだ紫玉ねぎの横に浮かんでいるさまを思い浮かべて。彼の肉つきのよい白い二の腕を調理するときの甘い香りを想像して。彼の肉を食べる――残酷なはずの行為が甘美な誘惑に感じる自分にうろたえて。
だめだ、だめ。そんなことにはさせない。彼のことは秘密にする。
「今日は、思ったより暖かくて」 サムは本当のことだけを口にする。「血を抜くのが遅すぎて、ダメにしちゃった。毛皮だけはいで、肉は捨てたよ」
「また寄り道をしたんでしょう。狩りのあとはすぐに帰ってこなきゃだめよ。獲物を持ったままウロウロしないの」 ロウィーナは血のような葡萄ジュースで唇を湿らせる。
「でないとあなたが獲物にされるわ」
サムはこっそりと屋敷を抜け出し、森の男を見つけた場所まで急ぐ。
彼はそこにいなかった。けれどたどり着いた茂みの変わりようを見て、逃げたわけじゃなさそうだと安堵する。ただの茂みだったそこは、下草が踏みならされて空き地に変わり、中心の地面は掘られていて、男が簡易なかまどを作ろうとしていたことが見て取れた。
がさがさ音がして、薪になりそうな枝を腕に抱えた男が戻ってきた。サムの顔を見ると一瞬で表情が明るくなる。「サム!」 男は枝を足元に落としてサムに近づいた。その両手がわずかに広げられている���で、サムは自分がハグされるんだと気づいた。
サムが躊躇いながら上げた腕の下に、男の腕が入り込んできた。肩甲骨の下に巻き付いた腕がぎゅっと彼の胴体を締める。”抱きしめられた”んだ。魔女たちはサムによく触れたがるけど、頬にキスしたり腕を組んだりするだけだ。
こうして誰かに真正面から抱きしめられるなんて、初めての経験だ。他人の体温を腹で感じるのも。
なんて心地がいい���だ。
「また来てくれたんだな」 男はそのまま顔だけを上げて、同じくらいの高さにあるサムの目を見てにっこり笑った。
サムはまぶしくてクラクラした。まるで、ああ、彼は太陽みたいだ――魔女や魔法使いが忌み嫌う太陽――けれど彼らが崇める月を輝かせる光の源。
「来るっていったじゃないか」 サムはゆっくりと、舌が絡まないようにいった。ハグに動揺したなんて、彼の笑顔にクラクラしたなんて、知られたら、あまり恰好がつかない気がした。恋に長けた魔力使いの男女のスマートな駆け引きを思い返し、取り澄ました顔を作る。「ほら、パンとジュースを持ってきた。昨日から何も食べてないって、ほんとう?」
「ありがとう!」 男はサムのぺたぺたと頬を叩いて感謝を表した。――状況を考えれば、それは感謝のしぐさで間違いないはずだ。サムにとってはあまりに親密すぎたので、すぐには思い当たらなかった。だけど、男は四六時中、出会った人間の頬をぺちぺちしてますとでもいうように平然として、その場に屈むとリュックの中を探りだす。
サムは早まる動悸を抑えるため、こっそり深呼吸を繰り返した。
「どうかな、憶えてないんだ。何も憶えてない」 男は瓶の蓋を捻って開け、すぐに半分を飲み干した。よほど喉が渇いていたんだろう。きれいに反った喉のラインを必要以上に凝視しないようにサムは気をつけた。「ほんとに、参ったよ。腹が減って、おまえの捨てていったウサギを焼こうと思ったんだ。でも火を熾す道具が見つからなくて」
「何も憶えてないって、どうしたの? どうしてこの森に入ったんだ? 町からそんなに遠くはないけど、ここが魔女の森だってわかってるだろう? それとも、よそから来たの?」
「それが、わかんねんだ」
「何も憶えてないの? 自分の名前も?」
彼は、驚いたように目をしばたかせた。まるで自分に名前あることすら、失念していたように。
その様子に異様さを感じて、サムはまさか、と思った。記憶喪失の人間が、”自分の名前を思い出せない”と悩むことはあっても、”自分に名前があること”を忘れて明るく振る舞うなんてことがあるだろうか。この異様さは、まじないの気配に通じる。彼の様子は、身体的、精神的な後遺症による記憶喪失であるというよりも、呪いによるダメージを受けている状態だと思ったほうがしっくりくる。
でも、まさか。だれが彼を呪うっていうんだ? 中世ならともかく、このセンシティブな時代に魔女が人間を呪うなんてありえない。
「うーん、たぶん、Dがつく気がする」 男が考え込むと眉間にしわができた。「D、D……ダリール、ディビット、違う……。デ……デレック? パッとしねえなあ……」
「ダンカン? ダドリー?」
「うーん?」
「ドミニク? ドウェイン?」
「ドウェイン? いいかもな。おれをそう呼ぶか?」
「それがきみの名前なの? 思い出した?」
「うーん? 多分違う気がする。でもいかして���よな」
サムは首を振った。彼の愛嬌に惑わされてはいけない。「もう少し、思い出してみようよ。デイモン、ディーン、ダライアス、デイル……」
「それだ!」
「デイル?」
「いや、もう一つ前の」
「ダライアス? ディーン?」
「ディーンだ!」 男はうれしそうに歯をむき出して笑った。「おれの名前はディーンだ。それに、思い出したぞ。おれには弟がいる」
「いいぞ。どこに住んでいたかは?」
男はさらにしわを深くして考え込んだが、しばらくしても唸り声しか出てこない。
サムはちらばった薪を集めて、かまどの枠を組み立てた。気づくとディーンがじっと見つめていた。
「何も思い出せない」 あっけらかんとしていた少し前と違って、悲しみに満ちた声だった。「どうしちまったんだろう。おれ。ウサギを抱いて、おまえを見つけた。それ以前のことが、何も思い出せないんだ」
「たぶん……たぶんだけど、きみは呪われたんだ」 サムは慎重に言葉を選んでいった。「魔女のことは、憶えてる……というか、知ってるだろ? 今ではそんな悪さをする魔女は少ないけど、トラブルになる自覚もないまま、彼女ら――彼かもしれないけど――を怒らせて、呪われるってことも、ないわけじゃないんだ」
「呪われた?」 ディーンは大きな目を限界まで開いた。「おれが? どうして?」
「わからない。もしかしたら違うかも。でもきみ、どこにも怪我はないようだし、記憶がないっていうのに、やたら気楽だったろ。それにここは魔女の森だよ。人間は入ってこない。基本的にはね。なのにきみがここにいるっていうのが、魔女が関わっているっていう証拠にならない?」
「おまえはずいぶん賢そうに話すんだな」 ディーンは鼻をすすった。水っぽい音がした。「何が証拠になるっていうんだ。おれはどうすればいい? どこに行けばいい」
「ここにいればいい」 サムは火種のないかまどを見つめて、それから首を振った。「ここじゃだめだ。ここは屋敷から近すぎるし。僕の家族に見つかったらディーンが危ない」
「何をいってるんだ? 怖いぞ」
「大丈夫。もっと奥に、今は使ってないあばら家があるんだ。たぶん僕しか知らない。そこにディーンをかくまってあげる。僕は魔法使いなんだ――まだ一人前じゃないけど。いろんな本を読める。それに、僕の親はすごい魔女なんだ、ディーンにかけられた呪いを解く方法をきっと知ってる」
「まて、待てよ。おまえが魔法使い? おまえの親が魔女? おれに呪いをかけたのはその魔女じゃないのか? ここはその魔女の森なんだろ?」
「ロウィーナは人に呪いなんてかけないよ。そんなにヒマじゃないんだ」
「わかんないだろ」 ディーンの声に水っぽさが増した。と思ったら、彼はぽろりと涙をこぼしている。サムは頬を叩かれた時以上に衝撃を受けた。こんなに静かに泣く人は見たことはなかった。
「ディーン、ごめん。泣かないで」 折れた薪の上に尻を乗せて、膝を折りたたんで小さくなっているディーンの横にしゃがみ込む。「大丈夫だよ。僕が守ってあげる。記憶を取り戻してあげるから」
ディーンはサムを見つめて、まばたきもせずまた二粒涙を落した。サムを奇跡を見守っているみたいにじっと彼を待った。やがて彼は赤いまぶたで瞳を覆って、小さく��な��いた。
「わかった。おまえを信じるよ」
3
あずまやに移動して寝床を整えた頃にはもう日が暮れかけていたので、サムは急ぎ屋敷に戻らないといけなかった。夕食にはコックを雇っているとはいえ、実際に食卓を作るのは女主人であるロウィーナの指示をうけたサムだ。
「また何か食べ物を持ってくるよ。遅くなるかもしれないけど、夜中までには必ず」
「サム、おれの記憶、戻るよな?」
小屋の質素な木戸を開けたサムは振り返る。戸の影で彼の不安そうな顔の半分が隠れてしまっている。サムより年上に見えるのに、心内を素直に伝えてくる瞳だけをみるとディーンは幼い子供のようだ。このまま留まりたい思いでいっぱいになる。
彼が人間ではなかったら。彼が記憶ではなく、過去を持たない精霊だとしたら、それは森がサムに与えた贈り物なのではないか。
彼を森の精霊だといって屋敷に連れ帰り、ターシャやマックスが連れているような使い魔として側に置く。何も知らず、誰と繋がりもない彼の唯一の主人となる。彼の食べるもの、着るもの、行動の範囲の一切をサムが指図し、彼のすべてを支配する。それがサムに、許されているとしたら?
あるいは彼をこのままここに留め置いて、二人で秘密の生活を続ける。ディーンには記憶を取り戻す方法がなかなか見つからないといっておけばいい。小屋を出ればいかに危険かを言い聞かせれば、逃げられることはないだろう。
違う。僕は彼を支配したいんじゃない。ただ彼に――
「キスしたいな……」
「えっ」
「えっ、あっ、いや」 妄想が強すぎて声に出ていたと知ってサムは慌てた。
「き、君の記憶は戻るよ、僕にまかせて。でも、いったん戻らなきゃ。ロウィーナは僕が家にいると思ってる。彼女は僕の部屋に勝手に入ったりしないけど、ディナーの準備に遅れたら魔法の鏡で覗かれるかも。僕がいないことがばれたら大騒ぎになる、森に捜索隊が出されたら大変だ。僕が行方不明になったのはもうずっと前のことなのに……」
「サム、おれにキスしたいのか」
「えっ」 サムは片手で戸にすがりつきながら唇をこすった。「なんで?」
「なんでって、そういっただろ? おれは、憶えてる」
そういって、自分の唇の感触を確かめるように、ディーンは舌をそろりと出して下唇を噛む。赤い舌と、暗がりでもきらりと輝く白い歯が、熟れたベリーのような唇から覗いた。サムは狩人の本能で手を伸ばした。指先が唇に触れ、湿った感覚がした。頬を滑った指が、耳たぶに触れると、そこは唇よりも熱かった。ディーンはため息を吐いた。
「サムの手、でっかいな」
ディーンは少し俯いて、サムの手が自分の項を包み込めるようにした。サムは夢心地で一歩近づき、両手でディーンの頭を抱く。後ろで木戸が閉まる音がする。ガラスの嵌っていない窓が一つあるだけの小屋の中は真っ暗になった。
ディーンは目を閉じたままゆっくりを顔を上げた。親指の付け根に彼の穏やかな脈動を聞く。野性の鹿に接近を許されたときのように誇らしく、謙虚な気持ちになった。サムは初めてキスをした。
4
何をいわれるかとひやひやしながら屋敷に戻ったが、ロウィーナは不在だった。かわりにアリシアがキッチンを取り仕切っていた。気が緩んだサムは今度はアリシアににやけ顔が見られないかと心配するはめになった。味見をして、雇いのコックにしょっぱいわね、でもこれでいいわ等と指示を出しながら、アリシアはサムを観察している。魔女というのはみんなそうだ。気安いふりをして他人の心を探るのに余念がない。
食卓が完成するころにロウィーナとターシャが帰ってきた。二人が揃って出かけていたことにサムは驚いた。何か大きな事件があったのかと思い、それからあずまやのディーンのことがばれたのではないかと怖くなる。
ロウィーナは冷静を装っていたけどイライラしているのは明らかだったし、ふだん泰然としているターシャもどこか落ち着きがない。
「二人でどこに行ってたんだ?」
食事が始まってしばらくして、マックスが尋ねた。サムは二人の魔女の答えを待つ間、ろくに呼吸もできなかった。ロウィーナがグラスを煽ったので、ターシャが話し出した。
「ロックリン家よ。招待状を出しに行ったの。とんでもないことを聞かされたわ。大事が控えているから心配ね。おかしなことにならなければいいけど。ロウィーナ……」
「ギデオンが死んだこと?」 ロウィーナはその話題を口にするのも腹立たしいとばかりにターシャをにらんだ。「大したことじゃないわ、あの腐った三つ子が今までそろっていたことが不吉だった。わざわざ私たちに話したのはサムの儀式にケチをつけるためよ。なめられたもんだわ、たかが数十年ばかりアメリカに入植したのが早いからって」
「ロックリン家? 私もあいつらは嫌い。でもしょうがないわ、あっちは由緒正しいドルイドのスペルを持ってる」 アリシアがみんなの顔を見回す。「私たち��あるのは……実地で身に着けた薬草学に、星占術、たくさんの水晶。あちこちの流派を回って極めた最先端の魔法術。あれ……全然悪くないかも?」
「さしずめ野草派ってとこだな」 マックスが調子を合わせる。「雑草と自称するのはやめておこう。でも、サムの儀式は予定どおりやるんだろ?」
「もちろんそのつもりよ」
「僕の儀式って?」 みんなが当然のようにいうから、サムは何か重要な予定を自分だけ聞き逃していたのかと焦った。ロウィーナとターシャ親子はともに定期的に魔法の儀式を行う。サタンへの忠誠を示し、魔力を高めるためだ。子どもにはまだ早いといって、いつものけ者にされていたから、どうせ自分には関係ないと思ってよく聞いていなかったのかも。
「僕も儀式に参加できるの?」
それを熱望していたのは覚えているが、ディーンを匿ってる今は避けたい。
「いいえ、そうじゃない。サム。”あなたの”儀式よ」 サムが言い訳を探す間もなくロウィーナはいった。
彼女は背筋をピンと伸ばしてサムを見た。「��なたはもう十六歳。サタンに忠誠を誓って一人前の魔法使いになる時が来たの。小さいころに教えたでしょ、森のストーンサークルで儀式を行う。この土地に住まう全ての魔女と魔法使いの立ち合いのもと、新しい魔法使いの誕生を祝うのよ」
サムはあっけにとられた。「そんな――大事なことを、なんで――もっと前に、言ってくれなかったんだ」
「逃げちゃうと困るでしょ」 アリシアがあっさりといってのける。「多感な思春期の子どもに”おまえは十六歳になったら”死の書”にサインしてサタン様の下僕になるんだ、それまで純潔を守れ”なんていったら大変なことになる。私もマックスも、知らされたのはその日の夕方。まあそれまでも、男の子と仲が良くなりすぎないように見張られていたけどね」
「その反動が今きてる」 マックスが気だるそうに顔を向けて、双子はほほ笑んだ。
「その日の夕方だって?」 サムは仰天した。「まさか、今夜?」
「まさか。今日は招待状を出しただけ。儀式は明日の夜」 ロウィーナはため息を吐いて再びカトラリーを持つ手を上げる。「まあ、だから、明日の昼間の勉強はお休み。あなたは寝ていなさい。真夜中に始め、明けの明星が昇るまで行うのが通例なの。初めての儀式だから特に長く感じるものよ。主役が居眠りなんて許されませんからね、しっかり寝ておくことね」
「私たちもその助言がほしかったわ」 双子が嘆くと、ターシャが「私の若いころなんてもっとひどかった。真夜中に叩き起こされて……」と話を始める。サムはそれを耳の端で聞きながら、味のしない肉を噛み締めた。大変なことになった。
ストーンサークルはディーンをかくまっているあずまやのすぐ近くにある。ただの天然のアスレチックジムだと思っていた古ぼけた巨石にそんな使い道があったなんて知らなかった。
ディーンを別の場所へ移す? いや、他に森に彼を隠せるような場所なんて思い当たらない。もしも永久に彼を森に閉じ込めておくっていうなら別だ――大木のうろ、崖下の洞窟、そういった場所を幾つか知っている――そこを拠点に家を作ることができる。何週間、何か月、何年もかけていいなら、サムは彼のために新しい屋敷だって建てられる――だけどそうじゃない。そうはならない。ディーンの記憶を取り戻して、彼の帰る場所を思い出せてあげるんだ。
「ロウィーナ……聞いていい?」 サムは何でもないふうに装って質問した。「人の……記憶を消す魔法ってあるだろ? 難しいのかな?」
当然ながら、何でもないふうに答えてくれる魔女はいなかった。みんながサムの顔を見るので、サムは急いで唐突に変な質問をした正当な理由を披露しなければならなかった。
「思春期に……」 喉にパンが詰まったふりをして咳をする。「その、儀式のことを聞かされたって、ああそう、って受け入れる子もいるかもしれないだろ。まずは話してみないと。隠すのはあんまりだ。それで、すごくその子が嫌がったり、自暴自棄になるようなら、その時は記憶を消す魔法を使えばいいんじゃないかと、そう思ったんだ。ただ思いついたんだよ」
一瞬、間��あいて、マックスが「ひゅー」と口笛を吹くまねをする。「その考え方、俺は好きだな。冷酷で、合理的で。さすが、ロウィーナの一番弟子」
ロウィーナは口元でだけ微笑み、ゆっくりと首を振った。「そうね、でも少し、短絡的よ。一時的に記憶を奪うことは、ハーブの知識があれば簡単にできる。だけど人の記憶を完全に消し去るのはとても難しい魔法なの。呪いというべきね。そんなものは仲間に使うべきじゃない」
「一時的なものだったら、ハーブを使えば治る?」
「ええ。ジュニパーベリー、それとほんの少しのベラドンナ……」 ロウィーナはスープをすすりながらすらすらと必要なハーブの種類を挙げていく。サムは記憶しながら、どれも屋敷の薬草庫や温室から拝借できるものだと思って安心した。「……マンドレークの頭をすり鉢にしてそれらを混ぜ合わせ、魔力を溜めた水に浸す。それを飲むのよ。簡単でしょ」
「それは記憶を失わせるほうのレシピじゃない?」 薬草学に長けたターシャが口を出す。ロウィーナはそうだったわと頷いた。「記憶を戻すほうなら、ベラドンナを入れちゃだめだった。だけどそういったハーブの魔法は時間とともに解けるから、ふつうはわざわざ作らないのよ」
「記憶をあれこれする魔法はドルイドが得意だったわね。ロックリン家にも伝わってるはずよ、あの書……」 ターシャは訳ありげな微笑みをロウィーナに向ける。「”黒の魔導書”。あれのせいで多くの魔女が高いプライドを圧し折ることになったわ。まあ、でも、今ではちょっと時代遅れね」
「あいつらの頭は中世で止まっているのよ」 ロウィーナは憎々し気につぶやいて、ツンと顎を上げた。
その夜中、各々が部屋に戻ってそれぞれの研究や遊びに没頭している時間、サムが眠っていることを期待されている時間に、彼はこっそりとベッドを抜け出してキッチンに忍び込んだ。用意したリュックサックにパンと果物を詰め込む。早くディーンのところに戻りたかった。空腹で不安な思いをさせたくないし、新しいランプを灯して暗闇を払ってやりたい。それになにより、彼と話がしたかった。記憶がなくてもかまわない。彼の声を聞いていたい。彼にどうして僕とキスをしたのと尋ねたいし、どうして僕がキスをしたのかを話して聞かせたい。もう一度キスをさせてほしいといったら彼は頷いてくれるだろうか。サムは期待でうずく胸を押さえた。断られないだろうという確信がそのうずきを甘いものにした。
「サム?」 暗がりからロウィーナが現われてサムの心臓は押さえたまま止まりかけた。冷蔵庫のドアを開けてうずくまる養い子をしばし見下ろして、ナイトドレスにローブを羽織った彼女はふと目元をやわらげた。
「眠れないのね。儀式の話をしたから」
「う、うん。そうなんだ。喉が渇いて……」 サムは冷蔵庫のドアを閉めて立ち上がり、足元のリュックを蹴って遠ざけた。暗いから見えないはずだ。
「心配することはないわ。あなたはただそこにいて、”死の書”にサインをすればいいだけ。あとは私たちの長い祝福を聞いていればいいのよ。夜が明けるまでね」
「勉強はたくさんさせられてるけど、夜更かしの授業はなかったな」
「何をいってるの。あなたが毎日遅くまで本を読んでいること、呪文や魔法陣の勉強をしてることは知ってるわ」 ロウィーナはそういってサムを驚かせた。彼女は手を伸ばしてサムの伸びた前髪を撫でつけてやった。
「情熱のある、熱心な生徒を持って光栄だわ。あなたはきっと、偉大な魔法使いになる。私にはわかる。あなたがほんの赤ん坊のころからわかってたわ」
「森で僕を拾った時から?」
んー、とロウィーナは目を細めて考えるふりをした。「やっぱり、あなたが自分の足でトイレまで歩いていけるようになった頃かしらね」
サムは笑って、自分を育てた魔女を見つめた。彼女の背丈を追い越してもうずいぶん経つ。彼女がサムの身体的な成長について何かいったことはなかった。けれど時々、彼女が自分を見上げる目が、誇らしく輝いているように思える瞬間があって、サムはその瞬間をとても愛していた。
「ロウィーナ」
「なあに」
「僕、成人するんだね」
「魔女のね。法律的にはまだ子ども」
「ロウィーナのおかげだ。僕、あなたの子どもであることが誇らしいよ」
ロウィーナの目が輝いた。
「まだまだ独り立ちはさせないわ。もう少し私のしごきに耐えることね」
「覚悟しとくよ」
ロウィーナは冷蔵庫を開けて水のデカンタを取り出した。キッチンを出ていこうとする彼女の柳のような後ろ姿に息を吐いて、踏みつけていたリュックを引き寄せる。何か思い出したようにロウィーナが振り向いて、サムは慌ててまたリュックを後ろ脚で蹴った。
「いくらでも夜更かししていいけど、明日の朝は狩りに行っちゃだめよ。食事の支度は双子に任せるから」
「なんで?」
ロウィーナは肩をすくめた。「ロックリン家のギデオン。彼が死んだのは夕食の時にいったわね。死体が森で見つかったのよ。彼らの領地は森の東側だけど、ハンターはそんなこと気にしないわ」
サムはギクリとした。「ギデオンはウィッチハンターに殺されたの?」
「魔女を殺せるのはウィッチハンターだけよ」
「だけど、そんなのニュースになるだろ」
「正当な捕り物ならハンターは死体を残さないし、カトリーナの様子じゃ何かトラブルを隠してる。だけど巻き込まれるいわれはないわね。しきたりだから、明日の儀式には彼ら――生き残った二人の嫌味なロックリン家――も呼ぶけれどね。森にはハンターがひそんでいるかもしれない。目撃者がない状況でハンターと遭遇したら、やつらがいうところの違法行為がなくても逮捕されるわよ。だから、サミュエル、明日の儀式にみんなで行くまでは、森に入っちゃだめ」
「わ、わかった」
ロウィーナが行ってしまうと、サムは念のために一度部屋に戻って、ベッドサイドのランプを付けた。それから温室に忍び込み、ハンガーに吊るされているマンドレークを一根、それと必要なハーブを掴んでリュックに詰める。温室の裏口からこっそりと抜け出したサムは、二階で休むロウィーナに心の中で詫びながら、パーカーのフードを深くかぶって、まっすぐ森へ向かった。
◇ ◇ ◇
ツイッターにも書いたけど設定だけは壮大。このあと・というかいま書いてるのは三部作のうちの一部でディーンとは別れて終わる。そしてサムは魔女の権利向上のために戦う革命戦士もどきになり、ハンターのディーンとは敵対関係に。。というロミジュリな。でも大ボスはUKの賢人か悪魔かチャックにでもして魔女もハンターも同じ側で戦うんだな。(そのあたりはボヤボヤ)最終的な問題は二人が兄弟だってどうやってばらすか、ばらした時の反応はどうするかだけど、その時にはもうやることやっちゃって覚悟できてるサミさまになってるだろうからきっとなんとかなる。
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06090046
あるところに、それはそれは醜い姫がおりました。顔には幾つもの爛れた火傷の痕があり、目や耳は聞こえていましたが、人間が一目見ればバケモノ!と声を上げ逃げてしまいそうな、そんな顔でした。醜い姫は国の外れ、森の中で、真っ黒な面を被った魔術師の男と二人、暮らしていました。
姫は、街に住むことは出来ません。危ない場所だから行けない、と男に言われ、姫は素直に森の中、何もない狭い小屋で、野生の動物や花と戯れながら、日々を過ごしていました。
姫と男が住む国は、気弱な王と、それはそれは美しい王女が納めている国でした。元は普通の国だったその場所は、王女によって段々と変わっていきました。
彼女は王に成り代わって国の仕組みを変え、美しさこそが全てである、という法律をもとに、国を作り替えました。
美しの国、と呼ばれたその国は、6歳になった日、見た目の美しさで、社会的な地位が決められます。
その地位は、一生変わりません。見た目がとても美しくなって、上にのぼっていく人も稀にいましたが、皆、醜いものは醜いものに与えられた貧民街で泥水を必死に啜り、美しいものは美しい場所で美しい景色を見ながら、贅沢な暮らしをする、世界が光と影に真っ二つ。そんな国でした。
「相変わらず、あの国は醜いな。」
「あら、新聞を読んでいるの?」
「あぁ。天気が知りたくてね。もうじき雨季が来る。今日は林檎を見に行こうか。」
「やったぁ!行く行く!」
姫には、幼い頃の記憶がありませんでした。自分が誰から産まれ、なぜこんな顔になり、この一見不気味な男と暮らしているのか、全く分かりません。男に聞いても、「森で拾った。」としか言われなかった姫は、時々男が持って帰ってくる新聞や本、そしてさまざまな森の植物、動物を見ながら、色んな知識を付けました。
魔術師の男も、姫の前で面白い実験をしてみたり、野生動物を捕まえて捌いてみたり、常に好奇心を満たしてやろうと楽しいものをたくさん見せました。
姫は、側から見た自分の顔がとても醜く、国では酷い目に遭うことを知っていました。美しいものこそ全て、という価値観に染まりきった国の人間とは違い、姫の顔を気にせず、ただ何事もないように過ごしてくれる男は、姫にとって、かけがえのない人でした。
男は、姫と出会ってから一度も、仮面を外したことがありません。真っ黒なカラスのような嘴のついた仮面を被り、眼の部分も暗くてよく見えません。
でも、姫は、例え、その仮面の下を一度も見たことがなくても、男のことが大好きでした。
「魔術なんてものはね、本当は無いんだよ。全部、科学で説明ができるんだ。」
「科学?」
「そう。皆は知らないが、病気だとか、飢饉なんかも全て、科学で解決するんだよ。」
「それって素敵!よく分からない迷信とか、思い込みに縛られているなんて、馬鹿みたいよ。」
「君は賢いな。さ、早く眠ろう。明日は16歳の誕生日だろう?収穫をして、君の大好物を作ってあげよう。」
「本当!?楽しみ、早く寝なくっちゃ!」
その日の夜、男は、小屋の外の気配に気付いてゆっくりと起き上がりました。隣のベッドでは、気持ちよさそうに寝息を立てる姫がいます。
男がナイフを手に玄関を開け、人影目掛けてナイフを突きつけると、そこには、ガタイのいい男が一人立っていました。
「なんだ、アンタか。」
「物騒なお出迎えだな。久しぶり。」
「姫はもう寝てる。外で話そう。」
仮面を外した男が、訪ねてきた男からタバコを貰い、肺に深く煙を吸い込んで口からぼわり、と吐き出しました。夜の闇に、薄ら白い煙が燻り、溶けていきます。
「誕生日だから、様子を見に来たのか。」
「あぁ。あれから10年経ったんだな。」
「立派に育ったよ。昔から変わらず、綺麗な人だ。」
「...そう、だな。」
「用はそれだけか?」
「いや、これを、姫に。と思って。」
「...生花のブローチか。は、クリスマスローズを選ぶなんて、趣味が悪い。」
「そう責めないでくれ。俺はあの日からずっと、姫を忘れず想って生きてきたんだ。」
「まあ、そのおかげで今ここに姫がいるんだ。責めやしないよ。」
「じゃあ、俺はもう城に戻るよ。夜明け前には戻っておかないと。」
「待て、これ持ってけ。」
「...変わらないな、お前も。ありがとう。帰りがてら食べるよ。」
ガタイのいい男は、渡された包みを懐に入れ、後ろ手で手を振りながら夜の闇の中へ消えていきました。仮面の男は仮面とブローチを抱えたまま、満天の星が浮かぶ空をぼーっと眺めていました。星の光が瞬いて、時折地面へ落ちてきて、木に実った沢山の果実を照らしました。
姫は、美味しそうなパンの焼ける匂いで目が覚めました。溶けたバターと、蜂蜜とミルクの匂い。飛び起きてキッチンに行けば、エプロン姿の仮面の男が姫を抱きとめ、「おはよう。」と言いました。
「おはよう。今日の天気は?」
「快晴さ。魔法の力でね。」
「ふふ、昨日は夕焼けが綺麗だった。だから晴れたんでしょ?」
「バレてたか。さぁ、ペテン師特製の朝食ですよ。席について。」
「はぁい。」
「「いただきます。」」
姫は手に持ったカゴへ、もぎ取った林檎を一つ入れました。もう5個、6個ほど入ったそのカゴはずしりと重たく、���の目にキラキラと輝く群青が写ります。
「今年も綺麗に実ったね!」
「あぁ、10年目ともなると安定するね。出来がいい。」
「はぁ、早くおじさんのアレが食べたいわ。」
「支度はしてあるよ。林檎を小屋へ運んでくれるかな。」
「はぁい!」
普通の林檎は火よりも濃くて、血のように赤いものだと、食べたことがなくとも本で読んで姫は知っていました。ただ、男の育てる林檎はどれも群青色。一眼見ただけではくさっている、と思わなくもない毒々しい色をしていました。でも、勿論毒などありません。姫は毎年、この林檎を、男の一番得意な料理で食べているからです。
「出来るまで眠っているかい?」
「ううん、見てたいの。だって今日は、私の誕生日だもの。」
「分かったよ。」
しゃく、しゃりと大きめの角切りに切られた林檎。瑞々しいそれよりも、姫はたっぷりの砂糖で煮込まれて、飴色になった林檎の方がずっと美味しそうに見えるのです。そう、姫は男の作るアップルパイが、世界で一番好きでした。
「さ、あとは焼けるのを待つだけ。」
「この待っている時間、狂おしいほど愛おしいわ。」
「こちらへおいで。」
「...なぁに?」
彼らの住む国では、16歳の誕生日は特別なものとして扱われていました。社会的地位が決められてから10年。顔の美しい者たちがそれはそれは盛大に祝う誕生日として、どこかの祭りのように盛大に騒ぐのです。
男は、クローゼットの奥から、大きな箱を取り出しました。姫の目は期待にキラキラと輝いています。埃の被っていないその箱を開け、姫は、嬉しさのあまり悲鳴を上げました。
箱の中にあったのは、純白のウェディングドレスでした。姫が物語の中で何度も見た、幸せなお姫様が王子と結ばれて、そして祝福の中で着るドレス。シンプルで模様も飾りも何もない、上品なデザインでした。
つやつやした生地を恐る恐る触って、手のひら全体で触れて、頬擦りしてみました。気持ちが良いその絹に顔を埋めて、そして、仮面の男を見上げました。姫の目には涙が揺蕩って、今にも溢れそうに膨らんでいます。
「どうした?」
「私、こんな綺麗な服、着ていいのかな。」
「君に着て欲しくて、君のために作ったんだ。」
「でも、私、」
「出会った頃からずっと、君は美しい。生まれてきてくれたことを、祝福したいんだ。それに、私は魔法使いだよ。いくらでも夢を見させてあげられる。騙されたと思って、着てくれないかな。」
「っ、分かった、大好きよ、おじさん。」
男はカメラを取り出して、中にフ���ルムを入れました。庭に置いた白いテーブルとチェアー。そして、姫の大好きなハーブティーにアップルパイ。外で待つ男の前に、着替えた姫が現れました。
純白のドレスに身を包んだ姫は、男が思わず見惚れてしまうくらい、それはそれは美しい姿をしていました。男は嬉しそうな声色で姫へ色々指示をし、座らせてみたりしゃがませてみたり、色々なポーズで写真を撮りました。
姫は写真が嫌いでした。でも、今日くらいは、綺麗な服を着た姿くらいは、せめて首から下だけでも、思い出として撮っておきたい、そう思って、涙を拭いながらカメラに向かって笑い続けました。
お腹いっぱいアップルパイを食べた姫は、日が沈む頃にはすっかり眠りに落ちてしまいました。キッチンの机の上には、現像された写真たちが何枚も散らばっています。その写真に写る姫の顔には、爛れた痕も、傷も何もなく、まるで白雪のような肌に、真っ黒で艶めかしい黒髪、熟れた正しい林檎のように赤く色づいた小さな唇、まさしく姫と呼ぶにふさわしい可愛らしい娘が写っていました。
「10年も掛かったよ、ごめん。」
そしてその夜、森に火が放たれました。男は姫を抱え、森の奥、人知れず作っていた岩の洞窟に逃げました。真っ赤な炎が青い林檎の木を包んで、飲み込んでいきます。
姫は震える唇を噛み締めて、その光景をただ見ていました。
「私が、醜いから、森を焼かれたの?」
「違うよ。君は悪くない。」
「おじさんの林檎の木、沢山リンゴが実ってたのに、燃えてしまう。」
「大丈夫だよ。落ち着こう。ゆっくり3数えてごらん。」
「......さん、にぃ、いち、」
数を数え、男のかけた術によって眠った姫を、男はそっと洞窟の奥へと寝かせました。被っていた仮面を外し、彼女へと被せ、洞窟へも術をかけた男は燃え盛る木々を見ては笑い、火のついた木を四方に投げ、むしろ森に広がる火を手助けしました。
「燃えろ燃えろ。これでいい。はは、ははは!」
森は延々と燃え、舞い上がった青銀の灰が風に乗せられ舞い上がって、街の方へと流れていきました。
王女は爪を噛みながら、城の中で怒鳴り散らしていました。10年前に殺したはずの姫が、生きていると鏡に知らされたからでした。
王女はその日も日課を済ませるべく、鏡の間で鏡に話しかけていました。
「鏡よ鏡、この世で一番美しいのは?」
『......おぉ、なんということ、この世で一番美しいのは、貴方の娘、白雪姫です。』
「何言ってるのよ、あの子は10年前に死んだわ。」
『いえ、生きています。街の外れ、森の中で自由に暮らしています。』
「なぜ10年もわからなかったの!?」
『強い魔力を感じます。』
「まぁいい、ちょっと!」
そばにいた側近の、ガタイのいい家来を呼びつけた王女は、冷酷な顔で一言、言いました。
「夜の間に火を放ちなさい。」
「お、王女様...しかし、あの森は...」
「焼け野原になれば、醜い者たちに土地を与えて畑にでもすればいい。早く火を。燃やし尽くして更地にして、殺すのよ。」
「......仰せのままに、王女様。」
城に突然の来訪者があったのは、火をつけた次の日の朝でした。王女は、呼んでも誰の姿も見えない城の中を、カツカツと苛立った足音を鳴らしながら歩いていました。
そして自室に戻った王女の前に、全身が黒い男が現れたのです。
「おはようございます、王女様。」
王女は固まりました。その男の、口の端の裂けたような傷痕と、色の違う左右の瞳、そしてその卑しい笑顔、神聖な城になど絶対入れるはずもない���シンメトリーな醜い顔には、嫌と言うほど見覚えがあったからです。
「あぁ、やっぱ覚えてた?そりゃそうか、自分の子供殺させた相手忘れるほどバカじゃねえな、さすがに。」
「何をしにきた。」
「お礼を。」
王女のベッドへ勝手に腰掛け、タバコへ火をつけて吸い出す男。困惑したままの王女を見て、心底楽しそうな笑顔を浮かべた男が、謎解きを始める。
「まずは10年前のお礼。娘の美しさに嫉妬したアンタの目の前で娘の顔に薬品ぶっかけて、その後一旦解放した俺を襲って、死体奪って、こんなご褒美までくれて、どうもありがとう。」
にこにこと上機嫌に笑いながら、男は昔を思い出していました。
鏡によって娘の美しさを知らしめられた王女は、6歳になる頃、呪術師の男に顔が醜くなる呪いをかけさせ、そして失望のあまり娘が自ら命を絶った、と、そういうストーリーを作り上げていたのでした。
勿論手を下した男も、二度と街を歩けないよう顔を傷つけて、トドメを刺させたつもりでした。
「10年前、アンタが娘の死体だと思ったあれは、俺が術をかけた豚の死体だよ。」
「な、そんな...確かに、鏡は死んだと、」
「何のために俺みたいな呪術師がいると思う?アンタみたいな醜い人間の心を騙して、呪うためだよ。ははは。」
高笑いが止まらない男は、ゆっくり瞬きしながら王女に近付き、煙を吐きかける。
「なぁ、王女さんよ。引き連れてるお供はどうした?」
「!!!まさか、それも、お前が...?」
「くく、ははは、あはははは。お前ならあの森を焼くって、分かってたからなぁ。俺は。」
王女は慌てて自室の窓に駆け寄り、バルコニーに出て外を見下ろしました。城の外、普段は美しい者たちが仲睦まじく集っている広場が、夥しい数の倒れ込む人々で埋まっています。
「10年間ずっと呪い続けたんだ。人も、土地も、何もかも、終わり。もうこの国は死んだ。」
「嘘だ、そんなはずは...貴様!」
「足掻くなって。もう、あとアンタが死ぬだけだから。」
男が人差し指を王女に向け、そして、オッドアイを見開き、何か言葉を呟きました。ニヤリ、と歪められた口角が釣り上がり、耳まで繋がった痕が引き攣れました。
ふわり、と浮いた王女が恐怖を顔に浮かべ、そして、男の指の動きと一緒に左右に揺らされ絶叫が城に響きます。
「さようなら。世界で一番醜い、王女様。」
下を向いた人差し指に操られるまま、王女は地面に顔から落ちていきました。男がバルコニーから下を覗けば、恨みがましい顔で見上げている王女がいます。楽しくてしょうがない男は、王女目掛けてバルコニーに置かれていた鉢植えを全て落とし、そしてスッキリした面持ちで城を後にしました。
男の育てていた青い林檎は、呪いの林檎でした。摂取しても、灰を吸い込んでも、育った大地さえ猛毒になる恐ろしいものを、男は森いっぱいに広がるまで育てていたのです。
ただ、男と、そして姫だけは、守りの呪いをかけたアップルパイを食べ続けていたので、この世界でも無事に生きられる。そんな理��尽すら、男は厭わないほど、この国を、人を嫌い、呪っていたのです。
死体の転がる小綺麗な広場を、男が楽しそうにスキップしながらかけていきます。転がる死体の中には、かつて姫と男が逃げるのを手助けした、あのガタイのいい男の姿もありました。
洞窟で丸二日眠っていた姫が目覚めた時、目の前には本の中でしか見たことのない海が広がっていました。今までは緑に囲まれていた姫は、また違う世界の自由を手に入れたのです。
そばに座って姫を見ていた仮面の男は、いつもと変わらない「おはよう。」を姫へと伝え、そのつるりとした頬をなぞりました。
いつもと違う感触に姫が目を見開き、己の顔に触れ、あふれる涙とともに男に抱きつくまで、あと3秒。
めでたし、めでたし。
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【沖縄返還】多くの尊い命と引き換えに叶った「奇跡の祖国復帰」
2016年5月16日 1時30分 まぐまぐニュース
5月15日は沖縄本土復帰記念日。終戦からこれほど短期間で、しかも平和的な話し合いで返還された例は、世界史上稀に見る出来事だと言います。なぜそんな奇跡が実現したのでしょうか。無料メルマガ『Japan on the Globe-国際派日本人養成講座』で詳しく解説されています。
沖縄の祖国復帰を果たした県民の思い
沖縄は昭和47(1972)年5月15日に返還された。戦争で失った領土が平和的な話し合いで短期間のうちに祖国に復帰したのは世界史上でもあまり例がない。
一度失った領土を外交交渉で取り戻す事がいかに難しいかは、北方領土や竹島の現状を思い浮かべれば、容易に理解できる。香港はアヘン戦争の結果、1898年にイギリスとの間で99年間の租借条約が結ばれ、中国に返還されたのは1997年であった。
まして米軍は沖縄戦で7万5,000人もの死傷者を出した。アメリカ軍の中には、「沖縄は我々の青年の血で贖(あがな)った戦利品である」と発言する者もいた。
昭和22(1947)年6月、マッカーサーは「沖縄人は日本人ではない」と発言した。この時点で、アメリカは、本土と沖縄を切り離して永久支配することを考えていた。いわば、今日のグアムのような形態である。
朝鮮半島、中国大陸、東南アジアを睨む沖縄の地政学的な重要性を考えれば、ここをアメリカの直轄地として、自由に使えるようにしておきたい、と考えるのは当然であった。
しかし、沖縄は「香港」にも「グアム」にもならず、平和裏に祖国に復帰できた。この世界史上での奇跡がどう実現したのか見てみよう。
祖国防衛に尽くした沖縄
沖縄が祖国防衛のために果たした役割は計り知れない。
昭和20(1945)年2月のヤルタ会談で、ルーズベルト大統領は、日本を壊滅させ、無条件降伏させる方針を確認した。4月中に沖縄を占領した後、南九州上陸を狙うオリンピック作戦、続いて関東平野に侵攻するコロネット作戦が計画されていた。スターリンのソ連は北海道、東北地方に侵出することが決定されていた(『祖国復帰は沖縄の誇り』p19)。
このシナリオ通りに展開したら、本土決戦でさらに数百万人規模の日本人が犠牲となっていたろう。さらにドイツと同様、無政府状態となったまま、米ソに分割占領されていたはずだ。
その悲劇を阻止したのが沖縄戦であった。日本軍の洞窟陣地を利用したゲリラ戦術により、米軍は太平洋戦争で最大の損害を受けた。日本軍守備隊の戦死者約6万5,000人に対して、米軍は地上戦闘での死傷、神風特攻による艦船の沈没・損害、激烈な戦闘による神経症での戦線離脱などで合計7万5,000人もの死傷者を出している。
日本軍の5倍の兵力を投入しながら、1ヶ月の作戦が3ヶ月もかかった。米軍は実質的には沖縄戦は敗北だったとの認識をしていた(同、p17)。
そして、その被害の大きさに、このまま本土侵攻に進んだら、米軍も100万人規模の犠牲を出すであろうと予想された。ここから、米政府は無条件降伏の方針を撤回し、有条件降伏を勧めるポツダム宣言を出した。
戦場となった沖縄で、日本軍は島民の3分の1、20万人を本土や安全な島北部に疎開させた。それでも軍属として戦った青壮年、従軍看護婦らも含めて、10万人規模の住民犠牲者が出ている。
沖縄戦での軍民の尊い犠牲により、本土決戦を避け得て、その何倍もの国民が救われ、国家と皇室の護持ができたのである。
次ページ>>沖縄県民を勇気づけた佐藤栄作首相の言葉
沖縄の「グアム」化を避けた昭和天皇のご提案
この事情を踏まえてであろう、昭和天皇は沖縄県民に対して格別のお気持ちを抱かれていた。それは昭和62(1987)年に病に倒れられた際に、「(沖縄訪問は)もうだめか」と言われ、次の痛恨の御製を詠われた事から窺える。
「思はざる病となりぬ沖縄をたづねて果さむつとめありしを」
昭和22(1947)年、占領下ながら、昭和天皇はアメリカに対して沖縄に関する重要な提案をされた。1つは、アメリカが沖縄を永久支配しようとしているのに対して、沖縄の潜在的主権は日本が持ち、施政権のみをアメリカが預かる形にして欲しいということ。
もう1つは、共��主義勢力から沖縄を守るために、アメリカの軍事力を展開して欲しい、ということだった。この慧眼は、現代においても、沖縄の米軍基地が中国の覇権拡大を食い止め、東アジアの平和維持に必要不可欠の存在になっている事実からも窺える。
昭和27(1952)年、サンフランシスコ講和条約で日本が独立を回復するが、その際にアメリカは昭和天皇のご提案を受け入れ、潜在的主権は日本が持ったまま、施政権はアメリカが預かる形とした。これにより「グアム」化への道は避けることができた。
次の問題はアメリカが沖縄の施政権をいつまで持つのか、という点となった。イギリスが香港を99年間租借したように、アメリカも沖縄を長期間支配すべしというのが、当時のアメリカ国民の意見だった。このままでは沖縄は「香港」化する恐れもあったのだが、それを食い止めたのが沖縄の祖国復帰運動だった。
「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、我が国の戦後は終わらない」
後に沖縄の祖国復帰運動の中心となった小学校教諭・仲村俊子さんは復帰前の沖縄県民の祖国への思いを次のように回想している。
復帰前の沖縄には、アメリカ施政下の琉球政府がありましたが、県民感情としては祖国日本が懐かしいのです。米軍統治下で物質的には恵まれていましたが、私たちの代で復帰を果たさないと、子供たちは自分の祖国がどこなのかさえわからなくなってしまうと危惧されていました。
(同、p34)
祖国復帰運動に立ち上がったのは、沖縄教職員会だった。これは日教組とは違い、純粋な教育団体だった。その初代会長・屋良朝苗(やら・ちょうびょう)氏は、復帰後に初代の沖縄県知事となった人物である。この屋良会長の時に、学校教育を通じて日の丸掲揚を広げる運動が始まった。
昭和27(1952)年に屋良会長名で次のような通知が出された。「各家に国旗を掲げるように奨励いたしましょう。国旗の注文はいつでも学校ごとにまとめて地区委員会を通じて申し込んでください」。毎年1万本の申し込みがあったという。本土側でもこれを支援して、大量の国旗を沖縄に送った。
当時、私は平敷屋中学校に勤務していましたが、初めて日の丸が学校に届いたときには、胸に響くものがあり、涙が出ました。
(同、p35)
昭和30年代から40年代には、教職員が復帰運動の中核となった。「沖縄を返せ」と歌いながら、デモ行進を行った。沖縄全県で日の丸が掲揚された。
こういう県民の想いに応え、佐藤栄作首相は昭和40(1965)年8月、戦後の首相としての初めての沖縄入りを果たし、那覇空港での第一声で「沖縄の祖国復帰が実現しない限り、我が国の戦後は終わらない」と語った。この声明は祖国を願う県民を大いに勇気づけた。佐藤政権も政治生命をかけて沖縄復帰に取り組んだ。
次ページ>>「祖国復帰反対」を叫ぶ団体の正体
ニクソン政権の沖縄返還決断
沖縄での祖国復帰運動の盛り上がりを背景にした日本政府の返還要求は、ニクソン政権を揺るがした。キッシンジャー大統領補���官はニクソン大統領にこう提案をした。
日本の返還要求の圧力はもはや押し戻すことのできないところまでに来ている。この交渉を拒否すれば一切の基地を失ってしまうことになってしまう。
(同、p23)
時あたかもベトナム戦争の最中であり、日本国内でも「ベトナム戦争反対」や「日米安保反対」と学生運動の嵐が吹き荒れていた。日本を自由主義陣営に留め、沖縄の基地を維持するためには、沖縄を返還せざるを得ないと考えたのであろう。昭和44(1969)年11月の日米首脳会談で「核抜き、本土並み、3年後返還」が合意された。
しかし沖縄が日本に復帰して一体化・安定化し、米軍基地がそのまま残ったのでは、中国やソ連など共産陣営にとっては極めて都合が悪い。分断されたまま、住民が反米感情を抱いていた方が米軍の動きを制約できるし、いざとなれば沖縄だけ独立させて共産陣営に取り込む道も残る。
「沖縄を日本革命の基地にしよう」
そんな意向を受けたのであろう、左翼陣営から祖国復帰反対運動が起こされた。昭和43(1968)年、屋良会長が琉球政府の行政主席に当選し、事務局長だった喜屋武(きやむ)氏が会長に就任した頃から沖縄教職員会が変わり始めた。
学校に「日の丸に賛成か、反対か」と言うアンケートが配られ、驚いて思わず「本当に喜屋武先生の名前できているのか」と聞いたほどです。私の勤務していた那覇市の城岳小学校はしっかりした人が多く、「賛成」が多数でした。
すると「やり直し」と言われてアンケートが返ってきたのです。指導を受けて「反対」を多くすると、ようやく通りました。この一件でおかしいと感じ始めました。
名護で開催された教職員婦人部の会では「今の日本に復帰するのではないから、復帰は言わずに安保反対だけを言え」という主張がなされていました。……
学校には「70年安保に向けて」というパンフレットが回ってくるようになり、街には「沖縄を日本革命の基地にしよう」という教職員会のポスターが貼られるようになりました。
(同、p36)
次ページ>>「祖国復帰とは、英霊の御心に応えること」
「沖縄県民が望まないのに無理してまでも復帰させなくてもいい」
学校でも闘争資金集めがあり、「この組織には絶対についていけない」と感じた仲村さんは、昭和44(1969)年11月に仲間5人と教職員会を脱会した。
脱会声明を「沖縄タイムズ」と「琉球新報」に乗せ、連絡先として中村さん宅の電話番号を記した。新聞社は「相当の圧力が来るかと思うが大丈夫か」と心配してくれたが、翌朝、立て続けにかかって来たのは抗議ではなく、「よく頑張った」という激励だった。
昭和46(1971)年6月に「沖縄返還協定」が調印され、11月に批准、翌年5月に返還という運びとなっていたが、そこに東京から「復帰が危ない」という連絡があった。前年に参議院議員に当選していた喜屋武会長が、与野党に「批准に反対してくれ」と説いて回っている、との由。
また沖縄でも安保反対のデモがあり、東京からは県民の大多数が復帰そのものに反対しているように見えたので、「沖縄県民が望まないのに無理してまでも復帰させなくてもいい」という話が国会でも出ているとのことだった。
仲村さんは居ても立ってもいられなくなり、組合を一緒に脱退した仲間たちと10月31日に「沖縄返還協定批准貫徹県民集会」を開いた。1,000人以上の県民、市町村の首長や議員も集まってくれた。仲村さんもクビを覚悟で、登壇して意見発表をした。
「祖国復帰とは、必死に祖国を守るために戦われた英霊の御心に応えること」
11月3日、仲村さんら8人の陳情団が上京した。沖縄出身の議員を始め、関係する政治家を回って、早期批准の陳情を行った。竹下登・官房長官などは祖国返還を願う仲村さんたちの訴えを涙ながらに聞いてくれた。
さらに6~13日は都心部やターミナルなどでビラまきをし、沖縄返還協定批准を願って「祈・批准」と書いたタスキを掛けて、整然としたデモ行進を行った。
一方、返還反対運動は過激化して、沖縄ではゼネスト、渋谷では暴動事件が起こり、両方で火焔瓶が投げられて、警察官が死亡するという事件まで起きた。
しかし、県民集会や陳情が奏功して、「沖縄返還協定」は11月24日に衆議院で自民党による単独採決で批准された。
沖縄に戻った時は、年休の2週間を超えていた。学校で60人あまりに吊し上げられ、組合の分会長からは「お前たちが陳情に行ったから、沖縄返還が強行採決されたんだぞ」と、ノートでテーブルを叩きながら、怒鳴り散らされた。
しかし、仲村さんは「私のクビ1つだけで沖縄が復帰できれば安いものだ」と吹っ切れた気分で出勤していた。何日か経って、校長とともに那覇市の教育委員会に呼ばれたが、理解ある教育長で、クビにはならずに済んだ。
仲村さんと一緒に上京して活動した富川春子さんは、沖縄戦で現地召集兵の父親と幼い弟を亡くしている。富川さんは上京時の思いを目を真っ赤にしてこう語っている。
祖国復帰とは、必死に祖国を守るために戦われた英霊の御心に応えることなのです。
上京時の私たちはわずか7名でしたが、背後には十数万柱の英霊がついていて下さると思うと、不思議と怖くありませんでした。
沖縄戦で亡くなられた英霊を思えば、赤化していく沖縄の状況を到底座視することはできませんでした。
(『祖国と青年』)
今また、沖縄は中国とその手先となっている左翼勢力により祖国から奪われる危機に瀕している。
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絶望のパレード
魂がうわついている。まるで自分が自分でないみたいだ。ここしばらく意識は常に前方斜め下で、歩いているのは抜け殻か尻尾のようなものである。いつから、そしてなぜそのようになってしまったのだろうか。正月にかこつけて内省的になってみる。
昨年の初めに私家版詩集を刊行した。それまでに書き溜めた僅かな詩編を、2人の詩人と編集者、美術家とともに共著の形でまとめた。処女詩集にして全集のようなおもむきがあるけれども、自分としてはそれでよい。稲垣足穂風に言うなら、以降に自分が書くものはその注釈かバリエーションに過ぎないということだ。共著者と編集者が営業に奔走してくれ、関西の大型書店のみならず、関東の書店にも置いてもらうことができた。ありがたいことに帯には人類学者の金子遊氏が一文を寄せてくださった。個人的には、自分の高校時代からの読書遍歴を決定づけた恵文社一乗寺店に置いてもらえたこと、そしてそこで一度品切れになったことが大変嬉しかった。これで一地方のマイナーポエットになることができたという感じがある。それ以上は望まないが、この営みは���々と続けていくつもりだ。
詩集に関するあれこれが落ち着いてからは、英語の学習に明け暮れた。一昨年は仕事で繁忙を極めており、勉強どころか読書も満足にできなかったため、それを取り戻すように必死にやった。おかげで昨年度中の目標としていた点数を一発で大きく上回ることができ、すぐに違う分野へ手を出した。次はフランス語であった。気合を入れて5000円もする参考書を買い、基礎からやり直していった。ところがその参考書、誤植があまりにも多く、解説も非常に不親切で、ページをめくるのが億劫になり早々にやる気を失ってしまった。なんとも情けない話である。新しい参考書を買う気もなくなり、漢字の勉強へシフトしたところ、こちらはうまくいった。徐々に、平日はカフェで、週末は図書館で勉強するスタイルが出来上がっていった。その間も読書は続け、昨年で40~50冊程度は読むことができた。
秋ごろには面白い出会いがあった。実存的な不安が高まったこともあり、有休を取って哲学の道を散歩していたところ、海外からの観光客に、掛かっている看板の意味を聞かれた。訛りのある英語だったため、フランス人ですか? と問うと、そうだとの答え。自分がわずかばかりフランス語が話せるとわかって意気投合し、3日間観光ガイドのようなことをした。彼の名はムッシュー・F、ひとりで日本にバカンスに来て、東京でラグビーの試合を見たりしたとのこと。七十を超える高齢だが、つい最近まで自分もラグビーをしていたと話すエネルギッシュな人物で、全く年齢を感じさせない。パリで会社を営んでいるそうで、これが私の家だと言って見せられたのは、湖畔に浮かぶ大邸宅の写真であった。週末には森を散歩したり、湖にモーターボートを浮かべたり、馬に乗ったりしているよと言う。もちろんそれらは全て私有(森や湖でさえ!)、モノホンの大金持ちである。京都では一緒にカフェに行ったり、大文字に登ったり、うどんをご馳走したり、孫用の柔道着を探したり、旅行の手配を手伝ったりした。是非フランスにおいでと言い残し、彼は去った。それから今でも連絡を取り合っている。実に50歳差の友人ができた。
かつて自分は、日本で日々を平穏に過ごしながらたまに外国語を話す生活を望んでいたが、今になって少しばかり叶っていることに気が付いた。仕事ではしばしば英語を使う。ただ、本音を言えば、金子光晴のように海外を旅して回りたい。学生時代に思い描いていた生活はと言えば、高等遊民か世界放浪者であった。金子は詩の中で「僕は少年の頃/学校に反対だった。/僕は、いままた/働くことに反対だ。」と言った。人間は何からも自由なのである。自分も「成績」や「評価」、「管理」などには絶対に反対である。人に指示され、その目を気にして送る生活など耐えられない......。ところが、じっさいの自分には構造の外へ飛び出す勇気がない。そもそも自分は道の外から生のスタ-トを切ったのだ。そこから正道に戻るだけで精いっぱいだった。血の鉄鎖に引きずられながらもなんとか空転を繰り返した結果、保守的な思想が全身に染みついてしまった。今はなすすべもないまま泣く泣くレールの上を鈍行で走っている。窓からは、空中を並走するもうひとりの自分が見える。全てに背を向けて純粋な精神の飛翔を楽しむ自分の姿が。金子の詩友・吉田一穂は「遂にコスモポリタンとは、永生救はれざる追放者である」と言った。世界は狭量だ。自分にとっては、シュマン・ド・フィロゾフもアヴェニュ・デ・シャンゼリゼも等価である。どうにか国や所属を超越したいと強く思う。やはり勉強をし直さねばならない。
自分の様子がおかしくなったのは10月頃からだ。一昨年度に忙殺されたせいで少なからず人間の心を失った自分は、仕事における虚脱感に苛まれていた。家における問題もあり、また昨年度新たに来た上司とは全くウマが合わず、フラストレーションも募っていた。そもそもが5年で5人も上司が変わるという異常な環境である。自分はよく耐えてきたと思う。働くことが馬鹿馬鹿しくなり、ぼーっとする時間が多くなる。そんな中、自分はある大きなミスをしでかしてしまった。それは実際大した問題ではない、誰にでも起こりうることだった。尻ぬぐいは上司とともに行うこととなった。しかし、そのミスのせいでかなり落ち込んでしまい、さらに事後対応や予防策の打ち出し方が虫唾が走るほど不快なものであったため、自分は深く考え込むこととなった。さらにそこで追い打ちのごとく転勤が告げられたため、自分はついに心身に不調をきたしてしまった。抑鬱、不眠、吐き気、緊張性頭痛、離人感、悲壮感、食欲不振……全ての事物から逃げ出したくなる衝動に眩暈がする。ある日職場で人と話している時に、どうにもうまく言葉が出てこなくなったため、何日か休む羽目になった。初めて心療内科を受診し薬をもらった。一日中涙が止まらなかった。その頃の記憶はあまりない。日々、ふわふわと悲しみのなかを漂っていたように思う。ただ、話を聞いてくれる周りの人々の存在はかなりありがたく、ひとりの人間の精神の危機を救おうとしてくれる数多の優しさに驚かされた。転勤の話は自分の現況を述べたところひとまず流れた。その際、上役が放った言葉が忘れられない。「私は今までどこに転勤しても良いという気持ちで仕事をしてきましたけどね」。他人の精神をいたずらに脅かすその無神経さに呆れて物が言えなかった。薬の服用を続け、1ヶ月半ほどかけて不調はゆるやかに回復したが、自分が何もできずに失った貴重な期間を返して欲しいと強く思う。仕事に対する考え方は世代間でもはや断絶していると言ってもよいだろう。
労働を称揚する一部の風潮が嫌いだ。仕事をしている自分は情けない。それにしがみついてしか生きられないという点において。システムに進んで身を捧げる人間の思考は停止している。彼らは堂々と「世の中」を語り始め、他人にそれを強制する。奴隷であることの冷たい喜びに彼らの身体は貫かれている。何にも興味を持てなかった大多数の人間が、20代前半に忽然と現れる組織に誘拐され、奇妙にも組織の事業であるところの搾取に加担・協力までしてしまう。それは集団的なストックホルム症候群とでも言うべきではないか。社会全体へのカウンセリングが必要だ。尤も、使命感を持って仕事に臨む一部の奇特な人々のことは尊敬している。生きる目的と収入が合致しさえすれば、自分も進んでそうなろう。だが自分は、「社会とはそういうもの」だという諦念には心の底から反抗したい。組織とは心を持たない奇形の怪物だ。怪物は人間の心の欠陥から生まれる。ただ怪物のおかげで我々は生きられる。それをなだめすかしておまんまを頂戴しようという小汚い算段に、虚しさを深める日々。人間的であろうとする以上、この虚しさを忘れてはいけない。
どうしようもない事実だが、労働によって人の心は荒む。労働は労働でしかない。肉体を動かすことによる健康維持という面を除けば、それ自体、自己にとっては無益なものだ。勤労意欲のない文学青年たちはいかなる生存戦略を以て生活に挑んでいるのか。彼らの洞窟を訪ねて回りたいと思う。現代には、彼らのように社会と内面世界を対立させたまま働き消耗する人々がいる。ある経営者がその現象を「ロキノン症候群」と呼んでいた。芸術に一度でもハマったことがあるような人々がそうなのだという。しかし彼らも納得はいかないながら、どこかで折り合いをつけて頑張っているはずだ。自分は彼らに一方的な連帯感を覚える。来る亡命に向けて、励まし合っているような気さえするのだ。世間様はきっと我々を馬鹿者だと罵るだろう。「なんとでもいはしておけ/なんとでもおもはしておけ」と、山村暮鳥の強い声が聞こえる。目に見えるものだけを信じるのもいいが、それを周りに強いてはならない。我々は今、ようやく開けてきた時代を生きている。だが認識は未だ模糊としている。完全な精神が保証される世界からすると、まだまだ古い時代なのだ。人間の姿を見失いがちな現代に対して言えるのはただ一つ、みんなで一緒に幸せになろう、ということだけだ。
さて、年末に3日間の有休をぶち込んだので年末年始は12連休となった。天六で寿司を食べ、友人宅に入り浸ってジャークチキンをむさ��った。ポルトガル料理に舌鼓を打ち、サイゼリヤで豪遊した。特に予定を立てずに、ひたすら酒とコーヒーを鯨飲する毎日であった。心身の不調はマシになったものの、不運が続き、人と会わなければどん底に落ちると思った。それはまるで自分という神輿を中心にした絶望のパレードのようだった。
休みの初日、ふと思い立ち、生き別れた父親の所在を探るべく、戸籍を請求してみた。私は父親の顔も名前も知らなかった。さほど興味がなかったというのもあるが、これまで家族に問うても曖昧な答えしか返ってこなかったのだ���働き出してからしばらくして、親戚から聞いたのは、父親は母親と同じく耳が聞こえなかったこと、暴力をふるう人間であったことの二つだけだ。養育費が払われることはなかったともどこかで聞いたような気もする。いずれにせよクズのような人間であったことは疑いようもない。生まれてから会った記憶もなく、不在が当たり前の環境で育ったため、会いたいと思ったことはほとんどない。ただ、自分の身体の半分が知らない人間の血によって構成されていることに何とも言えない気持ち悪さを覚えていた。というのも、顔は母親似だと言われるが、色覚異常の遺伝子は父親から受け継いだものであり、おかげで少年はある夢を断念せざるを得なくなったからだ。その「不可視の色」を意識するたび、自分の身の内には不在の存在がかえって色濃く反映された。違和感は自分が年を重ねるごとに増してゆくような気がした。そのため、せめて名前と消息だけでも知っておこうと思い、今回ようやく役所に出向いたのだ。職員に尋ねたところ丁寧に教えてもらえた。自分の戸籍から遡れば簡単に辿ることができる。しばらくして数枚の紙きれが手渡された。そこには聞きなれない苗字が書かれてあった。そして、案外近くにひとりで住んでいることがわかった。ふーん。何か虚しさを覚えた。自分は何がしたかったのか。カメラを持って突撃でもすれば面白いのかもしれない。ネットで調べてみると同じ名前の者が自己破産者リストに載っていた。そうかもしれないし、そうではないかもしれない。結局自分には関係のないことだ。じっさいこの文章を書いている今、父親の下の名前をまったく忘れてしまっている。思い出そうとしても思い出せないのだ。
旅行前日の夜中に家の鍵をなくした。普段ほとんど物をなくさないのでかなり焦った。約4㎞の距離を3往復し、交番に駆け込むも見つからず。最後に寄ったコンビニの駐車場を這うように探し回ったところ、思いがけない場所で発見し安堵した。寒くて死ぬかと思った。自分は落とし物を探す能力には自信がある。物をなくさない、などと言いながらイヤホンのイヤーピースはこれまでに3度落としたことがある。しかし、その都度血眼になって道端から救出してきたのだ。今回見つからなかったら自分はどんなに落ち込んでいただろう。2時間も無駄にしてしまったが、とにかく良かった。もうお洒落を気取ったカラビナは使わない。
中学時代の友人3名と有馬温泉に行った。ここ数年、年末の旅行は恒例行事となっている。とはいえこの4人で遊ぶために集まるのはおよそ10年ぶりだ。有馬は京都から車でおよそ1時間半。温泉街は観光客でごった返している。外国人も多い。昼飯にカレーを食べ、しばしぶらつく。細く入り組んだ坂道が続く。公園には赤く錆びついた蛇口があった。飲用可能な鉄泉だったが、衝撃的な味に顔がゆがむ。血だ。その後、目当ての温泉旅館に行くも臨時休業であった。どこの湯も混雑しており、20分待ちがザラだった。日帰り湯の看板が出ていないホテルにダメもとで聞いてみると、幸運にも入れるとの答え。客もほとんどおらず、金泉をこころゆくまで楽しめた。歩き途中、炭酸せんべいを土産に買う。特徴のない普通のせんべいだ。ここで一旦宿に戻って車を置き、再びタクシーで温泉街へ。鉄板焼き屋でお好み焼きを食べ、銀泉に入る。顔がツルツルになった。宿はそこからかなり離れた山裾にある合宿所のようなところだった。嫌がるタクシーに乗り込み、外灯のない急坂を登る。受付には緩い感じのおじさんがいて、懐かしさを覚える。鍵を受け取り、宿泊棟へ。一棟貸しなので騒ぎ放題だ。大量に仕入れた酒とつまみと思い出話で深夜までウノに耽った。翌朝気が付いたのは隣の棟の声が意外とよく聞こえるということだ。大声、というか爆音で昔の先生のモノマネやらツッコミやらを繰り返していた我々の醜態は筒抜けになっていたようだ。棟を出る時に同年代くらいの若者と鉢合わせてかなり気まずかった。ここにお詫び申し上げる。この日は朝から中華街へと移動し、料理を食らった。鰆の酒粕餡かけという聞きなれない一皿がめっぽう美味かった。バリスタのいるコーヒー屋でエスプレッソを飲み、だらだら歩いて旅行は終了。京都に着いてからなぜか3時間ほどドライブし、大盛の鴨南蛮そばを腹に入れてから解散となった。
大晦日は友人宅で蕎麦をご馳走になってから鐘を撞きに行き、深夜まで運行している阪急で松尾大社へ。地元の兄ちゃんが多い印象。社殿がコンパクトにまとまっていて良かった。おみくじは末吉だった。年明け早々、以前付き合っていた人が結婚したことを人づてに聞く。めでたい気持ち半分、複雑な気持ち半分。元日は高校時代の友人3人と四条で酒を飲むだけに留まる。2日は友人らと蹴上の日向大神宮へ。「大」と名づくが割合小さい。社殿の奥には天の岩屋を模したと思しき巨大な岩をL字型にくりぬいた洞窟があり、潜り抜けることができる。いつ作られたものかは不明だそう。暗闇を抜けて日の光を再び浴びる時、不思議にもスッキリとした感覚になる。ここでもおみくじは小吉だった。その後は下鴨神社の露店を物色し、ケバブとヤンニョムチーズチキンなる悪魔のような食べ物に枡酒で乾杯。旧友と合流し、深夜まで酒を飲み、コーヒーで〆。怒涛のアルコール摂取はここで一旦落ち着いた。
3日、昼に起きる。夕方ごろ喫茶店に行くもぼんやりして何もできず。3時間で本のページを3回めくったのみ。その帰りがけに初めて交通事故を起こした。自分は自転車に乗っていたが、考え事ごとをしていたかそれとも何も考えていなかったか、赤信号の灯る横断歩道の真ん中で車に真横からはねられて、初めて意識が戻った。即座に状況を理解し、平謝りする。非常に幸運なことに怪我も物損もなく、さらには運転手が気遣ってくれたおかげで大事には至らず、事故処理のみしてその場を後にした。自分はあまりにぼーっとしすぎていたのだ。赤信号はおろか、横断歩道があることさえも気づいていなかった。完全にこちらが悪い。ただ、こんなことを言ってはヒンシュクを買うだろうが、何か自分のせいではないような気もした。昔、轢かれたことのある友人が、「車は鉄の塊、人なんて無力」と言っていた。生と死は笑えるほどに近い。車の同乗者には、生きててよかったなぁ! と半ば怒った口調で言われた。果たしてそうなのか。苦しんで生きるか、知らぬ間に死ぬか、どちらが良いのか。よくわからない頭のまま先輩の家に遊びに行き、帰ってからおみくじを捨てた。馬鹿にもほどがある。
“WWⅢ”がツイッターのトレンド入りした日に、リニューアルしたみなみ会館で映画「AKIRA」を見た。第三次世界大戦で荒廃・復興した2020年のネオ東京が舞台である。東京オリンピックの開催まで予言されていて瞠目する。作画の緻密さと色彩の美麗さ、展開のスピードが尋常ではなく、見るドラッグのようであった。見に来ていたのは意外にも20代の若者が多かった。なぜか終了30分前に入ってきた女性3人組もいた。目がぐるぐる回って、もう何が何か訳がわからなかった。溢れそうな鍋に蓋をしたところ、その蓋の上から具が降ってきた。そんな脳内で、世界の終わりというよりは、自分の終わりという感じだった。翌日から仕事だったが、変に興奮して夜中まで寝付くことができなかった。
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SW2.5シナリオ 『タポの神隠し』
シナリオ名 : 『タポの神隠し』 推奨人数 : 3-5人 推奨レベル : 2-3 ジャンル : はじめてのばんぞくたいじ 難易度 : ★★★☆☆ メモ : 百番煎じ
●概要 “導きの港”ハーヴェス王国から北に向かって約一日。タポの村と呼ばれる農村で、ここ数か月謎の失踪事件が起きているという。 滅多に蛮族の被害も無い平和な村に一体何が起きたのか。新米冒険者達はその謎を解き明かす為、タポの村の奥地へと赴いた──。
●GM向けシナリオ概略 タポの村周辺に、レッサーオーガが率いる蛮族の小さな集団が隠れるようにして居座っていた。初めは狼や猪などの害獣や森の木のみを食べて過ごしていたが、群れが大きくなるにつれ、食料が足りなくなっていく。 そこで群れのボスであるレッサーオーガはタポの村に目を付け、ある日の夜に村長であるライアンを食い殺す。 その後村長ライアンに成りすましたレッサーオーガは、月に一度の頻度で村人を森へ誘導し、子分たちの食料としていた。 更なる群れの巨大化を目指すレッサーオーガは、これ以上に無い餌場を手にしたのだった。
●シナリオの流れ 1.導入 2.タポの村へ~村を散策 3.東の森 4.蛮族の洞窟 5.報告 6.レッサーオーガとの決戦 7.結末
●1.導入
PC達の関係性はご自由に。朝8時に、ハーヴェス王国にある水龍の逆鱗亭の店内から描写が始まります。
多様な冒険者が集う“導きの港”ハーヴェス王国。絢爛豪華な湾岸都市の一画にある、【水龍の逆鱗亭】にてこの物語は始まる。 木製の暖かな店内を、二メートル以上の巨体を持つ男が見渡す。 手に持った依頼書に見合った実力を持つのであろう、君達○人に大声を張り上げた。 「おい、そこの新米達! 仕事を探してるならこっちに来てくれないか!」 「まずは自己紹介をしておこう。俺の名前はナッシュ・ヴァルター」 「この水龍の逆鱗亭の店主だ」 「経験を積みたいってなら丁度いい仕事があるぜ? 話だけでも聞いてみないか」
元々一流の冒険者であったナッシュ(熊リカント/男性/57歳)は、ハーヴェス王国でも有名な冒険者の宿の店主です。 彼の指導の下、大成した冒険者も数多くいる事から、彼は信頼に足る人物であるという事はPCも知っていて良いでしょう。 承諾すれば、ナッシュは仕事の内容について話してくれます。
「お前達にやって貰いたいのは、“人探し”だ」 「このハーヴェス王国から北に一日かけて向かった所に、タポの村と呼ばれる農村がある」 「タポの村では四か月程前から、月に一人くらいの感覚で人が消えているらしい」 「──そこでお前達冒険者の出番ってわけさ」 「依頼内容は行方が知れなくなった四人の村人の捜索」 「村の近場には魔物も出ないって聞くし、お前らみたいな新米には丁度いいだろう」 「報酬は前金一人300ガメル、達成で更に一人700ガメル支払われる」 「どうだ、受けてみないか」
ここでナッシュが語る依頼の達成とは、「居なくなった四人の安否の確認」という事になります。 全員が生きている必要はなく、最悪死体の確認だけでも問題はありません。勿論、生きている事に越した事はないと併せて伝えて下さい。 本来であれば「失踪の謎の解明、及び解決」も必要となりますが、あくまでも村からの依頼は失踪した村人の捜索となります。 この依頼に了承したPC達に、ナッシュは一人300ガメルの前金を支払ってくれます。
●2. タポの村へ~村を散策
ここから自由に探索が可能になります。GMは、日数計算に気をつけて下さ���。 前金が支払われた段階から、72時間。それまでにPC達が囚われた村人を解放出来なければ、村人は食べられてしまいます。 タポの村へはナッシュの言葉通り、24時間で辿りつけます。それまでに買い物を行ったり、何か調べ物をしたりした分の時間はざっくり計算すると良いでしょう。
タポの村は大きな畑が広がっており、牧歌的な空気が村を包み込んでいる。 村の東には深い森、北には鉱山としても使われている切り立った山がある。
タポの村に着けば、見張り番である男、ベッポ(人間/男性/25歳)がPC達を出迎えてくれます。
「おお、こんな村に客人とは珍しい」 「……まさかその出で立ち、アンタ達が依頼を引き受けてくれた冒険者様かい?」 「ああ、やっぱり! アンタ達を呼んだのは俺だ!」 「俺はベッポ、この村の見張り番だ。よろしく頼むよ!」
好青年であるベッポは、十日前に最愛の妹アンジェが神隠しにあっています。村長に扮したレッサーオーガが上手く時間稼ぎをしましたが、遂に痺れを切らしたベッポを始めとする村人達が独断で冒険者に依頼を出しているのです。 ベッポは村の立ち入りの為には村長への挨拶が必要とし、冒険者達をタポの村村長、ライアンの家へと案内します。 ライアンの家は小屋とも呼べる程度の他の村人の家とは異なり、立派な木製の家です。ベッポはその扉をノックし、大声で来客を伝えるとPC達を家の中に招き入れます。
一人で暮らすには少々広めの空間に、木製の椅子に腰かける老人の姿がある。 何処か険しい表情を浮かべた老人は、君達を睨み付けるように覗き見た。 「……ようこそ御出でなすった」 「儂はライアン、この村の村長です」
勿論、この時は既にライアンは死亡しており、家の中で白骨化しています。 レッサーオーガは用心深く、粗を出さない為にも率先して冒険者と話をしようとはしません。 あくまで邪険に扱い、さっさと村から出ていって貰おうとします。PC達から質問を受けても、「知らない、分からない、覚えていない」の三種類くらいしか喋りません。さっさと家から追い出そうとまでします。
このシーン以降、ライアンと同じ場所にいる状態で、PLがライアンを怪しむ発言を行った際には、真偽判定を振らせましょう。 村で情報を集める前に行った場合の達成値は「12」。後述する情報を取得した場合は「8」になります。 もしこの真偽判定を達成した場合、一気にシーンは「● 6.レッサーオーガとの決戦 」へと移ります。
上記のライアンとの話を終え、村長の家を追い出されたPC達をベッポが迎えます。
「アンタ達には期待してるぜ、冒険者さん」 「消えた中には俺の妹アンジェも居るんだ」 「よろしく頼むよ!」
これ以降、PC達は自由に行動する事が出来ます。 ベッポを含む、他の村人達に聞き込み等を行う場合は以下の中から必要な項目を拾い、応えて下さい。 この辺りはGMのさじ加減で、上手くPC達を誘導してあげると良いでしょう。 特に重要になるのは、「村長の様子がおかしくなった」事と、「村長ではなく村人(ベッポ)達が依頼を出した」という事です。
「アンジェは二週間前、森へ果物を取りにいったんだ」 「…だがそれから返ってくる事はなかった」 「もう我慢ならないと、他の村人からカンパを募ってアンタ達冒険者を呼んだのさ」
「村人が居なくなってから、村長の元気が無くなっちまったんだよな」 「お疲れなんだろう」
「そういえば最近、夜に村長が出歩いてる所見てないなぁ」 「ついこの間までは、村の見回りを日課にしてたんだが」
「村の男達で森や鉱山を探したんだが、何も見つからなかった」
「この村は貧乏だから、アンタ達冒険者を呼ぶのに時間がかかっちまったんだ」 「村長は結構金を持ってるって聞いてたから期待してたんだけど、実際は無一文だったみたいでね」
森、鉱山に向かう場合は、片道一時間かかります。 鉱山では特にイベントはありません。
●3.東の森
東の森までは、一時間も掛ければたどり着く事が出来る。 森の木々たちの背は高く、陽が出ていてもどこか薄暗い印象を受けるだろう。
森では足跡追跡判定、もしくは探索判定を行う事が出来ます。 足跡追跡判定は達成値7、探索判定は達成値8で判定を行い、成功した場合は以下の描写を読んでください。
大小様々な足跡が伸びている。 その中でも特段小さな足跡が正規の道から外れて、巧妙に隠されていた獣道へ続いている事がわかる。 また、その足跡のすぐ傍に、何かを引きずったような跡も続いている。
これは蛮族が村人を襲い、自分達の洞窟へ攫った跡です。 もし判定に失敗した場合、5時間の探索を経て自動で獣道を発見する事が出来ます。その場合は足跡などの描写は不要です。
更に一時間ほど獣道を進めば、岩場にぽっかりと口をあけた洞窟に辿り着きます。 洞窟の内部は暗く、暗視が無ければ光源が無い限り見渡す事は出来ません。
● 4.蛮族の洞窟
レッサーオーガの群れの子分である蛮族達の住処です。群れはゴブリン(『Ⅰ』439p)、ダガーフッド (『Ⅰ』438p)、アローフッド (『Ⅰ』437p)で構成されています。 数はゴブリンが二匹で固定、ダガーフッドとアローフッドは(PC数-1)として下さい。
蛮族は二つのグループに分かれており、それぞれゴブリンを隊長としてダガーフッドとアローフッドが半分づついます。 半分は洞窟で待機、もう半分は狩りに出かけています。 PC達がこの洞窟の内部に侵入を試みた瞬間から、丁度30分後に狩りにでた蛮族が戻って来ます。GMはここでも時間管理を行って下さい。
まず洞窟の入口には早速罠が配置されています。 罠感知判定、達成値8に失敗すると、5mの落とし穴に落ち15点の物理ダメージが入ります。更に穴の下には小石が散りばめられており、大きな音が響きます。 その音で蛮族の待機グループが穴から這い出し、即時戦闘となります。穴に落ちたPC達の処遇はGMに任せます。 この罠を回避すれば、蛮族の待機グループは洞窟の内部に居る状態になります。
洞窟は一本道になっており、5分もあるけば分かれ道に出ます。 分かれ道では北、西、東に進む事が出来ます。 狩りに出かけた蛮族が戻ってきた場合、彼らは真っ直ぐに北の道を目指します。
・洞窟西:奴隷置き場 依頼承諾から48時間以内であれば、PC達の耳に金属音が聞こえます。 その奥では、壁に鎖でつながれた村人アンジェ(人間/女性/20歳)の姿があるでしょう。 彼女は蛮族に連れ去られて以降、何とか生き延びていました。 アンジェはそれ以降、PC達に同行を申し入れます。戦闘などが入る場合、蛮族は彼女を含めた中からランダムで攻撃対象を決定して下さい。 アンジェの能力はHP12、他は全て0です。 もし依頼承諾から48時間以上が経過している場合、この場所には鎖があるだけで他には何も見当たりません。
・洞窟東:ゴミ捨て場 この場所には蛮族達の生活ゴミが捨てられています。 基本的には動物の骨などです。この場所では探索判定を試みる事が出来ます。 自動成功で、獣の骨に混じって人骨も見つかります。 更に冒険者レベル+器用で判定を行い、8以上が出ればその人骨が三人分(アンジェ死亡時、四人分)である事がわかります。 この探索判定を行えば、依頼は完了したとみなされます。PC達に伝えてあげると良いでしょう。 達成値5以上で「ピアス」「指輪」「ネックレス」(売却値100G)が見つかります。これは既に死亡した村人達の遺品です。
・洞窟北:居住区 ここは蛮族達の寝床として使われており、広い地面には藁が乱雑に敷かれています。更に部屋の奥には宝箱が一つあります。また、壁には松明が掛けられており視界は良好です。 もし最初の罠で戦闘になっていない場合、蛮族の待機グループはこの場所で寝そべっています。 蛮族退治後、この場所では探索判定を行う事が出来ます。 達成値5以上で、敷かれた藁の数が確認出来ます。小さな藁の束が(ダガーフッドの数+アローフッドの数)分、中くらいの藁の束が二つ(ゴブリンの数)分ある事を伝えて下さい。 達成値8以上で、洞窟の壁に文字が刻まれている事が分かります。汎用蛮族語で書かれて��ます。
『女 未だ 食うな』 『人族 警戒 しろ』 『次 満月 戻る』
宝箱には鍵が掛かっています。解除判定、達成値は10です。 中には「能力増強の指輪」(『Ⅰ』329p)が一つ入っています。指輪の内容はダイスで決めるか、GMが決めて下さい。
●5.報告
洞窟の蛮族を倒せば報告を行う事になります。この際、「誰に報告をするか」、「アンジェを連れているか」、「遺品をどうするか」で分岐があります。 ライアンに報告した場合、「お疲れ様でした」と短く言うだけで、特に労う事もせずに冒険者達を返そうとします。 ベッポに報告した場合、アンジェを連れ帰れば泣きながらお礼を言います。アンジェが死体となっていれば、ベッポはがっかりとした様子でPC達を見送ります。 どちらにせよ、「村人の安否が決定」した時点で、彼らは冒険者を見送ろうとするでしょう。
遺品の三種類は売却する事も可能ですが、それぞれの家族に返す事も出来ます。 返した場合、エンディングで更に報酬500ガメルが追加されます。
●6.レッサーオーガとの決戦
村長ライアンに成りすましたレッサーオーガに対し、真偽判定を試みて成功した場合、レッサーオーガは本性を顕します。 基本的には家から出る事はないので、家の中での描写となるでしょう。 見破った際、即座に戦闘を仕掛ければ奇襲を掛けたと見なせます。先制判定に確実に成功し、ライアンは自分の手番でようやく人化を解除出来ます。 ご丁寧に見破った旨をライアンに伝えた場合は、正々堂々戦う事になります。
ライアンの瞳が怪しく輝く。 「ほう、私の姿を見破ったか」 「村人共め、勝手に冒険者なんぞ送り込みよって……全く面倒な事を」 「ここは貴重な餌場だ、簡単に手放すつもりもなければ──この事を知った貴様らを、生かして帰す道理もない」
ここではライアンに扮するレッサーオーガ(『Ⅰ』p442)との戦闘です。PCの数が4人以上の場合は、剣の欠片を(人数-3個)持たせましょう。 レッサーオーガ は一人で、援軍等はありません。家の中といえども容赦なく魔法をぶっ放してきます。 レッサーオーガ を倒せば、最後に彼は恨み言を残します。
「馬鹿な……!」 「だが、これで終わったと思うな……!」 「私という歯止めがなくなった以上、もう、この村は……」
更に洞窟攻略後、それをPC達が伝えた場合は更に悔恨に満ちた顔を浮かべ、呟きます。
「な、何だと!?」 「クソ、忌々しい人族共め!」 「貴様らさえ、居なければ……!」
レッサーオーガ死亡後、ライアンの家で探索判定を行えます。 自動成功として、家の隅から人骨が一人分見つかります。これは勿論、本物のライアンの物です。 達成値9以上で、ライアンの隠し財産が見つかります。宝石が箱に入っており、全て売却すれば500ガメル相当になるでしょう。
●7. 結末
PCが洞窟攻略(蛮族全討伐)してなおかつレッサーオーガを倒した場合は自動でエンディングを迎えます。 やり残したことがある場合、PC達にどうするか尋ね、自発的にハーヴェス王国に戻る事を選択した場合でもエンディングを迎えます。
エンディングは特定の要素によって変化します。
【エンディングA】…レッサーオーガを倒し、蛮族を全て討伐 君達の依頼完了から数か月後。 タポの村では作物が大豊作となり、君達宛てにたくさんの野菜が届く事になる。 そこ��添えられた手紙には、君達への感謝が所せましと並べられていた。 もうあの村で人が消えるような事件は起こらないだろう。 君達が、あの悪しき蛮族を討伐したのだから。
【エンディングB】…レッサーオーガを倒すも、蛮族を打ち残す。 君達の依頼完了から数週間後。 君達の耳に、驚くべきニュースが飛び込んでくる。 タポの村、蛮族により崩壊。 次に改訂されるであろう地図から、タポの村は永遠に消失した。
【エンディングC】…レッサーオーガを倒していない。 君達の依頼完了から数か月後。 水龍の逆鱗亭に、新たな依頼が舞い込んだ。 ──タポの村にて、人探しをお願いします。 タポの村では月に一回、誰かが消える。 その恐ろしい事件は、終わらなかった。
また、上記に加えて遺品を村人に返したかの有無で、報酬金額が500ガメル変動します。
報酬として一人1000ガメル(前金300、達成700)が支払われます。 そのほかの戦利品や、物資の売却品、遺品返却による報酬などはプレイヤーの頭数で割って下さい。
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Lazy Line Painter Jane
10月10日(木)から山形国際ドキュメンタリー映画祭に行ってきた。参加するのは初めてだったけど、街の雰囲気もゆるやかで暖かくて、たくさんの人々にも会えて嬉しかった。池添さんが誘ってくれた宿も皆やさしくてストレスがなくありがたかった。わすれないうちにいろいろメモ。
『富士山への道すがら、わたしが見たものは…』
メカスの監督作で、過去に自分でも上映したことがあったけど、開会式のあとに大スクリーンで流れる迫力はすごかった。劇中流れ続ける激しいドラミングは、来日中、ソ連崩壊直前(?)のニュースを受けたメカスさんの心情も表しているのかなと思ったり。上映前に農民詩人・木村迪夫さんの挨拶で、メカスさんが故郷・リトアニアのについて「村は正しさと美しさで溢れていた」と話していたことが紹介されていた。会場にはメカス日本日記の会の森國さんと書肆山田の方もいらしていた。
『愛を超えて、思いを胸に』
大たばこ会社とたばこ農家の戦いを描いた映画。めちゃくちゃ寝てしまったのだけど、無線みたいな音がずっと流れていたのが面白かった。監督が生後3ヶ月(!)のお子さんを抱えて挨拶に登壇してくれていた。
『光に生きるー���ビー・ミューラー』
浅倉さんに「メカスみがある」と紹介され「みるっきゃ��いだろ」と勇んで鑑賞した。ロビー・ミューラーが私的に撮りためたホームヴィデオのフッテージは繊細で美しくて、ドビュッシーをかけながらホテルの一室で撮られた家族へのメッセージ(からの信じられない水面)や、ズームした先の鏡に映る情けない無精髭などが印象的。作品としてってよりはロビー・ミューラーの映像が良いな、って感じだったけど、最後に口をあんぐりあけて光を浴び、ヴィム・ヴェンダースの言葉をうけとるロビー・ミューラーはすごく綺麗だった。(ヴェンダース、ちょっと津田直さんに似ていた・・・!)
『自画像:47KMの窓』『自画像:47KMのスフィンクス』
窓、のほうは今回もっとも感動した作品の1つ。ジャン・モンチー監督の無邪気でまっすぐなまなざし、もっと観ていたい!監督の育った小さな村についての物語なのだけど、特に「窓」のほうの、おじいさんへのインタビューと絵を描く少女を軸にした展開に心を揺さぶられた。寒さから身をしのぐために洋服や炎や家があるみたいな、根源的な感覚を呼び覚まされるし、その先で「芸術は人の心を豊かにするために在るんだ」と信じられる。会場に来ていた中国の田舎の村出身だという女の子が「こんな素敵な舞台で、監督の映画が上映されていることが嬉しい。私の村をみているようで、嬉しいし、悲しい。映画の最後に上がった花火は、村(の空)に絵を描くようで美しかった」というようなコメントをしていて、ジャン・モンチー監督はその子の目をみて満面の笑みでお辞儀していた。「壁」ってもう断絶を生むものみたいな意識が頭の中にあった気がするけど、本来風から身を守るためのものなんだな、と台風前夜に考えたし、その壁を未来にむけた色で塗り替えるという発想が好き。「スフィンクス」のほうはとにかく最初の猫とおばあさんの長回しがサイコー!
『非正規家族』
「死ね」とかいたずら書きをする青年、工場跡?の廃墟にベットを置いて、グラビアアイドルのポスターを眺める青年の背中が虚しく心に残った。
『セノーテ』
初の小田香監督作品!上映が始まった瞬間すさまじい音と映像の嵐。満席立ち見の会場で、皆の鼻息が荒くなるのを感じた。隕石によって生まれたあまりに美しい洞窟・セノーテに、かつて生贄として捧げられた命を思いながら潜るカメラ(iPhone7!)。宇宙と大地、生と死のはざまでたゆたう人間の命の激しさ、静けさ、奇妙さを、普段ではありえない視点から観させてもらうような経験だった。青緑の光がとにかく美しくて、そこに生と死と詩が浮かんでいる。具体的な言葉はなくても、水中に響くスー、スー、という監督の呼吸の音が、そのことを一番豊かに示しているような作り?が格好良かった。
『わたしの季節』
佐藤真さんが隠れ編集をしているという噂を聞いて観に行ったのだけど、低気圧で絶不調すぎてほとんど眠ってしまい無念・・・入り口で国立映画アーカイブの岡田さんとすれ違って柳澤寿男の本をいただいたことを思い出し、とっても申し訳ない気分に・・・!
『声なき炎』
こちらも途中うつらうつらしてしまったのだけど、観ていた部分はとても楽しんだ。無言症になってしまった母について語る息子の視点から、個人的にはマイク・ミルズを連想した(写真やホームヴィデオの差込の、端正な雰囲気がそうさせたのかな?)。母親が検査の機械に入るシーンと、プールを無言で歩くシーン、ラストシーンの呼びかけが強く印象に残っている。
『理性』
インドの宗教状況を映した骨太ドキュメンタリー。上映時間が4時間くらいあるけれど、映っている内容のインパクトの大きさとまとめ方の巧さで全然飽きさせない。自殺した学生の手紙の切実さとその前後の戦いに胸が締め付けられた。明るい紫色のシャツを着た白髪の監督のトークでインドの情勢についての話を聞き、日本の現状と照らし合わせてわりとヘヴィーな気持ちに。
そのほか少しだけ
・三浦さんに教えてもらい行ったインドカレー屋「ジャイ」が小宇宙だった。5回くらい交通事故にあって背がちぢみ、奥さんに追い出されてからカレーを煮込む時間を2時間増やしたという店主からいろいろな話を聞いた。インド映画のあらすじ(3カーン)や、インドに行くという日本人に2回買い物を頼んだけど2回ともお金だけ盗られた話などをずっと聞いていたのだけど、最後の最後に壁に貼られている四谷シモンさんや唐十郎の話題にふれたら、なんと店主は新宿「ナジャ」のクロさんのお友達だった!四谷シモンさんのことは「シモンちゃん」と呼んでいたし、篠原勝之さんと特に仲が良いらしい。「ナジャ」はメカスさんともゆかりが深い場所だし、オープニング作品の『富士山への〜』にはクロさんも出ていたんですよと言ったら店主も驚いていた。次の日『理性』の上映後にもばったり街中で会ったので、写真を撮らせてもらった。
・台風の影響が結構えぐかった。『イサドラの子供たち』が上映中止になったり、宿を一泊延長して泊まらせてもらったりした挙句、13日になって空が晴れても新幹線や在来線が動かず、高速バスも満席だったので14日の朝にどうしても東京にいなければならないという井上さんとりこちゃんとレンタカーで帰ってきた。井上さんが常に150キロで運転してくれたおかげで、21:00に山形を出て2:30には自宅に到着できた。本当に最高な井上さんのお父さんは佐藤真さんの同級生で、いまでも奥さん同士の交流があるらしい。沢田研二やMGMT、ボブ・マーリー、クラフトワークのアウトバーンやシューベルトが流れる中、りこちゃんが「うちら雲より早いよ!」と笑ってたり、未来の空想映画祭の話をしたのが楽しかった。
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33の質問/
1.金、銀、アルミニウムのうち、もっともすきなのはどれですか?
アルミニウム
2.自信を持って使える道具を一つあげてください。
ラケット。
3.女の顔と乳房のどちらに強くエロチズムを感じますか?
顔!表情
4.アイウエオといろはの、どちらが好きですか?
いろは。いろはの感覚が好き。
5.いま一番自分に問うてみたい問は、どんな問ですか?
どんな人になりたかった?
6.酔いざめの水以上に美味な酒を飲んだことがありますか?
それは運動後の水とおなじ?運動後の水より食後の一杯がすきだな。
7.前世があるとしたら自分はなんだったと思いますか?
あまり前世が信じられないので思い浮かばない。けど信じたいから来世は雲になりたいです。
8.草原、砂漠、岬、広場、洞窟、出岸、海辺、森、氷河、沼、村はずれ、島、何処が一番落ち着きそうですか?
草原!か、まあ洞窟。あとはむしろあり得ない。村はずれとか、むり。
9.白という言葉から連想をいくつか話してくださいませんか?
白。クリームとの境。雲は?存在しない。消してしまった。0。振り出し
10.好きな匂いを一つ二つあげて下さい。
地下鉄の匂い、整った匂い
11,もしできたら「やさしさ」を定義してみてください。
自分がそこにいてもいなくても相手が幸せだったらいいなと思えること。許せたこと。見つめて微笑んだ目がきらきらすること。花まで愛おしくなること。
12.一日が25時間だったら、余った1時間を何に使いますか?
計算がすぐできないけど、分計算にして1分を長くする。
13.現在の仕事以外に、以下の仕事のうちどれがもっとも自分に向いていると思いますか?
カウンセラー。
14.どんな状況の下で、もっとも強い恐怖を味わうと思いますか?
成瀬さん、お昼休みに来てください。
15.なぜ結婚したのですか?
16.嫌いなことわざを一つ挙げてください
ない!嫌いな名言は「自分を愛してないから〜だ」 「なにかを忘れるにはそれと一緒にいた歳月だけかかる」 「人は10代の時に手に入れられなかったものに一生執着する」
17. あなたにとって理想的な朝の様子を描写してみて下さい。
つい早起きしちゃってその流れでベットからでる。季節のフルーツがあってそれを齧って朝の散歩に出たら青空で風がきもちい!
18.一脚の椅子があります。どんな椅子を想像しますか?形、材質、色、置かれた場所など。
座るところが丸くて大きくて安定感がある。座るところはオレンジ、背中は暗い緑色。食卓に置いてあってみんな違うデザインの中のひとつがそれ。
19.目的地を決めずに旅に出るとしたら、東西南北、どちらの方角に向かいそうですか?
西か北。
20.子供の頃から今までずっと身近に持っているものがあったらあげて下さい。
旅行先で選んでクリスマスにやってきた人形。昔お母さんが使ってたすんごい肌触りのいい寝巻き
21.素足で歩くとしたら、以下のどの上がもっとも快いと思いますか?大理石、牧草地、毛皮、木の床、ぬかるみ、畳、砂丘。
牧草地。
22.あなたが一番犯しやすそうな罪は?
詐欺
23.もし人を殺すとしたら、どんな手段を択びますか?
死んでもしない。
24.ヌーディストについてどう思いますか?
辛くて出したんじゃないなら良い。
25.理想の献立の一例をあげて下さい。
きゅうりのたたき、お豆とトマトのスープ、炊き込みご飯イカと里芋のにもの。
26.大地震です。先ず何を持ち出しますか?
20の答えのもの、初代愛犬のもの
27.宇宙人から<アダマペ プサルネ ヨリカ>と問いかけられました。何と答えますか?
ペルマ ステレスアルシカ、メリア シリキカール?
28.人間は宇宙空間へ出てゆくべきだと考えますか?
今の状態でならno
29.あなたの人生における最初の記憶について述べて下さい。
夜空と窓と仲間たち
30.何のために、あるいは誰のためになら死ねますか?
自分のためなら
31.最も深い感謝の念を、どういう形で表現しますか?
だきしめる
32.好きな笑い話をひとつ、披露して下さいませんか?
人生1だらしないころ提出期限のお裁縫を車の中の膝で縫って到着寸前に完成して持ち上げたら全部制服のスカートに縫い付けてた
33.何故これらの質問に答えたのですか?
谷川俊太郎がだいすきだから
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星霜の月8日 ドーンガード砦
自宅で朝食を済ませ、さっそく吸血鬼ハンター――ドーンガードの砦に向かうことにした。砦はリフテンから東に向かった場所、モロウウィンドとの国境近くにあるとのことだった。
ジェナッサに目的地を告げると、「間違えて国境を歩いて捕まらないようにしないとね」とからかわれてしまった。私が初めてスカイリムに来た時の事を言っているのだろう。実際、洒落にならない目に遭っているので、国境には不用意に近づかないようにしようと思う。
街道沿いに行くと、岩山の隙間に篝火が設置されていた。事前に聞いていた場所と一致するので、用心しながら中へ入る。細い隙間を抜けると、目の前にきれいな渓谷が広がっていた。川が流れていて、鹿や狐やウサギが私達の足音に驚いたのか飛び出してくる。
ドーンガードの砦は渓谷のさらに奥にあった。私達の前を行く人間がいたので声をかけてみると、吸血鬼ハンターの仲間入りを希望してやってきたという、農家の青年だった。
せっかくなので一緒に砦に入ることにして、彼の後をついていく。
砦の近くで、私にドーンガードのことを教えてくれたオークが、何やら見たことのない武器の練習をしていた。(あとで分かったことだが、小型の弓にも見えるそれは、クロスボウといってドーンガード特製の武器なんだとか。)
砦の中に入ると、ドーンガードのメンバーらしい男性(独特な鎧を着ている)と、ステンダールの番人が話し込んでいる最中だった。
ステンダールの番人の間が吸血鬼によって破壊されたことについて話し合いをしているらしい。砦の前で門番をしていたセラーンという名前の男性から、ドーンガードのリーダーは昔ステンダールの番人だったという話を聞いていた。
ステンダールの番人の報告を聞いている彼は、まさしくドーンガードのリーダーであるイスランで、攻勢を強めてきた吸血鬼に対して、何らかの手を打たないといけないと考えているらしかった。
吸血鬼たちの狙いについて調査するため、ステンダールの番人は吸血鬼が探していた遺跡に向かうという。彼らの横で会話が終わるのを待っていた私は、彼らから、吸血鬼退治に貢献したいなら一緒に来ないかと声をかけられた。話の流れに巻き込まれたような気もするけど、遺跡について興味もあるし、同行することにした。
これで私はドーンガードの一員になったという事なんだろうか?
イスランは、私達もこの砦を自由に使っていいという。砦はかなり歴史のある場所らしく、彼の話によると第二紀の頃にはソリチュードの首長が使っていたこともあるのだとか。ただ、長く放置されていたことで蜘蛛の巣や埃だらけの場所もあるので、一度人を雇って掃除をしたらいいのにと思った。きっと私の自宅のように、綺麗にしてもらえるだろう。
少人数のドーンガードの拠点にするには少し大きすぎるような気もするが、メンバーを募集してこれから増員していくのかな。
屋上で少し休憩をした。夕陽に染まる渓谷が見渡せて、なかなかいい雰囲気の場所だった。
そうこうしているうちに夕飯時になったので、砦の食堂で暖炉の火を借りて食事をした。立派なテーブルが置いてあったけれど、殺風景な場所だったな。掃除をして大きな燭台を並べたら、いくらか良くなるだろう。
食事をした後は早めに寝てしまおうかとも思ったのだけれど、砦の隅に洞窟への入口を見つけたので気になって入ってみることにした。スキーヴァーやシャウラスが巣食っていたりしたら大変だと思ったからだ。――シャウラスと言えばあの灯台!思い出すの���恐ろしい。
中には地下部分へ流れ込むように水が流れていて、思い切って飛び込むと奥には大きな洞窟が広がっていた。――ジェナッサは、もし上から引き上げないと出られないような場所だと、二人共飛び込むのは危険だと言う。話し合った結果、私一人で探索をすることになった。
中は人の手が加えられていて、罠やいろいろな仕掛けが設置されていた。解き方が分からなくてしばらく迷った仕掛けは、遠くから的に矢を当てると扉が開くというものだった。
弓矢はジェナッサに渡していたので、彼女と一緒に来なかったことを少し後悔したが――ふと、昨日リフテンで買った魔法書で、弓矢を召喚する魔法について読んだばかりだったことを思い出し、本の内容を思い出しながら使ってみることにした。
魔法は上手く行った。弓の扱いに慣れていないので、見様見真似で的を狙って矢を射る。何度めかで当てることができた。……何とかなって良かった!
ところで、砦と洞窟の散策をしていて、アルゴニアンに関する本を二冊見つけた……どちらもベッドロールの横に置いてあったので、誰かが就寝前にこれを読んでいたようだ。1冊は見たことがない本だったので思わず持ち帰ってきてしまったけれど、ジェナッサには見せられないな……リフテンの自宅に戻ったら施錠できる箱にしまっておこう。
砦の上の階にきれいなベッドを見つけたので、今晩はここで休むことにした。――隣が血まみれの拷問部屋なのが気になるけど――拷問部屋のすぐ隣に寝室を置くなんて正気じゃない。元の砦の主の趣味だろうか?
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#39 ゲーム日記 【ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 ニンテンドー64】 23日目
落下する月の衝突が迫る終末の世界で、最期の3日間をひたすら繰り返す「ゼルダの伝説 ムジュラの仮面」プレイ23日目。
前回、次なる冒険の地「イカーナ」へ足を踏み入れたリンク。
生者の匂いのしない荒涼としたこの地には、あらゆる亡霊や彷徨える魂たちが「自分たちよりも強い者を求め」うろついている。そういった存在の一つである忍者の亡霊ガロや幽霊小屋の幽霊四姉妹らと出会い、彼らを倒すことでその魂を癒せることを知った。前回はそんなイカーナの独特の風土の一端を垣間見たところで終わっていたが、そのあと一週間ほど帰省をしていたので久々の更新となる。今回はけっこうガツンと大ボリュームになった。
(ちな���に、帰省している間に時オカは3DS版で全クリしたので満を持してムジュラに勤しめる)
イカーナの丘の上にある集落は深刻な水不足に陥っていてその原因は「わき水のどうくつ」の水が枯れていることにあるらしいので、まずはその洞窟へ向かってみる。
洞窟の中で待ち受けていたのは作曲家シャープの亡霊。
「死者の仲間入りをするがよい!」とか言って浮遊しながら目に見えない攻撃をしてくる。防ぐこともできずライフを削られていくばかりなので一旦外へ出る。凶悪。
水車小屋(オルゴールハウス?)へ行ってみるが戸が開かない。中から「お父さんはあんたたちの仲間じゃない!」と子供のものらしき声がする。うーん、ここもまだ謎だ。
再度、洞窟へ戻ってみるがやはり対処法がわからず外へ退避。
僅かに残るわき水は紫色に毒々しく染まっている。何かあったなこりゃ。
少し先に進んだところにある急坂を登ると「ロックビル」に入った。
軍艦島みたいなロケーションもそそられるし、音楽も良い。しかし仕掛けが難しい。
スイッチを押している間は空中に浮いている足場ブロックが別の位置に移動するがスイッチから離れると元の位置に戻るので、何か重しでも置いておかないと足場ブロックに乗ることができないが、重しになるようなものは見つからない。
やはりここも出直すことにし、ガロからヒントを入手しようと思い、外へ出る。
ガロは倒すと今際の際に(ていうか亡霊だから既に死んでるけど)ヒントを一つ言い残してくれる。
わき水のほら穴に入ろうとするものは
墓に隠された歌を知らなければ災いが起こるであろう
これだ!「墓に隠された歌」だ。
まずは墓を探そうとあたりを探索していると枯れ井戸を発見。
井戸の底には格子の降りたドアが二つあり、その前にそれぞれ一体ずつギブドが立っている。
(完全にホラー...)
2体とも倒せば開くのかなと思ったが、そうしてみてもドアは開かないしそもそもギブドは倒しても蘇る。
ミイラみたいに包帯ぐるぐる巻だから炎の矢で燃やせたりしないかなと放火してみると「ガワ」の部分は燃やせたけれど「素体」の部分は残った。
結局、井戸の底の謎も解けずまた外に出てきた。
イカーナ古城のそばの壁に横穴を発見。前を通っていたはずなのに全然気づいてなかった。時オカ3Dをやった後だとなおさら64のポリゴンの粗さが目につく。この粗さがイイんだけどね。
横穴に入ってみると、入り口を背にして太陽の模様の壁、奥には暗がりの中にスイッチがある。
スイッチに衝撃を与えると黄色に変わった。しかし特に周りに変化は起きない。太陽の模様が示すように「光」を使いそうなんだけど、それを実現する術がまだ無い。
色んなところに入っては出て入っては出て、イカーナの集落中をグルグルとあてもなく走り回る様はまさに「彷徨える魂」。このイカーナの地の誰よりも彷徨ってる自信がある。
一旦目的を整理しなきゃ。わき水を復活させるためには墓に隠された歌を知らなければならないのでまずは墓を探そう。
どうやら高台にあるこの集落の近くには無さそうなので、下界に降りてみてイカーナ渓谷周辺を探索。途中で見かけたアキンドナッツに聞くところによると「悪魔ばらいの仮面」があるらしい。付けるとギブドたちが襲ってこなくなるのかな。
「サコンのアジト」という場所もあった。「セキュリティ万全」と看板に書いてあるがそれもそのはず入り口には大きな岩がスッポリと嵌っている。
一番屈強なゴロンリンクになってパンチをお見舞いしてもその岩はビクともしないのでこりゃ大爆弾の出番かなと街に戻って大爆弾を購入し、巨岩の前で爆破するが・・・これでもビクともしない。
ムジュラではこんな風にそれまでの経験則が通用しないことがしばしばある。ひとまず墓場とは関係がなさそうなのでまた来よう。
墓場はなかなか見つからず、「もう出来ることはやりきったし行けるところは行ったぞ!」と観念して攻略ガイドをチラ見してわかった。
何のことはない、もっともーっとイカーナの入り口の方に戻れば墓に通ずる道は普通にあった。最初に訪れた時、ポウマスター(幽霊小屋の主人)に導かれるままに渓谷の方へ来ており、こっちの方にしかフィールドが広がっていないかと思っていた。思い込みダメ、絶対。
墓石に刻まれた文字を読んでいると一つ一つの墓に違う内容が刻まれていることがわかった。そのうちの一つに「天使のナミダ いざなうメロディーここに眠る」とあった。例の歌についてはどうもこの墓が怪しい。
今までの経験則から、墓石は掴んで引っ張ってズラすと中に入れる、もしくは中からモノが出てくるんだろうなあと睨んだが、「つかむ」コマンドなど出てこない。
と、そこへ一人の男が。懐かしい...墓守のダンペイさんだ!(時オカの墓地にもいた!)
ダンペイさん曰く、ここの墓はみんな山向こうのイカーナ城の王家の墓で、夜になるとユーレイが出るらしい。
日が暮れるのを楽しみにしつつ先へ進むと、得体の知れないデカい生き物の骸骨が横たわっている門があった。門の横には「我が魂を目覚めさせるものがうんちゃらかんちゃら〜」と書いてある。目覚めさせる、といえば目覚めのソナタだ!とオカリナを吹くと、横たわっていた骸骨が復活!デカい。
追いかけっこ?を挑まれているようで、門を背にしズシンズシンと走っていく骸骨の背中を追いかけていくが、等間隔で炎の壁とスタルベビー(小さい骸骨)が出現し行く手を阻む。2回目の挑戦にてゴール前で追いつくと戦闘に入ったがうまく倒すことができた。
(闘いに負けた彼のこの台詞に一瞬で心奪われた)
彼はもとは丘の上のイカーナ王国の軍を指揮していたスタル・キータというらしい。彼は語り始めた。
王国で起きた戦いに破れて屍になってからも
我が魂を呼び起こしてくれるものが訪れるのをここで待ち続けていた
出た!イカーナ節!(好き)
死してなお自分への忠誠を誓う部下たちに言葉を伝えて欲しい
もう戦いは終わったのだと
それで私は安らかな眠りにつくことができる
そう言うと彼はリンクに向き直り敬礼をして一言
「隊長どの!」
「・・・しばらく休暇を頂いてもよろしいでしょうか?」
(え、なに!?可愛すぎ!大好き!)
そしてイエッサー!と掛け声をあげ崩れ落ち、やがて消えた。
それと同時に大きな宝箱の周りを囲っていた炎も消え、その中から「隊長の帽子」をゲット。「数百の部下の亡霊が忠誠を誓う隊長のあかし」とのこと。
結構ホラーな見た目。
それにしてもスタル・キータ...その見た目に似つかわしくない気高さというか、というか骸骨になっても騎士道精神を貫いてるような、それでいて人間臭さや弱さも垣間見せるような・・・ムジュラや時オカのキャラクターはどれも魅力的だけど、スタル・キータのキャラクターは特に好きかも。
そうこうしているうちに日も暮れたので墓に降りてみると、そこら中にスタルベビーたちが戯れている。
木登りかわいい。
隊長の帽子を被ったまま話しかけてみると、墓守をサボっていたのかトボけた生返事を返してきたが、隊長だとわかった途端にかしこまる。かわいい。
リーダー格と思しき一人が隊長からの命令を待つと言うので「墓を守る」「墓を暴く」の選択肢から「暴く」の方を選んでみると、戸惑いながらも寄ってたかって豪快に墓を壊し始めた。
すると墓の下に通ずる穴��出現した。なるほどこうやって墓の下に入るのか。
墓の下の雰囲気、たまらん。
ダンペイさんも降りてきてる。骸骨のお面だと怖がるのでお面を外して話しかけると話をしてくれた。
なんでも「王家の伝説の宝を探しに来たが、松明が消えて困っている、暗くてよく見えないから宝の埋まってそうな場所まで案内してくれないか」とのこと。OK、任せて(月の衝突まで5分切ってるけど)。
ところでもはやダンペイさんって墓守じゃなくてれっきとした墓荒らしだよね(笑)
けっこう密着してゆっくり進まないとすぐフラフラとどっか行ってしまうのでZ注目をしながら進むと先導しやすい。しかし、世界の終わりまでもう時間がないので一旦セーブして1日目の朝からやり直し。
夜じゃないとスタルベビーたちは現れない(=墓の下へ行けない)ので、雑貨屋のカカシに夜までダンシングしてもらって夜の墓を再訪。
どうやら3人がかりで墓を取り囲んでいるスタルベビーに話しかけないと先ほどの「暴く」コマンドは出てこないことがわかった。ただ、今回は前回暴いてもらった墓と別だぞ、どうなっているんだろう...と穴を降りてみると・・・案の定前回と違うフロアが広がっていた。何これちょー楽しいじゃん。
このフロアを奥に進んでいくと、扉を開いた先になんか強そうなキャラが待ち受ける。
このフォルムは...完全にかの悪名高きアイアンナックですね。でも大丈夫、自分は時オカの頃から対アイアンナック戦は割と得意なので今回も楽勝の勝利。(むしろ、ウネウネしたチクワみたいなライクライクとかの方が苦手)
アイアンナックを倒すと冒頭で登場した作曲家シャープの弟・フラットの魂が解放される。
彼が言うには「兄のシャープが悪魔に魂を売り、私をこんなところに閉じ込めた」とのこと。兄がシャープ=半音「上」で弟がフラット=半音「下」なのも地味に面白い。
解放したお礼にとフラットが作曲した歌を教えてもらえたのだが・・・
雨・・・カミナリ・・・といえば・・・
キターーーーーー!嵐の歌!!この歌大好きなんだよ...(「覚えた」じゃなくて「思い出した」なところもグッとくる)
やっとのことで「墓に隠された歌」こと「嵐の歌」を演奏できるようになったので、早速わき水のどうくつへと向かう。シャープを前にして「嵐の歌」を吹くと、わき水が復活し村に水が戻り、ギブドたちが地に帰っていく。
(こうして見るとギブドちょっとかわいいやん...)
シャープは言う
フラットよ わが愛しき弟よ
死してなお 王家の復活を夢見た おろかな兄を 許してくれ・・・
我ら死した者は この地に蘇ってはならぬはず
それを狂わせたのは 全ては仮面をつけた者の策略である
仮面をつけた者...スタルキッドのことだろうか。
弟フラットの歌により、シャープは自身の愚かさに気づき、そして彼にかかっていた呪いも解けた。この呪いが彼を変え、わき水を枯らしてしまっていた元凶だった。
嵐の歌は、演奏すると一時的に雨と風を巻き起こせるが、それはその場所の水位を上げるためのものではなく、対象にかかった「呪い」を洗い流すためのもののようだ。
水が戻ったことでオルゴールハウスの水車も回るようになり、オルゴールの音色があたり一帯に響き始めた...これが本当に泣けるメロディなのだ。
また、周りをうろついていたギブドたちが消滅したことで安心したのか、オルゴールハウスの中から女の子が出てきた。しかしリンクの姿を見ると怯えた様子で家の中に戻りまた戸を閉め切ってしまった。この子と話せたら何か進展がありそうだけど...。
これで村に水を戻す方法はわかったが一つやり残したことがある。墓の下のダンペイさんのことを忘れかけていた。
どうやらスタルベビーたちが壊してくれる墓石は日にちごとに違うようで、1日目に来るとさっきのようにフラットが居る墓だが、ダンペイさんが宝探しに来ていた墓は3日目の晩にしか壊せないようだ。
3日目の夜まで進めて、再度挑戦。
フロア内に数箇所あるダンペイさんが掘ることができる砂場を手当たり次第に掘っていくと、謎の青い炎が掘り出される砂場がちらほらある。じっくりやっていくとうまいこと三角形を作るように三箇所でその青い炎が掘り出された。
すると、ダンペイさん曰く「ユーレイの親分」ことビックポウが出現。
倒すと空き瓶ゲット!地味に嬉しいやつ。
そもそもこのフロア(穴)に通じている墓石には「彷徨える魂を封じ込めるウツワ、ここに眠る」という文字が刻まれていたことからもわかるように、墓石の文字はその中に何が眠っているかを示しているようだ。面白い。全部の墓石の下に潜れるのかなぁ。
今回はここで終了。書いてみるとかなりの大ボリュームになったがドンドン展開が面白くなっているのでついつい夢中で進めてしまっていた。
この後の展開がちょっと行き詰まっているのでまた腰を据えてやるとしよう。イカーナ地方は終始怖〜い感じなのかなぁと思っていたけれど、独特のユーモアとかキャラクターや音楽が良いアクセントになっていて自分は結構、いやかなり好きかもしれない。面白くなってきた。
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Okinawa 🐠 day3
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3日目は7:30くらい?に起きて
さっさと朝食を済ませ、てぃだ工房へ。
ガラス吹き体験をしてきました。
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職人さんたちに教えてもらいながらグラス作成。
完成品が届いてたんだけど、まだちゃんと
写真撮れてなかったから、それはまた後日。
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思ってたより難しくて、
職人さんに手取り足取り手伝ってもらったけど
この工程を1人でやるのには
かなり練習しないと無理だなと思った。
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ガラス吹き体験は15分くらいで終わるので
次の予定まではダイヤモンドビーチでぶらぶら。
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海水の透明度が高くて綺麗だった!
地元の海じゃこんなに綺麗な水は見られないから
沖縄いいな〜〜と思う。
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御菓子御殿 恩納店の裏にあるビーチで
穴場らしく人も少なくてよかった!
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お昼時だったのでランチは
ダイヤモンドビーチを眺めながら過ごせる
ビーチテラスカフェ ダイヤモンドブルーで。
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内装もパステルカラーで可愛いし、
ドリンクはジャーで出てきて映える!(笑)
嬉しかったのはサラダバーがあって
好きなだけ食べられたこと。
メインはタコライス。美味しかった〜〜😋
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ランチのあとは、いよいよダイビング!
Pro Scuba Team SEALs さんに
お世話になりました。
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シュノーケリングはしたことあったんだけど
完全に潜るのは初めてで、
最初に海に入った時、呼吸が不安すぎて
本気で無理だと思いました。
でも言われたことを意識して頑張ったら
案外すぐ慣れた(笑)
結果、めちゃくちゃ楽しかったです!
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ゴーグルのせいで更にブスだしまるで別人だけど
この写真はなかなかお気に入り(笑)
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1ダイブ目は青の洞窟。
思いのほか人が沢山いたけど、凄く綺麗だった!
2ダイブ目は人がいないところで、かつ
写真の魚たちに襲われる所へ(笑)
(人を見ると餌が貰えると思って寄ってくるらしい)
ほんとうに集ってくるし前が見えないくらい。
凄く可愛かったけれど、
控えめなカクレクマノミを見てる時は
さすがに邪魔だよと思った。
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こんな感じ(笑)視界がほぼ全て魚(笑)
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でもとにかく楽しかった!
インストラクターさんにも上手だねって
褒められたからいつかライセンスを取りたい(単純)
2ダイブのプランにして本当によかったし
むしろ全然潜り足りないくらい。
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プランはたしか1人13500円くらいで
水着だけ着て行けばOKだし、
水中で写真撮ってくれて後から送ってもらえる!
めちゃくちゃ満足でした〜〜
早くまた行きたい🤩
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ダイビングは夕方くらいには終わり、そのあと
MANGO HOUSEでかりゆしウェアを買って
また居酒屋ディナー。
思ったより疲れてたのか、私は1件目でもう
厳しかったので切り上げてホテルに帰りました。
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かりゆしウェアの詳細は
次の投稿に載せます👕👚
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