#推し活トートバッグ
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furoku · 1 year ago
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7010333 · 11 months ago
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2023年振り返り(7月〜12月)
■7月
・四国に旅行した(直島−徳島)
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▲鳴門海峡の渦潮
結構雨が降っていた。渦潮っぽいのは見られたかも?
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▲大塚国際美術館
大塚国際美術館は全部���っくり観ていると一日では足りないのではないかというくらい作品が充実していた。
・夏キャンプ(土呂部)
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この回は泊まりで行った。
自分はテント泊ギアを所有していないのでロッジに泊まる。
日光の奥の方で、夏だけどだいぶ涼しかった。
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▲鳥が出てくる映画も観ました
■8月
・飲み会が多い
大阪在住の大学の友達が関東に遊びに来るとか、研究室の飲み会とか。
うまい寿司を連続で食べたりもしている。
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▲セブンイレブンのカレーフェアも食いまくった
■9月
・BIG FUNに行く
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なかなか行くチャンスがなかったBIG FUNに初めて参戦した。最高。また行きたい。
プレシャスホールにも遊びに行きたい。
一泊したので札幌観光もした。ぽんぽこ年間ベストグルメの「らーめんそら」の味噌ラーメンも食べられて満足。
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▲らーめんそら
・ぽこピー展に行く
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写真を見返しているだけで楽しい。
・どん底会2
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どん底からのやんばるからの石の家。
・秋キャンプ(手賀沼)
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だいぶ設備が整っているキャンプ場だった。手ぶらで行っても遊べそう。
■10月
・新居にお邪魔
マンションもいいな〜と思った。(小さい戸建気に入っています)
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▲江ノ島で海鮮丼食ってるな
・新居にお邪魔2
デカい戸建もいいな〜と思った。(小さい戸建気に入っています)
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▲推し活状況
■11月
・伊勢志摩旅行
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▲鳥羽水族館のラッコ
その他横山展望台、スペイン村など。
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▲潮路亭
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▲サンペルラ志摩
(この辺りはXに大量に写真をあげている)
まだまだ行ったことのない良いところが日本にたくさんあるなと感じた。
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▲短めの区間だったけれど観光列車のしまかぜにも乗れた
・Switchを買う
特に何かをやっているわけではない(やれや)。 とりあえずスイカゲームはやった。
・新しいレンズを購入
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■12月
・冬キャンプ2(手賀沼)
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冬のキャンプはサッポロ一番がうまい。
友達がiQ買っててめちゃ可愛かった。
・人の家に遊びに行って飲む
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おでん、山芋料理など。
この山芋焼いたやつが美味かった。トリキにあったやつ(今もあるのか?)
・忘年会
インターネットの人と酒を飲む会×2が開催された
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また長年相互フォローだったけどあった���とない人とお会いする機会を得た。今年はこの感じ多いな。嬉しいわ。
・クリスマス
なんやかんやクリスマスは外で食べることが多かったけど、今年は家でご飯を作って食べた
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(コース料理を家で再現するみたいな記事の影響を受けた感じではあるが・・・)
いい感じの皿が欲しくなった。
-------------------- 振り返るとめちゃくちゃ旅行した一年でした。
そして水族館に行きまくっていますね。
自分から進んで行っているわけではないですが、結構全国の水族館に足を運んでいる部類のhumanになってきたと思います。
キャンプも4回は行ったので、だいぶ慣れてきた感もあります。そのうちテントやタープを張って泊まるみたいなこともするようになるのでしょうか。
外遊び以外では何よりもぽこピーにハマってVtuberを色々見るようになったのがデカいです。
冗談抜きで一時は可処分時間の全てをアーカイブ視聴に費やしている時期もありました。面白いし可愛いしかっこいいところもあって、めちゃくちゃハマっています。
動画関連で言うと東海がしばらく休眠している��は少し寂しい感じもします。(そのタイミングくらいでバキ童チャンネルに出会ったのでお下品ネタの補給はそっちで行われているかもしれない)
仕事は楽しくやらしてもらっています。できることの幅が広がりつつあると感じています。今年は要件を満たしたので資格試験を受けたのですが、2問分ほど点数が足りていなかったので多分落ちたと思います(まだ合否発表はなされていない)。来年も受けるかもしれない。
みなさんの一年はいかがでしたか?
--------------------
(番外)今年買ってよかったもの ・コーチジャケット(Y-3)
プリマロフトという素材について全く知らなかったのだけれど、めちゃくちゃ暖かくてかなり着ている。デザインもシンプルでよき。
・オールインワンジェル(無印良品)
化粧水→乳液→クリームのような工程が不可能なのでオールインワンジェルを愛用しているのですが、これはあまりベタベタしない上に肌の調子もいい感じがして大変気に入った。今後はこれを使い続けると思う。
・ぽこピーパーカ オートミール(SPINNS)
推しグッズ。推しとお揃いも嬉しい。可愛いし普通に使えるので着まくっている。
・PIXEL FOLD(Google)
折りたたんだ時に縦に長すぎないのが良い。開くと写真が大きく見られるところと、漫画が見開きで見られる点も◯。チェンソーマンが捗った。
・WH-1000XM5(Sony)
WF-1000XM3を紛失した悲しみから絶対に落とさないであろうヘッドホンを購入。電車の中で騒いでいる馬鹿どもの声が一切聞こえなくなる最高のノイズキャンセリング性能で通勤のお供として必携品となっている。
・ExpertMouse ワイヤレストラックボール(Kenginton)
オービットを使っていたのを変更した。ボールがデカいと疲れない+ボタンが4つで組み合わせに応じたアクションをアサインできるのが便利。もう少しクリック音が小さければ最高であるが・・・。
・プロフィットジュニア(セーラー万年筆)
パイロットのカクノをずっと使っていたが、良い色のプロフィットジュニアを見つけたので鞍替えした。セーラーのイン��の方が長持ちする気がしている。良い。
・Veilance関連
今年はセットアップ×2とリュックとトートバッグを買った。服は本当に軽くて使いすくて良い。かばんはシンプルで丈夫で「これが良いんだよな〜〜」となる。
以上
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msrchig · 2 months ago
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最近買ってよかったもの
最近したお買い物でよかった~と思うものを書いていこうと思います。
・ジェラートピケ ホビートートバッグ
シンプルなトートバッグが欲しいと思って調べたらちょうどセール中で大きさも結構大きめでいいなと思い購入
色は白にしました。私は白が好きだから…
軽くて普段使いで気楽に使えそうでいい!ツイッターを見ると推し活現場やライブ参戦バッグとして使っている人が多くてなるほどねとなりました。
カラーリングがたくさんあってシンプルなのでぬいぐるみポーチやキーホルダーなんかもつけやすそうなのでそういうところがいいのかも
・Spirit City: Lofi Sessions
好きなBGMを流したりToDoリストなんかが作れる作業集中ツール
こういうツール系ははじめて買ったけど、おともスピリット(マスコット的なもの)も可愛くて家具のインテリアも好みでかわいい!
今もこれを起動して音楽を聴きながら書いてます。最近PCで作業することが多��ので助かる。
これをつけながらだら~っとネットショッピングするのもいい…
・無印良品 敏感肌用乳液 しっとり 200mL
乳液ってどれがいいんだ…もう何もわからない…と情報に疲れはてて買った。すべてが普通で安心する。普通っていいよね…
スキンケアって調べれば調べるほどわからなくなっていくので助かる…実は無印の商品ってあんまり買ったことなかったのですが今後の人生の選択肢に加わりました。
・MEKO 金属製4個入り アップルペンシル 交換用ペン先
わりと純正品使いがちではあるんですが、これは細くてよかった!ペーパーライクフィルム貼ってあるのですが、そんなにカリカリする感じもなくて使いやすかったです。iPadお絵描きにおすすめ。
以上!色々と買って遊んだゲームもあるのですがそれはまた別個で書こうと思います。
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gamepediajp · 10 months ago
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株式会社セガより、『BONGBONGEE×MUZIK TIGER』のプラ …
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myonbl · 3 years ago
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2021年6月28日(月)
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カバンも財布もひっくるめて、袋物が好きである。そんな私を見透かすように、Facebookがこれでもかと広告を突きつけてくる。それがクラウドファンディングとなると、ついクリックしてみてしまうのだ。本日届いたのは<倉敷帆布バッグ>、手頃な値段だったので少しだけ応援したのだった。腐るものではないけれど腐るほどあるトートバッグ、こちらもダイエットしなければ。
ツレアイと次男は出勤。
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エビ天煮麺+ヨーグルト+豆乳。
洗濯1回。
先週から対面授業が復活したが、前期は月曜日がオフ、あれこれ家事を片付ける。
不揃いのキュウリの特価品、今年初めてキュウリの佃煮を作る。
西大路花屋町・セントラルスクエアまで買物、プリペイドカードに1万円チャージ、月・火は100円分おまけが貰えるのだ。素麺・タマネギ・セロリを購入。
昨日からヨーグルトに漬けておいた鹿肉を使って、夕飯用にカレーを仕込む。
西七条郵便局、レターパック・スマートレターを購入。
KDDIからメール、<povo先行エントリーキャンペーン特典>として3,000円、auPAYにチャージしたと。すでにpovoからUQに乗り換えたが、特典対象条件は満たしていたようだ。
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ランチ、超久しぶりのチキンラーメンを頂く。
レンタルサーバーのメンテナンス、昨年度で終了した京都大学社会調査実習報告書「地域に学ぶ」のバックアップを取る。
ファミリーマートでMQJの電話代支払い、その後市バス13系統に乗って四条烏丸、15時45分に西村歯科到着。予約は16時だが、すぐに呼んでくれた。ドクターのチェックは特に問題なし、いつもどおりのクリーニング。
帰宅してから鹿肉カレーの仕上げ。
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息子たちにはカレー+トマトサラダ、ツレアイの帰宅を待って晩酌開始。とは言え、今週から<平日休肝日プロジェクト>再開、ノンアルコールビール+鹿肉カレーwithパンで早めに終了。
風呂の順番が来ても、今夜は眠くない、呑んでないからね。
今週の就寝前読書、松本清張『蒼い描点』。
若い編集者椎原典子は、女流作家村谷阿沙子の原稿催促に出向いた箱根で、顔見知りのフリーライターの変死にぶつかる。死者と村上女史に謎の繋がりを感じた典子と同僚崎野は、やがて女史には代作者がいたという確信を持つ。女史の夫と女中の相次ぐ失踪、女史の精神病院への逃避、そして第二の殺人と、事件は意外な方向へ発展する……。心理の微妙な起伏と情景の描写が光る推理長編。
なんとか、日付変更線を越える前にページを閉じた。
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今日は良く歩いた、15,000歩を越えるのは本当に久しぶり。
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gallery-fall · 5 years ago
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クルムホルンレコード
今月のショーケース 2
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2020 | 1 | 29 WED → 2 | 16 SUN
OPEN 12:00 - CLOSE 20:00
FALL
今月のショーケースは音楽レーベル「クルムホルンレコード」です。同レーベルは、中世ヨーロッパの古楽器を演奏する「カテリーナ古楽合奏団」や、古楽器や民族楽器、創作楽器をつかって子どもたちのための音楽を30年以上つくりつづけてきた「ロバの音楽座」などが活動の拠点としている、稽古場兼コンサートホール「ロバハウス」にて運営されています。
今回はクルムホルンレコードよりリリースされているCD作品、ロバハウス特製缶バッジやトートバッグなどを販売します(お買い上げのみなさまにロバの音楽座のリーフレットをさしあげています)。
また、主催の松本雅隆さんがコレクションしているロバの人形や創作楽器なども展示してます。CDコーナーの柱にはルネサンスの古い笛、クルムホルンもぶらさがっていますので、探してみてください。
ぜひこの機会に、クルムホルンレコードの不思議な魅力にふれてほしいです。
※ 店の一隅にある小さな棚を「ショーケース」と題し、月替わりでインディペンデントな小出版社や音楽レーベル、メーカーなどを紹介しています。
→ 今後の展示やイベントの予定
クルムホルンレコード
Kromhoorn record
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1973年、松本雅隆氏を中心に「カテリーナ古楽合奏団」が結成される。82年、「ロバの音楽座」を結成。92年、東京都立川市にホール「ロバハウス」をつくり、以降、定期的にコンサートをひらく。関連のCDなどを「クルムホルンレコード」からリリース開始。2006年、松本氏がジブリ作品『ゲド戦記』の音楽に参加。16年、ロバの音楽座の作品「森のオト」が児童福祉文化賞特別推薦を受賞。
roba-house.com
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SNS
→ Twitter(@gallery_FALL)
-
→ Instagram(@fall_mishina)
FALL
167-0042 東京都杉並区西荻北3-13-15-1F
地図 | 12:00 - 20:00 | 月・火お休み
gallery.fall at gmail.com | fall-gallery.com
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kkagneta2 · 6 years ago
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陽昇(草稿)
タイトルの読み方は「ひのぼり」です。つまりサンライズです。
「十号車、十号車、十号車、…………あ、ここだよ、お兄ちゃん、ここ、ここ!」
「わ、わかったから、引っ張らないでくれ! 荷物が。………」
「-------でも、どっちから入ったらいいんだろ。…………ま、どっちからでもいっかな。」
数字の小さい車両側からホームを登ってきた初希は、乗り込み口にたどり着くとようやく歩みを止め、手を引いている倖希の方に振り向いた。
「って、お兄ちゃん大丈夫? 一体誰に右手をやられちゃった��?」
見ると、キャリーケースやらトートバッグやらコンビニ袋やらを全て持たされているというのに、家を出てからずっと左手を妹に取られ無理やり歩かされてきた兄が、少し不満そうな顔をこちらに向けつつぷらぷらと右手を振っている。
「まったく、すこしは落ち着いてくれ。手がちぎれるだろ」
「ごめんごめん。ちょっと盛り上がっちゃって。------でも、こんな時間に大阪駅にくるなんてはじめてだからしょうがないよ。お兄ちゃんだって、実は盛り上がってるでしょ?」
「いや、まぁ、………たしかにそうだけど、さぁ。…………」
倖希は未だに不満そうな顔をしているが、確かに初希の言う通りである。彼はこんな風に日が変わった頃合いになるまで大阪駅に居たことは何回かあるものの、やはり日中には感じないその独特な雰囲気にどこか興奮を禁じ得ないのであった。だがこの日ばかりはそういう幻想的な理由だけから興奮を感じていた訳ではない。と、云うのも、実家へと一週間ほど帰省していた彼は、これから香川県高松市の高松駅を数時間前に発った寝台列車に乗り込み、東京へ向かい、そして下宿先へと戻るつもりなのであるが、その道すがらずっと妹であり恋人である初希が着いてきて、しかもその後ほんの二三日ではあるが愛する彼女と、家族というしがらみを取っ払って過ごそうと、そういう計画を立てているのである。本当は一人で新幹線を利用する帰省の予定だったのが、友達の勧めで寝台特急に乗ることに変わり、その上なぜか初希がどうしても、どうしても一緒に着いていきたいと言うから仕方なく、仕方なく、本当に仕方なくバイト代を切り崩して連れてきたのであるが、これほどまでに嬉しそうな妹の顔は久しぶりで、これからそんな彼女とほんの数日間とは言え二人きりで過ごせると思うと、気をつけなければつい笑みがこぼれてしまうほどに、悦びが心の奥底から湧き出てくるのであった。
「------寒くない?」
「全然っ。むしろさっきの待合室の中が暑かったから、今がちょうどいいくらい。------お兄ちゃんは?」
「俺はめちゃくちゃ寒いんだが、ちょっとその元気を分けてくれ。…………」
「えー。………お兄ちゃんまだ二十歳なのに。-----」
そうやって呆れつつも初希がキュッと手に力を込めてくる。倖希はこんな、照れ隠しのような妹の優しさが好きで好きでたまらなく、毎度のことながら頬を赤く火照らせてしまい、彼女に悟られまいと壁にある広告に目を向けたのであるが、ふいに視線を感じて下を向くと、初希が眼鏡の奥から得意げな眼でこちらを見てきていた。--------本当に大人びてきたものである。いつも今日みたいに我儘を通したり、いつも今みたいにグッとくる仕草をしてきて、顔立ちも美人というよりは可愛いさの方が強いのだけれども、少しおっとりとした目元や、流れ落ちる水のやうに癖のない髪の毛や、真紅が横にすうっと伸びた薄い唇やらには、並の少女では身につけられぬ気品があり、ただただひたすらに麗しい。しかもその上、暗い紫色の眼鏡をかけているせいで知的な、…………いや実際にとんでもなく頭が良いので「見える」なんて言うとひどい状態にされそうだがとにかく、股が疼くほどの知的な雰囲気を身に纏っている。昔は何かあればすぐ泣きべそをかいて、お兄ちゃん、お兄ちゃん、と手を伸ばし抱っこをせがんでくる幼い(いとけない)女の子だったのに、気がついた時にはすでに可愛らしい少女となり、そして今では立派な淑女へと成長しようとしているのであろうか。自分にはいつまで経ってもあの、負けず嫌いで泣き虫で兄にすら牙を剥く面影がちらつくけれども、初希ももう高校二年生、それもあと二ヶ月しないうちに三年生へ上がる年齢なのだから、いつまでもそんな幻影を彼女に重ね続けてはいくら妹とは言え失礼であろう。いい加減、彼女の成長を認め、そして、いつかは離れていってしまうことに覚悟を決めなくては。……………そんなことを考えていると倖希は途方もなく寂しくなってしまい、つい右手を彼女の頭にやるとそのまま優しく撫でていた。
「うん? なに?」
「いや、大きくなったなって」
「ふふん、そりゃそうよ。もうKよK。----っていうか、お兄ちゃんに揉まれてから大きくなるの止まんないんだけど。………」
初希が空いている方の手で豊かに育ちつつある自身の��元を撫でながら困ったようにそう言うので、倖希はどこか勘違いされた気がするのであるが訂正するのも面��だし、昨夜も精を搾り取ってきたその膨らみに一度目を奪われてしまっては考えも何処かへ吹き飛んでしまい、何をするのでもなくただ妹の頭を撫で続けていた。ふと気になって見渡してみると、駅のホームにはまばらとは言え意外にも電車を待っている人がちらほらおり、そういえば先程の待合室の中は一つ二つしか座席が空いてないほど一杯であったことを思い出すと、恐らく自分たちと同じように寝台列車に乗ろうとしている人が沢山居るのであろう。よく考えれば今日は三連休前の金曜日、…………いや、もう日は過ぎたから三連休初日の土曜日なのだから当たり前と言えば当たり前である。が、それにしてもこんな時間から電車に乗るのには一種の違和感というか、躊躇というか、何かロマンティックな物語の主人公の気分というか、何か黄泉の国へ連れて行かされるような気分というか、そういう不思議な気持ちを起こさせる何かがあるような気がする。なるほど確かに、友人の言ったとおりこの感覚は癖になりそうだ。---------
「あっ、お兄ちゃん、そろそろだよ、-------」
初希がそう声を出すと間もなく、ホームにいつも聞くチャイムが鳴り響き、周りの者たちがざわざわと賑わい始めた。家族連れはぴょんぴょん飛び跳ねる子供の世話に追われ、男女の組は変わらず話し合い、カメラを片手に持っていた者は皆線路脇で構えている。
「お、やっとか。いまさら遅いけど、忘れ物してないよな?」
と、倖希はそう妹に聞こうとしたのであるが、間が悪くちょうど「忘れ物」あたりで寝台列車が、ゴォッ………!、という音を立てて入ってくる。しかし初希にはちゃんと聞こえていたのか、
「もちろんもちろん。お兄ちゃんこそなにか忘れ物してない? この前充電器忘れたー! って言って大騒ぎしてたけど」
「あぁ、うん。たぶん大丈夫、………なはず。-----ま、いいや、乗ろう乗ろう」
かなり訝しんだ目で見られているうちに列車の扉が開いたので、倖希は一向に離してくれる気配のない力強い手を引いて、でもやっぱり、忘れ物をしているような気がして足が止まりそうになったが、言うと初希にどれだけいじられるか分からないので、空に浮かんでいるであろう綺麗な三日月を一瞬間眺めてから、黙って列車の中に入った。
  寝台列車というものは大方どの車両も一階部分と二階部分に分かれており、彼らが乗り込んだ車両では一階に二人部屋が、二階に豪華な一人部屋があるのであるが、その二人部屋というものは小さなベッドが二つ、人がひとり通れるか通れないかの隙間を隔てて配置された、例えるならホテルの一室を限りなく小さく且つ余分なものを削ぎ落としたような部屋であった。二人は列車に乗り込むと、まず狭い階段を下りて、狭い廊下を渡って、開け放しにされている部屋を見つけて、これが俺たちの部屋じゃないだろうかと思って切符を確認すると、案の定そうだったので、荷物を半ば押し込むようにして入れつつ自分たちも入った。するとその時ちょうど列車が動き出したらしく、扉を閉める際に廊下にある窓をちょっと覗いてみると、駅のホームがゆっくりと動いていくのが見えたのであるが、それはそれでワクワクする光景だけどまずは、まずはと思い扉を閉める。ここでようやく初希が手を離してくれる気になってくれたのかその力が弱くなったので、名残惜しくなりつつ両手を自由にすると、コートやら何やらを壁に吊るしてとりあえずベッドに腰掛け一息ついた。そうやって、兄の方は束の間の休息に胸をなでおろしていたのであるが、同じようにベッドに座った妹の方は興味津々に、ベッドの頭側にある謎のスイッチやら何故か付いているラジオのつまみを、時々歓声を上げつつ弄って(いじくって)いる。と、急に結構大きめの窓を遮っていたカーテンが上がり始めたのを目にするや、今度はそっちに食いつき、徐々に見えてくる外の景色に感嘆の声を上げ始めた。
「お、お、お、………わお。…………」
そう言うと窓枠に手をかけてさらに車窓に見入る。
「すっごい。…………ええやん。………ええやん。…………」
そして初希は、カーテンが上がり切る頃になるともう声をも出さず、目を見開いて窓の外を眺めるようになったのであるが、しばらく無言であった倖希もまたその移り変わっていく景色、-------たった一台の車のために色を変える信号機、読む者も居ないのにぽつりと立つ標識、住宅街の上を駆け抜けている電線、淡く光るように街灯に照らされている道路、夜空に点々と輝き星座を描く星々、……………そしてそれらをどこか物悲しい顔つきで見入る妹、------などなどに心を揺さぶられ、やはり違う世界へ連れて行かれたのではないのかという気分になると、自身も妹と同じように窓辺に手をついて外の景色を眺めた。今見ている街並みは、まだ大阪のものであるのに、普段見慣れているはずなのに、二年前まではここで暮らしていたというのにいまいち現実味が湧かず、隣に居る初希の存在を感じていると本当に恋人とどこか遠くに駆け落ちしているような、そんな錯覚さえしてくる。果たしてそう思うのは、生まれ育ったこの地から離れようとしているからなのか、それとも儚い表情をしてをられる彼女の佇まいに当てられたのか、はたまたぼうっと辺りを照らしている街灯に哀愁というものを感じたのか、いずれにしてもいたく美しい光景が車窓には広がっている。--------
「確かにこれは、いいな。いいぞ。…………」
二人のあいだにはこの言葉を最後に、しばらく電車が線路を走る音のみが響いていたのであるが、倖希が咳払いをしたのをきっかけに手をもじもじさせ始めたので、それがどういうことを意味しているのか知っている初希は、一つ、くすっと笑うと、絡まり合っている手のうち自分に近い方を奪ってやる。すると案の定、隣に居る兄から力という力が抜けていき首もがっくりと項垂れていったけれども、気がついた時にはあの、苛めてほしそうな優しい顔でこちらを見てきていた。
「こ、--------」
が、初希が口を開けたその時、コンコンコン…………、と扉をノックする音が聞こえてきた。
「あっ、はーい!」
すかさず倖希が反応すると、ガラリと言う音と共に扉が開き、
「すみません、乗車券の方を、-------」
と、言いながら嫌に朗らかな笑顔をした乗務員が部屋に入ってくる。-------どうやら切符を見せないといけないらしい。そうは理解していても突然のことだったので、すっかり自分の世界に浸っていた初希は一瞬固まってしまい、そのうちに手を離されてしまった。
「はい、どうぞ~」
さっと財布を取り出し、その中から切符を抜き取った倖希が朗らかに言う。自分だってあんなに哀しそうな顔をしていたというのに、なんだその変わりようは、------と少しムッとする初希であったが、私も切符を見せないといけないんだろうな、………と思い、気持ちを切り替えてベッドに座ったまま自分の荷物に手を伸ばす。
「あ、もう大丈夫です。ではごゆっくりどうぞ。-------」
「へっ?」
私のは見なくていいんかい、と、初希は心の中で言ったのであるが、本当に見せなくても良かったらしく、手を空に迷わせているうちに扉はガラガラガラ…………トスン、という音を立てて閉まってしまった。---------
「びっくりしたなぁ。………」
「うーん。…………あー。………………」
「初希?」
「なんか、あれだね。あれ。そう、あれ。………………」
「あれ?」
「そう、あれ。うん。あれ」
初希は根本から折れたようにベッドに寝転がってしまっているのであるが、その返事は全くもって要領を得ていない。たぶん、雰囲気無くなっちゃったね、…………と、本当は言いたいのであろう。倖希はそんなことを思いながら、もう一度ベッドに座ろうと一歩踏み出したその時、ポキっと折れていた妹の体が突然跳ねるようにして起き上がった。
「うおっ! なんだなんだ、---------」
「お兄ちゃん、ちょっと探検しようよ、探検!!」
「えっ、………」
「行こう行こう。雰囲気無くなっちゃったし、それにさっきちらっと見えた向こう側の車両、めっちゃ良かったやん、なんか非日常的で。ねぇ、行こうよー。…………」
「えー。もうちょっとゆっくり、--------」
そう言いかけたところで、初希がこちらの手を取って引っ張り始めたので、こうなっては妹が止まらないことを知っている彼は、そろそろ開けようと思っていたお酒やらお菓子やらが入ったコンビニ袋をその辺に投げ捨てグイッとその手を引き、彼女を立たせてやる。
「お兄ちゃんのそういうところ、大好きだよ」
「はいはい、------それじゃあ、行きましょうか、お嬢様。」
「ふふっ、なにそれ。つまんない。--------」
と言いつつも、くすくすと笑う初希の手を引っ張って足を踏み出した倖希であったが、部屋を出る頃にはもう妹の背中を追いかけるようになっていた(そんなスペースは無いから微妙。もう少し現実に即するように書き直す?)。
  ぐいぐいと手を引かれて行くと車両の連結部に出て、そこにはこれと言った物が無かったためあまり特別な印象は抱かなかったのであるが、倖希はそんなことよりも妹が楽しそうでなりよりであった。なぜかと言って彼が実家へと帰省したのは、初希がしなびてるから元気づけてやってくれ、どうせあんたが原因やろ、と母親から連絡があったからなのである。しかしそうは言われても当初、普段から妹とはよく通話するし、何よりその日も彼女の元気な声を聞いていた倖希はいまいち実感が湧かず、母親には、濡れ衣や、とだけ返したのであった。が、今まで弱音らしい弱音を吐いてこなかった初希のことだから自分の前では強がっているかもしれないと思うと、どうしても気が気でなくなってしまい、試験という試験全て乗り越え、レポートというレポートを全て提出し終えたらすぐ実家に帰ろうと、そういう予定を割と早くから立てていたのである。それでどうやら悪いことに、倖希のこの読みは当たっていたらしく、日を追うごとに普段の通話から沈黙の時間が増えていったので、余りにも妹を心配した彼はレポートを一つ放棄してまでして、予定より一日早く実家へと帰省したのであった。で、帰ってきてみると笑顔の初希に抱きつかれ、お土産をぶんどられ、いつもの調子でコロコロと転がされ、なんや元気そうやないかと若干損した気分になったものの、こちらを見てははにかみ、こちらに引っ付いてきては撫でるような声を出す様子には、どこか上滑りしているような印象を受けた。それに何と言っても片時も離れないのには、さすがの倖希もうんざりとした。けれどもそうやって、いつも以上に引っ付いてくるということは、妹をえらい寂しがらせていたということに違いなく、申し訳無さと愛おしさから相手をしてやっていたのであるが、じきに日が変わりかけてきたのでそろそろ寝ようと思い、久しぶりの自室に行こうとしたところ、……やっぱり付いて来る。ほら、こんな時間だし初希ももう寝な、明日も学校あるんやろ、とやんわり催促しても、いい加減にしなさい、と少し怒ったように言いつつ部屋へ押し込んでも、ただ、お兄ちゃん、………と微醺を帯びたような目で倖希を見ながら言うばかり。で、結局、根負けしてしまったのであるが、そうやって甘やかしているとしまいには布団にまで潜り込んで来て、目が覚めた時には共に朝を迎えていた。と、そんな風な日を始まりに、この帰省中は初希とずっと一緒に居たような気がするのであるが、なぜかそのあいだ彼女はあまり哀しそうな表情をしなかった。だけれどもここ二三日ほどは急に二人きりで居たいと言ってきて、昼は逢瀬のために神戸に行ったり難波に行ったり京都に行ったり、夜は食事後すぐに部屋に引きこもってこちらが枯れ果てるまで体を求めてきたり、言うとまたバツの悪そうな顔をされるので声には出さないが、それはもう大変であった。恐らく初希は、いつまでもこんな寂しい感情に流されてはいけないと思って、兄が帰ってきたのが純粋に嬉しくって、そんな物悲しい顔を意図してしなかったのだろうが、けだし、やはり別れが近づいてくるに従って耐えられなくなったのであろう。だからと言って爆発させるくらいなら最初から素直になって欲しかったのであるが、その辺りに彼女の健気さを感じて倖希は胸に迫る思いをしているのであった。
彼がそういう思いを抱いているのには一つ大きな理由があって、もう妹もあと数ヶ月すると高校三年生、-----つまり受験生になろうとしているのである。そうで無かったら妹の甘える仕草にも、自信は無いが厳しく応えられたはずなのである。だがやはり、初希がそろそろ受験を控えるようになると思うと、そうも言ってられない。なぜかと言ってあの一年間は魔のような期間であり、どれだけ自分が自信を持っていようが、どれだけ自分が良い偏差値を叩き出そうが、たった小テスト一個、たった教師の一言で途方も無い不安に襲われてしまう。思い出してみると自分はあまり頭の出来が良くなかったから、模試を受ける度に全然問題が解けずへこんで、結果が返ってくる前にこの世の終わりみたいな顔をしていたから親に、あんた大丈夫なん? と言われ、担任に、このままだとあそこは難しいだろうから志望校を変えたほうが良い、と言われ、そういえば常に不安で不安で夜遅くまで勉強していざ床に就こうとすると眠れず、眠れたかと思ったら数時間後、びっくりしたように心臓をひどく脈打たせながら跳ね起きる。そういう生活を常に送っていた。そんな中で唯一、心の支えであったのが初希であることは言うまでもなかろう。中学三年生だった彼女は自身も高校受験のために忙しい日々を過ごしていたにも関わらず、目を充血させてボソボソと英語を読んでいる兄のために蒸らしたタオルを用意したり、たまに自暴自棄になってあちこちへ遊びに行こうとする兄に付いていき一緒になって騒いだりしてくれた。で、騒いだ後は必ず帰りに、こちらの耳が痛くなるようなことを言って諭してくるのであるが、決して不快な気分にはならなかった。どころか一つ一つの言葉に重みと言うか、言霊というか、とにかく彼女の思いが詰まっていて不覚にも涙することは少なくなかった。とは言え、帰りの道中まさか中学生の女の子に甘える訳にはいかないから何とか耐えて家まで辿り着き、自室で二人きりになった所でようやく弱音を吐いて、誘われるがまま頭を彼女の胸に埋める。するといつも決まって初希は子守唄のように兄の名前を呼びその頭を撫で、他の誰も認めないけど私だけはお兄ちゃんが頑張っているのをいつも見てるからね、一昨日もお母さんに、ぼーっとしてるなら勉強したら? って言われてたけど私は知ってるよ、あの時は手に単語カードを持ってたから頭の中で憶えたことを諳んじてたんだってこと。………ふふっ、だって本当にずっと見てるんだからすぐ分かるよ、散歩に行くのも休憩じゃなくて歩きながら数学の問題を考えたいんだよね? ………私にはお兄ちゃん��感じてる不安がどれぐらいなのか良くわからないけれど、やっぱりそこまで根を詰めるのは良くない気がするの。だからお願い、頑張らないでとは言わないけれど、今だけはお兄ちゃんの大好きな私の、……私の、その、………おっぱいのことだけを考えて。お兄ちゃんのおかげで先週Dになったんだよ? -----などと言って、こちらの頭をその豊かになりつつある胸元に押し付けてくるのであったが、なんという心地よさであったか。ひどい緊張で夜も眠れなかった自分の頭の中からあの地獄のような不安が無くなり、体が蝋のように溶けていき、何も考えられなくなったかと思えば次の瞬間には一時間か二時間程度は時が経っている。だが目が覚めたところですぐさま鼻孔に妹の匂いが漂って来て、クラクラしているうちに再び気を失い次の瞬間には彼女の柔らかい膝の上で頭を撫でられている。そして、そろそろちゃんとベッドで寝よ? と妹に言われるがまま布団の中へと一緒に潜り込み、今度はその体を胸に抱いて眠るのであったが、そうすると余りの安心感から三度、気絶するように眠ってしまい次の日が平日であろうが何だろうが昼まで目が覚めないのである。
倖希にはそんな苦いような甘いような記憶があるために、妹はもっと苦労するであろうと考えており、何も彼女に強く言えないのであった。自分には初希という存在が近くに居てくれたからこそ、辛さが募ればすぐに甘えられていたけれども、そうやって入試を乗り越えてしまったがゆえに東京で暮らすことになり、妹の近くに居られなくなってしまった。彼女にはもう甘えられる相手が近くには居ない。そんなことを言うと自惚れているように捉えられるかもしれないが、自分がどれだけ妹に助けられたかを思い出すとやはり、ただでさえ不安に押しつぶされそうになる受験期に、心を寄せている兄と会えないのは心細いはずである。あと一年経って、入試を終え、無事彼女が大学に合格すれば同棲可能、-----いや、すでに同棲をする予定を立てているけれども、その肝心の一年間が彼女にとってどれだけ苦しい一年間になるのであろう。恐らく初希が今回しなびたのはそういうことが原因で、何があったのか推測するに、高校二年生となりて春を過ぎ夏を過ぎ秋を過ぎとうとう寒くなってくるや、あの高校のことだから、-----自分の母校でもあるから分かるのであるが、口を開けば入試だの、受験だの、もうあと日も無いだのと耳にタコが出来るほど言われ不安になったのだろう。自分の時はかなりのんびりとしていたから大して影響は無かったが、案外真面目で頑固者な彼女は先生の言うことを真摯に受け止めてしまったに違いない。しかもその先生というのが、どういう訳か妙に生徒を煽ることに関しては上手くて、入学したときからすでに口を開けば良く出来た先輩の話だったり、定期試験があればほんの少しの凡ミスでもああだこうだ言って自信を失わせるのである。どうしてそんなことをするのか良くわからないが、恐らく不安とか悔しさが本当にバネになるとでも思っているのであろう。で、そういうことを真面目に受け止め続けてきた彼女はこれまでずっと将来の不安を燻らせていて、トドメに、-----自分の覚えている限りではこの���期確か、センター試験の過去問かそれに似せた問題を本番さながらに解く、という行事があったはずで、………たぶん、本当にたぶん、そこであんまり良い成績が取れなかったためにとうとうしなびてしまった。と、こういう経緯(いきさつ)なのであろう。実はこっそりとそのセンター試験の結果を聞いてみたところ、次聞いたらいくらお兄ちゃんでも容赦しないからね、いい? 分かった? と云われたので大方当たっているかと思われる。
そんな訳で、別にセンター試験など雀の涙ほどに圧縮されるから気にしなくても良いのにしなしなにしなびていた初希が、今朝方急に元気になって今ではこちらの手を引っ張り、でもしばしば歩みを緩やかにして後ろを振り向きニッコリと微笑むようになったので、倖希もまたかなり嬉しくなっているのであった。なぜかと言って、彼が妹を東京に連れて行くことにしたのは、先に述べた事情をだいたい全て予想していたからであって、もっと言うと初希が着いていきたいと我儘を言う前から、もっともっと言うと東京に住むことになった自分を送り届けてくれたあの日から、倖希は妹が受験生となる前にいつかは二人きりで過ごして数年後の自分たちの姿を想像しておいて欲しいと、そういう願いがあったからなのである。彼は建前では妹を仕方なく東京まで連れて行っていると言うし、自分の心の中でも二三日の爛れた日々のために手間もお金もかけた、と思っている折があるにはあるけれども、本当は妹を元気づけたい一心でいるのである。だから誰よりも、-------もしかしたら初希本人よりも彼の方が喜んでいるかもしれないのであるが、旅の始まりともあって少々盛り上がりすぎている妹に家を出る前からずっと手を引かれていると、やっぱり少しだけ呆れてもくるのであった。
寝台列車の中はあれほどホームに人が居たというにも関わらずひっそりと静まり返っていて、ただ部屋の取っ手と、木の模様をした壁と、ちょっとした照明だけが付いている狭い、本当に狭い、人とすれ違うこともできなさそうなほど狭い廊下を縦に並んで渡っていると、確かに初希の言う通り非日常的というか幻想的であると、倖希は感じた。よく考えれば時刻は午前一時をちょうど過ぎたくらいなので、皆部屋に引きこもって寝ているのかもしれない。相変わらず手を引かれながら歩いていると、恐らく一人用の寝台個室であろうか、左右対称に狭しく部屋が並んだ車両にたどり着いた際に、初希がふと歩みを止めた。
「なんか、ステイサムの映画みたいだね……」
「どれ?」
「ほら、あの退役軍人なステイサムがマフィアだかなんだかをボコボコにするやつ」
「…………どれもそうだから分からん」
「んー、………ほら、あれ。こないだ見たやつ! ………の、ダンボールに押し込められた出稼ぎ中国人をステイサムがトラックの中で数えるシーン、あれみたい」
「あぁ、なるほど、分かった分かった。………確かにそれっぽいけど、例えがえげつ��くない?」
「せやな。………」
そう言うと初希は、手に持っていたスマホを片手で器用に扱い、カシャッと、この一件面白くなさそうな光景を写真に収めた。が、微妙に薄暗いせいで光がぼんやりとしてしまい上手く撮れなかったのであろう、云々唸って何回も取り直している。倖希はそんな妹を多少愉快に思いながら改めて車両内を見渡すのであったが、案の定何にも面白い物が無く、それに窓が無いために今しがた感動した夜景も見ることが出来ず、ひどい閉塞感に包まれてしまった。それでも殊の外ワクワクして仕方がないのは、そんな閉塞感を感じているからこそ秘密基地に入っているような、言わば少年時代に戻ったような感じがするからであろうか。たぶん少し違っていて、先程ちらりと見えた一階へ降りる小さな階段を思い出すと、ホラー映画というか、SF映画というか、何やら入ってはいけない場所へ迷い込んだような、そういう気分になっているからなのであろう。なるほど確かに初希の言う通り「探検」である。そう合点すると彼は、いまだぴょこぴょこと細かく動いては写真を撮っている初希のことが映画のヒロインのように見えてきて、こんな風にとりあえず動いてみる女性がまず最初に謎を解き明かしたりするんだよな、…………と映画の世界に入り込みそうになり、なんだかおかしくなってきて、ふいに笑みがこぼれてしまって、それを見た少女にニヤニヤと見つめられて、顔を無理やり引き締めて、けれどやっぱりその様子を笑われて、心が痛くなりながらも笑い返して、ごまかすように、
「そういえば、確か展望室みたいなのが逆の方向にあるよ。たぶん」
「ほんと? 行こう行こう!」
倖希は妹がスマホを手の中に丸め込んだのを見て、今度は自分が彼女を引っ張って行こうと足を踏み出したのであるが、壁伝いに無理無理こちらの前に出て来る体に気を取られていると、またもや引っ張られていく形で再び廊下を渡り歩いていった。
  「そういえば、今どの辺なんやろか。-------」
展望車、もといミニラウンジは意外にも二人の部屋がある車両のすぐ一つ隣にあって、車両の縦半分ほどの空間がちょうど左右対称に分かれており、床に固定された回らない椅子に座って、壁に固定された奥行きのない机に肘を乗せて、割と広めの窓から外が見えるようになっていた。彼らの他には妙齢の女性が三人、その椅子に掛け窓の外を時折眺めつつヒソヒソと静かに話をしているようで、それ意外の雰囲気は今までと変わりない、強いて言うなら自販機の色が少し賑やかなくらいである。で、その自販機に飲み物を買いに行った倖希がココアを袖に丸めて戻ってくると、頬杖をついてうっとりと窓の外を見つめていた初希がボソッとそう聞いてきたので、そういえば部屋を出る前に高槻の文字が見えた気がするからそろそろ京都に入ったんじゃなかろうか、と彼女の隣に座りつつ確かめてみたら意外なことにもう長岡京の辺りまで来ている。だが外を見ても消えかかる街明かりがぽつぽつと見えるばかりで、一体ここがどこなのかさっぱり分からない。
「うわー、…………ここ京都なんだ。全っ然気が付かなかった。…………」
「まぁ、夜だし、それにさっきまで窓がなかった車両に居たからね、山崎のウヰス��イ工場とか、チヨコレエトとか見えなかったんだろう。あといつも阪急に乗ってるから微妙に景色も違うだろうしね」
「だねー。…………」
「いやぁ、面白いなぁ、一昨日も初希と一緒に伏見稲荷まで行ったから通ったはずなんだけど、面白いなぁ、………あの時は、--------」
倖希はそれからも、こんな感じで現在地を地図アプリで追いかけ回してはその都度感想を述べるので非常にうるさかったのであろう、五分と経たず初希はその頬を手から離しキッと兄の顔を睨みつけ、
「お兄ちゃん」
「はい」
「静かに」
「はい」
元来妹に至極弱い兄である、倖希はその一言ですっかり静かになり、パキッ…………、という音を立ててココアの缶を開けて一口飲むと、もう何も言わずに変わらぬ速度で流れて行く京都の街明かりを見始めた。そしてほとんど目も瞑って電車の走る心地よい音に身を任せながらココアの缶を手持ち無沙汰に親指で撫でていたのであるが、しばらくすると横からぬっ、と細くしなやかな指が伸びてきて、カチリと、綺麗に切り揃えられた爪とその缶とが当たったと思ったら、次の瞬間にはココアは彼女の手に収まっていた。
「まったく、一声くらいかけてくれ」
「あ、ココアちょうだい。-----」
「遅いわっ」
澄ませた顔でココアの蓋を開けた初希は、濡れたように艶かしく光る唇を軽く突き出すと、下唇を缶の口へ柔らかく当て、人肌程度に温くなったココアをそっと舌の先に触れさせる。そしてその甘味やら、苦味やら、独特の舌触りやら、鼻孔に広がる香ばしい香りやらに顔をなごませてから、コクリ、コクリと気管の膨らみが薄っすらと見える魅惑的な喉を蠢かせ、その優しい味わいを体の中へ入れていく。倖希はその、ある意味口淫を思わせる仕草につい見惚れてしまっていたのであるが、いつしか窓に映る景色は景色とは言えないほど明るくなっており、とうとう背の高い建物も姿を現し始めていた。
「あゝ、この殺風景な感じ、…………京都駅だなぁ。…………」
「ふふっ、お兄ちゃんさっきから何か変。大丈夫? 変なもの拾って食べたりしてない?」
「いやだって、こんな人の居ない京都駅って珍しいやん? それに、-----」
----こうして素通りするのも珍しいし、と言いかけたところで、寝台特急は速度を落として、しかしそれでも案内板やらロッカーやらが掠れて見えない程度の速度で駅のホームを通過していく。
「あれ? 京都は通過するだけなのん?」
「らしい。意外だよね、残念?」
「いや全然。一昨日も来たから。………」
「そういえば、その時の写真さ、意外と綺麗に撮れてたから東京に着いたら見せてあげるよ」
「ほんとに? ---------それは楽しみなんだけどお兄ちゃん、私のことを私が気がついてないうちに撮ってたりしてないよね?」
「いやいや、そんなことは、…………実は一枚だけあります、ありますから。そんな目をしないで、ごめんって」
「もう、………」
「いやでも、あの一枚も綺麗に撮れてたから初希も気にいると思う、…………たぶん」
「そりゃ、被写体が良いんだもの、どう撮��うと綺麗になるよ。---------」
ふふん、と胸を反らし、とうとう倖希の手の平でも収まらなくなってしまった二つの大きな実を、そのおおらかで男の心を惹きつけて離さない蠱惑的な曲線で持って強調するのであったが、ちょうどその時、たまたま後ろを通りかかった男性の視線が突き刺さるのに気がつくと、慌てて自分の体を抱え込んだ。そして恥ずかしさを紛らわせるためなのか、憂さ晴らしのためなのか、ココアを雑に掴んでまたもやコクリ、コクリ、コクリ、…………と飲んでいく。やはりその豊満な胸は自慢ではあるけれども、他人には見られたくないのであろう。
「ここは人が行ったり来たりするから落ち着かないな。部屋に戻ろうか」
「だねー。………」
コトリ…、と音がしたので下を見ると、ココアが帰ってきていた。
「………あっ、うわっ、もうほとんど残ってへんやん! 」
「ふふっ、ココアありがと、お兄ちゃん。-------」
久しく聞いてなかった兄の驚く声に満足した初希は、立ち上がってぐいっと背伸びをすると、まだ一口しか飲んでなかったのに、…………と文句を言いながらほとんど最後の一滴となったココアを飲む兄を、密かに赤らめた顔で見守るのであった。
  倖希は、お花を摘みに行ってきますわと、至極お上品に言いそのまま車両を通り過ぎて行く初希の後姿を送り届けた後、部屋の中に入りコンビニ袋を拡げたのであるが、こんな時間にお菓子はあまりよろしく無いだろうと思ってお酒だけを取り出し、一人ベッドの上に座って移ろいで行く景色を、どこか物足りなさを感じながら見ていた。だがちょっとすると明かりがうるさくなってきたので、一口お酒を口に含んでから窓辺にその瓶を置き、電灯を消して再びあぐらをかいたところで、ゴロゴロ……、と云ふ音を立てながら扉が開いた。
「おにいちゃん?」
「あっ、ごめん。今点け直すから」
「いや、大丈夫大丈夫。-------それにしても、いいね、やっぱり」
「だよね。-------」
初希は部屋へ入ってきた時こそゴソゴソと自分の荷物を漁っていたものの、しばらくして用が済んだのか靴を脱いで倖希の真横に座り、少々ずり落ちていた眼鏡を指で上げるとさらに彼の元へすり寄った。そして倖希の差し出した手をそっと取って、肩に頭を乗せ体を預けると、それに呼応してなのかこちらの手を握ってくる力がほのかに強くなり、続いて向こうからも気持ち程度に体重をこちらにかけてくる。が、本当に気持ち程度なので、昔みたいに甘えていいんだよと声に出す代わりに、ぐしぐしと頭をその首元に押し付けてやる。するとしばらくは鬱陶しそうにしていたが、ようやくダラリとその体をこちらに預けてきてくれるようになったので、ふっふ……と、ちょっと笑ってから兄が見ているであろう寂しく道路を照らしている街灯を眺め初めた。そうやって、二人の兄妹は互いに言葉も交わしていないのにも関わらず、まるで示し合わせたかのように肩を並べ合い手を取り合い体を支え合い、二人して二人とも明かりが少くなり行く夜景を、どこか儚げな表情で見つめるのである(この一文要る?��るか、もう少し上手く書くか)。
京都を抜けたばかりなので明かりはまだぼうぼうとしているにはしているものの、時刻はもう午前二時を回っているために、目に見える民家はもぬけの殻のように真暗で、四車線ある広い道路もたまに通る車の光が賑やかに感じるほどに静まり返っており、倖希はまるで人が突然居なくなった後の世界のようだと、またもやワクワクしかけたのであったが、やはり虚しい。ラウンジに居た時までは京都市内を駆け抜けているせいもあって、窓から外を眺めると高い建物がそびえていたり、車も信号待ちで並ぶほど居たり、それに人の歩く姿も時たま見えていたのに、急に物寂しくなったものである。トイレに行くまでは兄にああだこうだと言っていた初希も、さすがに口を閉じて流れて行く景色を見守っている。彼女もまた、この光が無くなっていく様子を見て何かを感じ空想に耽っているのであろうか、それともぼんやりとただこの物寂しさに心を任せているのであろうか。兄である自分が想像するに恐らく後者であろうと思うが、しかしそれにしても得も言われぬ美しい横顔である。時折窓から入ってくる光にぼんやり照らされて輪郭はあいまいになり、目のまぶたや鼻の頭やなだらかな頬の山によってところどころ深い闇が出来、その闇の〝つや〟となめらかな白い肌とが見事に調和して、------なるほどこれが陰翳の美しさというものなのであろう。恐らく昼間の明るさではこうは見えまい。彼女の顔立ちは決して派手とは言えないが、その肌ははなはだ陶器のように光を跳ね返すほどの色艶をしており、人によっては好きと言うかもしれないけれども、自分には少々眩しすぎると思っていた。だがこうして闇に溶け込ますと余計なものが全て削ぎ落とされ、こちらが見ていることに気が付き恥ずかしそうに笑う表情すら、閑寂のうちに活けられた慎ましい花のよう。自分は彼女の美しさというものを分かっているつもりであったが、上辺だけを攫っていたのかもしれない。------
と、倖希は三度、妹の顔を見て惚れ惚れとしていたのであるが、そのうちに妙な懐かしさを感じる取るとそちらにすっかり気を取られてしまった。眼の前に居る少女はそこに居るだけで目を奪われてしまうほど美しいのに、なぜかその過去の姿がチラついて仕方がない。どうしてこんなにも気になるのであろう。初希とこうして一緒に静かに何も声を出さずじっとして体を寄せ合ったことなんていくらでもあるのに、なぜこんなにもあの、五六年前のとある冬の日、------もう記憶もおぼろげなあの日、田舎にある祖母の家へ遊びに行ったあの日のことを思い出してしまうのであろう。その時自分はさつま芋を焼こうと、その辺(あたり)から適当に拾ってきた落ち葉や木の枝や竹の幹などをちょっとした山にして、その中にアルミホイルで包んだ芋を放り込んで、火を点けて、ゴロゴロと転がしてきた丸太に座って、………���たかどうかは忘れたがとにかく何かに座って山の中でひっそりと、ほんのり夕焼けに照らされる木々を目の隅に留めつつまだまだ生まれたばかりの小さな炎を見ていた。-----あゝ、思い出してきた。確か、焼き芋焼こう焼こうと言ってきたご本人様は、そうやって火を点けてから案外すぐにやって来たのだけれども、一言二言話しているうちにとうとう歩くのも危ないほどに辺りが暗くなってきた上に、風でなびいた竹や木がさわさわ言い出したので、ひどく怖がるようになってしまったのだった。何せあの辺りは「出る」という話を前の晩に聞かされていたのである、いくら冗談めかして言われてもいつ木の陰からぬうっと出てくるのか分からない。だからあの時は自分も怖くなってきて立ち上がると、その小さく縮こまってしまった体を後ろから抱きしめてやった。そしてパチパチと暗闇の中へ飛び散っていく火花を一緒に目で追いかけながら話を、…………いや、話などしていない。自分たち兄妹は、あのおどろおどろしい闇の中で互いに互いの手を取り合って、ただただゆらゆらとはためく火の穂を眺めていただけだった。会話など無くても、自分たちは相手の手から伝わる力加減や汗や体温などの微妙な違いだけで、お互い何を思っているのか知り得るのだから当然である。そのうちに風が止んでずいぶんと静かになり、恐怖心もそれに次いで紛れていったが、結局手だけは離さなかった。もうその頃になると、炎の中心部分から燃えるものが少なくなり、頬を刺してくる暖かさもほとんど無くなりはしていたけれども、それに、焚き火の中へ入れていた芋もすっかり煮えきってしまっていたけれども、二人の兄妹はただ静かに灰になって崩れ行く木々を、心配して様子を見に来た両親が声をかけるまで見つめ続けた。--------まだ彼女の事を本当に「妹」だと思っていた頃の懐かしい記憶である。なぜ、今になって急に。………………
--------あゝ、そうか、だからか。まだ初希とはキスの一つもしていない時に、ちょうど今と同じような気味合いでぼんやりと焚き火を、そして、それによってほのかに照らされた彼女の顔を見守っていたからこんなにも気になったのか。それが今やどうだ。彼女がまだ中学生の時分に求められるがまま誘われるがまま、唇を重ね体を重ねたのをきっかけに、いつか終わらせなければ、そしていつか終わると知りながら、ぐだぐだと肉体関係が続いてしまっている。これがただの体だけの関係ならば、初希ももう十七歳という年齢なのだから、同じ教室に居る男子でも捕まえて兄の事など忘れることができよう。しかしもうすでに、引き返せぬほど彼女は自分を愛してしまっているし、それに負けじと自分も彼女のことを愛してしまっている。その上両親も、息子・娘が夜な夜な猥りがましい行いをしていることに、とっくの昔から気がついているにも関わらず、ただほのめかすだけで何もはっきりと言ってこない。そんなだから背徳感に膝を震わせたあの、-------妹の処女を奪ったあの日の感覚が消え失せるほどに何度も何度も、それこそこの一週間は毎日毎日、いつ誰が見てるのか、自分たちが何をしているのかも忘れて彼女と体を重ねていたのである。
もちろん、初希との関係を終わらせようとしたことなんて何回もあったが、彼女には話を切り出す前の顔つきから分かるのであろう、至極悲しい顔をしてこちらに向き直るので結局言えずじまいに終わり、最近ではもうその気も起きなくなってしまった。どころか、初希への思いが募りに募りすぎて、どうすれば彼女と人生を添い遂げられるのかを真剣に考えるようになってしまった。それは進んではいけない方向に舵を切ったということだけれども、なぜか自分には、止まっていた歯車がぐるぐると回り始めたような、そんな気がしてならない。つまり、間違った道の方が本来選択すべき正しい道だと、今ようやくその道を選んだのだと、自分は思っているようなのである。それでこれまでの半生をよくよく振り返ってみると、自分には彼女との関係を終わらせようという気持ちなど、さらさら無かったとしか言いようがなく、自分がやったことと言えば、そういういい加減な気持ちで別れを切り出したり、思わせぶりな態度を取ったりして、ただ彼女の心を弄んでいただけなのである。結局、初希と離れられないのは他の誰のせいでもなく自分のせいであり、けれどもこのまま共に添い遂げる方が正しい道だと信じて突き進むあたり、この鈍感で外道な男はずっと昔から手遅れだったのであろう。--------だが、終わる。初希との関係は確実に終わる。どれだけ愛し合おうとも、どれだけ手を尽くそうとも、血を分かち合った兄妹なのだからいつかは離れ離れにならなくてはならない。それは兄妹で性行為に至っていたと世に知られ無理やり仲を引き裂かれるか、それとも自然にどちらからともなく離れていくか分からないが、その時は確実に近づいてきている。自分たち兄妹に残された時間はあと僅か数年ほどであろう。血の繋がりがあるだけなのに、たったそれだけなのに、心も体も繋がった今ではその血の繋がりゆえに雑多なカップルよりも強く結び付きあっているというのに、兄妹の関係とは余りにも残酷なものである。本来ならば、こうして妹と二人きりで旅行することさえおかしいと思われるのかもしれない。……………
思い返してみると自分はこれまで生きてきて初希以上に気立てよく、一緒に居て心地よく、自分を理解している女性には会ったことがないし、それに、これからも会うことなんて無い気がするのである。今回の帰省の初日にもそれを実感した。自分が実家の門をくぐったのはちょうど夕食時であったから、お土産をぶんどられるやすぐにテーブルへ座るよう促されたのであるが、なぜかキッチンで料理を用意してくれたのは初希であった。とは言っても彼女は元々よく母親を手伝う子であったので、懐かしい気持ちで食卓に並んでいく生姜焼きや味噌汁、里芋の煮っころがし、そして小松菜とちりめんじゃこの和え物を眺めていた。最後の小松菜は意外であったけれども、どれも自分の好物である。早速いただきますと言い、青々としたネギの乗った味噌汁がたまらない香りを漂わせていたのでお椀を手に取ったところ、初希がエプロンを外しながら先程ぶんどったお土産を片手に隣へ座ってくる。そしてお土産を開けるのかと思いつつ味噌汁をすすっていたら、なぜか畏まった姿勢でこちらをじーっ、と見てくるので何事かと思いこちらからも見つめ返すと、おいしい? と聞いてくるのである。もちろん文句なしに美味しいのでそう返すと、ふにゃりと笑って、よかった、よかった、と言う。そこでようやく、この料理たちが彼女の手によって作られたものだと合点したのであるが、そう気がついて見てみると、なんと細部まで兄好みに仕立てられていたか。それまで飲んでいた味噌汁一つ取っても、自分の好きな薄めの��付けがなされていたし、具には自分の好きな豆腐と油揚げと玉ねぎが、ゴロゴロと自分の好きな大きさになって使われていたし、それに余りにも匂いが良いので聞いてみるとしっかり鰹節と昆布から出汁が取られていたし、そもそも先程のネギだって自分がかつてふりかけていた分量と全く一緒なのである。あともう少し述べておくと、あの時出てきた里芋は、先日に自分で食べたいと言っておきながらすっかり忘れていたものなのであるが、彼女はちゃんと憶えて献立に加えてくれたのであろう。結局自分は、ほとんど初めてと言っていい妹の手料理一つですっかり胃袋を鷲掴みにされてしまった。
そう思い出してみると、初希のことを紹介する時には、妹と言うより妻と言った方が正しいのである。先程だって、こちらがコートを脱ごうとするとさりげなく後ろから手を伸ばして来たので、ハンガーのある位置が逆ならばきっとコートを取られ吊りかけられたことだろう。それは事実、十年以上生活を共にしてきたからこそ会得し得た初希の心づかいであろうが、けだしそういう細かい身の回りの世話は長い時間をかけて少しずつ醸成されるものである。もっとも、自分が彼女の事を妻として見るようになったのは目であるから、そういった行動は副次的なものでしか無い。あの目はもうとっくの昔から兄を見るような目ではなく、夫を見つめる新妻のそれであって、殊に矢で射抜かれるような色気があるのである。一体全体いつからそんな目をしてきたのかはもう分からなくなってしまったが、自分が彼女のことを思い初めた頃、------彼女が中学一二生の頃にはすでに、ああいう媚びたような、哀愁を湛えたような目をしていた。いや、中学生の女の子に、しかも実の妹に恋をするなど存外な変態じゃないかと思われるだろうけれど、初希はその時もう十分人を惚れさせる魅力を備えていたのだから仕方がない。そもそも考えてみると、男は高校生になっても大学生になってもアホはアホのままであるが、女は中学生になる頃にはすっかり色づいているのである。彼女もあんな我儘で自分勝手な性格をしているけれども、案外体の成長は早く、ときどき見ることになった水々しい裸体には今思い出しても心臓が動悸を打ってしまう。そんな女性と当時高校生だった自分がかなりの時間を共にしたのである、こんなことになってしまったのも頷けよう。
ならば今はどうなのかと問われると、それはそれはもう、背も少し高くなって胸も大きくなって顔に深みが出て、--------あゝ、美しい。………………こんな美しい少女を独り占めに出来るなんて自分はなんと幸せ者なのだろう、絶対に離したくない、もういっそのことこのまま駆け落ちしたい。だが、あと一年経てば初希と二人っきりの時間がどっと増えるのだから、今は辛抱しておく方が懸命であろう。センター模試があんまり出来なかったとて、今まで何度も���の天才とも言える知力で二年歳の離れた兄を脅かしてきた彼女のことだ、恐らく九割以上を狙っていたのにぴったりだったとか、惜しくも十点二十点足りなかったとか、今ですらそのくらいの学力はあるはずなので、大学へは少なくとも自分より余裕を持って行けてしまうに違いない。そうなればもはやこちらのものである、誰にも邪魔のされない同棲生活をしばらく送ることが出来る。が、その後、つまり、自分が大学を卒業して就職した後はどうなる? 籍を入れられなければ子供も生むことが出来ない上に、異母でも異父でもない実の妹と事実上の夫婦生活を営むなど社会は許してくれまい。かと言って隠し通すのも、いつ何時ひょっと誰かに手を繋いでいるところを見られるのか分からないし、ひょっと酒の場などで口を滑らせてしまうか分からないし、ひょっと不審な点を怪しまれでもしたら、------そういう話が好まれる昨今の事情である、一気に付け込まれて初希との関係を暴かれてしまうであろう。そもそも、そんなことを考えながらビクビク怯えて日々を過ごしていると、バレるバレない以前に、夫婦仲に亀裂が走りそうである。ならばむしろ堂々としているのも手かもしれないけれども、どれほど公にすれば自然に見えるのか分からないし、そんなことをして初希を傷つけでもしたら、………と思うと足が止まってしまう。一体どうすれば。…………………
--------だが、そうやって悩むよりは、今は今を目一杯大切に生きるほうが良いのではないだろうか。まだあと数年しか無いとは言え、まだあと数年も残っているのである。それほど時間があれば自ずと考えもまとまり、自分たちの向かうべき方向が定まってくるであろう。よく考えれば、まだ彼女と添い遂げようと決意してから日が浅く、それに今までは自分一人でうじうじと考えていたのである。恐らく初希は、優柔不断な兄がそうそう早く決断を下せるなどとは微塵も思っておらず、それなら二人きりで生活するようになってから考えても遅くは無い、と云うよりお兄ちゃんに任せていたら何時まで経っても結論なんて出ないのだから、私に全部任せてその辺でお茶でも飲んでいなよ、などと思っているのではないだろうか。だから話題にも出さず、今日のようにひどい盛り上がり方をして今を楽しもうとしているのではないだろうか。ならば自分が取れる行動は一つしか無いのではないだろうか。駆け落ちの判断は数年後の自分とその妻に任せるとして、今日、明日、明後日は目一杯彼女を楽しませなければいけないのではないだろうか。ならこんな憂鬱な気持ちに負けている暇など無いのではないだろうか。------------
「こーき。…………」
ふいに、すっかり頭を首に埋めていた初希が、体勢はそのままに倖希の名前をそっと呟いた。かと思いきや、くるりと上半身を回して彼と向き直ると、肩に手をかけて体を押し倒し、自身もまたふわりとその上に倒れ込む。
「お、おい、はつき、こんなことする場所じゃないだろ。…………」
「んふふ、………そんなことは言っても、こーきの心臓は正直だね。もう、ドキドキしちゃってる。…………」
「はつき、落ち着けって。あと名前で呼ぶんじゃない」
「えー? だって、外だと名前で呼べって言ったのはこーきだったじゃん。私はちゃんと、こーきの言いつけを守ってるだけだよ?」
確かにそう言ったことはあるものの、それはかつて友人と自分と初希とで遊んだ際に、余りにもいちゃついてくるものだから彼女が妹だと言おうにも言えなくなってしまい、ついつい、今日だけは名前で呼んでくれ、と耳打ちしたのであって、決して、「外では『お兄ちゃん』と呼ぶな」、とは言ってないのである。だからどういうことかと言うと、今初希は、昨夜のように押し倒した彼の股に座り、昨夜のようにその手を片っぽずつ握り、そして昨夜のようにとろんとしたした目で見下ろしているのである。
「------だから言ってな、…………こら、そういう顔で見るんじゃない」
「それにさぁ、………こんな狭い部屋の中で男女が二人きりでいるなんて、何も起きないほうがおかしいと思わない?」
「いや、男女って言っても、俺たち兄妹だから、-------」
「んーん? いまさらこーきは何を言ってるのん? 昨日だって、私の下であんなに可愛くあえいでいたくせに。…………」
初希がこちらの目をまっすぐに見据えてくる。
「ちょ、ちょ、ちょっと。待って、はつき、まだ満足じゃないのか?-----」
「あれで十分? こーきは本当にそう思ってるのん? あと三日しか無いんだよ? 私達の時間は。もうそれだけなんだよ? ------あっ、でも、こーきがこのまま攫ってくれるなら話は別だけどね」
「それは、…………」
窓の外に映る景色はいよいよ明かりという明かりが無くなり、壁と天井の境界さえ分からないほど部屋は真暗であったが、倖希は自分を見据えてくる目が潤んでいるのを確かに感じ取った。
「ねっ、こーき、このまま向こうで過ごそうよ。過ごしてさ、---------」
-------と、初希が何かを言いかけた時、扉からガチャガチャと言う音が聞こえてきた。その音に、もう鼻と鼻が触れ合うほど顔を近づけてきていた初希もびっくりして体を起こしたが、まだガチャガチャと言っている。
「あ、あれ? なんで鍵が、………」
程なくして、そんな女性の声が聞こえてきた。あゝ、なるほど、もしかして、部屋を間違えた別の乗客がこの部屋を開けようとしているのか、--------と二人は合点して静かに扉を見つめる。
「うん? あ、しまった。ここじゃない。…………」
「ふっふっふ。………」
「-----こーき、趣味悪いよ」
「せやな。……………」
「あ、あの! ごめんなさい!」
見知らぬ誰かはその声を発するや、どこかへ走り去ったのであろう、もうその気配も伺えなくなってしまった。
「………やっぱり間違えてたんだな」
「ふふっ、私もさっき間違えそうになったから、仕方ないよね」
「なんだ、はつきも間違えそうになったのか」
「まぁ、ね。…………」
一瞬だけ晴れやかになった初希の顔が、どうしてだか再び沈んでいく、-----見えないが口調からそんな気がした。
「はつき、はつき、ちょっと重くなってきたからどいて、-------」
だから、せめてこれだけは、………と思ったのである。
「えっ、あっ、ごめん。………っていうか、こんな純粋無垢で可愛い女子高生に重いってどういうこ、--------」
「------ごめんな、今はこれだけで許してくれ」
「…………えへへ、やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだ。……………」
「…………どういうことだよ」
「んへへ、………いいのいいの。お兄ちゃんに意気地が無いのは分かってたし、あと一年だし、あと一年耐えればいいだけだし。…………そう、一年だけ。---------お兄ちゃん、頑張るよ、私。そしたらたくさん思い出作ろうね。終わっちゃう前にたくさん、たくさん。…………………」
「あぁ、そうだな。色んな事しような。……………」
「ん。--------あーあー、…………なんだか眠くなってきちゃった。このまま寝ていい?」
いいよ、と返事をして初希の顔から眼鏡を外し窓枠に置くと、すぐさまこちらの胸元にぐいぐいその顔を埋めてきたので、とりあえず後髪を撫でてやる。
「おやすみ、はつき」
「おやすみ、こーき。……………」
そうしてそのまま頭を撫で続け��いると、すー、すー、という可愛らしい寝息が列車の走る音に紛れて微かに、でも確かに聞こえてくるようになったので、倖希は一つため息をつくと、少しだけ酒を口に含んだ。時刻を確かめてみるともう午前三時である。窓の外には名古屋に近づいてきたのか、点々と煌めく街の灯が、水平線の向こう側まで広がっている。彼はそれを酒の肴にしようと予てから画策していたのであるが、胸の中に感じる言いようのない心地よさに一瞬眠気を感じたと思ったらもうそれまで、後はうとうとと船を漕ぐばかりになり、頭を撫でる手も止めてしまった。
  ハッと、倖希が気がついた時にはもう窓の外は白くなっていて、朝日こそは黒みを帯びた雲で見えなかったものの、ずっと遠くにある住宅地まで見渡せるほどには晴れやかな空気が漂っているようである。だが付近の道路やしまうたやに目を落としてみると、そこはかとなくどんよりとしているので、やはり雲行きは怪しいらしい。それよりもこの薄暗いのはその雲のせいだとすると、もしかしたら停車駅をいくつか逃してしまったかもしれず、倖希は今列車がどこを走っているのか気になったのであるが、いまいち頭がぼうっとするので雨の気配を心配しつつ車窓を眺めていた。と、ちょっとして、
「次は横浜、横浜、-------」
という車内放送が流れてくる。ということは、次の駅は終点の東京なのか、意外と時間が経ってしまっていた。ならそろそろ、この胸に抱きついて一向に起きる気配の無いお姫様を起こさねば。…………そうは思ったもののもう少しだけ、愛しい彼女の温もりというものを感じていたかったから、二三回ゆっくりと頭を撫でた後に背中をポンポンと叩いてやる。
「んんぁ、-----なに、なに。…………」
「そろそろ着くよ。初希、起きな」
「-----ああぁ、…………おはよ、お兄ちゃん。…………」
のっそりと体を起こすと初希は、まだまだ寝たり無いのかひどく眠そうな目を手でゴシゴシと拭っている。
「んぁー、…………だめ、ねむい。…………ついたらおこして。………………」
そう言って再び倒れ込もうとしてくるので、倖希はそれをやんわりと拒否した。
「うちに着いたら好きなだけ寝ていいから、今は頑張って。…………」
だがやっぱり眠気が勝るのか、ほとんど正座に近い状態であるのにしっかりと体を倖希に寄り掛けつつ眠るので、彼はすっかり諦めてしまうと、結局東京駅に着くまでそのままの体勢を保ち続けたのであった。
駅に着いてみると、相変わらず天気はどんよりとしているどころか、霧がかかったように建物という建物がぼんやりと佇んでおり、これなら今直ぐに降り出してもおかしくないな、と思いつつホームに降り立った倖希であったが、初希と手を繋いでいるせいで心持ちは穏やかと言えば穏やかであった。ところが、まだ飲みきっていない酒の瓶を捨てているうちに、さぁさぁと、小雨が降り出したかと思いきやそれは段々と大降りになり、しまいには風を伴って駅の壁に打ち付け初めてしまった。周りを見ると、素知らぬ顔で歩いている人も居れば、頭を抱えて外をじっと見つめている人も居る。
「ん? どうしたの、お兄ちゃん?」
「-------いや、なんでもない。行こう」
「ん、……………お兄ちゃん」
「あん?」
「手、手だよ!」
倖希は、酒の瓶を捨てる時に手を離してしまったのだった。
「おう、……すまんすまん」
と、言って再び初希の手を取ったのであるが、そういえば実家に傘を忘れていることに気がつくと、ついつい足が止まってしまった。
 (おわり)
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junikki · 2 years ago
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セーラームーンの靴下かわいいよおおお
5戦士ならマーズ推しなんだけども、この靴下の絵柄ではジュピターがめちゃくちゃかわいい!なんだろう?ウインクしてるからかな?この絵ではレイちゃんはまつ毛ないっぽく見えるのもあるかもしれない。
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ポケモンの靴下もかわいいいよおおお
日曜にモール行ったときに靴下まとめ買いしちゃいました。こういう昔のファミコンにありそうなドット絵がすごく好き。履くと薄汚れるのが悲しいよね。写真におさめておかないと。最近ポケモンGOのGBLでフシギバナよく使うから、なんか今はフシギダネに惹かれる。これもダネフシだけがウインクしてるね。ちなみに私はウインクするのが癖で、よく片目だけで見るみたいな感覚��何気なく無意味にやってしまう。
11月なのになんか今年は暖かい。金曜からトロント行くけども、何着て行こうかなあ…去年仕立てたショートコートとスカートのセット着ていこうかなあ。あれは上下分けてしまったので、本格的に寒くなったら腰が冷えて着れないから晩秋〜初冬ぐらいに着ておきたいんだよなあ。
これね。めちゃくちゃ可愛いんだけども中途半端に薄いという。きっと今の時期にちょうどいいのかもね。ショートコートだから脱いだ時にロングコートより嵩張らないというぐらいしか良さが無いね。ウール地のスカートの方は結構活躍できて良いけども。
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カナダで唯一買えるフリクションペン。paper mateというメイカーのもの。基本4本でセット売りされている。去年フリクションペンを買ったときには赤黒青緑という感じのベーシックカラーだらけだったが、今回見かけなかったのでこれにした。カラフルな色味が可愛い。主に洋裁に使うから正直何色でも良かったしね。一番上の青以外が今回買ったセット売りされていたもの。ダーツ部分をひいたり、後で必ず消したい仮の線を細くひけるので本当に重宝してる。手芸屋で買える消せるペンは太いし、割高だし。カナダの無印でもフリクション売ってくれたらなあ。カナダの無印結構売ってないものが多いんだわ。バウムクーヘンも売ってへんしな。大好きなものが全然売ってないので無印の意味ないです。はい。
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mid605 · 3 years ago
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花の終わり
 記憶のなかで、葉はいつも退屈そうな目をしていた。それでいて、つねに心惹かれるものを探し求めているようでもあった。おしゃべりで、思いつくままとりとめのない話ばかりする。そういうとき、僕は自然と聞き役に回った。彼女はというと、話を聞くそぶりさえ見せれば、相手はだれでもよさそうだった。きまぐれに他人に近づき、きまぐれに嫌った。何ごとにも彼女なりの0か100かの基準があり、まわりの言葉にはほとんど耳を傾けなかった。 「どうして来たの?」  葉の声で、座敷に突っ伏していた顔をあげる。スーパー銭湯の食事処には、僕たち以外だれもいない。壁かけ時計に目をやると、午後十時を回っていた。ラストオーダーの時間はとうに過ぎている。知らないうちにうたた寝をしていたようだった。 「葉が来てっていうから、来たんだよ」  のどが渇いて声がかすれる。葉は、そうだっけ、と言い、アルバイト用の三角巾を外した。ヘアゴムをとり、不快そうに頭をかく。肩より長く伸びた髪が、小さな顔を覆い隠した。 「飲んだら」  テーブルに二本、ミネラルウォーターのペットボトルが置かれる。言われるままキャップをひねると、やけにやわらかい。パッケージは初めて見るもので、口に含むと生ぬるい。しばらくバ��クヤードにでも眠っていたのだろう。葉は水を飲む僕の様子をしばらく眺めていたが、彼女自身はペットボトルに触れようともしなかった。
   *
 今年の冬は長いらしい。テレビでもネットでもおなじようなニュースが流れている。高校三年の秋だった。推薦で大学が決まってから、高校にはあまり行っていない。同級生が受験勉強に本腰を入れ始めて、なんとなく居心地がわるくなり、足が遠のいてしまった。だからといってすることもなく、感情を薄く引き伸ばしたような日々が続いた。  同級生から葉の話を聞いたのはそんなときだった。夕方、学校の最寄駅前で、おなじクラスの和田という女子生徒に呼び止められた。彼女は僕とおなじように、すでに進路の決まっている数少ないうちのひとりだった。 「葉さんって、昔からああだったの?」  開口一番、彼女は言った。地元のスーパー銭湯でアルバイトをしていて、そこで葉と知り合ったのだという。 「ああだったって?」 「問題児というか、なんというか。年上の人に向かって失礼だけれど。なにか大きなことがあったってわけじゃないの。でも浮いてるのはたしかよ。悪いほうの意味でね」  葉の名前を聞くのは久しぶりのことだった。道の真ん中に立っている和田の脇を、ちょうど授業が終わったのだろう、見慣れた制服の生徒たちが通り過ぎてゆく。僕はガードレールに沿うように自転車を寄せた。和田はかまわず話し続けた。 「シフトが重なったとき、高校の話になって、きみの名前が出たから驚いちゃった。ふたりが知り合いって、あんまり想像つかなくて。まあ、あの人の人間関係なんてほとんど知らないんだけど」  明朗な瞳に、わずかに軽薄さがにじんでいた。イヤフォンから音楽が漏れて、パーカーのポケットのなかで鳴っている。僕は手探りでプレイヤーの電源を落とした。  葉とは、小学校の集団下校の班が一緒だった。塾の行き帰りやランニングで彼女の家のまえを通りがかるとき、僕はきまって二階のベランダを見上げた。するとほぼ毎回、上下ともパジャマ姿で、裸足の彼女が佇んでいた。フェンスに腕をのせて、顔をうずめたまま、外の様子を眺めている。僕に気づくと、顔をあげて大げさに手を振った。かと思えば、呼んでも無反応なときもあった。 冬になり、とっくに日が落ちたあとでも、葉は部屋に戻ろうとしなかった。 「冷えるよ」そういうときは当然無視された。あるいは本当に聞こえていなかったのかもしれない。漠然と、彼女はなにかに傷つきながら生きているのかもしれないと思った。だけど、なにが葉を傷つけているのかはわからなかった。
 中学にあがると、葉はすでに二年で、目に見えて短いスカートをはいていた。そして案の定、生活指導の先生につかまって、制服の着方を直されていた。 「切ったスカートは、先輩がくれたの。だから家にもう一着、自分のがあるのよ。だからぜんぜんへいき」  スカートを没収されて、ブラウスとカーディガンに、下だけジャージのハーフパンツというちぐはぐな格好で、どうしてかハイソックスを脱ぎ、素足のままかかとのつぶれた上靴をはいていた。その様子がなんだか痛々しくて、だけど痛々しいと思うこと自体が葉をさみしい人にさせるような気がして、なにも言えなかった。スカートの長さや校則のことなんて、僕にはどうだっていい。  葉が僕に声をかけてくるのは、彼女がひとりのときだけだった。見かけるたびにべつの友だちといて、そういうときは視線さえよこさなかった。昼間、学校ではいつも饒舌で、まるでそういう役を演じているようだった。僕のまえではちっとも笑わないが、彼らに対しては陽気にふるまっていた。そんな器用さが彼女自身を窮屈な場所に追い込んでいるようにも思えた。  別れ際、和田はアルバイト先の銭湯の住所と、葉の連絡先をくれた。はじめは会ってもしかたないと思った。葉とは中学を最後にとっくに疎遠になっていたからだ。だけどその数日後、葉から短文のメールが送られてきた。
   *
「毎日、電気がついてないといいなあと思いながら帰るの」  そう言って、葉は二階建てのアパートの一室を見上げた。部屋の明かりとカーテンの影が窓に映っている。僕はしばらくその部屋を見上げていた。カーテンが薄く、室内の様子が透けて見えそうだった。 「やめてよ。怪しまれるから」  葉は道の真ん中に立ち止まり、あきれたように言った。アルバイト用のトートバッグの持ち手をつかみ、腕を揺らしている。時刻は0時を回って、僕たち以外に人影はない。葉がアパートから遠ざかってゆく。僕はその後ろを自転車を押しながら歩いた。車輪の回る乾いた音が夜の住宅街にひっそりと鳴っていた。 「あんた、ここまで自転車で来るなんてどうかしてるよ」  僕は黙っている。電車のほうがはやく来られたが、二時間ほどかけて自転車を漕いできた。時間は有り余っていた。 「これからどうするの」葉の背中に言った。無視されるかと思ったが、葉は立ち止まった。 「いいの。近くに泊めてくれる人もいるし、駅前にはネットカフェもあるから」  葉は大学で知り合った男のアパートで暮らしていた。もともと自分で借りていた部屋は、家賃がもったいないからと、夏の終わりに引き払った。秋になり、男との関係がうまくいかなくなった。顔をあわせたくなくて、彼が夜勤のアルバイトや遊びで家をあけているときだけ、寝に帰っているのだと言った。 「家賃も光熱費もしばらく払ってないし、よけいに帰りづらくなっちゃった」  葉はジャージの裾を地面にひきずって歩いている。この人はどうしてこうも、自分自身を生きづらいほうへ引っぱっていってしまうのだろう。年を重ねても、彼女に差す影は消える気配がなく、むしろ濃いしみとなって、現実まで忍び寄ってくるようだった。 「あんたを呼んだのは、余計なことを言わないから。それだけよ」  その代わり、僕はどれだけ葉をみつめても、その心を救うことはできないだろう。 「そんなこと、わざわざ言わなくたっていいよ」  僕は彼女の影の存在に気づいていながら、その正体を知ろうとはしなかった。葉が知らず知らずのうちに自身を暗い場所へ連れて行ってしまうように、僕もまた自分の凪いだ心の外へ出ていくことができない。 「ここからはひとりで行ける」  住宅街を抜けて駅前に出ると、葉はそう言った。彼女が手をあげると、僕を照らしていたビル街のネオンが一瞬届かなくなった。そのとき、彼女とはもう会わないだろうと思った。  冷えた風がパーカーの繊維を通り抜け、肌を刺す。もう十一月の半ばだった。自転車の前かごのなかで、ミネラルウォーターのペットボトルが転がり、ハンドルを握る手の感覚がぼやけた。
(2021年11月23日発行『カシコドコロ2021秋 不安』より)
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bububonbo · 3 years ago
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2021/10/23 「フィンレンソン展」
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2021/10/23 「フィンレンソン展」
京都文化博物館
電車内の吊り広告でテキスタイルかわいー!と思っていた展示です。フォロワーさんに誘っていただき行ってきました。緊急事態宣言下は展示鑑賞に行かなかったので、久しぶりの展示となりました。
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久しぶりの展示にワクワクで京都文化博物館に入るとそこかしこにテキスタイルの垂れ幕があり、心がウッキウキ���なりました。
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今回、ここ最近リアルが忙しかったのと、ウン十年オタクをしていて初めて推しがお亡くなりになるという経験をしたもので(?)心に余裕が無かったためにNO下調べで挑んでいます。なので、「フィンレンソン」がこの時点では人名だと思っていました。会場内に入り、章タイトルの『地域社会を支えたタンペレ紡績工場』を読んだ瞬間、これ人名じゃないな、と気付きました。北欧フィンランドで活躍したテキスタイルの会社の展示でした。ちなみにこのとき私のカバンはマリメッコの商品で、完全にケンカを売っている状態にありますが、気を取り直して鑑賞をします。
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展示全体の構成としてはおっ洒落だなぁ〜という印象です。日本人が思い描く北欧への“憧れ”を詰め込んだ宝石箱みたいな雰囲気。要所要所にフォトスポットもあり、アミューズメントとしてもとても楽しい。もちろん文化的な意味でもフィンレンソンの生地たちから北欧の息吹や生活を肌で感じ、学べる良い展示でした。
https://twitter.com/kyoto_bunpaku/status/1456424272243531777?t=hmazHwLessFrYEoQaZWOIg&s=19
図録が大判かつ紙が新聞紙っぽくて可愛らしいです。なんと最初からトートバッグ付という…!ポストカードも丸いというのが素敵ですね。
フィンレンソン展、グッズ類が非常に豊富で、気を抜くととんでもない額を使ってしまいそうになります。
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サミ・ヴァッリ氏のデザイン
この熊のテキスタイルヤバくて良いですね。
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spiwish · 4 years ago
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待っていた鞄。
12月中旬発送になります。 そう言われて、待ちきれない私がちゃんと待った品物。
それがこれです。
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じゃん!
ミィのバッグですー。 ショルダーにして使います。 色々写りこんでるけど許して…どうして…。 ミィの型抜きが、そのままバッグチャームになってついてるんです! もうすでに荷物を入れましたが、相変わらずパンパンです…。 もちろん、ヘルプマークと防犯ブザーもつけて。
色合いがドストライクでした。 そして、もう一つのもののほうがサイズは大きかったけど、 もちろん値段も高かったし、色の好みも推しもこっちだったし、 選んで正解だったかな、と思います。 秋色ですが、冬に活躍してもらいますよ!
これ、実をいうとすごく高くて… 何度も検討しなおしたんです。 でも、バイト辞める際、2年半続いたから! と、自分を甘やかして買ってしまいいました。 本当に自分に甘いです。どうにかしたい。
いやぁ、でも…可愛いな。 iPadは残念ながら入らないけど、トートバッグで持ち歩くとして。 なんか、この写真みてるだけで幸せだなぁ。 本当は使って幸せ感じたほうがいいんだろうけど…。
今日はお休みです。 明日に備えて体力を��えておく日です。
内科の薬がもうちょっとでなくなるのと、 昨日精神科に行って処方された薬を回収するべく、 内科と調剤薬局へ行ってきました。
内科、待たなかったのはいいんだけど… 次回、採血採尿…ぐぬぬ。 血圧が少し低めで喜んでたらこの仕打ちかよ…。 尿検査も採血もだるいんですよねー…6時間空腹、厳しい。
調剤薬局では、お兄さんが笑顔で迎えてくれました。 1月まで精神科の受診は無いのですが、 薬の量をみて、「少し症状が改善したのでしょうか」と聞かれ、 決してそうではなく年末はゆっくり過ごしたいから…って本音を言ってしまいました。 そうなんです、次回の精神科は年明けなんです。 なので今回は久しぶりに多めに薬が出ていました。 内科の薬は通常通り、精神科も特に変更なしで、 バイトを辞める話もしてきました。 お兄さんが「年内最後になりますね」と言っていたので、 「来年もどうぞよろしくお願い致します」と言い返したんです。 何故か、その返答はもらえず。 もしかして、お兄ちゃん、消えるのか…?
一抹の不安を感じながらも、 お昼兼おやつを買いにセブンへ行きます。 セブンでは元気な後輩の女の子がレジをしてくれました。 いつまでもその笑顔でいてくれ。
買ったのは、カマンベールチーズのフリコ(最近ドはまり)とフルーツサンド(定番ハマり)でした。 この二つでも700円行くの、恐ろしや…。 でもセブンさんのは美味しいんだよなぁ…。
帰宅して、買ったものを食べずに寝てました。 気づいたら16時…わぉ…。
慌てておやつを食べました。(もうお昼ご飯ではない…) お薬も飲みました。
お腹いっぱいになって、なうです。
可愛いムーミングッズが午前中に届いてHappyです! 欲しかったハンドソープも買えた幸せ。 ハンドソープ本体が、透明な液体なので、Aesopのものを使い終えたら早速使い始めます。 (なお、Aesopさんまだ半分ぐらいある…いつになるやら) ミィのシールも買いました。 私の癖で、シールを買うときは欲しいものは複数シート買ってしまうんですよね。 今回も3シートです。(笑)
あとは可愛い風呂敷?とか、小銭入れとか! 小銭入れ、本当に小銭しか入らなくてびっくりする小ささでした(笑) いいんだ、それぐらいのものが欲しかった! 早速新しい鞄に取り付けました。 写真には写ってないけどね…写したらよかったね…。
明日は、13時から美容室と、 そのあとからIvyです! 9周年のお祝い…というよりは、普通にみんなで盛り上がろう会。 一番最初にお声がけいただけて、嬉しい! 私なんかが行っていいのだろうか…大人ばかりなのに。 あ、そうか。私も大人か。
そんな感じで、明日が楽しみであります! 今日たくさん寝たから、明日は大丈夫…たぶん…。
ではでは、失礼しますね!
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furoku · 1 year ago
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requality-harajuku · 6 years ago
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ハイメゾン祭り、今週も大量。
入荷ラッシュのリクオリティ。
今週もハイメゾン祭りを継続、更に良い商品が大量。
Maison Margila Prada Gucci Loewe Dolce &Gabbana Saint Laurent Dior Burberry Arc'teryx Helmutlang Celine Versace
etc....
ピックアップしてご紹介。
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VERSACE
ヴェルサーチ、クラシックV2ラインのコートです。 空軍モチーフの縦ジップポケットにフロント比翼のシンプルなデザイン。 薄手のコットン生地で軽量な春夏シーズンのアイテム。
イタリア製
7980
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CELINE
セリーヌのライダースジャケット。 フランス製のコレクションライン。 袖や胸のジップが特徴的で、全てCELINE刻印入り。 立ち上がりの良い生地で構築的なシルエットを作ります。
定価110000円程。
9980
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Yves Saint Laurent
イヴサンローランのセットアップスーツ。 ヨーロッパではフォーマルなカラーとして定番のミッドナイトブルー。 フロントはダブル仕様で上品な雰囲気を引き立てます。
試着のみ美品
11980
model 182cm
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PRADA
プラダのブーツ。 ミリタリーモチーフをスタイリッシュにまとめた品のあるレースアップ。 レザーとナイロンのコンビネーション。 オールブラックのアッパーにヒールの赤いPRADAラインがアクセント。
イタリア製
7/ハーフ(26.5cm相当 ※通常のUK表記よりもワンサイズ大き目です。
9980
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LOEWE
ロエベ、オーバーシルエットのボタンダウンシャツ。 柔らかな肌触りのコットンに美しい配色のチェック。 シルエットはゆったりとたロング丈仕様。 こちらは以前のモデルですが2019SSのロエベも"オーバーサイズシャツ"をプレタのトップで推していて旬のシルエットです。
定価60000円程。
7980
model182cm
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Dolce&Gabbana
ドルチェ&ガッバーナのドレスシャツ。 多くのラインがある中で一番シャープなパターンなのがこちらのGLODライン。 超長綿を使ったボディにシェイプされた腰回りで身体のラインに沿う様なシルエットを作ります。 袖部分にDGロゴ入り。
イタリア製
7980
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BURBERRY
バーバリーのコート。 裏地にチェックがあしらわれたロンドンラインの定番トレンチ。 通常このタイプはコットン×ナイロン・ポリエステルが多いのですが、こちらはコットンの代わりにシルクを使った珍しい仕様。 細身のシルエット、独特の高級感のある艶と肌触りでオールブラックのカラーを引き立てています。
9980
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Christian Dior
ディオールのジャケット。 ブラックとグレーのラインがモードなトラックジャケットベースのデザイン。 生地も軽く、これからの時期に活躍出来るライトアウターです。
7980
model182cm
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Maison Margiela
メゾンマルジェラのシャツ。 コレクションラインである10のモデル。 洗いをかけて少し褪色したブラックボディに総柄のデザイン。 適度にリラックスしたマルジェラ得意のシルエットと合わさり良い雰囲気があります。
イタリア製
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PRADA
プラダのジャケット。 スポーツライン定番のナイロン素材のライトアウター。 ジップ付きのフロントポケット、袖の赤いPRADAラインのロゴ入り。 しかもこちらポケッタブル仕様で、内側のポケットに小さく収納して持ち運びが可能。 バッグに忍ばせて肌寒い時の羽織にもお使い頂けます。
定価68000円程。
イタリア製
9980
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Yves Saint Laurent rive gauche
イヴサンローランのバッグ。 ステファノピラーティのコレクションライン、リヴゴーシュの商品。 ナイロンボディに同色でYSLのロゴ入り。 ショルダーにはベルベット生地が使われ高級感のある仕上がり。
定価60000円程。
イタリア製
7980
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GUCCI
グッチのショルダーバッグ。 ボリュームのあるサイズ感。 オールブラックにシルバーのGUCCI刻印入りのバックル。 底には鋲が打ち付けられています。
定価130000円程。
イタリア製
9980
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RAFSIMONS
ラフシモンズのジャケット。 ナイロン素材の軽快なライトアウター。 襟元はレイヤード仕様でアレンジが可能です。
定価150000円程。
新品
19980
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GUCCI
グッチのコート。 柔らかな輪郭が特徴のノーカラー仕様。 綺麗なマスタードイエローはヴィヴィット過ぎず落ち着いたトーン。 一見シンプルですがカフスのカットなど細かい部分までしっかりとデザインされています。
定価150000円程。
イタリア製
19980
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Yves Saint Laurent rive gauch
サンローラン、以前のコレクションラインrive gauchのショートコート。 ボタンの配置や襟のデザインなどディティールまでしっかりとこだわった仕上がり。
イタリア製
定価180000円程。
19980
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ARC'TERYX
アークテリクスのショルダーバッグ。 外側一つ、内側に二つの収納とメッシュが付き。 機能美を極めたミニマルなデザイン。 オールブラックのモードなボディに始祖鳥ロゴのアクセント。 ショルダーとは別に持ち手が付いていてハンドバッグとしてもお使い頂けます。
5980
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DIOR HOMME
ディオールオムのシャツ。 定番のシャープなシルエットに小さめの襟。 フロントはボタン部分から糸の様なブラックラインが入りモードな雰囲気を高めています。
定価50000円程。
イタリア製。
9980
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Helmut Lang
ヘルムートラングのトートバッグ。 ブラックボディにホワイトのHelmut Langロゴ入りのシンプルなデザイン。 生地は厚みがありしっかりとしたコットン、内側は防水加工が施されています。 大き目サイズ、肩掛けもOKで使い勝手の良いバッグ。
新品
3980
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Maison Margiela
メゾンマルジェラのバッグ。11ライン。 ブラックの塗装がPVCコーティングされたシンプルなバッグ。 使っていくうちに塗装が少しづつ剥がれていき、黒いペンキの様な質感の変化が楽しめます。 トートバッグに長めのショルダーストラップ付き、サイズも大容量。
定価180000円程
イタリア製
スペシャルプライス
29980
などなどなど、毎週毎週の入荷で店内ガラッと変わっています。
今週末もリクオリティで。
お待ちしております。
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kkagtate2 · 6 years ago
Text
陽昇
サンライズ瀬戸に乗った兄妹の話です。えっちなし、ただイチャイチャしてるだけ。一応カクヨム投稿用
「十号車、十号車、十号車、…………あ、ここだよ、お兄ちゃん、ここ、ここ!」
「わ、わかったから、引っ張らないでくれ! 荷物が。………」
「-------でも、どっちから入ったらいいんだろ。…………ま、どっちからでもいっかな。」
数字の小さい車両側からホームを登ってきた初希は、乗り込み口にたどり着くとようやく歩みを止め、ようやく手を引いている倖希の方を振り向いた。
「って、お兄ちゃん大丈夫? 一体誰に右手をやられちゃったの?」
見ると、キャリーケースやらトートバッグやらコンビニ袋やらを全て持たされているというのに、家を出てからずっと左手を妹に取られ無理やり歩かされてきた兄が、少し不満そうな顔をこちらに向けつゝぷら〳〵と右手を振っている。
「まったく、すこしは落ち着いてくれ。手がちぎれるだろ」
「ごめんごめん。ちょっと盛り上がっちゃって。------でも、こんな時間に大阪駅にくるなんてはじめてだからしょうがないよ。お兄ちゃんだって、実は盛り上がってるでしょ?」
「いや、まぁ、………たしかにそうだけど、さぁ。…………」
倖希は未だに不満そうな顔をしているが、確かに初希の言う通りである。彼はこんな風に日が変わった頃合いになるまで大阪駅に居たことは何回かあるも のゝ 、やはり日中には感じないその独特な雰囲気にどこか興奮を禁じ得ないのであった。だがこの日ばかりはそういう幻想的な理由だけから興奮を感じていた訳ではない。と、云うのも、実家へと一週間ほど帰省していた彼は、これから数時間前に香川県高松市の意味分からん顔をした駅を発った寝台列車に乗り込み、東京へ向かい、そして下宿先へと戻るつもりなのであるが、その道すがらずっと妹であり恋人である初希が着いてきて、しかもその後ほんの二三日ではあるが愛する彼女と、家族というしがらみを取っ払って過ごそうと、そういう計画を立てているのである。本当は一人で新幹線を利用する帰省の予定だったのが、友達の勧めで寝台特急に乗ることに変わり、その上なぜか初希がどうしても、どうしても一緒に着いていきたいと言うから仕方なく、仕方なく、本当に仕方なくバイト代を切り崩して連れてきたのであるが、これほどまでに嬉しそうな妹の顔は久しぶりで、これからそんな彼女とほんの数日間とは言え二人きりで過ごせると思うと、気をつけなければつい笑みがこぼれてしまうほどに悦びが心の奥底から湧き出てくるのであった。
「------寒くない?」
「全然っ。むしろさっきの待合室の中が暑かったから、今がちょうどいいくらい。------お兄ちゃんは?」
「俺はめちゃくちゃ寒いんだが、ちょっとその元気を分けてくれ。…………」
「えー。………お兄ちゃんまだ二十歳なのに。-----」
そうやって呆れつつも初希がキュッと手に力を込めてくる。倖希はこんな、照れ隠しのような妹の優しさが好きで 〳〵 たまらなく、毎度のことながら頬を赤く火照らせてしまい、彼女に悟られまいと壁にある広告に目を向けたのであるが、ふいに視線を感じて下を向くと、初希が眼鏡の奥から得意げな眼でこちらを見てきていた。--------本当に大人びてきたものである。いつも今日みたいに我儘を通したり、いつも今みたいにグッとくる仕草をしてきて、顔立ちも美人というよりは可愛いさの方が強いのだけれども、少しおっとりとした目元や、流れ落ちる水のやうに癖のない髪の毛や、真紅が横にすうっと伸びた薄い唇やらには、並の少女では身につけられぬ気品があり、ただただひたすらに麗しい。しかもその上、暗い紫色の眼鏡をかけているせいで知的な、…………いや実際にとんでもなく頭が良いので「見える」なんて言うとひどい状態にされそうだがとにかく、股が疼くほどの知的な雰囲気を身に纏っている。昔は何かあればすぐ泣きべそをかいて、お兄ちゃん、お兄ちゃん、と手を伸ばし抱っこをせがんでくる幼い(いとけない)女の子だったのに、気がついた時にはすでに可愛らしい少女となり、そして今では立派な淑女へと成長しようとしているのであろうか。自分にはいつまで経ってもあの、負けず嫌いで泣き虫で兄にすら牙を剥く面影がちらつくけれども、初希ももう高校二年生、それもあと二ヶ月しないうちに三年生へ上がる年齢なのだから、いつまでもそんな幻影を彼女に重ね続けてはいくら妹とは言え失礼であろう。いい加減、彼女の成長を認め、そして、いつかは離れていってしまうことに覚悟を決めなくては。……………そんなことを考えていると倖希は途方もなく寂しくなってしまい、つい右手を彼女の頭にやるとそのまま優しく撫でていた。
「うん? なに?」
「いや、大きくなったなって」
「ふふん、そりゃそうよ。もうKよK。----っていうか、お兄ちゃんに揉まれてから大きくなるの止まんないんだけど。………」
初希が空いている方の手で豊かに育ちつつある自身の胸元を撫でながら困ったようにそう言うので、倖希はどこか勘違いされた気がするのであるが訂正するのも面倒だし、昨夜も精を搾り取ってきたその膨らみに一度目を奪われてしまっては考えも何処かへ吹き飛んでしまい、何をするのでもなくただ妹の頭を撫で続けていた。ふと気になって見渡してみると、駅のホームにはまばらとは言え意外にも電車を待っている人がちらほらおり、そういえば先程の待合室の中は一つ二つしか座席が空いてないほど一杯であったことを思い出すと、恐らく自分たちと同じように寝台列車に乗ろうとしている人が沢山居るのであろう。よく考えれば今日は三連休前の金曜日、…………いや、もう日は過ぎたから三連休初日の土曜日なのだから当たり前と言えば当たり前である。が、それにしてもこんな時間から電車に乗るのには一種の違和感というか、躊躇というか、何かロマンティックな物語の主人公の気分というか、何か黄泉の国へ連れて行かされるような気分というか、そういう不思議な気持ちを起こさせる何かがあるような気がする。なるほど確かに、友人の言ったとおりこの感覚は癖になりそうだ。---------
「あっ、お兄ちゃん、そろそろだよ、-------」
初希がそう声を出すと間もなく、ホームにいつも聞くチャイムが鳴り響き、周りの者たちがざわ 〴 〵 と賑わい始めた。家族連れはぴょん 〳〵 飛び跳ねる子供の世話に追われ、男女の組は変わらず話し合い、カメラを片手に持っていた者は皆線路脇で構えている。
「お、やっとか。いまさら遅いけど、忘れ物してないよな?」
と、倖希はそう妹に聞こうとしたのであるが、間が悪くちょうど「忘れ物」あたりで寝台列車が、ゴォッ………!、という音を立てて入ってくる。しかし初希にはちゃんと聞こえていたのか、
「もちろんもちろん。お兄ちゃんこそなにか忘れ物してない? この前充電器忘れたー! って言って大騒ぎしてたけど」
「あぁ、うん。たぶん大丈夫、………なはず。-----ま、いいや、乗ろう乗ろう」
かなり訝しんだ目で見られているうちに列車の扉が開いたので、倖希は一向に離してくれる気配のない力強い手を引いて、でもやっぱり忘れ物をしているような気がして足が止まりそうになったが、言うと初希にどれだけいじられるか分からないので、空に浮かんでいるであろう綺麗な三日月を一瞬間眺めてから、黙って列車の中に入った。
  寝台列車というものは大方どの車両も一階部分と二階部分に分かれており、彼らが乗り込んだ車両では一階に二人部屋が、二階に豪華な一人部屋があるのであるが、その二人部屋というものは小さなベッドが二つ、人がひとり通れるか通れないかの隙間を隔てて配置された、例えるならホテルの一室を限りなく小さく且つ余分なものを削ぎ落としたような部屋であった。二人は列車に乗り込むと、まず狭い階段を下りて、狭い廊下を渡って、開け放しにされている部屋を見つけて、これが俺たちの部屋じゃないだろうかと思って切符を確認すると、案の定そうだったので、荷物を半ば押し込むようにして入れつつ自分たちも入った。するとその時ちょうど列車が動き出したらしく、扉を閉める際に廊下にある窓をちょっと覗いてみると、駅のホームがゆっくりと動いていくのが見えたのであるが、それはそれでワク 〳〵 する光景だけどまずは〳〵 と思い扉を閉める。ここでようやく初希が手を離してくれる気になってくれたのかその力が弱くなったので、名残惜しくなりつつ両手を自由にすると、コートやら何やらを壁に吊るしてとりあえずベッドに腰掛け一息ついた。そうやって、兄の方は束の間の休息に胸をなでおろしていたのであるが、同じようにベッドに座った妹の方は興味津々に、ベッドの頭側にある謎のスイッチやら何故か付いているラジオのつまみを、時々歓声を上げつつ弄って(いじくって)いる。と、急に結構大きめの窓を遮っていたカーテンが上がり始めたのを目にするや、今度はそっちに食いつき、徐々に見えてくる外の景色に感嘆の声を上げ始めた。
「お、お、お、………わお。…………」
そう言うと窓枠に手をかけてさらに車窓に見入る。
「すっごい。…………ええやん。………ええやん。…………」
そして初希は、カーテンが上がり切る頃になるともう声をも出さず、目を見開いて窓の外を眺めるようになったのであるが、しばらく無言であった倖希もまたその移り変わっていく景色、-------たった一台の車のために色を変える信号機、読む者も居ないのにぽつりと立つ標識、住宅街の上を駆け抜けている電線、淡く光るように街灯に照らされている道路、夜空に点々と輝き星座を描く星々、……………そしてそれらをどこか物悲しい顔つきで見入る妹、------などなどに心を揺さぶられ、やはり違う世界へ連れて行かれたのではないのかという気分になると、自身も妹と同じように窓辺に手をついて外の景色を眺めた。今見ている街並みは、まだ大阪のものであるのに、普段見慣れているはずなのに、二年前まではここで暮らしていたというのにいまいち現実味が湧かず、隣に居る初希の存在を感じていると本当に恋人とどこか遠くに駆け落ちしているような、そんな錯覚さえしてくる。果たしてそう思うのは、生まれ育ったこの地から離れようとしているからなのか、それとも儚い表情をしてをられる彼女の佇まいに当てられたのか、はたまたぼうっと辺りを照らしている街灯に哀愁というものを感じたのか、いずれにしてもいたく美しい光景が車窓には広がっている。--------
「確かにこれは、いいな。いいぞ。…………」
二人のあいだにはこの言葉を最後に、しばらく電車が線路を走る音のみが響いていたのであるが、倖希が咳払いをしたのをきっかけに手をもじ 〳〵 させ始めたので、それがどういうことを意味しているのか知っている初希は、一つ、くすっと笑うと、絡まり合っている手のうち自分に近い方を奪ってやる。すると案の定、隣に居る兄から力という力が抜けていき首もがっくりと項垂れていったけれども、気がついた時にはあの、苛めてほしそうな優しい顔でこちらを見てきていた。
「こ、--------」
が、初希が口を開けたその時、コンコンコン…………、と扉をノックする音が聞こえてきた。
「あっ、はーい!」
すかさず倖希が反応すると、ガラリと言う音と共に扉が開き、
「すみません、乗車券の方を、-------」
と、言いながら嫌に朗らかな笑顔をした乗務員が部屋に入ってくる。-------どうやら切符を見せないといけないらしい。そうは理解していても突然のことだったので、すっかり自分の世界に浸っていた初希は一瞬固まってしまい、そのうちに手を離されてしまった。
「はい、どうぞ~」
さっと財布を取り出し、その中から切符を抜き取った倖希が朗らかに言う。自分だってあんなに哀しそうな顔をしていたというのに、なんだその変わりようは、------と少しムッとする初希であったが、私も切符を見せないといけないんだろうな、………と思い、気持ちを切り替えてベッドに座ったまま自分の荷物に手を伸ばす。
「あ、もう大丈夫です。ではごゆっくりどうぞ。-------」
「へっ?」
私のは見なくていいんかい、と、初希は心の中で言ったのであ��が、本当に見せなくても良かったらしく、手を空に迷わせているうちに扉はガラガラガラ…………トスン、という音を立てて閉まってしまった。---------
「びっくりしたなぁ。………」
「うーん。…………あー。………………」
「初希?」
「なんか、あれだね。あれ。そう、あれ。………………」
「あれ?」
「そう、あれ。うん。あれ」
初希は根本から折れたようにベッドに寝転がってしまっているのであるが、その返事は全くもって要領を得ていない。たぶん、雰囲気無くなっちゃったね、…………と、本当は言いたいのであろう。倖希はそんなことを思いながら、もう一度ベッドに座ろうと一歩踏み出したその時、ポキっと折れていた妹の体が突然跳ねるようにして起き上がった。
「うおっ! なんだなんだ、---------」
「お兄ちゃん、ちょっと探検しようよ、探検!!」
「えっ、………」
「行こう行こう。雰囲気無くなっちゃったし、それにさっきちらっと見えた向こう側の車両、めっちゃ良かったやん、なんか非日常的で。ねぇ、行こうよー。…………」
「えー。もうちょっとゆっくり、--------」
そう言いかけたところで、初希がこちらの手を取って引っ張り始めたので、こうなっては妹が止まらないことを知っている彼は、そろそろ開けようと思っていたお酒やらお菓子やらが入ったコンビニ袋をその辺に投げ捨てグイッとその手を引き、彼女を立たせてやる。
「お兄ちゃんのそういうところ、大好きだよ」
「はいはい、------それじゃあ、行きましょうか、お嬢様。」
「ふふっ、なにそれ。つまんない。--------」
と言いつつも、くす 〳〵 と笑う初希の手を引っ張って足を踏み出した倖希であったが、部屋を出る頃にはもう妹の背中を追いかけるようになっていた(そんなスペースは無いから微妙。もう少し現実に即するように書き直す?)。
  ぐい 〳〵 と手を引かれて行くと車両の連結部に出て、そこにはこれと言った物が無かったためあまり特別な印象は抱かなかったのであるが、倖希はそんなことよりも妹が楽しそうでなりよりであった。なぜかと言って彼が実家へと帰省したのは、初希がしなびてるから元気づけてやってくれ、どうせあんたが原因やろ、と母親から連絡があったからなのである。しかしそうは言われても当初、普段から妹とはよく通話するし、何よりその日も彼女の元気な声を聞いていた倖希はいまいち実感が湧かず、母親には、濡れ衣や、とだけ返したのであった。が、今まで弱音らしい弱音を吐いてこなかった初希のことだから自分の前では強がっているかもしれないと思うと、どうしても気が気でなくなってしまい、試験という試験全て乗り越え、レポートというレポートを全て提出し終えたらすぐ実家に帰ろうと、そういう予定を割と早くから立てていたのである。それでどうやら悪いことに、倖希のこの読みは当たっていたらしく、日を追うごとに普段の通話から沈黙の時間が増えていったので、余りにも妹を心配した彼はレポートを一つ放棄してまでして、予定より一日早く実家へと帰省したのであった。で、帰ってきてみると笑顔の初希に抱きつかれ、お土産をぶんどられ、いつもの調子でコロ 〳〵 と転がされて、なんや元気そうやないかと若干損した気分になったものの、こちらを見てははにかみ、こちらに引っ付いてきては撫でるような声を出す様子には、どこか上滑りしているような印象を受けた。それに何と言っても片時も離れないのには、さすがの倖希もうんざりとした。けれどもそうやって、いつも以上に引っ付いてくるということは、妹をえらい寂しがらせていたということに違いはなく、申し訳無さと愛おしさから相手をしてやったのであるが、じきに日が変わりかけてきたので、そろそろ寝ようと久しぶりの自室に行こうとしたところ、……やっぱり付いて来る。ほら、こんな時間だし初希ももう寝な、とやんわり催促しても、いい加減にしなさい、と少し怒ったように言いつつ部屋へ押し込んでも、ただ、お兄ちゃん、………と微醺を帯びたような目で倖希を見ながら言うばかり。で、結局、根負けしてしまったのであるが、そうやって甘やかしているとしまいには布団にまで潜り込んで来て、目が覚めた時には共に朝を迎えていた。と、そんな風な日を始まりに、この帰省中は初希とずっと一緒に居たような気がするのであるが、なぜかそのあいだ彼女はあまり哀しそうな表情をしなかった。だけれどもここ二三日ほどは急に二人きりで居たいと言ってきて、昼は逢瀬のために神戸に行ったり難波に行ったり京都に行ったり、夜は食事後すぐに部屋に引きこもってこちらが枯れ果てるまで体を求めてきたり、言うとまたバツの悪そうな顔をされるので声には出さないが、それはもう大変であった。恐らく初希は、いつまでもこんな寂しい感情に流されてはいけないと思って、兄が帰ってきたのが純粋に嬉しくって、そんな物悲しい顔を意図してしなかったのだろうが、けだし、やはり別れが近づいてくるに従って耐えられなくなったのであろう。だからと言って爆発させるくらいなら最初から素直になって欲しかったのであるが、その辺りに彼女の健気さを感じて倖希は胸に迫る思いをしているのであった。
彼がそういう思いを抱いているのには一つ大きな理由があって、もう妹もあと数ヶ月すると高校三年生、-----つまり受験生になろうとしているのである。そうで無かったら妹の甘える仕草にも、自信は無いが厳しく応えられたはずなのである。が、やはり初希がそろそろ受験を控えるようになると思うと、そうも言ってられない。なぜかと言ってあの一年間は魔のような期間であり、どれだけ自分が自信を持っていようが、どれだけ自分が良い偏差値を叩き出そうが、たった小テスト一個、たった教師の一言で途方も無い不安に襲われてしまう。思い出してみると自分はあまり頭の出来が良くなかったから、模試を受ける度に全然問題が解けずへこんで、結果が返ってくる前にこの世の終わりみたいな顔をしていたから親に、あんた大丈夫なん? と言われ、担任に、このままだとあそこは難しいだろうから志望校を変えたほうが良い、と言われ、そういえば常に不安で不安で夜遅くまで勉強していざ床に就こうとすると眠れず、眠れたかと思ったら数時間後、びっくりしたように心臓をひどく脈打たせながら跳ね起きる。そういう生活を常に送っていた。そんな中で唯一、心の支えであったのが初希であることは言うまでもなかろう。中学三年生だった彼女は自身も高校受験のために忙しい日々を過ごしていたにも関わらず、目を充血させてボソボソと英語を読んでいる兄のために蒸らしたタオルを用意したり、たまに自暴自棄になってあちこちへ遊びに行こうとする兄に付いていき一緒になって騒いだりしてくれた。で、騒いだ後は必ず帰りに、こちらの耳が痛くなるようなことを言って諭してくるのであるが、決して不快な気分にはならなかった。どころか一つ 〳〵 の言葉に重みと言うか、言霊というか、とにかく彼女の思いが詰まっていて不覚にも涙することは少なくなかった。とは言え、帰りの道中まさか中学生の女の子に甘える訳にはいかないから何とか耐えて家まで辿り着き、自室で二人きりになった所でようやく弱音を吐いて、誘われるがまま頭を彼女の胸に埋める。するといつも決まって初希は子守唄のように兄の名前を呼びその頭を撫で、他の誰も認めないけど私だけはお兄ちゃんが頑張っているのをいつも見てるからね、一昨日もお母さんに、ぼーっとしてるなら勉強したら? って言われてたけど私は知ってるよ、あの時は手に単語カードを持ってたから頭の中で憶えたことを諳んじてたんだってこと。………ふふっ、だって本当にずっと見てるんだからすぐ分かるよ、散歩に行くのも休憩じゃなくて歩きながら数学の問題を考えたいんだよね? ………私にはお兄ちゃんの感じてる不安がどれぐらいなのか良くわからないけれど、やっぱりそこまで根を詰めるのは良くない気がするの。だからお願い、頑張らないでとは言わないけれど、今だけはお兄ちゃんの大好きな私の、……私の、その、………おっぱいのことだけを考えて。お兄ちゃんのおかげで先週Dになったんだよ? -----などと言って、こちらの頭をその豊かになりつつある胸元に押し付けてくるのであったが、なんという心地よさであったか。ひどい緊張で夜も眠れなかった自分の頭の中からあの地獄のような不安が無くなり、体が蝋のように溶けていき何も考えられなくなったかと思えば次の瞬間には一時間か二時間程度は時が経っている。だが目が覚めたところですぐさま鼻孔に妹の匂いが漂って来て、クラ 〳〵 しているうちに再び気を失い次の瞬間には彼女の柔らかい膝の上で頭を撫でられている。そして、そろそろちゃんとベッドで寝よ? と妹に言われるがまま布団の中へと一緒に潜り込み、今度はその体を胸に抱いて眠るのであったが、そうすると余りの安心感から三度、気絶するように眠ってしまい次の日が平日であろうが何だろうが昼まで目が覚めないのである。
倖希にはそんな苦いような甘いような記憶があるために、妹はもっと苦労するであろうと考えており、何も彼女に強く言えないのであった。自分には初希という存在が近くに居てくれたからこそ、辛さが募ればすぐに甘えられていたけれども、そうやって入試を乗り越えてしまったがゆえに東京で暮らすことになり、妹の近くに居られなくなってしまった。彼女にはもう甘えられる相手が近くには居ない。そんなことを言うと自惚れているように捉えられるかもしれないが、自分がどれだけ妹に助けられたかを思い出すとやはり、ただでさえ不安に押しつぶされそうになる受験期に、心を寄せている兄と会えないのは心細いはずである。あと一年経って、入試を終え、無事彼女が大学に合格すれば同棲可能、-----いや、すでに同棲をする予定を立てているけれども、その肝心の一年間が彼女にとってどれだけ苦しい一年間になるのであろう。恐らく初希が今回しなびたのはそういうことが原因で、何があったのか推測するに、高校二年生となりて春を過ぎ夏を過ぎ秋を過ぎとうとう寒くなってくるや、あの高校のことだから、-----自分の母校でもあるから分かるのであるが、口を開けば入試だの、受験だの、もうあと日も無いだのと耳にタコが出来るほど言われ不安になったのだろう。自分の時はかなりのんびりとしていたから大して影響は無かったが、案外真面目で頑固者な彼女は先生の言うことを真摯に受け止めてしまったに違いない。しかもその先生というのが、どういう訳か妙に生徒を煽ることに関しては上手くて、入学したときからすでに口を開けば良く出来た先輩の話だったり、定期試験があればほんの少しの凡ミスでもああだこうだ言って自信を失わせるのである。どうしてそんなことをするのか良くわからないが、恐らく不安とか悔しさが本当にバネになるとでも思っているのであろう。で、そういうことを真面目に受け止め続けてきた彼女はこれまでずっと将来の不安を燻らせていて、トドメに、-----自分の覚えている限りではこの時期確か、センター試験の過去問かそれに似せた問題を本番さながらに解く、という行事があったはずで、………たぶん、本当にたぶん、そこであんまり良い成績が取れなかったためにとうとうしなびてしまった。と、こういう経緯(いきさつ)なのであろう。実はこっそりとそのセンター試験の結果を聞いてみたところ、次聞いたらいくらお兄ちゃんでも容赦しないからね、いい? 分かった? と云われたので大方当たっているかと思われる。
そんな訳で、別にセンター試験など雀の涙ほどに圧縮されるから気にしなくても良いのにしな 〳〵 にしなびていた初希が、今朝方急に元気になって今ではこちらの手を引っ張り、でもしば 〳〵 歩みを緩やかにして後ろを振り向きニッコリと微笑むようになったので、倖希もまたかなり嬉しくなっているのであった。なぜかと言って、彼が妹を東京に連れて行くことにしたのは、先に述べた事情をだいたい全て予想していたからであって、もっと言うと初希が着いていきたいと我儘を言う前から、もっと 〳〵 言うと東京に住むことになった自分を送り届けてくれたあの日から、倖希は妹が受験生となる前にいつかは二人きりで過ごして数年後の自分たちの姿を想像しておいて欲しいと、そういう願いがあったからなのである。彼は建前では妹を仕方なく東京まで連れて行っていると言うし、自分の心の中でも二三日の爛れた日々のために手間もお金もかけた、と思っている折があるにはあるけれども、本当は妹を元気づけたい一心でいるのである。だから誰よりも、-------もしかしたら初希本人よりも彼の方が喜んでいるかもしれないのであるが、旅の始まりともあって少々盛り上がりすぎている妹に家を出る前からずっと手を引かれていると、やっぱり少しだけ呆れてもくるのであった。
寝台列車の中はあれほどホームに人が居たというにも関わらずひっそりと静まり返っていて、ただ部屋の取っ手と、木の模様をした壁と、ちょっとした照明だけが付いている狭い、本当に狭い、人とすれ違うこともできなさそうなほど狭い廊下を縦に並んで渡っていると、確かに初希の言う通り非日常的というか幻想的であると、倖希は感じた。よく考えれば時刻は午前一時をちょうど過ぎたくらいなので、皆部屋に引きこもって寝ているのかもしれない。相変わらず手を引かれながら歩いていると、恐らく一人用の寝台個室であろうか、左右対称に狭しく部屋が並んだ車両にたどり着いた際に、初希がふと歩みを止めた。
「なんか、ステイサムの映画みたいだね……」
「どれ?」
「ほら、あの退役軍人なステイサムがマフィアだかなんだかをボコボコにするやつ」
「…………どれもそうだから分からん」
「んー、………ほら、あれ。こないだ見たやつ! ………の、ダンボールに押し込められた出稼ぎ中国人をステイサムがトラックの中で数えるシーン、あれみたい」
「あぁ、なるほど、分かった分かった。………確かにそれっぽいけど、例えがえげつなくない?」
「せやな。………」
そう言うと初希は、手に持っていたスマホを片手で器用に扱い、カシャッと、この一件面白くなさそうな光景を写真に収めた。が、微妙に薄暗いせいで光がぼんやりとしてしまい上手く撮れなかったのであろう、云々唸って何回も取り直している。倖希はそんな妹を多少愉快に思いながら改めて車両内を見渡すのであったが、案の定何にも面白い物が無く、それに窓が無いために今しがた感動した夜景も見ることが出来ず、ひどい閉塞感に包まれてしまった。それでも殊の外ワク 〳〵 して仕方がないのは、そんな閉塞感を感じているからこそ秘密基地に入っているような、言わば少年時代に戻ったような感じがするからであろうか。たぶん少し違っていて、先程ちらりと見えた一階へ降りる小さな階段を思い出すと、ホラー映画というか、SF映画というか、何やら入ってはいけない場所へ迷い込んだような、そういう気分になっているからなのであろう。なるほど確かに初希の言う通り「探検」である。そう合点すると彼は、いまだぴょこ 〳〵 と細かく動いては写真を撮っている初希のことが映画のヒロインのように見えてきて、こんな風にとりあえず動いてみる女性がまず最初に謎を解き明かしたりするんだよな、…………と映画の世界に入り込みそうになるのであった。
「そういえば、確か展望室みたいなのが逆の方向にあるよ。たぶん」
「ほんと? 行こう行こう!」
倖希は妹がスマホを手の中に丸め込んだのを見て、今度は自分が彼女を引っ張って行こうと足を踏み出したのであるが、壁伝いに無理無理こちらの前に出て来る体に気を取られていると、またもや引っ張られていく形で再び廊下を渡り歩いていった。
  「そういえば、今どの辺なんやろか。-------」
展望車、もといミニラウンジは意外にも二人の部屋がある車両のすぐ一つ隣にあって、車両の縦半分ほどの空間がちょうど左右対称に分かれており、床に固定された回らない椅子に座って、壁に固定された奥行きのない机に肘を乗せて、割と広めの窓から外が見えるようになっていた。彼らの他には女が三人だけその椅子に掛け窓の外を時折眺めつつヒソ 〳〵 と静かに話をしているようで、それ意外の雰囲気は今までと変わりない、強いて言うなら自販機の色が少し賑やかなくらいである。で、その自販機に飲み物を買いに行った倖希がココアを袖に丸めて戻ってくると、頬杖をついてうっとりと窓の外を見つめていた初希がボソッとそう聞いてきたので、そういえば部屋を出る前に高槻の文字が見えた気がするからそろそろ京都に入ったんじゃなかろうか、と彼女の隣に座りつつ確かめてみたら意外なことにもう長岡京の辺りまで来ている。だが外を見ても消えかかる街明かりがぽつぽつと見えるばかりで、一体ここがどこなのかさっぱり分からない。
「うわー、…………ここ京都なんだ。全っ然気が付かなかった。…………」
「まぁ、夜だし、それにさっきまで窓がなかった車両に居たからね、山崎のウヰスキイ工場とか、チヨコレエトとか見えなかったんだろう。あといつも阪急に乗ってるから微妙に景色も違うだろうしね」
「だねー。…………」
「いやぁ、面白いなぁ、一昨日も初希と一緒に伏見稲荷まで行ったから通ったはずなんだけど、面白いなぁ、………あの時は、--------」
倖希はそれからも、こんな感じで現在地を地図アプリで追いかけ回してはその都度感想を述べるので非常にうるさかったのであろう、五分と経たず初希はその頬を手から離しキッと兄の顔を睨みつけ、
「お兄ちゃん」
「はい」
「静かに」
「はい」
元来妹に至極弱い兄である、倖希はその一言ですっかり静かになり、パキッ…………、という音を立ててココアの缶を開けて一口飲むと、もう何も言わずに変わらぬ速度で流れて行く京都の街明かりを見始めた。そしてほとんど目も瞑って電車の走る心地よい音に身を任せながらココアの缶を手持ち無沙汰に親指で撫でていたのであるが、しばらくすると横からぬっ、と細くしなやかな指が伸びてきて、カチリと、綺麗に切り揃えられた爪とその缶とが当たったと思ったら、次の瞬間にココアは彼女の手に収まっていた。
「まったく、一声くらいかけてくれ」
「あ、ココアちょうだい。-----」
「遅いわっ」
澄ませた顔でココアの蓋を開けた初希は、濡れたように艶かしく光る唇を軽く突き出すと、下唇を缶の口へ柔らかく当て、人肌程度に温くなったココアをそっと舌の先に触れさせる。そしてその甘味やら、苦味やら、独特の舌触りやら、鼻孔に広がる香ばしい香りやらに顔をなごませてから、コクリ、コクリと気管の膨らみが薄っすらと見える魅惑的な喉を蠢かせ、その優しい味わいを体の中へ入れていく。倖希はその、ある意味口淫を思わせる仕草につい見惚れてしまっていたのであるが、いつしか窓に映る景色は景色とは言えないほど明るくなってをり、とうとう背の高い建物も姿を現し始めていた。
「あゝ、この殺風景な感じ、…………京都駅だなぁ。…………」
「ふふっ、お兄ちゃんさっきから何か変。大丈夫? 変なもの拾って食べたりしてない?」
「いやだって、こんな人の居ない京都駅って珍しいやん? それに、-----」
----こうして素通りするのも珍しいし、と言いかけたところで、寝台特急は速度を落として、しかしそれでも案内板やらロッカーやらが掠れて見えない程度の速度で駅のホームを通過していく。
「あれ? 京都は通過するだけなのん?」
「らしい。意外だよね、残念?」
「いや全然。一昨日も来たから。………」
「そういえば、その時の写真さ、意外と綺麗に撮れてたから東京に着いたら見せてあげるよ」
「ほんとに? ---------それは楽しみなんだけどお兄ちゃん、私のことを私が気がついてないうちに撮ってたりしてないよね?」
「いやいや、そんなことは、…………実は一枚だけあります、ありますから。そんな目をしないで、ごめんって」
「もう、………」
「いやでも、あの一枚も綺麗に撮れてたから初希も気にいると思う、…………たぶん」
「そりゃ、被写体が良いんだもの、どう撮ろうと綺麗になるよ。---------」
ふふん、と胸を反らし、とう 〳〵 倖希の手の平でも収まらなくなってしまった二つの大きな実を、そのおおらかで男の心を惹きつけて離さない蠱惑的な曲線で持って強調するのであったが、ちょうどその時、たまたま後ろを通りかかった男性の視線が突き刺さるのに気がつくと、慌てて自分の体を抱え込んだ。そして恥ずかしさを紛らわせるためなのか、憂さ晴らしのためなのか、ココアを雑に掴んでまたもやコクリ、コクリ、コクリ、…………と飲んでいく。やはりその豊満な胸は自慢ではあるけれども、他人には見られたくないのであろう。
「ここは人が行ったり来たりするから落ち着かないな。部屋に戻ろうか」
「だねー。………」
コトリ…、と音がしたので下を見ると、ココアが帰ってきていた。
「………あっ、うわっ、もうほとんど残ってへんやん! 」
「ふふっ、ココアありがと、お兄ちゃん。-------」
久しく聞いてなかった兄の驚く声に満足した初希は、立ち上がってぐいっと背伸びをすると、まだ一口しか飲んでなかったのに、…………と文句を言いながらほとんど最後の一滴となったココアを飲む兄を、密かに赤らめた顔で見守るのであった。
  倖希は、お花を摘みに行ってきますわと、至極お上品に言いそのまま車両を通り過ぎて行く初希の後姿を送り届けた後、部屋の中に入りコンビニ袋を拡げたのであるが、こんな時間にお菓子はあまりよろしく無いだろうと思ってお酒だけを取り出し、一人ベッドの上に座って移ろいで行く景色を、どこか物足りなさを感じながら見ていた。だがちょっとすると明かりがうるさくなってきたので、一口お酒を口に含んでから窓辺にその瓶を置き、電灯を消して再びあぐらをかいたところで、ゴロゴロ……、と云ふ音を立てながら扉が開いた。
「おにいちゃん?」
「あっ、ごめん。今点け直すから」
「いや、大丈夫大丈夫。-------それにしても、いいね、やっぱり」
「だよね。-------」
初希は部屋へ入ってきた時こそゴソ 〳〵 と自分の荷物を漁っていたものの、しばらくして用が済んだのか靴を脱いで倖希の真横に座り、少々ずり落ちていた眼鏡を指で上げるとさらに彼の元へすり寄った。そして倖希の差し出した手をそっと取って、肩に頭を乗せ体を預けると、それに呼応してなのかこちらの手を握ってくる力がほのかに強くなり、続いて向こうからも気持ち程度に体重をこちらにかけてくる。が、本当に気持ち程度なので、昔みたいに甘えていいんだよと声に出す代わりに、ぐし 〳〵 と頭をその首元に押し付けてやる。するとしばらくは鬱陶しそうにしていたが、ようやくダラリとその体をこちらに預けてきてくれるようになったので、ふっふ……と、ちょっと笑ってから兄が見ているであろう寂しく道路を照らしている街灯を眺め初めた。そうやって、二人の兄妹は互いに言葉も交わしていないのにも関わらず、まるで示し合わせたかのように肩を並べ合い手を取り合い体を支え合い、二人して二人とも明かりが少くなり行く夜景を、どこか儚げな表情で見つめるのである(この一文要る?削るか、もう少し上手く書くか)。
京都を抜けたばかりなので明かりはまだぼう 〳〵 としているにはしているものの、時刻はもう午前二時を回っているために、目に見える民家はもぬけの殻のように真暗で、四車線ある広い道路もたまに通る車の光が賑やかに感じるほどに静まり返っており、倖希はまるで人が突然居なくなった後の世界のようだと、またもやワク 〳〵 しかけたのであったが、やはり虚しい。ラウンジに居た時までは京都市内を駆け抜けているせいもあって、窓から外を眺めると高い建物がそびえていたり、車も信号待ちで並ぶほど居たり、それに人の歩く姿も時たま見えていたのに、急に物寂しくなったものである。トイレに行くまでは兄にああだこうだと言っていた初希も、さすがに口を閉じて流れて行く景色を見守っている。彼女もまた、この光が無くなっていく様子を見て何かを感じ空想に耽っているのであろうか、それともぼんやりとただこの物寂しさに心を任せているのであろうか。兄である自分が想像するに恐らく後者であろうと思うが、しかしそれにしても得も言われぬ美しい横顔である。時折窓から入ってくる光にぼんやり照らされて輪郭はあいまいになり、目のまぶたや鼻の頭やなだらかな頬の山によってところどころ深い闇が出来、その闇の〝つや〟となめらかな白い肌とが見事に調和して、------なるほどこれが陰翳の美しさというものなのであろう。恐らく昼間の明るさではこうは見えまい。彼女の顔立ちは決して派手とは言えないが、その肌ははなはだ陶器のように光を跳ね返すほどの色艶をしており、人によっては好きと言うかもしれないけれども、自分には少々眩しすぎると思っていた。だがこうして闇に溶け込ますと余計なものが全て削ぎ落とされ、こちらが見ていることに気が付き恥ずかしそうに笑う表情すら、閑寂のうちに活けられた慎ましい花のよう。自分は彼女の美しさというものを分かっているつもりであったが、上辺だけを攫っていたのかもしれない。------
と、倖希は三度、妹の顔を���て惚れ惚れとしていたのであるが、そのうちに妙な懐かしさを感じる取るとそちらにすっかり気を取られてしまった。眼の前に居る少女はそこに居るだけで目を奪われてしまうほど美しいのに、なぜかその過去の姿がチラついて仕方がない。どうしてこんなにも気になるのであろう。初希とこうして一緒に静かに何も声を出さずじっとして体を寄せ合ったことなんていくらでもあるのに、なぜこんなにもあの、五六年前のとある冬の日、------もう記憶もおぼろげなあの日、田舎にある祖母の家へ遊びに行ったあの日のことを思い出してしまうのであろう。その時自分はさつま芋を焼こうと、その辺(あたり)から適当に拾ってきた落ち葉や木の枝や竹の幹などをちょっとした山にして、その中にアルミホイルで包んだ芋を放り込んで、火を点けて、ゴロゴロと転がしてきた丸太に座って、…………たかどうかは忘れたがとにかく何かに座って山の中でひっそりと、ほんのり夕焼けに照らされる木々を目の隅に留めつつまだ 〳〵 生まれたばかりの小さな炎を見ていた。-----あゝ、思い出してきた。確か、焼き芋焼こう焼こうと言ってきたご本人様は、そうやって火を点けてから案外すぐにやって来たのだけれども、一言二言話しているうちにとうとう歩くのも危ないほどに辺りが暗くなってきた上に、風でなびいた竹や木がさわさわ言い出したので、ひどく怖がるようになってしまったのだった。何せあの辺りは「出る」という話を前の晩に聞かされていたのである、いくら冗談めかして言われてもいつ木の陰からぬうっと出てくるのか分からない。だからあの時は自分も怖くなってきて立ち上がると、その小さく縮こまってしまった体を後ろから抱きしめてやった。そしてパチ 〳〵 と暗闇の中へ飛び散っていく火花を一緒に目で追いかけながら話を、…………いや、話などしていない。自分たち兄妹は、あのおどろ 〳〵 しい闇の中で互いに互いの手を取り合って、ただ 〳〵 ゆら 〳〵 とはためく火の穂を眺めていただけだった。会話など無くても、自分たちは相手の手から伝わる力加減や汗や体温などの微妙な違いだけで、お互い何を思っているのか知り得るのだから当然である。そのうちに風が止んでずいぶんと静かになり、恐怖心もそれに次いで紛れていったが、結局手だけは離さなかった。もうその頃になると、炎の中心部分から燃えるものが少なくなり、頬を刺してくる暖かさもほとんど無くなりはしていたけれども、それに、焚き火の中へ入れていた芋もすっかり煮えきってしまっていたけれども、二人の兄妹はただ静かに灰になって崩れ行く木々を、心配して様子を見に来た両親が声をかけるまで見つめ続けた。--------まだ彼女の事を本当に「妹」だと思っていた頃の懐かしい記憶である。なぜ、今になって急に。………………
--------あゝ、そうか、だからか。まだ初希とはキスの一つもしていない時に、ちょうど今と同じような気味合いでぼんやりと焚き火を、そして、それによって鮮やかに照らされた彼女の顔を見守っていたからこんなにも気になったのか。それが今やどうだ。彼女がまだ中学生の時分に求められるがまま誘われるがまま、唇を重ね体を重ねたのをきっかけに、いつか終わらせなければ、そしていつか終わると知りながら、ぐだ 〳〵 と肉体関係が続いてしまっている。これがただの体だけの関係ならば、初希ももう十七歳という年齢なのだから、同じ教室に居る男子でも捕まえて兄の事など忘れることができよう。しかしもうすでに、引き返せぬほど彼女は自分を愛してしまっているし、それに負けじと自分も彼女のことを愛してしまっている。その上両親も、息子・娘が夜な夜な猥りがましい行いをしていることに、とっくの昔から気がついているにも関わらず、ただほのめかすだけで何もはっきりと言ってこない。そんなだから背徳感に膝を震わせたあの、-------妹の処女を奪ったあの日の感覚が消え失せるほどに何度も何度も、それこそこの一週間は毎日毎日、いつ誰が見てるのか、自分たちが何をしているのかも忘れて彼女と体を重ねていたのである。
もちろん、初希との関係を終わらせようとしたことなんて何回もあったが、彼女には話を切り出す前の顔つきから分かるのであろう、至極悲しい顔をしてこちらに向き直るので結局言えずじまいに終わり、最近ではもうその気も起きなくなってしまった。どころか、初希への思いが募りに募りすぎて、どうすれば彼女と人生を添い遂げられるのかを真剣に考えるようになってしまった。それは進んではいけない方向に舵を切ったということだけれども、なぜか自分には、止まっていた歯車がぐるぐると回り始めたような、そんな気がしてならない。つまり、間違った道の方が本来選択すべき正しい道だと、今ようやくその道を選んだのだと、自分は思っているようなのである。それでこれまでの半生をよくよく振り返ってみると、自分には彼女との関係を終わらせようという気持ちなど、さらさら無かったとしか言いようがなく、自分がやったことと言えば、そういういい加減な気持ちで別れを切り出したり、思わせぶりな態度を取ったりして、ただ彼女の心を弄んでいただけなのである。結局、初希と離れられないのは他の誰のせいでもなく自分のせいであり、けれどもこのまま共に添い遂げる方が正しい道だと信じて突き進むあたり、この鈍感で外道な男はずっと昔から手遅れだったのであろう。--------だが、終わる。初希との関係は確実に終わる。どれだけ愛し合おうとも、どれだけ手を尽くそうとも、血を分かち合った兄妹なのだからいつかは離れ離れにならなくてはならない。それは兄妹で性行為に至っていたと世に知られ無理やり仲を引き裂かれるか、それとも自然にどちらからともなく離れていくか分からないが、その時は確実に近づいてきている。自分たち兄妹に残された時間はあと僅か数年ほどであろう。血の繋がりがあるだけなのに、たったそれだけなのに、心も体も繋がった今ではその血の繋がりゆえに雑多なカップルよりも強く結び付きあっているというのに、兄妹の関係とは余りにも残酷なものである。本来ならば、こうして妹と二人きりで旅行することさえおかしいと思われるのかもしれない。……………
思い返してみると自分はこれまで生きてきて初希以上に気立てよく、一緒に居て心地よく、自分を理解している女性には会ったことがないし、それに、これからも会うことなんて無い気がするのである。今回の帰省の初日にもそれを実感した。自分が実家の門をくぐったのはちょうど夕食時であったから、お土産をぶんどられるやすぐにテーブルへ座るよう促されたのであるが、なぜかキッチンで料理を用意してくれたのは初希であった。とは言っても彼女は元々よく母親を手伝う子であったので、懐かしい気持ちで食卓に並んでいく生姜焼きや味噌汁、里芋の煮っころがし、そして小松菜とちりめんじゃこの和え物を眺めていた。最後の小松菜は意外であったけれども、どれも自分の好物である。早速いただきますと言い、青々としたネギの乗った味噌汁がたまらない香りを漂わせていたのでお椀を手に取ったところ、初希がエプロンを外しながら先程ぶんどったお土産を片手に隣へ座ってくる。そしてお土産を開けるのかと思いつつ味噌汁をすすっていたら、なぜか畏まった姿勢でこちらをじーっ、と見てくるので何事かと思いこちらからも見つめ返すと、おいしい? と聞いてくるのである。もちろん文句なしに美味しいのでそう返すと、ふにゃりと笑って、よかった、よかった、と言う。そこでようやく、この料理たちが彼女の手によって作られたものだと合点したのであるが、そう気がついて見てみると、なんと細部まで兄好みに仕立てられていたか。それまで飲んでいた味噌汁一つ取っても、自分の好きな薄めの味付けがなされていたし、具には自分の好きな豆腐と油揚げと玉ねぎが、ゴロゴロと自分の好きな大きさになって使われていたし、それに余りにも匂いが良いので聞いてみるとしっかり鰹節と昆布から出汁が取られていたし、そも 〳〵 先程のネギだってかつて自分がふりかけていた分量と全く一緒なのである。あともう少し述べておくと、あの時出てきた里芋は、先日に自分で食べたいと言っておきながらすっかり忘れていたものなのであるが、彼女はちゃんと憶えて献立に加えてくれたのであろう。結局自分は、ほとんど初めてと言っていい妹の手料理一つですっかり胃袋を鷲掴みにされてしまった。
そう思い出してみると、初希のことを紹介する時には、妹と言うより妻と言った方が正しいのである。先程だって、こちらがコートを脱ごうとするとさりげなく後ろから手を伸ばして来たので、ハンガーのある位置が逆ならばきっとコートを取られ吊りかけられたことだろう。それは事実、十年以上生活を共にしてきたからこそ会得し得た初希の心づかいであろうが、けだしそういう細かい身の回りの世話は長い時間をかけて少しずつ醸成されるものである。もっとも、自分が彼女の事を妻として見るようになったのは目であるから、そういった行動は副次的なものでしか無い。あの目はもうとっくの昔から兄を見るような目ではなく、夫を見つめる新妻のそれであって、殊に矢で射抜かれるような色気があるのである。一体全体いつからそんな目をしてきたのかはもう分からなくなってしまったが、自分が彼女のことを思い初めた頃、------彼女が中学一二生の頃にはすでに、ああいう媚びたような、哀愁を湛えたような目をしていた。いや、中学生の女の子に、しかも実の妹に恋をするなど存外な変態じゃないかと思われるだろうけれど、初希はその時もう十分人を惚れさせる魅力を備えていたのだから仕方がない。そも 〳〵 考えてみると、男は高校生になっても大学生になってもアホはアホのままであるが、女は中学生になる頃にはすっかり色づいているのである。彼女もあんな我儘で自分勝手な性格をしているけれども、案外体の成長は早く、ときどき見ることになった瑞々しい裸体には今思い出しても心臓が動悸を打ってしまう。そんな女性と当時高校生だった自分がかなりの時間を共にしたのである、こんなことになってしまったのも頷けよう。
ならば今はどうなのかと問われると、それはそれはもう、背も少し高くなって胸も大きくなって顔に深みが出て、--------あゝ、美しい。………………こんな美しい少女を独り占めに出来るなんて自分はなんと幸せ者なのだろう、絶対に離したくない、もういっそのことこのまま駆け落ちしたい。だが、あと一年経てば初希と二人っきりの時間がどっと増えるのだから、今は辛抱しておく方が懸命であろう。センター模試があんまり出来なかったとて、今まで何度もその天才とも言える知力で二年歳の離れた兄を脅かしてきた彼女のことだ、恐らく九割以上を狙っていたのにぴったりだったとか、惜しくも十点二十点足りなかったとか、今ですらそのくらいの学力はあるはずなので、大学へは少なくとも自分より余裕を持って行けてしまうに違いない。そうなればもはやこちらのものである、誰にも邪魔のされない同棲生活をしばらく送ることが出来る。が、その後、つまり、自分が大学を卒業して就職した後はどうなる? 籍を入れられなければ子供も生むことが出来ない上に、異母でも異父でもない実の妹と事実上の夫婦生活を営むなど社会は許してくれまい。かと言って隠し通すのも、いつ何時ひょっと誰かに手を繋いでいるところを見られるのか分からないし、ひょっと酒の場などで口を滑らせてしまうか分からないし、ひょっと不審な点を怪しまれでもしたら、------そういう話が好まれる昨今の事情である、一気に付け込まれて初希との関係を暴かれてしまうであろう。そも 〳〵 、そんなことを考えながらビク 〳〵 怯えて日々を過ごしていると、バレるバレない以前に、夫婦仲に亀裂が走りそうである。ならばむしろ堂々としているのも手かもしれないけれども、どれほど公にすれば自然に見えるのか分からないし、そんなことをして初希を傷つけでもしたら、………と思うと足が止まってしまう。一体どうすれば。…………………
--------だが、こうやって悩むよりは、今は今を目一杯大切に生きるほうが良いのではないだろうか。まだあと数年しか無いとは言え、まだあと数年も残っているのである。それほど時間があれば自ずと考えもまとまり、自分たちの向かうべき方向が定まってくるであろう。よく考えれば、まだ彼女と添い遂げようと決意してから日が浅く、それに今までは自分一人でうじ 〳〵 と考えていたのである。恐らく初希は、優柔不断な兄がそう 〳〵 早く決断を下せるなどとは微塵も思っておらず、それなら二人ぎりで生活するようになってから考えても遅くは無い、と云うよりお兄ちゃんに任せていたら何時まで経っても結論なんて出ないのだから、私に全部任せてその辺でお茶でも飲んでいなよ、などと思っているのではないだろうか。だから話題にも出さず、今日のようにひどい盛り上がり方をして今を楽しもうとしているのではないだろうか。ならば自分が取れる行動は一つしか無いのではないだろうか。駆け落ちの判断は数年後の自分とその妻に任せるとして、今日、明日、明後日は目一杯彼女を楽しませなければいけないのではないだろうか。ならこんな憂鬱な気持ちに負けている暇など無いのではないだろうか。------------
「こーき。…………」
ふいに、すっかり頭を首に埋めていた初希が、体勢はそのままに倖希の名前をそっと呟いた。かと思いきや、くるりと上半身を回して彼と向き直ると、肩に手をかけて体を押し倒し、自身もまたふわりとその上に倒れ込む。
「お、おい、はつき、こんなことする場所じゃないだろ。…………」
「んふふ、………そんなことは言っても、こーきの心臓は正直だね。もう、ドキドキしちゃってる。…………」
「はつき、落ち着けって。あと名前で呼ぶんじゃない」
「えー? だって、外だと名前で呼べって言ったのはこーきだったじゃん。私はちゃんと、こーきの言いつけを守ってるだけだよ?」
確かにそう言ったことはあるものの、それはかつて友人と自分と初希とで遊んだ際に、余りにもいちゃついてくるものだから彼女が妹だと言おうにも言えなくなってしまい、つい 〳〵 、今日だけは名前で呼んでくれ、と耳打ちしたのであって、決して、「外では『お兄ちゃん』と呼ぶな」、とは言ってないのである。だからどういうことかと言うと、今初希は、昨夜のように押し倒した彼の股に座り、昨夜のようにその手を片っぽずつ握り、そして昨夜のようにとろんとしたした目で見下ろしているのである。
「------だから言ってな、…………こら、そういう顔で見るんじゃない」
「それにさぁ、………こんな狭い部屋の中で男女が二人きりでいるなんて、何も起きないほうがおかしいと思わない?」
「いや、男女って言っても、俺たち兄妹だから、-------」
「んーん? いまさらこーきは何を言ってるのん? 昨日だって、私の下であんなに可愛くあえいでいたくせに。…………」
初希がこちらの目をまっすぐに見据えてくる。
「ちょ、ちょ、ちょっと。待って、はつき、まだ満足じゃないのか?-----」
「あれで十分? こーきは本当にそう思ってるのん? あと三日しか無いんだよ? 私達の時間は。もうそれだけなんだよ? ------あっ、でも、こーきがこのまま攫ってくれるなら話は別だけどね」
「それは、…………」
窓の外に映る景色はいよいよ明かりという明かりが無くなり、壁と天井の境界さえ分からないほど部屋は真暗であったが、倖希は自分を見据えてくる目が潤んでいるのを確かに感じ取った。
「ねっ、こーき、このまま向こうで過ごそうよ。過ごしてさ、---------」
-------と、初希が何かを言いかけた時、扉からガチャ 〳〵 と言う音が聞こえてきた。その音に、もう鼻と鼻が触れ合うほど顔を近づけてきていた初希もびっくりして体を起こしたが、まだガチャ 〳〵 と言っている。
「あ、あれ? なんで鍵が、………」
程なくして、そんな女性の声が聞こえてきた。あゝ、なるほど、もしかして、部屋を間違えた別の乗客がこの部屋を開けようとしているのか、--------と二人は合点して静かに扉を見つめる。
「うん? あ、しまった。ここじゃない。…………」
「ふっふっふ。………」
「-----こーき、趣味悪いよ」
「せやな。……………」
「あ、あの! ごめんなさい!」
見知らぬ誰かはその声を発するや、どこかへ走り去ったのであろう、もうその気配も伺えなくなってしまった。
「………やっぱり間違えてたんだな」
「ふふっ、私もさっき間違えそうになったから、仕方ないよね」
「なんだ、はつきも間違えそうになったのか」
「まぁ、ね。…………」
一瞬だけ晴れやかになった初希の顔が、どうしてだか再び沈んでいく、-----見えないが口調からそんな気がした。
「はつき、はつき、ちょっと重くなってきたからどいて、-------」
だから、せめてこれだけは、………と思ったのである。
「えっ、あっ、ごめん。………っていうか、こんな純粋無垢で可愛い女子高生に重いってどういうこ、--------」
「------ごめんな、今はこれだけで許してくれ」
「…………えへへ、やっぱりお兄ちゃんはお兄ちゃんだ。……………」
「…………どういうことだよ」
「んへへ、………いいのいいの。お兄ちゃんに意気地が無いのは分かってたし、あと一年だし、あと一年耐えればいいだけだし。…………そう、一年だけ。---------お兄ちゃん、頑張るよ、私。そしたらたくさん思い出作ろうね。終わっちゃう前にたくさん、たくさん。…………………」
「あぁ、そうだな。色んな事しような。……………」
「ん。--------あーあー、…………なんだか眠くなってきちゃった。このまま寝ていい?」
いいよ、と返事をして初希の顔から眼鏡を外し窓枠に置くと、すぐさまこちらの胸元にぐいぐいその顔を埋めてきたので、とりあえず後髪を撫でてやる。
「おやすみ、はつき」
「おやすみ、こーき。……………」
そうしてそのまま頭を撫で続けていると、すー、すー、という可愛らしい寝息が列車の走る音に紛れて微かに、でも確かに聞こえてくるようになったので、倖希は一つため息をつくと、少しだけ酒を口に含んだ。時刻を確かめてみるともう午前三時である。窓の外には名古屋に近づいてきたのか、点々と煌めく街の灯が、水平線の向こう側まで広がっている。彼はそれを酒の肴にしようと予てから画策していたのであるが、胸の中に感じる言いようのない心地よさに一瞬眠気を感じたと思ったらもうそれまで、後はうと 〳〵 と船を漕ぐばかりになり、頭を撫でる手も止めてしまった。
  ハッと、倖希が気がついた時にはもう窓の外は白くなっていて、朝日こそは黒みを帯びた雲で見えなかったものの、ずっと遠くにある住宅地まで見渡せるほどには晴れやかな空気が漂っているようである。だが付近の道路やしまうたやに目を落としてみると、そこはかとなくどんよりとしているので、やはり雲行きは怪しいらしい。それよりもこの薄暗いのはその雲のせいだとすると、もしかしたら停車駅をいくつか逃してしまったかもしれず、倖希は今列車がどこを走っているのか気になったのであるが、いまいち頭がぼうっとするので雨の気配を心配しつつ車窓を眺めていた。と、ちょっとして、
「次は横浜、横浜、-------」
という車内放送が流れてくる。ということは、次の駅は終点の東京なのか、意外と時間が経ってしまっていた。ならそろ 〳〵 、この胸に抱きついて一向に起きる気配の無いお姫様を起こさねば。…………そうは思ったもののもう少しだけ、愛しい彼女の温もりというものを感じていたかったから、二三回ゆっくりと頭を撫でた後に背中をポンポンと叩いてやる。
「んんぁ、-----なに、なに。…………」
「そろそろ着くよ。初希、起きな」
「-----ああぁ、…………おはよ、お兄ちゃん。…………」
のっそりと体を起こすと初希は、まだまだ寝たり無いのかひどく眠そうな目を手でゴシ 〳〵 と拭っている。
「んぁー、…………だめ、ねむい。…………ついたらおこして。………………」
そう言って再び倒れ込もうとしてくるので、倖希はそれをやんわりと拒否した。
「うちに着いたら好きなだけ寝ていいから、今は頑張って。…………」
だがやっぱり眠気が勝るのか、ほとんど正座に近い状態であるのにしっかりと体を倖希に寄り掛けつつ眠るので、彼はすっかり諦めてしまうと、結局東京駅に着くまでそのままの体勢を保ち続けたのであった。
駅に着いてみると、相変わらず天気はどんよりとしているどころか、霧がかかったように建物という建物がぼんやりと佇んでおり、これなら今直ぐに降り出してもおかしくないな、と思いつつホームに降り立った倖希であったが、初希と手を繋いでいるせいで心持ちは穏やかと言えば穏やかであった。ところが、まだ飲みきっていない酒の瓶を捨てているうちに、さぁ 〳〵 と、小雨が降り出したかと思いきやそれは段々と大降りになり、しまいには風を伴って駅の壁に打ち付け初めてしまった。周りを見ると、素知らぬ顔で歩いている人も居れば、頭を抱えて外をじっと見つめている人も居る。
「ん? どうしたの、お兄ちゃん?」
「-------いや、なんでもない。行こう」
「ん、……………お兄ちゃん」
「あん?」
「手、手だよ!」
「おう、……すまんすまん」
と、言って初希の手を取ったのであるが、そういえば実家に傘を忘れていることに気がつくと、つい 〳〵 足が止まってしまった。
 (おわり)
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juytjuy9 · 7 years ago
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tak4hir0 · 4 years ago
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■32歳腐女子自分の子供っぽさに気づいて恥ずかしくなる 昨年にあった話。 私(A)は32歳のオタクで腐女子である。 学生の頃から10年以上の付き合いのある同じくオタクで腐女子の友人が3人いるが、久しぶりにみんなと会って自分がとても32歳とは思えない子供っぽさであることを思い知って恥ずかしくなった。 ●私のオタ活 ずっとオタクだったが数年前に過去最高にどっぷりハマるジャンルに出会った。ゲーム原作でアニメや2.5次元など様々な展開のあるジャンルで、そのどれにもお金を使いまくった。ゲームへの課金、アニメ視聴、グッズを買い漁る、2.5次元に何公演も参戦する、2.5次元のグッズも買い漁る、2.5次元俳優自体にもハマる、様々なコラボ商品を買う等した。 二次創作も大好きで同人誌の大量買い、キャライメージアクセの大量買い、即売会参加もしていた。同人誌作家、同人アクセサリー作家、コスプレーヤーともツイッターで仲良くなり、オフ会をしたりそれはそれはオタクとして充実して楽しく過ごしていた。 その頃から友人達は子育てや仕事で忙しくなかなか全員で会うことができなかったが、昨年久しぶりに全員の予定が合い会うことになった。ここで私は自分の子供っぽさに気づいて恥ずかしくなったのだ。恥ずかしいと思ったのは主にファッションやメイクに関すること、お金の使い方、落ち着きのなさの3つだ。 ●最初の気付き~ファッション~ 一番に待ち合わせ場所に着いた私はみんなを待った。最初に現れたのはBちゃん。そこであれ?なんか綺麗というか大人っぽいなと思った。次にCちゃん、Dちゃんが来たが、その時も同じようなことを感じた。 みんな容姿はごくごく普通という感じで特別可愛いとか美人てわけじゃないんだけど、雰囲気がとても綺麗になっていた。 その日のみんなのコーデは細かい色や柄は忘れたけど多分こんな感じ。何でそんなこと覚えているのかというとこの日が恥ずかしさの気づきの日で忘れられないからである。 Bちゃんはコート、ドルマンスリーブのカットソーにミモレ丈のスカート、黒タイツにブーティ、ハンドバッグ。ケバすぎないばっちりメイク、薄いピンクのネイル、小ぶりでシンプルなネックレスとブレスレット。 Cちゃんはジャケット、白シャツにストレートパンツ、��ールパンプス、肩かけバッグ。濃いめかっこいいメイク、がっつり濃いネイル、大振りだけどデザインはシンプルなネックレスとバングル。 Dちゃんは唯一既婚子持ちだけど、ママって感じがしつつもオシャレだった。コート、膝下丈ニットワンピ、黒タイツにショートブーツ、大きめなオシャレなトートバッグ。ナチュラルメイク、トップコートのみっぽいピカピカネイル、結婚指輪と小ぶりでシンプルなイヤリング。 そして私Aはこうだ。 ダウンジャケット、ボーダーTシャツに着古したジーンズ、はきつぶしたスニーカー、サコッシュ。 薄すぎメイク(下地とフェイスパウダーのみ)、ボロボロの爪、、推しキャライメージのアクセサリー(イヤリング、ネックレス、ブレスレット、リングフル装備・同人グッズ含む) 三人の友人と比べるととんでもなくダサくてやばい32歳だ。なのにずっと自分はオタクなのにファッションに気を遣うしメイクもするオシャレさんだと思っていた。(やばすぎ) 服が適当なのにアクセサリーは着けられるもの全部着けてて、しかも推しキャラ二人分のイメージアクセだから色もデザインもバラバラで悪い意味で派手。うるさい。同人アクセとプチプラアクセしかないから子供のおもちゃみたいに見える。(同人アクセは本当にキャラのイメージを大事に��て丁寧に作られた素晴らしい作品です。私の使い方が悪い) 服だって近所のコンビニスーパーやアウトドアを楽しむくらいならいいと思うけど今日は予めオシャレなカフェやレストランにも行くと分かっていたのにこれはいけないだろう。 メイクに関しては厚塗りすると毛穴の開きが分かるからナチュラルにするとか言ってほんとに薄くしか下地もフェイスパウダーも着けてなくて毛穴の開きも黒ずみも丸わかり。 眉毛は自眉がしっかり生えてるから描く必要ないと思ってた。でもみんなみたいに綺麗な眉じゃなかった。眉毛薄い子はしっかり綺麗に自然に描けてるし、私と同じく自眉がしっかり生えてる子でも、形を整えて長さを調整して、足りないとこは描いて、私みたいなゲジゲジじゃなかった。 リップは元の唇の色が赤いからリップクリームでツヤ出すだけでいいと思ってたけどそんな綺麗な赤でもなかった。くすんでる。 どんどんあれ?私超ダサい?子供っぽい?あれ?という気持ちが大きくなって恥ずかしくなってきた。みんな優しいからダサいとかそういうこと全然言われないけど勝手に恥ずかしくなってた。 ●第2の気付き~お金の使い方~ 全員揃ったのでまずレストランでランチを食べた。 その時にみんなの今好きなジャンルやオタ活の話をした。上記で書いたようなオタ活の話をすると、みんなはすごいね~と反応してくれる。 同じくグッズやゲームに課金しまくってたBちゃんは「Aちゃんすごいね~私はもうそんなにできないかな。通院してるし親も歳だし何があるかわかんないから程々にしてる。他にもお金使いたいことあるしね」と言った。 Cちゃんも「分かる~何か前は出されるグッズは全部買わなきゃ、イベントは全部参加しなきゃって必死になってたけど将来のこと考えて貯蓄するために程々にしてみたら案外苦じゃなかった」と言った。 Dちゃんは「私も今は子供優先だから気になるアニメを見るくらいかな~」と言った。 BちゃんCちゃんは未だにゲームに課金もするけど推しにだけだし、推しを手に入れられなくても最初に設定した金額で出なかったら撤退するし、グッズはよく考えて本当に欲しいと思うものだけを、イベントは無理しない程度で行けなかったら円盤を買うとか、とても落ち着いたオタ活だった。 それに対して私は「へ~ちゃんと考えてるんだね。私なんかもう推しに夢中すぎてさっき言ったみたいなのがやめらんなくて貯蓄なんてないよwwwカードあるから未来の自分に頑張ってもらってる!wカードの締め日が来たらまた新しいの買うんだ~!^^」と言った。ウケ狙いで、みんな笑ってくれるだろうなと思って。 だがみんなちょっと引いたみたいな苦笑いをした。「すごいね…」と。そこでやっともしかして私のお金の使い方やばいのか?と気づいて、それを笑い話として嬉々として話した自分に恥ずかしくなった。でもみんな優しいから、好きなことに全力でいきいきしてるねとか言ってくれる。泣きそうになった。(優しさと恥ずかしさで) でも少し考えて、もしかして馬鹿にされてんのかなと思った。私はオタ活にお金使うから服も化粧品もイベントやオフ会の時くらいしか買わないしどれもプチプラばかり、みんなは服や化粧品にもお金かけてそうでオタクにお金使わなくてもそっちに使ってんじゃんとちょっとムッとした。(最悪) みんなにそれとなく今日のメイクとファッションいいねって言ったら使ってる化粧品や着てる服の話になった。みんな別に全身ブランド物とか全身高額品てわけではなくて、プチプラと高額品をバランスよく使っていた。プチプラの服でもきちんと手入れしてきちんとアイロンかければよく見えるし、化粧品もスキンケアやベースメイクはデパコスでアイメイクやリップはプチプラとか考えられてた。どうせ金かけてんだろ、金かけりゃそんくらいにはなるよねとか嫌味なこと考えた自分が更に恥ずかしい。 そしてBちゃんの肌が綺麗だという話題に変わった。 Cちゃんは一時期毛穴の開きと黒ずみに悩んでいると言って、一緒に悩んでいた。(会えない間もツイッターやラインでは話してた)Cちゃんはとあるデパコスのカウンターで肌を見てもらい、いいスキンケアに出会えたのだと言った。 ツイッターで嬉々としてこれいいよ!(ドヤ)とプチプラ化粧水を投稿していた自分が恥ずかしくなった。ツイッターでバズったプチプラのものだけを試しまくってちょっとしか改善されなかったのをドヤ顔で投稿していたのだ。そのプチプラのものだって悪い商品じゃないし合う人には合うのだろうけど、私は自分がどういう肌かもよく理解してなくて、とにかくバズった色んなプチプラのものを試してどれも効果は出なかった。 Cちゃんは20代の頃はとあるプチプラのものが肌にすごく合っていて大好きだったけどだんだん合わなくなって、本当に肌を綺麗にしたいと思ってお金をかけた。なのに私は毛穴消えない消えないとうだうだ言いながら、若い頃と同じことの繰り返しでお金も使わなかった。使うお金がなかった。とても情けなかった。 Bちゃんも同じような感じだったし、Dちゃんは今は昔ほどお金使えないし子育て忙しいからオールインワンになっちゃってると言いながらもデパコスまでとはいかないがそれなりのものを使っていたし綺麗な肌をしていた。 この話題がだんだん辛くなった頃(自分からふったくせに)、レストランを出て買い物に向かった。アニメショップで私は大量買い、みんなは1つだけ買うか買わないかだった。 その後みんなは化粧品や雑貨をいくつか買っていたけど私は何も買わなかった。欲しいものがなかった。というのは強がりで、本当はお金がなかった。アニメショップで使ってしまっていた。 最後にカフェに行くことは決まっていたので、そこで使うドリンク1杯分くらいは絶対に残しておかなければならない。また情けなさと恥ずかしさに襲われた。ATMで下ろすのもなんだか恥ずかしかった。 ●第3の気付き~落ち着きのなさ~ そして最後に予定していたカフェに来た。私はコーヒー1杯くらいしか頼めないけどみんなはケーキも頼むだろうか、みんなケーキを頼むのに一人だけ頼まなかったら感じ悪いかなとビクビクしていた。みんなそんなの気にするような子じゃないのに。結局みんなドリンクだけでホッとした。 今度はファッションや金銭感覚のことで恥ずかしさを感じたくなかったので推しを語ることを自ら提案した。 私「推しがね~もう最高で!かっこいいし可愛いし!もう推しのことしか考えられないw夢も腐も好きだからもう大変w推しは普段は超可愛くてやばいんだけど、シリアスではっこよくて頼もしくて~wギャップがもうたまんないの!エッチだし~!シリアスのときの色気がはんぱなくて素敵なのwキャッキャキャッキャ!」(小声ではある) Bちゃん「推しは一見性格悪そうに見えるけどほんとは優しくてそれが隠しきれない子なんだ。その優しさが好きなの」 Cちゃん「推しは天然なんだけど自分のことキレものだと思っててそこが可愛いんだよね」 Dちゃん「私は最近推しって感じの人はいないけど最近みたアニメのあの人がかっこいいなって気になってるかな」 お分かり頂けただろうか。 私の落ち着きのなさ、テンションの高さ、子供っぽさ。私は本当に「!」とか「w」とか着いてるみたいなテンションで喋る。この文章もなんとかぶっきらぼうな感じでテンションを抑えようと必死で書いてる。本当は「w」いっぱい着けたい。 みんなも学生時代とか20代前半くらいまではこんな感じ…だったと思うけどすっかり落ち着いている。誰か一人としか会えなかったときは、相手が落ち着いていても気にならなかったのに、4人で集まったら私だけ若い頃のテンションのままで急に気になり始めた。 ツイッターやラインでもみんな「!」とか「w」とか絵文字やスタンプが減っていっていたけどそれはあくまでSNS上でのことだったので全く気にしてなかった。 ジャンルで仲良くなったフォロワーの方がリア友より圧倒的に人数が多かったし、その人たちとはハイテンションで話していたからというのもあったと思う。 ジャンルで仲良くなった人たちは20代前半~半ばの人が多くて、みんなテンションが高くて自然と私もそうなっていったというか、そういう人に囲まれていてみんなが自然に落ち着いていく過程を歩まなかった。 若い子とキャッキャキャッキャハイテンションで推しの尊さとエッチさを語り、鍵垢なのをいいことにおちん〇ん!お〇んちん!と叫びまくっていた。他にも色んな下ネタ沢山。 実際会って遊んだフォロワーには「Aちゃん全然32歳に見えない若くて可愛いよ。小さい子みたい」とか言われて、私まだまだ若いんだ~!と喜んでいたし、「もう、私小さい子なんかじゃないよぅ(o`з’*)32ちゃいの大人のお姉さんなんだからね!みんなよりとちうえなの٩(๑òωó๑)۶あたちセクシーボインな大人のお姉さん!(๑ơ ₃ ơ)♥」とリプを送っていた。 やばい恥ずかしい死にたい。 フォロワーは本当に若いと思って褒めてくれたのかもしれないけど、言動が幼稚なところと、薄すぎる化粧と手入れされてない髪や爪、チープな服や持ち物が垢ぬけてなくて年齢不詳の子供おばさんぽくてそう感じたのかもしれないと震えた。 フォロワーと空リプで会話してよちよちぎゅっぎゅしたり、さっきみたいな私大人のお姉さん♥みたいなことを沢山言ってたし、昔若い頃ツイッターではよく見られたような、フォロワーと仲良しなアテクシアピールみたいなやり取りを未だに続けていたのだ。 久しぶりに同い年の友人と会って本当に本当に恥ずかしくなった。 考えなしに推しにお金を使いまくることも、ファッションのことも、テンションのことも、決して悪じゃないし、それが楽しくてずっとやり続けるんだって強く思ってる人はそれでいいと思う。でも私は自分の現状がとても32歳には思えなくて恥ずかしくなってしまった。どうにかしたいと思った。 どうにかしたいと思ったのに私はまた推しにジャブジャブお金を使い、着古した服ばかりを着て、フォロワーとハイテンションで話している。その時は楽しいのに、夜一日の行動等を思い返すと恥ずかしくて死にたくなる。 今度友人に相談してみようか。そしたら変われるだろうか。 Permalink | 記事への反応(16) | 17:06
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