#手作り雑貨ゆうつづ堂
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2023/8/18〜
8月18日 1人で過ごす時間が長すぎて、予定のある日が不安になっている。今日も明日も、ちょっとはしごするように人との予定があって遅れちゃいけない!とか、ちゃんと話さなきゃ行けない!とか思っていた。その気負いのせいなのか、昨晩から胃酸が出まくって空腹で胃痛を引きずっている。
でも!とっても今日ははしごして良い予定の1日だったと思う。 プリントと装丁をお願いしていたラボへ完成した作品を確認しに行く。最寄りの東銀座で下車して、歌舞伎座の中を通って地上へ行く。 東劇や新橋演舞場などがあるエリアなので観劇をしに来ている御婦人やご夫婦がたくさんいた。
ラボで若い女性の担当さんに作品を見せてもらう。 よかった、ひとまずよかった気がする。 担当さんとも出来上がりについて感想をいろいろ話し合って「展示も行かせて下さい!」と言ってくださったのでDMをお渡しした。
朝家を出た時DMを忘れたことに気がついて、その時、心身ともにだるすぎて、もういいか、と忘れたことに気がつかないふりをしてそのまま出かけようとしていたけれど、取りに戻ってよかった!
写真集の入金も済ませてこれであとは待つだけになった。
東京駅まで歩き、無駄に駅構内のお弁当や雑貨やお菓子を見て回って新幹線に乗る方々の波にのまれて旅行気分を味わう。 14時過ぎのお約束の時間にはだいぶ早そう、と思いながら、快速特急の中央線に乗って、実家の方面を目指す。今日は長島先生へ展覧会のお知らせという口実(?)でお家へお邪魔させてもらう約束をさせてもらっていた。 なんとなく実家には寄りたくない気持ちだったので、乗り換え駅でふらふらして、そしたらふと空腹感と共に胃痛が襲ってきて何か胃に入れなくては…!と焦る。 下車した駅前のローソンでソフトクリーム型のアイスを買って食べながら先生のお家まで向かおうと、写真でも撮っておこうとしたら、すっかりアイスを落としてしまった。
先生のお家には結局14時前に到着してしまって(14時過ぎが良い、と言われていた)、でも「暑いね〜大丈夫?」とお家に上げてくださった。 今日は息子さんはいらっしゃらなかった。 猫ちゃんが以前より近づいてきてくれて、足下でくんくんされたり、すっ、とふくらはぎに触れてきたり、先生曰く「だいぶ大丈夫なんじゃない!」と人嫌いの猫ちゃんが心を開いてきてくれていることを教えてもらった。
ターメリックのお茶を入れてもらい、いただいた本の感想や、写真展のお知らせや、いろんなメーカーのフォトコンテストのお話をした。ニコンのレビューに参加して小高さんにありがたい講評をいただいた報告ができた。エプソンのラボレンタルのことを教えてもらったので調べてみよう。
私の家族の話や病気の話もさせてもらって、確かに、流れ流されて今に至っていることが多すぎると思った。ずっとお互いに牽制し合ってこのままで、まあいいか、と思っていたけれど、ふと思い出す家族のことで私の生活がままならなくなってしまうのはとっても嫌なので、ふつーに思ったことを言ってあげようかな、みたいな気分になった。 向き合って話すことって、相手との関係性を良くしたい(結果良くしないといけない)ときにヘトヘトになりなが���することだと思っていた。でも結果最悪でも、そしたら関係性を断ち切る選択ができるし、大切な私の生活を生き残すためにも必要かもしれない。
そしてそうゆうことを気が付かせてくれる方に出会えて、もぐりで授業に潜入していただけの人間に、そんなことを教えてくれる方、とてもありがたい。
世の中には何だか生きやす��感じの人と、どこまでも生きづらい人がいて、どっちもいて良くて、私は生きづらがっちゃう人を好きになりがち。
本当にいろんな話をさせてもらっていたら、ご飯の時間が過ぎて、目の前の段ボール箱の上で丸くなっていた猫ちゃんが、にゃーにゃーお腹を空かせていた。
先生は足を痛めていて(たぶん私も患っている坐骨神経痛)つらそうだった。先日バレエの発表会があったとのことで、続いてお家には新しいシューズが届いていた。
人生を賭けて経験したことないことをしてみる、という意味で、妊娠という選択肢はあるかもしれない、と帰り駅まで送っていただいた車内で考えたりした。
8月19日 好きな人たちに会って悲しくなって早く帰ってお家で写真を撮った。 久しぶりの他人との予定に、行き先に迎えてくれる人がいる安心感と、キャンセル恐怖症を引きづりつつ家を出た。 明後日から起きられる気がしないな〜、もしだめだったら通院という言い訳を使おう、まで考えながら、あまり使わない路線の車窓を眺めて、先日誕生日だった友人のことを思い出してメッセージを送った。
この後会う好きな人たちのうち2人が今月誕生日なのと、おととい行って気に入りすぎたので今日もtealに行きプレゼントのお菓子を購入。 とても混んでいてカフェスペースは14時からのご案内、と言われていた。いつかジェラートを食べにいきたい。 とっても暑かったけれど最近知ったいい感じの街を歩くのは楽しくて、日本橋から大手町まで繋がった!
途中でロキソニンを買って、いつも2錠飲むと身体がしんどくなるので今日は1錠にしたらちょうどよかった。
コ本屋へ寄る余裕がなくなってしまいジュンク堂で最果タヒ書店を眺めて、水野しずと最果タヒの電子書籍でしか持っていない本と座礁船の詩のお香を購入。 昨日ブックタワーを頑張って組み立てたところなので強気になって本を買ってしまう。
友人と合流してベトナムレストランでおしゃべりをした。4人いるとクロストークになる。 登山の写真をまとめたブックを見せてもらった! 私はハイキングをする程の余裕はないので、とても良い風景とまとめられた写真たちに癒された。 私も新しい写真を何か撮りたいな〜と思って、今は写真展まではとりあえず写真展のことを考えておこう、と後回しにしている。
みんな色々考えたり、いろんなことをして、いろんな人に合っていて、これからもいろんなことがあるんだろうな〜、とひとの写真を見ると思う。それを後日談ばかり見せて、聞かせてもらうのは少し寂しくもなった。数日間ひとりでいたので私が完成されてしまっていて、あまりずっとみんなと居てはいけない!と途中で別れて帰ってきた。
昨日30歳になった友人は「30歳になりたくない!」と言っていた。それとマンスーンさんのグッズをくれるらしい。
帰ってきて、ふと今回の展示で大きく焼いた自撮りの写真と同じ服をきている、と気づき、お部屋で写真を撮っていた。バルコニーの外から東京音頭が聞こえてきてどこかで祭りをしているらしい。 確かに、こうゆう時「あ!祭り行こうよ!」とか不意に「花火しようよ!」とか連れ出せる相手がいるのは楽しいかも? それが毎回同じひとでなければもっと楽しいかも。
スーパーの桃がもうだめそうで、昨日までで連続桃習慣(週間?)を終えた。
ベトナムレストランのメニューに“日替わりお盆”セットというのがあったことを友���が見つけて「お盆が日替わり?!」と言っていて目の付け所が相変わらず良くて、さすが…!と思った。
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☆*CARAMEL MUSEUM情報 冬のCM ご参加作家様一挙ご紹介*☆
こんにちは♬キャラメルキューブです😊
開催まで、
残すところ
☆約1ヶ月☆
となりました♡❤︎♡
12月1日~12月26日の26日間、池袋PARCOさん 本館 B1Fにて開催する
🎪ハンドメイドの博物館🎪
✨🎄🎁CARAMEL MUSEUM 🎁🎄✨
開催発表BLOGはこちら✨
この度の投稿では、
CARAMEL MUSEUM参加作家様をご紹介
させて頂きます♡
今回はご参加作家様総数は
☆**160名様以上**☆
と過去最高のご参加数となっておりますのでぜひぜひご覧くださいませ☺
❆・*。+ CARAMEL MUSEUM 参加作家様一覧 +。 *・ ❆
(AtoZ)
作家様名・SP番号
※CC=CARAMEL CUBE CH=CARAMEL CUBE CHOCOLAT
✳︎* Cスペース 全日[12/1~12/26]参加作家様 * ✳︎
Limon 様 [ CH A-53 ]
✳︎* Cスペース 中期・後期[12/10~12/26]参加作家様 * ✳︎
tommy110369 様 [ CC BB-7 ]
✳︎* Cスペース 前期[12/1~12/9]参加作家様 * ✳︎
14にゃんこ 様 [ CH B-9 ] Atelier Chouchou 様 [ CH A-77 ] CiR:Shue Chloe 様 [ CH BB-6 ] Coco.co 様 [ CH AA-19 ] CRYSTAL GARDEN 様 [ CH A-9 ] empty 様 [ CH AA-22 ] Flower drops 様 [ CH A-80 ] grat jewelry 様 [ CH BB-41 ] handmade shop Rouge 様 [ CC AA-29 ] Lapis Moon 様 [ CH A-17 ] LittleSpica 様 [ CH AA-15 ] MaRin 様 [ CH AA-18 ] MOLTO MUPICO 様 [ CH AA-55 ] mijie 様 [ CH AA-86 ] NOMOAYA 様 [ CH BB-21 ] porupotoruko 様 [ CH A-2 ] pure*wire 様 [ CH AA-69 ] twinkle 様 [ CH AA-87 ] 藍猫屋 様 [ CH AA-36 ] あづまや 様 [ CH BB-31 ] 彗星の瞬き 様 [ CH A-84 ] 天使のくま房 様 [ CC A-11 ] 夜桜工房 様 [ CH AA-43 ]
✳︎* Cスペース 中期[12/10~12/17]参加作家様 * ✳︎
7palette 様 [ CH AA-26 ] blaue meer 様 [ CH BB-49 ] Classic Works 様 [ CH AA-71 ] honeyest 様 [ CC A-39 ] Kira Kawa Rainbow 様 [ CH AA-58 ] kurosu 様 [ CH BB-27 ] Mef屋 様 [ CC AA-26 ] our holiday 様 [ CH AA-13 ] rinae 様 [ CH A-57 ] sakuradrop 様 [ CC AA-46 ] tritum 様 [ CH BB-5 ] UsariBon୨୧Shop 様 [ CC BB-32 ] 烏水屋-うすいや- 様 [ CH AA-52 ] カンパネラ 様 [ CH AA-6 ] 煌鉱堂 様 [ CH B-42 ] くろねこ工房 様 [ CH BB-10 ] たいぇーるdeきゃび 様 [ CH A-78 ] はなばたけ 様 [ CH AA-23 ] ヒナノハナ 様 [ CH AA-94 ] ゆりすけあにまる 様 [ CH A-23 ] 花纏 様 [ CH B-20 ] 双月堂 twinCrescents★ 様 [ 外部作家様 ]
✳︎* Cスペース 後期[12/18~12/26]参加作家様 * ✳︎
396 様 [ CC A-12 ] LHM+Stantic 様 [ CH B-2 ] caprice 様 [ CH AA-5 ] haumygarden 様 [ CH AA-39 ] Jubilee 様 [ CH A-1 ] LuLuChronicle 様 [ CH BB-33 ] MAISON DE BAMBI 様 [ CH AA-72 ] nekomatalab 様 [ CH A-79 ] Novelize 様 [ CH AA-77 ] oldbasket 様 [ CC A-3 ] Spica LILA 様 [ CH AA-35 ] Stella rium 様 [ CH AA-25 ] SugarShark 様 [ CH BB-30 ] -tsukishiro- 様 [ CH AA-30 ] * yuru-yura * 様 [ CH A-51 ] あぅあ。 様 [ CH AA-49 ] 一色‐ひといろ‐ 様 [ CH AA-48 ] 戯ノ杜-SOBAEnoMORI- 様 [ CH AA-42 ] 三日月ノ木 様 [ CH BB-3 ] 心花-Shinka- 様 [ CH B-31 ] ななつ森 様 [ CH BB-35 ] 夜明玉 様 [ CH AA-73 ]
✳︎* Mスペース M2.3部[12/7~12/20]参加作家様 * ✳︎
ericknoza 様 [ CH A-3 ] 月華堂 様 [ CC B-12 ] 手作り雑貨 stella* 様 [ CH AA-57 ] 地球屋 様 [ CC BB-22 ]
✳︎* Mスペース M1部[12/1~12/6]参加作家様 * ✳︎
Anela 様 [ CH AA-60 ] ー Glaice ー 様 [ CC A-5 ] Hibiki's-M 様 [ CH B-14 ] DAISY MERCURY 様 [ CC BB-43 ] Juel Hearing 様 [ CH AA-28 ] kirari 様 [ CH A-81 ] Kuh☆lapin 様 [ CH BB-20 ] LED-Light Peer 様 [ CC BB-34 ] Linocuore 様 [ CC BB-23 ] MAD・HATTER 様 [ CC A-38 ] minim 様 [ CH B-15 ] Muguet-Lune 様 [ CH B-35 ] NERO 様 [ CH GG-7 ] NiamiL 様 [ CH AA-34 ] Recott 様 [ CH AA-29 ] sacosso 様 [ CH A-61 ] wangen 様 [ CH AA-74 ] WireJewelryねむひめ 様 [ CH AA-75 ] クママのレジン工房 様 [ CC AA-48 ] ぶらかみ堂 様 [ CC AA-34 ] ヘミスフィア 様 [ CH AA-45 ] らいむらいと 様 [ CC AA-38 ] 羽迦 様 [ CC A-31 ] 爪装猫丸 様 [ CH AA-89 ]
✳︎* Mスペース M2部[12/7~12/13]参加作家様 * ✳︎
Aqua Metacenter 様 [ CH AA-67 ] citron candy 様 [ CC BB-15 ] glisten 様 [ CC AA-41 ] Hotaru 様 [ CH B-23 ] Kirara Pokke & Kuu candle 様 [ CC B-7 ] little deer 様 [ CH A-12 ] Pyon.made 様 [ CH B-13 ] &RiRi❥❥ 様 [ CH BB-7 ] saucePOM 様 [ CC A-3 ] SheRa 様 [ CC AA-24 ] Soraha 様 [ CH BB-27 ] TsFactory&BLACKMASS 様 [ CC B-19 ] vivo. 様 [ CH AA-24 ] xuehui-3 様 [ CH B-1 ] かがち庵 様 [ CC BB-26 ] そばえのがっこう 様 [ CH B-4 ] ノエルリボン 様 [ CC A-20 ] まみ 様 [ CH B-32 ] ゆきはな 様 [ CH BB-38 ] 涼花堂 様 [ CC BB-10 ]
✳︎* Mスペース M3部[12/14~12/20]参加作家様 * ✳︎
Color!! 様 [ CH A-29 ] GlassOre 様 [ CH BB-1 ] HeiligHimmel 様 [ CC A-16 ] *hymn* 様 [ CC A-27 ] Lust 様 [ CH A-7 ] Magic Hour 様 [ CC B-6 ] mahana tiare �� [ CH A-16 ] misorairo 様 [ CH A-5 ] Nyomin~Fake*Sweets ~ 様 [ CC AA-47 ] saya_wanko 様 [ CH B-5 ] shine☆scheat 様 [ CC A-7 ] SiLent VoicE 様 [ CC B-2 ] tammy’s factory 様 [ CH AA-62 ] THEORY_MOVE 様 [ CH BB-17 ] 月鉱堂 様 [ CC A-22 ] こむちくはうす 様 [ CC A-25 ] 蒸朋房 様 [ CH B-4 ] チカとフミコ 様 [ CC B-9 ] ねじゅまるショップ 様 [ CH A-54 ] フルリー魔法堂 様 [ CH AA-50 ]
✳︎* Mスペース M4部[12/21~12/26]参加作家様 * ✳︎
ashelia 様 [ CH BB-15 ] BROWN TABBY 様 [ CH A-82 ] Cats,Wind & Fire 様 [ CH BB-34 ] Fickle Garden 様 [ CH A-28 ] flap・flag 様 [ CH AA-46 ] Handmade accessory LOCO 様 [ CH BB-42 ] i-palette 様 [ CC A-1 ] komorebi 様 [ CH B-17 ] Lacrime ~ラクリメ~ 様 [ CH B-11 ] niinaミニチュア傘 様 [ CC B-21 ] NODOKA 様 [ CH B-40 ] Petit Lapin 様 [ CH A-32 ] R-kadanS 様 [ CH AA-45 ] tailorDream 様 [ CC B-4 ] Viocrista 様 [ CH AA-88 ] YANESSANCE 様 [ CC BB-26 ] 花魁鳥* 様 [ CH B-33 ] 金の庭 様 [ CH A-24 ] 月のきまぐれ 様 [ CH AA-7 ] 黒蜥蜴亭 様 [ CH AA-92 ] こなみこや 様 [ CH AA-2 ] 深草院 様 [ CH A-20 ] 橘屋 様 [ CH A-13 ] をりをり-woriwori- 様 [ CC A-9 ]
以上の作家様でお送りいたします♡
✨❄️✨冬のキャラメルミュージアム✨❄️✨
今回は夏季期間での開催となって
シックで温かみを感じる作品が多くご出品予定でとっても楽しみです💚❤️
その時、その瞬間が出会いの素敵なハンドメイド作品と出会える事間違いございません♪
ハンドメイドの博物館
🌈💍🐠CARAMEL MUSEUM 🐠💍🌈
12月1日~12月26日の26日間、池袋PARCOさん 本館 B1Fにて開催です♬
沢山の素敵な作家様が池袋に集まるこの機会を是非お見逃しなく😄
最新情報はツイッターハッシュタグ
お目当ての作家さんの新作も見れちゃうかも⁉️
#CARAMEL_MUSEUM
開催までいよいよ1ヵ月となりますので随時情報を更新していきます❢
今後もお楽しみに😉
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【お知らせ】 植原翠先生『手作り雑貨ゆうつづ堂 ~アイオライトの道標~』の装画を担当しました。 二巻目はお店をあたたかで優しい光で包んでみました✨
著:植原翠 出版元:マイナビ出版 レーベル:ファン文庫 デザイン:ベイブリッジ・スタジオ 発売日:2/19 ISBN:978-4839975487
https://amazon.co.jp/dp/4839975485
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早々にゲットしました! 植原翠ちゃん先生著、『手作り雑貨ゆうつづ堂』 かなり楽しみであります!! #植原翠 #手作り雑貨ゆうつづ堂 #マイナビファン文庫 https://www.instagram.com/p/CFR6DaInxwk/?igshid=adm29ta5itc5
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物が苦手で食べ物が好きな話
[物が苦手な話]
物が苦手です。正確に言うと、物を所有するのが苦手です。物のことは好きだ。雑貨屋ですてきな物を眺めていると幸福になれる。インテリアも服も建物も乗り物も、世の中めちゃくちゃに綺麗で可愛くてかっこよくてときめく物がたくさんある。でも私は、それを所有するのが苦手です。
お気に入りのぬいぐるみがあったり好きなものに囲まれた部屋で過ごしている人の方が、なんとなく人間らしくて優しくて愛おしいような気がします。気がしているのですが、私が私の精神に従って私の部屋を私が居心地良い部屋にしていくと、物はどんどん減っていくのです。
さて、私は人生で2回、所有物をいっぺんにリセットされています。一度目は仙台に住んでいた12歳のとき、東日本大震災で。二度目は17歳の時、火事で。
一度目のショックは大したものではありませんでした。東日本大震災という事象そのもののショックが大きすぎたし、それによって全国に私よりも大変な目に遭っている人がたくさんいたから。つい今朝まで整理され積み上げられてきた物達がガラクタのように散乱した部屋を見て、(形あるものって、いずれ朽ちるんだ)とぼんやり思ったような気もするのですが、なんせまだ12歳です。自分で心から欲しいと思いこだわりを持っていたものなんてそうそうありませんし、まだ大抵の家の中にあるものは私だけのものではなく、家族と共有しているものでした。
しかし二度目のショックはなかなかのものでした。17歳の5月、夜桜を見に友人の車でドライブし家に送ってもらったらなんだか家の前に新聞記者や野次馬や消防車が集っていて、消防士が2階にある私の部屋の窓を破り部屋の中にホースで水を蒔いていました。その時住んでいた家は6LDKに地下室をつけたそれなりに大きい一戸建てだったのですが、家の中にあったものは勿論、家そのものも後に解体することになりました。家族と私は文字通り「着のみ着のまま」で、0からありとあらゆる物をまた買い直さなくてはなりませんでした。その事象は震災と違って私と私の家族だけのものであったし、17歳ともなれば自分の強い意志で選び、買った思い入れのある物もそれなりにありました。しかしそれらも全て平等に、一瞬にして灰、もしくは水浸しのゴミになっていました。形がある物だから。
さて現在、私は人から貰ったもの以外、基本的に物を���てるときに全く躊躇しません。形あるものはいずれ朽ちるのです。形あるものは、いずれ、朽ちるのです。それは私にとってとてもリアルな映像として残っています。形あるものたちが一瞬で灰となり水浸しのゴミとしか呼べない姿になった映像として。
経験によって「形あるものはいずれ朽ちる」が強烈な印象を私に残したせいか、気づけば私は物をあまり大事にできないという習性を持ってしまいました。正直に言うと自分の一番嫌いなところであり一番のコンプレックスです。努力でどうにかなることなのに未だに改善されていないから(例えば努力でどうにもならない身長などはそもそもコンプレックスになりません。コンプレックスに思うだけ無駄なので)。また同時に、物に対する精神のキャパも少ない。物が増えるとそれらのものを把握できなくなって扱い方がよく判らなくなる。私には持てるものが限られていると感じます。そしてそのキャパはおそらく多くの人より小さい。そうして私は物を所有することが苦手になりました。
最近ミニマリストになると何が良いかみたいな動画を観たりして、まあそれは一理あるのですが、私が物を持ちたくない理由は、汚れたり朽ちたり捨てたりいらなくなる瞬間が嫌だからです。大事なものではなくなる瞬間が嫌だ。怖くてたまらない。そのような理由で、私はアイドルオタクを長年しているのですが、家には全くグッズがありません。トレカにも一才の興味がありません。物だからです。好きな人の顔が印刷されているものであればより一層、汚れたり朽ちたり捨てたりいらなくなる瞬間を想像すると嫌でたまりません。なので最初から持たないようにしています。金を落としたい気持ちはあるのですが、本当に…グッズという点では全然貢献できません、ごめんね。最近は例えばBTSのIN THE SOOPのように金を払えば形ない情報や映像を買えるスタイルも広まっていて私は個人的にとても助かっているのですが、やっぱり形あるDVDやボックスが欲しいという人の意見を見るととても優しく温かく人間味のあるように感じるし、自分が斜に構えためんどくさくて冷たい人でなしに感じます。
が、なんかもうそこは今仕方ないし私の人生は私のためにあるので私は(他人に迷惑をかけない範囲で)私の精神が望む通りに生きていこうと思いますでも心臓のないクソ斜構ミニマリストと思われたくねーーーという気持ちもあるぜ!!!!てかミニマリストの定義が何か知らんけど後先考えない失敗の買い物することも全然あるし。買い物下手なのに物を持ちたくないからひたすら常に色んなものを捨てまくっている人になってめちゃくちゃ嫌だな。てかなくならないいつ終わりが来るかわからない物を所有するのは苦手なんだけど普通に綺麗なものや素敵なものを見るのは好きだしそれを買って自分のものにすることがサイコーなのはわかるしとか考えたところでああだから私は食べ物のことが好きなのかもなと思いました。
[食べ物が好きな話]
食べ物はいい。特に好きなのは果物と野菜。あざやかで綺麗でいろんな形に切れて栄養があって美味しくて、食べたらなくなる物。
特に切られた野菜のことが好きです。めちゃくちゃ可愛い。色とりどりで小さくてたくさんあって可愛くて、もしかして小さな女の子がキラキラしたビーズやボタンにうっとりしている感覚に近いのでしょうか?ちいさく切られた色々な種類のカラフルな野菜たちを見ているのがすごく好きです。そしてそれは去年1年間、国際寮の食堂で平日毎日100人分の野菜を切るという食堂のおばちゃんバイトをしたことでかなり助長されました。料理だけでなく掃除や皿洗いもあり結構な肉体労働で、私が在籍していた1年間の間に7人が新しく入り8人が辞めていったのですが、私はその仕事が大好きでした。大好きな切られた野菜を100人分も眺めていられるバイトなんて、飲食店の厨房か食堂のおばちゃんくらいでしょう。飲食店の場合厨房といえど相手は店に来てくれるその日によって違うお客様なのでプレッシャーはあるでしょうが毎日その食堂に住んでいる必ず来る人たちを相手にしている食堂のおばちゃんは本当にストレスフリーです。天国。「私は、野菜のことが、好きだー!!!!!」という明確な自覚が育ちました。野菜塩です。今のアカウントからTwitterをフォローしてくれている人はもしかして私の名前が「いしお」なのを知らないんだろうか 野菜が好きなので繋げてやさいしおにしました いしおさんです(自己紹介)。
私のことを料理好きと思っている人もいるかもしれませんがいやまあそれなりに好きですが正直料理より野菜の方が好きですね。私のオタク飯記録画像を見てくれている人は気づいているかもしれませんが、私は基本的に大した物を作っていません。ただ野菜をめっちゃ並べているから一見彩りが良いだけです。あの画像は料理というより、食べ物を並べてるだけです。私にとって料理とは野菜を映える形に加工するプロセスなのかもしれません。いや食べるのも味わうのも勿論かなり好きなんですけど、正直味で言うと美味しいもの食いたけりゃプロが作った店行くので、てか辛ラーメンが家で食えるものの中で一番美味いし、家で自分が食う飯に対しては味以上に健康的にバランスが取れていて目で見た時にいい感じであればそれでいいと思っている。味は二の次。家での飯は味覚より視覚。食べ物の顔ファン。産地直送春野菜とかマジでビジュ良すぎ。顔ファンのアンチは私より野菜食ってから口開きな。土井善晴先生も言ってますからね、毎日の家ご飯なんてめちゃくちゃ味しい必要ないって。多分私の料理は手際良くてバランスは取れてるけど、めちゃくちゃ美味しいわけではないと思う。でもそれでいいのよ。所詮顔ファンなので。
ということで今回のブログをまとめると、「家燃えて以来物を持つのが苦手になったオタクは食ったらなくなる物である食べ物(特に野菜)がめっちゃ好きになった」というだけの話です。前半ちょっとシリアスっぽかったのですが後半は野菜への愛でテンション上がって偏差値が15くらい下がりました。そんな訳でこれからも物が少ない部屋で野菜食いながら生きていこうと思います。あと私は酒も含め食べ物に関してはたいへん幸福なことにアレルギーも好き嫌いも本当に全くないので、ビジュ良い食べ物があったらいつでも待ってるからね♡
完
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9月10日の役者紹介
はいどうもこちら9月7日お昼下がりのクオリアです。33期です。野良の幕班員の仕事がないのでこっそり役者紹介していこうと思います。
黍
ウチのマイメン神友ズッ友フォーエバーきびのまきび。何度バ先を聞いても人を殺すバイトと言われ、クオリアだけには家の場所を教えないよう先輩に釘をさしたらしい。それでも君は私のズッ友。
これで何度目か知らないが君のセンス全てが好きさ。でも僕の見ている君はきっと氷山の一角なんだろうね……そんな!氷山の一角だなんて!じゃあ全ての力が解放されたらどうなっちゃうの?!次回「黍、はじめてのモルカー」デュエルスタンバイ!
ふう。
やらかすと怖いから同期から先紹介しちゃお。
竹之内かの
雰囲気だけでちゃうかの汚れを浄化し、優しいアロマの香で包み込む。その柔らかな笑顔の前では皆鼻の下が伸びきるため、真剣佑さえ3頭身になるとの噂も。可愛らしい雰囲気とは裏腹に、鼻の底に潜む狂気が沸々と泡立つ。これがパンケーキの泡なのか、マグマなのか私には分からない。しかし、天然かつ一品ものであることは確実だ。
田中かほ
彼女の笑顔は次世代のエネルギーとして日本中が期待を寄せる。余りにもにっこりかわいいために最近ビリケンさんが自信喪失中とのこと。しかし、ゆるゆるした空気に釣られてなめてかかってはいけない。すぐ様舌先の刃でとどめを刺される。ハニトラにかかった気分だよ全く。そんなとこもす
余談だが大道具の出席率は150%。1ミリも関係ない映像編集を手伝ってくれたしめちゃくちゃ優しい子。努力家な彼女には見習うべき点がおおい。
山根拓己
アラビア山脈の奥底には険しくも厳しい砂漠がある。そこに眠るオアシスを巡り、人々は幾千もの争いを繰り返していた…。争いは熾烈を極めたが、その中でも初回裏敗退を果たし、地区予選に進めなかった一族がいる。かつあげを恐れた彼らはせめて幼き者だけでも、イカダを使って赤子を海に流した。それこそが彼、しあらである。そのため、彼は30歳になったらシカゴに帰らなくてはならないらしい。
ベジ山ハム太郎
なんか野菜がいっぱい入ってる。私はハムサンドよりもたまごサンドの方が好き。多分食べ進めると中にいちごジャムとかはいってると思う。何でいちごジャムなのー?って聞いたらエヘヘへへって笑いながら「だってさー、美味しくない?ジャムってさあ、何にでも合うねんなぁ。エヘヘへへっえ、美味しくない?美味しくない?なあハク、美味しいよなぁ?なぁ?」て言うと思う。絶対。
君安飛那太
可愛い。可愛いけど可愛いと思ってはいけない。なぜなら奴はあざといからだ。前世で橋本環奈の爪の垢とか飲んだに違いない全くもう羨ましいぜ。いいヴォイスでいいキャラが繰り広げられるため君のシーンは飽きの来ない面白さがある。キレッキレな演技には見習うべきところが多い。あと可愛い。
頬張りマスト
最近上野動物園を脱走したパンダ。笹と竹の見分けに苦戦している。
#劇団ちゃうかちゃわん
オペさん
藤丸翔さん
右手にナグリ、左手に灯台、その口うねり出すは鋭きツッコミ。「1人三種の神器」というあだ名が着いたのも納得だ、その全てが一等品なのだから。彼が1人立っているだけで会話の盛り上がりが違う。一見滑りそうなボケだって彼の手に掛かればA級ギャグに早変わりするぜ。これには平野レミもびっくり。
スダチさん
うどんに入れると美味しいが、ちゃうかのちゃわんに入れるともっと美味しい。人々を釘付け、否、インパクト付けにする映像を華麗に作り続ける須田さん、その鋭い眼差しの先には一体何が見えているのか。たまに楽屋裏でお菓子をつまむ様を見かける。有能細身イケメンがお菓子もぐもぐして���の可愛い。映像余裕持って出したかったごめんなさい
久保勇貴さん
あいも変わらず忙しそう。オムニ期間くらいまでは会う度に印象が変遷していた。今のところはダークブルーで描かれてる3日後ピンクとかになってるかも。制作会計などまとめるお仕事が多そうだけどストレスまで抱えちゃダメよ適度に除いてね。と、言っても頑張ってしまうのがくうやさんなんだろうけど。
私の本名頬張りマストなんで苗字が「ほ行」じゃないですか。そうすると大体最後に回されるんですよ。給食で好きなおかず選べるみたいなのあったんだけど大抵唐揚げとか残ってなくてなんか鯖の塩焼きでがっかり、みたいな。なんで今回はオペさんを間に挟もうと思いました。名付けてオペサンド!すだちうどんの次に美味しそう。
先輩方
敬称は略しませんが敬語は略します。あぶり焼きとかしたら出てくるかもしれないです。あぶり焼きしないでください。
でぃあっ♡さん
でぃあさんが立ち上がると風がお辞儀し、空気が弦をはり始める。その圧倒的なプロポーションの良さに空いた口がマンホールになりそう。だけど何か教えてくれる時はとっても優しい。これは33期への自慢だが私はでぃあさんと柔軟を組ませていただいたことがある。どうだ羨ましいだろうでへへへ。
ひろせんせーさん
CVが豪華とのことでこの夏話題沸騰中。たちまちTwitterのトレンドを掻っ攫い、街にはグッズが溢れかえった。何のとは言わないが演技を始めた瞬間役が憑依して、貫禄まで滲む彼の演技力たるや。因みにアドリブもツョツョっぽい。なんてこったぱんなこった。
島﨑愛乃さん
鈴を転がしたような透明な声と花を摘んだような朗らかな笑顔のこっこさん。こっこさんの歌声を例えるなら夏に雑貨屋で売ってる、ピンク色の小瓶にちょこんと詰まった可愛らしい飴。ついつい手に取ってしまい、時々カランコロンと鳴らして楽しい、でも頬張ったらゆるゆる溶けちゃう、そんな飴。
おはようさぎさん
余りにもいい人。力作業も編集も演技もラップも全部すげぇのにその上いい人だから33期の尊敬の眼差しを掻っ攫ってる。信念に少年漫画をめちゃくちゃ感じる。ぶびさぎょうで理想の恋について(私が)語ってたらいつの間にやらガウスさんが話してた。黒の組織の話に移り変わってた。なんでやねん。髪色なんでも似合ってて凄い。
土下座したい
謝りたい気持ちが先行しすぎたまずい。舞台の上ではエモを、放課後にはハケを自在に使いこなす我らがぶびチの橋本悠樹さん。私は後輩に怒らない���とで定評のあるはっしーさんを悉く困らせてしまったため顔向けが出来ない。なので二度とペンキを撒き散らさないことを50回くらい誓おうと思います。私はそうなれないことを知った上ではっしーさんにめちゃくちゃ憧れている。センスもノリの良さも色々。だからなんだって話だけど迷惑かけるかもしれないが見守っててほしい🙇♀️
津島ヨモツさん
演出家と役者、2デッキ使いののちぇさん。31期Tシャツもドタイプです。せんびののちぇさん入れたら3デッキかもしれない。後、先輩としても優しいのが伝わってくるしお話面白いし1、2、3…あれ?もしかしてNデッキ使い?のちぇさん最初めっちゃしっかりした人かと思ったらしっかりしてるんだけど偶にふにゃふにゃしてて可愛い。
堀文乃さん
圧倒的な演技力と唯一無二の安定感を誇るカリスマらめるさん。凄すぎる人って周りの人が遠慮して近づけなくなったりしがちだけど(後輩の身分だと悪気なくそうなっちゃう)そうならないのはらめるさんのお人柄ゆえ。私たちにも積極的に絡んでくださってしかもめっちゃ優しいから「らめるさん〜🥺」ってなる。仕事あまり抱えすぎないでお体ご自愛ください🙇♀️
中津川つくもさん
よく絡んでくださる優しい先輩。いっぱいお話しできるのめっちゃ嬉しい!舞監としてのしっかりしたつくもさんと、普段の明るく優しいつくもさんどっちもカッコいいんだもん憧れちゃうよねー。あ、あとダンス💃がお上手すぎてポケ〜って見惚れてまう。なんて言うか…美しい。あと立て看の作り方は大体つくもさんに教えていただいた。カフェ行きたいですカフェカフェ。
なしもとはなさん
あまりにもハマり役。はなさんがセリフを喋る度に関係ない私にまでグッとくるものがある…グッとね…こうグッと…。ぐはっ!
後輩と喋ってくださる時めちゃ優しい。前、稽古で2人になった時私のセリフ読みにめちゃ付き合ってくれた。あとコーナンの場所もめちゃ教えてくれた。めちゃめちゃ美しくて優しい先輩。めちゃっ。
雑賀厚成さん
演技や部署で絡まない人(私)にもお疲れ様〜とか声かけてくれたり兎に角優しいシドさん。この前音響会議のお菓子くれた。やったね!喉にカセットテープ飼ってるタイプの人間。先輩曰くKing Gnuが“よすぎる“らしいので今度リクエストしようと思う。私の目の前で歌ってくれないかな…チラッ(p_-)
杏仁アニーさん
全部署の裏方における圧倒的ハイセンス、柔らかな微笑みと眼差し、息飲む演技力、悪人のパンダでさえ涙しそうな優しさ…どの角度から見ても完璧すぎてルービックキューブが土下座するレベル。ちなみに後輩の私は頭が半分くらい���面にのめり込んでる。めりめり。センスがハンパないし仕事のキャパもエゲツない。けど無理はしないでほしいよドラゲナイ。
トニーー板倉さん
電車で鉢合わせたため奴は隣にいる。ここらへんから9月10日世界線のクオリアですどうも。魅惑のヴォイスとアフロを武器にちゃうかの奴隷となった男、とにさん。照明しかり稽古しかり全体像を俯瞰するのに長けてる人だと思ってる。面倒見良いし、1番頼りにしてる先輩。だる絡みしてごめんねウザかったら練4から突き落としてもいいよ、怪我のない範囲で。
西田幸輝さん
ゆるゆるとした空気感を醸し出しながら舌先から放たれる言葉は切れ味抜群。ギャップ萌え選手権審査員賞を受賞した経歴は伊達じゃない。ちなみに伊達巻は美味しい。頼もしき大道具の方。なんか大道具上層部って共通する空気感ないですか?え、ないかな。なかったらごめん。ないかも。声のトーン好きです。衣装も似合ってます。ちゅるちゅる。
暁あじろさん
ニトロさん。名前が美味しそうなちゃうかランキング8位くらいを飾る強者。高身長イケメン抜群の運動神経などモテる要素のよりどりみどり風見鶏パック。でもどことなく"こっち側“の雰囲気を持ち合わせてるのがいい出汁になってる。こんな失礼な私にも優しく接してくれたことからも根っからのいい人だと伺える。頼りにしてますニトロさん🙇♀️
山内詫助さん
オレオの何がいいってさ、クッキーの間にクリームが挟まってるところだよね。でさ、オレオさんの良いところってさ、その優しさの間に神的なセンスとマグマのような謎が挟まってるところだよね。紹介するならそんな感じの人だと思っている。ちなみにオレオさんの深淵は覗いたことないからわからない、当たり前か。
西岡克起さん
神の経路と書いて神経と読むが、そのことを実感するのがこの方。抜群の運動神経、寸分狂いの無い書、圧巻の演技力、すぐ始まるジャン負け…凄い、あまりにも凄すぎる。彼の身体には神が駆け巡っているに違いない。会話途中で「ねぇクォーリー散歩いこー」とか「自販機行こー」とか思い立ったが即行動って感じの誘い方してくれる。んで着いてくと大体楽しい。西岡さんが楽しい人だからね、これからもいっぱい話してほすぅい
かけうどんさん
誰とも共有できなかったところでシンパシーを感じるため、先祖で交流があったのかもしれない。万屋の店員と客とか仙人と弟子とか。ひねくれてると言っていたが、そのひねくれを真っ直ぐ貫けるのがロッドさんなのだろう。世間に合わせてひねくれを捻じ曲げ��しまう方が実はひねくれなんじゃないかうんぬんかんぬん…あと竹川食堂行きたすぎる料理作ってくんで招待してください🙇♀️
高井下高井戸店さん
センスいいとか多才とか言われ慣れてるでしょ?でもなんぼあっても困るもんじゃないですからね、何度でも言いますセンスいいし多才かよ。習ってないピアノを練習したりギリシャ神話や日本史の本借りてるところを見た。自分が思う良いものに対して向き合ってどんどん吸収していく人なんだろうな。センス良いって結局はそういうことを言うんだろうなと思ってる。あとお化粧した時のお顔が可愛くて好き。あとロビさんとお話し出来ると嬉しくて心がぴょんぴょこするのでもっと話しかけて良いですか?
完
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厚着紳士
夜明けと共に吹き始めた強い風が乱暴に街の中を掻き回していた。猛烈な嵐到来の予感に包まれた私の心は落ち着く場所を失い、未だ薄暗い部屋の中を一人右往左往していた。 昼どきになると空の面は不気味な黒雲に覆われ、強面の風が不気味な金切り声を上げながら羊雲の群れを四方八方に追い散らしていた。今にも荒れた空が真っ二つに裂けて豪雨が降り注ぎ蒼白い雷の閃光とともに耳をつんざく雷鳴が辺りに轟きそうな気配だったが、一向に空は割れずに雨も雷も落ちて来はしなかった。半ば待ち草臥れて半ば裏切られたような心持ちとなって家を飛び出した私はあり合わせの目的地を決めると道端を歩き始めた。
家の中に居た時分、壁の隙間から止め処なく吹き込んで来る冷たい風にやや肌寒さを身に感じていた私は念には念を押して冬の格好をして居た。私は不意に遭遇する寒さと雷鳴と人間というものが大嫌いな人間だった。しかし家の玄関を出てしばらく歩いてみると暑さを感じた。季節は四月の半ばだから当然である。だが暑さよりもなおのこと強く肌身に染みているのは季節外れの格好をして外を歩いている事への羞恥心だった。家に戻って着替えて来ようかとも考えたが、引き返すには惜しいくらいに遠くまで歩いて来てしまったし、つまらない羞恥心に左右される事も馬鹿馬鹿しく思えた。しかしやはり恥ずかしさはしつこく消えなかった。ダウンジャケットの前ボタンを外して身体の表面を涼風に晒す事も考えたが、そんな事をするのは自らの過ちを強調する様なものでなおのこと恥ずかしさが増すばかりだと考え直した。 みるみると赤い悪魔の虜にされていった私の視線は自然と自分の同族を探し始めていた。この羞恥心を少しでも和らげようと躍起になっていたのだった。併せて薄着の蛮族達に心中��盛大な罵詈雑言を浴びせ掛けることも忘れなかった。風に短いスカートの裾を靡かせている女を見れば「けしからん破廉恥だ」と心中で眉をしかめ、ポロシャツの胸襟を開いてがに股で歩いている男を見れば「軟派な山羊男め」と心中で毒づき、ランニングシャツと短パンで道をひた向きに走る男を見れば「全く君は野蛮人なのか」と心中で断罪した。蛮族達は吐いて捨てる程居るようであり、片時も絶える事無く非情の裁きを司る私の目の前に現れた。しかし一方肝心の同志眷属とは中々出逢う事が叶わなかった。私は軽薄な薄着蛮族達と擦れ違うばかりの状況に段々と言い知れぬ寂寥の感を覚え始めた。今日の空が浮かべている雲の表情と同じように目まぐるしく移り変わって行く街色の片隅にぽつ念と取り残されている季節外れの男の顔に吹き付けられる風は全く容赦がなかった。 すると暫くして遠く前方に黒っぽい影が現れた。最初はそれが何であるか判然としなかったが、姿が近付いて来るにつれて紺のロングコートを着た中年の紳士だという事が判明した。厚着紳士の顔にはその服装とは対照的に冷ややかで侮蔑的な瞳と余情を許さない厳粛な皺が幾重も刻まれていて、風に靡く薄く毛の細い頭髪がなおのこと厳しく薄ら寒い印象に氷の華を添えていた。瞬く間に私の身内を冷ややかな緊張が走り抜けていった。強張った背筋は一直線に伸びていた。私の立場は裁く側から裁かれる側へと速やかに移行していた。しかし同時にそんな私の顔にも彼と同じ冷たい眼差しと威厳ある皺がおそらくは刻まれて居たのに違いない。私の面持ちと服装に疾風の如く視線を走らせた厚着紳士の瞳に刹那ではあるが同類を見つけた時に浮かぶあの親愛の情が浮かんでいた。 かくして二人の孤独な紳士はようやく相まみえたのだった。しかし紳士たる者その感情を面に出すことをしてはいけない。笑顔を見せたり握手をする等は全くの論外だった。寂しく風音が響くだけの沈黙の内に二人は互いのぶれない矜持を盛大に讃え合い、今後ともその厚着ダンディズムが街中に蔓延る悪しき蛮習に負けずに成就する事を祈りつつ、何事も無かったかの様に颯然と擦れ違うと、そのまま振り返りもせずに各々の目指すべき場所へと歩いて行った。 名乗りもせずに風と共に去って行った厚着紳士を私は密かな心中でプルースト君と呼ぶ事にした。プルースト君と出逢い、列風に掻き消されそうだった私の矜持は不思議なくらい息を吹き返した。羞恥心の赤い炎は青く清浄な冷や水によって打ち消されたのだった。先程まで脱ぎたくて仕方のなかった恥ずかしいダウンジャケットは紳士の礼服の風格を帯び、私は風荒れる街の道を威風堂々と闊歩し始めた。 しかし道を一歩一歩進む毎に紳士の誇りやプルースト君の面影は嘘のように薄らいでいった。再び羞恥心が生い茂る雑草の如く私の清らかな魂の庭園を脅かし始めるのに大して時間は必要無かった。気が付かないうちに恥ずかしい事だが私はこの不自然な恰好が何とか自然に見える方法を思案し始めていた。 例えば私が熱帯や南国から日本に遣って来て間もない異国人だという設定はどうだろうか?温かい国から訪れた彼らにとっては日本の春の気候ですら寒く感じるはずだろう。当然彼らは冬の格好���して外を出歩き、彼らを見る人々も「ああ彼らは暑い国の人々だからまだ寒く感じるのだな」と自然に思うに違いない。しかし私の風貌はどう見ても平たい顔の日本人であり、彼らの顔に深々と刻まれて居る野蛮な太陽の燃える面影は何処にも見出す事が出来無かった。それよりも風邪を引いて高熱を出して震えている病人を装った方が良いだろう。悪寒に襲われながらも近くはない病院へと歩いて行かねばならぬ、重苦を肩に背負った病の人を演じれば、見る人は冬の格好を嘲笑うどころか同情と憐憫の眼差しで私を見つめる事に違いない。こんな事ならばマスクを持ってくれば良かったが、マスク一つを取りに帰るには果てしなく遠い場所まで歩いて来てしまった。マスクに意識が囚われると、マスクをしている街の人間の多さに気付かされた。しかし彼らは半袖のシャツにマスクをしていたりスカートを履きながらマスクをしている。一体彼らは何の為にマスクをしているのか理解に苦しんだ。 暫くすると、私は重篤な病の暗い影が差した紳士見習いの面持ちをして難渋そうに道を歩いていた。それは紳士である事と羞恥心を軽減する事の折衷策、悪く言うならば私は自分を誤魔化し始めたのだった。しかしその効果は大きいらしく、擦れ違う人々は皆同情と憐憫の眼差しで私の顔を伺っているのが何となく察せられた。しかしかの人々は安易な慰めを拒絶する紳士の矜持をも察したらしく私に声を掛けて来る野暮な人間は誰一人として居なかった。ただ、紐に繋がれて散歩をしている小さな犬がやたらと私に向かって吠えて来たが、所詮は犬や猫、獣の類にこの病の暗い影が差した厚着紳士の美学が理解出来るはずも無かった。私は子犬に吠えられ背中や腋に大量の汗を掻きながらも未だ誇りを失わずに道を歩いていた。 しかし度々通行人達の服装を目にするにつれて、段々と私は自分自身が自分で予想していたよりは少数部族では無いという事に気が付き始めていた。歴然とした厚着紳士は皆無だったが、私のようにダウンを着た厚着紳士見習い程度であったら見つける事もそう難しくはなかった。恥ずかしさが少しずつ消えて無くなると抑え込んでいた暑さが急激に肌を熱し始めた。視線が四方に落ち着かなくなった私は頻りと人の視線を遮る物陰を探し始めた。 泳ぐ視線がようやく道の傍らに置かれた自動販売機を捉えると、駆けるように近付いて行ってその狭い陰に身を隠した。恐る恐る背後を振り返り誰か人が歩いて来ないかを確認すると運悪く背後から腰の曲がった老婆が強風の中難渋そうに手押し車を押して歩いて来るのが見えた。私は老婆の間の悪さに苛立ちを隠せなかったが、幸いな事に老婆の背後には人影が見られなかった。あの老婆さえ遣り過ごしてしまえばここは人々の視線から完全な死角となる事が予測出来たのだった。しかしこのまま微動だにせず自動販売機の陰に長い間身を隠しているのは怪し過ぎるという思いに駆られて、渋々と歩み出て自動販売機の目の前に仁王立ちになると私は腕を組んで眉間に深い皺を作った。買うべきジュースを真剣に吟味選抜している紳士の厳粛な態度を装ったのだった。 しかし風はなお強く老婆の手押し車は遅々として進まなかった。自動販売機と私の間の空間はそこだけ時間が止まっているかのようだった。私は緊張に強いられる沈黙の重さに耐えきれず、渋々ポケットから財布を取り出し、小銭を掴んで自動販売機の硬貨投入口に滑り込ませた。買いたくもない飲み物を選ばさられている不条理や屈辱感に最初は腹立たしかった私もケース内に陳列された色取り取りのジュース缶を目の前にしているうちに段々と本当にジュースを飲みたくなって来てその行き場の無い怒りは早くボタンを押してジュースを手に入れたいというもどかしさへと移り変わっていった。しかし強風に負けじとか細い腕二つで精一杯手押し車を押して何とか歩いている老婆を責める事は器量甚大懐深き紳士が為す所業では無い。そもそも恨むべきはこの強烈な風を吹かせている天だと考えた私は空を見上げると恨めしい視線を天に投げ掛けた。 ようやく老婆の足音とともに手押し車が地面を擦る音が背中に迫った時、私は満を持して自動販売機のボタンを押した。ジュースの落下する音と共に私はペットボトルに入ったメロンソーダを手に入れた。ダウンの中で汗を掻き火照った身体にメロンソーダの冷たさが手の平を通して心地よく伝わった。暫くの間余韻に浸っていると老婆の手押し車が私の横に現れ、みるみると通り過ぎて行った。遂に機は熟したのだった。私は再び自動販売機の物陰に身を隠すと念のため背後を振り返り人の姿が見えない事を確認した。誰も居ないことが解ると急ぐ指先でダウンジャケットのボタンを一つまた一つと外していった。最後に上から下へとファスナーが降ろされると、うっとりとする様な涼しい風が開けた中のシャツを通して素肌へと心地良く伝わって来た。涼しさと開放感に浸りながら手にしたメロンソーダを飲んで喉の渇きを潤した私は何事も無かったかのように再び道を歩き始めた。 坂口安吾はかの著名な堕落論の中で昨日の英雄も今日では闇屋になり貞淑な未亡人も娼婦になるというような意味の事を言っていたが、先程まで厚着紳士見習いだった私は破廉恥な軟派山羊男に成り下がってしまった。こんな格好をプルースト君が見たらさぞかし軽蔑の眼差しで私を見詰める事に違いない。たどり着いた駅のホームの長椅子に腰をかけて、何だか自身がどうしようもなく汚れてしまったような心持ちになった私は暗く深く���み込んでいた。膝の上に置かれた飲みかけのメロンソーダも言い知れぬ哀愁を帯びているようだった。胸を内を駆け巡り始めた耐えられぬ想いの脱出口を求めるように視線を駅の窓硝子越しに垣間見える空に送ると遠方に高く聳え立つ白い煙突塔が見えた。煙突の先端から濛々と吐き出される排煙が恐ろしい程の速さで荒れた空の彼岸へと流されている。 耐えられぬ思いが胸の内を駆け駅の窓硝子越しに見える空に視線を遣ると遠方に聳える白い煙突塔から濛々と吐き出されている排煙が恐ろしい速度で空の彼岸へと流されている様子が見えた。目には見えない風に流されて行く灰色に汚れた煙に対して、黒い雲に覆われた空の中に浮かぶ白い煙突塔は普段青い空の中で見ている雄姿よりもなおのこと白く純潔に光り輝いて見えた。何とも言えぬ気持の昂ぶりを覚えた私は思わずメロンソーダを傍らに除けた。ダウンジャケットの前ボタンに右手を掛けた。しかしすぐにまた思い直すと右手の位置を元の場所に戻した。そうして幾度となく決意と逡巡の間を行き来している間に段々と駅のホーム内には人間が溢れ始めた。強風の影響なのか電車は暫く駅に来ないようだった。 すると駅の階段を昇って来る黒い影があった。その物々しく重厚な風貌は軽薄に薄着を纏った人間の群れの中でひと際異彩を放っている。プルースト君だった。依然として彼は分厚いロングコートに厳しく身を包み込み、冷ややかな面持ちで堂々と駅のホームを歩いていたが、薄い頭髪と額には薄っすらと汗が浮かび、幅広い額を包むその辛苦の結晶は天井の蛍光灯に照らされて燦燦と四方八方に輝きを放っていた。私にはそれが不撓不屈の王者だけが戴く栄光の冠に見えた。未だ変わらずプルースト君は厚着紳士で在り続けていた。 私は彼の胸中に宿る鋼鉄の信念に感激を覚えると共に、それとは対照的に驚く程簡単に退転してしまった自分自身の脆弱な信念を恥じた。俯いて視線をホームの床に敷き詰められた正方形タイルの繋ぎ目の暗い溝へと落とした。この惨めな敗残の姿が彼の冷たい視線に晒される事を恐れ心臓から足の指の先までが慄き震えていた。しかしそんな事は露とも知らぬプルースト君はゆっくりとこちらへ歩いて来る。迫り来る脅威に戦慄した私は慌ててダウンのファスナーを下から上へと引き上げた。紳士の体裁を整えようと手先を闇雲に動かした。途中ダウンの布地が間に挟まって中々ファスナーが上がらない問題が浮上したものの、結局は何とかファスナーを上まで閉め切った。続けてボタンを嵌め終えると辛うじて私は張りぼてだがあの厚着紳士見習いの姿へと復活する事に成功した。 膝の上に置いてあった哀愁のメロンソーダも何となく恥ずかしく邪魔に思えて、隠してしまおうとダウンのポケットの中へとペットボトルを仕舞い込んでいた時、華麗颯爽とロングコートの紺色の裾端が視界の真横に映り込んだ。思わず私は顔を見上げた。���を上方に上げ過ぎた私は天井の蛍光灯の光を直接見てしまった。眩んだ目を閉じて直ぐにまた開くとプルースト君が真横に厳然と仁王立ちしていた。汗ばんだ蒼白い顔は白い光に包まれてなおのこと白く、紺のコートに包まれた首から上は先程窓から垣間見えた純潔の白い塔そのものだった。神々しくさえあるその立ち姿に畏敬の念を覚え始めた私の横で微塵も表情を崩さないプルースト君は優雅な動作で座席に腰を降ろすとロダンの考える人の様に拳を作った左手に顎を乗せて対岸のホームに、いやおそらくはその先の彼方にある白い塔にじっと厳しい視線を注ぎ始めた。私は期待を裏切らない彼の態度及び所作に感服感激していたが、一方でいつ自分の棄教退転が彼に見破られるかと気が気ではなくダウンジャケットの中は冷や汗で夥しく濡れ湿っていた。 プルースト君が真実の威厳に輝けば輝く程に、その冷たい眼差しの一撃が私を跡形もなく打ち砕くであろう事は否応無しに予想出来る事だった。一刻も早く電車が来て欲しかったが、依然として電車は暫くこの駅にはやって来そうになかった。緊張と沈黙を強いられる時間が二人の座る長椅子周辺を包み込み、その異様な空気を察してか今ではホーム中に人が溢れ返っているのにも関わらず私とプルースト君の周りには誰一人近寄っては来なかった。群衆の騒めきでホーム内は煩いはずなのに不思議と彼らの出す雑音は聞こえなかった。蟻のように蠢く彼らの姿も全く目に入らず、沈黙の静寂の中で私はただプルースト君の一挙手に全神経を注いでいた。 すると不意にプルースト君が私の座る右斜め前に視線を落とした。突然の動きに驚いて気が動転しつつも私も追ってその視線の先に目を遣った。プルースト君は私のダウンジャケットのポケットからはみ出しているメロンソーダの頭部を見ていた。私は愕然たる思いに駆られた。しかし今やどうする事も出来ない。怜悧な思考力と電光石火の直観力を併せ持つ彼ならばすぐにそれが棄教退転の証拠だという事に気が付くだろう。私は半ば観念して恐る恐るプルースト君の横顔を伺った。悪い予感は良く当たると云う。案の定プルースト君の蒼白い顔の口元には哀れみにも似た冷笑が至極鮮明に浮かんでいた。 私はというとそれからもう身を固く縮めて頑なに瞼を閉じる事しか出来なかった。遂に私が厚着紳士道から転がり落ちて軟派な薄着蛮族の一員と成り下がった事を見破られてしまった。卑怯千万な棄教退転者という消す事の出来ない烙印を隣に座る厳然たる厚着紳士に押されてしまった。 白い煙突塔から吐き出された排煙は永久に恥辱の空を漂い続けるのだ。あの笑みはかつて一心同体であった純白の塔から汚れてしまった灰色の煙へと送られた悲しみを押し隠した訣別の笑みだったのだろう。私は彼の隣でこのまま電車が来るのを待ち続ける事が耐えられなくなって来た。私にはプルースト君と同じ電車に乗る資格はもう既に失われているのだった。今すぐにでも立ち上がってそのまま逃げるように駅を出て、家に帰ってポップコーンでも焼け食いしよう、そうして全てを忘却の風に流してしまおう。そう思っていた矢先、隣のプルースト君が何やら慌ただしく動いている気配が伝わってきた。私は薄目を開いた。プルースト君はロングコートのポケットの中から何かを取り出そうとしていた。メロンソーダだった。驚きを隠せない私を尻目にプルースト君は渇き飢えた飼い豚のようにその薄緑色の炭酸ジュースを勢い良く飲み始めた。みるみるとペットボトルの中のメロンソーダが半分以上が無くなった。するとプルースト君は下品極まりないげっぷを数回したかと思うと「暑い、いや暑いなあ」と一人小さく呟いてコートのボタンをそそくさと外し始めた。瞬く間にコートの前門は解放された。中から汚い染みの沢山付着した白いシャツとその白布に包まれただらしのない太鼓腹が堂々と姿を現した。 私は暫くの間呆気に取られていた。しかしすぐに憤然と立ち上がった。長椅子に座ってメロンソーダを飲むかつてプルースト君と言われた汚物を背にしてホームの反対方向へ歩き始めた。出来る限りあの醜悪な棄教退転者から遠く離れたかった。暫く歩いていると、擦れ違う人々の怪訝そうな視線を感じた。自分の顔に哀れな裏切り者に対する軽侮の冷笑が浮かんでいる事に私は気が付いた。 ホームの端に辿り着くと私は視線をホームの対岸にその先の彼方にある白い塔へと注いた。黒雲に覆われた白い塔の陰には在りし日のプルースト君の面影がぼんやりとちらついた。しかしすぐにまた消えて無くなった。暫くすると白い塔さえも風に流れて来た黒雲に掻き消されてしまった。四角い窓枠からは何も見え無くなり、軽薄な人間達の姿と騒めきが壁に包まれたホーム中に充満していった。 言い知れぬ虚無と寂寥が肌身に沁みて私は静かに両の瞳を閉じた。周囲の雑音と共���色々な想念が目まぐるしく心中を通り過ぎて行った。プルースト君の事、厚着紳士で在り続けるという事、メロンソーダ、白い塔…、プルースト君の事。凡そ全てが雲や煙となって無辺の彼方へと押し流されて行った。真夜中と見紛う暗黒に私の全視界は覆われた。 間もなくすると闇の天頂に薄っすらと白い点が浮かんだ。最初は小さく朧げに白く映るだけだった点は徐々に膨張し始めた。同時に目も眩む程に光り輝き始めた。終いには白銀の光を溢れんばかりに湛えた満月並みの大円となった。実際に光は丸い稜線から溢れ始めて、激しい滝のように闇の下へと流れ落ち始めた。天頂から底辺へと一直線に落下する直瀑の白銀滝は段々と野太くなった。反対に大円は徐々に縮小していって再び小さな点へと戻っていった。更にはその点すらも闇に消えて、視界から見え無くなった直後、不意に全ての動きが止まった。 流れ落ちていた白銀滝の軌跡はそのままの光と形に凝固して、寂滅の真空に荘厳な光の巨塔が顕現した。その美々しく神々しい立ち姿に私は息をする事さえも忘れて見入った。最初は塔全体が一つの光源体の様に見えたが、よく目を凝らすと恐ろしく小さい光の結晶が高速で点滅していて、そうした極小微細の���片が寄り集まって一本の巨塔を形成しているのだという事が解った。その光の源が何なのかは判別出来なかったが、それよりも光に隙間無く埋められている塔の外壁の内で唯一不自然に切り取られている黒い正方形の個所がある事が気になった。塔の頂付近にその不可解な切り取り口はあった。怪しみながら私はその内側にじっと視線を集中させた。 徐々に瞳が慣れて来ると暗闇の中に茫漠とした人影の様なものが見え始めた。どうやら黒い正方形は窓枠である事が解った。しかしそれ以上は如何程目を凝らしても人影の相貌は明確にならなかった。ただ私の方を見ているらしい彼が恐ろしい程までに厚着している事だけは解った。あれは幻の厚着紳士なのか。思わず私は手を振ろうとした。しかし紳士という言葉の響きが振りかけた手を虚しく元の位置へと返した。 すると間も無く塔の根本周辺が波を打って揺らぎ始めた。下方からから少しずつ光の塔は崩れて霧散しだした。朦朧と四方へ流れ出した光群は丸く可愛い尻を光らせて夜の河を渡っていく銀蛍のように闇の彼方此方へと思い思いに飛んで行った。瞬く間に百千幾万の光片が暗闇一面を覆い尽くした。 冬の夜空に散りばめられた銀星のように暗闇の満天に煌く光の屑は各々少しずつその輝きと大きさを拡大させていった。間もなく見つめて居られ無い程に白く眩しくなった。耐えられ無くなった私は思わず目を見開いた。するとまた今度は天井の白い蛍光灯の眩しさが瞳を焼いた。いつの間にか自分の顔が斜め上を向いていた事に気が付いた。顔を元の位置に戻すと、焼き付いた白光が徐々に色褪せていった。依然として変わらぬホームの光景と。周囲の雑多なざわめきが目と耳に戻ると、依然として黒雲に覆い隠されている窓枠が目に付いた。すぐにまた私は目を閉じた。暗闇の中をを凝視してつい先程まで輝いていた光の面影を探してみたが、瞼の裏にはただ沈黙が広がるばかりだった。 しかし光り輝く巨塔の幻影は孤高の紳士たる決意を新たに芽生えさせた。私の心中は言い知れない高揚に包まれ始めた。是が非でも守らなければならない厚着矜持信念の実像をこの両の瞳で見た気がした。すると周囲の雑音も不思議と耳に心地よく聞こえ始めた。 『この者達があの神聖な光を見る事は決して無い事だろう。あの光は選ばれた孤高の厚着紳士だけが垣間見る事の出来る祝福の光なのだ。光の巨塔の窓に微かに垣間見えたあの人影はおそらく未来の自分だったのだろう。完全に厚着紳士と化した私が現在の中途半端な私に道を反れることの無いように暗示訓戒していたに違いない。しかしもはや誰に言われなくても私が道を踏み外す事は無い。私の上着のボタンが開かれる事はもう決して無い。あの白い光は私の脳裏に深く焼き付いた』 高揚感は体中の血を上気させて段々と私は喉の渇きを感じ始めた。するとポケットから頭を出したメロンソーダが目に付いた。再び私の心は激しく揺れ動き始めた。 一度は目を���らし二度目も逸らした。三度目になると私はメロンソーダを凝視していた。しかし迷いを振り払うかの様に視線を逸らすとまたすぐに前を向いた。四度目、私はメロンソーダを手に持っていた。三分の二以上減っていて非常に軽い。しかしまだ三分の一弱は残っている。ペットボトルの底の方で妖しく光る液体の薄緑色は喉の渇き切った私の瞳に避け難く魅惑的に映った。 まあ、喉を潤すぐらいは良いだろう、ダウンの前を開かない限りは。私はそう自分に言い聞かせるとペットボトルの口を開けた。間を置かないで一息にメロンソーダを飲み干した。 飲みかけのメロンソーダは炭酸が抜けきってしつこい程に甘く、更には生ぬるかった。それは紛れも無く堕落の味だった。腐った果実の味だった。私は何とも言えない苦い気持ちと後悔、更には自己嫌悪の念を覚えて早くこの嫌な味を忘れようと盛んに努めた。しかし舌の粘膜に絡み付いた甘さはなかなか消える事が無かった。私はどうしようも無く苛立った。すると突然隣に黒く長い影が映った。プルースト君だった。不意の再再会に思考が停止した私は手に持った空のメロンソーダを隠す事も出来ず、ただ茫然と突っ立っていたが、すぐに自分が手に握るそれがとても恥ずかしい物のように思えて来てメロンソーダを慌ててポケットの中に隠した。しかしプルースト君は私の隠蔽工作を見逃しては居ないようだった。すぐに自分のポケットから飲みかけのメロンソーダを取り出すとプルースト君は旨そうに大きな音を立ててソーダを飲み干した。乾いたゲップの音の響きが消える間もなく、透明になったペットボトルの蓋を華麗優雅な手捌きで閉めるとプルースト君はゆっくりとこちらに視線を向けた。その瞳に浮かんでいたのは紛れもなく同類を見つけた時に浮かぶあの親愛の情だった。 間もなくしてようやく電車が駅にやって来た。プルースト君と私は仲良く同じ車両に乗った。駅に溢れていた乗客達が逃げ場無く鮨詰めにされて居る狭い車内は冷房もまだ付いておらず蒸し暑かった。夥しい汗で額や脇を濡らしたプルースト君の隣で私はゆっくりとダウンのボタンに手を掛けた。視界の端に白い塔の残映が素早く流れ去っていった。
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11180143
愛読者が、死んだ。
いや、本当に死んだのかどうかは分からない。が、死んだ、と思うしか、ないのだろう。
そもそも私が小説で脚光を浴びたきっかけは、ある男のルポルタージュを書いたからだった。数多の取材を全て断っていた彼は、なぜか私にだけは心を開いて、全てを話してくれた。だからこそ書けた、そして注目された。
彼は、モラルの欠落した人間だった。善と悪を、その概念から全て捨て去ってしまっていた。人が良いと思うことも、不快に思うことも、彼は理解が出来ず、ただ彼の中のルールを元に生きている、パーソナリティ障害の一種だろうと私は初めて彼に会った時に直感した。
彼は、胸に大きな穴を抱えて、生きていた。無論、それは本当に穴が空いていたわけではないが、彼にとっては本当に穴が空いていて、穴の向こうから人が行き交う景色が見え、空虚、虚無を抱いて生きていた。不思議だ。幻覚、にしては突拍子が無さすぎる。幼い頃にスコンと空いたその穴は成長するごとに広がっていき、穴を埋める為、彼は試行し、画策した。
私が初めて彼に会ったのは、まだ裁判が始まる前のことだった。弁護士すらも遠ざけている、という彼に、私はただ、簡単な挨拶と自己紹介と、そして、「理解しない人間に理解させるため、言葉を紡ぎませんか。」と書き添えて、名刺と共に送付した。
その頃の私は書き殴った小説未満をコンテストに送り付けては、音沙汰のない携帯を握り締め、虚無感溢れる日々をなんとか食い繋いでいた。いわゆる底辺、だ。夢もなく、希望もなく、ただ、人並みの能がこれしかない、と、藁よりも脆い小説に、私は縋っていた。
そんな追い込まれた状況で手を伸ばした先が、極刑は免れないだろう男だったのは、今考えてもなぜなのか、よくわからない。ただ、他の囚人に興味があったわけでもなく、ルポルタージュが書きたかったわけでもなく、ただ、話したい。そう思った。
夏の暑い日のことだった。私の家に届いた茶封筒の中には白無地の紙が一枚入っており、筆圧の無い薄い鉛筆の字で「8月24日に、お待ちしています。」と、ただ一文だけが書き記されていた。
こちらから申し込むのに囚人側から日付を指定してくるなんて、風変わりな男だ。と、私は概要程度しか知らない彼の事件について、一通り知っておこうとパソコンを開いた。
『事件の被疑者、高山一途の家は貧しく、母親は風俗で日銭を稼ぎ、父親は勤めていた会社でトラブルを起こしクビになってからずっと、家で酒を飲んでは暴れる日々だった。怒鳴り声、金切声、過去に高山一家の近所に住んでいた住人は、幾度となく喧嘩の声を聞いていたという。高山は友人のない青春時代を送り、高校を卒業し就職した会社でも活躍することは出来ず、社会から孤立しその精神を捻じ曲げていった。高山は己の不出来を己以外の全てのせいだと責任転嫁し、世間を憎み、全てを恨み、そして凶行に至った。
被害者Aは20xx年8月24日午後11時過ぎ、高山の自宅において後頭部をバールで殴打され殺害。その後、高山により身体をバラバラに解体された後ミンチ状に叩き潰された。発見された段階では、人間だったものとは到底思えず修復不可能なほどだったという。
きっかけは近隣住民からの異臭がするという通報だった。高山は殺害から2週間後、Aさんだった腐肉と室内で戯れている所を発見、逮捕に至る。現場はひどい有り様で、近隣住民の中には体調を崩し救急搬送される者もいた。身体に、腐肉とそこから滲み出る汁を塗りたくっていた高山は抵抗することもなく素直に同行し、Aさん殺害及び死体損壊等の罪を認めた。初公判は※月※日予定。』
いくつも情報を拾っていく中で、私は唐突に、彼の名前の意味について気が付き、二の腕にぞわりと鳥肌が立った。
一途。イ��ト。それ。
あぁ、彼は、ずっと忌み嫌われ、居場所もなくただ産み落とされたという理由で必死に生きてきたんだと、何も知らない私ですら胸が締め付けられる思いがした。私は頭に入れた情報から憶測を全て消し、残った彼の人生のカケラを持って、刑務所へと赴いた。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
「失礼します。」
「どうぞ。」
手錠と腰縄を付けて出てきた青年は、私と大して歳の変わらない、人畜無害、悪く言えば何の印象にも残らない、黒髪と、黒曜石のような真っ黒な瞳の持ち主だった。奥深い、どこまでも底のない瞳をつい値踏みするように見てしまって、慌てて促されるままパイプ椅子へと腰掛けた。彼は開口一番、私の書いている小説のことを聞いた。
「何か一つ、話してくれませんか。」
「え、あ、はい、どんな話がお好きですか。」
「貴方が一番好きな話を。」
「分かりました。では、...世界から言葉が消えたなら。」
私の一番気に入っている話、それは、10万字話すと死んでしまう奇病にかかった、愛し合う二人の話。彼は朗読などしたこともない、世に出てすらいない私の拙い小説を、目を細めて静かに聞いていた。最後まで一度も口を挟むことなく聞いているから、読み上げる私も自然と力が入ってしまう。読み終え、余韻と共に顔を上げると、彼はほろほろ、と、目から雫を溢していた。人が泣く姿を、こんなにまじまじと見たのは初めてだった。
「だ、大丈夫ですか、」
「えぇ。ありがとうございます。」
「あの、すみません、どうして私と、会っていただけることになったんでしょうか。」
ふるふる、と犬のように首を振った彼はにこり、と機械的にはにかんで、机に手を置き私を見つめた。かしゃり、と決して軽くない鉄の音が、無機質な部屋に響く。
「僕に大してアクションを起こしてくる人達は皆、同情や好奇心、粗探しと金儲けの匂いがしました。送られてくる手紙は全て下手に出ているようで、僕を品定めするように舐め回してくる文章ばかり。」
「...それは、お察しします。」
「でも、貴方の手紙には、「理解しない人間に理解させるため、言葉を紡ぎませんか。」と書かれていた。面白いな、って思いませんか。」
「何故?」
「だって、貴方、「理解させる」って、僕と同じ目線に立って、物を言ってるでしょう。」
「.........意識、していませんでした。私はただ、憶測が嫌いで、貴方のことを理解したいと、そう思っただけです。」
「また、来てくれますか。」
「勿論。貴方のことを、少しずつでいいので、教えてくれますか。」
「一つ、条件があります。」
「何でしょう。」
「もし本にするなら、僕の言葉じゃなく、貴方の言葉で書いて欲しい。」
そして私は、彼の元へ通うことになった。話を聞けば聞くほど、彼の気持ちが痛いほど分かって、いや、分かっていたのかどうかは分からない。共鳴していただけかもしれない、同情心もあったかもしれない、でも私はただ��だあくる日も、そのあくる日も、私の言葉で彼を表し続けた。私の記した言葉を聞いて、楽しそうに微笑む彼は、私の言葉を最後まで一度も訂正しなかった。
「貴方はどう思う?僕の、したことについて。」
「...私なら、諦めてしまって、きっと得物を手に取って終わってしまうと思います。最後の最後まで、私が満たされることよりも、世間を気にしてしまう。不幸だと己を憐れんで、見えている答えからは目を背けて、後悔し続けて死ぬことは、きっと貴方の目から見れば不思議に映る、と思います。」
「理性的だけど、道徳的な答えではないね。普通はきっと、「己を満たす為に人を殺すのは躊躇う」って、そう答えるんじゃないかな。」
「でも、乾き続ける己のままで生きることは耐え難い苦痛だった時、己を満たす選択をしたことを、誰が責められるんでしょうか。」
「...貴方に、もう少し早く、出逢いたかった。」
ぽつり、零された言葉と、アクリル板越しに翳された掌。温度が重なることはない。触れ合って、痛みを分かち合うこともない。来園者の真似をする猿のように、彼の手に私の手を合わせて、ただ、じっとその目を見つめた。相変わらず何の感情もない目は、いつもより少しだけ暖かいような、そんな気がした。
彼も、私も、孤独だったのだと、その時初めて気が付いた。世間から隔離され、もしくは自ら距離を置き、人間が信じられず、理解不能な数億もの生き物に囲まれて秩序を保ちながら日々歩かされることに抗えず、翻弄され。きっと彼の胸に空いていた穴は、彼が被害者を殺害し、埋めようと必死に肉塊を塗りたくっていた穴は、彼以外の人間が、もしくは彼が、無意識のうちに彼から抉り取っていった、彼そのものだったのだろう。理解した瞬間止まらなくなった涙を、彼は拭えない。そうだった、最初に私の話で涙した彼の頬を撫でることだって、私には出来なかった。私と彼は、分かり合えたはずなのに、分かり合えない。私の言葉で作り上げた彼は、世間が言う狂人でも可哀想な子でもない、ただ一人の、人間だった。
その数日後、彼が獄中で首を吊ったという報道が流れた時、何となく、そうなるような気がしていて、それでも私は、彼が味わったような、胸に穴が開くような喪失感を抱いた。彼はただ、理解されたかっただけだ。理解のない人間の言葉が、行動が、彼の歩く道を少しずつ曲げていった。
私は書き溜めていた彼の全てを、一冊の本にした。本のタイトルは、「今日も、皮肉なほど空は青い。」。逮捕された彼が手錠をかけられた時、部屋のカーテンの隙間から空が見えた、と言っていた。ぴっちり閉じていたはずなのに、その時だけひらりと翻った暗赤色のカーテンの間から顔を覗かせた青は、目に刺さって痛いほど、青かった、と。
出版社は皆、猟奇的殺人犯のノンフィクションを出版したい、と食い付いた。帯に著名人の寒気がする言葉も書かれた。私の名前も大々的に張り出され、重版が決定し、至る所で賛否���論が巻き起こった。被害者の遺族は怒りを露わにし、会見で私と、彼に対しての呪詛をぶちまけた。
インタビュー、取材、関わってくる人間の全てを私は拒否して、来る日も来る日も、読者から届く手紙、メール、SNS上に散乱する、本の感想を読み漁り続けた。
そこに、私の望むものは何もなかった。
『あなたは犯罪者に対して同情を誘いたいんですか?』
私がいつ、どこに、彼を可哀想だと記したのだろう。
『犯罪者を擁護したいのですか?理解出来ません。彼は人を殺したんですよ。』
彼は許されるべきだとも、悪くない、とも私は書いていない。彼は素直に逮捕され、正式な処罰ではないが、命をもって罪へ対応した。これ以上、何をしろ、と言うのだろう。彼が跪き頭を地面に擦り付け、涙ながらに謝罪する所を見たかったのだろうか。
『とても面白かったです。狂人の世界が何となく理解出来ました。』
何をどう理解したら、この感想が浮かぶのだろう。そもそもこの人は、私の本を読んだのだろうか。
『作者はもしかしたら接していくうちに、高山を愛してしまったのではないか?贔屓目の文章は公平ではなく気持ちが悪い。』
『全てを人のせいにして自分が悪くないと喚く子供に殺された方が哀れでならない。』
『結局人殺しの自己正当化本。それに手を貸した筆者も同罪。裁かれろ。』
『ただただ不快。皆寂しかったり、一人になる瞬間はある。自分だけが苦しい、と言わんばかりの態度に腹が立つ。』
『いくら貰えるんだろうなぁ筆者。羨ましいぜ、人殺しのキチガイの本書いて金貰えるなんて。』
私は、とても愚かだったのだと気付かされた。
皆に理解させよう、などと宣って、彼を、私の言葉で形作ったこと。裏を返せば、その行為は、言葉を尽くせば理解される、と、人間に期待をしていたに他ならない。
私は、彼によって得たわずかな幸福よりも、その後に押し寄せてくる大きな悲しみ、不幸がどうしようもなく耐え難く、心底、己が哀れだった。
胸に穴が空いている、と言う幻覚を見続けた彼は、穴が塞がりそうになるたび、そしてまた無機質な空虚に戻るたび、こんな痛みを感じていたのだろうか。
私は毎日、感想を読み続けた。貰った手紙は、読んだものから燃やしていった。他者に理解される、ということが、どれほど難しいのかを、思い知った。言葉を紡ぐことが怖くなり、彼を理解した私ですら、疑わしく、かといって己と論争するほどの気力はなく、ただ、この世に私以外の、彼の理解者は現れず、唯一の彼の理解者はここにいても、もう彼の話に相槌を打つことは叶わず、陰鬱とする思考の暗闇の中を、堂々巡りしていた。
思考を持つ植物になりたい、と、ずっと思っていた。人間は考える葦である、という言葉が皮肉に聞こえるほど、私はただ、一人で、誰の脳にも引っ掛からず、狭間を生きていた。
孤独、などという言葉で表すのは烏滸がましいほど、私、彼が抱えるソレは哀しく、決して治らない不治の病のようなものだった。私は彼であり、彼は私だった。同じ境遇、というわけではない。赤の他人。彼には守るべき己の秩序があり、私にはそんな誇り高いものすらなく、能動的、怠惰に流されて生きていた。
彼は、目の前にいた人間の頭にバールを振り下ろす瞬間も、身体をミンチにする工程も、全て正気だった。ただ心の中に一つだけ、それをしなければ、生きているのが恐ろしい、今しなければずっと後悔し続ける、胸を掻きむしり大声を上げて暴れたくなるような焦燥感、漠然とした不安感、それらをごちゃ混ぜにした感情、抗えない欲求のようなものが湧き上がってきた、と話していた。上手く呼吸が出来なくなる感覚、と言われて、思わず己の胸を抑えた記憶が懐かしい。
出版から3ヶ月、私は感想を読むのをやめた。人間がもっと憎らしく、恐ろしく、嫌いになった。彼が褒めてくれた、利己的な幸せの話を追い求めよう。そう決めた。私の秩序は、小説を書き続けること。嗚呼と叫ぶ声を、流れた血を、光のない部屋を、全てを飲み込む黒を文字に乗せて、上手く呼吸すること。
出版社は、どこも私の名前を見た瞬間、原稿を送り返し、もしくは廃棄した。『君も人殺したんでしょ?なんだか噂で聞いたよ。』『よくうちで本出せると思ったね、君、自分がしたこと忘れたの?』『無理ですね。会社潰したくないので。』『女ならまだ赤裸々なセックスエッセイでも書かせてやれるけど、男じゃ使えないよ、いらない。』数多の断り文句は見事に各社で違うもので、私は感嘆すると共に、人間がまた嫌いになった。彼が乗せてくれたから、私の言葉が輝いていたのだと痛感した。きっとあの本は、ノンフィクション、ルポルタージュじゃなくても、きっと人の心に突き刺さったはずだと、そう思わずにはいられなかった。
以前に働いていた会社は、ルポの出版の直前に辞表を出した。私がいなくても、普段通り世界は回る。著者の実物を狂ったように探し回っていた人間も、見つからないと分かるや否や他の叩く対象を見つけ、そちらで楽しんでいるようだった。私の書いた彼の本は、悪趣味な三流ルポ、と呼ばれた。貯金は底を尽きた。手当たり次第応募して見つけた仕事で、小銭を稼いだ。家賃と、食事に使えばもう残りは硬貨しか残らない、そんな生活になった。元より、彼の本によって得た利益は、全て燃やしてしまっていた。それが、正しい末路だと思ったからだったが、何故と言われれば説明は出来ない。ただ燃えて、真っ赤になった札が灰白色に色褪せ、風に脆く崩れていく姿を見て、幸せそうだと、そう思った。
名前を伏せ、webサイトで小説を投稿し始めた。アクセス数も、いいね!も、どうでも良かった。私はただ秩序を保つために書き、顎を上げて、夜店の金魚のように、浅い水槽の中で居場所なく肩を���めながら、ただ、遥か遠くにある空を眺めては、届くはずもない鰭を伸ばした。
ある日、web上のダイレクトメールに一件のメッセージが入った。非難か、批評か、スパムか。開いた画面には文字がつらつらと記されていた。
『貴方の本を、販売当時に読みました。明記はされていませんが、某殺人事件のルポを書かれていた方ですか?文体が、似ていたのでもし勘違いであれば、すみません。』
断言するように言い当てられたのは初めてだったが、画面をスクロールする指はもう今更震えない。
『最新作、読みました。とても...哀しい話でした。ゾンビ、なんてコミカルなテーマなのに、貴方はコメをトラにしてしまう才能があるんでしょうね。悲劇。ただ、二人が次の世界で、二人の望む幸せを得られることを祈りたくなる、そんな話でした。過去作も、全て読みました。目を覆いたくなるリアルな描写も、抽象的なのに五感のどこかに優しく触れるような比喩も、とても素敵です。これからも、書いてください。』
コメとトラ。私が太宰の「人間失格」を好きな事は当然知らないだろうに、不思議と親近感が湧いた。単純だ。と少し笑ってから、私はその奇特な人間に一言、返信した。
『私のルポルタージュを読んで、どう思われましたか。』
無名の人間、それも、ファンタジーやラブコメがランキング上位を占めるwebにおいて、埋もれに埋もれていた私を見つけた人。だからこそ聞きたかった。例えどんな答えが返ってきても構わなかった。もう、罵詈雑言には慣れていた。
数日後、通知音に誘われて開いたDMには、前回よりも短い感想が送られてきていた。
『人を殺めた事実を別にすれば、私は少しだけ、彼の気持ちを理解出来る気がしました。。彼の抱いていた底なしの虚無感が見せた胸の穴も、それを埋めようと無意識のうちに焦がれていたものがやっと現れた時の衝動。共感は微塵も出来ないが、全く理解が出来ない化け物でも狂人でもない、赤色を見て赤色だと思う一人の人間だと思いました。』
何度も読み返していると、もう1通、メッセージが来た。惜しみながらも画面をスクロールする。
『もう一度読み直して、感想を考えました。外野からどうこう言えるほど、彼を軽んじることが出来ませんでした。良い悪いは、彼の起こした行動に対してであれば悪で、それを彼は自死という形で償った。彼の思考について善悪を語れるのは、本人だけ。』
私は、画面の向こうに現れた人間に、頭を下げた。見えるはずもない。自己満足だ。そう知りながらも、下げずにはいられなかった。彼を、私を、理解してくれてありがとう。それが、私が愛読者と出会った瞬間だった。
愛読者は、どうやら私の作風をいたく気に入ったらしかった。あれやこれや、私の言葉で色んな世界を見てみたい、と強請った。その様子はどこか彼にも似ている気がして、私は愛読者の望むまま、数多の世界を創造した。いっそう創作は捗った。愛読者以外の人間は、ろくに寄り付かずたまに冷やかす輩が現れる程度で、私の言葉は、世間には刺さらない。
まるで神にでもなった気分だった。初めて小説を書いた時、私の指先一つで、人が自由に動き、話し、歩き、生きて、死ぬ。理想の愛を作り上げることも、到底現実世界では幸せになれない人を幸せにすることも、なんでも出来た。幸福のシロップが私の脳のタンパク質にじゅわじゅわと染みていって、甘ったるいスポンジになって、溢れ出すのは快楽物質。
そう、私は神になった。上から下界を見下ろし、手に持った無数の糸を引いて切って繋いでダンス。鼻歌まじりに踊るはワルツ。喜悲劇とも呼べるその一人芝居を、私はただ、演じた。
世の偉いベストセラー作家も、私の敬愛する文豪も、ポエムを垂れ流す病んだSNSの住人も、暗闇の中で自慰じみた創作をして死んでいく私も、きっと書く理由なんて、ただ楽しくて気持ちいいから。それに尽きるような気がする。
愛読者は私の思考をよく理解し、ただモラルのない行為にはノーを突きつけ、感想を欠かさずくれた。楽しかった。アクリルの向こうで私の話を聞いていた彼は、感想を口にすることはなかった。核心を突き、時に厳しい指摘をし、それでも全ての登場人物に対して寄り添い、「理解」してくれた。行動の理由を、言動の意味を、目線の行く先を、彼らの見る世界を。
一人で歩いていた暗い世界に、ぽつり、ぽつりと街灯が灯っていく、そんな感覚。じわりじわり暖かくなる肌触りのいい空気が私を包んで、私は初めて、人と共有することの幸せを味わった。不変を自分以外に見出し、脳内を共鳴させることの価値を知った。
幸せは麻薬だ、とかの人が説く。0の状態から1の幸せを得た人間は、気付いた頃にはその1を見失う。10の幸せがないと、幸せを感じなくなる。人間は1の幸せを持っていても、0の時よりも、不幸に感じる。幸福感という魔物に侵され支配されてしまった哀れな脳が見せる、もっと大きな、訪れるはずと信じて疑わない幻影の幸せ。
私はさしずめ、来るはずのプレゼントを玄関先でそわそわと待つ少女のように無垢で、そして、馬鹿だった。無知ゆえの、無垢の信頼ゆえの、馬鹿。救えない。
愛読者は姿を消した。ある日話を更新した私のDMは、いつまで経っても鳴らなかった。震える手で押した愛読者のアカウントは消えていた。私はその時初めて、愛読者の名前も顔も性別も、何もかもを知らないことに気が付いた。遅すぎた、否、知っていたところで何が出来たのだろう。私はただ、愛読者から感想という自己顕示欲を満たせる砂糖を注がれ続けて、その甘さに耽溺していた白痴の蟻だったのに。並ぶ言葉がざらざらと、砂時計の砂の如く崩れて床に散らばっていく幻覚が見えて、私は端末を放り投げ、野良猫を落ち着かせるように布団を被り、何がいけなかったのかをひとしきり考え、そして、やめた。
人間は、皆、勝手だ。何故か。皆、自分が大事だからだ。誰も守ってくれない己を守るため、生きるため、人は必死に崖を這い上がって、その途中で崖にしがみつく他者の手を足場にしていたとしても、気付く術はない。
愛読者は何も悪くない。これは、人間に期待し、信用という目に見えない清らかな物を崇拝し、焦がれ、浅はかにも己の手の中に得られると勘違いし小躍りした、道化師の喜劇だ。
愛読者は今日も、どこかで息をして、空を見上げているのだろうか。彼が亡くなった時と同じ感覚を抱いていた。彼が最後に見た澄んだ空。私が、諦観し絶望しながらも、明日も見るであろう狭い空。人生には不幸も幸せもなく、ただいっさいがすぎていく、そう言った27歳の太宰の言葉が、彼の年に近付いてからやっと分かるようになった。そう、人が生きる、ということに、最初から大して意味はない。今、人間がヒエラルキーの頂点に君臨し、80億弱もひしめき合って睨み合って生きていることにも、意味はない。ただ、そうあったから。
愛読者が消えた意味も、彼が自ら命を絶った理由も、考えるのをやめよう。と思った。呼吸代わりに、ある種の強迫観念に基づいて狂ったように綴っていた世界も、閉じたところで私は死なないし、私は死ぬ。最早私が今こうして生きているのも、植物状態で眠る私の見ている長い長い夢かもしれない。
私は思考を捨て、人でいることをやめた。
途端に、世界が輝きだした。全てが美しく見える。私が今ここにあることが、何よりも楽しく、笑いが止まらない。鉄線入りの窓ガラスが、かの大聖堂のステンドグラスよりも耽美に見える。
太宰先生、貴方はきっと思考を続けたから、あんな話を書いたのよ。私、今、そこかしこに檸檬を置いて回りたいほど愉快。
これがきっと、幸せ。って呼ぶのね。
愛読者は死んだ。もう戻らない。私の世界と共に死んだ、と思っていたが、元から生きても死んでもいなかった。否、生きていて、死んでいた。シュレディンガーの猫だ。
「嗚呼、私、やっぱり、
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和二年(2020)4月24日(金曜日)<前日発行>
巣ごもりのヒット商品は一過性。消費マインドの変化をどこで読むか
任天堂ゲーム、スカパー、そしてネットフリックスに注目が集まったが
******************************
巣ごもり期間の三大ヒット商品とは、任天堂のゲーム、スカパー、そしてネットフリックスだ。
いずれも家に籠もり、時間をもてあましても瞑想、思索、読書の時間ではなかった。暇つぶしにゲーム、見たい映画、音楽ライブの代わり。外出自粛が解ければ、これらは見捨てられ、映画館、テーマパーク、歩行者天国、そして居酒屋に繰り出すことになり、ヒット商品は一過性だったことになる、だろう。
さはさりながら、あらゆる産業に地殻変動の予兆がある。
旅行業界、ホテルなどは、スカウトが行われている。優秀なガイド、通訳、接客のベテランが他の業界に移動している。インバウンドの回復には二、三年かかるだろうから、老舗旅館の廃業も続いている。人材はつねに求められるのである。
消費マインドの変化をどこで読むか
たとえばヤマト運輸は業界の革命児として「企業 TO 企業」から「個人 TO 個人」という配達業態の変化を主導し、クール宅急便などのヒットを生んだ。
コロナ以後、対面配達をやめ、ボックス配達や、ドローン配達の実験をおこなって次代のビジネスモデルを模索している。ヤマト運輸は年間18億個の荷物を配達し、従業員23万人。海外拠点も多い。
セメントは、この三十年で8000万トンから、4000万トンに需要が減った。
半減した現実は、日本が誇った製鉄所の高炉が次々と閉鎖に追い込まれたことに比例する。建築業界はふるわず、公共事業は減らされ、労働者は激減して外国人に依存するようになっていた。
マンションの新築件数が減少している。タワマンの売れ行きが足踏みという現実も頷ける。基幹産業が衰退の途次にある事実は誰もが掌握しているが、次の産業革命はコロナ収束以後に、日本でもおきてくるのか?
自動車生産が世界経済を牽引した。年初来、コロナ災禍による都市封鎖、外出禁止などによって新車販売が激減したことは一過性の現象であるにせよ、産業の主流の座を降りるとなると、次に何が産業界を牽引するのか?
或いはネット時代に産業革命の寵児といわれたソフトバンクや楽天の低迷ぶりをみていると、持て囃された新興産業も転換を余儀なくされており、大きな岐路にさしかかっている。IT関連で日本でも若手の起業家が輩出したが、第二のビルゲーツにはならず、マザーズ上場ていどで、「こじんまりと安定」を目指す人が多数派、だから飛躍はない。
▼通信革命、医療革命、メディアの変質のあとに
医療機器、ヘルスケア、製薬が飛躍的に伸びる産業であることは明らかである。各国も予算配分に気を配り、増額傾向にある。しかも自製化の傾向も明らかである。
ワクチンや特効薬のみならず、マスクや防護服、そして使い捨てのマスク、手袋、注射針にいたるまで需要が続く。
日本ばかりか欧米諸国は、医療機器、製薬生産を中国に依存してきたリスクに目覚め、自国生産に戻しつつあるように、マスクをシャープやパナソニックが生産するという異変は他分野でも顕著になるだろう。
精密部品、メカニカルな部品や中枢部品など、工学系も横ばいか微増傾向になり、問題は工場をどこに移転するかというサプライチェーンの世界的再構築に移っている。
過去十年の大変化といえば、通信革命を基盤にメディアがすっかり変質したことがあげられる。電波の世界でも地殻変動が繰り返され、地上波のテレビがユーチューブなどに代替されつつある。紙媒体の新聞が嘗ての甚大な影響力を失ったことは朝日新聞の凋落をみれば歴然としている。
1980年、アルビン・トフラーが『第三の波』を書いて、第一の波は農業革命、第二が産業革命であり、つづく第三の波は「情報化社会」の到来だろうと予測した。世界的ベストセラーとなって、日本でも翻訳がでた。
このなかで、とくにトフラーが強調したことは、通信が双方向となり、コテージで仕事が出来る世の中がくるとの近未来予測だった。トフラーの前にハーマン・カーンの『大転換期』という社会基盤の変化を予測する大胆な書があった。
ネットの急発達で、既存のメディアの権威は失墜した。その典型がツィッターで選挙をたたかって勝利したトランプであり、またアメリカでは既存の三大ネットワークとCNNよりFOXの急伸が顕著となって、これまでマイナーとされた考え方の持ち主が、じつは多数派だったことも立証された。
コロナ災禍で地下鉄もバスも新幹線もガラガラ、ゴールデンウィークの人出が88%減という意味は、在宅勤務というスタイルが普及したからである。つまり会社へ通うことなくても、仕事をこなせる時代の到来である。
かつて日本にはブンダン(文壇)という特殊な、群れをなす集団があった。
集まる場所は銀座、酒場では見えない秩序があって自然発生的な序列がなんとなく決められ、ボスがいて編集者が阿諛追従した。これは論壇もアカデミズムの世界も同じだった。文壇、論壇は東京に集中していたが、この崩壊が徐々に進み、銀座は廃れ、小説家は地方にいても、最初はFAXで送稿し、其れがワープロのフロッピィの受け渡しから、いまではパソコンで送稿できる。東京に暮らす必要もない。速達書留で原稿を送ることもない。いや、編集者が原稿をとりにくることもない。連載をしている雑誌の編集者と一度もあったことがないケースもある。
コロナ以前から明瞭にあった現象だが、やがて緊急事態宣言によって地下鉄、JRのガラガラぶりとなっても、経済がある程度機能していること、社会が廻っていること、トフラーが言ったように会社に行かなくても、コテージで仕事ができる分野が増えていたこと、この傾向はますます明らかになるだろう。
▼日本は日本人の国だったのだ
海外在留邦人が、世界に散らばっていた。コロナ危機に直面して、大挙帰国したことは注目してよいのではないか。
4月23日現在、世界の各地にあって日本に帰国希望する邦人はおよそ四千名。帰趨本能が如実にでたのだ。
日本に還りたい、どんなルートを経由しても、まだ飛んでいる便をみつけるか、チャーターを手配して、日本人は日本を懐かしんでいる。
インカにいた日本人旅行者およそ三百人、フィジーに語学留学していた百名の若者、アフリカ諸国では、帰国希望者はアジスアベバにあつまって、まだ飛んでいたエチオピア航空を使い、ロンドン経由など、あらゆる帰国ルートを見つけて帰ってきた。
国境封鎖は「鎖国」である。
長崎の「出島」を思い出す人が多いかも知れない。
4月にはいって来日する外国人は一日平均85人。国際線の99%が欠航している。まるで鎖国状態、逆転の発想をすれば、このメリットがこれからでてくるのではないか。
国際的なサプライチェーンの基本があって貿易は止まることがないが、人の流れが止まれば「文化的鎖国」となる。すなわち日本的な強みの再発見。日本にふさわしい産業の再構築、そのための教育システムの改編という長期ビジョンの基礎的要件を、考えるべきではないか。
グローバリズムの破綻、保護貿易主義の復活、経済のナショナル化への道に拍車がかかる。
▼農業の自給自足がこれほど見直された時代はない
人間が生きてゆくには、第一に食であり、第二に居であり、第三が衣、つまり嗜好品、贅沢品、不要不急の物質となる。
不要不急の物資は「突然死」のごとくに有名ブランドの購入はとまり、贅沢な時計ブームも萎縮し、背広など衣料品の売れ行きも止まった。
日本は食の自給自足が決定的に脆弱と言われた。
農業従事者が激減し、農家の危機が叫ばれた。漁業、林業とともに第一次産業に従事する人口は激減してきたが、米は質的向上が甚だしく、外国へ輸出も出来るほど農作が続く。野菜は農薬汚染された中国からの輸入が途絶えつつあり、加工食品も、いずれ衛生問題から、日本へ戻ってくるような気配がある。
コロナ以後の重大要件はまず帰農、第一次産業の梃子入れ、復活であり、それが国家安全保障の基底である。
経済の動脈といわれる銀行はフィンテックによって変質を余儀なくされてきた。金融、証券、保険の形態はネット、ペイペイ、カードによって脅かされて久しいが、旧態依然のままなのは、ATMだろう。
このATM維持、現金輸送経費、ガードマンにかかる経費は、膨大であり、効率的な再編が行われる。デジタル通貨は、リブロの蹉跌でかなり遅れるだろうが、各国の中央銀行がブロックチェーンを基礎とするデジタル通貨に切り替える方向にある。
物作りは、もはや大量生産というコスト競争は他国に依存し、独自の高価な物作りに移行する。
住宅も同じで通勤不要、コテージ生活が良いとなれば、限られた職種ではあろうけれど、住宅建設の発想も変わる。タワマンが頭打ちとなった現象は都会よりも田舎暮らしという次代を予感させる。
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【LIVE 出演(23日のみ)】
『北杜シェフズバル2020』
■開催日時:2020年2月22日(土)11:45-20:00 2月23日(日)10:45-15:00
※平井の出演は23日 13:00〜です!
■会場:清里高原 牧場通り コート・ドゥ・ヴェール・オーベルジュ牧草広場 ■入場料:無料 北杜で活躍するシェフらによる冬の饗宴「北杜シェフズバル」。八ヶ岳南麓育ちのゆたかな食材をふんだんにつかって、13人のシェフが腕をふるいます。 満天の星のもと、焚き火にあたりながら、いつものお店のお料理とは違った味、名水・北杜仕込みのお酒を味わい、山梨ゆかりのアーティストらによるステージを楽しむ。 そして、こどもたちはツリークライミングや森のいきもの紹介や凧づくりなどの遊びも堪能。 そんなおとなもこどもも八ヶ岳ならではの冬遊びを楽しめる2日間! ■出店シェフたち ★トラットリアタダリコ/山崎忠彦 俺のパスタ食えし! ★Terroir愛と胃袋/鈴木信作 今年は「麺処 愛と胃袋」でいきます! ★パスタと肴 MoRimoTo /森本慎治 甲州富士桜ポークと天然塩、八ヶ岳の風だけで育った完全無添加生ハムがおすすめです ★ふらここ食堂/高橋昭浩 シェフバル名物!ふらここ食堂のイタリア直送パルミジャーノ・レッジャーノチーズのリゾット」今年も登場します!! ★仁田平マルシェ/栗原俊行 雑貨、本、ギャラリー…… 不思議なマルシェの食堂から地元食材を使った料理をご提供 ★萌木の村ホテル hut・walden/輿水 広 イタリアナポリ仕込の 本格ピッツァを提供します! ★ジビエ居酒屋 さの屋/佐野琢哉 美味しく食べて楽しく呑む ★オーベルジュ レストランル マリアージュ/五味 博 八ヶ岳が育んだ食、空気、水、ゆらめく炎森の恵みを五感で味わって ★mountain* mountain w/cafe flat/山下宏史 世界中の美味しいをボーダレスに皿の上にお届けします ★パスタ&ピザガーデンマジョラム/小泉太喜 トリッパ煮込~フリットやスープで身も心も温まって! ★カフェドペイザン/日野沢輝夫 自家製酵母で手捏ね薪窯で焼くパンとストウブ鍋の煮込み料理 ★プチホテル&レストラン オールドエイジ/小口 真 煮込みの定番 ホテル特製ビーフシチューをどうぞ! ★ロトンド小淵沢/青野良太 食のイタリア×大自然の恵み八ヶ岳=ブラチェリーア ロトンド
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いたるところに、漢字、漢字、漢字が…!
「你好! 安田先生!(こんにちは!安田さん)」
小さいが清潔感のある空港から外へ出ると、私の名字が書かれた紙を持っている青年が流暢な中国語で声をかけてきた。彼の中国語名は子辰。紙には中国語で「歓迎」、日本語のひらがなで「ようこそ」と書いてある。彼は日本語はわからないが、Google翻訳で調べて書いてくれたという。
“子辰”と握手を交わした私のすぐ横を、機内で隣席に座っていた中国国営企業(資源系)に勤務する北京出身のビジネスマンの集団が歩いていく。彼らとは宿が一緒だったので「再見!(またね)」と挨拶を交わして見送った。
「四川電力阿壩公司」
現地の通貨を下ろすためにATMの列に並んでいると、またもや目の前に漢字があった。私の前に並ぶ男が、なぜか中国内陸部のインフラ企業・四川省電力公司アバ支社のサッカーチームのレプリカユニフォームを着ていたのだ。さらにミネラルウォーターのボトルを捨てる場所を探すと、中国語で「リサイクル」「その他のゴミ」と書かれたゴミ箱があった。
待っていてくれたピーター(子辰)と、空港付近で見かけた中国語の数々。ゴミ箱は中国の援助で設置されたらしく、英語よりも漢字のほうが文字が大きい。
そもそも、カタールのドーハで飛行機を乗り換えて以来、私はほとんど中国語しか使っていない。英語はせいぜい機内でのドリンクの注文と、入管で渡航意図を説明したときにちょっと喋った程度だ。
だが、私が来た場所は北京でも成都でもない。東アフリカの内陸部に位置する山岳国家・ルワンダの首都のキガリである。標高1500メートルほどの高原地帯に位置するキガリは、ほぼ赤道直下にもかかわらず、年間を通じて最高気温・最低気温の平均がそれぞれ約27度・約18度、湿度も低くて過ごしやすい。
“子辰”のルワンダでの名前はピーター・ムホザという(さらにフランス語でジャン・ピエール・ムホザという名もある)。意思疎通にほぼ問題がないレベルの中国語を話し、漢字のニックネームまで持っているが、れっきとしたルワンダ人だ。
ピーターとは、現地への渡航にあたり、北京の中国地質大学で恐竜学を学ぶ黒須球子(まりこ) さんのルームメイトのモザンビーク人留学生の友達の友達……という、恐竜とアフリカ系中国人材というカオスな人脈をたどった果てに知り合った。
(黒須さんについては、こちらの記事も参照いただきたい→https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64445)
中国を見るならアフリカを見よ!
ところで、私はなぜルワンダに行ったのか? 理由は簡単だ。いま、中国本土以外で中国ウォッチャーが最も見ておくべき場所は、アフリカだからである。
中国は1950年代以来、反帝国主義や第三世界の連帯を唱えてアフリカ諸国と独自のコネクションを築いてきた。イデオロギー主導の外交は1980年代にいったん下火になったが、21世紀に入ると資源エネルギー需要の増大や中国企業の対外進出(走出去)政策、さらに習近平政権下での一帯一路政策を受けて、アフリカとの関係が再び強化された。
※取材謝礼であるヤマハのステレオを手にテンションが爆上がりのピーター。ビックカメラの英語ページから欲しい商品を選んでもらったが、彼が選んだ液晶テレビは中国メーカーのハイセンス製だったので、第2希望のヤマハ製品を持っていった。
近年は中国の対外援助の5割近くを対アフリカ援助が占めている。「政治的条件のつかない援助」を合言葉に、相手国の政体にかかわらず(=たとえ独裁国家が相手でも)手を差し伸べる中国は、専制的な国も多いアフリカから見ればありがたい相手だ。旺盛な経済関係もあって、アフリカ諸国の対中好感度は軒並み高く、国連などの場でも中国の応援団として振る舞うことが期待されている。
そんなアフリカ諸国のなかで、私が今回訪ねたのがルワンダだ。1994年に50〜80万人もの犠牲者を出したルワンダ虐殺から、今年はちょうど25年目にあたる。いまこそ見ておくべき国だと言っていい。
詳しくは後述するが、内戦終結後のルワンダは「アフリカのシンガポール」を合言葉にスマート国家への脱皮を図っている。政治は専制体制、経済はニューエコノミーを重視した国家資本主義……と、国土面積が四国の1.4倍程度の小国にもかかわらず、中国さながらの国家を作ろうとしているのだ。
私は北京から約8000キロ離れたこの小さな国へ、「中国っぽいもの」を探す旅に出たのであった。
習近平は素晴らしいリーダーだ!
「最近のルワンダはアメリカと少しギクシャクしているけれど、中国との関係はすこぶる良好だ。いまのルワンダにとっていちばん重要な国は中国だと思うよ」
空港からのタクシーの車内で、ピーターがそう説明してくれた。
1990年生まれの彼はルワンダ虐殺で父を失ったが、内戦後は母子家庭のなかで勉学にはげみ、成績優秀者を選抜するルワンダ国家の奨学金を得て同国では数少ない高等教育機関であるルワンダ国立大学を卒業した。やがて2015年に中国政府奨学金留学生として北京科技大学に留学して、バイオ燃料にかかわる論文で修士号を取得している。
ピーターは細身の長身で、黙っていると横顔がちょっとウィル・スミスっぽくてかっこいいのだが、お調子者で不器用な性格が玉に瑕である(ただしルックスがよいのでモテる)。もっとも優秀なのは確かで、北京留学中は留学生の代表として訪中したルワンダ大統領のポール・カガメ(後述)にも会った。今年か来年、中国政府から再度の奨学金を得て北京で博士号を取るのが当面の目標だ。
「習近平は素晴らしいリーダーだと思うね。中国のリーダーはロング・タームでものを考えて、実行できている。多くのアフリカのリーダーも見習うべきだろう」
その経歴からしても当然、ピーターは親中派である。もっとも、こういうエリート層は最近のルワンダ(のみならずサブ・サハラ各国)ではそれほど珍しくない。例えば、2日後に私が会ったピーターの友人で、中国語教師のガット(32歳、中国語名「田文」)も言う。
「ルワンダがモデルにするべき国家は中国だ。政治的安定、経済発展、イノベーションを実現するには中国みたいな体制が理想的なんだ」
ガットも94年のルワンダ虐殺の生き残りである。ピーターと同じくルワンダ政府の奨学金を得て大学へ進学し、やがて中国政府の国策にもとづく語学教育プロジェクト・孔子学院の奨学金を得る形で重慶師範大学で漢語教育分野での修士号を取った。帰国後はそのままルワンダ国内の孔子学院に就職し、母国の後輩たちに中国語を教えている。
中国語とソロバン、広がる影響力
孔子学院はあくまでも語学教育プロジェクトであり、日本で一般に思われているほどゴリゴリのイデオロギー教育がなされているわけではない。ただ、ルワンダにとって最大の輸入相手国である中国の言語を教え、さらに奨学金を通じて「先進国」中国への留学の機会を提供してくれるので、現地のインテリ層の対中好感度を上げるうえでは一定の役割を果たしている。
2018年12月現在、アフリカ全土で孔子学院は59施設、より小規模な孔子課堂が41施設あり、のべ140万人以上が学んだとされる。ルワンダだけでも孔子学院・課堂は約20施設があり、ガットが教えているのはキガリからバスで3時間ほどの距離にある地方都市の教室だ。
ルワンダの孔子学院で、学生側が負担する費用は入学手続き料の30000ルワンダ・フラン(約3600円)のみ、入学後の学費は完全に無料だ。学位は取得できないとはいえ、将来を切り開く上ではかなりお得な教育機関だと言っていい。
※もう一人の孔子学院奨学金OBの中国留学経験者で、キガリ市内で旅行会社を経営するガテラ氏。アフリカ大陸のど真ん中にもかかわらず、中国語人材を探すとどんどん見つかる
孔子学院以外にも、私が目にした中国のソフトパワーを紹介しておこう。それはピーターの仕事である。彼は現在、北京に本社を置いて世界展開するソロバン教育塾チェーン「Shenmo(神墨)」グループのルワンダ・ブランチの運営にたずさわっているのだ。
キガリ郊外にある教室に遊びに行くと、6〜11歳の子ども十数人が、一心不乱にソロバンの玉を弾いていた。一通りソロバンを使わせた後は暗算である。算数の基礎能力を付けるうえでは、ソロバンは有効だ。
授業は英語でおこなわれるものの、教材は中国からそのまま持ってきたもの。漢字で書かれた答案用紙に、子どもたちが答えを書き入れていく。
かつてルワンダは旧宗主国のベルギーが教育に不熱心だったこともあって、1960年代まで大学が存在せず、その後も内戦などで教育の混乱が続いた歴史がある。Shenmoはまだ小規模だが、教育産業の需要それ自体はある国だ。
「ルワンダの教育環境は、はっきり言って現在でも全然よくない。理数系に強い人材を育てなきゃいけないんだ」
そう話すピーターは、半年ほど前に隣国タンザニアのダルエスサラームでShenmoのブランチ代表としての研修を経験した。イラン・ルワンダ・タンザニアの代表が集められ、中国人コーチからソロバンの特訓を受けたらしい。ライオンだらけの国に、中国ソロバン塾の「虎の穴」があったのだ。
父は穏健派だから殺された
ピーターのソロバン教室で学ぶ子どもたちは人懐っこく、あれこれと私に話しかけてきたり、時計やカメラをいじり回したりと天真爛漫だ。だが、彼らが生まれる前にルワンダが経験した歴史は重くて暗い。
ルワンダは過去にながらく、旧宗主国のドイツやベルギーによって作り出されたツチ・フツの「民族」対立に苦しんできた。ツチとフツの言語や宗教はほぼ同じで、両者の差異は実質的にほとんどないが、植民地時代に少数派のツチが「白人に近い」とみなされ中間支配層として活用されたことで対立の芽が生まれた。
ツチとされた人たちは人口の約14%、フツとされた人たちは約85%である(他に先住民である「トゥワ」が1%)。���チ・フツは外見上でも区別できないが、植民地政府が作ったIDカードに「民族」を記載する項目が設けられたことが悲劇の遠因になった。
1962年のルワンダ独立後は多数派であるフツが権力を握り、初代のカイバンダ大統領時代にはツチがしばしば虐殺された。2代目のハビャリマナ大統領(服部正也『ルワンダ中央銀行総裁日記』にも「ハビさん」の名で登場する)の時代の末期、1990年代前半にも激しい内戦が起こり、権力の維持を図った同政権の取り巻き集団を中心にフツ至上主義(フツ・パワー)が喧伝された。
ツチへの憎悪を煽った雑誌『KANGRA』。ルワンダ虐殺の当時、ツチの民兵たちの間でよく読まれていた。キガリ市内の虐殺記念館にて許可を得て撮影
ついに94年、このハビャリマナ大統領の暗殺を契機に混乱がいっそう拡大し、民兵組織や地方有力者の扇動を受けた一般のフツ系住民が、ツチや穏健派フツをわずか3ヶ月間で50万〜80万人(一説には100万人)も虐殺するルワンダ虐殺が起きた。単純計算でも、内戦前の人口(約720万人)の10%近い人数が犠牲になったことになる。ソロバン先生のピーターも、この事件で父親を失っている。
「当時は4歳だったから、僕には父さんの記憶も、虐殺の記憶もない。父さんがフツで母さんがツチだったらしいけれど、父さんはフツなのに虐殺に加わらない穏健派だったから殺されたみたいだ。ただ、どうやって亡くなったのかはよくわからない」
いっぽう、孔子学院の講師であるガットは、父親がツチで母親がフツだった。ガットが7歳のときに発生した虐殺で父親の一族は皆殺しにされたが、当時は母親がフツの男性と再婚していたので、連れ子であるガットはかろうじて難を逃れている。ガットは言う。
「私みたいな話はいくらでもあるが、みんな我慢している。被害者も加害者も大勢いるし、(虐殺の)当時に何をしていたかは、他人に聞ける話題じゃないさ。過去に直接手を下したことがわかっている人についても不問に付す。それが未来のためだ」
虐殺25年後の強権と経済発展
1994年のルワンダ虐殺は3ヵ月ほどで終わった。隣国ウガンダに亡命していたツチ系勢力を中心とするルワンダ愛国戦線(RPF)が内戦に勝利し、虐殺が停止されたからだ(ちなみに同年9月〜12月にはルワンダ難民への人道救援活動として、自衛隊が隣国ザイールの難民キャンプに派遣されている)。やがて政情は徐々に安定し、2000年からはRPFのリーダーだったポール・カガメが大統領となった。
近年、カガメは強力なリーダーシップのもとで「アフリカのシンガポール」を目標にルワンダの国家改造を進めている。カガメはかなり独裁的だが、ジンバブエのムガベや中央アフリカのボカサのような、従来のアフリカにありがちな国家を私物化するタイプのリーダーではなく、あだ名は「ルワンダのCEO」だ。植民地時代から行政や教育現場で用いられてきたフランス語も、英語に置き換えられた。
ルワンダの一人当たりGDPはまだ750ドル程度で、国家予算の3割を援助に頼る。だが、ルワンダの汚職の少なさや政府の行政能力、良好な治安、起業の容易さなどは国際的にも高く評価されている。国外からの投資も集まり、2008年〜2017年の10年間のGDP成長率は約7.5%に達した。人口も虐殺当時の倍以上となる約1220万人まで増え、社会には若者が多く活気がある。
近年は政府の政策により清掃に力が入れられていることもあって、キガリ市内の中心部はかなり清潔だ。路上にゴミはほとんどなく、他のアフリカの都市と比較しても清潔感がある。夜間のひとり歩きも、それほど怖くない。
カガメ政権下では従来の民族対立も強引に押さえ込まれ、いまや「ツチ」「フツ」はもちろん「民族(ethnicity)」という単語すらおおやけに���ることはタブーだ。もっとも実際のところ、内戦前は人口的に多数派のフツ系が支配層だったが、内戦後はカガメ自身を含めたツチ系のリーダーたちが台頭するようになっている。
現在、ICT分野で起業をしたり、中国に留学したりするような「意識の高い」ルワンダ人の青年エリートは(ピーターはフツ系だが)多くが幼少期に虐殺を生き延びたり、亡命先から母国に戻ってきたツチ系の人たちである。彼らはそれぞれカガメを手放しで称賛する。
「カガメ大統領は凄い。彼はルワンダ国民を愛しているし、ルワンダをもっと発展させてくれる。国家が発展するときは、ああいうストロングなリーダーの政治が必要なんだ。マスコミや野党の統制だって、ときには必要とされる場合があるのさ」(ピーター)
「カガメの政策は庶民の希望と合致している。彼ら(=RPF)はルワンダを虐殺から救ってくれたし、カガメに代われる者はいない。みんなが、カガメにもっと大統領を続けてほしいと思っている」(ガット)
中国人から「言論の自由がない」と評される国
ルワンダではカガメについて「褒める」以外の評価が許されていないとはいえ、かなり多くの国民が本気でカガメを支持しているのも確かだ。これはピーターやガットのようなエリート層だけに限った話でもない。
ただし、カガメ政権は経済発展以外の分野でもシンガポールや中国を参考にしているらしく、マスメディアを強力に統制し、野党を強力に弾圧している。さらに2015年には、憲法を改正して大統領任期を事実上17年間も延長してしまった。
プロパガンダ雑誌の表紙をかざるポール・カガメ。「ルワンダのCEO」のイメージを損なわないための演出なのだろうが、反政府ゲリラの元リーダーがこれだけスマートに振る舞っているのは驚きだ。
ルワンダの報道統制は凄まじく、中国系の民間シンクタンクが昨年8月に発表したレポート『非洲国家民衆眼中的中国形象—盧旺達(アフリカの国家・民衆から見た中国の姿:ルワンダ)』のなかでも「言論の自由は相対的に制限されている」「(現地メディアは)民衆の真実の感想や視点を反映したりよく伝えたりすることが比較的少ない」という記述がある。中国人が見てすら「言論の自由がない」と感じてしまうほどの国なのである。
従来、欧米各国はルワンダ虐殺への配慮もあってカガメ政権への批判を手加減してきたが、近年はさすがに批判が強まり、ルワンダの対米関係も悪化しつつある。ただ、それゆえに専制体制を気にせずに仲良くしてくれる「大国」の存在は歓迎される。つまり中国のことだ。
CNNによれば、中国は過去12年間でルワンダに4000億ドル(約4兆3900億円)を投資してきた。ルワンダの道路状況は地方を含めてかなり良好だが、こうした国内道路の7割は中国企業の建設によるという。昨年7月、習近平は中国の国家主席としては初めてルワンダを訪問して一帯一路構想への参加を歓迎し、一説には道路建設に1億2600万ドル(約138 億円)規模ともいう融資を決め、さらに病院や新空港の開発でもルワンダ政府と合意に達した。
ルワンダの目覚ましい復興は「アフリカの奇跡」として国際的にも高い評価を得ている。だが、その成功を支えるものは、広い意味での中国モデルの国家体制である。
「虐殺」の後には中国きたる
以前、私は『さいはての中国』(小学館新書)で、カンボジアでの中国の存在感の増大について書いた。かつて内戦とポル・ポトの虐殺を経験したカンボジアは、1990年代前半にUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)をはじめとした国際社会の支援のもとで議会制民主主義が導入されて国家を再スタートさせたが、近年は中国の強い影響化に置かれるようになった。
現在、カンボジアは急速な経済発展で投資家の注目を浴びるいっぽう、与党が国民議会の全議席を独占するなど、フン・セン首相の独裁体制が固められている。フン・センと中国の関係は強固で、カンボジア国家は、中国からの多額の借款を受け入れている。ASEANの会議などで南シナ海の領土問題が持ち出された際に、カンボジアが必ず中国を支持する光景もすでにお馴染みだ。
虐殺の後には中国きたる――。この構図はカンボジアのみならず、ルワンダもまた同様だ。
米中対立の激化が進むなか、今年5月12日付けのAFP(日本語版)は、フランス国際関係研究所のアリス・エクマン氏の見解を引用する形で、世界の各国が米中のいずれの勢力に属するかの選択を突きつけられる時代の到来を予告している。中国に「新冷戦」を本気で戦い抜く覚悟と体力があるかは不明だが、近年の中国の国際的プレゼンスの拡大を受けて、第三世界の諸国のなかには、かつての毛沢東時代さながらに中国側へなびく国が出てきている。
ルワンダをめぐってはかつて冷戦下の1960年代に、西側寄り(フランス寄り)のフツ系政権を牽制する目的から、複数のツチ系反政府勢力がソ連や中国の支援を受けていた歴史がある。現在の中国とツチ系のカガメ政権との関係は���半世紀前の共闘の構図が新冷戦の時代に装いを変えて復活したもの、という見方もできるだろう。
アフリカで中国を探す私の旅は、まだ始まったばかりである。
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☆**CARAMEL MUSEUM情報 CMお品書きご紹介PT.2♡**☆
こんにちは♡キャラメルキューブです😃
遂に開催まで
後,,,,,,,
✨✨✨✨✨5日✨✨✨✨✨
となりました❣️
7月21日~8月15日の26日間、池袋P’PARCOさん 1Fにて開催する
🎪ハンドメイドの博物館🎪
🌈💍🐠CARAMEL MUSEUM 🐠💍🌈
開催発表BLOGはこちら✨
ご参加作家様一覧はこちら🎶
春のCMお迎えフォトBLOGはこちら📸(CC.CH)
配置図ご紹介BLOGはこちら♡
イベントウェブ販売サービスについてはこちら🎁
☆**CARAMEL MUSEUM**☆イベントハッシュタグ
#CARAMEL_MUSEUM
こちらは
ご参加作家様・サークル様からお届け頂いた
・**。+お品書き。**・
のPART.2となっております♪
ぜひPART.1と合わせてお目当ての作品を事前にチェックしてみてくださいね🎶
☆**CARAMEL MUSEUMお品書き♡**☆
スペースC
全期(7/21~8/15)ご参加
前期 (7/21~7/29)ご参加
中期 (7/30~8/6)ご参加
後期 (8/7~8/15)ご参加
スペースM
1部 (7/21~7/26)ご参加
2部 (7/27~8/2) ご参加
3部 (8/3~8/9) ご参加
4部 (8/10~8/15) ご参加
*つくもあさ様*
CMスペース番号 :M2部・M-10
*一言コメント*
【人魚とその海】をテーマにした一点物のアクセサリー。
淡水パールを使ったかんざしや天然石を使用したバングル・ブレスレットなど。
*あづまや様*
CMスペース番号 :C前期・C-17
*一言コメント*
今回初めてCMに参加させていただきます。
作品について、主に羽二重を使用したつまみ細工のアクセサリーを、普段使いしやすいよう小さなサイズで制作しております。普段のお洋服から浴衣などに合わせても可愛いアクセサリーです。
今回は夏をテーマとした作品を中心に展開します。羽二重の透き通るような生地の薄さを感じていただきたいので、この機会にぜひ会場でお手に取ってご覧いください。
*雪華様*
CMスペース番号 :C前期・C-18
*一言コメント*
オリジナルデザインのメタルパーツを使ってアクセサリーや雑貨を制作しているユニット雪華です。 薄く繊細なすかしパーツに純金めっきを施し、高級感がありながら軽く普段使いしやすいアイテムを目指したものづくりをしています。 夏のCMでは定番の風鈴風アクセに新しい札や新素材が仲間入り! 本格的な旅行シーズンにお役立ちなご朱印帳バンドや、夏らしいアクセなどたくさんお持ちしますのでよろしくお願いします!
*藍猫屋様*
CMスペース番号 :C前期・C-21
*一言コメント*
猫と魔法をテーマに貴方だけの物語を彩るファンタジーなアクセサリーを制作しております。 魔法使いが身に付けていそうな耳飾りや幻想的なネックレスなど異世界の旅人にぴったりの魔法アクセサリーを揃えてお待ちしております。 夏の新作もございますので、是非覗いてみて下さいませ! 最新情報はTwitter→@ainekoya ▷Cスペース・前期 7/21~7/29【C-21】 ▷ショコラ常設BOX:AA-36
*Rouge様*
CMスペース番号 :M1部・M-13
*一言コメント*
美味しそうだけど食べられない?!
樹脂粘土製の可愛い食べられない食べ物を作っております。
様々な使い方ができる人気のチャームをはじめ、キーホルダーをメインで出す予定です!
細部まで作っておりますのでぜひお手に取ってご覧下さいませ。
*Labyrinthe Magique Doux様*
CMスペース番号 :M2部・M-3
*一言コメント*
今回2回目で参加させていただきます! 今回は私らしい可愛いデザインのピルケースやミラーだけでなく、夏デザインのヘアゴム、海塗りのバレッタ、ドライフラワーをたっぷり入れたイルカのバッグチャームも作りました! 7/27〜8/2まで【M-3】でお待ちしております!
*THEORY_MOVE様*
CMスペース番号 :M3部・M-18
*一言コメント*
UVレジンやスワロフスキーなどを使って、お菓子をイメージしたアクセサリーを制作しています。 水饅頭やアイスキャンディー、フルーツゼリーなど、涼しげなお菓子のアクセサリーをお届けします。 少しでも涼を感じていただけたら嬉しいです。
*SheRa様*
CMスペース番号 :M1部・M-11
*一言コメント*
「日々を彩る」をテーマにアクセサリーを作っていますSheRaです。CARAMEL MUSEUMではレースリボンのポニーフックやヘアゴムなど、ヘアアクセサリーを中心に販売します。
日々のコーディネートを彩るお手伝いができるようなデザインを目指しました。夏のコーディネートに合わせていただけたらうれしいです。
よろしくお願いします!
*mahana tiare様*
CMスペース番号 :M1部・M-6
*一言コメント*
和風な色の組み合わせや和柄を用いたリボンアクセサリーや布小物を作成しているmahana tiare(マハナティアレ)と申します。
今回のキャラメルミュージアムは7/21〜7/26のMスペースの1部に参加させていただきます。
今回は和柄リボンを使ったヘアアクセサリーなどを並べます♪
浴衣などの和装だけではなく、洋装にも合うデザインを考えて作成しています。
会場にて手に取ってご覧いただけると嬉しいです。
*くろねこ工房様*
CMスペース番号 :C中期・C-17
*一言コメント*
アクセサリー・雑貨やタイツ・オーバーニーソックスなどを制作している、くろねこ工房(CCC BB-10/AA-29)です。
切子硝子風や猫ちゃんクリームソーダの耳飾りのほか、初披露新作のインク沼のキーホルダー、和雫シリーズが仕上がる予定です
画像にないカラーverも追加しますので、詳細はTwitter @conecowork にて。
軽く���使いやすいアクリルのオリジナルデザインアクセサリー、ぜひご覧ください!
*Flower drops様*
CMスペース番号 :C後期・C-4
*一言コメント*
Flower drops(フラワードロップス)です。 レジンやビジューを使ったキラキラ光り輝くアクセサリーを制作しています。 定番アイテムの「花のしずく」、「煌めくしずく」シリーズの涼しげな新色をお披露目します。 前回ご好評いただけた片耳ずつ色を選べるアイテムもございます。 今回紹介しきれなかった新作はTwitterやInstagramで発信していきますので、ぜひご覧ください。 ID共通:@nyoco_fd
*月音様*
CMスペース番号 :M2部・M-6
*一言コメント*
月音の早希と申します。 蝶や星などのピアス、歯車のイヤークリップを中心に取り扱っています。 色違いなどもある為、カラーが豊富です。 歯車のイヤークリップは、ほぼ一点物での作成となっています。 普段使い出来るアクセサリーを目指していますので、素敵なご縁があると良いなと思っています。
*煌鉱堂様*
CMスペース番号 :M4部・M-17
*一言コメント*
新作のシーリングスタンプヘッドをご用意しました。今回は単品販売も行います。
またシーリングスタンプ初心者様向けのセットもありますので、ぜひシーリングスタンプに挑戦してみてください。
その他、キラキラと煌めく魔力を込めた新アイテムも多数ありますので、会場で手に取ってみてくださいね。
*NiamiL様*
CMスペース番号 :C中期・C-21
*一言コメント*
ゴシック、歯車、季節、猫、天然石など様々なアクセサリーのご用意をしております
*煌々流星群様*
CMスペース番号 :M2部・M-17
*一言コメント*
「普段使いできるキラキラのアクセサリー」をテーマに作っている煌々流星群(きらきらりゅうせいぐん)と申します。
各地でお祭りや花火大会が再開されているので、そんなお祭りでも映えるかんざしを中心に新作アクセサリーを作成しました。
他にも様々なアクセサリーを持ち込み予定です。
それぞれのキラキラを会場や通販で探してみてください。
*porupotoruko様*
CMスペース番号 :C前期・C-4
*一言コメント*
porupotorukoです。
『ラッコとシュノーケル』をテーマに、おちゃめで夏らしいアクセサリーを展開します。青や透明、ときどきビビッド。ゆらゆら、シュワシュワ、なみなみと。海の生き物モチーフなど、水分と涼しさを感じてもらえると嬉しいです。
ちなみに海に暮らすラッコの潜水時間は実は1、2分。人間とあまり変わりません。
*pure*wire様*
CMスペース番号 :C前期・C-24
*一言コメント*
チタンワイヤーと天然石やガラスでアクセサリーを作っています。
今回は宝石猫を多めにご用意しますので、猫好きさんに是非ご覧頂きたいです♪
チタンは軽くて丈夫で錆びない、そして金属アレルギーを起こしにくい素材ですので、お手入れの煩わしさや、重さ、アレルギーでアクセサリーを諦めていたにも楽しんで頂けたら嬉しいです。
*wangen様*
CMスペース番号 :M4部・M-13
*一言コメント*
「見た人の顔がほころぶような、そんな一品との素敵な出会いを」をテーマに、仕事の傍ら花や星、月をモチーフにしたアクセサリーを製作しています。
新作の月見花など、夏らしい色合いのアクセサリーたちをお届けします!
*月のきまぐれ様*
CMスペース番号 :M1部・M-7
*一言コメント*
M1部(スペース番号M-7)に参加させて頂くことになりました月のきまぐれと申します。 レジンやリボンを使ったアクセサリーを製作しています。 今回はキラキラ可愛い魔法モチーフに加えてリボンを使ったヘアアクセやマーメイドカラーの可愛いアイテムもご用意しております。 詳細はTwitter(@tkmk_lights)でも発信しておりますので是非チェックしてみて下さい(^^)
*blaue meer様*
CMスペース番号 :C中期・C-8
*一言コメント*
クラゲをモチーフにした紫陽花の入ったちょっと変わった紫陽花クラゲのアクセサリーです 夏にピッタリの紫陽花クラゲさんを着けてお出掛けしてください そして、小粒ながらも存在がある耳元で輝く小さなアクセサリーもございます 是非好きな色、推しの色を探してみてください。
*ヒナノハナ様*
CMスペース番号 :C前期・C-13
*一言コメント*
紫陽花をはじめとして、四季折々のお花を使ったアクセサリーを作っています。 ヒナノハナです
今回の新作はマーメイドカラーの紫陽花。 1枚1枚、丁寧にコーティングしてランダムに重ねました。 青と紫の鮮やかなグラデーション…ぜひ手に取ってご覧いただければ嬉しいです。 もちろん人気の紫陽花シリーズは、他にも納品予定でおります。 素敵なご縁がありますように♡
*GlassOre様*
CMスペース番号 :M4部・M-10
*一言コメント*
GlassOreと申します。
鉱石風なガラスは一つずつ溶かした手作りになります。ラメ入りのものやモヤがかかったものなどあります。
柔らかな輝きを放つアクセサリーは”シンプルだけど幻想的”でシーンを選ばすお使いいただけるかと思います。
ピアスやネックレス、かんざし等ご用意していきますのでよろしくお願いいたします。
*LittleSpica様*
CMスペース番号 :C中期・C-14
*一言コメント*
今回Cスペースの中期で出展させて頂きますLittleSpicaです。 夜空や宇宙をイメージしたアクセサリーを作りましたので是非会場でご覧ください。 新作や様々な情報はTwitter(https://twitter.com/_LittleSpica)にて随時報告致します。
*Atelier Chouchou様*
CMスペース番号 :C後期・C-15
*一言コメント*
「毎日にキラメキとトキメキを」というテーマで、色や季節を楽しめる作品を制作しているAtelier Chouchouです。 今回は、夏にピッタリな人魚をモチーフにしたアクセサリーや、海を切り取ったようなアイテムを中心にご用意しております。 キャラメルミュージアム→ C後期 C-15キャラメルキューブショコラ→ A-77Twitter → https://twitter.com/AtelierChou2
*たそがれ水曜日様*
CMスペース番号 :C中期・C-12
*一言コメント*
「黄昏時、憂鬱の背中を蹴り飛ばす勇気。」 時とともに移り変わる空や海の美しい色彩をレジンで表現し、丁寧に研磨して透明感と輝きにこだわった作品を制作しています。 夏にぴったりの透き通ってきらめくアクセサリーをぜひお手に取ってご覧ください! twitter:@twd_hm キャラメルキューブショコラ【AA-41】
*TARADOLL様*
CMスペース番号 :M4部・M-8
*一言コメント*
ゆめかわいい世界に、一軒の
キノコのおうちが建っています。
中では、女の子がなにやら絵を描いたり、
アクセサリーを作っているようです。
女の子の名前はTARADOLL。
目を瞑って、楽しいことを考えるのが
大好きです。
今日も目を瞑って、かわいいアクセサリーを
作ったり、オシャレしてる自分を想像して
イラストを描いている…
こちらはそんな女の子が開いている
お店です。
今回のテーマは、
海に住むお姫さまと仲間たちです♪♪♪
*Spica LILA様*
CMスペース番号 :C後期・C-20
*一言コメント*
ちょっとロマンチックなきらめくアクセサリーを制作する【Spica LILA】です。 今回はC後期 8/7〜8/15 の期間に参加します! ご好評いただいているくらげの耳飾りや夏らしく涼やかな色のアイテム、はちみつや星モチーフなど、色々なアクセサリーをご用意します。 新作も準備中です! 素敵な出会いがありますように。 新作やお品書きは、Twitter(@Spica_LILA)でお知らせします。
*じおぐらふぃ|ハナサガシ様*
CMスペース番号 :M3部・M-3
*一言コメント*
じおぐらふぃ|ハナサガシ です。 夏の新作としてお花のポニーフックや、熱帯魚をイメージしたイヤリングとピアス、 キャンディチャームのブレスレットなどをご用意しました。 色違いで各色一点物の作品が多いです。 会場にて実際にお手に取ってご覧いただければ幸いです。 キャラメルキューブショコラ A−4 そのほか各種お知らせ Twitter&Instagram @ha7geogr ※各種バリエーションもこちらでご確認いただけます!
*花奏-はなかなで-様*
CMスペース番号 :C前期・C-16
*一言コメント*
華奢で繊細、透明感のある非現実的なアクセサリーを制作しています。人と違うカラーアクセサリーをお探しの方へ。花弁とドロップのお店です。
*Strawberry♡flower様*
CMスペース番号 :M1部・M-3
*一言コメント*
『くまポップコーン☆キーホルダー&バッグチャーム』 毎回イベントで完売のくまポップコーンのキーホルダーです。ボールチェーンも付いているのでバッグチャームとしても使っていただけます。 トッピングなどもひとつひとつ違うのでお気に入りのデザインを見つけてくださいね。
『カップケーキピニャータのバッグチャーム(くま、うさぎ)』 毎回ご好評いただいているくま、うさぎカップケーキのバッグチャームになります。
ご来場、心よりお待ちしております♡
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【お知らせ】 植原翠先生『手作り雑貨ゆうつづ堂』の装画を担当しました。 不思議な力が溢れる手作り雑貨屋「ゆうつづ堂」で起こる素敵なお話の数々に心があたたまります🐈 著:植原翠 出版元:マイナビ出版 レーベル:ファン文庫 デザイン:ベイブリッジ・スタジオ 発売日:9/18 ISBN:978-4-8399-7406-0 https://book.mynavi.jp/ec/products/detail/id=116912
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十二月
今年の十二月は鞄の中が牛乳まみれになったことから始まった。ボストンバッグに入れていた瓶の蓋が、事もあろうに外れてしまっていたのである。そして、まず手洗いにでも駆け込むべきところを、そのまま列車に乗ってしまった。気が動転していた。しかししばらく時間の経つうちに平静を取り戻して、終わってしまったことはどうにもならないことに諦めがつき、仕事場についたときに鞄をまるごと捨てた。そのあと、仕事仲間に笑い草にして語った。その鞄は、このように牛乳塗れになるまでに、約十ヶ月のあいだわたしに担がれてきた。それは買い付けたときは安売りをしていて特段たいした痛手にはならなかったし、捨てた瞬間は厄介払いでもしたかのように清々しい気さえしたものだが、こういうことが積み重なると、さすがに心が弱ってくる。
ここ最近、二週間に一回は、牛乳塗れの鞄のような災難があるような気がしている。それを多いと捉えるのか、少ないと捉えるのかは、その人の人柄や性格などにも寄るのだろうが、わたしからしてみたら致命的に多かった。鍵を忘れて家族の帰宅する二十三時まで外に居なければならないとか、たった五分目を離した隙に自転車の盗難に遭うとか、些細なものだと、間違ったものを買ってきてしまうとか、ハンバーグに玉ねぎを多く入れすぎがためにただのひき肉炒めになってしまったことだとか。本当につまらない話だと思う���つまらない話は、積み重ねても積み重ねてもつまらない話でしかないが、それをたくさん乗せられた人は重さに耐え切れず死ぬんじゃないか知ら。 気丈なつもりでいたわたしも、いよいよ、押しつぶされそうになってしまったというわけである。
もうすっかり十二月だった。人生で十二月を迎えるのは、なんだかんだ言って二十五回目である。そのくせ、いつも初めて迎えるような気持ちになってしまう。人間は、生きるのに必要なこと以外は忘れるようにできている。 九月末に仕事場が移転した。企業拡大により、自分の部署だけが引っ越すことになった。列車の乗り換えも変わり、仕事場への道のりが少し長くなった。変わってからもう二ヶ月は経つのに、わたしの足は今でも稀に以前の乗り換えを目指そうとする。 仕事場では、毎日ちがう笑い話をする。愚痴を笑いに変えるのである。何も解決しないが、単に憂さ晴らしのためだった。でも、意外とこれが労力の要る作業なのかもしれない。強いふりをしているだけの人には。つまり、わたしである。
ハッピー・メリー・クリスマ��! ケーキはいかがですか、お嬢さん。 樫の木でできた重厚なドアを開けると、店主が恥ずかしげもなくそう迎え入れてきた。わたしが店に入ってくるのが、硝子越しに見えたのだろう。その言葉は間違いなくわたしにだけ向けられたややおふざけ気味のものだった。 「ハッピー・ハッピー・メリー・クリスマス。楽しい時期ですね。」 「そんなしけた顔で言われちゃあね。」 店主は髪を無造作にかきあげて苦笑した。 「まあおれもそんなハッピーじゃないんだけどね。なにしろ十二月が誕生日だから、おれもいよいよ三十路なわけよ。」 わたしは、おめでとうございます、と言って、なるべくカウンターから離れた席に座った。 「いつもの?」店主でなく、カウンターの端っこに頬杖をついて座っていたノラが言った。わたしは黙って肯いて椅子に座る。ノラは、店主に「いつもの。」とそのまま伝えてまた雑誌を読み始めた。いつもの、といっても、そんなに格好いいものではない。カフェラテである。 わたしはこの店に繁く通う。なぜなら、いつ来ても席が空いているからである。広いわけではない。かといって、狭すぎるということもない。客足が思わしくないのは、駅前の道からやや外れたところにあるためだろう。しかし潰れる気配もない。それはわたしのような常連客が、まるで自分の家かのように通い詰めているからである。 ノラもまた常連だった。いつも同じ席に座っていた。人気のない席なのである。なにしろ、カウンターの端っこには雑貨が山盛りに置いてあるのでとても狭い。そして、しっかりした椅子ではなく、わりと簡易的な椅子が配置されている。ほとんどノラのために用意されたような席だった。 「随分と元気がないようで?」 ノラはくるっと振り返って、めずらしく機嫌よさそうにわたしに話しかけてきた。 「年の瀬は殺傷能力があるね。」わたしは無表情のままで言った。「物憂さだ。」 わたしの吐き出した言葉に彼は、ふうん、だか、へえ、だか、音で言い表せないような返事をして、また目線を雑誌に戻した。スウェットみたいなズボンの膝小僧を居心地悪そうに掻いて、息苦しかったのか薄いキャメルのセーターの胸の部分を軽く引っ張りおろした。ノラを一言でいうなら、近所のこぢんまりとした部屋に住む貧乏大学生といったところか。いつ来ても居るので、たしか学生だったとは思うのだが、授業に行っているのか否かはよくわからない。 店主はカウンターに座るご年配と話し込んでいる。景気良く世間話に花を咲かせながら、ほとんどノラのほうを見ずにカフェラテをカウンターの端に置いた。それを、ノラがわたしのいるテーブルに運んだ。 「もう半分、新年に足を入れているようなもんだ。」ノラが言う。 「どういう意味?」 「諦めと自棄みたいなもんですかね。」 口が止まらないのか、ノラはそのまま席へは戻らなかった。わたしの横へ細い身体をするりとくぐらせ、隣の席とわたしの席とのちょうど真ん中あたりに収まった。 「あの爺さん、ずっとマスターと話し込んでやがんだ。しかも、宝くじの話ですぜ? 当たりもしない紙切れのことを延々と。暇ったらありゃしないね。」 「そう? 夢があっていいと思うけれど。」 「おや。あなたはおれと同意見だと思ってましたけどね。」 「同意見といえば同意見だけどね。」 「なんと。嘘がお上手で。」 カラン、コロロン。ドアに取り付けてあるベルがのっそりとした揺れに躊躇いがちになると、二人目のご老人が杖をついて入ってきた。先にいた宝くじを夢見るご老人が元気に声を掛けるので、どうやら二人は知り合いらしい。 「単位は平気なの。」 何の気なしに、ノラに聞いてみた。彼は肩をすくめて見せる。「あなたに心配されるほどじゃありませんぜ。」
悲しみよこんにちはという言葉が似合うのは素敵な異国の十七歳の女の子だけであろう。 マリオンは艶めく赤みがかった髪をシャンパン・ゴールドを纏った指先で梳きながら「あーあ。ふたご座流星群見られなかったなあ。」と言い言いわたしの隣へ座ってきた。 それは冬のわりに暖かい日の一瞬のことであった。やたら風だけが強くて、わたしは何度も帽子を吹っ飛ばされた。そのくせ曇っていて、空の彼方で繰り広げられていたはずの流星群は沢山の人に待ち侘びられていたのに、ついに姿を見せることはなかったという。わたしは仕事に追い回されぐっすり眠っていたのでわからなかった。 マリオンはきらきらの爪を眺めて溜息をつく。星のことで頭がいっぱいなようだった。何も言わずとも、彼女の目の前にはココアが運ばれてきた。言わずもがな、ノラの手によって。 彼女は知らないだろうが、今日はとある旅客車の廃車日である。わたしは特に列車が好きなのではないけれど、仕事に行くのに乗っているだけでその情報はいつの間にか頭に刷り込まれていた。駅前はいつも通りの賑わいであった。 一昨日のことである。仕事帰りの列車で、大騒ぎをするスーツの群れが流れ込んできた。夜遅かったので、酒でも飲んでいたのだろう、良い歳をして、大きな声で喋っている。忘年会か、とぼんやり思った。きっと、自分の立場も年齢もマナーも、何もかも忘れてしまったのだろう。それが良いことなのか悪いことなのかは、わたしなぞが決めるようなことではない。 ただ、あらゆることを忘れて良い日というのは、なんだか素敵な響きを持っていると思える。
十二月の折でさえ初雪なんか降らなかった。昨年は天から鍋やフライパンさえ降ってきたというのにだ。風に乗って聴こえる歌は、 Gloria in excelsis deo という遠い国の言葉だった。 「ミサだ。」リュカさんが言う。「大聖堂でみんな練習してる。」 街の中には杉の木が点々と生えていたが、どれも等しく雪の衣を纏いはしなかった。不思議とさみしげな光景である。 リュカさんと昨年のストライキは大変だったねと話した。そうそう、鉄の塊が空から落ちてきたのは、さじを投げた料理人および主婦たちの怒りの声だったのだ。とはいえ鈍器が空から落ちてくる様は、今風の言葉を借りて言えば「普通に危ない」はた迷惑なものだったけれど、公安が一日で鎮めてくれて事なきを得た。その一連の流れを何をするでもなく眺めていたノラは、公安が一言漏らした「こんな事があってたまるか。」という真面目一徹の正統派の愚痴に一日中狂ったように笑い転げていた。あれから、一年経つのか。 「一年が早いです。リュカさん。」 「きみはまだ若いから分からないかもしれないけれど、ぼくほどになるともっと短く感じるよ。」 「そんなに歳変わらないじゃないですか。」 「きみの三倍は生きてる。」 「うそつき。」 リュカさんは学校に通っていた頃の二つ上の先輩である。 三倍、とは随分大きく出たものである。読書の量でいえば、わたしが一生読む文章の三倍は摂取しているのかもしれない。リュカさんは学生時代から図書館が友達だった。ヒトの友達がいないわけでもない。その教養の豊富さと人望から、リュカさんは何処へ行っても人に囲まれる性質の人物だった。 「知識の量とか、そういう意味でした?」 「んー。なんのこと?」 「なんでもありませんでした。」 わたしの三倍生きているリュカさんに、わたしの言葉足らずの疑問は届かなかったようである。
同じような不幸が訪れるのではない。人はそれぞれ毎日なにかしらの困難に立ち向かっている。「まただ。」そう思うときは、その類の不幸を貴方が乗り越えられていないでいるから、何度もぶつかっているように感じているだけだ。 これほど真理に近い言葉を耳にしたのは、そう、おそらく七歳ぶりである。
十二月二十七日。樫の木のドアを開けた。耳あたりの良い「カランコロン。」は今日は耳に届かない。おもわず上を見てやると、ベルが取り外されてしまっている。 「いらっしゃい。」店主はグラスを拭きながら���った。「今日は端へすわんないで、こっちへおいでよ。」 店主の手招く先には、ノラだけが居た。今は、ノラしか客が居ないようだ。ノラを客と言っていいものか、そういったところから議論する必要があるなら、頭が冴えるようにチョコレート・ココアをオーダーせねばならないだろう。 「今ね、一年は早かったねって、おれが言ったところ。」店主は人の良い笑みを浮かべた。 「おれは、早かったなんて思わないんですがね。」 ノラは、湯のみを持って緑茶を啜った。どう考えても、裏メニューとしか思えないシロモノである。 「お嬢さんはどう? 今年は過ぎるの早かったかな。」 「そうかもしれないと思ったこともあったけど、やっぱりそんなに変わらない気がします。去年も同じ早さで一年は過ぎていった。」 「ああそうなんだ。じゃあおれだけかあ、今年一年が早かったの。さすがだね、輝かしいね、二十代。」 「最後、三十路川柳みたい。」 「ださ。」 ノラの放った二文字で店主は笑いながら憤慨する。それを見たノラが、史上最高に面白いものを見たとでもいうような人の悪い笑みを浮かべる。まったくも��て対象的な二人がゲラゲラと笑うさまをその横で見るような、そんな年の瀬を過ごすなんて、まるで今年の集大成だなあとわたしは残念な気持ちになった。
「リュカさんってすてき。」マリオンは瞳の中にうつる光彩をゆらゆらうっとりさせながら、両手を口の前であわせた。「あたしの三倍生きてるんだって。」 「騙されてるよ。」すかさずわたしは突っ込んだ。でも、マリオンはどうでもいいという風に首を大きく振った。そのたびにスモーキーピンクの髪が揺れ、甘いいちごの薫りがする。 「騙されたっていいわ。」
あした、きみは死ぬかもしれない。あさって、わたしは居なくなるかもしれない。
私小説を書かう。 と筆を持つまでして辞めたわけですよ。わかりますかね、お嬢さん。私小説なんかくだらない。不幸の積み重ねよりつまらない文の集まりですぜ。一つのことを言いたいがために、何百文字と捏造をでっち上げるなんて。酔っ払ったノラは、喉をひっかけひっかけそう言った。 本当にそうだと思った。 十二月二十七日。ドアベルの外された店の中で、流れに任せただけの忘年会が始まった。「おれたちは忘れる必要がある。」当然の権利のように、声高に叫ばれたのがそもそもの原因だった。この喫茶に酒のメニューはないが、店主とノラは家にあるだけの缶ビールを掻き集めて、ささやかな宴の幕を開いた。そして早速、ノラが酔っ払いに成り下がった。 酒に強いらしい店主は、冷蔵庫の奥からケーキを取り出してわたしに出してくれた。クリスマス用の材料が余ったからさあ、と明るく笑う。本当のことなんだか、どうなのだか。 わたしは、この場にリュカさんがいてくれたらなと思った。店主とノラの埃が舞いそうなほどの古臭い漫談には飽き飽きだった。なにせ、これはもう今年一年たっぷりと見ている。気乗りがしない。 じつは友人とけんかわかれをした。わたしがこの店へ来るほんの五分前ほどである。わたしが友人の集まりに顔を出さなかったことが原因だ。この手の不仲話は女子の中ではよくあることだった。 決定的なけんかがなくたって、友情というものはだんだんと色褪せていってしまう。今そばにある人が自分の今のすべてで、その先もその前も、何ひとつ同じものなどない。そうやって独り前に向かって歩くのだ。それが堪えないようにするために、人は飯を食らうのであろう。ケーキなどでは、なく。
さあさあ寄ってらっしゃい見てらっしゃい。ノラが言った。世にも奇妙な年越しケーキだよ。 いやいやいや。店主が言う。まだ二〇XX年だから。年越してないから。 ノー・ノー。もう半分二〇XY年に踏み入れているようなものさ。冬至を超えた瞬間から冬の本番っていうのは始まっていて、ある種、一年の始まりは真冬から始まるようなものなんだから、もう年越しと名乗ったって不思議じゃない。第一、三百六十五日あるうちの一日も十日も変わりゃしないんだから、そんな細かいところばかり気にするなんて、きみ、どだい時代遅れっていうものだぞ。ノラが言う。 店主はワイングラスをくっと傾けた(いつから缶ビールがなくなったのだろう)。「そういうの英語でなんて言うか知ってる?」 ノラは外国じみた身振りで首を傾げてみせた。 「GOOD GRIEF!」 そしてまた二人は大笑いをする。ノラは、意味をわかっているのだろうか。ちなみにわたしはよくわからなくて、その場ではただ苦笑いを穏やかな死海のボートのように浮かべているだけだった。家に帰ってキーボードを叩いて調べたら、画面に「ああ、呆れた。」という意訳が載っていた。
煉瓦を積み上げて渡した橋があって、その真中でリュカさんは時計を直していた。年末になると、人間が身勝手に区切った時間軸と自然の時間に僅かな隙間が出来てしまって、放っておけばあっという間に昼夜が逆転してしまう。その一年分のズレを、ほとんど凍って水位の下がった川の上にある橋のところで、調節を施すというわけである。街中の時計も、この時期すでに来年に合わせたものもあれば、今年のままの時計もある。そのため、年末の待ち合わせはちょっとした騒ぎになることもある。 つじつまを合わせるために言っておくと、時計の針は年明け後の一秒から一年を均等に区切る速度で回っていないから、夏頃には結構ずれているのだそうだ。でも、一年の中で昼と夜の長さは引っ張り合って移ろいゆくため、人間は意外にもその科学的事実に気づかない。 客は随分とまだらだった。別の目的があって橋を渡る人が、小さな木の椅子に座ってドライバーを片手に腕時計をこじ開けるリュカさんを見て、もうこんな時期か、と気づいて、ついでに直してもらう、というくらいのものだった。年末の風物詩なのだ。 「ぼくからしてみたら、まだ二〇一三年の夏さ。」リュカさんはご婦人の華奢な腕時計を、結構乱暴に開けて、言い放った。ご婦人のうっとりとした表情を見る限り、彼が商品をずさんに取り扱っていることなんて微塵も気が付いていないのだろう。リュカさんは端正な顔立ちをしているので、人生がうまくいきすぎる。ご婦人は多めのチップをリュカさんの右手にしっかり握らせ、足取り軽く橋を渡って行った。 「電池を交換していないことをそんなに格好良く言えるものなんですね。」 「そうかな? お嬢さんも、詩でも勉強したらいい。」 リュカさんはドライバーをチェスターコートの大きなポケットに仕舞い込んで、椅子を肩に担ぎあげた。閉店の合図だ。 「そういえば、きみ、まだノラと会ったりしてるの。」 「会うっていうか、店に行ったらいつもいるので。」 「ふうん。そう。」 リュカさんはそれ以上何も言わなかった。これから何処へ行くのか訪ねると、市役所へ行くとの事だった。取られすぎた税金の帳尻合わせに行くんだとか。良かったら、それが終わった頃の、七時に待ち合わせをして、パスタでも食べに行きませんかと誘ってみた。 「それはもちろん、今年の時間のだね?」 リュカさんは、世界中のやさしさをかき集めたように穏やかに笑った。
待ち合わせの時間まで、いよいよ暇になってしまった。図書館は昨日で閉館してしまった。わたしはボンヤリ橋の上で、寒さも凍えも忘れて、頬杖をついてしまう。 色々あったな。今年も。小さな溜息をついた。 でも、そのほとんどを、もう忘れてしまっていた。きっと生きるのに不要だったのであろう。つまらない話は、必要がない。 わたしの時計は、今年の時間を刻み続けている。このまま刻んでいったら、わたしはみんなより遅く歩いていけるのだろうか。みんなの一度歩いた安全な道を、踏みしめられるのだろうか……これもつまらない話なので、明日には全部忘れてわたしは時計の針を来年に合わせていることだろう。 あと三日で、十二月が終わる。誰がどう思おうと、きっかり三日だ。そうしたら、今年のことは、いとしい過去になる。
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