#悪魔の首飾り
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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和六年(2024年)10月21日(月曜日)
通巻第8469号
華やかな観光地にも闇の伏魔殿、マネロンの根城がある
世界の大富豪が集結し、逆に西側先進国や中露から資金は流失した
*************************
ドバイが何故マネロンとギャング、大富豪からテロ集団の拠点となったのか?
世界一の高層ビルや豪華リゾート、七つ星のホテル、世界の大富豪達の別荘が海を埋め立てた景勝地に並ぶ。
この富に目がくらんで世界各地から新興企業や妖しげなビジネスマンがあつまり、加えて犯罪集団のマネロン基地、中国の地下銀行など何でも御座れ。日本でもドバイからメッセージを発信して、あろうことか、参議院議員に当選し、一度も登院しなかった男はドバイを根城にしていた。
英紙『タイムズ』は「コカイン・インク──英国の麻薬取引の決済金がドバイで純金に変わる仕組み」という特集を組んだ。
英国の犯罪集団もドバイと深く関わっている事実を明らかにしたのだ。UAE(アラブ首長連邦)の中心ドバイに「現金運び屋」と渾名された闇のシンジケートが形成され、英国の麻薬や詐欺、犯罪組織の拠点となっていた。
密輸される金の中継地でもある。表の顔は国際都市、チャイナタウンもあれば、広大な売り場面積の紀伊國屋書店もある。日本語書籍は片隅で、諸外国語のベストセラ-、英訳された日本の漫画も売っている。
ドバイ当局は無策ではない。
「マネーロンダリング・テロ資金供与・違法組織資金供与対策委員会」(NAMLCFTC)はインターポールなど国際警察と緊密に協力し犯罪集団の摘発に努力している。
英国の違法薬物取引は100億ポンド(132億米ドル)規���と見積もられ、2016年から2022年の6年間に67億ポンド(88億9000万ドル)がマネロンされた。その洗浄された「きれいな資金」は英国に環流し、不動産に投資され、そのうち15億ポンド(19億9000万ドル)は汚職や正体不明のロシア人と関係していると前述英国紙が報じた。
UAEは毎年、世界の金の20~30%を取引している。UAE の金市場は宝飾品だけではなく、金地金や金貨の需要が高い。
英国における拠点はバーバーだった。「パンデミック以降、繁華街のあちこちで理髪店の開店ラッシュが見られました。こうした店の多くは、何千ポンドもの機器を持っているのに、客がいません」と捜査関係者が語る。
英国の犯罪集団は毎年1,500億ポンド(1,990億米ドル)を資金洗浄しており、米国に次いで世界第2位の「マネロン経済」となっている。
英国で増え続ける麻薬、大量の不法移民の乱入に納税者が悲鳴を上げる。この構造はアメリカと同じである。英国は歴史的に移民に寛大で、「合法移民」はナイジェリア、インド、パキスタン、香港など旧植民地や、英国と関わりが深いイラン、アフガニスタン、エチオピア、エリトリアなど。不法移民は多彩で、昨今はルワンダからの難民が目立つ。
▼不法移民の潜入ルートが代わった
「主にフランスから小型船舶で不法に入国する移民の急増によって起きている。英国の社会問題(となった)。小型船舶による不法入国は2020年に約8500人だったが、21年は約2万8500人、22年には約4万5700人に増えた。新型コロナ禍での入国規制で、英仏海峡トンネルをトラックで移動することが困難になり、小型船舶で不法入国が行われるようになったことが背景にある」(『ジェトロ海外報告』、24年5月2日)。
英国は移民に寛容だったうえ、彼らにも福祉政策が適応された。そのうえ不法滞在でも職を得やすいとされたが、欧州連合(EU)離脱後、経済が低迷し、不法入国者の収容に多額の公費が投入された。国民保健は、2024年7月時点で762 万件の待機リスト、約430万人の子供たちが貧困生活を送っているとされる。
英国納税者の歳入から年間140億ポンド(185億7000万米ドル)を割いて不法移民を養っていることになる。(因みに日本への不法移民(日本は『不法残留者』という)の五傑はベトナムが15,806人、タイ:11,494人、韓国:10,869人、中国:6,881人、フィリピン:5,069人、インドネシア:4,537人ほか)。
あまつさえ治安が悪化し、国民の不法移民への警戒と不満が拡がった。凶悪犯罪が急増し国民生活の安寧が覆った。この深刻な問題は英国ばかりか米国、独・仏などEU諸国に共通である。
ドバイに話を戻すと、世界一の富裕層を引き寄せる国であり、2024年末までに過去最高の6,700人の億万長者の流入が予想されている。対照的に英国は2028年までに億万長者の凡そ17パーセントを失うだろうと予測される。
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Golden Wildfire - Chapter 3 - Camp Lines (Japanese)
Couldn't find them on PegasusKnight, so...:
Claude
Claude: こうも同時期に、フォドラ各地で変事が 起こるってのは ...... 何なんだろうなあ? Claude: 偶然だとは思うが、妙な胸騒ぎもする。 この先いったい、どうなることやら..... Shez: 胸騒ぎ、か・・・
[共感する] Shez: 確かにね。パルミラを撃退して万事解決、とはいかない気がするわ。 Claude: お、お前もそう思うか。これが杞憂なら、それでいいんだが。 Claude: ここから、フォドラの情勢が大きく動く・・・・そんな気がしてならないんだ。 Claude: 他の連中も不安に思っているかもしれない。お前も声をかけてやってくれよ。
[受け流す] Shez: 考え過ぎじゃないかしら? それに今は、 パルミラとの戦いに集中したほうがいいわ。 Claude: まあ、そうなんだが......どうも引っかかるんだよなあ。 Claude: ここから、フォドラの情勢が大きく動く...そんな気がしてならないんだ。
Hilda
Hilda: あーあ............... せっかく兄さんから離れて楽しい学校生活を送れると思ったのになー。
[ヒルダの兄について聞く] Shez: てことは、お兄さんと仲が悪いの? Hilda: ううん、むしろ兄さんはあたしのことが 大好きすぎて、面倒くさいっていうかー。
[楽しい学校生活について聞く] Shez: 学校生活ってのは、楽しいものなの? Hilda: そりゃ楽しいでしょ。 同世代の友達と一緒に泣いたり笑ったり踊ったりー。
Hilda: あーもう、嫌だなあ。早く士���学校に戻りたいよー。
Lysithea
Lysithea: 万一、パルミラ軍に喉元を突破されたら、 同盟領は無事では済まなくなります。 Lysithea: クロードは、この事態の深刻さを ちゃんと理解しているんでしょうか。
[していると思う] Shez: わかっていて、あえて落ち着いて 振る舞ってるんじゃないかしら? Shez: 彼が不安な顔してたら、他のみんなも不安になってしまうものね。 Lysithea: なるほど............それが本当なら、彼を見直してあげなくもないです。
[していないと思う] Shez: うーん、わかってないんじゃない? 彼の様子は普段とあんまり変わらないわよ。 Lysithea: だとしたら困りますね。 彼は盟主代行として諸侯を指揮すべき立場だというのに。 Lysithea: クロードが次の盟主に相応しい器か......見極める機会にもなりそうですね。
Lorenz
Lorenz: 喉元近くにパルミラ勢が現れること自体は 珍しいことではないが... Lorenz: ゴネリル家が各地に援軍要請したとなると、 これは由々しき事態だと考えざるを得ない。 Shez: それは......どういうこと? Lorenz: 武勇で鳴るゴネリル家が堅牢な首飾りに 拠る限り、レスターは安泰とされてきた。 Lorenz: ゴネリル家もそれを誇りとしていたはず。 援軍を求めるなどよほどの事態なのだろう。 Lorenz: ・・・・・・君は平民なのだから、わざわざ危険な戦地に赴く義務はない。 いいのか?
[問題ないと答える] Shez: 私は戦いを生業とする傭兵よ。さら戦地を避ける理由はないわ。 Lorenz: そうか。ならば止めはしないが、無理はしないことだ。
[答えを保留する] Shez:なるほど、引き返すなら今のうちよね。考えておくわ、 忠告どうも。 Lorenz: その顔・・・・・・引き返す気などなさそうだな。無理はしないでくれたまえよ。
Marianne
Marianne: 主よ......。 Marianne: ..................。
[大丈夫か聞く] Shez: ねえ、大丈夫? 不安なら無理に 戦場に出なくてもいいと思うわよ。 Marianne: .........いえ、そういう訳には。義父に叱られてしまいますし。 Marianne: ..................。
[黙って見��る] Shez: ..................。 Marianne: ......... ! あ、あの.........何か? Shez: いえ、邪魔したら悪いと思って。 でも結局、邪魔しちゃったわね。 Marianne: いえ、邪魔だなんてそんな・・・・すみません。 Marianne: ..................。
Leonie, Ignatz, Raphael
Ignatz: やっぱり来るべきじゃなかったのかな。 ボクなんて、きっと足手まといに......。 Leonie: ちょっと、 イグナーツ。ここまで来て、何をプップッ言ってんだよ。 Leonie: パルミラの侵入を許せば、わたしらの故郷もどうなるかわからないんだぞ? Raphael: オデは戦うぞ! パルミラをブッ飛ばして妹を守ってやらねえ���なあ! Ignatz: でもボクらは、 戦いを学び始めたばかりの、ただの平民じゃないですか・・・・・・。 Raphael: ただの平民じゃねえだろ。 ちっとは学校で 鍛えたし、その辺の奴らよりは戦えるぞ。 Ignatz: シェズさんみたいに傭兵として戦ってきた経験があるならまだしも・・・・・・ Leonie: 情けない奴だなあ。 シェズ、あんたからも何か言ってやってくれよ。
[同情する] Shez: イグナーツの言ってることが道理よ。ちょっと無茶よね。 Ignatz: そうですよね? 成り行きに任せてここまで来ちゃったボクが悪いんですが........。
[助言する] Shez: まあ、やるだけやって、危なくなったら 逃げちゃいなさい。無理はしないことね。 Ignatz: 危なくなったら逃げる、 無理はしない...............わかりました、 それなら何とか......。
Leonie: 敵はもう目前、今さらジタバタしても 始まらないんだし、 頑張るしかないだろ! Shez: 戦いに備えて、そろそろ休もうかしら。
Shamir
Shamir: ・・・君は、傭兵上がりの生徒だな。話は聞いていた。 Shez: シェズよ。よろしくね。 Shamir: ああ。 私の本業も傭兵だ。セイロス騎士団に籍を置いてはいるが。 Shamir: つまり、君とは同業者だな。何かあれば言ってくれ。
Count Burgundy
パルミラ襲来の報を受け、近隣諸侯の兵を 引き連れてレスター西端より駆けつけた。 グロスタール家の将兵も預かってきている。 伯爵は自ら戦う気など端からないのでな。 文句の一つも言いたくなるが、 伯爵の心���を 害しては後々厄介、 長い物には巻かれろだ。 伯爵のご子息にも気を遣わねばならんし、まったく気苦労が絶えんな·····
Alliance soldier
フォドラの首飾りは、三国の力を結集して築かれた難攻不落の要塞です。 そして守将は、レスター随一の武勇を誇る ホルスト=ジギスヴァルト=ゴネリル卿。 たとえ我々が兵力で劣ろうとも、パルミラ軍なんて恐れるには及びません。
Student
本当なら今頃は、教室で講義を受けているはずだったのにな・・ 入学早々、こんなことになるなんて、まったくついてないよ。 とはいえ、自分で志願してきたんだし、 戦うからには全力を尽くすつもりさ。
Alliance soldier
パルミラ人と戦ったことはないが、 野蛮で残虐な連中なのだろう? 聞いた話では、全身が硬い毛に覆われていて牙まで生えているとか......。 もしも捕えられたら、 どんな酷いことをされるか.........想像するだに恐ろしい。
Alliance general
ゴネリル公よりレスター各地に援軍要請を 出したが、集まった兵はそう多くない。 このところ大きな戦争がなかったからな。諸侯も軍備を怠っていたのだろう。 それでも帝国や王国が兵を出してくれれば問題はないはずだったのだが...・・・・・ どうやらそれも望めぬらしい。 これは厳しい戦いになりそうだぞ。
Student
私はミュラー子爵家の縁者でね。実家は首飾りからそう遠くないんだ。 ・・・・・・そんな貴族いたっけ、って顔だな? どうせ五大諸侯くらいしか知らないんだろ。 ミュラー家はリーガン領とエドマンド領に 挟まれた、吹けば飛ぶような小貴族さ。 だが、レスターを守りたいという思いは、 五大諸侯にだって負けないつもりだよ。
Alliance general
私はエドマンド辺境伯家より派遣されてきました。 常ならば兵力の供出は免除されているのですが、今回ばかりはそうもいかず。 率いる兵力は僅かですが......せめてお嬢様をお守りしなくては。
#fe3h#fe16#few3h#golden wildfire#gw#golden deer#claude you... not poor clod yet ig#think i spent more time checking PK than making this post and I'm still scared that I missed something... oh well
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Giselle-profile
▼プロフィール
【名前】ジゼル クロムウェル(Giselle Cromwell) 【年齢/性別/身長】??歳/女/151cm 【一人称/二人称】私(わたし)/貴方 【長所】鷹揚・独創的・お茶目・柔軟・積極的 【短所】吞気・独善的・偏愛・小悪魔的 【好き】食事・魔法・調薬・変化・墓地・丈夫な骨 【嫌い】雷・待機時間・不変・腐った屍
大らかで気品ある落ち着いた雰囲気の中に少女らしいあどけなさも感じさせる何処か不思議な魅力を併せ持った女性。 上品な立ち居振る舞いながらも、茶目っ気を見せたり、気さくで話しやすいこともあって比較的親しみやすい性格。 反面、他者への評価を自分の価値観のみで判断してしまう面を持っており、嫌いな相手や興味の無い相手に対しては一切の容赦をしない。
高位の魔導師であり死霊を操るネクロマンサー。 一国の姫君としてこの世に生を受けたが、生まれながらに内包している魔力が桁違いに多く、中でも特に闇の魔力との親和性が高かった為、災いを呼ぶと周囲から危険視され長らく城に幽閉されていた。 生きていくには不自由のない生活環境を与えられてはいたものの、時が経つに連れしがらみが多く自由の少ない暮らしに嫌気が差し、最終的には城から抜け出すべく魔法を駆使して強引に脱出した大胆な過去を持つ。 城から抜け出して間も無い頃は、世情を知らないが故に傍若無人な振る舞いで悪さもしていたが、とある人物に出会ったことをきっかけにある程度は改善されている。 ���在は城に幽閉されていた頃に読んだ旅の物語に憧れて、各地を渡り歩く自由気ままな旅を続けている。
魔法や薬の研究が趣味。 風変わりな魔法や怪しげな薬を作っては、平気で他人を使って実験しようとするので注意が必要。しかし意外にも彼女��作る薬は一部の者から人気で、裏で高値で取引されていたりする。 又、美味しいものに目が無く食べる事が何よりも好きで、高級で贅沢な食事から有り触れた庶民の食べ物まで選り好みせず何でも食べる。 特に乳製品が好物で、中でもミルクは一日一本欠かさずに飲んでいる程。 因みにアンデッドは霊体や骸骨などを好んで使役する。魔力に満ちた魂と健康的で丈夫な骨が好き。
◇「つまらない日常にはもう飽きたの。《変化》を感じる有意義な時間を過ごしましょう?」 ◇「真っ赤な花を咲かせてあげる」 ◇「滑稽過ぎて笑っちゃう!貴方みたいな退屈で無価値な存在、関わるだけ無駄な時間ね」 ◇「カルシウムはちゃんと摂るのよ!じゃないと立派なスケルトンにはなれないわ」 ◇「どうかしら?凄いでしょ!沢山褒めてくれてもいいのよ?」 ◇「これは面白いの予感!」 ◇「ま、待って!流石の私もこれはちょっと恥ずかしいわ…っ!!」 ◇「私のことは気軽に《ジル》って呼んで!貴方にも可愛いあだ名を特別に私が考えてあげるわっ!」 ◇「ねえ大丈夫?疲れた時はやっぱりミルクよ。カルシウムが一番効くんだから!…もしそれでもダメそうなら、私に甘えてくれてもいいのよ?」 ◇「これでも私は一途なの。貴方の為ならこの命、捧げる事も厭わないわ」
◆「デニサ?そんなに恐い顔をしてどうしたのかしら?牛乳あるけど飲む?産地直送のとっても濃いミルクよ!…貴女のケーキを勝手に食べて、ゲイザーをボールにして遊んで、回復ポーションを媚薬にすり替えたことなら謝るわ…え?違うの?」 ◆「燿香。私は貴女を高く評価しているわ。こんなにも美味しいご飯を作れるのは紛れもない天才よ!侍よりも料理人を本業にすべきだと私は思うわ」
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▼使い魔と武器
◆使い魔は「ゴースト」。 憑依によりあらゆる物質や一部の生物に取り憑いて支配をする能力を持っている。 強靭な鎧に憑依し騎士の様に剣を振るったり、人間の死体に憑依し相手を欺いたりすることなども可能。 反面、彼ら自身の戦闘能力は低く、憑依対象が存在しなければ無力に等しいことが欠点。 因みに主人に合わせて悪戯に加担したりするが、彼らの性格は意外にも堅実的で主人が暴走しないように常に目を光らせている。
◆希少な魔鉱石製の紫色の大鎌。 魔鉱石で作られた武器は使用者の内包する魔力によって性能が多様に変化する珍しい性質を持つ。 因みに柄に装着されている宝石は十字架の首飾りの宝石と同じアンデシンの宝石。
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▼リンク
◆イラストの高解像度版と他クリエイター様による作品一覧
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29/07/23
会社の近くペルシャ料理屋があって、そこへいくと必ず幸福な気持ちになれる。店内にある大きなタンドールが放つ熱で店内がほかほか暖められていて(背中向かいの席では熱いくらい)、照明は薄暗くて、食事はおいしくて、なんだか居心地がよくて眠くなっちゃう感じ。ワンプレートメニューが大半だが、基本的な組み合わせとしては、バスマティライス、チキンorラムor両方の炭火串焼き、サラダ、焼きトマト、一欠片のバター、が盛り付けられている。若干酢にくぐらせたような風味のする、炭火で焼かれたチキンがお気に入りで毎回それを頼んでいたが、こないだはものすごくラムを食べたい気持ちになって、ラムはあまり好んで食べないけど美味しく食べられるのか心配半分、ラムが美味しいということになったならばそれはさぞかし美味しいだろうという楽しみ半分で店へ向かい、いつものチキンと、ラム(ミンチにしたラムを小さく成形した、ラム苦手な人にとって一番難易度低そうなやつ)が両方乗っているプレートをお願いして、食べたら、ラムが...とっても美味しかった..!
美容師の友だちに髪の毛を切ってもらうようになってから3ヶ月経つ。今回は彼女のお家にお邪魔して、髪を切ってもらって、ビールとおつまみをいただいた。ヘアカット中のBGMは千と千尋で、おつまみは彼女のシェアメイトが作った夕飯の残り物で、ああいう時間がもっと人生の中にあればいいなと思った。またすぐね。
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金曜日に有給を取って3連休を作り、マルタへ旅行した。イギリスは秋みたいに寒いけど、ヨーロッパには記録的な熱波がやってきており、マルタも例外ではなく、空港を出たら暑すぎて、いっぱい歩くのはやめよう..と危険を感じた。マルタには電車がなくて、移動手段はバスだから、3日間で15回くらいバスに乗った。前回のオスロ旅行で、自分の興味関心に基づいて行きたいところをいくつか選んでおくべきだという教訓を得たため、ワイナリーとかレストランとか色々ピックアップしておいたのに、バスが来なくて閉館時間に間に合わないみたいな理由で立てた予定はほとんど全て崩れ、行きたかったところの9割は行ってない。
立てた予定が全て崩れて向かったバスの終点には、イムディーナという静まり返った美しい城塞都市があった。後から調べてみたらマルタ最古の都市で、かつてはマルタの首都だったらしい。なんか���通のマルタの街に到着したなと思ってぷらぷら歩いていたら、お堀じゃないけどお堀みたいな高低差のある場所へ出て、中へ入るととっても別世界だった。旅をしている時(文字通りの旅ではなく、その場に意識があってその場に集中してわくわくしながら歩いている時)は自分の足音が聞こえる、とポールオースターの友だちが言ってたが、わたしは匂いもする。暑すぎるのか、痩せた雀が何羽か道端に転がって死んでいた。馬車馬は装飾のついた口輪と目隠しをされ、頭頂部には長い鳥の羽飾りが付けられていた。御者がヒーハー!と言いながら馬を走らせた。とにかく暑かった。
ほとんど熱中症の状態で夕食を求め入ったレストランで、ちょっとだけ..と飲んだ、キンキンに冷えた小瓶のチスク(マルタのローカル大衆ビール)が美味しくて椅子からころげ落ちた。熱中症なりかけで飲む冷たいビール、どんな夏の瞬間のビールよりうまい。
安いホステルにはエアコン設備などもちろんついていない。さらに、風力強の扇風機が2台回っている4人部屋の、私が寝た2段ベッドの上段だけ空気の溜まり場になっていた。明け方に頭からシャワーを浴びてさらさらになって、そのまま二度寝する。隣のベッドのイタリアから来たかわいらしい女の子2人組が夜遊びから帰ってきて、わたしは出がけに、部屋で少し話す。8年前に来たコミノ島はプライベートビーチのようで素晴らしかったけど、昨日行ったらツーリズム化されていて悲しかった。耳の裏に日焼け止めを塗り忘れて痛くなっちゃったから、あなたは忘れないように。わたしたち今ちょっとおかしいのよ、と言いながらドレスも脱がずにそのままベッドの上で眠ってしまった彼女は天使か何かみたいだった。扇風機をつけたまま部屋を出て行く。
地面がつるつると滑る。
砂のような色をした街並みが広がるマルタにもイケてるコーヒー屋は存在する。これも近代化・画一化の一途かと思うと、微妙な気持ちにもなるが、こういう場所へ来ると息が深く吸えるので有り難くもある。
マルタは3つの主要な島から成る。そのうちのゴゾ島へ行く。首都のバレッタから港までバスで1時間強、フェリーで20分。
フェリーほどいい乗り物はない。売店でビールとクリスプスを買って、デッキへ出て、なるべく人がいない場所で海を眺める。乗船案内と音楽が止んで、フェリーが作る波と風の音しかしない中に佇むと、これでいいような気がしてくる。ビールはあってもなくてもいいけど、フェリーのデッキで飲むビールの味というのがあって、それはめちゃくちゃうまい。
ゴゾ島へ降り立つと、足音と匂いがした。適当に道路沿いを歩いていたら、また別世界に続きそうな脇道があって、進んだらやっぱり別世界だった。ディズニーランドのトムソーヤ島で遊んでる時みたいな気持ちで謎の小屋へ入り、人で満杯のhop on hop offバスを眺めやりながら、人懐こすぎる砂色の猫と涼む。港とは反対側の海辺へ行きたかったのでバスを待つものの、一生来ないため、バス停近くのローカルスーパーを覗く。これといった面白いものは置かれていなくて、見たことある商品ばかりが並んでいた。バスは一生来ない。
バスを降り、水と涼しさを求めて入った地中海レストランは目と鼻の先に浜があり、今回の旅は下調べなしの出会いが素敵だなあとしみじみする。カルパッチョと白身魚のライススープ、プロセッコと、プロセッコの10倍あるでっかい水(笑)。カルパッチョは、生ハムのような薄切りの鮪が敷かれた上に生牡蠣、茹で蛸、海老が盛られていた。鮪は日本で食べるのと同じ味がした。カルパッチョは旨く、プロセッコはぬるく、ライススープは想像と違った。パンに添えられたバターは外気温のせいで分離していた。水が一番おいしかった。
おいしいものとお酒が好きで楽しい。
ヨーロッパ人の色気の正体ってなんなんだろう?アジア人が同じ格好をしてもああはならない。胸元がはだけていてもスカートが風で捲れてもはしたないと全く感じない。むしろロメール作品のようにさえ見える。そもそも'はしたない'という概念がアジア(少なくとも日本)にしか存在しないのではないか?色気って品かと思ってたけどそれは日本だけかもしれない。
地元料理が食べられるワインレストランを夕食に予約してみたらコース一択だった。お昼食べ過ぎてあんまりお腹空いてなかったからちょっと小走りで向かってみる。ラザニア、ムール貝と魚のスープ、うさぎの煮込みなど。人ん家の料理みたいな美味しさだった。マルタのワインはほとんどが島内で消費されるらしい。ゴゾ島の白ワインの感想:暑い村、お絵描きアプリのペンの一番太い線(色はグレーがかった白で透過度50)。食後のグリーンティーは、TWININGSのティーバッグで、お砂糖をいれる選択肢が与えられて、洋風の装飾がたっぷりついた受け皿付きの薄いカップと共にポットで提供された。カップの底に描かれた静物画のような果物が綺麗でうっとりした。
どこにでもあるような早朝からやってるスタンドでドーナツとオレンジジュースとコーヒー。扇風機に当たり続けていたいが荷物をまとめて宿を出る。行きたい街へ向かうバスが一生来ないため、行きたい街に名前が似てる街が行き先に���示されているバスに適当に乗ったら、行きたい街より30度北へ行くバスだった。でもやっぱり行きたい街へ行きたかったので、30度北の街へほとんど到着してからバスを乗り換え行きたい街へ向かったが、Googleマップの示すバス停へは行かず、行きたい街を通過してしまったため、行きたい街から30度南の街に降り立つこととなった。海辺でチスクを飲みながらメカジキを食べた。暑すぎて肌着1枚だった。店先のガラスに映る自分に目をやると、いわゆるバックパッカーの様相をしていた。
空港行きのバスだけは遅延なくスムーズに来て着く。肌着状態からシャツを身につけ普段の姿(?)に戻ると、途端に具合が悪くなった。日に当たりすぎたみたい。お土産を買ってセキュリティを通過し、充電スポットの近くに座って搭乗を待っていたら、すぐそばにグランドピアノがあることに気がついた。誰か上手な人が演奏しないかしらと思っていたら、青年によるリサイタルが始まった。父親が彼を呼びにやってくるまで、クラシックからビートルズまで5-6曲。思わぬ良い時間だった。
都市に住むと、旅行から帰ってくる時安心する。
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会社の人たち語録 ・やりたいことたくさんあるけど、今はやりたくないです。 ・返事がないのはいい知らせではないので。 ・Are you alright? まあまあ、ぼちぼち。
夕方、商店街へ買い出しに行く時がすごく幸せ。食べたいと思うものしか買わなかった時は特に幸せ。ぱつっと瑞々しい野菜、ちょっといいパスタ、ジャケ買いしたクラフトビール、好きな板チョコ。そんでキッチン飲酒しながらご飯作る。ビールを開けて一口目を飲むまでの間だけは音楽を止めるというのにはまっていて、そういえばフェリーのデッキで乗船案内とBGMが止んだ時の感じに似ていなくもない。フラットメイトが、夜中3時まで友人とリビングで遊んでいたり、土曜の夜にパーティへ出かけたりしているのと比較して、わたしが幸せ感じてるポイントは内向的だ。
やりたいことが浮かぶ。それをやる前に、比較対象の選択肢や判断軸を不必要なほど増やしてしまいがちだが、最適な選択を選び取ることよりも、やりたいと思う気持ちを満たすことの方が幸せなんじゃないか?
色々比べて悩んじゃったら「朝から決めてたことだから」って言うとスッと選び取れる!
食材の買い出しで1週間くらいはもつかなと感じるくらいたくさん買っても実際3日もすれば冷蔵庫空になるやつ、悲しさというかやるせなさを覚えるんだけど、こないだ500gパックの美味しそうなミニトマト買った時に、長く保ち続け���こと(終わりを迎えないようにする、終わりを想像しないようにすること)よりも、きちんと消費する(終わりを気持ちよく迎えること)を考えるようにしたら明るくなれてよかった。終わりって何事にもやってくるもんね。
食の話ばっかり回。
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コード77
ソーラーコード77「運命の過酷さに打たれた向こう見ずな若者の頭に、豊かな思索家の魂が芽生える」
コードの現象化形態:社会的リーダーシップ。精神的成長や知的成長。強い精神的苦悩。精神的苦痛をともなうショックな出来事。グループや集団内における立場の上昇と責任の増加に��う重圧。諦めずにチャレンジを続けることによる成功。精神的苦しみをともなう恋愛や、まれに離婚。
テロ攻撃に関する計画。テロリストや過激派の攻撃の失敗や計画の発覚や頓挫や逮捕。著名人の離婚、離別、不運、傷病、死。有名または実績のある作家や哲学者や科学者の離婚、離別、不運、傷病、死。有名または実績のあるスポーツ選手の離婚、離別、不運、傷病、死。スポーツ選手の頭部の負傷や、それを原因とする死亡事故の増加。
ルナーコード77「頭と足に羽の生えたギリシア神話の知恵の神(ヘルメース、足軽)が、天国と地獄の間を忙しく行き来する」
コードの現象化形態:良いことと悪いことが一挙に訪れる。プレッシャーやストレスのある状況下で、多忙さと格闘する。知的成長。知的リーダーシップ。精神世界の学びへの適性。ギリシャやローマやイタリアやフランスでの犯罪やテロ事件、あるいは国家的ネガティヴの増加。
有名スポーツ選手(特に、サッカー選手やマラソンその他の陸上選手やスプリンターやキックボクサー[一部ボクサー]や格闘家など足をメインに使うスポーツ競技の選手)を狙った凶悪犯罪やテロ攻撃。そうした人々のけが、病気、手術、入院、事故、交通事故、犯罪、犯罪被害、死亡。高級服飾ブランドの不運。高級服飾ブランドの経営者や幹部やデザイナーなどの不運(病気、事故、怪我、犯罪被害、死亡など)や醜聞、不祥事、犯罪、地位の低下、失脚(話)、辞任(話)、引退(話)など。エルメス、その他の伝統的高級ブランドにとっての良くない問題の���生。飛び降り自殺。首吊り自殺
【コード77】 ■対向コード:257 ■統合コード:283 ■直角コード:167
オズの魔法使いの主力スターゲート・コード77「天国と地獄を行き来する神の伝令にして強盗と泥棒の守護神ヘルメス(エルメス)」
コード77もコード123も、顕著な「自殺コード」です。コード77は「飛び降り自殺」や「首吊り自殺」を強く誘発し、コード123は「服毒自殺」や「服薬自殺」や、その他ガスなどの有害物質による自殺を強く誘発します。さらにそうした故意の他に類種の事故も誘発します。
ソーラーコード77「運命の過酷さに打たれた向こう見ずな若者の頭に思索家の魂が芽生える」は、人に(ときには、自殺さえ考えさせてしまう)「強い苦悩」をもたらします。
コード文にある「思索家の魂」というのは、毒盃による死を受け入れた際の哲学者のソクラテスのような死への覚悟や悟りの境地を(広義には含めて)表しています。このコードの現象化傾向の代表的なものは、事故、病気、死、金銭苦、生活苦、犯罪、犯罪被害、トラブル、苦悩、自殺、不運、逮捕…など。
ルナーコード77「兜と足に羽の生えたギリシア神話の知恵の神ヘルメース(エルメス)が、天国と地獄の間を忙しく行き来する」は、とりわけ(各界の著名な)賞の受賞者、教師、大学教授、学者、化学者、科学者、哲学者、研究家、作家、文筆家、クリエイター、ミュージシャン、デザイナー、スポーツ選手、アスリート、格闘家、泥棒、強盗、学生や若者の〈シグニフィケーター〉(=それらを表わすもの)となっています。
ヘルメースが音楽や牧畜(牧場、牛・羊・豚・山羊・鶏)の神であることから、そうした職業の人、および関係者や動物にもコード77のエネルギーは強く波及します。ヘルメースが被っている兜は、軍人(自衛隊含む)や工事関係者、パイロット、競輪・競艇・競馬の選手や野球選手など、ヘルメットを被る人、帽子に関係する人に、そして、ヘルメースが手に携えている医療のシンボルにもなっている魔法の杖は、医師・医療・病院関係者に、このコードの不運凶事[MNC]のエネルギー(現象化形態)を強く波及させます。
コード77には「天国と地獄」というキーワードが含まれていますため、容易にコード111と同語シンクロ相互強大相乗作用をともなって現象化します。
ソーラーコード111「有名な歌手がオペラ『地獄のオルフェ』(天国と地獄)の公演で、その妙技を披露し、有名な映画監督は水鏡に倒れ込んだ男(ナルシス)の最後の姿をフィルムに収める」
コードの現象化形態:有名大物歌手の体調不良・病気・入院・手術・死、その他の不運凶事の多発。有名映画監督や有名映画俳優女優の体調不良・病気・入院・手術・死、その他の不運凶事の多発。(ときに)多数の犠牲者をもたらす大地震や大洪水などの大災害の発生。水死。溺死。(風呂、温泉、川・滝・池・湖・貯水槽・ダム・貯水槽・用水路など、各種)水場での事故や重症や死。
ルナーコード111「体調不良をおしてステージに立った歌手が、歌の途中でめまいを起こしてしゃがみ込み、慌てた数名のスタッフが、走って彼の元に駆け寄る」
コードの現象化形態:有名大物歌手の体調不良・病気・入院・手術・死、その他の不運凶事の多発。
コード77は、「神の砦」の「オズ(バフォメット)の魔法使い」の「聖戦と正義の復讐の法の魔力」が、4次元を飛ばしてこの地上(3次元の人間界)にダイレクトに侵入してくるスターゲート(超時空次元接続特異点コード)です。
それゆえに、人も魔界(アカシック)も、その「奪い殺す力」を防ぐことはできません。 アレイスター・クロウリーは『第77の書 オズの書』にこう記しています。 「われらには、殺す権利あり。」
オズは火星(マーズ=ホルス)。「神の家」「戦争の砦」に満ちるコード77の力。それは大きく地を���るがし、堅固な建物の中に居る者も死の力で脅かす。コード5の天鷲蝶の地震る神天使メダリオンとコード77のオズの魔法使い死天使アザゼルが一つになった時、その力は最強になる。エピファニー(神の力の御公現)。コード257の「イースター」(復活祭)。即ち、タロットの大アルカナ20番「最後の審判」(ホルスのアイオーン)の前に来る先触れのしるし。
「神居即自然、自然即神居」とは、別の言い方をすれば、「エヒエ・アシェル・エヒエ」(われは、在りて在る者なり)ということです。 KAMVI(カムイ われらが母なる大地のごとく)=20+1+40+6+10=77=OZ(神の砦、軍隊、超常能力、ヌーメン)
【ホルスの言葉】 王家の館とは、天の単眼から放たれる最後の審判の日の雷電を冠としてその頭上に戴く神の使徒たる魔法使いたちの無敵の砦のことである。そしてその数は77である。
【マスター・アマラルマヌの教え】 309+128=437(400[ケルビム、すなわち生命の輪の沈黙の監視者たる動物天使たちと神の人からなるイデア的世界]・30[真理と正義の女神マートの審判の広間]・7[神剣])=77(オズ、砦、軍隊、力、霊力・超能力[フォース])イルミナティの「鷲の目」はすべてを射抜く。「火よ、われと共に歩め」。コードは「不可知」の中で燃え尽きる墓標の真実を物語る。 ヘルメースよ。来たりて、その灰を集め、ヨグ・ソトートの大いなる暗黒の目の深淵に投げ込め。
おお!わが至高の魔力によりてなされるその魔法式の数は、77+152+286=155なり。 見よ、こはハムハゼルの数ではなかったか。かくて証はここになされた。 わが元にあるは「戦争と復讐の神」ラー・ホール・クートのすべての力。
われはイルミナティの最高位の女祭司、かの「緋色の女」なり。「火よ、われと共に歩め!」「汝、火の声を聞け!」 われはOZの魔法使い。77は、その力の偉大な門なり。 われは世界の三部の学、哲学・天文学・自然科学を極めたヘルメース・トリスメギストスより当然のごとく偉大なる者なり。われが「世界の救世主」であることを明かす、これなる三重の印において。 77+186+309=212 エア・フォース! フェニックス! ラー・ホール・クイト! そしてわれはサタンの蛇を捕える!!
【ホルスの言葉】 もしお前が、幸福や豊かさや満足を目指しながらも、なかなかそこに到達できず、もがき苦しんでいるのだとするなら、おそらく今の��前にまだ足りないのは、幸福や豊かさや満足ではなく、さらなる苦境や欠乏や試練なのだ。これは私がたんなる意地悪で言っているわけではなく、アカシックのエネルギー上のパラドックスについての真理なのだ。「地獄下り昇天」という言葉がある。多くの人、いや、ほとんど全ての人は、まず天国を真っ先に目指し、そしてほぼ100%近く失敗する。ゆえに、真の賢者がまず目指すべきは、天国の安楽さではなく、地獄の試練(試罪法X)のほうなのだ。終わりよければ全てよし。だから、「楽園」に向かう途中にある苦しみについては過大評価するな。聖と俗、光と闇の戦いが避けられぬ以上は、楽園を実現するために苦しみが存在することもまた避けられぬことであるのだから。そしてそれが自然の理なのであれば、逆に、苦悩するのではなく、苦しい時こそ、なんとかして笑いを生み出せ。いまいる場所に(たとえそこが地獄であっても)、超人の笑いを生み出せるように生きよ。これはコード77とコード226の教えである。 【〈哲学者の毒盃〉、あるいは〈超人の笑い〉、あるいは〈逃走=闘争線〉の術式】 77+226=303
コード5+コード77=コード82 メダリオンとアザゼルが、コード82のゲートを領しました。 このコード82は、これまでセドラという悪魔が、そこからエネルギーを吸い、そして、光の子らを苦しめるためにそのゲートを使うことが多かったのですが、今後は光の影響の方が、より強まることになります。
コード77 頭 手 足
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プレイバック・ユア・ララバイの話
ルシファーお誕生日おめでとう。生まれてきてくれてありがとう。大好きだよ! 序盤うわ〜…いやこのキャラ推しにはならないかも怖いし俺様系苦手だし悪魔服作画コストやば〜……って思ってたのに怖くなかったし俺様系じゃなかったし傲慢腹黒ドS全て大嘘のラブマン(もっといい表現なかったの?)だったから嘘みたいにべキャボキャにハマっちゃったよ。悪魔服もう見なくても描けるよ。嘘ベルト?の飾りの部分は見ないと描けない。人生何があるかわからないですね。 すっごく気落ちしていた時に江國香織の「ホリー・ガーデン」という小説を読んで面白いよ〜〜泣ってなって元気が出て、書こう! って思った話です。1月後半くらいから本腰を入れてルシファーの誕生日には間に合えーッ! ってちまちま書いてました。ギリギリ間に合いました。間に合わせたの間違いかも。 書いては全消しを繰り返しすぎて空中分解し、もはやなにが面白いね〜ん! でも書きたいって思ったはずだこういうのを〜! って必死にキーボード叩いてました。毎回そうやってものづくりに向き合えという話ではある。 「愛せない過去があったとしても、今の自分として今のあなたに出会えてよかった」を軸に据えて、どう展開しようかな〜ってねちょねちょシーン思い浮かべたりセリフ思い浮かべて混ぜてたらObey Me! Night bringer(スペル合ってる?)が発表され、そして「何度出会っても好きになる」のコピーも発表され、はーい終わった!!!! 書��のやーめっぴ!! って二週間くらい思いました。思ったんですけど書きました。書きたかったから……。 私としては相手を好きになるには出会うタイミングも大切なものだと考えているのでそのコピーに思うことはないのですが、でも何度出会っても好きになる留学生と悪魔たちもいるのだろうなあって思います。
サタンが羨ましくてしょうがない留学生を書く時に本当にサタンのことがぜんっっぜんわからなくて「わかんないな〜」って思ってたら「ルシファーのこともぜーーーんっぜんわかんない! 理解しようと思えば相手を多少は理解できるようになるという考え自体間違ってるかも! ワハハ!! 」って急に開き直りが発生しました。今も全然わかってないです。わかるわからないの話ではないことにいい加減に納得したいですね。 のでもう、二次創作だから…っ!の言い訳をフルで使って書きました。
男性留学生のターンは、ルシファーと友達になりたい! っていう気持ちを沢山込めて書きました! 兄弟たちがmc以外の人間には冷たかったらどうしよう……って思ったんですけど他人に必要以上に冷たい推し絶対見たくないので、あとこれは……夢小説なので! みんなと友達! いえーい! って感じで書きました。友達のお兄さんみたいな距離感でルシファーと接してみたい気持ちがあります。恋愛感情無しでもルシファーと楽しく過ごしたいっていう気持ちもすっごくあります。
女性留学生のターンは、こういうのが好きかも〜っていうのを詰めて書きました。技量がなさすぎて上手くまとまらなくて悔しいのですが、今の私の全力はこれです、という感じです。きっともっとしっくりくる展開や言葉や表現があると思います。でも今の限界はこれですね……。約五万文字なのですが、消した部分を合わせると大体十二万文字くらい書きました。ガッと書いてガッと消すのを繰り返しまくりました。難しいですね物語作るのって。ので、実力足りないかもなあっていう部分は諦めて手放しました。これからも頑張ろう。
これは誕生日当日にルシファーのURカードのデビグラ読んでうわ〜〜こっちで書けば良かった………!!!! って爆発した削った箇所です。
プロットの段階で消したのでもう盛り込めないですね。あ〜……まあいいや。削ったところにも削ったけど好きだなっていうのを詰めたので、データを消すに消せないです。
↑これは一番最初に書いていた嘘つくのをやめられなくなってディアボロ殿下に見破られてうわーーっってなる留学生���ボツにして最初から書き直しにした、サタンが懐いていた猫が死んでいたのをサタンに言わずに埋葬してしまう、という留学生のプロットです。サタンが可哀想すぎるというかサタンのヘイト小説になってるだろ!!!!! と自分をぶん殴って書き直しました。ぶっちゃけ5月の中旬くらいまでこれで書いてて、一回完成してました。ほぼ全部書き直しましたが……。
↑これはやっと今アップしてる話の形へのこねくり回しがある程度止まった時に書いたけどくどいな…って思って消したやつです。勿体無いから上げちゃお。
タイトルの『プレイバック・ユア・ララバイ』は、毎日眠る前に頭の中に思い浮かべるこれまでの生涯のことが、この話で書いたルシファーや留学生たちにとって子守唄のように優しいものだといいな、そしてルシファーの生涯の傍にかつて確かにあったそれら人生が優しい思い出として思い出せるものになればいいなと思って付けました。各章のタイトルは〇〇・ユア・〇〇の形になるように頑張って考えたつもりなんですけど普通に英語出来なさすぎて難しかったですね。勉強しろ! はい。ユアは一章がルシファー→女性留学生、二章は女性留学生→ルシファー、三章は留学生たち→ルシファーへ向けたユアかな…って思いました。(思いました?)
書いてる時に本当に自分の拙さ至らなさを実感してオヨヨʕ•̫͡•ʔになってしまったのですが、西川美和さんの「私と同じだけ時間をかけて私と同じだけ集中して毎日やれば誰でも書けます」という『ゆれる』という作品に対してのコメントに励まされていました。また、名の知れた映画監督でさえも「もっといい表現があったはずだ」と悩むことがあるのか、とちょっとした衝撃を受けたりもしました。私も物事にこれくらい全力投球したいです。がんばります。
以下は細かい趣味を詰め込んだよのやかましい話です。
出てくる「帰れのベートーヴェン」は、『ホリー・ガー��ン』に出てくる「お弁当のベートーヴェン」のリスペクトです。帰れのベートーヴェンは悲愴第二楽章(ベートーヴェンの曲の中で帰るならこの曲じゃない? と思ったのでこれにしました)、お弁当のベートーヴェンは田園です。ポラロイドカメラのところもリスペクトというかこれこれこれこれをルシ留で見たいよ〜〜!!! がこの話が生まれた原点なので入れました。ドビュッシーの「月の光」は『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の中で何度も繰り返される曲で、私はこの映画が本当に本当に良くて何回観ても号泣したので入れよう……!!って思い、男性留学生に弾いてもらいました。女性留学生の星の光へのお願い事と、男性留学生の月の光、というように対比的なものが生まれたので結果オーライ、エブリシングイズオーライ、という感じになりました。よかったです。行き当たりばったりすぎる。 また、サタンが魔界史の解説で槍を持った老人の絵画を持ち出していますが、��の文章はディラン・トマスの「Do Not Go Gentle Into That Good Night」という詩が好きなのでそれをイメージして入れました。絵は国立西洋美術館にある、ラ・トゥールの「聖トマス」を思い浮かべながら書きました。両方ともトマスだ! 偶然でした。聖トマスの絵は別に改革派とかの関係ある絵ではないですが、本当になんというか、静かな迫力というか一目で急に引き込まれる強さというか、言語化が難しいのですがとにかく好きです。国立西洋美術館の常設展で見られます。国立西洋美術館の常設展で好きな絵もう一つあって、グエルチーノのゴリアテの首を持つダビデの絵なのですが、他のダビデの同じシーンを描いた作品に比べ瞳が潤んでいて、若々しさというかゴリアテを倒せたことに対する内なる喜びや興奮の部分が強く表れていて好きだなあって思います。詩はインターステラーが好きで強烈に覚えていた詩です。ノーラン監督の作品の中で出てくる詩ではTENETの「こうして世界は終わる爆音ではなく啜り泣きと共に」も好きです。エリオットのなにかの詩です。忘れました。(好きなのに!?)
今年も自分への誕生日プレゼントに表紙のデザイン頑張りめの同人誌を作ろうって思ってたので、今回はこの話で同人誌作るつもりでいます。本棚の中に入れておいて数年経ったら発見して読みたい感じの本にできたらいいな。全ての本をそういう気持ちで作っている気がします。あ〜箔押しなんかもしちゃったりしたいよ〜。いま透明箔気になってて……あとサンダンスリネンとかNTストライプGAとかリベロとかの紙がずっっと気になってて使ってみたいのでこの機会に使いたい!! ぞ!!! の気持ちもあります。でもおたクラブさん以外にサンダンスリネンの取り扱いがないけど透明箔はスタブさんで………どうしよう!? とにかく野望がもりもりです。というかAdobeのライセンス買ったのでせっかくなら使わないと勿体無いし……の気持ちもあります。
やるべきことが多いのと、一旦キャラクターへの理解に距離を置きたいなって思いつつあるので、おべいみーでの二次創作はちょっとだけ休もうって思っています。手のひら大回転が日常茶飯事なので普通に書くかも知れないけど。というより書くと思うけど。でもナイトブリンガーのことどうしても心から歓迎できなくてよくわからなくなってきてるので、こう、なんか…納得できる妥協点みたいな………何かを………………(?) でも今これを書いてる瞬間に暴君かTYRANTっていうタイトルの女性留学生×ルシファーと女体化ルシファー×男性留学生の二次創作が読みた��てたまらなくなってきたので書くかもしれない。自分が一番信用できないよ!!!
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ハロー(´ー∀ー`)2023.5.21
「ワイルドスピードファイヤーブースト」
してきましたあおです!!映画館で観れたことに高揚ブーストでした←
4DXで観ようか迷ったのですが、やはり4DXだと吹替版しかないのといい時間帯がなかったので断念しました
( ;ᵕ; )
ということで今回はこちらの感想ブログです。
ネタバレありますので鑑賞を控えている人は要注意です!!!!!!!!
ワイスピシリーズは今作で10作品目。こちらの作品より3部作でワイスピは完結するということで(2部作という声もあるがどっち?)なーーんか終わってほしくないんだけどこんなに続いてくれてありがとうという気持ちと絶対にリアルタイムで追いかけるぞという気持ちとファミリーよ永遠に!みたいな感情がないまぜになりますよね。
そんで今回はなんとモモア参戦!めちゃくちゃ楽しみにしてました〜
残念ながら悪役としてだったのですが、もうもうこの存在感は何なのでしょうか←
ストーリーとしてはワイスピメガマックス(5作品目)まで遡り、10年前から始まるのですがこちらの悪ボスの息子がモモアで父親を殺したドミニクへの復讐がメインストーリーです。
モモアはイケメンでごつめでロン毛…かっこいい。ワイスピのキャストってもうビジュアルからして武器な人が多いじゃないですか←
そんな中でも全く引けを取らないこのモモア。いや、モモアちゃんと呼ばせてもらいたい笑
それくらいお茶目で可愛いギャルで凶悪な敵なのですよ、奥さん。
二つのお団子してたり、ジーニーみたいに派手な洋服着ていたり可愛いマニキュアしていたり、敵なのにすること無茶苦茶なのに何でこんなに可愛いのってくらい可愛いのです←
好き🫶←
でさー、始まりがメガマックス振り返りみたいなシーンから始まってブライアンの姿がそこにあって泣きそうになったよね←
この作品にブライアンがいないのが本当に寂しくて、いたらどんな作品になっていたのだろうと思いを馳せてみたり切なかったけれど何よりもポールと一緒に作品を創っていきたかったのはヴィン達、ファミリー達なんだろうなって気持ちがバシバシと伝わってきて今もポールの想いと一緒に作品を創ってるんだなと。それをこういう形で映画にしてくれたことに感謝と感動が溢れます😢
そんで、10年間モモア何してたの?とはなったけどそこは置いといて←
(多分ドミニクとファミリーの情報を収集して計画を練っていたんだろうね
まぁーーアクションも映像もド派手でしたね〜
どうやって撮影しているの?って迫力満点シーンの連続です。
あとねCA役でポールの娘さんが出ていたみたいです!手足が長くてスラッとしていた!
そしてミスターノーバディの娘としてキャプテンマーベルが出てました笑
強い女性大集結なのか!?←
そんでドムのお母さん、ファンキーすぎんか←
首飾り手飾りじゃらじゃらすぎてどこかの最強魔女かなってなったよね←
そして秘密組織の新たな長・エイムスがまたムッキムキなのよね。もうムキムキはお腹いっぱいよ?←
ここでリトルノーバディの存在感が薄くて何でなの?という疑問も出てくるよね。新キャラがどんどん増えていくから仕方ないのかもしれないけど。
そしてミスターノーバディがいなくなってエイムスが指揮を取るようになるんだけど、ドムは消すべきじゃないかって敵視してくるのよ。
って訳でドミニクはモモアからも秘密組織からも狙われる存在となってしまうんですよね。
そんでもってエレナの妹?妹の話とかありましたっけ?
ワイスピシリーズ後付けシナリオってもうみんな周知の事実だと思うけど、これならトーキョードリフト時代のハンの元カノ役で私出れるのでは?←
(お前誰やねん
(無理矢理ファミリーになろうとせんでええねん
いや、みんなファミリーになりたいよね。
ブライアンの警官時代の元相方、とか。レティの妹、とか。ブライアンの妹、とか。
ホブスの弟、とか。
(やめれw
これは批判ではありませんからね!好き故の発想ですからね!←
そんでさ!サイファーがモモアにボッコボコにされてドムの家に来る訳よ。
あれ?サイファー姉さん?ユーもファミリーになるのかい?←
でこれまたサイファー姉さんもかっこいいのよね。敵は敵なんだけど一時休戦みたいな感じで(レティとはバトルするけど)なんせモモアが強すぎるから共闘といこうかみたいな流れになるんだけども。
そしてダンテ(モモア)はドムの息子を殺そうとしてくるのよね。
ミアはリトルBと一緒に隠れているんだけど、秘密組織の襲撃に遭います。ここで私は疑問が浮かびます。
(ミアの子供は?ファミリーを狙うのならミアの子供も標的になるのでは?)
そんな疑問はペイッと捨てて今作は観るしかなさそうです←
で��そこへドムの弟ジェイコブが登場。
ジェイコブがさ、普通にいい叔父さんしてたよね←
前作ではロボットみたいに笑わなかったのにさ、とっても気さくで可愛らしい叔父さんになってた←
そしてジェイコブはリトルBを守るために車で特攻隊になって死にましたT_T
泣いた……死なないでほしかったよ…
この先もう誰も死んでほしくないよ😭
ファミリーを失うのはつらすぎるよ…
(ハンの復活もあったから、ジェイコブの復活も期待したいけどあれで生きてたらもう何でもありなんだよね←
そしてサイファー姉さんとレティは南極大陸にいるのよね←
しかもそこへ潜水艦がやってきて中からなんと!!!
ジゼル出てきたーーーーーーーー
まさかのジゼル復活ですーーー笑
え?双子の妹とかそんなオチないよね←
これはもうハンとの結婚式しか想像できないよね←
ファミリーに囲まれての2人の結婚式のシーンが私には見えるよ!
そんなこんなで前作ジェットブレイクの最後でショウの所へやってきたハンの話につながって���キタキタキタようやくステイサム大暴れか!?ワクワク
ってしてたら終わったw w w w
めちゃくちゃ途中で終わったw w w w
今回、ローマン・テズ・ラムジーも活躍するのはするんだけどそこまでの働きはあまりなかったよね。この三角関係もあまり進行はしていないけどこの3人のシーンは1番眠くなっちゃうかな←
2人がラムジーを取り合っているってことで丁度いいのかもしれない。このままどっちともくっつかずに終わってほしいな笑
(かといってラムジーがLGBTな展開も望んではいない←
そしてエンドロール後にさ、なんとなんと
ホブスきたーーーーーーーーーーーー
\(°∀° )/
ずーーーっとヴィンとロック様の不仲説やバトルの記事を目にしていたけれど、、、ようやく和解したんだろうね…
ありがとーーーーーー( ; ; )
ホブスいないと終われないよねーーーそうだよねーーー
そして今ネットで調べてみたらワイスピは11で終わりなんだって。
次で終わりなんだってーーー( ; ; )
2025年公開予定だってーーー
待ち遠しいし終わってほしくない😭
最後はきっとルークエバンスも出るよね?デッカード家もピンチだもんね?
そしてまたスーパーコンボの時みたいにホブスとショウコンビ観れるよね?
めちゃくちゃ楽しみだーー\(°ω° )/
あぁ、もう一回ファイヤーブースト観たいよ…
スーパーコンボも見返したくなってきたよ…
話は変わって、ゼルダの伝説ティアーズオブザキングダムですが全く触っていません←
やはり配信でしようかなという気持ちがあり、配信ができる夏までは積みゲーを崩そうかなと思っております。
(また積みゲー溜まっとるんかい←
プレイしたいんだけどなー
始めるとそれだけで時間が足りなくなってしまうからなぁと思うし、それならこの間に積みゲーやっつけてもいいのかなと。
それとは別で動画用のゲームですが次は何にしようかなぁ🤔
休みの時間がもっと欲しい←
足りません🥲
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ハロウィンの海
人魚との恋
その夜はこの世ならざるモノ、魔物が人間に擬態して街に混じるそうだ 人間も彼等のふりをして 誰も彼も人間のようなそうでないような容姿で楽しんでいる 死者が生者のふりをして遺した者を連れ去るなどの、恐ろしげな話もある 実際に昔はこの祭りに乗じて子供や女が浚われたのかもしれない 死者や魔物の悪意のせいにして誰かをあやめたかもしれない 実態として危害を加えることができるなら、誰かもわからない姿で人混みがするのは おそろしい 私はこの祭りはだから例年あまり好きでは無かった けれどこの年は少しばかり事情が違った 私はその夜愛すべき一人の女性を見つけたから。 彼女が海から来るのをみてた。夥しい数のうつくしいウロコが彼女の下肢から剥がれ落ち 浜辺の砂に煌めくのを、 それを取りこぼさぬように一つ一つ拾い集めビンに入れていくのを 一部始終見ていた。彼女の正体は人魚だ…
酒場で彼女が席につくのを、そっと横から話し掛けた 「今晩わ、ご一緒しても?」 「どうぞ」と彼女は微笑んで、自分の皿を「おひとついかが」と差し出してくれた。皿には香草と肉の挟み焼きが乗っており、「おひとつ」のその豪快さに笑みが漏れた。長い髪が食事につきそうなので編み込んで結��上げると、頬を染めて礼を言われた。 食事を共にした後は、ランタン飾りを見上げながら街を歩いた。「こんなに沢山、とても美しい」とため息交じりに語る彼女に「初めて見る?」と訊ねると、少し口ごもって「うん」と頷いた。 「けれどとても懐かしいような温かい灯だと感じるの」 「そう…」それはきっと 彼女が以前この灯を見たことがあるからだと思った。 「この火を点けたランタンは後で波に流すんだ」 と、飾り立てられた街から徐々に浜辺へ歩きながら彼女に語りかけた。「燃え尽きた灰を…人の遺灰に見立て …海に還すんだよ」
滑らかな土の海岸につくと、木々の合間から届くランタンや街の灯が赤や金に輝いて見えた。手元は暗く影になり、けれど二人が互いに見詰め合うには十分な明るさがあった。 「…手を」 差し出すと、彼女はそっと手を取って身を寄せた。長い髪がゆったりと潮風に靡く。睫毛がうっとりと目元に影を作りながら、光を弾いて瞬いていた。 お祭り騒ぎもここまでは届かない。砂浜の鳴る音を立てながら、ゆったりと歌を口ずさんで彼女と踊る。 「じょうずだね」 「歌が?踊りが?」 「両方。…初めてとは思えないな」 言うと、彼女はまた少し口ごもって「そうね」と首を傾げた。困ったような微笑みが何かに気付きかけているのを感じて、私はダンスを止めた。 「…どうしたの?」 問いかける彼女に、名前を呼んだ。 教えていない名を呼ばれ、彼女は目を丸くして、…それから、その名前が自分のものだと気付いたようだった。私は、畳みかけるように自分の名を名乗り、彼女の記憶に訴えかけた。 「……君を待ってた」微笑み掛け、念を押すようにもう一度名前を口にする。「どうして」と彼女は慌てだし、何を見るでもなくあちこちに視線をやって、取りあった手を離そうとした。――離さない。 君が帰ってくるのを待ってた、…今日のこの夜 冥界と繋がる海に。 真っ直ぐ彼女を見詰める私を、彼女も見詰め返す。その目を反らさないまま、彼女を抱き寄せた。彼女は戸惑いながらも、私の背に腕を回して手の平を当てた。 「…だめ、いけない、戻らなくては」 「人魚に?死者の世界に?返したくない、…いいや、君は帰ってきたんだよ。ここが君の居るべき場所だ、そうだろう。私が君を返してもらう側だ」 「けれどそれは理に反する」 「理なんて。共に在るためなら曲げてしまえばいい」 「どうするつもり?」 「君を見つけて、この世の物を口にさせた、記憶も呼び覚ました…あとは君が蘇るのを決意して…<それ>を捨てるだけだ」 <それ>を。 視線で示す。彼女の腰につられた襷 そこに入っているビン、の、中身を。 「……」 彼女は沈黙し、考え込んだ。海辺に風と波の音だけがしばし響き、次に彼女が顔を上げたとき、私は彼女に口付けた。 彼女はビンを取り出して、私に差し出した。 「…ありがとう」 ああ ああ…、この日のために彼女を探し続けて幾年も 耐えた、…
――ビンを投げ捨てる 岩にうちつけられ、ガラスが割れ 中からあふれた夥しい煌めきの粒が、波に溶けて泡と化した。
「あっ」と ビンが空を飛ぶ一瞬に、彼女は声を上げていた。 私がビンをそのまま保管すると思って居たのかもしれない、けれどすぐさま彼女がどこへも行けないようにするのはもう決めていたことだった。人魚に戻る術があっては、いつまたと考えて安心できない。 ――でも 消してしまえば安心だ。 これでもう 彼女は還れない。
ハロウィンの祭りも終盤になり、ランタンの灯は燃え尽きて灰となった。 浮かれたような赤金の光は月の光と入れ替わり、厳かに空から照らしている。人々は街から海へとその灰を持ち寄って、渚に立ち並ぶとそれを波に返した。 私はどこか他人事のようにそれを見ていた。彼女はここに残る。もう返らないのだから。 だが 別れを惜しむ人々を眺め 油断しきったその時になって 「う、うぅぅ…」 と すぐ隣から、呻く声が聞こえた。 彼女の声が。 驚いて彼女を振り向いた途端、抱き寄せていた身体が不自然に崩れた。 「……えっ」 彼女の身体は溶けていた。 いや 膨れていた? 皮膚が気泡の集まりのようになって…細かに弾け 消え …そのおぞましさに、思わず彼女を離した途端、全身でべしゃりと浜に倒れた。 「あ、ごめん、」 馬鹿らしくなるような謝罪が口から漏れる そうしている間にも、泡はぷつぷつと弾け続け、 彼女は跡形もなくなった。
世の理は一方通行だった。 彼女と共に在りたいのならば 私が人魚になるしかなかったのだ。 ふらふらと海に入りかけ けれど人々に遮られ 気付いた、 彼女はもう 死者としても、どこにもいなくなってしまったことに。
『もう帰れない』
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CoC「礼讃」KPC ロアンナ・ハーパー
「ほとんど……皆さん夫の仕事の関係者ですわ。夫は天涯孤独ですし、私もこれといって身寄りがいないもので……」 「…………いえ、私は……大丈夫です……。ミアは……」 「あの子はきっと、父親が死んだなんて……わかっていないでしょうけど」 「夫がいなくなって、一人で…………ミアのためにお金を稼いだりすることは、辛くてもきっと耐えられます」 「でも呪いや魔術なんて、そんなものとどう戦えばいいの?」 「主よ、私たちの祈りを聞いてください。私たちにどうか忍耐と知恵を与えてください。困難の中にあっても勇気と希望を持ち、あなたの恵みが私��ちを高めてくださるよう祈ります。アーメン」
◆ロアンナ身上調査書
姓名:ロアンナ・ハーパー 年齢:34歳(礼讃時点で32歳) 性別:女 血液型:A型 誕生日:7月22日 星座:蟹座 身長:170cm 体重:52kg 髪色:色の薄いブロンド 瞳の色:グレー 視力:左右0.8 きき腕:右 声の質:優しく囁くような張りのない声 手術経験や虫歯、病気:風邪を引きやすいがこれといった病気はしたことがない 身体の傷、アザ、刺青:なし その他の身体的特徴(鼻や目の形、姿勢、乳房、足、ホクロなど):肌が青白く血色があまり良くない。手首が折れそうなほど細身。 セックス体験、恋愛、結婚観:若い頃に夫とすぐ結婚したため恋愛経験がほとんどない。男性経験は夫とマーティのみ。 尊敬する人:特になし 恨んでる人:特になし 出身:アイダホ州ボイシ 職業:仕立て屋、刺繍職人見習い 将来の夢:仕事で認められること 恐怖:他人に支配されること 癖:目線を逸らす 酒癖:あまり強くない 眠気がくる
一人称:私 二人称:あなた 呼び方:名字+さん、親しい人は名前呼び捨て
*概要
ハドソンバレーに住む子持ちの未亡人。夫のエイドリアン・ハーパーが亡くなり、マーティ・ロックとはその葬式で出会った。得体の知れないものに巻き込まれながらも生還し、今は娘と暮らす生計を立てるため就職した仕立て屋でまだまだ下働きの身。
*CoC「礼讃」あらすじ
このところ夫の様子がおかしく、毎月犬を連れて行っていたハンティングにも出かけないで家に籠るようになった。「蛇を殺した」「二人で遠くでやり直そう」などと口走る夫に不穏なものを感じ、ロアンナは手を触れるのを禁止されていた書斎の資料を調べることにした。しかし調べ物が得意でない彼女の調査は難航する。 その矢先に夫が奇妙な急性腎不全で亡くなり、混乱しているロアンナの元に怪しい男たちが現れる。蛇のような肌を持った異様な姿の彼らはイグという蛇神の信徒を名乗り、「エイドリアンもイグの信者であったが神を裏切り、神の蛇を殺したために殺された」「このままでは残された家族も仲間であった我々も呪われて殺される」と迫り、ロアンナに儀式に参加するよう脅してくる。 ロアンナはその話に違和感を覚える。しかし今まで調べていた内容と符合する部分もあ��、さらに娘もイグに狙われると脅され、男たちに目の前で得体の知れない魔術を見せられたロアンナは精神的に追い詰められていった。
そして迎えた葬儀当日、夫の仕事仲間だというマーティ・ロック・スミスが参列する。彼は会場に紛れ込んだ爬虫類じみた人物がハーパー邸に侵入したことに気付き、単身家の中へと入っていく。その中でロアンナが一人調べたことや、故エイドリアンの残した暗号や書籍を解読し、ハーパー邸に隠された冒涜的な真実を紐解いていくこととなる。 彼が翻訳したページの内容を読み、ロアンナはようやく理解した。夫は邪神を信仰し、誤って蛇を殺してしまったが故に呪いを恐れ、別の神に鞍替えしようとしていた。そして自分たちの娘ミアをツァトゥグアという新たな神に捧げることでイグの怒りから身を守ろうとしていたことを。 首を突っ込んだせいでそのまま蛇人間たちの魔術的儀式に巻き込まれててしまったマーティ・ロックに、ロアンナは夫の計画を使い、自分たちがツァトゥグアを召喚しこの男たちを捧げて退けるという悍ましい計画を持ちかける。だがロアンナからの話を聞いて蛇人間たちの正体を怪しみ、なにより神への信仰を裏切るのは気が進まないとマーティはロアンナを説得し、自ら彼らに立ち向かうことに決めたのだった。
イグの信徒を名乗る男たちは、その実イグに呪われ見放されたモグリの魔術師たちだった。すでにボロボロの体で魔術を行使しようとするも、ほとんどは失敗し、自滅するような形で戦いは幕を閉じる。 ロアンナは邪な神を信仰し裏切った末路を見て青ざめ、巻き込まれたにも関わらず、取り返しのつかないことになる前に助けてくれたマーティに心から感謝するのだった。
*性格
気弱そうな見た目どおり、流されやすく自己主張が苦手な性格。あまり感情を表に出すタイプではない。本来そうだったわけではなく、支配的な夫との長い結婚生活の中で培われた癖のようなものである。物静かで思慮深く繊細な感性の持ち主。他人の感情の機微にも敏感で、細やかな気遣いのできる女性。 自分の考えや能力に自信がなく、人に提示された道に従おうとするが、愛する娘のこととなると話は別で断固として娘の利益になるものを選ぼうとする。正直な働き者で新しいことを学ぶのが好き。慣れた相手ならおしゃべり好き。極端に依存心が強い面もあるが、自分の意思でそれをなるべく律している。ときに冷静で現実的な判断を下すことができる。
*人間関係
夫が亡くなるまで行動を制限されていたためかなり閉じた人間関係の中で暮らしており、友達や知り合いもほとんどいなかった。その閉塞した環境のなかで冷たい夫への恐れは強くなり、可愛い娘への依存心が高まっていた。 礼讃以降は仕事をするようになり徐々にではあるが交友関係が広まってきている。話の中心になるようなことはないが、持ち前の優しさと思いやりでうまくやっていけているようだ。 マーティ・ロックとはただの友人とは言い難い関係だが、前の結婚が大きな失敗だったこともあり、男性に精神的・経済的に依存することを恐れてなかなか前に進めないでいる。自分に気持ちがあるのと、娘のミアと飼い犬のニュールがマーティにとても懐いているのもあり、遠ざけたりもできない様子。
*家族関係、幼少期体験
アイダホ州ボイシのさらに郊外で自然豊かなロッジのような家で育つ。幼少期は貧しいながらに穏やかに過ごしたが、17歳の頃に両親が詐欺の被害に遭い廃業、苦しい借金を抱えることとなる。そこにエイドリアン・ハーパーが現れ、ロアンナと結婚させてくれるなら借金を肩代わりすると両親に持ちかけ、半ば売られるような形で20歳も年上のエイドリアンと結婚し、ハドソンバレーにやってきた。 両親は金を持ってすぐに消息がわからなくなり、孤独な娘時代を過ごす。その中でエイドリアンに対する恐怖と依存心を高めていった。
エイドリアン・ハーパーは芸術家だが知識を求める魔術師でもあり、生まれながらのハンターでもある。欲しいものがあればどんな汚い手でも使う男が目をつけたのが田舎町の若い娘だった。みずから苦労して手に入れたもののみに執着し、副産物的に生まれた娘には愛着がなかったのだろう。
*能力
若い頃に結婚し、大学にも行かず外出も制限されていたため、基礎的な学力が低い。文字を読むのも苦手である。代わりに手先は器用で、料理や針仕事など家でできることはほとんど完璧にこなすことができる。とりわけ針と糸の扱いには非常に長けており、唯一の特技と言ってよいのが刺繍。気の遠くなるような細かい図案でも時間をかけて完成させることができる集中力と忍耐力を有している。 色彩感覚とコーディネートセンスにも優れており、それらを活かして仕立て屋の下働きとして雇われ日々修練を積んでいる。まだまだ給料も低いが、仕事が丁寧なので評判は悪くない。
*好きなもの 食べ物:サーモン、じゃがいも 得意料理:サーモンのタルタルケーキ、じゃがいものパイ、彩りの良いサラダ、鶏のグリル 飲み物:カフェオレ、ルイボスティー 季節:春 色:白、黒、ネイビー→ライラック、サーモンピンクなど明るくて柔らかい色 香り:優しいダウニーの香り 書籍:あまり読まない 動物:犬 ファッション:保守的で飾り気のない服→柔らかい素材のワンピースやスカート 場所:新しい家、窓のある仕事場 愛用:手編みのロザリオブレスレット 趣味:裁縫、子供服のデザイン、手芸、犬の散歩
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大下宇陀児探偵小説選(1)
昆虫男爵ー使用ルビ集
序曲・銀座の昆虫
(C)埒(らち) (A)尾形良成(おがたよしなり) 人名:昆虫男爵です。 (C)渾名(あだな) (C)甲虫(かぶとむし) (C)卵生(らんせい) 卵の形で子を生み出す型式の事ですね。 (D)蚜虫(ありまき) アブラムシのことですが、てんとう虫に食べられる方のやつです。 (D)蛹(さなぎ) (B)面妖(おか)しい 本来ならあやしいと読むのでしょうが、話し言葉として表現したのでしょう。 (C)五十米(ごじゅうメートル) (C)冠(かぶ)る (D)跼(かが)む (C)呻(うな)る (B)飾窓(ショーウィンドー) (A)���奴(ももやっこ) 人名:胎生昆虫だといわれた新橋の芸者。 (B)芸妓(げいしゃ) 京都で活動しているのが「芸妓」、それ以外で活動しているのが「芸者」。 (C)斜(はす)っかい (C)羽交(はが)い締め (B)哮(いき)る 荒々しくほえさけぶという意味です。たけり立つ よりもわかりやすかったのでしょうか? (B)浅間(あさま)しい 古い言い回しにはこういう表現があるみたいです。卑しいってことですね。 (B)年齢(とし) これは、文学的な表現の工夫でしょうね。 (B)婦人(ひと) これは、婦人ではなく、人として見たいということなんでしょう。 (C)良人(おっと) (B)他人(ひと) 「他人事」あたりからきたよみなんでしょう。 (A)根村幸雄(ねむらゆきお) 人名:男爵の青年時代からの親友で、医学博士。 (C)他家(たけ)
寄席の昆虫
(A)玉虫蛍子(たまむしほたるこ) 人名:本名稲岡由子、虫の鳴き声を真似して近頃評判の寄席芸人。 (D)山窩(さんか) 村里に定住せず山中や河原などで野営しながら漂泊の生活をおくっていた人々らしいです。 (D)蚯蚓(みみず) (D)蟋蟀(きりぎりす) きりぎりすという表現は、コオロギの古名としてみたいです。 (D)河鹿(かじか) カジカガエルの別名。 (D)破落戸(ごろつき) (B)吃驚(びっくり) 当て字のようです。突然のことや意外なことに一瞬おどろくことですね。 (B)お銭(おあし) ぜにですね。まるで足が生えているかのように行ったり来たりすることから、「足」にたとえた。 (D)強請(ねだ)る (D)孤児(みなしご) (B)真実(ほんとう) うそでないことですから、ほんとうですね。 (D)一廉(ひとかど) ひときわ優れていることです。 (B)紙幣束(さつたば) 明治に発行された政府紙幣から「おさつ」とい割れたみたいです。 (C)忌々(いまいま)しい
湖畔の晩餐
(A)李(すもも) (C)容物(いれもの) (C)二粁(にきろ) (D)已(や)むを得ず 止まるとか終わるではなく、ここでは、しかたなくという意味で使われています。 (D)灼(や)ける (C)蘊蓄(うんちく) (D)剽悍(ひょうかん) すばやい上に、荒々しく強いことですが、ここではトンボのことを指してます。 (D)水蠆(やご) トンボの幼虫ですね。 (D)鰓(えら) (D)怺(こら)える (C)怪(け)しからん (B)匕首(あいくち) 当て字らしいです。正しくは「合口」です。 (B)破落漢(ごろつき) ならずものとか読むみたいいです。 (B)懐中(ふところ) 懐だけで“ふところ”と読みますね。 (B)踉(つ)ける ふらついたり、よろめいたりするという意味ですね。蛍子の兄が訪ねてきた様子を現しています。
地獄絵巻き
(D)鎖(とざ)されて (C)厠(かわや) (C)緞帳(どんちょう) (B)階下(した) まあ、ここでは下の階ことでしょう。 (C)箪笥(たんす) (B)吩咐(いいつ)ける 意味は、まさしくいいつけるです。 (B)消魂(けたた)ましい 魂が消えるほど驚くという意味の当て字でしょう。 (B)鳩尾(みぞおち) 胸の中央のへこんだ所ですね。なんでこれでみぞおちって読むんでしょうね?
老耄親爺と蝶々
(B)老耄(もうろく) 当て字のようです。耄碌(もうろく)と同じような意味ですね。 (B)狼狽(あわ)てて 不意の出来事などにあわててうろたえる漢字が出てますね。 (C)昨夜(ゆうべ) (C)硝子(がらす) (B)毒瓶(どくつぼ) 普通なら、毒壺でしょうけど、この小説の特異性からわざと昆虫採集に用いられる容器をイメージする毒瓶と表記したのかも。ただし、大型の毒瓶は毒壺ともよばれるみたいです。 (C)青酸加里(せいさんかり) 古い言い回しです。今なら、青酸カリですかね。 (D)縊(くく)る (C)鼈甲(べっこう) (B)老耄(おいぼれ) 古い言い方のようです。年を取ってぼけることですね。 (B)総義歯(そういれば) そうぎしと読みますが、意味は総入れ歯ということです。 (B)歯齦(はぐき) しぎんと読みますが、まさにはぐきの事です。歯肉炎のことを歯齦炎ともいいます。 (C)儂(わし) (A)杉山兵六(すぎやまひょうろく) 人名:探偵の助手で書生です。 (C)花骨牌(はながるた) (D)翅(はね) (B)読者諸君(みなさま) まあ、そういうことです。 (B)頒(わか)つ あかつと読むみたいです。意味は、分かち配ることですから、そのあたりからわかつになったのかも。 (C)頁(ぺーじ)
根村博士の説明
(C)繚乱(りょうらん) (C)長閑(のどか) (C)遑(いとま) (C)朴訥(ぼくとつ) (D)擡(もた)げる (B)跫音(あしおと) 古い表現です。『跫』一字であしおとと読みます。
自殺説と他殺説
(D)凭(よ)りかかる (B)呀(あ)っと 感嘆したり驚いて発する声のことですが、今は使わないですね。 (D)蹣跚(よろ)めく
二人の嫌疑者
(C)鳩首(きゅうしゅ) 人々が寄り集まって、額をつきあわせて相談すること。まさに鳩が群れる感じですか。 (C)長(た)けた (C)杳(よう)として (D)仄聞(そくぶん) (D)昵懇(じっこん) 親しく付き合うさまという意味です。
断末魔の訴え
(D)嵌(は)める ある形に合うように中に入れておさめることで、革手袋をはめてます。 (C)遮二無二(しゃにむに) (C)朦朧(もうろう) (D)嚥(の)む 「飲む」や「呑む」と同じなんですが、のみ下すと言う意味で、ここでは、毒を飲んでます。 (D)刳(えぐ)る (B)縡(こと) 「息が絶える」の意の事切れるの事の当て字ですね。 (C)譫言(うわごと) (B)阿母(おっか)あ 母を親しんでいう語ですね。口語風に当てたんでしょう。
悪魔の恋
(B)背後(うしろ) まさに、後ろですね。 (D)邪(よこし)ま 道にはずれていることですが、恋に関する意味で使うイメージですね。 (B)応報(むくい) 【因果応報】のおうほうですね。むくいがあるからこの字なんでしょう。 (D)犇々(ひしひし) 強く身に迫るさまで、今も使いますが、こんな字なんですね。 (D)服(の)む 飲食物を口から体内に送りこむこと。「内服薬」なんかを思い浮かべるとイメージが湧くかも。
了
分類の凡例(適当です) (A)漢字の読み方が一意に定まらない場合 (B)当て字や外来語の表記 (C)子供や初学者向けの読み方の指示 (D)読みにくい漢字の補助
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行屋虚彦 生育歴 +α
生育歴:
誕生してしばらくは、まだ少し自律して動けたナナちゃんが赤子イキヤの世話を、冷泉・山雪などと一緒にしていた。冷泉さんはまだ稼ぎの少ない生活だったが、雇えるときには信頼するお手伝いさんを呼んでもいたようだ。(冷泉さんの実家にたまに来ていた親戚?少なくとも美遊さんが信頼する人間) 冷泉さんはイキヤの新聞記事など含めた、優しい記憶だけのアルバムを作り続けていた。
イキヤ、発達が早い。 一才と2日目で立った。そのあとすぐ歩いた。 二歳の誕生日には普通に意味のある単語文を喋る。(作者とも行屋家の遺伝とも共通。)
2歳の頃に、絵本を読む。※実際は絵本を見ながら絵に描かれている内容を推測してペラペラと突っかかることなく流暢に話し続けていた。その内容がしっかりと筋が通っていていかにも絵本らしい語彙や表現にも満ちていたため、周囲の大人は「2歳でもう本が読める子」と勘違いするほどだった。 (実際はむしろ識字に困難がある)
2歳の頃には自主的にあれこれ動き回り、庭の草むしりなどもしていた。(命に圧されて殺されないよう、相手を殺していた) そのうち、弱った生き物を拾ってきて世話をし、死ぬ寸前に殺して標本にしたりなどを始める。 近所の年上の子どもに、泥水や砂をかけられたり目の特徴や機械的な動作について野次られる。が、本人は「なるほど、そう見えるのか」と納得しただけだった。 攻撃はすぐ回避アクションを体得したため、怪我を負ったことは少ない。
「イキヤは昔から…少なくとも2歳の頃にはすでに、人に触れられるのを極端に嫌った 嫌うというより…強い生理的嫌悪感のような 触れようとしてきた人間を蹴り飛ばして暴力沙汰になったことが何度かある 例えば敵意も害意もまるでなく優しく頭を撫でようとしてきた大人を、あの痩せた小柄で蹴って何メートルも吹っ飛ばして大怪我を負わせたことも 本人はあとで悔やんでたよ 相手に敵意や害意がないことが、目では見えてたはずなのに、体が先に動いちまったと
※3歳ごろから母の世話をもうしていたのではないかと思われる。 ※たまに帰ってくる父・疾彦の羽織の裾がたなびく様子を「かっこいい」と思い、「大きくなったらあれを譲ってもらって俺も着る」と思っていた。 ※新屋敷佐がイキヤを児童相談所案件ではないかと見ていたのもこの頃? ※同時期から、面前DVに遭っている。複数のアトリエに出入りしていた際、山雪のアトリエではないアトリエで、大人たちのセックスの遊びに付き合わされ、見ているようにと強要された。
5歳、アイロン事件。 ここから極寒の世界が始まる。あったかいものや湯気などが、感覚過敏とよくない生活習慣とともに受けつけなくなっていく。 「あったまると、溶けて崩れてカタチを保てず、終わる」 感覚過敏と神経が、ずっと極寒の中にいたらほんのり麻痺したり、暑さで汗をかかないから肌がかぶれたり痛くなったり痒くなったりについてすこし安全になる、という側面も、あたたかさの拒絶と極寒を助長した。 ※火傷を負わせた犯人は、直後に行方不明、のちに遺体で発見された。謎の謝罪文のような遺書を残していた。トキさんの仕業?
6歳、たまに現れてる時期に、図画工作とかの授業で必ず先生がイキヤの作品を褒めて、イキヤは居場所なくしてして クラスメイトや学校中の子から 「いくら自分ががんばって絵を描いても、どうせ選ばれるのは行屋に決まってる、いつもそう、もういいよ」って それで、周りの子どもの絵を描くモチベーションを自分が下げて奪っていると感じ、早々に学校の授業で描くのはやめて、師匠のアトリエで描き始めた。
それでもたまに顔を出さなければいけなかった小学校で、上階からバケツに入れられた鉛筆やコンパスや雑巾や定規などの入った水をかけられる。そのとき、咄嗟に頭を手で庇ったときに手に鉛筆が貫通するが、イキヤは帰宅してから描く絵のことで頭がいっぱいで(なんとなく手に違和感がある)としか感じず放置。 絵を描くときに不便を感じて初めて鉛筆が突き刺さっていることに気づいた。 クラスメイトからは、痛覚のない機械かロボットのようだとさらに不気味がられた。
6歳、ピアス事件。 冷泉さんの中のばけものを鎮静化させるため、冷泉さんの中の被害と加害の意識を同じにしよう、八つ当たりをさせようと、ピアスをあけるようにねだる。冷泉さんが拒絶し、諭そうとすると、イキヤは冷泉さんの過去の被害をその場で克明に見透かして言い当て、すべて言葉にした。動揺してフラッシュバックを起こして朦朧とした判断力のない状態で、ピアッサーに手を招かれて、挟まさせられて、イキヤがその上から冷泉さんの手を握ってバチン!と開けた。両耳を開けた以降の記憶は、冷泉さんの側にはしっかりとはない。 「バケモノにされたひと。暴れもせず、泣き叫ぶことも、喚き散らすこともなく、ひとを傷つけないように生きるバケモノの姿を、そのままただ見ていられなかった」 冷泉さんはイキヤに黒曜石のピアスをあげた 「二度と他人に同じ真似を強いることのないように 情動に飲まれそうになったらこのピアスに触れて思い出せ」と
6歳、ヌードモデルの仕事が、給料がいいので引き受ける。イキヤのヌードをほとんど性的な娯楽にしていた画家がおり、いかにも創作活動と芸術を装って隠れ蓑にして性的に搾取してくる視線にイキヤが自分で気付けたとき、イキヤは相手を蹴り飛ばして「筆持っといててめえにプライドねえのか」と叫び大暴れ。少し騒ぎになった。が、内輪でのことだからと、身内ネタで誰にもお咎めなしで終わった。
6歳、頭痛に悩まされ、市販の鎮痛剤を濫用・多量摂取しはじめた。飲んで効く間だけ、頭痛も全身の痛みも苦痛も和らぎ、他人ともそつなく接することができるようになると気付いてから、いつも市販薬を常備し、持ち歩くようになった。連日連用するとすぐに薬に耐性ができてしまう体で、用法容量を守っていては効かないときには過剰摂取していた。15歳時点でもまだそれは続いている。
6歳、それまでに描いた絵と師匠のアトリエで描いた絵すべてトータルで新聞記事に載る。その頃はまだ世間で物珍しかった「共感覚」という言葉を強調して載せられたことで、世間から注目の目が集まる。 それから逃げようと、ここからイキヤはモノトーンの絵しか描かなくなる。(それだとそういう画風として、何を描いてもいろいろ誤魔化せたから)
8歳、名廊直人に「見たままを描いてごらん」と言われ、そこから自分の色覚に完全に従順を通り越して隷属した絵を描き始める。 その絵を師匠のアトリエに置いていたらアトリエに来た人間(かなりの名士で富裕層の資産家)が「相応の額を払うからこの絵を買いたい」と言う。イキヤはなにげなくいつものハイペースで描いた絵の中のひとつだったその絵を、売る。 買った人間が、豪奢な自宅(大勢の富裕層が出入りする)の応接間にその絵をしっかりと飾ったこと、応接間に通された来客が話題の一端としてその絵について尋ね、しっかりと答える(イキヤの創作活動の一助になり支援するような感覚もおそらくあった)ことで、その人間の人脈にイキヤの絵は評判となり、 8歳のイキヤのもとに「自分の家にもあのような絵がぜひ欲しい」という、かなり裕福な大人たちからの依頼が来るようになる。 8歳のイキヤはせいいっぱい依頼に応え、「あのような絵」と称された最初に売れた絵から大きく枠を外れない絵を描いて売った。 依頼された絵以外はどんなようにでも好きに描いていたが、やがてそれもあまり人目に触れないようにし出した。(酷いことだから、だけではない。)
8歳、大人から飲まされた酒で急性アルコール中毒で倒れて死にかけた。以来、酒を飲んだことがない。 酒を飲まされる時、脱がされ引き倒され、「肛門で飲むか自分でちゃんと飲むか?」を脅され、選択させられたことで脳に異常が出る。が、本人は脅された部分の記憶を忘れ去っており、大したトラウマにもならず、さらに後日罵倒された言葉��、「自分が酒に弱かったせいで急性アルコール中毒で倒れた」とだけぼんやり記憶していた。急性アルコール中毒に死の危険があることなど、無意識に関連情報について調べたり、考えることを避けてやめていた。
依頼された絵を描くうちに「個展をやってみないか」と言われ、依頼された絵に近いものを選んで個展をした。 イキヤの中で「売れる絵を描けば当然売れる」ということが、思春期あたりで漠然と腑に落ちなくなってきてイライラしだし、粗暴になる。 (この辺りから公式デフォルトイキヤになっていく) 自慰行為では消えたくなる。
13歳の時、同じ公募展で入選した篝要の絵(ドローイング作品)を見て、展示会場の近くにいるカガリの色と気配を追い、初対面のカガリにイキヤから声をかける。「お前の描く絵は凄いものだ。絶対に描くのをやめるな」 その二言で身を翻してイキヤは走り去った。その褪せた黒い細身のパーカー姿の背中が遠ざかっていく、それがユーレイだったカガリが、イキヤを自分の「本体」として捉えた原風景となった。 これ以後、カガリはイキヤに接近し、たびたび脈絡もなくイキヤの首を絞め、それを許さないイキヤに容赦なく蹴り弾かれる。カガリの中でその度にイキヤは「殺しても殺しても絶対に死なない、壊しても壊しても壊しても大丈夫な最強の本体」になっていく。
15歳の時、名廊直人が40歳で自殺して死亡。 自分の視覚に静謐に従い続けた直人の命が早々に途切れたことで、イキヤの中で何かふっきれた。このままではいけないと。 これまでで一番大きな個展を開き、作風も画風も画材もテーマも纏まりも一貫性もないこれまで好きに描いた絵すべてを晒す。
その後、「行屋虚彦」の絵の確立していたブランド性はやや落ちた。しかし評価をあげる人間もいたため相変わらず売れる。
16歳の時、母・ナナが2階からの転落で首の骨を折り、死去。 不眠症だったイキヤがほんの5分ほどうっすら眠っていた隙の出来事だった。2階の手すり、落下した母の長い髪の毛の先が指に触れるところまでイキヤは駆けつけていたが、遅かった。 落下時に掴んだひと束の髪の毛は頭皮から抜けて2階のイキヤの手の中に残った。 そして母の亡骸を抱きしめて、母を一人にしないように(自分が置いていかれたくなかった)と死後の世界についていこうとした結果、発見されたときには目も耳も聞こえなくなっていた。それは視覚が強いイキヤにとっては冥界に近いなにかだった。
17歳、母の死後、守るものを亡くしたイキヤはとにかく自分にできる仕事ならなんでもやり始める。 あまりの手数の多さ、しかしオールマイティと呼ぶには偏っているさまが「外見的シーラカンス」モチーフの由来。 画家としては生粋の画家というよりやや「便利屋」的なふうにもなっていく。 もともと注文が多ければ多いほど不自由で楽しく絵が描けるイキヤ。
18歳、神経と感覚を研ぎ澄まして集中し絵を描き続けたことで、身体が緊張状態から戻ってこれなくなる。(生来そんな状態が続いてもいた) 胴体内(胸部から腹部全体、下腹部まで)を内側から誰かの手で優しく撫でられるような、性的快感に似た刺激に悶え苦しむ日々が始まる。本人が拒絶する意に反した性的快楽、に似た苦痛の継続。それで身体が死に至ることがないことも、イキヤ本人にもずっとよく感じられるような苦痛の継続。※トキさんはこれをさらに激しい激痛や快楽にすり替えて、自分であらゆる薬を試して、薬を見つけて生き延びた。
18歳、ある日絵を描いていて突然、眼球を無数の夥しい針で刺されるような痛みが目にくる。 逆まつげではないかとイキヤは睫毛を毟った。 眼科、脳神経外科、その他あらゆる検査でなにも身体には異常なし。原因不明となる。 目を閉じていると和らぐことから、ここからイキヤはほとんどの時間を目を閉じて視覚なしで生きる。 絵を描ける時間とタイミングが極端に制限され、作品数も激減を余儀なくされ、生きていくのにギリギリの収入しか得られなくなる。 途端に貧困と、目の見えない生活苦に陥る。
19歳、発狂。 ナナと同じ茫然自失の状態になる、もしくは幼児退行し健忘の激しい無邪気なさまになる。 目が見えないことと腑をくすぐられる病により、発狂。絵の中に描いて潜ませることで語れていた心を語るすべを奪われたことが決定打となる。 イキヤが潜在意識で絵の中に潜ませ続けたのは一貫してたった一言、「助けて」だった。
19歳、発狂状態で、行屋灯彦の家に囲われて生きることになる。 病の苦しみを知る灯彦と、その娘・冥(昏と同音だが別人。空海の詩からとった漢字)が、イキヤの身体を安らげようとしてイキヤをレイプするのが日常になる。 冥はイキヤの子を身籠り、イキヤの娘・行屋瞳(いきや・まな)が産まれる。 現状を知った冷泉、山雪らは灯彦と話し合うが、何度も決裂。 が、話し合いの途中で灯彦が若くして死亡。 最終的にイキヤは精神病院に入院しての生活に入る。
享年20歳。精神病院の病室で、殺害、変死?(閉鎖病棟なので普通は簡単に出入りできない)された状態で発見される。トキさんの仕業?
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背筋を意識的に伸ばす
背筋を伸ばすことを意識しておかなくてはならない。まだ高齢者とは言えないが、それに近づいている私は様々な身体の異変を日々感じている。加齢すれば起きることであるからこれは仕方がない。どんなにうわべを飾っても身体的な変化は避けられない。 白髪についてはずいぶん前から認知していた。今は定期的に染めているので気づかないけれども何もしなければほぼすべてが白髪のはずだ。皮膚のしわは隠せない。ただ、こちらは日々見慣れているせいで逆に注意が向くことはない。自然に抜けた歯がもっとも加齢の悲哀を感じさせる。 なんとかできそうなのが背筋である。背筋の衰えなどから猫背になり、やがて腰が曲がる状態になる。これについても私は高齢化の悪魔からの招待状を受けているような気分になることが多い。なるべく荷物を持って歩くこと、そしてときに意識して背中や首を伸ばすこと。背筋の衰えを克服することを意識することを考えている…
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「それ、プリコネかい?」
日が落ちかけ、人影もまばらとなった汝矣島(ヨイド)漢江公園。
ベンチで一人ゲームに熱中する少年に声をかけたのは、涼し気な目許が印象的な若い男であった。
「‥おじさん誰?ブルアカも知らないの?」
そう答えた少年の頬には生々しい青あざがあった。
「流行に疎くてね」
ふん、と鼻を鳴らして少年はスマホ画面に目を戻した。
「ブルアカは最高だよ。透き通った世界観のおかげでプリコネほどには気持ち悪くないんだ」
「ほう」
「あと、作ってる人が凄いんだ。キム・ヨンハっていうんだけどさ、シャバい部下を清渓川に沈めてピラニアに食わせて殺すんだ。クールでしょ?」
清渓川(チョンゲチョン)!
たまらず男は吹き出した。
「ハハ、待ってくれ、清渓川だって?あんな浅い川で人間を溺死させるのは不可能だろ。それに何?ピラニア?いったい誰がそんな馬鹿を言い出したんだ」
「知らないよ、皆言ってるんだ」
「皆って」
「ツイッターの皆さ!もう!邪魔しないでよ!」
「それ、喧嘩かい?」
男は少年の頬のあざを指差した。
スマホを弄る少年の指が止まる。
「‥‥ドヒョンにやられたんだ。あいつ、ふざけて僕を叩くのが生きがいなんだよ。今日だって生塩ノアの下着の色で言い争いになって‥」
「下着」
「僕は白だと思うのに、あいつは絶対に黒だって。童貞乙だって」
堰を切ったように、少年の目から涙が溢れ出した。
「鼻だな」
「え?」
「出会い頭で鼻に一発くれてやると良い。脳に酸素が行かなくなるから、喧嘩慣れしてない子供同士ならそれで決まりだ。次は腹。泣いても謝っても、絶対に手を緩めるなよ。こっちが『上』だと身体が理解するまで殴り、蹴り続けろ」
少年は目を丸くした。
「おじさん、ひょっとしてヤクザ?」
「そう見えるかい」
少年はブンブンと首を振った。
いつの間にか涙は止まっていた。
「なに、きみの尊敬するキム・ヨンハ統括Pならこう助言するんじゃないかと思っただけさ」
「ふーん、変なの‥あ!いっけね!塾の時間だ!遅刻しちゃう!」
「行きなさい。勉強は大事だ。ゲームに夢中になり過ぎないように。寝る前にスマホを弄るのも駄目だ」
「ちぇっ、ママと同じ事言ってら。じゃあね、おじさん!鼻パンチの話ありがとう!一発かましてみるよ!」
少年は勢いよく駆け出した。
「これは個人的意見だが!」
男が叫んだ。
少年が振り返った。
「私も生塩ノアの下着は白が良いと思う。ただしそれは飾り気の無いデザインではなく‥」
少年が応えた。
「王侯貴族の子女の為に三か月かけて職人が製作するオートクチュールのようなきらびやかさで‥」
「ヒラヒラで」
「シルキーで」
「良い匂いがして」
「それでいて‥」
「「デカブラ!!!!」」
二人は破顔した。
少年は再び駆け出し、もう振り返る事はなかった。
その姿が見えなくなるのと入れ替わりに、男のスマホが鳴った。
「‥私だ」
男の声は、別人のように低い。
夕映��を受けた漢江が、真っ赤に染まっていた。
「Appleの審査の件、だと‥?担当者の身柄は抑えたと報告を受けているが」
「引き渡しが条件?なら話は早い。そいつを『返して』やれ。少しずつ。小分けにしてな」
「ああ、そうだ」
「返す部位が無くなっても奴らが首を縦に振らんようなら、また連絡しろ」
電話を切り、忌々しげに溜息をつくと、男は懐から煙草を取り出した。
(清渓川、ピラニアか。或いはそれも悪くない)
ベンチに深く腰掛け、肺を紫煙で満たしながら男は─
キム・ヨンハは思いを馳せる。
来し方、行く末。
血塗られた道に。
「there..will..be..blood」
問題はそれが
「おれの血か、奴らの血か」
「おれの血か、奴らの血か‥か」
自嘲気味に笑う男を覆い隠すように、ソウルに夜の帳が降りようとしていた。
ゴッド・静馬
https://x.com/skekiyo_sizma/status/1586211344587841536?s=61&t=mRHRuhuqGpV3ebr2KejzRA
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ある画家の手記if.121 告白 夏祭り
新居の近くには綺麗な池のある広々した公園があって、気が向いたら僕はその公園の池の前のベンチで絵を描いてる。
池の水は溜まりっぱなしじゃなくて公園の外堀の浅い川を巡らせてあって、いつも透明度が高くて綺麗。魚もいる。魚を狙う鳥もくる。 いつも隣のベンチにいてスズメにパン屑をあげてるおじいさんとか、池のまわりをランニングしにくる学生とか、公園に日課で訪れる人たちがいて、僕も通ってるうちに友達が増えた。 静物画を描いてた頃は絵を描くために外に出る必要はなかったから知る由もなかったけど、衆目のある外で堂々と絵を描いてるとちょっと目立つし周囲の興味をひくものらしい。スズメのおじいさんにそう言われた。 そんな公園の友達から、近々この公園で夏祭りが開かれるっていう情報を得た。毎年の恒例行事なんだそうだ。 「直人くんも来てみたらどう?お家は歩いてこれる距離なんでしょう」 「…そうですね。息子と一緒に来ようかな、あの子も夏のお祭りは初めてかもしれないし」 「そういえば息子さんいらっしゃるんですよね、今何歳なんでしたっけ」 なぜか僕が親しくなった相手に香澄のことを話すといつの間にか相手の中で香澄が幼稚園児くらいになってる。 もう成人してますよって言って証拠の写メを見せるときはだいたい絢と香澄のツーショット写真を見せる。 最初に香澄単体の写真を見せて一目惚れとかされたら困るから、となりに香澄とはまた趣の違う華やかで派手な絢もいたら見せられた相手も何がなんだかよくわからなくならないかなとか。実際まあまあそんな感じの効果は上がってる。絢ごめん。 顔立ちだけなら僕と香澄より僕と絢のほうが似てることになるのかもしれないけど、写真を見せても絢のほうを僕の息子だって思う人は意外と少ない。僕も絢もそれぞれ新しい家や家族に馴染んできたのかな。 僕は夏祭りに行ったことは多分ないけど、香澄と行った旅館の初詣でみんな着物着ててお店がたくさん出てた、あんなかんじかな。
前のマンションは立地は住宅街の中だったけど、マンションの方針としてその地域での町内づきあいは一切絶ってあった。今はそういうのが何もない普通の一軒家だから町内の報せとかもご近所から回ってくる。 かいじゅうくんの形のポストに入ってた夏祭りのチラシを取りだして見ながら、簡単に添えられたお祭りのイラストでなんとなくの雰囲気を知る。描かれてる人、みんな着物…浴衣?だ。僕がポストの頭を撫でながらチラシを見てたらちょうど出かけてた香澄が道の向こうから帰ってきた。 最近香澄はよくイキヤのマンションに通ってる。 最初は部屋を貸した身として僕が通って様子を見るべきかなとも思ったけど、結局僕がいつまでも仕事してて行けないでいたら香澄が行ってくれてた。香澄はときどき車出したりもしてた。 二人はけっこう仲良しみたいだ。それは少し、わからないでもない。 イキヤの人間関係はこれまでほとんど画家やそういうことに携わる現場の人間で埋め尽くされてきてる。家庭内にも今は別の画家がいるだけだし。性格や気性を問わず画家同士で穏やかに優しくしあうだけってことにはならない。…その分、誰かに優しくしたい気持ちがずっと行き場をなくしてたりする。 帰ってきた香澄にお祭りのチラシを見せて笑う。 「これ、すぐ近所だし、一緒に行ってみようか」
そんなわけで当日の夕方、まずは自宅まで知り合いの着付け師の子に来てもらった。 浴衣もそこで前もって僕と香澄のぶんを買っておいた、お正月の旅館で知り合った貸衣装をしてたおばあちゃんの呉服屋さん。 あれから何度か仕事でおばあちゃんのお子さんたちにうちに来て手伝ってもらって、ちょっとだけ顔なじみになった。じゅんちゃんとゆなさん。 肖像画の内容にもよるけど、モデルがよく映える服や小道具が欲しいってときもあるから、そういうときに。うちのクローゼットにある服は僕と香澄のを合わせても、お互いに系統が揃ってる上にサイズが大きくてあんまり使えない。 買った浴衣は香澄が白で僕が濃い紫。旅館のときと違って香澄も今回は男性ものの浴衣で、二人とも柄はそんなに派手じゃない。旅先と違って行くのは近所の夏祭りだから、目立つ格好して歩いて妙な虫がついたら払うのに苦労しそうで。 今日は和服だから呼んで来てくれたのはじゅんちゃんだった。浴衣を綺麗に着付けてもらったお礼を昼間に焼いたクッキーと一緒に渡して、二人でお祭りに出かける。布を買って僕が作った簡単な浴衣を出がけに留守番するノエルに適当に着せたらじゅんちゃんに一度脱がされて着付けしなおされてた。
ちょうど陽が沈んだくらいのタイミング。外は昼間に比べたら少し気温も下がってきてる。 となりを歩く香澄の髪にはかいじゅうくんの簪が刺さってる。クリスマスに僕が慧にもらったものだったけど、僕より香澄が使う方が似合っててかわいいからそうしてる。…この方が慧もきっと喜ぶ。 香澄はバレンタイン…本人曰く「誕生日プレゼント」に、まことくんから髪留めをもらって、仕事の日とかによく使ってる。香澄は自分でそういう物はあんまり買わないし僕があげた覚えもなかったから訊いてみた。香澄が友達同士で物を贈りあったりすることにまで口は挟めないけどね。僕が無言でじーっと髪留めを見てたら視線に気づいた香澄は不思議そうに首傾げてた。
公園に入る前から外の道にも普段よりたくさんの人がいて、すでにかなり賑わってた。浴衣姿の人も多い。 はぐれないように手を繋いでたいけどご近所さんも来てそうだから無理かなぁ。 池のまわりをぐるっと夜店が囲むようにどこまでも連なってる。夜店は簡易テントみたいな作りで、高い鉄パイプみたいな骨組みを通してぼんやり光る提灯が頭上に並んで浮かんでる。 香澄と一緒に風を受けてとりあえず見て歩いてるうちにあっという間に空が暗くなって夕方から夜になった。提灯と夜店とところどころの街灯の灯りだけになる。 「あ」 思わず声が出た。飾りみたいにたくさんズラッと並べてあるのの中に、かいじゅうくんがいた。他にもいろんなキャラクター…?色々並んでる。顔だけ… 周りの人たちが買っていく様子を見てると、あれは顔につけるお面らしい。 迷わず買って香澄の頭に装着する。 「…?これって顔につけるんじゃないの?」かいじゅうくんのお面を香澄の頭の斜め上あたりにつける僕に香澄がほわほわ顔緩ませながら訊いてきた。 「香澄の顔が見えなくなったら僕が寂しいからね」 綺麗に装着し終えて満足してたら香澄がさらにほわほわ笑ってた。にっこりしてかいじゅうくんのいないところの髪の毛を梳いて撫でる。 僕はかいじゅうくんと比べたらやけにリアルな描写の般若面を買った。リアルで怖いからあんまり売れてないらしい。僕は首から下げた。背中側に面がくる。般若って女性じゃなかったっけ、とか思うけど、威嚇になる表情ではある。背後の警戒を般若面にお願いする。 二人でかき氷を買って食べ歩く。香澄がオレンジ、僕がブルーのやつ。二人でスプーンですくってお互いの口に運んで食べ比べてみる。どっちも冷た��ておいしい。 射的のお店があったから香澄と二人でやってみる。ゴムを飛ばす鉄砲みたいなライフルみたいなやつを使って景品を撃ち落としたらそれをもらえる。 まずやってみた香澄が何発か撃ってお菓子箱を一個撃ち落とした。香澄はこういう体験は初めてだって言うから「コツを掴むのが上手だね」ってにこにこ上機嫌で褒めた。 そのあとに、香澄がちょっとだけ欲しそうに見てたウサギのぬいぐるみを僕が狙う。ルールに則って決められたラインから踏み出さないで鉄砲を構える。着物の袖が邪魔で肩までまくし上げる。たすきがけとかできればよかった。 僕は腕が長いから普通に構えただけでちょっとズルしてる感じになってるのかな。ゴムをつけ直してウサギを何度か撃ったら置かれた位置からずれてバランスを崩してウサギが落ちた。 店の人から受け取ったウサギを香澄に渡したら嬉しそうにしてた。垂れた耳。まだ留学から帰ってきてない絢のことを連想したのかな。 絢は今、まことくんとオーストラリアに留学に行ってる。日本国内ではなんの気兼ねもなく自由に好きなように活動するのが難しいのかもしれないからよかったとも思う、同時に、僕も香澄も心配な気持ちもあった。 だから僕が庭の樹から少し削りだして、二人でお守りを作った。木彫りかいじゅうくんのキーホルダー。 半分くらいのところまで香澄に作ってもらって、僕は最後の仕上げと少し整える程度のほうが絢は喜ぶかな、と、思ったんだけど、あまりに面妖な初期段階が香澄から提出されて僕は思わず難しい顔になった。なにかの形象をあらわしているとおぼしき木片の突起部分を落としていったらネット検索で閲覧に年齢制限がかかるような姿になったのでさらに削って削って磨いていったら最後にかろうじて残ったのはころんと丸っこい鈴みたいな形のかいじゅうくんだった。雛かもしれない。 お祭りはまだ見てまわるけど僕が撃ち落としたウサギは手荷物になるから一旦僕が香澄から預かる。 ヨーヨーがたくさん水に浮かべてあるのを二人で発見。香澄がすくってとった。歩きながら楽しそうに手で弾かせて遊んでるから、預からないで香澄に持たせたままにする。 頭にかいじゅうくん、手に水色のヨーヨー。着物を白にしてよかった。香澄の髪の色がよく映えて綺麗。 夜店の焼き鳥とかクレープとかホットドッグの匂いが漂ってくる。僕らは家で早めの夕食を済ませたから匂いだけ。公園のみんな曰く、お祭りの夜店で売ってる食べ物全般は内臓や消化器系によほど自信がないと食べるのは分の悪い賭けなんだそうだ。たとえよく火が通されたものでも油が怪しかったりするらしい。 みんなに団扇を配ってる人がいたから僕もひとつもらって、首筋をあおいで風を通す。じゅんちゃんに片側に流すみたいな幅の広めの紐を一本絡ませた編み方にされたから、いつもみたいに後ろで縛ってるより暑い。 となりで香澄の歩くスピードが少しだけ落ちた、様子からして下駄で少し足が痛むみたいだった。 僕も下駄は履き慣れないけどいまだに全然痛くならないから油断してたな… 少し人混みから逸れた場所に入って、香澄の前に片膝をつく。 「ここに足乗せてごらん」自分の立てたほうの膝をトントンと示して香澄の片足からそっと下駄を脱がせた。そのまま僕の膝の上に乗った白い足を診てみて、すぐに病院に行く必要があるような怪我はまだないことを確認する。 それでも鼻緒があたる箇所は少し赤くなっちゃってるから今日はこの辺でもう帰ったほうがよさそうだ。片足ずつ僕の膝に乗せさせて、その間に僕は自分のハンカチを歯でいくつかに裂いて破って、香澄の下駄の緒の部分を外して抜いて、そこにひとまずの代替にハンカチを通していく。ハンカチが柔らかいガーゼ生地だからもとの頑丈な緒に比べれば痛くないかもしれない。 一度香澄に履いてもらってから、すぐ脱げないけど締めつけない程度に長さを調節した。 家までならなんとかなりそうだったからそのまま二人で帰ろうとして、帰る途中で二人して見つけてしまった。 すぐそこの、ビニールプールみたいなのの中にたくさん金魚が泳いでる…。 香澄と顔を見合わせる。 「足は痛くない?」 「うん。すごく楽。」 「…じゃあ、あれだけ最後に見て帰ろうか」 足を痛めないように、ゆっくり水槽の前に二人でかがんで元気に泳ぎ回る金魚をじっと見る。 …体が白くて…頭だけ朱いのがいる。小さい… 「あの子香澄に似てる」 指差して香澄に言いながら、お店の人にすすめられるまま金魚をすくう小さな道具をもらった。指先で触って確かめる。薄い紙が貼ってあるのを水につけて金魚をすくうみたいだけど、紙の目がどの向きなのかとか裏表とか、踏まえておいたら少しはたくさんすくえないかな…。 「…ん 香澄どこ行った?」 「あそこ!」 僕が道具を見てて見失った香澄に似てる金魚を香澄がずっと目で追跡しててくれた。香澄が指差す先に腕を伸ばしてひとまず一匹目を無事にすくう。香澄確保。 そのあとも僕は香澄に「どの子がいい?」って訊いて、香澄が選んだ子をすくって、五匹すくったところでとうとう紙が破れた。 金魚をもらっていくかここに放して帰るか訊かれて、もらって帰ることにした。
荷物が増えたし夜も更けてきたから、今度こそ本当に今日はこのあたりで帰ることにする。 特に金魚の入った袋を持ってからは僕も香澄も少しおたおたした。生き物が入ってるし、一緒に入れてもらった水は少ないし、袋は歩いてたらどうしても揺れるしで、このままじゃ帰り道の間に弱って死んじゃうんじゃないかと思って。 楽になったとは言ってたけどやっぱりいつもの香澄の歩くペースよりは遅いから、公園を出てうちまでの道の真ん中あたりにきてからは、香澄に金魚を持ってもらって僕が香澄をおんぶして帰った。 香澄をおんぶしたり抱っこして運ぶのが好き。僕も昔小さな頃によくそうしてもらってた。どこへ連れてかれるのか分からない状態でも安心していられるその人との関係が大事だった。今僕の背中で疲れたのか少しうとうとしてる香澄に、嬉しくてにこにこする。あんな安心感を、香澄にあげられたら。 お祭りはあと二日、今日みたいな感じで続くらしい。時間があれば、次は普通の動きやすい格好で寄ってみようかな。
お祭りの夜は家に帰ったら浴衣を脱いで、香澄とうさぎと一緒にお風呂に入った。 香澄を洗ったあとでうさぎも洗って清潔にした。さっぱりしてから普段着に着替えて急いで一人で車を出して金魚を飼うために必要なものを買いそろえてきた。あんな少ない水と袋に入れたままだと一晩で死んじゃうかもしれない。 ひとまず金魚たちを無事広い水の中にうつしてから眠った。
次の日、元気に泳ぐ金魚たちを見ながら、香澄と相談して何人かに金魚を譲る相談を持ちかけてみることにした。 香澄がイキヤに連絡してみたらイキヤは今のマンションの部屋で飼う形でもらってくれるらしい。僕が情香ちゃんに連絡してみたら、長期間部屋を留守にすることもままあるから少し難しいって言ってた。 五匹。白い体に赤い髪のかすみはうちで飼いたい。けど、かすみは一番体が小さくて餌を食べる順番争いでも弱いみたいだから、ほかの子と一緒に飼ったら競り負けて弱っちゃうかもしれない。誰かもらってくれる人…
まだ陽の落ちきってない夕方に今度は浴衣じゃなくて動きやすいいつもの服で、香澄とまたお祭りに行ってみる。 一度来てるから二人ともあんまり気構えがなくて、お祭りを満喫するというより散歩の延長みたいな感覚で。僕は今年の夏祭りの見納めのつもりであちこちを見回す。 僕の横で香澄は今日もかき氷を買って食べてる。僕もたまにスプーンでもらって食べる。 特に目新しいお店が増えてるわけでもなかったから、香澄にそろそろ帰ろうか、って 声をかけようとした瞬間だった 場にそぐわないすごい勢いで僕らの脇を走り過ぎていった男にぶつかられた香澄が 跳ね飛ばされるみたいに 池に落ちた 「ーーーー 香澄!!」 大きな水飛沫と人が落ちた音に周囲からいくつか悲鳴があがって周辺が騒然とする ここの池は綺麗なほうだけど深くなってるところは深い 香澄が一人で岸までたどり着くのは難しそうで僕も泳げるわけじゃないけど迷わず飛び込もうとしたとき、 カンカンカンと乾いた音がした 鉄パイプの屋台骨を踏みつけて走る音? 考える暇もなく夜店の屋根の上から細い人影が舞うように池に飛び込んだ ーーーいつもの特徴的な裾の長い上着は着てなかったけど見間違いようのないシルエットに 僕は香澄とは逆方向に走り出す 信用なんてしたくもないし信用したからこうするわけでもないけど、泳げない僕がたどたどしく救命ベストとか持って自分も池に飛び込むよりあれのほうが確実に香澄を助けられる ああもう 言いたくないけどあれは死生観とか倫理観とか常識とかそういうのが一切通用しないわりにどういう理屈だかこういう場面では迷いなく人命や人権を最優先したりする、あれの倫理観がとくに意味不明になるのは七ちゃんやイキヤや少数の大事な人間相手なのか 知るかそんなこと、ただおそらくこの場ではあれは香澄を助ける 学生時代からいがみ合ってきたから逆にソリの合わないフィーリングは嫌ってほど把握してる 僕の方が歩幅が広いし絵を描いててかなり体が鍛えられてたから、走ったらすぐに追いついた 香澄を突き飛ばして池に落として逃走しようとしてた男 腕を後ろからガシっと掴んだ、暴れて抵抗してきたから前方の空間に誰もいないのを確認して男の腕を掴んだまま前に回り込んで男の体を一度僕の肩と背に軽く引っかけるように乗せて空中で相手の体を大きくひっくり返すみたいに投げて前方の地面に叩きつけた 本気でやると全身あちこちに骨折や打撲を負わせる悲惨なことになるから、あくまで逃走防止の範疇を超えない程度に抑えた 倒れた男の両手を背中でねじりあげて背に乗っかるみたいに膝を当てて体重をかけて地面に這いつくばらせる 「あのね。こんなくだらないことしてないで僕は池に落ちた息子についてたかったんだ、心配だし、僕があの子を直接的に助けられなくても君にこんな風に構ってるよりは幾分かマシだよ僕の気分がね、でもこの祭りに来てるってことは君も近隣住人の可能性がある、そんな人間を正体不明のまま逃して野放しにするのも気持ちが悪いからね…」 取りおさえたまま今思ってる恨みつらみを男にずらずらストレス発散みたいに言い募ってたら、全身びしょ濡れになった香澄と行屋が池から無事に上がって僕のところまでやってきた。行屋が連れてきたというより香澄が僕のところまで来てくれたみたいだ。 「香澄!怖かったね…息ができなくて苦しい思いはしなかった?」 香澄をぎゅっと抱きしめたら、濡れてるせいかもしれないけど元々低めの体温がいつもよりさらに低い。真冬だったらショック死してたかもしれない… 僕の体温であっためるように抱きしめたままきゅっと閉じた目尻に薄く涙が浮かぶ …こわかった 「…池の水は清潔じゃないし、もう夜だけど今から一緒に病院に行こうね」 香澄から少し体を離して安心させるように微笑みかける。本当は救急車を呼びたかったけどここに呼んだらたくさんのいい好奇の目の的にされそうで、悩んだ末に呼ばなかった。 香澄は行屋のいつものマントみたいなカーディガンみたいなエスニック調の上着をバスタオルがわりにして頭からかぶってる。こっちを見てくる他人の視線から髪や顔や特徴的な部分をすっぽり隠せてる。そのために飛び込んでったときいつものこれは濡れないように着てなかったのか…? 行屋は僕がおさえてた男の背中を容赦なく踏みつけて、いつもジャラジャラ首から下げてるネックレスだかペンダントだか天然石がたくさん連なった長い首飾りの中から日本の仏教の行事で使う仰々しい数珠みたいなやつを一本首から外すと、僕が背中で束ねてた男の両腕を寝違えそうなほど引っぱってそれで縛り上げた 「…そんな繊細な装飾品、僕なら簡単に引きちぎるぞ。こんなものが手錠がわりの拘束になるのか」 あんまり行屋を見たくないので見ないようにしながら言ったら、行屋はとくに気取ったふうでも得意げなふうでもなくあっさり答えた。 「数珠を通してんのはピアノ線だ」 そう簡単には千切れないって言いたいのか ていうかそんな仕掛けあったのかそれ… 本人は歌うような口調で、数珠はいいぜ、海外でも宗教上の理由とか言や結構やべえときでも没収されずに見逃される、とかなんとか嘘か本当かわからないことを言いながら、さらにきつく縛り上げてる …に、しても、こいつが人命救助に加害者の捕獲… 行動に一貫性がある…とうとう気が狂ったのか? 「お前いつから善行に目覚めたんだ」 行屋は造形的にはそれほど大きくない口元を三日月みたいに大きくにんまりさせながら言う。 「飛び込みと捕り物は祭りの華だろうが」 「…」 やっぱりまともな理由じゃなかった。香澄が池に落ちたのも僕が突き飛ばした男を捕まえたのも、祭りにそえる花というか一等祭りを盛り上げる余興というか…そんな感覚なのか…? いや、理解したくない。ここまで。 行屋もそこでくるっと向きを変えて、薄着一枚でずぶ濡れのまま、まるで寒そうな気配もなく一言の挨拶もなしにまた身軽に夜店の屋根に登って身を翻してテントを飛びこえて、あっという間に姿は見えなくなって、祭りの中から去っていった。
その日はすぐに香澄を病院に連れていって診てもらった。 そんなにたくさん水を飲んでなかったおかげなのか、特に体に異常はなし、外傷もなし。医師は多分大丈夫だろうって言ってたけど、細菌とか諸々の検査をしてもらって、後日検査結果を聞きに来ることになった。 香澄を池に突き飛ばしていった男は僕が警察に引き渡した。お祭りの中で起きた事故だっていうんでお祭りの運営にも事の一部始終の説明を求められた。本人曰く、道を急いでいて不注意で偶然香澄に体がぶつかってしまい、そんなつもりはなかったのに香澄が池に落ちてしまって、深い池だったからそのまま溺死させてしまったらと思って怖くなって逃げた、僕に捕まったとき抵抗して暴れたのもそういうことで、香澄個人を狙った意図的な行動ではない、と。 僕はそれを鵜呑みにはしないし、まるで香澄が落ちたせいみたいな言い草がすごく不快だけど、それ以上個人的に関わるのも嫌だったからあとは警察に任せた。
香澄視点 続き
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[ハロウィンの夕暮れ、ヒナイチは幼い頃に迷い込んだ森に再び足を踏み入れた。森を抜けて、薄紫色の夕暮れに咲くひまわり畑の遊園地でヒナイチは男の子に出会う。でもなんだか初対面とは思えなくて、彼女はつい遅い時間まで一緒に遊んでしまった]
という264死の数年後設定
※
「わあ、どうしたんだ急に?」
彼のひらひらの白い胸元のフリル、紅いベストの上で紫に煌めくアメジストのブローチ、くるぶしまで届く長い黒いマント。そのマントの裾が土埃で汚れるのも厭わずに跪く姿は、吸血鬼というよりもまるで王子様みたいだ。
「…………また会える?」
そっとヒナイチの目を覗き込んで薄く笑む黒の王子様の口元に、小さな牙が白く見え隠れする。
「ああ、良いぞ?」
この子はどうしてそんな簡単な事を、難しい宿題を解けない時みたいな顔して聞くのだろう。
彼が浮かべている笑みは、『やれやれ、これは到底叶わない』と初めから諦めてかかっている気がする。そんな事あるものか、明日の夕方にでも、学校帰りに会う約束をすれば良いだけじゃないか。待ち合わせ場所��どこがいいだろう。
(うん?この男の子は、この辺りの小学校に通っているのだろうか?)
おじいさんがこの子を喜ばす為だけにこんな、びっくり箱をひっくり返したみたいな大掛かりなハロウィンパーティーを開くくらいだから、きっと凄いお金持ちのおうちの子には違いない。そしてお金持ちの子ばかり通う、遠い学校に電車で通っているのかも知れない。そういう難しい学校に通う子はさらに塾なんかにも通って、物凄く難しい宿題が毎日たくさん出るのかも知れない。
もしほんとにそんな生活なら、すぐに遊ぶ約束をするのは難しいだろう。新しい友達とまた会えるか、不安になるのも仕方ないだろうけど。
「……ほんとうに?」
ヒナイチの答えを聞いた男の子は口の端の笑みをぎゅううっと大きく吊り上げて、それでもまだヒナイチの前から立ち上がりはしなかった。そして、今までより低めの静かな声で、ゆっくりと話し出した。
「…………ヒナイチくん、君にお願いがあります。」
それはもう真剣な、夏休み最後の日に友達に宿題を写させて欲しいと頼むような声だったので、ヒナイチも思わずお菓子の袋の上で居住まいを正した。
「……うん。」
男の子はかしずくように煉瓦の道に片膝をついて、黒いお城のシルエットを背に、真摯な眼差しで自分を見上げている。
(なんだろう、こういうのを、どこかで見たことがあるな)
ヒナイチはふわふわ広がる自分のチュールスカートに目を落とした。
「どうか私の……」
(あっそうだ、これはこの間テレビで見たディズニーの映画の、結婚の申し込みの場面に似ている)
映画の中では青空の下、お城を背景にした白いフロックコートの王子様が、金髪のお姫様にプロポーズをしていた。
それならハロウィンの今夜、オレンジ色のランプに浮かぶ黒いお城の城下町。私はお菓子の玉座に座る赤毛の魔女で、彼は青い顔の吸血鬼の王子様だ。
「城で……」
(……あっしまった、今、何と言っていた??)
空想に浸っていた所為で、ヒナイチは彼の台詞を聞き逃した。男の子は言葉を続けた。
「来月の、私の誕生パーティに出席して欲しいのだけど、いかがでしょうか?」
「誕生パーティ?……それは、ええっと。うーん、どうなんだろう?」
ヒナイチはぐるりと周りを見渡して、夜を煌々と照らす遊園地の景色を眺めてみた。
初対面の男の子のうちに、いきなり遊びに行ってしまっても良いのだろうか?礼儀正しくしないといけないと道場で言われているし、まずはお母さんに相談してみないといけない。
あっ!
遊ぶのに夢中ですっかり忘れていたが、ここは一体どこなのだろう!?
森を抜けて、薄紫色の夕暮れに咲くひまわり畑の遊園地で初めて会った男の子。でもなんだか初対面とは思えなくて、ついこんな遅い時間まで一緒に遊んでしまったけど。今何時なんだろう、兄さんはきっと心配している。
「…………もう帰らないと。」
「えっ!?」
ぽそりとこぼしたヒナイチの呟きに、男の子が素っ頓狂な声をあげた。ヒナイチがどきっとしてまた彼に目を戻すと、男の子はしょんぼりと耳を萎れさせて俯いていた。
「帰っちゃうんだね……招待客はみんな、暫くうちに滞在すると聞いていたんだけど、君は違うんだね……」
眉までもへの字型に項垂れた男の子に、ヒナイチはとても気の毒な気分になった。
「うわっ!な、泣かないでくれ!」
「……あっそうだ!お父様にお願いして、君の家まで送ってあげよう!」
パッと顔を上げた男の子の表情は早替わり、今度は泣き出しそうだった目を輝かせて、とびきり悪戯っぽい笑顔を浮かべた。
「お父様に乗せて貰えれば、おうちまでひとっ飛びで帰れるからね!」
「えっ!?乗せてとは車の事だろうか?それはご迷惑だろう、ありがたいが遠慮させて……」
お菓子袋から立ち上がりかけたヒナイチの肩を男の子は両手で押し戻して、小さな牙をちらっと光らせて笑った。
「ここで待ってて、お父様を呼んでくるから!」
言った瞬間、背を向けた小さな身体は思いがけず俊敏な動きで走り出した。そしてヒナイチが呼び止める間も無く、彼はきらきら廻るメリーゴーランドとティーカップの間をマントをたなびかせて走り抜け、夜の中にすっかり見えなくなってしまった。
……ううむ、出来れば家に電話をかけさせて欲しかったんだが、頼み損ねてしまった。しかし、あの男の子がお父さんに頼んでみてくれたところで、初対面の女の子を家に送ってくれだなんて聞いてもらえるはずがない。すぐ戻って来るだろうから、頼んで兄さんに電話をさせてもらおう。遊園地の所在地をはっきり教えてもらえれば、多分兄さんの方が車で迎えに来てくれる。
ヒナイチは袋の上に大人しく座って、男の子の帰りを待つことにした。
◉
「ヘロー、楽しんでる?」
しばらく待っていると、遥か頭上から太い声が落ちてきて、ヒナイチは肩越しに振り向いた。菓子袋の後ろにはいつの間にか、それはそれは高い背の、吸血鬼マントの外国人のおじいさんが立ってヒナイチを見下ろしていた。
「あっおじいさん!」
ヒナイチは腰掛けていたお菓子袋から降りて、おじいさんの前できちんと頭を下げて挨拶した。うんと見上げた男の人の後ろには既に夜の帳が下りて、ちらちら星が瞬いていた。
「もちろん楽しんでいる!こんな楽しい遊園地は初めてだ。自分のうちの、こんな近くに遊園地があったなんて、どうして知らなかったんだろう。」
お母さんもお父さんも兄さんも、誰もここを知らないんだろうか?今まで、学校の友達も道場でも、この遊園地の噂を誰かが話すのを聞いた事がない。
「ここ、今日出来上がったばっかり。」
このおじいさんの返答は、ヒナイチの想定外だった。
「え?そうなのか!?そうか、それなら誰も行ったことが無いのは当たり前だな!……だけど、こんな大きな遊園地なら、出来上がる前にちょっとくらい噂になっていてもおかしく無いのだが……?今日みたいな1番初めの日なんか、もっと沢山の人がいっぱい集まるのではないだろうか?どうしてこんなに遊びに来る人が少ないんだろう?どの乗り物も凄く面白いのに、並ばなくても何回もすぐに乗れるから不思議だ!」
ぐるりと遊園地を見渡して、ヒナイチは改めて広さと明るさ、その見た目も奇想天外なアトラクションに感嘆した。前にお母さんに連れられて行った新装開店のスーパーは広くて、あまりの人だかりに呑まれてうっかりお母さんの手を離してしまった。はぐれて店内をウロウロするうちに、店員から渡された開店記念の風船がペンギン顔のプリントだったのを、ヒナイチは決して忘れはしない。(その後気をうしなって倒れるまで叫んで走り続け、お店の人に迷惑をかけたから、お母さんに物凄く怒られたのだ)
「ここは、私の一族のハロウィンパーティー会場。今日の招待客は、一族の者だけ。」
片言気味の日本語でおじいさんが話す内容を、ヒナイチはゆっくり頭の中で噛み砕いた。
「うん?んん??それは、おじいさんの家族でこの遊園地を貸し切っているという事なのか?ハロウィンパーティーの為に!?」
な、なんて凄いお金持ちなんだ。園内ですれ違う大人が全員吸血鬼マントだったのは、親戚みんなでお揃いの衣装を着ていたからなんだな。
おじいさんは近くの観覧���から遠くジェットコースターと、順に指差していきながら話した。
「あれ全部、皆を喜ばせようと思って、急いで一日がかりで作った。」
おじいさんの示す遊具には“HAPPY HALLOWEEN”や
“TRICK OR TREAT” とか緑や紫に光る絵の具で描かれたノボリが垂れていたり、園内の至る所にカボチャのランタンやガイコツが吊り下がっていたから、その飾りつけに一日中かかったという意味なのだろう。
規模こそこじんまりした遊園地だが、たった一日でこれだけ華やかなパーティーの用意が出来るのは凄いと思う。
「作るのは面白かったろうな!」
「オブコース。みんな喜んで遊んでいた。あの子が大喜びではしゃぐのを見たお父さんなんか、お母さんが泣いて喜ぶと言って、写真を撮りながらえんえん泣いていた!」
ここ一番の真剣な声色のおじいさんの問いかけに、ヒナイチが屈託ない笑顔で応じると、おじいさんは目を瞑って静かにこくりこくり頷いた。
「グレイト。ところで、一人?」
「うん、あの子はお父さんを探すと言って、走って行った。そうだ、おじいさん……あの子に、今度開く誕生日パーティーに来ないかと誘われたんだが、私は行っても構わないのだろうか?」
おじいさんは、じっと私を見てから首を横に振った。
「ウーン、城に呼ぶには、まだチョット早い。」
「あっ、うん……!そ、それはそうだろう、初対面の子をおうちに呼ぶのは、流石に早すぎるな!」
ヒナイチは視線をずらして、どもりながら答えた。こんな質問をして、礼儀知らずと思われただろう。恥ずかしくて顔が火照る。でも男の子の家をちょっと見てみたかったのはヒミツにしておく。
「ええと、おじいさん。あの子はお父さんに、私をうちまで送ってくれるよう頼みに行ってくれたんだ。でも初対面の私を送ってくれるはずはないし、家族に迎えを頼みたいから電話をかけさせて貰えないだろうか。それから……。」
景品で当たった、とてつもなく馬鹿でかいお菓子袋をヒナイチは未練たっぷりに眺めた。
「残念だけど、うちの車にはこれだけの量のお菓子は載せられないから、少しだけ貰って残りは置いて帰らなければならない。申し訳ないのだがおじいさん、この袋はここに残していく……」
あまり洋菓子は得意でないヒナイチも、おせんべい派のうちではまず出てこない珍しいお菓子の味が気になった。ハロウィンカラーの派手な包紙の下には、どんなお菓子が隠されているのだろう。何よりあの子が作るのを手伝ったお菓子って、どれの事だろう。
ヒナイチはぱんぱんにはち切れたお菓子袋の口元にしゃがんで、緩んでいた紐を全部解いた。袋からお菓子がぽろぽろとこぼれるのを拾い、被っている魔女のとんがり帽子を脱いで、袋がわりに詰め始めた。しかし、楽しげな色のキャンディーや可愛いラッピングのマドレーヌなど、帽子に全部詰めるにはあまりに種類が豊富で、ヒナイチは大変な誘惑と戦うことになった。
「ううむ、どうしよう、どれも美味しそうで気になってしまう……うわっ何だこの変な形のクッキーは?ネコなのか?シマウマ?」
吸血鬼マントのおじいさんは暫くの間、帽子に入れたお菓子を袋に戻したりまた選り出したり悩み続けるヒナイチを見下ろしていた。やがて、彼はぽそりとたずねた。
「全部ほしくない?」
一つ一つお菓子を手にとって吟味を繰り返すヒナイチは、おじいさんが自分のぴったり真後ろに回ってきたのに気が付いていなかった。
「実を言えば欲しいけれど、うちの車には載せ切らないし、そうだ、考えたら他所の人にこんなにお菓子を貰ったらお母さんに怒られてしまう!あれっ?」
「ぜんぶ持って帰りなさい。私が送る。」
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普遍性なき真実
龍と誠葉の契
4月馬鹿企画テーマ「立場逆転」
「ひとつ願いが叶うのなら」
僧侶姿の彼はハボダの眼前に近づき、にこやかに問いかける
「貴殿が求めるそれは、例え魔法使いだとしても強欲が過ぎる願いではござらんか?」
人懐こい笑みで、それでいてハボダが立つのもやっとな殺意を振り撒く僧が、人間ではなく龍であるのは自明の理であった
(一)
発端は、前線に近い集落まるごとが消え失せた報告が人龍連合に届けられたところからだった。確かに集落があった場所に、何の痕跡もなく全てが消え失せているとなれば、例え誠葉を用いたとしても異常である。
そして、なぜだかトラブル収束名人として名高い(不本意)ハボダが、その調査員として派遣されたのだ。何だって自分が、とハボダは文句を言おうとした。が、しばらく1人行動だから静かだぞ、と上の人間が爆発音を背後に告げたら、もう頷くしかなかった。先日、胃薬を受け取りに行って、あまりの顔色の悪さに睡眠薬を盛られた彼に必要なのは、静寂と平穏だったのだ。
そんな経緯で集落跡地にやってきたハボダを出迎えたのは、1人の僧侶であった。彼は人懐こい笑みで、ここに尋ね人がいたのだと説明する。こんな前線で、と怪訝な顔をしたハボダだったが、僧侶の手に握られていたのは、誰かの遺品であった。
「弔いを頼まれましたので」
僧侶の言葉に嘘は無いようだった。
「拙僧、名を玲瓏と申します。天の星を知るために、旅をしている僧侶です。貴殿は、その身なりからして遠い西の方と見えますが」
「西方の民を知っているのか」
「以前に彼の地へ近づいたことが。とは言え、乾期であったため商人に止められました。せめて雨季に向かうべきだと」
「賢明な助言だ」
西方の乾燥地帯を嫌というほど知っているハボダは、確かにこの僧侶が故郷間際まで来ていたのだと信じた。
「玲瓏殿、確かに俺は西方出身だ。名をハボダと言うのだが、今は人龍連合の一員として晦冥とも名乗っている。どちらでも好きなように呼んでくれ」
この地域ではあまり馴染みのない握手をハボダが求めれば、すんなりと玲瓏はそれに対応する。
「では、ハボダ殿とお呼びしましょう」
それで互いに挨拶は終わった。
(二)
「しかし、人龍連合のハボダ殿がここにいるということは、何かしら龍がこに集落を消したということでしょうか」
玲瓏からの問いかけ。ハボダはその問いにわからないと言って、首を横に振る。
「その調査員として俺が派遣されたのだ。……例え龍がその力を振るったとしても、こうも跡を消していくのは珍しい。そもそも、前線に近いとは言えここを襲う理由がわからない」
「ここは戦線においての物資補給所、ではなかったと?」
「ああ」
そこでハボダは玲瓏に、この集落が実は舞を奉納するための舞台があり、その舞台を維持する人々しか住んでいなかったのだと説明した。
「このような戦禍の最中、それでも舞を途絶えさせないと抗っていたのですか」
「それなりに名のある神事でもあったからな。宣言前は、祭りの日は人だらけだった」
舞い散る春の花、霞のように桃色が視界を覆い、風の姿を写しとる。その中心で一糸乱れぬ舞を踊る女人たちの姿は、荘厳の一言で表せられないものであった。
ハボダはかつて見た一幕を思い出し、その記憶の一片たりとも重ならない光景に、悲しみ覚えた。一体、この場で何が起きたのだろうか。
「ふむ、なるほど……ハボダ殿。その調査、拙僧も手伝わせていただけませんか?」
玲瓏の提案に、ハボダはタダビトを巻き込むわけにはいかないと断ろうとした。が、続く彼の言葉に躊躇いが生まれる。
「この遺品は羽衣です。きっと舞に奉仕する女人の物だったのでしょう」
彼は、と玲瓏が一区切りつける
「最後まで、この衣を手放しませんでした。そして、この地にて供養を頼むとも言われました。拙僧は、何もないこの地を見て困り果てておりましたが、これも何かの縁。ハボダ殿の調査に同行すれば、供養の道も開けます」
玲瓏の言葉は至極真っ当に思えた。
「……そこまで言うのなら��許可しましょう。ですが、危���なので俺の指示には従って貰います」
「構いませぬ。拙僧は弔いさえできれば何も望みません」
その純粋な言葉に、他の魔法使いもこうならいいのにと、ハボダは泣きそうになったし、胃痛は和らいだ。
(三)
何から調査をするのか、と玲瓏から問われた時、ハボダは土を調べると答えた。というよりも、初めてこの地にやってきた時に、彼は奇妙だと思ったのだ。
「痕跡がなくなった、集落がなくなった。この情報に含まれているのは、建物があって人がいなくなったと状態かと思ったのだが」
「実際は建物全てが消え失せていますなぁ」
「ああ、しかも倒壊とかの形跡もなし。ただただ、地面の上の物全てが消え失せている」
「だから地面を調べるのですか」
「そういう事だ」
ざり、とハボダが足元を撫でれば、変わり映えのない土が指先に着く。数度撫でて砂を退かせば、堅い大地が顕になった。が、やはりおかしいと彼は思う。
「玲瓏殿、できる限り砂を退けてください。なるべく広範囲でお願いします」
「目的は分かりませぬが、砂を退かすのですな?」
大きめの枝葉を幾つか探して来ましょう、と集落より離れたところに向かい、暫くすると枝葉の束を2つ、玲瓏は手にしていた。
「簡易の箒です。作業はこちらの方が捗るかと」
ハボダにも手渡された道具が、あっという間に砂を動かしていく。そして、結論が出た。
「ありえないことだが、建物の土台や支柱の跡すら遺されていないようだ」
顕になった大地には僅かな窪みはあれど、そこに人工物があった跡はない。全て、一様に、変化することなく、全く同じ状態の地面が広がっていた。
「足跡一つ、生活の痕跡一つ、そして火や水の跡すら残していない。異常だ」
「異常というよりも、化かされている気になってきましたな」
ハボダの出した結論に、玲瓏もまた同意する。が少しばかりユーモアも混ざった言い回しになっていた。
「周囲から見れば奇妙な空白地ですから、場所を間違えた訳ではありますまい。が、その空白に何の痕跡もないとはいやはやこれは」
一体、どのような魔法なのでしょうか、と玲瓏がハボダに尋ねた。が、ハボダは答えられない。正確には、己の持つ属性や魔法の規模が大きければ可能かもしれないが、それを可能とする龍は滅多にいないという事だ。
ハボダの契約龍からの情報なので嘘ではない。そして、契約龍はこの件には関わっていない。なぜなら、契約龍はこの規模の誠葉をウタえば、間違いなくもっと甚大な被害を出すし、制御をする概念を持たない。人がいた集落だけが消え失せさせた器用さが、あの龍にはないのだ。
だからこそ、ハボダは頭を悩ませる。間違いなく龍だ。だが、龍がなぜそんな面倒なことをしたのだ?
「ハボダ殿?ハボダどのー?」
何回か耳元で玲瓏がハボダの名を呼ぶ。1人考え事をしていたハボダはハッとなって、玲瓏に謝罪した。が、僧侶はケラケラと笑って「ハボダ殿は真面目でございますなぁ」と気にした風でもなく次の話題を出す。
「ハボダ殿は龍の仕業と疑っておりますか」
「ああ」
「では、龍がこれを行う理由があったのですな」
その玲瓏の言葉に頷こうとしたが、ハボダは思いとどまる。龍と人間は違う価値観で動いている。呼吸と同義で、天災を振り撒く龍もいるにはいるのだ。全てを人間基準で考える訳にはいかないのを、彼は伝えることにした
「龍の価値観……でございますか」
「人には人の、龍には龍の道理がある。確かに龍にとって必要なことだったのかもしれないが、それを俺たち人間が理解できるとは」
思えない、と続くはずの言葉を玲瓏が止めた。
「ハボダ殿は思い切りが良すぎるようですな」
人も龍も、生きているという点は変わりませぬ。感情があるのは否定できませぬ。そう、訥々と語る僧侶の言葉をハボダは黙って聞く。
「ですから、龍がここに何を求めたのかから考えませんか?」
それこそ分からん代表だと、なぜかハボダは言い返せなかった。
「まずハボダ殿にお尋ねしたいのは、なぜ舞が奉納されるようになったのでしょうか。奉納ということは、納める相手がいたはずです」
その指摘にハボダは、かつて見た神事の発祥を記憶から引き摺り出す
「桃源郷に住む貴人……への奉納だと聞く」
「桃源郷?」
「天上人が暮らす極楽、らしい」
その答えに玲瓏は「異界ですな」と呟いた。
「異界?」
「そうでございまする。こことは違う場所、こことは異なる場所。天国、地獄、あるいは川の向こう、山の向こう、海の向こうにある隔絶された場所。もしくは龍が住む人から離れた地」
「……まさか」
舞は隔絶した場所に住む龍に奉納する儀式であったのか、とハボダは驚愕した。
「龍が御伽話の存在となっても、龍にまつわる伝承は各地に多く残っております。また、ハボダ殿も承知でしょうが、龍は人の形になれましょう?ならば」
「龍が自らの身を隠して、人と交流してたのか」
「神事として残されたのならば、きっと何か契約をされたのかもしれません。その代価として、舞の奉納が続けられていた。……契約内容を推察できる何かを、ハボダ殿は知っておりますか?」
質問を受け取る前から、ハボダの脳内はずっと回り続けていた。何だ、何だ、契約内容は一体何だったのだ。
「祭の名は」
唐突に玲瓏が言った。その言葉にハボダの脳内に閃くものがある
「桜姫懐古祭……懐古!?」
舞踊る女人たちの姿、朗々と紡がれる祝詞、そして極め付けは
「桜姫という役は、まさか……」
舞を踊る女性たちの中でも、一際着飾った女性がいる。それを神事では桜姫役と呼び、舞台の中央で1人特別な舞を踊るのだ。それは栄誉なことであり、桜姫役はその年に結婚できるという伝説まであった。
桜の精だの、春の精だの、散々憶測混じりの蘊蓄を酔っ払いたちが口にしていたが、真実は違う。これは人間の女性と龍の恋愛譚なのだ。
幾年も幾年も、繰り返し繰り返し、龍に見せるための舞であり、龍に魅せるための奉納であったのだ。そして懐古祭の名の通り、結ばれた契約は龍の慰撫。愛した女性を忘れさせないための契約。そういう時に龍が与える寵愛は、愛した存在が住まう土地の守護が多いのをハボダは知っていた。
「……舞を奉納しなかったから、なのか?」
「……」
「この情勢下で舞を踊れなかっただけで、許せなかったのか!?」
ハボダの口調が荒くなる。声が張り、わなわなと腕を震わし、視線が険しくなる。怒りが彼を支配した。
「彼らは忘れてはいなかった。彼らは舞を大切に思っていた。今は舞えないかもしれないが、それでも消していい理由ではなかった!」
「ハボダ殿、落ち着いてくださいませ。何も、その舞の奉納相手がここを消したとは限りませぬ」
「だが、龍以外に誰ができると言うのだ!?」
「龍には龍の道理があるとおっしゃったのは、ハボダ殿でございましょう? それに今は戦時中です。龍も十分にそれを分かっておりますよ」
「なぜ言い切れる」
今度は逆にハボダが玲瓏を問い詰めた。
龍の動機が分かった。神事の意味も理解した。そこから導き出される答えは、散々を繰り返された悲劇でしかない。だが、
「ここを守護する龍は、龍王には従わなかった。ハボダ殿の契約龍や人龍連合におりまする龍たちと同様、人に寄り添う立場でありました」
玲瓏の言葉に、ハボダは頭に上っていた血が下がるのを自覚した。
そして、今目の前にいる僧侶の言葉に、違和感をようやく抱く。
「玲瓏殿は……なぜそれを」
口にしたのは悪手であったはずだ。何の防御策も打たずに、問いかけるなど普段のハボダならしない。にも関わらず、ハボダはまだ信じられないでいた。人懐こそうなこの少年顔の僧侶が、龍であることを信じられなかった。
いや、今の今まで気づかないほどに、彼は人の気配しかせず、言動に悪意もなく、人とそうずれたわけでもない感性で持ってハボダと会話を成り立たせていたのだ。それを龍が可能とするには、長く人と共にいなければならない。
「……彼は、人の寿命というものをちゃんと理解しておりました。いずれ消えゆ命、龍とは違う時間の歩み。それでも、僅かな時間を共にいられるだけで良かったと言っておりました」
ハボダの質問の意図とは異なる答えを玲瓏は紡ぎ始める。そこにあるのは、人と変わらぬ愛しいものへの慈愛であった。
「むしろ足掻こうとしたのは、人である彼女であった思います。あの日、彼が一目惚れした舞をずっとずっと見ていられるように、彼女の舞を受け継がせようと晩年まで躍起になって指導していたそうですから」
とは言え桜舞い散る中で踊る彼女は、老いてなお美しかったそうですよ、と玲瓏は茶化す。
「かの龍の名が忘れられ、桃源郷の貴人となっても。あの一途な女人の存在が忘れられ、桜や春の精となっても。人々の生活溶け込み、神事となり、祭りとして賑わう中で、あの日の舞が延々と続くその光景は、拙僧からしても美しいものです」
ですから、龍王の宣言を龍は受け入れず、人を守ろうとしました。
「玲瓏殿は……ここを守護する龍と」
「人にとっては長い付き合いなのでしょうな。あんなにも空を飛び回り、大地が狭いと言っていた彼が、こんな小さな土地の、こんなにも小さな命に全てを捧げる姿は」
「姿は」
「あはれ、でございました」
その言葉にハボダは絶望的なまでの差を実感する。
(四)
玲瓏の言葉に、説明に、始まりを知ったハボダは、ふとした違和感を覚えた。
集落の守護をしていた龍、そして消えた集落、跡形もなく広がる場所とその場に来たおそらく龍の玲瓏。長い話と歴史に逸らされそうになったが『根本的な部分が何一つ解明されていない』点が気になった。
今度は警戒心を持って、ハボダは尋ねる
「玲瓏殿」
「何ですかな」
「貴殿は弔いたいと言っていた。そして、この地を無くしたのは守護する龍とは限らないとも言った。では、ここは一体どこの龍によって全てを消されたと考えるべきか」
その瞬間、玲瓏の気配が変わる。
「うむむ、ハボダ殿は流されてはくれませんでしたか。人というよりも魔法使いとしては、大層な人情家をお見受けしたので、これで流されてくれるかと思ったのですが」
意外と論理的なお方だ、と言って玲瓏はそれまでの柔和な雰囲気をかなぐり捨てた。そこにいるのは、間違えようもなく龍だ。
「改めまして、ハボダ殿。拙僧は玲瓏。時に金緑とも称される龍でござます。これでも龍王軍の一員なれば、この地を守護する龍の説得要員でございました」
編笠を被り、袈裟を纏う少年は、尋常ではない生命力の気配を纏い、ハボダの前に対峙する
「その説得が功を為さず、結果貴殿がこの地を滅ぼしたのか!」
震える声を精神力で正し、ハボダは玲瓏を問い詰める。いつでも誠葉を放てるように距離を取ろうとしたが、それでも身体は恐怖で鈍くしか動かなかった
「拙僧はこの地を消してなどおりませぬ」
「では誰が」
「そも、ここは消えてはおらぬのです」
何をふざけたことを、と思ったハボダだが、玲瓏は何かしらの誠葉を口にする。ハボダはその瞬間、自らも誠葉を唱え、かの僧侶へと攻撃をした。が、そこで奇妙なことに、誠葉が共に事象を成す前に消えたのだ。
「これはッ」
「先に告げた通り、桃源郷という異��と化した場所に彼は長らくおりました。それが彼の力、彼の誠葉。拙僧相手では、それしか道が残されていない悟ったのでしょう」
つまりは神隠しですな、の説明にハボダは「馬鹿な」と言いたくなった。
「いやはや、実はちょっと拙僧も困っておりました。龍王軍としてはここの龍には退いて貰わねばならぬのですが、拙僧とは相性が悪く、こうして閉じ籠もってしまうと手出しができぬのです」
ですが、と嫌な笑いを浮かべて玲瓏はハボダを見る。
「ハボダ殿の力は、ここの龍にとっては最悪な属性でして」
「そんなことを言って、俺が貴殿に協力するとでも思っているのか!?龍王軍に味方するほど落ちぶれてはいないぞ」
啖呵を切ってハボダが言い返しても、玲瓏は特に応えた様子は見せない。
「ですが、異界に囚われた人は助けられましょう」
玲瓏の一言にハボダは息を呑む。
「龍の作り出す異界は、龍のためのもの。そこに人間への配慮はあまり為されませぬ。まぁ珍しく人への配慮がある龍なのですが、そもそも拙僧らとは根本的な体の違いがあります故、不具合はありましょう。長くいればいるほど、常人には耐えられないものかと」
「だが、」
「ここの地にいた人々は既に守護の龍の存在を忘れていたのでしょう?いくら彼らを守るためとは言え、龍王の宣言の後に出会う龍となれば、恐怖で精神を摩耗するものも出ておかしくはない」
「それでも、お前たち龍王軍がタダビトを逃すとは」
「では約束をしましょう」
この地に住まう人々は見逃そう、と玲瓏は告げる。
「守護した龍は」
「龍王に楯突いた時点で、末路は決まっておりまする。流石に彼は見逃せませぬ」
「見捨てろと?」
「全てを見捨てるか、龍見捨てるかの2択でござろう」
全てを失うよりかは、よほど良いのではないか?の提案のハボダは揺れる。
「それとも、今のこの場でハボダ殿が拙僧を倒して大団円を目指しますかな?まぁ、貴殿の力は少々厄介ですが、それでも器は人間ですからなぁ」
玲瓏の指摘通りであった。ハボダの属性は陰陽五行の中でも珍しい、陰属性だ。稀有であるし、その中でも攻撃力は高い。が、玲瓏の存在そのものが次元が違う。
「ハボダ殿の意見を拙僧は尊重しましょう。ここの集落の人々を助けて龍を見殺しにするか、龍の願いを聞き遂げて集落の人々を見捨てるか、その命を捨てて美談ぽく終わらせるか」
どう致しましょうか?の言葉に、ハボダは苦悩する。
「俺は」
「ハボダ殿は?さぁさぁ、どうしましょうか」
『そこまでにしてもらおうか、金緑』
唐突に第三者の声が割って入った。ハボダは周囲を見回すも、声の主は見えない。だが、玲瓏は驚くこともなく「遅かったでございますな、東風殿」と曰う。
その呼びかけに応えたのか、ハボダの背に龍が現れた。
『相変わらずの悪趣味さに反吐が出る』
「東風殿に言われたくないでございます。かつての戦いにおいて貴殿との策謀談議、どれだけ拙僧らが苦い思いをしたか」
『そのまま返すぞ』
ぽんぽんと気兼ねなく交わされる会話に、ハボダは目を白黒させる。
東風と呼ばれた龍は彼に『すまなかった』と言った。
『玲瓏は始めから、貴殿を利用しようとしていた。いずれ私が玲瓏の前に出なければならないように、貴殿に無茶な要求を突きつけたのだ』
「東風殿は人間に大層な情がおありですからね。例え見知らぬ魔法使いと言えども、あの選択を迷う時点でハボダ殿はこの龍の守護対象になりえましょう」
2頭の龍からの説明で、無意味な選択肢を突きつけられていたのをハボダは実感する。始めから一人相撲だったのかと、ハボダは玲瓏を睨んだ。が玲瓏は特に気にした様子はない。
「さて、東風殿。覚悟がお決まりかと思いますが、拙僧と共に」
「ちょっと待て」
「龍王軍まで」
「だから待てと」
「ご同行を」
「聞け、この陰険龍!」
「酷いでございます、ハボダ殿!拙僧、これでも龍の中では陽気な部類でございますよ!!」
『嘘つけ腹黒龍』
散々と玲瓏と東風の会話を邪魔し続けたハボダは、ようやっとこちらを見てくれたことに安堵する。対し、玲瓏は頬を膨らませ、いかにも怒っていますと顔に出していた。
それを呆れた表情で眺めるのは龍なので、いまいち締まりがない。
「もう、ハボダ殿はまだ何か言いたいことがあるのですか!?ちゃんと拙僧、約束は守りますぞ。東風殿も、そこは拙僧を信じているからこそ出てきてくれたのでしょう!?」
『いや、余計なことをこれ以上出さないようにだが?お前との約束はハボダ殿を人質に取るつもりだった』
「信頼ゼロでしたか」
「いや待て、俺を人質に取るとはどういうことだ?」
『うむ、貴殿の命を奪わない代わりに、こちらの民の命を人龍連合に保護させようと』
「俺はあなたを庇ったのだが?」
『違う。金緑は初めから人流連合の一員である貴殿の命を奪おうとはしていなかった。その力の価値を認めていたからだ』
「東風殿」
そこで初めて玲瓏が焦った表情を浮かべる。対し東風は余裕そうで、ハボダに説明した。
『金緑の口約束など端から信用などしておらん。だが、こいつはわざわざ貴殿に選択肢を与えた。人龍連合の魔法使いにそれを提示した意味を考えれば、簡単だ。金緑は貴殿に負い目を負わせたかったのだろう』
そして、と続く言葉は意外なものだった。
『問答を聞いている限り、貴殿はかなりの人情家。貴殿ならば見殺しにした龍の願いを叶えようと足掻くかもしれないし、結果金緑が求めるものを差し出すかもしれない。それは業腹だったので、私が貴殿に無理難題を押し付ける形にしたかったのだ』
(五)
ハボダは混乱していた。
消えた集落、おそらく龍に捧げられた舞の奉納、龍王軍と敵対した龍、その龍を排除しに来た龍、玲瓏にとって有益な力を持つハボダの価値。それぞれが、それぞれの立場で話を引っ掻き回し、筋道を見えなくしている。
何が正しいのか、何を目的としているのか、それが見えない。ならば、とハボダは深呼吸を一つ吐く。深く長く吐き続け、緊張を解き、思考をクリアにし、そして自身の目的を思い出す。
名はハボダ
人龍連合の魔法使い
消えた集落の謎を解き明かし、可能な限り人々を助ける
それだけだ。それが彼の芯であったのだ
ハボダの前では、玲瓏が東風に余計なことをと悪態をついている。だが、先程のよう焦りは見受けられない。ならば、まだかの龍の狙いからは離れていないのだ。だからハボダは確認しなければならなかった。確認のために、彼は自分自身へ向けて誠葉を解き放った。
(六)
ハボダの誠葉を止めたのは、玲瓏だけだった。東風は止めず、玲瓏だけが焦ったようにハボダが紡いだ誠葉の被害を食い止めたのだった。それが三者共に理解した時、次にハボダの命を狙ったのは東風であった。またもや玲瓏が止める。確かに、玲瓏にとってハボダが人質として効くようだった。
「ああもう、厄介なことをしてくれましたな!」
苛立ち混じりにハボダを抱えて玲瓏は飛び回る。飛び回りながらも東風からの攻撃を全て変化し、無力化させていた。
「それもこれも、ハボダ殿がせっかくまとまりかけてた話に横槍を入れたからですぞ!ああ、あの時無視しておけば」
「そう、それだ」
「どれですか!」
「あの時、俺に与えられた選択肢は龍を見捨てるか、人間を見捨てるかだった。だが結局は龍を見殺しにする道に誘導された」
抱えられながらも、ハボダは1つ1つを丁寧に考え始める。
「ハボダ殿は割とピンチかと思うのですが、それでも考えるのですか!?」
ああ、と頷いたハボダは舌を噛まないよう注意しながらも喋り始めた。
「玲瓏殿の目的は、この地を守る龍の排除。ただ、これまでの様子からして、貴殿は攻撃されなければ相手を攻撃できない縛りがある。あの東風と呼ばれる龍は、それに気づいて篭城戦へと切り替えた」
「対し東風と呼ばれる龍の目的は、この地の守備。集落の人間は発狂するかもしれないが、籠城戦をすればこの大地は守れる。つまり、両者とも狙いは土地であり、人間ではなかった」
「…………」
ハボダの説明に、玲瓏は何も言わない。
「そこにやって来たのが、俺だ。当初玲瓏殿は俺の力を使って、籠城戦の要である異界を壊そうとした。だが、ここで奇妙なことに土地の守護を放棄して東風は集落の人間の保護のために姿を現した。彼の説明だと、俺を使えば集落の人間が助かると思ったからだ」
しかしこれはおかしい、とハボダは思う。始めから龍たちは人間の命は度外視していた。ハボダの登場で、なぜ人間の命を天秤に乗せたのかが分からない。
しかし、玲瓏が何らかの狙いでハボダの命を守る動きをしている点を加味すれば、何となくこうではないかと仮説が浮かぶ。
「ただ一つの目的ではなく、優先順位があったはずだ。俺という異端がやって来たことで、当初の目的の優先順位が両者の中で入れ替わったのかもしれない。そこで俺を使うために、双方が人間の命を駆け引きに利用し始めた」
「たかがッ魔法使い1人の価値は重くないですよッ」
ハボダの言葉を否定する玲瓏だが、その顔の余裕はどんどんと剥がれていく。
「では、二頭の龍の狙いは何か。この土地に何があり、何故ここに両者共固執するのか。俺の力を使うと守護が壊れるのは確か。そして、この土地を欲しがる玲瓏殿にも不具合が生まれる」
さらにハボダは己の考えを述べていく。
「ここまで考えたとき、そもそも本当に舞の神事は龍の為に行われたのだろうか?という疑問が生まれた。確かに人と龍の交流があったのは事実だろうが、玲瓏殿は舞を踊る女人に一目惚れした龍が彼だった、と。龍のための奉納ではない、龍以外への奉納だ」
ならば始めから玲瓏はハボダを騙していたのだ。いや、事実の一部だけを教えて、誤解するように誘導していた。そのために、東風は業腹と言い放ったのだ。
「だが、両者ともに俺に真実を教える訳にはいかない事情もあった。俺が人龍連合に所属しているからだ」
「ハボダ殿、まだ話は続きますかな」
「ああ」
「拙僧、そろそろハボダ殿を庇いきれなくなりそうなのですが」
「嘘だな、何が何でも俺を生かしたいはずだ。陰属性……というよりも、俺が使う重力の誠葉は天の星に関わる」
その瞬間、玲瓏から表情が消える。
「玲瓏殿はその身を隠しながらも、天の星を求めると言った。東風殿は空を飛んでいたにも関わらず、大地に降りた。そして、春の訪れ、桜の開花に合わせる舞から考えれば、ここで行われていた神事は豊穣祈願。田畑のない土地に固執するとなれば」
ハボダは誠葉を紡いだが、玲瓏や東風に向けていない。
真っ黒な球体が地面を抉った。
誠葉は今度は転移もせずに発動し、大地を抉り、巨大な穴が開くとその下に隠れていたものを顕にする。
玲瓏は無表情に、東風は焦りを滲ませて、ハボダを睨んだ。
だが、ハボダの視線は巨大な穴に注がれている。そこにあったのは広々とした空間。
「人には見せたくないもの、龍が奪い合うもの、正確な暦に関係するもの、重力の誠葉で価値が変わるもの」
もう一度ハボダが誠葉を紡ぐが、東風が止めようとし、玲瓏の誠葉が予想外の現象を引き起こす。結果、その穴の中に記されたものが照らされた
「俺は正確に理解できないが、価値は��っている」
「これは星々の動きを記録し、計算し、予測された結果生み出された『数式』と『公理』だ」
(七)
ハボダが魔法使いとなったとき、契約龍から聞かされたのは重力というものの可能性だった。
重さ、質量、体積くらいまでなら分かるのだが、引力や力の釣り合い、果ては光の歪みに時間の伸び縮みなど、到底ハボダには理解できるものではなかった。
だが、契約龍自身もよく理解できていないらしい。本能でかの龍は身体に刻み込まれているため、特に苦も無く誠葉を紡げるようだった。だからこそ、人間であるハボダには無理だろうという前提で与太話として教えていた。「やろうと思えば星を降らせることも可能だ」と。
そんな馬鹿なとハボダは否定したが、契約龍は時代が時代ならやれたと豪語する。かの龍は人と龍が別れた頃に誕生した龍だ。存分にその力を振る舞うことはできなかったが、それでも独りで宙を目指したこともあったらしい。
「月に行きたかったが、生憎と誠葉が紡げなくなった。上は音のない場所だったんだ」
ハボダにとって契約龍の話は、そんな場所があるのかと好奇心が育つよりも、奇怪な御伽噺を聞かされた感覚が強い。
「なら、誠葉が届かない場所に浮かぶ星を落とすことなどできないだろう?」
「星は自らの力で位置を決めるのではなく、蜘蛛の巣のように互いを引っ張るらしい。だから綱引きのように」
引き込む力を強くすれば、星を落とせるのだ。と酔っ払いの戯言みたいなノリで教えられたのだ。
「だが、それにはどれだけの力が必要なのか確認せねばならない。人間は星を観察して、数で力を表しているとの噂だ」
「数式というやつだな」
「そうだ。誠葉は音として消えてしまうが、数式があれば」
星が落とせる日も来るかもな、と契約龍は上機嫌に教えたのだ。
もっとも、ハボダという魔法使いには到底できない力の使い方であったし、契約龍も龍王の宣言に反発していたからこそ今は人龍連合に身を寄せている。両者ともに本気で星を落とすつもりはなかった。
が、まさかである。
(八)
「秘匿されるべき数式と、俺の扱う誠葉への関与。あの契約龍の与太話かと思っていたが、まさか本気で星を落とす式があるかもしれない、などと誰が思うか」
玲瓏に抱えられたままのハボダの呟きに、今度こそ二頭の龍は沈黙した。
「龍王軍はこの式が欲しく、ここの守護者なら秘匿したい」
まさにハボダの存在がイレギュラーだったのだ。龍同士の膠着が、龍に対抗できるかもしれない方法を血眼になって探している連合の魔法使いに見つかった。しかも、鍵となる属性持ちだ。
玲瓏はこの場とハボダが欲しい。東風は例えこの場は放棄してもハボダだけは玲瓏に渡してはならない。
その思惑が今に至る。これで、ハボダはようやく龍に一矢報いる手段がわかった。
「なるほど、貴殿たちが生み出す策略に泣いたものが多いのも納得だ」
ハボダの腹の底から沸々と湧き上がる感情は怒り。せっかくの静かで平穏な調査任務。なのに!なのにである!!
「は、ハボダ殿?何を考えているのですか?」
玲瓏が恐る恐るハボダの顔を窺う。東風もまた、怪訝な顔で魔法使いを見つめた。
「やっっっっっっっってられるかあああああああああああ!!!!!」
それはハボダ渾身の叫びだった。
そのまま勢いで誠葉を唱えるが、あまりにも考えなしだったので結果、
「え?ええ?ちょ、ハボダ殿!?うわっ、重力の展開が早い」
『金緑ッ、その魔法使いを離すな!』
「無茶言うなでございます!!こんなネズミ花火みたいな状態で」
『こんな無茶苦茶な使い方があるか!私の誠葉の領域まで歪み始めた』
ハボダは玲瓏の腕から逃れ、そのまま東風の領域を穴だらけにする。
予想外の動きにそれまで散々ハボダを振り回していた龍たちは、片方は生け取りにしようと、もう片方は始末しようとした結果、慌てすぎて互いを邪魔し始めていた。
そしてその隙を逃すほどハボダも阿呆ではない。
「お前たちも目的なんか知るもんか」
地面に開けた穴から中覗き見る。
壁に床に彫られた文字、数、図形、記録の数々。その叡智が敷き詰められた空間で多くの人々が倒れ、苦しそうな顔を浮かべて絶命していた。とっくに彼らは発狂していたし、ハボダは遅すぎたのだ。
尚更彼の怒りが増大する。怒りのあまり、魔法の出力を誤った。
やめろと叫んだのは玲瓏か東風かは分からない。ハボダにとってはどうでもいいことだ。
彼は契約して得た力でもって、ありとあらゆる数式を記した壁を、床を、書物を、人を、まとめて押しつぶしたのだ。
ハボダ自身の身すら危険に晒すほどの重力の塊は、あらゆるものを飲み込む球体となる。
周囲を飲み込み続けている中、逃れる術が見当たらないことに、ハボダはとっくに気付いていた。そしてそれをくだらない最期だなと思う感性も持っていた。
とは言え、あの人間の命などどうでもいいと言わんばかりの龍たちが死守したかったものは壊せたのだ。
ならば良しとしよう、とハボダが思った矢先に別の誠葉が展開される。
「人情家ではなく激情家なお方とは思いませんでした」
やれやれと言った顔で、玲瓏が再びハボダを抱えて崩れかかった空間からあっさりと脱出したのであった。
(九)
「古代の叡智ぶち壊しは想定外でしたなぁ」
『何千年もの努力を壊すその度胸、逆に敬意を抱くぞ』
先程まで殺し合いをしていたはずの龍たちは、息のあった煽り文句をハボダにぶつけていた。
ピキピキとこめかみの血管が浮かぶほどに、それはハボダをイラつかせる。
「うるさい、黙れ、いい加減にしろ、俺は人龍連合の魔法使いだ。龍王軍とは敵対するし、人の命を奪う龍は憎む。それが俺の道理であり、このくだらない争いを止める手段だった訳だ」
龍には龍の、人には人の道理がある、と再度口にすれば、玲瓏は仕方がないと座り込んだ。
「ちょろいと思っておりましたが、案外頭が回るお方で驚きでございます。今後のために反省会を開きたいのですが、ハボダ殿の都合の良い日を教えてくださらぬか?」
『私も参加しよう。あとハボダ殿も盤上遊戯会は如何だろうか?貴殿ならきっと他の龍たちにも気に入られると』
「茶番はや め ろ」
ちぇー、つまんなーい、と文句を言う龍たちに本気でハボダは呆れる。
「で、」
「で?」
『うん?』
「何故、俺を助けたんだ?」
「それは弔いのためですよ」
最初の玲瓏の目的だったはずの言葉に、これまでほぼ全てが嘘だったのを知ったハボダは思わず「嘘だろ」と呟く。
「嘘ではございません。まぁ、確かにハボダ殿を騙す目的もありましたが、この地の慰めは拙僧らの役目ではなかったので」
何故だとハボダが首を傾げるよりも先に、玲瓏が東風殿と呼ぶ。東風は無言で玲瓏を見つめ返す。
「土地も人も憂いもなくなりました」
『ああ』
「その命を拙僧にお渡しください」
『仕方ない、あがけよ金緑』
ハボダが止める間もなく、東風は己で自身の命を終わらせる。はらはらと崩れ落ちる身体を目の当たりににした玲瓏は深々と礼をした
「さらばです、東風殿。貴殿との策略遊戯は楽しかったですよ」
震える声で送った言葉、お辞儀をしたことで見えぬ玲瓏の表情
「なぜ、何故だ!」
「龍王軍に楯突いたのです。当然の帰結でございましょう」
「だが、土地も人もなく、憂いもなくなったのなら共に」
「共に生きれませぬ。拙僧は龍王軍として抗うと決めました。そのためならば、かつての友であっても命を奪うのです」
しかし自殺だったではないか、のハボダの反論に、玲瓏は初めて敵意を露にする。
「もし仮にひとつ願いが叶うのなら、ハボダ殿は何を願いますか?」
「何を突然」
「それは犠牲なく叶えられると思いですか?そんな、都合のよい、誠葉よりも万能の何かがあると思いですか?」
「だが」
「ひとつ願いが叶うのなら」
玲瓏はハボダの眼前に近づき、にこやかに問いかける
「貴殿が求めるそれは、例え魔法使いだとしても強欲が過ぎる願いではござらんか?」
人懐こい笑みで、それでいてハボダが立つのもやっとな殺意を振り撒く僧が、人間ではなく龍であるのは自明の理であった。
「無理なのですよ、最初から。拙僧と東風殿が対立した時から、どちらかしか生きられない程度には追い詰められていました。少しでも時間稼ぎをするために、篭城戦までした。貴殿の登場で僅かな希望が生まれましたが、それも潰えた。ならば、決まりきった決着をつけるしかないでしょう」
つらつらと続く言葉。
「拙僧には役目があります。それを東風殿は慮り、自ら幕を引いたのです。彼には守護する土地も人も物もございませんから」
だから、と玲瓏はハボダに告げる。
「ハボダ殿が覚えてくださいませ。この地で、この美しい花があった場所で、誰が舞を送り、誰がそれを受け取り、どうして龍が守護したのか」
「それは嘘なのだろう」
「そうでしたね」
「貴殿が俺を騙すために誘導したもので」
「ええ、もう少し騙されてくれればと思いました」
「そもそも俺は人龍連合の一員で」
「存じております」
「なのに……」
俺に弔えと言うのか、とハボダは玲瓏に尋ねる。
「ハボダ殿は人情家で激情家なお人ですから、きっと流されてくれると思ったのですよ」
先程までの龍としての圧もなく。出会ったばかりの頃の、どこか人懐こい少年顔の僧侶として、彼は微笑んだ。それでハボダはこれが断れない策略だと気付く。気付いたが、もう疲れていたのでどうでも良かった。
「玲瓏殿」
「はい」
「貴殿ともう二度と会いたくない」
「拙僧としては、また巡り合う日を楽しみにしております」
「勘弁してくれ。……だが、嘘つきで意地っ張りの馬鹿な龍の願いくらいは叶えてやるさ」
「ひどいことを仰る。春だからこそ、愚かな振る舞いをするのですよ」
お互いにね、と悪戯っぽく玲瓏は笑い、そして誠葉を紡ぐ。その身は空へ、空へと登っていった。ハボダはしばらく空を飛ぶ龍の姿を眺める。が、眩しい光に嫌気がさして、すぐに視線を集落の跡地に向けた。
やることは山積みだが、まず彼は
「静かだな」
しばしの平穏を享受したかった。
(十)
玲瓏の帰還に合わせ、彼の部下たちが出迎える。口々にこれまでの戦果や被害が報告される中、一頭の龍が玲瓏に尋ねた。
「そういえば、あの数式は手に入れられたのですか?」
玲瓏の古馴染みが守護する土地に、星に関する数式があるのは龍王軍には周知の事実だった。
「いいえ。予想外なことに全部壊されてしまいましたからね」
「おや、それは残念でしたね。あれさえあれば、玲瓏様の研究が大分進むようでしたが」
ふ、と部下の視線が壁一面に描かれた天体図に注がれる。そこには幾つもの数式もあった。
「ないものはないので、また一から研究し直しですなぁ」
ああ面倒だ、と言わんばかりに彼は記された文字の幾つかを消す。
「東風殿が拙僧の味方���ったら話は早かったのですが……あの方は、拙僧と同じく龍王の存在は嫌いですが、龍王そのものは気に入っていますし」
残念でしたなぁ、と呟く玲瓏に悲壮感はない。龍王への不敬とも取れる言葉さえ軽い。
「玲瓏様。いくらあなた様が龍王様の腹心、右腕としての地位があったとしても、先程のような発言は慎まれた方がよろしいかと」
「良いんですよ、これで」
「ですが、」
「どうせ龍王は東風殿との一件すら拙僧の悪あがきにしか思っておりませんから」
慢心して貰わないと、の言葉さえ玲瓏は隠さない。
「拙僧、龍王の思惑を知っております。龍王軍の行末も察しております。だからこそ、龍王軍の右腕として策を練りましょう。龍の未来のために、人の未来のために、何故なら天の星に恋した身なので」
正気も理性もなくすほどに恋は偉大なのですよ、と恍惚な笑みを浮かべて玲瓏は星の名前を呼んだ。
END
キャラ紹介:ハボダif
人龍連合所属の晦冥の魔法使い
重力を操る誠葉を扱うが、人間のため使用には制限が掛かる
苦労人のツッコミ気質
連合の火消し担当だけど先に爆発物という名の同僚の撤去から始めるべきだと思ってる
頭はたぶん良いはず
キャラ紹介:玲瓏if
龍王軍所属、龍王の右腕であり腹心
変化変容の誠葉を操る古の龍
戦闘能力自体はあまりない。ので戦略特化で軍を従わせている
明るい性格だが腹黒いので、上の年代の龍ほど警戒度が高くなる
龍王概念嫌いと公言しているが、龍王自体は好き。龍王の狙いに便乗して、星の研究をしてる
東風(ゲストキャラ)
固定の誠葉を扱う玲瓏とは同年代の古の龍
空が好きで、星も好きで、玲瓏と飛び回っていたけど、舞を踊っていた女性に一目惚れしてから地上住まいをしてた
龍王の正体にも気付いているし、玲瓏の狙いも薄々察している
数式渡したら破滅一直線なので絶対渡すものかで対立した
立場逆転だと
・ハボダ本来の気性の荒さが全面に出る
・肉体による制限がないので、玲瓏のやっちゃいけない誠葉倫理が吹っ飛ぶ
・正史ハボダは色んな情で右腕として身動き取れなくなってるけど、if玲瓏は1つの情のために他全部切り捨てて暗躍含めて動いてる
な感じかなぁと思いました
たぶんifの方が気質的に本人たちのストレス少ないと思うけど、それはそれとして龍王軍の暗躍と暴走がより酷いことになるので、正史の方がまだ安全ぽそう
あと玲瓏ifが恋しちゃった天の星は、数多ある星々の中でも一等情のある『彼らが生きる』星です。これ以上告げてしまうのもあれだけど、お題に則したセリフ回しにすると分かりにくいので補足しました
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