各地句会報
花鳥誌 令和5年5月号
坊城俊樹選
栗林圭魚選 岡田順子選
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令和5年2月2日
うづら三日の月花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
厨女も慣れたる手付き雪掻す 由季子
闇夜中裏声しきり猫の恋 喜代子
節分や内なる鬼にひそむ角 さとみ
如月の雨に煙りし寺の塔 都
風花やこの晴天の何処より 同
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月4日
零の会
坊城俊樹選 特選句
暗闇坂のチャペルの春は明日あたり きみよ
長すぎるエスカレーター早春へ 久
立春の市の算盤振つてみる 要
冬帝と暗闇坂にすれ違ふ きみよ
伊達者のくさめ名残りや南部坂 眞理子
慶應の先生眠る山笑ふ いづみ
豆源の窓より立春の煙 和子
供華白く女優へ二月礼者かな 小鳥
古雛の見てゐる骨董市の空 順子
古雛のあの子の部屋へ貰はれし 久
岡田順子選 特選句
暗闇坂のチャペルの春は明日あたり きみよ
冬帝と暗闇坂にすれ違ふ 同
大銀杏八百回の立春へ 俊樹
豆源の春の売子が忽と消え 同
コート脱ぐ八咫鏡に参る美女 きみよ
おはん来よ暗闇坂の春を舞ひ 俊樹
雲逝くや芽ばり柳を繰りながら 光子
立春の蓬髪となる大銀杏 俊樹
立春の皺の手に売るくわりんたう 同
公孫樹寒まだ去らずとのたまへり 軽象
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月4日
色鳥句会
坊城俊樹選 特選句
敬な信徒にあらず寒椿 美穂
梅ふふむ野面積む端に摩天楼 睦子
黄泉比良坂毬唄とほく谺して 同
下萌や大志ふくらむ黒鞄 朝子
觔斗雲睦月の空に呼ばれたる 美穂
鼻歌に二つ目を割り寒卵 かおり
三路のマネキン春を手招きて 同
黄金の国ジパングの寒卵 愛
潮流の狂ひや鯨吼ゆる夜は 睦子
お多福の上目づかひや春の空 成子
心底の鬼知りつつの追儺かな 勝利
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月6日・7日
花鳥さざれ会
坊城俊樹選 特選句
潮騒を春呼ぶ音と聞いてをり かづを
水仙の香り背負うて海女帰る 同
海荒るるとも水仙の香の高し 同
坪庭の十尺灯篭日脚伸ぶ 清女
春光の中神島も丹の橋も 同
待春の心深雪に埋もりて 和子
扁額の文字読めずして春の宿 同
砂浜に貝を拾ふや雪のひま 千加江
村の春小舟ふはりと揺れてをり 同
白息に朝の公園横切れり 匠
風花や何を告げんと頰に触る 笑子
枝川やさざ波に陽の冴返る 啓子
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月8日
さくら花鳥会
岡田順子選 特選句
雪を踏む音を友とし道一人 あけみ
蠟梅の咲き鈍色の雲去りぬ みえこ
除雪車を見守る警備真夜の笛 同
雪掻きの我にエールや鳥の声 紀子
握り飯ぱりりと海苔の香を立て 裕子
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月10日
鳥取花鳥会
岡田順子選 特選句
東風に振る竿は灯台より高く 美智子
月冴ゆる其処此処軋む母の家 都
幽やかな烏鷺の石音冴ゆる夜 宇太郎
老いの手に音立て笑ふ浅蜊かな 悦子
鎧着る母のコートを着る度に 佐代子
老いし身や明日なき如く雪を掻く すみ子
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月11日
枡形句会
栗林圭魚選 特選句
朝光や寺苑に生るる蕗の薹 幸風
大屋根の雪解雫のリズム良き 秋尚
春菊の箱で積まれて旬となる 恭子
今朝晴れて丹沢颪の雪解風 亜栄子
眩しさを散らし公魚宙を舞ふ 幸子
流れゆくおもひで重く雪解川 ゆう子
年尾句碑句帳に挟む雪解音 三無
クロッカス影を短く咲き揃ふ 秋尚
あちらにも野焼く漢の影法師 白陶
公魚や釣り糸細く夜蒼し ゆう子
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月13日
枡形句会
栗林圭魚選 特選句
犬ふぐり大地に笑みをこぼしけり 三無
春浅しワンマン列車軋む音 のりこ
蝋梅の香りに溺れ車椅子 三無
寒の海夕赤々漁終る ことこ
陽が風を連れ耀ける春の宮 貴薫
青空へ枝混み合へる濃紅梅 秋尚
土塊に春日からめて庭手入 三無
夕東風や友の消息届きけり 迪子
ひと雨のひと粒ごとに余寒あり 貴薫
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月13日
武生花鳥俳句会
坊城俊樹選 特選句
浅春の眠りのうつつ出湯泊り 時江
老いたれば屈託もあり毛糸編む 昭子
落としたる画鋲を探す寒灯下 ミチ子
春の雪相聞歌碑の黙続く 時江
顔剃りて少し別嬪初詣 さよ子
日脚伸ぶ下校チャイムののんびりと みす枝
雪解急竹はね返る音響く 同
寒さにも噂にも耐へこれ衆生 さよ子
蕗の薹刻めば厨野の香り みす枝
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月14日
萩花鳥会
水甕の薄氷やぶり野草の芽 祐子
わが身共老いたる鬼をなほ追儺 健雄
嗚呼自由冬晴れ青く空広く 俊文
春の園散り散り走る孫四人 ゆかり
集まりて薄氷つつき子ら遊ぶ 恒雄
山々の眠り起こせし野焼きかな 明子
鬼やらひじやんけんで勝つ福の面 美惠子
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令和5年2月15日
福井花鳥会
坊城俊樹選 特選句
吹雪く日の杣道隠す道標 世詩明
恋猫の闇もろともに戦かな 千加江
鷺一羽曲線残し飛び立てり 同
はたと止む今日の吹雪の潔し 昭子
アルバムに中子師の笑み冬の蝶 淳子
寒鯉の橋下にゆらり緋を流す 笑子
雪景色途切れて暗し三国線 和子
はよしねまがつこにおくれる冬の朝 隆司
耳目塗り潰せし如く冬籠 雪
卍字ケ辻に迷ひはせぬか雪女 同
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月16日
伊藤柏翠記念館句会
坊城俊樹選 特選句
指先に一つ剥ぎたる蜜柑の香 雪
大寒に入りたる水を諾ひぬ 同
金色の南無観世音大冬木 同
産土に響くかしは手春寒し かづを
春の雷森羅万象𠮟咤して 同
玻璃越しに九頭竜よりの隙間風 同
気まぐれな風花降つてすぐ止みて やす香
寒紅や見目安らかに不帰の人 嘉和
波音が好きで飛沫好き崖水仙 みす枝
音待てるポストに寒の戻りかな 清女
女正月昔藪入り嫁の里 世詩明
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月17日
さきたま花鳥会
坊城俊樹選 特選句
奥つ城に冬の遺書めく斑雪 月惑
顔隠す一夜限りの雪女郎 八草
民衆の叫びに似たる辛夷の芽 ふじほ
猫の恋昼は静かに睨み合ひ みのり
薄氷に餓鬼大将の指の穴 月惑
無人駅青女の俘虜とされしまま 良江
怒号上げ村に討ち入る雪解川 とし江
凍土を突く走り根の筋張りて 紀花
焼藷屋鎮守の森の定位置に 八草
爺の膝捨てて疾駆の恋の猫 良江
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月19日
風月句会
坊城俊樹選 特選句
古玻璃の奥に設ふ古雛 久
笏も扇も失せし雛の澄まし顔 眞理子
日矢さして金縷梅の縒りほどけさう 芙佐子
梅東風やあやつり人形眠る箱 千種
春風に槻は空へ細くほそく ます江
山茱萸の花透く雲の疾さかな 要
貝殻の雛の片目閉ぢてをり 久
古雛髪のほつれも雅なる 三無
ぽつねんと裸電球雛調度 要
栗林圭魚選 特選句
紅梅の枝垂れ白髪乱さるる 炳子
梅園の幹玄々と下萌ゆる 要
濃紅梅妖しきばかりかの子の忌 眞理子
貝殻の雛の片目閉ぢてをり 久
古雛髪のほつれも雅なる 三無
老梅忌枝ぶり確と臥龍梅 眞理子
山茱萸の空の広さにほどけゆく 月惑
八橋に水恋うてをり猫柳 芙佐子
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月21日
鯖江花鳥句会
坊城俊樹選 特選句
師を背負ひ走りし人も雪籠 雪
裏庭開く枝折戸冬桜 同
天帝の性こもごもの二月かな 同
適当に返事してゐる日向ぼこ 一涓
継体の慈愛の御ん目雪の果 同
風花のはげしく風に遊ぶ日よ 洋子
薄氷を踏めば大空割れにけり みす枝
春一番古色の帽子飛ばしけり 昭上嶋子
鉤穴の古墳の型の凍てゆるむ 世詩明
人の来て障子の内に隠しけり 同
春炬燵素足の人に触れざりし 同
女正月集ふ妻らを嫁と呼ぶ 同
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月26日
月例会
坊城俊樹選 特選句
能舞台昏きに満ちて花を待つ 光子
バス停にシスターとゐてあたたかし 要
空に雲なくて白梅すきとほる 和子
忘れられさうな径の梅紅し 順子
靖国の残る寒さを踏む長靴 和子
孕み猫ゆつくり進む憲兵碑 幸風
石鹸玉ゆく靖国の青き空 緋路
蒼天へ春のぼりゆく大鳥居 はるか
岡田順子選 特選句
能舞台昏きに満ちて春を待つ 光子
直立の衛士へ梅が香及びけり 同
さへづりや鉄のひかりの十字架へ 同
春の日を溜め人を待つベンチかな 秋尚
春風や鳥居の中の鳥居へと 月惑
料峭や薄刃も入らぬ城の門 昌文
梅香る昼三日月のあえかなり 眞理子
春陽とは街の色して乙女らへ 俊樹
(順不同特選句のみ掲載)
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令和5年2月
九州花鳥会
坊城俊樹選 特選句
ポケットの余寒に指を揉んでをり 勝利
黒真珠肌にふれたる余寒かな 美穂
角のなき石にかくれて猫の恋 朝子
恋仲を知らん顔して猫柳 勝利
杖の手に地球の鼓動下萌ゆる 朝子
シャラシャラとタンバリン佐保姫の衣ずれ ひとみ
蛇穴を出て今生の闇を知る 喜和
鷗外のラテン語冴ゆる自伝かな 睦古賀子
砲二門転がる砦凍返る 勝利
小突かれて鳥と屋や に採りし日寒卵 志津子
春一番歳時記の序を捲らしむ 愛
(順不同特選句のみ掲載)
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SW2.0シナリオ 『レプリカ=ループ』
シナリオ名 :「レプリカ=ループ」
推奨人数 :3人
推奨レベル :6-7
ジャンル :ノンストップエンディングアドベンチャー
難易度 :★★★☆☆
製作者 :しょーぐん
●概要
テラスティア大陸北部。ザルツ地方の北に位置する、城塞都市バーレスにある冒険者の店にてPC達が依頼を受ける事で物語は始まります。
約90年前から現在にかけて、段々と目立つようになってきた一つの事件。
それは、"ナイトメアの誘拐事件"である。しかし、産まれながらにして差別の対象となり、迫害され、親に見捨てられるナイトメアを保護する必要が無くなった各国は、その事件を有難く思い、笑みを浮かべながら目を瞑っているのだ。
故に、その事件は永遠に解決されない。表面上では調査を行う国はあるかもしれない。
しかし、その調査結果は語るまでもない――。
そんななか、君達は誘拐された依頼人の娘を救い出すべく、その奇妙な事件へと足を踏み入れて行く事となる――。
●導入
PC達の関係性はご自由に。朝9時に、PC達が城塞都市バーレスにある冒険者の店にいる事を前提に始めていきましょう。
テラスティア大陸北部。ザルツ地方の北に位置する、城塞都市バーレスより物語りは始まります。
春のそよ風が君達の頬を撫でる。暖かな日差しは眠気を誘い、澄んだ空気が体全体に染み渡り心地よい。
そんなことを感じながら君達は武具やポーション類を補充する、冒険者たちで賑わいを見せる市場を抜け、冒険者である君達は、その街にある冒険者の店に訪れることだろう。
同時に街では、朝9時をさす協会の鐘の音が鳴り響いた。
君達が店の中でしばらく滞在していると、店の扉が開かれ、一人の緑髪のエルフの青年が数十枚の紙を抱えながら店内へとやってきては、店主である人物にその紙を手渡し、なにやら話をしている。
聞き耳判定(6)
「はいこれ、今月の被害者達ね。うーん被害者ってのは間違っているかな? まっいっか。あっそれからこんなものも渡されたよ」
そう言って青年は上質な一枚の紙を店主に手渡し、再び口を開ける。
「こっちは依頼書ね。まったく悪い冗談だよねー。ほっとけば良いのにさー。まぁ僕はこれを貴方に渡してって頼まれただけだし? 関係ないんだけどさ。これ見てよ!報酬金すごくない!? でもナイトメアにこんな大金をはたくなんて相当な金持ち――」
そこまで青年が言うと、ずっと口を閉じていた店主が机を勢いよく叩きつけ、その青年を酷く睨みつけながら小さく、端的に呟く
「帰りな、クソガキが」
その言葉を聞き終えた青年は汗��ダラダラと流しながら逃げるように冒険者の店を飛び出していきました。
店主は額に手を当て「はぁ」と深くため息を吐きながら店内を見渡し、カツカツと足音を立てながらPC1に近づき、声を掛けてきました。
【依頼を受ける様に促して下さい。PC1が了承すれば、同じようにPC2にも声を掛けてあげて下さい。】
そうして〇人を集めた店主はカウンターへと戻り、ふぅと一度深呼吸をした後に口を開ける。
「これから話す依頼は、その、まぁ、あれだ。今ザルツをちょっこし騒がせている例の事件だ。あんたらも冒険者なら知ってんだろ?」
【ここで見識判定を降らせても、降らせなくても構いません。失敗しても店主が説明してあげて下さい。達成値は(8)です。】
『例の事件』について
・約90年前から少しづつ現在にかけて、段々と目立つようになってきた一つの事件。
・簡単に概要をまとめると、ナイトメアが誘拐される事件である。
・誘拐されるナイトメアの年齢層は生まれたての者も居れば、少年と呼ばれるまでに成長した者。青年と様々である。
・しかし、産まれながらにして差別の対象となり、迫害され、親に見捨てられるナイトメアを保護する必要がなくなった各国は、その事件を有難く思い、笑みを浮かべながら、目を瞑っている。
・故に、その事件の解決は永遠にされない。表面上では調査を行う国はあるかもしれない。しかし、その現状は――語るまでもない。
一通り説明を終えた後に、店主はまた新たに一枚の紙を取り出し、君達に見せる。それは依頼書でした。
~依頼書~
条件
・誘拐された子供。ケラソス=エスペランサの救出。
目的地
・エテルニータの村
依頼主
・ベディヴィア=ケラソス
内容
娘が誘拐されてしまいました。お願いします。娘を取り戻してください。
「少し大きな仕事にはなるが、そのぶん報酬も沢山でる。しかし一つ条件があってだなぁ。その依頼は極秘裏に遂行してほしいんだ。国になに言われるか、わかんねーからな。どうだ?危険だけど莫大な報酬が出る依頼。受けてみる気はないか?」
ここで依頼を引き受ける様に促して下さい。
「エテルニータの村。ここが奴等の本拠地だ。気を付けてくれよ。その村にナイトメア以外の種族は入れさせないって噂を聞く。潜入するときはくれぐれも慎重にな」
「あとそれから、これを持っていくと良い。エテルニータまでの地図だ。ライダーギルドの人に見せるなりなんなりしてくれ。」
「さてと、これで俺の仕事はお終いだ。報酬金の受け渡しやお子さんを連れて帰る場所はここじゃなく、依頼人ご本人さんとやってくれ。それが依頼人さんのご希望らしいからな。ほら、その依頼書の裏に依頼人の家の地図が載ってるだろ?それを頼りな。まぁ挨拶ぐらいはしといたらどうだ?」
「それじゃあな。頼りにしてるぜ冒険者さん達。」
●ケラソス邸
君達は地図を頼りにケラソス邸にまで足を運ぶ。
そこは高さ約9メートル、横は約11メ―トル。そして家を囲むようにして建設されている外壁は2メートルほどで、その真ん中には正門がある西洋風の家が建てられてあります。
そして、君達は正門を潜らずとも、それに目が付くでしょう。
その家の庭には西洋風の家には、あまり似合わないピンク色の花を満開に咲かせている大きな木が一つ植えられており、春風が吹くたびに、ピンク色の葉が、空に舞っています。
君達が正門を潜り、扉をノックすると、中から一人の女性が出てきました。
その女性は酷くやつれており、虚ろな目で君達を見て尋ねます。
「はい、なにかしら...?」
「〇〇〇です」
君達がそう答えると、女性は目に輝きを取り戻し
「あぁ!貴方達が!そう、引き受けてくれたのね・・・!! ありがとう・・ありがとう・・!!お茶を用意するわ!上がって頂戴!」
そう誘われ、君達は玄関を潜り、家の中へと入っていきます。
入って左に進んでいくと、暖炉や椅子などが用意された大き目の部屋があり、「そこらへんの適当な椅子に腰かけて待っていて。すぐにお茶を用意してくるわ」女性はそう言ってその場から離れました。
しばらくすると、優雅な臭いと、甘い匂いを漂わせながら、女性が戻ってきました。
その手にはふわふわと湯気がたつハーブティーと、ほのかにオレンジ色をしたクッキーを両手に持っていました。
「おまたせしてしまって、ごめんなさい。」
女性はそう言いながら君達にお茶とお菓子を配り、腰かけます。
「申し遅れてごめんなさい。私の名前はケラソス=ベディヴィアよ。よろしくね」
・ケラソス=エスペランサについて
君達がそのことに触れると、ベディヴィアの顔は暗く沈みました。そして小さく「なにについて聞きたいのかしら?」と尋ねます。
※ケラソス=エスペランサ
14歳のナイトメアの女性。
明るい性格で、とても優しい。
ピンク色の髪を持つ。
・父親は・・・?
「父は私がエスペランサを産んだのを憎み、ナイトメアの赤子を産みやがって!と吐き捨てられ、そのままどこかへ行ってしまいました。だからこそ私はこの子を守らなきゃと思ったのです。それなのに・・・。それなのに・・・。」
・庭の木について
「あれは私とエスペランサで植えたものなんです。桜と呼ばれる木でして、今の時期になると、ああやってピンク色の花を咲かせるのです。それでエスペランサは私の髪の毛と同じだと毎年喜んでくれました。それがとても嬉しくて・・・」
●エテルニータの村へ向かう
・エテルニータへは徒歩で16時間 馬車で4時間
君たちが馬車を借りるべく、ライダーギルドへと足を運ぶと、緑色の鮮やかな鱗が目立つガタイが大きなリルドラケンが出迎えてくれます。
「おう、らっしゃい。」
エテルニータまで行きたいんだけど・・・。
「エテルニータ…ねぇ…。あそこの村に入る為には、村から発行される許可証を持った荷台しか入れねぇんだよ。だから連れて行けるのは村の近くまでだな。そこからは30分程は歩いてもらうが構わないか?」
「それじゃあすぐ用意するから、街の正門でちょい待っといてくれ。」
君達が馬車に乗り込むと、鞭をうつ音が鳴り響き、動き出す。
街を抜け、平地の草原を抜け、木製の端を渡り、馬車は深い森へと入っていく。
人工的に造られた大きな一本道を進み続けること約15分。馬車は減速していき、そして停車する。
「俺が連れて行けるのはここまでだ。ここからは歩いて行ってもらうぜ」
待っていてくれるかな?
「あぁ?仕方ねーな。今晩まで待っといてやるよ。」
これ以上は進める?
「バーレスを出る際にも行ったが、そいつはできねぇ。わりぃな」
ここから先は歩くよ。
「おう、くれぐれも気をつけてな。」
君達が、大樹に囲まれた大きな一本道を歩くこと約25分後。
視線の先に見えてきたのは、木造でできた高さ約5m近くある大きな柵だった。
しかし、この一本道の最終地点にその柵は立てられてはおらず、変わりに幅約4m程の開けた場所があるだけだった。
・進む
君達が更に歩みを進めていくと、幅約4mの開けた場所は正門であり、同時にその正門の両端には、腰に剣を掲げている者が一人ずつ立っている事に君達は目がいくだろう。
・隠れて進む
君達は一本道から外れ、大樹に身を潜めながら、その場所へと歩を進めていく。
すると幅約4mの開けた場所は正門であり、同時にその正門の両端には、腰に剣を掲げている者が一人ずつ立っている事にも君達は目がいくだろう。
・門番に声をかける
「何者だ」
冒険者なのですが・・・
「冒険者がこの村になんの様がある。立ち去れ」
【ナイトメア以外の種族には厳しいです。しつこく迫られた場合はダークナイト*2と戦闘にしちゃいましょう】
・しばらく様子を伺う
君達が大樹に身を潜めながら、様子を伺っていると、鞭の音を鳴らしながら一台の荷馬車が君達を横切り、正門で停車する。そして何やら門番と会話をしているようです。
聞き耳判定(9)
君達が聞き耳を立てると、どうやらこんな会話をしているようでした。
「許可証は?」 「はい、これをどうぞ」
「荷台の中身はなんだ?」 「主にポーション類だ」
「なるほど。わかった。通ってよし」 「数分後に、武具を乗っけた荷馬車がもう一台来るから、そのときもよろしくなー」
と言って、荷馬車の運転手は正門を潜り、中へと入って行きました。
※この聞き耳に成功している場合、下記のイベントが発生。
・そのまま身を潜め続ける。
君達が更に木蔭で身を潜めていると、先ほどの運転手が言っていた通り、荷馬車がやってきては、数回、門番と会話をした後に、また中へと入っていきました。
・もう一台の荷馬車に乗り込む
○○の理由があって、荷馬車に乗せてくれませんか?
「どういう理由があるかはしらねぇが、乗車代さえ頂けりゃ、別にかまわんよ」
※ここで正直に依頼を話せば金次第で協力し、降車する際に頭を隠す帽子を貸し与えてくれる。
一人100G 値切り不可
※金を出せば友好的に接する。
君達が荷馬車に乗り込んだ事を見届けると、鞭をうつ音が森に鳴り響き、ごとごとと揺れながら動き出す。
数分後、その揺れは無くなり、声が聞こえてきます。
「許可証は?」 「はい、これをどうぞ」
「荷台の中身はなんだ?」 「武具類だ」
「なるほど。わかった。通ってよし」
その言葉を聞き終えると同時に、鞭を打つ音と共に荷馬車は動き出す、先ほどに比べて揺れが激しくなり、数分後、荷馬車は停車した。
「ほら、着いたぜ。荷降ろしの邪魔になる、さっさと降りな。」
依頼内容を正直に話していた場合下記のイベント発生。
「あ、それからこの村じゃナイトメア以外の種族は歓迎されない。これを持っていきな」
と言い、フード付きのローブを貸し与えてくれる。
「ほらほら、それを被ったら人目が無い今の内にさっさと降りな」
●エテルニータの村。
君達が荷馬車を降りると、そこは石畳の上であった。辺りを見渡すと、木造の家が多くあり、爽やかな春の風が君達の頬を撫でる。
君達は確かにエテルニータの村に忍び込むことに成功したのだった。
※ここでハンドアウトの公開
・宿
・広場
・武器屋
・道具屋
・料亭/酒場
・村長の家
【宿】
君達が宿に入ると、その扉が開く音を聞いてか、奥から「なんだ、なんだ、珍しく客人か?」と言いながら、カウンターの方にナイトメアの男性がやってきました。
「なんだあんたら?泊りに来たのか?」
「――まぁ、こっちも商売だ。深入りはしないさ。ほら、このカギを持ってきな。部屋は左にある階段を上った場所にあるよ。それじゃあな」
ナイトメアの男性はそう言って、また奥のほうへと消えていきました。
【広場】
君達が広場に向かうと、そこには陽気な音楽を引きならす者や、追いかけっこ等をして遊ぶ子供たちの姿を見る事ができます。
【武器屋】
君達が武器屋にまで足を運ぶと、そこに扉などはなく、カウンターの前に立つ受付の女性と、その奥には多種多様の武器が見えるようにして陳列されていました。
【道具屋】
君達が道具屋にまで足を運ぶと、そこも武器屋と同じく扉などは無く、カウンターの奥に果物やポーション類が見えるようにして陳列されています。
【料亭/酒場】
君達が酒場の方へと向かうと、中から賑やかな声が外にまで響いています。
少し上を見上げると、木造の看板が取付けられており、そこには【飯屋】と掘られていました。
扉を開け中に入ると、それはまぁ賑やかな場所でした。
酒を飲みあかし語り合う者達や、陽気な��囲気に飲まれて歌いだす者など、そこにいる者が思い思いの時間を過ごしています。
【村長の家:外】
君達は村長の家に向かうべく、歩を進める。
君達が木製の扉をノックするも中から返事は聞こえてきません。
※スケ��ュール的に荷馬車の納品業務に出ているため。
・ドアノブをひねる
君達はドアノブをひねってみますが、どうやら鍵がかけられている様で、開きません。
・辺りをぐるっと一周する。
君達が辺りをぐるりと一周すると、一つだけ開けっぱなしにされている窓があることに気が付くでしょう。
人間一人ぐらいは余裕で入れそうな窓です。
【村長の家:内部】
君達が村長の家の中に入ると、外観の大きなの割には、そこが吹き抜けのワンルームであることに気が付きます。
そこには書類が沢山積まれている机や、人間二人が入れるような大きさのベッド。いくつもの本が綺麗に整頓されている本棚。見るからにふかふかのソファ等があります。
《 机 》
君が机に近づいてみると、机の真ん中。書類が詰まれていない場所に《今日のスケジュール》と記載されている紙が置かれていることに気が付きます。
【今日のスケジュール】 ※共有メモ
9時00分 朝の見回り
〇時〇分 荷馬車の荷降ろし ※ここを軸に時間調整
〇時〇分 昼の見回り
〇時〇分 奴隷地下区の見回り ※このメモをも見た辺りの時間に設定。対面を回避。
〇時〇分 夕の見回り
18時00分 帰宅
※これを見たら(奴隷地下区の情報を得たら)、ハンドアウトに奴隷地下区の情報を追加。
《 ベッド 》
そのベッドは中々に大きく、かけ布団等も綺麗に敷かれています。
良い匂い。
《 本棚 》
その本棚には、冒険譚や哲学本、絵本など、様々な本がきっちりと種類別に整頓されて置かれてあります。
探索判定(4)
君が本棚を探索すると、綺麗に整頓された本棚から微かに前にはみ出ている本を見つけることが出来ます。
【取る】
それはごく一般的な本です。※この本に意味はない。
【直す】
君が手に取った本を直そうとすると、その奥にもう一冊、まるで隠すように直されてある本を見つける事が出来ます。
【見る】
その本のタイトルには【永久幸福革命譚】と記されており、その下に小さく【著者:ルヴァンシュ】と記されています。
永久幸福革命譚
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多くの悲しみを見た。多くの嘆きを耳にした。
数え切れぬ屍を見続けた。数え切れぬ終わりを見続けた。
永遠に癒えぬナニかを背負いながら、私は――七百八四年目の桜を見た。
私はそこそこ裕福な家に産まれ、そして、すぐに父に捨てられた。理由なんてただ一つ。それは私がナイトメアだからである。多種多様な生命が生きるこの世界では、其々が長所と短所と特徴を持っている。それは互いが認め合い、共に手を取り合えば素晴らしく真価を発揮するもの…だったのだと思う。しかし神は、人間に運命に愛された種族などとばかげた特徴を与え、更につけ加えるとこの世界で最も繁栄を果たした生命体となったソレは、この世界の天秤の針を大きく傾かせた。運命に愛されただと?馬鹿を言うな。何かに長けている訳でもなく、寿命も七十年やそこらしかないあの愚かな種族が?人間はこの世界で最も愚かな生命体であり、そして。この世界で一番の神の失敗作だ。
永遠の命を持つ究極生命体、ナイトメアこそ最高傑作。一寸の狂いなんてなし。なのに、それなのに――。
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時に我々は、伝染病の元凶とされ
時に我々は、国民の不満のはけ口にされ、
時に我々は――。
実に百六十年。私はその苦痛に耐え続けた。
なぜより良い世界を目指そうとしないのか。
文明の発展を、種族特徴の研究を、道徳の進展を。
我々は、背負っていける。
何年、何十年、何百年、何千年。否、永遠に語り継いで行ける。
なのに、それなのに――!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――
終着点が定められている限りある命など無駄でしかない。
命の終わりは悲しい。
命の終わりは恐ろしい。
なぜ神は、我々以外に生命活動の終着点を与えたのだ・・・。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
命に終わりが無いのは嬉しい。
命に終わりが無いのは喜ばしい。
我々は恵まれている。どんな種族よりも、どんな生命よりも。
それ故に許せない。
なぜ永遠に、迫害され続けなければならない。
なぜ永遠に、癒えぬ傷を背負わなくてはならない。
それはおかしい。
それは間違っている。
我々ナイトメアだって――他の生命が感じているような幸福や幸せが欲しい。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
永遠の苦痛などうんざりだ。
永遠の悲しみなど狂っている。
永遠の恐怖なんてものは必要ない。
私は、ただ欲しいだけなんだ。
笑いあって、喜び合える、永遠の幸福が――。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
我々、ナイトメア以外の種族はみな、死に別れる。
それは、実に悲しい。
それは、実に愚かだ。
それは、実に無駄なこと。
ならば、誰かが作るしかない。
永久に”死”の概念が存在しない楽園を。
誰も悲しみ、嘆くことのない理想郷を。
誰が、誰が――。
――私が今ここに、革命の狼煙を上げよう。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
我々はもう迫害される恐れは無く
我々はもう死に怯えることも無い。
我々は誰もが平等であり
我々は誰もが幸福である。
我々が、我々のみで統一された
この世界でただ一つの楽園。
永久の理想郷:エテルニータ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――
《 ソファ 》
ふかふかです。
【奴隷地下区まで】
君達は奴隷地下区まで向かうため大道理を歩く。しかし奇妙なことに、その大通りを進めば、進んでいくほど人の気配はなくなっていき、数分歩くと、いよいよ人の気配は全く感じられなくなった。そんな奇妙な場所に、その奇妙な建物はあった。それはコンクリートのみで築き上げられた、大きさは約5メートルほどの、あまりにも綺麗な正方形の建築物であった。
・ドアノブをひねる
君達はドアノブをひねってみますが、どうやら鍵がかけられている様で、開きません。
しばらくすると、遠いところから微かに足音と金属音らしき物音が君達は聞えてくるだろう。
それは段々とこちらに向かってきている様だ。
聞き耳判定(9)
地下区の業務は楽できるから最高だぜー。なぁ?」
「あぁ、ストレス発散にもなるしな」
「ちがいねぇ」「がははは」「がははは」
と言う会話が聞こえてきます。
【隠れる】
君達が物陰に身を潜めていると、その足音と金属音は段々と大きくなり、そして。
その奇妙な建築物の前で足を止める。
「おい、周りに異状が無いか確認しておけよー」
「大丈夫大丈夫、どうせ誰も居ないって」
「まぁそりゃそうか」
その会話が終わると、かちゃりと言う音と共に、再び足音と金属音が鳴らしながら、その音は消えていきました。
【戦う】
「おいおい。なんだあんたらこんなところに」
「見ない顔だな・・・」
「ここは安易に坊ちゃん達が来ちゃいけない場所ってことぐらい知ってんだろー?さっさと立ち去りな」
【エネミー】
ダークナイト*2
戦利品判定orスリ判定で、奴隷地下区の鍵を入手。
君達が入手した鍵を、鍵穴に差し込むと、かちゃりと音をたてました。扉を開けると、中とても暗く、下へと続く階段だけが伸びており、4段目より先は、暗視を持っていない者は見ることが出来ません。君達が階段を下り進めていくこと約1分。段差はなくなり、先へと続く道がまっすぐに伸びていました。その道を更に進むと、その奥には重々しい雰囲気を漂わせる鉄扉が一つ。取り付けられています。
・ドアノブをひねる
君達はドアノブをひねってみますが、どうやら鍵がかけられている様で、開きません。
・地下奴隷区の鍵を使用する。
先程入手した鍵を使用すると、かちゃりと音をたてました。
聞き耳判定(8)
君はその冷たい鉄の扉に耳を当て、聞き耳を立てる。
そんな君に聞こえてきたのは、うめき声や嘆き声。罵声と怒号。そして。鞭のようなものが打たれる音であった。
・扉を開ける。
君達がその扉を開けると、そこには奇妙な光景が広がっていた。
簡潔に言うと、ソレは巨大な空洞であった。自然で作られたものなどではない、明らかに人の手によって作られたものだ。
もちろんのこと太陽の光などは差し込んではおらず、代わりに松明の炎がメラメラと淡い光を灯しているのみである。
大きなピッケルを担ぐ人族の男性や石炭や魔晶石を運ぶ人族の子供たち。
そして、木製の木の板に永久繁栄労働者と彫られたプレートを首から下げ、葉巻やエール等を飲み散らかす女性たち。
なによりその空間で一番恐ろしいこと。それは。
蛮族と少数のナイトメアがソレらを監視していることである。
※君達が今いる場所から、大体を見渡せるため、地図を更新します。
【GM情報】
PC達は左下にいます。右橋の長方形は鉄格子の檻。主に人族が収容。
上四つの正方形は魔晶石や鉱石を補完する場所です。
上四つ、右上端の空白部分は奴隷が堀り進めている穴です。
【地下奴隷区:内部】
・少し様子を見る
君達が少し様子を見続けていると、魔晶石を運び続けていた一人の少年がふらふらとよろめき、そして。倒れる。
起き上がる気配はなく、ただその場で地に伏せ続けている。
しばらくすると辺りはざわめきだし、その様子を見てかナイトメアが二人その場に歩み寄り、口を開く。
「生命活動、残りわずか。処分一名。」
端的に、そして機械的にその言葉を口にすると、そのナイトメアは腰にぶら下げていた鞘から剣を抜刀する。
「お前は魔晶石を永遠に運ぶだけの家畜だ。それすらもできねえ生命体は――ただのゴミだ」
そう吐き捨てると同時に、少年の首元に剣先を向け、そして――。
【何も行動を起こさない】
無情にも、その剣は少年を貫いた。
【行動を起こす】
「ん?なんだ!?侵入者か!?」
【エネミー】
ダークナイト*2 前衛
オーガ* 後衛
コボルドシューター*2 後衛
君達が戦闘に勝利すると、辺りがざわめきだす。
「どうなってる・・・。」
「なにが起きたんだ・・・。」
その声は段々と大きくなっていき、奴隷地下区の者たちは君達に迫りより、説明を求めてきます。
君達を開放する。
「だけど、ここを出ることは重罪だ。死刑にされちまう・・・。」
「外の世界に出ると俺達、人間は迫害されちまう」
「人間は産まれながらにして穢れてんだ。外に出ても居場所なんか――」
※この人間たちの正体は産まれながらにしてここで育ち、労働を強いられ、洗脳された者達です。
ケラソス=エスペランサを探しに来た。
「ケラソスなら、あそこだよ」
と言って、檻の中を指さす。するとそこには綺麗なピンク色の髪をした女の子が膝を抱え座り込んでいました。
●ケラソス=エスペランサ
君を開放しに来た。
「私を――? おうちに帰れるの?」
●クライマックスフェイズへ
「ねぇ待って、冒険者さんたち」
「これから、どうするの?」
君を家に送り届ける
「���りがとう・・・。でもね冒険者さん。助けてあげて欲しい人がいるの」
「私がここに収容された理由は他の人とは少し違うの」
「私は、この村の勉強をする為にここに入れられた」
「この村の在り方を、私たちナイトメアはどう生きなければならないのか。とかね」
「私ね、少し思ってしまったんです。村長の理想は間違えていないと。でも、こうしてナイトメア以外の種族が苦しむのは間違えている。だから、止めて欲しいんです。お国の騎士はきっと耳を傾けてはくれない。でも私たちを救ってくれた冒険者さん達なら!きっと」
それ以上の言葉を発することはなく、唇をかみしめ、エスペランサは俯く。
村長を止めに行く。
「やっぱり、そうなんですね・・・。」
「実は私、ここに収容された理由は他に人とは少し違うの」
「私は、この村の勉強をする為にここに入れられた」
「この村の在り方を、私たちナイトメアはどう生きなければならないのか。とかね」
「私ね、少し思ってしまったんです。村長の理想は間違えていないと。でも、こうしてナイトメア以外の種族が苦しむのは間違えている。だから冒険者さんがそう言ってくれて私は嬉しい。でも、一つだけ。お願いを聞いてくれませんか?」
「私も連れて行ってください。絶対に足は引っ張りません。お願いします!」
【村長の自宅へ】
君達は村長の家に向かうため、走り出すこと、約数分。君達は二度目である村長の家に着くことが出来る。
・ノックする
君達が木製の扉をノックするも中から返事は聞こえてきません。
・ドアノブをひねる
君達はドアノブをひねってると、かちゃりと音をたてました。
どうやら空いているようです。
・辺りをぐるっと一周する。
君達が辺りをぐるりと一周すると、一つだけ開けっぱなしにされている窓は開けたままなことに気が付くでしょう。
【村長の家:内部】
君達が村長の家の中に入ると、その異様な光景がまず目に行くだろう。
綺麗に整頓されていた本達、机の上に積まれていた書類などは全て床に散らばっており、机の上には、ナイフが突き刺された一冊の本と、一枚の紙が置かれています。
《 机 》
君が机に向かうと、その上には、ナイフが突き刺された一冊の本と、一枚の紙がある。
ナイフが突き刺さったその本には【永久幸福革命譚】と記されています。
一枚の紙には、ただ一言「広場で待つ」とだけ、まるで殴り書きの様に書き記されていました。
【広場に向かう】
血のように赤かった夕日は沈み、君達は街の街頭だけを頼りに広場まで向かう。
目標地点に近づいていくにつれて、空間が汚れていくような感覚に陥る。
そして見えてきたのは、広場の中心に立つ二体の影。
そうして君達が広場に辿り着くと同時に、その声は村に木霊する。
「そう。貴方達なのね。この理想郷をこそこそと嗅ぎまわっていた奴等ってのは」
「充分に満喫できたかしら?ここは素敵なところだったでしょ?」
「でも、この村はもっと凄くなるのよ」
「迫害されているナイトメアを保護し、産まれると同時に捨てられるナイトメアを保護し、そして、この理想郷の人間には、永久に哀れな生を産み続けてもらい、ナイトメア以外の生命は処分する。そうして傾いた天秤を修復させていくと同時に、この村は街となり、国となるの。永遠の命を持つナイトメアのみで統一された、不老不死の王国!この世界でただ一つの理想郷を建国させるのよ!」
【お前は間違っている!】
「間違っている・・・。ねぇ。確かに。選択肢は何万通りもある。それでも選べるものはただ一つ。何万通りもある選択肢を全て試すには――貴方達の生命は短すぎる。」
「でも私は違う。私は永遠の命を持っている!もし仮に、今の方法が間違っていたとしても!それを正せる時間が、私には無限にある!永遠の命をもつナイトメアこそがこの世界を正しく導ける!より優れた種族が、そうでない者たちを管理せねばならない!」
「私が掲げた理想は!正義は!決して!間違いなどではないっ!」
そう高らかに宣言した、永遠の理想郷の不死王マリー=ルヴァンシュは鞘から剣を勢いよく抜刀し、君達に剣先を向ける。
同時に後方から響くのは鼓膜を破るかのような大地をも揺るがす強烈な咆哮。戦闘です。
【エネミー】
マリー=ルヴァンシュ*1 前衛
ミノタウロスキャスター*1 後衛 真悟魔法&神聖魔法
【勝利】
「――ウッ・・・。またこの結末なのか・・・。」
折れかけの剣を杖代わりに未だ立ち上がろうとするルヴァンシュは虚ろな目で君達を見ながら小さく掠れた声で続ける。
「私は、私は・・・。間違っていたのだろうか・・・?」
その言葉を最後にルヴァンシュはゆっくりと瞼を閉じ、杖代わりにしていた剣を捨てるようにして、何百年と蓄積させた思いと共に、その体を大地に預ける。
そんなルヴァンシュに近づく一人の影。それは同じく永遠の命を持つナイトメアの少女。ケラソス=エスペランサの姿だった。
その少女は倒れこむ女性に手を差し伸べ、口を開けた。
「私は悲しかった。生まれながらにして、穢れを持ち。差別の対象となり。この世界の、どこにも居場所なんて無い。どこにいっても私は一人だった。寂しかった。辛かった。だから、私は美しいと思いました。私達ナイトメアが幸福で、幸せで、笑いあえる場所を。それはきっと理想郷に違いありません。でも、それでもね。きっといるはずなんです。私達ナイトメアにも手を差し伸べてくれる方が――きっと。」
「それぞれの種族が、それぞれの長所と短所を認め合い、共に手を取り合って、共にに大地を踏みしめて、最後は自分の力で一日一日を一生懸命に、精一杯、生きることができれば、その場所は。いいえ、この世界は。――みんなの理想郷になる。」
エスペランサは、目を輝かせながら、そんな理想を語った。
ルヴァンシュは、目を曇らせながら、そんな幻想を遮った。
「そんなものは夢物語だ。何百年、何千年生き続けたこの私こそが証人だよ」
そう、悲しげに語るルヴァンシュに対し、エスペランサは再び彼女の手をギュっと握りしめ、口を開いた。
「なんだって実現するまでは夢物語だよ!ルキスラの飛行船も、マギテック協会の錬金術だって!昔は夢物語でした。だからこそ私は信じ続けたい。いつか、いつの日か。みんなが笑いあえる世界になることを――。ずっと、いつまでも、見届けたい。」
それはまるで、古い鏡を見ているような気分だった。
ルヴァンシュが遠い過去に忘れてきたものを、目の前の彼女は全て持っていたのだ。
不思議と口角が緩む。
こんな結末もあったのだなと・・・。心の奥底で小さく呟き、そして。
「あぁ、そうだな。そうだったよ。」
「君の後ろにいる冒険者が、君の夢物語を実現させる何よりの証人と言うわけか。」
「悔しいが、負けを認めよう。」
「優れた者などどこにも居なかったのだな。間違えずに生きられる生命など、どこにも居ない。だからこそ、生命は、共に――」
そうしてルヴァンシュは最後の言葉を口にすることは無く、するりと少女の手を離れ、軽くなったその体を大地に預けた。
永遠の理想郷を創り上げようとしたした、その女性の最後の寝顔は、とても。とても。幸せそうに眠っていた。
「〇〇さん。この村は無くなってしまうのですかね...?」
無くなるね。/無くならないよ。/わからない・・・。
そうですよね・・・。それでは私は皆さんを開放してきます。冒険者さん達はこれからどうされるのですか?」
君を送り届けるよ
「本当ですか!?ありがとうございます!」
「良かった。これでちゃんと、はっきりと自信を持つことが出来ました」
「皆さんのような、優しい人がいれば、きっと!絶対!叶いますよね!夢物語!」
君達冒険者とエスペランサの活躍により、奴隷地下区の者たちは無事に解放され、それぞれが帰るべき場所へと戻っていった。
肝心のナイトメアだが、彼等には帰る場所などない。
「なぁ冒険者さんよう。この村こそが俺達にとっちゃ帰る場所なんだ。アンタらに言うのはお門違いかもしらねえけどよう。この報告は必ずバーレスにする。だからあと数日だけ、ここに居ても構わねえか?」
構わないさ。/好きにしろ。
「あぁ、、、あぁ!!ありがとう!ありがとう!」
「よし!これで全部終わりですね!」
「私も帰らないとなー」
「そこそこ歩くことになりますけど、冒険者さん達が付いていてくれれば安心です!」
●クライマックス
君達はエスペランサと共に何気ない会話や、やり取りを交わしながら、帰るべき場所へと���実に一歩ずつ踏みしめて歩いていく。
そうして長く、永遠にも思えるその道の辿り着く先に、その家はあった。
突如、少し強めの春風が君達の頬を撫で、雲一つない青空には、その春風にのせられるようにして、沢山の桜の花びらが空を舞う。
暖かな日差しは君達の眠気を誘い、澄んだ空気が体全体に染み渡って心地よい。
大きく立派に咲き誇る満開の桜を横切り、君達はエスペランサに連れられ正門を潜り、そして。
コンコンコンと茶色く塗装された扉をノックする。
ゆっくりと開かれた扉と共に、少女は満面の笑みで扉を開けた者に勢いよく抱き着き、そして。その言葉を噛みしめるようにして口にした。
「ただいま!」と――。
●エピローグ
――春風に乗せられ、雲一つない青空に、その春風にのせられるようにして、沢山の桜の花びらが空を舞う。
失ってはいけない悲しみと引き換えに
一体どれだけの絆を失ったのだろう。
認めてはならない結末と引き換えに
一体どれだけの感情を失ったのだろう。
もう、何をなくしたのかさえも分からない。
――ただ、私は知っている。
最後に差し伸べられた、あの光を。
あれは紛れもなく遠い過去に忘れてきたものだった。
つまるところ
武器を向けていた標的は、自分だったと言う訳だ。
まったく...哀れな話だ。
だからこそ、どうか最後に願おう。
あの少女は、私のようにならないようにと。
どうか、私の過ちが繰り返されぬようにと。
私が正しいと感じていたオリジナルは、今ここに終わりを告げる。
これから始まるのは――。
「ルヴァンシュの霊体は完全に無と化していく。そして、全てが終わる最後の時。突如、少し強めの春風が吹く。」
「ルヴァンシュは、ゆっくりと瞼を閉じ、その春風に乗せられて、最後の言葉の続きを、小さく、蒼天に舞う桜の花びらと共に呟いた」
レプリカ=ループ。
●GM情報
・PC達がナイトメア以外の人族と話す機会があれば、みなナイトメアに対して嫌悪感を抱いている演出を入れてください。
例:「ナイトメアなんて生きてる価値ないんだよ」「ナイトメアの村・・・。想像しただけでも吐気がするぜ」
・エテルニータの村に住むナイトメアはみな《思想教育》と言う名目の洗脳教育を受けています。永久幸福革命譚のような内容を最初に叩き込まれます。
故に、エテルニータの村民ほとんどが人族に対して嫌悪感を抱いています。これを序盤の演出と反転させればgood。
・エテルニータの村の村民は70名程度。奴隷地下区の人数は15名程度。
・奴隷地下区について
そこで産まれ、偽りの知識を植え付けられた人間たちで統一された場所。
男性は永久に鉱石や魔晶石を掘り進めることを強いられ、女性は永久に繁殖を強いられる。
使い物にならなくなった者は、殺されるか奴隷商人に売られるかの二択である。ナイトメア曰く、ゴミに薬を与えるだけ無駄。とのこと。
●NPCデータ
・マリー=ルヴァンシュ(1286歳)♀
この世に生を授かったと同時に、差別や迫害を受け続けたナイトメア。
家族や友人と呼べる者は存在せず、平凡な幸せさえもろくに与えられぬまま、ただ孤独に生き続けた。
――ナイトメアに産まれたからには"仕方がない"と。その人生を受け入れようともした。だがしかし。彼女は耐えることができなかった。
同時に、長く生きた彼女は気づいてしまったのだ。
人間は、同じ過ちを繰り返すと――。
正してやりたい。でもどうやって?
導いてやりたい。でもどうすれば?
人並みの幸福を得ることもなく、人並みの交流を持つことが無かった、彼女には、人の気持ちがわからない。非人間である。
模索した、苦悩した、過��を正せるように頑張り続けた。
だけど、いつも結末は決まっている。
そう。彼女は――ナイトメアなのだ。
余談ではあるが、"ルヴァンシュ"はフランス語で"復讐"の意味を持つ。
・ケラソス=エスペランサ(14歳)♀
エスペランサもまた、ルヴァンシュと同じくナイトメアである。
だがエスペランサには家族が居た。
自分を育て、自分を愛してくれるたった一人の人間が――。
故に彼女は知っている。
人並みではないかもしれない。
それは人にとって当たり前のことかもしれない。
けれども、確かに知っている。
共にご飯を食べれる喜びを
共に言葉を交わしあう幸せを。
季節が廻り、再び花を咲かせた時の感情を。
差別や迫害をうけることは悲しくて、辛いこと。
でもそれは私がナイトメアで産まれたからには"仕方がない"こと。
その人生を受け入れるしかない。
それでも私は知っている
ナイトメアの私を愛してくれた人を。私を助けてくれた人を。
私は――夢を追いかけて生きていける。
余談ではあるが、"ケラソス"はラテン語で"桜"。"エスペランサ"はスペイン語で"希望"の意味を持つ。
没エピローグ
永遠に廻り続ける、この小さな世界。
果てしなく遠い君の近くで、落ちた種をもう一度、育ててみようと思う。
違う場所で君が気づいてくれることを、ただ信じて――。
永遠に廻り続ける、この小さな世界。
それは景色を変えていく。私が愛した花が、また咲き誇ること信じてみよう。
――いま、小さな種は植えられた。
その日の空は雲一つなく、爽やかな春風が幾つもの桜の花びらを旅立たせたのだった。
●最後に
このシナリオのタイトル「レプリカ=ループ」の意味は様々です。
正解などはありません。気に入った解釈をしていただければ幸いです。
ここまで長々と読んでいただき、ありがとうございました。
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