#名古屋心理カウンセリング
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心の生活習慣
日々の心の習慣が、慢性的な思考となって体に影響を及ぼすこともありますね。 ということは、健やかな心の習慣んも身に付けることが可能になります。どのような形で保つのか?例えば、人に伝える言葉をポジティブ表現に変えてみる。喜んでもらえる言葉へ変換する。第三者の選択を、尊重する。 人には、言動や行動には閉経がありますよね。 ネガティブな発信をした背景を、想像してみると相手に対して、不満や強い憎しみが軽減することもあるかもしれません。 誰もが、秘密にしているネガティブな感情を見られないように隠しているのですから、触れられると怒りたくなる感情も理解ができるような気がします。 一番大切なことは、自分自身を守ることや健やかでいることに繋げる一つの方法です。 誰かの為ではなく、あなた自身の為にできることを探してみることから始めたいですね。 週末連休の方、お仕事の方、様々な働き方の中で、一息を…
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(ご隠居さんとお孫さんから)
小学生のころに一緒に暮らしていたおじいちゃん・おばあちゃん。おじいちゃんは木や花とお話しする優しい人、おばあちゃんは変な歌を歌う楽しい人でした。亡くなってもう30年余…久々に、無性に、会いたくなりました。
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名古屋駅でのランチ
皆さんこんにちは 心理カウンセラーの水野綾子です☺️ 今日はお友達とランチに行ってきました😍 久しぶりのランチでとってもおいしかったです サラベス https://map.yahoo.co.jp/v2/place/CGeJlW7DeWQ?fr=sydd_p-grmspot-iky-header_gs-ttl&from_srv=search_web Screenshot 名古屋駅すぐJRゲートタワーの1階にあります 知る人ぞ知る、エッグベネディクトを有名にさせたお店です😍 私は名古屋駅を毎日通るのですが、お店に入るのは初めてでした。 外から見る景色と違い店の中から見る名古屋駅はなぜかとってもおしゃれな街に見えました笑 見るところによって全く違うように見えるので不思議ですね😗 私はサーモンが入ったスクランブルエッグのセットにしました お腹がとってもいっぱいなり満足でしたよ 食べた後…
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オンラインお話し会へのご参加 ありがとうございました❣ #お話会 #オンライン #くれたけ心理相談室 #心理カウンセリング #心理カウンセラー #ロバーツ多英子 #ニュージーランド #カンタベリー #榊原一樹 #北海道 #札幌市 #古坂禄子 #奈良県 #生駒市 #渡辺恭代 #入間市 #狭山市 #末光道代 #名古屋 (くれたけ心理相談室(全国)) https://www.instagram.com/p/CnpC8kquaLq/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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くれたけ心理相談室 総会
新年会(総会)が、本部のある名古屋にて行われました。
昨日2/23、くれたけ心理相談室の新年会(総会)が、本部のある名古屋にて行われました。 現在、くれたけ心理相談室所属のカウンセラーは総勢50名程ですが、その中で今回集まることができたメンバーにより北は仙台から南は福岡まで、各地の所属カウンセラーが集まり、親睦を深めることができました。 こうして集まって感じるのは、やっぱりみんな「人がいい」ということです(^^)同じ志をもとに、こうして対面で集まることによって、安心感や繋がりも感じますし、エネルギー的な交流が起こります。 くれたけ心理相談室では、対面のカウンセリングをお勧めすることがありますが、それは、何より対面で会った時の交流の深度の深まりが大きいということがあります。実際に対面でお会いすることができるということはとても貴重なことだと、今回も実感いたしました。 皆様、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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10/4 豊田市ランチ会開催のご案内
いつも公式サイトをご覧いただき ありがとうございます。 くれたけ心理相談室ランチ会のご案内です。 10月は豊田市にて開催いたします。 カウンセリングに興味のある方、 カウンセラーと話をしてみたい方 どなたでもご参加いただけます。 一緒にお食事やお話を、楽しんでいただけたらと思います。 日時:10月4日(金)11時30分~ 場所:ほがらか若草店 駐車場:有(名鉄上豊田駅より送迎可能です) 参加費:無料(食事代をご持参ください) 【参加予定カウンセラー】 ・竹内嘉浩代表(名古屋本部) ・柴田桃子(安城支部) ・岩崎景子(豊田支部) ★エントリー・詳細についてはこちらをご確認ください。 ※エントリー期限は、9月29日(日)です。 皆様にお会いできることを、楽しみにしております。
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今
2017の「ハロスクール、バイ��イ」という作品ぶりに舞台に出演するのだけれど、それまでにも
cocoon
ロミオとジュリエット
SHISHAMOさんの「中庭の少女たち」のMV
Maybe!のコラム2本
インベカヲリ★さんのモデルやったり
いろいろしてて
その期間、まあ、cocoonのオーディションと稽古含めて14~17歳の期間凄い活動してる面は幸せに満ちていて、何より人に恵まれていたなと。こころのそこから。
たくさんの優しい人たちに出会えたから今がある、とか言えちゃう私が居る現在。を作ってくれた期間で。
そこからなぜ、わたしは、演劇、またそれにまつわる制作、何かを作ること、から離れたのだろうかと、冷静に考える。
第1に、最後に出演した「ハロスクール、バイバイ」が個人的にものすごく不完全燃焼で、この時期、演出家の同時進行の作品があまりに多く作品を作ること、とは一体なんなんだろうか、自分自身が主役という役割を与えられそんなことを考えながらもお客さんは時間を割いて劇場にやってくる。そういった作り方と私と思考と劇場と人々、全てがチグハグに感じた。
そのチグハグさを抱えながら私は演じてしまったのだった。
そして、なにより、劇場へ向かう時間たちの考え方のすれ違いを演出の藤田貴大さんと強く感じた。そこから、私は演じる、作る、携わる、ではなく、完全に裏方の仕事、学芸員等、について学べる大学の学部に入学した。
それまでは、油絵をやっていたが、作ること、を、17歳の時、私は完全に1度やめて、作るため、それを世に出すにはどう言った仕組みがあり、どうしたら人々が作品を見ることができるのか、という仕組みについて学ぶ事が大切であると考えたのだ。
家庭の方では、ハロスクール、の時に、無断で私の本名、仕事歴、外見、精神病をコンテンツとして扱い親が大儲けしていた。リストカットの事は書かれていなかった。このころ、初めて精神科に行った、家庭環境を聞かれると直ぐに児童相談所に連絡しますと言われた、私はそんなことされたら殺されると思い、泣きながらやめてくれと懇願し、サインバルタをもらって帰った。
そっから私はさらに表に出ることをやめてバイトと趣味に専念してなんだか無理やり楽しい高���生にしてた。でも、この期間の趣味たちにはほんとに救われた、音楽だった。
また違う自分の目線も生まれれば、家の中にいる時耳栓をするんじゃなくて、好きな曲を大きな音で聞くことでどうにか過ごせるようになったし。部屋にポスターを貼って、猫と過ごしていたら、そこはもう、私たちだけの世界だった。
ある日の事だった、理解ある彼くん、でもないし、分かり合えてる訳でもないし、正反対で、永遠とぶつかってはつながる、そんな恋人、つまりめちゃくちゃ健全な恋人とデートする約束があった。
私は基本的に洗面台を長時間使うことを許されては居ないが、兄は許されている、というか、実家(と言いたくないけど)の洗面所とふろ場はガラス張りでスケスケで、洗面所を使う=ふろ場が丸見えということなのだ。
私は用事があるので洗面所を使いたかった。
もちろん長風呂して中で違法アップロードされたバライティを見ている兄は分かっていても出てこない。ノックをする。無視。ノックをする。無視。全力でドアを殴る。ビビってキョドる兄。
兄は喧嘩をしたことが無い。
大急ぎで風呂を出た兄は部屋にいる私に向かって廊下からばーか!くそが!うにゃうにゃー!みたいなことを言っていたので、私は廊下に出て「お前が死ねばよかったのに」と、13年間思い続けてきたことを言った。
そしたら、喧嘩をしたことがない兄は、顔を殴ろうとしてミスって耳を殴った。
しかしピアスまみれの私には大打撃だった。
兄はそういうやつだ。
その後遅刻して彼に出会った時、「お前が死ねばよかったのに」という発言を思い返して涙がでた。お父さんはきっと望んでいない言葉だからだ。
家に帰るとお母さんが怒っていた、大学生がJKと風呂の長さで喧嘩してお母さんにチクっていた。うける。そんなこと言っちゃいけないのよ、と言われたので「今度から思っていることは言わないようにします」と言って部屋にもどった。
明日に親戚のおじさんが来ると言われた、お父さんが居ない私にお父さんの代わりのように親戚のおじさんをよく召喚する。
お父さんはお父さんでしかないのに。
次の日家で吉原炎上を見てたら親戚が来た
映画見終わってからでいいよと言われた、なんだよその気遣い。なんて思った。
このとき吉原炎上を見ていて良かったと思った、肝が座っている私だが、映画に影響を受け、いつも以上に肝が座って、劇中のかたせ梨乃の佇まいだった。
おじさんは「なんでおいちゃんがここにきちゅうかわかっちょると思うけど、お母さんの考えでひよは、これから一人暮らしすることになったら、家族のありがたみがわかるはずや」といった、
「私に��ばずれ、クソ女、ヤリマン、ゴミ、そんなふうに言ってたお母さんは私の個人情報をばらした上に私のメンタルを壊して、その、個人情報のせいで、バイト先に変なおじさんが来たり、学校でからかわれたりしたことはなかった事ってことでいいんですか?」
と伝えた
おじさんの隣に座るおばさんは、ずっと苦しそうな顔をしていた。私と同じような言葉をかけられていたからだろう。反発する私と、反発せずおじさんの横に座ることを決めた人生のおばさん。
「そおゆう言葉はコミニケーションやき、まあ、ね、そおゆうこともあったのも知らんかったがやけどまぁこの家に産まれたからにゃしょうがないことや」
そう言われた
しょうがない
うける
うける
能が何が正しいのかわからなくなり解離して私が私を見ているのがまじまじと分かった。
何も解決しない会話があった高校三年生の真ん中だった。
この頃から、文章が書けなくなった。
精神世界の話、というより、目の前にある全てのものが精神世界だった。バグって見えていた。それを私は書いていた。もちろん採用?されることは無かった。
最初は学費も生活費も出さないと言っていたお母さんをほっといたらAOで受かった大学の入学金を、勝手に振り込んでいた、お母さんは本気で私のことを捨てる度胸がないからだ。
三学期の家にいる期間、毎日、過呼吸や手首がズタボロになるまで何かと罵られていたが、そこんとこは病気特有の能が忘れさせてくれていて覚えていない。
ただ覚えているのは、5万円突然渡してきて、受け取って、ありがとうって言わなかったと永遠と罵られて5万円くれてありがとうございますと私が泣きながら言う。的なプレイは毎日のようにあった。あるあるの私のお金がなかったらお前は死んでるんだぞ発言は普通すぎて能が普通だよ〜って覚えてる。
なぜ今こんなこと書いてるかっていうと、カウンセリングが進んで脳が思い出してきてるからで、そして、精神世界に生きていなくなっていて、外の感覚、皮膚とか温度とか空気とか、そういうのがやや分かるようになってきて、普通の人のように。
そして去年東葛スポーツのA-②をみて、初めてcocoonにでた時のような幸せな心を思い出して、ああ、そういえば私って、なにかつくったり、かいたり、演じるのが好きな人だった。うれしかった。自分が自分を思い出すまでに時間がかかってしまったけど。
そいで、金山さんにファンレターみたいなのを送って、出演することになって。
生きてる限り誰かは私の事見ててくれるし知ってくれるのかと、私っていう存在は私だけでどんだけ解離性同一性障害であろうと、私という物体は1つだったんだ。過去に何があろうと、今なんだな、と。
コロナでどうなるのか分からないけど無事本番を迎えられますように。
そして、愛する鴨志田穣さん、私のお父さん。苗字を借りました、ありがとうございます。ずっと一緒にいるなってきもちが、一番で。今までもそうだったけど、それ以上に。
勝手に過去のお父さんの画像をsns載せてる方がいらっしゃいますがライターを名乗るのならしっかりと許可を取ってください。
鴨志田ひよ (id:norokoro) 327日前
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「田中絵里カウンセラーってどんな人ですか?」(くれたけ#208)
くれたけ心理相談室からカウンセラーへの今月のお題の一つ目にお答えします。 【お題】「田中絵里カウンセラーってどんな人ですか?」 田中絵里カウンセラーは、愛知県の知多・名古屋・長久手でご活躍されている私と同世代のカウンセラーさんです。 この人…、本当に…、化け物です!!笑 まず、神出鬼没! どこにでも現れます。 おそらく捕まえたくても捕まらない。 そして、彼女そのものが元気玉! いつもパワフルでエネルギッシュ。 そのエネルギーはどこからくるの? あ、答えは分かっています。おいしい食事ですね。 とにかくグルメです。いつも美味しそうなものを食べていますね。 もちろん、カウンセラーとしても化け物です。 多忙な中、公認心理師の資格を取得されています。 本当に尊敬します。 そんなくれたけ心理相談室のドン、田中絵里カウンセラーが私は大好きです。 化け物のカウンセリング、ぜひ受け…
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二年前日記5(2021年1/29〜2/4)
1月29日 夫はだいぶ元気になってきた。安心感が出たのか私は全然頑張れなくなってしまって、涙が出そうになってきたので、これはやばいなと思って携帯の電源を切ってしばらく布団に潜って本を読んだりごろごろしたら少し復活した。頑張りすぎは続かない。夫にも「頑張らんといてな」と昨日言われていた。不安定な人がいるとどうしても頑張るスイッチが入ってしまう。実家にいるときはずっとそんな感じだったんだなと今思えば思う。携帯の電源を入れると保険会社の人の留守電が入っていたので折り返す。来週、事故の状況を確認する調査があるんだそう。不利な風にもっていかれるのでは��いかとつい考えてしまう。信頼するって勇気がいることなんだな。腑に落ちた。限度額証明書が届いたので、病院代の差額を払いに行く。夫も一度外に出た方がいいんじゃないかなと思って、義実家に送り届けた。顔も見たいだろうし。支払いを済ませてから私も義実家へ。「お好み焼き食べていく?」と聞かれよばれることにした。お義母さんのお好み焼きはとても美味しい。いつもは持って帰ってきてくれるのをいただくが、今日は焼きたてが食べられて嬉しかった。お義父さんとお義母さんの誕生日につばた夫妻の本とDVDを贈ったらとても喜んでくれた。お義父さんは3月で定年後に働いていた病院の運転手を退職。もっと野菜作りを本格的にやるんだそう。入院中のこと、お疲れ様と言ってもらえたのが嬉しかった。母から電話。夫の状態のこと、昨日も説明したけど、またかかってきた。
1月30日 『名建築で朝食を』のスペシャルをを見ながら朝ごはんを食べる。私は11時からカウンセリングの予約をしていた。今回はzoomでうまくいった。話そうと思っていたことをとりとめもなく話す。やはりオンラインはオンラインですよねという話も先生とした。相談に行くまでの道中とかもきっと大事な時間なんだろうな。早く対面でできるようにして欲しい。お昼はラー飯。マルちゃんのでやったらいまひとつだった。あれはやはりサッポロ一番でないとダメなのかな。実家に顔を出そうかと思っていたけれど、足の痛みが出てきたみたいで今日はやめておくことにした。新しい痛みが出てくると精神的にしんどそう。そりゃそうだ。私もしんどくなって、少しワインを飲んだ。晩ご飯は津田鍋(北欧暮らしの道具店の津田さん考案の鍋)、カリフラワーのおかか和え。9時までには布団に入った。しっかり寝ないと心が壊れてしまう。父から母の料理がいよいよあやしくなってきたと連絡があった。どうしたらいいかなあ。自分でやりたい気持ちが強いから。とりあえず一度崩壊するのを見守るしかないのかな。
1月31日 朝、夫はガンダムを見て、私は本を読む。Zガンダムは終わり、次はガンダムZZ?Zが増えていく方式なのだろうか。午後、古本屋さんに本を売りに。500円でした。丈の長いパンツをお直しに出して、買い物をして帰宅。晩ご飯は、蛸飯、アボカドとエビのサラダ、買ってきた鴨ロースト。『麒麟がくる』を最後の最後になって見始めた。面白いなあ。
2月1日 朝、2人で鍼に行く。行く前になって急に夫が足湯をし始めたりしてイライラする。何とかギリギリに到着。最近、施術中に一瞬眠りそうになることがある。より力を抜けるようになってきたのか���しれない。嫌な力みは一日中感じている。お昼、サイゼリヤへ。私が頼んだもの(フリウリ風フリコ、アロスティチーニ、たまねぎのズッパ)が美味しすぎると夫が絶賛していた。私もこの美味しさはちょっとどうかしていると思っている。2時ごろ帰宅。読書。晩ご飯は、レトルトの八宝菜(白菜だけ加えればできるやつ)をご飯にかけた中華丼。ちょっといっぱいいっぱいになってしまって苦しい。色々わめくのを夫は静かに聞いていた。
2月2日 夫を義実家に預けて久しぶりに仕事へ。仕事はたのしいな。頭が一瞬にしてクリアになった。視野が狭くなると自分で自分を苦しめてしまうのだな。外に外に出て行こう。そのための力をもっとつけよう。帰り道、海が春っぽかった。義実家に迎えに行く前に、実家にも寄った。母親はご機嫌。今日は健康体操と歌声サロンがあったそう。好きな『雪椿』を歌ってくれた。やさしさとかいしょのなさがなんちゃらかんちゃらという曲。父は優しくも甲斐性がなくもないような気もするが、母にはそう見えているのか、本当はそういう人なのか、本当はそういう人と結婚したかったのか、よくわからない。父は母の料理があやしくなってきたので圧力鍋料理に凝り出した。鯖の味噌煮を作ったそうで少し分けてもらう。美味しそう。6時ごろ義実家へ。晩ご飯もご馳走になる。ありがたや。銀杏の炊き込みご飯、サーモンのお造り、ふろふき大根、具沢山のすまし汁、壬生菜の漬物、私が実家からもらってきた海苔巻き。どれも美味しかった。緊急事態宣言は一ヶ月延長になった。
2月3日 朝、夫の病院の付き添い。CTのあと先生の診察。足は特に心配ないみたい。昼は病院の食堂で食べた。私はとんかつ、夫は海老フライカレー。復帰の相談をしに会社に一度行ってみたらと言っていたのだが、会社に聞いたら「来なくていいと言われた」とのこと。よくよく聞いてみると、挨拶にくると思われていたようで復帰の目処がたってからでいいとのこと。「来週ぐらいにでもその相談に行くための約束を取った方がいいんじゃないのと思ってたんだけど」と言うと「まだそんなこと考えられない」と少し怒られてしまった。そんな気持ちはないけど追いつめてしまってるみたい。私は先の予定が立たないことが苦手。もし難しそうならちょっとずつ軌道修正していけばいいと思う。一方で、夫は予定を立てるのが嫌い。予定を立てて変更になるのが苦手。この違いなのだろうな。ただ居るだけってしんどいもんだな。人をコントロールしたい気持ちが出てきて怖い。今のうちに気づけてよかった。もうなるべく仕事と事故の話はしない。向き合って話をするのではなく、同じ方向を向いてそれぞれが少しずつでも前に進もう。晩ご飯は、父作の鯖の味噌煮、菜花の胡麻味噌和え、紅生姜天。
2月4日 立春。朝、散歩。昼はがんもどきと菜の花の炊いたの、納豆ご飯。昼から少し俳句をして、隣町の図書館へ。借りすぎないぞと決めていたが、面白そうな本がたくさんあって誘惑に負けた。図書館の近くの公園のカフェへ。日替わりでいろんな人がやっている。ホットチョコプリンが食べたかったけれど、ちょうど売り切れたところで、フレンチトーストにしたらそちらもすごく美味しかった。値段は破格の200円。「これ200円なんですか?」と言うと、「さっきのお客さんにも言われました」と苦笑されていた。晩ご飯は参鶏湯。サラダセロリをのせて。春だし巡らさないとと思って。
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9月の心理カウンセリング
9月は秋らしさを感じられる瞬間があります。個人的に秋はとても過ごしやすく1年の中でも、すきな季節です。夏の疲れがでやすい時期ですので、もちろん胃腸の疲れが出たり、倦怠感を感じやすいのかもしれません。 こころも似ているところがあり、それぞれの心の成長の時期は違っています。急激な心の成長が必要になられる場合は、心も疲れを感じてSOSを出してくれます。人によりSOSサインは違っていますが、呼吸がしずらい、めまい、深夜の漠然とした不安、睡眠障害、食欲減退、過食、様々です。「気にしない」というセリフはこの時期には禁物なのです。こころが、声を上げてくれているのです。こころの異変を放置した結果、身体症状まで出てきて、動けなくなってしまった。 このようなケースは多いのです。 気にしないという方法も、使い方を間違えると大変な結果となります。 ご自身でセルフケアが苦手なだと感じられた際は、心理カウン…
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#半田市夫婦問題相談#半田市子育て相談#名古屋スピリチュアル#名古屋夫婦カウンセリング#名古屋市婚活悩み#名古屋市恋愛相談#名古屋市男性カウンセリング#名古屋心理カウンセリング#常滑市夫婦問題相談#東海市夫婦相談#知多夫婦問題#知多市恋愛相談#長久手メンタルケア#長久手夫婦問題#長久手浮気相談
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一生懸命に生きる自分にきづくとき、人生は彩りにあふれ、鮮やかにかがやく。自分をいとおしく思う。 あなたは頑張っている!
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対面でのカウンセリングについて
皆さんこんにちは、 心理カウンセラーの水野綾子です🥰 今日はカウンセリング場所のご案内です😉 対面カウンセリングの場合、 平日は主に名古屋駅や金山駅にて、 土日祝日は加えて名古屋ルームも 対応させていただいております。 (フレキシブルに対応はさせていただきますので、 まずはお問い合わせくださいね) 場所は名古屋市内どこでも可能ですが、 ホテルラウンジやカフェ、レンタルルームを 使���させていただくことが多いです。 クライアント様と一緒に決めさせていただきます😉 ご予約の流れ ご予約 ↓ 返信をいたします ↓ クライアント様のご希望など聞き取りします ↓ レンタルルームなどの場合は 空き状況もふまえ、ご納得いただきご予約の確定です 以下、オススメのカウンセリング場所です😍 オススメカウンセリング場所 マリオット名古屋アソシアホテル シーナリー 最寄り:名古屋駅(各線) 利用可能時間:2…
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#カウンセリングを受けた方の経緯 くれたけ心理相談室のカウンセリングに初めてお越しになられる皆様も、実際に行動に至るまでには様々なお気持ちを持たれます。 「どうしようもなく手助けが欲しくて、すぐにネットで調べ��」 「自分でいろいろと改善を試みたが、変化が無かったので専門家に相談しようと思った」 「それほど大きな悩みでは無かったが、心理分野でのブレーンは作っておこうと思った」 「メンタル関係の本を読み興味を持ったので、一度受けてみようと思った」 「経営者なので、定期的なメンタルチェックをしてくれる所を探していた」 「信頼ある知人に勧められた」 「自分が持っている心の中の思いを、一度誰かに全て話したかった」 「病院や役所の相談窓口に行ったら、カウンセリングを勧められた」 「他のカウンセリングルームに通っていたが、どうも合わなかった」 「新しい環境に身を置くので、その前に心の整理がしたかった」 「メンタルクリニックに通っているが、対処ではなく根本的な改善をしたいから」 「ブログを見てカウンセラーに興味があった」等々です。 理由は実に様々で、心をテーマにした事であればご活用いただきたいと思っております。しかしながら、当相談室には、人生のあらゆる問題や悩みの解消の他、モチベーション管理、性格改善、目標実現のためのチェック等、様々な目的でご来所いただいております。 カウンセリング手法の他に、催眠療法、メンタルヘルス、脳科学(神経科学)からのアプローチ等で、画一的なカウンセリングでなく、100名100様の状況に柔軟に対応させていただきます。 カウンセリングルーム セラピーを初めて受けられる方には、もしかして「カウンセリングに依存してしまうのでは・・・」とご心配をされたり、「どのくらい通って望む状態になるのか?」と、もしかしたらご不安���お持ちになるかも知れませんが、当相談室では、初回のカウンセリングにて無碍に継続をお勧めする事はございません。(指針はお伝えさせていただきます)出来る限り早期に終結していただく事を私共も望んでおりますし、何よりもご自身のお気持ちに沿った施術をさせていただきたいと思っております。 それが信頼の元として、クライアント様からの紹介を多くいただいております。終了後に、抱えてみえた迷いが消えて、すっきりと今後の人生を歩んでいただける様に誠意を持って取り組ませていただいてます。 ある意味エステでお肌を美しく保たれる様に、フィットネスクラブに通って健全な身体を作られる様に、もちろん気軽なものではございませんが、内面のケアとしてカウンセリングをご活用いただければと思っております。 #心理カウンセラー #榊原一樹 #くれたけ心理相談室札幌支部 #橋本真弓 #くれたけ心理相談室エノー支部 #末光道代 #竹内嘉浩 #くれたけ心理相談室名古屋本部 (くれたけ心理相談室(全国)) https://www.instagram.com/p/CncMKnIN6Ln/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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𝕝𝕟𝕤𝕥𝕒𝕘𝕣𝕒𝕞をご覧の皆様。 こんばんは。 新たな称号を手に入れた男です。 昨年ヘアケアマイスター試験に 新設されたコース。 その名もズバリ 【ポーラスターコース】 なぜポーラスターが誕生したかと お客様は最初、理美容師のサービスや 技術、商品を知らない状態です。 理美容師は自分自身が提供する サービスや商品をお客様に【認知】 されることで理美容師個々の ブランディングを確率することが 出来ます。 ポーラスター【北極星】はその昔、 航海の羅針盤となった星です。 ポーラスターコースは ヘアケアマイスターの毛髪化学の 専門性をベースに理美容師の様々な 知識と経験が、お客様のライフデザインの 羅針盤となることで 理美容師として本来あるべき姿として より貢献出来るようにと作ったもの。 『何を伝えるかより、誰が伝えるか?』 理美容師のサービスや技術、商品が 認知されること。 知識をベースとしたカウンセリングが お客様と生涯向き合い、 切れ目のない関係性を構築し、 地域のかかりつけ医のような存在となり、 お客様にとって理美容師が唯一無二の 存在となることがゴール‼️ ��まり! 私、服部裕一が1度担当させて 頂いたからにはヘアデザインを 通して、心も身体も健康で ハッピーでいて欲しい。 気分が乗らない時ほど 美容院にきてリフレッシュしたり リラックスしたりして 明日からの生活が楽しくなるような そんなヘアデザインが作れる美容師 でありたいと思います。 なので今までは 今日どうしましょうか?という カウンセリングの入り口でしたが。 これからは 今日はどうされましたかぁ?と ドクターが開口一番に言う このセリフから始めたいと 思います。 そして 思いの丈を打ち明けてください。 私の知識と経験の中から ベストな方向性を導いていきます。 足元を照らす一筋の月の光のように ポーラスターとして(笑) やっと手元にディプロマとカードが 届いたので公開させていまだきました。 マイスターの方は4回くらい落ちた けど こちらはテキスト受け取ってから 毎日のように読み続けて1回で 合格出来て…自分が1番ビビった っていう(笑) まさか受かってるなんてみたいな。 #ヘアケアマイスター #ポーラスターコース #1発合格 #美容師 #服部裕一 #名東区美容師 #一社美容師 #名東区美容室 #名古屋美容室 #一社美容室 #駅近美容室 (Nagoya-shi, Aichi, Japan) https://www.instagram.com/p/CnRwh4jvywA/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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名古屋ルーム(名古屋市名東区)開設のご案内です。
いつも公式サイトをご覧いただき ありがとうございます。 くれたけ心理相談室 豊田支部は 愛知県豊田市を拠点とし 豊田市、みよし市、日進市での カウンセリングをお受け致しております。 この度、上記地域に加え、新たに くれたけ心理相談室名古屋ルーム(名古屋市名東区) にて、カウンセリングをスタート致します。 当サイト内の『アクセス』に 『名古屋ルーム(名古屋市名東区)カウンセリング』 のご案内を追加致しました。 詳細については、下記ページをご確認ください。 くれたけ心理相談室 名古屋ルームカウンセリング 今後ともよろしくお願いいたします。 くれたけ心理相談室 豊田支部 岩崎 景子
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【小説】The day I say good-bye (1/4) 【再録】
今日は朝から雨だった。
確か去年も雨だったよな、と僕は窓ガラスに反射している自分の顔を見つめて思った。僕を乗せたバスは、小雨の降る日曜の午後を北へ向かって走る。乗客は少ない。
予定より五分遅れて、予定通りバス停「船頭町三丁目」で降りた。灰色に濁った水が流れる大きな樫岸川を横切る橋を渡り、広げた傘に雨音が当たる雑音を聞きながら、柳の並木道を歩く。
小さな古本屋の角を右へ、古い木造家屋の住宅ばかりが建ち並ぶ細い路地を抜けたら左へ。途中、不機嫌そうな面構えの三毛猫が行く手を横切った。長い長い緩やかな坂を上り、苔生した石段を踏み締めて、赤い郵便ポストがあるところを左へ。突然広くなった道を行き、椿だか山茶花だかの生け垣のある家の角をまた左へ。
そうすると、大きなお寺の屋根が見えてくる。囲われた塀の中、門の向こうには、静かな墓地が広がっている。
そこの一角に、あーちゃんは眠っている。
砂利道を歩きながら、結構な数の墓の中から、あーちゃんの墓へ辿り着く。もう既に誰かが来たのだろう。墓には真っ白な百合と、あーちゃんの好物であった焼きそばパンが供えてあった。あーちゃんのご両親だろうか。
手ぶらで来てしまった僕は、ただ墓石を見上げる。周りの墓石に比べてまだ新しいその石は、手入れが行き届いていることもあって、朝から雨の今日であっても穏やかに光を反射している。
そっと墓石に触れてみた。無機質な冷たさと硬さだけが僕の指先に応えてくれる。
あーちゃんは墓石になった。僕にはそんな感覚がある。
あーちゃんは死んだ。死んで、燃やされて、灰になり、この石の下に閉じ込められている。埋められているのは、ただの灰だ。あーちゃんの灰。
あ���。あーちゃんは、どこに行ってしまったんだろう。
目を閉じた。指先は墓石に触れたま��。このままじっとしていたら、僕まで石になれそうだ。深く息をした。深く、深く。息を吐く時、わずかに震えた。まだ石じゃない。まだ僕は、石になれない。
ここに来ると、僕はいつも泣きたくなる。
ここに来ると、僕はいつも死にたくなる。
一体どれくらい、そうしていたのだろう。やがて後ろから、砂利を踏んで歩いてくる音が聞こえてきたので、僕は目を開き、手を引っ込めて振り向いた。
「よぉ、少年」
その人は僕の顔を見て、にっこり笑っていた。
総白髪かと疑うような灰色の頭髪。自己主張の激しい目元。頭の上の帽子から足元の厚底ブーツまで塗り潰したように真っ黒な恰好の人。
「やっほー」
蝙蝠傘を差す左手と、僕に向けてひらひらと振るその右手の手袋さえも黒く、ちらりと見えた中指の指輪の石の色さえも黒い。
「……どうも」
僕はそんな彼女に対し、顔の筋肉が引きつっているのを無理矢理に動かして、なんとか笑顔で応えて見せたりする。
彼女はすぐ側までやってきて、馴れ馴れしくも僕の頭を二、三度柔らかく叩く。
「こんなところで奇遇だねぇ。少年も墓参りに来たのかい」
「先生も、墓参りですか」
「せんせーって呼ぶなしぃ。あたしゃ、あんたにせんせー呼ばわりされるようなもんじゃございませんって」
彼女――日褄小雨先生はそう言って、だけど笑った。それから日褄先生は僕が先程までそうしていたのと同じように、あーちゃんの墓石を見上げた。彼女も手ぶらだった。
「直正が死んで、一年か」
先生は上着のポケットから煙草の箱とライターを取り出す。黒いその箱から取り出された煙草も、同じように黒い。
「あたしゃ、ここに来ると後悔ばかりするね」
ライターのかちっという音、吐き出される白い煙、どこか甘ったるい、ココナッツに似たにおいが漂う。
「あいつは、厄介なガキだったよ。つらいなら、『つらい』って言えばいい、それだけのことなんだ。あいつだって、つらいなら『つらい』って言ったんだろうさ。だけどあいつは、可哀想なことに、最後の最後まで自分がつらいってことに気付かなかったんだな」
煙草の煙を揺らしながら、そう言う先生の表情には、苦痛と後悔が入り混じった色が見える。口に煙草を咥えたまま、墓前で手を合わせ、彼女はただ目を閉じていた。瞼にしつこいほど塗られた濃い黒い化粧に、雨の滴が垂れる。
先生はしばらくして瞼を開き、煙草を一度口元から離すと、ヤニ臭いような甘ったるいような煙を吐き出して、それから僕を見て、優しく笑いかけた。それから先生は背を向け、歩き出してしまう。僕は黙ってそれを追った。
何も言わなくてもわかっていた。ここに立っていたって、悲しみとも虚しさとも呼ぶことのできない、吐き気がするような、叫び出したくなる���うな、暴れ出したくなるような、そんな感情が繰り返し繰り返し、波のようにやってきては僕の心の中を掻き回していくだけだ。先生は僕に、帰ろう、と言ったのだ。唇の端で、瞳の奥で。
先生の、まるで影法師が歩いているかのような黒い後ろ姿を見つめて、僕はかつてたった一度だけ見た、あーちゃんの黒いランドセルを思い出す。
彼がこっちに引っ越してきてからの三年間、一度も使われることのなかった傷だらけのランドセル。物置きの中で埃を被っていたそれには、あーちゃんの苦しみがどれだけ詰まっていたのだろう。
道の途中で振り返る。先程までと同じように、墓石はただそこにあった。墓前でかけるべき言葉も、抱くべき感情も、するべき行為も、何ひとつ僕は持ち合わせていない。
あーちゃんはもう死んだ。
わかりきっていたことだ。死んでから何かしてあげても無駄だ。生きているうちにしてあげないと、意味がない。だから、僕がこうしてここに立っている意味も、僕は見出すことができない。僕がここで、こうして呼吸をしていて、もうとっくに死んでしまったあーちゃんのお墓の前で、墓石を見つめている、その意味すら。
もう一度、あーちゃんの墓に背中を向けて、僕は今度こそ歩き始めた。
「最近調子はどう?」
墓地を出て、長い長い坂を下りながら、先生は僕にそう尋ねた。
「一ヶ月間、全くカウンセリング来なかったけど、何か変化があったりした?」
黙っていると先生はさらにそう訊いてきたので、僕は仕方なく口を開く。
「別に、何も」
「ちゃんと飯食ってる? また少し痩せたんじゃない?」
「食べてますよ」
「飯食わないから、いつまでも身長伸びないんだよ」
先生は僕の頭を、目覚まし時計を止める時のような動作で乱雑に叩く。
「ちょ……やめて下さいよ」
「あーっはっはっはっはー」
嫌がって身をよじろうとするが、先生はそれでもなお、僕に攻撃してくる。
「ちゃんと食わないと。摂食障害になるとつらいよ」
「食べますよ、ちゃんと……」
「あと、ちゃんと寝た方がいい。夜九時に寝ろ。身長伸びねぇぞ」
「九時に寝られる訳ないでしょう、小学生じゃあるまいし……」
「勉強なんかしてるから、身長伸びねぇんだよ」
「そんな訳ないでしょう」
あはは、と朗らかに彼女は笑う。そして最後に優しく、僕の頭を撫でた。
「負けるな、少年」
負けるなと言われても、一体何に――そう問いかけようとして、僕は口をつぐむ。僕が何と戦っているのか、先生はわかっているのだ。
「最近、市野谷はどうしてる?」
先生は何気ない声で、表情で、タイミングで、あっさりとその名前を口にした。
「さぁ……。最近会ってないし、電話もないし、わからないですね」
「ふうん。あ、そう」
先生はそれ以上、追及してくることはなかった。ただ独り言のように、「やっぱり、まだ駄目か」と言っただけだった。
郵便ポストのところまで歩いてきた時、先生は、「あたしはあっちだから」と僕の帰り道とは違う方向を指差した。
「駐車場で、葵が待ってるからさ」
「ああ、葵さん。一緒だったんですか」
「そ。少年は、バスで来たんだろ? 家まで車で送ろうか?」
運転するのは葵だけど、と彼女は付け足して言ったが、僕は首を横に振った。
「ひとりで帰りたいんです」
「あっそ。気を付けて帰れよ」
先生はそう言って、出会った時と同じように、ひらひらと手を振って別れた。
路地を右に曲がった時、僕は片手をパーカーのポケットに入れて初めて、とっくに音楽が止まったままになっているイヤホンを、両耳に突っ込んだままだということに気が付いた。
僕が小学校を卒業した、一年前の今日。
あーちゃんは人生を中退した。
自殺したのだ。十四歳だった。
遺書の最後にはこう書かれていた。
「僕は透明人間なんです」
あーちゃんは僕と同じ団地に住んでいて、僕より二つお兄さんだった。
僕が小学一年生の夏に、あーちゃんは家族四人で引っ越してきた。冬は雪に閉ざされる、北の方からやって来たのだという話を聞いたことがあった。
僕はあーちゃんの、団地で唯一の友達だった。学年の違う彼と、どんなきっかけで親しくなったのか正確には覚えていない。
あーちゃんは物静かな人だった。小学生の時から、年齢と不釣り合いなほど彼は大人びていた。
彼は人付き合いがあまり得意ではなく、友達がいなかった。口数は少なく、話す時もぼそぼそとした、抑揚のない平坦な喋り方で、どこか他人と距離を取りたがっていた。
部屋にこもりがちだった彼の肌は雪みたいに白くて、青い静脈が皮膚にうっすら透けて見えた。髪が少し長くて、色も薄かった。彼の父方の祖母が外国人だったと知ったのは、ずっと後のことだ。銀縁の眼鏡をかけていて、何か困ったことがあるとそれをかけ直す癖があった。
あーちゃんは器用だった。今まで何度も彼の部屋へ遊びに行ったことがあるけれど、そこには彼が組み立てたプラモデルがいくつも置かれていた。
僕が加減を知らないままにそれを乱暴に扱い、壊してしまったこともあった。とんでもないことをしてしまったと、僕はひどく後悔してうつむいていた。ごめんなさい、と謝った。年上の友人の大切な物を壊してしまって、どうしたらよいのかわからなかった。鼻の奥がつんとした。泣きたいのは壊されたあーちゃんの方だっただろうに、僕は泣き出しそうだった。
あーちゃんは、何も言わなかった。彼は立ち尽くす僕の前でしゃがみ込んだかと思うと、足下に散らばったいびつに欠けたパーツを拾い、引き出しの中からピンセットやら接着剤やらを取り出して、僕が壊した部分をあっという間に直してしまった。
それらの作業がすっかり終わってから彼は僕を呼んで、「ほら見てごらん」と言った。
恐る恐る近付くと、彼は直ったばかりの戦車のキャタピラ部分を指差して、
「ほら、もう大丈夫だよ。ちゃんと元通りになった。心配しなくてもいい。でもあと1時間は触っては駄目だ。まだ接着剤が乾かない��らね」
と静かに言った。あーちゃんは僕を叱ったりしなかった。
僕は最後まで、あーちゃんが大声を出すところを一度も見なかった。彼が泣いている姿も、声を出して笑っているのも。
一度だけ、あーちゃんの満面の笑みを見たことがある。
夏のある日、僕とあーちゃんは団地の屋上に忍び込んだ。
僕らは子供向けの雑誌に載っていた、よく飛ぶ紙飛行機の作り方を見て、それぞれ違うモデルの紙飛行機を作り、どちらがより遠くへ飛ぶのかを競走していた。
屋上から飛ばしてみよう、と提案したのは僕だった。普段から悪戯などしない大人しいあーちゃんが、その提案に首を縦に振ったのは今思い返せば珍しいことだった。そんなことはそれ以前も以降も二度となかった。
よく晴れた日だった。屋上から僕が飛ばした紙飛行機は、青い空を横切って、団地の駐車場の上を飛び、道路を挟んだ向かいの棟の四階、空き部屋のベランダへ不時着した。それは今まで飛ばしたどんな紙飛行機にも負けない、驚くべき距離だった。僕はすっかり嬉しくなって、得意げに叫んだ。
「僕が一番だ!」
興奮した僕を見て、あーちゃんは肩をすくめるような動作をした。そして言った。
「まだわからないよ」
あーちゃんの細い指が、紙飛行機を宙に放つ。丁寧に折られた白い紙飛行機は、ちょうどその時吹いてきた風に背中を押されるように屋上のフェンスを飛び越え、僕の紙飛行機と同じように駐車場の上を通り、向かいの棟の屋根を越え、それでもまだまだ飛び続け、青い空の中、最後は粒のようになって、ついには見えなくなってしまった。
僕は自分の紙飛行機が負けた悔しさと、魔法のような素晴らしい出来事を目にした嬉しさとが半分ずつ混じった目であーちゃんを見た。その時、僕は見たのだ。
あーちゃんは声を立てることはなかったが、満足そうな笑顔だった。
「僕は透明人間なんです」
それがあーちゃんの残した最後の言葉だ。
あーちゃんは、僕のことを怒ればよかったのだ。地団太を踏んで泣いてもよかったのだ。大声で笑ってもよかったのだ。彼との思い出を振り返ると、いつもそんなことばかり思う。彼はもう永遠に泣いたり笑ったりすることはない。彼は死んだのだから。
ねぇ、あーちゃん。今のきみに、僕はどんな風に見えているんだろう。
僕の横で静かに笑っていたきみは、決して透明なんかじゃなかったのに。
またいつものように春が来て、僕は中学二年生になった。
張り出されていたクラス替えの表を見て、そこに馴染みのある名前を二つ見つけた。今年は、二人とも僕と同じクラスのようだ。
教室へ向かってみたけれど、始業の時間になっても、その二つの名前が用意された席には、誰も座ることはなかった。
「やっぱり、まだ駄目か」
誰かと同じ言葉を口にしてみる。
本当は少しだけ、期待していた。何かが良くなったんじゃないかと。
だけど教室の中は新しいクラスメイトたちの喧騒でいっぱいで、新年度一発目、始業式の今日、二つの席が空白になっていることに誰も触れやしない。何も変わってなんかない。
何も変わらないまま、僕は中学二年生になった。
あーちゃんが死んだ時の学年と同じ、中学二年生になった。
あの日、あーちゃんの背中を押したのであろう風を、僕はずっと探してる。
青い空の果てに、小さ��消えて行ってしまったあーちゃんを、僕と「ひーちゃん」に返してほしくて。
鉛筆を紙の上に走らせる音が、止むことなく続いていた。
「何を描いてるの?」
「絵」
「なんの絵?」
「なんでもいいでしょ」
「今年は、同じクラスみたいだね」
「そう」
「その、よろしく」
表情を覆い隠すほど長い前髪の下、三白眼が一瞬僕を見た。
「よろしくって、何を?」
「クラスメイトとして、いろいろ……」
「意味ない。クラスなんて、関係ない」
抑揚のない声でそう言って、双眸は再び紙の上へと向けられてしまった。
「あ、そう……」
昼休みの保健室。
そこにいるのは二人の人間。
ひとりはカーテンの開かれたベッドに腰掛け、胸にはスケッチブック、右手には鉛筆を握り締めている。
もうひとりはベッドの脇のパイプ椅子に座り、特にすることもなく片膝を抱えている。こっちが僕だ。
この部屋の主であるはずの鬼怒田先生は、何か用があると言って席を外している。一体なんの仕事があるのかは知らないが、この学校の養護教諭はいつも忙しそうだ。
僕はすることもないので、ベッドに座っているそいつを少しばかり観察する。忙しそうに鉛筆を動かしている様子を見ると、今はこちらに注意を払ってはいなそうだから、好都合だ。
伸びてきて邪魔になったから切った、と言わんばかりのショートカットの髪。正反対に長く伸ばされた前髪は、栄養状態の悪そうな青白い顔を半分近く隠している。中学二年生としては小柄で華奢な体躯。制服のスカートから伸びる足の細さが痛々しく見える。
彼女の名前は、河野ミナモ。僕と同じクラス、出席番号は七番。
一言で表現するならば、彼女は保健室登校児だ。
鉛筆の音が、止んだ。
「なに?」
ミナモの瞬きに合わせて、彼女の前髪が微かに動く。少しばかり長く見つめ続けてしまったみたいだ。「いや、なんでもない」と言って、僕は天井を仰ぐ。
ミナモは少しの間、何も言わずに僕の方を見ていたようだが、また鉛筆を動かす作業を再開した。
鉛筆を走らせる音だけが聞こえる保健室。廊下の向こうからは、楽しそうに駆ける生徒たちの声が聞こえてくるが、それもどこか遠くの世界の出来事のようだ。この空間は、世界から切り離されている。
「何をしに来たの」
「何をって?」
「用が済んだなら、帰れば」
新年度が始まったばかりだからだろうか、ミナモは機嫌が悪いみたいだ。否、機嫌が悪いのではなく、具合が悪いのかもしれない。今日の彼女はいつもより顔色が悪いように見える。
「いない方がいいなら、出て行くよ」
「ここにいてほしい人なんて、いない」
平坦な声。他人を拒絶する声。憎しみも悲しみも全て隠された無機質な声。
「出て行きたいなら、出て行けば?」
そう言うミナモの目が、何かを試すように僕を一瞥した。僕はまだ、椅子から立ち上がらない。彼女は「あっそ」とつぶやくように言った。
「市野谷さんは、来たの?」
ミナモの三白眼がまだ僕を見ている。
「市野谷さんも同じクラスなんでしょ」
「なん��、河野も知ってたのか」
「質問に答えて」
「……来てないよ」
「そう」
ミナモの前髪が揺れる。瞬きが一回。
「不登校児二人を同じクラスにするなんて、学校側の考えてることってわからない」
彼女の言葉通り、僕のクラスには二人の不登校児がいる。
ひとりはこの河野ミナモ。
そしてもうひとりは、市野谷比比子。僕は彼女のことを昔から、「ひーちゃん」と呼んでいた。
二人とも、中学に入学してきてから一度も教室へ登校してきていない。二人の机と椅子は、一度も本人に使われることなく、今日も僕の教室にある。
といっても、保健室登校児であるミナモはまだましな方で、彼女は一年生の頃から保健室には登校してきている。その点ひーちゃんは、中学校の門をくぐったこともなければ、制服に袖を通したことさえない。
そんな二人が今年から僕と同じクラスに所属になったことには、正直驚いた。二人とも僕と接点があるから、なおさらだ。
「――くんも、」
ミナモが僕の名を呼んだような気がしたが、上手く聞き取れなかった。
「大変ね、不登校児二人の面倒を見させられて」
「そんな自嘲的にならなくても……」
「だって、本当のことでしょ」
スケッチブックを抱えるミナモの左腕、ぶかぶかのセーラー服の袖口から、包帯の巻かれた手首が見える。僕は自分の左手首を見やる。腕時計をしているその下に、隠した傷のことを思う。
「市野谷さんはともかく、教室へ行く気なんかない私の面倒まで、見なくてもいいのに」
「面倒なんて、見てるつもりないけど」
「私を訪ねに保健室に来るの、――くんくらいだよ」
僕の名前が耳障りに響く。ミナモが僕の顔を見た。僕は妙な表情をしていないだろうか。平然を装っているつもりなのだけれど。
「まだ、気にしているの?」
「気にしてるって、何を?」
「あの日のこと」
あの日。
あの春の日。雨の降る屋上で、僕とミナモは初めて出会った。
「死にたがり屋と死に損ない」
日褄先生は僕たちのことをそう呼んだ。どっちがどっちのことを指すのかは、��だに訊けていないままだ。
「……気にしてないよ」
「そう」
あっさりとした声だった。ミナモは壁の時計をちらりと見上げ、「昼休み終わるよ、帰れば」と言った。
今度は、僕も立ち上がった。「それじゃあ」と口にしたけれど、ミナモは既に僕への興味を失ったのか、スケッチブックに目線を落とし、返事のひとつもしなかった。
休みなく動き続ける鉛筆。
立ち上がった時にちらりと見えたスケッチブックは、ただただ黒く塗り潰されているだけで、何も描かれてなどいなかった。
ふと気付くと、僕は自分自身が誰なのかわからなくなっている。
自分が何者なのか、わからない。
目の前で展開されていく風景が虚構なのか、それとも現実なのか、そんなことさえわからなくなる。
だがそれはほんの一瞬のことで、本当はわかっている。
けれど感じるのだ。自分の身体が透けていくような感覚を。「自分」という存在だけが、ぽっかりと穴を空けて突っ立っているような。常に自分だけが透明な膜で覆われて、周囲から隔離されているかのような疎外感と、なんの手応えも得られない虚無感と。
あーちゃんがいなくなってから、僕は頻繁にこの感覚に襲われるようになった。
最初は、授業が終わった後の短い休み時間。次は登校中と下校中。その次は授業中にも、というように、僕が僕をわからなくなる感覚は、学校にいる間じゅうずっと続くようになった。しまいには、家にいても、外にいても、どこにいてもずっとそうだ。
周りに人がいればいるほど、その感覚は強かった。たくさんの人の中、埋もれて、紛れて、見失う。自分がさっきまで立っていた場所は、今はもう他の人が踏み荒らしていて。僕の居場所はそれぐらい危ういところにあって。人混みの中ぼうっとしていると、僕なんて消えてしまいそうで。
頭の奥がいつも痛かった。手足は冷え切ったみたいに血の気がなくて。酸素が薄い訳でもないのにちゃんと息ができなくて。周りの人の声がやたら大きく聞こえてきて。耳の中で何度もこだまする、誰かの声。ああ、どうして。こんなにも人が溢れているのに、ここにあーちゃんはいないんだろう。
僕はどうして、ここにいるんだろう。
「よぉ、少年」
旧校舎、屋上へ続く扉を開けると、そこには先客がいた。
ペンキがところどころ剥げた緑色のフェンスにもたれるようにして、床に足を投げ出しているのは日褄先生だった。今日も真っ黒な恰好で、ココナッツのにおいがする不思議な煙草を咥えている。
「田島先生が、先生のことを昼休みに探してましたよ」
「へへっ。そりゃ参ったね」
煙をゆらゆらと立ち昇らせて、先生は笑う。それからいつものように、「せんせーって呼ぶなよ」と付け加えた。彼女はさらに続けて言う。
「それで? 少年は何をし、こんなところに来たのかな?」
「ちょっと外の空気を吸いに」
「おお、奇遇だねぇ。あたしも外の空気を吸いに……」
「吸いにきたのはニコチンでしょう」
僕がそう言うと、先生は、「あっはっはっはー」と高らかに笑った。よく笑う人だ。
「残念だが少年、もう午後の授業は始まっている時間だし、ここは立ち入り禁止だよ」
「お言葉ですが先生、学校の敷地内は禁煙ですよ」
「しょうがない、今からカウンセリングするってことにしておいてあげるから、あたしの喫煙を見逃しておくれ。その代わり、あたしもきみの授業放棄を許してあげよう」
先生は右手でぽんぽんと、自分の隣、雨上がりでまだ湿気っているであろう床を叩いた。座れと言っているようだ。僕はそれに従わなかった。
先客がいたことは予想外だったが、僕は本当に、ただ、外の空気を吸いたくなってここに来ただけだ。授業を途中で抜けてきたこともあって、長居をするつもりはない。
ふと、視界の隅に「それ」が目に入った。
フェンスの一角に穴が空いている。ビニールテープでぐるぐる巻きになっているそこは、テープさえなければ屋上の崖っぷちに立つことを許している。そう。一年前、あそこから、あーちゃんは――。
(ねぇ、どうしてあーちゃんは、そらをとんだの?)
僕の脳裏を、いつかのひーちゃんの言葉がよぎる。
(あーちゃん、かえってくるよね? また、あえるよね?)
ひーちゃんの言葉がいくつもいくつも、風に飛ばされていく桜の花びらと同じように、僕の目の前を通り過ぎていく。
「こんなところで、何をしていたんですか」
そう質問��たのは僕の方だった。「んー?」と先生は煙草の煙を吐きながら言う。
「言っただろ、外の空気を吸いに来たんだよ」
「あーちゃんが死んだ、この場所の空気を、ですか」
先生の目が、僕を見た。その鋭さに、一瞬ひるみそうになる。彼女は強い。彼女の意思は、強い。
「同じ景色を見たいと思っただけだよ」
先生はそう言って、また煙草をふかす。
「先生、」
「せんせーって呼ぶな」
「質問があるんですけど」
「なにかね」
「嘘って、何回つけばホントになるんですか」
「……んー?」
淡い桜色の小さな断片が、いくつもいくつも風に流されていく。僕は黙って、それを見ている。手を伸ばすこともしないで。
「嘘は何回ついたって、嘘だろ」
「ですよね」
「嘘つきは怪人二十面相の始まりだ」
「言っている意味がわかりません」
「少年、」
「はい」
「市野谷に嘘つくの、しんどいのか?」
先生の煙草の煙も、みるみるうちに風に流されていく。手を伸ばしたところで、掴むことなどできないまま。
「市野谷に、直正は死んでないって、嘘をつき続けるの、しんどいか?」
ひーちゃんは知らない。あーちゃんが去年ここから死んだことを知らない。いや、知らない訳じゃない。認めていないのだ。あーちゃんの死を認めていない。彼がこの世界に僕らを置き去りにしたことを、許していない。
ひーちゃんはずっと信じている。あーちゃんは生きていると。いつか帰ってくると。今は遠くにいるけれど、きっとまた会える日が来ると。
だからひーちゃんは知らない。彼の墓石の冷たさも、彼が飛び降りたこの屋上の景色が、僕の目にどう映っているのかも。
屋上。フェンス。穴。空。桜。あーちゃん。自殺。墓石。遺書。透明人間。無。なんにもない。ない。空っぽ。いない。いないいないいないいない。ここにもいない。どこにもいない。探したっていない。消えた。消えちゃった。消滅。消失。消去。消しゴム。弾んで。飛んで。落ちて。転がって。その先に拾ってくれるきみがいて。笑顔。笑って。笑ってくれて。だけどそれも消えて。全部消えて。消えて消えて消えて。ただ昨日を越えて今日が過ぎ明日が来る。それを繰り返して。きみがいない世界で。ただ繰り返して。ひーちゃん。ひーちゃんが笑わなくなって。泣いてばかりで。だけどもうきみがいない。だから僕が。僕がひーちゃんを慰めて。嘘を。嘘をついて。ついてはいけない嘘を。ついてはいけない嘘ばかりを。それでもひーちゃんはまた笑うようになって。笑顔がたくさん戻って。だけどどうしてあんなにも、ひーちゃんの笑顔は空っぽなんだろう。
「しんどくなんか、ないですよ」
僕はそう答えた。
先生は何も言わなかった。
僕は明日にでも、怪人二十面相になっているかもしれなかった。
いつの間にか梅雨が終わり、実力テストも期末テストもクリアして、夏休みまであと一週間を切っていた。
ひと夏の解放までカウントダウンをしている今、僕のクラスの連中は完璧な気だるさに支配されていた。自主性や積極性などという言葉とは無縁の、慣性で流されているような脱力感。
先週に教室の天井四ヶ所に取り付けられている扇風機が全て故障したこともあいまって、クラスメイトたちの授業に対する意欲はほぼゼロだ。授業がひとつ終わる度に、皆溶け出すように机に上半身を投げ出しており、次の授業が始まったところで、その姿勢から僅かに起き上が��程度の差しかない。
そういう僕も、怠惰な中学二年生のひとりに過ぎない。さっきの英語の授業でノートに書き記したことと言えば、英語教師の松田が何回額の汗を脱ぐったのかを表す「正」の字だけだ。
休み時間に突入し、がやがやと騒がしい教室で、ひとりだけ仲間外れのように沈黙を守っていると、肘辺りから空気中に溶け出して、透明になっていくようなそんな気分になる。保健室には来るものの、自分の教室へは絶対に足を運ばないミナモの気持ちがわかるような気がする。
一学期がもうすぐ終わるこの時期になっても、相変わらず僕のクラスには常に二つの空席があった。ミナモも、ひーちゃんも、一度だって教室に登校してきていない。
「――くん、」
なんだか控えめに名前を呼ばれた気はしたが、クラスの喧騒に紛れて聞き取れなかった。
ふと机から顔を上げると、ひとりの女子が僕の机の脇に立っていた。見たことがあるような顔。もしかして、クラスメイトのひとりだろうか。彼女は廊下を指差して、「先生、呼んでる」とだけ言って立ち去った。
あまりにも唐突な出来事でその女子にお礼を言うのも忘れたが、廊下には担任の姿が見える。僕のクラス担任の担当科目は数学だが、次の授業は国語だ。なんの用かはわからないが、呼んでいるのなら行かなくてはならない。
「おー、悪いな、呼び出して」
去年大学を卒業したばかりの、どう見ても体育会系な容姿をしている担任は、僕を見てそう言った。
「ほい、これ」
突然差し出されたのはプリントの束だった。三十枚くらいありそうなプリントが穴を空けられ紐を通して結んである。
「悪いがこれを、市野谷さんに届けてくれないか」
担任がひーちゃんの名を口にしたのを聞いたのは、久しぶりのような気がした。もう朝の出欠確認の時でさえ、彼女の名前は呼ばれない。ミナモの名前だってそうだ。このクラスでは、ひーちゃんも、ミナモも、いないことが自然なのだ。
「……先生が、届けなくていいんですか」
「そうしたいのは山々なんだが、なかなか時間が取れなくてな。夏休みに入ったら家庭訪問に行こうとは思ってるんだ。このプリントは、それまでにやっておいてほしい宿題。中学に入ってから二年の一学期までに習う数学の問題を簡単にまとめたものなんだ」
「わかりました、届けます」
受け取ったプリントの束は、思っていたよりもずっとずっしりと重かった。
「すまんな。市野谷さんと小学生の頃一番仲が良かったのは、きみだと聞いたものだから」
「いえ……」
一年生の時から、ひーちゃんにプリントを届けてほしいと教師に頼まれることはよくあった。去年は彼女と僕は違うクラスだったけれど、同じ小学校出身の誰かに僕らが幼馴染みであると聞いたのだろう。
僕は学校に来なくなったひーちゃんのことを毛嫌いしている訳ではない。だから、何か届け物を頼まれてもそんなに嫌な気持ちにはならない。でも、と僕は思った。
でも僕は、ひーちゃんと一番仲が良かった訳じゃないんだ。
「じゃあ、よろしく頼むな」
次の授業の始業のチャイムが鳴り響く。
教室に戻り、出したままだった英語の教科書と「正」の字だけ記したノートと一緒に、ひーちゃんへのプリントの束を鞄に仕舞いながら、なんだか僕は泣きたくなった。
三角形が壊れるのは簡単だった。
三角形というのは、三辺と三つの角でできていて、当然のことだけれど一辺とひとつの角が消失したら、それはもう三角形ではない。
まだ小学校に上がったばかりの頃、���はどうして「さんかっけい」や「しかっけい」があるのに「にかっけい」がないのか、と考えていたけれど、どうやら僕の脳味噌は、その頃から数学的思考というものが不得手だったようだ。
「にかっけい」なんてあるはずがない。
僕と、あーちゃんと、ひーちゃん。
僕ら三人は、三角形だった。バランスの取りやすい形。
始まりは悲劇だった。
あの悪夢のような交通事故。ひーちゃんの弟の死。
真っ白なワンピースが汚れることにも気付かないまま、真っ赤になった弟の身体を抱いて泣き叫ぶひーちゃんに手を伸ばしたのは、僕と一緒に下校する途中のあーちゃんだった。
お互いの家が近かったこともあって、それから僕らは一緒にいるようになった。
溺愛していた最愛の弟を、目の前で信号無視したダンプカーに撥ねられて亡くしたひーちゃんは、三人で一緒にいてもときどき何かを思い出したかのように暴れては泣いていたけれど、あーちゃんはいつもそれをなだめ、泣き止むまでずっと待っていた。
口下手な彼は、ひーちゃんに上手く言葉をかけることがいつもできずにいたけれど、僕が彼の言葉を補って彼女に伝えてあげていた。
優しくて思いやりのあるひーちゃんは、感情を表すことが苦手なあーちゃんのことをよく気遣ってくれていた。
僕らは嘘みたいにバランスの取れた三角形だった。
あーちゃんが、この世界からいなくなるまでは。
「夏は嫌い」
昔、あーちゃんはそんなことを口にしていたような気がする。
「どうして?」
僕はそう訊いた。
夏休み、花火、虫捕り、お祭り、向日葵、朝顔、風鈴、西瓜、プール、海。
水の中の金魚の世界と、バニラアイスの木べらの湿り気。
その頃の僕は今よりもずっと幼くて、四季の中で夏が一番好きだった。
あーちゃんは部屋の窓を網戸にしていて、小さな扇風機を回していた。
彼は夏休みも相変わらず外に出ないで、部屋の中で静かに過ごしていた。彼の傍らにはいつも、星座の本と分厚い昆虫図鑑が置いてあった。
「夏、暑いから嫌いなの?」
僕が尋ねるとあーちゃんは抱えていた分厚い本からちょっとだけ顔を上げて、小さく首を横に振った。それから困ったように笑って、
「夏は、皆死んでいるから」
とだけ、つぶやくように言った。あーちゃんは、時々魔法の呪文のような、不思議なことを言って僕を困惑させることがあった。この時もそうだった。
「どういう意味?」
僕は理解できずに、ただ訊き返した。
あーちゃんはさっきよりも大きく首を横に振ると、何を思ったのか、唐突に、
「ああ、でも、海に行ってみたいな」
なんて言った。
「海?」
「そう、海」
「どうして、海?」
「海は、色褪せてないかもしれない。死んでないかもしれない」
その言葉の意味がわからず、僕が首を傾げていると、あーちゃんはぱたんと本を閉じて机に置いた。
「台所へ行こうか。確か、母さん��西瓜を切ってくれていたから。一緒に食べよう」
「うん!」
僕は西瓜に釣られて、わからなかった言葉のことも、すっかり忘れてしまった。
でも今の僕にはわかる。
夏の日射しは、世界を色褪せさせて僕の目に映す。
あーちゃんはそのことを、「死んでいる」と言ったのだ。今はもう確かめられないけれど。
結局、僕とあーちゃんが海へ行くことはなかった。彼から海へ出掛けた話を聞いたこともないから、恐らく、海へ行くことなく死んだのだろう。
あーちゃんが見ることのなかった海。
海は日射しを浴びても青々としたまま、「生きて」いるんだろうか。
彼が死んでから、僕も海へ足を運んでいない。たぶん、死んでしまいたくなるだろうから。
あーちゃん。
彼のことを「あーちゃん」と名付けたのは僕だった。
そういえば、どうして僕は「あーちゃん」と呼び始めたんだっけか。
彼の名前は、鈴木直正。
どこにも「あーちゃん」になる要素はないのに。
うなじを焼くようなじりじりとした太陽光を浴びながら、ペダルを漕いだ。
鼻の頭からぷつぷつと汗が噴き出すのを感じ、手の甲で汗を拭おうとしたら手は既に汗で湿っていた。雑音のように蝉の声が響いている。道路の脇には背の高い向日葵は、大きな花を咲かせているのに風がないので微動だにしない。
赤信号に止められて、僕は自転車のブレーキをかける。
夏がくる度、思い出す。
僕とあーちゃんが初めてひーちゃんに出会い、そして彼女の最愛の弟「ろーくん」が死んだ、あの事故のことを。
あの日も、世界が真っ白に焼き切れそうな、暑い日だった。
ひーちゃんは白い木綿のワンピースを着ていて、それがとても涼しげに見えた。ろーくんの血で汚れてしまったあのワンピースを、彼女はもうとっくに捨ててしまったのだろうけれど。
そういえば、ひーちゃんはあの事故の後、しばらくの間、弟の形見の黒いランドセルを使っていたっけ。黒い服ばかり着るようになって。周りの子はそんな彼女を気味悪がったんだ。
でもあーちゃんは、そんなひーちゃんを気味悪がったりしなかった。
信号が赤から青に変わる。再び漕ぎ出そうとペダルに足を乗せた時、僕の両目は横断歩道の向こうから歩いて来るその人を捉えて凍りついてしまった。
胸の奥の方が疼く。急に、聞こえてくる蝉の声が大きくなったような気がした。喉が渇いた。頬を撫でるように滴る汗が気持ち悪い。
信号は青になったというのに、僕は動き出すことができない。向こうから歩いて来る彼は、横断歩道を半分まで渡ったところで僕に気付いたようだった。片眉を持ち上げ、ほんの少し唇の端を歪める。それが笑みだとわかったのは、それとよく似た笑顔をずいぶん昔から知っているからだ。
「うー兄じゃないですか」
うー兄。彼は僕をそう呼んだ。
声変わりの途中みたいな声なのに、妙に大人びた口調。ぼそぼそとした喋り方。
色素の薄い頭髪。切れ長の一重瞼。ひょろりと伸びた背。かけているのは銀縁眼鏡。
何もかもが似ているけれど、日に焼けた真っ黒な肌と筋肉のついた足や腕だけは、記憶の中のあーちゃんとは違う。
道路を渡り終えてすぐ側まで来た彼は、親しげに僕に言う。
「久しぶりですね」
「……久しぶり」
僕がやっ��の思いでそう声を絞り出すと、彼は「ははっ」と笑った。きっとあーちゃんも、声を上げて笑うならそういう風に笑ったんだろうなぁ、と思う。
「どうしたんですか。驚きすぎですよ」
困ったような笑顔で、眼鏡をかけ直す。その手つきすらも、そっくり同じ。
「嫌だなぁ。うー兄は僕のことを見る度、まるで幽霊でも見たような顔するんだから」
「ごめんごめん」
「ははは、まぁいいですよ」
僕が謝ると、「あっくん」はまた笑った。
彼、「あっくん」こと鈴木篤人くんは、僕の一個下、中学一年生。私立の学校に通っているので僕とは学校が違う。野球部のエースで、勉強の成績もクラストップ。僕の団地でその中学に進学できた子供は彼だけだから、団地の中で知らない人はいない優等生だ。
年下とは思えないほど大人びた少年で、あーちゃんにそっくりな、あーちゃんの弟。
「中学は、どう? もう慣れた?」
「慣れましたね。今は部活が忙しくて」
「運動部は大変そうだもんね」
「うー兄は、帰宅部でしたっけ」
「そう。なんにもしてないよ」
「今から、どこへ行くんですか?」
「ああ、えっと、ひーちゃんに届け物」
「ひー姉のところですか」
あっくんはほんの一瞬、愛想笑いみたいな顔をした。
「ひー姉、まだ学校に行けてないんですか?」
「うん」
「行けるようになるといいですね」
「そうだね」
「うー兄は、元気にしてましたか?」
「僕? 元気だけど……」
「そうですか。いえ、なんだかうー兄、兄貴に似てきたなぁって思ったものですから」
「僕が?」
僕があーちゃんに似てきている?
「顔のつくりとかは、もちろん違いますけど、なんていうか、表情とか雰囲気が、兄貴に似てるなぁって」
「そうかな……」
僕にそんな自覚はないのだけれど。
「うー兄も死んじゃいそうで、心配です」
あっくんは柔らかい笑みを浮かべたままそう言った。
「……そう」
僕はそう返すので精いっぱいだった。
「それじゃ、ひー姉によろしくお伝え下さい」
「じゃあ、また……」
あーちゃんと同じ声で話し、あーちゃんと同じように笑う彼は、夏の日射しの中を歩いて行く。
(兄貴は、弱いから駄目なんだ)
いつか彼が、あーちゃんに向けて言った言葉。
あーちゃんは自分の弟にそう言われた時でさえ、怒ったりしなかった。ただ「そうだね」とだけ返して、少しだけ困ったような顔をしてみせた。
あっくんは、強い。
姿や雰囲気は似ているけれど、性格というか、芯の強さは全く違う。
あーちゃんの死を自分なりに受け止めて、乗り越えて。部活も勉強も努力して。あっくんを見ているといつも思う。兄弟でもこんなに違うものなのだろうか、と。ひとりっ子の僕にはわからないのだけれど。
僕は、どうだろうか。
あーちゃんの死を受け入れて、乗り越えていけているだろうか。
「……死相でも出てるのかな」
僕があーちゃんに似てきている、なんて。
笑えない冗談だった。
ふと見れば、信号はとっくに赤になっていた。青になるまで待つ間、僕の心から言い表せない不安が拭えなかった。
遺書を思い出した。
あーちゃんの書いた遺書。
「僕の分まで生きて。僕は透明人間なんです」
日褄先生はそれを、「ばっかじゃねーの」って笑った。
「透明人間は見えねぇから、透明人間なんだっつーの」
そんな風に言って、たぶん、泣いてた。
「僕の分まで生きて」
僕は自分の鼓動を聞く度に、その言葉を繰り返し、頭の奥で聞いていたような気がする。
その度に自分に問う。
どうして生きているのだろうか、と。
部屋に一歩踏み入れると、足下でガラスの破片が砕ける音がした。この部屋でスリッパを脱ぐことは自傷行為に等しい。
「あー、うーくんだー」
閉められたカーテン。閉ざされたままの雨戸。
散乱した物。叩き壊された物。落下したままの物。破り捨てられた物。物の残骸。
その中心に、彼女はいる。
「久しぶりだね、ひーちゃん」
「そうだねぇ、久しぶりだねぇ」
壁から落下して割れた時計は止まったまま。かろうじて壁にかかっているカレンダーはあの日のまま。
「あれれー、うーくん、背伸びた?」
「かもね」
「昔はこーんな小さかったのにねー」
「ひーちゃんに初めて会った時だって、そんなに小さくなかったと思うよ」
「あははははー」
空っぽの笑い声。聞いているこっちが空しくなる。
「はい、これ」
「なに? これ」
「滝澤先生に頼まれたプリント」
「たきざわって?」
「今度のクラスの担任だよ」
「ふーん」
「あ、そうだ、今度は僕の同じクラスに……」
彼女の手から投げ捨てられたプリントの束が、ろくに掃除されていない床に落ちて埃を巻き上げた。
「そういえば、あいつは?」
「あいつって?」
「黒尽くめの」
「黒尽くめって……日褄先生のこと?」
「まだいる?」
「日褄先生なら、今年度も学校にいるよ」
「なら、学校には行かなーい」
「どうして?」
「だってあいつ、怖いことばっかり言うんだもん」
「怖いこと?」
「あーちゃんはもう、死んだんだって」
「…………」
「ねぇ、うーくん」
「……なに?」
「うーくんはどうして、学校に行けるの? まだあーちゃんが帰って来ないのに」
どうして僕は、生きているんだろう。
「『僕』はね、怖いんだよ、うーくん。あーちゃんがいない毎日が。『僕』の毎日の中に、あーちゃんがいないんだよ。『僕』は怖い。毎日が怖い。あーちゃんのこと、忘れそうで怖い。あーちゃんが『僕』のこと、忘れそうで怖い……」
どうしてひーちゃんは、生きているんだろう。
「あーちゃんは今、誰の毎日の中にいるの?」
ひーちゃんの言葉はいつだって真っ直ぐだ。僕の心を突き刺すぐらい鋭利だ。僕の心を掻き回すぐらい乱暴だ。僕の心をこてんぱんに叩きのめすぐらい凶暴だ。
「ねぇ、うーくん」
いつだって思い知らされる。僕が駄目だってこと。
「うーくんは、どこにも行かないよね?」
いつだって思い知らせてくれる。僕じゃ駄目だってこと。
「どこにも、行かないよ」
僕はどこにも行けない。きみもどこにも行けない。この部屋のように時が止まったまま。あーちゃんが死んでから、何もかもが停止したまま。
「ふーん」
どこか興味なさそうな、ひーちゃんの声。
「よかった」
その後、他愛のない話を少しだけして、僕はひーちゃんの家を後にした。
死にたくなるほどの夏の熱気に包まれて、一気に現実に引き戻された気分になる。
こんな現実は嫌なんだ。あーちゃんが欠けて、ひーちゃんが壊れて、僕は嘘つきになって、こんな世界は、大嫌いだ。
僕は自分に問う。
どうして僕は、生きているんだろう。
もうあーちゃんは死んだのに。
「ひーちゃん」こと市野谷比比子は、小学生の頃からいつも奇異の目で見られていた。
「市野谷さんは、まるで死体みたいね」
そんなことを彼女に言ったのは、僕とひーちゃんが小学四年生の時の担任だった。
校舎の裏庭にはクラスごとの畑があって、そこで育てている作物の世話を、毎日クラスの誰かが当番制でしなくてはいけなかった。それは夏休み期間中も同じだった。
僕とひーちゃんが当番だった夏休みのある日、黙々と草を抜いていると、担任が様子を見にやって来た。
「頑張ってるわね」とかなんとか、最初はそんな風に声をかけてきた気がする。僕はそれに、「はい」とかなんとか、適当に返事をしていた。ひーちゃんは何も言わず、手元の草を引っこ抜くことに没頭していた。
担任は何度かひーちゃんにも声をかけたが、彼女は一度もそれに答えなかった。
ひーちゃんはいつもそうだった。彼女が学校で口を利くのは、同じクラスの僕と、二つ上の学年のあーちゃんにだけ。他は、クラスメイトだろうと教師だろうと、一言も言葉を発さなかった。
この当番を決める時も、そのことで揉めた。
くじ引きでひーちゃんと同じ当番に割り当てられた意地の悪い女子が、「せんせー、市野谷さんは喋らないから、当番の仕事が一緒にやりにくいでーす」と皆の前で言ったのだ。
それと同時に、僕と一緒の当番に割り当てられた出っ歯の野郎が、「市野谷さんと仲の良い――くんが市野谷さんと一緒にやればいいと思いまーす」と、僕の名前を指名した。
担任は困ったような笑顔で、
「でも、その二人だけを仲の良い者同士にしたら、不公平じゃないかな? 皆だって、仲の良い人同士で一緒の当番になりたいでしょう? 先生は普段あまり仲が良くない人とも仲良くなってもらうために、当番の割り振りをくじ引きにしたのよ。市野谷さんが皆ともっと仲良くなったら、皆も嬉しいでしょう?」
と言った。意地悪ガールは間髪入れずに、
「喋らない人とどうやって仲良くなればいいんですかー?」
と返した。
ためらいのない発言だった。それはただただ純粋で、悪意を含んだ発言だった。
「市野谷さんは私たちが仲良くしようとしてもいっつも無視してきまーす。それって、市野谷さんが私たちと仲良くしたくないからだと思いまーす。それなのに、無理やり仲良くさせるのは良くないと思いまーす」
「うーん、そんなことはないわよね、市野谷さん」
ひーちゃんは何も言わなかった。まるで教室内での出来事が何も耳に入っていないかのような表情で、窓の外を眺めていた。
「市野谷さん? 聞いているの?」
「なんか言えよ市野谷」
男子がひーちゃんの机を蹴る。その振動でひーちゃんの筆箱が机から滑り落ち、がちゃんと音を立てて中身をぶちまけたが、それでもひーちゃんには変化は訪れない。
クラスじゅうにざわざわとした小さな悪意が満ちる。
「あの子ちょっとおかしいんじゃない?」
そんな囁きが満ちる。担任の困惑した顔。意地悪いクラスメイトたちの汚らわしい視線。
僕は知っている。まるでここにいないかのような顔をして、窓の外を見ているひーちゃんの、その視線の先を。窓から見える新校舎には、彼女の弟、ろーくんがいた一年生の教室と、六年生のあーちゃんがいる教室がある。
ひーちゃんはいつも、ぼんやりとそっちばかりを見ている。教室の中を見渡すことはほとんどない。彼女がここにいないのではない。彼女にとって、こっちの世界が意味を成していないのだ。
「市野谷さんは、死体みたいね」
夏休み、校舎裏の畑。
その担任の一言に、僕は思わずぎょっとした。担任はしゃがみ込み、ひーちゃんに目線を合わせようとしながら、言う。
「市野谷さんは、どうしてなんにも言わないの? なんにも思わないの? あんな風に言われて、反論したいなって思わないの?」
ひーちゃんは黙って草を抜き続けている。
「市野谷さんは、皆と仲良くなりたいって思わない? 皆は、市野谷さんと仲良くなりたいって思ってるわよ」
ひーちゃんは黙っている。
「市野谷さんは、ずっとこのままでいるつもりなの? このままでいいの? お友達がいないままでいいの?」
ひーちゃんは。
「市野谷さん?」
「うるさい」
どこかで蝉が鳴き止��だ。
彼女が僕とあーちゃん以外の人間に言葉を発したところを、僕は初めて見た。彼女は担任を睨み付けるように見つめていた。真っ黒な瞳が、鋭い眼光を放っている。
「黙れ。うるさい。耳障り」
ひーちゃんが、僕の知らない表情をした。それはクラスメイトたちがひーちゃんに向けたような、玩具のような悪意ではなかった。それは本当の、なんの混じり気もない、殺意に満ちた顔だった。
「あんたなんか、死んじゃえ」
振り上げたひーちゃんの右手には、草抜きのために職員室から貸し出された鎌があって――。
「ひーちゃん!」
間一髪だった。担任は真っ青な顔で、息も絶え絶えで、しかし、その鎌の一撃をかろうじてかわした。担任は震えながら、何かを叫びながら校舎の方へと逃げるように走り去って行く。
「ひーちゃん、大丈夫?」
僕は地面に突き刺した鎌を固く握りしめたまま、動かなくなっている彼女に声をかけた。
「友達なら、いるもん」
うつむいたままの彼女が、そうぽつりと言う。
「あーちゃんと、うーくんがいるもん」
僕はただ、「そうだね」と言って、そっと彼女の頭を撫でた。
小学生の頃からどこか危うかったひーちゃんは、あーちゃんの自殺によって完全に壊れてしまった。
彼女にとってあーちゃんがどれだけ大切な存在だったかは、説明するのが難しい。あーちゃんは彼女にとって絶対唯一の存在だった。失ってはならない存在だった。彼女にとっては、あーちゃん以外のものは全てどうでもいいと思えるくらい、それくらい、あーちゃんは特別だった。
ひーちゃんが溺愛していた最愛の弟、ろーくんを失ったあの日。
あの日から、ひーちゃんの心にぽっかりと空いた穴を、あーちゃんの存在が埋めてきたからだ。
あーちゃんはひーちゃんの支えだった。
あーちゃんはひーちゃんの全部だった。
あーちゃんはひーちゃんの世界だった。
そして、彼女はあーちゃんを失った。
彼女は入学することになっていた中学校にいつまで経っても来なかった。来るはずがなかった。来れるはずがなかった。そこはあーちゃんが通っていたのと同じ学校であり、あーちゃんが死んだ場所でもある。
ひーちゃんは、まるで死んだみたいだった。
一日中部屋に閉じこもって、食事を摂ることも眠ることも彼女は拒否した。
誰とも口を利かなかった。実の親でさえも彼女は無視した。教室で誰とも言葉を交わさなかった時のように。まるで彼女の前からありとあらゆるものが消滅してしまったかのように。泣くことも笑うこともしなかった。ただ虚空を見つめているだけだった。
そんな生活が一週間もしないうちに彼女は強制的に入院させられた。
僕が中学に入学して、桜が全部散ってしまった頃、僕は彼女の病室を初めて訪れた。
「ひーちゃん」
彼女は身体に管を付けられ、生かされていた。
屍のように寝台に横たわる、変わり果てた彼女の姿。
(市野谷さんは死体みたいね)
そんなことを言った、担任の言葉が脳裏をよぎった。
「ひーちゃんっ」
僕はひーちゃんの手を取って、そう呼びかけた。彼女は何も言わなかった。
「そっち」へ行ってほしくなかった。置いていかれたくなかった。僕だって、あーちゃんの突然の死を受け止めきれていなかった。その上、ひーちゃんまで失うことになったら。そう考えるだけで嫌だった。
僕はここにいたかった。
「ひーちゃん、返事してよ。いなくならないでよ。いなくなるのは、あーちゃんだけで十分なんだよっ!」
僕が大声でそう言うと、初めてひーちゃんの瞳が、生き返った。
「……え?」
僕を見つめる彼女の瞳は、さっきまでのがらんどうではなかった。あの時のひーちゃんの瞳を、僕は一生忘れることができないだろう。
「あーちゃん、いなくなったの?」
ひーちゃんの声は僕の耳にこびりついた。
何言ってるんだよ、あーちゃんは死んだだろ。そう言おうとした。言おうとしたけれど、何かが僕を引き留めた。何かが僕の口を塞いだ。頭がおかしくなりそうだった。狂っている。僕はそう思った。壊れている。破綻している。もう何もかもが終わってしまっている。
それを言ってしまったら、ひーちゃんは死んでしまう。僕がひーちゃんを殺してしまう。ひーちゃんもあーちゃんみたいに、空を飛んでしまうのだ。
僕はそう直感していた。だから声が出なかった。
「それで、あーちゃん、いつかえってくるの?」
そして、僕は嘘をついた。ついてはいけない嘘だった。
あーちゃんは生きている。今は遠くにいるけれど、そのうち必ず帰ってくる、と。
その一週間後、ひーちゃんは無事に病院を退院した。人が変わったように元気になっていた。
僕の嘘を信じて、ひーちゃんは生きる道を選んだ。
それが、ひーちゃんの身体をいじくり回して管を繋いで病室で寝かせておくことよりもずっと残酷なことだということを僕は後で知った。彼女のこの上ない不幸と苦しみの中に永遠に留めておくことになってしまった。彼女にとってはもうとっくに終わってしまったこの世界で、彼女は二度と始まることのない始まりをずっと待っている。
もう二度と帰ってこない人を、ひーちゃんは待ち続けなければいけなくなった。
全ては僕のついた幼稚な嘘のせいで。
「学校は行かないよ」
「どうして?」
「だって、あーちゃん、いないんでしょ?」
学校にはいつから来るの? と問いかけた僕にひーちゃんは笑顔でそう答えた。まるで、さも当たり前かのように言った。
「『僕』は、あーちゃんが帰って来るのを待つよ」
「あれ、ひーちゃん、自分のこと『僕』って呼んでたっけ?」
「ふふふ」
ひーちゃんは笑った。幸せそうに笑った。恥ずかしそうに笑った。まるで恋をしているみたいだった。本当に何も知らないみたいに。本当に、僕の嘘を信じているみたいに。
「あーちゃんの真似、してるの。こうしてると自分のことを言う度、あーちゃんのことを思い出せるから」
僕は笑わなかった。
僕は、笑えなかった。
笑おうとしたら、顔が歪んだ。
醜い嘘に、歪んだ。
それからひーちゃんは、部屋に閉じこもって、あーちゃんの帰りをずっと待っているのだ。
今日も明日も明後日も、もう二度と帰ってこない人を。
※(2/4) へ続く→ https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/647000556094849024/
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