#ロッカー買取
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2024/12/15 寝起きのコインランドリー
昨日は日勤だった。日勤の日は勤務時間にして夜勤の半分程なのに夜勤よりも疲れる気がする。帰ると何もしたくない。帰宅早々洗濯機を回しバイト終わりの子を迎えに行く。迎えから戻ったらコインランドリーに乾燥に行けば良いと思っていた。帰宅して簡単な夕食を作り子どもたちと食べる。こたつに入ってだらだらしていたらすっかり洗濯のことを忘れていた。気づけばもうすぐコインランドリーが閉まる時間。冬だし臭くなることも無いと信じ明日の朝にしようと諦めて眠りにつく。
先日の休みに歩いた山の記録も書きかけでまだ途中になっている。もう一週間が過ぎる。冬がどんどん先を歩いて行って追いつけない。
目が覚めて6時。まだ薄暗い中コインランドリーに向かう。眠った後はまだ動ける。眠りって大事だ。もう長い間睡眠とはあまり上手に付き合えていないのを残念に思う。冷たく濡れた洗濯物をドラムの中に入れてカードを入れる。30分。その間に昨夜荷物が届いているとメールが来ていたロッカーへ向かう。荷物を受け取り近くのコンビニで温かいコーヒ��を買いコインランドリーに戻る。
店内のテーブルに朝日が差し込むのを眺めながら少し日常を振り返る。最近買ったスケジュール帳は予定よりも出来事。日々こんなにも慌ただしくごちゃごちゃとしているのにあっという間に1年が過ぎるので少しでも記録しておいたらさらりと過ぎてしまう1年がもったいなくないかもしれない、なんて思ったり。
洗濯物をたたんでカゴに入れ帰路。すっかり明るくなってすれ違う車も増えた。そういえば今日は日曜日だった。帰ってたたんだ洗濯物をしまう。日がさしている庭に出て鉢植えや植木の様子を見る。こんなに寒くても葉の多い紫陽花の鉢植えは気を抜くとすぐに萎れてしまう。鉢植えだと植物自身も限界があって不自由なのだなと思う。気まぐれに挿し木をしたバラは随分と枝を伸ばし、花自体も最初の頃より大きく立派になってきた。冬が来たのにまだ蕾をつけ花を咲かせている。バラってすごい。
今日も細切れの一日が始まる。夜勤なので昼間眠れると良いな。
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#日常 #猫
職場の休憩室で私のドーナツが盗み食いされた事件が起こったのですが、犯人が判明しました。
同じ課の人が間違えて食べたのかと思いきや、どうやら食べたのは、私とあまり関わることのない課の、その中でもダントツで変わり者と評されている女性である模様。
正確には、「私のドーナツ」というか、「同僚が私たちの課の面々買ってきてくれて、休憩室に置いとくからね」と置いといてくれたドーナツ��す。同僚が声を掛けてくれた30分後ぐらいに、自分のロッカーにしまっておこうと休憩室を覗いたところ……あれ?私が食べたいと言ったドーナツだけないぞ???
同僚に「あのドーナツは今日売り切れだったの?」と聞いたところ「いや?一つ買ってきてるはずだよ」と。
いやしかし、何度袋の中を見てもない。何なら一つ減った形跡があるから、恐らくここに私の頼んだドーナツがあったのだろう……。
私「私のドーナツだけなくなってる!」
同僚A「ほんとだ。確かに買ってきたはずなのに」
同僚B「今日◯◯さん(同じ課の人)早く帰ったから◯◯さんが自分のと間違えて持って帰ったんじゃないの?」
私「そっか、そうかもしれない。じゃあ◯◯さんのドーナツがこの中に残ってるってことか。じゃあ私はそれを貰おうかな」
というわけで、その場は落ち着いたのですが。まさかのどんでん返し(?)が判明したのは、私が帰った後でした。3つドーナツが余ったので、同僚が他の課で残っていたメンバーにそれをあげようとしたところ、例の人が
「私もう食べたから2つもいらない」
と返答したとのこと……。お ま え か !
そして早退した人は、ドーナツを持ち帰るのを忘れて帰っていたことも判明。◯◯さん、濡れ衣を着せて申し訳ない。
こちらとしてはまさか他の課の人が食べていたとは思わなくて、ダークホース過ぎるわ……と笑うしかありませんでした。まあ確かに課の名前を書いて置いてあったわけではないので、誰かが皆に差し入れてくれて勝手に食べていいもの、と解釈したのかもしれない。いやしかし、自由に取って良いお土産のお菓子とかはいつも「××に行ってきたお土産です。食べてください」などとメモが付けられているはず。そのメモもなく、しかも未開封のドーナツの箱を勝手に開封して食べるだろうか……?とモヤモヤは残るのでした。私は例え家族のものとかでも勝手に食べたり食べられたりすることはなかったので、中々ない経験にびっくりでした。
それにしても、後から考えてみれば、休憩室で「私のがないぞ!」と大騒ぎしている時、例のその人もすぐ近くでしれっと休憩してたんですよね。もし知らずに食べていたとしたら、私が近くでワーワー言ってるのを聞いて「やっべ食べちゃったよ」とか思ってたんでしょうか……。その時は我関せずといった風に座っていましたが、居心地が悪かっただろうなと思うとちょっとじわじわきます。
内容とは全く関係ない猫画像です。いつもより長い間猫じゃらしで跳ね回らせていたので遊び疲れた猫。目の前に獲物があっても無の境地です。
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週報-1
2024年01月28日(日)
8時には目が覚めていたけど布団から出たのは9時頃だった。昨日、すこし吐いてしまって胃というか内蔵が全体的にむかつく感じがした。昔は軽い体調不良を次の日まで引きずることなんか無かったのに、嫌だな~と思ってみた。本当はそんな嫌でも無い。コーヒーを煎れて運動をしながら欲しいもののことを思い出して、いったん運動を止めスマホで調べ、そのうち別に欲しくなくなって、また運動を再開をだらだらとやっていた。昨日干した洗濯物を畳んでぼうっとしていると��氏が起きてきた。外国の洗剤の匂いがするトレーナーを着ていた。実家から着て帰ってきたらしい。そのまま車でパン屋とコンビニに行って家で昼ごはんにした。コンビニでは一番くじを引いた。駄菓子を模した、ハンカチとか文房具とかのやつ。彼氏は私がこういうものを好きだと思い込んでいる。そりゃ好きだけど、通りすがりに見た可愛いものをいつまでも覚えていて欲しがるような年齢じゃない。今度来たときまだ良い感じの賞が残ってたらまたやろっか、と言い私は頷いた。昼ごはんはTVerで昨日のザ・ベストワンをみながら食べた。食べ終わると眠くなって昼寝した。最近、生理前でなくても眠い。おやつを食べながら本を読んでいたらまた眠くなった。
2024年01月29日(月)
また夜中の4時に目が覚めた。眠いまま出勤して仕事して退勤した。メルマガ作成に5時間くらいかけた気がするけど結局完成していない。可愛い女性が別の部署にいる。暗い部分の無いアイドルみたいな笑顔だと思った。退勤後、JINSのロッカーで眼鏡を受け取って電車に乗った。本を読んでいるとすぐに時間が経つ。立ちっぱなしでもあまり苦で無い。駅に着くと彼氏が迎えに来ていて、夜ごはんも買っておいてくれた。TVerでロンハーみながら食べた。
2024年01月30日(火)
悪寒がする。生理が近い。アイシャドウを塗らない化粧にした。退勤後にハンズで買い物した。香りものを買うのはやめたつもりだったけど、すごく懐かしい香りだったので迷わずカゴに入れた。どんな記憶と結びついて懐かしいのかは思い出せない。帰り道の薬局で、違う種類のプリン2つとたまご饅頭を買って帰った。プリンは食べ比べして遊ぶ。
2024年01月31日(水)
昼休みほぼまるっと昼寝に費やしたらそれから一日ご機嫌だった。家に帰ると先週注文していた勤め先のお菓子が届いたので夕食後に食べた。気軽に買える値段じゃ無いけど、たまには買って食べたいなと思った。サッカー20:30~バーレーン対日本。勝って彼氏が嬉しそう。
2024年02月02日(金)
年に1度あるかないかレベルの体調不良だった。出勤前は大したことなかったのに、退勤後は凄まじかった。頭痛と悪寒と吐き気がひどく口に胃液を溜めながら途中下車して薬を飲んだ。LINEで彼氏に助けを求め、迎えを待つ間にふらっと入ったデイリーヤマザキで小分けサイズの甘納豆が売られていて微かにテンションが上がった。2種類買った。迎えに来てくれた彼氏に夜ごはんと31アイスを買っても��って帰宅。家に着く頃には頭痛と吐き気は治っていたので、ごはんもアイスも楽しく食べた。ごはんはしゅうまいと大学芋とサラダ。アイスはワールドクラスチョコレートとストロベリーチーズケーキ。彼氏はイトウジュンヤの騒動について気をもんでいる。
2024年02月03日(土)
9時過ぎに起きて掃除と運動をしたあと彼氏と外出。パン屋で昼食を買って移動しながら食べて、ドンキで日用品を買い、初詣して夜ごはんを買って帰った。おみくじは大吉で、そんなわけあるかと一瞬思ったけどまあ私は大吉の生活をしている。途中でCCさくら×サンリオガチャとブルーナアニマル一番くじをやった。ミッフィーって不細工のと可愛いのがいるけど不細工のが多分本家なんだよなあ。
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キスをしすぎると、キスの特別な価値みたいなものがなくなるんじゃないかと思った。「好きだった人に言われたずっと忘れてない言葉」みたいな、そういうキラキラした衝撃的な瞬間をこれからも君につくってあげられるのだろうかと思った。いつまでも、君の最高の女の子でいたいと思った。
彼氏が充電してくれたモバイルバッテリーが、それだけで宝物みたいに見えた。彼が入れてくれた電気が尊いものに思えて、一生使わないでおこうと誓いみたいに思った。旅行3日目に日が変わった深夜1時半頃、彼が買わせてくれた大きなぬいぐるみを抱きながら君を見ていた。ふかふかのベッドに横たわりながら、ぬいぐるみと君のパーカーを抱えていた。わたしのスマートフォンの充電がなくならないように、わたしのモバイルバッテリーを君が充電してくれた。君がやさしく充電機を差す姿がスタンドライトの逆光で影になって、描くことのはじまりって、愛する人の影をなぞったことなんだよって言いたくなった。君をなぞってずっと忘れないようにしたいって思った。何回も何回も君を反復して、擦り切れるくらいに思い出したら、生まれ変わっても覚えていられるだろうかって思った。
はじめて日焼け止めを塗り始めた5月1日がもう1か月前になろうとしています。お久しぶりです。青い月はいつだって燦然と眠って光っています。先日、恋人と2泊3日の旅行をしてきました。会えるのは2ヶ月ぶりでした。やっぱり、この人と一緒にいたいと思いました。付き合った日に彼が送ってくれた、俺の余生あげるから君の余生を幸せにさせてよって言葉が永遠に忘れられないでいます。
デートする度にここに書くのは、忘れたくないからです。一瞬一瞬を思い出せたら、永遠に忘れないかもしれないって思えるからです。
通勤で混んでいる新幹線で運良く2人席が空いていて、彼が乗る駅まで隣に誰も座らないように小さな抵抗をしてみた。彼が乗る駅に停りそうになって、ゆっくり流れる景色から君を探してみたけど見つからなくて気持ちいい不安があった。着いて5秒後くらいで会えて、いつもの恋人だと思った。大好きで嬉しくて、よくわからないくらい安心する。新幹線だから手は握らなかったけど、ずっと触れてる肩が嬉しかった。
ホテルに近い改札口をふたりで探した。���テルまでは少し遠かったけど、冒険しているみたいだった。真っ直ぐな通りの先にはスカイツリーが見えた。その日はたくさん歩いてたくさん見てたくさん考えたけど、彼が一度も疲れたとか嫌だとか言わなかったことがすごくうれしかった。この人となら大変なことでも一緒に歩いていけるんじゃないかって、些細なことだけど。ホテルまでの帰り道からはライトアップされた紫色のスカイツリーが見えた。ライトアップの意味を調べて読み上げたけど、彼氏が眠そうでかわいかった。確か「雅」っていうライトアップだった。ふたりとも22時くらいにはきっと眠っていた。たまに目を覚ますとふとんに埋もれている彼がいて愛おしかった。ふとんをひっぱると、んーと唸りながら私に3分の1くらい渡してくれるのがかわいくて。目が覚めると朝の5時30分で、部屋に射す朝日が綺麗だった。君がくれたステンドグラスみたいな栞がキラキラ輝いて綺麗だった。うとうとしながら横になっている彼を見ながらお湯を沸かしてコーヒーを飲んだ。幸せだって思った。そういえば、フルーツティーを飲んだ後にキスしたら甘いって言ってたね。微睡んだ君の隙間から2つの水滴が垂れているのを見て、指でなぞった。わたしだけの秘密って思って、それを口にいれた。君はここにいるって思った。
ホテルを出てほとんど夏みたいな爽やかな空の下をキャリーケースを引きながら歩いた。街の看板や建物を見ながら君となんでもないことを話すのが楽しかった。駅のロッカーを探し回って、エレベーターを待っている時に君に日焼け止めを塗ってあげる。外でも首��顔に触れて家族みたいだなーって思った。自分がしてもらってたように自分もこうして人にしていくんだなって思った。少しだけ顔が白くなった君がかわいかったな。ケチな私がロッカーにキャリーケースを2台とも無理矢理入れたら取り出せなくなって君の手を煩わせてしょんぼりした。自分っていやな人間だなーと思ったけど君が仕方ないねって笑ってくれて大丈夫になった、やさしくてあったかくてずっと一緒にいたいって思った。メンチカツとかアイスとかふたりでおいしいねって分け合えるのがうれしい。おみくじを引いて当たっててうわーってなったり浅草寺の煙が目に直撃して泣いたりお参りしたりした。彼がちゃんと祈ってる後ろでそれを叶えてくださいってちゃっかり手を合わせた。
最果タヒのグッズを買いに紀伊國屋書店本店に行ったりサンシャイン水族館で毒を持った生き物を見たりして、外に出たらもう空が真っ黒だった。風が強く吹くサンシャインシティの広場で彼と手を繋いでひとりじめしてるみたいに歩いた。ベンチでキスをしてるカップルの近くのベンチに座って、そこから見える光る塔が何なのかふたりで必死に調べた、今思うとなんでそんなこと?と思うけど楽しかったなあ、結局専門学校の偽物スカイツリーだったね。ふたり手を繋いで風に吹かれながら暗い空を��上げてた。星なんて見えなかったけど、灰色と藍色を混ぜたみたいな空に電飾が反射してもやがかかったみたいに見えていた。人混みの中を急いで歩いたけど乗ろうとしていた電車に間に合わなくて2マスもどる。
2時間くらいかかる電車に乗って次の場所へ。ぬいぐるみを掴みながら、イヤホンを片方ずつつけながらお笑いのショーレースを見た。吐いてる人がいたり電車を降りてお水を買ってきてくれる人がいたりなんとなく忙しい時間だった。 ホテルについて夜中までやっているアイス屋さんへ行くと長蛇の列。若者が多くてびっくりした。彼の好きなラーメン屋へ行って深夜1時に中盛りという名の大盛りのまぜそばを食べた。おいしかったね、わたしは眠すぎて食べながら眠りそうでしたけど。お酒を買ってもらったのにホテルに帰るとすぐ就寝。ほんとうにありがたい恋人。翌朝シャワーを浴びて彼にバトンタッチすると時間が足りないことに気付く。ゆっくりしたかったからフロントに電話して1時間延長、支度が大体終わったあとまだ終わらないでしょみたいな感じになってもう1時間延長。この1時間がなかったら帰るのが惜しいくらいだったと思う、会えているときくらい君に触れていたいよ
この日は急遽彼の友人とバーベキュー。正直めちゃくちゃドキドキした。めちゃくちゃかわいい彼女って思われたいじゃん。それが彼を立てることにつながる?みたいな私の筋の通らない理論。駅まで彼の友人が迎えに来てくれてわーってなった(表せない感情)。車がお兄ちゃんがこの前買った車でこの年代の人ってみんなこれ乗るのかな?とか思った。そういえばお母さんがこの車見ると毎回遊んでそうな若い男の人が乗ってて助手席に女がいるって言ってた。うちのお母さん調べ。友達と話してる彼氏を見るのが変な感じだった。嬉しすぎてtwitterにも書いたけど、彼氏の音楽の趣味が良いのは勿論で、彼氏の友達も音楽の趣味が良いのたまらんすぎた。3人で乗ってた車でボーイズ・オン・ザ・ラン流れてたの一生忘れないと思う、ほんとに。酔った彼氏が友達とアジカン歌ってたのも音だけ覚えてる、私も酔ってたから音だけ。それからふたりとも記憶がないままなんか電車に乗っててなんか駅にいてなんかトイレに行ってなんかベンチで介抱してなんか母親を怖がって急いで電車で戻って結局新幹線遅らせて酔いが覚めた彼に飲み物買ってもらってマックで爆泣きした。「君が笑っていられるように頑張らなきゃな」 みたいなことを言われてこの人が救ってくれるんじゃないかって思った。 前ここにも書いたかな?女子高生のわたしのインスタの裏垢に書いたの。 「君の生きる場所はここじゃないと 君が手を引いてくれ」 ずっと忘れてないわたしが書いた言葉。久しぶりに開いたけど綺麗で儚くてさいこうだった。なきそう。非公開から解放したのであな��もあの日のわたしのこと忘れないでいて。
違うことで着地しちゃったけどパラシュートじゃなくて君から借りたパーカーが風でふくらんで運ばれたっていいよね。この人がいいってもっと強く深く思う数日間でした。いつまでも幸せでいて。ここまで読んでくれてありがとう。もう君も目撃者だよ。
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世の中は空前のサウナブームらしい。各種情報メディアを駆使して街の銭湯にたどり着いた全国の猛者たちが昼夜問わず約50 - 120 ℃の高温室内で肌を触れ合わせる姿を想像してゾッとしない訳がない。合言葉は「整いました」とのことで、僕はこれを珍奇サウナ偏愛者による「型に嵌ったフロー」と誤読して勝手に溜飲を下げている。チンコだけに、風呂だけに。これはなにもサウナ好きを揶揄しているのではない。むしろ彼らは街の銭湯の隆盛に大いに貢献している。そんなサウナブームを皮切りにして、いまでは銭湯での音楽ライブやDJイベント、更にレコードや書籍を販売する催事までもが行われて、みな一様にそれなりの賑わいをみせているようだ。この数年で銭湯を舞台にしたMVや楽曲がどれだけ製作されたことだろう。これについても、関わった人たちは広義の意味でのリノベーションに一役買っている。公共性の再編とでも形容しておこうか。因みにカセットテープレーベル”Ital.”を主催するケイタくんはサウナ好きではなく、古参にして無類の(ただの)風呂好きである。とある書籍の記述により誤解を招いている可能性があったので、一応。かくいう僕も幼少期に住んでいた家の並びに銭湯があったので週の半分くらいは利用していた。お尻に石鹸を塗りたくって誰が一番速く床を滑ることができるかを競い合う「尻軽レース」に挑戦したり、友人とタッグを組んで肩車をする、もしくは自力で壁をよじ登って女湯を覗くなどの愚行三昧で、いずれも店主にこっぴどく叱られた。16-18歳の頃にはいまも豊津駅の近くにある福助温泉で深夜の清掃アルバイトもさせてもらっていた。誰もいない時間帯の業務目的とは言え、禁断の女湯に足を踏み入れるのは、性欲みなぎる多感な時期の男子として、当たり前にドギマギした記憶がある。ロッカーの片隅に置き去りにされた下着を見つけたときは興奮を抑えきれなかった。いま思い返せば老���が使用している類の肌色のそれであったが、当時の自分としては貧相な妄想に薪をくべるものであれば、なんでも良かったのだ。バイト終わりにはトイレにこもって自身の陰茎を握り締めた。そんな日の翌朝は決まって寝坊してしまい、定刻の登校に間に合わなかった。そういう小さな欲望の積み重ねが、人を大人にするのだ。僕はいまでも家族で福助温泉に通っている。番台では当時と変わらぬ寡黙な女将さんが節目がちに帳面を捲っている。いまも昔もこの人に向かって性器をさらしているかと思うと、未熟な僕は今更ながらに不思議な感慨に浸ってしまう。女将さん、俺はちゃんとやれただろうか?やるべきこと、果たすべきことを全うできましたか?女将さんは大人になった僕を認識している筈だが、なにも言わない。もともと極端に口数の少ない方だったので、僕の方からも敢えて話題を持ち出すこともない。30年前、父親と一緒に股間を露わにしていた僕がいつしか父親になり、今度は自分の息子たちと共に股間を露わにしている。女将さんはすべてを見て、知っている。心底かなわないと思う。数十年間ずっと変わらぬ姿勢でペンを握る女将さんの手許にある帳面、あそこに世界の秘密、いや、もっと言えば「世紀の発見」がしたためられているのではないかと勘繰らせるほどの圧倒的な寡黙。安易に適温を求めてはならない。静寂の裏側で、湯は激しく沸いている。
もう一件、自分が子どもの頃から足繁く通い、お世話になっていた近所の銭湯、新泉温泉があったのだが、昨年惜しくも閉館してしまった。電気風呂の横に鯉が泳ぐ大きな水槽があって、息子たちも一番のお気に入りだったので、残念で仕方がない。隆盛と没落。この世の均衡が保たれたことなど、かつて一度もなかった筈だ。そもそもフロー(風呂)強者が言うほど簡単に物事が整う訳がない。新泉温泉の最終営業日、もちろん親子で最後の湯に浸かりに行った。しかしそんな日に限って長男がロッカーの鍵を紛失してしまい、浴室や脱衣場を血眼になって探し回るも見つからない。僕ら家族の異変に気がついた店主やその場にいたお客さんも誰が言い出すともなく、一緒になって鍵を探してくれた。床を這いずって探しているうちに銭湯の老朽を伴う歴史が手のひらを通じて伝わってくる。今日限りでもうこの場所には通うことができないことがわかっているので、自ずと込み上げてくるものがあった。鍵は古びた体重計の裏側から発見された。その瞬間、店主以外の全員が全裸のまま快哉を叫びハイタッチした。長男もほっと胸を撫で下ろしていた。これこそが裸の付き合いというものだ。帰り際、息子たちは自分たちで描いた新泉温泉の絵と手紙を店主に手渡した。僕は「実は子どもの頃から通っていたんです」と伝えると店主は「わかってたよ、自転車屋さんのとこの」と言ってくれた。適温を求めてはならない。いつだって現実は血反吐が出るほど残酷だ。それでも僕たちは新泉温泉の湯を忘れない。店主はその日の入浴料を受け取らなかった。
このように僕個人にとっても銭湯には様々な思い入れがあり、いまでも大好きな場所に変わりはないが、それは昨今のサウナブームとはまったく関係がないし、死んでも「整いました」とか言いたくない。そもそもが自分の性器を他者にさらすことも、他者によってさらされた性器を目の当たりにすることも得意ではない。むしろはっきりと苦手だ。世の男性の数だけ多種多様な性器が存在する。サイズ、形状、カラーバリエーション、味、ニオイ等々、どれをとってもふたつとして同じものがない。股の間にぶら下がっているという設置条件がこれまた滑稽で、あのルックスのあの人にあんな性器が、とか、あのガタイのあの人にあんな性器が……みたいな、得たくもない新規情報が視覚を通して脳内に流し込まれるので、煩わしいことこの上ない。挨拶を交わす程度だった近隣の人々とばったり銭湯で遭遇してしまったら、その日を境にして、顔を合わせるたびに性器が脳裏にチラついてしまう。実際に息子の同級生の父親数名と銭湯でチンコの鉢合わせしてしまったのだが、以降、なかなかパパたちのチンコの造形を払拭できなくなる。これはまさに不慮の追突事故、ごっチンコというやつだ。会社員時代、憧れの上司と出張先で入浴を共にする機会があったのだが、どちらかと言えば華奢に分類されるであろう上司の股間には目を覆いたくなるくらいに巨大なふたつのフグリがblah blah blah、いや垂れ下がっていたのだ。洗髪の際にバスチェアに腰掛けておられたが、信じられないことに巨大すぎるフグリはべちゃりと床に接地していた。以来、上司がどれほどの正論を振りかざそうが、客先でのプレゼン時に切れ味鋭くポインターを振り回そうが、どうしたってスラックスの内側で窒息しかけているであろう巨大なフグリを想起してしまう。程なく僕は退職した。とにかく性器というのにはそこにあるが故に素通りすることが難しく、極めて厄介なシロモノである。それが「ない」ことで逆に「有して」しまう諸問題と真摯に向き合ったOBATA LEOの最新作『目下茫洋』は、数多あるフェミニズム関連のテキストとは一線を画する。あまりにグロテスクでおぞましい、だからこそ美しいなどという常套句を粉砕する「弱さ」に貫かれた思考の遍歴。貫く我々♂ではなく、貫かれる♀の身体から滴る分泌液で書かれた紋様のようで、誌面に一定の形状で留められている訳ではない。読む者の素養に左右されるようにして、その形状は刻一刻と微細に変化するだろう。こちらは無数に排泄するが、あちらはたったひとつで対峙している。なにも戦地は彼の地だけではない。戦場は僕やあなたのすぐそばで、いまもネバっこく股を開��ている。
臍の下に埋め込まれた爆弾を抉りとるための努力を続けながら、同時にあるのかわからない最終地点に向けて爆弾を運ぶ。本当は抉り取ることはできないとわかっていても、背骨を曲げて運び続けることが、すなわち生きることになっている。『目下茫洋』
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本当に人手が足りないし、猫の手も借りたいぐらい人手不足になった結果、外国人を雇う事になった。もう外国人を雇い続けて1年になるが、これが頗る評判が悪い。仕事の漏れややり方に不備があるので指摘しても、カタコトの日本語で「ハイ、ワカリマシタ」とは返ってくるが何度言っても改善されない。本社に早く日本人雇ってくれ仕事が回らんと伝えても改善されず。金がないんだろう。発注側も安い清掃会社を使いたいので、もうこのまま安い清掃会社の従業員として致命的なミスでもして、「少し値が張ってもまともな清掃会社を使おう」と思わせるのが俺か社会的役割なんじゃないか?とさえ思った。またとある日、外国人が自分の入館証をトイレに誤って流したと言っていた。意味がわからん。流す前に気づくだろ普通。トイレじゃなくて誰かをビルに入れるために横に流したんじゃねえか?とさえ思った。入館証トイレ流しの件と再発行の話がビル管理会社に届きこっぴどく怒られ、「従業員に反省文書かせてくれないか?再発されては困る」と言われた。俺も対策してえけどうっかりでトイレに流す意味がわからねえもん。一応現場では入館証をポケットに入れず常に首にかけて携帯するというルールを再度周知はした。当該のベトナム人も「ハイ、ワカリマシタ」といった。そしてオーナーの言う通りに反省文書かせた。ベトナム人の彼なりの計らいではあったんだろうが英語がびっちり並んだ反省文が返ってきた。律儀に書いてくれてありがとう。俺は英語が読めないので、そのまま管理会社に渡した。管理会社部長は「これはふざけてるのか?」とブチキレた。俺は上の空でこの仕事に別れを思った。そんなこんなで数ヶ月前に、久々に日本人が入ってきた。中年の清掃経験がある男だ。挨拶もしっかりしてるし、現場の清掃員の七割が外国人なことに少し戸惑いはしていたが、俺は久々にホッとした。しかし、勤務開始から3日後にビル利用者から「最近入った清掃の男が階段掃除しながらスカートの中を覗いてくる」とクレームが入った。俺は覗きの現場を見てはいないので、片方の意見だけを鵜呑みに新入り中年を咎めることが出来なかったので一先ず保留にした。そして翌���別の女性からクレームが入ったので、これは本物かもしれない懸念が出た。昼休み前に「階段で清掃員にスカートの中を見られて不快だったというクレームか入った。新入り中年さんは本当に見て無いとは思うが、神経質なお客様もいて以前からこういうクレームがあったので(ちなみに過去に一度も無い)、階段の清掃中は極力仕事だけにフォーカスを当ててくださいね、なんかあったら遠慮なく私に相談してください。」と伝えた。そうすると新入り中年さんは顔と禿げた頭を真っ赤にして「俺じゃねえよ!!!!!!」と怒鳴りだした。「おまえは見てないと思う」という仮置きしたのにこのブチギレ方は「あ、こいつは本物だわ」と確信した。そのままロッカーから私服を取り出しそのまま外に出ていったので飯でも食べに行くのかなと思ったら駐車場から新入りの奇声音となにかものを壊す破壊音が聞こえたので急いで見に行ったら粉々になったマキタの掃除機と脱ぎ捨てられた作業服が転がっていた。新人中年は帰ってこなかった。入館証をトイレに流したベトナム人は「新人中年サン、チョトおかしいよ?」と困惑した表情で溢し、俺は本社から「従業員の教育が悪い」と叱責され、減給を言い渡され、仕事を辞める決心がついた。俺の指導力も不足していたんだろう。新しく入ってくる人間がまともに仕事をしてくれない外国人かやばい日本人の二択で、彼らをまともな清掃員に育て上げる能力は俺には無かった。もう俺は本社と何も話したくないし顔も見たくない精神状態に陥っていて、派遣先の入館証と作業着を本社に郵送し、事前に準備していた退職届を内容証明で送った。本社からの連絡先は着信拒否にし、かかってくる謎の携帯番号も着拒にしてから1ヶ月ほどで解雇通知が送られてきた。離職票が届いてなかったので、本社の総務部に電話で「増田だけど離職票が来てない」と伝えると「人事部長から話があるそうなのでお待ち下さい」と言われたので「はい」とだけ伝えガチャ切りし、ハローワークに「退職した会社に催促しても離職票が送られてこない」と伝えた。3週間ほどで離職票が届いた。そんなこんなで30代無職のゴミが出来上がった。職歴はフリーターと清掃会社しかないし高卒だが、もう清掃には二度と戻りたくないし、なんなら別会社でも清掃関係者を見るのが���だし、ホームセンターでマキタ製品を見るだけでも吐き気がする。精神科に行ったほうがいいのかもしれないが、客観的にみてまともじゃない精神状態でも受診しないことで「自分は精神的にまともかもしれない」一縷の望みの可能性に縋る事が出来、それが自分の中の精神安定を保つことが出来ている。話が少し脱線したが、すべての清掃会社はこんな感じではないんだろうけど、給与もっと高くし競争率高めないとこの先もっと酷くなる気がする。今は失業手当貰いながら無職中にJavascriptの入門書写経して「はぇ〜」って言いながら時間つぶしてる、職業訓練は過去に電気工事士取るのに使ったのでまた使ったらもっと職歴が汚れる。(2度も職業訓練に通ってる奴は使いたくないだろう)コンピュータって偉いな、指示が正しければ指示通り動くんだな、もう人間と接したくねえよ追記朝起きたらこんな誤字脱字だらけの書きなぐったような文章がホッテントリいりしてびびった親切心でアドバイスくれた方々どうもありがとう。全部に返事はする気力わかないけど、アドバイスくれた方々だけに所々補足。JavaScriptはブラウザ上ですぐ動きが見えるので入門書買って遊んでただけで、IT系に転職したいとかそういうのはないです。適応障害でメンタル死んだSEの友人の話とか聞いていたのと、N予備校でGithubに触れた時に「ギャッ、英語」となったので、無責任に趣味として遊ぶ分には良いと思うけれども、これに社会的責任がついたら絶対病むと思います。仕事にしてる人すごい。手書きコードをエディタに写経するだけの仕事とかあったらやりたいけどきっとそんなものは無いでしょう。清掃関係にも戻る予定はないですね、昔から自分の能力に劣り(精神的体力のなさや頭の回転の遅さ)を実感していて、門戸の広くてハードルの低い清掃業界に入ったのも自分の能力を見据えての選択でした。若い内に手に職つく別の業界に行くべきだと諸先輩方からは言われた事もあったのですが、新卒時代に圧倒的に同期より劣っていた飛んだ経験から考えて、仮に行っても多分やって行けなかったと思います。ビルメンですが、近くでビルメンを見てきたN=1から言わせてもらうと普通に大変だと思います。便所の糞抜きはビルメンの仕事でしたし、ネットだと未経験が入りやすいみたいな話がありますが、実際は元電気屋とか元水道屋の元職人達が多いので、未経験で入ってきたっぽい人達が苦労してるのを見てきました。手先が不器用なので私には無理だなと思ってます。元職人達に支えられてる業界なので、未経験だらけで記録とりのルーチンはこなせても、設備トラブルによるイレ��ュラーには対応出来ず、現場によっては炎上(火災的な意味ではなく)してる防災センターもあるとかビルメンの人から聞いたことがあります。電気工事士を取ったのですが、その時に手先の不器用さを痛感したのと、電気の知識が交流から理解できず止まっているので、適正はないですね。免許返納したほうがいいかもしれないです。家のスイッチ交換の役にはたちましたが。清掃やってて何いってんだと思われるかもしれませんが、汚いところと暑い所が結構苦手で、トイレ掃除のたびに頭痛と胃のムカつきを感じていました。こう書いてると働きたくない理由ばかり出てくるので、元々働きたくない社会不適合者なんだと思います。割と好感な反応もあったのでむしろ驚きましたが、本当に仕事ができない無能です。私を知ってる人がこれを読んで、私のことを真面目だとか有能だとか書かれてるのを見たら全員が全員「はぁ……?」と渋い顔すると思います。思われてるほど良い人間じゃないのですみません。とりあえず貯金も失業手当もあるし、当分はゆっくり過ごして、何も考えず静かに過ごそうと思います。気にかけてくれた人達ありがとう。嬉しかったです。おわり
清掃会社人材不足でマジでヤバい
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2023/7/31〜
7月31日 先週末から夏休みをとって沖縄へ旅行へ出掛けていた上司が、台風接近のため、予定していたフライトがキャンセルとなり、追加でお休み予定となる連絡がくる。 ちょうど仕事が立て込んでいるタイミングだったので、旅行先のホテルで持参していたノートパソコンで仕事をしてもらうことになった。上の立場になるといつでもお仕事ができるような準備をしてしまうものなんだろうか。 そういえば、金曜日に早退している中で、その上司の個人携帯から私の個人携帯へ着信が入っていたことを思い出す(折り返しはしていない)。
写真展のDMができて、HPに展示概要やプロフィールが掲載されて、なんだかいよいよという気持ちで嬉しい。 たくさん見積もりしてもらったけれど、写真集の発注もやっと完了させた。
重い重い診断書を持って、でも幸い(?)今日は上席の方々が揃って不在。お世話になっている保健師さんに相談メールをしてみてよかった! 上席の方と産業医の先生も交えた面談をしましょう、とのこと。 だんだんと私の訳のわからない病気のことに巻き込まれる人が増えていってしまうな〜と、面談の席でも、病識薄めの他人事口調で自分のことを話す自分が想像できて、でもお仕事をする人間としてだめなのがわかるので、あやのちゃん一体あなたはたくさんの大人達を巻き込んで何がしたいの?!という気持ちで泣きながら帰ってきた。
社会的に大きな組織なので、きちんと対応してくれることは確かで、でもそれが建前上のきちんと、であり、実態は裏でなかなかに言われたい放題になりかねないのも目の当たりにしているで、そうゆうところで怯んでしまっている。 (それを主治医の先生に言ったけれど、そんなの無視無視!と一喝されただけだった。)
とにかくなってみないとわからないし、今日もお外の現場に繰り出せたし、もうこの手のことを考えるのが面倒にもなってきたので、写真集を作ろうと思う。あと早く帰れない日も、飽きるまで桃を買おうと思う。
8月1日 久しぶりに日差しが強くない日だった。
朝から、昨日ギャラリーのHPに公開された展覧会の告知ページをSNSでお知らせしたり、並行線で上司に診断書を渡さなくてはいけないことで緊張したりしていた。
出勤してから、上司へメールを送り、面談をして、とりあえず先週の診察で言われたことと診断書に書かれていることだけを伝える。 伝える中でやっぱり泣いてしまって、そんなに仕事頑張りたくなかったんじゃないの、よかったじゃん、なにいい子ぶってんの?あやのちゃん!!という気持ち。
ちょっとした仕草や動作についてを、なんかね〜かわいいんだよね〜、と褒めてもらって少し回復。
相談メールを送っていた保健師さんから“緊張したでしょう”と、労いのメールをいただき、また泣きそうになって、どこまでもいつまでも大人の人に甘えている。
写真でも撮って帰ろう、と、ロッカーに置きっぱなしだった三脚を持って帰る。バスの中で一期下の方とあったので、今日は自撮りはできず、でもお���をしながら、日中は雷雨で鳴けなかった分を取り戻すようにセミが怖いくらい鳴く道を歩いた。
今日は心も身体もへとへとで、ちょっとしたことでまた泣いてしまいながら、1日を終えることになりそうです。
8月2日 今日は満月だけれどもう早くお部屋へ帰ってしまおうとしている。
外の現場を禁止するための文章だったのではなかったの?!と思いながら、今日もお外で立ち会いをする。診断書が出たから、それ以降すぐ外に出たら倒れてしまうのか、と言われたらそうではないけれど、なんか話が違う気がするし、それに乗って気丈に振舞ってしまう自分もいる。 昨日からの泣きぐせがついて、誰かとの少しのディスコミュニケーションで泣いてしまう。
時間があったら銀行をはしごする予定だったけれど、待ち時間が長そうで、すっかり体力がなくなっていて、中途半端にしか予定をこなせなかった。
出張先のまちは夏休みモードで、それぞれのお家のまえに小学生が夏休み期間中にお持ち帰りさせられる朝顔のプランターが置かれていた。 隣り合うお家で、一軒は枯れ果てていて、もう一軒は水色の朝顔が咲いていた。
観察日記とかで朝顔の絵を描いたことある人多い気がするけれど、朝顔って書くの難しい。ラッパ状の奥行きのある感じとか、花びらの柔らかい感じとか、支柱につるが絡まる感じとか、平面的なお花ではない感じ。着彩も花びら一枚の中で白いところと紫とか色があるところがなだらかにあって難しかった気がする。
そしたら、その朝顔のプランターのお家から女の人が駆け足で出てきて、私と鉢合わせた時に、あ!!と自分に笑いながら忘れ物を取りに玄関へ駆け戻っていった。足元がクロックスだったので、それを履き替えにもどったのかな。
午前中いっぱいで現場の用務を終えて、もうへとへとだったので職場には戻らずに、池袋PARCOでミッフィーのグッズを少しみて(やっぱり思ったより小さい売り場展開で過度な期待は厳禁)、丸ビルのおしゃれドラッグストアで少し買い物をして帰宅。 レジをしてくれたお姉さんの名札を見たら、私と同じ苗字の漢字で(かなりかなり珍しい)、え??妹かな?とドッキリしてしまった。 丸ビルの地下はランチに出てきているオフィス街の方々でとても混んでいた。 丸ビルの地上はオープントップバスに乗り込む外国人の方々がたくさんいた。
明らかに昨日から何かがすり減っている。
8月3日 全方向において落ち込んでいます!
8月4日 金曜日の魔法で少し復活して、あまり記憶がないくらいバタバタと提出間際の忙しさに紛れた1日だった。 取り立てて何も日記に書きたいこともなくて、これくらいの日々を毎日送れるようになれば、程よく充実できていいのかな、と、この帰り道で死んでしまったりするのかもしれない、と思っている。
先日職場に出した診断書に基づいて、誤魔化さずに体調優先で仕事をしたい旨と、体調回復に100%を注げることができない気持ちも含めて治療中である旨を、ちゃんと伝えないと!と昨晩泣きながら思っていた。
最近、お金関係の動きが2件あり、1つは身に覚えのない引き落としが発生しており、カード会社からの注意告発で判明したこと。カードの再発行中なので、なにか何も欲しくなくなる。世の中のプレスリリースに興味を持てなくなる。そうゆうことじゃなくて、カード不正利用されること怖がってよ。 もう1つは写真展用貯金をおろした時、9円の利子がついていたこと。 なんとなく覚え書き。
死なないで帰りたい。
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チケット敗北戦
ちょっと PC で調べ物をして、マウンテンブレンドという名前のコーヒー豆を挽いて淹れ、バナナの蒸しパンを食べた。それ以外は、坂本慎太郎とコーネリアスのライブのチケットの応募をしたくらいの午前中だった。
坂本慎太郎は以前一回だけ恵比寿でライブを観たことがあり、その時はゆらゆら帝国ではなくソロアルバムの曲を演奏していたのだが、ライブアレンジが絶妙で、ジャジーでエロスな雰囲気が出ていた。ソロの曲の、ただそこにある異物のような感じがすっとなくなり、じんと染み入る味わいの音楽になっていて凄いもの聴いたと思った記憶がある。
去年出たアルバムもアレンジでまた違う聴こえ方になるだろうと思って、観に行きたいと思ったのだった。あとコーネリアス���最近は普通に聴いているので得だと思った。
で、発売開始が 10:00 でそのタイミングを 5 分程度前から待ち伏せし、発売丁度にアクセスしたが、サイトがサーバーエラーの挙動になり購入に進めなくなった。リロードしたら売り切れていた。
今回は先行抽選が事前にあり、その残りの券を販売するようだったので、枚数が少なく限られた人しかチケットを手に入れられないようだった。
不安定なネット回線で申し込んだとか、クレカの情報確認で戸惑ったとかそういう反省点はあるが、まあそこが上手にできていたとしても自動購入の bot や運が強い人には勝てないので、あまり気にしても仕方がないし気にしない。
この経験を次に生かせればいいと思うが、最近あまりライブに行っていないので次のときにはまた忘れてしまっているのだと思う。
チケットが取れない時には、自分はあまりライブを観ることに魅力を感じていないのではないか?と考えたりする。
立ち続けて演奏や歌を聴かなければいけないこと、混んでいるライブであれば自由に移動ができないこと、自分の前にいる人の身長によってはステージが見えないこと、音量調節ができないこと(これは耳栓を使えば多少調整できる)、ロッカーに荷物を置けるかわからないところ、演者と観覧者が身内ばかりのときに場違いなところに来てしまったと感じること、などがある。なんか思い出すとチケットのもぎりの人の態度もたいてい悪かった気がする。
あーでもライブアレンジ聴きたい。ライブアルバムが聴きたい。
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うちの冷蔵庫の中には切らしてはいけない食材のコーナーがあるが、そこの食材がかなり減ってきたので、午後に買い出しに行った。
自分はどのスーパーでもたいてい良いところを見つけることができるのであまり店を選ばないのだが、今日は他にも買いたいものがあったのでショッピングモールに行って全てを揃えてしまうことにした。
事前に買う荷物が多いことが予想される場合、徒歩や自転車よりスクーターで向かう方がよい。スクーターには荷室が 2 つ+袋を吊り下げるフックがあるので木材とか扇風機を買わない限り大抵のものは積み込むことができる。
途中、初めて通る道の先に信号のない丁字路があり、目的地に向かうには半分渋滞になっているそこを右折で合流する必要が出た。こんな時、どのタイミングで入ればいいのだろうか?
あまりわからないが、今回は一瞬渋滞が途切れたのでそこに割り込ませてもらった。無理やりファスナー合流のように入れてもらうのが一般的なのか?とも考えた。
ショッピングモールまで距離は遠くないのですぐ着いた。
中に入っているカインズというホームセンターで布団の敷きパッドと枕パッドを購入した。通年で使いたいので冷感ではないものにした。
カインズには家で使う多種多様なアイテムが陳列されていて、歩いて眺めるだけで家の質を向上させるアイデアを沢山補充できそうだった。しかし買い物の前半からそんなことをしていたら体力が持たないと思ったのでやめた。
ビニール手袋を買うために上階にある 100 円ショップに向かった。予定には入っていなかったバターのケースとカカオのパンも買ってしまった。100 円ショップにパンが置いてあると意外で面白くついつい買ってしまう。
この店舗に隣接してゲームセンターがあり、このあたりがモールの中で最も混んでいたと思われる。
個人的には不快に思うレベルの混雑だったが、これを不快に思わない人が多ければこれがスタンダードになり、逆に混雑せず快適に過ごせる店は面積を広げた費用の分が価格に転嫁されるようになるだろう、と当然のことを考えていた。
最後に 1F のスーパーで食材を補充した。
自分には家に常に備えておきたいものとして食パン、牛乳、ヨーグルト、卵、バター、チーズ、豆腐、ハチミツなどがあるが、昼の時点でこのうち半分程度を食べきってしまっていた。なのでこれらの補充を行い、さらにグラノーラ、トマト、ジャガイモ、冷凍しめじ、冷凍ほうれん草、バターレーズンパン、豚肉切り落とし、焼売、ちくわ、きゅうり、キウイ、サラダ、エナジーゼリー、サバの煮物、インスタントコーヒー、イ���リアンパセリ、ウインナーをカートに入れ、5000 円を超える会計を iD で支払った。
レジに向かうために通り過ぎただけのお菓子のレーンで「明日はうちで映画祭りだから」と話していた家族のことを妙に憶えている。雨の中の暗い部屋でテレビ画面にうつる映画を眺める一家のことを想像した。
この店のバイク駐輪場は排気量 125cc までのバイクしか駐車できないと書いてあったので、面倒だと思いながらも車の駐車場に移動してスクーターを停めたのだが、これが最新式の駐車場で、駐車券がなく、入庫と出庫の際にナンバープレートをカメラで読み取って、それを使って支払い確認を行う仕組みになっているものだった。
買い物袋3つの取っ手を手の内側に食い込ませながら、出庫の手続きのために支払い機のタッチパネルを操作し、スクーターのナンバーを照合するが、車体前面のナンバープレートを読んで管理しているらしく、前面にナンバーがない自分のスクーターは画面に表れなかった。管理外になっているようだった。
そのため、係員に出庫方法を聞いたり、管理会社のコールセンターに電話したのだが、結局次から気を付けてくれとのことを言われただけで出ることができた。帰宅後に調べたら、実は反対側の入り口から入れば大排気量のバイクも停車できるスペースがあったことが今更わかった。
どうすればいいかよくわからないことがあった時には疲れる。しかもあまり考えずに選んだ帰り道が一方通行で、思ったように家に向かえなかった。駅前のその道は慢性渋滞のようなありさまで、なかなか抜けられなかった。
途中で図書館が経路上にあることがわかったので、寄って予約していた小説を回収することにした。
ガラガラの駐輪場にスクーターをサッと停めてハンドルにロックをする。ヘルメットを手に持ったまま本を借りて図書館を出たタイミングで閉館のお知らせが放送された。
あまり気にしていなかったが、あと少し遅かったら本を借りることにすら失敗していたらしい。
今回はちょうど放送があって自分がラッキーだったことに気づけたが、もう 1 分早く出ていたらそれもなかったのだろうと思った。
ツイていること、ツイていないことは無数にあるものの、そのうち自分が把握できているものはそのうちのごく僅かなのだろうと思った。バイクに乗るために防寒対策をしなければいけない季節は過ぎていて、サンダルに素手の恰好でそのまま乗れているという幸運も忘れていた。
別にそれがいいとか悪いとか、そういうことを今考えてはいない。
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三輪隊の小説(二次創作)
三輪隊の四畳半
「広いな」
広くはない。
︎ しかし、三輪秀次の独り言に奈良坂透は同意した。
「確かに広い」
「ま、広いな」
︎ 米屋陽介も同意する。
「いつもが狭いのよ」
︎ 控えめに月見蓮もうなずく。
︎ 全員意見は一致しているが、本来ならば広くはない。
︎ 三輪隊作戦室の奥まった場所にひっそりと存在する四畳半の部屋だ。
︎ この作戦室に入室して最初に目に入るオフィス然とした大部屋と対照的に、奥にある四畳半の小部屋はのんびりとした空間だ。畳の間に座卓を置いている。
︎ なぜそうなったかは、三輪隊以外の者は誰も知らない。壁際には渋い色の階段タンスが配置され、︎日本画の色紙も額縁に入って飾られ、その風景はノスタルジーさえ感じさせる。
「サザエさんかよ」
とは、A級太刀川隊隊員である出水公平のツッコミだった。
しかし、磯野家の居間も八畳である。カツオとワカメの子ども部屋だって六畳もある。
︎ 狭い四畳半が広く感じられるのは、三輪隊狙撃手である古寺章平の昨日からの不在によるものだった。
︎ 兄さんたちは寂しいのだ。
︎ 当の古寺は本日は遠征選抜試験初日で、寂しさなど感じている暇は微塵もないだろう。昨日は隊長面接のために休みをとっていた。
︎ 古寺は試験のために編成された臨時部隊の隊長を務める。それが意味する未来を考えると三輪は寂しい。
︎ 遠征よりもっと先の未来の話だ。上層部が最終的にどのような決定を下すかは分からないが、四人がバラバラで活動することになっても、遠征が終わればチームに戻る。
︎ しかし、古寺が本当に隊長になる未来は思っていたよりもきっと早く来るのだろう。
︎ とうとう、ちゃぶ台に頬っぺたを載せて、突っ伏してしまった奈良坂を眺めた。こたえている。日浦も行ってしまったあとだしな。米屋はニヤニヤと笑って頬杖をついた。
「動画残しとく?」 ︎
︎「やめてやれ」
「章平、喜ぶんじゃねえ」
「喜ばないだろう」
「章平のことわかってねえなあ。秀次じゃねえんだから」
それはその通りで、三輪なら困惑するだろう。
「話を混ぜっかえすな」
「米屋、りょーかい」
︎ 米屋は最後のバームクーヘンの切れ端を口に放り込んで、ちゃんと残してあった緑茶の冷めたのをごくごくと飲み干してご馳走様と言った。︎
「んじゃ、ま、個人戦行ってくるわ」
「遅番だからあまり時間がないぞ」
「ブースに行っても審査と試験で誰もいない」
︎ 三輪と奈良坂に同時に言われても、わかってるってと立ち上がる。
「太刀川さん��、いるっしょ」
「太刀川隊は早番だから、任務中よ」
︎ タブレットを見ながら、月見も声をかける。
「はーい」
︎ それでも、出かけようとする米屋に三輪はついに名前を呼んだ。
「陽介」
︎ その声の調子を汲んで、
「りょーかい」
︎ 米屋はストンと腰を下ろした。そのまま、三輪を見る。表情は読めない。これは文句を言いたいのだろうと三輪は見当をつけた。
︎ 米屋は未来を憂えて寂しがるなんてことに価値を見出さない。今、古寺がいなくて寂しいのは共有できても、それ以上の共有はお断りなのだ。
︎ しかし、米屋はそうでもこちらにも都合がある。だから、三輪は米屋を引き止めた。
「お前までいなくなったら寂しいだろう」
「なんだよ、そりゃ」
「そのままだ。部屋が広くなって、寂しいという意味だ」
︎ 米屋はそれ以上は突っ込まなかった。
︎ 奈良坂が不機嫌そうに顔をあげる。
「別に俺は寂しくない」
「奈良坂だって引き止めていただろう」
「忠告だ」
「はいはい、りょーかい、りょーかい」
︎ 米屋はもう一回立ち上がると、すぐ脇の冷蔵庫から紙パックの緑茶を取り出してきた。
「狭い部屋が好きだねえ」
狭い部屋だ。
︎ 四畳半の畳部屋ができたのには理由という程のものはない。
︎ A級にあがった時は皆とにかくテンションが高かった。
︎ 憧れの部隊章、トリガー改造、作戦室も引越しになる。
︎ 部隊章のデザインについては大いに盛り上がり、めちゃめちゃかっこいいのが出来たと全員自負している。
︎ トリガー改造は米屋が張り切った。前々から考えていた槍型のトリガーを実装して、学業そっちのけで訓練室にこもってしまうほどだった。これは三輪にとっても待望の実装だったので、相当付き合った。
︎ 一方で、さほど、盛り上がらなかったのは部屋のインテリアである。そこは高校生男子のチームだ。
︎ 大部屋もオペレーター室も広くなり、小さいながらもキッチンもついた。そして、その横に申し訳程度の小さな部屋がひとつ増えることとなった。
︎ B級時代、作戦室でも︎受験勉強が出来るようにと購入した古寺の机はそのまま大部屋に置くこととして、増えた一部屋を何に使おう。
︎ まず、面々は月見に相談した。三輪隊がB級ランク戦を勝ち抜き、晴れてA級部隊になったことについて、月見が最大の功労者であることは戦闘員全員の意見が一致していた。
「月見さんが好きに使えばいい」
︎ しかし、月見は辞退した。本部にあるオペレーターのスペースで身支度するから、自分用はいらないと言う。彼女の幼馴染である太刀川慶曰く『結構、すごいとこのお嬢様』だ。作戦室で身支度したり休憩するのはかえって落ち着かないものかもしれない。
︎ そこで、︎応接室にしたらどうですかと言ったのは古寺だ。
こみ入った話をする面談室のイメージだ。しかし、却下された。
「客こねーだろ」
「俺たちに客? ないな?」
「ラウンジで済む話しかないだろう」
︎ 米屋、三輪、奈良坂に順に言われて、古寺は先輩たち、自己評価低くないですか?と思ったが、実際、用事があってもA級新参部隊はこちらから出向くことが多いし、相談事も滅多になかった。あってもラウンジで済むことばかりだ。
︎ 次に、奈良坂がテスト前に作戦室で勉強したいと言い出した。古寺の受験勉強が捗ったのを見ていたからだ。しかし、目の前でダラダラされると集中できないからあのスペースを勉強部屋にしたらどうかという高校生らしい提案だ。それを聞いて、勉強のほうが大事だ、古寺の机も大部屋にある事だし、ダラダラするほうが狭い部屋でいいと三輪が言い切り、ダラダラするんだったら靴を脱ぎたいと米屋が希望し、そしたらフローリングか畳ですねと古寺が提案し、畳のほうが省スペースよと月見がまとめて、トントン拍子に狭い部屋の処遇は決まった。
︎ そこまで、決めてしまうと、みんなもう什器備品のことなどどうでも良くなって、
「今まで通り、タブレットあるし、モニターはまあ、なくてもいいな」
「タブレットの方が使いやすかったりしますしね」
「章平のパソコンもあるしな」
「必要になったら買えばいいんじゃね? 」
大部屋は作戦机、ロッカーからソファまでB級時代の作戦室から持ってきたものそのままざっくりと配置し、今に至る。モニターは未だに購入に至っていない。タブレットを持ち寄り、額を集めて相談する。
︎ 雑に決まった割には、四畳半はうまく機能し、それぞれダラダラもするし、全員でお茶もする。
長期遠征選抜試験が終わったら、まずはここで座卓を囲むことだろう。
終わり
︎ ︎ ︎ ︎ ︎
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或る街の群青を演奏してみた
今回はASIAN KUNG-FU GENERATIONの『或る街の群青』をカバーしました。
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実は10年ほど前にも全パートカバーに挑戦していて、音作りやミックスの難しさから"コレジャナイ感"がすごく、リードの録音前にお蔵入りとしていました。 今回は個人的なリベンジといったところでしょうか。 現時点の最大パワーで挑みましたが、リベンジできてますでしょうか?
今回からIRというものを導入しまして、ギターとベース両方に適用して音作りなどをしました。詳細は後半に。 ・ドラム まずはドラムから。ドラムのコピー自体は10年前にやっていたのですが、聴き直してみると全然違っていたのでイチから耳コピしなおしました。ドラムセットも初めから組んで、なるべく近い物をチョイスしましたが、なんならスネアの音作りがこの世で一番難しいんじゃねぇか?と最後まで悩まされました。もっとスコン!と鳴ってほしい。。 とはいえドラムはBFD3での打ち込みなので、演奏技量という点では全く苦ではないのです。最大の難関はベースでした。 ・ベース 今回はBEST HIT AKGの音源で耳コピしたのですが、ベースがよく聴こえん...! 土台としてのズッシリ感と存在感はあるのですが、細かいフレーズが両サイドのギターにかき消されていて、特にBメロやギターソロの裏で鳴っているフ��ーズの聴き取りに苦戦しました。 DAW上のEQで上をバッサリ切ってみたり、映像作品集のライブ音源を参考にしてまとめました。なんか最近見かけた音を分離するアプリみたいなのは知ってましたが、どうせ無理だろと思って試しませんでした。耳も鍛えられるしいいやと思って気合で耳コピしましたが、アプリで綺麗に分離出来てたら泣いちゃいますね。 ベースにもIRを取り入れて音作りしたのですが、かなり迫力が出て生々しい音を作ることが出来ました。後述しますが、Radarという機器に入っているampegの15インチ1発のキャビシミュと、SM58の組み合わせが非常に良くて、テンション上がりました。 ベースの音作りに限界を感じていたのでサンズアンプを買おうか本気で悩んでいたのですが、まだ買わなくて済みそうです。(サンズアンプ買う買う詐欺は10年続けてます) ・Leftギター つづいてゴッチさんパートのギター。 ギターはいつものLesPaul Specialの赤です。 ギター→TubeUlent→MXR Super Badass Distortion→UAFX LION→Mooer Radar→UR44(AudioIF)→PC(DAW)というながれです。 LIONのキャビシミュをOFFにして、Mooer RadarにDYNAX製IRを読み込んで置き換えて音作りをしました。これも後述しますがキャビ自体はBognerの412 slantのIRです。マイクの組み合わせでゴッチっぽい音を探して音作りしました。(本来はFender系のアンプなんですけどね) パワーコードが面で来るような曲なので、その辺意識した音を作りました。めちゃくちゃ分厚い音になって大満足です。 バッキングはイントロ後半やサビ、間奏、ソロで両サイドで鳴っているので、それぞれ録音して左右に振って流しています。サビはライブバージョンと原曲でパワーコードの弾き方が違っているように聴こえたので、左右で少し変えています。複雑な響きが音の厚みを増して迫力が出ました。異次元ヲ回遊~のところは4弦の開放弦に指が当たらないようにスライドするのが超難しくて何度も録り直しました。歌いながら弾くとか意味が分かりません。すごい。。。 先日のYouTube Liveにてゴッチパートの音作りのコツを教えてほしいとコメント頂きました。やはりミドルが肝だなと感じます。音のキャラクターが決まるのはミドルで、ゴッチパートを弾くくらいの歪みでミドルを削り過ぎるとヘヴィメタルで聴くような平らな音になってしまうので、程よくミドルを入れてあげて、ブリブリ言うような歪みを目指すと良いかと思います。あとはP90を使うと一気にそれっぽくなるので、P90搭載のギターを使うのも手っ取り早くてアリだと思います。 ・Rightギター 続きまして建さんパート。いつものLesPaulです。 ギター→TubeUlent→MXR Super COMP→Bogner Ecstasy Blue→UAFX LION→Mooer Radar→UR44(AudioIF)→PC(DAW) こちらもLIONのキャビをRadarで置き換えました。やはりIRの効果は絶大でした。ほんとに音が良くなって、ギターを弾くのが楽しいです。 或る街の群青はギターを始めた頃に一度コピーしていたのですんなりと録音出来ました。とはいえサビが間違っていたりソロの弾き方が違っていたので、そこを重点的に練習しました。 "嫌になって投げだした~"の部分は酔杯2007のライブバージョンを参考にしました。あのディレイのアレンジが格好良くて大好きで、カバーするならあれを再現したいなと考えていました。映像作品集5巻にも同じアレンジの或る街が収録されていますね。 "光だって闇だって~"の部分はウワモノギターが重ねられていて、フィナーレ感が出ていたので、追加で録音しました。アウトロのフランジャーは後々気付いてDAWで掛けています。 ・今回の経緯 さて、なぜ今回或る街にしたか、経緯としては 11月初めの飲みの席にて、店内の有線かなにかで2006~2008年あたりの懐かしい曲のプレイリストが流れていまして。 あー懐かしい曲ばっかりだな、なんて思っていたら"テーントーン"というギターが聴こえてきたわけですよ。 どうしてか、外で偶然聴くアジカンはテンションが爆上げになってしまうんですよね。その日は周りに同世代がいなかったので、ひとり恵比寿顔でノッていました。 それからしばらく或る街の群青を聴いていて、或る街弾きたい...と思いながらも10年前の挫折がチラついて、今の音じゃ難しいかなーなんて思っていたところで新機材を購入しましてね。
先ほどから名前が出ている機材がこちらのMooer Radar
これはキャビネットシミュレーターという機器です。僕が以前使っていたPODや、今使っているUAFX LIONにもキャビシミュは��準装備されていますが、これはキャビシミュだけの専用機なのです。
ギター→TubeUlent→MXR Super COMP→Bogner Ecstasy Blue→UAFX LION→Mooer Radar→UR44(AudioIF)→PC(DAW)
先程も出ましたが建さんパートではこんな感じで、UAFX LIONに装備されているキャビシミュをOFFにしてRadarで置き換えています。 このキャビシミュのなにが凄いかというと、キャビネットから出る音の音響特性と、様々なマイクで拾った時の音響特性をシミュレートしてくれるのがまァ凄いのです。実機のアンプを使った録音ではキャビネットから出た爆音をマイクで収録するのですが、それをせずとも音響特性を適用する事でキャビネットで鳴らした質感が得られるというわけですね。 今まで"アンプ"シミュばかり気にしていましたが、多数のキャビネットから近い音を選び、マイクの種類からも音作りを詰めることができます。PODやLIONに入っていたキャビシミュより多くのパターンが試せるようになり、専用機ならではの質の高いキャビネットシミュにグレードアップ出来ました。凄い時代ですよね。PODを使ってた12年の間にこんなのが出来ていたとは知りませんでした。 (IRについては三井律郎さんとInstantさんのYouTubeで知りました) そして、僕がこのRadarを買ったのにはもう一つ理由がありまして。。 Radarはデフォルトでもたくさんのキャビネットの音響特性(IRという)を収録していますが、この機器は他社製のIRも読み込んで使用できるのです。 そう来たらやはり試したいですよね?Bognerのキャビネットを。
ということで、他社製のIRを探していたところ、 DYNAXのBogner 412 Slant キャビネットIRを見つけました。
建さんが使用しているBogner Ecstasyの下にあるキャビネットと同型のBogner 412 slant キャビネットの音響特性データ。これでどれだけ音が近づくのか、試したかったのです。 結果は動画のとおり、ものすごく音が良くなりました。。 しかもこのIRデータ自体は2640円という安さ。まじかと。 詳細はサイトに飛んでもらえると分かりますが、スピーカーの位置やマイクの種類を組み合わせたたくさんデータが入っており、好みのマイクを選んで音作りが出来ます。 RadarをPCと接続して、アプリ内からIRデータを読み込ませて使用します。 ほんとに出音の質感が生々しく、迫力が出て、長年求めていた音にかなり近づくことが出来ました。 あまりにも良い音が出来たため、今回は或る街の群青をリベンジしてみようと思えたのでした。 音作りに行き詰った宅ロッカーの方、キャビシミュ、すんごく良いですよ。。
・雑感 或る街の群青は映画『鉄コン筋クリート』のエンディングテーマとして制作された楽曲で、通常の曲よりも音の迫力があるように感じました。音の配置も、バッキングが両方で鳴っていたり空間系で奥行きが出ていたりと複雑で、似せる���ックス作業は困難を極めました。 やはりプロの仕事は次元が違いますね。憧れます。 演奏面では以前からコピーしていたこともあり、ベース以外はすんなりと行った気もしますが、シンプルなフレーズを格好良く弾くのが結局は一番難しいなと思いました。 そして今回もYouTube君のContentIDには頭から尻まで原曲音源と判断されちゃいました。原曲はもっと凄い音してるので、ContentID君にはちゃんとアジカンの勉強をしてほしいですね。シングルコレクション送りつけてやろうかな...。なーんて。
それでは、また次回。
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【小説】非・登校 (中)
※『非・登校』(上)はこちら (https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/766014791068319744/)
静まり返っているアパートの駐車場に砂利の音を響かせながら、ママが運転する車は細い路地へと出て、遠慮がちな速度でそろそろと、僕が普段なら歩いている通学路を走り始める。
桜並木に繋がる道の角、いつもならそこにクラスメイトのハカセとボーロ、そのふたりが立っているはずだが、今日は誰もいなかった。家を出る前、ママが携帯電話でふたりの母親それぞれと話していたことを思い出す。ハカセもボーロも、きっと両親のどちらかが、車で学校まで送ることになったのだろう。
学区内にある、あるアパートの一室で、変死体がふたつ見つかったというニュースがテレビで放送されたのは、昨日の昼のことだった。死体のひとつは、そのアパートに暮らしている中年の男。そしてもうひとつは、小学生の女の子。彼女は僕と同じ小学五年生で、同じ学校に通う、同じ五年二組の、ナルミヤだった。男も、ナルミヤも、どうやら殺されて死んだらしい。そして殺した犯人は、まだ捕まっていない。
昨日、給食を食べた後、僕たちは午後の授業がなくなり、全校児童が集団下校となった。そして翌日の今日、登校する際は保護者が学校まで児童を送迎するように、と学校から連絡が回った。だからこうして僕は、学校までの道のりをママの車に揺られている。
ナルミヤは昨日、学校を休んでいた。おとといの月曜日もそうだった。いつも朝早く登校して来る彼女の席が八時になっても空っぽなのを見て、「あ、ナルミヤは今日休みなのか」と思っていた。朝の会で行われた健康観察で彼女の名前が呼ばれた時、担任の先生は「今日は、ナルミヤさんはお休みです」と言っていた。昨日の火曜日もそうだった。学校を休む時は、朝八時までに学校に保護者が連絡しなければいけないことになっている。だから、先生がそう言うということは、彼女の両親から学校に連絡があったのだと思っていた。
だけどナルミヤは死んでいた。殺されていたのだ。いつ殺されたのかは、知らされていない。もしかしたら、月曜日にはもう死んでいたのかもしれないし、火曜日の朝までは生きていたのかもしれない。
昨日の昼、給食を終えて昼休みを楽しもうとしていた僕たちに、ナルミヤが亡くなったこと、彼女が事故や病気ではなく、殺されて亡くなったらしいこと、その犯人が未だ捕まっていないこと、そんなショッキングなニュースを伝え、僕たちに下校の準備をするように伝えた担任の先生は、ひどく青ざめた顔をしていた。
だから僕は、そのニュースの内容よりも、先生の様子に驚いてしまった。いつも明るく朗らかで、僕たち五年二組を導いてくれていた先生も、今回のことばかりは、どうしたら良いのかわからないようだった。しかしそれを表に出さないようにしようと努めていることさえもわかってしまうほどの困惑ぶりで、そんな先生を見ているクラスメイトたちも動揺していた。
友達のハカセはさっき食べ終えたばかりの給食を机に吐いていたし、校庭でドッチボールをしたがっていたボーロは、昼休みのチャイムが鳴るよりも早くロッカーから取り出していたボールを手から落としていた。ボールは床で何度かバウンドしたのち、教室の後方へ片付けられていた机たちの下へと転がっていったけれど、誰もそれを拾いに行くことはなかった。教室の中は凍り付いたかのように静かだった。やがて誰かが小さな声で、「嘘でしょ……」と言ったのが聞こえた。先生は少しだけ首を横に動かして、今伝えたことが何ひとつ嘘ではないということを、かろうじて僕たちに伝えた。
「ケイちゃん」
僕が窓の外、いつもと何ひとつ変わらない朝の通学路の風景を眺めながら、昨日のことを思い返していると、ママが唐突に声をかけてきた。
「大丈夫? 学校に行きたくなかったら、今日はお休みしてもいいわよ。ママが学校に電話しておいてあげる。リスコはあの様子じゃ、今日は学校に行くの難しいと思うし……。ケイちゃんも休んだっていいのよ」
車のルームミラーに映っているママは、両手でハンドルを握ったまま、真剣な眼差しで前だけを見つめていた。後部座席の方を見ている様子がなかったので、僕はただ首を横に振るのではなく、「ううん」と声に出してママに答えた。
「学校に行くよ」
「大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「そう……」
そう言いながらも、ママはまだ悩んでいるようだった。
昨日、集団下校で妹と一緒に家に帰ると、出迎えたママは両目に涙を溜めていた。ナルミヤが殺されたというニュースに、彼女とクラスメイトである僕よりも、ママは動揺しているようだった。
そんなママを見たリスコは、たちまち表情を曇らせ、自室に閉じこもったまま、ダイニングに夕飯を食べに来ることもお風呂に入ることもなかった。気難しい僕の妹は、ヒステリックになっているママを見ることを何よりも嫌っている。僕はそんな妹の判断が正しいと思う反面、そんな僕たちの姿がママを悲しませているとも思う。
パパと離婚してからママは少しずつおかしくなっていって、夜にひとりリビングでお酒を飲んで、ワインの瓶を抱いたまま朝までソファーで寝ていたり、手料理をまったく作らなくなって、定期的に届く冷凍食品を順番に食卓に並べるようになったり、洗濯物がいつまでも畳まれることなく部屋の隅に山になっていて、僕たちはそこから衣類を取って着るようになったりしていた。使われることがなくなった掃除機は、僕と妹が交代でかけるようにした。
ママの変化に対して、僕よりもリスコの方が過敏に反応した。妹はママの言うことをほとんど聞かなくなり、���マが家にいる時間は自室にこもることが多くなった。学校に行くのは二日に一度、それも遅刻することなく登校できるのは三回に一回程度。ママが仕事へ向かうために家を出た後、やっと自室から出て来るからだ。
ママは、娘が閉じこもるようになった原因が自分にあるということを気付いている。そして妹も、実の母親のことを心から拒絶している訳ではない。だからリスコは自室の扉の鍵を常に開けておくし、ママはそんなリスコの部屋の扉を開けることはあっても、その中に踏み込むことは決してしない。それでも、ママは昔のようには戻らないままだし、リスコもママの前に姿を見せようとしないままだ。ふたりとも、解決策など見つからない袋小路に迷い込んだまま。そしてそれは、僕も同じだ。
ママに「しっかりして」と言うべきなのか、妹に「ちゃんとしよう」と言うべきなのか、ふたりともに言うべきなのか、僕は家族のために何をするべきなのか、何ができるのか、一体どう��れば、この状況を変えることができるのか、考えれば考えるほど、わからなくなってしまう。わからないからといって、何もしなくて良いということにはならないと、頭ではわかっているけれど、僕はまだ、何もできていない。もしもパパがいてくれたなら、どう行動しただろう。でも僕は、自分の父親がどんな人だったのか、もはや思い出せなくなっていた。
曲がり角でもないのに、車のウィンカーの音がして、うつむいていた僕は窓の外へと目線を向けた。ママが運転する車は、コンビニエンスストアの駐車場へと曲がって行くところだった。何か買い物をするのか、それとも、急にトイレに行きたくなったのだろうか。ルームミラー越しにママの表情を窺ってはみたものの、そのどちらでもなさそうだった。
「ケイちゃん、ちょっと、コンビニ寄って行こうか。何か欲しい物あったら、買ってあげるからね」
ママはそう言って、駐車場に車を停めると、さっさとエンジンを切ってしまった。「別にいいよ」と言おうか悩んだけれど、ママはあっという間に車から降りて行ってしまったので、僕も急いで車から降りることにした。
ママの後ろについてコンビニに入ろうとした時、ちょうど中から、買い物を終えた人が扉を押して出て来るところだった。僕は偶然にも、その人物を知っていた。同じクラスのヒナカワだった。
「ヒナカワ……」
「ケイタくん」
ヒナカワも僕に気が付いた。コンビニの入り口の前で見つめ合ったまま、黙ってしまった僕らを、ママは少しの間待っていたけれど、結局、僕たちをそこに残してひとりコンビニの中へと入って行った。
「ここ入り口の真ん前だから、ちょっと、そっち寄って」
ヒナカワが口を開いたのは、ママが雑誌コーナーの角を曲がって、その姿が外から見えなくなってからだった。僕たちはコンビニの正面から少し離れたところで向かい合って立った。
ヒナカワはTシャツとデニム姿で、僕のように学校の制服を着ている訳でもなければ、ランドセルを背負っている訳でもない。首から下げているタコのキーホルダーが付いた鍵だけが、普段教室で見ている彼女の姿と同じだった。
「ヒナカワ、今日、学校は?」
「行かないよ」
「どうして?」
「どうしてって……」
彼女は眉をひそめて僕を見た。そこで、僕は初めて、今目の前にいるヒナカワは、眼鏡を掛けていないのだということに気が付いた。
「だって、クラスメイトが死んだんだよ」
「うん……」
「殺されたの」
「うん……」
「だから、学校、行かなくてもいいでしょ」
「うん……」
返事をしてはいたが、僕はヒナカワの言葉の意味を今ひとつ理解できていなかった。でも恐らく、学校を休む理由に匹敵するには十分すぎるくらいの出来事に見舞われている、ということが言いたいのだろうな、と推測した。
「ヒナカワの……親は?」
「親?」
ヒナカワは右手に財布、左手にコンビニの袋を持っていて、袋の中には弁当が入っているようだった。周りに彼女の保護者らしき存在は見当たらず、どうやら、ひとりで買い物していたようだ。
「パパは夜勤から帰って来て、今から寝るとこ」
ヒナカワの右手に握られている、成人男性の所有物だろうなという印象の、黒くてごわついている重たそうな長財布に目をやりながら、僕はヒナカワの家には母親がいないのだということを思い出していた。そんな僕の目線を読み取ったのか、彼女は左手の弁当の袋を少し掲げて、「これ、私の今日のお昼」と言った。
「今、お昼ご飯買ったの?」
「だって、今から家に帰ったら部屋にこもってゲームするし。ゲームの途中でご飯買いに行くの面倒じゃん」
「ゲーム?」
「スタストだよ、スタスト。知らない? スターストレイザーってゲーム。ケイタくん、ゲームとかやらないんだっけ?」
「うちはゲーム禁止なんだ」
禁止、という言葉に、彼女は「オエッ」という顔をした。ヒナカワは筋金入りのゲーマーなんだって、ハカセが言っていたような気がする。
そういえば、ハカセもスタストというゲームを遊んでいると、以前、話していた。僕もボーロもテレビゲームであまり遊ばないから、詳しく教えてくれた訳ではなかったけれど、ハカセの口ぶりから、彼がそのゲームに夢中なのだということはよくわかった。
「スタストって、あれだよね、第八都市とか、なんとかドラゴンとか……」
ハカセが言っていたことを思い出しながら僕がそう言うと、ヒナカワは再び眉をひそめるようにして僕を見た。
「トチコロガラドンでしょ」
そう訂正されても、それが正しい名前なのかどうか、僕には判断ができない。
「そう……そのドラゴンがどうしても倒せないんだって、ハカセが言ってたんだ」
「キョウイチロウくんも探してるんだ、トチコロガラドンを倒す方法」
その時。そう言った時、ヒナカワはほんの少しだけ笑った。
「ケイちゃん、お待たせ」
コンビニの扉が開き、ビニール袋を手にしたママが出て来た。ママの顔を見た途端、ヒナカワは黙ってくるりと踵を返し、「じゃあね」とだけ言って歩き出してしまう。僕はそんな彼女の背中に何か言わなきゃいけないと思ったものの、上手く言葉にすることもできず、ただ見送ってしまった。僕はいつもそうだ。何をすれば良いかわからなくて、考えているうちに、時間だけが過ぎてしまう。
「やっぱり、今日は学校お休みしない? ママが学校に電話しておいてあげる。おうちに帰って、アイスクリームでも食べようよ」
ママはそう言って、コンビニの袋を左右に揺らして、かしゃかしゃと鳴らした。袋の中にはママがよく買ってくれる、いつものチョコレートアイスクリームが入っていた。
学校を休みたいとも、学校に行きたいとも、どちらも特別思っていなかった僕は、ママの提案に黙って頷いた。アイスクリームが食べたいとも思わなかったし、ママが思っているほど、僕はそのアイスクリームを好きじゃないけれど、それを伝えようとも思わなかった。
再び車に乗り込んで、ママの運転で来た道を引き返して行く。窓から、ヒナカワの姿を探したけれど、もう彼女の姿はどこにも見つからなかった。家に帰ったのだろう。家に帰って、今日は一日中、ゲームをするに違いなかった。
「ねぇ、ママ」
「なあに?」
「僕のパパって、どんな人だったんだっけ」
僕がそう尋ねた途端、ママの表情が凍り付いたのが、わざわざルームミラーに映るママの顔を確認するまでもなく、わかった。まるでこの車内だけが重力が強くなったかのように、空気が重苦しく感じる。
ママが僕の質問に答えることはなかった。こちらを見ることも、何か声をかけてくることもなかった。車のエンジン音、エアコンの音、ウィンカーの音、ブレーキの音、アクセルを踏む音。ママが運転をしている音だけが、僕の耳に届き続けた。
このまま家に帰っても、妹はさらに不機嫌になるだけだろうな、と思った。こんなママの姿を見て、部屋から出て来る妹ではないだろう。でもママが今こうなっているのは、僕の発した言葉のせいなのは間違いないから、リスコに申し訳なく思った。気難しい僕の妹は、謝ったところで許してはくれないだろう。
どうして僕は、いつもわからないのだろう。どうしたら良いのか、どうしたら良かったのか、わからないままだ。
ドアの内側にもたれるように、窓ガラスに頭を預けながらうなだれていると、視界の隅にさっき出て来たばかりの、僕たちのアパートが見えてきた。
と、いうのはすべて、僕の妄想だ。
現実の僕は、電車に揺られながら、窓から射し込む朝陽に照らされたナルミヤの影が床の上を滑るように移動しているのを見つめている。
彼女が乗って来る駅は、僕らの町と隣の町を分ける大きな川、その川を越えるための橋梁に差し掛かる手前にある。停車していた電車が駅を発ち、橋の前にある緩やかで大きなカーブを曲がる時、車両内の影たちが一斉に同じ方向へと動いていく。
車両に乗り込んでから、電車がその大きなカーブを曲がり切るまで、ナルミヤはいつも、入り口近くのバーを掴んだまま、突っ立っている。彼女が座席に腰を降ろすのは、いつも電車が橋梁に差し掛かってからだ。小学一年生の時、走り出した車両内を移動しようとして、よろけて盛大に尻もちをついてしまった記憶が、五年生になった今も、彼女の手をきつくバーを握ってやり過ごすように仕向けているらしい。
やっと歩き出した彼女は、他に空いている席もあるのに、なんのためらう様子も見せずに僕が座る座席の前にやって来て、今日も僕に尋ねる。
「おはよう、ケイタくん。隣、座ってもいいかな?」
「どうぞ」
どうぞご勝手に。膝の上に抱えているランドセルに顎を乗せたまま、いつものように僕はそう答える。
僕の座席は右隣も左隣も空席で、ナルミヤは僕の左側の座席を選んだ。僕と同じように、背負っていたランドセルを一度降ろし、膝に乗せて彼女は座った。
太陽に背を向けて座っている僕とナルミヤの影が、床にあった。その影の形から、今日はナルミヤの長い髪が左右に分けられ、それぞれ耳の上で結ばれているのだとわかった。僕は、その髪型をしている彼女があまり好きではなかった。
髪を結ばずにおろしている方が、僕は好きだ。透き通るような白い頬に、彼女の艶やかな黒髪が淡い影を作っているのを見つめるのが好きだ。だけどナルミヤは、最近髪を結ってばかりだ。だから僕は、最近彼女を見ると落胆してばかりいる。
「ケイタくん、今日の一時間目の国語は、漢字のテストだよ。勉強してきた?」
「してない」
「勉強しなくても、もう、ばっちり?」
「漢字ドリル、教室に置きっぱなしで、持って帰ってないから」
下を向いたままそう答えると、ナルミヤが僕の隣で小さく笑ったのが聞こえた。
「ケイタくん、いつも置き勉してるんだ、いけない子だね」
がたん、と。
電車が少し大きく揺れた。橋梁を渡り終わった時だった。窓の外へと目の向けると、川の水面が遠ざかっていくところだった。川岸に生える葦が堤防まで延々と続いている。毎日のように、登校の時に見る風景。
だけど、なぜだろう。僕はその時、これを見たことがある、と思ったのだ。この風景を、見たことがある。いや、当たり前だ。昨日だって僕は、今日と同じように電車で登校していた。先週だってそうだ。なのに、この既視感は一体なんだろう。まるで、夢の中で見たことが、そのまま現実世界に起こったかのような感覚だった。
目に映る風景に、大差��ないはず。そうだ、目じゃない。視覚じゃないんだ。僕が既視感を覚えたのは。僕は聞いたことがある。ナルミヤのさっきの言葉を。
そのことに気付いた僕は思わず、隣に座っているナルミヤの顔を見ようとした。そのために左側を向いた。する��彼女は、僕を見ていた。まるで今、僕が向くのを待っていたみたいに、真正面から、その大きな瞳でじっと僕を見つめていた。目と目が合った、そう思った瞬間、僕は全身に電流が駆け巡ったような衝撃を受けた。
「なっ……」
思いがけず叫んでしまった。同じ車両にいる周囲の数人が不思議そうに僕の方を見て、何事もなかったとわかると、すぐに視線を逸らした。その間も、ナルミヤは僕を見つめたままだった。僕の目だけが、彼女に視線を合わせたり逸らしたり忙しくうろたえていて、そんな僕を見てもなお、ナルミヤの目線はちっとも動じない。
目を合わせていることがつらかった。耐えられない。いや、実際は耐えられないほどの苦痛など微塵も感じていないのに、それでも目線を合わせ続ける勇気がない。そう、勇気がなかった。ナルミヤと見つめ合うだけの勇気が僕にはない。そうやって見つめ合っているだけで、身体じゅうが燃えるように熱くなって、焼け死んでしまうような気がするのだ。別に、ナルミヤの瞳からレーザー光線が出ている訳でもないのに。
「な、なんだよ……」
僕はそう言いながら、膝の上のランドセルを抱え直すようにして前を向き、今までのようにうつむくしかなかった。そうすることで、僕の視界は元通り床だけになり、ナルミヤの目線から顔を背けることになる。それだけで、一気に跳ね上がった体温が、静かに下降していくように感じる。自分の顔が熱くなっていることを自覚した。耳まで赤くなっているかもしれない。ナルミヤはそんな僕を見て、どう思うだろう。変な人だと思うかもしれない。
ナルミヤはまだ僕を見つめているようだった。床に伸びている彼女の影は、横顔のまま動いていない。先程の、正面から僕を見つめるナルミヤの顔。白い肌、長い睫毛、ぱっちりとした瞳、ほんのり赤い頬と唇。左耳の上には、水色の水玉模様のパッチンヘアピンが留まっていた。彼女は小学一年生の時から、そのヘアピンを愛用している。視界には影が投影された床しかなくても、僕はナルミヤの顔を細かく思い出すことができる。眉毛の形、鼻の形、顎の形。彼女が目の前にいなくても、正確にその顔を思い出せるようになるほど、僕は彼女を見つめてきた。
「一緒に見る?」
ナルミヤは、唐突にそう言った。
「え?」
思わず、僕は訊き返す。
「漢字ドリル、学校に置きっぱなしなんでしょ? 私、今持ってるから、一緒に見る?」
横目でちらりと窺ったナルミヤは、まだこちらをじっと見つめているままだった。その表情は真剣そのものだ。
「…………いや、いいよ」
僕は再び電車内の床へと目線を落としながら、そう答えた。
「いいの?」
「うん」
「……そっか」
ナルミヤはそう言って、やっと正面へ向き直った。膝の上のランドセルを開けて漢字ドリルを取り出している。降りる駅に着くまでの間、ドリルを見返して漢字の復習をするつもりらしかった。
僕は隣のナルミヤにわからないように、本当に小さく、肩をすくめた。急に馬鹿馬鹿しく思えて、なんとも言えない空しさが込み上げてきた。僕は見つめ合うだけで、今にも爆発してしまいそうな気持ちになるのに、彼女は一時間目の漢字テストのことに、意識が向いているようだった。
漢字のテストが、なんだと言うのだ。テストと言っても、成績の評価に直接的に影響するようなテストではなく、今まで習った漢字の復習を皆にしてもらうのが目的ですと、先週、担任の先生は言っていた。テストの出題範囲に指定されたページは、あらかじめ見ておいたけれど、復習が必要なほど難しい漢字も特に見当たらなかった。たいしたテストではないのだ。なのに、ナルミヤは漢字テストの心配をしている。どうしてなのだろう、僕はそのことに、無性に腹が立っていた。
僕は、ナルミヤにも同じように、苦しくなってもらいたかった。人の不幸を願うなんて、褒められたことではないとわかってはいるけれど、それが僕の本心だった。ナルミヤに僕と同じ思いをしてほしかった。僕にとって彼女が特別であるように、彼女に僕を特別と思ってほしかった。でもナルミヤは、そんな僕の感情なんて知るはずもなく、隣で漢字ドリルを見つめている。
電車が止まった。いつの間にか、駅に着いたみたいだ。でもこの駅は、僕たちが降りるべき駅ではない。車両の扉が開いて、数人の乗客が降りて行く。代わりに乗り込んで来たのは、見慣れたクラスメイトだった。ヒナカワだ。
赤いランドセルを背負っているヒナカワは、こちらへと真っ直ぐ歩み寄って来て、僕の右隣の席へ何も言わずに腰を降ろした。
「おはよう、ヒナカワ」
「……ん」
ヒナカワは小さな声でそう答えた。漢字ドリルへ視線を落としていたナルミヤは、僕がヒナカワに声をかけるまで、彼女が電車に乗り込んで来たことに気付いていなかったようだ。顔を上げると、きょとんとした表情で、「あれ? おはよう、ヒナカワさん」と言った。ヒナカワは、それには返事をしなかった。
ヒナカワはランドセルを背負ったまま、座席に腰掛けていた。背中と座席の背もたれの間にランドセルがつっかえて、尻が半分くらいしか座席の上に乗っかっていないはずだが、彼女がそれを気にしている様子はなかった。
ヒナカワはどこかぼんやりした表情で、足元の方を見つめていた。毛先がいつもあちらこちらに跳ねている彼女の髪は、今日は一段と好き勝手に暴れているようだったし、掛けている眼鏡のレンズには指紋の跡がくっきりと付いたままになっていた。そばかすが散った顔をくしゃくしゃにするように、大きな欠伸をしている。寝不足なのか、目の下にはうっすら隈ができていた。
「ヒナカワ、眠いの?」
「んー……」
僕の質問に、ヒナカワは緩慢そうな動作で目元を擦りながら、そう小さくうなっただけだった。どうやら、相当眠たいらしい。
電車は再び走り出している。電車の揺れに合わせて、ヒナカワの頭が規則的に揺れている。彼女の瞳が開いていなければ、眠っているのだと思っただろう。薄暗い光を灯したその目が、ちらりと僕の方を見やった。
「あれ……?」
ヒナカワの細く開いた唇から、転げ落ちるように言葉が出て来た。
「生きてるの……?」
「え?」
僕は思わず、訊き返した。ヒナカワの瞳を見つめ返して気付く。彼女は、僕を見ていた訳ではなかった。僕の左隣に座る、ナルミヤを見ていた。
「死んじゃったんじゃなかった?」
「え……?」
「ああ、そうか……」
ヒナカワは眠たそうに目をこすった。
「それは、ケイタくんの妄想だったんだっけ」
ヒナカワが何を言ったのか、わからなかった。僕は彼女の言葉の意味を理解することができなかった。
ナルミヤは漢字ドリルを眺めることに夢中になっていたらしい、そこでようやく顔を上げたようだ。電車の床に落ちている影から、彼女がヒナカワの方に顔を向けたのがわかった。
「うん? ヒナカワさん、なんの話してるの?」
「なんでもない」
ヒナカワはそう言うと、ナルミヤから目線を外した。先程までと同じように、自分の足元を見つめ続ける。電車の揺れに合わせて、また頭が揺れている。
ナルミヤは不思議そうに首を傾げているようだったが、それ以上何も話そうとしないヒナカワの様子を見て、再び漢字ドリルへと向き直った。そういう風に、床の影が動いていた。
僕はただ、床を見つめていた。
僕の妄想だと、ヒナカワは言った。まるで、僕の妄想の中でナルミヤが死んでいることを、知っているかのような口ぶりだった。
ナルミヤは、もう何度も死んでいる。彼女は数え切れないほどの死を迎えている。
たとえば、水泳の授業中にプールで溺れて死んでしまう彼女。学校の屋上から落下して死んでしまう彼女。横断歩道を渡る途中でダンプカーに撥ねられて死んでしまう彼女。校庭で遊んでいたら野良犬に襲われ噛まれて死んでしまう彼女……。
それらはすべて、僕の妄想の中における出来事だ。僕は彼女が死ぬところを、今まで幾度となく妄想してきた。
しかし、そのことを誰かに打ち明けたことはない。誰に話したとしても、僕は相手から異常者だという目で見られてしまうに違いない。僕はナルミヤと見つめ合う勇気もないくせに、彼女が死ぬところばかりを妄想してしまうのだ。どうしてなのかは、自分でもわからない。ナルミヤを見ていると胸が苦しくなってしまうから、彼女なんていっそ死んでしまえば良いと、心のどこかでそう思っているのかもしれない。
ヒナカワは、僕がしている妄想のことを知っているのだろうか。いや、知っているはずはない。そのことを誰にも漏らしたことなどないのだから。それは僕だけの秘密なのだ。だが、だとすれば先程の彼女の言葉は、一体なんだと言うのだろう。ヒナカワは、僕の秘密を知っているとしか思えない。ただでたらめを言って、それがたまたま合致したなんて、そんな偶然はありえない。
「ヒトシくんと、キョウイチロウくんは?」
「え?」
考え込んでいた僕は、突然のヒナカワの言葉に再び驚いた。彼女は相変わらず、うつむいたまま、自分の足元を見つめていた。
「ケイタくんが、ボーロとハカセって呼んでるふたりだよ。あのふたりは、一緒じゃないの?」
「一緒じゃないの、って、どういうこと……?」
「どういうことって…………」
訊き返した僕に、ヒナカワは不審そうな顔をした。眉間に皺が寄っている。
「ケイタくん、いつもそのふたりと一緒だったじゃない」
ヒナカワの声は、そう言いながらもだんだん音量が小さくなっていった。
ボーロとハカセ。それは僕の友達のあだ名で、僕たち三人は、学校ではよく一緒につるんでいる。昼休みに遊ぶのも、いつもこのふたりだ。だけど、「一緒じゃないの?」というのは、一体、どういう意味なのだろう。確かに、僕たち三人は、学校ではいつも一緒にいるけれど――。
「ヒトシくんは徒歩通学で、キョウイチロウくんはバス通学だよ」
そう答えたのは僕ではなく、漢字ドリルのページに目を凝らしているはずのナルミヤだった。
「私たちみたいに電車通学じゃないから、今は一緒にいない。そうでしょ、ケイタくん」
ナルミヤは凛とした声でそう言った。僕は振り向けなかった。僕は自分の右側に座る、ヒナカワを見つめたままだった。
「ヒナカワさん、なんでそんなこと訊くの?」
「……じゃあ、リスコちゃんは?」
「え?」
「ヒトシくんとキョウイチロウくんは電車通学じゃないからここにいない、それはわかったよ。じゃあリスコちゃんは? リスコちゃんはケイタくんの妹なんだから、同じ電車通学のはずでしょ? 見たところ、この車両にはいないみたいだけど。違う車両に乗っているの?」
「……ヒナカワさん、一体どうしたの?」
ナルミヤの声が、小さく震えていた。まるで怯えているみたいだった。
「ケイタくんに、妹なんていないよ?」
その言葉に、ヒナカワの瞳が見開かれる。
「ケイタくんは、ひとりっ子だよ? ねぇ、ケイタくん?」
僕はナルミヤの言葉に、頷こうとして――。
空をふたつに引き裂くような、咆哮が聞こえたのはその時だった。
電車が盛大なブレーキ音を立��ながら大きく揺れる。緊急停止したその衝撃で、ヒナカワは座席から床へと転がり落ちていった。ナルミヤの身体もバランスを崩す。僕が咄嗟に受け止めなかったら、ナルミヤも座席から転がり落ちていただろう。
「大丈夫?」
僕の問いに、ナルミヤは小さく頷く。周囲の乗客たちも、予期せぬ衝撃にバランスを崩す人がほとんどだった。停止した車両のあちらこちらから、気遣う言葉や謝る声が聞こえる。
「ケイタくん……あれ、見て…………」
ナルミヤが、窓の外を指さしていた。僕はそちら���見る。同じように窓から空を仰いだのは、僕たちだけではなかった。同じ車両に乗り合わせている他の乗客たちも同様だった。そして全員が、「それ」を目撃した。
「それ」は破壊者だった。僕は一目見てそう思った。「破壊神」と呼ぶこともできるのかもしれないが、「それ」が神であるとは到底思わなかった。
巨大な身体は鱗と羽毛に覆われていた。顔には目玉が五つあった。八本の手足にはそれぞれ大きな鉤爪があるのが見えた。二対の翼で羽ばたき、「それ」は空に浮かんでいた。どのくらいの大きさなのかはわからなかった。しかし「それ」は、今まで見たことのある、宙に浮かぶ生き物たちの何よりも巨大だった。旅客機くらいの大きさがあるかもしれない。
「それ」がなんていう生き物なのかは見当もつかなかった。ただ、僕たちに友好的な生き物とは思えなかった。「それ」は破壊者だった。僕はそう思った。
「ケイタくん……あれ、何……?」
乗客の誰もが言葉を失っていた。窓から見える「それ」が現実だとは思えなかった。だからそう尋ねたナルミヤの言葉に、車両の誰もが答えられなかった。その、はずだった。
「トチコロガラドンだよ」
ヒナカワだった。彼女は立ち上がりながらそう言った。背負ったままだったランドセルが緩衝材となり、背中から床に落ちても無事だったようだ。見たところ無傷のようだったし、身体のどこかが痛そうな素振りもなかった。
ヒナカワが口にした耳慣れない言葉が、ナルミヤの問いへの答えなのだということに、僕は遅れて気が付いた。
「トチ……? 今、なんて……?」
「トチコロガラドン。わからないの? それも、ケイタくんの妄想のはずでしょ?」
吐き捨てるようにヒナカワはそう答える。
「あれはスターストレイザーってテレビゲームに登場する、敵モンスター。名前はトチコロガラドン。第八都市を見捨てることが、あのモンスターを倒すための唯一の方法だった。多くのプレイヤーが挑戦していたけれど、他の方法はまだ誰も見つけていない。少なくとも、ケイタくんの妄想ではそうだった」
僕の妄想?
ヒナカワは、一体何を言っている? あの巨大な怪物が、僕の妄想だと言うのだろうか。
違う、あんな怪物、妄想なんかしていない。
僕が妄想していたのは。
思い描いていたのは、ナルミヤが死ぬところだ。ナルミヤが、溺れて、あるいは落下して、もしくは撥ねられて、そうでなければ噛まれて、刺されて、潰されて、刻まれて、吊られて、焼かれて、埋められて、死ぬところ。ひどい目に遭って、可哀想な姿になり果てて死ぬ。そういう妄想だ。テレビゲームのことも、あの怪物のことも、都市のことも、怪物の倒し方も、僕は知らない。そんなこと、妄想をしたこともない。
「キョウイチロウくんは?」
ヒナカワがもう一度、そう訊いた。
「本当に、キョウイチロウくんはここにいないの? 彼は、トチコロガラドンを倒す方法を探していたはずだよ」
「キョウイチロウくんは、バス通学なんだってば……」
そう答えたナルミヤの声は、もはや涙ぐんでいた。
ヒナカワの瞳は、僕を見ていた。ナルミヤのことは一切見ていなかった。窓の外で二対の翼で羽ばたき、八本の手足を垂らし、五つの目玉をギョロギョロと動かしている怪物にも、見向きもしなかった。僕だけを見ていた。まるで彼女の世界には、今や僕しか存在していないかのようだった。
「リスコちゃんはどこへ行ったの?」
ヒナカワが僕を食い入るように見つめたまま、そう言う。
リスコ。誰だそれは。僕の妹。違う、妹なんかいない。いつも寝起きがあまり良くない、僕の妹。僕はひとりっ子だ。起こそうとすると噛みついてくる、気性が激しい妹。僕にきょうだいはいない。気難しく、繊細で、環境の変化に敏感なリスコ。そんな人、僕は知らない。
「ケイタくん、思い出して」
僕は、何かを忘れているのだろうか。
何か思い出さなければいけないことが、あるのだろうか。
僕は。
目が覚めたのは目覚ましが鳴る前だった。朝食はトースト、ハムエッグ、オレンジジュース。赤、青、白の歯磨き粉。エプロンをしているママ。背広を着ているパパ。時計が止まった部屋。ガスも止まった部屋。黄ばんだタオル。ベランダで吸った煙草。葉桜の桜並木。途中で寄ったコンビニ。ママがよく買ってくれるチョコレートアイスクリーム。
僕は。
床にできた血溜まりでヘアピンを拾った。水色の水玉模様のヘアピンには見覚えがあった。アパートの一室には死体がふたつあった。パパのくたびれた革靴は玄関にあった。ママはワインの瓶を抱いて眠っていた。ナルミヤは美人で、ヒナカワはブス。
僕は。
十二人の操作キャラクターと十二種類の使用武器。宇宙から飛来する巨大で不可思議な敵の倒し方は数十通り存在し、その選択によって物語は細かく分岐していく。しかし、どんな経緯を辿ったとしても、第八都市は必ず壊滅してしまう。第八都市を犠牲にしなければ、トチコロガラドンを倒すことはできない。
僕は。
一体、何を犠牲にしたのだろうか?
と、いうのはすべて、僕の妄想だ。
現実の僕は、プラコマティクス溶液が満ちた培養ポッドの中をぷかぷかと漂いながら、短い夢から覚めた時のような感覚を味わっていた。授業中、眠ってはいけないと思っていながらも、眠気に抗えず一瞬、かくんと身体が震えるようなその感覚に、学校に通っていた日々のことを懐かしく思う。
ほんの一瞬に過ぎなかった僕のその感覚は、ポッドに接続されている測定器にすぐさま検知され、実験室にはアラーム音が流される。それは、まるで居眠りしていたことを教師に告げ口されたかのような、そんな居心地の悪さだった。
「被験者番号百零七、ケイタが覚醒しました」
モニターの前でそう告げたのは、ナルミヤだった。僕のポッドと接続されている唯一の視覚デバイスは、彼女の後ろ姿を捉えていた。今日の彼女は、腰まである艶やかな黒髪をポニーテールにしていた。
「ケイタが起きたか」
そう答えたのは、ナルミヤの隣に佇む男だった。ナルミヤと同様に白衣を着ているようだが、僕の視覚デバイスである小型カメラでは、その男の細かい風貌まではわからない。しかしその背格好から、恐らくは、ナルミヤが「博士」と呼ぶ男に違いない。
この実験室にいるのは、ナルミヤとその男、ふたりだけだった。たくさんの培養ポッドが並べられ、機器に接続されていた。ふたりはモニターに映し出される各ポッドの数値を見ているようだった。
「ケイタはずいぶん奇妙な夢を見ていたようだな。現れた波形も妙だ」
男はモニターを覗き込み、何やら感慨深そうに頷いている。ナルミヤはバインダーを手に、用紙に何か記録しているようだった。ペンを持っている右手が小刻みに動いている。
「覚醒には至らないが、半覚醒状態を何度も経験している……。わかるかねナルミヤくん、波形の、ここ、この部分だ。ここも、ああ、ここもそうだ。この波形の動きは、覚醒時に見られる形と全く同じだと思わないか。しかしこの程度の数値の変動では、覚醒とは呼べない。疑似的な覚醒状態を睡眠中に何度も体験しているということだ。夢の中で夢を見ている、とでも言えばいいのか……」
「ええ、博士。これは番号百零七にのみ現れる、彼特有の波形です」
「ふむ……。君が先週の報告書に記載していたのは、まさしくこの件だった訳だ」
男はモニターから目を離さないまま、腕組みをした。また、ひとりで何度も頷いている。
「ナルミヤくん、君は一体いつ、この波形に気が付いたのかね?」
「最初に疑念を抱いたのは三週間前のことですが、記録を確かめたところ、およそ八週間前から兆候はありました」
ナルミヤの凛とした声は聞いていて心地が良かった。僕のポッドに接続されている聴覚デバイスは、彼女の音声を捉えること、それ自体を喜びだと認識しているのではないかとさえ思う。もちろん、デバイスはただ機械的に音を捉えているだけに過ぎない。
「過去のデータは?」
「こちらです」
ナルミヤが端末を操作すると、モニターの表示が切り替わった。
「八週間前からのデータがこれか?」
「そうです」
「ずいぶん滑らかに数値が動いているな……いや、新しい記録になればなるほど、乱れが出てきている」
「乱れ、ですか?」
「そうだ。先程のデータで言うと、この、覚醒直前のところに最も顕著に出ている。ほら、数値が突然、跳ね上がっている箇所があるだろう」
「確かに、一度は上昇していますが、またすぐ元の数値に戻っていますし、その程度の振れ幅は誤差の範囲内のはずですが……」
そう言うナルミヤの横顔。多少、眉間に皺が寄ってはいるが、そんなことがまったく気にならないほど美しい、整った造形。
「確かにこれは誤差の範囲だ。しかし見なさい、八週間前のデータには、そんな誤差さえもない。数値の上昇と下降は常に一定の波を描いている」
男はモニターばかりを見つめている。ナルミヤの美しさになど、少しも気に留めている様子がない。
「この誤差とも言える『乱れ』は、徐々に増えてきている。これは一体、何を表しているのか、それが問題なんだ……」
男は、それからしばらくの間、黙ったままだった。ナルミヤはそんな男を見つめていた。まるで、男が何かの答えを口にするのをじっと待っているかのように見えた。
もしも、あんな風に見つめられたら。そう想像するだけで、震えそうだった。きっと僕はナルミヤに見つめられたら、何か答えに辿り着いたとしても、それを彼女に伝える勇気など持たないだろう。彼女を前にして、伝えられる言葉など、いずれもたいした価値を持たない。何を発しようとも、彼女の前では敵わない。僕の存在など、あまりにも無力だ。彼女の瞳には、それぐらいの力がある。
だから僕は、「博士」と呼ばれる男がナルミヤを前にして平然としていることが不思議でならなかった。彼女の声を直に聞き、その瞳に見つめられ、すぐ隣に彼女の存在があっても、動じないのはなぜなのだろう。あの男はよほどの異常者��違いなかった。人として必要な感覚器官が欠けているとしか思えない。彼女の魅力を感じることができないとしたら、それは五感があったとしてもなんの意味もない。目も、耳も失っている僕が、接続されたデバイスを通じてのみでさえ、ナルミヤの存在にこれほど感銘を受けているというのに。
「博士、八週間前は、新しい被験者がここに運ばれて来た時期とちょうど合致します」
沈黙を破ることをどこかためらうように、ナルミヤは囁くようにそう言った。
「新しい被験者……?」
「被験者番号百十三、ヒナカワです」
男が振り返った。並べられている培養ポッドを見ているのだ。僕が漂っている培養ポッドの六つ隣、ヒナカワの脳味噌が浮かんでいるはずのポッドを。僕に接続されている視覚デバイスが男の顔を捉える。男は眼鏡を掛けていた。そのレンズが照明を反射していて、表情はよくわからない。
「ヒナカワ……この被験者がここに来てから、ケイタの波形に変化が現れ、疑似的な覚醒を繰り返すようになった……と、いうことなのかね」
ナルミヤは頷く。
「因果関係はわかりません……ただ、番号百十三が来た時期と、番号百零七の波形に変化が生じた時期が合致する、というだけです」
「他の被験者の波形は? 変化は見られないのかね」
「二十週間前から遡ってデータを確認してみましたが、特には……」
「ふむ……。このふたりの被験者たちだけが特別、という訳か……」
男の顔の角度が少しばかり変わった。照明を反射していた眼鏡のレンズの向こうに、男の瞳が見えた。その瞳は暗い闇を湛えたように虚ろで、しかし、目線は鋭かった。
「このふたりの共通点はあるのかね?」
「あります。出身地です」
「出身地か……。どこの出身なんだ? ケイタとヒナカワは……」
「第八都市です」
ナルミヤは手元のバインダーに挟められている用紙を二、三枚めくりながら答えた。男は一瞬、それを聞いて言葉に詰まった。
「第八都市……そうか、このふたりは……あの壊滅した街の、生き残りという訳か……」
「被験者の中で、第八都市の出身者はこのふたりだけです」
「生き残った者同士が……被験者同士が、なんらかの影響を及ぼしているということかもしれないな……」
男はひとり、小さく何度も頷きながら、再びモニターへと向き直る。
「ナルミヤくん、君はもうしばらく、観測を続けてくれ。私は検証してみたいことがある」
「わかりました」
「何か異常が出たら、すぐに知らせてくれ」
「ええ、すぐにご連絡します」
男は実験室を出て行った。ひとりとなったナルミヤは、モニターと手元のバインダーの書類を見比べながら、端末の操作を始める。
ヒナカワが僕に話しかけてきたのは、その時だった。
――ケイタくん、聞こえる?
それは突然、背筋を指でなぞられた時のような不快感だった。僕に肉体があったら、大きく震わせて驚いていたことだろう。しかし、今の僕には身体がない。触覚と呼べる物もない。あるのは、プラコマティクス溶液に浮かぶ脳味噌だけだ。接続されている視覚デバイスと聴覚デバイスから、外部から映像と音声を取り込んで感知することがかろうじてできているけれど、それは僕の肉体を通してではなく、カメラとマイクが検知したデータが電子刺激となって脳で感じているだけに過ぎない。
しかし僕は、ヒナカワの声を感じるのだ。デバイスを通じてではなく、自分の肉体で、つまりは脳で直接、ヒナカワが僕に語りかけてきているのを感じている。
――ケイタくん、思い出した? 私たちはトチコロガラドンに襲われて、でもかろうじて生き残ったの。家族も、友達も、先生も、皆死んじゃった。街は壊滅状態になってしまった。私たちだけがこうして助かったの。
直接感じさせられている、ヒナカワの声は不快だった。聞いているだけで、身体じゅうを虫が這い回っているかのようだった。そんな経験をしたことは一度もないけれど、そうだとしか言いようがなかった。それは、ヒナカワを嫌悪しているという訳ではなく、恐らくは、他人が僕自身に直接入り込んでいる、そのこと自体の気味の悪さだった。
――ケイタくんが今までしてきた妄想はすべて、現実から目を逸らすためのものだったの。ケイタくんはトチコロガラドンのことも、第八都市が滅ぶことも、全部ゲームの中のことだと思うことにして、自分は普通に、普段通りに学校へ行って、生活しているんだと思い込もうとしていたの。それは卑怯なことなんかじゃないよ、ケイタくんの心を守るためには、必要なことだったの。
耳を塞ぐことでその声が聞こえなくなるのであれば、どんなに良かったのだろう。しかし僕には耳もなければ、声を遮るための両手もない。聴覚で感じている訳ではないその声を、聞こえないようにする手段はない。衣服をすべて剥ぎ取られ、陰部を撫で回されている。そんな不快感で僕は死にたくなっていた。
――でもケイタくん、そろそろ目を覚まして。私たちに起こったことを思い出して。現実と向き合って。私たちは身体を取り戻さなくちゃいけないの。そのためには、トチコロガラドンを倒さないといけない。
もはや僕の五感はすべて、ヒナカワに支配されていた。全身でヒナカワを感じていた。僕には耳も目も鼻も舌も皮膚さえもないというのに、そのすべてで彼女の存在を感じていた。彼女以外に何ひとつ、感じられる物がないと言ってもいい。この世界にはヒナカワしか存在していないのかと思うほど、すべてが彼女だった。
僕は彼女の白い肌を見た。鼻先にまで迫って来た彼女は、良いにおいがした。口の中にねじ込まれた「それ」は温かくて柔らかく、舌は微かな甘さを感じた。肌と肌が触れ合った。彼女の身体は僕よりも体温が少しばかり低かった。
彼女が僕の中に侵入して来たのを感じた。それを受け入れたつもりはなかった。しかし、抵抗する術もなかった。
――わかるでしょ、ケイタくん。私と力を合わせるの。一緒にトチコロガラドンを倒す。そのためには、こうするしかない。私たちは、ひとつになるの。
僕の中から、彼女の声が聞こえた。彼女は僕の中に侵入し続けていた。脳で感じられるところよりもずっと奥深いところまで、彼女が注がれて、満ちていくのがわかった。もはや彼女は液体で、僕はただそれを受け入れる容器だった。
――私と一緒に戦って。ケイタくん、お願い。
彼女の声は、どこか涙で潤んでいるように聞こえた。
その時だった。
彼女は短い悲鳴を上げて、僕の中から一瞬で消え失せた。
何が起こったのか。正常を取り戻した聴覚デバイスが実験室に鳴り響くアラームを捉えたが、それがなんの警告音なのか、すぐにはわからなかった。僕のすべてを支配していたヒナカワは、今はもう影も形もない。僕の視覚デバイスはモニターの前のナルミヤを捉えた。ナルミヤの右手は何かのボタンを押したままになっている。それが「緊急停止」のボタンであると、かろうじてわかった。どうやらナルミヤが、ヒナカワの侵入を阻止してくれたことは間違いなさそうだ。
ナルミヤは振り返った。僕を見ていた。僕の脳味噌が浮かんでいる、プラコマティクス溶液で満たされた培養ポッドを見つめていた。僕の視覚デバイスはナルミヤの視線の先にはない。だから、彼女がいくら僕の脳味噌を見つめても、目線が合うことはない。しかし、それで良かったのかもしれない。僕はナルミヤと見つめ合ったりしたら、正気を保っていられる自信がなかった。
「ヒナカワさんの培養ポッドを停止させたよ、ケイタくん」
ナルミヤはそう言った。それは凛とした声だった。
「再起動の処置をしなければ、ヒナカワさんの脳は機能停止に陥るよ。もって、あと五分ってところかな。そしたら、ヒナカワさんは死ぬの。もう二度と、ケイタくんの邪魔をすることもない」
ナルミヤは僕を見つめていた。目も耳も鼻も口も舌もない、手も足も何もない、ただ脳味噌でしかない僕を見ていた。
僕は視覚デバイスを通して、そんなナルミヤをただ眺めているしかなかった。僕はずっとそうだった。ナルミヤと同じ教室で過ごしていた、あの頃。当時から、僕は彼女を見つめていた。その横顔を、あるいは後ろ姿を。僕の目線はいつだって彼女のことを探していた。近くから、もしくは遠くから、彼女を見つめていた。今と同じだ。五体満足だった頃から、脳味噌だけになった今と変わらない。
あの時と同じだ。薄暗い台所の入り口に立ち尽くしていた、あの時。床に広がっていく赤い水溜まりの前で、僕は手を貸すことも叫ぶこともしなかった。何もせず、ただナルミヤを見ていた。汚れた鈍い銀色。水玉模様のヘアピンが落ちて、乱れた黒髪が横顔を隠していた。あの時、泣いていたのだろうか、それとも。今となってはわからない。あの時と、同じ。
実験室には警告音が鳴り続けていた。ヒナカワの気配はもうどこにも感じられなかった。ナルミヤがポッドを再起動させる様子はない。やがて、ヒナカワの脳は停止するだろう。
「私がケイタくんを守ってあげる。だから大丈夫。何も心配いらないよ」
ナルミヤの言葉はどこか厳かに響いた。彼女は微笑んでいた。それはどこか、神聖さを感じさせる笑みだった。彼女は天使みたいだった。女神なのかもしれなかった。
僕は夢の中にいる時のように、不思議な気持ちでナルミヤの言葉を聞いていた。
彼女は一体、何から守ろうとしてくれているのだろう? 誰かが、あるいは何かが僕を脅かそうとしているのだろうか。実際のところ、僕は何ひとつ、心配などしていなかった。たとえ僕の身がどんな不幸に見舞われるとしても、僕以外のすべてのものがどんな事態に陥るとしても、遠い国で戦争が始まったというニュースをテレビで見た時のような、ただ「そんな感じ」でしかなかった。 培養液にぷかぷかと浮かぶ脳味噌だけの僕にできることなんて、何もないのだから。
※『非・登校』(下) (https://kurihara-yumeko.tumblr.com/post/766016265929310208/) へと続く
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2024-10-13
午前中髪を切り、午後になって職場近くのジムへ。傾斜を付けて走り、体幹周りのマシンを中心にこなした。ついでに職場に置き忘れていた私物を取りに寄って、途中のターミナル駅のスーパーで食材を買って帰路につく。ここまでは順調に用事を済ませていた。
さて、自宅最寄駅に着いてリュックの中を探ってみると部屋の鍵が無い。シューズ、タオル、財布、替えのシャツ、さっき買ったものはちゃんとあって、鍵だけが無い。まずいなと思いジムに架電して問い合わせるも、届いていないという。とりあえずアパートに戻り、共用玄関の脇の駐輪場でもう一度荷物をひっくり返す。やはり鍵は無い。意を決して、荷物を自転車にひっかけて身を軽くして、再び電車に乗ってジムに向かうことにした。
ジムで使ったロッカーに残っているかもしれない、あるいは寄った職場に置いてきたかもしれない、と道すがら様々な可能性を考え、実際にそれらの場所を探した。しかしどちらにも鍵は見当たらなかった。たいした用事でもないのに休みの日に家と職場を2往復したことで、ますます悔しい。再びの帰りの電車。失意の中、スマホから「アパート 鍵 なくした」「鍵紛失 ピッキング」などと検索していた。
アパートの前まで戻り、荷物をひっくり返してやはり鍵が無いことを確かめる。ふと、一つの可能性に思い当たる。
「そもそも鍵、掛けてたっけ?」
つまり、鍵を持ち出してすらいなかったのではないか?
意を決して(何度目の決意だろう)、共用玄関脇の柵をよじ登って乗り越え(他の住人に見られていたらまずかった)、自室のドアの前に立ち、把手に手をかける。すると、ドアは当たり前みたいに開いた。やはりそもそも鍵を持ってはいなかったのだ。もちろん空巣にも入られていない。力が抜けて玄関に座り込む。
一昨日も経理から借りていたお金を紛失しかけて真っ青になって探していた。どっちも見つかって良かったですね。
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大阪公演FAQ・当日券について
大阪公演ご来場のお客様へご案内申し上げます。
【開場時間について】
開演45分前に開場いたします。
会場内のお化粧室の数が少ないため、大変混み合うことが予想されます。なるべく事前にお済ませの上、ご来場ください。
【上演時間について】
上演時間は、約2時間(途中休憩なし)を予定しております。
※変更になる可能性がございます。
※開演後、演出の都合上、客席にご案内できない時間帯がございますので、スタッフの指示に従って客席内にお入りください。
【グッズ販売について】
グッズは、先行販売(8/29(木)公演 開場前)・開場中・終演後に販売いたします。
※チケットをお持ちでないお客様もお買い求めいただけますが、
物販所へのご案内は先行販売(8/29(木)公演 開場前)及び上演中のみとなりますのでご注意くださいませ。
※グッズは数に限りがございますので、万一売り切れの際はご容赦下さいませ。
<先行販売時間について>
■8月29日(木) 18:00公演 →先行販売 16:00-16:45
※8月30日(金)公演、8月31日(土)公演の先行販売はございません。
▽グッズ詳細ページ
https://reonjack.com/#goods
【入り待ち・出待ちについて】
劇場付近での楽屋入り待ち・出待ち行為は禁止とさせていただきます。その他、劇場及び劇場近隣の皆様にご迷惑となる行為はご遠慮ください。 劇場敷地内ではスタッフの指示・案内にご協力いただきますようお願い申し上げます。
【お祝い花について】
スペースの関係上、お祝い花(スタンド花、楽屋花)は拝辞いたします。
【出演者へのプレゼントやお手紙について】
ロビーに設置されているプレゼントボックスにお預けください。
生花と飲食物に関しましては、お受け取りすることができませんので、あらかじめご了承ください。
【写真撮影について】
以下については撮影可能となっております。
【客席内】開場中のみ撮影いただけます。開演5分前のアナウンス以降は撮影をご遠慮ください。 【ロビー】全フロア撮影いただけます。撮影の際は、他のお客様にご配慮いただきますようお願いいたします。
【会場のロッカーやクロークについて】
会場ロビーに設置しているロッカーをご利用ください。クロークのご用意はございません。
また、客席内は狭くなっておりますので、大きなお荷物はお持ち込みいただけません。お手荷物は小さめにしていただけますよう、ご協力をお願いいたします。
【会場の喫煙所について】
劇場内は禁煙でございます。喫煙所はございません。
【当日券について】
全公演、開演60分前より地下1階シアター・ドラマシティにて販売いたします。
お支払いは現金のみとなります。(注釈付きのお席を含みます)
※注釈付きは、場面により見づらい可能性のあるお席です。
※クレジットカード等はご利用いただけません。
※当日券のご購入はおひとり様1枚限りなります。
▽当日券詳細ページ
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【車椅子でのご来場について】
車椅子でお越しのお客様は、当日のスムーズなご案内のため、公演前日までに梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(06-6377-3888)までご連絡ください。
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光る新PC(2024年7月21日の写真日記)
思うままに段ボールを破壊してご満悦顔のチャコちゃん 妻のリクエストで鯛焼き。くりこ庵、つぶれず良く頑張ってるな。 夕食。買ってきたお肉を焼いてもらいました。 一通りパーツが揃ったので新PCの組み立て。簡易水冷とそれに見合ったケースにしたんだけど、これまでとは発想が異なる組み立て方で苦労した。取りあえず光らせるまでで半日掛かった。 その後も作業を続けてだいぶ光ってきた。まだBIOS画面だけどアイドリング時のCPU温度も安定。新規購入パーツは一通り動作確認できたので、あとは旧PCから少しずつパーツとデータを移植していきます。 来月からスポーツジムを契約したんだけど、ちゃんとしたスポーツジムに行くのが初めての経験なので、着るものや飲み物の準備など細かいことばかり気になる。あと貴重品はどうするんだろ?鍵の掛かるロッカーは有料だったな。
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2023/4/17〜
4月17日 疲労感満載でふらふらしながら東京出張をして、お昼休みをとることができず、移動中に栄養補給をしたいのに何も食べられなくて、乗り換え駅で数分間電車を待つ間にセブンティーンアイスを食べる女子高生を眺めて、なんだか昨日からの不安定を引きずっている。
なんとか移動中に少しお菓子を食べて、嘘みたいに眠って、お家のある町を通り過ぎて出張先から職場へ戻って、またお家へ戻って、月曜日からへとへと。
土曜日のサンドウィッチの差し入れを全く食べられなかったことをつっこまれたり、食事のことで心がざらざらするのもう嫌なんですけど!
この、食事の異常と痩せすぎ身体的特徴は、どうやっても私が変わらないとだめらしい。わたしはわたしのままでいたい、と言うのが病気だと言われない位にはしないと、そうゆうこと、全部摂食障害のおかしい発言だったとされてしまう。
朝から着る洋服が決まらなかった。 バルコニーのハトの鳴き声がいつもより気になってしまった。 電車の人たちが身につけるものに書かれた英単語を訳しては、は?となった。自分の撮った写真がよくなくみえた。 とにかく疲れている!!
4月18日 やっぱり朝からへとへと!でも雨上がりの帰り道が思ったより気持ちよく過ごせて走って駅まで向かったりした。
家の裏側の空きテナントにコンビニジムが入っていてなんか嫌。
いまの新しい上司が、向かいの席の上司からたくさんもらった(お取り寄せ?)バナナをロッカールームに一晩置いていて、朝ロッカールームがバナナだった。 アポテーケのいちじくのクローゼットタグは負けてしまっていた。 そしてデスクの上に一本バナナが置かれていて、お一つ差し入れ���うぞ、とのこと。 バナナスムージーをジップロックで作れるらしいのでやってみようかな。
昨晩は映像の世紀を音声だけで聴いた。 映像の世紀なのに…、と今朝になってふと思った。
家について6階から降りてくるお隣さんの様子をエレベーター内の映像に確認し、外階段で3階まで上って遭遇を回避して、最後に追加でへとへと!
4月19日 4月20日の12時から、今日マチ子さんのトークイベントの申し込みが始まる!とお昼休みにサイトにアクセスしてみて、まだ今日が19日だった事に気が付く。 すっかり疲れて木曜日だと思ってた!
午後はもう体力が0.5くらいになって、ちょっとした他愛無い会話に1番疲れてしまう。
昨晩、そろそろ写真展の展示方法を決めたいな〜、と新津保さんの\風景の展示方法を検索していたら、今日から個展を開催する情報を見つける。週末のギャラリー打ち合わせの後に行こうかな。
パソコンのスクリーンショットの自撮り写真を、とても良い装丁で壁に飾ってみたい。
両親が死んでしまう夢をみて夜中に起きて、とっても不安になって、また眠るのが怖くなりあまり眠れなかった。死は平等のことで、何も怖いことでは無いことを最近わかってきて、安心したところだった。でも、自分でなく他人に起こってしまったとき、その人がいなくなり残された側の困ることって何かしらあって、やっぱり他人の死は不安になる。
水野しずの新刊を読んで、未来へ進んでいるのではなく、過去からの継続で生きていることに(解釈違いかもしれない)気付いて、また少し安心した。
4月20日 今日がお誕生日の友人から、先日送ったプレゼントのありがとうメッセージと、ミッフィーのガチャガチャマスコットはメラニーだったと連絡がきていた。 私も開けてみよう!
べたべたじめじめで不快指数高め。 お部屋のバナナが熟れてしまっているかも、と気になりながら、一日中ずっと忙しくて、周りのちょっとしたモーションを気にしてしまう位疲れて神経が過敏になってる! どこかに縛り付けて休ませないとおかしくなってしまいそう。
4月21日 ちゃんと少し体重を増やせていて、複雑だけれど、体感的にも少し安心感がある。もちろん複雑だけど!
友人にあげる誕生日プレゼントとお揃いで買ったガチャガチャ的ミッフィーマスコットを開けてみると、ボーダーワンピースのミッフィーだった。
帰り道、一期下の方と一緒に帰ってもらう。 三脚をやっとロッカーから持って帰っていたので「今日は写真撮る予定でしたか?大丈夫ですか?」と言ってくれた。 もしも写真展を開催できたときにはきてくださいね、と伝える。
どんより暑くて疲れてしまったので、お掃除はほどほどに早く休みたい。
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