#ロスト・ボディー
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映画『鉄男』、『アウトブレイク』、『コンテイジョン』、『陸軍』、『お小夜恋姿』、『インヴィジブル・ゲスト』
相変わらず鬱状態で、到底春に立ち向かう気力がありませんが、見た映画の寸評だけは残しておこうと思います。
『鉄男』は塚本晋也監督の作品。前から見たかったんですが、ある意味思った通りというか、才能のある学生が撮ったような映画ですね(これは褒め言葉でもあり貶し言葉でもあります)。若き日の田口トモロヲや、今とそれほど変わらない(!?)六平直政や石橋蓮司が出演していました。 田口トモロヲが鉄人間(なのでしょうね)に変身してしまい、恋人に姿を見られまいと浴室に隠れた時、恋人が「ワタシは驚かないたちだから見せて」となぜか3回言い、実際に田口トモロヲの姿を見て驚くところや、田口トモロヲと戦うもう一人の鉄人間(なのでしょうね)が上半身を覆っている鉄の鎧状のものを脱ぐと(え? 脱げるんだ)背中に大きなバッテンのついてTシャツを着ているところなんぞは、笑うところなんでしょうか。
『アウトブレイク』と『コンテイジョン』は前に一度テレビで見たことのある映画ですが、「新型コロナウイルスとカミュの『ペスト』」という論文を書くために改めて見ました。
『アウトブレイク』はエボラ出血熱を思わせるモルタバ・ウイルスという架空の伝染病を描いた映画です。ダスティン・ホフマン主演というのはわかっていたのですが、改めて見るとモーガン・フリーマンやドナルド・サザーランドやケビン・スペーシーも出演していました。 ラブロマンスあり、ヘリコプター同士の追いつ追われつのアクションシーンありのいかにもなハリウッド映画で、ワクチンが数時間���完成し量産できるというような御都合主義も目立ちますが、感染の宿主を特定しワクチンを作ろうとする主人公ダスティン・ホフマンと、気化爆弾で街やその住民ごとウイルスを殲滅しようとする軍司令官ドナルド・サザーランドの対立はサスペンスがあり、それなりに見応えのある映画でした。
スティーヴン・ソダーバーグ監督、マリオン・コティアール、マット・デイモン、ローレンス・フィッシュバーン、ジュード・ロウ、グウィネス・パルトロー、ケイト・ウィンスレット出演の『コンテイジョン』は群像劇で打って変わって非常にリアルな映画です。 ラストこそワクチンが開発されハッピーエンドになりますが、それまでは街で暴動や略奪は起こるわ、ネットで「ウイルスにはレンギョウが効く」とデマを飛ばし大儲けする配信者はいるわ、見ていて気が滅入るような展開です。
『陸軍』と『お小夜恋姿』は同僚の田中絹代ファンの同僚のY先生からお借りしたDVD。
『陸軍』は木下恵介が太平洋戦争中に陸軍から要請を受けて作った国策映画ですが、戦意を高揚するふりをして反戦を訴えるという離れ業を実践した珍品というか貴重な作品。セリフとは裏腹な感情を表現するという意味では、役者の勉強には非常に役立つ作品かもしれません。
『お小夜恋姿』は無声映画。前半は宿屋に泊まっている画家の男にお小夜が恋心を抱くという物語で、お小夜はモデルの女を孕ました画家に心を弄ばれてしまいますが、映画がちょうど半分終わったところで「……っていう小説を書いてるんだけどね」と小説家が言うのをお小夜が聞いているという斬新というか、前衛的というか、まあ言ってしまえば破綻した構造の映画です。 そこから逗留中の宿屋に払う宿代がない小説家の話になったかと思いきや、さらに物語はお小夜と宿屋に出入りしているハイヤーの運転手の悲しい恋の物語になります。 一本の映画で三つの物語が見られるなんて、なんてお得なんだ……というこれまた珍品映画。一見の価値はあります。
『インヴィジブル・ゲスト』はスペイン映画。愛人殺しの容疑で裁判にかけられる青年実業家と彼に裁判での証言の仕方を教える中年女性が、事件を再検討する物語と言えばいいのでしょうか、ストーリーは二転三転し面白いのですが、終わってしまえば「まあ、それしかないよなあ」という感じを持ってしまったのがちょっと残念かな。 また、映画の冒頭で弁護士の助手か何かの中年女性が「あと3時間しかない」と言ってタイムリミットを設けるのですが、どうせそういう���ミットを設けるのなら、映画の実際の時間と合わせて欲しかったというのが率直な思いです。 スペイン映画はそれほど詳しくありませんが、ヴィクトル・エリセの『ミツバチのささやき』、『エル・スール』は別格として、ペドロ・アルモドバルの映画は『バチ当たり修道院の最期』だの『神経衰弱ギリギリの女たち』だの『アタメ』だの『キカ』だの『オールアバウトマイマザー』だの『ボルベール 帰郷』だの『アイム・ソー・エキサイティド』だの『人生スイッチ』だの、いつぞやまとめて見たよなとか、ルイス・ブニュエルはスペイン人だけれど、活躍の場はフランスとメキシコだからブニュエルの映画はスペイン映画とはいえないなとか、『REC』の主演の姉ちゃんは胸元がセクシーだったとか考えているうちに、そういえば『ロスト・ボディー』というこれまた物語が二転三転するサスペンス映画があった、あれは名作だったなあと思ったたら、同じ監督の作品でした。 なるほど…… まあ『インヴィジブルゲスト』も悪くはないけれど、オススメは『ロスト・ボディー』の方かな。ヒロイン(なのか?)役のベレン・ルエダがチャーミングですし(この女優は『永遠のこどもたち』にも主演しています。あれもいい映画でした)。
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映画『クローズド・バル』
映画『クローズド・バル』(スペイン、2017)をDMM. comで借りたDVDで見ました。
監督も役者も全く知りません。ただ、前に借りたDVDに予告が入っていて面白そうだったのです。
予告によれば、バルセロナのあるカフェ(バル)から出た客が突然、狙撃され死亡してしまい、カフェにいた客たちは店から出られなくなるという設定の映画で、私は自分が最初に書いた芝居ーー人身事故で停車した電車の車内に8人の男女が閉じ込められるという『銀河鉄道じゃない夜』ーーを思い出したのか、なぜかコメディーだと思い込み、濃密な人間ドラマあるいは不条理な展開を期待していました。
でも、いざ見てみると全くそんな映画ではありません。まさかああいうことだったとは……
この映画は予備知識なく見るのが一番なので、詳細は書きません(まあ、世間的には全く知られていない映画ですから、わざわざ見ようと思う人は少ないかもしれませんが、それはまた別の話です)。
ただ、私のような閉所恐怖症にはちょっと辛い映画ですし、グロテスクな描写は少ないものの、極限状況に置かれた人間のエゴイズムを描いている点では、子どもが見ればトラウマになるかもしれないという気がします。
私は子どもの頃、砂漠へ行った旅行者たちが深い穴に落ちてしまい出られなくなるという漫画を読んで、強い衝撃を受けたことがあります。その漫画がつげ義春の『蟻地獄』であることを知ったのは、ずっと後になってからのことですが、結構トラウマになった作品です。
『クローズド・バル』はちょっとそんな感じのする映画でした。
印象的だったのは、主演の女優……というかねえちゃんがやたら色っぽかったこと。
スペインにはペネローペ・クルスとか、『永遠の子どもたち』や『ロスト・ボディー』のベレン・ルエダとか、『REC』シリーズのタンクトップがやたら似合うマヌエラ・ベレスコとか、魅力的な女優がたくさんいます。
あ、単に「私好み」というだけかもしれませんけれど……
『クローズド・バル』は決して爽快な映画ではありません。むしろ非常に気分の悪い映画です。
でも、映画を見て気分が悪くなるというのも、ある意味一つの経験として意味があるような気もします。
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