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うまく騙されないように、人の思考のクセを知っておこう。
コミュニケーション
ブログ:安達裕哉の記事一覧
Twitter:安達裕哉(Books&Apps)
著作:頭のいい人が話す前に考えていること(ダイヤモンド社)
人には、どの人にもある「思考のクセ」が存在しています。
そうしたクセは、普段あまり意識されることはありませんが、「知っている」人は、それを良くも悪くも「実態を隠す技術」や「他人を操作する技術」として使うことがあります。
例えば、「アンカー効果」として知られている思考のクセがあります。
これは「予測を立てる直前に見た数字をアンカー(よりどころ)にしやすい」という傾向です。
当然これは、金儲けにも利用できます。
数年前、アイオワ州スーシティーのスーパーマーケットがキャンベル・スープのセールを行い、定価から約一〇%引きで販売した。数日間は「お一人様12個まで」の張り紙が出され、残り数日間は「お一人何個でもどうぞ」の張り紙に変わった。 すると、制限されていた日の平均購入数は七缶で、制限なしの日の二倍に達したのである。
このように、心理に関する知識は、成果を大きく左右することもあります。
では、このような「思考のクセ」。
他にどのようなものがあるのでしょうか。
1.直感で信じたものを覆すことはほとんどない。
言い換えれば、「第一印象で決まる」。
例えば、採用面接で面接官は
「最初の数分で得た、候補者への印象を検証するために、残りの殆どの時間を使う」
と言われています。(採用ミスはこうして起きます。)
第一印象が良ければ「採用するための質問をする」
悪ければ「落とすための質問をする」のが面接官です。
逆に言えば、候補者側は「とにかく第一印象を重要にせよ」というアドバイスに従う必要があるということです。
これは「文章」にも当てはまります。
例えば、人物描写をするときに、その人の特徴を示す言葉の並び順は適当に決めてはいけません。
明るい 素直 けち
と書くほうが、
けち 明るい 素直
と書くよりも、良い印象となります。
2.ベストケースしか想定しない
将来予測をするとき、人は「最もうまくいくケース」しか考えません。
しかし、実験によれば、99%の確率で終わると宣言した時間で実際にタスクを終わらせる人間は45%のみです。
これは「ホフスタッターの法則」と呼ばれ、コストを過小評価し、便益を過大評価する人間の思考の癖です。
稲盛和夫は「悲観的に計画し、楽観的に実行せよ」と述べましたが、経験的にこれを知っていたのでしょう。
3.人は独自性を誇張する傾向にある
「うちは特別だからね」という話をどの会社でも聞きます。
しかし実際にそれが特別であるケースは少なく、仮に違っていたとしても、その差はわずかに過ぎないのです。
むしろ、独自性バイアスは、必要以上のコストを掛けて、自分たちの独自性を守ろうとしますから、組織に不利益をもたらします。
むしろ「独自性を誇張しない人のほうが独自性がある」と認識すべきです。
4.物語VSデータは、物語が勝つ
人は物語が大好きなので、プレゼンテーション資料も、報告書も、物語性のあるものが好まれます。
これだけなら良いのですが、物語のできが良すぎると、人間はデータを見なくなります。
場合によっては、「データが少ないほど、物語としての辻褄が合いやすい」ので、データを排除しようとする人もいるくらいです。
ストーリーの出来で重要なのは情報の整合性であって、完全性ではない。むしろ手元に少ししか情報がないときのほうが、うまいことすべての情報を筋書き通りにはめ込むことができる。
賢くあろうとすれば、自分に有利なデータではなく、自分に不利なデータも集めなければなりません。
そうして初めて「物語」に騙されずに済みます。
5.確率を理解できない人は多い
まず、次の文章を読んでください。
リンダは三一歳の独身女性。外交的でたいへん聡明である。専攻は哲学だった。学生時代には、差別や社会正義の問題に強い関心を持っていた。また、反核運動に参加したこともある。
では、次の質問に答えてほしい
リンダは銀行員か、それともフェミニスト運動に熱心な銀行員か、どちらだと思いますか
聡明な人であれば、当然前者を選択するでしょう。
しかし、多くの人は後者を選択します。
複数の主要大学の学部生を対象に実験を行ったところ、八五~九〇%が、確率の論理に反して二番目の選択肢を選んだのである。しかも呆れたことに、この連中はとんと恥じる様子がなかった。 あるとき自分のクラスで「君たちは、初歩的な論理ルールに反していることに気づかなかったのかね」と怒ってみせたところ、大教室の後ろのほうで、誰かが「それが何か?」と言い放ったものである。
確率は説得の材料として、全く役に立たない事がよく分かります。
6.心配が多かったり、忙しすぎると、頭が悪��なる
多くの心理学研究によれば、自分���律することと、注意深く頭を使うことは、どちらも等しく、脳に負荷をかける行為です。
したがって、認知の負荷が高くなると、誘惑に負ける可能性が高いのです。
認知的に忙しい状態では、利己的な選択をしやすく、挑発的な言葉遣いをしやすく、社会的な状況について表面的な判断をしやすいことも確かめられている
このため、例えばある行為の結果について心配しすぎると、実際に出来が悪くなることも多いのです。
常に忙しく、給料も安い「ブラックな職場」では、利己的で、口が悪く、思慮の浅い人が増えてしまう。
ですから、これはもはや「社会悪」と呼んでも良いのではないかと思います。
7.好き嫌いで決まる
多くの人は
「それが好きな場合は、メリットばかり思い出す。」
「嫌いな場合は、リスクばかり思い出す。」傾向にあります。
スロビックのチームは感情ヒューリスティックのメカニズムを調べる実験を行い、水道水へのフッ素添加、化学プラント、食品防腐剤、自動車などさまざまな技術について個人的な好き嫌いを言ってもらったうえで、それぞれのメリットすると、二つの答はあり得ないほど高い負の相関を示した。すなわち、ある技術に好感を抱いている場合はメリットを高く評価し、リスクはほとんど顧慮しない。逆にある技術をきらいな場合はリスクを強調し、メリットはほとんど思い浮かばない。
したがって、物事を通しやすくするには、あれこれ論理を組み立てるよりも、「好かれる人」になることが最も簡単です。
SNSを見れば、多くの人は、あれこれ理由をつけて主張をします。
「ワクチンが〜」
「フェミニズムが〜」
「子育てが〜」
「社会保障が〜」
でも、一皮むけば、
肯定的な意見は、「それが好き」。
否定的な意見は、「それが嫌い」。
そう覚えておいて、ほぼ間違いありません。
8.人は慎重に考えるよりも早く一つに決めたい
いくつもの選択肢を並行して考えることは、認知的な負荷が高い状態です。
認知的な負荷が高い状態は疲れますから、仮に選択が間違っていたとしても「早く決めて楽になりたい」と、思うのです。
これを「コミットメントの錯誤」と言います。
「たまたまモデルルームを見に行ったら、そこで買ってしまったよ」
と言う発言は、コミットメントの錯誤の典型であり、家や保険など、選択肢が無数にあり、かつ高額な買いものが、想像よりはるかに簡単に行われているのは、そのためです。
なお余談ですが、人には「自分が持っているものを高く評価する」という思考のクセ(保有効果)があり、高い買い物をしたとしても、後悔することはめったにありません。
「買わせてしまえばこっちのもの」と思っている営業マンは少なくないでしょう。
9.簡単にわかるものが好かれる
認知が容易なものほど好かれます。
例えば、見やすい表示、以前に聞かされたことのあるアイデア、見覚えのあるマーク。
こういったものは認識がしやすいため、それだけで「好ましい」と感じられます。
(出典:ダニエル・カーネマン ファスト&スロー)
また、機嫌がいいときや、体調のいいときには、「好ましい」と評価することが多くなりますから、上司の機嫌を見て、何かを提案するのは正しい行動です。
ただし、これは極端な話、「内容を問わない」という事でもあります。
「鶏の体温」という表現を繰り返し示された人は、「鶏の体温は四四度である(もっともらしい数字なら何でもよい)」という文章が出てきたときに、正しいと判断しやすい。 文章の一部になじんでいるだけで、全体に見覚えがあると感じ、真実だと考えるからだ。ある発言や文章の情報源を思い出せず、手持ちの情報とも関連づけられないとき、あなたはつい認知しやすさを手がかりにすることになる。
注意をしないと、「何度も見せられている」と言うだけで、それを真実だと信じてしまうかもしれません。
10.自分の頑張りには甘い評価をつける
チームで仕事をする場合、自分のほうが他のメンバーよりがんばっており、他のメンバーの貢献度は自分より小さいと考えがちです。
例えば、各自がチームに対して、どの程度の貢献をしているかを百分率で表してもらうと、チーム内のメンバーの数値の総和は100%を超えてしまいます。
あなたはもしかすると、自分に配分された報奨以上の貢献をしたのかもしれない。だがあなたがそう感じている��きは、チームのメンバー全員も同じ思いをしている可能性が高い。このことは、誰もが肝に銘じておくべきである。
これは、性格的な要因はごく小さく、誰でも同じような傾向を示します。
なぜかと言えば、「自分の貢献が一番思い出しやすく」かつ「思い出せないものより思い出せるものの方が強力な説得力を持つから」です。
投票を呼び掛ける活動は、投票日直前にやるほうが��力、という、ごく当たり前の話ではありますが。
これを利用可能性ヒューリスティックスと言います。
人事評価は自己申告を基にしてはなりません。
大抵の場合、過剰評価となってしまいます。
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事前にNDA締結したわけでもあるまいし、公開モデルルームで見つけた事実を指摘して公言する行為が営業妨害になるという説は、ハウスメーカー寄りのポジショントーク
[B! 炎上] タマホーム、展示場見学後のお客との事後対応を誤った結果、無事ネット上での「消せば増えるの法則」を発動させてしまう
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プレスリリース『日本建築材料協会と業務提携を締結』
業界全体で建材選定プロセスのDX化を加速 ~日本建築材料協会と業務提携を締結 会員各社の製品情報登録を拡充~
建築・建設業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)に挑戦する丸紅アークログ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:三川 亮、以下:当社)は、当社の運営する建築建材の総合検索プラットフォーム「Arch-LOG(アークログ)」の活用について、新しい時代の建材の開発・啓蒙・普及に努める一般社団法人日本建築材料協会(本部:大阪府大阪市西区、会長:松本 將、以下:日本建築材料協会)との業務提携契約を締結いたしました。
働き方改革の進展や、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うリモートワークの急速な普及などを背景に、建材業界においても業務のデジタル化への対応が急務となっています。今回の業務提携は、そうした現状に鑑み、業界全体として建材選定プロセスのデジタル化を図ることを主な目的としています。日本建築材料協会の200社を超える会員各社に「Arch-LOG」への建材情報登録をより一層進めていただくことで、より多くの建材が適切に選定されることを後押しするだけでなく、建材選択から資料手配、マテリアルボードの作成、関係者間での情報共有、客先への提案といった建材選定の一連のプロセスが「Arch-LOG」により全てデジタルで出来る様になり、建材業界にも大きなメリットがもたらされることが期待されます。
建築・建設業界および建材業界のDXを実現するため、「Arch-LOG」は運用開始時から登録建材の拡充と新機能の開発を続けており、業界への普及が進んでいます。ユーザーは、「Arch-LOG」に登録されている200万点近い建材の中から、例えばガラス、石材、防水材といったカテゴリーや、特定のメーカー名、キーワードなどで必要なものを検索することができます。複数メーカーの製品を比較しながら選定することも可能で、従来のように膨大なカタログの中から手作業で商品を探し出す必要もなく、異なるメーカーのサンプルを1クリックで請求することができます。また、直感的で自由度の高いデジタルマテリアルボードがWEBベースで作成できるほか、プロジェクトごとに正確な情報共有と合意形成が可能となるため、作業時間の大幅短縮による生産性の向上に貢献します。
今後、「Arch-LOG」は、さらなる新機能の実装に向けた準備も進めており、建築・建設業界と建材業界に関わる全ての関係者が利用できるDX化ツールとして、また、紙カタログの廃止や脱モデルルームなどによるCO2の削減に貢献するデジタルツールとして、導入拡大に向けて注力してまいります。
一般社団法人日本建築材料協会 一般社団法人日本建築材料協会は、国土交通省・経済産業省の認可による全国規模の建材業界の総合団体です。昭和9年6月発足と歴史は古く、建材製造会社・販売会社・施工会社等あらゆる建材関係会社を会員とし、本部を大阪に、関東・中部・中国・四国・九州に支部を置き、機能性、経済性・均質性・無害性などの工業的特性と、個性・造形・感動・愛着などの工芸的特性の両面に目を配った、新しい時代の建材の開発・啓蒙・普及に努めています。 ■事業内容 ①建築材料の調査研究 ②建築及び建築材料に関する施工方法の調査研究 ③建築及び建築材料関係団体との交流と情報交換 ④見学会、講習会の開催、その他建築材料に関する知識の普及 ⑤建築材料に関する相談、展示会の開催、その他建築材料に関する啓蒙宣伝 ⑥会報、雑誌、図書及び印刷物の刊行並びに頒布 ⑦その他本会の目的を達するに必要な事項 URL:https://www.kenzai.or.jp/
プレスリリース 「日本建築材料協会と業務提携」230112
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【パークタワー勝どき】 多くのマンションクラスタの注目を集め、高い割にぴえんな仕様で大顰蹙を買うも今だにモデルルーム見学の予約は常に満席。単価430万だけどみんな本当に買えるの…? 徒歩5分だけど無理矢理地下通して駅直結にできちゃう!そう、大三井不動産ならね!#クソ物件オブザイヤー2020
(1) #クソ物件オブザイヤー2020 - Twitter検索 / Twitter
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私は、埼玉県の川口に住んでいて、今住んでいる家については、とても気に入っているけれど、会社までドアtoドアで50分ほどかかるのが、やや面倒だと感じていた。
そんな話を会社の後輩の佳音さんに伝えると、彼女は私の住む家の姉妹マンションに住んでいて、彼女の隣の部屋が丁度空き部屋になり、募集しているとのことを教えてくれた。
部屋の写真を見ても、広さ・雰囲気ともに申し分なく、立地も会社までドアtoドアで21分だったので、わたしは内見に行くことに決めた。
内見に行くと、佳音さんと管理人さんが出迎えてくれ、このマンションは私が今住んでいるマンションのセカンドシリーズとして建てられたものだと教えてくれた。
確かに建物の素材��体は姉妹マンションと呼ぶに相応しいものだったが、雰囲気としてはセカンドシリーズとは思えないほどのクラシカルな様式だった。
部屋の並びにしても、私の住むマンションでは1フロアに部屋が3つ横並びのコンパクトな構成だが、このセカンドシリーズでは無秩序に各部屋が並び、渡り廊下もあるような作りになっていた。
佳音さんの部屋と空き部屋は5階にあるということで、私たちは世間話をしながらゆっくり5階まで階段で上がり、上がり切った目の前が佳音さんの部屋ということで、共用廊下から少しだけ部屋を覗かせてもらった。
間取りは16畳程度のほぼ正方形にちかい1Kだった。
彼女の部屋は、各四辺に大きなソファーが敷き詰められており、まるで四角い部屋の中心にスチームがあるサウナ室のようだった。
入り口の扉の反対側は上部一面が窓になっており、窓の外には木々の緑が見えた。窓には華奢な少し歪みのあるレースがかかっていて、レースの間から陽が差し込み、とても幻想的な雰囲気だった。
佳音さんの部屋を少し覗いたあと、その隣の部屋を案内された。一番奥にある角部屋だった。
少し奥まったところに部屋の入り口があるのだが、そこには天井のライトは特に設計されていなかったようで少しだけ暗さがあった。
部屋に入ると、空き部屋として紹介されていたにも関わらず、とても生活感のある部屋だった。というのも、家具家電も全て揃っていたし、おまけに洋服なんかもたくさん置いてあった。
まるで誰かが3分前までこの部屋にいたようなそんな雰囲気だった。
わたしは空き部屋として見に来た自覚があったため、マスターキーで開けてしまった別の住人の部屋かと思ったが、マンションの管理人はこの状況が空き部屋を紹介するのにごく当たり前かのように、部屋の広さや家賃を説明してくれた。だが、そこには多少の気まずさが表情に残っていた。私は上手く状況が飲み込めなかったが、流れに身をまかして、そのまま説明を受けた。
部屋の広さは14畳で、広めのウォークインクローゼットがあった。家具などもあったせいか、佳音さんの部屋よりかは少し狭いようにも思えたが、なんせ14畳もあるし、佳音さんの部屋にはないウォークインクローゼットがあるのが魅力的だった。今住んでいる家も収納という収納がないため、次に住む家は広めのクローゼットがあるといいなと思っていたので、とても魅力に感じた。
また、家賃も都内で、会社までも21分の立地で75,000円で紹介された。
管理人は私が同じシリーズの家に住んでいることを知っていたようで、今の家の家賃とこの部屋の家賃を並べ、それに加えて通勤の時間などのメリットが箇条書きされた資料を使い、丁寧に説明してくれた。
私自身、このセカンドシリーズのマンション自体の雰囲気はとても気に入ったし、職場までの通勤時間も今の家から通うより大分短縮される、その上今の家と広さは変わらず、今の家賃よりも15,000円も安く都内に住めるということで、かなり気持ちが傾いていたが、この気持ちの傾きを感じると同時に不安もよぎった。
どうして、都内のいい立地で14畳の部屋が75,000円で借りれるのだろう。
そして、なによりもこの部屋にある家具や家電や服等のことも気になった。
それらはモデルルームのようななりではなく、3分前まで人が住んでいたような空気を纏っているのだ。
ベッドに掛かっている布団も綺麗にベッドメイキングしているとは言えず、朝誰かが起きて、そのままの抜け殻のような形をしていた。服も数着は散らかるとまではいかなくとも、脱いだ後そのままにしてあるというような雰囲気だった。
私は気持ちが傾いていた分、悍しい気持ちが後からやってくるのを体全身で感じていた。
ここに住み、新しい活き活きとした生活を期待していた自分を濃い灰色の津波が飲み込んでしまうような感覚だった。
管理人の気まずそうな表情の意味も想像してしまった。私はそれに気がついた以上、聞かないわけにはいかなかった。私は自分が口を挟んで良いタイミングを見計らいながら、管理人へ尋ねた。
「この部屋は事故物件や、なにかなのですか?」
管理人の気まずそうな表情がより表立った。たった数秒だが、重たい沈黙が流れた。
最初に口を開いたのは佳音さんだった。「学生の男の子が住んでいたの。」 佳音さんは、まるで数秒続いた重い沈黙を知らなかったように話した。
「くぼゆうくんって言ってね、でも、死んじゃったの。」
わたしはその言葉を聞いて、この部屋の状態から突然的な死であることは察した。そして、突然的な死というのは、事故、もしくはその日突然やってきた"死にたい"という気持ちによる計画性のない自殺かのどちらかだと思った。
私はその突然的な死について、きちんと知りたかった。何故ならば、この部屋に住みたいと思っている自分の期待を裏切らない答えを聞きたかったから。そして、それは、悍しい気持ちを抑える答えであって欲しかったから。
「それは、交通事故とか?」私は尋ねた。相変わらず管理人の表情には気まずさが残り、佳音さんは何もなかったかのような表情をしている。
「自殺みたい。」と佳音さんは言った。
「都内の美術館のセミナールームで首を吊ったみたいです。」と気まずそうな表情をした管理人が付け加えるように話した。
私はこの部屋に、この3人でいることが、とても怖く思えてきた。心臓は静かに深く心音をたて、脈拍が上がっているのが分かった。
佳音さんの話では、彼はごく普通の学生だったという。"どこにでもいる学生"ではなく、"ごく普通の学生"だったと強調した。それを意味するところは、暖かい家庭に育ち、何も困ることなく、誰もが通るような悩み事しか抱えず、それもどこかでは必ず解決し、周囲から全く嫌われない好青年であって、朝まで安い居酒屋で騒いだり、よくある男女関係で��トラブルを抱えていたり��るような"どこにでもいる学生"ではないということを伝えたかったようだ。
わたしはそれを聞いて、自分が期待していた突然的な死の答えではなかったが、(私は彼の死は事故であって欲しかったのだ、その方が安心できる自分がいた) 悍しい気持ちは幾分か落ち着いた。
彼の死は誰も想像しておらず、そんなそぶりもなければ、遺書もなかったという。その日、ラーメンを食べるか、炒飯を食べるか迷い、炒飯を選ぶといつように、生きるのと死ぬのを迷い、死を選んだかのように死んのだと思った。
そう思えたからか、さっきまで私が勝手に感じていた濃い灰色の津波のような悍しさはどこかへ消えてしまった。
幾分か怖い気持ちはあるが、それでも、なんとなく、会ったこともない彼に親しみさえ覚えた。
携帯のバイブ通知が鳴った。その部屋にいた3人それぞれが自分の携帯を確認したが、誰の携帯にも通知が来たような形跡はなかった。
再び、バイブ通知が鳴った。
バイブ音がなったと思われる方向を見ると、黒い携帯があった。
LINEの通知が2件来ていた。
その携帯のロック画面は初期設定のままで特に個性を表してはいなかった。
ホームボタンを押すと、ロックがかかっておらず、そのままLINEアプリを開くことが出来た。男子学生の日常的な短文の何でもない内容が連なるLINEグループだった。
グループメンバーを見てみると、そこには6人いて、そのうちの1人はくぼゆうくんだった。そして、彼にはアーカイブというマークが付いていた。
なんとなくだが、その場でアーカイブというのは死者を生者とは出来ないが、形は残したいというシステムなのだと分かった。
きっとこのLINEグループの誰かが彼の死を知り、アーカイブ設定を施したのだろう。今時的な話だが、彼をグループから退出させるでもなく、気味悪がるわけでもなく、彼の人生の選択にそっと寄り添うようなそんな友情を感じた。
くぼゆうくんは、死んだあとでも、好青年らしく、好青年らしい扱いをされる人生なのだ。
携帯は53%の充電を残していた。
私はくぼゆうくんはかなり前に亡くなったものだと思っていたので、この携帯が気味悪く思えた。何故ここにあるのか、どうして充電が残っていて、電源が付いているのか。
「くぼゆうくんが亡くなったのはいつ?」と私は尋ねた。
「うーん、3週間前くらいかな。」と佳音さん言った。
わたしはもっと前のことかと思っていたので、なんだか呆気にとられた。
彼の存在が身近に感じた。
3週間前まで、くぼゆうくんはこの部屋で、"ごく普通の学生"らしい暮らしをしていたのだ。
そのあと、部屋を後にして、セカンドシリーズマンションの全体を歩いて回った。
我々がいた5階のワンフロア下には、小さなオフィスが入っており、佳音さんが中に入れるというので、入ってみると、中には数人顔見知りがいた。
どうやら、ここは会社の隠れオフィスらしく、十数人はここでたまに仕事をしているらしい。アットホームで、自由で、本社よりも居心地がいいため、週に何度かはここで働いているというのだ。もちろん会社公認のオフィスなのだが、その名の通り、"隠れオフィス"なので、事業所一覧には掲載されておらず、知る人ぞ知る場所になっているという。佳音さんはハニカミながら、階段を下りるだけ出社できるのは最高だと言った。
一階には中庭があり、そこには鬱蒼と木々や雑草が生え、中心には池のような形をしたプールがあった。その隣には決して清潔感があるとは言えないカフェテラススタイルのタイ料理屋もあった。そのタイ料理屋は随分と原始的で、キッチンが外にあり、薪で窯を温めるような様式で、とても日本とは思えない景色だった。
一通り、見学し終えて、私はセカンドシリーズのマンションをあとにし、自宅に戻ることにした。
最初このセカンドシリーズマンションを見た時はとても魅力的に思えた。
独特な雰囲気と奇妙なバランスはまさに私好みだった。
ただ、あの空き部屋(正確には"空き部屋"と呼べるなりはしていなかった)に行き、妙な感覚を覚え、前の住居人が突然的な死を遂げたとわかった時、私は決めた。
もし、事故であるならば、このまま検討するが、自殺だった場合は、ここに引っ越すことはないだろうと。
しかし、今帰路に立って、自殺だったというのに、なぜか前向きに検討している自分がいた。むしろ、あの部屋を最初に魅力的だと思ったのより、何倍も魅力的に感じているのだ。
電車の中ですっかり忘れていたことを思い出した。セカンドシリーズマンションにいた時は佳音さんや管理人さんと一緒にいたり(私は人といる時はあまり携帯を見ない)、状況や気持ちの整理に追われていて、調べられなかったのだが、私にとって恋人の家までの距離も大切だ。あまりに遠くなってしまうと、出不精の彼は私の家に遊びに来てくれなくなるし、かと言って、私も毎回行くのは少し大変だし(毎週行けたとしても、彼はシンプルな生活をしていて、娯楽物があまりないので、毎週料理するか昼寝をするかになってしまう、それでも平凡な良い週末になるのだが)、お互いが行き来できるのは大切だというのが私の考えだ。
GoogleMapでセカンドシリーズマンションの住所と恋人の住む東麻布のマンションの住所を入れてみる。
電車を使ってドアtoドアで93分。
私はセカンドシリーズマンションに住むことは難しいかもしれないと、埼玉の川口に帰りながら思った。
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第五章 アンケートからの質疑応答
モデルルームの初見学を実現した隆夫妻。アンケートを書き、いよいよ営業マンとのご対面。
「おはようございます。」後ろから営業の人がやってきた。A氏は自己紹介を簡単に行い、早速アンケートに目を通している。30秒で全部読み上げ、すべて理解したような顔で話しを始めた。
「まず、マンション見学が初めてということで、聞きなれない言葉があると思います。遠慮せずに聞いてください。そして、私は家を売るのが仕事���はなく、家を探しているかたに合った住まいを紹介することが仕事です。結婚相談所のマッチングのようなものです。」
「どんな家に住みたいかをまず聞かせてもらいたいと思います。それからお二人の意見を反映した間取りを形にして、ここにある間取り集の中からもいいとこどりをしながら更に理想の住まいを探しましょう。」
「そのためにアンケートを書いていただきました。まずはざっと行きましょう。」
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0611 滝山団地にいってきたよ(2)
バスが進んで団地エリアに差し掛かる。おおきな団地と心していたはずだけれど���これほどまでとは、とおののいて目をきょろつかせ、ついでに車内を振り返ると乗客は自分をいれて3名しかいない。
「聖地巡り」の根拠たる「滝山コミューン1974」序文で筆者は、30年ぶりに滝山団地を訪れる。「団地五丁目」で降車し、五丁目商店街を往復してから道を渡って第七小学校にむかう。私もまた、とりあえずはこの通りに動くつもりで、五丁目の停車場で降りる。くらっとなる。道に落ちる影は濃く、涼しさを期待して逃げ込んだところでなにも救われない。目の前にひろがるのはまさに「忘れられた」商店街。激しい日射のもと、どこかから流れるラジオの音のせいでよけいに無人であることが際立つ商店街の店先には商品が並んでいる。奥を見ると店の人が座ってじっとしているときもあるし、誰の姿も見えない店もある。
(写真:これが五丁目商店街だ!)
赤いアスファルトで覆われた道は遊歩道を志したデザインで、まったく整然としていない植栽たちがなにか奇異な感じを与えてくる。けれど明らかに手入れされていて、んでもって季節のせいか、よく繁っている。町並みの整頓基準がちょっと違うのかもしれない。巨大集合住宅の内部、ですもの。
なんていってるのも、「違和感のあるへんなスポットに違いない」という先入観を真夏日に撒き散らしているからこその感想でしかないんだろうけど、なんだか「ねじ式」の主人公がさまよう見知らぬ路地みたいな、っちゅうか要するに「(寝てるときの)夢っぽい雰囲気を捏造された場所」みたいな。
十メートルあるかないかぐらいの道に理髪店や喫茶店が詰まっていて、その先はただ住宅が並んでいる。いままで通ってきたどんな商店街とも、あるいは単に「商店街」という語から連想する���メージからも離れている。
バスの乗客は少なく、巨大住宅群に立ち降りたのに人の気配なく、けれどバスはひっきりなしにやってくる。花小金井駅からの出発だけでも10系統ちかくが団地を通って、東久留米駅からの系統もあって、山手線くらいの頻度でバスはやってくる。そのたびに、ひとり、ふたりと降りてきて、どこかにむかっていく。
本の通り「五丁目商店街」を往復し、バス通りに再びでると、右手に本屋がある。「昔ながらの」「30年前と変わりない」店なのかはわからない。その隣には業務スーパーがある。
とりあえず本屋にはいってみる。そんなに狭くない。書棚が低くて見晴らしがよい。客は二人いて、レジカウンターではクリーニングも受け付けている。店の奥の一画ではレンタルDVDの棚が並んで、ここだけゲオになっている。だからレジは本屋と、ゲオと、白洋舎を兼ねている。同じカウンターのうしろに三人の店員が世間話をしている。書棚をうろつくと、岩波文庫がそこそこ並んでいる。なのでそんなに悪い本屋ではないです。NARUTOの作者の色紙がかかっているけど、きっと集英社から配られるやつだろう。
中学の文化祭みたく白い模造紙に太いマジックで書いてある表に何月は時代劇、何月はコミック、というふうに年間のフェアの予定が書いてあって、毎年のことなんだろうと思った。
店を出て、業務スーパーに目をやると買い物客がいる。業務スーパーには、はいらない。
道を渡る。いよいよ団地の建物へ足を踏み入れる。五階建ての団地のひと棟の窓の数を横から数えると八つで、だからひとつの棟に40世帯だ。とはいえ形は一種類じゃないのですべてがそうともいえない。
忘れられた、棄てられた団地、というのは膨れ上がったフィクションでしかなくて、もちろん人は暮らしている。 子供時代をそこで過ごした筆者が30年ぶりに訪れた感想を「タイムスリップ」と表現したのはもっともだけれど、はじめて足を踏み入れる自分は、期待に反し、「地図にない場所にきた」みたいな気持ちにはならない。
大規模な造成につけ入るスキはない。それに10分バスに乗れば花小金井駅なのだ。空間的な余裕という点でも、暮らす人にとっての利便性の点でも、わざわざイオンモールを建てる展開にはならない。けっこうな規模の団地がそのまま残って不便がない。そんなもんだから、そりゃ当然ジオラマ感は出る。
もちろん団地は懐かしい感じがする。世代的には「レトロなもの」��て印象を持つし、小学校時代に遊びにいった横山君の家を思い出すし。
ええ、人はいない。いたとしても老人。でもそれは騒ぎたてることでもない。高齢者社会のなか平日の昼下がりの住宅地を歩いて、そこを30代くらいの男親と小学校二年くらいの子供がキャッチボールしてたり、10代20代の友達同士がタピオカ飲みながら歩いてたりするほうが奇妙なわけで、しかもおれは自分の趣味と実益(絵のモチーフ探し)のため、ひと気のない住宅街を歩くのが大好きだからそういう意味でも非日常的な散歩とはいいがたい。そろそろ、滝山団地へのイメージの過剰な押し付けがはがれてくる。バスが進むことで団地の規模のとてつもなさに圧倒されたことと、五丁目商店街の独特な雰囲気が今日のハイライトだろうな、という予感がかたまっていく。おれがすべきことは、ひたすら歩きまわってその規模を体感することだ。
団地、それも大規模な団地、ともなると、社会主義のお手本たるロシアの寒さのイメージも手伝って、ひたすらコンクリート、ひたすら直線、めっちゃ無機質で寒々しい場所なんだろう、と思っていたがこちらも思い込み、緑が多い。かなり多い。
暑さのなか歩き続け、すると突き当りに小学校がみえてくる。第七小学校だ。
ここでもよおした感興はまさに「聖地巡礼」のそれで、「あの本で述べられている出来事は、ここで実際に起こったのか」と、感じ入り、味わい、噛み締めたのだけどこれは人に伝わる性質のものじゃない。小学校はいわゆる普通の小学校。
よくないこととは知りつつも、団地のなかにはいってみる。階段や手すり、なにより天井までの高さのスケールが小さい。かなりこじんまりしている。五階と四階の間の踊り場に立って小学校を見下ろし、小学校を見下ろしてるの、通報されちゃわないかな~、と心配する。
子供の頃、近所の団地やマンションに勝手にはいって内部をうろつく、というのが趣味だったし、そういえばモデルルームとか大好きだし、高校生のころなら通学路にあるマンションに、施錠されていない空室をみつけて、たまにその部屋にひとりで入ってじっとする、という隠微な趣味を味わっていた。というようなことを久しぶりに思い出す。(通報されちゃわないでよかった)
団地の棟々のならぶ区画をバス通りと小学校前の通りが挟んでいる、というかたちになるのだが、小学校の正面を横切って一筋となりの道を選び、バス通りにぶつかる進路をとった。わかりますか?
(わかります?)
おおまかにいえばUターンです。が厳密に往復ではなくて往路と復路は別の道です。コの字型。で、それなのに、違う道のはずなのに! 往路と復路で目にする光景に差異が認められない。ほとんどかわらない。団地の棟々のならび、遊具のある円型の広場の案配、その遊具と遊具の配置、管理棟のつくりなど、まったく同じなので心配になる。空間の同一性がゆらぐ。それは均質さとか画一とかともちょっと違う感覚で、パラレルワールドにはいりこんだような。
ところでタイの寺院は立体曼荼羅のようになっている。ずらーっと仏像の並んだ正方形の回廊が単位で、この回廊自体もまたずらーっと正方形に並んでいて、内側にはよりおおきなスケールで、同様のルールで構成された回廊がある。もちろんタイですからそこにいるだけで体力の奪われていく蒸し暑さ。はじめてはいったとき、静かな回廊ひとつだけでも「なんじゃこれ」なのだけど、入ってきたのとは反対側のエリアに足を踏み入れると、さっきよりちょっとだけスケールの大きくなった、しかしそれ以外はさっきとまったく同じ構成の回廊にでてしまって混乱する。こりゃ悟っちゃうなあ~と汗をぬぐう。
というような体験を思い出しました。
(回廊がスケールを変えて二重になっている様子、伝わるだろうか…)
またまた~
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家に帰って、掃除やらなんやらを手伝って、夕方。 俺は、隣の家のドアをノックしていた。 「はーい」 声がして、がちゃりとドアが開いた。天使のごとき、というか元天使の金髪美少女がそこにいる。 「よう」 「上がってください」 「おじゃまします、っと」 ドアを閉める。 するとその瞬間、室内の光景ががらっと変わる。 靴の5足も並ぶと一杯になる狭いたたきは、モダンな黒タイルに。木造の古い室内は、どこのデザイナーズマンションだよ、というようなコンクリート壁に無垢フローリングに。そもそも室内の面積が違う。このボロアパートに収まる空間ではありえない。 「あいかわらずでたらめな空間だよなあ……」 「さすがに、汲取式のト��レは……そもそも排泄の必要すらなかった私には、つらいものがありまして……」 「必要なかったんだ、天使」 「それ以上はノーコメントで」 ということは、いろいろ抵抗あるんじゃないだろうか。清らかなはずの自分の肉体から、こう……。 「道太、それ以上考えないほうがいいです」 「心読めるのかよ」 「……顔を見ればわかります」 はぁ、とため息をつきつつの返事。 純粋な好奇心なんだけど。 案内されたのは20畳ほどのフローリングの空間だ。これまた、どこぞのモデルルームかいな、と言わんばかりの光景だ。鮮やかなグリーンのソファ。北欧風のシンプルで見栄えのいい棚。前世でも俺はついに手に入れることはなかった大画面の液晶テレビ。 「なあ、これ、この時代で発見されちゃったらオーパーツ並みの騒ぎになるのでは?」 「道太以外の人はこの空間に入れないようになってますから」 「ヨンナ、ただの人間じゃなかったの?」 「肉体はそうですけど、天界のバックアップを受けられないとは言ってないですよ?」 カウンターキッチンのカウンターに置かれたデロンギ製のいかにも高級げなエスプレッソマシンを操作しつつヨンナが答える。 「はいどうぞ。エスプレッソ、好きなんですよね?」 「……」 1983年の日本に存在してちゃいけないやつだよね、そのエスプレッソマシン。液晶テレビもエアコンも空気清浄機も全部そうだけど。それいったら俺とヨンナの存在そのものがおかしい。空間の改変くらい笑って受け入れるべきなのだろうか……。 デミカップとソーサーを受け取る。 そのままブラックで飲むと、濃厚な味と香りが口いっぱいに広がる。 やわらかくて、ごくわずかな酸味がある。 「うまい……」 反射的にうめきみたいな感想が出る。我ながらおっさんくさい。 そんな俺を見て、ヨンナは微笑む。 「駅の向こうに古い喫茶店がありますよね。そちらで豆も売ってるんです」 「あそこかぁ。社会人になってから入ったことがあるな。確かにブレンドうまかったよなあ」 「おつかいということにして、いつもメモを持参で買ってます」 そう言うヨンナはカフェラテである。スタバの上陸、何年先だと思ってんだ。森永のカフェラッテだってまだ発売してない。 「それで今日は?」 「いや、特に用事はない。晩飯まで時間あったからさ」 家に母さんがいて、暇な時間は、こうしてヨンナの家に来る。学校では安心して相談できないことも多いし。あとコーヒーが卑怯なくらいうまい。ちなみにエスプレッソマシンとは別にドリップマシンあるのよこの家。 「ああ、そういやさ、芹ヶ谷からなんか言われた?」 「芹ヶ谷……茜さん、ですか?」 「ああ」 「特にはなにも。たまに、かなりたちの悪い嫉妬の視線はもらいますが。それがなにか?」 「やっぱそうなんだ……」 軽くため息をつきつつ、さっきスーパーで起きたことを話す。 聞き終えたヨンナは、少し難しい顔をして言った。 「芹ヶ谷さんは、女子のなかでは影響力のある立場ですからね。道太がいやがらせをされなければいいんですけど……」 「物理的な被害が出るならともかく、中坊のいやがらせなんててきとーにあしらうって」 「女は怖いですよ。特に集団になると」 「会社の暗闘にくらべりゃなあ……。金が絡むわけじゃないし」 「それもそうですね」 ヨンナと話すのは気楽だ。未来から来たことを隠す必要もないし、精神的にも対等だ。会話のテンポが噛み合うところも好ましい。もちろんかわいさでは衣紬が優勝だが。特に関係ない文脈でも妹のかわいさをねじこんでいくスタイル。 「……それにしても、衣紬はなぜ、そんなに芹ヶ谷さんに敵対的なんですか?」 「ああ、その後のこと説明してなかったな」 ヨンナには直接関係しないことだったから端折っていた。 俺は店を出てからのことを語った。いかに衣紬がかわいいかを。いかに衣紬が俺を大好きであるかを。それはもう、熱く語った。 「……というわけで、なかよく腕を組んで帰ってきた」 「道太の顔がにやけすぎでどうしようもなく気持ち悪いのはさておき」 「ねえ、もうちょっと控えて? いかにおっさんメンタルでも傷つくものは傷つくんだけど」 「鏡を見たほうがいいと思います」 「そんなに?」 「衣紬に嫌われますよ?」 「それはやばい」 顔を引き締めた。 「すいません。正視が難しいくらい気持ち悪い感じになってます」 「なんでだよ!」 俺の抗議はスルーして考え込むヨンナ。 「……なんか、いまの話にまずいとこあった?」 「いえ、特には。ところで道太、今日このあとの予定は?」 「メシ食って、そのあと衣紬と一緒に銭湯。帰ったら宿題」 「いいですね。私もご一緒していいですか、お風呂」 「もちろん」 「じゃあ7時くらいにお迎えに上がってもいいでしょうか」 「あいよー」 そういうことになった。 「じゃあとでな、衣紬、ヨンナ」 「はーい」 銭湯は坂の下にある。徒歩5分くらいだ。いまは涼しいからいいが、夏場なんかは、家に帰ったころにはもう汗をかいてた。上山はここに限らず、とにかく斜面が多い。都会の斜面集落とかいって動画で紹介されてたくらいだ。 入口で男湯と女湯に分かれて入る。 規制が緩かった時代だから、衣紬が小4になるくらいまでは一緒に男湯に入っていた記憶がある。さすがに現在の衣紬はシャンプーハット必須ではない。荷物に入ってなかった。小4までは必須だったんですのよ、この妹。 このころは、まだまだ銭湯が元気だ。うちのように内風呂がない家庭は多かった。父親に連れられた同じクラスの女子と遭遇したこともある。が、そこで第二次性徴トリガーが爆発して性の目覚めを迎えることはなかった。なかったはず。 ��治生まれという番台のばーちゃんに金を払って脱衣所へ。 銭湯はレトロなものと相場が決まっているが、それは昭和30年代か40年代から建て替えがなされていないからだ。そういうわけで、この銭湯はそんなに古くない。巨大なお椀型の籐製の脱衣かごに浴室に入る。 「よう坊主、妹と一緒かー?」 さっそく顔見知りのおっさんに話しかけられる。 銭湯ってのは定期的に行くものであり、それゆえ、かぶる人は毎回かぶる。なので、銭湯のみの謎のコミュニティが存在する。 「ちゃんとチンポに毛生えたか?」 「……まあ、それなりに」 この時代の50がらみのおっさんは戦前の生まれだ。そして戦前生まれのデリカシーのなさというのは、ちょっと想像を絶するものがある。2022年の日本じゃ団塊の世代が叩かれたりするが、あれでも、その前の世代にくらべりゃマシなんだよな。 かこーんという桶の反響音。あちこちで流れているシャワーの音。いくよーという声と同時に女湯のほうから飛んでくるシャンプーの容器。銭湯というのは実によく音が響く。女湯のほうからなにやらけらけらと笑っている衣紬の声が聞こえる。 「洗うか……」 いまだに体を見るたびに微妙な気分になる。すね毛はほとんどなく、ワキに至ってはつるつる。結局52年間新品だった股間のモノもみずみずしいことこのうえない。 さらに。 「おにーちゃーん」 とうとつに女湯から声がかかる。 シャンプーが飛んでくるくらいだ。壁を挟んでの会話なんて日常茶飯事である。 「なんだー」 「上がったらアイスー」 「50円のみぞれな」 「やったーー」 この壁の向こうには全裸の衣紬がいる。 この13歳の肉体、問題がある。性欲が強い。はじめてのおしゃせいは経験済みですか、と問われると答えはイエスである。このあいだ試した。どこで、とは聞かないでください。 52歳のこじれた粘着質の性欲に13歳の健康な肉体。悪夢のような生物がここに爆誕した。 まして衣紬の裸を目撃する機会は多い。決定的に見てはいけない部分だけは見ていないが、まあ、だいたい想像できる。 妹だ。わかってる。わかってるのだが、ウェスターマーク効果が仕事しない。毎日のように新鮮に衣紬がかわいい。見た目も言動も幼いうえに、俺に死ぬほどなついてるので、まちがってお医者さんごっこのご提案をさせていただいたときには、うっかり受諾されてしまいそうな気配もある。えっちな契約が成立である。そしてそんなことを考えるとだな。 「……」 思わず股間を覗き込む。 まあいい。髪を流そう。あと明日になったら学校に行って芹が谷と顔を合わせなきゃいけない。 あえて憂鬱なことを考えると、急速に萎えていった。 「道太ー」 お、ヨンナだ。 「なんだー」 「衣紬のお肌、ぷにぷにですよー」 「……」 どこに座っているのかわかったら石鹸でも投げ込んでやったところだ。 ああいかん。想像してしまった。 ヨンナはガードが固い。しっかりと女性らしい身ごなしをする。しかし肉体は年齢なりだ。ほっそりとしていて、第二次性徴もささやかなものだ。なのに、表情だけが大人になることがある。いまのところヨンナは異性というより同志という気分が強いから、できるだけそういうことは考えないようにしている。 けど、まったく考えないかというと、それは話が別なわけで……。 なにしろ、あの肌の白さがやばい。きめが細かくて見るからにすべすべしている。指がほっそりとしていて長い。どうしても考えてしまう。下のほうも金色なのかなとかまあいろいろ。 「……相手は13歳だぞ」 俺にとっては娘以下の年齢である。 少なくとも、前世にいたときはこんなことはなかった。女の子でも、中学生くらいなら子供にしか見えなかった。それ以前に基本的に男女年齢問わず人間には一定の恐怖感があったから、そういう対象にはなりえなかった。 しかしいまは、どうやら違う。 「……」 頭のなかに百合色のとんでもない映像が浮かんできたので、洗面器に水をいっぱいに入れて頭からかぶった。ものすごい冷たい。52歳だったら死んでた。 のんびり湯船につかってから上がる。 しかしまあなんだ、白ブリーフにも慣れた。もともとボクサーブリーフ派だったので、着用感そのものに違和感はない。 番台のばーちゃんに話しかける。 「すいません、うちの妹は上がってますか」 「はい?」 「う・ち・の・い・も・う・と・は・あ・が・っ・て・ま・す・か!」 「巨人が勝ってるよ」 だめだこりゃ。番台のばーちゃんと会話は不可能である。よく接客できるな。それでいて釣銭とかまちがったことない。全部暗算でやってるっぽいんだよな……。 「道太ー、上がりましたよー」 珍しくヨンナが大きな声で呼びかけてくる。 「これから服を着ますので、いまのところまだ裸ですー」 「……」 「二人ともですよー」 その情報は欲しくなかった。あとおまえはともかく衣紬の全裸情報は流すな。許さん。 タイミングをあわせて、アイスを買って外に出る。 木製の下駄箱のある玄関ホールで合流である。 3人揃って買ったのは、みぞれバーである。アイスの世界は超がつくロングセラー商品が多いが、このみぞれバーは最近では見たことがない。グレープフルーツ味である。 「ふー」 外に出る。空気が気持ちいい。20度前後だと思うが、ほてった肌にはちょうどいい湯冷ましだ。 「いいお湯でした……」 「ヨンナ、意外に銭湯好きだよな」 「はい。それはもう」 風呂敷に包んだ銭湯セットを抱えたヨンナが、髪をかきあげながら俺の顔を覗き込んでくる。髪は濡れたまま。ふだんよりやや色が濃く見える金髪。 ぎくりとする���らい色っぽい。 「自宅に欲しくなりました」 「作るなよ。絶対に作るなよ」 「冗談ですよ」 まちがって毎日入りに行きたく���るだろうが。 ところで、さっきから衣紬がおとなしい。今日はヨンナが一緒ということで特別に支給されたアイスにもはしゃいでいる気配がない。 「衣紬」 「……」 返事がない。ぼけーっと焦点のあわない目をしている。 しかたない。俺は衣紬のほっぺたを突きつつ、もう一度呼びかけた。 「おい、衣紬」 「ひゃ、ひゃあっ!」 両手を上げて驚く衣紬。 その手から、ぼたっとアイスが落ちた。 「あ、ああぁ……」 この世の終わりのような顔をする衣紬。なにやってんだこいつ。 しかし俺はできるお兄ちゃんである。衣紬の笑顔のためなら、食べかけのアイスをあげるくらいなんでもない。 「俺のをやる」 「え、うん……いいの?」 「ああ」 衣紬にアイスを渡す。 衣紬は、じーっとアイスを睨んでいる。少しずつアイスが溶けて、ぽたりと地面に落ちる。 「衣紬、食べないのか?」 「お、お兄ちゃんの食べかけなんていらないっ」 アイスを俺に押し付けるように渡す衣紬。 「先に帰るっ」 そう言って、さっさと走っていってしまった。 衣紬は元気いっぱいだなあ。 「俺、なんかした!?」 「すみません。ガチ泣きはちょっと……」 「あの反抗期知らずの! 元気いっぱいでときどきアホかなと思うくらいのかわいい衣紬が! 俺のアイスをいらないと!」 「近い近い、顔が近いです道太」 鼻面を押し返される。 「うえぇ……衣紬ぅぅ……」 結局、その日、衣紬は俺とほとんど目をあわせてくれなかった。いつもなら布団のなかではなんだかんだとくっついてくるのにそれもなかった。 もうだめだ。おしまいだ。 俺の転生は失敗に終わったんだ……。
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手軽なので商品購入に結びつきやすいネット広告
広告で商品を宣伝した場合、成果が出るまでに時間がかかる事があります。 チラシなどはその1つです。その点ネット広告は、スピーディーに成果が出やすいメリットがあります。 確かに紙のチラシでも、商品の宣伝は可能です。 よくポストに投函されているチラシを見てみると、モデルルームが宣伝されている事もあります。 また近所の実店舗が宣伝されている事も多いです。
その紙のチラシを見た方々は、アクションを起こしてくれる可能性もあります。 ただそのアクションのハードルが、少々高いです。 モデルルームの場合は、見学してもらう為に、読者に現地に訪問してもらう必要があります。 実店舗も同様で、読者にお店に来てもらい、何か商品を購入してもらう必要があるのです。 そのハードルの高さから、一旦は紙媒体のチラシで宣伝しても、なかなか成果に結びつかない事もあります。 それに対してネット広告は、アクションのハードルが比較的低いです。 例えばネット通販です。自社が宣伝する商品広告に、通販サイトへのリンクを貼っておく手段もあります。 スマホでも簡単に手続き可能な通販サイトの購入ページに、リンクを貼っておく訳です。 スマホでも購入可能なら、成果に結びつきやすいです。 広告を見てくれた読者が、スマホでアクションを起こして、直ちに製品を購入してくれる可能性もあります。 紙媒体の広告と比べれば、明らかにハードルが低いです。 すなわち、それがネット広告の魅力の1つです。 ですから最近では、紙よりもネット広告に注目している方々も増えてきています。
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高級なリビングソファ 挑戦的なオーダーメイド家具 海外デザインのオシャレチェア 撮影スタジオ用家具
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2018.10.9 トータテさん主催 kurasu room での
和菓子講座、終わりました^^
初めての場所でのレッスンで
緊張しましたが
たくさんの方がご参加下さいました。
ありがとうございました。
おけいこドットコムさんのプロデュースで
お手伝いもしてくださり、
感謝の一日でした。
居心地良いモデルルーム見学も
楽しかったです^^
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タマホームと関わり合いになりたくないし、知人が新築住宅を検討していたり、モデルルーム見学を検討していると知ったら、この事件を教えたくなる。新聞テレビで広告してる企業だからと言って信用できるとは限らない
[B! 炎上] タマホーム、Xでトラブルになっていたユーザーに損害賠償請求を準備と発表。「スラップ訴訟」と批判浴びる(篠原修司) - エキスパート - Yahoo!ニュース
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モデルルーム見学
昨日モデルルーム見学してきました 結構物も気に入ったし、周辺環境も良さそうなんですが 売���しから3年近く経っているのに10戸売れ残っていることに驚きました
価格もお手頃なんですが、売れ残っていることが心配 てか3年経ってたらもう新築ではないような・・・ 初めから住んでいる方はもうすでに2年近く住んでいるわけで ほぼ中古買う感覚ですね 津波ハザードマップにもかかっているし、液状化はギリかかってるかかかってないか微妙なライン
この物件はなしですね。
その後、以前行ったモデルルームに電話で急遽アポ取り、突撃訪問 やっぱりその物件かなり良いのですが価格が高い いい物件なんですけどね 一旦そこのローン仮与信通してみようかと思っていますが ちょっと予算オーバーなんです
もうちょっと悩みますが 並行して別物件も探します
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とりあえず間取りは決まりました。 構造計算を進めながら、最終確認等していきます。 内装や庭木など選ぶものがたくさんすぎて あと何度迷宮入りするか楽しみです。 庭木を探すために植物園や植木屋さんをまわりたい。 着工はまだまだ先となりそうです。 そのため、まだそれらしい写真がありません…笑 完成見学会やモデルルームって 何度行っても楽しいし、参考になるので 色々な会社へ行くのがおすすめ。 未だに何件も行ってます。 #沼津 #富士山 #mtfuji #fuji #イマソラ #カコソラ #マイホーム #マイホーム計画 (Numazu, Shizuoka) https://www.instagram.com/p/CINnK49BLaD/?igshid=1kqbe0xp6h6ax
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