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#ソファ高級座り心地
umifani · 4 hours
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格好いい王様チェア 豪華なデザインの椅子 オシャレなアクセントチェア おすすめソファ オーダーメイド
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samantha-dan564 · 4 months
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言いたいことはわからんでもないけど、いい加減この「座席がソフト=かけ心地がいい」という「信仰」から脱却できないもんかと思う
座面やランバーが柔らかいと何が起こるかって言うと、骨の位置が安定しないで捻じれる。捻じれた結果筋肉に負担がかかる、結果として疲れるってロジックなんですよ
嫌そんなことはないソファは柔らくてもくつろげるじゃないかっていう人もいるかもしれないけど、ソファは体全体を椅子が支えてるんですよ。椅子の重要な二大要素である面厚一定と荷重分散のうち、面厚一定はゴミだけど荷重分散でフォローする。だから骨が捻じれても荷重が分散されていくらかマシなんです
 もっとも高級なソファであれば、椅子内部の詰め物を減らしてでもパンタグラフ構造のハンモックを内蔵して、面厚が一定になるよう配慮しています。そういう椅子は疲れにくい。ただしものすごく高価になりますが
 だけんど電車のロングシートは、尻と腰と背骨の下半分しか接触しない。こんなところに柔らかい座席を入れたらどうなる。腰骨が捻じれて荷重が分散できず、局所的に筋肉に負担がかかって疲れるんですよ。背骨と首の骨をいかに捻じれないようにデザインするかが、疲れない椅子のデザインと言っても過言ではないんです
 レーシングカーの座席が固いのも、オフィスのチェアが固いのも、骨をねじらず荷重を極力分散させて面厚を一定に保つための疲れないデザインなんですよ。やわらかい椅子はやわらかいというだけでゴミと言っても俺は言い過ぎではないと思います
 正しい資質の座席は面厚一定と荷重分散。とりあえずこれだけ覚えて帰ってください
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helloharuo-diary-2023 · 8 months
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過去日記「Novel」からのメッセージ
Wednesday 22 January 2014
坐禅会に行く時間と学校に行く時間はほぼ同じ早朝5時。昨年3月坐禅を始める時にハルオは、考えた。坐禅も良し、そして坐禅を習慣付けて夜型生活を朝型生活に切り替えようと。学校の授業をもっと大切に組んで行こうと。それまでのハルオは、長年夜型生活をしていた。深夜2時、3時は当たり前だった。東京の学校の授業スタートは、朝9:20から。その時間に間に合う為には、御殿場から出発する高速バスを朝6:20の始発に乗らなければならなかった。
今朝は、昨日と同じく禅寺の都合で坐禅会は、お休み。今年に入って増々坐禅修行に取組もうと決意したハルオは、のっぴきならない理由がない限り坐禅会に毎朝参加することを義務づける様にしていた。しかし今日は、坐禅会も休みで学校もあった。茶畑庵から車に乗って御殿場まで進むと雪舞っていた。裾野と御殿場間では、断然御殿場の方が標高高いので雪が降り易い。ハルオは、慎重にドライブをした。道路が凍結したり雪で視界が覆われたりするからだ。
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ハルオは、5:50の高速バスに乗った。昨年秋頃からダイヤ改正があり始発は、6:20から30分繰り上げられていた。余裕を持って東京に行かないといつ何時東名高速内で事故や渋滞に巻き込まれ予定時間を狂わされるのを防ぐ為だった。今朝は順調に進みバスは、7:30すぎに新宿に到着した。ハルオは、時間つぶしにマクドナルドに入ってコーヒーとソーセージマフィンを注文し喫煙席を選んでカウンター席に座った。窓の外は、左右に忙しなく人々が歩いていた。この時ハルオは、気付いた。ポケットWIFIの電源部を忘れたことを。それがないとリチャージが出来ないからバッテリーが1日持たない。いつもならインターネットをして時間を潰すハルオだったがWIFIの電源を切って読書に切り替えた。今ハルオが読んでいる本は、「参禅入門」大森曹玄著。1964年、ハルオが生まれた年に出版されたこの本は、読書が苦手なハルオにも読み易い本だった。
新宿駅から市ヶ谷駅まで総武線を使って市ヶ谷の学校まで、電車はいつも混んではいない。学校に着くとジャックダニエルのウィスキーをパロッた音楽イベントの張り紙がエレベーターの横に見た。ハルオは、以前レギュラーで仕事をしていた雑誌を思い出した。今日の授業は、いつもと違い合同プレゼンテーションの日だった。卒業制作を終えた生徒の作品を生徒1人1人プレゼンして行く。プレゼンテーションの会場となる教室に入ると生徒の数は少ない印象を受けた。ハルオは、中央の一番奥の席に座った。それには理由があった。自分の生徒がプレゼンをしたら記録として動画を録りたかったからだ。用意してあった三脚をキャリーバッグから取り出しカメラをセットしようとするとハルオは、又やってしまったと後悔した。三脚のクイックシューを忘れてしまった。静岡と東京の行き来を5年間続けているハルオだがいつも何かしら忘れ物をする自分が嫌だった。にも拘らずまたその過ちを犯してしまった。ただ過ちと言っても旅にトラブルは付き物でそのトラブルをどう知恵を働かせるというのも大事だなと1人納得して済ますハルオもいる。今回は、三脚の上にカメラを置いて手で落下を押さえる様にすることにした。16人の生徒が次々と指名されプレゼンテーションを行った。同世代の女性のポートレイト、卒業後移住する母島の生活のドキュメント、台湾からの留学生は、台湾の古い町並みを撮り、宮崎県の口蹄疫問題で29万頭の牛や豚が殺傷された地元を撮った生徒、巨大物が怖いとその巨大物たる建築物を撮った作品、、、、、様々な作品が紹介された。このプレゼンを真摯に受け止めプレゼン内容の紙に書いて来てる生徒もいれば行き当たりばったりでプレゼンする生徒もいる。後者の方が多く感じた。ハルオは、少しばかりそれで気分が悪かった。そしてハルオにも生徒から意見を求められてハルオは、答えた。「考えること、感じること、その意識を忘れないこと」ハルオは、そうメッセージを送った。メッセージを送っても生徒に受信機がなければ受信ことが出来ない。受信機がなくても時にはメッセージを送り続けることは大切だとハルオは、過去の経験から知っていた。ただハルオは、自分にその資格があるのだろうか?とも自問しながら。
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学校が終ると急いでハルオは、市ヶ谷駅に小走りで向かった。今日は、Uさんのお母さんの告別式だった。告別式の会場は、大森駅からタクシーで10分ほどの臨海斎場だった。ハルオは、急ぐとろくなことがなかった。電車に乗り次は飯田橋駅と知った瞬間「あれれ逆方向?」と乗る方向を間違えたと勘違いをして飯田橋駅で下車。そして逆方向の電車にまた乗った。そしてまた実は間違えていなかったと気付き四谷駅で降りてまた最初の方向の電車に乗車。それは、自分が水道橋駅から乗っていると思ったからだった。水道橋駅には、ハルオのオフィスがありその習慣が仇となった。御陰で臨海斎場までの道のりは遠のいた。大森駅に着いたらまずはバスに乗ろうと考えていたがこのタイムロスとバスの時刻表をネットで見たらバスがこの時間運行していないと知る。タクシーしか手段はないと悟りタクシーに急いで乗り込む。
斎場に到着した時は、告別式の全ての行事が終わっていた。ハルオは、遺影の前で手を合わせて故人のご冥福を祈った。その遺影は、ハルオが撮影した写真だった。昨年Uさんの姪っ子さんが結婚をされた時ハルオは撮影を担当した。その結婚式にUさんのお母さんも参列していた。向き合ってのポートレイトではなくあくまでもスナップショットだったので目線は横を向いていたが遺影の写真として評判が良かった。やはり昨年ハルオの友人のお父上が亡くなりその時も以前ハルオが撮った写真が遺影に使われ、その友人から「ハルオ君は、遺影写真家になれる」と言われていた。奇しくもその機会がまたやって来てしまった。ハルオは、自分が撮影した写真が人の役に立つのなら本望と心の中で思っていた。斎場を後にしUさんとそのお姉さんと3人でタクシーに乗りUさんと故人が一緒に暮らしていた自宅へと移動する。
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UさんとUさんのお姉さんとハルオの3人でタクシーに乗りUさんと故人が一緒に暮らしていた自宅へ移動した。蒲田駅から近いその家に入ると窓の外には、地元の高校が見えた。ハルオとUさんの交流は、20年近くになるがUさんの家には初めて訪れた。つい先日まで故人が使っていた4.5畳の和室には、仏壇があった。斎場の係員が僕らの後から間もなくやって来てお骨と遺影が棚台の上に置かれた。ハルオは、再度故人の冥福を祈った。Uさんは、読書家で本棚にはハルオには縁のなさそうな本がぎっしり並べられていた。UさんもUさんのお姉さんもいつも変わりない表情で告別式の後始末をしていた。僕は、告別式の参列者に用意されたお弁当をソファに座りながら頂いた。この家には、ニーチェという名の雄猫がいる。この猫の話もUさんから何度となく聞いていた。ニーチェは、来客であるハルオを警戒してかあまり姿を見せなかった。コーヒーを飲みながら故人を偲んで思い出話をしたりUさんの少年、学生時代の古いフォトアルバムを見せてもらった。Uさんの大学時代の写真は見た事があったがその前のUさんの在りし日の姿を見たのも初めてだった。ハルオは、もしもUさんが同級生だったらどんな関係になっていたのだろうかと想像していた。悪ガキでもなく、優等生という雰囲気でもなく、生意気そうでもなかった。同じソファに座っていたUさんがニーチェをあやしているとハルオは、ニーチェを自分の膝に引き寄せてみると意外と大人しくしていた。そのニーチェにUさんは驚きiPhoneで写真を何枚か撮った。夕方5時になりハルオは、次の予定、歯医者に行けなければならなかった。Uさんは、ハルオを鎌田駅まで見送ってくれた。
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ハルオは、京浜東北線で鎌田駅から品川駅まで移動した。川崎駅は、ハルオが昔付き合っていた女の子との思い出がある駅だった。あの子は、どうしているのだろうか?会いたいなと思った。そして山手線に乗り換え渋谷駅に行き、更に井の頭線に乗り換え三鷹台駅まで移動した。ハルオは、静岡に移住してからもこの三鷹台にある歯医者に通っている。ハルオは、その歯医者と信頼していた。今回あの治療は、右の奥歯の詰め物が外れてしまったからだった。治療はすぐに終ってしまい時間の予約をして新宿へと向かう。8時発の高速バスになんとか間に合いハルオは、いつもの様に後ろの方の席に落ち着いた。このバスは、超特急便で通常の特急便よりも殆どのバス停を飛ばすので時間が若干乗車時間が短く今夜のバスは順調に東名御殿場バス停に着いた。
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バスから降りて駐車場まで移動したハルオは、いつもの「Today's Fashion」の撮影をすることにした。ストロボを使わずに駐車場の灯りと高感度ISOの組み合わせで撮る。カメラは、駐車場に駐輪してあった誰かの自転車のサドルの上に設置しセルフタイマーを使って10秒後に3枚が撮れる設定にして3回繰り返した。ハルオの愛車のアーティ21スペシャルのフロントガラスは、凍り付いていた。間スプレーの解氷剤を窓に吹き付け、暫くして車を走らせた。
茶畑庵に着く前にスーパーマーケットに寄りタイムオーバーで半額になった焼き鳥や刺身を夕食に買う。茶畑庵も冷えきっていた。ハルオは、1週間前Uさんから分けてもらっていた遺影用の写真をフォトフレームに入れてあったので仏壇の横に置き鈴を鳴らしてもう一度手を合わせて故人の冥福を祈った。
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ichinichi-okure · 9 months
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2023.12.12tue_tokyo
「お母さん朝ドラ始まるよ〜」という声で今朝は起きる。すっかり寝坊。 昨日は夜中の1時までスマホで探し物をしていて、ぜんぜん起きれなかった。 10歳の長女たねさんが「サンタさんへ」って窓に貼っていたものが想像以上に高級すぎて、どうにか策はないものかと考え込んで探しまくって眠れなくなってしまったから。 あんなに夜更かししたのに結局見つけられなかったし。。
外は雨。 横で寝ている今年生まれた6ヶ月の次女つきちゃんを見ると、すでにとっくに起きていたようでニコ〜って笑ってみせる。天使!
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もじゃもじゃ頭のままテレビの前に座ると、7歳の長男舟くんがもう学校へ行こうとしている。 「いってらっしゃい」と見送りながら、耳は朝ドラに集中。
朝ドラオープニング中に急いで顔を洗っていたら「パン焼いたんだ〜」と夫タケ。 DTCのオカピにサワードゥのタネもらったのはいいものの、結局ハマったのはタケ。パンを気軽に焼く母になるのは失敗したけど、パンを焼く父は誕生したので良いですよね。 今朝のパンは膨らまなかったっていっていたけど十分おいしい。
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朝ドラ見ながら朝ごはんしていたら、急にドタバタするタケ。 結局パン焼いていたから朝の時間ないでやんの。 とはいえ今朝は私が大寝坊だったから色々家事やってくれていたし、、で、駅まで車で送る。 我が家は決め事なく、なんとなくお互いの雰囲気読んで家事し合うタイプ。
帰宅。元気モリモリのつきちゃん。 腰がしっかりしてきたのでお座りが上手に。それを見ていた舟くんが昨日トイピアノをつきちゃんに出してくれていた。やさお。
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一生懸命ピアノを弾くかわいい後ろ姿を見ながら、日曜にすぎはらけいたろうに言われた「つきちゃんの頭が膝」って言葉が脳裏に過ぎる…膝って…
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つきちゃんがピアノに夢中な間に、食器洗いと洗濯物干しを終わらせる、次は洗濯物畳みとリビングの掃除、、と思っていたけどつきちゃん泣き時間ぎれ。 ミルク飲ませ寝かせる。
今日は10時半から地域の児童館で012歳の幼児さんに向けた無料のクリスマス会があるとか。 上の子の時も含めてそういうの全然参加してこなかったのだけど犬友ゆかさんに誘われて行くことに。
児童館に着くとスタッフ���方々みんながサンタの帽子を��ぶっている。 部屋に入ると手作りのクリスマスの壁画や手作りのおもちゃや電飾キラキラの装飾たくさん。 犬友ゆうちゃんと娘ちゃんが先にいた。サンタスタイルしてる。かわいい。
初めの演目が児童館のスタッフの人たちの「大きなかぶ」の劇だった。 すごい!衣装も舞台も手作り感満載だけどとても愛ある催し! おじいさんおばあさんまではいいけれど、子供の名前がヨッシーで犬の名前がぽちで猫の名前がエリザベスでネズミの名前がチュウ吉だった。センス!
劇が終わり、児童館の方々が作ったたくさんの手作りおもちゃで遊ぶ時間に。 つきちゃんはまだ遊べる年ではないので子が3ヶ月違いの犬友ゆかさんと映えスポットで写真撮っていたら、同じぐらいの月齢の子を抱っこしたママさんと話が盛り上がり仲良くなった。名前はゆきちゃん。 犬友でママ友もゆかさんとゆうちゃんだし、こないだ別の場所で仲良くなったママ友はゆみちゃんだし、今回ゆきちゃんて、、U4、、UFO。。 私ももうゆづさんで良いからねって言った。
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サンタさんとトナカイがきてみんなにプレゼントをくれたのだけど、その一つ一つの箱も全部手作りで、何から何まで手作りじゃん、、ってその細やかな愛に泣けた。 こういう時、作る側、準備する側の苦労や仕事量が見えてしまうので、その有り難さと思いが見えるから余計泣けるのだろうな。スタッフの人に猛烈に感謝を伝える暑苦しい参加者。
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さぁ帰ろうとなった時、さっき仲良くなったばかりのゆきちゃんとここでお別れなんて、、と思って、急にランチに誘う。急だったけど思いつくのはもちろんベビ連れと言ったら座敷が優しいタイ食堂カオチャイ。 最近ハマっているカオヤムをゴリ押ししてみんなでカオヤムランチに。 相変わらず最高。。。って思ったら、カオヤム食べたの先週も火曜日だったし笑 毎週飽きずに食べる私。もちろんカオニャオダムガティもマストで食べる。
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東京とは思えぬ自然豊かなロケーション気に入り、湖畔って名前の住所も気に入り、ただそれだけで友達なんて木下家を除いてはゼロな状態でやってきたのに、こうやって犬と赤ちゃんを通じて気の合う友ができるなんて、去年までは思っていなかったよなぁ。ドードーとつきちゃんありがとう!!(ドードーは我が家の犬)
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ゆきちゃんとバイバイして犬友とも別れたのにまた犬の散歩で会う。 仲良すぎ。
今日は特に予定ない日と思っていたのに、結局朝から喋りっぱなしで疲れたな、と一休みでソファに腰掛けたつもりが抱っこしたつきちゃんと一緒にうたた寝。
「ただいま〜〜!!」という声で飛び起きる。 18時半。上の子2人がプールから帰ってきてしまった。 急いでご飯作らなきゃ!と冷蔵庫の中と相談してひき肉100グラムしかなかったので今晩は肉豆腐で。新米と納豆(娘)とたらこ(息子)があれば、あとはなんとかなる子供たち。ほっ
そうこうしているうちにタケも帰宅。
夕食中から中庭で飼っている烏骨鶏のアワちゃん(白)とチョンちゃん(黒)が外が真っ暗になっても小屋に入っておらず心配で見に行ったらドードーのタコのぬいぐるみが小屋の前に落ちていた。怖くて入れないでいたみたい。誰よタコべえ置いたの。 たまご3つあった。
食後、私がお風呂に入っている間主寝室で舟くんとつきちゃんの寝かしつけをしてくれていたようでタケ寝落ちしている。。なんならドードーも寝てる、、
いくら起こしても起きないので仕方ないよね!で、私は一人優雅に舟くんのベッドで寝ることに。
今日は早く寝たかった〜やった〜と思って目を瞑ったけれど、結局たねさんのサンタのお願いが頭から離れず、、スマホ見ないぞ見ないぞ〜という邪念の中眠る。
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1日って短い。
-プロフィール- udu(うづ)イシカワアイ 39歳 東京 テキスタイルブランドudutextil主宰・織物の先生 https://www.instagram.com/udutextil/ https://udutextil.com
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peche-log · 10 months
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BOOSTのお心遣い、ありがとうございました❕少しでも楽しんでいただけましたら幸いです🌼
♡・・・・・・♡・・・・・・♡・・・・・・♡・・・・・・♡
共通の友人の結婚式に参列する前夜のおはなし / 桃円
大剣を長めに取って大剣側が小剣の上にクロスするように……いきなりわからん用語出てきたけど、先が太い方を長めに取って十字に重ねろってことやんな?上に重ねた大剣側を後ろから一周回して、後ろから前に持ってくる……?ん?一周回したんにもっかい後ろから前に持ってくるんか?ほなこれ二周とちゃうんけ。あーもーわからん!
「円ぁ」
「なん」
「結んで」
「ハァ?」
パンツいっちょで祝儀袋と格闘していた幼馴染兼恋人に声を掛けると、えらく面倒臭そうな声色で返されてしまった。思っていた以上に集中していたところを邪魔してしまったらしい。ラグに直に座ってリビングテーブルに齧り付いていた彼が筆ペンを持ったまま不機嫌そうに見上げてくることすら、上目遣いでちょっとかわええやんかと思ってしまうから重症だと思う。
「結び方わかれへん。調べたけど無理や」
「ええ歳して何言うとんねん諦めんなや」
「祝儀袋担当したるから代わりに一回やってみてや。やってもろたら明日も出来るやろし」
「しゃあないなぁ」
余程ちまちまとした文字を書くのが億劫だったのだろう、口と態度に反して即座に筆ペンの蓋を閉めて桃吾の方へと向かってくる。子どもの頃、何度か一緒に冬休みの宿題の書き初めをしたことがある。円の字は読めないほどではないが決して美しいとは言い難く、小学生の間は習字教室に通わされていた桃吾の方が筆ペンの扱いには長けていると言えた。
ソファに腰掛ける桃吾の両足の間に膝をぐいと差し込んでネクタイを両の手に取った円が顔を近付け諸々説明してくれているが、なんとも集中し辛く軽い咳払いをする。疚しい気持ちは一切無かったが、事前準備さえ終えれば後は寝るだけという状態で円と同じく下着姿にカッターシャツを羽織っただけの桃吾は僅かに居心地が悪い思いだった。こんなコトで付き合いの長い恋人にいちいち反応しているなんて、それこそ“ええ歳して”だと思うのだが。
「……て、聞いとる?」
「聞いとらんかった。もっかい言うて」
「なんでやねん」
ぴしりと一発、デコピンがお見舞いされる。まともに聞いていなかった自分の行いを棚に上げ、明日は髪を後ろに撫で付ける予定でいるのに跡が残ったらどうしてくれると大袈裟に騒ぎ立てるとうっさいわと言いながら額に吸いつこうと��てくる。然程皮膚が薄い箇所ではないので大丈夫だとは思うが、額にキスマークなど本当に洒落にならないので些か強めに引き離した。
「もっかい説明したるからちゃんと聞きや」
「おん」
「お前返事の声だけはデカいな……こっち側を持つやろ」
今度はちゃんと聞いておこうと思ったのに、ふぁさりと伏せられた睫毛だとか暖房のせいでじわりと表面に汗をかいた胸元だとかがどうにも気になってしまう。思春期の少年のような思いを抱えた桃吾を他所に、円が小さく笑う声が落ちてくる。
「なつかしなぁ、わしも高校入学した時やり方わからんくて。聞ける人もおらんし。ようけ練習したわ」
何の支度するんにもあの頃ちょっと時間掛かっとったから、と続けるのでつい失われた宝物の元あった場所に目を向けてしまう。野球部の1日は朝が早く夜が遅い。勿論遅刻も厳禁であるし、下級生の頃なんかは早めの行動も求められる。些細なことでも手間取れば残された僅かな時間を削ることになるので、支度はテキパキと出来るに越したことはない。競技に直接関わることではなくともじわりと影響しうる、円から当たり前を奪っていったよくわからない名前の病を久し振りに思い起こして脳内で足蹴にした。
「円ぁ」
「なん」
「やっぱ明日も円が結んでや」
「ハァ?」
自分に乗り上げるように促しながら腰を抱き寄せると大人しくぺたりと座って抱き締められてくれる。すりすりと胸元に顔を寄せると「どこに甘えたスイッチあってん」と言いながらも髪を掻き混ぜられるので、とても心地が良かった。
「この辺か?甘えたスイッチ」
「それつむじやろ、下痢なるからやめぇ」
「え、便秘なるんとちゃうかったっけ」
「どっちゃでもええわ」
「まぁええけど。は〜〜雛家の男共はほんまに甘えたでちゅねぇ」
何故か機嫌が良くなった様子でちゅ、ちゅと桃吾の顔中を啄む様子は可愛らしいが、どうにも聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。
「なんて?ハ?雛家の男共?」
「ほや」
「あ?何が?俺だけじゃなく淳吾もってことけ?」
「おん。高校入学したてん頃とかよう『まどかさぁん、結び方わからんなってしまいましたぁ』とかメソメソしとったからよう結んだったで」
「���ァ!?聞いてないねんけど!」
「いちいち言うようなことでもないやろ」
苛立ちのぶつけようが無いので仕方なく円の鎖骨あたりをがじがじと甘噛みすることで怒りを抑えようとする。そんな桃吾の両頬を包んできた円は変わらずご機嫌がよろしいようで、可愛らしいリップ音を立てて口付けてきた。
「桃吾、イライラした時もガッツリ噛まへんようなったなぁ、えらいえらい。ええこええこ」
ちゃんとしつけ成功したなぁと口付けを繰り返す様をまぁ、かわええなと思ってしまうので。こういうご褒美のおかげですっかり目の前の男に躾けられてしまったなとは我ながら頷ける。
「なぁ桃吾」
「なんや」
「こんな近くで結んだんのなんかお前だけやから安心せぇや♡」
耳元で吐息交じりに告げながら態とらしく腰を揺らしてくる。うん、これは飼い主が悪い。裏腿にグッと力を入れて円を抱えたまま立ち上がると態とらしくきゃあとかなんとか騒いでいる。ご機嫌なのは良いことだが、シャツは明日着ていくつもりなのであまり強く握るのはやめてほしい。
「皺なるからあんま背中掴むなや。そんなんせんでも離さん」
「男前やなぁ。この後そのシャツわざわざハンガーにかけるんや?」
わしとえっちするために?とまたしても耳元で囁かれたので、仕返しにぺしりと尻を叩いたらすっかりとノッてきているらしい艶やかな声が返される。仕返しにならなかったらしい。
明日何時に出なければいけなかったのかあまり覚えていないなと思いながら円をベッドの上におろし、シャツを素早く脱ぎ去り寝室のハンガーラックに乱雑に投げ掛ける。万が一遅刻しそうになったら弟を迎えに来させようと考えながら、待ても出来ずに桃吾の下着に手を掛けようとする不届物の指先をぺしりとはたいた。今度は桃吾が躾直す番らしい。
待てとおかわり、時々口付け
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shukiiflog · 11 months
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ある画家の手記if.76 名廊誠人視点 告白
眠たいなぁ…
正面玄関 石畳 黒い門扉 …うちの人間は妙に背だけ伸びるからサイズ感としては…間違いでもないのかもね 僕は大仰なのは好きじゃない いくら由緒正しかろうとね…不必要に広い庭だとか、屋敷だとか、高級車だとか、あんまり馬鹿が露呈するようでかえって下品だろうに 世の中というのはそんな僕の趣味では回っていない いつも広い庭をみて整えてもらっている庭師さんはあちらも家を辿れば伝統芸に関してくるから、技を継承するためには突然仕事がなくなってはいけないしね… あちこちに忖度しているほうだ… 多分ね
本当に由緒正しいのなら粛々と時代に合わせて変わりなさい…一目でわかるような見目のこだわりなんてもう必要ないでしょう…そういう主張や威圧感がいまだに必要なら名廊はもうその辺のやくざと変わりない… …ってふうなことをご長老がたに進言申し上げたところ、反応は大激怒 …だからやくざだというんですよ… いい機会だから病院におしこんだ まあそれもかなり強引に進めたから…品格ある判断とはいえないのだろうけど、僕が個人的に、そろそろあの人たちを視界に入れ続けることの不快さに耐えがたくなって 勝手に決めた…
家の前で待機した車、の後部座席に乗り込む 直人さんの家まで四十五分程度かな 腕を組んで目を閉じた 眠たいなぁ…  寝よう
僕は予定を確認しないから…今日が約束した正確な日にちなのかは知らない でもなんとなく、今日だった気がする スケジュール帳の一冊も持たない 執事のような役割の人も持たない そもそも今日が何日かも数字ではよく覚えていないし… これで医者と多忙な当主の真似事がつとまるのか…昔から、こうな気がするな…と思ったことは外れない 時間とかね…日付とか なんとなくこうじゃないかなと 思って行動すれば確実に正確なのだからそれでいい だからまあ、約束した日も、今日なんでしょう そして絢人は、いないだろう 分かっていますよ…
ゆっくり眠っていた瞼をあげて覚醒した瞬間に、車が止まって、直人さんのご自宅の前に到着した 体内時計通り 四十五分間、しっかり熟睡した
付き人が僕の代わりに車のドアを開ける 「ここからは 僕一人で大丈夫です…」 そう一言告げて、車内で待機してもらった 黒に近い濃紺のスーツの上からシンプルな白いコートだけ羽織って 手土産は用意しなかったから、手ぶらでインターホンを押す 『誠人くん、時間ぴったりだね。どうぞ』 直人さんが鍵を開けてくれた エレベーターに乗る 正面に鏡
部屋へくると直人さんがもうドアを開けて腕を組んで、ドアに寄りかかって待っていた 「…誠人です。ずいぶんご無沙汰しております、直人さん」 「誠人くんも、大きくなったね。とにかく上がって。大したものは出せないけど」 「お気遣いなく…。では、お邪魔しましょうか…」 外観のイメージとブレのない、広い室内空間、大きな窓に、日のさす明るい部屋 リビングの応接用らしい暗色のソファに座るよう言われたので、座る 僕の前のソファに、向かい合って直人さんが座る 斜め前には、明るい髪の色の青年が座っていた 「申し訳ありません…脚を組まなければ落ち着かない性分で…   そう畏まる仲でもありませんし、よろしいですか…?」 直人さんは穏やかに笑って許諾してくださった 「好きなように過ごすといいよ。本家ではなかなかそうもいかないだろうから」 足を組んで、ソファの肘掛けに腕をおいて、頭をもたせかけて、目を閉じる   いつもの体勢 「…そうでもありませんよ…   おっしゃるとおり、過ごしにくかったので、…色々変えました」 「変えた? 名廊本家を?」 「ええ… 模様替え程度に」 うっすら目を開けると直人さんは少しびっくりされているようだったけれど、すぐにまた元の顔に戻った 「髪を、伸ばしておいでなんですね…。よくお似合いです…」 「そう? 本家ではこういうのさんざんに言われるでしょう。君の感性にも合わないかと思った」 ーーー”名廊家の幽霊” 僕の、あだ名 というか、古い友人が勝手にそう呼ぶのだけど 僕は名廊本家の柱から産み落とされでもしたように見えるらしい   家と癒着している、そのさまがそう感じさせるのだ、とも言われたけれど…   実態は、そうでもありませんよ… 視線を斜め前の青年に向ける 「ご挨拶が遅れましたね…失礼しました。僕は、名廊誠人といいます。あの家を、預かる者の一人です。あなたのことは不躾ながらほうぼうから伺っていましたよ、香澄さん…。艶やかな髪と目の色をしておいでだ。あなたを名廊家の一員としてお迎えできたことを、大変うれしく思っていますよ…」 彼が、綾瀬香澄さん 「初めまして…。ご足労いただいて…すみません…」 少し恥じらわれたような笑みを浮かべていらっしゃる そのまま席を立ってどこかに行ってしまった 「ごめんね、あの子は少し人見知りするから。多分お茶を淹れに行ってくれたんだと思うよ」 直人さんが軽いフォローを入れる 養子縁組の話が耳に入っても、僕は特に綾瀬香澄について身辺調査などはさせなかった したがる馬鹿者が本家にいたのをなだめて控えさせた どういう人間か 会って見れば一目瞭然なのだから、手間を惜しまずこうすればいいんです…    こそこそと嗅ぎ回るような品のない行動は許さない 名廊はいつからそんなに何もかもに怯えるようになったのか だから僕は絢人とも定期的に顔を合わせ、話しをした あの子はどこへもいかず、家の名を貶めることもなく、静かに約束をまっとうする そう思っていたけれど…… 言及せずに泳がせたほうが分かりやすい あの子は本心をまあまあうまくごまかすほうだから でも人間の内面の変化というのは、ごまかしのきかないものだ  直人さんと会うのも 病院を受診するのも 好きにすればいいよ…    他の者の意見は知らないけれど、僕はそんなことで気を揉むほど狭量ではない  ただ…    ああ、このままではおとなしく本家に生涯じっとさせることは 無理だなと なんとなくそう感じた日にガソリンをかけた  だってかわいそうでしょう…   あの子の体は、極度の緊張状態の持続で本来の痛みや苦しみから守られていた、のだろうから …そうでもなければ、あのように不自由なく動けるはずなど、ない体だ 発狂していておかしくないけれど、あの子は正気を保っている なら どこでどう暮らしても 待っているのは地獄だからね… 「お口に合うか分かりませんが…  どうぞ…」 遠慮がちにテーブルの上に三つの日本茶が出された 「…見たことのない焼きですね…。釜本はどちらですか?」 「そんな日用品にまでこだわらないよ。僕の友人が手びねりで作って焼いてくれた貰い物。高級品じゃなくてもかわいくて僕は気に入ってるよ」 「そうでしたか…失礼しました。良い品です。窯元を教えていただければ、ご支援しますが…」 「まぁ本人はそこまで自分の名を大きくしたいわけじゃないし、困窮してもいないと思うから。申し出は嬉しいけど、名廊はこれまで通り伝統芸能を存続させる方に財を費やすべきなんじゃないかな。誰にでもできることではないしね」 「……ごもっともです…」 また斜め前に静かに座った香澄さんは、少し緊張しておられる 僕となかなか目が合わないな… 身のこなしも、態度も、風貌も、粗野ではない、見たところ髪や目も染めたりしているのではない、なら良しとしておきましょう…  名廊を知る者なら、姓がどうであろうと血を継いでいないことはすぐ理解するだろうから
さて   どうしたものか…   
「……これから僕の言うことは、まあ窓の外で鳥が囀っている程度のつもりで、てきとうに流してください…」
そう言って僕は、ひとりごとのようなかたちで話しはじめた
「辟易しています…。ここに絢人がいないことなど分かりきっているのに、疑わしい場所へは足を運ばなければ納得しない人間がいる…   ほとんどは僕が片付けましたが、家の錆はどこからでも出て���る…    ここへ僕が直接足を運ぶことにも顔を顰める人間がいるものだから…煩わしくて少々内密にここへもきました。それで手土産のひとつも包めませんでした…。まぁ、家の車を使ったので帰れば露見するでしょうが…出がけに邪魔が入らなかっただけでもいいほうでしょうかね… 絢人はかわいそうな子でした…狂った父親の隔離された部屋へ一緒に閉じ込められて、あの子はいい慰み者だった…。理人さんは絢人のことを、ぬいぐるみだとも、雅人さんだとも、直人さん、あなたのことだとも、思っていた。記憶は後退しては戻るのを繰り返していた…気が触れているというより、認知症に近い症状だと思って見ていましたが…絢人の献身はただただ痛々しい結末に終わった あの子の背があんなに低いのは、おそらく幼���期からの理人さんとの性交渉の結果でしょう…  顔つきも年齢にそぐわず幼げでしょう…?  体が未成熟なうちからそういう経験を積みすぎると、あのような歪な外見にとどまってしまう症例は多いんです…    醜く愚かな子だけれど、僕は嫌ってなどいませんでしたよ… …困ったものです   絢人にあの名前で醜聞を撒かれては困る   というのは僕の言い分ではありませんが…本家全体の方針としては、つまりそういうことです …直人さんは長く画家をしてらっしゃいましたが、僕もよく作品を拝見していましたよ   あなたの描く絵を見て、深く納得したものです…  やはりあなたは生粋の名廊の人間だ …あなたのご両親について、ご長老がたはあなたの出自を大層嫌っていましたが、裏を返せば誰よりも濃く名廊の血を継いでいるということでもあるわけですし…   一昔前は家の中での婚姻も多かったのですから、繰り返しすぎなければそう忌み嫌うものでもないのですけれどね…      僕はあなたでいくつかの確信を得ました、あなたの絵で…   感謝していますよ、僕もずっと、気になっていましたから… 香澄さんの処遇については、僕から本家全体に口添えしておきましょう。…香澄さん」
ほとんど眠りかけて閉じていた瞼をあげて、香澄さんのほうを向いて呼びかける 「…はい。」 「今後も本家には関わらないことです…   勝手に調査したがる者を僕がおさえていますが、あなたが積極的にこちらに出向かれるとなると、それも難しい…。僕は大した権限を持ちませんからね…   お支えできることはしますが、その場合は僕個人にご相談ください…   僕の番号です。仕事中は切っていますが、直通で繋がります」 懐から名刺の裏に僕の携帯電話の番号を手書きした紙切れを、一枚とりだして、テーブルの上に置いた。 直人さんではなく香澄さんのほうへさし向けると、香澄さんは「ありがとうございます」と言って、裏の名刺にも目を通された 「…お医者さん…」 小さく呟かれた言葉に、応える 「ええ…医者です。大昔には名廊にも家の中で怠ける目的の手医者なんてものもいましたが、僕はそういう時代錯誤なものを好みませんし…   家に財産があろうと自分の生活費は自分で持ちますから …そうでない者も、いますけれど、僕はそうだ というだけです…」 家の財だけで遊び暮らせるとしても、普通に働いているほうが 僕の品格を落とさない と、僕は思う これにも反対者はいまだに多い 賎民にまじってせわしなく外を駆け回るなど許せないとね…   ここまでくると、失笑にしたってあまり笑えない…
くあ、と出てきたあくびを手のひらで覆い隠して言う 「…そろそろ お暇します。…横柄な態度が身にしみついたところがあり、ご不快な思いをされたかと存じますが…  ご容赦ください」 ソファから立ち上がった僕の顔を、直人さんが眉を下げて伺ってきた 「君がよければ僕のベッドを貸すけど。来客用の寝室がなくて。」 「……と、いうと?」 「様子を見ていて思い出したけど、誠人くん、幼い頃から過眠症の傾向があったから。少し眠っていったら?」 思い出した、か… 直人さんは随分変わられた…   ということは、やはり不治の病や逃れられない性質などというものでもない、と 「………いえ、帰りの車で充分です。お気遣いいただき、ありがとうございます。…では直人さん、香澄さんも、また機会があれば…お会いしましょう。御用の際には、…いつでもご連絡を」
二人して玄関先まで見送ってくださった
エントランスに出たあたりで僕のケータイが鳴った 発信者ーーー”冷泉慧清” 「ーーーはい」 『よぉ~誠人。声を聞くのも久方ぶりだが、元気かね?』 「元気ですよ…   久方ぶりのお電話の真意をお伺いしましょうか…」 『お前さんなら見当くらい付くだろう。まぁそれだと思ったもので間違いないさね』 「……正直、心当たりが多すぎて閉口しますが…」 『どれだっていいのさ、お家騒動も結構だが、女と子供は大事にしな。俺からはそれだけだ』 「女と子供……ですか」 『今度そっちに顔ォ出すぜ。隠居爺いの世間話に付き合うのがテメェみてぇな若者の義務ってもんだ』 「…幽霊相手ならなにを話しても支障ない、と…」 『そういうこった』
また連絡するとだけ告げられて電話は切れた 相変わらず食えないご老人だ   直人さんのご学友に冷泉家の人がいらっしゃいましたね…そういえば 何を言われることやら まあ どうとでもなるでしょう
香澄視点 続き
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umifani · 22 hours
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高級なリビングチェア シンプルなデザイン ラウンジチェア 高級カフェの椅子 喫茶店用チェア
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log2 · 2 years
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【有限会社花森家具】松本民芸家具のチェアなど15点が登録されました!
有限会社花森家具は、職人の手仕事による高級家具を製造・販売するメーカーです。安心してしっかりと長く使える家具、人に寄り添い安らぎと潤いをもたらしてくれる家具を手がけています。
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今回は、松本民芸家具のチェアなど15点をご登録いただきました。
Arch-LOG 花森家具  検索ページ
松本民芸家具は、家具を単なる工業製品ではなく生活工芸品と捉えその美しさを体現する民藝の精神に則って作られています。一つの製品は一人の職人が一貫した手仕事で担当。見えないところにまで技と心を込め、使うほどに美しくなる家具を作ります。
▼キャプテンチェア アームチェア 座り心地と安定性が抜群のウィンザーチェアです。
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▼バーナードリーチ サイドチェア 細めの脚と薄仕上げの座面で軽量に作られています。背中のアーチは一本の木を曲げています。
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▼ラッシチェア ソファ 北欧のイスをモチーフにデザインされたシンプルなイージーチェア。座面高さ34cmでロースタイルの生活にピッタリです。
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幾世代にもわたって使われる家具を追求する花森家具の製品を、ぜひご確認ください。
Arch-LOG 花森家具  検索ページ
※文章中の表現/画像は一部を有限会社花森家具のホームページより引用しています。
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lifestyle-en · 2 years
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FLANNEL SOFA 納品事例
正規店でも当店でも人気No.1!! フランネルソファの【PIVO】シリーズのご紹介です☺
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こちらA様邸は<3人掛け>のソファです、家族4人でも仲良く座れました♪
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素敵な暖炉にたくさんの観葉植物があり夢のような時間を須賀させて頂きました。
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あいにくの雨模様でしたが大きなガレージ付きマイホームのおかげで雨もしのぐことが出来、無事納品に至りホッと一安心♪
学校から帰ってきたお子様たちと、これから家族の憩いの場となるリビングの中心の新しいソファとの初対面を拝見できて私まで幸せな気持ちになりました。
40種類のカタチ、170種類の生地、多パターンの脚から選べるフランネルソファ。
リビングとダイニングの空間をひとつに繋げるソファとしてデザインされており、いろんな方向に腰掛けることのできるコミュニケーションの中心となるソファです。
みんなで座ってくつろげる十分な広さと、低めで視界が抜けることにより空間に圧迫感を与えません。
組み合わせによって、コーナーソファや一人掛けの贅沢ソファ・足を伸ばすことで出来るカウチソファにする…などなど、その家・使う人のライフスタイルに合うソファにカスタマイズできます。
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ソファと相性のいいクッションも展開しております。
45㎝×45㎝の通常サイズ:60㎝×60㎝のBIGサイズがあります。
高級ポリエステル綿とフェザー(羽毛)をたっぷり詰め込んだふっくらとした弾力なのでリラックスするときに是非おススメしたいです♪
――灯りと暮らしの専門店――
ライフスタイル提案型の雑貨店Enでは、日々の暮らしが少しでも楽しくなるような家具や照明などのご提案もさせていただきます。
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komogomo-blog · 2 years
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逃避旅行 Pt3
ドイツへ向けパリを出発、夜八時。 すでにピールを何杯か入れていたが約10キロの荷物のおかげで全然酔えなかった。パリを少し歩き回ってみたが、大きな町過ぎて何も掴めないままパリを出発した。今度こそと力を振り絞りドイツへ向かった。
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乗り換えでOffenburgで待機。一時間ほど。 夜の十一時に駅に到着し、そこから一時間の空き時間。駅を出てみると駅前の店に若者グルー���とおじさん二人組が飲んでいた。取り敢えず、おじさん二人組の横の机に座り、酒を飲む。ちょっと国境を超えるだけでこうも言語が変わるものかと毎回思う。
そこからフランクフルトで乗り継ぎし、Leipzigへと一直線。 朝九時、中央駅から街に出るとホームに帰ってきたと安心。ただただ嬉しかった。その頃は9€チケットいうものがあり、さっそく買う。チケット一枚で一ヶ月間乗り放題のチケット。とにかく体を休めたくて、日本の家に向かう。Eisenbahn通りに入り、家まで歩いているとエスターとばったり会う。いつも何かと気にかけてくれる優しい姉さんだ。開口一番、「ここで何してる」。これからボクシングに行くというエスター。「もう会わないと思ってたわ」と帰ってきたことを喜んでくれ、自分もうれしい。 日本の家の家に着くと、イクちゃんが待ってくれていた。会いたかったイクちゃんにようやく辿り着きようやく家に帰ってこれたこと��嬉しく、眠さも吹っ飛んだ。そこからジョージアの話だったり、どういった経緯でヨーロッパにやってきたのかを話した。十二時前、マユちゃんとエスターがボクシングから戻ってきた頃に力尽きるように眠りに落ちた。
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目を開けると懐かしの光景。壁際に設置されたソファから向かいの壁を眺める。遂に家に帰ってきたことを感じ、とても喜ばしかった。懐かしの通りに出るかと勢い良くドアを開け放ち、通りに椅子を出して座っていると、上の階からブルーノおじさんがゴミ出しに出てくる。「ブルーノ!」二、三回名前を呼ぶと振り向く。僕がだれなのかわからない時間3、4秒。おお!と驚きながら帰りを喜んでくれた。 「どれぐらいいるんだ」ブルーノは聞いてくる。自分は二週間と答えた。まだ持っていたチョコを一緒に吸い、また家でくつろいでいると今度はスリグさんがやってきた。「ヤモト!」こうスリグさんからは呼ばれている。「よく帰ってきた。よく帰ってきた。」と喜んでくれる。一服するぞと巻きだすジョイント。ほぼ毎日やってきてくれ、一緒に吸う。二年前とほぼ変わらぬいつもの安定感がまた安心させてくれるいいおじちゃんだ。 一緒にベンチに座って吸ってるとカタモトさんが自転車に乗ってやってくる。二年前より頬がやせていた。カッコいいおじさんになってきたなと思った。懐かしの面々に自分も初日から会うことができて、とても幸せだった。
そんな感じでドイツの滞在がスタートした。会いたかった人にも会え、喋れるドイツ語をペラペラと話す事の気持ち良さ。もう通り丸ごと家だった。どこに行けば何があるのか知っているし、頼れるおじさん達もそこかしこに点在している。
基本、引きこもりの自分は日本の家から出ない。逆に毎日人も来てくれるし出なくていいことが多い。 ご飯も昼ご飯を色んな人と食べた。ブルーノは毎日チェックに降りてきてくれる。大体十二時過ぎた頃に食材と共にやってきてくれる。ほぼ毎日昼ご飯はブルーノと一緒に食べた。四時頃になると今度はスリグさんがやってくる。一服するぞと遊びに来てくれる。スリグさんと一緒にいるのは心地良い。汚いEisenbahn通りで雄一安定しているおじさんだと思われる。その安定感が転がっているおじさん達とは違う安心感を与えてくれる。
Eisenbahnは高級化が進み、家賃は高騰。以前は3€で食べれた物も今では5€に値上がりしていた。おまけにロシアからのガスが止まり、生活はより一層苦しそうに思えた。
そんな中でもEisenbahnの色んな人達は子供な自分に世話を焼いてくれた。ブルーノとはよく一緒にご飯を作って食べ、ティノおじさんとは一緒にパスタを食べた。ちょうど前々日くらいにポルトで海鮮を食べられなかったことを悔しくぼやいていたのを覚えてくれており、簡単な海鮮クリームパスタを作ってくれた。スリグさんは毎日来ては一緒に時間を過ごしていく。二人で楽器を鳴らしたり、ただぼーっとしたり、たまには長話することもあった。 バフラムというイラン人のおじさんのところではイラン料理をお昼ご飯に。トマトソースに鶏のもも肉を煮込んだ物。イクちゃんのところではカツ定食と翌日の昼にカツ丼。焼肉パーティーもあった。Tobiさん家では担々麺を。スリグさんとはモスクのお祭りでもらってきてくれた夜ご飯を。ロレンス兄貴の家ではパスタを。エスターはケーキを焼いて持って来てくれ、悠さんと耕三さんには「滅茶苦茶」ご飯を食べに連れて行ってもらった。Halleではニノさんの所でラドさんが作ってくれたスパゲッティを食べ、翌日、一時期住まわせてもらっていたアンドレアスの所でオムレツを頂いたり、耕三さんとドイツ料理屋に行ったり。 ジョルトというお兄ちゃんの所でも朝ごはんを食べたり。シャバーンというエジプト人とも朝ごはんを食べた。元カノのオルガとも晩御飯を食べた。 とにかく色んな人が構ってくれた。こんな自分と時間を作って過ごしてくれた。別に面白い人間じゃないし、思い出話も面白おかしくできる自分でもない。だけれども皆自分を何処かに連れ出してくれた。
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LeipzigでもHalleでも湖に入った。トビリシは交通の便の悪さが原因で一度しか入っていない。ドイツの自然は自転車で行って帰って出来る所にあり、通算一ヶ月の中、三度泳ぎに行った。 Halleで耕三さんと行く湖はいつも気持ちの良い所。二年前に連れて行ってもらった巨大な池もとても綺麗だったのをよく覚えている。その後、ジョージアで出会った音楽家ヒロキさん・サラさん達のコンサート、自分が住んでいたスクワッドハウスへ聞きに行った。この時、23時から始まるコンサートで酒を飲みながら待っている間、ジョージアの事、ポルトガルでの非日常一週間、ポルトガルに連れて行ってくれたカナさんの事を頭の中を流れるように思い出した。ジョージアでの事は何にも決まっていなかったし、そもそもまだまだ帰りたくないという気持ちが強かった。この心地良いドイツが楽しくまた新鮮だった。ポルトガルでの一週間は正に夢のような思い出として残っている。実際、ポルトガルにいたという実感さえなく、言語もポルトガル語よりも英語やドイツ語と日本語がほとんどだった。お祭りの為に集った家族たちと共同生活し、終了とともに解散。途端に一人ぼっちになったのは衝撃過ぎて心が崩れ落ちそうだった。それでもたまに引き戻されるあのお祭り。カナさんは元気にしているだろうか。現地で別れるとき、運命共同体をするのが煩わしくて解散したのだが、一緒に居れば良かったかと後悔したりもした。
ある夜のバカ騒ぎも楽しかった。 その日は夕方から悠さん、耕三さん、晃さんと集って日本の家前で飲んでいた。直前まで元カノと二年ぶりに再会していた。二年ぶりに見た彼女はとても綺麗だった。初めて出会った時が向こうが20、自分が17の時だった。二度目に顔を合わせたのが今から二年前、彼女が22、自分が19。そして今回、24と21。ずっとずっと綺麗になった彼女を見つけ、ひさしぶりにドキドキした。その日は一時間ぐらい話して、自分は飲み会に向かった。 夜十時頃まで飲み進め、途中で夜ご飯も食べに行き、悠さん晃さんが帰っていく。耕三さんと二人で彼らを見送った直後ブルーノさんが降りてやってくる。途端にドリームチーム結成で夜はどんどん更けていく。十二時頃ショットを三人で飲み干し、一晩中飲み歩いた。途中、耕三さんは眠ると言い出し日本の家に引きこもり眠る。その間、ブルーノと自分は霧が立ちこむ通りを闊歩し、暗闇の公園を突っ切り、街中を歩き回りホームパーティーを見つける度に乗り込めるかどうか話し合った。最後はいつも乗り込まない選択で終わった。
ジョルトとは二度クラブへ一緒に行った。金曜の夜。12時から中に入り、家に帰ってくるのは6:30とか。その後、朝ご飯を食べゆっくりしてから犬一匹連れてサイクリングへ。途中ラシャも合流してリンデナウ地区を流れる運河沿いに森の方へ。この人たちはドイツの兄貴分の人たちである。毎度遊んでくれる。
ドイツでもラーメンスープを作った。結果は最悪に終わったのだが。前日仕込みの段階では最高にうまいスープができたのだが、そこで冷やさなかったのが駄目だった。一晩経つと既に匂いが変なのだ。おまけにうまみは酸性に代わってきており、もう逃げ出したかった。 この時ばかりはもう二度とラーメンなんて作らんと決め込んだし、もう何もかも嫌だった。
少しずつ気分が落ち込み始めてきた頃、飛行機のチケットも延長し当初の滞在予定はとっくに過ぎ去った。元カノともう一度会いたかったのも一つの大きな理由だった。半分以上の割合で。その他はジョージアに戻る理由をずっと探していた。
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t82475 · 4 years
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続・くのいちイリュージョン
1. 女性だけのイリュージョンチーム「コットンケーキ」に所属していたあたし、御崎芽瑠(みさきめる)がフリーのマジシャン、谷孝輔(たにこうすけ)と出会ったのはほんの4か月前のことだった。 恋人同士になり、専属のパートナーになって欲しいと頼まれた。 悩んだ末、あたしはコットンケーキを辞め、彼のアシスタントになって生きることに決めた。 2. 以前は撮影スタジオだったというフロアの半分に客席のソファとテーブルが並んでいる。 残り半分があたし達のステージだ。 ちらりと見たところ、客席は結婚式の披露宴みたいに着飾った人ばかりだった。 ここってものすごく高級なクラブなの? 「会員制の秘密クラブさ。会費は安くないらしいよ」 「すごいね」 「みんな俺たちを見に来てくれてるんだ。ドキドキするステージにしよう」 「うん!」 〇オープニング ステージが暗くなって、中央にスポットライトが一本当たった。 ゴーン。 鐘の音のSE(効果音)。 あたし一人で進み出た。 衣装は真っ赤な忍者の上衣、ショートパンツに網タイツとブーツ。覆面で顔を隠している。 身を屈めて爪先で小走り。ときおり物陰に隠れるようにして周囲を伺う。 あたしは敵地に侵入したくのいちだ。 絶対に見つからないよう、気配を殺して・・。 〇 スネアトラップの罠 がたんっ!! 大きな音がして、くのいちが消えた。 ピーッ、ピーッ! 呼び子が響き、ステージ全体が明るくなる。 くのいちは頭上高くに吊られていた。 片方の足を縄に絡められて、逆さになって激しくもがいている。 これは森で動物などを捕獲するために使うスネア・トラップという罠だ。 目立たないように張ったワイヤを引っ掛けると、縄の輪が足に掛かり、立ち木をしならせたバネの力で吊り上げられる。 「獲物がかかったか!」 黒装束の忍者が登場した。コースケだ。 長いマントを翻し、背中に太刀を背負っている。 黒忍者は逆さ吊りになったくのいちの手首を捕らえると、後ろ手に組ませて縄で縛り上げた。 さらに覆面を剥ぎ取って、その口に懐から出した白布を詰める。 「舌を噛んで自害されては困るからな」 にやりと笑うと、前髪を掴んで前後左右に振り回した。 ・・あたしは悔し気な表情を浮かべながら振り子のように揺れた。 揺れ幅が小さくなると、再び髪を掴んで揺らされた。 全体重を片足で受けているから長く続けると足首を痛めるけれど、そのために足首部分を分厚くしたブーツを履いているから耐えられる。 〇 逆さ吊りオリガミ 黒忍者は小さな箱を載せた台を押してくると、くのいちが揺れる真下に据えた。 一辺がわずか30センチほどのサイコロ形の箱である。 その箱の蓋を開け、くのいちを吊るす縄を緩めてゆっくり降下させた。 くのいちの頭が箱に入り、続けて肩、胸、腰と沈んでゆく。 こんな小さな箱にどうやって人間の身体が入るのか不思議だった。 くのいちの膝まで箱に入ったところで、黒忍者は足首に絡んだ縄を解き、さらに左右のブーツを脱がせた。 網タイツだけになった脚を上から押し込んで箱の蓋を閉じる。 黒忍者は背中の太刀を抜くと、箱にぶすりと突き刺した。 すぐに抜いて別の角度で再び突き刺す。 これを何度も繰り返した後、黒忍者は箱の面を内側に折り込んで半分の大きさにした。 さらに折って小さくする。 箱をゲンコツほどの大きさまで折り畳むと、黒忍者はその台まで二つに畳んで運び去ってしまった。 〇 皮張り椅子からの出現 ステージが暗くなって、反対側に置いた皮張りの椅子にスポットライトが当たる。 黒忍者はその椅子に艶のある大きな黒布をふわりと被せた。 すぐに布を外すと、そこにくのいちが腰掛けていた。 縄で後ろ手に縛られ、白布の猿轡をされた姿は変わりがない。 黒忍者はその口から覗く布の端を摘むとずるずる引きだした。 咳き込むくのいち。 その首を両手で締め上げる。 くのいちは首を振りながら苦しみ、やがて動かなくなった。 ・・コースケの首絞めは容赦なしだ。 あたしは息を詰まらせ、ちょっぴり感じながら気絶する演技をする。 黒忍者はくのいちの頬を叩いて意識を失ったことを確認する。 大きなビニール袋を持ってくると、くのいちの上から被せ、袋の口を縛って床に転がした。 〇 透明袋のスパイク刺し 椅子が下げられて、キャスター付の薄い金属台が登場した。 金属台の広さは畳一枚分ほど。 黒忍者はくのいちを入れたビニール袋を金属台に乗せた。 袋の中ではくのいちが目を覚ましたようだ。 ・・あたしは身を捩ってもがくふりをする。 この後、後ろ手に縛られた縄を抜けてビニール袋から脱出するけれど、そのタイミングが難しいんだ。 コースケがアドリブで芸をすることもあるし。 痛! こらコースケっ、女の子を足で蹴るなぁ。 喜んじゃうじゃないか~!! 黒忍者がくのいちを袋の上から蹴って、くのいちが苦しむ。 その間に頭上から大きな器具が降りてきて、ビニール袋のすぐ上で停止した。 鉄板は金属台とほぼ同じ大きさで、100本以上の金属針(スパイク)が下向きに生えていた。 生け花に使う剣山(けんざん)を逆さにしたような形状である。 四隅に布ロープを掛けて吊るしているようだ。 もしロープが切れたら鉄板は落下して、鋭く尖ったスパイクがくのいちを貫くことになるだろう。 黒忍者は火のついた松明(たいまつ)を持つと、4本の布ロープに順に火を移した。 燃え上がる布ロープ。 透明な袋の中ではくのいちが必死に縄を解こうとしている。 4本あるロープの1本が燃え尽きて切れた。 鉄板は大きく揺れたが、まだ宙に浮いている。 反対側の1本も切れた。 鉄板がぐらりと傾き、それにつられて残りの2本が同時に切断された。 がちゃん!! 大きな音がして鉄板が落下した。 ちぎれたビニールの破片が舞い散る。 観客の誰もが息をのんでステージを見つめた。 金属台にスパイクが突き刺さっているが、そこに人影はなかった。 最後の瞬間まで、袋の中には確かにくのいちが閉じ込められていた。 いったいどうなっているのだろう? ステージが明るくなった。 黒忍者がマントを広げると、その陰からくのいちが現れた。 拍手の中、並んでお辞儀をする。 ・・やったね! コースケの目を見て微笑んだ。 コースケも笑ってあたしの頭を叩いてくれた。 3. 「じゃあ、お仕事うまくいったんですね!?」ノコが聞いた。 「まあね」 「いいなぁ、私も見たかったです」 「ダメよ。会員でないと入れないお店だから」 ノコはコットンケーキの後輩で、あたしとちょっと特別な関係にある女の子だ。 「・・だいたい片付きましたね」 「ありがとう、助かったわ」 「メルさんのことなら何でもお手伝いしますよ~♥」 ここはコースケのマンション。 彼の専属になって、あたしは前のアパートを引き払いコースケと一緒に住むことにした。 一緒と言っても、籍は入れない。ただの同棲だけどね。 ノコは引っ越し荷物の整理に手伝いに来てくれたのだった。 「お茶、入れるわ」 「お茶���りも・・」「何?」 「コースケさんはまだ帰らないんですよね?」 「うん。彼、ショーの打ち合わせで、戻るのは夜になるって」 「なら、触れ合いたいです、メルさんと」 「もう」 「えへへ」「うふふ」 あたし達はくすくす笑いながら着ているものを全部脱いで裸になった。 忍者の長いマントを互いの首に巻く。 マントは忍者装束が趣味のあたしがノコと一緒に過ごすときに必ず着けるアイテムだった。 「拘束してもらえますか?」 「ノコってマゾなの?」「はい、ドMです♥」 相変わらず素直ではっきり言う子。だから好きなんだけど。 ノコはマントの下で後ろに手を合わせ、あたしはその手首に手錠を掛けてあげた。 「ああ、これで私に自由はありませんよね」 後ろ手錠の具合を確かめるノコ。 その顎に指をかけて持ち上げた。そっと唇を合わせる。 キスの後、後ろから回した手で左右の胸を揉みしだく。 この子はあたしより小柄なくせに、おっぱいが大きくてふわふわ柔らかいんだ。 股間に手をやると、そこはもうしっとり濡れていた。 「はぁ・・ん」 カナリアみたいに可愛い声。 こんな声で鳴かれたら、あたしも濡れてくるじゃないの。 ソファに揃って倒れ込んだ。 乳首を甘噛みすると、ノコは全身をびくんと震わせた。 「・・俺がいないときを狙って、何やってるの」 振り向くと、ドアが開いてコースケが立っていた。 4. 「コースケ! 帰るのは夜だって・・」 「のはずだったけど、早く済んだから帰ってきたの」 コースケは頭を掻きながら呆れたように言う。 「ま、こんなことになっているだろとは予想してたけどね」 「すみませーんっ、メルさんを食べようとしちゃって」ノコが謝った。 「俺は気にしないよ。それに食べようとしてたのはメルの方じゃないの?」 「・・」 あたしはノコの上から離れた。 赤くなっているのが自分で分かる。 二人の関係はコースケ公認だけど、彼の見ている前でこの子とエッチするほどあたしの心臓は強くない。 「わははは。メル、それじゃ欲求不満だろう?」 「ばか」 「楽しませてあげるよ。ノコちゃんもね」 「うわ~い」 そんな簡単に喜んじゃダメよ、ノコ。 コイツがこんな風に言うときは、だいたいロクでもない目に会うんだから。 コースケは皮張りの椅子を持ってきた。 それ、この間のステージで使った椅子。 「はい、メル。ここに座って、前に両手出して」 「この格好で?」「もちろん」 コースケはあたしを椅子に座らせると、前に出した両手首を縄で縛った。 さらに肘を折らせて手首の縄を首に巻いて括り付けた。 あたしは手を前で合わせたまま、下げられなくなった。 椅子ごと大きな黒布を被せられた。 「動いたら後でお仕置き。いいな?」「う、うん」
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「さあノコちゃん、メルを好きにしていいよ」 「うわ~いっ」 後ろ手錠のノコが這って黒布の下に入り込んできた。
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自分は膝立ちになると、あたしのマントの中に頭を挿し入れた。 ちゅう。 「きゃ」 おへその下を吸われた。そ、そんなに強く吸わなくても。 ノコの口は下へ下へと移動する。 あ、それ下の毛! 汚いよぉ。 「そろそろ諦めて足を開いてくださぁい、センパイ♥」 だ、だ、だっ、だめぇ。 両足の間にノコの肩が割り込んだ。 「はんっ!」 クリを吸われた。 「あ・・、あん、はぁん」 舌の先で転がされる。 「あ、あ、あああ」 我慢する気はすっかり失せた。 あたしは身を反り返らせて喘ぎ続ける。 「れろれろ。メルさんのおつゆ♥ 美味しいです」 「ば、ばか。そんなとこ、」 「噛みますよぉ。イっちゃってください」 「あ、やっ」 きゅん!! 衝撃が駆け抜けた。一瞬、意識が遠のく。 ノコの顔が上がってきて耳元で囁かれた。 「抱いてあげたいんですけど、手錠してるんでダメなんです。・・代わりにキスしますね♥」 「あぁっ!」「んんっ!」 ノコとあたし、両手を拘束された女同士がディープキスをする。 はあ、はあ。 肩で息をして、もう一度吸い合った。 ぱちぱちぱち。 「いいねぇ。堪能させてもらったよ」 のんびり拍手してからコースケが言った。 「はあ、はあ。コースケぇ。もう許して」 「そうだな。じゃ、そのままバニッシュしてよ」 「そ、そんな、無理」 「無理じゃないさ。それくらいできないとこの先困るぞ」 「きっとできます! メルさんなら」 もう、ノコまで無責任に。 「じゃ、いくぜ。・・ワン、ツウ、スリー!」 コースケは椅子全体を覆う黒布を両手で持って外した。 そこには後ろ手錠のノコだけが膝立ちで屈んでいた。 あたしが座っていた椅子の座面には、半透明の液体が広���って溜まっていた。 5. 翌日。 喫茶店に現れたサオリさんは以前より綺麗になっていた。 「待たせたかしら」「いえ、あたしも来たばかり」 「メルちゃん、何だか綺麗になってない?」 「あたしこそ、サオリさんが綺麗になったって思ったんですけど」 「え? あはは」「うふふ」 コットンケーキのリーダー、サオリさんと会うのはチームを辞めて以来だった。 あたしが円満に退所できたのはサオリさんが応援すると言ってくれたからで、あたしはとても感謝している。 「どうしてるの?」 「クラブで彼とイリュージョンのお仕事をやってます」 「そっか。頑張ってるのね」 「まだ続けてできるかどうかは分からないんですけど」 「コットンケーキだって最初はそうだったわ。・・それで、どこのお店?」 「それはまだちょっと、」 あたしは言葉をにごす。 秘密クラブで拷問イリュージョンやってます、なんてこの人には言えないよ。 サオリさんの目がきらりと光った。 「そう・・、詳しくは聞かないけど、いろいろなお店があるわ。危ない仕事はしないでね」 「無茶はしません。彼を信じて頑張ります」 「分かった」 サオリさんは笑って手を握ってくれた。 「じゃあ何も言わない! 自分の信じた道を進むのよ、メルちゃん」 「はい!」 6. 「くのいちの拷問とは考えたもんでんなぁ。客の評判は上々でしたで」 クラブのマネージャーが言った。 ガッチーと名乗る不思議な関西弁を喋るおじさんだった。 あたしとコースケは先週のステージの評価を聞きに来たのだった。 「来月も頼みますわ。それも好評やったら出演枠を毎週とる、ちゅうことで」 やった! あたしはコースケとガッツポーズをする。 「・・まぁ、できたら、できたらでよろしおまっけど、次は、もちょっと過激にしてくれたら、ええかもしれませんな」 「過激に、ですか?」コースケが聞く。 「過激に、ですわ。そちらのメルさんでしたか、可愛い顔やさかいグロな演出やったら喜ばれますわ。エロでもよろしいけど」 「分かりました、やります。まかせてください」 彼が胸を叩いた。 グロかエロって、あたしがやるんだよね。 コースケ、大丈夫? 安請け合いしちゃっても。 7. 東京から車で2時間の高原。 そこは小さな湖に面したキャンプ場だった。 次の出演が決まったお祝いに、あたしとコースケは二人でゆっくり過ごそうとやってきた。 キャンプなんて面倒くさいし汚れるからホテルがいいと言ったあたしに、大人気の絶景キャンプ場だから行こうと誘ったのはコースケだ。 「・・誰もいないじゃないの」 「あれ? おっかしいなぁ~。平日は空いてるのかなぁ~?」 「コースケ、知ってたんでしょ」 「わはははっ、まあいいじゃねーか」 「こんな寂しいところで二人だけなんて、どういうつもりよ!」 「誰もいなけりゃ、エッチし放題だぜ」 「え」 「ほら、今夜は晴れてるし、外でするってのはどう?」 これで喜ぶんだから、我ながら単純な女だと思う。 コースケはキャンプの料理も上手だった。 フライパンで焼いたピザとペンネ、チキンとキノコのホイル焼きを食べるとお腹いっぱいになった。 「マシュマロ、焼けたぜ」 「わ、食べるぅ」 パチパチ燃える火を前に並んで座っていると自然といい雰囲気になる。 あたしが身を寄せると彼が肩を抱いてくれたりして。 「キャンプも悪くないだろ?」 「うん、バカにしてごめんね。・・今度はノコも連れて来たいな」 「ああ、あの子なら喜ぶだろうね」 「見てっ。星がすごーい!」 「おお、まさに満天の星だ」 「こんなにたくさんの星見るの、初めてだよー」 見上げていると、頬に彼の手が添えられた。 顔を向けてキス。 「今日は優しいのね、コースケ」 「俺はいつでも優しいぜ?」「うそ」 「どう? 今なら何されてもいいって気分にならない?」 「そうね。・・いいよ、今なら」 「よっしゃ。じゃ、早速」 へ? コースケは立ち上がると暗がりの中を歩いていった。 もう、せっかくロマンチックな雰囲気だったのに。 バタン! あれは車のハッチバックの音。 「お待たせ~」 「何、そのキャリーケース」「見てな」 コースケはポケットから鍵を出すとキャリーケースの蓋を開けた。 大きな塊がごろんと転がり出た。 サージカルテープでぐるぐる巻きにされた布の袋だった。 テープを剥がして袋の口を開くと、中に膝を抱えて小さくなった女の子が入っていた。 「ノコ!!」 「えへへ。こんばんわぁ、メルさん」 「あんた、いつから」「えっと、朝からですぅ」 朝から? じゃ、あたし達がドライブして、ランチ食べて、コスモス園行って、それからえ~っと、ともかくいろいろしてる間、ずっと!? 「はいっ、頑張りましたぁ」 「水分補給も兼ねてカロリーゼリー持たせてたから問題ないぜ。トイレは無理だけど」 「私、漏らしたりしてませんよぉ。エライでしょ? ・・そろそろ限界ですけど」 「その袋は防水だよ。中でやっちゃって構わないって言っただろう?」 「女の子なのに、そんなことできませんっ。それに私、メルさんのためならボーコー炎になってもいいんです」 「そーいう問題じゃないでしょ!」 ともかくノコを袋から出して、トイレに行かせる。 ノコは裸で汗まみれだった。 「着るものあるの? それじゃ風邪引くわ」 「大丈夫です。メルさんに暖めてもらいますから」 「え? きゃっ」 やおらノコはあたしの服を脱がせ始めた。 「コースケ! 笑って見てないで何とかしてっ」 「俺、ノコちゃんの味方」「え~っ」 コースケは全裸になったあたしとノコを向かい合って密着させた。 反物のように巻いた布を出してくると、あたし達の首から下に巻き始めた。 とても薄くてゴムのように伸びる布だった。 きゅ、きゅ、きゅ。 弾力のある布が肌を絞め付ける。 き、気持ちいいじゃない。 「マミープレイに使う布だよ。メルはぎゅっと包まれるのが好きだろ? 性的な意味で」 「性的な意味は余計っ。・・否定、しないけど」 肩と肘、手首まで布に包まれる。 これ自力じゃ絶対に抜けられない。 「おっと、これを忘れてた」 あたしとノコの股間にU字形の器具が挿し込まれた。 「ちょっと重いから落ちないようにしっかり締めててね、ノコちゃん」 「はい!」 ノコ、何でそんな殊勝に応じるの。 やがて布はあたし達の膝から足首まで巻かれ、さらに二重、三重に巻かれた。 「口開けて、メル」「んっ」 コースケはあたしの口にハンドタオルを押し込んで上からガムテを貼った。 猿轡、あたしだけ!? 「よっしゃ、頭も巻くぞ」 あたし達は首から上も布を巻かれて一つの塊になった。 そのまま地面に転がされる。 「いいねぇ、女体ミイラ」 布の巻き具合とあたし達の呼吸を確認すると、コースケはおごそかに宣言する。 「二人揃ってイクまで放置。時間無制限」 えええ~っ!? 「俺は君らを肴にホットウイスキーでも飲んでるわ」 8. まったく動けなかった。 動けないけれど、女の子二人で肌を合わせて強く巻かれているのは気持ちよかった。 ちょっと息が苦しいのはノコの巨乳があたしの胸を圧迫するせい。 まあ仕方ないわね。 「メルさぁん♥」 耳元でノコが甘い声を出した。 あたし達は頬と頬を密着させた状態で固定されているから、この子の声は耳元で聞こえるんだ。 ぺろ。ぞくぞくぅ! 「んんっ、んんん~っ!!(ひぃっ、耳を舐めるな~!!)」 思わずのけ反ると、股間のU字器具が膣壁を刺激した。 「ひゃん!」「ん~っ!(ひゃんっ!)」。 あたしとノコは同時に悲鳴を上げる。 これ、うっかり力を入れるとヤバい・・。 ぶーんっ。 そのU字器具が振動を開始した。 「あぁ~んっ!!」「んんっ~ん!!!」 双頭バイブっ!? コースケめ、仕込んだなぁ!!! ノコがびくびく震え、同期してあたしもびくびく震えた。 膣(なか)で暴れるバイブは的確にGスポットを突いた。 耐えられずに下半身に力を入れると、それは刺激となって相手のGスポットに伝わる。 そしてさらに大きな刺激が返ってきて、こちらのGスポットをいっそう強く責めるのだった。 「はん! はん! はぁんっ!!!」「ん! ん! んん~んっ!!!」 コースケは双頭バイブのリモコンを気ままに操作した。 あたし達は震え、もがき、快感を増幅し合った。 イキそうになる前にバイブは停止して、その度に二人とも半狂乱になった。 疲れ果てたけれど、眠ることも休むこともできなかった。 あたしもノコも被虐の嵐の中をどこまでも堕ちた。 明け方近くになってコースケはようやくイクことを許してくれた。 ノコが声にならない声を上げて動かなくなり、それを見てあたしも安心して絶頂を迎え、そして意識を失った。 とても幸福だった。 朝ご飯の後、コースケが撮影した動画を見せてもらった。 スマホの画面の中で、あたし達を包んだミイラがまるで生き物のようにびくびく跳ねまわっていた。 9. クラブからさらに過激なネタと求められて、コースケは新しいイリュージョンを準備した。 機材の費用はクラブが出してくれるという。 続けて出演契約できたら、という条件だけどね。 「どう? いける?」「大丈夫、いけるよ」 あたしは新調したガラス箱に入って具合を確かめている。 クリスタルボックスに似ているけれど、幅と高さの内寸が50センチずつしかないから中で身を起こすことはできない。 高価な耐熱強化ガラスで作った箱だった。 絶対に成功させないといけないよね。 「じゃ、隠れて」「分かった」 あたしは底の扉を開けて、その下に滑り込んだ。 燃え盛る火の下でも安全に過ごせる隠れ場所。 「蓋、浮いてるぞ」「え、閉まってない?」 「太っただろ、メル」「失礼ねーっ。バストが大きくなったの!」 「そりゃあり得ねー」「言ったわねー。なら今夜確かめる?」「よし、徹底的に確かめてやる」 軽口を叩き合いながら、あたしは自分の位置を調整する。 「ごめん、一度押さえてくれる」「おっしゃ」 ぎゅ。かちゃり。 仰向けになったあたしを押さる天板が下がって、あたしはネタ場の空間にぴたりとはまり込んだ。 「どう?」「気持ちいい」 「何だよそれ。・・浸ってないで、とっとと出てこい」 「もうちょっと」 「あのねぇ~」 それからあたし達は次のステージの構成を決めて、ネタの練習を続けた。 10. 次のショーの本番当日。 「ノコ、何であんたがここにいるのよ」 「えへへ。私も手伝いに来ました」 控室にはノコがいた。 コースケと同じ黒い忍者の装束で顔に覆面をしていた。 「あんたもコットンケーキ辞めさせられちゃうよ」 「大丈夫です。ちゃんと顔隠してやりますから」 「それでバレないほど甘くないと思うけど」 「やらせてやれよ。ノコちゃんも覚悟して来てるんだ」 コースケが言うなら、とあたしはノコのアシスタントを認めた。 アシスタントと言ってもノコは黒子で機材の出し入れなどを手伝う役だ。 「・・御崎メルさん、来客です。フロアへどうぞ」「あ、はい!」 来客? 客席に行くと、そこにはセクシーなイブニングドレスの女性が待っていた。 「サオリさん!! どうしてここに!?」 「コットンケーキのリーダーが秘密クラブのメンバーだったらいけない?」 「いけなくはないけど・・、驚きました」 「ショーのプログラムに『Kosuke & Meru』ってあって、もしやと思って来たらやっぱり貴女だったのね」 「知られちゃったんですね。恥ずかしいです」 「いいのわ。わたし、今日はすごく楽しみにしてるんだから」「?」 サオリさんは微笑んだ。今まで見たことのないくらい色っぽい微笑み方だった。 「ここでやるってことは、メルちゃん、きっと可哀想な目に会うんでしょ?」 「え」 「正直に言うとね、女の子が酷いことされるのが大好きなの。拷問されたり、無理矢理犯されたり」 「・・サオリさん、やっぱりSだったんですか」 コットンケーキ時代、サオリさんの指導がとても厳しかったのを思い出した。 あたし達後輩はいつも泣かされて、このドS!とか思ったものだった。 「うふふ。逆かもしれないわよ」 サオリさんは笑っている。 「ま、まさか、ドM!?」 「わたしのことはいいじゃない。ステージ、怪我しないよう頑張ってね!」 「・・はいっ」 控室に戻り、ノコに「サオリさんが来てる」と伝えた。 「ぎょぼ!」 何、その驚き方は。 11. 〇 緊縛木箱と性感責め スポットライトの中に黒忍者のコースケと黒子のノコが登場した。 テーブルを出して、その上に空の木箱を置いた。 すぐに木箱を持ち上げると、テーブルの上にはくのいちのあたしがうつ伏せになって縄で全身を縛られていた。 衣装は先月のステージと同じ赤い上衣にショートパンツと網タイツだけど、ブーツと覆面は着けていない。 その代わり最初から口に縄を噛ませて猿轡をされている。 緊縛はタネも仕掛けもない本物だった。 背中に捩じり上げてほぼ直角に交差させた両手首と二の腕、胸の上下を絞め上げる高手小手縛り。 両足は膝と足首を縛り、後ろに強く引かれて背中の縄に連結されている。 決して楽じゃないホッグタイの逆海老縛り。 ショーが始まる前からこの姿勢で木箱に仕込まれていたのである。 黒忍者はくのいちの足首の縄を首の方向へ強く引いた。 テーブルについた顎に体重がかかる。 さらにその状態で太ももの間に手が侵入し、突き当りの部分が激しく揉み込まれた�� ・・くっ! あたしは両目をぎゅっと閉じて恥辱に耐える。 きついけど、これはまだまだ序盤なんだ。 今度のショーではお客様の前で性的な責めを受ける。 コースケは本気で責め、あたしは本気で苦しみ本気で感じる。 二人で決めたシナリオだった。 やがて膝と足首の縄が解かれ、右足と左足を黒忍者と黒子が掴んで開かせた。 逆海老の後は180度に近い開脚。 黒忍者は苦無(くない:忍者が使う短刀)を持ち、先端をくのいちの股間に突き立てる。 ショートパンツが破れない程度に突くけれど、それでも確実に女の敏感な部分が責められている。 「ん、あああああ~っ!!」 ・・耐えられずに声が出た。 あたしは喘ぎながら身を震わせる。 完全に被虐モードだった。じっと忍ぶ力なんて残っていない。 スポットライトに照らされて光る粘液がテーブルを濡らす様子が客席からも見えたはずだ。 〇 鞭打ちレビテーション ぐったり動かなくなったくのいちに大きな布が被せられた。 テーブルの後ろに黒忍者が立ち、両手で持ち上げる仕草をすると、布に覆われたくのいちがゆっくり上昇した。 2メートルほどに高さに浮かんだところで、黒忍者は一本鞭を手にする。 振りかぶって布の上からくのいちを打つ。 ぴしり。「あっ!」 鞭の音と呻き声が聞こえた。 ぴしり。「んっ!」 ぴしり。「んんっ!」 ぴしり。「んあっ!」 ぴしり。「ああーっ!!」 5度目の鞭打ちで布がずれ落ちた。 ・・この鞭打ちにも一切タネがない。 布が被せられているとはいえ、あたしはコースケの鞭を本当に受けている。 絶対に逃げられない拷問。 「女の子が酷いことされるのが大好きなの。拷問されたり、無理矢理犯されたり・・」 さっき聞いたサオリさんの言葉が蘇った。 あたし、本当に酷いことされてる! 鞭で布が落ちると、そこには高手小手で縛られたくのいちが浮かんでいた。 黒忍者は両手を振ってテーブルの上にくのいちを降下させた。 もう一度布を被せ直して、再び浮上させる。 鞭打ちが再開された。 ぴしり。「あぁっ!」 ぴしり。「んん~っ!!」 黒忍者は鞭を置くと、宙に浮かぶ布の端を掴んで引き下ろした。 ばさっ。 そこにあったはずの女体は消えてなくなっていた。 〇 ミイラ短剣刺し ステージ全体が明るくなった。 隅の方に敷かれていた黒布がむくむく膨み、中からくのいちが立ち上がった。 猿轡は外れていたけれど、高手小手の緊縛はそのままだった。 その場から逃げようとするが、黒忍者が両手を合わせて呪文を唱えると、何かに固められたかのように動けなくなって黒子に捕らえられた。 黒忍者は反物のように巻いた布を持ってきた。 これはあのキャンプで使った薄くて弾力のある布だった。 その布をくのいちの頭から足先までぐるぐる巻きつけた。 薄手の布の下にはくのいちの顔が透けて見えていたけれど、何重も巻くうちに見なくなって、全体が白っぽいミイラになった。 くのいちのミイラは床に転がされた。 黒忍者は短剣を持って掲げる。刃渡り10センチほどの銀色の短剣だった。 やおらその短剣をミイラのお腹に突き刺した。 「きゃあっ!!」激しい悲鳴。 さらに3本の短剣を出して、胸の上下と顔面に刺す。 ミイラは1本1本刺される度に悲鳴を上げてびくびく跳ね、短剣を突き立てた箇所には真っ赤な染みが広がった。 〇 ガラスの棺 透明な箱が登場する。 細長い棺(ひつぎ)のような形状をしていて、人が入るとしたら横たわるしかない大きさだった。 黒忍者はミイラから短剣を抜き、肩に担いで棺の中に入れた。 黒子が蓋をして南京錠の鍵を掛ける。 黒忍者は松明(たいまつ)に火を点けた。 照明が消えて真っ暗になった。 ステージの明かりは黒忍者が持つ松明だけである。 黒忍者は棺のまわりを歩きながら、松明で棺の中を照らした。 すると、何と、棺のミイラが燃え始めた! その火は次第に大きくなって、棺の中いっぱいに燃え広がった。 わっ。観客がざわつく。 一瞬だけ、棺の中にくのいちが見えたのだ。 しかしすぐにその姿は炎の中に消えてなくなってしまった。 ・・ヤバい!! あたしは棺の底に背中をつけて隠し扉を開けようとしていた。 ガチで両手を縛られているから動かせるのは指先だけだった。 その指に、あるはずの扉のフックが掛からない。 見つからないっ、見つからないよ!! 網タイツの足がちりちり焼け始めた。 火が小さくなって静かに消えた。 やがて照明が点いてステージが明るくなる。 黒忍者と黒子が棺の前後を持ち、斜めに傾けて中身を客席に向けた。 皆が目をこらした。 棺の中は黒い粉が溜まっているだけで、その他は何も入っていなかった。 くのいちの女の子は灰になってしまったのだろうか? 黒忍者が客席の後方を指差す。 黒子がほっとしたように両手を叩いた。 そこにはくのいちが立っていた。 忍者の衣装は灰で黒くなり、網タイツは焼けて穴が開きその下は赤くただれていた。 ・・あたしはステージに向かって走っていった。 ふらふらしながら、どうにか倒れずにすんだ。 拍手の中、揃って頭を下げる。 うずうずした。 お客さんの前だけど、もう我慢できない! あたしはその場でコースケに抱きついた。 黒忍者とくのいちはそのまま長いキスをした。 12. 喫茶店。 あたしはサオリさんと向かい合って座っていた。 「怪我したって本当?」 「火傷しただけです。脚に痕が残りますけど」 「可哀想に・・」 「大丈夫です。イリュージョンするのに問題ありません」 生足を出すのはちょっと難しいけどね。 「クラブの仕事はどうするの?」 「続けます。ただ、出演は減らそうって彼と相談してます」 「それがいいかもね。クラブを辞めないのなら、わたしはメルちゃんが苦しむシーンをこれからも楽しめるし」 「サオリさん、それ酷いですよ」 「あはは。じゃあ、今度はわたしが苦しんでみましょうか」 「見たい! でもいいんですか? コットンケーキのリーダーがそんなことして」 「コットンケーキでやればいいんでしょ? 拷問イリュージョン」 「まさか本気で言ってませんよね?」 「半分本気よ。ノコちゃんもやりたいって言ってるしね。貴女達のネタ見て興奮してるみたい」 「ぎょぼ!! 知ってたんですか、あの子のこと」 「リーダーを舐めちゃダメよ。そのときはメルちゃんもゲストで参加してくれる?」 「はい!」 13. 椅子に座ったあたしにコースケが黒い布を被せた。 「さあ、皆さま、ここに黒布に包まれたくのいちが一人!」 あたしは布の下から両手を前に出してひらひら振ってみせる。 「はい!」 真上から頭を叩かれた。ぱすっ。 「おおっ」「きゃっ!」 驚きの声が聞こえる。 あたしの頭はぺたりと潰れて、肩の高さで平らになってしまったのだった。 ここは公園。 あたしとコースケは通行人の前でイリュージョンをしていた。 赤と黒の忍者装束。 ノコはスマホの撮影担当で、ときにはネタの手伝いもしてくれている。 動画サイトに上げた『Kosuke & Meru のニンジャ・イリュージョン』は少しずつ閲覧回数が増えて、ほんの少しだけど収益を出すようになってきた。 「では、最後のイリュージョン!」 コースケはあたしの身体に布を巻き始めた。 薄くて弾力のある布を何重にも巻いて、あたしをミイラにする。 全身をきゅっと締められる感覚。 その気持ちよさにきゅんと濡れてしまいそうだ。 コースケは別の大きな黒布をあたしの上に被せた。 「はい!」 その黒布はふわりと広がって地面に落ちた。 あれ? 黒布を上げると、そこにはミイラに巻いていた薄い布だけが解けて落ちていた。 中身の女性はどこに消えたの? おおーっ。パチパチ! 一斉に起こる拍手。 その音をあたしは地面に置いたトランクの中で聞く。 今日も大成功ねっ。 この後、あたしはトランクに入ったまま帰ることになる。 荷物になって運ばれるのは悪い気分じゃない。 今夜はノコも一緒に過ごすことになっているから、またきっと酷い目に会うだろう。 「・・酷い目に会う女の子が大好きなの」サオリさんのセリフ。 あたしも大好きです。 ほのかな性感と被虐感に満たされた。 狭いトランクの中で回収されるのを待ちながら、あたしは甘くトロトロした時間を過ごすのだった。
~ 登場人物紹介 ~ 御崎芽瑠(みさきめる):25才。コースケとイリュージョンの新しい仕事を始める。イリュージョンチーム「コットンケーキ」元メンバー。 谷孝輔(たにこうすけ):30才。フリーのマジシャン。メルの恋人。 ノコ : 22才。コットンケーキの現役メンバー。メルのペット。 サオリ : コットンケーキのリーダー。30台半ばくらい。 前作 でコースケに誘われたメルが彼と一緒に頑張るお話です。 布や袋を使うというお題で拷問イリュージョン。 短剣をぶすぶす刺したり、火で燃やしたり、女の子は最初から最後までずっと緊縛されているとか、いろいろ楽しませてもらいました。 無茶といえば無茶ですが、ここはメルちゃんの精神力がスゴイから可能ということにしておきましょうww。 この先コースケくんとメルちゃんは秘密クラブとユーチューバーの二足の草鞋(わらじ)で生きるのでしょうか。 それともどこかで名を売ってメジャーなイリュージョニストになるのでしょうか。 くのいちイリュージョンのお話はこれで終了しますが、機会があればいつか描いてあげたい気もします。 (お約束はしませんよ~) 挿絵の画像はいただきものです。 黒布の下には実際に女性が椅子に座っています。 2枚目は分かりにくいですが、椅子に座った女性に向かい合ってもう一人女性が膝立ちになっています。 ノコちゃんがメルを責めるシーンはこの写真に合わせて書かせていただきました。 それではまた、 ありがとうございました。 # このコロナ禍中、皆さまの健康とお仕事/商売が無事であるよう祈っております。
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sorairono-neko · 5 years
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ぼくだけに聞かせる話を教えて
『勇利の魅力はね、そう……、音楽だよ。わかるだろう? 彼は音楽を奏でるんだ。スケートでね。途切れないのさ。じつにうつくしい。俺はうつくしいものが好きだ。勇利のあの音楽的な、人を魅するスケーティングのとりこになった。彼がすべり始めると、可憐な旋律が流れ出すんだ……』  ヴィクトルが話している。どこか遠くで──近くで。勇利は夢うつつに彼の甘い声を聞いていた。 『彼はね、いつも、言葉にできない何かで人を惹きつけるんだ。まさに芸術だよ。俺は採点員には絶対になりたくないね。だって、勇利のスケートに見蕩れて陶酔するということができなくなるじゃないか? 俺はね、よく勇利に言うんだ。練習終わりにね。勇利、なんでもいいからすべってくれ。ジャンプなんかしなくていい。きみの好きなように、思うように、踊って見せてくれ。昔のプログラムでもいいよ。ジュニアのころのものだって構わない。��だ、きみがすべるところを見たいんだ……』  勇利は幸福に包まれた。ああ、ヴィクトル。そんなふうに思ってくれていたの。ぼくこそ貴方のとりこだというのに、貴方はぼくのスケートを……。 『難しい子でね。でも最高にかわいいよ。どんな勇利でもかわいい。頑固なところも、言うことを聞かないところも、無茶をするところも、泣き虫なところも……。俺は勇利を愛してるんだ……』  意識がふっと浮上した。勇利はまぶたを開け、目をこすった。どうやら眠ってしまっていたらしい。彼はソファから身を起こし、テレビの大きな画面を見た。ヴィクトルが豪華な椅子に座って脚を高く組み、両手の指を突き合わせて、微笑を浮かべながら話している。彼の深い声音、崇高な顔立ちに勇利は一瞬うっとりした。すぐにリモコンを手にし、映像を停止させる。ヴィクトルの姿が消え失せ、音声がふっと途切れた。 「はあ……」  髪をかき上げ、かるく頭を振る。もう十時か、と時刻を確かめた。寝なければ。明日も朝から練習がある。誰よりもさきにリンクへ行きたい。  ディスクを取り出そうか迷い、勇利は結局そのままにしておいた。どうせ毎夜見ているのだ。明日も見るにきまっている。着替えを取り、入浴するため浴室へ向かった。  いま、勇利はひとりで暮らしていた。でも、ひとり暮らしではない。本当はふたりだ。ヴィクトルとともに住んでいる。しかし彼は一週間ほど前から仕事で家を空けており、そのあいだ、勇利とマッカチンが留守を守っていた。帰りはいつになるかわからない。連絡すると言っていたけれど、ヴィクトルのことだからきっと忘れるだろう。  勇利は熱い湯に浸かり、まぶたを閉ざした。いつもなら、ヴィクトルと一緒に入るのだ。勇利は一度も許可したことなどないのだが、彼が当たり前のように入ってきて、「ほら、つめて」と湯船に割りこんでくるのである。勇利はぶつぶつ文句を言いながらヴィクトルの胸にもたれ、身をあずける。ヴィクトルは勇利の身体をかるく抱いて、髪にくちびるを寄せる。そこで静かに語りあうのだ。  勇利は自分の身を抱きしめた。どうかしている。腕がからみついてこないと落ち着かないなんて。 「マッカチン、寝るよ」  勇利は、彼の部屋でくつろいでいたマッカチンを呼び、寝室へ入った。大きな寝台に横たわり、息をつく。眠るときも、ヴィクトルがいつも勇利を抱きしめるのだ。当たり前のように……。  ヴィクトルはいつ帰ってくるのだろう? 勇利は目を閉じた。  翌日、すこし買い物があったので街へ出た。そのとき、あるレストランの前を通りかかった。由緒正しい、いかにも高級そうな店で、勇利は建物がうつくしいと思って眺めたことがある。そのときヴィクトルは言ったものだ。 『気に入った? 今度連れてきてあげるよ』 『え? ううん、見た感じが好きだなと思って……』 『味も最高だよ。俺はときどきひとりで食べに来てたんだ』 『正装しないとだめなところじゃないの?』 『まあね』 『ぼくやだよ。そんなとこに入りたくない』 『勇利もたまには洗練された作法をためさなくちゃいけない。それが普段のきみを際立たせる。演技のときにだってにじみ出るものだよ』  後ろから人にかるく突き当たられ、勇利ははっと我に返った。立ち止まって店をじっと見ていたのだ。慌てて謝ると、相手も申し訳なさそうに謝罪して歩き去った。勇利も足を動かした。  ヴィクトル……。  ヴィクトルがいないのは一週間ほど前からだけれど、仕事はそれだけではなかった。その前も、さらにその前も、ひんぱんに家を空けている。すこしだけ帰ってきては勇利と過ごし、そしてまた忙しく出ていくのだ。ヴィクトルはロシアの英雄だ。帰還した皇帝を人々は求めている。彼が愛されているのを見るのはうれしい。さすがヴィクトルだな、と誇りに思う。しかし──しかし。  なんだか、すごく変わっちゃったな……。  勇利は、ヴィクトルといつでも一緒に過ごし、離れることなく寄り添っていた長谷津時代を思い出した。あの時期が贅沢で、むしろ普通でないのだと頭ではわかっている。だが、そうして慣れきった身体は簡単にはもとに戻らない。コーチになってもらう前のことを考えてみればいいのに、と思いはするけれど、ヴィクトルの愛を知り、彼に甘やかされた勇利は、もうそんなことはすっかり忘れてしまっているのだ。わがままになったものである。  ヴィクトルに文句を言ったことは一度もない。いっさい態度には出さなかった。ヴィクトルに心配をかけたくないし、さびしいなんて言えるような立場ではない。ヴィクトルを困らせるのはだめだ。それに、ヴィクトルが仕事をするのをいやがっているわけではないのだ。彼の出ている番組は、言葉がわからなくても見ているだけで楽しい。 『勇利、意味わかるの?』 『わかんない。でもヴィクトルの表情がすてきだし、声を聞いてるだけでもどきどきする』 『訳してあげようか』 『え?』 『ヴィクトル・ニキフォロフの発言を、ヴィクトル・ニキフォロフの通訳で聞けるんだ。最高だろ?』  ヴィクトルは得意げに笑った。 『そんなこと、この世界で勝生勇利ただひとりのためにしかしないんだよ、俺は』  またヴィクトルのことを考えている。勇利は困ったように微笑した。このところ、ずっとだ……。 「ただいま、マッカチン」  帰宅すると、マッカチンがうれしそうに寄ってくる。ヴィクトルがいなくてさびしくないかな、と心配したら、マッカチンは勇利を気遣うように見、「勇利くん、さびしくはないですか?」と言いたげに顔を近づけてきた。勇利は笑った。 「マッカチンは優しいねえ」  勇利は食事を済ませると、ソファに横たわり、またあのディスクを再生した。最初からだ。ヴィクトルがホテルの一室に入ってくる。スタッフの問いかけに答え、ゆっくりと語る。優しい表情で。勇利のことを……。  これは日本の番組だった。コーチの目から見た勝生勇利の魅力、という題材のインタビューに応じたものだ。ヴィクトルはずっと勇利のことを話している。愛情をこめて、真剣に、熱心に……。勇利はさびしいとき、いつもこれを見ることにしている。 『見た感じはね、あの通り、ごく地味だね。人ごみにまぎれたらいるのかいないのかわからない。でもね、知ってるだろう? 彼はとてもうつくしいんだ。眼鏡を外し、衣装を身につけ、髪を上げる。それを俺はいつも見ている。俺しか見られない。世界じゅうでただひとり。あの瞬間はぞくぞくするよ。けれど、いちばんぞくっと来るのは、勇利が『入る』瞬間なんだ。彼にはスイッチがあるのさ。うつくしく凛々しく変貌した勇利が、最後の階段を上がる……その瞬間さえ俺のものなんだ……』  勇利は目をほそめた。 『性格は、かたくなでね……、俺にすごく似てるところがある。まったくちがうところもあるんだけどね。ちがうところのほうが多いか……。でも、俺と彼は、魂が同じだよ』  そっと胸元を押さえる。苦しかった。 『コーチになったなりゆき? それは教えられないな……大切な想い出なんだ。あのときの勇利はかわいかったな……』  勇利は両手でおもてを覆った。かぼそい息が漏れる。ヴィクトルに会いたかった。  寝るとき、いつも勇利はベッドの右側で眠る。ヴィクトルは左だ。しかしその夜は、ほとんど真ん中に寄り、ヴィクトルのぬくもりを求めるように手を差し伸べた。ヴィクトルの匂いがすこしだけ濃くなった。勇利は身体をまるめるようにした。  ──こんなことなら、いいよって言っておくんだった。  そんなことを考えた。ヴィクトルはいつも勇利を口説くのだ。勇利、きみを抱きたい。ほほえみながら、しかしこのうえもなくきまじめに、疑いようもなく真剣にささやく。きみを肌で感じて、きみをもっとわかりたい。勇利のすべてを知りたいんだ。俺のことも感じてもらいたい。俺がどれほど熱くなって、勇利をどんなふうに求めるのか。勇利を手に入れたらどんなに幸福そうにするのか。わかってもらいたいんだよ……。  ヴィクトルは、根気よく、倦むことなく誘ってくれた。それなのに勇利はこわがって、ごめんなさい、と謝り続けた……。  何がこわかったのか、よくわからない。変化か。それとも、もっと夢中になってしまうことか。いったい──何が……。  勇利は眠りに落ちた。夢を見た。毎夜見ている映像のひとはしだった。ヴィクトルは、とろけるような微笑を浮かべ、甘い声で言う。 『勇利に似合う花は青い花だ。青いばらだね。それは俺の花だろうって? だったらなおさら彼にあげたいな。想像してみるといい。青いばらの花冠を頭にのせた勇利を。ぞくぞくしないか? 最高にうつくしいだろう……』  ヴィクトルは鍵を開け、家の中へ入った。なつかしい匂いがしてほっとした。勇利はしばしば、この家の匂いを「ヴィクトルの匂い」と批評しているが、ヴィクトルからするとここは勇利の匂いでいっぱいなのだった。  廊下を歩き、居間へと向かう。何か話し声が聞こえた。勇利の声ではない。ヴィクトルは扉をひらいた。大きな画面の中で、ヴィクトルが、しあわせそうに熱心に語っていた。勇利の話だった。ヴィクトルはしばらく、そこに映っている自分を眺めた。もっと言えばよかった、こんなものでは勇利の魅力を伝えきれない、と後悔した。ソファをまわりこんで、そこにいる勇利を見下ろす。うずくまっていたマッカチンが顔を上げた。ヴィクトルはくちびるの前に指を一本立てた。勇利は子どもっぽい顔を見せ、おむすびのぬいぐるみを抱きしめて、すやすやと深く眠りこんでいた。ヴィクトルはほほえんだ。しかし、その笑みはすぐに驚きに変わった。勇利のまなじりに、花雫のような涙が浮かんでいたのだ。 「勇利……」  かわいい勇利。俺の勇利……。ヴィクトルはソファのすみに浅く腰掛けると、身をかがめ、勇利の目元に優しく接吻した。涙をくちびるでぬぐってやる。勇利がふっと息をつき、すこし身じろいだ。 「ヴィクトル……」  起きるかと思ったけれど、彼は寝息をたてて眠り続けている。ヴィクトルは勇利の髪をそっとかきわけた。その手つきはいかにもいとおしげで、ふんだんに愛情がこもっていた。勇利の楚々としたまつげが揺れた。  そのとき、テレビの中で、ヴィクトルがしあわせそうに言った。 『俺にとっての勇利? ──そうだな。すべての愛かな』  ヴィクトルはくちびるをほころばせた。画面から勇利に視線を移し、甘いまなざしでじっとみつめる。 「愛してるよ、勇利」  ヴィクトルは、誰も聞いたことがないほど優しい声でささやいた。 「ん……」  勇利はもぞもぞと身体を転がし、うっすらとまぶたを開けた。ああ、また寝ちゃった、と溜息をつく。静かに目を動かした。マッカチンがいない。寝室にいるのか。それとも勇利の部屋か。 「ごはん食べなきゃ……」  今日はすこし早い時間に帰ってきたのだった。夕食までのあいだ、と思っていつものディスクを再生してしまった。まだ何も食べていない。  起き上がろうとした彼は、何かを手に持っていることに気がついた。ふとうつむき、たずさえているものに驚いて瞬く。 「なんで……?」  勇利が持っているのは青いばらだった。一輪だけ。だが、いかにもうつくしく、高貴で、さっと目を惹いた。勇利はまつげを伏せ、そっと花びらに接吻した。──なぜこんなものを持っているのだろう?  首をかしげたところで、またびっくりした。勇利はいつもの部屋着を着ていなかった。なぜか、きちんと正装している。見たこともない上質なスーツだ。どうして? これは夢だろうか?  勇利はそろそろと起き上がった。そのとき、足音が近づいてき、扉がひらいてヴィクトルが入ってきた。 「ああ、起きたのかい?」 「ヴィクトル」  勇利は目をまるくした。ふらふらと立ち上がる。 「い……いつ帰ってきたの……?」 「さっきだよ。ただいま、勇利」  ヴィクトルは勇利に顔を寄せると、頬にかるくくちづけた。勇利は赤くなった。 「この花……」 「ああ、おみやげだよ。勇利にふさわしいだろう?」  ヴィクトルは笑って花にも接吻する。勇利はますます赤くなった。 「きみにあげよう。飾っておこうね……。さあ行こう」 「ど、どこへ?」  手を引かれ、勇利はうろたえた。ヴィクトルは陽気に言う。 「食事だよ。まだだろう?」 「え? あ……」 「あの店に行こう。いつか話したレストラン」  見ると、ヴィクトルもきちんとスーツを着こんでいる。シャワーを浴びて着替えたらしい。なんてすてきなんだろう……。勇利は胸のときめかしさに、わずかに呼吸をみだした。 「この服……、ヴィクトルが着せたの……?」 「そうだよ。見かけて、勇利に似合うから買った。帰ったら勇利をエスコートしようと思ってね。楽しみにしてたんだ」  ヴィクトルは明朗に言った。 「さあ、おいで」  腕につかまるよううながされ、その通りにしたけれど、勇利は彼の手を引いて足を止めた。ヴィクトルが不思議そうな顔をする。 「……勇利?」 「あ、あの……」  勇利は気恥ずかしげにうつむいた。 「ぼく……、それより……」 「うん?」  ヴィクトルがにっこりする。 「別に行きたいところがある? 俺はどこでもいいよ。オーケィ、勇利、きみの希望を聞こう」 「あの……、ぼく……、ぼく……」  勇利はしどろもどろになった。どんどん顔が熱くなる。心臓がどきどきと打った。どうしよう。やめておこうか。言わないほうがいい。恥ずかしい。もうその気じゃなかったらどうしよう? 帰ってくるなりなんだ、と笑われるかも。あきれられるのは絶対にいやだ。やっぱりこのまま食事に行こう。それがいい。  ……でも……。  口ごもり、まっかになっている勇利を見て、ヴィクトルがふっとほほえんだ。彼は勇利の耳元にくちびるを寄せると、甘美な、愛撫するような声でささやいた。 「いま、きみを抱きたいと言ったら、きみはいつもとはちがう答えをくれるかい……?」  勇利ははっとした。答えようとした。たまらなく恥ずかしく、上手く言葉が出てこない。代わりに彼は目を上げ、ヴィクトルをみつめた。その瞳が雄弁に愛を語った。まるでキスするように勇利はヴィクトルを見たのである。 「ためしてみて、いいかい……」  ヴィクトルが優しく言った。勇利はこっくりとうなずいた。ヴィクトルはレストランではなく、寝室に勇利をエスコートした。上品に腰を抱かれ、ベッドに座る。上着を肩からすべり落とされる。ベストがひらかれ、ネクタイをほどかれ、シャツのボタンをひとつずつ外された。勇利は身をちぢめ、羞恥にふるえながらされるがままになっていた。  ヴィクトルは丁寧に、紳士的に勇利の服をすべて脱がせた。彼はゆっくりと勇利の裸身を横たえ、水際立った笑みを浮かべた。 「綺麗だよ」  あたたかな声で勇利を褒めて、自分も上着を脱ぎ捨てた。勇利はどうすればいいかわからず、白い手を下腹にのせ、もう一方の腕を身体に添わせてじっとしていた。ヴィクトルがのしかかってきた。ああ、と勇利は思った。ヴィクトルのはかりしれぬ瞳は深く澄んで、誠実であり、情熱的だった。 「後悔しないかい」  ヴィクトルが最後の逃げ道をつくるように尋ねた。勇利はせつなく彼をみつめた。 「後悔なら、もうしてる……」  勇利はささやいた。 「ヴィクトルがいないあいだ、ずっと考えてた……」  ヴィクトルの双眸はうつくしい。このひとになら、何もかも捧げたいと感じた。 「もっと早くにこうしておけばよかったって……」 「──勇利」  ヴィクトルの声が聞こえたと思った瞬間、彼の甘いくちづけが与えられ、そしてきつく抱きしめられた。 「あ……」 「勇利、かわいい」 「かわいくないよ……」  勇利はしょんぼりと目を伏せた。 「こんな意地っ張りで気難しくて頑固なぼく、かわいいわけない……」  ヴィクトルがまぶたをほそめた。彼はどういうわけか、たまらなくうれしいというふうにすてきに笑い、勇利の素肌にふれて熱っぽくつぶやいた。 「不埒なほどかわいいな、おまえは」  勇利は気恥ずかしく、ヴィクトルの顔が見られなかった。それでヴィクトルに背を向けたのだが、彼は背後から勇利を抱きしめ、力をこめた。ふたりの素肌がぴったりとくっついた。 「怒ってるのかい?」  ヴィクトルがやわらかな声で尋ねた。勇利は答えなかった。その代わり、胸元にあるヴィクトルの腕にそっとてのひらを当てた。 「あの映像、毎晩見ていたのかな?」  勇利はやはり答えられなかった。ヴィクトルが楽しそうに言う。 「あれでは足りないね。もっと勇利のことを話せばよかった。もっとも、万人に聞かせる話でもないか……」 「ぼくだけに聞かせる話を教えて……」 「いいよ」  ヴィクトルは勇利の耳たぶにくちづけた。勇利は目を閉じた。 「勇利、きみは俺のことを愛しているんだよ。知らなかっただろう? いや、自覚している愛のことじゃない。もっと奥深い、すぐれて甘い感情のことだ。いま、こうしていて何を感じる?」 「……ヴィクトルの愛を」 「そうだろう。それは俺を愛していなければ理解することのできないものなんだよ。わかるかな?」 「……わからない」 「そうか。それでもいいさ。頭でわからなくても、身体で、こころでわかることがある……」 「……ぼくはずっとヴィクトルを愛してたの?」 「ああ、とてもね。勇利は俺とこうなりたかったんだよ。俺に抱かれたかったんだ」 「本当?」 「うそなんかつかない。疑うかい?」  勇利はヴィクトルの手を握りしめた。ゆっくりと持ち上げ、指にくちびるを押し当てる。 「……ううん」 「信じる?」 「……信じる」 「いい子だ」  ヴィクトルが勇利の髪にくちづけた。勇利はほそく息を吐いた。 「じゃあ、ぼくはこれからどうなるの……」 「もちろん俺と愛しあうんだよ。わかってるだろう?」 「わからない。愛しあうってどうやって……?」 「きみはもう知ってるさ。いま愛しあったばかりじゃないか」 「そうじゃなくて……日々の暮らしの中で……ぼくは……」 「そんなのはささいな問題だ。俺がいてきみがいれば、愛というものは自然とはぐくまれる。そうしないようにしようと思ったってできないくらいだ。だってお互い強く惹かれ、求めあっている」 「本当に? ヴィクトルもぼくを求めてる?」 「なんだ、気づいてなかったのか? あんなに熱心に口説いてたのに?」 「だって……ヴィクトルが語ってくれたようなスケートをぼくが本当にできているのか、わからないよ……」 「言うと思ったよ。きみは本当に何もわかっていない。そういうところがかわいいんだ。ただ、盲目的に俺に愛を捧げている。褒めて欲しいな。そんなきみに無茶をせず、俺はずっと待っていたんだ。ご褒美が欲しい」 「ご褒美……」 「勇利は自分の気持ちもつかみきれていないようだから無理もないが、俺がどれだけおまえを愛しているか、おまえは正確にはわきまえていないだろう。一度抱いたくらいじゃだめだね……」  ヴィクトルは明るく言い、それから勇利の肩口にくちびるを寄せた。 「あ……」 「まあいいよ。扉はひらかれた。あとは……。言っておくけど、わざと長く留守にしたわけじゃないよ。そんなことはとてもできない。俺は勇利を傷つけたりはしない。それに、俺だって苦しいんだからね。こうなることがわかっていたわけでもない……」  ヴィクトルの手が勇利の身体をまさぐった。勇利はまぶたを閉ざし、呼吸を深くして、ヴィクトルのあたたかさを感じていた。ヴィクトルは勇利の耳に幾度もくちづけ、熱い吐息を漏らしてささやいた。 「愛してるよ……」  勇利のむきだしの肩がふるえた。ヴィクトルはいつくしむようにそれを撫で、とろけるような声で優しく頼んだ。 「そろそろこちらを向いてくれ……」 「…………」 「怒ってるのかい……?」  勇利は息を吸った。思いきってヴィクトルのほうを向き、ぎゅっと抱きついて甘えるように言った。 「喜んでるんだよ、ぼくは……!」  ヴィクトルの真っ青な瞳がすぐそこにあった。 「そこまでぼくのことわかってるなら、そのことだってわかるでしょ……」 「言わせたいんだよ。愛する子の声を聞きたい」  勇利はくちびるを押しつけた。不器用な、幼い、どうしようもないくちづけだ。しかしヴィクトルは目をほそめて笑い、子どものように喜んだ。 「勇利、こうなったことでおまえはまたいろいろと考えるだろうね。そうせずにはいられないたちだからね。でも勇利、その必要はないんだ。いいかい、きみ、もう何も考えなくていい。勇利はね……、俺を見ているだけでじゅうぶんなのさ。それだけで万事問題ないんだ。俺はいつだって、勇利にしか見せない目を、笑い方を、物言いをしているんだよ。わかるかい? 全部伝えて、教えて、愛するから……。もうあのディスクは必要ないね。捨ててしまおう。これからは俺が毎夜、きみへの愛を語り、きみのうつくしさを称えるよ。いいだろう? 聞いてるかい、勇利。おまえはくるおしいほどかわいいな。その慎ましやかな目つき……」
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shukiiflog · 1 year
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ある画家の手記if.49 告白
さようなら
先日受けとった書類を見ながら、ソファの上に体を伸ばしてのんびりする。香澄は僕の体の上に乗っかってさっきまで話してたけど今はうとうとしてる。
香澄の頭を撫でながら一通り書類に目を通し終えると、書類を横のテーブルに置いて香澄に声をかける。 「香澄、寝てる?」 「ん〜……」 眠そうだな。僕も今日は一緒に寝ようかな。外は雨。 翌日。天気がよかったから、棚の中から一番上等のワインを出してボストンバッグに詰めて、いくつかのパンも一緒に入れた。 僕がごそごそしてたら香澄が起きてきた。 「おはよう香澄」 「ん、おはよ… 直人お出かけ?」 丁寧にコーヒーを二人分淹れながら量を調節する。僕の横にきた香澄の頭を撫でて、後頭部に手を当てて引き寄せて目元にキスする。 淹れ終わったコーヒーを二つのタンブラーにうつした。 「香澄もおいで」 マンションから出て最近ようやく購った新車に二人で乗り込む。運転は僕。 高級車の並ぶお店で車種を僕がまったく迷わずに決めて香澄にそれでいいか聞いてみたらちょっと意外そうな顔をされた。 白いロールスロイス。 僕には似合わない気もしたけど、幼い頃から乗り慣れた思い入れのある車だった。 情香ちゃんが黒いゴツゴツした大きなベンツ。冷泉がポルシェ。稔さんがヴィンテージ?の…シボレーインパラ…だっけ…もう製造されてない車だった気がする。
兄さんが、白いロールスロイスだった。よく乗せて送り迎えなんかもしてくれた。
なんとなく車と人は似てる。
一時間もしないで目的地の墓地に着いた。 用意した荷物を香澄が持って、僕は片手に杖をついて、車を降りる。 半身を気に留めて庇いながら杖を使って歩くのにもだいぶ慣れた。 緑の繁る柔らかい土の道、石畳の階段を登って、ようやく少し開けた場所に出る。
昨日の雨に濡れてしっとりした土の足元、木の葉も階段も濡れて水滴が太陽の光を優しく照り返していた。 香澄は場所のせいなのか、いつもより口数少なくしている。 「そんなに厳かな顔しなくていいよ」笑って香澄の頭を撫でて肩を抱いた。 たくさん並んだ同じような小さな敷地で囲まれた石造りのお墓の中をいくつも通り過ぎて、ひとつのお墓の前で立ち止まる。 「……なんて読むの?」 墓石に刻まれた、いくつも読み方のある苗字に香澄が首をひねる。 「タカシギ、って読むんだよ」 僕は杖をそばの木に立てかけて置いて、墓に軽く手を合わせると持ってきたワインをお供えに置いた。 「香澄、ここで昼食にしよう」 「お墓の前で?いいの?」 「せっかく準備してきたんだしね」 ーーーこのお墓の中にいるのは、隆木義清っていう画家で、僕の絵の先生なんだ。 大学で僕とはじめて会った時にもうかなりご高齢だったけど、僕より元気な人だったな。 ヘビースモーカーで、いつもタバコの吸い殻を灰皿に山のようにして吸ってて、誰も飲めないような濃すぎるコーヒーを大量に淹れて飲みながら、威勢のいい口調で喋ってた。 大学の隅っこの古びて使い物にならなくなった校舎を根城みたいにしていつもそこで絵を描いてた。大きな水彩画。 大学でも絵を描くばっかりであまり居場所も知り合いもない僕をそこに居させてくれた。 先生だけど、何も教えてくれない。僕の絵にはいつも「下手」って、その一言だけ。 ここまでで一度話を切った。 じっと墓石を見つめて、続ける。 「先生は失明の危険のある目の病気を患って、本人はどこ吹く風だったけど、まわりに頼みこまれて目の手術をした。あなたの描く絵はこの国の宝だからって。
手術したばかりの病院の9階から飛び降りて、先生は亡くなった」
自殺だったと、思ってる。 「先生がよく言ってたよ。絵描きはひとに絵を教えられないって。先生も、自分の絵を描くだけで僕には何も教えてくれなかった」 画家は、絵を教えられない。 それは渦中にある人間自身には自分の成している事を説明できず、渦中から退いてようやく自分のしていたことを見て、他人に伝えられる、そして渦中から退いた人間は一度冷静になってしまったらそこまでで二度と画家には戻れないのだと、そういう意味だったと思ってる。 ーーーお前は描いてりゃいいんだよ
事あるごとにそう言われた。 「まさか僕が教える側になるなんて、先生は予想もしてなかっただろうな」 タンブラーの蓋を開けてコーヒーを飲む。 「…あっ、仕事決まったの?」 香澄がパンから顔を上げて僕を見る。にっこり笑って頷く。 「変な時期だけど、非常勤の枠に突然穴があいちゃって困ってたところだったらしいから、すぐにも来てほしいって」 「直人が先生…。」 「似合わない?」 「………」 香澄はしばらく間をおいて考えてから言った。 「前の直人だったらちぐはぐな感じするけど、今の直人には似合ってると思う」 「……そう」 本当にもう僕は画家ではなくなってしまった。 意思疎通がとれるようでとれない、でも確実に自分と同種の人間だった僕を、先生はたまに憐れむような目で見た。 それは先生自身が自分に向ける目でもあっただろう。 イキヤ、七ちゃん、稔さん、ーーーみんなもあの視線を受けただろう。 いつだか稔さんが言っていた、画家はたった一人で自分を誰より幸せにできるって。僕らは悲しい存在であっても似たもの同士だった。 でも僕はもう前のように一人で幸せになることはできない。 「……少し風が出てきたね。車に戻ろうか」 「うん」 香澄が杖をとってくれて、食べ終えた包みやゴミを二人で片付けて、きた道を戻る。 同種だけどまるで違った僕らは仲間だからって寄り添えるわけでもなく、みんなどうにもできない寂しさを抱えていた。先生はその生き方を90年近くも続けてそれを完遂した。 振り返って小さくなった墓石を見る。 ーーーごめんなさい。僕にその生き方はできません。
香澄と一緒に生きる幸せを選びたいから。
初めての授業の日。 場所はこれまでにも廃材をもらったり展示の打ち合わせをしたり、しょっちゅう来てた僕の出身校。 僕が受け持つのは演習だから、実質何もしなくていいようなものだ。 それでも一応、少しは服装に気を使ってきた。 使いこまれた古い木箱の上に座る二十人くらいの生徒たち。…その木箱、見覚えがある、僕が学生の頃も同じものを椅子に使ってた。相変わらず丈夫な木箱だな。 モデルの立つ高めの台の上に浅く腰掛けて足を組む、学生を前に笑顔で軽く挨拶する。 「臨時で君たちの授業を見ることになった、名廊といいます。この学校にはよく出入りしてたし僕も卒業生だから、知ってる人は知ってるのかな。僕から口うるさく作品に何か言うことはないから安心してね。なにか質問のある人はいる?」 生徒の一人がそっと手を挙げて聞いた。 「先生はどこかお体がお悪いんですか?」 僕の杖を見て言ってるんだろう。 「体の左側に少し麻痺があるんだよ」 聞いてきたその子をじっと見る。大きな目の中の虹彩が放射線状に広がって縁で円を描いてる。 「…君と…似た瞳を知ってる」 その子が首を傾げたから、にっこり笑ってつけ加えた。 「太陽みたいで、美しいね」
続き
オマケ
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maomao-pbt · 5 years
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プロフィール
基本スペック
181cm/70kg(±3)/37歳(加齢式)
容姿
線が細い鼻筋と小振りな口元は中性的な造りだが体格は骨太でごつめ。
全体的に色素が薄く、髪色と瞳は淡い柴色(ふしいろ)で肩にかかるくらいのボブ。
両耳朶にピアス穴3つずつ。右耳の裏側には蜂のタトゥー有り。通常は髪で隠れているが特に隠してはいないため、結んだり髪を掻き上げる際に視認されやすい。
腰には日の出を模したタトゥーも入っており今後もタトゥーは増える可能性あり。
性格
ふざけたやり取りが好きでノリはいい。スキンシップも多めでパーソナルスペースは狭い方。しかし最初はどんな相手にも様子を見ながらなので人見知りだと思われることも。
話し方は間延びした柔らかさがある。いつも飄々としているため何を考えているか分からないとうがった見方をされるが大体何も考えてない。
プライドや自尊心はエベレスト級に高い。
住居
3LDKの中古マンションをフルリノベで2LDKへ。
一部屋潰した広めのLDKはヘリンボーン柄に敷き詰められた明るめの床材と黒のアイアンインテリアで纏められている。
大きなテレビは壁掛け、その前には大柄な男2人は余裕で座れるグレーのコーナーソファが鎮座し、家にいる時間のほぼ大半はそこでゴロゴロしている為に寝落ち用のブランケットも完備。
残り2部屋は主寝室とゲストルーム。
恋人と同棲中。
趣味、嗜好
24時間営業ジムの会員だったがこのご時世に解約。
今は外食も控えており部屋でのんびり海外ドラマ見ながらソファで寝落ちパターン。
仕事
企業の研究職。機密データばかりを扱うので仕事内容を聞かれてもぼやかす。
勤務時間は不規則で仕事着はほぼ白衣。
キャリアアップに伴い部署間を越えて色々任され忙しい。
家族構成
実家に両親、姉(6つ上)。
両親はまだバリバリ働いている。
姉はニュージーランド人と結婚、離婚、そして出戻り(今ここ)。眞雄と瓜二つ、華奢にしたら姉の顔。子供の頃から恋人代わりに連れ回され全身着せ替え人形のように扱われていた為逆らえない。仲は良い。
恋愛感
恋人あり(2021/7/29)(TLで惚気るのは苦手です)
長く続く安定した人間関係を好む。恋愛ありきのスタートはほぼ無し。じっくりお互いを知る時間を経てから徐々に好きになる人。
ゲイでタチ(女の子は性的な意味で興味持てません。)
TLでの交流(追記)
@トスでソロル回します。ご自由に絡んで頂けると喜びますが長く続きそうな時はDMへ移動させて頂きます。
TL上での自身の惚気やイチャつきはあまり好みません。他者様がされるのはにこにこ眺めさせて頂いてますのでご自由になさって下さい。
ハグや頭撫でたりは軽率にします。TLでの触れ合いに深い意味はありません。抵抗のある方はこっそり教えて下さい。ご迷惑をおかけしたならすみません。
特別な方とのやり取りはDMでさせて頂きます。
個別交流
DMにてRP可。
私生活優先につき常時リアタイは困難です。
1日最低1レス以上の置き推奨。即レスも有り。リアタイ時は文字数200-300字前後で返信まで15分前後。長文になる程長考傾向。
会話のみや短文でさくさく回すやり取りも好きなので楽しく交流できると嬉しいです。
心情、確定など雑食なので地雷はありませんが漢文は当方頭が悪くて少し苦手です。バトルロルは未経験につき不可です。
恋愛になるとのんびりペースでもRPしたい派です。その場合はタイムリーな日常会話はTLや別窓で、など柔軟に交流できると嬉しいです。
過度な鬱、攻撃的な行動、切断スカ死、展開任せ
萎え以外一般的
PL
30↑女性、背後詮索混同不可
C≠L、行動体調ほぼフェイク
食べ物や風景などの実写真を上げることはありますが撮影時とはかなりタイムラグを設けます。
完なり推奨。特に恋愛関係が絡む場合のL様とは背後交流は致しません。
友人関係が長くなり恋愛発展しない場合のL様とは背後交流柔軟ですが、かなり消極的ではあります。通話は、オフでお会いするまでは不可です。
※ご注意
Twitterは隙間時間に見ていますので、お返事の順番は前後します。必ずしもDM優先という訳でもありません。その時に瞬発的にお話しやすい議題に飛びつく傾向があります。
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写真について
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annamanoxxx1 · 5 years
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月兎 01
 雨の中華街は、まるで小さな映画館で観る古いキネマのようだ。燻んだ灰に烟る極彩色。濡れた地面に反射する赤、黄、青。中華角灯の連なる汚れた路地裏。公園の東屋。媽祖廟に関帝廟。映画のセットに一人取り残されたような気持ちで左馬刻は夜道を歩いていた。傘はない。霧雨は、肩にかけたスカジャンの下までは染み込んではこない。こんな日は人も静かだ。観光客の少ない街は必然、客引きの声が消える。商売をしても仕方がないと皆知っているから。脇に下げたホルスターの拳銃が、重い。自然丸くなる背をポケットに突っ込んだ手で支える。息をすることすら怠い。
 沈んだ景色の中、不意に頭上に明かりを感じた。まるで、雲の隙間から気まぐれに顔を出す日の光のような。顔を上げると、眼鏡の男が居た。正確には、陳列窓の中に。男は、うたた寝をしているように見えた。アンティークのソファにゆったりと体を預けている。優美な曲線を描くマホガニーの肘置きに柔らかく添う指先。鈍い光沢のジャガード生地で作られたロングのチャイナ服。細い体。柔らかな質感の濃茶の髪。完璧な形をした耳には、赤い房飾り。シノワズリ趣味。それは男の装いだけではない。透かし彫の衝立も、天井から下がる黒の角灯とクリスタルのシャンデリアも、大胆なピオニー柄の淡碧の壁紙も。現代日本とは思えぬ、杳々とした空間。その中で眠る男に興味が湧いた。硝子に顔を近づける。繊細な装飾が施された眼鏡の、黒のフレームの奥。レンズ越しの瞼をまじまじと見つめる。放射状に広がる長い睫毛。丸みを帯びたまぶた。瞳の色は何色だろうか。白い頬に落ちる影。
「なぁ、目、開けろよ」
 聞こえるはずはない。だが、話しかけずにいられない。明かりの消された店で、唯一明るい陳列窓の中で、眠る男が生身のはずはないのに。それでも、あまりに男が生々しくて。
「なぁ、なぁ」
 気狂いのようにぽつ、ぽつと何度も語りかける。
 どれ位の時間、そこに居ただろうか。縋るように硝子に手を突いて。ようやく諦めて、立ち去ろうとした。その時に。ふぅ、と男のまつ毛が持ち上がった。最初に見えたのは、明るい緑。晴れた夏の木漏れ日のような。それに見とれていると、ゆっくりとマゼンタが現れる。不思議な瞳の色だった。
「きれぇだな、お前の目」
 こちらを見ない男に、話しかける。
「あっ?おい!」
 男は無反応のまま、スゥと瞼を下ろした。何事もなかったように、上下のまつ毛が重なる。
「………くそ」
 悪態をついた瞬間、店内がパッと明るくなった。
「何か、用か」
 デカイ男が、にゅっと建物の脇から顔を出す。どうやら店の人間のようだ。裏口から回ってきたのだろう。
「あ、いや、こいつ」
 左馬刻が、陳列窓の中の男を指差す。
「ああ……今店を開けよう。待っていてくれ」
 そう言って、大柄の男が戻っていく。日の光を集めたような明るいオレンジ色の髪、晴れた海面のような明るい青の目。白色人種の特徴を持つ、彫りの深い顔立ちに、飾り窓の男と同じようなロングのチャイナ服。シノワズリを体現したかのような男と、店の佇まいが重なった。すぐに透かし彫の施された硝子扉が内側に開く。
「どうぞ」
 背の高い男に招かれて、左馬刻は店内に足を踏み入れた。エキゾチックな花の香り。外からは見えなかった場所には、壺や茶器、置物などが並んでいる。
「茶を淹れよう。座っていてくれ」
縁にカーヴィングの施された、エボニーのティーテーブル。揃いの獣脚のアームチェアにドカリと座り、左馬刻は陳列窓の男の茶色い後ろ頭を、ぼんやりと見つめた。
「気になるか?」
 オレンジの髪の男が、茶盤に並んだ茶器に湯を注ぐ。流れるような手つきで茶葉を洗い、再度鉄瓶から湯を注ぎ、蓋を閉めた小ぶりな急須に上からも湯をかける。コトリ、と目の前に置かれた透かし模様の白い湯のみに浮かぶ、黄金の輪。ず、と一口すすると、茉莉花の香りが広がった。
「銃兎も連れてこよう。起きるかどうかはわからないが」
 そう言って、オレンジの髪の男が陳列窓に近づく。あの男は『銃兎』と言うのか、と左馬刻は思った。オレンジの髪の男に抱き上げられた銃兎が、左馬刻の向かいのアームチェアにゆっくりと降ろされた。
「銃兎、茶はどうだ?貴殿の好きな碧潭飄雪(スノージャスミン)を淹れたのだが」
スゥと、銃兎の瞳が開く。けれどまたすぐに閉じてしまって、オレンジの髪の男が苦笑した。
「どうやら、今日は気が乗らないようだ。部屋に戻せと言っている。すまないが、待っていてくれ」
 そう言って、オレンジの髪の男は銃兎を抱き、カーテンに覆われた店の奥へと消えていく。それを、なぜだかひどく腹立たしい気持ちで左馬刻は見つめていた。いや、腹立たしいというのは少し違う。左馬刻は、羨ましかったのだ。オレンジの髪の男が。
「さて、待たせたな。小官は理鶯という。元軍人だ。船に乗るのが好きで、各国で買い付けをしては、こうして商いをしている。貴殿の名は?」
「左馬刻」
左馬刻は簡潔に答えた。
「銃兎、は一体なんだ?人間か?」
左馬刻の率直な問いに、理鶯が微笑む。
「あれは観用少年(プランツドール)だ」
「は?プランツ?嘘だろ?」
 『プランツドール(観用少年・観用少女)』とは、その名の通り、観用の少年・少女だ。人工の。左馬刻の属する火貂組の組長・火貂退紅も一体、少女型を所持している。左馬刻は職業柄、派手な集まりに参加することが多いが、今まで目にした観用少女たちはみな、成人男性の胸元にも満たない姿だった。何年、何十年物でも。手入れを怠らなければ、同じ姿のまま二百年の時を越える個体もいると聞いている。
「稀に、育ってしまう物もいる。稀に、だが」
 そう言って、理鶯は茉莉花茶に口をつけた。
「左馬刻、銃兎は名人の手による傑作だった。銘は『月兎(げっと)』」
 銘がつくほどの観用少年の価値を、左馬刻は知っている。退紅のオヤジのプランツも、銘を持つ逸品だった。その値段は、億を超える。しかし、理鶯は『傑作だった』と過去形を使った。
「育ってしまったプランツの価値は、ほぼ無い。それでも、銘を持つプランツなら、ワンルームマンションを買えるくらいの価値を持つ」
 語りながら、理鶯が茶を左馬刻の湯のみに注ぐ。一煎目より柔らかく重い香りが立ち上った。
「へぇ」
 左馬刻が相槌を打つ。つまりあのウサギちゃんは、高級品っていうわけだ。
「一千万でどうだ?」
理鶯の言葉に、左馬刻が顔を上げる。
「は?」
訝しげな左馬刻に、理鶯が微笑みかけた。
「銃兎は、左馬刻を気に入ったようだ。興味がなければ、一瞬でも、瞳を開いたりはしない」
「アイツ、動けんの?」
 ずっと、寝っぱなしなのかと勝手に思い込んでいたが、そういえば今まで見てきた観用少年・少女たちはみな、歩き、笑い、主人と何か会話をしていた。
「食べもんも食えんのか?」
 理鶯が茶を勧めていた事も思い出した。
「ああ、風呂もトイレも、一人でこなせる。食事は日に3度、人肌に温めたミルク。週に一度金平糖を与えると肌ツヤが良くなるぞ。全体的に疲れが見えてきたら専用の栄養剤もある。銃兎は育っているから、人間と同じ食事も摂れるが、嗜好品だ。ミルクさえ与えていれば、ことは足りる」
 左馬刻は頭を抱える。自分の家に銃兎がいる事を想像して、胸がぎゅっと熱くなった。コンクリ打ちっ放しの無機質な部屋だ。家具も最低限しかない。そんな空間に、あの、美しいものが存在する。それはなんと魅力的なことか。
「そいやさ、銃兎って名前は誰がつけたんだよ」
 銃なんて物騒な名前が付いている。けれどその名は、あのお綺麗な顔に不思議と良く似合っていた。
「前の主人が、な」
 含むように呟いた理鶯は、それきり理由を語ろうとはしなかった。
「返事は直ぐでなくていい。銃兎は気難しい。迷ったら顔を見に来るといい。眠っていても、銃兎は気づく」
 流石に、高級車が買える値段を即決することはできなかった。
「馳走になった」そう言い残して、左馬刻は店を出た。
*
「いいのか銃兎?左馬刻は帰ってしまった」     天蓋付きの中華風の寝台の上、銃兎は絹のシーツに包まって眠っていた。理鶯の言葉に、パチリと緑の瞳が開く。理鶯が差し伸べた手をとって、銃兎はゆっくりと起き上がった。
「理鶯、余計な事はしないで頂けます?」
手厳しい一言に、理鶯が苦笑する。
「大体、一千万だなんて、安すぎます。私を何だと思っているんです」
ぷぅと頬を膨らませて、銃兎が涙を滲ませる。元は、数億で取引されていた個体だ。自尊心が大いに傷つけられたのだろう。
「だが、銃兎。貴殿の日々のミルク代や服、装飾品など、一体いくらの持ち出しになっていると思う?」
 優しい声で理鶯が問う。責めているのではないことは、銃兎にはちゃんと伝わっている。けれど。
「……だから、嫌ですけど、ものすごく嫌ですけど、硝子窓で客引きしているじゃないですか」
「うん、それはとても助かっている」
 言いながら、理鶯は銃兎の頭を柔らかく撫でた。現実、銃兎を目当てに店に飛び込んで来る客は多い。しかし、銃兎はそんな客たちには決して目を開かなかった。銃兎を目当てに入って来た客の中には、店の常連になる者も多い。もともと銃兎を欲しがる客というのは、美術��の好事家が多いのだ。
「だが、銃兎、小官は貴殿をこのようなところで飼い殺しにしたくない」
 理鶯の言葉に、銃兎が泣きそうな顔をした。
「わたしは、ここに居たいんです。ずっとここに。ねえ、駄目ですか?お願い、理鶯」
理鶯の幅の広いチャイナ服の袖を掴んで、銃兎が懇願する。理鶯は銃兎を大切に扱っているが、それはあくまで商品としてだ。出来る事なら、商品としてではなく、銃兎を愛してくれる人間に届けたかった。
「もう、人間を愛するのは嫌なんです。もう、あんな思い、二度としたくない」
 理鶯にすがり付く銃兎の背を撫でて、理鶯は物思いに耽る。通常、観用少年というのは、愛に絶望すると枯れるものだ。しかし、銃兎は、一度枯れかけはしたが、こうして未だ美しく咲いている。それは、銃兎も気が付かない心の奥底で、人の愛を望んでいるからではないのか。
「左馬刻は、きっとまた来る。ゆっくり考えたらいい」
 そう言って、理鶯は銃兎を寝台に横たえた。椅子の背に脱ぎ捨てられたチャイナ服を、ハンガーにかける。
「おやすみ、銃兎。また明日」
 暗闇の部屋から、明るい四角に足を踏み出す理鶯を、銃兎は寝台の上から静かに見送った。
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umifani · 11 days
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