#ゆめこい~夢見る魔法少女と恋の呪文��
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「最後の三角形: ジェフリー・フォード短篇傑作選」ジェフリー・フォード著を読了。
世界幻想文学大賞に7回、シャーリイ・ジャクスン賞に4回、MWA賞、ネビュラ賞など数多の賞に輝く現代幻想文学の巨人による郷愁と畏怖と偏愛に満ちた14篇。
所謂、幻想文学という括りになると思うのだが、ホラーやSFっぽい作品もあり幅の広さを感じる。偉大なる受賞歴を見るとなるほど納得。どの編も出だしは何となく取っ付きにくいというか、これはどんな話なんだ?と思いつつ、読み進めていくとどっぷり世界観に誘われている。大凡、
どんな小説でもそうなんだろうけれど、明らかにこの作家は誘い力が強くて、読み進めていきたい気持ちがムクムクと湧いて来る。素晴らしい作家だと思った。どの編も忘れがたい。今のところ今年度No.1。
アイスクリーム帝国:
共感覚が強い僕はコーヒー味のアイスクリームを食べるととアンナという女性が見えるようになった。アンナも僕が見えるようになったという。進学的幻想なのはどちらなのか。
マルシュージアンのゾンビ:
隣に越してきた老人は、自分は政府の秘密組織で従順な兵士を作る研究をしてたという。老人が急死した直後、我が家に現れたのはゾンビのように意識薄弱な男だった
トレンティーノさんの息子:
クラム漁が盛んなベイ、嵐の日に一人の少年が行方不明になる。少年と交流のあった私は、同じような嵐の海で死んだはずの少年を助けるのだが、船は瓦解してしまう。
タイムマニア:
悪夢にうなされている少年が��人の農家の井戸から白骨化した死体を発見する。ライムを口にしないと、死体のジミーの幽霊が現れてしまうのだが、炎の農場の奇妙な世界へ誘われその死の真相に近づいていく。
恐怖譚:
真夜中に目を覚ましたエミリーは家族の不在に気がつく。夜の道を歩く途中、馬車に乗った紳士に連れられ、朽ちた豪邸に住む母と子に出会うのだが。霊廟の中で呪文を創作するエミリーの姿をディキンスンの詩にまつわる表現で描く
本棚遠征隊:
健康を害して自宅で療養中の作家、本棚を見ると指先ほどの妖精らが本棚の登頂に向けて出発するところだった。これは幻想なのか?彼らは危険を顧みず、様々な本の前を通過して最上段を目指していく。
最後の三角形:
一文無しのホームレスがひょんな事から老婆の家に住むことに。老婆は男に「最後の三角形」と呼ばれる魔術の記号を探すように言われる。奇妙なコンビで魔術の謎を探っていくと、現れたのは死んだはずのの老婆の夫だった。
ナイトウィスキー:
動物の死骸から生える「死苺」で少量作られるナイトウィスキーを飲むと、泥酔した夢の中で死者と再会できるという。翌朝に木の上で眠る泥酔者を降ろす名誉職を得た僕は、酔っ払いとは別の何かと遭遇する
星椋鳥の群翔:
長閑で美しい地方都市には凄惨な殺人の歴史があった。唯一の目撃者である被害者の教授の娘は一才口を聞かず、小さな星椋鳥を連れて街を散策する。野獣と呼ばれた犯人を捜索する警部は、助手のジャリコと娘を尾行するが、公園で星椋鳥の大群が描く姿に驚嘆する。
ダルサリー:
狂気の科学者が生み出したビンの中のドーム型極小都市ダルサリー。原始大の盗聴器によると滅亡の危機にあり、科学者は自ら縮小ビームを浴びて都市に介入を試み、ダルサリーの中で更に極小都市を作り始めたという。
エクソスケルトン・タウン:
外惑星にあるエクソスケルトン・タウンに住む蟲型の生物と人類は、20世紀映画で交易していた。かつての男優・女優のスキンを纏った男女は「ボックス」の中だけで愛し合うことができるのだが。
��ボット将軍の第七の表情:
大きな惑星の衛星で発見されたハーバングと戦うために製造されたロボット将軍、その無慈悲な攻撃で死体の山を気付き英雄になるが、引退後は小さなアパートで暮らしている。自殺を依頼した男と格闘して切り離された頭部は・・・
ばらばらになった運命機械:
年老いた宇宙飛行士の回想、遠い惑星で知り合った恋人と宇宙の旅を続けたかったが冷凍睡眠で死亡、白い森の惑星に安置する。二人の元に時空を超えて現れた紺色の巨人と、機械部品を捜索するロボットによって運命が変えられていく。
イーリン゠オク年代記:
砂の城に住む妖精トゥイルミッシュは、虫のファーゴ、偶然出会った要請のメイワとマグテルと共に、短い一生のうちに創意工夫と喜びの体験を経て、砂の城が波に消えゆくと共に、その生涯を終えていく。
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廻游エチカ/JJ
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「私はJJ。ここの劇団員で占い師。白い魔女と呼んでいただいても結構よ」 「脈絡もなく魔女ですと言ったら、私のことをルシファーやベルゼブブの愛人だと毛嫌いする人もいるでしょう。不潔で淫らで呪いにまみれた女だとね。現代の魔女のイメージは深刻だわ。白い魔女は清潔な癒し手で幸福のために力を使うし、他人を呪ったりしない。税金も払ってたのよ」 「あなた、もう少し丁寧な言葉で話してくださらない?貴婦人にするようにしろと言ってるわけじゃないのよ。ただ礼儀正しくしてほしいの」 「いつの世も魔女は不幸な女の味方になるものよ」 「あの人の話はしないでちょうだい!」 「恋や愛にはずいぶん前に懲りたの。もう地獄の炎で焼かれるのはごめんよ」 「さ、マフィンを焼きましょう。行き詰まったときには小さな創作をするのがいちばん。どんな天才だっていつも評価Aの作品を作れっこないわ」 「芸術のためにはゆとりと豊かさが必要よ」 「お金をとって占いはしない。紙切れやコインのために心をすり減らすのはやめたの。ここは私にとって楽園だわ……」 「生きることは演じること」 「あなた、幸せにおなりなさいね」 ◆JJ身上調査書
姓名:ジョアナ・ジョイス(Joanna Joyce) 愛称:JJ 年齢:32歳 性別:女 血液型:A型 誕生日:11月3日 星座:さそり座 身長:161cm 体重:58kg 髪色:ライラック色 瞳の色:明るいブルー、薄い黄色混じり 視力:左右0.8 きき腕:右 声の質:���らかく静かな声(icv.井上喜久子) 手術経験や虫歯、病気:歯科矯正の経験あり、軽度のディスレクシアで文字の読み書きに難あり 身体の傷、アザ、刺青:太ももに小さなチューリップのタトゥー その他の身体的特徴(鼻や目の形、姿勢、乳房、足、ホクロなど):そばかす、口元にほくろ、グラマー セックス体験、恋愛、結婚観:交際経験は2人 身持ちが堅い 結婚に希望が持てずにいる 尊敬する人:ココ・シャネル 恨んでる人:いないと信じる 将来の夢:大きな庭のある家でハーブを育てる 恐怖:赤い爪 癖:目を伏せる 酒癖:酒は飲まないが、飲むと眠くなる
*交流向け 一人称:私 二人称:あなた 呼び方:ミズ、マダム、ミスター、ファーストネーム呼び
*概要
劇団員であり「カサブランカ」という名の店で待ち受ける占い師。名刺には白い魔女と書かれているが、実態は主にカードを使う占い師でありヒーラー、助産師でもある。占いではお金を取らず、望む相手にヒーリンググッズやお守り、お茶と軽食を提供する。 演劇では年齢層の近い女性の役が得意で、声の操る演技が得意。ナレーションを担当することも。役は求められればえり好みはしないが、激しくダイナミックな動きのある演技、長すぎるセリフは苦手。 花と料理と芸術、ハーブを育てることとお菓子作りが好き。女性と子供に特に優しい。
*性格
現実的で繊細、親しみやすく社交的。心優しいが少々おせっかい。人をもてなしたり楽しませたりするのが好き。本能的な判断力は優れているのだが、疑り深く優柔不断なところもある。包容力があり、忠実で愛情深い。やや頑固。自分の仕事にプライドを持っており、何をするにも自分らしさを大事にしている。人当たりが良く女性や子供には特に甘い顔をしてしまうが、嫌だと思えばそれをきちんと伝えるようにしている。こだわりが強く完璧主義的なところが仇になるときもしばしば。 注意深く他人を思いやり、人の気持ちがよくわかるゆえに疲れてしまうことがある。淑女然とした振る舞いをするが、内心では感情が激しく不安定になることも多く、そのようなときは少し気分家になる。不満がつのると人から離れ、自分ひとりの世界に浸ることで落ち着きを取り戻す。基本的には人が大好き。
*人間関係 人と一緒にいるのが好きで社交的。人間関係の安定のために進んで努力するタイプ。安心感のある相手を好むが、自分に刺激を与えてくれる人と話すのも好き。他人の不調にすぐ気づき、女性や子供相手にはおせっかいなほど気を向けてしまう。相手のフィールドに赴くよりは、自分の領域で他人をもてなすことが大好き。愛する人には過剰なほど献身的になる。
*家族関係、幼少期体験 イギリスのカンタベリー出身。イギリス人の父とルーマニア系ロマ(後述)の母を持ち、イギリス国籍を持つ。まったく文字の読み書きができないディスレクシアの母から同じ体質が遺伝したものの、困難だが少しは読めるという差異から「まともなイギリス人としての生きる」ことを期待され、踊りや占いなどロマの文化から遠ざけられて育った。本の読解に人の何倍も時間がかかるなか血の滲むような努力で看護師になったが、文字の読み書きが困難であることがどこかから患者に広まり、技術的には問題ないレベルで���るにもかかわらず不安から患者に施術を拒否されるようなことが増え、それに耐えかねて看護師を断念する。 次の仕事を探す中たまたま頼った女性からロマの占い師を紹介され、初めて触れた占いというものに感銘を受ける。そして自身もまたロマのルーツを持つことを思い出し、占いやヒーリングに興味を持つ。母に大反対されながらも家を飛び出し、別の方法で人を癒す術を身につけたいと願い、占いを生業にしていった。ロンドンで占い師としてそれなりにやっていけるようになった頃、スタンダップ・コメディアンのオリバー・スミスと出会う。 *ルーマニア系ロマ、JJの母について ロマとは一般にはヨーロッパ(欧州)で生活している移動型民族を指すジプシーの中で最大勢力の民族。ルーマニア語圏の場合ロミとすることもある。ロマの人種的分類については現在でも定説が存在せず厳密にどの人種に分類できるかはいまだに判明していない。正確な呼び方について文化的、言語的に言い切ることができないため、ここでは外名である「ジプシー」ではなく彼らの自称する「ロマ」を用いており、JJの母である「ルーマニア系ロマ」とは架空の民族。 JJの母がいたコミュニティは血縁とそうでないものも人種もさまざまに混じり合い独自のロマ語で会話をする者たち��、貧困層の神秘主義者がほとんど。文字を持たないため遺伝性のディスレクシアの者も非常に多い。占いや薬師、踊り子、楽団などを主な生業としており、国家を持たないため国籍もない。独自の文化を持ち、神を一柱選んで生涯の守り神とする。同じく魔女であったJJの母はルーマニア語と英語が少し話せたことから旅行客のイギリス人と恋に落ち、結婚する運びとなった。 大抵の者がものすごい貧困と差別を経験しながら育つ。血縁者ではないがJJとルーツを同じくする初演のソールはこのコミュニティで15歳まで育った。
*能力 劇団員としては人並み。動きで見せるよりは声を操る演技が得意で、有名なところではレ・ミゼラブルのファンティーヌ、真夏の夜の夢ティターニア、シカゴのハニャック、ハムレットのオフィーリアなど、脇役ながらやや悲劇的な女性役が多い。ナレーションや情感のこもった歌も上手。逆にコミカルで楽しい演技や激しいダンス、アクロバティック、長台詞は苦手。 占いを生業にしているとおり、スピリチュアルな分野が専門。とはいえ本人にサイキック能力のようなものがあるわけではなく、混ぜたカードから偶然出た一枚から解釈するカードリーダーとしての経験で相手を占う。他にも魔女としてのまじない、儀式、呪文なども習得してはいるが、あまりやすやすとは人に見せない。 医学的な看護技術を持ち、傷の手当などが手早く正確。
*好きなもの 食べ物:スコーン、マフィン、かぼちゃ、トマト、イチゴ、ブルーベリー、ラズベリー、マスカット、きのこ類 飲み物:紅茶、ハーブティー、シナモン入りのホットワイン、コーラ 季節:冬 色:白 花:ピンクのチューリップ、カサブランカ、白バラ、トルコキキョウ、カーネーション 香り:草花の香り 香水はラグーナの庭/エルメス(甘くて優雅な香り、マドンナリリー、シーノート、ウッディ) 異性:優しくて困っている人を助けられる人 書籍:ほとんど読まない 画集を眺める程度 動物:動物はだいたい全般が好き 花につくもの以外は虫も好き ファッション:フェミニンで上品なワンピース、いつも白が基調 場所:海、森林、自宅、大きな庭、カフェ、バスルーム 愛用:ゴールデンタロットカード 趣味:花とハーブの世話、料理、お菓子作り、ジャム作り、部屋の飾り付け、キッチンのラベリング
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好きな映画全部
インターステラー
寄生獣
LIFE!
パルプ・フィクション
インセプション
ファイトクラブ
渇き。
ゼロ・グラビティ
レ・ミゼラブル
ダークナイト
ショーシャンクの空に
セブン
ホーム・アローン
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー
風立ちぬ
プリズナーズ
地獄でなぜ悪い
レオン
千と千尋の神隠し
リトル・ミス・サンシャイン
ジャージー・ボーイズ
ソーシャル・ネットワーク
アルゴ
それでも夜は明ける
キック・アス
ダラス・バイヤーズクラブ
ナイトメアー・ビフォア・クリスマス
ホーム・アローン2
ホーム・アローン3
塔の上のラプンツェル
ダークナイト ライジング
ディパーテッド
桐島、部活やめるってよ
かぐや姫の物語
イエスマン “YES”は人生のパスワード
英国王のスピーチ
イングロリアス・バスターズ
ドラゴン・タトゥーの女
ロード・オブ・ザ・リング三部作
白ゆき姫殺人事件
トイ・ストーリー3
モンスターズ・ユニバーシティ
トレインスポッティング
シン・シティ
となりのトトロ
ゴッドファーザー
マルコヴィッチの穴
ホビット三部作
リアリティのダンス
レザボア・ドッグス
ファインディング・ニモ
ノーカントリー
127時間
Mr.インクレディブル
スター・トレック
ヒックとドラゴン
ザ・タウン
レイダース/失われたアーク《聖櫃》
シュガー・ラッシュ
モンスターズ・インク
トイ・ストーリー
レミーのおいしいレストラン
ローン・レンジャー
パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト
トイ・ストーリー2
パイレーツ・オブ・カリビア���/ワールド・エンド
アラジン
ウォーリー
ライオン・キング
シュレック
フランケンウィニー
カーズ
バグズ・ライフ
プリンセスと魔法のキス
ナショナル・トレジャー
Disney's クリスマス・キャロル
ファンタジア
カーズ2
リロ&スティッチ
ロジャー・ラビット
スラムドッグ$ミリオネア
ジャンゴ 繋がれざる者
ソウ
マイティ・ソー
ウォッチメン
her/世界でひとつの彼女
アメイジング・スパイダーマン2
キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー
X-MEN:フューチャー&パスト
青天の霹靂
スタンド・バイ・ミー
月に囚われた男
銀河ヒッチハイクガイド
インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国
LOOPER/ルーパー
凶悪
ジュラシック・パーク
ハート・ロッカー
クラッシュ
ミリオンダラー・ベイビー
ディア・ハンター
スティング
西部戦線異状なし
ファーゴ
インサイド・ルーウィン・デイヴィス
バーバー
ビッグ・リボウスキ
ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!
グランド・ブダペスト・ホテル
パシフィック・リム
アイアンマン3
ハリー・ポッターと賢者の石
スノーピアサー
バットマン ビギンズ
シャッター アイランド
X-MEN:ファースト・ジェネレーション
アイアンマン
トゥルーマン・ショー
ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル
トランスフォーマー
ヒューゴの不思議な発明
ウルヴァリン:SAMURAI
プライベート・ライアン
RED/レッド
ネブラスカ
キル・ビル
ナイトミュージアム
アイアンマン2
バイオハザード
ミッション:8ミニッツ
宇宙人ポール
ターミネーター2
ミスティック・リバー
ゾンビランド
硫黄島からの手紙
ボーン・アイデンティティー
プロメテウス
死霊館
ターミネーター
ナルニア国物語:第1章/ライオンと魔女
2001年 宇宙の旅
トランスフォーマー/リベンジ
21ジャンプストリート
セント・オブ・ウーマン/夢の香り
グッドフェローズ
ローマの休日
タクシードライバー
宇宙戦争
ゾディアック
戦火の馬
ジョーズ
X-MEN2
天使と悪魔
コンテイジョン
ゼア・ウィル・ビー・ブラッド
クローバーフィールド/HAKAISHA
インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説
エイリアン
インディ・ジョーンズ/最後の聖戦
マイ・ブラザー
アダプテーション
イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ
トロピック・サンダー/史上最低の作戦
バットマン リターンズ
悪魔のいけにえ
ターミネーター3
アイアン・ジャイアント
ザ・ファイター
インシディアス
3時10分、決断のとき
プレデター
ジュラシック・パークIII
激突!
アメリカン・グラフィティ
ダーティハリー
タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密
THE 4TH KIND フォース・カインド
AVP エイリアンVS.プレデター
スパイキッズ3-D:ゲームオーバー
デッド・サイレンス
独裁者
市民ケーン
イーグル・アイ
テキサス・チェーンソー
ゴーストシップ
マン・オン・ザ・ムーン
ワイルドバンチ
地獄の黙示録
アンヴィル!夢を諦めきれない男たち
くまのプーさん (2011)
エイリアン2
ボラット:栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習
ハロウィン(ロブ・ゾンビ版)
ポセイドン
プレデター2
リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い
トレジャー・プラネット
ピンクパンサー (2006)
ハワード・ザ・ダック 暗��魔王の陰謀
ライオン・キング3/ハクナ・マタタ
ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!
ショーン・オブ・ザ・デッド
ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!
バイオハザード II アポカリプス
ディセント
ウォレスとグルミット、危機一髪!
ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ!
崖の上のポニョ
容疑者Xの献身
リアル 完全なる首長竜の日
ポテチ
歩いても 歩いても
ゴジラ
スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ
ワンダフルライフ
仁義なき戦い
機動警察パトレイバー2 the Movie
機動警察パトレイバー THE MOVIE
ホーホケキョ となりの山田くん
クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲
殺人の追憶
少林サッカー
コーヒーをめぐる冒険
カポーティ
MUD -マッド-
トゥモロー・ワールド
96時間
現金に体を張れ
フォックスキャッチャー
はじまりのうた
クロニクル
ミッキーのクリスマス・キャロル
シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア
奇跡
ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT
狼の死刑宣告
ブギーナイツ
アメリカン・スナイパー
ワイルド・スピード EURO MISSION
イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
22ジャンプストリート
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん
ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
セッション
インヒアレント・ヴァイス
素晴らしき哉、人生!
プールサイド・デイズ
ザ・レイド
ザ・レイドGOKUDO
キッズ・リターン
そして父になる
アウトレイジ ビヨンド
3-4x10月
十三人の刺客
シンデレラ
バック・トゥ・ザ・フューチャー
エターナル・サンシャイン
アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
マッドマックス 怒りのデス・ロード
インサイド・ヘッド
ナイトクローラー
ほんとにあった!呪いのビデオ THE MOVIE2
フロム・ダスク・ティル・ドーン
アントマン
続・荒野の用心棒
ゾンビ
ミーン・ストリート
悪の法則
茄子 アンダルシアの夏
バクマン。
野いちご
ヴィジット
食人族
グリーン・インフェルノ
ダイ・ハード
007 カジノ・ロワイヤル
007 慰めの報酬
007 スカイフォール
知らない、ふたり
イントゥ・ザ・ワイルド
サイコ
残穢 -住んではいけない部屋-
サウルの息子
鬼談百景
オデッセイ
スティーブ・ジョブズ
恋人たち
ババドック 暗闇の魔物
ヘイトフル・エイト
デスプルーフ in グラインドハウス
横道世之介
冷たい熱帯魚
メガマインド
ビースト・オブ・ノー・ネーション
イコライザー
ドライヴ
[リミット]
マジカル・ガール
スポットライト 世紀のスクープ
ボーダーライン
バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生
ズートピア
モヒカン故郷に帰る
ブロンソン
レヴェナント 蘇えりし者
ハロウィン(オリジナル)
ヘイル,シーザー!
アイアムアヒーロー
ディストラクション・ベイビーズ
ヒメアノ~ル
海よりもまだ深く
晩春
クリーピー 偽りの隣人
FAKE
10クローバーフィールド・レーン
エクス・マキナ
死霊館 エンフィールド事件
用心棒
シン・ゴジラ
もらとりあむタマ子
シング・ストリート 未来へのうた
ジャングル・ブック
スキャナー・ダークリー
エンド・オブ・ウォッチ
ナイスガイズ!
ハドソン川の奇跡
怒り
真夏の方程式
永い言い訳
オーバー・フェンス
SCOOP!
ソーセージ・パーティー
アウトロー
ぼくのおじさん
プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命
最後の追跡
葛城事件
ダゲレオタイプの女
淵に立つ
無垢の祈り
CURE
GO
回路
ソドムの市
エブリバド・ウォンツ・サム!!
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
ロッキー
ロッキー2
ロッキー3
ロッキー・ザ・ファイナル
アメリカン・スリープオーバー
将軍様、あなたのために映画を撮ります
ミラーズ・クロッシング
アンジェラの灰
トーキョードリフター
アンタッチャブル
パッチギ!
沈黙ーサイレンスー
はなればなれに
くもりときどきミートボール
クリード チャンプを継ぐ男
福福荘の福ちゃん
お嬢さん
鉄男 TETSUO
その男、凶暴につき
アシュラ
哭声/コクソン
ダンボ
ピノキオ
ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日
キングコング:髑髏島の巨神
SING/シング
ムーンライト
牯嶺街少年殺人事件
64 -ロクヨン-
T2 トレインスポッティング
夜は短し歩けよ乙女
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー vol.2
映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ
マンチェスター・バイ・ザ・シー
美女と野獣
NINIFUNI
スプリット
昼顔
ラースとその彼女
リング
ヴィンセントが教えてくれたこと
パーソナル・ショッパー
岸辺の旅
ジョン・ウィック:チャプター2
キング・オブ・コメディ
ハウルの動く城
戦争のはらわた
ワンダーウーマン
イップ・マン 序章
はじまりへの旅
仁義なき戦い 広島死闘編
マングラー
20センチュリー・ウーマン
人生タクシー
ミラ���ル7号
人魚姫
カンフー・ハッスル
西遊記~はじまりのはじまり~
私はゾンビと歩いた!
マイティ・ソー/バトルロイヤル
IT/イット “それ”が見えたら、終わり。
彼女がその名を知らない鳥たち
スリー・ビルボード
青春の殺人者
ノッティングヒルの恋人
霊的ボリシェヴィキ
聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア
ぼくの名前はズッキーニ
羊の木
シェイプ・オブ・ウォーター
先生を流産させる会
おかえり
どこまでもいこう
誰も知らない
ノクターナル・アニマルズ
蛇の道
タイタニック
ゲット・アウト
レディ・プレイヤー1
予兆 散歩する侵略者
旧支配者のキャロル
ちはやふる3部作
泳ぎすぎた夜
君の名前で僕を呼んで
幼な子われらに生まれ
太陽がいっぱい
Wの悲劇
ゲティ家の身代金
ピーターラビット
デッドプール2
フロリダ・プロジェクト
緑色の部屋
HYSTERIC
雷魚
デトロイト
ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー
ファントム・スレッド
海を駆ける
レディ・バード
やくたたず
ウインド・リバー
赤ちゃん泥棒
ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
ミッション:インポッシブル/フォールアウト
検察側の罪人
きみの鳥はうたえる
寝ても覚めても
ラッキー
パリ、テキサス
イレイザーヘッド
エレファントマン
インランド・エンパイア
ゼイリブ
大いなる幻影
アンダー・ザ・シルバーレイク
灰とダイヤモンド
ザ・マスター
1987、ある闘いの真実
教誨師
遊星からの物体X
パリの恋人たち
893愚連隊
仕立て屋の恋
奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール
アレクサンダーの、ヒドクて、ヒサンで、サイテー、サイアクな日
マンディ 地獄のロード・ウォリアー
blue
新宿乱れ街 いくまで待って!
A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリー
ボーダーライン:ソルジャーズ・デイ
鉄西区
それから
白夜
ヘレディタリー/継承
ジャイアンツ
恐怖の報酬(フリードキン)
スウィートホーム
バムソム海賊団、ソウル・インフェルノ
蜘蛛の巣を払う女
ストライキ
女優霊
叫
サスペリア
ランボー
NAGAHAMA/八月八日
ファースト・マン
ちいさな独裁者
女王陛下のお気に入り
悪夢の香り
バーニング 劇場版
メリー・ポピンズ
アクアマン
わらの犬
大統領の陰謀
グリーンブック
運び屋
スパイダーマン:スパイダーバース
��ィッカーマン
ラブホテル
水で書かれた物語
手をつなぐ子ら
キャプテン・マーベル
暗殺の森
八つ墓村
Seventh Code
13回の新月のある年に
マルタ
ブラック・クランズマン
ドゥ・ザ・ライト・シング
ウォルト・ディズニーの約束
ダンボ(ティム・バートン)
生きてるだけで、愛。
赤い暴行
ワイルドツアー
E.T.
アベンジャーズ/エンドゲーム
北野武、神出鬼没
不滅の女
ヨーロッパ横断特急
THE COCKPIT
囚われの美女
麻雀放浪記2020
トウキョウソナタ
Guava Island
任侠ヘルパー
LOFT
日日是好日
ドッペルゲンガー
ローズマリーの赤ちゃん
リング2
回転
男と女 人生最良の日々
セインツ -約束の果て-
きみと、波にのれたら
ハウス・ジャック・ビルト
ニンゲン合格
スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
アンダルシア 女神の報復
蜘蛛の瞳
さらば愛しきアウトロー
シークレット・サンシャイン
ブルース・ブラザース
ブンミおじさんの森
生気の光
アルキメデスの大戦
絞殺魔
リュミエール!
デス・レース2000年
スイス・アーミー・マン
さらば、わが愛 覇王別姫
ベニスに死す
渚のシンドバッド
ドント・ウォーリー
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト
未知との遭遇
あの店長
ミッドナイト・トラベラー
インディアナ州モンロヴィア
クロール -凶暴領域-
サタンタンゴ
イエスタデイ
ノスタルジア
サクリファイス
ガリーボーイ
ポリス・ストーリー 香港国際警察
救いの接吻
象は静かに座っている
ワイルドライフ
ルナシー
幸福なラザロ
COLD WAR あの歌、2つの心
アイリッシュマン
ゾンビランド:ダブルタップ
コマンドー(日本語吹替版)
突然炎のごとく
ブラザー・ベア
こおろぎ
女の中にいる他人
雪の断章ー情熱ー
哀しき獣
裸の町
マリッジ・ストーリー
暴力行為
罠
6アンダーグラウンド
静かについて来い
この世界の(さらにいくつもの)片隅に
クレイマー、クレイマー
卒業
その女を殺せ
女が階段を上る時
フォードvsフェラーリ
書を捨てよ町へ出よう
続・激突!カージャック
グエムル -漢江の怪物-
動くな、死ね、甦れ!
初恋
山の焚火
ピクニック
かくも長き不在
炎628
私はモスクワを歩く
凪待ち
火口のふたり
50/50 フィフ��ィ・フィフティ
FRANK -フランク-
ロスト・エモーション
仮面/ペルソナ
パディントン
ドニー・ダーコ
第三の男
ミッション:インポッシブル
海炭市叙景
女は女である
フライト
スプリング・ブレイカーズ
スコット・ピルグリムVS.邪悪な元カレ軍団
ソナチネ
ハクソー・リッジ
幻の光
ビトウィーン・トゥ・ファーンズ:ザ・ムービー
ゲームの規則
冬冬の夏休み
夏をゆく人々
デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!
吸血鬼(カール・ドライヤー)
ようこそ、革命シネマへ
戦場のメリークリスマス
フレンチ・コネクション
フランケンシュタイン
ビッグ・フィッシュ
ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語
死霊のえじき
許された子どもたち
グッド・ボーイズ
キートンの大列車追跡
CLIMAX クライマックス
四季~ユートピアノ
自転車泥棒
透明人間(リー・ワネル)
キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン
嵐電
フランケンシュタインの花嫁
謎のストレンジャー
DISTANCE
ナイブズ・アウト
タンポポ
無言歌
新宿黒社会 チャイナ・マフィア戦争
極道戦国志 不動
DEAD OR ALIVE 犯罪者
ディア・ホワイト・ピープル
自由への闘い
ドイツ零年
サハラ戦車隊
アンジェリカの微笑み
ラ・ジュテ
スワロウテイル
バスターのバラード
ヒトラーの狂人
脱出
マン・ハント
れいこいるか
マトリックス
ハッピーアワー
ラストレター
ケス
血
ハスラーズ
コロッサル・ユース
レ・ミゼラブル(ラジ・リ)
何も変えてはならない
外套と短剣
ある女優の不在
豹/ジャガー
殺しが静かにやって来る
オープニング・ナイト
海辺のポーリーヌ
満月の夜
緑の光線
友だちの恋人
ひかりの歌
欲望の翼
ペイン&ゲイン
デンジャラス・プリズンー牢獄の処刑人ー
ブルータル・ジャスティス
鉱 ARAGANE
ヘンリー
フリークス
エヴァの匂い
5時から7時までのクレオ
鵞鳥湖の夜
マリアンヌ
ロシュフォールの恋人たち
PERFECT BLUE
トマホーク ガンマンvs食人族
セノーテ
ヴィタリナ
御用牙 かみそり半蔵地獄責め
暖流
アンダー・ザ・スキン 種の捕食
悪人伝
しとやかな獣
アニエスによるヴァルダ
幸福(しあわせ)
ジャック・ドゥミの少年期
ムクシン
日子
グッド・タイム
アナトリア・トリ���プ
楳図かずお恐怖劇場 蟲たちの家
女体
ノー・データ・プラン
サッド ヴァケイション
サンダーロード
アンセイン 狂気の真実
アニエスv.によるジェーンb.
ユリイカ
ロケーション
血を吸うカメラ
喜劇 女は度胸
喜劇 男は愛嬌
オフィシャル・シークレット
TOURISM
ゲンセンカン主人
オン・ザ・ロック
ブックスマート
ワンダーウーマン1984
リバー・オブ・グラス
続ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画
シカゴ7裁判
マザーレス・ブルックリン
ペイン・アンド・グローリー
マーティン・エデン
ウェンディ&ルーシー
風の中の牝鶏
1917 命をかけた伝令
秋刀魚の味
小早川家の秋
ザ・ライダー
赤ひげ
椿三十郎
酔いどれ天使
JSA
ロスト・イン・ラマンチャ
mid90s
息を殺して
KIDS
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細い目
ナイト・スリーパーズ
アーリーマン
シチリアーノ 裏切りの美学
ほえる犬は噛まない
子猫をお願い
幸せへのまわり道
花束みたいな恋をした
トキワ荘の青春
はちどり
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【S/D】サムと忘却の呪い(仮)1~4
ツイッターに画像で投稿しているS/D小説です。一万文字超くらい。まだ続きます。
もし魔女のロウィーナが、将来自分を殺す男になると知って攫い、殺してしまうつもりだった幼少のサムに情がわいて、自分の子として育てることにしたら? そしてハンターが”魔女狩り”に特化した集団だったら? という妄想から生まれた小話です。シーズン12の11話「忘却の呪い」をオマージュしています。アリシアやマックスという12から登場する魔女キャラにも出てもらってます(彼らはハンターだけどここでは魔女として)。
連載中の小説を書きたいとは思うんだけど宿便状態なので、ガス抜きに小話を書いてる現状です。なのでお気楽な感じで読んでもらえると。。
1
サムの養い親である魔女いわく、日のあるうちの森は獣の領域。だから理性ある魔女や魔法使いは夜に活動し、昼間のうざったい太陽が地上を照らしている間は絹のシーツに包まって体力の回復に努めるのだという。サムにいわせれば怠惰の言い訳にすぎないが、夜更かしな魔女たちの生態がいとおしくもあった。何より夜の彼女らはサムなど足元にも及ばぬほど鋭い英知と魔力の使い手だ。ならば彼女たちと少しばかり生態の異なる自分が、早起きして夜の”活動”の手助けをするのは義務であるし喜びでもある。獣の領域というなら早朝の森は狩りをするのに恵まれた環境だ。彼女たちはウサギのシチューが大好きだけど、そのウサギ��どこで泥の毛皮を脱いできて鍋に飛び込んでくれたのかは考えたがらない。
自分が何者であっても、森を歩くのが好きな男に変わりはなかっただろうかとサムは想像する。下草を踏むたび立ち上る濡れて青い土のにおい。罠にかけた小さな獣をくびくときすら、森はサムと獣のどちらをも憐れんで祝福してくれる。森はサムのびっくり箱だ。彼は自分の生まれた場所を知らない。だけど彼の親がこの森の入口に彼を捨てたとき、赤ん坊と森のあいだに絆が生まれ、その瞬間から森がサムの故郷になったのだ。※
そうだ。森はいつもサムを驚かせてくれる。かくれんぼで遊んでいた七歳の彼を、その懐の深さで半月のあいだかくまってくれ、養い親をすっかりやつれさせてしまった時のように。
その日、狩りを終えたサムの目の前を、遅寝のウサギが飛び跳ねていった。茂みの奥に逃げ込んだウサギを彼は追いかけた。腰には今日のぶんの収穫が下げられていたけれど、もう一匹恵まれたって困ることはない。
茂みの中から黒い毛皮が現われた。サムは手を伸ばそうとしてひっこめた。黒くもなかったし、毛皮でもなかった。朝露で濡れた短いブロンドがゆっくりとサムのほうを向いて、彼はアッと息をのんだ。魔女がウサギを化かして僕をからかおうとしているのか。そうでなければなぜこんな場所に、サムの知らない男がいる?
ところがブロンドの男の懐からさっきのウサギがぴょんと飛び出して、サムの脇を通ってどこかへ行ってしまった。「バイ、うさちゃん」と男はいった。寝ぼけたように、低くかすれた、それなのに、ぞっとするくらい、やわらかな声だった。
「僕はサム」と、サムはいった。まぬけ、と森がささやくのが聞こえた。もしくは自分自身の心の声だったかもしれない。
男は重たげなまぶたを持ち上げて、サムを見上げた。
「やあ、サム」
新緑、深い湖、砂金の流れる小川。男の瞳は輝いていた。
森はまたもサムに驚きを与えてくれた。彼は恋多き魔女たちに囲まれながら、自分が恋することが出来るとは思っていなかった。
この時までは。
2
昼過ぎから始まるブランチの席で、気もそぞろなサムに、養い親のロウィーナはけげんな視線を送る。
「今朝のウサギ、ちょっと血抜きが甘いじゃない? 生臭いのは嫌よ、われわれは吸血鬼ではないのだから」
「そう?」 サムはぼんやりと答える。「そうかな? それ、缶詰の肉だけど」
「サミュエール」 ロウィーナの視線がますます冷たくなる。
「今朝の狩りは空振りだった?」 行儀よくパンをちぎってアリシアがたずねる。彼女は見��目だけではなく、実年齢もサムとさほど離れていない若い魔女だ。母親のターシャ、双子のマックスとともに、ここロウィーナの屋敷に下宿している。
「今朝の狩り……」 思いもかけぬ収穫があったことを姉弟子にどうやって伝えればいいだろう。いや、とサムは意識の中で首を振る。
魔女のなわばり意識の強さといったら、狼人間が可愛く思えるほどだ。人間が――しかもどうやら”記憶があやふや”な、身元の怪しい――神聖な魔女の森に入り込んだと知れたら、ロウィーナははっきりと戦化粧をして森へ勇み、彼を排除しかかるだろう。双子のアリシアとマックスも、彼らは敵とみなした人間に容赦はしない。つまり、明日のシチューの中身が決まるってことだ。
サムはぶるっと震えた。靴の底から顎の奥まで震えは伝わってきた。春の始まりに色づく枝先のように初々しく、美しい彼の瞳が、よく炒めてから煮込んだ紫玉ねぎの横に浮かんでいるさまを思い浮かべて。彼の肉つきのよい白い二の腕を調理するときの甘い香りを想像して。彼の肉を食べる――残酷なはずの行為が甘美な誘惑に感じる自分にうろたえて。
だめだ、だめ。そんなことにはさせない。彼のことは秘密にする。
「今日は、思ったより暖かくて」 サムは本当のことだけを口にする。「血を抜くのが遅すぎて、ダメにしちゃった。毛皮だけはいで、肉は捨てたよ」
「また寄り道をしたんでしょう。狩りのあとはすぐに帰ってこなきゃだめよ。獲物を持ったままウロウロしないの」 ロウィーナは血のような葡萄ジュースで唇を湿らせる。
「でないとあなたが獲物にされるわ」
サムはこっそりと屋敷を抜け出し、森の男を見つけた場所まで急ぐ。
彼はそこにいなかった。けれどたどり着いた茂みの変わりようを見て、逃げたわけじゃなさそうだと安堵する。ただの茂みだったそこは、下草が踏みならされて空き地に変わり、中心の地面は掘られていて、男が簡易なかまどを作ろうとしていたことが見て取れた。
がさがさ音がして、薪になりそうな枝を腕に抱えた男が戻ってきた。サムの顔を見ると一瞬で表情が明るくなる。「サム!」 男は枝を足元に落としてサムに近づいた。その両手がわずかに広げられているので、サムは自分がハグされるんだと気づいた。
サムが躊躇いながら上げた腕の下に、男の腕が入り込んできた。肩甲骨の下に巻き付いた腕がぎゅっと彼の胴体を締める。”抱きしめられた”んだ。魔女たちはサムによく触れたがるけど、頬にキスしたり腕を組んだりするだけだ。
こうして誰かに真正面から抱きしめられるなんて、初めての経験だ。他人の体温を腹で感じるのも。
なんて心地がいいんだ。
「また来てくれたんだな」 男はそのまま顔だけを上げて、同じくらいの高さにあるサムの目を見てにっこり笑った。
サムはまぶしくてクラクラした。まるで、ああ、彼は太陽みたいだ――魔女や魔法使いが忌み嫌う太陽――けれど彼らが崇める月を輝かせる光の源。
���来るっていったじゃないか」 サムはゆっくりと、舌が絡まないようにいった。ハグに動揺したなんて、彼の笑顔にクラクラしたなんて、知られたら、あまり恰好がつかない気がした。恋に長けた魔力使いの男女のスマートな駆け引きを思い返し、取り澄ました顔を作る。「ほら、パンとジュースを持ってきた。昨日から何も食べてないって、ほんとう?」
「ありがとう!」 男はサムのぺたぺたと頬を叩いて感謝を表した。――状況を考えれば、それは感謝のしぐさで間違いないはずだ。サムにとってはあまりに親密すぎたので、すぐには思い当たらなかった。だけど、男は四六時中、出会った人間の頬をぺちぺちしてますとでもいうように平然として、その場に屈むとリュックの中を探りだす。
サムは早まる動悸を抑えるため、こっそり深呼吸を繰り返した。
「どうかな、憶えてないんだ。何も憶えてない」 男は瓶の蓋を捻って開け、すぐに半分を飲み干した。よほど喉が渇いていたんだろう。きれいに反った喉のラインを必要以上に凝視しないようにサムは気をつけた。「ほんとに、参ったよ。腹が減って、おまえの捨てていったウサギを焼こうと思ったんだ。でも火を熾す道具が見つからなくて」
「何も憶えてないって、どうしたの? どうしてこの森に入ったんだ? 町からそんなに遠くはないけど、ここが魔女の森だってわかってるだろう? それとも、よそから来たの?」
「それが、わかんねんだ」
「何も憶えてないの? 自分の名前も?」
彼は、驚いたように目をしばたかせた。まるで自分に名前あることすら、失念していたように。
その様子に異様さを感じて、サムはまさか、と思った。記憶喪失の人間が、”自分の名前を思い出せない”と悩むことはあっても、”自分に名前があること”を忘れて明るく振る舞うなんてことがあるだろうか。この異様さは、まじないの気配に通じる。彼の様子は、身体的、精神的な後遺症による記憶喪失であるというよりも、呪いによるダメージを受けている状態だと思ったほうがしっくりくる。
でも、まさか。だれが彼を呪うっていうんだ? 中世ならともかく、このセンシティブな時代に魔女が人間を呪うなんてありえない。
「うーん、たぶん、Dがつく気がする」 男が考え込むと眉間にしわができた。「D、D……ダリール、ディビット、違う……。デ……デレック? パッとしねえなあ……」
「ダンカン? ダドリー?」
「うーん?」
「ドミニク? ドウェイン?」
「ドウェイン? いいかもな。おれをそう呼ぶか?」
「それがきみの名前なの? 思い出した?」
「うーん? 多分違う気がする。でもいかして���よな」
サムは首を振った。彼の愛嬌に惑わされてはいけない。「もう少し、思い出してみようよ。デイモン、ディーン、ダライアス、デイル……」
「それだ!」
「デイル?」
「いや、もう一つ前の」
「ダライアス? ディーン?」
「ディーンだ!」 男はうれしそうに歯をむき出して笑った。「おれの名前はディーンだ。それに、思い出したぞ。おれには弟がいる」
「いいぞ。どこに住んでいたかは?」
男はさらにしわを深くして考え込んだが、しばらくしても唸り声しか出てこない。
サムはちらばった薪を集めて、かまどの枠を組み立てた。気づくとディーンがじっと見つめていた。
「何も思い出せない」 あっけらかんとしていた少し前と違って、悲しみに満ちた声だった。「どうしちまったんだろう。おれ。ウサギを抱いて、おまえを見つけた。それ以前のことが、何も思い出せないんだ」
「たぶん……たぶんだけど、きみは呪われたんだ」 サムは慎重に言葉を選んでいった。「魔女のことは、憶えてる……というか、知ってるだろ? 今ではそんな悪さをする魔女は少ないけど、トラブルになる自覚もないまま、彼女ら――彼かもしれないけど――を怒らせて、呪われるってことも、ないわけじゃないんだ」
「呪われた?」 ディーンは大きな目を限界まで開いた。「おれが? どうして?」
「わからない。もしかしたら違うかも。でもきみ、どこにも怪我はないようだし、記憶がないっていうのに、やたら気楽だったろ。それにここは魔女の森だよ。人間は入ってこない。基本的にはね。なのにきみがここにいるっていうのが、魔女が関わっているっていう証拠にならない?」
「おまえはずいぶん賢そうに話すんだな」 ディーンは鼻をすすった。水っぽい音がした。「何が証拠になるっていうんだ。おれはどうすればいい? どこに行けばいい」
「ここにいればいい」 サムは火種のないかまどを見つめて、それから首を振った。「ここじゃだめだ。ここは屋敷から近すぎるし。僕の家族に見つかったらディーンが危ない」
「何をいってるんだ? 怖いぞ」
「大丈夫。もっと奥に、今は使ってないあばら家があるんだ。たぶん僕しか知らない。そこにディーンをかくまってあげる。僕は魔法使いなんだ――まだ一人前じゃないけど。いろんな本を読める。それに、僕の親はすごい魔女なんだ、ディーンにかけられた呪いを解く方法をきっと知ってる」
「まて、待てよ。おまえが魔法使い? おまえの親が魔女? おれに呪いをかけたのはその魔女じゃないのか? ここはその魔女の森なんだろ?」
「ロウィーナは人に呪いなんてかけないよ。そんなにヒマじゃないんだ」
「わかんないだろ」 ディーンの声に水っぽさが増した。と思ったら、彼はぽろりと涙をこぼしている。サムは頬を叩かれた時以上に衝撃を受けた。こんなに静かに泣く人は見たことはなかった。
「ディーン、ごめん。泣かないで」 折れた薪の上に尻を乗せて、膝を折りたたんで小さくなっているディーンの横にしゃがみ込む。「大丈夫だよ。僕が守ってあげる。記憶を取り戻してあげるから」
ディーンはサムを見つめて、まばたきもせずまた二粒涙を落した。サムを奇跡を見守っているみたいにじっと彼を待った。やがて彼は赤い���ぶたで瞳を覆って、小さくうなずいた。
「わかった。おまえを信じるよ」
3
��ずまやに移動して寝床を整えた頃にはもう日が暮れかけていたので、サムは急ぎ屋敷に戻らないといけなかった。夕食にはコックを雇っているとはいえ、実際に食卓を作るのは女主人であるロウィーナの指示をうけたサムだ。
「また何か食べ物を持ってくるよ。遅くなるかもしれないけど、夜中までには必ず」
「サム、おれの記憶、戻るよな?」
小屋の質素な木戸を開けたサムは振り返る。戸の影で彼の不安そうな顔の半分が隠れてしまっている。サムより年上に見えるのに、心内を素直に伝えてくる瞳だけをみるとディーンは幼い子供のようだ。このまま留まりたい思いでいっぱいになる。
彼が人間ではなかったら。彼が記憶ではなく、過去を持たない精霊だとしたら、それは森がサムに与えた贈り物なのではないか。
彼を森の精霊だといって屋敷に連れ帰り、ターシャやマックスが連れているような使い魔として側に置く。何も知らず、誰と繋がりもない彼の唯一の主人となる。彼の食べるもの、着るもの、行動の範囲の一切をサムが指図し、彼のすべてを支配する。それがサムに、許されているとしたら?
あるいは彼をこのままここに留め置いて、二人で秘密の生活を続ける。ディーンには記憶を取り戻す方法がなかなか見つからないといっておけばいい。小屋を出ればいかに危険かを言い聞かせれば、逃げられることはないだろう。
違う。僕は彼を支配したいんじゃない。ただ彼に――
「キスしたいな……」
「えっ」
「えっ、あっ、いや」 妄想が強すぎて声に出ていたと知ってサムは慌てた。
「き、君の記憶は戻るよ、僕にまかせて。でも、いったん戻らなきゃ。ロウィーナは僕が家にいると思ってる。彼女は僕の部屋に勝手に入ったりしないけど、ディナーの準備に遅れたら魔法の鏡で覗かれるかも。僕がいないことがばれたら大騒ぎになる、森に捜索隊が出されたら大変だ。僕が行方不明になったのはもうずっと前のことなのに……」
「サム、おれにキスしたいのか」
「えっ」 サムは片手で戸にすがりつきながら唇をこすった。「なんで?」
「なんでって、そういっただろ? おれは、憶えてる」
そういって、自分の唇の感触を確かめるように、ディーンは舌をそろりと出して下唇を噛む。赤い舌と、暗がりでもきらりと輝く白い歯が、熟れたベリーのような唇から覗いた。サムは狩人の本能で手を伸ばした。指先が唇に触れ、湿った感覚がした。頬を滑った指が、耳たぶに触れると、そこは唇よりも熱かった。ディーンはため息を吐いた。
「サムの手、でっかいな」
ディーンは少し俯いて、サムの手が自分の項を包み込めるようにした。サムは夢心地で一歩近づき、両手でディーンの頭を抱く。後ろで木戸が閉まる音がする。ガラスの嵌っていない窓が一つあるだけの小屋の中は真っ暗になった。
ディーンは目を���じたままゆっくりを顔を上げた。親指の付け根に彼の穏やかな脈動を聞く。野性の鹿に接近を許されたときのように誇らしく、謙虚な気持ちになった。サムは初めてキスをした。
4
何をいわれるかとひやひやしながら屋敷に戻ったが、ロウィーナは不在だった。かわりにアリシアがキッチンを取り仕切っていた。気が緩んだサムは今度はアリシアににやけ顔が見られないかと心配するはめになった。味見をして、雇いのコックにしょっぱいわね、でもこれでいいわ等と指示を出しながら、アリシアはサムを観察している。魔女というのはみんなそうだ。気安いふりをして他人の心を探るのに余念がない。
食卓が完成するころにロウィーナとターシャが帰ってきた。二人が揃って出かけていたことにサムは驚いた。何か大きな事件があったのかと思い、それからあずまやのディーンのことがばれたのではないかと怖くなる。
ロウィーナは冷静を装っていたけどイライラしているのは明らかだったし、ふだん泰然としているターシャもどこか落ち着きがない。
「二人でどこに行ってたんだ?」
食事が始まってしばらくして、マックスが尋ねた。サムは二人の魔女の答えを待つ間、ろくに呼吸もできなかった。ロウィーナがグラスを煽ったので、ターシャが話し出した。
「ロックリン家よ。招待状を出しに行ったの。とんでもないことを聞かされたわ。大事が控えているから心配ね。おかしなことにならなければいいけど。ロウィーナ……」
「ギデオンが死んだこと?」 ロウィーナはその話題を口にするのも腹立たしいとばかりにターシャをにらんだ。「大したことじゃないわ、あの腐った三つ子が今までそろっていたことが不吉だった。わざわざ私たちに話したのはサムの儀式にケチをつけるためよ。なめられたもんだわ、たかが数十年ばかりアメリカに入植したのが早いからって」
「ロックリン家? 私もあいつらは嫌い。でもしょうがないわ、あっちは由緒正しいドルイドのスペルを持ってる」 アリシアがみんなの顔を見回す。「私たちにあるのは……実地で身に着けた薬草学に、星占術、たくさんの水晶。あちこちの流派を回って極めた最先端の魔法術。あれ……全然悪くないかも?」
「さしずめ野草派ってとこだな」 マックスが調子を合わせる。「雑草と自称するのはやめておこう。でも、サムの儀式は予定どおりやるんだろ?」
「もちろんそのつもりよ」
「僕の儀式って?」 みんなが当然のようにいうから、サムは何か重要な予定を自分だけ聞き逃していたのかと焦った。ロウィーナとターシャ親子はともに定期的に魔法の儀式を行う。サタンへの忠誠を示し、魔力を高めるためだ。子どもにはまだ早いといって、いつものけ者にされていたから、どうせ自分には関係ないと思ってよく聞いていなかったのかも。
「僕も儀式に参加できるの?」
それを熱望していたのは覚えているが、ディーンを匿ってる今は��けたい。
「いいえ、そうじゃない。サム。”あなたの”儀式よ」 サムが言い訳を探す間もなくロウィーナはいった。
彼女は背筋をピンと伸ばしてサムを見た。「あなたはもう十六歳。サタンに忠誠を誓って一人前の魔法使いになる時が来たの。小さいころに教えたでしょ、森のストーンサークルで儀式を行う。この土地に住まう全ての魔女と魔法使いの立ち合いのもと、新しい魔法使いの誕生を祝うのよ」
サムはあっけにとられた。「そんな――大事なことを、なんで――もっと前に、言ってくれなかったんだ」
「逃げちゃうと困るでしょ」 アリシアがあっさりといってのける。「多感な思春期の子どもに”おまえは十六歳になったら”死の書”にサインしてサタン様の下僕になるんだ、それまで純潔を守れ”なんていったら大変なことになる。私もマックスも、知らされたのはその日の夕方。まあそれまでも、男の子と仲が良くなりすぎないように見張られていたけどね」
「その反動が今きてる」 マックスが気だるそうに顔を向けて、双子はほほ笑んだ。
「その日の夕方だって?」 サムは仰天した。「まさか、今夜?」
「まさか。今日は招待状を出しただけ。儀式は明日の夜」 ロウィーナはため息を吐いて再びカトラリーを持つ手を上げる。「まあ、だから、明日の昼間の勉強はお休み。あなたは寝ていなさい。真夜中に始め、明けの明星が昇るまで行うのが通例なの。初めての儀式だから特に長く感じるものよ。主役が居眠りなんて許されませんからね、しっかり寝ておくことね」
「私たちもその助言がほしかったわ」 双子が嘆くと、ターシャが「私の若いころなんてもっとひどかった。真夜中に叩き起こされて……」と話を始める。サムはそれを耳の端で聞きながら、味のしない肉を噛み締めた。大変なことになった。
ストーンサークルはディーンをかくまっているあずまやのすぐ近くにある。ただの天然のアスレチックジムだと思っていた古ぼけた巨石にそんな使い道があったなんて知らなかった。
ディーンを別の場所へ移す? いや、他に森に彼を隠せるような場所なんて思い当たらない。もしも永久に彼を森に閉じ込めておくっていうなら別だ――大木のうろ、崖下の洞窟、そういった場所を幾つか知っている――そこを拠点に家を作ることができる。何週間、何か月、何年もかけていいなら、サムは彼のために新しい屋敷だって建てられる――だけどそうじゃない。そうはならない。ディーンの記憶を取り戻して、彼の帰る場所を思い出せてあげるんだ。
「ロウィーナ……聞いていい?」 サムは何でもないふうに装って質問した。「人の……記憶を消す魔法ってあるだろ? 難しいのかな?」
当然ながら、何でもないふうに答えてくれる魔女はいなかった。みんながサムの顔を見るので、サムは急いで唐突に変な質問をした正当な理由を披露しなければならなかった。
「思春期に……」 喉にパンが詰まったふりをして咳をする。「その、儀式のことを聞かされたって、ああそう、って受け入れる子もいるかもしれないだろ。まずは話してみないと。隠すのはあんまりだ。それで、すごくその子が嫌がったり、自暴自棄になるようなら、その時は記憶を消す魔法を使えばいいんじゃないかと、そう思ったんだ。ただ思いついたんだよ」
一瞬、間があいて、マックスが「ひゅー」と口笛を吹くまねをする。「その考え方、俺は好きだな。冷酷で、合理的で。さすが、ロウィーナの一番弟子」
ロウィーナは口元でだけ微笑み、ゆっくりと首を振った。「そうね、でも少し、短絡的よ。一時的に記憶を奪うことは、ハーブの知識があれば簡単にできる。だけど人の記憶を完全に消し去るのはとても難しい魔法なの。呪いというべきね。そんなものは仲間に使うべきじゃない」
「一時的なものだったら、ハーブを使えば治る?」
「ええ。ジュニパーベリー、それとほんの少しのベラドンナ……」 ロウィーナはスープをすすりながらすらすらと必要なハーブの種類を挙げていく。サムは記憶しながら、どれも屋敷の薬草庫や温室から拝借できるものだと思って安心した。「……マンドレークの頭をすり鉢にしてそれらを混ぜ合わせ、魔力を溜めた水に浸す。それを飲むのよ。簡単でしょ」
「それは記憶を失わせるほうのレシピじゃない?」 薬草学に長けたターシャが口を出す。ロウィーナはそうだったわと頷いた。「記憶を戻すほうなら、ベラドンナを入れちゃだめだった。だけどそういったハーブの魔法は時間とともに解けるから、ふつうはわざわざ作らないのよ」
「記憶をあれこれする魔法はドルイドが得意だったわね。ロックリン家にも伝わってるはずよ、あの書……」 ターシャは訳ありげな微笑みをロウィーナに向ける。「”黒の魔導書”。あれのせいで多くの魔女が高いプライドを圧し折ることになったわ。まあ、でも、今ではちょっと時代遅れね」
「あいつらの頭は中世で止まっているのよ」 ロウィーナは憎々し気につぶやいて、ツンと顎を上げた。
その夜中、各々が部屋に戻ってそれぞれの研究や遊びに没頭している時間、サムが眠っていることを期待されている時間に、彼はこっそりとベッドを抜け出してキッチンに忍び込んだ。用意したリュックサックにパンと果物を詰め込む。早くディーンのところに戻りたかった。空腹で不安な思いをさせたくないし、新しいランプを灯して暗闇を払ってやりたい。それになにより、彼と話がしたかった。記憶がなくてもかまわない。彼の声を聞いていたい。彼にどうして僕とキスをしたのと尋ねたいし、どうして僕がキスをしたのかを話して聞かせたい。もう一度キスをさせてほしいといったら彼は頷いてくれるだろうか。サムは期待でうずく胸を押さえた。断られないだろうという確信がそのうずきを甘いものにした。
「サム?」 暗がりからロウィーナが現われてサムの心臓は押さえたまま止まりかけた。冷蔵庫のドアを開けてうずくまる養い子をしばし見下ろして、ナイトドレスにローブを羽織った彼女はふと目元をやわらげた。
「眠��ないのね。儀式の話をしたから」
「う、うん。そうなんだ。喉が渇いて……」 サムは冷蔵庫のドアを閉めて立ち上がり、足元のリュックを蹴って遠ざけた。暗いから見えないはずだ。
「心配することはないわ。あなたはただそこにいて、”死の書”にサインをすればいいだけ。あとは私たちの長い祝福を聞いていればいいのよ。夜が明けるまでね」
「勉強はたくさんさせられてるけど、夜更かしの授業はなかったな」
「何をいってるの。あなたが毎日遅くまで本を読んでいること、呪文や魔法陣の勉強をしてることは知ってるわ」 ロウィーナはそういってサムを驚かせた。彼女は手を伸ばしてサムの伸びた前髪を撫でつけてやった。
「情熱のある、熱心な生徒を持って光栄だわ。あなたはきっと、偉大な魔法使いになる。私にはわかる。あなたがほんの赤ん坊のころからわかってたわ」
「森で僕を拾った時から?」
んー、とロウィーナは目を細めて考えるふりをした。「やっぱり、あなたが自分の足でトイレまで歩いていけるようになった頃かしらね」
サムは笑って、自分を育てた魔女を見つめた。彼女の背丈を追い越してもうずいぶん経つ。彼女がサムの身体的な成長について何かいったことはなかった。けれど時々、彼女が自分を見上げる目が、誇らしく輝いているように思える瞬間があって、サムはその瞬間をとても愛していた。
「ロウィーナ」
「なあに」
「僕、成人するんだね」
「魔女のね。法律的にはまだ子ども」
「ロウィーナのおかげだ。僕、あなたの子どもであることが誇らしいよ」
ロウィーナの目が輝いた。
「まだまだ独り立ちはさせないわ。もう少し私のしごきに耐えることね」
「覚悟しとくよ」
ロウィーナは冷蔵庫を開けて水のデカンタを取り出した。キッチンを出ていこうとする彼女の柳のような後ろ姿に息を吐いて、踏みつけていたリュックを引き寄せる。何か思い出したようにロウィーナが振り向いて、サムは慌ててまたリュックを後ろ脚で蹴った。
「いくらでも夜更かししていいけど、明日の朝は狩りに行っちゃだめよ。食事の支度は双子に任せるから」
「なんで?」
ロウィーナは肩をすくめた。「ロックリン家のギデオン。彼が死んだのは夕食の時にいったわね。死体が森で見つかったのよ。彼らの領地は森の東側だけど、ハンターはそんなこと気にしないわ」
サムはギクリとした。「ギデオンはウィッチハンターに殺されたの?」
「魔女を殺せるのはウィッチハンターだけよ」
「だけど、そんなのニュースになるだろ」
「正当な捕り物ならハンターは死体を残さないし、カトリーナの様子じゃ何かトラブルを隠してる。だけど巻き込まれるいわれはないわね。しきたりだから、明日の儀式には彼ら――生き残った二人の嫌味なロックリン家――も呼ぶけれどね。森にはハンターがひそんでいるかもしれない。目撃者がない状況でハンターと遭遇したら、やつらがいうところの違法行為がなくても逮捕されるわよ。だから、サミュエル、明日の儀式にみんなで行くまでは、森に入っちゃだめ」
「わ、わかった」
ロウィーナが行ってしまうと、サムは念のために一度部屋に戻って、ベッドサイドのランプを付けた。それから温室に忍び込み、ハンガーに吊るされているマンドレークを一���、それと必要なハーブを掴んでリュックに詰める。温室の裏口からこっそりと抜け出したサムは、二階で休むロウィーナに心の中で詫びながら、パーカーのフードを深くかぶって、まっすぐ森へ向かった。
◇ ◇ ◇
ツイッターにも書いたけど設定だけは壮大。このあと・というかいま書いてるのは三部作のうちの一部でディーンとは別れて終わる。そしてサムは魔女の権利向上のために戦う革命戦士もどきになり、ハンターのディーンとは敵対関係に。。というロミジュリな。でも大ボスはUKの賢人か悪魔かチャックにでもして魔女もハンターも同じ側で戦うんだな。(そのあたりはボヤボヤ)最終的な問題は二人が兄弟だってどうやってばらすか、ばらした時の反応はどうするかだけど、その時にはもうやることやっちゃって覚悟できてるサミさまになってるだろうからきっとなんとかなる。
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心射方位図の赤道で待ってる
ジャンル
神待ちSFアンソロジー
紹介
待チ人ハ来ズ。 {だから|されど|そして} ぼくらは。
神待ち——寄る辺ない少女がインターネット掲示板で自分を泊めてくれる存在を探すことを意味したその言葉が、いつし��文脈を逃れ、眠らない街を闊歩する。現代、未来、そして別世界に、まだ見ぬ出会いを透視する淡い待望。SFと幻想の視座から祈りを再定義する第四小説誌!
電子版
Kindle
収録作品
01 「神の裁きと訣別するため」 murashit: 箇条書きで語り尽くせる着想を散文によって展開するのは、労のみ多くて功少ない狂気の沙汰である。よりましな方法は、あらゆる事象を項目として書き出して、並列に差し出すことだ。より論理的で、より無能で、より怠惰な筆者は、じゃんけんにかんする完全でしかし短いリストを書く道をえらんだ。
02 「山の神さん」 笹帽子: 家出少女の神籬菜々は、神待ちアプリの暴走によりタイムリープし、大正時代の高校生・広瀬とマッチングしてしまう。下宿の部屋に泊めてもらうことなどできるはずもなく、代わりに広瀬と共に高みを目指す神籬だったが、背後には家出少女の時空補導を狙う魔の手が迫っていた!
03 「囚獄啓き」 小林 貫: 地獄とは、とあなたは思索する。死、罪と罰、終わりのない苦しみ……あるいは閻魔。取り留めのないイメージが交錯する。あなたが創り出す「地獄」へと続く道は無関心で舗装されている。念入りに、決して剥がれ落ちることのないよう幾重にもそれを塗り固めるあなたの姿は否応無しに物狂おしく、また少しだけ滑稽でもある。
04 「杞憂」 鴻上 怜: 北米先住民族の少年杞憂は老呪術師焼き脛の命を受け、機能を喪いつつある〈ポアソンの分霊獣〉の夢へ潜る危険な〈ビジョンクエスト〉を決行する。純情報空間キウィタスで働く女子工学情報生命体の棗と茘枝は、客として訪れた杞憂と出会い彼の秘密へと迫るが……
05 「キノコジュース」 国戸 素子: 俺は美少女魔法使いルシエが大好きな冒険者。大剣を振るって金を稼ぎ、いつかルシエに告白するんだ。でも最近、村のみんなの様子がおかしい。さらにルシエにも不穏な行動を見つけてしまう。村はどうなる?そして恋の行方は?俺は美少女魔法使いルシエが大好きな冒険者。いつかルシエに告白するんだ。
06 「蟹と待ち合わせ」 cydonianbanana: あたかも青く、青という言葉が失われてなお青みがかったような月下の海で、僕たちは今日も漂着物を探して歩く。人類が肉体を失う過渡期を生きる俺たちの日常と、私たちの《普通》。一人称複数の語りが重奏する、百年後のあたしたちによる克明な記録。
07 「ブロックバスター」 津浦 津浦: ひたすらに大きくなっていく放浪大亀/大亀の帰還を待つものども/ものどもの王/その世界にあったもの/その世界にないもの/その世界の外にあるもの/どこにもないもの/どこかにあるもの/生きている私たち。
執筆者
murashit(twitter, website)
笹帽子(twitter, website)
小林貫(twitter)
鴻上怜(twitter, website)
国戸素子(twitter)
cydonianbanana(twitter, website)
津浦津補(twitter)
表紙イラスト
全自動ムー大陸(twitter, website)
刊行日
2019年11月23日
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詩集「十代プリズム」
詩集「十代プリズム」 1.子供時代 2.夢想少女 3.家出少年 4.最終遊戯 5.満員電車 6.夢遊する泡沫 7.政治家たちのナイトクラブ 8.群衆の断末魔(Heart to Heart) 9.杭 10.大丈夫の呪文 11.嫌いな人との付き合い方 12.21XX -オーサカ狂想曲- 13.シースルー・エモーション 14.ラブ・カルチャー 15.二人は恋人同士 16.混沌と瞑想のポピュリズム 17.詩人の生息地 18.青春プリズム
______________________________________________________________________
1.「子供時代」
艶やかに燃える あの頃の思い出 大切なのは自分の意志だ 湧き上がる欲望だ
純粋だった頃の僕にはもう戻れない だけど今できるのは 夢へ走ることだけさ 後悔なんてしたくない だから頑張れる
嵐のように過ぎ去った青春の日々 もう遅すぎると懺悔を繰り返し いつしか僕��ちは大人になってしまった 子供時代を思い出す度に涙が止まらなくなる それでも立ち止まってちゃ何も始まらない 君は君のままで走り出すしかない
艶やかに燃える あの頃の思い出 大切なのは自分の意志だ 燃え上がる欲望だ
僕たちは社会の歯車として生きている 今できる精一杯(ぜんりょく)を 愛する人のためにぶつけて せめて子供時代の自分を裏切らぬよう 理不尽に耐えて ただ生きている 希望がなくとも ただ生きている 愛する人の笑顔のために
愛がなくちゃ ただの歯車さ 愛があるから 生きている価値がある 価値なんて自分で創造するものだ 誰かに認められるものじゃないのさ 自分の道くらい自分で決めればいいさ 誰かが決める人生なんてつまらないじゃんか
そんな当たり前さえ僕らは忘れてしまった 大人になった僕たちはゾンビのように生きている まるで魂を抜き取られたかのように 無表情で社会(マクロ)の一匹として生きている 未来なんて 明日なんて 今日があればそれでいい 画面が友達さ 空想が友達さ 友達なんて何処にもいない 現代社会の縮図
艶やかに燃える あの頃の思い出 大切なのは自分の意志だ 燃え上がる欲望だ 僕が僕でいることだ
純粋だった頃の僕にはもう戻れない だけど今できるのは 夢へ走ることだけさ 後悔なんてしたくない だから頑張れる
涙なんて拭いて 悲しみも吹き飛ばせ 嵐のように変化する 現代(いま)をまっすぐに生きてゆけ 大人たちの声に耳を塞いでいいんだ 子供時代のように自分だけを信じて生きろ
生きているだけで価値なんて生まれない 価値は自分自身で創り出すものなのさ
これは自分という名の物語の始まりに過ぎない
2.「夢想少女」
何かにかぶれて 誰かに紛れて いつかに怯えて 目線を逸らして 時代に遅れて 泣き出して 夢の中でしか自分になれない少女たち
君はまるで操り人形 操られることでしか主張できない 心棄ててる
何かが駆け出し 誰かが叫んで いつかが始まり 目線は何処かへ 時代は変わった 涙も枯れた 夢と現実の狭間で絶叫する少女たち
お前はまるでピエロのよう いろんなカルチャー着せ替えて 自分で何にも出来ないくせに 生意気ばっか言ってんじゃねえ 大人の本音
何かを信じて 誰かに任せて いつかを願って 目線に入らず 時代に流され 絶望し 再び夢の中で妄想する少女たち
少女を彩るのは 安物のリップクリームと石油仕立てのコスチューム 夢想少女(きみ)は何処へいく??
3.「家出少年」
大人になりたくない 子供のままでもいたくない 大人と子供の境界線 あと少しだけ駄々を捏ねさせてよ
大人は理解ってくれない 子供の蒼い主張(ビート)を 大人と子供の境界線 あと少しだけ子供のままでいさせてよ
だから 僕は家出をしたのさ 片道切符と下着忍ばせ 君の元へ向かうぜ もう僕は自由なのさ!
大人は自分勝手さ 「子供の癖に生意気だ」って言う 大人と子供の上下関係(ヒエラルキー) あと少しだけ背伸びさせてよ
大人が何かを主張(ビート)する 子供はそれに追従(グルーヴ)する 大人と子供の上下関係(ヒエラルキー) あと少しだけ歯向かわせてよ
だから 僕は不良になったのさ 往復切符と教科書(テキスト)忍ばせ 君の元へ向かうぜ もう僕は自由なのさ!
何でもかんでも否定されてばかりじゃ 何にも言えなくなって 僕は僕を見失う そうなってしまう前に……
だから! 僕は独りになったのさ 両手に覚悟と夢を忍ばせ 君の元へ向かうぜ 君だけのために走るぜ
もう僕は自由なのさ! もう僕は自由なのさ!!
4.「最終遊戯」
独りを過剰に怖がり 誰かと群れることがすべてだと そう声高らかに宣言する君は 本当に人間かい?
「生きろ」 「死ぬな」 「生きてることに価値がある」
大人はいつも無責任 子供はいつも無計画
虚無に放り出された frustration 夢幻に放り込まれた satisfaction
僕らは今何処で何をしているのだろう? 何のために生きているのだろう?
僕らは今何処で何をしているのだろう? 何のために生きているのだろう?
「諦めるな」 「今を大切にしろ」 「夢を持て」
うるせえんだよ ふざけんなよ 消えちまえよ
声なき叫びがこだまして 君は君でいられなくなる
けたたましく響く vibration ぬくもり求める communication
君は今何処で何をしているのだろう? 何のために生きているのだろう?
嵐の中に放り出された 一欠片のmoral 刹那の中に放り込まれた 孤独のfunny girl
大人にすべてを依存して 行く先さえも決められない それが現代の私たち 私はただの子羊さ
5.「満員電車」
ちょっと、そこの君。 そんなに座ることに拘らなくたっていいじゃん 座って何が得になるの? 人生変わるの?? 少年のまっすぐな瞳が胸に突き刺さる
いつしか、僕らは純粋な心を忘れてしまった。 ずっとずっと少年のままでいようと約束したのに 今や永遠のスパイラルの中で生きている 孤独の中で生きている
たかが三十分、されど三十分。 イヤホンを付けた君は本当に大切なものに気付かずに 耳の中を流れる音楽にただ夢中で 運命の出逢いさえも流れていってしまうんじゃないか そんな気すらもしてしまうよ
結局、 僕らは猿に逆戻りしているんじゃなかろうか 人間であることを放棄しているんじゃなかろうか 人が人である証拠は感情を言葉にできることだ しかし、 今の人はそれを極端に恐れている
もしも、満員電車の中で。 わたしがわたしであることに満足して あなたが他の誰かにもし入れ替わっていたとしても わたしはそれをあなたとして認識するのだろう
それが人間ってやつさ
少年はつぶらな瞳で真実を見つめている
6.「夢遊する泡沫」
今日も僕は宇宙旅行を続けている 希望と失望と絶望を携え 誰とも理解らない誰かのために闘っている 闘いは誰のためにあるものなのか 答えさえも理解せず あるはずのない永遠を信じて闘っている 僕らは何のために生きているのだろう そもそも 何故生きているのだろう 哲学的思索の果てに 夢幻世界で夢遊を続ける泡沫たち 朝から 真昼間から 夕方から その拠り所は知らないが とにかく 誰かのために闘っていることだけは確かだ 時代は変わり 運命も変わり続けてゆく そんな過去と未来のコンツェルトに翻弄され 僕らは夢遊する泡沫として生命を紡いでいる あゝ 何故生まれてきてしまったのか 何処かで大男が叫んでいる 恨めしい声で叫んでいる 最終電車が堂々と通り過ぎた頃 見えない誰かが線路上で踊っている 生きろ 生きろ 生きろ 誰かが呪文のように唱えている
7.「政治家たちのナイトクラブ」
君が誰かなんて関係ない ただ闇雲に踊り明かそう 片手にドンペリ 片手にシャンパン お酒の力でノーサイド
あんなこと言ってゴメンね 敵も味方もない夜だから 大人同士のカンバセーション 「好きだよ」弾む会話
今日の主役は私たち 国民なんてどーでもいい 明日も主役は私たち またあの場所でヨロシクね!
何を言ったかなんて関係ない ただ頓狂に語り明かそう 片手に印鑑 片手にFAX 時代なんて気にしない
こんなこと言ってゴメンね 愛も希望もない世界(くに)だから 子供のように笑わせて 「好きだよ」皮肉な言葉(こえ)
今日の主役は私たち 国民なんてどーでもいい 明日も主役は私たち またあの場所でヨロシクね! くれぐれもお手柔らかに!!
いつも主役は私たち 今が良ければそれでいい 明日も主役は私たち スーツは素性を隠す仮面
今日の主役は私たち 国民なんてどーでもいい 明日も主役は私たち またあの場所でヨロシクね! ここは政治家たちのナイトクラブ
8.「群衆の断末魔 -Heart to Heart-」
今日も群衆の真ん中で 悲しいニュースがスキップをしている 愛なんて、独りなんて、と喚きながら 傍観者たちはただ感情論に走っている 怒りをぶつけようにもぶつける場所がない だったら周りの誰かにぶつけてしまえばいいじゃない 自分じゃない自分がまるで悪魔のように囁く 解決策も見出せないのに 慈しむだけのあなたに何ができるのだろう? 心と心を付き合わせ 変えようのない昨日よりも どんな風にだって変えられる明日を変えることが どれだけ有意義なことなのか何故わからないのだろう?? 夢は夢の中で言えばいい 独り言は独り言のままでいい 屁理屈なんて言わないで 被害者を減らすたったひとつの方法は 加害者を生まないようにすればいいんだ そうすればもう誰も悲しまなくて済むんだ ゼロになるまで考えろ 誰かのために心と心を付き合わせ ゼロになるまで考えろ それがきっと僕らにできる唯一のこと 傍観者にできる唯一のこと 泣かなくてもいい 寄り添わなくてもいい そっと手を差し伸べてあげられる勇気があればそれで十分だ
9.「杭」
僕が生きている 世界は狭すぎて 大事なことさえ 何も見えないよ
群衆の中に潜む 静かな時代の風 求められるのは忠順さ 個性などは要らない 世界を知らない子供(ひと)に 大人(きみ)は正義ぶって 世の掟(きまり)を教えようなんて 口癖(ルーティン)のように言う
ぶち壊せ! 何もかも、変えてしまえ。 走り出せ! どんな声も、耳を塞げばいい。 大切なのはその意志さ 出過ぎた杭は打たれない
君が生きている 世界は広すぎて 嫉妬心すら 感じてしまうよ
ビル群の影に隠れて いつも君は泣いている 常識が口癖さ 大人はつまらないよ
外界(せかい)を知らない子供(ひと)に 大人(きみ)は大人ぶって 外界(せかい)はつまらないよなんて わかりきったように言う
ぶち壊せ! 何もかも、変えてしまえ。 走り出せ! どんな声も、耳を塞げばいい。 大切なのはその夢さ 出過ぎた杭は打たれない だから思いっきりはみ出そう
ぶち壊せ! 何もかも、変えてしまえ。 走り出せ! どんな声も、耳を塞げばいい。 大切なのはその意志さ 出過ぎた杭は打たれない だから思いっきりはみ出そう
10.「大丈夫の呪文」
気安く言わないでよ うるせえんだよ 何度も、何度もさあ、 私だって言うときゃ言うよ ロボットじゃないんだから 人間なんだから 画面の向こう側にいるからって なんでも言っていいと思ったら大間違い 私は私なの、わかる? ずっと泣いてるし、ずっと怒ってる、 やり場のない感情をどこにもぶつけられず 誰かの言葉に怯え 誰かの行動に身構え 後ろ指を指されないように透明人間を演じてるの 目立たないことが正義なんでしょ? 制服はきっちり着てほしいんでしょ?? わかるよ、黒髪のままでいてほしいって ほんとはそう思ってるよね 私だってあなたの言いたいことくらいわかる 全部お見通しよ、女の子を舐めないでよ ……ちょっとくらい好きにさせてくれたっていいじゃん
11.「嫌いな人との付き合い方」
現代は「キライ」と言いづらい世の中だ。 「キライ」という言葉はどうしても角が立つ。
でも、やっぱり「キライ」なものは「キライ」だ。 「キライ」なものを「スキ」って言うのは難しい。 そういうもんだ。
「だってさ、キライなんだぜ?」 「キライなのにスキっていうほど面白くないものはないよなあ」
ちょっと気取って言ってみる。
現代は「キライ」と言ってはいけない世の中だ。 「キライ」という言葉よりも「フツウ」という言葉の方が好まれる。
だが、「フツウ」はやっぱり「フツウ」だ。 「フツウ」という言葉ほど曖昧なものはない。 もっと言えば、馬鹿馬鹿しい。
「そのマヌケヅラを何とかしろよ?」 「君は二文字の言葉さえ躊躇するのかよ」
言葉にそう言われているような気さえしてくる。
ばーかばーか。
絶対現実では言えないけれど、 布団の中では声を大にして叫べそうだ。
夢の中で、僕は毒舌になる。 臆病者の独演会、今夜も始まる。
12.「21XX -オーサカ狂想曲-」
数十年前、関西弁は消滅した。
すべてはひとつの言葉に統一され、 見知らぬネオンが街を支配し、 僕が僕を認識できなくなる。
お好み焼きも、���こ焼きも、どこへ行ってしまったのだろう。
日本食はとっくの昔に放棄され、 食糧不足のこの国に残されたのは、 ご飯のような無味無臭のなにか。
美味しくもなければ、不味くもない。
僕は何も感じない食事を済ませ、 ダイスほどの荷物を纏め、 メトロポリスを跡にした。
ここはいつから、こんな砂漠になってしまったのだろう。 最新式の方位磁石に目を凝らし、 まるで一ミリメートルの糸を手繰るかのように、 砂漠の都会(まち)を進んでゆく。
どんなに頑張っても、夢なんて掴めっこないんだ。
胸に刻まられた消えない証が、 僕の好きに生きたいという欲望を、 永遠に不可能のまま葬ってしまう。
逃げたい、逃げられない、逃げようもない。
好きな人も、守るべき家族も、 誰かによって紡がれた石碑も、 みんな何処かへ行ってしまった。
環状線跡のスラム街に足を踏み込む。
明朝八時、 僕の最後の冒険は高らかに幕を開ける。 生きるために、最後の闘いを始めよう。
13.「シースルー・エモーション」
これ着けてごらんよ。 今流行りの、何もかも御見通しってやつ。 ほら、タダであげるからさ。
「えっ、いいの?」
少年はぎょっとした瞳でこちらを見た。 何か続けなきゃなと思い、私は必死に言霊とやらを膨らませた。
みんな、近いうちに必ず着け始めるから。 これさえ持っていれば、君も流行を先取りできるよ。 遠慮なんていらない。 さあ、早く着けなよ。
「でも。知らない人にモノを貰っちゃいけないって言われてるんだ」
私はよく教育された少年だな、と思った。 だけど、これを売らないと私は殺されてしまう。 命が懸かっているんだ。
お願い、これを受け取って。 私からの一生のお願い。 幸せになれる。 ほら、開運のおまじないだと思ってさ。
「わかった。貰ってあげる」
『良い子だ』 ……思わずそう言いそうになった。 いけない。 少年の前ではこの言葉は禁句だ。 これを言った瞬間、あどけない表情は怪訝な瞳に変貌する。
私は未来人として、このメガネを売らなければならない。 たとえ、そのメガネが何の変哲もないタダのメガネだったとしても。 私は私の仕事をするだけさ。
14.「ラヴ・カルチャー」
恋そのものが軽くなっている、 と、誰かが言った。
いつでもどこでも出逢えて、 誰とでも恋ができる。
手紙を送り会わなくても、 文通を繰り返さなくても、 パッと手を伸ばせば、 君を抱きしめることだってできる。
それが、 現代のラブ・カルチャー。
大人たちに何かを言われる筋合いなんてないし、 私たちは私たちのコミュニティをつくっている。
それが自由の正しい使い方であって、 真のクリエイティビティと言えるだろう。
愛と、理想と、希望を掲げて。 僕らは夢を叫び続けている。
15.「二人は恋人同士」
今年の夏が待ち遠しいよ キミと一緒につくろう 最高の思い出を
夏のビーチに水着姿の彼女 いつもと違うメイクに とびきりの笑顔を
キミと過ごした夏 世界色にきらめいてる あの日の記憶(メモリー) ずっと続かないかな 二人だけの素晴らしき日々 いつか歳を重ね 思い出 色褪せたとしても 僕たちはずっと一緒だよ 青春は終わらせない
夏の訪れに張り切る海岸線 半袖のTシャツに とびきりの時めきを
キミと過ごした夏 貴女色に輝いている 最高の思い出を
どうか終わらないで 二人だけの素晴らしき時間(とき)
いつか歳を重ね 今日(いま)がセピア色になっても 僕たちはずっと一緒だよ 青春は終わらせない
いつか歳を重ね 思い出 色褪せたとしても 僕たちはずっと一緒だよ 青春は終わらせない キミと最高の思い出を……
16.「混沌と瞑想のポピュリズム」
貴方を惑わす置き手紙 もううんざりよ その微笑(えがお)には 心残りは結ばれなかったこと きっと貴方はそう呟くでしょう
混沌と瞑想のポピュリズム 貴方は夢を見ているの
混沌と瞑想のポピュリズム 愛を知らぬ貴方にお似合いね
混沌と瞑想のポピュリズム 独身貴族は愛を知らない
悩ましく囁く愛の言葉 もううんざりよ 嘘つきには 「貴女に出逢って良かった」なんて 紳士気取りはもう止めてよ
混沌と瞑想のポピュリズム 私も夢を見ていたのかもしれない
混沌と瞑想のポピュリズム 嵐の前の静けさよ
混沌と瞑想のポピュリズム 涙は愛の渇望(リクエスト)
見つめ合い抱きしめ合い接吻(くちづけ)交わせば 誰でも虜に出来るなんて 貴女の口癖 独身貴族の悪い癖
混沌と瞑想のポピュリズム 誰もが夢を見ているの
混沌と瞑想のポピュリズム ずぶ濡れになりながら君は泣いている
混沌と瞑想のポピュリズム
混沌と瞑想のポピュリズム
独身貴族は愛を知らない
17.「詩人の生息地」
何をしていても、何処にいても、何故だか落ち着かない。 そんな日々が続くと、人は不安になる。
得体の知れない何かに常に追いかけられているような、 哀しみとも言えない感情に支配されているような、 とにかく、ネガティヴな気分になってしまう。
好きな人なんて、もういらない。
そう高らかに宣言したはいいけれど、結局恋を求めるのが人の性分。 愛と、夢と、希望があって、やっと半人前。
独りでいるだけで、世間からは白い目で見られているように感じる。
本当は独りが好きなのに、本当は独りでいたいのに。 これが同調圧力ってもの。 カフェテリアに、今日も誰かのヴォイス・アンサンブルが聞こえる。 その隙間で、息苦しそうに言葉を紡ぐひと。 それが詩人という生き物だ。
18.「青春プリズム」
屈折する、 感情も、行動も、何もかも。
挫折する、 夢も、目標も、何もかも。
愛なき時代とは言わないけれど、 今の時代に希望なんてない。
何もせず、 何かを始めようとするわけでもない、 そんな奴に希望なんて叫んでほしくない。
僕らに芽生えた反抗心は、 ひとつの青春プリズムを産み落とすこととなった。
かつて、大人にその力で反抗しようとした学生たちのように。
表面的には沈静化したつもりでも、 学生たちにはずーっと芽生え続けている。
大人にもなれず、子供にもなれない。 ジレンマが僕たちを大人にする。
あとがき「わたしの十代プリズム」
わたしたちは十代プリズムで屈折する。 内面的にも、外面的にも。 屈折しないと学べないことがいっぱいある。 ずっと楽しいまま生きられる人なんていない。 十代のわたしたちにとって、この世界は狭すぎるのだ。 なぜ、校則を守らなければならないのだろう。 どうして、就職活動の際にスーツを着なければならないのだろう。
わたしたちの素朴な疑問は、いつしか多忙に相殺されていく。 こうして、ティーンエイジャーたちは諦めるという言葉を知る。 要するに“挫折”を知ってしまうのだ。
挫折を知ってしまった人々は、もうまっすぐに生きてはいけない。 何をしようとも、屈折して生きるしかない。
わたしは四ヶ月後に十九歳になる。 あれだけ長いはずの十代が終わりを迎えようとしている。
「十代って、素晴らしいものだ」
十代になった頃、わたしはそう思っていた。 でも、それは半分正解で、半分間違っていた。
この詩集はわたしの十代の記録だ。 何処かがフィクションで、何処かがノンフィクション。
わたしは十代に入って、ようやく物心がついた。 誰かに指示されるのではなく、自分で考えることを学んだ。 多くの挫折を経験し、多くの絶望を味わった。 今も決して希望が見えているとは言えない。
だからこそ、書けた作品である。 逆説的に言えば、今しか書けない作品とも言えるだろう。
わたしにとって「創作」とは、ライフワークそのものだ。 恋人でも、親友でも、捉え方は好きにしてもらって構わない。
でも、ひとつだけはっきりしていることがある。
十代に創作という分野に出逢えて、本当に良かった。
たくさんの人に迷惑をかけ、多くの人を失望させてしまった。 過去はもう変わらないし、変えられない。 だけど、今から何かを変えることは可能だ。 物語という白紙のキャンバスに、無限の世界を描いていく。 その道筋の中で、誰かの人生を変えることだってできる。
あなたも何か描いてみたらいい。 みんなも、創作しよう。
いじめたり、いじめられたり、嫌なこともたくさんあった。 でも、いつもそばには創作がいた。 だから、今音楽大学で夢を追いかけられているし、ここで生きている。
最後に、あとひとつだけ。 不器用で、どうしようもなくって、文章も大して上手くはない。 話をすれば散らかり放題だし、ボソボソ喋るからみんなを困らせてばかり。 こんなわたしを支えてくれてありがとう。 ちょっとずつ直していこうと思っています。
これまで出逢ったすべての人々、これから出逢うすべての人々に感謝の意を込めて。
ありがとう。本当にありがとう。 これからもよろしくね。
詩集「十代プリズム」
Produced by YUU_PSYCHEDELIC Concept Created and Designed by UYUNOONUYU(ウユノユウ) Written by Yuu Sakaoka
Special Thanks to My Family,my friends and all my fans!!
YUU_PSYCHEDELIC
#詩#詩集#創作#YUU_PSYCHEDELIC#十代#青春#キリトリセカイ#teenager#poetry#youth#youthculture#art#modern art#poem#若者#アート
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パーティならチキンを焼いて my favorite things.
満たされたばら色の人生にも、遣る瀬無い夜は訪れる。そういうときは誰にだって、ささやかな楽しみや、希望にあふれた展望が、必要になるのだった。必ずしもすべて、未来の約束じゃあ、ない、胸の奥にそっと灯ったわずかのともしびのように、幾度となく取りだしては大事に眺めた過去の日々のことであったり、はっきりとは思い出せない、夢のなかの景色であったりしたもの。
なにもかもを忽ちに。打ち上げた花火のように、あるいは激しく打ち鳴らす銅鑼のように、景気よく、気前よく、解決する手段はない。自分たちにはふしぎの力があったけれども、短く唱える呪文、たったひとつ、長い長い魔法使いの人生にあって、幾度となく、あるいは自身の名前より、多く繰り返すことになるであろう言葉は、かならずしも万能ではなかった。こうあってほしい。願ったかたちと、色と、匂いと。思い描いたものをそのままに生み出すのは、魔法であっても容易くはない。そりゃあ、世界でいちばんの魔法使い、かつて魔王と恐れられ、また、その人自身もそう呼ばれることに何の疑問もなければ、快感にすら考えていたらしいオズであるなら、違っていたかもしれないが。少なくとも、排他的で、魔法使いに限らずとも、ひととひととの独特な距離と、稀薄な関係、微妙な均衡のうえに成り立つ東の国で、息を潜めるようにして暮らす歳月の、長くなったネロには難しいことだった。
かれらは人をたまらなく愛するくせ、ジレンマのハリネズミ、いつだって近寄りすぎれば互いに傷つけあうことを恐れている。本質的に優しく、どうしようもなく寂しいが、おなじだけ気位が高く、自らを偏屈と嘯いてはばからない。もとよりそういったきらいのあったゆえに、東の国の水によく馴染んだとも言えたし、あちこちを転々としつつも店を営み続けた日々が、ネロを東の国の魔法使いにしたとも言える。彼は大いに変わったし、何ひとつ変わらない。繊細なくせに豪胆で、穏やかなようでいて燃えたぎる焔をその身のうちに飼っている。敵と見るや容赦はないが、いちど懐に入れた者にはあまりに情が深すぎた。
磨きぬかれたカトラリー、整理整頓されたスパイスラック、年代順に並べられたワインのボトル、ひとつひとつを丁寧に、確実に。積み重ねる仕事は地道で堅実、つまらないといえばつまらないが、魔法使いらしくない勤勉さは、思えば初めからネロのものだった。掃き清められた床、皺だらけでも染みはない寝具たち、行き場のないガラクタが散乱してはいても埃ひとつなく、空気は入れ替えられていつでも新鮮だったし、窓にガラスは嵌まっておらずとも、雨漏りのする屋根はない。無責任で、自堕落、怠け者のふるまいをしてはいても、彼はきちんとしたひとだった。もっとも、照れくさいのか隠したがったが。
いつだって誰よりも早く起きて、オーブンに火を入れる。薪ひとつ、打ち合わせる火打ちのひとつにさえ、ネロは魔法を使わない。それはポリシーというよりも、ルールというよりも、信仰にも似た、祈りのようなルーティーンのなかにある。菜園の朝採りの野菜は瑞々しく、そのまま齧ってもゆたかな水と太陽の味がする。弱くないくせに深酒をきらい、ひそやかな談笑と、駆け引きのカードの卓にはつかないネロが、とっておきのバーに顔を出すことは滅多にない。いつだったか、一度か、二度か、酔いつぶれた男たち、いつだって酩酊しているようなくだけた魂のムルにカードでこてんぱんにされ、酔うほどに冴えるシャイロックのダーツ、上機嫌に賭け金を吊り上げてゆくレイズを、ブラッドリーは何度口にしただろう、浴びるほどに呑んでなおも眠ることかなわないミスラの憂鬱、それら綯い交ぜの男たちが、夜中の菜園でトマトやグリーンフラワーをちょいと拝借したときの、ネロの怒りの形相はいまだに語り種になっている。怒りに我を忘れたネロは、あろうことか序列第二位のミスラまでまとめて首根っこを引っ掴んで中庭の噴水にぶん投げてのけた。怒りの過ぎ去ったあとから勿論真っ青になっていたが、彼の大切なものを蔑ろにした人間たちを、東の魔法使いたちがそれこそ射殺すような視線で侮蔑したのでますます小さくなっていた。彼らは陰険で、執念深く、そうして何より、自らのように他人を遇することのできる人格を持ち合わせている。引っ込み思案ではあるが普段は礼儀正しく朗らかなヒースクリフや、横暴なようでいて真摯、育ちのよい振る舞いをするではなくとも主人を立てる忠義のシノ、呪い屋などと名乗りながら、不幸そのものを被せるのでなく、ひとの幸運を少しばかりくじいてみせるファウストさえも、まごうかたなき東の男、彼らのあいだの、触れ合わないながらもけして離れることのない紐帯は、かたく結ばれたノットのようだ。知っていれば容易くほどけるのに、力任せには外せない。
あいかわらず甘い男だな、と揶揄されて、かつてであれば傷つくか、さもなければ猛烈に腹を立てていただろう。思うに自分は若すぎたし、感傷的にすぎた。そんなに良いものでもなかったのに、いつだって、初恋の甘酸っぱさをひきずっている処女のような、散った花の香りを惜しんではらはらと涙をこぼす生娘の心ばえを持ち合わせていた。そんなに良いものであるはずもなかったのに! あの頃慕った男は破天荒、傍若無人は十八番、焦がれるままに背を追って、まともな教育ひとつない、宝石の目利き、あらゆる鍵のこじ開けかた、それから、うつくしく高潔な暴力、彼から学んだことのすべて。師と慕うにはあまりにも、絶対のカリスマでありすぎたし、かといって、率いる盗賊団の下っ端とだって気安く肩を組み、売り捌けば相当の値がつくであろう年代もののワインを惜しまずに振る舞った。ブラッドリーはそういう男だと、痛いほどによく、分��っていた。彼が均等に分け与えないのはマナ石くらいのもので、魔法使いたちにとっては、宝石よりも、贅の限りを尽くしたご馳走や、黄金に輝くシャンパンの泡、誰にも邪魔をされずに午すぎまで惰眠を餮ることのできるベッド、それらのすべてより、いくらも価値のあったもの。けれど、さほどの不満はなかった。マナ石をボスが喰うのなら、彼の庇護下にあるものたちは、結果として強さを手に入れたのと同義であったし、ブラッドリーは北の魔法使いらしからぬ、義に篤い男であり、同じだけ誰より北の魔法使いらしい、傲慢で、不遜で、気まぐれを持ち合わせていたものだ。
すれ違う紳士淑女の懐からちょいと財布をくすねるやりかたは、残念ながらろくでもない子どもの時分に覚えた。北の国では良くあることで、家のなかには、兄だか、姉だか、父だか、母だか分からない年長者たちが溢れていたが、少なくともネロは、自分がろくでもない家の、よくない子どもであることに十分に自覚的だった。意識して、悪を悪と知りながら為すことは、なんの免罪符にもならないが、成し遂げるための知恵と、技術と、度胸があること、他人から盗みとる他にはなにひとつ持たない子どもにもゆるされる財産だった。ひとりきり、自分だけを守り、慈しみ、愛してやる、それすらも厳しいのが北の国のならいであって、山ほど部下をかかえたり、誰からみても足手まといになりかねない男を相棒と呼んで憚らなかったブラッドリーが奇特なのだ。ちびで、やせぎすで、いつだって腹を空かせている子どもたち、北の国では路地裏に、彼らの明日は転がっていない。夜はあまりに深く、暗く、長いもの、朝を迎える前に仲良く骸になれるなら、孤独もいくらか浮かばれる。死は必ずしも幸福の対極にない。
北の大盗賊ブラッドリー・ベイン。彼は間違いなく悪党であり、与えるものでも、施すものでもありえなかった。彼は多くを持ち合わせたが、しかし、価値あるものは適切に、渡るべき手へ流れていった。きっとネロ・ターナーも、そのうちのひとつであっただろう。うつくしい宝石のような、この世にふたつとない宝剣のような価値が己にあると自惚れたことはなかったが、ほんとうに素晴らしいものは、いつだってブラッドリーのもとにとどまりはしない。彼が望んでそうしたものかもしれないし、ブラッドリー・ベインという男の、避けえざる、けして覆ることのない運命のうえに、定められたものかもしれなかった。彼自身から語られないまま、断絶された数百年、いまだに牢に繋がれて、似合いもしない献身と奉仕の日々、忌々しいと吐き捨てながら、楽しんでいるようにさえ思えるのは、願望ばかりでないだろう。彼に美徳があるとは認めがたいが、日々の困難をさえ笑いとばせる豪胆さは、同じく北の国に生まれ育っても、ネロにはついぞ、備わらなかった。
とくべつでない特別な日に、任務や、修行や、仕事やらで、へとへとになった子どもたちに、なにを食わせてやろうと考えるのが好きだった。市場で仕入れてきたばかりの新鮮な食材、昨夜のうちに絞めておいた鳥、近ごろ使っていない気がするスパイス。まともに飯を食いもせず酒の肴を摘まむばかりの大人たちには、炒ったナッツでも出して黙らせておきたい。夜を裂いてゆく一条の光は銃弾、なんで分からないかな、ネロは一度だって魔法でチキンを揚げたことはなかったし、ましてや子どもたちは、焼いたチキンをご所望なので。
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🎀🍫 .。.:*⭐️(๑•̀ㅂ•́)و⭐️🌈 ଘ(੭˃ᴗ˂)੭ 🐈 𝙢𝙖𝙜𝙞𝙘𝙖𝙡 𝙜𝙞𝙧𝙡 𝙩𝙧𝙖𝙣𝙨𝙛𝙤𝙧𝙢𝙖𝙩𝙞𝙤𝙣
#ゆめこい~夢見る魔法少女と恋の呪文~#アニメ#animecore#魔法少女を卒業し、魔法界に夢の花を返すためには、魔法を使って夢の花を咲かせなければなりません。#anime#otakucore#kawaiicore#webcore#vn#visual novel#game cg#weebcore#kawaii#moecore#cute aesthetic#my gifs#gif#magical girl#mahou shoujo#Yumekoi ~Yume Miru Mahou Shoujo to Koi no Jumon~#parasol#変身シーン
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二〇〇八年の断片集
これは二〇〇八年の断片を集めたもの。二十三歳から二十四歳の記録。二〇〇九年の断片集もある。
七月
何も読まない人は幸いだ。
眼鏡をかけないとほとんどの女性は美人に見える。
金持ちも貧乏人も、感じられる幸せの容量は同じだ。
長く話す人は思慮が無く、短く話す人は愚鈍である。
法律が増えれば増えるほど犯罪は増える。
男は学問をしないと莫迦になる。女は学問をすると莫迦になる。
真面目に生きようとすればするほど不真面目に生きざるをえなくなる。不真面目に生きようとすれば人は自然と真面目になる。
八月
同期の女の子たちが下宿に来たとき、大きな蜘蛛を見つけ、「早くやっつけなきゃ」と言った。でも私は殺さなかった。全ての命は尊い。だからこそ、それを奪うには快楽を求める心が必要だ。恨みや嫌悪感や投げやりな心で命を奪ってはならない。それが命への礼である。
駅前に昼飯を食べに行って戻る途中で中学生くらいの見知らぬ少女に「こんにちは」と挨拶をされて、私は「おっーす」と返事をした。よく日焼けしてぽっちゃりとした女の子だった。記憶にない。
女性の先輩職員。良く言えば女性的、悪く言えば女性的。
大いなる誤算。知的障害児に興味はあったし、今でも興味はある。しかしそれは文学的な興味であって療育への興味ではない。
もし私が心から愛する女性がいるとすれば千人の男に抱かれた十四歳。
人生は無為だ。日本全土を巡る放浪の旅をするか、インドネシアに移住するか。
日々の生活に倦怠を感じたら何かを創作して形に残す。物語でも、絵画でも、音楽でも。それが子供である必要はない。
もっと野菜を食べよう
電車内での痴漢がなぜ罰せられるのかというと、痴漢は数百円から数千円で買うべき「服の上からの臀部の愛撫」や「下半身への性器の擦りつけ」などといった行為を無銭で楽しもうとしたからだ。すなわち痴漢は窃盗と同じ種の犯罪である。同じ理由で強姦も強盗と同じ種の犯罪であろう。
もし誰かが他の人に「あなたの好きなタイプは何?」と質問した場合、質問者は、回答者が異性のあるタイプ(イデア)を追求するために異性とつき合うもののだと予め規定してしまっている。実際には様々な異性の違いを楽し��ために異性とつき合う人がいるというのに。そういう人間にとって「好きなタイプ」を定めてしまうことは無意味で味気のない行為だ。例えば私が「好きなタイプは?」と聞かれて「双子」と答えるのも双子の微妙な違いが好きだからに他ならない。
聞いた話によれば博多は結婚適齢期の独身女性が同年代の男性より多く、若い女性にとっての激戦区だという。或いは独身志向が強いのか。
男は、彼自身に興味のある女を賢いと思い、彼自身ではなく他の男に興味のある女を愚かだと見なす。だから全ての女を愚かだと断定する男は、どの女にも好かれていない、と思い込んでいるのだ。
私は他人の肉体を物質としか見なせない。例えば美女の肉体は何か貴重な物質であり、臭い男の肉体は何か臭い物質である。舌、唇、鼻、耳朶、乳首、陰唇、いずれの他人の肉片も博物館に保管されてしまう。
もし婚約者が元娼婦であっても結婚を完遂できる原動力が真実の愛だとしたら、私は純潔の処女ですら愛さない。
私は思う。仕事が嫌であればあるほど休暇の浮遊感は大きくなる。これは余暇を楽しむ為だけに労働している私にとって、都合の良いことではないか。まとまった休みが定期的にとれて、しかもその余暇が楽しいとしたらこれほど私に合っている仕事は無いんじゃなかろうか、と。
久しぶりに共感できる主人公トマーシュを見出すことができた。彼のように軽く生きたい、その軽さに耐えられないくらいまでに。
どんな社会体制であろうと、それが大勢の人間が集う社会という形式をとる限り、それに馴染めない人間が必ず存在する。そんな人間がとりうる手段は二つ。浮遊するか、絶望するか。あらゆる革命と変革は彼らとは無関係に為されている。
多くの若手経営者は織田信長を崇拝するが、そのうちほとんどの経営者は信長的人物を社員として採用しない。
職場の上司であるA係長は「結婚相手は妥協で選ぶな」と言うが、彼は自分が妥協で選ばれたかもしれない可能性を全く考慮していない凄い奴だ。
文学は少年期の私をどうしようもなく破滅せしめ、青年期においてどん底より救いたもうた。
女性と一緒の職場で、かなり動く仕事なので、よく乳房を触る。私は謝らない、気付かないふりをする。女性が「すいません」と謝ると惚けた顔をして軽く会釈を返す。
娼婦を尊敬できない男はあらゆる女を尊敬できない。
理想の老後。自営業か自由業で京都近郊に住む。東京近郊に、離婚した最初の妻との間に作った娘が夫と住んでいる。一年に一回だけ、娘を訪れる。私は彼女の子供たちから「京都のおじちゃん」と呼ばれ不思議がられている。というのも彼らにとっては三人目の祖父だから。週に一度、五條楽園に赴く。月に一度、長旅に出る。読書は欠かさない。
子供が欲しい、と私が思うときに浮かぶ光景は、一ヶ月に一度、裁判所が許可した時間だけ、まだ幼い娘か息子とレストランで会食し、帰り際にすぐ飽きられることが分かっている玩具を贈る場面。娘であればベッドに並んで忘れ去られる熊のぬいぐるみ。「何であのおじちゃんは熊さんのぬいぐるみばっかりくれるの?」小学生に上がったら絵本にしようかな。
もし私に、成人して未だに童貞の息子がいれば、かつてボルヘスの父がしたように、売春宿へ息子を送ろう。そんな理想の家庭を思い浮かべる。
恥骨が痛い。
美女や美少女をよく見かける街は美人が多いのではない。女性が街を歩いても安全な街なのだ。
人間が知覚できる事象はこの世界の極僅かなことに過ぎない。感覚が鋭敏であればあるほど、その人の知覚世界はより色彩に溢れ音楽に満ちて起伏に富み揺らぎ歪み傾いでいる。現代人が霊的存在について余り語らないのは、現代生活が感覚を鈍くさせているからだ。しかし火はいつまでも物質の揺らぎ、すなわちこの知覚世界の裏側に干渉し続けている。人よ、火を燃やせ、世界を超越せよ。
既に自分が正気と呼ばれるものを喪い、狂気の領域にあることを、数年前から薄々と気付いている。
職場での私は人生の裏を生き、休暇中での私は人生の表を生きる。
私は女性と議論をしない。いくら言葉を交換しても、お互いの思想と志向の違いを再認識するだけだからだ。そしてその段階に至った場合、私はその違いを知ることに興味が持てない。だから私は言う「女性と交換すべきは言葉ではなく、体液のみ」
今一番やりたいこと、中学生のときからの夢。どこからか女児を捕獲してきて、押し入れの中で飼育、調教し、優れた女性に育て上げること。
人間存在の悲劇を噛み締めた。
九月
福祉業は風俗業と同じで、水のような商売である。仕事の結果は形にならずに流れていき、客の記憶の中にだけ残るのだ。
新入社員の陥り易い思想的誤りは、自分に上司を殺害する権利があると思い込むこと。
法律で私の体を罰することができても、私の魂までは罰することができない。
今の仕事を続けるくらいなら、一九四五年四月初頭に大ベルリン防衛地域司令官に任命された方がましだ。
給料とは、働いたがために心を蝕むようになった苦しみと失った幾らかの正気の代償として労働者が得る金銭のこと、サラリー。
子宮のない女性は男性にとって「性の試験管」である。
中絶禁止も同性愛禁止も獣姦禁止も自慰禁止も旧約聖書創世記第三十八章第九節でのオナンの行為に対する第十節での主の怒りに由来する。しかし、人類はもう子種の浪費を許されるほどに殖えたのではないだろうか?
放浪の旅に出たい。
白地で絵は描かない。すべて黒地の上に描く。
若いときの苦労と快楽は買ってでもせよ。
もし私と結婚して離婚を言い出さない女がいたら、私は彼女の理性を疑う。
「今朝は強姦したかい?」が朝の挨拶代わりになるような都市。その都市でそう挨拶されたのなら私は快活に答えよう「ああ、今朝は女児を二人だけだ」
男根のない男性は女性にとって「お払い箱」だ。
中学生のころはサド侯爵の書く小説の倒錯的な場面を読んでよく興奮したものだが、今読み返してみて、その哲学的記述には感心するが、倒錯性は何も感じなくなってしまった。すなわち、勃たないのだ。
三日に一度は射精しないと健康に悪いそうだ。
女性に懸案事項の説明を請われて私が説明すると、大抵の女性は「私さんは私のせいにした」と非難する。単に私は事実を述べただけなのに女性に内在する被害妄想癖が私を卑怯者に仕立て上げるのだ。ゆえに私は説く「女性と交換すべきは言葉ではなく、体液のみ」
生理痛による発言ならしょうがない。
早稲田大学に通っていたころの記憶が、今は全くない。
私の働くK学園では誕生会と称してその月の誕生者を祝い、誕生カードを送る。先輩職員方はカードに百文字くらいの感動的な文章を綴る。けれど私は、文字は「おたんじょうびおめでとう」と名前くらいで、あとは動物の絵を大きく描く。先輩職員はそれを見て「文字が少なすぎる」と注意する。おかしい。園生は文字が読めないか読めても読み辛い人が殆どなのに、文字を多く書くのは保護者向けに書いているからだ。なんだかんだ偉そうなことを言ったって職員連中は知的障害者のことを考えていないのだ。
産まれるまで気づかなかった。生きることがこんなに大変だったなんて。
少しまともな知能を持っていれば理解できると思うが、この福祉社会は健常者と障害者にとっては生きやすいけれど、その中間に生きる半端者にとってはまことに生きにくい。
放浪に備えて知能指数七十前後の話し方を習得しなければならない。そうすれば同情や施しを得やすくなるだろう。
人の性格はその人の祖先の生業から遺伝を受けると考える。私の祖先は今昔物語にも載せられた鈴鹿峠の山賊であった。すなはち略奪・狩猟・採集・漂泊を生業とする山の民だ。福祉職なんて性分ではない、放浪者こそ最もふさわしい。
職場で大事なことは飲み会や余暇活動などで自分の味方を増やすことであり、それは私が最も苦手とすることだ。むしろ得意とするのは敵を増やすこと。
職場の人間がみな緑色の眼で私を見ている。奴等はまともな人間じゃない。
もしこの学園の職員のまま死んだら、悔��んでも悔やみきれない。
A係長に「やめちまえ!」と罵られたのだから今すぐ辞めても構わないだろう。むしろ辞めた方が有難く思われるはずだ。邪魔な奴がいなくなったと。
「すごい着想力ですね」と言うところを「すごい着床力ですね」と言ってしまった。
失踪を決意した次の日の職場の奴等はなんだか心優しい。
看護婦さんの注射が上手くて、少しも痛くなかった。
心を鬼とせよ。奴等は飢えた猛獣だ。おまえの臀肉を狙っている。
失踪して、日本中の山々を彷徨する。歩兵第三十一聯隊の福島泰蔵大尉が私の師匠だ。
人類は幼形成熟であり全て人類は成形(天使形態)に変態する寸前で死ぬ、という幻想。天使の蝶
地球を覆う現代文明という代物は、依存症ないしは文学的な意味での依存から成立している。
全ての人類が物質的依存から解放され流浪の旅に出た瞬間、現代文明は衰退し、文化とほとんど差の無い放浪文明が萌芽する。
私にとって「衰退」は悪い意味を持たない。なぜなら「進化」と「退化」は「変化」の類義語という認識しか持ちえないからだ。
だって進歩と退歩のどっちがいいかなんて誰にも分からないだろ?
K学園では、遅番勤務上がりの二十二時からミーティングが開かれる。クラスミーティングは三人の担任で開かれ、係長ミーティングは三担任に係長を加えて開かれる。留守録によれば、昨夜ミーティングがあったらしい。でも私はそのことを知らされておらず、その時には疲れ果てて自宅で寝ていた。これが昨今の事態の本質である。同じクラスの先輩職員は新人の私に満足な情報を与えず、それでいて私が「ちゃんとやっていない」と罵るのだ。先輩職員は「分からないことは聞かないとこちらも教えることができません」という態度だが、超能力者でもない私にはいつミーティングが開かれるかなんて知るよしもない。
どいつもこいつも腐りきっている。
九月十五日、新宿駅で下野国住人エーリク氏(「沈黙のソネット」)と出会い、神保町で昼飯を食べて東京駅で別れた。思考する脳と発話する舌の相違の甚だしさが一つの人格を形造る。
たったそのことを理解するだけでこんなにも親しみが湧くというのに。
必ず連絡しよう。
判断を中止してください。理解しようとして下さい。
ひとつの職場やサークルや組織に長くいるということは、陰口を叩かれる人から陰口を叩く人になるということだ。
管理職とは判断しなければならない職務だ。部下の人格さえも、誤解とともに。
仕事をすると人生が色褪せて見える。
曉の空は美しい。夜が怒りと悲しみに溢れていたからこそ
おまえは妊娠したての子宮に夫以外の陰茎を突き立てられて、なんとも思わないのか?
青年は旅の人。道連れは記憶だけ。
映画「Into The Wild」を観た。すなわち「Into The Mind」だった。
新宿を歩く人々は本来の美しさを失っている。
十月
現代文明世界はアリストテレス的人間観の上に立脚している。故に、私のようにポリス的動物であることを捨てて放浪し無宿、社会常識に則った思考は不可能であるために言語的思考のみを行うことで価値の変造をもくろむ「獣」はやがて排除される。
ただし、ディオゲネス的世界市民主義が台頭するのであれば話は変わってくる。
資本主義の豚どもよ、犬となれ!
犬どもよ、広場で自慰をせよ。
本当にエコを実現したいのであれば、冷蔵庫も車もクーラーもあらゆる文明機器を捨ててディオゲネスのように生きればよい。それ以外のエコは全て偽者のエコだ。
真実のエコは全人類の穏やかなる自殺である。
たぶん、文明機器を捨てた現代人は、亡命先で奴隷マネスに逃げられたディオゲネスのようになるだろう。
「おかしな話だよ、マネスのほうはディオゲネスなしにも生きていけるが、ディオゲネスのほうはマネスなしでは生きていけないだろうとすれば」
文明社会とは人間をひたすらに脆弱な動物にさせる機構だ。もう二度と野生には戻れないほどに。ここでは人間はひたすらにちっぽけになるだけだ。
青年よ、常に己の中の獣を調教しておけ。そしていざという時には牙を剥き、爪を立てて、おまえを侮辱した奴らに目にモノを見せてやれ。
かつて大学時代に海驢という女に言い寄られた季節のことだ。ふと私の中に「あの女に会いたい」という感情が起こった。その感情を確かめるために、私は自慰をした。すると面倒くさくなって余りその女に会いたくなくなった。私は重ねてもう一度自慰をした。すると全く会いたくなくなった。二、三日して袋に種が満ちると再び私の中に「会いたい」という感情が芽生えた。ゆえに私は結論付けた。恋愛とは性欲の文学的表現に過ぎないと。
私と彼女とは違う地平に立つ人間であった。前者は「人間の地平」に立ち、恋愛は蔑ろにしても人間は尊んだ。一方、後者は「恋愛の地平」に立ち、人間は蔑ろにしても恋愛は尊んだ。そのため後者は私にメールで別離を告げた上に自意識過剰な主張を何度も送りつけて来た。彼女流の恋愛観ではそれが至極正しく、真っ当なことのように思えたのだろう。それに対し前者はあくまでも人間としての防衛線を保つことしかできなかった。
彼女は自分の精神的あるいは肉体的欲求を充たすためだけに私を利用したにすぎなかった。そのために「恋愛」という文法を用いた。それに対し、私は人間であるという前提の上に立っていた。ゆえに二つの歯車が歯をあわせることはなかった。
『百年の孤独』のブエンディーア一族は愛なくして繁殖した。一族の最後の者は叔母と甥の近親相姦によって産まれたためにその呪いとして豚のしっぽを持って産まれ、蟻のむさぼるところとなった。しかし百年に及ぶ一族の歴史の中で「豚のしっぽ」は初めて愛によって産まれた子供であった。
『百年の孤独』は単行本を三冊買い、合わせて六回読んだ。私が長編小説をここまで繰り返して読んだのは他に例のないことだ。
琉球美人は琥珀色の肌、引き締まった細い肢体と小顔を特徴とするけれど、秋田美人は朱を散らした色白の肌、ふくよかな肉体と顎先を集約点として突き出た面長を特徴とする。
選びがたく、悩ましい。
一夫一妻婚という制度の発明は多くの人間を罪人とした。つまり、一夫一妻婚という制度を継続する限り、社会は姦淫罪を量産せざるをえないのである。
法律の数だけ、罪がある。
あらゆる家庭の災厄は、一夫一妻婚が生んだ。
一夫一妻婚が形作る「家庭」は、ある種の子供たちにとっての牢獄である。
私にとっても、「家庭」は牢獄だった。
ディオゲネスは人間をよく理解していた。ゆえに彼は結婚を否定した。そして、彼は女性の共有と当然の結論としての子どもの共有を主張した。
女が産んだ赤ん坊の父親が誰か、なんてことはどうでもいいじゃないか。
私は沖縄から奄美に至る航路で、仰向けに寝ながら「死の恐怖」を超越した。超越したとき、肩から背中にかけて熱いモノが走った。目からは涙が溢れ、こめかみを濡らした。
そのとき、私は一度、死んだのである。
「死の恐怖」は小学二年生の私を捕え、十五年に及び、私の心を鷲掴みにして離さなかった。それは常に無感覚への恐怖、偉大なる世界が消滅することへの恐怖であった。
死によって他人が私を忘却するとか、そういったことは恐れなかった。「死への恐怖」はきわめて個人的な問題であった。
死後に感覚があるのならば、人間はその新しい感覚で永遠を生きるだろう。もし、死後に感覚がないのならば、死は何ら思い悩むことではない。マルクス・アウレリウス・アントニヌスの思想の私なりの解釈である。
「死への恐怖」は克服した。しかし、私はまだ完全に「死」んだわけではない。
今までは常に捕われてきた人生だった。これからはこちらが捕える人生である。
蟹田駅で特急に乗り、青函トンネルを通って木古内駅で降りた。すると、もう電車がなかった。しょうがないので駅近くの公民館の前で野宿をした。二十三時に寝て五時に起きた。小雨が降っていて、寒かった。吐く息が白い。
北海道では寝袋の下にアルミシートを敷いて大地に体温を奪われるのを防がないと危険だ。今の寝袋は零下十度まで快眠、零下二十度まで生存できるそうだが、零下二十度でも快眠できるようにしたい。
『闇の左手』の、アイとエストラーベンの氷原越えを復習しよう。
北海道の面積はオーストリーより広く、北海道の人口五六〇万人はデンマークより多く、道内総生産額GDP約二十兆円はマレーシアやチェコよりも大きい。また、道内の陸上兵力は三万七千人でベルギー・ポルトガル・南アフリカ。キューバの陸軍と同規模である。そして道内だけの食��自給率は二百パーセントに届こうとしている。
北海道は数値上では充分に一国として独立できる。独立後の国名はもちろん「アイヌモシリ」、人間の大地。
私は、その大地を歩く。
さすがに放浪する資金に先が見えたので札幌市南区澄川にアパートを借りた。
まだ鍵をもらえない夜に、不動産会社の女性社員が自宅に泊めてくれた。北海道の人はやたらと親切だ。
ちなみに私は女性社員宅で、晩飯を食べてから朝までいびき一つかかずに熟睡していたようだ。
どうやら寝言の癖は治ったらしい。
PHSを買った。
もし宇宙の果てまで行けるという宇宙船があるのならば、地球上で想定しうるあらゆる幸福を諦めてでも、私は宇宙飛行士になる。
そして、私の死体は永遠に宇宙をさまようだろう。
ある人が言っていた「全ての女性は男でふさがっており、あぶれた男は彼女たちの体が空くのを待っている」という感覚を今日、はじめて味わった。
那覇の人と札幌の人は語尾に「さー」をつける。なぜ?
ちなみに私は一日の大半を欲情して過ごし、半日は半勃し、四分の一は勃起している。というのも私の神経はズタズタになっていて、脳が異常なまでに興奮物質を分泌するからだ。
物理的に、私は「狂人」である。ゆえに小学4年生の私を「気が違っている」と評したあの女性教諭は正しかったのだ。
まず買わなくてはいけないのは掃除機、それと便座カバー。
尊大な解釈だが、中学生の私は自分のことを「桁外れの出力で凍結してしまった電算機」に喩えていた。今ならさしずめ「お祓い箱」と喩える。
大した運動もしないのに疲れやすい人というのは、たいてい脳内で体力はおろか生命力さえも過剰消費しているものだ。
ハローワークで調べたところ、私の適職は技能職か芸術家だという。
北海道のスーパーでは玉ねぎとじゃがいもがそれぞれ一個十円で買える。食うのには困らなそうだ。
中古パソコンを買った。ネットを繋げば、さぁさ始まる楽しくも愉快なNEET生活。
野菜を凍らせないために冷蔵庫を買った。
近所の澄川若草公園のベンチに男子高生が腰掛け、女子高生が前から枝垂れかかり、野合していた。北海道はおおらかだ。
夕方になると近所でやたらと陸自将校を見る。昨日は将校さんがスピードくじを買っていた。
今、私の中で福満しげゆきが熱い。
『コレラの時代の愛』を手に取った途端に涙が溢れてきた。さすがガルシア・マルケスである。本を持つ者にも訴えかける。ましてや読む者へは。
宇宙の最果てを超え、宇宙化以前空間の有り様を地球に報告する使命を帯びた超光速航宙船「エスペラント」
推進機関は決まっている。原子力だ。
はてさて、膨張しているという宇宙の辺涯はどのようになっているのだろう?
乗組員は地球に未練のなくなった七人の若者、日本国から二十八歳、タンザニア人男性二十五歳、イスラエル人男性二十三歳、フランス人女性二十七歳、インドネシア人女性二十五歳、ペルー人女性二十二歳、国籍不明少女十九歳。それと修理用ロボット三台。
航宙船の大きさ、全長二四〇メートル、幅三〇メートル。乗組員は訓練により、航宙船を自力で組み立てることが可能である。
船内には恒星熱で駆動する五つの栽培室、三つの畜産室、三つの水槽室があり、その他にも食料加工機が装備されている。船内で半永久的な食料生産が可能である。
凍眠室では肉体を凍結することで老化を遅らせることが出来る。しかし完全に止めることはできない。
この銀河は今、宇宙のどのあたりを漂っているのだろう?
船内の娯楽は様々で、読書・運動・遊戯・音楽・絵画など地球上でできることはほぼ船内でできる。
これは娯楽というより使命に近いが、性交が七日おきに違う相手と行われる。ただし自分の遺伝子を継承した異性とは性交しない。
宇宙化以前空間についての報告書をまとめるのは私の何世代か後の子孫になるだろう。
図書室には地球人類の叡智の集約である五十万冊が書籍と電子文書とで保管されている。
本の記述言語も船内共通語も人工言語である。
乗組員は医療知識を身に付けており、簡単な外科手術なら執刀可能である。また薬剤、輸血用血液も完備されている。
酸素は栽培室や庭園内の植物で生成される。水は使用後に循環、濾過、消毒される。糞尿は堆肥となり栽培室に回される。
トイレ、洗濯、洗浄では水を一切使わない。
航宙船は地球に帰還することはない。可能であれば宇宙化以前世界で居住惑星を見つける。
もし、宇宙膨張説が誤りで、宇宙に果てなどなかったとしたら、彼らの人生の意味とは?
いずれにせよ彼らも他の死者と同じように忘れさられるだけだ。
甜菜の糖度は水に浮かべて量る。
もし私が四十年後、人生について語るとすれば、「人生は語りえないこと」と「人生を語るのは恥さらし以外の何物でもないこと」を語るだろう。
大朋めがね、最高。
よく映画などで「この街に知り合いは誰もいない」なんて主人公が出てくるけれど、今の私がそれだ。
「マシニスト」はけっこう凄い映画。
昼下がりの真駒内公園は心地好いが、日が翳ると寒い。
カレーはインド人にとっての味噌汁である。
私の安アパートの一階には若い女が二人の幼女と住んでいる。1Rに女三人、そして幼女のうちの一人は養護学校に通っている。見たところ知的障害ではない、身体的な障害だと思う。
私は酒を飲まないし、酒が嫌いだけれど、時々飲みたくなる酒がある。一つは黄酒、もう一つはサングリア。そして大抵すぐ飽きる。
ローマ帝国時代は葡萄酒を水割りしないで飲むことは下品なことだった。
葡萄酒一に対し蜜柑果汁を三か四の比率で混ぜ、小さく切ったバナナを入れて冷蔵庫で冷やして飲む。これが我流サングリア。底に残ったバナナが一番おいしい。
日本の宗教、寺院や神社が信仰を失った理由は落ち着いて座れる場を市民に提供しなかったからだ。私もそうだが、現代の若者で休日に仏前や神前の座敷へ行き、無料で何時間も座っていられる者は何人いるだろうか?
ポテトチップスを食べながら歩いていたら四羽の烏が数キロメートルも私の跡をつけてきて、途中で烏同士の縄張り争いが始まった。ブランコに乗った女児が、烏の襲撃から走って逃げる私を見て笑っていた。
まだ仕事が決まらない。やはり職業適性診断システムの通り、「工」のつく職業を目指した方がいいのだろうか?
そうだ。私は稼業に生き甲斐は求めないのだから、工場の歯車になることに悔いはない 。
そういえば、小学生のころの放課後は主に炬燵で横になってテレビを見ていた。学校生活で甚だしく疲労していたのだ。
人と向き合う仕事ではどうしても甚だしく疲労せざるをえない。
近所から藻岩山が見えるけれど、どうやらそこで初雪が観測されたらしい。もう札幌は冬だ。
こんな自堕落な生活がいつまで続くのだろう?
「命の続く限りだ」
日能研札幌が私に試練を与えた。小学五年生のテキストを使って模擬授業をして、出来が良ければ私を雇うというのだ。
真冬日の存在にびびり、紅衛兵が被るような帽子と電気ストーブを買った。
夜間の水抜きは十二月から始めよう。
札幌市中央図書館へ行く。蔵書は充分ではないものの悪くはない。
岩明均は古代ギリシャ世界に主題を置いている。塩野七生は中世イタリアが主題だった。赤羊は十九世紀のヨーロッパに主眼を置いているという。私も時代と地域を特定した主題があるといいなぁと思っているけれど特に思い浮かばない。
まぁ私には「帝国」という物語世界があるし。
敢えて言うなら、二十世紀エスペラント運動に携わった奇特人を取り上げると面白そうだ。
母の私への愛情が、一般の母子愛のようなものではなく、所謂「共依存」の一方通行であるならば、これまでの二十四年弱を説明しやすくなる。
十一月
戦争がなくて女性を共有できて食べる物に困らず各成人に満足な住居が割り当てられ、言論と思想と信教の自由がそこそこ��り、働けば働いた分だけ暮らすのに困らない給料を貰えて老後は年金が保証され、学費と医療費が無料の国。それが私の政治的目的だ。
つまり空想的社会主義。
それと人類人主義だか世界市民主義だかよく分けられない個人のあり方が私の基幹思想だ。
よって、ここに「空想的社会主義人類人党」を掲げる!
政権交代は選挙によるもの、そして政体の転換は民主的な投票によるものが好ましい。
思想を根拠とした暴力と殺害は厳しく禁止する。
キリスト教的異性独占行為である結婚制を廃止し、十八歳以上の労働者あるいは学生である男女が抽選で定められた相手と三日毎に共同交配所で生殖行為をする交配制を敷く。妊娠から出産までは人類人政府が完全に支援し、交配に因って誕生した父親不明の子どもたちは人類人政府が「人類の子どもたち」(filoj de homaro)として十八歳まで養育する。ただし母親は六歳まで自分の子どもを育てる権利を有する。もちろん義務ではないので育児放棄も可能だ。
同性愛者は「特殊交配所」を利用できる。
「人類の子どもたち」への教育は「人類人主義」(homaranismo)と「性欲の賛美」に基づいて行われる。
資本主義的異性寡占行為である恋愛の宣伝行為や過剰な恋愛賛美は個人的な趣味と芸術的表現以外ではこれを制限する。
いかなる場所であっても人類人は抽選で定められた相手以外の人類人との性交を禁止される。十三歳以上十八歳未満同士の性交、及び十三歳以上十八歳未満の「人類の子どもたち」と人類人との性交は性欲の解消と自己存在の確立のための行為としてこれを許可する。
すべての人類人は共同食堂を有する共同住宅が付与され、その見返りとして都市部では共同職場、近郊部では共同工場、農村部では共同農場にて労働する義務がある。
労働には対価として報酬と七十歳以降(もしくは退労勧告後)の年金が共通通貨ステーロ(stelo)で、そして交配する権利が与えられる。労働者及び退労者は医療費が無料である。
十八歳で全ての「人類の子どもたち」は人類人となる。人類人になった次の一月から、人類人は希望とそれまでの学校成績、そして試験を考慮した上で各種大学校に入学できる。そこで四年間、学問或いは職業訓練などに励む。学費は無償。もちろん、大学校に通わずそのまま労働者となる選択もある。
共同住宅での居住が困難な各種障害者は共同食堂を有する共同施設に入所でき、施設付属の工場や農場での労働を行うことによって労働者と同じく報酬と年金を得ることができる。もちろん交配する権利も与えられ、その対象は障害の程度により共同施設内の異性と施設外の異性とに分けられる。
刑務所では付属の工場や農場で労働している者に限り報酬と年金、そして刑務所内の異性と交配する権利が与えられる。
共同交配所は感染症の恐れがない限り、病院の患者も利用できる。
全ての「人類の子どもたち」はエスペラントを国際補助語として学ぶ。また全ての「人類の子どもたち」は各人の母語によって教育される権利を有し、母語による教師のいない学科は国際補助語エスペラントで教育される。第一外国語、第二外国語以下の外国語は個人の選択によって決定される。
共同住宅は一棟につき三十~五十戸(三十人から五十人)を収容し、共同住宅が十棟前後集まって一つの島を形成する。そして島が幾つか集まって区が形成され、区が幾つか集まって行政単位として、都市部の市、近郊部の町、農村部の村が形成される。区が設けられない場合もある。共同交配所は島単位で運営される。
人類人政府が統治する領域内で、島から島への移動は自由である。すなわち「空想的社会主義人類人共和国、日本群島」東京市世田谷区第三粕谷島第五棟第二十三号から「空想的社会主義人類人共和国、パリ盆地」パリ市第三区第十八島第一棟第十二号への移住は共同住宅の空きさえあれば誰でも可能である。必要なのは法律的処理と引越し作業だけだ。
移住先での行政サービスは母語で行われる。不可能な場合はエスペラントが用いられる。そのため人類人政府が統治する領域であれば善き人類人はどの共和国のどの島へ行っても行政サービスの内容を理解することができる。またどの人類人政府でも共通通貨ステーロ(stelo)が用いられているので、身元証明書と共通通貨を携帯していれば人類人はどの人類人政府へも簡単に旅行することができる。
死ぬと遺体は共同墓地に葬られる。遺産は全て人類人政府が没収し、家財道具は再利用される。
地球があますことなく全て空想的社会主義人類人共和国によって統治されたとき、(自己主張が激しく自意識過剰な反体制者どもは未だに音楽やテロで抵抗しているのだろうが)現生人類は己の種族の性欲の激しさに驚くことだろう。
複十字健診センターで肺のレントゲン写真を撮った。
私は中一から中三までツベルクリン反応は全て陰性で、そのためにひどく膿の出る注射を六回射った。
体育祭の度に注射されたところが膿んでぐちゅぐちゅになるので、体育祭の練習は嫌いだった。
それほど嫌な思いをしたのに、結核にかかっていたら笑える。
子規も啄木も同じ鳥のことを表す漢字だ。その鳥の口の中は赤い。
まるで結核患者の吐血のように。
札幌の地下鉄には網棚がない。
私は幼稚園に年中組から入った。そして最初の登園日に幼稚園のおもちゃを家に持って帰った。もちろん私に悪気はない。誰も「持って帰っちゃダメ」とは言わなくて、家でもそのおもちゃで遊びたかったから持って帰ったのだ。
私はそういう子どもだったし、今も多分にそういう人間だ。これを我が儘と呼ぶのは勝手だが、私は自身を「暗黙の了解のわからない人種」だと解釈している。
悪いのは「暗くて黙っているのになぜか了解している人種」だ。黙っていないで話せばいいのに。
シャルル・フーリエの『四運動の理論』を読み始めた。愉快だ。
十二月
買ってあったのに神聖なるアスパラガスを食べ忘れていたため、尿が臭い。
北海道の靴底は内地と違うらしい。
鶏の心臓と肝臓が半額だったので臓物カレーを作った。まずかったし、臓物である必要性がなかった。
半月弱だけ働いた九月分の給料が六万円だけ振り込まれていた。時給制の契約社員だから当然だが、奇特なことよ。
それでドミノピザを頼んだら、配達員が茶髪で小柄で猫を連想させる女の子、アキモトさんだった。お釣りを数える指先のたどたどしさがバイト経験の薄さを物語っている。思わず「ゆっくりでいいよ」「ご苦労様」などと優しい声をかけてしまった。
これが逆の立場であれば、私はアキモトさんの食べるであろうピッツァの上に己の白濁精子をバタァの如く振りかけたであろうに。
水商売とは「やったことが形に残らず水のように流れていく商売・仕事」の意である。
「福祉業は水商売なんです」と某知的障害児施設の幹部が言っていた。
かつて医師であった渡辺淳一が小説家になると決めたとき、母に「そんな水商売はやめなさい」と言われたという。
しかしよく考えれば、小説家の仕事は文章という形で残される。もし医師が医学研究を行わなければ、接客業である医師の方こそ水商売である。
水商売と非水商売のと境界は生産物の永続性や仕事の複数性について思考せざるをえず、曖昧である。ゆえに水商売の定義は難しく、渡辺淳一の例のように単なる負の意味を持つ言葉としてしか使われていない。
第三次産業はそもそも水商売である。
映画「レッドクリフ」を観た。「赤壁」に非ず。
九月までハリウッドのアクション映画だろうと私が思っていたのは事実だ。
蜀三将が強すぎて、かつ格好良すぎる。
官渡の戦いと赤壁の戦いは三国志の二大盛り場だけれど、まだ三国鼎立はなっていないんだよね。小学生のころは赤壁の戦い時の情勢がよくわかっていなかった。
中村師童(甘寧)が頑張っていた。
八卦陣には身震いがした。
規制が入って乳房は映せない。
前半は戦闘と外交の連続で、主線の通っていない名場面の羅列映画、すなわち駄作かな?と思ったけれど、お茶の場面で一本の線がすうっと引かれた。
赤壁の戦いは三国志版トロイ戦争だったのだ。
趙薇(尚香)の演技が浮いている。喜劇向きだな。
一番良かった場面は、次回の予告。次の主題は火と風だ。
この映画を観たあとの私なら一騎当千である。
滑舌が余りよくないので「公序良俗」と言おうとすると「公女凌辱」となってしまう。
ネットに繋がっていないパソコンはただのゲーム機だ。
電話窓口「私さまは、テレビの地上デジタル移行への対策はどのようになさっておいででしょうか?」 、私「テレビを買わないようにしています」
夜の狸小路は面白い。
まだ二十代も前半なのに、新しいことを始めるのにさえ「腰が重い」とは。
負けたいと願う心は知りたいと願う心である。
小麦は米より必須アミノ酸の量が格段に少ないので、パンだけで必要な栄養を摂るのは難しく、どうしても肉が必要になるのだ。
逆に言えば米は必須アミノ酸を多く含むので、一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べただけで栄養は充分なのだ。
日本人女性が段々と痩せ形になったのは食事の洋風化のお蔭なのだ。
中古冷蔵庫のホース接続部から水が漏れるので調べたら、ゴムが弱くなっていた。仕方ないのでヨドバシカメラで四七二円の替えを買って付け直した。
じゃがいもを四つに切ってサランラップでくるみ、七五〇Wで三分チン。それにマヨネーズと青海苔をかけたものを小腹がすいたら食べている。二キログラムを一九八円とかで売るのが悪い。
札幌の良いところ。東急ハンズとハローワークとブックオフとヨドバシカメラとアニメイトととらのあなとメロンブックスと紀伊國屋書店とドンキホーテとダイソーがお互い歩いて行ける距離にあること。(毎日一巡している)なのに人通りが渋谷や秋葉原よりも少ないこと。
そういえば、私が高校二年生のときはアニメイトとメロンブックスは狸小路の雑居ビルの二階にあったような気がする。
時計台はいつ見てもしょぼい。でも旧北海道庁は素晴らしい。
奄美大島もそうだったけれど母娘や母子をよく見掛ける。
朝起きて、今朝は特にしばれるさーと思ったら、粉雪が降ってたさー。
藻岩山の山頂付近に雪が積もっていた。風が吹くと皮膚に刃を当てたように冷たい。
昼になると雪の粒が大きくなって降りしきる。この分だと積もりそう。藻岩山が見えなくなった。
昼過ぎにはまた粉雪に戻った。
ローマ教会は一二八二年に全シチリア島民を破門したことがある��
ガブリエル・ガルシア・マルケスの登場人物は名を替えてあちこちにいる。
ガブリエル・ガルシア・マルケスはノーベル賞受賞講演中に、スペイン語文法の単純化と文法規則の人間化、そして正字法の撤廃を訴えた。
今日、たい焼きを食い逃げした女の子に体当たりされたような感覚を味わった。
国際補助語エスペラントを図書館で借りた入門テキストで復習している。新たな発見もあり奥深い。 ベネズエラの正式名称は「ベネズエラ・ボリバル共和国」である。
将来日本で福祉戦争が起こる。福祉をする側(貧困層)と福祉をされる側(富裕層)の間の闘争だ。
大学二年生のころ、札幌市北区出身の友人が「そのゼミの先輩の彼女は風俗嬢なんだよ」と馬鹿にしたように言っていた。確か業種はヘルスだったと思う。
私はしかし生粋の文学青年であったので、その先輩は「本物の愛とは何かを知る男」だと感心したものだった。
世に云う恋愛には三種ある。一に肉体的征服感、二に精神的連携、三に依存。いずれも正しい。
女性や青年はこれら三種に序列をつけたがるが、本能より出る感情ではない。
もし恋人が風俗嬢の場合、肉体的征服感を主とする者は悶え苦しみ、精神的連携を主とする者は仕事を応援し、依存する者は依存し続けるだろう。
江戸時代、豪商や文人は吉原の高級娼婦を正妻に身請けしたし、仏蘭西にも『椿姫』という高級娼婦との恋愛を描いた小説がある。
何も人生は女性のために生きるのではなく、自分自身のために生きるのだから先進的な近代人たちはあまり妻の過去や職業にこだわらなかったのだ。
ましてや現代人をば。
札幌で諸兄が遊ぶとしたら薄野ではなく、南六条東三丁目の交差点を豊平橋の方へ行って右手にある二つの会館はどうだろう。
少なくともその豊平川沿いの会館群は十九時くらいから薄野の風俗店が閉まる〇時以降も午前三時まで営業している。脱法営業だからだ。今日までなら行くことはないけれど、明日の幕開けとともに始まった空白の三時間でなら行く価値はある。
カネマツ会館と五条東会館とあり、黄色地の看板で飾ってあるのですぐ分かる。共に二階建平屋風となっていて中には小さな飲み屋が軒を連ねている。
坂口安吾は高校生のときに読んで挫折したが、さもありなん。小僧っ子にはわからんさ。
手に職じゃないけれど前の住居からアクリルガッシュを持ってきたのでアクリル画を再開した。
私は全て絵画は部屋の装飾のために描かれると信じ、絵画による自己表現というものを信用していない。
掛軸はそもそも飾るものであるし、ルネッサンス期のアトリエでは壁画を製作していた。
絵画は装飾品であるからこそ芸術であり、美術なのだ。
私の部屋には本棚がなく、また買わない予定であるから、寂しい白壁が広く空いているのだ。
街のあちこちに水色の函がおかれ、滑り止めの砂が満載だ。冬支度である。
これは「常に凡ゆる断片」
私の現在の研修生という立場は気楽だ。職場へ行く義務はない、しかし職場へ行って研修するとただ呆っと座っていただけでも給料が出る。七時間いれば日給は一万を超すが残念なことに交通費は出ない。
結局、履歴書を出して面接したところ、全てに受かっていた。
大学五年間で一度も病院にかからなかったし、四、五年生のときは特に無病息災だった。それは生活が閉塞的であったからだ。しかし小学生どもと触れ合う職場ではいつ伝染されるか怖くて堪らない。
結核ではないことを証明しなければならない。
ミニシアター系の映画は気取った芸術学生や頭の悪い女子大生が「こんな映画を観る自分っておしゃれ!」と観るものと相場が決まっているが、私も観る。今日はシアターキノで「敵こそ、我が友」を観た。
私はフランス人気質でフランス映画がよく合うので、フランス映画を多く上映するシアターキノは選ぶ苦労がない。
政治はえげつない。民主制であろうが、独裁制であろうが国家が人間の集合体である限り、醜い。
クラウス・バルビーは残忍な性格だったろう。しかし悪だったのだろうか? 悪とはきっと温和な性格をしていると思う。
風呂に入らないまでも足だけでもお湯に浸らせるだけで眠り心地が全然違う。
北海道では小学生でも棒を「ぼっこ」、唐揚げを「ざんぎ」と言う。
電車を「汽車」と言うのは分かる。というのは汽車と呼んでいた時代と今とで利便はほぼ同じだし、電車は山手線や京王線こそが呼ばれるに相応しい。
職場を二十一時に出発し歩いて自宅まで帰ると一時間半でつく。もちろん手袋、帽子(フード)、マフラーは必要だが。
「かたわ少女」という障害者の女の子を攻略するゲームが海外で製作中らしい。
しかし知的障害児が登場しないのが残念だ。白痴少女は萌えるのに。
男は女が弱い立場にあるときだけ、女を守ろうとするし、大切にして真剣に愛そうとする。
それは彼女たちが「この人がいないとこの先自分を愛してくれる男が現れないかもしれない」と不安に思っていることを男が知っているからだ。
男は女が自分より弱い位置に立っていないと安心できない。
というのは男は、一度男を知った女は男なしではいられないこと、そして女は常に男を乗り換える機会を伺っていることを知っているからだ。
女にとって男は靴と同じである。足裏は一度靴になれると直接地面を踏む痛さには耐えられないし、履き古した靴は履き替えたいと思うだろう。あるいはまだ新しくても見栄のために違う靴を物色したりする。それにサイズが大き過ぎてもダメだし、小さ過ぎてもダメだ。
だから、賢明な男は、いわゆるまともで競争相手のいそうな女は遊び感覚でしかつきあわないのだ。
つまり、障害を持つ少女或いは女性というのは現代社会では稀に見る「愛され女」なのだ。
死は恐れるに足らず。人間は死なない。なぜなら死ねば人間ではなくなるから。
怒るな、褒めよ。大事なことはチンパンジーが教えてくれる。
日本の大衆文化が幼稚なのは、大衆文化を形成するための大衆、つまり充分に余暇のある人々が生徒と学生に限られていて、成熟した大人は仕事に追われて忙しく文化どころじゃないからだ。
すると数の論理で中学生、高校生、専門学校生や女子大生に受けの良い番組、音楽、小説、漫画があたかも日本中の注目を浴びているかのように見える。或いは情報媒体がそう見させている。
いわゆる恋愛主義が社会を支配する主流思想に思えるのはそういった中学生や高校生の未熟さや幼稚さが大衆文化の前線を陣どっているからだ。
少しでも文化に興味のある人であれば仕事に就いて余暇を奪われることを恐れるだろう。そして無���への風当たりの強さに怯むのと同時に大衆文化の幼稚化を憎まなければならない。
まともな大衆文化を形成するには充分な数の大人が充分な量の余暇を持つ必要がある。そうやって数の論理で生徒・学生文化を日本大衆文化の一分野へと押し戻していかなければならない。
恋愛主義を一派閥へと駆逐し、男女の関係を“人間の地平”に立脚するものにしなければならない。
とりあえず私はキノカフェでフランス映画を観て、市立図書館で坂口安吾と旧共産圏とラテンアメリカの文学を読もう。
皇帝、国王、大統領は偉大で、豪華な外見をしていなければならない。たとえ黒革金銀細工の財布の中身が空であっても。
職場を出ると粉雪。
十一月二十日の札幌市内における最高気温、零度以下。
つまり真冬日。
そして、朝起きると人生でかつて経験したことのないような積雪。
水抜きしないと水道管が凍る。
起床時の室温、三度。
湯たんぽを購入。
氷雪上を歩くため、靴にスパイクをつけた。
そんな晩に狸小路で演奏している音楽愛好家がいる。
零下三度の札幌で、私は豊平川沿いを自宅まで歩き、やっと帰宅する。
帰宅時の室温、一度。
私を雇った職場が入っているビルに北海道で一番有名な政治家が所属する個人政党の本部がある。
だから今日は政治の話をしよう。
狸小路で日本共産党のDVDをもらった。
それはまさに志位書記長のファン・ディスクだったが、つらつらと全編を鑑賞してしまった。
あやうく共産党のファンになりそうだった。しんぶん赤旗日曜版を定期購読して、日本共産党に入党しそうになった。
旧共産圏を生きた人の小説を読むと、共産主義もそれほど悪くはないと思えてくる。
悪いのは共産主義じゃなくて独裁的な指導者と我が儘で自己主張の激しい反体制者だけだ。
けれど、そもそも私は人間集団が嫌いなんだ。
だからどこかの政党に入ることはまずしない。
それに大学時代に身近に見てきた「共産党」は醜悪だったし、第一に私はデモとか行進とかの集団行動が嫌いなんだ。団結しようとするのは現実から逃げているからだ。
もっとやり方がスマートなら、話を聞いてくれるかもしれないのに。やり方が顕示的で、目的へと努力する前から諦念が感じられる。まるで知的障害児や駄々っ子のようだ。
つまり私は共産主義には興味があるが、共産党はあまり好ましく思っていない。
しかし一国を動かすためには何かしらの政治学を学ばねばならない。大学の政治学部に入学するか既存政党に入るか、独学で習得するか?
よし、独学しよう。そして政党は私が自ら創ればいい!
大学四年生の夏、就職活動を諦めたときから生きている感覚に乏しくなってきたんだ。だんだんと。
早口でまくしたてる人は苦手だ。いや、人ではなくて早口が苦手で、早口で喋られると泣きたくなる。特に女性に多い。
早口な人と吃っている人のどちらを選べと言われたら間違いなく吃っている人を選ぶ。
早口な女性は別に頭の回転が速いのではない。なぜなら思考によって、ではなく記憶と憶測だけで話すからだ。
つまり早口の女性は言葉を持たない。彼女たちは壊れかけたテープレコーダーに過ぎないのだ。
職を探す度に共産主義を羨望する。
自動的に職は与えられて然るべきだと思う。
働く時間というのは私にとって死の時間である。
なぜ己の死を自分で探さねばならない?
私は常に余暇か副業が生きている時間なのだ。
これは逃げ、なのか? 或いはそういう生き方なのか?
「辞めさせた、或いは辞めた職場は労働者の次の仕事を見つける義務がある」という法律を作って欲しい。
逃げられた職場も。
「よく働こう」とするのではなく「よく生きよう」とする者にとって資本主義は残酷だ。
ニートさんとかフリーターさんを問題視する人は、まず面接で若者を見捨てる人を問題視した方がいいよ。とブックオフとパン屋チェーンのアルバイト面接に落ちた私が言う。やっぱり大学時代のバイトと同じ業種しか雇ってくれないのか? なんだ、この職業カースト制は?
私だって美味しいパンを作って主婦層や職業婦人からモてはやされたいのに。
生きているのかなぁ、本当に? 自分。
佐賀県からこの一週間、このブログへのアクセスがなかった。
その程度の教養レベルか!佐賀県の教育委員長は職務怠慢により死刑!
或いは佐賀県にパソコンは無いのか?
中学生のころ、スナッフビデオは都市伝説だと聞いて、「ならば自分たちで作ればいいんじゃないか」と思った。
抑圧された子供は、一人暮らしをすればできるかもしれないことを妄想するものだが、私の場合、その全てが犯罪がらみだった。
さて、私はこの見知らぬ百五十万都市で市民記者に登録した。
仕事における電話の秘訣は、相手に電話したことを後悔させないことだ。
空想的社会主義者の食卓。【切り餅(磯辺か餡)三個と納豆】【玄米フレーク五十グラムに牛乳かけ】【蒸し馬鈴薯と野菜スープ】【インスタント麺と蒸し馬鈴薯】【御飯と魚介缶詰と味噌汁】【ピザトースト二枚と野菜スープ】【カレーライス】【食パン二枚と目玉焼き】
空想的社会主義者の食事への心得。粗食、同一性保持、昼食は朝食と夕食のつなぎ。
空想的社会主義者の主要飲料は【牛乳】で、【野菜ジュース】や【珈琲】や【茶】は嗜好品として飲む。牛乳を多く飲む日は必ず納豆などの大豆食品を食べるべきである。
空想的社会主義者の栄養補給剤は【エビオス錠】である。
これは決まりではないが、豚肉と鰭や鱗のない魚は食べない。肉製品と乳製品を一緒に食べない。血を食べるのはダメ。
イスラエル国歌「ハティクヴァ」は物哀しい。
ラーメン! フライングスパゲッティモンスター。
実家にいたころは飽食気味で、私はやや肥満だった。
母は愛情を食事でしか表現できない人だったからだ。
学園時代はよく食べた。しかしよく戦ったので痩せた。
今は粗食で痩せた。
今日、昨日、一昨日は図書館(徒歩五分)とスーパーマーケット(徒歩三分)に行く他はずっとパソコンの前で過ごした。
おかげでウンコが硬い。
二ちゃんねる系のサイトに今更ながらはまっている。
もう仕事とかどうでもいいや。面接とかで人間性試されるの嫌いだし。
ほら、お外は怖いし。寒いし。
いつの間にか雪降ってるし。
火星に土地でも買って移り住もうかな?
やれやれ
人間は今でこそ呼吸し、食べ、排泄し、寝て、思考している。
しかし数年後か数十年後には思考は消え去り、記憶もなくなるだろう。
私はもしかしたら今までの人生の四倍の時間を生きるかもしれない。しかし決して五倍は生きないだろう。
思考と記憶の消滅、それを人は「死」と呼ぶ。
症例はいくつもあるにも関わらず「死」の問題は医学によっては解決されていない。ただ宗教だけがこれを信仰により解決させようとしている。
人はこう思うだろう。なぜ必ず「死」ぬ人間に思考が与えられたのか?と。思考さえなければ「死」を思い悩むことはなかったのに、と。
私はこう考える。誰かがこう仕組んだのだ「人間よ、その『死』とやらについて思考せよ」と。
で、私は考えた。人間は「死」ぬ、ゆえに有限だ。しかし人間の集合体である人類は半永久的に存在する。この違いに意味が存在する。
人間が「死」ぬのはなぜか?それは人類全体に更新を与えるためだ。つまり個人の人生というのは人類という種族全体の繁栄のためにある。
恐竜は失敗した。しかしあの時代にはあの形態が最適だった。今の時代は人類の形態が最適である。しかしいつ人類の絶滅が訪れるかわからない。
個人やある人間集団の私欲のために人類が犠牲になるとしたら、死んでいった人類はもとよりその個人やその人間集団の人生も無駄になる。なぜなら彼らは人生を無駄なことに使ったからだ。或いはそれも人類の試行錯誤なのか?
ゆえに私は結論付けた。人間の人生を活かすには常に自身のためではなく人類のために生きよ、と。私の宗教的信条でもある。
私が二〇〇七年二月に生み出した「人類意志こそ神」という真理は今もゆるぎない。
その結論ゆえに私は人類人主義と世界市民主義を支持する。
世界連邦を唱えるバハイ教はある意味では正しい。世界中心都市論と世界政府論を除いては。
ゆえに私は「宗教団体に所属しているか?」に関しては無宗教だが、「信仰を持つか?」については有信仰だ。
人類全体へのゆるぎない信仰。
警察犯処罰令第一条第三号「一定の住居または生業なくして諸方に徘徊する者は、三十日未満の拘留に処せられる」。私、危なかったなぁ。
ちなみに昨日は十五時すぎでマイナス三度だった。気温がプラスになることはなかった。
フードか帽子を被らないと顔が凍る。
キブツの子供は母親と離れて暮らす生活を強いられるので就学前は夜尿や指しゃぶりなどの情緒的未発達が見られる。
しかし子供の家での十八年間に及ぶ集団生活を経て、青年期になると非神経症ともいうべき環境適応能力と高い社会奉仕意欲を示すという。
人口の十%にも満たないキブツの人がイスラエルを率い、パレスチナ人どもから国を守ってきたと言っても過言ではない。
キブツはどこかスパルタと似ている。
母親の愛にくるまれてすくすく育ち、教育を終えて社会に出る際に新しい環境に適応できず引きこもりになったり神経症を患ったりする日本とは正反対である。
また家族という、気の違った両親の作る牢獄に囚われることなく、子供は成長することが出来る。そのことの、なんという幸福。
キブツ制度が全く善くて素晴らしいと賞賛するわけではないが、日本人はキブツなどの社会主義制度を少しは見習うべきだよ。
なぜ働けるし、働く意志のある人間が働けないのだ?労働力の余剰をどうして解決しようとしないのか?
ギリシャ的な暴動を起こしたいさね。ヘルメット、鉄パイプ、ナイフ、クロスボウ、火炎瓶を装備してさ。戦うんだ。
見えない何かと。
そのために私は筋トレを欠かさない。
正しい太り方をしよう。正しく太った人は美しい。
正しく太った人は、間違って痩せた人より美しい。
皆さんも親になれば分かると思うが、愚かな親は「子供は家庭にさえいれば良く育つ」と信じ、施設に預けられた子供を見ると「可哀想に!」なぞと言う。
これは親の傲慢であり、怠慢だ。
ある種の家庭に産まれた子供にとって、家庭とは牢獄に過ぎない。
悪しき家庭は普通の施設にさえ劣る。
もちろん、部下に怒鳴りつける上司がいるような施設は失格である。やたら怒鳴りつける父親がいるような家庭が失敗であるように。
家庭は人生の不条理の始まりである。結婚がそうであるように。
不倫の存在は結婚制度の不完全さと失敗を裏付けている。
なぜ男性は一人のやがては醜く老いる女性と共に生きねばならず、女性は一人の頑固で我が儘な男性に肉体を支配されなければならないのだ?
ならば結婚制度をなくし、複数の男性と複数の女性が乱交する交配を制度化すればいい。
そして交配を道徳とする。
これで家庭は消滅し、家庭起源の不幸も消え去る。
女性と子供を家庭という牢獄から解放しなければならない。
これはおいしいぞ
不満があるなら耐えてはならない。叫ばなければ、心弱き者はいつまでも弱いままだ。
INTER LUPOJ KRIU LUPE!
祖父の最初の記憶は航空機である。私は祖父の住む福岡まで航空機で遊びに行った。
両親の結婚式のときに某Hグループのエレベーター専門子会社の社長に就任したと聞くから、その時は既に退職していたのだろう。
それから祖父は奈良の西大寺に引っ越した。奈良での記憶はあまりにも大きい。
遊園地へ車で行く途中で私が寝てしまい、目覚めたら祖父宅の前だった。
祖父は三重県の山奥の出身で、憲兵として猿田彦神社を守っていたら終戦になったという。
カメラ好きで本好きだった。本好きは私まで遺伝したが、カメラ好きは父までの遺伝で止まってしまった。
最近、腰を痛めて歩行困難になったので東京区内に引っ越した。
父から連絡があり、今から急遽、私はAIRDO二十便で羽田空港へ向かう。
明日を迎えるかどうかは、分からないという。
こんなに揺れた飛行はチュニス・カルタゴ空港からシャルル・ド・ゴール空港への飛行以来だ。
連絡から二時間半で私はすでに機上の人だったため、荷物が近所徒歩五分の図書館へ行く際と同じ量である。
東京は雨が降っていることもあるけれど蒸し暑い。
この三ヶ月で私は巨大大陸辺縁にある弧状群島の知床から那覇までを一往復分移動したことになる。
私は行動する直前にはその行動について考えない。そのために行動に躊躇はない。
そのせいで今まで様々な困難があったけれど、今回は良かったのかもしれない。
考えてみれば祖父は昨日で八十四歳である。私があと四日で二十四歳であるように。
まだまだ十分とは言えないが神々に文句はつけられない年齢だ。
容態は少し落ち着いたようだが、まだ危ないらしい。
十二月六日に、大阪の釜ヶ崎で暴動事件が起こっていたという。引き金をひいたのは暴力的で犯罪的な西成警察署による労働者への暴行事件だった。
「連れて行かれた西成署の三階の個室で、四人の刑事に代わる代わる顔を殴られ、紐で首を締められ、足蹴りされ、挙句の果てに両足持たれて逆さ釣りにされた。気が遠くなると、スプレーをかけられたと言う。生活保護を打ち切ると脅かされて、その店に近づかないという始末書まで書かされている。」(西成署警察官の暴行に抗議する!)
年末における雇用問題の原因は、報道をみるかぎりでは労働者の選択肢の狭さに原因がある。
いや、労働者はそもそも選択なんてしたくはないのだ。だって仕事のために生きているわけではなく、生きるために仕事をしているのだから。
経営者はもちろん「仕事にために生きる人」を求めるだろう。已むをえないことだ。しかし従業員もそれに右に倣え、では自分で自分の首を絞めているようなものだ。面従腹背が必要である。
そういう意味で、日本の労働者は正社員も派遣社員も労働意識が低い。
企業が、「お客様のためにある」時代は終わりを告げた。これからは「従業員のためにある」企業が求められている。
労働力の均衡という面から見れば、学業を終えた健康な成人には自動的に職が与えられてしかるべきなのに。
情況の囚人という心理実験によれば、派遣社員も正社員になれば正社員ばりの働きをするし、正社員も派遣社員になればそれだけの働きをする。あらゆる面接や選別は無意味であって、人事が行うべきはしかるべき職を与え、仕事の結果を見て評価を与えるのではなく、「こういう結果であってほしい」という仮定の評価を実際に与えてしまうことだ。
十二月二十二日には札幌に帰る。
トロヤ点への新たなる月の飛来、止まない月震、超未来人類と新興恐竜との共存などについて有機的に考えようとしているが、果たせない。
六百円で大根サラダ・鴨肉三切・味噌汁・鳥肉たっぷりの丼物・アイスが食べられる地下一階のカフェ・ダイニングバーを見つけた。
十二月二十日に開店したジュンク堂へ行った。池袋級書艦だった。エスペラント関連書籍は十冊以上、なんと『百年の孤独』のスペイン語版も置いてあった。
札幌はジュンク堂、とらのあな、アニメイト、ブックオフの並びが熱い。
JRタワーのヴィレヴァンが狭いなぁ、嫌やなぁと思っていたらロフトの中にもあった。でも、ヴィレヴァン下北沢店の足元にも及ばない。
アリストテレスは貨幣を万物の尺度とする資本主義的世界を想定した。その一方でディオゲネスは貨幣を変造した罪でシノペを追放され、世界市民となった。彼は貨幣(常識、慣習)を変造したのだ。
純連のみそラーメンは美味しかった。
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魔女の霊薬 種村季弘
十六世紀ドイツの画家ハンス・バルドゥングス・グリーンに、「魔女たち」と題して、数人の魔女が恍惚状態で飛翔したり、そのための準備をしているらしい場景を描いた一幅の銅板画がある。後方に水平に浮遊している老婆が片方の手に尖の二股状になった杖を持ち、もう一方の手で、なかば浮き上った若い娘の腰を抱えて何処(いずこ)かへ拉し去ろうとしている。前景右手には、片手にもうもうと煙を上げる魔香の器を掲げて今にも地を離れんばかりのエクスタシーに浸っている女がいる。
注目すべきはしかし、それよりさらに前景左手の女である。彼女は左の手に何やら呪文のようなものを記入した紙片を持ち、もう一方の手を股間に押入して(後方にぐつぐつ煮えている釜から取り出したものであろう)塗膏(ぬりあぶら)らしきものを陰部に塗布しているのである。呪文と見えたのは、あるいは塗膏の製法または用法を書きとめた処方箋でもあろうか。仔細に見ると、この銅版画は映画的な連続場面で構成されていて、最前景の塗膏を塗布している魔女が遠景に退くのにつれて、徐々にエクスタシーに陥りながら催眠状態で飛翔する(もしくは飛行感覚に襲われる)過程を刻明に記述していることがわかる。
バルドゥングス・グリーンばかりではない。ゴヤも(「サバトへの道」)、アントワーヌ・ヴィルツもレオノール・フィニーも、古来魔女を描いたほとんどの画家が、箒にまたがって空中を飛行する魔女を描いた。魔女は飛ぶのである。しかも股間にあやしげな塗膏をなすり込むことによって。これこそが悪名高い「魔女の塗膏」であった。
ところで、一体、魔女の塗膏の成分はどんなものだったのだろうか。血やグロテスクな小動物のような、さまざまの呪術的成分を混じてはいるけれども、主成分はおおむね幻覚剤的な薬用植物であったようだ。ゲッチンゲン大学の精神病理学学者H・ロイナー教授は魔女の塗膏の成分を分析して、混合されたアルカロイドの種類をおよそ五種に大別した。
一、 イヌホオズキ属のアトロパ・べラドンナから抽出されるアトロビン。
二、 ヒヨスから抽出したヒヨスキアミン。
三、 トリカブトのアコニチン。
四、 ダトゥラ・ストニモニウムから取ったスコポラミン。
五、 オランダぱせりからのアフォディシアクム。
これらの各成分から醸し出される効果はまず深い昏睡状態であり、ついで、しばしば性的に儀式化された夢幻的幻視、飛行体験などである。おそらく媚薬(アフロディシアクム)として常用されたオランダぱせりは性的狂宴効果を高めたであろう。魔女審問の記録(十六、七世紀)には、実際におこなわれたものか、それともたんなる幻覚であったの定めではないか、ソドミー、ぺデラスティー、近親相姦のような倒錯性愛の告白がいたるところに見られる。告白された淫行のなかには悪魔の肛門接吻(アナル・キス)のように入社儀式化されているものもあった。アコニチンによる動悸不全はおそらく飛翔からの失墜感覚を惹起した。またベラドンナによる幻覚は、はげしく舞踊と結びつくと運動性の不安――すなわち飛行感覚を喚起する。睡眠への堕落、性的興奮、飛行感覚は、こうして各成分の作用の時差によって交互に複雑に出没する消長を遂げるものにちがいない。
使用法は、右のアルカロイド抽出物の混合液を煮つめたものに、新生児の血や脂、煤などを加えて軟膏状にこしらえたものを、太腿の内側、肩の窪み、女陰のまわりなどにすり込むのである。さて、細工は流々、はたして所期の効果が得られるであろうか。
現代の学者で魔女の塗膏を実際に当時の処方通りに造って人体実験をしてみた人がいる。自然魔術と汎知論、あるいはパラケルスス研究やシュレジア地方の伝説採集の研究で高名な民俗学者ウィルーエーリッヒ・ポイケルト教授である。一九六〇年、ポイケルトと知人のある法律家は、十七世紀の魔女の塗膏を処方通りに復元して、こころみに自分の額と肩の窪みにすり込んでみた。成分はベラドンナ、ヒヨス、朝鮮朝顔、その他の毒性植物を混合したものであった。まもなく二人はけだるい疲労に襲われ、ついで一種の陶酔状態で朦朧となり、それから深い昏睡状態に陥った。目がさめたのようやく二十四時間後で、かなりの頭痛を覚え、口腔からからに渇き切っていた。二人はそれから、時を移さずにぞれぞれ別個に「体験」を記述した。結果はほとんど口裏を合わせたように一致し、しかも、三百年前、異端審問官の拷問によって無理矢理吐き出させられた魔女たちの告白とおどろくべき一致を示したのである。
「私たちの長時間睡眠のなかで体験されたものは、無限の空間へのファンタスティックな飛翔、顔というよりはいやらしい醜面をぶら下げている、さまざまな生き物囲まれたグロテスクな祭り、原始的な地獄めぐり、深い失墜、悪魔の冒険などであった。」(ポイケルト『部屋のなかの悪魔の亡霊』)
してみると十六、七世紀の魔女たちの証言はかならずしも根も葉もない虚構ではなかったのである。一五二五年に『異端審問書』を書いたバルトロメウス・デ・スピナは、当時の有名な医者ぺルガモのアウグストゥス・デ・トゥレが、その家の女中が部屋のなかで素裸になり意識を失って死んだように床に倒れているのを発見した委細を記録している。翌朝、正気に戻ったところを尋ねてみると、彼女は「旅に出ていた」と答えたという。どうやら塗膏を使用したのである。ルネッサンス・イタリアの自然科学学者ヒエロニムス・カルダーヌス(カルダーノ)も旅の幻覚を伴う塗膏の話を書いている。
「それは、おどろくべき事物の数々を見させる効力と作用を有しているとされ……大部分は快楽の家、縁なす行楽地、素晴らしい大宴会、種々様々のきらびやかな衣装を着飾った美しい若者たち、王侯、貴顕の士、要するに人の心を呪縛し魅するありとあらゆるものを目に見させ、ために人びとはてっきりこれらの気晴らしや快楽��享楽し娯しんでいると錯覚さえする。彼らはしかし、一方では、悪魔、鳥、牢獄、荒野だの、絞首吏や拷問刑吏の醜怪な姿だの、とかをも眼にするのであって……そのため非常に遠い奇妙な国を旅行したような気がするほどである。」
おそらく現代の幻覚剤による「旅(トリップ)」と同じような、未知の空間への旅行が体験されたのであろう。ヒエロニムス・ボッシュの「千年王国」の天国と地獄を一またぎするような、至福と恐怖がこもごも登場するその旅の旅行の体験の内実は、「ビート族のベヨーテ生活」の至福共同体が「ある敷居を境に苦痛の闇へと転落し、そこからヒップスター生活が犯罪の世界へ繋っていく」(ワイリー・サイファー)ところまで、現代の幻覚剤体験そっくりだったようだ。
幻覚剤文明が現代の特産物ではないように、魔女の塗膏もキリスト教的中世独特の薬物ではなかった。それは古代ローマにも、それ以前の蒼古たる地中海文明的なかにも、明らかに存在していた。ただ、またしてもその意味が違っていたのだ。キリスト教的中世の魔女の塗膏が忌むべき禁止の対象であったのにひきかえ、そこでは同じものが驚異の対象だったからである。
もっとも著名な例は、アプレイウスの『黄金の驢馬』の主人公���キウスが魔女めいた小婢フォティスの導き屋根裏の小部屋の扉の隙間ごしに覗き見るパンフォレエの変身であろう。ミロオの妻パンフォレエは人眼に隠されて塗膏を身体中に塗り、鳥に変身して夜な夜な恋する男のもとへの飛んでゆく。
「見るとパンフォレエは最初にすっかり着ていた着物を脱いでしまうと、とある筐(はこ)を開いて中からいくつもの小箱を取り出し、その一つの蓋を取り去って、その中に入った塗膏をつまみ取ると、長いこと掌でこねつけておりましたが、そのうち爪先から頭髪のさままでからだじゅうにそれを塗りたくりました。そいでいろいろ何かこそこそ燭台に向ってつぶやいてから、手足を小刻みにぶるぶると震わせるのでした。すると、体のゆるやかに揺れうごくにつれて柔かい軟毛(にこげ)がだんだんと生え出し、しっかりした二つの翼までが延び出て、鼻は曲って硬くなり、爪はみな鉤状に変わって、パンフォレエは木菟(みみずく)になり変わったのです。
そうして低い啼き声を立てると、まず様子を吟味するように少しずつ地面から飛び上がるうち、次第に高く上がってゆくと見るまに、いっぱい羽根をひろげて、外へ飛んでってしまいました。」(呉茂一訳)
この場合にもパンフォレエの羽化登仙的な至福感は事の一面を物語っているにすぎない。同じ塗膏をフォティスから手に入れたルキウスは、同じようにそれを身体中に塗りたくりながら鳥とは似もつかぬ鈍重な驢馬に変身してしまう。それは天上的なものの失墜した果ての、道化た、暗い、醜悪な実相である。以後、彼はヒエロニムス・カルダーヌスのいわゆる「非常に遠い奇妙な国」の間をさまざまの魔物や物の怪に囲まれながらさまよいつづけなくてはならない。天上の飛翔は、一転、暗い冥府の旅に変るのである。
さて、このように両極的な作用を及ぼす『黄金の驢馬』の魔女の塗膏の成分は、一体どのようなものだったのであろうか。フォティスはこれらの驚異が「小さな、つまらない野草のおかげで」成就すると説明している。「茴香(ういきょう)をちょっぴり桂の葉をそえ、泉の水に浸したものを身に浴びるとか、飲むとかするだけ」でよく、また変身の解毒剤には「薔薇の花」を食べればよい。これ以上の説明がないので詳細は不明であるが、塗膏が茴香や桂の葉を含むいくつかの野草から合成されたことだけはたしかである。
ローマ文学史上、アプレイウス(一二三頃~一九〇年?)が登場するのは白銀時代も終焉してからのことであった。すでにこの頃、オリエントの異教はローマに流入して熱病のような猛威をふるっていた。しかし魔女の薬草はこれより早く、すでに黄金時代から重要な文学的トポスとしてしばしば詩文学の上に登場している。さいわい、ゲオルク・ルックという学者が黄金時代の四人の詩人に焦点をしぼって、『ローマ文学における魔女と魔法』について論じているので、これを参照しながらローマにおける魔女の塗膏の繁昌とその源泉をしばらく訪ねてみよう。
アプレイウスのパンフォレエが「恋いこがれた男」のもとに飛んでいくために鳥に変身したように、塗膏の効果の主たる目的の一つは明らかに愛の魔法であった。正確にはむしろ愛の錬金術というべきかもしれない。なぜから塗膏は、別れた男女をふたたび合一させたり、げんに夫婦である男女を分離させてその一方をよこしまにも他の男や女に結びつけようとする、分離と結合のための触媒の役を果たしたからだ。それゆえに塗膏の使い手反しばしばローマの悪場所である売淫の街区スブーラに巣食う百戦錬磨の取り持ち女たちであった。
盛期黄金時代の詩人ウェルギリウス(前七十~十九年)の『牧歌』第八に、ダフニスに恋をして捨てられた女が魔法で男を呼び返そうと逸話が見える。ふつうから職業的な魔女の家を訪うべきところであるが、この女(そもそも『牧歌』第八のこの箇所は、牧人ダモンとアルフェシボエウスが歌くらべをして、アルフェシボエウスが魔法を実演してみせるためにその女にじかになり変わり、彼女の声、言葉、状態を直接に演じているので、女は無名である)は女奴隷のアマリリスを助手に使い、かつて大妖術使いのモエリスから伝授された霊薬の製法を駆使して、みずから愛の魔法を演じてみせる。はじめに彼女はアマリリスを呼び寄せてつぎのように命じる。
「水を持ってきて、そこの祭壇を��わらかい紐でお結び。それから強い野草と匂いのきつい乳香を燃やすのだよ、そうすれば情夫(あのひと)の狂った気持を魔法の供物(くもつ)で惑わしてやれるのだから。足りたいのはあと魔法の呪文だけ。――街から家へ、私の呪文よ、ダフニスを連れ戻しておくれ。」
祭壇に結び紐、野草、呪文といった魔法が早くもあらわれている。「やわらかい紐」はおそらく羊毛の紐で、羊毛の紐には霊的呪縛力があると信じられていた。紐の結び方は、まず不実な相手の肖像画の首のすわりにそれぞれ三色(黒、白、赤)に彩った三本の紐をかけ、この画を祭壇のまわりに三度めぐらせる。「三つの異なる色を三つの結び目でひとつに結ぶかいい、アマリリス、結びつけさえすればいいのだよ、アマリリス、そしてお言い、〈私の愛の絆(きずな)を結ぶ〉と。」
三の数がしきりに重用されるのは、「神は奇数をおよろこびになる」からである。したがって「愛の絆」云々の畳句(ルフラン)も三x三の九回唱えられる。紐の三色のうち黒は冥府の色で、赤と白は悪を予防する保護色であり、黒を中心にしていわば施術者を庇護してくれる。こうして呪縛――結合(katadesis)が完了し、ダフニスは空間を立ち越えて施術者につながれてしまう。しかし魔法はこれで終わりではない。無気味な呪いの人形の焚刑がこれにつづく。
「粘土が火で固くなるように、蠟が同じ火にあった溶けるように、ダフニスは愛のために私のところにやってくる。供物の碾(ひ)き粉を徹き、もろい月桂樹を瀝青で燃やすがいい。悪いダフニスが私を燃やし、私はこの月桂樹の枝と私のダフニスを燃やす。」
呪いの人形はホスティウスの『諷刺詩篇』第一巻八「魔女とかかし」にも登場するが、ここでは魔女は「毛制と蠟制の二つの像をもっていた」(鈴木一郎訳)とあって、はっきり人体を模している。しかしウェルギリウスでは粘土や蠟をダフニスの姿に似せて捏ねておく必要はなかった。男の名前や不実を意味する符号が粘土や蠟に刻み込まれていたかもしれないが、顔形を模造するまでもなく、施術者の女がこれこれの呪物によってダフニスを意味し、それが相手だと考えればよかったのである。粘土は火のなかで固くなり、蠟は軟らかくなる。ゲオルク・ルックの注解によると、粘土は女の(相手にたいして硬化する)憎悪の固さをあらわし、蠟は彼女にたいしてふたたび軟化するであろう男の気持をあらわしている。異解では、粘土が固くなるのは、彼女から離れて他の情婦に移ったダフニスの気持を憎むべきコイ恋仇にたいして固くさせるの意である。同時に投げ込まれる月桂樹は願いの筋の吉凶を知らせてくれる。月桂樹がバチバチ爆(は)ぜて燃えれば願いはかない、燃えつきが悪ければさらに瀝青を注いで火を熾(おこ)らせるのである。
だが、つぎつぎにおこなわれる魔法にもかかわらず吉兆は一向にあらわれない。そこで女は、ダフニスが「担保」としてのこしていった衣服を閾(しきい)の下に埋めて地下の神々の裁きを乞う。「ダフニスは私にこの担保の借りがあるのだ」と。事態はこれでも好転しないので、女はアマリリスに先程燃えていた火の冷めた灰を河に持っていって投げ捨てるように命じる。その場合、灰を運んだらそれを「頭越しに」河に捨て、そちらの方を見ないで帰ってこなくてはならない。そうしないと悪霊がかえって施術者の側に憑(つ)いてしまうおそれがあるからである。かくて灰は流れに運ばれて「ダフニスを襲うであろう」。
この箇所では、女はダフニスへ呪縛をひとたび放棄して、呪いの灰で彼を襲うためにふたたび相手から分離している。「結合(カタデシス)の後にかりそめの「分離(アポリシス)」がつづくのである。この分離は恒久的なものではない。最後の結合手段として効果甚大な薬草(野草)が控えているのを女は知っている。しかしその力はあまりにも強大で、まかりまちがえば周囲に致命的な影響を及ぼす。そのために、一瞬、女は最後の切札を出すべきかどうかを逡巡する。するとこの瞬間、一度冷たくなった灰がふたたびめらめらと燃え上って祭壇を焦がしはじめる。
「これは吉兆だ!明らかにこれは何事かを意味している。――これを信じるべきなのか。それとも恋する女が魔法の夢にまどわされているのか。止まれ、���が呪文よ、止まれ。ダフニスはすでに都(みやこ)から帰りつつある。」
強烈な薬草を用いるまでもなく愛の魔法は成就する。しかし抜かずに終わった伝家の宝刀を彼女は依然として持ってはいるのである。それほどのようなものか。
「黒海沿岸で採集されたこの薬草と毒草は、モエリスがみずから私にくれたもので――それは黒海地方に多生している、しばしば私は、モエリスがこれを使って狼に変身して森のなかに姿を隠したり、深い墓穴から霊魂を喚び戻したり、穀物をよその土地に移したりするのを見た。」
薬草は単純な野草ではなく、特に「黒海地方に多生する」と明示されている。ホラティウスも初期の『エポーディ』のなかで、「毒薬の国イオルコスとヒべリアからきた毒薬」について語っている。ヒべリアは現代のグルジア共和国で、黒海地方に属する。黒海という地方は当然コルキス生まれの大魔女メデアを連想させるにちがいない。実際、詩人たちが邪悪な薬物の出所として念頭に浮かべているのはメデアその人なのである。メデアの壮大な魔法を活写した『転身物語』のオウィディウスはいうまでもなくティブルスも、「キルケ―か持ち、メデアが持っているあらゆる毒薬、デッサリアの地に生れたあらゆる薬草、欲情にたける雌馬の女陰からしたたる粘液」(『『哀歌』』と列挙する。オウィディウスのメデアは龍に打ちまたがってデッサリアに飛び、そこから薬草を採ってくる。すなわち薬草の特産地として、黒海沿岸とデッサリアといういずれ劣らぬ不気味な地方がいちじるしく強調されるのだが、これが何を意味するかについてはのちに述べたいと思う。
さて、ウェルギスウスの述べているモエリスの薬草の三つの応用例のうち、一は人狼変身、二は死者を喚起する降霊術(ネクロマンシ―)、三は穀物の生殖力の転移にそれぞれ関わる。人狼変身の話は後代(紀元一世紀)の『サテュリコン』の「トリマルキオーの饗宴」にも出てくるが、人狼信仰はおそらく神話時代に遡る起源を有している。ところがで、ロイナー教授は神話学者ランケ・グレイヴスらの説を援用して、オリュムボス神の飲食物たるアルブロジア(神々の食物)やネクタール(神々の美酒)が右のごとき幻覚性の薬物そのものではなかったとしても、そのエッセンス多量に混じていたにちがいないと推定する。ディオニュソス祭儀のメーナードたちの狂乱もこれと無関係ではない。
アルブロジアややネクタールを飲食する権限を独占している神々は、おそらく有史以前の聖なる王や女王たち(その前身はシャーマンであろう)であった。彼らの王朝が没落した後、それは、閉鎖的結社的なエレウシス密議やオルフェウス密議の秘密の要素となり、ディオニュソス祭儀とも結びついだ。密議の参加者たちは密議の席で共食した飲物や食物を絶対に口外してはならなかった。そうすることによって忘れ難い一連のヴィジョンが体験され、その類推的延長の上に超越的世界における不死と永生が約束されたからである。
ディオニュソス祭儀のメーナードたちの狂乱は、内的には飛翔感覚や性的興奮を伴い、外面的にはさながら狼のような凶暴を示したものにちがいない。彼女たちは髪をふり乱しながら国中を進行し、家畜や子供をずたずたに引き裂き、酒や薬物入りのピールに酔って「インドに旅行してきた」ことをひけらかした。してみると、見知らぬ士兵や妖術使いの人狼変身は、密議的な幻覚共同体が崩壊した後、秘密から疎外された個人や小集団が犯罪の形で表出せざるを得なかった聖なる薬物体験であったとおぼしいのである。
メーナードの末裔のように残酷な魔女たちは、先にふれたホラティウスの『エポーディ』にも登場してくる。数人の魔女が良家の子供を誘拐してきて、地面に首だけが出るように生き埋めにし、御馳走が山盛りの血を眼の前において(口元まで皿がきていても手が使えないので食べられないのだ)凄まじい飢えの修羅場をながながとたのしみ、はては生きたままの身体から骨髄と生き肝をちぎりとり、これを煮つめて媚薬をつくる。
「髪に、さてはまた蓬髪乱れる頭に、小さな蝮どもを絡ませながら、カニディアはコルキスの焔のなかにつぎのものを投ぜよと命じた。墓場から引き抜いてきた野生のいちじくの樹、死者の樹なる糸杉の木材、いやらしい蟇の血に塗られた卵、夜鳥ストリックスの羽根、毒草の国イオルコスとヒべリアからきた野草、飢えた牝犬の口からもぎとってきた骨を。」
これに子供の生き巻肝を加えれば魔女の霊薬は完成する。怖ろしい魔女カニディアのつくる媚薬は、ウェルギリウス作品の場合と同様、ある不実な男を呪縛するためである。しかし不思議なことに、カニディアの媚薬は予期したような効果を発揮しない。男の名はヴァールス、「老いぼれの漁色家」である。いましも彼は「私の手がこれ以上完璧には調和することのない塗膏(ポマード)を塗られ」て、魔窟スプーラの犬に吠えつかれ、人びとの物笑いの種になっているはずであるのに、これはどうしたことであろう。彼はこともなげに街をうろついて夜の冒険に出かけている。やがてカニディアは「(自分より)さらに秘密に通じた魔女」が彼の背後にいて、その呪文が自分の塗膏の効果を台なしにしていることをさとる。「もっと強力な薬を、そのもっと強力なやつをお前から取り上げてやる」。こうして毒物と解毒剤が互いにきそいながら老ヴァールスを板はさみにしてしまうわけた。
それはちょうど、十八世紀毒殺魔ド・ブランヴィリエ侯爵夫人が夫の侯爵を亡き者にしようと毒を盛ると、度重なる毒殺の発覚をおそれた相棒のサント・クロアが解毒剤をあたえ、毒と解毒のシーソーゲームのなかで中途半端な廃人となった侯爵が、宙ぶらりんな生かさず殺さずの、世にも恐ろしい余生を送ったのとそっくりであった。
ヴァールスというのが誰をモデルにした人物ではっきりしない。しかしホラティウスの知人であることはたしかで、詩人ははっきりとヴァールスの肩を持ち、かつカニディアを憎んでいる。一方カニディアは、詩人の庇護者マェーケーナスがローマの無縁墓地エスクィリーナエの丘を自分の庭園に造りなおした際、この旧墓地に出没した魔女である。ホラティウスは「汝、マドロスや旅商人どもにあまた愛された女」と侮蔑しているので、前身は港町の娼婦かいかがわしい取り持ち女の類であろう。一説には、本名をグラティディアと称してナポリで美顔用塗膏を商っていた実在の女であるともいう。
ホラティウスは何故かこの女を心底から憎悪していた。開明的なエピキュリアンであったホラティウスはむろん魔法を真に受けていたわけではないが、不倶戴天の敵カニティアの脅威は身をもって知っていたらしい。カニディアは詩人に執拗に呪いをかけた。『エポーディ』前半ではカニディアを揶揄していた詩人も、第十七歌あたりではさすかに音(ね)を上げて魔女に降参してしまう(「やめろ、やめてくれ!私は効き目のある術に降服する!」)カニディアとホラティウスの間には直接の色情的怨恨はないのに、何故こうも執拗に呪詛し憎悪し合うのであろう。目下の論題から離れるので無用の詮索ではあるが、講和主義として敗北してから「黄金の中庸」を看板に韜晦してきたホラティウスの、政敵にたいする潜在的な不安が魔女カニディアの姿に結実したのだとすれば含意は深長である。
ところで、先に私は、老ヴァールスがより秘密に通じた別の魔女から対抗秘薬を調達し、カニディアの塗膏から身を護った経緯を述べたが、正確にはこれは逆である。漁色家ヴァールスは老いかけた精力を挽回するために(別の)魔女に催淫剤を依頼し、そのお蔭で老齢にもかかわらず夜な夜なスプーラに出没することができたのであった。一方、カニディアの塗膏は通常の媚薬とに逆に、この好色な遊び人を性的不能に陥らせる麻痺的な減退剤であったにちがいない。なぜなら「老漁色家がスプーラに犬に吠えつかれ、人びとの物笑いの種になる」効果を狙った薬物は、相手を色街における無用の徒である不能者に仕立てるための、底意地の悪い精力減退の薬にほかならないだろうからである。この不能不毛化させる魔法は、ウェルギリウスのいう「第三の魔法」である穀物の生殖力の転移盗奪の法にも通じている。
ローマ最古の法文書である十二銅表律は、隣人の耕地の収穫物を荒廃させる災いの魔法を重罰をもって禁じている。罰は犯罪を前提としているので、すでに当時から他人の畑の生産力を涸渇させ、(あまつさえ)これを我田引水しておのが腹を肥やす魔法が実践されていたのであった。本来神と自然の摂理のみが按配すべき穀物の作不作が人為の魔法によって操作されるのなら、同じことは人間的自然である肉体の活力の、特に性的エネルギーの増減についても通用するはずである。
ホラティウスがカニディアに蒙ったの呪い魔法は、老ヴァールスのような精力衰弱のそれぞれではなかったが、肉体のすみやかな老化という脅威であった。彼の髪は急速に白くなり、仕事は日々困難になりまさり、一瞬として息を吐くひまもなくなるであろうというのが、カニディアの呪いに籠めた脅迫であった。事実、ホラティウスは年齢より早く白髪が目立ち始めていたが、それがカニディアの魔法のたまものという証拠はなく、むしろ詩人は生来の病身にもかかわらず健康を維持し、日々の仕事も快適に楽しんでいた。彼はカニディアの悪意を感得してはいたが、魔法そのものはそれほど本気で信じていたわけではなかった。
ウェルギリウスやホラティウスの同時代の詩人プロベルティウス(前四十八?~十九年)も魔女の呪いを蒙ったことがある。プロベルティウスの受けた呪いは、まさに彼の男性としての能力の荒廃の脅威であった。敵なる魔女はその名もアカンティスといい、魔法をあやつると同時にやはり男女の仲を斡旋する取り持ち女でもあった。そもそもおらゆる種類の自然と蔑視してその正常な運行を人為的に左右しようとするプロメテウス的瀆神行為である魔法を、とりわけ肉体のの領域において一手に引き受けていたのは、先にも述べたように、当時スブーラに巣食っていた卑賤な薬草売りの魔女やあやしげな取り持ち女だった。ホラティウスの『エポーディ』のいちじるしい影響下にある『哀歌』のなかで、プロペルティウスはほとんどホラティウスをそのまま踏襲しながら唱っている。
「彼女(アカンティス)はつれないヒッポリュトスをアプロディーテーにたいして和ませるすべをすら心得ているのだ、水入らずの愛の絆にたいする最悪の災いの鳥であるこの女性。彼女はベネローベをさえ、その夫の知らせなどおかまいなしに、淫蕩なアンティノースとめあわせることだろう。彼女がその気になれば、磁石はもはや鉄を牽引せず、鳥はその小鳥たちの巣のなかで継母(ままはは)となる。すなわち彼女がポルタ・コリナの野草を掘り出したならば、固く結ばれていたものはすべて流れる水に溶け去るのだ。彼女は大胆にも月に呪文をかけ、月をおのが掟に従わせ、夜な夜なその肉体を狼の姿に隠す。醒めている夫の眼を環形でくらませるために、彼女は処女の雌鳥どもの眼を爪でくり抜く。彼女は魔女たちと結託して私の男性の能力を去勢させようとし、私に害をあたえようものと子持ちの雌馬の欲情の愛液を集めた。」
アカンティスはエロチックな引力(共感)と斥力(反感)の結合(カタデシス)と分離(アポリシス)の両極原理を基盤とする錬金術的性愛術を自在に操るのである。思うがままに貞淑ペネローペを淫蕩なアンティノース靡かせ、冷たいヒッポリュトスにアプロディーテーにたいする熱烈な情欲をかきたてる。彼女は自然の法則を嘲笑し、リビトーの流れをあちらからこちらへと変えたり、涸らしたり、増量させたりすることさえできる。共夫の女をよこしまな道楽者に取り持つように頼まれれば、不運な男の眼を鳥の眼をくり抜くようにくらませ、あまつさえ他人の畑の作物を枯らすようにしてそのリビドーを荒廃させ、不能の夫から強壮薬で男性的魅力をいやが上に引き立たせられた道楽者の方へと女の浮いた心を誘導していく。共感の法則をたくみに使い分けて、愛し合う男女を別れさせたり、嫌われた相手を手元にたぐり寄せたりするのである。
もっとも、このときにこそ魔女アカンティスを憎々しげた呪詛しているプロベルティウスであるが、彼自身、若年の頃は靡かぬ片恋の人「キンティア情(なさけ)を買うために「キタイアの女の魔法の呪文によって星辰や河の軌道を転ずることができ」、「わが主なる女(ひと)の心を変えて、彼女の貌(かんばせ)を私のそれよりも蒼ざめさせる」魔女の性愛術に帰依したことがあったのである。
アカンティスの魔法の中心にあるのも「ボルタ・コリナの野草」である。黒海やコーカサス地方の野草ではなく、市郊外の入手しやすい野草に頼ったのは輸入品が高価だったからであろう。いずれにせよ、この野草を投ずることによって、星の運行、河川の流れ、男女の情愛、磁力や母子愛まで、自然の正常な摂理は突然ばらばらに分解し、崩壊した積木の神殿を魔女の家に組み立てなおすように、別種の構成原理の手に委ねられる。
端的にいえば、この瞬間に世界は昼の側から夜の側に逆転し、世界原理の主宰者が神と宗教から悪魔(もしくは魔霊(デーモン)と魔法に交替する。あるいは天地創造の原活力たる火が神の手からプロメテウスに簒奪される、といってもいい。このように、あらゆる魔法使いは自然の法則を嘲笑するプロメテウスにほかならないのである。
「宗教的人間の態度は、祈る人、懺悔する人の態度であり、魔法使いの態度は主人と支配者の態度である。信仰篤い人間は祈りのなかで彼の神々に自分の優位を感じさせ、呪文によって神々を屈服させる。ある意味で魔法使いは神々の上に立っている。なぜなら彼は、神々がそれに従わなければならないと呼びかけと誓言とを知っており、かつ服従させられた神々の怒りから身を護る予防策に精通しているからである。」(ゲオルタ・ルック)
ローマの詩人たちは宗教詩人というよりはむしろ世故に通じたエピキュリアンであった。彼らは神々の側に立って魔法使いや魔女をきびしく紏弾したわけではない。そうかといって、あまたの魔女の姿を描いたにもせよ、彼らは悪魔崇拝に首までどっぷりと浸って秘教的な暗黒詩を書いたのでもない。
詩人たちが魔法にたいしてあいまいな態度をとりつづけたのは、彼ら自身と魔法使いたちとの間に存在した隠微な抗争のためであった。彼らは宗教の側に立って魔法を攻撃することこそあえてしなかったが、彼らなりに魔法を嘲弄もしくは嫉妬していた。なぜなら魔法が万事を解決してしまえば、彼らの持駒である言葉の救済力という白い魔術の出番がなくなってしまうからである。「歌(カルメーン)の原義は「魔法の歌」、「魔術的呪文」であった。「詩作(ポイエーテス)」もまた言葉の自然状態の組み変えというプロメテウス的行為である。それゆえに詩人もまた「傲慢(ヒュブリス)」の罪によってみずからはコーカサスの山巓にさらされながら地上の人びとに慰藉を授ける。プロベルティウスの言葉の医術についての確信は反語的である。
私は離ればなれにさせられた恋人たちをふたたび合一させることができ、
主(ぬし)なる女(ひと)の抗う扉を開くことができる。
私は他人(ひと)の生々しい悲哀を癒すことができるが、
私の言葉のなかにはいささかの薬剤もない。
さてウェルギスウスのモエリスが演じた薬草による三つの魔法のうち、まだ死者降霊術のみが言及されていない。死者召喚の秘法に関しては、すでにホメーロスの『オヂュッセイア』第十一巻に「招魂」の章がある。そこでオヂュッセウスに地下に一キュービット四方の穴を掘り、乳、蜜、酒、水、大麦の粉などを播いてから黒い牧羊の喉を切ってその血を穴に注ぎ、死者たちの魂を喚び戻す。古代人にとって死者は存在から消滅するのではなく、冥府や月世界に移行するのであるから、冥府の主であるハーデスやペルセポネイアに祈願して時��を逆流させることができれば、死者は当然地下世界から地上に還帰するはずなのである。地下的なものの秘密の結実である薬草がこの喚び戻しに重要な役割を駆使するのである。オウィディウスはいう。「彼女は黴び朽ちた墓の底から汝の父祖や祖先を引き出し、大いなる祈りによって大地と岩石とを割る。」
死者召喚が発端と終末、死と生と逆転であるとすれば、死から生への大逆流の一環として若返りの魔法が考えられる。老年から幼年への(自然的に不可逆的な)若返りはいわば死者再臨の模型である。オウィディウスは『転身物語』のなかで大魔女メデアがアエソンに施したおどろくべき若返りの秘法を絢爛たる筆にのせて活写している。
しかもここでメデアの魔法の要となっているのも「魔法の霊薬」である。まずメデアは翼のある龍にの首に牽かれた車を呼び出し、これにのり込んでテッサリアの野に飛び、あまたの薬草を採集する。それから奇怪な薬の調合にかかる。
「かの女は、髪の毛をバックスの巫女のようにふりみだして、炎のもえている祭壇のまわりをぐるぐるまわり、こまかに割った炬火(たいまつ)を溝のなかの黒々として血にひたし、ふたつの祭壇の炎でその炬火に火をつけ、こうして火で三度、さらに硫黄で三度老人(アエソン)のからだを清めた。そのあいだに、火にかけた青銅のなかでは、魔法の霊薬が煮えたぎり、白い泡をたててふきこぼれていた。かの女は、ハエモニア(テッサリアの古名)で刈りとってきた草の根や種子や花や激烈な草汁をそのなかに煮こみ、さらに、極東の国からとりよせた 取り寄せた小石や、オケアヌスの引潮に洗われた砂をまぜ、これに満月の夜にあつめた露、鷲木菟(わしみみずく)の肉といまわしいその翼、おのれを狼のすがたに変えることができるといわれる人狼の臓腑をくわえ、その上にキニュプスの流れに住む水蛇のうすい鱗皮と、九代を生きながらえた鴉の嘴と頭を入れ��ことをわすれなかった。」(田中秀夫・前田敬作訳)
前代の詩人たちの精読者であったオウィディウスは、ここにウェルギリウスやホラティウスやプロペルティウスの伝えた魔女の秘薬のあらゆる要素を投げ入れ、ほとんど完璧なごった煮を調製しているのである。さて、メデアの最後に橄欖樹の枯枝でこの液体をかきまわすと、老いた枯枝はみるみるうちに縁に返って豊かな薬をつけ、ふきこぼれた液がふれた地面はたちまち若やいだ春の地肌に変り、花が咲き、やわらかい草が萌え出た。メデアはすぐさま剣を抜いて老人の喉に孔をあける。流れる出る古い血の後に薬液を注ぎ込むと、瀕死のアエソンの白い鬚や髪はたちまち真黒になり、老醜の皺は消えて四十年前の姿になり変わった。
メデアが龍にのって薬草を探しにいくデッサリア地方は、都の郊外のように手近ではないが、さりとて彼女の故郷の黒海沿岸(コルキス)やコーカサスのような遠方でもない。しかしこころみに地図を広げてみると、エーゲ海から黒海に入るダーダネルス海峡を通じて、薬草の特産地たる黒海東端のコルキス、ヒべリア、コーカサスは水路から意外にも指呼の間にある。事実、アルタゴナウタエたちはテッサリアのパガサエの港からアルゴ号を仕立ててコルキスの金羊毛皮を探しに出立した。テッサリアと黒海沿岸地方に古くから深い関係が成立していたであろうことは、この一事からも容易推測される。ちなみにロイナー教授の野生幻覚剤分布表によると、魔女の塗膏の歴史的原生地は「中央ヨーロッパ全土」とされている。
おそらく中央ヨーロッパ奥地から地中海沿岸地帯にかけて、かつて強大な母神信仰が栄えていたのであった。この地下的(クトーニッシュ)母神崇拝の宗教はやがてアポロン的宗教に打倒され、輝かしいギリシア世界の表面からは駆逐された。とはいえ跡形もなく消滅したわけではなく、勝利を占めた若いアポロン信仰は古い地中海宗教の多くの要素を受け入れた。たとえばデルポイの神託を授けるアポロン神殿の巫女ピュッティアは、大地の裂け目の上にすわって地中からくる母の指示を受信する。ピュティアという名称そのものがすでに前ギリシア的宗教における地下的なものの化身たるピュトンの蛇との関連を暗示している。
若い宗教に征服された前代の宗教は、一転、魔法となるのがつねであった。のが常であった。同様に魔女たちは、かつてこの冥府的な大母神信仰の由緒正しい女司祭若巫女だったのであろう。しばしば魔女が引合いに出すテッサリアやコルキスのような土地は、メデアのような大女司祭が君臨していた聖地だったのであろう。したがってローマの詩人たちがその作品のなかに描いたアカンティスやカニディアのような魔女は、没落した大母神崇拝教団の巫女の、いまは往古の栄えある祭儀に参加するすべもなく孤立して巷をさまよい、賤業に口糊する、頽落したなれの果ての身にちがいない。彼女たちが時折り口にした霊薬の甘味は、プルーストにおけるマドレーヌの喚起的美味とひとしく、それが神餞として共食された往時の、栄光ある、だがいまは沈んで久しい世界の天上的な至福の思い出を、一瞬ざまざと想起させてくれたかもしれない。
魔女の塗膏や霊薬は、それ自体としても、むろん後の悪魔礼拝と切っても切れない密接なつながりがある。しかしそれよりも重要なのは、魔女を女司祭に戴いていた前ギリシア的地中海宗教が若い宗教に敗北したとき、そこにアポロン信仰が定位されたことである。いいかえれば、このとき以来、崇拝の対象は女性神(大母神)から男性神アポロンに変ったのだ。
アポロン的宗教の男性神崇拝は、当然のことながらキリストを受け入れる基礎を用意した。ここからキリストの倒錯像サタンの成立まではわずか一歩である。アポロンとキリストが男性でなかったならば、悪魔もまたついに男性ではなかったであろう。若い男性神に打倒された母神へのなつかしい郷愁は、アポロンやキリストへの憎悪の化身である第二の男性神を必然的に招来せしめた。この怨恨と憎悪に黒々と塗り込められた黒い男は、ときにはサタンとして、ときにはロマンティックな悪魔主義者として、ときには超人や天才として、時代とともに変転する自己表現をとげた。 いみじくも聖侯爵の「悪魔主義」について語りながら、「天才は母の国にではなく、魔女の国に棲む」と語ったのはG・R・ホッケである。私が右に述べてきたのもサタンの棲もう風土たる「魔女の国」のくさぐさの追憶であった。
出自《悪魔礼拝》
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COC通過シナリオ
☆はKP可能なシナリオ※初回しの可能性有(シナリオ開いてるもの含) KPのみしているシナリオも掲載(pixiv等無料公開シナリオは☆マーク除外) KP(予定含)一度したものは◆ キャンペーンシナリオはCP名で記載します。
【あ行】 嗚呼咄咄‼︎ ☆ ◆I.C.D. 愛ではなく情☆ アイにかえる無彩花へ ◆愛の静寂 ☆ ◆愛は灼熱のアラビアン・ナイト ☆ 相食むる豚 愛罠蜂 ☆ ◆阿吽の断 ☆ 仰ぎ見る遡行 ◆秋葉原電人奇譚 ☆ アクアベル 悪魔の唇 ☆ Aconite アザーサイド・ウォーカー ☆ 浅草十二階 ☆ ◆亞書 ☆ Æ あトの祀リ☆ ┗ よ海くだリ ◆あなた方は御曹司です、金にモノを言わせてイタリアまでオペラを聴きに来ました。☆ アフェクシオンにも似て ☆ アベリアの町 アリスと終わらない不思議の国 ◆アルドラの騎士は君の名を呼ぶ ☆ アルリシャの星図 ☆ アンアンリ・ファンタスマゴリア☆ ◆暗狗☆ Unfinished Letter 家がない、燃えてる 家の中を歩いてみよう。☆ イエロウ・ウインド ☆ ◆異世界転生探索者と神託者の旅 ☆ 異説・狂人日記 犬神憑き☆ 鰯と柊 ☆ ◆インビジブルの慟哭☆ ウェンチェスター黙示録 (CP:1/2/3/4) ☆ 蠢く島 ◆嘘吐きなコトバと本当のココロ ◆泡沫の夢に踊れ☆ 現の盃 腕に刻まれる死 ◆海も枯れるまで☆ 永久の一日☆ Aの楽園Bの檻 ☆ エス ☆ SSS.S ☆ ◆えっ!壺を買うだけで幸せになるんで��か!? ☆ ergo ☆ ┣ 第一章「行ける所まで行き」 ┣ 第二章「鳥は少しずつ巣をつくる」 ┣ 第三章「夜は助言を運ぶ」 ┣ 第四章「良い天気は雨のあとに来る」 ┗ 第五章「然るべき場所で死ね」 エロ=マンガ島って知ってる? エンジェル・デビル・インプロパー ☆ 縁と命はつながれぬ ☆ Oh! My Buddy! ☆ ◆覆い隠されたプラトニック ☆ ◆おこちゃまドロップス!☆ お地蔵さん ◆おす⇔めすぱにっく! ☆ ◆越智満異聞☆ 踊れ、ワルツ ◆終わりなき病の処方箋 【か行】 怪異交渉人☆ ┗追加パート(記憶喪失H/ 無音交渉) 邂逅 怪盗テトラクロマットと時詠みの国 怪盗ロマネスク かいぶつたちとマホラカルト☆ 怪物たちのララバイ☆ 傀儡たるもの 飼う男☆ かえりのかい☆ 赫々ノ女殺人事件 ☆ かくりよ葬乱録 ☆ 傍若無人-かたわらにひとなきがごとし- ☆ ◆蛾と踊る☆ ◆彼方からの君に捧ぐ ☆ 金糸雀の欠伸 ☆ カノヨ街☆ ┗追鯨 カルペ・ディエムの頽廃 ◆カワセミの終息☆ 監獄館殺人事件☆ ◆監獄病島☆ ◆寒慄のエトピリカ☆ 機械仕掛けの街 ぎこちない同居☆ ◆きせい☆ ◆喫茶セラエノ ☆ キネマ 君の奥さん、お隣さん家のタンス漁ってたよ 救世主☆ 狂気山脈 ☆ ┣ 狂気山脈-未知なる山嶺を夢に求めて-☆ ┗ カエラズノケン ~狂気山脈第三次登山隊の顛末~☆ 共振する綻び 窮鼠は何を喰らうのか?☆ 凶爽吊花 (CP:1-2-3-4) ☆ ◆魚人姫 ☆ ◆キルキルイキル ☆ ◆GUILTY or Not GUILTY☆ ◆クインズゲーム ☆ 空気男奇譚 ☆ クオリアの輝き☆ ◆九頭龍剣伝説 クトゥルフ オブ ザ マスカレード☆ クトゥルフロンパ 海月ロマンチカ ◆グラスバレヱ (CP:1-2-3-4-5-6) ☆ Crazy4☆ 黒いガレー船 ☆ X2U シリーズ ┣◆神父×マフィア ☆ ┣アイドル×マネージャー☆ ┣大正XU2 令嬢×使用人☆ ┣◆大正X2U 文豪×現代☆ ┗大正X2U 探偵×怪盗 ☆ クロノスを喰らうもの 九頭鳥の散華 ☆ ◆黒山羊の園から☆ ◆月面世界☆ 獣も斯くや 怪異交渉人 口渇ルルパ☆ ゴウスバーグの子供達 ☆ 辜月のN ☆ ◆ここで長く生きて☆ こゝろ 午前3時の茨城県 ◆五畳六腑 GODDESSIN THE DAR ☆ 孤独の密室 ☆ ◆コトワリ これを証明せよ☆ ◆殺していいのは呼吸だけ☆ 混濁の協奏曲 混沌と咲き誇る燃ゆる赫☆
【さ行】 最高の生贄☆ サイコメイズ☆ 最終列車とゆめのあと☆ サイバネティクスハニー ◆歳末逆行メトロ☆ SILENT (CP:◆SILENT-欠陥品の集まる谷-偽りの始まり-)☆ ┗ LUNATIC 鎖錠のローゼンクローネ ☆ 殺人姫☆ 砂糖菓子7つ The man in Gray ☆ サムシングフォーを探して☆ 猿の真言 ☆ 残夏に啼く☆ ◆SAN値回復温泉旅行 潮騒に月見里 九九九九 ☆ シグナルレッド・デッド 死体は夏に向いてない ◆死中に生を求める�� ◆しにがみさんとのさいごのひ☆ シックコール ☆ 実験体δは青に微笑む 終焉賛歌救済論≒EF-Elyfine- 十二星座館殺人事件 ☆ 出社したら会社が炎上してた☆ ◆ジュノンの寵愛☆ 純潔の証明☆ JOKER≒JOKER☆ ◆SHOTGUN KIXXING MARRIAGE☆ 死を呼ぶつばめ(CP)☆ ジャンヌの猟犬☆ 上海摩天楼 (CP)☆ 心臓がちょっとはやく動くだけ シンデレラは今夜も帰れない ☆ 神明鏡 ☆ 新約ルルミヤの心臓 神話と科学 水銀灯 水媒花 スーサイデッドメアリンク☆ 好きです、〇〇さん☆ ◆ストックホルムに愛を唄え☆ snuff video☆ 沼男は誰だ? 星花の海より君を臨む 聖夜の二重奏☆ 世界線の中庭☆ ◆刹夏☆ 038 先生 蒼穹 ◆ソープスクール ☆ 底闇 底闇2 ◆そして円の果てで約束を☆ その罪裁くは神か、或いは☆ 其の身に宿りしモノは。☆ 【た行】 代理殺人は覚めないうちに☆ 太陽と月と眼 太陽の死んだ朝☆ -多眼の0-☆ 黄昏の扉 誰かが死んでいる☆ ◆誰が為のパニヒダ 誰がロックを殺すのか ダンテの審判(CP) ◆痴情の蛇☆ 血は歯車のように チャルディーニの法則☆ 月と羊 ◆罪を孕みし堕落の子ら Dlma☆ デウス・エクス・マキナは死んだ DDG ◆デートorデッド☆ 天啓劫火 天使の愛しみ 天使の密室と不浄のロザリオ☆ 天上落土、堕楽のすゝめ☆ 輾転と町は 天の糸 天露尋☆ とある家(略) ☆ とある幸せな家族の話☆ ◆東京革鳴☆ 東京前線異常アリ 東京人魚 ☆ ◆東京リビングデッドマンズ ☆ ◆同居人☆ 匿名幸福論者は獨と踊る 髑髏に口付け、屍体に花を(CP:1-2-3-4-5)☆ 頭夢児島殺人事件☆ ┗頭夢児島殺人事件二冊目 ◆虜 ドロップアウトディスパイア トローリイ・アイロニイ☆ 【な行】 ナインルーム☆ ナギサの物語☆ NapFrappe 773 ◆なわばり☆ ◆28時のサクラメント☆ 2㌫のガランドウ 庭師は何を口遊む 人形回廊 ◆にんぎょうじみたぼくら☆ ねぇ、昨日なにしてた?☆ ◆猫のお宿 ◆ネームレス・カルト☆ 眠り姫は幽霊クラゲの夢を見るか? ネリネ☆ ◆ノーザン・シタデル☆ NOBODY*2☆ ◆ノゾキアナ☆ 呪いのAV☆ 【は行】 拝火のキャンプ☆ 拝啓、敬愛なる無能たちへ (CP) ☆ Bye Bye summer days ハイフェッツをなぞる病☆ 白鴉の城☆ 花は恋せど散りぬるを ☆ 母なる海の鯨の部屋☆ 薔薇の館 HELLO HERO☆ パピルン☆ パレヱドレイド☆ 盤上の一歩 ピース・メイカー☆ ヒガンのきみへ ☆ 潜む闇の意志 ☆ PYX☆ ⼈の⼼は妖⾯の如し☆ ひとりじゃワルツも踊れない☆ 白夜の歌☆ ◆火点し頃の蜘蛛踊り☆ ひび割れた鯨の胃の中にて☆ 秘密と内証☆ ◆ひみつのリフレクション☆ 瓶の中の君 不完全なる図書館 腐葉土に咲く薔薇の如く☆ ヘイコウセンソウ☆ ◆平行線のアポフィライト 変身☆ 返照する銀河 片鱗 VOID 4ARE☆ 咆哮エトランゼ 紡命論とシンギュラリティ☆ HOMING ☆ ぼくの苗床を紹介します☆ 僕の夏を君に捧ぐ ☆ ぼくはなにもしらない~この事件の犯人は HO2~ ☆ 星の神話エンドロール☆ 星へ至る棺☆ 星渡るカンパネラ☆ ポストヒューマン・ビーイング☆ ┣ エンジェル・デビル・インプロパー ┣◆アルトゥリスティック・ラブ ┗◆1226.38.9 ホテル・エウティプローン ホルマリン漬けの心臓 【ま行】 ◆魔術師たちのトロイメライ☆ マグロ また明日 ◆マチソワ・ランデブー 魔法少女希望譚☆ 魔を曳く獣 Mr.Sの華麗なる政策 ミサキバス☆ ◆水の破片を召し上がって。☆ 道案内 密室シェアハウス 密室のパスト ☆ ◆見果ての綸紡 ☆ ◆mirror 虫虫虫 ムーンウォーズ! ムーンエラーアウトサイダー メイキン・ウーピーは東京駅で恋をする 名探偵黒猫と大怪盗キャッツ ☆ 巡る妖精☆ 【や行】 山羊の歌は謡えない(CP:1-2-3-4) ☆ ◆焼肉飲み放題2時間3000円 やさしいじごくのつくりかた☆ ◆ヤドリギあやかし探偵社 (CP:1-2-3-4) ☆ 闇に捧ぐアリア☆ ◆闇に鈍痛 ヤロクギ叙事詩☆ ◆有限無情のシグナルパルス ☆ ◆ 有求必應 EUREKA ☆ ゆらめく魔法市☆ 宵闇神凵 ◆ようこそ!迷冥市役所都市伝説課へ! ☆ 欲望街☆ ◆因って件の如し(+◆獏の悪食) ☆ 406号室の隣人 【ら行】 Life goes on ~人生は続く~☆ ◆楽園パラノイア☆ ◆羅生門☆ ラストキス -最後にキスをして出る部屋- ラッキースケベと13階段 ☆ ◆ラブドールはキミの味☆ Love me,Love my dog.☆ 爛爛(CP) ☆ Re:おキツネさま☆ Residuum:Philadelphia リトルリトルクライシス☆ ReBirthTown 旅館の捕食者☆ リンクヴェルトゲンガー☆ ルパルファンの夢夜 ルベライトジャム☆ 零落奇譚 ☆ レッドパージ Repli;C∀ レプリカントの葬列(CP) ☆ ◆煉獄のレヴナント☆ 【わ行】 ◆わたしのかわいいハーメルン ◆嗤う人間師 我の名を答えよ 1ペニーの運命治療薬 ☆ ◆ワンルーム・ディスコン☆ =通過予定============= 掠う盲鬼 蛇の理想郷 Zodiac school
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《例示》
サークル名:○○ 作品名:○○○
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【作品紹介】申請いただいたツイート内容 #テキレボ WebカタログのURL
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【作品紹介】申請いただいたツイート内容 #テキレボ WebカタログのURL
twitterID:@○○
画像があれば画像
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サークル名:千美生の里
作品名:ミディアミルド物語
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【作品紹介】“青い炎”ミディアム・サーガ、“マーナの知将”ケーデル・フェグラム、そして彼らを取り巻く人々――架空世界“ミディアミルド”の戦乱から統一へ向けての或る一時代を描く、全20巻(……超えるかも)予定の歴史群像劇。#テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/1573
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【作品紹介】架空世界の一地域を舞台に、戦乱から統一へ向かう或る一時代を描く、歴史群像小説。本伝は現在10巻まで刊行済、外伝集も6冊刊行済。ぶっちゃけた話“ミディアミルド版『三国志』”(汗)。単巻物の各外伝集から入るのも可。#テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/1573
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サークル名:千美生の里
作品名:魔剣士サラ=フィンク
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【作品紹介】かつてケルリ王国を恐怖のどん底に陥れた無差別殺人鬼“魔剣士”サラ=フィンク。しかし、偶然助けてしまったケルリの第二王女ミルシリアの存在が、彼を次第に変え始め――魔剣を操る青年魔道士と亡国の元王女の旅の途上で起こる事共を描く長編ファンタジー。#テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/6314
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【作品紹介】魔剣を操る青年魔道士と亡国の元王女との旅の途上で起こる事共を描く長編ファンタジー。単巻完結、820ページ。割にオーソドックスな「所謂『剣と魔法』の何となく西洋風なファンタジー」の皮を被っているが、血沸き肉躍る冒険譚というよりも寧ろ道中記。#テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/6314
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サークル名:アメシスト
作品名:砂の棺
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【作品紹介】砂の国を舞台とした、古代の謎と秘密に巻き込まれてゆく王道ファンタジー。傭兵と詩人、そして記憶と実体を失くした「俺」は、全てを解き明かせるのか。それとも……。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/2830
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【作品紹介】過去から現在という謎と秘密に迫る本編終了から約一年後。新しき地で出会う新しき人々と事件。「誰か」が夢見る幸せな幸せな物語。いつまで続く夢なのか、誰も知る由もない。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/4869
twitterID:@6ka6ka
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サークル名:アメシスト
作品名:きまぐれ天狗と楓のうちわ
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【作品紹介】和風ファンタジー短編連作。完結済み。旅の巫女とその護衛、小天狗が、四季折々の美味しい甘味を食べながら、愉快で楽しい旅を続けます。願わくばこの小さな幸せが永遠に……。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/6201
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【作品紹介】和風ファンタジー短編連作。完結済み。きまぐれな小天狗の我儘に振り回されながら、巫女と護衛は今日もまんじゅうを食べる。愉快で楽しい旅はまだまだ続きます。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/6201
twitterID:@6ka6ka
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サークル名:インドの仕立て屋さん
作品名:嫌犬
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【作品紹介】嫌犬:普通に暮らしてるのに普通じゃないことがめいいっぱい!でもこれが日常だから仕方ないね。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/6
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【作品紹介】嫌犬:高等遊民の青年と、ちょっと嫌な感じの喋る犬が織り成すハートフルストーリー。色々な人に振り回されつつ、迎える結末とは。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/6
twitterID:@towa49666
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サークル名:インドの仕立て屋さん
作品名:生物室談話
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【作品紹介】生物室談話:生物室で楽しく過ごす高校生活。そんな会話劇。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/3782
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【作品紹介】生物室談話:人生のほんのひととき、青春を切り取った会話劇。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/3782
twitterID:@towa49666
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サークル名:インドの仕立て屋さん
作品名:なべてよはこともなし
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【作品紹介】なべてよはこともなし:1ページに1本のSS。本の一息の物語。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7174
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【作品紹介】なべてよはこともなし:ひとつの世界を色々な視点から見たSS集。何気ない日常。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7174
twitterID:@towa49666
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サークル名:シュガーアイス
作品名:夏色フォトグラフィ
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【作品紹介】大学の写真部に所属する麻生奏は、いつものように部活のために大学へ向かうと、 仲の良い同級生竹本龍司にいつものように写真を撮られる。大学生同士の現代BL #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7392
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【作品紹介】写真バカの大学生たちのほのぼのBLストーリー。Web再録に加え、書き下ろしストーリーもあります! #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7392
twitterID:@simca_ac
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サークル名:花月
作品名:南風
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【作品紹介】『南風』舞姫とギタリストの姉弟が主軸の、愛と芸術のシリアスな物語。天才姉弟と賞賛された二人は旅の末、ある出会いにより運命が変わっていく。舞踊と音楽、絵画の要素が核となっています。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/6224
パターンBツイート
【作品紹介】『南風』2017年文フリ札幌発行、2019年春再版。文庫の恋愛小説。切ない話や芸術がお好きな方へ。あちこちに出させて頂いたこれの番外編をまとめた掌編集・短編集も頒布中です。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/6224
twitterID:@yuri_neko_0
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サークル名:みずひきはえいとのっと
作品名:Black Prince 3
パターンAツイート
【作品紹介】百年戦争前期イングランドの英雄の実像とは・・・ #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7310
パターンBツイート
【作品紹介】ブラックプリンスと呼ばれる王太子の話。史実をおいかける形の三巻目。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7310
twitterID:@tsuntan2
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サークル名:孝子洞のシャチ
作品名:九花のメイガス
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【作品紹介】『もしこの国が3.11からファシズムが始まったら』3.11原発事故でつながった異世界、「メイガス」。彼らは自由と自立、そして生のためにこの国と戦い決意をする。果たして世界と少女たちの運命は!「九花のメイガス」シリーズ #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7417
twitterID:@Lang_Est
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サークル名:浮草堂
作品名:ヘヴンズ・ドアー
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【作品紹介】天上の戦場【ヴァルハラ】新たなる世界の覇権国家の座を賭け、各国が今日も異能戦争中。 飯塚依子は名誉の戦死を遂げるため、仲間たちと戦場を駆け抜ける! 大和撫子、銃をとれ。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/2383
パターンBツイート
【作品紹介】本作品はALLバッドエンド。 しかし、バッドエンドであってバッドエンドではない。 彼ら皆、己を貫き。戦い抜いた戦士たち。狂った人殺しの戦士たち。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/2383
twitterID:@ukikusado
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サークル名:浮草堂
作品名:空六六六1出逢ノ語リ
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【作品紹介】銃と刃の現代ファンタジー 精神的に怪物の少年、七竈納。 最上級悪魔【鉄の女王】メフィスト・フェレス。 傷つき迷い間違えて、殺して走って大人になる。 生きるのがヘタな少年の成長戦記。 はじまり、はじまり。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/5102
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最上級悪魔【鉄の女王】メフィスト・フェレス 「こいつは強い。精神が強い。阿修羅のように、怪物のように、強い。だから、体も強くする。そして、私の荒事部門に置く」 「こういうのが甘えるってことでーす」 「不撓不屈のその魂、私のために使え」 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/5102
twitterID:@ukikusado
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サークル名:浮草堂
作品名:空六六六2 修行ノ語リ
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【作品紹介】銃と刃の成長戦記、第二巻。 16歳の少年少女に、戦の先生がそれぞれつけられる。 七竈納の先生は、「男のダメなところを詰め込んだような」剣豪、鏑木一刀斎。 見目麗しい粗暴の師弟。 舞台は晴明神社と三輪山。神と悪魔の物語。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/5103
パターンBツイート
【作品紹介】マリュースク→ユキの師。戦力のみ人間最強。ジョーイ→蛍の師。米国空軍中尉。鏑木一刀斎→納の師。男のダメなところを詰め込んだような剣豪。 「何を勉強させるつもり?」 「骨の髄まで戦の仕方を叩き込むのだ」 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/5103
twitterID:@ukikusado
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サークル名:hs*創作おうこく。
作品名:人外マトリクス
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【作品紹介】猫が満期になったり、一反木綿が歌ったり。ほのぼのとダークネスがいりまじる、人とその他の交錯する掌編小説集。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7395
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サークル名:恋人と時限爆弾
作品名:石の指
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【作品紹介】バンドミステリ『石の指』ーー映画に出演することになったイエロー・カナリーの四人組。ヒロインのバッグバンドをやるだけだと思っていたら、彼女のボディーガード役まで引き受けるはめに……シリーズ第三弾ですが、これだけでも読めます。https://plag.me/p/textrevo09/7503 #テキレボ
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【作品紹介】バンドミステリ『石の指』ーーお涙頂戴の映画なんて大嫌い、という歌手が難病物のヒロインに。イエロー・カナリーの四人はバックバンドとして映画に参加するはずが、彼女の過去を探るはめに…… シリーズ第三弾ですが、これだけでも読めます。 https://plag.me/p/textrevo09/7503 #テキレボ
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サークル名:魔術書工房
作品名:呪文を紡ぐビスケッタ短編集『精霊と人』
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【作品紹介】精霊を〈敵〉とする大陸で、ひょんなことから精霊と交流をもつようになった呪文書きのタリヤ。精霊と関わることを生業とする魔術書の審査官ルーファン。精霊と島の秘密を守り続ける御使いサファ。それぞれの日常と縁が織り成す物語——。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7515
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【作品紹介】第一部完結済の長編ファンタジー外伝。精霊と人の出会いや日常を切り取った短編を三編収録しました。こちらから読めば本編を少し違う視点から楽しむことができ、本編から読めば描ききれていない日常を掬うことができます。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7515
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サークル名:うつのトリセツ研究所
作品名:ウツの前、読んどきゃよかったこんな本
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【作品紹介】うつは「治る」のか?「薬では治らない」のか?「仮面うつ」「新型うつ」とは?「わがまま」「甘え」「怠け病」なのか。なぜ「再発」するのか。うつの本当の「原因」「治し方」「接し方」とは?目からウロコの体験記! #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7324
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【作品紹介】ウツって、いつ治るの?どうしたら治るの?「すごろく図解」で、ずばりナビガイド!知らなきゃソンソン。知ってからウツになるのと、知らないのとでは大違い?!こんなこと誰も教えてくれなかったよ?目からウロコの体験記! #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7324
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サークル名:虚事新社
作品名:忘れえぬ生涯
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【作品紹介】粗末なベッドの上で目を覚ました男。自分がいる部屋にも、枕元の椅子に腰掛けた老婆にも見覚えはない。名前を問われた男は、自分が何も思い出せないことに気付いた――(表題作)。様々な出会いを描いたショートショート六編。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/4078
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【作品紹介】大統領は宇宙研究所所長の報告を受け、会社員は天使の少女に遭遇し、役人は新しい上司と顔合わせ――。誰かと誰かの出会いはいつでも物語を走らせる。様々な形の出会いを描いたショートショート集。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/4078
twitterID:@SoragotoShinsha
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サークル名:虚事新社
作品名:なお澄みわたりパシフィック
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【作品紹介】超能力の実在の証明を夢見る院生・立花葵に連れられ、外部の人間が立ち入った記録のない伝説の島を訪れた大学生・須々木京。島長の孫娘・フレジアに案内され、住人の歓待を受ける中、二人がたどり着いた島の秘密とは。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/5075
twitterID:@SoragotoShinsha
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サークル名:虚事新社
作品名:アンチ文化侵略
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【作品紹介】高度な文化を持つ異星人による「人道的で賢明な」侵略作戦に対し、地球人が見せた抵抗とは……(表題作)。非現実と現実の関係性を綴り、問い直す七篇。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/6220
twitterID:@SoragotoShinsha
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サークル名:シュバリエ・オ・ミエル
作品名:メメント・モリ
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【作品紹介】【委託・二次創作】FGO サリぐだ二章獣国 凍てつく世界でサリエリは、オレンジの髪の少女の幻想に囚われる・・・その少女は【凡人】と称されながら人理修復をしたという----他に鳴鳳荘ネタあり。#新刊 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7635
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サークル名:シュバリエ・オ・ミエル
作品名:Spending All My Time ジュリエッタと四つの果実
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【作品紹介】【委託・二次】鉄血のオルフェンズ バルバトスルプスレクスを制した少女が戦場へ向かわせる理由は? GH、アリアンロッド・ジュリエッタに関わった男達との邂逅 ラスタル・イオク・ガエリオ・ガラン の四話 表紙イラストは彩々様(@psysai0080)にお願いしました。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7636
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サークル名:シュバリエ・オ・ミエル
作品名:BlackBird
パターンAツイート
【作品紹介】【委託・二次】ガンダムUC バナオド&リディ×ミヒロ #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7637
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サークル名:7's Library
作品名:育児アンソロジー1 こどもはかわいい こどもはたいへん【製本版】
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【作品紹介】7人のママと1人のパパによる、育児がテーマのノンフィクションアンソロジー。エッセイを中心に短歌・漫画の8作品を掲載。育児のリアルを感じていただける一冊。装丁にもこだわりました。ぜひ会場でお手に取ってご覧ください。#テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7110
パターンBツイート
【作品紹介】育児をしているひとたちの想いを書き残す場になったらいいな。 育児をしていないひとたちに育児をしているひとたちの想いが伝わったらいいな。という気持ちを込めてつくった、育児がテーマのノンフィクションアンソロジー。#テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7110
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サークル名:岬の芝居小屋
作品名:暁-朱つ輝-
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【作品紹介】鎌倉二代将軍源頼家の4男「千歳」 生まれて間もなく父と別れ、母が再婚し海の音と匂いの響く家にやって来た。 やがて、源氏の血の引くがために時代に翻弄されていく。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/6725
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サークル名:岬の芝居小屋
作品名:修羅刻逸聞
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【作品紹介】修羅の刻 二次創作小説。修羅の刻の鬼一編のラストで、陸奥を継いだ「虎一」の物語。 たった2コマしか出てこない彼の「人生」を描いてみました。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7684
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【作品紹介】時は1205年。源平合戦から20年の刻が流れた――相模国三浦の御家人三浦九郎胤義は、由比ガ浜で陸奥と出会った。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7684
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サークル名:NRD
作品名:CODE:AMBIVALENT 02 - 命の使い道-
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【作品紹介】片足不随のメカニックとエースパイロットの少女によるロボット物SF小説、人類が神と戦う王道路線のストーリーです #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7720
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サークル名:みずひきはえいとのっと
作品名:ブラックプリンス 4
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【作品紹介】ブラックプリンス・4巻目。ナヘラ遠征からイングランド帰国までのお話 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7597
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【作品紹介】スペインカスティーリア遠征から失策し、イングランドへ病身となって帰国するまでのお話 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7597
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サークル名:蒸奇都市倶楽部
作品名:暗翳の火床
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【作品紹介】最新刊『暗翳の火床』(文庫判532p1500円):〈蒸気都市〉帝都を訪れたばかりの楓はその都会の路地裏で奇怪な存在と出会う。〈黄金の幻影の結社〉——それは楓を恐るべき〈地下炉〉計画へ誘う破滅の使者であった! #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7457
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【作品紹介】蒸奇都市倶楽部2019年第二新刊! 『暗翳の火床』は532ページ1500円のボリューム! 〈蒸気都市〉帝都の光と闇と煤煙をしっかり包んでお届けします! #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7457
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サークル名:片足靴屋/Sheagh sidhe
作品名:人魚のかたり
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【作品紹介】夏山にあらわれた氷上の庭。水鏡にとざされる金色のさかな。これは、かきあつめられた、ひとさかなにまつわるかけら。和風幻想 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7653
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【作品紹介】僕がこいをしたそのひとは、出会ってからずっと少女のかたちを続けていた。これは僕があつめたひとさかなについてのかけら。和風幻想 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7653
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サークル名:花月
作品名:ザンクトゥアリウムの箴言
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【作品紹介】『ザンクトゥアリウムの箴言』テキレボ9新刊、ダブルヒロインのハイファンタジー。病弱な公女とその衛兵たちの物語。片想いや百合主従ぽさもあるハイファンですが魔法やバトルはほぼありません。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7435
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サークル名:アールワークス
作品名:【R18】DIRTY BLOODY DEPENDENT
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【作品紹介】【R18】吸血鬼の主従が人狼や死神、人間の魔物処刑人などとの戦いの中で互いの絆を確かなものにしてゆく姿を描いたゴシックアクションホラーBL。 CP傾向はオヤジ受け/爺さん受け。 本作品は1冊で完結しています。 #テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/7491
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サークル名:千美生の里
作品名:まなざし
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【作品紹介】幕末、文久三年秋、京都——壬生浪士組(後の新選組)副長土方歳三は、或る男から苦しい胸の内を告げられる。それまで男色とは縁なく生きてきた歳三は相手を拒絶するが……▼野間みつねの“私家版 土方歳三”。上下巻完結済。#テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/150
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【作品紹介】新選組の土方歳三の、京・壬生時代から箱館戦争での戦死までを中心に据えた、上下巻完結済作品。芹沢鴨や伊東甲子太郎など、巷の新選組モノでは歳三の“対立者”とされがちな人物の書き方が、多分、少し異色。▼URLは下巻。#テキレボ https://plag.me/p/textrevo09/151
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サークル名:蛇之屋
作品名:探偵人形NULL
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【作品紹介】心がないから、思いがないから、だからこそ見える真実がある。 けれどそれは、人が想像するにはあまりにも凄惨なものだった。しかし彼女は人形、いくら真実が見えたところで その思い理解することは、万に一つもありはしない。https://plag.me/p/textrevo09/7663 #テキレボ
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第26話 『ある術者の1日 (2) - “昼の陽光”』 One day of a necromer chapter 2 - “Daytime sunshine”
ダレンが過去を思い出す時、それは必ずどこか甘い痛みと胸が張り裂けんばかりの後悔が込み上げる。
今よりも以前、ダレンもヘルマンも、彼らより少しだけ年少のマルクも、――そしてエミリアもいた頃の事。
まだ破滅の序曲に気付いていたものが少なかった時代、ダレンたちも幸福な少年時代を送っていた。
今とはあまりにも状況が違った。屍者は跋扈せず、街は色に溢れ、活気に満ちていた。
ダレンのように親が殺されて孤児院に迎えられた者は、まだ幸福だった。ダレンの孤児院は特に待遇がよく、両親が健在ではあったが貧しい生活を強いられてきたころに比べれば、圧倒的に生活の質は上がった。
それでも両親が無残に殺された光景は薄れることがなく、ダレンは周囲に中々馴染めなかった。周囲も『運が悪い可哀相な子供』とダレンが自分で立ち直るのをゆっくりと見守り、ダレンに様々な書を通じて知識を与えることにした。
その閉じた心を開いたのが、エミリアだった。
「ねぇ、何を読んでるの?」
同じ年頃の子供と離れた木陰で大判の古書を読むダレンが、物珍しく、もしくは奇異に見えたのかもしれない。
柔らかな日差しを背負ったエミリアはきらきらと清廉に輝き、初めてダレンは天使を見たと思った。
「医療、魔術……?」
ぽかんとエミリアを見上げていたばかりだったダレンの手元を、エミリアが覗き込んだ。
医療魔術。
その言葉を読み上げられて、ダレンの頬に朱が差した。
ダレンを襲った悲劇を知らぬ者は街にはいないだろう。エミリアの穏やかな表情が一瞬曇ってしまう。
「その本難しい?」
「え……」
「教えて。私も知りたいわ」
エミリアがダレンといるのを見て、ヘルマンとマルクも近づいてきた。元は同じ学校で席を並べる友だ。打ち解ければ、距離が縮む時間もそれほどにかからなかった。
ほどなく、図書館籠もりの小さな4人組の事は、そこを出入りする者であれば、知らない者はいなくなった。
かつてダレンは、両親を亡くしても感情を表に出さなかった。衝撃が大き過ぎてどうしていいか分からず、徐々に不感になることで耐える技術を持ったダレンを、まだ若かった学友たちは不気味に感じて避けていただけで、心底忌避していた訳ではなかった。
そんな彼らの友情を深める契機になったものが、『医療魔術』だった。
新しい文献やもう忘れ去られた術法を見つけ出すのは、いつも決まって古い図書館。
ヘルマンとダレンが医療魔術の技術を語り、マルクが新しい本を探してくる。ああでもないこうでもないと語り、魔術を試した日々。
刺激的で、自分の境遇を忘れていられた唯一の時間だった。
その記憶を振り返る度、エミリアの慈悲深く愛らしい天使のような、清純な笑顔が一番に思い出される。
ダレンを救ったのは、ヘルマンやマルクへの友情と、エミリアへの淡い、その年頃に似合いの初恋だった。
目が合うとエミリアは、きょとんと目を丸めてからふわりと微笑む。その軽やかな笑みを見る度、胸がときめいた。
4人で一緒にいながら、全員がエミリアを中心に傍にいたことに気付かない訳がない。
全員にとってもエミリアは救いの天使だった。彼女がいたからこそ繋がり合い、喧嘩をしても仲裁役を必ずしてくれた。
だが、ダレンは誰よりも知っていたはずだった。幸福は突然、音もなく崩れ去るものだと。
永遠に続くように思える日々こそ、もろく蜃気楼のようなものなのだ、と。
瓦礫の隙間に、震え身を隠す男の姿を、屍者の軍勢が見出す事はついになかった。
唐突に訪れた世界の崩壊の日。街に溢れかえる屍者達とおぞましい死臭。
誰もが必死で逃げ惑った。古い予言を知るものも、知らないものも、老人も赤ん坊も屍者の前では平等に無力だった。
何が生死を分けたのか、ダレンは今でも分からない。
ただ、混乱が収まった時のことは鮮明に覚えている。
エミリアが寝ていたのだ。混乱の収まった街の片隅、かつてダレンにはじめて話しかけてくれたあの大きな木の下で、エミリアは目を伏せていた。
まるで、眠っているように。
もう大丈夫だと声をかけようとして、その異変にダレンは凍り付いた。
エミリアの体の下、ドレスを染め抜く赤い色。
どうして、自分は逃げ回ることしか出来なかったのか。自分よりもか弱いエミリアを探すべきだったのではないか。もう何も感じまいと思っていた凍った心が強く震えた。
「エミリア……? エミリア……何故……何故だ……」
触れたエミリアの頬は氷のように冷たかった。
人目を憚らずエミリアを抱き締めることが出来たのは、彼女が冷たい骸になってからだった。
「ダレン、汚れてしまうぞ」
ヘルマンがダレンの肩を叩いたが、エミリアを離すことが出来ない。
「このままじゃエミリアが可哀相だ、ちゃんと弔ってあげよう。そうして、僕達も逃げなくちゃ。きっとまた屍者が戻ってくる。あいつらが僕らを今度は八つ裂きにするんだ」
マルクは呪いのようにぶつぶつと繰り返す。
エミリアを抱えて、陥落した街から逃げた。エミリアを埋葬するための、そして安全に隠れられる場所を探して。
どういう経緯でこの墓地の近くの古びた小屋に辿り着いたのかは覚えていない。それでも、いつの間にか見つけた小屋で、倒れ込むようにして眠ってしまっていた。
夢さえ見ないような深い眠りから覚めても、エミリアは目覚めなかった。
世界が崩壊し、エミリアの魂がダレン達の前から去っても、朝は同じようにやってきて、ダレン達を無情にも照らしていた。
血の気の失せたエミリアを前に呆然としていたダレンの視界に、そっと影が落ちる。
「いつまでもこうしていられない」
マルクだった。
「……埋めよう」
「なら、このままじゃ可哀相だ、綺麗にしてあげよう」
「綺麗に……?」
「この辺りに壊死患部を腐敗から守るのに使ってた野草が生えてる」
気付けばマルクが腕にたくさんの野草を抱えていた。動く気配のないダレンを傍目に、マルクが黙々と手を血に汚しながらエミリアを綺麗にしていく。
「すまない、マルク」
「別に。このままエミリアが変わるのなんて見たくないって気持ちは同じなだけ」
このまま、エミリアは眠り続ける、終わりのない時の中を。
全員が無表情で、学んだ医術や医療魔術の知識を使い、エミリアのために時を止める処置をする。
朽ち果ててしまう運命を否定したかった。
「墓標には何を刻もう」
ヘルマンの声は強張っている。
「……美しいひと」
ダレンはそれだけを呟いて、墓標にそう刻んだ。
マルクは頷くと、黙って見つめていた。ヘルマンは、俯いて、肩を震わせていた。
エミリアは美しかった。その姿も心も。これ以上理想的な言葉は見つけられないとさえ思った。
その後、この土地の前の主が遺した冒涜の記録に触れ、俺達の戦いは始まった。
窓から差し込む月明かりがマルクの顔の半面を照らし、妖しい眼光を煌めかせる。
ダレンの目の前には6本の腕を持った奇怪な男の解剖図が、ずいと眼前に押し出された。
視界を塞ぐその解剖図は、正直吐き気を催すほどだ。
「やめろ。何のつもりだ」
「だから、これだ。屍体に他の屍体を繋いで強化するんだ! この解剖図は昔の技術が描かれてる! よく見て!」
興奮した様子でマルクは繰り返し、解剖図をバンバンと叩いた。
「何を言ってるか分かってるのか?」
「分かってるさ」
「ならそんなものはしまって忘れろ。もうこんなに遅いんだぞ」
ダレンが本を押しのけると、マルクはきょとんと目を丸くしていた。
「ダレンこそ分かってる?」
「マルク。落ち着け、新しい技術を見つけて興奮するのは分かるが、現実的じゃないだろ」
「これ以上に現実的な事、今他にあると思う?」
マルクの目は妖しく光ったままだ。
「だって、分かってるよね。このままじゃ僕達は全員死ぬ。しかも飢えながら、いつ襲われるか怯え続けてね」
「止せ」
「止さない。思考停止は悪だ」
「マルク」
マルクがダレンの腕を掴む。その強さにダレンはぐっと眉根を寄せた。
ここまで頑なだっただろうか、マルクは。
「昔の文献があっただけじゃ、実際に可能かなんて分からないだろ」
「かなり詳しい方法が乗ってるんだ、きっと出来る。僕達なら。医療魔術も使えるし、実際に屍体をコントロールする事だって出来てる」
「おい。落ち着いてくれ」
「ダレン。これはチャンスだ。このタイミングでこんな記述が見つかるなんて、まだ神様は僕達を見捨ててないってことだ」
本の記述を熱心に読み耽るマルクは、ダレンを見ずに続ける。
「可能だ。これは可能なんだ、弱い素材でも強化することが出来る。今まで雑兵を使ってたから負けてどんどんじり貧になって来たけど、今度は違う。限りある素材を補い合って長く戦える」
「今でもBuriedbornesを使ってるだろ」
Buriedbornesも魔の契約だ。ダレンがいなければ、マルクとヘルマンだけでは精神破綻を起こして、既にこの生活を維持することは叶わなかったはずだ。
それほどまでに危険な魔の契約に手を染めているのに、更に先へと進もうというのか。ダレンはマルクの提案に頷く事が出来なかった。
「もう既に倫理は死んだ」
マルクはにやりと笑う。
「そうじゃないか、ダレン。僕達はもう墓を掘り起こして、屍体を使ってる。今更何を取り繕う必要があるんだ。それに逃げ延びた場所にこの本があることは導きだと思わない?」
「エミリアがこんなことを望むか!?」
「なら、エミリアがいても、この方法を試さずに彼女を死なせるの?」
マルクの言葉は鋭いナイフのようにダレンの首にピタリと張り付いた。
心臓がバクンと大きく鼓動を打つ。
もしも、エミリアがここにいて、自分はエミリアのために清廉でいることと、エミリアを生かすために禁忌を冒すことのどちらを選ぶだろう。
エミリア。
美しい天使。
「ダレン。ダレンがいなかったら、僕がいくらBuriedbornesの術を完成させても生き延びられなかった。それは間違いない。だからこそ、これも神の導きだと僕は思う」
「マルク……」
「そして、ここでこの技術を知った。これは導きじゃないのか? もう既に墓を暴いた僕達が何を恐れるんだ?」
もう既に墓を暴いた。
そのことは仕方ないとダレンも割り切っていた筈だった。屍者に生身で勝てる術をダレン達の誰も持っていなかった。まだ医療魔術やBuriedbornesを知っていただけ、恵まれているのだ。
「墓を暴くのことと、屍体に手をかけるのは違うことだ」
「同じだ。その兵士の家族からしたら、どっちも同じくらいおぞましいことだ」
「でも、生き延びるためだった!」
「なら、何を悩むことがあるの。出来ることが見つかったっていうのに」
廊下から物音がし、燭台を手にしたヘルマンがマルクの部屋に顔を出した。
今起きたばかりと言った様子で、何度も瞬きをしている。
「おい、こんな夜に何を言い争っているんだ」
「すまない。起こしてしまったか」
「あれだけ大きな声で言い合っていて起きない方が可笑しい。何した」
どうした、ではなく、何した、と言われたことにダレンは溜息を吐いた。
マルクは、ダレンにもしたように、ヘルマンにも誇らしげにあの解剖図を見せた。見る間にヘルマンは忌々し気に表情を歪める。
「なんだ、悪魔か?」
「違う。新しいBuriedbornesを強化するための技術」
「はぁ?」
「昔にあったんだ、貧弱な屍体でも強化すれば優秀な戦士になるってある」
「正気か?」
その問いはマルクにではなく、ダレンに向けられたものだった。ダレンは肩を竦める。
マルクは正気だし、本気で言っているのだろう。だからこそと戸惑いが拭えない。
「現実的に不可能だ。いくらダレンがいても、ダレンには腕が2本しかない、そんな悪魔みたいに6本もある体なんて強化じゃない退化だ。使いこなすことなんて出来ん」
「ヘルマン達は何もわかってない。僕が正しいんだ。理論上は多肢化に伴う脳の感覚相異も適切な訓練を経れば解決できる。幻肢痛の逆だし、伸びた髪の先に感覚があるのと一緒だ」
「とにかく俺は反対だ。出来んもんは出来ん。それに、そこまで落ちぶれたくない」
「じゃあ、このままじりじりと死を受け入れるって?」
「魂の眠りをそこまで無碍にすることはしない。それがたとえ見知らぬ誰かであろうと」
マルクは冷めた目でヘルマンを窺い、それから、ダレンを見た。
ヘルマンの登場でかえって冷静になった。
生き延びるために墓を暴き、屍者と戦うため魔の契約を使った。そんな自分達が何を迷うというのか。エミリアがここにいたら、恐らく自分はきっと……――
「このままでは俺達全員、餓死するか、屍体���もに見つかって殺されるか、だ……」
それは誰でも分かる事だ。自覚している、けれど。
ダレンはしっかりと言葉にした。
「でも、だからと言ってそんな事出来るわけないだろ、マルク、落ち着け」
「……」
マルクは何も答えずに、じっと解剖図を見つめている。
「マルク! 聞いてるか」
ヘルマンが声を荒げた。
「いいか、絶対に辞めろ。まだ死ぬと決まった訳じゃない。可笑しいと思わんか? そこまで堕落していいのか?」
「これがあれば生き延びられる」
「マルク、黙れ。それでも出来ん、俺達は人間であるべきだ」
話は終わりだと言わんばかりに、ヘルマンは大きな足音を立てて部屋を出て行った。
人間であるべきだ、その言葉は理解できる。では、すでに墓を暴いた人間があるべき人間とはどんな存在だろうか。
ダレンは心の底が震える感触を必死で押し殺して、自分の部屋に戻った。
それから、少しの時間。
ダレンは自身のベッドの中でじっと目を凝らしていた。粗末な毛布を握りしめ、夜の闇を見つめていた。
ヘルマンの部屋は早々に灯りが消え、マルクの部屋からは神経質そうないら立った足音が響いていたが、少し前に灯りも消え、物音も消えた。
完全なる静寂。
その中でダレンはようやく体を起こした。
――なら、エミリアがいても、この方法を試さずに彼女を死なせるの?
マルクから投げかけられたその言葉が、ぐるぐると頭を回っている。
研究室にそっと向かい、また闇に目を凝らす。誰も気づいていない。
エミリアがいたら、この方法を試さずここで彼女を死なせるのか?
エミリアがまだ生きていたら、彼女を見殺しにするだろうか? エミリアに孤独を救われたこの俺が?
そんな事は、絶対しなかっただろう。彼女を守るためなら、きっと俺は、この方法も厭わず使うはずだ、これは当然の事だ。生きるために、エミリアを守るために。
安置しておいた屍体を何体か検め、一番筋肉質な腕を選んだ。戦死した時の傷か、足は骨まで粉砕して原形がなかったが、両腕はしっかりと残っている。
無言と反するように、研究室には鋸を一心に引く音と骨の断ち切れる聞いた事のない音が響き始めた。
マルクに眼前に押し付けられた解剖図は、すさまじいインパクトでダレンに記憶��れている。
不感になる事は、皮肉ながら慣れていた。
エミリアを今度こそ守り抜く。二度と彼女を失わないために。
「……出来た」
自分の声が虚ろに響く。
ダレンの目の前には、屍者よりも奇異な4本腕の屍体の兵士がいる。
再度耳を澄ます。誰も起きていない。
ダレンはゆっくりとBuriedbornesを開始した。自らの作り出した奇怪な化け物を試すために……
~つづく~
原作: ohNussy
著作: 森きいこ
※今回より、ショートストーリーはohNussyが作成したプロットを元に代筆していただく形になりました。ご了承ください。
ある術者の1日 (3) - ”日暮れ”
「ショートストーリー」は、Buriedbornesの本編で語られる事のない物語を補完するためのゲーム外コンテンツです。「ショートストーリー」で、よりBuriedbornesの世界を楽しんでいただけましたら幸いです。
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