uihy
自室の記録
5年前からルームシェアをしているSと一緒に引越しをしてから、3年が経った。寝室をSが、リビングを私が自室としている。私の部屋の正面には大きな窓があ���、左右にもそれぞれ小窓がある。
小窓1
装身具類の置き場所。ピアスを置いている鳥のレモン絞り器は、Fさんから貰ったもの。Fさんはよく動物のものをくれる。犬の形をした栓抜きや、野営をするくまの置物も彼からのプレゼントだった。
カートリッジインクの空き容器には、ヘアピンやネックレスを入れている。私の父は吸引式の万年筆を好んでいて、父から贈られたペンもインク瓶とセットのものが多かった。実家を出て外にいる時間が増えてからは、インクを切らすことが怖く、自然と替えのインクを持ち運べるカートリッジ式の万年筆を使うようになった。それからしばらく経ち、1年前にプログラマを辞めたことを手紙で報告すると、その数日後に「励まし」とボールペンが送られてきた。以降ずっとそのペンを使っているから、手持ちの万年筆はどれもインクを抜いてある。
よく付けるピアスは窓の縁に置いていて、どこかの喫茶店で使われていたらしい伝票入れには、硝子のオーナメントやトライアングルのビーターを差している。
Hのくれたトライアングル本体は、腕時計とブレスレットを失くさないための場所として機能している。良くない使い方だと罪悪感を覚えてはクロスで磨いている。
小窓2
『陶の家』を見かけたらひとつ買うというのを続けていて、現時点で3軒が建っている。少しずつ街になっていく。家の奥には、ミナペルホネンの好きなQさんにプレゼントしたものと色違いのタイルを置いている。
小窓3
すぐぼろぼろにしてしまう指先のケア用品を置いている。H先輩に貰ったネイルオイルの磨硝子が好きだった。Fさんが動物をくれるように、この人は硝子をよくプレゼントしてくれる。硝子のオーナメントも、ステンドグラスのくまもH先輩から貰っている。
窓を開閉するハンドル(オペレーターハンドルというらしい)に紐をかけて、ケーブルや電源類をまとめている。先日Eから貰った白いカールコードのシールドもここに下げている。黒い服ばかり着ているのに、Eには乳白色のイメージがある。“誤って人間として産まれてしまった天使”だと感じさせる人と知り合うことが何度かあり、Eもその中のひとりだった。
向かって左には仕事用のシャツ、右には外套を何着か掛けている。秋冬用の服ばかりある。
机
ここに越すことが決まってから最初に選んだ家具。プログラマになったばかりの頃、メモリの重要さを机の広さに喩えて教えられた。それで机は広いほど良いものだと認識したのか、気付けば横幅のある机ばかり探していた。天板の色を緑に決めて、部屋の軸に据えた。
職場で割ってしまったマグカップに無線イヤホンや保湿クリームを入れている。シャツを濡らしたまま破片を持つ私を見て、笑ってくれる会社の人たち。これ以上は無いとよく思う。
ヘアクリップ入れにしている、ままごと用のような小さな花瓶も気に入っている。渋谷の蚤の市で友人へのプレゼントを選んでから、度々その人の店でものを買うようになった。銀色のトレイやハート型の赤い缶もその人から買った。
銀色の電源タップは前の部屋から持ってきたもの。あらゆる電子機器の電力をここから供給している。
ギターをくれた友人たちが別の年の誕生日に合同出資してくれたオーディオインターフェースがモニターの下にある。未だに1-2と3-4の入力を同時にする方法が分からず、2つずつ付け替えながら使っている。これを貰ってからAudacityで曲を作り始めて、今もそのやり方をしている。会社の先輩には「システムを0と1だけで作ろうとしているみたいなものだよ」と言われたけれど、その頓馬さを含めて自分に馴染むので、Audacityをずっと使っている。キーボードがちょうど上に乗る。
モニターの横にはmicroKORGを置いている。普段は誕生日に贈り物をしないと取り決めているSだけれど、数年前に何かで手を貸した際「この恩は倍にして返します」と言い、その年の誕生日にmicroKORGをプレゼントしてくれた。このシンセサイザが部屋に来てから、自分の生活が向かうことのできる方角が増えたように感じている。大切な楽器。
microKORGには、新しい部屋で出した『野良の花壇』のマグネットを付けている。本来は冷蔵庫のために作られたマグネットだけれど、皆とスタジオにいる時にあって欲しく、ここに付けている。プリクラで来られなかった友達の似顔絵を描くような感覚。私の黒い冷蔵庫には、ピーター・ドイグの青鬼の絵と油絵の花のマグネットだけがある。
机の下に、PC・トランクケース・スーツケースを置いている。PCはSのお下がりで、MacBookしか使ったことのなかった当時の私は、こんなに大きな箱がPCだなんて、と思っていた。PCの上に付けたアンテナは狐の顔のような形をしている。
トランクケースは大学2年のころ大枚をはたいて手に入れたもの。どこか遠出をする時はこれに荷物を詰めている。畳み終えた洗濯物をSの部屋へ運ぶ時のかごや、ギターを弾く時の足置きとしても使用。頑丈さに安心する。
スーツケースはついこの間、京都に長く滞在するために買った。銀色の次に、灰がかった青が好きだと思う。
ギター・くま・本棚
ギターは高校時代の友人たちが誕生日にくれたもの。19歳になったばかりの頃、当時の交際相手と出掛けた帰り、気が付いたら楽器屋にいた。ギターを2本持ったその人に「どっちがいい」と訊かれ、指差した方を買ってくれた。私にギターを与え、弾き方を教えてくれたことにずっと感謝している。その人と別れてしばらく経ち、誕生祝いに何が欲しいかを訊かれ、ギターを頼んだのだった。友人たちは「あえて白にしてみた」と笑っていた。今思えば、このギターを貰ってから白を自分のものにすることへの抵抗が弱くなった。ギターの届いた日、触っているのが楽しくて大学を休んだのを覚えている。
YAMAHAのアンプは義兄が使っているのを見て購入した。私が真似をしていると知って嬉しそうだった、と姉から教えてもらった。
左端のくまは、元は白だったのだけれど、深い青のシーツで眠るのに付き合わせたせいで黝くなってしまった。Kの小説に「ヤニや涎で汚れてしまったのかしら」と書かれてからは、布で包んでいる。いつかぬいぐるみ病院に連れて行きたい。隣は一度も会ったことのない人が贈ってくれた黒いくまと、高校時代の交際相手が留学先のお土産として連れてきてくれた焦げ茶のくま。誰かとビデオ通話をする時にはよくパペットのくまに代理出席してもらっている。右は、地元や旅先の雑貨屋で見つけて連れてきてしまった(“しまった”という意識がずっとある)小麦と白のくま。グレーのワゴンに小さなギャッペを敷いて、くまたちの場所としている。
低い本棚の上
蓋のない宝箱。小物たちというより、質量のある記憶群という方が実感に近い。
西荻窪にあった喫茶店の閉業を知って沈んでいると、H先輩が「お店で使っていた品物を販売しているみたいです」と教えてくれた。黒い花瓶のあるおかげで、ずっとその店を忘れずにいられる。今はEのくれた竹とんぼや、Aさんのくれた花を入れている。ポストカードをしまっておける箱のついた額縁には、Aの写真を入れている。過去、「__の写真を写真展に出してもいいですか?」と、もう搬入の終わった状態で確認の連絡が来たことがあった。Aがごく稀に見せる、こういった強引さが大好きだった。展示を了承する代わりに譲ってもらったその時の写真たちは、勾配天井の部屋に暮らしていた時に飾っていた。上京してから借りたどの部屋にもAの写真を飾っている。そのほか、江の島で拾った石や、Tさんがライブ終わりに嵌めてくれた指環、Uさんと行った犬吠埼のイルカの置物、書ききれないほどの誰かと紐付いた宝物がある。
声の依頼を受けた際、お礼にといただいた絵。額装までしてくれていた。元々この人の絵が好きだったので大喜びした。一度この絵を裏返さなければいけない時期があったので、また飾ることができて嬉しかった。
高い本棚の上
小さなギターは、Kさんと一緒にRさんの部屋でパーティをした日、中古のおもちゃ屋で買ったもの。Rさんの部屋に戻った後もご機嫌に鳴らしていて、そのあと火事が起きた。カセットコンロの火がテーブルクロスに引火して、火が早送りのように広がっていくのを見た。三人で死ぬ映像がちらついた、次の瞬間には火が消えていて、振り向くと花瓶を持って息を切らしたRさんが立っていた。チューリップを活けていた水での消火。このおもちゃが生き延びた証明になっている。このあいだのアルバムに入れたフィールドレコーディング曲にはその日の日付が付けられていて、火のはじける音やこのおもちゃギターの音が入っていた。volca keysは初めて触ったシンセサイザ。自分ひとりである程度のことができるようになりたくて、リズムマシンとマルチエフェクターを買った。
銀色のバットはひとつ前に住んでいた部屋の近くにあった台所道具の店で買ったもので、前日と翌日のあいだの時間に携帯品を置いておく場所として使っている。
Artekのスツール60を、椅子やベッドサイドテーブルとして使っている。パーティめいたことをする時には、3脚くっつけて大きなテーブルとして使う。雑貨屋でまとめて購入したので、その日で店のポイントカードが1枚分溜まった。そのカードをイッタラのキャンドルホルダーと交換してもらった。
銀色のトレイは、先述の蚤の市で知った店で買ったもの。部屋のポケットとして使っている。
“拯”の字は、精神がどうしようもなく落ちていた今年の始めに、Uさんが「書初めをしよう」と言って筆を持たせてくれたもの。翌月にまた京都を訪れた際に、国際会館のカフェスペースで焼き上がったものを渡してくれた。頭でばかり考えてはすぐに身体と疎通できなくなる私に、四肢のあることを思い出させてくれる友人。
本の上には気休めの紙魚対策として除湿剤と防虫剤を置いている。
小窓4
Fさんからの犬の栓抜きと、Hに貰ったコンクリートの置物、H先輩が分けてくれた犬の箸置き。母の好きなミニチュアを贈る際、色違いのチューリップを自分にもひとつ購入して、端に置いている。自分のために生きた花を買えない反動か、花のモチーフのものを見かけると嬉しくてつい手が伸びる。
キッチン
私の洗面台を兼ねている。私もSも、料理と呼べるような自炊は殆どしないので、調味料や調理器具が少なく、キッチンの収納部にはそれぞれの私物が仕舞われている。
Mさんが引越し祝いに買ってくれたカセットコンロ。パンを焼く時やカフェオレを淹れる時に使う。組み立てる際の動作がロボットアニメのワンシーンを思い出させるので、人前で使う時には「変身!」と言うようにしている。
隣の空き瓶は元々ジンの入っていたもので、誰かに花をいただいた時には一旦ここに活けている。
この部屋に越した時にIがプレゼントしてくれたローズマリーの石鹸の匂いが好きで、貰った分を使い切ってからも自分で買い直している。歯磨き粉はGUM以外だと落ち着かないので旅行先にも持っていく。歯ブラシはKENTのもので、最初に使ったあとの歯の滑らかさに感動して、誰かに共感してほしいあまりSに押し売りをした。それからSも同じものを使っているので、それぞれのス���ックも合わせると10本近くこの歯ブラシがある。右端はリングホルダー。左手の薬指に環を嵌めるようになってから、指環が好きになった。今は5本の指環を付けている。
食器棚
H先輩のくれたくまを吊るしている。緑の石鹸はMさんのスペイン土産。ここに写っている鉄鍋も鉄フライパンも、写っていない3本の包丁も2枚のお盆も貰いもの。
ソファ
机の天板に合わせて布を選んだ、三人掛けのソファ。毎日ここで眠っている。Sの部屋にある質の良いベッドよりも、薄いマットレスを敷いたソファの方がよく眠れる。枕に近い小窓のハンドルにエジソンランプを括りつけて、普段はその光で睡眠薬が効くまでを過ごしている。
部屋のすぐ向かいには線路があり、3面の窓から電車の通る音や光が流れる。最終電車の後は、スケートボードの走る音や、酔った誰かの歌が聞こえる。この部屋で生活をしている。
8 notes
·
View notes
【対談 #4】逹瑯(MUCC) × 柩(NIGHTMARE)が語る、<悪夢69>と確かな関係性「“株式会社ヴィジュアル系”で言ったら社長クラス」
MUCCとNIGHTMAREが8月、東名阪ツーマンツアー<悪夢69>を開催する。同ツーマンツアーは8月17日のZepp Nagoyaを皮切りに、8月18日のZepp Osaka Bayside、ファイナルとなる8月24日のZepp Hanedaといった3会場をまわるもの。両者はこれまでにもイベント等で共演しているが、対バンは今回が初となる。
◆逹瑯(MUCC) × 柩(NIGHTMARE) 画像
結成24年目のNIGHTMAREに対し、MUCCは27年目であり先輩にあたるが、メジャーデビューは両バンド共に2003年だ。ヴィジュアル系というジャンルで括れば同じフィールドではあるものの、音楽性の差異は大きいかもしれない。しかし、NIGHTMAREは仙台を中心とする宮城、MUCCは茨城という同郷メンバーから成り立つバンド、という共通点もある。
そもそもなぜこのタイミングでツーマンツアーを企画したのか? どのようなライブ内容になりそうなのか? 開幕に向けて両バンドの関係性、それぞれの現在地、このツアーに懸ける想いなどを紐解く全四回の対談連載第一弾は両バンドのヴォーカリスト逹瑯(MUCC) × YOMI(NIGHTMARE)、第二弾はギタリストのミヤ(MUCC) × 咲人(NIGHTMARE)、第三弾はリズム隊のYUKKE(MUCC) × Ni~yaとRUKA(NIGHTMARE)対談をお届けした。そして最終回となる今回は、ツーマン<悪夢69>の首謀者ともいえる逹瑯(MUCC) × 柩(NIGHTMARE)だ。気心の知れた両者のトークセッションは終始笑いが止まらない。「うちらはたぶん、会社で言ったら社長クラスだと思う」といった深い話も飛び出す多面的な対談となった。
▲<NIGHTMARE × MUCC「悪夢69」>
◆ ◆ ◆
■もう20年近くですね
■フランクに話できる唯一の先輩なんで
──8月に<NIGHTMARE×MUCC ツーマンツアー『悪夢69』>を東名阪で開催します。もともと言い出しっぺは誰なんですか?
柩:逹瑯さんです。
逹瑯:そう、俺です。
──MUCCは現在、結成25周年イヤーを掲げたワンマンツアーで忙しくしています。その最中にツーマンツアーを企画したのは、どういう理由からですか?
逹瑯:去年ぐらいだっけ、話したのは?
柩:タッツー(逹瑯)から急に連絡がきた感じで。今、LINEを見返してみたら、タッツーから「ツーマンできないかね?」って連絡来たのは、去年5月23日でした。
逹瑯:1年ちょい前ぐらいか。
柩:だから実現するまでに時間はけっこう掛かってます。
逹瑯:でもタイミングはいつでもよかったんだよね。早くできるんだったら早くでもいいし、うちの周年ツアーやライヴが終わって時間が空いたときでもよかった。お互いのタイミングが合って、ライヴできる会場が取れるときみたいな感じで。
──つまり逹瑯さんとしては、是が非でもやりたかったツーマンだったんですか?
逹瑯:まず、楽しいことが好きなんで。おもしろそうじゃないですか、NIGHTMAREとのツーマンは。こっちがおもしろそうだと思ったというのもあるけど、ファンのみんなも、おもしろそうだと思ってくれそうだなと。そっちのほうが大きかった。
柩:過去にイベントでMUCCと一緒になったことはあるんですけど、ツーマンはなかったんで。しかも若いときからめっちゃカッコいいなと思っていたバンドで、そのMUCCとツーマンできるのは、俺も嬉しかったですね。
──「若いとき」ってMUCCのことを初めて知ったのは、いつぐらいだったんですか?
柩:10代でしたね。17〜18歳ぐらい。だからMUCCもかなり初期のころ。
逹瑯:1stアルバムぐらいのときかね?
柩:そう。1stミニアルバム『アンティーク』(1999年発表)とかのころ。“このMUCCというバンドは、絶対に変な人たちなんだろうな”って勝手に思ってた(笑)。いわゆるヴィジュアル系でもないなって印象は当時からあって。
逹瑯:それを言ったらさ、俺が柩と初めて会ったとき、柩は猫目の全眼カラコンしていたからね。もう、コイツは普通のヤツじゃないだろうなって思った(笑)。
柩:いやいや、勘弁してください。『アンティーク』のころのMUCCって、メンバー写真もモノクロで、メンバー全員のメイクも統一されているような、見るからに暗い雰囲気もあって。明らかに普通じゃなかった(笑)。
──普通じゃないのは、お互い様という。
逹瑯:いや、でもどのバンドもそうでしょう。普通のことをしたい人は、まずバンドやらないからね。
柩:確かに。特にこのジャンルは。
逹瑯:みんな普通じゃないものを好きになって、それでヴィジュアル系のバンドを始める感じだったから。
──はみ出してこそカッコいいところがありますからね。
逹瑯:俺らは高校生のころからそうだったけど、“みんなと違うことをやってるほうが目立つ”と思っていたんですよ。だから“今、なにが流行っているんだろう?”ってのを知ったうえで、それとは違うことをやりつつ、上手に採り入れるというのが、一番の正解だと思ってたんですよ、目立つという意味ではね。あと、自分にできることや得意なことってのを、ちゃんと分かっていた…という意味では、柩もそんな感じだったよね?
柩:他の人とかぶりたくないなってのはありましたね。俺の場合、身近な人とも、それこそメンバーともかぶりたくなかったし。
▲逹瑯(MUCC) × 柩(NIGHTMARE)
──柩さんはピアスを顔中に付けているじゃないですか。それも普通じゃない、というスタンスからだったんですか?
柩:ああ、かもしれない。
逹瑯:いや、オマエはドMだからでしょ(笑)?
柩:違う違う(笑)。
逹瑯:自傷行為の延長じゃないの? メンヘラでしょ(笑)?
柩:やめろって、その言い方は、違うっつうの(笑)。言い方がおかしいだろ。普通じゃないっていうか、ちょっとした変身願望から来ているかもしれないですね。
逹瑯:ああ、変態願望?
柩:変身! ヘ・ン・シ・ンだっていうの!!
逹瑯:あははは!
柩:やっぱり他とは違うこと、普通じゃないことって考えていったら、結果、こうなっていったんですよね。
──ピアスやタトゥーなど、最初は覚悟とか勇気も必要だったんですか?
柩:う〜ん、最初は勢いでしたね。15歳ぐらいからピアスを開け始めたんで。
逹瑯:最初は耳でしょ?
柩:耳だったかな…いや、違うわ。最初が口だ。
逹瑯:えっ!? 耳じゃねえんだ?
▲<V系って知ってる?>2022年12月27日@日本武道館【BUCK-TICK Respect Session】逹瑯(MUCC) × 柩(NIGHTMARE)
──最初から普通じゃない。やっぱり変態ってことですか(笑)。
柩:その言い方しないで(笑)。で、2つ目が耳だったかな。
逹瑯:ファーストタトゥーは?
柩:タトゥーは腕というか、肩のあたりに。
逹瑯:どんな絵が入ってんの?
柩:普通のやつ。
逹瑯:普通のタトゥーってなんだよ(笑)? よく分かんねえって。
柩:龍。
逹瑯:おお、ドラゴンね。なんで龍にしたん? 一発目だからたぶん、すげぇ慎重になったと思うんだけど。
柩:最初にタトゥー雑誌とかカタログとかを見てたら、東京の彫師さんのカッコいい龍が載っていて。それがいいなと思ったので、その彫師さんのスタジオに行って入れてもらったんです。
逹瑯:やっぱり彫師さんによって、彫りの上手い下手もあるんだろうけど、絵の上手い下手もあるんでしょ?
柩:あるし、色のぼかし方にクセみたいなのもあるし。
逹瑯:気に入ってないタトゥーはないの?
柩:ない!
逹瑯:スゲーな。
──タトゥーは意味を持って入れる人も多いじゃないですか。
柩:自分への戒めという意味を込めて入れる人もいますね。俺も、ラクガキみたいに入れたものもあれば、そういう思いを持って入れたものもあるし。
逹瑯:戒め? そうか。じゃあ、前に酔っぱらって周りのみんなに迷惑を掛けた、その自分への戒めで入れたタトゥーというのは、どれ(笑)?
柩:そんなタトゥーないって。それに、その話はやめろ(笑)! 書けないやつだから。
──詳細が気になる。でも余計なこともいろいろ知ってそうなぐらい仲がいいんですね(笑)。
逹瑯:まあ、普通に遊び仲間だから。
柩:もう20年近く。フランクに話ができる唯一の先輩なんで、タッツーが。
■みんなすげーことをやってきたんだなって
■自分で歌い始めて思ったから
──NIGHTMAREが一時活動を止めたときとか、ソロプロジェクトGREMLINSをスタートさせたときなど、逹瑯さんに相談もしたんですか?
柩:いや、俺からはなくて。タッツーから後で「あれはどうだったの?」とか聞いてもらうことはありましたね。
逹瑯:「自分で歌ってみてどうだったの?」とか。それぐらいの話で。
柩:やっぱ難しいですよね、歌って。上手い下手だけではどうにもならないってのが、露骨に出るパートかなと。
逹瑯:物理的に、出ねえ声は出ねえからな。
柩:そうそう。
逹瑯:ギタリスト的に言うなら、「ギター1本でなんとかしろ」って言われてる感じじゃん?
柩:そう、エフェクターもなしでね。
逹瑯:エフェクターはギリ使ってもいいけど、このギターしか弾いちゃダメだ、みたいなさ。このギターとこのアンプとこのキャビしか使っちゃいけませんって言われてる感じ。
柩:それでも、いかに表現するかっていう。やろうとしたら、やっぱすげぇ難しい。YOMIに対しても、他のバンドのボーカリストに対しても、みんなすげーことをやってきたんだなって、自分で歌い始めて思ったから。
逹瑯:しかも自分で選んで買った好きなギターじゃなくて、ずっと前から家にあったギターしか使っちゃダメだよって言われてる感じで(笑)。
柩:そうそう(笑)。理想と現実をまず思い知らされて、それでもいかに表現をしていくかって。
▲逹瑯(MUCC)
──歌うということでは、逹瑯さんのここ数年の成長ぶりは、ライヴを観るたびに感激するんですよ。2022年からソロワークスを本格スタートさせたのも、いい効果につながっているんですか?
逹瑯:それで言うと、SATOちが抜けたタイミングで、いろいろ時間もできたので、根本的なところから見直したんですよ。まず環境を整えたかな、歌いやすい環境を。良くも悪くも、MUCC全体がスポ根みたいな感じというか、“できない理由は自分にあるんじゃないか”って思ってしまう人種の集まりで(笑)。環境を整えようって考える前に、自分に問題があるんだろって感じの脳みそを持ってる人ばかりで。SATOち脱退後にサポートドラムを入れて練習する時間が多くなったとき、まず歌う環境を見直して、歌いやすい状況を作っていく時間もあったんですよ。だから、その過程で気づきがたくさんあったかな。
──そういう経験をした逹瑯さんから、ソロではボーカルも兼任する柩さんにアドバイスもありますか?
逹瑯:GREMLINSは結成してから何年経った?
柩:今年で10年。でも全然やってない時期もあったから。ライヴはトータルで50本ぐらいかな。音源はアルバム2枚、ミニアルバム1枚、あとシングルが3〜4枚。今日もさっきまでGREMLINSのリハで歌ってて。この対談が終わってからもまた歌うんですけど、リハのときから大変な思いをしてます(笑)。
逹瑯:GREMLINSでは、全曲でギターとボーカルを?
柩:ギターはAメロだけ美月(G / TheTHIRTEEN, Sadie)が弾くとかもあるけど、ギターソロとかは基本俺が全曲で弾いてるんで。
逹瑯:そりゃ大変だわ。歌ってないところではずっとギターを弾いてるんでしょう?
柩:そう。あとサビでは、歌いながら弾いているんで。
逹瑯:そうなると水分補給する時間も隙間もないでしょ?
柩:曲の途中にはないよ。曲と曲の合間しかない。
逹瑯:そりゃキツいな。楽器をやっている人は、曲の途中にノドを湿らせるっていう考えがないんだよね。ボーカリストは、曲の途中でノドを湿らせて、一度仕切り直すってのが、実はけっこう大事だから。
柩:あっ、それやってないかも。タッツーの助言を聞いて、この後のリハ中はノドを潤します。
▲柩(NIGHTMARE)
──歌の表現とか声の表情という面で、“こうすればいいかも”というアドバイスもあります?
逹瑯:それは好みとか歌のスタイルにもよるでしょう。K-POPとかR&Bとかが好きな人、泥臭いフォークソングが好きな人、ハードロックが好きな人、ミクスチャーが好きな人とか。それぞれによって歌い方も目指すスタイルも違うから。どのスタイルで、どういうボーカリストに憧れているかによっても、表現とか表情の付け方も違ってくると思うな。
柩:ちなみにタッツーは、細かいピッチとか気にしながら歌ってる感じ? それとも、そういうのはわりと自由にフィーリングのままで?
逹瑯:ピッチは気にするよ。今、自分がどのピッチで歌っていて、どういう声を出しているんだろうってのが、すごく分かるようなモニターの作り方を頑張ってる。自分が今、どれぐらいの声量で、どんな声を出しているのかが分からないと、それってそのまま歌のニュアンスに直結していくからさ。モニター環境も含めて、けっこう細かく煮詰めているかも。
柩:そんなところまで? 器用な人じゃないとできないパートだなって改めて思う、ボーカルは。
逹瑯:うん、そうだと思う。しかもライヴって、演奏して歌っていればいいってだけではないからさ。今、ライヴ全体がどんな空気感だとか、どういうふうに次の曲へつないでいこうとか、それはボーカルが考えなくちゃいけないから。ここで煽りを一発入れて、盛り上がったところで次だなとか。
柩:ライヴ全体を引っ張っていくというか。
逹瑯:そうそう。だから曲に没頭しつつも、どこかひとつ冷静になって、ライヴ全体の状況や空気感を見ていないとダメかもな。
柩:そこがすごいんだよな。俺、いっぱいいっぱいになるんだよ。
逹瑯:実際、難しいと思うよ。YOMIもアホなようでいて、ちゃんとやってるもんね(笑)。
柩:いや、アホだけどね(笑)。「アホなようで」ではなくて、YOMIはアホだけどやってる。この間、タッツーと飲んでいるときにもちらっと言ったんだけど、「いつかタッツーのソロとGREMLINSで一緒になにかやれたらな」って。
逹瑯:そうそう、やりたいよね。おもしろそうだから。
柩:俺も勉強になるし、絶対に。
逹瑯:勉強とかしないだろ、オマエは(笑)。
柩:いや、こう見えてすぐに刺激を受けるタイプだから、俺は(笑)。
▲<V系って知ってる?>2022年12月27日@日本武道館【BUCK-TICK Respect Session】逹瑯(MUCC) × 柩(NIGHTMARE)
──お互いに受ける刺激があるでしょうし。
逹瑯:NIGHTMAREとMUCCの対バンもさ、一回だけで終わらせずに、何回もやりたいよね。今回の対バンに合わせて、こういう対談で、俺と柩以外のメンバーも仲良くなっているじゃん?
柩:そうそう。RUKAさんもYUKKEさんとの対談でけっこうしゃべったみたいで。
逹瑯:RUKA君なんて、そもそも強めに引っ張り出さないと出てこないからね。
──今までは、2バンドの全員がワチャワチャ仲いいって感じでもなかったんですか?
柩:今までは個々で仲がいい、という感じでした。俺とタッツーが一番面識ある感じだったかな。
逹瑯:柩とNi〜yaとはちょこちょこ会ったりしていたけど、意外とYOMIとは遊ばなかったもんね。昔、アイジさん(LM.C)と飲むこともたまにあったから、そのへんのつながりで咲人と飲んだことがあった程度かな。RUKA君とは全然遊んだことないな。街中で偶然会って話すことがあったぐらいで。
柩:そっちのほうがレアケースだけどな(笑)。
逹瑯:「今、あそこにいました?」って突然LINEに連絡が来て、「おおっ、確かにいたよ」って(笑)。でも、結局本人とは出会わずで、どういうこと?みたいなこともあったり(笑)。
──全員がグッと急接近して絡むツーマンツアーだから、楽屋もそうだし、ステージ上でも刺激的なことしか起こらないでしょうね。
逹瑯:絶対に起こる。この前、2バンド全体の生配信番組の雑談からの流れで、ツーマンライヴのセッション企画にRUKA君が参加することになってね。RUKA君をセッションに引っ張り出せただけでも、すでにすごいと思ってる(笑)。
柩:確かに(笑)。RUKAさんは、みんなでワイワイやらなそうな人だから。それを引っ張り出したタッツーはすげえな、と横で見てて思ってたから(笑)。
逹瑯:しかも、すげえ自然な会話の流れのままセッション企画に引っ張り出すというね。
柩:さすが、全体をコントロールするボーカリスト=逹瑯だなって(笑)。やるなーと。
逹瑯:ツーマンツアーがスタートする前から、楽しそうなライヴになりそうって感じでしょ。
柩:NIGHTMAREのファンも嬉しいと思います。あんまり見たことのないRUKAさんの姿を目撃できることになるから。引っ張り出したタッツーに対して、NIGHTMAREのファンみんな、すごく感謝すると思います。
逹瑯:それは嬉しい。それにRUKA君の笑顔を取り戻してあげないと。
柩:いやいや、笑顔はあるよ(笑)。笑顔がない人ってことじゃないから。
■SATOちを知らないお客さんを
■もっと増やさなきゃいけない
──NIGHTMAREもMUCCも、20年以上の活動の歴史を積み重ねています。それぞれの現在の立ち位置から過去の自分たちを振り返ると、どう映りますか?
逹瑯:柩ってNIGHTMAREの前にバンドやってたの?
柩:ちゃんとしたバンド活動はやってない。
逹瑯:初バンドか。じゃあ俺と一緒だね。
柩:でも、セッション的にコピーバンドみたいなのはやったことあるけどね。
逹瑯:オリジナル曲をやるバンドは、NIGHTMAREが初めてでしょう? 俺もMUCCが初めてだから。ミヤさんはその前にバンドやっていて、YUKKEさんもちょこっとセッションバンド的なことをやってた。SATOちも前のバンドあったし。それで質問の答えだけど、この間、ボーッと振り返るような時間があったんですよ。バンドをやっていないプライベートの友達とか同じ歳の地元の仲間とかって、社会的にけっこう偉い立場や役職に就いてたりするんですよね。で、ヴィジュアル系バンド全体を一個の会社として考えたら、我々の役職はなんだろう?ってさ(笑)。
柩:すごい考え方するな。
逹瑯:いろんなパターンを考えていったとき、うちらはたぶん、会社で言ったら社長クラスだと思うよ。
柩:えっ!? うちら社長なの?
逹瑯:いやいや、先輩方はいっぱいいるんだよ。だけど、あの人たちは会社で言ったら会長クラスだから。たぶん我々世代が“株式会社ヴィジュアル系”で言ったら、いろんなところの支社長とか社長クラスなんだよ。
柩:まじ!? そんな話をされるとちょっと責任感が……(笑)。
逹瑯:ちょっと姿勢が変わってくるよね(笑)。
柩:うん、変わってくる。好き勝手やってるのもどうなのかな?って話になるし、でも好き勝手やりたいし。
▲MUCC
逹瑯:そう。でも業界全体で考えたら、我々は社長クラスになってる世代だし、意識してそうなっていなきゃいけないんだろうなって。そう考えたら、けっこう痺れたよー(笑)。
柩:そっかー、たしかに世代的にはそうかもな。自分たちがバンドを始めたころ、今の俺らの年齢の人たちって、すごい年上の方々、という印象だったもんね。
逹瑯:うちらがバンド活動をかじるか、かじらないかぐらいの10代のころに、第一線ですでにバカ売れしていた先輩たちは、ヴィジュアル系会社を設立した人たちだよ。会社の創設者ってことだね。それから何年も経って、我々は今、もう何代目って感じだろうけどさ。そういう立ち位置になってくると、今度は下の世代に対して、会社をよりいい状態にしていかなきゃいけないじゃん。
柩:そうだね。次の世代へ受け継いでいってもらうために。
逹瑯:そうそう。そうなっていくことが、我々世代が会長クラスとかになったときの住みやすさにもつながっていくからさ(笑)。
柩:あははは。すごいこと言うね(笑)。
逹瑯:だから自分たちのことばかり考えていてもいられねえんだろうなって。
柩:そうだよね。俺ら世代が刺激していかなきゃいけない。
逹瑯:そういう意味で言うと、NIGHTMAREとMUCCのツーマンツアーは、そういうことのひとつの要因になったらいいな、とは思うよ。
柩:確かに。直接的な後輩バンドたちもそうだけど、面識のないバンドマンとかにも観に来てもらいたいな。特に年下の頑張っているバンドマンたちに。
──単なるツーマンツアーではなく、シーン全体を活性化させるツアーにするという意気込みですか?
逹瑯:うん、そうなったらいい。
柩:ファンも、もうお母さんになっている世代が多いので、ライヴ離れしていった人たちもやっぱりいて。
逹瑯:子育てに忙しくて、ライヴに来れないって方もやっぱり多いからね。
柩:子育てしつつ仕事もしつつ、日々忙しくて、仕方なくライヴから離れてしまった方々がね。でも今回のツーマンツアーだけはちょっと観てみたいって、そういう方々も刺激したいですよね。青春を思い出してもらいたい。我々が活動をスタートさせたころにライヴハウスに来てくれてた高校生とかが、あの当時の気持ちになれるように。
▲NIGHTMARE
──でもMUCCもNIGHTMAREも、ライヴにけっこう若い世代もいますよね? この前、MUCCの野音ワンマンに行ったら、周りは若い子ばっかりで熱かったですから。
逹瑯:いいですね。ここ最近、ずっと思っていることがあるんですよ。全体の活性化もそうだけど、俺が今MUCCに関して思っていることを言うと、“SATOちさんのいた時代のMUCCを観てみたかった”という���代をもっと増やさなきゃいけないと思っていて。SATOちを知らないお客さんが増えないと。
柩:それだけ若い世代が来てるっていうことか。
逹瑯:そうそう。「SATOちがいなくて寂しい」って言ってる方ばかりでは、まだ新しい世代に向けてアピールできていないなって。今、MUCCの現場を手伝ってくれる若いスタッフが2人いるんだけど、彼らはSATOちの時代を知らないからさ。“今、一緒にものを作っているスタッフの中に、SATOちを知らない若い子がいるのか。すごいな”と思ってさ。
柩:SATOちさんって何年前でしたっけ?
逹瑯:えっ、死んだの(笑)?
柩:死んでないし(笑)。なんでSATOちさんを殺すの。
逹瑯:今、SATOちはムキムキだからね(笑)。
──パーソナルトレーナーとして生命力に溢れる体つきですから。
逹瑯:ほんとにそう。SATOちが脱退したのは、もう2年ちょい前か。
柩:衝撃だったもん、脱退。めっちゃ寂しい、と思って。
逹瑯:NIGHTMAREはそういう時期なかったの? 例えば誰かがしんどそうだな、とか。柩はしんどいと思ってた時期ないの? NIGHTMAREがバーンと売れ出したたとき、スケジュール的にもしんどかったとか。
柩:確かにしんどかったけど、“これが当たり前で、こういうもんだ”と思ってやっていたからね。俺は飼い慣らされてた(笑)。
逹瑯:よく言うよ(笑)。そのへんはメンバーみんなの地元が一緒というのもデカいかもね。
柩:そうそう。MUCCもメンバー全員、地元が一緒でしょ。地元が一緒で、みんなでこっちに出てきたっていう絆的なものがあるよね。
逹瑯:NIGHTMAREのメンバーは、通ってた学校も一緒なの?
柩:いや、別。俺とRUKAさんとは同じ高校だったけど、通っていた時期はかぶってないよ。
逹瑯:3つぐらい違うの?
柩:ううん、2つだけど…かぶってないってこと(笑)。
逹瑯:ああ、学校を辞めてるってことだね。で、どっちが?
柩:そこまで言わせるのか…どっちもだよ(笑)!
逹瑯:本来ならかぶってたはずなのに、やめてたからかぶらずと(笑)。で、高校を?
柩:中学を辞めるって無理でしょ(笑)。そんなの茨城でも無理でしょ。
逹瑯:高校が別なのに、よくRUKAさん以外は同じ歳のメンバーが集まったよね。
柩:友達を通して、それぞれ知り合っていったんだよね。
逹瑯:地元が一緒だと、メンバー間でバンド以外の共通項も持ってるわけじゃん。それがすごくいいなと思う、やってて。
柩:昔話も普通にできるから。
逹瑯:そう。昔からのツレが、メンバー間で一緒だったりするし。
柩:それで言うと、俺からしたらタッツーは先輩だけど、10代からの知り合いだし、地元のツレに近いものを勝手に感じている。
逹瑯:MUCCが仙台に行き始めたのも早かったしな。
柩:そう。昔からタッツーはあんま変わんないもん。ズケズケとモノを言う感じとか(笑)。
■一緒にものを作っていくときに
■ひとつのムーブメントって生まれる
──そういう近しい間柄だと、たとえば、ちょっとした行き詰まりを感じたり悩んだりしたとき、少し話しただけで力の出る言葉を掛けてくれたりとか?
柩:うん、まさにそう。
逹瑯:でも、柩はあまり悩むことなさそうだよな。
柩:いや、あるよ。なに、その勝手な決めつけは(笑)。
逹瑯:自分で解決してそうだから。
柩:ああ。いや、けっこう悩んだり、ストレス溜まったりするタイプなんだよ。
逹瑯:ほんと? いろんなタイプがいるじゃん。DEZERTのSORAとかアルルカンの暁とかは、一生悩んでそうなタイプじゃん。
柩:ああ。俺はそういう感じでもないかな。
逹瑯:人種的にそうじゃないじゃん。あと、メリーのガラは悩んでるとかじゃなくて、誰かに愚痴を聞いてほしいだけだからさ。悩みとかじゃなくて、ただぼやきたいだけでさ、一生(笑)。
柩:ひどいな、言ってることが(笑)。ガラさんはめちゃくちゃ優しいよ。
逹瑯:俺は悩み事がないわけじゃないけど、人に話して解決するような感じでもねえし。
柩:タッツーは人からアドバイスもらって悩みを解決するような人じゃない気がするな。
逹瑯:うん、人に話して解決するようなことだったら、自分で解決できるし。自分で解決できるんだったら、人に話したところで解決できない感じ。
柩:分かる。俺は溜め込んじゃう時期があるんだよな。
逹瑯:俺は溜め込まないんだよ。忘れちゃうんだよね(笑)。とりあえず目に付かないところに置いとくと、そのまま忘れちゃう。で、賞味期限が切れてる。もう、いいかって。
柩:その考え方、ちょっといいかもしれない。
──逹瑯さんは常に前向きだってことですね。
柩:うん。前向きなほうがいいですよ、基本的には。
逹瑯:それに、たいがいのことは時間が経てば解決しているからね。だってさ、20代のころに抱えていたような悩みは、今となってはどうでもよくない(笑)? それって時間が経てば解決したってことでさ。
柩:どうでもいいし、当時の悩みも覚えてないもん。
逹瑯:でしょ? そんなもんなんだよ。その程度の悩みしかない人生を送れているのは、幸せなことだよね。
柩:確かに。いろんな事情があって、ずーっと同じ悩みを抱えている人もいるから。
逹瑯:我々は好きなことやれているし、少数精鋭のクリエイティヴなスタッフに囲まれているから、まず、職場の人間関係で悩むことがほぼないじゃん。たいがいの人の悩みって、職場の人間関係だったりするでしょう。そこに関して我々は経験したことがないから、なんの助言もできないよね。相談されても綺麗事しか言えないと思う。
──“株式会社ヴィジュアル系”の社長として、これから若いバンドマンたちに頼りにされる場面も多くなりそうですよ。
逹瑯:むしろ、うちらが力を貸してほしい気がしてるんだよね。“なにかイベントやろうぜ” “フェスやろうぜ”ってときに、“出てくれ”とか“一緒にやってくれ”とかさ。誘われるほうも出させてもらったというよりも、一緒に作りましょうってスタンスのほうが、絶対に楽しいよ。
柩:変な遠慮はしないでくれっていう。
逹瑯:うん。一緒にものを作っていくときに、ひとつのムーブメントって生まれると思う。それは一人の力ではどうにもならないからさ。ムーブメントを作っていくとき、力を合わせるのが必要だと思う。
柩:タッツー主導でフェスやってよ。
逹瑯:やりたいと思うんだけど、やるんだったら、継続して毎年もやらないと意味がないと思ってるんだよね。一発で終わっちゃったら、ただのイベントだから。継続して毎年やることで、ひとつの文化やコミュニティになっていくわけじゃん。だからやるとなったとき、相当な覚悟が必要だと思ってる。
柩:MUCCがやるときは呼んでほしいです。
逹瑯:絶対に呼ぶんじゃないかな、うん。
柩:うちのボーカルの弟のバンドとかも。
逹瑯:YOMIの弟…?
柩:YOMIの弟が、仙台貨物ってバンドをやってるんで。
逹瑯:あっ、あれ弟なんだ!? 俺は同じ人かと思ってた(笑)。
柩:いや、別人です!
逹瑯:じゃあ、スリーマンしよう(笑)。MUCCがトップバッターやるから。
柩:その順番はどうなの(笑)? 仙台貨物とNIGHTMAREが続いちゃうんだよね。ちょっといろいろ相談をしないといけないかも(笑)。
──仙台貨物のフルフェイスさんにも話を通さないとマズいですよね、きっと(笑)。
柩:あ、ギターの人ですか? 僕は全く面識ないんですけどね(笑)。
逹瑯:あ、そう来る(笑)? メンバーさんに“本当はこんなバンドやりたくないんだよな”と思ってる人はいないんかね?
柩:いや〜、いないんじゃないかな。まっ、そういう時期もあったかもしれないけど(笑)。
逹瑯:俺、ずっとベースの人はオウチンチン(王珍々)…おちんちんかと思ってた。そしたらワン・チェンチェンなんだよな。
柩:ああ、そうらしいですね。俺もちょっとあんまり詳しくないんで(笑)。株式会社ヴィジュアル系の話に戻るけど、社長という立場にいるって自覚しなきゃいけないのであれば、俺らも今後はイベントとかいろいろやっていきたいし。
逹瑯:いや〜、でもNIGHTMAREは友達が少ねぇからな。
柩:だからそれ言うの、やめてもらっていい(笑)? 俺ら田舎から出てきてますから。
逹瑯:いや、うちらも田舎から出てきてんだよ(笑)。
柩:でも茨城のほうが東京に近いし。
逹瑯:若干ね(笑)。ところで普段、なにして遊んでんの?
柩:遊ぶ……たとえば2週間ぐらい休みがあったら、夏ならダイビングとか。沖縄はやっぱ綺麗。
逹瑯:本島より離島がいいんでしょう? 沖縄のバンドマンに言わせると、「沖縄本島はこれでも汚くなったんですよ」ってことだからね。全然綺麗なのに。
柩:すごく綺麗だよね。あとサクッとダイビングに行くときは伊豆とか。
逹瑯:大島とか新島とか、あっちのほうも良さそうだよね。俺、今年は秋口ぐらいにキャンプに手を出してみようかと思ってて。
柩:ちょっとそれ、俺も行きたい! 去年、初めて行ったんだけど。
逹瑯:テントとか持ってんの?
柩:寝るときはバンガローだった。
逹瑯:それキャンプじゃねえーし! バカ野郎!! 自分で建てろ、寝るところは。テントと寝袋だよ。だから、ちょっとずつキャンプ用品を揃えていこうと思ってて。
柩:行くなら9月?
逹瑯:10月後半ぐらいから狙えたらなと思ってる。
──ツーマンツアーの打ち上げは、キャンプ場に決まった感じですか?
柩:しますか、2人打ち上げをキャンプ場で(笑)。
逹瑯:キャンプ部結成だな。YUKKEさんが部長で。
柩:あっ、それ最高です。
──最高なキャンプの前に、大事��のがツーマンツアーですよ。
柩:そうですよね。ステージ上だけじゃなくて、フロアのみんなも、我々と同じようにテンション上げて盛り上がってほしいですね。別々のバンドのファンの子が一ヵ所に集まるわけだけど、ギクシャクしないでほしいっていうか(笑)。仲良く盛り上がってほしい。
逹瑯:そこに関してはうちらよりフロアのほうが慣れてるでしょう。ファンのみんなは、いろんなライヴに行ってるだろうから、経験値も高いよ。
──そんなオーディエンスのみなさんに、最後に言葉をいただけたらと思います。
逹瑯:なんも深く考えずに、遊びに来て楽しんでもらうだけでいいので。いい意味でライトな気持ちで遊びに来てもらえばいいと思っています。
柩:構えないで来てほしいね。お互いのバンドの曲は、事前にある程度は聴いてきてほしいですけど。
逹瑯:ある程度? 難しいよ、300曲以上はあるからね(笑)。
柩:じゃあ、ちょこっとでも、最新曲とかだけでも(笑)。まあ、夏の思い出を作るぐらいに、夏祭りに行くような感じで来てもらえればなと思います。自分も構えるというよりは、ライヴ当日を楽しく迎えたいと思ってます。
取材・文◎長谷川幸信
撮影◎冨田味我(MUCC LIVE)/菅沼剛弘(NIGHTMARE LIVE)
13.08.2023 quelle: barks.jp
6 notes
·
View notes