#お祝い腕立て伏せ
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atsushi2015 · 2 years ago
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このレポートは202212111のアーカイブです。(動画撮影は1210です) 温泉ソムリエ20周年おめでとう㊗️ございます! これは #お祝い腕立て伏せ のリハーサルですね #温泉ソムリエ20周年記念式典 #温泉ソムリエオフ会 #ラビスタ東京ベイ #この映えある式典で乾杯のご挨拶を賜りました #ブラックスーツに蝶ネクタイで臨みました #いきなり腕立て伏せ #腕立てたのしー #腕立て伏せ #腕立て伏せチャレンジ  #温泉ソムリエたのしー (ラビスタ東京べイ(共立リゾート)) https://www.instagram.com/p/CrkAV6lP2cP/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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arraytale001 · 2 days ago
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chapter 9
file 08
後戻りはできない
( (この音楽を聴きながら第9章を読んでください。ベートーヴェン -「月光ソナタ」第1楽章 - 432 Hz -(ピアノ演奏))
殺人鬼を捕まえるには、殺人鬼のように考えることが必要だ——時には自分自身がその存在になる必要さえある。それがSansとRaysが始めたゲームだった。Sansには勝つためにできることはあまりない、少なくとも彼はそう思っていた。彼はSnowdinを彷徨いながら、弟を置いていき、彼にまとわりつく雪を払った。
残念ながら、これは夢ではなかった。Sansは魂が抜け落ちたかのように歩き、その目は遠くを見つめ焦点を失っていたが、彼の心はただ一つのことに向かっていた。自由に動けるのは自分だけだという苦い現実が、彼の口の中に嫌な味を残した。彼は目を閉じ、この悲劇的な現実を受け入れる準備をした。
「これがゲームの始め方だっていうのなら、俺もそれに乗るしかねぇな。」
Sansは自分を助けるか、あるいは奈落に突き落とす可能性のあるさまざまなシナリオを思い浮かべた。どの計画も、彼がずっと避けてきた暗い場所へと導いていた。それまでは遠くから観察するだけだったが、今ではもはや制限はなかった。道徳を犠牲にする道が大きく開けていたのだ。
「さよならだ、Sans。」彼は真剣にそう言った。そして結果を受け入れた。これが彼の新しい自分への歓迎だった——血に染まった道を歩き、光を置き去りにしなければならない。
「フリスク、今どこにいるんだ、ん?」
彼はあの人間を利用することができた。そしてもう一人...あの人間と同じ姿を持つもう一つの存在。 この世界の暗い領域に玉座を持つ女王。
「Chara、お��に会うのが待ちきれねぇ。」
Raysのおかげで、SansはUndertaleの世界の隅々ま��知っていた。プレイヤーを無力にし、彼らの意志を強制的に従わせることができる存在さえ知っていた。 FriskとFloweyだけが知る隠された存在、Chara。Sansは成功のために彼ら両方を見つけなければならなかった——力ずくでなければ不可能だったとしても。
Sansはそれに気づいていなかった。だが、その笑み——いや、むしろその薄笑いは——Raysと同じものだった。それが無意識のうちに彼の顔に浮かんでいた。その笑みには恐怖が宿っていた。それは決意と深い絶望によって形作られたもので、雷鳴のように轟き、隠れた深みから獲物を打ちのめす準備ができていた。
Sansの足取りはいつもより軽やかだった。これまで彼が拒絶してきた最悪の側面を、今回は拒むことなく、両腕を広げて受け入れていた。その背後に漂う暗い霧は今や彼の身体を支え、彼の最も暗い側面から遠ざけていた鎖を断ち切る満足感で彼を強化していた。
Sansが到着したのは、お気に入りの場所——Waterfallだった。その場所はいつものように静かで穏やかだった。魔法の結晶のような青い輝きが、彼の肩に溜まった緊張をほぐしてくれた。それはまさに目に優しい光景で、とても美しかった。水の穏やかな流れと周囲に咲くエコーフラワーが、彼の心をより静かにしてくれた——Sansは彼を押し潰していた負の感情が水のように蒸発し始めるのを感じた。それは静寂の雰囲気がもたらす癒しだった。
突然、花々の囁きが聞こえてきた。それは彼が過去に言った言葉を繰り返していた。「責任を取る準備ができていない。」 Sansは自分の過去の戯言を再び耳にして、思わず笑い出した。
通常であれば、Sansはこうした囁きに悩まされていたはずだ。しかし今回は、Sansは全く動じなかった。彼は「自由」を感じていた——それも、いつもとは違った形の自由だった。Sansはその暗い奈落に突き落とされたのではなく、自らその中に手を伸ばし、それを支配していたのだ。
支配。Sansは初めて、自分の心を完全に支配しているという感覚を得た。 エコーフラワーの囁きは今や、彼にとって些細なことでしかなく、全く気にならなかった。
古びた公園のベンチはいつものようにそこにあり、使われていないようで色褪せていた。彼はその上に腰を下ろし、声を上げた。
「おい、Rays。」
返事はなかった。
「俺を見てるのは分かってるぜ。けど、それってすごく不公平じゃねぇか?」
再び、沈黙。しかしSansは確信していた。Raysが確かに聞いていて、そして今頃��違いなく、広い笑みを浮かべているだろうということを。
「15日だけくれ。俺を見るのをやめろ——たった15日だ。それくらいできるだろう?」
今回は、SansはRaysからの返答を待った。
突然、彼の目の前の地面が動き始め、文字を形作った。それはこう綴られていた。
「お願いって言って。。魔法の言葉を使え、Sans。」
もちろん、そんなに簡単にはいかないだろう、とSansは思った。既に絡み合った彼の思考はさらに重くなっていく。Raysが欲しがるものを渡さなければ、計画を隠すためのプライバシーは得られないだろう。 復讐——すべてはそこに帰結していた。SansはこれまでにRaysを散々侮辱してきた。その結果、今やRaysは自分のプライドに傷つけられた仕返しを求めていた。Sansはこれを予想していた。Raysがいつか動き出すだろうと分かっていたのだ。
Sansは長いため息をつき、不快な言葉を口にする準備をした。Raysはその間、ポップコーンの入ったバケツを手にしながら、辛抱強く待っていた。Sansは、Rays��こういう瞬間をどれだけ楽しむかをよく知っていた。
Sansは心を決め、言いたくない言葉をどうにかして口に出さなければならなかった。その忌々しい言葉を言う必要があった。勝利を掴むために、Sansは自分の快適な領域を飛び出し、再び頭を下げなければならなかった。彼の失墜を待ち望む悪魔に向かって。
Sansは頭を下げ、苛立ちを隠せない声で言った。
「... お願い 。」
そして——
「プッ——」
Sansはその声が聞こえた瞬間、すぐに顔を上げた。その嫌いな声が、今やすぐ近くから聞こえてきたのだ。彼の目は、嘲笑の表情を浮かべて彼のプライドを踏みにじるように見つめる姿とぶつかった。だが、それはいつものRaysではなかった——その姿は人間の形をしており、同じ服を着ていたが、顔は全く違っていた。
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「マジかよ?」
「俺がお前の顔を使うの嫌だろ?だから、もっとイケメンな人間の姿を取ることにしたんだ。どう思う?」
彼は広い笑みを浮かべ、Sansからの褒め言葉か、不満げな反応を待っていた。Raysはどちらの反応でも実際には気にしなかった。ただ、この大きく変わった外見でSansがどんな影響を受けるかを楽しむことだけが目的だったのだ。
一方で、Sansには、このRaysの馬鹿げた振る舞いがいつまで続くのか分からなかった。彼は、Raysが聞きたい言葉を言ったからといって、それで終わるような相手ではないことを知っていた。何か別の目的があるはずだ。そのため、Sansは無関心な態度を選んで応じた。
「さぁな、どう思う?俺、ファッションとかよく分かんねぇし。」
Raysはこの些細な返事をすでに予測していた。
「残念だな。お前を感心させる顔を決めるのにかなり時間をかけたのに、サンズ。」
それに対してSansはくすっと笑いながら返した。
「がっかりだろ。」
「少しね。最初からお前に期待なんてしてなかったけど。」
「Sansはすぐに目を岩壁に埋め込まれたクリスタルに向けた。それは明るく輝いていた。Raysは、Sansがすでに会話に興味を失っているのを見て、すぐにベンチに向かい、空いている場所を探して座った。Raysが隣に座っても、Sansは何の反応も示さず、ただ無関心さを漂わせていた。彼は顔を手で支え、沈黙を支配した。やがて、Raysが沈黙を破った。「うーん、まだ足りないな。うん、すごく不満だ。」Raysは体を寄せ、広い笑みを浮かべた。「さっきのお願いのことだけど、本気じゃなかっただろ、Sans。とてもがっかりだよ。」」
Sansは心の中でため息をつき、軽く目を転がしながら小さく息を吐いた。
「今度は何だよ?」Sansは隣のエコーフラワーを見続けたまま言った。
Raysはすぐには答えなかった。しかし、数秒後、ついに口を開いた。
「跪け。」
Sansはそのショックを隠しきれなかった。鋭い刺すような感覚が彼の扁桃体へと一気に流れ込むのを感じた。Sansは魂も心も、恐ろしく衝撃的な感覚に包まれた。一言が巨大な爆発のように感じられた——Raysは彼にとって最悪の状況を望んでおり、それはこれからも続いていくのだ。祈ることは無駄だった。Sansは自分の悪運を受け入れ、プライドを投げ出さなければならなかった。
「...それがお前の望みなら。」
Raysはすぐに満足そうに微笑んだ。Sansが不本意ながらもその尊厳を投げ出した姿をじっくりと観察していた。その満足そうな表情はSansにとって屈辱的であり、苦々しく酸っぱい一時的な勝利の祝賀だった。
「始めようか、Sans。」
Sansはすぐに立ち上がり、重い足取りでRaysに向かって歩き始めた。ここにいるのが自分とRaysだけであることに感謝した。自分の崩��した姿を、多くの目にさらしたくなかったからだ。
右足を下ろし、頭を垂れながら、体は動かすのが非常に重く感じられた――まるで背中が1トンの石に圧迫されているかのようだった。心の中での抵抗は、Raysの力に屈することを拒んでいたが、その圧力を解き放ち、自分を最も低い位置に降伏させなければならなかった。Raysの前に膝をつき、最悪の敵の前に。
手は汚れた地面に触れ、全ての無意識の拒絶が尊厳を保とうとしていた。Sansは顔を上げ、両目に火花を宿したままRaysを見つめた。「お願いだ」Sansはその二つの言葉を口にした、それは致命的な毒のようで、口から汚物が出るように感じられた。喉の骨は、舌を刺す酸っぱい味で締め付けられるようだった。
そして、ついに…
「HAHA!おお、これを見ろ、私はこの美しい瞬間をよく覚えておこう。」
Raysは楽しそうに拍手を始め、その目は興奮に満ちた満足感で輝いていた。彼はそれを心から楽しんでいた。その表情は、コロッセオの闘技場で剣闘士の戦いを楽しむ王のようであり、頬を流れる血を拭いながらその快感に浸る姿そのものだった。
屈辱の感情はSansの喉元に引っかかっていたが、彼はそれを抑え込んだ。手を握り締め、魂の中の炎をゆっくりと消し去り、今にも爆発しそうな感情を飲み込んだ。
「まあ、もう立っていいぞ。満足した。すごく楽しかったよ。」
Sansはすぐに立ち上がり、膝についた砂や汚れを見つめた。そして、独裁者のように椅子に座り続けるRaysを見上げた。彼の黄色と赤の目は、獲物を憐れむ狩人のようであり、退屈した結果その獲物を再び逃がしてやるような目をしていた。
「15日間か。よし、その15日間は目を閉じてやる。」Raysは目を細めて言った。
「きっと退屈な時間になるだろうけど、それが面白い挑戦でもある。お前の計画がどう進むか、楽しみにしてるよ、Sans。」
Sansは膝と手を払いつつ、少し苛立った顔でRaysを見つめたが、感情を抑えていた。
「そうだな、お前は待つしかない。それが楽しいところだ。お前に最高の驚きを用意しないとな。」
Raysはすぐにニヤリと笑った。それは何か非常に面白いことを思いついた時の表情だった。
 「なあ、Sans。」Raysは左側を軽く叩き、Sansにもう一度座るよう合図した。Sansは無言で従い、その場に腰を下ろした。
 「お前に贈り物をやるよ。」
 「贈り物?」
 Raysは右手を開くと、火花がまるで花火のように手のひらに現れた。「アクセスだ。」彼の目が大きく見開かれると、火花の周りを数字の集まりが旋回し始めた。それは壮観な花火のショーのようだった。そしてRaysは再び口を開いた。
 「お前に好きなNPC一人へのアクセスを与えてやる。」
 Raysは混乱した様子のSansをじっと見つめながら続けた。「そのNPCはお前の仲間、友達、あるいは奴隷になるかもしれない。お前がどう扱うかは自由だ。そのNPCを完全に支配する権限を与えてやる。どうだ?」
Sansは驚愕した表情でRaysを見つめていた。まさか、本気か?混乱しながら考えた。
 Raysは一体何を考えている?何が狙いだ?なぜこんなことをする?頭の中で疑問が積み重なり、それはまるで積み上げられたブロックタワーのようだった。しかし、Sansは答えを得ることができなかった。いや、問い詰める必要もなかった。「アクセス」を得るということは、今の壊れた状態で選択肢がほとんど残されていない自分にとって拒むことのできない贈り物だったからだ。
「で?」RaysはSansをちらりと見ながら尋ねた。彼にはSansの答えが既に分かっていたようだった。
 「それは見事な贈り物だな。受け取るよ。」
 Sansは微笑みながら、決意のこもった目でRaysを見つめた。
 「その調子だ!」
そう言うや否や、RaysはSansの手首をしっかりと掴んだ。すると、焼けるような感覚が瞬く間に広がった。突然のまばゆい光が目を覆い、Sansは何も見えなくなった。彼は体と心に何かが侵入してくるのを感じた。異様な清涼感に襲われると同時に、頭の中がかき乱され、魂が激しく震えた。それは心臓が速く鼓動し、その衝撃が全身を駆け巡るような感覚であり、自分の力が完全に奪われるような混沌だった。
Sansは何が起きているのか理解できなかった。身体がけいれんし、まるで盲目になったかのような感覚が襲った。そしてその瞬間、全身と精神が強烈な衝撃を受ける中、Sansは何も感じなくなり、痺れるような感覚に襲われた。脚に力が入らず、完全に弱り切っていた。この感覚は、Raysが彼にUndertaleのすべての情報を与えた時の感覚と似ていた。しかし、今回はそれよりもさらに苛烈で、完全に予想外で、パニックに陥るほどのものだった。
そしてついに...
 「起きろよ、lazybones。」
Sansはパニックになり、目を開けた。彼はもう椅子に座っておらず、非常に乱れた状態で地面に横たわっていた。そして...
 「Rays?」Sansは周囲を見渡したが、そこには自分以外誰もいなかった。Raysはもうその場にいないようで、跡形もなく姿を消していた。彼を地面に残し、自分の玉座に戻ったようだった。
 「...クソ野郎が。」
Sansはよろめきながら立ち上がり、脚は震え、非常に疲弊していた。息は荒く、体力は極限まで低下していた。彼はあまりにも弱っており、庭の椅子まで這い寄り、背中を預けて長い溜息をついた。
 「まあ、約束は守ったな...公平なゲーム、ってか。」
SansはWaterfallを歩きながら、周囲の美しい景色を楽しんでいなかった。彼の目はターゲットにした人物を探していた。Raysの贈り物を受け取ったが、Raysには彼を助ける気などないことを知っていた。彼は、Raysが自分の対戦相手を助けようとする善良な人間ではないことを、そう単純に考えていない。Raysはただ、もっと驚きの要素で物事を盛り上げたかっただけだ。それが彼を生きていると感じさせる唯一のことだった。何の味もないプログラムではなく、運命を嘆く負け犬だ。そして���Raysは15日間彼を監視できなかったので、Sansが何を計画するのかを予測させることになった。
そして最終的に、あまり時間が経たず、彼が探していた人物、もちろんFriskを見つけた。しかし…
「彼はUndyneと戦っているのか。」
Sansは、Raysとの会話中にそのゲームがプレイヤーによって行われていることに気づいていなかった。彼は安全な距離から静かに戦いを観察していたが、突然、彼の心にひとつの考えが浮かび、彼を動揺させた。
今まで感じたことのないような衝動、背中を優しく撫でられるような感覚。冷静な口調で残酷な言葉を囁きながら、彼は平穏と微かな恐怖を感じた。いつもとは違う自分に迷い込ん��いた。今回は、暗い深淵が手を差し伸べてきて、彼の手を掴み、強く引き寄せた。
「ようこそ」とそれは言った。Sansは目を閉じ、体をさらにその中へと漂わせた。かつての自分から遠く離れて。
「…試してみる価値があるかもな」と彼は囁いた。
Sansの第一歩は、最も暗い道に踏み出すことだった。
彼はその一つにじっと目を向けた。ナイフのように鋭い骨の先端が空中に突き出し、その先端から血が流れるのを待っていた。それは非常に間違った一歩だとSansは気づいた。しかし他に方法はなかった。彼はそれをやらなければならなかった。ためらってはいけない、さもなくばまた敗北の終わりを迎えるだけだ――彼の道徳は粉々に砕け散った。Sansの目の前に広がっているのは、命のないコードの集合体、自己の世界を理解することさえできないNPCたちだった。それをUndyneに見ようとした、以前のように彼女を見たくはなかった。
Sansは旧い自分を否定し、新しい自分で立っていた。
Sansは引き下がらない、彼はその危険な道を歩み続けるだろう。
「ごめん。」
数百本の骨の弾幕が素早く飛び、容赦なくターゲットを貫き、空中で紙のように引き裂かれた。Sansは無力なまま、自分の手で友人の一人が死ぬのを見守った。Undyneはすぐに死に、反応することも、なぜ自分がその残虐な死に値するのかも理解できなかった。血が流れ、彼の体を濡らした…まるで血に満ちた泥のプールで溺れているようだった。Sansは自分を引き渡し、さらに深くその中に沈み込んでいった。
Sansは自分の行動がひどく間違っていたことを知っていた。彼は許しを受けるに値しない。
だが、Sansはそれを受け入れた。犠牲にしなければならないものがあった。そしてそれが、彼の感情、彼の友人、そしてかつての自分だった。もはやユーモアのあるSansではなく、検察官は力の座から引きずり下ろされ、決して洗い流せない罪で汚れていた。
「ふふ、これがどういう感じか。」
血で汚れた手を見る幻想を見て、Sansは広く笑い、息を吐いた。
「本当に気持ち悪い。」
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animekirbyserifu · 1 year ago
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フームその3
21話 ・「(弟に絵本を読み聞かせて)そして皆は、王女様の結婚をお祝いしました。それから2人は幸せに暮らしたということです。どう、面白かった?」 ・「まぁね、童話ってのはこんなものよ。」 ・「ローナ王女?」 ・「(弟に自身は可愛くないと遠回しに言われて)何言いたいの?あらそう、私も男は皆ブンみたいかと思ってた。それに比べて、ヴィーはカッコいいわ…。やだ…(ヴィー本人に)聞こえちゃったかな…(この頃は近衛兵ヴィーを男性だと思っている)。」 ・「(ヴィーにご令嬢だと呼ばれて)あら~ご令嬢だなんて(照れる)。」 ・「(ヴィーにカービィをペットだと言われて)ペットじゃないわ、カービィという戦士です。」 ・「あぁ!(回転扉の)その像に触っちゃダメ!」 ・「ご、ごめんなさい!(ヴィーと重なったため顔を赤らめる)」 ・「もう城の外よ、デデデの趣味でこの城にはいろいろな仕掛けがあるの。」 ・「あたしも一緒に行く。あなたのことが心配だから…。」 ・「みなさーん!王女様の近衛兵ヴィーよ、歓迎してあげてー!」 ・「(王女ではなく近衛兵でガッカリする村人たちに対して)何よー、皆どうしたの?(王女の近衛兵も)大切なお客様じゃないのぉ。」 ・「(わたがしを「美味じゃー」というヴィーに対して)ぷっ、何その言葉、美味いでいいのにー。」 ・「王女様と一緒だと、いつも贅沢なごちそうを食べられるんでしょうねぇ~。」 ・「でもあなたには、王女様を守る仕事があるんでしょ?」 ・「あらブン、王女様のエスコートは飽きたの?」 ・「(ヴィーのブローチを見て)王家の紋章…。ローナ王女様は貴女だったのね。」 ・「じゃあお城にいる王女様は?」 ・「確かに…(近衛兵の)その服なら自由にやれるわね。」 ・「(ローナ王女に対して)謝ることなんかない。さ、帽子を被って。そうすればずっとヴィーのまま。」 ・「あなたは王女ローナなのよ。」 ・「(デデデに卑怯だと言われて)アンタに言われたくないわ。」 ・「(スッシーの)攻撃方法は単純な魔獣ね。」 ・「ローナ…いえ、ヴィー。あなたが願っていた自由な暮らし。そして、自分に正直に生きる事の大切さ…。まだちゃんと理解してないかもしれないけど、私は素敵な王女ローナの休日を忘れはしない…。」
22話 ・「離れ小島って訳ね…とにかくボートを探しましょ!」 ・「(弱音を吐くブンに対して)分かってる!考えてんだから黙ってて!」 ・「今やらなきゃならないことが、決まったわね(空腹で腹が鳴る)。」 ・「こんなとこに人がいるわけないでしょ!」 ・「(銀河戦士団が敗戦したことを知らないダコーニョに対して)ダコーニョさん、戦争は終わったわ…。」 ・「本当なの!ナイトメアには勝てなかった。何故って、銀河戦士団は敗れたから。」 ・「カービィ、あのダコーニョって人どうだった?」 ・「でもあの人、本気で戦争が続いてるって信じてるみたいよ。」 ・「なんでこんな目に遭わなきゃいけないの!(腕立て伏せをさせられる)」 ・「私たちの村は本当に平和よ。ダコーニョさんはいつからこの島に(住んでるの)?」 ・「でも、その間に戦争は終わったのよ。」 ・「メタナイト卿は今、私たちの村に住んでいるわ。」 ・「ねぇ、私たちと一緒にププビレッジに行かない?平和な世界を見て欲しいの。」 ・「船!もしかして…(デデデだと予想し、的中する)。」 ・「あの竜巻、アンタ(デデデ)の仕業だったのね。」 ・「ダコーニョさん、これでも私たちがスパイだと思う?」 ・「カービィは、メタナイト卿が認めた新世代の星の戦士よ。」
23話 ・「ちょっと、あれどういうこと?(トッコリに対して)長くてもいい、話しなさい!」 ・「(デデデに対して)環境破壊の王者のクセして!」 ・「うるさいわね!ヒナなら安全よ!」 ・「あなたに任せるより確かよ。」 ・「さぁダイナベイビー、ママのいるおうちに帰りましょう(「卵を産む」ほかに、ダイナブレイドがメスであることが分かるセリフ)。」 ・「ワープスターで助けるしかないわね。トッコリ、(川で流される)ヒナを追って!来て、ワープスター!」 ・「カービィのおかげで、またベイビーは命拾いしたってワケねぇ。」
24話 ・「(忍者の巻物の文字は)古代プププ文字とは違うわね。」 ・「バッカみたい、デデデまで忍者ごっこ?どこまで本気なの?」 ・「ええ、もしかしたらそれが本物の忍者かと思ったけど。」 ・「(銀河戦士団の忍者部隊は)戦いには生き残ったんでしょ?」 ・「そいつが巻物を奪いに来たとしたら…。」 ・「でも、ここに来るまで私は(忍者を)見かけなかったけど?」 ・「(ベニカゲの持つ)あの手裏剣は本物よ、ブン。」 ・「(ベニカゲに対して)アンタ手裏剣投げるの苦手みたいね。」 ・「(ベニカゲの成績表が)巻物じゃないの?(盗まれた成績表が)このプププランドまで流されて、キュリオさんの手に入ったってワケ。」 ・「(ヤミカゲを見て)なんかあの忍者ヤバそう…。」 ・「こうなったら、(ヤミカゲを)カービィに倒してもらうしかないわね。」 ・「(デデデから)あの成績表取り返さなくていいの~?」
25話 ・「聞いた?(エスカルゴンに)愛の手紙だって…。」 ・「嘘をつくからバチが当たったのよ(厳密には「エスカルゴンが大王になった」という嘘をついたところで、「デデデが怒ってしまう」という事実は分かり切っているため、偶発的にひどい目に遭うことを意味する「バチが当たる」とは違うが)。」 ・「パパ~安請け合い(後を考えずに簡単に頼みを聞くこと)しないで。」 ・「みんなー!もうすぐ(エスカルゴンの)お母さんが来るわ!みんな急いで準備して!」 ・「(エスカルゴンの芝居が)バレるのは時間の問題ね…。」 ・「(エスカルゴンの)お母さんが悲しむ顔は、見たくないわぁ。」 ・「(エスカルゴンの)お母様、あいつ(デデデ)大王の真似をしているの(自称「大王」だし、一応間違っていないが)。」 ・「バカなことを言って皆を笑わせる「デデデ」っていう笑わせ係なの。」 ・「笑わせ係、紹介してやる。こちらはエスカルゴンのおっかさんであーる(デデデにエスカルゴンの母を紹介する)。」 ・「えぇ、お母様もそう信じてる。彼女を悲しませたくなかったら、1日くらい大王を譲ってやったら~?」 ・「えぇ、でもやな感じね。デデデが素直に…(お前がやれって言ったんだろ)。」 ・「分かった!デデデはエスカルゴンを困らせて、恥をかかせようとしているのよ!」 ・「カービィ、吸いこみよ!」 ・「ドリフターの能力をコピーしたわ。」 ・「どうしようもないわ、お母さんが帰った途端あれじゃ、カービィ!」
26話 ・「(ソドブレに「メタナイト卿はどこだ」と聞かれて)いいえ、それよりこの騒ぎは何なの?」 ・「カービィ、(煙を)吐き出して!」 ・「まったくー、あなたたちは命知らずね。」 ・「そう?じゃあ彼のさっきの命令(「何があってもカービィを守れ」という命令)は何故聞けないの?」 ・「いいのよ。でも、あなたたちのご立派な忠誠心には呆れるわ。」 ・「来て、ワープスター!」
27話 ・「ウィスピーの居場所はあなた(カービィ)しか知らないんだからー、ちゃんと案内して。」 ・「久しぶりね、ウィスピー。」 ・「でしょうね。ここらは、あなたのような大きな木ばかりで、陽だまりができないから(森に花が咲くのは珍しいわね)。」 ・「この花のお名前は?名前があれば、もっと好きになれるじゃない。フラワーじゃそのまんまだし…『ラブリー』はどう?」 ・「良いと思う!ラブリーにけってーい!」 ・「ウィスピーったら、きっとラブリーに恋をしてるんだなぁ。植物だって知性があるのよ。ウィスピーくらいの歳になると、植物でも言葉を話すようになる。恋ぐらいしてもおかしくないでしょ?(ウィスピーの樹齢は不明)」 ・「花の命は短いの。ラブリーが綺麗に咲いていられるようにしてやりましょ。」 ・「カービィ!(煙幕を)吸いこんで!」 ・「ゴルフ場の設計図よ…。」 ・「ウィスピー聞いて!ラブリーはデデデの仕業で魔獣になったかもしれないの!」 ・「ウィスピー!あなたは騙されてるのよ!」 ・「ウィスピー、私たちを離して!お願い目を覚まして!このままだとあなたは枯れてしまう!あなたが枯れたらこの森まで滅びてしまう!」 ・「(このスパイホッパーの残骸を)見て!ラブリーは魔獣にされたのよ!」 ・「(ウィスピーの前に咲いた普通の花を見て)ラブリーは魔獣にされたけど、今は仲間がこんなに!」
28話 ・「キュリオさん、考古学の研究はいかが?たまには、お仕事を忘れて春を楽しんだら?」 ・「『デデデ・ファクトリー建設予定地』って書いてあるわよ。」 ・「(ファクトリーを娯楽施設だと勘違いするカワサキに対して)いいえ、モノを作る工場のことよ。」 ・「(工場のユニフォームのデザインに対して)なんか…囚人服みたい。」 ・「みんな辞めなさい!帰るのよ!子供を働かせて良いの?(※彼らは自主的にやりたがっています)」
・「ブン、カービィもよ、お昼よ。ちょっとアンタ顔つきが変よ?モノに憑りつかれたみたいに無表情になってる。(髪で隠れて元から顔なんか見えないだろ…)」 ・「ひどい!休みもないの?」 ・「(カービィを助けたいから)機会を止めて!カービィが死んじゃうわ…。」 ・「この仕掛けはカービィをやっつけるためだったのね…(※違います)。」 ・「カービィ…無事だったのね。」 ・「(エスカルゴンに「工場から出ていけ」と言われて)こっちから出ていくわよ。皆(村人たち)も一緒に出ましょ。働いてもロクなことはないわ。」 ・「どうしようもないわ…あなた(カービィ)が助かっただけでも喜ぶべきね…。帰りましょ…。」 ・「皆…朝から夕方まで12時間も働いて、それが嬉しいの?(初日から12時間は流石にヤバい)」 ・「パパがこの国の大臣なら、あのファクトリーを止めさせて!(仮に大臣のパームが工場に反対意見を持ってても、大王兼工場主のデデデらの方が権力が強いし無理だと思う)楽しむ?働かせてるだけよ!」 ・「このファクトリーの目的は不明です!ハッキリするまで、みんな働くのはやめましょう!(村人にトマトをぶつけられる)」 ・「キュリオさん…あなただけは味方になってくれるのね。」 ・「あ…二酸化イオンや窒素酸化物がすごい量…大変だわ!(こいつ本当に子供なの?)」 ・「(酸性雨で枯れた木々を見て)春が訪れても生き物たちがいない…沈黙の春だわ…もう村はおしまいよ…(『沈黙の春』の元ネタは生物学者「レイチェル・カーソン」の書物)。」 ・「酸性雨…。(メタナイトは)知ってたの?だったら何で止めないの!」 ・「だってー私も(工場で作られた)便利グッズがチョー欲しいんだもーん!(※演技です)」 ・「(ブンに対して小声で)ねぇ…今作っている部品…変だと思わない?洗濯機やトースターにこんな大きな部品使う?ねぇ…この部品が何に使われているか、見たくない?(言い方が少しエロい)きっとすごい機械よ!」 ・「便利グッズを作ると見せかけて、ここはロボット組み立て工場だったのよ。」 ・「カービィ…アイツ(アイスドラゴン・ロボ)を冷やそうとしても無駄よ。ここのスチームエンジンを壊して!」 ・「何でも良いわ。少なくともカービィは(私が村を救ったことは)分かってくれてるもの(一番分かってなさそう)。」
29話 ・「イジメね、わざわざここに立てるなんて(飲食店が1つしかないププビレッジのような田舎ならともかく、飲食店が密集するケースはよくあるので「イジメ」は大げさであるが)。」 ・「パパもママも騙されやすいんだからぁ~。」 ・「カワサキ~。ムッシュ・ゴーンの料理がアナタのより美味しいのは確かよ。でも~なんか気に食わないのよね。」 ・「だったら対抗策を考えれば?なんかあるでしょ?安くするとか、おまけをつけるとか。」 ・「(カワサキに対して)怠けたツケがどっと回ってきたのね…。」 ・「(店をたたもうとするカワサキに対して)それじゃ敵の思うツボよ!どうして味で勝負しないの~。カワサキの味が好きな人だっているかもしれないじゃない。」 ・「はい、お待ちどうさま。(激辛ラーメンを食べる)覚悟はいい?」 ・「今度はシャーベットだって!こっちもなんか考えないと!激辛ブームはもう終わるわ!目を覚まして!」 ・「何これ!(シャーベットが)カービィそっくりじゃない!そうだねって、ちょっとブン!」 ・「ちょちょっと!皆よく見て!シャーベットじゃない!これはカービィよ!」 ・「なんで変身したのに勝てないのよ~。(メタナイトに対して)もう無責任なんだから~(メタナイトの責任じゃないだろ…)。」 ・「(デデデに対して)よく言うわ!カービィを皆に食べさせようとしたクセに!」
30話 ・「うすら寒くなってきたわねぇ…カービィ!今日は冷えそうだから、気をつけてー!あぁ…。」 ・「もう…ちょっとカービィ!またそんなとこで寝てー!」 ・「カービィ!そんなとこで寝ちゃダメ!」 ・「もうカービィったら…。鳥の巣で寝ちゃって、本当に鳥になっても知りませんからね!(この発言が後の騒動の伏線となる)」 ・「(カワサキが卵料理の話に論点を変えたため)あの…そんなことじゃなくて…。」 ・「(ヤブイに対して)あのね、カービィを診察してどうするの?」 ・「じゃあ私のせい?バカ言わないで(他人に責任を押しつけることが多いフームにしては珍しく、冗談交じりだが責任を押しつけられている)。」 ・「皆はタマゴを見てて!こうなりゃ徹底的に調べてやるわ。」 ・「あ、あった!カッコウなど、鳥の仲間には托卵(たくらん)といって、他の鳥の巣に自分のタマゴを産み落とし、ヒナを育てさせる。ふーん…托卵ねぇ…。」 ・「あんたたち!(デデエス)カービィの寝床にこっそりタマゴを置いてない?」 ・「あれほど言ったのにダメねぇ…。ずっと(カービィの)姿が見えないのよ、少しは心配したら?(雨降って来たんだししょうがないでしょ…)」 ・「どうなるか様子を見ましょ…。タマゴが孵れば分かるわ。」 ・「タマゴが孵るわ!」 ・「(生まれたガルボを見て)当たり前でしょ、カービィの子じゃないんだから…。見たことない生き物だけど…。」 ・「生まれて初めて見たカービィを、親だと思ってるのかしら…。」 ・「カービィに任せとけば大丈夫みたいね…。」 ・「オバケって…何があったの?」 ・「あなたが一生懸命育てた子だから、守りたい気持ちは分かるわ。でも…。」 ・「(カービィに対して)どんな子にもしつけは必要よ。悪いことをしたら叱ってやらないと。」 ・「どうしたの…(親ガルボに)殺されちゃうわ。(カービィが戦わないと)でないと、あなたが死んじゃう!」 ・「来て、ワープスター。」 ・「(ミニガルボは)カービィが、初めて自分で育てたペットですものね…(ロボット犬涙目である)。」
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oboro-moon-night · 2 years ago
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7年くらい前の映画「怒り」初見感想
 いまから7年ほど前(7年ほど前!!!?!?!?!?)に、映画館で「怒り」を観たときの感想を発掘したので転載。文章はめちゃくちゃだけど勢いとパッションだけはあっていいな…忙しいを言い訳にせずちゃんとアウトプットしたい…全然文章書けない…。でも今見返してみるとすげ~オタク構文でウケるね。
・冒頭のプール  体系も恰好も雰囲気も表情の作り方も笑い方も完全にその道の人だったよ妻夫木くん…すごい…。インタビューの記事で見たんだけど、役作りのために鍛えたり日サロに行ったりひげをデザイン脱毛したりしたらしいです…もう100点…はなまる…。それにしてもこのプール、イケメンしかいないな。ドレスコードがイケメンとかなの??? ・ハッテン場  安座して顔伏せている直人かわいすぎか~~~~~~~~~~!!白いな細いな筋肉ないな~~~~~~!! そういう自分を抱きしめるみたいな守るみたいな体勢されちゃうとたまらなくなるよ…。そして彼の脚を自分の脚で無理やりこじ開けようとする優馬と抵抗する直人。そこを強引に組み敷いて手首を押さえつけキスをして、そのままロクに慣らしもせず突っ込む優馬。ツイッターで見た通り最&高だった。この時代(とき)この地球(ほし)この場所に生まれ出で存在しこの作品を拝めることは奇跡なのでは…みたいなそんな気持ち。ゴムの口ピッと噛み切ってペッとその辺に吐き捨てる優馬サイコーだし、直人の挿入時のリアクションと事後シーツから顔を上げたときに唾液が糸引いてるのも萌えすぎて涙目だった。唾液の粘性が高いってことはちゃんと快感を得ていたんだね直人…よかったよかった…(?) 音声が完全に控えめなBLCDでした。そして性欲を満たした後は食欲を満たしに行くふたり。並んでラーメンを啜っているとき、何���訪ねても自分のことを話��うとしない直人のことを「おいおい笑」みたいな感じで優馬が軽く小突くんだけど、カウンター席はこういうことできちゃうからいいよね~ハ~~尊い。 ・コンビニ  コンビニで買い物をする直人。弁当とかオレンジとかと一緒に普通にゴムも買っていて、ああ、ふたりが体を重ねることはもう日常の一端となっているんだなあ…としみじみしてしまう。このとき優馬は友人たちと肉を食らっているんだけど、もうここ完全に肉食系男子(文字通りの意味とダブルミーニング)…めちゃくちゃがっついてますやん…漲るエナジーあふれるパワー…(?) 帰り道で弁当の傾きが気になって直そうとするんだけど、荷物が多いせいでうまく直すことのできない直人アー。そんな不器用なところも素敵。そしてそれを後ろから見守る優馬のまなざしが慈愛に満ちすぎてはいませんか…? この世は愛で満ちている…。そして「オイ!」って優馬にいきなり声かけられた直人のビクッと具合が愛おしい。「持っててやるから好きなだけ弁当直せよ」と言ってさりげなく荷物を持つ優馬のスバダリ感たるや…。そして帰宅するまでの道のりで、後ろを着いてくる直人を振り返って確認する優馬の表情も優しすぎて涙が出そうだった。コンビニエンスストアで350ml(スリーファイブオーエムエル)の缶ビール買って歩く速度をBPM83(エイトスリー)に合わせて夜の散歩してくれ…と本気で思ったけれど、よく考えたら優馬の暮らしに缶ビール似合わなすぎる。 ・「信じてくれてありがとう」のやつ  帰宅後キッチンでカップ麺を調理する直人ですが、ここのうなじが最高にエッチで目が離せなかった。そしてカップ麺…不摂生かよ…もっと栄養のあるものも食べなね…。なんか元気なくない? みたいなニュアンスのことを尋ねる優馬に対して「うん ちょっとだるくて…風邪かも」と答える直人。このセリフ、「ちょっと」が「ちょと」みたいな詰まった感じに聞こえて直人のたどたどしさというか拙さというかまだ緊張してる感じというか、そういうのを勝手に深読みしてしまいめちゃくちゃ萌えた。そんな彼に対し「それなら昼間も家にいればいいじゃん。但し物がなくなったりしたら即通報するけど。ゲイバレ怖くて通報しない人も多いけど、俺そういうの全然気にしないから。」みたいなことを言う優馬。エッ直人日中ずっとふらふらして優馬が帰ってくるまで公園にいたの? まじか…かわいい…。「言っとくけど俺、お前のことこれっぽっちも信じてないから。……何か言えよ」「疑ってるんじゃなくて、信じてるんでしょ。…何か言えばいいんだっけ? 信じてくれて、ありがとう」なっ直人~~~~~~~;;;;;;;;;;;;;;;; ハ~ここで自分の価値観変えさせてくれたんだからますます優馬は直人に惹かれちゃうじゃん!!!!!!!! 信用の対義語が不信であるように、「信じる⇔疑う」ではなく「信じる⇔信じない���であって、疑う≠信じないだと思うんですよね。むしろ信じる≒疑う、というか。表裏一体。信じるという前提があるからこそ疑ってしまう、みたいな…だから疑われているというのは少なからず信じてくれているから、みたいな…。ゆえに、ここで直人が「疑ってるんじゃなくて、信じてるんでしょ」と言った意図はつまりそういうことだと思うんです。(※読み返して追記:たぶんそもそも信じてないと疑いようがないよね、みたいなことを言いたかったんだと思う。卵が先か鶏が先かみたいな話になるけど。)そしてこの後のセッシーンもまさに腐女子大歓喜だった。キスしてる途中で直人が一瞬上になるの、直人もちゃんと求めて欲している感じがしていい。素敵。ハ~~生きててよかった。そしてピロートークの体勢も最高すぎでは…???? 腕枕してるけどお互い向かい合っていないのとかすっかり同じ体勢とっているのとかさあ…。全体的に彼らは正面から向かい合って顔を見合う機会があまりなくないですか? ここもそうだしラーメンも横並びだったし会話シーンでも優馬は後ろとか横から声掛けているし。真上からのカメラアングルがあるんだけど、そこでふたりの体格差はっきり分かってキュンとした…筋肉の付き方も肌の色も全然違うし直人の方が身長高いのもポイント…。ここで頭から足先までぴったり画面に収まっているのは横長の画面を採用したからだそうです。なるほど~。そしてベッドめちゃめちゃでかくないっすか。二人で寝ても全然余白があるじゃん。キングサイズ? ・ホスピス  なんやかんやで優馬の母親に会いにホスピスへ足を運ぶようになる直人。そこで優馬の母から昔の優馬の話とかたくさん聞いて、自分の知らない優馬の一面を知ることができて嬉しかったのかな直人…と勝手に思いを馳せる私。ある日、ラウンジで優馬の母と直人が話しているところに優馬も顔を出して、直人に自分が昔使っていたスマホを渡す。この時点で優馬は完全に直人と離れる気ゼロだろ~~~だいすきかよ~~~~~~!! 「こいつ今どきケータイ持ってないんだぜ? 信じられないよな~。服なんかもこればっかだし」「あんたは大切なものが多すぎるのよ」鑑賞時は、このやり取りに対して 大切なものが多くて何がいけないの、全部大事なんだもん、いいじゃん…と思っていたのですが完全に伏線でしたねコレ。その多すぎる大切なもののうちのひとつである直人を、永遠に失うことになることへの伏線。それと、仕事にも友人にも恵まれマイノリティでありながらも臆さず人生エンジョイしているように見える優馬(持つ者)と施設で育ち持病もあり安定した生活を送ることができない直人(持たざる者)の対比でもあるのかなあ、と。あ、直人の右頬のほくろが判明したのもこの場面だった。縦に三つ並んだ特徴的なほくろを気に入っていないらしく、指摘されたときに軽く指先で擦るような仕草をしていたのかわいかった…。 ・優馬の母の死  雰囲気的に優馬の母の死に立ち会ったのは直人だったのかな? 「なあ、俺、母さんになんて声かければいいのかな…?」ホスピスに駆けつける優馬の演技が本当に凄い。やたら深呼吸して涙を流すまいとする姿とか、それでも堪えきれなくてこぶしで自分の胸を叩く姿とか、母親の部屋に入ってから一気に涙声になるのとか、感情の発露がリアルだった。そうだよね、人前で涙は流したくないよね、でもだからって直人がこの場にいなかったら思う存分泣けるのに~とかじゃなくて、母親の話し相手になってくれた直人には感謝しているし確実に優馬の支えにもなっているし…うまくまとまらないけどそんな感じ。母親の部屋に入る直前に優馬が直人の肩というか胸というかそのあたりをポンと叩いていたのも、ふたりの信頼というかそういうのが見えた気がした。後日、お墓参りの道中で「葬式…来るなって言ってごめんな。高校とか大学のやつも来るから、お前のこと、なんて言ったらいいか分からなくて」と言う優馬に対して無言で首を振る直人。こういう世間体問題よくBLで見るやつや~~~~~~…肉親に言うのにも家族になるのにも相当な覚悟が必要で、しかも周りから祝福されることが困難で、世間の目は冷たくて二人だけで支え合っていくのはすごく過酷でしんどいこと……。「でもさあ、墓なんて買っても無駄だよな。母さんが入って、俺が入って、それで終わりだろ。…一緒の墓に入るか?」エッッッちょっと待ってこれ完全にプロポーズですやん??? 俺に毎朝味噌汁を作ってくださいと同じようなものだよね???? 本気だとしても冗談だとしても、こういうことサラッと口に出しちゃう程度には優馬にとって直人の存在が大きなものになっていたんだろうなあ…。同じ墓に入る=死ぬまで一緒ってことだよね。冒頭のシーンといい優馬はなんとなく遊び慣れているのかな~という印象で、お付き合いしている人にあまり入れ込まない(入れ込めない)タイプなのかと思っていたので、そう思える人ができて本当によかったね…という気持ち。ご祝儀あげたい。 ・カマかける  中目黒のカフェで女性と楽し気にお茶する直人の姿を偶然目撃した優馬。帰宅後確認するも、「パチンコ行ってた。ちょっと勝っちゃった」と返される(エッ直人パチンコとか行くんだ!!??? ウワ~ギャップ…たまらない…)。ここで直人がオレンジ剥いていて、「そのベタついた手で「はいはい、冷蔵庫などは触りません」というやり取りがあるんだけど被せて返事するの以心伝心かよ…。そしてこのオレンジはこの間コンビニで買っていたやつ?それともオレンジ好きなのかな?? かわ…。その上以前オレンジ剥いたベタベタした手で冷蔵庫とかドアノブとか触って怒られたの? ハ~もうそんなちょっとズボラなところも好きよ直人…。あとさ、ここのオレンジの剥き方が、くし切りにして皮と実の境目に切れ目を入れ���食べやすさを考えた切り方でさ、だから何?って言われたらそれまでなんだけど…そのひと手間がなんかいいよね…。 (※読み返して追記:ここのオレンジ、「あなたは私のオレンジの片割れ」…ってコト…!?(気付くのが遅い)そしてヘドウィグ思い出してもっかい見たくなった) 中目のカフェで女といるのを見たと優馬に言われ「どうしてカマかけるような言い方するの?」と直人。自分が彼に嘘をついた罪悪感と、嘘に気付いていた彼に対する申し訳なさと…それと、最初からはっきり言うんじゃなくて、カマかけられたことが信用されていないように感じて傷ついたのかな…。詳しいことは何も話そうとしない直人に「別にお前がバイだったとかでもこんな風には思わなかったと思うんだよな…嫉妬?とは違うかな…なんかこう、もっと根本的なところで裏切られた、みたいな…」と言う優馬。ッッそんなに好きなら!!! 大切なら!!!!! 今ちゃんと話さないと決定的なすれ違いが生じてダメになるからちゃんと話そう!!!!???? こちとら今までそういうBLいくつも見てきたんだよ!!!!!! でもそれらと同じようにまたあんたちも仲直りラブラブハッピーエンド♡になる保証なんてどこにもないんだよ!!!!!!????? とこのセリフを聞いた瞬間一人勝手に昂るわたくし。しかし今画面の向こうにいるふたりにそれを伝える術はなく、悔しさのあまり涙する…お願い、私あなたたちには幸せになってほしいの…。何を言われても結局受け手の捉え方なんだよな、というニュアンスのことを言う優馬にウッとくる。確かに図星だし私も同感なんですけれども…でもそこで双方が伝える努力及び受け取ろうとする努力を怠ってしまったらもう成す術なしじゃん…おしまいじゃん…。 ・直人がいなくなる  そんなやりとりの後に直人がいなくなってしまい、優馬は留守電何度も残したりして憔悴している様子。たまたまテレビで八王子殺人事件の犯人の顔が流れており、なんとなく似ているし特徴的なほくろまで一緒だしもしや…と疑ってしまう優馬。そこに空気読めすぎだろ~…というタイミングで警察から電話が掛かってきて「大西直人さんをご存知ですか?」と尋ねられる。知らない、と答えそのまま電話を切った優馬は、家中の直人のも���を片っ端からゴミ箱へ放り込んでいく。最後に彼がよく着ていたカーディガンを手に取り、しばし逡巡するも、結局ゴミ箱へ。私ここの場面がどうしてもピンと来ないんですけれども…なんで知らないって言ったの? 直人の所有物を捨てたの? 殺人犯かもしれないと思ったら怖くなったから? あるいは(結果的に)殺人犯を匿ったことで社会的地位が脅かされることを恐れたから? 千葉編の愛子でも思ったんだけど、どうして信じ切ることができないんだろう。本当に好きなら、信じられるんじゃないの? あるいは殺人犯だとしても一緒にいたいと思うんじゃないの? まあ信じる/疑うこと、信じることの難しさがテーマの映画ではあるんだけどさ…。こんな甘ちゃんの考えしかできないのは私がま��人生経験の浅い青二才だからなのでしょうか。もっと裏切ったり裏切られたりすればまた考え方が変わってくるのかな。ウーン腑に落としたい。 ・失踪の真相を知る   以前直人を見かけた中目黒のカフェの前を通ると、あの時直人と一緒にいた女性(薫)が店内に座っていた。思わず優馬が声を掛けると、直人の色々なことを教えてくれた。薫と直人は同じ施設で育ったこと。直人は生まれつき心臓に持病があり、手術でどうにかなるものではなく薬でごまかしながら生活していたこと。そのため、思うように仕事に就くことができずにいたこと。…そして、数日前に公園の茂みで倒れている彼が発見されたこと。なっ直人~~~なんでだよ~~~~;;;;;; 自分の死期を悟って姿を消すなんてどこの猫だよ;;;;;;;;; 「直人からよく優馬さんの話は聞いていました」「自分はずっと(同性愛者であることを)隠して生きていくんだって思っていたけど、優馬さんはすごく堂々としていて。優馬さんと一緒にいると、なんだか自分にも自信が湧くんだって、自分まで強くなった気になれるんだーって、直人言ってました」話しながら目を潤ませつつも涙をこらえる薫と、ぐしゃぐしゃの顔でボロボロ泣く優馬が対照的だった…。そして呆然として放心状態で店を出ると、真昼間の往来で慟哭する優馬。だって、母親が亡くなった時も人前で涙を流すまいとしていた優馬がこんな人がたくさんいるところでボロ泣きするんだよ? どれだけ直人が大切だったのかって話だよね…。この直人の事情を明かした後でのあの回想シーンはずるすぎる。もう大号泣だった。ふたりが優馬の家の窓際に腰かけてお酒(缶ではなく瓶なあたりが超優馬。オシャン)を飲んでいる時にふと直人が「前に、一緒に墓に入るかって俺に訊いたろ? …一緒は無理でも……隣でもいいよな」とこぼすんですよ!!?? 泣いてしまうだろ!! 一緒は無理だって分かってるあたり、口に出しちゃうあたり切なすぎる…同じ墓に入りたいって言ってもいいんだよ言うだけタダなんだから…。真面目に捉えて真面目に返すあたり、直人の融通の効かなさというか誠実さが垣間見えた。私は映画が終わって即「墓 他人」でググりました笑 墓埋法的には特に規制はなくて、墓の永代使用権者が認めれば誰を埋蔵してもよいらしい。けれど、一般的な傾向としては永代使用権者の家族しかひとつの墓に入らない模様です。また、法的にはオールオッケーだけど墓地の管理規制によっては永代使用権者の親族に限られてしまうそう。不可能ではないけどちょっとめんどくさいし怪訝な顔はされるよ、って感じかしら。あと全然関係ないけどここの高畑充希の髪型かわいかったので研究して真似したい。 ・その他萌えポイントとか感じたことの殴り書き  全体的に直人が寂しそうでいい。表情が乏しいんだけど、優馬といると��はちょっと柔らかい表情に見える(都合のいい解釈…)。不器用なところがひたすらに愛しい。8~9分袖のカーディガン最高。手首を見せてくれてありがとう。常に彩度の低い色の服を着ているのもいい。直人メチャ儚げな雰囲気出ててすごい、綾野剛こんな人だと思っていなかった。前髪切った直人をちゃんと見たかった。髪を切っているシーンの背中が最高…タンクトップ…肩が出ているよ…。全体的に抱きしめたくなる背中。  優馬、なんとなく刹那主義的というか今が楽しけりゃオッケーみたいな人だと勝手に思っているので、そんな彼が直人という大切にしたい存在、そばにいたい存在に出会えたことに感謝…。でも彼はこの先の人生でずっと直人のことを引きずっていくのだろうか。信じて疑ってこうなったんだから最初から信じなきゃいいじゃん、もう誰も信じんわ、みたいになったらしんどいな…おいしけど…。今までみたいに遊ぶけど絶対誰とも仲良くなりすぎないように予防線張ってる的な(今までは来るもの拒まず去る者追わずだったし、今回の直人みたいに面白そう、自分の興味にピンと来たと思ったら距離を詰めに行っていた)。そんなある日どことなく直人に似た雰囲気の男性に出会い…みたいな話で一本書けちゃうよねきっと…。  二人が雨の日にベッドにふたりして座っているシーン好き。幸せになれなそうな雰囲気出てる(?) 怒りロスなのでこの画像拾ってきてスマホのロック画面にした。  もし二周目見たら絶対最初からボロ泣きしてしまうだろ…だってセリフの一つひとつが全部伏線なんだもの…。 原作履修者と非履修者で彼らの性格などの捉え方が微妙に異なるっぽいので、早く原作履修したい。図書館で予約しよう。  妻夫木くんと綾野剛が役作りのために同棲していたこととかその間のエピソードとかツイッターで見かけては悶絶している。エッすごすぎ…ごちそうさまです…はなまるぴっぴ…。「用意スタート」の前にチューしたりするの…。(おそらくカマかけるシーンを撮影した日に)仕事帰りにふたりで飲みに行って帰路に着いていると、綾野剛が「コンビニ寄って帰るけど何かいる?」「俺はいいや」「そっか、じゃあ行ってくるね」と言ったきりもう戻ってこなかったとか最of the高すぎませんか…「あのシーン撮影日にいなくなろうと前から決めていた」とか「きれいなベッドを見て、あんなに悲しいと思ったのは初めてだったなあ」とか模範解答すぎるよ…。  顔の緩みを抑えるため萌えシーンで頬の内側噛んでいたらいつのまにか切れてた。 ・全体を通してのまとめ  東京編の覚え書きまとめていたら自分が何の映画を観に行ったのかよく分からなくなってきた…悲愛ものの良質なBL映画でも観に行ったのだろうか…。でも「怒り」は本当に衝撃的な作品で、悲しくて、とか悔しくて、とか萌えすぎて、とかではなく、心臓を掴まれてワシワシ感情を揺さぶられる反動で始終涙目の142分間でした��出演陣全員演技がものすごく良い…。上映後しばらく立てなかった。でも東京編がなかったら本当に最後まで見られなかったかもしれない。東北地方の秋口の結構寒い日のプール授業(千葉沖縄)でプールから上がった時の足裏で感じるプールサイドのコンクリートの温かさ(東京)…そしてそこへ容赦なく吹き付ける風(千葉沖縄)…みたいな。自分では結構上手いたとえができたと思ったのに読み返したら全然意味が分からないですね。  LGBTとか貧困とか沖縄問題とかの問題をゴチャゴチャさせずに厭味ったらしくなくコンパクトにぎゅぎゅっとまとめてあるの、すごくないですか。しかも三つの編み方というか絡ませ方がすごく自然で美しい構成だった。  千葉編、宮崎あおい7キロ太ったとかって聞いたけどどこが…? 真っすぐなまなざしが痛いくらいだったし躁っぽさがよかった。久しぶりに見た松ケンの横顔はサイコーだった。いい鼻…。彼は寡黙な役が似合うなあ。警察に電話した後、田代くんが犯人ではないと判明した時の愛子の演技が圧巻だった。サイレントなのがまたぐっとくる。あと「お父ちゃん」呼びかわいい。「おじさん、愛子は幸せになれないって思ってない? あの子を好きになる男がロクな奴なはずがないって、そう思ってるでしょ」に対してお父ちゃんと一緒にハッとした。ごめん…愛子…。  沖縄編、すずちゃんがあまり好きではないのでどうかな~~~と思っていたけど全然そんなことなかった。彼女はすごい女優だ。沖縄編が見ていて一番しんどい。もうこれからすずちゃん見るたびに泣きそう。母親と同じベッドで眠る泉の幼い寝顔を見て「どうしてこの子があんな目に…」と思わずにはいられなかった。母親も「沖縄に引っ越してこなかったら」と自分を責めるだろうし辰哉くんもまた「映画に誘わなかったら」と自分を責めるんだろうなあ…しんどいなあ…。辰哉くんが抗議運動に参加する父親を見て「あんなので変わるわけないじゃん…何を言っても聞いてもらえないでしょ…」と言っていたのがのちのちブーメラン大打撃すぎてつらい。訴えても聞いてもらえない、恥ずかしい思いをしたくない、つらかったことをつらかったって分かってもらうのってすごく大変なんだよ、わたしそんなに強くないよ…そう言って泣き崩れる泉に対して何もできない辰哉くんに泣けた。ああいう時、どんな風に声を掛けてどんな風に振る舞えばいいのか分からないよ…。訴えても聞いてもらえない、伝わらないっていうのが、東京編の「結局受け取り手の捉え方」にちょっとリンクするのかなあ。「まあ三人とも犯人じゃないってオチだと思っているけどこの中だったら確実に森山未來が犯人だろ~笑」と思っていたら本当にそうだったので笑った。笑えない。「ポリス!ポリース!」って叫んだのお前じゃなくて結局見知らぬオヤジだったのかよ。「え、森山未來だったんだ! 声じゃ全然分からなかった~」と思った私の純粋な驚きを返せ。ほか二つは信じる→疑うだったけどここだけ信じる→裏切られるでしたね���辰哉くんの殺害理由も「信じていたから許せなかった」だし。ラストの田中はまじ狂気はらんでた。デストロイヤー田中…。ハサミでほくろ抉ったりだとか「俺さ、こいつはコロッと信じてくれるなって奴、見れば分かるんだよね。なんでそんなに簡単に他人を信じられるのかな、ふっしぎだよね~」とか「頭に血が上らないと冷静になれないんだよね」といきなり壁倒立始めたりだとか。クレイジー。泉が沖縄の美しい海に向かって叫んで(というよりも吠えて)そのままエンドロールに入っていったのが良かった。あの流れであんなに優しいチェロの旋律流れたら泣くだろ…。チェロは弦楽器の中で一番包容力があって感情が音に乗る楽器だと思う。エンドロールの見間違いかもしれないけど演奏しているの2celloの人だった?  怒り、三人のなかに実は犯人いなかったけど疑ってしまうことでもろもろ破綻していって結局心が離れてしまって修復不可能でアーア、という話だと思い込んで観に行ったので、え~~~犯人出るんだ!! まじかよクレイジー!! 嘘やん!!!! という印象。千葉だけ幸せな終わり方をすることによって、余計に東京沖縄のつらさが際立った。これで全部バッドエンドだったらハ~鬱…で終わりだったけれど、千葉によって信じ切れなかったことを乗り越えたパターンが生じてしまうと 他の東京沖縄でバッドエンドを回避する方法はなかったのだろうか…と悶々とやるせなさに苛まれる。疑ってしまった側の視点で進行する物語ですが、信じてもらえなかった側のことも考えながら観ていたらしんどくてしんどくてキャパオーバーになった。あ、まじで今私の胸が張り裂けるかもしれない比喩でなく…とも思った。先輩と観に行ったんですが、きっとひとりで観に行っていたら整理しきれなくて帰り道自転車漕ぎながら「なっ直人~~~~~~~;;;;;;; どうして…なんでだよ直人~~~~~~~~ウオオオオオオオ~~~~;;;;;;;;;」と絶叫アンド号泣してしまっていた。ので、誰かと観に行くのがオススメ。あとしばらく放心状態になってしまうので付き合う前とか付き合いたてのカップルのデートにも激しく推奨しない。それと映画の後に予定が入っているときに行くのもよくなさそうです。この後一緒に行った先輩とそのまま飲みに行ったのですが、普通に酒を飲みかわし楽しく会話できるテンションに戻るまで入店後30分くらいかかった…。  観終わって数日経つにも関わらず未だに引きずっているのですが、ずっと「信じるとは…疑うとは…」ばかり考えております。哲学…。映画は好印象であれ悪印象であれ強ければ強いほど、引きずらせる期間が長ければ長いほど作品の「勝ち」だと思っているので、そういった意味で「怒り」は大大大勝利だと思う。 私の感想は以上です。間違ってる部分があればこっそり教えていただけたら幸いです。あと、「ここの場面、こういうことじゃないの?」みたいなのがございましたらぜひぜひお聞きしたいのでよろしくお願いします。
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inuoh-anime · 2 years ago
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『犬王』発声OK!”狂騒”応援上映 イベントレポート
12月13日(火)に新宿バルト9にて劇場アニメーション『犬王』の「発声OK!”狂騒”応援上映」実施いたしました。
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 今年5月の公開以来、熱狂的なファンを増やしてきた映画『犬王』。その待望の発声OK!”狂騒”応援上映がついに実現! 12月13日(火)は第80回ゴールデングローブ賞・アニメ映画賞に『犬王』がノミネートされたというニュースが世界中を駆け巡った翌日であり、『犬王』Blu-ray・DVDの発売前日。会場となった映画館・新宿バルト9の最大席数を誇るシアター9は、全席完売!
 冒頭の製作会社のクレジットに投げかけられた「ありがとう!」の声援と喝采から、場内はすでに感無量ムード満点。森山未來演じる琵琶法師・友魚が「今は昔……」と歌いだし、現代の京都から室町時代へと鮮やかに舞台が移り変わる『犬王』のタイトルから、早くも観客は熱狂の渦に到達! 割れんばかりの拍手と手拍子、闇にひらめくうちわ、シーンごとに青・赤・紫など巧みに色替えされるペンライト、いずれもこれまでの無発声応援上映で培われてきたであろう絶妙なリズム&タイミングが美しい。加えて今回が「発声OK」初開催とは思えないほど、ユーモラスかつ語彙豊かで、愛情に溢れた声援・歓声・コール&レスポンスも磨きのかかった仕上がり。そして「比叡座の舞台に その名をとどろかす!」「お前たちの物語を 一人残らず聴いてやる!」「俺たち以外 全てに成仏してもらおうぜ」等の名台詞ごとに、さながら歌舞伎の大見得がキマったような快感とともに会場全体からうねるような拍手喝采が巻き起こる! 作品のパワーに匹敵する『犬王』ファンのとめどない熱量に、ひたすら��動させられる一夜となった。
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 友魚改め友一の「これより新しい物語を始めたいと存じます」という宣言を境に、いよいよアヴちゃん演じる天才能楽師・犬王が室町のポップスターとして快進撃を始める中盤以降は、まるでロックバンドのライブ会場にいるかのような盛り上がり。友一バンド(のち友有座)のワイルド&セクシーな野外パフォーマンス、犬王の圧倒的カリスマ性と歌唱力をもって「平家物語」を斬新に語りなおす≪腕塚≫≪鯨≫≪竜中将≫といった演目=見せ場の数々が、文字どおりライブ感を増幅させる観客の生声・生音を得て真の威力を発揮! 特に≪鯨≫における観衆のコール&レスポンスは、ファン待望のシンクロポイントだっただけに、スクリーンと現実の垣根が完全に破壊されたかのような臨場感と陶酔感に溢れていた。≪竜中将≫のトリッキーな変調に次ぐ変調にも、何度も繰り返し作品を観てきた猛者=ファンたちは巧みに追随し、波に乗り、見事に大団円にたどり着く。そのクライマックスには、犬王と友魚のドラマ、湯浅政明監督はじめ表現者たちの結晶である『犬王』という映画、そして待望の発声応援上映という「場」と、すべてを包括する多幸感が充ち満ちていた。
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 犬王、友魚という主演スターたちに対する「カッコいい!」「がんばって!」「箸の持ち方キレイ!」といった惜しみない歓声・声援もさることながら、犬王の父、友魚の父、友魚の琵琶の師匠・谷一、さらに将軍義満の妻・業子に至るまで、脇の登場人物たちへの多彩な掛け声もまた楽しく、創意と遊び心に富み、時に笑いを誘って会場を和ませた。そのすべてが優しさを湛えていること、また犬王や友魚たちに仇なすものにも敵意ではなく「どうして?」という疑問や「わからない!」という抵抗で呼びかけていたことにも、『犬王』という作品とファンの特別な精神性が表れているかのようだった。そして終盤の激しい展開の後にも、その悲しみを受け止める「静寂」の瞬間が、ひときわ鮮烈に感じられた。こんなにもエモーションの起伏が細部まで汲み取られた応援上映も、稀ではないだろうか。
 今、ようやく皆が待ち望んだ『犬王』のあるべき姿が実現した……。そんな喜びを噛みしめるかのように、映画が終わっても、客席からは盛大な拍手がしばらく鳴りやまず、席を立とうとする人もいない。ついには「アンコール!」の声まで起き、「ゴールデングローブ賞ノミネートおめでとう!」の祝福も。名残惜しさに袖掴まれた人々をようやく帰途に就かせたのは、「またどこかの『犬王』で会いましょう!」という、ファンからの約束の言葉だった。
 そう、“まだ終わらぬ”。きっとこの先も『犬王』は息長く、末永く続いていくことを予感させる一夜となった。『犬王』が観客参加型映画の殿堂入りを果たす日も近い……そう思わせるに足る、至上の映画体験であった。
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  応援上映に興味があっても、なかなか参加することが叶わない方も多いはず。『犬王』完全生産限定版Blu-rayに収録された「無発声“狂騒”生コメンタリー@新宿バルト9 2022.7.29」では、その様子を副音声として楽しむことができる。こちらは応援上映に同席した湯浅政明監督、脚本の野木亜紀子、犬王役のアヴちゃんによる実況解説と、なんとアヴちゃんの生歌つき!ご自宅でも、ぜひその臨場感と多幸感を堪能してほしい。
(文・岡本敦史)
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sorairono-neko · 4 years ago
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コーチを待っている
 勇利は緊張しているようだった。彼が試合のときにそうなるのはいつものことだけれど、これはシーズン序盤のB級大会で、試合勘を取り戻すためと課題をわかりやすくするために出場しているのだ。もちろん試合は試合だが、普段よりは自由に、好きにすべってよいのである。ヴィクトルとしては、改善点を浮き彫りにしてくれたほうがありがたいくらいだ。しかし勇利はかたくなっており、顔は青白く見えた。ショートプログラムではそうでもなかったのに、フリースケーティングになってこれほど変わるとはどうしたことだろう? 「勇利」  ヴィクトルはただ名を呼んで勇利の手を握った。ひんやりと、つめたい手だった。ヴィクトルは勇利にほほえみかけた。勇利もかすかに微笑した。 「何も心配はない。おまえならできる」 「はい」  勇利はうなずき、氷の中央へひとりで向かった。ヴィクトルは勇利から目をそらさずに、ひたすら彼だけをみつめていた。  最初は問題ないように見えた。動きはすこしかたいけれど、緊張もあるし、まだプログラムが熟していないのだから仕方がない。この程度は予想していたことだった。スケーティングにいつものなめらかさがないが、これもかまわない。試合で初めてプログラムを披露するということに気を取られているせいだ。このぎこちなさでは、ジャンプの回転が不足するかもしれないけれど、アンダーローテーションくらいなら──。  勇利が最初の四回転ジャンプを跳んだ。ヴィクトルははっとした。軸が驚くほどに傾き、勇利は派手に転倒した。観客がどよめき、ヴィクトルも思わずフェンスから身を乗り出した。さいわい、勇利はすぐに立ち上がって続きをすべり始めたけれど、彼の表情から、焦りが大きくなっていることが見て取れた。  まずいな……。  ヴィクトルははらはらし、祈るような気持ちで勇利をみつめた。落ち着いて。いつもどおりやればいいんだ。練習と同じように。練習のときは、あんなに綺麗にすべることができただろう?  しかし勇利は、落ち着くことはなかった。最初のジャンプの失敗が響いているのか、二本目もしくじり、転びこそしなかったもののステップアウトした。三本目はまた転倒した。コンビネーションでは、トリプルアクセルとトリプルサルコウのあいだのシングルジャンプに、あきらかに回転が足りなかった。そのあとも、フリーフットはタッチダウンするし、着氷のときにはこらえるし、さんざんだった。うつくしいはずのスピンでさえ、回転数が少なかったり、基本姿勢が崩れたりした。ステップシークエンスではクラスタができず、ときおりひどくぐらついた。度重なる失敗のせいで心身ともに疲労しているのだろう、かなり息が上がり、体力が続かなくなっているようだった。どうにか最後まですべりきりはしたけれど、終わったときは激しく肩で呼吸しており、痛々しいほどだった。  観客は力いっぱい拍手をしていたし、声援も大きく送っていた。けれど勇利にはなんのなぐさめにもならなかったようで、彼は蒼白になりながら、こころがどこかにいってしまったという表情で挨拶をした。ヴィクトルは早く勇利を抱きしめてやりたくてたまらず、彼が戻ってくるのを待ちわびていた。  ようやく挨拶を終えた勇利が、リンクから出るために出口のほうを見た。そこで待っていたヴィクトルは驚いて息をのんだ。勇利はヴィクトルと目が合うなり、いまにも泣き出しそうなくしゃくしゃの顔つきになり、両手をひろげて、子どもが駆けてくるように帰ってきた。 「勇利」  いきなり抱きついてきた勇利を、ヴィクトルは力いっぱい抱擁した。勇利はヴィクトルの肩に顔を押しつけ、全身をふるわせた。泣いているようだった。 「勇利、大丈夫だ」  ヴィクトルは優しく彼の背を撫でた。激しく動いたため、身体は熱く、汗が噴き出しているのがよくわかった。 「大丈夫だよ」  勇利は何も言わず、しゃくり上げるように呼吸してヴィクトルにしがみついた。ヴィクトルは彼の髪をよしよしと愛撫したあと、エッジカバーをつけてやり、キスアンドクライへ連れていった。そこでナショナルジャージを着せると、勇利がまた泣き顔でぎゅうっとくっついてきた。ひどい得点が出ることはわかっていた。ヴィクトルは勇利をいつくしむように抱き、彼の耳に、こころをこめてささやきかけた。 「気にすることはない。勇利が本当はできることを俺は知っているよ。こういう日もある。グランプリシリーズの前にこうなれて、かえってよかったんだ。いまのうちに失敗しておけばいい。いいかい勇利、おまえの武器は、うつくしいステップシークエンスと、低い、姿勢の動かない速いスピン、それにまるでダブルのようになめらかに跳ぶトリプルアクセル、そして、絶対にエラーのつかないジャンプのエッジだ。勇利のルッツは正確無比だ。それだけできるんだ。勇利は魅力的だよ。俺は知ってる」  勇利はずっと、顔をぐしゃぐしゃにし、ヴィクトル以外にはけっして見せないようにして泣いていた。ヴィクトルは、彼のその泣き顔が忘れられなかった。  グランプリファイナルが終わると、それぞれの国内選手権、ヨーロッパ選手権や四大陸選手権が続き、勇利と会えなかった。四大陸選手権が日本開催だったため、勇利はファイナルのあとすぐ日本へ発ち、国内試合が終わっても帰ってこず、しばらくロシアを留守にした。 「ああ心配だ。勇利が心配だ。大丈夫かな。彼は繊細なんだ」  ヴィクトルは自分の練習をしながらも、勇利が気になって仕方なかった。 「シニア上がりたての選手じゃあるまいし、ひとりで練習する方法くらい知っているだろうが」  ヤコフがあきれかえった。 「ヤコフは勇利のことを知らないからそんなことが言える」  勇利からは毎日のように練習動画が届くし、ヴィクトルも助言や指示、メニューなどをメールで送っているけれど、ヴィクトルがたわいない話題を示しても勇利はそれに返事をせず、ひたすらにスケートの話をしているので、ますます心配になるのだ。勇利はまじめな性格だからそうなるのだろうが、ヴィクトルとしては、何か思うところがあるのではないか、気持ちを隠しているのではないかと気が気ではない。  勇利の四大陸選手権には帯同できない。どうしても予定が合わない。しかし……。 「エキシビションになら間に合うな」  ヴィクトルは自分の日程表をにらんでつぶやいた。 「おい、まさかおまえ」  ヤコフが顔をしかめた。 「よし、行こう」 「近所に散歩に行くみたいに簡単に言うな」 「勇利にはコーチが必要だ」  ヴィクトルはいつかの勇利の泣き顔を思い出した。 「俺がそばにいなくちゃ」 「試合が終わってから行っても意味がない」 「意味はあるさ。そうだろ?」  ヴィクトルはヤコフをじっと見た。 「ヤコフ、俺は行くよ」  ヤコフは苦々しい顔をしていたが、やがて溜息をついた。 「仕方がない」 「ありがとうヤコフ!」 「反対してもおまえは聞かんだろう」  ヤコフはヴィクトルをにらんだ。 「さっさとこのニュースを生徒に教えてやるんだな。きっと喜ぶだろう」  ヴィクトルは眉を上げた。 「何を言ってるんだ。勇利にはないしょだよ。じゃなきゃ驚かないだろ?」 「こんなときにまで驚きを追求するな!」  ヤコフががみがみ言ったけれど、ヴィクトルはやはり、勇利には話さないつもりだった。試合には行けないがエキシビションには行ける、と言われて、彼がどう思うかわからない。喜ぶか、あるいは、それなら試合にも来て欲しかったとせつない思いをするか……。おもてには出さないだろうけれど、胸を痛めるかもしれない。頭では仕方のないことだと理解しても、こういうことは理屈ではないのだ。それに、もし予定が狂って行けなかったら、かえって彼につらい思いをさせることになる。  勇利には話さない。その代わり、彼が驚き、喜び、うれしくて泣くくらいのことをしてやりたかった。勇利はさびしいときほど口には出さない。それをヴィクトルは知っていた。  ヴィクトルは四大陸選手権の主催に連絡を取り、大切な相談をした。 「何をごそごそしとるのか知らんが、どうせおまえのことだからおおがかりなことだろう。勝生勇利が優勝していなければかっこうがつかんぞ」  むっつりとしたヤコフの指摘に、ヴィクトルは平気な顔で答えた。 「勇利なら金メダルさ。俺の勇利だ」  エキシビションは、「離れずにそばにいて」にした。今季の曲はそれとはちがうものなのだが、ヴィクトルがいないとさびしく、勇利はそうせずにはいられなかったのだ。  すべっているあいだじゅう、ヴィクトルのことを考えた。勇利はスケートをしているときはたいていヴィクトルのことを考えているのだけれど、このときはこ��さらにそうだった。ヴィクトルはいまごろ何をしているだろう? どうしているだろう? 勇利のことをすこしは想ってくれているだろうか? ヴィクトルのことだから、忘れてしまっているかもしれない。でも彼は優しく、「勇利のことは忘れないよ」と言ってくれる。勇利はその言葉を信じた。けれど……、忙しいひとだから、遠く離れている生徒どころではないだろう。きっと。それは仕方のないことだ。  手を差し伸べるところでは、さらにヴィクトルを身近に感じた。彼は勇利のためにこのプログラムをすべってくれたことがある。見ていたのは勇利だけだ。あのとき、ヴィクトルもこうして、勇利のほうへ手を差し伸べて、甘く、いとおしそうにみつめ、情熱的にほほえんだ。  ああ、ヴィクトルに会いたい。この試合が終われば会える。よかったよ、勇利。すてきだった。なんてすばらしいんだ。おまえは俺の誇りだ。そう言って欲しい。勇利の金メダルにキスしてくれるだろうか? 勇利にキスしてくれるだろうか? 早く抱きしめて欲しい。いますぐに……。  曲が終わったとき、観客はすぐには拍手をせず、しんと静まり返っていた。勇利は何か失敗してしまったのかと思って慌てた。��ちがっていただろうか? それとも──ヴィクトルのことを考えてすべったのがわかってしまっただろうか。勇利は戸惑い、赤くなった。  ようやく歓声と拍手が起こったので、勇利は深くお辞儀をしてリンクから去ろうとした。彼が最後の演技者だった。これでプログラムは終わりだ。  しかし、一歩踏み出したとき、会場内の大きなモニタが明るくなった。勇利は驚いて振り返り、観客たちも静かになった。映っているのは白い壁で、ただそれだけなのに、勇利はなんとなく見覚えがあるような気がした。どこだったかな……。  横からカメラの前に入ってきたのはヴィクトルだった。勇利ははっとして口元に手をやり、白い壁の前に立つヴィクトルをみつめた。 「やあ、勇利」  ヴィクトルがいつものすてきな声で話し始めた。 「優勝おめでとう。金メダルだね。きみの金メダルにキスするのをずっと楽しみにしてたんだよ」  勇利の頬は紅潮した。ヴィクトルらしい驚かせ方だった。この試合に帯同できなかったことの代わりとして、この動画を贈ってくれたのだろう。それにしても、撮影したのは優勝のきまる前だろうに、もし勇利が金メダルを獲れていなかったらどうするつもりだったのだ。それもヴィクトルらしいと勇利は涙をこぼしそうになりながら笑った。 「今回は一緒に行けなくてごめんね。とてもさびしかった。こっちでひとりでいるのはつまらないよ。勇利はさびしがってるのは自分だけだと思ってるかもしれないけど、俺のほうこそせつない思いをしてるんだよ。きみはそれをわかってないだろう」  ぼくのほうがさびしいもん、と勇利は思った。ヴィクトルこそぜんぜんわかっていない。 「勇利は俺がきみをどれほど愛してるか、ちっとも理解してないからね。いつかしっかり教えてやろうと思ってるんだ。いいかい? お断りだと言われてもそうするよ」  勇利は笑顔になり、客席からも笑い声が聞こえた。 「いま、ヴィクトルったらこんなことを言って、ぼくが金メダルを獲れてなかったらどうするつもり? ──なんて思ってるだろう?」  そのとおりだったので、勇利はさらに笑ってしまった。 「金メダルは獲るさ。俺の勇利だ。当たり前だ」  そのひとことに、勇利は胸がずきずきと甘く痛んだ。ヴィクトルは勇利が勝つといつでも信じてくれている。 「早く勇利に会いたいよ」  ヴィクトルはゆっくりと言った。 「勇利の金メダルにキスがしたい。きみを抱きしめたい。よくやったねと言いたい。ほかにも──いろいろ、話したいこと、したいことがあるよ」  全部して。勇利は苦しいほどにそう思った。ヴィクトルの話を聞きたかったし、彼のぬくもりを感じたかった。 「勇利の声が聞きたい。いつもの、ヴィクトルは何を言ってるのかわからない、っていうあきれた声でもいいよ」  みんながまた笑った。勇利は口元を両手で押さえ続けた。ヴィクトルは何を言ってるのかわからないけど、でも、そんなところが好き……。 「あるいは──、ヴィクトル、またやったんだね、と言うかな。本当に驚かせるのが好きだねって。──勇利、驚いてくれたかい?」 「うん。すごく……」  勇利はちいさく、ぽつんとつぶやいた。ヴィクトルを愛していると思った。どうしてこんなに好きなのだろう? ずっと好きなのに、どんどん好きになっていく。 「でも、もっと別のことを言われるかもしれないな。ヴィクトル、あれなに? そう言って怒るかな。だって、みんなの前でこんなことをしたら、勇利は恥ずかしがるだろうからね。全世界が見守ってる中で、勇利に愛の告白をしているようなものだから」 「ばか……」  客席がわいているけれど、勇利の耳には入らなかった。彼はいま、ヴィクトルしか見えず、ヴィクトルの声しか聞こえなかった。 「何も恥ずかしくはないさ。ただ、愛の告白は���ってちゃんと、直接言うよ。いつも言ってるけどね」  ヴィクトルがほほえんだ。 「勇利」 「なに……」 「俺に会いたいと思ってくれるかい?」 「当たり前だよ……」 「俺のことを考えてくれてる?」 「うん……」 「俺も勇利に会いたいよ」 「会いに来てよ……」 「早くおまえをこの腕につかまえたい」 「そうして……」 「すぐに抱きしめたいんだ──」  勇利のすらっとした後ろ姿を、ヴィクトルはリンクサイドからみつめていた。夢にまで見た勇利の立ち姿だ。「離れずにそばにいて」の青い衣装がよく似合っている。これはヴィクトルがもともと着ていたものと同じ型で、色だけがちがっていた。ヴィクトルは、それに合わせてつくった、もととはちがう衣装を身につけようと思ったのだけれど、やめておいて、黒いスーツにした。自分はいま、勇利のコーチなのだ。そのために来たのだ。それならばこの瞬間は、これ以外、着るべきものはない。  勇利は口元に両手を当て、夢中で大きな画面を見ている。彼がどれほど情熱的な目つきをしているか、後ろからでもわかった。そのまなざしを、もうすぐ浴びることができるのだ。  ヴィクトルは苦しいほどに胸が高鳴った。ほんの二ヶ月のことなのに、もう何年も勇利と会っていない気がした。足がふるえそうで困ってしまった。みっともないまねをするわけにはいかない。転ぶなんてもってのほかだ。勇利の前では、かっこうよいヴィクトルでいなければ。せめて氷の上にいるときは──。  ヴィクトルはエッジカバーを外した。ゆっくりと氷に踏み出すと、すぐに気がついた観客が、ざわっとざわめいた。勇利は熱心に画面のヴィクトルを見ている。まったくまわりに注意を向けていない。ヴィクトルは静かにすべり始めた。 「でも、もっと別のことを言われるかもしれないな。ヴィクトル、あれなに? そう言って怒るかな」  響く自分の声を聞き、ヴィクトルは微笑した。勇利は怒っているときも魅力的だ。とびきりかわゆいのだ。しかし、いまは笑って欲しい。全世界を前に、こんなふうに愛の告白をしても。 「勇利。俺に会いたいと思ってくれるかい?」  勇利の背中が近づいてきた。 「俺のことを考えてくれてる?」  ヴィクトルは頭がおかしくなりそうなほど、勇利のことしか考えていなかった。 「俺も勇利に会いたいよ」  そうだ。だからこうして会いに来たのだ。 「早くおまえをこの腕につかまえたい」  あとすこし。ほんのすこしで……。 「すぐに抱きしめたいんだ」  そう……。  ──いますぐに。  勇利は、歓声がどんどん大きくなっているのに気がついていなかった。彼は画面の中のヴィクトルだけをみつめていた。だから、ヴィクトルが背後から突然腕にふれ、そのまま引き寄せて抱きしめたとき、心底からびっくりしたようだった。 「え……!?」  勇利は振り返り、そのうつくしく澄んだ瞳にヴィクトルを映して、大きく目をみひらいた。彼は悲鳴を上げ、慌てたようにヴィクトルから離れ、向き直って、両手で口元を覆った。信じられないというそのそぶりがかわいくて、ヴィクトルは笑ってしまった。 「え? え? うそ……なに……どういうこと……?」  勇利はかぶりを振りながら、じりじりとあとずさりし、大画面と、すぐ前にいるヴィクトルとを見くらべた。ヴィクトルが腕をひらいても、まだ信じられないようで動かなかった。 「なんで? うそでしょ? なんでヴィクトルが……」  彼はあまりのことに可笑しくなったのか、かすかに笑った。しかしすぐにその表情は泣き顔になり、顔じゅうぐしゃぐしゃにすると、声を上げて泣きながらヴィクトルに駆けよってきた。 「ヴィクトル……!」  勇利はヴィクトルにしがみつき、ヴィクトルも力いっぱい抱き返した。ふたりを祝福の声と拍手が包んだ。 「ヴィクトル、ヴィクトル、ヴィクトル……」  勇利の声は嗚咽にまじって聞き取れないくらいだった。彼はヴィクトルにほっぺた���すり寄せ、顔を上げると、両手を伸べて頬を包みこんだ。ヴィクトルは勇利の腰を抱いたまま、彼に夢中でキスをした。 「勇利……」  幾度もくちびるを合わせては離し、勇利の瞳をのぞきこんだ。それはひどくうるんでいて、涙は、あふれては頬を流れ落ちていった。 「う、ひっく、えっ、ヴィクトル、あぁん、ヴィクトル、う、ううっ、あーん、あーん……」  勇利は泣きじゃくり、またヴィクトルにしがみついた。ヴィクトルは勇利の髪にくちびるを押し当てた。 「勇利、会いたかったよ。ようやくだ……」  勇利はしゃくり上げるばかりで、何も言わなかった。ときおり首をもたげては、本当にヴィクトルなのか、消えはしないのかと確かめるので、そのたびにヴィクトルは接吻した。 「もう離さない。離れないよ」  勇利のふるえる指が、またヴィクトルの頬にふれた。おそるおそる……。ヴィクトルは鼻先をこすりあわせ、くちびるをついばんだ。そして長いあいだ勇利を抱きしめ続けた。勇利はいつまでたっても泣きやまず、ずっと激しく嗚咽を漏らしていた。ヴィクトルはくちびるで勇利の涙をぬぐい、いとしい子の額にくちづけしてささやいた。 「愛してるよ、勇利」  勇利は勢いよくヴィクトルに抱きついた。ヴィクトルはそのしなやかな肢体を横向きにかるがると抱き上げて、たまらなくいとしいという笑顔を向けた。勇利はヴィクトルの首筋にかたく腕をまわし、肩口に顔を伏せて全身をふるわせた。 「驚いた?」 「…………」 「最高だっただろう?」 「…………」 「俺は最高だったよ」  ベッドに並んで座り、ひと落ち着きしても、勇利はヴィクトルの腕を抱きしめ、肩にもたれかかったまま離れようとしなかった。ヴィクトルも彼から離れるつもりはなかったので、それでいっこうにかまわなかった。 「おなかはすいてないかい?」 「…………」 「何か飲む?」 「…………」  勇利が静かに目を上げた。長いまつげと、うるおいを帯びたチョコレート色の瞳を見たヴィクトルは、そっと彼にキスをした。勇利がねだるようにすり寄ってきた。ヴィクトルはもう一度くちびるを合わせた。 「勇利、何か言ってくれ。声が聞きたい」 「…………」  勇利は口元に指を押し当て、じっとヴィクトルをみつめた。その目つきだけでヴィクトルはくらくらした。勇利のこの目によわいのだ……。勇利は可憐なくちびるをひらき、ヴィクトルの耳元にささやいた。 「ヴィクトル……」  名前を呼ばれただけなのに、全身がしびれるような感覚に襲われた。なんという幸福……。ヴィクトルはくるおしいほどの胸のうずきに耐え、勇利の耳に口を近づけた。 「勇利がいることで、俺は完全になれるような気がするよ」 「ヴィクトル……」  勇利が続けた。 「どうしてわかったの……?」 「何がだい……?」 「ぼくが会いに来て欲しいと思ってたこと。それと……、ぼくがいますぐキスして欲しいって思ってたこと──」  ヴィクトルは言葉が終わらないうちにくちびるを合わせた。 「こうかい?」 「…………」 「こう?」  何度も何度もくちびるを押し当てると、「そう……」と吐息のような勇利の声が答えた。彼の目からこぼれた新しい清廉な涙にヴィクトルはキスをした。 「どうして来てくれたの……?」 「会いたかったからさ」 「どうして会いたかったの……?」 「勇利を愛してるし、俺は勇利のコーチだからね。勇利はシーズンの初め、試合で失敗して泣いたね。あのとき、俺は勇利に必要とされてるんだと思った。もし失敗しなくても、やっぱり必要とされてるんだ。失敗したらなぐさめて力になってあげられる。失敗し��かったら──、抱きしめて褒めてあげられる。俺はそれをしたかった。勇利が泣くときも笑うときも、そばにいたいと思ったんだ」  勇利は泣きながらほほえみ、ヴィクトルの頬にふれてキスをしてから、金メダルを取り出した。 「キスして」  ヴィクトルは勇利のメダルにくちづけし、それから勇利にも接吻した。そして彼の黒髪を撫で、微笑してささやいた。 「ジャンプでは転ばなかったね?」 「うん」 「ステップアウトもしなかった?」 「しなかった」 「回転は足りてたかい?」 「ひとつも刺さらなかった」 「タッチダウンは?」 「しなかった」 「スピンも安定してただろうね?」 「ずっと数を数えてた」 「ステップのクラスタは完成した?」 「した」 「全部完璧だね?」 「…………」  勇利は口元に手を当てて考えこんだ。 「完璧かどうか……は……」  ヴィクトルは笑いだした。 「そうだ。その向上心こそ大切なものだよ。次は世界選手権だから」  勇利はヴィクトルのネクタイにふれ、その結び目をすこし直した。彼はつぶやいた。 「かっこいい」 「そうかい?」 「似合ってる」 「勇利にそう言われると得意になるよ」 「ぼく、エキシビションで『離れずにそばにいて』をやったんだ」 「見てたよ。すてきだった。デュエットを一緒にしたかったね。かっこよく似合ってるスーツ姿だけど」 「だめ……」  勇利は甘えるようにかぶりを振った。 「コーチ姿の俺じゃいけないかい?」 「そうじゃなくて」  勇利は気恥ずかしそうに答えた。 「あのときは、ぼく、何がなんだかわからなくて、泣いちゃって、とてもすべれなかったから……」  ヴィクトルはほほえんだ。 「あとで、あの瞬間の動画をふたりで見よう」 「やだ。見ないで」 「なぜ? きっとすてきだよ」 「恥ずかしい」 「ちっとも恥ずかしくなんかないさ……」  ヴィクトルは勇利の手を握った。勇利が顔を上げた。ふたりのくちびるが出会った。勇利がそっとまぶたを上げた。 「ねえ……」 「なんだい?」 「ヴィクトルはいつか、ぼくが失敗したあの試合で、ぼくについて話してくれたね……」 「ああ、そうだったね」 「ぼくのトリプルアクセルはなめらかで、ルッツは正確無比だって」 「そうだ」 「ヴィクトルも……」  勇利は、濡れたまつげの向こうから、みずみずしく澄んだ愛くるしい瞳をきららかに輝かせ、聡明そうに言った。 「ヴィクトルもぼくの望みをかなえるときはなめらかで、ぼくの望みをくみ取る力は正確無比だよ。それと……ぼくも愛してる」
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idiotect · 4 years ago
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ちょっとだけ、クラウドがホラーちっくなおはなしでっす。
なんでもOKの方推奨~~~~!
「クラウド!!!!」
 目を離した刹那。本当にそれは一瞬で。  クラウドの身体を、ヤズーとロッズが放った銃弾が貫いていた。そして、次の瞬間、振りかぶった彼の大剣と沢山のマテリアから発動した魔法が衝突し、目も開けていられない程の白い爆発の後、どこを探しても、いくら名前を呼ぼうとも、世界中を何周としても、彼の姿はとうとう見つからなかった。  rêve ou réalité  あの日の雨で星痕症候群の患者が救われて幾日が過ぎただろうか。エッジの街はまだまだ遠方から病を治しに来る人々でごった返している。世界中に降った輝くような雨は、それを浴びた人、もの、すべてを浄化したけれども、その時、デンゼルのように屋根の下に居た人も多く、噂を聞きつけた人々で伍番街の教会は連日中に入れないほどの人出だそうだ。混乱が生じるといけないので、リーブをはじめとしたWROが指揮をとっているらしい。仲間達も手が空いている者はそれを手伝っているという。  そんな中、ティファは一人、店を再開した。  手伝いには行かなかった。仲間達も来なくていい、十分だ、と言っていたし、寧ろ、店もやらずに休んでいたらいいんじゃないか、とも言われた。それというのも、あの日から、ティファは連日連夜、クラウドを探していた。そして、そうなることは傍目に見ても分かりきっていたのに、精神のバランスを崩してしまったのだ。  特に深刻なのは睡眠だった。  ティファは、夢を見る。  その夢では、皆が見守る中���クラウドは教会の泉の中に現れて、ただいま、と言った。そして、マリンとデンゼルと4人で手を繋いで、セブンスヘブンに帰ってきた。仲間達皆で祝杯をあげてご馳走を食べて、これでもかと酔いつぶれてそして、二人、同じベッドで眠った。 「…ティファ?」  ふと、柔らかい音が響て、ティファは瞼を開いた。 「…マリン。…ごめん、寝てた?」 「うん。…あのね、そろそろ酒屋さん来る時間だな、って思って」  重たい瞼を持ち上げて、ティファは時計を見た。いつから意識を失っていたのか。確かに、もうすぐ納品の車が来る時間だ。 「もうこんな時間だったんだ。起こしてくれてありがとう、マリン」  マリンは少しだけ眉をよせて、うん、と小さくうなずいた。  睡眠障害。そう診断されて日が浅い。  日中、ぼうっとしているとすぐ寝落ちてしまうのだ。だからなのか、寝すぎて眠い悪循環で、ずっと、けだるさが体中にまとわりついている。病院にも行ったが、おそらく精神的ショックをやわらげようと、脳が眠るよう過剰に指示を出しているのでしょう、そういった診断だった。規則正しい生活をすれば、じきによくなりますよ、と。  その為、ティファは一旦クラウドの捜索を諦め、日中起きていられる時間をフルで使って店の開店準備をし、夜は精一杯働いた。働いている間は気がまぎれるし、寝落ちてしまう事もない。ティファだって、夢うつつのまどろみは望んではいなかった。そういう中途半端な眠りが、一番 精神的によくない夢を見せた。だから、ぐっすりと眠る必要があるのだ。潜在意識が届かないほどの、深い深い眠りに。 「こんにちはー!配達でーす!」  元気な声が裏口の方からして、ティファは慌てて走っていった。 「ごめんなさい、ぼんやりしてて… …あれ、いつもの方はお休みですか?」 「あ~… …あの、前の人、突然辞めたんっスよ」 「え!?何かあったとか…?」 「えっと、いや、う~ん、詳しくはわからないんです」  どこか言いにくそうに青年は笑うと、ティファが注文していた酒類の木箱を重たそうに置いた。明らかに慣れてなさそうな様子だ。   (…一昨日来た時は、いつも通りだったのに…)  顔なじみのいつもの酒屋の配達員は、もうセブンスヘブンの担当になって随分長かった。真面目な人柄で、仕事も丁寧で。それに、いつも、ちょっとした雑談とか、おまけとかしてくれるくらいには親しかった、と思っていただけに、何も言わずに突然やめた、という事実を、ティファはいまいち飲み込めなかった。人間関係のもめごとだろうか?職場環境が悪かった、とか…?そんなもやもやが、顔に出ていたのかもしれない。 「あ~、あの…」  悩んだ挙句、のような歯切れの悪さで、新担当の青年が口を開いた。 「ここだけの話なんですが、アイツ、クスリやってたみたいで…」 「え!?」 「中毒っぽくなって入院したって話なんです���。…言わないでくださいよ。あ、オレも他の店のヤツ皆、クスリやってるヤツなんか後いませんから、そこは安心してください!」  それだけ早口で言うと、青年は帰っていった。 (クスリ、…)  世界が救われたからといって、すべてが平和になるなんて思ってはいない。ついこの間も、常連客の一人が最近店に来なくなったので、いつも一緒に飲んでいた人に聞いたところ、借金を踏み倒して蒸発したとか。 (分かってはいる、、けど…)  今更、正義漢ぶるつもりだってさらさらなかった。でも、命を落とした仲間達の事を想うと、気持ちの収まりどころが分からなくなる時も時々あった。 ***  それから数日後の事だ。その日も店は大繁盛だった。  けっして広くはない店の中、皆が幸せそうに笑っている様子を見渡していて、ふと、カウンター席の端に一人で座る男性にティファの目が留まった。彼もまた、常連客の一人だった。いつもは陽気に、他愛もない色々な話をしてくれる彼だが、今日は何かあったのか沈んだ表情をしていた。 「おかわり、作ります?」  それとなく近寄って話しかけると、空のグラスを両手で抱えて何か考え事をしていたらしい男性は、びくりと身体を震わせて、そしてあわあわと顔を上げた。 「あぁ、ティファちゃん。もう、たくさん飲んだから、この辺にしとくよ」 「ふふ、飲み過ぎは良くないですものね」  そう、ティファが頷くと、男性はほっとしたようだった。  ティファは皿を拭く続きに戻った。一枚一枚、丁寧に布巾で拭いて、棚にしまっていく。その工程をずっと見ていた男性だったが、最後の一枚が拭き終わった時、おもむろに口を開いた。 「ティファちゃんは眠れなくなったことはあるかい?」 「…私は、、最近寝すぎるくらいなので…。…眠れないんですか?」  男性はただ頷いた。 「最近、ね…。酒でも飲めば眠れるかと思ったんだけど、そうでもないみたいだ。…でも、…いや。気のせいかもな…」  そう独り言のように呟いて、そして顔を伏せた。 「あ、そうだ、これ使ってみます?」  ティファはポケットから小さな匂い袋を取り出した。ハーブの優しい匂いが香るそれは、精神を落ち着ける働きがある、とかでマリンとデンゼルと一緒に作ったものだった。 「なんだい?」 「お守りみたいなものです。昨日、子供達と作ったんです。眠れるようになるといいんだけど」  男性はその袋を受け取ると、すうっと匂いを嗅いで、そして微笑んだ。 「いい匂いだ。…よく眠れるかもしれない」  しかし、その後、それまで定期的に来てたその男性を店でみかける事はなくなった。 ***  ユフィが来た時、ティファはこの事を思い切って話してみた。 「え~、ティファの思い過ごしだって。そんなことないよ」 「でも…なんだか、気になって」 「そんなん、世の中にはごまんといるって。たまたま、店の常連客が2人来なくなっただけじゃん」 「酒屋さん入れると3人だよ」  ティファが即座に反論すると、ユフィはあからさまに大きなため息をついた。 「じゃ、3人。…だいたいさ、ティファ働きすぎなんだよ」 「そんなことないよ」 「そんな事あるって」 「だって……ユフィとか皆の方が働いてるでしょ…」 「アタシ達は、ほら、、、どこも悪くないからさ」 「私だって、ただ、寝すぎるだけで…」 「それが心配なんじゃん。皆心配してるよ。クラウドならぜったい止めてる……」  名前を出してしまって、ユフィはしまった、と顔をしかめる。  でも、ティファの表情はみるみるうちに曇っていった。 「寝すぎるとか、そんな事してる場合じゃないのにね。早く、クラウド探してあげないと…」 「あ〜……」     その時だった。ぐらっと視界が揺らいで、ティファはテーブルに手をついた。 「ティファ!?」 「ごめん、ゆふぃ、ちょっと横になる…」 「大丈夫!?苦しい??」 「ううん…だいじょうぶ…」 「全然大丈夫に見えないよ!…何か薬とか…」 「…ほんとうに、だいじょうぶだから…」  それは本当だ。これだけ強烈な眠気ならば大丈夫。今回は深い眠りに違いない。 「ねむいだけだから…」 「ティファ!」  ユフィの悲鳴のような声が遠くに聞こえて、そして、消えた。  ・  ・  ・  ・  無音の後の静寂。 「…ティファ」  真っ暗な世界に響いた、大好きな、やさしい声。  ティファは目を開いた。 「…ク���ウド?」 「おはよう、ティファ」 「…おはよう」  そして、そのままクラウドの首に抱きついた。 「…ティファ?」 「…怖い夢を見たの」 「……どんな?」 「…クラウドが居なくなる夢」 「俺はここに居る」 「うん。…でも、家出した」 「それはっ…ごめん。もうしない」 「絶対?」 「うん。絶対だ」  耳元で響いた、困ったような、でもどこか嬉しそうなその声に、ティファは少しだけ身体を離して、クラウドの顔を見た。  そこは二人の寝室で、そして、碧い瞳が少し心配そうに、こちらを見ていた。  だから、そのきゅっと一文字に結ばれた唇に、ティファはキスをした。即座にクラウドはそれに答えてくれて、彼女の閉じていた唇は割って入ってきた舌によって開けられる。顔の角度を変え、もう一度、と落ちてきた熱い吐息に、再度入ってきた舌に、身体の奥が疼いて熱を持ち始める。 「…ティファ」 「ん?」 「…もう少しだから」 「え?」 「…もう少しだ。だから…」  こつんと額と額が触れ、地肌に直に触れるクラウドの指に力が籠もった。次の瞬間、彼がティファを掻き抱いた腕が強くて、息が苦しい。 「……。」 「え?」 「」 「クラウド?なんて言ったの?」 「クラウド??」  パッと目が覚めた。  そこは夢に見たのと同じベッドの上。  ただ、そこにはティファ一人だった。 (…聞いちゃいけなかったんだ)    ティファは起き上がった。目を向けた窓の外は、空が白ばんでいる。夜明け前の静かな靄のかかった外の景色。窓にカーテンがかけられていないのは、そんな時間から眠っていたからだろうか。  ティファはただぼんやりと窓の外をみつめた。  徐々に外は明るさを増し、ふとした瞬間、光の糸が空に放たれ、じんわりと頭を見せた陽の輝き。それは一瞬で空を金色に染めた。 (…………そうすれば、まだ一緒にいられたのに)  深い夢は幸せに満ち溢れていて、そして残酷だ。夢はティファの発言を求めてはいない。いつも一方的に始まって、唐突に終わった。  夢の中で二人は言葉もなく飽きもせず、一晩中愛し合った。夢の中で目が覚めると、いつもそこにはクラウドの顔があって。そして、目が合う。唇が重なる。クラウドの手が服の下から肌に触る、その少しだけ冷たい感触までもありありと伝わってくる。だから、いつも全力でそれに答えてしまう。すると、煌々と濡れた唇がティファの身体中にキスを落としていく。全身に余すことなく、彼の、クラウドの感触が刻み込まれていく。そして、夜が明けるのだ。  ……でもそれは、最後まで、間違えなかった時。間違うと、今みたいに夜明け前に目が覚めてしまう。 (…次は気をつけなくちゃ)  話してはいけない、そう訴えるように、夢の中のクラウドはティファの問にはほとんど答えない。それなのに、今日の夢の中の彼は何か伝えたそうでもあった。それは、ティファが咄嗟に抱き着いてしまったからなのかもしれないが。でも、、、 (わかってる、所詮、あれは夢…)  触れる感触も、耳に響くその声も限りなくリアルで、今の生きる喜びで、でも、夢、なのだ。  と、行き場を失ったままになっていた身体の中の熱がうずいて、ティファは自分で自分を抱きしめた。  その時、違和感を感じた。  恐る恐る、自分の腕を見る。そこには、いつできたのだろうか、きつく握りしめられたような、赤い指の跡が浮かんでいた。 *** 「ティファさん…顔色悪くないですか?」 「え!?そ、そうですか…?」  常連客に突然指摘され、ティファは思わずグラスを落としそうになった。幸いにもそれはまた手の中に留まり、最悪の事態は防げたものの、一緒になって飛び跳ねた心臓はドキドキと大きな音を響かせている。 「疲れてるんじゃないかって、前から心配してたんですよ。最近、表情が暗い」  常連客は尚も続ける。  しかし、その彼の心配してくれているのであろう口調が、妙に耳に触るような気がして、ティファは俯いた。 「…昨日夜更かししたからかな。今日は早く寝ます」  ティファはそう言うと、素早く客に微笑み、そしてまた視線を落とす。  作業をしている風を装って、もう磨き上がれているグラスを再度拭き始めた。 「心配だな…僕が家族なら、早く休めって、今日はもう貴女を休ませますよ」 「ふふ、そうですね。もうすぐお店も閉店時間だし、今日は早めに閉めちゃおうかな」 「ティファさん、僕は本気で心配しているんですよ」  ああ、嫌だ、咄嗟にそう思ってしまって、ティファは耳を塞ぎたくなった。 「僕だったら、貴女みたいな人を一人で働かせたりしない」  私は、働きたくて働いているの。働かされているわけじゃない。 「そうだ、僕が代わりに皆に言いましょうか。今日は閉店しますって」  やめて。  それは、それは………クラウドの役目。  ―ティファ、休んだ方がいい。  ―すまない、今日は早いが閉店にする。  脳裏に心配そうな彼の姿が浮かんだ。その表情が夢の中のクラウドと重なる。ティファ、と心配そうにのぞき込む、吸い込まれそうなほど碧い瞳。  彼の、……クラウドの場所を、私から取らないで。  ティファは顔を上げると、にっこり、とほほ笑んだ。 「いえ、自分で皆さんに言ってきます。お会計もあるし…あ、先に頂いてもいいですか?」 「えっ、ああ…」  代金を受け取って、ティファはカウンターから出た。そして、テーブル一つ一つに声をかけていく。その後ろで、先ほどの常連客は店を出たようだった。  それからすぐの事だった。  ドン    そんな鈍い大きな音が店の外から響いた。 「なんだぁ…?」  誰かがそう呟き、誰かが外へ様子を見に行った。しばらくして戻ってきた男は、席に座りながら隣の客に言った。 「なんでも、近くで事故があったらしい。モンス���ー車だかに人がひかれたんだとよ」 「へぇ。千鳥足で歩いてた酔っ払いか」 「そこまでは分からなかったなぁ」  ・  ・  ・ 「ティファ」 「…クラウド?」 「おはよう、ティファ」 「…おはよう」  ティファはクラウドに抱きついた。 「…ティファ?」 「クラウド、どこに居るの?」 「………ここに居るだろ?」 「………。」  いやいやをする小さな子供のように、ティファは頭を横に振った。 「でも、」 「ティファ」  クラウドはティファの名前を呼ぶ。そして、その唇はティファの耳の外側をなぞるように触れたのち、その耳たぶを唇と唇で挟んだ。 「ん…」  漏れ出た声に、耳元に落とされた、ため息のような吐息。 「…もう少しだ」 「…。」 「……だから、それまで…」 「……。」  静かに身体はベッドの上に寝かされる。  一番最初は額だ。つぎにこめかみ。頬、そして、首筋。ゆっくりとクラウドはキスを落としていく。いつも決まった順番。むき出しの腕をなぞるように移動した唇は、手の甲で止まり、そして内側にも。指の一本一本までも。  その動きを見ていると碧い瞳と目が合う。そして彼は切なげに微笑んで、唇と唇が重なった。 「……俺は、ティファの方が居なくならないか不安だ」 「…え?」  覆いかぶさるその大きな身体が闇を作る。 「…………誰も、ティファに近寄らせたくない」 「え?」 「ティファは分かってない、」 「…クラウド?」 「…俺が…どれだけ……」 「クラウド?」  ・  ・  ・  店のドアベルが勢いよく跳ね上がり、近くのテーブルに座っていた初老の男性がそれに気が付いて顔を上げた。 「おう、いつも元気だな」 「あったりまえじゃん!」  その元気のよい声にティファが顔を上げると、それに気が付いたユフィがひらひらと手を振った。 「ティファ~お腹すいた~」 「先に連絡くれたら作って待ってたのに!」  呆れて言うティファに、ユフィは「忍がそんなことしないって」そう真顔で言い返しながらカウンター席に腰を下ろした。 「適当でいい?」 「うん。おいしーやつお願いね!」 「りょうかい」  ティファが調理を始め、ユフィはそれをにこにこ顔で眺めていたが、ふと、思い立ったように口を開いた。 「あれからは増えてない?」 「え?何が??」 「前に、ティファの思い過ごしだって言ったやつだよ」 「う~ん」 「え、また誰か来なくなったの?」 「うん…、でもそれは私のせいだから違うかな」 「ティファのせいって?」 「ちょっと、失礼な事をした、かも…」  その二人の会話が聞こえていたようだ。ユフィの隣に座っていた男が口をはさんだ。 「それさ、よくそこに座ってたヤツ?身なりの良いスーツ着て」  カウンター席はだいたい常連客が座る事が多いため、それぞれが名前は知らずとも顔見知りであることも多い。その男も大概いつも同じ席に座っていたから知っていたのだろう。 「ええ、そうです」 「あいつ、事故にあったって言ってたから、ティファちゃんのせいじゃないさ。治ったらまた来るだろうから、覚悟しといた方がいいよ」 「なんだよ、覚悟って」 「ティファちゃんはモテるんだって」 「はぁ?知ってるし」  ユフィが客に失礼な態度をとっているにも関わらず、ティファはぼうっと呟いた。 「…事故?」  あの日、一番最初に帰った彼。あの後すぐに近くで事故があったと聞いたのは、数日たってからだった。街中に入ってきたモンスターと一般人が衝突したそうだ。もし、それが彼だったのなら。それが、ここに来ていた事が原因なのだとしたら。……これで4人目だ。 (なんだろう…怖い…)  背筋に悪寒のようなものが走って、ティファは身震いをした。次々と姿を消していく顔見知りの人達。それぞれ理由があるにせよ、重なりすぎじゃないだろうか。そして、そう、ティファ自身の体調不良。規則正しい生活を心がけてはいるが、一行に改善が見られない。それどころか、日に日に悪化しているような気さえする。 「ねぇ、ユフィ、やっぱり…」  そう言いかけたティファだったが、ユフィはあ、という顔のまま、丁度電話に出てしまったところだった。 「もしもーし!ユフィちゃんだよ。…え、今?…別にいーじゃん、どこでも」  不貞腐れた顔をした彼女だったが、途端に表情が変わった。 「ティファ今仕事中だから。は?ティファなら目の前に……。……。分かった。すぐ行くよ」  電話を切るなり、ユフィはティファを見て真剣な顔になった。大きく息を吸い込み、そして、 「…ティファ、落ち着いて聞いてね。  あのさ、クラウドが見つかったって。今から一緒に行こう」  その後のあれこれを、ティファはあまり良く覚えていない。  ユフィに手伝ってもらって、急遽店を閉めると、マリンとデンゼルを預けて、二人は迎えのヘリに乗った。暗夜の闇を掻き分けるように進んだ先に見えてきたのは、海の中にぽっかりと灯りを灯した孤島だった。  ヘリはその島に一つだけある診療所の屋上上空をホバリングし、二人は飛び降りるように建物に降り立つとそのまま迎えに来ていた看護師に連れられて中に入った。  そして、一つの個室へと案内された。 「…クラウド?」  壁もカーテンもベッドも、真っ白な部屋だった。そこにクラウドは眠るようにベッドに身体を横たえていた。 「今朝、ミディール沖で見つかったようです」  静かな声でリーブが言った。 「おそらく、海底のライフストリームから吹き上げられてきたのでしょう。驚いたのは、どこにも怪我ひとつなかった点です。どうやら、ライフストリームの中で再生していたらしい。身体中のライフストリーム濃度が極端に高くなっています。でも、人体に害があるレベルではない。あくまで、傷の再生にだけつかったようです。それがクラウドさんの意思なのか、ライフストリームの意思なのか、それはわかりませんが」 「……目は、覚めない…?」  真っ白な部屋で閉じられている金色のまつ毛。それは照明に透けるように輝いてはいるが、しっかりと閉じられたままだ。 「医者が言うには、いつ覚めてもおかしくない状態らしい。…何か刺激が必要なのかもしれない。それで、ティファさんに来てもらったわけです。ティファさんが来れば、反応があるかと思いまして…」  気遣わしげにリーブは言った。「ティファさんの体調を考えて、目が覚めてからの方が良い気もしたのですが…」そう言葉を濁した。  ティファはクラウドの傍までくると、身体の横に力なく置かれている手を取った。両手で包んで、暫く待ってみた。でも、特に何も変化はなかった。 「…少し、二人きりにしてもらうことは出来ますか…?」  リーブとユフィ、そして看護師はうなづきあって部屋を出ていった。  その真っ白な部屋に、ティファは眠ったままのクラウドと二人きりになった。 「…クラウド?」  呼びかける、でも、その声は白に吸い込まれていく。  眠るクラウドは、本当にただ眠っているかのようだった。規則的に胸が上下し、顔色も良い。でも、全身の力が抜けていて、意識はまだ、どこか遠い世界にいるのが分かる。 「……帰ってきて、クラウド」  ティファはクラウドの顔を見つめた。あの碧い瞳が見たかった。そして、言って欲しかった。『ティファ』と。クラウドが言うその言葉をどれだけ夢に見たことだろう。  ティファは、クラウドの眠るベッ��の上に手をついた。そして、そうっとクラウドの額に唇を落とした。つぎにこめかみ。頬、そして、首筋。ゆっくりとティファはキスを落としていく。腕をなぞるように移動した唇は、手の甲で止まり、そして内側にも。指の一本一本までも。そして、クラウドの顔を見た。 「……………………ティファ?」  薄く開いた口から、細い小さな声が漏れて、そして、ゆっくりと、碧い瞳が開かれた。 「っ、おはよう、クラウド」 「……おはよう、ティファ」    碧い瞳と目が合う。そして彼は切なげに微笑んだ。顔をそっと近づけると、ようやく、唇と唇が重なった。抱きしめた体はまだうまく覚醒していないようだったけれども、クラウドはゆっくりとティファの背中に手を回し、そしてぎゅっと力を入れた。 「ただいま」 「うん、おかえりなさい…」  笑顔と共に堪えるように、きゅっと一文字に結ばれた唇。頭を少し持ち上げると、クラウドはそこにキスをした。ティファの紅い瞳から、涙がぽろぽろと零れていった。 ***    クラウドが帰ってきて、ティファの体調は瞬く間に良くなった。マリンやデンゼルはもちろん、仲間達も店に顔を見に寄っては喜んでいった。  そして、セブンスヘブンに戻ったクラウドを、家族以外で一番?大歓迎したのはまさかの年配の客達だった。そんなに仲良かった…?とティファが思ってしまうくらいだ。彼らは配達を再開したクラウドが仕事を終えて店に戻るなり、 「おお、クラウドさん良かったな~!俺たちもこれで安心して飲める」 「やっぱり、ここにはクラウドさんが居ないとダメだな」  そう彼を囲むとバシバシと酔い任せの遠慮なしに背中を叩くものだから、クラウドが嫌がらないかと少し心配した。しかし、 「当然だ」  そうキリッとした顔で返事をしていて、思わずティファはびっくりしてしまったのだが。  その後、酒屋の配達人は退院し、客として姿を見せた。「薬!?違いますよ、俺、アル中で…だから今日はジュースお願いします」そう情けなさそうに笑った。蒸発した、と言われていた常連客もまた店に来るようになった。「え!?出稼ぎに行ってただけだって」眠れなくなっていた男も、「眠れるようになったから、溜まってた仕事を片せてやっと来れた」そう笑った。あの事故にあった男も、退院したそうだ。  でも、4人共、クラウドと顔を合わせた瞬間、ぎょっとしたように怯えて見えたのは、ただの思い過ごしだろうか。  でも、あれから、魔晄色が少し強くなった瞳をのぞき込んでティファは言う。 「やっぱり、クラウド少し変わったね…?」  ティファの紅い瞳を見上げてクラウドは答える。 「…だったらティファが教えてくれ」  軟らかい微笑みをたたえて、ティファを抱きしめ、小さく呟く。「ティファが俺を完全にしてくれる」 「どうやって?」  クラウドの唇はティファの耳をなぞり、そして囁いた。 「……夢で見たように」 fin.
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hananien · 4 years ago
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【SPN】庭師と騎士
警告:R18※性描写、差別的描写
ペアリング:サム/ディーン、オリキャラ/ディーン
登場人物:ディーン・ウィンチェスター、サム・ウィンチェスター、ボビー・シンガー・ルーファス・ターナー、ケビン・トラン、チャーリー・ブラッドベリー、クラウス神父(モデル:クラウリー)
文字数:約16000字
設定: 修道院の囚われ庭師ディーン(20)と宿を頼みに来た騎士サム(24)。年齢逆転、中世AU。
言い訳: 映画「天使たちのビッチナイト」に影響を受けました。ボソボソと書いてましたがちょっと行き詰まり、詰まってまで書くほどのものじゃないので一旦停止します。
 自分のことなら肋骨の二本や三本が折れていたとしても気づかないふりをしていられるが、部下たちを休ませる必要があった。
 王国騎士の象徴である深紅のマントは彼ら自身の血に染められ、疲労と傷の痛みとで意識がもうろうとしている者も数名いた。何よりも空腹だった。狩りをしようにも、矢がなく、矢を作るためにキャンプを張る体力もない。  一度腰を下ろせばそこが墓地になるかもしれなかった。  辺境の村を救うために命じられた出征だった。王はどこまで知っていたのか……。おそらくは何も知らなかったのに違いない。そうだと信じたかった。辺境の村はすでに隣国に占領されていた。彼らは罠にかけられたのだった。  待ち構えていた敵兵に大勢の仲間の命と馬を奪われ、サムは惨めな敗走を余儀なくされた。  森の中を、王城とは微妙にずれた方向へ進んでいるのに、サムに率いられた騎士たちは何もいわなかった。彼らもまた、サムと同じ疑いを胸に抱いていたのだ。全ては王に仕組まれたのではないかと。  誰一人口には出さなかったが、森の中をさ迷うサムに行き先を尋ねる者もいなかった。  なけなしの食糧を持たせて斥候に出していたケビンが、隊のもとに戻ってきた。彼は森の中に修道院を発見した。サムはその修道院に避難するべきか迷った。森は王国の領内だ。もしも王が裏切っていた場合、修道院にまで手を回されていたら彼らは殺される。  だが、このままでは夜を越せない者もいるかもしれなかった。サムは未だ六人の騎士を率いていて、王国よりサムに忠実な彼らを何としても生かさなければならない。  サムはケビンに案内を命じた。
 ディーンは自分の名前を気に入っていたが、今ではその名前を呼ぶ者はほとんどいなかった。  修道院では誰もがディーンのことを「あれ」とか「そこの」とか表現する。もしくは彼自身の職業である「庭師」とか。彼自身に、直接呼びかける者はいない。なぜなら彼は耳が聞こえないし、口も利けないから。  ディーンは今年で二十歳になる……らしい。彼は子供のころに両親を盗賊に殺されて、もともと身を寄せる予定だったこの修道院に引き取られた。ただし支払うべき寄付金も盗賊に奪われたので、修道士としてではなく庭師として働いて暮らしている。  夜中、ディーンはフラフラになりながら修道院を出て、納屋に帰り着いた。家畜小屋の横の納屋が彼の住処だ。神父が彼に酒を飲ませたので、藁の下に敷いた板のわずかな段差にも躓いてしまった。  そのまま藁の中にうずくまって、眠ってしまおうと思った時だ。納屋の戸の下の隙間から、赤い炎の色と複数の人影がちらついて見えた。  ディーンは、静かに身を起こした。少し胸やけはするが、幻覚を見るほど酔ってはいない。ディーンがいる納屋は、修道院の庭の中にある。修道士たちをオオカミやクマから守る塀の、内側だ。修道士たちは夜中にうろついたりしないから、この人影は外部からの――塀の外、森からの――侵入者たちのものだ。  門番の爺さんは何をしていたのか。もちろん、寝ているんだろう、夜更かしするには年を取りすぎている。今までも修道院が盗賊被害には遭ったことはあるが、こんな夜中じゃなかった。オオカミにとってはボロを着ていようが聖職者のローブを着ていようが肉は肉。強襲も山菜取りも日差しの入る間にやるのが最善だ。  では何者か。ディーンはそっと戸を開けて姿を見ようとした。ところが戸に手をかける間もなく、外から勢いよく開けられて転がり出てしまう。うつ伏せに倒れた鼻先に松明の火を受けてきらめく刃のきっさきを見て、そういえば、神父に持たされたロウソクが小屋の中で灯しっぱなしだったなと気づく。  「こそこそと覗き見をしていたな」 ざらついて低い声がディーンを脅した。ディーンはその一声だけで、彼がとても疲れて、痛みを堪えているのがわかった。  「やめろ、ルーファス! 何をしている」  若い男の声がした。ディーンを脅している男は剣のきっさきを外に向けた。「こいつが、俺たちを見張っていた。きっと刺客だ。俺たちがここに来るのを知っていて、殺そうとしてたんだ」  刺客、という言葉に、側にいた男たちが反応した。いったい何人いるんだ。すっかりと敵意を向けられて、ディーンはひるんだ。  「馬鹿な、彼を見ろ。丸腰だ。それに刺客なら小屋の中でロウソクなんて灯して待っているわけがない」 若い声の男が手を握って、ディーンを立たせた。俯いていると首から上が視界にも入らない。とても背の高い男だった。  「すまない、怖がらせてしまった。我々は……森で迷ってしまって、怪我を負った者もいる。宿と手当てが必要で、どうかここを頼らせてもらいたいと思って訪ねた」  背の高さのわりに、威圧的なところのない声だった。ディーンが頷くのを見て、男は続けた。  「君は――君は、修道士か?」 ディーンは首をかしげる。「そうか、でも、ここの人間だ。そうだろ? 神父に会わせてもらえるかい?」 ディーンはまた、首をかしげる。  「なんだ、こいつ、ぼんやりして」 さっき脅してきた男――闇夜に溶け込むような黒い肌をした――が、胡乱そうに顔をゆがめて吐き捨てる。「おお、酒臭いぞ。おおかた雑用係が、くすねた赤ワインをこっそり飲んでいたんだろう」  「いや、もしかして――君、耳が聞こえないの?」 若い男が自分の耳辺りを指さしてそういったので、ディーンは頷いた。それから彼は自分の口を指さして、声が出ないことをアピールする。  男の肩が一段下がったように見えて、ディーンは胸が重くなった。相手が自分を役立たずと判断して失望したのがわかるとき、いつもそうなる。  彼らは盗賊には見えなかった。何に見えるかって、それは一目でわかった。彼らは深紅の騎士だ。王国の誇り高い戦士たち。  幼いころに憧れた存在に囲まれて、これまで以上に自分が矮小な存在に思えた。  「聞こえないし、しゃべれもしないんじゃ、役に立たない。行こう、ケビンに神父を探させればいい」 疲れた男の声。  抗議のため息が松明の明かりの外から聞こえた。「また僕一人? 構いませんけどね、僕だって交渉するには疲れ過ぎて……」  「一番若いしまともに歩いてるじゃないか! 俺なんか見ろ、腕が折れて肩も外れてる、それに多分、日が上る前に止血しないと死ぬ!」  ディーンは初めて彼らの悲惨な状態に気が付いた。  松明を持っているのは一番背の高い、���い声の男で、彼はどうやら肋骨が折れているようだった。肩が下がっているのはそのせいかもしれなかった。ルーファスと呼ばれた、やや年配の黒い肌の男は、無事なところは剣を握った右腕だけというありさまだった。左半身が黒ずんでいて、それが全て彼自身の血であるのなら一晩もたないというのも納得だ。女性もいた。兜から零れた髪が松明の炎とそっくりの色に輝いて見えた。しかしその顔は血と泥で汚れていて、別の騎士が彼女の左足が地面に付かないように支えていた。その騎士自身も、兜の外された頭に傷を受けているのか、額から流れた血で耳が濡れている。  六人――いや、七人だろうか。みんな満身創痍だ。最強の騎士たちが、どうしてこんなに傷ついて、夜中に森の中をゆく羽目に。  ディーンは松明を持った男の腕を引っ張った。折れた肋骨に響いたのか、呻きながら彼は腕を振り払おうとする。  「待って、彼、案内してくれるんじゃない? 中に、神父様のところに」 女性の騎士がそういった。ディーンはそれを聞こえないが、何となく表情で理解した振りをして頷き、ますます騎士の腕を引っ張った。  騎士はそれきりディーンの誘導に素直についてきた。彼が歩き出すとみんなも黙って歩き出す。どうやらこの背の高い男が、この一団のリーダーであるらしかった。  修道院の正面扉の鍵はいつでも開いているが、神父の居室はたいていの場合――とりわけ夜はそうだ――鍵がかかっている。ディーンはいつも自分が来たことを示す独特のリズムでノックをした。  「……なんだ?」 すぐに扉の向こうで、眠りから起こされて不機嫌そうな声が聞こえてほっとする。もう一度ノックすると、今度は苛立たし気に寝台から降りる音がした。「なんだ、ディーン、忘れ物でもしたのか……」  戸を開いた神父は、ディーンと彼の後ろに立つ騎士たちの姿を見て、ぎょっとして仰け反った。いつも偉そうにしている神父のそんな顔を見られてディーンは少しおかしかった。  ディーンは背の高い男が事情を説明できるように脇にのいた。  「夜半にこのような不意の訪問をして申し訳ない。緊急の事態ですのでどうかお許し頂きたい。私は王国騎士のサミュエル・ウィンチェスター。彼は同じく騎士のルーファス。彼は重傷を負っていて一刻も早い治療が必要です。他にも手当と休息が必要な者たちがいる」  神父は、突然現れた傷だらけの騎士たちと、さっき別れたばかりの庭師を代わる代わる、忙しなく視線を動かして見て、それから普段着のような体面をするりと羽織った。深刻そうに頷き、それから騎士たちを安心させるようにほほ笑む。「騎士の皆様、もう安全です。すぐに治癒師を呼びます。食堂がいいでしょう、治療は厨房で行います。おい」 目線でディーンは呼びかけられ、あわてて神父のひざ元に跪いて彼の唇を読むふりをする。  「治癒師を、起こして、食堂に、連れてきなさい。わかったか?」  ディーンは三回頷いて、立ち上がると治癒師のいる棟へ駆け出す。  「ご親切に感謝する」 男のやわらかい礼が聞こえる。「……彼はディーンという名なのか? あとでもう一度会いたい、ずいぶんと怖がらせてしまったのに、我々の窮状を理解して中へ案内してくれた……」  ディーンはその声を立ち止まって聞いていたかったが、”聞こえない”のに盗み聞きなどできるはずがなかった。
 明け方にルーファスは熱を出し、治癒師は回復まで数日はかかるだろうといった。サムは騎士たちと目を合わせた。今はまだ、森の深いところにあるこの修道院には何の知らせも来ていないようだが、いずれは王国から兵士が遣わされ、この当たりで姿を消した騎士たち――”反逆者たち”と呼ばれるかもしれない――がいることを知らされるだろう。俗世から離れているとはいえ修道院には多くの貴族や裕福な商家の息子が、いずれはまた世俗へ戻ることを前提にここで生活している。彼らの耳に王宮での噂が届いていないことはまずあり得なく、彼らがどちらの派閥を支持しているかはサムにはわからない。もっとも王が追っている失踪騎士を庇おうなどという不届きな者が、たくさんいては困るのだった。  出征の命令が罠であったのなら、彼らは尾けられていたはずだった。サムの死体を探しに捜索がしかれるのは間違いない。この修道院もいずれ見つかるだろう。長く留まるのは良策ではない。  かといって昏睡状態のルーファスを担いで森に戻るわけにもいかず、止む無くサムたちはしばらくの滞在を請うことになった。  修道院長のクラウス神父は快く応じてくれたが、用意されたのは厨房の下の地下室で、そこはかとなく歓迎とは真逆の意図を読み取れる程度には不快だった。彼には腹に一物ありそうな感じがした。サムの予感はしばしば王の占い師をも勝るが、騎士たちを不安させるような予感は口には出せなかった。  厨房の火の前で休ませているルーファスと、彼に付き添っているボビーを除く、五人の騎士が地下に立ち尽くし、ひとまず寝られる場所を求めて目をさ迷わせている。探すまでもない狭い空間だった。横になれるのは三人、あとの二人は壁に寄せた空き箱の上で膝を枕に眠るしかないだろう。  「お腹がすいた」 疲れて表情もないチャーリーが言った。「立ったままでもいいから寝たい。でもその前に、生の人参でもいいから食べたいわ」  「僕も同感。もちろんできれば生じゃなくて、熱々のシチューに煮込まれた人参がいいけど」  ガースの言葉に、チャーリーとケビンが深い溜息をついた。  地下室の入口からボビーの声が下りてきた。「おい、今から食べ物がそっちに行くぞ」  まるでパンに足が生えているかのように言い方にサムが階段の上に入口を見上げると、ほっそりした足首が現れた。  足首の持ち主は片手に重ねた平皿の上にゴブレットとワイン瓶を乗せ、革の手袋をはめたもう片方の手には湯気のたつ小鍋を下げて階段を下りてきた。  家畜小屋の隣にいた青年、ディーンだった。神父が彼を使いによこしたのだろう。  「シチューだ!」 ガースが喜びの声を上げた。チャーリーとケビンも控え目な歓声を上げる。みんなの目がおいしそうな匂いを発する小鍋に向かっているのに対し、サムは青年の足首から目が離せないでいた。  彼はなぜ裸足なんだろう。何かの罰か? 神父は修道士や雑用係に体罰を与えるような指導をしているのか? サムは薄暗い地下室にあってほの白く光って見える足首から視線を引きはがし、もっと上に目をやった。まだ夜着のままの薄着、庭でルーファスが引き倒したせいで薄汚れている。細いが力のありそうなしっかりとした肩から腕。まっすぐに伸びた首の上には信じられないほど繊細な美貌が乗っていた。  サムは青年から皿を受け取ってやろうと手を伸ばした。ところがサムが皿に手をかけたとたん、びっくりした彼はバランスを崩して階段を一段踏みそこねた。  転びそうになった彼を、サムは慌てて抱き止めた。耳元に、彼の声にならない悲鳴のような、驚きの吐息を感じる。そうだ、彼は耳が聞こえないのだった。話すことが出来ないのはわかるが、声を出すこともできないとは。  「急に触っちゃだめよ、サム!」 床に落ちた皿を拾いながらチャーリーがいう。「彼は耳が聞こえないんでしょ、彼に見えないところから現れたらびっくりするじゃない」  「ディーンだっけ? いや、救世主だ、なんておいしそうなシチュー、スープか? これで僕らは生き延びられる」 ガースが恭しく小鍋を受け取り、空き箱の上に並べた皿にさっさと盛り付けていく。階段の一番下でサムに抱き止められたままのディーンは、自分の仕事を取られたように見えたのか焦って体をよじったが、サムはどうしてか離しがたくて、すぐには解放してやれなかった。  まったく、どうして裸足なんだ?
 修道士たちが詩を読みながら朝食を終えるのを交代で横になりながら過ごして待ち、穴倉のような地下室から出て騎士たちは食堂で体を伸ばした。一晩中ルーファスの看病をしていたボビーにも休めと命じて、サムが代わりに厨房の隅に居座ることにした。  厨房番の修道士は彼らがまるでそこに居ないかのように振る舞う。サムも彼らの日課を邪魔する意思はないのでただ黙って石窯の火と、マントでくるんだ藁の上に寝かせた熟練の騎士の寝顔を見るだけだ。  ルーファスは気難しく人の好き嫌いが激しい男だが、サムが幼い頃から”ウィンチェスター家”に仕えていた忠臣だ。もし彼がこのまま目覚めなかったら……。自分が王宮でもっとうまく立ち回れていたら、こんなことにはならなかったかもしれない。  若き王の父と――つまり前王とサムの父親が従弟同士だったために、サムにも王位継承権があった。実際、前王が危篤の際には若すぎる王太子を不安視する者たちからサムを王にと推す声も上がった。不穏な声が派閥化する前にサムは自ら継承権を放棄し、領地の大半を王に返還して王宮に留まり一騎士としての振る舞いに徹した。  その無欲さと節制した態度が逆に信奉者を集めることとなり、サムが最も望まないもの――”ウィンチェスター派”の存在が宮殿内に囁かれるようになった。国王派――この場合は年若き王をいいように操ろうとする老練な大臣たちという意味だ――が敵意と警戒心を募らせるのも無理はないとサムが理解するくらいには、噂は公然と囁かれた。何とか火消しに回ったが、疑いを持つ者にとっては���それが有罪の証に見えただろう。  自分のせいで部下たちを失い、また失いつつあるのかと思うと、サムはたまらないむなしさに襲われた。  ペタペタと石の床を踏む足音が聞こえ顔を上げる。ディーンが水差しを持って厨房にやってきた。彼は石窯の横に置かれた桶の中に水を入れる。サムは声もかけずに暗がりから彼の横顔をぼうっと眺めた。声をかけたところで、彼には聞こえないが――  床で寝ているルーファスが呻きながら寝返りを打った。動きに気づいたディーンが彼のほうを見て、その奥にいるサムにも気づいた。  「やあ」 サムは聞こえないとわかりつつ声をかけた。まるきり無駄ではないだろう。神父の唇を読んで指示を受けていたようだから、言葉を知らないわけではないようだ。  彼が自分の唇を読めるように火の前に近づく。  「あー、僕は、サムだ。サム、王国の騎士。サムだ。君はディーン、ディーンだね? そう呼んでいいかい?」  ディーンは目を丸く見開いて頷いた。零れそうなほど大きな目だ。狼を前にしたうさぎみたいに警戒している。  「怖がらないでいい。昨夜はありがとう。乱暴なことをしてすまなかった。怪我はないか?」  強ばった顔で頷かれる。彼は自らの喉を指して話せないことをアピールした。サムは手を上げてわかっていることを示す。  「ごめん――君の仕事の邪魔をするつもりはないんだ。ただ、何か困ってることがあるなら――」 じっと見つめられたまま首を振られる。「――ない?」 今度は頷かれる。「――……そうか、わかった。邪魔をしてごめん」  ディーンは一度瞬きをしてサムを見つめた。彼は本当に美しい青年だった。薄汚れてはいるし、お世辞にも清潔な香りがするとは言い難かったが、王宮でもお目にかかったことのないほど端正な顔立ちをしている。こんな森の奥深くの修道院で雑用係をしているのが信じられないくらいだ。耳と口が不自由なことがその理由に間違いないだろうが、それにしても――。  水差しの水を全て桶に注いでしまうと、ディーンはしばし躊躇った後、サムを指さして、それから自分の胸をさすった。  彼が動くのを眺めるだけでぼうっとしてしまう自分をサムは自覚した。ディーンは何かを伝えたいのだ。もう一度同じ仕草をした。  「君の? 僕の、胸?」 ディーンは、今度は地下に繋がる階段のほうを指さして、その場で転ぶ真似をした。そしてまたサムの胸のあた��を指さす。  理解されてないとわかるとディーンの行動は早かった。彼はルーファスをまたいでサムの前にしゃがみ込み、彼の胸に直接触れた。  サムは戦闘中以外に初めて、自分の心臓の音を聞いた。  ディーンの瞳の色は鮮やかな新緑だった。夜にはわからなかったが、髪の色も暗い金髪だ。厨房に差し込む埃っぽい日差しを浴びてキラキラと輝いている。  呆然と瞳を見つめていると、やっとその目が自分を心配していることに気が付いた。  「……ああ、そっか。僕が骨折してること、君は気づいてるんだね」 ”骨折”という言葉に彼が頷いたので、サムは納得した。さっき階段から落ちかけた彼を抱き止めたから、痛みが悪化していないか心配してくれたのだろう。サムは、彼が理解されるのが困難と知りながら、わざわざその心配を伝えようとしてくれたことに、非常な喜びを感じた。  「大丈夫だよ、自分で包帯を巻いた。よくあることなんだ、小さいころは馬に乗るたびに落馬して骨を折ってた。僕は治りが早いんだ。治るたびに背が伸びる」  少し早口で言ってしまったから、ディーンが読み取ってくれたかはわからなかった。だが照れくさくて笑ったサムにつられるように、ディーンも笑顔になった。  まさに魂を吸い取られるような美しさだった。魔術にかかったように目が逸らせない。完璧な頬の稜線に触れたくなって、サムは思わず手を伸ばした。  厨房の入口で大きな音がした。ボビーが戸にかかっていたモップを倒した音のようだった。  「やれやれ、どこもかしこも、掃除道具と本ばかりだ。一生ここにいても退屈しないぞ」  「ボビー?」  「ああ、水が一杯ほしくてな。ルーファスの調子はどうだ?」  サムが立ち上がる前に、ディーンは驚くほどの素早さで裏戸から出て行ってしまった。
 キラキラしてる。  ディーンは昔からキラキラしたものに弱かった。  木漏れ日を浴びながら一時の昼寝は何物にも得難い喜びだ。太陽は全てを輝かせる。泥だまりの水だってき��めく。生まれたばかりの子ヤギの瞳、朝露に濡れた花と重たげな羽を開く蝶。礼拝堂でかしずいた修道士の手から下がるロザリオ。水差しから桶に水を注ぐときの小気味よい飛沫。  彼はそういったものを愛していた。キラキラしたものを。つまりは美しいもの。彼が持ち得なかったもの。  サムという騎士はディーンが今までに見た何よりも輝いていた。  あまりにもまぶしくて直視しているのが辛くなったほどだ。彼の瞳の色に見入っていたせいで、厨房で大きな音に反応してしまった。幸いサムは音を立てた騎士のほうに目がいってディーンの反応には気づかなかったようだ。  もう一度彼の目を見て彼に触れてみたかったが、近づくのが恐ろしくもあった。
 ディーン何某という男の子がこの世に生を受けたとき、彼は両親にとても祝福された子供だった。彼は美しい子だと言われて育った。親というのは自分の子が世界で一番美しく愛らしいと信じるものだから仕方ない。おかげでディーンは両親が殺され、修道院に引き取られる八つか九つの頃まで、自分が怪物だと知らずに生きてこられた。  修道院長のクラウス神父は親と寄付金を失った彼を憐れみ深く受け入れてくれたが、幼い孤児を見る目に嫌悪感が宿っているのをディーンは見逃さなかった。  「お前は醜い、ディーン。稀に見る醜さだ」と神父は、気の毒だが率直に言わざるを得ないといった。「その幼さでその醜さ、成長すれば見る者が怖気をふるう怪物のごとき醜悪な存在となるだろう。無視できない悪評を招く。もし怪物を飼っていると噂が立てば、修道院の名が傷つき、私と修道士たちは教会を追われるだろう。お前も森に戻るしかなくなる」 しかしと神父は続けた。「拾った怪物が不具となれば話は違う。耳も聞こえなければ口もきけないただの醜い哀れな子供を保護したとなれば、教皇も納得なさるだろう。いいかね、ディーン。お前をそう呼ぶのは今日この日から私だけだ。他の者たちの話に耳を傾けてはいけないし、口を聞いてもいけない。おまえは不具だ。不具でなければ、ここを追い出される。ただの唾棄すべき怪物だ。わかったかね? 本当にわかっているなら、誓いを立てるのだ」  「神様に嘘をつけとおっしゃるのですか?」  まろやかな頬を打たれてディーンは床に這いつくばった。礼拝堂の高窓から差し込む明かりを背負って神父は怒りをあらわにした。  「何という身勝手な物言いだ、すでに悪魔がその身に宿っている! お前の言葉は毒、お前の耳は地獄に通じている! 盗賊どもがお前を見逃したのも、生かしておいたほうが悪が世に蔓延るとわかっていたからに違いない。そんな者を神聖な修道院で養おうとは、愚かな考えだった。今すぐに出ていきなさい」  ディーンは、恐ろしくて泣いてすがった。修道院を追い出されたら行くところがない。森へ放り出されたら一晩のうちに狼の餌食になって死んでしまうだろう。生き延びられたとしても、神父ですら嫌悪するほど醜い自分が、他に受け入れてくれる場所があるはずもない。  ディーンは誓った。何度も誓って神父に許しを請うた。「話しません、聞きません。修道院のみなさまのご迷惑になることは決してしません。お願いです。追い出さないでください」  「お前を信じよう。我が子よ」 打たれた頬をやさしく撫でられ、跪いてディーンを起こした神父に、ディーンは一生返せぬ恩を負った。
 ぼんやりと昔を思い出しながら草をむしっていたディーンの手元に影が落ちた。  「やあ、ディーン……だめだ、こっちを向いてもらってからじゃないと」 後ろでサムがぼやくのが聞こえた。  ディーンは手についた草を払って、振り向いた。太陽は真上にあり、彼は太陽よりも背が高いことがわかって、ディーンはまた草むしりに戻った。  「あの、えっと……。ディーン? ディーン」  正面に回り込まれて、ディーンは仕方なく目線を上げた。屈んだサムはディーンと目が合うと、白い歯をこぼして笑った。  ああ、やっぱりキラキラしてる。  ディーンは困った。
 サムは困っていた。どうにもこの雑用係の庭師が気になって仕方ない。  厨房から風のように消えた彼を追って修道院の中庭を探していると、ネズの木の下で草をむしっている背中を見つけた。話しかけようとして彼が聞こえないことを改めて思い出す。聞こえない相手と会話がしたいと思うなんてどうかしてる。  それなのに気づけば彼の前に腰を下ろして、身振り手振りを交えながら話しかけていた。仕事中のディーンは、あまり興味のない顔と時々サムに向けてくれる。それだけでなぜか心が満たされた。  ネズの実を採って指の中で転がしていると、その実をディーンが取ろうとした。修道院の土地で採れる実は全て神が修道士に恵まれた貴重なもの――それがたとえ一粒の未熟な実でも――だからサムは素直に彼に渡してやればよかった。だがサムは反射的に手をひっこめた。ディーンの反応がみたかったのだ。彼は騎士にからかわれて恥じ入るような男か、それとも立ち向かってくるか? 答えはすぐにわかった。彼は明らかにむっとした顔でサムを見上げ、身を乗り出し手を伸ばしてきた。  サムはさらに後ろに下がり、ディーンは膝で土を蹴って追いすがる。怒りのせいか日差しを長く浴びすぎたせいか――おそらくそのどちらも原因だ――額まで紅潮した顔をまっすぐに向けられて、サムは胸の奥底に歓喜が生まれるのを感じた。  「ハハハ……! ああ……」 するりと言葉がこぼれ出てきた。「ああ、君はなんて美しいんだ!」  ディーンがサムの手を取ったのと、サムがディーンの腕を掴んだのと、どちらが早��ったかわからかない。サムはディーンに飛びつかれたと思ったし、ディーンはサムに引き倒されたと思ったかもしれない。どっちにしろ、結果的に彼らはネズの根のくぼみに入ってキスをした。  長いキスをした。サムはディーンの髪の中に手を入れた。やわらかい髪は土のにおいがした。彼の唾液はみずみずしい草の味がした。耳を指で挟んで引っ張ると、ん、ん、と喉を鳴らす音が聞こえた。とても小さな音だったが初めて聞いた彼の”声”だった。もっと聞きたくて、サムは色んなところを触った。耳、うなじ、肩、胸、直接肌に触れたくて、腹に手を伸ばしたところでディーンが抵抗した。  初めは抵抗だとわからなかった。嫌なことは嫌と言ってくれる相手としか寝たことがなかったからだ。ところが強く手首を掴まれて我に返った。  「ごめん!」 サムは慌てて手を離した。「ご、ごめん、本当にごめん! こんなこと……こんなことするべきじゃなかった。僕は……だめだ、どうかしてる」 額を抱えてネズの根に尻を押し付け、できるだけディーンから離れようとした。「僕はどうかしてる。いつもはもっと……何というか……こんなにがっついてなくて、それに君は男で修道院に住んでるし――ま、まあ、そういう問題じゃないけど――ディーン――本当にごめん――ディーン?」  ディーンは泣いていた。静かに一筋の涙を頬に流してサムを見ていた。  「待って!」  またも彼の身の軽さを証明する動きを見届けることになった。納屋のほうに走っていく彼の姿を、今度はとても追う気にはなれなかった。
 夜、クラウス神父の部屋でディーンは跪いていた。  「神父様、私は罪を犯しました。二日ぶりの告解です」  「続けて」  「私は罪を犯しました……」 ディーンはごくりとつばを飲み込んだ。「私は、自らの毒で、ある人を……ある人を、侵してしまったかもしれません」  暖炉の前に置かれたイスに座り、本を読んでいた神父は、鼻にかけていた眼鏡を外してディーンを見た。  「それは由々しきことだ、ディーン。お前の毒はとても強い。いったい誰を毒に侵したのだ。修道士か?」  「いいえ、騎士です」  「騎士! 昨日ここに侵入してきたばかりの、あの狼藉者どものことか? ディーン、おお、ディーン。お前の中の悪魔はいつになったら消えるのだろう」 神父は叩きつけるように本を閉じ、立ち上がった。「新顔とくれば誘惑せずにはおれないのか? どうやって、毒を仕込んだ。どの騎士だ」  「一番背のたかい騎士です。クラウス神父。彼の唇を吸いました。その時、もしかしたら声を出してしまったかもしれません。ほんの少しですが、とても近くにいたので聞こえたかもしれません」  「なんてことだ」  「あと、彼の上に乗ったときに胸を強く圧迫してしまったように思います。骨折がひどくなっていなければいいのですが、あとで治癒師にみてもらうことはできますか?」  「ディーン……」 神父は長い溜息をついた。「ディーン。お前の悪魔は強くなっている。聖餐のワインを飲ませても、毒を薄めることはできなかった。お前と唯一こうして言葉を交わし、お前の毒を一身に受けている私の体はもうボロボロだ」  「そんな」  「これ以上ひどくなれば、告解を聞くことも困難になるかもしれない」  ディーンはうろたえた。「神父様が許しを与えて下さらなければおれは……本物の怪物になってしまいます」  「そうだ。だから私は耐えているのだ。だが今日はこれが限界だ。日に日にお前の毒は強くなっていくからな」 神父はローブを脱いで寝台に横たわった。「頼む、やってくれ、ディーン」  ディーンは頷いて寝台に片膝を乗せると、神父の下衣を下ろして屈み込んだ。現れたペニスを手にとって丁寧に舐め始める。  「私の中からお前の毒を吸い取り、全て飲み込むのだ。一滴でも零せば修道院に毒が広がってしまう。お前のためにもそれは防がなくてはならない」  「はい、神父様」  「黙りなさい! 黙って、もっと強く吸うんだ!」 神父は厳しく叱責したが、不出来な子に向けて優しくアドバイスをくれた。「口の中に、全部入れてしまったほうがいい。強く全体を頬の内側でこすりながら吸ったほうが、毒が出てくるのも早いだろう」  心の中でだけ頷いて、ディーンはいわれた通り吸い続けた。もう何度もやっていることなのに、一度としてうまくやれたことがない。いつも最後には、神父の手を煩わせてしまう。彼は自分のために毒で苦しんでいるのにだ。  今回も毒が出る前に疲れて吸う力が弱まってしまい、神父に手伝ってもらうことになった。  「歯を立てたら地獄行きだからな。お前を地獄に堕としたくはない」 神父は忠告してから、両手でディーンの頭を抱えて上下にゆすった。昨夜はワインを飲んだあとにこれをやったからしばらく目眩が治まらなかった。今日はしらふだし、神父がこうやって手を借してくれるとすぐに終わるのでディーンはほっとした。  硬く張りつめたペニスから熱い液体が出てきた。ディーンは舌を使って慎重に喉の奥に送り、飲み込んでいった。飲み込むときにどうしても少し声が出てしまうが、神父がそれを咎めたことはなかった。ディーンが努力して抑えているのを知っているのだろう。  注意深く全て飲み込んで、それでも以前、もう出ないと思って口を離した瞬間に吹き出てきたことがあったので、もう一度根本から絞るように吸っていき、本当に終わったと確信してからペニスを解放した。神父の体は汗ばんでいて、四肢はぐったりと投げ出されていた。  ディーンはテーブルに置かれた水差しの水を自分の上着にしみこませ、神父の顔をぬぐった。まどろみから覚めたような穏やかな顔で、神父はディーンを見つめた。  「これで私の毒はお前に戻った。私は救われたが、お前は違う。許しを得るために、また私を毒に侵さねばならない。哀れな醜い我が子よ」  そういって背を向け、神父は眠りに入った。その背中をしばし見つめて、ディーンは今夜彼から与えられなかった神の許しが得られるよう、心の中祈った。
 修道士たちが寝静まった夜、一人の騎士が目を覚ました。  「うーん、とうとう地獄に落ちたか……どうりで犬の腐ったような臭いがするはずだ」  「ルーファス!」 ボビーの声でサムは目を覚ました。地下は狭すぎるが、サムがいなければ全員が横になれるとわかったから厨房の隅で寝ていたのだ。  「ルーファス! このアホンダラ、いつまで寝てるつもりだった!」 ボビーが歓喜の声を上げて長い付き合いの騎士を起こしてやっていた。サムはゴブレットに水を注いで彼らのもとへ運んだ。  「サミュエル」   「ルーファス。よく戻ってきた」  皮肉っぽい騎士は眉を上げた。「大げさだな。ちょっと寝てただけだ」 ボビーの手からゴブレットを取り、一口飲んで元気よく咳き込んだあと、周囲を見回す。「それより、ここはどこだ、なんでお前らまで床に寝てる?」  「厨房だよ。他の皆はこの地下で寝てる。修道院長はあまり僕らを歓迎していないみたいだ。いきなり殺されないだけマシだけどね」  「なんてこった。のん気にしすぎだ。食糧をいただいてさっさと出発しよう」  「馬鹿言ってないで寝てろ。死にかけたんだぞ」 起き上がろうとするルーファスをボビーが押し戻す。しかしその腕を掴んで傷ついた騎士は強引に起きようとする。  「おい、寝てろって」  「うるさい、腹が減って寝るどころじゃない!」  サムとボビーは顔を見合わせた。
 三人の騎士は食堂に移動した。一本のロウソクを囲んで、鍋に入れっぱなしのシチューをルーファスが食べるのを見守る。  「で、どうする」 まずそうな顔でルーファスはいう。もっともルーファスは何を食べてもこういう顔だから別にシチューが腐っているわけではない。例外が強い酒を飲む時くらいで、一度密造酒を売って儲けていた商売上手な盗賊団を摘発した時には大喜びだった(酒類は国庫に押収されると知ってからも喜んでいたからサムは心配だった)。  修道院にある酒といえば聖体のワインくらいだろう。ブドウ園を持っている裕福な修道院もあるが、この清貧を絵にしたような辺境の修道院ではワインは貴重品のはずだ。ルーファスが酒に手を出せない環境でよかった。しかし――サムは思い出した。そんな貴重なワインの匂いを、あのみすぼらしい身なりの、納屋で寝ている青年は纏わせていたのだった。  「どうするって?」  ボビーが聞き返す。ルーファスは舌打ちしそうな顔になってスプーンを振った。「これからどこへ行くかってことだよ! 王都に戻って裏切者だか敗走者だかの烙印を押されて処刑されるのはごめんだぜ」  「おい、ルーファス!」  「いいんだ、ボビー。はっきりさせなきゃならないことだ」 サムはロウソクの火を見つめながらいった。「誤魔化してもしょうがない。我々は罠にかけられた。仕掛けたのは王だ。もう王都には戻れない――戻れば僕だけでなく、全員が殺される」  「もとからお前さんの居ない所で生き延びようとは思っていないさ。だが俺とルーファスはともかく……」  「若くて将来有望で王都に恋人がいる私でも同じように思ってるわよ」 チャーリーが食堂に来た。ルーファスの隣に座って平皿に移したシチューを覗き込む。「それおいしい?」  「土まみれのカブよりはな」  「なあ、今の話だが、俺はこう思ってる」 ボビーがいった。「この状況になって初めて言えることだが、王国は腐ってる。王に信念がないせいだ。私欲にまみれた大臣どもが好き放題している。民は仕える主を選べないが、俺たちは違う。もとから誰に忠義を尽くすべきか知っている。もう選んでいる。もうすでに、自分の望む王の下にいる」  「その話、なんだか素敵に聞こえる。続けて」 チャーリーがいう。  「いや、まったく素敵じゃない。むしろ危険だ」 サムはいったが、彼の言葉を取り合う者はいなかった。  ゴブレットの水を飲み干してルーファスが頷いた。「サムを王にするって? それはいい。そうしよう。四年前にあの棒みたいなガキに冠を乗せる前にそうしとけばよかったんだ。野生馬を捕まえて藁で編んだ鞍に乗り、折れた剣を振りかざして、七人の騎士で玉座を奪還する!」 そしてまた顔をしかめながらシチューを食べ始める。「俺はそれでもいいよ。少なくとも戦って死ねる」  ボビーがうなった。「これは死ぬ話じゃない。最後まで聞け、ルーファス」  「そうよ、死ぬのは怖くないけど賢く生きたっていい」 チャーリーが細い指でテーブルを叩く。「ねえ、私に案がある。ここの修道院長に相談するのよ。彼から教皇に仲裁を頼んでもらうの。時間を稼いで仲間を集める。探せば腐った大臣の中にもまだウジ虫が沸いてないヤツもいるかもしれない。血を流さなくても王を変える手はある。アダムだって冠の重さから解放されさえすればいい子に戻るわよ」  「それよりウィンチェスター領に戻ってしばらく潜伏すべきだ。あそこの領民は王よりもサムに従う。俺たちを王兵に差し出したりしない」  「だから、それからどうするのかって話よ。潜伏もいいけど結局王と対決するしかないじゃない、このまま森で朽ち果てるか北の隣国に情報を売って保護してもらって本物の売国奴になる他には!」  「ちょっと落ち着け、二人とも。修道士たちが起きてくる。それから僕の計画も聞け」  「ろくな計画じゃない」  「ルーファス! ぼやくな」  「そうよルーファス、死にかけたくせに。黙ってさっさと食べなさいよ」  サムはため息を吐きそうになるのを堪えて皆に宣言した。「王都には僕一人で行く」  「ほらな」とスプーンを放ってルーファスが特大のため息を吐いた。「ろくな計画じゃない」
 行商売りの見習い少年と仲良くなったことがあった。同年代の子と遊ぶのは初めてだったから嬉しくて、ディーンは思わず自分の秘密をもらしてしまった。自分の口で見の上を語る彼に、少年はそんなのはおかしいといった。  「君は神父に騙されているんだよ。君は醜くなんかない、夏の蝶の羽のように美しいよ」  「神様の家で嘘をついちゃいけないよ」  「嘘なんかじゃない。ホントにホントだよ。僕は師匠について色んな場所へ行くけれど、どんなお貴族様の家でだって君みたいな綺麗な人を見たことがないよ」  ディーンは嬉しかった。少年の優しさに感謝した。次の日の朝、出発するはずの行商売りが見習いがいなくなったと騒ぎ出し、修道士たちが探すと、裏の枯れ井戸の底で見つかった。  井戸は淵が朽ちていて、遺体を引き上げることもできなかった。神父は木の板で封印をした。ひと夏の友人は永遠に枯れ井戸の中に閉じ込められた。  修道院は巨大な棺桶だ。  ディーンは二度と友人を作らなかった。
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atsushi2015 · 2 years ago
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このレポートは20220919 のアーカイブです! 1053日目 u12 この日は私の62菜(歳)の誕生日でしたが、大型台風接近であまり湯巡りもせずに #別府八湯温泉道名人会 メンバーで #タイ古式マッサージRAKA のセラピスト髙橋恵理香先生のお世話になりました。 全身をバキバキボキボキしていただいて良い気持ち〜 てな訳で私は #ブルースリー に生まれ変わりました。 そんな訳無いよね! てな訳で #レストラン東洋軒 で #本家とり天定食 食べました。 まだ終わらない! 夜は定宿の #ちとせ で おバカな仲間たちがボクの62菜を祝ってくれました。 仕事で残念ながら帰ってしまった せんべえ(長谷部義文)さん、ちとせの女将さんも祝ってくださいました。石井靖史くん、村上久美子さん、工藤宏太くん、髙橋恵理香さん皆んなありがとう❤️(年齢順w) 別府八湯温泉道 #別府温泉部 # 別府温泉名人会 #別府たのしー #大分県たのしー #おんせん県おおいた #いいお湯見つけました #いいゆ #いいゆてぬぐい #いいゆ手ぬぐい #いきなり腕立て伏せ #腕立てたのしー #腕立て伏せ #腕立て伏せチャレンジ #全米ヨガアライアンス #RYT200 #ヨガインストラクター養成講座 受講中 (Beppu, Oita) https://www.instagram.com/p/Cn8_DPMv7Kn/?igshid=NGJjMDIxMWI=
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xf-2 · 4 years ago
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ワクチン配布数に異常なバラつきがある問題で、基礎自治体の接種体制に大混乱が生じている。その事態改善と収拾に地方行政が奔走しているため現況を報告したい。にわかには信じがたい状況で、接種予約が絶望的に無理な自治体と、接種対象たる高齢者の人数以上の配布を受けた自治体もある。 人口密集地である政令市や感染者数が激増している自治体に大きくカバーして欲しいところだが、隣接自治体でも三倍の格差がある。自治体の接種体制は、大混乱に陥ってしまい、この混乱はさらに激しくなる危険が否定できない。
例えば、人口6,764人の吉富町には、2925回分が配布。同町の高齢者は2,124人であり、つまり希望者は100%接種できる。というか余ってしまう。 隣接する上毛町は人口7,619人(高齢者は2,648人)で吉富より規模が大きいが、975回分のみ。当選確率は約37%。上毛町と吉富町は互いに隣接するのだが、この倍率差は異常だろう。 さらに、豊前市の人口は25,341人(高齢者9,097人)は、吉富町と同数の2925回分に留まる。当選確率は約32%。 築上町は、18,119人(高齢者6,569人)、配布数は1950回分。当選確率は最低の約29%である。
便宜的に用いた当選確率とは、全高齢者が接種を希望したと仮定し、かつ今回のロットから次回の配布が遅延したという条件で計算した。 問題は、「豊前市・吉富町・上毛町・築上町」は、広域連携で合同で接種していく点。それぞれの会場で互いの住民が鉢合わせるわけだが、一自治体は100%の接種で、隣接自治体は3割以下だ。同じ医師会から支援を受け、なんと予約に要するコールセンターも統合されている。配布数が不十分な自治体は第一回接種の予約を受け付けている中で、充分に有する自治体は第二回接種を求める。コールセンターは、二つの業務が混在してしまい、また接種にあたる医師も対応が難しい。
行橋市73,317人(高齢者21,562人)は、2925回分(3箱)。高齢者数が10倍も違う吉富町と同数だ。当選確率は、13%。 本市に隣接するみやこ町は、人口19,512人(高齢者7,721人)に対し、なぜか行橋市よりも多い3900回分(4箱)を配布。当選確率は約50%。 みやこ町には、医師はほとんどおらず、結果的に行橋市の医師もサポートしていく可能性もある。(行橋みやこ医師会) 隣接自治体において、ここまでの当選確率の差は、住民に説明ができない。行橋市においても感染者は出ている。
飯塚市128,184人(高齢者40,121人)も2925回分(3箱)。高齢者数が20倍近く違う吉富町と同数だ。当選確率は、7%に過ぎない。県が調整した結果だが、飯塚市が悪いわけではない。 ここで行橋市と飯塚市について述べさせて頂きたいが、自治体単独での接種能力を一般に有する自治体である。町村の場合は広域連携などで合同接種などを行っており、当然ながら「飯塚市・行橋市は、打つ能力」を持っている。銃はあれども弾がないという状態。
町村を優先配布した可能性は否定できないという声もあるだろう。 しかし、那珂川市50,323人(高齢者11,545)には13箱、実に12675回分が配布。高齢者数よりも多いため、当選確率は100%だ。
地域差なのかと言えばそうではない。遠賀川周辺の3町の例。 65歳以上人口が8780人の水巻町に3箱、9828人の岡垣町に9箱、5800人の遠賀町に6箱と人口規模に応じていない。
当然、地方行政は大混乱に陥った。 最悪の事態としては、かなりの量を破棄せざるを得ない危険性も指摘されていた。理由は本稿で詳述するが、1箱が975回分のため高齢者数が2000とか3000の小規模自治体で中途半端な人数で開封してしまうと、かなりの量を破棄せざるを得ないため。それを抑止するための広域連携だったのだが、バラツキが大きすぎて同時接種は絶望的だ。
また、接種能力を有する中規模自治体で、近隣の町村のサポートを行う市は、自らが守るべき市民の接種が終わってない中で、ワクチンのみ持っている町村の支援を行うのは住民感情からも難しい。接種支援に周れずデッドストック化するリスクもあった。
これらワクチンの配布偏在ですが、本日の状況を報告します。
(プレス対応) 昨日が祝日であったため、(配布箱数のデータについて)メディア側が裏取りできませんでした。公式の資料ではありますが非公開であったため、プレスが扱うにあたっては事実確認が必要だったのです。ほぼ徹夜のまま(早朝4時ぐらいまで)複数の電話会議・オンライン会議を行っており、朝一で対応を開始。 朝より対応。無事に裏取りを完了させ、首長のコメントも用意できました。 明日の朝、一紙ですが掲載できます。web版でありますが、すでに記事はアップされています。取材を経ての、正規の報道です。
次に、地方公共6団体。 動いたのは、市長会です。ここからは御礼になるのですが、谷畑英吾・前湖南市長(全国の副会長など要職を歴任)が一緒に動いてくださいました。一昨日のBlogを拡散してくださり、動きがありました。 私の住む行橋市の田中市長より電話を頂き、本庄市(埼玉県)の吉田信解市長(市長会の委員長)より架電があったとのこと。当市市長からの伝聞にはなりますが「全国市長会会長の立谷会長が、本日たまたま河野大臣に要請書を持って行くところだったので、本問題について共有している。」とのことでした。谷畑市長には行橋市と豊前市の偏在について報告していたため、本庄市長からは行橋・豊前に連絡を入れてくれたと谷畑市長からお伺いしました。当市市長からのお礼をお伝えしました。
私は市長職は有しておりませんので断片情報にはなりますが、市長会トップからは(恐らく自治体名は伏せて)配布数の偏在について報告がなされた模様です。谷畑市長を経由し、前述の自治体情報については逐一調査するとともに、私の信頼する敏腕記者たちが徹底的に数字の洗い出しを行っていきました。皆、徹夜の連続でした。プレスの動きを淡々と報告しつつ、数字の積み上げ作業を行っていきました。
自治体へのワクチン配布は、厚労省から総務省に移管されていました。総務大臣の記者会見において、本件が反映されたことを確認。各所にお礼の連絡を入れていったのは夕刻でした。目の前の偏在の問題は未解決も、2陣以降の効率化の向上に期待。 ここは総務マターのため、これより都道府県に指導を入れて頂くにあたって、その資料作成を行っておりました。
そうしたところ、これら偏在を解消するためでしょうか、国からさらなる次の便が実数が突然の公開。川の大臣の会見です。各地の市長・町長の動き、メディアの動きが奏功した可能性もあります。
私もその前線で戦っていたのですが、GW直前ゆえ平日が一日しかありません。裏取りを短期決戦で完了させる必要があったため、かなりの手続きを簡素化(詠唱破棄)してしまいました。近隣町長には非常に申し訳なく思っておりましたところ、上毛町の坪根町長が同行してくださり、一部の町長への報告が叶いました。築上町の新川町長にお会いし状況報告をしたのは19時を回っており、ご迷惑にも自宅までお邪魔してしまいました。
とりあえず、大臣まで公式団体名にて情報があがったと想定されるため、第一次の動きとしては良しとします。私は市議でありますので、これが��責の果たし方。 明日、明後日までは過負荷かかる見込み。
さて、これら動きの中で、今後の課題や混乱が想定される箇所が洗い出されてきましたので報告します。 国の新たな発表により、偏在の多くは解消されると期待いたしますが、地方行政における混乱は継続する可能性があり、それを早期に事前想定することにより「接種の混乱抑止、および事態解決」を期待して本稿を記します。
すでに本日の記事がネットには公開されておりますので併せて紹介します。
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報道の紹介明日の朝刊にも掲載されることでしょう。
コロナワクチン、福岡県内の自治体配分数に格差 調整不足を指摘する声も
 新型コロナウイルスのワクチン確保をめぐり、福岡県内の自治体間で格差が生じている。5月以降、各自治体で順次、接種を進めていく中、初期段階では人口規模が同程度の自治体間で確保数が大きく異なるケースがみられ、場合によっては規模との逆転現象も生じた。自治体からは必要数をまとめる県の調整不足を指摘する声が上がる。
 福岡県内には6月末までに2456箱(6回接種で約287万3千回分)が届く。このうち、5月10日からの2週間に各自治体に届けられるワクチンは567箱で、最多の144箱を受け取る福岡市をはじめ、県内60市町村で高齢者向けへの接種準備が進む。
 ただ、複数の県内自治体から「人口規模や接種体制の実情と食い違う配分だ」との指摘が相次ぐ。
 県西部では、65歳以上人口(平成27年国勢調査)で約10倍の差がある行橋市(1万9835人)と吉富町(1989人)で、配分数はともに3箱だった。遠賀川周辺の3町でも、65歳以上人口(同)が8780人の水巻町に3箱、9828人の岡垣町に9箱、5800人の遠賀町に6箱と人口規模に応じていない。
 自治体のワクチン確保担当者は「自前の接種体制をもとに2週間で可能な量を申請した」との声がある一方、「供給体制が不確実な中、75歳以上の2回接種に必要な量を確保しようとした」との説明もあり、考え方の違いが浮き彫りに。この違いが格差が生じた原因とみられる。
 自治体の申請を取りまとめる県は「市町村には2週間分で接種可能な量を申請するよう通知している」とするが、マンパワー不足や、時間の制約から「各自治体から上がってきた申請を信頼するしかない」(県担当者)という。
 ワクチンをめぐっては、必要数は確保される一定の見込みが立ち、今後の配分によって自治体間の偏在は解消していくとみられる。
 ただ、ある県西部の自治体首長は「都市部で封じ込めを進めるための優先供給は理解できるが、郡部で格差が生じるのは住民に説明ができず、理解に苦しむ(配分数の)増減もあった。現状のままでは不信を招く」と憤りを隠さない。
産経ニュースコロナワクチン、福岡県内の自治体配分数に格差 調整不足を指摘する声もhttps://www.sankei.com/region/news/210430/rgn2104300003-n2.html自治体の申請を取りまとめる県は「市町村には2週間分で接種可能な量を申請するよう通知している」とするが、マンパワー不足や、時間の制約から「各自治体から上がってきた…
ワクチン配布の考え方(私見)まずもって私見であることは冒頭で述べておきます。
ワクチンそのものが危険という意見がネット上にはあるのは重々承知しておりますが、特に高齢者の中には熱望している方もおり、「国費で購入した資材」に対する「入手難易度」の機会平等の観点は述べられるべきだと考えております。
その上で、人口密集地である政令指定都市や大規模自治体には集中投資して頂いて全く構わないと(少なくとも私個人は)考えています。これは各自治体ごとに考えがありましょうし、接種希望者の気持ちを考えれば「あくまで私見」と述べるに留めさせて頂きたい。
感染者が増えている自治体やまんぼう、ワクチン接種の傾斜配分は全くもって否定する立場ではありません。 むしろ傾斜配分がなされていなければ、それは逆の問題も指摘されるでしょう。単に人口比で割ればいいとは思っておりません。
しかし、明らかに人口比が異なり、10倍とか20倍という差があるのは問題です。各自治体は、接種体制を構築してきており、体制構築(銃を用意)するも弾は来ない、これでは何のために地方行政が準備をしてきたのか全く意味が分からない。
また、多く取り過ぎた自治体も果たして接種可能なのか?という話がでてくる。同時に接種できる人数には、施設規模なども影響してくるわけで、ワクチンさえあれば一気に終わるというものでもない。著しくバランスを欠くことは凄まじい問題を生じてしまう。
特に広域連携の話は、別項で詳述させて頂きますが、「偏在」は接種体制そのものを破壊してしまうのです。この点は強く主張したい。
高齢者への接種を進めるのであれば、対応にあたる医師・看護師への接種を事前に完了させたうえで、まずは人口比(より正確には高齢者数の比率)で基準値を作成する。その上で政令市や人口密集地に加配、ここは大きく加配すべきでしょう。さらに政令市と交流人口の多い自治体に傾斜配分をかけます。
当然ながら感染者数が激増している自治体やまんぼうによる加配も行います。 さらに、接種体制が充分に整っている、つまり銃の多い自治体にもプラスαを行う。 これがスタンダードな考え方ではないでしょうか。
基準値を設け、これをベースに置いたのは地方自治体が接種にあたるためです。 当選倍率に著しい差が出てしまえば、恐ろしいまでの不満を住民に与えることになる。地方の首長は、あくまで地域住民に選ばれているのであり、守るべき住民がおります。行橋市長は行橋市民に選ばれ、そして行橋市民が雇っているのです。行橋市の職員を養っているのは、行橋市民です。
いずれの自治体も、自分の市民を守りたい!という思いは当然に出てくるわけであり、郡部や隣接自治体において高齢化率や感染者数に違いはないものの、何倍もの当選確率の差が出た場合には「地方行政は、住民に説明できない」のです。
その不平不満の中で、市職員らが現場に立てるかと言えば答えはノーです。 基礎自治体には振った以上は、最低限の格差是正はなされていなければ【接種はできません。】というのが私の考えです。
よって最低条件をクリアした上で、つまり一定の公平性は担保しつつも、人口密集地や感染数の多い地域に集中投資する。ここはセンスなのでしょうが、私ならば人口比を5割、傾斜配分用に5割です。傾斜の比率が高いように感じるかもしれませんが、政令市と一般市の人口差は凄まじいものがあり、これぐらいの比率を設けなければ「有意な差」は得られないと考える為です。あくまで私見にはなりますけれども。
一般市側からのクレームはあるかと思いますが、「感染抑制」という考えに立ちかれば、人と人が接する可能性の高いところから集中運用するよりなく、ゆえに準備が整っている自治体にも若干の加配を行うことを条件に交渉します。
スタンダードな考え方ではないでしょうか。 (あくまで私見にはなります。)
大事なことは、ワクチンを熱望する高齢者がいずれの自治体にもおり、現場で対応する市職員が「住民にちゃんと説明できる」だけのロジックとなっている必要があるという点です。そこが満たせるのであれば、どのような方法でも構わない。
後段においては、私個人の考えであるとさらに断ったうえで、高齢者への接種の優先順位にも言及させて頂きたい。
高齢者のみへの接種という国の方針に反発するわけではありませんが、私は「政令市・人口密集地の”高齢者以外の層”」にも早期に接種して良かったのではないかと思っています。難しい政治判断になるとは思いますが、外に出て、かつ人と会う者にこそ接種を急ぐべきです。
果たして若者が接種を希望するかは分かりませんし(ネット上には危険論があることは承知していると断ったうえで)希望する若者にも接種して行った方が、最終的には感染を沈静化させる近道だと思えてならないのです。
郡部、いわゆる田舎においては、都心部から持ち込まれる事例が多いのは事実です。 まずは都心部を抑えなければ、郡部の自治体は守れない。医療体制も貧弱であり、ここはクラスターが発生、重症者が大量に出た場合には本当に対処不可能なのです。
だからこそ、地方議員としては「都市部の感染抑止を最優先」することは方策としてはアリだと思っており、高齢者のみに限定しての接種ではなく、もう一歩踏み込んだ対策があってもよかったのではないかと考えています。
※ しかし、熱望する高齢者が大量に存在する中で、この政策決定を(自分自身がその立場にあったと仮定して)私ができるかと言えば、強く自信を持つこともできないことは正直に述べておきます。
広域連携とワクチンの破棄
冒頭において、豊前市・上毛町・吉富町・築上町の事例を述べました。 これは県内の各所でも起きていることかと思いますが、連携して接種にあたります。
豊前は市政にはなりますが、人口は2万人代であり潤沢な市職員を有するわけではありません。また近隣の3町は独自の接種体制を構築するのは難しいでしょう。そもそも医師会が全ての自治体にあるわけではないのです。
メディアは大規模自治体の事例ばかりを取り上げますが、郡部には郡部の難しさがあるのです。
1市3町で連携し、共通のコールセンター、同じ医師会で対処する。 事例で言えば、Aチーム(豊前町・上毛町)、Bチーム(築上町・吉富町)を編成し、日付けをずらして同じ医師たちが対応する。 これなら効率的です。
事���局は上毛町が受け、コールセンターは築上町が担っています。
冒頭の事例で、私が「破棄の危険」まで述べた理由がここにあるのですが、吉富町は”第一回接種”の100%持っているため、医者側の協力が得られたならば早い段階で①接種が完了します。
しかし、豊前・上毛・築上町は高齢者の3割しか接種が完了しません。弾が足りないからです。 単に不公平感だけではなく、業務がまわらない。
同じコールセンターにおいて、吉富の「2回目接種の予約」と、豊前・築上・上毛の「1回目接種の積み残し」の対応を行うことは無理です。そもそも第一回接種が完了していない築上町の町長・職員が、吉富の2回目接種に負荷を割くことは(地方自治の観点から言えば)異常です。
コールセンターが機能を停止すれば、接種予約そのものができません。
「緊急だから」とのことで、国からの御下命ではありますが、地方自治体には「通常の業務」も併行して行われているのです。介護保険を止めていいのか、課税業務を止めていいのか。
すでに小規模自治体の行政力は、コロナ以前から相当に弱体化しています。市町村合併とパソコンの導入により、かつてと比較すると地方公務員の数は激減しているのです。効率化を高めていった結果、コスト削減はできましたが、マンパワーは減少しており有事への対処能力は減少していたのです。
「ワクチン予約の電話がつながらない」という抗議とか意見も、役場にはかかってきます。 行橋市(人口7万人)ぐらいの規模であれば、それなりの職員数はおります。うまく編成すれば一時的な負荷分散は可能で、他部門からも応援も見込めます。
けれども町村単位になると全量を投入しても限りがある。 そのための広域連携でした。
「つながらない予約電話」「それに対する抗議」が混在し、職員がボロボロの状態で。。。
【1回目の接種】と【2回目の接種】の予約処理を行うのは不可能です。どうやっても無理なんだ。
では、なぜ広域連携なのかと言えば、ワクチンの有効活用のため、その側面もあったのです。 1箱をあければ975回。これは町村からすると大きすぎるロットなのです。
例えば吉富町の高齢者は2,124人、上毛町は高齢者は2,648人です。 975回とは、接種対象者の半数にあたるわけですが、解凍したワクチン通りの人数が来るでしょうか? では、1100人の接種希望者が来てしまった場合には、2箱目を開けるのか。3週間を空けるため、中途半端に開けてしまった箱の残分を破棄することになっても。
豊前市の人口は25,341人(高齢者9,097人)築上町は、18,119人(高齢者6,569人)。 だから、豊前市と上毛がセット、築上と上毛がセットなのではないでしょうか。私はこの1市3町の議員ではありませんので、この広域化の発端や議論には詳しくありませんが、「ワクチンの破棄分を抑える」効果を期待しての連携であったと考えるのは自然なことだと思います。 (当たりくじは各自治体で管理するも、会場においては同じ箱から出していき順次開梱すれば破棄は極小化できる。)
県が、謎の配分を行った結果どうなったか。 吉富が3箱、豊前が3箱、上毛は1箱、築上は2箱。 吉富は100%、築上29%。
これらのボトムがあわなければ、合同での連携しての接種業務は破綻する。 ならば吉富は3箱を「好きなタイミングでどんどん開ける」と、その分の残分は、場合によっては破棄していかねばならない。
実は、築上町長には話を通さずに動いていたため、先ほどお会いしていたのですが、やはり自らの町民を守らねばならないという観点や、第一回接種・第二回接種の予約作業の混在は「難しいだろう」という考えでしたので、場合によってはコールセンターの統合を解除する可能性だってすでに出ています。 (豊前・上毛・築上は共に高齢者の約3割のため、今後も連携できると思います。)
吉富だけ出て行く形になった場合、吉富町は今から早急に専決処分で予算を通し、スタッフを雇用して体制構築から行わねばなりません。 そして大量のワクチン破棄を行いながら、自前で町民に接種していくよりない。広域で確保した意思を(フリーライドするような形で)残る1市2町が使うことを許したり、築上町のコールセンターが機能するかは分からない。
これは、この1市3町の連携のみの話ではありません。
人口規模の小さな自治体は、恐らく類似の工夫を担当者間で締結していると想定され、この無作為なバラバラのワクチン配布は、構築していた自治体間連携を破壊してしまった可能性が高い。少なくとも前述の4自治体については致命的なヒビが入ったと当職は認識する。
(県は、自治体からの申請数を基準にしたと述べているため、1市3町で申請中の共同歩調をとる予定であったにも関わらず、吉富町が協調を破棄して多く申請したことが発覚しているため。県が止めるべきだったと思う。)
また、築上町町長・上毛町長は頭を抱えており、「じゃ仕方ないかぁ」と笑って許すような表情ではなかった。少なくとも私の見る限りは。
市町村は、それぞれ持ちうる予算も職員数もギリギリの中、一年に渡る「緊急」を延々とこなしてきました。もう、兵隊はいないんです、いないんだ。政令指定都市や都庁とは違うんです。交代要員もいない。
その限られた人的資源を紡ぎ合わせて、それでもゲームチェンジャーとされ、地域住民が期待するワクチン接種に「ギリギリの調整」を組み上げていたんです。こんな乱暴な配布方法は、それを全て破壊する行為だった。
みんなカリカリしている、とても平和的に行こうという空気ではない。 貧すれば鈍するという言葉もあるが、つらい現状があれば「減らされたらどうしよう」と過大に申請した自治体だって出てくるだろう。けれども、それを県が容認してしまえば、全体の破綻を招いてしまう。
実際に、私の目の前で壊れかけている。
これは、県内の各所で生じた「ヒビ」だと思う。 ワクチンは来ても、接種することができるかは分からない。
謝辞
昨日は過去記事を流し込んだのみとなり、少し手を抜かせて頂きました。 その間、命懸けで事務作業をしていた次第です。それは私のことではありません。
何より時間がなかった。 問題発覚が水曜日の昼、ここで各自治体の配布差の問題を知る。 問題は木曜日が祝日であり、平日の金曜日を逃せばGWに突入してしまう。
行政機関の公式の窓口は止まってしまうため、資料の裏取りや首長のコメントはとれなくなる。
与えられた時間は、48時間。
実際に動けるのは金曜日のみ、朝8時から17時まで、実質9時間が勝負。
それまでに必要な資料を準備し(ないから作る)、すべての人間が同時に動かねばならない。
まず、谷畑市長にお礼を書きたい。 相当な多方面に連絡を入れてくださったと思います。 どことどこに連絡というのは教えてくれませんが、行橋市長に、本庄市の吉田信解市長(市長会の委員長)から連絡を頂いています。豊前市にも連絡を入れてくださったと伺いました。
また(本庄市長経由し)市長会の立谷会長(相馬市長)が河野大臣にお伝え頂いたであろうことも。
これを、祝日の一日だけで完了させるというのは、どういう負荷を背負ったのか筆舌に尽くしがたい。 谷畑市長が有する、積み重ねた人間関係、その財産に甘えてしまったというのが実態だ。
私にはできない。
本来は、様々な手続きがある。 私は市長ではないので、ある意味では越権行為だとは思うが、市長会を動かしてくれと要望することは本当は筋違いなのだ。また、谷畑市長は、先日勇退しており現職ではない。物凄く無理をさせてしまったと思う、それでも「頼みます」とお願いしました。
福岡の市長会は、私はアクセスできません。 田中市長に報告しつつ勝手に動きました。その他の市長達には、一部ではありましょうが、上毛町長が連絡を入れてくれました。
そもそも記者は、金曜日の朝一に裏取り(前述の記事の資料は、当時は公開されていなかった)をするため、貫徹で準備をしていました。凄まじい数の自治体に取材をあてていって、それで記事が間に合った。
たった一日の平日、ここに全ての照準をあわせて全処理能力を投入。
正規ルートはとれておらず、あらゆるものをすっ飛ばして対応。 これは本来ならば、行儀の悪い行為であって、仁義をきれたとは言えない。
アニメでいうところの詠唱破棄。 これが許されるのは、事態の緊急性と、日ごろのお付き合い。 (許されてないかもしれませんが。)
豊前市長には市長会から連絡が行っており事態を把握していると推定しますが、1市3町を事例としつつも築上町の新川久三町長には、まったく報告ができていません。 携帯番号を知らなかったから、祝日に連絡をつけることができなかったからです。まったく知らぬ中で、記事だけ出る(築上の名前は出ずとも)のは失礼です。
(平均よりも多い自治体は良いでしょうが、そうではないところには情報共有をしておかないとトップが知らないというのは恥をかかせてしまいます。)
(本来は中間報告を入れつつ動くのが筋です。)
ある程度の目処がついたのは夕刻。
紙面化がほぼ確定の報告を坪根町長にしたところ 「何かして欲しいことはあるか」と言われたので、ワガママを言いました。
上毛町長から築上町長にアポをとってもらったのが18時半頃。当然、庁舎にはおりません。 【いまから行きますから】と押し切ってくれて、新川町長の自宅についたのは19時過ぎでした。
私は、隣接する自治体とはいえ、ただの市議の身分に過ぎないのでありますが、夜中に自宅まで押しかけてお時間を頂きました。まずもって感謝いたします。
報告が遅れたこと、仁義をきってなかったことをお詫びし、現在持ちうる情報を報告しました。
新川町長からは、そこまで君らが粘ったとはと深くお礼を言われ、玄関まで見送ってくれました。
新川町長の携帯番号をゲットした。 今度、町長室も遊びに行っていいって。 やったZE☆
他、各地の地方議会の正副議長級が奔走し、全国の都道府県の配布状況をボトムから逆ハック。 凄い人数が、数日、寝ていない。
一部ではありますが、僭越ながら陣頭指揮をとらせて頂いたことを誇りに思います。 私に賭けてくれたこと、地方行政の矜持を示せたこと、感謝します。
残48時間からスタートし、実際に大臣までつながったこと。 「君だったら間に合うかもしれない、名前は貸すから行きなさい!」って言ってくれたのは嬉しかった。
共に戦ってくれたこと、駆け抜けてくれたこと、 読者の皆様の拡散支援も含め、深く感謝いたします。
ワクチン配布 国、明言ここのニュースは大きく触れる必要はないでしょう。
河野大臣から、PF06、PF07、PF08が示されました。
現在の配布は、PF01~05まで。 PF01~04は少量でトライアルなどに用いられたものです。
本Blogで取り上げた「偏在」は、PF05になります。 ここが高齢者用の大規模納入の開始。
私たちは、PF06において不足自治体との調整、および広域対応をしている自治体の調整を要望する構えでありました。これは都道府県で決定されるものと考えていました。
しかし、PF06~PF08までを国が策定、配布計画として「国が決定」したのです。 昨晩のニュースの中身であります。
実はもうその資料も持っておるのですが、かなりの部分の偏在は解消できるものと期待しています。 最初から国が強権発動できるのであれば、そうしたほうが良かったのかな、とも。
ただ弊害もありまして、都道府県単位で「ここ!」という個所付けができなくなったという課題も残ります。 一気にPF06~PF08まで決めてしまうと、感染爆発などが生じた場合の対応ができません。
とは言え、都道府県単位に(総務省から)取りまとめさせ、基礎自治体に申請させる方式は実際に事故を起こしています。これは大事故と言っていい。
ならば国が早期に乗り出すのも理解はできますし、万が一の大幅不足(地域単位での感染激増)の場合は、何がしかの対処を講じて行けばよい。 どこもかしこも「少しでもワクチンを」となっている以上、それぞれが利害関係者みたいな状況ですから、協議をまとめろというのは無理だったのかもしれません。
下手に余地を残さず、一気に06~08を発表してしまうのは正解かもしれません。
私は、「市」の議員でありますが、他府県の地方議員には申し訳ない思いもあり、ここまでの供給の謎配分は恐らく福岡だけのようです。まだ全県データは見ておりませんが、実は福岡県行政のみが起こした事故という可能性が否定できず、スタートした時点では全貌が見えませんでしたので(また今も把握できていない)ごめんなさい。
公平に、かつ迅速に対応できていた都道府県からすれば、一気にPF08まで固定されてしまったことには弊害もあるかもしれません。
しかし、「いつ、どれだけ入る」という数を、具体的に国が示したことで 「この接種体制で、どこに何人の人員配置」という、純粋な接種体制の構築に集中していけることでしょう。
その計画が立案できるようになったことは、私はやはり喜ぶべきことだと考えております。
スペシャルサンクス 中野区の吉田康一郎議員からは「プリンと羊羹があったら、プリンから先に食べるものだ。物事には優先順位がある。君はいまワクチン偏在問題に特化すべきだ!」という、一瞬、意味が分からない例え話で激励しれくれました。ヘトヘトに疲れていて頭が回っていなくて愚痴ったときです。
私はわけも分からず「プリンも食べたい、羊羹も食べる」と答えたら、「いやプリンのほうが早く痛むから」と言われたので「今度、買ってくれるなら、もう少し頑張る」と答えました。今度、羊羹もプリンも食べさせてくれると信じております。
国希研の同志議員へ。 数日、不在にして申し訳ありません。職権代行を受けてくださった笠間議員に感謝します。
併せて、ウイグルを応援する全国地方議員の会においては幹事長の職を頂いているにも関わらず、他執行部メンバー、代表理事・議員会員の皆様にご迷惑をおかけしました。
もう一両日中には戦線復帰いたします。
↓ウイグル問題の啓発支援にご協力頂ける方は、下記もお願いいたします。↓
ウイグル応援グッズ
保守基金ウイグル応援グッズ | 保守基金https://hosyukikin.jp/category/item/itemgenre/org/uyghur/<strong>ウイグル証言集会</strong><strong> </strong>「ウイグルを応援する全国地方議員の会」が主催し、日本ウイグル協会の共催で実施しています。実際に迫害にあっている方に登壇して頂き、地方議員が同席のもと被害実態を訴えてきまし...
一部ではありますが、僭越ながら陣頭指揮をとらせて頂いたことを誇りに思います。
私に賭けてくれたこと、感謝いたします。
残48時間からスタートし、実際に大臣までつながったこと。
中一日は祝日、分の悪い戦いだった。
「乗った」という声、
「君だったら間に合うかもしれない、名前は貸すから行きなさい!」って言ってくれたこと、
共に地方行政の矜持を示せたこと、戦ってくれたこと、駆け抜けてくれたこと、感謝します。
読者の皆様の拡散支援も含め、深く感謝いたします。
さて、残りの残務を片付けよう。
よう頑張ったという方は、FBのイイネ・シェア、Twitterでの拡散をお願いします。
※ 恐らく表示される人数が極少数になると思うので、とりあえず「見えた」人はイイネをお願いします。一定数がないと、タイムラインにあがらないと思う。私のアカウントの場合は特に。
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beracha7 · 5 years ago
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サトピーの運動器具で、腕立て伏せ中。笑!
.
今週もいろんなことがありました^_^
短く、神様がしてくださったことを書いてみたいと思います!
火曜日と水曜日、
神様に両実家に行くべきかどうかを、
聞いてみたら、行きなさいとのことで、
行ってみたら祝福受けました!
なかなか行けなくて、感謝していたのですが、
神様が行きなさいと言われるときに行くのが
ベストでした^_^
.
水曜日は、久しぶりのこともあり
ルークはなかなか朝学校に行けず、
洋服も着替えてもらえず。笑
かなりイライラしてしまっていたのですが、
学校に30.40分遅れたことによって、
サトピのお姉さんご夫妻に会えて!!
まさにその為だったのかなと。
神様のゆるしなしには何も起きない。笑。
.
あと、ある場所で
マシンを交代することがあったのですが
前の人遅いなぁ。。と思ってしまい。笑
そのあとで、神様に悔い改めて🥺
この罪もゆるされて、益になりました!
ってお祈りしたら、
なんと、その人と話せて関わりが。笑
.
他の日にも、学校にいた他のママさん。
なんだか嫌だなって思ってしまって😅
悔い改めて、
罪がゆるされて、このことが益になりました!
ってお祈りした直後に
そのお子さんとママさんを助けることになり、
なんだかとても仲良くなりました。笑
.
他にも、
ルークに数ヶ月前にアメリカにいるときに、
なんで!!と
ちょっと必要以上に怒ってしまって。
そこからルークがあることに関して、
出来なくなってしまっていたような気がして。
申し訳ないなぁと思っていました。
.
気づいていなかったのですが、
自分が悪いからと、責めていたり
ゆるされていないと感じていたのかも。
前にも悔い改めていたのですが、
.
今日改めて悔い改めて、
罪人ですが、イェスさまの十字架によって
完全にゆるされていて、このことの益も
みれました!😊 とお祈りした直後、
なんと、ずっと止まっていたことでしたが、
ルークが再びできるようになり!
しかも、自主的に、自分から!
そして、とっても喜んでいました!^_^
.
なんか、
たくさんの間違えの中でも、
十字架があり、完全なるゆるしがあり、
それに立って、神様がすべて
益としてくださると信じるなら、
本当に益になるんだと。
神様の完全なゆるしって
すごいなと思いました!
.
しかも、長崎行きのチケットをとるのに、
最初は高めだったのですが、
安く行けるようにと夫婦で祈ったら、
なぜか、急にサトピがマイルが今月で失効
してしまうことがわかり!
マイルで2人分行けるようになりました!
ルークも3歳以上なので、
3名分ですが、取ろうとしていた分の
3分の1!!感謝です☺️
.
神様色々ありがとうございますー!
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youki-komatsu3 · 5 years ago
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 Facebookで7日間ブックカバーチャレンジという、いわゆるバトンが回ってきたので今日までやっていました。
 バトンが流行っていたあの時代、最初はノリノリでやっていたものの次第に面倒くささや少しのモヤモヤに飲み込まれ遠ざかっていきました。
 正直なところ今でも少し苦手ですが、基礎疾患が多く厳重に引きこもる何も起きない日々……苦手なルールを排除してやってみようと思った訳です。
以下敬称略です。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1
『寺山修司少女詩集』 角川文庫
著:寺山修司
とある病気で手術をし入院生活を送っていた時に常に持っていた詩集。短い詩も多いため音読をしたり書き写したりと、リハビリの供として大変お世話になりました。
『ヒスイ』という詩が作曲家の信長貴富によって合唱曲と独唱曲になっており、主メロがとても好きなのでいつか歌えないものかと思って楽譜を眠らせています。合唱になっている詩なら『飛行機よ』も好きです。曲がまた最高なんですよ、冒頭のアカペラがホールに響く気持ちよさ……いかんいかん、合唱ができない日々に悶々として合唱の話をしてしまう……。
2
『これは のみの ぴこ』 サンリード
作:谷川俊太郎 絵:和田誠
表題の「これは のみの ぴこ」から始まる壮大な言葉遊び(ネタバレになるので言葉遊びとしか言えません)……黄金コンビの谷川俊太郎と和田誠による詩の絵本です。和田さんがレタリングしたのだろうと思うのですが、絵にぴったりのフォントが良いです。
四歳頃全文を暗記、今でも暗唱出来るというのが私の地味な特技です。ページを繰るごとに一文が増えていくこの絵本、繰り返し繰り返し読み聞かせをする側は大層地獄だったと思います。ごめんなさい。でもまあ、あくまでも絵本なのでそんなにお時間は取りませんから、うんざりせずに読んでください。全文暗唱出来るという地味な特技が出来るかもしれません。
3
『指輪物語』評論社
著:J・R・R・トールキン 訳:瀬田貞二・田中明子
映画『ロード・オブ・ザ・リング』の原作で文庫版は全10巻にも及ぶ超大作ファンタジー小説です。全ファンタジー小説の始祖的な物語。前日譚の『ホビットの冒険』も含めた中つ国の物語がとても好きです。文字や地図に歴史、文化。その全てが著者による創作なのに、隙を感じさせないところが最高。この長さで挫ける人もいるとは思います……でも、面白いです!こんな時にファンタジーはいいかもしれませんね。
映画も好きで何度も観ていますが、小説版は映画を観たあとでも十分楽しめます。レゴラスはいいぞ!!もう、映画だけでもいいから!映画もめちゃくちゃ長いけど!!映画だったら、王の帰還でピピンが宰相の前で歌う曲がいいです。作業中に映画のサントラを流すと壮大な気持ちになれておすすめ!
4
『七色いんこ』秋田文庫
作:手塚��虫
手塚治虫といえば火の鳥、ブッダ、アトム……いろいろありますがあえての七色いんこです。漫画類が禁止されていた幼少期に祖父がぽんとくれたのが七色いんこ5巻でした。火の鳥は親と共に行った人の家に全巻あり貪るように読んでた気がします。ブッダは小学校の時教室にあったなあ。あれは何故だったんでしょう。
七色いんこの話に戻ります。なんと言っても、いんこがカッコいいんですよ。あとトミー。ルパン三世しかり、世界各地にある秘密基地、老若男女誰にでも変身出来るマスク……ロマンが溢れます。こういうの、憧れる時があると思うんですが、え?ないですか?またまたぁ。ラストに犬のタマサブローが主人公のお話があり、そこに私の推しのタコブネ(のようなもの)が出てきます。タコブネ、かわいいタコブネ……。
5
『学研の観察図鑑2 昆虫2・クモ』学研
監修:国立科学博物館 友國雅章
小学生時代、旅行でも持ち歩いていたポケット図鑑です。自然についてや、カメラやボードゲームについて教えてくれた方との思い出もたくさん詰まっています。これは○○アブ!あれは△△アブ!それはハエ!それはハチ!!とかやってましたね……。
幼少期に愛読書=図鑑の時期があると思うんですが、それが昆虫倶楽部という特殊な部活に入部したことも相まって相当長引いていたように思います。ビビりなので普通に害虫(Gとか)は嫌いですが、無駄に知識だけはモリモリあります。そういえば、昔ディスカバリーチャンネルでGの研究者がその身体能力について嬉々として語るとか見てたな……あいつら脚の動きがね、すごいんであんなに速いらしいっすよ。
6
『鳥の王さま ショーン・タンのスケッチブック』
著:ショーン・タン 訳:岸本佐知子
アニメーション作家でもある著者による画集です。眺めているだけで本当に幸せになれる本。去年、ちひろ美術館東京で開催された展覧会も見に行きましたし、翻訳されている絵本はかなり持っています。ちひろ美術館では展覧会の画集と『セミ』という絵本を買いました。可哀想で可愛いセミ。自由だ!セミ!
風景や人物スケッチは当然素敵なのですが、何より不思議生物達が可愛い。本当に可愛い。大してない語彙力が消滅します。眼福眼福……。いつかこんな絵が描きたいけれど、描けないだろうなあと思って寂しくなるくらいお気に入りです。この人の毒はゴーリーのような即効性はありませんがじわじわと優しく効く毒です。絵本『エリック』もいいぞ!(ゴーリーだったら『うろんな客』がいいぞ!)
7
『アヒルと鴨のコインロッカー』創元推理文庫
著:伊坂幸太郎
伊坂幸太郎の小説が好きでこれまたたくさん読んでいるのですが、ここは一番最初に読んだ本を。
新幹線の中で読もうと東京駅の本屋で手に取ったのがこれで、ここだけの話旅行より夢中でした。以来、伊坂幸太郎に限らず、ばらまかれた伏線達が最後に集合し結実するカタルシスの虜です。映画もいいよ。他におすすめするなら、初期作品は当然なんですが是非『フィッシュストーリー』を。短いのですんなり読めます。映画も最高。もうすっかり結末はわかってるのに何度も観ちゃう。斉藤和義の作った劇中歌も最高なんで。止まらなくなるので切り上げますね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
以上、ブックカバーチャレンジは終了です。
1、詩集
2、絵本
3、ファンタジー
4、漫画
5、図鑑
6、画集
7、ミステリー
このようにジャンル分けをし、思い出のあるものを中心に無理矢理絞り出しました。なのでちょっと中途半端な気もします。
図書館に行ったら上限冊数借りてきてしまうような、いわゆる本の虫には酷なバトンでした。他にもオーデュボンの祈りとかボッコちゃんとか儚い羊たちの祝宴とかぶらんこ乗り、エッシャーの画集、やっぱりオオカミ、ことわざ辞典、伝記類……はてしない物語ギリシャ神話ラブクラフト全集バスカヴィル家の犬青い鳥聖☆おにいさんオズの魔法使い怪盗探偵山猫不思議の国のアリス腕貫探偵おおきな木福家警部補……切りがないので解散!!
お付き合いくださいましてありがとうございました。最後に、今読んでいるのは
『不穏な眠り』文春文庫
著:若竹七海
探偵葉村晶シリーズ最新刊です。葉村晶シリーズ一巻目『依頼人は死んだ』は短編集なので入りやすくこのシリーズの醍醐味が詰まっていて、導入として最高です。ドキドキハラハラ……えっ……あ……うわあああああああああってなれます。
以上です。では。
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sekitoh · 5 years ago
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今年のナイスアルバム2019 ~前編~
目次
~前編~
・日本の音楽シーンの振り返り
・レビュ~本編(8月リリース作品まで)
~後編~
・レビュ~本編(9月リリース作品から)
・終わりに
・アーカイブ
日本の音楽シーンの振り返り
今年の日本のポピュラーミュージックのシーンを振り返ると、昨年の延長戦のように感じる。簡潔に、
「思い出消費の激化」
「商業音楽の転換」
という2点にまとめられると思う。
前者の「思い出消費」の激化に関してだが、昨年大ヒットを飛ばした平成J-POPの売れ線コンピ『ラブとポップ』に乗っかる形で次々と似たようなコンピアルバムが発売され、同じように好セールスを記録した。
加えて既にある程度の地位を獲得しているミュージ���ャン達のベストアルバムリリースラッシュ。これに関しては後に述べるストリーミングへの転換と大きく関わってくる点だが、思い出消費の文脈でも十分に語りうるトピックでもあるだろう。
さて後者の「商業音楽の転換」についてだが、ストリーミングという点と、ミュージシャンの現場での音楽の売り方、リスナーの音楽に対する距離感の変化、などによって音楽業界の地殻変動がさらに進んだ印象がある。
ストリーミングの普及により、例えばスピッツ、Larc~en~Ciel、サザンオールスターズのストリーミング解禁と同時に、ファンによる各々の想いが詰まったプレイリストが沢山世の中に現れ、そしてそれらの多くがシェアされた。音楽が人生で物語として根付いている様をまざまざと見せつけられ、音楽の力を再認識した一年でもあった。
レビュ~本編
…以上のような業界の背景は一切考慮せず!
俺が「ええやん〜!」となったグッドアルバムをリリース順にただただ褒めちぎっていきます!ドンドンパフパフ〜!!!一年で最も俺がイキイキとして鬼気迫る勢いで長文をしたたたたためるお時間ですよ!!!!文体にかなりブレがあると思いますが、テンションがそのまま表れているので敢えて修正はしていません!
今回からはYouTubeのリンクだけでなく、Apple Music, Spotifyでのプレイリストも共有しようかなと思っております。よりわたくしの文章とレコメンドを気軽に楽しんでいただきたい!そんな気持ちで手間と愛情をかけました!
Apple Musicはこちら。THE NOVEMBERSだけ現在再生不可です。
https://music.apple.com/jp/playlist/2019%E5%B9%B4%E3%82%B0%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%A0%E3%82%88%E3%82%8A/pl.u-4JomrADCaegAR8x
Spotifyはコチラ。THE NOVEMBERSだけ利用不可なのでこちらのプレイリストには追加されていません(発売元のレーベルの解体とかで色々と問題が生じています)。
https://open.spotify.com/user/g301uqo0bnulcrbjlrxv1osc4/playlist/3KkFUAwFTlkDSbjHWMQjfL?si=NVrMJVp3QaS_18cg1f8lbA
ぜひプレイリストを再生しつつお読みくださいませ。
1/16 King Gnu『Sympa』
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https://youtu.be/j_NHrPC3ij8
2019年の日本のポピュラーミュージックシーンを語る上でKing Gnuを避けて通ることはもう誰にも出来ないだろう、という程にヒットしました。
こんなにも高度なグルーヴメイクと得体のしれないギターのフレージングのサウンド、複雑なヴォーカルラインがここまで大衆に受け入れられた要因は一体どこにあったのか?普段あまりロックを聴かない知人や職場の後輩も夢中になっている。彼らに「King Gnuのどこを気に入ったのか?」と聞いてもあまり明確な答えが返ってこない。ヴォーカルが上手い!オシャレ!などという答えは返ってくるが、いずれも本質の外縁をただ指先でなぞっているだけな気がしていた。
そんな折、ふと思いついて同様にKing Gnuにハマっている妹に対してかなり粘って質問してみたところ以下の答えが返ってきた。
「今までに出会ったことがない音で衝撃的だった」
「あなたは蜃気楼の“あなたは蜃気楼〜♪”のメロディが一度聴いたら頭から離れない」
「見た目もかっこいい」
「Flash!!!のサビのメロディがめちゃくちゃ良い」
上の知人らと似たような意見だが、ようやく何となく分かってきた。なんということはない、キャッチーなメロディラインとヴィジュアルで惹きつけつつ、そのサウンドの新しさで一気に奥まで引きずり込んだわけか!と得心がいった。ポップミュージックの定義を刷新する時の動きである!それができるミュージシャンは本当に一握りなのだが。
そして伏見さんがより精緻に彼らのことを分析している記事がアップされているので、こちらも併せて一読してほしい。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69558
来年のアタマにはセカンドアルバムがリリースされる。イヤフォンのCMのあの曲「Teenage Forever」や一躍彼らをスターダムに押し上げた「白日」などが収録された、オーバーキルなアルバム。恐らく来年もKing Gnu旋風は止まらない。
3/13 THE NOVEMBERS『ANGELS』
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https://youtu.be/zeHjdd-sqSY
THE NOVEMBERSの7th Album。今年はファーストフルアルバム『picnic』のリリース11周年。両アルバムの楽曲を演奏して回る「天使たちのピクニック」という祝福のようなツアーを敢行していたことも記憶に新しい。
初期の作品と今回の作品、ハッキリと違う。しかし同じライヴでそれぞれのアルバムの楽曲を演奏しても全く違和感を生じさせなかったことは特筆に値すべきことだと思う。
今作ではエレクトロなアプローチも取り入れており、低音のレンジがグッと広がっている。一曲目「TOKYO」の凶暴なローに飲み込まれたかと思えば、二曲目「BAD DREAM」で更にエッジィに刻まれた打ち込みのドラムが突き刺さり、シマーリバーブの開放が心地よいサビへ。「Everything」では更にシマーが広がりを見せ、「plastic」ではエキゾチックなベースラインがうねる。「DOWN TO HEAVEN」「Zoning」「Ghost Rider」と再び猛り狂う楽曲が並び、天上の調べのような「Close To Me」「ANGELS」で幕を終える。
まだまだノベンバーズは進化するのか?どこまでいくんだ?と恐ろしくなった。初めてノベンバーズを聴く方も、久々に聴く方も。人類必聴の一枚。
3/20 Dos Monos『Dos City』
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https://youtu.be/uq3J8C51bAY
今年は個人的にヒップホップがアツい一年だったのですが、その中で一枚挙げるならこちらですね。荘子it、TaiTan、没の3人によるグループ。
まだヒップホップを解釈し、発露するほどの言葉が不足しているので、まだまだこのアルバムの良さを捉え切れていない自覚があり、悔し��。
トラックの奇抜さ、ライムのユニークさは明らかに他のヒップホップと一線を画している。それだけは分かる。このアルバムのリリースにあたり、菊地成孔からのコメントがあるので引用しておく。
“「荘子itよ、孔子itだ。お前もお前のマイメンもまだまだだが、見所はある。最初のアンファン・テリブルに認定しよう。最後の関門は、師を踏み殺す事だ。早速始めるがいい。さあ踏め。韻ではない。顔面だ。”N/K a.k.a 孔子it(JAZZ DOMMUNISTERS)
https://natalie.mu/music/news/324613
Dos Monos本日発売アルバムから三宅唱監督の新曲MV公開、菊地成孔らコメント到着(動画あり / コメントあり)Dos Monosが本日3月20日に1stアルバム「Dos City」をリリース。収録曲「アガルタ」のミュージックビデオがYouTubeで公開された。音楽ナタリー
狂っている。菊地成孔、恐るべし。
そして菊地成孔にこう言わせしめるDos Monosもまた恐るべし。
3/29 Supercrush『Never Let You Drift Away』
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https://youtu.be/ANJNK6SwFD0
俺たちの大好きなUSオルタナだぜ!もうオルタナですとしか言いようがないです。古き良きオルタナの作法から一切ブレないサウンドメイク。
新鮮味は全くありませんが、我々は得てしてこういった「型」にはまったものに触れると安心するものです。アバンギャルドなものばかりを追いかけていると、いつのまにか自分の立ち位置が分からなくなってしまう、ということはざらにあります。そんな時はルーツに立ち返りましょう。
改めて、もうオルタナですとしか言いようがないですね…ダイナソーJr.やらFeederやら、もうあの辺直系のサウンドです。FLAKE RECORDSでレコ漁りをしていた時に試聴機で聴いて「コレコレ〜!こういうの好き〜!!!」となった一枚です。ナードマグネットの須田さんがメチャクチャに熱いレコメンドを書いてたのも試聴したきっかけです。レコ屋のコメントってつい読んじゃうよね。
4/26 Local Natives『Violet Street』
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https://youtu.be/oWwytT5JAdM
こちらもFLAKE RECORDSの試聴機で見つけたバンドです。コーラスワークとグルーヴィな低音が最高に気持ちいい、エレクトロ・インディーポップ。
ロスの5人組バンドとのこと。ライヴでも全員でコーラスとかやってるのかな、だとしたら最高じゃん、超観たいんだけど!!
初期のアルバムも聴いてみたけれど、良い!コーラスの美しさはそのままで、よりバンド感の強いサウンドです。ナイスドリームポップ。アイラブドリームポップ。
5/31 Colde『Love, Pt.1』
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https://youtu.be/mjVq7Ha_WtQ
韓国のR&B界隈、最近かなりいい感じなんですよ。HYUKOHとかに代表されるようなインディーロック界隈は随分と前から注目を集めてますが、R&Bも要チェックです。
Coldeはoffonoffというユニットのヴォーカルのソロプロジェクトでして、offonoffに比べてよりSSW感が強め=歌モノ感強めといった趣です。
この辺界隈はインターネッツで知り合った方に色々と教えてもらいました。彼女とはもう連絡を取れる状態ではないけれど、その節はありがとうございました。人から教えてもらった音楽ってその後も結構印象に残りますよね。あれって何なんだろう。
7/10 GUIRO『A MEZZANINE(あ・めっざにね) - EP』
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DAXの森、道、市場2019の動画を観漁っている時に見つけたバンド。これはいいぞ、と思い調べたら今年にアルバム(EP)を出していたので、聴いてみるとこれまたいい。
ヴォーカルを最初聴いた時に「お、小山田圭吾か…?!」となったが、ライヴ映像を観ると全く別人だったので安心した。
森は生きているとか、Indus & Rocksとかを好きな人にレコメンドしたい。
解釈の余地を残した詞、レンジが広く、多様な楽器が響くアンサンブル。これは今まで聴いたことがなかった。アルバムを聴いている間中、背筋に何か得体のしれない気配を感じるような、平穏さと不気味さが同居しているような音。
そして調べていて分かったのだが、ベースの方はかのFoorin「パプリカ」でベースを弾いているらしい。
7/12 Tycho『Weather』
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https://youtu.be/u-SHHwAJDY8
コレはね!メッチャよかったですよ!!ホント!!今年の一枚を選べと言われたらコレ…かな…!!!好きすぎてアナログも買いましたもん!限定クリアヴァイナル!家でわくわくしながら針落としたら、まさかの音飛びする不良品だった時の悲しさが分かるだろうか!!!ショックのあまりリアルに膝をついたね!音が飛ぼうが繰り返し聴いてるけど!
ジャンル的にはドリームポップ、シューゲイザーなどを通過したエレクトロです。が、今回は女性ヴォーカルSaint Sinnerをほぼ全編に渡り起用。これまでのTychoとしては異色な一作となっています。
しっかし、これが良いんですよ…。心地よく、輪郭が丸いTychoのエレクトロサウンドの上に、スモーキーで空から降ってくるようなヴォーカルが溶け合う、天上のアンビエンス。これは家でゆっくりと音楽を聴きたい。だからこそアナログ盤のように聴くのに手間がかかる媒体というのはうってつけ。アナログはレコードを取り出し、ターンテーブルの上に置き、針をそっと落として���A面が終わればひっくり返し…と聴くに際する工程の多い代物。しかしそれはひっくり返せばそれだけ音楽に対しての真摯な姿勢が求められるということ。このアルバムにはそれをする価値が十分にあるのです。
7/17 Easycome『Easycome』
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https://m.youtube.com/watch?v=X89Z8XgXlEI 大阪のインディー・ポップバンドEasycomeの1st full album。とても思い入れの深い一枚。このアルバムに関してはリリース時に本気で書いたレビューがあるので、それを読んでください(過去の自分に丸投げ)。
https://sekitoh.tumblr.com/post/186334448155/easycome
7/24 Kitri『secondo - EP』
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https://youtu.be/aKsed7AdsT0
ピアノ連弾ヴォーカルの姉妹ユニット。この字面だけで既に興味が湧いてきませんか?
大橋トリオが噛んでるというのもあり、非常にファンタジーでシアトリカルなアレンジがアルバムの随所で光ります。しかしそれは影や危うさを感じさせる、どこか不穏で耽美的な詞世観(歌詞の世界観を指すわたくしの造語です)、ふたりのヴォーカルの美しいハーモニー、ピアノの繊細な旋律…といったKitri自身の持つ魅力があってこそのアレンジ。
ジブリが好きな人にはドンズバで刺さりそうな気がする。
映画「“隠れビッチ”やってました。」の主題歌に「さよなら、涙目」が起用、更にNHKの「みんなのうた」に「雨上がり」が起用されるなど、世間的な注目もますます増えていく中、来年には1stアルバムのリリースも控えてます。完全に来年ブレイクします。断言する!!!
因みに1st EPも今年の1/24リリースなんですよね…畳み掛け方が上手い。
8/7 大石晴子『賛歌 EP』
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https://youtu.be/YvTWRNsJPCc
大阪出身、神奈川育ちのSSWの初流通盤。今年最も瑞々しく、心に刺さった一枚。
公式の紹介文が簡潔かつ味があっていいので引用します。
“大石晴子
大阪生まれ神奈川育ち。
生活の機微を、美しくも不思議な響きのメロディで歌うシンガーソングライター。
早稲田大学のソウルミュージックサークルで出会ったR&Bフィーリング、お笑いラジオ番組のヘヴィーリスニングで体得した鋭利な言語感覚、愛犬家。”
GRAPEVINEに影響を受けていることを公言しているが、サウンドの趣は異なる。ナイアガラサウンド、フォークロック、昨今のトレンドであるシティポップ、それらを彷彿とさせるウワモノの鳴り方がとにかく美味しい。そして何よりも大石晴子の歌声が素晴らしい。息の量が多めだがパワフルさも兼ね備えている。
歌詞の世界観はGRAPEVINE的な、多くを語らないものとしてまとまってます。言うなれば点描画のようにまとまっている。近くで見ると単語ひとつひとつだが、全体を俯瞰すると像が見えてくるような、そんな詞だ。
ストリーミングでも聴くことができるが、これが聴けなくなる時が来るのが怖くて、CDを買いに街に出かけた。印象深い一枚だった。
8/28 ヨルシカ『エルマ』
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https://youtu.be/PWbRleMGagU
ボカロPであるn-buna(読み:ナブナ)とヴォーカリストsuisによるユニット。ボカロ特有の内向的で叙情的な詞世観、テクニカルなギターのフレージング、高度なヴォーカルが紡ぐ、切なく、ヒリヒリとした音楽。
今作では前述したような「ボカロらしさ」は影を潜め、純粋なソングライティングの腕が光る、落ち着いた美しい楽曲が多く並び、よりこのコンセプトアルバムが形成する世界に浸りやすくなっている。
4ヶ月前にリリースされた『だから僕は音楽を辞めた』と対になるコンセプトアルバム。そちらはよりロック色の強いアルバム。
ヨルシカ、後述する井上陽水のトリビュートアルバムにも参加しているんですが、それもメチャクチャ良いんですよね…イントロ4秒のアコギの抉るようなチョーキングを聴いた時には思わず叫んでしまった。カッコ良すぎてハートを持っていかれた。フォオオオオ!!って。そしてsuisのクリアな歌声がMake-up Shadowの色香漂う詞に独特なフィルターをかけていて、妙味。
後編に続く… 
https://sekitoh.tumblr.com/post/190015199350/%E4%BB%8A%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%90%E3%83%A02019-%E5%BE%8C%E7%B7%A8
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2ttf · 13 years ago
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see also How to Edit a Glyph that is not listed on iFontMaker
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sorairono-neko · 5 years ago
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それにしても、勇利が好きな相手はいったい誰なんだ?
「勇利と仲よくやってる?」  電話越しにクリストフにそう訊かれたヴィクトルは、力をこめて「もちろんさ!」と答えた。 「もう毎日楽しくて楽しくてたまらないよ。長谷津の日々も最高だったけど、勇利がロシアへ来てからは、また別の楽しみがあって俺はとてつもなくしあわせだね」 「そうだろうとも」  クリストフは確かにというように請け合った。 「きみのことだから、早々に手を出しちゃったんじゃない?」 「え?」 「それとも、臆病になってしまって、何もできないままかな。だとしたらさきが思いやられるね」  ヴィクトルは何を言われているのかよくわからなかった。しばらく黙りこんで思案していたら、もしかして……とある考えがひらめいた。 「ヴィクトル? 聞いてる?」 「ああ、聞いてるよ」  ヴィクトルは、まわりの者に、とにかく勇利と特別な関係だと思われがちなのだ。確かに特別は特別だ。勇利のような子はどこにもいないし、彼以上に愛している者もいない。しかしみんなは、ヴィクトルと勇利がセックスしていると考えているようだ。そんなことは一度もしたことのないヴィクトルは、なぜそんなふうに思われるのだろうとふしぎだった。 「クリス、もしかして……」 「なんだい?」 「クリスも、俺が勇利とセックスしてると思ってるのかい?」  クリストフは笑いだし、「はっきり言うね」とおもしろがった。 「じゃあ俺もはっきり答えよう。もちろん思ってるよ。そうでしょ?」  ヴィクトルは鼻を鳴らした。 「心外なんだが」 「どうして? ヴィクトル、勇利とセックスしたくないの?」 「したいとかしたくないとか、そういう問題じゃない」 「じゃあどういう問題?」 「勇利は勇利だ。俺の大事な大事な子なんだ」 「それとセックスしたいってことは矛盾しないと思うけど」 「考えたこともないよ」 「考えたほうがいいのかもしれないよ」 「なぜ?」 「ヴィクトル……、君ってどうしようもないね。本当に勇利以外愛したことがないんだね。よく考えてみな。もし勇利が『この人が好きです』って誰か相手を連れてきたらどうする?」 「え?」  ヴィクトルは想像してみようとした。しかし、イマジネーションを大切にする彼の力をもってしても、それはあまりに難しいことだった。勇利がヴィクトル以外の誰かを好きになる? 現実的ではない。勇利の世界にはスケートとヴィクトルしかないのに。 「もちろん祝福するよ」  ヴィクトルは当たり障りなく、常識的な、一般的な返事をした。 「すてきなことじゃないか。誰かを好きになるってすばらしいよ。そうだろ?」 「それはヴィクトルが勇利を好きだから言える言葉でしょ」 「そのとおりだが、俺は──」 「勇利とそんな関係になるなんて思いもよらない? まあいいけどね」 「勇利には好きな相手はいないらしい。それであれほど情緒的なんだから、もし誰かを愛したら、スケートはさらに音楽的に、叙情的になるはずだよ。彼の人生も豊かになる。視野がひろがって楽しみも増える。自信もどんどんつくだろう。いいことずくめだ」 「まあいいけどね。あとで泣いても知らないよ」 「なんだって?」 「それほど勇利を愛してるのに、まだ愛ってものがわかってないらしい」  クリストフは含み笑いを残して電話を切った。ヴィクトルは携帯電話をみつめて息を漏らし��。泣く? 俺が? なぜだ? 勇利がしあわせになるのにどうしてかなしむ必要があるんだ? ヴィクトルにはさっぱりわからなかった。  とにかく、ヴィクトルは勇利と毎日一緒にいられて、スケートができて、生活をともにできてしあわせなのだ。それ以上のことなんて考えられない。勇利が誰かを好きになるなんて、とてもあり得ないことのようにヴィクトルには思えた。  しかし、彼のその考えは、数日のうちに突き崩された。 「あの、ヴィクトル、話が……というか、相談があるんだけど……」  勇利がそう切り出したのは、夕食も済んだ落ち着いた時刻で、彼は頬をほんのりと赤く染め、ひかえめに、可憐に瞬きをして、ためらいがちな様子だった。 「相談? なんだい?」  勇利に頼られるのが大好きなヴィクトルは、声をはずませてソファに座り、自分の隣を叩いた。 「なんでも聞くよ。ここへおいで」 「うん……」 「勇利がそんなふうに素直に話してくれるのは珍しい。うれしいな」 「いつも素直にしてるでしょ」  勇利は腰を下ろしながら口をとがらせた。 「いや、勇利は自分の考えはめったにおもてに出さない。それで俺の精神がどれほど痛めつけられていることか」  ヴィクトルは勇利に大切な打ち明け話をしてもらえるうれしさで浮かれ返り、青い目を幸福そうに輝かせた。 「さあ、なんでも話してくれ。勇利の助けになりたいし、力になりたい。遠慮なんかしなくていい」 「……うん」  勇利は相変わらず赤い頬をしたまま、子どものような態度だった。ヴィクトルは勇利がかわいくてたまらなかった。自分を頼ってくるこのいとしい生徒を見ていると、俺がかなしみをとりのぞいてやるぞ、俺がしあわせにするぞ、という気持ちがどんどん湧いてくる。 「あのさ、ぼく……」  勇利が決心したように顔を上げた。ヴィクトルは、この可憐なくちびるからどんな本音が飛び出してくるのだろうと、どきどきしながら待った。 「好きなひとができたみたいなんだよね」 「──え?」  思いがけないことを言われ、ヴィクトルは一瞬、全機能が停止してしまった。ものを考えられず、瞬きができず、呼吸もままならなかった。ヴィクトルは、あのとき心臓も止まったとあとになって思った。 「あっ、好きっていうか……」  表情をなくしてしまったヴィクトルの驚きように慌てたのか、勇利が急いで手を振った。 「好きなのかなあ……っていうくらいの気持ちなんだけど! はっきり好きって思ったわけじゃないし、もしかしてそうなのかな……? ってぼんやりとね……ちょっと……」 「そ、そうなのか」  このときにはヴィクトルも人間的な性能を取り戻し、話すことができるようになった。しかしまだ半分くらいは動いていなかった。 「それはおめでとう。よかったじゃないか」 「そ、そうかな?」 「そうだよ。人を愛すれば人生が豊かになる。視野もひろがる。すてきなことだよ」  ヴィクトルは、クリストフに言ったことをそのままなぞって口にした。そうかな、そうかも、と勇利はほほえんだ。 「そうか……とうとう勇利が……俺がそういう話をしたらとにかく怒り狂った勇利が……」 「ちょっと、そういう……」  勇利が何か抗議している。しかしヴィクトルは、勇利の言うことがよくわからなかった。耳には入るのだけれど理解できない。まるで知らない国の言葉みたいだ。どうやらまだ本調子ではないようだ。いったいどうしたというのだろう? せっかく勇利にとって���いことになったのに。 「とにかくおめでとう。それで、いつから付き合ってるんだい? デートはしてるの?」  ヴィクトルはにっこりして尋ねた。楽しい勇利の話が聞きたいと思ったのに、自分の声がなんだか遠くて、水の中にいるようで、言葉つきも鮮明ではなく、ヴィクトルは耳がどうかしたのかと驚いた。本当に、いったいどうしたというのだろう……具合でも悪いのかな? 「あっ、いや、付き合ってるとか、そういうのじゃなくて……」  勇利が眉を下げた。 「ああ、そうか。相談って言ってたね。どうすれば付き合えるかっていうこと? デートに誘うにはどうしたらいいかとか?」  ヴィクトルはそれに答えようとして、上手く説明できないことに気がついた。わからないのだ。 「あの、そういうことでもなくて」  勇利がぶんぶんとかぶりを振った。 「その人と近づきになりたいとか、そんなんじゃないんだ」  彼は困ったように首をかしげながら解説した。 「さっきも言ったけど……、本当に好きかどうかもよくわからない。ぼくこのひとのこと好きだったのかなあ……って考えてる感じなんだ」 「好きだった、ということは、その人は昔からの知り合いなのかい?」 「あっ、う、うん……そう……」  勇利ははにかんでうつむいた。ヴィクトルの胸がにわかにざわめいた。俺と出会う前から知っている相手なのか。いったい誰だ? 日本のスケーター? 長谷津の知り合いか? 「でもよくわからなくて……。わからないのはいいんだ。べつにそこを突き止めたいわけじゃない。好きだとしても、もっと別の感情だとしても、ぼくはそのひとがいちばんだから、それについてはまったく問題がないんだ」  ぼくはそのひとがいちばん。そのひとことに、ヴィクトルは激しくうろたえた。勇利のいちばんは自分だと思っていた。いつだって勇利はヴィクトルを愛し、ヴィクトルだけを見ていると思っていた。だが、ちがったのだ。そうではないのだ。 「いちばん……なのか……」  ヴィクトルはぼうぜんとしてつぶやいた。 「う、うん……」  勇利はますます赤くなって気恥ずかしそうにした。 「もう、ずっと……そのひとが宇宙一だよ……」  ずっと。つまり、ヴィクトルが「俺が勇利のいちばんだ」と浮かれているあいだも、勇利にとってはその人物がいちばんだったのだ。なんということだろう。とんだ道化だ。何をうぬぼれていたのだ。自分はばかだ。 「好きかどうかわからないっていうのはね……、ぼくは当然以前からそのひとが大好きなんだけど、最近は、彼を見てると、勝手に胸がどきどきして、どうしようもないんだ」  ヴィクトルはなんと答えればよいのかわからなかった。彼は勇利の言葉から導き出せる、しごく当たり前のことを言った。 「彼ということは、相手は男なんだね」 「そうだよ」  勇利はこっくりとうなずいた。 「ぼくは彼を前にするときはいつだってどきどきしてたんだけど、それは最初の……親しく接するようになったころのことで、慣れてからはけっこう普通に話せるようになってたんだ。そのひとはぼくにかなりべたべたしてくるんだけど……」 「べたべた!」  ヴィクトルは大声を上げた。 「べたべただって!」 「う、うん。そう」  勇利がしどろもどろになった。しまった。驚かせてしまった。ヴィクトルは後悔した。だが、勇利にべたべたするとは……なんとずうずうしい男なのだろう! 「でもぼくは、べたべたされても平然としていられたんだ。もういつものことだし、そういう接触が好きなひとなんだろうって思ってた。だから平気だったんだ」  ヴィクトルは、よっぽど勇利に注意をしようかと思った。その男は下心を持っているのかもしれない。勇利とふれあうことに喜びを感じているのかもしれない。油断してはいけない。しかし、迷っているうちに勇利は話を続けた。 「だけど、近頃ではどうもそんな感じじゃないんだ。いままでどおりなんとも思わずいられることもあるんだけど……、そうじゃないことがかなり多くなってきたんだ。平然とっていうわけにはいかなくなった。顔を見るだけでもどきどきするんだから、それは当然だよね。なんかもう、目が合うだけでもたまらなくなって……何も話さなくても……一緒にいるだけでどきどきして……ほっぺたが赤くなって……」  勇利は吐息をつき、赤い頬をしてかぶりを振った。 「話しかけられたり、ちょっとさわられたりすると、すごくうろたえちゃうんだ。こういうのってどうなんだろう? ぼくはそのひとが好きなのかな?」  純粋な瞳で問いかけられ、ヴィクトルはどきりとした。答えられない。 「いいんだけどどっちでも……。そのひとがいちばんっていうことはよくわかってるから、それでいいんだけど……」  勇利はまた「いちばん」の話をした。ヴィクトルは憂うつな気分になった。 「ただ、そのひとといて、普通に話せないとか、どきどきしておかしくなっちゃうとか、そういうのは困るんだ。それは本当に困るんだ。彼に変に思われるし……ぼくも、彼とはごくありふれた感じで話したいんだ」  勇利は吐息をついて目を伏せた。それから彼はまぶたを上げ、真剣な態度を示した。 「ねえヴィクトル、どうしたらいいと思う? どうすればこれまでどおり話せるかな? ヴィクトルならわかるかと思って、ぼく」  そんなこと、ちっともわからなかった。だが「わからない」と言うわけにはいかない。勇利はヴィクトルを信頼して、ヴィクトルなら教えてくれると思って頼ってきているのだ。なんとかしてやらなければならない。それにしても、ただ勇利が好きなひとの話をしているだけなのに、こんなに胸が苦しいのはどうしてだろう? 「そのひととはひんぱんに会うのかい?」  ヴィクトルはどうにか正解のいとぐちをつかもうと、知りたくないけれど調査することにした。 「うん。毎日会う。ほとんど一日じゅう一緒にいる」  なんだって!? 俺は聞いてないぞ! ヴィクトルは反射的にそう叫びそうになった。だめだ。自分の都合を考えている場合ではない。勇利は好きなひとといられてしあわせなのだろう。よいことではないか……。 「へだたりをとることはできないんだね?」 「うん……ふたりの関係からいって無理だし……」  ふたりの関係! なんだそれ! ヴィクトルは憤慨した。いやな響きだ。「ふたりの関係」。 「ぼくもその……会わないようにするっていうのはちょっと……」  勇利が気恥ずかしそうにつぶやいた。ヴィクトルは胸が痛くなった。勇利はその相手といつだって一緒にいたいのだ。ずっといたいのだ。彼にそんなにも想われるなんて、なんて幸運なやつなのだろう。 「……本当に、付き合いたいわけじゃないのかい?」 「え? うん、それはいいんだ。そういうんじゃないんだよ。そもそも、好きなのかどうかもわからないし」  ヴィクトルはほっと息をついた。そうか。そうだよな。好きじゃない可能性もあるんだ。──いや、これで好きじゃないなんて、そんなことがあるだろうか!? 「……とにかく、普通に話せるようになればいいんだね」  ヴィクトルは不穏な気持ちをおさえ、苦しみながら平静を装った。 「うんそう。いちいち赤くなったりどぎまぎしたりするのをやめたい」 「そうだな……だったら、勇利……」  ヴィクトルは必死で考えた。勇利のために、何かよい案を出さなければ。彼を喜ばせたい。 「まず……、赤くなるのはどうしようもないと思う」 「えっ、そ、そうなんだ……」  勇利が目を大きくした。 「でもね」  ヴィクトルは急いで続けた。勇利をがっかりさせたくなかった。 「こういう方法もある。つまり……、ひらきなおってしまうのはどうだろう」 「ひらきなおる?」 「そうだ。勇利はどうしても赤くなってしまう。そういうとき、いちいち、『ぼくは彼のことが好きなのか?』と自問するのがよくないんじゃないだろうか。考えこむ必要はないんだよ。赤くなっても、『ぼくは彼のことが気になってるんだから、これは自然なことなんだ、当たり前のことなんだ』と思うんだ。『いつもどおり』ってね。そう言い聞かせるようにすれば、そのうち慣れて、『あ、また赤くなっちゃった』『でもこのひとのことが気になるんだからしょうがないよな』と受け容れられるんじゃないかな」 「なるほど……そっか……うん……」  勇利は口元に指を当て、考え深そうに幾度かうなずいた。 「それを『当たり前』と思うのか……。確かにいつものことなら、またかーって思えるかもしれない……」 「だろ? もし相手に頬が赤いのをからかわれても、笑顔で答えればいいんだよ。『だって貴方のことが好きなんだから仕方ないじゃん』って。自然に言えばおかしくない。向こうはあっさり受け取って、『そういうものか』って笑ってくれるよ」 「そっかー」  勇利はよい答えにたどり着けたというようににこにこした。 「わかった! ありがとうヴィクトル。ぼくがんばってみる。ヴィクトルに相談してよかった」 「勇利の役に立ててうれしいよ」  ヴィクトルは笑顔でうなずきながら、なんとなく自分が後悔しているような気がした。これでは勇利はその相手と付き合うようになってしまうのではないか。勇利は好きかどうかわからないと言っているし、そういうつもりはない。だが、相手はどうかわからない。「好きなんだから」と言われたら、自分もそうだと打ち明けるのではないか? 勇利はこんなにも魅力的でうつくしい。惹かれないわけがない。──しかし、たとえそうなったとしても、それはよいことだ。勇利がしあわせになるのだからすばらしいなりゆきだ。そうだ。そうにきまっている。  ところで俺はなぜこんなに胸が苦しいんだ? 「ああ、衝撃だなあ。勇利の世界は俺だけだと思ってたよ」  ヴィクトルはそれ以上考えるのはやめにして、意識して笑いながら勇利をからかった。すると勇利は目をみひらき、それから耳まで赤くなってうつむいた。ヴィクトルは驚いた。そしてすぐに納得した。勇利は、あれほど好きだと言っていた俺以上に気になる誰かがいることが気恥ずかしいんだな……。  ヴィクトルはそれ以来、なんだか上の空になってしまった。勇利のことを思い浮かべるとせつなくなって、彼のことばかり考える。話しているときもそうだし、ひとりになってもそうだ。勇利の好きな相手は誰だろう、今日も一緒だったのだろうか、と心配でたまらない。毎日会うということはスケートの関係者ではないだろうか。リンクメイトだろうか、それともコーチやトレーナーか。いったい誰だ、とヴィクトルはクラブへ行くと、勇利に近づく者をじろじろ見てしまうのだった。  勇利は、好きかどうかわからないと言っていた。だが、彼の態度は、あきらかに好きなひとを想っているそれだった。もう自覚しただろうか。それとも、まだ迷っているのだろうか。勇利は気持ちを突き止めることに興味はないようだったけれど、自然と気がつくこともある。愛をはっきりと知っても、付き合うのはいいなんて言うだろうか? 彼はひかえめでおとなしい性質だが、こころぎめをしたら強いのだ。追い詰められると思いがけない行動に出る。ヴィクトルに指輪を渡してきたときだって──。 「勇利、前に言ってた俺の昔の雑誌、みつけたよ」  ヴィクトルは、夕食のあと、居間のソファで熱心にロシア語を勉強している勇利に、一冊の古い雑誌を差し出した。勇利はしかつめらしい表情から一転して顔を輝かせ、瞳をきらきらさせて歓声を上げた。 「やったー! どうもありがとうヴィクトル! 大きくなってからは、自分の力でずいぶんヴィクトルのいろいろなものを買ったけど、ロシアで売ってるのだけは無理だったんだ」 「そんなに喜んでもらえて光栄だね」  勇利ははしゃいで手を伸ばし、興奮ぎみに雑誌を受け取ろうとした。すると指先がヴィクトルの手にふれ、彼は驚いて腕をすこし引いた。ちょうど渡すつもりだったヴィクトルは雑誌を離してしまったので、それはすとんと落ちた。勇利が反射的に左手で受け止めた。しかしヴィクトルのほうも、とっさに本をつかもうとしたから、勢いで勇利の右手を握りしめてしまった。 「あっ」 「あ……」  たちまち勇利の頬が赤くなり、彼は急いでうつむいた。ヴィクトルはさっと手を離し、うろたえながら無理に笑った。 「ごめんごめん。痛かったかい?」 「う、ううん。そんなことないけど……」  勇利は上目遣いでちらとヴィクトルを見た。それからまた気恥ずかしそうに目を伏せた。そんな反応をされて、ヴィクトルまでなんだか照れてしまった。べつにこんなことは珍しくもないのに。いったいどうしたことだろう。 「勇利、顔が赤いよ」  ヴィクトルはごまかすために勇利をからかった。 「かなり赤い。りんごみたいだ」  勇利はじっとヴィクトルをみつめた。ヴィクトルはどきっとした。勇利は照れ笑いを浮かべてたどたどしく言った。 「そんなの、ヴィクトルが好きなんだから仕方ないじゃん」 「えっ……」  ヴィクトルはうろたえた。好きと言われた。勇利に。いや──もちろん気にすることはない。特別な意味などないのだ。勇利がヴィクトルを好きだということに、いまさらいちいち大騒ぎするのはおかしな話だ。しかし──しかし、そうとわかっていても、ヴィクトルは鼓動がどうしようもなく速くなり、自分を見失いそうになった。 「そ、そうかい?」 「そうだよ」 「そうだね……」  ヴィクトルは勇利の隣にぼんやりと腰を下ろした。落ち着け、と彼は自分に言い聞かせた。勇利には好きな相手がいるのだ。自分はいったい何を勘違いしているのだろう。──勘違い? どんなことをどう勘違いしているのだ? 「勇利の……」  ヴィクトルは、雑誌を胸に抱いてそわそわしている勇利に優しく話しかけた。 「勇利の好きな相手って、どんなひとだい?」 「えっ、それは……ス……」  勇利は口ごもり、ちらとヴィクトルを見てうつむいた。 「ス?」 「いえ、あの……優しくてかっこいい……すごく高貴ですてきなひとだよ……」 「そうか……」  高貴ですてきか……優しくてかっこいい……。そういうのが勇利の好みなのだろうか。それなら勇利と釣り合いはとれるかもしれない。でも俺はゆるせないな、とヴィクトルは思った。──ゆるせないって何がだろう。 「あの、何度も言うけど、好きかどうかはわからないからね」  勇利が念を押した。 「そうか。ところで、その彼と一緒にいるのには慣れた? 俺の助言は役に立ってるかい?」 「役に……」  勇利ははにかんでおもてをさしうつむけ、ちいさくうなずいた。 「うん、もちろんだよ……助かってる……」  彼は言いながら、左手でそっと右手の甲をさすった。ゆっくりとした、無意識のようなしぐさだった。 「赤くなっても、相手にはなんとも思われてないみたいだし……」 「そうなのかい? 勇利が照れてるのに、その愛情がわからないなんて、とんでもなくにぶいやつだな」 「えっ、そうかな……でもそれでいいんだよ。ぼくは気持ちを知られたら困るんだから」 「だがそいつはばかだ。普通わかるだろう。勇利に好意を向けられて気づかないなんて、相当の鈍感だぞ」 「えっと……」  勇利が困ったようにうつむき、頬に手を当て���。しまった。彼の好きな相手をけなしてしまった。勇利は気を悪くしただろう。 「ごめん」  ヴィクトルは急いで謝った。 「えっ、何が?」  勇利がふしぎそうにした。 「勇利の好きな相手を罵ってしまった」 「あ……、そう……そうだね……でも……」  勇利は困惑したようで、何か言いあぐねていた。コーチと好きな相手との板挟みで、どうにも言葉が出てこないのだろう。 「その相手が、勇利の想いに気づけばいいのにと思うよ」  反省したヴィクトルは、勇利を元気づけるためにそう言った。俺は何を話しているんだろうと思った。こういうことを口にするのがひどくつらい。なぜだろう? 「だから、ぼくは知られたら困るんだってば」  勇利はくすくす笑った。 「相変わらずヴィクトルは人の話を聞かないね」 「そう、そうだったね」  ヴィクトルは何度かちいさくうなずいた。自分が何を言っているのかよくわからなかった。 「だけど勇利くらいかわいい子なら、相手が気持ちに気づかなくても、向こうのほうから好きになってくるかもしれない」  ヴィクトルは忠告しながら、本当にそうなったらどうしようと思った。勇利は、好きな相手に好きだと言われたら、その愛に応えてしまうのではないか? 好きかどうかわからないと彼は言っているけれど、どう見ても──。 「そんなことあるわけないよ」  勇利が目をまるくした。 「いや、そうだ。勇利はその人と結ばれるかもしれないよ」  ヴィクトルは、どうして自分はこんな話をしているのだろうと疑問だった。これほどつらい思いをして、なぜ? いや──こういう話をしていてつらいと感じてしまうのはどうしてなのだ? わからない。 「えー、まさか」  勇利が可笑しそうに笑いだした。本当に、こころの底からあり得ないと思っている態度だった。 「本当だ」  ヴィクトルはむきになった。 「そうなる。絶対にそうなる」 「ないってば。彼、ぼくにぜんぜん興味ないみたいだもん」 「なぜそんなことが言える?」 「だって……その……、」  勇利は言葉につまり、それから赤い顔でほほえんだ。 「好きなひとがいるかもしれないっていう話をしたら、その相手と結ばれるかもしれないよって、応援……? 応援、されたし」 「それが本当だとしたらそいつの目は節穴だね」  ヴィクトルは大きな声で言い切った。 「勇利のことを好きじゃないのか? 応援するだって? 完全に頭がおかしいよ」 「あの……、そんなことはないよ……」  勇利が弁護した。しかしヴィクトルはかぶりを振った。 「いや、そうだ。絶対にそうだ。応援だって? 応援してる場合か? 勇利を愛してないのか? 勇利は綺麗だし、かわいいし、可憐だし、上品だし、うつくしいし、清楚だし、うつくしいし、凛としているし、うつくしいし、うつくしいんだ」 「ヴィクトル、も、もういいよ……そんなんじゃないから……」  勇利がさらにまっかになった。 「なのに勇利を好きじゃないのか? 勇利に愛されているのに? なんて愚かなやつなんだ。勇利の愛をなんだと思ってるんだ? いますぐ愛してるよと言って抱きしめるべきだ。そいつにきちんとした分別があるならね」 「分別はあるひとだよ……。でもそんなことはあり得ないし、あったら困るんだ。ぼくは好きかどうかわからないから……」 「ああ、そうだったね。そうだ。勇利はそいつが好きかどうかわからないんだ」  ほとんど怒りにまかせて話していたヴィクトルは、ほっと息をついて気持ちを鎮めた。 「……じゃあ勇利は、具体的には、その人のことをどう思ってるんだい?」 「どうって……」 「たとえばそいつと何をしたい? どんなことをしたい?」  ヴィクトルは、キスって言われたらどうしよう、と不安になった。しかし、訊かずにはいられなかった。知りたくないけれど、知らないままでいるのも苦痛だ。 「どんなこと……」  勇利は口元に手を当てて考えこんだ。長い時間だった。やがて彼はぱっとおもてを上げると、りんごみたいな頬で、気恥ずかしそうに笑った。 「結婚するなら彼みたいなひとがいいなって思うけど、そういう答えでいい?」  ヴィクトルはその場でソファにつっぷしそうになった。結婚? 結婚だって? キスと同じくらい威力がある。つらい。どうしよう。どうしよう……。 「あ、あの、ヴィクトル……なんかぼく変なこと言ったかな……」  顔色を変えたヴィクトルに、勇利は心配そうに尋ねた。ヴィクトルはどうにかほほえんだ。 「いや……、その、それを本人に言ったことはあるのかい? つまり、好きな相手に……」 「えっ、えと……う、うん……言ったことになる……のかな……?」  勇利はためらいながら、ちいさくうなずいた。ヴィクトルは衝撃を受けた。頭の中が真っ白になった。そんなことをしたら──そんなことをしたら──。 「そいつは……な、なんて……?」 「なんてって、べつに……、驚いてたけど……」 「……驚いただけかい?」 「うん……、それだけ……」 「信じられない!」  ばかじゃないのだろうか! ヴィクトルはわめきたかった。勇利に結婚したいと言われて即座にキスしないなんて、完全に気が狂っている男にちがいない。ばかの中のばかだ。俺だったら──俺だったら──。 「貴方としたい、ってはっきり言ったわけじゃ……ないんだけど……なんていうか……気になってるひとがいて、そのひととするなら結婚かなって……」  それにしても、勇利は結婚したいとまで思っているのに、好きかどうかわからないなんて主張している。こちらも正気だろうかという気がしてきた。ヴィクトルは、勇利に「それは好きということなんだよ」と教えるべきか悩んだ。勇利にはしあわせになってもらいたい。しかし、なぜかこういう話をすると胸が痛い。聞きたくないし、知りたくない。けれど話さずにはいられない。いったい自分はどうしてしまったのだろう。 「ヴィクトル、どうしたの?」  うんうんうなって悩んでいるヴィクトルの顔を、勇利が気遣うようにのぞきこんだ。なんて純粋でかわいい目をしているのか。無垢であるぶんたちが悪い。ヴィクトルはくらくらした。勇利、きみは相手のことが好きなんだよ。なぜわからないんだ? 結婚したいんだろう? 好きでなければそんなことは思わない。それが理解できないなんて、子どもというかなんというか……。俺だって勇利と結婚したい! ──ん? 俺は何を考えているんだ? 俺の気持ちはいいんだ。問題は、勇利が結婚したいと思っているのに、好きかどうかわからないと言っていることで、それはおかしいとしか言いようがないんだ……。  なにしろ勇利はにぶいからな!
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athena-i-tes · 6 years ago
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星霜の月30日 ブサーダムズ、ドラゴン・ブリッジ
早朝に起床し、朝食を済ませてから出発した。アイネサックに泊めてもらった礼を告げると、いつでも来て構わないよと言ってくれた。昨日も書いた気がするけれど、このスカイリムで、よそ者であるアルトマーの私に親切にしてくれる人がいるのはとてもありがたい事だ。アイネサックはノルドが権力を持っている土地で暮らしているブレトンなので、肩身が狭いと言っていたっけ。ひょっとしたら、私に親切にしてくれる理由には、そんな事情からくる親近感があるのかもしれない。(先祖から受け継いだ土地に住んでいるだけなのに、のけ者扱いされるのはおかしなことだと思う。…ああ、サルモールの支配下にある故郷で暮らしている両親のことを思い出してしまうな。)
さて、ブサーダムズを目指して山道を歩いていると、向こう側から子供が駆けてきたので面食らってしまった。彼らの話によると、この辺りを探検していて、ドゥーマーの遺跡を見つけ、宝探しをして遊んでいたのだという。こんな朝早い時間に山中にいるということは、昨晩じゅう外で遊んでいたのだろうか?狼が出るような場所を子供だけで歩くなんて危険すぎるだろう。
こういう場合は頭ごなしに叱っても聞き入れられないものだ。金貨を一枚くれるなら遺跡の位置を教えると言うので(私は既に先日訪れていたので知っていたが)、彼らの冒険に免じて金貨を支払い、少し話をして仲良くなってから、子供だけで行動するのは危険だと忠告することにした。
果たして聞き入れてもらえたかは分からないけれど、冒険好きの子供が危険な目に遭わなければ良いと思う……。(どこに住んでいるのか訪ねてみたが、はぐらかされてしまった)
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ペライトの信者である感染者たち(彼らが祝福と呼んでいる病に感染した人たち)の潜伏する、ブサーダムズに到着した。感染者たちはナイフや弓矢などの簡素な武器を持っていたが、装備は普通の服を着ている場合がほとんどだった。中心人物であるオーチェンドールのもと集められた、戦うための集団というわけではなく、あくまで疾病を媒介するのが目的なのだろう。
ペライトが言うには、オーチェンドールはペライトの命令に反し、連絡を断って遺跡にこもっているのだと言う。スカイリムに病を蔓延させる感染者は、スカイリムの人々にとって脅威となるだろう。彼らは「病によって救われることもある」と言うが……健康な者が他人によって意図的に疾病を伝染させられるなんて、やはりおかしいと思う。
遺跡の内部には、相変わらずドゥーマー特有の罠が多く仕掛けられていた。感染者たちは穏やかな雰囲気で暮らしている様子だったけれど、私たちの姿を見るなり襲いかかってきた。彼らは口から緑色の液体を吹き出す。接近戦で何度も顔や体に吹きかけられてしまった。健康に害がないと良いけれど……。
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至るところで緑色の煙が吹き出し、菌類のように見える明るい緑色の水疱状のものが壁に張り付いていた。なんとも不衛生だし、気味が悪い場所だ。
遺跡の中は予想以上に広く、探索しているうちにとっくに昼食時を過ぎていたのだけれど、こんな場所ではとても食事をする気にはなれなかった。
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壁に張り付いていた菌の塊は、試しに火炎魔法を当ててみると破壊することができた。念のため、目についたものは全て焼いておくことにした。
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感染者たちは(気味の悪い液体を吐くことを除けば)あまり脅威ではなかったのだが、あいにくブサーダムズはドゥーマーの遺跡だ。ドゥーマーの兵器である機械の蜘蛛や兵隊たち、それにセンチュリオンまでが立て続けに襲ってくるので、オーチェンドールと戦う前に危うく力尽きてしまうところだった…。機械の兵隊たちには破壊魔法がいまいち効かないので、いつも苦労してしまう。
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遺跡の最奥部にはオーチェンドールがいた。――名乗られたわけじゃなかったけれど、最奥部の広い部屋に一人ぽつんと立っていたし、出で立ちも魔法の腕も他の感染者たちと段違いだったので、すぐに見当がついた。オーチェンドールは瞬時に空間を移動する魔法を使い、遠距離から矢継ぎ早に冷気魔法を浴びせてくるので、かなり苦戦してしまった。ジェナッサがオーチェンドールの攻撃に合わせて弓と剣を持ち替えていたのは見事だった。
……ともかく、かなり危うかったけれど何とかオーチェンドールを倒すことができた。やっと遺跡から出られると思うと、急に気が抜けてしまった。
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外に出てひとまず休憩をしようかと思った矢先、頭上でドラゴンの吠え声が聞こえた。次から次へと災難は重なるものだ。私たちに気づかずにどこかへ行ってくれないかと願ったが、こちらに向かって氷のブレスを吹きかけてきたため、応戦せざるを得なかった。
余談だけれど、このドラゴンを倒した直後に仮面の信者たちに襲われた。息つく間もなく戦わされて、もうへとへとだ。
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宿屋のきちんとしたベッドで休みたかったので、まっすぐドラゴン・ブリッジを目指そうかと考えたけれど、少し寄り道すればペライトの祠に立ち寄れることを思い出し、その足で向かってしまうことにした。
またあの気味の悪い色の煙を吸うのは気が引けたが、やらないことには今回の一件に片がつかない。
オーチェンドールを倒してきたことを報告すると、私の手元にどこからともなく白い盾が現れた。どうやらペライトのデイドラ・アーティファクトらしい。(ペライトの祝福として疾病を与えられたらどうしようかと一瞬肝を冷やしてしまった!そうでなくて良かった)
今後デイドラと関わりたくはないが、ペライトいわく「また会うことになる」という。疾病にかかるのは遠慮したいと思う。
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下山して昨日歩いてきた川沿いを戻り、ドラゴン・ブリッジに着く頃には、夜も深い時間になっていた。宿屋「フォー・シールズ」の女主人は、遅い時間の客に少し驚いた様子だった。金貨を多めに払い、温かい食事とそれから身体を洗うための湯、それにベッドを用意してもらい、ようやくひと心地つくことができた。
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