#4階級制覇
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seiryousya · 1 year ago
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FULTON VS INOUE
「勝てる」と思ったとしてもやってみなければわからないのが��負の世界。 しかもバンタムで4団体統一、3階級制覇しているチャンピオンには様々なプレッシャーがかかる。そんなプレッシャーは全く感じさせず熟練した技術戦を難なく制した。 武術的に井上のボクシングを見ると以下の3点が見てとれる。①間合い(相手との距離のこと) 先ずは間合いを制したことが勝因だ。フルトンも自分の間合いを熟知していたが 井上はリーチでハンデキャップがあるにもかかわらず一足一拳の間合いを保った。 (一足一拳とは自分が一歩踏み込めば当たる距離の事)②拍子(リズムのこと) 野球でも160kmのスピードボールばかりだと打たれるように武術でも拍子が重要になる。 同じ拍子だと人は慣れてしまう。階段を駆け上がれるのは同じ高さだと脳が認識 できるから。違う高さが混じっていたら駆け上がるのは数倍難しくなる。 つまり攻撃のリズムが変わるの…
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mronomasahiro · 1 year ago
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「小野 正裕 経済学者」 - 経済と市場の再バランス
「小野 正裕 経済学者」 - 経済と市場の再バランス
意思決定は、将来の理解と予測に基づいて行われなければなりません。マクロ経済の力によって、個人や国、地域の視点が変わりつつあります。地政学的緊張が高まっており、社会政治的移行、資源制約、気候変動に関連する潜在的なリスクも高まっています。メーカーは常に機会とリスクを比較検討しています。しかし今日では、メガトレンドとして知られる世界の複雑な問題の影響に内在する前例のない不確実性と変動性も克服する必要があります。
アルビン・トフラーは 50 年前に『Future Shock』を執筆しましたが、この本は今でも驚くほど先見の明があり、今日の製造組織に大きな影響を与えています。 『Future Shock』の中で、アルビン・トフラーは、世界経済と情報化時代に起きている劇的な構造変化、つまり「超産業社会」に向けた技術進歩の加速を指摘し、産業革命後の新たな分水嶺を特定しています。製造業者の回復力、競争力、収益性は、世界を席巻する 5 つの主要な変化の方向を理解し、計画することにかかっています。
1. 人口移動
2030 年までに、世界の人口は 85 億人に達します。一部の地域や国では人口が爆発的に増加し、巨大な労働市場と消費市場が形成されています。その他、特に日本、スペイン、ポルトガルは減少しており、最も急速に増加している年齢層は高齢者で2030 年までに 65 歳以上の人口が 10 億人を超えることになります。たとえば、韓国の首都、ソウル市では 65 歳以上の人口が現在の 2 倍になり、2030 年までに人口の 21% を占めることになるでしょう。
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その時までに、世界人口の3分の2が都市に住み、都市が世界のGDPの80%を生み出すことになるでしょう。そして人口1,000万人を超える大都市が43個も存在することになります。120大都市のうち17都市は現在特定されている新興国に位置し、メキシコシティとサンパウロ、深センと上海、ムンバイとラホール、ラゴスとキンシャサなどの独占都市がこの地域の経済活動を支配することになります。
これは何を意味するのでしょうか?
高齢者には薬や適切な生活用品、ケアが必要です。 2030 年までに、ロボットによる高齢者の介護がますます増え、医療技術メーカーは積層造形 (3D プリンティング) を利用して、高齢者のニーズを満たす効率的な補助装置を設計、製造する可能性があります。
加工食品メーカーに関連して、単身世帯は今後10年間で最も急速に成長する世帯構造となるでしょう。
2. 環境圧力と資源不足
人口圧力はすでに地球資源に負担をかけており、水や食料、エネルギーなど、移動手段における創造的な解決策が必要となっています。現在、世界の人口は地球上の再生可能資源の 150% を毎年消費しており、これが過去 10 年間、綿花からコーヒー、原油、トウモロコシに至るまでの商品の年間平均価格の絶え間ない変動を引き起こしています。
気候変動はさらなる影響をもたらす前兆で、異常気象は大規模なインフラ被害を引き起こす可能性があり、同時に海面上昇も沿岸地域を危険にさらす可能性があります。生物多様性の損失は生態系の持続可能性を脅かし、世界中で乾燥地帯が拡大し、気温の上昇が農業を脅かしています。しかし、2030 年までに、人類は現在より 50% 多くのエネルギーと40% 多くの水、そして 3 分の 1 多くの食料を必要とするでしょう。
これは何を意味するのでしょうか?
廃棄物を削減するだけでなく、総合的な再製造や材料の再利用を通じて循環経済(サーキュラーエコノミー)を受け入れる必要があります。食料生産、持続可能な建築材料、輸送ソリューション用の次世代バッテリ、エネルギー生産はすべて、深いイノベーションを必要とします。目的を持った組織は、社会的良心と企業倫理に対する消費者の期待にも応える必要があります。
3. テクノロジーの台頭
人間と機械の間の境界線��まだ曖昧ではないかもしれませんが、日本のロボット工学の専門家である石黒宏氏は、その時代はそう遠くないと信じており、「場合によってはコンピューターはすでに人間より超越しており、テクノロジーは進化の一形態にすぎない。私たちは人間の定義を変えつつある」と述べています。人工知能 (AI) が深層学習(ディープラーニング)とパターン認識が飛躍するにつれて、何らかの形式の人間と機械の合成が増加しています。
この議題を優先事項とするならば企業が勝利するでしょう。 AI のさまざまな導入率をモデル化すると、前者は最も早く投資を損益分岐点にし、2030 年までの 10 年間で 122% の累積キャッシュ フロー増加を生み出すのに対し、後者はわずか 10% であることがわかります。 導入が遅れている企業は、純キャッシュフローのマイナスに反映される重大な競争上の不利を予見する必要があります。インダストリー 4.0 は間もなく 5.0 に移行し、まったく新しい産業が誕生します。 2030 年までに、人工知能の応用と導入により、世界の GDP は 13 ~ 15 兆ドル増加すると予想、最前線に立つメーカーは、これらの増加の大部分を獲得することとなります。
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これは何を意味するのでしょうか?
テクノロジーと推定された消費者の選択によって引き起こされる損壊は、所有権の性質を変えています。世界最大手のタクシー業界ウーバーは自社に車を所有しておらず、小売大手アリババは在庫を持たないが買い手と売り手の仲介役を務め、写真業界のインスタグラムはカメラの製造も販売もしていません。
サービスとしての製造 マース(MaaS) プラットフォームは、特に自動車や航空宇宙などの業界で供給ネットワークを再構築し、オランダのマースに拠点を置く 3DHub 社の例を考えてみましょう。同社は年間 200,000 件の製造取引を可能にし、「部品は 5 分以内に生産される」と言われています。
積層造形はまもなくライフサイエンスに革命をもたらすかもしれません。サンディエゴに本拠を置くバイオテクノロジー新興企業Organovoは、3Dプリンティングを使って人間の肝臓組織を「修復」する試験の資金が不足していますが、この画期的なコンセプトは近い将来に普及し始めるかもしれません。迅速な医薬品研究と試験の促進により、製薬メーカーは新薬開発にかかる大幅なコスト (平均 10 億ドル以上) と時間 (10 ~ 15 年) を節約できるようになります。
4. 経済と市場のリバランス
経済力は西側から東側に移りつつあります。今後20年のどこかの時点で、中国、ブラジル、インドネシア、インド、ロシア、メキシコ、トルコの新興7カ国のGDPの合計はG7のGDPを超えるでしょう。
アジアの多くの国が輸出主導の成長から脱却する中、中間層が急速に成長しています。2030年までに、アジア太平洋地域は世界の中流階級の人口の3分の2、中流階級の消費の60%近くを占めるようになり、2010年の28%と23%から増加するでしょう。今日の新興市場がほぼすべての消費者製品カテゴリーの原動力となるため、これはほぼすべてのブランドオーナーやメーカーにとって良いことです。
中国経済が消費ベースのモデルへの移行を続けており、デジタル接続、サイバーフィジカルシステム接続、中国の一帯一路構想などのインフラ接続など、地域の接続性が拡大し続けています。
これは何を意味するのでしょうか?
アジア太平洋地域内の貿易、投資、資本の流れは日に日に増加しており、世界経済は多極化が進んでいます。すべての製造業において、競争環境は変化し、アジア太平洋地域での存在感を高めるためには、グローバルな価値ネットワークを構築する必要があります。
5. 新たなリスク
30年前、政治学者のフランシス・フクヤマは、ベルリンの壁の崩壊は「歴史の終わり」を示したと宣言しました。これは西側の自由民主主義の覇権とそれに関連する経済秩序が広がり、安定とより広範な繁栄をもたらすということです。
彼の予測は時期尚早でした。所得格差の統計的尺度であるジニ係数は、低所得国から高所得国に至るまで、国の資産のあらゆるレベルで上昇しています。 この拡大する不平等は現在、フランスの「黄色いベスト運動」から香港の街頭抗議活動や英国の EU 離脱、「アメリカ第一主義」の孤立主義感情に至るまで、ポピュリズムと不満として現れています。
ポピュリズムは保護主義的な政策と結びついています。貿易戦争と関税戦争はまだ始まったばかりかもしれません。今年9月、トランプ政権は1,250億ドル相当の中国からの輸入品に15%の追加関税を課し、中国からの輸入品に対する平均関税は21%に引き上げられました。中国は直ちに反応し、自動車部品や大豆を含む1,700以上の米国製品に対する関税を引き上げ、米国産原油には5%の関税を課しました。その影響は明らかで、中国の製造業は8月に4カ月連続で減速し、関税により米国の家庭は今後1年間で平均970ドルの損害を受けると予想されています。
新しいテクノロジーや人口動態の変化に関連した地政学は、継続的なリスクを引き起こす可能性があり、現在のビジネスリーダーは、この新たな変動パターンを軽減する必要があります。
貿易はますます政治的武器として利用されるでしょう。中国と米国と同様、日本と韓国も、1910年から1945年までの日本の植民地支配に対する賠償をめぐる対立に根ざした報復関税による貿易戦争に巻き込まれています。結果、両国のGDP予測は下方修正されました。
世界貿易機関(WTO)は2019年10月、世界の貿易量の伸び予測を4月時点の予想2.6%から1.2%に引き下げ、半分以下の減少となりました。同様に、世界のGDP成長率予測も2.6%から2.3%に引き下げられ、WTOのロベルト・アゼベド事務局長は「貿易摩擦は直接的な影響以外にも不確実性を高めており、一部の企業が生産性向上のための投資を遅らせている」と述べています。
これは何を意味するのでしょうか?
貿易障壁と関税障壁が地政学的リスクと社会経済的リスクをどの程度悪化させるかは不明です。しかし、新しいテクノロジーや人口動態の変化に伴い、地政学が継続的なリスクをもたらすことは明らかであり、現在のビジネスリーダーは、この新たな変動パターンを緩和する必要があります。
メガトレンドの影響はあらゆるところに及んでおり2030 年の将来を見据えて、次の 5 つの主要分野から戦略的見通しを実行する必要があります。
(1)『人々を第一に考える』
現在の重要なスキル不足はさらに悪化するでしょう。同時に、今日の製造業の労働力の 5 分の 1 以上が技術の代替に直面しています。
Q.組織は将来を見据えた人材戦略を採用していますか?
(2)『新しいテクノロジーを導入』
オートメーションと人工知能、ブロックチェーンとビッグデータ、インダストリー 4.0 のこれらの要素には、大きな競争上の優位性を生み出す能力があります。
Q.組織はスマート マニュファクチャリングの新しい機能に適応していますか?
(3)『市場の変化に適応し、理解する』
この課題には、世界の人口動態に合わせて市場浸透度や取引量を再評価し、社会経済のバランスを再調整することが含まれます。
Q.同社は 2030 年の世界市場と機会を見据えた立場にありますか?
(4)『イノベーションの再開』
ビジネスモデルはメガトレンドによって破壊されるでしょう。製品の提供は、顧客の期待の変化に応じて進化する必要があります。
Q.企業は「デジタル・ファースト時代」に自社の製品イメージをどのように再形成できるでしょうか?
(5)『リスクを管理するために多角的な戦略を採用する』
不確実性と変動性が増大する中、先見性がありながらも規律あるリーダーシップが必要です。
Q.供給ネットワークのあらゆる側面を保護するために、包括的なリスクとシナリオの管理計画が策定されていますか?
結論
今後 10 年間で、すべての業界が世界的なメガトレンドの暗黙的に含まれる課題に直面することになります。急速に変化する世界に直面して、今日下される優先順位と決定は、製造業の回復力と競争力に影響を与えます。
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ono-masahiro · 1 year ago
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小野正裕のアドバイス:経済と市場の再バランス
意思決定は、将来の理解と予測に基づいて行われなければなりません。マクロ経済の力によって、個人や国、地域の視点が変わりつつあります。地政学的緊張が高まっており、社会政治的移行、資源制約、気候変動に関連する潜在的なリスクも高まっています。メーカーは常に機会とリスクを比較検討しています。しかし今日では、メガトレンドとして知られる世界の複雑な問題の影響に内在する前例のない不確実性と変動性も克服する必要があります。
ア���ビン・トフラーは 50 年前に『Future Shock』を執筆しましたが、この本は今でも驚くほど先見の明があり、今日の製造組織に大きな影響を与えています。 『Future Shock』の中で、アルビン・トフラーは、世界経済と情報化時代に起きている劇的な構造変化、つまり「超産業社会」に向けた技術進歩の加速を指摘し、産業革命後の新たな分水嶺を特定しています。製造業者の回復力、競争力、収益性は、世界を席巻する 5 つの主要な変化の方向を理解し、計画することにかかっています。
1. 人口移動 2030 年までに、世界の人口は 85 億人に達します。一部の地域や国では人口が爆発的に増加し、巨大な労働市場と消費市場が形成されています。その他、特に日本、スペイン、ポルトガルは減少しており、最も急速に増加している年齢層は高齢者で2030 年までに 65 歳以上の人口が 10 億人を超えることになります。たとえば、韓国の首都、ソウル市では 65 歳以上の人口が現在の 2 倍になり、2030 年までに人口の 21% を占めることになるでしょう。
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その時までに、世界人口の3分の2が都市に住み、都市が世界のGDPの80%を生み出すことになるでしょう。そして人口1,000万人を超える大都市が43個も存在することになります。120大都市のうち17都市は現在特定されている新興国に位置し、メキシコシティとサンパウロ、深センと上海、ムンバイとラホール、ラゴスとキンシャサなどの独占都市がこの地域の経済活動を支配することになります。
これは何を意味するのでしょうか? 高齢者には薬や適切な生活用品、ケアが必要です。 2030 年までに、ロボットによる高齢者の介護がますます増え、医療技術メーカーは積層造形 (3D プリンティング) を利用して、高齢者のニーズを満たす効率的な補助装置を設計、製造する可能性があります。 加工食品メーカーに関連して、単身世帯は今後10年間で最も急速に成長する世帯構造となるでしょう。
2. 環境圧力と資源不足 人口圧力はすでに地球資源に負担をかけており、水や食料、エネルギーなど、移動手段における創造的な解決策が必要となっています。現在、世界の人口は地球上の再生可能資源の 150% を毎年消費しており、これが過去 10 年間、綿花からコーヒー、原油、トウモロコシに至るまでの商品の年間平均価格の絶え間ない変動を引き起こしています。 気候変動はさらなる影響をもたらす前兆で、異常気象は大規模なインフラ被害を引き起こす可能性があり、同時に海面上昇も沿岸地域を危険にさらす可能性があります。生物多様性の損失は生態系の持続可能性を脅かし、世界中で乾燥地帯が拡大し、気温の上昇が農業を脅かしています。しかし、2030 年までに、人類は現在より 50% 多くのエネルギーと40% 多くの水、そして 3 分の 1 多くの食料を必要とするでしょう。 これは何を意味するのでしょうか? 廃棄物を削減するだけでなく、総合的な再製造や材料の再利用を通じて循環経済(サーキュラーエコノミー)を受け入れる必要があります。食料生産、持続可能な建築材料、輸送ソリューション用の次世代バッテリ、エネルギー生産はすべて、深いイノベーションを必要とします。目的を持った組織は、社会的良心と企業倫理に対する消費者の期待にも応える必要があります。
3. テクノロジーの台頭 人間と機械の間の境界線はまだ曖昧ではないかもしれませんが、日本のロボット工学の専門家である石黒宏氏は、その時代はそう遠くないと信じており、「場合によってはコンピューターはすでに人間より超越しており、テクノロジーは進化の一形態にすぎない。私たちは人間の定義を変えつつある」と述べています。人工知能 (AI) が深層学習(ディープラーニング)とパターン認識が飛躍するにつれて、何らかの形式の人間と機械の合成が増加しています。
この議題を優先事項とするならば企業が勝利するでしょう。 AI のさまざまな導入率をモデル化すると、前者は最も早く投資を損益分岐点にし、2030 年までの 10 年間で 122% の累積キャッシュ フロー増加を生み出すのに対し、後者はわずか 10% であることがわかります。 導入が遅れている企業は、純キャッシュフローのマイナスに反映される重大な競争上の不利を予見する必要があります。インダストリー 4.0 は間もなく 5.0 に移行し、まったく新しい産業が誕生します。 2030 年までに、人工知能の応用と導入により、世界の GDP は 13 ~ 15 兆ドル増加すると予想、最前線に立つメーカーは、これらの増加の大部分を獲得することとなります。
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これは何を意味するのでしょうか? テクノロジーと推定された消費者の選択によって引き起こされる損壊は、所有権の性質を変えています。世界最大手のタクシー業界ウーバーは自社に車を所有しておらず、小売大手アリババは在庫を持たないが買い手と売り手の仲介役を務め、写真業界のインスタグラムはカメラの製造も販売もしていません。 サービスとしての製造 マース(MaaS) プラットフォームは、特に自動車や航空宇宙などの業界で供給ネットワークを再構築し、オランダのマースに拠点を置く 3DHub 社の例を考えてみましょう。同社は年間 200,000 件の製造取引を可能にし、「部品は 5 分以内に生産される」と言われています。
積層造形はまもなくライフサイエンスに革命をもたらすかもしれません。サンディエゴに本拠を置くバイオテクノロジー新興企業Organovoは、3Dプリンティングを使って人間の肝臓組織を「修復」する試験の資金が不足していますが、この画期的なコンセプトは近い将来に普及し始めるかもしれません。迅速な医薬品研究と試験の促進により、製薬メーカーは新薬開発にかかる大幅なコスト (平均 10 億ドル以上) と時間 (10 ~ 15 年) を節約できるようになります。
4. 経済と市場のリバランス 経済力は西側から東側に移りつつあります。今後20年のどこかの時点で、中国、ブラジル、インドネシア、インド、ロシア、メキシコ、トルコの新興7カ国のGDPの合計はG7のGDPを超えるでしょう。
アジアの多くの国が輸出主導の成長から脱却する中、中間層が急速に成長しています。2030年までに、アジア太平洋地域は世界の中流階級の人口の3分の2、中流階級の消費の60%近くを占めるようになり、2010年の28%と23%から増加するでしょう。今日の新興市場がほぼすべての消費者製品カテゴリーの原動力となるため、これはほぼすべてのブランドオーナーやメーカーにとって良いことです。 中国経済が消費ベースのモデルへの移行を続けており、デジタル接続、サイバーフィジカルシステム接続、中国の一帯一路構想などのインフラ接続など、地域の接続性が拡大し続けています。 これは何を意味するのでしょうか? アジア太平洋地域内の貿易、投資、資本の流れは日に日に増加しており、世界経済は多極化が進んでいます。すべての製造業において、競争環境は変化し、アジア太平洋地域での存在感を高めるためには、グローバルな価値ネットワークを構築する必要があります。
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5. 新たなリスク 30年前、政治学者のフランシス・フクヤマは、ベルリンの壁の崩壊は「歴史の終わり」を示したと宣言しました。これは西側の自由民主主義の覇権とそれに関連する経済秩序が広���り、安定とより広範な繁栄をもたらすということです。 彼の予測は時期尚早でした。所得格差の統計的尺度であるジニ係数は、低所得国から高所得国に至るまで、国の資産のあらゆるレベルで上昇しています。 この拡大する不平等は現在、フランスの「黄色いベスト運動」から香港の街頭抗議活動や英国の EU 離脱、「アメリカ第一主義」の孤立主義感情に至るまで、ポピュリズムと不満として現れています。
ポピュリズムは保護主義的な政策と結びついています。貿易戦争と関税戦争はまだ始まったばかりかもしれません。今年9月、トランプ政権は1,250億ドル相当の中国からの輸入品に15%の追加関税を課し、中国からの輸入品に対する平均関税は21%に引き上げられました。中国は直ちに反応し、自動車部品や大豆を含む1,700以上の米国製品に対する関税を引き上げ、米国産原油には5%の関税を課しました。その影響は明らかで、中国の製造業は8月に4カ月連続で減速し、関税により米国の家庭は今後1年間で平均970ドルの損害を受けると予想されています。
新しいテクノロジーや人口動態の変化に関連した地政学は、継続的なリスクを引き起こす可能性があり、現在のビジネスリーダーは、この新たな変動パターンを軽減する必要があります。
貿易はますます政治的武器として利用されるでしょう。中国と米国と同様、日本と韓国も、1910年から1945年までの日本の植民地支配に対する賠償をめぐる対立に根ざした報復関税による貿易戦争に巻き込まれています。結果、両国のGDP予測は下方修正されました。 世界貿易機関(WTO)は2019年10月、世界の貿易量の伸び予測を4月時点の予想2.6%から1.2%に引き下げ、半分以下の減少となりました。同様に、世界のGDP成長率予測も2.6%から2.3%に引き下げられ、WTOのロベルト・アゼベド事務局長は「貿易摩擦は直接的な影響以外にも不確実性を高めており、一部の企業が生産性向上のための投資を遅らせている」と述べています。 これは何を意味するのでしょうか? 貿易障壁と関税障壁が地政学的リスクと社会経済的リスクをどの程度悪化させるかは不明です。しかし、新しいテクノロジーや人口動態の変化に伴い、地政学が継続的なリスクをもたらすことは明らかであり、現在のビジネスリーダーは、この新たな変動パターンを緩和する必要があります。 メガトレンドの影響はあらゆるところに及んでおり2030 年の将来を見据えて、次の 5 つの主要分野から戦略的見通しを実行する必要があります。
(1)『人々を第一に考える』 現在の重要なスキル不足はさらに悪化するでしょう。同時に、今日の製造業の労働力の 5 分の 1 以上が技術の代替に直面しています。 Q.組織は将来を見据えた人材戦略を採用していますか?
(2)『新しいテクノロジーを導入』 オートメーションと人工知能、ブロックチェーンとビッグデータ、インダストリー 4.0 のこれらの要素には、大きな競争上の優位性を生み出す能力があります。 Q.組織はスマート マニュファクチャリングの新しい機能に適応していますか?
(3)『市場の変化に適応し、理解する』 この課題には、世界の人口動態に合わせて市場浸透度や取引量を再評価し、社会経済のバランスを再調整することが含まれます。 Q.同社は 2030 年の世界市場と機会を見据えた立場にありますか?
(4)『イノベーションの再開』 ビジネスモデルはメガトレンドによって破壊されるでしょう。製品の提供は、顧客の期待の変化に応じて進化する必要があります。 Q.企業は「デジタル・ファースト時代」に自社の製品イメージをどのように再形成できるでしょうか?
(5)『リスクを管理するために多角的な戦略を採用する』 不確実性と変動性が増大する中、先見性がありながらも規律あるリーダーシップが必要です。 Q.��給ネットワークのあらゆる側面を保護するために、包括的なリスクとシナリオの管理計画が策定されていますか?
結論 今後 10 年間で、すべての業界が世界的なメガトレンドの暗黙的に含まれる課題に直面することになります。急速に変化する世界に直面して、今日下される優先順位と決定は、製造業の回復力と競争力に影響を与えます。
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bessho-zeppelin · 1 year ago
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多分この中だと一番強いな^_^
是非とも小國くんにはボコボコにしてもらいたい。
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dopingconsomme · 1 year ago
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2023年07月26日の記事一覧
2023年07月26日の記事一覧 http://dailyfeed.jp/feed/23663/2023-07-26 (全 4 件) 1. Valorant - REFLECTIONS 2. 英国人写真家の見た明治日本 (講談社学術文庫) 3. 井上尚弥が日本人2人目の4階級制覇 フルトンに8回TKO勝ち 階級上がっても強さ不変「まだまだ強い姿見せられる」世界戦20連勝(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース 4. 「大手マスコミは私の声を無視するかもしれない」 共同通信の元記者が会社提訴...特派員協会で会見した理由 via 複数のRSSをまとめるのデイリーフィード - DailyFeed http://dailyfeed.jp/feed/23663 July 27, 2023 at 05:00AM
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manabuhosaka · 1 year ago
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flamingo-rex · 3 years ago
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2022.06.07
井上尚弥VSノニト・ドネア
凄すぎた!!
正直、早期ラウンドでのKOで
井上尚弥が勝つと予想してて、周りにも言ってたけど
それすら、遥かに上廻る2ラウンド1分24秒
オープニングセレモニーの布袋さんの演奏より
短いんちゃうか?(笑)
早期ラウンドKOは、井上尚弥 本人も想定して
調整して来たと思うけど、それすら上廻る
ドネアのプレッシャー。
めちゃくちゃ警戒してた筈の、ドネアの左フック
試合開始早々に、ヒットさせた時に
井上尚弥のスイッチは入ったと、思う。
とにかく、井上尚弥のフェイントの技術と、
反応スピードは、ちょっと次元違うレベルだったな
コレは本当に日本歴代の最高傑作のボクサーだし
ドネアも、ゴロフキンも、村田諒太も、井上尚弥も
人間性含めて、一流だわ。
本当に凄い試合を観たわ
トータル4分24秒
しかし、濃密な時間だったわ
暫くアーカイブのリピート配信観まくるな…
相手は5階級制覇したノニトドネアだよ
そのレジェンド相手に2ラウンドKO
とんでもねぇわ。
とにかく3団体タイトル制覇おめでとうございます
相手は逃げまくるだろうけど、4タイトル目
是非、4タイトル統一して、階級上げて
ドネアみたいに5階級制覇とかして欲しいよね(^^)
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ari0921 · 3 years ago
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EU脱炭素、日米と同床異夢 国境炭素税で摩擦辞さず
ヨーロッパ
2021年8月2日
欧州連合(EU)の欧州委員会が域内の温暖化ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする目標実現に向けて包括案を公表した。掛け声だけでなく、具体案を出すのは主要国・地域で初めてだ。環境覇権を狙うEUの野心が透ける。
「欧州は(世界を)先導する準備ができている」。フォンデアライエン欧州委員長は7月14日、包括案を公表した記者会見の冒頭発言をこう締めくくった。EUが気候変動分野のトップランナーであり続けるには、他国との摩擦も辞さないとの決意表明でもあった。
なかでも強い姿勢を示すのが国境炭素調整措置(CBAM)だ。EU関係者によると、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかけるCBAMについて、日米などの国から「EU単独で発表するのか」との問い合わせが相次いだ。自国のどの産業にどの程度の影響があるか、制度設計を尋ねる内容だった。
実際に導入されれば他国にとっては負担増になる。環境・通商摩擦が起きるのは明白だ。ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は3月、CBAMを「最後の手段とすべきだ」とけん制した。バイデン米大統領も6月のEU首脳との会談で懸念を伝えた。
それでもEUは独自の発表にこだわった。CBAMの負担額は域内の排出量取引制度の価格をもとに算出する。05年から制度を導入したEUには「ノウハウが蓄積されている」(ティメルマンス上級副委員長)。
EUは、排出量取引など国レベルの炭素価格を持たない日米がCBAMを直ちに採用するのは難しいとみる。中長期で日米とCBAMで連携する「グリーン同盟」を組む可能性は排除しないものの、EUが主導権を握るとの意思表示といえる。
背景には米中のどちらかが環境覇権を握ることへの警戒感がある。IT(情報技術)を巡る技術覇権争いでEUは米中に後れを取った。欧州委がいち早く対策を公表したのもEUの温暖化ガスの排出量は世界の8%にすぎず、EUの存在感がかすみかねないとの危機感からだ。欧州政策研究所のエルカーバウト・リサーチフェローは「野心的な対策であり、他国に対してEUが(環境政策の主導権を握る)ゲームに参加していると理解させた」と語る。
中国が勝てば、世界の脱炭素化の首根っこを押さえられる。国際エネルギー機関(IEA)によると、電気自動車(EV)の生産に欠かせないレアアース(希土類)の加工で中国は9割近いシェアを握る。リチウムとコバルトは6割前後だ。
米国はバイデン氏が大統領に就任し、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰を決め��が、将来にわたって国際的な指導力を発揮できるか不透明感を払拭できない。ブッシュ元大統領(第43代)が京都議定書の批准を拒否し、トランプ前大統領はパリ協定から離脱した過去があるからだ。共和党政権に戻れば歴史が繰り返される可能性は否定できない。
包括案はCBAMに加え、ガソリン車やディーゼル車など内燃機関車の35年までの事実上の販売禁止達成や、自動車や冷暖房の燃料に炭素価格を課すなど家計の負担増にも踏み込んだ。
ポーランド経済研究所などの試算では、EUの低所得者層の平均年間負担額が自動車で44%、冷暖房で50%増える可能性がある。比較的所得の低い東欧などに不満がくすぶっている。
一部の業界団体も反発している。機械や電気、電子関連の団体はCBAM導入で、原材料価格が上昇する可能性への懸念を表明した。欧州自動車工業会は内燃機関車の販売禁止を「単一の技術を禁止するのは現段階では合理的ではない」と批判した。
EUは内部に不満や反対論を抱えながらも、4億5千万人の市場を後ろ盾に域外の国や企業に新たなルール導入を迫る姿勢を鮮明にした。日本や米国とは共通の価値観に基づき、対中政策などで共同歩調をとるが、環境分野では日米と同床異夢の状況を強めている。
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xf-2 · 3 years ago
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新型コロナウイルスの重症患者が急増している。特に40代・50代の重症化が目立つのが第5波の特徴で、東京都では重症患者の6割を占める。だが、この年代へのワクチン接種の進み具合は、自治体によってばらつきが大きく、かなり遅れている所も多い。そんな中、東京都墨田区では、今月7日時点で1回の接種を終えた40代は区民の6割を超え、50代は7割近くに達している。
今月13日付日経新聞電子版によると、同紙が緊急事態宣言下にある6都道府県の主要都市の1回目接種率を調べたところ、墨田区は50歳代で71.9%、40歳代で60.6%とダントツに高かった。40代については、さいたま市(6.7%)、那覇市(16.4%)、大阪市(17.7%)、世田谷区や品川区(17.8%)などと接種率が伸び悩む自治体が少なくない中、墨田区の進捗状況は際立っている。その効果か、陽性者数の推移を示すグラフからは、陽性者が下降の兆しも見てとれる。
 なぜそれができたのか。同区のコロナ対策の陣頭指揮をとる西塚至・同区保健所長に話を聞いた。
困難なスタートからの巻き返し
なぜ墨田区は、こんなに速いんでしょう?
「いえ、決して順調に行ったわけではありません。出足が遅れ、想定外のこともいろいろ起きました。大学病院があるわけでも、集団接種に向いた広い施設があるわけでもなく、大きい施設は五輪で抑えられて、条件は決して恵ま��ていません。それでもなんとか巻き返し、いろんなことを積み重ねて、結果的に今がある、というのが実情です」(西塚さん、以下囲み内は同様)
 どのようなことを積み重ねてきたのか。西塚さんへのインタビューや資料から、主要な事柄を確認していきたい。
高齢者枠を使ってでも、まずは医療従事者に接種、という判断
 同区では昨年7月頃から、地元医師会とコロナ対策について協議を行う中で、ワクチンについても話し合いを重ねてきた。12月に区役所内に予防接種調整担当課を立ち上げ、ワクチン接種の準備を進めた。
 しかし国のワクチン調達は遅れ、当初は輸入量が少なかった。高齢者への接種が開始される4月12日時点で、東京都に割り当てられたワクチンは4箱(3900回分)のみ。高齢者人口の多い地域から配分が始まり、初回は世田谷区と八王子市が2箱ずつ配分を受けた。墨田区としてはいささか出鼻をくじかれるスタートとなった。
 墨田区は接種初日の4月17日、集団接種の予行演習をかねて、区内の医療従事者に接種を行った。国の計画では、医療従事者の接種は都道府県が行い、市区町村は住民接種を担当する、ことになっていた。それをあえて、医療従事者からスタートさせたのだ。
「区は住民のことだけ考えていればよいはずでした。しかし、予約システムがダウンするなど、都の医療従事者接種は遅れ、(高齢者への接種を行う)医師がワクチンを打てずにいました。それで、うちは住民接種の枠を使ってでも、まずは医療従事者の集団接種を先に行おう、と」 
 これは、その後のワクチン接種について、医療従事者の士気を高める効果も生んだ、という。その後、全国各地で、自身は未接種のまま高齢者施設で接種を行う医師たちから不安の声があがったが、墨田区ではそうした事態はなかった。ちなみに、同区では救急車で患者を搬送する消防署員にも、5月には接種を行った、という。
”災害時の頭”で考える
接種券を早い時期に配ったわけ
 墨田区の特徴の1つは、ワクチン接種券の配布が早かったことだ。高齢者施設の接種に目処がつき、一般の高齢者の接種が始まったのは5月10日だった。だが65歳以上の区民の接種券は、2か月近く早い4月1日には発送していた。そして6月1日には、都内で最も早く、16~64歳の全ての区民に発送を行った。
「定期接種など”平常モード”では、事業開始の直前に接種券をお送りするのが普通です。しかし、今は”危機”。”災害時の頭”で考えると、大事なのは1人でも多くの人が、ワクチンを打つことです。一足早く接種が始まった世田谷区の高齢者施設に、墨田区民が暮らしているかもしれない。他区の施設で働いている区民もいるでしょう。そういう方々が、接種券がないために打ちそびれる、という事態が起きないよう、とにかく接種券だけは早くお配りしよう、と。1人でも2人でも、今居る場所で打って下さい、という思いでした」
 この”危機モード”対応は、後に想定外の恩恵を区民にもたらすことになった。
対象者の5%が自衛隊のセンターへ
 65歳以上に限定して行われていた自衛隊の大規模接種センターが突然、6月16日からの年齢制限撤廃を発表。遠方の東京・大手町の会場まで出向くよりも地元で打ちたい、という高齢者が多かったようで、希望者が想定を大きく下回ったためだ。
 若い年齢層の接種が可能となったが、予約には接種券が必要。しかし、この時点で多くの自治体は64歳以下には配布していなかった。そんな中、墨田区の人々はすでに接種券を手にしており、区民は次々に自衛隊のセンターに赴いて接種を受けた。
「これは大きかったです。1万2000人、対象者の5%が自衛隊に行って打って下さった」
災害時の助け合い
 住民の協力もあった。
 自衛隊のセンターでは、モデルナ社製のワクチンを使用。当初、厚労省はモデルナを接種可能な年齢を18歳以上としていた(その後12歳以上に変更)。また、モデルナは副反応が出やすいという話が出回り、1回目と2回目をファイザーより長く4週間空けなければならないこともあって、敬遠する人も少なくなかった。
「ところが、区内の大人たちから、『自分たちは自衛隊に行って、モデルナを打とう』という声があがったんです。ファイザーが足りなくなる、という時期でもあり、『ファイザーは子どもたちに回そう』という草の根の運動になって、自衛隊での接種が増えました。災害時は、地域の助け合いがあってこそ、です」
区直営の集団接種をメインに
危機には「割り切り」も必要
 墨田区の”危機モード”対応は、ほかにもある。
「”平常モード”であれば、日頃診てもらっている身近なかかりつけ医に打ってもらうのが一番です。ただ、今は災害時。危機にあっては、割り切るところは割り切って、最大限効率化を図り、数を多く打つのが大事。それに、このワクチンは1瓶から6人分とらなきゃいけないので、個別の診療所でやっていると余ってしまうことも。冷凍庫で保存する必要があるなどの使いにくさもあります。
 やはり、こういうものは集団接種がいい。これは2009年の新型インフルエンザの時の経験でもあります。国がいくら練馬方式(診療所での個別接種をメインに、集団接種で残りをカバーする)を推奨しても、うちはブレずに”危機モード”で対応し、集団接種メインで行くことにしました」
”小分け隊”の活用でムダなく数を稼ぐ
 当初は4つの区施設を使い、そのほか7病院でも個別接種を実施した。このうち墨田中央病院の接種では、千葉大学墨田サテライトキャンパスが会場を提供した。運営は民間に業務委託せず、区が直営し、ワクチンの在庫管理や配送は、職員による”小分け隊”が行った。
 キャンセルが出た場合は、区の危機管理Twitterやメールで区民に告知して希望者を区役所に集め、”小分け隊”が余ったワクチンを回収、西塚さんら保健所の医師が接種した。こうして、ムダを出さずに接種回数を稼いだ。地元医師会も”危機モード”を共有。集団接種の打ち手は、すべて区内の医師たちでまかなった。
「大きい施設はオリンピックに抑えられて使えないなど、条件は厳しく、地域にある資源を最適化して使うしかなかった。でも、それをやってみたら、いろんないいことがあった。特に地元医師会は自分たちが責任をもってやろうと士気が高く、おかげで事故なく、質が高く、長続きしている」
等身大の形作り
 接種券の発送や会場の設営は、選挙の際の入場整理券や会場作りと同じ、ということで、選挙管理委員会の職員が担当した。ワクチンに関する情報を掲載した区の広報紙は全戸配布することとし、これにも選挙公報配布のスキルが生きた。
「形を作って丸投げするのではなく、自分たちにできる等身大の形を作り、そこにちゃんと血が流れるように、職員が町内を回って苦情聞きなどもやって、形をさらに整えていきました」
 住民の声を聞く中で、若い世代の接種を進めるには、夜間、駅の近くで行う必要があると分かった。そこで、6月末から東京スカイツリーに隣接するビル、JR錦糸町駅と両国駅近くのホテルにも接種会場を設置。平日は午後8時まで、さらに土日祝日にも接種を行えるようにした。スカイツリー会場には託児所も設けた。
二転三転する国の方針にも柔軟に対応
当初から複数のワクチン使用を計画
 国のワクチン供給が不安定な中、墨田区は接種が始まる前の段階から、モデルナ社製ワクチンの使用を計画に組み込んでいたことが奏功した。
 接種が始まった時点で、厚労省が承認していたのはファイザー社製ワクチンのみだった。モデルナ社とアストラゼネカ社のワクチンが特例承認されたのは5月21日。しかし墨田区では、3月に公表した「実施計画」で、7月にはアストラゼネカとモデルナのワクチンを導入して、接種を加速させる計画を明らかにしていた。両社のワクチンは、ファイザー社製とは接種の間隔が違い、在庫管理も異なるので、複雑なオペレーションが必要になる。しかし、同区では接種の加速には、ファイザー以外のワクチンも必要になると考え、事前準備をしていた。それが、以下のように役立つことになる。
事前準備でモデルナ確保
 6月11日、ワクチン担当の河野太郎規制改革担当相が、市町村の集団接種でもモデルナの使用を認める方向を示した。あらかじめ計画済みの墨田区は、すぐに手を挙げた。この素早い反応で、同区はモデルナの配送を受けることができた。
 国が自治体でのモデルナ使用を認めたのは、7月からはファイザーの輸入量が減る分を補うためだった。ところが国は、同月22日には再度の方針変更をした。モデルナを使用する職域接種の申し込みが多く、「1日の可能配送量はもう上限に達している。このままいくと、供給できる総量を超えてしまう」として、自治体のモデルナを使った集団接種と職域接種の申請を中止したのだ。準備が間に合わず、配分を受けられなかった自治体もある。
在庫を出し惜しまない
 ワクチン供給不足への対策として、河野行革担当相が一時、在庫が多い自治体には配分を減らす、という新方針を示し、全国の自治体が混乱したことがあった。この時も、墨田区は影響を最小限に済ませた。扱いが面倒なワクチン接種記録システム(VRS)は、区職員が残業してこまめに入力。2回分を確保しないと1回目の予約をとれない、という自治体が予約を停止している中、墨田区では西塚保健所長が「在庫は出し惜しみせず、ペースを落とさずに予約や接種を進めて下さい」と、現場に檄を飛ばした。
「平常であれば2回確保してから予約をとる、となりますが、これも”危機モード”で対応しました。モデルナがありますし、国の輸入予定量は公表されていましたから、そういう情報を常にチェックしながら、大丈夫だろう、と。カラ元気でもありましたが、在庫ゼロのおかげで、”ボーナス(追加)”も来ました。この時期に加速するはずが、それはできなかったけれど、(ファイザー供給減の)前と同じ水準は保てた」
 このように、ワクチンを巡ってしばしば二転三転する国の対応にも、早い時期からの準備と、”危機モード”による柔軟で大胆な反応で、切り抜けてきたのが墨田区だった。
通年議会が補正予算に迅速対応
 加えて、区議会も”危機モード”を共有。ワクチン接種会場の増設など、様々な変化に伴う予算の確保に素早く対応した。
「昨年の11月から通年議会となっていたこともあり、毎月のように補正予算を通してくれるので、次々に変化する状況に迅速に対応できたんです」
 毎月の議会で、議員が住民の要望を披露したのも、情報として役立った、という。
”危機モード”共有の背景
 このように区、地元医師会、住民、議会などが”危機モード”を共有できた背景には、墨田区特有の事情もありそうだ。
 隅田川沿いにある同区は、水害の危機と常に向き合っている。最悪の事態では、ほぼ全域が水没することもあり��る、と予測されているからだ。大雨の予報が出るたびに、同区は水害の発生を警戒��る。常に最悪の事態を想定して考える”危機モード”の思考が鍛えられ、コロナ対応でも生きたのではないか。
 同区では昨年1月末の段階から、新型コロナウイルスを新たな「災害」、それも警戒レベル5の最大級の災害ととらえて対応してきた、という。国や東京都では、第5波で重症患者数が過去最高を日々更新する事態になって、ようやく「災害級」という言葉が出てきたのに比べると、危機への向き合い方が異なるように見える。
 この”危機モード”を区、医師会、住民、議会が共有し、連携することで、次々に生じるいろんな問題をうまく飲み込み、ペースを落とさずに接種を続けることができた、と言えるだろう。
ワクチン以外でも素早い対応
 墨田区が速いのはワクチン接種だけではない。医療提供体制についても、���だった対応が見られた。2つの例を挙げる。1つは、地域完結型の医療体制「墨田区モデル」の構築。もう1つは、抗体カクテル療法のすみやかな導入だ。
回復期の患者を中小病院が引き受ける
 コロナ禍の日本で、医療が逼迫する原因の1つに、回復した重症者の転院が困難、という問題がある。患者は人工呼吸器から離脱できても、すぐに日常生活には戻れるわけではない。その後の治療やリハビリが必要だが、そのための転院先がなかなかみつからないのだ。
 これに対応するため、墨田区は今年1月25日、地域の病院が連携して、転院を進める仕組みを作った。同区では第一種感染症指定医療機関である都立墨東病院が重症患者を、同病院と重点医療機関の病院が中等症患者を引き受けている。そして回復期に入った患者は、他の中小私立病院が次々に受け入れ、重症者や中等症患者のためのベッドを空けるようにした。
 この体制を導入して3日後には、入院待機者が0になった。今も、医療崩壊を食い止めている。
 速やかな体制作りが可能になったのも、災害時を想定した、常日頃からの地元医師会と保健所の関係があったからだ。
「危機を想定し、墨東病院には『断らない医療』をやってもらい、そこがいっぱいになったら地域の医療機関が後方支援で引き受ける、という意識が、地元の病院経営者には以前からある。今回は、墨東をパンクさせないために、自分たちが支えていかなければならないという危機感が、地元医師会の中でより一層強い」
抗体カクテル療法にもいち早く対応
 抗体カクテル療法は、2種類の抗体を点滴投与する治療法で、軽症者の重症化を防ぐ効果がある。アメリカのトランプ前大統領が感染した際、この治療を受け、早期に回復したことで知られる。日本では、7月19日に重症化リスクの高い軽症・中等症患者の治療薬として特例承認された。墨田区では、同愛記念病院に区民優先の病床を20床確保していたが、ここで同月27日から必要な患者にこの療法を行うことにした。8月13日までに20人の患者に実施し、いずれも経過は良好、という。
 東京都がこの療法のための病床20床を確保したことを発表した��は同月12日だったことを考えると、墨田区の手際の良さが光る。これも、”危機モード”による早い準備が生んだ。
「4月に、近いうちに特例承認されるという情報があったので、区内の病院で実施しようと、5月頃から病院と勉強をしてきました。当初は4つの病院で実施しようと考えていたのですが、入院が必要とのことなので、区民のための病床を確保していた同愛記念病院で行うことにしました」
 準備を急いだのは、第4波の大阪の状況を見て、危機感を募らせたからだ。地元医師会と共に、神戸市民病院の医師を招いたweb上の研修会を行い、関西でどのようなことが起きたのか、詳細を学び、対策を検討した。
「酸素が足りない、中等症のベッドは一杯になり、感染者が減らない。このような大阪の第4波が東京でも起きる、という前提で準備をしたのが、今生きている」
十分な検査態勢を整える
 このほか、コロナ対応としては、検査態勢を区独自で充実させてきたことも大きい。それは、昨年4月に墨東病院でクラスターが発生し、新たな入院や救命救急センターでの患者受け入れを停止した時の教訓からだという。
「国立感染症研究所が入って、症状のない人も含めて全員の検査をやった。そのやり方から学ぶことが多かった。ウイルスは目に見えない敵なので、徹底した検査しかない」
 しかし当時、東京都としてできる検査は1日に200-300件ほど。そのため、医師が必要と判断しても、検査を受けられない発熱患者がいた。墨田区は、独自にPCRセンターを設置。6月に検査会社を区内に誘致し、通常の3割程度の金額で1日240件の検査を行えるようにした。
 さらに、保健所自身が唾液によるPCR検査を開始した。検体を唾液にしたのは、医師がいちいち咽頭を綿棒でぬぐう作業をしなくてすむので、大量の検査に適していると考えたからだ。
 最初に大規模な検査を行ったのは昨年6月下旬。地元のオーケストラ、新日本フィルハーモニー交響楽団の楽団員ら74人のPCR検査で、全員の陰性を確認した。それまで演奏活動を自粛していたオーケストラは、7月初めに演奏会を再開した。
「自前の検査なので午前中に検体を出せば、2時間後には結果が分かります。費用も1人1000円くらいで済みます。どこかの施設で1人陽性者が出れば、すぐに全員の検査をやる」
 陽性者の第一報を知ると、西塚所長自身も防護服を着込み、検査のために現場に向かった。高校受験の時期は受験生の検査を行い、小学校の移動教室など人数が多い時にはプール方式で検査した。夜の街が危ないという話が広がった時期には、向島の花街の芸者たちの検査を実施。「向島は安全だと示したいので、ぜひやってください」という芸者衆の要望に応えた。
「人は大事」
 こうした対応が可能になったのは、1人の保健所職員がいたからだ。ベテラン検査技師の大橋菜穂子さん。西塚所長が独自の検査実施の方法について頭を悩ませていたところ、大橋さんが「私はPCR検査ができます」と申し出た。
 2014年に代々木公園でデング熱が発生して以来、大橋さんは毎月のように、区内の公園で蚊を採取してはすりつぶし、PCR検査でウイルス感染の有無を調査し続けていた。結果はいつも陰性だが、それを確かめるために、大橋さんは黙々と検査を重ねた。PCR検査の技術を磨き、機械もメンテナンスを欠かさなかった。
 それが、このコロナ禍で生きた。大橋さんは、感染症研でコロナウイルスの検査の手法を学び、今では変異株の検査も担っている。
「昔は、検便も結核の検査も、水道の検査も、すべて保健所でやっていた。それが次々に民間委託となり、保健所から検査機能が失われ、保健所そのものも減らされてきた。そんな中、商売にはならない蚊の検査を続けてきた検査技師が1人いたおかげで、コロナにも対応できた。本当に、人は大事です。金にならないことをやって、危機に備える。これこそ公衆衛生です」
適切な情報の公開
 住民への適切な情報発信も心がけた。象徴的な事例が、早期にコロナ対応をする医療機関名の公表に踏み切ったことだ。
 新型コロナの感染が疑われる患者に対応する医療機関は、都道府県が「診療・検査医療機関」を指定した。ただ、多くの自治体は「風評被害」を恐れて機関名を公表しなかった。東京都も同様。そのため、患者が受診するには、かかりつけ医か都の発熱相談センターに相談し、紹介を受けなければならない。同センターに電話がつながらないことも多く、煩雑さから、症状があっても軽症の場合、医療機関にかからずに済ませる人も少なくなかった。
 そうした人が感染を広げる懸念から、墨田区は昨年11月、区内の「診療・検査医療機関」の名称公表に踏み切った。それによって受診がしやすくなる利便性と、感染拡大の抑制が狙いだった。区の広報紙では、年末年始の発熱外来を行っている医療機関名と診療日や連絡先などを詳しく伝えた。
 さらに、西塚所長がTwitterなどのSNSを使って、区の対応を丁寧に説明。西塚所長のアカウントには、「家族が熱を出した。どうしたらいい?」「熱がある。日曜日だけど、どうしたらいい?」といった相談も頻繁に飛び込む。そのたび、「○○なら、予約なしで受診できます」などといった情報を伝えている。
「自分が必要な時に必要な情報が得られずに困っている人がいる。そういう人をとりこぼさないようにしたい。災害時は、区としては大きく構えて対策をしなければならないが、こういう細かい情報を補強するにはSNSは有益です」
 このような対応をするため、自宅にいても、スマートフォンは手放さない。
 ちなみに、施設で患者が確認された時、噂や風評被害を防ぐため、同区では施設名も公表している。
保健所の役割とは
 保健所の仕事について、西塚所長はこう語る。
「いろんな資料を分析しながら、地域の弱みを常にウォッチして、必要な資源を作って供給していく。インテリジェンスとロジスティクスです。墨田区は一貫して、これが公衆衛生を担う保健所の役割と認識してやってきました。私たちは、尾身先生たち専門家が言うことを忠実にやってきただけです。その(提言を実現する)ために必要な資源は用意する。現場の医師たちが『検査をしたい』『患者を入院させたい』と言う時に、ちゃんとできるようにする。これが保健所の仕事です。
 資源が足りなければ、作る。たとえば、東京都の検査能力が限られているからと、検査数を絞るのではなく、検査がより多くできるようにしてきました。国や都の対応を言い訳にせず、資源にニーズを合わせるのではなく、ニーズに資源を合わせるんです」
 そのための工夫をし、早めに準備を整えて、あらゆる立場の人たちを結びつけていくのが、西塚流の真骨頂と言えるだろう。
 平成元(1989)年度には、全国に848あった保健所は、合理化の波に洗われて、現在は470まで減らされた。その保健所が今、新型コロナウイルスとの闘いで要の役割を担っている。
「だいぶ減らされたとはいえ、うちに検査技師がいたように、今もまだ保健所には様々なスキルが残っています。その力を、今発揮しないで、いつ発揮するのだ。そんな思いでやっています」
 各地でも今、それぞれの地域の事情を踏まえた保健所の奮闘がある。その保健所の機能を存分に生かすためにも、また、各地でワクチン接種を加速化するためにも、国や各自治体が西塚所長の話から学ぶところは多いのではないか。
11 notes · View notes
1109voice · 3 years ago
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バンタム級最強
カシメロ君へ。
アナタが格上の選手を挑発するのは構わない。プロスポーツなんだし。試合への注目もアップするだろうしね。実際、試合なんて実力通りの結果になるとは限らないし、アナタの攻撃力が井上選手にとって危険なのは理解している。だけど今すぐにやらせろ、っていうのはあまりに分不相応。彼は無敗の3階級制覇チャンピオンにしてWBSSの覇者。カシメロ君、あなたWBSSに参加してないくせに後から出てきてテテやリゴンドーに勝ったからといって、実績的にはドネアさん、井上さんの足元にも及ばないわけ。あたなが素晴らしい選手なのはわかっているから、まずはドネアさんとのセミファイナルに勝って井上選手への挑戦権を勝ち取ってから大口たたいてください。ま、ドネアさんに勝つのも厳しいと思うけど。
ただ井上選手、スピード、パワー、防御技術、どれをとってもすべてアナタの方がカシメロより上だけど、番狂わせってこういう時に起こりがちだから熱くなりすぎないよう気を付けてください。不気味なのはカシメロ君の耐久力。ボクシングは相対的なスポーツなのでそこが唯一心配です。万一、クリーンヒットを急所に決めてカシメロ君がケロッとしてたとしてもムキにならずにカシメロ君のパンチを食わないことを優先した戦術に変えてください。 KO勝利のカギはボディでしょうね。 4団体統一を信じて応援しています。
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buriedbornes · 5 years ago
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第47話 『覇王降臨(3) - 転機』 Advent of the Overlord chapter 3 - “Revolution”
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全てがひっくり返って新しい秩序が支配するまでに、時間はかからない。
国の最後の治安を守るはずだった兵士達が、城へと殺到した。
守るべき立場の者がいないのだから、それは戦いですらなかった。
城にいた数えるほどの特権階級���達は、残らず市中の広場に引きずり出された。
それは、然るべき結果であったと同時に、にわかには信じ難い光景でもあった。
誰一人として、行動に異を唱える者はいなかった。
集団は、驚くほど整然と政治責任者達を引き立てた。
そのあまりの整然さに、疑いなく広場まで自分の足で歩んできた者さえいた。
それは、帝国の、最初で最後であり、静かなるクーデターだった。
しかし、無血では成らなかった。
陣頭に立っていたテオは、黒色の甲冑を身にまとい、広場へと現れた。
黒髪をたなびかせて、細身の長剣を佩いていた。
「このような事を、一体何の権利があって…!ワシらが何をしたと言うんだ!」
石畳の上に横たえられ狼狽するロー氏を前に、テオは冷たい視線を投げかけた。
「そんな事、どうでもいいのですよ」
テオは剣を抜いた。
ロー氏の顔が青褪める。
「これまであなた方が何をしてきたのか、そんな事は何の問題でもないのです」
「では…」
剣が高く掲げられる。
「これからの帝国にあなたのような方は必要ない、それだけです」
鋭い軌跡が弧を描き、皺まみれの頭部が宙を跳ねた。
テオは剣を殊更に掲げ、民衆や兵士達はそれに呼応して爆発する。
そうして、テオは次々に帝国の要人達の首を刎ねていき、それに応じて国が沸く。
血が流れ、熱狂が最高潮に達していく様を、エルピダだけは冷静に見つめていた。
これは一体なんだ。
何が起きている。
テオは、何をしているんだ?
人々がテオを、革命の指導者として祭り上げている。
昨日までは魔術院の一員として、帝国を構成する人間の一人として、隅に埋もれていたはずの青年が、一夜にして帝国を底から覆している。
そしてその事を、誰一人として疑問を抱く事なく、まるで何年も前からそうであったかのように、新たな覇者の出現を人々は歓迎している。
これは、異常な光景だ。
白昼夢でも、もう少し現実味のある様子を映すだろう。
エルピダは、この日初めて、心の底からテオに恐怖した。
テオに出会った日、彼が大きな宿命を背負う、非凡なる人間である事は確信していた。
ただ、これほどのものであろうとは。
エルピダは、次々と剣を振るっていくテオを凝視した。
何十人もの血が流れ、最後に、ティアナ女帝が残された。
成人もせぬ、ほんの子供である。
テオも、体躯はともかく、歳だけで言えば、大して変わらぬはずである。
殺すのか、この子も。
ヴァーニスの血脈さえ断って、テオはこの国の王になるつもりか。
「かつてヴァーニス帝がそうしたように―」
��晩のテオの弁舌が脳裏をよぎる。
しかし、ティアナ女帝は、つまらなさそうな顔でテオを一瞥すると、再び目を閉じただけだった。
「早くしてくださらないかしら」
テオはその言葉に応じて、剣を構える。
「こんな最後を迎えるために、私は生を与えられたのですね」
小さな女帝は、大きなため息を漏らした。
「ちっとも面白くなかったわ」
剣が空を走った。
それは、少なくとも未来を生きる者達にとっては、新しい歴史が始まる瞬間であった。
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夕刻、テオは広場に設置された簡易の踏み台に登り、佇んでいた。
人々は彼の言葉を待ち、静まり返っていた。
エルピダは、テオに呼ばれ、台の傍らにいた。
「あなたも、この革命の立役者だ」
その言葉は、あまりにも白々しく響いた。
それでも今は、テオなりの気遣いが見せてくれる人間味が、不安を和らげてくれる気がして、それに縋りたい気持ちもあった。
テオは、人々を見渡して、口を開いた。
「今日この日、真の自由を勝ち取ったのは、他でもないここにいる全ての人々である」
そこまで言うと、テオは剣を引き抜き、左手の甲を軽く撫でて、血を流した。
その血を民衆達に向け、叫ぶ。
「今日、ここにいる全ての人々が、戦うための剣を引き抜いたのだ。私は皆の剣だ。戦って勝ち取り得るもの全てを、私が皆に代わって手に入れよう」
テオは剣を掲げた。
民衆の感情が弾けた。
そこからは、意味のある言葉が聞こえる事はなかった。
方々から飛び交うあらゆる種類の歓声が全ての音を遮って、会話は成り立たなかった。
ただ、テオは、剣を掲げた先の空を見上げていた。
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新たな王が生まれ、文字通り一夜にして、帝国は生まれ変わった。
富は再分配され、行政は最適化され、まるで縛られて止まっていた血流が流れ出すように、滞っていた経済と物流が息を吹き返した。
革命とは、昨日まであったものを新しいものに置き換える過程である。
新たな形に順応するまで、本来は社会全体を混乱が支配するのが常である。
しかし帝国は、まるで昨日までそうであったかのように、一夜にして、全く異なる社会を受け入れた。
その、明らかに異常な事態に、異常さを感じられている人間は、エルピダの他にはいないように見受けられた。
また、革命決起の日以来、光を見る機会が得られない事にも、エルピダは疑問を感じていた。
テオの革命と、光が見えなくなった事に、何の相関関係があるのか、エルピダには全くわからなかったが、ただ彼はテオに詰問する時間を持てず、煩悶とする日々を過ごさざるを得なかった。
テオは言うまでもなく善政を敷いた。
そのために、一日中テオは城と街の各所を移動し続けていた。
つい数日前までは、魔術院の研究室で隣に座っていた若き同胞が、今は国をより良くするために奔走しているのだ。
エルピダにとってのそれは、ほとんど不審な行為だった。
あれほどの研究への情熱はどこへ行ったのか。
光がどこから来て、何をもたらすのか、その真実を共に追うのではなかったのか。
あるいは、光が何かをもたらした結果、彼にこの劇的な変化を与えてしまったのではないか。
しかし、確証を得る手段は何ひとつなかった。
国政が安定し始めた頃、テオは魔術院の拡大を指示した。
そして、これまでとは比較にならないほどの規模で研究設備を増強し始めた。
貴族の屋敷と見紛うほどの新しい研究室を見渡しながら、エルピダの中で謎がさらに深まった。
テオはまさか、このために国を覆したのか?
仮にそうであれば、なるほど筋は通るし、合点も行く。
ただ、そうであったならば、尚の事正気の沙汰とは思えぬ。
自身の研究を推し進めるために、国を盗ってしまおうなどと誰が考えるか。
そしてまた、それを本当に成し遂げてしまえる人間など、いようものか。
しかし、そうでない場合は、やはりテオの事が理解できなくなる。
自身の野心のため、あの演説のように、自分が欲しいものを全て手に入れるための戦いであったのかもしれない、そう��違いない、と思うしかなかった。
もはやテオは、どう転んでもエルピダの理解の範疇外の存在に変貌していた。
エルピダは再び、今度は独りで、光の正体を追い求める研究を再開した。
テオが研究室に戻ってくる事はなかった。
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テオは、覇王を自称した。
革命時の象徴的な黒い甲冑に、さらに外出に際してはフルフェイスの兜をかぶった。
曰く、威容を示す事も覇王の仕事である、との事だった。
ヴァーニス帝が力、ワーレン帝が知の支配なら、テオはカリスマの支配だった。
すべての人々が、不自然なほどにテオを信じていた。
テオに従えば全てがうまく行く、そう誰もが信じるからこそ無用な反駁も生じず、安定した社会の重要な要因となっていた。
不自然ではあったが、納得してしまいそうなほどのものを、テオは持っていた。
誰に対しても偉ぶる事なく平等に接し、聡明で、そして革命の日以後のどんな場面でも笑顔を絶やさなかった。
彼に対した時、臣下の者が感じる事は、不安や緊張よりも、安心と安らぎであった。
ずっとこの人と共に歩みたいと思わせる、圧倒的なカリスマ性が、テオの最大の武器であった。
民衆の覇王に対する態度は、親愛や忠誠よりも、むしろ盲信や崇拝に近かった。
そして、そんな王だからこそ、呼ばずとも後宮に入る事を望む女性達は跡を絶たなかった。
そんな者達に、テオは、どちらかと言えば冷淡な反応を示した。
だが、帝国は過去に跡継ぎが原因で幾度となく国難が訪れた経緯から、臣下達も後宮を据える事を強く推していた。
半ばやむを得ないような形で、テオは後宮の設置を許可した。
しかしテオは、有力者の家族などは全く迎えず、街先で貧しそうに暮らす者を選んでは後宮に迎えた。
そうして、その娘達には、様々な教育を施し、技術を身に着けさせ、働く場を用意した。
娘達は少なくとも寝食に不安を覚える事はな��なったが、特別贅沢ができるわけでもなかった。
そしてテオ自身も、一向に夜の閨に足を向ける事がなかった。
あまりに前例のない扱いに、臣下達は口々に”これは後宮と呼べるのか?”と疑問を呈した。
その問に大して、覇王はこう答えた。
「どんな貧しい身であっても、勤勉であれば覇王の寵愛を受けられるかもしれないと知れば、民衆は誰もが勤勉になろうとするだろう。優れた才能の芽が見つかれば、その娘と私とで成した子も優れた王になるだろう。愚王の歴史が繰り返される事もない」
臣下達は、後宮の事についてそれ以上追求する事をやめた。
代わりに、後宮とは別に、若い者を奨学励行する施設が作られ、性別年齢を問わず優れた者を国中から抜擢し重用するための制度が設けられるに至った。
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覇王はこうして富国を成し遂げ、遂にはヴァーニス帝の悲願、即ち諸国統一のための外征を再開した。
戦わずして併合される国がほとんどだったが、一方で、抗う相手に対して覇王は容赦なく果断であった。
礼を尽くす相手には礼を返し、丁重に扱い、平等な臣民として迎え入れた。
当初は暗黒時代の衰退によってヴァーニス帝全盛時の半分程度になっていた版図は、再び盛り返し、かつての領土を超えて、さらにその倍以上の領土を平らげて、帝国は歴史上最も隆盛する時期を迎えた。
革命から、10年が過ぎようとしていた。
~つづく~
第48話 覇王降臨(4) 再誕
「ショートストーリー」は、Buriedbornesの本編で語られる事のない物語を補完するためのゲーム外コンテンツです。「ショートストーリー」で、よりBuriedbornesの世界を楽しんでいただけましたら幸いです。
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bigraceultreport · 5 years ago
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200524[優駿牝馬(オークス)] 東京を自転車で1周してみようと思った話
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↑住宅街を流れる川
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※このお話は多少(というより少なからずな)フィクションを含みます。
東京を自転車で1周してみようと思った話
「君ってやりたいこととか、無いの?」
カフェテリアで授業1コマの空きを共に待っていた先輩から言われた言葉にあれ?となった。この人がこんなことを言うのは珍しいな?
何かの講義で知り合ってツイッターIDだけを交換したその先輩は、サークルも入らず、バイトもせず、かといって何か他に打ち込んでいるものがあるわけでもなく、ちょっと人より洋画に詳しくて、読書家な女の人だった。
むしろ先輩のやりたいことって何ですか、という僕の問いは「また今度話すよ」と濁された。
結局、その答えは教えてもらえなかったが。
思えばどこか余裕を感じる雰囲気というか、一方で他人を寄せ付けない感じはミステリアスで、ぜひ結婚を前提としたお付き合いをさせていただきたかったところではあるが、先輩には大学に入った頃からの2年以上の付き合いになる彼氏がいて、ツイッターでたまに当時はまだふぁぼと言われていたいいね!を飛ばしあう程度の関係の僕が付け入る隙は微塵も無かった。
「やりたいことって別に将来の話とか聞いてるわけじゃなくて、パイ投げで憎い先輩にべったりクリームを塗りつけたいとか、1日中漫画喫茶に籠ってなんかありえないくらいの大長編を制覇してみたいとかだよ。」
なるほど。僕は覚悟した。もちろんやりたいことはたくさんある。大学近くのラブホに入って行く男女を1晩かけて観察したり、地元のラブホ街の様子を公園のベンチに座って��めたり、バイト先の本屋の向かいのラブホテルがどれくらい繁盛しているかの売上(となるだろう人たちを眺めながら)考察をしたりしたい。ただ、ここで面白いことを言って彼女を笑わせることが出来たなら。もしかしたら偶然とアブラマシマシな力とやらで僕のものに……。
「俺、北海道を自転車で1周してみたいんす。」
意味が分からない。いや、意味が分からないならないなりにもうちょっと何かあるだろうと今の僕も、その1文を口にした0.72秒後の僕も思った。そもそも、北海道を自転車で1周してみたいと思ったことなど生涯で1度も無い。
「何それ。『自転車少年記』じゃない。」
そう、まさに『自転車少年記』なのである!多分。たしか。たしかにそんな話だったような気がするのである。いや、そんなに壮大な話では無かった気もするが、確かにそんな話ではあったのである。『自転車少年記』はたしかにそんな話だった!
「そう!『自転車少年記』なんですよ!俺、ああいうのに憧れてて。」
「ほんとかなぁ。でもまぁ、やれたらいいね。そういうの。」
そういって笑った彼女の顔を僕は今でも忘れることが出来ない(思い出補正で)。
そのわずか1週間後、僕は池袋の路上に停めていた自転車を豊島区都市整備部土木管理課に放置自転車として持っていかれ、手数料として5000円を支払うことになる。
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大学も4年目に入ると就活に真剣に取り組まなくてはならなくなる。際限なく聞かれる「学生時代に力を入れたこと」「入社したらやりたいこと」に疲弊しながら、志望業界も特になく、働きたい業種も、やりたいことも無かった僕は「やりたいこと」を探していて、そういえば、と上述の話をふと思い出した。就活に行き詰っていた僕は早速、自転車に飛び乗ってまだ花粉が舞い散る外へ飛び出した。
「とりあえず、東京を山手線沿いに1周してみるか。」
スタートは大塚駅。巣鴨ー駒込ー田端ー西日暮里ー日暮里ー、田端でアトレのでかい建物で迂回する羽目になったり、消防署で訓練中の隊員の罵声が聞こえたり、色々ありながら僕の自転車の旅は続く。
上野駅に向かう途中、巨大な階段が現れ、自転車の僕は行き場を失ってしまって、階段を自転車を抱えて歩くことになった。恥ずかしながら、この時点でわずか6駅程度しか走っていないにも関わらず、僕の体力はほぼほぼ限界である。
結局、秋葉原で1周するのは無理だ。となり、総武線沿いを西に進み早稲田周辺をなぞり、高田馬場ー目白と東京を半周しただけで僕の些細なチャレンジは終了した。翌日は筋肉��に苦しみ、受けに行く予定のテストセンターをパスした。
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↑ 東京1周旅の途中に立ち寄った谷中ぎんざ。屋台で50円の焼き鳥を食べて満喫。ちなみに元カノと行こうと約束していて結局行けなかった有名な料理屋さんが谷中ぎんざにある。(余談) 
東京を半周して分かったことは、まず、こんな自分でも「やりたい」と願えば、東京を1周することは出来なくても、半周するくらいのことは出来るのだ、ということ。
今なら「やりたいこと」は無数にある。
まず、アブラボウズを食べたい。 バラムツ(食べられない)の記事読んで、「どうしても似たような魚が食べたければアブラボウズを!」って記載があり、アブラボウズ食べたくてウズウズしている。 バラムツは当然食べたくない。オムツが必要になるらしいし。
クエも食べたい。和歌山が名物らしい。高級魚らしいが、構わない。美味しいものを食べに行きたい。
成田山のふもとの老舗でウナギが食べたい。参道へ続く道に香るウナギのたれの匂いや雰囲気をもう一度味わいたい。
バンジージャンプをやってみたい。多分生涯で1度だけで良いけど。笑
バナナボートも乗ってみたい。自撮り棒で映像を取りながらしっかり振り落とされてみたい。
普通に温泉旅行に行きたい。Alexaも欲しい。
他には……ポーカープレイヤーになってみたい。海外のトーナメントでファイナルテーブルに残ってみたい。
……後は普通に結婚したい。
生きてますか。お元気ですか。先輩。
北海道を1周どころか、僕は東京を半周するくらいしかできませんでした。 ただ、他にもやりたいことはたくさんあって、少しずつ叶えながら生きてます。
もう連絡先も知らないけど、お元気で。
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2020 優駿牝馬(オークス) 予想
先週はセラピアが除外になり、消���不良のレース。ノームコアをそのまま上に上げればよかったが、スカーレットカラーも良いと思っていたので迷って結局買えなかった。アーモンドアイの出るレースは後悔しかない。いつだって予想は良い線行っているのだが、毎度馬券が取れない。
今週のオークスは難しい。デアリングタクトの評価、デゼル、アブレイズといった無敗の新星の見極め、重馬場の桜花賞の考察及び、桜花賞のダメージがどれくらい残っているかの判断。オークスは毎年距離適性というよりはその時点の完成度がものを言うレースになる。どの馬も2400mは初めてで距離適性も怪しい馬同士の争いだ。多少の距離適性の差は現時点の完成度で逆転できると考える。
早速、予想に移ろう。本命は◎クラヴァシュドール。前走は3コーナーでもまれて後退、しかし追い込んで4着の内容は素晴らしい。完成度も高く勝利できるだろう。〇マルターズディオサは前走は完全に馬場にやられてしまっていた。レベルの高さは間違いないので、盛り返しに期待。ここまで人気を落とすようなら。以下、強いだろうデアリングタクト、阪神JFは位置取りが後ろすぎ、桜花賞は馬場で力を出し切れなかったリアアメリア、シンザン記念勝ち馬のサンクテュエールを指名する。
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来週はいよいよダービー!ボートレースオールスターもあるよ!
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以下、写真集
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↑ HOTELニューノャトー(西船橋)
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↑ 袋田の滝。ちなみに1人旅。周りはカップルだらけでした。
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↑ 崖の岩にも命が芽吹く。
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haruki-kumagai · 5 years ago
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西成ガギグゲゴ【七人の侍 ジャブ】
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西成ガギグゲゴ【七人の侍ジャブ】
SUPREMEの服をさり気なく着こなし、お洒落な被り物をのせてる
毎日来るのに着こなしている服が違う
古着や新作などの服をさらりと着こなすその人物は、私の店ピカスペースに訪れる 七人の侍の一人、ジャブさん
陽気な赤の自転車に乗りながら、これまた陽気に酒を飲む人物である お気に入りのマイク・タイソンのTシャツやボクシング関係のTシャツを来ている時は、さらに陽気で シャドーボクシングをしながら入店してくる時も良くある光景である
ジャブさんも古参のお客さんで、6年程の常連である
日に何度も訪れるのがジャブさんの飲み方だった
「はるちゃん サッポロ!!グラス2つ」と言い
必ずその都度わたしと乾杯する
「この店は、波動が良いな」 「はるちゃんが波動がいいからかな」 「必ずサクセス出来るね」
そう言って笑った
ジャブさんも深みのある良い笑顔をする一人だ
この新世界近辺に長く住んでいて、新世界市場の繁忙期の話などしてくれる 幼少の頃から、新世界にはおやじさんと一緒に来てたみたいだ かなりこの近辺の歴史には、詳しくジャブさんから教えられる事はおおいい
わたしのお店のピカスペースは、新世界市場の商店街の中にある 新世界市場は、100メートル程の商店街なのだが、その中に当時溢れる位お客さんがいたらしい これは、市場内の商店主からも聞いたときがある話だった。 本当にすさまじい黄金時代だったらしい
大型のスーパーの出現などにより、少しずつお客さんは流れて行った。 ピカスペースは市場の南側にあるのだが、わたしが8年前に初めて来たときにはすでに南側のほとんどはシャッターが閉まっていた まさにシャッター商店街だった
新世界一帯は、串カツのメッカであり、かなりデコラティブなお店が集まっている。、 ビジュアルもゴチャゴチャしててその中心に通天閣がそびえ立つ かなり面白い雰囲気で、人々も良く訪れる観光地である 朝から飲む安い立ち飲み屋もいっぱいあり、昼頃には完全に出来上がってる人々を良く見る場所でもある
この新世界市場だけが、とりのこされている様だった。
わたしはこの感じが好きだったし、この場所に可能性を感じていた
ここ数年のインバウンドの特需により、通天閣&新世界は外国人旅行者、特にアジアの方々がおおく来るようになった 新世界近辺のマンションやアパート、人の気配のしなかった物件は、どんどん民泊かHOTEL、串カツ屋に変わって行った
新世界市場は、通天閣まで徒歩30秒と言う好立地にもかかわらず、ガラガラの商店街だった
そこに当然、目を向ける人達が出てきた 中国マネーが瞬く間に入りこみ、新世界市場内だけで、5~6軒の民泊が出来た
ピカスペースの隣にも民泊ができた
商店街的には、お店になってもらいたい所だが、民泊が増加した
シャッターから真新しい玄関になっていった
そんな中、商店街的に待望だった新規のお店が、近々2店舗南側にオープンする予定である
これは、本当にうれしい
新世界市場は、大きく衰退した時代から新しくうねりはじめている
それは、ここで商売をしているわたしもまざまざと感じている
個人的に懸念している所もあるが、新世界市場が盛り上がる事はうれしい事である
衰退から発展へと新世界市場は、移行している様に思う
当然、ジャブさんもそれを感じている様だった。
「はるちゃん、そろそろ���クセスできるんじゃない」
そう最近、ジャブさんは良く言った
ジャブさんは、ボクシングが大好きな事と自称カメラマンと言っていた
口癖は「必ずサクセスできるよ」だった
ただ、まったく謎の人物だった 独特の距離感の持主で、口調もおだやかで丁寧 言葉のセンスも良く 淡々としていた人物だった カメラを撮る事も稀で、見せてもらう写真は、別段変わり映えの無い人物の笑顔ばかりだった
基本、その人物を好きになればその人物の背景や道中などが、気になりだし聞き出すのがわたしの流れである
ただジャブさんに限っては、謎のままで良いと思っていた また聞き出すのもなんか野暮だと感じていた
それ位、ジャブさんの会話のリズムが心地よかった
昼間から酒を飲み 帰ったと思ったら、新しい服装に着替えてまた来る
他にお客さんがいれば、丁寧に応対しながら一緒にお酒を飲む 当然、そのお客さんにも奢る
またちょっとこの人とは、噛み合わないなと感じれば、お酒が残っていようとスッと笑顔で挨拶して帰って行く人だった
ピカスペースは、お客さんとお客さんの距離感がかなり近い 満員御礼になれば、次から次にお客さんを吸い込みだしてしまう
相席などは、当たり前になり椅子を移動させながら各々が話し込む
この状態になると私は、ひたすらお酒を出し軽いアテを出すだけになる
お客さん同士で盛り上がり、酒もすすむし売上もあがる
勝手に全てが廻り出す、最高のアテとは会話であると思ってしまう
この瞬間が好きで、毎日こうであれば良いと思うが、この店の場合は、完全に引きである
ピカスペースがぐちゃぐちゃに盛り上がってる時に、ジャブさんが来れば 何本も瓶ビールを注文し、顔見知りな人を中心にお酒を注いでいる
「はるちゃん 今日は楽しいな 儲けてなー」そう言って楽しんで行く
自分でさえもしばらくこの盛り上がりは、いらないと思うのにジャブさんは、 次の日、開店と同時に来て「もう一丁」見たいなノリで来る
そういう一面もある人だった
店をやっていると常連と言う枠が出来る もちろん商売的には素晴らしい事だが、この常連にも程良い距離感と一週間に来る回数がある
勝手な事を言ってしまうが、その距離感と回数が丁度良い位の常連は、常連客である
その距離感と回数を超えてくるのが、七人侍の1つの共通事項である
ただ七人の侍の目当ては、わたしであり 客がいようがいまいが、何時でもタイマンを求めてくるのである
それなのに七人の侍のジャブさんの場合だけは、不思議と楽しい時間を過ごせた
ジャブさんは、来だすと来るが見なくなるとしばらく見なくなる その塩梅も丁度よかったのかもしれない
4年位前にWBA世界フライ級タイトルマッチ 井岡一翔の世界戦にジャブさんから招待された
いつも通りボクシングの話で盛り上がっていたら、ジャブさんは井岡一翔のタニマチであるから チケットを貰えると言っていた
一緒に行こうとなり、会場で待ち合わせて世界戦に立ち会えた ジャブさんは、小さいコンパクトな椅子を取り出し、決められた席に座らず 慣れた様子で、通路の一角に陣取った かなり良い場所で二人で見ていた
結果は井岡一翔の勝利で3階級制覇だった。
その時のジャブさんの喜びようはすさまじいものだった
ボクシングの試合は、初めてだったがかなり面白いのでオススメしておきます 特に入場シーンが素晴らしい
平日の早い時間帯から深夜遅くまで、赤い自転車でフワフワしている
「この人は、毎日何をしてるんだろうか?」
一切が謎だった
ただカジュアルで上品な人だった
酔いだすと時折、スピリチュアル系な事を言い出す また、著名な人とのツーショット写真を見せてくれる ガラケーの画質の良くない写真だが、ジャブさんは相当若く見える
ジャブさんは、50代前半だが、写真は20代位に見える
「はるちゃんは、良い波動を持っている」 「はるちゃんは、大器晩成型」 「必ずサクセスできる」
これは、ジャブさんに度々、言われる事柄である 前向きな言葉なので、言われるとうれしい
深く酒を飲み過ぎた時の、ジャブさんは陽気であるが、時折すさまじい顔つきで一点を睨みつけてる事が何度かあった
ちょっと怖いとこもあるな位で、あまり気にしなかった
今年に入ってから、ちらほらジャブさんが店に通う様になった わたし自身、店も営業しているが別件で忙しくなり、店を臨時休業する機���がおおかった
営業日より休業日が増える中、稀に営業してる時は、必ずジャブさんが訪れた
それがなんとなくうれしかった
もう一人の七人の侍の番頭さんが来て、2人で下ネタで盛り上がっていたらジャブさんが来た ジャブさんと番頭さんは面識があり、七人の侍の中では、珍しく馬が合っていた
基本、七人の侍同士は、同族嫌悪では無いがあまり馬が合わなかった
かなりふざけた会話をしてたら、ジャブさんもノリだし3人で下ネタ大会になった
この際だからふざけようと思い
わたしはジャブさんにジャブを入れ始めた
反応はすこぶる良かった
ジャブさんはおもむろに立ちあがり、両手で乳首を摘み
「ダブル乳首ー!!」と絶叫した
これは、素晴らしいと思い
3人でダブル乳首をしながら楽しんだ
「はるちゃん、必ずサクセスできるよ」
わたしは、返す刀でこう言った
「ジャブさん、今からセックス?」
「ナイスカウンター」と言い残しジャブさんは笑顔で帰っていた
会話には、リズムがありリズムがある会話が好きである リズムの無い会話や一方通行な会話も嫌いではないが、毎回そうだと嫌になる
ジャブさんとは会話のリズムが合うのだと思う
ダブル乳首以来、何かの枷がとれたのかジャブさんとの距離感が和らいだ アウトボクシングからのインファイトと華麗にお互いに牽制しあった
うまくコンビネーションが決まると膝をついてダウンしましたとお互いに笑った
営業日には必ず店に顔を出すようになった
酔いだすと、自らダブル乳首をする様になった
そこからは、ひたすらに下ネタになった
ざっくばらんな関係になろうと本人の素性には、一切触れなかった
こういう関係性も悪くなく、会話をボクシングに見立てるコミュニケーションが面白いと感じていた
ジャブさんも本当に良い笑顔をする一人だ
ジャブさんは、良く自分の服を私にくれる 体系的にまったく違うので、サイズのでかめの服をくれる
サングラスや靴、時計と色々持って来てくれるが、高価な物は断っている
お弁当を買ってきてくれる事も多々ある
本当に良くしてくれる
「はるちゃん いつもいつもありがとう」そう必ず言って帰って行った
陽気な赤い自転車に乗ったジャブさんをしばらく見なくなった
わたしは、別件で忙しくなり、店を1ヶ月近く休んでいたのだ
久々に新世界に帰ってきたら店の前に、ジャブさんがいた
「はるちゃん 久しぶりー」となりそのまま2人で飲んでいた
かなり陽気な時間を過ごしていた
「はるちゃん ダブル乳首なシャブしながらすると超気持ちいいぞ」
「はるちゃん シャブセックス超気持ちいいぞ」
いきなりだった
催促したわけではないが、そこからジャブさんは自分の素姓を話し始めた 溜まりに溜まってたのか、全てを吐きだして行った
ジャブさんは、かなり裕福な育ちだったようだ おばあちゃんがかなりの有力者であり、おやじさんはそれを武器におおいに建設関係で成功された
ジャブさんは、当初は地上げ屋だった。 ただこのまま行くと危険と感じて、不動産の営業の方にシフトしていった そしてみるみる頭角を現して行き、若くして成功された
育ちも良く、実家のバックボーンも完璧、イケイケだった為そこに目を付ける上層部の人達がいた
この青年にしよう この青年を完璧にサクセスさせようとネットワークビジネスのフィクサー達が動いたのである 当時ネットワークビジネスが盛り上がりを見せていたが一般の人達にはそこまで認知されておらず また認知している人達からのネットワークビジネスの評価は、半信半疑だったらしい
ネットワークビジネスの顔が欲しいと考えていた上層部の方々が、全ての条件をクリアしている若いジャブさんに白羽の矢が立ったのだ
見えていない世界は恐いなと感じた
そこからジャブさんは、完璧なサクセスロードにはいった、何もせずにいても 会う人から、称賛された 会う人物もかなりの人物だった
本当かどうか不明だが、スティーヴィー・ワンダーに誕生日に目の前で歌ってもらったらしい おおくの芸能人に会う機会に恵まれた 著名な人達、スポーツ選手、華やかな日々が始まった
まさにサクセスロードをひたすら進んで行った
「ジャブくんは何もしなくていいから」そうフィクサーに言われた
何もかも用意され全てがジャブさん中心に廻り出していた
権利収入により、どんどん財も膨れて行った
表の顔になる人物とは、選別された一握りの人達が色々な条件をクリアした上でフィクサーによって選ばられる。
ある時、若かりし時のジャブさんがネットワークビジネスのトップにあたる人にこう聞いた
「どうやったら成功できますか?」
そうしたら、その方がジャブさんの所へ歩み寄ってこう言った
「バカ野郎ー!! 努力だよー!!」おおきな声で怒られた
その後、満面の笑顔で続けた
「努力だよ 努力しかないんだよ」と優しく肩をたたいた
500人近い人達が集まり、壇上にジャブさんが呼ばれ称賛される 壇上目線から見る、500人の羨むジャブさんに対する目線は、まさにサクセスした者でしか味わえない極みだった
富と名声を若くして手に入れたジャブさんのサ���セスは、そんなに長く続かなかった 大き過ぎる富と名声は災いを呼んだ 少しずつ快楽の方へ傾倒して行くのである
酒、博打、女、それ以上も求めてしまい 覚醒剤の世界に入って行った
ひたすらに快楽の世界に沈んで行った 毎日がシャブセックスだった その時のダブル乳首が今でも忘れられないらしい
強迫症状が出始めて、誰かに追われてる気持になり 度々、タクシーで他県に移動していた
この症状が出始めると、後戻り出来ないみたいだ
しらふでは、いられなくなり覚醒剤の回数が増えて行った
全てを捧げる世界だった
自ずと破滅の沼にどっぷりと沈んで行った
500人以上が集まる中、ジャブさんはいつも通りに壇上に呼ばれた
そして大きな声でこう言われた
「君ー!! シャブやってるね!! もう駄目だな!! 君は破門だ!!」
その目は、突き刺さるものだった
壇上から500人の方を見た時、完全に崩壊したとジャブさんは言った
瞼の裏にあの光景は焼きついてる
一点を睨みつける険しい表情のジャブさんがそこにいた
そのまま完全にネットワークビジネスの表の顔から破門され、そのまま病院に直行した
数年の病院でのリハビリ生活と、家族の支えにより何とか覚醒剤を断つ事に成功した。
一度大きく失敗してしまった人に、この国は厳しい
ジャブさんは、人生のほんの一時にベルトを手に入れ、ベルトを失った
ジャブさんだけの意思だったのか、失ってから20年以上が経過している
その20年は想像を絶する日々だったのではないか かける言葉がその時、わたしには見つからなかった
ジャブさんは、それからもピカスペースに度々訪れる 少し自虐ネタ見たいな感じで、当時の事をネタにしだしている わたしは、合いの手を打ちながら、ジャブをいれている
フットワークのキレも良くなったんじゃないか そうわたしからは見える
ジャブさんに対して今だにかける言葉は見つからないが、うっすらだが重なる世界がある
赤い自転車に揺られながら衰退から発展へとジャブさんは20年流れていると思う
ジャブさんは必ずもう一度、自分の意思で青コーナーからリングに上がるだろう
そこにフィクサーはいない
その時のファイティングポーズを是非見てほしい
くまがいはるきWEB https://haruki-kumagai.tumblr.com/ イマジネーションピカスペースWEB https://pikaspace.tumblr.com/
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taka-oneokrock · 6 years ago
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君は僕等の光 誇り 勇気 希望 その他もろもろ全部です。 本当におめでとう!ありがとう! #井岡一翔 #4階級制覇
(Source: https://www.instagram.com/10969taka/)
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wdbrkbrmghm · 5 years ago
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夏の甲子園は履正社高が星稜高を下して優勝した。  今大会を見ていて気づいたのは、選手が試合中に水分を摂り過ぎることと、スタミナ不足である。 【連続写真】奥川恭伸の投球フォーム「下半身の使い方が素晴らしい」  ラグビーやサッカーのようにノンストップで走りっぱなしの競技なら、休憩時間に水分を補給するのも分かる。しかし、野球は「間」のあるスポーツだ。そこでガブガブと必要以上の水分を摂ったらどうなるか。集中力がなくなるのだ。野球経験のある人ならうなずけるだろう。  暑さの中、ユニフォームが汗でグッショリ濡れるほど練習をやった上で、新しいユニフォームに着替えて、水分を摂ってからまたグラウンドに戻っていく。それが正規の考えだ。経験のない人間に限って、体にいいからと言って水分補給を奨励する。その結果、集中力を欠くどころかスタミナがなくなってしまう。実際に、今夏は試合中に足がつった選手を何人か見た。��いうことは、根本的な練習不足ということである。  こういうことを書くと暑さ対策が最優先、もし何かあったらどう責任を取るのだと、よってたかって誰か一人に集中砲火を浴びせるのがいまの日本という社会だ。そういう大衆に限って責任観念がない。暑さ対策はあくまで大人の論理。10代の若者の体力というのはそれで壊れるほどヤワではない。十分に免疫力がある。  とにかく、いまの日本は“タラレバ”の段階から、マイナス思考に陥り過ぎている。だから、こうすればケガをしないだろうという消極的な考えがはびこってしまう。リスクを取らない考え方は一見なるほどと思うが、実は人間の可能性をこれほどバカにしていることはない。人間というのは偉大なもので、「やれ」と言ったらやれるのだ。  そこの部分のポテンシャルを信じ切ることができないから、岩手大会で大船渡高の佐々木朗希が登板回避などというケースが起こってしまう。あれはもうナンセンスである。甲子園は高校球児にとって二度と訪れない夢。その夢を現実に変えるためにみんな必死に頑張っているのだから、監督もこういうことをしたら問題になるのではないかなどと考える必要はないのだ。
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真剣にプレーすべきときには……
 さて、今夏の甲子園で注目度No.1、星稜の奥川恭伸投手についても言及しておきたい。1回戦を見たときに、これは決勝まで行くぞと思っていた。決勝で敗れたのは、見に行っていたスカウトの人たちも残念がっただろうと思う。  奥川は、準々決勝はベンチに温存、準決勝には途中降板、日程的にも配慮がなされた中で、150キロ級の球を投げながらきれいに打たれた。実際に生で見たわけではないので何とも言えないが、ということはそんなに速くはないのだろうか。  私がひとつ気になったのは、マウンドでの笑い過ぎだ。笑うことは必ずしも悪いことではない。緊張を緩和させてくれる。しかし、真剣にプレーすべきときに笑ってはいけない。  奥川は優秀な投手だけに、そのことだけは言っておきたい。  最後に、高校球界ではいま球数制限が異常なほど話題になっている。しかし、それ以前にやるべきことがあるのではないかというのが私の考えだ。 真剣にプレーすべきときには…… さて、今夏の甲子園で注目度No.1、星稜の奥川恭伸投手についても言及しておきたい。1回戦を見たときに、これは決勝まで行くぞと思っていた。決勝で敗れたのは、見に行っていたスカウトの人たちも残念がっただろうと思う。  奥川は、準々決勝はベンチに温存、準決勝には途中降板、日程的にも配慮がなされた中で、150キロ級の球を投げながらきれいに打たれた。実際に生で見たわけではないので何とも言えないが、ということはそんなに速くはないのだろうか。  私がひとつ気になったのは、マウンドでの笑い過ぎだ。笑うことは必ずしも悪いことではない。緊張を緩和させてくれる。しかし、真剣にプレーすべきときに笑ってはいけない。  奥川は優秀な投手だけに、そのことだけは言っておきたい。  最後に、高校球界ではいま球数制限が異常なほど話題になっている。しかし、それ以前にやるべきことがあるのではないかというのが私の考えだ。 『週刊ベースボール』2019年9月9日号(8月28日発売)より ●廣岡達朗(ひろおか・たつろう) 1932年2月9日生まれ。広島県出身。呉三津田高、早大を経て54年に巨人入団。大型遊撃手として新人王に輝くなど活躍。66年に引退。広島、ヤクルトのコーチを経て76年シーズン途中にヤクルト監督に就任。78年、球団初のリーグ制覇、日本一に導く。82年の西武監督就任1年目から2年連続日本一。4年間で3度優勝という偉業を残し85年限りで退団。92年野球殿堂入り。
ーーー
床屋の与太話じゃないんだよ。広く公になり、名前も出るのに、この感覚。でも野球殿堂だってよ。だから、日本の野球はきらいなのよ。早く◯ね。
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cookingarden · 6 years ago
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井上智洋『純粋機械化経済』
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年金や消費税が選挙の争点になっている。こうしたなか、人工知能(AI)が今後の生活に切実な問題を引き起こすと考えている人は、いったいどのくらいいるのだろう。
本書には、10年もすれば中国とサイバー・リバタリアンの間で経済覇権をめぐる争いが新局面を迎え、世界は不老階級と不要階級に分断される可能性が示されている。わたしたちの眼の前には、「生きているうちに目撃することになる、とんでもない歴史的な場面」が迫っているという。
著者は、AIを制する者が世界を制するとの確信を持って以来、その影響について論考を進めてきた。探求の視野は専門の経済学にとどまらず、歴史、科学、思想、哲学に広く及んでいる。本書はその7年にわたる1) 論考の集大成である。
純粋機械生産で機械と人間の役割が変わる
なぜ、中国が他国に先駆けて覇権の第一歩を切るのか、著者はその理由をたんに技術発展に求めているわけではない。
これまでの産業革命がそうだったように、革新的な機械が発明されるごとに生産量が増え、消費と投資の循環が生まれることで国は経済力を高めてきた。発明が蒸気機関であろうとAIであろうと、この基本サイクルに変わりはない。
しかし、AIが機械に組み込まれると、機械の中身と人間の役割��大きく変わる。AIで能力を拡張した機械は、人間の世話をほとんど受けずに自動生産をはじめる。同時に人間はこれまで行っていた機械の世話から、AI機械を創造する仕事へと役割を変える。この両者が成立するとき、著者のいう「純粋機械化経済」のサイクルがはじまる。その前後で起こる生産状況の変化を、著者は下図のように書き分けている。(左:AI導入前の生産サイクル(p.312) 右:AI導入後の生産サイクル(p.387))
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図には示されていないが、AI導入後は自動生産によって増加した供給量に応じて需要も増えなくてはならない。
機械と人間の高度化に不可欠な投資と教育
本書の中で著者は、AI導入後の生産サイクルへの移行を可能にするのは、機械を高度化するための投資、知識労働の高度化に向けた教育、そして消費するための収入であり、現状ではこの条件を最も満たすのが中国だとしている。中国は国策として、AIの強化につながる投資と教育に莫大な資本を投入しているからである。
例えば、中国は2014年に習近平国家主席が新状態(ニューノーマル)を打ち出して以降、製造分野の「中国製造2025」、インターネットの産業重畳接続とでもいうべき「互聯網+(インターネットプラス)」、AI技術の集中発展に特化した「次世代AI発展計画」などを矢継早に打ち出し、教育と科学技術を強化してきた。
わたしたちは、中国が独裁国家だからという理由でこうした取り組みを低く評価しがちだが、著者は「収奪的な政府だからといって西洋諸国のようなイノベーションは起きないとは到底言えない、経済成長にとって重要なのは民主主義であるか否かではないと」述べ(p.373)、中国が独裁体制のまま経済発展を遂げる可能性を示唆している。
実際、中国が国家を挙げてテコ入れしているのは、人工知能の分野だけではない。エネルギーや材料科学などの基礎科学、さらには宇宙開発においても米国としのぎを削っている。間違いなく中国は世界のどの国よりも積極的に、経済を下支えするイノベーション全般に注力している。2019年現在のこうした現実から見て、経済爆発に向けて中国が最初のテイクオフを果たすとする著者の予測(p.354)は現実味を増している。
テイクオフを果たすには、三つ目の要件である需要の拡大が必要になる。しかし、著者はこれを中国に関連付けて言及していない。14億人の人口を抱え、経済格差が激しい中国にとって、経済拡大が進むなかでの需要不足は問題にならないということだろう。
テイクオフを果たす二つの勢力
しかし、純粋機械化経済に向けてテイクオフを果たすのは中国だけとは限らない。このことについて著者は、「AI時代の国家の役割」と題する最終章のなかで、東浩紀の言葉2) を引用しながら次のように述べていている。
サイバー・リバタリアンは「生々しい富への欲望を抱いたまま、無欲な共産主義者であるかのように振舞う」(…)他の誰かが人々の暮らしぶりを良くしてくれるなら、自分は無名の貧しい一市民でいいなどとは考えない。自分こそが社会を変革に導かなければならないし、それは金銭的な成功と不可分というわけだ。(p.430)
「彼ら」というのはスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツらのことだ。彼らは、純粋機械化経済に最も近い領域に生息する、国家とは別の存在の騎手たちである。しかし、昨今の反GAFAの動きにみられるように、サイバー空間を利用して経済的にも勢力を拡大してきたそのビジネスは、すでにEUや中国の権益を脅かすまでに成長している。覇権の中枢を担うのは必ずしも中国のような巨大国家ではなく、著者のいうようにサイバー・リバタリアン率いるプラットフォーム企業である可能性もでてくる。
リゾーム対ヒエラルキーの経済戦争
サイバー・リバタリアンの思想は、中国のような国家とはおよそ相容れないものだ。このことを理解するには、下のノーラン・チャートが役に立つ。3)
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図のように中国は権威主義の頂点に、トランプ政権の米国は保守に位置している。中国とリバタリアンは正反対に位置づけられ接点がない。このような配置になるのは、経済と個人それぞれにたいする自由の考え方が異なるからだ。しかし、より本質的には、リバタリアニズムの根底に「自己所有権」の概念があるからである。自己所有権とは「自分の身体とそれが所有するものに対する絶対的な所有権で、すべての人間に生まれ持って与えられている不可侵の権利」3) とされている。
このような権利は個人という最小単位のものであって、国家が個人の権利を収奪しながら巨大化する独裁国家とは相容れない。つまり、リバタリアニズムと中国が対極にあるのは、根本的には自由を実現するうえで、中枢の分散と集約のどちらを志向するかの根本的な違いからきている。戦いが思想ではなく経済力になるのは、表層にある経済が両者に共通の価値観だからである。
結果的に、テイクオフを果たした勢力は勢力で、ともに高度に発達したAIを武器に、一方はリゾーム的な発展を強化(無数の中枢が相互分権的に影響しあう)し、もう一方はヒエラルキーを強化(唯一の中枢が集権的に巨大化する)しながら経済力を競うことになる。離陸したところで、彼らの視界に見えるのは青空ではない。
AIがもたらすディストピアとユートピアの分岐
その戦いの先には、いったい何が待ち受けているのだろうか。『純粋機械化経済』のもっとも重要な部分は、この問い以降の著者の考察にあると思う。著者は、中国とサイバー・リバタリアンたちとの覇権争いが二者択一的な結果をもたらすとは考えていない。
戦いはAI技術をめぐる永遠の技術革新のせめぎ合いに他ならず、どのみち知能爆発によって人間の身体的な限界を超えた超人的な存在が出現するだろう。そうなれば、100年やそこらではほとんど進化しない生身の人間は、いやでもAIとの関係を強めなくてはならなくなる。著者がいうように、ハラリが『ホモ・デウス』で描いた「不老階級」や「不要階級」の出現もあり得ない話ではない。少数のエリート達で構成される「不老階級」の人々は、肉体や意識をアップグレードしながら生きながらえることができる。一方、大多数の「不要階級」の人々は、社会の繁栄にほとんど貢献できないまま、肉体的な限界のまま死んでいく。
しかし、ごくわずかの不老階級と大多数の不要階級に二分された人間社会は、それがリバタリアニズムと独裁国家のどちらから生まれようと悲惨というしかない。人間の平等が完全に損なわれているからである。サイバー・リバタリアンは自由の名のもとに大多数の中枢に不平等をもたらし、覇権的国家は階層構造ゆえにごく上層以外のほとんどの下層を、ともに人間的な救済から排除することになる。
結局のところ、機械化経済の発達から生まれた大分岐は、再び人間をユートピアとディストピアに大分岐させることになる、というのが著者の予測だ。
自由と平等を実現できない現代のイデオロギー
こうした状況は、はたして回避できるのだろうか? AIが生体化し人間に近づき、経済発展の中枢を担うようになったとき、どのようにすれば自由で平等な社会を実現することができるのだろうか? ここで著者のいう平等とは所得を等しくすることではなく、誰もが「健康で文化的な最低限度の生活を送る」状態を指している。(p.457)
解決策を求めて著者は、ソ連型の社会主義の可能性を検討する。なぜ、ソ連型社会主義なのか? それは、社会主義の理念に平等の実現があるからだ。サイバー・リバタリアンと中国は対極にあるが、市場経済を重視する点で共通している。このことが争いを経て格差もたらすことはすでに見た通りだ。
一方で、ソ連型社会主義はリバタリアニズムの対極にあって、平等の実現を理念に、中枢によって経済が統制されている。もし、統制が完璧に行われれば市場経済の問題が回避され、自由と平等が達成できるかもしれない。
しかし著者は、そもそも人間の脳と同様にリゾーム構造を持つ市場経済を、中央制御型のコンピュータのような階層構造に当てはめるのは無理があるという。ソ連型社会主義もまた、その思想からではなく、経済運営という実務の行き詰まりから失敗するというわけだ。
その上でなお著者は、もし中央制御のコンピュータが神のような知性を持つ超AIになったらどうだろうかと自問し、しかし、そのようなAIは今世紀中には出現しないとして、ソ連型社会主義が平等の問題を解決する可能性を排除している。(p.453)
こうして著者は、それぞれのイデオロギーがもつ限界を次のように整理する。
アナーキズムにおいては自由を重視するあまり平等が損なわれる。リバタリアニズムから派生したネオリベやカリフォルニアン・イデオロギーでは自由な経済活動は称揚されたが、両者が支配的な現在のアメリカ社会では、人々の所得格差は拡大を続けている。一方のソ連型社会主義では、平等を重視するあまり自由が損なわれた。(pp.454-455)
結局のところ、三つのイデオロギーが���のまま発展しても、自由と平等の問題を解決することはできないことになる。いずれもその思想からというより、思想を実現するための経済運営に行き詰まることが問題の根底にある。
市場の回復1:AI技術の公共財化
そこで著者は、イデオロギーにもとづく問題解決を離れ、個々のイデオロギーが持つ機能の見直しへと考えを進める。リバタリアニズム、中国的覇権主義、ソ連型社会主義にはそれぞれに中枢がある。そのどれもが、経済的な運営を誤り不平等に陥る。そうであれば、中枢の役割を見直し、どうすれば中枢が不平等を解消できるかを検討べきだということになる。これを著者は「市場の失敗への対処」と呼んでいる。(p.457)
そして、市場の失敗に対処するには、二つの取り組みが必要だという。ひとつは合成の誤謬への対策、もうひとつは再分配の制度を作り機能させることである。ここで合成の誤謬が出てくるのは、個人の貯蓄が集団化すると消費を押し下げ公共の利益が減るように、AI技術の発展を私企業の競合に任せると、本来公共財として市場に貢献するべきAI技術の発展が損なわれるということだろう。
実際、現在のAI技術のほとんどは、AIプラットフォーム企業で開発された私的財だ。IBMのWatson、マイクロソフトのAzure Learning Studio、アマゾンのAmazon Machine Learningなど、無料サービスも用意されているが、高度な利用をしようとするとそれなりの料金はかかる。利用価値を考えれば無償に近いという考えはあるかもしれないが、誰でもが無料でサービスを受けられるわけではないという意味で排除的である。また、マイクロソフトのサービスのなかには、Windowsマシンの利用者でなければサービスが制限されることもありこれも排除的だ。このように、現在のAI技術の多くは公共財の条件を満たしていない。
しかし、AI技術は経済や国力を通じて生活者に大きな影響を及ぼすと言う理由で、本来公共財だという考え方は理解できる。そうであれば中枢は、AI技術を公共財らしく扱うべきだというのもその通りだ。現状では公共財とはいえないAI技術から、公共財としての効用を引き出す必要がある。もし、二番煎じではとても経営的に立ち行かないと言う理由で、日本の企業や大学のAI研究がさらに弱まれば、近未来世界で日本自体が「不要階級」になりかねない。著者は次のように述べている。
私的収益と社会的収益にギャップがある限り、研究開発に対しても防衛や道路と同様に政府支出の対象にすべきだ。(…)。知識創造性と知識利用性を高めるためになすべきことは、研究開発や教育に惜しみなく支出することだ。それは中枢としての政府の役割であり、民間任せにしていては十分ではない。(pp.461-462)
要するに、市場の失敗へのひとつの対策は、AI技術の強化に向けて日本も、中国と同様の中枢機能を発揮する必要があるということになる。
市場の回復2:ベーシックインカム
市場の回復へのもうひとつの対策が、かねてからの著者の持論であるベーシックインカム(BI)の導入である。わたしが最初に著者のBI論に接したのは『人工知能と経済の未来』だが、4) 今回の『純粋機械化経済』では、新たな考えが導入されている。それは、税金を財源とする固定BIとヘリコプターマネーをベースとした変動BIを併用するもので、著者はこれを「2階建てのBI」と呼んでいる。そのねらいを、著者は次のように述べている。
固定BIは、最低限の生活を保証するためのBIを意味しており、安定した財源を必要とするので、税金を原資にするのが妥当だろう。(…)変動BIは景気をコントロールするためのBIであり、その額はインフレ率や失業率に応じて変動させる。(p.400)
前者は税金を通じた再分配なので、国家の機能に馴染みやすい。一方、後者は「今後巨大IT企業企業によって担われる可能性もある」という。この2階建てのBIを、リバタリアニズム、中国的覇権主義、ソ連型社会主義のそれぞれに当てはめれば、固定BIは国家の形態を取る中国やソ連の中枢に馴染み、変動BIは自家用のヘリコプターならいつでも飛ばせるサイバー・リバタリアンの中枢に馴染む。
しかし、大きな問題がある。それは、リバタリアニズムの考え方が平等の実現からはかけ離れていることだ。だが、ここに至ってはもうそのことは承知で、著者がいうように、
大々的な再分配政策なしに、彼らの商売が世直しにつながらないことは、彼ら自身がある程度は分かっているのである。彼らが心置きなく商売に専念できるようにするためにも、BIの導入は欠かせない。(p.465)
と説得するしかないのだろう。
予見できない未来に託す希望
このブログ記事を書いている今日、思いがけないニュースが入ってきた。ジョージ・ソロス氏ら19人の米国の大富豪が、「米国は道徳、倫理、経済的に我々の資産へ課税する責任がある」として、自ら大富豪への増税を訴えたとある。5) 本稿で取り上げてきた主旨に沿っていえば、リバタリアン自らが固定BIを申し出たような事態に思える。少なくてもわたしは、米国の大富豪が連名でこのような声明を出すとは思いもしなかった。
良くも悪くも、未来を予見することはむずかしい。井上智洋氏が『純粋機械化経済』で描いてみせた超AI社会の姿がどうなるか、「生きているうちに目撃することになる、とんでもない歴史的な場面」(p.478)を見届けてみたい。それが著者のいう、「誰もが健康で文化的な最低限度の生活ができる」社会であることを切に願っている。
1)本書の冒頭にある、早稲田大学でワークショップが開催された2013年から2019年の7年間。
2)東浩紀『観光客の哲学』ゲンロン, 2017, p.238.
3)木澤佐登志 『ニック・ランドと新反動主義』星海社新書, 2019, p.61.
4)井上智洋『人工知能と経済の未来』文春新書, 2016. 本ブログでは下記のなかで、BIの実施シミュレーションを取り上げている。 https://cookingarden.tumblr.com/post/150203646199
5)日本経済新聞「ソロス氏ら米大富豪『超富裕層に課税を』」2019.6.25. https://www.nikkei.com/article/DGXMZO46527130V20C19A6000000/
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