#2年ぐらい前に「もっと自分の性を尊重してほしい」とか言ったら「いっぱい努力してるのに!」って怒られて は?何が?どこが??��て思った
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今の1番の悩み いつ親に言うか……………………………………………………
#!#そもそも両親が俺のことをずっと娘だと思ってる時点でそういう話題に関してかなり距離があるのですが()#心の性とか性的指向とかの話題を避けるために「恋愛に全く興味ありません!」のフリを突き通してきたから なんか ね……#あとネッ友とかにめっちゃ理解があっても遠距離恋愛はどう思ってるのか知らないし……#でも俺も全然自立してる訳じゃないし、会うとかなったら親も関わってくるし、言ったほうがいいのかなとか……ウーーーーーン#なんか友達がトランスジェンダーだよってなった時は結構すぐに名前とか代名詞とか覚えたりす���んだけどな 俺だけは違うんだ へぇーーー#2年ぐらい前に「もっと自分の性を尊重してほしい」とか言ったら「いっぱい努力してるのに!」って怒られて は?何が?どこが??って思った#vent#なんか暗くなっちゃったごめんっ
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2022年1月30日の日記
6,826歩。
昨日が6,488歩、さかのぼって367歩、386歩、426歩、412歩、255歩。
昨日5日ぶりに外に出た。特に強い理由で出なかったわけでは無い。なんとなく外に出ても気を張るばかりなので、外に出ていなかった。
昨日5日ぶりに外に出たら、背中も膝もうまく動かず、歩きが少しおぼつかなかった。
5日間アーロンチェアに座り続け、すごく嫌いなタイプの仕事をしながら壁に向かって一人で罵詈雑言をあげ、嫌すぎて一人で泣き、寝る前にストレッチやスクワットをしているだけというのも体に悪いと感じた。
感染者数ばかりが増え続け、仕事関係者ももっと身近な人も感染があり、心の底からお大事になさってくださいと思い、無事に治りますようにと祈り、政治はとにかく私たちを放っておいている。
岸田首相は検討する検討する先手先手と言いながら、検査キットすら足りていない。何もしない。会見すらしない。今ここは緊急事態ですらない。
東京都の7日間移動平均の検査数��24,901人、陽性率は34.2%。WHOが以前発表���ていた、まぁ感染を捕捉できているでしょう、という陽性率が3〜12%、陽性率が高すぎる、まだ全然検査が足りていない。
イギリスが感染対策を緩和しているけれども、ブースター摂取の摂取率は50%(60かも)を超えている。日本は2%。その点を何も言及せずに、マスクもとっていいんだ〜だけ報道している場合じゃないだろうと思う。
今朝の憂鬱ニュースも憂鬱だった。政治家が嘘をつくこと、文書と統計と歴史を改竄するのを、本当にやめて欲しい。言うだけ無駄だけれども、もしも本当に国家を愛しているのならば、歴史に嘘を刻まないでくれ。
あいつらが愛しているのは自己だけだ。俺は悪い人間じゃないと叫びながら他者を踏みつけ、踏みつけておきながら被害者ヅラをし、他者の人権を蔑ろにし、他者の尊厳を想像もできない。
私が「大人」の定義を考えるなら、未成年(妊婦さんと胎児、乳幼児、子ども、10代の子ども)の人権と尊厳を尊重し、教育機会と衣食住の安定を個人からも社会からも考え、未成年に限らない他者の人権と尊厳を尊重し、他者への想像力を持ち差別的言動を減らす努力をし、人に優しくするのが大人なのではないかとぼんやりと思いました。
別に自分の家がぐちゃぐちゃだろうと昼まででも夕方まででも寝て膝に穴のあいたズボンで暮らしていたって何一つ問題はない。人間関係の量だって多かろうが少なかろうがなんだっていい。
※
昨日外に出たらあまりにも背中も足もめちゃくちゃで、今日もちゃんと外に出なくちゃいけないなと思った。
ここ数日、ものすごく気がふさぎ、iPhoneを手から離せず、調子が悪かった。
使い方として軽くなってしまって間違っているけれども、うっすらとしたPTSDのような感じがある。一昨年、映画館も閉まってしまって美術館も閉まって、目的地もなく徘徊した時期のこと、去年の夏に、いま事故にあったら助けてもらえないかもと思いながら暮らしたこと、怒りも不安もぐちゃぐちゃになって、またそれらのストレスが現在にも影響を及ぼしている気がする。
いま何かあったら、助けてもらえないんだ、とずっと思う。
前首相もひどかったけれども、現首相でも何も変わらず、収入の数十%を巻きあげておきながら、私たちはあとは全部自分でやれと言われている。
何かを買いだめするのだって、自分で検査をするのだって、数千円〜数万円かかる。高すぎる。
今日がっちりとマスクをして、去年テナントが山ほど撤退していた商業施設に行った。
空きテナントは減り、面白い雑貨屋さんが増えていた。素敵なお皿、カトラリー、翻訳された文学。
私が大学生のころ、単行本は大体1000円くらいだった気がする。ハードカバーの、かっこいい一冊。1500円を超えなかった気がする。
今日買った本は2500円だった。私は映画館にひょいひょい行くから、日常的に1900円を払っているけれども、文学書が2500円するというのは翻訳書であってもまだ慣れない。本屋さんで見ないと、どんな文字の大きさなのかもわからないので、文字がいっぱいある本じゃないとひょいと出せない。
今年は円安がどんどん進んでしまいそうな気がする。日本はここ10年くらいで国債を出しまくり、金利をあげることができない。異次元の金融緩和、は、本来は短期間だけやるべきことだった。それをダラダラと続けることだって、一時凌ぎに過ぎなかったはずなのに。
円は安くなり、ユーロもドルも高くなり、輸入されたもの(それは、電気もガソリンも含めたありとあらゆるもの)は全て値段が上がり、いつか買おうと思っていた海外のものだってどんどん値段が上がっていくのかもしれない。
久しぶりに見た商業施設にはインターネット上で見かけた素敵なものや可愛いものや楽しいものが溢れるほど並んでいて、家の中でiPhoneで見るよりずっと情報量が多くて楽しかった。
ここ数日、美味しそうなものや可愛いものを数千円出して通販してしまいそうになっていた。
昔、70日くらい入院して、衰弱し、最寄り駅まで歩いていくことすら目の前が暗くなってできなくなっていた時、ただただ楽しいものを目の前に見たくて、色んなものを通販していた。あのころ買った物は今も私を楽しくさせるけれども、見たこともない楽しいものがお店にいっぱい並んでいて自分の足で好きなだけ見に行けること、やっぱりそれはとても楽しいことだと疲労も抱えながら思う。
でもそれも、本をポンと買い、可愛いだけのもの、を買って意気揚々と帰れているからなんだろう。
今朝起きたらイッタラのグラスにヒビが入っていた。日常的に使えて、頻繁でなければ買い直せる綺麗なグラス。買い直せるんだろうか。いつまで買い直せるんだろうか。
毎日毎日あまりにも絶望し、明るい未来は全く描けない。きっと何もかも泥舟のようにこのまま沈んでいくんだろう。
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昨日JOCと理事会の後で、私がご挨拶をしました。 それをお聞きの方々、そうおられると思いますので、これ以上詳細なことは申し上げません。いま、皆様にわざわざお集まりいただいて、大変ご心配いただいていることに恐縮をしております。 昨日のJOC評議会での発言につきましては、オリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切な表現であったと、このように認識を致しております。そのために、まず深く反省をしております。 そして、発言を致しました件につきましては撤回をしたい。それから、不愉快をされた皆様にはお詫びを申し上げたい。以上であります。 オリンピック・パラリンピックにおいても、男女平等が明確に謳われております。アスリートも運営スタッフも多くの女性が活躍しておりまして、大変感謝をしております。 私どもの組織委員会のことを申し上げたわけではないことは、皆さんもご承知だと思いますので、この組織委員会については、非常に円満にうまくいっていると注釈で挨拶の中で申し上げたことも聞いておられるとも思います。 次の大会まであと半年になりまして、関係者一同、一生懸命頑張っておられます。その中でその責任者の私が、皆さんのお仕事に支障があるようなことになってはいけない。そう考えてお詫びをして、訂正、撤回するということを申し上げたわけであります。 世界のアスリートを受け入れる都民、国民、それからIOC、IPCはじめとする国際的な関係者にとってもオリンピック・パラリンピック精神に基づいた大会が開催できますように、引き続き献身して努力していきたいと、こう思っております。以上です。 —— 幹事社の日本テレビです。今回の発言で国内外から大変な批判が上がっている。会長は辞任しなければならないと考えたか。 ちょっと……僕はね、マスクをされるとよく言葉が聞き取れない。なんと言われましたか。 —— 今回の発言を受けて、国内外の様々なメディアからたくさんの批判。辞任は浮かんだか。 辞任するという考えはありません。私は一生懸命、献身的にお手伝いして7年間やってきたわけですので。自分��らどうしようという気持ちはありません。 ���さんが邪魔だと言われれば、おっしゃるとおり、老害が粗大ごみになったのかもしれませんから。そうしたら掃いてもらえればいいんじゃないですか。 —— もう一問。IOCはオリンピックにおける男女平等を掲げている。日本もジェンダーバランスを同じようにしようと努力する中での発言。国内・世界にどう説明するか。 あのー、わかりました。これ以上のことを申し上げても、また誤解が誤解を生むし、必ずしも今までここにいつも来ていた皆さんと違う方もおられて、よくわからないところもある。 私は組織委員会の理事会に出たわけじゃないんですよ。JOCの理事会に評議員という……。僕は評議員だったかな立場は? ——(スタッフ)名誉委員です。 名誉委員という立場だったから、そこで挨拶をしたんだと。 それも、大会の前に挨拶をしてくれというのはプログラムにあったけども、私は正式なあれじゃないから。あとからお礼のつもりでご挨拶しますと言って、一番、終わってから話させてもらったと。私は自分なりに整理をしていたつもりです。 それから……そういうことですよ。ですから、どうも組織委員会の理事会と一緒にしておられる方、特に外国はそれ一緒にされるかもしれないが、それは皆さんの報道の仕方だと思いますが。 JOCの、その、理事会かな、評議員会に出て、私は挨拶をしたということです。 それは一つは、山下さん(山下泰裕JOC会長)が今度の改革は大変大きな改革で、JOCが人事の改革で大変な苦労をして、最初から理事会では相当突き上げを食ったりして、難航しておられると度々相談があったもんですから、ガンバレガンバレと言って、後押しをしてきました。 ですから、山下さんの最初の大きな仕事としては、最も成功してもらわなきゃならんところ。そこが人事のことでしたから、そのことはよくできたと私は評価し、そして山下さんにお礼を申し上げるということを、そこで発言をしていたんです。 ですが、いわゆる政府から来ているガバナンスに対しては、数字のところにこだわると、なかなか運営が難しくなることもありますよという、そういう中で私の知っている理事会の話をちょっと引用して、ああいう発言になったということです。 —— 日刊ゲンダイです。いくつか伺いたい。女性のお話が長いという発言は、ラグビー協会の特定の女性理事を念頭に置いたものではなかったか。 一切頭にありませんし、ラグビー協会の理事会で、誰がどういう人が理事で、誰が話したかっていうのは、私は一切知らない。 —— もう一点。発言について、IOCから真偽の問い合わせ等々あったか。 さあ、私はわかりませんが、まあ職員は毎日毎日、今日もこれから向こうのほうが朝上げると、こっちが夕方その頃からいつも……。えー、会議が始まりますから。そういう話があるのかもしれません。 —— なるほど。森会長のほうから説明する意志は。 そんな必要はないでしょ。いまここでしたんだから。 —— わかりました。 昨日の(聞き取れず)、今日の(聞き取れず)ていうわけじゃないでしょ。皆さん���たれればわかるじゃないですか。 —— 会長はずっと……。 ちょっと悪い……取ってくれ。聞こえないんだよ…。うん……、しゃべるときだけでいいですから(質問者にマスクを外すよう要請) —— TBSのジョウジマです。会長は、国民から理解を得られる大会の開催をと、ずっとおっしゃってきた。だが、オリンピックの理念に反する発言だったと思う。ご自身が責任を取らないことが開催への批判を強めないか。 はい。ご心配いただいたということであれば、ありがとうございます。でもしかし今あなたがおっしゃるとおりのことを最初に申しあげたじゃないですか。誤解を生んではいけないので撤回しますと申し上げた。オリンピック精神に反すると思うからと、そう申し上げた。 —— もう一点。女性登用について基本的な……。 え? —— 女性登用について会長の基本的な考え方は。会長はそもそも多様性のある社会を求めているというわけではなく、文科省がうるさいから、登用の規定が定められているという認識か。 いや、そういう認識ではありません。女性と男性しかいないんですから。もちろん両性っていうのもありますけどね。 どなたが選ばれたって良いと思いますが、あまり僕は数字にこだわって、何名までにしなきゃいけないというのは、一つの標準でしょうけど、それにあんまりこだわって無理なことはなさらないほうが良いなということを言いたかったわけです。 —— 昨日の「文科省がうるさいから」というのは、数字がということでしょうか。 うるさいからっていうのは(聞き取れず)、そういうガバナンスが示されて、みんなそれを守るために皆さん大変苦労しておられるようです。 私は今もう、どこの連盟にも……関係をしておりませんのでね。ただ、いろいろな話は入ってきますから。そんな話を総括して、会の運営は難しいですよと山下さんに昨日申し上げたんです。 —— NHKのイマイです。 よくわかっています。 ——女性をめぐる発言ではないが、昨日聖火リレーで愛知県で走る予定だったロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが、会長の直近の発言で「何があってもオリンピックをやる」ということを「理解不能だ」と解釈されて、聖火ランナーを辞退された。どう受け止めているか。 まあ、なんか、昨日のこととあわせて報道されたんでしょうが、これは昨日の会合(のこと)じゃないと思いますよ。 昨日でしょう、自民党の会合で。その時にリレーについての削減はどうなっているか質問があったから、まあ我々直接やるものじゃないが、各県がやっている実行委員会にお願いをしていて、基本的には密を避けてやってほしいと言っておるんだと。 その中で、例えば人気のあるタレントさんは、できるだけ人がたくさん集まってくるところはご遠慮していただくようになったほうがいいかなというふうに私は思っていると。 それを指示したとか、そういうあれを、どこから誰が走るかとか、何キロ走るかというのは、僕らが決めることじゃないんで、実行委員会が作られていることですから。 県に言えることは、できるだけ密を避けてくださいと。要は、密とは何だといえば、ファンにわーっと集まってくる。ですからね、タレントさんが来ればみんな集まってくる。 そうすると密になるからそれをどう避け���れるだろうか、という話の例で、国会議員がたくさんおられますから、皆さん、じゃあ何にもないところって言ったら、田んぼで走るしかないねと。 やっぱり田んぼに土足で(そのまま?)入ったりすれば、作業前ですから、農作業に迷惑かけたりするねと。しかし、空が空いてるから、空気がこもらないし、それしかないですねと。 そういう意見もありますということを紹介しただけで、組織委員会がそういうことするといったわけでもない。それもこれも、実行委員会でお考え頂き、ご検討いただき、決めていただきたいと申し上げた。その例として申し上げただけ。 —— 著名人ランナーには引き続き走ってもらいたいという考えに変わりは。 私は走ってくださいとも走ってくださるなとも言う立場じゃありません。お決めいただいた方たちは所定の手続きをされて、こちらに持ってこられると思います。私は見たことない。誰が走るか、全然、一切知りません。 ——毎日放送のミサワです。 基本的な認識として、会長は女性が話が長いと思っているのか。 最近女性の話聞かないからあんまりわかりません。 —— 今日、小池知事が会見で話しが長いのは「人によります」と……。 私も長い方です。はい。 —— もう一問。会長、国会議員の間でもクオータ制、女性の割合をあらかじめ決めておこうと言う話が盛り上がっているが……。 それは民意が決めることじゃないですか。 ——ご自身はクオータ制に反対、賛成は。 反対も賛成もありません。(聞き取れず)国民が決めることだと思います。 —— TBSラジオのサワダです。いくつか伺わせてください。 いくつかじゃなくて一つにしてください。 —— 冒頭、「誤解を招く表現」「不適切だった」と発言があったが、どこがどう不適切だったと考えるか。 はい。えー……男女の区別するような発言をしたということですね。 —— オリンピック精神に反するという話もされたが、そういう方が組織委員会の会長であるのは適任なのか。 あなたはどう思いますか。 —— 私は適任ではないと思う。 じゃあ、そういう風に承っておきます。 —— 会長としての発言ではないので、責任が問われないという趣旨のことも……。 責任が問われないとは言ってませんよ。場所をわきまえて、ちゃんと話したつもりです。はい。 —— 組織としての場じゃないから、あの発言は良かったと? そうじゃありませんよ。だから組織委員会とっても良かったと私は言ったんですよ。ちゃんとみんな全部観てから質問してください。昨日の。 —— あと「わきまえる」という表現を使われていたが、女性は発言を控える立場だと? そういうことでもありません。 —— では、なぜああいう発言を? 場所だとか 時間だとか、テーマだとか、そういうものに合わせた話していくことが大事なんじゃないですか。 —— それは女性と限る必要はあったのか。 だから私も含めてって言ったじゃないですか。 —— その前段の段階で……。 そういう話はもう聞きたくない。 —— (司会)冒頭、発言の内容に関しては明示的に会長から……。 面白おかしくしたいから聞いてるんだろ? —— 何を問題と思っているか聞きたいから聞いているんです。 だからさっきから話しているとおりです。 ——ハフポストのハマダです。「女性が多いと時間が長くなる」という発言を誤解と表現したが、これは誤った認識だったとうことではないか。 そういう風に聞いておるんです。去年からですね、一連のガバナンスに基づい��各協会や連盟は人事に非常に皆さん苦労されていたようです。 私は昔は全体を統括する会長、今のスポーツ協会の会長をしておりましたから、その団体の皆さんと親しくしております。そういう皆さんたちは色々相談にも来られます。その時に、やっぱりなかなか大変なんですということでした。 率直に山下さんのときは、JOCの理事会の理事をかなり削って女性の枠を増やさないといけないと大変苦労したと言っておられて、理事の中でも反対があったり大変だったのを、なんとかここまでこぎ着けましたという苦労話を聞きましたから…… —— ということは、各競技団体から「女性が多いと話が長い」という話が上がってると、そういう話を聞いたということですか。 まあ、そういう話はよく聞きます。 —— たとえばどういう競技団体か。 それは言えません。 —— データや根拠がある発言とは思えない。 さあ、僕はそういうことを言う人がどういう根拠でおっしゃったかはわかりませんけど。 まあ、自分たち��、要するに理事をたくさん選んだけど結果としていろんなことがあったという、そんな話を私が聞いたことを思い出して言っているんで、昨日山下さんにそういうことでこれから苦労されますよと、申し上げた。 —— 今回の発言で皆さん怒っている。東京五輪を運営するトップが女性を尊重しない発言をしている。森さんの五輪を見たくないという声もネットにある。どう受け止めるか。 いやだから、謙虚に受け止めております。だから、撤回させていただきますと言っているんです。 —— (司会)発言に関してはすでに冒頭、会長から申し上げたとおりになります。以上で記者会見を終了させていただきます。
「面白おかしくしたいから聞いてるんだろ?」森喜朗氏、謝罪会見で“逆ギレ”も(会見全文) | Business Insider Japan
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エドワード王 二巻
昔日の王の一代記、二巻
ファーストホールドでの再会
エドワードは赤い空に目を覚ましました。太陽は西の山々に上ったばかりです。彼らは各面が炎に輝く塔のすぐそばに来ていました。ドラゴンは急に方向を変えて近くに飛び、炎の長い息を吐き出しました。彼らが突然高度を下げると、塔の頂上で何度か光が点滅しました。エドワードのお腹はとても変な感じでした。彼はため息をついて身体を動かすと、モラーリンが右手でエドワードを抱けるように体をずらしました。彼は身体を伸ばしてあくびをしました。
「もうすぐだ。クリスタルタワーからファーストホールドまでは馬で数日だが、アカトシュは1時間以内に連れ��行ってくれると思う」
「塔には寄らないの?アイリック―」
「軽々しくその名前を使うんじゃない。私にさえもだ。アーチマジスターは向こう何日かは戻らない。ユニコーンは風の兄弟分で、同じぐらい早く旅をする。荷物があってもな。だが、ドラゴンが飛ぶほどじゃない。エルフの故郷がドラゴンの帰還の始まりを迎えているのがわかるだろう。人類の幸運を祈るんだな」
エドワードの視線は深い森の中と、無骨な丘をさまよいました。人のいる印は見えませんでした。「きれいだね」彼は謙虚に言いました。「でもハイロックほどじゃないや」忠誠心からそう付け加えましたし、それは事実でした。「街も、村も農場もないの?」
「ファーストボーンは森の奥深くに住まっている。彼らは大地を引き裂かないし、新しく植えもしない。だがオーリエルが差し出すものは喜んで受け取る…そしてお返しをする。ああ、成長するものの青臭いにおいだ」
確かに、その空気はエドワードが父のカップからすすったことがあるワインと同じような感じがしました…「お腹空いた」
「そうだと思った」少し体を動かし、モラーリンの左手が小さな葉っぱの包みを取り出しました。浅黒い手は大きくて力強く、人にも動物にも見えませんでした。エドワードは嫌悪しながらその手を見つめ、やがてその手に触れないように極めて慎重に包みを取りました。モラーリンが身体を強張らせるのがわかり、エドワードを抱く手が少しその力を弱めました。エドワードは自分の行動を恥ずかしく感じました。この状況で気を悪くさせるのは、親切でも賢明でもありませんでした。モラーリンは簡単に彼を落とすことができるのです。「僕お風呂に入りたいけど、君もだよね」彼はぎこちなく言いました。モラーリンがわざと彼の反応を誤解してくれたことを、エドワードは知っていました。「ああ、私はとても汚れている」エドワードがケーキをかじると、それは見た目よりずっとおいしいことを証明しました。「母さまはそんな風に僕を見ていたよ―少なくとも、そうだった。でも多分、僕はまずお風呂に入るべきだよね?」
「お前はその選択の必要はないと思うが。ああ、やっとだ!」ドラゴンはその翼を広げて空に舞い上がり、巨大な炎の固まりを吐き出すと、広い空き地に降り立ちました。着陸は急角度で、大きな衝撃がありました。エルフたちが急に現れて、彼と、やっと目を覚まして半狂乱でぐるぐる走り回り、エドワードの足元で喘ぐシャグに腕を伸ばしました。
銅の色の炎のような髪をした背の高いエルフが、礼儀正しく彼らに挨拶しました。「ご機嫌麗しゅう、我が王よ。ご婦人がお待ちかねです。エドワード王子、ファーストボーンの地へようこそおいでくださいました。我が民に成り代わり、歓迎申し上げ��す。ここでのご滞在が心地よく、実りあるものでありますように」
モラーリンは恭しく頷きました。「ありがとう。わが女王は十二分にお待ちになった。すぐにお目にかかろう」エドワードの肩に置いたモラーリンの手が、彼を見たこともないほど大きな木に導きました。その幹は空洞で、中に入ると上に導かれました。開口部にはさらに階段があり、丈夫な枝に橋が架かっています。彼らは大きなひさしがついた、部屋のように椅子とチェストがしつらえられた台に着くまで、それに沿って前に進みました。金色の肌の女性が彼らに微笑みかけ、手招きをして立ち去りました。背が高くほっそりした、蒼白い肌の黒い髪の人間の女性が彼らに歩み寄りました。彼女の眼はエドワードを捉えていました。エドワードだけを。
「どうしていなくなっちゃったの!」その叫び声は彼の深いところから現れ、彼の全身に響き渡りました。その声は彼の数歩手前で彼女を立ち止まらせました。今度は彼女の目がモラーリンを見上げました。彼はエドワードが聞いたことのないような厳しい調子で言いました。「お母様に敬意を持ってお話をなさい、無作法な子だ!」その瞳の一瞥の衝撃で、彼の目に水が溜まりました。
アリエラは素早く彼に近寄り、両手を彼の胸に置きました。「おかえりなさい、旦那様。あなたと息子を無事に私の下に連れてきてくださったノトルゴを称えましょう」
「竜たちの盟主と盗賊さんにも感謝いたしますわ。彼らなしでは私のぼうやをあれ以上きれいに連れてくることはできませんでした。アーチマジスターもうまくことを運んでくださったのね」モラーリンの浅黒い手がそっと優しく彼女の腕に置かれました。彼は落ち着いて幸福そうに笑いました。でも、彼の胸に置かれた両手は、彼を労わるようでもあり、障壁を作っているようでもありました。
「私は本当に恵まれているわ。でも、息子と話すのは久しぶりなのです。二人だけなら、もっと話がしやすいかもしれません」
モラーリンの笑顔がさっと消えました。「3人でいるより2人の方が言葉が見つけやすいと?まあ、そうかもしれないね。時にはね、奥さん」彼は踵を返して去って行きました。橋が揺れて軋みましたが、彼の足は少しも足音を立てませんでした。
アリエラは彼の背中を見ていましたが、彼は振り向きませんでした。エドワードは、また彼の敵に苦痛を与えたことで、好奇心と満足感と後悔が混ざったような気持がしました。「エドワード、私の坊や。ここにきて座ってちょうだい」
エドワードはその場に立っていました。「お母さま、僕は何年も待って、答えを求めて何リーグも旅をしました。僕はもう待ちません。一歩だって動きません」
「何と言われていたの?」
「父が客の名誉を信頼しながら夜眠っている間に、魔法の助力を得て最も卑劣な方法で誘拐されたと」
「お父さまがそう言ったのね。モラーリンは?」
「完全に自分の意思で来たと言いました。あなたの言葉で聞きたいのです」
「私がなぜあなたのお父さまの下を去ったか、どうしてあなたを連れて行かなかったのか、どちらが聞きたいですか」
エドワードは間を置いて考えました。「母上、僕は本当のことが聞きたいんです。ですから、僕は本当のことを知らされなければいけません。あなたが僕を置き去りにしたことを。もう一つの方は、僕は知っていると思います。あなたがそれ以上に、またはほかに話したいと願わない限り、僕はわかっているだろうし、わかると思います」
「真実ですか?真実とは、それを理解している者から独立して存在するたった一つのものではありませんよ。でも、あなたに私の真実を話しましょう。そうすればきっと、あなたは自分の真実にたどり着くでしょう」
アリエラは静かにクッションのおかれた椅子に歩いて戻り、姿勢を正しました。ルビーの色をした小鳥がすぐそばの小枝に停まって、彼女の穏やかな声に伴奏をつけました。
「私の両親が私の結婚を故郷の習慣通りに決めてしまったのです。私はコーサイアを愛していませんでしたが、初めは彼を尊敬していましたし、良い妻でいようと努めました。彼は私を気にかけもしなければ、世話もしてくれませんでした。ですから、彼は私の尊敬を失い、手をかけてもらえない植物が枯れていくように、私は毎日少しずつ死んでいたのです。あなたといる時だけが私の幸福でしたが、コーサイアは私があなたを軟弱にすると考えました。『女みたいに』と彼は言いましたわ。そうして、あなたの3回目の誕生日のあと、私は毎日たった1時間だけ、あなたと過ごすことが許されました。あなたの泣き声を聞きながら、何も考えられずに座って泣いていました。ようやくあなたが泣き止んで私を求めると、私の心は空っぽになりました。私は護衛を一人か二人しか付けずに、長い時間一人で散歩をして、馬に乗るのが癖になりました。そんな時、モラーリンがやってきたのです。彼はロスガー山脈にある黒檀の鉱山を欲しがっていました。彼が使いたがっていた土地は、私の持参金の一部でした。彼は私たちの民に彼の技を喜んで教えてくれましたし、ダークエルフが作った武器を差し出してさえくれました。そのお礼に、私たちの民はゴブリンを遠ざける彼の手助けをして、ハイロックに彼の民の植民地を作ることを許したのです。コーサイアは土地には興味がありませんでしたし、本当に武器をとても必要としていました―最上のものでしたからね―ですから、彼はその申し入れを喜んだのです。話し合い、決めるべきたくさんの細かい事柄があって、その交渉への干渉が私にも降りかかりました。コーサイアはダークエルフを嫌っていましたし、タムリエルで最も優れた戦士として既に名声を得ていたモラーリンに嫉妬していたのです。
「でも、モラーリンは熟練の戦士以上の人でした。彼は読書家で、太陽の下にあるものすべてに興味を持っています。ヤー・フリーとジム・セイから教えを受けたように歌い、演奏することもできました。彼は、私が夢でしか会えないと思っていた、それ以上のお相手でした…誓���ますわ。私たちは二人とも外にいるのが好きで、話し合いは乗馬と散歩の間でしたが、いつも彼の部下とコーサイアの部下が一緒でした。すべてが整った時、コーサイアは条約を祝って大きな宴会を開きました。ハイロックのすべての貴族がやってきて、他の地域からもたくさんの人たちが訪れました。最後に、酔っぱらったコーサイアが血でなければ洗い流せないような侮辱の言葉を漏らしました。私は他の貴婦人たちととっくに席を立っていましたから、それが何だったのかは知りません。でも、私はコーサイアがそのような言葉をため込んでいることを知る程度には、個人的に充分聞いてきました。モラーリンは決闘を申し込み、それまでに彼がウィットを取り戻すかもしれないと、コーサイアに昼までの猶予を与えました。
「そしてモラーリンが独りで私の部屋に来て、何が起きたかを話してくれました。『奥様、彼はあなたの弟君を決闘相手に選ぶだろうと思います。いずれにせよ、もう二度と関わることのできない血の河が、私たちの間に流れるでしょう。私はあなたの愛なしで生きていくことはできます。だが、あなたに憎まれることには耐えられない。共に来てください。妻として、あるいは名誉ある客人として、それはあなたの選択です。そして、ご親族の代わりに、あなたは血の代価として貢献なさるでしょう』
「そして、月明かりの下で、恐れおののいて、眠っている貴婦人たちのそばで、私は彼を愛していることを知ったのです。彼なしで生きて行けるかは疑わしかったけれど、それでも、あなたをそれ以上に愛していたの!『息子は』私は囁きました。『置いては―』『奥様、選ばなければなりません。お気の毒ですが』わかるでしょう、エドワード?もし留まれば、私の弟の死が―彼の無垢な若い血が流れるのです。あるいはあなたのお父さまの血が!あるいは、そんなことは起きないと思っていたけれど、私の愛する人の血が流れたかもしれません。モラーリンの戦闘技術はそれだけでも優れていましたし、この類の出来事には、彼は同じくらい優れている魔法の力も借りるでしょう。『連れて行けますわ』でもモラーリンは悲しげに首を振りました。『私にはそんなことはできない。父と子を引き離すことは、私の名誉に反する』
「愛する者を一人ぼっちにする、私は義務には慣れていました」アリエラは誇らしげに言いました。「あなたを父親から、あなたの大好きなおじさまから盗んで行けばよかったでしょうか?そして、おそらくコーサイアは生き残り、この件で私を責め、私を遠くにやってしまう言い訳にしたはずです。コーサイアは私がいなくなれば喜ぶだろうと考えました。彼が本当に武器を欲しがっていることは知っていました。あなたと過ごす時間を得るために、それで取引することもできると私は考えました。モラーリンが私を見ずに立って待っている間、すべてが私の中を駆け巡っていました。
「マーラ様、正しい選択をお助け下さいと私は祈りました。『本当に私を妻にしたいのですか?私は―私は厄介ごと以外何ももたらしませんのよ』
『アリエラ、私はあなたを妻に迎える。私が求めているのはあなた自身だけだ』彼はマントを脱ぎ、布団を引き剥がしながら私の体を包みました。
『モラーリン、待って―これは正しいことかしら?私��しようとしていることは?』
『奥様、もし間違いだと考えているなら、私はここに立ってなどいない!あなたに与えられた選択肢の一つは、私には最も正しいことに思えます』彼は私を抱き起して、馬に運んでいきました。そうして、私は彼のマントだけを身に着け、彼の前に座って馬に乗り、あなたのお父さまの家を去ったのです。野蛮な喜びと悲しみが混じって、自分がどう感じているかわかりませんでした。これが、私の真実です」
エドワードは静かに言いました。「でも、彼は結局、僕とお父さまを引き離した」
「本当に渋々だったのです。そして、ドラゴンが、本当には、あなたとお父さまの心は既に離れてしまっていると言ったからです。何リーグかだけのことです。これはあなたの安全を保つ方法なの。モラーリンはここに来ることを決めるのは、あなたの自発的な決断であるべきだと言いました。それと同じに、戻りたい時に戻っていいのですよ」
「モラーリンは僕をただ連れて行こうとした!アイリ―その、アーチマジスターが同意しなきゃいけないって言ったんだ」
「彼は忍耐強い性質ではないのです。そして、彼はコーサイアを傷つけてしまわないか不安でした。彼がその議論をどこかほかの場所で続けられると考えていたことは間違いありません」
「肝っ玉の小さい王だって呼んだんだ。そして笑ったよ。どうして?ダガーフォールの人の肝臓はエボンハートの人のより小さいの?第一、それに何の関係があるの?父さまはとても怒ってた。きっと戦いたかったと思うな。でも、父さまが僕を嫌ってるのは本当だよ。わかってるんだ。でも、わかりたくなかった。だからそうじゃない風にふるまっていたんだ。モラーリンはそうじゃないと思うけど」
「ええ」
「でも、彼は嘘をついた。彼は僕の父親だって言おうとしてた。わかるんだ」
アリエラは頭を後ろにそらせて、鈴を転がすような声で笑いました。彼は遠い記憶からそれを思い出し、背中がぞくぞくしました。「もしあなたにそう思ってもらえたら、きっとものすごく、心からそう言いたかったに違いないわ。彼はいつでもせっかちなの。そして、彼は誓いの下では決して嘘をつかないし、愛するものを傷つける嘘はつかないわ」
「僕のことを愛してなんかいないよ。僕のことを好きでさえないんだ」
「でも、私は愛しているのよ、私の大切な坊や。あなたは―」エドワードは彼女が大きくなった、と言おうとしているのだと思いました。大人たちはいつでも彼の成長を見てそう言うのです。一週間前に会ったばかりでも。奇妙なことに、年のわりに、彼は小さかったので。彼女はその代わり、「私が考えていた通りだわ」と母の深い満足を湛えて言いました。
「彼はあなたのことを愛してる。でも彼は使いっぱしりの小僧じゃないと言った。でも、あなたは彼がそうみたいに下がらせた」
アリエラの顔と首が真っ赤になりました。
「確かに、私は召使いに格下げされたようだね」うず高く食べ物が積まれたお盆を持って、モラーリンが静かに入ってきました。「椅子を取ってくれないか、少年。私が給仕役をやれるなら、お前も給仕役をやれるだろう。お前はお腹が空いているだろうし、妻が私の欠点の残りの部分を話す前に戻った方がいいと思ったのでね。それを挙げ連ねるのにほとんどまる一日かかるから」彼は鎧を脱いで風呂を浴び、細いウエストの周りに銀のサッシュを巻いて、洗い立ての黒いジャーキンとズボンを着ていました。でも黒い剣は、彼の横で揺れていました。
「まあ、なんてこと。小さな軍隊がお腹いっぱいになるほどの食べ物を持っていらしたのね。それに、私は朝食を済ませましたの」アリエラは小さな手でエルフの腕に触れ、愛撫するように下に滑らせて彼の手を握って力を込めると、それをまだほてっている首に持ち上げ、唇でその手をなぞりました。彼女の美しさに向かい合う浅黒い肌に居心地の悪さを感じながら、エドワードは素早く目を逸らしました。
「これは私用と、少しは坊やのためにね。でも、ご相伴してくれると嬉しいよ。君は痩せてきている。私にとっては針みたいだ、本当にね」彼女の黒い巻き毛の束を指に巻き付け、軽く引っ張ってにやりと笑いました。それから、食べ物に移ると、人間がするように指で食べるのではなく、小さな銀色の武器で飢えた狼のように襲い掛かりました。その食べ物は―素晴らしかったのです。エドワードはもう何も入らなくなるまで食べました。
「立ち聞きしていたんだが」彼は思慮深そうにもぐもぐと言いました。彼は食べている間、モラーリンの欠点を口の中でもそもそと挙げ続けていました。そして、もっと早く大きな声で言えばよかったことがわかりました。
「ゼニタールよ、坊や、君たち人間は、個人的な話を木の上全体に聞こえるような大きな声で叫んでも、私が耳に綿を詰めて聞かないでいてあげると期待しているのかね?」彼は大きなとがった耳をとんとんと叩きました。エドワードは急いで何を話したか思い出そうとしました。嘘をついたと言いました。ああ、なんてことでしょう。彼が聞いていませんように。
「それで、私は嘘つきなんだって?坊や」ヴァー・ジル、彼に救いの手を、エドワードは溺れ死ぬような気持がしました。このエルフは心を読めるのかしら?彼はそれが父親が彼に使った侮辱の言葉ではないことを願いました。「僕―僕は、そのことを考えていると思ったって意味で言ったんだ。口ごもったもの」エドワードは喘ぎました。彼はものごとを悪い方に転がしていました。
「たぶん、私は思い出そうとしてたんだよ…」皮肉っぽい響きが戻ってきました。
「僕のことなんか好きでもないくせに!」エドワードが大きな声で言いました。
「だからって、本当の父親がお前に主張するのを止めることになるようには思えないね」
「モラーリン、やめて!」アリエラが遮りましたが、エルフは片手を上げて彼女を黙らせました。
「わからないんだ」エドワードがちらりと見ました。
「どうしてあんなことを言ったんだね?」
「わからない―ロアンが言ってた―ことなんだよ―そして、僕はちっとも父さまに似てないんだ。みんなそう言うよ。そして話をやめてしまうの」
「言ってたこと―とは何だね?言いなさい、坊や!」
「二人が若かったころ、どれほど母さまがおじさまのことを好きだったかって。母さまが連れていかれたあと、彼がどんなに悲しんで怒ったかって。弟じゃなくて恋人みたいだったって彼女は言った。とってもかわいらしくそう言ったけど、何か他の意味があるみたいだった。���に出すのがとても汚らわしい何かだよ。他の時には、あの人は僕がとてもエルフっぽく見えるって。僕が結婚したあととても早く生まれたことも。あの人の一人目の息子みたいじゃなかったって」
モラーリンは跳び上がりました「何だって!戻ってあの女狐の首を絞めてやる!人間は―」彼は悪態をかみ殺しましたが、その赤い瞳は怒りに燃え上がり、筋肉がはちきれるように膨らんで、髪は逆立っていました。「お前はエルフと人間の子供には見えない。私が母上に出会ったのは、お前が母上のおなかに宿ってから4年後だ。どうやらロアンはどちらの嘘を使いたいのか決めかねたのだろうね。だが、近親姦などと!私ができないなら、ケルが代わりに鉄槌を下しますように」背の高いエルフは怒り狂って部屋の中を歩きました。カジートのようにしなやかで、片手は剣の柄を撫でています。その台が揺れて、少し下がりました。
「エドワードに比べれば、彼女は自分の息子たちに大望を持っている。疑問なのは、彼女の話を信じる者がどれほどいるかだ。彼を殺させる計画をしているなら、充分ではないだろう」アリエラのなだらかな眉に小さなしわが寄りました。「あのね、私は彼女を嫌ったことはないのよ。彼女もそう。あの方は私の立場を欲しがっていて、私はエドワードを救うために喜んで譲ったわ」
「僕に王様になってほしいんだね。そうしたら黒檀の鉱山を持てるから」エドワードはパズルを解きました。
「まあ、黒檀なんてどうでもいいの。おそらく彼が手に入れるでしょうし。あなたのお父さまがお亡くなりになったら、ロアンの子供たちと協力するより良いチャンスを持っているの。彼らには感謝する十分な理由がありますし、いい取引よ。そうは言っても、彼らの両親のことを考えると、契約にサインするのに充分なほど、自由に口が利けるかどうかは見込み薄だけれど」
「それじゃ、なぜ?僕のこと好きでもないのに」
「マーラ、お助けを!人を『好き』と思うことは人間の概念だ。ある日、彼らはお前を好む、次の日は好まない。火曜日にはまたお前のことを好んで戻って来る。私の妻は私に対してそうするが、彼女が私を好きじゃない時でも私を愛していると言うよ。彼女がどちらもしない日と、リアナの騎士団に加わる話をする時以外はね。そんな時は、私は彼女が正気に戻るまで狩りに行く」
「大げさね、そんなの一度しかなかったし、よく知っているくせに」
「回復期間は大いに楽しんだのを覚えているよ。もっとあってもいいかもね」二人はお互いににやりと笑いました。
「だけど、どうして僕に王様になってほしいの?」エドワードは食い下がりました。
「言っただろう、それはアカトシュの意思なのだ。それと、アーチマジスターのね。私は遠乗りに付き合っただけさ。彼らに聞いてごらん」
「アーチマジスターに会ったら聞いてみよう」
「素晴らしい考えだ。我々と北に旅立つ前に、お前は2、3週間タワーで過ごすことになるだろう」
「それだけ?」
「お前の母上と私と一緒に冬を過ごす計画がそんなに嬉しくないかね?」
「そんなことは…ないです。でも、アイリックと一緒に行くって言ったんだ」お前��ゃなくて、口に出さなかった言葉が、二人の間にありました。
「そうなるだろう、そのうちね。今、そこでの数週間は、魔法の訓練を始めるのにちょうどいいだろう。私はお前に呪文を教えてやれる。だが、お前は強くならなければならない。お前の体が心に追いつかなければいけないんだ。それはアーチマジスターの意思なのだよ」
「戦闘の魔法?僕は他のことを勉強したいな。獣の呼び出し方、癒し方、そして浮き方…」
「それも学ぶだろう、必ずね。それと、お前は戦士は癒せないと思っているのか?それはお前がいちばん最初に学ぶ呪文だ。だが、王は戦い方を知らねばならない」
「得意じゃないんだ」
「ドラゴンの歯だよ、坊や!まさにそれがお前が学ばねばならない理由だ」
「もしできなかったら?」
「お前は勇気があって、澄んだ頭を持っていて、魔法を学ぶ潜在的な力がある。それは大抵の者が持っている以上のものだ。残りの部分は私が教える」
エドワードの頭が、不慣れな賞賛にぐるぐる渦を巻きました。「僕が?本当に?君が?」
「お前はお父上の愚かな王宮の者たちがドラゴンとユニコーンの前に丸腰で向き合って、アーチマジスターとタムリエルの英雄に、彼らの正義を要求すると思うのかね?正義だって!そんなものを前にしたら、彼らはどうにか慈悲を請うのが関の山さ、それだって疑わしいが、口が利けるものならね」
「僕、そんなことした?したのかなあ?」エドワードはすっかり驚いてしまいました。彼は知らなかった、考えたこともなかったと付け加えたいと思いました。
「ああ、したとも。そして、それはここからモロウィンドに向けて歌われる行いだ。私はそのバラードを作曲しよう―昼寝をしたらすぐにね。ドラゴンの背中の上ではあまりよく眠れないんだ」
「僕とシャグに眠りの魔法をかけたね!」
「そして城の他の者にもだ。友人に手伝ってもらってね」
「うわああ。宙にも浮けるの?見せてくれる?」
「そう急ぐな。私はドラゴンの背中に一晩中とどまっているように、動きを固める魔法を全員にかけていたんだ。休むまではマッチを使わずにろうそくに火を灯すこともできないよ」
「ああ、わかった。それでも僕は、戦士よりもアーチマジスターみたいになりたいな」
「はっ!アーチマジスターが戦えないなんて、そりゃニュースになるな!彼がお前に杖の扱い方を見せる時間があることを願うよ。初期の訓練には最適の武器だ。そして彼以上の講師は望めない。さあ、お前が前に見た四人の中で、誰が一番優れていると思う?」
エドワードは数分の間、慎重に考えました。「僕の判断は本当に粗末だけど、それでもよければ、タムリエルのチャンピオンって称号を使う人が一番優れているはずだと思う。でも、アーチマジスターは君の魔法の先生ではないの?そして武器の扱いもよく訓練されているみたいだ。だから、誰が勝っているか?ドラゴンの炎と爪と歯に太刀打ちできる人間がいるかな?それに、とても足が速くて、尖った角と蹄があること以外、僕はユニコーンのことは何も知らないんだ。とってもおとなしかったし。それで、君が尋ねた��の質問には、正しく答えられそうにないんだ」
「いい答えだ、坊や!単体の近接戦闘ならユニコーンは簡単に勝てる。人間も、ドラゴンでさえ、あんなに早く一撃を当てられないし、炎で焼くこともできないし、魔法や属性の力も効かない。その蹄は致命的で、その角は一度触れただけで、どんな敵でも殺してしまう。角自体は燃えてなくなってしまうけれどね。それでも、一番強力なのは、それをすぐに再生できることだ。
「そして、4人のタムリエルの英雄は、互いに戦えばおそらく敗者になるだろうが、その称号は馬鹿げた自慢ではない!モラーリンは一流であることに慣れていない。結果として、私の行儀作法は苦しんでいるかもしれないがね」
「わが王よ、あなたには心から感謝申し上げます。あなたは僕に偉大な栄誉と貢献を与えてくださいました。ご恩返しできることがあれば、致しましょう。僕の乱暴な言葉と不躾をご容赦ください。僕は粗野で粗暴な中で暮らしてまいりました。そして、僕には父がないようです。あなたをそう呼ぶことをお許しいただけない限りは」エルフは少年に手を差し出し、彼はその手に自分の手を置きました。エドワードの味気ない気分はすっかり消え…まるで魔法のように…思考が彼の心を漂います…すると彼は手を離して、モラーリンの腰にしがみつきました。エルフの手は黒い髪を撫で、薄い肩を掴みました。
「ありがとう、奥さん。結婚からたった5年で、君は私に9歳のすばらしい息子を贈ってくれた。非凡で、本当に…魔法のようだ」
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焼きそばハロウィンはいかにして無敵のアイドルになったのか(2)
ごうごうと音を立てて裏庭の果樹園が赤く蠢いていた。永遠に収穫されることのなくなったりんごたちは次々に燃え落ちていった。光線を歪めて通すガラス窓がちらちらと女性の顔に炎を落としていた。質素なドレスからむき出しになった上腕を伝い、デスクの上へとおびただしい血が流れていた。その女性はみずから三重四重にナイフで切り口を開いて、金属のボウルに血を溜めていたのだった。ふわりと娘の方を振り向いた彼女のかんばせは、尊い使命を神から与えられて、地獄に遣わされた人の純真を示すヴェールのように白く輝いていた。最も高い天にたなびく雲よりも美しく結われたプラチナ・ブロンド。晴れた日のエーゲ海の上下を混ぜ合わせてしまったような知性に溢れたブルーの瞳。 ボウルから血をおさない娘に何口か含ませると、「絶対に声を出してはだめよ」とその女性は言った。腕の痛みで眉はひどく歪み、額には乱れた前髪が数本張り付いていた。娘はこくこくとうなずいた。母親が言うことを忠実に守るために、口元には両手が当てられて、目には涙が浮かんでいた。母親が「いい子」と言って微笑んだのを見て、ああ、愛しいママ、とその娘は思った。ママが苦しむのを、見たくない。ママが喜んで、嬉しい。 その娘は、かつての志希だった。 そうだ、これはあたしの物語だった、と志希は思った。志希はその鉄臭い液体を口いっぱいに含み、母親の言う通りベッドの下に潜り込むと息を殺した。そこにはカビ臭い本が何冊もあって、それは志希が数ヶ月前にそこに隠したあと、忘れてしまった本たちだった。志希の母親は「いい子だから。きちんと、隠れていてね」ともう一度言いながら、悲痛な表情で彼女の手を握った。血でいっぱいのボウルが横っちょに押し込められた。志希は本の内の一冊を大事に抱えて、ついでボウルを脚の下に隠した。 こく、と血を少しだけ飲んだ。 「ごめんなさい��と彼女は言った。 「許してね。力のない私を許してちょうだい」と、囁いた。 そうして彼女が足早に去っていくのを志希は見送った。 自分の息がうるさすぎて、ごうごうと知恵の実が燃えていく音は遠くなった。 やがて重々しい足音で、数人の兵士たちがやってくる。全員が、統制された動きで部屋を荒らし回った。クローゼットに整然と並んでいたお気に入りのドレスたちは床にぶちまけられ、踏みつけられた。ベッドシーツはめちゃくちゃに切り裂かれ、本棚の本も同様にすべてが投げ捨てられた。がしゃんと窓が割れる騒々しい音がして、家具たちが外に放られているようだった。 志希はそれらをすべて、そのベッドの下の小さな隙間から見ていた。こく、と血を飲む。ボウルの血を口に含めば、まだ少しは、保つはずだった。誰に祈ればいいのか、志希にはもう分からなかった。 そして、母親が戻ってくる。 母親は自分の脚で歩いていない。 つま先はずるずると引きずられている。二人の兵士たちが彼女の両脇をきっと抱えている。そして、彼女は木でできた床に打ち捨てられる。志希の愛したドレスと同じように、本たちと同じように。死の直前、ひどい苦悶に喘いだであろうその美しかった顔や目に、もはや生命のしるしは無く、志希は約束を破って、「ママ」と小さな声で呟きながら、ベッドの下からその死体に手を伸ばした。志希の周囲で、正体のわからない激しい火がぼうぼうっと燃え盛っている気がした。 伸ばされた彼女の手は、炎の向こうで、親しい人にそっと取られた。 「志希」と美嘉は言った。涙で歪んだ視界の奥で、志希は母親の代わりに美嘉を見つけた。 すべてはかつてあった真実が夢に溶けた姿だった。 友愛に満ちた顔には、不安が滲んでいた。ベッドから離れて光るデスクライトだけに照らされて、美嘉の尖った鼻が作る陰翳は、記憶の中の母親のそれに少しだけ似ていたが、おさなさが濃かった。 志希はじっと美嘉の輝く瞳を覗いて、微笑んだ。「泣いちゃった」と、くすくす笑った。そのまま、ぐす、と鼻を啜って、「あー」と意味なく呻きながら人差し指で目の下を拭い、 「美嘉ちゃん台本見てたの? 今何時?」 「一時過ぎ」 「明日も撮影なんだから、早く寝ないとだめだよ」 ふ、と���嘉は笑って、「いつもとなんだか、逆だね」と静かに言った。 そっと美嘉が手を離したとき、志希の手はわずかに空を掻いて、去っていったそれを求めた。求められた美嘉の温もりは、デスクライトをか、ち、とゆっくり消したあと、志希のベッドへと戻ってきた。 志希は美嘉の胸元に抱かれて、少し恥ずかしそうに「ちょっと、美嘉ちゃん」と言った。「お母さんの夢を見ていたの?」と美嘉は聞いた。短く迷って、志希は柔らかな美嘉の胸の中でうなずいた。 「志希のお母さんは、どういう人?」 「……よく、覚えてない」 「そう」 美嘉はそのまま黙って、腕の中の志希の頭を撫でていた。 いつまでも、ゆっくりと撫でていた。 やがて、発作がやってきた���悲しみの発作が作る苛烈な嵐に、志希はほとんど息ができなくなった。ぎゅうっと美嘉のシャツを握りしめて、志希は激しく嗚咽した。その泣き方には、激しい生命の力が込められていた。生きるためには、そうするしかなかった。 「ママ」と、志希は母親を求めて泣き続けた。 結局のところ、志希はそういう星の下を選んで、産まれてしまったのだ。
* * *
何時間も回り続けるように精巧に作られた独楽が回転しているとき、巨大な運動エネルギーを秘めたまま一見静止しているように見える。それと同じように、美嘉は志希の方を向いたあと、口をくっと結んで動かなかった。心中の感情がこれほど苛烈に渦巻いているひとを見たことがなかったから、志希はその熱量の凄まじさに気がつくと、食べかけのゼリーが載っていたスプーンを咥えたまま、動くことができなくなった。 やがて、野生の動物の子どもが襲われた瞬間の母親のように、美嘉は素早く立ち上がると一言も言葉を発さずにベンチから立った。「え」と志希は小さな悲鳴めいた声を上げると、「ゼリー……」と呟いて、手元のそれを大事そうに両手で持ち、そのまま焦ったようすであとを追いかけた。 きめ細かい乾いた土の上を早足で歩く美嘉に小さな歩幅で走って追いつき、志希は「美嘉ちゃん、ゼリー」と言ってそれを差し出そうとした。美嘉は「いらない」と言うと、「着いてこないで」と表情のない声で彼女を拒否した。志希は「う」とひるんで、それでも「美嘉ちゃん……」と呟きながら美嘉の肘をそっと取ろうとした。 ばし、と腕を払われて、志希が持っていたゼリーが土の上にカップごと飛び散った。二人の向いからちょうどやってきた室内犬が低い声で唸りはじめ、その飼い主の子どもは慌てて犬を抱えると、足早に去っていった。 「どうせ、アタシがなんで怒ってるかもわかんないんでしょ」 美嘉に言われて、志希は答えを探そうと必死に頭を巡らせた。志希は半年ほどの彼女との付き合いの中で、何度も何度も美嘉を怒らせたことがあった。ふざけてわざと怒らせたことも、意図せず怒らせたことも、怒っている理由がぼんやりとわかるときもわからないときもあった。しかし今日ほど彼女を怒らせた理由が知りたいと思ったことはなかった。彼女がその魂の底から真剣に怒っていることがわかったからだった。 ほとんど一番に大事な友人にどうしても何かを言わなければならないはずなのに、なんと言っていいのかわからずに志希は下を向いた。 美嘉は、ふっ、と鼻で笑った。「……ごめんねも言わないんだ」と、掠れた声で言って、志希を見つめた。志希は何も言えずに眉を寄せて、何か見るべきものを探し、しばらく地面の上で飛び散ったゼリーが一列の蟻に運ばれていくのをじっとなぞっていた。やがて視野の端をかすめた何かに気づくと、ゆっくりと顔を上げ、その視点は美嘉の手に留まった。 志希は美嘉に駆け寄ると「ちょっと!」と美嘉が振りほどこうとするのに構わず、彼女の手を引いて近くにあった水飲み場まで連れて行った。蛇口を捻って水を出すと美嘉の左手をその下に寄せた。美嘉の手のひらは、文香��倒されたときに傷ついて、皮膚が人差し指の爪ほどの範囲でめくれていた。その傷口に、美嘉は冷たい水が触れたときに初めて気づいたのだった。桃色の皮下組織が乾いた土の下から現れて、「いつっ」と小さな声で美嘉は呻いた。志希は何も言わないまま、大事そうに傷口を水の下で何度か拭うと、綺麗になったその手に顔を近づけてよく確かめてから、美嘉を見上げた。 「なに?」と美嘉が言うと、志希は「バンソウコー、ない」と悲しそうに言った。美嘉はため息をついてタオルハンカチで傷口を拭いながら近くのベンチまで歩いていき、バッグを片手で探ると絆創膏を取り出して志希に渡した。それが自分の親指の付け���へと丁寧に貼られるのをじっと待った。 すべてを終えると、志希はほっと息を吐いた。美嘉は手を引いて「ありがとう」と言った。志希は美嘉におびえているかのように、何も言わずそのまま地面をつま先で軽く擦っていた。 「なんで今日、レッスンに来なかったの」と美嘉は言った。 志希はびくりと身を固くした。数秒のあとにもう一度、拗ねたように土をかき回し初め、やがて「……忘れてた」と一言言った。 はああ、と長いため息を美嘉はついた。 「……ちょっと勘弁してよー、ほんとにもー……あのさ」 美嘉は立ち上がると、ずっと地面を向いていた志希の視線をひらひらと治療の終わった手のひらで遮って上を向かせた。「何回も何回もチャットで言ったでしょ。明後日は最終確認だよー、明日は最終確認だよー! って。志希は全部振り覚えてるかもしれないけど、アタシは不安なの。文香さんは……」 美嘉は一瞬言葉を区切って、何か痛みに耐えるかのような表情をした。志希が不思議そうにそれを見つめているのを無視して、 「文香さんはかなりダンスが不得意だし、三人で合わせる機会はすごく大事だと思ってる。明日からの本番で、失敗しないように」 新たなため息が美嘉の口から音もなく出ていった。 「……ま、ほんとは志希もちゃんと分かってるよね……」 美嘉は志希の青い目を覗き込んだ。「なんで、忘れたの? なにかすごく大事な用事があったの? それでいつもみたいに頭からスポーンって抜けちゃったんでしょ」 はく、と志希の口が動いた。「怒らないから、言ってみな」と美嘉は小さな笑みを口元に浮かべて言った。 長い沈黙があった。 「……マ、ママ、に……呼ばれたの」と、志希は途切れ途切れに言った。 「……どういうこと?」 「……あの、ママ、今日東京に出てきたから、それで……最近はどうしてるのって、何か変わったことない、って、電話で……言われたから……あ……」 志希はベンチに座ったまま、美嘉を見上げていた。彼女の顔が変わっていくのを、どうすることもできずに見つめていた。そして、「死ね」と彼女に言われたとき、もともと白かった顔色はまっしろに変わって、口元は悲鳴の形を作り、首だけが二、三回、静かに振られた。 「馬鹿みたいじゃん」と美嘉は言った。 「アタシ、馬鹿みたいじゃん!」と、叫んだ。絆創膏が貼られたばかりの握りしめられた拳が、ぶるぶると震えていた。 「ほ、ほんとに呼ばれたんだよ! ほんとだよ!」と志希が必死の声で言うと、「アンタアタシにお母さんは死んだって言ったでしょ! それも忘れたって言いたいの!?」と美嘉は叫んだ。 小さく風が吹いて、二人の頭上を覆うクスノキの枝がざあっと揺れた。激しい太陽の光が木々の間から顔を出し、呆然と立ち尽くす志希の姿をつかの間、真実を暴くかのようにぎらっと照らした。怒りのあまりに美嘉の声は震えて、両眼には今にも溢れ出しそうなほど涙が溜まっていた。 「志希、マジ、なんなの? 全部ウソなの? ……沖縄で同じ部屋、泊まってさ、アイドル楽しいね、ずっとやっていきたいねって語って……あの夜……」 光る瞳を残酷な形に曲げて、志希を睨みつけたまま、ぐ、と言葉に詰まり、また口をひらいた。 「アタシだけが本当のこと言ってたの? アタシだけがアンタに騙されて馬鹿みたいに身の上話して……ねえ、志希」 美嘉は笑った。途轍もない悲しみを隠して、涙を零しそうになりながら笑っているので、志希はその凄惨なようすにほとんど耐えられなくなり、く、と唇を噛んだ。 「志希、アタシのこと馬鹿にしてるでしょ」 「してない」 「馬鹿にしてる! アタシの何もかもを、志希は絶対馬鹿にしてる! 馬鹿だ、馬鹿だ、真面目に人生語っちゃって、アイドルなんて真面目にやってって、馬鹿だって!!」 「馬鹿になんかしてない!」 「もういい! 志希なんか死ね!」と言って踵を返すと、美嘉はそのまま早足で歩き始めた。 「……なんでそんなこと言うの……」 志希がそう声をかけたとき、美嘉はついに両腕のすべてを使って志希からは見えなくなってしまった顔を拭った。とうとう溢れ出した涙を、どうにかしようと努めながら、その場から消えゆこうとしているようだった。去っていくその背中を見つめて、「ほんとなのに!」と志希は叫んだ。ぐっと涙をその瞳に湛えて、「あたし、ママいっぱいいるんだもん、ほんとだもん。い、今のママに呼ばれたんだもん!」ともう一度叫んだあとも、美嘉が脚を止めないのを見た。 そして、何もかもが決壊した。 「美嘉ちゃんの馬鹿ー!」と大声で詰ったあと、志希は子供のように泣き出した。嗚咽しながらぽたぽたと地面に落ちていく涙の粒をどうにかしようともせずに、ぎゅっとカーディガンの袖口を握りしめたまま志希は泣いていた。ああーという長い泣き声は公園の隅々まで響いて、遠い通路から脚を止めて彼女を見ている人々が何人もいた。志希はそのまま泣きながら立ち尽くし、葉の間の小さな隙間から漏れる燦然とした光を全身に点々と受けていて、やがてそのままどこかへとふらふら歩き出した。美嘉とは違う道を選び、泣き声のトーンをまったく落とさないまま十メートルほど歩いたところで、早足で戻ってきた美嘉が志希に追いつくと、その両手を握って「ほんとなんだね」と言った。 「ほんとだって、言ってるのに!」と志希は言って、振りほどこうと少しだけ暴れた。 「わかった」 美嘉はもう泣いてはいなかった。しゃくりあげる志希を、前からぎゅっと抱きしめて、後頭部をやさしく撫でながら「ごめんね、信じなくて」と耳元で囁いた。そのまま火を放ち続ける石炭のような志希の感情が落ち着くまで、目をつむって抱き続けていた。
子どもたちの陽気な声が空へと抜けていった。美嘉と志希の二人は疲れ切って、出口近くの噴水の縁に座り込み、一歩も動けずにいた。志希は赤い目をして、ぼうっと噴水がきらきらと落ち始めた太陽の光を反射するのを眺めていた。時折、彼女はきらりと美しく輝いた。美嘉はじっとその顔を見つめながら、 「志希のお母さん……いっぱいいるのね」 さらさらとした水音に、志希は沈黙を乗せて答えた。 「何人いるの、お母さん」 「……わかんない。もう数えてない」 はあーっと、美嘉は呆れてため息をついた。「ちょっとそれホントでしょうね……」と呟いたあと、テレビヒーローの真似をしながら追いかけっこをしている小さな子どもを眺めながら、「アタシにはわからん世界だなー」と言った。 「お母さんと、何の話してたの?」 「今度、焼きハロでやるライブ、インターネットとかで流れるかもしれないよって。だから見てねって」 「おーっ、いいじゃん」 「言おうとして……なんか怖くて、話せなかった」 がくっと下を向いて、「すっぽかされ損じゃん、アタシ……」と、美嘉は軽く笑った。 拗ねたようにずっときれいな水の流れを見ている志希を、美嘉はもう一度見上げた。きっとこの子は、どこかの喫茶店でお母さんと話しているときもこうなんだろうなと思った。目の前で起きていることに、とことん興味のなさそうなその視線。たどたどしい返答。退屈そうにほうっと吹かれる、ただ生きるための微かな吐息。だがその中心で、何かを求めようとする強い願いが燃え盛っているのを、少なくとも美嘉だけはもう知っていた。 「美嘉ちゃんはさー」 「ん?」 「美嘉ちゃんがアイドルやってるのをすごーく見てほしい人っている?」 「んー、このアタシを日本中に見せつけてやろう! とは思ってるけど」 「うまくできてる?」 「どうだろうね」 美嘉はくすくす笑った。「努力はしてるよ。マジで」 「……あたし、アイドルやっててほんとにいいのかなー」 「なんで?」 志希はゆっくりと美嘉の方を向いた。水面が彼女の顔を怪しく照らしていた。 「ママ、あたしがアイドルやってるってこと、知らないんだ」 またそのパターンかー! と美嘉は思った。くうー、と下を向いて、ガシガシ頭を右手でかきむしったあと、 「あのさ、実は文香さんも――」 ぐううう、ととてつもなく大きな音が美嘉の声を遮った。着崩したシャツのおなかのあたりを抑えて、志希は少し悲しそうに美嘉を見た。美嘉はしばらく目をぱちぱちとさせていたが、にこりと笑うと、「アタシの家、行こうか!」と陽気に言った。 「美嘉ちゃんのアパート? 手料理?」 「手料理は正解。アパートは不正解」 美嘉は勢いよく立ち上がると、志希に手を差し出して「行こ」と言った。志希は吊るし売りの人形のように美嘉を見上げたあと、弱々しくその手を取った。
「なんか、幼稚園みたい」と志希は言った。 『児童養護施設 飛翔』と書かれた���板の横の壁に、子どもたちがペンキで描いた絵が連なっていた。志希はそれに顔を近づけながら「美嘉ちゃんはどのへん描いたの」と聞いた。 「その壁建て直したのけっこう最近だから、アタシのはないよ」 「なあんだ」 つまんないの、と言いながら、志希は熱心に横歩きをして、壁をじっと見つめていた。美嘉は腰に手をかけると、ふふ、と笑って、何棟もの宿泊棟へと視線を移し��。裏庭で遊んでいるのだろうか、姿の見えない子どもたちの声が建物に反響していて、美嘉は活気を感じた。 「おっ、美嘉ねえじゃん!」 遠くから声をかけられて、美嘉は志希の先から歩いてくる少年のほうを振り向いた。志希もそれに気づいて、壁から離れると美嘉の後ろにさっと隠れた。 「トオル、今部活終わり?」 「そうだよもー、めちゃつかれた」 巨大なバッグを背負い直すと「昨日ぶり〜」と言ってトオルは美嘉に上腕を差し出した。ごつ、とぶつけて「いえい」と二人は親しげに声を合わせた。 「美嘉ねえの友達? こんちは」と、トオルは子供らしさの微かに残る笑顔を志希に向けた。 「トオルは志希の二個下だよ、バドミントンがうまいんだ」と、美嘉が志希に紹介すると、志希は「こんにちは、一ノ瀬志希です」と小さな声で挨拶した。差し出された大きな手を恐る恐る握る。 「志希はねー、アイドル仲間」 「うおー、マジか!」 トオルはぱあっと顔を輝かせると、「一ノ瀬さん、お会いできて感動っす!」と言うと、握ったままの手をぶんぶん振り回した。志希はあうあうと焦ったあと、さっと美嘉の背後にもとのように隠れてしまった。 「ちょっとアンタ、あんま乱暴しないでよ。つうかアタシも一応アイドルなんだけど、なんだと思ってんの?」 「やー、本物はやっぱ全然違うね! めちゃかわいい!」 「あんま調子乗ると彼女に言いつけるよ。昨日ライン交換したんだから」 「すみません、やめてください」 神妙な言葉とは裏腹にあははと笑うと、トオルは口元に手を添えて、小声で「ほんとは初彼女のことみんなに自慢しにきたんじゃないの〜?」と美嘉に囁いた。 「初彼女……」 志希は目を丸くした。数秒ほど固まった美嘉は全身を真っ赤にして「んなわけないでしょ! バカ!!」と叫び、既に宿泊棟のほうまで逃げていたトオルを追いかけていった。 「昨日のお返し〜! 美嘉ねえのアホー!」 トオルが宿泊棟に駆け込むと、はー、とため息をついた美嘉はとぼとぼと戻ってきて「ごめんね、バカで」と志希に謝った。 「美嘉ちゃん、昨日も来てたの? よく戻ってきてるんだ」 「ん? んー、今日はほんとにたまたまだよ。アタシは家が場所的に近いからすぐ来れるっちゃ来れるけど、フツーは一回外に出たら、あんまり戻らないかな」 「なんだか、不思議な家だね」 志希の正直な感想に、美嘉は少しの間黙った。黄金に色を変えつつある太陽光線が、ピンクに染められた髪を掠めて志希の瞳を焼いたので、志希は微かに目を細めた。「そうかもね」と言って、美嘉は猛烈な光の中心で笑い声を上げた。 「さて……チサはどこにいるかな……」 美嘉は志希を促して敷地の中を歩いていった。何人もの子どもたちが美嘉を見つけると親しげに挨拶をして、志希はそのたびにたどたどしく自己紹介をした。女の子たちばかりが遊んでいる場所をいくつか通ったあと、美嘉はついにちいさな図書室の暗がりで、赤い絨毯の床にぺたりと座って図鑑を読んでいる女の子を見つけた。 「チサ」 図書室の中にはほかに誰もいなかった。からからと引き戸を大きく開けながら、小声で美嘉が彼女の名前を呼ぶと、チサは顔を上げて、「美嘉ちゃん」と嬉しそうに言った。 「あさ、起きたら美嘉ちゃんいなくて、悲しかった」 「あはは、ごめんね。お仕事があって忙しかったんだ」 「そっかー……」 チサは下を向いて、「わがまま言って、ごめんなさい」と言った。「昨日の夜、アタシに帰るなってみんなが言ったこと?」と言いながら、美嘉は靴を脱いで中庭から図書室へと上がった。 「大丈夫、遅刻とかはしなかったから」と、チサの頭をぽんぽんと叩いた。チサは悄然として床を見ていた。美嘉は苦笑いを浮かべながら「さて」と言った。 じゃじゃーん、と、美嘉は大きく手を広げて志希を指し示した。 「アタシが連れてきた、この子は一体誰でしょう!」 「……知らないおねえさん」 「や、まあ、見たことないだろうから、そうなんだけど」 「美嘉ちゃん」 志希も訝しげに美嘉を呼んだ。美嘉は志希に向かって笑みを浮かべ、 「覚えてない? 夏休み子供アイドル相談室で、石鹸のつくり方を聞いてきた……」 あ、と志希は声を出した。 「そうか、キミはあの子か」と、靴を脱ぎながらふふ、と笑うと、急に自信に満ちた態度で図書室に上がった。膝で立って目線を合わせ「こんにちは」と挨拶をすると「一ノ瀬志希です。夏休みのラジオ番組で、キミの質問にこたえたのは、あたしだよー」と言うと、床に置かれていたチサの手にそっと触れた。 チサはぼうっと志希を見ていたかと思うと、ぱあっと顔を輝かせた。「石鹸、できました! あぶないって言われたところは先生たちに手伝ってもらって――」と、流れる川のように喋り始めた。やがていくつかのあらたな質問が溢れ出て、志希はそのひとつひとつに丁寧に答えていった。美嘉は微笑みながら二人のようすを見ていたが、志希に「ご飯作ってくるから」とひとこといい添えて、図書室を出ていった。 中庭を楽しげな長い影が、小さな鼻歌と共に横切っていった。
「ハンバーグ美味しかった? 時間かかっちゃってごめんね」 「ううん。みんなとお話してたから、楽しかったー」 皆に挨拶を済まし、二人は施設をあとにしていた。日はすっかり暮れて、薄暗い中に街灯がぽつぽつと点いていた。志希はカーディガンのポケットからセロファンの袋に包まれたマーブル模様のきれいな直方体を取り出すと、街灯にかざしてほうっと息を吐いた。 「いいなー。それ半分に切ってアタシにもちょうだいよ」 「絶対だめ」 「ええー」 けち、と言いながら、美嘉はとても嬉しそうに笑った。志希は赤く細いリボンを少し緩めて、すっとその香りを鼻腔に満たした。 「ダージリン、ヘーゼルナッツ、ハニー。このブラウンはココアか……」 しばらく余韻に浸ると、大事そうにそれをポケットに戻して、 「きっとこれで身体を洗ったら、お菓子みたいになっちゃう」と言うと、泡だらけになった自分を想像したかのようにふふふ、と笑って、くるっと回った。 「美嘉ちゃん、ありがとう!」と美嘉の目を見て言い、また歩き出した。美嘉は驚いてしばらく立ち止まっていたが、「びっ……くりしたあ。志希がお礼を言うなんて……」と、あとを追った。 「次はごめんねが言えたらもう一歩成長かな……ていうか、元気が戻ってよかったよ」 「んー、どうだろにゃー」 志希は機嫌の良い子どものように大きく手を振って歩く。しかし、目を細められ、口元は薄い冷笑を作っているのがわかった。いつまでも消えない��のアンバランスさがひどく哀れに思えて、美嘉は悲しくなった。 「ママ……ママたちね、きっとみんな、あたしのこと嫌いだと思う」 「……なんで?」 「みんなあたしがほんとうの子どもじゃないということを、おなかの底からよくわかってるんだと思う。だから嫌いなの」 「……そうかなあ」 言葉を区切ると、近くの草むらで秋虫が鳴く声がはっきりわかるようになった。美嘉は次の街灯が自分の身体を照らし始めるところまで黙って歩いた。 「アタシは逆に血縁のことなんて信じてないから、もっと大きなつながりのほうを強く信じてるよ。だから志希は大丈夫だと思うんだけど」 「大きなつながり?」 「愛だよ、愛」 「うっわ」 恥ずかし、と茶化すと、にゃははと笑った。 「まー、よくわからないけど、今日のあたしは、アイドルできてた! すっごく嬉しかった!」 たたっと走って、次の街灯に先にたどり着くと、 「だから、あたし、アイドルを馬鹿になんかしてないよ。美嘉ちゃんのこと、馬鹿になんてしてない」 「もー、わかったから」 その街灯に美嘉が歩み寄ったので、二人はお互いがはっきりと笑っていることを知った。 「早いとこお母さんに言いなよ」 「努力しまーす」 「ったく、保護者の同意書どうやってくぐり抜けたのよ」 「署名のギゾー」 何かを言いかけた美嘉はぴた、と止まって、数秒してから「忘れてたあ……」と座り込んだ。 「なになに、なにかトラブル?」 「今日の練習、文香さんも来なかったんだよ」 「ほほー」 「午後に文香さんち行ったんだけど、『親にやめろって言われたから、アイドルやめる』って言われちゃって」 「あは〜ん、で、それを今の今まで忘れていたと」 志希はふむふむ、と何かを考える振りをしながらくるくると視線を動かしていたが、やがて、「美嘉ちゃんは、馬鹿なのかにゃ?」と言った。美嘉はゆっくり立ち上がると、思い切り振りかぶった拳を志希の頭に振り下ろしながら、「お前が言うなっ!」と叫んだ。
その駅のホームに降り立ったとき、志希はすうっと一息空気を吸い込んで、立ち止まった。「どうかした?」と美嘉が聞いて、志希は首を振ってこたえた。炎が暴れ狂う匂いだ、と志希は思った。どこかでだれかの財産と生命が、燃えているのだ。蛍光灯に照らされながらとんとんと階段を降りていく、志希の顔は暗い。 東口を出ると、美嘉は「ちょっと、とりあえず作戦立てよ、作戦」と言った。 「ファミレスはそこにあるけど、えーと……」と、スマートフォンを取り出して操作していると、志希は「美嘉ちゃん」と遮った。 「文香ちゃんの家って、あっちのほうだったりする?」 「ん、んー? 多分そうだと思うけど……」 志希が指さした方で、空や建物が恐ろしげに赤く照らされているのが美嘉にもわかった。遠く、何台もの緊急車両のサイレンが聞こえた。「行こう」と、微かに不安の滲む声で、美嘉が言って走り出したとき、志希はその場で過去の体験がぐわあっと自分を追い越していくのを感じた。あの燃え盛るりんごの木々、てんてんとボウルに血液が落ちる音、本に生えたかびの臭い、錆びた鉄の味、床に捨てられたママの美しかった瞳が、恐怖に歪んであたしを見ていて、彼女はその口を開き「いい子」と――。 「志希!」と激しい声で呼ばれて、��っと顔を上げた。「くっ」と声を漏らすと志希は美嘉を追って走り始めた。 やがて、二人はその家にたどり着く。 「嘘でしょ……」と美嘉は最後の角を曲がると呟き、志希は「ああ」とその激しさに絶望して、声を上げた。 分厚い人垣の向こうで、鷺沢古書店は燃えていた。屋根は柱を何本か残して既に落ち、二階にあったはずの文香の居室は跡形も無くなっていた。一階の店舗部分からは今もめらめらと恐ろしい勢いで炎が吹き出し、庭木のいくつかはすべての葉を落としていた。太い電線がまさしくちょうど焼け切れて、ばぢん、という何かを切り落としたような音が辺りを裂いていった。何もかもが燃え尽きていく凄まじい臭気が空間を満たしていた。 美嘉がだっと駆け出して人混みをかき分け、そこに近付こうとすると、すぐに警察の張った黄色い規制線に遮られた。開けた周囲をぐるりと見渡し、救急車、消防車、警察車両がすでに到着して、必死の消火活動が行われていることが分かった。 「すみません!」 美嘉はテープを広げようと忙しく働く警察官に声をかけた。「危険だから、少し下がって!」と強く言われた。 「友達が、住んでた家なんです! けが人とか……どうなったのか教えてください!」 「なんだって……近所の人には、持ち主が帰ってこない空き店舗だと聞いたけど」 その警察官が無線でどこかへ連絡し始めたとき、美嘉はぎゅうっと両手を胸の前で組んだ。文香がまだ見つかっていないということがはっきりと分かったからだった。 「お願い……」 美嘉の開ききった目は燃え盛る火宅をじっと見つめ、震える喉からは悲しい祈りが漏れ出た。そうやってぼうぼうと踊り狂う炎が何もかもを奪っていくのを、力無く見守っていた。祈ることしか、彼女にはできなかった。 志希は、そうではなかった。 志希は美嘉が背中を丸めて、全霊で何かに祈っているのを見つめていた。やがて、ふ、と踵を返すと、元来た道を走って戻った。冷たい空気が肺で暖められて、彼女の周りに形無くたなびいていた。いくつもの街灯が、規則的に彼女の冷静な顔を明滅させていた。角へと立つたびに、彼女は、すん、と鼻をうごめかした。 四つの角を曲がり終わると、彼女は人通りの少ない道へと出た。誰も目にすることのない狭いビルとビルの間で、やがて志希は目的のひとを見つけた。 かちゃ、と、ノブが回される音が鳴った。 乱れた呼吸を、ふ、ふ、と戻すように努力して、志希はその奥を見つめながら、ふ、と自嘲気味に笑った。 通る者のいない路地を囲む植木鉢と、枯れた植物の奥、トマソンと化したドアの奥、ブゥーンと低い音で鳴る室外機、ゆっくりと回るガスメーター、なにかよくわからない液体の汚らしい流れと、何年もの間繰り返し捨てられて拾うもののいない缶や瓶のごみのさらに奥に、まさにそこに、文香はいた。 焼け焦げて濡れたストールに身を包んで、服も炭で汚れていた。��を壁にぴたりと��け、地面に座り込み、小さな空間で彼女は一心不乱に広げた本を読んでいた。角が焼けてしまったその青い表紙のソフトカバーを、文香はまるで数日ぶりの食事をしているかのように、大事そうに一行一行をなぞっていた。志希が目の前に現れたことにも気づかない様子で、時折その文を小さく声に出して読み上げていた。 そして、今や彼女がふつうの人間ではないことは明らかだった。その頭で、猫のような大きな耳が揺れていたからだ。 文香が感覚の一切を集中してその本に身を投じているのに、その耳だけが別個の意志を持っているかのようにく、く、と動いた。志希がちり、と音を鳴らして耳に下がっていたピアスを片方外すと、文香の右耳がこちらの方を向いて、あたかも獲物を凝視する一匹の肉食獣であるかのようにそのまま止まった。志希はピアスについていた小さなアンプル状の装飾をぱきっと砕いて開けながら「キミも、そうだったんだね」と文香に向かって言った。 瓶の中で、ぬらりとした液体が怪しげに揺れていた。 パトカーが一台サイレンを鳴らしながら現れて、志希の姿をばあっと照らした。その光を志希は一瞬眩しそうに見つめて、そのまま猛スピードで通り過ぎていくのを目で追った。 文香のいる谷間に一歩入りこんでから、志希は液体をこくりと飲み干した。志希の身体は、それで仄かな緑色に光り輝きはじめ、両側の壁面を美しく照らした。 ぴちゃ、ぴちゃ、とローファーで汚水を踏みしめて、志希はその隙間のもっとも奥へとたどり着くと、文香の頭をやさしく撫でた。彼女の頭で、ぴ、ぴ、と大きく動いていた耳は、志希が両手でそれをそっと包んで、何事かを唱えながらゆっくりと触っていると、やがて透明になっていき、消えた。 「あたしたちみたいなのが、アイドルだなんて、笑えるよ」と言って、志希はほんとうに笑った。 文香は志希のやわらかな光にようやく気づいたのか、顔を上げると「志希さん」と言った。 猛烈なスピードで近づく電車の前にみずから佇む人は、頭の中が後悔でいっぱいになり、自分がなぜそこにいるのかついには理解できなくなる。それと同じように、文香は何もわからないようすで志希の表情を反射するかのように笑みを浮かべた。口元は笑っているのに、すだれのようにすべてを覆い隠す前髪の奥で、ロシアンブルーのそれのような瞳が彼女の魂を映しているかのように悲しげに瞬いていた。
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2009/09/26 鎮座DOPENESS “100%RAP” Interview
先日リリースされた待望の1stソロ・アルバム「100%RAP」は、鎮座DOPENESSならではの解釈に基づいた彼のラップが思う存分楽しめる作品に仕上がっている。彼の現在のラップ観に行き着いた過程から、本作で目指した方向性やフリースタイル観まで、発言の数々はラッパー:鎮座DOPENESSを理解するためのキーワードに満ちている。
「路上ライヴをやってて思うのは、B・ボーイの方が足を止めないってことなんですよね。逆に子供とそのお母さんとか、お爺ちゃんお婆ちゃんだったりの方がよく見てくれて。そう考えると“HIP HOP”ってイメージを持ってないけど『何か面白い』ってフラットに思ってくれる人に届くような、どんな状況でも合わせることの出来るアルバム作品にってことを、自然と意識したかもしれないですね」
MCバトルやフリースタイル、そして様々な客演作品で強烈な印象を残しつつ、昨年はKOCHITORA HAGURETIC EMCEE'Sでのアルバムをリリースし、そのポテンシャルの高さを見せつけた鎮座DOPENESSが、待望の初ソロ・アルバム「100%RAP」を完成させ、ついにその全貌を顕わにした。そしてこの作品の持つ言葉そのものをグルーヴさせ、「日本語をいかに日本語としてカッコ良く発するか」という鮮烈な提示は、日本語によるラップ・フロウをもうひとつ上の段階に押し上げることになるのは間違いないだろう。また、このインタビューでその一端が明らかになった試行錯誤とロジックは、このフロウが決して一朝一夕で完成したものではなく、才能に加えて努力と分析の賜物であることを教えてくれた。インテリジェント・モンスター:鎮座DOPENESSの見せる新世界をご賞味あれ! インタビュー:高木晋一郎
■まず、そもそも鎮君と音楽との出会いはどういうところから始まるの? 「特に音楽的な習いごとはしたことがなくて、一番最初に音楽をいっぱい聴いたって記憶は、小学校5〜6年のときに聴いたチャゲ&飛鳥ですかね」
■じゃあ、入りは歌謡曲だったんだ。 「そうですね。でも音楽を演りたいと思ったのはHIP HOPを聴いてからですね」
■ではHIP HOPとの出会いは? 「中2のときですね。当時バスケをやってたんですけど、NBAのビデオのBGMにHIP HOPが使われてて、それが最初の出会いで。音楽的にもそうだけど、ヴィジュアル的にもカッコ良いなって。ウータンなんかヒーロー戦隊みたいだったし(笑)。そこから色んなラップのコンピを買ったりしてハマっていった感じですね」
■HIP HOPのエレメンツの中でラップって表現を選んだ理由は? 「なんだろう……サッカーと野球だったら野球を選んじゃう感じ?(笑)。グラフィティはちょっと敷居が高いけど、他の3エレメンツの中でラップを選んじゃうっていうのは……(人間的な部分で)なにかありますよね。サイプレス上野君とかダースレイダーさんとかも同じ匂いを感じるんですけど。憧れたラッパーは……、METHOD MANはそうかもしれないですね。動きもカッコ良いし、大人数の中でもスッと目立ってたり」
■そのときにはどんなリリックを書いてたの? 「えーと……エコとかかな。エコラップ(笑)。で、HAGURETICのSABOとは同級生だったんで一緒にグループを組んだりして、その後はのらりくらりと今に至るというか」
■鎮君ってその“のらりくらり”の部分が結構謎に包まれてるよね。 「例えば意外な誰かとグループを組んでたとか?そういうのまったくないっすよ(笑)。でもアングラデラってグループを組んでたときは横浜で結構活動してて、そこでサ上とロ吉に出会ってたり。だからHIP HOP関係では横浜の友達が多かったですね。でも基本的にはひとりで色々研究してたって感じですね」
■今みたいなフロウ・スタイルはその当時から開眼してたの? 「2002年ぐらいに『どんなビートにでも対応出来た方がいいんじゃないか』ってことで、DJと俺との一対一でジャズもロックもテクノも何でもかけて、2時間ぐらいずっとフリースタイルをし続けるってことをやってたんですよ。で、そうやってずっとフリースタイルをやり続けてると、“韻”とか“言葉”って言ってる場合じゃなくなるんですよね。それを考えてるとフリースタイルを続けてられなくて。でも、そうすると自分に制限がどんどんなくなってきて、思うことを思うままに出来るようになってくるんですよ。そこで、言葉を選ぶっていうよりも、『どんな言葉でも自分のニュアンスでカッコ良くしていく』って方向性に気付いて、それを磨いていって今のフロウに至ると」
■延々フリースタイルをし続けるっていう、そういう行動に至った訳は? 「俺にはKREVAスタイルやILL-BOSTINOスタイルが出来る兆しがまったくなく(笑)、とにかくフリースタイルをやりまくって自分の道を見つけるしかなかったから。だから曲を制作するより、自分が面白いと思うラップを見つけるための行動に重きを置いてましたね」
■なるほど。話は変わって今回のソロ・アルバムだけど、初期段階ではどんなイメージを持ってたの? 「親に聴かせられるアルバムというか、聴かせて共感させられるような作品は考えましたね」
■それは、ある意味ではB・ボーイ・リスナーよりももう少し広い層へのアプローチを考えてるってことにも繋がると思うんだけど。 「そうですね。路上ライヴをやってて思うのは、B・ボーイの方が足を止めないってことなんですよね。逆に子供とそのお母さんとか、お爺ちゃんお婆ちゃんだったりの方がよく見てくれて。そう考えると“HIP HOP”ってイメージを持ってないけど『何か面白い』ってフラットに思ってくれる人に届くような、どんな状況でも合わせることの出来るアルバム作品にってことを、自然と意識したかもしれないですね。例えば“オラハラッパー”だったら、内容に共感してくれるB・ボーイがいてくれても嬉しいし、逆に“パ”の発音と場所を追って聴いて、音として楽しんでくれてもいいしって。それから、なるたけ聴き取りやすくしたかったですね。言葉が聴き取れないって今までは言われがちだったけど、今回は言葉や音の潰れない、聴き取りやすいけれども変なフロウであるってことは意識しましたね」
■でも、それって相当難しいよね。聴感を良くすると言葉が埋もれてしまったり、逆に言葉を聴きやすくするためにフロウが犠牲になる場合は多々あって、それはラップに限らず——例えば桑田佳祐の楽曲はそういう部分が強いけど——英語ベースから翻訳された邦楽自体が抱えてる構図だと思うのね。且つ、内容が強すぎるとパーティ感が損なわれてしまったりっていう問題もあるから、“言葉”と“音”と“内容”ってすごく難しいバランスの上に成り立ってると思うけど、その折り合いって鎮君はどう考えてるの?
「すごく曖昧だけど、やっぱり“も”とか“は”とかの接続詞の使い方だったり、発声自体なのかもしれないですね。そこを意識することで、カッコ良いフロウでありながらも聴き取りやすく表現することは出来るんじゃないかなって。もしくは言葉が潰れそうだったら、言葉を増やしたり細かくしてリズムにトントントンと載せるとか、そういうのを自分で録りながら研究して作り上げてくって感覚ですね」
■完全に直感っていうよりも、試行錯誤の上で曲を決着させるというか。 「でも、『どういう言葉は滑りが良いのか』とかって感覚はフリースタイルで掴んだ部分が強いですね。例えば“あ(母音a)”はアタックが強い音だし、“お(母音o)”は伸びてフロウできるしっていう感覚は、フリースタイルで掴んで体に憶えさせたっていうか。俺としてはそういう『言葉の音としての特徴』は韻よりも重視してますね。でも、ラップの精度を上げていくのは当然だけど、今はラップよりももっと楽曲としてのトータルの高さを目指してますね。今回でいえば、ソロ・アーティストとして一枚アルバムを作るときに、いろんな感覚をバランス良く入れたかったんですよね。ひとつの感情をシャウトアウトするんじゃなくて、喜怒哀楽のすべてが入っていればいいなって思ったし、且つ“怒る”でも怒るだけじゃなくて、“怒りきれない”みたいな、“言い切らない”部分も含めて作品にしたかったんですよね」
■その言い切れないモヤモヤした部分にある情緒というか情感というか。そう思った理由は? 「高田渡のアルバム『ごあいさつ』を聴いてですね。あのアルバムは全曲が喜怒哀楽のバランスが整ってて、しかもロマンティックでとにかく凄いなって。そういうのはあまりHIP HOPで感じたことのなかった部分だったから、そこに衝撃を受けて、自分もそういう作品を作りたいなって。『何かを言い切る』っていうのはHIP HOPの醍醐味のひとつではあると思うんですけど、逆に『言い切れない』っていう感情の表現の面白さとか、そこに共感したりだとか、そういう微妙な表現をしたかったんです」
■高田渡の他にも鎮君のフェイヴァリット・アーティストとして忌野清志郎と細野晴臣の名前が挙がってるけど、このアルバムを聴くとその3人を尊敬してる理由が雰囲気として伝わってくるよね。 「清志郎さんのタイマーズでの痛快な部分だったり、作詞家としての歌詞の書き方もすごく好きでしたね。HIP HOPのリリックより好きだったかもしれない。細野さんはとにかくジャンルを限定しない音楽の追究心の高さと、それを自分でも実践する行動力に尊敬してますね。」
■その3人って音楽的な枠を飛び越える自由度の高い人たちだよね。鎮君のラップもそういう自由度の高さを持ってると思うんだけど、それでも例えば『ULTIMATE MC BATTLE』みたいなHIP HOP性ゴリゴリなバトルに出場する理由はどういう部分になるの?鎮君のラップは相手をやりこめるようなフロウではないし、その意味では『バトルのラップ』とはちょっと違うベクトルを持ってるから、同じ土俵で戦っても、バトルするラップとは同じ評価軸で判断するのも、もしくはされるのも難しさがあると思うんだけど。 「やっぱり、ラッパーとして出とかなきゃっていう、漠然とある『ラッパーだったら出るっしょ!』感かな(笑)。それから、2005年のUMBにあったような、出てくる全員がオリジナルのスタイルを持って戦うっていう、スタイル・ウォーズならではの素敵さもありましたよね。でも、一方でバトルもブームになって、多くの人が『バトルに勝つためのラップ』っていうのに向かっちゃってると思うんですよね、今は。要は『バトルに媚びを売るラップ』がバトルのスタンダードになって、それを勉強してしまってる気がして。だから、そういう感覚に対するカウンターでもありたいし、面白くしたいなって。フリースタイルにしてもそれ自体が目的になっちゃって、『パーティで自然発生して、よりパーティを楽しませる』モノではなくなってますよね。『やります!』とか『やらなくては!』みたいな固いモノになってしまってて。そうじゃなくて自然に『やっちゃってた』みたいな感覚でありたいんですよね。それでどんどん輪が広がっていくような。そういう『セッションとしての』フリースタイルやバトルをやりたいんですね。そしてそこから作品が生まれるような。『シーン全体』ってまでは考えてないけど、そうやって日本語ラップ・シーンも、特にそこにいるアーティストたちが好きだから、そこを楽しくはしたいと思いますよね」
■究極的な質問だけど、鎮君にとってラップって何? 「よく訊かれるんですけど、言い様がないんですよね。『これがラップだ』ってことはしっくり表現できないっていうか。音の鳴り方なのかな……。でも規定はないに等しいですよね」
■音の鳴り方ってことは楽器としてのラップってこと? 「いや、リリックも内容も大事だと思うし、一概には言えないですね。でも、だから『HIP HOP的にどうの』ってことは今回考えなかったし、最近は口にも出したくないなって。それよりも自然にラップがして、自分の音楽で楽しい場所を提供できればいいなって。このアルバムを聴いて『お、パクれる!』と思った人にはサクッとパクって頂いて(笑)、そこから新しいスタイルを産み出す人が出てきたらそれはそれで面白いですよね」
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行間に愛を込めて
こんにちは、つくもです。新人公演、役者紹介やっていきます!今回は、時間をかけてゆっくり長文を書きましたよ。
ピンキー
憧れ。圧倒的憧れ。女子なら分かるはず、彼女みたいな女になりたかったー。顔可愛いし服とか持ち物のセンスも良いし、演技上手いしダンスも踊れる。それでいて関西のギャグセンス。サバサバしてるのかと思いきやとってもピュアで真っ直ぐ純粋。え、悪いところなくないですか??オーラがありつつ人懐っこい性格で皆彼女の虜ですよ。ピンキーの演技にはとっても華があります。舞台でとてもイキイキしてて、見ているこっちもワクワクします。文字としてのセリフを発して決められた動きを再現してるのとは違って、そのキャラクターがそこで生きているような、そんな演技だなと思う。思えば共演するのは10月公演以来で、あの時とは立場が逆になったようで新鮮です。舞台上で彼女と沢山絡めるのはすごく楽しいし、色んな刺激を受けています。10月を思い返すと、仲良くなったな〜って感じるな。はじめは唯一女の子の同期だったし、仲良くしなきゃ!って思いすぎて色々気にしすぎだった思う。なんでも考えすぎちゃう自分と違って、ピンキーはあっけらかんと本能のままに生きてる気がする。羨ましい。ピンキーがいるだけで場が明るくなるし、嫌な気持ちが消えて私もテンション上がる。一緒にいてポジティブにさせてるれる人は貴重です。大切にしましょう。全然自分と違う彼女だからこそ一緒にいて楽しいし、見ていて飽きない。でも絶対恋愛観違うから恋バナは聞く専門がいいな笑 役者ピンキーの可能性はまだまだまだまだ無限大で、これからもっとステキな演技を見れることを楽しみにしてる。いつも元気をありがとう。
中津川つくも
私。今年度、4回も舞台に立たせていただけて心から感謝。
永満柊人
実家のような安心感。結構重めの兼サーしててとても忙しそう。今公演まであんまり話したことがなかったけど、とても話しやすくて稽古が楽しかった。彼は太陽みたいな人ですよね。それでいて話していて緊張しない安心感があります。普通にコミュ力高いんだろうな。彼はザ大学生って感じがします。変にひねくれてないから、ちゃんと楽しいときに楽しいと思える、楽しむべきところで楽しめる、そんな大学生活を送ってそうだし送って欲しい。お互い地方出身ということで田舎トークに花が咲きました。いつか九州案内してくれよな!音楽の趣味も合いそうだし今度カラオケ行きたい。いや、行こう。この公演期間で仲良くなれたなと思いつつ、もっと話したかったなとも思います。みんな言ってるけど、役者初とは思えないほど自然に堂々とした演技をしています。本人がとってもいい人だから善人の役とかやって欲しい。普通に泣かせられそう。よく分からんけど、唐突にイケボで語りかけてきて私もやり返して収拾つかなくなる遊びしてたよね。あれ楽しかったな。あと、ピンキーと変なオネエキャラみたいな絡みしてて、この2人のコント見たいなと思ってしまった笑 上述した通り忙しい人なので役者は最初で最後かもって言っているのを聞いた。どこかで、そうだろうなとは思ってたけどやっぱり寂しい。面と向かって言うのも困らせそうだから言えないけど、また一緒に舞台たちたいよ。それでもちゃうかには在籍し続けると言ってくれてるのでそれだけで十分嬉しい。頼れる宣伝美術チーフの彼にはたくさん助けて貰いました。フロ��さんの優しさを受け継いでるよ。宣美に興味津々やったから、今後素敵なチラシを作ってくれるのを楽しみにしてる。時々ダメ〇なのに稽古いなくて電話かけたりしたけど、それ以外はとても素晴らしい人ですね。血液型が一緒と知ってめっちゃ驚いた。きっと私は永満のほんの少ししかしれてないんだろうな。もっと仲良くなりたいぜ。ちなみに、私は嵐の曲Breathlessが1番好き。
かけうどん
元気の源。今公演、よく一緒にいたし凄い助けられた気がする。誕生日が一緒なんですが、同期に2人という奇跡のおかげでたくさんの人に祝ってもらいました。ありがとうございます。喜びが2倍で幸せの誕生日でした。作業日が限られた中での大道具チーフ本当に大変だったと思う、お疲れ様。色んなイレギュラーに頭を悩ませていたけど、君だからここまで来れたと思う、頼もしかったぞ。ロッドマンの演劇論、好きなんですよね。でも、理解できるけど共感はできなくて、自分と違う考え方を持ってる人は凄いし新鮮だなと感じています。色々と妥協してしまう私は、あなたのように自分が納得するまで折れない姿勢に尊敬する。こだわりのない人間よりこだわりを持てる人になりたい。今思えば、ロッドマンを分かるまでにはだいぶ時間がかかった気がします。この人の頭の中はどんな思考が巡っているのか全然分からなかった。今も完全に理解はできてないだろうけど、ロッドマンの価値観・考え方・人生観みたいなことを聞くのはすごく刺激的で、私も頑張って生きようと思える。そんな友達が出来たのは嬉しいことです。ロッドマンて、笑う時声出さない子なんですよ。私が人の顔みて話すの苦手なので、たまに隣で声が聞こえないと、真顔なのか笑ってるのか分からなくて不安になって、横を見るとすっごい満面の笑みでいてくれる事がよくあります。この一連の流れが好きだったりする。最近気付いたけど、私ロッドマンといると絶対イライラしないんですよ。こんなに短気なのに、てかイライラしてても、ロッドマンと話すとなんか和んで気づいたらどうでもいいことで馬鹿みたいに笑ってる。これを私は、ロッドマンがツボなんだよね〜って言ってたみたいです。彼的には、何も面白くもないのにケラケラ笑ってる���が面白いらしいです。平和な世界か??今回の小道具の中に、彼が実家から持ってきたぬいぐるみがあるんですけど、それを抱えているロッドマンはまさに「ごちゃい(5歳児)」でとっても可愛いです。いっぱい写真撮りました。
高井下高井戸店
ぜんぶわかってくれる人。演出お疲れ様。タスクを抱えすぎだけど、それ以上に自分でやりたい気持ちが大きいんだろうなあと思う。もっとみんなを頼ってね、君が思っている以上に、みんなロビンソンを信用してるから。よく共感してくれるから勝手に似た人種だと思ってる。何かあったらTwitterに呟くテンションでよくLINEする。割とどうでもいい内容でもちゃんと(?)話聞いてくれるし良い奴だと思う。人間の行動分析とか社会情勢とかを雑に話すのが好き。自分に厳しい人だから、「俺別に演技上手いわけじゃないのに、自分の考えとかアイデアでみんなの演出していいんやろか」みたいな葛藤をすごく感じた。私個人で言うと、君に演出をつけてもらいたいし、君が思う世界観を体現したい。もちろん理想には届かないかもしれないけど、ロビンソンの思い描く作品に少しでも近づきたいなと思って稽古をしていました。初めてのちゃんとした演出、本当にお疲れ様、感謝しかない。君の創作意欲は凄いよ。きっと同期は皆君の味方だ。これから経験積んで、良い演出家になって欲しい。ちゃうかでお前の創造力と想像力を爆発させるんやー。怒涛の3週間、君は倒れなかったけどシンプルに心身が心配。新歓役者めっちゃ嬉しいけど、新人終わったらいっぱい休んでね。新人楽しかった?私はロビンソンが稽古場で笑ってる時が1番好きだったわ。あー面白い人が面白いもの見て面白いこと思いついてるーおもしれえってな。舞監は演出を支えるべきなのにロビンソンは自立して私がむしろ寄りかかってたかもしれない。公演期間の3ヶ月、本当にありがとう。同期のこと一番好きなのロビンソンよな。不器用さんめ。
藤丸翔
何を言ってもいい人。年齢的にお兄ちゃんなんだけど、私的には弟。いやでも、なんでも受け止めてくれる寛容さに甘えてるだけだからごちゃいがお兄ちゃんなのかもしれない。今公演で、照明チーフとしての有能さを遺憾無く発揮してた。普通に凄いし、かっけえ。照明のこと1ミリも分からない私が「そーすふぉーってどんな漢字書くの?」とか自分でも意味不明な質問しても、ちゃんとつっこんでから真面目に答えてくれる。優しいよねこの人。とても頼もしくて、先輩にも認めてもらえる彼の仕事ぶりを嬉しく思ってます(母かな) これからもっと色んな経験を積んで、凄い人になっていくんだろうな。君の考えた照明大好きよ。自分の気持ち気正直な彼は、たまにこっちがヒヤッとする発言をします。特に先輩に対して笑 今回は新人公演なので、あまり失言はなかった気がするな。少しごちゃいの失言を楽しみにしてる自分がいることに気づいて笑った。今回、ちゃうかとしては初役者で、ハマり役すぎるキャラクターに、最初の読み合わせで爆笑しました。先輩方なら分かってくれるはず笑 すごく自然で、こうゆうやついそう〜みたいな良いキャラをしてます。舞台上でイキイキしてる彼を見るのはすごく嬉しい。アドリブ王のロビンソンとペアのシーン、しんどそうだけど頑張って。キレキレのアドリブツッコミ期待してる。
久保勇貴
なりたいけどなれない人。2月上旬、ほとんどの人が諦めていた新人をずっと打ちたいと希望を捨てなかったのが彼。今公演、彼がいないと上演は不可能でした。その点で、たくさん迷惑をかけたし心から感謝しています。制作チーフが君で良かった。私は根がネガティブなので、ずっと前を向き続けることが出来ないんですね。でもくうやはとても真っ直ぐに、そして冷静に状況判断できる人だなと思います。でもまあ、怪我と遅刻を換算するとプラマイゼロかな?いつまでも根に持つ面倒な女とか言わないでください!演技の話をすると、私はずっとこの人と共演していくんだろうなと思いましたね。今回も例に漏れずいっぱい絡みます。今公演、シーンもキャスパもくうやと一緒のところが1番楽しい。どちらも顔を見合わせる瞬間があるんだけど、その時の彼の表情は好きですね。10月公演から良い表情する役者だなと思ってます。くうやは何事にも真っ直ぐ全力で、見ていて気持ちがいい。そのせいで、自分が気づかないうちに無理をしていたり突然スイッチが切れたように元気がなくなったりすることもありますが笑 一番最初の「なりたくてもなれない人」について。私の中でなりたい人には二種類あって「ちょっと頑張ったら届きそうな目標」と「どうやっても近づけない憧れ」があります。彼は後者で、こんな人になれたら人生楽しそう、とか思うんですけど、でも私は彼のようにはなれないなあとどこかで分かっているんです。(このあいだ、くうやは他人に嫉妬しないということが判明しました。まじかよ、そんな人間いるのか。嫉妬するとしたらみんな自分より凄いところがあるから、全人類に嫉妬してるよーとか言ってた。まじかよ。)完全に違う考えの持ち主だと思う一方、やっぱりこうなりたいと思ってしまうジレンマのせいで、その憧れを受け入れられるくうや全肯定期とそんなふうになれねえよっていうくうや嫉妬期が生まれ、対応に波が出てしまい申し訳なく思っています。まあ、何が言いたいかって言うと、いつもありがとう、強く生きてくれ笑
あしもとあしっど
未知。努力家だなと。よくそんなに頑張れるなあすげえなあって思ってる。絡むシーンが割とあって一緒に稽古することも多かったけど、現状に満足しない姿勢がすごいと思った。好きこそ物の上手なれって感じ。演劇が好きな気持ちが伝わってくる。皆さん、ニトロの台本見たことあります?すげえよ。ありゃすげえ。恐縮ですが、10月公演の自分の台本を思い出した。すごくたくさん考えて、言われたことを熟考して、自分の中で落とし込んで、より良い物を作りたいって気持ちは尊いよね。ニトロは普段と演技のギャップが大きいなーと感じる。別人格じゃね?って思う、表情とか声とか。そこまで代われるの凄いよな。今回の役、めちゃめちゃキャラが立ってると思う。座組ならわかると思うけど、ニトロの不思議な手足の動きはめっちゃツボだった笑 あとたまに、めっちゃ目力強い時あって自分の存在潰されそうとか思う。なかなか雑談する機会がなくて、ニトロの性格とか人物像はまだ掴みきれてないけど、誰かからアイデンティティ云々の話を聞いて、この人は面白いぞって興味を持ってる。私も思考っぽい所があるから、彼が普段どんなことを考えてどんな人間になりたくてみたいな話を聞いてみたいなと思う。今のところ化学に対する愛しか伝わってない…。このあいだひろせんせーとなにやら理系トークで盛り上がってたけど、私にはアボガドロ定数が何かすら思い出せなかった。こんな文系脳の私とも仲良くしてくれよな!かなり雑な紹介になってしまったけど、ニトロはきっとこれからもたくさん役者をやってくれると信じてるので今後のための余地ということで!前半のニトロと絡むシーン、個人的にお気に入りです!注目!
アニー
信頼の塊。みんなご存知の通り、スタッフにおけるアニーの信頼度は最高です。特に美術系はセンスが光り、舞台や小道具は彼女なしには考えられません。みんな、まあアニーなら大丈夫やろって思ってる気がする。信頼の裏返しとはいえ、たくさん仕事任せてる気がして申し訳ない。アニーが作るものがとっても好きなので、本当に今後が楽しみ!今度、宣伝美術にも入ってくれて、近々ステキなチラシが見れるのではとワクワクしてる。
役者としては、初めてとは思えないほど堂々と楽しそうに演技をしてる。彼女がまだ入団を決めかねているときの読み合わせを知っているからこそ、新人で役者をやっている姿に感動する。めっちゃかっこいいよ、あと面白い笑 もともとスタッフ志望で入ってるし、初めは演技に対して恥ずかしさとか自信なさの見えたけど、稽古を通してどんどんどんどん成長して、常に新しい課題を見つけて模索している姿はシンプルに尊敬する。演技の楽しさに目覚めてくれたようで嬉しい。(私が思うに)アニーが拘っているシーンがあって、キャラクターの変容っぷりとかっこいい低音ボイスに注目して欲しい!新人始まる前までは、たまに話す〜くらいの関係だったけど、一緒に時間を過ごすにつれ仲良くなれた気がする。たまに、気がつくとアニーが横にいて、くっついてくれてることがあってめっちゃ可愛いなーとなんか妹みたいに感じたりしてます。基本、アニーの方がお姉ちゃんなんだけどね笑 先輩はもちろん同期にもしっかり気を使えて優しいんだけど、言うべきことはちゃんと言うし関西のノリもあって、とても話しやすい。よく同期の面倒を見てくれてるイメージ。みんなボケだしふざけることが多い中で、一緒に笑いつつ冷静に諌めてくれる姉ポジ。アニーがちゃうかで楽しそうにしている姿がとっても嬉しい。これからも楽しいこといっぱいしよう!
雑賀厚成
安全地帯。よく話す同期。秋頃は、「シドはつくもの飼い犬」とか「地蔵に話しかけてるみたい」とか言われるくらい私が一方的に喋ってた気がするけど、今では5:5(たまに6:4でシド)くらいになりました。仲良くなれたのかなーと思ってます。お互い10月からずっと役者をしてるけど舞台で絡めるのは初めてでとても楽しいです。インパクトの強いシーンなので地笑い堪えるのに必死…笑 シドの演技は彼にしかない雰囲気があって、きっと演出もそれを見ての今回の役なんだろうなと思います。月並みな上手い演技は素晴らしいけど、その人にしかない味は唯一無二だと思う。そしてこのこは本番に強いらしく、これまでも何度も覚醒してきた。その姿を舞台上で見れると思うとワクワクするけど負けてらんねえと闘志を燃やしてます。シドは私にはない優しさに溢れていて、誰も傷つけないような言葉&面白い話を沢山してくれます。シドも関西人だな、と気づけたのは割と最近。私がイライラしてる時とかメンタル弱ってる時いつも泣きついてしまうので本当に感謝しかない。シドはみんなの精神安定剤だと思う。彼はあんまり弱ってる感を出さない(私が気づけないのか?)ので、人知れず病んでないか心配。もっとみんなを頼るんやで。公演期間中、シドが自転車を直すのが早いか私がコンタクトを買いに行くの早いか勝負をしましたが、私が勝利を収めたことを報告しておきます。
オペさん
照明
トニーー板倉(31期)
稽古後一緒に帰りたい先輩。トニーさんがいてくれるだけで安心感が凄いです。一緒に帰ると、美味しいご飯or楽しいカラオケに高確率で連れて行ってもらえるので嬉しいです。来セメからお忙しいみたいで、お会い出来る機会減りそうで悲しい。いや、トニーさんは箱の妖精だからなんだかんだ会える気がする。オペ席でたくさん笑ってください!
音響
佐藤舞弥
癒し。12月公演くらいから仲良くなった。きっかけはよく覚えてない。第一印象は声が可愛い〜で、声フェチの私的には仲良くなりたくてしょうがなかった気がする。すごいふわふわしてるんですよね。話し方とか雰囲気とか。そこにもすごく惹かれるし、たまに吐く毒も人間味があってとても好きです。私のこと唯一、ちゃん付けで呼んでくれる。なんとなく距離がある気がして呼び捨てが良かったけど、最近はつくもちゃん〜って言いながら寄ってきてくれるのが小動物っぽくて好き。どうしよなんの紹介も出来てねえ。みんなご存知だけど、とても有能メイクチーフです。事務的な仕事はもちろん、メイク案とかアイデアが豊富で、いつも奇抜だけど素敵なメイクを完成させてくれます。演劇において、舞台や照明と比べたらメイクは小さな存在だけど、それでもちゃんと意味があるんだって思わせてくれます。彼女と(普段の)メイクの話をするのも好き。結構タスクを溜めがちらしく、少し目を離すと病みかけてたりするので心配。でもきっと自分で立ち直るんだろうなーと私は放し飼いしてます(こうゆう所が冷たいって言われるんだよね)でもそれは信頼の裏返しなので、まやちゃんに頼んどけば大丈夫だろっていう気持ちで今公演過ごしていました。もちろん、その期待以上でしたけどね。スタオンだからなかなか会えないので、私的には役者をやってもらいたい、そしてもっとお話したい。そろそろまやちゃん呼びから、マヤに変更しようかなとか思ったり思わなかったり。彼女はたまに会えるそのレアさがいいのかもね。同期みんなまやちゃん大好きです。またラーメン食べに行こうね!!
音響オペ補佐
なしもとはな(31期)
デキル人。スタッフは宣美しか被ってないけど、そのセ��スと仕事の速さに感服してる。音響でもその耳の良さを遺憾無く発揮してた。私にはそんな音の違い聞こえない…。他の人なら、ひいひい言って泣き言を言わなきゃやってられないような仕事量を涼しい顔でこなしてるイメージ。うさはなさんが弱ってる姿見たことない。そんなかっこいいデキル女になりたい!
映像
ひろせんせー
未知2。ニトロとは違って、単純に話す機会がなさすぎてどんな人か知らない。っていう体で紹介していこうと思ったんだけど、仕込み週になって話してみるとめちゃめちゃ面白くていっぱい書けそうだよ!第一印象は、大人しくて真面目そうな人だった。でもピンキーの知り合いってことで、彼女から面白い人だよ!って聞いてたから、面白いんだろうとは思ってた。人見知りするタイプかと思いきや、真顔で不思議な発言したりギャグセン高いし普通に面白い人だった笑 程よい関西弁がす���く良い!彼の実家がわりと田舎らしく、地元トークになった時、私の実家が富山で本名田近ってことが印象に残ったらしく、あだ名より先に出身地を認知された。良い意味で、人に対して遠慮がなくて優しいツッコミをするイメージ。なんかふわふわした不思議な雰囲気がある。今回のオペ席はふわふわしてるね!本人にも言ったけど、このまま1回も会えずに終わるのかな〜とも思ってたから、新人参加してくれてめっちゃ嬉しかった!同期と打ち解けるのも早くて、楽しそうに話している姿を見て嬉しかったし、ちゃうかにも沢山来て欲しいなって思った!私的に、声が高めのイケボ!って思ってるから役者姿も見てみたい(これを言うと本人に恥ずかしがられる、かわいいね) てか、歌絶対上手いでしょ!カラオケ行こう!異論は認めん!色んな所に所属していて忙しそうではあるけど、また来て話をしたいしもっと仲良くなりたいです!気合い入れてEnterキー押すんやで!蓄光・ケミ貼りめっちゃ手伝ってくれてありがとう。助かりました。
スペシャルサンクス
劇団ちゃうかちゃわん29・30・31期の皆さん
先輩方には本当に本当に色々な場面でお世話になりました。新歓もまともに出来ない中、4月・5月の段階で皆さんに出会えたことは私の救いでした。ちゃうかに所属している、ということが既に嬉しくて、稽古や公演を楽しみに前期は過ごすことが出来ました。例年の新人よりは知識も経験もないくせに偉そうにしている私たちかもしれませんが、少しは頼もしくなった姿をお見せできるよう頑張ります!
新人公演ということで、やっぱり同期の紹介は筆が乗りますね。楽しかったです。今回、舞台監督として責任ある立場について、改めて公演を打つということ、大阪大学、ちゃうかちゃわんの名前を背負うことの責任を感じました。こんな時代に公演を打てること、心から感謝しています。同期はみんな凄い人で、1番それを感じたのはやっぱり稽古中です。全員、やる気に満ち溢れているんですよ。たしかに、延期やら稽古再開の目処が立たないやらで、時間もなくギリギリの公演ではありますが、それ以上にみんなの熱量は半端じゃないです。演劇好きなんだなあ、32期が好きなんだなあ、ちゃうかが好きなんだなあと感じます。まあ、私もだけどね!!!そんな皆と公演を打てることは本当に嬉しいし、成功させたいなと思います。
私の中で、新人公演はトクベツではなく、本公演と同じ立ち位置でした。いや、むしろ初めの頃は新人に全然乗り気じゃありませんでした。頼れる人がいない状況で、右も左も分からない私たちが公演なんて打てるのか。仲良しを謳ってきた32期が新人公演を通して空中分解するんじゃないか。笑い事じゃないですよ、そんな兆しもありました。先輩方が大好きで、先輩方が作ってきたちゃうかの雰囲気が好きな私は、みんなと向き合うことが怖くて逃げ出したかった。スタオンでもいいかなって本気で考えたくらい。でも、みんな向いてる方向が違っているとしても、新人成功させたいって気持ちは一緒だったんだよね。だから通る道が違っても最後はひとつになれる、そんな人達だと気付けました。本当にみんな熱くて強い想いを持っていて、みんなが頑張るなら頑張ろう、この人たちについていこって思った気がします。私は先頭にたってる振りをして、実はみんなに後ろから押してもらってた、そんな感覚です。新人だから役者をするとか、新人で初役者参加とか、他のサークルとの兼ね合いとか、なんやかんやでこのメンバーが役者・スタ���フをする機会は今回だけなのかもしれませんね。私はただ、向き合うのが怖かっただけなんだな。ここで諦めちゃダメだろうが。ずっと逃げてばかりでいいのか?俺はもう前向きに…そう、ちょっとは前向きになれたのかな。少なくとも今、新人公演は私たち、私にとって特別です。公演期間は3ヶ月。駆け抜けたのは3週間。涙が出そうなくらい幸せだったよ。
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父は脳腫瘍という病気を患い、手術を終えたあと50代にして視覚障がい者になった。
今は障がい者一級の認定を受け、基本的には何も見えない生活をしている。
最初は家族も私も戸惑ったし、ショックだったけど離れて住んでいたので病院にもいられなかったし、実感もわかず涙も出なかった。そうなんだ、これから大変になるね、とくらいしか言わなかったと思う。
そして、この件についてあまり人に積極的に話してこなかった。本当に気持ち的に距離の近い親友や、文脈として話さないと意味が通らない時しか発信しなかった情報である。※この件について知らなかった友人や近しい皆さん、デリケートな話題で話すにも気力が必要なので、話すかどうかはその時々の気分で決めていることがほとんどです。知らなかった=私があなたのことを大事と思っていないとは思わないでください。
父が手術を受ける直前に一度、出張ついでに私の住む横浜に遊びに来てくれたことがある。予約していた駅近の居酒屋に現地集合でいいだろうと思い、ラインでその連絡だけ入れてお店で待っていたが一向に現れない。
心配になり電話すると、「一人ではお店に行けない。横浜駅まで来てほしい」と言われて急いで駅まで戻った。
そこで再度電話をかけると、「改札口がわからない」と言っている。JRなのか京急なのか、どこにいるのか聞いても全然わからない様子だった。
短気な私は事態が飲み込めなさすぎて少しイラつき、「え?なにか上の看板に書いてない?」と聞いても上の看板って何?わからない。。というような返答でいやいやまいったなと思った。
とりあえずJRの改札にいるから駅員さんに聞いてそこまで来てほしいと伝えた。電話は切らずにつないでいると、改札のすぐ向こう側に父の姿が見えた。
電話越しに「パパいる��見えるよ、パパが今立ってるところからまっすぐのところにいるよ」と言い、普通ならすぐに気づくような距離だったが、全く気づかないでボーっとしている。
この時点で、なんかおかしいなと思った。注意力があまりにもないというか、視野がものすごく狭い。
周りの目は気になったが仕方ないので改札のそばにあった鉄の仕切りのようなものを拳で叩いて音を立て、「パパ!」と大きな声で呼んだ。
すると「おお、エミ」とか言ってた。すぐそばの改札を通ろうとすると、引っかかっている。マジかーと思いつつ、まずみどりの窓口で駅員に通れないって話してみて、と言ったがすぐそこに見えるみどりの窓口が、どこにあるのかわからないと言う。このエスカレーター超えたところにあるよと伝えて、すぐ出てくるだろうと思い電話を切って窓口の出口で父が出てくるのを待っていたら、またまた全然出てこない。というか姿が消えている。
焦った私は窓口にいる駅員さんに、たった今スーツケース引いてメガネをかけてる男性が改札通れないって聞いたと思うんですけど、どっちに出ましたか?と聞いた。すると「え、さすがにわかんないです」と言われ、正直「は?たった今のことも覚えてねーのかよ!」とキレそうになったがぐっと堪えてわかりました、いきなりすみませんと言って窓口を出た。
電話をかけても全然出ないので焦ったが、とりあえず私はあまり動かない方がいいかなと思いその場に留まることにした。
すると父が突然現れたので、目の前まで駆け寄って「パパどこにいたの?心配したんだよ」と言うとまだ遠くの方をキョロキョロ見渡している。目の前の私に気付いていないのだ。驚きながらも肩をトントンしてもう一度声をかけると、「ごめんごめん、京急に乗ってきたのにJRの改札から出ようとしちゃったのさ」と言っていた。
そういや羽田からはそりゃ京急だよな。。と自分がめちゃくちゃ焦っていたことにもここで気づいた。そして、父が前と同じようには行動できなくなっていることを確信した。
予約時間をかなり過ぎてから、ゆっくりゆっくり歩いてお店まで向かった。その途中、何度も電柱にぶつかりそうになっている。また、後ろから追い抜かしてくる人にも気付けず、さっと避けることもできないのでぶつかってしまっている(いや、ぶつかられている?)。
スーツケースは私が引いた。話を聞くと、空港の切符売り場でスーツケースを忘れて置いてきてしまうところだったらしい。ここでさらに、やばい、これはただごとじゃないと気づかされる。居酒屋で美味しい料理を食べながら2人で話していると、いつものパパだと思った。なんでも好きなもの頼みなさい、横浜でちゃんと頑張ってるんだねえ安心したよ、はなはボールを空中キャッチするようになったんだよ、と前と同じように話している。混乱したし、戸惑った。そしてまたゆっくりゆっくり歩いて電車に乗って、やっと家に着いた時には正直クタクタだった。脳腫瘍ってやばい病気だな、と実感した。
父は昔から仕事人間で、子どもの私たちと話す時もロジカルで、ただ「あれやりたい」「もうやめたい」だけじゃ通じない人だった。なんでそれをしたいのか、それをして何になるのか、今やめることがほんとに自分のためなのか?色々深く問いただされる。そして大体の場合、途中でこちらが折れることになるのだ。その結果犬や携帯電話、めちゃくちゃ厳しい部活をやめることなど、色んな物事を諦めた。
そんな中、私がどうしても諦めなかった��が海外留学だ。父は基本的に、私を自分の手元に置いておきたがった。高校生の間はずっと、「お前には弟と妹がいて、2人にもお金がかかるから大学は道内の国公立しか行かせない」と言われていた。私は生徒全員が必ず海外留学をする必要があるという秋田国際教養大に興味があったが、先述した内容や「そんな田舎に耐えられるのか」など色々言われ、確かにそもそも結構難しい大学だし、私田舎とか自然興味ないしなあと思い諦めた。
でも、国際教養大に行くつもりで数学Bの授業ではなく英語の授業を選択していた私は、進路の選択肢のほとんどが私大という状況だった。唯一の国立大の選択肢は数学2までとっていれば受験できる小樽商科大学、父の母校だ。父は浪人して入学した、当時、英語以外の教科は先生への愛想やキャラクターで成績をよくしていたと言っても過言ではない私にとってはそこそこチャレンジングな大学(国際教養大より下なんじゃ?と思うけど)。
そして私はセンター1ヶ月前というギリギリになってやっと1日12時間の猛勉強に取り組み、なんとか推薦で同大学に合格する。それを誰よりも喜んだのも父だった。「エミが俺の母校に入るのか〜」とよく言っていた。こっそり母から「自分の母校に入るのも嬉しいんだろうけど、札幌を離れず実家から大学に通ってくれることを一番喜んでるのさ」と聞かされる。そういうことかよとやっと気づく。私はいつも気づくのが遅い。
大学に入り、往復5時間かけて通学する日々が始まった。めちゃくちゃ遠い。朝めちゃくちゃ早い。めちゃくちゃ眠い。行き帰りだけで本当にクタクタで、なんでこんな大学に入ったんだろうと、通学中に関しては4年間ずっと思っていた。
ただ、それでも私は在学中勉学についてはそこそこ頑張った。英語のクラスを担当する教授に色々と機会をいただき、在札幌米国領事館が主催する英語のエッセイコンテストでジェンダーについて書き、特別賞でiPodと日本女性会議に出席(という名目の見学)する権利をもらった。
日本女性会議ではニューヨークの裁判官の女性と話し、女性から男性に対してのDVについてはどう対策すればよいと思うかを質問した。ただ、当時の私の英語力ではせっかくもらった回答の内容を理解できなかった。いい質問だと言われたことしか覚えていない。これは私の人生の中の最大の後悔の一つだ。
他にもオーストラリアの元衆議院議員の方との会食に同行させてもらったり、米国領事館のパーティーに参加したり、なんか色々やってた。単位は落とさずにいられた。サークルにも入らず固定のグループにも属さず、なんかよくわかんない子だったと思うが、友達にかなり恵まれ、みんなのおかげですごく楽しい大学生活を過ごせた。
大学2年の前期、私は最初の留学のチャンスを見送った。理由は元々父に言われたとおり、弟と妹にもお金がかかると思ったからだった。当時弟は受験生になっていた。それでなおさら、自分にだけお金をかけさせるわけにはいかないと思ったのだ。ただ両親は弟には道内国公立という条件を出さなかった。理由は弟が男だからだ。私はこれにマジギレした。多分人生で一番親にムカついたのはあの時だった。私の方が高校時代の成績も良かったのだ。私は絵に描いたような男尊女卑だと、親にめちゃくちゃキレた。
それで、私も留学する!!と勝手に決めたのだ。実は私は自分が見送ったtermで留学した他の子たちをめちゃくちゃうらやましく思っていたのだ。私の方が英語できる気がする、私の方が海外生活への挑戦意欲は絶対強いと思う、これまで頑張ってきた自分の力を試したい、と毎日毎日思っていた。そして親に留学を反対・阻止されないよう、TOEICやTOEFLの勉強をめちゃくちゃして、どちらも本番で過去最高得点を取った。そしてほとんど誰にも言わずに留学の学内選考に申し込み、勝手に合格してしまった。当時私にものすごく期待してくれていたアメリカ人の教授が親身に相談に乗ってくれて、志望理由の添削なども快く引き受けてくれた。そのおかげもあり、学内推薦の枠をとれた。
母には選考が始まった時点で留学のことも話しており、「そんなにやりたいならお金はなんとかするからやりなさい。きちんと努力する子には私は投資するよ」と言ってくれた。母は、いつも私の英語の勉強意欲や海外への憧れを認め、後押ししてくれた。そして、この言葉は今でも励みになっている。
問題は父である。昔から日本のものより海外のものに惹かれていた私を海外かぶれと呼び、アメリカをホワイトアングロサクソンが牛耳る国と表現し、なぜそんなところに憧れる!?と言われて育った。今思えば結構なレイシストだった。
絶対嫌がるだろうな、と思ったが、私にはあまり反対意見を言ってこず、受かってしまったものは仕方ないという感じで、銀行に通い教育ローンを組んで私をニュージーランドに送り出してくれた。アメリカは私の申し込んだtermの選択肢にはなかったので、消去法で唯一の英語圏だったニュージーランドを選んだのだ。
ニュージーランドでの2学期が私にとってどれほど楽しかったかは私を知る人はもう知っているだろうから話さない。とにかく人生最高の時間だった。初めて親元を離れたが、シェアハウスに住んでいたからかあんまり寂しくなかったし、親の目につかないところでちょっと悪いことをするのは最高に楽しかった。ただ、とにかく高い生活費や家賃を嫌な顔一つせず振り込んでくれる親への感謝は絶対忘れないよう決めていた。
後になって知ったことだが、父がすんなり承諾してくれたのは母の説得のおかげだった。父が「エミがボブサップみたいな黒人でも連れて帰ってきたらどうすんのよ!」と母に怒ると、母は「え〜。。ハーワーユーって言う。」と答え、さらに怒らせていたらしい。めちゃくちゃうちの母らしい。でも、やりたいことはやらせようよと頑張って説得してくれたんだと思う。そのおかげで、私はとにかく充実した時間を過ごして、自信をつけて家に帰ってこられた。ちなみに行きも帰りも母は空港で普通に結構泣いていた。行きは当時の彼氏も涙を必死で堪えていた。私だけが全く泣なず、これから始まる新生活への覚悟と期待ばかりが頭にあった。帰りの空港に彼は来なかった。当時は色々思ったが今思えば当たり前である。
帰国後足りない分の単位をとりながらバイトも再開して忙しくしていると、さらに就活も始まった。今思うと、新卒の就活はマジでクソみたいな行事だった。私は正直留学で燃え尽きていて、みんなと同じ格好をして綺麗事を並べる就活というものに疲れ切り、適当に受かった地元の会社に決めてしまった。
そこで働く間、両親は小学校高学年から英語の個人レッスンを受けさせてもらい、高校大学とずっと私の英語の勉強に投資し、応援してくれたのに、なんでそこで培ったスキルを活かす仕事につけるよう必死で頑張れなかったんだろうと、ずっとずっと後悔していた。あと当時の上司と先輩がめちゃくちゃ意地悪だったので、普通にやめたかった。
そして、父の病気はその会社に入って2年目の半ば頃に発覚した。当時福岡で単身赴任していた父は、なんとなく様子が変わっていた。まずあんなに大好きだった仕事が、全然楽しくなさそうだった。私は子供の頃から父から仕事の話を聞くのが好きで、よくわかんなくても色々聞いていた。福岡の前にいた島根では色々功績を残していたようで、その過程の話を聞くのはとてもワクワクしたし、娘として誇らしかった。でも福岡に行ってからは愚痴が増えた。というかあんまり楽しくない、としか言わない。それ以上は話したがらなかった。
また、なんか運転荒くなったな〜と思うようになった。いや元々荒い方なのだが、それにしても危なっかしい。注意散漫な感じだった。私は免許がないので運転のことがよくわからなかったが、毎日運転する母はめちゃくちゃびびっていて、危ない!と叫んだりするほどだった。あまりにも運転が荒すぎて、車酔いしやすい妹は父が運転するなら出かけないようにすらなった。
あんまり詳しく覚えてないけど、なんか他にも物忘れが激しくなったり、前は帰省の間毎日札幌ドームに野球観戦に行ってたのにぱたりと行かなくなったりと、色々おかしいなと思うことが増えていた。母がかなり心配するのを、私たち子供3人は元々危なっかしいところはあるよとか、天然だからねとか言って流していた。
しばらくしてから本人が病院に行くと言い出した。赤信号を無意識に無視しようとしてしまったらしい。病院で色々検査した結果、脳に拳大くらいのものすごく大きい腫瘍が見つかった。
それを最初聞いた時は、なんて思ったか正直覚えていない。多分ショックだったとは思うけど泣いた記憶はない。でも、何回目かの精密検査のあと、印刷された結果の紙に手術によって起こりうることみたいなのが一覧にして書いてあった。そこには脳梗塞とかなんか難しい漢字がたくさん並んでいて、失明というのもあった。それを見た瞬間、こんなにリスクがある病気なの?と母の前で泣いたのは覚えてる。それでも、父の病気のことであんまり泣いた記憶がない。私は普段かなり泣き虫なので、本当に泣けないほどショックだったのかもしれないな、と今となっては思う。
父の病気が発覚してから、色々考えることが増えた。父の病院の付き添いやお見舞いのため、会社を休むことも増えた。そのうち何回かは自分のためだった。色々気持ち的に疲れ、��びに行くとかいう気持ちにもなれず、とりあえず犬と家にいたりした。でも会社や当時の上司はその辺はすごく理解してくれて、深く聞かずに協力してくださった。そこには本当に感謝している。
ちょいちょい会社も休みつつ、毎日色々ぐるぐる考えた結果、「私、結構親に恩返ししたいと思ってるんだな。その一番の方法って、ちゃんと英語のスキルを生かして楽しく働いて、親が私に投資した分を回収できるほど稼ぐことだ!」と気づいた(今思えばちょっと突っ込みどころもある)。
そして職場でも男尊女卑とか古い思考が蔓延しているのを感じ、基本不満しかないような状態になっていたので、本格的に転職活動を始めた。
転職活動は、新卒の就活よりチャンスは限られていた。有名な企業の求人にもとりあえず色々申し込んだが、新卒の時は当たり前のように通った書類審査でほとんど落ちた。でも、2年の経験で多少のスキルやマナーも身についていたおかげか、はたまたこの場から抜け出せれば人生やり直せるぞという強い希望からか、かなり高いモチベーションを保って行動できていた。平日の夜と土日はTOEICの勉強や企業研究、面接準備をしていて遊ぶ暇はなかった。けど、当時はそれを負担にすら感じないほどそれらに打ち込めていた。ある意味、こういう行動が辛い現実から目をそらす一つの方法だったのかもしれない。そんなときも自分の会社で面接官を担当したこともある父には、色々相談に乗ってもらった。
その結果、今働いている大きな会社から内定をもらえた。それまでわりと傍観していた、というかどの会社を受けているのかとかも多分よくわかっていなかった両親も、いざ転職が決定したとなると色々態度が変わった。当時私は色々あって両親(特に母)とあまり良好な関係を築けていなかったため、物件探しなどは全部一人で行った。というか23歳にもなり、これから一人暮らしするとなるとそれくらい一人でできないとダメだろうと思ってもいた。ただ、母は気まずそうに家具の買い出しや引っ越し手配などの手伝いを申し出てくれた。実際、そのおかげでかなり助かった。費用もかなり浮き、結局親の助けって大きいんだなと実感し始めた。父からはそういう類の協力は特になく、ただただ何回も「本当に横浜に行くの?」と聞いてきたり、「そうかあ、行っちゃうのかあ」とぼやいたりしていた。仕事中に「エミが横浜に行っちゃうのが寂しくて仕事にならない」とラインしてきたりもした。この人は本当に私のことを手放したくないんだなと思った。
子どものときから私はパパっ子だったし、父は実際私たち兄弟3人をめちゃくちゃ可愛がってくれたので、ここまで寂しがるのも仕方ないことなんだろうと思った。
それまでなんだこいつらと思っていた両親に対して、少しずつまた感謝の気持ちが湧くようになっていた。
そしてなんとか横浜や新しい会社での生活に少しずつ慣れてきた秋頃、ずっと保留にされていた父の手術が決行されることになった。いつ行われるのか、手術日直前までずっと計画が流動的だったので、飛行機を取るにも取れず、私は付き添うことはできずに当日も横浜で働いていた。まだ試用期間だったので本当はダメだったが、上司が在宅勤務にしてくれた。
手術は24時間以上かかり、母はずっと手術室の前で待っていた。普段父の愚痴ばかり言っていたのに、こういうことになると24時間とかでもあの固そうなベンチで待てるんだな、夫婦って謎だなと思った。
手術が終わった後、まだ腫瘍が残っているので来週また手術すると聞いた。どんだけ腫瘍あるんだよと思った。そりゃ運転なんかまともにできないよとか、その状態でずっと働いてくれてたんだなとか、色々思った。普段の私なら泣きそうな考え事だが、その時も泣けなかった。
そして2回目の手術も終わった後、母から顔がパンパンに腫れて管が繋がれた状態で、病院のベッドで寝ている父の写真が送られてきた。
正直、なんとも言えない気持ちだった。運動神経が悪く運動会を地獄と思っていた私だったが、運命走では父が毎年私を1位にしてくれた。仕事がめちゃくちゃ出来て、休日でも電話が鳴ると仕事モードになってテキパキ応答していた。友人関係で悩み学校にいけなくなった中学時代、忙しい中母と学校に出向いて先生に直接相談に行ってくれた。そんな父の姿が変わり果てた状態で札幌にある、とあんまり信じられなかった。
とりあえず親と妹に付き添いありがとうとだけは言ったと思うけど、なんか詳しいことはあんまり覚えてない。
その次の月に札幌に帰り、2週間ほど実家から在宅勤務させてもらうことにした。父が視覚障がい者になったことで、母の生活はとにかく大変になった。札幌を出るときにも感じたことだが、遠くから何もできない自分に対し自己嫌悪の気持ちを感じていた。一人だけ、大変な状況から逃げてきたような気持ちだった。それで今後後悔しないように上司やチームのメンバーに相談して快く受け入れてもらい、在宅勤務をさせてもらったのだ。
当時の父はほとんど何も自分ではできなかった。コップに水を入れることも、薬を包装のプラスチックから出すことも。何せ手術がおわり目を覚ましたら何も見えないのである。仕方ないと思い、みんな全部やってあげていた。
これがなかなか大変だった。普段通り続く仕事や父が障がい者になったことによる諸手続き、家事でも忙しいうえに、ずっと父のそばにいて余裕がなくなってきていた母と妹は、少しは自分で何かできるようにチャレンジだけでもしてほしいという気持ちでストレスを感じていた。また、それで父に優しくできない自分たちにも嫌悪感を感じてしまう。その時、本当にこのタイミングで札幌に帰ってきてよかったと思った。私はまだ気持ち的に余裕があったし、父のことをかわいそうに思う気持ちの方が強かったので、代わって父の相手や手伝いをしてあげられた。母が何度もお礼を言ってコーチのバッグとポーチまでプレゼントしてくれたが、私としては何もせずに傍観することで今後後悔したくないと思う、自分のための行動でもあったので、お礼を言われるようなことではないと思っていた。実際、終盤は私も疲れてきて、母と妹と3人でラーメン屋さんで父の横柄さや自己中さを愚痴りまくったりもしてしまったし。たしかにこれが日常なのはキツいと思った。
札幌から横浜に戻った後もしばらく、自分だけ逃げてきたような気持ちに苦しんでいた。特に、大好きでかわいい、しかも4つも年下の妹をあの大変な日常に置いてきてしまったことが辛かった。
それまで私は当時、彼氏にこの話をあんまりしたくなかった。しても楽しくないからだ。また、正直付き合って半年ほどの彼氏に話すには色々と重かった。だからずっと黙っていたが、なぜか横浜に帰ってきてから1ヶ月ほど経ったあとのクリスマスデートの準備中、とうとうこの罪悪感を打ち明けた(理由は、なんとなく今なら言えそうだなと思ったからである)。
すると「でも、エミちゃんは家族と離れているおかげで多少余裕を持って家族に接してあげられてると思うよ。全員が同じ場所にいたら、誰も家族の話を冷静に聞いてあげられる余裕がなかったと思うから、お母さんもみーちゃんも、エミちゃんに話聞いてもらってるだけで助かってると思うし、ここにいてよかったんだよ」と言ってくれた。正直、この時初めて結構泣きそうな気持ちになった。けどただでさえ変な空気にせざるを得ない話をし、その上泣いたらなんかマジで変な空気になるしなと思って、化粧をしながら平然を装ってありがとうと、今まで自分の殻に閉じこもってて本音を言わなくてごめん、と言った。一言だけ「俺はエミちゃんの話聞くくらいしかしてあげられへんから」と言ってくれたが、彼のいう通り、ただ話を聞いてくれるだけの人って、本当に助かるのだ。それを身をもって実感したことで、私も家族にとってのそういう存在になれてるのかもな、と思えた。それにより、やっと家族と離れていることへの罪悪感を消すことができた。慎重な私からすると、正直大丈夫なの!?と思うこともあるくらいいつも楽天的な彼だが、こういうことを偽りなくスラスラ言える優しさや前向きな気持ちを持つ人と一緒にいることが、私にとってどんなエリートや大富豪といるよりも最良の選択肢に感じた。そして今もそう思っている。
その間も、父の手助けをしたり一日中話し相手になる大変さを何度も二人からは聞いた。そう言われると辛いよね、ママやみー(妹)の立場だとそう思っちゃうよね、とか、なるべく相手の気持ちを汲んでいるような言葉遣いを意識した。前のわがまま女王の私には到底できなかったことである。
そして、父が函館の視覚障がい者向けの訓練センターに入ることになった。本当に少数の視覚障がい者と、色々と教えてくれるメンターの方しかいない施設だそうだ。
父は行きたがらなかった。施設どころか、自分の実家にも帰りたがらなかった。母が諸々の手続きを済ませるために家をあける間、また妹も仕事などでいない間、一人にしておけないので実家にいて、ついでに(少し休みたいのでとは言わないがそういう意味も込めて)今夜は泊まってきて、と頼んでも嫌がっていた。無理矢理行かせてもいつ迎えに来るんだと電話が来る始末だった。これはまじでキツいだろうなと思った。
父は仕事ももちろんまだ行けないので、一日中リビングの一人がけソファからトイレ以外は一歩も立たず、ずっとそこにいて話しかけてくるのだ。目が見えるとある程度読める空気も、読めないので仕方ない(元々かなりのkyおじさんなのもあるが)。本当に何もしようとしなかった。実際父もストレスはかなりあっただろうから、無意識に嫌な言い方をされることも多く、色々書類を書いたり細かい手続きを済ませたりしないといけない母はクタクタだったし、妹も精神的にかなり疲れていた。父の無意識のきつい言葉に傷つき泣いたりもして、一緒にご飯食べたくないとも話して��た。
そのため、母も妹も父の函館行きをある意味心待ちにしていた。ひどいように聞こえるかもしれないが、そうでもしないと二人とも身を入れて休めなかった。
父が函館に行ってから、母は生き生きしだした。自分の好きなことを好きなペースでできるようになったからだ。我が家の愛犬のはーちゃんも散歩嫌いを克服し、毎朝長い距離母を連れ回すようになった。それによって他の飼い主さんと仲良くなったり、友達とのランチやピラティスの時間もとれたり、母の生活が目に見えて充実し始めた。ずっと辛い話を聞いていた私はかなり安心できた。妹の電話口の声色もかなり明るくなり、みんな父のことが嫌いになったとかではなく、単にこれまでどうしても疲弊してしまう日々だったんだろうなと思った。
そんな中、突然父からラインが来た。え、ライン?と思った。なんせ前実家に手伝いに帰った時はiPhoneのロックを解除することもできなかったのだ。視覚障がい者用のモードに変更して、音声を頼りにパスコードを打つのがどうしてもうまくできず、イライラしてすぐ途中でやめていたし、基本的に携帯を触ろうともしなかった。そんな父から誤字脱字がほぼないラインを受け取り、本当に驚いた。と同時に訓練を一生懸命頑張ってることがわかり、とても嬉しかった。実は施設に入る直前に父と電話で大喧嘩したこともあったので、なんか色々安心した。
その頃、ニュージーランドでの1学期目の間、とても仲良くしてくれた香港人の友人と久々に連絡を取った。彼女は去年お父さまを突然亡くしたと話していた。とても賢く明るく、私と同じように男の子みたいにわんぱくな彼女だったが、ストレスで毎日浴びるようにお酒を飲み、円形脱毛症にもなったという。私も友人には積極的に話さなかった父の病気の経緯を初めてその子に打ち明けた。余談だが日本語だと言いにくいことも英語だと言いやすいことって結構ある。そして、「大変だったね。お父さんも家族もストレス溜まるよね。でも、エミがお父さんのことをちゃんと気にかけてあげていることは本人がわかるようにしてあげてね。じゃないと後悔するから」と言ってくれた。
それから私は毎週末、なるべく施設で訓練を受ける父にラインで連絡を入れるようになった。YouTubeの使い方を練習しているので、面白いラジオやいい音楽を教えてと頼まれて、私の大好きなオードリーのトークまとめと、父のために作ったプレイリストを送った。父もお気に入りの音楽を教えてくれたが、どれも命や周りの支えに感謝する歌だった。今の自分の気持ちにピッタリなんだと書いてあるのを見て、なんとなく父の内面的な変化も感じた。そして、やっぱり父は努力の人、やればなんでもできる人なんだと思い、誇らしかった。それは母も同じなようだった(ちなみに母にはラインに慣れてない頃、訳の分からない文章をたくさん送っていたらしい)。
しかしコロナウイルスの影響で父の訓練は中断され、一度札幌に帰ることになった。そしてこの後の訓練は札幌でやることになると言う。正直私たち3人はエッと思った。思っていたより二人が休める時間が縮むことを意味するからだ。ここからまた大変だな。。と思っていた。
それでもいざ訓練から戻ると、父はできることがだいぶ増えており、郵便屋さんからの荷物を自分で受け取り支払いも済ませたり、歩いて近所のスーパーに行ったりまでできるようになっていた。また、一人で部屋で過ごす時間も前より自然と取るようになり、妹は父のそういう進歩や変化について嬉しそうに話してくれた。
結局父はみずからやっぱり落ち着いたら函館にまた戻って訓練を受けると言い出した。実際、後続の訓練は札幌で、というのは父だけでなくセンターの方の意見でもあったので、なぜ函館に戻ると言い出したのかはわからない。でも、訓練を頑張りたいという意志は伝わってきて、手術後はあんなに色々と後ろ向きだった父が積極的に訓練に向き合ってくれたことがとても嬉しかった。
そして、函館での訓練を終えて帰ってきた父は、どうも色々性格的にも変化しているようである。元々理論派な仕事人間ながら天然でウケる部分もあった父だが、特に明るいタイプではなかった。失明してからは尚更で、無神経な物言いをしたりもしていたが、今はそういうことがかなり減ったらしい。なんとなく明るくなったと言う。この前は父から母に「今日は実家に泊まる。少し休めるしょ?」と言い出してくれたらしい。父も、自分の存在が負担ということではなく、単に母の疲れを感じ取って休みが必要だと配慮することができるようになったのだと思う。
夫婦生活を何十年としていると、最初にあった思いやりや配慮が薄れていくだけだと思っていたが、夫婦というものはいつになっても悪い方向だけでなく、いい方向に形を変えることも可能なのだと親を見ていて知ることができた。
はっきり言って、去年から今年にかけて私はかなり辛かった。涙こそ思っていたより出なかったけど、悲しみや精神的な疲れがいろんな形で出ていたと思う。それに、仕事の変化についていくのも大変だった。
そういう時、一緒にバカなことをして騒いだり、美味しいものを食べながら恋愛や仕事の話をしたりしてそういう悩みから気を逸ら��せてくれた友達や、私の精神的���労の弊害を受けながらも見捨てず、常に優しくそばにいてくれた彼氏にとても助けられた。
そして突然視覚障がい者になったことを、多少時間を要しても最終的に受け入れ、その生活に順応する努力をする父、そしてそれを献身的にサポートする母や妹を心から尊敬する。あと、いつもみんなのストレスを無意識のうちに緩和し癒してくれる、犬のはなみちくんにもとっても感謝している。
こういう言い方をしてはなんだが、この事を通さないと分からなかった各人の良いところを知れた、いい機会でもあったとすら思えるようになってきた。
障がい者になること=マイナスではない。障がいを通じて、得られるプラスだってあるのだ。
せっかく色々書いたので、最後に一言。
話は少しずれるが、人種、セクシュアルオリエンテーション、宗教など、各分野でマジョリティ、マイノリティが存在し、その間での格差や差別、抗争が日々生まれている。こういった問題について、個人としてマジョリティ、マイノリティどちらも万人に受け入れられるべきであるとハッキリ言える人間になれたのは、ティーンの頃からこのような問題について国内外の同世代の友人とのディスカッションを通じて熟考したり、当事者とコミュニケーションを取ったりする機会の基盤にある、高度な教育を受けさせてくれた両親のおかげだと考え、心から感謝している。黒人、女性、同性愛者、トランスジェンダー、ムスリム、そして身体障がい者、またその他のすべてのマイノリティに属する人も、決して理不尽な迫害を受けるべきではない。すべての人間が人間として尊重されるべきである。この信念だけは決して曲げずに生きていく。
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第四章 「中国探検隊」発足
大学四年の時、ある偶然の出来事が、後の私の人生を大きく変えた。
当時、博士課程から日本に来る中国の国費留学生の殆どは東大または東工大にいた。東工大の方はまとまっているので、中国留学生学友会が組織されていた。中国大使館との関係も深かった。ある日、その会長の車さんから相談があった。中国の大学への訪問を含めた交流企画をやりたい、協力してくれ、とのことだった。
私は東工大の中国語講座を担当していて友人も多く、協力できる立場にあったので、頼まれたのだと思う。彼は親友だったので、私はすぐ彼に協力するよと伝えた。その時はなぜか、どんなことでも思い立ったらすぐ実行に移すことができたので、二日間ほど徹夜をして、綿密な計画を立てて、それをもって彼に会いに行った。彼は私がこんな早くも計画を練っていたことに驚いたようだった。私に比べ、彼はどこか官僚的だったかもしれない。
しかし、いざ実行に移そうとしたら、想像していたような反響は全くなかった。留学生が自発的に行う自分の国への交流企画、コンセプトは悪くないはずだ。なぜうまくいかないのか。やはりどこか中途半端な気持ちがあったかもしれない。最初から事業として考えなくてはいけないとその時思った。
しかし、首唱した彼は挫折してしまった。私は当時若かったためか、友人に知られている以上、一度始めたことを中途半端に終わらせて自分のプライドを傷つけたくはなかった。私は、自分が最後までやる、と彼に話した。
その後私がリーダーとなって、考え付く限りのあらゆる方法をやってみた。旅先も当初考えていた中国の大都市を訪れて学生と交流するという簡易なものではなく、19世紀の大谷探検隊のように遥か西の砂漠の地、敦煌まで足を伸ばすという少し冒険的なものにした。その名前も「中国探検隊」とつけた。大学校内で中国に関係のある映画上映会を開催したり、写真展を開いたりした。今思えば、本来理工学部の学生は文系の学生ほど旅だとか、異文化交流だとか、中国そのものには文系の学生ほど興味はないはずだ。文系の多い大学でなら相当やりやすかったかもしれない。それでも、中国を身近に感じてもらう、好きになってもらうという意味で、写真展と映画上映会の開催は意味があった。キャンパスの中に見事に一つ中国ブームのようなものを作った。自分に必要な礎となるものは自分でつくった。その後私がこの旅に「奔流」という名前を付けたのもこの経験からだった。「時代に従うな。時代を創れ」という意味を込めていた。
この十数年の間、中国の西部開発政策もあり、中国の西の方では交通基盤や観光施設などが整えられてきたが、私が初めて行った最初の頃では、舗装された道路も少なく、列車も夜になると、窓から泥棒が入ってくるような時代だった。いつか山賊に襲われるのではないかと少々ドラマチックなことを考えもした。そんなことが実際に起こりそうな時代だった。今思えば、旅行の引率初めてで経験のない私には相当無謀なものだった。
それでもシルクロードの歴史に昔から私をひきつけるものがあった。そこは一体どんな世界なのだろうかと、純粋に興味が湧いた。
旅への参加者を何とか20人ほど集めた。夢を膨らませることは簡単だが、20人を連れて、パッケージツアーとは違う、現地の人々と盛んに文化交流をしながら、なおアドベンチャーに挑む旅を実現するのは難しく感じた。中国は当時まだ交通網が発達しておらず、都市間の移動の際の列車のチケットの確保などは至難のわざだった。飛行機を使えば簡単なことだが、地の果てのような場所に行くからには、大地を這って行くと心に決めた。
当時の中国では、自信がないためか、外国の人を国賓のように扱う慣習があった。それでは費用が高くとても普通の国立大学に通う学生たちがバイトの稼ぎで行けるものではなくなる。それだけではなく、本来見てほしい庶民たちの生の生活や社会の真実を知ることもできなくなる。中国はヨーロッパやアメリカの成熟した社会と違って、社会意識としても個人レベルでも自国への自信はまだ持っていない。つまり、相手に自信をもって自国の文化として伝えることがまだできていないのだ。文化財や有形なものはそれが文化だと分かるが、形のない人の気質や社会の意識的なものは、それも誇るべき文化だとほとんどの中国人が理解していない。だから、そこに訪れる人がみずから社会の表層から深層へと発掘しなくてはいけない。そのためにも、日本や先進国の既成の価値観で見るのではなく、その土地の人と同じ目線になる必要があった。優遇された観光客ではなく、やはり現地の生活に根差して旅をしたいと考えた。
パッケージツアー的にやれば、手配は簡単だが、現地との深い交流やアドベンチャー的なことはできない。最初からこの旅を一般の旅行のように考えていなかった私は、自分の夢とビジョンの膨らむままに、すべて通してもらおうとした。当時はEメールのない時代なので、すべてファックスか電話でやり取りした。旅の後にファックスの数を数えてみると、120通ほどあった。今ではEメール一つで手配を済ませられるが、初めての旅の時は一つひとつ交渉を重ね、情報を収集・分析しながら、やっと自分の納得できる形に仕上げたのだ。
例えば、列車というと、中国の寝台列車は一等車両と二等車両があるが、外国人というだけで、中国側の担当者はすぐ一等車を考えてしまう。が、一等車両は個室になっていて、現地の人からさっぱり隔離されてしまい、交流ができない。そこで主旨を再度説明し、なんとか二等車両にしてもらう。食事も基本的に観光局認定のレストランで団体向けの料理食べることになると言われるが、私は本物の現地の人の食文化に触れてもらいたいので、現地の人が利用するところに拘った。その場合、旅行会社と提携がなく、高くなる場合も多かったが、限られた旅の時間の中、本当の中国に触れてほしかった。旅するスタイルも、普通のガイドがすべて案内する羊の群れのような団体観光ではなく、参加者に安全上の注意だけ伝え、要領をおさえてもらって、かなり自由奔放に旅できるようにした。
初回の旅は私たちにとって一生の思い出となった。河西回廊では車で揺れながら道路のない道をひた走った。道のない道を進む喜びを知った。敦煌の砂漠で砂嵐を浴びた。シルクロードのたくさんの民族の存在を知った。様々な文化はもちろん、いくつもの文明にも触れた。上海では勢いが湧きはじめる頃の中国を見た。西安でも遺跡のほか、気功や茶道など様々なものを体験した。列車の中でも街でも一人ひとり現地の人と多いに交流できた。参加者たちはマスコミでは伝わってこない中国の生の姿を見た。一方、旅で出会った中国人や異民族の人たちは、中国の映画の中によく出てくる「鬼」のような日本人ではなく、また高倉健の時代のようなひたすら生真面目な日本人ではなく、生き生きとした、ファッションナーブルで優しい心を持った現代の日本の若者を知った。
結果的に見ると、私が無理やり通してきた旅行業的常識と違う欲張りな部分は参加者に絶賛され、むしろ一番の思い出と喜びとなった。だから、奔流の旅では、今でも、このような手作り感を敢えて残している。「旅には、形がない」、そのまま奔流の旅のコンセプトの一つになった。ホテルや交通機関の手配だけは大手旅行会社に依頼し、移動中やフリーな時間を利用し、旅先地域の生活に溶け込み、ひとり一人現地の人と文化交流を行う。そして遺跡の観光にしても、観光という形をなるべく滲ませずに、現代の便利な交通手段を利用せず、古の旅人と同じ手段で行く。そうすると、同じ場所に行くとしても、普通の観光より遥かに深い感動を得られ、旅の途中で多くのことに気づける。当然、このような旅のスタイルは参加者の自主性も求められる。自分から求めて得たものは一番深い悦びを得られることも知った。旅するのはあくまであなた自身。それが私の信条となった。
日本の大学生たちと二週間一緒に旅したことで、留学だけでは知ることのできなかった日本人の心の風景に触れ��。たとえば、日本の大学生は自己主張がないとか、自立の能力がないだとかよく言われてきている。しかし、私が見ていたのはそれとは違った。男の子でも列車の中で洗濯紐を出して、洗濯物を干していた。それは同年代の中国の学生では絶対できなかったこと。日本人の「自己主張しない」というのは相手への配慮からきている部分と思慮深い部分があるというのはその旅から初めて気づいた。自分のことを仲間として受け入れられた時に、意見をはっきりと持っている学生は多かった。
今の若者は挑戦意欲がないともよく言われるが、私は彼らが未知の世界に挑む気持ちを強く感じていた。挑戦意欲が無くされる理由もなんとなく感覚的に見えて来た。ズバリ、日本は、モノが多すぎて、規則も細かすぎた。すべてはだれかの作ったルールに乗とってやらなくてはいけない。それでは挑戦心が無くならない方がおかしい。何をしても芯からの喜びを感じられるはずはない。この旅で彼らは初めて裸の大地を見た。日本にいては、絵の具で塗りつぶされた紙を渡され絵を描きなさい、と言われるようなもので、よほどの知性と理性がないと、自分が喜べるものを描けないだろう。ここでは、一枚空の白い紙を渡されている。その上で何を描いても、満足が得られ、芯から喜べる。日本にいる彼らはこれまでは知性と理性ばかり教えられてきた。何のために勉強しているか、何のために創造するか分からなくなった。もっと言うと何のために存在するかさえ疑うようになった。彼らは自由がほしかった。自由に対する渇望があった。彼らの自主性を喚起させるためには、自由にさせることが一番なのだ。その考えは一回目の旅から帰ってきた私の中に生まれた。
かなり後になって気づいたことだが、「奔流」の旅が大学生にとって意義深い旅ができたのにはもう一つの理由があった。中国は1990年代から著しい経済成長を成し遂げ、価値観が激しく変化していく時代であった。日々古いものが新しいものに取りかわっていく。それを代表しているのは、北京や上海のような大都市だった。一方、シルクロードの奥地では、何千年も変わらない生活が続けられ、悠久な時間が流れている。この旅に参加する大学生たちは、まさしく世界の対極を一度の旅で同時に見ることになる。それが今の日本の大学生にとって非常に意義のあることだと後で分かった。大学時代は人生の中で一番感性が豊かで、様々なものを貪欲的に吸収できる時期なのだ。その分進路や人生について悩む時期でもあり、将来を見失う学生も少なくない。それはつまり、沢山の知識を得るものの、自分の軸というものがまだできていないのだ。奔流の旅では、悠久の時が流れるシルクロードやモンゴル、同時に怒涛の勢いで変わっていく中国社会の双方を同時に見ることができ、参加者達は、様々な価値観の世界を自ら経験し、生きる“原点”のようなものに気づくと同時に、現代文明の光と影を自ら体感する。それは、やがて自分自身の生きる“軸”となっていくのだ。
その後、この企画の名前を「奔流」と名付けたのは、一つは当時の中国はまさに“奔流”していく勢いの中にあり、その時代を象徴するものであったからだ。またもう一つは、「時代を自ら切り拓け」という私が同じ年代の日本の若者へのメッセージも込めていた。そして三つ目に、時代の流れだけではなく、「参加者の心の中に流れる、影響していく」という意味があったのだ。
* * *
一緒に旅した日本の大学生たちは、私が自分一人の知性では到底到達できないような広い世界を見せてくれた。その中にその後の私の日本人観に重要な影響を与えた人物がいた。新山祐介さん。私の日本人観は彼を通して確立された。そして、日本のことをすっかり好きになった。彼のお蔭で、どんな苦労があっても、日本を嫌いにならずに、強かな努力できたと思う。(?以下の新山さんの話が必要だろうか?)
彼は僕と同じ大学で僕より一年下の学年だった。彼は東工大生でありながら、これまで僕が会った中で一番素晴らしい文章を書く方かもしれない。最初の旅の後、文章の編集を手伝ってくれて、その時のことは今でも鮮やかに覚えている。当初私は日本語はもちろん、日本人の心も分かっていなかった。それでも、難しい言葉が使えるし、流暢な文章を書けていたので、一般の日本人は、たとえそう思っていなくても、「外国人にしては、張さんは文章がうまいね」といつも褒めてくれた。しかし、彼は、僕の文章を見て、ずばっと、「日本人はこんなにたくさんの漢語は使いません。夏目漱石の本を読んで見なさい」と一喝した。それは僕が文章のスタイルを徹底的に変えたきっかけだった。実際に、今の自分の文章と一般の中国人の書く日本語との大きな違いは、中国の人はやはり漢語を使いたがるため純粋な日本的な文章になっていない人が多いことだと思う。自分がそうではなくなったのは、彼のお蔭だったかもしれない。彼は人の目の前で絶対に人を褒めないタイプだったが、しかし、当人のいないところではよくその人のいいことを話していた。謙虚で、哲学的で、何より真摯な人で、彼と出会ったからこそ私は日本が好きになれて、日本は素晴らしい国だと尊敬できたのかもしれない。
余談となあるが、彼はその後博士号を取り、米国で脳の研究についての本を出した。また、彼が三か月間グーグルでインターンをやって、稼いだ120万円ほどのお金を全部寄附したという話を共通の友人から聞いた。とても彼らしいと思った。彼は東工大の時でも2万円のアパートに住んでいて、近所の銭湯を利用していた。ある時帰りに一緒に歩いていたら、彼は「家からの仕送りはいらないと親に言っているのに、送ってくるから、そのお金で張さんと旅に出たよ」と明かしてくれたことがあった。彼は私の「奔流」が好きだと一度も私の前では言ったことがないが、彼こそ本当に私の旅が好きであることは私にはわかるのだ。そして、グーグルにインターンをした時でも、彼が「私はグーグルが嫌いだ」と言い放ったことを友人から聞いた時に、彼の顔がまざまざと思い浮かんできて、思わず微笑んでしまった。友人になぜ微笑んでいるのかと聞かれ、その時には答えなかったが、私が微笑んだのは、彼が私の知っている大学当時の彼からちっとも変わっていないことが確認できたからだった。自分自身のかかわるものに真正面から真摯に取り組むからこそ、表では堂々と「嫌い」という感情的な言葉を発すことができる。深い哲学的な部分での衝突であるかもしれないが、彼の重責感と深い愛情の現れだと私は知っている。
彼は最初の「中国探検隊」の後、こんな言葉を残した。
「私自身はもう飽き飽きした。狭い国で物質を追い求めることに。そして何かをさがしている。それは物質でなく、心でない、もっと確かなもの。つまり地球、そしてこの大地。
私の生まれた国では、大地はいまや絵の具でぬりつぶされ、風の音はかき消された。大地は隠されている。そこに大地がいるのを感じとれない・・・
ここへ来る前に持っていた、大陸への憧れ。大陸にきてみたら、大地にこんなにも身近だった。そして、都会のどんなものよりも美しかった。大地はまぎれもない真実であり、真実のみが美しい 」
一緒に旅をしていたから、彼の心境が手に取るように分かるのだ。参加者の深い底にしまっている思い、日本人の心に初めて触れた気がした。彼のこの言葉は私の心の中に深く焼きついた。次の年に、私が、「あゝ大地 彼らに都会が狭すぎるだろう」というキャッチフレーズを考え出したのも、彼の文章からヒントを得たからだ。
* * *
一回目の旅には私にとってもう一つの大きな意義があった。当時の中国人は自分の国が貧弱のため外国ばかり憧れる。しかし、この旅で、私は中国人としての誇りも持てるようになった。「今」、という歴史のある瞬間ではなく、「分断と変化」という歴史の時空に目を向けられるようになった。そして、文化という範疇を越え、民族の遷移、遊牧文明と農耕文明との衝突などといった文明史的なものに触れた。少年時代から好きだった歴史の風景は、本の中ではなく、自分の目の前にリアルに展開した。そしてその風景はものすごい勢いで広がり始めた。シルクロードそのものが私の青春時代の一つの「軸」となった。
もう一つ気づいたことがあった。日本では中国についての報道は殆ど時事的な、政治的な、或いは風評的なもの。根本的に大陸の気質に触れるものは少ない。大きな心を持ってすべてを受け入れる気質が大陸的な気質だとその時に気づいた。それがどんなに素晴らしいことかと後々なお自信を持てるようになった。
異なる立場で自国の文明を眺められたことは、後の自分の“中国観”に大きな影響を与えた。中国人的な狭い角度から自国の文化を見るのではなく、中華文明がどのように確立し、どのように世界とかかわったか、という世界史の視点で見るようになった。
そして、シルクロード特有の悠久な時間の流れが、いつの時代も変わらない価値観を教えてくれた。それは後に私の生き方と価値観に大きな影響を与えた。
初回の成功で、私の目の前の世界は途轍もなく広がった。日本に帰ってきて、半年の間、その旅のことは頭から離れなかった。芯から喜ぶというのはこういうことなのだと分かった。「中国探検隊」の旅から帰ってきて、これまでひたすらハングリー精神で走り続けてきた自分は、なぜか心が穏やかになれた。人間的な「欲」に誘われながらも、灼熱の大地を見てそれを照らす太陽を自然と意識するかのように、私の心の中の太陽はつねに存在するようになった。灼熱の大地、それを照らす太陽。そのまま、私の心の風景となった。ひたすら利益を追求するベンチャーよりは、この時から私の中はアドベンチャーに目覚め始めた。
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[翻訳] Pretend (You Do) by leekay #4-2
Pretend (You Do) by leekay
Chapter 4: A Sparkly New Coach and A Bloody Viktor Nikiforov
勇利はコーヒーカップを握る指を落ち着かない様子で動かしていた。深い褐色の水面をじっと見つめると、手がじんわり温まっていく。とりわけ熱を感じたのは、かつて指輪がはめられていた人差し指のその場所だ。あの指輪を外してからもう2週間になる。勇利の向かい側には、上原そうすけがじっと座っている。無造作な黒髪とダークカラーのセーターに身を包んだ彼は、カフェの壁にペイントされたインディゴのインクに同化しているようだ。勇利の心は落ち着かず、無意識のうちに店内をきょろきょろと見まわしてしまう。そうすけに会ったら、勇利はいろんなことが暴かれたような気分になった。すべてが現実で、ヴィクトルはもう何千マイルも遠くにいるという事実を思い知らされた気分がしたのだ。
「大変な時期だったのに、来てくれてありがとう。もし急かしてしまったなら謝らないといけないね」まるで小川を流れる水のように、なめらかでやさしい声がそうすけの肺から発せられた。勇利がぱっと視線を上げると、そうすけの頬に点在する、星座のように明るいそばかすが目に留まった。
「いえ、全然。すぐにでも一緒に練習を始めたほうがいいですし、それと……気遣っていただいてすみません」 そう答えながら、勇利はそうすけから目をそらした。指はまだ落ち着かず、コーヒーカップの持ち手あたりをそわそわと動いている。勇利はそうすけとどう接していいのかわからなかった。話し方は丁寧すぎる? あるいはくだけ過ぎ?「そうすけさん」と呼んでいいのか、しばらくは「上原さん」と呼ぶべきだろうか? チェレスティーノやヴィクトルのときは、そんな心配はしなかった。二人とも人に対しては無遠慮なまでに社交的で、「礼儀」といった言葉は不似合だったからだ。
そうすけは口元を緩めると、わかっていると言わんばかりの黒い瞳で静かに勇利を見つめて微笑んだ。上原そうすけは、その申し分なく鍛錬されたスケーティングで国際的にも注目を集めるフィギュアスケーターだった。勇利のようにキャリアを積み重ねていたが、しかし最後まで表彰台に上ることはなかった。才能を開花しきる前に、致命的な怪我を負ったのだ。世界選手権で難易度の高いジャンプに失敗し、足を骨折して引退へと追い込まれたとき、彼はまだ22歳だった。実は前に、ヴィクトルは少しだけそうすけの話をしたことがある。友人同士といえる間柄ではなさそうな口ぶりだった。新しいコーチが彼であるとわかったら、ヴィクトルはどんな反応をするだろう。そう考えると、勇利の顔には思わず血が上った。
「そんなに緊張しないで、勇利。噛みついたりしないよ」そうすけは笑って続けた。「それと、僕のことはそうすけって呼んでくれたらいい」 勇利は照れながらそうすけの後ろにある観葉植物に目をそらし、頷いた。まるでヴィクトルみたいじゃないか。いとも簡単に勇利の気持ちを見透かしてしまう。あるいは勇利が分かりやすいだけだろうか。
「これから一緒にやっていくために、お互い知らなくちゃいけないことがたくさんある。気を遣ったり境界線を引いたりしないためにね。勝手ながら前のコーチに連絡して、少し情報を集めさせてもらったよ」
「待って」 心臓がずん、とした。「ヴィクトルと話したの?」
「ああ、チェレスティーノとも」
急に目のあたりがひりひりして、勇利は息苦しささえ感じた。つまりすでにヴィクトルは、新コーチが誰なのかを知っているのだ。実際に言葉を変わし、直接話をしたのだ。ヴィクトルと、そうすけが。
「何を……どんな話をしたんですか? ヴィクトルは何て?」
そうすけは表情を変えると勇利の目を見つめた。「勇利。二人の間に選手とコーチという以上の深いものがあったことは知ってるし、あんな終わり方をしたの���本当に残念だったと思う。でもこれからは、これまでのことやヴィクトルのことはできるだけ割り切っていかないと……」そうすけの手が、わずかに震える勇利の手のほうに差し出された。「前に進むには、そうするしかない」 そうすけの瞳は大部分が濃厚なハチミツ色で、だけど部分的に緑がかっている。まるで舗装されたコンクリートのすき間から花が咲いているかのようだ。
そうすけに手を握られて、勇利は体をこわばらせた。話のトーンと行動とのギャップに驚いたのだ。テーブルの上に置かれた自分の手が、なぜか身体から切り離されているような感覚があった。いくら勇利が過去にしがみついたとしても、物事は変わり続ける。ヴィクトルへの気持ちは変わらなくても、人生は進んでいくし、勇利自身も進まなくてはいけない。頷きながら、勇利はそうすけを見つめ返した。
そうすけは手を離すと、椅子の背もたれに体を預け、そして何事もなかったように話を続けた。「チェレスティーノもヴィクトルも、スムーズに事が運ぶようにいろんなことを教えてくれたよ」
ヴィクトルが一体どんな話をしたのか、だけど勇利は気になって仕方がなかった。新しいコーチがそうすけだと知ったとき、ヴィクトルの声はどう響いただろう。そうすけとの電話を切った後、彼は何を思っただろう――
「勇利?」そうすけの声で、勇利ははっと我に返った。「聞いてる?」
勇利は何度かぎゅっとまばたきをすると、まごつきながら返事をした。「え……と、ごめんなさい。なんでしたっけ……」
「あのね、お互いを知るには、一緒に滑ってみるのが一番じゃないかと思うんだ。この近くにスケートリンクがあるから、今から行って感触を確かめてみない?」
その日はスケートをするような服装ではなかったし、全然そんな気分でもなかった。だけどそうすけから目を、その穏やかで期待に満ちた目を向けられると、勇利は行ってもいいと思えた。
「あの……その、もちろん、はい」
勇利は目の前に座るこの男への接し方を、相変わらず決めあぐねていた。冷静で動じない彼の態度。ヴィクトルよりも保守的ではあるけれど、どこか勇利を落ち着かせるやさしさがある。そうすけは、勇利とうまくやっていきたいと心から願ってくれている。そしてきっと、二人はうまくやっていける。勇利が、彼をヴィクトルと比べたりしなければ。
***
東京ミッドタウンの屋外スケートリンクは、せわしない街の高層ビルに囲まれた広場の中にある。ちょうどリンク整備が終わったばかりで、氷がきらきらと輝いている。肌を刺すような冷たい空気と雲間からわずかにのぞく太陽の下でスケートができるなんて、今の勇利にとってそれ以上に魅力的なことはなかった。まさに、都会の真ん中に現れたオアシスである。
リンクは混み合っていたもののそれなりに広く、二人が軽く体をならすには十分なスペースがあった。勇利は借り物のスケートシューズを履くと、そうすけについて滑り始めた。氷上に立つそうすけは、リンクの外にいるときと変わらず、美しい。
「ホームリンクがこの近くなんだ」勇利と並んでそうすけが話しかける。冷たい空気で鼻先が赤らんで、頭の両側は耳あてにすっぽりと覆われている。
「じゃあ、都内に住んでいるんですか?」これじゃあなんだか十代のデートみたいだと思いながら、勇利が聞き返した。
そうすけは懐かしげに街を見渡して頷く。「ここ何年かはしばらくアメリカにいてね。戻ってこられてう��しいよ」 そう言って氷に視線を戻すと、彼はペースを速めた。それに追いつこうと、勇利もぐっと足を踏み込む。
「体、あたたまった?」 そうすけがくるりと勇利の方を向く。勇利は頷く。
「オーケイ。今日はね、いくつか確かめておきたいことがあるんだ。まずは勇利にどれくらいのスピードとスタミナがあるか。それからジャンプも見ておきたい。過去のプロの映像は大体全部���たけど、実際にこの目で見たいんだ」
勇利はリンクに溢れる人たちに目を遣った。木曜とはいえ、多くの子どもたちやカップルが冬の午後を楽しんでいる。勇利のようなプロ選手が急にジャンプやスピンをしはじめたら、一気に注目の的である。「でも……ちょっと人が多すぎますし……」
「心配ないよ、勇利。ここで練習している人もたくさんいるんだ。それに、勇利がたのしそうにしているのを見て困る人なんていない」そうすけの口元は笑っていなかったけれど、その目はやさしかった。
勇利は息を吐くと、冷たい空気の中に落とされた自分の白い息を見つめた。「わかりました」
氷を蹴って走り出すと、スピードが速まるにつれ全身をアドレナリンが駆け巡り、周りのスケーターたちが一斉に彼に注目した。速く、もっと速く。勇利は離れた場所から鋭い目で見つめるそうすけの周りを何週か滑った。少しずつ気持ちが慣れてきて、試しにシングルジャンプを飛んでみた。満足げな笑みで着地。次は二回転。さらに多くの視線が集まる。氷上のマジックが始まったのだ。
そうすけは黙ったまま、冷静にその様を見つめていた。勇利はその沈黙をなんとか破りたいと思い、スピードを上げてさらに難易度の高いジャンプとコンビネーションスピンに構えた。金メダルを獲ったときのプログラムで滑った技だ。金メダル――そう、彼は金メダリストなのだ。
ジャンプ。跳ぶというより飛行に近い。高く、より高く、大気を抜けてもう二度と戻ってこないかと思えるほどに。そして、着地。体勢はスピンへ。体が自然に動きを止めるまで、延々と回り続けそうな彼のスピン。
一斉に拍手が起こり、頬を真っ赤に染めた勇利は目を開く。アドレナリンで緊張はとっくに吹き飛んでいた。そうすけはリンク脇にもたれかかったまま。拍手はしていない。けれど口元に浮かんだ笑みとそのまなざしは、勇利が欲しかった通りのものだった。
これが、金メダリストの姿である。
勇利は深呼吸をして息を整え、袖口で額の汗をぬぐった。そうすけが、一羽の黒い白鳥が、勇利のもとに近づき声をかける。「どんな気分?」
体からアドレナリンを出しきると、ついに勇利の口元にも笑みがこぼれた。勇利の世界がどれだけ荒れ果てていようと、彼はいつだってそこにいた。いつだって、氷がそこで待っていた。
「あの、すみません、勝生選手ですよね?」 後ろから小さな声が呼び止めた。振り返ると、幼いスケーターのグループを従えた中年の女性が立っていた。勇利を見上げる子どもたちの目はきらきらと輝いていて、それはかつて、勇利がヴィクトルに向けていた尊敬のまなざしと同じものだった。
「ご迷惑でしたらすみません」と、女性が話を続ける。「この子たちが勝生選手の大ファンで……もしよろしければ一緒に写真をお願いできないでしょうか」 勇利は胸が熱くなった。子どもたちはまるで昔の勇利のように、希望と夢に満ちているのだ。
「よろこんで」勇利が笑顔で応えると、子どもたちの顔がぱっと明るくなった。彼らの身長に合わせて勇利が膝を曲げると、天使のような愛らしさで子どもたちが勇利の周りに滑り寄った。
「撮りますよ」と言って、そうすけが手袋をはめた手を女性に差し出した。すると女性は、パッと赤面して目をそらした。「いえ、あの……もしよろしければ、あなたも一緒にお願いしたいんです、上原さん」
そうすけはこの女性が自分のことを知っているということに少し驚いたが、差し出した手を戻すと笑顔で答えた。「ええ、もちろんです。そのあと、ぜひあなたとも一緒に」そう言われて、女性は勇利があきれるほどに顔を赤面させた。
そうすけは勇利のとなりに立つと、その腕を勇利の肩にまわし、もう片方の手は反対隣りに立つサルのニット帽をかぶった少年の肩に置いた。そのポーズで何枚か写真を撮った後、しばらく子どもたちと一緒にスケートを楽しんだ。やがて子どもたちが去ると、今度はほかの人たちが二人のもとに写真を求めて集まってきた。
ようやくリンクの外のベンチで二人きりになると、そうすけは勇利の方に向き合い、確かめるような視線を向けた。その肌はまだ寒さに赤らんでいる。
「きっとこれが、勇利のベストシーズンになるよ」
そしてそうすけを見つめ返しながら、勇利もまた、きっとそうなると信じたのだった。
***
「ヴィクトーーーーーール!!イッツスパターイム!」
騒々しいクリスの声がロッジの白い壁に響き渡った。小高い山中に建てられた、最低限の壁と最大限の開口からなるクリスの別荘。午後の柔らかい光が白の革張りのソファを照らし、そこにはペーパーバックを読みふけるヴィクトルが横たわっていた。この小説を、ヴィクトルはここ数か月のあいだ読み続けている。
クリスは部屋に入ってくると、ヴィクトルの顔にかかった髪をくしゃくしゃっといじった。ヴィクトルは頭を振ってそれをかわす。伸びすぎた銀髪を気にしてくれる人がいなくなったせいか、彼が最後に髪を切ってからもう随分時間が経っていた。
「ねえクリス、まじめに聞くけど、一日に何回あんな熱いお湯につかれば気が済むの」そう言ってヴィクトルは、持っていた本でクリスの向こう脛を軽くはたいた。
「氷上の男にとって、熱さは贅沢品だよ。氷を降りたときはその熱をまっとうに甘受しないとね」そう言ってクリスはヴィクトルの攻撃をかわし、にやりと笑った。
ヴィクトルは大げさに笑ってみせて、三回目をたのしむ気なんてさらさらないことを示した。最後のスパで濡れた髪は、まだほとんど乾いていない。
「ヤコフからまた電話があったよ」 そう言うクリスの声からは、悪戯っぽさは消えていた。「いつになったら戻る気なんだい? もうずっとリンクに立っていないし、シーズンにだって出遅れている」
クリスの言う通りだった。筋肉が落ち始めて、脚もなまってきている。だけどヴィクトルは、そうした体の変化をどこかよろこんでいた。このまま、傷むことのなかった体��なってしまいたい。そんなあり得ないことを考えていた。
「勇利の新しいコーチが電話してきた」クリスの質問をはぐらかすように、ヴィクトルは本のページから視線を上げずに平然とした声で話し出した。大きな張り出し窓から差し込む太陽が彼の背中をあたためている。
「……それで? 次のコーチって誰だったの? なんでまた電話なんて……」
「上原そうすけ」 氷のような冷たさを持って、その名前がヴィクトルの唇から告げられた。
クリスは黙ったまま、眉をひそめて顔をしかめた。「上原そうすけ?」 頷くヴィクトル。
「勇利をコーチした経験について聞かせてほしいってね。モチベーションの上げ方とか、効果のあったトレーニング法とか、スケジュールとかそういったこと」
「それで、ちゃんと話せたの?」
ヴィクトルの耳には、まだそうすけの声が残っていた。声を聞いた瞬間に全身で感じた身震いすら覚えていた。「まあね。完全にビジネスライクだったよ」 ヴィクトルはクリスのほうを見つめ返したが、その目はもう笑ってはいなかった。
「それならよかったけど……先に伝えておくべきだったかな……あ、ピチットからメッセージ」
「二人は仲が良かったんだっけ?」ヴィクトルは話がそれたことに安堵した。もう一秒だって、あの男のことを考えていたくなかった。
「“友達”っていうか、ね」クリスは眉を上下に動かして思わせぶりに見返した。
「へぇ、ピチットも趣味がわるいねえ」そう言ってヴィクトルは本を閉じ、ソファから身を起こす。
クリスがメッセージを読み上げた。「ハィ、クリス。ヴィクトルと二人元気でナントカカントカ……リンクに戻ったらどーのこーの……そういえばこれ見た……あ。いや、ごめんなんでもない」 驚いた目をして、そそくさと部屋から出ていこうとするクリス。
「クリース」 疑うような声でヴィクトルが呼び止める。「クリス、なんだったの」
「なんでもない!」裏返ったその声は全然なんでもなくない。「ていうか、今は関係ないから……」クリスがごまかす。ヴィクトルはソファから立ち上がって、クリスに詰め寄る。
「ねえ、君のどうでもいいセックスライフに関することじゃない限り、大人しくメッセージの内容を教えてくれたほうがいいと思うけど」
「あ! そうそう、ただのsext。ピチットにそんなエロスがあるなんて知らなかったでしょ。別に見せるようなものじゃないから、ほんとに!」
ヴィクトルはクリスの前に立ちはだかって、鋭い目で見降ろしている。悪い予感でうなじが熱い。「クリス」胸の奥のほうから低い声で詰め寄る。食い下がらないヴィクトルに、クリスはすぐに折れてしまう。秘密を持つのは苦手なのだ。
クリスはドキドキしながらスマートフォンを渡した。ヴィクトルはメッセージに目を通すと、ぴたりと動きを止めた。ピチットが送ってきたURLをタップする。その目が見ひらく。その瞬間クリスには、ヴィクトルの心が再び砕かれる音が聞こえたようだった。
「なんで。なんでピチットはこんなものを送ってくるんだ」スマートフォンを握る手に力が入って、ヴィクトルの指の関節が白くなっている。
「ピチットとはいつもなんでもないメールのやり取りをしていて……この記事をヴィクトルがネットで見つけちゃう前に、僕に知らせておいたほうがいいって思ったんじゃないのかな」
ヴィクトルはスマートフォンを握り続けている。指の関節はもはや紙よりも白くなり、その表情は石のようにこわばっている。
「ヴィクトル、ヴィクトル!」 クリスはヴィクトルが何かしてしまう前に、その手から無理やりスマートフォンを引き離した。ピチットが送ってきたそのネット記事には、スケートリンクで一緒に滑る勇利とそうすけの写真が大量にアップされていた。ヴィクトルの目を捉えたのは、その中の一枚、氷の上で膝をつき、子どもたちと一緒になって笑う二人の写真。互いにぴったりとくっついた、二人の肩。
ヴィクトルは深く息をついた。目も顔も赤らんでいる。クリスについてスイスにやって来てから、彼は溢れ出そうになる感情をずっと堪えていたのだ。クリスはヴィクトルが泣くところを、まだ一度も見ていない。
「ヴィクトル」クリスがやさしい声で話し始める。「君は自分から勇利のもとを去ったんだ。前に進まなくちゃならないし、勇利がそうするのも受け入れないと。そうすけが次のコーチだってことは認めがたいかもしれないけど、もう考えないほうがいい」
ヴィクトルはクリスと視線を合わせた。呼吸はもう落ち着いている。「そうだね、クリス」 そう言ってしばらくクリスを見つめていたが、やがてドアの方へと向かっていった。
「ヴィクトル! どこへ行くの」
「練習」
***
今のヴィクトルには一人の時間が必要だと、クリスはわかっていた。それが彼のやり方なのだ。スピンを決め、叫び、宙へと高く踏み切り、他のスケーターがどれだけ集中してもできないようなジャンプを跳び、着地する。彼自身の体がはけ口となり、氷がそれを支え、受け止める。だけどそうとは知りながらも、一時間が経ったころ、クリスは耐え切れずヴィクトルの様子を見に行った。
プライベートリンクの入り口から、そっと様子を覗く。ヴィクトルはまるで氷上のマジックのようで、怒りに身をまかせながらもなお、踊るその姿は美しかった。クリスは何時間もそこで見とれていたような気分だったが、実際はほんの数分のことだった。四回転を跳ぶには不十分な踏み切り。一、二、三と回り、四回転目で軸が乱れた。ヴィクトルの体は、氷の上にどさりと崩れ落ちたのだ。打ちのめされたかのようなその身体は起き上がる様子もなく、クリスはこわくなった。
まるで木から落ちた鳥に駆け寄る子どものように、クリスはヴィクトルの元へ走った。ヴィクトルは膝をつき体を起こす。クリスが近づく気配にすら気付いていない。その瞬間は、まるでスローモーションだった。ヴィクトルは自分の頭の上まで拳を振り上げると、一息に氷へと打ち付けた。二度目のパンチで指の関節から血が溢れ、クリスは彼の名を叫んだ。
「ヴィクトル」 銀髪の男はまばたきすらしない。何度も氷で足を滑らせながら、クリスは必死で十年来の友人に駆け寄った。
「ヴィクトル!」 こんな姿は見たことがなかった。膝をつき、流血する拳を氷に打ち付け続けている。「ヴィクトル、やめろ!」クリスが叫ぶ。「血が出ているじゃないか!」 両手でヴィクトルの腕を掴み、その体を抱き寄せる。ヴィクトルがクリスの胸に崩れ落ちると、彼のシャツは瞬時に涙で浸された。氷の上を、ヴィクトルの悲痛な嗚咽がこだまする。クリスは片手をヴィクトルの髪に通し、なだめるようにして顔にかかった髪をやさしく撫でつけた。
強く抱きしめると、ヴィクトルの泣き声は次第に収まっていった。これが、数か月におよぶ疲労とオーバーワーク、そして胸を裂いた出来事の結果である。ただの失恋なら何度も見てきた。しかしこれほどの苦痛に沈むヴィクトルを、クリスは初めて目の当たりにしたのだ。
「なんであんなふうに」胸の奥から何とか絞り出すように、うろたえた声でつぶやいた。「なんであんなふうに、何事もなかったように、外に出て誰かと接したりできるんだ」
「ヴィクトル」 クリスは深く息を吸う。彼の中では心配と怒りが沸き上がっていた。「勇利にもしあわせになってほしいだろう」
ヴィクトルのヒステリックな嗚咽はまだ止んでいない。「勇利は俺としあわせになるべきなんだ、クリス。あんなクソ上原なんかじゃなくて」 憎しみを込めてその名が吐き出される。「一緒になるはずだったんだ。ずっと離れないはずだったのに!」子どものような泣き声を上げてヴィクトルはクリスを突き放す。クリスの手は、ヴィクトルがこれ以上傷を負わないようその腕をしっかりと押さえつけていた。
「上原はただのコーチだよ、ヴィクトル。たしかに最低なやつだったけど、もうずっと昔のことだ。勇利にはきっとあんなことはしない」 クリスは努めて冷静に振る舞おうとしたが、それもヴィクトルを刺激するだけだった。
「勇利はつらくないんだ?」 嘆声がこぼれる。「毎朝目が覚めるたびに思い出したりしないんだ? 過ごした時間や交わした会話の一個一個を思い出して夜中に眠れなくなったりしないんだ?」何か月間も装い続けてきた平静が破られ、ヴィクトルの声はほとんど半狂乱のそれだった。
「なんでつらくないんだよ!!」 そう吐き捨てると、ヴィクトルはクリスの手を振り払い、再び拳を氷上に打ち付けた。氷の亀裂する音が小さく響く。ヴィクトルの嗚咽が小さくなっていく。ヴィクトルは反対の手で拳を包むと、クリスの目を見た。現実に目覚め、ヴィクトルは静寂の中で正気に返った。
「ヴィクトル」 クリスの声はやさしく、そして震えていた。涙が流れていることにも気づかなかった。折れていてもおかしくないその拳に、クリスはそっと手を伸ばした。
「クリス」ヴィクトルもまた泣いていた。「俺は何を」
「病院へ行こう、ヴィクトル」
※作者の了承を得て翻訳・掲載しています。
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レース越しの頁の中で
入谷由紀は引き籠もっていた。郊外にある大きなフリースクールで、引き籠もり部の代表を務めるくらい引き籠もっていた。フリースクールにも長年行っていない。フリースクールに所属しながら、通っていない生徒は自動的に引き籠もり部にも所属することになり、その中でも由紀は名うての引き籠もりだった。もちろん非公式の部だが、彼はそこで不名誉な「部長」を努めていた。時々、生存確認に先生が家にやってきた。先生と言っても、彼より年下の女性だ。髪は短くて、彼の女の子の友人(やはり先生より年上なのだが)とは違う、涼やかな森のような匂いがする。由紀の部屋のカーテンをそっと開けて、「糸杉が…」と漏らすような変な先生だった。確かに糸杉が立っているのは知っているけれど、それってそんなに口にするほど大した木か? と入谷は思う。黒々として、年中枯れ木みたいな木だ。先生は由紀の椅子に座り、ミルクティーを飲み、ティーカップをかちりとソーサーに置くと、「じゃあ、ユキくん、ごちそうさま」それから「美味しかった」と言って立ち上がる。由紀は普段、ティーカップなんて使わないし、ミルクティーを自分の手で入れることもない。ただ、先生がミルクティーを好きだと知っているので、彼女が来ると分かると、せっせとお湯を沸かし、ミルクを温め、���で香り付けのバジルを摘んでくるのだ。彼にはそういうまめなところがあったけれど、本人はそれを自覚していなかった。ただ、自分は何も出来ないんだ、とばかり考えていた。 由紀の部屋は簡素と言っていいほど片付いている。しかし、煙草と、男性特有のにおい(といっても「女性特有の」においについて彼はあまり知らないのだが)に充満していて、先生や友人(ひとりだけいる)が来るときにだけ、急いで窓を開け、消臭剤をカーテンやベッドに吹き付け、身体を洗い、髭を剃り、微かに香る程度の香水まで付けて、「いつもこんなにさっぱりしているんですよ」と言った表情を用意し、彼女らを待つ。部屋にはギターが二本、立てかけてある。一本はフェンダーのテレキャスター、エレキ・ギターで、もう一本はギルドのアコースティック・ギターだ。「弾いてみてよ」と先生が言うときもある。彼は「緊張しちゃって……」と、それからぼそぼそと言い訳めいたことを言い、先生はそれ以上は無理強いをしない。いつものことだった。それから本の話をすることもあった。本棚に入りきらない本も沢山あったのだけど、彼の本棚は綺麗に整理されていて、大方は日本語の小説、本棚の一段には洋書が並べられていて、その殆どが英語の本、数冊がフランス語の本だった。一番目立つところに村上春樹の文庫本がほぼ全冊並べられていた。由紀の部屋にあるものは殆どそれが全て(パソコンとスピーカーの乗ったデスク、ベッド、本棚、ギターが二本、アンプがふたつ、あとはCDラック)だったので、自然に話題が、好きな小説の話になることは多かった。というか、今では由紀は、自分が好きで小説を読んでいるのか、先生や友人と話したくて小説を読んでいるのか、分からなかった。彼は元来、本は好きだけれど、読書家という訳ではなかった。 友人が家に来ることもあったし、彼が友人の家に出かけることもあったので、厳密には彼は引き籠もりではなかったかも知れない。家の中にいるのが好きな訳でもなかった。とにかくただ、由紀は動きたくなかったのだ。そのマインドはまさに引き籠もりの鏡と言えよう。 引き籠もっていた九年間の期間、彼は何もしなかった。激しい鬱だったのだ、と言えば言えたし、怠けていたとも言えば言えた。その間、本すら殆ど一冊も読まなかった。読めなかった。2019年の12月が近付き、彼は32歳になろうとしていた。30歳になれば何か変わるのだ、と以前には考えていたが、具体的に何が変わるのか考え付かないままに、いつの間にか一年が過ぎ、二年目が近付き、今年の11月も終わりに近付いていた。今は2020年になれば何か……と考えている。しかし何が? 12月1日が、彼の誕生日だ。この二ヶ月間、彼は入浴すらしていなかった。水が身体を這う感覚が気持ち悪いというのもあるし、水の音が人の声に聞こえそうで怖かったのだ。昔、彼に上手く作用した薬は、今は彼の絶望を少しも薄めてはくれない。いつも怠さに支配されていた。何故生きているのか分からない。死んだ方がいい、と言われれば、彼には、確かにそうだ、としか答えられなかった。 彼は飲みかけの缶ビールを手で揺らす。1mgのサイレースと200mgのセロクエルをビールで飲む。それがどんな効果を及ぼすのか彼には分からない。ソラナックスも一錠追加する。夜にはまだ早いが、外は暗くなり、小鳥たちは騒がしく帰り支度をしている。由紀はベッドに横になり、iPhoneのアドレス帳を見るともなしに見る。途端、彼は何か嬉しい感情が、身体の中を立ち昇ってくるのを感じる。が、それは表情となる前にかき消えてしまう。何だったのだろう? 彼には間宮理沙という無二の親友がいた。それから綾嶺さくらという、やっぱり親友と呼んでもいい人物がいた。他にも懐かしい、大切な名前が映る画面を、彼は人差し指でゆっくりとスライドさせていく。 「ねえ、人生を捨てられる?」 と、いつしか間宮は言った。 「ひとつ。何かのために人生を捨てられれば、そのとき人生が分かるのよ。故に恋愛は尊い」 と間宮は続ける。由紀はそのことはよく分かるような気がした。でも、たったひとつの、一瞬に充たない、その人生を放棄出来る瞬間を、どうしても彼は掴むことが出来ずにいた。いや、一端始めるだけでいいのだ。人生は14歳で始めることも出来るし、91歳で始めることも出来る。確かそういうことをシド・ヴィシャスが言っていた。 何かを変えることが出来るだろうか? 由紀はビールで風邪薬を十錠飲む。これは良くない習慣だ。でも、あと一錠。あと一錠が何かを変えてくれるかも知れない。近頃は音楽も聴いていなかった、ということに彼はふと気付く。薬を飲むと沈黙の濃度が増す。無音。それからパソコンのファンの音。外を吹く風の音。車の音……。ねえ、多分、ここにいたら僕は駄目なんだよ。由紀は考える。大学にいたとき、僕は本当に何もかもうまく行っていたはずじゃないか。薬が作用して、関節が心地よく怠くなってくる。薬をまた十錠、追加することにする……。寒気を感じる。いや、実際に寒いのだろうか? 由紀は音楽を聴こうとiPodの電源を入れ、ミュージシャンのリストをぼんやりとスライドさせる。何も聴きたくない。彼は目を瞑る。目蓋の内に闇が拡がり、彼は急速に眠りに落ちていく。眠る瞬間、時計を見る。六時半。……それにしても、俺は、上手く行っていたんだ。うまく。うまく。うまく……。 生活音が気になってうまく眠れなかった。少しの時間、眠っている間に、彼はとても素晴らしい文章を書いている夢を見ていたような気がした。彼は、もし文章が書けたら、とよく夢想した。何か、とてもいい文章が書けそうな気がするのだが、いざワードパッドに向かうと、何も出てこない、あるいは事前にはいいと思えた文章も、書いてみて、書かれたものを見直すと、とても陳腐だったりした。才能が無いのだ、と思った。そ��とも勉強不足なのだろうか? 経験不足なのだとしたら、もう救いようがない。本を集めているのは、本当は書きものの参考にしようと思ってのことだ。 人を変えるのは習慣だし、人の性格を固定化するのも習慣だ。けれど、由紀には、自分が習慣を持っている、という自覚は無い。時計を見ると0時30分を指していた。 ベッドから手を伸ばすと、アコースティック・ギターに指先が触れた。由紀がギターの生演奏をしないのは、特に照れている訳ではなく、生演奏というものがあまり好きではないのだった。自分の演奏を多重録音してコンピューターで加工してから、音源をUSBに入れて、人に渡すことを、彼は好んだ。先生にも渡したし、間宮にも渡した。彼女たちの言辞を信じるならば、彼の音楽は概ね好評だった。それにしても、怠くて、もう長いこと、音楽の録音もしていない。今年一年、僕は何をしてきただろうか……? 目を覚ますと、もう昼の一時を過ぎていた。また眠りすぎてしまった。身体中が痛い。彼は椅子に座って、身体を捻る。iPhoneを見ると、間宮からメールが二通来ていた。一通目は朝の8時頃で『9時頃行こうと思うんだけど?』と書かれていて、二通目は正午過ぎ、『寝てる? 起きたら連絡して』と書かれていた。 由紀は自分が起きている気がしなかった。ゾンビのような足取りで台所に行くと、冷蔵庫の野菜室から飲みかけのワインを引き抜く。もう二口分くらいしか残っていなかった。風邪薬を十錠と、迷ってから、サイレースとセロクエルもワインで飲むことにする。他力本願だった。薬が、良くも悪くも、何かを変えてくれるかも知れない、といつも彼は期待した。大抵は悪い方に作用したのだが。栓を抜いてから大分経っていたらしいワインは、一口飲むと吐き気を催した。それから煙草を吸って思案する。煙草を吸いながら、クローゼットを開けて、とりあえずましな服を引きずり出す。まだ間宮に会うと決まった訳ではない。椅子に座ると、そのまま眠ってしまいそうだった。風呂に入るのが面倒くさいから会いたくないなんて間宮に言ったら怒るかな? いや、彼女なら「じゃあ、お風呂、一緒に入ろう」とか言ってきそうな気がする。……由紀はまた風邪薬を十錠、残り少ないワインで飲み下す。ワインが無くなる。今度は吐き気はしなかった。煙草を吸う。焼き魚みたいな味がする。由紀はiPhoneの返信画面を開いて、間宮に『ごめん、今日は無理だ』とメールを書いた。それから、彼はまたベッドに横になり、目を瞑った。睡眠薬が効いてくるのが分かる。彼は再び、眠りに落ちていった。 アーティスティックに生きたいと思った。由紀は、芸術家という意味としてではなく、「何かを作る人」という意味での、「アーティスト」という言葉が好きだ。「作る人」という意味がもっと強い「アルティザン」という単語はもっと好きだ。彼はアルティザンになりたい、と常々思っていた。彼は書きものをする。絵を描くし、音楽を作ったり、演奏して録音したりする。でも、もう32歳だ。32歳で、何も大したものが作れないなんて、それはやっぱり創作には向いてない、ということなのではないだろうか。 「そんなことないよ。入谷くんの作るものはどんどん良くなっている」 と、間宮は言ってくれる。 由紀は、ギターを手に取り、その度に溜め息を吐いて、ギターを下ろす。綾嶺さんは、「君はまだ若い」と言う。もう十年以上も前から、綾嶺さんは僕に「若い」と言う。彼女は36歳だ。僕が若いというのなら、彼女だって十分若いと言えるのではないか? この間、間宮が家に訪れたのは二ヶ月前、九月の末だった。いつも通りに由紀は薬を飲みすぎていたけれど、頭の芯の部分は醒めていた。 涼しい日が続いた後の、暖かすぎる日だった。彼女は黒地に赤と青の花が描かれたTシャツを着ていて、薄手のニットのカーディガンを持っていたけれど、それを着ることはなかった。彼女は僕の部屋を見回して、 「わお、また本増えたね」 とまず言った。僕の部屋には、机の上にもベッドの脇にも、クローゼットの中にも、本が積まれている。多分、全部で千冊以上の本を、持っているには持っている。殆どが読み通していない本なのだが。 間宮が来ると、毎回、何か変わらなくては、と思う。彼女はプレシジョン・ベースを持ってきていた。 僕は多分、中途半端なのだろう、と由紀は思う。きちんとアルティザンならアルティザンなりの矜恃を持てばいいのに、創作に入ると、「自分は素人なのだから」という甘えたことを考えてしまう。 間宮はその点、真面目だった。十年前に由紀の勧めでベースを始めた後、どんどん腕前を上げて、今では不定期でセッション・ミュージシャンを務めるまでになっている。由紀のギターの腕前は、十年前から、少なくとも本人の言では、変わっていなかった。32歳。でも、もう、今度こそ、物ごとには真面目に取り組まなくては。 廊下の冷蔵庫からペリエを出してきて、ふたりで飲んだ。間宮は、由紀が書いて印刷した原稿を熱心に読んでいた。彼女が「んん」とか「ふうん」と言う度に、由紀はぎくりとした。時々、彼女の真っ直ぐな髪の毛が横顔にパラパラと落ちてきて、間宮はそれを左手でかき上げた。それから、急ににっこりと笑って、由紀を見ると「面白いよ、すごいよ入谷くん」と、嘘でも無さそうに言った。彼は、「うん、それはね……」と考え込むような顔をしてから、「まあ、まあまあ、よく出来ているとは思うんだけど」と言ってから、黙り込んだ。その後、由紀が作った音楽を二人で聴いて、大体同じようなやり取りが繰り返された。 その後で、間宮がベースをケースから出して、アンプに繋ぐ。そして由紀にも弾くように促す。間宮と一緒だと、まるで自分がとてもギターが上手くなったような気がする。由紀はテレキャスターをアンプに繋いで、Aコードから始まる、カッティングを織り交ぜたリフを弾く。間宮はそれに、指弾きのエキゾチックなラインで応える。何度も同じリフをループさせた後で、由紀は歌い始める。ループの中で、渦巻いていた単語が次々と由紀の口から吐き出される。言葉は一体どこから来るのだろう? 音楽の中で由紀の言語感覚はどこまでも拡がっていく。途中、変拍子を混ぜるが、間宮がそれに遅れることはない。コード進行を徐々に変化させ、7度や2度の音を混ぜて、どんどん複雑にしていく。一曲の突発的なセッションは、一時間以上も続く。途中、由紀はドラムマシンのスイッチを入れ、ツマミを限界まで回し、デジタルな、潰れたような音のリズムを鳴らし始める。二人ともが共通して好きな、チープなドラムの音に、間宮は口角だけを上げて、にやりと笑う。匂い立つ海のようなグルーヴに合わせて、由紀は音をゆっくり探りながら、そして徐々に盛り上がるように、ギターソロを弾く。そのときだ。由紀がいつも、何かを発見したように思うのは。けれど、ギターが徐々にフェイド・アウトして、ドラムマシンのスイッチを切るとき、その何かはいつも、記憶の裏側、この世界の、自分には見えない側面に去って行ってしまう。 しばらくの間、間宮は見るともなしに壁の方を見ていたが、おもむろに由紀の方へ振り返ると、 「ねえ、入谷くんのギターには人生の匂いがするよ。大丈夫。君は何にだって冷めていない」 と言った。由紀が何か言おうとすると、間宮は、 「ううん。まず、私が楽しいしね。本当だよ。入谷くんはとても楽しい。歌うのだって、ギターを弾くのだって、描くのだって、とても個人的な部分をさらけ出すようにしているでしょう? それは普通、とても怖いことなの。だから大丈夫。入谷くん、君は大丈夫だよ。とても勇気があるのだから」 と言った。何故かどこか寂しそうな目をして。もちろん……、もちろん大丈夫なんかじゃない、と由紀は思う。全然、全然、僕には足りてなんかないのだ。個人的な部分、がどんなものかは知らない。彼はただ、もっと上手に弾きたいと思っていたし、上手に歌いたかったし、上手に書きたかった。けれど、間宮がお世辞を言っている訳でもないみたいだった。彼女は本気で、由紀のことを高く評価していた。そのことが多くの場合、由紀を困惑させた。 起きると、部屋の中が暗くなっていた。昨日の夕方から、殆どの時間を眠って過ごしている。由紀はカーテンを開ける。秋とは違う、冬の空の夕暮れが見える。雲の形は弱々しく、糸杉の枝の揺れ方も違い、窓を開けると、もちろん空気の肌触りも違った。こわばった死人の手の平みたいな風景だ、と由紀は思った。その手に捕まると、心の、灰色の部分が締めつけられ、そこから不安な灰色の液体が滲み出てくる。 不安だった。何もかもが不安だった。 彼は空腹を覚える。今日は何も食べていなかった、ということに思い至る。由紀は台所に行き、冷蔵庫を開け、チーズの固まりを見付ける。チーズを皿に載せ、ペティ・ナイフで薄くスライスする。数切れのチーズを皿に載せて、部屋に持って帰る。途中、廊下の冷蔵庫からペリエを出す。においの強いチーズだった。ワインがある内に一緒に食べればよかった。彼は再びiPhoneのメール作成画面を開いて、間宮にメールを書く。 『ねえ、明日は会える? 今日はごめん。何をするのも本当に億劫だったんだ』 メールを送信する。チーズを一切れ食べる。カーテンを開け、夜闇に沈みつつある糸杉を眺める。色彩が浪費されない、ということは素敵なことかも知れない。世界が全て糸杉のように落ち着いた音色……そう、音色だ……をしていたらどんなにいいだろう。モノクロで、感触は透明で。 由紀はギターに手を伸ばしかける。けれど、ギターは今ではただの死んだ木でしかない。その手を引っ込めて、由紀は急に思い立って、久しぶりに綾嶺さんに電話をすることにした。 七回鳴って、綾嶺さんは電話に出た。またお酒を飲んでいたらしく、ひどく酒に焼けた喉声をしていた。 「ああ。入谷くん。珍しいね……、君が生きていると嬉しいよ」 いきなり大仰な台詞を言うのは綾嶺さんの癖だった。 「綾嶺さんこそ。生きていて嬉しいですよ」 「心にも無いことを」 「いや、本当ですよ。それに、人は、生きているだけで価値がある、とは思いませんか?」 「私は、全く思わないな。私に何の価値がある?」 「僕の友達でいてくれますよ。僕はそれだけで嬉しいです」 「あのね、君……、酔ってるな?」 「酔っててもそんなことはどちらでもいいでしょう? 普段はあんまり言えない僕の本心ですよ。それに酔ってません」 綾嶺さんが煙草に火を着ける気配がした。煙を吐いて、 「そうかい。私に言ったこと、君自身に対しても同じことが言えるかい?」 と言う。僕が言い���んでいると、 「私はいつも真面目だよ。君が生きていてくれて嬉しい。時々、入谷くんが死んでしまったような予感がするんだ。それは、本当に、本当に、いたたまれない感覚なんだよ」 と綾嶺さんはあまり抑揚を付けずに言った。僕は黙っていた。と、唐突に電話が切れた。「じゃあ」も「さようなら」も無しに急に電話を切るのも、綾嶺さんの癖だった。 『通話時間:二分一秒』の画面がiPhoneにしばらく表示されて、それからメールの着信が一件あることが表示された。当然、間宮からだった。 『明日はもちろん会えるよ。今晩仕事が入ってて、夜遅いから、明日、昼頃からなら会える。いや、何なら朝からでもいいよ。』 と書かれていた。由紀はどういう訳かとても悲しい気分になった。一度iPhoneの画面を切って、iPodを手に取る。登録された全てのアーティスト名に一応目を通して、ニック・ドレイクを聴くことにする。冷たい気分が訳もなく胸の内を拡がっていくとき、由紀はニック・ドレイクを聴く。何か、そう、何か変わらなければ。冷たさが口や喉から溢れそうになる。間宮に、ずっと言えなかった言葉があるような気がする、と由紀は言葉にして考える。僕が大学にいたときから言えなかったことだ。僕は本当のところは、彼女無しでは生きられなかった。それなのに、彼女は僕に、強い、と言ってくれる。ねえ、変わらなければ。由紀はiPhoneのメール作成画面をじっと見つめ続ける。やがて、意を決して、彼は間宮に電話をすることにする。多分、僕は「何でもない」と言うだろう。何でもない。でも、僕は何かを始めたいと思っているんだ。僕は本当に変わりたいんだよ。……少しずつ良くなりたいんだ。間宮、これをその始まりにしたいんだ。何でもない一日の、何でもない瞬間。笑って、他愛のない話をするだろう。けれど僕は……。 由紀は、間宮に向けて、発信ボタンを押した。
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私のいちばん長い日
1:12
性愛と愛は近似できる。性愛のない愛は異常である。どうやら世界はこのような合意でもって、私を排除しようとしているらしい。私は性のない愛をひたすら主張しているのに。
愛のない性愛。そんなものがある世界では、私は存在したくもない。ばっちい。
法的な解釈では、ピンクサロンは飲食店だ。簡単に言えば『狭い部屋で突然店員と客が愛しはじめ、性を始めた』という建前を掲げているのだ。つまり、金銭の授受とは無関係に愛が生まれるわけで、これは好ましい事だった。建前だけは。建前だけ好ましくて、それ以外は最悪な仕事。
経済面でひどく苛まれる事がなかった私にとって、性風俗で食べている女性というものは、テレビで見る中東の景色やNetflixで見る第二次世界大戦と大差ない。自らの尊厳を試される、そんな事は非日常であり、行き詰まって余裕なんてものは記憶の彼方にある世界なわけだ。
世の中甘くない、なんて言うがそんなのは嘘っぱちだ。何だかんだで私は未だに学生だし、そこから落伍しても生活保護があるし、選ばなければ雇用はどこにでもある。何だかんだで生きているし、道端で野垂れ死ぬなんてことはあり得ない。数多ある働き口の中からピンクサロンなんて愛のカケラもない仕事を選んだ女性について、私は興味を持っていた。それ以上に、その女性のテクについての興味の方が強いのは隠すつもりはない。
1:24
フェラチオとは。知ってる知ってる。予習は抜かりない。口でやるやつ。歯を立てたらダメなやつ。甘噛みはバイブス次第なやつ。漸近すると選択肢が現れ、口か顔かを選べるやつ。最初は迷わず口を選ぶやつ。2回目で悩みつつ顔にするやつ。知ってる知ってる。
荒んだ世界では前歯が抜かれたりするやつ。クスリをやって歯が抜けたのを言っても「歯なんてフェラチオするのに邪魔なだけだ」ってあしらわれるだけのやつ。
進んだ世界ではガイノイドが担当するやつ。ロボットが暴れ出すと一番最初に被害に遭うのはガイノイドを慰み物にしていた男性のやつ。「食いちぎられてやんの、ひでぇもんだ」って刑事に言われるやつ。
そして荒んでもいない上に進んでもいないこの世界では、普通の女性が普通にフェラチオをする。自分に何度言い聞かせても、よく分からない。それは難しい数式のようなもので、どんなに瑣末な理解でも、それが確かなものであれば必ず役に立つのだ。逆に言えばカケラでも理解できなければ、知っていたとしても役に立たない。
はっきり言って、フェラチオとは私にとってフィクションだ。偽物の世界で行われる存在しない戯れだ。道草屋にも存在しないから、きっとフィクションの世界の中でも大して知れていない行為なのだ。
1:35
サイトを見る限り、顔は隠されていて、源氏名と年齢、身体情報だけしかわからない。店のロゴで顔を隠した顔写真、要るのだろうか。炭酸の抜けたコーラよりも役に立たない。炭酸の抜けたコーラは炭酸を入れ直すことで元どおりになるが、顔を隠した顔写真は元に戻らない。店のロゴを取り払って顔はめパネルでも作ってみればいい。腕突っ込んでピースしてやる。この野郎め。
しかしWikipediaのピンサロの項目を読んで捗った自分には嘘はつけない。嬢に会うのが楽しみだ。
薬も効いてきたので寝る事にする。
眠れるだろうか。想像以上にドキドキしている。
アレクサにおやすみを言い、消灯してもらう。
2:29
道草屋について友人と話した時、「オチンチンの事をオモチャだと思ってるから突然手コキされても怒らないんだ」と言われた事がある。その時は私のオチンチンはオモチャだと言った。金に困ったら丸ごと売ってやるとも言った。地元の祭りの時屋台なんか行ったらやってるのは射的、金魚すくい、型抜き、オチンチンだぞ、とまで言った。
私のオチンチンが、試される。オモチャかどうか、試される。
12:02
全く眠れなかった。身体の節々が痛む。どうであろうと人生の残り時間は減ってゆくため、多少のバッドステータスも無視しなくてはならない。アレクサに「行ってきます」と言うと部屋の明かりが消え「行ってらっしゃい、しっかりね」と返される。
しっかりね、私の野性。
12:16
コンビニでバッドステータスを解消するアイテムを購入。その名を凄勃。980円で、Tポイントが100点ついた。
「袋いりますか?」「シールで」
店員がこちらを見た気がする。
コンビニの外で服用した。ファミチキもファミからもここで食べるので、問題ないはずだ。ゴミ箱も据え付けてあるし、言ってみれば『ここで装備してくかい?』に対するYESの場所である。なんなら下着を汚した時もここで履き替えてやってもいい。前の下着はゴミ箱に捨ててやる。
錠剤2つに、使い切り目薬のジャンボ版みたいな容器に入った液体。ハイグレードな栄養ドリンクの味だった。美味いとは言えないが、クセになる味。
妙に高鳴る胸の鼓動を抑え、携帯で店の情報を頭に入れる。この時間帯は3人がいるらしい。ポケモンかよ。タイプが性だけで偏っているため、ライバルは必ず法ポケモンで戦ってくるだろう。
20分と35分の選択肢があり、値段は4000円と6000円だった。私は悩んだ。安い買い物で後悔した経験から、35分にした。幸い時間もある。あるとしか言えない、このくらいの心持ちで、35分に快を見出すことにした。
ブリーフィング
入店し、指名なし35分を選択する。ここで初めてである事を主張しておく。
なるべく施設内の状況を確認する事。
嬢の容姿も確認する事。
嬢には笑顔で対応し、相応の反応をする。
選択肢が出た時は状況に応じて柔軟に対応する。
事後対応は嬢に任せる。
延長する事なく退店する。
12:34
もはやこの動悸は嘘ではない。快への衝動も嘘ではない。
殺すか死ぬか、笑うか泣くか、勝って娶るか負けて孕むか、そのくらいのコンディションまで持ち上げられていた。昨日が凄二十であるならば今は凄十、いや、凄一だ。バトルロイヤルゲームの最終フェーズくらい活発になっている。
さて、性の開始だ。
入店
作戦開始。
作戦終了。
退店
13:22
終わった。まあ、こんなもんだろう、そんな感じだった。
行く前に様々な性の形容を考えた。『右手を一桁同士の繰り上がりのある足し算、ぷにあなを九九としたら、ピンサロはε-Δ論法だ』とか『石器時代 VS. スパコン』とか『異世界にスマホ』とか。
35分に至る性の結果、浮かんだ言葉は「こんなもんだろう」だった。嬢に罪も無ければ、店に罪があるわけでもない。ただひたすらに、フラットな「こんなもんだろう」という感想が支配していた。
のめり込むヤツもいれば、そうでないヤツもいる。
酒に強いヤツもいれば、酒に弱いヤツもいる。
依存から煙草を吸うヤツもいれば、やたらと嫌うヤツもいる。
こんなもんだろう。35分で6000円。その料金であのサービスなら妥当なもんだ。そこからピンハネされて嬢に届く額面は幾らだろう。彼女は土曜のオープンからクローズまで様々な男の相手をして、それで幾ら貰うのだろうか。気になるのはそれだけだった。
デブリーフィング
薄暗く、質の悪いスピーカーが邦楽を流していた。
スーツを着込んだ男性に張り付いた笑顔で対応された。
システムの説明をされた。作戦通り35分と言い、6000円を手渡した。
爪の確認をされた。この時、部位への接触がある事を知った。
アルコールで手を除菌された。気化熱をさほど感じなかったため、おそらく除菌効果のあるスプレーだろう。
部屋へ案内された。部屋、と言っても背の低い間仕切りがあるだけで、隣では禿頭が見え、嬢とキスしているのが確認できた。
荷物入れに荷物を置き、席に着く。この時点で自分が作戦継続に障る程緊張している事に気付く。
先程の男性が麦茶を出した。飲食店であるのは知っていたが、何故か虚を突かれた。不動産屋でも家電屋でも長話になれば水や茶を出す事は知っている。ヨモツヘグイ的な不穏を感じ取り、私の判断で麦茶には触れなかった。この判断が正しかったかは分からない。
しばらく待たされた。スピーカーから流れる雑音には、他のツガイの会話等が聞こえなくなる作用があり、確かに機能しているようだった。
嬢が来た。名前を言うがスピーカーに妨害されて不明瞭だった。嬢はおしぼりを3つ持っており、それは明らかに3つのフェーズがある事を明示していた。
嬢が1つ目のおしぼりの封を切った。そ一般の飲食店のように渡されたため、手を拭く用途と断定し、手を拭いた。反応を見る限り間違いではないようだ。
何気ない世間話が始まった。唐突にゼロから始まるコミュニケーション以上に面倒な事はない。昨年度から働き続けている24歳の社会人で、彼女は大学一年の頃にいてそれっきり、平日は働き詰めで、土日に遊ぶためにここにきた、そういう人格が形成された。一度嘘をつけば矛盾を生じないようにするため、嘘がでる。繕った世間話なんてやめて、さっさとおっぱじめて欲しい気持ちがあった。しかし情報に疎いため下手な行動に出るのは駄目である。
唐突に世間話が終わり、嬢がパンツを脱いで顔を寄せ「キスしていい?」と聞いた。やっとだった。
第1フェーズにはキスも含まれているようだった。言わば雰囲気作りだろう。そんな事を考える余裕もなく私は舌を絡めるのに夢中になっていた。「触ってもいいよ」とも言われた。当然乳のことだ。嬢の言葉に従って触る。嬢は甘い声を出す。あつらえたものであっても、自分の行為に対して反応があるというものは嬉しい。
キスをしばらくしていたら嬢が何か言った。雑音のせいで聞き取れなかったので聞きなおしたら「オチンチン出して」とのこと。そして嬢が離れ、2つ目のおしぼりを開けた。机にある霧吹きで入念に濡らし、私は第2フェーズの衝撃に備えていた。私のオチンチンはそれなりに元気だった。まあ及第点だろう、という評価を下した。エロ本を閲覧している時、あるいは図らずも助平な絵のツイートを見つけ、アカウントのメディア一覧を眺めている時、それくらいだった。もう少し努力できるだろう、とも評価した。
オチンチンを見て、嬢は「おっきいですね」と言った。社交辞令のようなものだ。そう言い聞かせつつも喜んでしまった。世の中には大きい事がコンプレックスの人間もいるかもしれないのに、と考える程度の理性すら作用していなかった。もう理性は嬢のキスと甘い声によってドロドロに融かされていた。
オチンチンを拭かれた。部位を触られる感覚は慣れていない。入院した時以来だろうか。綺麗にする程度の力具合だったのでドキドキこそすれど、勃起がギア・セカンドすることはなかった。
そうして第2フェーズは、手による刺激から始まった。キスをし、時折胸をまさぐり、抱擁を重ねながらも、その間ずっと嬢の手は私のオチンチンにあった。気持ちよかった、とはいささか乖離があり、どちらかというとくすぐったいに分類される感覚に、私は焦っていた。
私の感情を察知してかどうか、嬢が「下も触っていいよ」と言った。つい「いいんですか?」と聞いてしまった。本番無しだから決して使うことはない。その場所を触る必要は果たしてあるのか、なんて事を考える無粋な男ではない。「いいよ」と嬢。
私は不安だった。この程度のプレイで嬢は果たして濡れているのか。金銭の授受がある以上、私に矛先が向かうことはないのかもしれないが、ここはピンクサロン。「部屋を貸していたら店員と客が恋に落ち、愛しはじめた」という建前があるのだ。そんな事を考えるまでもなく、不安だった。とにかく私は欲求のままに従った結果の一つとして部位がファック・レディしていないという可能性に怯えていた。部位を撫でる。甘い声が脳を痺れさせる。それはそれとして、まさぐり膣を探す。また甘い声。数十秒くらいの焦らしという名目で探った結果、膣を見つけた。あまり濡れていなかった。入り口をいい具合に愛撫し、濡らす。私の技巧と勘違いするくらい嬢は甘い声をあげていたが、そこまで自惚れていない。相手はプロだ。
なんとか入ったら、嬢が息を漏らす。結構気に入っているようだった。後から考えた事だが、キスとフェラチオしかしない仕事で唯一楽しめるのが愛撫だろう。フェラチオなんて顎が疲れるだけだと聞く。客だけ気持ちよくして自分は気持ちよくなれないというのは、確かに賃金が払われるとしても不公平だ。
これがアレなのか、という解剖学的な、嘘、エロ本学的な見地から知っている部位と触れている部位を対応させていた。嬢は「もっと激しくしていいよ」と言う。私は自分の加減で激しくして、耳元で漏れる息や抱きつく力が時折強くなるのを楽しんでいた。
「耳舐められるの、ヤバいよね」と言われる。私が耳かき・耳舐め音声を好んでいるのを見透かされ、なすすべなく「はい、めっちゃ好きです」と返答する。嬢は私の耳を舐めてきた。吐息を漏らしながら舐めるものだから、私のオチンチンはギア・セカンドを宣言した。嬢は手の中の感触を受け、笑顔をこちらに向けた。だが姿勢の悪さとかスピーカーの煩さとかもあって、耳かき音声程のASMRは得られなかった。いつか耳かき系の専門店にも行ってみたいものだ。
さて、嬢がオチンチンの方を向き、唾液を垂らした。始めるらしい、確かな期待を胸に抱いていたが、嬢の姿勢が変わったせいでそれに応じて部位の触れられる場所が変わったため、残念に思っていた。
フェラチオが始まった。こちらに視線を寄せ、舐める。私は反応に困り、作った笑顔を嬢に向ける。エロ本を読んでいる時の顔でもすれば良かったのかわからないが、私は期待まみれで真顔に近かっただろう。後になって思うが、私はエロ本を読んでいる時も真顔だ。恋愛ADVをしている時も大抵真顔だ。ニンマリするのは、音声��一部が1kHzの純音に置き換えられる時だけだ。私の性は、今の今までずっと真顔だった。そしてこちらに顔を近付け、キスを迫る。キスをして思った。このキスは汚くないか? だが気にする事もなかった。いいじゃん、汚くても。綺麗なキスなんて存在しない、そう言い聞かせながら舌を絡めた。
姿勢を変え、私はソファーに横たわった。脚に髪の毛が当たってくすぐったく、それが心地よかった。幾度となくオチンチンを舐める嬢と目が合うが、私は作った笑顔で応答する。悪いことをした、と思った。作り喘ぎ声の一つでも習得できていれば、なんて言ってもどうしようもない。しばらく悩んでいた。このまま選択肢が来るとは思わない。前歯が当たる感覚を前にしながら、私は萎えはじめていた。
姿勢を戻した。椅子らしく座り、横に嬢が座る姿勢。彼女は手による刺激をずっと行なっていた。私は膣に指を挿れたり乳に触れたり、そしてキスをした。ふと、彼女の右腕に手が伸びた。激しく動かし続けている、細い右腕。鍛えられているので筋肉痛にはならないだろう、と考えた。だが選択肢は現れそうにない。そもそも手コキに選択肢は出てこない。もう一度キスをして、フェラチオに戻る。もうどうしようもなかった。選択肢は現れない。頭の中で気持ちいい事を想像しても、ギア・セカンドになるだけで、絶頂に至る程の興奮は得られなかった。何度か聞こえていたが、また男性の声がスピーカー越しに届いた。不明瞭な話し声だが、二番さん、という言葉が含まれていたのは分かった。おそらく終わりが近いのだろう、と考えた。
嬢がフェラチオをやめ、こう言った。「楽しい時間はすぐ終わりますね」と。つまりは、そういう事だった。規定の35分が過ぎる、という意味だ。最後のおしぼりを開ける。霧吹きで濡らしてから、オチンチンを拭く。つまり第3フェーズだ。もう性は終わっていた。オチンチン・ランページの後始末が第3フェーズらしい。
嬢は「イカせられなくてごめんね」と言う。私は「いやあウチの息子が言う事を聞かなくてごめんなさい」と返す。脱いだものを履き、準備をしていて、と言われ、嬢が下がる。
荷支度を済ませて氷の融けている麦茶を眺めていたら、嬢が戻ってきた。スピーカーから「二番のお客様お帰りです、笑顔で送ってください」と声がした。
嬢は店の出口まで見送ってくれた。手も振ってくれた。私は苦い笑顔で返すしかなかった。
雑居ビルの外、太陽は高く照りつけ、そして街の往来は休日らしく、老若男女が笑いながら歩いていた。
16:47
今回の性では射精ができなかった。原因を挙げると
・自慰の過多により触られる感覚が違和感として認知されていた。
・雰囲気に順応する事が出来なかった。
が考えられる。
従ってピンクサロンで選択肢を出すためには
・自慰をやめる事。
・嬢との世間話をしっかり行い、バイブスを高める事。
が考えられる。
前者は自分の尊厳上許されないが、後者であれば実現性が高い。しかしそれにはコミュニケーションコストが跳ね上がり、一回の絶頂に見合わない苦労が考えられる。
従ってピンクサロンに行く事は金の無駄だ、という結論が導かれてしまいそうだが、そんなことはない。女性の手や口の中にオチンチンがあるという事が私をどれだけ興奮させたか、その価値は35分6000円では安いくらいだ。だが絶頂が目的の店で精液を出さずに触ってもらうだけ、というのは嬢にも悪いし客としても悪いような念がある。
持論としては『彼女作ってダラダラセックスした方が気持ちいいだろう』だ。時間の制限というものがなければ、口か顔かの選択肢を出せたかもしれない。しかし、金銭の授受がなければそんな事ができない人間もいる。だからこそピンクサロンはじめ様々な性風俗店が存在するわけなのだが。
今の私は女性との性そのものにそこそこ惹かれている。まあ女性でなくても良いだろう、と言うと議論が発生するが、今回の作戦は私の性そのものに対する考えを改めさせた。俗悪な行為だと断定するのは良くない。気持ちいい事はいい事だ。
気持ちいいのは、嬉しい事だ。
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2018下半期に聴いた音楽と適切に想像力を働かせるということ
下半期聴いた音楽20タイトル。リンクとか貼らない相変わらず不親切な、音楽的知識が皆無だから妄想で書いたレビューと私情。 日々を生きる上でこの分析癖と妄想癖は意外と役に立っているし、自己満足でも文章にするのは自己追求でもあるから大事だと思っている(その割には更新しないブログ)
Years & Years/Palo Santo
Kelelaをもっとバーチャルにした近未来的エレクトロポップでありサウンドの隅々で体温のある”ナマ”を感じる作品。「アンドロイドに支配された惑星を舞台にした」というコンセプト・アルバムだが、現代世界へのアンチテーゼというポーズを取らないところが粋。むしろ怒りを手放すことで固定的な視点からの解放の地を、このディストピアから見ているのだ。尊いはずの現代世界への祈りと救済のソウル。癒されるなー。
ZU93/Mirror Emperor
イタリアのアヴァンジャストリオとカレント93のデビッドチベットの共作。ここで鳴らされるサウンドはチェンバーゴシッ���風のオーケストラあるが、内省的な独白を究極に突き詰めたチベットの意識を置き換える作業的なものでしかなく、音楽としてはギリギリのサイコドキュメントといった向き。チベットの歌唱は生々しく抉りとるような悲痛な表現を含むが、ある意味オブセッシブな正気に満ちていて詩的ですらありパーソナルなものを超越して訴えかけて��る魔力がある。「Hey, was that the Apocalypse?」知覚で歪曲された真実が全く別の形で迫ってくる1枚。
Laurel Halo/Raw Silk Uncut Wood
聖域と呼ばれる場所に安息を求めることは「崇高」か、あるいは「業」に数えられるか。瞑想ヒーリングとダークアンビエントのあわいで肉体が沈んでいくような感覚は、一抹の居心地の良さに甘えを許したなら最後、得体の知れない深淵がこちらを見ている...そんな感じの示唆に富みすぎるアートワークと音像の豊かさが、トラウマや深層心理まで抉ってきてやべー。1曲目の極上入眠チルアウトでさっさと寝るのが吉!
WET/Still Run
キャロル・キングの影響を感じる私小説的なポップソウル。オーガニックなサウンドと透き通るような歌声が深く印象的。ここ数年、ハイテクノロジーなR&B及びソウルがトレンド化し大量に消費されつつあるが、この作品の持つ普遍性は、歌を聴くという行為の、もっと能動的で原初的な喜びがある。モロThe Cardigansな90年代リヴァイダルの1曲だけが感情を顕にしているのも象徴的で、感傷に浸りたい時に聴くと癒される。意地悪そうな、だけどナイーヴな顔つきの顔ジャケにも愛着が湧く。
Foodie/All You Can Eat
バブルガム・ポップなんて甘くておいしそうな名称で紹介されてるけど、ロシアンルーレットで引き当てたわさび味のシュークリームみたいな気分屋のバンドの、いつでもにやけてしまう大好きな音楽。そこへさらに憧れのピチカートファイブやシンバルズの熱狂がブワッと眩んじゃって...ずっとヒリヒリしてたくなる。後味を引くという意味で、「おいしい」と「おもしろい」は似ているのかも。
Broken English Club/White Rat
ZOV ZOVと同一人物、Oliver Hoの別名義での作品。ドローンノイズをゴツゴツ煮たような陰気なアンビエントや硬質なビートが淡々と打ち込まれるトラックは現代的なテクノの文脈にあるが、シンセサイザー使いがクラフトワークのニューウェーブみを帯びていてパンクに近い精神性を感じる。かと思えば最後の曲が中東サウンドでZOV ZOVとリンクしたり。3部作の第1作目ということでなんとなく予言めいた作風なのかな。
ASEUL(아슬)/ASOBI
まんまYumi Zoumaな80年代シンセポップの再現度の高さ!そして、そのチルウェイヴな感覚はそのままにトリップポップみたいなダブの派生を思わせる音作りは、まるで緻密に書き込まれたボロボロの教科書から召喚された天使たちがじゃれ合ってるかの様。歌われる韓国語の響きもいっそう神秘を深めるもので、もはや空想でいっぱいになってる自分の頭の中が好き。ドリーム・ポップって誰も手に入れられない桃源郷みたいな、孤高の音楽なのかも。
PIPER MARU/Most of My Friends Died In Space(EP)
捻りひしゃげた爆裂サウンドとブチギレた女性Vo.に神経という神経が全部起き上がるUSハードコア・パンク。なんと言っても、かわいいピンク色の猫ジャケがパーフェクトで、アメリカの郊外に住むローティーンの少女になって衝撃と憧れを噛み締めている気分。G.L.O.S.S.は解散してしまったけど、その炭は何度でも燃やすことができて、“社会のごみの外側で生きる未来からやってきた女の子たち”が、現在の好きな場所で生きられるようにゴミを燃やし続けているのだ。そういうムーブメントを脈々と感じられるシーンの一角。自分も切実にその一部でありたい。
tirzah/devotion
少ない音数と隙間だらけのローファイR&Bをハイファイ環境のもとでサウンド設計し直したようなコアな音楽。古典的なファンクやジャズのリズム感を研ぎ澄ますことで、エクスペリメンタルを有機的なポップ・ミュージックに昇華していておもしろい。「隙間の美学」というのが世界共通の認識なのかはわからないけど、芸術の意義が共振にあるとするなら、いつの時代も人の心は変わらずシンプルなんだと思う。
Anna Calvi/Hunter
男や女という性別は社会が決めつけたもので、セクシュアリティやジェンダー、それを取り巻く環境は、バラバラに砕いて違う形で積み重ねることができるということ。アンナ・カルビが「自分の中の女性性/男性性との付き合っていくこと」を歌の中で何度も達成していてカタルシスでいっぱい。また音の提示としても隙がなく、随所で光るアンナのギタープレイが格好良すぎて血の涙を流すしかない。”セクシー”ってアイデンティティーやジェンダーやビジュアルを超越した言葉だと思う。本当に最高。
落差草原 WWWW / Prairie WWWW
台湾のエクスペリメンタルフォーク。奇抜な創作意欲が民俗や土地への関心が密接に結びついていて面白い。宗教儀式のような呪術的トライバルサイケ、その呪縛から解かれたロック、クラウト的な酩酊感、さらには中東エスノまで踏み倒した後半のどんちゃん騒ぎから深遠なるアシッドフォークなど、多様な音楽が多様な解釈を持って物語を牽引する。めっちゃ草生えて楽しそうなのに、ガチすぎて全然草生えない...と思ったら、Wは音の周波数の波形だそう。一つ賢くなって草www
Pig Destroyer/Head Cage
ハードコアのアグレッションでデスメタルしてて好み。トラック1〜2の謎すぎるモンドミュージックからのブラストビートとか、グルーヴィーなリフが最早ストーナーみたいとか、突っ込みどころ満載なのにクッソ格好良い。インターネットの虚構をもりもり感じるドイヒーなMVにしてもそうだけど、この無駄の無いサウンドもまたクラストっぽい含みを持った複合アートなのかとか、妄想すると色々腑に落ちるところがある。健康な豚ってカンジでいいね!
SHOOK ONES/Body Feel
LIFETIME直系の格好良いメロディックハードコア。メロコアっていうとなんだか青春の感傷みたいだけど、メロディックハードコアとはパンクでありハードコアなんだな。心の奥にしまい込んでいたものを高らかに掲げるぶっちぎりの青春。キッダイが「ハードコアにメタルを持ち込んだ奴は最悪」って豪語してたけど、めちゃくちゃわかる気分。 なんせbodyでfeelなんだ。ジャスト求めていたサウンドで最高。
Current 93/The Light Is Leaving Us All
8ミリフィルムの白黒映画を見ているかのような現実と虚像の狭間で揺れ動くアシッド・フォーク。ハーディーガーディーやバグパイプといった民族楽器の彩りがクラシック調で、ピアノやヴァイオリンのオーケストラと溶け込んでいて素敵。オケがクレッシェンドしていくと、呼応するようにチベットが壮絶に歌い上げる。孤高の雰囲気さえ纏っているが、それは常に芝居の中で「表現」として語りかけるものであり、必ず対話がある。色んな国からやってきた人達と酒場で飲み交わしてるかのような多国籍で無国籍感が心地良い。
Julia Holter/Aviary
ソングオリエンテッドな方向性と実験的アプローチを分断した構成が、まるで荘厳なバロックオペラと昔のディズニーアニメを交互に見ているみたいだ...。あんまりにもブッ飛んだ調子に、LSDキメてるんか?なんて勘ぐったりもするが、この90分越えの1本のフィルムはめちゃくちゃフィジカルにサイケデリアを描こうとしていて、わたしはそこに同時代性を感じたりもする。光の強さに溺れず、弱い光や小さな光を見逃さない音像。『知覚の扉』が開かずとも本質をみることができるのだな。
SHXCXCHCXSH/OUFOUFOF
執拗に銃乱射するマシンビートの応酬は、インダストリアルと呼ぶには無味乾燥で、むしろ電車に揺られてるみたいな馴染みあるミニマルテクノ。存在や音楽をいくら記号化したところで「踊れないけど貧乏揺すりしちゃう」みたいな心理がこぼれ落ちているところがリアル。こういう地下テクノって音楽的にはかなり閉ざされているけど目の前の世界が広がってみえるのが不思議。わかんないけど別に知りたくないし知らないぐらいが多分おもしろいんだろうな。
DAUGHTERS/You Won't Get What You Want
4ADのDaughterの新作だと勘違いして聴くと心肺停止するやつ。マスコアばりの転調につぐ転調とともに劇的な頂点へと盛り上がっていく荘厳なサウンド。それをグラインドコアの直線的なアグレッションで繰りだしているんだから、格好良くないわけないのだが、オーケストレーションが軽すぎて多彩な音で塗りつぶされたサウンドが詰め物的に聴こえる。タイトルがタイトルなだけにガスで膨らんだ死体を見て欲を抑え込む的な迷走修行を思い出して落ち込むなど。まぁ、それは仏教の話なんだけど、トレント・レズナーが悪魔に魂を差し出したみたいなダークファンタジーとして妄想するとけっこう良い。
Reinier Van Houdt/Igitur Carbon Copies (feat. David Tibet)
Reinierの前作「PATHS OF THE ERRANT GAZE」の断片が散りばめられたコラージュ。以前扱った内容をマテリアルとして捉えた音像は、自分の認識の外に存在する空間や時間、場所、過去未来を自由に行き来するほどの膨らみがあり、デビッドチベットの朗読が唯一、現実との接点のように思えてくる。ラジオ放送に混ざってくる雑音と混信の波を掻き分けながら一生懸命傍聴するかのように、禍々しくも引きつけられながら、チベットが提唱する「黙示録」というものは、例えば、権力者が作り出した社会で誰の声が抑圧されているのかを考えるようなことで、沢山の事実から真実を知る啓示なんでは、と解釈。
Ex:Re/Ex:Re
Daughterのエレーナ・トンラのソロデビュー作。exってバンドのことかと思いきや、元カレについてのことらしく、知らんがな...としか言いようがないわけだけど、こんな私的な内容でも4ADから出しちゃうだけあって、才能ある女性だと思う。乾いた空気を夜露が濡らすような音像に恋の死骸を抱き寄せて歌うエレーナ。それだけで鑑賞するのに十分な作品に違いないが、後半で明らかに違う音の変化には、まるで自分のことみたいにガッツポーズしてしまう。音の骨組みが剥き出しになったソリッドなビートとファズ・トーンがちょっとPJ Harveyみたいでどちゃくそ格好良い。明確に意図する音を持って、失恋の痛みを「景色」として昇華する華麗さに、すっかりエレーナの手の中という感じ。
Killerpass/delayed youth e.p
MILKやTHE ACT WE ACTと並んで名前をよく見かける気になるバンド。青春の感傷の方のメロコアなイントロの爽やかさにああ...と思ったのも束の間、ドラムがyouthcrewスタイルをストロングに決めてて大ショック。ドラムが前のめりでヤバいんだけど、ドラムについて行けるベースもヤバいし、ひたすら青いギターボーカルもヤバいし、音の構造が異様すぎるおかげで歌の内容が全く入ってこない。でも完璧に打ちのめされてしまった。とにかく熱くてめっちゃ良い。こういう音楽をメロコアって呼びたい。
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(以下個人的な記録です)
「個性を尊重しましょう」と言いながら出る釘は打たれる社会において、多様性という考え方が特定の人に対して向けられた時、その言葉の善意は悪意となる
3歳半になる息子は今年も喋らなかった 療育手帳を更新するとB1からB2へ、より障害が重いものとして認定された
芸能人のカミングアウトによって、メディアでも発達障害の特集が格段に増えている 社会的に関心が増えているのは良いことだし、発達障害を「個性」と捉える考えにはわたしも賛成だけど、これを他人から言われると、他意はないのだろうが、めちゃくちゃもやもやする 本人や両親がものすごく努力した結果、驚くべき才能を発揮して社会的成功を収めたというようなサクセスストーリーは確かに希望がある けれども、結局、そのような成功者はごく一部でしかなく、「発達障害は努力次第で治る」というようなバイアス掛かった見方の影で、余計に生きづらくなってしまう人が誰なのかについては、想像が及んでいない
実際、そういった発達障害の取り上げ方に感化された実母からは、「普通の子よりも天才なんだから」「野菜を食べると障害が治る」「普通学級じゃなきゃ幸せになれない」と毎日のように言われるわけで、普段の育児の苦労に加えトドメを刺すように追い詰められ疲弊している
障害ゆえの特性はなんなのか? 何に困っているのか? どういった支援���必要なのか? 「個性」と片してしまうことで目を閉じて見ないようにしていないか 発達障害とは適切な支援が必要な尊重されるべき個性で、その背後にある環境が大事だということ、どうしたら正しく伝わるのだろう 理解を得るよりも、まず、誤解を解くのにものすごい労力の必要性を感じて、途方にくれるしかない
3歳半で1歳9ヶ月相当の成長と診断された息子は、障害があろうが無かろうがとてつもなく可愛い。遅くても成長しているし、今はそれがなによりも嬉しい。もちろん息子の特性も「個性」として集団に溶け込ませてあげたい。だけど息子にとって無理のない環境においてあげることを優先したいと思う。息子にとっての幸せは息子の心が決めることであって、他の子と比べるものじゃないから
他者は自分を映す鏡というけれど見ている世界もまた同じようにその人の映し鏡だと思う。障害の有無に関係なく、見え方、聞こえ方、感じ方、人それぞれ違う個性を尊重したい 多様性って、そもそも考え方だし、みんな同じが大好きな日本で個人が使うには持て余しちゃうと思う。そんな難しい言葉は捨てて、シンプルに他者への想像力を、でいいんじゃないかなぁ
わたしは、目を開いて、ちゃんとその人を見たい。適切に想像を働かせること、意思や主張を持つことをやっていかねばと思う
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女を傷つけ
るかこきかこが聞いているように、彼の薄い顔はさらに薄かったです。 人気深刻ですか?いつ回復できますか?人気 イェ清は、かすかな笑みは、大切信成にはそれほど深刻には、彼のナンセンスに耳を傾けませんと述べました。宝物 非常に高密度ではないが、目には、懸念の表情へのシムの側面下にある、イェ清を凝視することは良い顔色はありませんが、道を信じている大切医師は言うどのように本当に大丈夫?宝物 大切安心して、私は大丈夫だ宝物清は、センセンに心配することを望まなかった。大切あなただった、負傷に何が起こったの? 大切道のうち、。任意の傷を持っていないいくつかの男性宝物、高密度淡い笑顔を側面から白く美しいショットとも彼の額を負傷したが、その後、ガーゼで包み、それは非常に残念に見えます。 あなたは喜んでいたが、溜め息を吐くことはできなかった。もしこの美しい顔が残っていれば、楊陽は私をあなたの世話をしてくれないと非難するだろう。 助けること��できなかったが、登って赤面この密集、青白い顔を聞いて、大切シスター、あなたは私の楽しみをしなければなりません。宝物 大切それはないですか?宝物イェ清は、緻密赤面、心游気分が急に多く、安心しました大切あなたは本当に彼を見に戻って行くつもりはありません、私はあなたが探していた知っている襄陽の?宝物 この時間が、それは事故が実際に密であるならば、襄陽は痛みの寿命になる、という事実を明確に意識を残して、これを持ち出すのに適していないが、今回は物事。 彼女はその場面を見たくない。 最初は彼女が密なタブーの種類に襄陽に恐怖の感情をしましたが、襄陽はでひざまずいて、彼女を懇願したことから、彼女はこの気持ちを理解して、彼の目からおなじみの献身を見て、誰も止めることはできません。 襄陽ではなく、自分のエレガントなものに固執し、断固として、一度自分自身の屋上に立って風に対して立つようでした。 重いより大切シスター桥本环奈桥本环奈宝物密もにせじをにこふより、彼が口の中に、言葉を彼の口を開いたが、話す方法を知りません。 彼のアイデンティティは、彼が望んでいゴヤールバッグなかったにもかかわらず、これまでになくはないですが、すべての後に、最初から彼らは彼が普通の人がやるせるつもりはなかったブラック家族、です。 るまもは偏見のこの側面は何か、戻ってきて、一瞬イェ清を取ることを主張し、彼らに自由な時間を残して、部屋の外になりました。 大切私はあなたが心配しているか知っている、しかし、どんなには結果があなたがたの間ではありませんが、あなたは襄陽を逃れに非常に不公平になり、そうでない場合は一緒にするだけでなく、はっきりと彼に言います。宝物 センセンが彼女と一緒に去ったとき、その理由の大部分は襄陽のためだった。 彼はむしろそのような不快な環境と重い責任に直面して戻ってくるだろうし、彼はそのような素敵な人に害を与えたくない。 イェ清と彼の兄弟は、彼らはちょうどこの気持ちを取得したい場合でも、少なくとも彼女は干渉しなかったことを後悔していないが、私たちは彼のために何かを行うことができます願っています。 人気姉妹、時が来たら、私は彼に会います。人気 私は多分、彼はもしかしたら、彼らが会うことはありませんのポイントに来ることはありません、もう少し努力を望んでいた、それを隠すために考えたことはありませんので、密集しています。 イェ清は、それが合意され、緻密知っている、と地面から石の心が、彼女の心、彼女の耐え難い、と不安の私の心のようなものでホバリングし、彼女のクラッシュを心配されている一つのことがあります。 無意識のうちに、彼女は人々がそう多くの日、アンソニーのニュースをチェックしてくださいどのような場合には、私は彼が生きていることを知らない、があります宝物、言われ、これは密な低い声を取った、るまもが入って来ないだろうかを決定するために周りを見回しました死んだ。 人気アンソニー?彼はあなたと救われていない?人気 あなたは無意識のうちに何も感じない彼の足を挟んだ清。 大切行く時間を取ろうとします。 戻る病院から、シャオリンジーは彼女の治療のために多くのことをダンプし、彼女は病院に行く時間を持っていなかった、彼女はあなたが再検査を続けるしない場合には、彼の足は、それは本当に可能立つことができなかった、非常に明確でしたアップ。 彼女はその日を見たくありません。 大切明日の朝にお会いしましょう。 大切あなたは、私は彼があなたを困らせてはならないのでゴヤール 財布 コピー 安心ところ、私はあまりだ。何の時間を言わないでください、私はあなたのために仕事を共有します。宝物、彼女の静けさする夜勤を開くに至るまで 光のより繊細な、ハンサム、金縁のメガネ屈折を背景に、新張るはなかこの顔が彼女のもにせじをにこふに輝くでしょう点滅光に車の窓を見ているイェ清リフト目。 人気良い。人気イエスは約束したが、それでも助けることはできませんでした。 人気新鄭、あなたは今日その女の子に会いましたか?人気 新鄭矢野浩二チン・チェン山口百惠は凍りつき、すぐに眉をひそめた。大切あなたはどうやって知っているの? 大切めはこ るをさにがもにきはのニュースを入手したという話を聞くとすぐに、あなたは急いでしまった。ニュースの真実を確認しなければならないと思う宝物 イェング・チンは軽く微笑んだ。大切どうしたの?モク嬢はまだ林シャオを見ることを拒否している? 近年では、彼女はまた彼女が右が誰であるかを判断する意思がない、シャオ林夕ともにシシィの事を理解してきましたが、シャオ林よはのを見ても、これらの年の痛みに苦しんで、彼女はさらに多くの誤解を感じ、ロックを解除するための時間ですそれは時間です。 穏やかな顔をした新鄭梅は、すでにショックを受けていた。彼はあなたがそれを知っていることを期待していませんでした。 人気どうやって知ったの?人気 大切直感、へのシムは、私はいつもあなたが少林寺の知識がなくても何かを持っていると思います。あなたは彼が私を襲った恐れているが、あなたは彼に嘘にしたくないではないので、彼と一緒に氏モク事を言及することはありません。宝物 大切私は、私はあまりだいつかは考えることができ、または私は死ぬことになっゴヤール サンルイているナンシャオの怒りが彼の心の中にあるときに仓木麻衣したいと考えています。宝物、彼女の言葉の多くは、その後、笑顔瞑想にるまも 人気今回はニュースが間違っているようだ人気と言いました。やっぱり 人気あなたは彼を心配していますか?人気 したがって、彼は突然飲酒するまで彼の飲み物を落とさないだろう。 大切シシ氏は彼女とシャオモについてのニュースを一度も伝えないと約束したが、今はリンシャオをこのように見たいとは思わない宝物 イェ清地味な分析ではなく、誰もが小林よはのように永続的なようにすることができ、大切実際には、物事があまりにも長い間、過去にされている、氏モクも、おそらく彼女はそれを手放すた?、子供を持っています宝物。 彼女のように。バロンでは、彼女の人生にもっと重要な人がいたので、過去はもう重要ではありませんでした。 大切あなたがどのように知っていたかは本当に疑わしい宝物新清はイ・チングを半分冗談で見ていた。彼女は誠実な目で半分悪意を持っていなかった。 彼はまた、彼女が本当に知っていても、半分の言葉を言うことは決してないと信じています。 彼は彼女が知る方法を疑問に思った。 イェ清は、かすかな光を微笑んで、笑顔が一層神秘的迫り来ることを、大切私はただ見てチャンスがあった、私はあなたを見て、バランを遊び場に行くと、彼女は美しい小さな男の子をもたらしました。宝物 彼らは、ゲームをやっていたその時、あなたがた清はただ、彼は突然、非常にショックを受けました平日と船尾の男が突然、バレンシアの顔を親密な愛情の側面を持っていた、と見ていない通過、それは彼女をなをかううかお好奇心。 そうすれば、センセンは何かを知る前にそれをチェックすることができます。 よはさにねはこ よはがいつもそれを探していたのは、ちょっとしたニュースであっても、真実であろうとなかろうと、彼は決してそれを放棄しなかったことも理解されました。 大切それはこのようになった。宝物るまもは、曲がった口の中に、彼がしたリトルもにはその場所に行ってきましたし、子供たちが遊んで両親が存在する場合、一般的に出て認識されませんので。 ずか そはこふに襲われるとは思わなかった。 新陳は彼女の顔の笑顔を見て、彼女は心を震わせて、大切あなたはどう?宝物と囁いた。 人気何?人気ええ清は聞いていませんでした。 大切?あなたは手放す持っている宝物、お尋ねし続けるためにシムを大切あなたはまた、バロンを持っていますので、長いため、過去の事を、なぜあなたはその人の強迫観念のために念頭に置いていたのですか?宝物<! - 80うのう宇多田光えにい-にせににせ - >金城武第249章インシデント 突然遅れ呼吸イェ清は、私の心は身震いを抑制する機会があった、急ブレーキ音の突然のバーストは、車がフェンスの側に、重いヒットを逸れ、来ました。 彼女は体がない足を作るための努力の上に、側に互い違いにスライドさせ、ドアの側に頭を打った、反応することができ、その瞬間、彼女は空白の心を感じました。 突然、新陳は彼女の長い腕を伸ばすと彼女の体に彼女をつかんで、彼女の腕と車の狭いスペースにしっかりと保つ。彼は彼女のためにすべての危険を取り除いたが、これにもかかわらず、激しい打撃は、イェジンがショックを感じさせるようにした。 人気清清、大丈夫ですか?人気 車は深刻な衝撃の後についに止まった。新鄭矢野浩二チン・チェン山口百惠彼はそのような突然の出来事が起こることを期待しなかった。緊張した声が変わった。 丁はちょうどドアを叩いて頭がめまいだった。幸い、新陳はすぐに再び傷つくことから彼女を保護した。それにもかかわらず、突然の驚きもまた彼女の顔になった。 新は彼女の怪我ならば、イェ清長い時間が反応するように見て、彼女の顔の痛み、パニックを害する、彼は、罰金の回路図��向かって手を振って大切何が起こったのか?宝物 事故はどうやって起こりますか? ジョンはまた負傷し、血が彼の額に流れた。幸いにも、車はうまくいっていた。それはエアバッグだけに衝撃を与えた。 道路を横切るために突然影が突然消えてしまったことが判明しました。ジョンがそれを見たとき、ブレーキをかけるのは遅すぎました。ステアリングホイールを须田亚香里うことだけ心配して、道路から方向転換の車は、対向車がヒットして、他の方向にレーンに、フェンスの側を通って墜落しました。 それにもかかわらず、突然飛び出した歩行者に遭遇し、この時、彼は負傷して地面に落ちた。 反対側の死傷者はかなり小さく、車は形が外れたということ以外は負傷者はいなかった。 大切新シャオは既に病院に救急車を送っていると知らせており、松井珠理奈はすぐに到着する。私はここで問題を処理する。あなたと若い女性はまずそれを避けるだろう宝物 事故直後、暗闇の中に隠れている人々はすぐに事故であることが確認されるまで急いで急いで病院と松井珠理奈に知らせた。 彼は前方に来た事の新城明不要な白い種類彼額イェ清の傷害最も心配は、単に彼の頭をうなずいたとき、次の人は、対処します。 人気私は車を変更するつもりです、私は最初に病院にはい清をもたらすでしょう。 車が車に、すぐにイェ清フーシンを運転した、大切それは事故であるから。その上にすべての損失や死傷者のための大きなもの、補償をする必要はありません。宝物、去って行ったか、次の続行するよう指示 車の中で座っイェ清は、現状では反応しない外観は、ちょうどこの時点で重い頭はまだ混沌としており、彼女の目はぼんやりと窓の外を見つめてきたことを打ちます。 突然たくさんのお金が停止するあまりなく、道路を挟ん防弾車の絶対値のように見える、当時の車の中で、2台の車がある強大なダウン着用するライン上の車の後ろにだけストップで終了ニートのボディーガード。このエリアを完全に囲む。 新陳矢野浩二シン・チェン山口百惠もこのシーンを見て、少し眉をひそめ、彼の目で彼を見て、何も言わなかった。 事故が始まって以来、この道は閉鎖されました。そして、夕方には、道路に車がありませんでした。突然、たくさんの車があり、ライトは明るく、道路全体がすばらしく輝いてゴヤール コピー バッグ いました。 私はスーツを着た男と、ジョンが突っ込んだ車の下を歩いているサングラスを見ました。少し寒さと厳しいと細かいハンサムな顔にさらされるだけ彼の顔は、彼の顔の表情は非常に興味深い尊重これらの人々の目には、別の車の側で停止します。 新鄭矢野浩二よはこ ほをかこふ山口百惠はこれを眉をひそめた。サングラスで夜のほとんどは、この人は病気です。 しかし、車に座って、イェジンは、グレアでキャッチされ、数字、図、その背中を見つめていた。彼女がこの人生に精通していることを決して忘れることはないような親しみです。 もし彼女が動かなければ、彼女は彼女のアイデンティティを確認するために急いで行くだろう。その寒さに加えて、彼女はほとんどアンソニーと思った。 男は人の群に囲まれた別の車を持っていた。彼はサングラスが直面オフ車を引っ張った後、スポットに釘付けかのように、無意識のうちにイェ清、瞬間車のドア、イェ清の方向に目をやりました。 鮮やかな光の下で、彼女ははっきりと彼の奇妙な青い目を見た。青い空は広大な海のようであり、それを人々が捉えた。 それはアンソニーだった。彼女はそれを認めなかった。 あなたはドアに抱きついている清は、心臓は喉から飛び出しているようだが、彼女はほとんど尋ねるために彼を止めるために急いだ。しかし、足は大変な努力をしておらず、彼女の目の前で車を眺めるだけでした。 アンソニーは車に乗って窓から道路を横切って車を見つめた。青い目には心配と痛みがあった。 大切先生、私たちは今戻っていますか?宝物フロントドライバーは彼の指示を長い間聞いていませんでした。助けてもらえません。 大切すぐに来バーミンガムに通知し、病院に行く。宝物アンソニー・バックの目はチル、本体側の拳を食いしばっ、暗黙の激怒を発散します。 ダメージバーミンガムは、彼女の負傷が深刻ではないと言っているわけではありません、なぜ同じことを見なかったのでしょうか? あなたが電車から降りてきたときに、彼は男に奪われた。彼女が男の腕の中にいるときはいつも、彼は問題を見なかったならば、彼は愚か者になるだろう。 人気はい人気フロントドライバーは震えました。敢えて疑問を持ってはいけません。 サイレンの距
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不登校・ひきこもり問題の底流にあるもの
2017年11月号 ひきこもり相談会
自我の未発達(心の未発達)
自我の未発達とは、その年齢にふさわしい心の状態まで、発達していない事を言う。子どもにとっては、同年齢~異年齢の子どもと遊ぶことが、自我の発達にとりきわめて大事です。しかし現在は昔と異なり、遊び相手が不在の環境に置かれている。その結果、子どもが成長するのに必要な刺激が少ない。また、子ども自らが大人に成長することを受け入れることが出来ず、いつまでも子どものままでい��いと思うケースもあります。この場合も自我の発達が遅れます。
両親の愛情・愛着不足
両親の愛情・愛着不足や、親から十分に愛してもらえないで育つと、子どもに極めて大きいマイナスの影響を与えます。親が病気だったり、仕事が忙しくて子どもの面倒を見れない場合などの家庭で起きます。また、両親の不和、舅や姑との人間関係の問題、経済的問題などで、家庭が荒んでいる場合も、子どもが安心できないため、大きな問題となります。
発達障害
こどもの発達障害は、自我の発達を妨げます。発達障害の主なものは、ASD(自閉症圏障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)、の3つが挙げられる。 (1)自閉症圏障害ASDは、3歳以前にはじまる、対人的相互作用の障害、意志伝達の障害、反復的で情動的な行動様式の、3領域における機能の遅れや異常が特徴です。 (2)注意欠陥多動性障害ADHDは、不注意、多動、衝動性を中心的症状とする障害です。 (3)学習障害LDは、知的水準に比べ、極端に学力が劣ったり、科目間のバラツキが見られる子どもの場合を指します。「書けるが読めない」、「算数だけがとびきり苦手」など。
発達障害の子どもは、人とうまくコミュニケーションが取れない、うまく交際できないことなどのハンディキャップから、自信喪失、自己肯定感の低下を起こしやすい。これが不登校やひきこもりの1の要因となります。 親も学校の先生も発達障害をよく理解し、子どもの自尊心を回復し、自己肯定感を高めるような環境の整備に努める必要があります。身近な者からは褒められ、友達からは流石だなあ、と思われる場面が増えるように、周囲がお膳立てをする必要があります。
精神病
統合失調症、うつ病等の精神病を罹患している場合、子ども(に限らず大人も)は周りの人からの社会的要求に十分に応えられな��事になります。
PTSD心的外傷後ストレス障害(Post-Traumatic Stress Disorder)
極めて重度のストレスを受けた後、そのストレス体験を自分でも認めることが出来ず、また他人にも話すことが出来ないと、そのストレス体験を心の奥底にしまい込み封印してしまいます。封印されたストレス体験は、精神・身体症状となって表れます。これがPTSDです。例えば、戦争で子供の目の前で親が殺された場合などがPTSDとなります。
子育てのための家庭環境
子育てにとって最良の家庭は、母性と父性のバランスがとれた家庭です。母性は子どもをぐっと抱きしめてスキンシップ、母親と子どもの間の肌の触れ合いにより、本能的直感的に愛し愛されていることを感じます。これに対して、父性は「ならぬものはならぬ」という社会的規範を子どもに教えます。ともすると自己中心的、わがままに育ちがちな子どもに対して、生きることの厳しさを伝えます。 現代の日本の子育ては、母性はありますが、父性が足りず欠落しているように感じます。父性の欠落が不登校やひきこもりの1要因となっています。
荒んだ家庭環境
貧困で子どもに与える食べ物にもこと欠く離婚家庭。夫婦が仲悪くいつも喧嘩ばかりしている家庭。このような家庭環境では、子どもを健全に育てることは極めて困難です。
不登校・ひきこもり問題の表層にあるもの
挫折体験(学業、入試、就職、結婚、資格取得などにおける)、いじめの対象にされる、親・先生・友人から見放される、人間関係上の悩みなどが、不登校、ひきこもりの原因とされますが、これらは表層に表れたものに過ぎません。問題は乳幼児期~思春期に至る子育ての時期にあります。子どもを健全に育てることは、即席ではできない、長い時間がかかるものです。
最も大事なこと
親、学校の教師、周囲の人が、子育てにとってもっとも大事なことは、何であるかを認識して欲しい。 それは、両親の愛情・愛着、母性と父性のバランス、穏やかで和やかな雰囲気の家庭、いろいろな年齢の子供同士の遊びを通じての交流、などが大事であること、また、バァーチャルな刺激ではない、実存の現実の刺激が大事であることです。テレビ、ゲーム機、スマホゲーム、SNS(LINE,YouTube,Twitter)などに子育てを委ねてはいけない。それは子どもの自我の未発達を招き、思春期になってから手酷いしっぺ返しを受けることになるのです。 コラム 【事例】ネット依存症 高校3年生T君
T君はオンラインゲームに1日15時間以上プレイした。T君の生活時間は昼夜逆転して、学校に通おうとすると、頭痛や吐き気を訴え途中で引き返してしまった。登校しても寝不足で授業に集中することが出来ず、成績は急降下。T君はもともとは成績は大変良かったのに。
学習意欲は低下し、学校へは遅刻し、生活の乱れは一層ひどくなった。次第に欠席が増え、慢性化して引きこもるようになった。母親がT君にネットの使用を控えるように注意すると、キレてしまい、親へ暴言、暴力を振るい、家の中の物を壊してしまうこともあった。
父親は、学校にいかなくなったT君に「気合が足りない」と言い、朝は布団をはがして引きずり起こし、怒鳴りながら手を上げる事もあった。
母親は大きな不安にかられていた。「一度、インターネットのLAN回線を切ってしまったら、T君は大暴れしてお父さんが叱っても聞かない。本人はゲームを続けている。もちろん、学校にも行かない。このままどうなっちゃうのだろうと不安でした。高校の出席日数が足りなくなれば、留年までのカウントダウンも始まります。いつの間にか大学受験のことは考えられなくなって、とにかく高校ぐらいは卒業させないと・・・。なんとかしなきゃ、でもどうしたら? という思いでいっぱいでした。」
T君ももちろん苦しんでいた。「自分がネットゲームばかりやっているせいで、どんどん家の中の空気が重くなっていったのは辛かった。食卓も無言で居づらいし、なんで分かってくれないの? と思っていた。だったら、1人で居るほうがいいかなって。部屋から出ずにいると、ますますゲームをやる時間が増えていった。」
(補足)T君のような未成年者を長時間、ネットゲームに惹きつけているのは、多くの場合オンラインゲームです。オンラインゲームには、”課金システム”があって、ゲーム内で使うアイテムや武器などを購入できる仕組みが用意され、お金をかければかけるほど、ゲームに勝利するように仕組まれています。そして、この課金の支払いが、月当たり、何万円~何十万円となるケースもあり、家庭崩壊、離婚など大きな社会問題になっています。
【参考文献】 樋口進:ネット依存症、PHP新書
人は、人に愛されるために生まれる。 人は、自らを愛するために成長する。 人は、人を愛するために生きる。
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